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1954-04-05 第19回国会 参議院 水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月五日(月曜日)    午後二時七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    理事            千田  正君            秋山俊一郎君    委員            野田 俊作君            森 八三一君            木下 源吾君   国務大臣    国 務 大 臣 安藤 正純君   政府委員    外務政務次官  小滝  彬君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    農林政務次官  平野 三郎君    水産庁長官   清井  正君    水産庁次長   岡井 正男君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    水産庁生産部長 永野 正二君   —————————————   本日の会議に付した事件補助金等臨時特例等に関する法律  案に関する件 ○水産政策に関する調査の件  (ビキニ被爆事件に関する件)   —————————————
  2. 千田正

    理事千田正君) 只今より委員会を開会いたします。  最初に、只今本院におきまして、政府提案補助金等臨時特例等に関する法律案特別委員会において審議されておりますが、この水産関係において特に重大な問題がこの法律案の中に盛られておりますので、これに対して農林委員会文部委員会並びに厚生委員会等から特別委員長宛にそれぞれ削除、修正方を申込んでおるようでありますので、水産委員会といたしましても、この特例法案に対する特別委員会に対して、特に水産関係としては重大な面が載つておりますので、その点を水産委員長から申込むほうが妥当ではないかということを皆様にお諮り申上げたいと思うのですが、如何いたしたらよろしうございましようか。
  3. 森八三一

    ○森八三一君 只今のはどれだけあるのですか。
  4. 千田正

    理事千田正君) 三つあります。
  5. 森八三一

    ○森八三一君 内容を一応御説明願いたい。どれとどれと申込むのですか。
  6. 千田正

    理事千田正君) 補助金等臨時特例等に関する法律案の第十三条におきましては、漁業法に基く負担特例としまして、「漁業調整委員会に関する国の負担については、当分の間、漁業法昭和二十四年法律第二百六十七号)第百十八条(漁業調整委員会費用)の規定によらず、次項に定めるところによる。」、「2 国は、政令で定めるところにより、漁業調整委員会に要する経費を負担する。」これが十三条でありまして、これによりますというと、法律に定めておつたところのこの漁業調整委員会に対する補助を、政令に定める一定の面だけを国が負担して、当分の間これは全額補助を二分の一、或いは三分の一に減額しようというのがこの第十三条の政府提案の理由のようであります。  第十五条は、水産資源保護法に基く負担特例ですが、第十五条「国は、当分の間、水産資源保護法昭和二十六年法律第三百十三号)第十九条(費用負担)の規定にかかわらず、予算の範囲内において、都道府県知事管理計画に基いて行う保護水面管理に要する給費の一部を補助するものとする。」、これは従来全額国庫負担でありまして、内水面その他浅海増殖等保護全額国庫負担であつたのを、このたびは二分の一に減額するというのがこの趣旨であります。  次は、漁船損害補償法規定読替ですが、第十六条「当分の間、漁船損害補償法昭和二十七年法律第二十八号)第百十二条第一項(付保義務の発生)中「指定漁船(一年を通じて六十日以上漁業に従事する総トン数百トン未満一トン以上の動力漁船であつて当該地区内に主たる根拠地を有する漁船をいう。以下同じ。)」とあるのは、政令で指定する漁船(以下「指定漁船」という。」と読み替えるものとする。」というのでありまして、政府側考え方は、一トンから二十トンまでは従来の法律によつて補助するけれども、二十トン以上百トン未満のものはこの際補助しない、こういうのがこの法案趣旨であります。  この三つの水産関係の条項がこのたびの臨時特例法案の中に盛られてありますので、これを水産委員会としては如何するか、特にこの漁船損害補償法規定読替は、沿岸から沖合へという水産界のスローガンによつて、不漁の続く沿岸漁民が更に組合或いは共同によつて中型漁船沖合へと進ませておる現状から考えてみるというと、この百トン未満の分は国で十分補助をしてやるのが当然だというのが特別委員会における殆んど全員の考えなのでありますが、この臨時特例に則すそ法律案そのものが、文部省関係或いは農林省、或いは運輸省等いろいろあつて、瓦も玉も同じような、ただ何の関係もなく羅列した法律案であるために、只今特別委員会でも審議に難渋を極めておる状況でありますので、そのうちこの水産関係の問題、特に漁船に関する保護立場から、こういう問題は水産委員会からも各委員会と同様一応の修正方を申し込んだほうが妥当ではないかということが現在まで起きておりますので、皆様にお諮りする次第であります。差支えなかつたならば、委員長理事にお任せ願つて……ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  7. 千田正

    理事千田正君) 速記を始めて。只今委員長から皆さんにお諮りした件につきましては、次の委員会において案文を検討した上に如何にするか、方法を決定することにいたします。
  8. 千田正

    理事千田正君) 本日は、前の委員会におきまして論議されておりました、このたびのビキニ被爆事件に関しまして、政府当局としましては安藤国務大臣中心としていろいろ損害に関する委員会を持つて、それぞれ権威ある人々が集つて日本政府としての立場を明らかにするために目下調査或いは審議中ということなんでありまして、これに対しまして、政府側水産委員会としまして十分に疑義を質して、なお且つ独立後の日本立場を明確にすべきであるという論議がこの前の委員会において強く論議されたのでありますが、本日はこの点に関しまして、安藤国務大臣か御出席になつておりますので、委員のかたがたからその点について御質疑を開始して頂きたいと思います。
  9. 木下源吾

    木下源吾君 一つ安藤さんにお伺いするのですが、今度あなたを中心にして協議会か何かできたということですが、これはどういう目的でおやりになるのですか。それをお聞きしないと、何もかもお尋ねしては……。
  10. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) これは船の損害もあり、それからまぐろの輸出の検査というような問題もあの、又治療の問題もあり、船の管理といつたような問題もあり、対米交渉問題もあり、いろいろな方面に亘つておりますので、各省の次官、局長、その他関係各省の人が寄つて打合せ協議会ができたのであります。それをまとめるために私が議長ということを担当しているわけでありまして、大体きまつたのもありますが、まだ最後の決定に至らないで審議中なのもあるという、そういう立場です。
  11. 木下源吾

    木下源吾君 それではそういう範囲でお尋ねしようと思います。こちら側のほうへは、先般三崎地方といいますか、かつを、まぐろ業者のほうからいろいろ陳情が出ている。それを検討しておりまして、何せ水産庁だけでもはつきりせん点もあるし、かたがた総合的な調査をしておられるというのであるからおいでを願つた、こういうことになります。このような先ず損害に対しては、基本的にはどういうように規定づけて考えているか。例えば戦争被害、或いは災害だとか、いろいろあるだろうと思いますが、どういう建前でこの被害に対し規定づけておられるか、これを一つお伺いしたいと思います。
  12. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 私は、各省で今言う通りにそれぞれ専門的に調べておりますので、そういう細かいことはわかりませんが、大体総合して私の答えられる点だけをお答えいたします。  大体今度の船の被災に伴う損害というものを積算いたしまして、それをアメリカ要求するという建前でやつているのです。それについては大体あの福竜丸の船体ですね、それからいろいろな漁具、それからまぐろ等漁獲物、その他まだいろいろ損害を受けて壊れたりなんかした破損、毀損の物品というふうに分けて、それぞれ専門的に調べておりまして、それがすつかり確定しますれば、それを又持ち寄つて総合的に審査しまして、それが確定すれば向う要求する、こういうことになつているのです。
  13. 木下源吾

    木下源吾君 要求根拠はどういう点に立つておられるのですか。
  14. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 根拠といいますと……。
  15. 木下源吾

