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1954-08-06 第19回国会 参議院 経済安定委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月六日(金曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 政夫君    理事            岩沢 忠恭君            笹森 順造君    委員            奥 むめお君            八木 秀次君   国務大臣    通商産業大臣  愛知 揆一君   事務局側    常任委員会専門    員       桑野  仁君    常任委員会専門    員       内田源兵衞君   説明員    防衛庁経理局工    務課長     大森 頼雄君    経済審議庁次長 石原 武夫君    経済審議庁調査    部長      須賀 賢二君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    農林大臣農地局    経済課長    富谷 彰介君    通商産業省通商    局次長     大堀  弘君    建設省道路局長 富樫 凱一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本経済の安定と自立に関する調査  の件  (現下の経済情勢と将来の見通しに  関する件)  (対米借款交渉の経過並びに経済の  総合施策に関する件)  (対米借款事業計画に関する件)   —————————————
  2. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それでは開会いたします。すでに登院なさつてつてちよつと差支えでまだ御出席にならないかたがございますが、昨日に引続いて日本経済の安定と自立に関する調査を続行したいと思います。  本日は最初に経済審議庁次長石原さんから我が国経済現状とその見通しについて伺いたいと思います。
  3. 石原武夫

    説明員石原武夫君) それでは先ず初めに経済の最近の状況を御説明申上げたいと思いますが、便宜お手許資料といたしまして経審で作つております月例経済報告書というのが、これは八月分でございますが、それをお手許に差上げてございますのでこれに主としてよりまして最近までの実情を御説明申上げまして、その後に今後の見通しにつきまして或る程度お話を申上げたいと思います。便宜上この資料の順に従いまして御説明申上げたいと存じまするが、初めに一枚めくつて頂きました三頁目に物価の問題が出ておりますので、物価の問題から順次お話を申上げたいと思います。物価につきましては今の、今回の緊縮政策が行われましてから順次卸売物価につきましては下げて来ております。卸売物価は本年七月の第二週で朝鮮動乱前を一〇〇といたしますと、二月のピークから七・六%下つておりまして、昭和二十六年の三月以来の最低に落ちて来ておるわけでございます。併し最近の状況を見ますると、その物価低落状況もやや下げしぶつて来ておるような兆候が見えております。これまで最も下落が甚だしかつたと言われております繊維等につきまして見ましても、幾分反騰の気配も窺われますし、又食糧等につきましては凶作予想というような見通しから多少の強気に転じておりまして、七月の第三週につきましては、卸売物価食糧繊維中心として〇・五%反騰を見せておるという状況でございます。現在お開きを願つております三頁の表にございますが、それで御覧願いますと、一月から七月の第二週までの分でございます、その一番高かりた本年のピークといたしましては二月十三日に一六二・一という数字が出ております。それが七月十日に一四九・七、第三週には一五〇・五とちよつと反騰いたしておりますが、これも先ほど御説明申上げましたが、主として食糧繊維反騰いたしておるのでございますが、そのうち食糧だけを除きましてその他のものについて見ますと、やはり〇・二%ぐらい下つておるという状況で、七月第二週でちよつと反騰いたしました。主として原因食糧にございます。なおこれは七月の第二週まで資料として印刷してございますが、極く最近の七月三十一日に終ります第四週目について見ますると一四八・八というところまで下つております。その前週の七月二十四日は、一四九・九でございまして、今申しました第四週の一四八・八は二月の最高に比較いたしますと約八%の下落ということになつておりまして、今まで多少最近下げしぶつておる状況がございますが、順次却売物価につきましては下つておるという状況でございます。次の頁を御覧になりますと、第四頁はその商品別についてどういうふうな構成になつているかをここに表として揚げてそれぞれ下落率等も書いてございます。この数字につきましては後ほと御覧願うことにいたしまして一々の説明は省略させて頂きたいと思います。  それから次に、今のは卸売物価でございますが、消費者価格がどうなつているかと申しますと、これは五月頃から幾分下向きになつておりまするが、卸売物価に比べますと非常にその動きはにぶくなつております。即ち先ほどの表でも、二月から六月にかけまして卸売物価は六或いは七%下つて来ておりわけでありますが、消費者物価につきましては樺か〇・一%の下落程度でございまして、その主たる内容は次の五頁に書いてございますように主食、非主食被服光熱、住居、雑費というようなことで、特に下つておりますのは被服光熱料の二項目でございます。このうち光熱料につきましては季節的な動きがございまして、例えば木炭等は当然季節的に最近の時期は値下りをするわけであります。被服は御承知のように繊維が非常に下つております。その影響を受けて下つておるわけでございますが、全般的にはまだかよりな高い水準にあるわけでございます。かように消費者物価卸売物価に比較いたしまして下らないという理由につきましては、どういう理由があるか、これを考えて見ますると、ここにも書いてございますように二月以来卸売物価が相当大幅に低落しておりまするが、その主たる理由流通部門金詰り等によりまして、在庫調整に基くものでありまして、末端の消費需要は減つていないのではないかという点が弟一点でございます。  それから第二点といたしましては、卸売物価が下りましても、それが小売物価まで影響して参りまするまでには、或る程度の期間がかかるわけでございまして、その時間的なズレ小売物価に現われていないのではないかと、こういうふうに考えられるのでございます。  第三点につきましては、消費者物価のうちにはサービス料金が含まれておりまして、これらの動きは非常に長期の時間的のズレを生ずるのでありまして、二月から六月にかけましても、家賃でございますとか、或いは授業料というようなものは五%程度つているこいう状況でございまして、これが消費者物価が下らない一つの理由ではないかと考えられるのであります。  尤も消費者物価調査につきましては、消費者物価指数正札価格によりまして、或る特定の消費につきまして、その価格を順次毎月調べておりますので、実際には特売でありますとか、そういうようなことで相当大幅下つているものもありますが、それらの数字は的確に現われていないような調査方法がございますので、さような意味で実際の小売物価はこの指数よりももう少し下つているのではないかというふうにも考えられるわけでございます。  それから次にもう一枚おめくり願いまして、六番目には金融関係に移りまするが、第一の貸出増加と、預金減少という問題について御説明をいたします。  日銀券は六月に百十六億円の増発なつておりまするが、これは前年の同月に比較いたしますると、むしろ殖え方は緩慢でございます。日銀券の発行高等につきましては、その下の同頁の下の表がございまするが、そこの各月、一月から六月まで出しておりまするが、その初めの欄で日銀券増減というところを御覧願いますると、一月以降出ておりまするが、六月に至りまして百十六億円増発なつております。従つてこれを一月から六月まで半年間集計いたしますと、九百五十六億円の縮少になつております。これをその下の欄で二十八年の数を出しておりまするが、これを御覧願いますると、昨年の六月は増発は百五十二億で、これに比べますると、六月の増発は少くなつております。又半年の集計で御覧を頂きましても、十八年のうち、一——六月では六百億の縮少でございますのに対して、二十九年度は先ほど申しましたように九百五十六億という縮少になつているわけでございます。  それから次に、次の頁でございます。財政資金関係でございまするが、これは四月、五月と異例の最近撒超なつております。これは前年度の予算の繰越し使用というようなものが現われて参りまして、かような異例撒超なつているわけでございますが、六月に至りますと二百九十五億円という、前年の同月を上廻わる揚超に転じております。これは主として租税の収入法人税中心といたしまして予想外に好調を示したのによりまするほか、又食管会計の受超や、別口外国為替貸の減少等を反映しているものと考えられるわけであります。  それらの細かい内訳につきましては、その下に表といたしまして数字を出してございまするが、これで御覧願いますように、二十九年の四月は五百六十八億の撒超でございまして、五月は五十六億円でございまするが、かようにその右にございます二十八年度で一番下の総計を御覧願いますると、四月は二百二十四億円の撒超、五月はすでに二百八十五億円の揚超に転じているにかかわらず、本年度は五月でも金額は五十六億円でございまするが、なお撒超というような形態になつております。只今申しましたように、六月は前年度百六十六億円でありました揚超が、本年度は二百九十五億円と相当大幅に揚超に転じているような次第でございます。  次に次の頁八頁目を御覧願いたいと思いまするが、全国銀行貸出は六月百三十五億円の増加なつております。これは季節的な関係が主でございまして、ボーナスでありますとか、産米関係とか、産麦代金とか、或いは納税資金というような季節的な需要を反映したものと思われまするが、最近の銀行貸出は右に五られるような銀行貸出について見ますると一部には滞貨的な融資、或いは繋ぎ融資というようなものもあるのではないかと推測されるような状況でございます。  それで運転資金貸出卸小売に対しまして減少いたしまして、むしろ製造業のぼうに増加をいたしておる。これは流通部門買控えに伴います生産者在庫の増大を反映したものと考えられるのであります。後ほど御説明申しますように在庫は非常に累月殖えておりますので、その辺の関係も反映をいたしておるものと考えられるわけであります。  それから一——五月の間におきます銀行貸出増加のうち約三分の一は地方公共団体に対するものでございまして、これには赤字繁ぎ融資という性格が多分にあるように見受けられます。これは最近非常に問題になつております地方財政の窮乏というような問題とも関連をいたしておるもの、従いまして非常に相当の部分が地方公共団体銀行から金が出ておるという状況でございます。  それから第三番目に輸入金融引締影響が本格化するに伴いまして企業輸入関係借入資金の返済が殖えて六月には輸入決済手形貸が二百十三億円、別口外為貸では八十四億円減少をいたしておりますので、かような減少に伴いまして或る程度のこれに見合うような融資が行われておるというふうにも考えられるわけでございます。併しこれを通観いたしまして六月の貸出増加も前年同月に比べますれば三割にも達しない状況でございまして、銀行融資抑制態度の基準というものは変つておらないように見受けられます。従つて企業といたしましての金繰りは逼迫をいたしまして預金の引出しを求める傾向が強くなつております。その結果銀行預金は六月には三百二十五億という大幅な減少を示しております。預金減少は主に法人の営業性的な預金減少をいたしておりまして、個人の貯蓄性のほうの預金はむしろ好調に推移をしておると思われるのでございます。このように市中銀行貸出増加預金減少からいたしまして金融市場は非常に繁忙化しておりまして、日銀信用は六月に四百五億円を増加いたしまして、日銀貸出残高は月末で三千九百九十五億円というふうになりまして、約四千億の台に迫つております。八月四日におきましてもほぼこの程度数字でございます。八月四日は三千四百九十三億円という程度でほぼ横ばいの状況でございます。その以下に全国銀行貸出預金増減数字各月に一つ示してございまするが、貸出につきましては六月、第一の欄にございますように百三十六億円ほぼ殖えております。三行目の預金におきましては三百六十二億円の減少というような数字なつておるわけでございます。  それから次に、次の頁を御覧願いまして、十頁員にございまするが、生産関係でございます。五月の鉱工業生産はここに一六七・三と書いてございまするが、これは速報数字でございますので灘だ恐縮でございますが、修正をいたしまして一六四・一に正確な数字なつております。一六四・一でございますが、前月よりも約四%弱の減少を示しております。いろいろこの月は休日等の関係を考慮いたしますと、実勢はほぼ四月と同じようなものではないかと考えられまするが、前年同月との比較と申しますか、その増が率につきましては約一一%引続き減少傾向にございます。  他方生産者在庫流通部門買控えからいたしまして顕著な増勢を辿つておりまして、五月の製造工業在庫指数は前年同月よりも四割も多くなつているといと状況でございます。只今御説明を申上げました指数の表が次の十一頁目にございまするが、これの欄の下のほうで二十九年の一月一五六・八というこの数字を横に御覧願いますと、三月が一七二・四というふうに一番高くなつております。その後四月が一六八、それから五月が先ほど申しましたように、一六四・一というふうに下つて参りまして、六月はこれはまだ速報でございますが、速報によりますると、一六一・六という数字なつております。この表にちよつと書いてございませんが、最近六月の速報数字は一六一・六でございます。かように各月少しずつ下つて参つておるわけでございます。これを対前年の同月の比について見ましても一月につきましては、この表の最後の欄にございますが、二十九年の一月につきましては二割五分くらいの増加なつておつたものが一割くらいのところまで下つて来ておるという状況で、生産は漸次減少傾向を辿つておるというふうに申上げることができるかと存じます。  これに反しまして生産者在庫指数は下のほうに表として掲げてございますが、これは製造工業だけについて掲げてございますが、これをちよつと御覧願いますると、この表の一番下の欄でございますが、そこに二十九年一月から順に五月までの数字でございますが、これで御覧願いますと、一月は一二九、二月は一三四、三月一四二、四月一五三、五月は一六五、かように二〇、三〇、四〇、五〇、六〇というふうに在庫数は毎月相当大幅に増加傾向を辿つておるのでございます。かような在庫増加の圧迫からいたしまして漸く操短の機運が高まつて来たようにも見受けられます。石炭でございますとか、合成染料ゴム等の部内におきましては五月からすでに操短の実績が現われておりまするし、又次の頁に書いてございますように、十二頁を御覧願いますと、鉄鋼とか、一部の機械、或いはスフ等につきましても六月から生産縮小を始めておるような状況でございます。併し六月までにおきましてはまだ綿でございますとか、人絹でございますとか、輸出或いはその他の関連部門はむしろ好調でございます。又セメントを初めといたしまして官公需関連の深い部門なども概して生産は順調に進んでおります。結局一般的な国内需要関連した部門が今のところは最も影響を受けておるように思います。尤もこのうち、綿等につきましては、そろそろ近く減産の傾向に行くように見えますので、今後やはり生産全体としては縮小を続けるものではないかというふうに予想をされるわけでございます。  次にかような金融引締影響を受けました部門につきまして御説明をいたしますが、その第一は倒産失業の問題でございますが、不渡手形につきましては、五月の一日当りは約千八百枚でございまして、これをピークにいたしまして減つて参りまして、七月一日から十七日までの間の平均では千四百四十八枚ということで減つて参りまして、繊維商社倒産も幾分小康を得ておるようでございます。これは流通部門中心といたしました弱小企業整理が或る程度一巡化したものではないかというふうに思われますし、他方生産部門を含めました労働省調べ事業所整理の数から申しますると、これは一段と多くなつて来ております。十二頁の下に東京手形交換所の一日当り不渡手形数字を掲げてございます。これで御覧願いますと、一月から六月まで、二番目の欄にその枚数が出ておりますが、四月が千五百枚、三月、四月というところは千五百枚台でありますが、五月が千八百枚、六月が千四百枚、七月が千四百枚ということで先ほど申上げましたように、多少数字は減つておるような状況でございます。  次に十三頁にございます繊維商社倒産数につきましては三月が一〇五という数字でございます。多少の高低はございますが、六月が八四、五月が七六ということでピークに比較いたしますと多少減つておるような状況でございます。  次に整理事業所数につきましては、二十九年はここにありますように、四月から非常に殖えておりまして、三月が四三三であつたのが約倍の八九七、五月が七七一、事業所数整理のほうは相当大きく四月以降増加をしておるような状況でございます。  かように緊縮政策生産段階のほうまで滲透をして参りまして、操短等の気運が強まるにつれまして、雇用賃金の面につきましてもこの影響が現われ始めております。  先ず雇用の面につきまして申しますと、六月には常用雇用が多少減少いたしておりますし、又一方完全失業の数も増加をしております。いずれも例年の五月というのは割合雇用も殖える時期でございます、さような例年の例から見ますと、むしろ五月の数字異例減少が現われてお るのではないかというように考えられます。失業保険離職票受付件数も四月、五月と引続き高い水準にございます。又労働市場では求人数が著減しておりまして、殊に一般労働者についても求職者数の三分の一くらいになつておるというような状況なつております。この求人求職関係につきましては約四割、五割という数字割合正常かと申しますか、割合ノーマルな状況というふうに伺つておりますが、それが約三分の一くらいに減つておるという状況でございます。常用雇用数字につきましてはそれ以下の表にございますが、二十九年度につきまして四月が一〇二・四であつたのが一〇一・八というふうに多少減つておるわけであります。先ほど申しましたように五月は季節的には雇用数から見れば殖える時期にかかわらずむしろ減少しておるという点が注目すべき点かと思います。この下のほうの欄は完全失業者の数でありますが、四月が五十一万でありましたのが五月が五十八万というように多少増加しております。  次の表の十五頁には失業保険動きが書いてございますが、その三行目に保険金受給者数を掲げてございますが、これは三月頃から大した動きは示してございません。それからその下のほうの表が公共職業安定所求人求職状況とございますが、その一番上の欄が二十九年度でございますが、求人求職は、五月について求職が百十一万に対して求人のほうは三十三万二千ということで、比率で申しますと三分の一程度なつておるわけであります。これは先ほども御説明しました通り相当注目すべき事柄であろうと存じます。  それから次の十六頁に賃金の不払の数字を掲げております、これも急速に賃金の不払が殖えておりまして、特に石炭でございますとか、機械の一部等においてそれが特に現われているわけでございます。その下に表がございまするが、各月に分けまして、一番上の欄が前月から未解決で当月に持越した金額でございます。これを五月で申しますと九億二千四百万という数字になりますが、その次の二行目が当月に新たに増加した不払の金額でございまして、これを五月で御覧願いますと、十億二千九百万、これを横に御覧願いますと、一月頃は三億であります。それが三月に五億台になりました。四月に七億、五月に十億という数字に累月に殖えて来ている状況でございます。その次の三段目は、これは不払金額の合計でございますが、従いまして五月におきましては、繰越の九億と、新規の十億を入れまして、十九億というような数字なつております。この賃金の不払の実際の数字は、これはこの調べ労働省でお調べを願つているのですが、正確にはもとよりわかりませんのでございますが、ただこの調査をしております対象につきましては一定をしておりますので、少くともこの増加傾向というものは大体真実に近いものではないかというふうに考えられるわけであります。絶対額につきましては、全国亘つて不払賃金の額を正確につかむということはできませんので、絶対額についてはこれ以上のものがあるのではないかと思いますが、傾向としては大体これの表から増加傾向を察して、余り誤りがないのではないかというふうに考えられるわけでございます。  それから次に五番目は消費水準の問題でございますが、これはまだ現状を持続いたしております。五月の都市消費水準は、これは東京都でございますが、昭和九—十一年を一〇〇といたしまして、九四・八ということで、前年と書いてありますが、前月より約四%くらい低下をいたしております。前年の同月に対する増加率は一四・一%というふうに、非常にまだ高い水準を示しております。  尤も以上は東京都についての調べでございますが、全国都市につきましてはかなり様子が変つておりまして、前年同月に対する消費水準増加率は一—四月で三乃四%、五月は僅かに〇・三ということで、全国都市につきましては非常に下つて参つております。なお東京都の勤労者黒字率、これは実収入に対する黒字割合でございますが、本年の一—五月平均で三・五%という数学が出ておりまするが、これを前年同期の一・三%に比べますと相当多くなつておりまして、貯蓄性向が高まつて来ているということはこの面からも窺えるものかと存じます。  次の表は東京都の勤労者消費水準を掲げたものでございまするが、一の表の下から二番目のところは、今年の二十九年の一月から五月までの数字でございますが、これで御覧願いましても、三月が九五・一、これが五月は九四・八と、多少下り気味なつております。その一番下の欄を御覧願いますと、これは前年同月に対する比率でございますが、先ほど申上げました通りに、前年同月に対しては一制四分上廻つているというところでまだ維持されているというような状況なつております。  それからその次の六番目は、外国為替収支状況でございますが、これは漸次好転をして来ている状況にございます。外国為替収支赤字は漸減の傾向を辿つておりまして、六月は七カ月ぶりで約一千百万ドルの黒字を記録いたしました。これは輸出が比較的好調を続けております半面、輸入がほぼ前年並みの水準まで下つて来たことによるものでございますが、六月の黒字で直ちに国際収支の前途を楽観するのはまだ如何かと存じますが、次の十八頁に書いてございますように、六月におき映しては、MSA資金を引当といたしました小麦の買付代金は、合計いたしまして、一千六百万ドルと四百万ドル、五月、六月とで二千万ドル、米国から払込まれまして、これが貿易外収入に立つておりますので、さような一時的な原因もございますので、既往の数字から今後必ずしも楽観する、黒字になるということにはならんかと思いまするが、一般的に申しますると、すでに前年同月に比べまして、二割五分から三制近くの大体増加を示しておりますので、一般的には外貨収支尻は改善をされて来ているというふうに考えられるわけでございます。  以上は概括的な数字につきましての御説明でございますが、これを概括して極く簡単に申しますると、この今の表の第一頁目に書いてございますようなことが言えるかと思います。  第一番目は、緊縮政策影響は、流通部門中心とする在庫の調整から、先ず卸売物価の顕著な低落を招きまして、二月以来七%、或は極く最近に至りましては八%程度まで下つて参りました。又不渡手形の発生や商社の倒産増加されて参りましたが、七月には物価も漸く下げしぶつて参りまして、又弱小企業の整備も一段落の傾向にあるのではないかというふうに観察されるわけであります。  二番目といたしまして、併しながら生産部門に対する影響は漸次現われて参りまして、これは物価下落から採算が苦しくなつた者が多いようでございまして、又流通部門買控えから、生産者の在庫が著増して、この面から圧迫を受けるようになつたものと考えられます。その結果在庫に対する資金の需要が強まると共に、操短の気運も現在高まりつつあるように見受けられます。  三番目といたしましては、日銀券は六月に百十六億円の増発となつたのでございます。これは主として市中銀行貸出増加預金減少に伴う日銀信用の増大を反映したものでございますが、貸出増加原因には、季節的な資金需要といたしまして当然殖えるもののほかに、或る程度の滞貨融資繋ぎ融資があつたのではないかというふうに考えられるわけでございます。ただ市中銀行といたしましては、日銀金融政策、特に三次高率の額が漸次殖えて参つておりますので、容易にこれが貸出に応ずるというような体制にはないように考えられます。  四番目は、鉱工業生産につきましては、五月までのところは目立つた減少はしておりませんが、一部にはもうすでに操短の実績も現われておりまして、今後更に鉄鋼、その他の部門については、生産縮小の体制に移つておるという状況にございます。  五番目といたしまして、操短の気運が高まるにつれまして、人員整理も行われまして、五月の雇用指数例年と違つた動きを示し、又賃金の不払状況も更に深刻になつておるということが言えると思います。  六番目といたしまして、かような雇用賃金動きは、貯蓄性向増加傾向とも相待つて消費需要に或る程度の変化を与えるものとも思われますが、これは少くとも五月までにおきましては、消費水準は依然として高い水準を維持しておるように思われます。  それから第七掛目に、外国為替の収支につきましては、先ほど申しましたように、六月に初めて黒字になるということでございますが、その原因には、MSAの小麦代金というような一時的の収入もありまするので、必ずしもまだ楽観する程度ではないのではないか。  以上は極く概括的な経済状況の最近までの御説明を申上げたのでございます。  以下簡単に今後の見通しというお話でございますが、それを申上げたいと存じます。実は今後の見通しにつきましては、本年度当初、本年度見通しということを或いは御説明申上げたかと思いますが、まだその後数カ月しかたつておりませんので、本年度見通しの改訂を正確にいたす段階にはまだ来ておりませんが、今日申上げますのは極く……、現在どの程度見通しであるかということで、極く大ざつぱにと申しまするか、非常に精密な計算をした上で申上げるところまでに至つておりませんので、さような意味での見通しが非常に正しいというふうに、自信を以て申上げるわけには参りませんが、一応の見通しを申上げさせて頂きたいと思います。  先ず第一に生産でございまするが、生産につきましては別に一枚小さな紙が資料としてお手許にございますが、これは二十六、七、八年度の実績を書いたものでございますが、鉱工業生産につきましてはこの資料にもございますように、二十八年度の実績は九年—十一年を基準といたしまして一六一・四ということになつておりますが、これがその後の動きにつきましては、先ほどの御説明のときに申上げましたように、この指数が六月に一六一・幾つという数字を先ほど申上げましたが、丁度現在が昨年度平均指数ぐらいのところに来ておるわけであります、それで今後どうなるかという点につきましては、正確になかなかまだ申上げかねますが、一応の推定といたしましては多少上廻つて一六三ぐらいに落ちつくのではないかというふうに一応現在考えております。これはもう少しこの上半期ぐらいの動きを見ますと、或いはまだ多少減るということが考えられるかと思いますが、まだ今のところでは、今までのところ相当高い数字にございますので、年間平均をいたしましても去年の実績を多少上廻るぐらいのところに落ちつくのではないかというのが今の現状におきます見通しでございます。  その次は輸出でございまするが、輸出につきましては御承知のようにここに書いてございますように、二十八年度の実績は十二億四千万ドルということでございます。それで今年度見通しにつきましてはこれから下期の外貨予算の策定にかかりますので、その際に正確に予測を立てて予算を作るわけでございますので、まだその作業が済んでおりませんので的確なことは申上げかねますが、一応現在我々の見通しから申しますと、これも十三億七千万ドルぐらいまで伸びるのではないかというふうに一応考えております。その数字は今申しましたように、下期の外貨予算を検討する際に多少変つて来るかと思います。現在の見通しから申しますと、昨年の十二億四千万ドルに対しまして十三億七千万ドルぐらいのところまで参るのではない、かように考んでおります。  輸入につきましては昨年度の実績がこの表にございますように、二十二億五百万ドルということになつておりまするが、今年度といたしましては一応二十億ドルぐらいのところを当初から予定しておりまするし、大体その枠に本年度といたしましても収めるつもりじございますので、大体二十億ドル前後というふうに現在のところ考えておるわけでございます。  それからその次にございます特需につきましては、これは別にお手許にございます資料にもございますように、二十七年度も八億、二十八年度が七億六千百万ドルということでございまするが、御承知のように最近までの実績におきまして特需は昨年に比べまして相当減つておるわけでございまして、只今までのところでございますると、ちよつと正確に今数字を持つておりませんので、今までのベースでございますると、五億数千万ドルぐらいのベースではないかと存じまするが、我々といたしましては五億数千万ドル乃至六億ぐらいのところは一応現在期待しておるわけでございます。併しこれは御承知のようにいろいろ対外的な関係できまりますので、正確なことは申上げかねますが、現在のペースから申しますると五億五、六千万ドルぐらい、まあ一応年間といたしましては六億ドルぐらいまで期待できるのではないかと思いますが、これはなお今後十分もう少し外貨予算等の際に検討をすることになろうと思います。さようなわけでこれに貿易外等を入れました本年度の収支尻は約一億ドルぐらいの、前後の赤字になるのではないか、かように目下のところ考えております。これがまだポンド・ユーザンス等の関係で為替尻といたしましては多少それが減るということにもなろうかと思いまするが、大体一億ドル前後ぐらいの赤字になるのではないかというのが現状予想でございます。  それからその次に物価につきましては、これはなかなか予測が非常に困難でございまして、先ほど申しましたように卸売物価につきましては極く最近までに八%すでに下つて来ておるのでございます。今後この傾向がどういうふうになりますかは非常に予測がむずかしいのであります。実は多分当初作りましたときには今までの時期にこれほど下るとは予想していなかつたの下はないかと思いますが、現在までのところ八%下つておりますので、相当そうした指数から申しますと、卸売物価につきましては相当大幅に下つておると思いまするが、今後の動きにつき申しては非常に問題があろうと思いますが、一応現在までのところ我々の経審の事務当局で一応考えている点だけ申上げまするので、これは又いろいろ御批判もあろうかと思いますが、それで申上げますと、生産財の卸売物価につきましてはこの二十九年度平均といたしまして、二十八年度を一〇〇といたしますると、約七%ぐらい下るのでけないか。これは二十八年度一カ年の平均と二十九年度一カ年の平均の比較でございますが、約七%前後ぐらいまで生産財の卸売物価は下るのではないかというふうに考えておる次第でございます。従いまして本年の三月と明年の三月の時点の差で比較いたしますると、これは一割を多少越すぐらいまで下るのではないかというふうに、一割一分とか一割二分とかいうような、一割をちよつと越すぐらいまでのところにまで時点差の比較では、三月末で比較をいたしまして下るのではないか、かように考えております。  それからその次にCPI、消費者物価につきましては、これは先ほど御説明いたしましたように、殆んど現在まで下つていない状況でございます、今後多少下る傾向にはあるかと思いまするが、これも年度平均で申しますると、二十八年度平均と二十九年度平均とで比較をいたしますると、殆んど横ばいではないかというふうに予想をいたしております。これは非常に小売物価の下る歩調が緩慢でございまして、なかなか卸売物価が下りましても下らんという点もございまするし、先ほど申しましたように、消費者物価のところには料金とかその他卸売物価に直接鯉くものだけではございませんので、さような意味で殆んど横ばいではないか。上ることはないと思いますが、ほぼ横ばいぐらいのところに落ちつくのではないかというふうに考えております。ただ先ほど申しましたように応点差、本年の三月と明年の三月で比較をいたしますると、これも非常にむずかしいのでございますが、これは五%前後は或いは下るのではないか、五、六%ぐらいというところまでは、五%乃至六%ぐらいのところは一応下り得るのではないかというふうに考えております。  それからもう一つ問題になりますのは、雇用と申しますか、失業関係でございますが、これは又非常にむずかしい問題でございまして、実は年度当初の予測ということを、いつか御説明を申上げたかと思いまするが、雇用のほうは先ほど五月で申しましたように、多少五月は非常に憂いを見せておりますが、併し四月あたりは年度当初予想いたしましたよりも非常に雇用は高い水準にございますので、従つて年度出初考えておつたほど雇用は減らないだろうと今までの実績から考えますると思われますが、これもちよつと正確にどのぐらいの、何事万の雇用になるかということはちよつとはつきり申上げかねるのでございます。  なお失業につきましては先ほど申しましたように、完全失業者は殖えて参つておりまするが、これもいわゆる離職者が出ましても直ちに失業にならずに、新たに営業を始めるとか帰農するとかいうような形態が行われておりますので、はつきり失業者が幾ら出て来るかという数字はこれは非常に困難である。ただ今の現状の実績を申上げますると、更に今後殖えて参ると思いますが、これが何十万殖えるかということになりますると、ちよつと今までのところ細かい計算もいたしておりませんが、はつきりしたところは申上げかねるような状況でございます。  以上概略現状と簡単な将来の見通しを御説明申上げました。
  4. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 御質問ございませんか。
  5. 八木秀次

