○
政府委員(
久下勝次君)
只今のお話の点に似た
ような
意見がこの
法律案を
審議いたします際に、経営者側から盛んに一時言われた。それは若しもこれを急激に六十歳に上げるということになれば、現在は
停年制によ
つてどんどん首切る、そうなると、新規の雇用を受入れる余地がなくなり、五年間延びるということで、従
つてそういう雇用の、新規雇用を受入れられなくなる
ような体制になることは困ると、責任がとれんという
ようなことを極めて当初の間におきましては、そういう
意見が
相当強く述べられたのであります。その当時におきましては、私
どもの案
自身も二十年という
ような長
期間でなしに、せいぜい十年間くらいで六十歳にしてしまおうという
ような、多少急進的な
考え方を持
つておつたことから、そういう批判がございまして、その後案を直しまして、二十年後に、具体的に申しますれば、この法律施行のときに三十九歳の人が六十歳に
なつたときに初めて全部が六十歳になるという
ような、漸進的な方法をとるという
ような方針になりましたところ、それであれば賛成である、こういう
ようなことになりまして、経営者といたしましてはこの案に賛成をされたわけでございます。それで確かに私は現実の今の
段階におきまして、これをいきなり六十にするということは無理であろうと思います。それ故にこそ実は
相当長い経過的な措置をとつたつもりでありまして、私
どもとしては、今お話の
ように個々の
企業を
考えまして、特に
公務員の
制度を今御引例になりましたけれ
ども、
公務員としては確かにお話の
ように私
ども人事管理的な問題で、この五十五歳の
年金開始或いは四十五歳から若年停止という
ような考慮もございますが、そういう
ようなことによ
つて四十五でやめても半分はもらえるという
ような
制度をと
つておりますのは、主に人事管理的な面があるのであろうと思います。そのことはその者が四十五歳なり五十歳でやめて遊んで食
つて行くというつもりではなくて、やはりどこかで働いて行くであろうという
ような
考え方をと
つておるものと思うのでございまして、
厚生年金の
ようにだんだん幅が広く
適用されて行きますものにつきましては、その
考え方は私は簡単に取入れられないのじやないか。やはりどこかで
勤労者として生きて行く以上、農地でも持
つて郷里に帰る所のある人は格別でございますが、いやしくも
勤労者として働く人はやはり一生
勤労者として働くであろうと思いまするから、そういう
意味合いおきまして、
適用範囲の拡張と相待ちまして、私
どもは一
企業だけを見ますとそういうことがございまするけれ
ども、主体の
被用者としての立場を
考えました場合には、やはり六十歳までは何とかして働いて食
つて行くという
ような態勢をとらざるを得ない。これが
日本の将来の必然的な姿ではないか、こういうふうに
考えておるのでございまして、結局結果におきまして、
竹中先生のおつしやるのと
結論的には同じでありまして、現
段階においては急激にやることは無理でありまするので、極めて緩やかな、漸進的な措置をとつたという
考えでございます。