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1954-05-28 第19回国会 参議院 外務委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十八日(金曜日)    午前十一時九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            團  伊能君            佐多 忠隆君    委員            古池 信三君            重宗 雄三君            杉原 荒太君            宮澤 喜一君            梶原 茂嘉君            高良 とみ君            中田 吉雄君            羽生 三七君            加藤シヅエ君            鶴見 祐輔君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁経理局長 石原 周夫君    保安庁装備局長 久保 亀夫君    外務省条約局長 下田 武三君    外務省国際協力    局長      伊関佑二郎君   説明員    外務省国際協力    局第三課長   安川  壯君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国に対する合衆国艦艇貸与に  関する協定批准について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○継続調査票求の件   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。  日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定批准について承認を求めるの件を議題といたします。昨日に引続き質疑を続行いたします。質疑のあるかたは御発言をお願いいたします。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 昨日外務大臣にお尋ねしたこの協定の実体になる十七隻二万七千トンのあと若し貸与を得られる場合には、附属書に追加すれば足りるかどうかという問題については、速記録を調べた上でということになつておりましたので、速記録を見ましたが、どちらとも判定のつかんような形に、なかなか外務大臣捕捉しがたいような答弁をされておることがわかつたわけであります。そこでこの速記録によると、外務大臣は、自分の頭はまだ法律的に固まつておらない、従つて十分研究した上で処置したいということで結んでおります。そこで昨日のことをもう一度繰返しますが、確かに予算制約がありますので、無制限的にこの協定がパイプとなつて海上自衛隊が増加して行くという結論が直ちに出て来るわけではありませんが、併し予算上の制約という場合には、主として日本で今日艦艇を造る場合、これはもう非常な建造費を要しますから、非常な制約を受けると思いますが、そうでなしに、貸与を受ける場合は、僅かな人員等その他若干の経費で事足りますので、重大な予算上の制約とはならない、従つて艦艇貸与協定というようなものを別個に結ばなくとも、附属君に追加すれば足りるというようなことになりかねないことになると思うのであります。御研究中ということでありますが、解釈はそれぞれ両方あるようでありますけれども、私はこの機会に重ねて、外務大臣が新らしく、更に貸与を受ける場合には適当に協定作成されて行くことが正しいと考えますが、この機会にもう一回はつきりお示しを願いたいと思います。
  4. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは協定を締結いたしましたときの考え方は、アメリカ日本も同様でありますが、この協定前文に「若干の艦艇」と書いてあります。この若干の艦船はこの協定によつて貸与できるのであつて、その若干の艦船が何であるかということは、日本側アメリカ側とでおのずから考え方が逢う場合があり得る、例えばアメリカでは今年の予算では十七隻、二万七十トンと言つておりますが、これも全部この協定で受けられるかどうか、或いは一部MSA協定によつて贈与を受けるかでありますが、最大限十七隻、二万七千トンというのが一応の予算でできております。併しながら十七隻になるか或いは十七隻以下であるか、これは日本側としては別問題、協定とつまり直接の関係は、少くともこの文面上はないわけであります。アメリカ側から言えば、この基礎になつておるのは、例の公法の百八十八号ですが、これは二十五隻ということになつておりますが、これを全部日本貸与するかどうかは、これは別問題でありますが、アメリカ法律上の規則から言えば、二十五隻までは貸与できるのであります。従つてこの協定文と、それから実際日本側がどういう措置をとるかということは、直接には関連がないわけであります。少くとも法文上は関係がないわけであります。そこで理窟から言いますと、この若干の航船はこの協定で借りられるわけでありますから、十七隻が済んで、全部て十七隻になるかどうかわかりませんが、一応十七隻が済んで、十八隻目からどうかというと、それは法文上は当然附属書によつて借受けられる形になつております。又その意味でこの協定はできておるのであります。それじや無限に借受けられるかというと、そうじやなくて、第一には、若干の艦艇ということになるのであります。前文にそう書いてある。若干ということは、若干の限界はきめられませんけれども戦力と同じようなことになるかもわからんが、併し若干というのに、何でもかでもどんどん借りるということは、これは実際上不可能であります。もう一つは、日本予算上の制限があつて、今羽生君は少しくらいの人員ならどうにでもなる、こうおつしやるが、それは五十人、七十人の人数は融通ができるかも知れませんが、併し一つの船に乗組む人が二百五十人、若し巡洋艦になれば非常に多くなりましようが、駆逐艦でも二百三十人とか二百五十人の数になるのであつて、これを仮に一隻はその規定人員の中で融通できると仮定しても、二隻になつたら、三隻になつたらとてもその規定人員の中で融通は実際上できないし、又予算審議の際においても、或いは防衛庁設置法を今後審議される場合においても、人間を殖やして何に使うかわからんが、まあよかろうというような審議の仕方はされておりません。一々これは何に使うのだ、どうやるのだ、非常に厳格な審議をしておられるのは御承知の通りであつて従つていろいろな点から見まして、理論上は成るほど追加して行けば借受けられるということになつておりますが、決してこれは無制限に借受けられるという問題じやないというのが現在の考え方であります。従つて現在も自分一個の考え方としては、附属書に追加して借受けられるもの、こう考えておりますが、併しこれにはおのずから非常な制限があつて、そうむやみに借受けられるものでないことは事実であります。又国会の知らない間に大きな船がどんどん入つて来るというようなことのないことは、今申した通りでありますが、一応そういうつもりでやつておりますけれども、更にこの問題は十分研究して見たいということは、前に申した通りであります。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 じやもう一つ、そこでアメリカ公法百八十八号というものが内容が変つて来るとか、アメリカ側の法的な規制というものが変化をして来て、昨日木村長官が言われたように、場合によつた航空母艦でも借りたい、或いは今外務大臣お話なつたように巡洋艦というお話がありましたが、そういうようなものが来る場合には、常識上当然新らしい協定が必要であつて、そのような艦種に至るまで附属書に追加して足りるとは考えられませんが、その辺はどうですか。
  6. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今のところそういうところまでは、現実の問題として、我々理論的にはそれはいろいろありましようが、只今対象としておりますのは公法百八十八号ですから、それと違う事態が起つて来ますれば……、公法百八十八号が内容が変つて来るとか、或いは別の法律かできて又何かできるということになりますれば、これ又新たなる別個の事態でありますから、そのときにその実際のものを見て考える以外にちよつとお答えしようがないのでありますが、なお附加えて申しますれば、一体、例えば仮にこちら側がそうやつて羽生君のように幾らでも借りて来るかわからん、この協定で……、という御心配を持つておりましようが、我々は仮に理論上は附属書に追加すれば借受けられるという形になつているけれども、来年の話になつて、又来年この協定と同様の条件アメリカが貸すか貸さないかむ実はわからない。形はこうなつておるけれども条件が違うかも知れない点をむしろ逆に心配しておるくらいであつて、そう国会が知らない間にどんどん大きな船が出て来るというようなことは、これはちよつと私どもには考えられない。実際そういうことはないと申上げて差支えないと思います。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 大体政府考え方はわかつたわけでありますが、そこで仮に政府考えが固まつて附属書に追加して行つてもいいのだという立場をとられた場合に、今よく言われている戦力問答という立場から見て、仮にここ暫らくいろいろな艦艇を借り受けても、政府としてはそれは海上立場から見てここ暫らく戦力に至らないという程度のものである。自動的に附属書に追加して行くという事態が生じた場合、そういうような場合に、そんな御心配になるような事態はないのだという程度の問題ですか。
  8. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今我々が予測しておりますアメリカ側から全部大統領の権限の下に置かれるものを借受けましても、これは全体で二十五隻であります。而も一番大きいのは駆逐冊という程度であります。将来我々の対象から考えて見ますと、それはみんな日本側にだけ来るとは想像できません。すでにほかにイヤマークしているのもあるようであります。従つて極く限定されたものでありますから、それはその範囲では到底戦力ということにはなるまい、こう考えております。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 そこでもう一度お尋ねしたいことは、昨日何回も繰返したことでありますが、今政府考えておる海上警備隊から海上自衛隊への推移の過程から考えて、当然直接侵略に対応するものとして海上自衛隊を作るわけですか、そういう場合に現在の借受ける十七隻、二方七千トンの海上自衛隊の態様から来ると、大体沿岸の警備とか或いは商船防衛というようなものに一応限定されて、そういう意味で合目的的に編成されておると思うのですが、それが仮に先ほどお話のような巡洋艦とか或いは航空母艦とか、そういうようなものを借受けるようなことが仮に起つた場合は、それは明白に商船護衛とか海岸の警備というよりも、むしろずつと先へ範囲を越すものと考えて、明白に戦力云々の問題に必ずぶつかると思うのですが、仮にそういうものを借受ける場合には、政府はどういうふうにお考えになりますか、これは木村長官からでもようございます。
  10. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は今直ちに航空母艦が借受けられるものとは考えておりませんが、仮に借受けることになるといたしましても一隻か二隻のものであろうと思います。それらはいわゆる商船護衛のためでありまして、決して他国に侵略し得るような能力を持つておるものではありませんから、従つて戦力問題は起つて来ないと我々は考えております。
  11. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 関連して。巡洋艦の問題が出ましたが、巡洋艦についてはどう考えられますか。
  12. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 巡洋艦でも、今考えておりまするのは大体三千トン級のものでありまして、これもすぐに借受けられるとは考えておりません。従つて今申上げたような点から、戦力問題は起らないと考えております。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 航空母艦一隻か二隻借りるということがあつても、どうも私は日本地理的条件から、例えば航空機の行動半径航続距離等から考えて見て、航空母艦を必要とするような場合に、非常に大規模な海域に対する作戦計画を想定しなければ、航空母艦という概念は入つて来ないと考えるのですが。
  14. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々の考えておる航空母艦は、要するに小型の航空母鑑でありまして、そう多数の機種を登載し得るようなものではない。全く商船護衛に任ずるものと考えておるのであります。
  15. 中田吉雄

    中田吉雄君 その点に関して。海上自衛隊増強に関して羽生委員が質問された点に関係するのですが、ハワイ等から護送船団をこちらに送るような、そういう想定の下に只今のような航空母艦等考えられておるという考えも一部私は見たのですが、そういうことは如何でしようか。
  16. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 商船船団護衛いたしますためには、到底現在考えておりますような我々の警備隊の力を以てしては不可能でございまして、一個船団大体商船二十隻乃至三十隻程度船団護衛いたしますのに、駆逐艦が六ぱい程度以上いると思うのであります。従いましてハワイまでの商船船団護衛するというようなことは不可能でございまして、現在のこの力では漸く南方島伝いに台湾との間でございますか、それも一船団護衛をいたしますると他の船団護衛できないという程度でございますから、ハワイまでの船団護衛というようなところまでは力が及ばないと考えております。
  17. 中田吉雄

    中田吉雄君 木村長官にお尋ねしますが、長官並びに吉田内閣においてとられる日本自衛方式と、我が党の考えておる日本安全保障とが考え方次元違つて、同じ考え方ただ程度の差というようなことでないのは、我我としても非常に残念に思うのですが、そこで私はアメリカと特別な関係に立つて、だんだんと海上自衛隊も含めて自衛力を漸増して行かれる、そういうような形でどんどん殖やされて行くことが、曾つて日本が犯したような過ちは起さない、いささかの憂慮もない、政治家としてそういうふうにお考えでありますか。日本明治四年ですか、戸籍制度作つて人口調査をし、明治五年に徴兵令を布いて富国強兵の国是を立てて遂にそれが日本に運命的な悲劇をもたらしたということを考えますと、我々としては憂慮なきを得ないのですが、担当大臣とされて、日本が犯したような過ちはないものであるというふうにお考えですか。そういう点についての心がまえについてお伺いしたい。
  18. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々といたしましても、その点については最も重大な関心を寄せておるのであります。曾つてのような愚を再び繰返してはいけない。従つて今度の自衛隊法におきましても、厳格にその旨を規定しておるのであります。要は不当な外部からの侵略に対して日本防衛する、これに自衛力限界をおいておるのであります。ただただ日本独立と安全を確保するために、今申上げましたような外部からの不当侵略に対して対処し得る部隊を作る、これであります。そこに私は限界がおかれておる、こう考えております。
  19. 中田吉雄

    中田吉雄君 そういうお考えで、この防衛責任大臣として対処されていることは結構ですがただ日米関係安保条約を結び、MSA協定を結び、艦艇貸与協定を結んで非常に深い関係に入つて来る、そして日米の力の差というものが、条約上対等なものであつても、実質上はそういうことが許されん、特にアメリカ世界政策と関連しまして、私はアメリカ極東に持つているいろいろな政策の一端として、長官の今申されたような考えを乗越えて、この日本極東紛争に巻込みはしないか、そういうことについて保安庁当局はいろいろ接触されておると思うのですが、御心配はございませんか。
  20. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは日米間の安保条約にも明白に規定しており、又その精神とするところは、アメリカ駐留軍日本防衛のために、延いてはアジア防衛のために、自由世界の平和を企図しておることは明瞭であるのであります。従いましてその限りにおいて、私はアメリカのいわゆる世界政策というものは決して侵略的意図を持つておるわけではないと考えております。従いまして日本におきましても、アメリカ駐留軍と互いに手を携えて日本の安全を守つて行く、これであります。従いまして日本自衛隊も、先刻申上げましたように、ただただ不当な外部侵略に対して対処することを目的とし、任務としておるのであります。決して御心配のようなことはなかろうと考えます。
  21. 中田吉雄

    中田吉雄君 申すまでもありませんが、一九五一年の相互安全保障法のサプ・メイトルにもアメリカの安全を維持し、アメリカ外交政策を促進するということが目的とされておりますが、その点を前提にしまして、併し私はアメリカのとつている最近の諸政策というものは、必然的に紛争を巻起して行くのではないか。又そういう過程アメリカ極東政策を展開して行くというふうに心配しているものですが、特に最近、私いつか申上げたと思いますが、日米開戦責任者はどつちだ、最近その論争が又たくさん出ているのです。それによつて見ましても、最近も世界週報にも外務省出身者であります大鷹正次郎氏が日米開戦責任者はどつちだ、それについてアメリカの公式な機関が設けましたパール・ハーバー爆撃の問題を扱つたそういうソースから材料を引出して、そしてむしろルーズヴエルト大統領開戦責任は負わずに、日本をして誘導して最初の一撃を加えさして、そして日本に、戦争責任を負わして日米開戦に持つて行くという緻密な作戦を立ててやつたということが、そしてビアード等は、ルーズヴエルト大統領アメリカ国民を欺いて、秘密のうちに戦争計画を立てたというようなことを厖大な資料から論証し、私もその要訳を最近翻訳して手に入れましたが、そういうこともあり、私は特に日本がそういう当事者であつた関係から非常に心配だと思うわけであります。而もアメリカソヴイエト日本侵略することはできない、それはアメリカ駐留軍のあるなしにかかわらず、ということを言つているにもかかわらず、アメリカが逃げれば共産主義侵略は直ちにあるように言つて日本に再軍備さして、そして実際はアメリカのもつと大きな極東戦略に使うというふうに巻込んで行くというような虞れがあるのではないか。特に日本の主体性が確立されていない場合に、私はこういうことがあるのではないかと思つて心配するのですが、その点如何でしようか。
  22. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今申されました太平洋戦争、それがアメリカ責任日本責任か、この戦争の契機を作つたものはアメリカ日本か、その議論についてはいろいろありましよう。併しいずれにいたしましても、現在アメリカの意図するところは、私はアジアの平和と自由を守ろうということにあろうと考えております。これが延いては世界の平和に寄与するのであります。従つて我が日本はこのアメリカ考え方に共鳴して、先ず以てアメリカ駐留軍日本部隊とが互いに手を携えて日本の平和と独立を守つて行く、而して延いてはアジアの平和を守つて行こう、この精神にほかならないものと私はこう考えております。
  23. 中田吉雄

