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1954-02-22 第19回国会 参議院 水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十二日(月曜日)    午後二時二十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     森崎  隆君    理事            秋山俊一郎君            千田  正君    委員            青山 正一君            野田 俊作君            森 八三一君   政府委員    調達庁長官   福島愼太郎君    水産庁長官   清井  正君    海上保安庁長官 山口  伝君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    調達庁不動産部    次長      大石 孝章君    水産庁漁政部長 立川 宗保君   —————————————   本日の会議に付した事件水産政策に関する調査の件  (漁場における駐留軍演習場に関  する件)  (巡視船「さど」のだ捕事件に関す  る件)   —————————————
  2. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それでは大変遅刻いたしまして申訳ございません。只今から委員会を開会いたします。  先般の九十九里浜射撃の件につきまして水産庁からその後の説明を伺いたいと思います。
  3. 清井正

    政府委員清井正君) 只今お話のございました、先般片貝におきまして米軍演習地において高射砲射撃演習があつたのでございますが、この件につきましてこの前の委員会においていろいろお話を承わつたのでありますが、その後便宜どものほうにおきまして、去る十七日に外務省海上保安庁調達庁及び地元県より係官が集まりまして、この問題につきましての打合せ並びに実情調査協議会を開催いたしたのであります。詳しくは漁政部長が当日出席いたしまして会議を主宰いたしましたので、詳しくは漁政部長より御説明申上げますが、大体事実の確認等につきましてややまだ不確定の部分があるようであります。その他事実確認並びにこれに基いていわゆる演習実施方法を、関係漁業者周知徹底せしめる方法等につきまして更にいろいろ打合せをいたしたのであります。只今から漁政部長より便宜説明をさして頂きたいと思います。
  4. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 現在までいろいろ各方面からの資料を収集いたしまして、当日の事実を追究をいたしておりますが、まだいろいろと最終的にはなかなかはつきりしないという点を若干残しておりますが、大体こういう事情であつたようだというところの見当がついたように思いますので、その点の御報告を申上げたいと思います。この片貝演習につきましては、これは演習条件が毎週月曜日から木曜日まで、時間は十二時から十八時まで、但し射撃演習は一年を通じて三十五週間を超えないという条件でございまして、それが二つの演習区域に分れておりまして、いずれも豊海射撃場中心として扇形地域演習区域になつております。A区域B区域とありまして、A区域のほうは主として高射機関銃で以て演習をいたしますところの豊海中心として半径八千ヤード扇形地域B区域は主として高射砲を以て演習しますところの半径二万二千ヤードの扇形地域であります。演習の態様は俗称赤とんぼと称せられますところの人の乗つていない無人の小さな飛行機を無線で操縦をいたしまして、空に飛ばしまして、それを標的として高射機関銃又は高射機関砲を打つわけであります。それで本年は演習を一月十一日から開始をいたされまして、それでこの演習をいつやるかということにつきましては、アメリカ側から日本政府に対して演習の日程を六カ月前に日本政府に提示いたしまして、そうして更にその射撃実施の予定を変更するという際には、十五日前までに日本側通知をする。こういうことになつておりまして、本年はさような通知の下に一月十一日から開始をされたのであります。当日、二月十一日は木曜日に当りまして、演習は月曜日からずつと演習が行われておりました。それで当日正午十二時過ぎにおきまして、演習区域内に若干の船が残つておりました。それで海上保安庁巡視船報告によりますと、海上保安庁巡視船が十三時頃その扇形地域北辺に到着をしております。それで十三時頃海上保安庁巡視船北辺におりましたときに、海上保安庁巡視船報告によれば、視界内に漁船を認めず、こういう報告になつております。尤も当日は霧がかかつておりまして、視界が非常に悪くて二、三マイル程度しか見えなかつたようでありますが、その北辺地域からは漁船を見なかつた、こういうことであるようであります。十三時過ぎに海上保安庁巡視船区域外に退去せよ、危険であるから退去せられたしという無電を受取りまして、区域外に離れて、そうして近辺に漁船がないかどうかを見ながら、漁船があれば、危険区域に近寄らないように指示すべく、区域附近航行をしておりましたが、その海上保安庁巡視船報告によれば、その行動漁船を認めておりません。そこで十四時前に第一回の射撃が行われております。このときには、いろいろ事情をよく聞いて見ますと、区域の一番南の端に、扇形の南辺に漁船が五、六隻いたそうであります。それで米軍高射砲は、北方の、一番北辺地域に向けて発射をされておりますというのであります。それで米軍射撃は、十五時頃、それから十七時頃射撃が行われております。その間、海上保安庁巡視船は、現地区域の外をずつと警戒しながら航行をいたしましたが、先ほど申しました通り漁船を遂に認めておらないのであります。そこでその後威嚇射撃であつたということにつきまして最も重大であると考えておりまして、関係官庁のいろいろなルートでその事実を確認をしたいとして努力をいたしたのでありますが、現在に至るまで威嚇射撃であつたということを証するに足る事実を確認をしておりません。それは第一には射撃を受けた、そして或いは自分の近くに至近弾を受けて、非常に危険を感じたという漁船報告がありません。そういう申告を求め、且つ又どこの漁船がそういう射撃を受けたかということをいろいろ捕捉に努めておりますが、現在捕捉されておりません。従つてどの漁船が打たれたかということが確認をされないのでありますが、この漁船区域の南辺から南に去つたというもののようでありますので、千葉県の南部地方の、南の地区漁船であつたのではないだろうかというのが関係者想像であります。そこで片貝射場演習条件によりますと、特別な大漁で作業を打切ることができない場合は、現地における日米双方代表間の了解に基いて一時射撃を延期するが、その際は延期した時間の埋合せをすることとする、こういう取極めがあります。そこでこの現地の、片貝演習場におきましては、すでにその連絡方法連絡機構等については、ほかの演習場に見ないような特別な措置が講ぜられまして、と申しますのは、この豊海町の、現地射場のすぐ近所に、千葉県の県営で以て超短波無電局を置きまして、それに各千葉県下の代表地区漁船親船子船関係作つて、その親船に超短波無電気を備え付けさしておるのであります。それでこの海上から今日は非常に大漁である、漁船はもう二時間退去できないというような場合にはそこから無電局連絡をして、無電局からすぐに、この演習時間内は演習米軍基地の中に千葉県の職員がその時間中おることになつております。そのために特別に職員豊海町に一人千葉県の主事を常駐さしている、それにすぐ連絡をして、それからアメリカ司令官と相談をして適宜の措置をとるということになつております。そういう措置が講ぜられているのでありますが、当日は特別の大漁で暫らく延ばしてくれいという日本側からの連絡がなかつた連絡をした事実がないのであります。そこで当日の漁の模様でありますが、この漁場飯岡沖、これは演習場北方でありまして演習場区域外であります。その附近で漁があつたようでありまして、演習区域内で非常に大きな漁があつたという事実はない模様であります。大体以上のような状態でありまして、いわば威嚇射撃というものが行われたかどうかという点に重点を置いて、その確認に努めましたが、遂に現在その確認を得ていない。どうも威嚇射撃が行われたという事実は今のところ言い得ないのではないかと、こう思われます。それから十三時頃北辺海上保安庁の船がおりましてそれから無電を受けまして、そこを去つて行動をしておりましたが、その海上保安庁の船も、その威嚇射撃と称されております十四時少し前の射撃の砲声を聞いておりません。それで保安庁の船の確認も出ておりません。それからその後におけるいろいろな経過でありますが、二月の十六日に千葉県におきまして関係者が寄りまして、これは新聞にいろいろなことを伝えられた関係もあるようでありますが、この日本側関係漁業者も集まり、関係官庁も集まり、それから米軍代表者現地演習部隊代表者も一緒に集まつて、今後更によりよくこの運営をしたいということを目的として会議をやつておりますが、その会議結論といたしましては、現地連絡をよくしようではないか、それとこの漁民側からは船にもつと更に無線を設備をしたいから、無線をつけることについて援助をして欲しいという要求があります。それから米軍からは、大漁の際は勿論これは延期をする、それでできるならば当日午前十一時までに連絡をしてもらうと最も好都合である、こういう申出がある。それから現地演習区域である区域がどこまでであるかということを更に周知徹底をさせたいというので、その区域出漁をする関係漁船に対して海図をいろいろ配付をいたしまして、そうして水深を書き、ここからだということをよく徹底させるように努力をしたい、こういうことであります。  それからもう一つここでちよつと会議結論ではありませんが、先ほど申し落したことを伝えますが、このA区域B区域というものがある、こう申しました。そうして演習実施の問題につきましては、勿論いつからいつ演習をするかということについては、関係漁業協同組合に県からも伝え、それから海上保安庁でこの通信系連絡で、無線で通報をいたしておりますが、なお当日現地におきましては、旗を掲げて、A地区のときはどういう色の旗、B地区のときはどういう色の旗ということを掲げて知らしておる、こういうことであります。  それから今後の措置の一端になりますが、海上保安庁の、銚子のあれは海上保安部でありますか、あすこが現地を管轄をしておる、海上保安庁出先機関になりますが、それが現在配属船が三隻あるそうでありますが、それを今後当分の間演習実施のひには一隻船を必ずその演習区域に派遣をして、そうして問題のようなことが起らないように十分パトロールをするということを実施をいたしますということであります。  大体現在までわかりました事情は以上の通りであります。
  5. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 御質疑がありましたら……。
  6. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 新聞で我々は承知したのでありますが、水産庁側から立川部長が御調査なつたということでありますが、その調査せられた範囲はどういう範囲において調査をされたのか、どういう面について調査をされたかということが一点。  それから次に、そのときに出漁をしておつた五、六艘の船というのはどこの船であつて、誰が持主ということはわからなかつたのであるかどうか。  それからその出ておつた漁業はいわし漁業だということでありますが、どういう種類漁業であつたか。それからその辺に出て行く漁船の大きさはどれくらいの大きさの船であるか、トン数、馬力、大体どのくらいの船が出ているか、こういう面について御答弁願いたいと思います。
  7. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 調査をいたしましたルートでありますが、これは海上保安庁、それから外務省調達庁、それから千葉県、かようなルートでそれぞれの集まつ調査報告を集積をし、更に又その事実の調査努力をしておる、こういうわけであります。千葉県庁従つて漁業協同組合その他漁業関係調査とか、或いは警察網を通す調査とか、それから海上保安庁海上保安庁巡視船による調査とか、まあそういうようなことによつて調査をいたしております。それからその総合された一応の現在までの経過というのは先ほど申上げた通りであります。  それからその船がどこの船であつたかということでありますが、これは特に千葉県庁に頼みまして、県内のことでありますので、事情調査努力をいたしておりますが、現在までどこの船であつたかということを、不思議なようでありますが、確認ができておらない。これは或いは私ども想像になりますけれども、まあその演習期間中に演習場の中に入つてつたということでありますので、そういう関係であるかということを一つ想像をいたしますし、それからもう一つ、非常にそこに至近弾等が落ちて身辺に危険があつたということになれば、これは何らかの恰好で報告が来るのではないかと思いますが、そういうことではなかつたのではなかろうかと、現在までどうもキヤツチできないのでこういう想像をいたしております。  それから漁業種類漁船の大きさでありますが、あそこは主として旋網のいわしきんちやくの漁場でありますが、そのほか一本釣、或いは小型延繩でありますとか、小型底曳といいますか、そういうものの漁場であります。それで従つてさんちやくの船につきましては四、五十トンのものを最大といたしまして、あとはそれ以下、五十トン以下になり、ずつと小漁船がそれぞれの漁業目的従つておるということでありまして、五十トン以下非常に小さいものに至るまである、こういう規模になつております。
  8. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そういたしますと、今のお話によると、そこらへ出ておる五、六艘の船が、新聞によると威嚇射撃といわれて我々が非常に驚いたのでありますが、そういう操業している近くに弾が落ちて来たというようなことによつて甚だ困つたというような陳情とか何か訴えはなかつたわけでありましようか。その点はどうでしようか。
  9. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 現在までのところさような陳情があつたという事実を確認しておりません。
  10. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今のお話ですと、立川部長の御調査は、現地における漁業者に直接会つての御調査ではないので、千葉県とか、或いは外務省調達庁保安庁、或いはその他そういう方面の御調査であつて、直接漁業者にお会いになつていないということで、いわゆる間接調査のような感じがするんですが、一体ああいつたような威嚇射撃といつたようなことが新聞に出たことは、これは非常に大きなセンセーシヨンを起したわけでありますが、何か間違いでもあつたんでしようか、何か誤認したというような印象でもございますか。
  11. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 間違いであつたということを確言できないのでありますが、どうも今まで調査したところ、非常に威嚇射撃があつたということを、被害を受けたほう、それから射撃をしたほうの両方からの調査に基きましてもまだ出ておりません。勿論直接当人に会つたということでありませんので、間接調査でありますから、いわば最後の極め手を持つていないのではありますが、今私の感じを申しますと、どうも今までのところはそういう威嚇というような事態ではなかつたんじやなかろうかという感じを持つておるわけであります。
  12. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そうしますと、その至近弾とまで行かなくても、操業している近くへどんどん弾を落されて非常に操業にも困つたとか、或いは危険を感じたというようなことはどこからも申出た事実はないといたしますれば、果して威嚇射撃であつたかどうか、恐らく威嚇射撃ではなかつたろうという感じがいたしますが、そういつたような陳情なり訴えというものはどの面にもあなたの御調査の上では現われておりませんですか。
  13. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 出ておりません。
  14. 千田正