    ○八木秀次君 財政資金の民間に対する収支のことで、お尋ねするというか、所感を申すというか、両方並ねて申上げます。的確な数字をここに持つておらないので、単に昨年来の印象を考えて見ますと、財政資金が撒布超過になるか、揚超になるかというような、つまり今後の見通しということを今まで政府が発表をなさつたのが、非常な実際には相通を来たしておる、払超になるか、受起になるか、逆になる。勿論、昨年来は災出その他異常な事態も起つて参りました。殊に少し強く言うならば、政府の方針も大変換をされたやに思われるためもありましようけれども、今後の見通しについて、この財政資金の工合というのは、昨年来のは余りに実情が外れておつたということを示したのですが、そういう記憶を持つておりますが、これについて何か釈明的にか、何か説明的のお話でもあれば参考に承わりたいと思います。
  6. 須賀賢二

    説明員(須賀賢二君) この点は、最近新聞等でも非常に問題になつておると思いますが、只今お話がありましたように、財政資金の対民間収支の見通しが、非常に当初の予想より狂つておるわけであります。特に最近月におきましても、七月の数字は、只今お手許の配付にはございませんですが、ここで申上げますと、七月は、財政資金全体としては二十八億の揚げに終つたわけでございます。当初は二百数十億の揚超になる予定であつたというようなことになつておつたのが、こういうことになつたわけであります。この原因その他はいろいろあるようでありまするが、只今お話のありましたように、前年度からの支出のズレが非常に今年は多く、これが千数百億に及んでおるというようなことが一つと、それから地方財政との関係におきまして、最近まあ地方財政の窮迫ということが、非常に問題になつておるわけでございますが、公共事業費、平衡交付金等の関係が、まあ別に意識的というわけではないだろうと思いまするけれども、前年度に比較いたしますというとかなり大幅に、五月、六月、七月と地方に流れておるというような結果がこういうふうになつていると思います。従いまして、当初財政当局等で立案をいたしました各期別の対民間収支の計画は、かなり狂つて来ておるわけでございまして、これを年度を通じまして、当初考えておりましたような線に落ちつけて行くというようなことになりますと、下半期かなりいろいろな面の影響が出て来るというようなことになりますので、今後かなり問題がある。ただ私どもといたしましては、直接これを処理しておりまする立場でございませんので、余り立入つたことを申上げることはどうかと考えますが、かなり当初の計画に比較いたしまして、現実の財政資金の対民間収支の計数が変つておる。当初の予想とかなり狂つておるというようなことは只今のお話通りだと思います。
  7. 八木秀次

    ○八木秀次君 只今お話がありましたので、私は審議庁を咎め立てするつもりはないのでありますが、併しこの事柄、只今御説明にあつた事柄ですが、地方公共団体のふしだらということがあると思います。併し地方行政の問題は、或いは自治庁の問題であつて、審議庁にかれこれ申上げても済まんと思いますが、年来地方行政が相当不健全と思われておつたそれが、具体的に暴露して来なかつたから我々としてただ見ておりましたけれども、最近査の様子では余り顕著にこれが現われている。その指導というか監督というか、余り放任されておつたことの尻を私は今審議庁に持つて来たようなことになつて誠にお気毒に思いますが、数学的に見通しが狂つてしまうというような醜態を私は示したとして、これは当委員会並びに審議庁の直接の問題でございませんけれども、地方財政が極めて不健全であるように思われる重大な問題としてここで指摘しておきたいと思います。
  8. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 御質問ありませんか。
  9. 奥むめお

    ○奥むめお君 私のほうでお伺いするのですが、人口の増殖ですね、一年に百二十万くらい殖える。そして平常の通りつても、つまり百三十万乃至百万くらいの新らしい就職者というものが殖えているわけでございます。正確に殖えて行くものが出て行くわけでございますから、日本の宿命的な人口問題というものを、あなたがたは今までのいろいろ失業者の数、或いはずつと御報告下すつた中に勘定して下さつていると思うのでです。私は社会の実際のつらさというものは、それらのものは、ずつと数字の上以上に入つているんじやないかという気がするのですが、どんなものでしようか。御調査になるときにどういうふうになさるものでしようか。
  10. 須賀賢二

    説明員(須賀賢二君) 人口問題についてお話になりましたが、私どもも余り先走つた御返事をいたしかねると思いますが、只今お話にありますように、大体今後の年商自然増、大体最近の見通しによりますと、明年以降大体百万人くらい、まあ当初百十万くらいの予想なつておつたのでありますが、最近出生率の低下その他で大体百万くらい、なお人口の自然増の百万の問題よりも、只今御指摘にありましたように、今後の問題といたしましては、新らしく生産年齢人口に入つて参りますものに就労の機会を与えるということがより逼迫した問題になつて来るわけであります。そのほうの関係当局の予想を聞きますと、只今大体七、八十万の新らしい生産年齢人口に対して就労の機会を与えなければならないというふうに予測をされているようでありますが、先ほど次長から御説明申上げましたように、当面の雇用情勢といたしましては、現在のデフレ進行の過程から言いますと、このままの婆ではこの機会は減つても殖えるということはない。むしろ総合的の問題といたしまして処理して行かなければならない。今明確にこれをどうということは申上げかねるのでございますけれども、只今奥先生からお話のありました、労働情勢は、我々がつかまえている資料で判断してよろしいかどうかという点についてだけ申上げますると、私どももこういう経済情勢の報告等をとりまとめて参ります場合の心がまえといたしましては、特に従来までは一般経済界の動き、例えば物価でありますとか、或いは金融財政の関係でありますとか、そういう点を特に注意をいたしましてとらえておりますれば一応大体の状況を把握いたせたのでありますけれども、これからの問題といたしましてはやはり労働関係をよほど注意をして見て行かなければならんというような気がまえでやつております。ただ全体を総観いたしまするような資料は現在までのところでは的確に把握いたすことはなかなか困難でございまして、私どももここに現われておりまする数字だけで現在の労働情勢は一応出ておるというふうには、さように簡単には考えておらんわけであります。失業問題でありまするとか、或いは潜在失業の問題でありますとか、或いは階層別の問題でありまするとか、そういう点も更に考慮されて、十分検討して参りたいと考えております。
  11. 奥むめお

    ○奥むめお君 私は一千万世帯あると見るのですね。そうすると百万人足らずの新らしい生産年齢が殖えるということになれば大体十軒に一人。それから生れる子供の数で言つてもとにかく十軒に一人は人口が殖えるというこの趨勢ですね。日本の宿命でございましようけれども、これを基にしなければ日本の経済というものは私考えられないし、対策は立たないのじやないかと思います。ですからそこから割出して常に百万人分の生産増強というか、とにかく暮らしの立つような途が殖えて行かなければ現在の水準さえ保つて行けないわけですね。無論一番基本になる問題をここに計算なさるときに、どうも審議庁あたりで一番対策を立てるときに考えていらつしやると思うけれども、もつと具体的にその面から行かないと、収入が殖えたということは人口が百万も殖えているのだから殖えなければやつて行けないはずですしね、だから失業者でも私は実際の生活というものはとにかく役所の数字からよりももつとぴんぴんと感ずる社会情勢というものがあると思うですが、私はいつも人口問題から来ているものではないかということを非常に感ずるものですから、だから別にそれに対する基本的な考億を加えて、そうして見通しを立ててもらわなければ困ると思うし、又数字の解明もしてもらわないと、実情からは私は離れはせんかということを非常に案じているわけです。ですから又具体的な問題は別のものといたしまして、私の感じますことをちよつと申し上げておきます。
  12. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 只今奥先生からのお話誠に御尤もでございまして、我々といたしましても現状は今お話申上げたようなことでありますが、確かに日本の宿命と申しますか、非常に大幅な人口増加を如何にして完全雇用と申しますか、これを養つて行くかということは、日本の将来をどういうふうにして持つて行くかということの最大の問題だと思います。我々が先の見通しなり、或いは長期の計画を作る際にこれを如何にして吸収すべきかということを考えるのは最大の問題だと承知しております。今後従来経審でもいわゆる長期計画と言われるような点を検討して参りましたが、従来のものは最近の経済情勢下ではもとよりその事情等が一変しておりまするので、今後将来の問題を検討し直さなければならんと思いますが、その際にはその辺の点を十分一つ考えて行かなければならん。お話のように非常に日本としてはそれだけ殖える人口を如何にして養うかということが非常にむずかしい問題だと思いますが、我々といたしましては将来の計画なり、見通しを作る場合にはその点を十分検討して参りたいと思います。数字を申上げますと、二十八年度で今のいわゆる生産年齢人口は十四歳以上の年齢に達しておるものは五千八百三十万人。それで二十八年度でいわゆる生産年齢人口に達したものの増加分、それは八十七万です。生産年齢人口全体では五千八百三十万、それから二十八年度中に新たに生産年齢に増加されたものが八十七万でございます。それに対応いたしまして雇用問題でありますが、雇用はこれは自分で農業をやつているとか、或いは自分で仕事をしている人は入らんわけであります。いわゆる雇用主に雇用されている人数は二十八年度で千四百八十万であります。これは年間平均とございます。それで今申しました生産年齢人口八十七万殖えたのに対応いたしまして、二十八年度に新たに雇用増加になりましたのは五十九万という数字でございます。これは生産年齢人口に達しましても全部雇用に行くというわけではございませんので、その辺の関係ちよつとどういうふうに見るか、いろいろ見方があると思いますが、数字で申しますとさような数字なつております。二十八年度といたしましては八十七万に対して約六十万近い雇用が殖えておりますのでさした問題はなかつたかと思いますが、これは昨年度数字でございまして、今後の見通しからいたしまして非常に、差当りの問題としても大きな問題でありますし、将来の問題といたしましても今お示しのように非常に大きな問題があると思いますので、今後その辺は十分検討して行きたい、かように考えております。
  13. 小林政夫

