運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-08-31 第19回国会 参議院 厚生委員会社会医療関係の諸問題に関する小委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月三十一日(火曜日)    午後一時四十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中山 壽彦君    副委員長    山下 義信君    委員            高良 とみ君            藤原 道子君            紅露 みつ君   担当委員外委員            高野 一夫君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    厚生省保険局長 久下 勝次君   参考人    非現業職員共済    組合理事長   今井 一男君    健康保険組合連    合会会長    宮尾 武男君    日本病院協会原    価計算委員長  神崎 三益君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○社会保険点数引下げに関する件   —————————————
  2. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 只今から社会医療関係の諸問題に関する小委員会を開会いたします。社会保険点数引下げに関する件を議題にいたします。  なお、この機会に今回中央医療協議会メンバーが変つたようでありまするし、そのメンバー変つた点、或いは今後の運営等につきまして久下保険局長から簡単に御説明を願います。
  3. 久下勝次

    説明員久下勝次君) 御報告を申上げます。  中央社会保険医療協議会は本年の六月十四日で半数委員任期が満了いたしたのでございます。その後私どものほうで、法律の定めるところに基きまして各関係団体委員推薦方をお願いいたしますと同時に、公益代表委員につきましては、任期満了委員の後任につきまして厚生大臣手許で選考しておつた次第でございます。先般各団体からの推薦も取揃いましたので委員の委嘱をいたしました。その結果去る八月の二十八日に第十五回の医療協議会を開催した次第でございます。委員顔ぶれは御承知通り法律によりまして保険者代表する委員、それから被保険者及び事業主代表する委員診療担当者代表する委員及び公益代表する委員の四グループに分れておりまして、それぞれ一グループが六名ずつの構成でございます。保険者代表する委員のうち、三名任期参つたのでございます。そのうち健康保険組合連合会推薦になる安田委員は重ねて委員としての御推薦がございましたので再任をせられました。それから国民健康保険団体中央会代表する委員といたしましては神奈川県の国保団体連合会の副理事長をしておられます柳川委員がこれ又重ねて推薦がございまして再任をせられたのでございます。なお私が保険局長として政府管掌健康保険代表委員に任命されておつたのでございますが、これも就任をいたしました次第でございます。なお医療課長が先般更迭がございましたので、新たに新医療課長委員として就任をいたした次第でございます。そのほかに、保険者代表委員としては任期が満了いたしませんでしたが、国民健康保険代表する委員の高崎氏が一身上の都合で辞表を出されましたので、これに対しましては岩手県の佐藤公一さんが周保団体連合会から推薦によつて委員になられたわけでございます。  次は、被保険者及び事業主代表する委員のうち、半数の三名、河原委員五十嵐委員佐藤委員がそれぞれ任期が満了いたしましたところ、関係団体推薦がございまして事業主代表する委員であつた河原委員の代りに入江委員が新たに就任せられました。それから被保険者代表する委員五十嵐佐藤委員推薦替えがございましたのでそれぞれ小西、岩佐委員が代つて依嘱をせられた次第でございます。  診療担当者代表する委員につきましては、日本医師会代表する委員として日本医師会から推薦のございました松沢、河島両委員はこの際推薦替がございましたので、この御両者に代りまして高島、丸茂両委員就任をせられたのでございます。もう一人診療担当者代表する委員のうち、日本薬剤師協会から従来可児委員が御推薦になつてつたのでありますが、今回野澤委員推薦替がございましたので依嘱をいたしました次第でございます。  それから公益代表する委員につきましては、前会長をしておられました末高委員、それから地方財政委員会委員をしておられました木村委員東京医科歯科大学檜垣委員、三名の方が任期満了をいたしまして厚生大臣手許で先ほど申上げたように選考をいたしました結果、元内務大臣湯澤三千男委員、元保険院総務局長をしてその後千葉県知事をしておりました川村秀文委員、このお二人が新たに依嘱をせられまして東京医科歯科大学檜垣委員は重任をすることになつた次第でございます。  さような関係で各委員顔ぶれも揃いましたので、先ほど申上げましたように去る八月の二十八日に第十五回の中央社会保険医療協議会を開催をいたしました。先ず法規の定むるところによりまして会長及び会長代理互選をして頂いたのであります。その結果公益代表委員である湯澤三千男委員協議会会長互選をせられ、会長代理には今井一男委員就任をせられました次第でございます。  なお附加えて申上げますが、八月の二十八日の第十五回協議会の主たる議題は以上の問題でございましたけれども、これに関連して当面の問題につきまして関係委員から、それぞれ質問或いは意見発表等がございましたけれども、極めて円滑のうちに和気あいあいのうちに協議会を閉じましたような次第でございます。甚だ簡単でございますが、御報告申上げます。
  4. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 別段ほかに御質問ございませんか。……本日は今回行われました社会保険点数引下げに関し、参考人といたしまして非現業共済組合連合会理事長今井一男君、健康保険組合連合会会長宮尾武男君、日本病院協会原価計算委員長神崎三益君の三氏の御出席を願つております。参考人の各位には御多用中御出席頂きまして誠に有難う存じます。この機会に私から厚く御礼を申上げます。これから御意見の御発表を願うのでありますが、それぞれのお立場から隔意ない御意見発表をお願いいたします。なお、時間の関係上各委員方々からの質疑は、参考人全部の意見発表ののちにお願いいたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 御異議ないと認めましてさように決定いたします。  今井一男君は少し都合上遅れられるそうでありますから、先ず宮尾さんから御意見の御発表をお願いいたします。
  6. 宮尾武男

    参考人宮尾武男君) 私宮尾でございます。点数表について意見を申せというお言葉でございますので若干申上げたいと思いますが、点数表に対して我々が考えております基本的考えと申しますか、これは診療報酬支払方法一つの問題だと思うのでありますが、現在のような単価点数とを掛けて出す診療報酬の払い方というものに対して我々は大きな疑問を持つておるのでありまして、こういう社会保険三十年の歴史がございまするが、初めのうちは人頭式でやられておりましたのが、この点数単価方式に変りましてから相当の時日を経つておりまするが、この支払方式というものは妥当でないという我々は見地に立つておりまして、そういう点からいたしますというと、早くもつと適当な方式というものが見出され、それが社会保険に適用されることが最も望ましいのだ、併し現在の行われております単価方式というものについて申上げますというと、この点数表というものがこれが非常に合理的にできておるかおらないかということでありまするが、私ども点数表というものが非常に合理的にできているとは思わないのであります。と申しますのは、いろいろな経験或いはいろいろな専門家方々の御意見を総合いたして考えてみましても、点数表というものが科学的な式に基いてできて来たとは今のところ判断しておりませんので、これがもつと非常に科学的な考えに基いてできたものであるならば、或いはよりよい方向に進んで行くかも知れませんのですが、多くの場合この点数表というものは医者医療費値上げの問題に利用されて来たというふうにしか私ども経験上思われないのであります。四十数回に亘つて訂正されておりまするが、多くは点数表それ自体のバランスということもありましようけれども点数表の中にある各科間のバランス、そういうようなものも非常に考慮されて或るときは訂正される。又或るときには薬治料というものが非常に重大な観点から訂正される。そうしますというと今度は耳鼻科或いは眼科といつたようなものが訂正されるというふうに、いろいろな場合で訂正されて来ておりますけれども、多くの場合は一点単価が上らなかつた場合に点数改正が取上げられる、実質的な診療費値上げがもたらされるというような実情を繰返して参つております。そういう点で私どもはこの点数表がもつと合理性のあるものに、もつと科学的な検討を経て早く改訂されることを望ましいと考えておるのであります。  今回の点数の問題につきましては過去四十数回に亘つて改訂された点数表というものを全面的に満足されたものではないとは考えまするが、一旦決定いたしまして告示になりました以上は、私ども遵法精神からそれに従つてつておるのでありまして、今度のような問題が告示になつて出ました以上は、これはやはり多少の不満はあつても新点数によつて行われて行くのが私は至当だと考えるのでありまして、先頃来行われております点数問題の紛議に対しまして、とかく大衆の声というものは指導者方々がお考えになるよりも逸脱して、むしろこの間の薬価基準によつて下げられた分を何とか是正しなければいけないのだというような方向に向つて行くことを私は憂えているのであります。先頃七月一日の告示以後七月分の診療報酬請求等に見ましても或る府県においては新点数で十分やつておられる、或いは歯科医師方面ではすべて新点数で行われているというにもかかわらず、数県の府県においては非常に尖鋭化して或るところでは五〇%、或る県では一〇〇%も旧点数請求が行われている。こういう事態では我々が社会保険を育てて行こうと思いますのに非常に遺憾の極みなのでありまして、できれば一つ改訂点数でやるということがはつきりわかりますならば、その点数表が不合理な点を是正されるということは私あえて反対はしないのであります。むしろ合理的な点数表にすることが望ましいのでありまするから、でこぼこ調整結構だと思うのであります。そういうような次第で、若しもこの間の告示によつて下げられた分の埋め合せをするために、この点数表をいじるのだというようなことで、若しも点数表がいじられるのであるならば、我々は絶対に反対せざるを得ない。むしろそれならば昨年入院料是正がありましたときに我々は薬価基準によつて是正を約束をして頂いておりますので、むしろ入院料のときから考え是正するというふうに言わざるを得ないのでありまするが、告示になりました分については遵法して行くという精神従つて行きたいのでありまして、この際は是非そういう七月一日の告示以後は新点数でやるという考え方をはつきりさして頂いてでこぼこ調整をして頂きたい。でこぼこ調整につきましても、これは只今申上げましたように点数改正診療費値上げ、実質的な診療費値上げをいつも狙つて行われておりましたことを反省して頂いて、むしろ不合理或いは本当のでこぼこ調整をするべきだ。それにはやはり現行診療費の範囲内で一つつて頂く、枠内でやつて頂きたいということが我々連合会の全体の意見なんであります。幸いに医療協議会も最近に開かれたのでありまして、そういう方向に向つて若しもでこぼこ調整が行われるならば我々も協力にやぶさかではないのであります。
  7. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) それでは今井さんに一つお話願いましよう。今井さんは今井メモというようなものを御発表になつておりまするし、今日まで臨時保険医療審議会或いは中央医療協議会等メンバーで御活動になつているようであります。今回は中央医療協議会会長代理にも御就任になりましたので、いろいろ御意見が豊富であろうと思いますが、どうか一つこの際御発表を願いたいと思います。
  8. 今井一男

    参考人今井一男君) 私実は今朝ほど突然速達を頂きまして、今回の単価引下げ云々というような題目だけを承知したような次第でありまして、甚だ怠けて申訳ありませんが、この委員会がどういう経過でどういうふうなことを狙つて今御研究中のものか、その点を承わりませんと、私から積極的に特に申上げたいと思います点も、どの点に重点を置いてよろしいか見当がつきかねます。甚だ失礼でございますけれども、一応……。殊に又只今遅刻をいたしまして前の参考人の御意見も伺つておりませんから、見当違いのことを申上げますと時間の不経済でありますし、一言お示し頂ければ仕合せであります。
  9. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) この小委員会は今度の抗性物質点数引下げが動機となりまして、御承知のように全国的に医師会が動いておられます。どういうふうな経過になつてこういうふうになつたか、又これをどういうふうに収拾したらいいかというようなことを慎重に審議しようと思いまして、厚生委員会においては特に小委員会を設けて掘下げて検討することになつているのであります。それには政府当局からも一応今日までの経過を聞いておきましたが、なお政府以外の今日までこういう方面に御関係のある皆さんのそれぞれの立場から腹蔵のない御意見を十分拝聴いたしたいということで、今日参考人としておいでを願つたのであります。どうぞ一つ……。
  10. 今井一男

