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参考人(塩沢常信君) 本日この
委員会が
学校給食の問題に非常に御関心をお持ち下さいまして、私
どもに
意見の開陳をお許し頂きましたことは、誠に私
どもの喜びでございます。私の喜びは
全国の千五百万の
父兄の喜びであると存じまして厚くお礼を申上げます。私は
東京都の
小学校のP・T・Aの協議
会長、
全国学校給食推進協議会本部長、それから
日本P・T・A連合
会長等をいたしております。
学校給食に関しましては本日
文部省並に
東京都から主管課長がお見えに
なつておりますし、実施の責任者といたしまして
学校の校長さんがお見えに
なつておりまして、
数字を挙げての統計的な説明は先刻行われましたので、そうした面は一切略しまして私はP・T・Aの
立場からこうした
学校給食というものについて御説明を申上げたいと思います。
後刻いろいろと私
どもは
学校給食につきまして、政府並びに国会
関係に
要望をいたすことがたくさんございますので、それを御了解頂く前提といたしまして、推進協議会の性格というものをちよつと簡単に申上げておきます。
学校給食が行われましたのは、戦前もあ
つたのでございますけれ
ども、戦後いわゆる占領軍が占領政策としての
一つとして、ガリオア或いは
ユニセフ・ララ
物資等を基調といたしまして、無償で
学校給食を行いましたために、非常に
発展して参りました。当時私
どもといたしますと
学校給食が、こういうことを申上げてよいかどうかわかりませんが、殆んど半強制的に行われるというような事態に
なつておりまして、P・T・Aといたしましては当時非常に苦しい
状態でございまして、
学校施設その他の点につきまして復旧のために莫大な
経費をP・T・Aが
負担しておりました。その
関係上
給食の
施設をするということは非常に苦しいことでございまして、むしろ迷惑的な感じで受入れたのでございます。けれ
どもいろいろな面から考えまして
学校給食をやらなくてはいけないというふうに考えまして、当時苦しい財政の中からP・T・Aは、一校のP・T・Aが少いところは三十万円、大きいところは百万円、或いは二百万円という当時の金で費用をかけまして、
給食所を作り、
給食施設をいたしました。そうして
学校給食というものを受入れたのでございます。ところが日が経ち、年が経
つて参りますと、
学校給食のよさというものがだんだんわか
つて参りまして、何と申しますか、
子供の
保健と申しますか、いろいろな疾病の減少とか、或いは発育の
状況の著しい効果が現われて来る。又
教育的にいろいろな得るところがございましたので、初めてP・T・Aといたしますと
学校給食というものは非常にいい
施策であつたということで、非常に喜んでお
つたのでございます。
ところが
昭和二十六年の八月二十一日の日に政府のほうでこの制度を打ち切るというようなことが言われましたので、実は期せずして
全国からこの
学校給食を従来
通り継続して欲しいという希望が燃え上りまして、
東京に七百人、或いは千人というような陳情者が集
つて参りまして、或いは文書によりましても国会、或いは政府
関係に対しまして数千通の陳情文が出て来るというようなことでございました。当時各都道府県ばらばらな陳情団が上京いたしまして、混乱いたしておりました。私
どもそれを見ましていろいろと各県各様の陳情をいたしてお
つたのでは、御当局並びに国会
関係に対しましても御迷惑をかけるし、できれば統制ある運動を続けますために
一つの組織を
作つて、そして本当に
子供への愛情を願う
父兄と先生、こういつたものだけの組織にいたしまして、そうして
教育的な運動を続けながら皆さん方の御理解を頂こうということで推進協議会というものが結成され、各県に推進協議会がございまして、
東京都地区に総本部を置きまして、今日までこの運動を続けているわけであります。推進協議会は、そういうような形で生まれて参
つたのでございます。
然らば今日の
学校給食はどうかと申しますと、非常に
父兄といたしましては
給食を喜んでおりますけれ
ども、一方には
給食を辞退する向きが往々にして出て来るのでございまして、なぜ往々にして出て来るかと申しますと、今日の
学校給食が
父兄の
負担が非常に過重に
なつて来たということでございます。
給食は非常にいいものであるけれ
ども、これを続けて頂くための
父兄の
負担が多くてこれに堪えられないというような
状況でございます。
子供の一人の家庭におきましては、さほどではございませんが、二人、三人、或いは四人というふうに
なつて来ますると、相当の
金額になりますために堪えられないということがございます。私
どもの知
つております
父兄のうちでは、極くささやかな生活をしているお母さんが、
学校給食だけは是非続けたいというので、夜内職をして、そうして
学校給食を稼ぎ出して納めているというような会員も現在あるのでございます。併しながら
学校給食がいやだから反対するというような
父兄は余りございません。現在
学校給食に反対している人
たちの多くは、いわゆる
父兄の
負担が多過ぎるということと、それから
学校給食がまずいというようなことを
子供が言う、こういうことが
一つ大きな
原因でございました。
父兄の
負担が軽く
なつて、そしておいしい
給食で栄養分も十分とれるというような
