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1954-07-21 第19回国会 参議院 水産委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年七月二十一日(水曜日)    午前十時二十二分開会   —————————————   委員異動 七月十日委員赤木正雄辞任につき、 その補欠として島村軍次君を議長にお いて指名した。 七月十六日委員海野三朗辞任につ き、その補欠として森崎隆君を議長に おいて指名した。 七月二十日委員平井太郎君及び松岡平 市君辞任につき、その補欠として石村 幸作君及び秋山俊一郎君を議長におい て指名した。 七月二十一日委員東隆君及び苫米地義 三君辞任につき、その補欠として松澤 兼人君及び武藤常介君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 孝平君    理事            秋山俊一郎君            千田  正君    委員            青山 正一君            石村 幸作君            楠見 義男君            森崎  隆君            松澤 兼人君   国務大臣    国 務 大 臣 安藤 正純君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    外務省アジア局    長       中川  融君    水産庁長官   清井  正君   —————————————   本日の会議に付した事件理事補欠選任の件 ○水産政策に関する調査の件  (ビキニ被爆事件に関する件)   —————————————
  2. 小林孝平

    委員長小林孝平君) これより水産委員会を開会いたします。  この際お諮りいたします。先日委員異動理事の一名が欠員になつておりますが、只今この理事補欠互選を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 御異議ないと認めます。つきましてはこの理事補欠互選方法成規の手続を省略して委員長の指名によることに御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 御異議ないと認めます。それでは秋山俊一郎君を理事に指名いたします。   —————————————
  5. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 本日の議題はビキニ被爆事件に関する件でございます。只今出席の方は安藤国務大臣水産庁清井長官、ほかに外務省アジア局長と大蔵省の鈴木主計官、厚生省の楠本環境衛生部長が後ほどお見えになるはずであります。  最初に先日前回委員会におきまして安藤国務大臣に数点お願いをしてございます。即ちアメリカ水爆実験を止むを得ずやる場合はあらかじめその実験日等について日本側に通告をしてもらいたいこと、或いは水爆実験に関するいろいろの被害状況調査に関連いたしましてアメリカ側がすでに調査してはつきりいたしておる点等につきまして種々の資料日本側に提供してもらいたいこと、例といたしましてはビキニ環礁から海中に流れ出す灰の量とか、或いは環礁の中の相当濃厚な放射能を含んでおる海水がやはり外に流れ出る、そういう点につきましてすでに調査が行われておると思いますから、これらの点について日本側資料を提供してもらいたいというような点についてアメリカ側外務省を通じて交渉してもらいたいということをお願いしてあつたのでございまするけれども、これらの点についてその後どういうふうになつておりますかということを最初安藤国務大臣からお話を願いたいと思います。
  6. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 今後アメリカ実験をするかしないかはまだ断定はできませんが、今後アメリカが更に実験をする場合におきましては日本政府予告してもらいたいという交渉はするつもりであります。併しながらこの間の実験中にもそういう交渉をいたしたのでありまして、そのことはこの前の委員会お答えをいたしておきましたが、それに対しましては大気の関係とか、或いは海流の関係とかいろいろそういう関係から予告ができない場合が多い、或いはそういう以外のまあ政治的事情といいますか、そういつたよう関係予告のできないというような事情もありまして、或いは今後必ずしも予告ができないというような場合におきましては、危険区域を厳重に設定をして危険の及ばないようにするということ、万全の用意準備をしても万一被害があつた場合においてはこれに対して十分の賠償をするということ、そういう点を今後アメリカ実験する場合においては厳重に交渉をするという方針只今おるのであります。それからその次の実験資料でありますが、これはアメリカに対して要求をしたいと思いますが、それに対して委員会からどういう資料だということをもう少し具体的にお示しを願いたいと思います。それに基きまして差支えのないことは要求をしたいと、こういう方針でありますから、そう御承知を願いたいと思います。
  7. 楠見義男

    ○楠見義男君 今後行われるべき実験に関連しての日本側からアメリカ側に対する要求の問題は、今安藤国務大臣からお話のありましたように是非そのように御連絡を願いたいと思いますし、又委員会に対する御希望の点は私どももその点を取りまとめて政府側にも御連絡を申上げたいと思います。こり際お伺いしておきたいと思いますことは、前回委員会直後でありましたか、新聞等にも報道せられたこととして、アメリカ側賠償意向について、いわゆる直接被害ですか、それのみを賠償するような意向が伝えられておつたように記憶しております。新聞報道通りつておるかどうかは別としまして、日本政府としては、引続いて賠償交渉をしておられると思うのでありますが、今日までにおける賠償要求経過等について、これは後刻外務省からお見えになれば細かい点を又伺いたいと思いますが、安藤国務大臣手許でおわかりの程度のことはこり際聞かせて頂きたいと思います。
  8. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 私が承知をいたしておりますことだけを申上げます。日本政府としましては、直接損害並びに間接損害を綿密に且つ厳重に調査をしまして、それをアメリカ政府提出をいたしてあるのであります。これに対しまして、アメリカのほうの考えは、直接損害賠償をしよう、間接損害ということは、合理的に考えて見なければならず、それから今までそういう損害を与えた場合に、アメリカとしては、直接損害賠償はしても間接損害賠償をした例はない。それでこれに対しては難色があるのであります。且つ又アメリカとしましては、成るべく早く日本のほうの態度がきまれば解決もしたいという色は出ているのであります。で、過日来ワシントンのほうとも直接交渉もしておりますが、更にこちらではアリソン大使を通じて交渉をやつておるわけであります。ところがまだその結論に到達しておらないのであります。成るべく早く解決し、成るべく日本としては、間接損害といつても直接に近い間接損害、むしろ間接損害と数え立てても直接損害と解釈するほうが適当だと思われるものに対しては、やはり賠償をしてもらいたいという日本態度方針であります。併しそのことがアメリカのほうと日本のほうとは少し考えが違うのでありまして、そこがまあ今行き悩んでおるという状態であります。
  9. 楠見義男

    ○楠見義男君 前回にもお伺いしたことを重ねて技術的な問題でお伺いして恐縮なんですが、今の直接損害或いは直接損害とみなして然るべき間接損害の問題なんですが、それは前回お伺いしましたように、例えば福龍丸事件の直後四、五日間にこちらへ来て、そして廃棄されたもの、これは準直接損害ですが、直接損害に入れてもいいと、こういうような御意向もお伺いしたのですが、それ以後、例えば最近もどんどん廃棄されておるもの、これは日本側立場に立つても或いはアメリカ側に立つても勿論でありますが、これは賠償対象には考えられておらない、こういうふうに理解してようございましようか。
  10. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それは日本要求としては、やはり賠償対象としてそれをすつかり積算して提出はしてあるのであります。併しアメリカのほうはそういうことに対しては難色がある、只今申上げたように。
  11. 楠見義男

    ○楠見義男君 いや、私のお伺いするのは、その点はいわゆる日本側においても間接損害と見ておられるのかどうか、その点なんです。
  12. 清井正

    説明員清井正君) 只今の御質問に対して私から補足さして頂きたいと思います。いわゆる直接、間接と申しますが、直接なり間接というふうに分けますことが実は意識的に何か非常に差があるような感じを与えまして、私どもは努めて、直接、間接という言葉は向う説明をする場合には使つていないのであります。普通直接、間接と、こう言われておるわけでありますが、そこで福龍丸が受けた被害、船或いは船に積載したものの被害或いは乗組んでおられたかたがたの治療費なり或いは損害賠償というようなことは、これはまあいわゆる直接であまりす。その他の問題について、私ども考えておりますのは、いわゆる福龍丸船体とその乗組員治療費或いは慰藉料等関係のほかに、その次の問題といたしましては、福龍丸に積んであつた而もこちらへ持つて参りまして廃棄いたしました魚類並びにその後引続き国の施策によつて到着港において検査をいたしまして、一定ガイガ—カウントがあつたことによつて廃棄いたしましたところの、引続き起りました数多くの船は、丁度六月末までで百四十九隻となつております。又最近もときたま新聞に出ておりますが、ああいうふうにこちらに到着いたして国で検査をいたしまして、そうして廃棄を命ぜられた当該船に対しましては、全部私どもはいわゆる直接損害ということで以てはつきり要求しておりますし、向うもその点は認めておるように考えております。その内容といたしましては、直接の魚の廃棄したものの価格或いはその廃棄に要した費用、或いは一部のものは売つておるものもありますから、それが非常に値下りしておる場合におきましては、それの値下り損、そういうような一切のこれに要しましたところの費用、或いは得べがりし利益というものを計算いたしまして、これは私どもも直接損害ということで先方交渉いたしておりますし、先方もその点につきましては若干の異論があつたようでありますけれども只今では私どもの聞いておるところではそれは当然賠償の範囲に入るものだということで考えてよろしいのじやないかというふうに考えております。
  13. 楠見義男

