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1954-07-07 第19回国会 参議院 水産委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年七月七日(水曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————   委員長補欠 六月三日森崎隆委員長辞任につき、 その補欠として小林孝平君を議長にお いて委員長に指名した。   委員の異動 六月三日委員森八三一君及び木下源吾辞任につき、その補欠として北勝太 郎君及び小林孝平君を議長において指 名した。 六月十五日委員北勝太郎君及び菊田七 平君辞任につき、その補欠として島村 軍次君及び苫米地義三君を議長におい て指名した。 七月六日委員秋山俊一郎君、野田俊作 君及び島村軍次辞任につき、その補 欠として松岡平市君、赤木正雄君及び 楠見義男君を議長において指名した。 七月七日委員森崎隆君及び片岡文重辞任につき、その補欠として海野三朗 君及び松澤兼人君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 孝平君    委員            青山 正一君            松岡 平市君            赤木 正雄君            楠見 義男君            海野 三朗君            松澤 兼人君            苫米地義三君   委員外議員            島村 軍次君            羽仁 五郎君   国務大臣    国 務 大 臣 安藤 正純君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   参考人    調査団長水産庁    南海水産研究    所資源部長   矢部  博君    海上保安庁水路    部海上保安官  堀  定清君    運輸省気象研究    所運輸技官   杉浦 吉郎君    厚生省予防衛生   研究所厚生技官  河端 俊治君    三重大学講師  吉井 義一君    厚生省衛生試験    所厚生技官   浦久保五郎君    水産庁調査研究    部長      藤永 元作君    東京水産大学教    授       宇田 道隆君    運輸省気象研究    所員      三宅 泰雄君    水産庁南海区水    産研究所長   中村 広司君    東京水産大学教    授       佐々木忠義君    立教大学教授  田島 英三君   説明員    水産庁長官   清井  正君   —————————————   本日の会議に付した事件水産政策に関する調査の件  (俊鶻丸ビキニ海域調査に関する  件)   —————————————
  2. 小林孝平

    委員長小林孝平君) これより委員会を開会いたします。  本日は俊鶻丸ビキニ海域調査に関する件を議題に供します。  ビキニ水爆調査船としての俊鶴丸が全国民注視の下に五月十五日東京港を出航して以来、約五十日の長期亘つてビキニ環礁中心とした洋上八千海里をつぶさに調査されて、去る四日全員恙なく帰航されましたことはすでに皆さん承知通りであります。調査団無事調査を了えられましたことは私ども何よりのことと存じております。  この際お諮りいたしたいのでありますが、この調査に当られたかたがたの中から十二名のかたに只今出席を頂いておりますが御紹介いたします。向つて左から調査団団長水産庁南海水産研究所資源部長矢部博君、海上保安庁水路部海上保安官堀定清君、運輸省気象研究所運輸技官杉浦吉郎君、厚生省予防衛生研究所厚生技官河端俊治君、三重大学講師吉井義一君、厚生省衛生試験所厚生技官浦久保五郎君、以上は俊鶻丸に乗船されたかたがたであります。次は顧問団かたがたであります。水産庁調査研究部長藤永元作君、東京水産大学教授宇田道隆君、運輸省気象研究所員三宅泰雄君、水産庁南海水産研究所長中村広司君、東京水産大学教授佐々木忠義君、立教大学教授田島英三君、以上でございます。これらのかたがた参考人としてこれから御意見を承わりたいと存じますか、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  3. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 御異議ないと認めさよう決定いたしました。参考人かたがたに一言御挨拶申上げます。  御乗船のかたがたは極めて困難な状況の下において、而も長期亘つて調査に従事されまして誠に御苦労様でありました。任務を了えられまして無事お帰りになりましたことは御同慶に存します。又顧問かたがたには現地の調査報告に基いていろいろ御検討なさいまして、極めて御多忙でありましたことと存じます。本日は、お忙しいところを而も皆さん疲れの際にわざわさ本院へお越し願つて早速にもその調査の結果について御意見やらお話を承わることにいたしましたのですが、お疲れのところ大変恐縮に存じております。併しこのことは国民の一大関心事こ相成つておることでもあり、且つ又我が民族将来の存亡にもかかわつて来ないとも限らん事件でございます。又本委員会といたしましても、この水爆事件発生以来熱心に調査して参りました関係もありますので、皆さんの貴重なる調査の結果についてのお話を承わり、今後本件の対策に資したいと存じ、急遽本日委員皆さんのお集まりを願いまして委員会を開会いたすことした次第でございます。  何とぞ、御帰還早々資料等の整備についても時間的余裕もございませんでしようが、調査経過中心にしてそれぞれ調査部門について十分なる御意見をお述べ願いたいと存じます。  なお委員かたがたにお諮りいたしますが、参考人のかたもかなり多数でございますし、時間の都合もございますので、矢部君、堀君、杉浦君、河端君、吉井君および浦久保君にはそれぞれ発言時間を二十分以内、その他のかたがたにはそれぞれ十五分以内にお願いいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお参考人及び政府に対する質疑は参考人発言が全部終つてからにいたしたいと存じますが、如何でございましよう。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 御異議ないと認め、さよう取計らいます。  それでは先ず、団長矢部博君からご発言をお願いいたします。
  6. 矢部博

    参考人矢部博君) 調査経過概要を申上げます。  俊鶻丸は五月の十五日東京を出発いたしまして、途中ウエ—キ島で二回水を補給しまして、帰つて参りました。この間の私どもがやりました調査概要を述べますと、我々は先ず海水放射能状態を調べるために船をとめまして、深さ大体五百乃至八百メ—トルまでの海水を取りまして、その海水に含まれている放射能状態を船の中で調べました。次にプランクトンを取り、これは魚或いはほかの動物の餌になるものでございますが、このプランクトンを船の走つているときには海水ポンプで、或いはとまつているときには特別のプランクトン・ネットと申す網で取りまして、これを材料にしまして放射能程度を調べました。  次は稚魚網と申しまして、口径一メ—トル三十、長さが四メ—トル程度あります網を使いまして、百八十メ—トル程度の深さから表面までの稚魚及び比較的大きなプランクトンを取りまして、これを調査しました。次は全航海のうち九回、漁業者のやると同じような方法で実際にまぐろ或いはさめなどを取りまして、この魚に含まれている放射能、これはあとから担当者から細かく説明があると思いますが、体の表面、肉、内臓内臓などは更にたくさんの部分に分けて放射能程度を調べました。次は海流調査でありますが、これは航海中ずつとGEK或いはエクマンの流測計という特殊な機械を使いまして海流状態を調べました。そのほかに雨が降つた場合にはその雨を取りまして雨の中に含まれている放射能、それから航海中は船体を調べまして、その船体がどの程度放射能によつて侵されているかということは毎日調べました。それから船医がおりまして、船医乗組員及び調査員健康状態についてずつと調べて参りました。  以上概略でございますが、こういう方法によつて調べたことを毎日調査員の中で話合いまして、そしていろいろの意見が出ますが、これについては、意見は私ども水産庁に送らずに、その生のデ—タ水産庁のほうに毎日電報して参りました。そして帰つて参りましてその翌日に水産庁に我々調査員顧問団が集りまして、そしてこの調査の結果を報告合つて、一応の私どもの船の中でやつた仕事については報告いたしました。  今後はこの持つて来た厖大な資料を更に検討しまして、これは顧問団その他と一緒になつてこの仕事がまとまるように、水産庁のほうで計画されております。  以上でございます。
  7. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 次は堀定清書にお願いいたします。
  8. 堀定清

    参考人堀定清君) 私は主として海流及び水塊水塊と申しますのは水のかたまりでございますが、水塊化学的物理的性質調査、これは放射能に関するものは又別なかたがやられましたが、海流調査水塊性質調査、この二つを主な分担としてやつて参りました。  私たちが調査しました海域は、大ざつぱに申しまして北赤道海流赤道反流、南赤道海流、この三つの大きな流れが支配しております。問題の焦点でありますビキニは大体北緯十二度でございまして、これはほぼ北赤道海流中心に当つております。その位置を大体申上げますと、大体北緯十五度から北緯九度までの間、これが北赤道海流と認められます。それから九度から北緯三度、大体でございますが、その間に反流が認められます。それから三度以南、これは南赤道海流、それからその向は北赤道海流南赤道海流は西のほうに流れる、その間にあります赤道反流、これは東のほうに流れるのであります。その結果を大体今ここに図にして持つて参つたのでありますが、これをお廻ししたいと思います。実線で書いてありますのが流測計を以ちまして実際に測つた値であります。それから点線で書いてありますのが、実測ではないのでありますが、水温の分布とか、その他いろいろなほかの条件を睨み合せまして書きましたもので、その矢印の大きさは流速とは関係ございません。今申しました点は大体従来のこの附近の海況大差はないものと認められますが、ただ一つ北緯十五度以北におきましてかなり顕著な東向き流れが認められました。  それからこのほか各測点で水を取りましてその性質を調べたわけでありますが、その取りました水は表面の水、それから十メ—タ—、二十五メ—タ—、五十メ—タ—、メ—タ—、百五十メ—タ—、二百メ—タ—、三百メ—タ—、四百メ—タ—、五百、六百、八百この十二層に採水器を入れましてその各層の水を取りましてその塩分、それから普通栄養塩と言つておりますが、燐酸塩とか硅酸塩、硝酸塩、そういうものの定量分析をいたしました。それでその化学分析の結果は、一部まだ終つておりませんので、ここで申上げることはできませんが、水温について少し申上げますと、これも従来の海況と余り大差はないようでありまして、赤道反流の所で非常に温度が低くなつておる。それで大体二百メ—タ—から深い所は大体一様な水であります。温度の違いとかそういうものは殆んど全海域を通じてありません。これは従来通りであります。  以上で大体私の分担しました報告を終りたいと思います。
  9. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 次は杉浦吉郎君にお願いいたします。
  10. 杉浦吉郎

    参考人杉浦吉郎君) 私が分担いたしました仕事空気放射能、雨水の放射能、それと海水放射能を調べることでありました。  先ず順序といたしまして空気放射能について申上げますと、これは大体三十立方メ—タ—空気をふきましてこの中の塵埃を適当な装置に捕えましてその放射能を計りますと、最高十五カウント毎分という値が得られたほかは、大抵の場合放射能を認めることができませんでした。  次に雨の放射能につきまして、これは五月の二十二日、ウェ—キ島に着く二日前でございますが、この際僅かに〇・三ミリの雨につきまして一万七千四百カウント毎分一リットル当りという数字を得たのが最高でございまして、その後はたかだか五百カウント毎分一リットルという数学にとどまりまして、大部分のものが放射能は極めて微弱であるということがわかりました。  次に海水放射能について申上げますと、これは航路に当つて水面海水はできるだけ多数集めて詳細に海水汚染状況を調べることに努めました。又一方海の水面から二十メ—タ—、四十メ—タ—、五十メ—タ—、六十メ—タ—、七十五メ—タ—、メ—タ—、百五十メ—タ—、二百メ—タ—、三百メ—タ—、四百メ—タ—、五百メ—タ—、六百メ—タ—、八百メ—タ—、この各層につきましてこれはあらかじめ定めてあります測点について各層放射能を定量いたしました。その結果はいろいろの興味ある事実を発見したのでありますけれども、ここではその詳紹は省かせて頂きまして、我々が得ました数多くの測定の結果を整理しまして、大づかみ海水汚染状況はこうであろうと推定される結果だけをここで発表させて頂きます。その詳しい数字はすでに一、二の新聞紙上にも発表されておりますので御承知のかたもあるかと思いますけれども、ここではおよそその範囲を申上げます。  先ず北のほうではウェ—キ島の極く近く、およそ北緯十四度辺まで汚染範囲が拡がつておるかに見受けられます。それでおよそのその辺り放射能を申上げますと、五十カウント毎分一リットルという程度のものはウェ—キ島の極く近くまで達しております。それからこの五十カウント毎分数字が得られます範囲を下に下つて参りますと、これは大体北緯八度の辺まで下ることができます。それからビキニの東のほうを見ますと、これは我々の調査範囲であります。東経百七十三度の線まで検出することができました。それから西のほうでは、やはり我々の調査範囲であります東経百五十度の線まで検出することができました。ただ大ざつぱに申しまして、その形は、百六十度より西百五十度の範囲に亘りましては、只今申上げました五十カウント毎分汚染範囲が幾らか西に向つてつぼまつておるような状況であります。  それから更に放射能の強いと思われます部分をあらかじめ知るために、試みに三百カウント毎分リットル範囲を定めますと、これは大部分ビキニ西方およそ東経百六十五度から百五十度の範囲に亘つておりまして、勿論先ほどの五十カウント毎分範囲よりは狭い所に出て参ります。  併しながらその形は大体五十カウント毎分汚染範囲の形状と似ております。なおビキニの東方におきましてもこの三百カウント毎分程度汚染は認められまして、それはビキニ北寄りで、大体北緯十五度辺に汚染の個所が見付けられます。これは東経百七十三度の我々の調査範囲まで達しております。  この三百カウント毎分汚染海域内の状況をもう少し細かく申上げますと、この中ではかなり汚染の行程に差がございまして、その汚染の高い所と低い所が波型に現われて参つております。それで我々が得ました最高値は大体ビキニ西方にございましたが、一例を申上げますと、ビキニ西方およそ八十マイルの地点で深さ五十メ—タ—の所で五千七百八十カウント毎分という値が得られております。これは最高値ではありませんが、かなり高い放射能を示す一例として申上げておきます。  次に北緯八度より下りまして我々の調査範囲でありました南緯三度のあたりまでは殆んど海水放射能は検出されないと申上げてもよろしいかと思います。それから又北緯二十度から北、と申しましても我々の調査した所は、ウェ—キを出まして一度南下してそれから東京に帰るまでのほぼ一直線上のコ—スについてでありますけれども、このコ—スにつきましては、北緯二十度より北の部分では、小笠原の近海に至るまで水面放射能は検出されないと申上げていいと思います。  以上、我々の調査した海水汚染状大づかみに申上げることができると思います。
  11. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 次は河端俊治君にお願いいたします。
  12. 河端俊治

    参考人河端俊治君) 私どものやりました生物関係仕事概要を御説明申上げます。  私どものやりましたのは、先ほど団長から申されましたようにプランクトン、これは小型プランクトン稚魚網で以て漁獲いたします。大型プランクトン測定とそれから延繩でとれますまぐろその他の魚類につきましての測定と、ウェ—キあたりでは手釣をいたしまして、それによつて得られました魚獲物についての測定及び船上に夜になりますと飛込んで参ります飛魚につきましてやりました測定というふうに大別されます。  その測定仕事概要を申上げますと、先ず船上におきましては、普通言つておりますガィガ—カウンタ—という機械で以て魚の表面、鰓、内臓この部分サ—べをいたしました。それから私どもまぐろをとるときの条件は、普通の漁船と違いまして、本船の上で延繩を海の中に投入いたしまして、上げるときは約三トンくらいの小型漁艇と申すボ—トに乗りまして捲き上げてとるのであります。そのとれましたときにすぐ携帯用小型サ—ベ・メ—タ—で一応表面を検査いたします。とれましたものを本船上に運びまして更にサ—べをかけて、それから細かく各部分にとりまして精密測定のほうに移すというような仕事の手順で行われます。小型プランクトンのほうは非常にとれた量が少いので実際上分けませんで、全部測定のほうに廻しました。大型プランクトンのほうはできるだけ種類別に分けまして測定を行いました。魚のほうは、さめ類は殆んど私どもの能力的にもできませんものですから、筋肉肝臓ぐらいにとどめましたが、まぐろ類はできるだけ細かく測定いたすために背側筋肉腹側筋肉血合肉皮膚肝臓、胃の内容物それから腸、精巣、腎臓、骨、血液、そういうふうに分けまして放射能測定をいたしました。放射能測定試料を一グラム取りましてその湿つた状態ガイガ—カウンタ—にて測定することと、更にその測定が終りましたものを乾燥機にかけまして乾燥いたしまして測定するというふうにいたしました。私ども報告は両方書いてございますけれども、原則的には生の肉或いは臓器の一グラムを乾燥いたしましたときのカウント数で結果を現わしております。  その得られました結果を御説明申上げますと、プランクトンでは、只今説明がありました海水汚染状態に極めて似た関係がございます。特に大型プランクトンの中で、私どもがデ—タに載せましたのは矢虫という類のプランクトンでございますが、それについて見ますと、海水汚染状態に非常によく似ておりました。ただ海水汚染状態よりも非常に強く現われて来るというのが特徴であります。但しプランクトン種類によりまして著しい差がございます。併しいずれの種類でありましても、全体を通じて見ますと、海水汚染状態とよく一致した変化を示しております。海水汚染の高いときには当然プランクトン汚染も高いという結果を得られております。海水と比較いたしますと、一般的にプランクトン放射能の強さは同一数量の海水のそれよりも遥かに高いので、海水汚染の有力な指標となることができるであろうというふうに考えております。お魚について申上げますと、魚類汚染についての特徴は、次に申上げますことであります。  第一番目は、魚体放射能の強さの、私どもが八回漁撈をいたしましたが、その八回の場所別変化は、一部の例外を除きますと、大体プランクトン海水汚染に一致しております。  二番目は、同一の魚体放射能の強さは、器官によりまして著しい相違がございます。一番強い所は、胃腸の内容物及び胃袋のすぐ下のほうに房状になつている幽門垂という器官がついておりますが、その幽門垂肝臓を含めまして、脾臓、腎臓というようなものが一般に多く現われております。鰓及び血液はこれに次いでおります。皮膚それから骨、お刺身にする所の筋肉汚染は極めて僅かでございます。但し背中の所の肉で、まぐろ、かつをの類には血合肉といつて、赤くてお刹身にしない所ですが、その部分は自身の肉に比べますと、常に高い放射能を示しております。  その次に大型の魚をとりますと、胃の内容物の中の小さなお魚にそういうものが含まれておりますが、そういうものをとりまして、できるだけそれの内臓部分だけの放射能測定いたしましたが、その小魚及び船の中に飛込んで来ます飛魚測定結果より申しますと、一般に同じ水域に棲息しておりますまぐろの餌となるような小型の魚の放射能は、大型のものに比べますと強い傾向がございます。但し勿論それは魚体による差もございます。  以上申上げましたことをまとめますと、汚染の原因というものは、主として汚染された食べ物、これはプランクトン、小魚その他のものでございますが、そういうものを摂取することによつて汚染されたものだというふうに考えられております。  それから実用的な問題といたしまして、今回私どもはその汚染された魚の処理方法を一応検討してみたのでありますが、その我々の得られた範囲では、汚染された魚では、表面及び内臓を除きまして、その腹腔内は十分海水だとか、ソ—プレスソ—プ、EDTAという薬品で洗滌いたしましても、その汚染は除くことはできませんでした。灰等の附着によるものではなく、体の中に吸収されているのを示すものだというふうに考えられております。  それで場所別によりますこの汚染状態を航跡に従いまして私ども見て参りますと、大体北赤道辺の私ども調べた範囲内の場所は、特にビキニの附近ほ非常に高いお魚の汚染状態が見られましたし、それに比較いたしますと、赤道反流は比較的少く、南赤道海域に入りますと、殆んど認めることができないという結果が得られました。
  13. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 次は吉井義一石にお願いいたします。
  14. 吉井義一