    委員長小林政夫君) これは大臣が見えて併せて御答弁願つてもいいと思うのですが、先ほど次長からの御説明見通し数字等については、大体二十九年度予算編成時の見通しと余り変りがない数字ですね。今八木委員から御指摘になつたように、最近の国庫対民間収支等が相当違つている状態、七月だけとつても本来は二百五十億程度揚超であるべきが、二十七億の揚超で、二百億からの差額が有る。又六月或いは七月の外貨収支も予想より悪くなつている。或いは麦の買上げが進んだ、こういうような点から相当国庫対民間収支の関係が違つて来ている。そういう昭和二十九年度予算編成時と違つた要素を織込んでもなお且つ今の示された生産規模、或いは物価等を今の見価し通りに行かせるつもりであるかどうか、そういう点どうですか。
  14. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 今お話ありました対民間収支は隔月、或いは四半期ごとに作つております予想お話のように相当大きく変動していることは事実でございますが、これは予想が、これは大蔵当局がやつていらつしやるので我々詳しく存じませんが、対民間収支につきましては、例えば大きく食い違いますのは貿易の関係で、それの収支が変つて来るとか、それから税収入その他国の収入が当初の予算の予想よりも違つて来るとか、いろいろ原因はあると思いますが、今一番大きく違つておりますのは、隔月なり、四半期の予想が非常に会い違つて来ておりますが、年間といたしましては今のところ非常に多く違つて来るということは一応まだ考えておりません。今お話のように麦の問題等は一応買上げが殖えて、それの関係の政府資金をどうするかという問題もあるように伺つておりますが、これは麦の買上げ資金というようなものにつきましては或る程度インヴエントリーでございまして、それを民間に払下げるまでの期間の資金でございますので、今のところなお検討しなければならない点はお示しのように多々あると思いますが、その関係で今の年度当初に作りました予算その他がすぐ修正しなければこのままやつて行けないというふうにも考えておりません。まだ勿論検討いたしまして、例えば問題になりますのは輸出銀行の資金があれで足りるかどうかというような点が問題でございますが、今後その辺の調整はどうしても必要かと思いますが、今はつきり予算等についてかようのままでは実行できないということには実は考えておらないのであります。
  15. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それからこの白書を読んで、かいつまんで結論を言うと、将来伸びんがための足踏みだ、縮小だと、こういうことで今のような大体年度末に卸売物価において一割一分程度、小売において五、六%下つている、あとそういうふうに持つて行くんだというのですが、一体拡大均衡へ転換する時期及び物価が、初め予算出町言われたことは五分乃至一割ということであつたのですが、小売の段階或いは生産者段階まで物価が少くとも小売において一割くらいになる。それから拡大均衡へ一体移る時期というのは、これは月旬等では示しにくいかも知れないが、どういう状態になつたときに一体拡大均衡に移すのか、そういう目途はどういうところに置いておられるわけですか。
  16. 石原武夫

    説明員石原武夫君) 只今の点は後ほど大臣がお見えになる予定でございますので、大臣からお答えを願つたほうがいいかと思うのですが、御質問がございましたので、事務当局、私だけの考えで一つ答弁さして預きます。或いは大臣が別のお考えをお持ちかも知れませんが、一応……。只今の点は今後の政策の非常に重要な問題であろうと思いますが、我々の考えでは本年度は或いは卸売物価等につきましてはほぼ当初の事態と申しますかよりは多少上廻るかも知らん程度に大体行く。先ほど申しましたように一割をちよつと越すかも知れんという程度まで三月末には下りやしないかというふうに申上げた。小売のほうは、これは先ほど御説明いたしましたようにいろいろのズレ等ございまして、それらの半分程度しかせいぜい下らないということでございまするが、小売につましては時間的なズレがございますので、御売物価が下つた率だけ小売が必ず下るとは行かんかと思いますが、併し時間的なズレは追つて調整をされまして或る程度卸売物価並みに追従して小売も下るんじやないかというふうに我々は考えております。従いまして、来年三月末で比較いたしますると、卸と小売とは下り方が半分くらいにしかならんといたしましても、仮に卸売物価がそのままでありましても小売が順次時間的なズレを以ちまして下つて行くんではないかというふうに一応予測をいたしておるわけであります。それで次に今年度の三月まではそうといたしましても、来年度或いはその先一体どうするかどいう御質問かと思いまするが、我々といたしましては一応少くとも来年度の上半期でございますね、来年度の上半期くらいまではさようなことで更に物価を下げるというようなことを考えて行くんではないかと思いますし、その後の情勢につきましては今後の実績等によつて或いは来年度一ぱい今のような物価引下げをなお推進をいたしまして、三十一年度から更に今度は経済の安定の基礎の上に拡大に持つて行くか、或いは多少その時期が早く物価等が下れば来年度の下半期中にでもさような方向に向け得るのではないかということで、その時期等については確たる今までのところまだ事務当局といたしましても見通しを持つておりませんが、今までのところでは、只今のところの考えでは、少くとも上半期或いは長ければ来年一ぱいという工合に考えておるわけであります。
  17. 小林政夫

    委員長小林政夫君) いずれその他の問題大臣が見えて又お伺いしたいと思いますが、まあその間に通産省の通商局次長大堀君が出席しておりますので、最近の輸出状況又今後の見通し等について、大臣が見えたらちよつと中へ挿んでもらいますけれども、その間やつて下さい。
  18. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) 本日突然伺いましたので、資料も準備いたしておりませんので恐縮でございますが、先ほど経審次長から大勢のお話がございましたので、それを補足する意味におきまして簡単に最近の貿易の状況を御説明申上げたいと思います。  大勢といたしましては、先ほどお話のように、輸出が比校的順調に伸びておると申しますか、進んでおるわけでございまして、五三年、昨年の一月乃至十二月の月平均ベースをとつて見ますると、輸出について、これは通関の実績或いは信用状ベースで比較いたしますと、いろいろの比較がございますが、通関実績からも昨年一カ年の月平均は一億六百万ドルベースであつたのですが、この一月から六月までの六カ月平均をとりますと一億二十万ドルということになつております。信用状ベースで申しますと、昨年の一カ月が八十九百万ドル、それが本年の上半期は一億一千万ドルベースということになつておりまして、更に許可の量で比較いたしましても、やはり通関と同じように一億三百万ドル、本年度が一億二千万ドル、大体一億ベースが一億二千万ドルベースに上つておるというふうに考えられるのでございます。  輸入のほうはと申しますと、輸入につきましては、最近やはり金融引締の結果と考えられますが、輸入の意欲が減退して、これが数字の上にも若干現われております。通関実績で申しますと、まだ昨年来の輸入の量がずれて入つておりますので、通関実績によりましては昨年の平均が一億ドルでございますが、本年の五月まで依然として二億ドルを超えております。併しながら信用状の開設のほうで見て参りますと、昨年の平均は一億七千万ドルでございますけれども、この四月からは一億四千万ドル、一億五千万ドル、一億四千万ドル、そういつた程度に四月以来昨年の平均を下廻つておる実績が出て参つております。私どもの仕事の範囲で申しましてもAA品目と申しておりますが、自動承認制で入れます品目にしても、本年度の上期予算の実行実績を見ますと、やはり計画予定量に達しないと考えられる程度の申請の状況でございます。そういつた状況で、輸出輸入につきましては、輸出は比較的伸びておりまして輸入のほうは落ちておる。従いまして収支の面で、先ほど申上げましたように六月に為替の面でも黒字が初めて出たという数字が出て参つております。  価格の面を御参考に申上げますと、これは輸出契約価格指数は五三年の月平均が一二七・九という数字でございますが、一月から三月まではこれを上廻つておりますが、四月、五月とこれを下廻つて参りまして、四月が一二六・四、一二四・八と輸出契約価格指数が下つておるようであります。これは一般の物価の下降傾向が現われておるものと考えられるのでございますが、先ほど来申上げましたように、輸出が非常に伸びておりますし、輸出意欲が業界一般にかなり積極的に大いに輸出しなければならんという気持があるように見受けられるのでございます。他面若干金詰りその他の関係で投売りをするというような悪い面も見られないことはないのでございます。最近もミシンその他につきまして具体的にそういう事例が発生しております。これらについては逆に関税引上げ乃至輸入の制限といつた方向へ動く虞れもございますので、そういう面につきましては私どもとして十分注意を喚起し気を付けて参つておりますが、輸出意欲増進は非常に結構でございますけれども、そういつた逆に注意すべき現象もあるわけでございます。輸入のほうは昨年の国際物価指数でございますが、輸入契約価格折数は五三年の月平均が一一〇%でございますが、本年度は大体一〇五、六%の線になつております。但しまあ一月以来の動きを見ますると若干この四月、五月と、三月、四月若干一月頃と比べて特に輸入価格が上つて参つてれります。これはアメリカの景気が若干まあ打ち直しておる関係、或いはヨーロッパのほうが割合に好況である、それから後進国も農産物価格が割合に上つておる、こういつたことが影響しておるかと思いますが、価格につきましてはこういう傾向を示しておる次第でございます。  それから若干ドル、ポンド、オープン・アカウント三つにの分析いたしまして検討して見ますると、輸出のほうはやはりドル地域に対しても、又ポンド地域に対しても輸出は増進いたしております。特にポンド地域につきましては日英協定ができましてこの一月以来比較的に向うが輸入許可を出しておる関係かと思います。各地域平均しまして一月以来だんだん輸出が殖えて参つております。インドは若干減つておりますが、オーストラリアにいたしましてもビルマにいたしましても或いはパキスタン、南阿各地平均いたしまして殖えております。又自治領でない植民地関係につきましては昨年度の月平均にはまだ達しておりませんが、一月以来やはり逐次殖えて参つております。オープン・アカウント地域につきましては、これは勿論スウィング勘定を除きまして輸出増強されますればこれは結構なことでありますが、御承知のようにインドネシア、韓国の関係につきましては封鎖勘定といいますか、輸出超過の分が振替えできないものでございますから輸出しただけ向うへ金が溜まつてしまうという現象が出ておりますために先般インドネシアに対して輸出調整措置を促進いたしたわけであります。今後少くとも輸出輸入のバランスをとるように輸入の促進及び輸出の調整措置を実施したいと思います。その効果は六月、七月あたりからぽつぽつ数字の上に出ておるように見られるのでございますが、これはなお経過措置等もでございましてだんだん均衡のほうへ行くのではないかと思つております。甚だ資料も持合せませんで簡単でございますが、概略だけ御説明申上げました。
  19. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 御質問ありますか。
  20. 八木秀次

    ○八木秀次君 ちよつと一つ伺いたいのですが、スイスフランの今後の動きに対して何か予測なさるとか、或いは何か今後影響があるたろうかということを考えるべきなんでしようか。
  21. 大堀弘

    説明員(大堀弘君) この点につきましては実はポンドの自由化の問題、或いは西独のマルクの問題の関連もございまして、今後まあ相当大きな影響力を持つ問題だと考えておりますが、目下のところちよつと当面どうという点について御説明する資料もございませんです。
  22. 小林政夫

    委員長小林政夫君) じやあ今大臣が出席するそうですから、大臣の説明を聞いて後に大堀者に対する質疑を行いたいと思います。  それでは始めます。経審長官から最近のデフレ状況下においてですね、いろいろまあ手直し等も考えられておるやに報道された点もあるし、経済総合施策に関する御所信とですね、併せていろいろ講じられておる対米借款の交渉であるとか、或いは世界銀行、国際通貨基金等とのお話合い等についてですね、一応の御説明をお願いしたい。
  23. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 只今委員長からのお話に対しまして、概略最近までの状況を御報告いたしたいと思います。  先ず第一に非常に率直に申上げたいんでありますが、デフレ政策の手直しという言葉が非常に誤り伝えられましたことは、私といたしましては非常に遺憾なのでありまして、デフレ政策、現在やつておりまするものを変更する意思は全然ないわけでございます。ただ私かそういう表現をしましたその中味は、その当時において是非私どもがやりたいと考えておりました例えば輸出金融の改善の措置でありますとか、或いは中小企業に対して貸倒準備金の税法上の優遇措置を早くきめることとか、或いは国庫預託金の引揚を暫時延期することとか、そういう具体的なものを称して私は手真しと言つたつもりでありますから、これを要するにデフレ政策の大本は絶対に変更しない、その影響によつて若干のひずみ等が起つた場合に、具体的にそれに対して適切な措置を進めて行く、こういうつもりでございます。  そういうふうな考え方でございますから只今の段階において政府としては与党と相呼応いたしまして、これから更に今申しましたようなデフレ政策を推進し補強して行くというために、新らしく今後どういうふうな経済政策を展開して行くことがいいであろうかということについて、できれば思想を統一し作文も作つて、国民の批判を仰ぎたいと、こう考えて、今寄りよりそれぞれの立場で作業をしているような次第でございます。  従つてこれからどういうふうな新らしいことを申上げるかということについては、まだ政府部内も相談ができておりませんから、今日の段階では私の考え方を申上げるにとどめたいと思います。これからの経済政策の展開についてはできるだけ長い目で見てと言いますのは、今日のこの苦しいデフレ政策はいつまで続くんだと、いつになつたら、将来どういう恰好になるだろうかということが国民的な関心の的だろうと想像されますので、或る程度長い目で見て、どういうふうに日本の経済を持つて行つたらば適当であろうかということを掲げることが適当ではなかろうかと、私はかように考えております。その具体的な内容として、私として重点を置きたいと思つておりますのは、国際収支の改善ということであり、具体的には特に輸出の振興策について具体的な考え方を打出したいと思つていることであります。この点につきましては実は約半年がかりでやつたのでありますが、特需の問題もありますし、それから今後の日本の経済としては国際収支の均衡の維持ということが最大の眼目であると考えましたのででき得るならば日本の輸出力を二十億ドル程度までにで透るだけ速かな機会に達成をするような計画ができないかということで、通産省、経済審議庁が中心になりまして、約半年がかりで非常に詳細な研究をいたしました。その結論が一応出ましたのが、昭和三十二年度において十七億四千万ドルの輸出が確保できると、こういう答案が一応出て参りました。で、この作業は単に机上の空論ではございませんで、相当程度実際家、業界の意見をも取入れましたし、それから予想されること、これからのいろいろの政治的な問題等も或る程度考慮に入れるというような、非常に広汎な取上げ方をいたしたわけでございますが、この数字はいわゆる二重価格制度であるとか、或いは補給金、補助金とかいつたような人為的な措置を用いないで、正常な努力によつて獲得し得る、一応最高限の数字である、こういうふう結論でございます。ただ一応そういうものがまとまりましたけれども、その更に詳細な点については各方面お御意見を求めて、更に研究を進めているのでありまして、その研究案の内容等につきましては、別に御説明申上げ、又御批判を頂く機会もあろうかと思いまするので、本日はこの程度にいたしておきますが、要するに今後の経済政策の上では、例えば三十二年度においてはこれだけの正常貿易ができるはずだと、従つてこれに対して各産業別に、或いは合理化、或いはそのほかの曲においてどう努力をしなければならんかということを中心の課題にして、先ほど申しましたように、多少長い目で見ての日本経済の将来を描きながら、これに歩調を合した考え方を整理をして見たいというのが私の現在の考え方でございます。そうしてそれと同時に国内経済におきましては、自給度の向上ということ、輸入防遏の対策ということも当然その観点から取上げられて行かなければならないと思いますし、又重要産業の合理化の対策もこの観点から検討いたしたい。それから中小企業対策について、これ又今申しました輸出振興の三カ年計画と申しますか、それと相照応した中小企業対策というものを確立いたしたい。  それから燃料の総合対策、或いは又工業技術の振興の対策といつたようなものが各論的にその目標に集中して整理をして参りたいというふうに考えておるわけでございます。それで、これは今お断りいたしましたように今後まだ暫らくの日数を要すると思うのでありますが、できれば八月中にでも一応とりまとめた結論を得たいというふうに考えて勉強を進めておる次第でございます。  それからその次にお尋ねの渉外関係の事項について御説明いたしたいと思います。  先ず最近日本を訪問いたしました主な外国の団体は一つが御承知のFOA調査団であります。それから現在滞日中の世界銀行調査団とIMFの調査団、この二つの調査団が連日私どもにいろいろの質問をし、説明を求められておるわけでございますし、又こちらからいろいろの要請を含む申入れをいたしております。FOAの調査団はF OA本部のマイヤー氏を団長にいたしまして、モリソン、キヤピス、リードというような諸君が来日したのでありますが、すでに任務を終了して帰国いたしました。このマイヤー氏の一行は当初からFOAとして今回来日いたしました目的は事情の調査であつて、日本側とネゴシエイトするものではない、文字通り調査団であるということでございましたので日本経済現状説明を、当方といたしましてはできるだけ詳細に説明をするに努めたのでありまするが、従つて結論としてどういう取極めができたとか、或いはどういう点について打合せができたというような性質のものは全然ございません。  その次に世界銀行調査団でございますが、これにつきましては御承知の通り昨年秋日本に参りましたドールという人を団長にいたしまして数人の世界銀行の行員が参つております。併しながらドール氏を除いた大部分の人は農業関係調査に来ておるのでございまして、先月末来朝以来昨日まで主として中国、四国、東海、近畿方面のいろいろの日本の農業施設について調査をして参りました。又二、三日うちに今度は東北から北海道方面に視察をすることになつております。それから時日は未確定でございますが、追つて鉱工業関係その他の調査団が来朝することになる見込でございます。それから世界銀行に対する日本側の態度でございますが、実は申すまでもございませんが、日本としては経済自立上やりたい計画はたくさんあるわけでございまして、そのどれもこれもその具体的な計画に精粗、いろいろの差はございますが、外資を導入したいという計画は恐らく数十に及ぶと思われるのでありますが、昨年秋ドール氏が来朝した丁度その頃におきましても恐らく二十数個のプロジエクトというものが一応話題になつておつたような非常に広汎な問題でございます。で私どもはそれらに対しまして先ずできるだけ日本経決の自立上、或いは先ほど申しましたようなこれからの考え方の上に直接役立つて外資の効果が発揮でき得るようなものを選ぶことが適当であると考えましたので、閣僚懇談会その他におきまして何遍か協議をいたしまして、各省間の意見を整理をし、とりまとめをいたしました。大体先ず食糧増産と申しますか、農地開発と申しますか、そういう農業関係のことを第一に取上げることが望ましいのではないかというふうな考え方になつておひます。  それから第二にはすでに計画が実際に進んでおりまするところの電源開発の関係で水力電気の開発のために電源開発会社が必要としておりまする外国から購入する機械代金、技術援助といつたような面に必要な外貨を第二と申しますか、その次に考えたいというふうに考えております。  そうして第三のカテゴリーとして、鉄鋼、石炭機械等についての合理化計画の中でやはり外貨をどうしても所要とするものが相当ございまするので、それらのうちから先方とも十分相談をいたしまして、適当と思うものを選別いたしまして、できるならば世界銀行から借りることにしたい。これらは期間の問題や、金利の問題が、これらの点はまだまだ先にならないと話になりませんけれども、御承知のように従来の例から申しましても、長期で安い金利でということの点から申しましても、これらの中から適当なものが選び出されまするならば、日本としても結構なことではなかろうかと私どもとしては考えておるわけでございます。併しながら先ほど申しましたように、今日のところは農業調査団が農業の実際調査に当つておる段階でございますから、未だこのプロジエクトに対して何千万ドル、どういう条件でというような話にはまだ全然入つておりませんので、それらについて御報告を申上げるまでに至つていないような次第であります。  それからIMAの調査団はマーフイー氏を団長にいたしまして数口前に来朝いたしたのでありまするが、これは日本のいろいろのやり方等について外国からデイスクリリネートした待遇を受けないように、又半面におきまして日本として貿易上とつておりました措置等について批判さるべきことがあれば、それに対して十分事情を説明するというようなことで、IMFとの連携を強化いたしたいというような態度でこの調査団を迎えておるような次第でございます。  極く概略でございまするが、以上一応御説明いたしたのでありますが、なお御質問に応じまして詳細に御説明いたしたいと思います。
  24. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 御質問ございませんか。
  25. 八木秀次