    ○楠見義男君 くどいようですが、もう一度念を押してお伺いしたいのですが、最近もどんどん或る一定の数以上のカウントが数えられて、そして廃棄を命じておるというものは直接損害として日本側も認める、向う側も認めておる、こういうふうに理解してようございますか。
  14. 清井正

    説明員清井正君) 私はそういうふうに考えております。
  15. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると損害賠償要求をする場合に、こうやつて毎日々々続けて出て来ておるんだから、賠償額というものは要求する場合にはどういうふうになるのでしようか。
  16. 清井正

    説明員清井正君) この点は、中川局長が来ておりますからそのほうからお答えしたほうがいいかと思いますが、確かにだんだんと時日の経過と共に起つて参りますので、一定の時間的な価格の開きというものがあるわけであります。すでに私どもが当初計算をしたときよりもどんどん殖えておりまして、その都度追加の金額計算いたしまして、外務省を通じて先方に出したわけであります。そこで、この問題の進捗と共に、そういう事件が起つて参りまして、そのことが私どものほうで正式に集計できますれば、逐次追加いたしているわけでありますが、その問題をどの程度で打切るというのか、或いはどの程度金額まで見て行くかということにつきましては、今後の賠償の問題の期日の問題、或いはそれに関する計数の技術の問題にいろいろ関連すると思いますので、その点ははつきり申上げられませんが、私どもとしてはその都度計算をいたしまして外務省連絡をとつておる、こういう状況であります。
  17. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 今外務省中川アジア局長見えましたので、最初外務省から御説明を聞くということでありましたのですから、ここで……。
  18. 千田正

    千田正君 外務省の代表として来られているのですが、今までの様子を見るというと、外務省はちつとも誠意を示しておらないと我々感ずるのですが、大丈夫大臣以外の人でそういう説明できますか、はつきりした態度で……。我々は今後この問題については十分国立場からも又国民立場からも我々としては要求しなければならないのだが、そういう点でそれに対して十分責任を持つてお答えできるかどうか、それをはつきりして頂きたい。
  19. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 安藤大臣は十一時までしかここにおられませんので、若し安藤大臣に御質問がおありでございましたら先にやつて頂きまして、そうして今の外務省からの説明を聞きたいと思います。そうしてその際に千田さんのおつしやつたようなことを更に確かめてあれします。
  20. 千田正

    千田正君 先般の委員会に私は欠席しておらなかつたのでありますが、前の国会のときに、安藤大臣から従来大臣の管掌しておられる立場における御説明があつたわけであります。その後の進捗状態も先般の委員会で承わつておりますが、この間接と言わず、直接と言わず、当方において過失のない者が今度のビキニのいわゆる水爆実験によつてこうむつ被害賠償対象とみなすかどうか、この点はどういうふうに安藤大臣はお考えになつておられますか。
  21. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 日本としてですか。
  22. 千田正

    千田正君 そうです。
  23. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 日本としては、今清井長官から言われたように、この場合直接、間接ということは、福龍丸船体があんなふうになり、それから患者が出たと、その治療とか、或いは慰藉料であるとか、或いは直接にまぐろ廃棄したとか、これはまあ直接の損害でありますが、誰が考えつて直接なんだが、それ以後出たもの、その他等についても、日本としては直接とか間接とかということは言わないで向うにすつかり提出をしてあるのであります。ですから日本立場としては、直接、間接という区別はつけないで要求してあり、又アメリカとしても、そういうことよりはこれに対して向うの又判断によつて賠償をしようという態度考えられておるのです。
  24. 千田正

    千田正君 勿論これは私が言うまでもなく、国際法上から言いましても、独立国国民が公海において何ら過失なくして被害をこうむつた場合は、当然これは賠償対象になることは、私が言うまでもなく大臣はよく御存じのことと思いますから、直接とか間接とか言わずに、日本側が請求していることは妥当だと我々も考えます。併しながらそれに対する答えが遅々として進まないというのは一体那辺にあるのかということを私は伺いたいのであります。どういうために今日に至つてはつきりした当方からの要求に対する十分なるお答えが出ないのか、何かそこに原因があるのですか。
  25. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それは何だろうと思うのであります、今外務省中川局長が来ましたから細かい点はそつちから聞いてもらうほうがいいと思いますが、見解がやや違つているのじやないかと思うのです。私の考えでは、日本としては直接、間接と言わず、これからこうむつ損害賠償をしてもらいたい、こういう態度でいるのですし、アメリカとしては、まあそれを観念的に分けて、そうして適当に賠償しようといつたよう立場ではないかと推測するのであります。併しそれは直接交渉に当つている外務省のほうでお聞き願つたほうが適当と思います。
  26. 千田正

    千田正君 そこで私はこの際はつきりして頂きたいのは、曾つて外務大臣予算委員会において私の質問に対して答えたことは、ビキニ環礁におけるところの水爆実験に対しては、日本側はいわゆる自由国家群一員として当然これに協力しなければならない、であるから止むを得ないが、我々としては、日本外務大臣立場からいうと、当然アメリカ実験に対しては協力する、これを一応言うております。その面において実際の被害に対する賠償という面にその問題がからんで来るとするならば、どの面において日本が協力するのかということに限界点が当然置かれて来る。そこで日本側が仮に損害賠償額が不足であつた場合においては、日本国家のうちにおいて罹災民或いはその他の被害者に対して国がそれをやる、政府が当然それに協力の立場においてそうした被害者に対しての方法を講ずるという意思を政府が持つているのかどうか。これは大臣政府のいわゆる要路の一員として勿論閣議にも参画しておられるでしようが、その根本方針はつきりしない限りにおいては、いわゆる直接であるとか間接であるとかという論議を闘わす前に、アメリカ側において当方要求額に対して十分でない場合においては、国内において十分にそれに対する政策考えて実行に移すということをはつきりすべきであると思いますが、そういう問題については閣議において或いはあなたがたの考えにおいてどういうふうに考えておられますか。この点をこの際又はつきりして頂きたいと思います。
  27. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 私としてはアメリカに対して十分なる賠償をさせたいということを考えてその方針を持つているのであります。併しながら今お話のように、アメリカ賠償額日本考えているところに達しないという場合、不満の場合においては何らか国内措置をしてでも当業者の危急を救い、且つ又、水産業界の今後の維持発展のために努力しなければなるまいと考えております。併しながら、今賠償についてアメリカ日米交渉の過程にあるのですから、それがきまらないうちに国内措置に取りかかるという段階になつてはおりません。アメリカのほうの措置がきまつたときにおいて不満であれば何らかそういうような措置を講じたいと考えております。
  28. 楠見義男

    ○楠見義男君 今のその点は明らかにお聞かせ置きを頂きたいと思うのであります。この前の委員会の際にも、日本側が例えば賠償措置というようなことをやれば、或いは又それに代るようなことをやれば、折角アメリカ側に対して賠償要求をしておるのに、向うはそれを口実にして賠償を渋るというようなこともあつて交渉上まずいのだと、これはそういうこともあろうかと思うのです。ただ日本側として、政府としてアメリカ賠償要求するというのは、それだけの賠償すべき筋合いのものだとして、国際交渉に移して要求をするのであるし、従つて日本政府としては当然それは被害漁民は勿論、関係業者に対しては賠償すべきものであると、こういうことが基礎になつて交渉であるわけなんですから、従つて千田さんからお話がありましたように、これは随分御苦労をせられると思いますけれども、その結果アメリカ側が我々の要望するがごとく、日本政府要求するがごとくしないという場合には、当然これは政府アメリカに代つて政府として賠償をすべきものだと、こう観念するのが筋だと思うのです。これは今の安藤さんのお気持もそういうお気持だと思いますが、もう一度その点をはつきりと観念を私どもしておきたいと思いますから、重ねて恐縮ですが、この点をお聞かせ頂きたい。
  29. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) その国内措置の問題を今ここで政府として明言するというのは、まだその段取りに行つていないと思うのです。アメリカとの交渉が結末がついた場合においては、そう考えなきやならんと思つております。
  30. 楠見義男

