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1954-08-09 第19回国会 参議院 厚生委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月九日(月曜日)    午後一時四十四分開会   —————————————   委員異動 六月三日委員谷口弥三郎辞任につ き、その補欠として榊原亨君を議長に おいて指名した。 六月八日委員廣瀬久忠辞任につき、 その補欠として高瀬荘太郎君を議長に おいて指名した。 六月十五日委員高瀬荘太郎君、宇垣一 成君及び有馬英二辞任につき、その 補欠として高良とみ君、前田穰君及び 紅露みつ君を議長において指名した。 六月十六日委員堂森芳夫辞任につ き、その補欠として山下義信君を議長 において指名した。 六月二十八日委員紅露みつ君及び高良 とみ君辞任につき、その補欠として有 馬英二君及び高橋道男君を議長におい て指名した。 七月十四日委員有馬英二辞任につ き、その補欠として紅露みつ君を議長 において指名した。 七月十五日委員榊原亨辞任につき、 その補欠として谷口弥三郎君を議長に おいて指名した。 七月二十四日委員谷口弥三郎辞任に つき、その補欠として榊原亨君を議長 において指名した。 八月五日委員高橋道男辞任につき、 その補欠として高良とみ君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     上條 愛一君    理事            常岡 一郎君            竹中 勝男君    委員            中山 壽彦君            榊原  亨君            前田  穰君            高良 とみ君            藤原 道子君            湯山  勇君            山下 義信君            紅露 みつ君   国務大臣    厚 生 大 臣 草葉 隆圓君    国 務 大 臣 安藤 正純君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁已君   説明員    外務省アジア局    長       中川  融君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    厚生省引揚援護    局長      田辺 繁雄君   —————————————   本日の会議に付した事件社会保障制度に関する調査の件  (中国紅十字会代表招待及び中国人  遺骨送還に関する件)  (ビキニ被爆者及び家族援護に関す  る件)   —————————————
  2. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 只今から厚生委員会を開会いたします。  初めに、厚生委員異動を御報告申上げます。第十九回国会の閉会後の異動によりまして新たに厚生委員になられた方は、山下義信さん、前田穰さん、榊原亨さん、紅露みつさん、高良とみさんの五人の方々でございます。御紹介いたします。   —————————————
  3. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それではこれより議事に入ります。  社会保障制度に関する調査の一環として、第一に中国紅十字会代表招待に関する件を議題といたします。政府におけるその後の状況を御説明願います。
  4. 中川融

    説明員中川融君) 中共に抑留されております一般邦人を引続いて内地に帰還せしめることの一助といたしまして、又先般来中国紅十字会が本問題についていろいろ尽力してくれましたことに対する謝意を表する一つ方式といたしまして、中国紅十字の会長その他代表人たち内地に招いていろいろ懇談をしたい、或いは視察等もしてもらいたいということを、前から日本赤十字社から申出でがありまして、必要な入国許可旅券発給等について政府の援助を得たいということでございました。  これにつきましても政府当局といたしましては果してこういうような方式邦人引揚問題促進に貢献するかどうかというような点、又これに関連いたしましていろいろこれが純粋の引揚げという人道問題以外の問題にいろいろ利用されるというようなことがないかというような点につきまして、必ずしも日赤とは意見一つにしていなかつた関係上、なかなかこの入国許可についての政府側の協力という点が結末を見なかつたのであります。  先般両院におきまして、この招待問題について政府は善処するようにという決議が、それぞれ同じ内容の決議両院においてありました関係上、政府といたしましてもできるだけ速かにこの問題を解決したいと考えておりましたところ、最近に至りまして日赤におきまして関係団体から本事件を政治的の目的には決して利用しないという約束を取り、或いは日赤のほうといたしましてはできるだけそういうふうに努力するということを約束されましたので、本問題につきましてはこれ以上心配する必要はあるまいという結論に達しました。先週中頃政府としても異存ないということを日赤に通達いたしました。日赤から早速中国紅十字会会長宛電報を発しまして、来月約二週間の予定を以ちまして中国紅十字会代表七、八名を日本招待したいということを申送りました。それに対してまだ返事は聞いていない状況でございます。  簡単ですが、これを以て御報告を終ります。
  5. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御質疑を願います。
  6. 竹中勝男

    竹中勝男君 今政府の御説明外務省は今までこれに躊躇しておつたのは、邦人引揚促進にこれが貢献するかどうかということについて疑念を持つておられたということなんですが、そうするとこれを招待を出されることを承認されたことについてはこれは貢献するというふうに解釈されたわけですか。
  7. 中川融

    説明員中川融君) その点につきましては、政府としての考えは特段変つておるという事情ではございません、恐らく邦人引揚という問題はいろいろ中共政府もてのいろいろの考え方から判断されて決定される問題ではないか、従つて紅十字会の代表招待して日本における謝意を表する。或いはいろいろこれと懇談するということによつてさして促進されるとは実のところ考えていないのであります。併し本問題は一つ一般輿論の問題といいますか、問題ともなつております。かたがた先般国会におきまして両院決議もありまして、政府として善処すべしということでありますので、むしろ国会の御決議尊重するというつもりから本件について、入国について許可をするということをきめた次第であります。
  8. 竹中勝男

    竹中勝男君 私が伺つているのは、政府が紅十字の代表をよんでも引揚促進には貢献しない、するかしないかわからないということに対して御質問したのですが、今の御答弁では、恐らくしないだろうという御答弁だと解釈していいですか。そういう解釈の下におよびになるわけですか。
  9. 中川融

    説明員中川融君) 当初政府がこれの承諾を躊躇いたしておりました理由は、先ほど簡単でありますが申述べたように、これが果してどの程度貢献するやは疑問であるということと同時に、その反面この招待という問題が、いろいろ人道問題以外のこと、或いは別の言い方を申しますれば、政治的な目的に利用されやしないかという面がありますので、その両者を比較検討いたしますと、どうもこれは軽々に招待承認すべきではないのではないかという疑念がありましたために、延び延びになつていたわけであります。併しこの件につきましては国会決議がございましたので、もはやそういう点についての政府の判断をこの際固執すべきではないというとかうに考えまして、その趣旨によつて政府としては最近承認を与えることになつた次第であります。
  10. 竹中勝男

    竹中勝男君 まだはつきりしないのですが、紅十字の代表招待してみても、これが引揚促進には一向プラスになるとは思わぬという点については間違いないのですね、外務省のお考えは……。
  11. 中川融

    説明員中川融君) 引揚促進になるかならないかということは、はつきりした結論は出し得ないわけであります。これは勿論その結果を見た上でなければ結論は出ないわけでありますが、見通しとしては、我々が中共というものの性格その他を判断いたしております結論としては、さようなことではなかなか方針なりなんなりを変えるような政治柄ではないというふうに考えておりましたので、従つて民間の各方面からいろいろこれをよぶことが唯一の促進策であるというような議論に対しましては、必ずしも政府は同意見ではなかつたわけであります。併し絶対に貢献しないと言い切ることもこれは早計であると思います。併し政府が躊躇いたしました理由は、そういう貢献ということが非常にあいまいであつて結論が出ない。一方これによつていろいろの政治的に利用されるというような、いわば政府の面から見ますと面白くないことも予想された。この両者を比較検討いたしまして、これに対して結論をそう急速には出していなかつたわけであります。併し最近に至りまして、この承認いたしました理由は、政府検討の結果が、今までとは違つた結論なつたという事情によるものではむしろなくて、国会の御決議尊重するという趣旨から出ているものであります。
  12. 竹中勝男

    竹中勝男君 しつこいようですけれども、今のアジア局長の御答弁によりますと、日本はあまり中国に信頼を置いていない。中国代表と交渉してみたところで、その結果が中国の性質上信頼できないというふうな御言葉が、或いは全体としての説明がそういうようになつているのですが、私はこの点については意見になりますけれども、これはそういう態度中国の紅十字代表日本招待するということについては、私は政府がもう少しそういう態度を改められるのでなかつた効果はないと思う。よんで見ても、これを信頼していいのか悪いのか、結果がいいのか悪いのかわからんというような政府態度というものは、私は面白くないと思う。この点私は委員として、そういう政府態度で、紅十字の代表日赤招待することを承認されたというのであれば、私は大変遺憾だと思う。そういう点についてはアジア局長はやはり、どこまでも政府中国代表をよんでも、引揚に貢献するかしないかは一向わからないという態度でおられるのか、成るだけいい結果をもたらすようにという意図の下においてなされているのか、私は重ねて伺いたい。
  13. 中川融

    説明員中川融君) 今回中共代表をよびますことによつて引揚問題にいい結果が出てくるということは、政府としてももとより希望するところであります。又中共の紅十字の代表をよびます際に、政府がそういう心がまえでは効果が出ないのじやないかという御意見でございますが、これは併し入国許可いたします政府として、そういうような考えを持つているということでありまして、これを招待いたしますのは政府ではなくて、日赤がいたすのであります。日赤としては、これによつて相当効果があるというふうに期待して、又その趣旨誠意を尽くして、中共紅十字の代表を接待されるものと考えております。又日本側誠意があることによつて日本側誠意を尽くしても、中国国柄からなかなかむずかしいのじやないかというようなことを申しましたのは、誠意を尽くす相手中国政府ではないのでありまして、これは中国の紅十字であるのであります。従つて中共国柄といたしまして、政府というものが非常に強い立場にある。又日本赤十字と、中国の紅十字とその政府とに対する影響と申しますか、そういうようなものはやはり距りがあるのじやないかと思うのでありまして、従つて誠意を尽くします相手が紅十字である場合において、果してその誠意がどれほど中共政府自体影響を及ぼすかというような点については、やはり日本における場合と同じように考えるのは、少し行き過ぎではないかというふうに我々は見ている次第であります。
  14. 竹中勝男

    竹中勝男君 長くなりますから簡単にしますが、どうも御説明を聞いておつても、やはり政府態度というものが、中国に対する不信或いは中国に対する特殊な考え方、或いは中国或いは中国紅十字との関係におけるものに対する不信、消極的な態度というものが、少くともはつきり現われているように思うのですが、参議院の厚生委員会としては、中国の紅十字会の代表をよぶということは、非常に引揚げ促進についても、或いは中日国交についてもプラスになるという確信の下に、我我は紅十字の李徳会長をよぶということを決議しているわけなんです。こういう点について私の希望としては、政府がどこまでもそういう中国に対する先入主中国紅十字会に対する消極的信頼的な態度というものを変えて頂きたいと思う。そうしなければ紅十字の代表招待して感謝の意を表する、そうして将来の引揚げ問題の解決に対して、積極的ないい結果をつかむという我々委員会意思に合わない点、政府にそういうズレが出て来るということを私は非常に懸念する。その点については十分御注意を願いたいと私は思う。
  15. 山下義信