    ○八木秀次君 誠につまらないことをお尋ねするようですが、只今長官から外資について二十以上のプロジェクトがあるというお話がありました。今まで各方面折衝いたして感じますことは、民間では円資金を欲しいがために外貨を欲しいというような、誠に見当はずれのことが数年来希望されておる。ところが今のプロジェクトというのは政府の各官庁等で出しておられるプロジェクトであるとすれば、お役所でもやつぱり円資金が欲しいから外貨を借りたいというようなことを考えておるなら、それはもう片つ端から削つてしまわなければならんわけじやなかろうかと思うのであります。そんなことでもあるんじやないかという感じを持つのであります。殊に今デフレ政策を国としてやつておる際にそのような問題があつたら、これは皆切捨てなければならない。近頃の愛知用水の話にしましても、真に外貨の要るものは、それは若干は結構でしようが、それに応ずるところの円資金の問題でいろいろ御苦労と思いますが、これは非常に重大な問題である。どうも誤解が、民間の事情を知らない方面ばかりでなしに、官庁方面にもあるのじやなかろうかということを心配いたしております。が、どんなものでございましようか。
  26. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この点は誠に御尤もな御質問でございまして、大験こういうふうな経過になつておる、結論として私は御心配ないというように考えます。  それは只今八木先生も御指摘の通りなんでありまして、当初は円資金についてもいわゆるインパクト・ローンという恰好で世界銀行から金が借りられるという期待が相当あつたわけであります。従つて円資金についてもこれは借りられそうだというようなことで各方面の期待が多かつたことは事実でございますが、これは世界銀行の意見を待つまでもなく、今日のところインパクト・ローン、即ち円にすぐ代つて使えるような、日本で必要な円資金をこれに期待するという考え方は全然私どもとしてはとつておりません。それからその次にまあ強いて申しますならば、世界銀行から金を借りられればあとは何とかなるだろう、公認料をもらつたようなものだという考え方も或いは一部にあるかも知れませんが、そういうような点も十分頭に入れまして計画を整理したわけであります。それで具体的に申しますと、先ほど申しましたように、先ず電力関係のごときはいわゆる電源開発五カ年計画でそのときどきの財政事情等によつて多少計画が小規模になるというようなことは或いはあるかも知れませんが、どつちみちこれは日本としてやらなければならないことであり、又財政資金計画の上にも当然取上げられて毎年やつておるわけでありますが、その中で必要な外貨を機械購入のために要るということをこの借款に仰ぐということは、これによつて改めて別に円資金問題を起すわけでも全然ございませんから、これなどは最もスムースに考えられる問題だと思います。  それからその次の鉄、石炭、或いは機械というようなものになりますと、これも又各企業体において当然計画しておるものであり、而も政府としても場合によつて財政資金等についても考えてやらなければならんものがあるかも知れませんけれども、その額は全体から言えば極めて少いものであつて、原則的に自己資本或いは借入金等によつて処理ができるものでございますから、これ又そのうちの外国からどうしても輸入しなければならない機械なり、技術に対する対価をこの銀行の借款が借りるということは、これ又そのこと自体から円資金の問題を起さない、こういうことで、これもスムースに考えられる問題であると思います。  それから第三に、愛知用水その他農地開発の関係の点につきましては、実は円資金の問題が相当大きな問題でございます。併しこれとてもそのプロジエクトを各具体的に分析して見ますると、愛知用水に例をとりますと、その所要資金が五カ年間で三百八億円というような現在計画になつております。そのうち五十億円程度が世界銀行からの借款に期待しておる外貨所要額でございますから、残りの二百五十億円というものが五カ年に円資金として財政計画上、或いはその他の計画に乗るかどうかという問題であります。初年度約四十億円という程度のことでございますから、これは財政計画上他のものを総合的に考えて、例えば大蔵省でも或る程度の努力はできる、或いは又農林省においても全体の計画の一環として推進する上において、具体的な対策が講じ得るであろうと考えているのでございます。そういうような関係を起して参りまして、なお別個に、これはまだ将来の問題でありますが、過剰農産物の受入れに伴う代り円資金の問題もございまするので、総合的に智慧を出し合つて計画をいたしますれば、実際の問題としてこれによつて新たなる円資金の問題が大きく起るということにはならないし、又そうしないように一つ吸収して考えて行きたいというふうに思つているわけでございます。
  27. 八木秀次

    ○八木秀次君 もう二、三点承わりたいと思いますが、一つは、かねて総理から、経済の長期計画をやるのは共産主義者のやることだといつたふうなことが、速記録にも載つておるほどにはつきりと述べられております。私どもは経済審議庁のかたがたと大体ものの考えは非常によく近く似ておるつもりでおるわけであります。どうやら長期計画などは無用だということはもうすでに放棄なすつたものと思いますが、長官としてはそのように勿論御了解と思いますが、この点承わりたい。  それから次はFOA、IMF等の調査というお話のほかに、いわゆる防衛道路のお話がありました。これは金融機関の問題でなくて、アメリカの国防予算であるから全く別だということでありましようが、これは随分、数年前からお話があつたかに承知しておるのでありますが、これはもう審議庁として相当御関係のあることと思うのでありますが、日本の経済とか、産業ということと直接……、間接にはあるでしようけれども、直接には関係のない防衛道路という話が相当進み得る見通しであられるかどうか。  それから第三番目には愛知用水の場合のような、農業食糧問題の関係お話でありますが、日本の人口問題の解決等から考えても、食糧の自給ということを余り重要視するよりは、重化学工業の振興が、輸出によるというか、そういう方面に重点を置かなきやならんと思つておるのでありますが、世界中の食糧事情を相当心得ておるFOAの人たちが、日本の食糧事情ということを外資の導入によつてやることがやはり適切であると見ておつたか、こちら側の考えておることほどに重く考えていなかつたか。それらの印象はどんなものであつたろうかと、聞きたく思つておるわけであります。以上であります。
  28. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 第一のこの長期計画と申しますか、その点は、まあこれは率直に申しまして、吉田総理の表現の仕方がまずかつた点もあると思うのでありますが、私どもは御承知の通り、例えば外貨予算の編成にしても、財政投融資計画にいたしましても、或いは又電源開発五カ年計画というようなことにいたしましても、従来からいわゆる経済の計画性ということは否定しておりませんし、そういう方向で積上げて参つたつもりでございますが、今回の輸出振興対策等については、輸出目標制度といつたようなものを作りたいと思つておるくらいでございますから、先ほど申しましたように、或る程度長い口で見た計画性と申しますか、これを考えて参りたいと思つておるわけでございまして、そういう意味合において、吉田総理の考え方もこれに背馳するものではないと私は確信いたしております。  それから第二の防御道路の問題は、その名のごとく防衛といいますか、そういう点を一応の目標にしておる計画でありまして、まあ俗な言葉で申しますれば、世界銀行の借款というようなこととは別の、別格のものであるというふうに考えておるのでございまして、これは米国が、イタリア、その他の国に対して実施をいたしました計画等と照応いたしまして考えて参りたいし、又アメリカ側との折衝が期待されておるような状態でございます。  それから第三の点も誠に御尤もでございますが、先ほど申しましたように、FOAのほうの調査団は、私どもの持つている計画なり、或いは現状説明なりに対しまして、非常に詳細ないろいろの意見の交換はございましたが、結論的なものは出なかつたわけでございますが、その間農地開発等についての先方の印象というお尋ねでございましたが、格別これに対してどうというような……、私の接触いたしました範囲では、印象というほどのものを得ることはございませんでした。或いは他の接触した人たちにどういう印象があつたかまではわりませんが、私との間におきましては、特に食糧問題について消極的である等の印象は受けなかつたような次第でございます。
  29. 笹森順造

    ○笹森順造君 長官にお尋ねしたいのですが、先ほどのお話は、我が国の国際収支を改善して、又我が国の自立経済の健全化を図るために、どうしても今後満三年、或いは満二年くらいの後には、輸入輸出のバランスをとるということを目標として、できるならば輸出を十七億三千万ドル程度かくらいにまで伸ばしたい。これはそれでもなお足らないと思いますけれども、やはり戦前のように二十億ドルというものの、輸入輸出が丁度パーになつておつたところまで行く努力が、やはり政府としては必要じやないか。そこで初めて今の多少、或いは三億乃至五億くらい、それでもなおその後に伸びて行く輸入の額と比べて見るというと、なおそれでも十分じやないのじやないかという気がいたします。そこで思い切つてやはりもう二年もたつたならば、収支がパーになるくらいの計画が立たないものだろうかということを一つお尋ねしたいと思います。  そして、ところがここへ非常な御苦心があるだろうと思いますのは、戦前における日本のこの輸入輸出のことは、相手国の状況とそれから相手国が必要といたしておりました品目との問に、現在において非常な違いが出て来ておる。我々が後進国だと再つておつた国が、もうすでにみずから生産力を増強して、日本で折角出したいと思う物を、向うで生産するというふうになつて来た、或いは又ヨーロッパ各国においても、或いは米国さえ、その当時必要としておつた日本の物を買付けない。或いは買付ける必要がなくなつたものは、品目にもたくさんあることは御承知の通り。或いは生糸にしてもそうでしよう。或いは又陶器類にしてもそうでしよう。そういうようなことを考えて見ると、非常にこの折角立てた計画が、思う壷にはまらないという困難性が、戦前と比較して現実にあるじやないかというような、二重の困難性があるということを実は考えておりまして、今お尋ねになつております満二年後に十七億というものを打出そうということならば、一体相手国をどう考えておるか。これは日本の外交の関係にも大きな関係を持つて来るので、日本の相手国というものを考えずにこれはできないことである。従つて内閣においても従来のような、相手国を成る一方的なものにばかり制限せずに、やはりこれは日本がまだ平和を樹立していない、まだ形式的に交戦国であるものとの間に、早くこれは平和を結ばなきやいかんということではないか。或いはそういう外交の関係はそのままにしておつても、経済外交を推進しなきやならないのじやないか。これは今まで吉田内閣が随分私ども国会で論議しても、やはりそれら相手国を重視していない。丁度今八木先生がお話なつたように、計画経済を立てるということに大体変えて来なければならんと共に、日本の外交の根本を変えて来なければ、今言つたような貿易の収支を償うというところまで行かないのじやないか。ところがこれは単に技術上の問題でなしに、そういう面まで含まなければならない。これは特に大臣として今後こういう面に相手国をどう持つて行くか、或いは又品目をどういう工合に切換えて行くかという点について御意見を一つ承わりたいと思います。
  30. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 先ず第一のせめて二十億ドルにならないかというお話は誠に御尤もでありまして、私も当初は二十億ドルということに計画ができないかということで作業を始めたのでありますが、これは今の研究の結果といたしましては、先ず十七億四千万ドルというようなところが最大の限度であり、目標として適当であろうという結論が只今のところは出ておるようなわけでありまして、なおこれを伸ばすということについては、何とかして研究を更に加えなければならないと思つております。  それから相手国とそれから品目の問題でございますが、私はでき得るだけ何と申しますか、自由主義諸国家群との協調という範囲内においてできるだけ貿易の範囲を伸ばして行きたい。少くともそういうふうに考えておるわけでございます。ただまあこれは申すまでもございませんが、仮に中共或いはソ連圏でありましても、範囲が拡がつただけではいけないのであつて、こういう地域についても輸出を伸ばすためには、向うの事情もよくわからなければならないと同時に、良質廉価のものでなければ到底これらの市場においても輸出を伸ばすことはできないと思うのでありまして、そういう点においては、他の地域に対すると全く条件は変らない。ただ地理的に近い関係にあるということだけが特色かと考えるようなわけでございますが、十分一つ研究をいたしたいと思つております。  それからこの作業を我々がいたします場合に、相手国として想定されるところが、最近の状況、或いは今後の見通しの上においてどういう経済の発展を示しておるかということについては、相当及ばずながら研究をいたしまして、そのほうからも積上げた作業をいたしたような次第でございまして、先ほど申しましたように、これは一つ機会を見まして、実際この作業に当つたような人々からも詳細に一つ研究の過程をお聞き取り願いたいものだと思う次第でございます。
  31. 笹森順造

    ○笹森順造君 もう少しお尋ねしたいのですが、今の私ども自由国家群と、従来の通りに外交を推進することは何ら異論ないのですが、私は筋のあることだと思つております。それには異論がない。ところが今長官のお話のように、成る品目によつては途中の輸送費というものは非常に大きな要素になりますために、できるだけ近いところとの貿易ということが、やはりこれが再開されることが非常に難ましい。一例を申しますならば、例えば木材のようなものを今度ソ連圏から入れよう、従つて向うのほうからそういう仮に若し多量に廉価のものが入るとすると、従つてこちらからも輸出することができるということで、適確なバーター・システムであるかどうかは知りませんけれども、少くともそういう一つの途が開かれることによつて、やはり新らしい規模ができるのじやないか。今度国会議員がたが新らしい途を開くために努力して来ておる。この結果が、私は帰つて来なければどの程度まで果して具体化するかはわかりません、又どの程度までこれが実際に行なつて信憑性があるかはわかりませんけれども、どうもこの辺の努力がまだ足らんのじやないか、今後研究しますということですが、もうそろそろこの辺のことがあつてもいいのじやないかという気がいたします。例えば木材のようなものでも、或いはパルプのようなものでも、北欧の、例えばノルウエーあたりから非常に日本に売りたいというようなことがありましても、随分運賃が長い距離でかかるものですから、決して日本のためにならない。ところが近いところになりますと、そういうものは非常に地理的な関係で、今の中共等との貿易を再開することが日本のためになるのじやないか。経済経済としてイギリスがやつたような方針に政府の基本線がなつているかどうか、そこを一つまあお尋ねしたいと思います。
  32. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この点は誠に御尤もでございまして、私どもといたしましては、大体御承知のように、従来ココムの線よりも以上に禁輸の品目が日本は多かつたのでございますので、過去半年の問に殆んど全部禁輸を解除いたしまして、今では先ずココムと同様というところまで行つたわけでありますので、これから更に禁輸の品目を解除する、こういうところからやつて参りますことが最も実際的であると思うのでありまして、私どももその範囲内でできることでも、食わず嫌いでやつていないというわけでは毛頭ないわけでありまして、最近は輸出輸入も相当中共に対しても伸びているような状況でございますし、少くとも政府部内におきましても経済関係の面から申しますると、これはできるだけ拡げて行くような努力をすべきものであるというふうに私は考えているわけでございます。
  33. 笹森順造