    千田正君 今の漁政部長説明で、実際農林省側調査実情はわかつたのでありますが、ただ我々としましては、この二月十五日の本会議の議場におきまして右派社会党東隆君から緊急質問としまして、九十九里浜射撃問題について堂々と問題を表面に出されて来ておる。それで只今官報をめくつて当時の速記録を十分に検討して見ますというと、この問題について十二日の朝刊が一斉に九十九里浜禁止区域において米軍威嚇射撃をしたということを報じている。そういうことで東隆君ほか何名か知らんが、千葉県の現地行つて実情調査した、彼はそう述べております。それによるというと、一応漁民人たちからも、射撃をした、但し、威嚇射撃であるかどうかということは別としまして、この場合における射撃は従来と非常に発射数は普通よりも増しておつた、或いはドアーも閉まらないほどいろいろな問題が起るような状況においてそういうふうに行われておつたということを本会議の席上で東君から緊急質問をなされております。そこで当委員会といたしましても、当然この問題を取上げまして、行政官庁である水産庁から特に御調査願つたのでありますが、只今漁政部長説明によるというと、そういうことがなかつた。ただ私は一貫してこの問題を通観する場合におきまして、要するに日本漁民の犠牲において日米協定という一つ協定に基いてのこういうことを実行しなくちやならないというような状況に置かれておるということを実に悲しむものであつて、それに対するいわゆる国の補償というものは十分じやない。漁民生活を脅やかしてまでも日本はそういう協定に追従して行かなくちやならないかというところに東君たち緊急質問の要旨もあるのでありまするが、この問題に対して恐らく威嚇射撃であるか、ないかということは、又いろいろぶり返して来るであろうと思いますが、当委員会として我々が聞きたいのは、これで一体漁民生活は守れるか、漁民生業に対して支障がないかどうか。支障があるならば、それに対して十分なる国は補償をすべきが当然であるのだが、これはどうか。現在のいわゆる先般の特別調達庁からの御説明を伺つておりまするが、その御説明によつて十分に漁民が納得しておるかどうか。自分たち生業を抛つてまでも日米協定のいわゆる趣旨に基いて自分らの生業を傷けられてもなお満足してこれをやつておるかどうか。そこに大きな私は重点があるのじやないか。その点につきましてはどういうふうに考えておりますか。何らそういうことに対しては不平を聞いておらないのかどうか。水産庁としてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  15. 清井正

    政府委員清井正君) 只今千田委員からのお話でございましたが、この点はこの前の委員会におきましても、簡単でございましたが、私ども考え方を実は申上げておつたのでありましたが、確かに私どもといたしましては、かかる問題につきましては極めて慎重なる態度でなければならんと思つておるのであります。根本的に演習の云々ということになりますと、私が御答弁申上げる範囲ではございませんが、私といたしましては、仮にかかる種類演習区域が設定されまして、それによつて水産業者が何らかの被害を受けるという事態があるといたしますれば、我我といたしましては、できる限りかかることのないようにと申しますか、できるならば、かかる演習区域の設定のないようにということの観点から、いろいろ私ども政府部内では折衝いたして参つておるのであります。併し、いろいろな事情から、止むを得ずかかる演習場を設定しなければならんということになりました場合におきましては、でき得る限りその方法範囲、期限につきましては、業者被害がない方法でやつてもらうということで私どもは今までやつて参つておりますし、今後もそういうことでやつて参らなければならんと思うのであります。而して一旦設定されました場合に、何らかの方法によつて漁業者が経済上の影響を受ける、それに対する補償問題につきましては、私どもこの正当なる被害に対しまして正当なる補償のあるべきことは当然でありますので、この問題につきましては政府部内においてよく連絡をいたしまして、関係業者の意見も十分聞きまして、正当なる補償を与えるように努力して参らなければならん、かように考えておる次第であります。
  16. 森崎隆