    山下義信君 今竹中委員の御質疑があつて伺つてつたのですが、私は別な角度から伺いたいのです。最後に竹中委員の言われたような意味のことを、私は外務省もそう考えているのだろうと思う。外務省中国を全く信頼しない。李徳女史の来日は好ましくないと思つているというふうにばかり、そういうふうに考えてはいないので、後段の竹中委員の希望せられたような気持ちは実は持つているのだ、持つているのだけれども、一言言い損つたら大変だから用心して、今言うようにきちんと紋切り型のことを言うのだろうと思う。私は外務省が今回入国許可したことは、私はまあ遅いけれどもこれを是とするのです。我々が決議したのはもう数カ月前です。国会決議尊重したとおつしやつたけれども、まあ尊重尊重であつて、今頃まあ尊重ということになるのですけれども、ともかく遅くとも同意せられたということは私は多とするのです。  それで日赤がよぶ、三団体がよぶことが政治的に利用されることをおそれて云々と言うが、政治的に利用したのは誰だ。この李徳女史の招請問題を政治的に利用したのは誰だ。(「そうだ」と呼ぶ者あり)政府じやないか。(「その通り」と呼ぶ者あり)これを断つたのも政治的な意味で断り、今回これを許可したのも政府みずからの政治的な意図が私はあると思う。赤十字や三団体に何の政治的意図がある。若し意図があるというなら、外務省は指摘してみ給え。我々から言えばこれを今日まで拓否し続けたのも、政府アメリカ一辺倒外交方針のその具に供したのだ。私はそう思う。で今回、まあ私大きな声したつてしようがないから、今回これを政府がなんだかこう非常に解釈を十分了承して、趣旨を了承して欣然としてこれを承諾したということは、私は先ほど中川局長が述べられた、そういう表面的な形式的な理由でなしに、私はもつと政府のこのたびのこの措置を高く評価したいと思うが、どうです。私は大いに買つてあげたいと思うのですが、どうです。私は政府が今日の国際情勢から見られて、これはですよ、新聞などがぼつぼつ書いているが、政府外交方針も若干是正しなくちやならん。修正しなくちやならんという段階に来ておる。我々野党が多年叫んで来たことに、漸く今日少しばかり気が付きかけた。私が今日の李徳女史に対する外務省態度が変つたということは、政府方針外交方針上大いに考うるところがあつて、漸く今日になつてこの承諾という挙に出た、こう私は善意に政府のいい一つ、その方針の変更を来たしたその一つの現われであると高く評価したいと私は考える。この点中川局長はどうお考えになりますか。そういうふうに私どもは高く外務省態度を評価しているのですが、如何です。
  16. 中川融

    説明員中川融君) 政府が紅十字代表入国につきまして承認を与えました理由は、先ほど私の述べました通りでありまして、中共に対する日本政府考え方変化したから、その結果としてこれを承認したというような関連はないのであります。  なお、中共に対する不信というふうに、先ほど私ども申しましたことをおとりになられたようですが、決して中共政府自体に対して日本政府不信の念を持つているということではないのでありまして、中共政府中国紅十字会との相関関係というようなものにおきまして、中国紅十字会に対していろいろ好意を示すということが、同時に中共政府の政策にすぐに影響があるというように考え解釈するのは、中共国柄から見て少しむずかしいのではないか、かように考えるということを申した次第でありまして、中共政府というものを別に信用していないという趣旨を申上げたのではないのであります。
  17. 山下義信

    山下義信君 私はこのたびの外務省許可一つの、外交上の一つの大きな私は何といいますか、できごとというか、一つ措置というか、そういうことの意味があると思うのですね、意味にとられると思うのですね。理由は今たびたび繰返されたような理由であるが、それはまあ形式的な理由であつて、そのことをそういう理由によつて許可した、政府が認めたということは、大きな政府態度変化と思いますが、どうですか。    〔藤原道子君「率直に御答弁願います」と述ぶ〕
  18. 中川融

    説明員中川融君) 私はこの問題につきまして、いろいろ政府部内において研究もいたしておりましたし、私自身折衝の衝等にも当つたのであります。その経緯から見まして、先ほど私の御説明いたしました通り中共に対する日本の認識が変つたというようなことから、今回の承認なつたものではないのであります。
  19. 山下義信

    山下義信君 変つたのでなければ、この理由はもうとうから、半年前からはつきりしている理由であつて、半年前にはこれを拒否しておつて、今回これを認めるということが変つたのじやありませんか。理由はちつとも半年前から変つたのじやないので、半年前の理由と若干の理由変化があつたというならば、それはこの度認めることにした同じ理由が半年前もあつたのでありまして、外交官とやりとりすると、私が負けるかも知れませんから、この程度にしておきます。同一理由承認したというのであれば、政府態度変つたのじやありませんか。変らんというのがおかしいじやありませんか。  関連して伺いますが、まあ最近中共日本との関係が非常にだんだん近くなつて来たことは、顧著な事実であります。そうして民間のあらゆる団体その他が自然と親近を一層加えつつある情勢は、只今非常に注目すべき情勢でありまして、私ども非常に喜んでおるのでありますが、政府はこの民間の日中の交流状況というものを、どういうように考えておられますか、御意見を承わりたいと思うのです。
  20. 中川融

    説明員中川融君) 最近中共日本との間に民間いろいろ交流が盛んになつたというお話でございますが、具体的にどういうことをお指しになるのか私にはちよつとわからないのでありますが、別段従来と特に変つたことはないように思うのであります。勿論中共側からいろいろの、例えばこの前、議員団招待するというような話とか、その他の話がございますけれども、これに対する政府側態度というものは、御承知のようにまだはつきり結論が出ておらない状態でありまして、中共側から一連のそういうような、何と申しますか、運動が行われておるからというお話でありますならば、最近いろいろそういう中共側からの運動が比較的多くなつたように思うということは言えると思います。これに対応して日本側からどのような態度になつておるかということでありますれば、これは今までのところ特に変つていないと申上げるほかないと存じます。
  21. 山下義信

    山下義信君 外務省中共平和攻勢を恐れて、必要以上の用心を重ねておられるということは、誰もわかつておるのですが、今中共側からどういう手を打つて来ようと、私は日本政府としては考えなければならん段階であつて、まあ各種団体の動き、或いは殊に議員中共旅行なんかは、政府としては、これは積極的に私は理解を持つて相当援助すべきだと私は考える。これが中日外交打開のきつかけになることは万人が認めておる。私は外務省はそういうことに対して非常になんというか、虚心担懐に、而もアジアの大局から見ても、これは私は十分積極的に、そういうことに対してこれを阻害したり、或いは阻止したり邪魔立てしたりということでなしに、むしろ積極的に向う平和攻勢を十分活用するという心がまえで私は出て行くべきだと、こういうふうに考えておるんですが、アジア局長の見解はどうですか。
  22. 中川融

    説明員中川融君) 政府といたしましても、この種類の問題につきましての態度ということを特に今まだきめていないのであります。これにつきましては御意見も十分傾聴いたしまして更に研究検討を続けたいと思います。
  23. 藤原道子

    藤原道子君 先ほど来、局長の御答弁伺つておりますと、だんだんわからなくなつてしまう。結局中共政府云々ということを言われますけれども、日本政府中共政府との間ではどうにも話合いがつかない。国交の回復ができていない現状といたしましては、そういう段階にある。それを赤十字その他の三国体の力によつて引揚促進されたことは、これはもう否定することのできない事実であります。これを然らば国民が求めていないかといえば、国民はもう寝る間も寝ないで、引揚の一日も早からんことを祈り続けて来た。それが紅十字会の好意によつてとにかく引揚ができたというこの事実に対しては、あなたも否定はできないと思う。これに対して今度李徳女史をおよびするということは、感謝意味を含めておよびするということが、私は赤十字社の趣意だつたと思う。そういうことを社長は向うで約束して来られておる。それによつて向う感謝意味を含めてお迎えして、そこからだんだん気持が親密を加えて行つて、次の引揚にも又便になるであろうという期待はあつた。だけれども今度およびするのは、ためになるとかならないとかいうような露骨な考え方からなされたものではないということを私たち考えておる。私はそう思つておる。ですからこれに対してあなたがどうお考えになつておるかということが一つと、いま一つは先ほど来どうも政治的に利用されるというおそれがあつて云々ということが、しばしばあなたの口から出ておりますけれども、これに関連いたしまして最近中共戦犯を送り還してもいい。還してやろうというような意思がある。これをこちらへ言つて来た。ところが三団体外務省話合いをしたいという申入れをしても、外務省がこれに応じないで、未だに話合いが始まつていないのは、これはどういうわけなんでございましようか。これも政治目的に利用されるおそれがあるからとおつしやるのでございましようか。ということになると、戦犯を、終戦以来九年経つておりまして、夜の目も寝ずに待ち焦れている家族気持ちに対して、外務省はそれでよろしゆうございましようか。政治目的の利用ということをどういうふうに我々は解釈したらよろしいのでございましようか。私はこの点どうも外務省のやり方に割切れないものをしばしば感じておるのでございますが、一日も早い引揚促進のために、戦犯を祖国に迎え入れまするためには、三団体と言つて来ておる以上は、やはりこれと話合いをお進めにならなければ、三団体と言つて来たのだから、三団体でやつたらいいじやないかということでは、相済まんと思うのでございますが、それに対して外務省はどういうふうにお考えになり、今後どう処置されるお考えであるかということを私は明確にお伺いをしたいのであります。
  24. 中川融

