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1954-08-30 第19回国会 参議院 厚生委員会社会医療関係の諸問題に関する小委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月三十日(月曜日)    午前十時六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中山 壽彦君    副委員長    山下 義信君    委員            高良 とみ君            藤原 道子君            紅露 みつ君    担当委員外委員 高野 一夫君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁已君   説明員    厚生省医務局長 曾田 長宗君   参考人    日本医師会長  黒澤 潤三君    日本医師会常任    理事      太田 清一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○社会保険点数引下げに関する件 ○参考人の出頭に関する件   —————————————
  2. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 只今から社会医療関係の諸問題に関する小委員会を開会いたします。  社会保険点数引下げに関する件を議題といたします。本日は、この問題に関しまして日本医師会長黒澤潤三君、日本医師会常任理事太田清一君の両君に御出席を願つております。両君には御多忙のところおいで下さいましたことを御礼を申上げます。どうか日本医師会の立場からこの問題につきまして隔意なき御意見を御発言願いたいと存じます。  なお、時間の関係もございまするから、各委員の方々の御質疑は、参考人の全部の意見発表のありました後にお願いをいたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 御異議ないと認めます。それでは黒澤日本医師会長から二一御発表を願います。
  4. 黒澤潤三

    参考人黒澤潤三君) 私は日本医師会長黒澤でございます。  社会保険の問題につきましては、最近非常にこの問題が社会に対する影響が大きくなりまして、皆様も十分御関心をお持ちでございましようと存じます。又各方面がこの問題につきましては、今後の推移に非常な注意を払つておるのでございます。で、これのよつて参りまするところはすでに現在健康保険が実施いたされましてから二十八年でございまして、相当な訓練を受けて参つたはずであるのでありまするが、日本終戦当時に一応潰滅に瀕するような状態であつた健康保険が、終戦後の産業勃興その他に連れまして、一面は経済事情もあつたのでありますけれども、急速に又ぶり返しまして参りまして、この利用率が非常に高くなつて参つておるのでございます。従いまして従来戦争前、昭和十八年頃の日本保険経済内容というものは非常露かでございまして、たまたま御承知通りに、そのときに家族診療ということまでが考えられるようになつたのでございます。終戦後は当初はよろしかつたのでございまするけれども、この利用者が非常に急激に増加して参りましたために、又終戦後の経済の変動が非常にはげしうございましたために、単価につきましてもたびたびの検討が加えられて参つておるのでございます。現在実施せられておりまする単価は、昭和二十六年の十一月でございますか決定されました単価が現在やられておるのでございまするが、只今様子を見まするというと、地方は勿論でございますが、大都市、例えば東京のごときにおきましても、都内健康保険利用率は非常に多くなつて参つております。現在従いまして日本医療形態というものは、健康保険診療というものは、一応医療形態の根本になつておるのでございます。従いましてこれの将来のあり方につきましては、国民大衆に影響するところが非常に大きいわけでございます。  たまたま、これは診療をいたします医師と、保険者、被保険者という三者の一体になりました組織でありまするのでありますけれども、最近診療報酬に対するいろいろな問題が起つて参りました。というのは、元来健康保険診療報酬というものは、これが制定せられました当時に、医者経済ということをひどく考慮せられておらなかつたのでありまして、たまたま私自身が保険医でありまして、昭和二年当初からこれに関係しておるのでありますけれども、初めは一体健康保険収入というものは、医者収入には考えられなかつたものであります。ところが昭和二十四、五年後は、少くも都内におきましても六、七〇%、多いところは八〇%くらいは保険診療でありますからして、医者経済というものは保険診療報酬に依存せられなければならんという状況になつて参つたのでございます。こうなりますというと、そこで御承知通り医者に対して払われまする一点単価を基礎といたしまする診療報酬ということは、大きく響いて参つて来るのであります。たまたま昭和二十六年には単価値上げということを強く全国保険医が打ち出して参りまして、政府にも要求をいたしますし、各政党の御協力も願いましているくとやりました結果、そのときに出ましたのが、十一円五十銭、十二円五十銭であります。いわゆる当時このことにつきましては、暫定単価である、十分な単価値上げではないけれども、一面これに対しては税金考慮をするということで、御承知の二五%、三〇%という税金考慮をいたしまして、一応これが据え置かれたわけでございまして、爾来今日まで、二十九年の現在まで、一点の単価というものはそのまま放置せられて参つておるのでありまするが、たまたま昨年の末あたりから、最近抗生物質、その他の国内生産が非常に増加いたしましたために、極めて高価であつたストレプトマイシン、或いはペニシリン等が著しく値下りをして参つた、こういうことでありまして、このことは事実であります。さような事実からいたしまして、ペニシリン点数値下げ考えられ、或いはストレプトマイシンのような高価なものであり、而も今日結核治療には欠くべからざる薬の使用の範囲も広いものであるからして、これに対する点数値下げということも考慮せられたようであります。昨年末におきましては、一応この問題が出ましたのでありまするけれどもペニシリン、その他の僅かの値下げであり、当時入院料、或いは往診料値上げが行われたのでございます。  たまたま本年に相成りまして、本年の四月の医療協議会におきまして、抗生物質、殊にストレプトマイシンの大巾の値下げを、政府から医療協議会に提出せられましたのでありまして、このことにつきましては、医師会は、とにかく現在の段階ではこの値下げということは同意できないという意思表示をいたしておるのでございまして、それにもかかわらず、この繰越されました五月の二十七日の医療協議会に、この問題が取上げられまして、医師会はこれに対して十分の意思を開陳いたします暇もありませんで、そのときに点数値下げということが決定せられてしまつたのであります。これは、このこと自体は著しい薬価の値下りでありまするので、場合によりましては止むを得ない事情があるのでありまするけれども、御承知通り先年来、二十六年来据置かれました単価というものが、現在そのままである。殊に二十八年度の税の処置につきましては、我々が従来期待しておりました三〇%という線が全く実施せられませんで、全国的に四五%いう、まちまちでありますけれども、相当に高額な課税の率になつて参りましたからして、診療を相当いたしまする保険医につきましては、大きな打撃であるのであります。而も最近保険診療がますます増加して来ると、こういうことでありまして、この事態保険医経済に強く響いて参つておるのでございます。  かような次第でありまするからして、これは全国の都市、地方を問いませんて、この値下げということに対して非常な強い刺戟をいたします一面、点数アンバランスの是正をすることなしに、ただ薬値下げに対する点数引下げを行うということは不当であるというのが、医者主張であるのでございます。  かような意味からいたしまして、日本医師会は、六月の十八日に厚生大臣に対しまして、医師会の所信をはつきりと申上げましたし、これによつていろいろな問題が起るで奪うということについても、あらかじめの注意をいたして参つたのでございます。で、幸か不幸か、たまたま六月の二十一日に、或る一部分医師厚生大臣に面会を強要いたしました挙げ句に、一部の者が厚生省の構内に坐り込むというような事態が発生して参つたのであります。この事態は、一部の急進的な諸君であつたかも知れませんが、併しその考えますことは、全国保険医がたまたま普段抱懐しておりまする考えと同じであるのでありまして、これに共鳴する者が非常に多くなつて参りました。で、従いまして坐り込みにつきましても、いろいろな運動、援助が行われたようであります。又全国の各都道府県医師会は、大会を開催いたしまして、この処置について社会保険問題の解決につきまして、非常に強い希望を出して参つておるのでございます。これはなお現在でも各所に大会が行われておるのでございまして、この事態は非常に無理な要求をしておるとは私は考えておりません。現在の保険経済から申しまして、診療報酬単価、或いは点数、或いは課税のやり方などから申しまして、今日この問題を解決いたしませんというと、将来日本村会保険というものは、大きな、或いはそこに完全な遂行はできない事態になるかも知れんと思うのであります。でこれはただ小手先の扱いをするとか、一時的な妥協によりまして今日この問題を解決いたしましても、年々非常に増加をいたします保険診療のために、保険経済いうものはますます膨脹いたすでございましようし、国民大衆に影響いたしますことも非常に大きいのでありするからして、たまたま今日のような段階に参つておるのでありまするから、根本的に本問題を解決いたしませんことには、将来我が国の医療というものは、安心して、診療を担当いたします者も、或いは被保険者大衆も、病気疾病治療ということに専念することはできないであろうと、こう考えるのであります。で、これらにつきまして、いろいろ数字的な問題もあるのでございまするが、又私の言葉が足りませんこともあると存じまするが、数字的な問題につきましては、太田常任理事がおられまして、後刻御説明を申上げるのでございます。又、いろいろとそれらの諸問題につきまして私の知りまする範囲のことは御質問がございますればお答え申上げたい、こう考えまして、一応私の考えております今日までの事態推移につきまして、簡単に御説明を申上げました。
  5. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) それでは太田理事から一つ
  6. 太田清一

