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1954-07-31 第19回国会 参議院 水産委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年七月三十一日(土曜日)    午前十一時十六分開会   —————————————   委員の異動 本日委員片岡文重君及び森崎隆君辞任 につき、その補欠として曾祢益君及び 佐多忠隆君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 孝平君    理事            秋山俊一郎君            千田  正君    委員            田中 啓一君            楠見 義男君            島村 軍次君            佐多 忠隆君            曾祢  益君   国務大臣    農 林 大 臣 保利  茂君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君   説明員    水産庁長官   清井  正君   —————————————   本日の会議に付した事件水産政策に関する調査の件  (ビキニ被爆事件に関する件)   —————————————
  2. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 只今より水産委員会を開会いたします。  本日の議題はビキニ被爆準件に関する件でございます。  本日の政府側出席者保利農林大臣及び清井水産庁長官であります。農林大臣只今見えになつておりませんけれども、間もなく御出席の予定であります。  最初に昨日千田委員から農林省に要求がありました冷凍まぐろ及びまぐろ罐詰の対米輸出数量について水産庁長官から御説明を願います。
  3. 清井正

    説明員清井正君) 先般千田委員からお話がございました対米の冷凍罐詰まぐろ輸出状況が今回の事件によつて影響があるのかどうか、こういうことについてお話がありまして、私はそのときに事件の発した当初は極く短い間にLCの取消のような問題があつたようであるけれども、全体的にはビキニによる影響というものはないというふうに申上げたのでありますが、その後数字的にはつきりいたしました点を申上げたいと思います。  只今でわかつておりますところは、事件発生直後取消は一件あるのであります。その後の調査ではまだはつきりいたしておりませんが、一件だけわかつております。その後は別段の支障なく輸出ができておるようであります。  それから輸出数量でありますが、数量罐詰冷凍に分けてちよつと申上げますが、罐詰のほうを先に申上げますと、本年の暦年の一月から六月までを昨年と比較いたしますというと、昨年の一月から六月までは六十五万五千箱を輸出いたしておりましたが、今年は六月までに八十六万箱を輸出いたしております。一—六の計では昨年の六十五万に対して八十六万でありまするから約二十万の増でございます。これを併しビキニの起りました三月以降を比較いたして見ますと二十八年の三月が九万二千箱、本年の三月が二十二万三千箱、二十八年の四月が六万三千箱、本年の四月が十万九千箱、それから去年の五月が九万三千箱、本年の五月が九万二千箱、六月が去年が十五万七千箱でありますが、今年は三万八千箱と減つております。罐詰はそこまではずつといいのでありますが、六月になつてつておるのであります。それは冷凍においてもあとで御説明申上げますが、同じような傾向を示しております。なぜ四月、五月がよくて、六月に下つて来たであろうかということでございますが、最近向うの実情を視察して帰つて来られたかたもありますが、そのかたがたの意見をまだ聞いておりませんが、今年の今までに私ども業界意向を聞きまして考えられることは、向うの、アメリカにおきまする一般の肉類の価格が最近下つたというので、或る程度これは獣肉類でありますが、それとまぐろの肉とが競争的な関係にあるのであるが、向うの肉が相当下つたために今までまぐろを食していた者が肉に転換したのではなかろうか、こういうふうに考えておるのであります。それから今までの気温といいますか、気候でありますが、それの関係もあるのではないかということも言われております。というのは、やはり最近まで割合気温例年に比較してアメリカにおいても例年よりも割合低かつたというようなところがあつた。そういうことも影響しておるのではなかろうかということでありますが、これも正確にははつきり申上げられませんが、そういう観測もいたしております。特に罐詰につきましては、ちよつと値段が割高であるといいますか、向う罐詰値段と比較いたしまして割高であるということが言われまして、この七月から少し値段を下げておるのであります。例えば一箱最近までF・〇・Bで十二ドル二十セントのものを七月からは十一ドルに下げておるのであります。そういうようなふうに向う品物日本品物との値段の差が非常に狭まつて来たということが影響しておる、従つて値を下げることによつて更にこの伸展を期したいというふうに業界では要望いたしております。まだこの結果ははつきり現われておりませんが、七月は相当低調を示しておるようであります。七月の最近の数字はわかりませんが、どういうふうにこの結果が現われておるかわかりませんが、そういうことでありまして、六月になつて去年より減つた、併し一—六の計は去年より多いということであります。  それは罐詰でありますが、冷凍につきまして申しますと、昨年の一—六月の計が二方六千トン、今年の一—六月の計が三万一千トンということで相当の増を示しております。それからこれを月別に申しますというと、昨年の三月が三千八百トンに対しまして今年の三月が五千八百トン、昨年の四月が三千百トンに対しまして今年の四月が八千二百トン、それから昨年の五月が二千四百トンで今年の五月が四千四百トン、昨年の六月が一万二千トンで今年の六月が六千五百トンというふうに六月になつて下つております。それまではずつと上つております。これ又同様に恐らくそういうような食品等関係によるのではなかろうかということでありますが、なおこれは業界でも向うに視察に行つておりますので、その結果等を十分聞きまして、これは今後の問題として十分考えて行かなければならんと思うのであります。いずれにしろこの現象が一時的であるか、或いは恒久的な問題でありますか、このまぐろ関係冷凍罐詰が、ビキニによつて影響を受けたものではない。これが一般観測になつておるのであります。これは昨日もお話がありました通り、むしろ積極的にまぐろ関係冷凍罐詰品輸出を振興する、このための関税問題等もあるわけでありますが、これは私どもも事務的に最近向うに申入れる機会もあるのでありますが、そういう機会を通じまして、只今罐詰関税の引下げの措置を今後とつて参らなければならん、或いは冷凍罐詰もそういうようなことをいたしますが、その他対外のまぐろ関係輸出ということの振興には気を付けて行かなければならんと思います。御質問がありましたことについて数字的な点を御説明申上げた次第であります。
  4. 千田正

