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1954-09-09 第19回国会 参議院 経済安定委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月九日(木曜日)    午後二時八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 政夫君    理事            岩沢 忠恭君            笹森 順造君            岡田 宗司君            八木 秀次君   説明員    経済審議庁次長 石原 武夫君    通商産業省企業   局企業第一課長  川出 千速君    通商産業省重工    業局製鉄課長  三井 太佶君    通商産業省石炭    局長      齋藤 正年君    運輸省海運局長 岡田 修一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本経済の安定と自立に関する調査  の件  (総合経済政策に関する件)   —————————————
  2. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それではこれから委員会を開会いたします。昨日来から引続いて本日は特に物価政策に関連して存じたいと思います。先ず経審のほうにお尋ねしますが、今政府が意識的に政策を集中して、特に特定の物資についてコストを下げる、こういうものは一体何と何とを狙つておるのか。いわゆる言われておるところは石灰、鉄ということが言われておる。そのほかにまだあるのか。その点について一応概括的なことを……。それから重点を置いて引下げを図らんとしておる物資について、本日は通産省公益事業局長が差支えて、石炭局長とそれから重工業局製鉄課長が出席されておりますが、石炭と鉄についてどういう政策を総合的に進めているのかという点について、先ず政府側説明を聞きたいと思います。
  3. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 只今お尋ねの、一般的の価格引下げについて、具体的にどういうものについて計画的に考えているかということのお尋ねでございましたが、現在までのところは、極く概括的に申しますると、昨年度、或いはその前からのいろいろな経済情勢のため、非常に国際的に割高になつているのを、ここ一両年物価引下げたいということでやつておりまするが、現在まではつきり政府の施策としてやつておりまするのは、一般的には御承知緊縮政策ということで、全面的に、今年度で申しますれば約一割くらいの鉱工業の物価引下げたいとうことで、やつておるわけでございます。  それで今お尋ねの、具体的に各商品ごと計画的にどの程度、こういうふうな品目についてやつているかというお尋ねでございますが、これは計画的にいろいろ合理化等を進めておりますのは、極く最近始めたわけでございませんで、鉄なり、石炭なり、或いは肥料なりというものにつきましては、それぞれ数年前から合理化計画というのをやつておりまして、例えば鉄について申しますれば、いわゆる三カ年計画ということで、これは一応三カ年がついておるわけでございますので、計画がまた必ずしも全部完成しておるとは申上げられませんが、大部分のものにその三カ年計画の実施を見ております、で引続いて更に今後なお合理化を進めたいということで、今検討しておるわけであります。その辺につきましては後ほど通産当局のほうの係官がおりますので、具体的に御説明を申上げることと思いますが、石炭につきましても、これも炭価の引下げについて計画を考えておりまして、これも後ほど詳しく御説明があると思います。  そのほかに硫安につきましても、一応五カ年間国際価格と申しまするか、或いは大体の目見当としては、五十ドルくらいというものを目見当といたしまして、これは各社別に今後の合理化計画というものを今作つております。  それ以外の品目につきましては、今具体的に何カ年計画とか、或いはそういうようなことで、はつきりこの程度まで引下げたいという具体的な計画はまだできておりませんが、今後順次各品種につきまして、それぞれ合理化なり、何なりの計画を作つて行くということにいたしたいというふうに考えております。
  4. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それでは、どちらが先になりますか……。じや石炭局長
  5. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) 石灰価格と申しますが、コスト引下げ方策でございますが、国際的に見て、日本石灰が高いという点、これが徳に重工業原料コストの高騰の原因なつておるという点、それから重油或いは輸入炭というふうな、石炭との競合燃料関係におきまして、なお国内炭が高価である、そういう二つの点から、石炭企業自体の問題といたしましても、或いは日本産業全体の基盤の改善という面につきましても、石炭価格、その基礎になるコスト引下げということが非常に従来から問題になつておりまとし、我々としても努力しておる次第でございます。  で石炭が特に先ず外国に比べて高い原因は何かということでございますが、これに一つには石炭生れと申しますか、日本石炭が非常に生成年代が新らしいというような面から、品質自体か実は外国石炭より大分悪いわけでありまして、そういう点から、原炭としてはそう差がございませんでも、それをカロリー当り幾らというふうな、その本来の効用に応じた価格という点になりますと、非常に不利になる。例えて申しますと、輸入炭は現在日本着が十八ドル半程度でございますから、約七千円弱ぐらいになります。現在の原料炭も、京浜地区まで運びましても大体価格としてはその程度、九州なり、北海道なり産炭地におきます工場着の値段では、むしろ輸入炭よりも安いのでございますが、品質原料炭で申しますれば、米国輸入炭は灰分が一番低いので四%。高いので六%というところでございますのに対して、国内原料炭は、先ず平均八%というところに高いという原因があるわけであります。そういうふうに一つ石炭自身生れでございますので、これは如何ともいたし方がないのでありますが、もう一つはやはり炭鉱自体操業条件変化というものが高い原因のもう一つでありまして、それは戦前能率に比べますとわかるのでありますが、戦前昭和九年乃至十一年頃は、大体一カ月労働者一人当り能率が十七トン乃至十八トン、年産に直しますと二百トン程度であります。それに対しまして現在が最近若干改善いたしましたところが約十一トンから十二トン、年間に直しまして百三十トン乃至百四十トンくらいでございましして、大体戦前の三分の二程度なつております。それが戦前物価に比べまして石炭がほかの物価の倍率に比べて石灰上り方がより多い、その分だけ結局一般の産業基礎悪化させておるということになると思いますが、せめてその程度の分だけは先ず引下げなければならんというふうに我々考えておるわけであります。  で、その原因が又二つございまして、一つは実は坑内の実労働時間の短縮というところに一つ原因がございます。それから一つは、坑内採掘条件悪化という原因があります。実労働時間の短縮と申しますのは、基準法の施行によりまして、現在炭坑夫労働時間は拘束八時間、即ち坑口坑口に入坑してから出坑するまでの間が八時間ということになつております。それに対しまして往復の時間、要するに切羽までの往復の時間を除きまして、現実採掘なり、掘進なりの仕事の現場におきまする実働の時間は、通勤時間が七十五分程度なつておりますので、それに三十分の休憩時間を加えて考えますと、六時間十五分くらいになつております。それが戦前は大体拘束か十時間乃十一時間、これは請負、その他の労務者が入つておりまして正確な統計がございませんが、大体そのくらいでありまして実働時間として、八時間から八時間半くらいになつております。結局労務者一人当り能率の差は、大半は、現在の能率戦前能率との比較で申しますれば、労働時間の、実働時間の差が大半つておることになるわけでありますが、同時に戦前から現在までの二十年間におきます技術の進歩が、これ又他の残業が相当生産性が上つております。石炭産業よりも機械化その他で進歩しております面がございまするので、それを入れて考えますると、なお非常にまだ足りない部分かある、それが即ち坑内条件悪化という形で原因なつておるわけでございます。どのくらい坑内条件悪化しておるかという点でございますが、いろいろの見方が……、と申しますか、基準が取り得るわけでありますが、一番簡単な、例えば坑内の深さという点だけで申しますと、戦前のその当時が二百メーターちよつと……、今正確な数字を持つておりませんが、二百メーターちよつとの程度でございます。現在は殆んど三百メーターに近付いております、これは平均の採堀個所深度でございます。大体五割近く深くなつている。そのほかに坑道延長でありますとか、或いは排水丘でありますとか、或いは排気量でありますとか、そういつたすべての要素が大体五割から、ものによつては倍以上悪くなつております。でその原因は非常に簡単でありまして、結局坑内が深部に移行したために、坑道延長が長くなつたということが……、そのために、又例えば坑内労務者のうちで、運搬でありますとか、或いは仕繰りと申します坑内維持保安のための労務者でありますとか、そういつた間接労務者が非常に殖えまして、採掘なり、掘進なりの面接労務における機械化、その他の能率増進分以上に、そういつた間接労務がかかる。又坑道延長いたしますために、排水でありますとか、排気でありますとかいう方面動力の使用が非常に殖えて、物品費も殖えたというところが原因でございます。それでどうしてそういうふうに坑道延長される、即ち自然条件が悪くなるまで放任されておつたかということでございますが、その原因も大体大まかに言えば二つございまして、一つ戦争中から終戦後にかけまして、目先増産を、非常にまあ石炭としては強く要求されて来た、従いまして新らしい坑道を掘ります場合には、当然その分だけは採掘労務者から割かなければならないわけです。結局限られた労務なり、資材なりで、差当り目先増産を強行しようといたしますれば、現在準備のついておる坑道切羽を利用して掘つて行くということにならざるを得ない、それが一つ原因でございます。一つは、石炭基礎物資であるという点によりまして、戦争中から終戦後にかけましても、石炭について引続いて価格抑制政策がとられて来たわけでございます、そのために償却、或いはその他の内部蓄積が非常に不足いたしまして、従つて炭鉱そういつた若返りのための設備投資する余裕がなかつた、それが原因であります、従つて炭鉱合理化と申しますか、コスト引下げをやろうといたしますれば、非常にまあ話に単純でございまして、そういつた自然条件と申しますか、採掘条件悪化したものを取返す、それにはもうすでに現在の大部分採掘個所といたしましては、経済的に非常に不利な状態なつておりますので、思い切つてこれを廃棄いたしまして、全然新らしく合理的な坑道を掘直すということになつて参るわけであります。石炭局といたしましては、それを竪坑方式という形で我々は申しておりますが、新らしく、要するに坑道を掘つて、旧来の非能率坑道を廃棄するということであります、ただ特に竪坑を問題にいたしますのは、これは従来の日本炭鉱は、大体三分の二までは斜坑方式でやつて参りましたけれども、これは竪坑方式に比べまして、採掘深度が延びるに従つて坑道の延びる割合が非常に大きい。従つて採掘個所が或る程度以上に深くなりますと、経済的には竪坑のほうが遥に有利になるという関係がございますのと、一面竪坑の場合には、イニシアル・コストとしては最高の場合には三倍程度のものがかかりますけれども、その後のコストの上昇が斜坑に比べまして常に少い、従つて長期亘つて石炭鉱業合理化をいたしますためには、どうしても竪坑中心にして合理化をやらなければならないことになります。現在我々のところで考えておりますのは、大体五カ年程度目標にいたしましてこれは実は資金がどれだけつくかによつて年限はきまるわけでありますが、資金の獲得のめども考えまして、五カ年間で六十八本の堅坑を掘ります、それに要する資金が約四百億円程度であります。それをやりたいということで、合理化中心のテーマとして抽出いたしております。国内資金の確保につきましても、或いは世界銀行の融資につきましても、それを中心にしてやつておるわけでございます。で、この竪坑が完成いたしますと、竪坑を掘ります炭鉱だけについて申しますれば、能率月当り十八トン乃至十九トンくらいのところに参ると思います。全体平均でも十七トンくらいまでは行き得るのじやないか、但しこれは現在よりも堅坑を掘りますと能率が上りますので、生産がどうしても殖えますから、生産は四千八百万トン程度生産ができますということを条件にいたしまして、大体十七トン程度のトン数になる。その場合には、コストも現在に比べまして大体二割程度なお引下げる余地があるものというふうに考えております次第であります。  なおそのほかに機械化、その他の問題もございますが、これは、そう堅坑のようにまとまつた資金も要りませんので、着々進捗しておりまして、それがそういう面から、終戦当時と申しますか、昭和三十三、四年頃能率が一人当り六十トン程度でありましたのが、現在十二トンになつて来た次第でございます。この方面につきましては特に今申上げるほどのこともございません。順調に進んで、かなりの機械化が進んだと言つていいと思います。
  6. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それじや鉄鋼のほうを……。
  7. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 鉄鋼業合理化計画通産省合理化審議会で議論いたしましたのが昭和二十六年でございます。我々は合理化について大体三つの方向を大きく考えておりまして、第一はこれは常続的にやる合理化でございまして、主に技術的に各高炉平炉圧延部門に亘りまして原単位を低下し、又は歩留りを向上するという策でございまして、これにつきましては米国見学団が参るとか、向うから技術指導が参るとか、そのほかいろいろな技術委員会を主催するということをいたしまして、これにつきましては非常に目立つていい成績が最近出ております、例えて申しますと、熔鉱炉におきまして従来は一トンの銑鉄を得るために約〇・九トンのコークスを使用したのでございますか、昨今におきましては、一トンの鉄鋼につきまして〇・七%乃至〇・八%のコークスを以て事足りるのでございまして、成績のいいものは更にそれを下廻るという状況なつております。平炉につきましては従来重油にいたしますと約一トンの鋼を作りますのに百六十キロの重油を必要としたのでありますが、現在におきましては酵素製鋼その他の活用によりましていいところは約百キロと申しますと熱量にいたしまして約百万カロリーでございますが、百キロ、百キロ乃至二十キロぐらいの燃料を以て事足りるという状況でございます。この点につきましては我々は合理化の成果が非常に挙つたと考えております。  第二は輸入原料の問題でございまして、御承知のごとく鉄鋼業は非常に輸入原料に依存いたしますので、でき得る限り安くてよい原料を入手するということが方針となりまして、一時朝鮮事変後におきましては急激に需要が上昇いたしましたために米国等から鉱石輸入をいたしておりましたが、現在は逐次米国鉱石等輸入を削減いたしまして東南ア方面に転換しております。特に御承知のごとくコークスにつきましてはどうしても対米依存をしなければならない状況でございますので、方向といたしましてはできるだけいい鉱石使つてコークスの消費を少くしようという方向技術が向いまして、インドから良質の鉄鋼をできる限り買うように努力いたしております。この点につきまして現存のところの原料状況におきましてはかなり合理化されて来ておると存じます。これと並行いたしまして国内におきます砂鉄の活用硫酸滓活用というような国内原料活用も、経済的な観点からにらみ合わせまして使い得るだけ現在使つておる状況でございます。  第三が合理化審議会で最も問題となり、又最も世間の注目を集めた問題でございまして、これは鉄鋼設備の三カ年合理化計画でございます。これは昭和二十六年よりスタートいたしまして昨年二十八年度を以て終る予定でございました。ところがこれにつきましては米国よりいろいろと最新式設備を除きまして今年度つまり来年の三月頃までに主だつた工事は殆んど建設工事としては完了する予定なつております。勿論圧延機につきましては非常に高性能又最新式のものでございまして、建設が終つたからと申しましてすぐにこれが経済的効果を発揚するとは限りません。どうしても技術を完全にマスターする期間が長いものでしたら二年、短いものでしても少くとも半年は要するわけでありまして、そういう意味で、建設という意味でなしに、経済的な意味での完了ということは今年一ぱい、更に来年の半ば頃までは必要ではないかという工合に考えておる次第でございます。  計画の内容を簡単に申上げます。これは各社より提出されました計画資料を我々のほうで検討いたしまして適当なところに収めたのでありますが、全部一千百六億円の投資額になります。勿論このうちには近代化と特別断わる必要のないもので、例えば熔鉱炉コークス炉が何年か使つた後に巻替える、煉瓦の積替えをやるということもございますし、港湾が浅くなつたために浚渫するといつたような広い意味での補修というもの、又当時は増産に向つておりましたので、古い熔鉱炉に手を入れて火を入れるといつたようなまあ近代化というセンスとはちよつと違つたような投資、これが一千百億円のうちの二〇%くらいには相当いたすわけでございます。従つて近代化という名に値する工事は約八百億乃至九百億という工合に考えております。このうちで現在まで約千億の投下が行われました、九割が問うしとしては完成したということになるわけでございます。このソースといたしましては現在まだ全部完結しておりませんので集計はできませんし、又一方ではまだ借りなければならんし、一方では返す時期に入つて来るという点で、やや複雑になりますが、大略申しますと開発銀行資金が百五十億前後でございます。約一五%前後になります。日銀の別口外貨の貸付がこれ又同額約一五%程度になります。この三〇%が公約機関から供給された資金でございます。これにこれとほぼ協調融資といつたような線によりまして市中銀行、これは興業銀行長期信用銀行、こういうところが主体になりますが、これがやはり三百五十億程度ソースとしては一番大きなソースなつております。ただこれは開銀の融資協調融資といつたような形で出た資金でございます、その他の資金は株式の増資、社債、それから社内留保金の再投資という形で支出されて今日に至つたわけであります。これをもう少し部門別に詳細に申上げますと、このうち約半分、五百六十億円が圧延機の整備に用いられました。御承知のようにストリツプ・ミルを初めといたしまして、主としてこの五百六十億の資金は分塊ミル、それからストリツプ・ミル、つまり薄板系統の平に延ばします——我々フラツトロールと申しまして、アメリカでもそう申しておりますが、厚板とか、平に延びた鋼、硅素鋼板帯鋼というふうな平に延びた鋼に重もに重点が指向されまして、それに次いでパイプの生産投資重点が向けられておりました。このほかに熔鉱炉関係、これはコークスを含めまして約百五十億、それから平炉製鋼方面に約百億、そのほかに動力、運輸、化成品といつたような特殊鋼、それから特殊銑というものを全部含めまして千百六億になるわけであります。この目的といたしまして外国に匹敵できる鋼材原価を実現したいというのが理想でございまして、この場合外国と申しましても、通常我々が外国海外と申しますのは米国英国ドイツフランスベルギールクセンブルグ、これに日本を加えまして七カ国が世界鉄鋼輸出に従事している国々でありまして、他の国々鉄鋼業を持つておりますけれども、これは絶対量から見ますと輸入国でありまして、七カ国が輸出国でありますこのうちでおのおのの国につきましてコストが非常に違いまして、我々の調査によりますと最も英国が安く、これに米国が次ぎまして、欧州のほうにおきましてはドイツフランスベルギー、この辺は品質鋼材種類、又立地条件によりまして高低ができますが、大体ベルギーのアントワープ港、又オランダのロツテルダム港に輸出品として出した、その港湾におけるFOBのコストで比較しますと、ほぼ同じ結果になるというのが我我調査結果であります、又世界市場におきましても——尤も欧州大陸の三カ国か、ルクセンブルグベルギーの一部と見てよろしいわけでありますが、我々の最も強敵の競争者でありまして、従つて先ず我々が海外原価に鞘寄せするという場合には欧州大陸コストを一応の目標にとつて考えたわけであります。昭和二十六年頃原案を検討いたしました際には、正確なる算定ではございませんでしたが、鋼材にして約二五%日本のほうが高いというような調査結果でありまして、これを少くとも欧州に比べまして、一〇%以内ぐらい、つまり遠くの輸出市場では不利でございますが、少くとも東南洋方面においては対策なコストで競争できるというところまで持つて行こうというのが合理化計画の主眼でありますから、現在までのその目標に向つて進んで参つたわけであります。  最近の情勢を申上げますと、先ほど申上げましたような高炉平炉につきましてはほぼ合理化を完了して、合理化効果を発揮しておりますが、圧延におきましてはまだ必ずしも所期のいわゆる経済操業と申しますか、そういう状態には達していないものがございます。例えば広畑の製鉄所におけるコールド・ストリング・ミル工事、これは合理化計画の中で最も大きな工事一つでございまして、約百億の金を投じた工事でございます。これが昭和二十六年に着工したものでありますが、本年の二月に開所式が行われたわけでございます。爾来約半年が経過したわけでございます。この能力は二十四万トンと申しておりますが、現実生産はほぼ月一万トンの生産量年間に直しますと約十二万トン、即ち総能力の約半分の能力の稼働にまで達しております。詳しく実情を調べますと技術的にまだ非常に至らん点が多々ございまして完全な経済操業に入つているとは見られない。やはり貸すに若干の時日を以てしないと実際の成績は確認できないという状況でございますが、鉄鋼業におきましては昨年の九月から十月頃最も景気がよかつたのであります景気がよかつたと申しましても繊維産業あたり景気のよいのと違いまして、非常にほどほどの景気のよさでございますが、そのときを基準にして今日までの変遷を若干申上げておいたほうがいいと思います。つまり政府デフレ政策に入る直前の姿でございますが、その当時におきましては現在に比べますと諸原料が著しく値が下つて来ております。一番著しい下り方をしましたのは屑鉄でございました。これは当時万一八千円しましたのが現在は三万円すれすれのところまで暴落しております。又輸入鉱石におきましても、昨年におきましては平均約一トン当り日本港湾におきまして一五・八ドルも払つたのが現在は一三・四ドルを払つて而もより良質な鉱石輸入されております。石炭につきましては、輸入炭につきましては殆んど変化はございません。約邦貨に直しまして六千三百円でございます。これが現在内の石炭におきましては昨年の九月頃におきまして約六千四百円でございました、これは平均でございます。それが現在大体六千百五十円の線まで下落しておる、約四%下落を見ておるわけでございます。こういう現状、諸価格下落に伴いまして、又一方では合理化設備か逐次能力を発揮して参りましたために原価においては相当の低下を見ました。これは鋼材種類にもよりますし、又例えば棒鋼などには殆んど合理化資金というものが投資せられなかつたのであります。鋼材にもよりますし、又会社の種類にもよります。八幡のように非常に銑鉄をたくさん使つておる工場と市井の単独平炉工場とは、例えば屑鉄が非常に下つたというときには響き方が違いまして工場によつて非常にアンバランスがございますが、極く平均いたしまして銑鉄におきまして昨年の九月頃から約八%、鋼塊にしまして一四%、鋼材にしまして約一三%以上の原価引下げが実現したと我々は信じております。勿論原価計算のことでございますから確実なデーターを持つことはできないのでありますが、我々の常識から判断しましてそういう工合に考えております、それから一方鋼材の値下りは更に甚だしうございますので、御承知のように鉄鋼業はかなりの不況下に推移して来ておる次第でございます。そこまでが今日までの合理計画の進展の模様でございます。
  8. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それでは企業局長の代りに企業局第一課長の川出君が出席しておりますが、伝えられるところによりますと、生産性向上本部とかいうようなものを通産省に設けて官民の知識を結集して生産性向上に努力をするんだということが言われておるんですが、そういう点についてどういう構想があるのか。
  9. 川出千速