    ○笹森順造君 別の問題をもう一つだけお尋ねしたいんですが、只今のお話でそういうお気持にだんだん変つて来ているということであるならば国際情勢等と睨み合せて誠に希望に近いものだと考えますので、どうか一つそういう工合にお進めを願いたい。  それからもう一つのことは、世界銀行調査団で来て、いろいろ日本の経済、産業或いは又特にいろいろな電源開発であるとか、或いは水力発電の問題であるとか、従つてこれが食糧増産のためてあるとか、或いは関連して鉄道、石炭の合理化のためであるとかいうことを、日本がこちらの受入態勢の一つとして視察をさせている。これはやはり日本の経済要求の一つとして集中された一つの問題であると思う。そこでこれは是非具体化するように政府も努力してもらいたいということなんでありますが、それについて特に私ここで気になりますは、日本としてはやはり国際収支をよくして、そうして輸入しなくてもいい必需品を日本が自給自足できることが一番必要なこと、その必要なことの中に、特に食糧がある、従つて食糧増産ということのために、これに金を要する、これは特にこれが農地の改革、機械化等に用いられるということがいいことだと思う。ところがこれが御承知のように、だんだんに世界各国、特に農業の機械化というものが発達した米国、カナダその他で非常な勢いでやつているので、米国の一番大きな問題は、如何にして食糧を増産するかということでなくて、あの資本主義的な機械力を以て生産した過剰食糧をどう一体世界に撒布するか以外に、市場を求める以外にアメリカの農業政策はないという現状なつていることは私が申上げるまでもない。この間に日本としては、無論自立経済のためには食糧を増産しなければ間に合わんが、例えば今度MSAの五千万ドルの食糧買付の金にしても、向うは買つてもらいたい、従つて日本の食糧を増産するためにいろいろ使うことに果して喜んで向うはこれに真に同調して協力してくれるかどうか。飜つて考えて見ると、世界のすべての人口が、今日生産過剰国から生産の不足な国と比べて見て、果してどういう工合にこの食糧の自給というものは世界中できるかということがはつきりわからなければ言えない話ですが、近頃聞くところによると中共では食料を非常に増産されているということを聞いている、こういう場合に日本の食糧増産ということに対して、世界銀行が非常に喜んでこれがために支出するという気持になるようなことをさせ得るかどうか。それから又この前には、ドツジの政策は、我々は一面においてはよかつたし、一面においては日本農業のために非常に困つたものだと思つてつたのは、日本の農業の開発のためには、やはり米国も尊んで金を出すことは、余り喜んでやつておらなかつた、今まで……。従つてここに大きな国際銀行の大転換をさせる上においては、我々はよほど主体性を以て、日本は必要なんだということをはつきりさせなければいかんのじやないか。従つて世界銀行から金を引出すについても、日本の食糧増産ということに対して、はつきりしたそういう主体性を持つて、確信を持つて進めるだけのいい条件があるかどうか。それを老婆心ながらお尋ねしておきたいと思います。
  34. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 誠に御尤もで私も同感でございます。従つてそれ故にこそ例えば円資金の問題等につきましても、農地の開発の場合においては、私は余剰農産物の代り円の使用ということに相当の私は意味があると思うのであります。これは日本側といたしまして、向うの考え方はともかくとして、こちらとしてはこれに対しては相当の重要性を置いて然るべき性格の問題ではなかろうかと、私はこう考えておるのでありまして、従来の私の見方でございまして、どこまで当つておるかわかりませんが、世界銀行調査団のほうは、御承知のように国際的な性格でもございますから、愛知用水の問題にいたしましても、或いは北海道の泥炭地域の開発にしても、或いは八郎潟の干拓等に対しましても、非常な興味を示しておりますことは事実でございます。でありまするから、そういう関係と結び合せて余剰農産物のアメリカの処理に関連を持たせて、日本側が主体性を持つての考え方に同意をしてついて来てくれるように、これからいろいろと折衝を展開することが我々の任務であろう、こういうふうに考えておりまするので、これにつきましてできるだけの努力を今後とも図つて参りたいと思つております。
  35. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 先ほど事務局にはちよつと尋ねたと思うのですが、最近の国庫対民間収支等が大分当初の見込とは違つておるし、そういう財政資金の払出し状況からいつて、当初政府で予想されておつたデフレ政策というものが崩れて行くのじやないかという、こういう予想をする、心配をする円きもある。こういう当初予算編成時に見込まれた状況と違つた様相を織込んで、果して只今事務当局から二十九年末の生産規模、或いは物価の状態等についての見通しの話があつたのですが、おおむね予算編成と同じような見通しを立てておられる。一体それに対して狂いはないのか、又そうさせるのには、多少手直しという意味が、違つた意味の手直しというか、調整をお考えになつておるのかどうか。そういう点について成るべく率直な御所見を伺いたいと思います。
  36. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) さつきも冒頭に率直に申しましたように、手直しという言葉は非常に悪い意味を持たれたので、これはそういう表現は私は使わんことにしたいのでありますが、ほかに適当な言葉は実はないのでありますが、私の考えによると、手直しというのは、今御指摘のように当初予定したよりもインフレ的な要因が出て来た場合には、やはり元の筋に戻すための手直しが必要だと思います。そういう意味で若し政府の撒布超過が非常な勢いで、別えば通貨の状況その他に狂いが生ずるというようなことでありますれば、やはり適切な措置を講じなければならないと思うのであります。併し御案内のように、従来の経過に辿つて見ましても、別えば日銀貸出なり、或いは市中金融機関からの貸出なりは減つていないのです。それでこの増加がどうして起つたかというと、その当時は国庫の揚超が非常に多かつたからそれを緩和しているというような状態があつたこともありますから、今後においても国庫の収支だけの状態でなくて、いわゆる総合的に考えて金融政策その他に寛厳よろしきを得るように措置することは私は必要だと思つております。
  37. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それで大分別の面から言いますと、今非常にデフレ政策が破綻するのじやないかというような見地からお尋ねしたのですけれども、又一方かなりデフレが滲透して、例えば昨日の審議官の報告等でも、大阪或いは北九州等において、大分リアクシヨンが出ておる。そういう意味で失業問題或いは中小企業対策等について、何か予算の編成替を要するのではないか、こういう点も窺われるのですが、あらゆる点を考慮して、予算についてどういうふうにお考えになつてれりますか。
  38. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 只今御指摘の通り失業対策、それから中小企業対策等の面は、先ほどのお話と又逆な面においてデフレ効果が非常に滲透して来た。それから特に成る部面にしわ寄せられて、非常にひずみが多くなつているというような場合には、これに対する対策が必要なので、その面から失業対策につきましても、すでに御説明いたしたと思いますが、続審が総合政策の立場から中心になりまして、先般も公共事業や鉱害復旧事業の繰上げと申しますか、繰上げと同時に、失業の発生することの多い地点に繰上げて施行するというようなことをその協議会から閣議の決定まで持つて行きまして、具体的な措置を打つているんでありますが、そういうことをやつて参る必要は非常にあると思うのであります。併し只今のところ予算の編成替までは今すぐやらなくてもいいんじやなかろうか。大体将来を見通しながらできるだけ融通のある措置を大蔵省側で考えてくれるならば、差当りのところ今の程度失業並びに対策でございますれば、ここ数カ月はやつて行けるというような見通しを持つております。
  39. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 中小企業関係融資等についても同様のお考えですか。
  40. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 中小企業のほうの考え方につきましても大体同様でございまして、まあ率直に申しますと、多少将来を見通しながら時期を繰上げて資金を流すというようなやり方は講じ得る余地が相当あるのではなかろうかと思つております。  それからなお行政的にでき得る措置等につきましては、関係の向きとも十分連絡をとつておりますので、あえてこの際予算とか法律を用いずして、暫らくの間は十分対策が打つて行けると、こういうふうに考えております。
  41. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから先ほどのお話で、三十二年度輸出を十七億四千万ドルに持つて行く、これには相当相手国別、又商品別に積上げた計算でそうなつて行くのだ。こういうことがあり、又事務当局のお話では大体来年度、即ち三十年度一ぱいくらいは現状のような足踏み状態で以て、それから拡大均衡に行きたい。こういうような希望的見通しを言われたのですが、白書等によつても、現状は将来の拡大のための足踏みだということが書いてあるのだけれども、一体その拡大均衡へ移すモメントについての科学的なというか、具体的な転換についてのこういう時期であるというようなことについて書いてない。そういう点についてはどういうふうに大臣は見通しておられるか。
  42. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この点は非常にむずかしい点でありまして、どの時点を押えてこれから拡大均衡に入るかということは非常にむずかしいところだと思いますが、私は概括的に申上げますると、一番大事なことはやはり国際収支の均衡と思うのであります。で幸いに六月、七月は受取超過といういうな時期が続いておりますが、この国際収支の時々の移り変りはじつとよく注視しておきまして、先ずこの程度ならば当分収支均衡が続くであろうという、そういう見通しを得たときには、もうすでに拡大均衡へ踏み切るような態勢へ入らなければいけないのではなかろうかと、こう考えておるのでありまして、その時期を私は大体これから一年或いは一年ちよつとという程度のところではなかろうかと思います。それから物価につきましては、御承知のように私どもがこの一月に申しましたのが、この年度中に五%乃至一〇%下げると申しておりましたのですが、これは大体大筋から言えば、目的を達成しつつあると思うのであります。中には繊維のごとく遥かにそれ以上に下つて、国際水準を下廻るというような程度のものも出て参りましたが、こういうものについてはむしろ需給調整と申しますか、そういう点での物資別の配意が必要になつて参つたと、こういうふうに考えますが、物価だけについて、例えば総合物価指数が幾らになつたら、それから転換するのだということは、なかなかむずかしくて言えないと思うのでありまして、物価等については、物別にやはり調整措置が必要じやなかろうかと考えております。併し総じて申しますると、まあ来年度の前半期の終りくらいには、大体このいわゆる地固めの最終の段階に入り得りのではなかろうか、こういうふうに考えております。と申しますのは、物価にしても、この年末までに更にどのくらい下るかわかりませんが、この影響が時期的にずれて来年度のほうに入つて参りますから、来年度に改めて更に一割下げなければならない、そうしてその下つたときにどうこうするというのは、却つて私は言い過ぎではなかろうかというような感じもいたしますので、大体これから一年、或いは一年ちよつとの時期を一つの目標に見て行くべきではないかと思つております。
  43. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから三十二年度に十七億四千万ドルの輸出を相当の確信を持つてやるように持つて行く、又自立態勢も固めて行くと、こういうことでまあ大きく計画というか、方向、まあ目標をきめて、それに施策を集中すると言われるように聞えるわけであります。その目標の設定、施策等については研究中であるから、後刻公表するであろう、こういうことでありますが、その方法でありますが、一体どういうふうにやられるのか、国家としてはこういうふうに考えておるということで、まあ外貨の割当であるとか、その他直接政府の現在統制しておる枠内にある事柄はそれで行けると思うのです、一番手つ取早い話で金融なんかは、依然として自主統制に任して行かれるのか、或いはもうすでに量的統制の範囲を脱して、質的に考えられて行かなければならんということになつておるのだが、その質的統制は融資自主規制委員会と金融機関の自主的な歩みに任されるのか、成る程度力を以て臨もうとされるのか、その辺のところは如何ですか。
  44. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは只今のところでは原則的には自主的にやつてもらいたいと思うのであります。併し今後その点については更に早急に私としては研究をすべき問題だと思つております。それからはつきり申上げ得ると思いますことは何と申しましても、これは資金源を、国内資本の蓄積を急速度に大きくすることではなかろうか。先ほどもお話がございましたが、インパクトローンとか何とか、他人に頼つておるような感じでおりますことは、経済自立上非常にまずいので、そのために税法上その他いろいろ議論はございましようが、一つの簡単明瞭な政策としては預貯金の利子課税をやめるとか、生命保険の保険料とか、保険金に対して税金を一時ストップするとかいうようなことで、資金の源を豊にするということがこの際とるべき措置ではなかろうか、これはまだ政府においてもその方面と十分話はできておりませんけれども、私としては一つの考え方はそこにあるのではなかろうか。で、それを今度はどういうふうな向きに流して行くかということについて、方法論として自主的な調整がいいのか、或いは実質的にこういうところがよろしいというような法的規制をするのがよろしいのか、これは十分に研究しなければならん問題だと思いますが、私はともあれ、最近の経済指標を見ておりましても、資本蓄積の増加程度がますます鈍くなつておる、そうして徒らに貸出が多いというこの現状は、そこの根本から一つ直してかからなければならないんで暫らくほかの部門は棚上げにして頂いてやつて見たらどうであろうかということを、私見として考えております。
  45. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから物価等も今お話のように、物によつては国際価格を下廻つておる。併し一番力を入れなければならん重化学工業製品としてはそうでない。最近セメントに対して価格切下げの勧告をするとがいうような報道がありますが、今十七億四千万ドルの輸出目標を達成するに当つて、そういつた国際価格と比べて割高なものについて、又それがかなり下げる余地があるというように、その物価について何か政府として干渉的な措置をとるようなお含みがあるのかどうか。
  46. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 今その物価ストツプ令といつたような考え方は持つておりません。で、只今セメントのことがお話に出ましたが、セメント等につきましては特殊なものでもありますからやりやすい点もあるのかも知れませんけれども、たまたまいわゆる官需、政府の需要が非常に多いものですから、買方の方式の改善ということと、併せて業界の協力を得まして、まだ私は不十分なんでありますけれども、第二のステップとして、大体公共事業関係を三百円建値を下げるということについては、業界も欣然と協力してくれるようでありますから、こういう方式で話合いを進め得る限りはこういう方式で参りたい、こういうふうに考えおります。
  47. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから世界銀行からの借款については、先ほども八木委員からちよつとお託がありましたが、まあ外貨を借りなければならんという点が、かなり我々としても疑問に思う点も多々あるわけです。いろいろ話はあつたようでありますから、これは一体どういうものについて借款をしたいのが、又その額はどの程度、二十九年度にはどのくらい、三十年度にはどうと、こういうようなおよその肚ずもりを持つて、借入れる以上は交渉を進められるはずなんです。差支えなければその辺のところお話し願いたいと思う。
  48. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 大体世界銀行関係は先ほど基本的なことを申上げたのでありますが、外国製の機械を使つたほうが国内の機械を使つたよりも経済効果が顕著にあつてよろしいというのが一つのカテゴリー、それから国内では造れないというものは殆んどないかも知れませんが、造ろうとしても非常に多額の金がかかり、日子を要する、要するに俗な言葉で言えば外国のものがすぐ手つ取早く入るというようなことも一つの部類でございます。それから例えば水力電気などの場合において、ロツク・フイールと言うのでありますか、世界的にもなかなか難工事の設計をするというような方式の場合には、その設計なり工事なりについての技術を導入すると非常にうまく行くというような場合におきましては、その技術の援助に対する外貨を払わなければなりませんから、その外貨といつたようなものに集中して今度はお願いすることにいたしております。その合計についてはよく新聞に報道されておりまするように、世界銀行のほうの肚ずもりといたしましては、大体一億ドル程度ならばというような気持があるように見受けられます。その一億ドル程度とううことはそう固い意味ではなさそうでありますが、すでに四千万ドルの火力借款がございますから、日本のいろいろの条件からも睨み合せて見ましてまあ六、七千万ドルのところであれば最も望ましいし、又実現も相当容易じやなかろうかというふうに私は見ておりまして、その程度のところを腹案といたしまして、さつき申しました三つのものについてのサウンドしているのが現在の実情でございます。  それから三十年度以降につきましては実はまだ政府側といたしましては外資導入の計画を持つておりません。今の交渉中のものの成行き等について考えて、又一方FOAの関係などとも睨み合せまして早急に希望的な計画を作りたいと思つております。今まだ御説明申上げるまでのものを持つておりません。
  49. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 何かほかに御質問ございませんか。一時という約束なので、少し時間が過ぎておりますが、それはまだいろいろ尋ねしたいようなことがあるようですが、今日はこれで大臣の質問を一応終ることにいたします。  午後はこれから二時まで休憩いたしまして、二時から再開することにいたします。    午後一時十二分休憩    —————・—————    午後二時十七分開会
  50. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それでは開会をいたします。  通産省の企業局次長が参つて、通産関係の対米借款計画について説明をすることになつておりましたが、都合で出席できなくなつたので、農林関係と建設、防衛庁関係に、本日の午後は問題が限られると思いますが、今建設庁の道路局長富樫君が出席をしておりまするので建設省関係、まあ特にこの弾丸道略等について、一応の計画を話して頂きたいと思います。
  51. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 建設省の計画しておりますいわゆる弾丸道路、東京—神戸間の高速道路につきまして御説明申上げます。  この計画につきましては一昨年来調査を始めておりまして、二十九年度調査が完成いたす予定になつております。すでに現地についての実測は終了いたしておりますが、なお長い橋梁でありますとか、トンネルでありますとかの地質調査等が二十九年度に残された調査の仕事でございます。この計画は東京から神戸の最短距離を結びまして、自動車専用の高速道路にしようという計画でございます。東京と神戸の間は約五百四十キロほどになりますが、これを平均一時間百キロの速力で走れるように設計する考えてございます。勿論高速を出す道路でございますので、鉄道は勿論、その他の道路とはすべて立体交叉にいたしまして、所々に連絡場所を設けるといつた式のものでございまして、最近米国あたりでは相当この方式が用いられておるようでございますが、それらの方法をとつております。何せこの計画が起きましたのは、現在の東海道が非常に交通が輻輳して参りまして、到底従来の改良計画では間に合わない。特に長距離の通過交通が多くなつております現状でございますから、これに応ずるために計画されたものでございます。これは有料の道路にいたしまして、建設費は償還いたしたい計画でございますが、只今の計画では一日七、八千台の自動車が通ることになりますと、十五年ぐらいで償還できる計画になつております。この計画をどういうふうに実施するかという問題でございますが、これにつきましてはまだ資金の目当てがついてれりません。これを実施する方法といたしまして公社の案でありますとか、或いは又道路会社の案でありますとかが考えられておるのでございますが、いずれにいたしましても国内だけの資金では間に合わない。外資を入れたいという考えもあるのございまして、これらのことは只今考えられておる状態でございまして、結論を得ておりません。ここで蛇足かも知れませんが、最近中央道と申します道路の計画案が言われております。これは只今御説明申上げました高速道路のほかに、日本の国土を開発したいという意味を持つ道路でございまして、只今この中央道案につきましては建設省に調査審議会を設けまして審議を続行中でございます。関係があると存ぜられますので一言附加えて申上げました。
  52. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 道路整備五カ年計画も大体この前十九国会の終り項までにはまだ内容的にはつきり我々にも説明しなかつたのですが、その他いろいろ道路の整備新設等の計画があろうと思いますが、それとの関連においてどうなのか、それから又防衛道路等との関係はどうなるのか。
  53. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 道路整備費の財源等に関する臨時措置法によりまして、昭和二十九年から道路整備五年計画を立てまして実施いたしております。この五カ年計画の中には先ほど御説明申上げました高速道路は含まれておりません。高速道路は公共事業費によるべきものでないというふうにも考えておりますので、公共事業業の計画の中には含めてございません。それからいわゆる防衛道路でございますが、この際防衛道路は保安庁が計画をいたしまして、只今米軍と打合中でございますが、道路整備の立場から我々もその打合会には入つております。この計画は只今続行中でございまして、只今は道路網の設定を打合中でございまして、近く結論に達するものと思われますが、この計画は大体において我々が考えております道路整備の計画と対象は同じでございます。我々もこの防衛計画の道路に盛られた道路は道路整備の立場からも整備いたしたいと考えておるわけでございまして、ただ五カ年計画におきましては五カ年計画の総額が少い関係でこれらの道路に対して盛られますのは極く僅かであろうと思いますけれども、対象になる道路は我々の見方から言いましても整備すべき道路であると考えておるわけでございます。只今のこの防衛道路の計画のうち五カ年計画にどれだけ盛られておるかを作業中でございますので近く延長、金額等がはつきりすることと考えております。
  54. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 御質疑はございませんか。
  55. 笹森順造