    千田正君 昨日もこの点については外務大臣に特にこの問題について申入れてあるのでありますが、やはり通商外交という点についても特にこの際強力に推進して行きたい。このビキニ被害によつて甚大なる被害をこうむつ水産業であり、水産業者の今の状況では、なかなかその不況を救われそうもありませんので、あらゆる点からこの問題は研究して行かなければならんと思います。特に外交問題については、遅々として進まない今日において、いわゆる間接被害があるというのは、そう簡単にアメリカ承知しそうにも見えない。そういう場合にやはり最後の切札としましては、こういつた水産業輸出の面をはつきり打出して行つて外交の線上に乗せて、そうしてこういうことで以て或る場合においては、それから生じた利潤を、苦しい水産業者に転換するような調整をするのも将来計らなければならんのじやないかというふうに考えられますので、昨日も申入れたわけであります。この点はとくと研究されて、飽くまで国内産業であると共に輸出産業である水産業の強力な推進を図つて頂きたいと思う次第であります。重ねて申入れておきます。
  5. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今のに関連しますが、おわかりになつておるかどうかわかりませんが、毎年のまぐろかつお水揚地における価格ですね。大体相場がどのくらいしておるということをお調べになつたものがありますか。毎年、昨年中の価格がどういうふうに変動しているか、高いときも安いときもあると思うのですが、大体平均相場がどれくらいになつておるか。ぴんちようがどうだ、かつおが幾らとかいつたような、そういうものを調べたものが無論あると思いますが、ここでお持ちになつていなければあとでも……。
  6. 清井正

    説明員清井正君) 私のほうで今回の事件関連いたしまして、いろいろ資料を取揃えたのでありますが、その際にも調べたものがあるのでありますが、今はつきりした数字を持つておりませんので、いずれ数字を差上げたいと思いますが、これはやはり御承知通り大体四月頃までがずつと高くなりまして、五月、六月はずつと底をついております。それから漸次又上つて来るというのが大体の風潮でありまして、本来ならば四月はずつと上つて来る、それが五月、六月に下つて底をついてから、七月以降だんだんと上つて来る、こういう傾向を示しているようでありますが、今年は特に大体三崎の相場で申しますと、三月の事件が起つてから、三月一ぱいは加重平均でありますが、三崎で揚りましたこれが大体三百三十円から三百円台でありましたのが、四月に入りますとぐんぐん落ちまして、本来ならば上るのが、二百八十円、二百四十円、下旬は二百二十円と下つて参りました。更に五月はやはり二百円台でずつと来まして、五月の下旬は百七十円まで下つたのであります。それから六月の上旬も百八十円台でありましたが、中旬からずつと上つて参つたのでありまして、現在は三百円台を越している。こういうような状況であるのであります。やはりやや回復傾向を示しておることは事実でありますけれども、まだこれは回復いたしてない。少し回復状況にあるというのが今日の状況だろうと思うのであります。例年を比較いたしましても、大体毎年々々少しずつ上昇傾向を実は示しておるのでありまして、或いは二割、或いは三割程度上つてつて来ておるのであります。特に対米輸出が盛んになつて参りましたので、輸出用ぴんちようなんか割合価格は安定を示しております。その他そういうような対米輸出が強気であるにつれて価格も非常に上つてつたというようなこともあるようでありますが、とにかく今回の事件で、本来上るべき四月がぐつと下つて五月もずつと下つて、六月に入つて上向きになつて来たが、まだまだ回復のところまで行つてないのが実態でございまして、こういうのが業界から強く損失ということが言われまして、私どもこの点についていろいろ打合せをいたしておるのでありますが、そういうような大体年間の状況になつているようであります。
  7. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 これは一つおわかりでしたらめばちなんかの日本国内消費刺身用の魚、これらの価格の変動はどうか。今のはたしかかつおだつたと思います。まぐろ内地消費国内消費価格は、やはり同じような傾向をとつておりますか、著しい傾向をとつておりますか。
  8. 清井正