    中田吉雄君 これは見解相違になると思いますから申上げませんが、少くとも日本は歴史始まつて以来の打撃を、戦争責任はいずれにもあれ、そうしてビアード博士とかタンシルとかモーゲンスタンというアメリカ一流の左翼的な傾向のある人でない人々すら、大統領とつた対日政策のうちに、本質的に日米開戦に持つて行く要因を含んだということを厖大な出典を示しながらやつておるわけであります。私はこの点は十分お考え願いたいし、更に、而もその日本とつ政策というものはABCDラインという包囲政策であり、而もアメリカ共産主表の封じ込み政策をとつておるのも殆んどそれと同じで、見解相違もあると申されるでしようが、時間もありませんので申上げませんが、而もその今日本にはめられた包囲政策と同じソヴイエト中国にはめておる政策も、例えばウオルター・リツプマンのケナンのトルーマン・ドクトリンに対する批判も、殆んどこれと同じような見解を、例えば要約いたしますと、ソ連に対する封じ込め政策、コンテイソメント・ポリシイは、アメリカの実力を超えたコミツトメントを与える不健全な外交政策である。第二には、ソ連の選ぶ場所、時期においてソ連の最も得意とするランド・パワーに対抗するようなことはソ連外交主導権の下にやられることで、その政策は破綻する。第三番目には、ソ連接壌地域においては脆弱な同盟国を結成することになり、勢力均衡政策からいつてもマイナスであり、而もアメリカ安全保障計画の中核たるべき太平洋協同社会の強化に役立たない。或いは第四には、コンテインメントによつてソ連が動きがとれなくなり、折れることを期待するというようなことは、不確定な目的のためにアメリカ外交政策を従属させるような多くの欠点を含んで、この政策は破綻するということを、アメリカ切つて外交評論家と称すべきリップマンが一九五一年に、すでにこの日本が全面的に応じておる外交政策に対して極めて剴切なる批判を加えているわけであります。アメリカ日本に課せましたABCDライン包囲政策、更にそれの中国ソヴイエトに対する包囲政策、そういうものが今世界的に行詰つていることを、この防衛問題をお考えになる木村長官とされては、是非この問題を十分お考えになつて過ちのないことを私は期待しまして、木村長官に対する質問はやめますが、そういうふうに、アメリカのとつている外交政策がそういう危険を含んでいるものだということは、左翼の批判評論家でない人で、幾らでも論証できるわけでして、是非その点はお考え頂いて、我々と次元は異なつておりますが、誤まりのなきを期して頂きたいことを希望しておきます。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 昨日私と木村長官との質疑応答過程で、長官は又ここ暫らく日本海上自衛力というものはアメリカを頼る以外にはないだろうということを言われたわけであり、又私ども日本の現在の国力、経済力から見て当然そうなると思うのです。そこで我々の非常に憂えることは、仮に直接侵略ということを言われる場合には、それがまあ直接の攻撃の脅威現実事態としてすでに起つた場合、単に脅威があるという情勢判断だけでなしに、現実にそういう事態が起つた場合にのみ、事のよしあしは問わず、それに対応する処置というものが問題の対象となるわけでありますが、今日本のこの海上自衛力増強というものは、殆んどその主力がアメリカからの艦船貸与によつて賄われるわけでありますので、そこで日米安全保障条約或いはMSAその他の協定等によつて、この日米間の協力体制というものが漸次進められて行くべき場合に、日本はそう考えなくても、アメリカ自身がこの侵略に対する判定を、例えばアジア近隣諸国からの侵略があるものと見て、日本艦艇を動かすような場合に何らかの合意を求められるような場合、そういうことはないとは言えないと思います。将来。特に日本は船を借りておるのでありますからなお更そうだと思う。だから現実侵略脅威が起つたという事実の上に立つて問題を論ずる場合は全く別個でありますが、そうでなくて現実には侵略は来なくても、侵略者アメリカが断定をして、日本にその協力を求められるような事態が起つた場合は、木村長官としてはどういう立場をおとりになるでありましようか。
  25. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 自衛隊出動するのは、これは先刻から申上げました通り現実日本侵略脅威迫つた場合であります。このときにのみ初めて出動ということはあり得るのであります。従いましてアメリカ如何よう日本海上自衛隊出動を要請されましても、それに応ずることはあり得ないわけであります。今お話のようなことは私は決して御心配はない、こう思つております。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 軍事顧問団の団長の先般の発言等は、日米軍事同盟と見なしてかなり強い意味発言をされており、かたがた日米合意というようなことを求められた場合に、或いは日米の協議を求められた場合に、果してどういう態度をとるかということは、私は非常に杞憂を持つてつた一人でありますが、今のような確信を持つて最後まで貫き通せると固くお考えでありますか。
  27. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は固くその信念であります。
  28. 中田吉雄

    中田吉雄君 その点についてちよつと。今年の一月のアメリカ議会ですか、ニユールツク作成をきめましたそのときのいろいろ議会のやり取りを見ますると、日本ニユールツク作戦の一環として予定されておる、こういうことを言つておるわけです。そうしてその際に、アメリカ自分が必要なとき、必要な地域に対してその国を壊滅させるような報復爆撃をやるということを言つて、この宣戦の問題について、議会の権限はどうするという問題がいろいろアメリカ議会で論戦されておりますが、そういうようなことがアメリカと仮にアジアのどこかで第三国と起きた際に、日本がその渦中に入るような際には、日本はそれについて発言し得ると思うのですが、長官はどうお考えになりますか。
  29. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知の通りアメリカニユールツク作戦というのはいろいろの見方もありましようが、要は、いわゆる将来はアメリカとしては海上兵力に重きを置くより爆撃部隊に重きを置く、いわゆる攻撃部隊に重きを置くということが上になると私は見ております。これは純粋の作戦方面からの見地からの議論であると私は思つております。そこでアメリカ如何ような態度をとろうと、日本は独自の立場において日本防衛をすべきものであつて日本の安全と独立を守るために自衛隊が置かれるのでありますから、自衛隊の行動の限度というものも、そこに私はあろうと考えております。それでアメリカ如何なる要請があろうとも、その以外に日本自衛隊を用いるということは、私はあり得ないと思います。
  30. 中田吉雄

    中田吉雄君 そういうアメリカニユールツク作戦の一環として、例えば日本に原子爆弾があるかどうか知りませんが、そういうようなことでもう日本と相談せずに、有無を言わせず、仕方なしにそういう問題に引きずり込まれる虞れがあると思うのですが、そういうことについてはどうお考えになりますか。
  31. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 先刻から申上げましたように、日本自衛隊の任務というものは、はつきりきめられておるのであります。その以外に行動するということはあり得ないことであります。又行動させてはいけないであろうと私は考えております。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 先日の内閣委員会における木村禧八郎君の質問に対する木村長官の答弁、それから昨日の本委員会における質疑応答を承わつてつて、今後は空、海に重点を置いて行きたいというお話でありましたが、これは陸上の防衛力が一応満足し得る状態に来たから、今後は空、海と、こういうように言われるのか、或いはそれとも日本地理的条件から従来の方針を変えられて、空、海に重点を置かれるようにお考えになつての御発言か、その辺は如何でありますか。
  33. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の申したのは、日本の世かれた環境から論じて、将来は海と空によほど重点を置くことを要するであろう、その点について自分は希望を持つておる。併しながら海、空を増強するということについては、これは非常に金のかかることであります。日本の財政面から見て、果してこれが急速に増強されるかどうかということは、なかなか疑問である、むしろ容易でないのじやないか。但しそういう方向に向けて行きたいという考えは持つておる、こういうわけであります。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、空、海という場合には、もうお話のように非常な財政的制約を受けると思うのです。従つて艦艇貸与を受ける以外に、実際その増強ということは殆んど考えられないということになると思いますが、その場合、若干のそれじやあ経済、的余裕が仮にできた場合、これは仮定の問題でありますが、若干の経済的余裕ができた場合には、現状のままにおいてものを考えた場合、地上部隊増強にウエイトを置かれますか。空、海にウエイトを置かれますか。
  35. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は地上部隊よりかむしろ海と空に重点を置くべきじやないかと、こう考えます。
  36. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 昨日木村長官お話の中に、駆逐艦、それから護衛駆逐艦、コンヴオイと言われておるようでありますが、そのコンヴオイの範囲とそれから内応ですね、例えば日本の普通の商船が物を逆ぶときのコンヴオイというか、それがどこまでの距離かということを大体伺いたい。
  37. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 大体日本商船が運航いたしておりますのは、太平洋方面と南方方面、御存じの通りでございますが、大体太平洋方面が六、七割程度、南方が三割程度でございます。一カ年に三千万トン以上の物資を運んでおりまするので、これを有事の場合に護衛をいたしますためには、日本艦艇のみを以て実行いたしますると、恐らく百万トン近くの駆逐艦を要すると存じております。従いまして、到底現在日本単独を以ちまして有事の際に日本商船全部を護衛をするということは不可能でございます。現在この協定その他によりまして、来年初め頃までに有しまする護衛に適当な艦艇は極めて僅かでございまして、恐らくは日本商船隊の極めて一部分しか護衛はできないことと存じております。
  38. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私が伺いましたのは、それで端緒を得たのですが、例えば今度のインドシナの形勢から、不幸にして朝鮮のような事態が起らないとも限らない。そういう場合に、日本が南方から食糧品、原料を運んで参りますときに、日本のコンヴオイがついておるというと、それが不正に急迫した状態に陥らないとも限らないから、自衛ということが非常に広くなつて来るという心配をしているわけだつたのですが、そういう危険はございませんでしようか。
  39. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) どういう事態を予想いたしまするか、その事態になつて見ませんとわからないのでございますが、先ほど申上げました通り日本単独の力を以ちまして日本商船の全部の護衛をすることは不可能でございまするから、不可能ではございますが、併し日本といたしましては、生存いたして行くためにはどうしても物資の輸入を図らなければならない。従いまして、商船に危険がございますれば全力を挙げましてこれが護衛ということに努力いたさなければならないと存じております。
  40. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 そうすると、日本から非常に離れた公海で日本国民の生活の必需品を運んで来て、それが不正な攻撃を受けた場合は、それは自衛権発動の理由になりますか。
  41. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 当然なると思つております。
  42. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつとその場合には正当防衛といいますか、緊急避難といいますか、そういう行為の対象とはなりましようが、自衛権については日本に対しての直接の侵略という非常に限定した解釈になりますから、従つて自衛権の発動の原因にはならんと考えております。
  43. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 そうすると、それは日本本土の侵略にもならないししますけれども、そこの乗組員の日本人と日本に必要な品物がある場合には、それは緊急状態であるけれども侵略ではないとはつきりお分けになりますか。
  44. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はそう考えております。ただ攻撃を受けますれば正当防衛はいたさなければならないと思います。これは正当防衛であつていわゆる自衛権の発動ということにはならない。そこまで解釈を拡げてしまうと限界がなくなつてしまう、それを特に気を付けております。
  45. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それを実は私も心配したのです。そうすると明白に日本本土内に対するところの発生した緊急状態と非常に遠方の公海で起つた緊急状態とは分けて、遠方で起つた場合には自衛権の発動にはならないということですか。
  46. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) つまりおつしやるようなことは、仮にどつかで紛争が起つている、その巻添えを食つて攻撃されたというような場合に、その攻撃は日本侵略しようという意図の下に攻撃したのじやない。従つて攻撃が日本に向けられているか、それともたまたまそこに護衛船がおつたので撃たれたということは明白に区別しなければならないと考えております。
  47. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それなら安心いたしますが、それから自衛権というものは広義に解釈すると、やはり日本の国民の生命、財産、国民生活を脅威するというふうに拡げれば、やはり自衛権の発動の対象になると思つて心配したのでありますが、今外務大臣お話によると、非常に厳格に解釈するということならば、それまでは及ばないのですね。
  48. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 我々は自衛権の発動については、最も狭義に解釈いたして限定して行きたいということを常に方針にいたしております。従つてそういうことには及びません。
  49. 中田吉雄

    中田吉雄君 木村長官のさつきのお話の中に、第三国との戦争に引きずり込まれたりすることのないように、ただただ日本安全保障という見地からお考えになつていると言つたのですが、その際に、日本に原爆を持込ませるかどうかということは非常に問題だと思うのですが、その点についてはどういうふうにお考えですか。
  50. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は原爆の使用ということについては、非常に何と申しますか、否定的な態度を持つております。どうかそういうようなものを用うることがないようにと考えておつて、全世界の人類のために大変なこれは悲しむべきことである、今後そういうようなものが用いられるということになれば、私は、私ども全人類の破滅の一歩を築くものと、こう考えております。ひたすらさようなことのないようにと念願いたしております。
  51. 中田吉雄

    中田吉雄君 御承知のように、イギリスのたしかロンドンの郊外のイースト・アンダリアといいますか、あそこにはアメリカの原爆基地があります。イギリスのような強国でもその原爆の基地に原爆を持込んでそれを使うことについては絶対先制攻撃というようなことをさせない。そうしてイギリスの了解なしには絶対に使わせないという確約をお取りにチヤーチル首相がアメリカに老躯を引つ下げていつか行つたことがありますが、その点は一つ只今の木村大臣の発言のようでしたら心配ありませんが、今後やはりアメリカのニユールツク政策の中心が原子兵器、水爆兵器にあるとすれば、日本の基地は主要な役割を負わされると思いますので、持込んだり、或いはその使用等については、只今発言のような線を一つ堅持してもらいたいということを申上げておきます。
  52. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 保安庁長官に伺いたいのでございますが、この艦艇貸与法の第三条のことでございまするけれども、これによりますと、一旦貸与されました艦艇アメリカの自国の自衛上の都合によつて引揚げられることもあり得るというふうに書いてあるのでございますが、これは先ほどからの長官の御発言によりますと、日本の自衛の問題は飽くまでも日本独自の考えによつてこれはなさるべきであつてアメリカの指図を受けるべきものではないという御発言がたびたびございます。もとより木村長官はそのようにお信じになつていらつしやるのであろうと私も了解いたしますけれども、この第三条に、途中で引揚げられることがあり得るというような条項があるということは、若し日本自衛力を発動しようとする考え方と、アメリカがいろいろ日本に対して期待している極東政策との考えの間に必ずしも一致点が見出せないような場合には、この第三条が物を言うというような懸念をお持ちにならないでございましようか。
  53. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はその懸念がないと考えております。この三条に明白に規定しておるように、アメリカ防衛上必要な場合であります。いつでも勝手に引揚げるというわけじやないのであります。ここに限定されております。従いまして日本の受けた船が日本で使つておる間に勝手にアメリカから引揚けられるというようなことはないと私は了承しております。
  54. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 アメリカ防衛上の必要ということは、具体的に申しますと、どういうような場合が想定されるのでございますか。
  55. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この字句は、よその国でも同じ字句を入れておるそうでございますが、その意味を尋ねましたところ、これは例えば太平洋方面に戦争が起つてアメリカとしては艦艇の不定を告げてどうしても貸した船の返却をお願いしたい。日本は太平洋沿岸国であるから、直接その戦争には関係ないというような場合も、やはり仮定としては考えられるのであります。日本には差支えなくてアメリカだけが戦争に入つておる。というようなときには、やはりこの返却ということも考えられるという説明でございました。
  56. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 下田局長の御説明を木村長官はその通りにお信じになられますでしようか。例えばこの太平洋で戦争が起つたときには、向うで船が足りないとすれば、日本はそのときにはあいておりますからお返ししましようというような、そんなような状態ということをお考えになりますでしようか。
  57. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 防衛上必要というこの字句の結局解釈になるのであります。この字句の解釈について、十分我々は考慮を払う必要があろうと考えております。アメリカの自国の防衛でありますから、アメリカが自国の防衛以外に引渡せと言われても、日本は引渡す必要はないのであります。極めて限定的に解すべきものと考えております。
  58. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、木村長官のお考えは、アメリカの自国の防衛というものと日本防衛というものがそんなにはつきり切離して考えられるというお考えでございますか。
  59. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それははつきり私は区別することと考えております。日本防衛アメリカ自国の防衛、これは区別すべきものであろうと考えております。
  60. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それは機械的には区別できることでございましようけれども、今のアメリカ極東政策というようなものを考えたら、日本の自衛、アメリカ防衛というふうに、そんなに機械的に切離すということは私は到底考えられないことだと思いますから、どうしてもこの第三条が、こういうものがあるということは、長官が日頃言つていらつしやることから考えますれば、これは随分気に入らない条項であるのじやないかと思いますけれども、実際これは大変いい条項だとお思いになりますか。
  61. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはやはりアメリカ立場考えなくちやならんと考えております。アメリカ自分の国の防御上必要であるという場合においてはこれは止むを得ない、そこで私たちも日本のいろいろな財政力を速かに強化して、日本で独自の船を持ちたい、これを私は言つておるのであります。
  62. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういうところに論議をお持込みになるのでございましたら、もうこれ以上申上げることはございません。
  63. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この貸与協定の基本になつておるアメリカ貸与法並びにそれに関連して結ばれた各国の協定を資料としてお出し願うように数回たびたび要求をしておるのですが、まだ出ておりませんが、どうなんですか。
  64. 高良とみ