    委員長森崎隆君) ちよつと千田委員に申上げますが、九十九里浜射撃事件に関連しまして漁民損害補償の問題もこれは自然関連して出て来たのでありますが、丁度調達庁福島調達庁長官、並びに大石不動産部次長佐藤補償第二課長、御三名さまが御出席でございますから質疑を御続行願います。
  17. 千田正

    千田正君 今私は水産庁長官からお答えを聞いたのでありますが、実際補償の責任の地位にあられますところの特別調達庁長官がお見えになつておるとするならばなおこの点を明らかにして頂きたい、こう思うのであります。たびたび我々は基地の問題について外務当局を質した際においても、外務大臣の答弁は、何とかして日米協定、いわゆる国が結んだ外交上の協定については十分に国民の協力を要望しておる、こういう答えをされております。先般のこの九十九里浜の問題につきましても、緊急質問に対するところの岡崎外務大臣お答えとしましては、できるだけ国民の皆さんに損害をかけないように協力して頂くような方法をとりたい、こういうことを言うておりまするが、現実においては実際そうではない。こういう問題が起るということは、少くとも漁民なり農民なりが協力できなくなつたから十分に協力できるだけのことをやつて頂けば、国が結んだ……今日の国際情勢において、当然日米行政協定のこの協定に、少くとも国としてやつたことに対しては、農民漁民も協力したいという希望はあるでしよう。併し現実生活困窮の今日においてはそういうことには協力できない。その不満からこういう問題が起きて来ると思うのでありますが、この日米行政協定範囲内においてこの補償の限界を訂正する御意思があるかどうか。国民をしてもう少し、もつと喜んで日米間のこうした問題の不祥事が起らないように協力させるという方向に向つて補償制度を改革なされる御意思があるかどうか、この点について長官のお考えを承わりたいと思います。
  18. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) 九十九里浜射撃事件と申しますか、新聞に報道せられました事件に関連しまして漁業補償の現状が適正に行われておるがどうかということでございますが、実は私先般九十九里浜まで行つて参りました。補償関係その他のほうが主たる目的でありましたので、いわゆる射撃事件については正確なる調査というわけには参らないかも知れませんですが、豊海町の役場の関係者及び漁業民白里片貝、三町の町長初めあの附近の町村連合してできております射撃場撤廃運動期成同盟会といいますか、その本部の委員長以下役員関係漁業組合、その他五十数名になつたかと思いますが、全部集まつておりまして、補償関係その他の打合せをしたのです。自然先般の射撃というものは一体どういう実情であつたかということが出た。船に乗つて射撃を受けた人がいたのか、いないのか、その辺はつきりしないから私は正確な調査であるというわけには参りますまいかと思いますが、併し撤廃期成会というようなことで撤廃運動をしておる委員長以下全役員町長らもおり、漁業組合長もおるのだとすれば、本当に射撃事件があつたとすれば、これは有力なる撤廃運動の根拠でありますから、当然やかましいことを言わなければならないのであります。一応射撃事件の話も聞いたのですが、そういうことはない、こういう話です。船の近くに弾丸の落ちた人はないのか、ない、誰も問題にしておらん、東京方面新聞に出ておるそうだが、現場では問題にしておらんという話でありましたので、あの事件以後に東京新聞に現われたところとは相当実態は違うところがあるのであろうという印象を受けて参つたのであります。これに関連いたしまして、当然漁業補償という問題がやかましくなつておりまして、実は私が九十九里浜に行かなければならないということは、先般の射撃事件関係なく、前々からの補償問題で現場を見に来いということになつておりましたので、この一月の初めからの約束で参つたことなんで、その際の補償問題の一番根本の問題に今のところなつておりますのは、陸上における補償と申しますか、政府側の施設の問題でありまして、当日の会議の席上でも漁業に関する補償のほうはどうにかこうにか或る程度まで行つておるのですが、漁業者以外に、陸上に非常に大きな車両が射撃場まで毎週々々来るために道路が傷む。射撃のために学校の授業ができない、若しくは民家の屋根瓦が傷む。そういう方面が閑却されておるという点が今のところ九十九里浜における一般の問題になつておりまして、現地人たちが言つたことを引用して徒らに責任を逃れるわけではありませんけれども漁業に関する補償のほうは一応のことはできておつてもそれ以外の面ができておらないじやないかということが当面の問題になつているわけです。漁業補償が適正に行われているかどうか、従つて適正でなければこれについてその基準その他について考え直す必要がありはしないかという御指摘でございましたが、まあ漁業を制限しておる、これに対して補償をするということになるわけでありますが、これは御承知かと思いますけれども九十九里浜漁業制限と申しますのは、あそこでアメリカ軍が一定の地域に対して射撃練習を行う。これは一週間の月曜日から木曜日まで、週に四日になるわけです。これは但し六月、十二月は全然行わないというようなことになつておりますので、漁業者は一年三百六十五日のうち二百二十何日でございましたかは漁業ができるということになつているわけです。残りの百四十何日は漁業が制限を受ける。その百四十何日のうち午前中は操業差支えないということで、正午から四時まで操業が制限を受けるということになつております。その制限にいたしましても、現在約束ができておりまして友好裡に実施せられておりますが、非常に魚がとれるとか、準備の都合その他で射撃開始を遅らせろという漁業者側の連絡があればやめるということになつております。従いまして漁業者側から待つてくれろという連絡があつてアメリカが終日待つて遂に一発も打たなかつたという事例まであるくらいでありまして、制限ということも一年の全部を制限しておるわけではない。二百二十何日は差支えなく操業ができ、あとの百四十何日も半日は操業できるという状態になつておりますので、我々が補償いたしますという面も従いまして一年の何分の一かになるわけです。私どもが支払います補償の額が九十九里浜漁業者の一年の収入全部をカバーしなければならないものであるということにはならないわけでありまして、これも現地漁業者諸君も御承知おきのことなんです。従いまして昨年度でございましたか、二十七年度に対しまして大体二億三百万円くらいの補償額が九十九里浜については予定されておりまして、去年のうち大部分は支払済になつておりますが、このくらいの補償金額というものにつきましては、それは勿論最善を望みますれば、まだまだ考えようはあると思いますけれども、無理であつても、納得の行くであろうという線までは私どもとしては漁業補償についてはできておるのではないかというふうに考えております。但し現地の諸君の御指摘になります漁業補償はどうやらこうやらの線まで行つたにせよ、漁業者以外陸上における被害についてはなお政府の努力が足りないではないかという点は御尤もだと思いまして、研究を約束しておる次第でありまして、本年度内にでき得る限り現地の人の納得する陸上の補償問題も解決したいと考えておる次第であります。
  19. 千田正

    千田正君 長官のおつしやることから考えるというと、別に不平を持ちそうもない、事実調査して見ても、漁業補償の面においては何ら支障のないような方法補償しておる、ただ陸上の施設、例えば学校の授業に差支えるとか、道路の破損したところを復旧してもらいたいと、こういうような問題であれば、何とか恰好がつくのじやないかというような御説明のようでありますが、私はその点もその通りでしよう。ただこういう問題が少くとも現地の誰もそうじやないと言うにかかわらず、東京の各新聞紙が一斉に十二日の朝刊に出したというのはどういうことなのか。どこから出ているか。こういうことについてはお調べになつたのでございますか。
  20. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) その点は正直なことを申しまして全く不可解なのでありますが、現地の、現地と申しますか、千葉県の新聞関係から東京にそういう新聞報道が来たであろうということは一応想像されるのでありますが、私が参りましたときには、千葉県庁に立寄りまして、各新聞社の記者諸君も全部おりまして、いきなりその射撃事件その他ついて相当いろいろな質問がありましたから、恐らく千葉県担当の記者諸君はそういう射撃事件があつたという了解の下に私に御質問になつたのだろうと思います。それは私もよくこれから聞いて見るんだということで、その各新聞社の諸君も全部ついて来られたのでありまして、五十数人の現地の諸君と私と問答している問答を逐一お聞きになつてつたわけであります。以来そういう関係の記事が出なくなつてしまつたのであります。恐らくそれで新聞関係も御了承になつただろうと思いますが、当日射撃があつたことは間違いなくあつたのです。ただこれはアメリカ側から聞いた話でありませんので、現地漁業並びに対策本部関係の人に聞いた話でありますので、このほうがむしろ我々としては切実に近いことだろうと思つて、そのまま受けつけておるわけでありますが、この扇形になつております射撃区域を右と左にAとBとに分けまして、B地区に船がおつて射撃の目標はA地区に向けておれば差支えないということで、アメリカ側も打ち、漁船側もそれを了承しておる。当日はA地区に向けて射撃したんだが、A地区に船の影は見えなかつた。念のために後ほどそのあとで射撃場にも参りまして、安全装置と申しますか、双眼鏡による施設、又レーダーによる施設も我々見て参つたのですけれども、七万ヤードまで見えるというレーダーでありまして、七万ヤードまでは万年筆一本までもわかるというレーダーでありまして、射撃区域は二万ヤードでありますので、船のいないということを確認してA側の地区に打つたということはアメリカ側も言つております。し、日本側も言つております。B側の地区は若干の漁船が残つてつたということでありますので、海に漁船が出ておつたということも、射撃があつたということも、これは事実であつたようであります。併しながらこれについては漁業側もアメリカ側もいずれも問題にしておらないということでありまして、或いは平生のそういう射撃練習その他になれておらない人が見たのですか、陸上からは見えない距離でありますので……という話から誤り伝えられたのであろうと思つております。誰がどういうふうに如何なる考えがあつてそういうニユースを出したかということまでは詮索して考えておりません。
  21. 青山正一

