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1954-09-07 第19回国会 参議院 経済安定委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月七日(火曜日)    午後一時四十五分開会   —————————————   委員の異動 八月六日委員岡田宗司辞任につき、 その補欠として松本治一郎君を議長に おいて指名した。 九月七日委員松本治一郎辞任につ き、その補欠として岡田宗司君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 政夫君    理事      岩沢 忠恭君    委員            奥 むめお君            岡田 宗司君            八木 秀次君   国務大臣    国 務 大 臣 愛知 揆一君   事務局側    常任委員会専門    員       桑野  仁君    常任委員会専門    員       内田源兵衛君   説明員    経済審議庁次長 石原 武夫君    大蔵省銀行局長 河野 通一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本経済の安定と自立に関する調査  の件  (新輸出計画に関する件)  (総合経済政策に関する件)  (最近の経済情勢に対処する金融政  策に関する件)   —————————————
  2. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それではこれから第三回経済安定委員会を開会いたします。  先ず経済審議庁次長石原君から輸出目標昭和三十二年度十七億四千万ドルということが先般の委員会において長官からも話があつたのでありますが、その内容について、地域別品日別年次別等について成るべく詳細に、又その目的が長官としてはかなり自信がある、相当確信の持てるデータに基いての推算であるということでありましたから、そういうことが我々として十分肯けるような説明をも加えて説明をしてもらいたいと思います。
  3. 石原武夫

    説明員石原武夫君) それでは只今委員長からお話がございました三十二年度目標といたします輸出計画について御説明をいたします。  只今手許にお配りをいたしました「新輸出計画について」という資料につきまして御説明をさして頂きたいと思います。この資料、或いはこの計画は、先般長官からもお話がありましたように、通産省で数カ月かかりまして一応作業した結果の案でございます。この作業いたします際には、あとでこの作成方針にも書いてございまするが、冬商品別に、各市場別に検討をいたしまして、それを積み重ねまして作りました。その積み重ねた上で輸出入をそれぞれ各地域について総合的に判断をいたしまして例えば或る地域に非常に出超なつているというようなことは、現実問題としてなかなか実施がむずかしいというような点もありますので、各地域別輸出入のバランスという点も念頭に置きまして一応調整して作りました案でございます。  以下この資料につきまして順に御説明を申上げたいと思いますが、この作りました作成方針につきましては、目標年度において、正常貿易によつてできる限り国際収支の改善を図るということを目途にいたしたわけでございまして、輸入につきましては現在の本年度の大体約二十億というベースを維持することにいたしまして、これに適応するような輸出構成の変化及び自給度向上等を織込みまして計画考えたわけでございます。ただ案を作ります際に、先ほども申しましたように、輸入が二十億でありますので、これにマッチさせるような輸出計画を作るということではなくして、できるだけ現実性があるという案を作りたいという考えからいたしまして、先ほど申しましたように商品別市場別にそれぞれ検討いたしたわけでございましてその際に産業の実態とか各輸出市場条件、それから当該商品につきましての将来の国際競争力というような点をできるだけ参酌いたしまして、我々といたしましてはできるだけ実現性のあるようにと努めて案を作つたつもりでございます。  なお三十二年の目標年度におきましては、西欧のほうでは御承知のようにすでに通貨自由交換性ということが問題になつておるような状況でもございますので、相当さような点が回復されると予想もされますので、従つて国際的な通商競争ということも激しくなると思いますので、やはり将来輸出を伸ばすにつきましては、国際的な競争力のある物資に重点を置いて輸出伸長を図るということにいたしたのでございます。  次に中共向け輸出につきましては将来特需が漸減して参りますという点もございますし、さような点からもいたしまして品目別に現在の制限をできるだけ大幅に緩和される、政府といたしましてもさような方針の下に今後の措置をして行きたいということで、さような前提の下に一応の推算をいたしたのでございます。  次に輸出計画の概要でございますが、目標年度におきまする輸出H標額市場別及び商品別事情から考慮いたしまして総計といたしまして十七億四千万ドルといたしたのでございます。この結果、二十八年度実績に比べますと、約五億トルの増加という数字に相成つております。  次に市場別輸出計画でございますが、第一に通貨地域別輸出計画につきましては相手国市場状況、将来性、輸入市場東南アヘ転換及び先進国向け輸出強化等を考慮いたしまして、主要国ごとにこれを積み上げまして、各通貨地域別市場別目標の算定をいたしたのであります。その結果といたしましては最も輸出伸びると思われまするのはスターリング地域向けでございまして、約五億ドルの輸出増加のうち二億七千五百万ドル程度スターリング地域において増進する。それに次ぎましてドル地域向けが約一億四千九百万ドル、オープンアカウント地域向けにつきましては七千二百万ドルということに相成つたわけであります。  その通貨地域別輸出見込につきまして、第三項の上段のほうに表として載せてございますが、二十八年度実績目標年度、それから伸長高増加いたします伸長率というふうに掲げてございますが、これで御覧願いますように率から申しますと、ドル地域が三三%、スターリング地域が八二%、オープンアカウント地域が一六%、合計いたしますと約四割の増加ということに相成つておるわけでございます。  次に東南ア地域向け輸出計画でございますが、東南ア地域につきましては購買力の両から大きな制約がございまして目標年度において市場転換による一億ドルの輸入増、一億三千万ドルの出超計画を考慮いたしまして輸出は七億ドル程度見込んだわけであります。これは計画をいたします際に輸出の面だけで申上げますと、この数字よりも更に商品別考えましても輸出が増大できるんじやないかという数字が実は出て参るのでありますが、さようにいたしますと、たださような数字を出しましても一つは向うの購買力外貨状況等考えますと、その日本からの輸出の決済する資金が必ずしも十分でないんじやないか、従つてさようなことを考えましても、現在インドネシア等にありますように、ただ非常に大きな出超になりまして貸越になつてしまう可能性相当出て参りますように思われますので、その辺は或る程度抑えまして、又一面この地域輸出を伸ばしまするために日本から輸入を多くすればそれだけ当然輸出ができることに相成ると思いまするので、できるだけ市場転換を図りまして、これら東南ア地域から日本が余計輸入をして余計輸出をしたいというようなことで、さようなことで今申しましたように一億ドルくらいのものは現在他地域から輸入しておりますものをこの地域に振替えて輸入をするということと、或る程度出超はこれは先のことでもございまするし、或る程度見込んでもさして差支えはなかろうかということでこの一億三千万ドル程度は更に計画をいたしまして、一応東一南ア地域は七億ドルというふうに見込んだのでございます。この結果これらの地域に対しまする伸長高は一億八千万ドル、これを率にいたしますと三七%ということになりまするが、これらの地域に対しまする輸出構成比部から申しますると、なお他の地域伸びますので二十八年度実績を下廻るというような結果に相成つております。  それからその次は中共貿易でございますが、中共貿易につきましても米、大豆、石炭等はこれを他地域からその中共地域市場転換考えて参りまして、約七千万ドル程度輸入計画しております。なおこれと大体同額輸出を期待しておるわけであります。勿論この前提といたしましては日本相当輸出をいたしますにつきまして現在やつております輸出制限相当に緩和されるという条件の下に想定をいたしたのでございます。なお今申しました東南ア地域輸出見込につきまして、第二表として東南ア地域とその他の地域に分けまして二十八年度の各実績及び目標年度のそれぞれの輸出見込を表としてここに掲げてございます。お手許にある資料が取違えて甚だ恐縮に存じまするが、多分お手許のほうには取違えになつておると思いまするが、今申しました第二表の次を一枚めくつて頂きまして七頁と書いてある三、商品別輸出計画というところに続くことになりますので、七頁を御覧願いたいと思います。今申しました輸出計画をこれを商品別輸出伸長状況を見ますると、機械で一億二千百万ドルの伸びを示しておりまするが、これは主として軽機械類プラントの一部輸出増等見込んでおるものでございます。繊維製品につきましてはこれも相当伸びがあるわけでありまするが、これは繊維の中に紙を含んでおりまして、これが相当伸びておるわけでありまするが繊維の中でも生糸化繊布及び二次製品輸出増相当見込んでおるのでございます。その地農水産物及び雑貨が依然相当大きな輸出の比重を占めておりまして、鉄鋼製品につきましては輸出伸び悩みが見られるような状況でございます。輸出品構成重化学工業化の傾向は、鉄鋼輸出構成比率の減少を見込めば、僅か四%程度の前進ということでございまするが、これは重化学工業製品の主たる輸出市場であります東西ア市場輸出が先ほど申しました理由によつて余り輸出を期待できないということが我が国におきます輸出競争力販売態勢が非常に乏しいというような事情からかようなことになつておるわけであります。  なお次の最後の第三表に、商品別輸出伸長見込只今申しましたように、農産物、繊維等の種類に分けまして、二十八年度実績及び目標年度伸長高とそれぞれの比率を掲げてございます。  次は又先ほど飛ばして御説明いたしました第五頁の四でございまするが、輸出伸長期待産業輸出伸長見込という表題になつておりますので、そこへ続くことに相成ります。外貨手取率が高く且つ加工度の高い商品で、今後相当大幅に輸出伸長が期待し得る適格商品を以下申しますような六群に類別をいたしまして、それぞれに応じて輸出振興対策を総合的に検討いたしておるわけでございます。これらの輸出適格産業として取上げられましたものによりまする輸出が四億九千七百万ドルの増加のうち三億九千万ドルを占めておりまして、比率で申しますると七八%がこれに当ることに相成ります。輸出適格産業と申しておりますが、これらは今後における輸出振興対策の最も重点を置くべき対象でありますと共に、これらの対策は総合的且つ強力に行わなければ今の目標達成も或いは困難かと思いますので、これらに今後の輸出増進対策を集中いたしたいというふうに考えております。併し、これら以外のものにつきましても目標年度におきましては三七%という比率を占めておりますので、従来の通り一般的な輸出振興対策は今後もこれを推進して行く必要があろうというふうに考えております。  その次が新輸出計画推進でございまするが、国際収支均衡達成我が国経済自立目標なつておる現状におきまして、今後の輸出振興に最重点を置いて通商産業政策推進して参りますことが必要でございまするが、これがために当面着手すべき問題点といたしましては次の諸点があるかと考えておるわけであります。一は市場分析の徹底でございます。二は産業別輸出振興対策具体化、三番目が本計画達成のための推進組織設置ということでございます。  第四表に先ほど申しました類別を掲げてございまするが、第一類は、ここに書いてありますように、日本の特産的な商品でありまして、先進国中心としまして現在においても相当輸出が出ておるもの、例えば生糸でございますとか、真珠でございますとか、さようなものでございますが、これらにつきましては、税問題の解決でございますとか、先進国保護貿易との調整の問題、或いは先ほど例を申しませんでしたが、「まぐろ」の罐詰等もこれに入ると思いますが、これらについてもそれぞれ経済的な外交の推進も必要であろうと思いまするが、各商品につきまして今申しましたような点につきましてはそれらの点を今後の対策として考えて行く必要があろうかと考えます。  それから第二類は消耗的な消費財、主としてこれは中小企業生産による消耗的な消費財でございまして、例えて申しますると、一般雑貨の類でありますとか、繊維二次製品等がこれに該当いたすと思いまするが、これらのものは現在でも価格の面では相当国際的な競争力があると考えられまするので、これらの部類に対しましての対策といたしましては、例えばデザインの問題でありますとか、意匠の問題というような問題につきまして然るべき措置考えることによつて更に輸出を伸ばし得るのではないか、それらの問題について所要措置を講ずる必要があるというふうに考えております。もう一つは、これらは中小企業の占める分野が大部分でございまするので、販売機横と申しまするか、或いは問屋機能の活用によつて加工貿易制度推進をして行くというような点も必要であろうと思います。例えば玩具等のものにつきましては、かような機構が是非整備される必要があろうと思います。それから又雑貨等につきましては、輸出雑貨販売会社というようなものを作りまして、原料の支給でありますとか、或いは製品一手買収輸出というような機構も或いは必要ではないかというふうに考えます。それから次に第四番目といたしまして、これらの商品につきましては、ややもすると不当廉売でありますとか、売叩きをされておるというような点が実情だと考えられまするので、これらの商品輸出につきましては、輸出組合強化、或いは買収販売会社を作るというようなことによりまして、或いはチェック・プライスの運用を改善するとかいうことによつて、それらの不備を補つて行く必要があるのではないかというように考えております。  それから第三類は耐久的消費財ということになつておりまするが、これはこれらのここに想定しております商品は最終的な生産段階が主として中小企業によつて行われておる耐久的消費財でございまして素材でありますとか部品生産は比較的近代的な生産によつておるもの、例といたしまして、ミシンでありますとか、カメラでありますとか、双眼鏡でありますとか、そうした軽機械類と申しますか、さようなもの、或いは亜鉛鉄板等もこれらに該当するかと思いますが、カメラであるとか、自転車等につきましては、これは意匠対策を至急に確立する必要がある。それから第二番目には輸出態勢整備、これにつきましては、具体的には、ミシンでありますとか、双眼鏡自転車等につきましては、非常に不当に廉売が行われておるというような事情もありますので、輸出態勢整備が必要であろうと思います。第三番目に輸出検査励行強化であります。これは特に御説明する必要もないかと思いますが、これらに該当する商品といたしましても、ミシンカメラ、或いは亜鉛鉄板というようなものが考えられると思います。更にこれらの商品につきましても、コストを引上げるという意味からいたしまして、規格の統一による部品生産専用化というようなことも必要かと考えられますし、更にサービス・センターの設置というようなこともこれらの商品について今後必要であろうかというように考えております。  第四類は規格商品と書いてございますが、主としてこれは大企業の量産によつて生産されまする規格的な商品でございまして、価格引下げによりまして輸出伸長が期待し得るものというふうに考えておるものでありまして、例といたしましては、セメントでございますとか、硫安というようなものでございます。これらにつきましては、勿論今後合理化なりをいたしましてコスト引下げるということが最も肝要でございますが、なお輸出の面といたしましては、これらにつきましては、輸出責任制度の採用、或いは窓口商社の指定、輸出協定の認定というようなことの措置をとる必要があろうと考えております。  それから第五類は新製品でございまして、わが国で今後発展の可能性の多い新規産業で将来相当輸出が期待できるものということでございまして、これは例といたしましては、チタンでございますとか、或いは合成繊維というこうなものがこれに該当すると考えます。これらの産業につきましては、今後企業の濫立を防止しまして、計画的にこれらの産業の育成を図つて行くことが第一に必要であろうと思います。第二に、国内におきまする需要分野の開拓或いは促進等がこれらの産業を育成して行く上に是非必要であろうと思います。例えば合成繊維等は、さような措置を今後併せとる必要があろうと思います。なお、これらの産業新規産業でございますので、今後設備の拡張なり合理化なりを相当いたす必要があると思いますので、これらの資金につきましては十分政府としても配慮して行きたい。なお税制面におきましてもこれらの新規産業につきましては優遇的な措置を講じて行きたいというふうに考えております。  第六類は重機械類でございますが、これは御説明するまでもございませんが、主として大企業注文生産によるものでございまして、後進国中心といたしまして今後輸出伸長を期待される重機械、例えば発電機械とか、そういつたプラント物でございます。これらの業種につきましての輸出振興を図りまするためには、今後第一には東南アジア諸国との経済的な協力関係促進が必要と考えられます。第二番目には、重機械相談室等の運営を更に強力にいたしまして総合的な技術、設計、施行等の機関を育成して行くということによりまして海外に進出して行くようにしたいと考えております。それから第三番目といたしましては、国内生産分野協定を含む大メーカーの市場協定というようなことも必要であろうかと思います。なおこれらの産業につきましては、もとより設備近代化によりまするコスト引下げが第一でございますので、これらの所要資金の額及び輸出の場合におきまする長期の運転資金等の確保の措置を講じて行く必要があろう、かように考えております。  以上極く概略御説明を申上げました。あと質問に応じてお答えをさせて頂きたいと思います。
  4. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 御質問がありますれば、どうぞ……。  御説明によると今の計画軽工業重工業比率が余りそう変つてないというか、今までの実績と……。その点やはりかなり繊維工業に、軽工業輸出重点が依然としてあるわけですね。これは、この前提条件として番かれておるように、重工業製品はいろいろ苦心して見てもどうも国際競争力伸びないのだということで考えられておるのですけれども、今とられているデフレ政策としてもそつちのほうへウエイトを置いているのじやないか。その施策の努果というものがこの程度しか現われないというような見込なんですけれども、その点どうですか。
  5. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 従来よく一般的に日本の将来の産業構造と申しますか、産業重化学工業に進まざるを得ないし、当然そうすべきだということで、一般論としてわれわれもさように考えておりまするが、計画を作りまする際には、先ほど申しましたように余り希望的な計画と申しまするか、架空な計画にややもするとなり勝ちでございますので、先ほど御説明申しましたように商品別前場別国際競争力等も十分考えまして計画いたしましたので、かような結果になつたわけでございます。  それで今お話のように長い目で見ますると、日本産業のあり方というものはやはり重化学工業方面にもう少し全体的にウエイトを置く、輸出の面におきましてもさような必要があろうかと存じまするが、現実の問題といたしましてはこれは三十三年度ということで年度を切つておりますが、さようなことを考えましても急速にさような商品で大幅な輸出見込むということは困難ではないか、これはむしろ現実なり今後の見通しにできるだけマッチしたもので作りたいということでかような結果になりましたので、勿論将来はだんだん重化学工業方面日本産業全体も、輸出もさような方向に向いて行くべきでもあり、又さような方向に漸次相成るかと思いまするが、現在この期限を切りました三十二年というところでは、やはりそうしたものもこの一両年に急速に国際競争力をつけて、それで相当大幅な輸出をして行くということはやはり困難だという見通しでかような結果になつたのだと思います。
  6. 岡田宗司