    参考人太田清一君) 只今会長からいろいろと述べられたのでございまするけれども、私は更に本問題に対しまして敷征いたしまして、やや詳しく申上げたいと思うのでございます、  去る四月三十日並びに五月二十七日の両日に亘つて、第十三回、第十四回中央社会保険医療協議会が開催されたのでございます。今回の協議事項として提案いたされましたものは、すでに皆様も御存じの通り、第一が結核治療指針の一部の改正について、第二が抗生物質療法基準補遺について、第三が船員性病治療指針について、第四が社会保険診療報酬点数表の一部改正について、第五といたしましてその他ということになつていたのでございます。先ず第一より第三項までの指針等につきましては、いずれも日本医師会の答申に基いて作成せられたものでございまして、従つてこれは社会保険医療内容改善を強く主張し、又医療内容については今回の医療内容改善委員会に諮問すべきであるという一昨年来の主張が、具現いたしましたものでございますので、反対する理由もなく全面的に賛成したのでございます。  次に今回の重大な問題となりました第四項の点数改正でありますが、本日は主としてこの問題についての経過並びに日本医師会意見を申述べたいと思うのでございます。今回の点数改選対しましていろいろ問題を投げかけておりまして、私どもがなぜにかくも本問題に関しまして重大な問題としてこれを取上げているかということについて大分誤解が多く、その結果我々の要求がゆがめられて考えられているというようにも思いますので、この機会に私ども考え方をよく御説明申上げて御理解をお願いすることができますれば大変に幸いと存ずるのでございます。  第一に、声を大にして申上げたいのは、今回の点数引下げということに対しましては、私どもは全面的にこれに反対しているのではないということでございます。先ほど会長が申上げましたいわゆる反対ということは、あとから私が説明することによつてよく御了解を得られると思うのでございます。四月三十日、五日二十七日の中央医療協議会においても、一部を除きましては終始これに賛成をしているのでございます。薬の原価が下つたから点数を下げるということは当然過ぎるくらい当然でございます。それではなぜこのように問題になつたかといいますと、私ども主張は、薬の下つた分点数を下げるのはわかるが、それではなぜ薬の原価上つたものを上げないのかということが第一点でございます。例えば麻薬のようなものは非常の値上り塩酸コカインに例をとつてみますというと、昭和二十三年の十一月改正が二十七円十銭、これを一といたしますというと、二十九年の一月は実に二千四百五十円、九十倍以上に上つておるのでございます。その他の麻薬類はすべて値上りになつているわけでございますが、そのために今の点数では患者手術処置をいたします際、これを無痛にして行いますには、薬の原価に食い込んでしまうという事実があるのでございます。材料費人件費も出て来ない。而も麻薬は購入する上にも、使用する上にも、非常に法規上面倒な手続を要するもので、〇・一グラム使つても、二日も三日も診療を休んで麻薬官から取調べられるというようなものでございますが、このような薬が非常に値上りしたものについては、この取扱い上も厄介なものにつきましては今回は少しも考慮されていない、薬が下つたものを下げるということが当然ならば、薬の上つたものを上げろという要求もまあ我々としてはこれは当然じやないかというようなふうに考えているわけでございます。更に今回の改正点数の中で内服薬につきましても、我々としては納得のできない計算方式を用いております点、或いは注射料の中においても二、三計算方式誤りがあるのでございます。これらの点については十分検討すべきものを、それを一つ一つ検討することもなく討論打切りというような動議を採択し、一方的に決定した中央社会保険医療協議会の非民主的の会議運営方式には、我々としては絶対に承服しがたいというのでございます。これらの誤りの点につきましては、後から詳しく申述べることにいたします。  第二点といたしましては、先ほど会長から申上げましたいわゆる点数アンバランスの問題でございますが、これは昭和二年一月健康保険が初めて実施せられた当時、数名の医師によつて作られた極めて非科学的な点数表を今以て行なつているという事実があるのでございます。その後次から次へと新らしいものが入る、或いは新らしく設けられたものがあるのでございますが、併し古くきめられたものが十年一日のごとく改正せられないで、これが、その当時作つた医師主観が強く支配して作られたものであるのに、これがそのままになつておりますので、現代の医学においてこれを考えますと非常に矛盾が多いのでございます。又医師の無形の技術の評価が非常に低く評価されておるという事実があるのでございます。例えて申上げますというと、初診料のようなものでも僅かに四点でございます。乙地では四十六円、甲地では五十円でございますが、而もこの一つ病気経過中、これとは全く関係のない別の病気や或いは外傷を診察いたしましても、初診料は二年でも、或いは結核の場合は三年でも、初診料は取れない、こういう仕組みになつているのでございます。患者を診ても、これは何であるかそうして治療はどのようにすべきかというような重大な、それこそ患者の苦痛を除くための重大な判定要素となる生命尊重という見地からいたしましても、こういつたような重大な、医師にとりましては最も重要な技術に属しまするところの初診料が、そのように低く評価されている、その上に前に申述べたような制約があるのでございます。これが現行法では被保険者が負担する或いは被扶養者が半分ということになつているわけでございますか、この点に関しますところの意見は差控えますが、とにもかくにも負担の所属帰趨は別問題といたしまして、いずれにしても現在は保険医技術料にしわ寄せして犠牲を押付けているということは、どうも否定ができないのじやないかとこう思うのでございます。又再診料のごときものはこれは二点でございます。二十三円でございますが、これらも投薬、注射手術処置した場合は取れない仕組みになつております。まあ例えて申しますと、昼間患者がやつて参りまして、注射処置をしてやる、ところが夜になつても熱が下らないので家族は驚いて病院に夜中にやつて来る、別に変つたことがないので、これはまあ帰つてよく冷やして、あなたの病気はこうくこういう病気だ、こういうふうな経過をとるだろう、よく氷で冷やしていなさい、食物はこうしていなさいというような病気に対する注意をして帰すということをいたします。これは真夜中であろうとも二十三円きり取れないのでございます。看護婦を起して冬ストーブを焚くというようなことになりましても、やはりそれでも何でも二十三円だと、こういうことでございます。こういつたふうな矛盾がございますし、又病気判定の上にも欠くべからざるいろいろの検査料等点数が余りにも低く評価されているのでございます。一々これをここで例証いたしますことは差控えますが、要するに今の単価は余りにも薬品材料原価だけに重点を置いた点数表のきめ方のため、医療技術料に属する部分が物価の上昇、人件費光熱費の高騰にもかかわらず、全然考慮されないで、低いままに放置されているという事実があるのでございます。更に一方においては労働基準法によつて、すべての労働者は保護されているわけでありますが、当然医療従事者である看護婦その他にもこれが適用を受けるわけでありますが、これに対して一点単価の中にも又点数表の中にも少しも考慮されていないのでございます。従つてこれらの労働者に対して、夜間の割増賃金を支払うということになりますというと、夜の手術、夜の患者は全く医者の生業、天職にたつてのみ保険医はこれを行なつておる、損とか得とかいう問題ではないのでございます。このような労働基準法社会保険点数表との矛盾、或いは又医師法医療法いろいろとやかましい、やかましいと言うと語弊があるかも知れませんが、非常に立派な法律が作られ、例えば患者何人に対して何人の看護婦医者を必要とするか或いは病院の機構はどうとか、診療所はどうか、いろいろと立派な法律があるわけですが、そういつたような法律を忠実に守るために、社会保険点数、或いは社会保険診療報酬との間の大きな矛盾、こういつたような法律との矛盾がたくさんあるわけでございますが、そういう点数矛盾、不合理、不適正のものの幾つかを同時に直すということは、どうもやはり私どもとしても、当然じやないか、こう思うわけです。一体この点数表と申しますのは、いろいろの医療行為の比重、比較表といつたようなもので、健康保険の始められた当時から今日まで、全面的に改正されたことは、私の記憶ではないのでございます。更に申上げるまでもなく、健康保険医療の一小部分に過ぎなかつた時代、言い換えれば、社会保険収入などどうでもよかつた時代に二、三の特定の医者主観によつて作られたこの社会保険は、日進月歩の医術に合わないばかりでない、社会保険医療収入の大部分である今日においては、全然考え方を改める必要が絶対にあるわけでございます。従つて今はその相互間には非常に矛盾が多いので、どうしても今の診療報酬支払方式を継続する限りにおいては、全面的に改訂する必要に迫られておるわけでございます。これは学会を動員して衆智を集めてきめなければならないので、どうしても相当期間を要する、そういうことになると、いつまでも医師犠牲になる。ひいては社会保険医療にも響く結果にもなる、こういつたようなわけでございます。併しこういうような非常に急ぐ場合には、取りあえず緊急に現実の問題として暫定措置として、誰が考えてもこれは直さなければならないというような不合理、不適正なものを直してほしいというのが第二の問題でございます。  第三といたしましては、今の単価は、先ほど会長が申されました通り、二十六年の、当時の谷口日本医師会長橋本厚生大臣の間で四つの条件で日本医師会としては甚だ不満ではあるが、了解したものであるということは、これ又すでに皆様も御承知通りでございます。ところがこの単価昭和二十七年三月二十一日までの暫定単価であつたものが今日まで据え置かれているばかりでなく、税金のほうも所得率二五—三〇%、本年においては十二月三日の自由党総務会において社会保険診療単価引上の問題は多年の懸案であるが、種々困難な事情がある故に、当分は源泉課税対象は二四乃至二八%の範囲内において所得額を査定し、その他の適当な措置を講じて均衡を図り以て社会保険の実を完うしたいと思うというような決議をなされまして、なお閣議においても慎重に検討いたしました結果、三月三日の閣議において了承決定されたと聞いておるのでございます。而も草葉厚生大臣は、はつきりと二月十六日の参議院厚生委員会において中山先生質問に答えられて、昨年と同様三〇%だと言われておるのでございます。ところが末端税務署におきましては四〇%、先ほど会長が申されました通り四〇%以上になつておるのでございます。このように政府与党である自由党総務会又は閣議できめられたものが、その上一国の大臣議会でお述べになつたことが、実際とは全然違つた結果になつておるということになりますと、一体私どもは何を信じていいのか、その去就に迷うのでございます。このように単価はそのままにして、而も一方的に税の問題も結果において放任したということになると、これは私どもにとつては重大問題でございます。このような情勢下において点数引下げをあえて強行することは厚生省としてはよほど御苦心なされてのことと思うのであります。と申しますのは二十八年の二月の十三日、即ち昨年の医師所得税をきめる閣議で向井当時の大蔵大臣から吉田総理に宛てました社会保険診療報酬に対する課税上の取扱等に関する件、閣議了解事項等で次のように決定して公文書を出されておるのでございます。第一は、社会保険診療報酬に対する課税上の取扱については、昭和二十七年分については従来の経緯に鑑み、前年と同様の措置を構ずるものとし、昭和二十八年度分については他の方法により処理すべきものとする、第二は社会保険診療報酬適正化については関係各省において速かに根本的な検討を加えるものとする、なお、このことば要すれば臨時医療審議会その他の民間の公正な意見を徴するものとする、こう決定されておる関係から、これは当然厚生省といたしましても真剣にお考えになつて適正診療報酬について至急に結論をお出しになるため、このような引下げを急がれたと、こう思うのでございますが、このようなことを考えましても、全般的な適正診療報酬検討実施と同時に行うべきものと考えられるのでございます。厚生省は何かといいますというと、臨時医療審議会と逃げられるのでございますが、これは議会等の各議員の先生方の御質問に対しても臨時医療審議会でいたしますということで逃げられるのでございますが、これは決定機関ではないのでございます。診療報酬はあくまでも中央社会保険医療協議会で最終的に、正式に決定されるというのがこれまでの建前であり。そのような関係にございますので、日本医師会といたしましては、臨時医療審議会単価問題を取上げられることに対しましては、これは勿論我々としても反対をするわけではございませんが、これらの二つの会議関係はつきりしませんと、あとになつてそう申しては大変に失礼な下品な表現かも知れませんが、又一ぱい食わされるのじやないかという心配があるのでございます。大変に横道にそれましたが、いづれにいたしましても適正医療費を同時に検討実施すべきものであるというのが第三の理由でございます。  以上の三つの理由が私ども主張でございます。今回のように保険医の全部に及ぼすようなものは、事実上の単価引下げにも匹敵するもので、厚生省は今回の引下げで三%収入減となり、結核の四カ月を六カ月に延ばした。或いは新らしく加えたもので二乃至二・九%増となると、こう言つておるようでありますが、私どもの調査では、私的医療機関でも四%、結核病院では一割近く以上の収入減となるのでございます。而も結核の延長に対して六ケ月後でなければそのような、仮に厚生省の数字が確かだとしても、結核収入増に対しては、四ヶ月乃至六カ月後でなければそういうふうな結果にならない。つまり初めは大した影響がないわけですから、それが四カ月、六カ月後に、先が拡がつてそうして二・九%増になる、こういうような関係になると思うのでございます。従つて以上申上げました理由から、第一に点数表適正にきめられているということ、第二が単価が公正妥当であるという、二つの大前提に立つて初めて言えるわけでありまして、薬が下つたから点数を下げるのは当り前じやないかといつたような厚生省又は保険者の宣伝は、ちよつとそれだけを聞くと、国民は何と医者つてやつは強慾だとすぐ思うのは当然でございますが、誠に医師会は宣伝戦になりますと下手でございますので、どうもこういつたような問題に対しますと、後手々々と立ち遅れますが、まあこの機会に特に医師会の真意を申上げるわけでございまして、私どもの意のあるこをと十分お汲み取り下されば本当に幸いと存ずる次第でございますが、あと御質問に答えまして、今回の中央医療協議会経過その他について率直にお答えをしたいと、かように考えるわけでございます。
  7. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 一応両参考人からの御意見発表がありましたから、委員各位から御質疑をお願いしたいと思います。
  8. 山下義信