    木下源吾君 何か国際法とか何とか、こういうのがあるでしよう。
  16. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それは無論国際法関係にもよるのでしようが、今までこういうことはないことでありますから、実際の損害を調べて、又アメリカのほうでもこれを補償しよう、そこまで最後的に行かないでも中間補償はしよう、最後になつて本当補償をしようというような方針になつておりますから、それでこちらでは一々の損害を実際のところを調べてやろう、そういうことが根拠になつていそわけですね。
  17. 木下源吾

    木下源吾君 つまりこれらの損害についてお願いして補償を出してもらうという建前もあろうし、当然の権利として要求するという建前もあろうし、この建前によつてはこの処理の上において非常な違いが出て来ると思うのですね、実際具体的に……。その点の根拠をお伺いしているのであります。
  18. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 必ずしもお願いするわけじやないのです。アメリカでもその趣旨を言つて来ておりますから、それに対応してこちらは補償の種類についての額を申出そうというわけなんであります。
  19. 木下源吾

    木下源吾君 そうするとなんですか、初めからこういう被害が起きるということを、あらかじめ何か予定をしておつたのですか、これは……。
  20. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 一体実験によつてああいうような被害が起るなんということは予想もしておらないわけなんですね。そういう被害がたまたま実験によつてつたのですから、これに対してこちらは、要求すべきは要求しなければならんということは当然のことだと思うのです。アメリカもこれに対しては決して否定的な態度はとつておらない。
  21. 木下源吾

    木下源吾君 こちらが具体的な要求を出しましたか。
  22. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 具体的の要求は、先ほど言う通りまだすつかり精査ができませんから、最後的な要求はしておりませんが、すでに外務省から米国大使館にその趣意を話をして、アメリカ側考慮を要望してあります。
  23. 木下源吾

    木下源吾君 そのアメリカに対しての、言葉の上でか公文書か、若し公文書であるならば、その公文書をここでちよつと発表してもらいたい。
  24. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それは発表はちよつと……。
  25. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 最初この事件が起りましたときにおいては、まだ事実が判明いたしませんから、事実について先方に照会いたしました。ところがその後議会でも何遍も答弁しておりますように、日本としては損害について向う賠償要求するという考えでおります。殊に日本側調査によりますると、危険区域外に船があつたということが明瞭でありますから、その趣旨文書ではございませんが、在京の米国大使に対しても、又ワシントンにおいては井口大使のほうからも申出ているわけなんであります。ところがアメリカ側ではすでに先月の二十四日に日本側に対して、支払うべきものは補償するという意思を表明いたしております。文書で出すということになれば金額とか、いろいろこちらで調査した結果を盛込まなければなりませんので、文書は出しておりませんが、その趣旨は十分徹底しておるのであります。従いまして、先方のほうも支払う、補償するということをはつきり表明し、これを公表している次第でございます。
  26. 木下源吾

    木下源吾君 これは向うにいる大使から向う政府申入れたというようなお話だが、申入れ内容一つ御発表願いたい。
  27. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 内容と申しますというと、まだ金額とか内容がわかつておりませんから、だからそれについてこちらの被害状況を述べて、それに応じて補償をしてもらうという趣旨であります。
  28. 木下源吾

    木下源吾君 そうすると、ただこういう被害があつたからということだけなんですか。申入れ内容というものは新聞で見る程度ですか。こちらからもやはり困ると言うたのでしよう。
  29. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 三月の十六日、続いて中間的には三月の十九日に向うに対してこちらの被害があつた事実を申入れて、更に三月二十七日には詳細にこの事件を書きものにして向うへ渡してあるのでございます。
  30. 木下源吾

    木下源吾君 その事実を向うへ渡したというだけで、それを渡したのは何かこちらのほうは意図があつて渡したのでしよう。そうすればその意図内容一つ申入れ内容を聞きたいと、こういうことなんです、私は。
  31. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 損害補償そのものにつきましての内容は、関係各省の打合会と申しますか、安藤国務大臣の主宰せられておりまする会議によつて調べられた結果を正式に申入れるわけでありまして、まだ具体的にどういう補償をしてもらいたいということは、正式に申入れておりません。
  32. 木下源吾

    木下源吾君 補償をしてくれということは言うてやつたのですか。
  33. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) その趣旨十分向うへ徹底しておるはずであります。
  34. 木下源吾

    木下源吾君 その補償してくれということは、何に基いてお話しになつらのですか。
  35. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 日本側立場から申しますると、日本側調査によりまするならば、先方十分警戒措置をとつていなかつたということが言えるだろうと思うのです。こういう実験をするということは、その領域内において、この閉鎖区域内に行われておるのであつて、それは不法でないにしても、それについては危険を除くだけの十分の予備的な警戒措置、及びそのときに十分な警告をしなければならないにもかかわらず、それが十分に徹底していないということになれば、責任は先方にある。従つてそれによつて起されたところの損害補償してもらうのが当然であるというのが日本側立場であります。
  36. 木下源吾

    木下源吾君 その立場でそういうように表明されたのですか。
  37. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 先ほどから申しまするように、損害賠償そのものにつきましては、ただ原則的なことだけでは足りないのでありまして、如何なる場合においても詳細を付して出さなければなりませんから、この内容についてはまだ申入れておりませんが、その原則については十分向うに徹底さしてあるわけであります。
  38. 木下源吾

    木下源吾君 その内容を具体的にということは勿論必要なことでありますが、私は先ほどから申上げておるように、これを要求することは権利として要求をしたのか、権利であるならば、どういう一体根拠に基いて権利として要求したのか、或いはただこういう損害があるんだからこれを補償してもらいたい、こういう程度でおやりになつたのか、その点を明確にしたいと思つてお尋ねしておるわけであつて、勿論内容はどの程度に、損害の額、そういうものはあとで調べて見なければわからんだろうと思うが、これは根本の問題は、今あなたがおつしやつたように、警戒措置をしておらなかつたということは向うつまり手落ちである、であるからこの損害を出すべきである、賠償すべきである、こういう態度であるならば、そういう申入をしたならばそれでよろしいのでございます。そうでございますか。
  39. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 今おつしやつたような趣旨であります。
  40. 木下源吾

    木下源吾君 そうすると、向うのやつた水域はあらかじめこの範囲は危険であるから船が入つてはいけないとか何とかいう事前に何か日本政府に知らせがあつたものですか。
  41. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) これもすでにこの委員会で答弁申上げたかと思いまするが、あの危険区域というのは一九四八年以来実施せられておるものであります。そこでこれの通報措置としては、国際水路会議規定に基く通報世界各国に対してなすわけでありまして、日本もその通報を受けておる。ところがその後日本の船が危険水域に入つたという事実を先方が認めまして、一昨年の九月十八日に在米新木大使を通じて、そこへ入らないように、十分警戒さしてくれということを文書で以て申出た、そこで更に周知方を徹底せしむるために、水産庁、或いは海上保安部からその措置をとつたという事実はありまするが、その後に又危険区域が拡大せられまして、昨年拡大されましたときにはそのような水路部通報がありまして、これを日本のほうでも告示をし、そうしてそれを皆に周知徹底させるという措置をとつた次第でありまして、特別に外交的機関を通じて申出があつたのは、今申しました一昨年の九月の十八日であります。
  42. 木下源吾

