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参考人(
井上敏夫君) 最近の
金融情勢につきまして、若干お話を申上げたいと思います。御承知のように、丁度一年前から金融引締め政策を実行して参りまして、その影響を顧みますると、丁度本年の一月—三月の間に
相当苛烈に現われたのでありますが、その後本
年度に入りまして、過
年度の
予算の支払であるとか、或いは又軍人
恩給の支払でありますとか、
地方公共団体に対する春雲あるとか、いろいろの財政
資金の撒布がございまして、やや金融的には楽のような状態にな
つたのでございますが、この第二
四半期即ち七月—九月の間と、その間における
金融情勢を、世間も又我々も非常に心配してお
つたのでございます。それは、その当時といたしまして、財政
資金の引揚超過が、それはこの期間に据え置きされるであろうと推算されましたところ、
日本銀行の
金融制度の引締めの殆んど最終的と申しますか、その尻が七—八両月くらいに現われると予想されましたので、両方の意味合からいたしまして随分金融は窮屈であると、かように予想されたのであります。これに対しまして、私
どもといたしましては、一番影響を受けたところの産業に対する市中銀行の融資に対しまする
日本銀行の高率適用制度の適用を若干緩和いたしましたのと、それから少し技術的な話に
なりまするが、第二次高率適用制度、或る方式でこれは出すのでございますが、それに対して、
一定の調整率をかけておるのでございます。その調整率を、四月—六月の比較的金融の楽であつたときのそのまま据置くということで乗り切ろうとしたわけでございますが、ところが結果からみますと、この期間におきまする財政
資金の引揚は僅かに六十億円に止まつた。このような原因からいたしまして心、配されました七月—九月の第二
四半期もまずまずというところで経過いたしたのでございます。これに引続きまして、今月からの三カ月間、即ち第三
四半期の問題でございますが、これは御承知のように供米代金が
相当たくさんに撒されます。それを第一の原因といたしまして、財政
資金が非常な支払超過になる期間でございます。
財政
資金の収支の
関係は、
只今申上げましたように八月、九月の間でも大いに狂
つたのでございまして、今大体この期間の撒布超過額を申上げてもその
通りになるかどうか私もちよつと本当の自信がないのでございますが、
只今の
資料からいろいろ判断いたしてみますと、恐らくこの三カ月間に二千億或いは二千百億くらいの財政
資金の撒布超過になるであろうと思うのであります。そのようなことからいたしまして、少し話が脇へ外れるかも知れませんが、御承知のように、新聞雑誌等に報ぜられておりますいわゆるデフレ底入観といつたような観測と申しますか、そういつたような一種の心理が事業界その他に行われるように
なつて参つたことは御承知の
通りであります。なおこの観測に対しましては、当初の金融引締めの眼目でありましたところの国際収支の改善、それから物価の引下げ、この二つの大きな目的が、一〇〇%とは言えないまでも、
相当顕著に達成されて参つたと思うのでございます。
先ず物価の面についてみますと、
卸売物価の水準は大体昨年六月頃の水準に還
つておると思うのであります。
小売物価にいたしましても、ほぼ昨年の八月頃の金融引締め以前の状態に
なつております。と申しますのは、金融引締めにいろいろの方策を展開いたしましたのちにおきましても、依然としてこの思惑的な取引、その他の
関係からいたしまして、物価は
相当上
つて参りました。恐らく本年の二月、三月頃がピークであつたと思うのでありますが、そういう上昇の傾向を解消いたしまして大体今申上げたように
卸売物価の水準としては昨年六月頃、
小売としては八月頃に戻
つている状態でございます。
又国際収支の点からみましても、極く最近新聞に発表いたしましたのでありますが、本年四月から九月までの本
年度の
上半期におきまして、ドルに換算いたしまして七千九百万ドルの受取超過に
なつておるのであります。元よりこの間におきまして、企業の倒産、或いは不渡り手形の増嵩等、いろいろのデフレに伴うところの犠牲と申しますか、そういうものが現われたのは事実でございますが、これも先刻申しましたような
金融情勢からいたしまして、昨今はそれほど激しい状態ではないというようなこと、それから今申しましたような国際収支も、これは手放しには楽観できないところがあるのでございますが、一応収支が改善しており、物価も
相当一時のピークに比較して下
つております。
それから
日本銀行券の発行高におきましても、九月末は五千百五十二、三億だつたと思
つておりますが、これが昨年に比較いたしまして大体五十億ぐらい低位にございます。九月の
平均をと
つてみますると、もつと幅の広い収縮ぶりに
なつておるのでございます。これらのいろいろの指標からいたしまして、もうデフレは底をついたのではないかという観測が行われたことは御承知の
通りと存じます。
私
どもといたしましては、それならばこの財政
資金の撒布超過の非常に多い第三
四半期に対してどう対処するか、こういう問題でございますが、二つの手を打つことに政策
委員会で決定されたのでございます。一つは、先刻も申上げましたが、二次高率方式の
通り、いわゆる調整率を前期の九〇%から七〇%に引下げたのであります。即ち市中銀行が
日本銀行から低利で借りられる部分が
相当それによりまして低く、
金額が小さくな
つたのであります。いわゆる借りにくくな
つたのであります。もう一つの手段といたしましては、供米代金が農協或いは信連の段階から農林中央金庫にか
なりそれが集ま
つて参ります。この
金額もはつきりは推定できないのでございますが、少くとも第三
四半期におきまして七百億円、或いは昨今の農村の消費傾向からみまして、もう少し殖えるのではないか、八百億円くらいに達するかも知れません。これに対しまして昨年やりましたと同じように、市中銀行の二次高率で
日本銀行から
借入れております
金額を農中の
資金によ
つて肩替りしてもらいたい。それからその他に又関連産業に融資をすることにも
なりましようが、
相当部分をいわゆる
日本銀行の売オペレーシヨン、
日本銀行が持
つておりますところの手形を大体農林中央金庫のそろばんに合うような割引率を以ちまして短期間農中に持
つてもらいたい。こういう手段を講じまして結局農中へ集まつたこの期間における
資金を
日本銀行への還流を図る、こういう手段を講じたのでございます。恐らく今日あたりはその一部分を実行しておるかと思うのでございますが、このような方法と申しますか、方針によりまして、大体第三
四半期におきましては財政
資金の撒布超過額の五割以上は引揚げることができるのではないか。このようなことができるといたしまするならば、大体におきまして先ほど申上げました九月末の銀行券発行高が五千百五十二、三億でございますが、年末通貨も六千億乃至六千百億ぐらいのところで収まるのではないか、かように考えておる次第であります。従いまして金融政策を
中心とする限りにおきましては、やはり今後もそう楽には
なつて参らない、かように考える次第でございます。
それが昨今の情勢でございますが、なおちようど金融を
中心といたしまする引締め政策が一年に相成
つたのでございます。今後これにつきまして
関係方面への影響
なり何
なりを篤と検討いたしまして、少し芸を細かくして行く必要がある、これは私
ども実は認めておるのでございます。
只今までのところ輸入金融の引締め、或いは高率適用制度の強化と申しますか、そういうようなことを
中心としてや
つて参つたのでございます。今後にいろいろな問題がある、このことにつきましては十分検討して参りたい、かように考えておる次第でございます。そのほか例えば
中小企業に対する影響であるとか、今後のそれに対する金融対策であるとか、万般の問題があるかと思うのでございますが、非常に概括的ではございますが、あと御
質問に応ずることにいたしまして、昨今の
金融情勢を極く大まかに御
説明いたしたような次第でございます。