    参考人吉井義一君) 私のほうはいわゆる計測関係でございまして、計測器を使用して、いわゆる放射能を計るというほうの仕事であります。  放射能測定といたしましては、精密測定をするために科研型の二十三進法の測定器を四台、それからいわゆる船、あるいは甲板なんかを調べるために持ち運びのできる交流電源サ—べ・メ—タ—というものを用いておりますが、これが三台、それから小さな船に乗せて、漁艇に持つて行くために電池式サ—べ・メ—タ—五台、こういうものを揃えまして測定したわけであります。精密測定のほうは、先ほど申されましたように、海水或いはプランクトン、或いは魚などのいわゆる試料測定室に集りますと、これを先ほどの精密測定器にかけて調べます。  その精密測定器概要を簡単に申上げますと、いわゆるガイガ—カウンタ—でございまして、これはいわゆる放射能のうち特にべ—タ—線を余計調べる、こういうものであります。大体我々といたしましては、正確に早く調べるために、それをモット—といたしまして、大体測定器の誤差の範囲はプラス・マイナス五%以内に抑えるように試料によつて時間を調節して測定しております。それからそのほか線量計を持つております。シンチレ—シヨン・カウンタ—というもの、ガンマ—線測定するためにシンチレ—シヨン・カウンタ—というものを科研でわざわざ作られたものを一台ブリッジに置いております。これらが大体測定器概要であります。  そして測定いたしたものは海水、或いは大気班、或いは生物班に全部出しまして検討する、そういうことをやりました。そのほかにとれました放射能のある試料の放射状、即ちどのくらいの程度で減つて行くか、或いはどんなものが入つているかというようなことを測定いたしまして、今後の、水素爆弾の現在残つているいわゆる残留放射線というものが今後どういうふうなものになるかというようなものの資料にしたいといつて測定したわけであります。これは現在も続けておりますから今後の問題と思います。  そのほか現在考えておりますことは、このような測器が果して漁船に載せて適当であつたかどうかというそういう検討も今後の問題として残しておきたいと思います。  大体以上であります。
  15. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 次は浦久保五郎君にお願いいたします。
  16. 浦久保五郎

    参考人浦久保五郎君) 簡単に申上げます。  私ども空気汚染をお手伝いいたしましたが、これは全航程を通じて殆んど問題はないということを認めました。それから放射線の総線量をポケット線量計を船内の各部九カ所においてそれを調べましたが、一航海、つまり東京を出てから東京に帰るまでの総放射線量が百乃至百五十ミリ・レントゲン以下という結果を得まして、先ず安全であるということが認められました。それから船体汚染を毎日場所をきめて測りましたが、一番高いところで百五十カウント・バ—・ミニツツという程度で、殆んどの所が二桁の数十カウントという程度でありました。なおこの船体放射能が僅かではあるが出て来る原因といたしましては、海水が被つてそのために船体汚染されるということが一番大きな原因であると、こういうふうに思われました。  それから東京へ帰る二日前の七月一日に測つたときには、一カ所を除いてほかは殆んど放射能を認められないという状態にまでなつてしまいました。なおそれらについては、特別に放射能がついたから放射能を落すために船体を洗滌するということはしなかつたのでありましたが、そういうふうになつてしまいました。  それから放射能を体内に取入れる機会といたしましては、結局海水を口から体内に入れる、或いは傷の部分海水なり汚染された物質をつける、或いは汚染された空気を呼吸するといういろいろ考えられると思いますが、それについても、今度の航海については殆んど先ず問題はありませんでした。我々は実験をやるために汚染されると、たとえ十カウント汚染されても実験のデ—ダが狂つて来る。そのためにいろいろな手袋をはめたり或いはいろいろな、場所によつて海水の使用を禁止したり、そういうことをいたしましたが、こういうことを先ずしなくてもよかろうと認められました。  それから全員、乗組員健康状態でございますが、これは船の上のことでありますので、さほど健康とはつきりは申上げられませんが、先ず先ず普通である、特別な特徴はないということでして、途中患者も出ましたが、放射能による疾患というものは全然認められませんでした。なお且つドクタ—のほうで白血球の測定を数度行なつておりましたが、これも先ず、まだよく聞いてはおりませんが、さほど特徴はないという結果でありました。  以上の結果からあの海域を航行するというその船に乗つている人間に対する衛生という点について見ますと、非常に汚染された海域において海水で食器を洗うとか或いは米をとぐとか或いは甲板にいて何時間も海水を頭から浴びる、しぶきを浴びるとか、そういう極端なことさえしなければ、先ず航行に対しては差支えはなかろうということが認められました。  以上であります。
  17. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 次は藤永元作君にお願いたします
  18. 藤永元作

    参考人藤永元作君) それでは私は俊鵬丸を出すまでに至つた経緯、それから今後この厖大な資料をどのように処理して発表するかというようなことについて極く簡単に御説明いたします。  御承知のように三月十六日ですか、初めて福龍丸の事件が新聞に報道されましてからは、その一番大きな被害は、水産業、特に南方のまぐろでございました。それで水産庁といたしましては、何とかして一日も早く南方の漁場の調査をやりまして、根本的な対策を立てなくてはならん、こう考えましていろいろ準備を進めたわけでございます。併しながら折角船を出す限りは単に水産業という立場以外に、更に海水汚染とか或いは大気の汚染とか、とにかく南方の海を我々が可能な範囲においてできるだけ広範囲調査もやつて見たい、かように考えまして、先ず水産庁は日本海洋学会、日本水産学会の援助を求めまして、更に又関係の官庁といたしましては文部省、厚生省、運輸省という方面にもいろいろお願いをいたしまして、これらの官庁或いは学校或いは学会というような各方面の専門家にそれぞれお願いいたしまして班を組織いたしました。そうして班の責任者をきめまして、精密なプランを立てて頂いたのであります。大体四月の十日頃からいろいろ会合を持ちまして、いよいよプランができましたのが四日の二十日過ぎ、船は五月の一日頃に出そうという予定でおりましたが、いろいろ初めてのことでありまして、なかなかその準備も思うように行きませんで、漸く五月の十五日に船を出すことになつたわけであります。初めはビキニで航行中に更にもう一回や二回の原爆の実験に会うのじやないかというように考えまして、できるだけの準備はいたしたのでございますが、幸いにして航行中には水爆の実験はありませんでした。その点は割合気持は楽であつたんでございます。  それから約五十日間の航海を了えまして去る七月の四日に東京に帰つて参りました。集めました資料は実に厖大なものでございまして、これを更にもつと研究を進めなくてはなりません。  それで出発から船が帰るまではビキニ海域調査団というものを組織しまして、水産庁が事務当局のようなものになりまして準備をしたのでございますが、今後はその調査団というものは解体いたしまして、ビキニ調査連絡会というものを水産庁内に設けまして、これが中心になりまして、今後の資料の取りまとめをやつて行きたい、かように計画を進めております。  計画の進め方は、準備のときと同じように班を各班に分けまして、今までの実際に船に乗つてつて調査をやられたかたがた及び計画に参加されたかたがたに一緒になつてもらいまして、大体約ニカ月後には資料の取りまとめができるように目下準備を進めております。幸いにいたしまして、この五十一日間の航海中一人の病人もできない。又この頃よく新聞を賑わしております白血球の減少ということも殆んど認められないで無事に帰つて参りました。それで一昨日調査団かたがた、あるいは顧問団かたがたに集つて頂きまして新聞やラジオを通じて報告いたしましたように、第一回目の水産庁報告として極く大ざつばなことを申上げたのでございます。  それを更に要約して見ますと、北赤道海流は全部ではございませんが相当海の汚染されておる場所がある。そこは主としてめばちの漁場でありますが、このビキニ周辺のめばちを主にする漁場は少しは注意されたほうがよかろう、但しこれは長くは続くものではなくて、約半年の間くらいはビキニ周辺のめばちの漁場はできればおやめになつたほうがいいじやないか、まあこのくらいの程度は言えるのじやないかと、こう思います。それから赤道反流、これはきはだとくろかわを主にする漁場でありますが、ここではそう大した汚染の影響はあるまい。南赤道以南になりますと、これは殆んど汚染ということは考えなくて済むのじやないか、このような見解を発表したわけであります。但し魚は多少移動するものでありますから、南赤道反流の魚には全然汚染された魚が出ないかというと、そう簡単に割切れませんが、先ず赤道反流から南赤道流域においては、汚染された魚の出る確率は極めて少いということは言えるのであろうと、かように思います。又先ほどからもたびたび調査員のかたから報告がありましたが、あの周りの航海は一向に差支えがない。現在漁船は南のほうに行く場合に危険区域を避けまして随分大廻りをして参りますが、そういうことは必要はない、大廻りをしないで直線コ—スをとられて漁場に行かれても先ず差支えはなかろう。但しビキニの西側には相当汚染されておる海域がございますので、そのあたりを航行する際には注意されて、そこの水を取つて米をとぐとか或いはシャワ—を浴びるとかいうことは成るべくなら避けられたほうがいいだろう。而もその海域と申しますと、五、六時間で通過する海域でございますから、その間くらいは海の水の使用は注意されたほうがよいだろう。このくらいのことを一昨日発表したわけでございます。  更に詳細は、これから調査員かたがた、或いは顧問団かたがたで十分研究して頂きましてその成果を発表いたしたい、かように思う次第でございます。
  19. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 次は宇田道隆君にお願いいたします。
  20. 宇田道隆

    参考人宇田道隆君) 私は一般海洋のほうで、先ほど堀君から話がありましたような海洋の海流とか海洋状況調査のいろいろな準備及び企画の御相談にあずかりまして、大体の事柄はすでにお話がございましたが、それに附加えて申しますれば、今度の調査北赤道流、それから赤道反流、南赤道流というような区域が非常に汚染の境をはつきり見せておるように存ぜられます。そしてその北赤道流の北の辺にも亜熱帯収斂線というものがございますが、やはりそれも関係しておるようでありまして、水の流れの線が寄り集まる所、収斂と申しますが、そういう線状になつた所、或いは渦流のできておる部分が非常に重要な役目をしておるようでございます。今後こういう水の動きによりまして、どのように汚染されたものが運ばれるかということは非常に大切な問題で、日本近海に関連いたしますので、我々も近海の調査と共に注意しなければいけないことだろうと思いますが、魚のほうの調査と相待つて調べて行かねはなりません。それからビキニの附近の海水の拡散というものによりまして、汚染流れの下流のほうに拡がつて参ります。そのことも共に予想されたことでありましたが、今度の俊鶻丸調査によつて、科学的に実証されたということが非常な功績であろうと思います。ただ一つ予想外のことがありましたのは、先ほど説明がありましたように北緯十二度以北に東の流れが出ている。一つの反流のようなものを見せて、それがビキニの北に一つの時計廻りの渦巻の形を見せておりますが、これにつきましては、なお今後調査が進められましてはつきりいたすと思いますが、大変興味のある事実であると思います。  なお私ども調査は八月中に大体の成果を得て、これに対して検討を加えることになつております。簡単ながら……。
  21. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 次は三宅泰雄君にお願いいたします。
  22. 三宅泰雄

    参考人三宅泰雄君) 私は今度の顧問団の一人といたしまして、大気と海水汚染の問題を主として担当したのでありますが、第五福龍丸事件以後多くの船が放射能汚染を受けて損害を受けたわけでありますが、その汚染の仕方は、大体空から放射性の塵が降つてそれによつて非常に強度の放射能汚染を受けておるとまあ判断されたのであります。従いまして我々の調査のやり方といたしましても、主として大気の汚染関係に重点を置きまして、考えられるあらゆる装置を備えたのであります。それで例えば空気をポンプで引いてそれを水で洗つてその水について放射能を調べるとか、或いは空から降つて来た塵をビニ—ル膜の上に集めてそれによつて汚染を調べる。或いは電気を使つた電気集塵器とか或いはインピンジャ—という機械を使うとか、五、六種類の装置を備えまして準備したわけであります。ところで海水のほうはこれは今までのアメリカで公表されましたビキニ及びエニウエトツクの環礁の実験のあの附近の海水或いは生物の実験結果を見ましても、海水放射能については余りはつきりしたことは書いてありませんで、むしろ海水には放射能がないといつたようなことも書いてございましたし、それから又日本の漁船が持つて帰りました海水によつて調べた結果も、海水放射能は否定的な結果であつたというようなことがありまして、専門家の間でも、果して海水放射能があるかどうかについては疑いを持つかたもあつたわけであります。それで私たちは、これは海水放射能を測る技術の問題がむずかしいのじやないかと考えまして、東京大学の化学教室と私の研究室で共同いたしまして、海水放射能を測る方法につきまして討論に討論を重ねて或る結論に達したわけであります。その間非常に出帆を控えた数日間、調査に参加しました杉浦調査員を初め東大の若い研究員たちが殆んど夜通しで研究いたしまして、的確に海水から放射能をつかむ方法を案出したのであります。  ところで現地に参りますというと、先ほどから調査員報告にもありましたように、大気のほうは予想に反しましてそれほどの汚染は認められなかつた。ところが、初め余り重きを置いていなかつた海水のほうにむしろ汚染が現われたということは、これは今回の調査の非常に重要な発見ではないかと思うのであります。それで、併しその海水のほうも、初めのうちは幾らやつて放射能が出ないというわけで、調査員もがつかりして、これはやつぱりみんなが言つている通りじやないかということも考えたらしいのですが、五月三十一日でしたか、四百五十カウントという放射能を見出したときは、杉浦調査員のその当時の手紙によるというと、まあ極端に言えば嬉し涙が出た。それから海水放射能がみつかつたということによつて非常に調査団全体に大きいシヨツクを与えて、これからの調査を如何にすべきかということで非常に周到な討論がなされたということでございます。それで先ほどの御報告にもありましたように、殊にビキニの西側の北赤道海流に沿つて北緯十度、十五度ぐらいの幅を以て帯状に放射能の強い部分流れておるということがはつきりいたしました。それから大体その放射能を持つ海水と、流れている部分における魚とかプランクトンもやはり強い汚染をこうむつておる。で、そういう非常に重要な結果が生まれたことも発見されたわけであります。特にこのプランクトン海水汚染よりも範囲が広いのでありまして、将来若しも漁船が簡単なガイガ—カウンタ—その他の計器を持ちまして、プランクトンを目当てにしてその汚染を測つて行きますならば、若しもそれに汚染が認められれば近所に海水汚染されている場所があるという、一つの非常に有効な、何といいますか予想ができるわけでありまして、今後の漁業の安全に対して非常に有効ではないかと考えるのであります。  今後の問題といたしましては、その放射能汚染範囲がどの程度に拡がつておるか、その分布状況のはつきりした地図を作るということ、それからその汚染の径路がどういう径路によつてなされているかということをもつと突つ込んで考えたい。まあそういう問題につきまして、まだ今後調査すべきことが残つておるように思うのであります。  以上私の説明はこれで終ります。
  23. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 次は中村広司君にお願いいたします。
  24. 中村広司