    ○青山正一君 水産庁のほうに外務省なり或いは現地司令官あたり、米軍関係方面からこの関係について申入か何かないのですか、この問題について。
  22. 清井正

    政府委員清井正君) 米軍のほうから直接には私らのほうに何ら連絡はございません。先般も漁政部長のところでいろいろ事情を聞きましたところでも、先ほど御説明を申上げました通り間接に得た調査でありましてそれぞれ担当官庁のかたがたがそれぞれ調査されたところを私のところに便宜持ち寄つたということであります。そういう意味において間接調査はございます。別に米軍のほうから直接水産庁へというお話はございません。
  23. 千田正

    千田正君 私の心配するのは、調達庁長官のおつしやるのは勿論特別調達庁の立場から十分調査の結果、間違いなく自分らの職を完うしておるという意味でのお答えであろうと思うのであります。その点は十分了解しますが、たびたびこの基地の問題ついては日米協定以来問題が起きておる。どこに一体その根本の問題が起る原因があるのか。これは私は日米協定の内容においてお互いの補償の問題について十分これはこの問題については慎重に考えて頂きたい、こう思うのであります。例えばこの皿なら皿が半分壊されたから半分の分だけを損害補償すればそれでいいのだ、そういう考えでは日米間の問題は解決できないのです。例えば十石とれる米をお前はそのうち三分の一の百二十日しか働かないのだから、それだからそれをその分を三石だけ補償してやる、こういう実損に対してのみの補償をお考えになつてつたならば、こういう問題は解決できないと思います。それはやはり精神的に少くとも納得の行くようなそれらの問題を考えてやらなくちやならん。例えば内灘の問題などもそうでしよう。初めは、あれは心配するなと当時の林国務大臣が一戸当り五万円なら五万円の安心料といいますか見舞金をやる、併しあなたがたの帳簿の中からはそういう金は出せない。やはり内灘におけるところの何カ年かの生産というものを基準においてその何十%を補償するかということはこれは両国間の間において行われた話であつた。それだけの話ならば内灘は何も基地として提供しなかつたはずであつたろうと思います。少くともそれ以上の、そうじやないのだ、それはそれとして協定内容としてあるのだ、けれどもこれだけのことをほかにもしてやるから、君ら我慢して協力してくれよ、こういうところで初めて納得の行くところの補償というものは、或いは見舞金というものが出て来るのであります。壊されたものだけをそれを復帰するというのだつたら、こういう問題は今後ともますます拡まつて来ると思います。でありますからその根本方針において実害だけを補償するという意味じやなく、更に安心感を与えて恐怖感を取除いてそうして将来の日本のいわゆる国力の回復のために協力して欲しいという国民への納得の点が足りないのじやないか。私はそう思うのででありますが、長官はどういうふうにお考えになりますか。
  24. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) 私どもは大体、大体と申しますか正確に申しまして実害を補償するという主義でございます。只今仰せがありました安心感を与えるという意味の問題につきましては、これは特別損失その他の間接的な損害について年々歳々実害のみを補填しておるということは、却つて地元民諸君のためにもならないし、政府のためにもならないという意味で、そういうものを防止するような施設を有効にできるならば施設をするという意味で、安心感を与えて頂くことは積極的に考えておりますが、いわゆる損害そのものに対しましては、実際の損害はでき得る限り納得のできる損害を補填する。それ以上は精神的な問題というものは、有効にこれを取上げる。今の特別損失その他の関係で防除施設その他の関係のものはございますけれども、一般的には実害補填以外には当面の方針としては持つておらないはずであると承知しております。
  25. 千田正

    千田正君 であるから私は今後こういう問題はしよつちゆう起ると思うのであります。実害だけ補償するという観点から言えば、必ずあとからあとからこういう問題が起きて来る。例えば片貝の問題でなくとも、富士山麓基地においてもやはり駐留軍が来た。パンパンが殖える。風教が害される。青年が堕落する。婦女が頽廃して行く。教育上非常に困る。こういうような問題がしよつちゆう起きておる。なぜこれを、日米協定というものは日本の国を守るためにアメリカ日本と共に歩んで行こう。お前たちの国を守るためになるのだから、君ら我慢してくれ、という誠に立派な理想であるけれども、なぜ協力しないか。何故に憤慨してそういうものは協力しないかというと、根本を掘り下げて行けば実害以上な、少くとも民主主義の今日においては人権の尊重というものがある。その権利は必ずしも持つておる者ばかりじやない。精神的の権利もある。そういうような損害に対しては何ら考慮することなく、単なる実害だけの補償というものを考えるからこうした問題は次から次へと跡を絶たないのである。それ故に実害だけの補償ということが例えばそれは特別調達庁の任務でないとしても、何らかの方法によつて政府が考えない限り、日米協定の下に置くところの基地問題というものは、ますます国民の納得の行かない線に追い込まれるきみがあるというので、その点を私はあなたに質しておく。実害だけの問題であつたら単なる事務的の処理でよろしい。それだけで納得が行かないからこういう点を尋ねておる。私はそういう点において更にあなたの、慎重にこれは日米間の問題のみならず、日本の将来の、国際国家に復帰する日本国民の根柢を作る問題でありますから更に私は考えて頂きたいと思います。
  26. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 ちよつと調達庁長官が初めてお見えになりましたので、直接この問題ばかりではございませんが、お尋ねいたしますが、従来この業者に対する損害補償に対しましては、基地問題その他演習等の問題で随所にたくさんの事例が起つておりますが、これに対する各地区から被害者と申しますか、損害を受ける業者のほうから申請が法律により出て参ります。それを調達庁が事実を十分精査いたしまして、その損害額を算出して、そして、その金を調達庁業者に払うはずでありますが、現在までの支出はその上に更に大蔵省がそれを査定するといいますか、これについていろいろと文句をつけてなかなか解決をしない。調達庁においてすら所定の時期にはなかなか解決せんものが、更に大蔵省においてほつとけば幾らでもかかるというような事実があるのでありますが、一体こういう調達庁の任務というものはどこまで持つておるのか、大蔵省が元来本当の責任官庁のような感じがするのでありますが、正面から言いますと調達庁が責任官庁でなければならん。そういう際に私も調達庁に足を運び、大蔵省にも足を運んで実は調達庁の助太刀をしておるような気持で実はおりましたが、その際に長官は大蔵省の幹部と会つて調達庁の案を十分突き通すような御努力を払つておられるだろうか、その点をお伺いいたしたい。
  27. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) 御指摘の点は誠に御尤もな点であるわけであります。実は私も調達庁に参りましてからまだ数カ月にしかなりません、勉強が足りておらないことも事実でありますけれども漁業補償関係の問題になお一層の努力が必要で、私自身の努力が必要であることも事実でありまして、その点甚だ恐縮しておる次第でありますが、併しながら大蔵省と調達庁との関係において、相当事務上手数のかかるということ御指摘の通りでありますけれども、その根本に、漁業補償の実態というものが非常にきめにくいものであるという点がありますことは、これ又否定しがたい事実でありまして、理窟のつけようによつては水掛論になる虞れのある内容を多分に含んでおりますので、調達庁としてはできる限りの補償をしたい、大蔵省としては欠陥があれば、若しくはその他に理由がつけ得ればその金額についても意見を申述べるということになりますので、その間こちらが大蔵省の言う通りでありますれば問題は早く片付くのかも知れませんけれども、できる限り調達庁の積算いたしました数字について意見を貫徹しようということになりますので手間がかかるということを繰返していると思います。今それに対しまして私自身も相当の努力はいたしておるつもりでありますが、今後とも一層の努力をいたしまして大蔵省との了解、その他を促進するようにいたしたいと思つております。漁業補償に必要な事務上の手続という問題が複雑過ぎるということも一面にあるわけであります。これにつきましてはできる限り能率のいい簡素な手続に改めたいと考えましてその手配を進めておる次第であります。
  28. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 漁業損害補償をするに当りまして、その数字を算定して行くことはこれはなかなかむずかしいことは私もよく認めております。むずかしいが、併しそれは大蔵省へ行つたらやさしいかというと大蔵省だつて同じだ。むしろ始終手がけておられる調達庁が一番その点には慣れてもおりますし、又基準に従つてやるそれぞれの規範があるはずであります。そこで十分に練られたものが調達庁長官の名前で大蔵省へ出て行つたものが向うでああでもない、こうでもないとこねくり廻されて、とどのつまりはわけのわからん数字で出て来るということは私ども非常に納得行かない。そこでどうか私は希望を申上げておきますが、これからも演習の続く限りはこの問題は消えない。ずつと続いている。従つて今度初めて算定された数字というものはこれは基礎になるわけです。そうしますと今までのように長引くことは私はないのじやないかと思いますが、これがやはり長引くようなことでは一体今の基準がどうであるか。間違つてつたなら間違つてつた点を是正すればいいのであつて、今後におきましてはどうか調達庁でしつかりした算定をされましたならば、長官の判が坐つたものは長官みずからが出て行つて素人の大蔵省を説き伏せるくらいなことはやつて頂きたい。大蔵省と調達庁とを比べますれば調達庁のほうがよつぽど玄人だと思う。玄人が素人のわかりもしない意味でふらふらするようではいかんと思いますから、今後この点は毎年起つて来る問題でありますから……。長官お見えになりましたから……、実は私は長官をお尋ねしましたときお話を申上げることができなかつた、だからいい機会でありますからこの際お願いをして今後は今までのようなことのないように一つお願いをいたしたいと思います。
  29. 千田正

