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説明員(
渋江操一君) それではお手許にお配りいたしております要綱案の内容について御
説明を申上げます。
その前にお断わり申上げておかなければならんと思いますが、電源開先或いは公共事業の、殊にダム用地の取得に伴います補償問題、これは前々からいろいろの形におきまして問題にな
つておりますし、又国会等に対しても各方面からのこれに対する
対策の要望、陳情等もあられる
ように聞いております。殊に一昨年来、か
ような諸情勢に対応いたしまして御
承知の
ような電源開発に伴う補償基準要綱というものを一方に
政府といたしまして閣議決定をいたしました。それからなお、これとの
関係におきまして
建設省所管の公共事業につきましては、公共事業用地の補償基準要綱というものを、これ又
建設省の内部の訓令といたしまして、それぞれ工事機関であります出先、或いは補償工事をや
つております都道府県に対しまして、この基準の指示をいたしまして、いわゆる補償基準の適正化といいますか、もぐはぐな形にならない
ようにいたしまして適正な補償が行われる
ような
手当てをいたして実は今日に至
つたわけでございます。併し現状から申しますと、まだまだこの補償問題は制度的にも運営の面でも相当これに対する改善
措置を講じなければいかん段階に相成
つておるというふうに私
どもは見ております。さ
ような点からいたしましてこれに対する
考え方を一応まとめてみたわけでございます。
要綱の内容は、三段に分けて掲げております。第一が、この収用法の改正の
措置であります。第二段の
措置が補償基準に関する法制化の問題でございます。それから第三段が被補償者と生活再建に対する援護
措置の問題でございます。こういうふうな三段階に分けまして
対策を立てておるのでございます。
先ず第一の収用法の改正の
措置でございますが、収用法の改正につきましては、
一つは、手続の簡素化を図
つて、できるだけ収用権の発動を手軽に簡易な形で事業者が活用して行くということを
考えて参りたい、か
ような観点に立
つての改正を
考えておるのが
一つと、それからもう
一つは、この補償審査の機構を、現状から或る
程度やはり不備を補い、権威あるこの補償の
措置を
考えて行きたいというのが第二点、この二つを収用法の改正問題として取り上げておるのでございます。先ず第一段の、簡素化の
方法でございますが、その
一つといたしまして、ここに協議の省略ということを掲げてございます。御
承知の
ように、当
委員会で先般土地収用法の改正を御審議願
つたわけでございますが、その際斡旋制度というものを、この収用手続の一部といたしまして規定をして頂いたわけでございます。か
ような斡旋制度は、実際は当事者協議の
一つの延長、これに対して第三者が入りまして当事者協議をいたす、
一つの当事者協議の一体系でございますので、これからいたしまして、この斡旋から更に収用法の本来の形であります土地細目の公告、収用
委員会の裁決という段階に持ち込みます
方法といたしまして、もう一遍斡旋は行われて不調に終
つたけれ
ども、更に当事者協議を別に重ねるかということにな
つて参りますと、事実上これは無意義なことで、無意義と申しますか、斡旋の段階ですでに当事者協議が行われたわけでございますから、その
関係におきましてこの斡旋を行
なつた場合においては、起業者は当事者協議という手続を省略することができるということを規定いたしたいと
考えたわけでございます。
それから手数料の問題、これは現在の手数料がたしか一万円以下という
ような形できめられております。実際におきましては、かなりこの補償の審査に対しましては、適正な補償をいたそうとすればするほど、
現地の
調査その他にかなりの費用負担がかか
つて参ることが当然想像せられますので、か
ような
関係からいたしまして、この収用
委員会の裁決、或いは事業認定、か
ような場合におきまする手数料というものを引上げて行きたいというふうに
考えているのでございます。
それから三から六までの間でございますが、これは中央
委員会という収用審査機構を
一つ新しく設置いたして参りたい、か
ような
考え方でございます。現在の収用審査の機構といたしましては、都道府県単位に都道府県収用
委員会というものが現在の収用法で置かれております。置かれておりますが、御
承知の
ような現在の補償問題の重点は必ずしも地方問題に限定された問題ばかりではございません。むしろ電源開発或いはダムの
建設とい
つたような大規模な事業にな
つて参りますと、どうしてもこれは中央の問題にな
つて参
つております。で、さ
ような
関係もございますし、それから収用の補償審査の権威そのものを確立する意味からいたしましても、これは中央機構というものをやはり確立することが必要であるというふうにも
考えますので、ここに掲げてございます
ような都道府県単位の収用
委員会のほかに中央
委員会というものを別に設けまして、この権限といたしましては、五に書いてございます
ように、地方審査の代審機関といたしまして作りたい、か
ように
考えているのでございます。
それからもう
一つの問題は、現在ございます都道府県単位の収用
委員会の
委員の人選でございますが、この
委員会の公正な審査を保障するためには、やはり
委員の人選の肝要なことは勿論でございますが、ともいたしますと、地方的な利害に左右されて審査が行われるのじやないかという懸念が、起業者といたしましてこういう収用法の活用、審査を求める上においての非常な不安を持つ
