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中田吉雄君 私は
日本社会党を代表して、
只今上程されています
日本国と
アメリカ合衆国との間の
相互防衛援助協定の
批准について
承認を求めるの件ほか三件に対して反対の討論をいたすものであります。
先ず反対します第一の理由は、吉田内閣がとられ、且つ
MSA協定に際して一層よく浮きぼりされましたところの現内閣の外交政策は、戦前の大きい過ちを犯しました外交政策の轍を又再びふむ慮れが多分にあるのではないかという点でございます。太平洋戦争前において相対立します二大陣営の中に処しまして、我が
日本のと
つた外交方寸は、独伊の枢軸に一辺倒したわけであります。即ち我が国は一九三六年日独伊の防共
協定から出発し、それはやがて一九四〇年日独伊の三国同盟に発展し、遂に一九四一年日米開戦となり、我が国外交は
日本を破局的な運命に陥れたことは明らかであります。然るに戦後の吉田内閣の外交政策を見ますと、相対立する米ソ両陣営の中において、一九五二年の講和、安保両条約から出で、今文
MSAを受入れ、
アメリカに追随し、はつきりとこのたび西欧陣営にふみ切
つたわけであります。そしてこの反共政策並びに一辺倒外交であるという点におきましては、過ちを犯しました戦前の外交と全く軌を一にするものと言わなくてはなりません。ダレス外交に引ずり廻されている吉田、岡崎外交は、往年のヒットラー、リツベントロップ外交に盲従して取返えしのつかない失敗をいたしました近衛、松岡外交の危険をふむものといたしまして、我々の断じて容認し得ないところであります。これを世界の外交史について見ましても、遠く離れた大国に追随いたしまして、隣国の大国を敵に廻したような外交は、すべて失敗をいたしておるのであります。例えば、フインランドは第一次、第二次大戦共に反ソの立場をとり、ドイツに自国の運命を委ねて失敗し、又近くは蒋政権が親米反日のいわゆる遠交近攻政策、即ち隣国に仮想敵国を持つところの国策をと
つたため、一九二七年南京政府を樹立しまして以来、僅か二十二年にして遂に崩壊せざるを得なか
つたわけであります。未だ一度も過ちを冒したことのない民族というものはございません。聡明な民族、偉大な民族というものは、同じ過ちを又再び繰返さないということが大切であります。この点において
MSA協定を受け対米追随の深みに入ります吉田外交は、全く危くて見ておれないという状態であるわけであります。我我の強く反対せざるを得ないゆえんのものであります。
第二に反対すべき理由は、
MSAを受けて
アメリカの
MSA機構にはまり込みますことは、誤
つたアメリカの世界政策、外交政策に我が国の運命を従属せしめることであります。
MSA協定の根拠法とも言うべき一九四九年の相互防衛
援助法及び一九五一年の相互安全保障法には、
MSA援助を与えるのは、
アメリカの安全保障を維持し、
アメリカの外交政策を促進し、且つ
アメリカ国民の福祉を培うことを目的とずるものであることは、はつきりいたしておるわけであります。法文の随所にそれが謳われているわけであります。即ち、
MSA援助を与えますことは何も慈全事業ではないのであ
つて、それは
アメリカの世界政策或いは外交政策の展開の手段或いはてことして与えられるものでございます。
従つて、
MSA援助を受けて
協定第八条に
規定するような各種の義務を負うことは、
アメリカの利益でもあるが我が国の利益でもあり、いわゆる利害の完全なる一致がなくてはならないのでありますが、特にこの際
アメリカの世界政策や外交政策が世界の当面せる諸課題を果してよく解き得るや、その適格性について多くの疑問なきを得ないわけであります。
私はこの際
日本と最も深い友好
関係ある
アメリカの極東政策と世界政策の妥当性
如何に触れておきたいと思うわけであります。
アメリカは一九〇〇年門戸開放の宣言以来、モンロー主義から脱却し、極東政策に乗出したわけであります。極東政策に関し
日本との
関係を見ますると、一八五三年ペルリ来航以来一九四一年
日本の直珠湾攻撃に至るまでおよそ百年間におきまして、その前半五十年間は極めて日米の
関係は友好的でございました。即ち、東漸するロシアを牽制するため、日露戦争におきましては
日本に対して多大の
援助を
アメリカは与えました。併し、この戦争をきつかけにいたしまして
日本が強国として、擡頭いたしますや、一九〇九年の加州排日法案通過をきつかけとし、ワシントン軍縮
会議、ロンドン軍縮
会議、満州国不
承認及び日米通商条約の廃棄等、一貫して
日本を抑制し、遂に一九四一年の日米の開戦に至
つたのであります。即ち、ここで我々の学びとらなくてはならないことは
アメリカとの親善
関係は変
つておるものであり、歴史的なものであるという点であります。即ち
MSAを我が国に与え、今
アメリカが
日本に求めておるものは
アメリカの極東政策に
従つて中ソ両日を牽制することである。この対米
関係は丁度日露戦争当時をほうふつせしめるものであり、又
日本を牽制するために曾
つて蒋政権に求めたものを、中ソ両国を牽制する手段として
日本にそれを果させようとしておるのが
MSAの本質でございます。対米
関係の歴史的な反省の上に立たず、自主性もなく限度を超えまして
アメリカの極東政策に追随しますことは、第二の
蒋介石政権の轍を踏むものと言わなくてはならないかと思うわけであります。
次に極東政策を含む
アメリカの世界政策であるが、
アメリカは中ソ両国を東西南北から大きく包囲するところの軍事的鉄環をはめて行く政策をと
つていますが、この政策は平和ではなく戦争への道であることは、曾
つて日本にはめられたABCDの包囲政策が遂に太平洋戦争に
なつたことを見れば自明の理であります。