    岡田宗司君 この新輸出計画策定について、前提となるものは輸入をほぼ今年度くらいにとどめる、こういうことが一方において考えられておるわけですね、そうしますとこの新政策のほうにあるのですが、食糧輸入増加人口が毎年殖えて来る、それでそれに見合うだけの食糧を供給するのに、これは輸入を抑えて行つて国内だけの増産で以て賄なつて本年度程度食糧輸入にとどめよということが考えられております。ところでその後も、これは更に問題になるのでありますけれども、この年々の人口増加、これは百何方になりますか、それと一体並行的に国内食糧増産が図れるものかどうか、それをどうお考えなつておるか。
  7. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 只今のお尋ねは、食糧といたしましてはこの計画では多少殖えるかとも思いますが、殆んど余り違わないという計画です。その人口増が約百万くらいあろうと毎年考えられておりますが、それの必要な食糧国内生産増で賄いたいという考えであります。
  8. 岡田宗司

    岡田宗司君 それはここのところ一一、二年が、まあこの新計画が三十二年度までだということで、或いは三十二年度まではそのくらいのことは見込めるかも知れないけれども、毎年百何方ずつ殖えて行くものに対して、それに見合うだけの年々の食糧生産増加ということを日本で可能だとお考えなつているかどうか。
  9. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 只今正確に数字を以てお答えをする知識を持合せておりませんで甚だ失礼でございますが、我々といたしましては、大ざつぱに申しますると、ここ数年は国内食糧増産計画で一応人口増による食糧需要増は賄えるだろう。将来は輸出増によりまして或る程度食糧輸入増加をするという形に相成るのだろうと考えております。
  10. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、ここ数年というふうに限定してあるわけですね。
  11. 石原武夫

    説明員石原武夫君) この計画は一応三十二年度までで、それまでのところということで考えます。
  12. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、これは大臣に聞かなければはつきりしたお答えは出ないだろうと思うのですが、この2の東南アジア向け輸出計画のうちで(3)の対中国貿易の問題ですね、これは私どももその必要性ということを大いに強調しておるわけでありまして、これは当然なされなければならんわけであります。で約七千万ドルの輸入計画しておる、それと同時に同額輸出を期待しておる、こういうことがここに策定されてある。ところが中国との貿易の問題ということはこれは大きな政治問題です。そうして政府としてどういう一体態度を以て臨むか、まだ私どもは知らされてない。それにもかかわりませず七千万ドルという現在から考えるというと相当な額が計上されておるのですが、これは政府の対中国政策が転属するということを考慮に入れて、こういう数字を出したのか、殆んど転換しないで現在のままの制限状態の下において、このくらいは伸びるだろうというので、こういう数字を出したのか。この点はどちらでこの策定に当つたのですか。
  13. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 只今のお尋ねは、これは大臣からお答えを願うのが適当かと思いまするが、一応これをここにも想定として書いてございまするが、中国向け輸出の緩和は相当大幅に緩和をするという前提で、これがそういう今政府として政策かというお尋ねにつきましては、できれば後ほど大臣からお答えをさせて頂きたいと思いますが、これを考えました際におきましては、一つは将来日本輸出を伸ばす上におきましては或る程度かような中共、その他の今現在制限相当あります地域につきましても輸出を伸ばして行く必要があるという点が一つと、それから普通の商品につきましては今でも例えば亜鉛、鉄板とかいろいろ制限がございまするが、いわゆる兵器に近いようなものは、これは別にいたしまして、普通の国際的商品として一般に行われておるものにつきましては、少くともこの三十二年度ぐらいまでに緩和をされて、そうしたものの輸出は可能なんだという一応前提で、この数字はできておるわけでございます。従いまして、今お尋ねの点にも関連いたしまするが、さような点につきまして、もう少し大きな政治的な判断ではつきりその点がいたしますれば、中共貿易に限られませんかも知れませんが、多少この数字もそうした意味で直る可能性があると思いますが、現在一応事務的にはさようなところで一応数字を得ておるということでございます。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 それからこれ全体を見ておりますというと、三十二年度の終りにおいて輸出地域別伸長見込から言いますと、ドル地域に対する割合が減つて来るわけですね、スターリング地域に対しては殖える、こういうことになつて来るのですが、このままドル地域に対しまして輸出ということ今後なかなかむずかしいことだろうと思いますが、同時に輸入の問題ですが、輸入の点につきましても相当ドル地域からの輸入を減らすようなことになつて来るわけですが、このドル地域からの輸入を減らすという問題について、これは例えば綿花の輸入を減らすとかいうような問題も起つて来るでしよう、或いは石油のアメリカからの輸入を減らすという問題も起るでしよう、それからそのほかのまあいろいろな小麦のアメリカからの輸入を減らすとかというようなことも起つて来ますが、これは一体今日本貿易というものがアメリカに依存しておる、特に輸入に依存しておる場合に、こういうふうに大幅にドル地域、特にアメリカからの輸入を削減するということがいろいろの外交上の難問題にぶつからないものかどうか。そういうことはぶつからないということを予想してドル地域からの輸入減少、それをスターリング地域に振替えるということをお考えなつておるのかどうか。
  15. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 只今の点、私から一応お答えを申上げますが、御承知のように、現在でも対アメリカとの貿易は非常な入超であります。それで、将来通貨の問題がどうなるかわかりませんが、やはり日本といたしましては、或る一国に非常に入超だということは、今の特需等がありますれば割合にバランスが合いますが、かようにこれが漸次減つて行くと若し仮定をいたしますれば、これは非常にバランスが合わなくなる。さようなことで日本の立場から申しましてもこれがバランスが今合つているのを減らして行くということを考えると、今お話のような点をシビヤーに考えて行かなければなりません。現在は非常にアンバランスに貿易面ではなつておるわけです。将来特需等、そうした特別のものがない場合には日本としては非常な入超になるというような際には、或る程度日本貿易が、或いは経済が充実して行くためにさようなことを考えても差支えないのではないか。ただそう非常にずらすといつても一遍にこれで対米貿易もバランスが合うということにはこれでもとてもなりません。一応この程度のことはいいんじやないかというふうに考えております。
  16. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうするとまあ、これを策定したあなたのほうでは政治的な意味を抜きにして、そうしてその特需をも含めたドル地域輸出と見合う程度考えつつドル地域からの輸入を減らす、そういうふうな前提の下にドル地域からの輸入を減らすということをお考えなつておるのですね。
  17. 石原武夫

