○
政府委員(渋江操一君) それでは仮換地の指定の概略につきまして申上げたいと思います。
換地は、前節につきまして御
審議願いましたように、
一つの換地計画を固めまして、それを換地処分に移すということで
区画整理の最終目的が達せられるわけでございますが、併しこの換地処分なるものは、施工地区内の甲乙丙丁と各地区に分れたそれぞれの
土地につきまして、換地を一挙に同時に行うということは、これは到底不可能でありまして、そういう
意味からいたしまして、本来の換地処分に移行する準備
段階といたしまして、換地の予定地、或いはこの
法案におきましては仮換地という制度を設けまして、そこに一応旧
土地所有者の
権利、所有権乃至
借地権を移すという
方法をとりまして、その
方法といたしましては、甲の
土地所有者を乙の仮換地に指定する。そして甲の
土地のあいたところへ持
つて来て丙の
土地所有者を次に移す。こうい
つたように順次換地予定地を設けることによ
つて最終的に全体の換地処分に結末を付ける。こういう
方法を手法として
考えました。これは何も今回の
法律が新しく
考え出したわけではありません。従前の
土地区画整理事業におきましても、例えば都市計画法の十三条に基きまして換地予定地制度を設けておりますが、これも同じ趣意であります。そういう
方法において仮換地制度を新しく今回の
土地区画整理法案にも盛り込んだわけであります。そこで今の趣意を達成するための手続きを第三節には掲げたわけであります。
先ず第一に九十八条でございますが、九十八条に仮換地の指定をする条件を第一項に掲げたのであります。即ち換地処分を行う以前におきまして仮換地を指定することができる。これは先ほど申上げましたように、仮換地指定制度が換地処分を最終的に行う
一つの準備的措置であるという
意味であります。前におきまして、目的といたしましてここに二つそれを掲げたのでございます。その
一つに
土地の区画形質の変更、それから
公共施設の新設、変更に係る
工事のため必要がある場合、即ち
土地区画整理事業の
方法といたしまして、
土地の区画を整理いたしますとか、或いは盛土等によりまして宅地の整理を行いますとか、そうい
つた工事も必要がある場合もございます。それから
公共施設に関する
工事を行う必要がある場合もございます。こうい
つたような場合におきまする必要があります場合と、それから「又は」以下の分は第二段の条件でありますが、「換地計画に基き換地処分を行うため必要がある場合」、即ち換地計画本来の目的に即応いたしまして換地処分を行う必要があると認めた場合、こういう二段の条件を
考えております。こういう場合におきましては仮換地の指定を
施行者はすることができるということを
規定いたしたわけであります。
それから第二項におきましては、換地計画において取上げております
事項或いは「換地計画の決定の基準、」これらはやはり仮換地の指定の際にも当然に考慮して行われるということを
規定しておるわけであります。この際の「換地計画の決定の基準」と申しますのは、前に換地計画の際に御
説明申上げましたような八十九条「換地」の
一つの原則といたしまして、換地の基準といたしましては、「従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用
状況、環境等」に即応して、従来の宅地と新しい宅地との換地
方法を定めなければならないというのでありますが、かような換地の原則、或いは九十一条に
規定いたしております過小宅地の際の換地
方法の
一つの特例、更に九十三条の立体換地方式、或いは九十五条の特別な施設に対する換地の方式の特例、こういうような換地計画の際に考慮せらるべきそれぞれの基準を、この仮換地指定の際においても同様にこれにならいましてやはり仮換地の指定をしなければいけないということを
規定しておるわけであります。その趣意は先ほど申しましたように、仮換地の指定と申しましても、これは換地処分に最終的に移行する
一つの手法でございますので、そうい
つた点からいたしまして、仮換地の指定の効果は最終的には換地処分の効果に繋がるわけでありまして、そういう点からいたしまして、換地計画全体に対して定められた基準というものは、併せて仮換地の指定の際にも取入れなければならないということにいたしておるわけであります。
それから「仮換地の指定の効果」でありますが、仮換地の指定の効果といたしましては、先ず九十九条の第一項に掲げてございますように、換地指定の効力の発生の日、これはそれぞれ仮換地の指定の際に、新しい換地の
土地使用者、それから旧来の
土地の使用者に対しまするそれぞれの通知によ
つて、この効力発生の日をきめるわけでありますが、そういう指定の効力の発生の目というものから最終的な換地処分の効力確定に至る目の間までは、従前の
土地の使用収益権者は、同じ使用収益権の
内容を持
つた権利を新しい仮換地の上に行使することができる、こういうことを先ず効果の第一に
規定いたしてあります。それと同時に、従来の宅地における使用収益権というものは行使することができない。これは当然であろうと思います。使用収益権の働きというものが、従前の
土地から新しい仮換地を指定された
土地に移る、こういう指定の効果が出て来るということを第一項に
規定いたしておるわけであります。
第二項はその特例でありまして、
施行者において、特に仮換地にいきなり使用収益権を働かせようと思
つても、実際上障害物件が存します場合等におきましては、これを除去して後に使用収益させるということにする必要がありますので、それに対しましては
施行者が開始できる日を別に定めまして通知をし、その使用収益の効力発生の日をきめるということにいたしておるのであります。
それから第三項におきましては、これは今申しました仮換地に使用収益権を持