    説明員清井正君) これは東京卸売市場価格でございますが、これは二十八年と二十九年とを比較いたしたものでございますが、大体東京市場価格、二十八年が三月の上旬が四百二、三十円台、それから四月がずつと上昇傾向を実は示して、四月の中旬は五百円近い数字を示しておつたのであります。これは去年であります。それから少し下つて、五、六月は三百五、六十円台をずつと維持しておるというような状況でございますが、今年は三月の上旬が非常に高うございまして、これは六百円を越しておる価格でございます。それが三月の下旬になりまして三百七、八十円台にぐつと一遍に下りまして、それから四月の中旬に丁度三百円、それから五月の中旬に二百三十円というふうに非常に下つて参りました。六月に入りましてから少し上向きになりまして、六月の中旬は三百円というような状況を示しているのでございまして、結局四月に上つて少し下つて、これを維持するというような状況であつたのが、三月から四月、五月にかけてぐつと下りました。それから最近少し回復の状態にあると、こういうようなのがめばち東京市場価格実態であります。
  9. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 農林大臣がお見えになりましたので、ビキニ被爆の件につきまして、これから御説明を願うことにいたします。  先般来岡崎外務大臣安藤国務大臣からこの件についていろいろ事情をお聞きしたのでありまするけれども、結論といたしまして外交折衝はなかなか捗りませんから、それと並行いたしまして国内対策を速かに立てる必要がある、こういうことで政府のほうでその対策を立てて頂くようにお話を進めて参つておるのであります。  それで本日農林大臣から具体的にどういうふうにこの話が進んでおるかということを最初に御説明願いたいと思います。
  10. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 安藤国務大臣の御協力を頂いておりまして、外務大臣大蔵大臣安藤国務大臣、私、しばしば御相談もいたし、議を進めておるわけでございます。安藤大臣から当委員会に諸般の事情について御説明いたしておられるということを聞き及んでおりますので、一応それを私の説明に代えさして頂きたい。なお御質疑等によつて更に申上げるようにいたしたいと、かように考えます。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 私同僚委員諸君の御了解を願いまして、或いは安藤国務大臣岡崎外務大臣を交えての、この委員会お話のときに大体おわかりになつたようなことに多少関連するかも知れませんが、今の保利大臣お話によると、この問題についての基本的なことについては質問がなければお話にならないということでありまするから、更に基本的な問題について御質問をお許し願いたい。  先ず第一にこの問題は言うまでもなく、いわゆるアメリカ日本との関係になりまするビキニ被爆に関する善後措置と申しまするかこの問題と、それから更に大きな原、水爆をどうするか、こういう問題とに分れると思うのでありますが、その第二の原、水爆全般の問題はこれは本日の問題じやございませんので、その点について触れないことにいたしまして、いわゆる日米間に問題になつておる被害問題についての一般的な問題について伺いたいのですが、先ず私はこの問題については外交上から言えば、責任者の処分とか或いはアメリカからの正式の陳謝というような外交上の問題もあろうと思います。これも私は今日触れません。従つて外交上及び国内上残つておる問題は大ざつばに言えば損害に対する賠償といいますか、国内的に言えば補償、この問題と、更には今後の同種の事件が起らないようにこの点に関して原子力全体の問題とも関連いたしまするが、日米間の問題として今後こういう問題を起すなという意味の将来の保証、この二つの問題がこれは農林大臣としても当然に主管事項としてこの二つの問題には取つ組んでおられると思うわけです。従つてこの賠償と将来の保証の問題について基本的なお考えを伺いたい。  第一にこの損害賠償の問題については、過般来の外務大臣及び安藤国務大臣お話で、恐らく同僚委員かたは政府意向を御承知だと思うのです。私は直接伺つたことがないので保利さんから政府立場はつきり説明願いたいのですが、どうも私の見ているところによれば、今までの政府のやり方というものはアメリカとの交渉ペンデイングであるからその交渉に累を及ぼしてはいけないというような考慮というか、或いは理由というかに基いて国内的にやるべき損害補償或いは救済、こういう問題もそのままにしておつたのではないか、これは私をして言わしむるならば、一応は外交上の日本側主張を弱めるような国内的措置をやるべきでない、この点は同感です。併し逆に言うならば、外交上何ら日本側主張を弱めないような方法において急を要する国内的な賠償なり、融資なり、減免税なりをやつて悪いということは私はないと思う。なぜ外交交渉がむずかしくてペンデイングであるからという理由国内措置をおとりにならなかつたのか、これは並行してやれると政府が本当に肚をおきめになれば、アメリカとの交渉は直接の損害間接損害とに分けて賠償を要求されておるに違いないと私は思う。その場合に直接損害については大体これだけ、間接損害はこのくらいあるということを発表しながら、アメリカから間接損害がどの程度来ようが来まいが、他の被害問題、例えば漁業について申上げるならば、李承晩ライン等不法行為の結果水産界或いはこれに従事する労働者諸君が困つておられる、そういう問題との関連は勿論あります、併しそういうことを、関連考慮に入れても、取りあえずこのビキニ水爆関連する国内的な補償及び救済措置融資措置ということはこれをとられても断じてアメリカに対する交渉においてマイナスになる面はない。むしろそれは我がほうの主張を強めることになる。ただそれは政府としてはアメリカからそれだけのその裏付といいますか、補償金が取れない場合には、その部分だけ裸にならざるを得ない。そこに政治的にも財政的にも一つの決心がお要りになろうと思う。これはよくわかります。従つていろいろな国内的の他の関連考えた上で政府が飽くまで自主的な立場からこの補償なり融資の枠は、間接はこのくらいは取りあえずやるということをおきめになつて、そうしてそれをおやりになつて然るべきではないか。今日まですでに約五カ月たつておる。その間外交交渉ができないから、或いは外交交渉に累を及ぼすといけないから、こういう理由で今日まで結果から言えば便々とこの問題を引張つて来た。そうなつて参りますると、先ほど私は分けて申上げたように、この補償の問題と、それから将来日本漁業なり生存なりに非常に至大関係のある水爆実験の問題、更に私が申上げた水爆全体の問題、こういうものが全部引つくるまつて一つの大きな政治的な雰囲気を起して来る。それは日本全体のためからいつても好ましくない。率直に言うならば、政府の対米交渉の行悩みと、対国内にやるべき当面の措置をやらないために、ビキニ問題即反米運動ということにすべてなつてしまうと、こういう政治的の結果を招来して来る。これは勿論業界方々及び漁師や船員の方々その他魚商方々、これらに対する措置として適当でないのみならず、日本全体の外交政策からいつても甚だ不適当なる結果を招来しているものではないか。非常に抽象論であるけれども、私はさように考えておるので、先ず第一点としてはこの対米交渉国内措置関連する、これを切離して自主的な計画を早く、今までは悪かつたと思うのですが、早くおきめになつておやりになるお考えであるかどうか伺いたい。これが質問の第一点。  第二点は将来の保証であります。この問題ももとより原、水爆のいわゆる原子力国際管理の下における原、水爆、つまり兵器の禁止という大きな問題に関連してその一環としての実験禁止という考え方、これは理論的には正しい。併しこれは必ずしもすぐできる問題でない。従つてマ—シヤル群島の、つまりアメリカの現在の信託統治区域にあるあの独立の立場にない原住民の諸君ですら、農林大臣も御承知のように、国連にささやかなる訴えをして、やめてもらえないならせめて絶対に安全にしてくれ、こういう要請を出しておる。いわんや我が国としては、これは勿論外交上の問題であるけれども我が国漁業と国民の生存とそれの基礎である蛋白資源の問題とか、輸出産業の問題に至大関係がある漁業責任者として保利さんは将来の保証、つまり実験の今後の問題及びすでにやられたことが海水なり、或いは海の生物に対して如何なる汚染と危険を与えているかということについてどういうふうにお考えになり、この点をどういうふうに政府に対して要求しておられるか。この二点だけを、大きな点だけを先ず伺いたい。