    木下源吾君 それで、そういうアメリカからの申入というものは、これは国際法とか何とかいう、そういうものに根拠を持つておるのですか。
  43. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 今度の水爆実験というようなものは新らしい事態でありまして、今までの我々の観念からいうと、なかなか律しにくいような点もありまするけれども、何らかの危険な行動をとる場合は、従来もこういう国際水路会議規定によつて通報する、或いは実弾の演習をするとか、或いはその他危険なことがある場合は、ただ一国に対してだけでなしに、世界全部に知らせる必要があるので、この国際的な手続によつて通報が行われるというのが例であります。危険だからこれは入るのは絶対に先方として権利として認めないという意味でなしに、警戒してもらいたいという意味を以てこういう措置がとられて来た、これがこれまでの慣例であります。
  44. 木下源吾

    木下源吾君 慣例と言いますけれども、今新聞などで見ますと、又危険区域を拡げた。これは公海の問題で、アメリカが一方的にそういうことをやるということは、それは困るではないか、そういうようなことが論じられているのでお尋ねしているんです。それでまあ水爆なんというものは新らしい事件だから、そういうことを考慮に別に入れておらなかつた、うつかりしておつたんだという、こうなら別でありますけれども、今言う通り慣例になりまして、公海をどのくらいでも拡げて行けば漁も何もできなくなるわけなんで、そういう点についてお伺いしているんです。あなたのほうでも新らしいことだから手を打つべきところを或いは打てないでおつたかも知れない、そういうこともあつたかも知れないけれども、これは新らしい事実だから止むを得んといたしましても、次から次と海域を拡げて、そうしてこつちのほうは損害損害だけれども、これから漁も何もできん、こういうことになつたら非常に困るじやないか、こういうのでお尋ねしているので、それについて親切に一つあなたのほうから今までのことを、又今後に対しての考え等々を一つお伺いしたいと思います。
  45. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 危険区域が非常に広くなつて、船の航行とか、或いは漁業に重大なる影響を及ぼすということになりますれば、今御指摘のように、一方では公海自由の原則によつてそういう実験もできるということも言えるでありましようが、片方漁業しておる所、又船を持つている国から言えば、それによつて公海自由の原則が害せられるという矛盾した状態ができますから、これについては新らしい考慮を加えて、若しそれが重大な結果になるならば、それは停止するとか、或いは時期を特定の時期を選ぶとか、いろいろな方法考えなければならないものだろうと存じます。でありまするから先月の三十一日にも、この際拡大された危険区域については申入れをいたしております。時期の問題、或いは区域の問題、又実験を行わない合間においてそこが通行できるようにいろいろの申入れをいたしております。根本的に言えば、本日も参議院で御決議になりました原子力の国際管理、又原子兵器大量殺害兵器使用禁止というところまで行かなければならない。そうしなければ本当の根本的な解決はできないでありましようが、取りあえずの方法といたしましては、できるだけそうした漁業に対する被害がないように、航行に対して、又生命財産に対して差支えがないようにして、この危険区域をできるだけ狭くする、又それが邪魔にならないようにするという考え方で先般申入れをしたような次第であります。まだはつきりした回答は来ておりませんが、アメリカ側も十分考慮するということになつておりまするので、不日これに対して何らか回答があるものと私ども期待いたしておる次第でございます。
  46. 木下源吾

    木下源吾君 今そういう兵器としての水爆実験禁止とか、根本的の問題で、その根本的な問題を解決するためにはこういう具体的な問題をもう少し掘り下げて、そして相手方も何しなければならんと思うのです。今のお話の中に危険区域を狭める、こういうお話があつたが、危険区域を一体狭めるという程度でこの問題が解決できる問題だと私ども考えておらん。今言う通り成層圏の上に灰が飛んで、何カ月かたつてそれがどこへでも落ちて来る、こういうものなんで、危険区域を狭めるとか何とかいう全くそんな考えは私は全然今度のこの問題には当らんと、こう思つておるのだか、あなたがたもいろいろ研究すればそういうところに達すると思う。そういう点について政府は具体的にやはりそういうものでないということを、アメリカ政府、或いは世界に対して輿論に訴える方法を講じてもらわなければいかんと、こう思つておるのですが、さてこれほど重大な問題であります中で、今政府でとられていることの方法船体だとか、或いは漁具だとか、或いは漁だとか、こういう部分的な問題を取上げられておるようであります。併しこの原爆、水爆の問題はその損害の及ぼすところが単に直接こういう問題だけではないように、私どもはだんだん日を経るに従つて考えられる。今言う間接被害もたくさんあると思います。こういう間接被害というものに対してはどういうような方針をとつておるのでありますか、それを先ずお尋ねいたします。
  47. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 間接被害もいろいろありましようから、それも今例えば船体だとか、漁具だとか、或いは漁獲物、或いは又今後の生活保障の問題とか、そういつたような損害要求はするわけなんですが、ですからそれ以外の間接被害というものもいろいろありましようから、それも合せて研究はいたしておるのでありますが、併し間接被害ということがどの範囲で行くのか、具体的にそれをきめるということには相当の複雑にして困難なことがありますから、多少時間はかかつとおりますが、それに向つて調査は進行しておるのであります。
  48. 木下源吾

    木下源吾君 間接被害調査を進行しておられると言いますが、その大体の基準というようなものがありましたならば御発表願いたい。
  49. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) これは水産庁を一番中心にしまして、いろいろな関係方面でそれぞれにどういうのが間接被害になるかというようなことも今研究をしたり調査をしているのであります。ですから結論的にこれだけが間接被害だと今はつきり具体的に申上げる段階にはまだなつておらないのです。
  50. 木下源吾

    木下源吾君 水産庁に更にお伺いしますが、間接被害について水産庁はどういう一体考えを持つておられますか。
  51. 清井正

    政府委員清井正君) 只今安藤大臣よりお話申上げましたようなことが本筋であります。私どもといたしましては、この問題によつて起りました各方面に及ぼした影響、特に水産庁といたしましては、当該漁業者のみならず、一般漁業者並び販売業者等に相当の影響を与えていることは事実であります。この問題を只今間接被害という形でどういうふうにして取上げるかということにつきましては、目下相談をしておりまして、まだ結論に達しておりませんが、私どもとしてはこの問題を取上げるに当つて、その計数等につきまして相当はつきりした整理をしなければならんと思つております。目下私どものほうで各方面からいろいろの資料を集めているのであります。一般的に業界等からも相当例えば魚を放棄せざるを得なかつたことの損害であるとか、或いは一般に値下りがしたから困つたという、それによる影響とか、いろいろなことを聞いているのでありますが、只今状況といたしましては、目下それを各方面の見地から検討しているという段階でありまして、具体的に御説明申上げる段階に至つておらないのであります。
  52. 木下源吾