    ○楠見義男君 アメリカに対する賠償要求額についてはこの前もお尋ねしまして、これは交渉の途上にあることであるし、又いろいろの関係もあつて、その額は明示できないというお話がありまして、その点は一応私どもも諒としたわけなんですが、ただその問題に関連して、日本かつをまぐろ漁業者協会、それから日本かつをまぐろ漁業協同組合連合会から公式な書類として私ども手許に参つておるその書類の中に、原水爆事件によるまぐろ漁業者損害額として、福龍丸関係の直接の関係は除いて、三月十六日より六月三十日までの間の分として十九億二千八百四十四万五千円の損害額が提示されております。尤もこの中には事件対策処理費という、事件関係しての対策処理費が千二百万円計上されておりますが、それを除くと、例えば危険水域設定に伴う損害とか、或いは魚価低下による損害とか、漁獲物廃棄したまぐろ漁船損害とか、販売時期の遅延による損害とか、こういうような内訳で以て今申上げましたように、事件対策処理費千二百万円を含めて総額十九億二千八百四十四万五千円という、こういう数字が出ておる、これを政府側のほうでは認めるとか認めないとかいうようなことをお尋ねする意味ではありませんが、この程度損害というものは、政府のお考えになつておる損害と著しく違つておるかどうか、当らずといえども遠からずという程度損害であるのか、政府側でお考えになつておられる損害額と余り大した相違はないのかどうか、この程度のことはお伺いしてもいいのじやないかと思うのですが、どうでしよう。
  31. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 実はその数字の問題については明言しかねるのでありますが、併しこの問題は非常に重大な問題でありまするし、それから又委員会としましても非常に熱心にしばしば御質問でありますから、私はまあその概略のようなことをちよつと申上げておきます。大体こちらで、政府としてきめてある……、きめたということは、すべての厳格なる調査をして決定しておりまする損害数字と、只今示しなつた当業者から提出した数字とは、余り相違しておりません。まあそれだけのことでお許しを願いたい。
  32. 楠見義男

    ○楠見義男君 実は私こういうことをお伺いするのは、先般もちよつと申上げたのですが……
  33. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 今のことは、その余り相違していないということは、つまり福龍丸船体の処分とか、或いは患者治療費とか、慰藉料とか、一切そういうことを含めて、その数字が当業者からの損失として計上した数字と余り違わない、むしろ少し上廻つておるというだけのことを申上げておきます。
  34. 楠見義男

    ○楠見義男君 実はお尋ねするのは、こういうことからなんです。今のアメリカに対する損害賠償要求しておられる、それから日本政府考え方は、今も安藤さんからお話になつたように、その結果を待つてやろうという、こういうことなんです。これが早くきまればいいのですが、国際交渉をやつて、この委員会で取上げてからでも相当になつておるわけであります。一方漁業者仕込資金にも困つて、随分、中には高利の金を借りておる業者も出て来たし、或いは操業を中止するというような業者も出て来ておる。そこでかつをまぐろ関係については、これは輸出関係からいつても三千万ドルの輸出をしておる。政府は今輸出奨励ということを盛んに国策として謳つておられる。それから全体の漁業から言えば、昨年は二百十億円も漁獲がある。こういう重要なる産業が仕込資金にも困つておる。又中には高利のものも出て来ておる。そこで政府対策が、賠償を含めて遅れておること自体が、非常に業界に迷惑をかけておるというだけじやなしに、国民経済観点からいつても、我々は重要な問題だと考えておるわけであります。そこでそういう仕込資金政府は何らかの措置によつて講じて上げるべきじやないか、例えば資金融通斡旋等考えて上げるべきじやないかというのに対して、先般は静岡県と神奈川県に一億二千万円程度の融資の枠が決定した。これは現実にその後業者の手に行つておるかどうか、これは県に責任を持たしてやつておるという御説明ですから、非常に心もとないものだと私は考えておる。併しその一億二千万円というものも、全体の損害から見て大体それをカバ—するような金額であるなら、こうやかましいことは言わない。ところが損害が二十億である場合、三十億である場合の一億二千万円と、損害が四億或いは五億の場合の一億二千万円とは非常に違う。我々はその観点から仕込資金の問題についても、政府に対して強く要望し、この委員会でもそれを具体的な問題として取上げてやつて参りたい。それにはその基礎になる数字というものが明らかでなければ、我々のやることも実は空廻りなつちやうことになり、又当を得ない、適当でない、ぴんとつぼに当るような適当な対策にならない虞れがある。そこで業界からこういう数字を言つて来ておる。併しこれはべらぼうに多い数字か少い数字か、私ども直接調査したわけではありませんからわからない。その私ども自体が、自身が直接調査をする資料としてこの前にも魚価の変動の係数カ—ブ、数字等を委員会でも要求したのですが、あれから十日くらいたつていますけれども、まだ私ども手許には水産庁から頂いておらない。だから調べようがないのです、私どもの手では。そこで現在の状態ではやつぱり政府側でこの損害額が大体このあたりかどうかということをお伺いして、それを基礎にして今度はこれからの仕込資金対策考えて行きたい、こういうことでありますから、その点を申上げておきたいと思います。
  35. 森崎隆

    森崎隆君 時間が余りないようですから、ちよつと国務大臣に対して、この問題は国務大臣が担当されておりますが、細かくは組織がどうなつておりますか。調査資料損害数字なんかはどこでやられておるのですか。
  36. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それは農林省、殊に水産庁でやつておるのであります。
  37. 森崎隆

    森崎隆君 それから対米交渉は。
  38. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) これは外務省
  39. 森崎隆

    森崎隆君 それでは水産庁のほうで出された資料数字等は、やつばり大臣が持たれるわけですか。それは閣議を経るわけですか。
  40. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 閣議にはその程度のことはかけません。
  41. 森崎隆

    森崎隆君 それで時間が十一時となつておりますけれども、もう十一時近いのですけれども、あと時間……。
  42. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  43. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 速記を始めて。
  44. 森崎隆

    森崎隆君 それでは国務大臣質問いたします。四月に質問いたしましたときに、福龍丸通信で直接損害並びにこれに近いものというようなお言葉もありましたが、清井長官からのお話では、直接、間接ということは一応考えていないというお話でございますが、その点は清井長官の申される通りでございますか。これが一点と、それから第二は、さつきも楠見さんからお話があつたので、一番これは大切な問題です。極端に例を出して申しますれば、あなたという親父さんのところに息子や孫も別居して家庭を持つておる。それが働けなくなつたわけです。そこでその損害を与えたアメリカに対して補償を出せというのでございますが、この交渉は相当時間もかかります。この間その息子なり孫の一家がどうして食うかという問題がある。そこで政府が融資をするとか、代替補償するとかいう問題が出て来るわけです。その問題につきまして、まだはつきりと政府方針としては言えないと申しまするが、もう六カ月たちました今日、それははつきり言えないということは、私非常に残念な問題だと思うのです。それでできましたら、明日までに、総理も東京におられるようでありますから、はつきりして頂きたい。これはまあ先の交渉は又半年とか、一カ年とかいろいろ相手もありますことですからかかる場合、その間漁民自体はどうして行くかという問題があると思います。融資を斡旋してもらつても親切は有難いのですが、これはやつぱり利子というものがある。これは利子は自分で払うかどうかという問題、これは根本原則としてきめて頂きたい。アメリカに対しての交渉は、大体数字はつきり言えなければ結構ですが、或る数字を以て、近い数字を以て交渉をして、これは何年かかつてもやつてみせる。それまでお前たち困るから取りあえず政府のほうとして必要のものだけは立替えてやろう、或いは融資を出してやろう、又アメリカのほうに交渉に支障を来たすならば何かの形で貸付金、何かの形で一応君たちが操業できるような準備はしてやろうというような基本的な構想なり態度というものは、当然政府においても立てられていなければならないはずです。それが今になつて大臣から、まだそれははつきりとしてはいないのだが、若しアメリカが支払わない場合には、これは政府として考えなければならんだろうという生ぬるい考えでは、今の段階では私は駄目だと思う。その点は今お答えができないとあれば仕方がないのですが、明日まで一つ総理にすぐ会つて頂いてはつきりして頂けませんか、どうですか。先ずこの一点あなたの御決意、その見通しについてお伺いしたい。
  45. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) もう少し突つ込んで話をしますと、アメリカ賠償額について大体見込を立てて来ておる。でありますから日本のほうとの考えがそこに一致をしますれば、むしろアメリカ賠償というものが余り遠からずに解決しようかと思うのです。併しながらそこにいろいろの難点等がありまして、今検討をしておる最中なんです。それでもう少しそれを突つ込んで又言いますと、これは私個人の方針になるかも知れませんが、私はアメリカの示されておる内示といつたような点では恐らくうまく行かないのじやないかと考えておる。即ち、私はそれに対して満足をいたしておらない。私としては、これは私個人ですよ、政府の意見じやないのですから、そこをよく誤解をして頂かないように願いたい。そこでそういうことで、そういう考えを持つてアメリカとの折衝を続けておるわけなんです。それで大体それでいいという方針がきまれば割合に早く解決すると思います。それじや不満足だからということになつて折衝を続けることにりますと、この解決が延びて長引くということになるのです。そうなつた場合には何らか国内措置を講じなければならない、こう実は考えておるわけなんです。
  46. 森崎隆

