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説明員(曾田
長宗君)
只今の御質疑でございますが、私
どもも、この問題は私
どもの立場からとしても、非常に重大な問題であるというふうに
考えている。
従つて只今はつきりと結論的なことを申上げるのもどうかと思いますが、少くとも私
どもがどんな
考え方をしているか、或いは少くともどういうことが自分たちの問題であるというふうに
考えているかということを申上げてみたいと思います。私
どもまあ当然のことなんでございますけれ
ども、根本的に
考えておりますのは、再々
先生方からも申されましたように、国民の
医療を支障なく進めて行く、或いは又更に一層学問の進歩に応じて向上せしめて行くということが根本的な目標であるわけであります。それをまあ実現いたしますためには、いろいろ物の面におきましても、
医療施設等を整備して行くということも必要でございましようし、又この
医師ばかりではこれはないのでございますが、そのほかの歯科
医師、或いは
看護婦、助産婦、その他
医療関係者、この人たちが生活に不安を感ぜずに、又自分のや
つている仕事に意義を感じて、仕事を遂行して行けるというような姿に持
つて参りたいものだというふうに
考えているわけであります。たまたま今度保険の、いろいろ
点数の問題とか、或るいは
単価の問題、或いは
課税の問題というようなことで、
医師の間に不満が高ま
つて来て、そうしてともすると、一般の病人、
患者と申しますか、こういうような人たちに対しても十分なお世話ができないぞというようなことを、まあ
はつきりと態度に現わされるというようなことになりましたことは非常に遺憾なことだと思
つているわけであります。一方私
どもとしましては、
医師会等にもお話申上げまして、こういういろいろ面倒な問題、これについては
政府としても十分
考慮して行かなければならんものであるというふうには
考えますが、
医師側といたしましても軽挙妄動、言葉が悪いかも知れませんけれ
ども、というような誇りを受けないように、一般の国民の
医療にできるだけ支障のないようにこの点を十分
考慮して、自重して頂きたいというようなことも申上げたりしたのであります。併し他面におきまして、私
どもは今申上げたように
医師の、何と申しますか、実
収入というようなものが余りに切下げられて行くというような
事態にならないように、いろいろと
関係の方面にも連絡をして
考慮を願わなければならんというふうに
考えているわけであります。この
医師の実
収入がどの程度のものでなければならんかということにつきましては、これはなかなかむずかしいことでありまして、一
通りの常識的にはそういうことが
考えられるのでありますけれ
ども、さて、何万円がその具体的な額であるかということになるとむずかしいのであります。この問題についてはいろいろの方面から、又各方面の
意見を伺いながら妥当な数字を勘案して見なければならんのではないかというふうに思
つているわけであります。
この保険の問題につきましては、これは私
どもの所管外のことでもあり、非常にデリケートな問題でございますので、私が申上げるのはどうかと思いますが、先ほ
ども医師会長からお話になりましたように、
単価の問題、
点数の問題、或いは
課税の問題そのほかにもいろいろの問題があると思いますが、幾つかの要素が加
つて医師の実
収入というものが定められて来るものと思うのでございまして、どの点だけでというわけには行くまいかと思います。或いは又
一つの問題だけで、例えば
点数なら
点数だけでもこの問題が或いは解決できるかも知れない。それを一点でもうんと進めれば解決ができるかも知れませんが、併しその一点だけでは進み切れないということがございますれば、この三つのフアクター、或いはそれ以上の、その他の要素を勘案いたしまして、そうしてそのおのおのが不十分ながらも若干ずつ上
つて行くというようなことから、統合的には相当な実
収入が得られるというようなところに行くのではないかというふうに
考えられるのでありまして、
医師会長が申されましたただ
一つだけの問題でなしに、幾つもの問題も並行して
要求されるのだと言われますことは実情としては私も御尤もなことだと思うのであります。こういうように
考えるわけでありますが、今も申しましたように最近いろいろベース・アツプがなされて行
つて、それに応じて
医師の実
収入が増加して行かないというお
考えにつきましては、私
どももいろいろ資料を集めて多少
検討はいたしておりますけれ
ども、今のところ果してどれだけその
医師の実
収入の上りが遅滞しておるかということにつきましてはこれもなかなか正確に
はつかみきれないのでありまして、大体大ざつばに申しますれば、とに
かく戦前に比べて戦後の
医師の実