    説明員石原武夫君) この案が若し仮に実現をいたしましても、対米の貿易にこれは特需を入れましてなお日本としては入超といいますか、払いになると思います。従つてこれの転換は先ほど御説明いたしましたように東南アジア地域との貿易促進し、従つて日本輸出を増進するためにその地域転換できる、具体的に転換できる品目を拾いましてできるだけ転換考えたわけでございまして、とても全部将来必ずというところまでは行かない、そちらのほうの限度からその程度でとどめておくということであります。
  18. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカからの輸入転換ですね、東南アジアのほうの、若しくはそのほかの地域、つまりドル地域以外の輸入に振替えるその主なものは何でございますか。
  19. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 主たる物資といたしましては、石炭、鉄鉱石、小麦、大豆、それから綿花、主な商品はさようなものでございます。
  20. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それでは大臣が出席されて総括的な説明を受ける前に、ちよつと今の輸出計画相手国事情はどういうふうに考えてあるのか、即ちアメリカの景気等、これは大体現状の通りで続いて行くということが前提である。又東南アジヤの特に賠償支払国等の賠償問題はこの間に片付く、或いはいつ頃片付くという前提の下にこういう計画が立てられたのかどうか、その点はどうですか。
  21. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 今お尋ねの、例えばアメリカその他の国の景気と申しますか、そういうような点につきましては特に現在と大差ないという前提でございます。ただ先ほどもちよつと触れてございまするが、国際的な通商競争というものは或る程度激しいということは予想しなければならん。景気として特に不況であるとか、非常な好況であるとかいうようなことは別に何も考えてございません  それからなお東南アジアのうちの賠償が問題になる国々でございまするが、これはこの三十二年までに賠償が全部解決しておるんだという必ずしも前提でございませんので、ただ対目的な通商の面におきましては年がたつと共に漸次改善はして行くであろうという程度で、賠償が全部解決しておるという前提ではございません。
  22. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 東南アジアというふうに漠然としてでありますが、この計画というと、特に何億何千万ドルというような数字まではつきりしておるわけですから、その特別の作業はしておられるわけですね、まあしておられるはずだから、今日はその資料は間に合つていないようですが、明細な各相手先別、国別の積み重ねた物資別の資料が頂ければ出してもらいたいと思います。
  23. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 今の細かい資料は、実は通産当局にございますので、御趣意をあれいたしまして、よく通産当局とお話いたしまして、御趣意に副うようにいたしたいと思います。
  24. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それではなおほかにも新輸出計画について御質疑があろうかと思いますが、一応これとも重大な関係のある、新総合経済政策について長篇から総括的な御説明といいますか、御抱負を承わりたいと思います。なお附加えて申上げておきますが、今日は長官相当時間があるそうですから、皆さんもそのおつもりで……。
  25. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) それでは只今委員長からのお指図のありました点につきまして、私から概略先ず御説明をいたしまして、御質問お答えすることにいたしたいと思います。  昨年幕以来御承知の通り実施して参りましたいわゆる緊縮政策でありますが、それは漸く私はその効果を現わしつつあると考えております。例えば物価について見れば、卸売物価において大体今年の初め以来、約九%強下落いたしましたし、国際収支も、四月以来漸次好転を示し、六月以降におきましては若干の黒字を引続き現わしておるのであります。勿論それらの点について細かく分析すれば、いろいろの問題はまだまだございますけれども、漸次効果は現わして来ておるということは言えると思うのであります。ところで他面におきましては、緊縮政策によりまするところの歪みも一面において相当現われて来ておることは否みがたいと思います。その点から今後総合的な施策というものを講ずる必要があると思われるわけであります。更に国際情勢について考える必要があると思うのでありますが、ジュネーヴ会議の成果、インドシナにおける休戦の成立等に伴いまして、大勢は漸次動乱から安定べと移行しておるように私は見受けるのであります。それだけに世界各地域における貿易競争はますますその激しさを加えようとして来ておるというかうに情勢判断ができると思います。それから更に各国のうちには、それぞれの経済基盤の強化を完了して、通貨価値の安定を終了したとまで言えるような各国があるのでありまして、特にイギリス、西ドイツ等におきましては近く通貨自由交換性を回復して、自由貿易主義の旗幟の下にそれぞれ貿易の拡大に一層の努力を傾注せんとしておる情勢であるわけであります。こういつたような状態から、我が国経済情勢が戦後において生産相当著しく回復、増大したとは言いますものの、資本蓄積もまだ不十分でありますし、産業の基盤も脆弱でありますし、又年々百二三十万人の人口が殖えて、いわゆる追加輸入をしなければならないというような重圧も考えなければなりませんので、現状のままを以ていたしますれば今後一層輸出増加し、輸入を抑制せんとしてもおのずから限界があるものと考えないわけには参りません。更に最近の特需の収入も遺憾ながら漸減的傾向にありますことを考慮いたしますと、我が国国際収支の均衡の回復ということはなかなか困難であると考えざるを得ないと思うのであります。併しながらかくのごとき状態におきましてそのむずかしさの中を何とかして切抜けて参りたいと考えるものでありまして、第一に今後の政策目標は、できるだけ速かに正常貿易による国際収支の均衡を回復したいというふうに考えるものでありまして、その点から先ほど来御審議があつたと思いますが、基準年度目標年度というものを設定いたしまして、輸出計画を画期的に具体的なものにして伸ばして参りたいというようなことを考えるのもその一つでございます。併しその輸出を伸ばすにしても、又二面におきまして輸入の抑制を必要であると考えるにつきましても、その実現を容易ならしめるためには物価をもう少し国際的な水準に引寄せたい、この点については先月の当委員会におきましても私の気持を申上げたわけでございますが、この点につきましてあとで申しますように、今後一層の努力を図りたいと思うのであります。先ず話が元へ戻りますが、輸出増大のためには今も触れましたように、輸出目標制というものを採用いたしたい。それから輸出産業の優遇、商社の統合強化、経済効果の推進といつたようないろいろの対策がすでに講ぜられ、又考えられておりますが、これらをそれぞれ総合的に推進して参りたいと考えます。  それから第二に輸入の抑制でございますが、一応の考え方といたしまして、昭和三十年度以後輸入の規模というものは大体において昭和二十九年度並みにしたい、本年度並みにしたいということを考えております。大体二十億ドルベースということになろうと思うのでありますが、御承知の通り、輸入食糧を初めとし、原材料その他の材料関係が殆んど全部でございますから、なかなかこれ以上切ることは困難でもありますし、又国内のいろいろの輸出計画等と照合して考えます場合に、逆にこの程度輸入を維持しなければならないという考え方をとらざるを得ないと思います。併しながら二面におきまして、食糧については勿論でありますが、合成繊維等自給度を向上するということに力を入れて参りたい。又貯蓄奨励といつたようなものと相並行いたしまして、消費抑制の措置をとりたいというふうにも考えるわけであります。それから先ほば申しました通り、輸出産業等に関連いたしまして、一層投資の重点化、効率化を図つて行かなければならない。それから基礎産業等には外資の効率的な導入というものも図りたいというふうにも考えております。物価につきましては総合的な物価に対する考え方を確立いたしたい。低物価の維持、価格の安定を図りまするためには、総合的なものの考え方も必要でございましようし、具体的には公共料金等の問題につきましても能う限りの智恵を絞つてこれの上ることを抑制いたさなければならないと考えております。  次に第二の目標といたしましては、差当り正常貿易による国際収支の均衡ということを申しましても、これはここ一両年の間は遺憾ながら不可能と言わざるを得ないのでありまして、過渡的にはいわゆる特需の計画的な確保、減少の防止ということが確保されなければならないと考えます。  それから第三の目標は、我が国産業の基礎を強化することであると思います。産業の基礎の強化については、これ又いろいろの打つべき手があると思いますけれども、一層再評価を促進するということも必要であり、又企業の社内留保を増大すること等によりまする資本蓄積の促進ということが大切な問題であります。それから財政投融資の重点化、効率化という点については申すまでもないことと思います。  それから第四の総合対策といたしまして、適切な雇用対策を講ずることによつて社会不安の除去を図らなければならない。このためには特に失業対策中小企業対策に十分の配意をして参りたい。基本的に考えなければならない点といたしましては、大体以上申しましたような点を考えておるわけでございます。  そこで具体的な政策をとつて参りまする場合のその基調でございますが、経済についての新らしい政策といつても、以上申しましたように事新らしく鬼面人を驚かすようなものは私は考えられないと思います。ただ言い古されたことや、陳腐なことであつても、国民全体が和協力するというような態勢の下にできるだけ実行して行つて成果を期さなければならない。そのためには、例えば輸出目標にいたしましても、こういう政府考え方であるから、こういう地域にこの程度輸出はできるはずであつて、そのために努力をしなければならんというような意味の目標なり或いは手段なりというものをできるだけ政府としては明確にして行かなければならない責務を感ずるわけであります。それからこれらの政策を実行して行く上におきまして、所要の範囲において相当長い眼で見た計画性ということが私は必要であると思うのでありまして、例えば輸出目標制度を採用したいというのも、その一つの現われでございます。又一面においては、輸入節約の目標策定をすることも必要であり、又主要産業別生産目標を設定する、それから産業に対する投融資の計画ということも必要であると思います。更に又食糧増産、外航船、防衛生産といつたようなものについても計画的な整備というものが考えられなければならないと思うのであります。それから特にこういつたようなことをやつて参りまする場合に、できるだけ早い機会に経済自立の実を挙げるという観点から一定の期間を限つていろいろの工夫を講ずることも私は必要かと思うのであります。例えば税法について申しますならば、資本の蓄積を画期的に増加させるために相当程度の預貯金、保険等について租税の減免措置をとるとか、或いは輸出振興のための輸出所得に対する課税の軽減ということも考えて行かなければならないと思います。それから先ほど申しましたような企業の社内留保を増加する、資本蓄積のために資産再評価を促進する、貸倒準備金制度を拡充する、償却に対する特別措置や、交際費課税の拡張をするとかいうようなことも考えて行かなければならない問題かと思うのであります。それから中小企業に関する税にいたしましても、極く一部は十九国会で実現されましたけれども、更に一層税負担の合理化を図ることが特に中小企業の育成のために必要かと思います。それから消費抑制と関連して贅沢品等に対する間接税の問題も考えるべき問題だと思うのであります。こういつたような税法に対する私どもとしては希望を持ちますと同時に、場合によりましては失業対策費の不足を補うというような特殊の、どちらかと言えば臨時的な目的のためには或る種の目的税というものの研究なども必要ではなかろうかと考えております。これらにつきましては未だ政府を通じて全体の考え方をまとめたというまでには勿論行つておりませんけれども、経済審議庁というような立場から申しますれば、これらについての相当の研究を進めて、できるなら実行の過程に移して参りたいというふうに考えておるわけでございます。  それから中小企業の更に保護育成のために、中小企業等協同組合法、それから中小企業安定法、この両法律の調整というようなことを考えなければなるまいと思うのであります。これらの点について又同時に中小企業信用保険制度についても相当の改善の余地があるかと思うのでありますが、他面百貨店と小売業者との岡のいろいろの問題について、その調整の措置考えなければなるまいか思うのであります。  只今申しましたように、くどいようでございますが、これらの具体的な個個の施策等につきましては、なお今後政府部内においても十分検討を要する点が多々ございまするので、政府全体の決意として申上げる段階には至つておりませんけれども、大体の政府考え方を中間的にお聞き取り願う意味で、私一個の考え方が大分あるのでありまするが、御披露申上げたような次第でございます。問題が非常に広汎でございますので御質問も多いかと思いますが順次御質問に対しましてお答えすることにいたしたいと思います。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 今度お考えなつている御発表になつたこと、又今日の新聞に発表されました自由党の経済新政策というようなものを見ますと、とにかく昭和三十年度、三十一年度、三十二年度に亘る三カ年間の経済計画、こういうふうに見られるのです。これは三年間に亘る経済計画、こう見てよろしいのでございますか。
  27. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 一応先ほど申しましたように、問題の取上げ方を私は輸出計画というところから取上げて参りたいと思いまして、昭和三十二年度を一応の目標年度にいたしまして、十七億四千万ドルというようなものを掲げております。その限りにおきまして、三十二年度に至る一つ年度計画というふうに御覧頂くことは一向差支えございません。ただ経済自立三年計画といつたような恰好で打出しておるのではないのでございます。
  28. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ但書は別にしまして、確かに三年間に亘る経済計画に違いないのです。単に輸出だけではない。あなたの今説明された基礎になる自由党の経済新政策を見るというと、もつと広汎なものです。従つてこれは経済計画一つ。で、もう前々吉田首相は計画経済というものは赤だと、我々はそんなものはやらんと、それを見ると、これはもう私も予算委員会その他で何遍もそういうことを言われたことをお伺いしている。それで大蔵大臣と、それからあなたもそれを経済計画というものを否定しておられる。ところがまあ今度日本の経済状態が全般として悪化して来た、特に貿易のバランスが非常に悪い、こういうことからその回復ということを目標にして三カ年の経済計画をお立てになつたように私は思う。そうすると今までの計画経済は自由党としてはやらない、こういう考え方はここではつきりと転換なつた、こう私ども考えたいんですが、そう考えてよろしうございますか。
  29. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これはしばしば従来も只今お話の通り論議があつたわけでありますが、計画経済というと一つの概念があるかと私は思うのでありまして、そういう意味での計画経済というものは考えておりませんというのが、私の考え方でありまして併しおよそ経済に計画がないのはこれはそういうことはないのでありまして、予算を初め外貨予算その他いろいろの計画をいたすわけでありまして、私はやはり経済計画としてものを考えており、これは言葉の上の争いのようでございますが、私は或る程度長い眼で見た経済の計画というものを作りたい、こういうふうに考えております。
  30. 岡田宗司

    岡田宗司君 経済計画というものが成る極の概念がある、これはそういう概念に基いてやつたんじやないかと思う、併しこれは一極の経済の計画である、長期に亘る経済の計画であると、こういうことであります。そうするとこれは概念のない経済計画と、こういうことなんでございますか。
  31. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 私の申上げたいのは経済政策というものには総合性と、さつき申しましたように計画性を確保しなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  32. 岡田宗司

    岡田宗司君 経済政策には総合性と計画性を確保するというと、これは立派な計画経済の概念になるわけですが、概念のない経済計画とどう違うのですか。
  33. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 私の申しますのは計画経済というと、これはあなたはそう御覧にならなくても、私どもが見ますと計画経済という一つの方法論まで含めた一つの概念があると思われるのでありまして、それが場合によりますと誤解を生じますので、計画経済の方式というものはとりませんということを申上げておるのであります。
  34. 岡田宗司