    ○山下義信君 私はこの問題は、国民医療の上の重大な問題であり、我が国の社会保障制度の制度上の非常に大きな問題でありまして、委員会はそういう角度で最近の社会保険医対政府間の闘争の問題について非常に大きな関心を持つておるわけであります。それでこの小委員会事態の真相を明らかにして、そうして将来の我々の態度にも資したいと考えております。それで単に医療担当者のそういう職域の利益の問題とのみは我々は考えていない。そういう観点で実はこの問題の推移を眺めておるのでございますから、公平な見地で私は検討を加えておるわけでございます。そういうことで私は承わりたいと思う。参考人の方に、黒澤会長並びに大田理事に私は伺いたいのでありますが、今回のこの闘争について我我第三者として納得の行きにくい点がありますから、その点から伺いたいと思います。それは例えば単価の問題にしても、昭和二十六年度に今お話のように暫定的にきめられた現在の、現行の単価、それが今回突如としてこういう大きな闘争の題目に掲げられ来たつたこのニカ年間乃至三カ年間の間は一体日本医師会は何をしておられたかということですね。これが私ども合点が行かない。一体単価の不当は今日初めて不当になつたのか。ですから昭和二十六年、二十七年、二十八年はあなたのほうではこれを妥当と見ておられたのかどうか。今日初めて現行の単価の不適正ということを急に呼ばれ、そうしてそれが闘争の題目になつて来たということは私どもは合点が行かないのであります。或いはその他のことについても私は或いは日本医師会政府との間に点数の改訂についても、今回の抗生物質値下りによるこの引下げ等についても、私は或る種の了解を持つておられたのではないかという気持がするのです。そばで見ておりますと……、例えば先般問題になりました一部の社会保険医の諸君が、厚生省に坐り込みのデモをやつたとする。そのときにおけるあなたのほうの態度は、その坐り込みの社会保険医には何ら関係がないのだという声明が新聞に出たように思う。私は不思議に思つたのです。これは従来医師会等が主張されて来たつた問題を引下げて、これらの諸君がこういう行動に出て来られたのだろうと思うのだが、併しそれについては日本医師会は何も関係がないのだというか、言い換えれば我々の受け取つた印象はそういうことに反対しておるのは一部のものだ。日本医師会政府の方針に対してはそこまでは反対をしていないのだという、ただデモの形態についてあなたがたがこれを認めるとか、認めんとかいうのでなくして、その主張することについても何かしらん、それらの人たちとは考えが違うのであるかのごとき御声明、或いはおとりになつた態度が私どもには印象づけられた。先ほど黒澤会長もややそれに近いようなことをおつしやつて、併しながら掲げていること、主張していることは同じようであるから、我々もそれにその主張においては全く同様であるとおつしつたんですが、言い換えると、後から日本医師会があの社会保険医諸君のあの動きに合流したというか、初めて腰を上げたというか、ついて行つたかという形で今回の全国的な大きな闘争をなされたように私どもの目には映ずるんですね。それでどうもその間に厚生省との間に日本医師会の幹部諸君は十分話合いが従来こうなされつつあつて来たんじやないかという気持がするんです。先般政府出席せしめましてこの点を聞いて見ますというと、奥歯に物のはさまつたようなことを言つて、必ずしもなかつたとは否定をしない。若干話合いをして来たということの事実だけは言うんです。従いまして今回あなた方のほうでこの問題について立上つてつておいでになるのは、五月二十七日のあの中央社会保険医療協議会のあれが極めて不都合であつたといつてそこから発端をされているようであるんですが、それまでは、その五月二十七日の決裂までは十分に私は政府との間の妥協の話をなして来られたのじやないかと思う。それでなければ合点が行かない。五月二十七日の医療協議会の運営が不都合だからといつて席を蹴つたと同時に、全国社会保険医が起ち上つたというのでは筋が通らん。それまで闘いつつ、闘いつつ政府要求し、政府といろいろと話合つたが、蹴つてつて遂に交渉が決裂した、その形が一部には医療協議会の席にも現われたというのでありますと、私どもは何だか筋が通つてわかるようでありますが、そこまでは大分妥協をしておいでになつているのじやないかという気持がするんです。これは私は率直に申上げるんです。そういうふうに感じますので、私は次のことを伺いたいと思うのでありますが、従いまして第一点としましては、この単価の問題につきましても、政府のほうではニカ年以上経つて、まだこれらについての方針やその他の態度が決定しないのは、実は医師会に責任があるのだ、それで政府医師会の再考を促しているのだというような意味のことを申しておりますが、この点につきましては、どういうふうに医師会のほうでは考えておられるのか。今日までのとられました経過につきまして御説明を願いたい。  それからついでに申しますが、第二点は、今申しましたように点数表の不均衡を、不公正の是正をするということについては厚生省のほうでは日医側の意見というものがどこにあるかわからん、それで日医側のほうから正式な意見というものが出て来ないのだ、従つて要望がどういう要望をしているのかはつきりわからないのだということを言つておるのであります。今ここで御陳述になりましたことを承わりますと、大分詳細な意見を持つておられるようであります。私ども具体的な資料がお揃いでございますれば、当委員会にも預載したいと思うのでありますが、そういうはつきりとしたあなた方の意見というものを政府にお出しになつておられるのか、なつておられないのかということを一つ承わりたいのであります。  それから今回薬価の値下りによる点数の改訂は、これはあらかじめ政府と日医側との間に折衝があつて、あなた方のぼうでは了解したのであるということが伝えられているのでありますが、果してその点はどうかということを承わりたい。従いまして今回の点数の改訂は政府とすでに内折衝をされてその点御了解の下でなされたのでありますから、従つて治療指針等もあなた方のほうとのお話合いの結果できるだけこの点数引下げによる刺戟を少くするためにその実施等についてもお話合いがあつて、そして今回政府がそういう措置をとつたのであるということが伝えられておるのでありますが、この点はどういうふうになつておりますか、承わりたい。  先ず以上の四点を伺いますが、ひつくるめまして最後に私が伺いたいと思うのは、七月の五日にあなた方のほうから四項目の要求をひつ下げて厚生大臣に御会見になつたということでありますが、そのときの模様も最後に併せて、どういうお話合いをなさつたかということを、互いに了解点に達したのであるか、達しなかつたのであるか、どういうお話合いをなされたのかというようなことについて承わりたい。
  9. 中山壽彦

  10. 山下義信

    ○山下義信君 成るべくならば会長から私はできるだけのことを説明して頂いて、黒澤会長がおわかりにならないことを太田参考人から補足して頂きたいと思います。
  11. 黒澤潤三

    参考人黒澤潤三君) 只今山下先生の御質問につきまして私のわかります範囲をお答え申上げますが、単価の問題をなぜ今日まで放つておいて、そして俄然この五月にこういう問題を取上げたかという御質問でありますが、社会保険診療報酬というものは、我々が申します自由診療に比較いたしまして、非常に低額であるということはこれはもう周知の事実なんでございます。而もその低額診療によつて医者生活をいたしますのでありますからして生活の脅威がある。何かの方法でこれは補わなければいけないのでありまして、それには単価値上げするということも一つの方法でございましよう。或いは操作をして点数を上げるということも方法でございましよう。それからもう一つはそこで考えられますのは支出を少くすることでありまして、今日保険医が最も苦痛といたしまするのは、税金の問題なんであります。従いまして税金の面で医師の負担を少くするということも考えられたわけであります。勿論私ども現在の日本医師会理事者は本年の四月に日本医師会理事者になりまして、これらの諸事務を担当いたしましたのでありまして、その前にも恐らく前の理事者の諸君も同様な考えでおられたことは明らかでありますけれども、ただ方法といたしまして点数を是正をいたす方法もございましようし、或る面では税でこの医師経済を補おうというような考えもあつたかも知れません。でありますからして前理事者もこれについては十分苦心をいたしまして、何らかの形で保険医経済内容につきましてこれを考慮しようという方法があつたのでありするが、たまたまむしろ一点の単価を操作するということは、今日の経済下におきましていろいろな困難な面もあるということで専ら税の問題を考えておつたかも知れないのでございます。従いまして従来のこの数年間の日本医師会のあり方につきましては私どもも十分にまあ御説明を申上げる段階ではありませんけれども、趣旨といたしましては保険医経済を十分に考慮いたしましたことなんでありまするが、方法において単価によらずに税ということを考えられる面もあつたかも知れないと存じます。これは私自身がいたしましたことでございませんので、はつきりとしたお答えはできないのでありますが、私は想像いたしましてさようなことも考えられるのでございます。  それから坐り込みの問題なんでありますが、只今お話のございましたように、坐り込みにつきましては六月の二十一日に突如として坐り込みということが行われた。で、まあ全然事情を知らない人から考えますというと、日本医師会は最近の社会保険の問題を解決するために、まあ考えようによりましては或る一部分の人を使倣いたしまして、坐り込みというような強硬な戦術に出たとも考えられないことはないのでありますが、かようなことにつきまして私ども日本医師会がその坐り込みについて使嘱するというようなことはないということを申上げているのでございます。従いましてたまたま社会保険問題につきまして非常な不満を持ちまするところの保険医の諸君がかような運動をし始めて来たのでありますからして、当初の動機につきましては、日本医師会ではもう全然寝耳に水で私どもはそのことを聞いてびつくりいたしましたような次第なのでございます。  それから点数アンバランスにつきまして日本医師会意見がないと、かようなお話でございますが、これにつきましては日本医師会もよりより十分な研究をいたしますし、日本医師会内に専門の研究会を持ちまして、いろいろと研究をいたしているのでございます。で、現在点数アンバランスにつきましては、いろいろな資料を持つているのでございますが、これは或る程度話が進行いたしましたときに、政府とも十分それを出しまして話合いをしよう、こう考えているのでございます。  薬価の値下りによる点数改正ということ、このこと自体は先ほども私が申上げましたのでありますけれども、昨年十二月の医療協議会の席で、或いはその前からすでにこのことは問題になつていたようでございまして、聞くところによりますというと、その当時の医療協議会でもその点数値下げということは考えられたやに聞いておるんでありますが、まあこれは私の仄聞でありますからはつきりはいたしませんけれども、たまたまその当時はペニシリンの極く少部分値下げですんでおるのでございます。ところが、そのペニシリンの極く少部分値下げでさえも全国保険医に対しましては非常な衝撃でございました。今回値下げをいたされましたストレプトマイシン値下げなどにはまるで比較にならないくらいの少額の値下げであつたにもかかわらず、全国保険医としてはそのペニシリン値下げで非常な打撃を受けて、あちこちに強い意見が抬頭して参つておることも私ども承知しておるのでございます。それからそのあとで今の日本医師会の答申に基きます結核治療指針の実施の時期というものをこれと一諸にいたしまして、まあいわば保険医経済的影響と申しますかを少くしようというようなお考えであるのでありまするが、この点数値下りによります収入減というものは、政府でも数字を出しております。日本医師会でも一応数字を出しておるんでありますけれども、このこと自体は実際やつてみないとわからないことなんであります。現在七月一日から請求をいたしまして、これに対する旧点数で請求いたしましたものの修正をした額というものは相当に大きなものであるようであります。でありますので、値下りに対しまする数字も政府の申しておりまする三・三%ぐらいなものではないように思われるのでございます。又一面使用期間、使用範囲の拡大によつて、これの影響につきましては、これは今後やつてみないとわからないのでありまするが、若干これは殖えることは見込まれるのでございまして、これらにつきまして請求はすでにしておりますからして、値下りの面はよくわかります。わかりますが、今後増加の面につきましては全然まだやつておりませんので、算盤で出すことはちよつと困難じやないかと私は考えておるのでございます。七月七日の厚生省に対する要求を実は私もそのとき参つておるのでございまして、そのことにつきましては医師会の四項目を出しまして、極く短時間の会見でございまして、一応この要求項目をお出しいたしますからして、十分な御考慮を願いたい、これにつきましては後日話合いを続けるということを約束いたしまして引取りましたので、その席上では何ら結論には達しておりません。只今質問の点につきまして、大略御説明を申上げました。なお、太田理事からも……。
  12. 山下義信

    ○山下義信君 その前に今黒澤会長からお述べになりましたことで、もう一つ聞いておきたいと思うことは、あの社会保険医の坐り込みのことを全然知らなかつたのだとおつしやるのでありますが、果してそうでありましようか、どうでしようか。私は或いは事前に御承知になつていらしたのじやないかと思うのですがね。あのデモの仕度などもあのお膝元の近くで御準備なさつていたこともあり、大体は御承知つたと思う。それがデモが行われたときに厚生省当局は困つて、あなたのほうにいろいろお話があつて厚生省のほうの御注文で、あのデモには何ら関係がないのだという、どちらかと言えば政府を助けるような意味の御声明は、厚生省のほうの御注文でお出しになつたのではないでしようか、その辺のことを一つ私は承わつておきたいと思うのですね。  それからいま一つお話の中の草葉厚生大臣と七月の五日にお会いになりましたときに、お互いにここでまあ一つ話合いで行こうじやないかという了解がついたというようなことも聞いておるんでありますが、併しそれは続いて交渉なさる糸口ができたのですか、ただ単に会うて帰つたというだけなんですか、然るに全国保険医諸君は、その以後において一日休診という、ああいう前代未聞の闘争をやつておられるんであつて、七月一日の厚生大臣との会見は決裂したんですか、或いはこれから話合いをしようという紳士協約ができたのでしようか。私は七月一日のあなた方のほうの代表者の厚生大臣との会見と、その後の社会保険医の全国的なあの闘争の情勢と睨合せまして、話合いをしようということの約束をしたのか、或いは要求を持つてつたけれども厚生大臣は蹴つて、そうしてそれきり扶を別つたのか、どういうことかということが私に納得ができませんので、その辺の様子を一つお話を願いたい。
  13. 黒澤潤三