    参考人中村広司君) 私は顧問団生物班の一人としまして、主に漁業というような見地からこの問題の調査のお手伝いをしたわけであります。御承知のように、今回調査した方面の海というのは、日本のまぐろ漁船の活動している漁場の一部分であつたし、又この海はまぐろ類の資源が涵養されている海の一部分にもなつているわけでございまして、放射能がこれにどんな影響を与えているかというようなことに非常な関心を持つていたわけであります。先ほど調査員からもお話がありましたが、この方面の海は大体三つの海流に切つて考えることができる。それからその三つの海流海域というのは、先ほど調査研究部長からもお話がありましたが、そこでとれる魚も違えば、同じ魚がとれても非常に魚の型が違うというようなことからそれぞれ違つた性格を持つた漁場である。こういうふうなことは、今までの調査の結果から、この水爆以前の調査の結果から想定していたわけであります。まあ魚の種類が違つたり又季節によつても違いますが、今それぞれ漁場の性格が違うと申しましたが、その違つた海流にいる魚はわりにまじりにくいのである、入りまじりにくい形になつているものだ、こういうふうなことはかねがね考えられていたわけでありますが、今回の調査の結果を見ますと、大体においてこういうふうな私どもの考えていたことが、妥当であつたという証明が出て来たように思います。それから又漁場としての安全性というようなものもかなり明確に認められたというふうに考えられるのでありまして、大きな収穫であつたのじやないかと、こんなふうに考えているわけであります。併し今回の調査はいわば一つの断面を見ただけでありまして、これだけで十分な結論が出て来るかどうかということについては、かなり問題がありそうに思うのでありまして、若し今後こういう調査が行われる、或いは汚染された魚の出現する状態、こういうふうなものからもう少し裏付けをしたものができて来て、漁業の立場からこの問題が今後の資料と相待つてはつきりさせられることができるのじやないか、こういうふうに考えておる次第であります。
  25. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 次は佐々木忠義君にお願いいたします。
  26. 佐々木忠義

    参考人佐々木忠義君) 私は顧問団の一人として分担をいたしましたのは放射能を測る測器、つまりいわゆるカウンタ—と申しますが、そういう点について御協力をしたのであります。それで先ほど藤永部長からいろいろいきさつにつきまして詳細なお話がありましたが、我々がその仕事に参画するようになりまして、船が出るまでに約四十日間顧問団かたがたは殆んど俊鶻丸を派遣するためについておつたのであります。  そこで放射能測定装置を積むにいたしましても、果してどういうものを幾つ積んだらいいか、そういう点についてさんざん会議に会議を開きまして、いろいろな角度から検討をしたのであります。つまり放射能を測る装置が結局は最後のこの仕事の締めくくりをやるのでありまして、いろいろな調査員海水を取つて来る、或いはお魚をとつて来る、そういうことをやりましても、それが最後に放射能測定計器にかかるのでありまして、万一用意いたしました測定計器が役に立たないということになれば、これは大変なことである。全国民が期待をかけ、世界各国が注視しておる、その中でこういう仕事をやる場合に、万一放射能測定計器が不備であるために、或いは途中で故障を起したために調査船が引揚げなければならんというようなことになつたんではこれは大変だというので、実に深刻に考えまして、いろいろな角度から検討をいたしました。若し故障を起した場合には、或いは飛行機で送ろうかというような補給の方法まで考えたのであります。そういたしまして、結局六種類測定計器を備えまして、先ほど吉井さんからもお話がありましたように、科学研究所の協力を得まして日本には一つしかないいわゆるシンチレ—シヨン・カウンタ—というようなものを、研究室備え付のものをわざわざはずしまして俊鶻丸のデッキに取付ける、そういうような、これは一例でありますが、あらゆる角度から検討をしたのであります。  それから今度の測定の目であり、耳であると申しましたが、船が出る直前まで水爆実験は恐らく実験中に行われるであろうということを予期しなければならないような情勢の下にわれわれはそういうものを準備したのでありまて、従つて折角乗組んでもらう調査員かたがたの危険防止、生命の危険、そういうことに対しても測定計器の不備或いは不足のためにそういうことを起したのではこれは相済まんというので、非常に真剣に考えまして、とにかく当時の現状としてはこれ以上のものは先ず得られないであろう、種類にいたしましても、性能にいたしましても、そういうものを積んで持たしたのであります。それで先ほど古井委員からのお話がありましたが、とにかく測定計器が不足であり、或いは不備であるために今度の調査が思うように行かなかつたというようなことは一つもないのでありまして、十分なる性能を発揮して貴重なデ—タを持つてつて来たような報告を受けております。ただそれは計器そのものがいいとか悪いとかというのではなく、いろいろ裏話商いてみますと、測定員は非常にサンプルがたくさん持込まれまして、忙しいときには三十分、或いは一時間、それくらいな睡眠しかとらないで、絶えず計器の手当をしながら測定をして来た。無論そういう絶えざる努力が一緒になつてそういう貴重な結果をもたらしたのであろう、こう深く信じております。積みました計器はこれは陸上で使う計器でありまして非常に精密なものになりますと、ちやんとした立派な研究室、実験室に安置して使う、そういうものをとにかく積んだのでありましてそれが条件の悪い、非常に湿度の高い、温度の高い海域で、而も測定員が悪条件下で使用するという点で非常な心配をいたしましたけれども、計器の性能と測定員の絶えざる努力で、とにかくそういう目的を果して帰つて来た。それではそういうものだけがあれば、今後いろいろこういう問題は引続いて起り得るであろうと想像いたしますが、それでいいかと言いますと、決してそうではないのでありまして、そういうために今度学術会議の中に放射能影響調査特別委員会というものができまして、五つの班が設けられましたが、その中の水産班の一つの研究テ—マとして、漁船放射能測定計器の研究という大きなテ—マが掲げられたのであります。只今三宅顧問のほうの発言もありましたが、そういう一つのテ—マの下に、今後それを近海か或いは遠洋に行く船舶、漁船にすべての船が積み得るような堅牢にして性能のいい、別な観点から作られるべき放射能測定計器というものの研究が急速に進められることを希望するのであります。
  27. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 次は田島英三君にお願いいたします。
  28. 田島英三

    参考人田島英三君) 御承知のように、南方から帰つて参ります船の汚染が、三月の中旬頃から実は厚生省のほうの原爆症調査研究協議会のほうで、そのほうの委員として私も測定に携わつておるのでありますが、その汚染程度と申しますというと、船によつては数万カウントもあるものもありますし、数千カウント程度のものもありまして、殆んどまあ大部分の船が多少なりともよごれているというような状況であります。例えば、三月下旬から六月中旬ぐらいまでの間の統計をとつて見まするというと、百カウント以上の放射能を示します船が二百隻中八十隻ばかり出ておる、そんなような状況であります。これは何のためによごれておるかということが前から問題になりまして、只今三宅さんのほうからもお話がありましたように、大気の汚染のために恐らくよごれるであろうというふうな考えを持つておりました。  そういたしますというと、ここに環境衛生としまして二つの問題が出て参ります。というのは、一つは、今度の調査団が行かれますときに、そういうよごれた大気の中を通過するときに、調査団の健康に害がありはしないかというのが一つの問題であります。もう一つの問題は、これは私あちこちの漁港に行きまして、実際船員、漁夫から聞くのでありますが、そういうよごれた大気の中を通つておつたら我々の体にも害がありはしないかというふうな問題がありまして、この点もはつきりさせなければいけないというふうな建前から、水産庁のほうにお願いしまして、厚生省の原爆症調査研究協議会の環境衛生部会からも研究員、調査員を出して乗船さして頂いたわけです。その結果は、只今浦久保調査員から御報告がありましたように、安心していいような状態が出ましたのは非常に有難いことだと思つております。その結果、もう一度申しますというと、例えばポケット・チエンバ—で一日体の外から放射線を受けますものは、今度の全航海で百ミリ・レントゲン、或いは百五十ミリ・レントゲン、一日について申しますというと、最大〇・六九ミリ・レントゲンの照射を外から受けているのが最大であつたそうであります。これは人間が一日最大幾らまで受けていいかというのは医科のほうできまつておりまして、三百ミリ・レントゲン・毎週ということになりますので、これを一日平均に直しますというと、四十三ミリ・レントゲン・毎日ということでありますから、遥かにこの最大許容量よりも下廻つた数字を示しているということになりますので、その危険区域と言われています南方漁場あたりに四六時中おりましても、一向、その点から申しては安心できるというふうな結論が得られたわけです。  もう一つ、空気汚染の問題でありますが、これも空気をふいてそれの残つた濾紙の上のカウントを測りますというと、一立方メ—タ—カウントが精々であつたように聞いておりますので、この量も現在最も厳しいとされています最大許容量から計算いたしました数よりも遥かに下廻つております。最も厳しいとされている最大許容量から計算いたしまして、実験条件を大体仮定いたしまして計算いたしますというと、やはり百カウント以上まであつてもいいということになりますのに、今回の測定だというと、数カウント毎立方メ—トルという値いでありますから、この点から申しましても、その辺の航海に関しては絶対安心であるというふうなことが出て参りました。  で、その他実は計画としましては、若しそういう状況がありましたならばどういうふうに空気を除洗するかというふうな問題もありますので、その準備もして参りました。それからもう一つ、船などがよごれておつた場合に、それをどういうふうにきれいにするか、除洗をするかというふうな準備もして参りました。ところがその空気のほうが幸いにしてきれいでありましたもので、そちらのほうの除洗の研究は実は幸いにしてできなかつたというふうな結論になつております。  それから船がどうして汚染されるかということは、只今お話がありましたように、実は大気ではなくて海水が汚れているためにそれのしぶき或いは非常に細かいしぶきによつて汚染されるということがほぼ確かになりましたので、それから推察いたしますというと、現在までに私たちのほうで船及び積荷のよごれの状況でわからなかつた幾つかの点が非常にはつきりして参りました。その一つ二つを申上げますというと、今まで入港して参りました船について申しますというと、船体はかなりよごれているにもかかわらず、中に入つている積荷が比較的よごれていないというようなことは、若し空気だつたらばちよつと考えられないようなものですが、これも解決できる。その他幾つかのこと、或いは船体がよごれておりましても船室の中は余りよごれていないというふうなことから、事柄が今度の調査でいよいよはつきりしたものだと思われるのであります。  大体以上であります。
  29. 小林孝平

    委員長小林孝平君) これで参考人の御発言は全部終了いたしました。参考人及び政府べ御質疑のあるかたは逐次御発言を願います。只今政府側から御出席のかたは水産庁の清井長官、海上保安庁山口長官、須田水路部長。それから安藤国務大臣は午後から見えられるはずであります。厚生省関係も、只今おいでになりませんけれども、後刻おいでになるはずであります。それから矢部三宅田島の三君は止むを得ない用件のために、一時までここにおられますので、この三君に特に御質疑のあるかたはお先に御質疑を願いたいと思います。
  30. 海野三朗

    海野三朗君 それでは矢部さん、田島さすに先にお伺いをいたしたいと思います。先の矢部さんからのお話では、深さか五百メ—トル乃至八百メ—トルの所も調査したというお話でございましたが、魚類は五百メ—トル、八百メ—トル以下に棲息しておるのでございましようか。
  31. 矢部博

    参考人矢部博君) 種類によつては魚も八百メ—トル以下におると思います。
  32. 海野三朗

    海野三朗君 そうですか。どんなお魚が……。
  33. 矢部博

    参考人矢部博君) いわゆる深海魚というようなものは深い所におります。
  34. 海野三朗

    海野三朗君 ああそうですか。有難うございました  田島さんにお伺いいたしたいのですが、安心した結果を得られたとおつしやるのでありますけれども、それはつまりカウントが低いからというお考えでありますか。そのカウントが如何に人体に及ぼして来るのであるかというところの科学的根拠をお伺いいたしたいと思うのであります。その絶対安心だというお話はどこに根拠をおいておるのでございましようか。
  35. 田島英三

    参考人田島英三君) お伺いいたしますが、その三百ミリ・レントゲン・毎週という数字の根拠をお尋ねになつていらつしやいますか。
  36. 海野三朗

    海野三朗君 安心した結果を得たというお話でありますから、その安心したとおつしやるのは、どこに根拠をお置きなさつてそういうふうにおつしやるのであるか、それを私はお伺いしているのであります。
  37. 田島英三

    参考人田島英三君) 人間が外から放射線を受けます最大許容量が三百ミリ・レントゲン・毎週ということが言われております。それは医学的な根拠から申されております。それを一日当りに換算いたしますというと、四十三ミリ・レントゲン毎日ということになります。ところが今度調査団が行かれまして測りましたところによりまするこいうと、最大受けられましたのが〇・六九ミリ・レントゲン・毎日ということになりますので、〇・六九と四十三と比較いたしまして、非常に外部から受けます放射線の強さは低いと、こう申上げたのであります。
  38. 海野三朗

    海野三朗君 ヒマラヤ山に登つて参りますというと、高く登つて行けば行くほど酸素量が稀薄になつて来ることはもう一般の常識でありますが、その酸素の量が少い、人体に害を及ぼさないからといつておりますけれども、その酸素の量が減つて来れば減つて来ただけ、長い間かかれば非常に弊害が私はあると考えられるのでありますが、只今カウントも医学的には、ちよつとの実験ではそれでいいかも知れないけれども、本当に考えて見ましたときには、それが長い間、つまり時間というもので以てアキユ—ミユレイトして行つたときの結果を思いますと、私どもは安心できないのではないか、こういうふうに思うのでありますが、田島さんのお考えは如何でございましようか。
  39. 田島英三

    参考人田島英三君) 私はこの三百ミリ、レントゲン、毎週というのは、それだけの強さのものを一生受けておつてもよろしいという限度で、お医者さんのほうできめられたものだと思います。
  40. 海野三朗

    海野三朗君 そういたしますと、つまりお医者さんのほうのことを御信じなさつて、つまり受売りなさつたということでございましようか。
  41. 田島英三

    参考人田島英三君) さようでございます。
  42. 海野三朗

    海野三朗君 私今日おいでになつかたがたにお願い申しておきたいと思いますることは、このカウントが今ちよつと影響がないからといつても、その影響が果してないとは言われない。例えば肥料にいたしましてもそうです。硫安の肥料を年々撒いて行つておるというと、だんだん硫化物ができて自然とその硫安の利き方が減つて来ておる。或いは鉱毒の問題にいたしましてもそうです。極く僅かの鉱毒が流れ、だんだんそれが積年積つて来るというと、そこに大きく現われて来た、現われて来たときに初めてこれは鉱毒の影響だ、こういうようなことを私どもが今見ておるのでありまして、そういう点から考えますると、ただお医者さんのほうでそれは差支えないのだと言われるけれども、私は非常にそこに疑問を持つておるのであります。積年働いて来れば必ずその結果が出て来るのじやないかと、こういうように私ども思うのでありますが、田島さんあたりはどういうふうにお考えになつていらつしやいますか。
  43. 田島英三

    参考人田島英三君) 私はこの三百ミリ、レントゲンという数字を出したのは、その点まで考慮されて出されたのではないかと存じております。
  44. 青山正一

    ○青山正一君  河端参考人にお尋ねいたしたいと思いますが、先ほどの…。
  45. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと青山さん、今矢部さん、田島さん、三宅さんの三人が一時からお帰りになりますので、その三人に対する質問を先にお願いいたしたい、こう思つております。関連しておる場合はあれですけれども、できればそういうふうにお願いしたいと思います。
  46. 楠見義男

    ○楠見義男君 それじや総括的な問題で、或いは矢部さんにお尋ねするのは筋違いかもわかりませんが、この調査ですね、これはこういうような調査をアメリカ自体もやつておるというようなことはないのでございましようか。若しあるとすれば、そちらとの関係をどういうように付けて行くか。今後お互いに持ち寄つてつて行くとかいうことになるのでしようが、その前にアメリカ自体はこういうような調査はやつておらないのでしようか。その点若しおわかりになつておりましたらお伺いしたいと思います。
  47. 青山正一

    ○青山正一君 それに関連しまして只今楠見委員からお話があつたわけですが、私もその点を承わりたいと思いますが、これは矢部さんに対する質問になるか或いは藤永部長あたりに対する質問になるか、それはわかりませんが、一つ楠見さんの問題に関連しまして伺いたいと思いますが、米国においてはすでにこの放射能がどれだけのカウントがあればそれは人体に影響がないというようなはつきりした結論を出しておる、そうした角度からこれが人体に影響がないからというようなことで、このカウント以下は罐詰にするのだということで盛んに罐詰も造つておる。そういつた事実を日本政府へ、或いは日本のこういう学界のほうヘアメリカのほうから発表されておるかどうか、そういつた事実について承わりたいと思います。
  48. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 最大許容量の問題につきましては、アメリカでも二つの見解があるようであります。二つとも日本に参つております。  それからもう一つはビキニ環礁周辺の研究はどうやつているかという点でございますが、それは極く狭い範囲ではやつておるようです。毎年やつておるようでございます。但し日本がこのたびやりましたような、あのような広い海域でやつたというような例はないように思います。
  49. 青山正一