    千田正君 まあこの九十九里とか内灘というのは事件が起きてから随分騒がれた問題でありますが、現実にまだ解決されておらないところのいわゆる漁業関係の問題があるわけであります。そういう問題に対してはどういうふうにお考えになりますか。例えば九州東南方におけるところのジヨージ・エリヤとかいろいろな問題があります。そういう問題に対しては水産庁調査が不十分なために補償のあれができないのか、それともあなたのほうはどういうふうにその点を考えておられるかという、その方針について承わりたいと思います。
  30. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) 御指摘の九州方面におきまする何と申しますか、アルフアベツト地区といいますか、そういう方面漁業補償の作業が満足に進捗しておらないということは事実であるかと思いますが、これは又先ほど申上げました通り、実体をつかみにくいということによりまして、事務上の措置が遅れているのだと思います。詳しいことは私もよく承知はしておりませんけれども、漸次解決の方向に向いておりまして、少くとも本年度内には適当な解決の途がつくのではないかと思つております。私自身の直接問題に対する研究の足りない点その他もございますけれども、今後でき得る限りこれらにつきましても解決を促進するようにして参りたいと思つております。
  31. 森崎隆

    委員長森崎隆君) ちよつと私から一つ希望、その他御質問を申上げておきます。  今漁民生活には、演習場というものができましてから、調達庁はもう非常に大きな利害関係代表者という意味で関係が深くなつて来ております。私もこの委員会に厄介になりまして数カ月にしかなりませんで甚だ勝手がわかりませんけれども、これまでできますならば調達庁からしばしば出て頂きまして原則的なこともお聞きしたいということはやまやまであつたのでありますが、山中部長、大石次長、その他のかたがたに非常に熱心にやつて頂いておりまして、非常にこれは感謝しておりますが、長官がこれまで一度もお見えになれなかつた、これはいろいろとお忙しいためであつたろうと思いまするが、一度も見えられなかつたことは、非常に実はこれまで残念に思つていたわけでございます。せいぜい一つ今後本委員会にもお繰合せの上しばしば御出席頂くようにお願いいたします。  今秋山委員から非常に大切な原則的な問題、これは部長、次長さんにお聞きしましても、とても答弁はできないことだと思つてども実はお聞きしたかつたのでありますが、実際上調達庁と大蔵省とで損害の問題はきめるのでございましようが、そのきめるまでに至るプロセスというものは一体どういうふうになるのでございましようか、具体的に一つその御説明だけして頂きたいと思います。
  32. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) この問題、私から申上げるべきだと思いますのですが、細かくは或いは私でないほうがよろしかろうと思いますので甚だ失礼でございますが、取りあえずここに不動産の次長が参つておりまするので、一応先に説明さして頂くことをお許し頂きたと思います。
  33. 大石孝章

    説明員大石孝章君) 駐留軍演習等に基きまするところの漁業の損失補償につきましてのやり方の問題でございますが、私どもこのやり方は毎度当委員会で御説明、御報告申上げてありますように、やり方そのものは御承認頂きましても、いわゆる通常生じますところの損失を、それを補うというやり方をやつておるわけでございます。ただ長官からも御説明申上げましたように、被害の実体というものをつかむのに、いわゆる極め手がつかみにくいといいますか、なかなか困難な作業でありますので、とかく四方八方からこれを批判いたします場合に、批判の的になることは事実でございます。従いまして私どもとしましては、できるだけ各方面でこれを論議できるものを客観性を持たせるといいますか、農林省、水産庁の権威のある統計等もございますので、そういつたようなものを参照しつつ、いろいろ当時起きました実体をありのまま摘み上げまして、そうしてこれを計算のいろいろな条件に織込みます。織込みますと同時に、内部的には私どもやはり何といいましても、今秋山委員から玄人であるといつたような御批評もあつたかと思いますが、決して玄人ではございませんので、土地建物、ああいつたようなビルデイングのことをやつたり、倉庫のことをやつたりしながら、一面こういつたような漁業のことをやるというような関係にありますので、できるだけその担任者には平素の勉強を要求はいたしておりますが、とてもそれだけではかなわんといつたような点につきましては、各方面の御意見、なかんずく専門行政庁でありますところの水産庁方面にはいろいろな御指導も頂きまして、そうして或る一つのできるだけ客観性のあるというものをつかんで、そして策定いたしておるような次第でございます。ですから私どもの策定は、飽くまで通常生じますところの損失を補填するという点に立脚いたしまして、而も皆さんが御納得行けるという線にできるだけ持つて行くという努力を絶えずいたしておるような次第でございます。
  34. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 私が今お聞きしましたのは、こういう観点に立つ質問じやないのです。補償の額がいろいろ苦心をされましてでき上りますが、その規則の問題とか、又客観性のある適正な金額、そういうことは別にしまして、まあそれが出たといたしますね、出た場合はどうなるのですか。それが結局福島長官の手で判こが押されて、一応それが調達庁では決定になるわけですね。そうして予算がちやんと組まれておる中から、これは調達庁を通じて、漁民の手にいろいろな機関を通じて出されるわけですね。そのときに大蔵省が何か途中に入つて、なかなかこれを値切るとか、値切らんとか、いろいろなややこしい問題があるらしいのですが、その間のそういう問題を実は聞きたいのです。これはもう大石君でなくて、この福島長官に聞かないとこれはわからない。あなたは素人だ。だからこれはもつと端的に申しますと、調達庁が適正な、客観性の成るべく多い資料を出して、これだけだと確定すれば、あとは大蔵省で御決定頂くのか、長官は判こだけつけば、あとはどう値切られようとも、これは長官としてはどうにもできないのか、或いは長官がこうだと言えば、或いは大蔵省はどうしてもそれに応じなければならないのか、或いは又大蔵省と調達庁とが両方折衝して、この話合いの上で決定するのか、そのまあ三つぐらいしかないのですね、結局は……。あなたのほうが値切るのに応ずるか、頑としてきかないで大蔵省がこれに応ずるか、又その折衷案をとるか、或いは一方的に調達庁で決定したものをその通り出せば、大蔵省はいやでも判こを押して出さなければならんか、或いはそれを大蔵省で削られるのか、そういう点を長官一つお答え頂きたい。
  35. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) 本当を申しますと、こういう点につきましては、手続は私よりも次長のほうが知つておるのでありますけれども、私から申上げますと、予算は防衛支出金として枠があるわけでありますが、これが防衛支出金のままで調達庁の所管の予算となつておるわけではありませんので、一々の案件につきまして、金額が決定しますと同時に移し替えになつて来て、その上で我々のほうで支出をするという手続がありますので、その移し替えをする際に、その移し替えの額を定めるという協議を、大蔵省との間に行わなければならないと了解しております。従いまして本式に各漁業家のほうへ金が出るという決裁の、つまり私が決裁いたしますときには、その移し替えの事務折衝の終つたあとになつておるようであります。まあ大蔵省が大蔵省所管の予算を、調達庁の所管に、一々の件について移すという現在の手続が如何か、こういう点はございましようけれども、現在のその手続を実行いたします限りにおいて、一々移し替えの際に額の高を協議しなければならないということは、まあ現状においてはいたし方ないところであろうと思います。
  36. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それでは時間がありませんから、あと一つ宿題……。
  37. 千田正