給食にな
つて参りますれば、誰一人これに反対するものはないわけでございます。現在の
状況はそんな
状態でございまして、現在P・T・Aの人
たちが
負担しております
学校給食費と申しますものは、大体三百円から、三百五、六十円に
なつております。
負担の
内容におきましてどういう率に
なつているかと申しますと、
先ほどお手許にお配りいたしました
参考資料の中に、色刷りに細く出ておりますが、現在では
父兄の
負担が八九%、国家から
補助を頂いておりますのが一一%という
状況に
なつているのでございます。これが現在の
学校給食の
状況でございます。
それから
学校給食の将来という点でございまするが、私
どもは今申上げましたように
父兄が非常に希望しているものでございます。又
学校給食の価値というものが十分認識せられまして、是非とも
学校給食は継続しなければならないものであるということは、これは殆んど
父兄全体の現在における考え方でございます。どういう点からと申しますると、やはり
先ほど申上げましたような、例えば近眼の減少であるとか、むし歯の減少、或いは消化器病の減少であるとか、発育の
状況とか、というような点を勘案いたしまして、
子供たちのために是非これはや
つて頂きたいとかように考えるのでございます。
由来
学校の
教育というものが学問を
中心に多く進められて来ましたのでございますが、私
ども今日の考えといたしましては、義務
教育は学問を教えるだけでなくて、その学問をやがてその社会人に
なつたときに使いこなすだけの体力を
子供の時代から十分与えて置く、これが
一つの義務
教育であるというような考え方さえ持つように私
ども現在
なつておる次第でございます。従
つて将来どうしても
学校給食は継続してや
つて行かなければならない、又同時にこれは国策的な見地から考えましても、いわゆる食糧問題の解決或いは酪農の奨励であるとか、或いは国民
保健の
立場から言いましても是非これは取上げて頂きたい重要な問題でございまして、私はすべての国家の中に起るいろいろな現象はこの
学校給食を基調として政治を行われた場合に初めて解決するのじやないだろうかというような考えさえ持
つておるくらいでございます。衣食住、我々の生活がこの点におきまして新らしい
教育がそこに基調を置く以上は、やはり食餌を取り上げて、そうして合理的な食餌をとるということが先ず
学校の
児童から始ま
つて家庭にまで及んで行く、そうして新らしい生活を立てなければならないとこういうふうに現在考えておる
状態でございます。従
つて今までの
学校給食が私
どもはいろいろな
施設をいたしながらも、不安の
状態にありましたのは、やはり
先ほど来
お話がございましたように法的な根拠がないために、今年は
学校給食が継続されたが、来年はどうなるかというような不安が絶えず続いております。よく現在でもいろいろな
施設いたしまして、例えば調理具を買う、或いは裁断機を買う、洗滌機を買うというようなことがございましても、果してこういう
施設をしても、来年これが使えるか使えないかというような不安が先ず先に立ちますために、こういう
施設の点におきましてもなかなか思い切つた
施設ができないのが現在の
状態でございます。従
つてこれを立法化して頂きまして
学校給食は必ず行われるということがはつきりいたしますと、そうした点におきましても
父兄は安心してこの
方面の
施設へも相当程度の協力ができるように
なつて行くのではないだろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
なお、立法化と共に
予算化してこれの
裏付をして頂きたいということでございます。これは
要望の
事項と併せて申上げますが、
要望事項につきましては
先ほどやはり
参考資料といたしましてお手許にお届けいたしました。実はこの
要望事項は、政府で今回この国会に何か
学校給食法を御提出下さるように伺いましたので、願わくば私
どもの長い間の希望であるこの
要望を織り込んで頂きたいというつもりで、先般この
要望書を国会
関係並びに政府
関係にもお配りした
資料でございますが、その中で終りのほうに
要望しております事柄を羅列してございます。第一に書いてございます小中
学校児童生徒を
対象として
教育過程として実施して頂きたいということは、私は医者でないからよく存じませんが、お医者さんにいろいろの
お話を聞いてみますと、
小学校、中
学校という時代が非常に
子供の伸びる時代だそうでございまして、
小学校の場合は
男子とか
女子とか、或いは中
学校の年齢になると
男子か
女子かいずれかが非常に身長の伸びる時期だそうでございましてそういつたような
関係から行きまして、
小学校、中
学校の中に、この義務
教育の中に
先ほど申上げましたように学問と共に体力を与えるという趣旨に則
つて中
学校まで是非これを及ぼして頂きたいということを挙げたわけでございます。更に、新
教育の建前から行きましてこれを
教育課程の中に取入れて頂きたいということが私
どもの希望の第一でございまして、その次に
学校給食用原麦、
ミルク代金の全額国庫
負担、これが
先ほど推進協議会のできます理由を申上げましたが、
一つの大きな理由でございまするが、推進協議会のできます前は、この
学校給食用原麦と
ミルクは全部国家の御
負担でございましてこれが全部国家
負担に