    ○青山正一君 その問題と関連して、例えばそういつた事実はやはり日本に来ておるのですかどうですか。  それからどれほどの影響があるかどうかということもやつぱり発表されてあなたのほうに報告があるのですかどうですか。
  50. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 私のほうにはありませんが、学者たちが個々に文献を多少持つておいでになつておるようでございます。  それから最近参りましたアメリカのドナルドソンという人が、今後はできる限りの文献を日本に送ると、こう申しております。但し原子力のいろいろな発表というものはアメリカでも非常な統制をとつておるようでございまして、日本の要求するものを全部送るというわけには参らないのではないか、こう思つております。  それから、もう一つは、最大許容量の問題につきましては、実はアメリカの原子力委員会から派遣されましたドクタ—・ボスというのとドクタ—・ドナルドソンさんが在京中にお医者さんとか或いは物理学者を呼びまして、日本の学術会議と十分討論をやろうということになつておりまして、向うから学者を呼ぶことになつておりましたが、不幸にしてこの方面に関係をしておるアメリカの物理学者が今欧洲に行つているそうで、従つて早急には日本の学者と一緒になつてデイスカツスすることができない。それで今年の秋にはアメリカから原子方面の権威者が日本に参りまして、日本の学者と十分討議する、こういうことになつております。
  51. 楠見義男

    ○楠見義男君 矢部さんにお伺いするのですが、先ほど来皆さんがたから具体的な水域についての各方面からする調査をお伺いしたのですが、或いは私自身の聞き間違いか或いは聞き足りなかつた点があつたかも知れませんが、それは特定水域における調査に関連をして、例えば汚染水域というものはどういうふうに移動をして行くとか、或いは汚染されたプランクトンの繁殖状況がどうなつて行くとか、或いは汚染された魚類自体がどういう変化を示して行くかとか、こういう移動的な調査というものは今回の調査ではおやりにならずに、それはただ毎日々々の調査を生のまま報告されて、その報告された結果からそういうものを今後推断をして行くというふうなことになるのか、この辺の点はどういうふうに御調査の結果なつておるのでありましようか。その点ちよつと聞き漏らしたのですが。
  52. 矢部博

    参考人矢部博君) その点は勿論私どものやつている毎日の仕事からはそのまま結論が出せませんから、そういうことを十分考えて資料は集めて参りました。
  53. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 補足して申上げますと、例えば魚に対する汚染の問題とか、或いは放射能を受けてプランクトンがどのように繁殖して行くかという問題は、なかなか船の上で測定できませんので、今大学でやつております。従いまして大学のいろいろな実験と今度の調査報告と合せていろいろ結論が出るのじやないかと思います。かように思つております。
  54. 楠見義男

    ○楠見義男君 それじやちよつと藤永さんにお伺いしますが、それはその各カウントの度合に応じたプランクトンを、その実験場なり或いは研究所でお集めになつて、そうして経過を見て行く、こういうことをやつておられるのでございますか。
  55. 藤永元作

    参考人藤永元作君) これはビキニの灰を基にしまして、例えば百カウントのもの、三百カウントのもの、或いは五百カウントはどうなるかというようにやつております。
  56. 楠見義男

    ○楠見義男君 それはどの程度の期間でそういうような結果が出る見込なんでしようか。
  57. 藤永元作

    参考人藤永元作君) それは全般の報告をやれば一カ月ではこうなる、或いは半年ではこうなる、或いは一年ではこうなる、これはずつと続ける問題だろうと思います。現在のところでは、ニカ月ぐらいのところなら言えるだろうと思います。
  58. 楠見義男

    ○楠見義男君 その点は、一つ午後からでも……。
  59. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 今私デ—タを持つていないので、はつきりしたことは申上げられませんが、御必要なら取り寄せてお送りしてもよろしうございます。
  60. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつとお伺いいたしますけれども、先ほど楠見委員からお話になりました米国側との関係でございますけれども、今回の調査をやりまして、米国側に日本から資料の提供を要求するような必要があるのかないのか。あるとお考えにならんのか。具体的に例を挙げれば、ビキニ環礁から出る灰の出方というようなものは、アメリカ側にその資料の提供を要求する必要があるのじやないかと思うのですけれども、その辺如何でございましようか。
  61. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 今、これは大使館を通じて要求したものではございませんが、先日まで二人の学者がおりましたので、その二人の学者には、送られ得る資料は全部送つてくれということは頼んでおります。従いましてその資料が送つて来まして、更に不足の分があればお願いしよう、こう思つております。
  62. 松澤兼人

    松澤兼人君 簡単に矢部さんにお伺いしますけれども、今回の調査では、海水汚染程度というものが非常にはつきりしたわけなんですが、これはあれでしようか。一回の実験でこうなつたものか、或いは数回の実験で、それが積み重なつてこの程度なつたのかということは、調査の結果今すぐにはおわかりになりませんか。継続実験した結果であるのか。或いはまあ一回実験すればこの程度汚染程度というものは出るであろう、そういうことは……。
  63. 矢部博

    参考人矢部博君) 一回の爆発でどの程度汚染されるものかというのは推定はできないと思います。併し今度のやつが、数回繰返されてこういう結果になるだろうということは、放射能のほうから推定しております。
  64. 松澤兼人

    松澤兼人君 逆に言いましてこれで暫らく実験がないとしまして、半年なり或いは何カ月か先に、もう一回この調査をやれば、どの程度まで汚染されているものが減つて来たかということはわかるわけですね。
  65. 矢部博

    参考人矢部博君) それはわかると思います。
  66. 松澤兼人

    松澤兼人君 もう一つですが、先ほど主として赤道反流、南北の赤道海流ということをお伺いしたわけですが、北南の関係はほぼわかりましたけれども、東西の関係がまだはつきりしないように存じますが、東西の関係はどの程度ならば危険がないとか、或いは漁業に差支えはないとかいうことは、現在までの調査でおわかりになつていらつしやいますか。
  67. 矢部博

    参考人矢部博君) 今度のは、おつしやるように縦に切つたそのデ—タにつきまして報告したわけですが、その東西のことについては、推定以外は方法はないと思います。それについてははつきりしたことは言えません。
  68. 松澤兼人

    松澤兼人君 先ほどお話がありました北赤道海流においては、特定の漁業はまあ半年くらい先ならば危険はないであろう、或いは南赤道海流においては、殆んど汚染ということは考えられないというようなお話があつたように思うのですけれども、我々としても南北の関係はそれでほぼ明瞭になつたと思うのです。そういう意味で東経どのくらいまでは危険であるとか、或いはそれから先は危険でないとかいう判断を、今回の調査で大体出ておりますか、東西の関係です。
  69. 矢部博

    参考人矢部博君) 今度の調査をした範囲内では出ております。そして水産庁のほうの見解は見解と申しますか、発表された、それは放射能の減り方、つまりそれ自体のデイケイの関係と、海水の拡散とか或いは放射能プランクトンの吸収、それ自体の減り方というようなことから考えて、水産庁の発表が出たものと思います。
  70. 海野三朗

    海野三朗君 三宅さんにお伺いいたしますが、このべ—タ—線ガンマ—線測定は、東京大学の化学のほうの学者に頼むというお話がありましたが、ラデイアル・アクテイヴ・サブスタンスは、物理のほうに非常に関係しておるのではありませんか。ということで、物理のほうの学者のほうととも十分御相談になつて、このいわゆるカウンタ—を吟味なさつたのでありますか。そこをちよつとお伺いいたします。
  71. 三宅泰雄

    参考人三宅泰雄君) 現在の化学者は全部物理学的な専門知識を持つておりますから、特に物理学者、化学者とこだわらなくてもその辺御心配はないと思います。
  72. 海野三朗

    海野三朗君 それは物理学的なものも持つておりますけれども、ラディアル・アクテイヴ・サブスタンスというのは、特にこの方面は専門であると承知しておるのです。こういう方面の権威者がたくさんおるのだから、そういうほうを皆集めて、計器を吟味されたんでないといけないと思うという一点と、それから分布状態の地図はいつ頃までにできますか。これは早急でないと用をなさない。時々刻々変つて行くと私は思うのでありますが、その分布地図ができるまでの見通しは如何なものでございますか。
  73. 三宅泰雄

    参考人三宅泰雄君) 計器のことは私の担当ではありません。日本における最高のそういう専門家と相談したのであります。  それから分布地図のできる見通しでございますが、これは一月くらいかかれば或る程度のものはできると思います。
  74. 海野三朗

    海野三朗君 大体水爆実験はどの地点でアメリカはやつたとお考えですか。どなたでもよろしいですが、一体どの地点で実験をやつたものか、ビキニですか、ウェ—キ島ですか、どの辺で実験をやつたのでありますか、大体の御想像……。
  75. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 今までの調査員から得たいろいろの報告を総合しまして、或いは海水流れから判断いたしまして、やはりビキニ島だろうと、こう思つております。
  76. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 委員外のかたの御発言がありますが、お許ししてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) 矢部さんに伺いたいのですが、今回の調査されます前に、調査の目的としてお考えになつていたことがあると思うのですが、その調査の目的を今回の調査でことごとく果されたのですか、それとも最初に予定しておられた目的の中で果すことができなかつたものがおありなんでしようか、その点は如何ですか。
  78. 矢部博

    参考人矢部博君) 目的にしておつたものは、なし得る限りのことはやつたと、例えば目的にしておつた灰が降つたらこうやるというようなことは、現実に降らなかつたものだからできませんでしたけれども、できることはやりました。
  79. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) こういう種類調査は、つまり国際的に今度初めてなされたと承知するのですが、従つてあなたの責任として、一番大きな問題としては、こういうような目的を持つた調査が、今回のような計画と企画ですね、先ず企画から始まるわけですが、今回のような企画と、それから今回のような準備と、それから今回のような設備で妥当だつたかどうかという点について、あなたが団長としてはどういうふうにお考えになつておりますか。おおむね妥当だつたというふうにお考えか、特に著しい欠陥がなかつたか、その点はどうでしようか。
  80. 矢部博

    参考人矢部博君) 現実の問題としては、まだもつともつと準備を周到にしてあればよりいい結果が出たということは思います。併し、限られた準備の期間とか、そういうことを考えたら現在のものは止むを得なかつたと、そういうふうに私は思います。
  81. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) 止むを得なかつたというのは、どういう点ですか。
  82. 矢部博

    参考人矢部博君) 例えば、若しあれより大きな船を、そうして調査の施設というか、スペースがもつと、実験室の大きな船があれば、我々の労力はもつと少かつただろうと、そういうことです。
  83. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) そうすると、大体原則的には、今回の調査は、その企画から、準備から、実行において大した支障はなかつたというふうに考えてよろしいのですか。
  84. 矢部博

    参考人矢部博君) はい。
  85. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) 続いて同じような調査を一定の期間をおいてなす必要があるとお考えですか、ないとお考えですか。
  86. 矢部博

    参考人矢部博君) あると思います。
  87. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) それはどれくらいの期間をおいてなすのが理想的だというふうにお考えですか。
  88. 矢部博

    参考人矢部博君) 理想的ということについては、私は調査の結果をはつきり検討して見ないと言えません。
  89. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) やはりいろいろな問題があると思うのですが、団長としてのお考えの中で、最も大きな問題というのはどういう問題であるというふうにお考えでありますか。
  90. 矢部博

    参考人矢部博君) 問題というと、どういうことですか、ちよつと御質問が……。
  91. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) 今度調査をなさいまして、その中で最大の問題は何であつたか。
  92. 矢部博

    参考人矢部博君) 最大の問題ということは、私どもが実際にやつたときのやりにくかつた点と、こういう意味でございますか………、それは実験室の設備でございます、もつとスペースをこしらえ、そうして居住性のいいこと、その二つが一番大きいと考えております。
  93. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと関連してお尋ねいたしますけれども、今回の設備が不十分であつて、もつとよかつたら更によい調査ができたというお話でございましたけれども、私たちが仄かに聞いておるところによりますと、相当設備その他給与といいますか、そういうものが悪いので、今後こういう調査を行う場合に、今回のような給与設備なら非常に実施に支障があると、もつと砕いて言えば、こういう程度なら乗り手がないのではないかというような声もあるのですが、団長としてその点どういうふうにお考えになりますか。
  94. 矢部博

    参考人矢部博君) 全然乗り手がないというふうには私は考えておりまでん。(笑声)
  95. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 私この点について藤永さんから御意見を承わりたいと思います。
  96. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 居住の点につきまして、あるいは実験室の点につきまして、確かに不備な点はございました。これは言訳じみて甚だ申すのがつらいのではございますが、忽々の際せもございましたし、又ほかに船を探そうといつても、なかなか水産庁の自由になる船がありませんので、止むを得ず俊鶻丸を使いましたが、但し調査員を二十二名も乗せると、あるいは報道班員のかたを九名もお乗せするというようなことになりますと、これはどうしても学校の練習船を使う以外には手がないのでありまして、普通の調査船ですと調査員はせいぜい五人か六人のものでございます。従いまして、そういう船を使つたのでは、外部から突然三十人以上の人をお乗せするということには参らないわけでございます。それで、船は甚だ古い、居住もよくない、或いは又実験室も小さいということで、甚だ乗つて頂くかたには申訳なかつたのでありますが、あれ以上の船を今日本で求めても無理なのでありまして、止むを得ずやつたわけであります  その点は調査員かたがたには甚だ御迷惑だつたと、こう考えております。
  97. 海野三朗

    海野三朗君 関連質問をいたしたいと思います。矢部さんにお伺いいたしたいのでありますが、このたびの調査、これで十分だとお考えになつておるか。この調査に対するあなたの御構想を承わりたいと思う。只今乗り手がなくなるとは思わないというようなお話でありますが、そういうようなことでなしに、要するに、ただビキニに行つて見て来たというだけではいけない。ただ通りしなに実験をしたというような簡単な考えでは私はいかんと思う。調査であるならば、もつとこれはこうしなければいけないのだと、どこに欠点があるのだということを、つまりこの調査に対するなあたの御構想を一つ承わりたいと思うのであります。こうあつて欲しいとか、これはもつともつとやらなければいかんとか、或いは船をこうしなければいけないのだとか、この方面の研究をやらなければいけないのだとかいうような、あなたの御構想を承わつておきたいと思う。
  98. 矢部博

    参考人矢部博君) 私は今度船の出た、船の乗組の団長でありまして、そういうことは余り考えずに、はつきり申しますと、この調査団というのは、私ども実際乗つた調査員と、それから船員と、それから顧問団のようないろいろ計画した、これが全部合さつて調査団になつております。私はそのうちの船に乗つた調査員を統轄するものだと思つておりましたから、調査全体がかくあるべきだというようなことは……
  99. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと海野さんに申上げますが、今の御質問は、藤永さんにでもお尋ねになつて頂いたほうかよいのではないかと思います。  それから先ほどから繰返して申上げるように、三人のかたは一時までここにおられて出られますので、特に三人のかたにお尋ねいたしたいことがあつたら先にお願いいたしたいと思います。
  100. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) さつきから伺つておる私の質問の要点は、今回の調査のやはり最大の目的は、ビキニ水域における水爆実験というふうなものを続けることが差支えないか、それともやめてもらわなければならないかということがやはり一番大きな問題だろうと思います。その点その目的にかなわないような調査をやるということは私はむしろ有害だろうと思う。やらないほうがいい。従つていい加減な調査をなさつたというふうには我々思つていないのですが、併し設備或いは予算或いはその企画というようなものが若し不十分でありますと、その最も大きな問題についての結論が極めてあいまいで却つて害があるではないか、そういう意味で団長としてのあなたが今回の調査は、その企画及び準備又その実行の上において大体妥当であつたというふうにお考えであるかどうかということを伺つたのですが、重ねて伺うのは失礼になるからやめますが、次の問題として伺いたいのは、この程度の規模のものでは私は極めて不十分じやないかと思うのです。今の質疑応答の中でもそういうふうに判断されると思うのですが、従つてあなたの恐らく報告の中にありました点で伺つておきたいと思うのですが、今回のようなものは極めて不十分であるからもつと完全なこういうものを極めて近い機会に企画して派遣してもらいたいとか、或いは今回の程度のものしかできないとするならば、それを少くとも一カ月以内に第二回の調査をしなければならない、そういうような点についての御意見があるのではないか、今のような目的をお考えになつて……。今海野委員からおつしやつた、ただビキニ辺を歩いて来たというだけでは勿論ないわけでしようから、一番大きな問題としては、ビキニ水爆実験というようなものが再び繰返されても差支えないというふうにお考えになるのか、或いはそういう問題についての材料は得られなかつた、判断はなし得ない、それから個々の細かい問題としては、やはり第二の大きな問題としては、これは恐らく太平洋ビキニ水域近辺における魚類の絶滅というようなものになるかも知れないという点については判断をなし得たかなし得ないのか。或いはなし得ないとするならば、どういうふうにすればなし得るとお考えになるのか。それから第三に我々として伺いたいと思つたのは、この原子核分裂或いは熱分裂というのですが、水爆実験というものについての従来の科学上の所見というものは極めて不十分だつたということが福龍丸の被害でわかつたということは、申すまでもなく予想されていなかつたところの影響があつた、予想されていなかつたところの影響があつたというのは、一体学問上どういう範囲にそれが及ぶものであろうかということについては、まだ明らかでないと言わなければならない。従つて大体水爆の影響はこういうものであろうという予想をして今度の調査を企画されたのか、或いはその水爆の影響は従来の学問上の所見に及ばない予想以外のいろいろな影響があつたという点からも、その予想以外の影響をも考慮されて企画されたのか、そのような点についても伺いたいと思うのですが、これは時間の関係で御退席になるかたがたの中から特に御意見があれば伺つておきたい。先ず第一の点ですね、これについてはどんなふうにお考えですか。
  101. 矢部博