  12. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 曾祢さんも御事情はよく御承知だと思うのでございますけれども、私ども水爆実験によつて日本漁業がこうむつておりまする損害、それにつきましては私どもできるだけの調査を遂げて外交当局折衝に待つておるわけでございますが、さればといつてお話のように便々相当の期間もたつておる、この間において国内的に何らの措置を講じて来ないで、ということでございますけれども、今日までとつて来ておる国内措置はそれは措置じやないということでそういうお言葉であれば、これはもう止むを得ないわけでございますが、今日まで当然やらなければならない、又どんなに日米間の交渉が面倒であつても確保せられ得べしと断定的に素人でも考えられるようなものにつきましては、必要限度措置補償措置、内払等の形によりまして今日までやつて来ておるわけでございます。或いは又まぐろ業者に与えました打撃、これは桝で計るような工合には行かんかも知れませんけれども相当大きな打撃があつたことは事実でございます。従つて我が国産業としても重要な産業であるし、同時に又個人としても相当打撃を受けておるわけですし、この操業を維持して参るために或る程度産業資金と申しますか、さようなものの必要もこれはもう当然認めなきやならんし、先般そういう点に関しましても融資措置をとつておるわけでございます。ただ今後長くこの形で交渉解決をしない、解決がまだ延びるというようなことになりますれば、ここで今日までとつて来た措置を更に敷衍して繋いで行く措置を講じなければならんじやないか。そこの関係が私はいろいろ外務大臣からも話を聞いておりますけれども、大体日米間の交渉はほぼ最終段階に来ておると見ざるを得ない。それに満足するかしないかはこれは別といたしましても、大体もう最終的なところに到達して来ておると見なければならん事情になつております。そこでそういう事情考慮いたしまして今最終解決をする場合にこれで応ずるか応ぜざるか、応ぜざる場合にはどうするか、応ずる場合にはどうするかということについて相談をしておるところでございまして、曾祢さんのあれですけれども、無論足りる足りないは別でございますけれども、手をつかねて便々として見送つて来ておるというわけでは決してない点だけは一つ御了承を願いたいと思います。  なお水爆の問題は国際的な重大な問題でございますし、私ども水産行政の衝に立つ者としましては、ともあれあれだけの損害日本漁業がこうむつておるわけでございますし、従いまして当初から操業の安全、或いは必要止むを得ない危険水域設定等がありますならばそれにつきましては十分の補償が講ぜられるようにということを外務省にも強くお願いをして来ておるわけでございまして、この点は今後とも次期の実験等がいつ頃から始まりますか、それまでには努力を続けて参るつもりでおります。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 まあ今までのことについて私も決して詳細を知つておるわけではございませんが、内払をされた、或いは融資の枠を作られたというようなことくらいではないかと思うのですが、これは決して十分でないことは農林大臣もお認めであろうと思う。  それからアメリカとの交渉と分離して国内措置をやるやらないは、もう大体時期的に政府考えでも、アメリとの交渉では、大体我々の言うところの、これは詳細に言えばいろいろ範囲の問題はあるだろうけれども、いわゆる直接損害以外は払いそうもないということが大体今わかつて来ている事実じやないかと思う。して見れば、直接損害に対しても、我々の見る、日本側の見る直接損害アメリカが出してもいいというのとの違いもありましようが、少くともアメリカの出すという程度までははつきりするわけなんで、直接損害で払うべきものはすぐ払う準備はどういうふうにされているか、若しそういうことになればそれで余つて来るところの直接並びに間接損害に対しては今後どの程度にこれを見積り、つまり今までの一億五千万というようなものでなくてどの程度にこれを見積り、それでそれはつまり融資としてはどのくらい、税の減免としてはどれくらい、利子補給はどのくらいといつたような具体的な計数を速かにお立てになるお気持であるかどうか、過去にやられたことの計数と、今後やる計画、これはまだ政府全体としては、委員長からの先ほどのお話にもありましたが、もう近くできるであろうという、まだできておらんようですが、主管大臣としては大体ここに枠をお示し願うことができるかどうか、この点を伺いたい。  それから第二の将来の問題についてはもう少し明確な御答弁を得たいのです。私は二つ質問しているんです。非常に専門的な問題になるが、併し日本としていろいろ現地調査もやられて、非常にいいことでありまするが、いわゆる海水の汚染というようなことについても調査されておるし、本日の新聞の伝うるところによれば、アメリカ原子力委員会のほうでは、これは新聞の報道程度であつて詳細はわからないけれども、要するにビキニ、エニウエトクのあの環礁の極く附近以外魚は絶対に大丈夫だということを言つております。それが十分な科学性を以て直接関係の深い日本側として確認できるものかどうか。それから今大臣のお言葉尻を捉えるわけじやないけれども、私の言う将来の保証というのは、又実験をやられてその場合の損害補償という意味でなくて、仮に実験が今後ありとすればその実験そのものが日本側に物的損害を与えないのみならず、日本漁業等に不利益をこうむらないようにさせるというようなことまで積極的に考えて行くつもりであるか、そういう意味の将来我がほうに不利な影響を与えないという保証をどうしてとるか。アメリカとしてはすでに五月には五四年度暦年中の実験は一応終つたという発表をしたようです。これは私政府じやないから政府から確認して頂きたいんですが、少くとも今年度中、五四暦年度中はもうやらないということらしいんです。併し勿論、だからといつてアメリカだけに禁止しろということはこれは道理が立ちませんから、従つてこの問題は非常にむずかしい問題であつて原子力全体の問題に関連して米ソ共にこの実験をやめてもらうという問題に関連すると思いますが、そういうことを含んで漁業関係の担当大臣として将来の実験に対する我がほうの要求というものを明確に一つ打出して頂きたい。
  14. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私どものほうでは、私が一番初めから心配しておりましたのは、日本の重要産業である漁業漁業中の重要部分を占めておりまするまぐろ漁業がために衰退を来たすというようなことがあつては大変である、従つてそれに対しましては政府としてもできるだけの措置は講じなきやならん、そういうことで、それは外交当局も同様の考えでございますし、その線で折衝は進めて頂いておりますけれども、いわゆる間接損害というものは、まあこれは曾祢さんは専門家であられるし、私どもはよく不案内でございますけれども、国際法と申しますか、そういう外交事例の前例からいたしましても、極めて間接損害というものの賠償というものはむずかしいものだというようなことを聞かされて来ておるわけです。そんなことはまあどうでもよろしいとして、とにかくまぐろ漁業に与えた打撃の重大であつたことはこれはもう何人も否定し得ないことでございますし、従いまして先般一億五千万円の枠内で融資としては融資措置を講じて来ておりますが、それを以てしては行届かない。無論どこまで行つたら行届くかということも甚だこれは実際問題としては測定いたしかねる点もあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても同額近いまぐろ漁業者に対する融資というものは必要じやないか。同時に市場関係の受けた打撃、それによつてその後の事業運営についても相当影響が来たしておるわけであるから、全体の産業界がそうでありまするように金融逼迫の情勢の中に立つて而もさような特殊な事情によつて影響を受けて来ているから、その面に対しても私どもとしては融資する措置をとることを希望いたして、それがまあ只今もみ合つておるいわば状態なんでございます。もうあからさま申上げましてそういうことでございます。  なお後段の問題につきましては、これは極めて重要な問題でございます。私どもの今までとつて来ておりまする外交当局に対する要請措置が或いは手ぬるい点もあろうかという反省もしなければならんと思いますから、この点は更に検討を加えまして十分趣意に副うように努力いたしたいと考えます。
  15. 千田正

