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政府委員(大宰
博邦君)
保育所の運営につきましては、いろいろ昨年来多くの問題を抱えておりまして、
一つ一つこれを軌道に乗せたいと思
つて努力しておる
状況でございますが、その
一つとして今の御指摘の定員の問題を
地方では議論しておるように私も存じております。それでこの定員制を厳守するということにつきましては、私
ども昨年の七月に
地方に通牒を出しまして、今
年度内を余裕
期間といたしまして二十九
年度からはこれを
実施するから、それに即応して準備してもらいたいということを言
つておるわけであります。なぜこの定員制を
実施いたしますかということを申上げますと、大体二つの面からこれを取上げざるを得ないわけでございます。お話のように今日
保育所に入所させたいという子供は遥かに定員の数よりも多いのでありますので、まあ少し無理してでも入れたらどうかという議論もあるかと思います。殊にこの国家
予算が相当圧縮されて参りまして、殖えつつありますけれ
ども、その
増加割合が全部の需要を賄うに足りないということになりますると、当然定員をオーバーして入れるという問題に
なつて来るかと思うのでありますが、これは二つの問題を先に解決しておかなければいけないのであります。その
一つの問題は、
保育所に関します最低
基準というのが
厚生省令で出ておるのであります。これは最低
基準と申しますのは、児童福祉施設に関して、運営について最低の
基準を設けてあるために、これを割
つてはいけないということに
なつておるわけでございます。
内容としましては
保育所を運営しますについて、例えば
保育所の坪数が児童一人当りどれくらいなければいけないか、或いは保姆さんが児童何人について保姆さん一人を置かなければいけない、或いは保育時間であるとか、保育のやり方であるとかいうようなことがそこに書いてあるわけでございますが、その中で特に二つの点がこれにからんで来ると思うのであります。
一つは、
保育所のこの保育室についてこの幼児一人について〇・六坪という
制限がございます。それからもう
一つは保姆さんが大体まあ普通の場合でございますると、満二歳以上の幼児についてはおおむね三十人について保姆さん一人を置かなければいけない、こういう
基準が出ておるわけでございます。それでこれを、若し定員をオーバーして入れるとなりますると、この最低
基準の違反になるわけでございます。それは
法律の違反になると同時に、実質的には保姆に非常な負担をかけ、それから児童の保育についても支障を来す。実はこの面についていろいろ検討しおりますが、一例を申上げますると、現在の三十人について一人保姆を置くということにつきましても、保姆さん
たちの中から申しますると、それがもう実はもつと二十五人に一人ぐらいにしてもらいたいのだ、併し今日三十人に一人ときま
つているのだから、せめてこの線を維持してもらいたい。こういうことが、保姆さんのほうからの圧倒的な
要望があるわけでございます。それから保育室などについて児童一人当り〇・六坪ということにつきましても、保姆のほうの立場から申しますると、これを更に圧縮してたくさんの子供を入れますると、御承知の
通り子供というものはおとなくしておりませんので、しよつ中いたずらをしたり、かけずり廻
つたりする。そうするとすぐ肩が触れ合
つたとか、ぶつか
つたとかというようなことでも
つて泣いたりわめいたり、それから喧嘩をしたりする。そういうことが同時に又保姆さんのほうの負担になりまして、この保姆さんの神経をいらだてるというようなことからいたしまして、保姆の方々のほうからはこの最低
基準というものは絶対に維持してもらわなければ困ると、まあこういうことを実は申しておるのであります。これに対しまして主として施設長の側でございまするが、このほうではあの最低
基準というものについても、実は科学的な根拠というものもはつきりしたものを自分
たちが納得するのはきめていないんだ。だからその点についても必ずしもあれが絶対的のものとは思わないし、それからお話のように今日外にたくさん放置されている子供のことを
考えれば、そんなことは或る程度無視した
つていいんじやないかということで、主として会合を開きますたびに、主としてではございませんが、各種の大会、会議などにおきまして、施設長側と、保姆の側とが真正面から対立せねばならんことに
なつて来ておるのであります。それで私はこの問題につきましてはやはり
只今の段階といたしましては、この施設長の側の人の言うことの気持もわかるのでございまするけれ