    参考人黒澤潤三君) 只今の御質問の坐り込みにつきましては、大体私は先刻申上げた通りなんでありますけれども、実はその六月の十八日に私どもが要望書を大臣に出しまして、この内容は御承知のことと存じますが、相当強い日本医師会意見をこれに述べてございますのであります。これを出しまして一応政府の猛省を促しておつたのでありするが、たまたま二十一日に一部の諸君が厚生省に参りまして大臣と会見を強要した、その後でそこに坐り込みになつたということなんでありまして、これは山下先生再三それについて御質問でありまするが、私どもではその坐り込んだということを聞きまして実は初めて事情を知りましたのでありまして、あらかじめその一部分の諸君に使倣をいたしまして坐り込みをやらしたというようなことはないのでございますからして、この点ははつきりと申上げておきます。  もう一つは、七月五日の会見につきましては、これは只今山下先生のおつしやいますように、一応要求事項を出します、で、この四項目の要求につきましては、今日すぐしかそれの返事はできないのであるからして、今後十分に検討してと、この点についての話合いはいたしておりますので、さよう御承知を願いたいと思います。
  14. 山下義信

    ○山下義信君 いま一つ黒澤会長に私伺いたいと思うのは、あとで又他のことを伺うかもわかりませんが、差当つて伺いたいと思うことは、一点単価の値上と課税の問題とは、あなた方のほうは久しく不可分の問題として処理して来たんだと、こういうことでありました。ニカ年間放棄したんではない、単価の問題を決して放棄したんではない、これは課税の問題で善処して行くという方針で実は来たんだ、今回突如としてこれを取り上げたという意味じやないんだ、そこで処理して来ようとしたんだ、こういうお考えであります。ところが今度は何ですか、一点単価の値上を要求せられたらば、課税の問題はもういいのですか、一体根本的な方針はどういう御方針、今までは一点単価の据置は課税問題について善処するということで、それで処理して来たんだ、こういうこと。今度は一点単価の引上をやるということになると、課税問題は、これは追及しないというお考えですか、どういうことですか。
  15. 黒澤潤三

    参考人黒澤潤三君) 一点単価の値上の問題でありますが、この問題は先刻も私申上げましたように、そのときによつて、又そのときの理事者によつて方針も違うでありましようけれども、要は保険医経済内容に帰着するのでありまするが、一点の単価を二十六年に現在行われておりまする十一円五十銭、十二円五十銭というものにせられまして、同時にこれは、聞くらくは暫定単価であると、従つて一方税処置は二五%、三〇%の税処置をするということで、二十六年、七年と、こう二年間はこの処置が行われておつた。まあ不満足ながら保険医の諸君は一応それでやつて参つておるのでございます。ところが二十八年度のものにつきましては、従来やられておりました二五%乃至三〇%の税処置というものは、全国的にこれが取り上げられなくなつてしまつた、従いまして或る県ではまあ十分に交渉をいたしまして、やつとそこに近いところに持つてつたものもあります。大多数のものは四〇%以上の、或いは甚しきに至つて廿五〇%というようなことになつて参りますからして、これじやたまらん、一体税と言つて約束をしておきながら、税のことは駄目だ、それなら単価であり、点数アンバランスを直すことでなければ、保険医は生きて行かれんじやないかというような相当切実な叫びなんでありまして、まあ今日の国の経済のことを私どもはよく存じませんけれども、国家経済考えましてまあ成るべく御迷惑をかけないようにとは考えるのでありまするが、保険医の生活というものがさように追い詰められた段階になつて参りますというと、従来割合いに引つ込み思案であつた医師の諸君が非常に強く起ち上つて参りまして、これらの問題の解決に、税の問題もさようである、点数単価も、とにかく今日この問題を解決しないことには、だんだんだんだんと保険医いうものは追い込まれてしまつて、而も現在の段階から申しますれば、保険診療というものはますます増勢する一途であるのであります。更に我々は社会保障というようなことも将来考えられておる矢先であるのでありますからして、ここでこの問題を十分に解決をして、小手先は或いは一時的妥協に終らないで解決しておかなくちやならんというような気持が、全国保険医に強く起つて来たことは確かでございます。私はさような意味であろうと考えます。
  16. 山下義信

    ○山下義信君 結局日医の最高の方針は、そうすると単価の引上げと税の問題とを並行して行くという御方針と了承してよろしうございますか。私は税の問題と単価の引上げの問題とは本質的に若干の差異がある、社会保険医というものの性格上について私は若干の何と言うか、一つのイデオロギーというような、私は本質的な差異があると考えるのでありますが、これは並行しておやりになるという方針であるということならばそれでもわかります。それで今後はどういう態度で、掲げられた四項目のこの貫徹については、あなた方のほうではどういう方針を持つて行かれるということでありますか、その根本的な御態度を一つつておきたい。
  17. 黒澤潤三

    参考人黒澤潤三君) 我々が七月五日に出しました四項目というものは、これは前々から研究せられました、而も保険医の非常に最も切実に要望する問題なんでありまして、このこと自体が全部満たされるならば、今日のこれは保険医と言わずに日本社会保険診療というものはこれ以上のことはないと私は考えるのでありまするが、まあこれにつきましてはいろいろな経路があろうと存じますけれども、例えば点数アンバランス、第一項にあります点数アンバランス、第二項の単価の問題等は、これはいずれも厚生省の当局、或いは中央医療協議会、或いは社会保険の審議会でございましようか。さようなところで検討いたしまして、とにかく我々の要求が実現できますように十分な努力をいたしますし、日本医師会といたしましてもこれについての研究をいたしておりまして、数字的のデータも作つておるところでございますので、これが一日も早く目的の達成せられますことを希望いたしておるのであります。勿論これらにつきましては国会の先生方の十分な御了解と御支援を頂かなければならんことと存じます。殊にその次の第三の項目であります社会保険法の抜本的改革というようなことがあるのであります。このことにつきましては社会保険法は先刻も申上げましたように健康保険というものは大正十年頃立案せられた法律であります。その当時の日本の国の事情、或いは経済の状態というものは昭和のまだ前でありまして非常に違つておるのであります。当時のドイツの健康保険を輸入いたしました日本の大きな社会立法なのでありまするが、このことが今日まで続いておる。もうすでにそれは関東大震災の大正十二年頃実施せられる考えで企画されたそうでありますが、関東大震災のためにこれが延びまして昭和二年の一月一日から実施されたのであります。法についての改正部分的にいたされておるのでありまするが、その根本の精神というものは大体その当時の国の事情によつて立案されたようなのでありまするからして、終戦後の日本の今日の状態から申しますれば、この健康保険法につきましても相当に抜本的な改革をいたしませんというと、今日の国情には十分適合しない、こう考えられますので、これらは勿論国会の先生方の御尽力によりましてできますことと存ずるのであります。  更に第四項目にあります医療協議会の問題なのでありまするが、これは御承知通り昨日から医療協議会が開かれておりまして、当初にこれらについての話合いもあつたようであります。なお、これについてもやはり法律改正する面もあるかも知れませんが、これらにつきましては今後十分検討せられることと思います。お答えいたします。
  18. 山下義信

    ○山下義信君 もう一つ伺います、私は今までお話を承わつておると実は要領を得ないのです。それで国会はこの問題について取り上げました以上は、何らかの意思表示をして公正妥当なる意見を出して問題の速かなる私は結着を希うものであります。なんとなれば国民医療に重大なる影響があるからです。これは社会保険医諸君はなんと言われるか、この要求が貫徹せざれば我我は社会保険医を総辞退する用意がある、我々は重大なる決意があるということをしばしばおつしやつておられる。これは国民として非常に恐怖を感ぜざるを得ない。このことによつて政府が困るかどうか、これは別問題。或いは政府の一部では困らないということを言つておる。そういうことを言うけれども、そういうことの実現は不可能だと思います。非常に楽観的な見方をする政府内の一部のものがある。いずれにいたしましてもこれは当面は政府社会保険医の闘争であるのでありまするが、それ自体が国民が医療上にしわ寄せをせられて、国民はいつも不安な思いを持つということになる以上は、黙視することができません。従つてどもは国民の福祉のために、国民の医療上の安心安堵を一日も早く見なければなりません立場において、問題の速やかなる結着を望むものであります。でありまするからして、私は事態を明確にすることを伺つておるのであります。この四項目がこれは全部これが解決しなければ、あなた方はお許しにならんのであるか、どうであるか或いは四項目を細分すれば、五項目にもなりましよう。そうしてこの要求の貫徹の方法はどういう態度をとられるのであるかということを、今まで伺つたんでは明確にならん。今会長のおつしやるには、医療協議会その他の審議を待つつもりだと、おつしやつた。それで解決が付くというお見通しであるかどうか。或いは政府とお話合いが或る程度まで、途中までは進みつつあつた。俄然として急にああいうふうな全体的な闘争、苛烈なる闘争形態に移られたという辺のところについての事情の御説明がないのでありまするが、政府とお話合いをつけるというお見通しがあるのか。強烈に闘つて行かなければ、なかなか解決しないので我々は飽くまで、断乎として闘うという御方針を持つておられるのか。或いはこれは今のような各種の協議機関等によつて我々は解決する見通しを持つておると言われるのか。この問題の解決には非常に不安を持つておる。おぼつかないと思つて、実は我々も非常な焦慮をしておると言われるか。この問題の解決にあなた方の団体としての最高幹部は楽観的な観測を持つておられるのか、異常な熱意を持続せざれば容易に解決しないというお考えで、なお闘争態勢を進めるというお考えであるのかということがわからない。聞いておりますというと、うやむやのうちに何だか納りそうにも聞えますし、私どものほうではこれは非常に重大な問題と思うておりますので、その辺のお見通しを、一部においては政府とごちやごちや話合いにし妥協するような形も見えており、一部においては非常に威嚇的な社会問題としての闘争態勢をおとりになつており、私はああいう一つ社会運動を大きな社会問題として闘争形態をおとりになつた以上は、私は責任があると思う。この運動を主催するこの団体の幹部諸君は私は責任があると思う。あれだけの、一日休診というがごとき国民医療に非常に不安な闘争形態をおとりになつて、そうしてこれらの項目を掲げておいて、うやむやの間にこれを葬り去るというがごときことになつて行かれるということになると、私はこれは鬼面人を驚かすものである。真相をさぐつてみれば、政府との間でちよこちよこと或る程度の了解を以てことを納めて行こうという、飽くまでもこれを闘うということでなくて、或る程度話合いで納めて行こうと進めようとするならば、それはそれでいいから、私はこの際これを、事態を明らかにして頂けば、我々はこの問題を検討して行く、審議して行く上に考え方がありますからはつきりとその辺をおつしやつておいて頂きたいと思います。
  19. 黒澤潤三

    参考人黒澤潤三君) 山下先生の今の御質問でございますというと、何か日本医師会政府とあらかじめ話合つて、その楽屋裏で細工をしておるというようなお考えであります。併しながら今日、今申上げますように日本医師会が六月十八日の要求事項を御覧になりましても、あの字句に示しますように、曾てないような強い表現をしておるのでございます。なお七月五日の要求項目は四項目でありまするけれども、あのこと自体は具現化せられるならばこれ以上のことはございません。併しこのこと自体は我々が要求をいたしまして、全部が勿論これが貫徹することを望んではおりまするが、まあ折衡の結果完全でない場合もあろうかとも存じますが、現在の私どもはこのことが完全に実現せられるような努力をしておるのでありまして、いい加減に、鬼面人を驚かすというようなものではないのであります。日本医師会理事者である我々は、失礼ながら私は開業医でございまして、毎日相当に多数の診療をしておるものでありますけれども、殆んどこれを放擲いたしましてこの問題の解決のために尽力をいたしております。理事の諸君も同様でございます。でありますからしてこの問題をうやむやに、まあ一部分の妥協でことを済ますというような安易な考えでは毛頭ないのであります。今日の問題を解決いたしませんことには、到底これは保険医ばかりじやなくて、先刻先生のおつしやいますように全国の五千万の被保険者及びその家族というものは、安んじて医療を受けることができないということはお説の通りでありまするので、是非ともこれらの問題の十分な解決をいたしたいと存じます。さような意味合いからいたしまして、どうぞ先生方のこれに対する御検討と又いい御解決の方法をおとり頂きますように私はお願い申上げるのであります。
  20. 山下義信