    千田正君 農林大臣に特に我々は非常に不満を覚えておるが、先般来ビキニ損害問題について再三委員会を開いて大臣の出席を要望しておるにかかわらず、なかなかお見えにならない。而もここへお見えになつて政府の内容を聞くというと、外務大臣外務大臣なりの外交の問題、それから安藤国務相は成るほど今度の被害に対する政府対策委員委員長みたいなことをやつておられるだろうけれども、要領は一つも得ていない。外交折衝が済んだらば、それを基本として国内対策に当りたいと言う。併し先ほども曾祢委員からお尋ねがあつたように、これは並行してもできることであるし、現実においてはもうすでに業者そのものが明日にも倒れかかつておる。金融措置も何にもできないから、高利貸から金を借りて出漁をする。取つて来た魚はもう半値以下になつてしまう。何回もそれを繰返しておるうちに、先ほどのあなたがおつしやるような、こういうことによつて日本水産業の中核をなすところのまぐろかつお漁業というもの、遠洋漁業というものは壊滅に瀕する。こういう状況にあつてもあなたはちつとも出ておいでにならない。安藤国務大臣が何か言つたように話をしておられるけれども、我々は信用ができないのです。こんなちやらんぽらんの話では……少くとも国内対策においてはあなたが中心になつてはつきりしためどをつけて頂かないと、この水産業としては壊滅に瀕してしまう。そこで私はあなたに要求するのは、一体これをいつ片付けるつもりなのか。外務大臣に昨日質問するというと、なかなかこれは容易ではない。めどなども言い切れない。いわゆる皆さんの要望しているような額までには到底アメリカは今のところは承知しそうもない。その要望を満たすためには相当強力な外交折衝を必要とするけれども、それがいつになるかわからない。安藤国務大臣に聞くというと、私は保利大臣相談の上にとにかく外交折衝のめどがついたならば国内の問題に移りたい、いつまでたつても堂々廻りでありまして、到底この問題の解決のめどがつきそうもない。そこで私は特に大臣に今日は御出席つてはつきりしたお答えを頂きたい。外交折衝が長引くのは止むを得ないとしても、それはどこまでも日本の国権の擁護のために堂々とやつてもらいたい。併し国内の今の状況を十分おわかりのことと思いますから、これに対する対策をどうされるか。先ほども最低のことをやつておるとおつしやるけれども、神奈川、三崎だけの問題じやありませんよ。神奈川県や静岡県だけの問題じやない。百何十隻という船が受けて来たところの漁獲その他の損害をどうするか。アメリカから補償をもらわなくても或る程度国内においてこの産業の衰微する現況を救わなければ到底やつて行けない状況を主管大臣としてあなたはどうなさるか。その誠意を私ははつきりと今日は聞きたいと思うのです。荏苒してもう数カ月を経ても今日なお対策ができない。こういうようなことでは到底我々は国民の一人として現内閣に対して信用できない。税金や何かに対しては御承知通り汚職事件という疑惑の下に金が使われておる。国民の疑惑を晴らそうとするならば、こういう際にこそむしろはつきりした誠意ある政府の施策を国民のためにやるべきである。私はこの点について一体いつ頃ならばこのめどをつけて、国内対策をやられるかという点をこの際保利大臣からはつきり聞きたい。例えば八月中にこれはめどをつける、八月の中頃までにつける、そうしなければ生産に携わつている人たちはお先真暗なのです。これを一つ主管大臣として一応この際仮に世間に十分御発表できないとするならばこの当委員会に対してでもいいからはつきりとした大臣の肚を割つたところを伺いたい。この点をお願いいたします。
  16. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 大体は先ほど曾祢さんにお答えいたしましたように、成るほど千田さんの言われますように交渉は捗らん、国内的には交渉を眺めておるということで、堂々廻りで、どこでどうけじめをつけようとしておるのかという御疑念は御尤もでございます。まあこれは大体は千田さんも御承知のように、当初アメリカのほうでは私どもが心配をしているような事態に来ているのじやないのじやないかというような点もあつたろうと思います。そんなことで初めにこのくらいといつたようなものが実に問題にならないとかいうようなことで、そこでその都度外務大臣からも経過を聞いております。問題にならんぞ、これは、ということで押返し押返ししておりますことが、こう延び延びになつて来ておる元でもあるわけであります。そういう意味で先ほど曾祢さんも御指摘せられておりましたように、そういたしますれば、日がかかる、日がかかれば直接無残な損害を受けたそのことに対しても見送つて行くというようなこともこれはできないことでございますから、必要と申しますか、最小限度と申しますか、ともかくぎりぎりのところの内払的な補償措置を講じつつ突張つて来ておつたわけなんであります。さつきちよつと暗示的に申上げましたように、大体併しまあ責任を回避するということであれば別でございますけれども、まあそんな言葉を使つていいかどうかわかりませんけれども、もう大体堂々廻りを終つて肚をきめるところじやないかというところまで来ておると、そういうところに近付いておると私は考えておるわけであります。そこで日が延びて来た、国内的にもあの程度措置しかとつていない、で、解決するしないはともかくとして先ほど申しましたように、お話のように三崎、焼津だけの業者が被害を受けておるわけじやございませんから、その他の業者に対しても先般とつ融資措置等はとらなきやあいかん。それと市場関係についても私の立場からいたしますれば同様に一つ融資措置等は講じて、そうして業者の立直りを図つて行かなければならんのじやないか、こういうふうに考えてやつておるわけです。  当委員会に対して私の出席が延び延びでお叱りを受けておりますが、その点につきましては私はもう昨日もここに出て参つて何しておりましたけれども、農林委員会と丁度かち合つておりまして、農林委員会のほうに出ておりました。それからもう当委員会のほうに安藤国務大臣水爆関係について特に閣内で心配をして頂いておりますので、委員会の御審議を進めて頂く上においても安藤国務大臣に努めて御出席つてつたわけであります。私は決して出席を回避しておつたという意味ではございませんから、その点は一つ御了承願いたいと思います。甚だどうも最終的に責任を以てこういたしますということを言えませんので、これは事実の段階でございますから、併し大体の状態は御推察頂けると思います。
  17. 千田正