    千田正君 関連して……。この間緊急質問に対する大蔵大臣の答弁があつたのですが、これは一応聞いておきたいと思いますが、その後大蔵大臣は、これはそのときの答弁は当を得ない答弁ではありますが、傷害と死亡のときの標準を答えておるのです。仮に米軍射撃等による損害補償についての基準はどうなつておるかということに対して、療養に対してはその療養に要した費用の全額、それから傷害に対しましては、大人の賃金の千日分、最高金額では百三十四万円を限度として補償を払う、遺族に対しましては百万円を限度として補償を行う、葬式費用としては一万円を補償する。こういうふうになつておるようでありまするが、この傷害に対する最高金額では百三十四万円であつて、死亡に対しましては、遺族に対しましては百万円、葬式の費用に至つてはたつた一万円。そこが、一体何を標準にしてこういう基準を立てられたのか、その点おわかりであつたら一応御説明願いたい。
  38. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) この今の死亡に対します補償金と申しますか、これはまあ先般の九十九里浜射撃事件に関連して申上げるのはいささか如何かと思うのでありますけれども、通常起りますのは、軍用のトラックにひかれたとか、そういうことによつて起ります傷害事件でありますので、そういう種類事件としてまあ御返答申上げるわけでありますが、これはいわゆる行政協定十八条に基きます補償ということであります。それが一応の……、それに現在実行しております基準として定められておりますものが死亡いたしました場合に、最高額約百万円というものが一応の基準として定められておるということは、私承知しておるのでございますが、どういう計算上の基礎についてその百万円の金額を定めたかということになりますと、甚だ恐縮ですが、ちよつと承知しておりませんのですが、死亡した場合に百万円、療養費の場合には全額負担するというようなことは、一応その通りだと承知しております。
  39. 千田正

    千田正君 まあ葬儀費用も一万円ということになるというと、今常識で考えても、棺桶だけでも一万円くらい要らなきやならん。とにかくこれは話にならんと思います。(笑声)逆に、一体あれですか。日本において何らかの公共事業か何かやつているとき、日本のトラツクが仮に米軍をひいた、こういう場合には、一体どういうことになるか。日米行政協定の中に含んでおりますか。
  40. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) 日米行政協定のほうには、そういう点を想定していないそうであります。
  41. 千田正

    千田正君 それじや一方的にこちらではひいても差支ない。ひいた場合によつても、損害賠償を勝手につけてよろしい、今向う側で二百万円よこせと言えば、こつちもやらなくちやならない、こういうことになりますか。一方的に、演習のときだけ、こつちが損害をこうむつたときには、こういうふうにやる。向うは何かやはり汽車でひかれたとか、或いはトラツクでひかれたとか、或いは何かそういう偶発的なことによつて米国人をひいたとかというような場合においては、何ら補償しなくてもいいのか、或いは向うの要求通り全額払わなくちやならないのか、そういうことはどういうふうになつているのですか。
  42. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) アメリカ人が日本におきまして汽車、汽船、その他、或いは私個人の行為によりまして損害を受けたという場合の問題は、普通の日本人が損害を受けた場合と全然同一に扱うという建前になつているものと了承しています。そういう点、行政協定にそういう点がないからといつて、どうも簡単にアメリカ人をひき殺していいということにはなつておらないはずであると思います。行政協定に、アメリカ軍の行為によつて生じた損害をどうするかということが定めてありますのは、これは定めて置かないと当面誰が、どこで、どういうふうな手続によつて払うか。のみならず、最終的にこれがアメリカが負担するものということを定めて置かなければならないという趣旨に従つて十八条というものが定められているのだと思います。日本政府側が……、窓口から申しますと、調達庁が取りあえずその損害金を払う。後においてそのアメリカ政府側の負担の手続が定めてあるというのが十八条であろうかと思います。
  43. 千田正

    千田正君 今のお答えは了承しますが、この支払金額の基準に対しては、これは毎年々々経済状況が変つて行くのであつて、その経済状況の変化によつて、この基準も場合によつては改変できるということになつておりますか。
  44. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) 人の命のことでございますので、やたらに相場に変動があるようなことは申しかねるのでありますけれども、併しながら経済状況が変ればそういう基準は当然改正せねばならんということは、私はさように信じております。
  45. 千田正

    千田正君 これ以上論議をしても又九十九里浜漁業補償の問題とは方向が大分違つておりますので、ただ補償の基準という原則についての問題はもつと研究したいわけでありますが、とにかく葬儀費用が一万円というようなことは、これは大いに改正して欲しいと思います。一応この際申添えておきます。私はこれで質問を終ります。
  46. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それでは一つもう時間がございませんので、一言だけこの次の機会までにお願いしたいと思います。実は漁業関係者に対する演習場損害補償のこれまでの実績から見まして、内灘に対しましての補償というものと、その他の地区に対する補償には非常な私たちはアンバランスがあると思います。それで内灘に対しまして出されました補償の金額の算定その他につきましては、福島長官は当時調達庁におられなかつたように今聞いておりますが、引継事項としてやはりそういうことにつきましても或る程度記録なんかを見ておわかりなことと思いまするが、あの当時は調達庁においてはどういう算定をしてこれを大蔵省に出し、大蔵省はそれをどのように増減して結局最終的に判こを押して決定したかという経過を一度お聞きいたしたいと思います。私たち考えは別に内灘に対する費用の金額が多いという観点ではなくて、最小限度どこの地区に対しましてもあの程度のことは当然だと考えておるわけであります。言い換えますればほかの地区は余りにみじめな補償金額だ、このように我々は考えておるわけであります。当時どのように折衝されましてあのようにきまつたか、きまる以前の折衝では調達庁では少くともこれだけが妥当でないかと言い、これに対して大蔵省の意見、又は大臣の意見でも入つておればどういうふうに入つてああいう金額が決定したか、その過程を一度お聞きしたい。それだけは今日無理でありましようから次の機会までにお願いいたしたいと思います。調達庁のほうはこれで質疑がなければ今日はこれで打切りにいたします。それから九十九里浜の問題で国際協力局の関次長がお見えになつておりますが、さつきの立川部長さんの御報告は大体打合せの上の御報告でございましようか、如何でございましようか。
  47. 清井正

    政府委員清井正君) 関係官が寄つて打合せをいたしましたことでございます。
  48. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それならよろしうございますが……。   —————————————
  49. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それから山口海上保安庁長官が見えられておりますので、次に長官に先般韓国に拿捕されました巡視船の件につきまして一応の経過の御報告を願います。
  50. 山口伝