    森崎隆君 今のは大臣の個人のお言葉ですが、私はこれは大臣個人のお考えというものを早く政府のお考えにして頂きたい。と申しますのは、方針がきまればというのは、きまるのは何できまるかというと、あなた自身がきめるのでしよう。だから即座にきめればいい。今頃になつて方針がきまればどうだこうだという、今政府のほうでは対米交渉はうまく行くという見通しらしい。安藤国務相自身の考えはどうも危つかしい、そういう齟齬が今頃あるということはおかしい。ですから早く政府方針はつきりして、あなたの大臣としての、担当大臣としての意向、危つかしいぞということを閣議に持つてつて、そうして政府自体がそういう気持交渉して頂く。
  47. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) ちよつとあなたに伺いたいが、アメリカのほうとはうまく行かないと言つておるというのはどこで言つておるというのですか。
  48. 森崎隆

    森崎隆君 今大臣が申されました、少し私個人としてはどうも危つかしいということをあとから附加えられたのですが。
  49. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 政府としてはアメリカ交渉を継続中なんですよ。
  50. 森崎隆

    森崎隆君 それはわかる。
  51. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 併し私自身が考えると不満足なんです、一口に言うと。それで勿論私が不満足ということは、どうも同業者がそれじや不満足じやないかと察するのです。これは重大問題だから、根本的に検討しなきやなるまいと、こういうふうに思つておるわけなんです。事が大きいだけに軽率にきめるわけにも行かない。もう一つは、アメリカ責任があつてアメリカ責任において賠償要求しているんです。ですからその段階中に日本賠償をするとか何とかいうことは早計だろうと思う。であるから日米交渉の段階の最中においてまだ少しそれは早いんじやないか。つまり日米交渉をもつと円満にこちらが満足が行くように導いて行きたい、こういうところにあるんです。
  52. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 安藤大臣にちよつと申上げますが、ここで今、国務大臣としてビキニ被爆事件の主管大臣としていろいろお尋ねしておるんでありますけれども、ときどき全く個人的な御発言があるわけなんです。ところが聞いているほうは、私個人の考えと言われましても、やはり国務大臣としてのお考えとして承わつて質問したり、或いは外部にもそういうような感じを与えて非常に紛更を来たすんですね、だから一つ余り個人的の御発言でなく、主管大臣としての御発言をして頂かないと非常に楽観的な気分を一般に与えていかないんじやないかと思いますので、ちよつと御注意と言つては失礼ですが、是非国務大臣としての、政府全体の意見でなくてもいいけれども、少くとも国務大臣としての御意見を一つ述べて頂きたい、こう思います。
  53. 森崎隆

    森崎隆君 続きまして大臣にお尋ねいたしますが、お尋ねというよりも或いは意見かも知れませんが、対米交渉はすでに六カ月もたつているんですが、まだはつきりしない、一部だけしか解決しない、これはやはり国と国との交渉ですから、相当時間がかかると思う。今後も三日や十日や一カ月くらいですぐにはつきりするとは思えない。ですから又時期を急ぐために要求額を或る程度割引をして妥結するということは、全然我々としては迷惑千万です。ですからじつくり一年かかつても二年かかつても結構です。じつくり自分の主張を相手に認識せしめて重大な被害についての経済的その他の物心両面の補償を必ずとるようにして頂きたい。ただそれと関連して、現益直接被害を受けた漁業家全体としてはどうにもこうにもならない時期に立至つておる。ですから今から暫らく様子を見た上で、政府の代替補償を考えるべき時期じやないかということはもう二カ月、三カ月前に済んでいるはずです。ですからその点の問題をはつきりして頂きたい。もう一つは、対米交渉を一つのゼズチユア—として、日本が総補償額を幾ら、これをアメリカ要求するという態度はつきりして、取りあえず漁民は因つているからそれだけのものをすぐ漁民に代替補償をして背水の陣を布いてやるくらいのことは、却つて外交折衝にはプラスになつてもマイナスにならないと思う。その点は早急にきめてもらいたい。それが一つ、もう一つは、岡崎外務大臣のほうはあの実験には協力するということは正式に本会議で発言されました。この発言をされましたについては、内閣を代表しての発言でございますから、国務大臣がやはりああいう爆弾の実験には協力するという立場であろうと私は考えます。ところがこれにつきましては、具体的なものが当然あつての発言だと思う。例えば協力するがどの程度の協力か、日本人が若干死んでも、例えば五十名までは死んでもよろしいというのか、一名でも生命に危険を感じさせない範囲において協力するというのか、又協力した結果、日本国にいろいろ損害を与えた場合には、これは当然全額日本要求通りこれはアメリカから賠償してもらうのだというような基本的な打合せの上に立つて協力すると言つたのか、そういうような具体的な裏付けの基礎条件が固まらずして、それで国連に協力する建前から実験には協力する、いい加減な抽象的な言葉だけで、これは国民の福利を保護して行かなければならない政府としては非常に無責任だと思う。それで外務大臣の言われたあの協力というお言葉は、大臣もこれに勿論賛成でありましようが、その裏付けになるいろいろ基礎条件が確立しているのかどうか。どの限度まで協力するのか。今日のような悲惨な日本漁業界が破滅一歩手前にあるようなこともこれは止む得ないという意味の協力かどうか。これは基本問題としてはつきりお答えしてもらいたい。  それから大臣はもうすぐ御退席のようでございますから、あとの質問は明日に譲りますが、あと外務省、水産庁が来られておりますから、そのかたの御答弁は大臣責任を持たれるかということをはつきりして頂きたい。この二点について。
  54. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) ちよつとお答えしますが、外務大臣が協力と言つたことは、非常に細かい点を一々解剖してどうこうということじやなく、自由主義国家の共通政策として協力をするという大まかな話だと思います。併しながらどうもこの水爆の問題は世界的な問題になつて、非常に重大な問題になつて来たのですから、更にこれは根本的に検討しなければならないと思います。そこで先ほどもちよつとお答えしたが、あなたがおいでだつたかどうか、一番初めにお答えをしたのだが、今後アメリカがあの水爆の実験が必要なのか、もう必要でないのか、或いはするのかしないのか、これはわかりませんが、日本としましては、今後アメリカが或いは又水爆実験をやるというような場合には日本に、日本というよりは、世界の各国のほかの国の人類その他には被害の及ばない、殊に日本立場としては日本被害の及ばないところでやつてもらいたいということを要求をしたい。併しながらどうしても水爆はやるのだ、又ビキニが一番いいのだということになれば、今あなたが言われたように、被害日本に及ばないという厳重なる計画を立てて区域の設定その他厳重なことをしてやつてもらいたい。併しながらそれでも、そういうことをやつても万一にも日本の船であるとか、人であるとか、すべてのことに被害が及んだ場合には、すべての損害を十分に賠償をしてもらわなければならない、こういうことを申込んで約束をいたしたい、そういうことはアメリカに申込みたいと考えておる次第であります。
  55. 森崎隆

    森崎隆君 その問題についていま一つだけですが、大臣のお言葉はよくわかります。日本被害の及ばないような実験地域の設定ということ、これは要望なさるのですね。これは厳密に言いますと、私たちの常識から考えますと、言い換えたならば、太平洋水域その他では実験はしてくれるな、これはむしろしてくれるなという要望をしたほうが私は早いと思う。ところが被害を及ぼさないという条件を言つて協力するというのですが、若しあとから被害があつた場合には賠償をとるという言葉は言い換えたならば、先の言葉と抵触するわけですね。被害日本人に及ぼさないように実験をしてくれるというのだが、あつた場合ということになると、言い換えると被害はあつてもよろしい、そういう場所で実験しても仕方がないが、その代り賠償をよこせ、前の要望と矛盾するわけだ、その点は閣議で十分に皆さんがたと御相談なさつているのですか。
  56. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それはアメリカがまだ今後いつ実験するのかしないのか、又いつするのか、そういうことはわからないのですから、いよいよやるという場合には無論閣議で決定をして、政府方針としてやるわけなんです。その場合に細かい検討をしまして、どういう段取りでどういう範囲で要求するとかということは、そのときにいよいよそういうことをやろうとすることがわかつた場合に要求をしよう、こういうことなんですから、今私の言つたことは、仮定にそんなことを考えているというわけで、そういう方針でただアメリカ要求したい、こういうわけなんです。いずれそういうことがきまり、或いは前にわかつた場合にやりたい、併しその前に又……、今ちよつと言い忘れましたが、予告を先にしてもらいたいということは更にそれに附加えてやりたいというわけなんです。どうしてもあの区域で実験をするというならば、併しその前にそういう実験を要るか要らないか、やめてもらいたいというようなことも一つここで根本的に検討をして、日本としては態度をきめなければならないと思つている次第であります。
  57. 松澤兼人