収入というものが、非常に比較的には低下しておるということだけは認められると思うのでありますが、その低下した
日本の現在の国情といたしましてこれは耐え得べからざる程度にまで行
つておるか、或いはその辺のところぎりぎりのところぐらいはと
考えられるではないかという、この点の判断につきましては私
どももまだ申上げることはできないと思うのであります。十分省内におきましても、或いは外からの各方面の御
意見というものも勘案していろいろ更に
検討が進められなければならんものであるというふうに
考えるのであります。
なお、先ほ
ども申されたのでありますが、従来はいわゆる自由
診療の部面が非常に広いというときにおきましては、この保険の
診療報酬というようなものに多少の不正がございましても、それは自由
診療という直でも
つて成る程度補正されて来たというふうに
考えられるのでありますが、今日におきましては非常に自由
診療の
部分が国民
医療の内部において非常に縮小して来ております。これは前にも申上げたかと思うのでありますが、ただ単に保険の基金等から支払うというだけのものではなしに、いわゆる半額自己負担というようなものも国民が自分の家計から支払
つておりましても、その報酬はやはりこの一定の
診療報酬の規定に従
つた額しか支払われないというような
事情がございますので、この自由
診療契約によ
つて医師が得ております
診療費というものは、先ほ
どもお話あ
つたかと思うのでありますが、大体六割とか六割五分というものが保険或いはそのほかの生活保護等によるものだと、いわゆる公費負担だというふうに
考えられましても、その自費としても
保険診療のその
診療報酬の規定に
従つておりますものがそのほかにありますので、実際に自由の
診療契約に基く
診療支払というものは私は恐らく一五%程度ぐらいしかないのではないかというように思われるのでありまして、このいわゆる保険の
診療報酬というものの決定が、
医師の生活というものに極めて重大な影響を与えておるということは私
どもも認めておるのでありまして、これが十分
適正なものでなければならんというふうに
考えておる次第でございます。
それから
医師の生活費と申しちや言葉が悪うございますが、実
収入というものが今申上げたように戦前に比べては非常に悪い。併しこの最近の数年間においてはこれがどうだろうか、更に年々悪化しているというふうに言えるかどうか、保険の話を聞きますというと、基金の支払等は前年同期、或いは前々年同期というようなものに比べてみると、相当なパーセンテージで以て支払いが殖えている。だから結局
医師のところには何らかの形でそれは
単価の引上げはなくとも、
点数の増加とか、或いは件数の増加というようなことで以て
収入が殖えているのではないかということを言われているのであります。そういうような点から行きましてすぐに
医師の実
収入が直ちに減
つているとも言いかねるのであります。これも先ほど
医師会のほうからお話がございましたように、私
一つ重要な問題は、やはり
病院診療というものがだんだんと大きいウエイトを占めつつある、これも最近の数字ももうじき出て来るはずでございますけれ
ども、二十七年の数字といたしましても、国民総
医療費の半ば以上、半ばを若干過ぎると思うのでありますが、これは
病院で支払われているのであります。このいわゆる
診療所におきましては半分以下の支払いが行われている。そして
医師は大体
病院に勤めております
医師よりも、
診療所の
医師が殆んど倍、
医師の数はいると思うのであります。こういうように
考えますれば、この
病院に比べまして
診療所の
医師というものに、
医師一人当りの
収入という平均に比べますならば
診療所の
医師に、
医師一人に対しては平均よりはかなり下に下廻
つて来るのではないかというふうに
考えられます。で一方
病院の増加の問題でありますが、これは勿論一部は公立
病院というようなものも増加せられてありますが、私設のもの、或いは
医療法人等の形をとりますものの増加もあるのであります。で
病院に対する一般の要望と申しますか、こういうものは相当強いのであります。みずから自分の身銭を切
つて病院へ入るということになりますと、これは制約を受けるのでありますけれ
ども、
社会保険とか或いは生活保護とかというような途が開かれて参りますれば、できることならば
病院に入りたいという人たちがこれはますます殖えて来まして、今でもそれを要望している人たちが多いのであります。こういうような状況からこの
病院の病床の増加、殊に
結核というようなものにつきましては、これは私は阻止することはできないのではないかというふうに
考えられますので、この
病院の病床の逐年増加というものと、一方において開業医の方々が、或いはもつと限定いたしますれば、特に
診療所の方々、こういうような方々のところに参る