    説明員(川出千速君) 先ほど通産省のほうから御説明いたしましたように、企業の合理化につきましては財政投融資によりまして設備近代化をやる、それから又外資法の運用によりまして、外国の新しい進歩した技術を入れるというようなこと、或いは税制の面でも合理化政府としては努力をしし、民間の努力と相待つて相当効果を挙げて来たと思いますが、どうもそれだけでは足らないのではないか。そういう方策と並行いたしまして企業全般り経営のやり方とか、或いは管理の仕方或いは財務関係の管理のやり方或いは生産能率の向上というように企業の生産性そのものを高める運動が西欧諸国では相当に発展いたしまして、効果に収めておるということを聞いておるわけでございます。我が国でもそういうような企業全般の生産性を高める、結局これはコストが下るということになると思いますけれども、そういう積極的な運動を政府と、それから企業自体が一緒になつて今後やつて行くことが企業合理化といいますか、コスト引下げに大きく寄与するのではないかということで現在通産省中心なつて考えておるわけでございますが、まだ具体的に案は固まつていない次第でございます。生産性向上と言いますと、広く言えばこれは通産省としては行政の大部分を占めておることにもなります。それから又一番力を入れようといたしております輸出振興の裏腹の問題にもなりますので非常に範囲が広く、いろいろな分野に亘つて力を合せて研究をして行こう、一種の、そういうためにはその中核体になる組織というものも民間が中心なつて作らなければならないんじやないかというような感じを持つておるわけでございますが、現在はまだ確定した案ということになつていないのであります。
  10. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから昨日経審のほうから話があつたんですが、特殊産業に対する開銀融資の八十億ですね、これの内訳はきまりましたか。特に今日説明のあつた石炭、鉄等ついてはどういうふうに……。
  11. 川出千速