    参考人矢部博君) 若し出すならもつと設備の十分なものを出して頂きたい、こう思います。
  102. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) それから企画については、次の第二回の調査についてはどんなふうに考えておりますか。
  103. 矢部博

    参考人矢部博君) それは第二回を出して頂きたいと思います。その時期についてはいつ出すかということについては、もう少し資料を検討して見てからでないとはつきり言えません。
  104. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) 第三の点のいろいろな影響の及ぶ範囲内について、例えば今度調査をなさつた結果について、その結果を判断するに、調査団の中に専門家が十分おつたか、或いは他の専門家がいたほうがよかつたのではないかというような点についてはどんな感じをお持ちですか。
  105. 矢部博

    参考人矢部博君) その点なら我々の調査で支障はありませんでした。
  106. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) 特に取扱に困るようなそういうデ—タというものにぶつかられたというようなことはないですか。
  107. 矢部博

    参考人矢部博君) 私たちだけで処理できないときは、水産庁のほうに電報を打ちまして、それに対する見解を求めました。
  108. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつとお諮りいたします。この辺から三人のかただけではなく、その他のかたについての御質問も併せてお願いすることにいたしたいと思います。
  109. 青山正一

    ○青山正一君 先ほど御質問申上げたいと思つたのですが、中途半端になつたのでありますが、河端参考人にお願いたしたいと思います。先ほどのあなたの御説明によりますと、比較的腐りやすい内臓とか、あるいは血合の肉に放射能が多いということを承わつたのでありますが、これを一尾の魚で、例えば例を挙げて特に御説明願いたいと思うのですが、一尾のまぐろとか、或いはめばち、或いはさめを調べて見ますと、自身の肉はどれくらいのカウントがあるか、或いは内臓はどれくらいあるか、或いは血合の肉のカウントはどうだ、これは食糧政策上の建前から見て今後研究しなければならんところに行くわけですが、そういう点についての状態はどうでありましたか、その点について承わりたいと思います。
  110. 河端俊治

    参考人河端俊治君) 先ほど時間がございませんでしたものですから、具体的な数字は遠慮したのでございますが、きはだについて申上げますと、ビキニの真ん中に当ります所でとれました六尾のきはだについて私どもの実験ですと、腸の内容物の、いろいろ魚の消化されて出て来るどろどろになつたやつがありますが、それですと、元の一グラムを乾燥いたしましたときのカウント数で現わしますと、最高が一万八千カウント、それからその次に強いのは乾燥で最高が六千カウント、その乾燥も場所によつて若干相違かございます。今のは体のほうから見ますと、三つの部分に分けられ、右側の一番下の部分が強い、そこの所で評価いたしました。その次は食べ物を食べますと、胃袋の中から幽門垂に通じて消化或いは吸収されるのですが、それの部分が非常に強い。一番強いのは五千三百カウント、その他の脾臓、腎臓というのも一千カウント以上でございます。それに比較しますと、筋肉のほうは最高が十五カウントくらいというふうな数字が現われております。ただ血合のほうになりますと、一桁上つております。
  111. 青山正一

    ○青山正一君 百五十ですか。
  112. 河端俊治

    参考人河端俊治君) ええ、百から百数十くらいというところでございます。あといろいろな段階の魚がとられまして、食べた直後のまだ胃の中或いは腸の内容物の中は放射能が非常に強いが、臓器のほうはそういう影響を与えられた段階に来ていない魚も得られましたし、逆に消化されてしまつて、胃の内容物はその割に強くないが、臓器のほうに相当強く附着している、これは場所によつていろいろな段階のものが得られます。一番強かつたのは、これはウェ—キ島から第二回目の航海で南のほうに下つて参りましたときにとられたびんちよう、かつお、かつおが一番強かつたわけでございます。内地近海におりますような小型のかつおではなくて、いわゆる二貫目くらいであります。根付きの余り回遊性のない、そういうふうに考えられますかつおの場合でございますが、その例では腸の内容物が二万八千カウント、それから幽門垂が二万九千カウント腎臓が非常に強くて二万一千カウント、その場合の筋肉が百六十カウント、血合の肉が八十カウント、その程度でございます。
  113. 青山正一

    ○青山正一君 そんな程度で結構でございます。それならばこういうことは申上げられますね。例えば肝臓はきれいになつた、つまり内臓部分をきれいに取つた、そして血合の肉もきれいに取つた肉をきれいに水洗いをして食べればカウントは非常に少い、こういう意味合いですね、結論的に言えば。
  114. 河端俊治

    参考人河端俊治君) そういうことは申上げられます。
  115. 青山正一

    ○青山正一君 その点、一つ水産庁あたりも十分に研究して頂いて、何でもかんでも放つて歩いて日本の食糧政策を無にするようなことにならんように一つ十分に気を付けて頂きたいと思います。
  116. 楠見義男

    ○楠見義男君 ちよつと今の青山さんに関連して、実は先ほど伺つたのは、プランクトンの棲息状況がどういうふうになるかということだとか、或いはそういう汚染された漁類自体がどういうふうに変化して行くかという調査がなければ、単に今青山さんと河端さんのお話程度で、ただこの部分だけが汚染されて、あとは大したことはないということなのか。それはどういうふうにほかの魚類魚体全体に影響を及ぼして行くかという調査がなければ、簡単に青山さんの言われるような私は結論にはならんと思うのです。そこで人間が参つてしまうように魚自体が或る一定期間で参つてしまうというようなことになるかもわからない。その調査というものがあるのかないのかということを伺いたい。
  117. 藤永元作

    参考人藤永元作君) これは船の上では実験できませんので、今陸上でいろいろこいだとかふなとか、そういうものを使つてつております。例えば肝臓が相当やられている魚はどのくらいの寿命があるだろうかという、そういうような基礎実験は陸上の、大学あたりでずつとやつております。
  118. 楠見義男

    ○楠見義男君 それは人体に関する実験でモルモットを使うとか何とかと同じようなふうに、今の具体的にめばちならめばちに関する影響をこいやふなでやつて、共通的に的確な結果が出るでしようか。
  119. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 推測に過ぎませんが、めばちを飼つてそういうことをやるといつてもそれはちよつと不可能なんです。まぐろを飼つていろいろ影響を見るということは、ちよつと現状ではできかねるものですから、それで割合飼いやすい淡水魚によつて可能な限りの方法で調べております。
  120. 楠見義男

    ○楠見義男君 これは意見になりますけれども、そういうことだから、結局矢部団長がおつしやつたように、何回も行つて変化状況を見るとか、あるいは調査船自体に相当の実験設備を持つてやるとかいうことでなければ、これだけの大きな問題で、しかもまあ羽仁さんのおつしやるような、もうこれはこの地域ではやめてもらいたいというような意味の貴重なデ—タを出すとすれば、それだけのようなことをやらなければ、結局学術的な信用あるかないかというようなこと、あるいは意見は水掛論みたいになつたりするというようなことはないでしようか。
  121. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 私どもが今考えておりますのは、今度の実験のいろいろなデ—タがこれから出て参りますが、これを詳細に報告して、これによつていろいろな結論は各方面からやつて頂ければいいと、こう思つております。生のデ—タを詳細に発表して、これによつて学者がそのデ—タをもとにしていろいろ検討を加える、こう思つております。
  122. 青山正一

    ○青山正一君 いま一点だけ、三宅参考人さんか、これは堀参考人さんかどちらかわかりませんが、御両人に承わりたいと思いますが、五月三十一日の日に初めて海水から四百五十という放射能を発見した、こういうお話でありましたのですが、この海水の四百五十というカウントは、つまりずつとそこまで、深度によつて違うのですが、ただ表面が四百五十で、そうしてその下百メ—トルくらいはどうだとか、その点について一つ御説明願いたいと思います。
  123. 杉浦吉郎

    参考人杉浦吉郎君) 只今の質問について杉浦参考人からお答えいたしたいと思います。只今の問題になりました測定につきまして観測結果を申上げますと、深さ零メ—タ—の層で四百五十カウント毎分という値が出たのでありますが、百メ—タ—になりますと三十四カウントに減つております。更に二百五十メ—タ—では五カウント、五百メ—タ—では零、こういう結果になつております。
  124. 青山正一

    ○青山正一君 その附近に棲息している魚の種類というものはきはだですか、めばちですか、本まぐろですかどつちですか。
  125. 河端俊治

    参考人河端俊治君) この辺では実は天候が悪くて漁撈は全然やらなかつたのです。私どもそれですからちよつとはつきりしたことは申上げられません。
  126. 青山正一

    ○青山正一君 その深度は、その附近に住んでいる魚の深度の割合はどうですか。何メ—トル、何百メ—トルくらいにどんな魚がいるとかいうような……。
  127. 中村広司

    参考人中村広司君) 私から、そのカウントの出て来た海域は、今お話のあつた漁場という観点から見ますと、大部分がかじきを主とする漁場、それから深さはどの辺の所を泳いでいるかというと、これは非常に実験がむずかしくて、正確な魚の泳いでいる深さというものはわからないのでございますが、漁具の形、或いは特殊な漁具を一、二用いてやつた実験の結果で見たまぐろの類は、大体百メ—タ—から百五十メ—タ—くらいの深さの所で一番よく、これは余計いるということじやなくて、よく釣れるということです。  それでもうお答えできたと思いますが……。本まぐろはおりません。
  128. 青山正一

    ○青山正一君 そうなると、先ほど深度の関係をいろいろお話願つたわけなんですが、海面においては四百五十、それから百メ—トルくらいのところで三十五というようなお話がありましたのですが、そうすると、今とれるかじきは百メ—トル以下の所におるんだということになると、その回遊している状態のときにはカウントは全然その魚にはついていなかつた、ところが表面へ出たときにそういつた大きなカウントがついたと、こういうふうに解釈しても差支えないものでしようかどうでしようか。
  129. 中村広司

    参考人中村広司君) 今一番釣れる深さが百メ—トルから百五十メ—トルの間だと申上げたのであります。実は御承知のように水面をとんとん飛んで歩いていることもあります。餌が表面汚染されて、そういうものを食つていれば、先ほど河端調査員からお話のあつたように、餌から一番汚染される可能性が多いというように考えられる限り、汚染の可能性はないということは言えないだろうと思います。
  130. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと今のに関連して一つお尋ねいたしたいのは、北赤道海流のめばち以外は安全だという御報告なんですけれども、この北赤道海流にいるめばちもこれは産卵した後北上して来るんじやありませんですか。これは北赤道海流にだけおるんですか。産卵したら北上して来て危険になつて来るんじやないのですか。
  131. 中村広司

    参考人中村広司君) 勿論大きく動き廻つていることは考えられるのでございますが、北赤道海流、その辺で卵を生むだろうということもおよそ見当がついておりますが、それが具体的にどういうコ—スをとつて動いているかということについては、我々まだ何の知識もないのであります。
  132. 小林孝平

    委員長小林孝平君) そうするとわからないだけであつて、この北赤道海流にだけ住んでおるということははつきりしておらんわけなんですね。
  133. 中村広司

    参考人中村広司君) 但し申上げられることは、或る期間、どれだけの期間かということもわかりませんが、潮目から魚がはみ出して行くということは割に少いらしいです。
  134. 楠見義男

    ○楠見義男君 私も実はその点お伺いしたいと思つたんですが、めばちの回遊状況というのは水産庁といいますかではまだわかつておらないんですか。
  135. 中村広司

    参考人中村広司君) 残念ながらわかつておりません。
  136. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうしますと、北赤道海流海水としては非常に汚染されているといつても、漁業の観点から言えばめばちは危いということのほうがもつと的確じやないのでしようか。回遊状況がわかつておれば、それに応じた漁業者に対する指示も可能だと思うんですが、回遊状況がわからないということになればその辺は魚類で抑える、大体そこに住んでいるという、その汚染をされた期間にというか、現在そこにおつても而もその区域が非常に汚染されておるということになれば、現在は勿論将来においてもめばちは危いぞと、こういうようなことを指示する以外には行政庁としては漁業者に対する指示の方法は的確じやないのじやないかという気がするんですが、その点は如何でしようか。
  137. 青山正一

    ○青山正一君 それと関連しまして。今楠見さんのおつしやつたことに関連して御質問申上げたいと思いますが、水産庁は僕はいけないと思うんです。本まぐろなどは恐らく全然この対象になつていないだろうと私は思うのです。例えばまぐろのうちにびんちようとか或いはかじきとかめばちとか或いはきはだあたりが多少対象になつておると思うのですが、これから新聞などに発表するときに、びんちようならびんちよう、きはだならきはだ、そういうふうにはつきりして頂かんことには、近海に取れる魚まで本まぐろで、全部、僕ら普通通称まぐろというのは日本人が食うまぐろは本まぐろであつて、そういうびんちようとか何とか、これは罐詰類なんです。そういうものを一緒にごつちやにしてもらつては困るわけですから、これから発表する際におきましてはまぐろ類という言葉を全然使わずに、びんちようとか、きはだとか、或いはめかじきとか、そういうふうな名前に一つして頂かんことには、食う者の建前、或いは魚を販売する者の建前としては非常に困ろうと思います。その点一つ十分に御注意願いたいと思います。
  138. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 非常にむずかしい問題でありまして、ちよつと返事に今困つておるわけでありますか……。
  139. 楠見義男

    ○楠見義男君 それでいいです。
  140. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 今私も御質問し、楠見委員からもお話がありましたのですが、今回の報告の中に北赤道海流のめばち以外は安全だ、そのめばちは今度どこに行くかわからん、こういうようなことで非常にこの問題は重大な問題だと思いますので、これから休憩いたす間によく御検討下さいまして(笑声)御返事頂きたいと、こういうふうに思います。
  141. 楠見義男

    ○楠見義男君 もう一点だけ。これは佐々木先生と水産庁のほうにお伺いしたいのですが、それは先ほど三宅さんのおつしやつた点素人として非常にわかりやすかつたのですが、これから漁業者が南のほうに行つて漁業をやる場合に一番簡単なのはプランクトンを調べてそれでそのカウントの多い所は海域も汚れている、従つて又魚も取らないように注意すると、こういうようなお話がございましたが、それに関連しまして佐々木先生にお伺いしたいのですが、そういう簡単な漁船にくつつけるような計測器といいますか、そういうものは現にあるのですか、それともこれから作るとしても極めて容易に手軽にできるのでしようか、その点を一つと、それから水産庁に、若しそういう場合に水産庁としてはそれを漁船に取りつけさせることについての指導といいますか奨励といいますか、そういうような方面についてどういうふうにお考えになつているか、この点を佐々木先生と水産庁のほうにお伺いしたい。
  142. 佐々木忠義

    参考人佐々木忠義君) 今の漁船用の放射能測定針器の問題ですが、これはできます。それで学術会議で先ほど申上げましたようにテ—マとして取上げまして、すでに試作に着手しております。目標は今年末を目標にいたしております。その場合に、漁船用といつた場合に大体三種類に分けられると思います。一つは主として甲板で使う。但し陸上の計器であつては困る。使う人が非常に乱暴な漁夫が使うということで、主として甲板で使うけれども、従来の陸上のものではとても間に合わない。堅牢にして而も取扱が容易であるという意味の漁船用計器が一つ。もう一つは、液浸型と申しまして、つまり海水の中に測定部分を突つこんで測る。その場合に表面海水汚染を測る問題と、幾らか深い所まで測つてほしいという場合に使う測定器。液浸型を二つのタイプに分けまして、表面海水汚染を測る場合と、やや深い所まで測る場合。これは技術的に多少困難な点がありまするけれども、これは私はでき得ると思つております。その研究に向つて今進んでおります。
  143. 羽仁五郎

    委員外議員(羽仁五郎君) 矢部さんに伺つておきたいのですが、あなたが調査団団長として出発される前又は出発された後或いはお帰りになつてから調査団調査の結果についてそれを、発表することについて何かの制約を受けられた事実がありますか。
  144. 矢部博

    参考人矢部博君) お答えいたします。それは全然ありません。
  145. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 暫時休憩いたします。    午後零時五十八分休憩    —————・—————    午後一時五十二分開会
  146. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 再開いたします。
  147. 楠見義男

    ○楠見義男君 午前中に、これは藤永さんにお尋ねしたことで、委員長から休憩後というようなお話もありました  が、午前中私お尋ね申上げたように、めばち、ならめばちの回遊状況というものははつきりしておらない。ところが現在汚染水域においてめばちが危険だ、そういうことから今度は理窟でずつと行きますと、結局めばちは危いぞというようなことになつて来ると、実はめばちというものは、私も専門家ではありませんから詳しく存じませんが、相当広い水域に亘つてめばちは棲息しておるんだと思うんです。そうすると、理窟で以てめばちは危いぞということになつて来ると、これは又漁業者は勿論、販売或いは消費面にも非常に大きな影響を及ぼすんだと思うんです。従つて勿論そういう机上論的な或いは理窟だけのことは言えない、こうなつて来れば何らかそこに水産庁としても或る程度納得できるような理窟で以てこれを一般に知らせるとか、危険なものは危険、そうでないものはそうでないというふうにしないと、十把一からげになつて非常に影響を受ける所が多いと思いますから、この点についてもう少し詳細に御説明をお伺いしたいと思います。
  148. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 私どもが本日申上げましたのは、北緯八度から十二度の間の北赤道流域、ここには、これが全体ではありませんが、所々汚染されておる海域がございます。その海域はたまたまめばちのとれる所があるのであります。併しながらそこのめばちが全部汚染されておるというわけじやございませんでして、その中でとれておるめばちでも汚染されておるものは僅かなものでございます。更にこれを日本全体のめばち漁場から見ますと、殆んど一%にも足りないような状態であります。従いまして、ここのめばちが汚染された海域におると申しましても、日本全体から考えますと、これは殆んど問題にするほどのことはない、かように考えております。
  149. 楠見義男