    松澤兼人君 先ほど劈頭に安藤国務大臣がおつしやつたことは今の言葉でよくわかつたのですが、結局申入れをする場合にはいろいろこういうことも考えてというお話であつて委員会で今後あの近所で水爆、原爆の実験をやめるように申入れて欲しいということ、そういう意向はまだ閣議としても取上げていないし、いわんやアメリカに対して申入れはしていない、こういうわけですね。
  58. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) まだ閣議ではしてありません。それで今世界的大問題になつているこれが、今後どうなるかということはまだ確定はしていないと思います。アメリカにおいても……。アメリカがそういう方針を決定したという場合には当然日本でもこれは深く検討し、政府方針として確定して行かなければならんと思います。
  59. 松澤兼人

    松澤兼人君 それで先ほど大臣がおつしやつた技術的には海域の関係とか、或いは海流の関係であるとかいうようなことをいろいろ考えなければならないし、実験がなされるものか、或いは又いつなされるかということもよくわからない。それから政治的な立場から言えば、原水爆の実験をやるということを各国に通知するということも、これは困難であろうというようなこともこれは国務大臣個人としての御想像に過ぎないので、何らこれは政府態度としてアメリカからこういう話があつたということでもないと了解してよろしうございますか。
  60. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) アメリカからですか。
  61. 松澤兼人

    松澤兼人君 アメリカからそういう話があつたということではないわけですね。
  62. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) 今後の実験の場合のことについては無論アメリカから何もその話はありません。ただ日本政府としてそういうことを考えている。
  63. 松澤兼人

    松澤兼人君 それじや余りアメリカ立場ばかり考えていて、日本の、特に委員会で今後あの海域で原水爆の実験はやつてもらいたくないという、それは日本漁業界に対して非常に大きな影響もあるしするから成るべくやつてもらいたくないという、そういう申入れについて具体的な閣議の話合いということは全然なかつたというふうに了解しまして、それでは事前に実験を取りやめてもらいたいという申入れをなさるお考えがあるのかどうか、この点は如何ですか。
  64. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) それは今は実験と言いましても、今のところ二、三カ月の間によしんばアメリカがやるかやらないかわかりませんけれども、やることになつてもここ数カ月の間にはやらないと思うのですね。それでありますからそれに間に合うように当然それは閣議において検討をして決定をすることになるのです。
  65. 松澤兼人

    松澤兼人君 これを政治的に発表することの可否は別として、実験をやるという場合には勿論それは相当の準備期間が必要でありましようし、その間若し政府が誠意があり、又熱心に外交交渉等によつて実験があるかどうかということを若し察知すると申しますか、或いは情報を手に入れると申しますか、そういうことがあるとすれば、当然実験があるであろうということは想像されると思うのです。我々の考えていることはそういう情報がキャッチできたとかできないとかということを別にして、今後の問題として公海における漁業の安全というようなことを考えて、実験の取りやめを申入れしてもらいたいということがやはり国民としての希望だろうと思うのです。そういう点を考えれば今後数カ月やらないと思うという断定で、やらないのだから申入れする必要はないじやないかという結論になるわけですけれども、我々は今後数カ月の間実験があるかないかわかりませんけれども、あれだけの被害なり、或いは損害なりを受けた日本としましては、日本漁業を守つたり、或いは日本国民の身体を守つたりすることから考えて、あの水域では原水爆の実験を取りやめてもらいたいという申入れをしてもらいたいということが国民意向ではないか、こう思うわけです。委員会におきましてもやはりそういう趣旨で一応は政府立場なり意向なりを確かめて見たいという結論になつたのだと思うのです。そうしますと、早急にアメリカに対して原水爆の実験は取りやめてもらいたいという申入れをする御意思がないというふうに了解してもよろしうございますか。
  66. 安藤正純

    国務大臣安藤正純君) そうきめて下さることは少し早計ですね。今の段階においては水爆実験をやめてくれ、これは世界的な問題になつている。併しその結論は出ておらないわけなんです。日本としましても全然やめろということを申入れるまでには、政府においても、又いろいろ厳重な検討を経て、そうして申入れなければならない。だから申入れないと決して断定はしておりません。今のところはこれは重大な問題だから厳重に検討して行きたい、こういうわけなんです。
  67. 千田正

    千田正君 委員長から外務大臣出席を求めてありますか。
  68. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 求めてあります。
  69. 千田正

    千田正君 私は経過を聞く前に、根本をはつきりしてもらいたいと思いますから一言質問いたします。  先ほどからいろいろ各委員からの質問に対して安藤国務大臣は個人の立場、或いはあらゆる点において明確なる言を避けておるようであります。これは外務大臣でなければ或いはお答えできないかも知れないけれども、我々はしばしばこの委員会外務大臣出席要求しておるにもかかわらず出て来ない。これに対して今日外務当局は果して答えられるかどうか、根本方針について私お尋ねします。これははつきりしてもらわんというと、あなたがたから経過を聞いておつても何にもならんからはつきりしてもらいたいと思うのです。それは外務大臣は先般も本会議の席上、或いは予算委員会の席上でアメリカの原爆の実験に対しては協力する、こういうことを答えておる。この根本方針は防衛協定の拡大解釈であるかどうか、この点はどういうふうに考えますか。
  70. 中川融

    説明員中川融君) 外務大臣は原爆実験事件が起きました当初におきまして、日本としてはアメリカの原爆実験には協力するという趣旨のことを申述べました理由は、只今御指摘のありましたように、又安藤国務大臣から先ほど御説明がありましたように、日本の国際環境に置かれております地位、今の国際社会が共産陣営、自由主義陣営と二つに分れております際に、日本が自由主義陣営に属しておる、それは安保条約によつてはつきりしておるわけであります。そういう日本の置かれた国際的地位というもの、そういう大局的見地に立ちまして、元来ならば、若しそういうことが全然ないならば、このような危険な、例えば原爆実験というものはやめてもらいたいというような要求をするのが筋でありましようけれども、そのような国際的な大局的な見地ということを考えまして、でき得る限り、支障のない限り、今度のような日本の、いわば共同防衛に当つておる国がその世界的な冷い戦争と申しますか、そういう事態に有効に対処するために、新らしい兵器の実験等をするという場合にはできるだけこれに好意的な眼で以て見てやるべきであろう。勿論そのことは決して日本がそれによつて損害を受けることを承認するとか、甘受するとかいうことにはなりませんけれども、この実験そのものはできるだけこれを好意的に見てやろうじやないかという趣旨で申されたのであろうと存じます。又我々事務当局もそういう趣旨でそのことを解釈いたしております。
  71. 千田正

    千田正君 そこで重大な問題が今の結果を来たしておると思うのですが、今の話であるというと、まあ協力する、自由国家群の一つとして協力する、その間に生じた損害等に対して…点。じや協力するのはどういうことか、ただ声援するというだけじやなくして、そういう実験によつて生じたところの損害の一端をその国が背負うという意味を現わしておると我々は考えるのですが、ただ声援するというだけじやないと私は思いますが、その点はどうですか。
  72. 中川融

    説明員中川融君) 協力するというのは、飽くまでも原爆実験をするかしないかということについて、これをしないでもらいたいと言うか、或いはするけれども、それについてはこういうようないろいろ予防措置は当然考えてくれと言うか、そこの差異になると思うのであります。協力するからといつて損害日本が分担するというようなことは、決してそれからは出て来ないと考えております。
  73. 千田正

    千田正君 これは形を変えてアメリカ側から言いますれば、協力するという場合においてはそういう面を含んで日本が協力するという意味に向うは解釈するだろうと私は思う。こういうことは今度の損害に対しての要求、この面も甚だ我々は歯痒いのですが、この点を一点聞きたい。というのはビキニ損害に対するところの一切の対策本部の主管大臣只今までお見えなつ安藤国務大臣ですが、安藤国務大臣からの要求がなければ外交交渉をしないのか、それともそういうことなしに外務省は独自の立場で、いわゆる日本政府を代表して外交折衝に入るか、その限界はどういうふうに立てておるのですか。
  74. 中川融

    説明員中川融君) 原爆の問題が起きまして、政府においてはこれに関係する官庁が非常に多数に亙りますので、御承知のように内閣に臨時に原爆の損害対策打合会というものを作りまして、安藤国務大臣がその委員長となられまして、政府全部の施策方針というものを統一的にここで検討してきめて行こうということにしたわけでございます。賠償要求の問題もこの一環となるわけでありまして、従つてどのような方針、どのようなものをアメリカ側に提示するかというようなことは、全部この打合会におきまして検討いたしまして、その結果に基きまして現実のアメリカ政府との折衝の面を外務省が担当しておるということでございます。従つて外務省が単独にその内容まで勝手いろいろ考えまして、或いはそれを取捨選択して交渉しておるというものではございません。
  75. 森崎隆