    説明員(川出千速君) 開発銀行の枠特掲産業言つておりますが、電力と海運を除ました以外の重要業種、これは当初資金運用計画は九十五億でございまして、それが資金ソースの減つたことから実際上八十五億ぐらいにならざるを得ないだろうということを大蔵省、或いは経済審議庁のほうで御相談なさつてきまつたわけでございますが、通商省としましてはその減らない前の九十五億で大体考えまして、あと八十五億に減るかどうかということはこれは見通しの問題でございまして、或いはもつと減るかも知れないし、或いは八十五億にまで減らないかもわからないものですから、九十五億ということで、鉄鋼とそれから石灰、硫安、機械、自家発、合成繊維というような六業種につきまして大ざつぱなめどは作つたわけでございます。それによりますと、石炭がたしか、はつきり記憶しておりませんが、三十億見当、それから合成繊維関係が二十億見当、それから鉄鋼が五億見当、自家発が十四億見当、それから硫安が十一億見当であつたかと思います。併しこれは資金が実際どういうふうになつて来るかという情勢と睨み合せて開発銀行が自主的に判断して融資されるということになつておるわけでございます。
  12. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それでは質疑に入ります。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ず石炭からお伺いします。先ず石炭ですが、竪坑なんか大分進められておるようですが、今日石炭界が非常に不況にあることは御承知の通りでありますが、基礎産業一つとしての石炭は非常に景気変動の際にその景気変動の波に揺られやすい産業である。日本の場合におきましては、まあ大手筋は別といたしまして、特に中小企業、そのうちの小企業、石炭などの小企業、これが景気気変動に対する一つのクツシヨンのような役目をしておる。景気がよくなるというとだあつと始まる。そして景気が悪くなるというと何かもうすつぽらかしちやつてやめる。景気がよくなると又始める。確かにこれは一つのクツシヨンの役目をしていると思う。併し全体から考えると随分無駄な話でもある。今後まあ日本石炭をどの程度生産量で維持して行くつもりか。まあ例えば四千五百万トンなら四千五百万トンを維持して行く。こういうような小企業、これを一体どういうふうにして行くつもりであるか。例えばこれは、景気変動の際のクツシヨンだから置いておいたほうがいい。そこで儲かるときは儲かるけれども、潰れるときは潰れてもいい。労働者も坑夫も昔からの仕来りで、儲かるときにはそこへどつと寄つて来る。景気か悪くなつたら皆が帰つてしまつて、どこかへ片付いてしまう。こういうような考え方で、クツシヨンとして小企業を残しておくつもりなのか。これに対する対策をどうするつもりなんですか。この小企業なり或いはもう少し大きいのなりがあるために合理化が妨げられておる。そして全体としてこれが日本石炭界の重荷になつているというふうに考えますが、この点についてどうお考えになるか。
  14. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) 中小炭鉱合理化の途上においてどう考えるかというお話のように伺いましたが、これは今御指摘のように、確かに過去におきまして景気変動の調整のような役目をして来たことは確かでございます。ただ中小炭鉱について考えなければなりませんのは、これは炭鉱と申しましても、炭鉱として一つの鉱業権と申しますか、事業の主体として扱つておりますものの中に二つございまして、鉱業権者というものと租鉱権者というものがございますが、中小炭鉱は大部分は御存じのように租鉱権者でございます。これは実は鉱業権者がすでに持つておりまして、成る程度設備しております施設のうち極く一部のところだけを借り受けて採掘する、従つて、それは石炭生産量が非常に低い、それから特に埋蔵量に対しまして生産量が非常に多いということは、即ち極く短期間の一時的な基礎による事業をやつておる炭鉱であります。従つて、勿論そういう場合に、投資もそう多くございません。まあ労務者の問題は、これは必ずしも全部が短期の契約で就労しておるとは限りませんが、併し本来の事業自体がそういう性格なものでございますから、すべてそういう考え方で運営されておるものが大部分でございますので、これについて特に一般の出炭の中核をなしておりますような中堅以上の炭鉱と同一に特別の援助なり面倒なりを見なければならんという必要はないじやないか、そういうふうな企業のあり方に応じた程度の取扱をすべきじやないかと思つておりますが、ただそういうところでも、それに応じた程度におきましては別に特別な差別待遇をいたしませんし、合理化の完成にそういう炭鉱が特に妨げをなしておるというふうにも我々考えておりません次第でございます。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、そういういわゆる零細経営というか、小炭鉱は放つて置くんだと、今のままにして置くんだ、将来もそういうものについては整理もしないのだ、今のままの形態で置いて、或る程度クツシヨンの役目をさして置くんだと、そういうお考え方ですか。
  16. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) これは今申上げましたように、特に景気と申しますか、需要が急増したような場合には確かにおつしやるように非常に急速に増産をするというような場合には効果があるのでございますが、ただ現状のように非常な週刊生産になりましたような場合に、今申しましたような経営のあり方からして、どうしても非常に極端に投売りをするというふうな問題がどうもつきまとうようであります。而もまあ中小炭鉱であります関係から、いろいろな関係で経営が非常に簡単でその一面には又各種の法規を厳格に守れないというような面もあるじやないかと思いますが、そういうような面がございますので、やはりこういつた極端に不景気な場合には何か考えなければならない。併しそれは特別にそういう山を強制的に整理をいたしますとか、そういうふうな問題、或いは政府が特に差別待遇をするというふうな、そういう扱いをすべきではないというふうに考えておりまして、その趣旨で申上げたわけでありますが、ただ過剰競争を防止するという意味では或る程度考えなければならんじやないか、そういうところは一つ経済者が経営が成立たなくてやめましても、又誰かほかの人がそこを安く権利を買つて又始めるというようなことで、なかなか究極における整理がつかない、過剰競争の解決ができないので、何かそれについては考なければならないのじやないかと思つておりますけれども、まだこういうふうにしたらいいという決定的な案、意見というようなところまではまだ固まつておりませんので、そういう点でお答えしたわけであります。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 説明を聞いているのではないのですよ。ああいう形態を今後そのまま残して今のまま放置しておくのか、それとも何か対策があるのかと聞いたら、今のところ対策がない、こういうわけなんですね、これは非常に大きな問題を残すだろうと思うのですがね、結局。特に労働者の面から見てもああいうところに働いておる連中はいいときはぱつと寄つて来るけれども、悪くなると一番先にひどい目にあわされる。そして保護も何も受けない。そういう面を考えなきやならんのに、あなたがたのほうであれがもうどうもちよつと手がつけにくい、何か考えなきやならんけれども今のところどうにも手がつけられない、これじや私しようがないと思う。石炭のやはり問題は全体としての対策を考えなきやならんのです。大企業も考えなきやならんと同時にこういう問題を将来どういうふうに処理して行くか、ということがこれはやはり石炭業全体に対する対策なんです。そいつを聞いたら考えていないような話では随分付けない通産省だと思うのでね。もうちつとあなたなんかもしつかりそういう問題を考えて下さいよ。いや、もういいです、頼りない。
  18. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 二〇%炭価が、まあ現在のコストが低減する、今とられておる電源開発等の一連の合理化措置を完遂すれば。併し今のお話で六十八本をやるのに四百億かかる、本年開銀融資は三十億ある、それで協調融資で幾らつくかわかりませんが、そのまあどういうつく予定なのかということも聞きたいのですが、相当長居年月がかかるわけですね、六十八本の堅坑をするのにもそういう資金のつけ方によつて年限は縮まるし、或いは長くなる。問題はタイムリーに考えて二十九年度末までには何本でき、それが全体の炭価にどういう影響を及ぼすか、一つ二つ炭鉱で二割下げてもやはり需給の関係で全体の炭価というものはそれが基本で引下げられるかどうかということは問題だと思うのです。そういう点についての見込はどういうふうにつけますか。
  19. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) これは先ほども申しましたように六十八本の竪坑が完成いたしますれば仮りに竪坑の分も含めて全体平均で二〇%程度下るということであります。ただ現状はお話のように今年の開発銀行の枠が三十億、それに対して政府関係資金の引揚げが約六十億程度ございまして、むしろ非常な引揚超過になつておりますので、現状を基準にして考えますれば、全くもう実はこの計画は絵に描いた餅以下になるわけでありまして、これは今年も我々の計画では二十本実は着工し方針でございます。昨年度、二十本着工する予定のものが、八本、今年もやはり新規に二十本程度着工を初めは計画しておりましたが、殆んどやはり大限度まあ八本程度しか着工自体ができないような状態であります。むしろ企業としてはこのままの状態が続きますれば定期の支払期限が来ました政府資金の支払にも事を欠くような状況でございます。我々が現在四百億、六十八本で申しておりますのはこの合理化資金について政府側として根本的に一つ計画を立てて頂きたい、我々の考え方では二十億程度政府資金をせめて五カ年間といたしますれば毎年八十億程度くらいは貸して頂けると、そういう前提で考えましてそういうことになると申しましたので、現状ではとても見通しもつきませんし、中に二十九年度末にどれくらいになるというふうなことは現状も余り改善する可能性はないように思つておる次第でございます。
  20. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから二割下るというのはいつの炭価を基準にして二割ですか。
  21. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) 現在のコスト平均先ず大手、中小のほうは正確にわかりませんので、大手を平均いたしまして四千円と四千百円との間くらいだと思つております。大体まあ四千百円程度であります。それに対しましてなお二割程度というふうに考えております。
  22. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 企業局のほうでは……、今の石炭局長は絵に描いた餅だということなんだが、あなたのほうは一体どういう観点に立つておりますか。
  23. 川出千速

    説明員(川出千速君) 全く同感でございます。
  24. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 同感じや君、済まんじやないか。(笑声)どういうところで一体同感か、何とかやろうということでどうしてくれればそうなるという、まあ勿論金さえつければいいという結論でしようけれども……。
  25. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) これは私石炭関係者だけとして考えておることを申上げますと、これはこの前の休会中の委員会にもほかの委員会で通産大臣から申上げたことがございますが、重油の関税の復活の問題でございます。重油の関税を復活いたしますと六十億から七十低程度の、平年度でございますが、収入がある予定でございます。そのうち石油関係が十五、六億乃至二十億程度のものを石油関係に使いたいというふうな計画があるようでございますが、残り五十億程度のものを石炭関係のこの資金に廻して頂ければ我々としてはこの計画が完遂できるのじやないかというように考えておる次第であります。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 新経済政策で見ますととにかく三十二年度までに日本輸出を促進するために、そうして国際収支のバランスがまあとれるように相当すべての製品のコスト引下げを行おうとしておる。でまあ石灰コスト引下げは重要なわけなんですが、季節変動が、こういうような判恐慌状態価格の大きな変動を抜きにして考えて大体石炭基準価格をどれくらいに持つて行こうとするのですか、三十二年度までにどのくらいに持つて行こうとするのですか。
  27. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) 我々が現状より二割引下げと考えましたときには丁度二割くらい引下げますと、消費市場、例えば阪神或いは京浜等の消費市場におきしまして、メリツトを考慮に入れまして大体重油と同じくらいというふうなことになるわけであります。丁度コスト引下げの数字と大体見合つておりますので、そのくらいにできたらいいのじやないか。又コスト面で申しますと、現在平均カロリーが六千二百カロリーくらいでございます。それが四千百円くらいでありますから、カロリー当り先ず七十銭見当になつてそれが二割下りますと、三千三、四百円ということになります。一ドルちよつと欠ける程度になるわけであります、山元の価格が……。そういたしますと、大陸並みの石炭の一段、アメリカ並みにはとても参りませんが、大陸並みの石炭価格というふうになりまして、それくらいならば先ずまあまあ基礎原料の値段としてはどうにか行けるのじやないかというふうに考えておるわけであります。
  28. 岡田宗司

    岡田宗司君 そこまで下げるには、昭和三十二年度まで三カ年間にそういうふうになる、又はさせる確信がおありですか。
  29. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) 先ほども御説明申上げましたように、条件二つございます。一つ合理化資金が調達できる。もう一つは、実は石炭の供給力に非常に関係がございます。これは現状のように、現在でございますと、恐らく年間の供給需要量が四千二百万トン乃至三百万トン、二百万トン程度じやないかと思いますが、その程度じやないとちよつとむずかしい、これは竪坑六十八本を掘りますと竪坑の対象炭鉱だけで五百万トン程度増産になる。従つて現状と同じ程度でございますれば、他の炭鉱で五百万トン程度減産をして而も能率が上つた分に相当するだけ更に人員整理をしなければならん、こういうことになりますので、それはとてもあと三年乃至四年ではむずかしかろう、従つて先ず現状の、現在の炭鉱は現在程度の出炭を維持するものとして能率の上昇した分だけ労務者は減るわけで、そして竪坑炭鉱増産なつた分はそのしまま市場が増加するという前提があるわけでございます。その二つの前提が実現いたしますれば、我我としてはその程度引下げることは可能である、物価水準不変という前提の下にでございますが、可能であると思います。
  30. 岡田宗司

    岡田宗司君 非常にむずかしい条件というわけですね、そうすると。実現性が八〇%乃至九〇%困難だ、こういうことになりますね。
  31. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 企業局のほうで今の石炭局長の希望は、重油に対して関税をかけるか、どうかして輸入——俗な言葉で輸入すれば儲かる、そう儲かる利益を吐出させてこのほうの合理化資金を作ると、こういうことですね、簡単に言えば。そういうことは石油布製業者等との関係通産省としてはどうです。
  32. 川出千速

    説明員(川出千速君) いろいろ業界の利害には関係あると思いますけれども、石炭鉱業の合理化ということは、やはり国の経済政策の基本と思いますのでそういう措置も止むを得ないのではないかというふうに考えております。
  33. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それは企業局としてそういう方針でプツシユしようというか、何とかこの資金不足を打開しようという気持ですか。
  34. 川出千速