    岡田宗司君 今のあなたの言われる或る極の概念というようなことから推して行きますと、計画経済というものは、例えばソ連とか中国とかの共産主義国家でやつておられる計画経済、或いは又社会主義的な計画経済ということを指しておられる、ところが必ずしも社会主義国、或いは共産主義の国というような国だけが計画経済をやつておるのではない。やはり西ドイツにいたしましても、フランスにいたしましても、或いはそのほかの国々にいたしましてもそれぞれプランウイルトシヤフトをとつておる、そういたしますとまあ自由党がここに言われております総合的な政策計画経済というものはこれは勿論社会主義とか、或いは共産主義とかいうような、そういうようなところから生れた経済計画ではない、併しこれが今もあなたのお話のように、計画経済ということは事実なんです。これを否定しようたつて否定できない、そうするとどう考えつて資本主義とか、社会主義とか、共産主義とかいう前提の問題を抜きにしたところで、あなたのほうの党なり、政府なりが今まで考えておつた経済政策から転換した、百八十度転換したか、九十度転換したか、とにかく転換したということは言われると思う。それはお認めになるかならないか。
  35. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この計画経済という問題については、まあ議論がぐるぐる廻わりするわけなんですが、今御指摘になつた西ドイツとか、フランスとかいうところでとつておるところの経済政策は私のいわゆる計画経済ではないんであつて、先ほど申しましたように、これから大いに我々としては経済政策を総合的に総合性を持たせる、又計剛性を確保させて推進をしたということを考えておるわけでございますから、これを今の外国等に比較して見た場合に大体今御指摘になつたような国々で考えておりますことと私はその意味においては大差はないと思います。それからその次に、君らは政策を百八十度転換したのかどうかというお尋ねでございますが、先ほどもちよつと申しましたように、日本は今内外の情勢を達観して見て確かに私は新らしい一つ転換期に直面していると思います。その新らしい転換期に直面したこの情勢に対応いたしまして、翻つて経済政策についても総合的、計画的にやつて行こうというのでございますから、私はイデオロギー的に転換をしたものではなくて、情勢に応ずる適宜の措置をとり得るような考え方を整理して行こうと、こういうふうな考え方でございますから、おつしやるような百八十度の転換をしたものとは考えておりません。
  36. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は自由党なり、自由党の組織しておる政府が百八十度経済政策を変えたということは、何も社会主義や共産主義の経済政策に移つたなんということでお聞きしているのではないんです。これは今も言われましたが、今度は情勢の変化に応じてどうしても総合的な経済の計画を立てなければならん、こう言つておられる、これは情勢の変化に応じてどうしてもやらなきやならんのだということなんですが、これを裏返しますと、今まで総合的な経済政策はおやりになつてなかつたということを白状されたものだと思う。特に吉田首相以下あなたをも含めて計画経済はやらないのだ、自由党の方針じやないのだということをしばしば言われておるところを見ますというと、否でも応でも総合政策をとらなければならんのだ、而も三カ年間にかかつて、新聞の報ずるところによると、緊急立法までやつてそれをやろうということは、これはどうしたつて転換と認めざるを得ない。それをまだはつきりとお認めになると言い切れないのですか。
  37. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは何遍も今までも議論を交したところだと思うのでありますが、もう一度繰返して申上げますと、従来でも御承知のように、食糧増産計画を初め電力にしても、石炭にしても、或いは造船にしても、合成繊維鉄鋼といつたようなものすべてこれは五年計画とか三年計画でやつておるのでありまして、これはさつきも申しましたように、経済を計画的に、財政を計画的にやつて行こうとい一うことの現われなんであります。こういう具体的な過去における事例を挙げるまでも私はないと思うのでありますけれども、イデオロギー的に百八十度転換したというようなことは全然私はない、これは明瞭だと思います。
  38. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあこの問題幾ら申上げてもがんばられるのですからそれはいたし方がないのですが、とにかく私どもは自由党のいわゆる自由放任主義に基く経済政策が行詰つたのだ、これは社会主義とか、共産主義とかというイデオロギーに基くものじやないけれども、プランウイルトシヤフトをやらなければならんということになつたのだ、兜を脱いだのだ。こういうふうに私は認めます。それで以て問答を繰返すのはやめましよう。  次にお伺いしたいのですが、これはまあ今度の総合的な経済政策をおとりになるというよりも、むしろそれをやらざるを得なくなつた環境といいます、か、経済情勢といいますか、それはまあ日本の経済にとつて非常に不利なものを生み出して来たわけなんですけれども、この間から二十九年度の緊縮予算、それから金融引締というような方式をとつて先ずおやりになつておる一面において輸入が若干減つたと、それから輸出が幾らか増加した、それから国内においては物価が九%ほど下つたというようなことで効果を現わして来た、こういうお話であつたわけですが、そういうような今までとられました措置というものは大体もう頭打ちをしておると、こういうふうに御認識になつて更に積極的に進めるためにこういうような総合的な計画をお立てになつたのですか。今までとられた措置は大体頭打ちをしたと、そういうふうにお考えなつておりますか。
  39. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 先ほども申上げましたように私は一つの大筋としてはいわゆる緊縮政策が所期の効果を挙げておるというふうに私は確信しておるのでありまするが、ただいわゆる歪みというようなものが他面において現われて来ておるというのは大きく申しますならば、例えば失業の問題、或いは倒産の問題、或いは又その失業や倒産にいたしましても地域により業種によつていろいろの様相が違つて行く、そのできるだけ大きな政策推進して行くためには歪みみを少くして行くという意味において総合的な施策がなお一属必要になつて来ておる、こういうふうに思いまするので、そういう意味から言えば或いはいわゆる金融の引締政策だけが独走しているというような非難が世間にはあるようでありますが、そういうような点も、十分そういうような批評も取入れて総合的な施策を講ずる必要がある、私はこう思つているのでありまして、今までやつたことが限界に来たとか、間違つておるとか、こういうふうには私は考えておらないのであります。
  40. 岡田宗司

    岡田宗司君 今までやつたことがこれは限界に来たとは考えない、こういうまあお話でしたけれども、それは現在のままで進めて行くとすれば、例えば物価が更にどれくらい下るというお見込なのか、それから又金融引締もこのままの方針で続けて行く、これもまあ物価に影響するところであるでありましようが、こういうようなことから物価は更にこのままでももつと下落する、そうして一方において自動的に消費が少くなつ輸入も抑えられる、或いはこのままで行つて更に物価が下つたために輸出も進む、そういうふうにまだ考えておられるのですか。
  41. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは極く大ざつぱな議論になつて恐縮なんでありますが、私は前回のこの委員会で申上げましたと思いますが、概して言えば今年の初め或いは去年の暮に立戻つてものを考えて見ますと、概していつて二割くらい物価が下るならば、国際的な貿易の面においても相当日本は確固たる地位を占めることができるというふうに私ども考えておつたのでありまして、それをどういうふうに実行して行くかということ、或いはその幅等について十分慎重に検討いたしまして、その結果御承知のように、大体ここ一年の間では五乃至一〇%の物価が下落すればいいのだ、そうしてその下落が来年度にだんだん滲透して行きますから、必ずしもその場合において二割の幅というのではなくても大体一割五分というような程度のところを目標にした今度は政策が来年度において行われれば大体所期の目的を達するのではないかと、こういうふうに考えて参つたわけであります。そこで今年の分について見れば、大体の大綱においては所期の目的を達しつつあるわけでありますから、この夏から考えあと一年間くらいの間に今申しましたように昨年の暮に立戻つて見て来年の夏から秋にかけて一割五分くらいの幅が物価の上においてできたというような足取になれば、これは相当日本の経済というものは正常な姿に立直つたものである、こういうふうに今以て私は考えておるのであります。そういう見通しにおいてもう一息の努力をその面においてやりたい。そのためには来年度においても予算はやはり今年度と同じ程度のものにとどめなければならないと思うし、金融政策その他も大体今の政策を踏襲して行くべきだと考えておるのであります。ところがこれはすでに御説明申上げたかと思いますけれども、最近のごときにおきましても金融の引締めと申しましても例えば国庫の民間に対する撒布超過の時期がずれた関係などもございましようが、預貯金が殖えて民間の貸出しも殖えるというようなことも過去一、二カ月の間にも見られたような現象でありまして、そんなに窮屈に金融が引締まつておるわけでもないのでありまして、丁度こういうような政策の滲透の仕方或いはその時期その時期におきまして適当なる調整作用が加わつておるということは全体の調整を余りドラスチックにしない程度において大きな線が動いておるというふうに私は見ておるのでありましてれいま少し金融の問題にいたしましても、或いは場合によつては締め得るところもそんなに窮屈な締め方でなしにあり得るのではなかろうか、そういうところへ私ども考えておりますような重点的な資金の流し方というような点について、いま少し方法論等においても考慮が払われますならば、その成果は相当に挙がるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。
  42. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今お話ですというと、金融引締めについて若干全体としてじやないが、或る面においてそれを効果的にするために緩和をする面があつていいのじやないか、或いはそつちのほうに今度はもつと積極的に言えば金を流してもいいというところもあるというふうに受取れたのですが、そういうふうに解してよろしうございますか。
  43. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) そうではないのでありまして、例えば金融の引締ということは非常に窮屈だと言われ、又それが現実のように経験されるような段階に例えば過去一、ニカ月の間に行われたようなそういう時一期になると、多少金融が緩むといいますか、財政との関係で金融がちよつと楽になつたようなこともある。そういうように適当に調整作用が働いて来ておるから、余りひどいことにならずに適当なところで政策の大綱が梶を外さずに動いておる。こういうふうに私は過去の或る時期を捉えて見ておるのでありまして、従つて見ようによつてはこれはもつときつくしてもいいので、きつくする面は私は大いにきつくしたらいいと思う。同時に先ほども抽象的に申しましたが、どうしても例えば中小企業等にもう少し金が流れなければならないという面もあれば、そのほうも考えなければならんということで、私の気持としては最近のような状態ではもう少し締めてもいいのじやないか、金融だけのほうから行くと……、そういうふうに考え方を持つているわけです。
  44. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると政府資金の撒布が相当行われておる、従つて金融のほうは中小企業のほうへは少し流されなければならんけれども、他の分はもつと締めろ、こういう御意見ですか。
  45. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) それは一つは根本の国庫と民間の収支状況見通してものを考えて行かなければならないのでありますが、撒布超過が続くならばもつと締めることは当然やつていいと思うのです。
  46. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今の愛知さんのお話を伺つておりますというと、今までとつて来た財政の緊縮、それから金融の引締等が予想通りの効果を現わした、そうすると恐らく今後もその効果を現わして行くだろう、こういうお話ですが、そうするとなぜ、ここで以て総合経済計画が必要かということの問題が一つつて来るわけでありますが、若し愛知さんの言うようにこれが非常に所期通りの効果を挙げておる、なお今後も効果を挙げるだろうというのならば、特にこういう経済計画は要らんはずだ、そうして自由党の従来の方針をただお続けになつておるべきだ、併し私の見ているところ濃いろいろ歪みみという言葉で現わして来られましたけれども、歪みみだか、欠陥だか、或はデフレ政策一つの結果だかわかりませんが、そういうものが出て来ている、それでそれも是正しながら更にもつと生産費の切下げなり、或いは産業合理化なり、或いは又輸出の増進なりということを図り、積極的な施策として総合計画をお立てになつたのじやないかと思いますが、これはやはり今までの財政の緊縮と、それから金融政策だけでは足りないということの結果ではないのですか。
  47. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) それは先ほど申しましたように、内外の諸情勢から言つて大きく考え一つの新らしい転機に日本は来ておる、そういうところから考えていろいろの政策ついて考えるべきところは大いに考えて行こうじやないかということの一環として経済政策もその関係から取上げられておるわけでありますから、例えば輸出の問題を一つ取上げて見ても国際情勢が相当変つて来ているむしろ混乱から安定の状態に政治的に入つているが、それだけに輸出競争はまだ激甚である。そうするとそれに対してこちらで輸入を伸ばして行くためにはより効果的な手を打たなければならないというような、何といいますか、積極面と言えば積極面かも知れませんし、情勢の転換に応じた必要な措置というわけで、そういうふうな政策転換をやろうというわけでございますから、従来のやり方が悪いとか、いいとかいうのではなくして、客観情勢が変つて来ておるところも大きく取入れて行かなければならないと思うわけでございます。
  48. 岡田宗司

    岡田宗司君 従来の自由党のおとりになつ政策というものがいわゆる自由放任の考え方に基いており、そうしてそれの結果随分いろいろなこと起つておる。私が今日本がこういうような経済的な苦境に立つたのには勿論客観的な情勢の変化、朝鮮の休戦以来起りました世界の経済情勢等の変化という面もあるかと思いますが、これを見通して、特に朝鮮休戦後に起る経済的な変化を見通して自由党なり或いは政府が経済政策もしつかりしたものを立てておらんという点に今日の日本の経済の苦境一の根源があるのじやないか。これは勿論全部ではありませんけれども、自由党の今までの考え方なりやり方というものが、やはり日本の経済を今日のような状況にした少くとも一半の責任があつたのじやないか、それは全国的に否定なさいますか、全然自由党の政策政府政策は今日の日本の経済の苦境に何ら責任はないそういうふうにお考えなつておりますか。
  49. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この点は私はこういうふうに考えるのでありますが、特に朝鮮事変以来ということになりますれば、朝鮮事変が起つてから少くとも昨年の年初くらいまでの間におきましては、例えば国民所得の面から申しても、或いは国際収支の面から申しても、内外両面に亘つて非常な私はよい面が日本の経済には多かつたと思うのであります。ただ昨年に入りましてからよく申上げる通りでありますが、国民所得の殖え方も又画期的であつた、それから鉱工業生産伸び方も世界一であつたとかというような国内的には繁栄があつたけれども国際収支の面で非常な逆超を呈したという点から言つて昨年一年の間、殊に或いはその後半期には米作の不作というようなこともそれに加重し、或いは災害というようなことが更にそれに加重された関係もありますが、国際収支の、面において工合が悪かつたということは言えると思いますが、その他を総じて朝鮮事変以来ということでございますれば、私はむしろ非常な成功であつたのじやないか、こういうふうに考えております。
  50. 岡田宗司