なつて頂きますと、よく世間では全額国庫
負担と申しておりますが、私
どもに言わせますと、
学校給食は全額国庫
負担ではございませんで、これでもまだ半分にならないのでございまして、御
参考にお配りしました色刷のほうの
学校給食費の
負担の割合はというほうに書いてございます。
ミルクと
小麦粉の全部を国家で
負担いたしましても、なお副食その他のもので
父兄の
負担が五九%、国の
負担が四一%になるわけでございますが、これは
学校給食を実施いたしました当時の
状況でございます。私
どもは
学校給食の実施された当時の
状況に是非戻して頂きたいということがこの第二の項目でございます。決して
父兄の
負担を、
父兄の
負担といいますか、避ける
意味の
要望ではございませんので、その点を御了解頂きたいと思います。
それから第三の準要保護
児童生徒に対する国庫
補助、これは要保護
児童につきましてはそれぞれ政府のほうからのお手当がございましてよろしいのでございますが、いわゆる紙一重の苦況にある
子供さん、御
父兄という
方々がかなり多数ございまして、大体P・T・Aの会員の五%ぐらいはそういう御
父兄がございます。こういう
方々はいわゆる
学校給食費が払えない方でございます。
先ほど東華小学校の校長先生から
お話がございましたように、いろいろな面からこれを強いて取立てるとか、どうするということができませんので、勢いこれは他の
父兄の
負担に
なつておる次第でございます。こういうものにつきましては、これが結局他の
父兄の
負担を過重にして行
つているというようなことから、是非こういう点につきましても何か
厚生的な面から
法律によ
つて、こういう
子供たちを守
つて頂くように御配慮を頂きたい。
それから第四にございます
学校給食の
施設費国庫
補助、これにつきましても従来P・T・Aの費用で
施設をいたしておりまするが、まだ、まだいろいろな
保健衛生の
立場から行きまして完備しなければならない点がございますので、こういう点につきましても御
補助を頂きたいし、なお現在
学校給食をいたしたくても、この
施設ができないところがございますので、そういう点につきましても国庫の
補助を頂きまして
施設を充実して
学校給食を是非行
なつて頂きたいということでございます。それから第五に、
学校給食専従員(栄養士、調理士、事務員)、の身分保障並に人件費の国庫
補助ということがございます。現在
学校給食を実施いたしておりまするが、各
学校にこれの専門的な人が少いのでございます。例えばいろいろ調理にいたしましても、素人的な考えから
栄養面を考えたりいたしておりますので、こういう点につきまして専門家が十分に調べた、
調査した、或いは
研究した
資料によりまして、その科学的な
給食を与える、こういうような場合はこうした専門家が欲しい。又いろいろ事務をとるような人
たちにつきましても是非御配慮を頂きたい、こういうように考えるのでございます。現在
学校では
給食を行
なつておりますが、非常に人手が足りのうございまして、現在
学校の中の作業所に働いております人々を分けますと、いわゆる専任の調理人と、そのほかに今度は失業対策の
関係から来ている人と、そのほかにP・T・Aで雇い上げている人があります。これは、人が足りませんために余儀なくP・T・Aが雇い上げた。それでもまだ人が足りませんので、現在ではPTAの会員が、お母さんがたが当番制をとりましてそして五人とか六人というふうに
学校に参りまして、そしてこの調理のお手伝いを現在いたしております。そういうような
状態でございます。従
つて、こういう
方面につきましても何らかの御配慮を頂きたい。
それから直接項目に載
つておりませんが、これは落ちておりますが、もう
一つは
給食用のいろいろな
物資に対して税の減免をお願いしたい。例えば、砂糖の消費税を免除して頂くとか、その他いわゆる学用品と同様に、教材と同様に、この面についてのいろいろな各種の
物資に対して減免の措置をお願いいたしたいということでございます。
これが大体私
どもの推進協議会が
要望しておる事柄でございまして、若し
法律が制定されるならば、
法律の中にこのようなことを何とかして盛り込んで頂きたいということがお願いでございます。この
水害、
冷害が起りましてから、金田的に見まして推進協議会の本部に参ります手紙によりますと、欠食
児童が非常に殖えて参りまして、いろいろな点でこの
学校給食を
要望する声が非常に大きくな
つて参りました。何と申しまするか、是非一日も早くそうした
方面を実現したい。従
つて法制化がいつできるかというような問合せが殆んど連日
全国から来ておるような
状況でございます。非常に何と申しますか、そういう点で
食糧事情がむつかしく
なつたりしますと、いろいろの問題が起ります。
子供の弁当の紛失とか、いわゆる途中で奪うというような恐るべき問題が随所に出て来る
状況でございますので、そうしたことを
子供の生活の中から消して行くようなふうに一日も早く御措置を願いたいと思います。私
どもは、こうしたいわゆる純真な気持で、この運動には一切の業者の御参加をお断りいたしまして、ただ
父兄と先生だけで以て運動を続けておる次第であります。
子供たちの幸福のために、延いては国家百年の将来のいわゆる
基礎を築くという大きな見地からいたしまして、皆さん方の格段な御配慮をお願いいたしたいと思います。