    説明員(川出千速君) 省としてまだ結論いうところには至たつておりません。従つて個人の意見でございます。
  35. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから石炭局長に聞きますが、生産性の問題は、コストは二割ぐらいに下るということですが、この結果一カ月十七万トンですか、というようなことになりますが、まあ英国、西独あたりと比べて現状は坑夫一人当り日本のほうの出炭量は二分の一とか、三分の一、こういうような状態ですが、その点は堅坑開発によつてどうなるのですか。
  36. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) 現状は大体お話の通りでございます。ただこれはアメリカ、それから六大陸共に日本のように実は全坑夫での能率というものはとつておりませんので、大体坑内夫一人一日当りというような計算でございます。そういう計算でやりますと、大体大陸諸国は、今資料を持つておりませんが、大体昨年でございましたかその成績坑内夫一人一口当りたしか一トン分ぐらいであつたと思います。それに対して日本能率がたしか〇・七程度じやなかつたかと思います。大体お話のように半分ぐらいでございます。この堅坑にいたしますと、現状に比べて約三分の一ぐらい上ることになりますので、大体現状よりも坑内外の比率は若干上昇いたしますが、併し余り大きくは変りませんので、その割合で考えますれば坑内夫として一トン程度じやないか、大体ヨーロツパの三分の二ぐらいの比率になる。全体の平均でございます。
  37. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 世界銀行の調査によると、先ほど日本の高炭価の第一原因として生れが悪い、こういうことだつたですけれども、世界銀行の調査団の報告するところによると、西欧等と比べてそう生れば悪くないのじやないかと、こういう報告がされておるわけですね、その点はどうなんですか。
  38. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) これは別にお言葉を返すわけではございませんが、世界銀行の我々が接触した範囲では、生れの問題ではございませんので、自然条件日本は決して、アメリカは別として大陸とそう違わないのじやないかという点が専ら議論の対象でございまして、この点はこれも非常にこうなりますとちよつと比較のしようがないのであまりすが、要するに先はど申しましたように日本平均深度で今三百メートルくらいでございます。で、西ドイツあたりは八百メートルくらいになつておりまして、深度は非常に深いし、御存じのように日本は地震国、火山国でございまして、非常にまあ地殻がもめておる、従つて石炭につきましても一カ所にまとまつたフイルドが少い、それから炭層の膨縮と申しますが、厚くなつたり薄くなつたりする断層が非常に多い、そういうふうな面で、かなりちよつと計算しにくい要素が一つあるわけでございます。従つて確かに深さはもう西ドイツなんかに比べれば遥かに浅いのでありますが、自然条件として果して日本のほうがいいかどうかという点まあむしろそういつた合理化の一番基本になりますまと、まつた地区で大規模の機械を使つての仕事がやりにくいという点でむしろ我々としてはヨーロツパよりも若干不利じやないかということを申したのでありますが、その点は世界銀行と我々と若干意見の迷つた点であります。生れの点は炭質的に日本石炭は御存じのように第三紀層の石炭で、ヨーロツパの石炭は大部分石炭紀の石炭でありまして、これはどうしても炭価、カロリーから申しまして日本が不利であることは間違いないと思います。
  39. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それからコストの低減、絵に描いた餅については余り議論してもしようがないということになるのですが、まあこういうことがやれたとして二割がたの低減になる、こうなつたと仮定して結局ものの値段は需給関係、その場合に時給の関係で上つた、高くなる要素が出て来たというような場合に、少くとも国際炭価と比べて高いということについて何か人為的に抑制するとかそういう含みがあるのですか、今のような炭鉱の採算状態つたらあなたのほうの局の希望から言えば成るべく一つ高炭価に持つて行きたいという気持があるでしようけれども、全体的に考えて……。
  40. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) 実は先ほど中小炭鉱の整理の問題でお話がございましたが、そのときも甚だどうも煮え切らない御返事をいたしたわけでありますが、実は我々のところで、石炭対策を大分時間をかけて研究はいたしておりまして、近いうちに省としての結論を出したいと思つておりますが、その中で実はいろいろ考えておりますことがでございますけれども、まだ実は省として固まりませんので、ここで申上げなかつたわけでございます。実はお話の通りの問題がございまして、それについて何か特別の制度を考えなければならんのではないかということでいろいろ研究をいたしております。例えは一つ基準になる価格というふうなもの政府がきめまして、それを何らかの形で公表するというふうなことも考えられるのじやないかと思います。いずれにいたしましても我々としては先ほども申しましたように、輸入炭とか重油とかいうふうな競争燃料がございまして、少くともそれと経済的に競争でき得る価格でない限り石炭の本当の安定ができない、そのときどきの外貨事情によつて需給の増強が甚だしく変るということでは炭炭のような産業は到底立行かないわけでございます。そういう面で石炭鉱業自体といたしましても、これは長い目で見れば石炭価格引下げて競争燃料に十分競争し得る価格で売るということが、国の産業合理化という面を離れまして、石炭鉱業自体としてあるべき態度ではないかと我々は考えております。石炭業者としても最近の経験からいたしまして、将来価格引下げてむしろ安定のほうに重点を置いて経営して行くべきだという考え方は持つておるものと思つております。
  41. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 標準価格を示すだけでそういうことに行けますかね。例えば鉄道、或いは電力会社等の買入価格というもの々標準価格によつて行政的な措置でやらせるという標準価格を示すと言えば、結局それを実行すると言えば、あなたのほうの直接行政的支配力のあるところに、そういう価格で取引されるということになるのでしようが、そういうことで標準価格を維持する、その普通の取引形体を通じて維持できますかね。これを世界銀行なんかの融資を受けるときに一番問だろうと思うのですがね。合理化をやつたはいいが、引下げただけは炭鉱業者が儲けるのだということでは、日本の開銀融資を出すにしても、又世界銀行から融資するにしても、意味のないことですが、その点の確保という問題が今の標準価格程度の行政措置で行けるかどうか。
  42. 齋藤正年

    説明員齋藤正年君) 標準価格の問題は私も全くまだ未決定で、一つの考えられる方法として申上げただけでございますが、ただ御存じのように石炭価格につきましては、大口需要は殆ど全部一種の団体協定のような形できまつております。その石炭需要と申しますのは、一番大きいのは国鉄と電力と鉄鋼と三社であります。そのうちでも特に国鉄の炭価と申しますのは石炭の、炭価全体のベースをきめるような実質上の効果を持つております。従つて若し標準炭価というふうなものが示されますれば、少くとも国鉄炭価とか、一方とかというものはそれによつて決定してしまう、少くともそれよりも高い価格を払うということは殆んど考えられないように思われます。それか同時に炭価全体の大勢を決定するここになると思いますが、そのほかに先ほど来繰返して申しましたように、重油にいたしましても、輸入炭にいたしましても国内炭よりもメリツトを考慮いたしますれば、遥かに安いわけであります。その割当権は政府が持つておりますけれども、それは十分生産業者に対して保障になると我々は考えておる次第であります。
  43. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それでは次は鉄鋼関係に移るのでありますが、大分鉄鋼のほうは先ほどの説明を聞くと、投融資関係は今の石炭の話よりはいい状態なつております。かなりあなたがたの計画しておられる線に近寄つている現在、そういうあらゆる意味の、広い意味合理化措置を講じて、当初の狙いであつた西欧諸国に比べて二五%高かつたのを一〇%くらい安くする……安くできたのですか、もうできているのか、いつ頃からそうなるのか、その点はどうですか。
  44. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 二十六年に合理化審議会が発足しました当時におきましては、実は外国情報も十分なものが手に入らなかつたわけでございます。本当に見当で、どうも売価がこのくらいであるからこのくらいだろうという工合に考えておつたのであります。現在は相当詳しい情報が我々の手で作られまして、かなり近い線に我々推測していると存じます。非常に少し技術的に立入つて失礼でございますか、欧州における鋼材原価が非常にむずかしい要素が二つ三つございまして、一つは御承知のごとく、ヨーロツパ大陸というところは非常に間接税の高い国でございます。フランスあたりにおきましては鋼材について十数パーセントの間接税がかかる。ドイツにおきましても取引のたびにいわゆる取引高税として四・二%がかかるというような間接税体系を持つているわけであります。間接が高い割合にフランスあたりは、直接税は日本より遥かに安いわけでございます。ドイツにおきましては間接税も高いし直接税も高いというような体系を持つております。日本の場合には米国及び英国によく似ておりまして、直接税が大部分の税金になるわけであります。こういう点でコスト計算をやりますと、間接金の場合はコストの計算に入つて来るのであります。直接税体系の我々日本におきましては、これは税金所得から払われるわけでありますからコストに入らない。こういうような技術的にも非常にむずかしい点がございます。それが一つでございます。  もう一つは御承知のごとく昭和二十六年以後欧州におきましては大変動がありまして、御承知のごとくシユーマン・プランが発足しておりまして現在まで行われております。かなりコストストラクチヤーにも変化があるのであります。例えて申しますと、それまでドイツからフランスコークス石炭を買つて参りました。フランスの北部のロレーヌ地区で主に製鉄業をやるわけであります。シユーマン・プランの前におきましては、いわゆる差別待遇がございまして、これに対し関税がかかつた。又為替割当があつた又運賃におきましても非常にあれで、ドイツ国内業者に対する鉄道運賃というものと、輸出用の鉄道運賃というものは別の運賃レートを適用するというような点でありまして、非常に何といいますか、人工的に複雑であつたのが、シユーマン計画で一掃されて、同一の国であるがごとく取引ができるというようなことで、コストストラクチヤーが変つたわけであります。従つて厳密な比較が非常に困難でございますが、大よそ現在の状況で申しますと、昨年の九月、十月、つまり鉄鋼がやや好調期にありましたときにおいては、一五%程度コストの開きがあつたと私は思います。ところが今度のこのデフレ政策によつて原料諸理価が下落して、現在においては欧州大陸が、比較の場所でこれ又ややこしいのでございますが、日本鉄鋼業は皆海に面してありまして、輸出する場合においてもすぐ港から外国船に積んでやれるわけでありますから、港渡しのコストというものは非常に僅かでありますが、ヨーロツパにおきましては大部分が内陸的工業でございまして、ドイツはルールに、フランスはロレーヌ、ベルギーにおきましても奥地に入りましてリエージユの附近にあると思いますがアントワープ、ロツテルダムの輸出港に到着するのには数ドルの運賃がかかる。今比較いたしますのは、我々恒例といたしましてはアントワープ、ロツテルダムというような輸出港に到着したときのコストでまあ比較するわけでございます。つまり輸出コストを比較する、こういうことになるわけでございますが、現在においては鋼材種類によつて異なりますが、一般の棒鋼、厚板というような一般市販鋼材におきましては、約一〇%に現在はなつております。ただこれが今申しましたように我々のやつた合理化の結果、そこまで来たというのか、世界的に原料その他の価格ベースというものが非常に変動して、偶然一〇%になつたのか、この辺ははつきり分離できないと思います。
  45. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから将来の方向として、もう投融資が一〇%ばかり行けばまあ完成するわけですね、一応あなたのほうで考え得られる合理化近代化の線は、今のような石炭コスト低減の方途が非常に危なかつかしい状態では、これから大いに政府のほうでも考えなければならんと思う。絵に描いた餅というようなことでなく、その炭価はどういうふうに考えておられますか、将来の……。
  46. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 実はこのコストの将来の見通しででございますが、これは世界銀行との交渉等によつて作業したものでございます。我々一応五ケ年後を想定して、計算したデータをここへ持つておりますが、炭価につきましては一応今申しましたごとく、竪坑の開さくというのは予定通りは捗らないだろう。ただ現在のようなデフレ政策のために石炭の諸コスト、まあ物品費、そういうものも下落がありましようし、又やはり優勝劣敗で安い炭鉱のほうがより多くの生産をするという原則は貫かれるだろうという考えで、約現在のコスト・ベースより二乃至三%の下落を見て計算しております。鉄鉱石につきましては国内鉱石については、余り下落はないと思いますが、輸入鉱石については更にやはり二乃至三%の下落は可能であるという見通しで検討しております、
  47. 小林政夫

    委員長小林政夫君) そうすると、先ほど聞き漏らしたと思うのですが、今でもどういう条件か正確にはわからんけれども、一〇%ぐらいの開きだと、そうすると今のような調子で打つて近代化設備等が経済的操業を開始した後今のお話だと、五年後なら五年後に一体鉄鋼は規格によつていろいろ違うでしようけれども、どのくらいのコスト低減になりますか。
  48. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 五カ年後と申しましたのは、これは世界銀行融資の対象になつた工事が、借りられてうまく完成した場合というのでありまして、現世に第一次合理化計画に関する限りは、五カ年後以前に少くとも来年度の中期においては、私どもは殆んどすベてが経済操業に乗つてもらわなければ困ると思つております。そういうベースで考えますと、現在のコストにつきまして、計算方法がいろいろございまして、鉄鋼業は銑鋼一貫作業が中心でございますので、高炉でも平炉でも圧延機でも合理化が進んで安くなるという工合に、ずつと縦に合理化結果が集積されて行く場合と、圧延機なら圧延機が新らしくなつたから、それだけで圧延機によるコスト低下がどれくらいかという方法もあるわけであります。最初のやり方をとつて見ますと、鋼材の品種によりまして異なりますが、棒鋼のような条鋼類、つまり長い鋼材では第一のようなコスト計算によつて見ると、一〇%度低下ができると思つております。
  49. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 今よりも一〇%。
  50. 三井太佶

    説明員三井太佶君) はあ、勿論これは合理化をやつた工場とやらん工場とございますので、やつた工場が、という意味でございます。併し厚板とか薄板とかそういつたものにつきましては、二〇%程度は下るはずであると我我は考えております。別な言葉で申せば、下らなけれはそれば工場が勉強が足らないのだ、こういう工合に考えております。
  51. 小林政夫