    参考人今井一男君) 実は今回の中央医療協議会におきましての単価改正問題は、丁度議論のありました四月三十日の会議に私よんどころない用事で欠席をいたしましたために、具体的な経過は当日の分は承知しておらないのであります。又私自身あの委員会公益代表という資格で出ております点もございまして、その間事前等におきましての各団体間の折衝のほうも知りませんから、当日の動きは私存じないのでありますが、問題になりました五月の会議には、これも遅刻いたしまして、若干最後の幕切れのところを列席したものであります。  いずれにいたしましても、実態が安ければ点数を引下げるということはまあ理窟上問題のないところでありますが、こういつた利害関係の相反する立場にある人たちがお互いに代表を出しまして、そこで成るべく円満に話を運ぶということを所期するためには、やはり会議運営につきましてかなり工夫を要することが必要ではなかろうかと、こういう点は私つねづね頭に思つているところであります。この中央医療協議会に私も関係を持ちまして恐らく四、五年、第一回からだと思いますが、その間の医療協議会運営のやり方が、ややもいたしますといつもぎりぎりのところで案を出される。最も甚だしい例は、いつも三月の末に四月一日からの分を強行されたことが多いのであります。勿論こういつた問題は性質上資料集め等に非常に手数がかかりますので、厚生省事務当局の御苦労も必ずしもわからんわけではありませんが、それにいたしましても、いま少し何らかその間に事前的な研究の時間を与えるという必要は、私第三者的な目から見まして痛切に感じたところであります。のみならずこの協議会でとり上げられまする問題、この問題がどうも何から取り上げられるかということが、列席しております者でもわからないような式な運営にとかく陥り勝ちの傾向がある。即ち今医師会側のほうではどういつた問題が重点になつているか、或いは被保険者側のほうではどういつたような点が一番早く解決を要するかといつたような問題点があらかじめはつきり表へ打出されまして、そうしてそれに対する検討方法、又それを結局におきまして政府当局調査を依頼しなければならん分野が多かろうと思うのでありますが、どうも下手を……悪い言葉で申しますれば政府当局の重要と考えられる問題といいますか、急ぐ問題という問題が常に問題に上せられまして、一般的にそこに代表されておりまする委員の各団体代表の緊急と申しまする問題との間に食い違いがあるんじやないか。食い違いも時と場合によりましては止むを得ない事情もありますが、その食い違い食い違いとして、何とか事前的に了解を得るようなことがございますというと、今回のような紛争も少くて済んだんではなかろうかという気がするのであります。いろいろと厚生当局団体陳情に行く、陳情に行つた問題の中から厚生当局が手の揃つたもの、又緊急と認めるものというものが取上げられて行く。勿論あの協議会厚生大臣諮問機関という立場法律上置かれておりまするから、厚生当局が問題を出すことはその意味においては法律上正しいことであるかも知れませんが、あのような各関係者が集まりまして、医療診療報酬の内容を検討し、決定し、協議し、運営して行くためには、やはり関係者が成るべく膝を交えた形で、納得した収まり方が望ましいのでありまして、その意味におきましては、やはり関係者の急ぐという或いは資料整つたという問題が中心となつて議題に供せられる、そういう実際上の運営がございましたならば、私はよほど情勢変つたのではなかろうかと思います。幸い今回の新らしい委員の交替の機会にそういつたようなお話も懇談の席で出ましたので、これからは恐らくその点につきましてかなりの改善が見られるのではなかろうかと、ひそかに期待をいたしておるのであります。なお、一番あの協議会で取り上げます大きな問題は申すまでもなく点数改正でありますが、この点数改正いたします場合にも、何か一つ点数改正についての建前のような、まあプリンシプルのようなものがあらかじめ関係団体の間で抽象的で結構でありますが、お話がまとまつておるというと、その後の紛争も少いのではなかろうかという気がいたします。即ち薬価なら薬価というものが、まあ今の人事院等の勧告にございますように、何パーセント違つたら直すとか、その資料はこういつた資料をこういうふうにまとめ上げてこれをこう直してこう掛けてあつて、こう出す、かような申合せのようなものがあらかじめできておりますというと、その後の推移に関係者が絶えず眼を光らかしておりまして、そうして問題を厚生省のほうに提出すれば、厚生省のほうで具体的な資料を掲げまして出せる、かようなことにも相成ろうかというような気がいたします。そういう点につきましては大部分につきましては、只今協議会制度相当よく各方面の意向を反映する仕組みになつておりますからして、あの運営が工合よく行きましたならば、国会のほうにそれほど御迷惑をかけなくても問題は相当うまく解決されるはずじやなかろうかという気がするものであります。まあ協議会に席を置きまして中立委員立場から感じますというと、そういつた点が主な感想になるかと思います。  なお、この際ついでに今回の全国の各地の医師会におきましての諸々の問題、これと現行単価との関連から、私の個人的な感想の二、三を申上げますと、私は実は前回の医療協議会におきまして、いわば現行単価におきまして単価の元を自分でそろばんを置いたという責任を負つておるのでありますが、とにかく現行単価をはじきます場合におきましての資料の不足という点は、私その衝に当りまして痛切に感じたところであります。率直に申しまして今開業しておられる個人の保険医が何人おるかということ自身さえもわからない。従いましてお医者さんが現実に何人の患者を扱つておるか、又扱うべきか、こういつた問題等も把握のしようがないのであります。従いまして結局現行単価はそのときまで両者が少くとも承認しておりました計算方式をそのまま踏襲して新らしい数字で置替えたということだけで、ああいう市価を計算した次第でありまして、それがそのままになつておることは当時の関係者としても非常に残念なところでありまして、どうしても再検討は必要な問題であろうかと思います。併しそのために開かれました臨時医療協議会、これに私も引続き甚だ筋はおかしいのでありますが、関係いたしておるものでありますが、この医療協議会は再検討、即ち現行単価の決定した沿革に鑑みまして、これをもう一度調べ直すということが主ででき上つたように承知しておるのでありますが、すでに発足いたしましてから満二年以上になるのでありますが、その間むしろ議論がほかの方面、いわば保険医療あり方といつた面に話が進みまして、勿論保険医療あり方ということも、私としては一度は掘下げて是非検討したい問題とは思うのでありますけれども、その面でいわば行き当りまして、結局未だ何らの進展を見せていない。従つて検討すべき資料等も全然基準がきまらないために何ら着手をされていない、こういう形に相成つております。常識的に考えまして、私のような立場にある者から眺めますと、少くとも良識あるお医者さんがあれだけの数集まられて騒がれるということは、恐らく現在の単価相当の無理があるんじやないかということは、これは想像させるに十分なものがあると思うのでありますが、同時に、それでは現実医師の実際の経理はどうなつておるかという問題になりますと、三年前の医療費原価計算方式のときにおきましても、医師側から反対してその方式が確立するに至らず、その後の一部病院等資料調査につきましても、まあ噂でありますが、医師会側が反対されたとかいうことで、データが集まつておらんそうであります。とにかく税金の特別扱いが急になくなつた点から見ましても、恐らく医師の前より条件の悪くなつたことは想像ができますし、特に只今の税法のように源泉徴収で一割も取るというバランスは、恐らく他のいろいろの所得と比べてもつと不権衡なものがあるかと思うのでありますが、それにいたしましても、医師側意見が常に抽象的でありまして、具体的なデータを出すことを拒まれておる、こういつた形が又他の方面に非常な納得を得ない大きな根本的な原因になつておると思うのであります。又一方、現在の情勢からいたしまして、物価を引上げるということがいろいろの意味から不適当ということは言えましようけれども、それにいたしましても、幾ら上げればここにおいて幾らの政府の予算が殖えるからどうこうという立場にのみ立つ議論は、これは正しい議論とも考えられないかと思います。そういつた意味では、やはり何とかここで関係者が従来の行きがかりをすべて捨てられまして、そうして一度関係者全体が納得できるような医療費計算方式並びに実態というものをつかむということ、これは、私話がうまく進みますならば、そう長い期間は要しないと思います。決して二年、三年というふうな長期間を要する問題ではなかろうと思うのです。そういつたことを虚心担懐にやられる気運を作られることが一番じやないか。その結果出たデータというものを更にどう処理するかということは、又その次の段階で考えればよろしい問題ではなかろうかと思うのであります。勿論結局は国民の負担と医師の生活とにバランスのかかつて来る問題でありますから、従つて、結局数字は出ましても、医師のほうに或る程度御辛抱願わなければならんような点も出て来るかも知れません。併しいずれにいたしましても、こういつた社会保険制度、こういう社会保障制度の一環として推進するためには、ありとあらゆる関係者の犠牲が公正に行くということがこの制度発表のためにも一番重要なことだと考えますので、そういつた角度から、皆さんが一切をさらけ出して御相談になるという線に問題を持つて行かれることを私のような立場にある者としては是非お願いをしたいのでございます。  まあ一応この程度のことを申上げておきます。
  11. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) それでは日本病院協会神崎君。
  12. 神崎三益

    参考人神崎三益君) 私日本病院協会原価計算委員会委員長をしております神崎であります。冒頭、保険診療の六〇%を受持つておる病院団体から、原価計算を取扱つておるという意味で、こういう公式の席上に意見を申上げる機会を与えられましたことを衷心感謝申上げます。  先ほど来今井先生、宮尾先生からいろいろお話がありましたが、私ども医療担当者として、又病院経営の立場にあるものとして、健康保険が長い歴史を持つて、いろいろのこともございましたが、……委員長済みませんが、私資料を用意して参つてありますから……。
  13. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 今頂戴しました。
  14. 神崎三益