    木下源吾君 この問題については、まあ国としては漁業、いわゆる食糧のこの蛋白資源の問題にも関係しますし、それから漁をして来たものを扱う一般の商人、よく新聞などにあるすし屋に至るまで、こういう被害、それから又これは漁獲に行つた直接の被害、これは広汎なものです。国といたしましては、大体先般陳情に来ている陳情書の内容によりますと、これは必ずしも信ずるというわけではありませんが、とにかく我が国のこの水揚金額では五十五億円、三崎だけで五十五億円だ、こういうのです。で、これが国全体の七割だと思いますから、恐らく八十億以上にもなろうかと思います。で、この三崎だけでもこれだけである、こう言つているのであります。恐らくこれからの損害というものは夥しいものである。先般李承晩ラインの問題のときに七十億の損害というようなものが出ている。又北洋方面については各戦前の漁獲と今比べて見ますというと、約百億以上でございまして、いずれも国全体としての損害でありますが、とにもかくにもこういうことが積み重なつてつたならば、日本がこれはもう経済も破滅してしまうし、国民の滅亡になつてしまうと、こう考えられるんです。而もこの問題などは底曳以西、或いは李承晩ラインのほうから皆押されて押されてただ一つこれは残されたところの漁師の逃場所、これが今度やられた、こういうことになるんですね。そうなると、これは一水産庁の問題だけに終らないと思います。私の言うのは、それらを皆含めていわゆる間接損害と言つて差支えないと思うんです。個々のものを調査してとか何とかいうそんなのんきなことは私は言つておられないと思うのでございますが、年々の漁獲高はわかつております。そうして持つて来たものはあの通りでございます。こういうような事態に立至つておるときに、僅かに船だとか、取つて来た魚の代金だとか、灰がついている漁具だとか、そういうことで私はのんきにしておられないと思うのですが、これは水産庁だとか、或いはそういう個々別々でやれば、そういう考えも起すものと思うが、少くとも安藤さんがこれはまあ総括的にやると言われるときには、そんな個々の問題などを取上げるのではなく、国全体の今申上げたような損害を、これをすぐ出るのですから、これを一つ引つさげて、政府方針をきめておやりになつているものと私は考えているのでございますが、おやりになつておらんければ、一つ抱負でもよろしいから安藤さんからお伺いしたいと、こう思うのでございます。
  53. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 今やつておりますのは、この福竜丸の被害に対するすべての調査、並びにその総合調査の結果のアメリカ政府要求するという点の各省の打合会なんです。ですから今の打合会範囲ではそれをやつて行くより仕方がない。それで、それはその今の現在出ている現状の救済の問題なんです。併し政府はそれでのんきにそれでおしまいにしちまうというような考えは持つておらないのであります。政府としましては、更に進んでもつとその根本方針に向つて行かなくちやいかん。要するにこれはその国策にも関係する問題なんだから、その国策の根本に向つて更に考究し、何らかの方針を定めて行かなければならんと憂慮している次第なんです。それと同時にこの問題は、これはまあ初めて起つた問題で、世界で初めての問題なんで、こういう水爆の試験でこういうようなことが起るというようなことは恐らく予想もしなかつたでありましよう。而してその被害者は日本なのでありますから、日本としてはその立場からも黙つてはおられない。それをまあ動機として、ヨーロツパでもアメリカでも盛んに国際連合等を通じて、今それらの問題の根本問題にもかかつて来ているようであります。それから日本としてももともと原爆を広島、長崎で受け、更に今度のビキニの水爆実験で又第三回の被害を受け、併しそれがこの問題はむしろ日本的というよりは国際的、世界的の問題なんだから、そういう点につきましては今後考究して行きたいと思つておりますが、併しそれはそれとして、現在の今の福竜丸並びに三崎の光栄丸ですか、そういうほうの現在起つている焦眉の急務に対しての対策を先ず立てて行かなければならない。それをまあやつているわけなんです。併しそれで甘んじておしまいになるという考えは持つておりません。なお閣議等にも諮りまして、なお考究は進めて行きたいと思います。
  54. 木下源吾

    木下源吾君 折角大臣のまあお考えを承つて、だんだん明らかになつて来ましたが、世界の問題だと、こういうようにまあお話になりました。これは世界本当に原爆の被害を身を以て体験したものはないのですね。日本だけはこの戦争からこれを被害を受けている。でこのことを世界にもう少し早目から私は十分原爆の恐しさを、その被害の甚大さをもつともつと日本が知らせてやる義務があつたのではないかと私は思うのであります。今度の機会に、損害はもとよりでありますが、部分的な損害はもとよりでありますが、あらゆる角度からこの恐るべき害をなすもの、こういうことを世界にもつともつと積極的に明らかにする手段を講ぜられることが大切だと思つております。それと附随して今の損害ですね、今度の実在する損害に対してはそれが今の賠償を容易ならしめる一つの契機になると思うのであります。  さて、それではこの直接の今の御担当なさつている被害でありますが、政府は具体的にこの損害に対して、被害に対してどういうような措置をなされたか、この点をお伺いしたいと思います。
  55. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) この今の何ですか、現場の直接被害に対してですか。
  56. 木下源吾

    木下源吾君 そうです。
  57. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それは先ほどちよつと申上げました通り船体とか、船具とか、或いは漁獲物であるとか、そういつたようなこと、及び治療の問題ですね、そういうようなこと、及びあとの生活保障といつたような問題について、それぞれ分科会を設けて研究しておりますが、それがすつかりまとまりますれば、それを総合して直接にアメリカへ申出すということであります。  それから船のそれではどうするかというような問題も、もうすでに大体話がきまつておりますが、まだ実行には至つておりません。
  58. 木下源吾

    木下源吾君 手続としては結構でございますが、実際問題としては三崎ですか、この辺ももう魚の取引上そういう所は非常な打撃を受け、もはやその営業ができなくてやめてしまうというような境遇に陥つている者がある。或いは又直接被害を受けた第五福竜丸の船員等は御承知の通りもう病院に入つたり、こういう窮迫した、而もその人たちは別に資力があるわけではございますまい、こういう問題に対してアメリカから調査の上補償を受けられるのだということであるならば、それに基いた問題でもよろしい、或いは何でもよろしいから、これを救済する方法をしなければいかないのじやないか、こういうふうに考えますが、その点はどうなつておりますか。
  59. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それにつきましては、いろいろ研究しておりまして、まあ治療費はどういう標準で出すとか、或いは船員の収入とか、船員の経営上の損害とか、こういうようなことも過去の今までの実績を算定しまして、そしてそれを出して先ず差当り今あなたの御質問のようにだ、うかうかしておられんのだから、まあ一カ月ごとくらいにそれを出して行こうというようなことを今方針を立つておるのであります。  それから福竜丸の船も駄目なんであるから、その船に対する代船を購入をしてやると、そうして福竜丸は廃棄をしようというような方針を立てておりまするから、恐らくそう長いことなく、最近にそういうことが実現をすることになろうと思います。
  60. 木下源吾

    木下源吾君 今の一カ月ごとにやろうということ、治療費とか或いは生活保障といいますか、そういうことのお考えは結構でございます。これは日本、こつちの政府のほうでは何の法律によつておやりになるのですか。
  61. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) これはね、要するにそれはアメリカに対する補償要求の基礎なんです。結局アメリカかそれを補償することになる。その間にすぐアメリカが出せばよし、そうでなければ何らかの途を講じて政府が出そう、或いはその間に一時融資をするといつたような手段もあろうかと思います。
  62. 木下源吾

    木下源吾君 この融資をする、或いは何とかいうまあいろいろあろうけれどもですね、生活保護法によつてやるとか、或いは厚生省の何か救済の法律によつてやるとか、何とかというようなことを今お考えになつておるのじやないですか。
  63. 清井正

    政府委員清井正君) 只今安藤大臣から御説明申上げましたが、御心配の点は尤もだと思います。私ども誠にそのように考えておる次第でありまして、何とかして現在被害を受けておられるかたに対してできるかけ早く措置をしなければならんというふうに考えておるのであります。で只今のところは御承知の通り船員保険に全部加入をしておるわけでございます。該当のかたが全部そこで船員保険法の適用を受けまして、只今のところは治療を受けているかたは全部その法律適用で無料の治療を受けておるのであります。それから家族のかたも船員保険法によりまして、当分の間はこれは全額の家族の補償を行うわけであります。一定の基準に基きまして家族に手当が出るのであります。これも長くはございませんが、一定期間はあるわけでございます。そういうことで取りあえずは治療を受けているかたはうまく行つておるのであります。又特にこの間いろいろ諸経費がかかるわけでございます。家族のかたが東京におられる間、東京の間を往復するとか、いろいろこの事件に関して経費が要るわけでございます。そういうことにつきましては、いずれ又補償があるわけなんですけれど、取りあえずの措置といたしましては、丁度焼津の漁業協同組合が非常にしつかりした組合でありまして、全部協同組合等において取りあえずの面倒を見ているようでありますので、私どもとしましては、取りあえずの関係者のかたに対する措置はついていると、こう考えております。  併しそれだからといつてどもがその措置を急がないというわけではないのでありまして、急いで只今安藤大臣が申しましたような趣旨によりまして、計算等をいたしまして、然るべき本筋にこれを持つて行こう、持つて行くところの暫定措置として只今措置が行われると、こういうふうに実は言つていいと考えておるのであります。
  64. 木下源吾