    委員長小林政夫君) そうすると来年の中期に至つてはもう少くとも西欧価格の積出価格、アントワープですか、FOB価格においては日本は割高でない。炭価等も現状のままで割高でないということが言えるんですね。
  52. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 問題は又元へ戻つて甚だ失礼でございますが、何かマニユフアクチヤリング・コスト、つまり製造コストとしては我々は匹敵できると思います。勿論ぴつたり一致するというわけでございませんで、品種によつて、例えば棒鋼のようなものが日本側では余り合理化は当初はやられなかつた欧州でも実は余りやつておらないわけでありますが、欧州におきましては日本のように平炉で造りませんで転炉で造りましてフランスあたりでは非常に安い鉄鉱石で転炉に向いたものをやつておりまして非常に恵まれた原料資源を持つておりますというように、非常に原料価格のイフエクトが原価を支配する上においては依然として不利だと思います。ただ加工行程の長い薄板とか亜鉛鉄板とかいうものについては、マニユフアクチヤリング・コストとしては匹敵できると思います。ただ鉄鋼のほうにおきましては金利のコストが高うございまして、現在鉄鋼一貫工場の大きな工場におきましては、総原価、これは製造原価でございまして、総原価の八〇%程度が金利でございます。従つて非常に皮肉な申し方かも知れまんが、現在における日本鉄鋼業が一番不利になつておるのは実は金利負担だ、それだけはプラス・アルフアーで日本のほうが外国より不利だと、こう私は思つております。
  53. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 生産性の問題は、書いたものによると、英国のこれは今のお話で規格によつて違うでしようけれども、製鋼の生産性の問題は英国の二分の一、アメリカの五分の一、こういうようなことが言われておるんですが、来年の中期になればその点はどうでしよう。
  54. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 平炉生産性はこれは二つの要因に支配されると私は思います。一つは炉の大きさでございまして、二百トンの炉もあれば五十トンの炉もあるわけでございます。五十トンの炉でも二百トンの炉でも工員は幾らも違わないわけであります。アメリカが非常に生産性が高いのは、一基当り平炉平均サイズが日本の約三倍になつております。従いまして当然ここに差が生じて参ります。もう一つはこれは平炉特有の現象でございますが、平炉の作業は最も肉体労働を要する仕事の一つでございまして、炉の前で工員が裸になりまして、スコツプでフエロ・アロイというものを炉に投げ込む、陽を一同出したあとで炉床にドロマイトを投げ込んで手直しをする。これは非常に熱いのであります。従つて日本で或る工場に実験いたしましたが、どうも肉体力からいつて米国の肉を食つて大きくなつた人たちと比べると、どうもあれほどはとても働けぬ、やはり鉄砲持てばアメリカぐらい行くでしようが、スコツプ持つと肉体力というものを比べて見まして、そう行かないということで、平炉につきましてはアメリカにおいては一炉当り二人乃至三人でございます。日本におきましては五人乃至六人でございます。この程度は肉体の相性から来るもの、又炉の大きさから来るもの、これはなかなか克服できないと思います。ただ運搬系統という間接労働につきましては、米国乃至英国の水準まで行かなければなるまいと思います。併しこれにもいろいろ制限がございまして、私もアメリカに参りまして直接見たのでありますが、アメリカにおきましてはトラツク、乗用車が平炉のすぐ炉前まで来て停まるわけでございます。諸事万端運搬が機械化できるわけでありすが、日本におきましてはそういつたた慰まれた平炉を持つておる工場は極く僅かでありまして、すべては極く古い平炉かを改良して造つておるわけでございますから、自動車どころか足で歩いても危いという工場が多くございまして、メカナイゼーシヨンをやる余地がないといわれておりまして、むしろこの点におきましてはドイツと似ておりまして、ドイツにおきましてはいろいろ論文を漁つて見ますると、やはりアメリカ式のメカナイゼーシヨンはできないと、先ほどお話がありましたが、生産性向上委員会ドイツにもございまして、アメリカに行つてその資料を見ますと、どうも我々のところではアメリカほどの労働力に到底及ばないので、古い設備をできるだけ機械化して使いたい。日本も同じような立場であります。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ朝鮮事変のような戦争でもないとして、この昭和三十五年まで、つまり新経済政策と称せられるものの行われる期間内において、銑鉄並びに鉄鋼はどのくらいの生産量を維持して行くつもりですか。
  56. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 鉄鋼業基礎産業でございますので、統計表を分析いたしますと、一般的な経済赦免と、非常に並行関係を持つのであります。国民一人頭の実質国民所得とか、産業活動指数とか、これと関聯して図を引きますと、非常に一次的関係が出て来るわけでございまして、結局国民所得なり、全部の生産活動というものに支配されるわけです、昨年度におきましては、鉱工業の生産指数が経済審議庁の統計によりますと、多分一五七であつたように思います。それについて国内で消費された鋼材が約四百七十万、これプラス輸出を加えて鋼材の総生産なつております。我々としましてはこの鉱工業生産指数が一八五くらいまで今後伸びる。現在一六五くらいにまで伸びると仮定いたしますと、輸出を含めまして、約六百万トンの鋼材が必要です。従つて景気の変動がございますが、大体五百万と六百万の間くらいと、こう考えます。
  57. 岡田宗司

    岡田宗司君 私も大体その程度と見るのですが、その程度維持して行くとして、現在の能力、キャパシテイ、それからあなたの言われる合理化が進められて、新らしい生産力が附加えられる、その場合全体としてのキヤパシテイはどのくらいですか、生産力増強による……。
  58. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 鉄鋼の場合におきましては、キヤパシテイという計り方が、二つ普通でございまして、諸外国で例えばドイツ鉄鋼生産能力というような場合には、これは鋼塊の生産能力で申しております。併しこの合理化作業を考えます場合には、圧延機生産能力をも考え併せなければならないわけであります。これは外国でも常識でございますが、大体三割くらい圧延のキヤパシテイが多いのが普通でございます。と申しますのは、景気変動がございますので、景気変動に処すために三割くらい圧延のキヤパシテイでは多くてもいいわけです。そういう意味で大体の鋼塊の生産能力が約一千万と言います。現在の生産も約八百万、圧延機のほうは約千三百万でございまして、従つて全体としてはそれほどアンバランスではない。ただ問題は数字だけ申しますと、非常にサープラスキヤパシテイであるという結論になるわけでありますが、よく内部に立至つて見ますると、御承知のごとく戦時中軍部の圧力でいろいろ特殊鋼工場がたくさん、殆んど雨後のたけのこのごとく出まして、今現在使つてないようなロール等、あちこちに非常に旧式なものがある。こういうのを整理して考えますと、大体六万トンの鋼材生産の場合におきましては、著しく旧式な設備というものを除きまして、それほど大きな過剰設備はないわけです。ただ一番問題になりますのは、圧延機というのは非常に能力がきめにくいのでございます。例えば広畑で先ほど圧延が二十四万トンと申しましたが、これはアメリカにおきましては非常に品種が多うございますので、或る品種、或る厚みが何百トン、何千トンという注文が来るわけでございまして、それが終るまでロールの手直しをしなくてもやつて行ける。日本におきますと、一番大きい注文で千トン足らず、小さいものは数十トンというのがある。それをやるたびにローラーの手直しをやるということで、必然的に能力がアメリカより下る。私どもの考えから申しますと、六百万トンの鋼材生産に達しますれば、第一次合理化計画近代化された設備で七〇%以上の操業ができるものと考えております。
  59. 岡田宗司

    岡田宗司君 合理化問題全体として考えて、コスト引下げということを考えました場合に、さつきあなたの指摘された古い、もう使えないような施設、これが相当重荷になると思いますが、これはどうなさいますか。
  60. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 先ず大会社は八幡製鉄でもよろしいのでございますが、薄板の合理化をやらしてストリツプをやつた場合に、そこに薄板設備は償却してもらいたいと我々は思つておりまして、現在のところは融資をするときの一種の道義的な条件なつておりますが、法律的に強制する力はございません。何とかこれは我々に速やかにそういつた旧式設備というものを、そういうものは早く整理したいと思つております。それから第二は市場が、あつちもこつちもいろいろやるということになりますと、さつき申しました当然オーバーキヤパシテイを維持しなければならない。従つて企業ごとに或る品種の協定と申しますか、専門化を行政措置によつて誘導して行くということによつて、古い設備が誰が見ても要らないということがはつきりわかりますれば、自然償却するだろうと思う。どういう注文が来るかわからないから、古いものでも持つておる心理がある、その心理も専門化が行われますれば、そういう心理もなくなつて行われるであろう。そういうものについては税法上の措置を講じて頂きたいということ考えております。
  61. 岡田宗司

    岡田宗司君 昨日も第一の問題が問題になつたのですか。その道義的な条件といいますか、それじやなかなか実際古い設備を廃棄して、そうして全体としてのコスト引下げということはむずかしいのですが、もう少し単なる道義的なことじやなくて、もう少し強い力を以て合理化を促進するような方向に何らかの措置ができないかと考えたのですが……。
  62. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 私は一課長でございますが、今の通産省当局が真剣に考えていると思います。
  63. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから第二点、これもなかなかむずかしい問題だと思うのです。併し計画経済をやるとすれば当然行つて然るべきものだと思う。これも何か行うような具体的な措置を考えておりますか。
  64. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 現在品種の専門化はテクニカルのサイドから言えると思う。別なサイドから言うと業界の協定が必要である。現在の構成取引法においても合理化カルテルはやつてよろしいということになつておりますが、非常に範囲が狭いのであります。解釈のしようによると著しく狭い範囲になつておるのであります。こういうことを悪い意味での協定じやございまんで、そういつた発展的な意味での協定が行われ得るようにしたいという意向を通産当局が持つていると私は考えます。
  65. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 企業局のほうに聞きますが、最近読売新聞に出た新輸出計画に基づくいろいろな措置、今のカルテル的なもの、或いは買取会社とかそういうようなかなり独禁法に違反する、抵触すると思われるような施策が出て、大臣は自分の知つたことじやない、新聞のほうで勝手に作文したらしいというのでありますが、今の話とも関連してそういうことはどういうふうに考えておるのですか。
  66. 川出千速

    説明員(川出千速君) 鉄鋼合理化、これは是非やらなければならない問題でございまして、そのためにはどういうことをやつたいいだろうかということを内部としては検討いたしております。そうしますといわゆる製鉄課長のほうから言いましたような独占禁止法、現在の独占禁止法の範囲内でやれるであろうかどうであろうかという疑問が出て参ります。その辺をどういうふりに調整するか、これは法律の問題になりますが、検討しておるというところでございます。
  67. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 今の製鉄に限らず輸出振興措置について。
  68. 川出千速

    説明員(川出千速君) 輸出振興につきましては、御承知のように独占禁止法の例外立法とし出して輸出入取引法ができておりまして、相当大幅に例外を認めておるの、あります。なお現行の輸出入取引法では今後輸出振興に力を尽して行く上にまだいろいろ障害があるということで、その輸出入取引法の改正につきまして研究いたしております。
  69. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 研究をしている。それから。
  70. 岡田宗司

    岡田宗司君 今の独禁法との関係ですが、これは独禁法の精神その他からいつてこういうふうな状態なつたときに、例えば業者が寄つて価格の吊上げを策する。そうしてその独占利潤を確保することが問題だ。政府が全体としての計画を立てて、その計画を遂行させるために政府のほうが指導的な立場からいろいろやらせるというとになれば、これは独禁法の精神からちつとも抵触しないのですが、そこいらはどう考えているのでありますか。これは政府が何らかの立法措置を講じてやるという考え方で行くのか、それともまあ独禁法の問題をそういうふうに考えておるというところを見ると、業者の自発的な措置としてやらせるようにしようと考えているのですか。どつちですか。
  71. 川出千速

    説明員(川出千速君) 政府が強権を以ていろいろまあやるいうことは現在考えておりませんので、やはり業界から盛り上つて、この合理化のために共同行為をやつて行く、そういうラインで考えを持つております。
  72. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、三十二年までに来して間に合うようにできますかね、そこが問題だ。やつぱりこうやつて経済政策を立てて、三十二年末というとあと三年ですね、それまでにやるというのなら、ちつとは、そういう少なくとも計画経済をやると肚をきめられた以上は、そのようにしなければしようがない。
  73. 川出千速

    説明員(川出千速君) この辺は非常にむずかしいところでございますが、現在の独禁法の精神を尊重しなければならないのでございまして、その辺の調整はこれは考えて見たいと思つております。
  74. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 今の製鉄課長の話を聞いて、非常に嬉しくなつたわけですがね、明るいので、そこは而も石炭局長の言われるように非常に困難があるけれども、単価が二割も下るということであれば、国際価格というか、西欧価格よりも少くともマニユフアクチヤリング・コストにおいては日本のほうが安くなるというふうなことも見込まれるというようなんですね。確かにその通りだと非常に我々は安心するのですが、幸いここに消費者の代表の海運局長が見えておりますので、大体その造船用鋼材なんというのはどうなりますか
  75. 三井太佶

    説明員三井太佶君) 欧洲の鋼材価格に対して我々の日本のほうがより安くなるというのは楽観的かも知れませんけれども、少くとも頡頏できるという線を考えております。勿論これは経済情勢の変動で、例えば今の屑鉄価格あたりは、ちよつと金融情勢が許せば直ちにはね返つて来るといつたような非常に不安定な要素が一つありますので、はつきり申しかねますが、我々はそういう努力をしたいと思つております。それからも一つ御参考に申上げておきたいのでありますが、ヨーロツパの現在の石炭価格と、日本石炭価格は、確かに日本のほうが高いのであります。併し最近の情報によりますと、ドイツあたりの石炭も、長期的には非常に上る傾向にある。昔と違いまして坑内の安全装置とか、住宅資金とか、そういつた坑夫の福祉のために用いなければならない資金というものが非常にある。これはまあ長い目では回収できるでありましようが、差当りコストを上げて、又不況が来てもこれは別に下る余地がないというようなことで、長期的にはドイツ石炭価格が上るというので、牧後における鉄鋼業技術というものが一変して来ているという報告を受けております。戦争前は石炭が安うございますから石炭は少したくさんかかつて鉱石を安く買うというような方向であつたんです。最近石炭はどうしても高くなるから鉱石を安く買つて石炭の消費を減らそう、日本と同じような傾向になつているというような点で、我々も又日本合理化をやつており、又欧洲もやつているわけでありますが、楽観的かも知れませんが、日本のほうがまだ低下できるようなフアクターが多いんじやないかという点を考えております。それから今の御質問の造船用鋼材の問題でございますが、前に申上げました通り、最近は非常にプライスが下つております。コストも下つておりますが、更に速い勢いでプライズが下つております。第十一次造船用の厚板の問題の価格等につきまして、まだこれは決定を見ておりません。噂を聞いたところによりますと、かなり安い値が出ているような、それへ比較しますと、ドイツあたりの造船所あたりが使つている厚板より高くはないという一段が最近出ております。これは勿論英国と比べますと依然として高いのであります。二割とか一割日本のほうが厚板が高いのであります。ヨーロツパの造船所が使つている厚板と比べますと最近むしろ日本のほうが安いんじやないか、そういうふうに聞いております。
  76. 小林政夫