    森崎隆君 今の千田委員の御質問に関連してお尋ねしたいのですが、外務大臣が原爆、水爆の実験に協力すると言われたことの意味は、あなたのほうで大体そうだろうということでお話があつたのでございますが、ただ問題はあの答弁をされました時期の問題です。これから実験をするというような予報があつたときに、それは反対と言つた場合に、いやこれは自由国家群の一環としてこれは協力するということなら、我々は勿論反対ですけれども、現政府としては止むを得んと思います。ところが実際は実験の結果非常に被害を受けた直後の答弁でございましよう。そうしたならば協力をするという言葉だけでは一国の外務大臣の答弁としたならば、これは非常に国民に対して無責任だと思う。協力するという言葉の背後には外交上のいろいろな発表も皆そうなんですが、いろいろ折衝いたしまして、こういう場合はどうする、又被害を受けた場合はどうするか、被害のスケールはどこまでを持つて行くか、若し直接、間接を分けるとするならば、直接はどこまで、間接の場合はどこまで、間接については何%というところまで、本当はそこまで折衝をして、そういう条件の上に立つて、それは例えば発表が遅れましたにいたしましても、その上で協力するということならまだわかる。又原則的には日本人には絶対に被害を与えないという条件の下に協力するというならわかるのですが、ですから時期の問題から考えますと、被害を受けた直後にああいうふうに協力という言葉を若し私がアメリカ側に立つてあれを聞いたならば非常に安心する、即ち無条件に協力するというようにこれはアメリカとしてとつてもいたし方ない。そういうふうに相手に無条件に協力をするといつたような取り方をされるようなあの発表は、私は一国の外務大臣としては無責任だ。従いまして外務大臣は今おられないのですが、そういう答弁を外務大臣にさせるのは事務当局として責任があると思う。その点についてもつとはつきりしたものはないのですね。
  76. 中川融

    説明員中川融君) その当時の外務大臣の協力云々という発言は、公式の文書等で勿論発表したものではありませんので、口頭の答弁の際の発言でありますので、その意を尽くしていないが故に各方面にいろいろな誤解を生じたということは遺憾と我々も考えますけれども併しその根本の趣意は先ほど申しましたように原爆実験をすることそれ自体を頭から拒否するか、それともこれを原則としては容認し、併し損害等については十全の策を講じてもらいたいという態度に出るか、その境目にいわばあつたわけでありまして、当時原爆実験の結果、これだけの被害を受けたということで、日本国内におきましては、このようなものは早速もう中止するように要求すべきであるという論もあつたわけでありますが、政府としてはその大局的見地から中止を要求するという態度には出ない。あらゆる、これは将来の災害を補償する、又今起きました第五福龍丸等の事件については、その損害補償をするということをアメリカ要求いたしまして、原爆実験そのものについては、これの中止を要求しない態度に出たわけでありまして、その際の、政府方針を決定する際の、いわば考え方として、今の協力という言葉が出たものと考えております。
  77. 千田正

    千田正君 それじやこれから経過を伺うことにしますが、今までの折衝の過程は、先ほどあなたがお答えになつたように、外務省としては、只今安藤国務大臣が主管しておるところの、いわゆるビキニ環礁水爆に関する被害に対する対策本部の意向に基いて、外務省が単なる、いわゆる事務折衝が、独自の立場じやないという立場において、これから御説明なさるわけですね。その点はつきりして私のほうは聞きたいと思う。
  78. 中川融

    説明員中川融君) そういう方針でやつておりますのが、従来の経過であります。なお、打合会というものも各省から成立つておりますので、外務省もそのうちの一員であります。殊に外交折衝をどのようにしてやつたらいいかということにつきましては、外務省がいわば直接の主務省でありますので、従つて打合会におきましても、その点につきましては、外務省側から相当いろいろの意見その他を出しまして、発言しておりまするから、勿論打合会というものが外務省から離れたというものではない。外務省もその一員でありますので、而も交渉につきましては責任のある一員でありますので、打合会の意向外務省意向とは一致しておる。実際の結果におきましては一致しておる次第であります。その点だけちよつと……。
  79. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと今御質問になつておる点なども、一応お話を聞いてから、これは外務省独自の意見で交渉したのか、或いは対策本部全体の意見であるかというような点は一応話を聞いてからやつたほうが適当だと思いますので、最初の予定のように一応外務省からの経過を聞きたいと思います。
  80. 千田正

    千田正君 それはやはり委員に諮つてつてもらいたい。
  81. 石村幸作

    石村幸作君 その前に一言お願いしたいのですが、対策本部の責任者である安藤国務大臣が来て、いろいろ答弁があり、説明もあつたのですが、今お話のあつた通り、その当面の主管省の、責任者である外務大臣及び農林大臣に明日は御出席つて、いろいろ質問に答えても頂きたいし、又お話もして頂きたい。特にこの休会中にもかかわらず、こうして委員会を開いて、皆さん熱心に検討しておるのですから、成るべく明日は両大臣に御出席を願つて責任のある、一つお話をして頂きたいと、特に要求したいと思います。
  82. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつとお諮りいたします。この問題については外務大臣出席要求して、いろいろ御説明を聞くはずになつて、本日やりましたところ、外務大臣は都合が悪いというので出席されませんですけれども、どうしてもこれは外務大臣から直接説明を聞かなければならない点がありますので、明日是非外務大臣出席してもらうように要求いたしたいと思いますから、さよう御承知願います。
  83. 楠見義男

    ○楠見義男君 農林大臣は……。
  84. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 明日は外務大臣と農林大臣安藤国務大臣と、それから外務省の係官、そういうように要求いたしたいと思います。
  85. 青山正一

    ○青山正一君 ちよつとそれに補足して……只今石村さんからお話通り、この各委員とも、これはアメリカ外務省との折衝ばかりじやなしに、国内的に何とか措置しなければならんというような意向が非常に強いものがありますからして、そういつた方面を勘案するときには、どうしてもやはり農林大臣出席が強く要望されるわけですからして、明日は必ず農林大臣においで願うということを、特に御要求願います。
  86. 小林孝平

    委員長小林孝平君) それでは只今から中川局長から賠償につきまして今まで折衝いたしました経過を聞きたいと思いますが、よろしうございますか。
  87. 中川融

    説明員中川融君) 今回のビキニの原爆事件が起きましてから、これは御承知のように三月中旬でございますが、この被害アメリカに補償を要求すべきであるということは、当然真先に考えられたことでございます。と同時に、アメリカ側におきましても、これにつきましては、その当時は第五福龍丸が主として問題になつてつたわけでありますが、第五福龍丸の船員の病院で治療する費用、或いは留守家族のかたがたの生活、こういうようなものにつきましては、できるだけ早く中間的にでも補償したい、この用意があるということをアリソン大使が声明したのであります。それに応じまして日本側としては、できるだけ早く損害数字を算定して、先方提出したいと思いまして、関係官庁が協力いたしまして急いだのでありますが、結局被害というものはどんどん殖えて来るということで、的確な数字というものを急速に締切るというわけに行かない事情がだんだん判明いたしまして、併しながら政府側考えとしては、とにかくこのビキニの原爆実験によつて日本側に生じた損害というものは、逐一アメリカ側に提示しアメリカ側から逐次これを補償してもらう、つまり損害というものを正直にあるだけのものを出して、それをその都度アメリカ側から補償してもらうというのが一番いい方法ではないかというふうにその当時は考えまして、その趣旨から先ず第五福龍丸関係のもの、それも全部ではありませんでしたが、病院の費用その他想像されるものを集めまして四月十日に資料先方提出いたしました。これを先方では早速ワシントンに送りまして、ワシントンでアメリカ政府及び原子力委員会等でこれを検討した次第であります。なおそれに引続きまして、逐次我がほうの損害額というものが、新らしいものが順次判明いたしまして、判明するごとにこれを一まとめにして先方に通達する、提示するという方法をとつて、これは最近にまで至つておるのであります。大体五、六回さようなものが出ておると記憶いたしております。なおそれでは現在で全部損害額の提示が終つたかということになりますと、これは現在でもなお放射能を持つたまぐろを積んだ船が帰つて来るということがときどき出て参りますので、まだ終局的には終つていないと言わざるを得ないのであります。これは今後もそういうものの資料がまとまり次第逐次提示して行くという方法をとりたいと思つております。これは我がほうからの損害額の提示でありますが、なおその損害額の中には日本側としては的確にこの際判定できないものも実はあるわけです。例えば第五福龍丸関係患者のかたの入院治療費というものは、毎月幾ら、こういう額がその月末に実は出て来るわけであります。従つてその金額は実は毎月変ります。同時に果して各人が今後何カ月継続して入院治療されるかということは想像以外に今のところ判定の方法はないのであります。そのような不確定な点がございますが、大体これを大ざつぱにこの程度なら大丈夫じやないかと思う程度の推算をいたしまして、こういう種類の不確定の分については取りあえず提示してあるわけでございます。  次にこの日本側から提示いたしました損害額に対します先方態度でありますが、これはアメリカ側でもこの問題につきましては、非常にその当時三月、四月の頃におきましては、日本側からの新聞報道その他がアメリカ側、受取ります側から見ますと、少し不必要にアラ—ミングな報道ではないのかというような誤解を持つていたようであります。従つて初めにおきましては、相当この日本側から提示しました額についても、これはアメリカ政府部内のことでありますが、いろいろの意見があつたようであります。ちよつと暫時速記を、少しの間ですがおとめ頂きまして……。
  88. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  89. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 速記を始めて。
  90. 中川融