    参考人神崎三益君) その数と規模におきましては、世界に冠たる発達を見たることは大変喜ばしいことでありますが、併し保険者、被保険者にもまだ若干の不満があるようでございますが、医療担当者側の不満は、今日各地に起きておりますいろいろの出来事から十分お察しがつくと存じます。  点数切下げについての意見というお話でございましたが、我々総合病院で、原価計算上今回の点数切下げが如何なる比重を以て収入減を来すかということを計算いたしてみますると、三%乃至三・五%の収入減になるということが計算上出て参るのでございます。結核を主として扱う結核病院におきましては、遥かに大きい比率で収入減を来すということは、もういろいろなものに発表になつておりまするから御承知だと思います。この点数の切下げが十分満足しておる診療報酬即ち単価の下に行われたものでありまするならば、それは三%乃至三・五%の数にしかならないのでありまするが、御承知のごとく、昭和二十六年の暫定単価取極め以来、医療関係者は絶えず診療報酬の適正化を叫んで来ておつたのであります。その矢先にいろいろ会議の経緯や事情もあるでございましようが、我々といたしましては、雛鳥が餌を求めて口をあけておる、その中に石ころをほうり込まれたような感じがした、これは私の率直なる考えでございます。で、この低い単価のしわ寄せばどこに参るかと申しますると、我々は飽くまでも良心的な医療は守らなくてはならない。そういたしまするというと、先ず第一に医療従業員の人件費の圧縮というところに参ります。その数字をグラフその他表でお示ししたものが「日本赤十字社の給与の実際と政府給与ベースとの比較」というグラフを御覧頂くとその間の事情がよくわかります。全日赤関係病院職員一万九百二十八人の平均が一万二千五百円でございます。まだほかの資料を早く集めなくてはならないのでございますが、こういうグラフになつたものとしては日赤のものだけでございます。済生会の現在の給与ぺースは一万二千二百七十一円で、日赤の病院職員の給与ペースよりも下廻つております。このグラフを御覧になると、日赤のカーブは二十四年の十月から始つておりますので、この以前はわかりませんが、この際には少くとも公務員のベースと同一であつたわけであります。その後だんだん両者のカーブが離れて参りまして、今日では大体二千九百八十円ほど下廻つております。その間に、二十六年の暫定単価改正、二十八年の暮の入院料点数改正がありましたが、一向人件費の改善には役立つていない。即ち、我々の団体においては公務員の給与ベースにも追つ付けない。而も病院というものは、その構成の六割は医師、薬剤師、看護婦、医療技術員という専門学校以上の教育を経て、而も国家の検定を受けて初めて職務に従事する特定の人員が六割、その他事務職員等の学歴を調べてみましても、七割乃至八割が高等学校以上の教育を受けておる。かような高度の質を持つた事業場は余り他に見られないのじやないか。まあ大学の研究室は別でありますが、一般産業界におけるよりは、我々の調べた範囲では非常に高度な質を持つております。それがかような状態に追込まれておる。それから第二枚目の表を御覧頂きたい。これは調べ得まする東京都内及び全国に組織を持つ病院数字でございますが、二つの団体と七つの病院の現在職員の給与ベースでありますが、その一番上の欄が医師でありますが、原価計算を以てこのデフレ下でも値上げの認められておる電力会社の従業員の給与ベース二万四千八百二十三円に比較いたしますると、医師のみの給与ベースで、それが二つの病院団体及び七つの病院の中で、六つだけ僅かに電力会社の給与ベースを上廻つておるのであります。医師にして、三つの病院においては、電力会社全職員の給与べース二万四千八百三十三円に及ばないというこの実情が私は人件費にしわ寄せされておるという立派な事実であると思います。  なお今度は稼働で、いわゆる第二は、人員の縮小即稼働過重にこの低単価はしわ寄せして参ります。それを一、二表でお目にかけますると、日赤武蔵野病院及び済生会中央病院でございますが、先ほど今井先生から全国医師の稼働量がわからないというお話がございましたが、これは私もいろいろ尋ねてみましたが、正確に一人当り幾らの働きをしておるかということは、まだ不幸にして的確な数字はつかんでおりません。併しながら、大体一人当りの医師が健康保険において月平均七千点の稼働があるという久下局長さんのお話をラジオで伺いました。又そういう数字も出ておりましたが、それを補正いたしまして、補正ということは、まだ自由診療が二割はありますので、これ以外に二割の自由診療があると、こう仮定いたしまして、一月の全国医師の平均が八千七百五十点、これは各府県とか、或いは東京都についてはわかつております。秋田県においては医師稼働量が健康保険で四千点ということを秋田県の医師会長から聞いております。黒沢会長に承わつたときには大体平均四千点だ、開業医の平均はこういうことでございまして、勿論我々のようないろいろ機能的な設備を持つております大きい病院においては、平均を上廻ることは当然でございますが、それが武蔵野日赤病院におきましては、一万九千三百二十点、丁度平均の二・三倍になつております。済生会中央病院は二万九百二十一点、二・四倍になつております。かような稼働をやりまして、そうして人件費を圧縮してどうやらまあやつてつておるというわけであります。医療費が安いというけれども、お前はそういういい栄養をしておるじやないかとおつしやられるかも知れませんが、併し、私は先ほど来申しましたように、医師であるならば又従業員であるならば、それなみの給与は要求しても一向差支えないじやないか、こういうことを考えまして、そうして、一点単価はかくあらねばならんという三通り資料を作つてみました。なお先ほど原価計算と申しましたが、実はこれが病院協会で作りました原価計算要綱なのでございますが、もう皆手許になくなりまして、これしかありませんので済みませんが、回覧を一つお願いしたいと思います。この原価計算につきましてちよつと脇道に入りますが申上げますが、私ども病院協会におきましては、昨年来どうしても立派な資料を作つてそして万人を納得せしむる数字を出すのでなくては、我々は合理的な医療報酬を頂くわけに行かない、なお各診療技術の点数をきめるに当りましても、原価計算が基礎になるのでなくては適正なものは得られない、こういう考えの下に有志が選ばれまして五つの病院について五月に行いました。今その製表中でありまして、お目にかけられないことを残念に思うのでございますが、出来上りましたならば是非御一覧願いたい、かように存じております。つい一週間ばかり前に全国の病院に呼びかけまして原価計算普及講習会というのを我々の団体が催しましたところ、我々当初五十病院を予想しておりましたにもかかわらず、その倍の百病院、百七十数名の受講者が集つて参りました。この事実は如何に全国の病院が不合理なる診療報酬に悩んでおるかということを如実に示すいい例だと存じております。近く我々はそれらの病院を中心に全国に呼びかけまして、そして正確な多数のデーターを集めたい、かように存じております。これは今後単価診療報酬の適正化のためにも、又病院の経営の上にも、又先ほど宮尾先生からお話のありました合理的なる点数の取りきめにも、又それを狙つてつたわけではございませんが、医薬分業の今現在施行し得るか否かの決定にも相当お役立ちするのではないかと、かように考えております。さようなことが人件費及び人員の縮小即稼働過重というところにしわ寄せして来ております。  なお、我々はこれは調べて見ないでもわかることでございますが、診療設備の整備にも又多分なしわ寄せが来ているということを私は推測いたします。本日も午前中それらのことを調査する意味病院サービスの基準化ということの研究委員会をやりまして、相当詳細なる調査表の最終決定をいたしました。これを全国二千数百の病院にお願いしてその資料を集めたい、かように存じておりますので、それらの数字がまとまりますと、医療報酬の適正を欠くがために日本の医療機関が如何なる状態にあるか、というデータが現れると、かように自信しております。  以上、医師の給与ベースにして電力会社の電線工夫その他の平均給与に劣り、又質において非常に高度のものである病院という団体の給与ベースが一般公務員の給与ベースを遥かに下廻つておる、そうしてこれは調べて見た上でなければわかりませんが、今やはり病院サービスの調査基準化ができましたならば、どういう事実が現れるかということはおよそ想像がつくと思います。そこでかようなことで遷延して参りますならば、私は日本の医療は破滅すると、こう直言申上げるのであります。  そこで先ほど来いろいろな御意見もございましたが、私は十全なる案、十全なる策、これを望むものであります。我々のほうでも逐次資料を作つておりまするから……、併し今は轍鮒の急でありまして、これ以上私は遷延を許さない。で、非常に見方によつては乏しい資料かも知れませんが、一定の原価計算方式によつて算出したものを補正いたしまするというと、相当違いのない数字が出て参るという観点から、あえて武蔵野日赤、及び済生会中央病院、この二つの病院の現状を基礎にいたしましてそうして一点単価はかくあらねばならんというのを出しましたのがこの数表でございます。我々、これはまあ私の考えが多分に入つておりますので、又一般の医師会の各位或いは病院協会の総会にかけましたら、どういう意見が出ますか知れませんが、原価計算委員会意見としましては我々は電力会社の従業員以上の給与を病院従業員は要求する、これは要求して憚りないところであります。それはその説明の中にも又先ほど来申上げますように構成の質が違うということと、又非常な責任を感ぜられておるという点から、二万四千八百三十三円の給与ベースを上廻るものを要求して当然でありますが、一応その電力会社並みのベースにいたしまして、そうして二倍半も働くということはこれはいずれ機械が壊れて参ります。英国の医療制度を承わりましても、登録制ではあるけれども、いくら評判のいい医者でも三千人以上は登録を認めない、こういうことをつい先達つて聞きました。誠にむべなるかなでありまして、やつて行かなければならんからという火事場のような努力はそう長続きするものではありません。それはひとり医療従業員の上にかかる不幸のみでなく、それらの医療を受ける国民の不幸を招くからであります。そこで二倍半働いておるのでございますから、全国平均医師一人当り八千七百五十点に切下げてもいいのでありますが、それは先ほど申しましたような能率ある機関を持つておるものでは許されないので、一応四分の三に切下げる、一万五千点にしてみます。これがまあ全国平均の一・七倍でございますが、こういたしまして初めは患者の数を減らすという計算をしたのであります。それが一番しまいの、一点半価はかくあらねばならんという数字なんですが、併しこれは実際には行われないであろう、来る人を拒むわけには行かない。従つて医療従業員の今まで縮小した人数を四分の三の稼働量になるように三分の四倍いたしまして増員いたしました。増員いたしまして、そして電力会社並みの糾与ベースにいたしますと十九円八十八銭、約二十円であります。それから公務員、最低の公務員と申しますと公務員の方に申訳ないのでありますが、先ほど来縷々説明申上げたように、違うというゆえを以つて公務員並みに補正いたしますると、武蔵野日赤で十五円六十八銭、済生会中央病院で十五円八十七銭、殆んど同じような数字が出て参ります。併しこれでは我々は満足できないのでありまして、併し電力会社を上廻る要求も、これはまだ予算の措置のないときに到底無理だろう、こう考えまして、その中間をとつて五割の増、五割だけベースを増額いたします。それで計算いたしてみますと、武蔵野日赤十七円五十八銭、済生会中央病院で十七円八十四銭、こういう数字が出て参るのでございます。なお表には健康保険の予算の大きい数字も挙げて、どの辺からこれらの……、これは約三割の増になりますが、御捻出願えるか、国庫の負担をどういうふうにしたら最少で抑えられるかということと、お隣りに連合会会長さんがおいでになりますが、私は厚生省当局及び健保連合会の考慮を促すという、まだそれぞれには差上げてありませんですが、その文の中に書きましたように単一組合の収支の状況の表を拝見いたしまして、又これは相当事業内容のいい所だろうとは思いますが、我々の調べられる範囲で二十八年度の単一組合の決算を拝見いたしますると、私の見るところでは医療給付に三割の増額をいたしても、まだまだ組合の運営に一向支障はない、こういうことを私は考えるのでございます。成るほど海の家、山の家、リクリエーシヨン運動場の建設費に千何百万円お使いになることも結構でございましようが、窮乏をお救いした医師が轍鮒の急を叫んでおる際には暫く海の家、山の家その他リクリエーシヨン施設の建設をお控え願えないだろうか。私はそれが悪いと申すのではございません、暫くそれらのことをお控え願い。家族に全額給付その他政府管掌を上廻るいろいろな特別給付を一応政府並みにお控え願えるならば、私は、私の計算では医療給付に三割の増額はあえて保険料を増額なさらないでも可能なりと私は信じております。  最後に、委員長から思うことは腹蔵なく言えというお言葉でございますから、或いは差障りがある向きもあるかも知れませんが、私の思つておることを率直に申上げますならば、健康保険というものはそもそも相互扶助の精神でできたものであるということはどなたも御承知通りであります。然るに保険料が裕福で納入が確実であるところの事業所は競つて単一組合を結成し、又政府もそれを奨励しております。かくして政府管掌として残るものは保険料の貧弱で而も納入の不確実なもののみと申しては語弊があるかも知れませんが、それらが多数政府の管掌の下に残る、監督者にして保険者たる二重人格を持つておられる厚生省は、健康診療の完全を期する前に、その貧弱な政府管掌の保険経済の黒字を確保するに汲々たるというのが現状であろうと思います。保険医の不満が起り、別紙の資料のごとく単一組合が君大な余剰が出るのも理の当然で、これを個人に例えますならば、貧乏人の払い得る診療医療費で以て金持をも診療せよということでございます。  次に朝日新聞が去る二十六年十二月に載せました「医は仁術」という論説の一部を摘録して載せましたから御覧頂きたいと存じます。『「医は仁術」という言葉は、医師攻撃の常用武器である(中略)しかし仁術たることは、医師自身の誇持であり道徳的理想であつても個々の患者が個々の開業医に請求出来る債権である筈はない。昔から仁術たり得たのは社会が医師に仁術を施す余力を与えていた結果であり、富者の負担で貧者の治療もする社会保障を、医師の生計の中で遣り得たからに外ならぬ、即ち仁術もタダでできた訳ではないのである。所がその仁術の根源は枯渇して来た。事業税がかかり健保診療の収入は少い。……世情の変に合した医師の側から、生活の叫びが起るも不思議はあるまい。』これはすでに二十六年の朝日新聞の論説として載つておるのでございます。私の妄誕、当を得ない点があるかも知れませんが、私は重ねて申上げます。政府管掌というところの貧乏人が払い得る診療報酬で以てそうして金持の単一組合連合会の診療をやるということに我々医療担当者が苦しめられ、又我々の目から見れば厖大な余剰が出る。私の病院でも私事を申上げては失礼でございますが、非常に忙がしい仕事をやつておるので、毎年どこか海の家へやつてくれという願いが連続出て参りまして、本年漸く若干の臍繰りを出しまして葉山に本当に陋屋の二階を二間借りて、そうして二百何人の従業員及びその家族が嬉々として夏の一日を遊んでおります。私も一日それを参観に参りまして、何々健保海の家という、実に我々の病院の海の家から見れば、金殿玉楼とまでは言いませんが、裏長屋と山手の住宅の違いがあるのがずらつと並んでおるのを見て、成るほど私の想像がこういうところに端的に現われておる、かように考えた次第であります。併しながら私はあえて単一組合の成長に反対するものではございません。なぜならばこの最後に書いておきましたように「単一組合は従来政府がその結成を奨励した筋合もあり」、次のような利点がある。「保険料の徴収が正確である。」「自分達の団体の組合だから保険経済の上からも亦統制の上からも健康管理がよく行われて、予防措置が行届き罹病率が低下する。此事は大局から見て大いに望ましい。」ことでありまして、我々医師は、決して病人の殖えるのを喜こんでいるのではなくして、どうも日本国民全体が一日も早くすべてが健康であるようにという念願を持つております。その意味から申しまして、単一組合の発達はそのことを助長する大きなプラスがある、かように考えますので、これの発達は私は奨励して頂きたい、かように存じます。  大変長い時間を頂きまして恐縮でございます。
  15. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 各参考人からの御意見発表は一応終りましたから、委員各位から御質疑をお願いいたします。
  16. 山下義信

    ○山下義信君 かねて一度御意見を伺う機会を得たいと思つておりました宮尾さん、今井さんに御足労願つて意見を聞くことができまして、私は本懐であります。さいぜん、今井さんから、委員会は一体どういう目的で取上げているのか、その趣旨によつて話し方があるということでありましたが、その辺が御連絡が不十分で、私どもも申訳ないと思つております。実はこういう専門的な問題でありますから、今井さん等のお手で御処理が願えることを非常に期待いたしておりましたわけでありますが、ああいうふうに保険医諸君の非常に全国的な大きな動きになつて参りまして、これは確かに一つの大きな社会問題も投げかけ、同時にこれは当然政治問題である、ああいう大きな一つの運動というものが、ただ単に空鉄砲に終るのか、威嚇に終るのか存じませんけれども、併しそれ自体が非常に大きな問題である。これはまさに政治問題である。何人がこういう事態に立ち至らしめたのかということです。しばしばこういうことが繰返される虞れがあるのかどうか。又、この事態が果して円満に妥結する見込みがあるのか、誰がそれを努力するか、私ども社会保険医の動きのいろいろな背後の要素、そういうことはお互いに見る必要はない。国民が非常に不安に、或る意味におきましては、先ほど今井さんがおつしやつたように、社会保障制度上の一大危機である、従いまして私ども厚生委員会としても、これは大きな問題として取上げて行かなければならない、かくのごとき事態を招来いたした責任を明確にして行かなければならない等々のことを考えまして、実は重大に取上げているのです。従来こういうことにつきましては、すべて専門家皆さん方の御見解をいつも敬意を表して聞いておつたのでありまして、国会みずから見解を表明したことはなかつたと思うのでありますが、いろいろ検討いたしましたり、委員会を設けて調査をたくさん、私どもの参議院のほうで、社会保障制度研究の初期から調査をいたして参つておりました熱心さは御承知通りでありますが、別にこうという具体的に意思表示をしたことはなかつたのであります。非常に大きな影響があり問題が大きくてしかも深い。而も専門的な知識と見識がなければ判断のできがたい問題でありまするから、できるだけ慎重な態度をとつて参つたのでありますが、恐らく今回私はそういうわけに行かないだろうと思う。議員も雑駁でありまして無知でありましても、勉強いたしまして、これは或る程度意見も出さなくちやならん、こういうことが繰返され、而もいつも無責任にいい加減に推移して行くということは、もう許しちやならん。私どもはこう考えておりまして、勉強さして頂いておるわけなんであります。それで私は一応私の考えを申上げます。これは何も小委員会のまとまつた考えでありませんが、少くとも小委員の一人の私はそういう考えで、この問題に対処しているわけなのであります。  私は宮尾さんと今井さんとに簡単に一、二伺いたいと思うのでありますが、実はゆつくり時間をかけまして、何かと詳しいお教えを受けたいのでありますが、こういう席であります。から、極く大体のことを一つ承わりたいと思うのであります。それは一つには宮尾さんに伺うのでありますが、医師会が今回四項目の要求を揚げまして政府に強く申入れをした。或いは日本医師会が声明書を出した。殊に六・一八の声明書、それに対して連合会のほうから、質問書兼反駁書というようなものが出ている。つまりこの声明書を非難され、その医師会に対する種々の御質問が出ているわけであります。この御質問の中に、日本医師会政府がこの度の不合理点数改正を非常に強行するというような暴挙に出たと言うているが、我々の知つている限りではそういう事実はないように思うということがあるわけであります。先ほど今井参考人のお述べになりました医療協議会等に対します政府の運用に対する態度につきましては、私ども全く同感のお話があつたのでありますが、それは少し筋の違つた大綱についてお話なすつたのですが、今回の五・二七の医療協議会の前後のああいう持つて来る前に、日本医師会政府との間に、まあ話合いというか或る程度の納得というか、あんなに紛糾しないで行けるという見通しの下にやられたのであるかどうかということが非常に不明確なんでありまして、その点を政府にも聞き、昨日でありましたか、日本医師会に聞いたのでありますが、あとで速記を見ませんと、非常に微妙な問答が行われておりますので、一相はまだわからんわけでありますが、折角宮尾さんがおいで下さいましたので、この質問書の中に、日本医師会政府の今回の出方を非難していることにつきまして、今申上げましたようなお言葉は、何かその辺の壷中の消息につきまして御承知の点がありましたらば、お漏らしを願いたいと思います。この一点だけ。
  17. 宮尾武男