    委員長小林政夫君) ほかに通産当局に対して御質疑ございませんか。なければ次は昨日自給度の向上による外貨の節約というような意味で、そのアイテムの一つとして外航船舶の増強による国際収支の、何といいますか、改善といいますか、大体三十二年度には四千五百万ドル運賃収入が上つて、それだけ外貨面の節約が見込まれる、こういうことであります。そういう点と関連して、既往の外航船舶による運賃収入の実績及び今後の見通し、それから特に十九国会等を通じて、参議院においてはいろいろこの外航船舶の建造の仕方について注文といいますか、意見も述べたわけであります。そういう点を織込んで今度十二次造船の建造方針というものがかなり改善をされたようにも新聞で報じられておりますが、そういう点を全部併せて一応海運局長から御説明を願いたいと思います。
  77. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 外航船舶による外貨収入並びに外貨払節約の実績並びに今後の見通しでございますが、昭和二士五年以降を申上げますと、海運関係の貿易外収入といたしまして二十五年度が二千七百四十万ドル、それから二十六年度が一億四千五百二万ドル、二七年度が一億八千五百六十万ドル、二十八年度が一億八千八百九十万ドル、二十九年度が大体二億七十万ドル、三十年度が二億一千万ドル、私ども三十二年度の見通しを持つておりませんで、私どもも外航船舶拡充五カ年計画といたしまして二十九年度から三十年度までの五カ年間に百万総トンの船を造る、こういう考えであります。従つて二十四年度の見通しといたしましては、一億三千六百万ドル、かような一応の推算を立てておるわけでございます。只今申しました二十七年度と二十八年度の存続が余り差がございませんのは、この間において船腹が相当殖えましたけれども、運気か非常に低落を示している。こういうことから余り差がございません。それから三十四年度の見通しが二十九年度並びに三十年度の見通しに比べて非常に殖えておりまするのは、実は二十九年度の建造量が当初二十万総トンを予定しておりましたところ、これが十五万総トン程度しかできない。従つて五万総トンの建造量が後年度にしわ寄せになつている。それから三十四年度頃になりますと、二十九年度、三十年度の外貨収入見込というものが現在の非常に低落いたしました運賃を基礎にして、これはトランパー貨物運賃については余り変りはございませんでしようが、定期航路運賃につきましては今が一番底でございます。現在すでに相当の立直りを示しております。それが三十四年度頃になると相当の安定した運賃になるであろう。こういう運賃高の見通しと、更に経済審議庁その他による輸出が相当伸びるという、輸出量が相当増加する、日本船による積取りが増加する、こういう見通しから三十四年度の見込が非常に多い。こういうことでございます。或いは経済審議庁の立てておりますものと多少の狂いがあろうかと思います。そういうのが多少出ております。で、今後の建造計画でございますが、私ども只今申上げましたように、二十九年度以降五カ年間に百万総トンの船腹を造る。これによりまして大体現在の船腹が多少数年が違うかと思いますが、三百三十万総トン、そのうち外航船が二百六十万総トン、これに更に百万総トン造りますと四百三十万総トンになる。そのうち、或いは古い船で流れるもの、或いは海難で沈没するもの等がございまするから、大体このままで行きますと四百十万トンとか、或いは十四、五万トンぐらいになりますか、いわゆる四百万程度という目標になるわけでございます。今後の船腹拡充の方法でございますが、実は十次船につきまして、前の同公で御説明申上げました方法は、大体財政金七割、それから市中資金三割、その市中資金に対しては例の利子補給損失神仙制度をつけてある。こういう方法で今御説明申上げまして、実は今その方法で実施すべく募集をした。その募集の方法といたしましては、これは小林委員長からそのときにも御指摘がございましたが、できるだけ自由競争的な方法をとつたらどうかという御指摘がありました。私もかねがねそういうふうな考えで政府が造船を割当てる、そういうような形は避けたいという気持を持つております。従つてその方法といたしましては三割の市中融資をつけ得る力がある船主、これを申込ませる、そこで船主の力の能力を判定して、そうしてセレクトされたものがオーバーした場合に、開発銀行並びに私どものほうでセレクトするようにしたい、こういうわけで三割というものについて市中融資の確約をつけて出すようにというわけで募集をしたわけでございます。ところが現在の海運会社の経理状況が非常に悪化いたしておりまして、開発銀行に対する金利はこの前の国会で申上げましたように滞つて従つて市中銀行から借りている金に対する金利が非常に滞りの額が多い、或いは金利として払つているかも知れませんが、その半分は運転資金として借りまして、運転資金の借入が非常に多い、そこで市中銀行としては、現在のような船会社の経理状況ではこれ以上貸せない、殊に金融引締めで手許の金がないのに金利すら払えないようなものについては絶対出せない、こういう強い線が出まして、まあ二カ月余りもみにもんだわけですが、結局まあ市中銀行との話合いの結果財政資金は八割、市中資金は二割、但し市中資金のほうも二割分は出せないから一割に相当する額についてはすでに市中銀行から造船融資に出しているものについて開発銀行からその一割に相当する額を肩替りしてもらいたい。こういう話です。でまあ最後はそういうことで財政八割、市中二割、更にそのうちの船価の一割に相当する額は開発銀行で既往の分を肩替りして市中に資金を供給する。こういうことで目下船主を募集し直しまして、その選定の準備をやつております。そのときに市中銀行から強い申入れがありまして、あらかじめ市中銀行のほうで確約書を出すということは是非かんべんしてもらいたい、政府側のほうで、政府側と申しますか開発銀行並びに運輸省のほうでこれはと思う船主を選定される、その船主に対して市中銀行が金をつけるようにいたしましよう。こういうことでいろいろもみにもんだのでございますが、結局船主選考の方法は従来のやり方通りになつたということでございまして、この点大変残念に思つているわけです。そこで目下開発銀行のほうでは船会社の資産、信用状況を詳細に調べており、私どものほうは船会社の出しておりまする航路の状況、殊に定期航路は非常に競争状態がございまするので船会社の申入れている定期航路の船をそのまま認めてよいかどうかということを只今審査しております。この審査を運輸省だけの意見できめるのではなく、民間のいわゆる中立者で且つ海運に相当の経験のあるかたがたを航路審査員にお願いしてその審査を受けているというのが現在の状態です。そこで十次船は非常にまあ差迫つた問題でございますし、まあ途中で馬を乗換えるということができませんので、まあ従来の方法で行かざるを得ないのですが、今後それではこれをどういう形で進めて行くか、これは非常にむずかしい問題です。いろいろの考え方がございまして、例えば社会党あたりでご提案になつておりまする政府の機関をこしらえて、そこでまあ全額船を注文して持つまあ国有の形にする、これが一つの形。それから昔ありました船舶公団に似たようないわゆる私ども海事公社と言つております、やはり国の機関、海事公社という機関をこしらえて、それで七割程度を持つ、あとの三割を船会社に資金を調達して持たす。この場合も従来のような船舶公団の供与方式ですと市中銀行の金がつきませんので市中のほうの金を元利とも優先弁済というふうな状況、或いはそういう海事公社で船会社の株を持つ、船会社が新造のために金が必要だという場合に、その額だけ増資させる、そうしてその増資した額をまあ七割なら七割に相当する分をその国の機関で持つ、これは無論国或いは国の機関が船会社の経営に関与するということになりますと、船会社の活動というものが鈍りますし、対外的な関係もございまするので、議決権のない株で以て配当は優先的にするというふうな、いわゆる投資の形態をとるというふうなこと、それから又もう一つ開発銀行から従来のような形で融資をさせるのだが、併しすでにもう海運に対する融資というのは普通の他の産業融資とは違つた性格になつている、いわゆる普通の金融ベースに乗らないもう性格になつていますので、たとえ開銀から出すにしましても、これが共同融資という形をとつて市中銀行からの金を導入しなければならんとなりますと、そこのどうしても市中の金利並びに元本を或る程度優先的に返すという方策を講じなければ返つて来ないであろう、こういうふうないろいろのまあ考え方がございまして、実はまだその辺についてのもう一つ最後の肚がきまらないわけであります。大蔵省その他経済審議庁、そういう方面とも十分打合せをいたしまして、何らかの方法を講じないと、来年度以降の船舶拡充というものは非常に困難な状態であるというのが現状でございます。
  78. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 輸出船舶の引合は最近どうですか。
  79. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 輸出船舶につきましては最近相当あるようでございまして、これはまあ私実は船舶局のほうで目下そのほうに当つておりますから、私ももう一つ詳しくあれですが、非常にあるようでございますが、もう一つ価格の点、相当にたたいて来るわけでございまして、価格の点などで行き悩んでおる。それからもう一つは例の輸出入銀行の金が足りないものでございますから、そういう面と、それから最近ではトルコの船の国際入札に参加したのですが、それの金の支払方法等で日本側がいろいろ考えているうちにドイツにとられたというふうな何もございますが、相当に引き合がある。これに対してやはり非常に叩いて来る価格にどういうふうにして日本の造船業者をこれに応じさせるか。それからもう一つは、輸出入銀行の金の問題、こういうのが一番大きい問題であります。
  80. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 今の三十四年度に三億三千六百万ドルの運賃収入の見込ということで、最近の運賃ベースが大分三十四年度においては回復するということも考慮に入れての見込だということですが、経審の資料によると、大体毎年二十万トンくらい外航船舶の建造を行うとして、二十万トンについての外貨収入というものは千五百万ドル、五年間ということになると七十五百万ダラー、大分あなたのほうの殖え方に開きがあるのですがね。それは一にその経審の見積りとあなたのほうの違う点は運賃ベースにあるわけですか。
  81. 岡田修一

    説明員岡田修一君) これは二十九年度、三十年度は余り変りないのじやないかと思いますが、その三十四年度急に殖えておりますのは、先ほど言いましたように、定期航路の運賃が相当回復するということと、それから定期航路のいわゆる雑貨の輸出か相当伸びている、この量の見方についての相違ということであります。大体二十九年度或いは三十年度におけ運賃の見方ですが、経審は大体一グロストン当り七十五ドルいうふうに見ていると聞いておりますが、二十八年度の実績は大体一グロストン当り七十七ドルでございます。それを少し内輪に押えられておるのじやないかと思います。これは二十八年度は例えばニユーヨーク航路、それからインド、パキスタン航路、こういう日本中心の割合雑貨の動航路は非常にと運賃が下つておりまして例えば二十ドルぐらいしておりました運賃が六ドルぐらいまで下つたということ、これが最近十二ドルまで回復しまして、更に十一月には十五ドルまで回復するという状況にあるのであります。それからインド、パキスタンにいたしましても、同盟できめておりまするレートの三〇%から四〇%ぐらいまで下つておりまして、これも最近非常に安定しまして、旧同盟率の六〇%ぐらいなところまで回復しておりまして、更に回復の状況が出て来た。その他南米航路にいたしましても相当安定しておりますし、それから中南米方面におきましては、最近御承知の通り輸出が非常に伸びた、一方において運賃が安定しているというので、割合いい状況が出ております。これが今後なお相当回復して来るのじやないか、かような見通しを待つております。そういうことを考えますると、二十八年度の実績で算定するということは非常に固く抑えている、こういうことになつております。
  82. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それからもう一つ、一番この前の問題になつた船会会社の合理化ですね、企業整備の関係、大分新聞の報道によると推進されかけたけれども、所期の目的をしておらんように思いますが、どういう点が一番難関なんですか。
  83. 岡田修一