    ○笹森順造君 ちよつと細かいことですが、今のお話で明確に了解しなかつたからお聞きするのですが、道路整備五カ年計画に含まれておる総額は約五百四十億円、そこで今の弾丸通路の中に防衛道路の意味でやはり若干含まれておるかのお話のようでしたが、この五百四十億円という中に今の費用が入つているのですか、或いはこの枠外に別に考えるべきなんですか、算定の基準はどうなつておりますか。
  56. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 只今笹森先生から申されました数字は前に新聞等に出た数字かと存じます。それで只今折衝しておりますのは大分模様が変つて参りまして、選ばれた線の種類も又延長も変つて来ておりますので、只今その中にどのくらい含まれておるかという勘定をしておるわけでございます。  それからいわゆる弾丸道路でございますが、これは前の新聞等に出ましたものについては別枠として含まれておつたのでございますが、只今のところはその高速道路は除かれております。
  57. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 外資導入と言うか、その対米借款によつてやらなきやならん、弾丸道路の場合、それはどういうものですか、どういう、例えば土木工事をやる機械であるとか、日本でちよつと手当ができにくい機械とか、非常に能率がいい機械とかというふうなものを輸入するために借款をする、こういうことになるのでしようけれども、大体どの程度のものを、どういうもので、どの程度金額を予定しなきやならないのですか。この計画は整つておりますか。
  58. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) この高速道路の資金計画につきましてはまだはつきりいたしておりませんので、従来考えられておりました案を御説明申上げる程度しかできないのでございますが、この東京—神戸間の高速度道路は現在の積算によりますと千四百数十億かかるわけでございます。會つてはこの金額を外資を入れたいという考えがあつたわけでございますが、いやそれではなかなか外資が入るまいというようなことで、その半分ぐらいは国内で資金を融通したらどうかという案もございました。その後委員長の言われましたように、向うから入れる、輸入される機械でありますとか、資材でありますとかを相当割合を高くして、それによつて外資を得るようにしたらどうかというような意見もあつたわけでございますが、只今のところは先ほど御説明申上げました程度以上に出ておらないわけであります。
  59. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 当初の計画で全額外資導入といつたつて、結局円資金の手当さえつけばいいわけでありますから、特に向うから入れなきやならん設備とか、機械等があれば別として、セメントにしても国内調達でできるだろうし、成るほど金詰りだからといつて外資は入れなきやならんということにはならんじやないか。勿論余剰農産物等を向うから物を持つて来て、その売上代金でそういう費用に充てるとかというならばまあインフレにもならないということで行けるのですが、今のような事態で、まあ逆にデフレ政策をやつて行く、こういうときにこの弾丸道路を造るということであれば、外貨導入といつたつて、今お話のは、この道路が計画された当初の心組みだと思うのですが、この事態になつてからは大分変つているんじやないか。まあ午前中経審長官からもそういう意味の答弁もありましたが、又一方建設省としてもかなり土建用の機械を整備されたと、そういうようなものでこの弾丸道路を造つても、造らなくても或る程度技術の高度化のために機械は整備されつつあると思うのですが、それとの関連はどうなんですか。
  60. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 土木工事を機械化して行きたいという考えは持つておりますし、この方向にだんだん進められるものと考えているわけでございます。併し従来建設省のとつて参りましたその機械に対する政策と申しますかは、国内の機械を助成して行きたい、機械産業を助成して行きたいという考え方だつたわけでございます。で、公共事業費によるものはそういう考えで、特に国内でできない機械は別でございますが、大体国内産のものを使つているわけでございます。弾丸道路につきましては、これはまあいろいろ考え方もあるわけでございますが、アメリカの機械なり資材なりを入れて、そのことが外資を入りやすくするのではないかというように考えておつたこともあるわけでございますが、併しこの高速道路につきましては、アメリカからどうしても買わなければならん機械、或いは資材というものは極く僅かでございます。ですから、まあそういう面でなくて、いわゆる投資というようなことで、その外資が入らなければいけないということを考えているわけでございますが、これについては今日のところ、まだ目途が立つておりません。
  61. 笹森順造

    ○笹森順造君 弾丸道路を造つて、今の構想では、これは有料道路にしようという考えをお持ちのようですが、この考え方は固まつておりますか。固まつているかという言葉は変ですけれども、こういうことは日本では今度初めてやるのだろうが、ただこの弾丸道路というのが今度できるのは、公社になるかどうか知らないが、こういうものにするつもりですか。これを又建設省としては奨励して東京—神戸間ばかりでなくて、特に必要だと考えられる道路を造るとするならば、やはり有料道路にするということに対する建設省の考え方自体がどの程度まで行つているかお伺いしたい。
  62. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) この高速道路は有料で考えております。それは外資を入れようというような話もございましたし、国内の資金をこれに入れようという考えもあつたわけでございますが、要するに償還される金で建設するという考え方から有料道路にしようという考え方が浮んだわけでございますが、なおこの高速道路は東京—神戸間だけではございませんので、全国的にこういう道路を考えているわけでございます。
  63. 笹森順造

    ○笹森順造君 そういうことである場合にはやはり右へならえで、やはりそのほかのものも有料道路にしようというお考えですか。
  64. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) これはまだはつきり申せませんのですが、これは東京—神戸間ははつきり採算がとれるという計算に基いて有料道路にしようということを考えておるわけでございます。今後できますそういうような道路は、例えば青森—東京間でありますとか、神戸—下関間でありますとかというところになつて来るわけでございますが、これははつきりそれでは有料にするかということはまだそう申せないのではないかと思うのです。だんだんにこういう高速道路が必要になつて来れば、公共事業費でも或る程度やらなければならんと考えますし、そうなれば有料にするということも考えなくてもいいのではないかというふうに考えます。
  65. 笹森順造

    ○笹森順造君 今のお話でもとよりまだ明確な結論に達しておらない場合にお尋ねするものもどうかと思いますが、今の構想では大体公社らしく響くのでありますが、それには道路整備五カ年計画の費用も考えられる。併しガソリン税とか、そういうものはその中に入つて来ない。私どもが外資が導入されると、これがどういう形式で公社を通して来るのやら、政府を通して来るのやら知りませんが、いずれにしても国の費用がこの中に入つて来るということになれば、そこで資本が、資金がそこに入つて来た場合にはつきりとした計画というものはないような印象を受けますが、そこまで有料道路としてこれを十五カ年で償還するということをおつしやる以上はどれだけ国が出し、どれだけ一体公募するか、さつきのお話で結論までのお話はどうも納得できることが得られないようでありますが、はつきりとした、ここに出ておる一千億幾らという大きな費用がかかるとすれば、而も十五カ年のうちに償還するという結論が出れば大体そこに大づかみな、どういう金が入つて来て、それに対して有料道路としてどれだけしたらどうなるかというに大づかみの構想てもお聞かせ願いたいと思うのです。
  66. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) この千四百数十億かかつて、そうして十五カ年で償還できると申上げましたのは、或る計算に立つた上のことでございますが、この計算はいわば仮定したものでございます。千四百億を年何分の利子で借りて、それを十五カ年で均等償還して行くという計算の上に立つたものでございまして、言われるように、その資金を色分けいたしまして、どれがどういう利子の金、或いはどこから来る金というふうにはまだ計算いたしておらないのであります。
  67. 笹森順造

    ○笹森順造君 少し話が早いかも知れませんが、有料道路とすると、その単位基準をどういうふうに考えておりますか。つまり哩数でどれだけ行くとどれくらいになるということにならないといけないと思いますが、そういう今の一日の使用が七、八千台とすれば、それに対して何哩に対して幾らというような基準は大体きまつておりますか。
  68. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 今考えておりますのは、単位延長当りの金で計算いたしておるわけでございますが、一キロ当り乗用車で五円、トラックで十円という勘定にしております。
  69. 奥むめお

    ○奥むめお君 非常に大きな予算のあらましの内訳ですけれども、あらましの内訳はおわかりでしようか。
  70. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) わかつておりますが、実は今日その資料をここに持つて来ておらないのでありますが……。
  71. 奥むめお

    ○奥むめお君 あなたの御記憶で大ざつぱにどうですか。
  72. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 防衛道路ということでございましたので……。
  73. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 後ほど又委員のほうへ資料を出して下さい。それではまだ道路局長に対する質問はあると思いますが、一応防衛庁の経理局の工務課長出席しましたので、その防備道路の防衛庁としてどういうふうな計画でおられるか、概要を先ず御説明願いたいと思います。
  74. 大森頼雄

    説明員(大森頼雄君) 先ほど道路局長から前に御説明あつたかどうかと思いますけれども、私のほうの計画と申しますのも、まだ本当の大ざつぱな方針で、自衛隊が自分の任務を遂行して参りますために機械化されました部隊が、その機軸力と補給力とを持ちまして最も力の発揮しやすいということのために必要な道路、その道路のうちで一番大事な道路と思つております。まあ人間の体で申しますと動脈と申しますか、そういつた一番の根幹となる路線、それはどの程度のものかということで一応想定しまして、そういつた道路だけは常時から整備をしておきまして、いざというときに今申しました自分の任務が完全に遂行できるようにということで路線を選びまして、その路線について米軍側の助言なども聞きまして、逐次それを直しながら今研究を進めておる段階でございます。
  75. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 今の道路局長の説明と、それからあなたの説明を承わつて、局長の説明だと本来まあ日本としてやらなきやならん道路計画に副うたものであつて、特に防衛道路だからといつて別に新らしい路線を考えたわけじやない、こういうようにとれたのですが、そういう特に防衛道路と名付けて、ところによつては防衛道路を造るならいやだというような再軍備反対というような意味からの不必要な反感も起しておる事例もあるやに聞いております。特に防衛道路と名付けて、何か違つた、建設省で計画しておる道路整備計画と変つた何か要素があるのですか。
  76. 大森頼雄

    説明員(大森頼雄君) 今お話のありました通りでございまして、防衛道路と申しましても別に新らしい道路を考えているところは殆んどございませんで、大部分が既設道路の改修を考えております。従つて産業道路と申しておりますものと大体において重複しているところが大部分であるとお考え願つていいと思うのでありますが、なぜ防衛通路とそれなら申して、何か特に特殊なところがあるかと申されたようにお聞きしたのでございますが、それは今申しましたように防衛上の点から見まして、産業上の面から見ますというと、或いはまだ何と申しますか、その必要の程度の順位がずつとあとのほうになつている路線でありましても、勿論これは産業道路であつてでございますが、併し防衛の点から見ますとそれがずつと早目に、そして又規格の点などで申しましても、産業道路で考えているよりは、産業道路のうちのいわゆるクラスがずつとあるわけでございましようけれども、そのうちの下に考えておつたような路線が防衛上から見ますというと、やはりもう少し上のクラスの道路として、緩急順から見まして、用い時期に整備しておくことが防衛上から行くと、先ほど申しました任務達成の上から行くと非常に望ましいというような点で、いわゆる緩急の順とか、或いは道路の企画の面、そういうような而で産業上から見た必要の程度以上の、以上と言うと又少し語弊があるかも知れませんけれども、もう少し上のクラスの道路の整備を要求している点が違うところと思つております。そういう結果は産業の面から割出して行つたのではどうしても出て来ないのだろうと思うのであります。
  77. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それで財源の点ですがね、この点はどういうふうに防衛庁のほうでは考えておられますか。
  78. 大森頼雄

    説明員(大森頼雄君) 財源につきましては現在のところまだいずれともきまつておらないように聞いております。まだその一番元になります現在では道路網をどういうふうにするか、そしてその道路はどんな規格のものがいいか、そうしてそういつたものを最小限一番必要だと思う道路網を整備しておくにはどれだけの工費が要るかということを只今建設省と一緒になりまして、米軍側の助言なども聞きながら整備している状況でありまして、この財源はどうするかという問題はまだきまつておらない。
  79. 小林政夫

    委員君(小林政夫君) 防衛庁としても防衛道路と名付けて、産業道路としての順位と違う、又規格も変えてやる、そういう際に米軍と或いは共同して折半負担ということになるか、向うから一方的に出して来られるかも知らんが、そういうもの、日米安全保障という建前で、その線で成るべく向うから金を出してもらうという含みで交渉しておられるのか。その際に全額出すのか。或いは本来建設省で計画している道路計画にプラスされる面だけについての可能性がある。或いは工事の順序からいつて高順位のものを繰上げてやるのだから。少くとも防衛道路という範疇になつたものは、全部いわゆる軍事費の中から出し得る性質のもの、その点はどういう見解ですか。折衝して見なければわからんけれども、あなたのほうの肚ずもりとしてはどういうふうにして考えておられるのですか。
  80. 大森頼雄

    説明員(大森頼雄君) 只今御質問のことにつきましては中の、防衛庁の中のそれぞれの担当者としてはいろいろな意見は、まだ正式ではございませんがいろいろ話が出ておりますけれども、まあ話の程度でございまして、まとまつた意見もありませんし、それから先ほど申しましたように米軍側とはまだ費用については正式に話合つていることはございません。
  81. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 建設省はどういう考えですか。
  82. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) この防衛道路計画のうちで五カ年計画にも載つているという面がございます。この分については従来計画されておつた規格で実施したいと考えておりますけれども、その他の部分については今立てられております五カ年計画を変えようという考えは持つておりません。
  83. 小林政夫

    委員長小林政夫君) いや、その手当の問題で、どうせあなたのほうは道路をうんとよくしたいし、整備したい存念で一ぱいであり、そのために財政資金がもらえないということで相当ガソリン税等も無理してああいうふうになつた。出せる名目がつけばどこかほかから引張つて来たいという気持がある。その際に今の防衛道路なんという恰好の名前がつけば何とかして乗つかつて行きたいという気持があるのじやないですか。
  84. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) この防衛道路については、五カ年計画に入つておる分は別といたしまして、その他のものでは公共事業費を注ぎ込む考えはないわけでございますが、日本の道路の現状からいたしまして、公共事業費以外の金が来るのであれば、道路整備のほうに廻したいという気持を打つております。
  85. 笹森順造

    ○笹森順造君 まだ話が熟しておらんように伺うのですが、そこで今のうちにいろいろ考えておく必要があるのですが、委員長からお話の防衛道路という名称を付することが一体いいのか悪いのかという問題があるのじやないかと思います。如何なる道路でも、一旦必要ある場合には、先ず防衛道路としての意味を果す道路でなければならない。昔の鉄道に防衛鉄道線というものはなかつたのです。併し必要があると皆これが防衛のためにも用いられる。又産業のためにも使われる。今日のすべての道路も同じことだ。特に防衛道路ということを言うものも、そこに何か理由がなければならない。殊に今弾丸道路を造ろうという場合に、一つの例として東京—神戸間のそういう高速の道路を造ろうとした場合には、産業道路と防御道路としての表現が使われると、道路自体の利用価値と申しましようか、使用目的と申しましようか、或いは又これによる規格と申しましようか、この上においても相当な差が出て来なければならない。特に日本のように河川の多い国では、橋梁という問題が非常に大きく出て来る。従つてこれが単なる産業道路として、或いは乗用車であるとか、或いはトラツクであるとか、積載量において或る制限が加えられております、そういう車が使われておるところは非常な重量を以て働かれる戦車その他のものが、やはり産業道路とせずに防衛道路として使われるところの橋梁の強度を必要とすることになるのじやないかと思う、そういう意味では、つまりこれを何レーンにするか、三レーンにするか、片道五レーンにするか、それらのことについてもいろいろ技術的に規格が違つて来なければならない。従つて産業道路としての必要以上の負担から、防衛道路としては考えなければならんから、その費用というものが当然問題になつて来るのじやなかろうか。その場合に、これを有料道路として、一キロ当り五円或いは十円ということで、十五カ年で償還するということを言つている。そのもとが、一体産業道路としての、必要以上の強い力を必要とする橋梁或いは又道路の幅員なりを要するものに負担させるということになると、私は政治としては適切でないと思う。従つて国家が負担すべきものは、当然これは国として無料で負担しなければならん。或いはこれをMSAの将来の相談として、こういうことのためにその金が或る面から来るということ、であれば、これは無料で公社などに、道路を建設するものに与えて、そうして、従つてこの有料道路というもののキロ当りの単価を出して、最初お聞きしたのですが、そういうものをもつと軽減されて行くということでなければ意味をなさんのじやないか。こういうようなことを実は考えるので、そこで建設省としては、公共事業費というものは非常に大事なんだから、これをやたらと使わしたくないのは無理ない話でありますので、できればそういう他の財源というものを防衛庁で考えて、これに注入するということでなければ理窟が通らんのじやないか。但しその場合に、最初委員長が申されましたように、名称をそういう名称にして、然るが故に防衛道路とするのが適切であるとか、不適切であるとか、そこの問題になつて来る。併しいずれにしても、できれば基幹道路とか、幹線道路とかにして、そうして名目は余り審議しないような問題にして、而もその実を挙げるというのが政治ではないかと思う。又これらの今後折衝をすることは今後のことでしようけれども、又お話を聞いてもその点はつきりしないので、外資を導入したいということを道路局長最初からお話になましたので、その点のかわり合いは、今のところ、これからのようてありますが、先ず第一防衛庁としてこれらのかかり合いについて、つまり弾丸道路の建設の橋梁、或いは又道路の幅員等の規格が産業道路以上に必要でなければならん、もつと高度のものということをおつしやいましたが、その間について防衛庁の必要とする道路の大体の規格のことでもお話願えれば私どもだんだん理解して行くのじやないかと思いますが、若しそういうことまで、細かいことまでお話ができるならば伺いたいと思います。防衛庁のほうからでも……。
  86. 大森頼雄

    説明員(大森頼雄君) 今お話にありましたように私も存じますが、防衛道路という名前、それから防衛道路として考える考え方でございますが、これは名前などは、実際名前とか、それから若し刺激を与える点で不利な点が非常に多いとすれば、これは相当考えなければいけない問題だろうと思いますので……。それから先ほど申しました規格の違いでございますけれども、これは確かにそうなんでありまして、先ほど私申しましたように、産業道路としては、このくらいの幅員の道路で、このくらいな強度でいいというのに対して、私のほうは幅員はそのままでも、そこのところは荷重だけでも大きくしたいということを、又幅員も更にもう少し広くしておきたいというところも出て来るのでございまして、従つて産業の面から行けば、このクラスの道路でいいのに対して、同じ道路でありながら防衛の面から見た場合に、更に多くの工費を使つてその上のクラスにして行かなければならないというような部分が出て来るだろうと思うのでありまして、その場合の経費の負担は、はつきりと区別をつけるべきではないかというような考えでございましたように聞いたのですが、若しそれを実施するという場合でございますと、やはりそういうふうに考えるべきではないかと思うのでございます。それから只今考えております荷重は、私のほうでは等荷荷重と言つておりますが、等荷荷重五十トン、或いは六十トンというものを今考えて計画を進めているわけでございます。それから道路の幅員は特には広くしておりませんで、有効幅員が七・五米のものと六米のものと二通り考えております。ただ防衛道路として使うという非常事の場合を考えますと、幅員のほかに路肩を普通の道路で考えております場合は、最小限をきめられると、恐らくどれどれ以上ときめられると思うのでございますが、その場合に路肩はやはり普通の場合よりも更に広いほうが非常に好都合だということで、路肩の面などでも多少細かい検討になつて参りますと、違いが出て来るだろう、そういうふうに考えております。
  87. 笹森順造

    ○笹森順造君 組かいことで大変失礼ですけれども、今の六米幾ら、或いは七米になると、ニレーンくらいになりますか、三レーンにはならんと思うのですが如何ですか。
  88. 大森頼雄

    説明員(大森頼雄君) 二車線でございます。往復するだけでございます。
  89. 笹森順造

    ○笹森順造君 それが折角こういう千何百億という金を考えて、日本の国が永久に、一方二レーンくらいで間に合うとお考えですか。これは非常に大きな問題だと思うが、少くとも片面三レーン以上にならなければ、将来、十年、二十年の後には、こんなものを造つたかと言われることになりやしませんか。この点計画が少し小さ過ぎるような感じがします。鉄道で広軌と狭軌の問題が数十年間問題になつていあように、今のような計画で一体それでいいとお考えになつておりますか。如何でございましよう。
  90. 大森頼雄