    説明員中川融君) 中国紅十字会代表感謝の意を現わす意味において招待するということは、初めから日赤が言つておられたことでありまして、そのこと自体について政府として別に異存はないのでありますが、そのことが同時にいろいろほかの目的に利用されはしないかということで、先ほど申上げましたようにこれの承認が遅れていたのであります。このことにつきましては最近承認をいたしまして、日赤から招待電報が出たわけであります。なお、最近中共当局戦犯者を近く釈放するかも知れない、その場合には日赤等団体にやはりやつてもらいたい、日本側としてはやつてもらいたい、こういう意向を現地に旅行いたしました人に伝えまして、その人から内地へ知らせがあつたわけであります。これにつきまして外務省としてこれを決して反対とか異議を唱えていることではないのでありまして、非常に賛成であります。外地戦犯の人が一人でも多く一日でも早く内地へ帰られるということは、国民を挙げての吉報でありますので、これは是非そのように解決実現してもらいたいと思うのであります。従つて私どもは三団体の人に早く電報を打つたらいいじやないか、早く一日も早く一人でも多く帰れるようにということを電報を打つたらいいじやないかということを申しておるのでありますが、三団体といいますか、日赤以外の二つの団体のほうはその前にどうしても外務省に会わなければ電報が打てないと言うのであります。どうして外務省に会わなければ電報が打てないのか、我々は理由がわからないのであります。つまりそういうこと自体がいろいろこういう引揚げとか戦犯釈放という人道的な大事な問題を、何かの条件にくつつけていろいろ利用されようということの動きの現われじやないかというふうにまで、或いは解釈すれば解釈されるような態度でありますので、外務当局といたしましては、外務省に今会つて特に今何と言つて聞くことはないじやないか、政府としては戦犯の人が在外邦人の人がいつどこの港へ帰るということであれば、早速配船してそのほうは厚生当局で用意しておるのでありまして、いつでも配船できるのであります。要はできるだけ早くたくさんの人が帰れるように、従つて又いつ何人ぐらいの人がどこへ集結するかということを聞くことでありまして、それを聞くことは何も外務省に会わなくとも聞けるわけであります。そのことは私から十分三団体に伝えてあるのでありまして、三団体ではどうしても外務当局に一遍会わなければ困るという理由が甚だ不可解でありますので、目下更に三団体が本当にどういうわけで会わなければならないのかということを聞いておるわけであります。
  25. 藤原道子

    藤原道子君 三団体外務省に会わなければというようなことに対してそれがすぐ何かの目的のように解釈されることがおかしいのじやないでしようか。お忙しいではございましようけれども、ちよつとお会いになつつて、そう大して差支えないのであつて、会つてみてそれが好ましくないならばその時に又処置をとられればいいのであつて、あなた方は会わないと言い、団体のほうでは会いたいと言い、その中に入つて赤十字のほうは非常に困つておいでになるという記事が新聞に出ておりますが、この記事が間違いなんでございましようか。それともそういう事実がそうなつておるのでございましようか。それは又どうして会えないというのか、その理由はどこにあるのでございましようか。
  26. 中川融

    説明員中川融君) 三団体の方に何ということなし会うということに、勿論仕事の関係はありますけれども、決して反対ではないのであります。日赤以外の二つの団体の方は会わなければ電報が打てないというふうなことを言うておられるのであります。これがどうしても不可解なのであります。どうして会わなければ電報が出せないのか、つまり電報を出すという大事なことを、政府当局に会うということを関連せしめて、いわば面会を強要するという恰好に出ておるのが甚だ不可解でありますので、その間の事情をもう少し確めたいと思うのであります。
  27. 藤原道子

    藤原道子君 ますます奇怪だと思うのでございますが……。政府ではどうしても戦犯釈放等についての手が打てなかつた。ところがそれが幸いにも三団体を通じてそれができるという見通しがついたということになればですよ、それは打合せ等のこともあろうから、会いたいというのが当り前だろうと思うのです。ところがそれを面会を強要するというふうにおとりになるのは、何かあなたの方で後ろ暗いところがあるんですか。
  28. 中川融

    説明員中川融君) 会わなければ大事なことができない、その理由が我々から見れば薄弱でありまして、そのことから結局会わなければ電報という大事なものが打てないんだぞということからして、会わなければならないように仕向けるというその方法といいますか、それに我々外務当局としては了解できないものがあるわけであります。従つてこれは単に漫然としてとにかくそういうようなことから会わなければ……、会えば電報が打てるではないかというふうに軽々しく考えるべき問題ではなく、何かそこにやはりこの際はつきりしておかなければいけないものが含まれておるのではないかと、かように考える次第であります。
  29. 藤原道子

    藤原道子君 ますます私は了解できません。外務省はそんな特権があるのですか。結局私はそういうやり方が問題を縺れさして来ると思うのです。一日も早く帰してもらいたいという家族気持ちを思うときに、あなたのような立場を固執されるということはおかしい。と言つてみても今の政府当局が外国の招待の宴会に出るまでアメリカのお許しを得なければ決定ができないというような弱腰だから、だんだんだんだんに日本はこういうふうになつて来ているのではありませんか。そんなことは言いたくはございませんが、とにかく私は本当に家族気持ち考えるならば、速かにこの問題は解決さして欲しいのです。面会強要という言葉がございましたが、私これは穏かでないと思う。どういう強要の方法をされたのであるか。果して強要であつたならば、私たち考えなければなりません。その点を明かにして頂きたいと思います。
  30. 中川融

    説明員中川融君) つまり普通に会いまして、そして話をするというのであればこれは差支えないわけでありますが、会わなければ、要するに大事な電報が打てないということを言つておるのであります。会うことと大事な電報が打てないということの間には、どんな理由があるか、どういうそこに必然的な関連性があるかということをえ考てみますと、必要なことは全部すでにわかつておるのでありまして、何も今更会つて聞かなければならん必要はないのであります。船の配船のこともすつかりきまつておりますし、又先方としては、今回は三団体代表者に来てもらう必要はないということも先方に連絡しましたし、伝わつておるのであります。特に会つて何を頼むということもないわけでありますが、併しどうしても会わなければ電報が打てないというようなことを言つておるのです。これはやはり間接的ではありましようが、面会をさようなことで強要することにいとしいのではないかと考えて、先ほど面会強要ということを申上げたのであります。
  31. 湯山勇

    ○湯山勇君 私は局長のおつしやることは少し誤解か、間違いがあると思いますので、その点を質したいと思います。それは紅十字代表招待するということは、感謝意味で御招待するのだ、こういうことをおつしやつて、このことが引揚げにまあ余り影響はないだろうというようなお話ですけれども、これは当委員会でこのことが決議された状況とは非常に違つております。と申しますのは、当委員会でこういう決議がなされましたのは、感謝を表明するだけならば引揚げが終つてからでもいいじやないかという外務省側の意見の開陳があつたんです。これは政務次官からございました。そのときに当委員会としてはそういう感謝意味だけでなくて、現在残つておる数千名の人を帰すためには、やはりこの段階において来て頂くべきじやないかということで、政務次官もそのことを了承されて、それでは私といたしましても全力を挙げて御協力申しましようということで、あの決議がなされたことを局長は御存じでないのではないかと思います。そういういきさつから今日の招待ということになりますと、局長のおつしやつたような一方的な意味だけではなくて、このことに対する大きな期待があるはずでございますが、若し局長が御存じないとすれば、これは小瀧さんとよく話合いを願うし、なおその問題についてはかなりの意見に食い違いがありますから、委員長にお願いしたいのですが、若し御答弁如何によつては、大臣を是非明日および願うように願いたいと思います。  それからもう一つ、今度の招待について政府は何らかのプランを持つておられますか。ただ旅券を出す出さない、許可を与えるというだけでございましようか。なお、時間をお急ぎのようですから、簡単に申上げますが、一切の応接を赤十字がするといたしますと、赤十字は実際運営等の費用に困りまして、政府から若干の補助を出しておるはずでございます。そういう赤十字がどういうところからどういう費用を出すか、政府としてはこれに対して何か助成をするとか何とか、そういう途を考えられておられるのかどうか。そういう経費面についてもおわかりの点を明らかにして頂きたい。
  32. 中川融

    説明員中川融君) 紅十字会の招待感謝の意を現わすことと同時に、今後の引揚促進させるという二つの目的があつたことは、政府は初めから承知しております。従つて必ずしもその一つだけというふうには解釈いたしておりません。なお紅十字会を招待いたします際に、政府が何か直接にするかどうかというお尋ねでございますが、政府としては、これは日本赤十字社中国の紅十字会の代表者をよぶということであるというふうに了解いたしております。政府としては直接何らの措置もとりません。全部日本赤十字社がこれの接待に当るはずであります。なお、赤十字社がその経費をどうするという点につきましては、私も詳しいことは存じませんが、赤十字社で然るべく経費を捻出するというふうに了解いたしております。政府は別に補助金というようなことは只今考えておりません。   —————————————
  33. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それではあとでなお御質疑を継続して頂くことにしたいと思いますが、安藤国務大臣がお急ぎのようでございますから議題を変えまして、ビキニ被爆者とその家族の援護に関する件を議題といたします。  先ず、安藤国務大臣から、その後の経過の御報告をお願いいたします。
  34. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 大体水産委員会、殊に参議院の水産委員会でも十数回に亘つて委員会を開いてはつきり申上げてあります。今日も午前に参議院水産委員会で只今の現況も申上げておきましたから……。併しこの委員会で御質問でありますから、極く大体のところを申上げます。この被害対策につきましては、第一に対米交渉をずつと続けておるのであります。対米交渉もよほど進んで参りまして、もうほどなく解決がつくであろうと推測をされます。併しながらまだ最後の結論までは行つておりません。ただ、これに対しまして、アメリカでは直接損害、間接損害と形式的に分けて、直接損害は賠償をすると、間接損害は賠償をしないと、そう形式的には、形式の上では現われて来ないかも知れません。総括して、どういうものだけに賠償する、こういうような形になつて来るだろうと思います。併しながら実質から言いますと、アメリカでは責任を感じて直接損害の賠償はしよう、間接損害はよくわかつてはいるけれども、アメリカの国内法にそういう間接損害を賠償したという例も余りなし、又今日までいろいろな事件がありまして、それが国際裁判所にかかつたこともありますが、その判決はやはり直接損害の程度で判決をされて、間接損害には及んでおらないという判決例もあるというようなことでありまして、実質的には直接損害を標準としての賠償と思います。併しながら日本からの交渉を外務大臣を通してやつている。その交渉には相当幅を持つておりますから、形式の如何にかかわらず、やや幅の広い過程において解決をされることと思うのであります。最後の結論には行つておりませんが、もう結論に近くなつております。そこで政府といたしましてはそういう直接損害のほかにですね。まぐろの魚価の低落ですね。市価の暴落、それから市場の混乱、そういつたような間接損害です。即ち生産業者に対する、そういう損害ですね。それから流通関係の業者に対する損害、これを何とかして早く水産業が円滑に活動ができることにしなければならない、こういう立場で政府考えておりまして、差当り国内の措置を講ずるつもりであります。現にその点は、例えば神奈川、即ち三崎です。静岡、即ち焼津、こういうところに対しましては融資の措置をいたしたのであります。併しそれに及んでおらないところがまだ大部分でありますから、そういう点に拡張しまして、国内融資をしよう、融資であります。ということを実はもう十分前からそういう方針で、殊に最近関係大臣の間で相談をして協議を進めている。これが現況であります。
  35. 湯山勇