    ○楠見義男君 これは今申上げたような趣旨で、漁業者及び販売業者或いは消費者というような面の立場からも考えなければならんと思うのですが、そこで午前中にもお話がありまし第一回の発表の俊鶻丸調査結果概要ですね、これを見ましても、その汚染されたまぐろ類について内臓及びえらが多い、肉は少い、併し水域から見れば北赤道流域のめばち漁場は汚染の虞れが多いと、こういうような発表だけで足りるのか、なお若し一般に発表するとすれば、但し一般の市場のものについてはこういうような措置を講じているとかいうふうなことまでしないと、非常にこれは不親切といいますか、今申上げたような立場からすればこういうふうな気もするのですが、もう少し何か方法はないのですかね。
  150. 藤永元作

    参考人藤永元作君) これはまあ大体午前中調査員から説明のありましたように、内臓を除去すれば先ず大丈夫だということは言えると思います。従いまして、特に南方で赤道反流でとつて来るものは特にそういうことに注意すればそう問題はないと、こう考えております。従いまして、これは極く一般に概要報告したのでありますが、更に特に南方のほうに行く漁船にはもつと詳細に書いたり或いは話したりしてやろうと、こう存じております。これは極く一般向きに発表したので、一般向きには余り漁業のことばかり言つたのではこれはいけない。又漁業のことばかりでは一般がぼけると、こういうことになりますので、漁船に対してはもつと詳細なものを発表しまして、どうすれば汚染が防げるかということも言つてやろう、こう思つております。
  151. 海野三朗

    海野三朗君 その問題に関連して……。この肉のほうには極めて少いというお話でありますが、放射能内臓に非常に働く。X光線の場合においても鉛の前垂をかけてやつているようなわけで、それはつまり生殖器を侵すということはもうすでに定説なんです。この魚類においても内臓を侵されれば、つまり産卵とかそういつた方面に非常に影響して来ると思うのでありますが、肉だけは少いからいいと安閑としておられないのじやないか。内臓つて生殖の関係魚類の産卵に影響をしては将来に非常に大きな影響をもたらすのじやないか、こういうふうに考えるのでありますが、こういう点につきましては河端さんあたりはどういうふうにお考えになつていらつしやいますか。
  152. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと海野さん、今のめばちの問題がもう少し残つている点がありますから、その点をやりましてから今のを……。
  153. 海野三朗

    海野三朗君 ああそうですか。
  154. 小林孝平

    委員長小林孝平君) じやちよつと今の問題楠見委員の質問に関連してお尋ねいたしますが、先ほど六カ月たてば大体いいだろうというお話でございますが、それはどういう根拠でございますか。
  155. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 六カ月と申しましたは、放射能がだんだん減少して参りますね、それから又海の水ですからだんだん拡散して参ります。そうしますと、水が汚染されているという立場から申しますと、六カ月もすればあのあたり海域は相当汚染の度が少くなるのじやないか、こういう見解を持つております。
  156. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 重ねてお尋ねしますけれども、今のお話だと、それはその北赤道海域汚染が非常に程度が弱くなつている。だから外から今度新たに入つて来たものは安全でしようけれども、一番最初におつしやつたように、めばちというものが大体そこに定住しておるということになれば、もうすでに今までに皆食つてしまつているのですね、プランクトンとか或いは海水から直接……、そうすれば半年たつても魚自身は食つたものはもうなおらんということになるのですかどうですか。
  157. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 食つたものはこれはやはり新陳代謝によりましてどんどん出て行きます。大体九〇%は出て行くでしよう、僅かの間に。例えば原子福龍丸の灰なんかも持つて来ましてそれをプランクトンにつけまして、それを魚に餌にしてやりますと、一遍お腹を押すと九〇%くらいなくなつてしまうのです。もう排泄されてしまうのです。
  158. 楠見義男

    ○楠見義男君 それに関連して甚だ幼稚な質問をして恐縮なんですけれども、人間の場合にはだんだんと白血球がなくなつて来てそれで参つてしまいますね。ところがその魚の場合にはそれは又新陳代謝で或る一定の期間が過ぎたらもう安全になるというふうな、まあそういうことはあるのでしようか。
  159. 藤永元作

    参考人藤永元作君) それは言えないと思います。
  160. 楠見義男

    ○楠見義男君 ですから午前中のようにやはりそういう研究が結果がないとですね、今早計に、と言つては失礼ですけれども、そういう結論が出ないんじやないでしようか。
  161. 藤永元作

    参考人藤永元作君) ですからたとえ海の水が赤道反流のほうがきれいになりましても、魚そのものの放射能というのは残ると思います。ずつと長く。従いまして、南の特に赤道反流の魚はよそでとれるものよりももつと船の上でよく洗つて内臓を取つて、そうして持つて来るというようにすれば被害の程度は非常に少くて済むのじやないかと思います。
  162. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 半年たてば大体非常に弱くなるだろうというお話ですけれども、そういうことになればますます半年たつたらもう一回調査をやらなければならんということになるのじやありませんですか。
  163. 藤永元作

    参考人藤永元作君) われわれとしては、まあできれば先ほどもお話がありましたように、年に一遍或いは二回くらいを繰返してやりたいのでございますが、なかなかこう周囲にいろいろな事情がありますので、そうたびたびは船は出せないと思いますが、併しまあできる限りの方法を講じまして、今後も南の海のほうからデ—タをとるということにはしたいと思つております。
  164. 小林孝平

    委員長小林孝平君) もう一度繰返してお尋ねいたしますが、いろいろの事情があつてとこうおつしやいますけれども、それは半年たつて汚染が直らんということになれば、これは漁業の問題のみならず、容易ならん問題だろう思うのであります。そのいろいろな事情というものは、そういうもの以上に更に重大な支障があるものかどうか、いろいろの事情というのはどういうことなんですか。
  165. 藤永元作

    参考人藤永元作君) まあ予算の問題もありますし、そこに行く専門の船というものはなかなかないわけでありますから、やはり学校の船を借りる、今のところとしては学校の船を借りる以外に手はないと思います。予算の関係で……。普通の調査船ですと、調査員も寝れるという部屋というものは三つか四つ、せいぜいあつても十はない。ところが乗込むものは相当、少くとも十五、六人の者は乗つて行かなければなりませんし、実験室の設備も要りますので、従つて学校の船を借りるより方法はないのですが、学校の船といいますと、これは又調査船でありませんし、学校の生徒の実習をやるのが建前になつておりますから、そう勝手に借りるということにも参らないわけであります。そうしますと、我我が半年に一回やりたいと思いましても、なかなか半年に一遍ずつやるわけには行きませんので、これからはできるだけ南のほうに行く船、漁船のみならず向うのほうに航海する船にいろいろなことを頼みまして、私どものほうでやれる、範囲のことをやつてもらおう、こう今考えているわけであります。
  166. 小林孝平

    委員長小林孝平君) これは顧問団のほうといたしまして非常に遠慮されて、船がないとか、或いは予算といつたつて僅か二千万円ですが、それほどに遠慮されておられるようですけれども、私は顧問団としてそういうものを乗越えて、どうしてもしなければならんという意見があるのじやないですか。その二千万円くらいの金、或いはちよつと船を借りるというような支障のためにやめてもいいという程度にお考えになつているのか。その程度にまあ放射能による被害というものを軽くお考えになつているのかどうかという点を重ねてお尋ねしたいと思います。
  167. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 顧問団の立場からいたしますと、相当な障害がありましても、これを乗越えて、半年先に船を出すとか、或いは年に二回ぐらい船を出す、そういうことにいたしたいと思つております。
  168. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の藤永さんの御意見の点ですね、これは顧問団とか調査団とかというような立場で、今回調査をされた結果を将来に生かして行く上から言つても、しつかりとした一つ意見を確立して頂きまして、それを行政庁に対し強い主張して頂きたいと思うのです。私ども実はいろいろ午前中も質問申上げておるのは、国会のこういう審議の形式でありますから、或いは不慣れのかたは何だか詰問されているようなふうにおとりになつているかたも或いは中にはおありになるのじやないかと思つて、内心惧れているのですが、実は私どもは、長日月に亘つて非常に御苦労をせられた調査団かたがた、或いは顧問団かたがたに対する感謝の念で一ぱいなんです。ただその折角御苦心せられた結果を如何に活かして行くかということがこの委員会における、わざわざおいで頂いて御意見お話を承わる目的だと私は考えておる。そこで、今回の調査せられた結果を総合して、これからどういうふうに持つて行かれるのか、この点が一つ又大きな問題だと思つているのですが、これは午前中も藤永さんからもお話があつたわけなんですが、更に例えば青山委員からも、アメリカ向けの罐詰原料のまぐろ等について、向うから相当勝手なことも言つて来ておる。それに対しては強く科学的に立証されて、安全なら安全ということを言つてやらなければならん。そういう立場からしましても、今回の調査は非常に貴重な、日本としては力強く主張をなし得るその材料を提供して頂いていると思いますが、同時にその調査を総合した結果を今後どういうふうに持つて行くのかということが、これは又非常に大きな関心事だと思うのであります。そこで午前中も、例えばプランクトンの繁殖状況がどうなるだろうかとか、或いは汚染魚類自体の変化がどうなるだろうかとか、海流の動きに伴う汚染区域の拡大がどうなるであろうか、或いは逆に又時日がたつに従つて汚染の度合が薄れて行くその程度はどうなるだろうかというようなことを引続いて我々は知つて行かなければならんと思うのであります。そこでそういうような、今申上げたようなことの経過が、今まで御苦心せられてお集めになつ資料を今度は持ち寄つて、そういうことで結果が得られるものか、或いはそうでなくして、どうしても三月に一遍とか或いは六カ月目に一遍とか、そういうふうにして又調査をしなければ水の汚染の度合の変化とか、或いはプランクトンの含有状況とか、いろいろの問題はどういうふうにしてわかるのか、これは先ほど申上げたように、非常に今回の第一次の調査の成果を活す上において、又将来対米その他水産輸出の観点から、或いは又国内消費の観点から非常に大きな問題だと思うのです。そういう点について一つ詳細にお話を承わりたいと思いますると同時に、冒頭に申上げましたように、その結論に対しては、これはお尋ねじやなしにお願いなんですが、しつかりとして強く主張すべきものは行政庁方面にも主張して頂き、我我は又それに対して立法府の立場から推進すべきものは推進したい、こういうふうに考えるわけでありますから、どうぞその点お願い申上げますと同時に、お尋ね申上げる点については詳細に一つ御説明頂きたいと思います。
  169. 藤永元作

    参考人藤永元作君) 今後どうするかという方針をしつかり立てなくちやなりませんが、それはやはり今持つて参りました資料を余すところなく検討いたしまして、それから海水汚染状態、或いは海水も随分持つてつておりますから、それがどのように変化するか、或いはプランクトンも持つてつておりますから、それがどのように変化するか、そういうことを十分見極めまして、それから今度は今後の方針は行政的にはどうやつたらいいというようなことも樹立されるのじやないか、かように思つております。まだ帰つたばかりでありまして、荷物も本日漸く揚げるという状態なんでありまして、そういう総括的な或いはしつかりした将来の方針というものは、もうあと二カ月ほどお待ち願えればはつきりした見通しの下に我々はどうやるべきであるという見解は発表いたしたい、かように思つております。
  170. 島村軍次

    委員外議員島村軍次君) 海流関係についてどなたからでも結構ですから……。只今承わりますと、赤道以北についての被害というか、放射能の被害がよく現われている。以南については少い。そこであそこに出ております図は、あれは海流関係か何か知りませんが、一体海流流れというものは我々素人ですからよくわかりませんが、四つの流れがあるとかいうお話だつたのですが、それは日本の沿岸及び魚族にどういう関係を持つものかということを一つと、それからもう一つは、素人で考えますというと、地球の自転によつて放射能流れる道というか、方向がおよそきまつて来るのじやないか、それが例えば雨に乗つてそうして新潟へ落ちるとかいうようなことが新聞へよく出るわけなんですが、そこで御調査の結果によつて海流流れ方の基本がどういうものであるかということと同時に、その日本近海に及ぼす影響、及び地球の自転等の関係で他の地域、つまり例えばアメリカであるとか、或いは西部のほうへどういうふうな影響のあるものかという基本的な問題についてアウト・ラインだけ一つ御説明を願いたいと思うのですが、これらの問題は国民が非常に関心を持つておるばかりでなく、素人的に一体どういうふうに海流関係でどう流れて来るかというような問題は重大な問題だと思うのですが、概要だけ一つ御説明願いたいと思います。
  171. 宇田道隆

    参考人宇田道隆君) ここに図が出ておりますから、これを見て説明いたしたいと思いますが、ここに赤い線がありまして、これは海流の潮境であります。それからここにも一つ潮境があります。この間を流れている大体北緯三度くらいから北緯八、九度くらいの間に流れているのが赤道反流と申しまして西から東に流れます。流速は一ノット乃至ニノツトの流れが普通であります。その北に北赤道海流というのが、これは大体北東貿易風の区域でその風のエネルギ—を得て東から西に流れ海流であります。それから北赤道海流は大体北緯二十度あたりまで普通及ぶものであります。今回の調査によつてこういう新らしいうず巻きが今まで知られなかつたものが発見されております。これは実はアメリカのまだ公表されていない報告に数年前に一部出ておりまして、非常に私ども不思議に思つておりましたが、今回又出て参りまして、今までの記録には曾つてないもので、この点これから一つ検討いたしたいと思いますが、それがあるためでございましよう、多分今度ビキニから出た放射能がこういう流れによつてこの区域のほかに北のほうにちよつと出ております。この流れの反流が西から東へ行くためだろうと思いますが、ここにこういうものが若干出ております。それでこの海流系はこの北緯三度以南で赤道を越えて南赤道海流というものが今度は東から西に流れております。非常にこの方面は海流の複雑なところでありまして、断面を見ますと、北のほうと南のほうの冷たい水がずつと潜つてこの赤道反流あたりで上つて上昇流を示して、その関係でここは水温が非常に低い帯を現わしております。そしてここは漁場でありまして、先ほどもお話がありましたように、まぐろ種類もこの赤道反流に棲んでおるものと北赤道海流に棲んでおるものとははつきり分れております。それから南赤道海流のものと、こういうように棲み分けをいたしております。そのほかに緑に染つておる北緯十度の北に、ここは八度ぐらいのところですが、その外側にもう一つ橙色に染つているのがありますが、こういうところに汚染区域が現われております。大体この区域は先ほど繰返して言われておるように、北赤道海流の区域でありますから、この全体の影響は東から西に動いておるものと、一部ここで戻つておるものもありますけれども、又これは当然北赤道海流に乗つて西に流れますから、これはこちらのほうに行つてフィリピンのほうへ行き、それから台湾の東を通り、沖繩の北を通つて日本の南海をずつと廻りますのに、この流速で行きますと、ここで測つたのは大体一ノットか一ノット半くらいの程度でありますから、仮にこれが一日にいたしますと二十乃至三十マイルであります。日本までのこの道をずつと辿つて行きますと、三千六百マイルくらいで、この伊豆のあたりまで行きますから、二十マイル三十マイルとして割出しますと四カ月かかります。それで三月一日から四カ月とすれば七月頃になるわけであります。二十マイルといたしますれば約半年になります。それでありますから九月頃になるのであります。それからこの水の影響を受けたものがだんだんと動いて参りまして、検出できればその頃を大体中心として現われるものではないか、最初の山か……。この時期が三月から五、六月の中頃まで相当長い間続くものであろうと思います。併しただ水がそのまま来るものではありませんで、途中雨も降りますし、特に東支那海に触れる所になりますと、この区域では非常に大陸の揚子江とか黄河とかの水の影響を受けた非常に塩分の薄いものと混合いたしまして水が薄められる。その水の影響で相当薄められ、放射能は先ほども言いましたように、この海水と半減期の関係で数カ月の間に減つて参ります。この両方から考えまして、黒潮は台湾から日本の沿岸を廻り、沖合に参ますときには相当減つておる。而もそれが日本の沿岸に入つて来ますのには、この黒潮の分流で入つて参りますので、極く一部分しか入つて来ないので非常に沿岸水で薄められる。それから丁度日本はその頃梅雨期か台風期に入りまして、非常に雨の多い時期でありまして、それによつて薄められる沿岸水が沖合に拡張し上うという勢力が強いのでありますから、沿岸においてはよほど検出しがたくなるのが普通であろうと想像いたされます。ただこれは想像でございましてやはりビキニ海域でいたしたと同様に、これは検査をいたすべき性質のものであろうと思います。  これからアメリカのほうにどういうふうな経路を通つて影響するかと申しますと、北赤道海流は黒潮を廻つて約三年ぐらいののちに、早ければ二年後にシアトル、カルフォルニアの沿岸に及びますから、これは殆んど問題にならないのではないか。それからこの区域、赤道反流の区域でありますと、一年ぐらいのちに一部が中米沖合に及ぶわけでありますから、これも余り大して問題にならないであろうと思います。結局空に上つた灰が降る、これは大気の循環でありますから、勿論すぐ現われるであろうと思います。大体海流の概略はそのようなものでございまして、赤道区域の海流というのは、最近アメリカでも頻りに調査いたしておりますが、これは相当今後も繰返して観測されなければいけないし、この辺は特にうず巻の多い区域でありまして、そこは非常にいい漁場にもなつているのであります。水産上も、今後又こういう危険防止の関係からも調査をいたすべきものではないかと思うのであります。  それから申し落しましたが、夏はニユ—ギニアの北側を、海流が東から西にミンダナオ、セレベス方面に向つて流れる、その海流は夏は強くなります。北半球では冬は反対に、流れが強くなるのであります。大体御質問の点についてお答え申上げましたが、何か足りないところがありましたら又申上げます。
  172. 島村軍次