    岡田宗司君 大変自信の強いお話なんですが、それなら一例を挙げてお伺いしますが、ともかく日本は朝鮮事変の間に非常にドルを稼いだ。ところが今度急激に減少してしまつて慌てておられるようでありますが、例えばあのときにああむやみに砂糖の輸入をしなくても済んだだろうと思う。ああいうことはやはり自由党なり政府としては立派な施策だつた、これは間違いない施策だつた、そういうふうにお考えですか。
  51. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 砂糖について申しましても、ともかく或る時期においてその時期が物価の面或いは輸出価格の面において相当外国の価格との間において隔りが生じておつたというようなときに、その穴埋めといいますか、調整措置として或る程度国内で高く売れるようなものを抱合せて輸出を認めるというようなことは本来とるべき措置ではございませんが、過渡的には許さるべき措置だと私は思うのでありますが、そういう面に利用されたものについては一概にこれを批評することはできないと思います。それから自動承認制その他の適用によつて見方によれば不必要と思われる品物が入つて来たということは、これはその限りにおいてそういうことが言甘えるのでありまして、それがいけなかつたということであれば、それだけのことについてならばとやかく申すことはないのでありますけれども、併しこれとても自動承認制というようなものが、日本貿易伸長のためにそのときとしては適当な措置としてとられた、それを利用して或る種の不要不急品が入つたとしても、全体から見てこれが失敗であつた、失敗であつたということをあながち断定することはちよつと如何かと思われるわけであります。私は先ほど申しましたように、特に去年一年間だけを通じて見れば外貨の喪失の度合が強かつた、これには止むを得ない原因もあつたろうが、これはまずかつたということは申しておるのでありまして、その全体として昨年の国際収支の面は余りよい結果でなかつたということは言えると思います。
  52. 岡田宗司

    岡田宗司君 今のお話を聞いておりまするというと、自由党なり政府政策は、今日の日本の経済不況に何ら責任を負う必要はないというふうに聞えるわけなんです。併しながらとにかく外貨が非常にたくさん失われたということは事実です。それからよその国に比べまして日本生産費が、コストが非常に高いというのは、これは事実であります。とにかく朝鮮事変が起りましてから暫らくは日本は非常によかつたのでありますが、朝鮮の休戦の成立する前からもうぼちぼち兆候は現われて来た、そのときたなぜ政府国内の物価の引下げ、或いは輸入についてもつとしつかりした政策を、貿易についてもしつかりした政策をとらなかつたかということを考えて見ますというと、責任がないと言つてのほほんとしておられるものじやないと思うのですが、私は今日自由党がこういう経済政策を出し、又政府がこれに基いて薪経済政策を行おうということは、やつばり内心はしまつたということをお感じになつているからだと思うのですが、その点はどうですか。
  53. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) その点は今年一月の十九国会の休会明けに政府側で政府政策説明をいたしましたときにも申上げておる通りでありまして、先ほど来申しておりますように、昨年中のいろいろやりましたこと毒返つて見ると、その結果が、例えば消費インフレ的になつておつた、これには財政政策についても、或いは為替政策等についても反省すべきところが多いりということを率直に申しておるのでありまして私どもとしてはその点についての責任は大いに感じておるわけであります。
  54. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に今度の新輸出計画についてお伺いしますが、これで見ますというと、とにかく東南アジアヘの輸出を非常に増大しようということが考えられております。そしてこの四頁の(3)にありますけれども、対中国貿易について米、大豆、石炭等市場転換考えて約七千万ドルの輸入計画し、これと同額輸出を期待している、こう書いてある。今中国貿易は御承知のようにアメリカのほうからいろいろ干渉されて、そして強い制限を受けております。これはその制限が緩和されて行く、或いは日本のほうから積極的に緩和を求める、その結果緩和されると考えてこういう数字を私は計上したものだ、先ほど石原君からもそういうようなお答えがあつたのですが、そうすると政府の対中国政策というものは、今のような考え方であつてはならないはずだ、転換しなければならんはずだ、これはあなたの直接タツチされる問題じやないかも知れませんけれども、吉田内閣全体としてこの問題についての転換ということを考えなければこういう結論は出て来ないのですが、中国に対する外交政策なり、或いは又中国との貿易について今までの考え方をお変えになるということを前提にしておるのですか。
  55. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これはすでに実績でも御承知の通りと思いますが、大体昭和二十八年中の中国からの輸入は二千万ドル弱と記憶いたしておりますが、それに対しまして昭和二十九年の一月から五月までにすでに千九百万ドルの輸入実績として上つておるのでありまして、大体去年と今年とを比べますと、少くとも輸入は二倍以上になる見込でありますが、これは私が一月に就任いたしまして以来でも数回に亘つて禁輸品目を削減しておりまして、只今では御承知のようにココムと大体同じ程度のことになつておるわけでありますが、更に私どもとしてはこの禁輸品目の削減ということに、引続きできるだけの努力をいたしたいと考えておりますが、それから現行の制限の下におきましてもなお中共との間の貿易を展開いたして参りますためにはいろいろの経済上の方法論だけでまだ手があるように思いますので、そういうことにも勿論努力をして参りたいと考えております。  それでこの七千万ドルの問題でございますが、大体輸入を中共のほうに転換し、そうして米、大豆、石炭等を七千万ドル程度輸入したい、しかすればそれだけの輸出考えなければならぬ、こういうような考え方でありますが、果してここまでやるのにはどうやつたらやれるかという考えを進めて行きます上においては、確かに御指摘のようなこの禁輸品目の解除等について一段の努力を進めなければならぬのでありまして、この目標の達成は相当に困難のように思いますが、何とかここまではやりたいという目標を掲げたものであります。  それからなお附加えて申上げたいと思いますが、私のこれは一個の研究でございますが、仮に徹底的にもう中共との間にはこちらからの輸出制限がないというような場合を考えて見て、今考えられる輸出輸入の規模はどのくらいかということでございますが、なかなかこれは一億ドルまでは持つて行けないように思います。これは九千万ドルというようなところがせいぜいのところではなかろうかと私は一個の研究ございますが、そういうふうに思つておりますが、その面から行きましてもこの七千万ドルというものは相当に困難な努力の目標であると思つております。
  56. 岡田宗司

    岡田宗司君 今のお話ですと、輸出禁止になつている品目の緩和とか、或いは取引上のいろいろな技術的な措置で以てこれくらいは困難であるけれども、これくらいは逆に達せられるのだ、こういうことをお考えなつておつて従つて根本的に中国に対する外交政策というものの転換ということを御考慮になつておらんようですが、併しながらジュネーヴ会議以降の状況を見ておりますと、これはどうしても今までの中国に対する考え方を変えなければならぬ事態になつておる。池田幹事長が中国に対する考え方を変えなければならぬというようなことを言つただけでも、アメリカはちよつと騒いだようでありますが、そういうようなここを考えないで技術措置だけで以て少くとも中国貿易を七千万ドル程度まで持つて行ける、こうお考えなのですか、或いは今の吉田内閣のとつておる中国に対する考え方を変えなければこれまで持つて行けないというふうにお考えなつておるのか、そこはどういうふうにお考えなつておりますか。
  57. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これはここにも端的に書いてございますように、この際中共向け禁輸の緩和についてはかなりの措置が講ぜられるものと想定したと書いてある通りでございまして、相当程度の禁輸緩和の措置前提なつておる。その相当程度の禁輸緩和ということが経済的な措置というのか、或いは政治的な措置というのかということについてはいろいろの御議論があろうかと思いますけれども、ともかくもこの見通作業がかなりの措置が講じられたということを想定して作つておるわけでございます。それから同時にくどいようでありますが、今私自分一個の考えでありますけれども相当今度は逆に徹底的に緩和された、政治的にも何にも相当にしこりがなくなつた、という状態を考えても、差当りのところは九千万ドル程度以上を出ることはなかなか困難ではなかろうかと思いますので、その点はそういうことで一つ御了承願いたいと思います。
  58. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと禁輸品目の相当の緩和ということはアメリカに対する外交交渉が相当進められる、強力に進めておるということを前提としておるように思われるんですが、そういうふうに解釈してよろしうございますか。
  59. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これはアメリカというお話がございましたが、実は現在の中共に対する輸出禁止の措置は先ずココムと全く同じ線にならつたと申しても支障ないのでございまして、アメリカというよりはむしろ西欧諸国の協調ということの枠内でやつて行かなければならない問題だと思います。
  60. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあお逃げになつておりますけれども、今までのココムのその禁止品目の問題にいたしましても、それを西欧諸国に押付けた問題にいたしましても、これはアメリカの力なんです。そして日本中国との貿易をいろいろと干渉しおるのもこれはもうアメリカであることは周知の事実なんです。そうするとこれを緩和させるということは、やはりアメリカに向つて日本相当強腰で交渉する、或いは情勢の変化によつてアメリカもどうも日本に対して中国との貿易をこれくらいに認めなければならんということで、アメリカの方針が変化するかどつちかだと思うのです。で、まさか黙つて向うの方針の変化するのを待つていたわけじやないと思うのですが、これはやはり日本政府のほうで相当強く推し進めておられるんですか、交渉は。
  61. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この中共貿易につきましては、御承知のようにもう大分前からアメリカといわずできるだけ日本の禁輸品目がもつと削減されるようにということの努力については常に弛まず努力を続けておるわけであります。例えば亜鉛鉄板のごときが輸出ができるようになりますると、これは一品目でありましても札当効果があると思いますので、特にこういう点については弛まず努力を続けておる次第でございます。
  62. 岡田宗司

    岡田宗司君 西欧諸国は相当中国に対して輸出をやつております。又そのためには例えば貿易の使節団を送るとかいうようなことをやつております。これは必ずしも中国を承認した国ばかりではない。で実際今の状況では日本は非常な立遅れだ。この中国貿易に対する立遅れを回復しなければならん。どういうような措置でこの立遅れを克服されようとしますか。
  63. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) その御批判も御尤もと思うのでありますが、只今申しましたよように、我々としては弛まず努力を続け、又好機を捉えまして少しずつでも対中国貿易が幅が広くなるようにということについては今後ともできるだけ努力をいたしたいと思います。
  64. 岡田宗司

    岡田宗司君 この中国は私が申上げるまでもなく貿易が国営でありますから国と交渉しなければならん。そこで日本といたしましては、何らかの形の貿易使節団を送る、或いは向うの貿易の代表者を日本に招くというような措置をおとりになるつもりはございませんか。
  65. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この点はいろいろの関係もございまして、只今すぐにそういう措置をとるということは現在計画いたしておりません。
  66. 岡田宗司

    岡田宗司君 いろいろの関係というのは、アメリカのほうの顔色を御覧になつているということでございますか。
  67. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは率直に申しまして必ずしも政治的な話合いとか、或いは使節というような恰好で行きましても必ずしも具体的な成果を挙げ得ない場合も多いようでございます。それから又具体的の問題になつて参りますと予想され得る条件というものが直ちに日本としては充足し得ないようなものも想像される向きもございまして、そういうような点についてもう少し慎重なる段取りを検討いたしたいと思つております。
  68. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、まあ極く近いうちにはそういうことはないが、或るところまで来たら、貿易使節団を送つてもつと向うと直接話合つて貿易の途を講ずるという措置もとられると、こう解してよろしうございますか。
  69. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 将来の問題に対しまして、今確たることは申上げかねますけれども、そういうことも考え得ることだとは思います。
  70. 奥むめお

    ○奥むめお君 この黄変米の問題で厚生委員会、決算委員会、いろいろ各委員会で配給禁止の決議をしておることは御承知のことと思いますけれども、たまたま今賠償交渉の課程におありになる向うとしては、輸出の一番重きをなすものといつてもいい米にけちをつけられて、何か先行き問題が起つて来ないかということ、又向うとしては、日本は安いものを、百悪いものをあえて買つているのだから、当り前だというふうな考えでいるのか、どつちなんです。
  71. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) このビルマの御承知のように賠償問題の交渉は、只今政府といたしましては、外務大臣に一元的に窓口をいたしまして、話合いがなされておりますので、その間の微妙な雰囲気等については私案はわからないのでありますが、この黄変米の問題と賠償の問題とがしかく密着な関係にあるようには私は聞いておりませんが、併しこれは何分その当の当事者でございませんので、確たる御返事はちよつと申しかねるような状態でございます。
  72. 奥むめお