    高良とみ君 私は今のアメリカのパブリツク・ローの百八十八号を細かに拝見いたしましたところが、デイストロイヤー以下のものを大統領は二十五隻に限り貸与する権限を与えられているのであつて、それ以上の艦を貸すことはできないとちやんと書いてあるのです。併し長官は、前からできるならば航空母艦も練習用に借りたいというような御意向を御発表になつておりますが、それはMSA範囲でもないでしようし、それからこの中でもないとしたら、どういう形で以てそういうものを借りる可能性があるとお考えになつておられるか、それが一点。もう一つ、できるならば巡洋艦も一隻ぐらいは借りたいという御意向も発表になつておるのでありますが、これについては、どういう形でその可能性があると考えておられるのか、御説明を頂きたい。
  65. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは私は希望でありまして、希望は実現するとは限らないのであります。如何なる形式の下にこれを借りるかということについては、私はまだはつきり申上げることができないのであります。希望を私は申述べておつたのであります。
  66. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、昨日の事務当局の御説明では、巡洋艦を借りるようになつて来れば、これはまあ戦力と言わざるを得ないという御説明なんでありますが、併し長官においては、巡洋艦の一隻や二隻あり、空母が一、二隻あつてもこれは戦力というものではないというふうに考えておられるのでしようか。
  67. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は小型の空母一隻や二隻ありましても、直ちにこれは憲法第九条二項の戦力に至るものとは考えておりません。
  68. 高良とみ

    高良とみ君 よその国ではこういう艦艇貸与に当りましては、目的をはつきと書いておるのが多いようであります。例えば訓練場であるとか或いはサノマリーンの戦争に対しての訓練であるとか、テクニカルな訓練であるというようなことをはつきり書いてあるのですが、長官のお考えや保安庁の御説明を伺つていますと、常に遠洋からの商船護衛であるとか、或いは日本の広い意味での自衛権の授護であるというふうになつて、どうもその点が日本の近接しておりまする諸国にとつて、やはり日本は正式に再軍備をしつつある、そして如何にもその御説明はいつ何時でも戦時状態に入り得るかのような御説明を伺う。殊に先ほどのお話のように、直接侵略がなければ、自衛隊或いは自衛艦を発動しないのだというお話でありますと、これは今後訓練をなさるでありましようが、その点がよその船艦を借用しておりますフランスとかイタリアという国のそれとはよほど違うので、その事態一つ御説明頂きたい。日本に直接侵略をもうそんなに考えられておられるかどうか。
  69. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはアメリカから借受けてもやはり訓練はしなければならん、どこの国でもそうだと思います。訓練と実用とは相待つて行かなければならない。日本で仮に空母を借受けるにいたしましても、これはふだんは訓練を積んで行く、直接の用に達するときには実用に使うのは当然であると、こう考えております。
  70. 高良とみ

    高良とみ君 それと同時に、どうしても日本にそれだけ三軍基本に立つたところの軍備を持ちまするときには、やはりこれの及ぼす近隣への影響ということを考えなければならないのでありますが、これは外務大臣からあとで伺おうと思つておりましたが、ほかの近隣の国を考えますると、如何にも小さなフリゲート艦しか持つておらない。そういう意味日本は多分木村長官の御希望通りだと思うのでありますが、今のところ極東における第一の海軍力を保持することになると思うのですけれども戦争を放棄し、且つ軍備を放棄した日本として、こういう事態をぬけぬけとうまく小さな穴からするする出て、こういう軍艦級のものをこれからも増して行く、巡洋艦航空母艦も増して行くというようなことに対しては、もう少し何とか国民の納得の行く憲法の改正なり、或いは近隣に誤解を受けないようなもう少し正当な道があるというふうに、正しきを主張なさいます木村長官としては何かお考えになつていることと思いますが、如何でしようか。
  71. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 現在日本で保有しておりまする船と言えば極めて微々たるものであります。高良さんも或いはお乗りになつかも知れませんが、あのフリーゲート艦は実に微力なものであります。又今度借受けようとしておりまする船にしましても、皆僅かに千六百トン、千四百トンの駆逐艦、これは長距離に運航することは不可能であります。又航空母艦考えておりましても、これはいわゆる小型航空母艦程度のものでありまして、決して他国に脅威を与えるというような実力を持つていないのであります。ただ日本海上警備につかしめるという程度のものでありまするから、決して他国に脅威を与えるというような性質のものと考えておりません。
  72. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 木村長官との問に誤解がありまして、先ほど長官は一時間という約束でしたというふうに了解されておつたようでありますが、私は今日はそういうお約束はしておらなかつたのであります。併し内閣委員会のほうの都合を聞きまするというと、午後一時から開会、そしてその初めに国防会議の件を政府から御説明になられる。そのために事前に長官は協議をされるという必要がある、これは了解のできることであります。つきましては、まだ佐多委員長官に対する質問がお残りでしようが、できるだけ切り詰めて質問をして頂いて、長官を成るべく早くお返しするというようにしたいと思います。それでは高良委員の御質問は官房長から後刻続けて説明を求められるというようなことでは如何でございますか。
  73. 高良とみ

    高良とみ君 私は長官から伺えば結構でございます。あと一点だけ伺いまして……。そうしますと今までの過程を顧みて見ますと、朝鮮事変の勃発と共に日本にああいう警備隊、予備隊をこしらえた、今度はMSAによつて自衛隊という戦力に、実際の外敵に当るものに発展して来ている。そしてあの当時のフリゲート艦は沿岸警衛ということでありましたが、今回のも今の御説明によりますと、小さなものであると言われますけれども、併し極東方面においては一番たくさんの海軍力を持つておるのでありますし、どこの国でも十五隻以上持つている国はありません、八万トン以上の実動艦船を持つている国はアジアにはないのです。この点でこういうふうにこの次は何になるかということを国民は思つているわけなんです。例えば今提案されておるところのSEATOなり或いはPATOというようなものに、少くとも軍艦をこうやつて借りておりまする国としては拒否できない立場になれば、この点はどういうふうに行くだろう、そうしてそのときの海外派兵というようなことを本当に心配しておるのは無理がないと思います。先ほど加藤委員からの御質問にもそういう疑惑を受けたのでありますが、これによつてさんざんアジアなり世界が苦労しましたお互いの軍備の競争というような、例えばすぐ隣りの国々を顧みましてもフリゲート艦やそれらのもの以上のものを持つておる国はないのでありますが、長官としては、そこに何らか限度がおありになるのでしようか。何かここまで持てば日本のいわゆる自衛のための警備は十分であるとお思いになるのか。それとも先ほど事務当局からお話のあつたように、ハワイから南米からいろいろな鉱石等を持つて来る商船隊を護衛して来るという訓練をするということは、世界中廻つて日本護衛船団というものは足らないと思いますが、どう考えておられますか。これで最後です。
  74. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知の通り日本のおかれた地理的環境というものは、ほかの国とはよほど違うのであります。なお高良委員も非常に関心を寄せられておることと私は思いまするが、日本の近海においての漁民の保護ということを我々は考えなければならん。朝鮮水域なり黄海水域において日本の漁民がどれだけ脅かされておるか。これらのことについては我々相当の関心を持つております。これも結局日本でその警備をする船が足りないものでありますから、警備する船がおればそういう問題もおのずから私は解消すると思います。こういうことから見て今の日本の現有勢力だけでは、私はこの長い海岸警備線を十分に賄つて行くことはできないということは万々御承知のことだと思います。従つてこれらの点から考慮をめぐらせば、これらに適当する小船、小さい船は是非とも我々は日本の国のためには持たざるを得ないのであります。これは何も他国に対して脅かすとか何とかということは決してない、ただただ日本の国の安全、秩序を守り、且つそのような漁民の人命、財産を守ることが必要であります。  航空母艦の話でありますが、航空母艦もこれは借りられるか借りられんかわかりませんが、ただ我々の借りる目的がどこにあるかと申しますると、いわゆる商船団のコンヴオイ、保護だと、これだけであります。それ以外に何ら他意はないのであります。これを以て他国に脅威を与えるとかというような性質のものでは私はないと思います。申すまでもなく、日本海上自衛隊にいたしましても、ただ国外からの不当の侵略行為に対してこれを守つて行こう、この任務を帯びておるだけに過ぎないのであるということを十分御了承願いたいと思います。
  75. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 簡潔にどうぞお願いいたします。
  76. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これまでの質疑応答を聞いておりまして、大体昨日私が問題にしていた一体海上自衛隊を作ることによつて防衛をしなければならない侵略とは何を意味するのだということが、ほぼ明らかになつたように思うのです。その場合には、先ほどから御説明があつたように、日本の国土が侵略現実にされた、或いは侵略の危機があるという場合に、それに対応するものとして海上警備隊を作るのだというお話であつたと思うのです。そこまでならば了承ができるのですが、ところが一方においては、昨年から今日にかけての御説明では、商船隊の護衛をするのだ、或いは更に又長官の御説明によると、漁民の保護をするのだ、こういうために自衛隊が必要なんだということにまで話を打つて来ておられる。然らば漁民の問題に対するああいういろんな諸外国の措置、或いは商船に対する、先ほどお話の輸送に対するいろいろな他国の措置、そういうものも長官侵略であると、従つて自衛隊防衛しなければならんというふうにお考えになつておるのかどうか。先ずそれを明瞭にお聞きしたい。
  77. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はこれを以て立ちに侵略とは考えておりません。侵略とは考えておりませんが、日本海上自衛隊にいたしましても、明白に海上における我が国民の人命を保護するという任務を与えられておるのであります。急迫不正な場合が起つたときには、国民の生命を守つて行こうという任務も与えられておるのであります。その点から顧みましても、私はこのくらいの程度の船を持つということは当然なことであろうと考えます。
  78. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これまで長官の御説明では、そういう単なる警備、そういう海上における治安の維持等々であるならば、海上保安隊の警察的な任務で足りるのだ、併し、それでなくつて、昨日から言つておられるように、侵略の危険があり、それを防衛しなければならないから海上自衛隊なるものが必要になつて来たんだという御説明であるから、そうだとすれば、やはり漁民に対する措置、或いは商船に対するいろいろな措置も、これを侵略と認めて、それに対処するために自衛隊を以て対処するのだということにならなければ、自衛隊のそういう任務を合理化することはできないと思うのですが……。
  79. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 自衛隊の任務は、はつきり自衛隊法規定しております。又防衛庁設置法案にも規定しております。即ち外部からの不当な武力攻撃に対してこれを守ると同時に、日本の国民の生命、財産を急迫になつて危険に陥つた場合において、これを守つて行ごうという三つの任務を与えられておるわけであります。この両面から考えまして、さような場合において対処し得ることは当然であるのであります。
  80. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならばそういう漁民、或いは商船に対する急迫不正の侵害が行われたと仮定して、それを守ることが必要だど、自衛隊の任務からそれが必要だということを言われますが、その守る守り方は自衛権の発動ということで守るというふうにお考えになつているのかどうか。
  81. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それには必ずしも自衛権の発動と見なくてもよかろうと思つております。
  82. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはどういう問題で。
  83. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 一種の正当防衛権であります。
  84. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならばそういう意味でのものであるならば、必ずしも海上保安隊が海上自衛隊になる必要はない。その理由にはならないのじやないですか。
  85. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それだから先刻申上げておる通り自衛隊というのは、急迫外部からの不当侵略に対処し得ると同時に、我が国民の生命と財産を守つて行こうということなのであります。
  86. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもその点がはつきりしないのですが、それならばもう一つ別な問題で、木村長官は先ほどから航空母艦、或いは巡洋艦等の借入れも今後は希望をしているのだというようなお話があつたと思うのですが、ところが、昨日あたりの御説明によると、これは自衛のための艦隊であるから、せいぜい駆逐艦、或いは護衛駆逐艦程度であつて、それ以上の艦種巡洋艦なり巡洋戦艦、戦艦、航空母艦等々に及ぶものではないという御説明があつたのですが、その点は、長官はそういう区別にしないで、進んでは巡洋艦航空母艦にも至るということをなおあえて主張をされるのか。従つて、昨日のそういう御説明は間違いなのかどうか。
  87. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 昨日私の申したことは、戦艦なんかを借入れるという意図はないと申上げたんであります。小型の航空母艦等については借受けられれば借受けたい、こう申したのであります。
  88. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 先ほどの外務大臣の御答弁と只今木村長官の御答弁と同じなんですか、外務大臣にお伺いします。
  89. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は同じだと思います。というのは、木村長官の言われるのは、漁船の保護等を行う。これは危くなつたときに船のそばに行つたり、忠告したり、交渉したり、いろんな保護の仕方があるのであります。木村長官の言われるのは、万一そういう行為のために攻撃された場合には、やはり正当防衛ということがあるだろうが自衛権は発動しない、こういう趣旨だろうと思います。
  90. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 どういう線を引けますか、正当防衛と自衛権の発動と。
  91. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) つまり日本侵略する意図でやるというときには……
  92. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それはまあわかつておりますが、行為としての自衛権発動と正当防衛の区別は……、違いますか。
  93. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは武力の発動という意味では同じことであります。併し、その性質は全く違います。つまり、いわゆる正当防衛で緊急避難でありますから、敵の、向うから攻撃されて来たやつを防ぐだけの処置であります。
  94. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それを戦乱に導かないようにというだけの心配はして頂きたい。
  95. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そこで昨日からのお話によりますと、新たにできる海上自衛隊は、巡洋艦だとか巡洋戦艦だとか、戦艦、航空母艦等々の艦種を持つていないのだから、これは専ら自衛のための艦隊であると言い得るし、言わなければならないという御説明であつたのですが、それは逆に今度は裏から言えば、そういう態様の海軍であるならば、独立に艦隊行動をし得る、一つの編成として独立に艦隊行動をし得るような艦隊の種類ではないので、従つてそれが本格的な艦隊行動をしようとすれば、必ずアメリカ極東海軍の一翼であるとか、補充部隊であるとかという形で活動をする以外にないということになると思うのですが、若し日本の艦隊がそういう性質のものであるということが半永久的なもので、あるならば、それは日本の艦隊が半永久的に独立国の独立の海軍ではないのだ。アメリカ極東海軍の補充部隊に過ぎないのだということを意味しているに過ぎないと思いますが、その点はどういうふうにお考えでありますか。
  96. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 必ずしもアメリカの補充部隊とは申すことはできません。日本がやはり独自で以て計画を立てて行くのであります。併し場合によつてアメリカと共同で行動をする場合もあり得るということは我々も考えております。
  97. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今のそういう艦の編成であれば、独立の艦隊として、それ自体としての艦隊行動はできないわけでしよう。
  98. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうじやありません。やはり船隊、今でも船隊群と言つております。それの行動はやはり一つの編隊を作つておるのであります。現にこの間の北海道災害のときにおいても編隊軍があちらへ参つたのであります。
  99. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、それはああいうときの海上保安隊程度の警察任務をやる場合にはできるでしようけれども、それ以外に、今長官なんかがおつしやつている侵略の危機が、侵略があるというような場合の艦隊行動としては、完全な独立の艦隊行動にはなり得ない。それは必ずアメリカの主力部隊その他と合一してしかなされないし、その運命がむしろ半永久的に運命付けられているものになつておる。そうであれば、あなたがたがやかましく言われる独立国の独立の軍隊、独自に国を守るための軍隊なんだ、艦隊なんだということにはなり得ないのじやないか。その点はどういうふうにお考えになりますか。
  100. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 必ずしもそうは申すことはできません。日本にいてそういう不当な侵略行為があつた場合に、その侵略の実勢如何によるわけであります。我が現有の海上部隊だけでもこれを処置し得る場合もあり得ると我々は考えております。
  101. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから、それでは艦隊の指導訓練等々についてはどういうふうになつているのか。特にアメリカ側との関係においてはどういうふうになつておるのか。更にこれに対する軍事顧問団の配属なり、或いは指導訓練の様式はどういうふうになつておるのか。
  102. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本海上自衛隊に関しては、アメリカから何らの掣肘を受けません。又訓練についても日本独自でやつておるわけであります。顧問団につきましても、決して顧問団がかような点にタッチすることは絶対にないわけであります。
  103. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると軍事顧問団海上自衛隊に対して配属をされるものはどうい態様になるのですか。
  104. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは船に搭載されておりまする新らしい兵器などについての指導を受けたりすることはあり得ると考えます。併し船の行動その他について指揮監督等を受けるというよなことは絶対にありません。
  105. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカの現地においてはどうですか。向うで。において、日本自衛隊が派遣して教育を受けることはあり得ます。
  106. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうしたら、この軍艦を引取り等々に行つて、向うで指導をされて、訓練をされて、教育をされるという点はどうなりますか。
  107. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 兵器その他の操作についてアドヴアイスを受けることはあり得ると考えております。
  108. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから、昨日からの御説明によつて貸与協定MSA援助との関係ですが、千五百トン以上のものはこの貸与協定によるのだというお話でありますが、そうしますと今日本アメリカに本年度期待をされているのは殆んど千四、五百トン以上、千四百トンとか千六百トン専守々のもの、それらは全部貸与協定によるとすると、MSAによるものは殆んどないということが言えるのですが、そういうふうに考えておいていいですか。
  109. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 一部はMSAによるものもあり得ると思います。まだこれは交渉して見ないからわかりませんが、船の大きさからいつてもそういうことはあり得ると思います。
  110. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 大きさからいつてか……、今提示された資料によりますと、哨戒船の三百トンが四はいと三十トンが一ぱい、これだけしかないのですか。
  111. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) だからそれだけでもMSAに入るわけです。
  112. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それだけはMSAに入るのですか。
  113. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) まだわかりませんが、入る場合もあります。
  114. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それからこれも昨日ちよつとお尋ねして正確にして置いたのですが、木村長官の御説明によりますと、三十年度の人員の増は、大体海上部隊においては八千六百人程度というお話つたと思うのです。そうしますと、今年の五千五百人程度より更に大幅な人員増が行われると思いますが、それに関連すると、来年度艦船貸与協定に期待をされるのは少くとも本年度の十七隻、二万七千トン程度ということは一応予想をされるのかどうか。その辺はどういうふうにお考えになりますか。
  115. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは私が言い間違えたかも知れません。間違つてつたら訂正いたします。八千六百というのは空のことで、海のほうは六千です。
  116. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ああそうですか。
  117. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 或いは私が言い間違つてつたかも知れません。
  118. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじやその六千でも、今年より人員は多いわけですね。従つてそれに関連する艦船貸与に期待されるものはどういうふうな見通しでそういう六千の数字が出て来たか。
  119. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはまだ確定したものでは全然ないのでございます。ただ三十年度においてどれくらいのことを考えているかという御質問でありましたから、大体そのくらいの程度のことは考えているということを人数で申上げたわけであります。その船の種類、隻数等については何らまだ考えておりません。
  120. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その種類、隻数等については具体的には何ら考えておられないでしようが、大体の見積もり、大体の大ざつぱな見当として今年程度のもの以上のものを期待しなければ六千増員ということは考えられないので、それは当然に予定されているのかどうか。
  121. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 大体二万トン程度のことを考えたのであります。
  122. 高良とみ