    ○山下義信君 太田参考人に私は伺うのですが、今の健保のアンバランスについてあなたがたのほうの案といいますか、一案というものいつ御発表になりますか。
  21. 太田清一

    参考人太田清一君) その前に先ほど薬の、今回の薬の値下りによる点数引下げ問題について、あらかじめ日医と厚生省とが了解しておつたのではないかというような御質問がございましたので、初めにその問題に関連いたしましてお答え申上げて、あとからいわゆる不合理適正な今回の問題に我々の考えておりますことをあとから続けて申上げたいと、こういうふうに思うのでございます。率直に申上げますというと、昨年の十二月の入院料往診料の改訂当時、すでに抗生物質その他の薬が相当値下りを示して参りましたので、その際同時にこれらの点数引下げるべきだという保険者側の要求が非常に強くて困るというような話が、当時の保険課長の五十嵐医療課長から、非公式ではありましたけれども、そういうような話があつたことはこれは事実でございます。で、その当時私は常任理事でございまして、社会保険関係を担当いたしておりました関係から、次の点を強調いたしまして、この問題に対する厚生省の慎重なる態度を要望しておいたのでございます。で第一は、社会保険収入に対する税金問題が、先ほど申上げましたように決定いたしませんで、重大な段階になりつつありますので、その決定を持たないので軽々にこれを行うべきではなく、慎重に取扱つてもらいたいということが第一点でございます。第二点といたしましては、入院料往診料の引上げは一部保険医だけに潤う問題であつて、特に入院料は官公立大病院に大きく響くが、一般開業医にとつては誠に関係が少い。従つてその対象として見られやすい抗生物質全般の引下げは、全保険医の問題だけに、慎重に取扱つてもらいたい。特に入院料引下げは現在結核関係医療費が全医療費の四五%と推定せられるので、結核病床の増加と相俊つて、更にこれを上廻ることが予想されるので、その対策を十分考えるべきである。極端な表現方法を以てするならば、一部の医療機関のために全部の保険医から取り去つて、そしてこれを穴埋めするというように見られやすい問題だけに、よく全般の研究調査をされた上でしたほうがよいじやないか。それから第三点といたしましては、若しこういつたような問題を出すならば、初診料、両診料の問題についても考慮する必要があるのじやないかというような三点を申し述べて、いろいろと話合つたことは記憶しておるのでございます。で丁度その頃厚生省として結核治療指針の一部改正について、それから厚生物質療法の基準の補遺、高血圧の治療指針その他について学会の医療内容改善委員会に諮問されており、結核治療指針のほうがいろいろと学者の間に議論がまとまりませんで、三月初め、昨年の十二月入院料往診料の改訂のため、当時の医療協議会の連合会側の委員の上山、立石両委員の交替問題も起りまして、昨年の結核の四万床の結核ベットの増加も加わつて、相当保険経済に占める入院料の地位が大きく、保険者側から強い要望があるんだというようなことも聞いておつたわけでございます。で、この機会といつては大変失礼でございますが、今の日本で行われております相互扶助的な保険制度を、根本的に結核対策について国家的に考慮する必要があるんじやないか。今日までの数年間において、それこそ数年後においては、それこそ重大な危機に陥ると考えられますので、この点も十分国家的見地から御考慮下さいますれば、大変に幸いと存ずるのでございます。で、お手許に配付いたしました資料、第二表を御覧頂ければ、この入院、外来の診療費の関係がおわかりになると思うのでございますが、二十四年度の一〇〇に対して総計において二・六倍とたつておりますが、入院は実に四倍になつておるのでございます。で外来はニ信となつているにすぎないのであります。而も医療費、入院と外来費のそれの百分比は二十四年度におきましては二五・六五%に対して、外来は七四・三五%であつたものが二十六年度においては、入院は三四・四九、外来は六五・五一%、半分以上跳ね上つておる。二十八年度においては三九・三%に対して六〇・七%となり、二十九年度においては、昨年十二月の入院料の改訂と共に、恐らく驚くべき数字に跳ね上つているであろうことは想像にかなくないのでございます。病院病床数も二十四年度におきまして、二十五万四千三百七十一床を一〇〇といたしますと、二十八年度は四十万八千五百十床となり、一六一と増加をし、今後増加するばかりで、これらの多くは結核のためのものばかりであつて、真に結核問題は社会保険医療の重大な問題でございます。大変横道にそれましたが、こういつたような観点から、相当入院料が大幅に増して来まして、保険経済がどうとかだから、大変保険者から文句が出るのだというようなことを私は聞いておりました。三月十六日に初めて五十嵐当時の課長から公式に協議会を開きたいという話があつたわけでございます。結核治療指針の答申を早くするよう学会に申入れてくれまいか、保険者側は日本医師会が故意に学会を遅らしているというふうに言つて困るのだというふうな話があつたわけでございます。そこで私は更に所得税に対する問題が未決定であることは、昨年の入院料往診料改訂当時と変りがない。市もその状況は却つて悪い。それから第二は、日本医師会が学会の答申を故意に引き延ばしているというようなことは絶対になく、又そんなことはできるものではないのである。従つて学者の意見の調整については、十分善処いたしましよう。それから当時日本医師会の両副会長は両名とも辞職をされまして、又日本医師会の役員といたしましても、三月末を以て任期満了というふうになるのでございまして、この問題は当然新らしく選出された役員において処理せらるべきものであると考えられまするので、中央医療協議会の開催期日については、厚生省の要望があつたということだけを新役員に事務引継ぎをいたしましよう、こういうことを話合つたのであります。で四月一日に新らしく日本医師会の役員が選出され事務引継をいたしたのでございます。そこで四月十三日に日本医師会理事会において正式に決定を見ました次の事項を口頭を以て申入れをいたしました。第一は、前に申述べたように、社会保険収入所得税があのように、二十六年度の単価問題の解決条件の一つであるという前提が、結果的に見て一方的に破棄されているからして、厚生省はこの際適正医療費について検討すべきである。臨時医療保険審議会においてニカ年間何らの結論も出ないということに対しては、積極的に努力してもらいたい。ただ、そこで以てのんべんくらりんといつまでも遅くなるのは困るから、厚生省も積極的に一つ働きかけて努力してくれまいかというようなこと、第二といたしましては、全般的に影響する改正であるから、同時に全般的に不合理、不適正な固定点数改正すべきであるというのが第二点、第三点は学会の答申を待つて議会を開くべきであつて、学者間の意見の調整はしたいということを正式に回答し、更に不合理、不適正なものについては、初診料、再診料、検査料等医師技術料に属するものの不当に低いと思われるものについて申入をいたし、この点久下局長並びに五十嵐課長に口頭を以て二回くらいと思いますが申入れたのでございます。四月二十日に日本医師会館において五十嵐課長が来会されまして、開催期日を四月三十日にきめたい、それから抗生物質ストレプトマイシンペニシリン、等抗生物質について、初めてその具体的な点数について協議をし、その際も、他の不合理適正なものについては同時に提案されることを強く要望したのでございます。このときの我々のこの点数について協議いたしましたのは、薬の値段についてストマイがどのくらいで買えるのだろうかというような、厚生省の言い分に対して我々が意見を述べたということだけで、全般の問題に対しては我々は了解を与えたつもりは決してないのでございます。それから四月二十二日に第二回目の抗生物質点数について再び話合いをいたしました。ところが今まで抗生物質だけだと思つていたものが、四月二十六日になつて医療協議会を開らかれます前四日になつて、突如としてぶどう糖、リンゲル、その他全般に亘る固定点数の引下に関する原案を示されたのでございます。従つてこれら示されたものにつきまして検討をする暇もなく、又私の申入れをいたしました不合理、不適正点数の幾つかについては、これは中央医療協議会の席上で、例えばといつたような表現の仕方で出したほうがいいじやないかといつたような、ただただ今回の点数引下だけを強力に押しておることをはつきりいたしまして、日本医師会の正式の申入れについては、何故かその一片の誠意も熱意も示されなかつたのであります。ところが今開業医は税金問題で非常に激昂している。若しこれをのみ強行すると、保険料の面において重大なる影響があり、ガソリンに火をつけるようなものだ、大変こう申しては失礼でございますが、久下局長は議会で答弁が非常にお上手だそうでございます。今度は厚生省は責任をもつてお答を頂きたいとまでかく言明したくらいでございまして、私ども日本医師会といたしましては、この薬価の値段については了承を与えましたが、個々の問題については一々了解を与えないまま、厚生省としても又我々の申入れに対して何らの具体的な誠意を示されないままの状態で、四月三十日の中央医療協議会は開催されたのであります。なお、一層この点は非常に重大でございますので申上げますが、中立委員に対しては当日協議会の席上で資料をお配りしたとかこれはあとから聞いたのでございますが、そのための何か薬が下つたの点数を下げるということに日本医師会反対されておるというように印象づけられまして、誤解をされたのではないかと思われるような発言があつたわけでございます。当時の日本医師会の代表としての私の発言内容は、第一項より第三項までの治療指針については賛成をする。第四項の点数改正についても大部分は賛成するが、検討する時間も少なかつたが大部分は賛成する。併しこれのみを単独に施行することに対しては異議がある。同時に他の薬の上つたために、不合理適正なる点数改正を同時に考えてもらいたい。各学会、地方医師会からいろいろ陳情や要望があるがその取扱いについてでござましたが、これはお手許にお配りしてございますが、このようなことをどんなに持ち込みましても厚生省がその気になつてくれなければ、何年でも机の上に放置しておくというのが従来からの慣習かのように見受けられますから、やはりこれだけは取上ぐべきものは取上げてもらいたい、協議会はつきりしておく必要があるのではないか。いけないものはいけない、いいものはいいということではつきりすべきじやないかということの発言をいたしました。勿論このこと早急に結論が出るものでもございませんが、又内容によつては特に医療内容に亘るものでございますので、厚生省さえやる気ならすぐできる問題でもあり、又その中には不合理適正点数問題があるからでもございます。併し四月三十日の中央医療協議会に議論が沸騰して、又厚生省に誠意があれば厚生省側なり会長なりが休憩するなり、小委員会に持ち込むなりして、円満に会議を持込むのが従来の行き方でございますが、今回はそういうことをいたしませんで、ただ、一気に押そうというふうに感ぜられる発言をした。私が自分で、休憩をしてそして懇談しようじやないかというふうに行かなければならんような変態的な会の運営方式をとられたわけでございます。これを以ていたしましても、ただ厚生省は強行しようということで、ほかのことは全然考慮されてないというようなことにつきまして、或いはそのときの久下局長の御答弁につきましては、私としては甚だ遺憾の点があつたのでございます。結局いろいろと操めました挙げ句に、局長から懇談会の席上次のように言明をされたと思うのでございます。一つ適正医療費については厚生省も積極的に従討をする。それから臨時医療保険審議会をして早く結論に到達するように努力しよう。それから第二が、点数の不合理適正なものについては、速かに検討する、所得税の法制化については努力する。発言の内容はこういうような内容だと思うのでございますけれども、この検討するということだけでも、保険者側から猛然と反対があり、所得税はここの問題でないのではないかというような保険者側の不誠実な意見も出されたのでございます。私どもといたしましては、ただ検討するということだけでは、これまで政府厚生省のとり来たつた経緯に鑑み、信用ができないから、期限を明示して欲しかつたわけでございます。これだけではどうも又騙されるというような気がしてならなかつたわけでございます。更に、そのとき木村中立委員から医師会と十分話合いがついて会議を開いたんじやないのか。一体薬が下つたの点数引下げるのは不思議はないじやないか。なぜ反対するのだ、といつたような発言をなされたので、そこでは私は、本日一番当初に申上げたような理由を繰返し申上げたのでございます。木村委員は、薬の値段の上つたものはこれは当然改めるべきだ。不合理適正なものを直すのは当然至急にやつたらいいじやないかというような発言があつたわけでございます。保険者厚生省もその発言に対して横を向いておられて、積極的なそれに対する意見発表がなかつた。結局最後に末高会長から六月一日実施を目標にして解決に努力されたいというような発言に対しまして、私は非常に重大な問題なので理事会に諮つてから御返事する、厚生省はこの解決に誠意を示して欲しい。そうすれば私は会員の意見をまとめるよう努力しよう、こういうふうに私は申してその日の会議は終つたのでございます。私といたしましては、よく現下の下部の会員の熱烈なあの声を十分に厚生省説明をし、その実態を十分厚生省説明をいたしまして、不合理、不適正点数についての取扱方法、その協議会へ提出すべき時期を明示されることを期待し、更に適正医療費の検討方法、及びその期限の明示については厚生省もわかつてくれるだろう、そういうことならば会員も納得するだろう、こう考えましたものですから、厚生省に向つては前のような要求を十分に強く善処方要望をいたしまして、同時に会員に対してこれを説得をいたしたのでございます。ところが厚生省では、ただ引下げだけを強行しようということだけで、甚だしいのは不合理、不適正なものはない。そういうものはありますか、こういつたような、誠に減点を疑うような発言をなされたのでございます。そこで私がちよつと考えても、これは何とかしなければならんというようなものがこれだけはあると言つて、プリントに書いたものを渡して、いろいろと折衝を重ねたのでございますガ、結局九月までには何とかしよう。それも協議会にかけられるようになるかどうかわからない、こういつたようなことでございましたので、こういうふうになかなか進行しないような状況で、私としては何とか協議会の小委員会に付議するなり、そういうふうにして、はつきりしたものにしてもらいたいということを再々厚生省に向つて交渉を続けて参つたわけでございます。一方日本医師会におきましても、事の重要性に鑑み、いろいろと検討いたしました結果、診療報酬の不合理、不適正について何ら触れることなく、単独に薬の値下り、だけの理由を以て広範囲、且つ大幅な点数引下げを行うことは国民医療の円満な推移を阻害するものであるというような見地からいたしまして、たまたま開かれました十八回代議員会におきましても、昭和二十九年四月三十日の中央医療協議会に提出された協議会事項中、第四項の点数表一部改正案は全般的な適正診療報酬の施行と同時に実施せられるべきもので、本件のみを実施することは絶対に反対だと決議されたのでございます。私といたしましては、何とかこの問題を円満に解決しようというふうに極力努力をいたしまして、できることならば小委員会に付議して、そうして継続審議なり、或いは施行の期日についてもはつきりしてもらう形に持つてつたらばいいのじやないかというふうにして、最後まで厚生省と折衝をしておりました。従いまして私どもがこういうような経過をとつて参つたのでございますが、決してこの四月三十日までの間に我々が前々からこの点了承したとかどうだとかいうような点は全然ないのてございまして、ただ薬の値段について百七十円というものを、これは実際は高いのもあるし、どうだからこれは百七十五円でなければ買えない地区もあるというような、値段についてはこれは確かに交渉し、更にいろいろと話合いをいたしましたが、いろいろその他の問題、先ほど申上げました点数表の問題につきましては、不合理適正の問題の取扱方については全然これは我々としては了解をしておらなかつたのでございます。
  22. 山下義信