    参考人宮尾武男君) 只今質問でございますので、その声明書の中にあります医師会側の十八日の声明書というものが、非常に感情的に走つておられたように私どもは見受けたのでありますが、なお、その声明文が直接連合会なり保険側に向つて書かれたものではなくして、政府に対しての攻撃のように私どもは感じたのであります。そのために直接医師会にものを言うというということはこの段階ではまだ早いのじやないか、そういうような意味から申入書、質問書というような形でなされたのでありまして、その声明書の中にある穏かでないと思われる字句の説明を求めております。その意味従つて質問にありましたような字句に対しましても、これはまあ医師会が当時感情的にできたものだとは思いますけれども、あの医療協議会運営につきましては、私どもからも委員を出しておりまするが、只今非常に微妙な質疑応答が行われて決議が行われたという先生のお話でございますが、その間については私は列席しておりませんので、承知しておりませんが、とにかく私どもの見解としては、あの医療協議会は適法に行われているのだ、個人的にいろいろなこと雇傭贈からんでいるようなことがたとえありましても、あの委員会自体の運営というものは適法に行われて適法に決議されたのだ、こういう見解をとつておりましたので、私どもは飽くまでもあの委員会が正式である、従つてあの委員会に基いて告示が出たものはこれは正当な告示である。その告示については遵法の精神に基いて守るべきであるということを暗に楓刺して出しておるつもりでございます。御満足じやないかも知れませんが……。
  18. 山下義信

    ○山下義信君 さようでございますか。私の伺いましたのは、実はその協議会以前のことなんですが、以前に政府医師会との間に何か多少でも話合いが進んで、そうして医療協議会運営が進行したのかどうかということについては、何か御承知のことがあるかと思いまして伺いましたのでありますが、そういうことも指したのかと私は……。ただ医療協議会のことは合法的であるという意味のお言葉ならよくわかりました。  次に宮尾さんに伺うのでありますが、丁度医師会代表者が七月五日に厚生大臣に会つて四項目の要求を申入れをしたのです。たまたまその日にあなたのほうも厚生大臣に御会見なされて、それで医師会側の申入を真向に反対する申入をしたのですが、厚生大臣何と申しましたかしら。そのときのお話、それからこれはもう絶対に御反対でございますか。真向からもう百パーセント御反対ですか。反対の申入のお気持ちと、厚生大臣のそのとき何と申しましたか、お差支えなければお渡し願いたいと思います。
  19. 宮尾武男

    参考人宮尾武男君) これはその当時の新聞報道、或いは医師会の幹部の方の声明というようなものを拝見したり伺つておりますと、非常に何といいますか、理路整然としてはいない。今日申されたことが明日繰返されたりなんかしておりまして、殊に厚生大臣が約束をしたとか、こういうことはどうしたとかいうような巷間いろいろな説がありまして、只今申上げましたように、あの段階では医師会に直接連合会がものを申すのじやない。だからそういういろいろな情報や報道を質す意味においても、これは厚生大臣に一度お目にかかつて、本当の大臣の意思のあるところを聞いてみなければ、これはこれからいかんというような意味で出かけたのでありまして、そのとき単価の値上について約束した覚えはないということをはつきり申されました。それから私ども情報で聞いておりましたときには、点数表是正、あのまあ医療協議会の案が無効だということについては、大臣はそれを医師会代表に約束したというような情報が流れておりましたので、その点も私どもは真偽を質したいというような意味で大臣にお目にかかつて、その点もお質しをしたところが、大臣は凸凹の調整はどうも多少しなければなるまいというような、はつきりは申されなかつたようですが、そういうふうに私どもには受取れたのであります。そのときには私どもの陣営では、これはもう新点数で行くべきなんだ、そこで凸凹の調整というようなことは約束してもらつちや困るという考えを以て修正したのですけれども、大臣の御意思を付度するというと、多少の凸凹の修正はというお話でございましたので、だからその凸凹、先ほど私が申上げましたように、点数表の改訂はとかく値上げに使われやすいのだから、不合理是正されるのはいいけれども、凹ばかり引上げて、凸のほうも叩いて頂かなければ困るのだ、それで枠の中でやつて頂かなければ私どもは困るということを念を押したところが、大臣は、それは是正はやるけれども政府には予算というものがあるのだから、そう枠から飛出すようなことはできないのだ、こういうようなお話で別れたのであります。まあ、そのときのいろいろなお話では、大臣はどうも医師会の誰と話をしたらば一体本当に話ができるのか、こういう現状では非常に困つたものなんだ、こういうことを述懐されていると思います。
  20. 山下義信

    ○山下義信君 先ほど宮尾さん、お述べになりましたうちに、現在の点数表合理的でない点も、まあ認めていらつしやいますね。それでこれは或る程度是正の必要があるということは認めておいでになりますね。大体においてどうでございますか、相当手直しをする必要がありましようか。この凸凹調整ですね。このアンバランス是正という。全部の点数に亘りまして相当する必要がありますでしようか。どう、まあ大体のところでございますね、どういうお考えでございましようか。
  21. 宮尾武男

    参考人宮尾武男君) 私ども医療協議会できまつて告示されたものには従つて行こう、こういう考え方を前提にしておりますから、新らしく見た観点からこういうものが不合理だというようなことがありますれば、これは今日告示がなされて、明日そういう不合理が発見されて、それが医療協議会できまれば、それは私どもはまあ従つて行くより仕方がない。今の点数表をいじるということは我々は前々から不賛成です。それで是非新料金体系なり、或いは合理的な支払方法ができるということを望んでおりますので、みずからいろいろな甚だしい答案是正して行こうという必要は認めないのでありますが、今も折角そういうお話が出ておりますので、我々の連合会としても研究はしております。だけれども、これはやはり新らしい観点に立つて、なおここに是正すべき点があるという何か納得するようなものが出ますればこれは一応検討した上で  。併しなお、それのために国民医療費国民経済に及ぼすような影響が余計出るならば、これはむしろ枠内で点数表自体というものが、私どもに言わせますと、あれは医者の中の内部の分配の問題なんです。ですからこの枠内でこういうふうにしたほうが内部の分配上合理的だ、内科と外科との関係、或いは耳鼻科と小児科との関係、こういうふうに点数表をいじつたほうがいいのだという内部関係合理的なものが出て来るならば、これも又我々納得が行けばいいのじやないかと考えておるのであります。
  22. 山下義信

    ○山下義信君 点数表が内部分配論だという宮尾さんからのお話、これは私非常に興味深く思いました。これは非常に考えさせて頂く価値のある宮尾論だと思います。総枠をきめておいて、その中で合理的に是正するということは私は非常に矛盾しているのじやないかと思う。合理的な是正をやつてみて、それが総枠で収まるか、はみ出るか、それはのちの結果です。理窟から言うと、先に枠をはめておいて、しわをどつちかにだんだん寄せて行つて、その中のしわを伸ばして行くと枠を出るか出ないか、合理的に検討して行くことが前提であつて、枠はその結果による問題だと私は思います。その合理的な改訂を枠からはみ出ることを意図せずにあえて決行するかせんか、これは先に枠内でという条件をつけることが合理的にということと矛盾しておるのじやないかと思いますが、その辺はどうお考えになりますか。
  23. 宮尾武男

    参考人宮尾武男君) それはそういうお話通りでありますけれども点数表を、学者的に良心的にといいますか、そういうような意味において更正されて来た歴史を持つておるなら私はいいと思います。今までの歴史は不幸にして単価の値上りにあらざれば点数表の改訂、こういう形で四十数回繰返されおります。たまたまあの薬価基準が下つたために、開闢以来のことをやつたのであります。そういうようなわけで本当の良心的な意味点数の改訂ということができるならば、それは又考え直す必要があると思います。
  24. 山下義信

    ○山下義信君 最後に宮尾さんに伺いますが、お笑いになつては困るのですが、あなたのほうの連合会は何と言つても権成のある団体でありますが、私ども第三者から見ると、いつも医師会と真向うから対立しておる。一大何と言いますか強敵といいますか、そういう非常に相容れざる、いつも反対の立場に見られておる。その両者の問はどうも対立しておる。而もその対立が苛烈のような気持がする。これはどうしても現在の制度の上では三者が円満に協力して行くよりほか、こんな不完全な制度ではどうしても行かないのは皆わかつておる。どうも私は医師会健康保険組合連合会とが対立して敵味方になつておるような気持がするのです。これが何とかなりませんでしようか。そういうお気持はないでしようか。それはそういう苦い経験をお述べになつて頂かなければならないのですけれども、どうもその形が何か協力して行ける方向へ何とかして頂けると有難いと思います。宮尾さんは指導者でいらつしやるんですから、一つお気持はどうですか。
  25. 宮尾武男

    参考人宮尾武男君) 私どもも、山下先生のおつしやるように医療担当者との協力なくして社会保険は進歩するとは思つておりません。ですから医師と協力し得る場合には常に手を握つて行こうということは、これはもう十数年来の連合会の憲章でございます。併し不幸にしてその間にトラブルがあるわけですが、これは非常に微妙な点がありまして、健康保険組合というものは保険経済は個々の経済なんです。ですからこれは医師会と個々が話をして行けばわかる段階にあつたときも昔はあつたのであります。併し今のようなときには保険者だけの主張を率直に主張し得る団体というものは、健康保険組合連合会が率直に割合にものが言える団体であります。政府は御承知のように監督者であり保険者であるのですが、保険者としてものを言うと又非常に困る場合がある。そういうような場合には、やはり連合会が代弁して言わざるを得ないというようなこともあるのです。ここに今井さんもおいでになつておりますが、これは政府職員の共済組合であります。こういうようなものがものを率直に言うのにはいい団体であります。連合会の本質は昔から協力し得る医師とは手を握つて行こうというのでありまして、幸いにして昨今では協力することのできない、医師と、協力し得る医師とがだんだんはつきりして来そうでございますから、これがはつきりしますれば、むしろ協力する医師に手を差しのべて、不協力のはつきりした医師には手を差しのべないで行き得ると思います。もう少しじやないかと思います。
  26. 山下義信

    ○山下義信君 今後は宮尾さんの放送は政府の放送として重要視することにしましよう。(笑声)  次に今非さんに伺いたいのですが、先ほど医療協議会あり方につきまして、殊に今回の運営の模様につきまして御説明を頂きましてよくわかりました。私どもどうもそういうふうに見まして先般委員会でも議論したわけでありますが、今回抗性物質関係の一部の点数引下げのあの図らい方、これは実際妥当なのでございましようか、どうなのでございましようか。特にあのことだけを切離して出して、そして非常に大きな多年の宿題というものを脇に放置しておいて、あのことだけを決行したということ、それから医師会が主張するそれらの新薬の初期における治療状況、それから値下りが始つて来てから今回点数の引下げをしようというまでの時期の関係、或いは又それらの使用の治療方法改正が実際的に普遍的に行われて来るまでのいわゆるその間の待時間との睨合せ等々からして、今回の改正が七月一日からあの種の引下げが行われたということは、大体におきまして妥当なんでございますか、問題がまだあるのでございましようか、その辺は如何でございましようか。
  27. 今井一男