一つの原因にな
つております。さ
ような
関係からいたしまして、この
委員の任命は、やはりこれを
建設大臣の承認の上で公正な任命
方法にあ
つてほしい、か
ようなことを
考えまして、現在地方の都道府県単位の収用
委員会の
委員の任命は、知事が府県議会の承認を得て任命する
建前にな
つておりますが、それに更に加えまして
建設大臣の承認を受けて任命すると、こういう
建前にいたすことが、今申上げました
ような
目的にも副うのじやないかという
考え方でこの改正を
考えているわけでございます。
以上が収用法の手続の改正上におきます問題点でございます。
それから第二部の問題がこの損失補償の基準に関する問題でございます。ここに十三項に分けましてその内容を掲げておりますが、この一部はすでに現在の原則的なものは、収用法の現行法におきまして確立をされております。併し収用法に現在規定されて確立されております原則で、足らざる部分がかなりございまして、これが現在現状において行われている収用補償の上でも、或いは
先ほど申上げました閣議決定にな
つております電源開発に伴う補償基準要綱の内容におきましても、或いは
建設省の立てております公共事業の補償基準要綱の場合にも、その内容を一部出しておるのでございますが、さ
ような
関係がやはり立法化されて、これが補償審査の
一つの物差にな
つて行くという
建前であることが、いわゆる補償を作為的に、いろいろな力
関係によ
つて補償の額を左右して行くという
ようなことを避ける上において、非常に肝要な点ではないかというふうに
考えておりますので、さ
ような点からいたしまして、補償基準の内容というものをできるだけ立法化いたしましてこれによ
つて補償の物差を適正な形に持
つて行くという形にしたいという
考え方でございます。
内容から申上げますと、五、六、七と、それぞれ土地の補償、物件の補償、権利の補償ということが規定されております。これは大体現在の原則的なものは、土地収用法の中におきましても、土地所有者のこうむる通常受くべき損失補償の内容といたしまして、殊に近隣地の土地価格等を参酌して補償額をきめるという規定からいたしまして、同様な原則が立てられておるわけでございますが、更にこれを巨細に宅地等の土地の場合、或いは物件、立木、
建物の場合、それから地上権、永小作権、採石権等、土地等に
関係いたしております諸権利の補償額等に対しまして、それぞれ詳細に規定をいたして参りたいというふうに
考えておるのでございます。
それから替地補償でございますが、この替地補償も、現在は土地収用法の中に規定を一部出しております。ただ現物補償、金銭補償に代る替地補償制度は、
一つの
制約を実は現在の収用法は規定いたしております。野放しな替地補償の請求権というものを必ずしも認めておりません。おりませんが、現状から参りますと、かなり金銭補償によるよりも、土地そのものの補償、現物の補償というものを、補償の場合には強く要求される
ようなのが現状でございますので、の点におきまして土地収用法の現在の
制約は、相当これは緩和して、請求権の範囲を拡めて行く必要があるのではないかというふうに
考えて、この規定を置きたいというふうに
考えております。
通常受ける損失の補償につきましては、ここに書いてあるところで、
説明を省略さして頂きます。
そのほかの新しい補償基準として附け加わります部分をなお申上げますと、慰藉料でございますが、慰藉料はここに書いてございます
ような精神上の損失に対する補償という観点に立
つて規定いたしておるわけであります。御
承知の
ような水没地の、永年住みなれた土地を離れるという
関係におきまして、ただ土地価格を補償するというだけではございませんで、その当事者の精神的な苦痛、そうい
つたようなもりを成る
程度補償するのが現状でございます。これをやはり慰藉料という形において起業者として補償
措置を行な
つておりますが、これらの点につきましても、現在の収用法では、いわゆる通働受ける損失の補償というので、慰藉料等はこれは収用
委員会の裁決の対象としての
一つの物差には必ずしもなり得ないのではないかと
考えておりますが、これらにつきましても新しい規定を作りたいというわけでございます。
特別生業補償、これも現状から通常受ける損失補償の内容としてやや疑問を持たれておる問題でございます。さ
ような
関係からいたしまして、ここにございます
ような山菜の採取、鳥獣の捕獲、か
ようなダム用地で
考えられ得る、或いは通常公共事業、公共
施設を行う用地の場合に
考えられ得るか
ような生業上の利益、か
ようなものを失
つた場合の補償
措置、これも新しく規定をいたしたい。
それから次の少数残存者補償でございますが、御
承知の
ように、殊にダム用地の場合でございますと、部落の大部分が水没地にな
つて、部落の少数者が
現地にとどまらなければならないという場合におきましては、これを補償する基準は、現在のところ、土地収用法に規定をいたしております通常受ける損失の補償、損失の補償内容となり得るかどうか、これも
一つの疑問を持たれておるところでございます。これはか
ような場合が或いは一種の営業上の損失補償にならない場合もございまし
よう。併しさ
ような
関係でなくて、少数残存者のいわゆる部落維持のたカ、或いは生業維持のための負担か、そのために非常に影響をこうむるという場合も
考えられますので、さ