    高良とみ君 関連しまして。今言われた二万トンというのは来年度に全部、すでに今計算しますと十万トンくらい日本艦船はあるのですが、その二万トンというのは来年増加分のことを言われたのでありましようか、如何ですか。
  123. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 増加分でございます。
  124. 高良とみ

    高良とみ君 増加が二万トン、その内容はわかりませんか。
  125. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 内容までまだ現在わかつておりません。
  126. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では、木村長官に対しましての質問は大体この程度で打切りまして、御異議ございませんか。
  127. 高良とみ

    高良とみ君 只今のに関連して伺つてよろしうございますか……。事務当局のかたに、只今お話の二万トン、来年艦船貸与の増加の御計画だそうであります。その中にあるものは航空母艦巡洋艦その他同様な内容、ざつとここに今回挙げられた十七隻のほかにどういうものが御考慮でございましようか。
  128. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 実は三十年度のことを人員六千人くらいじやないかということを大臣から申上げましたが、三十年度のことにつきましては、財政の関係もございまするし、一切まだ決定いたしておりません。大ざつばに今年よりもトン数にして少し船を増す程度しかできまいというような考えから、大体人員にいたしますと六千人程度くらいだろうという見当でございまして、船の隻数、種類、トン数等につきましては、確定した数字はございません。但し巡洋艦であるとか或いは戦艦であるとかそういうようないわゆる軍艦に属するものは持つような意思もございませんし、能力もございません。従いまして若し殖えますといたしましても、現在の掃海船或いは駆逐艦程度が米国側から供与されればという程度でございます。それも維持費が相当かかりますから、予算関係もありますから、現在においては私どもの事務当局の見込という程度でございます。
  129. 高良とみ

    高良とみ君 本年度は二千七百トン……を申込んで、そのうち四隻しかまだ話がついていないというのでありますが、来年度二万トンというと非常な飛躍に思われるのです。まあ十倍になるのでありますが、これはやはりこの今回の船艦貸与協定の中でこれをずつと拡げて行かれるおつもりなのですか。
  130. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 四隻は現在話がついておりますものだけでございまして、私どものほうで供与を期待いたしまして、今後引続き折衝を続けまするのは十七隻、二万七千二百五十トンでございます。来年におきましては、これはこれほど大きな数字にはなるまいと思います。六千人の、およそ六千人と見通しをつけました基礎といたしましては、大体一万七、八千トン程度に見合う数字でございます。
  131. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと昨日お示しになつたこの八万六千百九十一トン、十万トンに近いものでありますが、それに新造追加がありますので、この来年度の二万七千二百五十トン全部これを加えてそうなるのですか。それともこれは更に加わるのですか。
  132. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 昨日も申上げましたように、二十八年及び二十九年度に新造いたしまする船ができ上りまして更に十七隻、二万七千二百五十トンの供与を受けまして、現在持つておりますTMLSその他掃海船等を加えますると八万六千百九十一トンになるわけでございます。従いまして来年度若し財政が許しまして一万数千トンのものが殖えまするといたしますると、それを加えて約十万トンになるわけでございます。
  133. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その今のお話で大体三十年度もまあ大ざつぱにいつて二万トン程度のものの追加貸与が問題になつたというお話がありますが、それとの関連でもう少し外務大臣にお聞きしたいのですが、よく問題になるアメリカ貸与法、それに基く二十五隻というものは現在までにどう処置をされているのか、どういうふうにきまつているのか、その点を先ずお聞きしたい。
  134. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これははつきりわかりません。つまり、きまつておるという以外に、イヤマークされているといいますか、予定されているものがどの程度ありや、日本側に対しても予定しているのですが、ほかからもほうぼう申込があるようでありますから、どの程度予定されておるか、イヤマークされておるものがあるかないか、この点ははつきりわからない。
  135. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするとあの協定に書かれておる四隻ですかは、すでに大統領が権限を持つておるのみならず、日本貸与することに対してすでに承認を与え、従つて予算なんかもついているというふうに考えていいのですか。
  136. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 予算はもうすべて二十五隻に対して適当なものがついております。ただきまつていないこの四隻だけ予算をつけて大統領がきめた、ほかのものは大統領がきめれば予算は自然について来る。
  137. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、あとは大統領がきめさえすればいいのですか、四隻以上のものは。
  138. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りでございます。
  139. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするとそういう日本に四隻を大統領がきめたような形においてすでに二十五隻のうちできまつているのはどれだけありますか。それから各国でどういう要求なりが出て来ているのですか。
  140. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今我々の承知しているはつきりきまつておるのは二隻あると思います。
  141. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本の、ちよつとそれはどこですか。
  142. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 台湾の国民政府に二隻と了解しております。
  143. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると国民政府とフランスあと協定しているかと思いますが、この協定をすでにしているのはどことどこなんですか。それからその協定その他を全部資料としてお出し願いたいと言つておるのですが、まだ出て来ていないのですが、これはどうなつているのですか。
  144. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 協定があることを承知しておりますものは、フランスと国民政府との二カ国だけでございます。ただそれはフランス、国民政府それぞれの自国ですら公表をされておりませんので、私ども情報として大体の枠は知らされておりまするが、日本政府から資料として秘密にされておるものを差上げるわけに行かない、御了承願います。
  145. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 協定自体が公表されていないし、秘密になつているのですが。
  146. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その通りでございます。
  147. 高良とみ

    高良とみ君 その協定自身は発表にならないでも一番一つ伺いたいと思つておりましたものは、例えばイタリアに航空母艦を練習用に貸しておりますが、そのイタリアの海軍力の再建に対してはどういうふうなこの国際条約範囲でやつておるのですか。それをまあ情報として伺いたいのです。それはそういう理由は日本もイタリアも、尤もイタリアの降伏は早く、理由が違いますけれども日本安保条約反びMSAによつてこういう公法百八十八号の中でいうところのネーヴアル・サービスとしての軍艦をたくさん使つておるけれども、イタリアはそのほかに巡洋艦、戦艦或いはその他の、今日日本が借りておりますようなものをたくさんやはり借りつつあるのかどうか、イタリアとの比較において御説明願うと多少わかると思うのです。或いはNATOの範囲でそういうことを許可しておるのでしようかどうでしようか。
  148. 下田武三

    政府委員(下田武三君) イタリアは御承知のように平和条約で陸軍何トン、空軍同機、海軍何トンというように陸海空軍の存在を前提として、そして平和条約で一定の限度まで認められておるのであります。イタリアも独力ではそれらのものを持ち得ませんので、日本と同様にMSA協定を締結いたしまして、それから援助物件をもらつております。そのほかにMSAの枠外といたしまして、やはり公法百八十八号によりまして艦艇をもらう、MSA公法百八十八号と二本建になつておるわけでございます。
  149. 高良とみ

    高良とみ君 そしてその場合にイタリアの海軍力というようなものは総トン数がどれくらいの程度まで回復しておるでしようか。
  150. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 只今資料を持つておりませんが、イタリア平和条約協定されましたのは、海軍が十五万トンくらいではなかつたかと思います。
  151. 高良とみ

    高良とみ君 有難うございました、わかりました。
  152. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それで来年度二万トン程度のものを予想しておるということになりますと、程度からいつて十何倍になりますか、相当やはり今年と同じ程度のものに、或いは今年より若干低目の程度で数量が同じようなものになると思うのですが、その場合に先ほどから問題となつております協定を新たに結び変えるということなしに、ただ附属書にそういう数量に至つてもなお且つ追加をしてできるというようにお考えですか。
  153. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは先ほど羽生君にお答えいたしましたように、理論上はこの協定は若干のものとなつておりますから、若干という問題の解釈、字の解釈には勿論よりましようし、それから無制限ということではなくて、百八十八号の制限内であり、こちらは予算範囲内であるということはありますが、理論上は、協定はアネツクスに追加すれば借受けられるようになつております。併し政治的に見て、それが適当でありや否やというような点については更に十分考慮したい、こういうのが只今の我々の考え方であります。
  154. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 若干という場合百に、さつきお話にあつたように十七隻が必ずしも十七隻完全になるかどうかわからない、十隻になるか八隻になるかもわからない、そういう移動があるから若干というふうな了解をされたというようにも聞えるし、いやそういうことでなくて、今言つたように更に十何倍と来年度追つかけてもそれも若干のうちに入るのだというふうにも聞えたし、そこのところがはつきりしないのですが、そこはどうなんですか、両国の了解は。
  155. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは理論上からいうと両方ありまして、十七隻といつても十隻になるかも知れない、又来年度、今二万トン近いものという予想をしておりますが、予算関係上一隻になるかも知れない、一隻しか借りられないということもあり得ないことではないと思います。従つて理論的に申せば、両方を含めて若干というところであります。
  156. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから先ほどの御説によつて、昨日は外務大臣の御説明によると、大体この協定内容通り条件であるならば当然に数量の境減はできるように理論的にはなつているから、条件さえ変らなければ、これで大体数量の変化だけを附属書に記載すればそれでできると思うというような趣旨の昨日の御説明だつたのですが、今日はそこのところが若干違つて、と言つても、条件が必ずしもこのままで行ける、特にアメリカ側からの条件がこのままで行けるということも確定はできないので、条件の変化があり得るから、そのままには行けないかも知れないかというような御説明もあつたようですが、そこのところはどうなんですか。条件さえ変らなければ、この条件ならそのまま押して行けるのか。
  157. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはもうたびたび繰返すようですが、理論上は、条件さえ同様ならばアネツクスに追加して行かれるわけであります。ただその場合に、例えば若干という字が若し今年仮に十七隻借りたとする、そして来年三十隻借りたとする、三十隻と十七隻、四十七隻で若干と言えるかどうか、これは常識論ですが、十七隻が仮に若干の中に入るとすれば、十七隻に二隻を加えたら若干をはみ出すかどうかということと、三十隻になつたら若干をはみ出すかどうか、これは理論では行かない、政治的な問題になつて来ることもあり得るから、そこで取扱については、来年度のこちら側の希望計画、アメリカ側のこれに応ずる見込等も研究しまして、理論的にはいいとしても、実際上そういうことをやるべきものであるかどうかは十分研究してみたい、こういうわけで協定の形の上は今申した通りアネツクスに附加えるならできるような形になつております。
  158. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするとその政治的な考慮をしなければならないということは、これはアメリカに対して政治的な考慮をしなければならないという意味に聞えたのですが、そうなんですか。更に対国内の政治的な配慮も加味して判断をしなければならんという意味で、両方の意味で政治的にお考えになつているのですか、その点を。
  159. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカ側としては、来年度もこの協定で貸すつもりでこの協定は作つておるのであります。又アメリカ側としては大して影響がないことは、国内の大統領の裁決がありまして、貸し得る船があれば、この協定でも国会承認を得るわけではない、大統領承認があればできるのですから、大した問題はないわけです。要するに政治的考慮というのは国内、主として国会に対する関係であります。
  160. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカでは来年度もこれで、この協定で数量増の問題として措置し得るように考えているような御説明ですが、併しアメリカ貸与法によると先から御説明のあるように、二十五隻で而もその中の十七隻、これはどうなるかわかりませんでしようけれども、これが仮に実現をし、更に国府であるとかフランス等々が申込れているような隻数が若干でも実現して行くとすれば、更に日本から二万トン程度の、十三隻になりますか十五隻になりますか、そういうものとしてはもう二十五隻の中には余地はないことは余りに明瞭なんで、二十五隻を前提にする限りは、十七隻仮に一回切りにしてあとはあとということにしか判断はできないように思うのですが、この辺の事情はどうなんですか。
  161. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それはこれも幾度も繰返しますように、十七隻全部が貸与協定で来るとは私は勿論考えていない、MSAで来る、来年の分も何万トンになるか知れませんが、MSAで来る分もあり得るわけであります。そういうふうに計算はまだほかの国はどれだけ借りるかわかりませんし、日本が全体来年どれくらい借りるかまだきまつておりませんから、まだそういう計算は立ちにくいだろうと思います。
  162. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするとこの二万七千トン、十七隻ということが非常に不確定な要素になつて来たのですが、予算の上から聞きますが、予算をお立てになつときには、一体引渡しの数量がどれくらいあり、時期的にいつくらいから始まる、従つて人員はどうするというようなことで予算を組んでおられるのか、その点の御説明を願いたい。
  163. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 十七隻の予算関係でございますが、これは予算委員会で御説明申上げましたように、人件費、渡航に要しまする経費、運航いたしまする経費全部を合わせまして十億五千万円ほどであります。百万円単位で申上げますと、十億五千三百万円。これは三つの項目から今申上げたようになつておりまして、人件費が平均六カ月、二億七千五百万円、人数にいたしまして三千二百人、これは定員及び予備員一隻当りDDにつきましては二百六十二人、DEにつきましては二百六人であります。そういう定員計算をしております。被服費が一億八百万円、糧食費が五千四百万円、これの単価につきましては、大体予算委員会で佐多委員に申上げた通りであります。合計いたしまして、人件費、被服費、食糧費が四億三千八百万円。第二の項目は渡航関係についての経費、これは先ほど申上げましたようなものにつきましては、訓練を向うでやるものもございますが、こちらから引取りに参りまする経費でありまして、大体船の定員の六割程度の人間が向うへ参りまして、帰りは自力で運航して参る。その運航いたしまする最小限度の人間が向うへ参りまする渡航の経費、それが二億五千万円、外国旅費、それに講習の極く僅かの金が加わりまして一億五千三百万円というのが渡航費であります。第三は、こちらに参りましてからの運航経費、これは平均三月弱であります。これが燃料費、需品費、修理費というものを合せまして三億六千百万円、以上三者を合計しまして十億五千三百万円ということに相成つております。
  164. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは人件費六カ月、運航費三カ月とかいうのは、引渡しの時期はいつ頃と見ておりますか。
  165. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 大体人件費六カ月と申しまするのは、引取りに参ります期間もございまするが、訓練をいたします期間を見ております。従いまして、向うからこちらへ持つて参りまして、それからの期間を見まして三カ月でありまするから、大体一月頃までにこちらに平均してなるというような前提になつておるというふうに考えております。
  166. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 官房長のほうにお尋ねいたしますが、その予算を組まれたときの見通しと、今お話によると十七隻がなかなか簡単には行かないので、差当り四はいですか、きまつている程度で、あとまだ相当折衝をしなければならないのでしようが、そういう関係から言うと、引渡しの時期その他から考えて、予算を作られたときと今とは相当事情が変つて来ているというふうに考えておいていいのかどうか。
  167. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 十七隻につきましては、引続き外務当局、それから私どものほうでも折衝を続けておりまして、私どもといたしましては、十七隻現在におきましても全部が供与されることを期待いたしております。予算との関係につきましては、只今経理局長から申上げましたように、運航費を平均三カ月見ておりますが、ものによりましては或いは一月なり三月なりするものもあるかと思います。この四隻につきましては、場合によつては或いは年内に引渡しが行われ石こともあり得ると思いますので、平均三カ月の運航費は、或いは平均二カ月半になりますか、平均二カ月になるか存じませんが、予算編成当時と、そうさしたる差異はないと存じておるのであります。
  168. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この際それに関連して、もう一つお聞きしておきたいと思いますが、MSA協定によつてこつちが期待をしている海上、陸上、或いは航空の設備の引渡し状況なりその後の折衝はどういうふうになつておりますか、協定が発効した以後に……。
  169. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 私からお答え申上げるのが適当かどうか存じませんが、陸上の分につきましては、目下細かい内容の打合せをやつておりまして、私どもの今得ておる印象から申しますれば、大体私ども考えているものと多少出たり入つたりあるかも知れませんが、ほぼそういうところに来るのじやないかというふうに考えます。  空のほうにつきましても、今折衝をいたしておるわけでありまするが、このほうもいろいろな飛行機の種類の関係、特定のものはちよつと今すぐ手に入ることはむずかしいようなもの、その代りのものをどうするかというような折衝をし、このほうもいろいろ出入りがありますが、このほうは陸よりは多少まだ遅れた段階です。目下のところこれらの引渡しの遅延、或いはそういうような予算関係ということも含んでおります。時の情勢等から見まして、著しい差異が出るというふうには考えておりません。
  170. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それからMSAの現状ですが、いろいろ論議された場合に、MDAの援助がいろいろ論議された場合に、陸上、海上、航空全部で五百五十億程度、即ち陸軍が二百八十億、海上が二百二十億、航空が五十億、五百五十億程度だと、従つて、それを大ざつぱにドル換算をすれば一億五千万程度だというふうに了承していたんですが、この艦船貸与協定その他の審議で、はつきりなつて参りますと、海上艦艇の二百二十億というのは、大体MDAの援助ではなくて、艦船貸与協定だということになると、MDAの援助はそれを除いた金額、従つて幾らになりますか、三百三十億くらいですか。従つて、ドル換算で九千万ドル程度というようなことになるようですが、MDAの援助はそういうものと考えていいのかどうか。これは外務大臣でしようか、或いは外務省のほうの事務局ですか、その点を少しはつきり……。
  171. 下田武三