    木下源吾君 今外務省のほうで言われているように例のないことだ、又安藤さんの言うように、従つてこれらの問題に対しては特に何か特例法でも作るというくらいの措置は私は講じられて然るべきだと思うのだが、今の船員保険法とか、何保険法とかいう、それはなかなかそういう間に合せの法律でなどではこれは救われるものじやないと私は思う。そういう準備をしておりますか、特別な法律を作るというような……。
  65. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) まだそこまでは行つておりませんがね。とにかく今答えられたように船員保険法によつて先ず差当りのことはできるから、まあそれで応急措置をしておいて、今後における経過及び結果等を見まして、或いは特例法を拵える必要があるとすれば、そういうふうな方向に向うかも知れませんが、まだそこまでは行つておりません。
  66. 木下源吾

    木下源吾君 その保険法によつて一体どのくらいの今まで金を出しておるのですか。
  67. 清井正

    政府委員清井正君) 金額的にははつきりいたしませんけれども、治療費は全部これは負担をいたしておりますから、本人は全然負担がないわけでございます。それから家族につきましても、先ほど申し上げました通り、四カ月間は標準報酬の全額を実は支給を受けることになつておりますので、取りあえずは関係者のかたがたはこの自己の支出は一銭もないというふうに考えておるわけでございます。
  68. 木下源吾

    木下源吾君 その全額のやつは何か月分までやつておりますか。
  69. 清井正

    政府委員清井正君) これはちよつと私のほうの所管ではございませんが、私の聞いているところによりますと、四カ月間は標準報酬額の全額、四カ月を超えますと、百分の六十というものを支給を受けるのでありますけれども、まだ事件が発生以来余り日がたつておりませんので、今のところは八額家族の人は支給を受けております。
  70. 木下源吾

    木下源吾君 それは額は幾らぐらいだということをお尋ねしたのですが、おわかりにならなければよろしいのですが。
  71. 清井正

    政府委員清井正君) 治療のほうこれは治療の実額でございますからはつきりいたしませんが、ただ手当を受ける場合ですね、四カ月は全額、四カ月を越えた場合百分の六十と、その基礎金額ちよつとこれは保険法のほうの建前で大体基準を六千円、七千円、八千円と三段階にわかれているのでおります。そこで一応その人の月収額が八千円と算定される場合と七十円と算定される場合と六千円と算定される場合の三種類ありまして、たしか今度の該当二十三人のかたは、それぞれに該当されるかたがあるようでございますけれども、その基礎金額の件につきましては、只今の保険法の基礎としてはそれが基礎金額となつておるわけであります。
  72. 木下源吾

    木下源吾君 私はその実際やつている金高を聞いておるのですけれども、わからなければあとでもよろしいのですけれども。  それから今の保険法によつて支出しておると、こういうことはいろいろ言われますけれども、これは何です、皆それぞれ私用の費用も要るのですよ、私用の費用もですな。それでまあそれは別といたしまして、そうしたこの魚の損害というのは今やはり調査をしておられるのでございますか。
  73. 清井正

    政府委員清井正君) 調査をいたしております。
  74. 木下源吾

    木下源吾君 そうすると、値下りの部分も調査しておりますか。
  75. 清井正

    政府委員清井正君) この部分につきましても、抽象的にいろいろどういう見当でその値下りをしておるかということについて、目下検討をいたしておるのであります。
  76. 木下源吾

    木下源吾君 この調査は一体どの範囲でおやりになつておるのか、ただ第五福竜丸とそのほかの光栄丸だけか、もつと調査をしておられるのか。その損害というものはやるかやらんかは別ですけれども、対象を調査しておられるか。
  77. 清井正

    政府委員清井正君) これはまあ非常に広範囲に及んでおることは御承知の通りであります。問題は全部のまぐろのみならず一般の魚価もこれによつて相当低落をいたしたのでありまして、抽象的に申しますと相当広範囲に亘るのであります。私どもとしては只今安藤大臣から御説明がありました通り、直接に福竜丸についての魚の損害ということが先ず第一に計算されるわけであります。その他光栄丸等の廃棄をしなければならなくなつた魚についての損害等は直接すぐ計算が出るのでありますが、その他一般のものにつきましては、非常に実は事務的にも計算の方法がいろいろございまして、非常に困難な点もあるのであります。そこでそれをどういうふうな形で、どういうふうな一体計算をするかということにつきまして、目下検討いたしておる最中でございます。
  78. 木下源吾

    木下源吾君 まぐろの商売をしておる者はですね、相当なこの被害をしておるということは、これは一般の情勢を見てもわかる。でこれに対する融資といいますか、融資のこともさつきお話があつたし、いろいろあるでしようが、実際にこれを救済する時期はいつ頃になりますか。
  79. 清井正

    政府委員清井正君) この問題はまあ私どもとしては早く何らかの結論を見出さなければならないのでございますが、非常に事務的に見ましていろいろ困難な点がございますので、なかなか実は進捗を見てないような実情でございます。併し問題は先ず取りあえずの措置という問題はあるわけでございます。特に先般来三崎の業者等からも融資の問題等がございますが、三崎等においては県から三千万円の融資をしておるようでございますが、問題は生産業者のみならず中間の流通業者損害等にい参しましても、それ相当に融資のことも考えて行かなければならんだろうと思つておるのであります。私どもといたしましても、今すぐ融資をこうということもはつきりと申上げられませんけれども損害措置の問題として、生産業者のみならず流通業者に対しても融資を御斡旋する何らかの途をどうしても考えてあげなければならんのじやないかと考えております。併し具体的にどの範囲でどの数字というところまでまだ作業が進んでおりませんが、何とかそこらのことを見てあげなければいかん問題だと私ども考えております。
  80. 木下源吾

    木下源吾君 今御苦心をなさつておる点はよくわかりますが、今お伺いしておるというと、やはり基本的な態度がきまつておらんのじやないですか。こういう点、この問題を災害として取扱うのか、まあ一口に言えば。或いは又新らしいこれは一つの事態であるから、一つこれを救済するために国の立場から、或いは個々の損害補償する立場、こういう面から一つ方針を立てられて、今の事務的に非常にややこしい問題があると言われたような点を解消して、迅速にこれが運べるような立法措置をやらなければいかんのじやないかと、こういうふうに考えますが、こういう点についてはどうですか。これは安藤さんお考えなつたらどんなものです。
  81. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) いずれはそういうことになろうかと思いますが、今までにないことだし、それから各省立場としてもなかなか、水産庁長官その他から話されるように、皆それぞれ苦心して遺憾のないようにしようというので努力しておるのです。ですから、そういうことは各省関係官庁の間で分科会もできておるんだから、そういう話がすつかりきまつて参りますと、今度は全体の総合会議でそこに機能的に基本方針が立つて来るのじやないかと私は見通しを持つておるわけであります。御指摘のように成るたけ早くやりたい。併しそれをこちらできめて、又その損害補償要求するということについても、余り過大な、過大というか、実際よりは過ぎたような、一口に言えば吹つかけたようなことはしたくない。併しながら実際の損害については、遠慮することはないのだから言わなければならぬ。それは外交上の立場もありますから、それらのことも考慮に入れつつ、要するに今分科的専門調査をしていますから、それが日ならずしてまとまつて来ますれば、おのずからそこに一つの基本的な方針がきまつて来るのだろうと見通しをつけておる次第であります。
  82. 木下源吾

