○
平林太一君
昭和二十六
年度一般会計歳入歳出決算、
昭和二十六
年度特別会計歳入歳出決算、
昭和二十六
年度政府関係機関決算報告書、以上三件に対してこれを
承認し難きことを表明いたすものであります。
その
理由といたしましては、すでに二十回内外における
決算審議の実情に徴しまして極めて事理明白なることが、事実として今日までの
委員会の経過に徴しまして明確に相成
つておることが、第一の
理由としてこれを申上げるものであります。二十六
年度における
会計検査院の批難し、
指摘し、
不当事項として挙げられておるものは千百八十一件の多数に上
つておりますることは、申すまでもないことであります。これらの事実に対しまして、過ま
つて改むるに憚ることなかれという
行為が、この千百八十一件の間に現われておりますれば、更に
考慮すべき余地もあり得るのでありますが、この点が全然現われておりません。それどころではない。過去
昭和二十二年以来の経路を見ましても、累年この
事件が増大をいたしておる、この厳粛なる事実であります。
会計検査院の
検査状況は、今日までの
審議の状況に徴しまして、その全部に亘る三分の一内外しか、今日
会計検査院の持
つております
予算又人事、その機能というものしかできていないという事実であります。にもかかわらず、かような多数の
事件を発生いたしておるということは、当然潜在しておりまする
ところの不正不当或いは批難すべき
事件というものが想像せられて余りある次第である。かようなことを
承認するということは、これは最後における当否の問題を批判する地位におる
国会の最終的な地位といたしまして、如何にも明白なる事柄として、これを
承認するというがごときことは、ことさらに私自身といたしましては、良心に違背する
行為をいたすということに相成るのであります。かような事柄に対しまして、近年議院
内閣制下における政党
内閣の綱紀の弛緩、綱紀の紊乱というものが漸く表に現われて参りましたが、そういう事柄は、私はいわゆる政党
内閣がその力を私して、力を濫用して、そして政治を私しておる。政治を濫用する、以てその政治の公正を阻害して、政治の公正というものを破壊して、国家に害毒を流す。これは綱紀弛緩、綱紀紊乱の姿であり、実態であることは申すまでもないのでありますが、そういう政党
内閣下におけるこの
行為が、近年露骨に国家行政の
機関に滲潤して来たというこの事実であります。これは
予算におきまして、一兆億円内外の
予算、その他財政投資におきましては三千億円内外の
予算、そういうような厖大な
予算というものを
執行する行政
機関に、これが滲潤して来たということになりますと、これは容易ならざることでありまして、漫然としてこれを
承認するというがごとき惰性的の
行為を続けておりますならば、当然行政
機関の一角から国家は不測の災いをここから発生せしめ、遂にこの悔を百年の後にいたさなければならないというような
事態に立至ることが深く憂慮される次第であります。
承認をすること、しないこと、それが及ぼす反響、影響というものが、当事者に対しては、私自身といたしましては、本日は
政府の
関係要路の諸君がそれぞれ御
出席に相成
つておりまするが、私はこれを
承認しないということが
政府要路の諸君に対する慈悲、大愛であるということを、この際申上げるのであります。これを
承認すればどうなるか。いわゆる惰性、習慣というものほど恐るべきものはない。かくて弊中に座して弊を知らず。個人としては極めて良識ある立派な諸君だと思います。併し習慣、惰性の下に国家の
予算を
執行するに当りまして、
一つの集団、
一つのいわゆる形の上におきまして行われるということになりますと、そのことをみずから気ずかざることもありましよう。又気ずいても一人を以てさようなことを改めるわけにはいかない。そういう間に救うべからざる
事態に立至る、現に今回の造船疑獄
事件に対しましても、運輸省の或る極めて良心的な官吏が階上からみずから身を地底に投じて自殺をいたしたという
行為、この本人の平生の執務の状況、人柄というものを見ますれば、誠に立派な人であつた、良心的な人であつたということが、今日それぞれの報道を通じまして全
国民の非常な同情を買
つておる次第であります。むしろその人格に対しては崇高の気持をさえ起すというようなことすら私は感ぜざるを得ない。併しこういう
事態に立至つたということは、取りもなおさずこの
機構の中において、いわゆる習慣惰性においてそういうことが改められなかつたということが、この悲惨な事実を生んだのであります。でありまするから、私はこの際これを
承認いたさない。私が無所属クラブを代表いたしましてここで申上げるわけでありまするが、せめてものこの気持を
政府の要路諸君は
国会の意思として、又私は恐らくこれは良心的な全
国民の、而も素直な従順な
政府の
関係諸君に対する心持であるということを信じて疑わざるものでございます。どうぞ
一つ大過なく——国家の官吏というものは昔から実に立派ないわゆる教えがある。大過なく職責を全うした、二十年、三十年の年月を大過なく全うするということは、これは人生の記録といたしまして、私は容易ならざることである。同時にこのぐらい崇高、偉大なことはない。何ぞ次官、大臣を以て偉えしとするか。局長にな
つて偉らいということではない。大過なく職責を、三十年の官吏生活を全するということが、これが一番大事であると思うのであります。でありまするから、国家の
制度といたしましても、大過なからしめるために、
会計検査院が厳然たる独立の地位におきましてこの会計監査のことに当る、そしてひたすら爾後の不正不当
行為の起らざることを前提としてこの
行為が行われるということを御承知願いたいと思います。そういう意味におきまして、甚だ遺憾ではありまするが、二十六
年度の
決算に対しましては、これを
承認しない。
承認しないということは、是非、それによ
つて承認したことよりも、
関係官吏諸君の良心の反省というものがそれによ
つて強くこれが躍動せられて、そして爾後そういうことをしない、そういうことを未然に防止、或いは絶無ならしめるということによ
つて、大過なき官界の御職務を果すことができるのである。そういうことを私はひたすら期待して、この
決算に
承認をいたさないということを御了承を願いたいのであります。徒らに私はかような
決算の問題に対しまして何か政争、野党与党というような問題ではありません。一切のこれはものことをそういう問題に対しましては超越をいたしまして、ひたすらに官吏諸君の無事安泰を希う。その官吏諸君の
行為が無事安泰であるときにおいて、国家の行政業務がやはり正常に行われる。正常に行われることによ
つて、国家の運命国運というものが、これが滞りなく諸般のことが取り運びにな
つて、そうして
国民ひとしくその所を得る。こういうことにこれは相成ること極めて明白であります。
私は以上の
理由によりまして本
審査に
承認をいたさないということを明らかにいたす。併しそのことは私自体といたしましては、少くともこれは
承認をいたすということよりも諸君を思うの情、誠に深いものがある。再び
官庁の階上から飛び降りるというような善良な官吏を出さしめざらんごとをひたすら希うが故に、このことを申上げるのであります。
以上の
理由によりまして本
決算に対しての
承認に対しては反対をいたすものであります。