    ○湯山勇君 只今の大臣の御説明は極めて抽象的、一般的であつて、現在の段階においてはもう少し詳しく知りたいと思います。と申しますのは、先般岡崎外務大臣は、二十七日に、アメリカは補償費八十万ドルを出す意向だ、それに対して外務大臣としては、いろいろ資料を集めて見ると、その総額が二十億円を超えているというようなことを記者団に発表しております。そうすると、大体向うとしてはどれだけ出そうという、こちらとしてはどれだけ出してもらいたい、どれだけ出してもらえば、どれだけの補償ができる、こういう点をもう少し具体的に大臣から御説明を頂きたいと思います。
  36. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) アメリカは初めはそんなに出さないつもりだつたのですね、率直に言いますと……。それを非常に交渉しまして大分向うもわかつて来、こちらも談判を続けたわけで、結局八十万ドルということが出ております。併し八十万ドルでは満足ができないというのが我々の考え方で、少くとももうちよつと上げなければいかん。向うの立場では直接損害というんですよ。それ以上はやはり出ない。ところが直接損害としましてもそれじやいけないというので、努力を続けているというわけであります。
  37. 湯山勇

    ○湯山勇君 それでは直接損害だけで政府としてはどれだけに見ておられるのでございますか。
  38. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 直接損害、数字のことを実はね。私は申上げたいんですがね。一遍にここで言つてしまうわけにも行かないから、この点は水産委員会でも申上げずにありますから、その点はどうぞお許しを願いたいんです。ただ併し、概数を言つておきますと、直接損害というのは、これはいろいろ算定の仕方があるのですね。厳格に言いますと、福龍丸の船体がまるで駄目になつちやつたからその措置、それから二十三人の患者の治療費及び今後の生活保障といいますか、或いは慰藉料といいますか、とにかく今後の保障ですね。それから福龍丸等に属していた船具、船員の私物、その他これに附属したもので放射能を浴びて使い物にならん、そういうものの損害ですね、それから福龍丸についで第十三光栄丸というのが三崎に着きまして、これが相当放射能を浴びて来ているんです。これらも勿論損害に入りますし、爾来最近までで百四十九隻ですか、ちちつと極めて確かなことは何ですが、大体それくらいの船が放射能を浴びてまぐろを廃棄している。それは勿論福龍丸、光栄丸というのは殆んどまぐろを全部海中に廃棄しちやつたんですが、その後はそんなにないようです。積んで来たまぐろ全部を廃棄したわけでもない、三分の一廃棄したものもあれば、五分の一廃棄したものもある。要するに検査の結果百カウント以下のものはいい、百カウント以上の放射能を浴びているものはそれを廃棄しておりますから、そういうまぐろの廃棄したことですね。そういつたようなものを含んでおります。そういう点が大体直接損害でありますが、なお私がここで余りはつきり申上げられないということは、そこに緩急の、緩急というとおかしいけれども、そういつたよう事情があるのですよ。例えば危険区域を設定しましたね。その危険区域を設定したから、普通ずつと早く行けるところを遠廻りして行かなければならん、又遠廻りして漁獲して帰るから、それだけの費用が余計かかるんですね。船にそういうようなものを実は検査してあるんですよ。だからそれは極めて厳格に言うと、それが直接損害といえるのか、いえないのかわかりませんが、私どもとしましては、政府としてはそれを直接損害と認定いたしまして、そういつたようなことも入れてある、こういうわけなんです。
  39. 湯山勇

    ○湯山勇君 只今の点は非常にデリケートな問題でございますから、只今の御答弁で一応了承いたしまして、次にお尋ねいたしたいのは、先ほど政府としては融資をしているというお話でございましたが、融資というのは例えばこの今度被害を受けた船員たち、こういうものの生活費もその融質対象になつているのでございましようか。若しなつているのだとすれば、そういう融資はどういう経路で本人の家族に融資されるか、そうして又これも償還についてはどういう方法がとられるのか、その点を御説明頂きたいと思います。
  40. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 家族の何ですか、将来の保障ということですか。
  41. 湯山勇

    ○湯山勇君 現在の生活費ですね。
  42. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 現在の生活費というのは、その他のことは、これは融資、国内融資の中には入れないつもりです。これは賠償のほうで当然出ることと思いますから入れません。それじやどうしてそういうことをやつているかと言えば、その治療費は予算に盛つてあります、厚生省の……。まあ、それは厚生大臣がいるから詳しく聞いて下さつてもいいが、それでこの予算の中から切り盛りをしておるのであります。併しながら、それが当然第一の直接損害ですから、向うから来ればそこで精算ができる。こういうつもりなんです。それからなお今後の慰藉料といいますか、或いは生活保護といいますか、それらも勿論重い患者もあり、軽い患者もあり一概には言えませんけれども、そういうことに対する将来の生活保障のごときも、これも直接損害としてアメリカに交渉をしているわけで、恐らくこれはアメリカが承知をいたしましよう。そういうわけになつておりますから、要するに、そういうのは国内融資は入れません。国内融資はつまり漁価の低落、それによつて受けた生産業者、流通業者の損害です。それから市場の混乱とか、そういつたような方面のことを、融資として打撃を受けたところを切り抜けて、そして、業務、仕事に行詰りのないように融通をして行こう、こういう趣意なんです。
  43. 湯山勇

    ○湯山勇君 償還についてはどういうふうな……。
  44. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 融資の償還ですか。
  45. 湯山勇

    ○湯山勇君 そうです。ちよつとそれに附加えて……。その償還については、賠償額の決定如何によつて、先ほどの八十万ドルがどうなるか、その賠償額の決定如何によつては、融資したものを補償金なり何なりで、つまり融資でなくて、交付金とか、或いは補助金という形になりますか、そういう形で返さなくてもいいというような措置も考慮しておられるかどうか。その点を一つ説明頂きたいと思います。
  46. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) その点は、これは将来でないとわかりません、今日では……、(笑声)今日では今あなたのおつしやつたようなことは考えておらないですよ。融資ですから、急場を切り抜けて、差支えないようにしよう、こういうわけなんです。で、その期限も必らずしも余り長くはないかも知れんが、そう一カ月、ニカ月というような短期ではないつもりなんです。
  47. 湯山勇

    ○湯山勇君 わかつたようなわからないような点があるのですけれども……  なお、厚生大臣にお尋ねいたしたいと思います。以前に当委員会におきまして、被害者の家族の生活保護につきまして、大臣から非公開で御表明がありましたが、あのときの措置は、現在もあの通りの状態で続けられておるものか、或いは今度のこの問題と関連して、新たな何らかの方法がとられておるか。この点について厚生大臣からお答え頂きたいと思います。
  48. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) あのときの状態の通りに続いておるのでございます。従つて補償がありますると、その補償の対象になつております。
  49. 湯山勇

    ○湯山勇君 変な問答になりますけれども、あのときの状態のまま続いておられるとすれば、その当事者ですね、中間当事者に対してはやはり今回の融資というような措置は講ぜられておるのでございますか。
  50. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) これは中間当事者が相当の力があると申上げるか、相当な機関でありますために、現在では融資という程度までは及んでおらないと承知しております。
  51. 湯山勇

    ○湯山勇君 相当力があるとは申しますけれども、これも相当今日の情勢では困つているのではないかと思いますが、融資対象にするお考えはお持ちでございましようか。
  52. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) 成るべく早くこのアメリカとの話合いがついて、これも只今のお話のように、もう大体終末に近くなつているという程度であろうと私どもも存じておりますから、このほうを急いで、そして治療、家族、その他に補償の方法を十分急いでいたしたほうがいいじやないか、なおそれで不十分なら、又話が延びるような場合は、これは考えて行かにやならんのではないかと思つております。
  53. 山下義信

    山下義信君 安藤国務相に伺うのでありますが、アメリカとの賠償の話は近く終結を見るだろう、話がつくだろうというお話でありましたが、近くというのはいつ頃でございますか。今月中くらいには話は済みますか。もつと早いのでございましようか。
  54. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) これは外務大臣がやつているんですが、勿論その状態及び相談等にもあずかつておりますが、はつきりいつというようなことは、相手のあることでありますから、殊に向うが言つて来た額によかろうと言つて応ずるならば、早いですけれども、それじやこちらは満足しておりませんから、もう少し上げなきやいかんというようなまあ考えを持つているものですから、そこがかかります。かかりますが、今日は八月の九日ですから、私の考えでは、これは私個人の考かも知れませんが、順調に行けば今月一ぱいに片付きましよう。
  55. 山下義信

    山下義信君 大体まあ見通しのいい御答弁を頂いたのですが、日本政府のビキニ関係の対策のまあ補償と言うか、日本政府が被害者に対する措置ですね。その必要な措置をするその費用は向うから損害賠償として取つただけのものを日本政府措置するのですか、或いは又それに日本政府自体の財政支出をして、プラスして、関係者のできるだけ満足の行くような対策をしてやろうという考えなのですか。つまりアメリカから受取つただけの範囲内でやろうというのですか。それが少なければ日本政府のほうで出して、そしてやろうというのですか。その辺はどういう考え政府は持つていらつしやるのですか。
  56. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) それは大体アメリカの賠償において支弁して行こうという方針です。と申しますのは、それでこちらでも考える直接損害といつたような点は、大抵行くのだろうと思います。併しながら、これが対米折衝のことで、相手のあることですから、余りにこちらが考えている、政府考えている方針と違うようなことがあれば、それはそのときにどうしても国内として、政府しても更に考えて行かなきやならんと今考えております。
  57. 山下義信