    ○奥むめお君 それでは政府は配給をやめる意思はないと、こうはつきりしておりますが、まあ但し科学的な基礎がはつきりしたら、それによつて基準をきめると、こういう但書は附いているわけですけれども、将来ともにこれだけ国民的な問題になつておりますし、非常に病変菌の多いことが今明らかになつている、これを輸入品の大きなものとして将来も期待していらつしやるつもりでございますか。
  73. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは将来におきましても何分輸入に期待しなければ、現在の配給率は維持できないわけでございますから、買い方その他につきましては、細心の注意を、更に一層払うべきものとは思いますけれども、やはり将来におきましても、外米の購入ということは続けて参らなければならないと考えております。
  74. 奥むめお

    ○奥むめお君 私はこういうことを伺いますのは、審議庁長官としての国民全体の立場を背負つていらつしやる、そのためにはつきりしておきたいと思うのでございますけれども、国民は食べたくない、食べない、政府は、いや、配給するのだ、こう言うていらつしやる。そういうふうなものを国民は食生活、量としての食糧の配給の予定を立てるために買わなければならない。日本輸出がなかなか伸びないので、輸入を減らすよりほかにない、はつきりこの線は出ておりますのですが、そういう中で、ほかに方法がない、又例えば病変菌の検査に、二十六年から出ておりますが、二十六年、七年、八年、又九年と出ておるわけですが、会計検査院では僅かに三百万円の予算を請求して、予備費の中から直接買付の現地へ行つて調査したい、こう申出たけれども、これを否決されているのですね。僅かに、国民保健の上では非常に重大なこの問題に、三百万円を節約しなければならないと言われる政府が、私は飽くまでこれは買わなければならんのだ、又配給して行かなければならんのだ、こういう立場をお持ちになるといたしますと、国民の総意と非常に違うと思うのですよ。まだほかに、配給米を、外米をどうしても割当てなければならないという、それよりほかにはもうないのだということが、私どもに納得の行く御説明がないと、そこに無理がある。如何でございますか。
  75. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 私は先ほど申しましたのは、現在の制度の下におきましては、どうしても数量的に需給がバランスいたしませんから、やはりビルマ米、或いはタイ米、相当多量に今後も入れなければならないと思います。併し一方において、これは私一個の考えではございますが、米の配給を或る程度数を減らすとか、その代りに小麦粉その他の配給をするとか、或いは更にもつと根本的な食糧需給対策を大規模に進めるとかいうようなことについては、この際大いに考え直さなければならないと思いますが、併しそれらのことをやるにいたしましても、全然外米の輸入をしないで済むかというと、遺憾ながらそうでないのじやなかろうか。従つて取りあえずのところは病変菌の少くとも疑いのあるようなものが入らないようにするためのいろいろの改善策が先ず当面のところ必要じやなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。将来の問題としては、私は何とかして粉食奨励や、その他の増産対策及び食生活の改善ということと相待つて、もつと国際商品で以て外国から輸入するにしても、日本の国民の食生活を確保するように仕向けることがいいのではないかというふうに感ずるのでありますが、併し余りそれを今すぐ打出すことができるかというと、そうは行かないとこるに悩みがある。又同時にビルマやタイの諸国といたしましては、日本に対して米を輸出するということが、向うからいつても望ましいことでもございましようから、その辺のところはひとり日本国民の食生活の問題のみでなく、そういつたような面まで併せて考慮する必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。
  76. 奥むめお

    ○奥むめお君 例えばビルマからのお米の返りとして輸出しておりますね、そういつたものを、やはりお米を買わないと、買つてもらえないから、それで買うということになりますですか。それとも何かはかの理由になりますですか。
  77. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) ビルマの場合におきましては、日本からの輸出がビルマからの輸入に比べて非常に少いのです。従つてお話になるようなことはないのです。むしろこちらからもつと物をうんと買つてもらわなければ、あれだけの米を輸入してバランスがとれないのです。それからセイロンにしても同様でございます。
  78. 奥むめお

    ○奥むめお君 次に私は、これは農林省に余計関係のあることですから、深く申上げないでおきますけれども、この新経済政策の大綱を見ましても、卸売物価が八%、九%下つた、もう緊縮政策を打出されてから半年になるのでございますね、私ども家庭の声から見ますと、数字的には六%が八%になり、九%になつて卸売物価は下つたと出ておりますが、下つたのは販路を考えない生産の増強のために安くなつたということが大きな事情だろうと見られるのですね、その証拠には、家庭生活から見まして、バターとか、繊維とか或る二、三のものは下りましたけれども、非常に物価が高くなつて苦しいということはちつとも変りない、むしろ強くなつているのです。もう半年辛抱したら下るのだ、こういうふうに今まで言われておりますけれども現実に小売物価は下つておらないのです。これは私どもから言えば、こういう状態の中で輸出産業に非常に重点的に資金面、或いは金利面で手配をなさるということになれば、輸出産業でない国内のもので、又それが困りはしないか。近い例で申しますと、米の問題ですね、わざわざ高い外米を買わなくても、もつと米の内地の生産のやり方、或いは集め力というものに、資金面でもいろんな面で、税金の面でも手配があれば、私は外米の輸入というものはほかに減らされるし、又そう外米の輸入考えなくても日本が非常に困るということはないと、自分たちはそういう見通しを持つておるのですが、そういう面でも輸出産業……、何でも貧乏人は、あるものを裸になるまで売らなくては困るから売ろうとしますけれども、そこにやはり国内の問題と重さ軽さというものを考えてもらわなければならん面が非常にあるということを、物価が安くならない面と一緒に合せて私たち考えておるのです。そういう面で如何ですか。
  79. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは今申しましたですが、誠に御尤もなお考えだと思うのであります。若しその外米を買わなくても済むような状態でありますならば、大分これは日本輸出入計画等も相当根本的に変つて来るほどの大きな問題であると思うのでありまして、成るほどそういうふうにしたいとは思いますけれども、ここ一、二年、或いは三年、四年の間にそういう状態に果して持つて行けるかどうかということにつきましては、にわかに確信を持つてお答えができないように思いますが、実は私どもも先般来やはり非常にこの点については悩んで考えておる点でございますから、更に一層よく研究はいたして見たいと思います。
  80. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 銀行局長が出席しておりますので、大分待つておられますから、丁度長官のおられるときに、糸口をつけるという意味で、今の話のあつた、どうも物価が実際においては小売物価は余り下らない、卸売物価の下つたということについても、金融の量的規制による投売的価格引下げであつて、本当にはコストの軽減というようなことから実質的な物価の値下りではない、こういう批評も行われておるのですが、そういう点について、長官はどういうふうにお考えなつておるか。又そういうことを受けての恐らく金融の質的統制というようなことが言われ出しておるわけですが、その問題とからんでのまあ金融の各論に入つてどういうふうなことを考えておられるか。又先ほどの話では、自由党の政調会案というものが今朝新聞に発表されておりますが、先ほどの長官の話では、細部の点については政府のほうとまだ調整はできておらないというようなお話であつて、大綱的には大体同じような考え方で進んでおられるのじやないかと思われるように受取れたのでありますが、その中で経済自立臨時緊急措置法というような法律を制定し、それには或る程度金融統制というような点も含まれておるようでありますが、この国家総動員法的な法律を出し、そうして政府に経済施策を全面的に委任し、その中で金融についても曾つて資金調整令のごときものをやるつもりなのか、そういう点についてはどういうふうに考えておるのか……。  ちよつと速記をとめて下さい。    [速記中止〕
  81. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 速記を始めて下さい。
  82. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) それでは只今お話がありました点についてお答えいたしますが、先ず物価の問題でありますが、前々からも申上げておりまして私どもも十分関心を持つて見ておるのでありますが、井上財政の当時におきましても卸売物価の下落が小売物価のほうに影響して現われて来たのは大体半年乃至それ以上かかつておりまするので、そういう関係も消費者物価の下落がまだ十分に行つてないこの時間的な滲透の度合かとも考えておるわけでございます。それからいま一つは、統計といいますか、指数の取り方、方法にも関係するわけでございましようが、小売物価、消費者物価、生計費等のあれにおきましては、申すまでもございませんが、食費の関係が相当ウエイトを占めております。この小売価格が簡単に天候に支配されたり、或いはその他の原因等によりまして、そのウエイトが高いだけに下落の度合がさほどでない。これが全体の指数の構成上にかなりの影響を及ぼしておるのでなかろうかと思います。それからいま一つは、御承知のように、最近デパートその他の特売というのが非常に行われておるようでありますが、これは実質的には下落になつておるはずなのでございますが、指数には現われていないということも言えるかと思います。それからコストの問題でありますが、これは各企業に亘つてコストの計算はは、いつも問題になりますが、なかなか政府としても確たる資料をつかみ得ないのでありますが、例えば日本銀行等の調査などで見ましても、自信のあるものとは勿論日銀でも言つておりませんが、昨年の暮から最近にかけての鉄鋼その他基幹産業についてのコストの調べをして見ると、大体一割近くのコストの低減というものが現われていそうに思うというような調査も出ておるようでございます。これ又小売との関係と同じような状況かと思いますが、順序としては、先ず物価が下がる、従つてコストに影響するというようなことになる関係で、今後こういうふうな関係はもう少し顕著に現われて来るのではなかろうかと思います。  それから勿論各企業コスト引下げ合理化というようなことは、当然これから又卸売物価下落というような情勢を背景にしていろいろの手が打たれて行くわけでありますから、こういう面にもだんだんと影響がかなり明らかになつて来るのではなかろうかと、こういうふうに考えておるわけであります。それから資金調整と緊急立法の問題のお尋ねでございますが、実は、この自由党で取りまとめました案も、まだ十分具体的には政府側として説明も聞いておりませんので、例えば金融の質的調整をするといたしましても、その方法をどういうことにするのであろうかと、又そのいわゆる質的調整を緊急立方法の上に調い込むというところまで考えておるのかどうかというような具体的な点については、この立案者の気持も十分にまだ聞いておりませんので、それを十分に打合せましてから、それに対する政府の態度というものをきめたいと思つております。従つて、今日のところはお答えするまでの用意ができていないような次第でございます。
  83. 岡田宗司

    岡田宗司君 それに関連しまして、まあ自由党のほうの案と政府側とはまだ十分な打合せができておらんから今日政府としてまだそういう点について具体的なことを言う段階ではない、これはまあそれでいいです。ところが先ほど大臣は金融の引締の問題について、或る面についてはもつと強くやりたいのだというようなことを言われました。又、中小企業等についてはまあもう少し緩和してもいいというようなことも言つておる。そこで自由党のこの経済政策との関係を抜きにして、現在政府はどういうふうな金融措置を具体的に行おうとしておられるか、どういう政策をお持ちになつてをられるか、これはまあ銀行局長もおられるのですが、具体的な措置は十分私は説明を聞かれると思うのですが、この点一つあなたからでも、銀行局長からでもいいから、聞かせて頂きたい。
  84. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) それでは私から申上げたいと思いますのは、先ほど申しましたように、或る程度質的の調整ということが私は考えられていいのではないかと思いますけれども、併しこれには方法が幾つもあるのであつて、例えば従来よりも開発銀行とか、或いは中小企業公庫とかに対する資金源を充実するということになれば、その分だけは完全な何といいますか、コントロールされた目的のところにその金が流れるわけでありますから、これでも相当程度に目的は達せられる。私はこれも私見てありますが、戦争前から行われておつたような産業に甲、乙、丙の順位をつけるというような機械的なやり方は余り実効を挙げないのではなかろうかというふうに考えますので、質的調整と申しましても、例えば輸出金融の優遇であるとか、或いは合理化資金の優遇であるとかいうような、各個別に日銀等を通じて措置をすることによつて、先ほど申しました機構を通ずるものと併せて相当の効果を期待し得るものもあるのではなかろうかというように考えておりますが、この点は更に大蔵省等とも十分研究を積みました上で具体的な成案を考えて見たいと思つております。
  85. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ質的統制結構でございますが、まだ実際にパチンコ屋に大分資金が流れて行くというようなこともあるのです。これは全体からは少いかも知れませんが、そういうことも行われておるわけです。なかなか質的統制もむずかしいことだと思うのですが、今のお話を聞いておりますというと、開発銀行等を通じてやるというやり方、或いは合理化とかその他目的を設定してそうして日銀とよく話合いをしてといいますか、その上で以つてやる、こういうお話のようでございますが、現在相当滞貨金融も行われているように聞いているのですが、あれなんぞはどうお考えですか。
  86. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 滞貨金融がどれだけ今行われておりますか、的確な資料を持つておりませんが、最近急激に滞貨金融の残高が殖えているようにも思いませんが、その辺のところは一つ銀行局長から現状の御説明を願いたいと思います。
  87. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 銀行局長から今の点について……、政策転換じやないかも知れないが、質的統制ということが相当クローズ・アツプされておりますが、最近の事態に鑑みての今岡田委員からの質問に答えるような意味で、今後金融政策をどう持つて行こうとあなたの立場として考えておるか、一応概括的に話して下さい。
  88. 河野通一