    ○山下義信君 大変長い御説明を頂いたのでございますが、この機会にあなたのお立場を鮮明にせられるのはよいと思います。よくわかりました。わかつたということは、つまりあなたがたの騙されたところがどこで騙されたという場所がよくわかりました。それでいわば一ぱい、しばしば先ほどから両参考人とも一ぱい食つた、一ぱい食つたとおつしやる。成るほど一ぱい食つた。一ぱい食つたのかどうなんかということは後日でないとわかりませんが、よくわかりました。先ほど私がお尋ねした三十数項目に亘つて凸凹調整のあり方の御意見が出て、これは最終的な意見でないのだ、一応の意見だということをおつしやつておられる。政府は日医の最終的な決定的な意見というものがわからんと言うのでありますが、私は素人でわかりませんが、それは点数アンバランスの是正についてばもうそれでいいのですか、まだその他の要求があるのですか。つまり言い換えると、根本的な全体的な改訂をやろうとすると到底短時日にはできません、こういうことを言う。それで八月一ぱいに、もう八月一ぱい今日で過ぎましたが、仮に八月一ぱいにやるというならば、応急のそのうちの一部分は我々としても御相談に応じてこれはできるかもわからんが、日にちははつきり約束はしていないのだが、恒久的な改訂はできるだけ全般的にやるということになると、これはとても長時日を要してと、こう言う。そうすると点数の改訂の要求というのは根本的な総体的な改訂を要求しておられるのか。今の抗生物質値下りによる一部の改訂に伴つて、それに相睨み合うような応急的な点数改訂等を要求せられたのが三十数項目なんですか。その辺のところがわからんので先ほどお尋ねしたのですが、そこのお答えがないのですがどうです。
  23. 太田清一

    参考人太田清一君) お答えいたします。私どもは先ほど会長も申されましたように、七月五日に示したこの四つの項目を私どもとしてはとつておるわけでございます。併し、今山下先生のおつしやいましたように、単価の問題とか、或いは又、その他抜本的法律改正とかいうような問題こ対しては、これは相当期間を要するであろうということは、これは当然わかるわけでございます。  それから又、実は昨日も医療協議会で久下保険局長がお答えになつた点でございますが、医薬分業その他の問題と関連して、医療費或いは全面的な点数表の改訂、こういつたような問題は当然起つて来る問題で、至急考えたいと思うというような発言もされたわけでございますが、いずれにいたしましても、問題は先ほど申上げましたように、本日一番初めに申上げましたように、健康保険点数表そのものは全面的にこれは改正しなければならない時期に来ておりますが、これは山下先生おつしやいましたように相当衆智を集め、そしてやります関係上、日数を要するということは当然でございます。そこで、私どもは取りあえず、これは暫定的な考え方から、非常に不合理なもの、その中には、場合によつては、これでは少し点数がよ過ぎるというのもあろうと思います。或いはこれでは成るほどひどいというのもあろうと思いますが、いずれにいたしましても、そういつたような暫定的な措置といたしまして、この我々の考えております点数表のでこぼこ調整をしたい。そうして、先ほど申上げましたように、今回の抗生物資の値下りによる、点数引下げによるところの影響は、全医療機関に、いろいろとその厚い薄いの違いはございますけれども、全医療機関に影響があるものだけに、今回のでこぼこ調整については、やはり全医療機関に反映するようなものをここで取上げたいというふうに、取あえずそれを示したわけでございまして、なお日本医師会といたしましても、一昨日の理事会におきまして、最後の案がまあでき上つておるのでございますが、実はできないことを今強く主張いたしましても、これはすぐにものにならないのでございまして、とにかく取り得るものから、取りやすいものから、而も全面的に、全部の医師に均貌するようなものをここで取り上げたいという考えを持ちまして、厚生省と交渉を続けておるのでございます。ただ、それではなぜ日本医師会が正々堂々とやらないかというお叱りがあると思いますけれども、この点について申上げますというと、従来、この医療協議会の構成、或いは運営その他から見まして、どうしても厚生省の幹事案でないと協議会は殆んど通らないのでございます。我々が如何にいい主張を、我々としていい主張をいたしましても協議会を通らないという現状であり、而も、すでに御承知のように保険者代表から六人、それから事業主代表及び被保険者代表から六人、診療担当者から六人、公益代表から六人、こういつた構成で、どうしても数において我々はかなわない仕組みになつておりますので、こういうようなところに日本医師会の案を何らの下交渉なく持ち込むというのは、全然そこで又多くの議論をするようになつて、これはどうもよくないのじやないかというように考えまして、大体先ほど申上げましたように、厚生省には不合理、不適正なものはないというようなことでございましたので、私どもとしては、こういう点があるじやないか、或いはこういう点もあるじやないかというような、何と申しましようか、大変失礼な言葉ですけれども、我我の意見を申上げて、そうして厚生省の参考にしてもらい、それを幹事案とし、更にそれを我々が了承いたしましたもの、これとそれから又日本医師会の案、そういつたようなものをよく勘案いたしまして、そうしてこれを会議に出して、そうして会議の通過を成るべく円滑にして行きたいと、こういうような考えの下に只今交渉をしているのでございまして、日本医師会の案が全然ないというような先ほど山下先生の御質問でございましたが、そういう意味合いに索きまして、我々は今交渉を続けているのでございます。
  24. 山下義信

    ○山下義信君 私の質問は大体終つたのでありますが、私は社会保険医諸君の要求のまあ大部分につきましては、理解を持つて、或る程度賛成しているつもりなんです。それでその要求を如何に実現するかということについて、その社会保険医諸君が闘うことについては、私はその要求の貫徹を望んでいるのです。それで従つて先ほどから多少言葉の使い方等が、或いは露骨なことを申上げたりして、いわゆる言葉の足りなかつたところがあり、余り過ぎたところがあつたかわかりませんが、それはあなた方の立場を何も非難し、攻撃しようという意図ではない、事態を明確にいたさなければ、我々が賛成している部分について、国会という立場ではつきりと論議をすることができないので、事態を明確にするつもりで伺つたのですから、御了承を願いたい。  それで最後に、これは愚問ですがね、愚問ですが伺いたいと思うのは、今当面の社会保険医として闘つておられるこの一つの闘いですね、要求ですね、これは医薬分業と関係がありますか。これは会長からでもお答え願いたいと思います。
  25. 黒澤潤三

    参考人黒澤潤三君) 現在の表に出たままの姿では、医薬分業には直接の関係はございません。ございませんけれども、この医療費というようなことは、延いては将来考えられております医薬分業ということに、しまいには関係することになろうと思いますが、現在はそういうことにはからみ合つておらないのであります。
  26. 山下義信

    ○山下義信君 私はこの際曾田医務局長に、今社会保険医の諸君が掲げて要求されている諸問題について、又先般一日休診総辞退等のことが行われたのですが、それらをも含めて、今の社会保険医の要求について、これは保険局の所管、社会保険というもの或いはその他の診療報酬或いは点数等は医務局の所管であるが、併しその社会保険医を受持つておられるものは、我が国の言うまでもなく開業医諸君であり、従つて医家の生計、その他の諸君にも至大な関係があり、又それらのことは、国民の医療上に大きな関係が及んで来るわけであります。医務局長としては、社会保険諸君の要求項目等について、又最近の動向等について、又将来の社会保険医のあり方というものが、今のような建前、今のような状態でいいかどうかということについて、医療行政という立場で、医務局長はどう考えておられるかということを、この際あなたの御意見を承わつておきたい。
  27. 曾田長宗