    参考人今井一男君) あの問題が協議会に出ましたのは四月三十日でございますが、普段ですというと、よく政府当局はその日になつて資料をお配りになるのですが、あの際はたしか一週間ばかり前に資料はそれぞれの委員の所にお送りになりました。私どもも頂きました。それで実は私は、あの委員会では少くとも団体に属する立場で出ておらないせいかも知れませんが、私は承知しておりませんでしたけれども、あとで聞きますというと、去年の十一月か十二月かの協議会で、この次にはこういうものをやるぞという話は政府当局から出ておつたということであります。これは私確認しておりません、私は聞いておりません。尤も医師会の一部のこれは噂であります。噂というとなんかも知れませんが、四月の半ば頃になつてこの話を聞いたというふうなことは聞きました。なお、先ほどから伺つておりますというと、山下委員はその点非常にデリケートにお考えのようですから、噂ばかり申上げては恐縮ですが、あの数字そのものとしては関係者誰が見てもやはり今までのルールでやれば、あれだけ下がるということについては異存がなかつたようであります。但し、あれだけをああいう形で抑えること自身は若干問題があるということで、当時の医師会出席委員は、私は欠席して知りませんが、暫く時間をかせということで帰つて来て、あとで縺れた、こういつたことのようでありますので、その意味から申しましてあとの五月の委員会の動きはどうでありましても、従来の点数とりきめの方法に従えば、やはりああいう数字が出るということについては先ず疑問の余地はなさそうであります。私自身はそれを確めておりませんけれども、なさそうであります。ただ先ほどちよつと触れましたように、従来からのやり方が、これは宮尾さんが先ほども述べられましたように、どうもどういうルールで一体点数をきめて行くかということ自身がもう長い問一つの型にはまつてしまつておる。それがもう委しがすつかり変つてしまいまして、一体どういうのが正しいのか、そこがわからないような恰好になつておると思うのであります。私としてはむしろ先ほどちよつと触れましたように、どういつたものにどういつたものを掛けてどう割つてこうやつた資料はどこから取つて来て、こういつたルールができておりますというと、ああいつた問題も極めて簡単に片付くのじやないか。それが今まで私のここ数年間参加しておる例から申しますというと、議論されておらないようであります。そこに今回の問題のいわば根本的な禍根があつた従つて低くなつたものを下げることは、これは医療協議会としては当然の任務でありますからして、その点は問題はないと思いますが、然らばこういうふうに上つたものはどうするか、こういつた点を先ほどちよつと触れましたように、医師会なり医師会のほうから皆の集つた席で問題を提起いたしまして、そうしてその席ではこの問題をどういうふうに検討してこの次にどう出す、こういつた形で処理せられて行けば、非常に話もスムーズに行くのじやないか。ところが関係団体がそれぞれ厚生省陳情に行く、少し誇張して申上げますと、そうするとそのうちから厚生省は先ず急ぎの問題を摘み上げて手をお出しになる、そこで勝負をつけてしまうというような形に、少くとも今まではなつてつたように私は見受けます。これが不満のもとではないかと思います。  それから今の山下先生のお話の中で、医療協、議会はもつと大きな問題があるのじやないかというお話がございました。これは単価改正の問題であろうと思いますが、併しこの点は例の臨時医療協議会のほうで先ずその建前を検討する、こういう約束で入りましてから、二年経ちまして未たにどうも二進も三進も行かないような形になつております。これを医療協議会で採り上げようというのは、やはり根本的に両方の、委員会でそういう、何といいますか、取極めをひつくり返さないというと私はやれないような行がかりになつておるのではないかと思うのです。  それからこれは余計なこと、でありますが、折角山下先生のざつくばらんのお話ですから、ざつくばらんに申上げますと、とにかく今回のような問題が起つたことは私ども関係者として誠に遺憾でございますし、又今のような全国の情勢からいたしますというと、それは将来非常な社会問題にまでなりまして、どうして国会で政治的にお取上げにならなければならぬようなことに相成るかも知れませんが、併しながら私は関係者の一人としては、できるだけそういうことは避けにいのみならず、中央医療協議会が一応議事が混乱と言つちや言い過ぎでございますが、少しゴタゴタをいたしましたけれども、とにかく委員の改選も無事にすみまして、八月二十八日でしたか新しいメンバーも全部きまりまして、その間恐らく私はよく存じませんが、関係団体政府の間にもいろいろお話があつたであろうと思います。従いましてここで心機一転して、そこで問題を従来よりはうまく運営して解決して行こう、こういつた機運になつておりますので、暫くの間は過去の行かかりは成るべくそおつとして頂くほうがよろしいのではなかろうか、こういう余計なことでございますか若干感想を申上げておきます。
  28. 山下義信

    ○山下義信君 懇切な御答弁を頂いて有難うございます。私もこれは噂ですけれども入院料の引上げのときでも、この点数引下げの話も出て、それからだんだんお話合いがずつと続いておつて、六月一日からやろうということは、これは政府医師会との問の妥協の上で六月一日という話合いがついておつた。それがああいうふうなことになつて、急に医師会が居直つて来て、政府のほうとしては予想しなかつた医師会の態度豹変というか、それでああいうふうな運動になつて、今度は一カ月医師会の顔を立つてもう一遍待つというようなことで、或る程度妥協か大体できておるということもこれは噂でありますから、真偽は保証の限りではありませんか、ともかく六月一日からやろうとしたことも、又七月一日ということも私は時期的に了承できないのですけれども、七月一日からどうでもやろうというのは何か予算の関係が……、七月一日なら第二四半期ですが、どうでも七月一日からは是非やらなければならぬ、これは六月、七月と時期的な関係がございましようか、この改訂につきまして……。
  29. 今井一男

    参考人今井一男君) 私の見るところですから、当つておらんかもわかりませんが、恐らく予算との関係は私はないと思います。ただむしろ従来、従来というのは二、三年前を含めまして厚生省点数改正されます場合に、ときによるとさかのぼつたり、それからそうでなくても明日からといつたような式にやられて来ております。従いまして値下げのときに余り長く引きますと、これは保険者なり被保険者側のほうの収まりがつかん。そこで最小限一カ月延ばしても七月以降は出ない、こういつたの政府当局のほうの腹ではなかろうか。ここに保険局長がおられますけれども久下さんからは聞いておりませんが、私はそう想像いたします。
  30. 山下義信

    ○山下義信君 最後に今一つ伺いたいのは、この前の単価のときに大変御心配をかけて今の現行単価をきめて頂いたのですが、先ほどの今井さんのお話にも、どうもあれは自分としても実は満足をしていないのだ、いろいろ御苦心のことは御推察いたすのでありますが、従つて単価改正の必要が、値上げというよりは、むしろ改正の必要があるのだろうということが想像されるのでありますが、あのときのいきさつにというのは詳しく承わつておりますと時間もとりますので、大体のことは伝聞して承知しておるのでありますが、私が承わりたいと思いますことは、あの計算をいたします基礎を昨日も高野委員から一つの論争のきつかけが出されたのでありますが、これは非常に大きな問題でありますから短時間では到底意を尽しがとうございますが、一体この医師の生活費といいますか生計費といいますか、そういうものの扱い方でございますね。要するところ厳密な意味の材料その他直接必要な諸材料以外の何と申しますか、企業で申しますと利潤でございますけれども、サラリーマンで申しますると所得でございますが、その諸材料以外のものを見ても、俗にいう生計費大変あのときもCPS等を使うか使わんかで御心配なすつたんですが、私わからんのでございますけれども今井さんはその辺をどういうふうに考えておいでになるのでございましようか。又我々もどう考えたらいいであろうか。いわゆる診療報酬というものは、これは一つ医師の企業としてのそれは利潤、言葉が悪いがそういうふうに見るべきか、一つの勤労者の所得と見るべきか、或いは又その医師の生活を保障する費目が含まれておるのであるか、生活が保障されておるのであるか、或いは又全体をひつくるめてこれは物価と見るのであるか、つまり診療報酬というものはそれ自体が一つの物価と見るものであるかという基本的な診療報酬の性格とでも申しましようか、そういうことにつきまして今後どういう角度で私どもが勉強したらいいかということに、ついて、私は特に今井さんから最近の御所感を一つ承わつておきたいと思います。
  31. 今井一男

    参考人今井一男君) 非常にむずかしい御質問でございますが、まあ前回の私の経験で非常に困つた点だけを申上げますと、お医さんのほうは、少くともお医者さんの生活費は、これは主といたしまして個人の開業医のことを言つておられますが、所得は三万五千円でしたか五万円でしたか、とにかくそういつた額がなければならん、こういつたことを言われました。ところが工合の悪いことに、お医者さんは健康保険ばかりでやつておられるわけではありません。どうしてもその中に一部自由診療が入つております。自由診携のほうの単価、これはいろいろ土地によつて違いますが、田舎のほうでは殆んど健康保険並乃至はそれ以下、東京都内では約五割増というようなことがよく言われておるのでありますが、そういつたものとプラスしてその金額というものを狙うのならばこれはまあ一つの話になるのでありますが、そうなりますというと自由診療が幾らあるかということの実態をよく調べないとこれは議論ができないのであります。それで健康保険だけでそれだけのものをよこせと言われても、これは少し御無理な御注文でこれは私も勿論賛成できません。で結局前回はどういたしたかと申上げますというと、その点双方の議論が対立して解決しませんから、二十三年でありますかに、両方が妥協いたしまして健康保険だけで一般勤労者の二割増のものを頂く、こういつたルールであのときのをきめたのであります。二割は一体何を根拠乏するか私もわかりません。日本生活問題研究所の安藤さんのそのときの調停案を両方がお呑みになつたものですから、今度もむずかしいから前通りにしましようというだけの話なんであります。てれともう一つは当時よりは、安藤さんの時代よりはお医者さんが患者を余計扱つているじやないか、これは健保連合会でも非常に主張しております。併しその点は資料がないから我慢なさいということで、この点は健保連合会のほうは御承認なさいませんけれども、私の案は強いてお譲りを頂いた、それで健康保険のほうではそこで泣いて頂いて、一方お医者さんのほうでは、当時よりは健康保険の削合が殖えておりますからして、従つて当時ならど二割増でよかつたかも知れません、というのは残つておる自由診療の分が大きうございますから……。ところか数年後には自由診療のほうが減つておりますから、もつと殖やさなければならんという理窟かあるでありましようけれども、そのほうはお医者さんのほうに泣いて頂くというふうに全くのインチキな、悪く言えば労働問題の賃金の判任案のような形で実はでつち上げたのが、率直に申上げてあの案であります。併しながら若し健保連合会が推定せられておられますような患者数をお扱いになりますならば、そうしてその残りを自由診療の数字でお扱いになりますならば、医師会がおつしやつております最高の金額は勿論無理でありましても、相当のところまでは生活費を値上げされましても、勤労者の三割、四割という数字ではないという裏付けを私は陰ではしたのであります。その辺はどちらからも余り見て頂けなかつたことが私として非常に残念に思うところでございますが、結局これはすべて基礎になるデータがたかつたためであります。ただ、双方の意見食い違いがなかつたために、私としてはタッチはしませんでしたけれども、私はほかに問題点があると思います。薬代、人件費、何々、こういつた費目をどうして計算するかということについては、実は両者間に議論がなかつたのでありますが、私は疑問の点がある。と申しますことは、やはり保険医の今の制度ですね。将来制度は変るかも知れません。今の制度は結局少くとも個人開業医は企業の責任者である。自己の責任で企業を受持つわけでありまして、従いまして、はやろうとはやるまいとこんなことは誰も知つたことではない。大きな資本をかけて店を開きましても、店と言つては悪いですが、開きましても人気がないというとぺちやんこになることも、これはあり得るのであります。その意味でサラリーマンとは経済上の地位がまるで変つておると思いますが、そういつたものをどう見るか、勿論健康保険というものは、つておりますけれども、それにしても義務制ではございませんからして、患者は自由にお医者さんを選べる建前であります。併しなからそういつた優勝劣敗の仕組みの中で、どんな人までもカバーするかということは、これ又問題だと思います。その意味で企業責任を認めながら、その企業責任をどこで切るかこういつたところまで掘り下げませんというと、合理的な診療報酬の価額は出て来ないであろう、こう考えます。で、先ほどのお話でありますが、結局従いまして、私はこれは勤労所得と見るということは、これは間違いだと思います。勤労所得でなくて、やはり事業所得だと思います。併し事業所得の中でも、決してお医者さん自身が腕を組んで店員を働かせて金を儲けている企業ではございませんからして、みずから陣頭に立つて自分の技術で事業を営んでおるのでありますからして、事業所得の中では非常に勤労所得に近い性質を持つておると思います。併し飽くまで事業であつて、その企業責任を見るという問題が先ほど神崎さんからお話ありましたけれども病院等の勤務者と違つた経済上の地位にあるということを織り込む点であります。これが私は前回の審議会では議論されませんでしたけれども、私としては、非常に気になつている点であります。で結局診療報酬全体としては物価になることは間違いございませんが、併し今まで余り議論されておりませんが、一体病院中心に考えるべき医療単価がよろしいのか、或いは開業医本位の医療単価がよろしいのか、この点も決して割切れておりません、これまては診療報酬はすべてベッドなしの開業医のことを頭に置いてやつております。併し企業責任的なものは入つておりません。又こうなりますというと、将来日本の医療機関の体系はどうなつて行くべきか、こういつた問題にまで触れまして、結局開業医であれ、診療所と病院との結び付きというところまで議論して行かなければならんことに相成りまするので、その点まで考えますというと、この問題はなかなか簡単には片付かんであろうと思います。
  32. 山下義信