    説明員岡田修一君) この船会社の企業の合理化でございますが、経営自体の合理化はこれは船会社は非常に苦しうございますから、それぞれに非常に徹底してやつている。併し企業間における提携とか或いは統合、こういう問題でございますが、それについては一つは現在盛んに競争している航路について、お互いに協定し或いは提携を強化してそうして安定する。もう一つは企業単位間における提携なり或いは合併、こういうこと、これは実は企業の統合ということになりますとですね、船会社自体まあ死活問題となりますとなかなかそう簡単に行かない。これは私どもは、やはり最近経常が非常に苦しくなつて、金融面で非常に苦しいのです。金融面で行詰つて、経営者が経営を投出すというところに来ないとなかなか実行しないので、又そういうときになつて合併したものが本業の合併の意義を達するのであつて政府が半強制的に指導するとなると、そこに相当の無駄をくつつけたものができ上る。殊にこの海運というのは間際競争の非常に激しいものでございますから、会社内部が一つの系統なり指揮の下にきちつとまとまつて相手方に対しませんと、寄合世帯であぐらをかいてやれるという企業じやありませんので、その点は無理やりにやるというのでなしに、経営の行詰りによる統合品というようなものであるべきじやないか。併し、実際問題といたしまして、すでに定期航路をやつてつた会社がもう定期航路をやると非常に赤字が多い、従つてその定期航路をほかの会社に譲つて、その会社から自分の得意とするところのトランパーの船を譲つてもらつて、いわゆる定期航路の船と不定期線の船とを交換して、それぞれの分野で合理的な経営をやる、こういうものが、すでに実行したものがございます。それから私どものところへそいうふうなことをやりたいということを相談に来ておるものもございまして、従つてここ半年ぐらいの間に無理なくそういうものが相当進展するだろう、更にそういう情勢をより強くいたしまするがために私どものほうで業者に指導いたしておりますのは、今日本の海運業者の中で自分で船を動かしておりますものは約二十社ぐらいございます。これを五つか、或いはは少くとも六つぐらいなグループによつて、そうしてそのグループ内でお互いの提携をする、例えば同一航路をやつておる場合には配船のスケジユールを一緒にやる、或いは集荷を一緒にやる、或いは一方の船主が船腹が足りない場合には他の船主から提供する、そういう企業の非常に強い提携を行おうとする、そういうグループを作るということを目下推奨をしてそのグループの編成を今急ぎつつある。こういうふうになりますと、まあ海運業者その他のものとの無駄な競争が非常に減殺される、又そういう提携から先ほど言いましたような航路の交換というふうな問題、或いは進んで企業の統合というふうな機運もより強く出て来やしないかというので今そういうことを慫慂いたしておる次第でございます。
  84. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それからまあ十次造船の問題については突然の方針の変更とかいうようなこともできない。造船従業員の失業の問題なんか、或いは関連中小企業に与える影響というような点を考慮して規定方針通りその船を造らなければならん、そういう造船従業員及び関連中小企業対策というような意味が強く出て、今お話のように前の船の造り方と余り変りばえのしない、むしろ私たちの観点から言うと市中銀行の割合が少くなつただけ改悪だろうと思うようなやり方で船が造らざるを得ないとい事態になつたようですが、今お話の将来の方法としていろいろお考えになつて、この前言つたような海事公社だとか、或いは全部国有にするとかいうような問題であれば別ですが、少くとも一時点を限つて造船申込をしろ、それに遅れたら造れないのだというようなやり方でなしに、適格船主ならばいつでもまた海運当局等において審査の結果随時造船、こういう観点はどうなつたわけですか、今度は時期的に非常に迫られて非常に遅れたから止むを得なかつたのか、その点はどうですか。
  85. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 実は最初に申込をとることにいたしましたときには今お説のような方法をとつたわけです。まあその最初の出発の時点はこれははつきりしなければなりませんので、六月以降船主のほうで三割の市中賃金の調達できるものは随時申込め、これはいつでもよろしい、調達したときから申込め、それを開発銀行はそのときどきそれを取上げて審査をして、そうしてきめて行こうじやないか、こういうふうにして出発したのでございますが、先日ほど申しましたように市中銀行は一切出さないと申合せをされたのではないようですけれども、期せずして一致した。従つて一月ほどやりましたけれども一隻も出ないということで、これじやいつまでたつても船が造れないから何とかこれを打開してもらいたいという声が関係業者のほうからも強く出ました。そこで市中銀行政府のほうで膝を属して話合いをしなければならなかつた、こういうことでございます。
  86. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 又最近猛烈に船を造る運動が始まつておりますね。ああいう事態を起すと汚職とか何とかいうようなことがあつてもなくても、そういうことが言われるような事態を生むんじやないかということで、何とかやり力を変えてもらいたいという話があるんですが、どうも今度のほうが、むしろ今までよりもやりやすく、市中金融が礎質的には一割というような、そういう意味においてはむしろ前よりも安易になつておる点が相当問題だと思いますが、一方相当輸出船舶の引合が活撥であるという点、こうい点から考えて日本の海運会社が今かなり不況である、併しいろいろそういうグループ別の共同運航といいますか、で以て実質的な運賃の引上げという収支改善に役立つような方途が講じられつつあるようですが、活撥に船を造ろうとする外国側の事情というものはとういうところにあるんですか。だんだんそれで世界全体の外航船舶が殖えて行けば、日本で四百万トン計画をやつて、果してうまくペイして行くことになるのかどうか。
  87. 岡田修一

    説明員岡田修一君) この海運が不景気になりますと、古い性能の悪い船は、もう運航費も償えないわけです。従つて繋いだほうがいい。で。新らしい船はやはり償却まで行きませんにしましても、金利ぐらいは払えるたけの力を持つておる。従つて外国の船主は今では古い船で相当金を儲けた。ところが古い船は今言つたように能率が非常に悪い、それを新らしい船に乗換えよう、こういうことで相当の建造量が出ておるわけです。日本に対しても注文が来ております。最近ちよつと私ども聞きましたのでは、ギリシヤの船主というのはアメリカからリバテイを譲り受けまして、そうして非常に儲けたところがリバテイでは現在のマーケツトでは採算がとれない。そこでリバテイを潰すなりほかへ売つて、そうして新しい船に乗換えるという計画相当ある、大体そういうのが多いんでございますが、で、トランパー・マーケツトにいたしましても、今日本中心のトランパー・マーケツトが非常に悪いんでございます。と申しますのは、日本はまだ戦時標準型の船を改造したもの、これは九ノツト、或いは十ノット、それから朝鮮動乱の後のブームでたくさん古い船が要りました。これが船齢二十五年から三十年以上でございまして、やはり速力が九ノツト、十ノツト、こういう船は遠くは出られないんでございます。従つて日本中心に入り込むことにたつておる。日本中心のそういうトランパーの貨物船が割合に多くて運賃が安い。これがやつぱりトランパーでも十三ノツト以上の船になりますと、まあ大西洋中心に動かせるとか、世界的に動けるわけですからね。今のマーケツトから見ますと大西洋のほうが非常にいいんでございます。併し日本の今持つておる船は、そちらのほうをやつたらやれるかというと、今言つたように速力の関係、性能の関係でやれない。こういうことでありまして、先ほど言つたように世界的に新造になるのはむしろ古い船を新らしい船に乗換えたい、そういう点が一つだと思います。
  88. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから三十二年度の政府の新輸出計画、貿易計画で行くと、輸入は二十万ドルで抑えておる。輸出目標十七億四千万ドル、こういう状態で、三十二年度というと今から、二十九年度を入れると四年ですか、四年間にあなたのほうで御計画通り二十万トンふえるとなれば八十万トンふえるわけです。現外航船舶が二百八十万トン、それによつてこの日本の貿易量というか、日本中心として出入する貨物総量の何%が自国船でやれるのか。
  89. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 輸出物資の積取比率でございますが、実は手許に三十二年度の何を持つておりませんので、私のは三十四年度でやつておるものですから途中のやつを抜かしております。大体二十八年度の輸入物資の積取比率がドライ・カーゴーで四〇%であります。それから石油数が五〇%でございまして、合計で見ますと四三%日本船が積取つております。それから二十九年度におきましては一般貨物四五%、石油類が五五%、平均して四八%を日本船で積取る。三十年度が一般貨物五〇%、それから石油類が五五%、平均して五一%と、まあ半分以上三十年度は積取る。これが三十四年度になりますと、一般貨物五四%、石油類五九%、合計五六%、こういう見通しを持つております。  それから輸出物資につきましては、二十八年度の実績が三八%でございます二十九年度も大体そんなものじやないかと、こういうふうに思つております。三十年度は、これが四〇%、大体これは摘出の貨物がふえるということからいたしまして、積取比率は大体四〇%くらい三十年度も続くんじやないだろうか、かように考えております。
  90. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それがこの船腹増強の比率から考えて行くと、必ずしもその増強比率とは見合うつてないですわね。
  91. 岡田修一

    説明員岡田修一君) さようでございますね。
  92. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 見合つておらないし、又現在でも少くとも今先ほど言われたような共同運航のようなグループ別の運航、共同行為ですか、共同行為ができる前の状態を考えますと、非常に積荷競争というか、まあ船を不経済な使い方をする。全く船腹はガラ空きで、少くとも三分の二くらいはあけて帰つているような航路がかなりあるというような状態を今の共同行為によつて成るべく船腹をあけないように有効な利用をして行けば、今のような積取比率をやつて行くのに、一体二十万トンずつずつと計画だからと言つてつて行かなきやならんのかどうか、その一体二十万トン計画というものはそういう積取比率から逆算しての計画なんですか、どういうことですか。
  93. 岡田修一

    説明員岡田修一君) この三十四年度に四十万トンなり十九万トンくらいの船を持ちたいと申しますのは、むしろ私どもの考えから言いますと、戦前のような輸入物資につきましては約六〇%が日本船、それから輸出物資については七〇%が日本船、こういうところを、目標とすべきではないかというふうに考えるのでございますけれども、一応五〇%……六〇%近いところを目標にしてはどうかというので少し控え目に考えておりまするような次第であります。先ほどの船腹増加とそれから積取りの量が殖えてないじやないか、こういうことでございますが、これはむしろ今後殖やしまする船の三分の二は定期航路です。定期航路になりますと寄航地が多いということで従つてその船の回転率が少い。それから雑貨につきしましては、これ満船で出るということはございませんですね。いつも一万トンの船で、例えば日本から今ニユーヨーク航路に行きますのには一応三千トンくらい競争を緩和するために制限しております。そういうふうに三分の一腹、せいぜい半分の腹で走つて別の港で一部降して又行く、こういうことでございまして、従つて定期航路を中心に殖やしておりまするので、船腹の量と積荷の率とは必ずしも一致してはいない。それからもう一つは三国輸送を相当考えて見たい。戦前は大体運賃、収入の二五%というものが三国間でございまして、現在ではそれが一三%か四%程度でございます。これも少くとも三国間輸送を全輸送の二〇%くらいのところへ持つて行きたい、こういうようなところからして、必ずしも日本中心物資の積収量が船腹量の増加には比例しないということが言えます。
  94. 岡田宗司

    岡田宗司君 第十次造船の船価は昨年度若しくは一昨年度に比べてどのくらいですか。
  95. 岡田修一

    説明員岡田修一君) これは実は今日手許に持つておりませんが、九次後期でございますね、九次後期に比べまして大体一割、物によつては一割四分船によつては六、七%、平均して九次後期に比べて一割くらい下つております。これは実は今度はうんと船価を下げないと選定に入れないぞというので、大分強く言いましたので、造船所も船主もその選に入りたいというので非常に下げた。外国船の注文をとるように一部出血受注をしているという形でございまして、九次の後期に比べて大体平均して一割くらい下つております。
  96. 岡田宗司

    岡田宗司君 外国船は出血受注が多いでしようが、内航船と外国輸出するやつとの開きですね、これについてどのくらいもあるのですか。
  97. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 実は今まで外国から注文をとつておりますのは、或いは引合が来ておりますのは、すべてタンカー若しくは特殊船でございまして、ちよつと比較ができないのでございます。トランパーの船につきまして、それではロンドンあたりの海運集会所で発表しておる船価と比べてどうかということでございますが、殆んど近いところへ下つて来ておる、或いは多小高いかと思いますが、殆んど大差ないとろへ来ておる。従つて今の船価で、今度中込んでおるような船価で船を造りました場合には、金利は勿論のこと、或る程度の売却まで廻わせるという計算になるわけでございます。十分な償却はできません。
  98. 岡田宗司

    岡田宗司君 政府の新経済政策なるものによると、三十四年度まで更に鉄、石炭その他のコスト引下げるということになつて来ますと、更に現在の船価を引下げることができるのですか。
  99. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 先ほど通産省のほうからのお話がございましたが、やはり日本船の船価が高いということは材料費が高い、或いは艤装品の価格が高い、こういうような点にございまして、従つてその材料の価格通産省のお話のように西欧並みに下るということになりしますれば、これはほかのほうのコストが、日本船は高いということは、日本の造船所のコストが高いということはございませんので、十分太刀打ちできると思います。一般の鋼材価格は何ですが、特に船の鋼材につきましては、いわゆる規格鋼材を使つておりまして、その規格料として特別のチヤージがかかるわけです。この点が一般鋼材価格の低下と同時にどの程度に低下したか。この点にかかるかと思います。
  100. 岡田宗司