    説明員中川融君) こういうことでアメリカ側はこの問題について大局的見地から取扱いたいという考えはあるのでありますが、併しまた日本側の提示いたしました損害額全部についてこれを考慮しようというところまでは今のところ来ていない状態であります。アメリカとの補償問題の交渉がこの事件が始まりまして、殊に最初数字を提示いたしました四月の当初から見まして、約三カ月になつておるにかかわらず未だに結末を見ないのは、根本的にはさようなところに彼我の見解と申しますか、考え方の相違が依然としてあるということがこの原因になつておるのであります。  なお然らば今後政府がどういう方針でこれに対処して行くかということになります。これは安藤国務大臣も非常にデリケートな表現ではございますが申されましたように、政府としては目下慎重に検討中であるという状況でございます。簡単でございますが経過報告を終ります。
  91. 千田正

    千田正君 今の中川局長説明の中には、アメリカ側立場を話しておられますが、いわゆる間接損害と申しますか、魚価の値下り、併しその原因たるや大部分は当然いわゆるビキニの水爆によるところの被害が原因をなしておるのであつて、これはやはり国際法上からいつても当然請求できるものと我々は思考するのですが、外務省の見解としてはどういうふうに考えられますか。
  92. 中川融

    説明員中川融君) このような事案につきましての勿論国際法上の法規と申しますか、はつきりきまりました準則というものはないわけでありまして、結局これは慣習ということによるほかは、若し何か準拠しようとすれば慣習というものが一つのよりどころになるわけでございますが、従来の国家間の補償の先例等は先ほどアメリカ側が申しましたように間接的な損害というものについては補償していないのが従来の例であります、従いまして純法律論的といいますか、或いは国家間の慣例ということから申しますれば、この問題についてはアメリカ側の言い分も相当理があるのではないかというふうに考えられますが、併し何と申しましてもビキニの原爆実験というものは非常にいわば今までのいろいろの事案とは或る意味で違つた一つの新らしい事件である、新らしい種類の事件であるとも見られるのでありまして、その及ぼす損害というものも非常に広範囲に亙るものでありますし、且つ又正直のところ原爆実験というものがどのような被害を一体及ぼすものであるかということについては、例えば海水の汚染の問題であるとか、或いは魚その他の海におります生物の汚染の問題であるとかという点につきましては、はつきり調査の結論もまだ出ていない状況でありまして、これについてはやはり一種の政治論といたしましては、間接損害についても或る程度の考慮をすべしという論も成立つのではなかろうかと考えております。この点を余り突き詰めることは如何かと思いまして、今のところはそれ以上の結論は出しておりません。これらの原爆実験というものの正確な損害の実体というものは、結局この間の俊鶻丸の調査その他或いは今後更に放射能が人体にどの程度被害を及ぼすものであるかというような点につきましての調査ということをやはり待たなければ結論は出し得ないのではないか、これは私個人の見解でありますがさように考えております。
  93. 千田正

    千田正君 そこが問題でありましてあなたがたのほうではどうも我々から見ると余り請求したくなさそうであるが、実際からいうと直接損害より以上に間接損害によつて操業不可能になる、魚価の値下り等によつて操業できないというようなことが又広範囲に亙つて被害になつておる。これが実際において賠償なり、或いはアメリカ側から何らかの施策を講じないとするならば、国内的に施策を講じなかつたならば、及ぼすところの影響は非常に大きい。この観点に立つて外務省としては当然私は請求してよろしいと思う。その点も聞きたいし、この点については私は水産庁長官にも伺いたいのですが、どうも今まで荏苒としてこうした面の施策が行われておらない。外交に対しては外務省が主管官庁としてやつておるが、国内対策は水産庁が主体でありますからここが主体になつてやるということになつておるのですが、その点はどうなんですか。
  94. 清井正

    説明員清井正君) 只今質問がありました点でございますが、国内対策としてはそれぞれの所管官庁で行うわけでありますが、当然私どもといたしましては水産の仕事をお預りしておりますから、水産関係、殊に水産業者損害に対しましてはできるだけの対策を講じなければならないのであります。御指摘の通り実は損害賠償の問題が片付いておりませんので、関係業者が非常な迷惑をこうむつておることにつきましては、実は私ども甚だ残念に考えておるのであります。今までにおきましてもいろいろ対策を立てたいということでいろいろ実は部内におきましては考えていたのでありますけれども、誠に申訳ないことでありますが、未だ的確なる施策というものを持ち得ないことを甚だ実は申訳ないと思つておるのであります。  先ほどもお話がありましたが、実は予算において一部の内払的な施策を講じたことは御承知通りでありますが、なおその他一般の業界損害に対しまして、とにかく賠償の問題が延びるならその延びる間を荏苒待つておれないから、その間に適当なる施策をやれ、こういう御要望があるわけであります。  そこで私ども先ず融資をしたらどうかということでいろいろ相談をいたしたのでありますが、これ又非常に時間を要しまして、而もその結果は僅か静岡、神奈川の両県に対しまして政府資金運用部資金を県に融通する、県においてこれを関係業者に融資するということで案を立ててやつと今措置したのであります。これ又金額も僅かでありますが、方法につきましても業界からも不満があるのであります。そういうことで私どもも実はいろいろ考えましたが、なかなか策が立たず、僅かにそれをやりましたののみで、甚だ残念でございますが、私といたしましては賠償の問題と睨み合せて、これが長引くことによつて起る、又起りつつある業界の損失というものと睨み合せまして、何かまだ賠償にかかるまでの間でも繋ぎをしたいという考えでおるのであります。残念ながら今までのところはそう思つたようなことができないというので非常に残念に思つておりますが、今後も折角勉強してやつて参りたいと考えております。
  95. 千田正

    千田正君 そうした国内対策の決定権は安藤国務大臣の主管の下において行われる対策本部が指導権を持つておるのでありますか。
  96. 清井正

    説明員清井正君) 指導権と申しますか、正確な意味の指導権ということに解釈できるかどうかわかりませんが、私どもこの問題に関連して起ります諸般の問題についていろいろの角度から検討、打合せ等をいたしておりますので、こういうような問題も打合会において出るのであります。只今申上げました極く僅かの金額でありますが、融資の問題も実は打合会において問題として取上げられまして実現を見たのでありますが、要するにこれは打合会の主管と申しますか何と申しますか、各省と打合会とは緊密な連絡をとつて打合会の意思を以て各省においてこれを実施するということで進めて参りたいと考えております。
  97. 千田正

    千田正君 もう一つ我々が腑に落ちないのは、外務当局に聞くのですが、どうも外務省従来の行き方は常に秘密外交であつて、先ほどの安藤国務大臣外務省を通じての交渉に対しての金額も明確に言わない、向う側からのサジエツシヨンに対しても十分なことを言わない、これは国民に知らせて却つて不利になるという根性もあるかも知らんが、一体どの程度まで行つたアメリカがこの問題に対して支払う意思があるのか、その点の目安はすでについてもいいのじやないかと私は思うのですが、一体あなたたちが請求している金額と、その支払ということ、向うが一応これくらいの分だけは政治的にも支払わなくちやならないということは少くともサジエツシヨンがあるだろうと思うのですが、その点に対することは表明できないのですか。
  98. 中川融

    説明員中川融君) 交渉中の事柄につきまして、殊に数字に関連するような点についていろいろ発表といいますか、新聞等に出ますと、やはり双方の政府立場というものを非常に工合の悪いものにするという虞れがある、又そういう事態からまとまるべき交渉が却つてまとまらなくなるということもあり得るのであつて、我々としては交渉が或る程度めどのつくまでは、この内容については新聞等に出ないようにするのが必要なことじやないかと思つております。併し大体の考え方がどういう点に相違があるかということはすでにお話しいたしております。さようなことから先方態度というものも大体御推察願えると思うのでありますが、更にそれ以上のことはやはり御遠慮させて頂きたいと思います。
  99. 千田正