    政府委員(下田武三君) MDAによる援助一億五千ドルという大体見当のお尋ねですが、これは日本に参りますものの価値の大体の評価でありまして、実際に艦艇MSA法による支出を伴わないと、つまりMSA法と別個の百八十八号というようなもので参ります場合には、恐らくMSAとして計算された予算を米国政府としては使用することなしにこちらに参るということもあり得ると思います。そうしますと、百八十八号でカバーされた部分は一億五千万ドルからMSA援助としては削除される、引かれるわけであります。従つて、これは受取りの形から申しますと、何ら増減はないという次第でございます。
  172. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その場合にMDAとしては、予算的に一億五千万ドル程度向うは考えているでしようが、今のお話のようにその中の九千万ドル程度艦船貸与協定から、いや二百二十億程度艦船貸与協定から出て来るのだからそれだけ穴が開くと、それだけMDAとしては余裕が出て来るわけでしようが、それはもう一十九年度の期待量としては、この間お出しになつ程度のものだけで、そこでそれだけの余裕が出たからそれを別途追加期待をする等々のことはお考えになつていないのですか。
  173. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 先ほど申落しましたが、公報百八十八号には、実は予算の裏付けがないのでございまして、艦艇を引渡す事前に米側で修理をいたします。でき上つたものを日本に引渡すわけでありますが、その修理費はMSA法の予算から出すということが法律に書いてございます。従いましてその修理費だけはやはりMSA法を食うわけであります。従いましてMSA予算から出るものは、艦艇そのものの価値全部だけが落ちるのではなくて、そこから修理費をみたものがやはりMSA予算として使用額に残るわけであります。  それからついでに申しますと、陸上の武器、今まで事実上貸与されておりましたものの修理、これが従来は、昨年頃はMSA法と別個の単行法で修理するというアメリカ側考えであつたように聞いておりましたが、最近の情報によりますと、これもMSA法の、つまり一九五五年度MSA法の新らしい改正法の中の一つのセクシヨンとして加えようという考えが最近あるようであります。そうしますと、そちらのほうも、或いは修理のほうはMSA予算を食うということになるかも知れません。でございますから昨年の一億五千万という大ざつぱな見当も、それらのものをいろいろ差引いたり或いは附加えたりしませんと最終的なものは出て参らないと思います。
  174. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから先ほど問題になりました商船護衛或いは漁民の保護等々に海上自衛隊が使われるのだというお話でしたが、これは普通の場合には、そういうものには使われないで、ただ急迫不正の侵害があつたようなときだけ使われる、それからそういう場合でも原則としては外交交渉その他によつて問題の処理はなされるので、原則としてはやはりこういうものには使わないのだというふうに考えておいていいのかどうか、外務大臣……。
  175. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは今までの保安隊の中の海上警備任務、これは陸上のほうも同じでありますけれども、今までの保安隊の任務があります。それに新たに直接侵略に対抗する任務が加わつた、その任務が全然変つたのじやありません。今までの任務がそのまま続いておつて、新たに今度は直接侵略に対抗する任務がそれに加えられた、こうお考えになればそれが正確です。
  176. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、海上自衛隊も、そういう従来の海上保安庁がやつてつたような任務として、常時漁民の保護なり或いは商船の保護なりに当つておるというふうに考えるのか、そうでなくて、急迫不正の侵害があつたときとか、ありそうなときとか、そういうときに限られるのか、そういう点はどうなのですか。
  177. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 海上自衛隊のほうは平生は行動いたしませんので、平素漁民の保護、その他につきましては海上保安庁の任務になつております。私どものほうは特別の必要があるときという規定になつておりまするから、その際に行動をすることになることになつております。
  178. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういうときに、侵略ではないけれども、急迫不正の侵害があつて、自衛権の発動ではなくて、正当防衛ですか、そういう行為として何か自衛隊が処置をするというようなことになれば、それは従来の海上保安隊の警備船と違つた何か力なり、違つた活動なり、措置ができるのかどうか、その辺はどうなんですか。
  179. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 海上自衛隊のほうは、海上保安庁の打つております船の実力で処理し得ないような事態の際に行動いたします。併し権限でありますとか、或いは行動をし得る法律上の限度という問題については、差異はございません。
  180. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 差異がないのですか。
  181. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) ありません。
  182. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、この実力行動なり、何なり等はできないということになりますか。
  183. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 急迫不正の侵害に対しまして正当防御或いは緊急避難等の場合に実力を行使し得ることは海上保安庁と同様でございます。
  184. 高良とみ

    高良とみ君 関連して伺つておきます。先ほど御説明にあつたことと只今の御説明とは非常に灘締していると思うのです。ですから海上保安庁の漁船等を保護して、若しも急迫不正の事態が起つたならば、海上保安庁の船で以て十分保護し得るのでありますのに、これを追及して行くと常に木村保安庁長官は、漁民の保護が必要であるからアメリカから船を借りて、これで今まで海上保安庁とは違う性格を持つた護衛をやるのだというふうに言われるのです。そこに如何にも必要のないものにわざとカバーして行くような説明をなさるのですが、もう少し明快な区分をわかりやすい意味で説明して頂きたい。両方ともするというふうにも言われるかと思うといや片一方は急迫不正の侵略がない場合には動いて行かないのだという御説明と、両方ある、どつちが本当か……。
  185. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 直接侵略がありました場合は別でございまするが、平素の漁船保護等につきましては、海上保安庁が第一次的に当つております。私どものほうは海上保安庁の実力を以ても警備が完全に執行できないような場合に出かけることはありまするが、併しその場合におきましては、法律上は海上保安庁の船と私どものほうの海上自衛隊の船との間に差異はないと存じまするので、その場合におきましては正当防衛或いは緊急避難等につきまして実力を行使し得ることはできまするけれども、特別な差異はないと存じます。
  186. 高良とみ

    高良とみ君 その点について外務大臣に伺つて置きたいのです。日本は平たく考えて、片一方に賠償の義務をまだ来し得ないでおる。それから東南アジアの諸国は先ほども申ましたように、極く僅かなフリゲート艦ぐらいしか待たないで、生産力も低く非常な苦難の中に日本の出方を見つめておる、こういうときに、海上保安庁で相当な程度の直接侵略がなければ保護し得る漁民或いはその他の商船の運航等に対して十分な仕事ができるのに、あえてここに貸す船があるからといつて艦船を借り、又年間十億ずつでも予算を増加して行つて、端的に言えば再軍備するということに対して、このアジア諸国の、殊に賠償を要求しつつある国が日本に対して本当に心から正しい行き方をし、自分たちに言われていることが正直に平和な意図であるというふうに考えるのでしようか。そこに疑いが生じて、こんなに自分の国の都合には本当に緊迫しておらないのにやつており、何らかもつと違う目的を持つているのじやないかというふうに疑い、賠償問題が困難に直面するということは随分考え得ることだと思うのです。そういう反応もかなり出て来ているのではないかと思うのでございまして、これは日本民族のために、果して外務省としては外交の本来の趣旨からいつて、そういうことは十分に御考慮になつたと存じますが、そのバランスについて本当にどちらが将来の日本のためになるかということについて、どういうふうに考えてありますか、伺つておきたいのです。
  187. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 東南アジア諸国におきましても、日本が自国の防衛をおろそかにしてまで賠償を払えとは言つておりません。この点については、今考えておる程度防衛力の増強については、何ら誤解を持つておりませんから、御心配下さらんでいいだろうと思います。
  188. 高良とみ

    高良とみ君 そういうふうにお答えになるだろうと思つたのであります。自国の危険を犠牲にしてまでということは今の問題ではないのでありまして、そうするとやはりさつきの問題に出ました、それならば目の前に緊急な直接侵略の危険を考慮せせざるを得ないと日本考えておるということにもなるでしよう。その点がまあ賠償については随分努力しておられることも十分認めておりまするけれども、その点において心配を東南アジジアがしておらないならば、なぜもつと賠償問題についてただ向うが余り多額を要求するという意味ではなく、もう少し冷静に日本を理解する点があつてよかろうと思うのでありますが、どうもそうでないところが、私どもが賠償を要求している国の動機に対して十分にまだ考慮に入れ得ないものがあるかも知れません。けれども、できるならば日本の今までの経過から言い、又今の現状から言い、もう少し平たい了解を取りつけるためには、国民の要望と、それから東南アジア諸邦の要望と、それらの丁度マツチしたところに正しいところがあるのではないかと思いますが、それはそうでないのでしようか。
  189. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 第一に、高良さんのお言葉とも考えられないのですが、急迫せる侵略の危険が起つてからですね、それ船を借りて来る、それ訓練をするつたつてこれは間に合やしません。で、今起らないのになぜ防衛力を増強するかというお話は、これは当然起つてから幾らやろうたつてこれはとても間に合やしない。従つて、起らないうちからやらざるを得ない。  それから、東南アジア諸国の日本に対する主なる誤解は、日本に来て見たり、或いは日本の統計などを見て、工業生産が非常に上つて、一五〇とか六〇とかになつておる。或いは国民所得が非常に多くなつておるとか、或いは東京へ来て見るとビルディングが非常にたくさんあつて、表面は繁栄しておるように見えておるということで、もつと払えるだけの国富があるであろうという点に主なる誤解があるのでありますが、少くとも日本の国の守りをするための今程度防衛力についての費用を、あれは多いからこつちに賠償に廻せというような話は、私は全然聞いておりません。
  190. 高良とみ

    高良とみ君 そのためにこそ安保条約があり、アメリカは多くの犠牲を払つてここに空軍も持ち、海軍も持ち、陸軍さえも置いておるのでありまして、それがあたかもないような話を承わるわけなのでありますが、アメリカ安保条約は名前だけ残して全部軍は引揚げたいという意図を発表したとも承わつておらないわけです。まあ日本経済力に合つただけの責任を負うて、徐々にアメリカの負担を軽くしたいということは了承できますが、その経済力なり、或いは日本が賠償の養務を持つておることの事実も無視できないのでありますから、その経済力に応じ、又よくバランスのとれたという意味で申しまするならば、何も安保条約を侵す危険が起つてから急に軍艦を借りて来て自分の国を守るというようなことは、私どもはそんなふうに考えないのであります。もう少し端的に申しますならば、安保条約というものをあれだけの犠牲を国民感想の上から払つてつておりまする限り、これに信頼しアメリカ協力して、若しそういう事態が起つたならば守つて行けるものだと国民は思つておりますが、東南アジアとの貿易、或いは今後の友好関係の上から申しましても、そこらは軍事のことのみを言わないでも、全般的な経済力からもつと賠償に対して誠意のある理解を得て、そしてアメリカにも徐々に日本責任をとる、誠意のないことはないけれども、併しアメリカといえども急に引揚げなければならないというような事態とも考えられないのでありますが、その点どうなんでしようか。それじや安保条約というものについて、アメリカが急速に引揚げる、或いはノミナルなものにしたいという意向はわかつておらないのでしようか。
  191. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 要するに、議論はいろいろありましよう。これはいつまでたつても水掛論かも知れませんが、仮に日本MSA協定も結ばず、艦艇貸与協定も結ばずして、人員を増加してこれに対する装備或いは船、飛行機を全部自国の予算で以て作上げると言つたらば、或いは東南アジアでは、そんなに使わなくてもいいので賠償に少し廻せと言うかも知れません。併しそれができないから船も借り、武器も借り、飛行機も借り、こういう、国としてはちよつとみつともないのですが、こういう程度でできる範囲の国防ということを考えているのですから、これについて別によその国で変な眼で見るということはないわけです。
  192. 高良とみ