    木下源吾君 私は安藤さんにたびたびお伺いしておるのは、事務的な、つまり各省のいろいろな問題というのは、すでにみんな一生懸命やつておられるのでございますけれども、政治的な方針をきめてやらないと、これは進まないと思うのですよ。それは勿論資料のですね、そういうものによつて総合的な一つ方針ということも大切でありますが、その前に政治的な何か方針一つ出してやらんと、それですから結局最後にはおいでを願つてこういうことをお尋ねしなければならん、こういうことになつたのではないかと、こう思うのです。どうか一つ何かやはり政府でその方針を、大綱をきめて、そうして各省にその方針を与える、こういうふうにおやりになつたほうがいいと思うが、どうですか、その点については。
  83. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 御忠告の趣旨は御尤もと思います。それでそういうふうにしたいと私個人は考えておる。ですが、こういうことは今までないことでもありますし、それから非常に広範囲に及ぶことで、直接損害ばかりでなく、間接損害というとなかなか範囲が広くいろいろありますから、そういうことがほうぼうからまとまつて来て、そういう参考の基礎的材料ができて、そこに総合方針ができて、政府方針がきまるのではないか。今まであるようなことならば先へ政府方針をきめてしまつてずつとやるのですが、必ずしもそうばかりは行かない。それがこれからも非常に長くかかることならそんなことを待つておられませんが、もうそう日ならずしてできると思います。併しあなたのお話考慮に入れておきます。
  84. 木下源吾

    木下源吾君 今日参議院の本会議でも決議が行われたことは御承知の通りでありますが、私どももその決議に従つていろいろ御要請などしておるわけでございます。今日の参議院で、いろいろ各党の主張においては内容は違いがありますが、或る主張によれば、アメリカのやつておることは非常によくないことである、だから陳謝をさせる、損害は勿論のこと、こういう主張までかなされておる。そういうことは一切の客観情勢によつてどういうように表現されて行くかはわかりませんが、実際の外交上はですね。併しながら国民としては恐らく今度の問題など非常に歯痒い感じを持つておるのではないか。もうあの海域においては殆んど遠廻りをして行かなければ駄目だとか、灰をかぶつただけでいいものやら、或いは又いろいろな報道が全部真実でないにしても、アメリカは余り親切なような印象を与えておらんです。特にそういう報道ばかりかも知れませんけれども被害は大したことはない、少し誇大なあれを宣伝しているのだというようなことやら、どうも国民としてはもう少し手ぬるいというような感じを持つておると思うのでありまして、これも外務次官に今仮に御質問してみたところが、先ほど来の御答弁のようなもので、申入れ内容どもそういうように考えておるくらいの程度なんです。それは損害賠償を、最後的には感情的になつて、お前らそんなことを言うならやらないと言うかも知れません、それは……。併しやはりこれくらいの人道上の問題であり、そうしてどこから見ても今度のやられたということは、ほかのほうの者の生命なんていうものに対しては余り考慮を払つておらんようなやり方ですよ、今度のやり方は……。そこでやはり陳謝を要求するというような表現でなくても、相当強硬に、強い態度で私は外交方針をきめておやりになつたほうがいいのではないか。これも一つかためて、この総合の調査の結果勿論そういうことになろうし、大体皆さんを集めて大臣がお聞きになればわかると思うのです。ですからそういう態度をきめて、そうして政府方針態度をきめて個個の問題にぶつかつていいのではないか、こう思われるのですが、この点を一つ大臣の御意見、所感がありましたら承わつておきたい。
  85. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) お話はよく承わりました。だんだんそういう方針従つて行くかも知れません。今はとにかく分科的に専門的に研究して、こちらで言い出したことに対して向うから反駁されても引込むようなことのないように、こつちでも確実な調査をしておきたい。その上に是非対策を丸でべきことは立てる。今のあなたのおつしやるような強い方針で行くほうが至当か、或いはその点について考慮を払うべきことが至当か、そういうふうになりますれば、その点きまりをつけたいと思います。
  86. 木下源吾

    木下源吾君 その業者も相当困つている者もあり、破産をしておる者も聞いておるのですが、これらに対してどうですか。減税とか或いは免税とかいうことについては何か話合いをなすつたことはございませんか。
  87. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) まだそこまで行つておりませんですが、それもやはり調査の結果がすつかり出て来た総合的判断によつて、いろいろそういうようなことが考究されることになるだろうと思います。
  88. 木下源吾

    木下源吾君 併し店をしまつてしまわなければならんような業者も出ていることは御承知の通りと思うのです。そこで調査をしまうということは現実にどういうことを、どの程度でどうするということは、それは調査の結果を待たなければいかんと思う。併しこのような事態になつている者に対しては減税をするとか、免税をするとかいうことは、何もそう深い調査は私は要らんのではないか、こういうように考えるのです。この点はどうですか。
  89. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) まだ、減税、免税等の話には行つておりませんが、それらもおのずから考究の問題になろうと思います。
  90. 木下源吾

    木下源吾君 それでは最後に外務省にお尋ねしたいと思うのですが、今日の参議院の決議案に対する大臣の答弁は、私は或る程度今までよりも態度は違つていると思うのです。まあ端的に言うと……。そこで外務省としては従来からの方針と、この問題に関して何か方針を御協議になつて変わつたことがあるのか、それを一つお伺いしたい。
  91. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 御質問の趣旨がはつきりわからないのですが……。
  92. 木下源吾

    木下源吾君 一言に言えば、今までは行つた者が悪い、一言に言えばアメリカがああいう実験をするのはこれは当然なんだ、新聞その他では私はそのような答弁と見ているのです。今日はそれとは違うのです。今日の答弁はできるだけ決議の趣旨をやるというような或る程度誠意を示しての答弁をしているわけなんです。その点についてお尋ねしているのです。
  93. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 本日のこの決議は、原子力の国際管理、或いは原子兵器使用禁止という問題でありまして、これはもうもとより外務省も年来希望してやまないところであります。ただ一方的に片一方だけやめさしたらいいじやないかというような御議論もありましたので、それに対してはしかし簡単には行かない。とにかく国際管理というようなことになれば願つたりかなつたりで、世界民族の人道と平和の上に非常に喜ばしいことでありますから、特に本日の決議の趣旨については外務省としては心からの賛同の意を表し、又そうした機運が国際的に出て来ることを願つてやまないわけであります。幸いにしてイギリスあたりでもこれが非常に論じられまして、日本のいろんな報道は相当詳細に各紙に掲げられておりまして、議会でも問題になつております。非常に不幸なことでありましたが、これを契機にして是非そうした機運が醸成されることを望んでやまない次第であります。
  94. 木下源吾

    木下源吾君 そうであるならば、今度の損害どもおざなりの、つまり計数に現れて来るというようなおざなりではなく、これは思い切つて国の損害の実態を外交的に折衝するという決意を持つておられるか。
  95. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) その通りであの主張の正しいところを反映せしめるように努力したいと考えております。
  96. 木下源吾