    山下義信君 それでまあそういうことで、政府のお考え向うに賠償させられた範囲内でやるのだ、それで十分だと考えているという御意見であれば、一応御意見としては聞いておきますが、それじや足りつこないし、関係者は承服しないと思いますが、それにしましても、そういう措置をしますることは、やはり何と言いますか、予算措置といいますか、そういうふうな実際の実施の方法ですね。これはどういうやり方でやりますのですか。つまり予備費か何かで支出しておいて、あとで賠償は、いわゆる臨時国庫への収入として、政府の予算措置は次の補正なら補正でする、とりあえず予備費で緊急支出とするというやり方をするのですか。予算上といいますか、財政上の金繰りの措置は一体どういうふうにやるという考えですか。これは早くやるなんと言つたところで、若し普通の補正予算を組んでやるということになれば、政府はできるだけ臨時国会向うへ引張ろうとしているんですから、十一月にも十二月にもなる。それじや関係者は待てないのです。何か緊急の財政措置をなさるというお考えはなさらなければならないと思いますが、その点はどういうお考えですか。
  58. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) その点、国内措置をしなければならないというので、融資の方法を講じて、今立案して大蔵大臣等とも折衝中なんです。これもそんなに長くかからないで、成るべく早くきめたいと思つておりますから、じきにきまると思います。融資ですから、これを補給とか何とかということではありません。融資なのであるからそのわけなんですが、但し、今までも大分延びておりますので、もうすでに賠償を見込んで、国内の内払いは予備費の支出をしてやつた次第なんです。
  59. 山下義信

    山下義信君 財政法上のことにはいろいろ僕らもうといのですから、余り聞けないですけれども、併し賠償交渉中なら、融資という方法も、一応はそういう措置が当然ですけれども、或いは若干は当然法規上認められるものは支出はできるのですけれども、賠償がまとまつたということになつたら、融資じやなくて、すぐ切換えて補償金交付という手続をとるのでなければ、筋が立たんのじやないかと思うのです。融資ならば、そんなような、返済を求めるというような金繰りのやり方でなくして、もう取れただけの賠償金、政府はそれ以上一文も出さないと言うのですが、ともかくもその金はすぐ振替えて円にして払つてやらなければならんのですから、もうその段階になれば融資じやないのですから、私は何らか予算上の措置が要るんじやないかと思う。そういうことは政府では研究しておられますか。
  60. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) そういう点につきましても今まで随分考究をしたのですが、例えば冷害に対するように特別立法をこしらえてやるとか、損害に対してどうとか、そういうわけにも行かないのです。直接損害のほうは賠償で来るのですし、あとは間接損害、殊にそれは魚価の低落による危急を救う処置なんですから、普通の対策とちよつとそごに違うところが大分ありまして、いろいろ考究した結果、融資で行こう、ともかく早くして危急を救いたい、こういう考えにまとまつたわけなんです。
  61. 竹中勝男

    竹中勝男君 今の大臣の御説明で、まあ余りはつきりどれだけが直接損害であるかということについては、デリケートな問題で言えないと言われるのですが、併し国民は、これはただ単に賠償額の問題でなくて、相当この問題は深刻な性質を持つておる問題です、ビキニの問題というのは……。殊に患者のごときは未だに不安でおります。最近にも私らは会つておりますが、一体自分らの補償はどうなるのか、家族の補償はどうなるのか、今立替金であつて、而も家族の生活には足りないということを訴えております。家族五人で二万円程度の補助では足りない。或る人は五人の家族を持つております、宮崎県の人です。そういうふうな不安の状態に五カ月近くも放任されておる。国民の知りたいことは、日本政府がアメリカに向つてどれだけ熱心にこの問題を解決しようとして当つておるかということです。それでお尋ねしますが、今問題になつておる八十万ドルというのは、日本政府が計算しておるいわゆる直接損害というものに対しては非常に少い額ですか、或いはそこそこの額なんですか、或いはそそれに相当する額なんですか。
  62. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 必ずしも相当とは申上げませんが、そう桁の違つた、余りかけ離れた額ではないと思います。
  63. 竹中勝男

    竹中勝男君 直接被害、間接被害という今までの形式論では、この水爆の問題は新らしいケースのように思われるのですが、やはり直接被害を非常に拡大して考えるという今の段階の交渉の方法は私は妥当だと思うのですが、それにしましても、日本政府は水爆実験に協力するというのですから、これは例になるだろうと思うのですが、今度のこちうの交渉の仕方は……。まだこれが起ると我々は考えなければならない。水爆の実験をアメリカがやる、これに対して日本政府はやめてくれと言わないで、協力するというのですから、こういう状態の下において日本外務省が交渉しておる額というのは、相当重要な意味を持つておると思います。これは一回きりじやないだろうと思う、現在の建前とすれば、日本外務省の建前からすれば、日本外交の建前からすれば、今の日本政府のやつている建前からすれば……。それでこれは相当強硬に日本の犠牲者に対する損害賠償というものは、腰をきめて外務省はやはり交渉をされる肚があるのですか、或いは遠慮しながらやつておられるのですか、その点伺いたい。
  64. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 外務大臣が折衝の任に当るのは当然で、やつております。外務大臣の折衝には或いは緩急の態度があるのかも知れません。政府としましては無論強い態度を以てやつております。でありますから、先ほどお話の出た八十万ドルということも、それでは満足できんと、こういう態度を以て折衝を続けておるのであります。  それからなお、あなたが今お話なつた、一体水爆の実験ということは、これはなかなかむずかしい問題で、政府態度をここでは言えません。ただ私個人とすれば、水爆実験はやめたらよかろうと、こういうような私個人の考えである。併しそういうことは政府としては言えませんし、而もこの問題は国際連合でもしばしば出ておりまして、民主国家群のほうでは、今後のアメリカの水爆実験ということを必ずしも否定はしておらないという立場もありますし、そう簡単には言い切れない問題なんです。そこでアメリカは今年のうちは水爆実験をやらないかと思うのです。併しながらもうそれじややらないとは決して保証できません、来年になつたら又やるかも知れない。その場合においては、今度一体水爆というものが今までないことで、世界に初めて起つたことで、こんなに重大な損害を及ぼすというようなことは初めてのことであり、又これはもつと大きく考えれば、全世界の問題であり、全人類の問題なんですから、軽々に看過はしておられませんからして、今後来年水爆をやるというようなことになつた場合においては、あらかじめ外交折衝をするという方針を以て今政府は進んでおります。
  65. 竹中勝男

    竹中勝男君 これは厚生委員会ですから、幸いにビキニ被爆家族援護の問題が出ておるのですからしてお尋ねするのですが、政府代表も出ておられるわけですから……。安藤国務大臣は個人的には水爆実験にはこれ以上はもう賛成しかねる、大変私はまあ国務大臣の考えというものは正しいと思います。又それは国民の輿論を代表しておる考え方だと思います。併しながらはつきり国会で外務大臣は協力すると言明したのです。我々の党の質問に対してはつきりそういうふうに答弁をしておる。この点が国民には非常に大きな不安を与えておるのです。それでこういう限りない被害というものが予想される原爆、水爆の実験に対して日本政府がとつて来た態度ですね、今もそれは改めていないと私は思う。国務大臣としてこれに個人的に反対だという意見を聞いたのは、恐らく国民は初めてだろうと思う。日本政府は、国民を忘れて水爆の実験は賛成だ、賛成だと言えないにしても、これは仕方がないことだ、こういうふうなのが日本政府態度だと国民は思つております。それで今度の被害に対する損害賠償に対して相当強硬な態度で、もはや再びアメリカがもう一度水爆の実験ができないほど、彼らが慎重に考える、そういう内容を持つた賠償を日本は要求すべきだと思う。そういう点について八十万ドルかそこそこであるにしても、恐らく私はこんな額では足らないかと思うのです。間接被害の点から考えて見ても、水爆の被害そのものについては、国民に与えた精神的被害というものに至つては、これは測り知れない被害を持つていると思います。全人類に対して与えている被害だと言えるわけです。こういうことに対して政府当局、殊に出先の外務当局が少しでも弱腰であつて国民意思を無視したような態度でこの問題を解決しようとするならばこれは由々しきことだと私は考えております。そういう意味国民は一体損害の、日本が要求している、日本がこれくらいの損害があるというのは一体どのくらいなのか、何千億円なのか、何百億円なのか、こういうことを具体的に知りたいだろうと思う。こういう点についてもいわゆる秘密でそれは言えないというようなふうにでなく、成るたけ早い機会に、これだけの大きな被害というものを世界に向つて日本政府は発表すべきだと思う。従つて水爆の実験はもうやめてくれ、こういうふうに持つて行くのが日本政府のあり方だと私は考えております。国務大臣どう思われますか、そういう点に対して……。
  66. 安藤正純

    ○国務大臣(安藤正純君) 日本といたしましては、直接損害、間接損害全部を検討いたしましてその全部をアメリカ政府に提出しております。ですから向うではこれだけの損害を受けた、直接、間接に……、ということは承知をしているわけです。併し先ほどから申上げておりますように、アメリカでは直接と間接と、言わんかも知れませんが、大ずかみにしようと思つて来るのかも知れませんが、最後は……。併し実質的には直接損害の賠償こういうことになるのだろう。併しその直接損害でも、日本としてはその額が、それでは満足できないという今過程にあつてその最後の段階に入つているのであります。そこで間接損害はそれじやどうするか。できれば日本政府で金を出して予算措置を講じて、間接損害の補償をしたいのでありますが、御承知の通り日本の現在の財政はどうもそれを許しませんし、いろいろな事情があつてそう行きませんから、そこで先ず融資の措置を講ずるということになつて、これが解決をしておるのであります。併し先ほど申しますように、若し来年度又アメリカがこれをやるならば、一口に言えば安全保障ということをはつきりアメリカに外交交派をしなければならない、こう考えておる次第であります。  もう一つ、私は序いでに言つておきたいことは、外務大臣は協力と言つたというその問題もかなり出ているのだが、これはまあ一般的に協力ということを言つたのだろうと思うのですね。協力ということはこの間実験をしたその続きなんですね。私は何も外務大臣の弁護をする必要はないけれども、自分の解釈で言うと、この間水爆実験を日本が、あれがあることはわかつていたのですから、それでその続きだからまあ協力と言つたのだろう。併しこの水爆なるものが文化を破壊し、人類を殺戮し、これは重大なことだ。どうしてもいけないというのならば、これはどうしても世界の問題だから国際連合でこれをきめなければいけない。ところが現在国際連合にはアメリカのほうの民主国家群のほうはこれを支持しておる、内心はどうか知りませんが、形においては……。それで非常にこれは困るわけであつて、そういう世論から動かして行かなければ、日本としてはいきなり非協力だという線を出すわけに行かないと思うのです。殊にそれに対しては日本国会などは非常に熱心にやつて下さつているが、もつと熱心な線を出して頂きたいということを、私のほうから今度は逆に要求したい。現にこの間も参議院、衆議院の決議案ですね。あれもそこまで行つていないのですよ。水爆の実験をやつてくれという決議案じやないのですから、損害のないようにしてくれというあれは決議案です。むしろ惜しいことをしたと思つているのですよ。(「自由党が賛成しなかつたのですよ」と呼ぶ者あり)実際にはアメリカに強く当りたいのです。そういうことを序いでに申上げておきます。
  67. 竹中勝男