    高良とみ君 もう一点、これは先ほど保安長官にも伺つたことでありますが、李承晩ライン等で以て日本の漁船が脅かされたり或いは中共沿岸で日本の漁船が拿捕されたりというようなことを、そういうことを理由にして、かなり日本の海の守りというふうなことについて宣伝されたと思うのです。ついては、そういうふうなことが理由であつたか、或いはアメリカが引揚げたいということを或いは理由にされた向きもあるのでありますが、これだけ日本アジア第一流の十万トン……、これから又どんどん増加して行く海軍力を持つた国になつて行くと、近隣の国から見ればそこに多少競争的な気持もあつて、それは日本は全部アメリカから借りたからよかろう。それは中共も言いましよう、それは台湾も言いましよう、李承晩も言うでしよう。それはほかのアジア諸国も言いましよう。それは多々ますます弁ずるということもありましようが、併しそれによつて日本は過去にあれだけの過ちをしたのでありまするから、やはり限度がなければならない。その限度についてはまだどなたからも承わつておらないのでありまするが、イタリアは十万万トン、日本はどのくらいまでの海軍力をお持ちになり、又もらえるものならハワイからでも、南米からでも、或いはアフリカからでも護衛船団をつけて、コンヴオイの仕事をさせるというふうに、海軍力の増強の限度及びこれに対するよその国との競争、この二つの点についてお示しを願いたい。
  193. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 全体東南アジア諸国とお比べになりまするけれども日本のように人口が非常に多くて、そうして食糧その他を輸入しなければやつて行けない国と、それから自給自足までは行かないが、輸入量の非常に少い国とはおのずから違うのであります。殊に東南アジアに年間二千万トンも物を輸入している国というものは日本以外にどこにもありません。そうしてこれに対するコンヴオイは、先ほどもちよつとお話があつた、これははつきりわかりますまいが、百万トン程度の船がなければ維持できないということであつて、現在ではそれにほど遠いものであります。又トン数だけを考えられても、これは正確でないのであつて、例えば駆逐艦程度のもの、護衛用のものはトン数が多くたつてこれはよその国を攻撃する役には立たない。せいぜい潜水艦に対する保護程度のものでありますから、よその国を攻撃しに行くということはできない。結局そういう程度のもの、又保安庁でも只今のところ戦闘艦等を借りる等は、仮に貸してくれるにしても借りる意思はないと、こう言つておるのですから、その内容を御覧になれば、よその国を脅威するものでない。又日本の単にトン数の多いのはどういうわけかと言えば、これは日本の輸入量が非常に多いから止むを得ん。海岸線も長いのでありますが、そういう実際上の点から勘定しないといかんと思います。
  194. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと速記をとめて。    [速記中止〕
  195. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を一つけて下さい。  質疑を続行いたします。
  196. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この艦隊が防衛をしなければならない種類の侵略がどういうものであるかということが先ほどから問題になつておるのでありますが、その場合に政府のほうでは、侵略の危険があるのじやないか、それじや具体的にどういう方式で、どういう態様、どういう国々のどういう種類の侵略が予想されるんだというような話を聞くと、その点は何ら具体的に説明をされないし、断片的に言われることは、ソ連の潜水艦が極東海域に百三、三十隻もいるような状態だからというようなことがちよつと断片的に述べられています。ところが先ほどのお話によると、潜水艦が或いは商船に対してその他何らかの妨害をする、何らかの措置をするというようなことは、侵略とは考えていないんであるというような御説明があつて、それではつきりなつてつたんですが、そうなるとすると、一体政府がお考えになつておる海上自衛隊防衛をしなければならない種類の侵略というのはどういうことを考えておられるのか。それをもう一度詳しく御説明願いたい。
  197. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは佐多君がそんなことを質問されるのはどうかと思うんですが、あらかじめこういう形で、こういう方法で、こういう所から侵略するということをどこの国も明らかにするわけはないんであつて侵略という以上は不正の侵略で、これがあらかじめわかつていれば、これはどこの国もそう心配する必要もない、又コンヴオイ等については、これは二種類あるんです。つまり日本侵略されている間でも日本は食糧等を輸入しなければならない。そうでなくて、よその国の間に紛争があるような場合でも、やはり同じようなことをしなければならない。従つて侵略に当面しつつコンヴオイをする場合もありましようし、そうでなし場合もありましよう。だからコンヴオイというものは侵略とは全然関係はないんだということは、これは又言えないわけです。
  198. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、その侵略があるかも知れないし、或いはあることが非常に公算が大だからと言われるけれども、その態様なり、方式なり、可能性なりというのは、具体的には何らわからないんである。ただあるかも知れないからという程度のことなんですか。
  199. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 例えば佐多君なんかよくお聞きになるスイスなど、或いはスエーデンなどは中立の立場をとり、中立政策ということを言つておりますが、従つてどこの国を敵国祝するというわけでもなければ、どこの国を仮想敵に考えているわけでもない。それじやそんな所は何も軍隊は要らんかというと、やはり軍隊を持つている。これは国として、如何なる国と急に仲が悪くなるかも知れない、それは将来のことは予想はできない。
  200. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ただそうあるかも知れないことに備えて置くだけなんであるという意味なんですか。
  201. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そう言うとえらい無益なことをやつておるようにとられるのですが、私はそういう常識的なことを一々お答えするのは却つて委員会を侮辱するというようなことになると思いますが、独立国として当然のことであり、又世界中どこの国でもやつておることであります。日本程度が低いだけの話であります。
  202. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、それは終戦後の日本が新らしい形において新らしい憲法の下に新らしい国を持とうとしたときの考え方は、従来ならばほかの諸国においては今大臣がおつしやつたようなことが通念になつておるけれども、その通念を破つて新らしい形で発足をしようとしておるのでありますから、ただそういう通念だからとか、そういう慣習だからとか、そういう歴史だからということではこれは合理化ができない。そうするといつもあなたがたのほうじや侵略の危険があるからと言われるから、それならもつとそれが具体的にどういう方式で、どういうことが考えられるんだ、だからこれだけのものが必要なんだということが十分に納得の行くように説明がなければならないと思うんですが、それがどうも我々納得が行かない。
  203. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 憲法前文は大きな理想を掲げておるので、あれが憲法制定当時に世界の情勢がこうなつておるとか必ずしも思つてつたわけじやない。大きな理想を持つてそれに進むという考え方は今でも同じであろうと思います。現実事態はまだそこまでは行つていないので、そうして又今の日本防衛力というものを以てしてそれじや侵略に当てるとすれば、これは安保条約を以てアメリカの武力も間接の安全保障として、これはいつ如何なる場合に、如何なる所から侵略行為が行われても防ぎ得るという程度のことをいたしておるのですが、それを漸次アメリカ側から日本にとつて代りたいという段階の第一歩といいますか、極く初歩を今踏み出しておるということであります。
  204. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは安全保障条約精神なり、やり方はわかるけれども、その前提において侵略というのは一体どういうことを考えておられるのかということの具体的な答弁がなつておりません。これは何遍やつても同じことですから、この問題はこの程度にして、もう一つ具体的にお聞きしておきたいのですが、横浜ですか、日米運航会社だつたかと思いますが、ああいう会社があつてLST六十隻ぐらいを保有して輸送その他に当つておると思いますが、あれと今期待をしておられる輸送艦の二隻というものとは何か関係があるのか。それからあの一体船ですか、軍艦ですか、あれはどういう性格のどういう性質のものか、これを一つ御説明願いたい。
  205. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は具体的に日米何とか会社というのは知りませんが、仮にLSTとか何とかそういうものを打つておるとすれば、恐らく軍馬を払下げて普通の馬にして馬力に引かしておるようなものじやないかと思う。
  206. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 何か三千トン程度のものを六十隻斜度持つておるのでしよう。単に軍馬払下げ程度のものじやないと思うのですが、私も余りよく知らないので、それを一つ御説明願いたい。その上で……。
  207. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 何か今聞きますと、私知らないのですが、入れ智恵してくれたところによりますと、これはアメリカの運送を引受けておる会社で、その意味で払下げを受けて使つてつたということで輸送船でしよう。
  208. 安川壯

    説明員(安川壯君) 運航を請負つておるだけです。
  209. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 運航を請負つてつて、その船籍、これはもうLSTで軍艦だと思うのですけれども、それはこの国籍はどこにあるのですか。それからどういう形で使用をしておるのですか。占有なり使用しておるのですか。
  210. 安川壯

    説明員(安川壯君) 私も詳しくは知らないのですが、船籍は向うにあり、払下げてこちらの所有になつてないということは確かでございます。ただ向うの軍の輸送を請負うサービス・コントラクトに基いて船を運航しておるというふうに聞いております。
  211. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 LSTですから艦艇の性質としては艦艇であり、向うでは軍艦なんですね。
  212. 安川壯

    説明員(安川壯君) LSTが向うの軍艦のリストに載つておるかどうか存じません。載つておるとすればその一部だと思います。
  213. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それを日本アメリカとの間の契約で借り受けるなり何なりして運航を請負つて、例えば兵員輸送その他をやつておるという性質のものと考えるのですか。
  214. 安川壯

    説明員(安川壯君) 日本で申しますと、これはいわゆる民間会社が請負つておるわけでございます。政府は全然関係しておりません。
  215. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう場合には、それの輸送その他に対する警備なり防衛等々は、この海上自衛隊はどういう関係になるのですか。
  216. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 全然開いておりませんし、又私のほうの任務でもございません。
  217. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本の今会社ですよ。そうして日本の会社がそういう輸送の業務をやつておるのですよ。
  218. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 日本がコンヴオイをやるといたしますと、これは日本のための目的で動いておる船を防衛するのでありまして、外国のためにサービスをしておる船をコンヴオイするということはこれは考えられないことであります。
  219. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、この護衛海上自衛隊とは全然無関係だ、それから若し向うがこうした海上自衛隊その他ができた場合に、これの安全の保護なり何なりに当れと言われても何ら責任はないし、従つて完全に突つぱねるべき性質のものなんだというふうに了解してもいいのですか。
  220. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 実際問題となりました場合にどうするかはこれは将来お考えになることでしようが、理論上は十分突つぱねられる筋合いだと思います。
  221. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはこの保安庁のほうでもそういうふうにお考えになつておりますか。
  222. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) その通りであります。
  223. 中田吉雄

    中田吉雄君 官房長にお尋ねしますが、このたび自衛隊法を出され、三軍に対して或る方式を打出されたのですが、その際三軍の釣合いのとれた方式を作つてアメリカと御折衝になつたが、陸上部隊のほうだけ三年に繰上げ、海空のほうは五年計画の後半にずらしてしまつたというようなことが伝えられておりますが、その間の消息についてお伺いいたしたい。
  224. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 陸海空の三つの自衛隊の均衡ということは、昨日も大臣から御説明申上げたと思いますが、私ども考えておりません。従いまして陸上何方に対応して飛行機何機、或いは海が何万トンというふうにには考えておらないのであります。それから将来の増強計画につきましては、これもたびたび大臣から申されております通り、私どものほうといたしましてまだ検討中で成案を得ておりません。従いまして陸について三年にやるとか或いは海について三年にやるとか、空について五年にやるというような計画というものは現在のところ勿論きまつておらないのであります。
  225. 中田吉雄

    中田吉雄君 いろいろ不確定条件があるのでなかなかきちんとした計画が立たんということですが、そういういろいろ素案でも示されて、そうして国会等の批判を受けながらまとめて行かれるというようなことが必要だと思うのですが、アメリカとの折衝については、海空のほうは厳しく批判されて、陸のほうをスピード・アツプするように言われておるのですが、そのときにも全体の計画を持たずに御折衝になつたのですか。
  226. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 米国との関係において陸をスピード・アツプするとかいうようなことはございません。又この漸増計画と申しますのは、御承知のように、財政と非常に関係をして参りまするので、私どものほうでいろいろ部内で討議はいたしまするけれども、又二年後においてどうだ、三年後においてどうだという案で申上げるような成案というものはできておらないのであります。
  227. 中田吉雄

    中田吉雄君 昨日もちよつと御説明があつたのですが、駆逐艦の耐用年数ですね、昨日私ちよつと聞き漏らしたのですが、大体どれぐらいなんですか。それから、いろいろ予算上の、例えば補修とか、いろいろそういう耐用年限からこれは割出して、年々の予算計上を見ておられるのだと思うのですが、そういうことについて一つ御説明願いたい。
  228. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 昨日も申上げましたように、DDは一九四〇年から一九四三年の間にできておりまするし、又DEのほうは一九四三年及び四年頃の建造でございます。どのくらい命数があるのか、私もはつきりぞんじませんが、こういう船がどのくらい使えるのか、構造その他からも来るのでございましようし、私どもとしては今まで承知しておりません。大体二十五年ぐらいはもつのじやないかということでございます。
  229. 中田吉雄

    中田吉雄君 もう大体、私はお借りになる船は普通なら、もう耐用期限を過ぎていると思うのです。私の持つているのは二十年に大体見てあるのです。そこでお尋ねいたしたいのは、私予算委員会でこの造船利子補給の問題にからんで、アメリカの船の建造の問題でいろいろわかつたことは、丁度この一九四〇年から四四年頃に造られた船は最も粗雑なんです。これは実は日本の船会社が、貨物船をたくさん買つて弱り切つておるのです。そしてそれを国会に働きかけて、その買船も利子補給の対象に入れる、そして船会社はもう使い途がないので、アメリカに金を支払えないので、最近差押えされている商船会社はたくさんあるのです。そういう点から私終戦末期で、もう非常に急いでおつて、耐用年限の限界に来、そして又日本がこれを借りてからもなかなか補修が要るのではないかと思うのですが、これまでのフリゲート艦等の状況とからんで、そういうことについて御引見を承わりたい。
  230. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 今まで経理局長おりましたのでございますが、内閣委員会に出ておりますので、詳細な資料を今持つておりませんので、ちよつとすぐ呼びましてお答えいたします。
  231. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今の御質問ですが、アメリカ側で問題になつておる例のビクトリーとかリバテイー型というのは、これはそのときの輸送の必要上急いで造つたりして、不備、又燃料が余計に要るのでありますが、駆逐艦等の軍艦、戦闘に使う般その他については、逆にもつと力を入れて造つたのであつて、その御懸念はないと思います。  それから耐用年限ですが、これも終戦後余り使つておりませんから、まだ耐用年限は相当あると思います。それから修繕については、この前のフリゲート艦のときもそうでありますが、今度もアメリカ側で、特にアメリカの海軍は十分費用を以て補修して、リコンデイシヨンをしてから日本側に引渡す、こういうことになつております。
  232. 中田吉雄

    中田吉雄君 条約局長にお伺いしますが、私ちよつと出なかつたのですが、質疑なんかもいろいろあつたようですが、この艦艇の国際法上の地位について一点、締めくくりにお伺いをしておきたいのです。
  233. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 国際法上軍艦と称し、又軍艦としての特権を享受し、地位を認められるためには一定の要件がございます。軍艦旗の下に行動し、統帥系統に属する海軍の将校の指揮下にあり、乗員も又海軍の規律に服するというような要件がございます。そこで日本には海軍というのはないのでございますから、どだいその大きな枠に外れるわけであります。併し自衛隊旗も掲げておりますし、中には制服を着た政府の職員が乗つておりまして、やはり政府の規律に従つておりますので、目的は自衛のために限定されておりますが、極めて類似した外形を早しておりますので、実際問題といたしましては、多くの国が軍艦並みの特権を与えることがあり得ますし、又それを希望する次第でございますが、併し国際法上軍艦の要件を厳密には備えてないものを、日本法律上の権利としてこれに軍艦の特権を認めろということは、私はできない。一にどう取扱われるかということは、相手国の好意的な措置に期待するほかはない、そう申上げるのが私の結論でございます。
  234. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうしますと、これは外国の領海における軍艦の不可侵権とか、治外法権とかいうような問題で、そういう待遇をしてくれる国もあるでしようが、ない国は、乗組員が上陸したようなときはどうなりますか。
  235. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 乗組員が上陸した場合は、公勢に無関係に、軍艦でも公船でも同じでございます。一般的に申しまして、軍艦ではないといたしましても、これは政府の所有に属する公船でございますので、公船の特権は最小限受けるわけでございます。なお特権の問題以外に、自衛の軍艦が入つて来た、大砲をうつとか、所在国の領事に挨拶に行くとか、逆に市長を訪問するという問題もございますが、これなどは法律的地位以上に、私は将来仮に行くようなことがありましたら、なかなか取扱にむずかしい問題だろうと思います。実は最近国際会議がございまして。ロンドンで聞かれております。油を海中に濫りに投棄してはいかんという取締をする条約がありましたときに、日本自衛隊に属する自衛艦の取扱い、これはなかなか日本だけの特例でございまして、ちよつと取扱に各国代表とも困つたという事例がございまして、確かにむずかしい問題を提供いたしておる次第でございます。
  236. 中田吉雄

    中田吉雄君 この公船でしたら、私の調べたのでは、やはり乗組員が上陸した場合には、軍艦の乗組員のような特権はないように思うのですが、その辺はどうなんですか。
  237. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 公船は、外国に入りましたら、その外国の法令の認める範囲、或いは外国が行政上の措置として認める範洲しか特権を享受し得ない。一に相手様の定めるところに従う。
  238. 中田吉雄

    中田吉雄君 事態が起きたような際に、これはどうなりますか。私船を拿捕したり、攻撃をしたりする、軍艦と同じ国際法上並みを以て対抗できるのですか、その点どうですか。
  239. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 臨検、拿捕の問題は、敵船に対する場合と、中立国船に対する場合とございます。そこで日本侵略が万一ありました場合に、その侵略部隊を輸送するために、もう日本の領海の間際に兵隊を満載して、軍艦ではないが船がやつて来ておるという場合には、これは自衛権の行使といたしましてその船舶をとめる、或いは臨検ずる、更に先方のあれに応じて攻撃を加えるということもできると思うのであります。ところが公海でこれは敵国向の軍需品を輸送していやしないかという疑いから中立国の船舶までひつつかまえて臨検、拿捕するということは、国際法上交戦者の権利として切めて認められることでありまして、そういうようなことは自衛権の範囲に属しませんから、自衛としてはできないと思います。現実侵略部隊の一部として敵兵を満載してやつて来ようとしておるという、そういう事前でありましたら、これは交戦者の権利としてでなくて、自衛権の発動としてやはり臨検、拿捕できる、そういうふうに考えております。
  240. 中田吉雄

    中田吉雄君 東支那海等におきまして、中国とは講和状態ができていない、休戦状態ですか、そういう状態にあつて、そこにおける日本貸与された艦艇はどうなりますか。例えば日本の船が拿捕される、そういうときには国際法上どういうことができますか。
  241. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 公海で自衛艦が何か不当な扱いを受けたといたしますと、これは自衛権の問題よりは正当防衛或いは緊急避難の問題になると存じます。
  242. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちよつと関連して。さつきの中立国の輸送船の臨検、拿捕はできない、それからその場合に敵性国であることははつきりしておるのだが、併しそれは輸送船に過さないのだ、特に公海においては……、そういう場合はやはり敵性のものといえども、できないのですね。
  243. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 敵性のものといえども、それが現実侵略行動、つまり日本の領海にもう兵を満載して入つて来るというようなことがない限りは、それに対して手を加えることは、これは交戦権がない限りできないと思います。
  244. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 その場合に自衛艦が中立国の船を拿捕した場合はどうなりますか、仮に拿捕したとしたら……。
  245. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは相手国の態度によるわけでありますが、当然不法行為として日本責任を追求して来ると思います。非常に好意的な国は、日本は今一方で侵略を受けておるのだから中立船といえども或いは敵に軍需物資を輸送しておるという嫌疑からとめたのではないか、それは尤もだといつて責任を追求しない国もあるかも知れませんが、責任を追求されてもこれはいたし方ない問題だと思います。
  246. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それは日本が交戦権がないという理由になりますか、相手国に……。
  247. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 若し相手が不法行為の責任を追求して来るといたしますれば、これはやはり日本は交戦権を行使する資格がないからということを理由といたすかも知れません。
  248. 中田吉雄