    木下源吾君 水産庁ですが、あの事件以来まぐろその他に対して消費者としては非常な不安を持つておる。頭へこびりついて離れないというような状況にある。そういたしますと、これは責任を以てこの魚ならば責任を持つ、ですから一種の統制ですか、政府として責任を以てというくらいの措置をして、一般に対する不安を除去する、かような方法は何か考えておられませんか。
  97. 清井正

    政府委員清井正君) 減にこのたびの事件によりまして、単にまぐろの消費者のみならず、一般の魚の消費者に対して非常な影響を与えたことは、私といたしましては誠に残念だと思つておるのであります。そこで何とかして正確な知識を魚類の消費者に与えることによつて、この事件による影響を一日も早くこれは除去する方向に持つて行かなければならないというようなことはお話通りであります。すでに御承知の通りどもといたしましては、これは第五福竜丸の事件が起つて以来早速厚生省とも相談をいたしまして、まぐろ漁業者の漁船か入つて来ます港を指定いたしまして、南方より入つて参りました船についてこれを検査するという措置をとつたのであります。その他輸出いたすものにつきましても同様な措置をとつたのであります。その他私どもといたしましてもあらゆる機会を通じまして、ラジオ、新聞等によつて弘報事業といいますか、いわゆる趣旨を徹底させる事業といたしましては、私どもといたしましてはできるだけ努めたつもりであります。又関係業者、無論各地方庁におきましても同様な措置をとつておるのであります。そこで私どもといたしましては、漸次回復に向つておると思うのであります。現に一般的な市況を調べましても、一時ちよつと最低になりましたけれども、その後だんだんと上廻つて来て、漸次平静に向いつつあるようでありますけれども、なかなか元戻つていないのであります。何とかしてこれを早く戻して正常な状態に持つて行かなければならんと考えておるのであります。只今のところでは厚生省とも相談いたしまして、厚生省でやつて噴いておりますところの検査に合格したものは必ず大丈夫だ、それ以外に入つて来るものも全部大丈夫だというような趣旨をよく関係者、国、地方庁が力を合せて趣旨徹底を図つて、一日も早く市況の回復を図るようにしなければならないと実は考えておる次第であります。
  98. 木下源吾

    木下源吾君 じや大臣如何ですか、融資のこともお考えになつておられるのですか。
  99. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 考えております。決定はしておりません。
  100. 千田正

    理事千田正君) 安藤国務大臣に対しての御質疑はございませんか。
  101. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 安藤国務大臣に一言お伺いしたい。今回の水爆実験のために区域が相当拡張されております。そうして現在では日本に帰つて来る漁船の通過経路が、水産庁から指定区域としてかなり広汎な区域がその実験場所を中心として指定されております。その指定された区域を通過して来る船に対してはすべて検査をしておられるようでありますが、この区域は恐らく危険の懸念があるというような意味合いから先方で、アメリカで指定した区域以外に、更に広くそういうゆとりを取つたものと思われます。そういたしますと、日本漁船が先ず以て漁場に参ります場合にも、帰つて来る場合にも、この指定区域は避けなきやならん。万一ここへ来れば、ほかを通つて来ても検査を受けるかもしれませんけれども、少くともここを通過したら検査を受けなければならん。検査を受けるということは危険の懸念があると見なければならん。そういたしますと、これを迂回して漁場へ行き、漁場から帰らなければならんということになりますと、非常に広い範囲の長い航海をしなければならん、聞くところによりますと、今回のこの区域の拡張というものが御承知の通り半月形になつております。南のほうはあいておりまして、北のほうが半円、こういうふうになつております。この南のほうは御覧になれないかもしれませんが、半分あいている、ここは危険でない、この北のほうが危険なんだ、こういうことなんです。ところが日本の漁場はここなんだ。百トンクラスの漁船が行くのに最もいい所だ。三百トン、四百トンになればもつと遠方へ行きますけれども日本の非常に数の多い百トンから二百トンクラスのものは、ここのあいている所へ従来行つてつた。今後そこを船が迂回してここへ行かなければならないとすると、三崎からぐるつと廻つて行かなければならん、廻つて行かなければ非常に近いんですが、廻つて行きますと、新聞にも出ておりますが、三日とか四日とか余分に日数がかかる。そうすると操業日数は短縮されるし、油の消費量も増して来る。従つて現在のタンクではここへ行くことができないという結果になる。  こういうことに対しても何らかの措置考えておられるかどうか。単に害に会つたものに対して、例えば魚を捨てたとか、或いは魚の値下りだとか、或いはその船に対する補償であるとかいつたことのほかに、こういつたようなことまでも考えておられるかどうか。若し考えておられないとするならば、これは絶対に考えて頂かなければならん問題ですが、その点は如何ですか。
  102. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 今のお話の点も、現在の損害、現在問題の対策処理を主としてやつているんですが、将来今お話のような点も無論考えつつありまして、どういうふうにするかという結論には行つておりませんが、そういうことを考慮に入れて折角進行中なんであります。
  103. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今回の事件は勿論世界中の新らしいケースでありまして、例のないことでございすが、昨年のあの大きな水害とか台風の害とかいうものがありました際に、政府は大野国務大臣をしてこれに当らしめた、今回は安藤国務大臣をしてこの問題に当らしめたということは、非常に重大な問題と考え政府が対処しておるものと私は考えるんです。そこで先ほどから木下委員から頻りに御質問なり要望がございましたが、私も同じように、生産者及び流通業者の今日の困憊は非常なものである。殊に最近十三光栄丸が帰つて来て、その魚が又廃棄されて、その船の処分をどうするかといつたような問題がありますると、業者は次々と不安が、又そんな船が来やしないかということになりますと、まぐろ、さめ等ああいう南から来る大きな魚のみならず、近海の魚までその影響を受けているというような事態で、私は現実には知りませんが、流通業者、魚商などで営業ができなくなつたという連中があるというように聞いております。要するにこれは早く手を打たなければ参つてしまう。ですからそういうものは参つてしまえば仕方がないと言えばそれまででありますが、そうは行かないので、融資なり何なりでそういうものを一応膏薬貼りでもして殺さないようにする必要があるのではないか。そこですべての損害の数が集計されるまで待てない問題がたくさんありやしないか。これは私はその人の経営が拙劣なためではなくて、こういう事態のために不測の損害を蒙つたということに対してはいずれ補償があるでしようから、その補償の前に融資なり何なりの方法で最も手つ取り早くこれを救済して行くことが必要じやないか。そこで根本的な対策は勿論立てると同時に、並行してさようなものを、これはまあそうたくさんは私はないと思いますが、先ず長い間のれんでやつている者が参りかけたというものは、地方的にも調査すればすぐわかりはしないかと思いますので、そういう者は至急に手を打つてやる。そうしませんと、折角漁師が取つて来た魚を市場へ揚げて仲買人が買つた、その買つたものがよそへ売れなければそれで値が下るというと仕切りができませんと、そうすると生産者に金が払えない、漁師にも支払いができない、然らば漁師に払わないでそれで生きているかというと、生きているわけに行きません。商売が止つてしまう。ですからこれはその流通業者に対しても早急に手を打つてこれを助けておきませんと、生産者に響いて来る。そういう点を一つ特に大臣を主査とせられてこの問題に対処しておられるのでありますから、その趣旨は非常に重大に考えて、一般各省の事務的措置ではいけないと、こう考えておられると思いますから、一つこの点は政治的にでも早急に手を打つて一応の膏薬貼りでも仕方がないですから、やつて殺さないようにする措置をお願いしたいと思います。
  104. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 今のお話通りです。でまあ間接損害ということも、延びれば延びるほど間接損害が多くなるようなわけですから、間接損害の延長になつてしまうのだから、今のお話通りに手つ取り早く何らかの措置を一時的にでも先ずする。そうして本当のことに行くまでにそうしたい。例えば神奈川県では三千万円の融資をしたというのです。で、政府においても政府としてのそういう融資等の途を成るべく早く講じたいと考えております。
  105. 千田正