    説明員(大森頼雄君) お説の通りでございまして……併し私たちが今考えておりますのは、やはり工費の面なども考えておるのでそういつた計画をやつておりますが、それで先ほどから、今路肩のことを申したのでございますけれども、路肩をできるだけ広くとりたいということ、それから許しますならば、結局路肩からあれを全部入れまして道路の敷地としては四十フイート、約十三米でございます。それくらい欲しい。そういたしますというと、今お話にありましたような路肩の一部分というのは交通、産業の発達と共にどうしても必要だというときには更にそこに一車線を増すこともできる。十三米あればいざというときの防衛の面から言つても、又将来の、お説のようなことを考えましても十分間に合せ得るだろうと思つております。
  91. 八木秀次

    ○八木秀次君 この道路の話は大分複雑であり、如何にもあいまいな感じがいたしますのでお尋ねしたいんです、先ず簡単に私は東京—神戸間の高速自動車道路について自分の了解するところを申上げたいんでありますが、建設省に先ずお伺いするのは、道路整備五カ年計画というものにはいわゆる弾丸道路というものは入つておるんですか、ないんですか。
  92. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 入つておりません。
  93. 八木秀次

    ○八木秀次君 そこで私の了解を東京神戸間の高速自動車道路について申したい。二、三年前に建設省ではこれの調査をするために、外国人を雇うためであつたか何か外貨を使いたいという申請がありました。そこでそういう調査をしても、それは実現できないのであれば無駄使いであるからこの外貨を使うということは適当でないというので、私は外資委員として反対いたしたことがございます。この資金というのが得られない間に金を使つてはならんと申したところが、建設省当局はこの資金のことは自分らにはわからない、総理大臣と建設大臣ぐらいがおわかりで、これは外資を導入するんでありましようと、こういう答弁でありましたから、外資を取扱つておる委員会の私としては、そういう外資は来ないんだ、アメリカからの外資ならば利払と償還計画がちやんと立たない貸金というものは得られるものではないんだ、そういう意味で反対をいたしましたけれども、そのときの少額の外貨を使うことは認可されたのであります。そこでその後どうなるかと思つておりますと、省では年に二、三十万円の調査費を使つて現に調査をしていらつしやる、それは無駄使いになりはしないか、又それに関係する人たちは公務員として余剰の公務員と認められる虞れはないかと心配しておつたのでありまして、もとより調査をするということは他日役に立つことではあります、けれども、よほど官庁としてはその点慎でなければならんと思つてつたのであります。果してこの資金が得られるかどうかと思つておりますと、そのうちに例の中央道の計画という田中氏の案が出て参りまして、そして先頃の会期中に中央道の法案が議員提出で出て参りまして当委員会にもかかつたのであります。これは建設省の計画しておれられたものと平行するところの競争線でありまして、この法案は衆議院では継続審議になつたものでありますが、参議院のほうではまだ適当と思われない結果、審議に打切られたのであります、それまでの間は防衛道路という言葉は全然なかつた。即ち建設省がやるにしても、或いは民間人である田中私案にいたしまても、これは有料道路であつて企業計画が立つものであるということになつておつた。資金を調達して、それに対して配当なり利払なりをしてなお償還が確実に行くものであるというふうに計画をしておられると承知しておつた。最初建設省の場合にはどれくらいの貨物輸送ができるのであろうか、それから計算しておいでになるはずだと思つておつた。ところが計算をしてある。それでは東海道線が輸送しておる国鉄の貨物との競合いという問題などについて鉄道当局と打合せをしておるかと言つたところが、全然しておらない。東海道線の鉄道輸送をそつくりトラツクに持つて来るような案であつたんでは不健全であると私は思つたのであります。殊に外貨になりますと、ドルを持つて来るのではインフレーシヨンをあおるだけである。必要な物資に支払うものだけは借りて外国で支払をしておいてもらうべきだ、そうしてそれに対して円の資金が非常に必要である、それは容易なことではないという意見であつたのであります。併し昨年までの政府のものの考え方は円を放出することを案外平気であつたのでありますが、今やデフレ政策ということになつておるそうして見ると、これはできれば結構だけれども、今やるべからざることではないかと私思うのであります。どこで中央道の案にいたしましても、建設省の今までの案にしても、資金の上からこれは成立たないということを心配しておつたのであります。ところが率然として防衛道路という言葉が出始めた。先ほど来笹森委員等からお尋ねがあつたのでありますが、あのいわゆる元の弾丸道路というものと防衛道路というものが同じであるか、違うのであるかということがはつきりしないのでありますが、私一人の考えでは、防衛道路と言い出したのは、世界銀行とか金融機関からの外資導入を考えないものであつて、アメリカの国防省の持つておる国防予算から日本の軍事援助としてやつてもらうという意味において防衛道路という名前がついておるのだと私は思つておつた。ところが今日承わるというと、建設省においても何か計画をしておる。防衛庁においても計画をしておる。その間に何か連絡があるのでありましようけれども、何やらそこにもたにもしたものあつてわかりにくいのであります。そこで防衛道路としての東京—神戸間というものは建設省の計画しておつた東海道に沿うところの高速道路であるのか、中央道であるのか、或いはその他に防衛庁独自の東京—神戸間の防衛道路なるものがあるのか、その辺のところは一向わからないのであります。そのいずれにしても誠にむずかしいことだと思うのであります。第一防衛道路というものが、占領下ならばアメリカ軍が自分の資金を以て事業を遂行するだけのことであります。それを併し日本側にやらせるといたしましてもその資金というものの問題は非常にむずかしいのであります。日本のデフレ政策に反するようなことをされても困るのであります。その顧慮は片方は防衛道路についてあるのでありますが、建設省の計画なすつておるのは、これは一つの独立企業として採算のとれるものとしての計画であるはずなんであります。そうして見れば、先ほどからも御質問のありましたように、収入はこういう基礎でこれくらいのことがあるのだ、支出はこれくらいになるのだという企業計画、事業計画がなければならん、営業的にそろばんが合わなければならんのです。それなしに調査費というものをすでに支出しておるのであります。そうしていつまでたつてもはつきりした答弁は得られないのであります。誠に杜撰な私はものの進め方ではなかろうかと思うのでありますが、私の今までの了解はこういうことなんでありますが、間違つておる点があつたらそれを指摘して頂きたい。
  94. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 防衛道路計画の中には東京—神戸間の高速道路が入つておりません。それから東京—神戸間の高速道路は採算がとれるように計画いたしておりますし、その企業計画を持つております。それから調査のことでございますが、実測を終りまして、只今平面図、縦断図ができております。更に大きなトンネル、橋梁で地質の点で多少道を変えなければならんものが出て来ておりますので、それらの実際の調査を本年度実施することにいたしております。
  95. 八木秀次

    ○八木秀次君 只今の御答弁は建設省が今まで計画しておられたいわゆる弾丸道路についてでありますが、その後先ほど申上げた議員提出の法案に出て参りました中央を通るところの中央道の案が当委員会としては一応審議を打切つたのでありますが、建設大臣はこれをお取上げになつて審議会にお諮りになつたということを承知しております。そうしてこれは技術的にやれないことはないという結論を新聞で見たのでありますが、我々の知りたいことは技術的にそういうことが造れるか造れぬの問題ではなくて、どれくらいの経費がかかる難工事であるか、それが経営的にそろばんに合うかどうかということの調査でなければならんと思うのであります。工事は金がかかつても何でもやるというのならば随分雑工事でもできると思うのであります。今項そういう中央道ができるかできぬかという調査でもなかろうと私は技術者の一人として考える。それはもつと採算的にうまく行くかどうかを考えてもらいたい。その結果はどうやら建設省のもとの案に傾いておるやに私は新聞で承知しておるのでありますが、どうも移り気で以てそれも一つ当つて見ようやというようなふらふらした考えで建設省が事を進めておいでになるのではなかろうかということを今までいつも不安に感じておつた次第なのでありますのでつい失礼なことも申したかと思います。
  96. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 田中清一さんの計画されておりまするいわゆる国土開発中央道につきましては、只今建設省に調査審議会を赴きまして審議中でございます。審議の段階は技術的に可能かどうか先ず取上げたわけでありますが、これは金さえ出せば技術的に不可能ではないということになつたわけでございます。これからの審議は然らば果して経済的にどうあろうかということを調査するわけでございまして、なおそのあとにやるべしときまればその資金計画というものを立てなければならんことになるわけでございますが、この田中さんの中央通が言われましてから相当年数がたつておるわけでございますが、未だに実測をする段階に至つておりません。現在まで論議しておりますのは航空写真と航空写真を図化いたしました一万分の一の地図によつて推測しておるに過ぎませんが、これを実施いたす段階になりますと、この明石山脈を越える線を実測いたさなければならんという一つの事業が残つておるわけでございます。
  97. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 前大蔵委員会で申上げたと思うのですが、有料道路ですね、現在ある有料道路もいろいろ何個所も手をつけて経済効果を発揮するのにあれも仕掛り、これも仕掛りと、こういう状態であるので、成るべく一つか二つ三つ重点的に集中して料金をとつてその間の建設費用を償却するにしても早く経済効果が出るような施策をとるべきではないか、こういう意見を開陳したところが、そういう点は考えて現在すでに手のついておる有料道路特別会計の名においてやつておると、これらの既存のものと、今度の弾丸道路というようなものとの、一体着工するとしてどういうお考えですか。まあやはり金の手配さえついたら弾丸道路は今までの有料道路、或いは橋梁等もそのままにしておいて並行的にやると、こういうお考えなのか、その辺のところはどうです。
  98. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 弾丸道路につきましては今の有料道路制度のあの特別会計の金でやろうということは考えておりません。それで今の特別会計でやつております有料道路につきましては誠にお説の通りでございまして、私どもも早く実効を挙げるように努力いたしておる次第でございますが、何分にも今年きめられました予算が僅かで本年度完成のものが来年に持越されておるわけでございますが、これなども新規というものはできるだけとらないことにいたしまして、すでに着手したものを完成させるという方向に行きたいと考えております。
  99. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 私の言う趣旨はあの特別会計の金は使わずに弾丸通路はやるのだということなんですけれども、要するに借款であろうと財政資金であろうと道路関係への金を今度も弾丸道路をやろうと言えば千四百億使うのだと、そういう金が使えるような状態であればまだ今度の弾丸道路を若しやられるとして、それを道路会社にされるのか、或いは又別の特別会計でやられるのかは別としても、一応今までの有料道路特別会計による引つかかりがあるのだから今のお話のように金がなくて本年度完成のものすら翌年度へ持越すということであれば、考え方としては今度の有料弾丸道路をやる金が手配できたら、それを今までの引つかかりのほうへ廻して早く従来の引つかかりを完成して、然る後にこの東京—神戸間の弾丸道路は手をつける、こういうこともやれるのではないか、それを向うは向うで特別会計は今まで通りの範囲でやつて行く、こつちは別途の金を調達するという別途資金手当ということが必ずしもその国全体から見れば勘定科目は別であつても別途にはならない。その優先順位という、あなたがたで何でも東京—神戸間は早くやらなければならないという何か理由がおありになるのか、その点については……。
  100. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 東京—神戸間の高速道路については資金計画が立つておりませんが、一つの考え得られる案として政府の出資を求めるということがあるわけでございます。そういたしますと、資金運用部資金等を入れなければならないことになりますが、これを入れることになりますと、今の有料道路に差し響きがあるわけでございます。こうなりますと、私どもといたしましてはすでに着手されたものを早く完成したいと思うのでございます。東京—神戸間のこの道路はどういたしましてもまあ五年から七年はかかると思いますので、すでに着手したものを早く完成するように努力いたしたいと考えております。
  101. 小林政夫

    委員長小林政夫君) それから防衛庁のほうへ伺いたいのでありますが、どうも細かい路線等については箝口令が布いてあるのか余り話がないようですが、ただ大体の傾向として北海道、東京まあ下関におけるこういう縦走道といいますか、というほうの道路整備に優先順位を持たれるのか、或いは日本海、太平洋の連絡の道路を整備するという横断道路、どつちに一体優先順位を置かれるのか、この程度のことは話せると思いますが。
  102. 富樫凱一

    説明員(富樫凱一君) 今お話がありましたような北海道から九州まで全国について考えております。それからお話にありましたような縦貫道も大切でございますし、又いつかの横断道路もやはり重要な線だと考えております。
  103. 小林政夫

    委員長小林政夫君) いや、その両方やるのか、一体どつちを先にやるように考えておりますか。
  104. 大森頼雄

    説明員(大森頼雄君) 緩急順は北海道から北関東、関西、九州とありますというと、横、縦でどつちが先かということではなくて、そうではなくて、やはりいろいろな条件が伴つておりますが、大体においてやはり地域的、それから遠距離を繋ぐという関係で考えております。縦と横でどつちが先かというと両方同心になつております。
  105. 小林政夫

    委員長小林政夫君) ほかに……。  ではまあ大分きまつてつても言えないような点もございますし、又きまつていない点もあるし、一応道路関係はこの程度にしておきます。  では道路局長、それから工務課長御苦労様でした。  次は農村省から愛知用水関係説明を願いたいのですが、出席者は官房長と、それから農地局の経済課長であります。じや、どちらからでも、愛知用水について、今の計画、借款等の申込について、まああなたのほうで、いわゆる愛知用水というのは、どういうような計画なのか、その計画の概要を御説明願います。
  106. 富谷彰介

    説明員(富谷彰介君) 愛知用水と申しますのは、地域は名古屋市の東部、東春日井郡、それから知多半島全域でございまして、現在関係いたします耕地面積といたしましては約三十三万町歩でございます。この地域は昔から水に乏しく、而も河川から水を引きたくも適当な河川がないというような地帯でございましたが、従つて、この地域に住んでおりまする約五万四千戸の農民というものは、大体水の補給というものを希望しておつたわけであります。如何にこの地域が水に困つておるかという例を申上げますと、実に一万三千以上の溜池が地区内にあります。三万三千町歩の田畑を灌漑いたしますために、一万三千の大小無数の溜池がこの地に散在しております。この溜池から水を得ておる。更に知多半傷に参りますと、飲料水にも非常に困難を感じます。知多半島の突端に師崎という町がありますが、この町全町に井戸が僅か三つしかない、そういうような状況でございます。従つて、農林省といたしましては、昭和二十六年から地元の要求に応えまして、この地域に何とか用水を確保してやりたい、併せて工業用水も引いて参りたい、上水道も引いて参りたいという計画を立てるべく昭和二十六年以来、本年までに四カ年継続いたしまして調査を行なつたわけであります。その結果、結論といたしましては、木曾川の上流長野県でありますが、長野県に二子持という地点がございます。ここに有効貯水量九千万トンの貯水池を新らしく造りまして、この水を木曾川に沿つて下まで引いて参る。それを岐阜県の兼山というところがありますが、この兼山から取入れまして、東春日井郡を通り東末端まで水を流そうという計画を作つたのでありますが、これに要する総工費が三百八億円でありまして、この三百八億円を投じますことによつて得られます米麦の増産量は、米麦で申しますと約二十八万石、そのほかに蔬菜、果樹等、農民の一年間に得られます収益増、これは米麦の二十八万石を合せまして、約四十四億円という増産量を挙げることになつております。で、私どもといたしましては、只今申上げました三百八億円の所要資金、このうちで世界銀行に対しては、直接ドルを必要といたします機械、それからこの機械を運転するに要します燃料油、これを合計いたしまして、一千四百万ドル、邦貨に直しまして約五十億円余りでございますが、一千四百万ドルを世界銀行融資を仰ぐべく申請したような次第でございます。  以上が愛知用水の概況でございますが、次に残りの……、三百八億円、そのうち五十億円ばかりが外貨となるわけでありまして、残りの二百五十八億余の円貨につきましては、これは現在交渉が始まつておりまするアメリカの余剰農産物の受入資金、余剰農産物の見返資金を以て、円資金に充てたいという希望を持つているわけであります。以上が愛知用水の概要でございます。  次に八郎潟の御説明を申上げます。八郎潟は御承知の通り秋田県にありまする湖でございまして、現在のところやや塩水がさざ程度、大体淡水であります。で、一番深い所でマイナス四メーター、湖の全面積は約二万二千町歩でございます、これを干拓いたしますと、一万三千町歩ばかりの耕地ができます。で、この計画につきましても、農林省は二年前から調査を開始しております。実は八郎潟の干拓計画に対しましては、遥か大正年代から再々計画がなされたのでありますが、当時、今日までの農業、土木技術では、なかなか解決がむずかしいというような難点がございまして、未だに案の決定を見なかつたわけでありますが、最近に至りまして、やつと一応の成案を得まして、八郎潟の水を干し上げて、附近から流れ込む川の水は、これを八郎潟の一部に貯溜することによりまして、潅漑用水を兼ねたいという計画を作りまして、これに要します総経費が約百二十億円でございます。で、百二十億円かけまして、全湖水面積二万二千町歩のうちで、一万三千町歩に田を作ります。一万三千町歩の田を作りますと、これによりまして、米が約三十三万八千石取れるわけでございます。で、今申上げました百二十億円の資金のうちで、この土木に必要な機械、これを約九億円と概算いたしておりますが、この九億円について世界銀行融資を仰ぎたいという希望を持つた次第であります。以上が八郎潟でございます。  次に長崎の干拓に関しましては、これは長崎の長崎県と佐賀県に挟まれておりまする諌早湾を締切りまして、約七千町歩の耕地を作りたい、こういう計画でございます。ところがこの長崎干折に関しましては、締切りの最深部は現在海底のマイナス十メーターにありますので、現在の農業、土木の技術を以ていたしましては、なかなか困難であります。従つて農林省としましては、目標はこの諌早湾を締切ることによりまして、七千三百町歩の耕地を作り、最低米麦二十七万石ばかりの増産を上げたいという希望で、調査を行なつているような次第であります。従つて長崎干拓に関しましては、一応世界銀行のほうへ、こういう計画があるという程度で出したものの、只今すぐ実施設計が完了するかということになりますと、まだまだ暫らくの間検討を続けなければならんという段階でございます。御参考までに申上げますと、今の大ざつぱな計算では、この長崎干拓の完成に必要な資金が約三百十億円ございます。二百十億円かかる見込になつております。  次にこれは農林省から提出したのではございませんが、農業関係といたしまして、北海道開発庁から石狩川の総合開発が申請されておりますので、その概要を申上げておきます。これは石狩川に沿います泥炭地を開発いたしまして、約九十四万石ばかりの米の生産を挙げたいという希望で出した計画でございますが、この石狩川の計画の中に含まれております地域は、現在着工中のもの、或いは一部着工したもの、或いは更に全然まだ計画段階にあるもの、そういうものを合せますれば、全部で六地区の複合計画になつております。で、従つてこの或るものにつきましては、先ほど申上げました長崎干拓のような調査の段階にあるものがあり、他のものにつきましては愛知用水程度調査の完了を見たものもありというようなわけで、内容がいろいろ精粗まちまちになつている点がございます。併し農業に関して申上げますと、石狩川の泥炭地を開発することによりまして、耕地を新らしく二万五千町歩ばかり作ります。それから既設の水田を約十二万町歩ばかり改良いたします。かようにいたしまして、費総工として四百二十九億円ばかりかかるわけでございますが、この四百二十九億円の工事費のうちで、工事に必要な機械類の輸入ために外貨を一千百九十五万ドル要求しているような状況でございます。  以上が現在農業関係について世界銀行融資申請をいたしました概要でございます。
  107. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 今のお話を承わつて、大体計画の固まつておるというのは、愛知用水と八郎潟と北海道泥炭地帯ですが、世界銀行への融資申込額はわかりましたが、申込額以外は、今の愛知用水のほうは余剰農産物の売払円資金で調達する、他のほうはどういうことになるのですか。
  108. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) ほかのほうも勿論余剰農産物を期待しておるようでございます。只今経済課長からお話なつたように、現任までのところは、基礎調査その他からいつて愛知用水が最も具体的な問題として、あと八郎潟、石狩、長崎、そういう順がになつておるので、同様な方針で進んでおるわけでございます。
  109. 小林政夫