    政府委員(山口伝君) 一昨日の二月二十日に海上保安庁の東支那海に出ております巡視船の「さど」が韓国側に不法連行されました事件が起きましたので、只今わかつております範囲状況を取りあえず御報告さして頂きたいと思います。  一昨日当時済州島の西方海域並びに東支那海方面において巡視船「くさがき」を指揮船といたしまして「へくら」、「さど」、「こしき」計四隻を以て行動中であつたのであります。巡視船「さど」は二十日の午前零時三十分農林漁区二百九十四、これは済州島の西南西約五十海里、おおむね位置は北緯三十三度十七分、東経百二十五度十五分、当時こういうことでございます、におきまして突如韓国警備船P三十八号、韓国の沿岸警備隊所属、トン数は約二百五十トン、装備は十三ミリ機銃二門及び小銃、これは後ほど先方の金星号ということがわかつたのでございますが、これから銃撃を受け横付けを要請されました。七時頃船長は機関長と共に相手の船に移乗いたしまして会談を行いましたところ、先方は「さど」を捕獲する旨を通告したので、種々折衝したが翻意せず、次いで八時頃、相手船即ち金星号の乗組員七名が「さど」に乗り移つて来まして、「さど」の乗組員十五名を先方の警備船に移乗せしめ、このため「さど」は八時以後無線の封鎖を受けまして通信は不能、一方この情報を入手いたしました指揮船「くさがき」は、直ちに現場に直行しまして、八時十五分「さど」を認めた。レーダーか何かだと思いますが、認めた。八時三十分頃、「さど」が済州島に向け連行されつつあるのを確認いたしたのであります。八時四十七分、「くさがき」は、警備船に横付けをした上、直接交渉を行わんといたしましたが、相手の船は横付けを許さず、九時五分に至るや、威嚇のためと思われますが、小銃二発を発砲して来た。なお「くさがき」は、交渉を断念せず、至近距離、大体四百メートルと言つていますが、至近距離が並行しつつ、国際信号、その他の方法を以て種々折衝を試みましたが、相手の船は応答をいたしません。で、折衝不能のため、このような状況報告を受けましたので、九時四十五分に、門司にある第七管区海上保安部長の指令によつて、これは効果がないと認めたわけでありまして、止むなく、一応「くさがき」は現場を離脱いたしたのであります。かような報告を受けましたので、私のほうでは、早速内容を、情報を外務省に入れまして、即刻韓国のほうへ、厳重なる抗議と共に、船体並びに乗組員の即時釈放を申入れて頂きました。又水産庁のほうにも御報告するし、或いは又アメリカ大使館等へも情報を入れました。その後早速外務省とされては、同日午前中に、十一時頃だつたと思いますが、奥村次官が金公使を呼ばれて厳重なる抗議をし、折衝をして頂いたわけであります。その後情報によりますると、いろいろな新聞、UP電、或いはロイター電にも伝えられましたが、昨日になりまして巡視船から情報が入りました。「さど」は二十日の十五時十五分済州島の済州邑に到着をしてそこで軟禁をされ、同日の夜二十二時三十分、午後の十時半、向うの金星号の船長から釈放の通知を受けて、二十一日、即ち昨日の午前零時に当地を発港いたしまして今朝四時四十五分関門港外の六連に着き、そこで検疫を受けまして八時二十分門司に入港したのであります。なお船長から概況を報告して来ておりますので、それを附加えたいと思います。日時は先ほど申上げましたように、一昨日の午前六時三十分、位置は北緯三十三度十五分、東経百二十五度二十分、五分だけ違います。これは船長からの報告であります。それから当時の海の気象は、北の風で風力は二で、僅かであります。雲量が六、半晴、うねりは西、靄がかかつてつて海上は平穏、当時の状況は「さど」としましては午前六時にレーダーにて左舷のほう七海里に三隻の船影を見ている。これらの船の国籍確認のために接近をいたしましたところが、一隻は極めて感度が良好で恐らく韓国の警備船か又は三百トン型のスチーム・トロールと思われた。六時二十分に、東のほうが次第に明るくなつて参つた。西方はガスがかかつていることと、月没のために視界は依然として不良であつた。六時二十五分頃右舷のガスの切れ間に航海燈が薄く見えた直後、相手の船から国際信号で発火信号を以て何船だという信号を受けたわけであります。その状況によつて、「さど」としては恐らくこれは韓国船じやなかろうかという公算があつたわけでありまするが、こちらからもホワツト・シツプという信号を送つたのに対して返答はしないで、相手の船は突然銃声を以てこれに報いて、同時にストツプ・カムという信号を送つて来たのであります。「さど」はそのとき避退すればするだけの余裕はあつたのでありますが、ほかのレーダーの二隻は操業中の情報があつた日本漁船と思われましたので、その二隻のことを慮つて会談を行うことに決意したと言つております。七時頃から八時まで約一時間韓国の金星号船上において同船の船長と会談を行なつたそのときの会談の内容につきまして次のように船長から来ておりまして、「さど」の船長は国際法上の慣例に基いて公海における公海の自由並びに漁業の自由ということを主張しましたが、先方の船長は「さど」船長の主張する国際法上の権利はわかるが、自分たちは韓国政府の指示で行動している、船長個人の意思では如何ともいたしがたいとして、「さど」を連れて行くというので、いわゆる平和ラインを固守して譲らないので、結論を得ないまま八時頃相手は実力を以て「さど」を連行すると告げて、この際十五人の人質をとつて遂に連れて行くことになつたのであります。済州島における取扱状況についてこれ又報告が入つておりますが、「さど」の連れて行かれたところは済州島の済州邑という港であります。「さど」の船員は、「さど」に乗船のまま軟禁状態でありまして、個人の自由は別段拘束されないが、韓国側の警備兵が約八名が陸上との交通を絶つ意味において「さど」を警護しておつた。それから釈放のときの理由につきましては別段申さずに韓国政府の指示によるということのみを告げたようであります。私のほうといたしましては取りあえず外務省を通じて厳重に抗議しその日のぎりぎり一ぱいでありますが、即日釈放の形をとつて一応一段落のようでありますが、そのような不祥事件を今後起されてはかないませんので、なお更に不審の点も詳報を得ましてこれを十分分析研究して改めて韓国に対して文書による厳重なる抗議をいたしてもらうことに外務省と折衝いたしております。やつてもらうことにいたしております。  なおこれらのことに鑑みまして、今後の同方面における警備の方針等につきましても十分考えなくちやならんと思うのでありますが、目下情報を得た上で情勢の分析をいたして、至急考えをまとめたいという状況であります。
  51. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 何か御質問ございませんか。
  52. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この問題は、帰つては来ましたけれども、僅か数時間の拿捕でありましても、日本の公の官船を向うの官船が拿捕したということは、これは重大な問題ではないかと私ども考えるのであります。而も両船は、それの釈放に協力するためにそばに行つたけれども、受けつけないで帰つて来たということを聞きますと、誠に情ないような感じがいたしますが、今後再び三度かようなことがありますると、やはり厳重抗議で対応するのでありますか、何か重ねてかような場合があつた場合には、やはり現状通りやるより仕方がないというお見込でありますか。何らかの手段があるのでありますか。その点を一つはつきりしておきたいと思います。
  53. 山口伝

    政府委員(山口伝君) 本当に決心するには、もう少しその当時の状況が詳細にわかりましてから申上げたほうがいいかと思いますが、いろいろ考えて予想しておりますことは、只今こちらの巡視船に業務用の火器を附けることになつているわけでありますが、今日までのところ火器そのものをまだ取付けておりません。すでに四十九隻だけは砲座、弾薬庫、乗員の居住区その他の改装は全部終りました。四十九隻はできましたが、最後の火器そのものの取付工事はいたしておりませんが、こういつたものもこういう情勢であれば、場合によつてはもう取付けなくちやならんと思うのでありますが、向うも今のところ従来と違いまして、沿岸の警備隊ということでかようなことを仕掛けて、実力を以て仕掛けて来る以上は、自衛上といたしましても、こういつた火器の問題が出て来るわけでありますが、その辺を決心するにつきましては、よほど慎重な配慮が要すると思うのであります。私のほうといたしましては前々からの計画でありまするので、差当り進行しつつあるのはこの年度内に、即ち三月一ぱいまでに十隻分の火器取付の工事にかかるようにいたしておりますが、甚だやりにくいのであります。何分船が足らないので、東支那海方面に全国から絞つてつているので、その他の地区における、最近浮游機雷が出始めたことに関して船艇が相当要りますし、海難救助も冬季で非常に弱つておりますが、そういうようなために、仮に火器の取付を急ぐといたしましても、事実上これらの仕事を部分的に空白にするわけに行きませんので、今のところ十隻ぐらいはできるだろうというので、それに取りかかる予定になつておりますが、二十九年度におきましては全部取付けるだけの予算は計上して出してあるわけであります。そういうことは今後どうしても考えなくちやならんようになつて来るのじやないか。
  54. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 火器を取付けるということは飾りじやないので、火器を取付けたのは、そういう場合にぶつ放すということも予想される、ただ附けただけでは何にもならない。そういたしますると、日本の官船が、例えば運輸省関係保安庁の船であろうと、いわゆる保安庁海上警備隊の船であろうと、日本の国の船ということにおいて大した変りはない。ただ任務の上に多少の差はありましても、そうして外国の船と打ち合いをやるということにおいては殆んど変りない。こう考えるわけでありますが、そこは素人ですからわかりませんけれども、火器を備えるまでは海上警備隊の救援を求めるというわけにはいかんものですか、火器を持つたらみずからぶつ放すが、ないうちはアメリカじやないけれども日本にある船で以てこれを防衛するとか何とかという方法をとることはできないものですか。これはいろいろ警備隊の任務、警備隊の出動についての条件もあるようでありますが、今言つたような火器を据付けて、それで以て自衛の処置をとるということにおいては、余り変らないように思いますが、その点は如何でしようか。
  55. 山口伝