    ○山下義信君 いま一つ伺いたいと思いますことは、私がちよつと疑問に思いますのは、社会保険医というものが、一般開業医師より別個にそれだけやつておるというのがありますと、私は極めて問題が簡単に片付ぐ、と思う。それが今のように開業医師が指定を受けて、つまり委嘱を受けてやつて、おるという形をとつておりますと、社会保険、医としての程度診療報酬を与えれはいいのか、先ほど皆さんがおつしやつたように、開業医師としての立場が持続し得るように診療報酬を定めるべきかどうか、それで、自由診療と保険診療とのパーセンテージが動くということは、その診療報酬のきめ方がまあ多少辛いことになれば、パーセンテージが殖えれば損になる。その代り患者が殖えるじやないかということは、その代りにはならんのであつて、結局パーセンテージが殖えることは、診療報酬が辛ければこれはそれだけつらくなるわけです。それで私が疑問に思いますのは、自由診療を二、三割しかやつていない、大部分が、六〇%、七〇%は保険患者を扱つておるその、医師に、保険医としててなしにいわゆる自由診療をしておる開業医師としての立場を、端的に言えば生活を見て行くということについていつも議論があるのですが、私の決定意見じやないのですけれども、私が伺いたいと思いますのは、若し社会保険医の待遇を、これを下げると、医師の能力が、極めて雑駁なことを言いますが、医師の能力が下る慮れがあるかどうかということですね。それで今は社会保険医というものと一般の開業医師との能力、手腕、技量の差等があつちやならんのでありますが、今は仮に開業医師が百パーセントの立派な高い技術と能力を持つておるとすると、その高い技術と能力の、医師を安く社会保険医として雇うということと同じことなんですね。それで私は、大体のその社会保険、医に対する診療報酬が、一般医師に与える報酬より若し低ければ、それは治療内容に差等があるからと言えばそれまででありますけれども、その報ゆるところが低ければ、いわゆる保険診療が比較的割合が小さい間はいいですけれども、非常にそれがパーセンテージが増加し、膨脹して参りますと、要するところ立派な医師社会保険医を委嘱しておることが、その立派な医師という基盤が崩壊して来やしないかということが、素人でありますけれども心配されるのです。それで私は、ほかの職業と違つて、公平に言つて医師には、相当研究もし、又いろいろ……、これはうまでもないことですけれども、余裕も与え、勉強もさせなければならん。それで今のように朝から晩まで、半分か事務で、半分が点数計算で、半分がいい加減の制限診療の枠内でいい加減にやつておるということを全国の医師が繰返しておると、私は日本の医師の能力、従つて国民医療の内容が低下する震れがあつてはならんという気持がするのでございますけれども、極めて雑駁な局面からの見方でありますが、そういう点につきましての、医師の生活ということを顧慮した場合における考え方でございますね、そういう点につきましてはどうでございましようか、重ねまして一つ御所見を伺つておきたいと思います。
  33. 今井一男

    参考人今井一男君) 勿論生活にゆとりのあるほど研究を要する商売、商売と言つちや何ですが、職業としてはより能力も向上するであろうということにつきましては、これは議論の余地はなかろうと思います。多々益々弁ずであろうと思います。思いますが、むしろそれより私などの経験から申しますというと、戦後の非常な最近の医学、医術の進歩から申しまして、やはり個人開業医というものと病院との結び付き方、従来のようにいずれかと申しますというと、個人開業医のほうが全体医療機関のうちの大部分を占めまして、病院というものがむしろ従みたいなものであつた。ところが、とにかく非常な医療設備に金のかかるような時代になりまして、特にアメリカの医学といつたような導入をいたしました関係から、個人資本ではどうしてもやり切れない。非常に大きな問題が戦後出て来ておると思います。そういつた際に、国民経済的にも有効な、而も医学、医術の最新のものにも適応さして、なお且つ開業医としての特殊な立場を活かして行く。即ち、病院では到底手の尽せない、個人々々の体質、病歴等もよく心得た、親切な、又特殊な開業医の地位というもの、医療機関としての地位というものですな、こういつたものが、今ややもしますというと開業医と病院が患者の取りつこをしておる。むしろ開業医のほうに行くほうが適当な患者が病院に行き、逆さまに病院に行くべき者が開業医に行つておる。こういつた形を、勿論強制はできませんけれども、いま少し何らか合理的な調整を加えて行くということが、今後の厚生行政の上に課せられた非常に大きな私は問題ではなかろうかと思います。今のように一つ医療機械で百万、二百万というような金のかかるようなことになりますというと、今のような金利の高い金では、個人開業医は到底いわゆる従来のような形における競争は困難になるのではないかということを恐れておるのであります。
  34. 山下義信

    ○山下義信君 わかりました。病院中心主義に移行しつつあるということは、私も非常に重大な注目せにやならんことと存じます。そういう観点から考えますと、私ども考え方には又影響するところがあると思うのですが、これは実は政府の予算上、いわゆる社会保障費に対しまする政府の予算の出し方が足りなくて、渋つておるために、しわがあつちこつちあつちこつち寄つて来るので、私はこれは被保険者も、それから医療担当者も、或いは扶養家族の一部負担も、いわゆる三万損ではないが、皆がしわを分け合つて、犠牲を持ち合つて解決すべきだという議論があるが、私は納得せん。政府が財政を出せば片がつく。政府が金を出さんから、総枠がどうだのこうだのという議論が成り立つのであつて、仮に今井さんが大蔵大臣で、もつと出して下されば、非常に合理的な、或る程度納得するような線が出て来る。私は禍根は、政府がこの方面に金を出すことを根本的にしぶつているのが問題のこれは背後じやないかという気がするのですが、その点最後に御所見を承わります。
  35. 今井一男

    参考人今井一男君) 先は先ほど犠牲の公平ということを申しましたのは、これは全国民をこめてと、こういう意味でございまして、おつしやる点も入つているつもりでございます。併し関係者は一切知らん顔をする、これもけしからんのでありまして、関係者も無論入れまして合理的に、政府と申しますか、国家と申しますか、とにかく全体をひつくるめてそうして合理的な負担をしなければ、こういつた社会保障みたいな制度は前進しない。こういう意味でございまして、決して山下先生のおつしやつたことと全然正反対を申上げたわけではございません。
  36. 山下義信

    ○山下義信君 わかりました。私の質疑はこれで終ります。
  37. 高良とみ

    高良とみ君 先ほどの病院側からの御発言がありました中に、病院に来られる方たちの病気の内容は余り細かく出てなかつたのですが、この間うちからの御説明によつて、大分ストレプトマイシンとかパスとか、そういう抗生物質の問題があるために、結核治療、結核診療というものを、もう一つ病院の扱う患者、保険の患者から分けた場合にもう少しはつきりして来るのじやないですか。そういう点が御考慮の中に入つているのですか。それをひつくるめてこういう点数の価格などが出ているのですか。
  38. 神崎三益

    参考人神崎三益君) 只今の御質問ですが、一応議論の中には結核予防法によるところの、診療費は全額結核予防法というものの裏付けとしての別の途から出して頂こうという話は出ましたのですが、私の作りました資料には現行通りの筋途で、今のストレプトマイシンであるとか、或いは胸部外科手術であるとかいうようなものは勘定いたしたわけであります。而も大体その基礎になりました原価計算は五月に行いまして、七月一日以降実施されました点数の切下げは考慮の中に入れておりません。
  39. 高良とみ

    高良とみ君 それで済生会とか或いは日赤、こういう御調査なつた中で、結核患者の占める率はどのくらいに大体考えておいででしようか。
  40. 神崎三益

    参考人神崎三益君) お答えいたします。正確な数字は持合せませんから御容赦を願いまして、大体先ず総合日病院でありましても、今は結核病棟は大変殖えて参つておりますから、恐らく入院患者の半数が結核性の疾患であろう、かように考えております。
  41. 高良とみ

    高良とみ君 大体それでもう少し数字をよく研究させて頂きたいと思うのですが、今非参考人にお伺いしたいのは、こういう病院方面から単価計算とか或いはこういう機関における医師の稼働点数とかいうものがこう出て来ているわけなんですね、こういうふうな基礎数字というものはほかの関係団体医師会もそうでありますが、例えば非現業共済組合等のほかの方面から撮かよつた方式で以てぞろぞろとこう出て来て、そうして委員会の判断の基礎になるものの計算尺みたいになつておる。こつちから持つて来る計算尺はこう、あつちから持つて来る計算尺はこうというように行くのが科学的な処理じやないかと前から考えていたのですが、それについては委員のお一人としてどう考えておられますか。
  42. 今井一男

    参考人今井一男君) 先ほど触れましたように、単価なり診療報酬なりを病院本位に考えるか、或いは診療所本位に考えるかという基本的な問題が実は残つております。従来この医療協議会代表されております日本医師会側は常に診療所という、病院をのけましたものを基礎にして主張しておられますので、現行もそれでできておるわけであります。そこに今後残された大きな同順があると思います。それからもう一つは、資料の点について、余計なことでありますが一言申上げますと、従来日本医師会でも歯科医師会でも、その他の団体でも、それぞれ資料というものは一応はお取り揃えになつてよく協議会にお出しになります。併しそれはそれぞれの団体が何らかの前提で一方的に、悪く申しまするとお出しになつたものですから、相手方の団体が納得しないのですね。政府資料につきましてもその非難が一部ございます。で私は前回も申上げたのでありますが、初めに資料を集めるときに、関係者が集まつて、一体どういうふうな資料を集めようか、どういう基準でこうせい、ああせい、サンプリングをどうするか、こういつたことまでお打合せの上でお出しになりますと、労力も時間も僅かでお互に納得のできるものが揃うのじやないか、ところがれがすべて関係団体だけが御自分で、勿論それはそう悪意は私あるとは思いませんけれども、それにいたしましても基礎が違いますと比較する場合に非常にむずかしい、解決困難なる問題を生じますが故は、私はそういうことを常々申上げておるのでありますが、不幸にして未だにどうもその機運にまではなつておらないのであります。
  43. 高良とみ

    高良とみ君 大体その問題の困難を生ずる点がそんなところにおありになるのだろうと思つていたのですが、やはりそうするとどうしても感情的な解決に持つて来るようになりやすいと思うのです。なお研究さして頂きますが、健康保険組合の宮尾さんのパンフレットを拝見いたしまして、先にどの協力し得る医者とは健康保険組合連合会は今後とも協力して行くけれども、協力することの困難な、つまり日本の医師会の何パーセントかの人はどうしてもわからないのだから、そういうところは協力困難なように思うが、もう少し時間がたつたら解決するようなお話があつたように思うのですが、果してそういうふうに考えておられるか。その見通しは将来病院形態のもの或いは例えば病院方面から出ているような、今井さんの言われたところの企業責任者でない、そういうものを負わない、或いはあなたのほうの保険を受けて来る方面都合のいい医者だけに協力をしてもらつて、そうでないものに対しては困難だというお見通しをお持ちなんですか。それを先ず第一に伺いたいのですが……。
  44. 宮尾武男

    参考人宮尾武男君) 私が協力し得る医者と申上げたのは、これはもう三十年来言うところでございますが、保険を理解してもらつて、まあこの健康保険が始まりました時分には、なかなか自由診療と社会診療との割合が、保険診療など少かつた時代があるのです。そういうようなときにも健康保険に理解を持つてしてくれる医者とはやつて行こうという気持をずつと持つてつたのです。最近のような傾向がずつと続いて参りますというと、これはやはり私ども考えておりますところでは、協力したい医者はたくさんあるのですね。協力して行くべきだというような、医業の本質からいつての公共性、或いは医は仁術なりというような本質からいつて協力して行きたいということはあるのですが、診療費の適正なる支払方法というものが見付からないために、協力したくてもできないというような形に多少追い込まれて来ていると思うのです。ですから私は冒頭に申上げましたように今の支払方法については、誰も満足な支払方法だという人はないのです。ここで何かお互に努力して支払方法の適正なものを見付けて行くことができれば仕合せなんですけれども、これは私どもの見通しでは、全国画一的に一つ方法をとつて支払方式をやるということでは、これはどうもできないという見通しが今のところ強い。と申しますのは、北海道のような所、或いは岩手県のような辺鄙な所と東京のような所では、おのずから支払方法というものは変つていいという考えに我々は到達しつつあるのであります。そして又保険者のいろいろな形態から申しますというと、それは全国的の医者と協力してもらわなくとも、或いはその事業場の周辺にある、或いは従業員の居住地域にある或る特定の医者と協力しても、これは目的が達せられている。殊に私どものような健康保険組合を持つています事業場では、大抵自己の診療所を持つておりますために、自己の診療所とその特定地域にある従業員が密集しているとか、或いは工場周辺とかいうような所の特定の医者と協力して行けば、これもやり得るという一つ方法考えられておるのであります。そういうふうで、協力し得ない医者というのはどういうのかと申しますと、これはいろいろ保険診療がだんだんに普及して参りまして、そして医者保険診療がなければ食つて行けないというような状態に追込まれております。従つて、先ほど山下先生がおつしやつたように、安い報酬では保険医自体の素質が下つてしまいやしないかという御心配でありますけれども、私ども考え方では、今では保険医がつまり悪貨が良貨を駆逐しているという形になつております。それで、一部の医者は過剰診療をやりましたり、或いは不正な請求をしたりするとか、そういうことを審査するために非常な手数と余分な機関を別に設けております。そういうようなことでわかつた医者、この間も新聞で御覧になりましたから御承知でありましようが、東京都における駒形病院のごときものは、ああいう医者はつきり排除して、そしていわゆる良貨の、いいお医者さん、或いは技術の高いお医者さんと手を握つて行くことができるような仕組みにこれを持つて行く、変えて行くということをして頂かなければ、なかなかそういうふうにつて行かないのではないかというふうに考えておるのであります。  病院と診療所との点にお触れになりましたのですが、病院の、これが国家の予算が云々というお話でありますが、今の国立病院とか公立病院というのは、大体自主独立採算制と申しますか、そういうようなことをしておるために、割合に無理な診療をしておるのであります。と申しますのは、大きな公立病院は大抵入院患者だけでは、公立病院は入院を主として扱うような病院なんでしようが、そういう病院が外来患者を数百人扱わなければやつて行けないというような形になつておりますが、そういうようなこともやはりむしろ大病院が外来患者を吸収して、近所の診療所の開業医を圧迫するというような形も、何かの形によつて是正されて行かなければ適正なことはできない。又協力したくてもできないというような状態に追い込まれてしまう。一つそういうような態勢を作つて行くということた近道じやないかと、こういうふうに思つております。ですから、若しもこの単価問題が政治的に非常にむずかしい問題になりまして、何か政治的に解決するために税金問題が取上げられるというような場合には、むしろそういう今申上げましたような諸般の事情を勘案した上で、一つ税金の措置をおとり下さる、或いは例えば一番早いことでおわかりやすく申上げまするならば、無医村のようなところがありまして、なかなか医者が行き手がない、そういうようなところにやはり医者を派遣するけれども、その医者には五年なり十年なり無税にしてやるというような措置を講じてやるというようなことも、税金の措置と一緒にお考え下すつて頂きたいと思つておるのであります。
  45. 高良とみ