ども、やはり第一線に働いておる保姆さんの気持というものもこれは無視できない、そういう面から経済的には施設長のまあそういう
意見を尤もと思うことがありましても、軽々には賛成できない。それで実は二十九
年度におきましてさような最低
基準につきましてもう少し科学的な面から実は検討してみたいというふうに今
考えておるわけであります。仮に検討してみまして、まあ最低
基準を若干ゆるめても、保姆さんの疲労の回復、労働の再生産、或いは子供の保育についてさほどの影響がないというようなことになりますれば、それはそれとして又そのときに保姆さんにも話して、こういうことなんだからという話の余地は又出て来るかと思う。又反対に今の
基準はどうしてもこれを維持して行かなければならないんだということになりますれば、これを又施設長側に話しまして、施設長側の人にも納得してもらうということも出て来るだろうと思います。まあこういうような問題はやはりそういうようなふうにして保育事業に従事いたしまする施設長、保姆、さような
人たちが皆納得してや
つて行くのでなければ、必ずあとにまずい結果が残る。さようなふうに
考えて、この二十九
年度におきましてさような点についても少し専門家の手を煩わして検討してみたい、その結果を待
つて又
考えて行きたいというような気持でございます。
それからもう
一つの面は、先ほ
どもお話があ
つたと思いますけれ
ども、財政の面でございます。御承知の
通り昨年来
保育所の非常に大きな問題は
保育所の
援護率と申しまして、この
保育所の経常費について父兄から取るのが建前でありますけれ
ども、取れない分については公の費用で見る。その取れない割合を
援護率と申すのでありますが、この
援護率につきまして一応
予算では経常費の三〇%というふうに組んでおる。つまり七割は取れるが、三割ほどは恐らく取れないだろう。全体に換算しての話でございますが、そういうふうにして
予算を実は組んでおるのでありまするが、
地方の
実情はその七割が父兄からとても取れない、むしろ逆に三割か四割しか父兄から取れないのであ
つて、
従つて援護率は六割か七割にしてもらわなければ困るというような
要望が昨年来強く出ておるわけであります。当然さようなふうにして参りますと、
保育所の経常費に穴があく、赤字が出る、これに対して国のほうで面倒みてくれるかどうか。この問題が非常に大きな問題に
なつて参るわけでございます。かような
保育所の運営について大きな問題をまだ未解決のままで私
どもは抱いておるわけで、目下鋭意これの打開に努力しておる最中でございますが、まだ未解決で抱えておる今日の
状態からいたしますと、この
保育所の定員内の赤字についても今のような大きな問題を控えております際に、更に定員をオーバーした分についてその赤字の問題というものを今日更にこれを持つことが是か非かという問題にも
なつて来るかと思うのであります。当然定員をオーバーしてまで入れるという上からには、そこに入れる子供はやはり
保育所に入れなければならない下層勤労階層とか、或いは親が
入院しておるために面倒みる人がいないというような子供になるわけでありまして、これを金持の、まあ金の取れる子供だけ入れるのであれば、これは経常費の運営が楽になりますが、それでは定員をオーバーしてまで入れた趣旨は没却されるわけでありますから、当然これはさような困
つた子供を入れるということに
なつて参ります。そういたしますと、
保育所の運営は定員内の赤字にプラス定員をオーバーした分が嵩むわけであります。実はそういう面までも財政当局と渡り合
つて獲得するということにつきましては、私
ども今日の段階ではまだ自信がないのであります。それにもかかわりませず、ただ
地方でそういう安易な、安易と申してはあれですが、
地方のそういうすなおな要求をそのまま鵜呑みにして定員超過を認めるということになりますと、これは財政面で申しますと、いよいよその赤字の穴を埋めるということについては到底できなく
なつて、そうしてこれは廻り廻
つて市町村費の負担が殖える、それすらもカバーできないことになりますと、今度は子供
たちの面に最後にはしわ寄せが行く。こういうことになりますと、結局におきまして
保育所の運営というものが阻害されるということに
なつてしまう。さような
考えから今日のところでは、
地方ではいろいろ申しております、私
どももそれに対して堅持するのは非常に辛いのでありますけれ
ども、今日の段階では涙を呑んでもこの定員制を厳守して行かなければならないというような気持で現在おる次第であります。