    説明員(曾田長宗君) 只今の御質疑でございますが、私どもも、この問題は私どもの立場からとしても、非常に重大な問題であるというふうに考えている。従つて只今はつきりと結論的なことを申上げるのもどうかと思いますが、少くとも私どもがどんな考え方をしているか、或いは少くともどういうことが自分たちの問題であるというふうに考えているかということを申上げてみたいと思います。私どもまあ当然のことなんでございますけれども、根本的に考えておりますのは、再々先生方からも申されましたように、国民の医療を支障なく進めて行く、或いは又更に一層学問の進歩に応じて向上せしめて行くということが根本的な目標であるわけであります。それをまあ実現いたしますためには、いろいろ物の面におきましても、医療施設等を整備して行くということも必要でございましようし、又この医師ばかりではこれはないのでございますが、そのほかの歯科医師、或いは看護婦、助産婦、その他医療関係者、この人たちが生活に不安を感ぜずに、又自分のやつている仕事に意義を感じて、仕事を遂行して行けるというような姿に持つて参りたいものだというふうに考えているわけであります。たまたま今度保険の、いろいろ点数の問題とか、或るいは単価の問題、或いは課税の問題というようなことで、医師の間に不満が高まつて来て、そうしてともすると、一般の病人、患者と申しますか、こういうような人たちに対しても十分なお世話ができないぞというようなことを、まあはつきりと態度に現わされるというようなことになりましたことは非常に遺憾なことだと思つているわけであります。一方私どもとしましては、医師会等にもお話申上げまして、こういういろいろ面倒な問題、これについては政府としても十分考慮して行かなければならんものであるというふうには考えますが、医師側といたしましても軽挙妄動、言葉が悪いかも知れませんけれども、というような誇りを受けないように、一般の国民の医療にできるだけ支障のないようにこの点を十分考慮して、自重して頂きたいというようなことも申上げたりしたのであります。併し他面におきまして、私どもは今申上げたように医師の、何と申しますか、実収入というようなものが余りに切下げられて行くというような事態にならないように、いろいろと関係の方面にも連絡をして考慮を願わなければならんというふうに考えているわけであります。この医師の実収入がどの程度のものでなければならんかということにつきましては、これはなかなかむずかしいことでありまして、一通りの常識的にはそういうことが考えられるのでありますけれども、さて、何万円がその具体的な額であるかということになるとむずかしいのであります。この問題についてはいろいろの方面から、又各方面の意見を伺いながら妥当な数字を勘案して見なければならんのではないかというふうに思つているわけであります。  この保険の問題につきましては、これは私どもの所管外のことでもあり、非常にデリケートな問題でございますので、私が申上げるのはどうかと思いますが、先ほども医師会長からお話になりましたように、単価の問題、点数の問題、或いは課税の問題そのほかにもいろいろの問題があると思いますが、幾つかの要素が加つて医師の実収入というものが定められて来るものと思うのでございまして、どの点だけでというわけには行くまいかと思います。或いは又一つの問題だけで、例えば点数なら点数だけでもこの問題が或いは解決できるかも知れない。それを一点でもうんと進めれば解決ができるかも知れませんが、併しその一点だけでは進み切れないということがございますれば、この三つのフアクター、或いはそれ以上の、その他の要素を勘案いたしまして、そうしてそのおのおのが不十分ながらも若干ずつ上つて行くというようなことから、統合的には相当な実収入が得られるというようなところに行くのではないかというふうに考えられるのでありまして、医師会長が申されましたただ一つだけの問題でなしに、幾つもの問題も並行して要求されるのだと言われますことは実情としては私も御尤もなことだと思うのであります。こういうように考えるわけでありますが、今も申しましたように最近いろいろベース・アツプがなされて行つて、それに応じて医師の実収入が増加して行かないというお考えにつきましては、私どももいろいろ資料を集めて多少検討はいたしておりますけれども、今のところ果してどれだけその医師の実収入の上りが遅滞しておるかということにつきましてはこれもなかなか正確にはつかみきれないのでありまして、大体大ざつばに申しますれば、とにかく戦前に比べて戦後の医師の実収入というものが、非常に比較的には低下しておるということだけは認められると思うのでありますが、その低下した日本の現在の国情といたしましてこれは耐え得べからざる程度にまで行つておるか、或いはその辺のところぎりぎりのところぐらいはと考えられるではないかという、この点の判断につきましては私どももまだ申上げることはできないと思うのであります。十分省内におきましても、或いは外からの各方面の御意見というものも勘案していろいろ更に検討が進められなければならんものであるというふうに考えるのであります。  なお、先ほども申されたのでありますが、従来はいわゆる自由診療の部面が非常に広いというときにおきましては、この保険の診療報酬というようなものに多少の不正がございましても、それは自由診療という直でもつて成る程度補正されて来たというふうに考えられるのでありますが、今日におきましては非常に自由診療部分が国民医療の内部において非常に縮小して来ております。これは前にも申上げたかと思うのでありますが、ただ単に保険の基金等から支払うというだけのものではなしに、いわゆる半額自己負担というようなものも国民が自分の家計から支払つておりましても、その報酬はやはりこの一定の診療報酬の規定に従つた額しか支払われないというような事情がございますので、この自由診療契約によつて医師が得ております診療費というものは、先ほどもお話あつたかと思うのでありますが、大体六割とか六割五分というものが保険或いはそのほかの生活保護等によるものだと、いわゆる公費負担だというふうに考えられましても、その自費としても保険診療のその診療報酬の規定に従つておりますものがそのほかにありますので、実際に自由の診療契約に基く診療支払というものは私は恐らく一五%程度ぐらいしかないのではないかというように思われるのでありまして、このいわゆる保険の診療報酬というものの決定が、医師の生活というものに極めて重大な影響を与えておるということは私どもも認めておるのでありまして、これが十分適正なものでなければならんというふうに考えておる次第でございます。  それから医師の生活費と申しちや言葉が悪うございますが、実収入というものが今申上げたように戦前に比べては非常に悪い。併しこの最近の数年間においてはこれがどうだろうか、更に年々悪化しているというふうに言えるかどうか、保険の話を聞きますというと、基金の支払等は前年同期、或いは前々年同期というようなものに比べてみると、相当なパーセンテージで以て支払いが殖えている。だから結局医師のところには何らかの形でそれは単価の引上げはなくとも、点数の増加とか、或いは件数の増加というようなことで以て収入が殖えているのではないかということを言われているのであります。そういうような点から行きましてすぐに医師の実収入が直ちに減つているとも言いかねるのであります。これも先ほど医師会のほうからお話がございましたように、私一つ重要な問題は、やはり病院診療というものがだんだんと大きいウエイトを占めつつある、これも最近の数字ももうじき出て来るはずでございますけれども、二十七年の数字といたしましても、国民総医療費の半ば以上、半ばを若干過ぎると思うのでありますが、これは病院で支払われているのであります。このいわゆる診療所におきましては半分以下の支払いが行われている。そして医師は大体病院に勤めております医師よりも、診療所医師が殆んど倍、医師の数はいると思うのであります。こういうように考えますれば、この病院に比べまして診療所医師というものに、医師一人当りの収入という平均に比べますならば診療所医師に、医師一人に対しては平均よりはかなり下に下廻つて来るのではないかというふうに考えられます。で一方病院の増加の問題でありますが、これは勿論一部は公立病院というようなものも増加せられてありますが、私設のもの、或いは医療法人等の形をとりますものの増加もあるのであります。で病院に対する一般の要望と申しますか、こういうものは相当強いのであります。みずから自分の身銭を切つて病院へ入るということになりますと、これは制約を受けるのでありますけれども社会保険とか或いは生活保護とかというような途が開かれて参りますれば、できることならば病院に入りたいという人たちがこれはますます殖えて来まして、今でもそれを要望している人たちが多いのであります。こういうような状況からこの病院の病床の増加、殊に結核というようなものにつきましては、これは私は阻止することはできないのではないかというふうに考えられますので、この病院の病床の逐年増加というものと、一方において開業医の方々が、或いはもつと限定いたしますれば、特に診療所の方々、こういうような方々のところに参る患者という者が少くとも絶対数は別としましても、ウエイトから行きますというとだんだん減じつつあるのではないかというふうに思われるのであります。そしてこの病院に勤めます医師の数も従つて増加をいたしております。それから診療所数の医師のは割合に増加しておりませんが、さればといつてそれほど減少をしているわけでもないのであります。ほぼ同じくらい、或いは極めて僅かばかり増加しているというようなことであるのであります。そして一方病人がより多く病院のほうに吸収されて行くというような事情が、これが保険の問題とは別問題としましても、併しこれは別ではございません。保険制度が発達して参りますと、ますますそういう傾向は出て来ると思うのでありますが、こういうようなことがこの医師の実生活というものには相当響いて参るのではないか。事実この前の社会保険単価が定められます場合に、大体医師一人が何人くらい患者を診るであろうというふうに予想されました数字よりは、現在の診療所医師はそれだけの患者を診ておらないというようなのが私どもの調べました数字からも出ておるのであります。そして而も医師の極めて秘密であるところには、なお医師が逐次増加しつつある。そうしてまだ医師の非常に不足しておりますところは、依然としてそこで医師の不足が叫ばれておる。又私どもの国立の、病院はともかくといたしまして、療養所のようなところでございますと、やはり東北、北海道というようなところでは、医師を求めてもなかなか求め切らないというような状況にあるわけであります。こういうようなところから、ただ平均で論ずる以上に、事実実収入の少いことをかこつお医者さん方が多数おられるということは実情であろうと思います。勅どもこれに対しましては病院の病床の増加ということは、これは国民の要望であるというふうに考えておるわけであります。勿論この病院の新設、或いは増築というようなことについてもできるだけこれを放置するのでなしに、計画性を持たせて参りたいというふうに考えておるのでありますが、何しろ今日の世の中におきましては、こういうものをきつく統制するという筋はございません。又政府関係というものだけとしましても、なかなか今よりは進めなければならず、又進められると思いますけれども、これもなかなかうまく統一が、統制がとれないというような状況であるのであります。これをできるだけ一つ計画性を持たせて行く、にもかかわらず病床の増加ということは、私今申上げたように国民の要望の線であるというふうに思つております。それで一つ病院のベットに対する国民の要望に応えて、病床の増加を図るということは必要でございますけれども、これに野放図にこの増加の傾向を辿らせるということだけでなしに、やはり病院には病院診療の特徴があり、それから一般の診療所医師には、この病院医師とは違つた診療の特徴があるものであろうというふうに考えておるわけでありまして、率直に、具体的に申しますれば、病院においては入院治療を主として、病院の外来というものは、これは本来余りに大きくすべきものではない、勿論何と申しますか相談的な診察を行い治療の方針を立てるというような意味において、病院外来の意義がゼロだとは申しませんけれども、これは開業医、或いは診療所医師にお預けしていい患者病院に集中させるということは正しい方向ではないのではないか。又入院しました患者についても、いつまでも病院にいたほうが家におるよりはよく手が届くからというようなことではなしに、病院でなければ本当に正しい処置ができないという期間だけ収容いたしまして、自宅で治療ができるという段階は、これは自宅に帰して、この診療所のお医者さん方に世話をして頂くというような筋を出すべきものであろうというふうに考えておるわけであります。この辺のところが今のところでは確かに無統制であり、計画性を欠いているというふうに考えられるのであります。  又もう一つは、先ほども初診料、再診料というようなものが全然医師に正しく支払われておらない。こういう形を改めるということにつきましては、いわゆる医療費の新体系という問題でございまして、これは保険局と私どもと一緒になつていろいろ検討をいたして、近いうちに或る結論が得られると思うのであります。勿論この新体系というのも、根本的に完成した姿を打ち出すということは、これは長年月を要するものと思いますけれども、基本的な考え方というものだけは是非打ち出して参りたいというふうに思つておるわけであります。  まあ、こういうようなことが今般この保険診療の問題につきましていろいろ医師側から起されております問題について、私ども医療行政の立場からどういうことが問題であり、又どういうふうの筋に解決の途を求めて行こうとしておるかということを申上げた次第であります。余り長々と申上げて失礼いたしました。
  28. 山下義信

    ○山下義信君 医務局長の考えはわかりました。抽象的なお話でありましたが、大部分は私も同感、同意見であります。殊に医療行政上誠に無計画でという反省の点は全く同感であります。それで私が医務局長にお願いしておくことは、次回に私ども社会医療の諸問題についての考え方をきめるまでに、でき得れば国民医療白書というか、国民医療に関する医師を中心としての実態について、できるだけ詳細に一つ説明の機会を得たい。資料等も取りまとめておいて頂きたい。それで社会保険医は全国的の団体として動くというので強そうに見えるけれども、一人一人というものは非常に弱い立場で、制度の上で法律上非常に弱い立場に置かれておる。それでその社会保険医をつかまえて保険者の当局がこれと交渉するということは、一つの棒を一方のほうは二尺、こつちのほうは八尺握つてつてやあやあ言うのと動じでありまして、これは非常に非民主的な……、制度がそうなつておるから止むを得ん。それで社会保険医と開業医というものが別個の場合は即座に問題が解決すると思う。併し我が国の制度では開業医の殆んどが社会保険医であつて、これと保険契約をしてやつておるということであるから、社会保険医の困ることは即開業医師の困ることになつて、医務局としてもこれは傍観はできないと思う。例えば一日休診ということはよろしくないから成るべくやめてもらいたいということを言う以上は、そういう事態に至らしめないような対策を当局は持つていなければならんはずであつて、それで私は医務局にお願いするのは、この社会保険医とつまり保険行政の当局者のやりとりを傍で傍観なさつておることはないと思う。内実は部内において十分医務局長が努力して下さつておると思うのだが、社会保険医の利益代表というような意味でなしに、開業医師という、日本医師というもののあり方について非常に大きな影響を与えて、その医師を今日のような不安定な状態に幾日もさらしておくということは、これは非常に私は国民が迷惑をすることだと思う。その損害は挙げて国民が負う。政府はもう寸毫もかすり傷も負わない。草葉君が何と言おうと何の実害もない。実害を実際に受ける者は、この問題について日夜悩んで、そのために手を取られ、心を奪われ、実際においてしわ寄せを受けるのは国民でありますから、私は医務当局が医療行政上一つこの保険制度につきましては十分考えて、開業医制度についても併せて考えて、そうして病院その他について今示唆のあつたそういう点についても十分な計画性を持たれ、そうして医師適正な数、過剰状態かどうかというような、あらゆる面について、又医師の生活状態について医務局としての我が国の医療行政上こうあるべきだという具体的な、何といいますか、一つ考え方を打ち出して頂く。これは当然御用意なさつておると思うが、やがて次に大きな問題を控えておるのでありますから、私は社会保険医対保険局の構想でなしに、保険局対医務局が相争つてよろしいと思う。そういうふうにしていらつしやると思うのですが、そこで次回には医務当局の御見解を資料等によつて我々にわかるような、適当なときまで一つ十分御見解をまとめておいて頂きたいと思います。これを要望しておきます。
  29. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 小委員の方々の御質疑はないようでありますが、只今委員外の高野一夫君から発言を求められておりますが、これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 御異議ないと認めます。高野君、どうぞ……。
  31. 高野一夫