    竹中勝男君 これは希望になりますが、これは我々は実験絶対反対なんですけれども、政府が協力すると言つた以上は、これは自由党としては反対とは言えないのだから、国会で多数で何でもやる自由党のことですから、我々が反対と言つたつて、協力と決議するのは仕方がない。そういう意味で安藤国務大臣は我々に反対してくれと言われても、これはやはり自由党がそういう気にならないことにはどうにもならないですよ。その協力だから、この交渉を徹底的にやつて欲しいと我々は望むんです。で、この差当りのことは急がなくてもいいと思います。こうなつたら……。だから財政措置の上で融資というものを考えているのですから、差当りの問題はなるたけ直接被害者の生活、治療及び漁業関係者、そういうところについての直接被害に対するまあその補償というものは、国家が至急に応急に十分な措置をとられて、腰を据えてこの原爆水爆問題は解決するという態度でアメリカと交渉に当つてもらいたいと思います。我々はそうであるならば、どこまでも水爆実験反対という線を国民と一緒に国会に持ち出そうと思うのであります。そういう点について安藤国務大臣は非常に人道的な立場で立派な見解を持つておられるのですから、国務大臣の安藤さんのような意見を、一つ自由党や政府に反映して頂きたいと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり)で、これはくれぐれも希望として述べておきます。
  68. 山下義信

    山下義信君 私は丁度いい機会ですから、関連してお伺いしたいと思うのですが、安藤国務相並びに厚生大臣が御出席でありますから、丁度いいと思うのですが、当面の水爆関係は安藤国務相が御承知下さるのですね、それであとはこれらの原水爆関係のことは厚生大臣のほうで一括してお世話なさるようなことに承わつている。たまたま本日は長崎に九年以前に原子爆弾の落ちた日でありますが、私はこのたびの水爆の被害者の病状も、門外漢でありますから、よくわかりませんが、ともかくも今日は治療の極め手がないということであります。今の患者の人たちへの治療方法等も、東大の都築博士が中心になつてつておられることも、広島の原爆の障害者のやつた治療の経験を持つて行つて、例えば安静第一主義というような程度でやつている。今のところでは治療の方法なしということを承わつている。最近は長崎、広島の九ヵ年以前の放射能患者が踵を接して続々と改めてこの原爆症の兆候が出て来て、死亡者が続出しておる。丁度最近は広島、長崎のこういう原爆の日でありますので、中央、地方の各報道関係者もこれを指摘しておるわけなんです。で、我々としてはそういう放射能の障害についてこれは相当政府としても検討を加えなければ、当面の損害だなんということも、これも重要であるが、今後放射能の障害関係を如何にこれを治療して行くか、どうして行くかというような事柄について、政府はもつと真剣に検討をせらるべきであろうと私は考えておる。それでこれは折角九ヵ年以前に長崎、広島が二十数万の犠牲を払つて、その後九ヵ年引続いて関係者がこの放射能の治療と取り組んで貴重なデータがたくさんできておる。この事実を政府はつかんで十分御調査なさるのが至当ではないかという考えを我々は持つておるのでありますが、当局においては何か具体的な考えを立てておいでになるかどうかということを厚生大臣からこの席で改めて私は承わりたいと思う。  それからいま一つは、将来放射能関係研究所といいますか、そういうもの、或いは私承わるのに日本学術会議においてもこれは一つ放射能の研究所を作ろうじやないかということを決議なされたということ、或いは又現地の長崎医大であるとか、関係の広島医大等も大学の中にそういう研究所を持ちたいというので、文部省関係の予算として要求したいということを言つておるようでありますが、政府はばらばらに各団体とかそういう関係者でなしに総合的に国として一本にまとめて放射能関係研究所というようなものを持つお考えがあるかどうかということを聞きたいのです。アメリカのABCCは広島、長崎に持つている厖大な資料を、場合によつては今日まで非常にたくさんな調査をしておる資料を、日本政府に渡してもいいというようなことを言つておるそうです。或いは又一部分場合によつては厚生省と相談して、何か最近新らしくABCCも方針が変つて、場合によつて日本政府と相談してもいいということを言つておるそうでありますが、厚生省はそういうふうなことについてどういうふうなお考えを持つておられるかということを、この席で厚生大臣から御言明を頂きたい、かように考えております。
  69. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) お話のように、広島、長崎の丁度昨日、今日はその記念の日で、誠に感慨深いのでございますが、その後御承知のように原爆症調査研究協議会を厚生省関係におきまして、設置し、アメリカのABCCと協力しながら原爆症の調査研究を進めて参つたのでありますが、今回のビキニ関係事件が起りましてから、従来のこれではどうも不十分であるし、更に広範囲の方面に研究調査並びに対策を立てて参らねばならない状態と相成りましたので、従来の原爆症調査研究協議会を拡大強化いたしまして、原爆被害に対する調査研究協議会というものにしながら、長崎、広島等におけるその後の患者の問題に対しましてもこれを対象とし、更に今回のビキニ関係の患者その他食品等に関しまする方面に及びまして調査の対象として参りたいというので、目下政府部内で関係省とこれらの点を検討いたしております。急いでこれらの立場から原爆被害全体に対しまする対策をこれに対する処置とを講じて参るという方針で進んでおります。その具体的な対策等も追つて研究して参りたいと存じております。
  70. 山下義信

    山下義信君 後段のもう一つ、国として放射能関係の総合的な一つ研究所を持つというような考え方はないかどうか、検討してみる考えはないかどうかという点について御答弁を頂きたい。
  71. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) 放射能関係についての研究はそれぞれ或いは通産省その他でいたすことにいたして、先般閣議等でも決定いたしておりまするが、それによる被害と申しますか、或いはそれから起る可能性あるもろもろの対策というものは、今回の原爆被害に対する調査研究協議会で併せて取扱つて行くべきものとして考えております。
  72. 山下義信

    山下義信君 私の質問ちよつとぼかしていらつしやる。私の後段に伺つておるのは、私医者のことはよくわからないのですが、放射能の治療関係のいろいろ研究の医師、医学者といいますか、そういうものを中心として原水爆の障害者の治療の方法の研究をしなければ、今だつて東大で入れている水爆の患者だつて何もに特別の治療方法はない。私は是非一つ日本だけが世界で実験させられた、その負傷者も持ち、その病人を持つているというのは日本だけしかないのでありますから、政府はこれを何といいますか、総合して十分権威ある研究をされるように私は御研究を願いたい、こういう意味伺つておるのであります。日本学術会議のなにも、放射能の病気のほうの治療研究を、そういう機関を作れということを決議したらしい、各大学でもそういうことをやつて、ばらばらでなしにどこか一本でやるべきじやないかと思うのです。大体のことを大臣からお考えを御答弁つて、できれば又あとで事務当局から考えを具体的に聞きたいと思います。
  73. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) 御指摘の点、私ども同感に考えております。従いまして厚生省でもそれを含めて考えて参りたいと思います。
  74. 山下義信

    山下義信君 楠本部長、何か具体的な何がありましたら補足して下さい、大臣の答弁を……。
  75. 楠本正康

    説明員(楠本正康君) この放射能に関しまする治療をも含めました総合的な一つ調査機関につきましては、目下私のほうといたしましては、治療を中心というようなことにいたしますれば、どこか国で一カ所にまとめべきものが、御指摘のように極めて効率的なものだと考えております。併し具体的な問題といたしましてはまだそこまで行つておりません。一応は協議会の形式でこれを総合して行きたいものでございまして、これは厚生省に只今大臣からも御答弁がございましたように、新たに原爆対策に関する調査研究協議会を設けまして、これによりまして一応総合的な調査研究の実を一本にまとめて実施をして行きたい、かような所存でございます。
  76. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 最後に私から、細かい点でありまするが、厚生大臣にお願い申上げたい問題は、この家族の援護に関する問題でありまするが、これは厚生大臣のお話によると中間の機関に立替をさせておると、こう  いうことでありまするが、その立替の場合に、一切を中間の機関に、額等も委せておるのか、或いは厚生省で家族に支給する、家族数その他の情勢に応じて、額等の問題は指示されておるのか。ということは家族の援護について不十分だという声を私どもは承わつておるわけでありまするが、この点について厚生省としては、全く中間の機関に額その他の援護の方法等については一任されておるのか、或いは連絡をとつて十分なる指示をされておるのか、この点を承わりたい。
  77. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) 当時ここでも私御報告申上げましたように、現地の県並びに只今御摘指の中間機関等でよく御相談を頂いて、家庭に即応するような方法というのでいたしておりまするから、厚生省からこの額以上はいけないというような強い指示でいたしておる次第でもございません。従いまして又大変それで不十分と見るようなことがありますと、更に協議をしても結構だというふうに考えております。
  78. 上條愛一

    委員長上條愛一君) この点については、厚生省において任しつきりということでなしに、やはり連絡をとつて家族の意向等も参考にせられて、十分に援護の行届くようなふうに御処置を願いたいとお願いいたしておきます。  それではビキニ被爆者及び家族の援護に関する件は以上で質問を打切つてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  80. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは先に戻りまして、中国の紅十字代表に関する件ですが、なお御質問がありましたら御質問をお願いいたします。若しないようでございましたら、これに関連いたしまして、戦時中に日本において死亡した中国人の遺骨送還について、その経過並びに今後の送還についての見通し等について御当局から御説明を願いたいと存じます。と申しまするのは、前に一度遺骨の送還はいたしましたけれども、その後において全国各地から集りました遺骨というものが千個に達しておるということでありまして、これを急速に処置する必要があると存じまするので、この問題についての外務省アジア局長、経過の御説明をお願いいたします。
  81. 中川融

    説明員中川融君) 戦争中に内地においていろいろな理由で死亡いたしました中国人の遺骨を中国本土に送還したいという話は、先般来ときどき我々も聞いておりましたけれども、いずれにせよまだ具体的な問題として取上げられるに至つていないように考えております。なお昨年度におきましては、中共から邦人の引揚に当りまして、内地にあります遺骨をその船で中国本土に送り還したいという話が出て参りました。併しながらその当時すでに台湾の国民政府と船にどういうものを乗載せるかということについての話合いができたあとでありましたので、国民政府に対する約束との関係から、邦人送還の船に、つまり往路に遺骨を乗載せて行くということが不可能でありましたので、止むを得ず別の船に乗せて、遺骨を計三回でありましたか、送り届けたということがあるのであります。本年度におきまして遺骨をどのように処理するかということにつきましては、まだ政府当局において具体的に何ら研究若しくは決定した事実はございません。
  82. 竹中勝男