    千田正君 併しこれは保利さん何じやないですか、あなたと大蔵大臣と安藤国務相と、それから外務大臣、先ず大体四人で一応今まで十分お互いに肚を割つてお話合いしておるでしようが、もう大体この辺でけじめをつけて、外交折衝外交折衝でやる、国内国内でこの程度のことはやるという肚はもうできておられてもいいと思うし、又そうでなければならんと思うのですが、それでどうですか八月の十日あたりまでに大体のめどはつけられないですか。
  18. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これは私の肚がまえはそういうつもりでおります。そういうつもりで肚を作つておるつもりでございます。そこで融資関係大蔵大臣、財務当局に、私どものところに来ない点がまだ残つておるわけです。御指摘の四大臣では、ほぼ日米間の話合いが大体その辺かというようなところになつてからしばしば相談しておるわけであります。或る程度は大蔵省も考えるところまで来ておりますけれども、なかなかそれがどうも私としては困るということでまだ話合いがつかないでおる点が残つております。それを大体できるだけ早い機会に片付けたいと、かように考えております。
  19. 千田正

    千田正君 どうも農林大臣になればそういうお話安藤大臣になると、これはいずれ保利農林大臣外務大臣大蔵大臣相談してめどをきめたい。大蔵大臣は出て来ない。外務大臣外交折衝に対してはお任せ願つて私は極力やります。併し国内措置はこれに並行されて一向差支えがないからこれは所管大臣の大蔵大臣、それに安藤国務相は大いに協力してやつてもらいたい、一体どこがかなめの打ち所か、結局吉田総理大臣を呼び出してイエスかノ—かを責めなければならんのかということになりまして、吉田さんのような床の間の置物みたいなかたは最後の鶴の一声で結構です。とにかく所管大臣のあなたのようなかたがこの辺でやりたい、この辺でやるから業界諸君も、生産者或いは業者の人たちも政府を信頼してよろしいのじやないかという一つ肚がまえをはつきりしてもらつてもいいのじやないかと思うのですが……。
  20. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これも全く同感でありまして、私もそう行きたいわけなんです。そう行きたいから内部で苦労もしております、努力もしておりますけれども、全体のとにかく財政方針といいますか、金融方針といいますか、その中に立つて取上げておるものですから、それはまあ随分不謹慎だと言われるかも知れませんけれども、問題の性質から、大蔵省も真剣には考えますけれども、通常の形においてはそんなものはとても問題にならんわけなんですね。それはとんでもないことなんだということで話をしておる。まあ、或る程度の見通しはありますけれども、それじやとても私としては責任の一班を全うすることができないのじやないかと考えますので、まだ折衝を続けておるわけなんです。
  21. 千田正

    千田正君 まあともかく保利大臣は、党内とか閣内のいざこざのときにはいつでも優秀な腕を振われておまとめになる、調停役においてはナンバ—ワンなんでありますが、今の問題と考えて見れば、金庫番と外交係とそれから隠居とまとめるのはそう面倒なことじやない。お瘠せになつたのは御苦労なさつているせいじやないかと御同情申上げますが、一つこの辺でまとめてはつきりしてもらいたいですな。
  22. 楠見義男

    ○楠見義男君 千田さんの言われた扇のかなめという役割を果すのは、今日の段階においては私は農林大臣だと思つている。その理由はだんだんと申上げますが、それは本委員会で、閉会後も本日で六回目の委員会をやつて、当面の安藤大臣、それから外務大臣等の御説明を伺つて、少くとも私の納得し了解した点は、先ほどの曾祢さんの御質問にもありましたが、今まで政府考え方は対米折衝を主にして、その経過を見て、或いはその結果によつて対内施策を講じようという気持があつたということがはつきりした。そのことは、一億五千万円の融資を御決定になつたの事件発生後四カ月目であつたという事実に徴してもこれは明らかなんです。ところが、曾祢さんも触れられましたが、外交折衝をやつている最中にいろいろの施策をお講じのことが、外交折衝を円滑に進める上においてプラスになるかマイナスになるか。最初のお考えはマイナスになるというようなお考えでなかつたかと思われる。安藤国務大臣も当初はそのようなことを盛んに言つておりました。そこは餅は餅屋なんだから、当面の責任者外務大臣からその意見を聞こうということで外務大臣から意見を聞くと、これはちつともマイナスにならない、むしろ場合によつてはプラスになる場合もある。そこで外交折衝と対内施策というものは順調に並行してやつて頂いて一向差支えない、むしろ場合によつてはプラスになるということを外務大臣はつきりと言明をされた。そこでその点は明瞭に実は本委員会としてもなつたわけです。そこで昨日も、いよいよ最後の段階になつてこうやつて四カ月も我々は騒いでおるが、騒ぐのは騒ぐほうでいいかもわからんが、実際の業者はもう音を上げている。暫らくするともう音も上らなくなる。だから早くその対策をこの段階では争つてもらうべきじやないかということを昨日両大臣お見えの節に申上げ、又御意見を伺つたところ、先ほど来それがもその段階になつておる、こういうことなんです。そういうふうになつて来ますと、当面のかなめはこれはもう農林大臣ということにならざるを得ない。そこで今後この対策がうまく行くかどうかという問題は、一に農林大臣の御努力に待つ以外にはないということになるわけなんです。ところが、これからの対内施策として一体それじやあ政府はどういうふうにお考えになつておるか。昨日伺いますと、大体融資ということで何とか切抜けられることのようにお考えになつておるんじやないかと思う。私は、この考え方は甘い……というと失礼ですが、極めて不十分だと思つておる。というのは、一億五千万円の融資の枠がきまつてからでももう恐らく二週間以上、三週間になると思う。それじやあ、これは大臣もお調べになつたらわかりますが、その融資がきまつた三週間後の今日、現実に融資が行われておるか。恐らく行われておらんのだと思う。一件も行われておらんと思う。それはなぜかと言えば、これはまあ条件のむずかしいこともあります。例えば担保を要求する。これだけの被害を受けて損害を受けておる漁業者が担保があるかどうか。これは常識的に考えてもわかるのですが、そういうふうに条件自体も非常にむずかしい。それから方法も県に任している。こういうことで、折角きめて、そして先ほども問題になつていますが、対策措置として見るか見ないかという問題がありますが、これは見ようによつては全然措置を講じておらないと私は同様だと思う。こういうような資金融通の考え方、措置を、今後の対策の唯一の方法としてお考えになつているとすれば、これは私は全く措置とは考えられないと思う。従つてこれからの対策としてどういうことをお考えになつておるか、資金融通の途をお考えになつているとすれば、その資金融通の方法は従来と同じようなことをお考えになつているのか、又異なつた改善された、実際に業者の手に渡るような資金融通の途をお考えになつているのか、この点が一点と、それからその次には、私は実は昨日も申上げたのですが、この際は保利さん恐らく同様にお考えになつておられると思いますが、その際は政府の親心として考えられるすべての措置考えてもらいたい。丁度陸地における風水害その他の対策において、いろいろ従来も措置をお考えになつたのですが、それと同じようなことを考えて頂きたい。例えば一つの問題としては税の問題もある。とにかく政府アメリカに対して、要求ではないかもわからんが、損害としてその資料としてお出しになつておる数額だけでも二十億を超えておる。そういうふうな損害を受けておる業者が、本年の収入で以て前年の税を払うという場合に満足に払えるかどうか、これを一つ考えてもおわかりだと思う。これは陸地における減免税措置をおとりになつておることとの均衡の上から言つても当然考えられるべき親心の一端だと思います。そういうふうに資金融通の方法についてもお考え願わなければならんこともあるし、それ以外の税の問題にしても、その他の問題にしても親心として考えられるすべてのことを一つ施して頂きたいということが我々の念願であると同時に、今後かなめである農林大臣の御尽力を願わなければならん私は問題の中心点だと思う。そこで結論的に言えば、もう最後の段階に来ておるということは安藤大臣外務大臣もお考えになつておる。その外交折衝と切離して対内施策を講ずることはむしろプラスになる場合もあるということも、これも明らかになつておる。そうなれば速かに対内施策を講じて頂きたいが、それは千田さんからもお話があつたように、できるだけ早くやつて頂きたい。衆議院のほうもこの十日には委員会があるそうですが、私どもも九日には閉会中における第七回目の委員会をやることになつておりますので、できればそれに間に合うようにやつて頂きたい。これはまあ希望でありますが、お尋ねの点は資金融通の点について、今までと同じような考え方でおやりになるのか、これは私は困ると思いますが、その点についての御意見、それからそれ以外の対策についてお考えになつておられるのか、又お考えになる余地があるのか、もう最後の段階になりましたから、この点を農林大臣直接のかなめからその対策を承わりたい。
  23. 保利茂