    高良とみ君 二、三お説明の中に、なおこのパンフレットの中にも質問があるのでありますが、国庫負担でやるという御主張は、医師会とも同じ御主張であるというように書いておられますが、その国庫負担はやはり保険をやらない医師も負担しておるのです。国民全体の納める税金でありますから、勿論申すまでもない。してみると、これはお互いに進歩の過程にあると思うのでありますが、健康保険組合は大体において自家病院というものを職場に持ち、その近所にあるお医者さんには、つまりそれはもう義務として診療しろというのではなくて、むしろこれは行来は私どものほうで従業員の診療は、全部入院させるつもりですけれども、特にあなたのほうの技術を、あなたのほうで要望しておられるところの制限診療を完全診療のほうに持つて行きたい高い理想を持つておるから、協力してもらいたいという立場で行かれるのが本筋であろうと思うのであります。併しそれと、組合もまだ余り発達しておらないから、十分に今の足らないところは、いろいろな財政上のやり方もあるでしようが、国庫で負担しろ、そうして協力できない上医者方々は、これは仕方がない、こういうようなお考えにも伺いますと、非常に先の将来への伸びと、それから税金を負担しておる国民全体の中における保険組合というものの協力性というような面から、何だか伺つてつて矛盾を感ずるのですが……。
  46. 宮尾武男

    参考人宮尾武男君) 工事、事業場とその周辺の医者との関係というものにちよつと触れたのでありますが、国庫負担の考えというのは、まだ十分発達しないから、その間だけ国庫で見てくれというような、こういうような意味の国庫負担を主張しておるのじやないのであります。御承知のように税金で医者のあれをカバーすることも、これは国民全体の税金ですから、国庫負担と余り変りがないのであります。我々が従来主張しておりますのは、社会保障という観点から、医療を受けた者に、その社会保険医療費に対して、社会保障という立場から国が幾分を負担してくれるのが至当ではないか、こういうような考え方で国庫負担を主張しておりますので、苦しいからやつてくれというのじやないのであります。それからお医者さんのほうで国庫負担を主張しておいでになるのは、単価を上げてもらいたいのだけれども単価がなかなか今の国民経済から見て、医療費の負担が国民に転嫁されているのだから、なかなか国民に負担してもらえない、被保険者保険者にもなかなか負担してもらえないから、それは十五円の単価にきめて、十二円五十銭との差額だけは国が負担しろ、こういうことで、これは石炭の価格差補給金の形で医者は、主張しておるのであります。一概に国庫負担と申しましてもいろいろな意味があるわけでございます。それはどういうふうな形で国庫負担が流れて来て一般大衆に落ちるかというようなことは国の政治のやり方で、ただ社会保障費が日本の国の予算に対して七・五%と申しますか、その七・五%が各別々になつておる。だからそういうふうなものも合理的に何か配分されれば、足りない医療費医者が苦しいというのなら、医者のほうに廻すこともできると思うのです。ただ、国民経済上七・五%がどういうふうに配分されて行くか、或いはどういうふうに流れて行くかということを十分一つ先生方にお考え頂いて、それが合理的に配分され、或いは流れ、或いは恩恵を受けるようにして行きたいということを考えておるのであります。ただ、健康保険組合が苦しいからその間だけ国庫負担をもらいたい、こういうのじやないのでございます。
  47. 高良とみ

    高良とみ君 わかりました。もう一点だけ伺いたいと思います。御主張は大体そうであろうと思うのですけれども、併しそれは一番矛盾に感ずるのは、時間的な差を考えてお書き上げになつていると思うのですが、私どもはこういう日本の経済の実情、労働組合或いは健康保険或いは国庫負担の非常な未発達の状態においては、やはり健康保険診療というものは制限診療であるということを実務者といいますか、お医者さんたちも考え、又国庫においても、厚生省の国庫負担においても制限診療であるというように考えておると思うのです。その点が将来の希望としては完全治療にして行きたいし、又どんどん進んで行く最新最良の医療を新憲法の立場から与えたいというのは誰もの願いでありますが、あなたのほうの健康保険組合そのものが制限診療に対してはこれは本筋でないというはつきりした理想をかかげておいでになるのですか。
  48. 宮尾武男

    参考人宮尾武男君) これはもう先生のおつしやられるまでもなく、我々制限診療ということはもう理想的なものじやないのです。併し現在の診療においてももう制限診療じやないということを私は確信しておるのでございます。時間的なズレ云々ということか書いてありますけれども、これは例えばストマイ或いはペニシリンのようなものがアメリカから入つて来たときにすぐには保険で使えなかつた。併しそれは学会その他で以て相当研究されて、それは間違いのないものであるというその定説ができるまではその間でズレがある。或いはまあ製薬会社が新薬を持つて来た、これを一つ使つてもらいたい。使うことについては許可を受けているのですが、それを医者へ持つてつて使つてくれと言われるけれども社会保険でそれを使うのにはまだ時期が少し早過ぎる。或いはもう少しいろいろ学説を考えたり、或いはいろいろな試験を経た上で、これは社会保険に使つてもいいというようなときになるまでの間の時間のズレが、えてしてお医者様からはこれはまだ社会保険では使えないのだ、こういういい薬があるのだけれどもまだ使えないのだと、こういうところを患者の心理といいますか、被保険者の心理にうまく制限診療じやないかという錯覚を起させるといつてはあれかも知れませんけれども、そういうように考えられがちなんです。そういう意味において制限診療だという非難は当らないと思うのです。殊に健康保険組合においてはむしろ過剰診療を恐れるくらいに、ときどき政府からも監査その他で以てお叱りを受けるのは、健康保険組合はむしろ十分過ぎるくらいに診療しておるのだ、こういうようなお叱りさえ受けるくらいなんです。制限診療ということが私の今の社会保険の段階においては、これは保険経済上、日雇保険というのは別でございますが、今の健康保険においては、恐らく私はないと思つております。
  49. 高良とみ

    高良とみ君 もう一点だけ、これは伺うというよりも、いろいろな材料を提供して頂いて大変参考になつたのですが、やはり今の制限診療にしても、薬業との関係もあり、日本の経済全般と深い関係がございますが、結果としてはやはり現場の技術者である医師、或いは医師会と保険組合あたりがもつと、鶏を殺してしまつたのでは玉子も何も出て来ないのだし、それから自分の組合員の健康を保持しようと思うには、技術も基準も最上の御希望がここに示してあるようでありますから、そういう意味でその間に摩擦がないようにして、むしろ行政当局である、或いは国庫の負担を負わしめるところの機関などに向つて、声を一つにして御要求になつたほうが、非常に強力になるように思う。私は本当のどつちにも偏しない立場でそういうふうに感ずるのです。そういう点で如何なものでしようか。今までの長年の御経験から、連合会としてはそういうふうに従業員の保険運動を積極的な声として移して頂いたほうが、厚生省としても、厚生大臣も、七・五%どころではない、国庫の負担を進めて行くのに非常に結構だと私は考える。そうして行政当局の局長もここにおられますけれども、局長なども古い考えで、厚生省としてはこういうふうな都合点数を下げたということではなく、昔の官吏が上からやるというのではなく、国民に仕えるという立場で、皆さんの声がはつきりして来れば、一方に偏しない国民の要望というものが実現されるというように思える。今までの御経歴は存じませんけれども、何だか医師会、或いは実務者とその待遇の実情などに対して、お互いに利益が相反するような材料の、或いは御意見の開陳があつたことに対して、近い将来には必ずそういうふうにおできになるのじやないかというように考えて如何でしようか。
  50. 宮尾武男

    参考人宮尾武男君) 先生のおつしやること御尤もなのです。そういう社会保険診療のために、一般の国民を診療し得るように我々は努力して行かなければならないと思つております。何か一般の国民が聞くというと、医者保険医が喧嘩しているということは、やはりおつしやる通りうまく行かないかも知れませんが、お互いに我慢して、今後ともまあもとから協力は惜しまないものですから協力して行きたいと考えております。
  51. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 今井さん、私からちよつと今井さんにお尋ねしておきたいのですが、今井さんが今井メモというものを発表されているのですが、丁度今日おいでになつたので、その大あら筋だけ御説明願いたい、極く大綱だけ……。
  52. 今井一男

    参考人今井一男君) 実は発表はしておらないのですけれども、一部新聞に洩れたというのが真相でございまして、一昨年の六月ですか、臨時保険医療審議会が出発いたしまして、その関係者の間で随分むずかしい、而も保険医療の根本に関する議論の展開がございました。尤も途中参議院議員選挙のために、半年ばかり関係者が殆んど大多数御出馬になつたので休んだこともございますが、結局におきましてこの対立点がどうにも解けませんので、丁度一年前、昨年の丁度今頃だと思いますが、小委員会を作りまして、関係団体から一人ずつ出まして、私個人といたしましては止む得ず人がないために、私小委員長をお預りいたしまして、そこで何とかその打開点の発見に努めましたけれども、遂に今までの議論の整理が一歩も前進いたしませんで、最後にこれからの議論展開のためのまあいわば叩き台みたいなものをこしらえる役を仰せつかつたのです。そこで私こしらえましてその小委員にだけお配りしたのが今中山委員長の仰せのまあ今井メモといわれるものでございます。尤もこれはこの三月頃或る関係雑誌にすつぱ抜かれましてから、大分一部には伝わつておるようでありますが、決して私のかくあるべきというものを出したものではございませんで、むしろ今後関係団体議論を展開されまして、何らかの結論に到達する場合の問題点を列記し、それに対する考え方として今まで触れられなかつたような点を特に強く指摘しようという意味合いで、でつち上げたものでありますから、従いましてあれは体系的になつておるものじやないのでありますが、ただ私が保険医療の本質、特に医師会から三原則というものがぶちつけられましたのにまあいわば対しまして、保険医療そのものとして非常に見逃されておる点がありやしないかということを強く指摘したかつたのがあれの大きな点になつております。即ち医療というものはとにかく基本的人権にも関係いたしますし、又人間誰にも万遍なく発生する可能性のあるものでありまするし、又アメリカでさえも入院の際にはあのアメリカの高賃金をもつてさえも、自分のポケット・マネーでは払えない、やはり医療保険にかかうなければならんというほどまでに本来一時的に金のかかる性質のものでありますからして、どうしても社会保険によつてこれを伸ばして行く必要性がある。もう恐らく社会保険たるべき絶対的な緊急性を持つておるという点、この点はもうすでに今までにどなたからも強調された点でありますが、一方において社会保険にするのに最も又不都合な最も適当でない要素がある。即ち医者によつて治療のやり方が違うのであります。まあ極端な例を申上げますというと、とにかく腹をこわした、断食して家で寝ておけと、こういつた方法でもなおる場合がございますし、同時に立派な病室へ入れまして手厚い看護をして、又注射、滋養食をとらせましてそうしてなおす方法も、これも治癒にはなります。又お医者さん自身にも非常に上手な方があり、まあそうでもない方がある。病院の設備にも実に高低の差があります。勿論どの病気にかかるかということのこの危険性はこれは運としてあきらめるにいたしましても、同じ病気にかかつた場合も、なおし方、受ける治療内容というものが非常に変り得るという、これは物的にも人的にも変り得るという要素を持つております。ほかの厚生年金などのように六十才になつたら三万円もらえる、そういつたふうに万遍に公平に分配できる要素を持つておらん。又或る人間であれば、家へ帰つてヨジウムをつけておけばそれでひとりでに治る病気を又医者に行つてそうして相当の手当を受けるということも可能な性質の保険事故であります。そういつた意味合いから非常に不公平な要素を含む。これは併し医療という以上止むを得ない、医療に伴うこれは致命的な私は保険的に不公平な要素を含む事故だと思うのであります。併しいやしくも保険でお互いに金を出し合いましてその危険を分散するという建前からいたします以上は、この差は最小限度にしなければ保険として甚だ合理性を欠く。そういつた意味合いからは、どうしてもそこに治療内容或いは医療設備というもの或いは医療技術というものを極力、これは極力であります、私はできるということとできないという部分があると思いますが、極力揃えるという、私の言葉では規格という言葉を使つておりますが、サンドライズするということが必要になつて来るのじやないか。そういう理論を考える必要がある。勿論医者の技術のごときは、或いは治療経験のごときは、到底なかなかそういつたふうになるものではございませんが、少くとも物的な面、医療設備的な面、こういつた面は私はそういうふうなところへ踏み込むのがむしろ社会保険である以上当然ではないか。現在医師会保険者側で一番大きく争われておる問題といたしまして、先ほどからお話が出ましたような制限診療の問題がございます。医師会は制限診療けしからん、これは全部撤廃しろ、これでは良心的な治療ができない、こういつたことがこれが一般の声のようであります。又これに対しまして政府当局並びに保険者の側からは、制限診療ではない、適正診療なんだ、こういつたことがいつも論争の種になつております。併し私は制限という言葉はそのとり方でありますが、何らか公平化する意味におきまして一つの枠がはめられることは理論的に当然であろう。そうしなければ保険というのに適しない。勿論これをイギリスなどのように請負か何かにしてしまえば、又やり方もございましようけれども従つて又問題は先ほどの宮尾さんあたりの支払方式の問題にもからまつて参りますが、私は日本のような理窟の多い、うるさい、殊に人の数の多い、分配論の議論の出ます所では、やはり現行単価点数方式というものは当然ここ当分変えることはできないのじやないか、こういつた考え方を持つておりまするが故に、その立場からいたしますればどうしてもここに枠というものがはめられるということは、これは止むを得ないというようなことになるのじやないか。そういつたことを出発点にして行きましてお話を進めて行くというと、それは議論の一致するところ分れるところありましようが、とにかくものの考え方が相当はつきりして来やしないか。今までではとにかく適正診療と制限診療という議論が対立したきりになつておるのがこれまでの保険医療あり方の基本的な衝突面のようであります。そこで角度を変えて頂く意味でそういうちよつとつむじ曲りな議論をわざと展開しただけでありまして、相当長いものになつておりますけれども、結局要はそこからあつちこつちへ枝葉が出て行つただけでありまして、而もこのメモを差し上げましてからすでに八カ月であります。未だにどうも関係団体からも再開のチャンスが至つておりません。極く最近中央医療協議会も再発足した際、臨時医療保険審議会のほうも再発足して何とか当初の目的を反省してみようじやないかという空気が起つております。私何も再発足できますならば、こんなメモはどこでどう消えてなくなつても結構で、できるならば結論が出せないものなら出せないものでよろしいですから、出せるか出せないかということをトコトンまで掘下げないうちに、今のような幕切れでは関係者の一人として非常に残念でございますので、成るべく近い機会に臨時医療保険審議会を何かの形で形をつけるために多少の微力は尽したいと思つております。その際に今申し上げましたメモは或いは何らかの議論の踏み台にはなるかとも存じておるのであります。
  53. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) ほかに御発言がないようですから、小委員外の高野一夫君から発言を求められておりますが、許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 御異議ないと認めます。高野君に発言を許可いたします。
  55. 高野一夫