    担当委員外委員(高野一夫君) 簡単にお尋ねしますが、結局いろいろお話を伺つておりますと、医師の保険による収入が足りないということが根本のことになつておるようですが、それで医師会のほうは食えないとおつしやる。曾田医務局長は、食えるか食えないかは生計費の実態調査がわからないから、何とも判断がつかないとおつしやる。そこでこれは結局医療費及び収入の中から医療に必要な経費を落したあとの生計費がどうなつておるかということに起因するだろうと思うわけです。そこで先年厚生省にできました診療報酬議会日本医師会の開業医の実態調査報告書が出ました。当時の情勢と今日の情勢とは違いますが、一応その数字を挙げて、私はその数字のことでなしに、物の考え方として一つつておきたいことがある。それは生計費が足りないということならば、これはゆゆしい問題であるから、大いに医療費の適正なる改正ということに協力することに我々やぶさかでない。ところで当時日本医師会から出た数字を私は記憶しておりますが、当時開業医の平均収入が一カ月九万四千円である。そのうちの二千円は医療外の収入であつて、純然たる医療による収入は九万二千円ある。その中からいろいろな経費を落して幾ら残つたかと言うと三五%残つておる。三万二千何百円残つておる。そこでどういうものを経費として落したかということを質問し、且つ文献によつて説明したのを見ますと、これは医療に対する経費というだけでなしに、全く医療関係のない、例えば住民税とか、区民税とかいうような個人的な支出とすべきものを当然医療の経費として落されてあつて、何ら医療費として支出する必要がないという状態であつても伏且つ三五%残つてつた。これはほかの商工業を見ましても十割儲けたり、五割儲けたり或いは五分しか儲からんものもありましようが、団体の調査の平均数字として個人的な立場で出すべき税金までも経費として落して、なお且つ純然たるいわゆる商工業においては純益とも考えられるべきものが三割五分あるということは、これは非常に私は大きい問題だと思つておる。そこでこの三割五分に該当する三万二千円というものが純然たる生計費に充当されておつたわけであります。そこで当時の生計費はどうかというと、全国の一般市民の平均生計費は一万二千円、そうしますと実に開業医の純然たる生計費は一万二千円の二・七倍である。そこで二・七倍とか五倍とか、これがいいとか悪いとかということをここで申上げるのではなくて、やはりこういうふうに一般市民の生計費の何倍かというものがなければ医者の生計というものはやつて行けない、こういうような基本的な考え方をお持ちであるかどうか。例えばアメリカにおいて農民の五倍が医師収入だから日本においても何倍かあるべきだという議論は昔からされておるわけです。その是否は問わないのですが、当時のそういう一万二千円の平均生計費の二・七倍であるというようなことであるのですが、これの是否は別として、現在においても一般市民の生計費の何倍かというものを医師というものは生活安定のためにやはり要求される、そういう基本的な考え方を持つておられるか、これを私は伺いたい。  それからも一つは、結局いろいろな点数単価問題とか或いは点数引上げ問題とかいうことの基本は、先ほど太田さんのお話があつた通り、やはり医師診療に対する技術料、無形の報酬というものに対する考え方が従来はあいまいもこであつたから、そういうような問題が起つて来るだろうと思うのであります。従つてこの無形の報酬に対する技術料という考え方を中心にした新医療費体系、これは日本医師会全国の賛成で決定したわけです。この新医療費の体系の調査算定の全面的な協力を日本医師会としてはなさるべき筋合のものではなかろうか。そのことが即ち皆さんのおつしやるこの社会保険に対する医療費の適正なる是正ということで、これが私は基本問題になるのじやないか。ところで過去の歴史を見ますと、必ずしも厚生省が新医療費体系の調査算定にかかるということに当つて日本医師会が協力的にならん。むしろ非協力的な態度をおとりになつて、一々ここで申上げません。そこでそういうことでなくて、役員もお替りになつたのでありますから、今後は、この将来の無形の技術に対する報酬ということを重く見た診療費の算定ということに、全面的な協力をなさる意見があるかないか。これが私社会保険に対する根本問題の解決策だと考えております。このニつの点についての基本的なお考え方だけで結構なんですから、一応黒星日本医師会長の御見解を一つ伺いたいと思います。
  32. 黒澤潤三

    参考人黒澤潤三君) 只今高野さんの御質問でありますが、私は前のことはよく憶えておりません。憶えておりませんが、一般開業医が、これは大体医師一人、看護婦一人でベッドのないという程度の診療所のことを考えておるであろうと思うのでありますけれども、そういう場合に、一般の市民の生活よりも若干余計に経費を見なくちやならんことは、これは当然であろうと思います。これに対する数字は今研究しておりますし、まだデータを調べておるのでありますが、これは例えば勤務者の家庭を考えますのと、家庭にたとい小なりといえども診療所を持つておりまする医者の生活を考えましても、やはりそうなるのじやないか、こう思います。ただ、その数などについては、私は詳しいことは申上げられません。大体そういうことでございます。  新医療費体系ということにつきましても、目下研究しておりますからして、これはまあこの問題の今後影響するところは非常に大きいのでございまして、まあ十分に数字的検討をいたしましてこの問題を解決したい、こう考えております。この問題につきましても、十分研究をしておるということを申上げます。
  33. 高野一夫

    担当委員外委員(高野一夫君) 私は誠に意外な御意見を伺うので残念なのですが、この新医療費体系がきまつたの昭和二十六年であります。それでこれで是非一つ行きたいということを関係者一同皆申合せてやつたわけなんですが、今日の段階において、更にこれが是否についてのいろいろな検討をする、調査をするというような状態であつては、私日本医師会がここで社会保険点数云々というようなことをおつしやるのは、その考え方からしてどうも大変矛盾した考え方じやないか、社会保険点数、或いはその単価というようなものについての是正、これは必要だろうと思いますが、その基本は、結局新医療費体系の考え方なんであるわけで、そこで新医療費体系ができ上つたならば、すべてこういう問題は私は解決するだろうと思う。それについて、過去において協力的でなかつたということは問わずといたしましても、今日現在においては、これに対する協力的態度をとるか、とらんかというようなお考えを聞くことはできずに、目下研究中であるというようなことは、私はこの社会保険に対する医療費の是正というお考え方、御要求とは、頗る私はマッチしない現状に対するお考え方じやないか、こうまあ考えるわけなんですが、率直に申上げて……。
  34. 黒澤潤三

    参考人黒澤潤三君) 何か高野さんのお話は、ちよつと私に解せないのでありまするが、二十六年にサムスのおりましたときに、急遽これらの問題が研究いたされまして、当時一応何か結論が出たかのように見えるのでありますけれども、現在見ますというと、このこと自体はなお大いに研究の余地があると私は考えるのであります。従いまして今日の段階から申しまして、なお新医療費体系については研究をしておる。併し協力をしないということを私は申しておるのではありませんで、研究しておりますからして、これに対して勿論その結果が出まするならば、協力をすることになることは当然だろうと思います。
  35. 高野一夫

    担当委員外委員(高野一夫君) よろしうございます。
  36. 太田清一

    参考人太田清一君) 先ほど高野先生から、当時九万二千円の収入があるというふうに日本医師会から出された、こういうような御質問のように思つたのでございますけれども、これはその当時といたしましては私もよく存じておりませんが、全医療機関に対する平均でございます。今日この機会に申上げておきたいのは、これは健康保険委員会でございますので、申上げるのでございますが、よく保険者保険医は一カ月一人十万円あるじやないかというようなことを言われますが、これは単なる算術計算でございまして、国民を欺噛するも甚しいと私は考えるのでございます。で二十九年四月分の社会保険支払額は、総計七十一億四千百五十五万円でございまして、これは家族窓口分を含めてでございます。で官公立病院、或いは法人、公法人病院への支払額は、四十万五十八百七円、私立保険医に支払われますものは、三十億八千四百四十七万九千円でございまして、その比は五十七対四十三と、公的医療機関に非常に多く支払われておるという事実があるのでございます。で官公立法人病院は半分以上を取つておる、こういう実情でございます。更に保険医総数が六万三千五百五十二人で、うち日赤その他が四千三百七十三カ所、而もこういう機関は勿論保険医……、保険者の指定する病院でございますから、たくさんの医者がおるわけでございますが、私的医療機関が五万九十百八十一カ所、そういたしますというと、公的機関は一カ月平均九万二千円余になりまして、私的医療機関は五万二千百三円、こういうふうになるのでございます。で全く保険者の言いますことは、算術平均でこれを全部割るからああいうことになるので、これは我々この際、この機会に訂正しておきたいと思うのでございます。これに私的医療機関の五万何がしに、自費患者、或いは国保、これはこのお手許にお渡しいたしました資料には、国保関係は入れてございませんが、こういつたような収入を加えましても平均八万円以下というのが現在の実情ではないか。それからいろいろの経費を差引きますというと、現在は三万円以下というようなことで、相当開業医の実情は、先ほど曾田局長が申されました通り、いわゆる医者の玄関構えと申しまして、見かけはいいように見えましても、内容は惨沮たるものがあり、而も今回の問題によりまして、相当末端の会員が、重大な決意を持つて起上つているという実情を、十分お汲み取りを願いたいと存じます。
  37. 高野一夫

    担当委員外委員(高野一夫君) 委員長、ちよつと誤解があるようなんですが……。私の申上げましたのは、九万二千円というのは、医師会の資料なのであつて、それが適正だとか、どうとかということを言うのじやない。考え方として先ほど伺つたのであります。それで当時純然たるいわゆる商工業に対しては三割五分の純益に該当するようなものが残つて来た。三万二千円、そうしてそれはそのほかのものをすべて差引いた残りのこの三万二千円、三割五分というものは、生計費に充当される。自分の家族を養うことだけに充当されるべきものが三割五分の三万二千円ですから、それが一方の一般市民の一万二千円の二・七倍ということなのですが、その一切の経費は全部引いた残りである。だからそのような一般の市民のいわゆる生計費との比較をとつてやはり何倍かなければ、やはり高等の教育を受けた俺たちだから、それくらいするのは当り前じやないか、こういう考え方がよく冗談の中にも出るから、やはり根本において何倍かの生計費であるべきだ、こういうお考え方であるかどうか、こういうことを私は伺つた。先ほど黒澤さんは、残つたものについては、看護婦とか、何かについてお話があつたが、そういうものが全部引いてある、引いた残りの生計費……。この数字は一応忘れても結構です。生計費というものが、開業医なら開業医の生計費というものは、一般市民の生計費の何倍かが救しい、こういう考え方がやはり根本にあるかどうか、こういうことを私は聞きたかつたわけです。数字の問題は別ですよ。結構です、大体まあわかりましたから……。
  38. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 今日は大分時間も過ぎましたから、この程度でとどめたいと思います。明日は中央医療協議会の中立委員の今井一男君、それから組合連合会会長宮尾武男君、それから日本病院協会原価計算委員長神崎三盆君、以上主君を参考人として呼びたいと存じまするが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 御異議ないと認めます。明日は午後一時半から小委員会を開会いたします。それでは今日はこれで散会いたします。参考人の方長時間有難うございました。    午後零時四十一分散会