    国務大臣保利茂君) ともあれ、この漁業関係につきましては私がとにかく責任者でございますから、各般の措置をとるべき最終段階にあるという考え方の下に最善の努力を払うつもりでおります。第一点の融資の、まあ先ほど来申上げますように、私としてはまぐろ漁業者はもとより市場関係についても融資措置を講じて立上りに助力をして行きたい。その融資方法が実際に融資を受けなければならないほうに廻らない、条件等が非常にやかましくて廻らないということにつきましては、これは目的を全然離れるわけでございますから、どこまでも目的は業者個々のかたがたが立上つて行かれるというための助力措置考えておりますので、御趣意に副うて一つ工夫をいたすようにいたしたいと考えます。それから融資以外の措置については考えないか、税の問題等にかかつて来ると思いますが、これは一つ至急事務当局に、事務当局は無論案を持つてつてくれていると思いますけれども、私の手に頂いて私が努力をいたすようにいたします。私としてはもう一点考えておりますけれども、この点はちよつとどうかまだ発表申上げられんわけであります。私としても最善を尽してかなめとか、そういうことはともあれ責任は私にあるわけでございますから、決して安藤大臣やその他のかたにあるわけではなく、私にあるべきだと思いますからできるだけのことをいたします。
  24. 楠見義男

    ○楠見義男君 さつき申上げましたように、安藤さんはこれは全くこう言つちや失礼ですが、対策についての実力を持つておられる大臣じやないのです。対策についての実力を持つておられるのはいわゆる所管大臣である外務大臣農林大臣、それから大蔵大臣、いわば私は実は監視役だということを申上げましたが、まあそういう立場で、今日の段階は先ほど来申上げましたように、中心は農林大臣だと思います。今資金の問題についても従来の経緯に鑑みて改善の途を考えるようにやつて頂けるようでありますし、それ以外の税の問題についても考えて頂けるようだし、なお何だか玉手箱でもありそうですが、その玉手箱も是非一つ開いて頂いて、而も速かに、要するに問題は私は時間の問題だと思います。もう再三申しますように、船でも処分しようか、或いはこの仕事をやめようかというふうな段階にまで来ておると思いますから、時間的の問題がこの際は非常に大きな要素になると思いますから、是非早急にお考え、御対策をお立て頂きたい。このことを重ねてお願いいたします。
  25. 保利茂

    国務大臣保利茂君) その時間的な問題になつて来ておるということにも私は同感でございます。そういう意味で十分の措置が、御満足を頂くということは或いは困難かも知れませんけれども、とにかく一面は時間的にも急がなければならんじやないかという考えで処理して行きたいと、かように考え、ております。
  26. 島村軍次

    ○島村軍次君 大体只今農林大臣の御発言で、責任を以て早急に片付けるというお話がありましたので、その点了承いたしたのでありますが、この融資の問題になりますと、お言葉にもあつたようでありますが、どうも府県に任し、或いは府県を通ずるという従来の融資の方法は他の農林資金の融通等の場合にも、玉手箱はあつてもなかなかそれは食付きができんというのが今までの例であつたのです。いわんや業者の人の御意見を聞いて見ると、そこにごろがつておる一億五千万円はまだ食付きができんのだという現在の状況であります。そこでしつこいようでありますが、これに担保をとるとか条件を、非常な条件をつける従来の型でやるということに対して、これは水産庁長官も事務的にもつと積極的にやられて、若しそれが行かねば、これは国際的の問題もあるわけですから、一つ大臣でこれらの点は今度は思い切つた融資措置を速かに講じて頂きたいということを重ねて一つお願い申上げたいと思います。県に任しておきましては、府県の取扱というものは、これは事務に追われてしまつて、実際に県知事はそのむずかしい条件というもの、或いは市中銀行とどういうふうな方法でやられるか、具体的な問題について特に一つ早急に事務当局を督励されて速かな解決を重ねてお願いいたしたいと思います。
  27. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これは重ねて申上げますけれども、個々の業者に流れないということになれば意味をなさんことになりますから、そういうことで府県を通さないで行くという形はむずかしいと思いますけれども、とにかく末端の業者のかたに速かに流れるように工夫をしてもらうようにいたします。
  28. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 最後に私ちよつと伺いたいのですが、現在まで考えられておることは、間接損害、直接損害国内では分けて考えておられますけれども、直接の損害に対してはアメリカから来るからそれは補償として行くが、若しそれが非常に少いようであつて間接損害においても殆んど直接損害と変らないような大きな損害である、まあ現在の実際はまぐろを捨てたとか、或いは病人ができたというような問題の費用よりも、水爆実験によつて国内の消費面から来る魚価の暴落という問題が一番大きいのです。業者の陳情書等によりましても約十五億円ほどの損害上つているということでありますが、これが政府が積算しておりますものが仮に二十億或いは二十一億といたしますと大半になる。そこでこれに近いような直接損害なり何なりアメリカから来ればいいのですけれども、我々の想像するところはこれにはほど遠いものではないかと想像されますが、そうした場合にあとのものを資金の融資によつて解決しようということは、これは融資を受けるほうも大変だろうと思う。そこで融資も或る面にはやらなければならんが、若し場合によつて政府補償といつたようなことも考えなければならんのじやないか、当然考えなければならん問題である。これは私は安藤大臣にも申上げたのですが、天然のいわゆる風水害等と違いまして、当然相手があつて人為的に起つた問題である。而もこれが、日本政府はこれらの原因についても岡崎外務大臣は国として協力をして行くということである関係もありまして、協力して行くというような立場をとつておられる関係上、それによつて受けた犠牲に対しては日本政府もその一斑をどうしても背負わなければならんのじやないか。背負うのが当然じやないかと私は考えるのですが、大臣としまして補償以外に国内措置として講ずる点は税の減免等もございましようが、補償という途も或る程度考えておられるか、先ほどのいわゆる玉手箱はそこにあるのじやないかと私は想像いたしますが、その点は如何でございましようか。
  29. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 筋道として理窟を立てて行けばお話通りだと思います。実際問題としては私はそれは不可能だと思います。そういう措置が、現在も政府の方針の内情からいたしまして、その点も私どもとしては心得ておるつもりでございます、この今日までの経過におきまして。併しそれは私はそういうことを考える余地があるということは申上げることはできませんということを今はつきり申上げておきます。
  30. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 それはどういうわけでございますか。日本国が補償的な、いわゆる貸すのではなくて、救済的な意味でも救済金を出すといつたようなことのできないというのは何かできない理由がございますか。
  31. 保利茂