患者という者が少くとも絶対数は別としましても、ウエイトから行きますというとだんだん減じつつあるのではないかというふうに思われるのであります。そしてこの
病院に勤めます
医師の数も
従つて増加をいたしております。それから
診療所数の
医師のは割合に増加しておりませんが、さればとい
つてそれほど減少をしているわけでもないのであります。ほぼ同じくらい、或いは極めて僅かばかり増加しているというようなことであるのであります。そして一方病人がより多く
病院のほうに吸収されて行くというような
事情が、これが保険の問題とは別問題としましても、併しこれは別ではございません。保険制度が発達して参りますと、ますますそういう傾向は出て来ると思うのでありますが、こういうようなことがこの
医師の実生活というものには相当響いて参るのではないか。事実この前の
社会保険の
単価が定められます場合に、大体
医師一人が何人くらい
患者を診るであろうというふうに予想されました数字よりは、現在の
診療所の
医師はそれだけの
患者を診ておらないというようなのが私
どもの調べました数字からも出ておるのであります。そして而も
医師の極めて秘密であるところには、なお
医師が逐次増加しつつある。そうしてまだ
医師の非常に不足しておりますところは、依然としてそこで
医師の不足が叫ばれておる。又私
どもの国立の、
病院はとも
かくといたしまして、療養所のようなところでございますと、やはり東北、北海道というようなところでは、
医師を求めてもなかなか求め切らないというような状況にあるわけであります。こういうようなところから、ただ平均で論ずる以上に、事実実
収入の少いことをかこつお
医者さん方が多数おられるということは実情であろうと思います。勅
どもこれに対しましては
病院の病床の増加ということは、これは国民の要望であるというふうに
考えておるわけであります。勿論この
病院の新設、或いは増築というようなことについてもできるだけこれを放置するのでなしに、計画性を持たせて参りたいというふうに
考えておるのでありますが、何しろ今日の世の中におきましては、こういうものをきつく統制するという筋はございません。又
政府関係というものだけとしましても、なかなか今よりは進めなければならず、又進められると思いますけれ
ども、これもなかなかうまく統一が、統制がとれないというような状況であるのであります。これをできるだけ
一つ計画性を持たせて行く、にもかかわらず病床の増加ということは、私今申上げたように国民の要望の線であるというふうに思
つております。それで
一つは
病院のベットに対する国民の要望に応えて、病床の増加を図るということは必要でございますけれ
ども、これに野放図にこの増加の傾向を辿らせるということだけでなしに、やはり
病院には
病院診療の特徴があり、それから一般の
診療所の
医師には、この
病院の
医師とは
違つた診療の特徴があるものであろうというふうに
考えておるわけでありまして、率直に、具体的に申しますれば、
病院においては入院
治療を主として、
病院の外来というものは、これは本来余りに大きくすべきものではない、勿論何と申しますか相談的な診察を行い
治療の方針を立てるというような意味において、
病院外来の意義がゼロだとは申しませんけれ
ども、これは開業医、或いは
診療所の
医師にお預けしていい
患者を
病院に集中させるということは正しい方向ではないのではないか。又入院しました
患者についても、いつまでも
病院にいたほうが家におるよりはよく手が届くからというようなことではなしに、
病院でなければ本当に正しい
処置ができないという期間だけ収容いたしまして、自宅で
治療ができるという
段階は、これは自宅に帰して、この
診療所のお
医者さん方に世話をして頂くというような筋を出すべきものであろうというふうに
考えておるわけであります。この辺のところが今のところでは確かに無統制であり、計画性を欠いているというふうに
考えられるのであります。
又もう
一つは、先ほ
ども初診料、再診料というようなものが全然
医師に正しく支払われておらない。こういう形を改めるということにつきましては、いわゆる
医療費の新体系という問題でございまして、これは保険局と私
どもと一緒にな
つていろいろ
検討をいたして、近いうちに或る結論が得られると思うのであります。勿論この新体系というのも、根本的に完成した姿を打ち出すということは、これは長年月を要するものと思いますけれ
ども、基本的な
考え方というものだけは是非打ち出して参りたいというふうに思
つておるわけであります。
まあ、こういうようなことが今般この
保険診療の問題につきましていろいろ
医師側から起されております問題について、私
ども医療行政の立場からどういうことが問題であり、又どういうふうの筋に解決の途を求めて行こうとしておるかということを申上げた次第であります。余り長々と申上げて失礼いたしました。