    委員長小林政夫君) そうすると全額手をつけて行けば、必ず余剰農産物の円資金でやるので、結局その工事自体は全額借入金でやる。そうして余剰農産物の円資金というのはもらうつもりなのか、或いは見返資金と河じように、今度の例で言えば、一千万ドルだけは受けるけれども、四千万ドルは若し使うとしても返さなければならんというような、そういう点はこの工事関係ではどうなるのか、地元負担等は全然ないのですか。
  110. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 勿論事業費の負担区分は現在の公共事業費の負担区分で考えておるのであります。但し事業を早期に完遂するためには、こういう大きい事業につきましては会社なり、或いは特別会計を作りまして、現在の公共事業で年度の切れ目に金の注込み方が悪くて、事業の効率が悪くないようにするという点、そのほか事務能率を上げるために、今申上げましたような特別な機構を作つてやりたいと思つております。それを、初めに会社が金をまとめて出して、あとで地元の負担なら負担というものを回収して行くと、こういう考えでおります。然らば元になる金をどういうふうにして調達するかの問題でありますが、一部は問題になつております世界銀行からの借入れ、残りはこれは日本側の勝手な希望でありまして、できれば全部でも余剰農産物のほうから欲しい、こういうような考え方であります。若しそれができなければ当然日本の財政資金の負担でやらなければいけない、こういうことになります。問題はこういう大きい事業でありますので、財政負担、余剰農産物以外の金を相当出さなければならんことになりますれば、現在着工中の計画に相当支障を来たしますので、これらの計画自体のスタートに問題ができて来るのでありまして、私どものほうとしましては、専ら余剰農産物から出してくれ、こういうことでやつているのであります。ただアメリカ側の余剰農産物の法律が七月一日から成立しているのでありますが、グランド、つまり先ほどのMSAの一千万ドルの譲与でどれだけ来るのか、それから貸付金でどれだけ来るのか、この関係がまだアメリカの政府の中で明確でありません。これは最近二、三日前に来た向うからの報告によりましても、まだ向うの担当部局も明確になつていないようでありまして、グランドの分と借入の分とはどういうふうになるかわかりませんが、これは農林省としましては、必ずしもグランドでなくて借入の分でよろしい、こういう方針でやつているようなわけであります。
  111. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 御質問……。
  112. 奥むめお

    ○奥むめお君 私は初めの弾丸道路の場合でも、今度の場合でも、何かこうアメリカからの借款を得るために、あの手この手を無理に考え出したという印象を非常に受けるのですね。だからあとの借りたものだから返さなければならんということは当り前のことなんで、そういう意味で日本の経済状態に無理があるということを聞きますのですね。これはどうも一つも納得行かないのですけれども、あなたがたは技術の立場から計画をお立てなさるわけですから、問題は別になると思いますけれども、九州のほうの干拓を一つ考えましても、あれは発表された当時からいろいろ問題になつておりますですね。愛知用水の問題は非常に政治的なものもあるんでしようけれども、あの辺の地域を考えましても、土地柄石にかじりついてまでも百姓をしなければ食つて行けないんだという人があの辺にはたくさんいるということも考えなければならないだろうし、又日本の全体的な農業政策、米価の問題とか、農作物の価格の問題から言いましても非常に見通しが甘過ぎはしないか、そんなことに金を使うんだつたら……。アメリカから金を借りて何でもしたらいいと、あの手この手と計画をお立てになるのは無理からんと思います。けれども、私ども全体的に考えて、非常にそういう政府の態度に気に入らないう政府の態度に気に入らないものがあるのですね。殊にここで農業の場合をとつて見ますと、今の百姓が立たない、農家の米がよくできないということは水のないところも随分あるけれども、もつと根本の理由が多いのではないかしら。その無理な点をそのままにして金を借りて、約束の期限に返そうとするために、百姓にしわ寄せになつて却つて困りはせんかという気がいたしますが……。
  113. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 非常にむずかしい問題でありますが、私どもの考えている考え方を簡単に申上げますと、要するにこれは私ども行政官として、農林省の役人としての考え方でありますので或いは間違つているかとも思いますが、今の状況で行きますと、とにかくにも日本の中でできるだけ食糧を自給しなければならないというのは我我に与られたる至上命令であると、こういうふうに考えているのであります。それはどうかと申しますと、少し理窟つぽくなるのですが、毎年とにかく百万から、戦後は百五十万、最近では百三十万、人口問題研究所の研究によると十年後でもまだ百万程度の人口増はあるだろう、これは三十年後にもなればもつとうんと減つて、人口の伸び方が減つて来るという調査なつておりますが、そうしますと、まあ大体一人一石乃至一石二斗の米、……米に換算しての食糧が要るわけであります。ところがこの三十年来のあれを見てみますと、とにかく日本の商工業が発達し、或いは災害等によりまして、毎年平均いたしまして三万町歩以上の耕地が潰れて来ているのであります。従いまして現在のままで行きますと、人口増と耕地の潰れ、それから耕地が、使つているうちにだんだん生産力が落ちて行くのであります。土壌の養分、或いは土壌の中の化学的、理化学的な性質が変つて落ちて行く。そういうものを考えますと、大体毎年二百五十万石程度食糧増加しなければやつて行けないのであります。これは今やかましい問題があります。食生活の改善で蛋白、脂肪をとつたらいいじやないかという考え方であります。これに向つてもやつておりますけれども、そう一挙に……、これは十年、十五年後を見て頂ければ相当な改善ができると思うのでありまするけれども、一挙にはやれないということになりますと、どうしてもまあ日本人が最も馴れている米麦、或いは甘藷、それが作れる耕地を作つて行かざるを得んのであります。これは食う物それ自体を直接に増さなければいかんという考え方であります。又一方この農村の社会問題の面から見ますと、終戦前までは農家一戸当りの経営面積が一町八反あつたのであります。それが終戦直後数百万の海外引揚、或いは軍備廃止による重工業の縮小からいつて、現在は一戸当り八反余りの経営面積しかないのであります。而も六割近くは五反未満の経営面積しか持つていないのでありまして、このことは結局、日本の農家が、半分は働きたくても働く基盤がない。こういうふうな状態になつているのでありまして、農家経済調査というので、農林省が五千戸の経済を几帳面な記帳に基く集計報告を出しているのであります。それを見ましても、全体平均を見ますと、各農家一戸当りの総収入のうち、三割が農業以外の収入であります。即ちそれは自分がまあ食糧の加工工場、トマト・ジュースとか、いろいろの加工工場を持つとか、これなんかいいほうでありますが、或いは子供、或いは経営者自体が俸給をとる、或いは車馬挽き等、或いは公共事業の人夫に出る、そういつた農業外の収入によつているのであります。そうしますと、現在のところで農村の人口、即ちそれがそういつた状態にある農家人口が、八千八百万のうち四五%とか、六%とかいう数字なつておりますが、これらが重工業のほうに行くなり、移民に行くなりする以外は、この農業の中でこの問題を解決しなければいかないのであります。農業の中で解決する方法としましては、どうしてもとにかく自分が今耕やしている土地の生産力を上げることが第一番であります。その方法としましては、水利、或いは排水、或いは近間の開拓、或いは集団的な未墾地に国内移住をする、こういうこと。或いは又最近統計で御承知と思いますが、農産物の輸出等が相当伸びております。二十八年度は二億ドル以上になつております。即ち二十八年の総輸出額の十七%を占めております。貿易外の、或いは特需を含めた二十億に比べても約一割を占めております。そういつたふうに、小さい百合根、椎茸、筍、あらゆるものを商品化するという、いろいろな方法によらざるを得ぬのであります。併し何と申しましても、この農業の基盤えある土地条件の整備ということが、やはり農業、或いは農林省に与えられたる仕事の根本であると思いまして、我々一生懸命やつておるのであります。小さい規模から大きい規模にいろいろあります。大きい規模になりますと、只今説明申上げましたように、数百億を要するのであります。この数百億をやりますと、例えば、愛知用水を例にとりますと、百八十億でやりまして、大体五カ年間にやるのが一番経済的である。そうしますと、六十億の毎年の資金が要るのであります。ところが現在農林省の、いろいろ批判を受けておりますが、土地改良関係の費用は、開拓を含めましても、二十九年度は節約後二百五十億にしかならないのであります。従いましてまだこれからやるべきところは、今申上げましただけでもあり、ほかに現在調査が相当進んでおる地点では、まだ数カ所、小規模の県営、いわゆる県、或いは市町村でやる地区を合せれば、現在三千六百カ所くらいやつておりますが、そのほかにまあ数十カ所というのは、早くやりたいやりたいというので待つておるのであります。従いまして現在の日本の国民経済立直しからいつて、デフレーシヨン政策が必要であるという場合に、国内の財政資金を食うことには限度がある。従いましてできるだけそれに頼らないと、且つ先ほど来申上げております要請を満たすのには、どうしても外から金を仰ぐことが必要になつて来るのじやないか、こういうふうに考えるのであります。これも併しまあざつくばらんに申上げ、或いは少し言い過ぎになるかも知れませんが、余剰農産物の問題がアメリカにある。それに対して我々のほうは、アメリカからも食糧を買わなければいけない、買う一つの条件として、そういう条件が出て来るのなれば、これを利用したほうがいいじやないか。こういう考え方もあるのでありまして、国の財政資金でやれればそれに越したことはないのでありますが、財政資金でやれないところに、世界銀行、或いは余剰農産物というような問題が出て来ましたので、はたから御覧になると、これに飛び付いたというように見えるのでありますが、まさに飛び付いたと言われても仕方がないのであります。我々は財政資金に年がら年中食い付いておるのでありますが、最初に申上げましたように、十年後の国の食糧事情を考えると、まああらゆる手段を講じなければならない、こういうふうな考え方から出発しているのであります。
  114. 奥むめお

    ○奥むめお君 まあ、余剰農産物を買うことに含まれる条件として、これを持出すとおつしやるなら、又考え方は別だと思うのですね、差当りして欲しいことは何だということは、十年、十五年先のことよりも、差当りしたいことは随分あると思うから、私ども批判的になるのですけれどもね。それじや数学的に伺いますとね。この償還の金額のことですね。農業の負担が十九億九千四百万、すると差引き、この水を引いて農家が助かります分が十九億九千九百万としますと五百万くらいしか残らない、農民のほうにプラスするものは。それから発電のほうの、水を引くことによつていろいろ何します問題と、ここでちよつと、例えば電気は総額三百八億円のうち大部分占めるとしまして、収益四億九千八百万円に対して、負担償還額は三億千四百万円、そうしますと、農民の負担するものは、非常に大きなものになりますね、これで農民がやつて行けるかということを私ども非常に心配しますね、そうして比較して……。
  115. 富谷彰介

    説明員(富谷彰介君) 只今御指摘になりました十九億九千四百万円の償還額、これは農業全般としまして、短年の償還額がそれだけになつておるのでございまして、先ほど官房長から御説明申上げました通り、この総計費三百八億のうちで国営事業に該当します分、それから県営事業に該当します分、団体営事業に該当します分、こう分けて参りますと、現在の土地改良法によります補助率で申上げますと、国営事業の場合には六〇%を国が負担いたします。残りの四〇%を県と地元が半分々々で負担いたします。県営事業の場合には、国が五〇%を補助いたします。残りの五〇%を地元と県がやはり半々ずつ、こういうことになつております。団体営につきましては、四〇%を国が補助する。残りの六〇%を農民が負担する。そういうわけで純然たる農民負担を十九億九十九百万円の中から取り出しますと、四億九千八百万円と記憶しておりますが、五億円足らずになるわけでございます。従つて農民としましては、十九億九千九百万円の純余剰であります。従つて純余剰が出ますので、差引きその中から五億円だけ償還いたしますと、残りの十四億円というものが農家の集積となつて出て参るという計算をいたしております。電気の負担の収益に比べて軽過ぎやしないかという御質問であります。これは御尤もでございます。従来のこういう多目的の施設の負担関係、割振りは政令できまつておるわけでございますが、電気の場合には、一応利息を九分で計画いたしまして、そうして負担を出しておるわけであります。ところがこの場合には、一応世界銀行からの借款も年に五分、それから余剰農産物からの借入も一応年に五分ということで、一応五分の金利で計算しております。従つて本来ならば電気は九分で負担をすべきところを五分の負担で済んでおりますので、非常に償還関係が楽になつて来ておる。年に四分ずつ楽になつておる。その点確かに御指摘の通り問題もございますが、これは一応の計算上の割当でございまして、実際の事業を施行する場合の負担関係につきましては、電気或いは水道、そういつたいろいろの主務官庁ともよく相談いたしまして、その上で決定いたすことになろうかと思います。
  116. 八木秀次

    ○八木秀次君 只今の御説明で私いささかはつきりしてもうお尋ねしないでもいいかとも思つたのですが、私どもも電気に関係した技術のほうをやつております。発電用のダム建設ということはそろばんが合うからできるが、灌漑用のダム建設は誰が資金を出すだろうかというのが我々の常識的ないつもの判断です。潅漑全体が十分に得られたから、それに対して、応分のものを取立てるというのは、中立ちでうまく取るというのが、これは専門外だからわからないことです。そこで八郎潟のような干拓でもやろうという場合には、新らしい農地ができるから、今度の場合には、それは例えば国が経営するのか、そこに農民が小作人のように入るのか、零細農地主になるのか、そこで国自体が企業をやるけれども、今までは税金をとつて来て、財政資金でやりくりがついておるけれども、お役人がやるには借金をして行く以上は独立採算の立つような企業でなくちやならない。ところが電力だの、水道だのということになると消費がで選るから我々ははつきり行けるけれども、潅漑用水になつたときにこれだけ農村に利益したからこれだけ取るぞということが、うまく取れるかどうかと思つてつたのですが、ところが今お話なつたように十九億幾らというものが農民の面だということで、それに対してどうかと思つておりましたが、今課長から御説明があつてほぼわかりましたけれども、その方面のことは不心得で不案内であるために、果してその計画のように農家から取立てができるものか、それはどんな形でやるものかというようなことについてよくわからなかつたのであります。何か自然電力を売るとか、水道料金を取るとかいうように簡単なものでないから一度伺いたいと思つておつたわけです。そういうことをちよつと申しておきます。
  117. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 御尤もでありますが、この土地改良をやりますと、昔の耕地整理組合に相当するものができまして、そこで水利費も取るわけでありまして、これは国税徴収法の例によつて取るわけでありますが、現在ちよつとすると、反当千円、多いところで千五百円くらいの負担があるかと思います。この愛知用水の計算で行けば千三百円になる計算をいたしております。従いまして、ここの計算は、結局国として経済的に償還ができるというわけです。この内訳として農民の負担がその程度でございますので、現在までその他の各地でやられております土地改良と比べて、大体一様のところに落ちつく。
  118. 小林政夫

    委員長小林政夫君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止)
  119. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 速記を始めて下さい。  今の余剰農産物売上代金から金を使うというとこで、二十九年度を考えて見て、この今の愛知用水の計画のうまく世界銀行から借款が得られれば、二十九年度からでも着手しよう、こういうことであれば、一体その余剰農産物の代金として本年度二十九年に使えるのは、先般のあれで百四十四億ですか、それから三十六億という只でもらつた分はこれはうまく入れるのか、当初は、MSA援助のあの審議のときは、てんでこういうことは問題にしなかつた。その後急激に大きくクローズされた問題ですけれども、その場合の関係はどうです。
  120. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 現在のところは三十年度から事業を始めておる、こういうところもあります。これから準備しまして、世界銀行関係で余剰農産物のことを片付れけば、どんなに早くても三十年度でなければコンクリートの計画を実施することはできない、こういうふうに考えております。従いまして只今ありました五十万ドルのうちのグラントの分はこれは一応今までの方針で農業のほうには要求しない、こういうことになります。
  121. 小林政夫

    委員長小林政夫君) そうすると三十年度には余剰農産物として大体どのくらい入るのですか、見込は。
  122. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) これもまだ明確でありません。七億ドル三年間というので一応法律ができております。そうしますと一億三、四十万ドルが一年分になりまして、或いは今年はもつと当初の年は増すのかも知れませんが、一応平均すればそうなります。そのうち日本にどれだけ来るかというのが又問題でありますが、これは全然きまつておりません。この日本向けのやつでもきまつておればもう少し交渉のしようがあるのですが、それもきまらないので、とにかく直業だけでなしに、ほかのほうも含めて農産物の金をできるだけよこせ、こういうことでやつておるわけであります。
  123. 小林政夫

    委員長小林政夫君) 向うの態度はわからんとして、こつちとしては多ければ多いほどいいというわけのものでもないでしよう、その点はどうですか。
  124. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 農林省としまして農業関係だけの計画で行きますと、三十年度愛知用水では約四十億あればいいのです。世界銀行から約四十億、五十億のうち四十億要る、それから日本側負担分として四十億あればいいのです。従いまして初年度は一千万ドル程度でございまして、全体として円資金、で要るのは二百五十億でございますから、それを一年間に預ければ何ぼになりますか、七千万ドルになりますか、それを一年間でもらえれば、積んで順に使つて行く、こういうことになるのです農業関係だけの資金としてはそう問題にしなくても、今の二千五百万ドルの中に入るのじやないか。
  125. 小林政夫

    委員長小林政夫君) いや、私の言うのは、それは愛知用水をやるという建前から行けば多いほどいいのですが、ノーマルな食糧の取引を阻害しない範囲における譲与乃至余剰農産物の処分、そういう御点から行つて農林省全体として考えてどれだけ向うが日本に引取つてくれと言い得る……、向うは余剰農産物を日本に引取つてもらいたい。こつちとして幾ら引取りましようと言える限度というものがあるのじやないか。それがどの程度であるのか。
  126. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 農林省所管の物資だけについて見ますと、小麦が五十万トン、それから大麦が十万トン、大豆が十五万トン、それからとうもろこし五万トン、そのほか乳牛飼育用の脱脂粉乳、或いは一部バターになるかも知れませんが、今のところ脱脂粉乳でそれが百万ドル、大体値段がだんだん下つて来ておりますのであれですが、五、六千万ドルは出て来るのじやないかと思います。農村省だけの所管として。そのほか綿花とか、たばことかいろいろなものがありますが、只今申上げた品目で五、六千万ドルになるのじやないかと思います。
  127. 小林政夫

    委員長小林政夫君) よろしうございますか。  それじや今日はこれで散会いたします。    午後四時九分散会