    委員外議員島村軍次君) 私のお聞きしたのは、只今海流のことに関連して日本の近海に及ぼす影響は大体わかつたのですが、そこで只今お話を承わりますと、直接地球の自転とかいうものに関係ないのでありますか。
  173. 宇田道隆

    参考人宇田道隆君) 地球の自転と流れ、風の動きは関係があるのでありまして、あらゆる運動物体が地球上で地球自転の偏向力と申しますか、地球が廻りますために、北半球では絶えず右手にふれる力が働きます。そのために北赤道海流はこう行つてこういうような運動をする。貿易風に追われ、北のほうのところでは偏西風で押上げられる、偏向力があるためにだんだんこういうような運動をいたすのであります。先ほどもお話のあつたようにここの黒潮という流れが強くなるのはこの偏向力のためであります。少し専門的な話になつて恐縮でありますが、この海の密度が非常に西に全体として寄りますから、そのために非常に西側に強化されるのであります。そういうことのために黒潮という流れは非常に発達します。反対に南半球では、濠洲の東に非常に強い流れが南下します。それからこちらのほう、ペル—に北上するのをペル—海流と言います。アメリカの沿岸に行く海流をカリフォルニア海流と言いまして、これは皆自転の偏向力によるのであります。
  174. 島村軍次

    委員外議員島村軍次君) そこで素人の質問ですけれども、貿易風と海流との関係はわかりましたが、只今説明によりますと、ビキニの被害というものはむしろ海流関係よりは灰のほうに影響がある。空気というか、つまり風の流れ海流との釣合いというか、流れ方の問題についてちよつと簡単に説明して下さい。
  175. 宇田道隆

    参考人宇田道隆君) 大体海流は今申上げましたように風のエネルギ—を受けて運動をいたすのであります。今の灰のことは、ビキニから爆発のときに吹上つた灰は三万メ—トルぐらい上に上つております。そして上層気流に乗つて動くわけであります。最初三、四月の頃にはこちらの方向においてはジエツト、ストリ—ム、偏西風が非常に強く、中緯度ではそのために西風が三、四月の冬には南のほうにずつと下つて参りますから、そのために上層からずつと東側のほうに灰が多く降るようになります。そして重い灰が先に落ち、細かい灰はあとで落ちるので遠くまで運ばれたわけであります。それでこちらの方面に非常に灰を被つた船が多かつた。一千マイルも離れたところを通つた船が灰を被つておる。ところがだんだん時期が夏になりますにつれて、赤道地方ではジェット、ストリ—ムが北に動くのが普通である。赤道東部にありましては、上空まで東の風に送られるために、だんだんこちらのほうに多く降るようになります。そして全体に上へ行つたものの、風がだんだん自転偏向力でこういうふうに曲げられまして、反対貿易風になる。だんだん自転偏向力でこういうふうに曲げられて、大体この太平洋の高気圧のめぐるような方向に、日本列島のほうに参る。それでこちらのほうで爆発しても、やはり日本列島のほうに参りますから、日本列島のほうに気流が集まるようになる。谷間と申しますか、やはりそういうふうな恰好に気流の関係では日本はなつております。こちらのほうで若し実験をやれば、当然南半球に多く行くわけでありますか、北半球ですから、極く一部しか南半球のほうに行かないで、主にこういうふうな廻り方をする。それから上のほうに行つて、この赤道の上をぐるぐる廻るものが当然あるわけであります。インドや或いはロンドンのほうや、ほうぼうで検出されておるのは、そのためであります。それで今のお話のように、非常に気流と海流とが似た運動をいたしておりますし、非常に広く影響するのは、勿論上層気流の関係で灰が降るということが影響があるわけであります。ただそれがどういうふうに人体に、天水とかいろいろな関係で危険の程度まで影響があるかということは、これは私個人が申上げるよりも、ほかの専門家のかたがおられますから、そのかたからお話して頂きたいと思います。
  176. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと申上げます。只今安藤国務大臣がお見えになつておりますし、そのほか水産庁の清井長官、岡井次長、厚生省の楠本環境衛生部長が見えられておりますので、一応政府当局に対する質問をここでやつて頂きたいと思います。
  177. 青山正一

    ○青山正一君 安藤国務大臣、又は大臣の御返答願えない専門的なことは一つ水産庁長官から補足御説明願うことにいたしまして、三点ばかり、これはたびたび御質問申上げたのですが、余り私には要領を得ないので再質問いたしたいと思うのです。この水爆実験は、その当時明らかに危険告示区域外において行動しておつた、その行動しておつたわが漁船に甚だ悲惨なる影響を与えておる、これは事実であります。これに関連していろいろな問題が起きて来て、一般国民にまで非常な大きな影響を与えておる、それも事実であります。あらかじめ一定の危険区域を定めて、これを告示したと否とにかかわらず、公海にかかる区域を設定すること自体が現行国際法上の公海自由の原則を侵犯するものではないかどうか、その点についてはつきりした所見を承わりたい、これが第一点。  それから第二点といたしまして、この水爆実験が領土、領海内において行われたものであり、ただその結果が近接の公海に亘り或る影響があつたとしても止むを得ないであろうとの見解があり得るにしましても、これがすでに他国の正当な漁業に重大な危害を及ぼすに至つた場合に、そういつたことが容認されてよいものであろうかどうかということ、先ずこの二点について御質問申上げたいと思います。
  178. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 今の初めの問題は、私がお答えをするよりは、外務大臣に聞いて頂くほうが適当だと思います。  それから第二の問題は、危険区域を設定して、日本の漁船はその外にいたにかかわらずこういう被害を受けたのでありますから、その過失は米国にあると、従つて責任も米国にあると思うのであります。その立場でアメリカに対しまして賠償の要求をいたしておるのであります。
  179. 青山正一

    ○青山正一君 それでは、この第二の問題に関連いたしまして、いま一応御質問いたしたいと思いますが、この水爆実験が米国関係科学者すら予想しなかつたほどの猛威を現わしておる、これは事実であります。そういうところから考えて見まして、仮に広汎な危険区域を設定したからというて、危険そのものを局限できるかどうか、そういうことができるかどうか、実験そのものを中止する以外に途がないじやないか、そういつたことについて日本政府当局としてアメリカと折衝したことがあるかどうか、その点について承わりたいと思います。
  180. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) あのビキニの問題がありまして、今日に至るまでの間、即ちあの実験を数回行いましたが、その行なつておる間に、実験をやめてもらえないかと、或いはやめてもらうとか、或いはもつと区域を別にしてやつたらどうかといつたことに類する交渉はいたしたのであります。併しこれに対しましては、一口に言いますと、簡単に言うと、実験はむしろ世界の平和政策に対する対策としても必要であるといつたような答え、それからずつと続いてやるということは、丁度そのまぐろの漁獲期はむしろ実験を避けるということはできないかというような日本の交渉に対しましては、どうもそうしたいがそうはできない事情があると、というのは、いろいろ、私どもは専門家ではありませんからそういうことはよくわかりませんが、海流関係というのか、どういう関係か、その期間を逸することは非常に実験上困るのであると、従つてそのまぐろの漁業期間を延ばすということは困ると、こういつたような回答があつたのであります。でありますから、従つて日本の政府といたしましては、それだけの折衝なり、交渉はいたしたのでありますが、只今申すように、アメリカの態度がそういう方針であつたということを御了承願いたい。尤も私は外務当局でありませんから、詳しい細かい点はわかりませんが、大体そういうわけであります。  それから、その実験をやめるやめないということが大変問題になつております。私個人の意見から言いますと、これは非常に重大な問題なんだと、実験するほうがいいのか、実験しないでもわかつているからよろしいというか、その判定は容易にはできないと、むしろこの実験禁止ということに対しましては、私個人としては相当の見解を持つておりますが、政府としましては、そこまで私が言うところには達しておりません。併しそのことは、今後俊鶻丸調査がありまして、各専門家が乗つてつていろいろな調査をし、又資料を持つて来ましたから、内地におりまする専門学者諸君のこれから比較研究等がありましようし、更に又日本におきまするそういう調査機関を拡張統一してやることになつております。  もう一つは、この秋くらいに日本学術会議からアメリカの原子力の学者を呼んで日米共同の調査をすることになつておるのであります。これは又アメリカのほうでは、日本から呼ばれてそうやつてやるのならば、これは世界人類のために大変いいことだと言つて、いい気持を持つてこれに応じて来ているようでありますから、恐らく秋頃そういう会議が開けましよう。で、あらゆる知識を網羅し、研究をして、その結論が、この実験をやめてもらうほうがいいのか、或いはそうでなくても制限的にしてやれるか、そういうようなことがこの研究の結果として出て来るのではなかろうかと思います。従つて、日本としましては、そういうあらゆる研究を経ての結果ここに結論を出して対米交渉をすることが必要だと考えておる次第であります。
  181. 青山正一

    ○青山正一君 安藤国務大臣からいろいろな御意見を承わつたわけでありますが、ここに水産庁の長官もおいでになるのですが、水産の立場から考えて長官は、この私の第一点、第二点、その第二点に関連する第三点の質問について、更にお答えを補足願いたいと思います。
  182. 清井正

    説明員(清井正君) 只今安藤国務大臣からお答え申上げましたので殆んど尽きるのでありまして、私から特に水産の立場から御説明を申上げることも実は甚だ困難な実情にあるのであります。ただ率直に申上げますれば、この福龍丸の事件によりまして、漁業者が非常に影響を受けたということは、御承知通りであります。これはひとりまぐろ関係の業者のみならず、一般の漁業者がこれに基くいわゆる魚価の低落というようなことで、全日本の漁業者が非常に影響を受けたということであります。無論これが対策につきましては、私どももつとにいろいろ努力をいたしておつたのでありまするが、まあとにもかくにも実情をはつきり把握することが何としても肝心だということで、只今も御報告がありまして俊鶻丸の派遣ということになつたのであります。この問題につきましては、私どもも、只今も安藤大臣からお話がありました通り、外務省事務当局を通じまして、私ども水産の立場からの率直な声を十分通じたのであります。そこでいろいろ折衝しておりましたが、只今の大臣の御説明通りのような結果になつておるのであります。私どもといたしましては、今後できる限り具体的な事実をはつきり把握いたしまして、それに基いて正確な資料に基く正確な判断の下に速かに正常な状態に戻るような措置を講じて行くのが、私ども水産の立場からすれば最大のなすべきことであるのでありまして、只今も、午前中の御質問にもありました、今度の結果に基く再派遣の問題等につきましても、これは私どもすぐお答え申上げる段階でございませんが、なお今後関係の学者の研究等を通じまして、必要があればそういうことも考えなければならんのではないかと思つております。いずれにしましても、只今申上げる段階ではございませんので、学者の正確なる判断の結果に基いてきめなければなりませんので、いずれにいたしましても今後の問題につきましては、とにもかくにも全力を尽してできる限り正常な状態に早く戻したいということを念願いたしておる次第であります。
  183. 青山正一

    ○青山正一君 先ほど第一点について御質問申上げたところ、これは外務大臣の管轄である、こういうふうなお話でありましたのですが、少くとも私どもの考え方といたしまして、これは国際法上の公海自由の原則を侵しておる、こういうふうにみなしても僕は差支えないのじやないかと、こういうふうに考えております。若し国際法上の公海自由の原則を侵犯するものとしたならば、これは李承晩ラインの宣言のように、或いはアラフラ海の領有の宣言の場合と同様の態度を以て日本政府がアメリカ政府に臨むべきが僕な本当の途ではなかろうかと、こういうことを私は意見として申上げておきます。
  184. 海野三朗

    海野三朗君 只今青山委員からの御質問に対する安藤国務大臣のお答えを伺つたのでありますが、アメリカの態度、人類のために云々、平和のために云々と申しますが、今現実に漁業方面に対しては少からざる致命的打撃と申しても過言ではない大問題を引起しておる。これに対して日本政府からの要求があつた。それに対するアメリカの答弁は、私は甚だ当を得ないものであつて、甚だけしからんことである。人類愛を説くアメリカ、それが仮面をかぶつたやり方であると、私には考えられるのであります。又院議においても、この原爆の実験に対しては反対の意思を表明しておつたのに、岡崎国務大臣は、現に水爆の実験には協力するというようなことを新聞で発表をしておるのであります。国務大臣としましては、外務大臣から聞けとおつしやるけれども、やはり岡崎国務大臣と同じ考えでいらつしやるのでありますか、アメリカのやり方が間違つているのだと、とんでもないことだとお考えになつておるか、我いはアメリカの答弁が正しいとお考えになつておるか、これは率直なる安藤国務大臣の御所見を承わりたい。
  185. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 私は率直に言えば、アメリカの実験、それが他国、殊に日本に及ぼす被害があつても、そういう目的のためだからそれは止むを得ないからと言つてあの実験に協力するがいいのだとは思つておりません、私の意見としては……。併しながら、それならば直ちに実験は悪いのだと、そうも言い切れない。それにつきましては、専門学者の研究の意見もよく聞かなければならないし、いろいろありますから、そう簡単には言い切れませんが、とにかく人類に被害を及ぼし、それから漁獲物に甚大な被害を及ぼし、いろいろな影響があるその実験については、アメリカは非常に反省をして今後の態度を考えなければなるまいと、幸いにこの間五回でありましたか実験が終つたのでありまして、今後このままで行けばアメリカはまだ実験をするつもりかと思いますが、今幸いにそれが休んでおるのですから、この次の実験をするということがわかつたらば、それまでの間には日本としてはお説の通り適当なる対策を立てて行かなければならないと私は存じております。
  186. 海野三朗

    海野三朗君 只今お話でよくわかりましたが、あなたも閣僚の一人でありれるのだから、岡崎外務大臣のあの放言、私どもは放言と言つています。ああいうような水爆の実験に協力するというようなことは私は人間として言えないことだと思うのです。あなたも閣僚のお一人でありまするから、岡崎君にはやはりあなたのほうからも強くそういうことをお話をして頂きたいというふうに私はお願いをしておきます。
  187. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) よくわかりました、あなたの御注意は……。それでこれは言わないでおいてもいいのかも知れませんが、そこまで話が出たから言つておきますが、岡崎君に対して再三私は話をしました。今まで参議院の水産委員会、或いは衆議院の水産委員会に出ました話、即ち国論の赴くところそれをよく通知して、且つ又私の個人としての意見を加えて岡崎君には意見の交換をしてあります。更に又今度の被害の賠償につきましてもしつかりやつてもらいたい、軟弱外交と、日本の外務省は軟弱外交と言われないためにやつてもらわないと困るということは十分言つてあります。併しこれは私の専門じやない、私が担当しているのじやありません。政府といえば勿論一つでありますから責任は無論辞しませんが、担当は別になつておりますから、岡崎君を通じて十分意見を交換し、注意はしてあるということを御了解願います。
  188. 海野三朗

    海野三朗君 それでは只今海流の……。
  189. 小林孝平

    委員長小林孝平君) ちよつと、今大臣に質問をしておりますから……。
  190. 楠見義男

    ○楠見義男君 お尋ねする前に私甚だ迂闊なことを伺うのですが、ビキニ環礁における水爆被害に関しての日本政府の代表と言いますか、担当大臣として安藤さん今日見えられておるのでしようか、そういうことでしようか、最初に。
  191. 小林孝平