つております者は、その指定の日乃至は効力発生の日から当然仮換地の上に使用収益権というものはそこで停止をする、これは当然のことでありますが、それを明確に謳
つてあるわけであります。これが仮換地指定の効果の一駒に相当するわけであります。従前の
土地の使用収益権というものは仮換地の上に移り、従来の使用収益権というものは従来の
土地の上にはもう働かない。それから新換地の上の前からの
権利者というものは使用収益権を行使することはできない。こういう一駒の仮換地の指定の効果というものを順次繰返すことによ
つて、仮換地の指定が最終的には換地処分の全体に及ぶ。こういうことを
規定いたしておるわけであります。
第百条でございますが、百条は仮換地方式に移行することができない
権利者の
取扱いをきめておるわけであります。即ち換地計画において換地を定めない宅地の
所有者につきましては、これは新しい換地の指定が当然ございません。
従つて換地の指定も当然その結果としては出て来ないことになりますので、それらに対する宅地
所有者に対する措置といたしましては、従来の
土地の使用収益権は、これは
施行者が一定の期日を定めまして、その期日から使用収益を停止させるということによ
つて権利者の
権利行使を一応ストツプするということを
規定をいたしておるのであります。勿論、使用収益をストップして、従前の
土地に行使してお
つたと同様の
権利内容のものを使用収益すべき新しい換地を与えられないのでございますから、これらにつきましては当然これに対しまして相当の期間を置いて通知をするという措置をきめておるわけでございます。
第二項は、さような
施行者の権限に基きまして停止措置を講じた場合の効果であります。これは当然その効果といたしまして、今の
施行者の通知を受けた以後におきましては、その期日以後使用収益を行うことができないということを
法律の上で明定いたしまして、
権利の行使を停止する。こういうことをこの
施行者の権限行便の効果として明記いたしておるわけであります。
それから第百一条、これは仮換地の指定等に伴う補償措置でございます。通常、仮換地の指定は、順次
只今申上げましたような
方法によ
つて行われます結果といたしまして、新しい仮換地の使用、仮換地の目的地の使用収益の開始のできるのを待
つて指定を行う。それから、これによ
つて従来の
土地の使用収益権を停止させるというのが通常の原則であります。併しこの切替が今申上げましたような時間的なズレが生じない形で行われる場合もございますし、その間に時間的ズレを生ずることが起る場合が想定されるわけでありまして、その時間的にもズレが生ずる場合に対しましての補償を先ず解決しなければいけないということを百一条の第一項に
規定いたしておるわけであります。先ほど申上げましたように、九十九条の第二項と申しますのは、障害物等が仮換地にあ
つた場合に、それを除去した上で初めて指定の効果として使用収益権を働かすというふうなことによりまして、従前の宅地についての使用収益権は一応
施行者から指定の結果としましてストツプされたにかかわらず、新換地に対する使用収益権の行使は障害物が除去されるまでの間というものは行使することがで)」ない、かようなことに相成
つた場合におきましては、その損失を受けた者に対しての補償をしなければならない、こういうことを
規定いたしておるのであります。
それから第二項は、九十九条の第三項、即ち仮換地の使用収益ができなく
なつたという結果といたしまして、これは当然仮換地に対しての指定を受けた結果といたしまして、
権利行使ができなくなる、これに対しては当然その損失を補償しなければいけない。尤もこれは、仮換地の
所有者或いは使用収益権者が、通例の場合においては、先ほど申上げたようにストツプされる、又それに対応いたしまして新しい換地指定があるという結果になるのが予想されるわけでありますが、そういう通常の予想される例をとらずして、相当の期間、
権利行使ができなく
なつたということに対しての損失補償の
規定でございます。それを第二項は
規定いたしておるのでございます。
それから第三項は、新しい換地を与えられない
権利者に対する使用収益を停止するという
方法を百条に
規定いたしてございますが、その
施行者の使用収益の停止通知、この結果として使用収益権を働かせることができなく
なつた、こういう場合に対する
権利者に対する補償措置であります。
四項、五項は、これらの補償金額の裁定方式、或いは補償金の供託
方法によ
つて債権者の保護の措置をとるという前々の
規定をそれぞれ準用する
規定でございます。
それから百二条は仮清算金の徴収交付の
規定でございます。先ほど申上げましたように、九十八条による仮換地の指定をした場合、或いは百条によりまして
施行者が使用収益権を停止をされた場合につきましては、本来、換地処分が全部完了した後において清算金をそれぞれ交付いたします。九十四条と申しますのは、本来の清算金の算出
方法を
規定いたしておるわけでありますが、この本来の清算金の算出
方法の例にならいまして、最終的な清算金の交付の
段階に至る事前におきまして仮清算金を交付することができるということを
規定したわけでありまして、これは仮換地指定制度をできるだけ早く片付けて、本換地の結果としての最終
段階の時期を待つことなく、
権利の確定、それによる清算金の処分というものをそれぞれ中間
段階においても考慮できるということを
規定いたしたわけであります。
これらの仮換地の指定制度、それから
只今各条につきまして申上げた制度は、大体従来の換地予定制度を特別都市計画法において現在の
土地区画整理事業の上に実行いたしております。これをそれぞれこの新しい法文の体裁の上に現わしまして、実際と
法律のほうの手続とを併せたような配慮を払
つたつもりでございます。