    竹中勝男君 これはもう簡単に言えば簡単なことなんですが、まあ李徳全さんが来られることと関連して、やはりこの遺骨のような重大な意義、大切な意義を持つたものを、まあこの前も一時誤解を与えたように、荷作りして送るというような、荷物のようにして送るというようなふうに一時外務省考えられたようなこともあるようですが、そういうようなことのないように、殊に李徳全さんが中国から来るんですから、これを契機に今後の問題を、殊に引揚の問題、戦犯者の問題を解決するということが、まあ中国紅十字の代表をよぶということを我々委員会決議したもとなんですから、一つそういうことに関連して千個の、現在集つておる千個の遺骨を中国に、できればやはりこの衆参両院厚生委員会の手ででも持つて行くというくらいのところまで、そうしてそれを機会に、と言うと悪いけれども、在留邦人の調査だとか、引揚促進ということに我我が乗り出せるようなふうに、遺骨を利用すると言うと大変言葉が悪いですが、この遺骨を契機、一つの契機にして将来の問題の解決に資して行くように考えられるように私は希望するわけです。外務省については、そういうことについて別に反対はありませんか、そういうことについては……。
  83. 中川融

    説明員中川融君) 邦人の帰つて来る船にこちらから遺骨を送る問題を関連せしめることは、私は今のところ、現在の、今日の言わば私限りの見解ですが、甚だ邦人の帰国自体を或る意味で困難にするのではないかということを懸念いたします。それは結局昨年も問題になつたわけでありますが、台湾の国民政府との関係で、こちらから邦人送還船に往路に或いは人を乗せるとか或いは遺骨を乗せるとか、さようなことをいたしますことがなかなか台湾側の保障を取りつけるのに困難な事情がありますので、却つて邦人送還自体を困難な事態にもたらすのではないかということを懸念いたしております。併し甚だ迂潤でありますが、この問題を最近一つも聞いてもおりませんし、その意味考えてもおりませんので、只今それ以上のことを申上げるりは控えさして頂きたいと思います。
  84. 竹中勝男

    竹中勝男君 そういう交換の条件に持つて行くとか何とかいう意味では毛頭ございませんが、こういうことも極めて鄭重に日本政府としてはしなければならない。それが将来の問題にも関連して来ると、そういう点です。外務省のほうもよくわかつて頂きたいということです。即ち鄭重に送る。この前のように荷物の一つにして送るというような考えをやめてもらいたい。そういうことです。それが将来に非常に重大な影響を及ぼしますから……。
  85. 中川融

    説明員中川融君) 先方において非常に強い希望があると申しますか、つまりこれを送り返すことが非常に先方の感情を和らげる。そういうことによつて邦人の帰還その他を促進するというふうなことがありますれば、人道的の問題のやはり一つでありますので研究いたしてみたいと思つております。併し先方の意向その他も実は我々まだ聞いておりませんので、更に今後研究いたしたいと思つております。
  86. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の問題で原則的な問題についてお尋ねいたしたいのですが、前回このことをやろうとしたけれども、国民政府側との了解が得られなかつたのでできなかつた。これは全く事務的な問題だと思いますが、そういうふうに把握してよろしいかどうか。又外務省としては積極的にこの遺骨を送還する意思を持つておるかどうか、この点を先ず伺いたいと思います。
  87. 藤原道子

    藤原道子君 関連して……。先ほど局長は、昨年のときにはすでに方針を決定した後であつたから、台湾政府との了解を得るのが困難であつたというふうに御答弁になつたように私伺つたのですが、今度はこれから相談をすることでございまするから、私は当然の礼儀としてもこの際遺骨を送還すべきであると考えるのでございますが、先ほどの局長の御答弁はそうであつたように伺いましたが、それはどうなんでしよう。
  88. 中川融

    説明員中川融君) 国民政府との交渉の際は、御承知の通り船が向うへ行く際には何も積まない、こういう約束で、ただ帰還する邦人を帰りに乗つけて来るというこういうことで航路の安全の保障を取りつけたのでございます。その後になつて遺骨を返すという問題が起きましたために、国民政府のほうとの話合いに違つた結果が出て来ましたので、止むを得ず別の船を仕立ててわざわざ返したという、いわば非常に不経済なことをしたわけであります。併し国民政府の反対というものが本質的なものであるか、形式的なものであるかという点にかかると思うのであります。これが単に形式的に船の往路には何も積まないと約束したにもかかわらず、積むということは約束が違うじやないかという程度であれば、あらかじめ遺骨を積んで行つて、新たに邦人を乗つけて還すということも事前に通告をすれば差支えないようでありますが、これが本質的に中共側にいろいろなものとか、或いは人間をとかいうことは台湾の国民政府としては承知しないということでありますると、この船の航路の安全保障を取付けること自体が非常に困難になるという結果になるわけでありますが、この台湾の国民政府考え方というものが本質的なものであるか、或いは形式的な反対に過ぎないかという点は我々としてまだ事情を承知しておりません。  なお、原則論として遺骨を還すことに賛成かどうかということにつきましては、先方が希望しないものを還すというのはこれは必要でないと思います。これは人道的な問題でもあり、戦争中に中国の人が日本にいわば強制徴用によつて労力を提供させられて、その結果死亡したというようなことが、確かに人道上よろしくないことでありますので、その遺家族等で是非遺骨を還してもらいたい。例えば日本の現在の軍人軍属の遺家族の方が外地にまだ残つておる遺骨を是非取返してもらいたいという希望が非常にありますけれども、あれと同じような先方でそういう希望があるということであれば、これは何とかの方法を講じまして還すようにしたいと思いますが、その先方からの、先方の意向、意思というものがわかりませんので、そういうものを確かめてから処置したいと考えております。
  89. 湯山勇

    ○湯山勇君 先方の意思を確めてからとか、希望があればとかいうことは、これは全く理由にならないと思うのです。どこの世界の民族にしても、どこの人類にしても自分の血を分けた肉親の者の遺骨が異郷で野ざらし、雨ざらしになつている。その遺骨に還つてもらいたいというのは、古今東西を通じて人情の自然だと思うのです。それを改めて確めなければならないというように考えられるところに、私はまだ、先ほどの問題ではないけれども、この問題も外務省自体、もつと言えば政府自体が政治的に考えているのじやないかと、そういう疑いを持つわけです。もつと率直に考えて頂けば、これはどうしても送り還さなくちやならんということになるのが私は当然じやないかと思いますが、その点はどうお考えになりますか。  更に国民政府のこの前に何も積んで行つちやいけないといつた協定が本質的なものかどうかという点についてですけれども、或いは戦争状態にある両国間の一方へ軍需物資なり、軍需資材なりを運ぶとすれば別ですけれども、外交交渉を以て、少くとも今日独立した日本外交を以て何の戦力の足しにもならない、役にも立たない遺骨を送ることを、それほど局外者と言いますか、第三国の意向を気がねをしなければできないというような、そういう状態に今日本はあるがどうか、非常に基本的な問題で疑義がありますので、お尋ねいたしたいと思います。
  90. 中川融

    説明員中川融君) 我々はやはり先方においての希望といいますか、考え方というものが先決ではなかろうかと考えるのであります。向うへ送りましても、これが遺家族の手に果して渡るかどうかというような点も、我々としてはやはり送り還す前に考えなければならないことだろうと思います。やはり先方の意向ということが前提になるべきであろう。これは決してすでに死亡された人に対する何と申しますか、人間的な感情というものを無視するが故に言うのではないのでありまして、やはり送り還す以上は、向うにおきまして然るべき扱いを受けて遺家族にそれぞれ還る。或いはその他の適当な方法が講ぜられるという点について、あらかじめやはり確めておきたいと考えるわけであます。  なお、国民政府の了承をとることでありますが、これは日本の遠慮とか何とかいうことでなしに、現実の問題として台湾海峡は国民政府側の海軍力が相当強いのでありまして、これを通る際には、どうしても安全保障というものを取付けなければ船自体が安全を保障されないわけであります。やはりどうしても安全保障を取らなければいけない。その際には国民政府側の保障を取付ける必要があります。国民政府側に交渉しなければなりません。その際の交渉の難易ということから言いますれば、何も積んで行かないということであれば、これは一番間違いがないことであります。何か物を積んで行くということになりますと、それは中共に対する戦力を増強するかどうかということを、実質的な判断を離れましてやはり国民政府側の感情といいますか、そういうものもあると思うのでありまして、交渉をしないというのではありませんが、交渉が困難になるであろう、容易でなくなるだろうということを客観的な事実として、見通しとして申上げた次第であります。
  91. 湯山勇

    ○湯山勇君 今のお話お話としてわかりますけれども、すでに一回は、一回ならず二回、三回と送還しているのでありますから、そうするとそれは先方にそういう意思がある。それから送つてつた遺骨がどうなるか確めたいというが、政府は今日まで努力を少しもしていらつしやらない。ともかくおつしやつたような原則を認めるといたしましても、今まで送り還したという既成事実に立つて考えた場合に、今後の拒否するとか今後送り還すことは見合せるというそういう理由は何もないと思いますが、これは如何でしようか。  それから第二点の国民政府との問題ですけれども、最初おつしやつたのは、前回はこういう約束をしたあとであつたから、むずかしかつたんだという御説明であつた。ところが只今のお話では、極めて重大な意味を含めての御発言なので、これは若干私ども了解に苦しむところですが、若しそうだとすれば只今のようなふうに考えるならば、前回あとで行つた分は航路の安全保障なくして行つたのでございますか、これを伺いたいと思います。
  92. 中川融

    説明員中川融君) 前回参りました船のうち、邦人引揚げに使いました船については安全保障を取付けてあるわけであります。日本から遺骨を送還するのに使いました船につきましては、国民政府の安全保障を取り付けることができずに事実問題として航行した次第であります。
  93. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちよつと爆音で聞こえなかつたのですが、大事なところが……。
  94. 中川融

    説明員中川融君) 前回配船いたしました船については、邦人引揚げに使つた分については、これは台湾政府の安全保障を取付けて出したわけでありますが、中国人の遺骨を送りましたこの船、これについては国民政府の安全保障を取付けることができないままにこの船を運行した次第であります。
  95. 湯山勇