    国務大臣保利茂君) まあ人災といい天災といいではありますけれども間接的な損害に対して国が補償して行くということは今日までも、又今後といえども筋としては考えられることでございますけれども、実際としてはむずかしいと思います。これは今後の問題で研究さして頂くことはあろうかと思います。
  32. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 日本政府がこの損害を見積りましても仮に二十億なら二十億というものの補償アメリカに要求しておる。ところがアメリカがそれを出さないで、一部分しか出さなかつた場合には、あとの残りの極く一部分の融資に待つてあとは捨ててしまう、政府はやり放しということは私はちよつと筋が通らないように思うのですが、その点に対するお考えが私どもとしては補償を要求して、これは補償相当すべきものである、アメリカがこれを賠償すべきものであるというふうに考えられて要求しておられるのだろうと思いますが、若しいけなければこれと手を繋いでおる日本政府に私は責任があるのじやないか、従つて全部とは言わないが、一部は救済的な措置を講ずべきじやないか。例えば風水害等には補助金というものがあります。一斑は自分で持つが、他は国の補助金によつてこれを救うてやるという手があるのですが、これには補助金はない、救済金もない、貸してやるのだということになると、とてもこれは借りて再建して行く、或いは損害を補填して行くということは非常に私は困難ではないかと思う。そこにまあ人災的なものに対する政府が親心を持つてつてもらわなければならんのじやないか。これは将来こういうことが二度も三度もあつては困りますが、必ずしも又ないとは言えないのです。現在の状態では今年はないだろうという程度であつて、将来やらないということは誰も保証しておらんのですから、再びこういうことがあつたら、どうもこうもないようなことになるので、この際は何とか政府が或る程度の助成をして、助成と言つたらおかしいのですが、救済をしてやるということに考えをして頂く途はないものか。これを突つ放されるということになると、業者は誠にそういう扱いしか受けない。御承知のように、西の海は中共或いは朝鮮、これらに痛みつけられておる。北はソ連で非常に窮屈である。たまたま一番いい南のほうは今度の水爆で以てひどい目に会つた。沿岸は沿岸で競り合つておるのですから、日本漁業というものは非常に危ない状態に陥つて来ることになると思います。これについて大臣に私はお尋ねはしませんが、かような事情についてお考え下さいまして、最善の策を考えて頂きたいということをお願いいたします。
  33. 島村軍次

    ○島村軍次君 ちよつと具体的な問題で水産庁長官に伺いますが、一億五千万円は多分預金部資金からのだろうと思いますが、そうして償還期限とか、或いは利子とかいう問題はどうなつておりますか。それからあの交渉の範囲、それから利子補給というような問題についてお考えなつたかどうか。なおこれらの問題は今度の九日の最後の委員会といいますか、開かれるというのですから、それまでにはつきりしたことが決定になるかどうか、お見通しを一つ伺いたい。
  34. 清井正

    説明員清井正君) 只今実施いたしております静岡、神奈川両県に対する貸付でございますが、これはお話通り預金部の融通資金を県に貸付する。県が直接に或いは一定の金融機関を通じて貸付する、こういう建前になつておるのであります。この資金の貸付は日歩一銭八厘になつております。貸付の期間は、原則は三カ月の短期貸付でございますが、これは三十年度の三月末までは延期し得るという、いわゆる借換えをなし得るという建前になつておるのであります。県はこの利子はとりませんけれども、更に一定の市中金融機関に、極く最低限度の利鞘を認めるということはどうかと思いますが、その点は県内部で以て操作するようにさせるという状況であります。それから只今の問題になつております点につきましては、今折角大臣からお話申上げたと思います。大蔵省とも十分打合中でございますので、いずれ申上げる機会があることと存じます。  利子補給の問題につきましては当初から考えておりません。
  35. 楠見義男

    ○楠見義男君 保利さん、利子補給の問題の起るのも私は尤もだと思う節もあるのですよ。というのは、今秋山さんのおつしやつた点に関連するのですが、秋山さんは間接補償の約二十億というものも日本政府アメリカ賠償要求をしておられるようにおつしやつているのです。私はそれは賠償要求を日本政府はしていないということを実は自分で乱暴ながら断定して昨日申上げたのです。それは、たまたまこの二十七日の朝日新聞に載つてつた記事を引用して、「なお日本側は必ずしも『補償要求額』としてではないが、損害資料として三月以降損害があり次第にアメリカ側に資料を提出しており、その総額は二十億円を超えている。」こういう字句を引用して、若しこの字句が正しければ日本政府間接被害を要求していないのです。ただ資料としてはこういう資料もありますという、こういう提出はしておるけれども、要求はしておらないということを実は断言をして申し上げてよい。若し自分の断定が間違つておれば訂正してもらいたいということを外務大臣にも申上げたのですが、外務大臣は御訂正がなかつたのです。だから、私の推定は間違いないと、自分でまあそう思つておるのです。そこで、若し日本政府がこれだけの損害があるから賠償してくれという要求をアメリカ側にしておれば、これは国際的にも日本政府は業者に賠償すべきものだというので外国に要求しているのですから、若し外国が断われば日本政府としては当然業者に賠償すべき筋合だと思う。ところが日本政府はそういう要求をしていないから、さつき申上げたように、そこで秋山さんの言うふうにはならない。ならないが、併し日本政府としては先ほどお話があつたように、筋としてはこういうことも考えなければならんという農林大臣のそのお考えは極めて常識的な当然のことだと思う。そこで賠償という方法が講ぜられればいいが、日本政府として賠償という方法が講ぜられればいいが、講ぜられないとするならばやはりそれに代るべき近い措置を、さつき申上げたような親心のあらゆるものを吐き出してもらいたいという意味で、一銭八厘なんという普通だつて借りられるようなそういう金じやなしに、むしろ補給すべきものは補給する途を講じて上げるのが当然じやないか。私はそういうふうに思うので利子補給の問題も考慮の中に是非入れて置いて頂きたい。こういうふうにお願い申し上げます。
  36. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 本件もいよいよ最終的の段階に来たようでございますので、次回開催予定の八月の九日には政府におかれましても具体的な案を準備されまして当委員会に御発表下さるよう御希望いたしておきます。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十四分散会