    中田吉雄君 下田局長にお伺いしますが、政治犯人の庇護権はありますか。軍艦にはあるようですが、これはいろいろ北鮮、南鮮その他にからんで問題も起きると思いますが、それはどうなりますか。
  249. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 政治犯の庇護権はないと思います。
  250. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 石原経理局長が帰つて来られましたが……。
  251. 中田吉雄

    中田吉雄君 海上自衛隊の今後の予算の殖え方について、いろいろ参考にするためにと思つてお伺いするのですが、よく予算に経営費として更新費とか或いは調整費、補充年率とかいろいろテクニカル・タームがあるようですが、そういうものについて一つお伺いしたいと思います。
  252. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 今の更新の関係でございますが、更新の関係につきましては、実は陸上自衛隊のほうにつきましては、相当車両その他の何と申しますか、火器でない部品につきましては、これは大体更新の率を毎年やはりきめる、これはいわゆるリプレースと呼んでおるので御承知の通りと思います。海のほうにつきましては、ちよつとそういうような更新というような関係が伴いまするものは、車両のような関係にはございませんので、一番大きい項目になりまする船舶の修理、これは大体年を経まするに従いまして修理費の力ーヴは上つて参ります。これは大体従来の少い数字を使用してありますのと、それから商船の場合、或いは昔の場合におきます修理費のカーヴがございまして、大体これはこの前の機会に申上げたと思いますが、今度の新らしい駆逐艦につきましては、大体十年たつたものだという計算をいたしまして、修理計算をいたしております。船舶は御承知のように大体十年内外のところであります。大体その点の計算のあれは立つたかと思つております。今後又非常に違つた種類のものが入りますれば、又その際にどういうくらいの年月のたつたものであるかということを見当をつけまして、修理費のカーヴを見ます。現在のようなもので行きますれば、今の十年経過の修理費でよろしいのではないかと思います。あとの船具類につきましては、これは大体今船舶課長がおりませんが、大体耐用年数みたいなものがございますので、それを見まして補修の金を計上するということになります。極く大ざつぱに申上げますと、先般予算委員会で申上げたと思いますが、今海上自衛隊の使つておりますような護衛船艇、こういうものを中心として考えて見ますると、トン当りの維持費が陸上施設を合せまして十万円くらいのところでお考え願えばいいかということを先般申上げたのであります。
  253. 中田吉雄

    中田吉雄君 調整率というような言葉が使われておりまするが、これはどういうことになりますか。
  254. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) ちよつとそれはどの資料でございますか。
  255. 中田吉雄

    中田吉雄君 私がいろいろこつちで集めた資料です。
  256. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) ちよつとわかりかねます。
  257. 中田吉雄

    中田吉雄君 これは海上自衛隊を持てばこれだけ要るというようなことでいろいろ計算をするのに調節率とか年率とかいろいろ出してやつてあるものですから、こういう機会に御指導を受けて見たいと思つたのです。あとからでも結構です。  これは条約局長からお伺いしてもいいと思いますが、第九条に、私ちよつと欠席したことがあるのですが、これは実施のために必要な取極とはどんなことなんでしようか。
  258. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは各条に、両国の政府合意してきめるというような約束がたくさんございます。例えば引渡しのときの引渡しの証書をどういう形式でどういうように作ろうとか、そのすぐ前にあります第八条の損害の賠償についてどういう取極を行うか、そういうこの条約の実施のために必要となりますごとにつきまして、やはり政府の権限内で相談いたしましてできましたものを文書としてまとめるということであります。
  259. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちよつと条文に関連して、第三条のところですね、五年を経過してあと追加五年の場合には、これによると「適切且つ可能であるかどうか」を協議するということになつておりますね、船舶貸借協定ですね、あの場合には当然に何も協議を持たないで、当然延長されるように書いてあつたのじやないかと思いますが、それは違つておるのかどうか。違つたとすればどういう事情であのときと違つた案で協定がなされたのですか。その点ちよつと承わりたいと思います。
  260. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 仰せのように船舶貸借協定の場合には、場合によつては新たに五年の追加ができる規定になつておりまして、そこでできれば日本側も船舶貸借協定の例によりたかつたのでございますが、アメリカが他国と取極めておりますものでは、全然期間の延長を認めていないのでございます。そこでどうも日本だけに認めるわけに行かないということで、両者の中間で、それでは五年で打切らないで、五年たつたときには相談してきめるというところで妥協が成立したわけであります。
  261. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 条約局長に伺いたいのですが、相互防衛援助協定との関係なんですが、三条を見ますと、相互防衛援助協定規定従つて艦艇を占有し又は使用する、今後アメリカから供与を受ける艦艇は一応この種の貸与協定、この協定をくぐるのですか。それともくぐらずに供与を受ける場合があるのか。言い換えますると両方の規定の、両方の協定の適用の下に入つて来る船があるのかどうかという点であります。
  262. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この協定の下に借ります船は、MDA協定の船の中には入つて参りません。そこで第二条と申しますと、MDA協定はいろいろな規定がございますが、例えば国連憲章に矛盾したような扱い方をしてはならんとか、或いは転用してはいけないというような規定がございます。その規定を又繰返してこの協定の中に持つて来る代りに、あたかもそれらの規定がこの協定に鋏で切つて附け足されておると同じような効果を持たせようという趣旨で第二条の規定が入つておるのであります。
  263. 高良とみ

    高良とみ君 局長にお伺いいたしたいのですが、原文の場合には、「占有し」と書いてあるのですが、リテインと書いてあつたものですから、私は日本にすでにある軍艦、こういう輸送船などをそのまま持つてつて、そのほかアメリカからも持つて来るのだろうと思つたんですが、そういう意味はないのですか。
  264. 下田武三

    政府委員(下田武三君) リナインと申しますのは、借受けたものをリテインするということでありまして、今古である船をそのまま持ち続けるということではございません。つまり日本の手に入つて来ますのが供与でございまして、供与されたものを持ち続けるのが占有、リテインでございます。そしてそれを使うとこるでありますが、一番初めの供与のことはこの協定で定める条件で供与するということであります。それでそれ以後の占有することと使うことについては、相互防衛援助協定規定に従う、こういうふうになつております。
  265. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それからこの合衆国艦艇貸与に関する協定となつていて、前の船舶協定の場合には船舶貸借協定となつていたんじやないかと思いますが、これは何か意味があるのですか。
  266. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 前のは英語のチヤーター・パーテイと言つておりまして、私船の用船契約と同じチヤーターという字を使つておりましたので、これは貸借と訳したわけでありますが、今度の場合にはローンでございますので、やはり字を変えたほうがよろしいと思いまして貸与といたしたのであります。
  267. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカの原文で字が変つているのは何か意味があるのですか。
  268. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは前の協定のときの母法になりました法律がございましたが、あのときに母法自体にやはりチャーターという字が使われたのではないかと存じております。
  269. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 根源は今の御説明でわかりますが、根源において変えたのに何か意味があるのかどうか。
  270. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは特に意味はないと存じます。
  271. 中田吉雄

    中田吉雄君 岡崎大臣に私としての最後のお伺いをしますが、MSA協定を結び、更に艦艇貸与協定を結び、実際矢継早にこういういろいろな増強計画がなされまして、限界がわからないという点も非常に不安を持ち、又我が党の反対する一つの理由なんですが、この審議過程でいろいろこれに対する御見解を承わりましたが、吉田総理が外遊されて艦艇貸与協定を含む日本自衛力の漸増の線が飛躍的に変つて来るということはあるでしようか。その点について。
  272. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 吉田総理はよくワンマンと言われておりますが、閣議の決定を経ずして日本の方針を変えることはありません。
  273. 中田吉雄

    中田吉雄君 実は外電或いは国内の新聞雑誌その他外遊に関しまする批判なり或いは情報において伝えておるものを見ますると、すでに東南アジア防衛機構にも参加する、そうして統一行動をとる、憲法改正の時期も約束する、そうしてお帰りになつたら臨時国公でも開いて政策の大転換をされるというようなことも出ておりまして、すでに党の首脳部にはそういう御意見をお漏らしになつたというふうにも出て、もう我々がこの協定審議しておるすぐあとにそういう協定が更に躍進するようないろいろな説が出ておるのですが、外交の首脳部とされて御相談にも応ぜられておると思いますが、如何でしようか。
  274. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 総理の渡米についてはいろいろの憶測が出ておりまして、中には私の見たのでも親善以上には出ない、何にも具体的な話はしないという説もあり、中田君の言われるような説もあります。これはすべて臆測であります。いずれ政府としては正しい見解を表明することと思いまするが、たびたび申すように、総理の信念はずつと変つておりません。飽くまでも自衛力漸増という考えで来ておりまして、飛躍的な変化があるということは全然考えられないことであります。
  275. 中田吉雄

    中田吉雄君 この艦艇貸与協定の採決の前に、大体外遊の目的なりいろいろお漏らしになると非常に採決にも便宜ですが、そういうこともできんと思いますが、今国会にやられると思うのですが、大体いつ頃か予想できるならちよつと……。
  276. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは主として国内の問題でありますので、官房長官が主になつて研究をいたしております。いずれ相談がまとまりますれば……、時期はまだきまつておりません。
  277. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の点について関連しまして。そういう問題についてまた外務大臣にお聞きしたい一般外交政策上の問題なり何なりかなりあると思いますが、仮にこの協定審議が終つてつた後にも、まだ二、三日会期はあるようでございますから、適当な機会にそういうあれを作つて頂くことも一つ御考慮願いたいと思います。
  278. 中田吉雄

    中田吉雄君 如何でしよう、その点一つ何とか大臣の御答弁を……。
  279. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 外務大臣のお繰合せが付けば、委員長としては何ら異議はございませんが、会期末外務大臣、御都合つきますかしら。
  280. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 委員会の御要望とあればいつでも、と申してもそれは差障りのある場合もありますが、できるだけ御要望に副うようにいたします。
  281. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは質疑はこれにて終局したものと認めます。午後三時半から委員会を再開しまして、討論に入りたいと存じます。  これにて休憩いたします。    午後二時二十二分休憩    —————・—————     午後四時五分開会
  282. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) これより外務委員会を再開いたします。  これより討論に入ります。御意見のあるかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。
  283. 羽生三七