    理事千田正君) ちよつとお諮りいたしますが、安藤国務大臣が時間がないそうでありますから、よろしうございますか……。それでは御苦労様でした。
  106. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 外務省に一つお伺いいたしますが、さつぱり私はわからないのでありますけれども、今度のこの実験によりまして、この周辺には住民の住んでいる島が大分あるように思うのです。このビキニの周辺には……。そうして今度危険区域としておる中においては、人が住んでいるか住まんかわかりませんけれども、このかなり近い区域にはいろいろな島嶼がありまして、曾つて日本が委任統治していた時分の島もこの辺に散在しているようでありますが、ここらの島の住民に対して損害があつたかどうか。何か新聞で見ますと、アメリカの人も二百何十人、或いは原住民がどうしたとかいうことが出ておりますが、そういつたような情報はわかつておりませんか。
  107. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) お説の通り新聞に相当数の土人及び何十人かのアメリカ人を含んで非常に大きな被害があつたように出ておりましたけれども、その後原子力委員会の公的な発表によりますと、これらの被害と申しまするか、影響というものは殆んどとるに足らないものであつた、別段の支障を来たさなかつたというふうに出ておりまするから、原子力委員会の発表のほうが事実を物語つているものであろうというふうに私ども解釈しております。
  108. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 私は永野部長に御所見を伺いたいのですが、今回の十三光栄丸は約六百万マイルほど離れたところにおつたのです、一番近いところで……。ところがああいつたような事件があつたということであります。いろいろこれを危険区域を聞いてみますと、南のほうがあいておつて、北のほう或いは東西に拡がつておるということは、南のほうから北へ向けて風の方向がきまつてつて、南のほうには灰や何かが飛んで来ないというふうな考え方じやないかというお話でありますが、風のことですから、必ずしも南とか北というわけのものでもないと私は考える。殊に台風なんかの場合にはどこまで持つて行くかもわからない。又さきほどもお話がありましたように、非常に高い成層圏附近までも飛んで行くということになりますと、北のほう、或いは西のほうは安心できないということになりますが、距離からみますと、日本の領土、八丈島のあたりからみますと、一千四五百海里の距離じやないか。指定区域だともつと近くになりまして、七、八百海里のところになるのでありますが、そういつたようなことに対してちつとも危険を感じないと見ていいものでしようか。更に日本は、日本本土とは申しませんが、日本本土からこの危険区域までの海面も漁場なんです。五百マイル或いは七百マイル、或いは一千マイルという距離もそれぞれ小型の船がここで操業いたしておるのでありますが、そういうものに対して今後危険はないということが言えるでしようか。若しその点もはつきりしないということになりますと、先ほどからお話のように、この日本の遠洋漁業というものは殆んど大半は絶滅することになる。そういつたようなことを水産庁ではどういうふうにみておりますか。
  109. 永野正二

    説明員(永野正二君) 只今の御発言の実験、或いは今後行わるべき実験によつて、この方面漁業にどれだけの影響があるかということにつきましては、実は私どもも正確な判断の資料は持つていないわけでございまして、その点につきまして、我々のとつております立場としては、日本漁業が我が国の国民経済に占める位置から考えまして、これに対する被害を最小限度にするように十分注意考慮を米国政府において払つてもらいたい、又具体的に実験の行われます際には、日本漁業被害が及ばないような十分な予防の措置をとつてもらいたい、又万一被害が起つたとすれば、これに対しては十分な補償をしてもらいたいという立場をとつておるわけでございまするが、具体的に現在の危険区域として指定されております区域以外に被害が絶対に及ばないものであるかどうかという点については、これはなかなか問題の性質上はつきりしたことは我々としても現在まだ結論が出ていないような状態でございます。
  110. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 私は只今お尋ねしましたような懸念の下に、この原爆被害というものは三回も日本が受けておる。よそには殆んど経験がないと思うのです。併し先ほど来お尋ねしておりますように、これを中心として周辺にはたくさんの島々があり、ハワイと日本とはこれを中心として余り違わない距離にある所です。そうしますというと、この周辺における被害状況というものを調査することは、殆んど日本の遠洋漁業の状態を推察するのに非常に重大な資料となる。これは非常に日本の置かれておる国際情勢から見ますと、困難かも知れませんし、アメリカ自体もあつちにもこつちにも被害があるということは恐らく余り発表したくないであろうと思いますので、これらの被害については、日本の状態のみならず、この場所を中心として周辺の被害状況というものをできるだけ一つ詳細に情報をとつて頂きたい。そうしないと日本危険区域がどの辺であるかという今後の推測がつかない。この間も立教大学の先生がおつしやつたように、予測は九五%当つたというが、あとの五%というものはどこへ行くかわからないというような話で、第五福竜丸もその五%に入つてつた。ところがその上更に大きな威力の実験を行うということになりますと、アメリカが大体推定した区域にとどまるか、或いはそれがもつと大きなものであるかということもこれは予測がつかない。そこで、こういうたびたびの実験について、我々はこれをよしてもらえば一番いいのでありますが、どうしてもよさないとすれば、そのときどきの情報は成るべくとつてもらいたい。併し情報をとろうとしてやればスパイ行為というようなことになつてむずかしい問題にぶつかつてしまう。そうでなしに、堂々とこの情報をとるような方法を外務省も水産庁もやつてもらいたい。そうして過般の実験被害日本漁船だけであつた、ほかには及んでいなかつたということになれば、又安心ができるのですが、所々に、あつちにもこつちにもあつたということになりますれば、これは今後日本の遠洋漁業の進展の上に非常に大きな障害になる。かように考えますので、この点の情報をとることができるかどうか、水産庁及び外務省の御見解を伺つて置きたい。
  111. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 日本の水産業に関係のあるような情報というものは是非日本へ知らせてもらいたいということは、これまでも米国側へ要求しておるところでありまして、米国側からもこれは極めて簡単な通報ではありましたけれども、三月二十四日には原子実験に伴う漁業や海流の危険性がどの程度まで認められるかというような点についての米国の原子力委員会の声明をさえ通報して来ておるわけであります。が併しもつと今後こういう実験が繰返されるとすれば、詳細な事情を場合によつては発表しないというような一つの約束の下にでも与えてもらうということに努力しなければならないだろうと思います。この点も去る三十一日にいろいろ申入れもしておりまするから、今後こちらのほうの調査の進行に連れて又米国側と十分話合いをしなければならないと考えておる次第でございます。三月二十六日の実験のほうは、三月一日の場合と違つて、あのときには非常に予期しないような危険な結果をもたらしたけれども、二十六日の実験はそういうことにならないで、大体予想通りの結果を得たというようにしまして、今度の新らしく行われた実験のほうが比較的被害が少かつたように原子力委員会のほうでは公表しておるわけであります。でありまするから、今後行われるとすれば、できるだけそうした被害区域を少くするような実験、こうした面も同時に考えてもらわなければならないだろう。根本的には先ほど木下委員に申しましたように、行われないことが第一でありますが、どうしても実験を行うということになれば、被害のないような方法もやつてもらいたい、又行われるような場合には、今御指摘のように全部の内容を発表できなくても、少くとも漁業関係のあるような事項はその都度通報してもらうように交渉しておる次第であります。
  112. 千田正

    理事千田正君) 他に御質疑はございませんか。  それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後三時四十九分散会