    岡田宗司君 今の造船の船台が非常に余つている。こいつの整理統合の問題が今非常に起つているわけです。恐らく業者自体もまあ潰れるのもあるし、それから進んで統合するのもあるでしようが、これは政府としてはいろいろ促進してどのくらいの製造能力を縮減して行こうとするのですか。
  101. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 大体まあ今、現在の大型船を造り得る造船所の能力を、これを大体六十万総トンと言つておりますが、ところが今後における内地船の建造量二十万トンは、確保したい。併し現在の財政状況から言いますと、果して二十万トン確保できるかどうか非常に問題でございますが、一応二十万トン、それに輸出船を十九万総トン入れる、ほかに保安庁の船その他でまあ四十万トンの仕事を確保したい、そうしてその二十万トン余りの過剰のなにが出る、これをどういうふうにして整理するかでございますが、これは政府のほうでどの造船所についてはもう外航船をやらないとか、どの造船所に集中するとかいうことは、これはなかなか困難でありますが、そこで発注を通じて自然整理する。その前に計画造船が、まあ今年も得にそのひどい条件が出ているのですが、従来のように、従来は或る程度量が大きかつたものですから、満遍なく渡しておつたのですが、今年はその量が非常に少い。そのためにじや意識的にいい造船所に集中して持つて行くかどうか、そういうふうにいい造船所に集中して持つて行けば、そこに自然、自然というか、淘汰ができるわけです。これは併し計画造船でございまするが、やはり私どもはこの船主を見て、船主の資産、信用並びに経営力、それから造る船の効率ということを見ている。従つてそのいい船主をつかまえた造船所が生きるという、ところがその船主のなにをしました場合にやはりいい船主はいい造船所に結び付いている、多少の例外はあるかも知れませんが。そこでまあいい船主を選べば自然優秀な造船所へ仕事が行く。それ以外の造船所はよほどの努力、特徴を示さない限り仕事が行かないのじやないか。そういうところからまあ自然の整理ができる。それじやそういうふうに整理状況に陥つた造船所はどういうふうにしてこれを救つて行くかということはまだ具体的ななにはございませんが、これはその現象が現われた上で、一つ何かの措置を考えなければいけないのじやないかと、かように考えております。
  102. 岡田宗司

    岡田宗司君 非常に間接的な方法だけれども、そういうふうにして過剰設備を整理されると、こういうことになつて行くわけですが、もうすでにそのために潰れている企業ですね、もう造船をやめてほかのものを造つて行くよりしようがないといつたふうになつたところが幾つかありますか。
  103. 岡田修一

    説明員岡田修一君) この造船所というんはなかなか不死身でございまして、仕事がうまく行かなかつたからすぐに潰れるかというとそうじやございませんで、いろいろの仕事でずつと凌いで行く。ただ今までに潰れました日本海ドツクという富山にあるドツク、これは戦争中海軍が使つておりまして、戦後になつて初めて外航船を造つた、それが去年九次船が行かないで一応解散した。今度十次造船で相当行かない造船所ができますが、これは職工の整理だとかいろいろな方法もありましようが、造船所自体はやはり残つて行くのじやないか。これをすつかり根を断ち切るということはよほど大きな金をかけるでもしないとできないのじやないか。むしろこれが生きるがために陸上のいろいろの工事に食い込んで行つて従つて従来やつてつた、陸上の工事を受けておつた会社が競争が激しくなつて困るということになるわけであります。従つて造船所の整理ということを非常に簡単にまあ皆さんおつしやるんですが、私はそう簡単に行かない、従つて金融機関なんかも造船所は潰れてもいい、その整理資金は我々が出すんだと言つておりますが、実際に新造船所に金を出したほうが安くなりますぞということを、口をすつぱくして盛んに造船所を整理しろということをおつしやつたのです。私たちは造船事業というものが非常に広範囲に亘る、殊に中小企業に関連があるということで、かなり一般的には労働者の雇用ということ、そういうものからして成るほど今船を造ると採算がとれませんが、他の面における造船というものの効果ですね。これを一つお考え願いたいと思うのです。
  104. 小林政夫

    委員長小林政夫君) その点でニユアンスの点なんですが、この前大分問題にした船主と造船所の結び付き、融資の場合、今度の十次造船の場合には、やはり前と同じような結び付きで融資をされるのか、その点はどうですか。
  105. 岡田修一

    説明員岡田修一君) この点もこの前御説があつたのでございますが、まあいろいろ考えましたけれども、やはりこの船主にすれば自分の信頼する造船所に設計その他十分打合せをして、そうして自分のまあ何といいますか、非常に長い間二十年、三十年に亘つて使うものでありますから、自分の信頼し得る造船所を選ぶ。それからもう一つは市中の金を受けますのにやはり造船所と銀行の繋がりを利用して市中の金を集めて行く、まあこういうふうな観点から、やはり従来のように船主をして造船所と随意に契約して、そうしてそれを申請をされる。但しそういたしますとそこに非常に高い船価のものができるとか何とかいうことで弊害が出やせんか。これは特に私どものほうで船価監査室というものを設けまして、そうして各申請船主の船舶の利用その他詳細に検討いたしまして、まあ少し無駄のないように且つ船価を合理的に安く下げるということを強力に指導いたします。
  106. 笹森順造

    ○笹森順造君 一つだけお聞きしておきたいのですが、造船計画と国際収支改善との関係で、計画的な或いは結論的な大掴みだけでもお伺いしたいのですが、この五カ年で百万トンの造船計画をやる、それにはまあ財政資金投資が相当或いは七割、八割出るものとして大きな犠牲を払うのですけれども、これが片面から言えばいろいろ正しい利益を得るようなお話もあるのですけれども、先ほどのお話で国際収支の上にこれが役立つということが私どもの計画の狙いの一つでなければならない。通産大臣が三十二年度には十七億四千万というものを輸出をして行きたい、或いは又それによつて国際収支の改善もして行きたいという御趣旨のようですが、そこで先ほど委員長からもお話があつてちよつと触れられたようですが、この統計で発表されたこのものによりましても、ここの三十八表ですか、ここにありますけれども、経済審議庁が出した二十九年度年次経済報告の中のここを見ても、邦船の積取比率は輸入物資において総平均四三%、ところが戦前においてはこれは、輸入のものは六〇%、輸出は七〇%、これを内輪に見て今度は五〇%ぐらいまで上げて行きたいという今のお話、ところかそれだけではなお不十分であるからさつきのお話によると戦前の第三国間の積荷は大体三五%であつた。ところが現在は一二、三%に過ぎない、一〇%に持つて行きたい、こういうような大体のお話のように伺つたのですか、そこでこれを総合的に考えて見ると、戦前において日本の国が海運国として、第三国間の積荷ということの運賃を取つて、今日で言うならいわゆる外貨獲得という役割を非常に果していた、これに対する計画が折角百万総トン数というものをこれからやるならば、結果的に見てこのことによつて今まで、逆に言うと五七%というものは日本に入つて来るものも外国のほうに金を払つていた、こういうわけです。それか払わなくてもよくなるケースを多くして行きたい、更に第三国間の荷物の積荷を多くして行けば、そこでこの百万トンというものを造るために必要とする、外国に払わなければならないいろいろな物資等のもの、いろいろと計算して見て総合的な、何か結果的にはいわゆる国際収支の上にどれだけのためになるのかということが、大掴みでもいいからわかつて来ると、私どもはつきり計画を支持する上において論拠が出て来ると思うので、その点でできるだけの、今のお答えを伺つておきたい。これは総合的な話で結構ですから……。
  107. 小林政夫

    委員長小林政夫君) ちよつともう一つ附加えて言わしてもらいたいのだが、本年度、二十九年度当初計画より少し開銀資金が減つて百七十億円…、そのほかに利子補給をやつてこれだけの財政資金を使つて、そうして造つた結果による外貨収入というものの増大は千五百万ドルなんですね、これだけの金をもつとほかのほうに使えば外貨収支の改善というか、になるのではないか、こういうことがどうも我々としては若干割切れない、そういう点について何かあなたのほうで反芻というか、納得する説明ができますか。
  108. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 先にどの外貨手取のことでございますが、百万トン計画を達成したいという目標一つといたしまして、五カ年間に百万トン造つて、三十四年度の外航船腹が三百二、三十万トンになる。そこでその場合の三十四年度の手取といいますか、収入が二億ドル、で、船が払います外貨というのはバンカーとか、或いは外国での港湾費用ポート・チヤージ、そういうものでございまして、大体三億ドルに対して一億ドルくらいが出る、まあ二億ドルくらいを海運で貢献したい、こういうことです。ところでもう一つ、先ほどのお説では、それでは百万トンの船を巡るのにどれだけその船を造るような事態に対して外貨が出るか、こういうことでございますが、これに鋼材の元になる鉄鉱石石炭をどの程度輸入するかということでございまして、百万トンの船を造りますのに鋼材として大体六十万トンでございましよう。鋼材以外にいろいろな計器類がございましようが、これは極く僅かなものだと思います。一番大きなのは鋼材、あとは日本でできるもの、或いは日本労働者が働いて頂く、六十万トンの鋼材に対してどのくらい結局原料として外貨を払つたかということになるのですけれども、これは割合に僅かなものではないかと思うのですが、船価に対しましては鋼材価格は二五%ぐらいです。それでは鋼材価格の中で輸入のなにとしてどれぐらい占めておるかということがちよつとわかりませんけれども、或いは半分とすると船価の一二%ぐらいになりますか、そんなにも輸入原料を使つていないのではないかと思いますけれども、殆んどネグリジブルな額じやないかという感じがいたします。ちよつとその点なお調べまして……。それから今委員長の話のことは、実は私どももほかの産業に財政資金を投下するよりは海運に投下したほうが外貨獲得にこれだけの効果があるのではないかということで、実は比較するものはなかなかないのであります。それで一番財政投資をたくさん出しておるのが電源開発、それから農地開発、こういうものに政府の金を相当投下しているのです、電源開発をやつて、そこから出て来る電力量、これを輸入油に換算した場合に、それではその投下資金一万円当りと、それから外貨の獲得のがどういうふうに比較されるか、それから農地開発と、それで開発された、生産された米の量がそれだけ輸入が節約されるために要する外貨、こういうものと比較して、私今手許に何も持つておりませんが、比較しました場合に海運のほうが遥かに有利であるという一つの数字が出たのでございます。これは私は多少手前味噌のところがあるかも知れません。特にバンカー代その他でどれぐらい使うかというような観点が、見方によつて多小違いますが、とにかく今日私は打つておりませんが、大蔵省、それから自由党あたりに御説明するためにこしらえた資料では、電源開発とか農地開発に金をお使い下さるよりは海運のほうに金をお使い願つたほうが遥かに……。
  109. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それではその資料で僕らが審議したらもつと積極的に推進しますから政府案の決定版で……、今言われた電源開発、或いは食糧増産、それから先ほどもお聞きの通り、石炭コスト低減にはかなり金が要るというのにない、そういうような点、他の部門に同様の財政投資をした場合に経済効果、あなたの船のほうで造船に投資した場合の経済効果、これを比較して、又今笹森委員の御指摘になつた、造るために使う外貨、そういうものの差引きした手取外貨としてどつちが得か、こういうのを出して下さい、政府の決定版として……。
  110. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 承知いたしました。
  111. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから一つ気にかかるのは、これは私も責任があるような気がするのですが、輸出入銀行が金がなくて、外航船舶の輸出船の受注がそのために制約を受けるというような事態、ちよつと先ほどそういうようなことがあつたのですが、これは本当にそういう状態なつて、おるのか、金があれば輸出ができるというときに、届出入銀行の資金繰りの都合で金がないから云々ということを言わせるのは非常にまずいと思うのですが、又我々前に百二十億、或いは百五十価、まあ二百億近い金を遊ばすのは勿体ないじやないかということは大分強く言つて、取上げんでもいいけれども、それを他に有効に使うようにというようなことを主張して来たのでありますが、足らなくなつたことは非常に幸いなことですが、スムースについて行くような方途を講じなければならん。これはあなたのほうに言うべきことじやないけれども、むしろ、あなたのほうは使うほうですね、そういう意味から言つて、或いは船舶局のほうかも知れないが、どういう実情ですか、
  112. 岡田修一

    説明員岡田修一君) 最近の何は、或いは大蔵省のほうで、輸出入銀行の資金の増加のことを二月前でしたか、盛んにやつておりましたから現在では解決がついておるかも知れませんですが、一、二カ月前には輸出入銀行の資金の問題を盛んにやかましく言つてつた、併しその後大蔵省で非常に真剣に取上げておりましたから、或いは最近解決しておるじやないかという気がいたします、これを調べまして、あとで……。
  113. 小林政夫

    委員長小林政夫君) だから本当に困るなら、我々も輸出入銀行とほかのほうの担当を呼んで大いに質さなければならない。いいですか。それではこのくらいにしておきます。
  114. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それでは委員のかたにお諮りいたしますが、議員派遣について何か御希望ありますか、どこのほうへ行つて見たいという……。どういうことを見てみたいですか、そういう希望ないですか。私のほうでは別に確定的な今案はないのですけれども、まあ我々の委員会でも予算はあるわけですが、そういう点で……、
  115. 岡田宗司

    岡田宗司君 別に希望ないですがね。
  116. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 特別に御希望ないですか。
  117. 笹森順造

    ○笹森順造君 今突然……、別にこれという何もありません。
  118. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それじやなお私のほうでもよく検討いたしまして、案ができれば皆さんに又お諮りいたします。
  119. 岡田宗司

    岡田宗司君 じや、委員長一任ということにて……。
  120. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後五時四分散会