    羽生三七君 私は日本社会党を代表して、只今議題となりました日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定批准について承認を求めるの件に反対をいたします。  以下いささか所見を開陳してその趣旨に代えたいと思います。  今度新らしくできる自衛隊艦艇が、その名を自衛艦と呼ぼうと何と呼ぼうと、これは軍艦であることに間違いはありません。このことは日本の現行憲法に背達することは又余りにも明瞭であります。そこで、国際法上認められた自衛の権利というものが、独立国家にあるかないかという議論は、ここでしようと思いませんが、当然それはあることは当り前だと思うのであります。この場合に私たち明らかにしておきたいことは、自衛の手段なり方法なりという問題と、その自衛権を行使する方法とが、又おのずから別個の問題であるということでございます。よく我々が軍備に反対すると言うと、独立国家に軍隊はなくてもよいのか、或いは又無防備無抵抗の立場をとるのか、そういうことで反論をされるかたがありますが、それはいささか的迷いであります。如何なる場合の安全保障といえども、絶対的の安全保障というものはありません。それは当然相対的なものである。我々はそれを相対的と言う以上は、比較の立場においてものを考えるわけでありますが、武力を持たなければ絶対に自国の安全が保持しがたいと思われるような時期もあるかも知れません。併し又同時に、その国の経済力の安定なり治安については、警察方に待つなり、或いは自主的にして且つ弾力性ある外交を通じて、そういうものの総合としての国家安全保障方式のほうが、十万や二十万の軍隊を持つよりもより安全の度合が強いという時期もあるのであります。我々はその時期が現在に相当すると考えております。直接侵略の問題がよく言われますが、併し今世界に問題になる国々庁我々考えた場合に、これは同一国内に、ことごとく二重政権を持つておる国であるということは、例えば朝鮮然り、南北に分れておる。中国然り、本土と台湾に分れておる。インドシナ然り、これはホー・チミンとバオダイに分れておる。或いはドイツは現在問題が起つておるとは申せませんが、東西両域に分れておる。こういう同一国内に二重政権を持つ国の一方が統一政権を樹立しよう、或いはへグモニーを確立しようとすることによつて、そこに直接戦争なり何なりが起る。この場合に、今世界では侵略とか何とかいうことが言われておるのでありますが、これはむしろ、この全面的な国際戦争を思わせる侵略とはおよそ異なるのでありまして、同一国内における政権争奪の戦いであると見るべきものがあると考えるのであります。それを見て我が日本を見ると、我が国の吉田内閣は、よかれあしかれ日本には二軍政権は存在いたしません。そういう場合に、果して海を越して直接日本を攻撃の対象とするような、そういり形の侵略が直ちに想定されるかどうか。若し理由なき帰路が直ちに日本にありと想定されるたらば、而も近い将来にそういうものがありと想定されるならば、私はこの場合において討論の内容を変えるでありましよう。又当然変るのは当り前であります。併し私どもの見通し得る近い将来において、或る天気晴朗なる日、突如として日本を占領しようというような武力侵略が起るという想定には我々は立つておりません。むしろこれよりも、日本以外の他国からの紛争に巻き込まれる危険のウエイトのほうが多い。だから我々が安全保障考える場合に、その両方を比較した場合に、私どもはむしろ、日本が今ささやかな軍備なんかを持つよりも、むしろ先ほど来申上げた諸条件に頼ることのほうが自国の安全保障の度合は強いという立場に立つわけであります。こういう立場に立つて、私どもは今作られようとする日本海上自衛隊或いはその他一般防衛方式そのものが決して日本の安全に役立つものではない。而もそれは現行憲法第九条の規定に明白に背反し、憲法を空文化せしめるものであるという立場に立つて反対するのがその反対の第一点であります。  次は、この協定質疑過程においてもすでに明らかにしましたように、十七隻、二万七千トンの貸与規定しておるものでありますが、併し解釈の如何によりましては、将来更に十七隻以上のものが国会承認を経ることなく、協定附属書に追加することを以て足れりとする形をとつて日本海上自衛力増強が進められて行く杞憂を孕んでおります。而もこのことは、単にそういう技術的な問題だけではなしに、一体戦力を我々が規定する場合の各種の条件を検討する場合に、国会承認を経ることなく、そういうものが進められて行く場合には、勿論予算上の制約があつて予算審議過程に若干このことが明らかにされるでありましようけれども、併し艦艇貸与そのものについては、明白に国会承認なくして行われる危険性もありますので、かれこれそれらの点を勘案いたしましても、非常に不十分な点をこの協定は孕んでおると思うのであります。これが問題の第二点であります。それからら第三点は、政府はしばしは独立国家に値する自衛力増強を言いますが、併し質疑過程にすでに明らかなことく、未だ日本自衛力目的とするその総体的な力というものは何ら明らかにされておりません。何ら計画は明示されておらない。もとより日本の国力、経済力考えた場合に、今直ちに確定的に何年の後にはどれだけのトン数、どれだけの空軍力、どれだけの地上軍を持つというような断定的な結論を下しがたい不確定な要素が存在しておることは認めますけれども、併しそれならばそれで、或る一定の目的を掲げながら、併しそうではあるが財政上の理由で本年度はこの程度しか実現できないということを立証するに足りる一つの基準というものが、地上であれ、海上であれ、なければならんと思うのてあります。そういう基準が何ら示されておらない。全くその都度御都合によつて組み立てられておる自衛力増強であります。このことは、独立国家の自衛力という名に値しない全く不確定なもので、而もこれは殆んそ他国の援助に待つという形をとつておる。特に海上自衛隊におきましては、殆んど大部分が、全部というくらいにアメリカ艦艇貸与を受けることによつて自国の海上自衛力増強しようとしております。こういう自主性のないやり方は、我々としてどうしてもやはり承服し得ざる問題の第三点であります。  それから第四点は、特に我々として考えなければならないことは、昨今の国際情勢からしまして、この海上自衛力が将来自国の防衛よりもむしろ他国の紛争に利用され、又その紛争の中に介入せしめられる危険性を有するということであります。特にインドシナの戦争の発展の過程において、しばしば言われる自由諸国の統一行動というようなものが、本日の新聞でも明らかなように、東南アジア防衛機構という形をとるかも知れない情勢に今我々は遭遇しておるわけであります。こういう場合に、私どもは本当の意味の自国の防衛というよりも、むしろ他国の而もアジアの近隣の諸国の紛争の中に日本の作られるであろう防衛力が介入せしめられる危険を非常に多く持つておる。こういう危険に使われる可能性が非常に多い今の形の自衛力増強、特にこの艦艇貸与については、やはり反対せざるを得ないのであります。  更に問題の第五点は、これも質疑過程において明らかになりましたように、日本の現在の貧弱な経済力、特に輸出の不振、貿易のアンバランス、外貨保有の減少、それから更にアメリカとの債務の問題、或いはフイリツピン、インドネシア等の賠償支払の問題、こういう問題とも合せまして、日本の今後の経済の展望というものは極めて憂うべきものがあると思うのであります。現在の状態においてすら、日本が外貨保有の減少を日一日と深刻化しておる今日、若し自国の力で自衛を増強しようととするならば、これは必ず国民生活の低下を招来する。而もそれは僅かの金でなしに、大規模な金を注ぎ込むことなくしては、相当数の部隊編成なんというものはできないのでありますから、当然国民生活の安定というものが犠牲になることは当り前であります。だから、そういう国民生活の安定が犠牲になるような場合には、一番問題になる国内治安の維持というものが不可能になるような客観的な情勢すら醸し出されると思うのであります。だから若し世界にある紛争という問題を、一つ一つのケース我々が取上げてみるならば、よく共産諸国の侵略行為ということが言われますが、それは或る特定の国の中に他の同一思想体系を持つ国の協力を求めるような要素が成長した場合に、必ず問題が起るのです。何も問題のないところに中国なり或いはソ連が、共産主議諸国が協力をし、何らかのレヴオリユーシヨンを計画したようなことは、少くとも一九一七年のソヴエト革命以来歴史上全然例はありません。これがある場合は、必ず先ほど申上げましたように、その特定の国の中に非常な経済的な大混乱が起るとか、或いは戦争の遺産として混乱が起るとか、そういうところに共通の立場に立つものの援助なり或いは、工作というものが進められるので、ノーマルな状態の下に突如として相呼応する勢力というものが立ち上るということは、歴史上いささかも我々の発見することのできないケースであります。だから、我々が今日本当に日本の経済の安定を確立して行き、又それを通じて日本の治安の確立を期するならば、我々はそれが今の日本立場において最も安全な自国の防衛方式であるということを固く確信をいたしておるわけであります。若しそうでなしに、自国にはそういう経済能力がないのだから、アメリカから艦艇貸与を受け、或いは外国の援助を受けて祖国の防衛に当るのだ、そういう立場をとるのだということになりますならば、恐らくこれは半永久的に外国依存の軍隊になることは間違いありません。二年や三年でアメリカの海軍が撤退し得るような海上自衛力が作り上げられると考えるようなかたは恐らくないと思う。併し、一国防衛方式が古いのであるから、集団防衛方式によつて日米協力するのに何の不思議があるかと言われるかも知れませんが、これは質問の過程においても明らかにしましたよりに、自国が確固たる一つの力を持ち、事のよしあしは別でありますが、自国が確固たる力を持つて、それにプラスして相手国の力を加え、これによつて集団安全保障というなら話はわかりますが、すべて相手の国を頼り、又それと結ぶ集団安全保障方式というようなものは、結局において独立国家が対等の立場で結ぶ安全保障方式ではなく、必ず従属的な形になることは火を見るよりも明らかであります。これは諸般の情勢を勘案いたしまして、この艦艇貸与協定は全く日本自衛隊増強の糸口に過ざませんが、これが海軍となりまして、将来我々は本当の意味の単なる海上警備或いは商船防衛というような本来の任務を逸脱するようなところにまで発展をして行くであろう危険を十分内包しておると考えるのであります。  日本の将来を我々はかれこれ考えましたときに、今日この協定に示された僅か四隻の艦艇貸与というものはささやかなものに見えますけれども、併し世界日本を取巻くところの客観的な諸条件から考えまして、この協定が適当であると考える結論はどこにも見出すことができないのであります。かかる見地から日本社会党は本協定に反対するのであります。  以上を以て討論といたします。
  284. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は自由党を代表して本協定承認することに賛成をいたすものであります。  先に日米相互防衛援助協定に賛成の立場をとりました我々といたしましては、この協定に賛成する理由につきましては、ここに改めてくどくどしく申述べる必要はないと存じます。何となれば、本協定目的といたしまするところは、先に国会承認を得ましたところの日米相互援助防衛協定において明らかにされておりますところと同じ精神に基くものであるからであります。只今羽生委員のお説を拝聴いたしました。その間にいろいろありましたが、私らも国の防衛の措置を考えるに当つて、外国からの援助を受けるという問題については極めて慎重に考えなければならんことだと思います。ただ財政上の理由というような単なる理由だけで以て、外国からの援助を幾らでも受けていい、或いは外国依存的な考え方、そういうことでは絶対に私いかんことだと思います。ただ併し、本協定の予想しております程度のことは、現状におきまして私はた際上適当な措置と考えるものであります。  なお、本協定によつて日本貸与を受けますその艦船が、極めて厳格な意味における自衛の目的範囲を逸脱するようなことに用いられてはならんということは、これは当然のことであります。又実際上、この協定によつて貸与を受けます艦船の規模等からいたしましても、それ自体を以て他国を侵すとか他国を脅すとかいうようなものでないことは、これは誰の目にも明らかなことでありますが、更にそれが他の事柄と関連を持つてそういう結果になるようなことがあつてはならないわけでありまして、又更に、戦争だとか或いは侵略だとかいう、そういう大きなことでなくても、他国との関係において指弾を受けるような結果を招来するようなことにこれが用いられるようなことがあつてはならんのであつて、そういう点については、政府としても細心の留意を以て当られることを期待するものであります。  先にアメリカとの間に相互防御援助協定の締結を見た。更に今度この艦船貸与協定の締結があつた。つまり防御努力についての外交措置でありまするが、これに関連しましてこの機会に私一言附言さして頂きたいと思いますことは、こういつた防衛努力の措置と相並んで日本として非常に大事なことは、やはり戦争の防止、平和の維持、出際緊張の緩和ということを目標とするところの外交政策の展開であります。この点が併せてとられてこそ、初めて私その両方の目的が達せられると思うのであります。今まで政府においてもそういう点は十分に考えてやつておるに違いないと思いまするが、併しこの上ともなおそういう点の考慮を強く加えた外交努力をして頂きたいと思う。それでこそ、そしてそれが又、日本国内だけでなく、外国にもそれが広く認識されるというところまで一つ外交努力をして頂きたいと、こういうことを強く希望するものであります。  そういつたことを申上げまして、私はこの協定は賛成するものであります。
  285. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、本協定承認することに反対の意を表明したいと思います。  私どもの反対の理由は、只今羽生委員より非常に至れり尽せりに述べられましたので、私はこれ以上のことを、特に重複するようなことをここで御説明する必要がないかと思いますけれども、非常に残念に思いますことには、この協定は僅か四隻の駆逐艦を借りるというような誠にささやかのごとく見える協定ではございますけれども、この協定が悪くすれば、これを門戸にいたしまして、日本の海軍が将来建設される糸口になるというような心配を国民は多分に抱かざるを得ないということでございます。殊にこの艦艇貸与といわず、MSA協定といわず、只今政府のやつておられますことは、言葉だけを変えて、再軍備の方向に向う憲法に違反すると思われるようなことは、すべて言葉の上の魔術でこれをごまかして行く、ごますと言つては大変に言葉が失礼であるかと思いますけれども、事実上どう考えても、誰が見ても駆逐艦と国際的にも認められておるものが日本に借りて来られた場合には、これは自衛艦というような名称を以て呼ばれると、そういうようなことによつて憲法に違反しないような工作をされるというようなことは、何でも言葉の上だけでこれをどうにか操つて行けばどんなことでもできるというような、広い意味から言えば、日本の社会教育の上からも非常にこういうことは面白くないことだと考えます。こういうようなことから、明らかに私どもから見れば再軍備の第一歩であり、現行憲法に違反するものであるということが、私どもの反対の大きな理由でございます。  その次にもう一つ特に附加えておきたいと存じますのは、この協定が非常に露骨な従属外交の露呈であるというようなことが感ぜられるのでございます。先ほど質問のときにちよつと申上げましたけれども、この協定の第三条の、アメリカ合衆国政府は、この協定に基いて貸与したいずれかの艦艇の返還を貸与期間の満了前に要請することができる云々というようなことが書いてあるのでございますが、これはアメリカの自国の防衛の必要から起つた場合というふうに非常に善意に解釈して、こういうような協定をお結びになつたように承わりますけれども、国国との外交は、必ずしも善意だけで以て始終取引をして行くことはできないことは私から申上げるまでもないことでございまして、こういうような条項があるということが、何と申しましても今日のアメリカ極東外交日本が好むと好まざるとにかかわらず、こういう協定によつて必然的に追随せざるを得ないような立場に置かれるということは非常に私どもとして残念なことだと考えます。  又もう一つは、この協定を編んでいらつしやいましたいろいろの過程におきまして、質疑応答の結果明らかになりましたことは、今日岡崎外務大臣のやつていらつしやるところの外交というものが、外交というようなことよりは、むしろ日本の、吉田内閣防衛政策というものに全く引ずられたところの独自性を失つた外交というような面が非常に露呈されておる。これは今与党であられるところの杉原委員からも中されましたことと非常に同じことになると思いますけれども外交という面をもつともつと強力に発揮して頂いて、外交の力によつてのみ日本の平和を守るくらいの考え方を以て外交をして頂かなければならないので、軍事力というもののみで、軍事力を背景にして場初めて外交ができるということは、私どもから考えて非常に本末転倒のように考えまして、そういうような立場からもこの協定に賛成することができないのでございます。
  286. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定批准について承認を与えることに賛意を表するものであります。  我が国の立地的環境からいたしまして、海上において防衛力の整備を図るということは肝要のことと思うのであります。而して本件協定はこれに対して寄与するところがあると思われるのであります。且つ日米相互防衛援助協定締結の趣旨に本件は即応するものであり、又MSA協定の実施上の一つの施策であるわけであります。これらの点に鑑みまして、私は日米相互防衛援助協定に賛成をいたしましたと同様の所論からして、これに賛意を表するものであります
  287. 高良とみ

    高良とみ君 私は緑風会の一部の者の考えもございまして、MSAに反対したと同じ趣旨を以て、この日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定批准について承認を与えることのできないことを遺憾に思います。  第一に、今日世界中が非常な困惑した気持でありまするときに、緊張緩和のためにこそ常に、どうして貢献しようかという努力を日夜沈思すべきときだと思います。日本の国民、漁民や商船隊を保護するという話もありましたが、その人たちが感じております不安はもつと深刻な全く違う面について心配しておるのであります。即ち最近の世界情勢が平和と生存の脅威を与え、文明そのものに対する危険と不安を与え、根本的には武力に対する有害無益だという不信を与えております。申すまでもなく安保条約、平和条約によつて、私ども日本駐留軍を持ち、多くの基地を持ち、それがアジアの不安を増し、中ソ同盟条約を刺激し出したことはすでに川知の事実であります。ついで朝鮮事変が起りました時、それによつて予備隊及び保安隊ができて、当時のGHQもこれを以て日本の安全と防衛を十分と考えたものでありました。最近にはMSA協定を作つて日本への軍事的要請が進み更に今回この協定によりまして自衛艦を米国から貸与受ける国際条約の基礎となるのであります。本協定MSA条約による武器供与から更に進んだものであります。即ち二段と大型駆逐艦を借用せんとするのみならず更にもう一歩進入まして保安庁長官の希望なさるような巡洋艦を借り、航空母艦を借りることに許諾を与えることになるのであります。預り得る可能性があるならば、何でも借用して用うることによつて日本国民の軍事費の負担はますます加重されます。これは緊張緩和の方向に行くのではなくて、逆に近隣諸国に与える影響を深く憂慮されるものがあるのであります。勿論これらの日本だけが持つ艦艇の数隻によつて直ちに脅威とされるというほど世界は敏感ではないでございましよう。けれども強大な米海軍を背景に持つ上に今回の十七隻、二万七千トンの増加により武装を一旦捨てた日本が急にアジア一等の海軍力を持つことになります。借り物の武力を以て武装を整える其の動機については国際上の影響するところが広くあります。これが真の平和外交であろうか、日本国民の真意でないと私は憂うものであります。即ち武装平和のために専念する努力の半分でももつと緊張緩和のために尽されるならば、日本外交の健全であることを思う国々が多くあると思うのであります。有名な言葉に「賠償か再軍備かどちらが先か」という言葉が東南アジア方面では言われております。これらは弱い国々であるから無視してよいなどといつてそのまま見過すべきものではありません。そこにはアジアの人たちの真心が存在し、将来とも日本の貿易、国交回復、アジアの平和全般のために利するところは少く友誼は薄くなるのではないかと思うのであります。  次に、国民の納得の行く外交を希望する点からこの協定が不十分であると思うのであります。憲法に言われておりまする戦力というものに至らないと政府は説明し続けますが、何と言おうとも、やはり大砲は大砲であり、艦は軍艦であり、又国際的には明らかに軍籍にある軍艦であります。この言い抜けが白を白とする正直な国民に納得されずにまかり通つて行くことに対しまして、私どもが委託を受けております国民の信頼に対して、道義的に遺憾に思うのであります。できますならば、国民の各層、各年齢の人たちが心から協力できるような国民体制を作ることが願わしい。特に東南アジア地域の集団安全保障体制SEATOやPATOについて、外務大臣はただ「結構でございます」というのでありますが、さような軍事同盟を礼讃する平和外交はあり得ないと考えます。アメリカのような近隣を持つ日本としては、アメリカのような富める国が、世界から疑われないために十分な友情の真意を示し、武力によらざるアジアの平和道を主張すべきものであると私は考えます。最近の平和外交上にはなすべきことが山積いたしておりまして、近い中国、或いは朝鮮等、アジア各地において、平和推進の機会の殖えておりまするときに、我が国としてはもつと一層お互いの現状を顧み、貿易推進を初めとし、戦争によつてコリゴリし、それに悩み且つ又再発の不安を持つておりまするアジアに平和を築くべく、一層の努力をされんことこそ、外交の本来の使命であると考えます。  従つてこの協定が遺憾ながら日本の電力、戦力の事実上の増強でありまするので、賛成申上げることができないのであります。国民のために一層の民生の安定と社会保障、住宅政策等に抜本的な努力が払われるようにバランスのとれた政策を内閣としても御努力あらんことを希望いたします。
  288. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ほかに御発言はございませんか。ほかに御発言もないようでありまするから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  289. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。それではこれより採決に入ります。日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定批准について承認を求めるの件について採決をいたします。本件を承認することに賛成のかたの挙手を求めます。    〔賛成者挙手〕
  290. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 多数であります。よつて本件は承認すべきものと決定いたしました。  なお委員長が議院に報告する内容については、本院規則百四条により、あらかじめ多数意見者の承認を経ることになつておりますが、これは前例通り委員長に御一任願いたいと存じます。  又委員長が議院に提出する報告書には、本院規則七十二条により、多数意見者の署名を附することになつておりますので、本件を承認されたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     梶原 茂嘉  宮澤 喜一     重宗 雄三  團  伊能     古池 信三  鶴見 祐輔     杉原 荒太   —————————————
  291. 中田吉雄

    中田吉雄君 外務大臣の御都合もあると思うのですが、来週の月曜日午前中だけでも結構ですから、若し何でしたら明日でも委員会を開いて頂きたいと思います。
  292. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  293. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて。  それでは明日の午前開けたら開くし、さもなかつたら月曜日の午前にできるだけの努力をして開くということに御承認を願います。   —————————————
  294. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次に継続調査要求についてお諮りをいたします。外務委員会では今期国会当初より国際情勢等に関する件について調査の承認を受け調査を継続して参りましたが、閉会中もなお継続して調査する必要がありまするので、継続調査承認要求書を提出いたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  295. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないと認めますので、これを提出することに決定いたします。  なお又その文案については委員長に御一任願いたいと存じます。  それでは外務委員会は本日はこれで散会いたします。    午後四時四十五分散会