ような場合における損失を補償して参りたい、か
ように
考えておるのでございます。
買収価格の基準の問題でございますが、これは
考え方といたしましては、収旧法の果して損失補償の基準の内容の一部として取上げてよろしい問題であるかどうか、やや問題点でございます。ここに原則を掲げました理由は、地方
公共団体、国の場合におきましても、或いは地方
公共団体、或いは電源開発等の場合におきましても、その収用地
資金そのものは、
国家資金或いは
財政資金をそれぞれ投入いたして土地を確保いたしておるわけでございまして、いわばその価格が
一つの適正な基準で買上げられるということは、この
国家資金あり
財政資金を使
つて起業をやる場合の当然の
措置ではないか、つまりこれは営業上の採算を上台とした会社
資金、産業
資金等をただ使
つて土地を取得する場合とやや趣きを異にするという
ように
考えておりますので、さ
ような点からこの買収価格の基準というものを
法律的な津前で、補償精進の土地価杯或いは物件価格、権利価格等というものを参酌いたしまして、一方にこの基準を確立する必要が、延いては補償基準を適正な形にする
一つの手段ではないかという工うにも
考えられます。さ
ような
関係からこの買収価格基準に対する法制化の
措置、これらう併せて
考える必要があるというふうに
考えられまして、ここに掲げてあるのでございます。尤もこれは収唱法或いは損失補償基準に関する
法律として掲ぐベキか、或いは会計法、
一つの経理法規の内容として掲ぐべきか、そこには問題点が残
つておるというふうに
考えております。
第三部は被補償者の生活再建の援護
措置に関する規定でございます。大体の
考え方は、
只今申上げました
ような適正な損失は補償するという形になりますけれ
ども、併し生活基盤というものは被補償者の場合に非常な変化を起すということがときによ
つて考えられるわけでありまして、さ
ような生業の
方法手段、或いは生業の条件が非常に変化しなければならない、変更を余儀なくされたという場合を、これは或る
程度条件を法令で規定いたしまして、さ
ような条件に適合しておる場合におきましては、この被補償者のそれぞれ申請等によりまして生業
資金を貸付けるという
措置をとりたいというふうに
考えておるのであります。か
ような意味合いにおきまして、
融資条件もここに掲げてございますが、そのほかに
資金を如何なる形で運営するかという意味におきまして、第二として特別会計を設けて、この
資金を都道府県に、それぞれ直接被補償者に貸付けるか、或いは
公共団体等を通じまして転貸する
方法をとるか、これはまだはつ青りはいたしておりませんが、いずれにいたしましても、そういう特別会計によ
つてごの
資金運営を図
つて行きたいというふうに
考えます。大体これらの
資金がどのくらい要るかということも、およその見当はつけてれ現存
予算上の
措置の点まで或る
程度考えております。ここに掲げましたのは、それの手段といたしましての法制化或いは特別会計の設置という問題を掲げたわけでございます。
それからそれに伴います
方法といたしまして営農指導ということを四に掲げたのでございます。
資金貸付に伴いまして、それと裏はらをなしまして営農指導の
措置を
考えて行
つたならばどうか。
それから公共
施設の費用負担でございますが、これも現在の補償の上でやや欠けておる点と申しますか、盲点にな
つておることの
一つでございまして、この移住を余儀なくされた者が新しい村を作る、さ
ような
関係におきます場合におきます公共
施設の設置、改良、これらに対しては、現在は
予算上の裁量に任されておるわけでございますが、事実問題といたしまして、これはやはり一種の公共事業の施行に伴う犠牲者の
手当といたしまして必要ある
手当をしなければならない
措置であるというふうに
考えておるので、その点を規定しておるのでございます。
それから替地の収用、替地の収用は現在のところ、公共事業用地そのものを取得するについては収用権を認められております。併しその公共事業用地の替地たるべきものに新しく収用権が発動できるかということにな
つて参りますと、この点は
先ほど申上げました
ように、現行土地収用法では、
一つの請求権をただ認めておるだけでございまして、その請求を受けました起業者がそれを土台といたしまして収用権を持つということは
考えられておりません。それに対しましてこの要綱の
考え方は、
建設大臣の認可を得まして一定の条件に適合しておる場合におきましては、土地収用法上の事業認定、従
つてそれに伴う収用権というものを認めて行こう、こういうところまで替地補償の
方法を徹底する
一つの手段として、か
ような点まで規定をして
考えたならばどうか、こういうふうに
考えておるのであります。
七、八は、これは現在町村の合併促進法等にも規定がございますが、集団移住の場合の、或いはその他必要な場合におきまして、か
ような犠牲者に対する特別な援護
措置というものを国、
公共団体の権限の範囲内におきましてなし得ることを更に附け加えまして、か
ような補償の完璧を期することにしたらばどうかというふうに
考えておるのでございます。
以上がこの要綱の概要でございます。いずれにいたしましても現在補償問題がつかえておるために、公共事業の促進そのものが非常に停滞しておるという現状でございまして、さ
ような点からいたしまして、か
ような制度を是非
考えて行く必要があるのではないかというふうに
考えております。