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国務大臣(
石井光次郎君) お答えいたします。私は第九次の
前期、それから
後期に
亘つて、この
計画造船に参画をした
運輸省の
首脳部でありまするから、その
立場上、一応今の
お話に対して、少しく実際の
状況から
考えを申述べたいと思うのでありますが、第九次
造船をやる少し前から、というよりも、もう
一つもつと前から、即ち二十七年頃から
海運界というものがだんだん不況にな
つて来たのは御
承知の
通りでありまして、これに対しまして、一体
日本の
海運界を推持し、更に
日本の
海運を
増強して行くにはどうしたらいいかという問題が、痛切に
考えられるようにな
つて来たわけでございます。それで先ず第一の問題として、
日本の船の
増強をするという
方針を以て、これから
世界の
海運界において
日本が戦前第三位を占めてお
つた、まあそこまでは参らんにいたしましても、又その当時持
つておりました六百万トンでございますか、そのくらいな船まで還えらんでも、せめてこの
外国貿易の半分ぐらいな
程度を
日本の船で輸送し得るような
状態に先ず持
つて行く。次にはせめて七〇%ぐらいまでは
最後の、
最後といいますか、
目標として一応進んで行くというので、
運輸省は四カ年
海運の
増強計画というものを持
つたわけでございます。それによりまして、毎年三十万トンの
外航船を造る。これを四年間や
つて行きますれば、一応の
目標の線に近付くことができるとこいうので、
造船計画を立てたわけでございます。それで二十八年度におきましては、前と後と合せまして、約二十五万トンの
造船をやるということに
なつたわけでございまして、この
造船を引続き二十九年度も、私
どもは三十万トン行かんでも、それに近い数量の船をこしらえたいということを念願いたしてお
つたのでございまするが、今度
皆さんがたに御
審議を願
つておりまする
予算においては、約二十万トンぐらいな見当で
造船を続けてや
つて行きたいということで
予算を提出し、
衆議院の
協賛を得たわけで、
皆さんの御
審議をお願いする途中にあるわけでございます。で、船をこしらえるということそのものは、私は国策上私
どもの言うてお
つたことが
議会においても御承認を、昨年も今年度の
予算を作るときもお願いができ、今年度今御
審議中の
予算にも盛られて、すでに
衆議院の
協賛を得ました。
皆さんがたの御賛成も願えるのではないかと思
つておるのでございます。
ただこれに関連いたしましての
利子補給の問題でございます。これはこの前の
議会に提出されましたときに、御
承知のように参議院におきまして
予算委員会等においても
利子補給の度が過ぎはしないか。そうすると、スキャンダルが起る虞れがあるぞというような警告も承わ
つてお
つたのでございます。私
どもは
利子補給の度合いがいいか悪いかという問題になりますると、これは
世界的な
基準まで利子を下げてやらなければ、本当に競争がなかなかむずかしいという
考えの下に、三分五厘の線まで
開銀の利子を下げることの三派協定案に、私
どもは政府も結局賛成したのでございましたが、それが行われまして、そのことと、それから一方では
造船の上に鋼材の補給金のようなものが利子を下げるような形で行われましたために、
造船も幸いに本年はプラント輸出として海外からの
注文が非常に少か
つた状態が、又回復しまして、今年は十万トン強、或いは十二万トンぐらい二十八年度では
外国の
注文があるのじやないか。それと
日本の
造船と併せて
造船所もちやんと立
つて行くことができるという
状態を維持しておるわけでございます。これが私
どもの今までや
つて参りましたこと、又これから続けてお願いしようとしておる
予算の面に現われておる方向でございますが、これは十分に御
審議を願いましてそうして私
どもの意のあるところをおわかり願
つて、御賛成を願いたいのでございますが、
利子補給は本年度は
開銀が三分五厘、
市中銀行が五分というのが実際のものでありまして、来年度は政府のほうの
開銀に対する補給を減しまして、
両方とも五分ということにな
つておりますが、実質は
開銀の扱いによ
つて将来利益の上
つたときに払うという形で一分五厘を見送ることにな
つておりますので、結局実際の利子が
船会社の負担になる率は本年と同じような
状態にな
つておるわけでございます。この行き方は私は
日本の
海運の今の
世界の競争場裡に立
つて行く場合において、是非このくらいの
程度は続けて頂きたいということを念願しているものでございます。これが間違
つておりますれば、私の全
責任でございますが、私はこのくらいなことにして、そうして
世界の競争場裡に立
つて行く。そうして実際の外貨獲得が本年は漸くだんだん進んで参りまして、約二億ドルくらいな外貨の節約獲得に、なるような
状態まで参りました。併しまださつき申しまするように、貿易総量の四割何分くらいにしか、
日本と
外国との貿易の四割何分しかまだ
日本の船で扱
つていないのでございますから、どうかしてこの船の量をもう少し増しまして、もう少し外貨の獲得、それから流出を防ぐということに持
つて行きたいと思うのでございます。外貨外貨と申しまして、
外国の金をたくさん使
つてそれだけの値打ちがあるかというような御
質問も出るのでありまするが、私
どもの
考えといたしましては、戦前の外貨と戦後の外貨と申しまするか、船舶によ
つて、
海運によ
つて得まする外貨というものは非常に比重が変
つて来ていると思うのであります。戦前は貿易外の収入といたしましては、
外国における
日本の商社とその他興行の収益もあり、それらの人
たちの送金というものも非常に大きな部分を占めてお
つたと思うのでありまするが、今日において貿易がいつでも逆調を来たしておる。そうしてそれを補う貿易外の収入というものの一番大きなものは、そうして
はつきりと直ぐ船が就航すれば直ぐそれだけのものが現われて来るのは
海運でございまするから、この
海運というものを是非盛んにして行かなければならん、こういうふうに思
つておるのでございます。
この頃問題にな
つておりまする
海運の不祥
事件は、本件のこの船を多くするという、それから
海運を助長して行くという線からは離れておると思うのでございます。私はどういうふうなところまで行
つて、どういうものが出て来るか、
はつきり
承知いたしませんが、伝えられるようなところから見ますると、これは本筋の仕事の欠陥では私はないと思うのでございます。それはもう
利子補給もなければ、それから政府の援助
計画造船というようなものの何にもない、野放しものであれば、そこにいろいろな問題は起らないということは確かでありますけれ
ども、起
つたそのものは、どこから由来するかということを
考えますると、起
つていることは誠にいやなことであると思うのでございますが、私
どものこの仕事をや
つて行く本筋だけは、別問題として、ぜひ
皆さんがたの御賛成を得てや
つて行きたい。私といたしましては、これに対しまして、ぜひこの
日本の
海運界をもう少し強力なものにするという線に一層努力をし、ここに何らかの疑惑が起り得るものであるとすれば、それをできるだけ少くするような
行政措置なり法的な
措置をとりましてそうして明朗な
海運界というものを回復させなければならない。これは私の重大な
責任だ、私がこれをやらなければならん、こういうふうに
考えておるわけでございます。