    説明員(河野通一君) 最近の経済情勢に対処する金融政策の基本的な考え方の問題でありますが、これは先ほど日経審長官からもお話のありましたように、私どもといたしましては現在その具体的な方策についてはいろいろ研究をいたしておる段階であります。併し基本的な考え方としては、現在まで約一年近くの間とつて参りました一連の金融施策、財政方針というものについては、その線は堅持して参りたいという考え方に立つております。ただその間においてこれはただ平面的にこの問題を取扱うならば、おのずからいろいろな意味ででこぼこが起つて来る。そのでこぼこについてはこれは当然調整しなければならない。よく言われる経済の或る分野にしわが寄るといつたような問題については、これをできるだけ調整をとつて行くということの必要性は十分考えております。この春以来私どもが金融について単なる量的の引締ということだけでなしに、これに対して質的な配慮を加えて行かなければならんということを申して参つておるのであります。この意味は今申上げましたような点から単なる最的な調節というようなことに対していろいろ起つて来るような、何といいますか、摩擦、或いは副作用といつたようなもの、或いはでこぼこといつたようなものをできるだけならして行くということの配慮にほかならんのであります。然から現在質的な調整ということに対して、政府は直ちに法的な統制を考えておるか、例えば先ほど御指摘がありましたが、戦時中から終戦直後までありましたいわゆる資金調整法、そういつたふうな考え方に立つた法的規制というものを一体考えているかという問題であります。具体的に資金調整法的な規制方法がいいか、悪いかの問題は、これは技術的にはいろいろ問題がありまして、殊に現在のような時期において、ああいつた考え方による個々のケースに対する認可、許可、或いは承認というようなことで問題の質的な金融の規制をやつて行くことがいいか、悪いかということにつきましては、相当考えなければならん問題がある。併しその問題は一応抜きにいたしましても、現在のところ直ちに法的な規制という線にまで行く必要があるかないか、この問題について私どもは現在まだ的確なる結論に到達いたしておりません。現在のところでは、そういつた個々のケースに対して認許可というような行政処分を以て臨むというような行き方は、この際として少くとも直ちにそういつた制度をとることが果して適当であろうかどうか、私はこれはまだ私個人の意見として申上げたほうがいいかと思いますが、私はまだそういつたところにまで踏切りをつけて行くべきではないと考えます。  それから第二にこれらの問題を法的に規制をして行くということに対しましては、そういつた金融というものと、或いは産業計画といいますか、産業政策といいますか、そういつたものとの間の調節、或いはその表裏一体の関係というものをどういうふうにしてつけて行くかというような問題を十分に考えて行かなければならんと思うのです。例えば先ほどもちよつとパチンコ屋の例が出たのでありますが、パチンコ屋の例は一応抜きにいたしましても、私どもは一般のビル建築に対して金融をつけてはならんということをやかましく言つてつておる、これは具体的に言つておる、併し現実にビルが建つておることは事実であります。而もその金融が直接には出ておらなくても、金機関からその資金がいろんな形、権利金の形であるか、運転資金の形であるか、いろんな形で出ておる。勿論その点について金融機関が悪意といいますか、当然そういうことになるということを知つて金を出しておるという場合には、これは当然金融機関の責に帰すべきものと思いますが、多くの部分においては、悪意というか、そういう情を知らないで、結果として、そういうことになるという場合が多いように私は思うのであります。これはいろいろな御意見もあることでありますが、私はそういうふうに見ております。従いまして一体それではビル建築自体を資金の面から抑えるということについては、これは法的に仮に行うにいたしましてもおのずから限界がある、私はこれを率直に且つ的確にこの問題を解決する方法はどういうことかと言えば、ビル建築を物理的にとめるということであろうと思つております。そういうことができるかできないかの問題はいろいろ他の行政の部面において問題があると思いますけれども、そういつた観点から金融なり資金なりというものの法的な統制を行なつて行きます。場合におきましては、そういつた実体面の政策なり、あるいは計画なりというものとの関係をどういうふうにして表裏相吻合さして行くかといつたような問題が当然に起つて来ると思うのであります。その結果先ほど経審長官からもお話がありましたように、例とし挙げられたのでありますが、例えば開発銀行の資金というものをどういう形で調達するか、これを現在やつてつておりますような、狭い意味じやありませんが広い意味の財政資金というルートだけに限つてその資金源を調達して行くことが現在まではとられておるのでありますが、これを更に市中の資金からそういつた開発銀行の資金、或いは中小企業金融公庫の資金といつたようなものを調達することのよし思しという問題、こういつた問題についても十分に研究はいたして参りたいと考えております。併しこれらの問題につきましては、財政金融を通ずる基本的な考え方及び基本的な方針に反することなしや否やの問題等と非常に重要な関係があるのでありまして、これらの問題を総合的に睨み合せながら最も的確なる結論を得ることが絶対に必要であろうと考えております。現在まだ検討の過程にございますので、結論的なことを申上げることができませんことは甚だ遺憾でありますが、考え方の問題のトピツクとしては今申上げげましたような観点に立つて問題を検討しておる、こういう次第であります。
  89. 岡田宗司

    岡田宗司君 河野さんに伺います。どういう種類のところへ金の流れるのを締めて行きたいとお考えですか。例えばビルとか料理屋とか、ああいうところは勿論でしよう。それから滞貨金融もお締めになりたい、こうお考えなんですか。それから農村もお締めになりたい、こうお考えですか。
  90. 河野通一

    説明員(河野通一君) 農村の資金を全部抑えるということは考えておりません。私ども資金を抑制するという問題につきましてはいろんな形の問題がありますが、先ず大きく分けますと、設備資金と運転資金というふうに二つに分けられます。設備資金のほうはこれは戦前からやつて参りましたいろんな金融統制、いわゆる金融統制の経験からいたしましても、まだ設備資金のほうの統制ということは割合できるのであります。然るに運転資金、而も金融機関から出ている運転資金の規制ということは、なかなか具体的に法的に行うということについては困難である。これはおわかり願えることと思うのであります。併しながら私どもは、だから運転資金というものは野放図に放つて置いてよろしい、どんなところへ出てもよろしいというように考えておるのではございません。今お話のありました、例えば料理屋に金が出たり、或いはパチンコ屋に金融機関の金が出るということはこれは当然そういうことがあるべきではない。私は、これは又お叱りを受けるかも知れませんが、直接にはそういう方面に金融機関から金が出ているとは思いません。これはいろいろな形で間接に或いはそういうところへ出ているかも知れませんが、私は直接には出ていないと思うのであります。でお話の、然らば一体農村の資金を締めることを考えているか、こういうお詰でございますが、これも今お話申上げましたように、農村における堅実なる生産資金、これは運転資金が大部分でありましよう。設備資金につきましては、恐らく一般の民間の金融機関よりもむしろ政府機関のほうから出ているものが多いと思いますが、一般の生産資金こしての農村の資金というものが私は日本の金融の中の順位において十分に順位を高く考えて行かなければならんものであるということはこれは申すまでもないことと考えております。現に農手の制度その他の制度を通じて、これらの一連の金融については相当程度どもは優遇の措置を講じて参つておるつもりでございます。勿論その度合が足りないという御意見はあるかと思いますけれども、そういつた観点で農村における堅実なる生産資金についてはこれを確保することを私どもは十分に配慮いたして参りたいと考えておりますし、又今後においてもそういうことは考えて参りたいと思つております。併しながら農村における消費資金と申しますか、こういつた資金の面におきましては、私はこれは農村といわず都市といわずでありますけれども、できるだけこういつた資金は詰めて頂きたい。そうしてそれができるだけ金融機関を通ずる蓄積となつて帰つて来て、それが国の緊要なる資金という形で更にこれが放出される、それが生産資金として緊要なる生産の充実、或いは日本経済自立すると申しますか、そういつた方面に積極的に充てられるというふうなことになることを望みたいという考え方におきましては、或いは農村の資金において更に消費を詰めて頂いて、その資金が貯蓄に廻るように願いたい。こう申上げることはこれは決して農村に対して非常に失礼なことを申上げているとは私は考えておらないのであります。今後におきましても、これは都市においても同じでありますが、できるだけ消費資金というものは詰めて消費を抑制して、そうしてそれらの蓄積によつてつて来た資金が最も国の経済を再建いたして行きまするために必要な方面に更にそれが投下されるということのルートをできるだけ確保して行きたいという念願におきましては、今後においても更にそういつた考え方を推し進めて行くということが必要であろうと考えております。これらも或る意味におきましては金融の流れを質的に考慮して行くということの一つの現われだろうと考えておる次第であります。
  91. 岡田宗司

    岡田宗司君 今農村の資金を詰める考えがあるかということをいろいろお聞きしたのですが、消費資金においては引締めると、こういうお話であつた。ところが今の日本の農業経営の状態から行くと、ああいう零細農で、近代的な経営をやつておるわけではございませんので、生産資金と消費資金というものが区別されておらん、ごちやごちやになつておる、これは現実です。この場合消費資金を締めるということについて、どういう具体的な方法をおとりになるのですか。
  92. 河野通一

    説明員(河野通一君) 私が今申上げましたのは直ちに何かそういうことを法的に規制をするということを前提にして私は申上げているわけじやない、この点は消費資金というのは、大きく分ければ設備資金か運転資金かと言われれば、恐らく運転資金ということになると思うのですが、この消費資金というもの、運転資金というものの法的規制が如何にむずかしいかということを前提にして私は申上げておる。従つてこれらの消費資金を如何なる方法で強制力を以て規制をするということが果してうまくできるかどうかということはこれから十分に検討しなければならない問題であります。併し私たちはそういつた資金を法的に強制的に規制をして行くというのでなしに、何らかの方法で以てそういつた資金が或いは国民運動でありましようか、或いは税制その他の関係から或る一つの要因を作つて行くということでありましようか、いろいろ方法がありましようと思いますけれども、法的に強制してそれらの資金を圧縮するというのでなくしてこれらの問題を更に解決する途は私はあるのじやないか、勿論これは法律を以て強制して行くようなそんな効果がはつきり現われるものではございません。併し現在私どもがいろんな形で、資本と申しますか、そういつたものの蓄積を各方面にお願いいたしておりまするそのラインを進めるということも、私どもは今申上げましたような方法として、消費資金をできるだけ抑えて行くという一環として一つの効果があるかと私は考えておりますが、必ずしも今御質問がありましたように、直ちにそういつた資金を法律を以て強制して引揚げて行くというようなことを今直ちにやろうと考えておるわけではないということを申上げたいと思います。
  93. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ法律で引揚げるという方法はとらない、これはよくわかつておりますが、併し例えば相当強制的な方法を考えられておるのじやないかと僕は思うのです。例えば本年度産米の供出代金が農協を通じて出される、その際にそれらの一部を法律を以てではないけれども、強制的貯蓄をする、そういうふうなことを考えておられるのじやないですか。
  94. 河野通一

    説明員(河野通一君) 法律を以ては勿論考えておりませんが、今お話の点は例えば農協で米を売つた代金、これが現在まで、これは数年前から実行しておるのでありますが、一応貯金の形で上つて来る、併しこれは御承知のように全部引出しを制限するとか、そういうことはやつておりません。一遍貯金の形で吸上げたものはいつでもこれは払出すという形になる、そういつたふうなことは現在もやつておりまするし、今後においてもそれをやめるつもりはございません。併し私はこれは別に強制するという意味ではございませんので、その程度のことは今後においても続けてやつて行つて差支えないと考えております。  それからもう一点、これは今御質問のうちにはそうはつきりはございませんでしたが、これは新聞紙上に出ておりますが、例えばこれから第三四半期にかけて相当な財政の撒布超過になる、而もその幾つかの大きな原因の一つがやはり食糧の、米の収買代金という形で出て来るということが一つの大きな、これだけじやありませんが、幾つかの大きいアイテムの一つじやないかと考えております。従つてそういつたものを収買いたして参りますために政府が必要とする資金を調達する食糧証券、これを何らかの形で民間において消化して行くことが財政の撒超による金融への影響をできるだけならすという議論があるわけです。この問題について今お話があつたのであるとすれば、この問題は今研究いたしております。併しこの問題も飽くまで私どもは強制をして行こうとは考えておりません。殊に米の代金というものの動くルートの中枢には、これは御承知のように農林中金があるわけです。而も農林中金に上つて来る資金というものは、これから数カ月の間非常に大きくなつている。これらの資金を今申上げたような食糧証券との関係においてどうやつて調節して行くかということが技術的に一番大きな問題になつて来る、併しこの点については農林の系統金融一機関の間における利益を守るという一つ目標もありますので、これらとの関係の調節ということは非常にむずかしい問題でありますから、具体的にはこれらの食糧証券の金利その他の条件をどうして行くかということが一つの大きな問題であろう、これを非常に低い条件で無理やりに農林中命に持たせるということになりますと、そこに非常に大きな農林系統の金融機関の間の利益を害するという問題がある。これらの問題について更に私どもは具体的に研究を続けて参りたいと思いますが、いずれにいたしましてもこれらの問題について私どもはむちやな半強制的な措置をとつて参りたいということは毛頭考えておりません。できるだけ話合いによつて持てるような条件を作り上げた上で、そういつた措置をして参りたい、かように考えておる次第であります。
  95. 岡田宗司