    委員長小林孝平君) そうでございます。
  192. 楠見義男

    ○楠見義男君 安藤さんに数点伺いますが、私は坐つてお伺いいたしますからお答えも坐つてお願いいたします。  先ず最初に、先ほど青山委員からお尋ねになつた公海における危険区域設定の問題について、青山委員とそれから安藤さんの間の質疑応答の点はよくわかりました。ただこの問題は外務大臣の所管と言えば所管かもわかりませんが、これだけ大きな問題になつて来て、而も経過が相当過ぎたのでありますから、日本政府としての考え方なり、或いは態度というものはすでにきまつておるのじやないかと思うのですが、まだ政府全体としての態度がきまつておらないのでしようか、おらなければこれは止むを得ませんが、外務大臣としての意見を伺わざるを得ませんが、日本政府の態度がきまつておるとすればこれは閣僚として御承知のはずでありますからその点をお漏らし頂ければ非常に仕合せだと思います。
  193. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 政府としての態度がきまつていることはこの間のビキニの水爆実験が日本に対して甚大なる被害を与えた、その責任はアメリカにある、従つてその損害賠償は当然アメリカがすべきことである、こういう態度はきまつております。従つてその方針に基いて対米交渉を進めているのであります。併し先ほどからも問題になつておりまする。それじや今後の水爆実験については禁止という態度で日本が行くのか、或いはそれに対してどうするのかというその点に至つてはまだきまつておらないのです。
  194. 楠見義男

    ○楠見義男君 青山委員のお尋ねになつた点は、今安藤さんからお答えになつたことは第二点、第三点の質問に対するお答えであつて、第一点の、いやしくも公海に一国が独自で以てここは危険区域だと、従つて航行はしちやいかんとか、或いはその危険区域内における損害は受けてもこれは受けたものが悪いのだ、そういう意味の危険区域の設定は国際法上違法じやないか、これを適法だというふうにお考えになつておるのか、或いは日本政府としては違法だという意見に固まつているのか、この点をお尋ねになつたと思うのです。この点は先申上げたようにもうこれだけの問題もあり、特にビキニ等の問題を中心にしてその問題が大きくなつたのだから政府としては考え方は決定しているのじやないか、こういうふうに私は思うのですが、その点は如何でしようか。
  195. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) それはまだ本当は決定していないのです。と言いますのは、今までも私らのほうで打合会といいますか、協議会といいますか、各省を集めて、私が議長をして各省の人が寄られて、そういう場でいろいろ話も出て研究もし、又そのほうから国際法学者等にも二、三研究を煩わしたこともあります。が併しそれが一つきまつた結論にまで行つていないのです。それからもう一つは政府のことも私が外務大臣……、私が第一の青山さんの御質問に対して言わないということも、そこまでまだ突きとめて最後の結論はやつておりません。さればといつてそれをやらないのじやないのです。政府の怠慢というわけではないのです。研究をしたり検討はしておりますが、最後のこれはなかなか外交上の交渉にもなるし、又国際法上のいろいろ問題もありますからそう簡単に行かないからそこで最後の結論には行つておりません。最後の結論には行つておちないことを私がここで答えますと政府の思想統一が欠けるといけないと思つてそれで言わなかつたのであります。
  196. 楠見義男

    ○楠見義男君 その点はよく了承します。  その次にお伺いしたいのは、これは或いは今までの水産委員会でたびたび御質問があつたり、或いは又お答えがあつたかもわかりませんが、ビキニ問題に関連しての我がほうの被害、この被害には直接の漁獲物を埋没したり廃棄したり或いは船自体を処分したりというような直接被害と、今回の問題を契機として一般に魚価が安くなつたとか、或いは売れなくなつたとかいうような間接被害、この間接被害の調査は甚だむずかしい困難な問題だと思いますが、こういう被害の調査、現在までにおける直接被害及び間接被害の額というものは、これは罐詰がアメリカに対して売れなくなつたとかそういう間接被害もありましようが、すべてそういう被害を直接被害、間接被害に分けて政府としてはどういうふうに見積つておられるでしようか、その点を。
  197. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) その点は詳しく調べてあります。あらゆる方法を以て又あらゆる聞くべきところには全部聞いて詳しく出ておるのです。それは詳しいことはむしろ水産庁長官から聞いて頂きたいが、私は極く大体のことを言いますと、間接損害と直接損害をはつきり分けてあります。併し直接損害と間接損害と、一体間接損害というものは非常に実はむずかしい問題です。ものが固まつておるのじやなくて、間接損害の中には商売関係、流通関係、いろいろ動いていることを捕えるのだから、どこまでが間接損害という限界をつけることが困難だ。併しいろいろ考えて見て直接損害と間接損害とはつきりしている間に中間的損害があるだろう、その中間的損害を直接損害のほうに入れてもいいのじやないかという考えを私初め水産庁その他各省の間では持つておるのであります。ところがアメリカのほうでは、アメリカは責任は認めておるわけです。従つて損害賠償はしようという態度に出て来ておる、併し直接損害についての範囲、従つてその額になりますね、それがまだきまらないのです。というのは、向うにもいろいろ議論があるでしよう、ありましようがそこがきまらない、だが大体言うと、これは今向うのをしつかりつかんであるのではありませんが、これは私の察しですが、直接損害は賠償しよう、間接損害はどうも限界がはつきりしないし、どうもそういう例が今までないから間接損害までには及ばないのじやないかというそういう感じがするのであります。併し今我々のほうはその間接損害ということは本当の間接損害というものはどうもこれは仕方がない、こつちで打切るより。不幸であるけれども、遺憾であるけれども打切つてしまつても仕方がない。中間的損害で而もその中間が直接のほうに近いと言われるようなそのときの環境、事情のあるものは直接損害、或いは準直接損害としてアメリカから賠償をしてもらわなければいけないと、こういう態度を実はとつておるのであります。
  198. 楠見義男

    ○楠見義男君 これは対米折衝等でいろいろお差支えがあるなら強いてお聞きしなくてもいいのですが、大体のところおわかりになれば。
  199. 清井正

    説明員(清井正君) 只今楠見委員からお話のございました点、大臣からお話がございましたが、それ以上数字的な点ちよつと申上げかねるのであります。なお大臣の御説明いたしたものを少し細かく申上げて御参考にしたいと思います。  私ども先ず考えておりますのは、福龍丸の直接の関係、これは御承知通り福龍丸は只今政府で試験研究用に買上げをいたしておるわけであります。なおこれはアメリカに対しては別途損害賠償を要求しておるのであります。その関係と、それから福龍丸の中に無論私物、油その他船用品が入つておりましたからそれも買上げると同時にアメリカに賠償を要求しております。そのほか御承知通り患者がありますから、これは別途他に詳細な計算をいたしまして、患者の治療費、慰藉料等につきましては完全な計数を出しまして、私どもの計算いたしましたものと合計いたしましてアメリカのほうに出しておるのであります。私どもとしては福龍丸の直接の関係、それからそれに第二といたしましては、こちらで御承知通り遠方のまぐろが入つて参ります港を五港指定いたしまして検査を厚生省でやつておりますが、そこで検査をいたしました結果廃棄と決定して処分いたしたものがあります。それに対する補償でございます。これは現在まではたしか百四十九隻該当いたしております。約四万貫くらいの数字を廃棄をいたしたかと思いますが、そのものにつきましては当該廃棄された漁獲物の補償並びに休業等をいたしましたのでその間の補償等およそそれについて考えられるべきもの全部デ—タを出しましてそれについて損害額を研究しておるのであります。無論その中には福龍丸の漁獲物も入つております。そういうわけで福龍丸関係と直接日本政府が検査をいたしまして廃棄をいたしたものの数字、これが第一に挙げられるわけであります。  その次に挙げられますのは危険海域を遠廻りして、迂回をして漁場に行つた分であります。危険海域設置に基く漁業者の損害とか、この損害は非常にむずかしかつたのでありますが、大体南方に参りますまぐろ漁業者の数もわかつておりますから、特定しておりますから全部逐一当りまして、曾つて承知通り扇形にアメリカが危険区域を拡大いたしましたが、その危険区域を避けて南方に出漁をいたしましたので、その航海が長くなり、それが漁獲物に間接に影響するわけでありますので、それがどの程度に達するかという金額を想定いたしまして、それを第一に計算いたしたのであります。  その次に計算いたしましたのは、まぐろ漁業者の魚価低落の問題であります。これは一般に魚価が低落しておるのでありますが、まぐろが殊に一番ひどい影響を受けております。まぐろ漁業者の魚価の低落を計算いたしまして、これはやはり或る程度日にちを限らなければなりませんので、やはり福龍丸の事件の起つたのを契機といたしまして、あの事件を一応の限度といたしまして、あの時期を見合つてまぐろの魚価がぐつと下つておりますからそれによつてまぐろ漁業者が少くもあの損害がなかつたら取れたであろうという金額を想定いたしまして、そこでまぐろ漁業者の魚価低落による損害の計算をやつたのであります。  その次の市場混乱に基く損害であります。市場混乱に基く損害額を二つに分けてその一つは只今大臣からお話のありましたいわゆる事件直後の数日間の損害額と、それから以後引続き起つた損害額というものを分けてあります。第一のほうは、これは同じ損害と申しましてもいわゆる原料高製品安という関係であります。これは産地、消費地の仲買と取引業者も入つております。それから練製品、焼竹輪等そういつた加工品も入つております。およそ関係業者から全部入れまして極く猛烈な勢いで値段が下つたわけであります。結局買つたときよりも売つたときのほうが安いという現象であります。それを押えましてそれを一つ挙げました。その次には引続いてずつと魚価も低落いたしました。それに基く一般関係者の損害額を計算いたしたのであります。  それから最後にはいわゆる事件処理費と申しますか、本庁及び関係地方団体、地方庁、それから市場関係、或いはその他今度の事件によつて関係の官民が支出いたしました経費を事件処理費として計算をいたしました。この計算が外務省を通じてアメリカに提出をいたしておるわけであります。  賠償の点についての交渉の経過につきましては只今大臣から御説明申上げた通りであります。
  200. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 金額はどのくらいになつておりますか。
  201. 清井正

    説明員(清井正君) 金額の点につきましてはちよつとまだ交渉の都度……最中でありまして、ちよつとここで申上げることは如何かと思いますので差控えさして頂きたいと思います。
  202. 松岡平市

    松岡平市君 議事進行……、非常にたくさんの参考人を呼んで委員会を開いておられるわけであります。俊鶻丸調査報告関係のある事案に絞つて成るべく直接関係のある事案に絞つて、それに直接関係のないことは参考人各位もいろいろお忙しいでしようし、非常にたくさんいらつしやるのだからそれだけを早く済まして、それらのかたがたはお忙しいから参考人としての用務をお済まし願つて別途に委員会を進行するようにして頂きたい。議事進行について希望を申述べます。
  203. 小林孝平

    委員長小林孝平君) 承知しました。
  204. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の松岡さんのお話御尤もで、実はその点、私今伺おうと思つていたところなんですが、午前中から実は非常に御苦労になつ調査団調査の結果について御報告を承わつたのであります。そうしてその調査の結果をこれからどういうふうに持つて行くかということについての考え方について意見をお伺いしたり、或いは又我我の意見を申上げたりしておつたのです。まだ荷物が本日やつと陸揚げされる程度でこれからの問題のいろいろ検討はもう一、ニカ月要すというような御報告もあつたのです。私どもの極めて素朴な感じなんですが、今までの調査は、これは言葉は適当じやありませんが、この地域ではどういう状況だといういわば静態の調査のような気がするのです。それがこれから例えばその地域のプランクトン汚染されてプランクトンがどういう変化をして行くだろうかとか、或いは汚染された魚がどういうふうに変化して行くだろうかというようなことだとか、或いは海流がどうなつて行くだろうか、或いは汚染された水がどういうふうに薄まつて行くだろうかというようなことは、これからの非常に大きな問題だと感じておるわけです。そういう問題が今回の調査の結果それを総合して、陸揚げをして、例えば一つ水がどういうふうに薄れて行くか、だから例えば三カ月先にはもうその水域の魚は大丈夫だとか、或いは六カ月先には大丈夫だとかいうふうになるのかどうかということは、集められた資料を陸揚げしてそこで調査をしてその調査でわかるかどうかというと、私は個人の極めて素朴な感じですが、なかなかむずかしいんじやないかという気がするんです。やはり御報告の中にも六カ月くらいはこの地域はこの漁業は遠慮したほうがいいだろう。こういうような御報告も実はあつたのですが、果して六カ月目に安全なのか、或いはもつと早く五カ月目にはもういいのかというようなことは、やはりもう一遍行つてつて見なければわからないんじやないかという気もする。併し今回の調査でもいろいろ御苦心談を伺つたんですが、その御苦心の中にも設備が不十分であるとか、もう少し大きな或いはスペースのある、或いは実験設備のある、研究設備のあるそういうような船で行けばもつとよかつただろうというようなお話もお漏らしがあり、又一方にそれに対しては現在の水産庁の入手し得る限度においてはあの程度の貧弱な練習船しかなかつたというようなお話があつたり、まあいろいろあつたんです。要するに私どもはこれだけ御苦労をかけて、而も科学技術陣を大きく言えばその方面の専門的な技術員を総動員をして今回の調査をやられたその結果には満幅の信頼を置きたいと同時に、これから出て来る調査結果、或いはその結果に基く今後の方針等についてもこれは満幅の信頼を置いて参りたいと、こういうふうに思つておる。そこでその調査の結果これはどうしてももう一遍行かなきやならんというような場合には、これはまあ希望なりお願いなんですが、是非調査陣の意見を尊重して頂きたい、政府としては。まあ前回は二千万円程度であつたそうでありますが、いずれにしても対米折衝をするには我がほうとしてはしつかりとしたデ—タに基き、又向うを納得させるだけの正確な調査でなければこれは幾ら口先で強いことを言つて資料がなければ駄目なんですから、そこでそういう調査陣の結果について非常に尊敬といいますか、信頼をし且つ尊重してもらいたいというふうに我々はお願いをするのですが、同時に政府としてもその点はお考え頂けると思うのですが、如何でしようか。その点を先ず一つだけお伺いしておきたい。
  205. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 楠見さんの御希望の通りに私は考えます。まあまだ資料もすつかり解決しないからだんだんこれから成るたけ早く結果がわかつて、同時に又それによつて行かない学者、科学者連中とも総合研究をしまして、そうしてどうしてもまだこれでは、今度の調査は非常に骨を折つて献身的にやつてもらつたんで結構なんだが、なお今後もつと周密なる、まだ一遍じやいけないというようなこともあれば、それは再度の調査船も出してやらなきやならないと思いますね。事はこれはなかなか重大なんですから、政府としましてもそういうふうに慎重且つ重大に考えましてあなたの御希望のように仕向けて行かなければならないと存じております。
  206. 小林孝平

    委員長小林孝平君) お諮りいたします。参考人の方には非常にお疲れのところ熱心に御意見を述べて頂いたり、又質問に答えて頂いて非常にお疲れだろうと思うのであります。それで本日は大体あと十五分くらいこの委員会をやりまして一応閉会いたしたいと思いますので、さよう取計らいたいと思いますが……。
  207. 青山正一

    ○青山正一君 厚生省の衛生試験所の方なり、或いは厚生省の予防衛生研究所のお方においで願つたのですが、ちよつと私の提案が果していいものか悪いものかを一つ御意見を承わりたいと思いますが、まぐろの基地として焼津とか或いは三崎とかその他二港あげられておるわけでありますが、今まで三崎へ揚げた品物にしましても、焼津で揚がる南方から来たまぐろにしましても、全部市場の中でいわゆる検査をしておるわけです。そのためにまぐろ以外の近海で取れた魚も非常に影響を受けまして、魚の値下りなり、或いは何かしら黴菌が付いておりやせんかというようなふうにしてみなされておることも事実だろうと思います。そこで私が特に提案いたしたいというのは、これじや政府委員にもたびたび私お願いしたわけでありますが、例えば三崎の市場へ直接揚げずに城ケ島あたりに定めた厚生省の検査場というものを設けて、そこで調べてパスしたものは全部品物はいいんだということで三崎の市場べ揚げるとか、焼津なら知多半島あたりに検査場を置いてやつて行く。そうしたら三崎に揚がつた品物も焼津に揚がつた品物も文句なしにいいのじやないかと考えるわけでありますが、そうした設備を置いていいものか悪いものか、私は置くのが結構だと、こういうふうに考えておりますが、あなた方の御意見が承わりたいと思います。
  208. 浦久保五郎

    参考人浦久保五郎君) 御返事いたしますが、私どもは研究所の技官でございまして、データを出すだけのことでございますから、そういうあすこに関係しておりませんので……。
  209. 小林孝平

    委員長小林孝平君) それなら大体参考人の方に御質問はございませんでしようか。  それでは本日は参考人かたがたから非常にお疲れのところ御出席願いまして、誠に有難うございました。文字通り汗と油にまみれて五十余日航海されまして、漸く帰港されほつといたしまして、昨日解団式が終りまして、一体みされたいところでございましたのを、私たちはこの事件が余りに重大であり、全国民が注視をいたしまして、皆さん方の調査報告というものに対して絶大なる関心を持つておることに鑑みまして、非常に御迷惑とは存じましたけれども、本日委員会を開催いたしまして御出席をお願いした次第でございまして、重ね重ね厚くお礼を申上げる次第でございます。今後皆さん方の調査の結果というものは、日本の水産業の再建の上から、又今後の外交交渉の上から考えましても、極めて重大なる意味があるのでございますので、この調査の取りまとめに当りまして慎重処置を願いたいと考えると同時に、本日皆さん方からいろいろの御意見を承わりまして、私たちといたしましても、今後この事件の審議に当りまして非常な参考になりましたことをここに厚くお礼を申上げる次第であります。非常に長時間お疲れのところ御出席下さいまして厚くお礼を申上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十五分散会