    担当委員外委員(高野一夫君) 私ちよつと今井さんの御意見を伺いたいのです。実は先ほど山下委員の発言の中にも出たのですが、昨日医師の、特に開業医の生計維持ということについて昨日私は医師会長にお尋ねしたのです。それは医療は非常に大事な仕事であるということであつて、特に高度の生計費が必要である、こういうことで昨日もはつきり言つておられるわけです。そこであなたも我々も曾つて診療報酬調査会で一緒に参加して医療費検討をしたことがあるのですが、そのときに医師会から出たデータにも、研究費や図書費なんかを全部差引いた純然たる医師の生計費というものが一般市民の生計費の二・七倍になつてつた。そこで医療が非常に大事であるのだしするのだが、まあ一般市民の生計費よりは高い生計費が医師には必要なんだ、こういう議論が今でも相当されておるわけなんです。私はこういう点についてそうとも考えられるし、又どうもそれについて議論の起つて来るのは我々は病気にかかつて医者にかかる前に先ず食わなければならない、着物を着なければならない、住居も持たなければならない。そうすると食糧を作つてくれる仕事、或いは栄養問題を考えてくれる仕事、家を作つてくれる大工の仕事、或いは着物を作つてくれる繊維業者の仕事みんな我々の生活と切り離せない。第三者において何ら変るところがないのじやないか。ただ生命に関する仕事であるが、別には生きんがための仕事がある。そこでその重要さにおいては私は毫も変るべき筋合いのものではない、こうも考える。そういう考えがだんだん起つて来ておるわけなんです。そこでそうすれば一般市民の平均生計費よりは何層倍かの生活費が医者にとつては特に必要である、こういう考え方は今どきの私は世の中にどうも余り適切でない考え方なんじやないか、こういうふうに私は今考えかけているわけなんですが、こういう点について、それが今度の点数改正或いは単価引上げ問題についても、いや医師はこれじや食えないと言う。そして全国何万の保険医が総辞退する。昨日も話が出ましたが、これは国民恫喝の意図じやないでしようけれども、結果においては全く国民に対する恫偶です、そこでそういうようなことをしてまででも、なお且つ食うためにもつと何とかしなければならない、こう言われるわけですが、そこで一般市民の平均生計費というものの何倍かの生活費、生計費というものが医療に従事している人たちには特に必要であるかどうか、こういう点についてどうも私は多分の疑問を持つのですが、あなたの一つ公平な立場で学識経験者としてのお考えを聞かして頂きたい。
  56. 今井一男

    参考人今井一男君) むずかしいお尋ねでございますが、こういつたまあ賃金的なものを考えます場合に、この仕事は人の生命にかかわるから大事だ、この仕事は国の責任を負うから大事だというような議論を展開して行きますと、少くとも賃金をきめる場合には勝負はつかないのが先ず常識となつているようでございます。その意味からいたしますというと、結局その配分或いは高低をきめます方法といたしましては、結局におきましてそういう任務をやりますために必要な資格要件と申しますか、コーリフイケーシヨンの理論がアメリカあたりでは強く行われており、日本などでも最近公務員などにつきましてはそういつたことで格付けをやつているようであります。現実の問題といたしまして私も何倍がいいのかということをお答えはできませんが、仮に、やや思い付き程度のことになりますけれども、若しも医者診療報酬云々ということを単価方式の中に織り込もうといたしますならば、幸いにして公務員の中にたくさんのお医者さんがおられますからして、そういつたものを一応先ず基準に置きまして、これは併しいわばサラリーマンであります。それにさつき私の申上げた企業性の問題、これをどの程度にプラス、マイナスするかというところから先ず或る程度の結論は出て来るのじやないかというような感じはいたすわけでありますけれども、何倍という式の形は、ちよつとこれは基準のとりようは実際はないと思います。
  57. 高野一夫

    担当委員外委員(高野一夫君) 一般市民の生計費の統計のとり方は、私は専門家じやないから詳しく存じませんが、これにはサラリーマンも入つておれば、一般企業家も全部引つくるめての生計費であろうと思います。その基準生計費の中から特別に抽出して医療関係者医師というものだけが、仮に開業医が個人企業家であるといたしましても、それだけを抽出して特別の生計費の考え方、こういうことをすべきかどうか、こういう点なんですが、それはどうでしよう。
  58. 今井一男

    参考人今井一男君) 仰せの通り、CPS等を用いますというと、ありとあらゆる勤務者、要するにサラリーマンも中小企業の事業主も大会社の重役もみんな入つているわけでございますが、都市における標準的な生場計費ということになつておりますから、従いまして結局におきまして今の仰せのような点も、どういつた働きをしてどの程度の患者を扱つている、どのくらいのお医者さんというところに問題点があるのだと思います。単に抽象的に医師と申しましても、或いは開業医と申しましても、それがどの程度の一体時間的な勤労をし、どの程度の患者を扱つておるかということを具体的につかまえて行きませんで、単に抽象論で、お医者さんというだけで議論をいたしますというと、いろいろ解きにくい問題が出て来るのじやないか。勿論患者が多ければお医者さんのほうも算盤が有利になることは当然でございますが、その点が今のところ非常にわかりにくいのであります。特に先ほど申上げました病院或いは国家公務員と比較いたします場合におきましても、国家公務員の勤務医師は、具体的にどのくらい働いてどのくらいの患者を扱つておるか、一般の開業医は標準額としてどういうことになつておるか、こういつた比較をしませんで、勤労所得に近い事業所得という意味におきまして比較をいたしませんで、単に開業医であるということだけで、そういう具体的な勤労内容を見ませんで格付をすると、そこに又面倒な問題が起つて来るのだろうと思います。
  59. 山下義信

    ○山下義信君 私最後に保険局長に聞いておきたいのですが、先ほど参考人方々から、昨日実は医務局長からもそれに類した発言があつたのですが、最近我々が見ましても、我が国の医療機関のあり方が漸次病院形態の機関が発達しつつあることは事実なんです。それから民衆も病院を利用することが非常に増加しておることも事実なんです。将来社会保険の被保険者の診療はできるだけ病院を利用させるという、病院という医療機関を、これを中心に置いて行くというような方針が政府にあるかどうかということについて保険局長はどういう見解を持つこおられるか、この点を聞いておきたいと思います。
  60. 久下勝次

    説明員久下勝次君) お尋ねの問題につきましては、私どもとしては別にはつきりした方針は持つておりません。結局医療機関というものは、今厚生省におきましては医務局におきまして国全体の医療機関の現状と将来あるべき姿というようなものにつきましては、若干の計画を持つておるわけでございます。かと申しましても、それは別段それに基いて配置を強制をするわけにも参りません。財力のあります主体が申請をして参りまして、これが法律の定むる基準に合致すればそれを許すというような建前でございまするが、私どもとしては結局これは必要なところに医療機関が必要に応じてできて来るという姿と見る以外に手はないわけでございますが、併しながら一方におきまして、私から申すまでもなく御案内の通り、地方の、特に農村地域におきましては、自然に放置しておきましたのでは、なかなか医療機関が普及いたしません。折角国民健康保険ができましても、これ又実際に医療にかかるには十分な施設がないという現状でございます。そういう意味合いにおきまして、御承知通り診療所を主とした医療機関の普及を国の補助を出して奨励をいたしておるという実情でございます。従いまして必ずしも全体の傾向が病院だけで行くという政府の方針とは私はとつて頂かなくてもいいと思います。そういう方面のことも合せ考えながら、全体としての推進をしておるわけでございまして、併し先ほど今井委員お話にもございましたように、医療機関としては、医療のためにいろいろな機械設備類に金がかかります関係上、而も一般の国民経済の窮迫ぶりは依然として解消をいたしておりませんので、恐らく個人の診療所といたしましても、なかなか完全な設備を作つて行くには、今日個人々々の力では困難な状態になつておると思います。そういう意味合におきまして、私は今井先生のお話をむしろ公的な機関、そういうものがそういう関係から必然的に殖えざるを得ない状態にあるのではないかというふうに理解をするものでございます。それを公的でありましようと、或いは病院でありましようと、いずれにしましても、私ども立場からそのいずれかを選べという考えを現在はとつておらないし、又とる考えもございません。
  61. 山下義信

    ○山下義信君 診療報酬考えるときのデータとして、そうすると個人の医師データも、病院データも、大体同一に公平に見て行く。一方のデータを特に重視するというようなことはないわけでありますね。
  62. 久下勝次

    説明員久下勝次君) 前に現行単価につきまして御説明を申上げたことがあると思います。先ほど今井委員からもお話がございましたように、現行単価が昭和二十六年の十二月に決定をいたしましたが、その資料となりましたのは、昭和二十四年九月の百五十カ所の私立診療所の調査資料を基礎にいたしております。この平均値をとりまして、物価及び賃金の変動を見ましたものが現行単価の基礎になつております。そこで大体の考え方を申上げますると、現在の点数なり単価なりの決定の基礎になつておりまするものは、比較的病院というよりも、個人開業医の経営の考え方できめられておるというふうになつておるのでございます。これも点数のことでも一々例を挙げて……私も専門家ではありませんから、そこまで申上げられませんが、大体の傾向はそういう点を考慮して、若しも病院と開業医との間の数字が違うような場合には、開業医に有利な方法をとるというような考え方を従来からとつております。現在の診療報酬病院中心にはなつておりません。
  63. 山下義信

    ○山下義信君 私は今日ここで聞こうとはしないのですが、今まあ個人診療所と公的機関、又は個人診療所と病院形態のものということについて、社会保険がいずれの医療機関を利用するかということについてははつきりした方針がないということになりますと、診療報酬の基礎になりますデータのとり方、重点の置き方、こういうものも別にないということにならなければ平仄が合わない。併しながら私素人に考えて、公的の医療機関と私的の医療機関と私はデータが違うだろうと思う。それから個人の診療所と病院とのいわゆる何というか、能率も違いますし、従つてコストも違つて来て、私はそこに差異があると思うのです。従つていわばこれをつきまぜて、五日飯にして、両方を公平に取合せてそういうデータを見て行くのか、将来の方針、現下の大勢を睨合せてどういうふうにするかということは、私はやはりこれは関連して来ると思うのです。それで伺つたのでありますが、これは私ども又勉強しまして、これは政府のほうでも、方針がなくてはならんと私は思うのです。それで別にその間に軽重、比重のお考えはないのだということになれば、それも一つの方針なんです。ですからはつきりとそういうこともしておかなければ私はいけないのじやないかと思います。これも又他日に譲ります。
  64. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 他に御質問ございませんか。  参考人の各位には、暑中長時間にいろいろ有益なお話を拝聴いたしまして有難うございました。私から厚くお礼を申上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十六分散会