    千田正君 大体何カ月待つたら一体向うの表明ができるのですか。もう今日すでに百日以上経過して未だにそういう表明さえもできない、サジエツシヨンもできない。而も毎日々々何らかの報告があるだろう、或いは国内的に対策があるだろうといつて出漁ができないで苦しんでおる漁民の声を聞いたらそんな荏苒として待つているはずはないと思う。大体いつ頃ならばそういう目安がつくのか。それによつて金を借りられるものは借りても仕込をして出て行くものは出て行かなければならない。或いは十月になるか、今年の暮になるか、来年になるかわからない、そういうあいまいな態度で水産業者は荏苒として待つておるわけに行かないのでありまして、大体いつ頃ならば目安がつくのか。そういう大体予想ができないのですか
  100. 中川融

    説明員中川融君) 御指摘の点誠に御尤もであります。我々としては勿論できるだけ早く、もうすでに実は当然解決していなければならない時期であるということも十分承知しておるのであります。併し、やはり何とかできるだけよい条件で解決したいと思つております関係上、どうしても遅れて来ておるわけであります。勿論業者のかたがた、関係者のかたがたのいろいろお困りの様子ということも十分承知しておりますので、できるだけ早い機会にできるだけよい条件で解決したいと思つておるのでありますが、それでは何カ月たつたらということになりますと、これはやはりその条件がいろいろありますので、只今何カ月という、一月とか二月とかいうふうにはつきり申上げることができないのは甚だ遺憾でございます。
  101. 千田正

    千田正君 どうもお答えを聞くというといつになるかわからん。結論はいつになるかわからん。それでは御意思だけはわかつておるけれども、結果がいつ出て来るかわからない。同じことなんですがね。それで、我々として特に外務省交渉してもらいたいのは、それならば段階をつけてもいいから、これとこれの条件だけはもう今日でも困るのだと、これとこれはいつまでにやつてもらいたい、そういう折衝ぐらいは独立国の面目にかけてやれるはずだし、やらなくちやならないと私は思う。それぐらいの決意を持つてもらいたいのですが、そういうこともできないならば、一切これはもう闇の中でダイヤモンドを探すようなもんで、どこにあるのかわかりやしない。一体そういう見当さえもつかないのですか。
  102. 中川融

    説明員中川融君) アメリカとの間に一応今片付け得るものを片付けて行く。それ以外の片付けるのがむずかしい問題はあとに残すということも確かに一つの方法考えるのであります。当初我々の考えておりましたことは先ほどの説明の中で触れておりましたが、順次に支払つてもらうということを最初考えたのであります。それに対してアメリカ側はやはりこういう非常に双方の感情のわだかまりとなるような案件は、一挙に解決して行つてあとに尾を引かないようにしたい。一括して支払いたい。一度に支払いたいという向う方針であることがわかつたのであります。それに対してこちらもやはり諸般の情勢を考えますと、結局そのほうが大局的に見て有利じやなかろうか。その意味は、つまり片付くものは要するに向うとしても異論のないものが最初に片付き得るのであります。それを片付けてしまうとあとの分についてはこの解決ということが非常に遅れる、或いは向う気持から言えば相当気持が楽になると申しますか、従つて解決が非常に長引くということを覚悟しなければならん。むしろやはり一括して一度に片付けるというやり方のほうが、結局日本側にとつて有利じやなかろうかというふうに考えまして、今その方法で行つておるわけでございます。勿論これが余り長引くということになれば、更に又別の方法考えなければならないかとも思いますが、只今のところはその方法のほうがむしろ日本側にとつても利益じやなかろうかと考えております。
  103. 森崎隆

    森崎隆君 今の、秘密折衝をやつておるというわけですね。数字はすでに要求の額が出ておるのですけれども国民には発表できないと、私たちは素人考えでどうもわからないのですが、こういう問題はやはり数字はつきり国民に知らせて、相手に正式にやはり要求をすべき問題だと思いますので、正式に書面を以てアメリカ要求したことがあるのですか、ないのですか。この点を先に……。
  104. 中川融

    説明員中川融君) 先方に対する我がほうの数字の提起ということはこれは勿論書いたもので出ておるわけでございます。なお的確な数字等を発表したほうがいいんじやないかというお考えもこれは御尤もと思います。又余り交渉が長引くというようなことになれば双方の立場はつきりさせる意味でさようなことも或いは考えなければならんかとも思いますが、今のところはできるだけ早く円満な解決を図りたいということで進んでおりますので、やはりその交渉の内容、数字的なことについては暫らくは伏せておいて、双方の政府が困らないようにしておいたほうがいいんじやないか。つまり何らかの数字に到達する場合に、やはり前の数字はこうであつたが今度はこうだというようなことを先方の身になつて考えて見ますと、いろいろ向うとしてもやりにくい点があろうかと思います。
  105. 森崎隆

    森崎隆君 数字を正式にはつきり書いて書面で要求をしたということは、日本政府アメリカ合衆国の政府に対して正式に賠償要求をしたということになるんですね。そのときの条件としまして、但しこの数字日本国民には当分知らさないから秘密にしておいて下さいという条項を入れてあるのですか。
  106. 中川融

    説明員中川融君) 交渉の性質でありますが、これは先ほどこれが果して国際法上正式の法律的要求として成立ち得るかどうかというような問題についての議論も出たのでありますが、これは新らしい事態というようなことから、これを法律的な要求としていわゆる正式の損害賠償として要求するということは内容の意味から的確でないというように我々として判断しております。そうかといつてその内容を例えば二つに分けまして、正式の要求と、そうでない政治的な要求、法律上の要求と政治的な要求というようなものに分けますとこれも又よろしくない。殊に日本アメリカとの関係でありますから、その点は全部を政治的な問題として片付けたいというふうに考えております。従つてその交渉と申しますか、その交渉のやり方につきましても法律上の権利としてこれだけのものを損害賠償すべしというようなやり方はとつていないのでありまして、これは日米間の政治的な話合いといいますか、交渉というふうな角度から取上げて行きたいと思います。
  107. 森崎隆

    森崎隆君 それではなかなか解決しないで延びるでしよう。ですから私はやはりはつきりと数字国民に知らせるし、書面で出して何年何月何日までに御回答を頂きたいという期限を付してはつきりやはり出して、交渉はおおらかにしていいと思う。両国の政府が困るといけないから秘密で折衝をするというのですが、困るというのはどんなことなんですか。例えば日本は幾らの金を出してくれと、アメリカでは幾らにしてくれと値切つて来る。そこで二〇%なり三〇%値切られた。値切られたが結局発表のときは話合いによつて両国政府が発表して、日本政府はこれだけ要求したが、アメリカは全面的に受入れたという、両方に傷がつかないようにするというやり方でしているのか、或いは又将来アメリカがこれを値切られた場合に、日本はこれだけの額を強く請求いたしましたが、アメリカからは二〇%……、いろいろ難癖をつけられまして結局賠償はこのようにきまつて、これを呑まざるを得ない段階になりましたという発表をするつもりなんですか。その点が一点と、政府として困るというのは、例えば軍事関係の武器の貸与なんかで以ていやがらせをされるから、この点で何とか頼み込んで、成るべく多数の額をとつて、円満に他の問題を刺激しないというような、そういうふうな政治的な含みがあるのか。必要ならば速記をとめてもつと打割つた話をしてもらいたい、その点はどうなのですか。困るという内容を聞きたい。
  108. 中川融

    説明員中川融君) ちよつと速記をおとめ願いたいと思います。
  109. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 速記をとめて。    〔速記中止]
  110. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 速記を始めて。
  111. 中川融

    説明員中川融君) 只今のところ、いつ頃からというところまで考えておりませんが、今暫らくこのやり方を継続して見たいというふうに考えております。
  112. 千田正

    千田正君 これは中川局長にお願いするのですが、早く大体目安をつけてもらいたい。それによつて、あなたがたのほうがはつきりしないとすれば、国内対策というのを荏苒として延ばすわけに行かない。それで国内の面からやらなくちやならない。農林省なり或いは厚生省なりというものに対して又別個の立場で我々委員会としましては、あなたがたどうしてもやらないとするならばこれは議員立法なりして苦しい漁民を救わなければならんですからそういう目安を早くつけて頂きたい。これは特に私大臣が明日出席するならばその肚をきめてこの委員会に出て頂きたいということをあなたから大臣によく申添えて頂きたいと思います。
  113. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  114. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 速記を始めて。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十六分散会