    ○湯山勇君 それでは国民政府の安全保障を得ないまで外務省は船を出すことを、或いは船を向うにやることを承認されたわけでございますか。
  96. 中川融

    説明員中川融君) その通りであります。
  97. 湯山勇

    ○湯山勇君 それならば今度の問題につきましても、幸いにして了解を得られて安全保障が頂ければ、これはこれに越したことはないと思いますけれども、得られなければ、前回と同様の措置をとる御意見があるかどうか。実は私の県でも二百余の遺骨を、別子銅山に入つていた人のを取出しまして、随分費用もかかりましたが、県、市その他からの費用も出してもらつて、もうすでにいつでも送り出せるように準備ができているのでございます。前回そういうふうな措置まで極端に言えば強行されたわけですが、今後も前回同様に許可が得られれば、それは結構ですけれども、得られない場合には強行して、得られないままで強行する、こういう意思をお持ちになつているかどうか。若しお持ちになつていないとすれば、前回となぜ別な措置をとるか、こういう点について御答弁頂きたいと思います。
  98. 田辺繁雄

    説明員(田辺繁雄君) 昨年の例を申上げます……。
  99. 湯山勇

    ○湯山勇君 外務省の御意見を聞いているのです。外務省の御態度を聞いておるので、事実はかまいません。(「田辺さんの考え方はわかつているのです。外務省に関する問題を我々が衝いている、岡崎さんの肚一つなんだ」と呼ぶ者あり)
  100. 中川融

    説明員中川融君) 前回の場合におきましては、邦人引揚一つの条件のようになりまして、内地におきまする中国人の帰還問題、遺骨の送還問題ということが取上げられまして、御承知の通り非常にこれは世間を騒がした問題になつたわけでございます。折角の邦人が帰つて来るという際に、こういうことで支障ができては困るからというので、政府としては非常な無理算段をいたしまして、在留中国人の送還及び遺骨の送還を実施したわけでございます。従つて非常な無理をしたのでありまして、別に更に、本当ならばその行く船に乗つけて行き、帰りに邦人を乗つけて来れば、一つの船で済むものを、二つの船を出しまして一つの船にはこちらから運ぶものばかり、もう一つの船は向うからこつちに運ぶものばかりというような、非常な無駄をしたわけであります。これは併し邦人引揚という是非とも実施しなければならない事業というものを円滑に遂行するという必要上から、特にさような措置までとつて遺骨の送還及び在留中国人の送還ということを行なつたのでありまして、相当いわばあぶない橋を渡つたわけであります。これは要するにそういうものが邦人送還のいわば条件となつたからでありまして、今度の場合にはできるだけさようなむずかしい条件はつけないようにしてもらいたい、つけないようにしたい。そうして中共にあります邦人の引揚だけがスムーズに一日も早く行くようにするのが我々として努力すべき目標ではないか、勿論中国に対する人道上の見地から、今内地に積んであります千何体かの遺骨を適当な時期に還すということも、勿論考慮してもいいわけでありますが、これは邦人引揚の反対条件のようにされることは、甚だ邦人引揚その他を困難ならしめるということから切離すようにするのがいいのではないか。さような場合には若し先方の意向等がよくわかれば、そのときに考慮することにして、これをこの際取り上げるということは、却つて問題を紛糾させるゆえんではなかろうか、私は只今さように考えております。
  101. 上條愛一

    委員長上條愛一君) これは如何でしようか、今お聞きしておると、日本政府当局としては、千個の遺骨がすでに集つておるということを御承知でなかつたようでありますが、すでに千個の遺骨がいつでも送還されるように準備されておるのでありまして、これは慰霊実行委員会、大谷さんの委員長をやつておられる慰霊実行委員会ですでに準備を整えている。従つてこれは本来から言えば日本政府としては、当然これらの遺骨をできるだけ早く中国へ送り届けるということは、これは当然な責務であると考えます。それでこの問題は別個に、送還とは別個でやるか、或いは送還の際に同時に送還の便を利用してこれを送り届けるかということは別にお考え願うとして、いずれにしても日本政府としては、日赤及び慰霊実行委員会と御連絡の上、至急にこれらの千個の遺骨を中国にお届けするような措置を講じて頂きたいと思いますが、これについて御異議ありませんか。
  102. 中川融

    説明員中川融君) その問題につきましては、新らしい問題として関係当局即ち外務省のみならず厚生省等があるわけでありますが、更にこれを実施するとすれば、経費もかかるので、大蔵省等と協議した上で態度を決したい、かように考えております。
  103. 上條愛一

    委員長上條愛一君) 如何でございましようか、厚生委員会としては千個の遺骨がすでに準備されておることでありますから、今アジア局長のおつしやるようにいろいろ関係当局と御相談の上で、至急にこの送還の手続をとつて頂きたいということを希望してこの問題を打切つたらどうかと思いますが……。
  104. 山下義信

    山下義信君 異議はありませんが、今のアジア局長関係の厚生省やその他といろいろ相談してみたいと、前のことはまあ前任者のことで、中川さん御承知でないと思うので御尤もだと思うが、いろいろ関係調査して頂いて、政府のほうは政府のほうでいろいろ研究して頂きたい。同時にそれぞれ御要望なさつたんですが同時に委員会もこの問題を一つ我々も十分調査して、今お話も出ましたが、中国遺骨送還委員会で、大谷君のやつていたあの委員会ですね。であのときの主要メンーの人もだんだん引揚げて帰つた人もあるでしようし、あの委員会はどういう現状になつておるか私は実は未知なんですが、最近の委員会の組織や構成等も……。でこの委員会自体もこれをどう御協力申上げるか、どう御尽力したらいいかということを委員会自体も私は検討する必要があろうと思うのです。政府のほうも関係者で一つ研究おきを願つて、我々もどういう手で御尽力を申上げることができるか、何か方法があるかどうか、政府と十分連絡の上で、これは厚生委員会の当然の仕事であるから引揚特別委員会がなくなつちやつて、こつちへ仕事が来ている以上は、これは委員会自体の仕事であるから、一応この質疑応答だけで済んだということでなしに、これは一つ委員会自体の持分の仕事としてこの問題に対する対策を委員会検討して行くということに一つして置いて頂ければいいのじやないかと思うのです。我々も一つ勉強したいと思いますので、そういことにきめて置いて頂きたい、如何でしようか。
  105. 湯山勇

    ○湯山勇君 もう一つ、幸い関係当局の一人である厚生大臣がお見えになつておりますから、今外務省だけの御見解を伺つたのでありますが、厚生大臣の御見解もここで一つ承わつておきたいと思いますが、大臣から一つお願いいたします。
  106. 草葉隆圓

    ○国務大臣(草葉隆圓君) これは今さつき外務省アジア局長からもお話がありましたし、従来私ども厚生省におきましてもいろいろ御関係を申上げておつたふしもございますし、従つて山下委員からも只今お話もありましたので、この委員会としても御検討を頂き、私どももこれらの点をいろいろな点からして一つ検討する必要がありはしないか、それでその点お進めを頂くといいのじやないか。
  107. 山下義信

    山下義信君 政府のほうもそういうお考えでありましたならばこの問題も委員会としての処置の仕方は、委員長理事会で一つ検討を下さつて、要すれば小委員会でもお設けになつてもいいと思いますので、一つ理事会で御検討下さるようにお願いいたしたいと思います。お預けしておきます。
  108. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは今山下委員からの御提案がありましたように、政府当局としては政府当局として可急的速かに送還の方法等についての御研究を願つて処置を願う。それから委員会といたしましては理事会でよく検討を加えて対策を講じで行くことにしたいと思います。それでよろしうございますか。
  109. 藤原道子

    藤原道子君 それで私は異議ございませんが、それと合せて外務当局に一つ私注文があるのですが、これは実は私ども中国のこの遺骨はすでに千体以上は準備されているにもかかわらず、いろいろな点に難色があるようでありますが、私先年外務大臣に日本の遺骨が南方に実に悲しい状態になつたままでまだ放置されている。私参りましたときに犬の遊び場所になつている。戦犯の墓所などはもう今に遺骨がなくなるのじやないかというような怪し気なところにいけられたままになつておる。これらに対して何とか手を打つ方法はないのかということを私外務大臣に質したことあるのです。そのときに何とか早急に手を打ちたいと思う、いろいろ外交上の問題もございますので、その点も是非早急に遺族の人の御安心の行くように処置したいと思いますという言葉があつたのでございます。ところがその後何らまだお答えに接していないのでございますが、そうした問題もどのように調査され、或いは交渉等がどのように進んでいるかということを一つ調査になつておいて、後日委員会へ御報告を願いたいと、外務当局にお願いいたします。
  110. 中川融

    説明員中川融君) 只今御質問の点につきましては、我々も非常に重大に考えており、いろいろ努力いたしおります。最近におきましては例えばシンガポール、或いはマレー半島、或いは英領のニューギニヤその他或いは豪州の地域のいろいろ島がありますが、さようなところ、これらについては相当話が進みまして、どういうところに日本人の墓地がある、戦没者の墓地とか或いはお骨が安置してあるというようなことも大体調査ができまして、その調査に基きまして配船計画その他、これは厚生省のほうで御準備になつて現地と折衝をやつております。なお、例えばフリイピン或いはビルマ等、いわゆる非常なジャングルの奥地のほう、山の奥のほうにまだ日本人の遺骨がたくさんあるのじやないかということがあるのであります。これらの地域については、現地の治安等の関係から調査もなかなか思うようにできませんので、これらのほうは遅れておりますが、治安の比較的に確立しております英領地域につきましては、相当話が進んでおりまして、今年中には何とか措置ができる。船が配船できるような運びになるのではないかと思つております。  なお、只今御注文の資料等につきましては厚生省とも連絡をいたしまして、至急お届けいたします。
  111. 藤原道子

    藤原道子君 これで終りますが、日本の遺族がやはり日本人の遺骨を待ちこがれておりますと同じに、中国の人々もそうであろうと思いますので、そういうような意味をも含めて是非外務省考え方が好転することを、私心から期待いたしまして今日はこれだけ……。
  112. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは遺骨送還の問題は、以上の決定を以て打切りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは十分間休憩いたしまして、今後の議題の進め方について御相談を願いたいと思いますが、よろしゆうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 上條愛一

    委員長上條愛一君) それでは暫時休憩いたします。    午後三時五十四分休憩    〔休憩後開会に至らなかつた