    政府委員(山口伝君) 打ち合いということにおいては、或いは事実関係は同じかも知れませんが、性質としては私は違うと考えております。警備隊はもともと防衛……今度の改正ではつきりするように、防衛的な任務を以てできているのでありまして、私のほうは準警察船なんです。準警察船といえども海上におきましては業務執行上単に陸上でやつておるがごとく、拳銃ぐらいでは仕事にならないわけであります。船と船との仕事でありまするので、いろいろ準備をする、或いは最悪の場合の正当防衛、緊急避難においての或る程度の火器を持つことは国際慣例だと思う。そういう意味で我々のほうは取付けることはきめておるわけです。で、取付けないこういうような状態のときに、すぐ警備隊に応援を頼むということは、これはこういつた漁船の保護のために、たとえ相手は不法行為ではありましても、警備隊なるものが出動する、出て来るということは、非常にいろんな影響も大きいことでありまして、情重なる配慮が要るのじやないかと思います。私の考えとしましては、まだ巡視船としては、かねての計画通りの火器の装備も終つておらないのでありますから、なおそうかといつてこの火器がお話のように打ち合うという意味で行くのではないのでありますが、今回のようなことで、向うから打たれて、拿捕されるというような場合には、これは自分たちの命なり、船体の保護のために、正当防衛の範囲において慎重なる態度で、最悪の場合には打つような段階も差支えないかも知れません。もともとそういうふうな状態に行くことが一歩進歩だと思つて、我々はそのほうの手配を今後続けて行くわけであります。今のような状態のときに、今後すぐ警備隊の応援を求めるということにつきましては、まあ相当考えて頂かないと、これはちよつと無理ではないかと思います。
  56. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 山口さんは今度起つたような、日本の船を向うが来て銃撃を加えたり、威嚇をして、そうしておいて捕獲して行くということは、最悪の事態と思われませんか、日本の国として考えた場合に……、これは人間も殺されなかつた、船も沈められなかつたから、まあいいや、と考えておるかも知れませんが、我々としては日本に対して大きな侮辱だと思うが、如何なる国家も日本に対してさようなことはしてない、それに対して韓国がさようなことをするということは、日本の国に対する非常な侮辱と考えておるが、さように考えておりませんか。
  57. 山口伝

    政府委員(山口伝君) それを私も申上げておるように、韓国が巡視船に対してかようなことを行うということは、如何に重大な本当に無法なことであるかというようなことは、認識の上で申上げておるのであります。たまたま今度の場合には、火器がありませんので、又先ほど御説明申上げたように、船長の判断では附近日本漁船もあつたし、従来通り会談で話がつきやせんかと思うので、乗り移つてつてつたために、遂にこういつた事態が引き起つた。こういうことに対しては、非常なる反省を促さなければならんと思つております。誠に我々に対しての侮辱であることは同感であります。
  58. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 これは幾ら押問答をしても切りがないのですが、そのときに僚船の「くさがき」でございますか、「くさがき」は直ちに本部に対して報告はしたと思いますが、何らかこれは救出するような手段を講ずるような要請でもありましたでしようか。
  59. 山口伝

    政府委員(山口伝君) 救出と申しますとこちらに防禦といいますか、救援の指令を仰いだかということでございますか。
  60. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 ええ。
  61. 山口伝

    政府委員(山口伝君) その報告は受けておりませんが、無論私の想像でありますが、相当の長い間並行して追尾しながら刻々に七管区本部の指示を仰いでおつたと思います。七管区本部長の判断では最後に御説明をしたように、向うが「くさがき」に対しても打つて来ておりますから、これではどうも仕方がないから「くさがき」に対しては七管区本部長から一応退れというようになつたわけです。
  62. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 私はそれにつけても誠にだらしがないように考えるのですがね。僚船が捕まえられていつておるのを打たれたから退つてしまい、それきりになつて何とかなるだろう、それじや日本として余りに意気地がなさ過ぎる。それに対する最善の策はすぐとるべきだつたと思うのですが、今後の問題もあるので、私はそういう場合に海上保安庁警備隊でも何でも報告して、あらゆる手段を講じなければ必ずこの問題は再び起りますよ。こんなことをしておつた日本はとつつかまれて……。この場合特に実害は大したことはないかも知れませんが、日本国民感情というものは私一人じやないと思う、実に堪えられない侮辱を受けたのです。
  63. 山口伝

    政府委員(山口伝君) 誠に私どもも切歯扼腕でありますが、一応火器を取付けてあれば、それに或いは正当防衛としてものを言わせる可能性があつたかも知れませんが、そこが現場の「くさがき」の船長の判断も非常に迷つたと思います。ずつとついて行つて、その報告をしながら自分で退避して来たのではなくて、苦労して最後にとにかくどうしたらいいだろうかということで七管区本部長に聞いたところが、裸船だし下手をすると同じように打たれて来るので、まああとは折衝ということになつたと思うのであります。すぐ警備隊が行くわけでもありませんし、その場の判断については、今後の研究した状況によつて、非常にそういう点がなお今後の対策としては大事なものだと思うのでありまして、研究いたしたいと思つております。今回の場合は「くさがき」も四百メートルまで接近して、盛んに折衝しようとしたが、相手にせずにむしろ銃で報いて来るから、止むを得ずに七管区本部長から一つ退れということに相成つた考えております。
  64. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 現場の手に負えなければ、何とか日本にはまだ手があるのですから、これがどうにもこうにもならないということなら何だが、何の手も尽さずにだらだら打たれたから引込んだのでは、漁船の保護は望まれんと思う。そんな屁つぴり腰では……。
  65. 千田正

    千田正君 どうも秋山委員の立場で論ずるなら誠に結構だが、私は国民的な感情の上からは秋山委員と同じに思つておるが、併し私はこの「さど」の行動は誠に沈着にして、再び国際紛争に捲き込まれて、日韓会談の支障にならないようなむしろ沈着な行動だと思う。ということは、火器を持つてつたら或いはやつたかも知れない。やることがいいことか悪いことか、これはむしろ日本の現在の置かれた立場を冷静に判断すれば、当然私は「さど」のとつた行動は止むを得ない行動じやないか。むしろそれよりも、一日も早く日韓会談を開催してそうしてこの不祥事を早くなくするように政府は努力すべきじやないか。私はそれで、今後起るであろうことを、秋山委員と同様に恐れる。或いは武器も必要でありましよう。併し先ず第一に日韓会談を再開して、この問題の解決を一日も早く行う。その会談の際、いわゆる向うがそういう行動をとつた場合は、日本においても或いはそれに対して報復する行動をとるであろうという条件をはつきり謳つて、少し後に、例えば海上保安庁なり或いは警備施設なりがそれに対抗するというならば、これは国際法上当然の措置として、あらゆる点から認められるべき点だ。日本の現在の、武装もなければ、会談も再開されず、而も漁船もおる、そうして八方ふさがりの場合において行われた行動としてはむしろ沈着冷静だつたと思う。これは各委員の御判断もあると思いますが、私はむしろ当水産委員会としては、政府に対して、殊に外務大臣に対しては、一日も早く日韓会談の再開を要望して、これからこのような不祥事を未然に防ぐ、私はそういう立場で考えたのでありますが、特にここにはお二人の長官がおられますから、外務省に向つて強硬にこの不祥事を未然に防ぐための会談再開を要望して頂きたい。この点を申上げておきます。
  66. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 私は今の千田さんの御意見に対して、いろいろ考えもありますが、私はそれは申しませんが、少くとも日本国民としてはかようなことには堪えられんと私は思う。だから必ずしも打ち合いをやれと私は言うのじやありませんが、それは問題を今後起らないようなことだけにはしなければ、二度も三度もこういうことをやれられたのではとてもじつとしておれん。たとえ武装がなくたつてただ引つ込んでしまうというわけには私はいかんと思います。それでこの際あらゆる手段を講じて二度とこういうことのないような処置を講じてもらいたい。これは日韓会談というお話もありまするけれども、なかなか日韓会談もこちらだけでやるわけじやありませんけれども、何偏もやるけれども一向に話にならない。我々は大した期待を持てなくなつおる。まあこれにはいろいろ要素もありましようが、少くとも今回の事件に対しては我々国民としては非常に憤慨に堪えないわけであります。その点は長官も御同感のようなお話でありますから、それが今後たびたび起らないように一つ御配慮を頂きたいと思います。
  67. 青山正一

    ○青山正一君 この問題じやないのですが、一つ海上保安庁長官にいろいろ調査して頂きたいことがあるのですが、一つお取調べの上こちらへ書類を頂きたいのですが、これはこの前私ら委員長に連れられて対馬へ行きましたのですが、海上保安庁の船に乗りましていろいろお厄介になりましたのでありますが、乗組員の待遇の上において非常に保安庁の警備船と申しますか、この船の乗組員と、それから海上保安庁巡視船の乗組員との間の待遇の上において非常な差異があるように聞いているわけなんですが、どういう点が待遇の上において現われておるかどうか、その点を一つ両方比較した書類を御提出願いたいと思います。その点だけ委員長のほうから一つお願いして頂きたいと思います。
  68. 森崎隆

    委員長森崎隆君) できるだけ一つ早くお出しを願いたいと思います。  ほかに御質疑ございませんですか。それでは法案の質疑は時間の都合で次回にいたしまして、本日はこれを以て委員会を閉じます。    午後四時十三分散会