    岡田宗司君 農村に政府が支払う供米代金の一部を法律によらないでも現在以上に強く抑えて行くことが可能である。それから又農林中金等の集まつて来た資金についているいろいろと操作をされることもこれは容易だと思う。併しそのために政府が今考えておるところだと思うのだが、農村が少しインフレ的傾向にある、こういうことからむやみなことをされて、そしてその生産が、一方において食糧増産をやろうというのに、片方において金融的に締めて行く。そしてなかなか増産の実が挙がらん。こんなことになつて来ますと、これは農村からも非常に反撃が起つて来る、大きな政治問題にもなつて来ると思う。ただ農村のほうに資金がたくさん流れるからというので政治的考慮も払わず、農民の意向も尊重せずして無理にあそこが一番引締めいいからと言つて引締めるようなことはしないでもらいたい、こう思います。  それから私もう打切りますが、今日の読売新聞に出ている「新輸出計画最終案成る」これは私はこれの全文が今日提出されるものと思つておつた。ところがこれが出ておらん。「六期待産業を選別」とかなんとかというふうにかなり具体的に出ている。この新聞に出ておるものは、これはあなたのほうで作られたものの写しですか。
  96. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 実は読売新聞に出ておりますのは、先ほど御質問がありましたので、通産当局に聞きましたら、通産当局で持つておる資料の二部が抜けて出たという話でございます。それで今日我々といたしましては今お話の新聞に出ております元になつたと思われる資料は持つておりませんが、今日は実は通産委員会がございまして通産委員会で配付されると同じ資料を一緒に作つてもらいまして御配付申上げた。従つて今お示しのような新聞紙上に出ております部分が抜けておりますが、至急にそれの元になつ資料があると思いますので、通産省と打合せましてそれがございましたならば、御必要がございますればそれも次の機会に資料として御配付申上げたいと思います。
  97. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 明日までにこれだけはつきりしているのですから何とかお願いいたします。  ただ銀行局長に一点聞いておきますが、今日は理財局長が出席しなかつたのでその点十分聞けなかつたのですが、国庫対民間収支が非常に当初とは変つて来ました。その必然の結果として、金融だけの点から考えるともつと締めなければならん、現在程度の引締でもすでにでごぼこのしわが寄つて来て成る程度調整しなければならん、国庫対民間の収支が当初と大分違つたということと関連して今の金融政策のあり方について、例えば食糧証券を民間に引受けさせるというようなことも一つのその方向の調整として出て来たアイデアだと思うのですけれども、そういう国庫対民間収支が当初の見込よりもうんと払超である、こういう点からの金融政策へのはね返りというものについてはどういうふうに考えておられますか。
  98. 河野通一

    説明員(河野通一君) 委員長御指摘のように当初私どもが予算上国庫収支について考えましたところと、現在の実績相当大幅な撒超という結果になつております。これが今後第三四半期におきましていわゆる本格的な撒超になるのでありますが、この期においてどういうふうなことに国庫収支の推移がなつて行くかということにつきまして現在いろいろ研究を加えおります。私どもの気持はできるだけ国庫収支が非常に撒超であろうと吸収であろうと、どちらもでこぼこになつてはいかん、従つて第三四半期における国庫収支の支出超過、撒布超過ということはできるだけこれをならして行くというふうな配慮で以て財政計画を具体的に立ててもらうことにおいて主計局方面、財政当局ともいろいろ相談をいたしております。併しそれにいたしましても程度の差異でございまして、第三四半期はやはり相当程度の撒布超過ということは免かれんと私ども考えております。その上に、これはまだはつきり本格的に結論を得ておりませんが、十月に入りましてから或る程度ドル・ユーザンス、これは輸入関係でありますがドル・ユーザンスを或る程度実行して行くべきではないかというので現在いろいろ研究をいたしております。これをやりますと、やり方にもよるのでありますが、当然国内の円金融というものに対して相当緩む要素になることはこれは御承知の通りであります。こういつた問題を併せ考えながら、一方でドル・ユーザンスの実施に伴う国内の円輸入金融をどういうふうにして裏腹になつてこれを調節して行くかということ、それだけでなしに、更に国内の円の輸入金融だけでなしに、金融全体をどういうふうにして調節をして行かなければならんかということは今申上げましたような国康収支の今後の見通しということがまだはつきり実は結論が出ておりませんが、そういうものの推移と睨み合せ、又今申上げましたドル・ユーザンスその他の実施の方法、これは方法によつて国内金融に対する影響度は非常に変つて来る、そういつた点も十分に睨み合せて並行してこの問題を考えて参りたい。今御指摘のありましたような糧券をできるだけ市中のベースにおいてこれを消化して行く、或いは今後の国際収支見通しによりましては外為証券というものを或る程度出して行かなければならん、外為証券の形で外為会計の円資金というものを調達することが必要になつて来ると思うのであります。こういつたものを今糧券におけると同じような観点から市中の消化ということが考えられるかどうか、こういつたことを現在研究をいたしております。併し先ほど申上げましたように糧券についてまだ結論が出ておりませんと同様に、外為証券の市中において消化することの可否についてはいろいろな問題があるのであります。もう少し研究をした上でないと何とも言えませんが、仮にこれらの措置を行わないといたしましても、円金融全体の調節ということは、これはほかの途でできないことはないわけであります。具体的に申上げまするならば、更に日銀における高率適用制度というものをどういうふうに考えるか、こういつた金融全体の量的な引締の問題として更に考えて行けますし、それから輸入金融を更にどの程度詰めて行くかというような問題とか、この問題解決の途はないではないというわけで、今ただ問題点があるということだけ申しげて甚だ結論が申上げられないのは遺憾でありますけれども、今そういつた私がいろいろ申上げましたようなことが今後の金融におけるいろいろな施策の問題或いはアイテムとして取上げられて行く問題だということを申上げる程度に今日はとどめたいと思います。
  99. 岡田宗司

    岡田宗司君 通貨の発行量はどのくらいで抑えて行こうとしておるのですか。
  100. 河野通一

    説明員(河野通一君) これはいろいろな金融政策、或いは財政政策を集約した尻が結局通貨の量に出て来る。適正通貨量ということはよく言われるのでありますが、適正通貨量ということは理論的にはいろいろな観点からいろいろ言えると思いますけれども、実際の行政面におきましては私はなかなか的確なことは申上げられないと思います。併し私どもが現在の状況の下において考えますならば大体平均発行高で今の状態では四千億台、五千億を切つた程度ではないか。通貨の推移を御参考までに申上げておきますが、私どもとしては順調な推移を辿つておると思います。よくこれはいろいろな比較をいたすことができると思いますが、大体今頃私どもが使つておりますのは、前年の同期の状態と平均発行高で比較いたしておりますが、二十七年に対して二十八というのが大体年の平均発行高においてベースとして大体五百五十億の増加ということになります。金融引締を去年の十月以降行なつて参りましたが、今年の二百にはまだそれが十分現われておりません。具体的に申しますると、平均発行高において去年の一月に対して今年の一月は六百五十億の平均発行高の増加であります。それが二月になりますと二百七、八十億の増、前年の二月に比較して、それが三月、四月と大体二百億台で来ております。それから五月も大体二百億ちよつとくらいの増加で来ております。それが六月に入りまして百六十億台くらいにたしかなつているのではないかと思います。それが七月におきましては、百、五、六億くらいの増加、八月は前年の八月に比べまして平均発行高で大体二十億、平均において去年の同月の平均発行高のベースに大体返つて来ております。平均発行高の絶対数は五千六十億くらいなのであります。通貨状況は今申上げましたようなことで、私としては大体順調な推移を辿つておる。それでその程度でいいかという問題につきましては、今後の問題において今申上げましたような財政から来るいろいろな原因、或いは金融においてどういうふうなことを今後やつて行くかにおいてこれらの通貨に現われて来る影響というものは相当変つて来ると思いますけれども、私はこれらの基調は維持して行くということが日本の経済を建直して行く上に絶対に必要ではなかろうかと考えております、御参考までに…。
  101. 岡田宗司

    岡田宗司君 それではこれから更に金融引締をやつて通貨の発行量を相当減らすというふうなお考えでないというふうに承わつてよろしいのですか。
  102. 河野通一

    説明員(河野通一君) それは先ほど申上げましたように、大体私どもは五千六十億、大体五千億台と平均発行高で抑えて頂ければいいのでありますが、感じとしてはややもう少し下り気味のほうがいいのではないか、四千九百億台くらいのところではないかと思います。併しこれは御案内のように年末になりますと当然季節的な発行増ということがありますから、ずつと永久にそういうふうになるというふうには考えておりません。
  103. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから先ほどの財政資金の国庫対民間というところのはね返りとして金融的に調整をして糧券だとか、或いは外為証券、それでもいけなければ高率適用、そういうことになつて来ますとやはり金融にからみ金融独走的な傾向が強いですね、その結果は資金量としては変らないとしても、そのしわは必ず私は中小企業、いわゆる経済力の弱いところ、又大企業であつても国家的にはこういう輸出対策として相当設備合理化等もやらなければはならないが、収益が悪い、こういうものにはかなりしわが寄る、それの調整をどういうように、やるつもりか、先ほどのお話では成るべく金融は引締めて、自主性を重んじて、法規的統制を避ける、まあ財政資金による投融資はお手のものだから相当するでしようが、委細の点については産業政策と必ずしもマッチした計画ではない、併し現実の問題としては大分先般からあなたとも非常にやつた、輸出金融の、これは今の時代になれば僕は大いに殖やしてもらいたいのですがそういうことでそういうような点、又開銀の融資の内容についても、これは具体的にはあなたの所管ではないですけれども、内訳は……そういうようなことについても、当初予算で考えられた開銀融資の内訳も変えなければならない、内訳だけで済むのか、又自由党の政策によると場合によつては開銀債を出そう、こういうようなことまでやるのか、そういう点はどうですか。
  104. 河野通一

    説明員(河野通一君) 今お話の点は、今後におきましても、特に中小企業面における金融の引締の影響というものが、しわ寄せという言葉で言われておるように、どうしても強く当つて来る傾向にある。これらの問題についての措置は今後十分配慮いたして行かなければならないと思つております。私どもが配慮いたしますに当つても、考えて参らなければならんことは、先ほどから申上げましたような基本的な考え方の枠の中でこの問題を考えて行きたい。その枠を超えるような意味でこれらの問題を考えると、結局又元も子もなくなると申しますか、結局逆作用の問題になつて来る。従つてその枠の中でどの程度のことが考えられるか、これはおのずから私は限界があると思いますけれども、枠の中でできるだけ中小企業の問題は考えて行きたい。  それから輸出銀行の話も出ましたが、これらの問題についても、乏しい財政の枠の中でできるだけこれらの資金の充実ということについて現在具体的に検討いたしております。折角伸びるべきプラント輸出国際収支を改善できるものが、円の金が、財政資金がないために伸びないというようなことは、誠に残念なことでありますから、そういうようなことにならないように、非常に苦しい財政の状況でありますけれども、できるだけそういう問題にならないように考えております。  それから開発銀行の問題は、今御指摘がありましたが、予算の当時御説明申上げましたところに比べて、いろいろな関係で資金相当つて参りました。これはいわゆる三党修正の問題もありましようし、それが或る程度更に節約をして行かなければならん問題もある、それから他面におきまして或る程度経済界全体の推移の影響を受けまして、回収が当初見込んだほど実は行かんという問題が起つて参りました。これは業者について申上げるのは差控えたいと思いますが、そこはおわかり願えると思いますが、そういつた点で、開発銀行全体の資金計画というものを、或る程度圧縮するという結果になるのでありますが、変えて参らなければならん。これは先般来経済審議庁ともいろいろ御相談をした上で、大体政府としての考え方を一応取りまとめたものができております。御必要でありましたら、これは経済審議庁のほうからお取り願えば、大体おわかり願えると思います。
  105. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 今持つていますか。
  106. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 今手許には持つておりません。
  107. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それでは審議庁のほうで明日でも…。今日は輸出計画について聞いたのですが、輸入の圧縮計画もありますね。二十八年度は二十四億ドルの輸入をやつた。今度二十億ドルに三年間抑える、どういう圧縮の仕方をやるのか、合成繊維増産して、それによつて天然製品輸入量を減らす、或いは石油の原油を輸入することに重点を置いて揮発油等の輸入は抑える、いろいろあるのじやないですか。そういう輸入、広く言えば自立体制の確立ですけれども、少くとも二十八年度と比べて二十九年度は四億ドル減らす、そういうのはどういう点で減らすのか、どうして二十億ドルにするのか、こういう計画が立つていなければならんわけです。そういう説明もしてもらいたいと思います。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  108. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 速記を始めて下さい。  それでは本日はこの程度で散会いたします。    午後四時四十二分散会