アメリカの政策が極東で目指すものは決して単に共産主義の発展を抑えるだけではございません。中国における現在の政治体制をひつくり返し、若し可能ならば
蒋介石
をもう一遍中国本土に帰そうとしていることを目指していることは、ダレス長官の
アメリカの議会における証言で明らかなわけである。
MSAを受けて
アメリカの誤
つたこのアジアの反共十字軍のお先棒を担ぐことは、我が国のみならず
アメリカをして誤らしめるものといわなくてはなりません。むしろこの
アメリカの誤
つた極東政策を我が国がマントロールし、我が国を、媒体といたしまして
アメリカをしてアジアに過ちなく適応させることは、
日本に課せられた重大な
任務といわなくてはなりません。
従つてMSAに包蔵するところの
アメリカの極東政策に強く反対し、これを牽制しその誤
つた部面を是正いたします我が党の政策は、反米ではなくて即
つて真実の
意味における親米政策であると私たちはみるものであります。特に歴史家のトインビーが言
つていますように、
アメリカのピユーリタン的な性格から外交政策のイデオロギーに対する狂信性、非妥協性等から来るところの過誤について我々は十分検討しまして、
アメリカの持つ政策について戦争的な要因を含むものについてはこれを是正し、平和的な
傾向のものについてはこれに協力するという峻別した態度を私としてはとるべきであろうと思うわけであります。
第三に、この
協定は平和と安全保障に対し個別的及び集団安全保障を無条件に信奉し、外交政策並びに集団安全保障に決定的
影響を及ぼしつつある新たなる要素、即ち原爆、水爆に対する顧慮が全くない点であります。恐らく一九五四年の国際外交における最大の課題であるこの問題について、いささかの考慮を払われていないことは極めて遺憾とするところであります。元来国際連合憲章が一九四五年六月二十六日サンフランシスコで調印されましたときは原子爆弾はなか
つたのであります。いわんや水素爆弾においてはなお更であります。なお
世界各国が相対立する米ソ両陣営に分れ、多くの自由諸国が
アメリカを中心に団結し、これに自国の安全を求めましたのは、実に米国だけが原子爆弾を独占的に保有していたことに由来することが極めて多いのであります。そういう見地から一九四九年四月四日の北大西洋条約
機構ができたのであ
つて、これは原爆の
アメリカの独占を前提とし、加盟十四カ国をこれに結集し得たわけであります。然るに同じ一九四九年の九月二十三日にソ連が原爆を持ち、
アメリ九のその独占が破れ、一九五三年の八月八日に水爆すら持つに至
つたのであります。而も両者の差違は漸次縮小しつつあり、
従つて原爆貯蔵に対し効用逓減の法則が作用し、今や
アメリカ外交の最大の
武器であ
つた対ソ原爆の優位性が全く失われつつあるわけであります。特に原爆、水爆における特殊性は、原爆運搬の戦略手段たる超長距離爆撃機の発展のテンポは原爆増加のテンポよりも遅く、更にこれが防空態勢は一層そのテンポがのろいというところに重大な世界戦略における特質があるわけであります。
従つて戦略爆撃機の発展の現
段階においてはどうしても前進基地の確保を絶対的な要請とするわけであります。これが本
MSA協定に対しても講和、安保両条約並びに
行政協定に得た
米軍の
日本駐留基地貸与の問題について、いささかの譲与も返還の意思をも表明しないのは全くこの理由に基くものであります。併しソ連が原爆を持
つた現在
アメリカに基地を貸していることは極めて危険であり、その置かれた
地位は不安定と
なつたのであります。原爆による対ソ戦略爆撃の基地がソ連の原爆から安全であり得る保障は何らないのであります。これがNATO
機構或いはEDC
機構、中東防衛
機構、
アメリカ、パキスタンの
協定等の集団安全保障
機構が動揺しつつある最大の理由はここにあるわけであります。かような事態からいたしまして、
アメリカ軍部では今におきましてはもはやヨーロツパの空軍基地は万一の際には使用に堪えないという自覚に至
つておるわけであります。これがスペイン、アフリカ等のソビエトからはるか遠方に基地を移動しつつあるところの斥大の理由であります。この
MSA協定というものは、神通力を失
つたアメリカの原爆外交を無条件に信奉し、
兵器の発展が集団安全保障
機構に重大な変質を与えつつあることに無関心であり、これでは我が国の安全保障には断じてなり得ないわけである。かかることで我が国の安全が可能だと信じますことは、曾
つて広島において十万の
陸軍の精鋭、長崎において三万の精鋭がた
つた二発の原子爆弾で一瞬にしてふきとび、そうして無条件降伏に至
つた愚を再び繰返すものと言わなければなりません。
MSA受諾の前になすべきことは、自衛軍の創設を認める立場からいたしましても、かかる
兵器の異常なる発展から集団安全保障
機構、或いは自衛方式に対する
影響を検討し、然る後におもむろに出発するような慎重なる配慮がなさるべきであると私は思うわけである。
第四に反対すべき理由は、この
協定は憲法に違反し、且つ重大なる新たなる軍事義務を負担させられておる点であります。
アメリカは
MSA援助を与える場合の被
援助国の資格と条件を厳密に
規定し、被
援助国がそれに同意をする場合のほかは断じて
援助を与えてはならないとしておるのであります。相互安全保障法第五百十一条を受けましたのが
協定第八条の
規定でありますが、
日本は自国の防衛力のみならず、自由世界の防衛力の発展と維持のために人力、資源、施設及び一般的経済的条件の許します限り全面的に寄与しなくてはならなか
つたのであります。明らかに兵力増強の義務を負
つています。これ政府が従来しばしば表明されました
MSAは受けても
保安隊は増強しないという公約に明らかに反するものであります。特に
MSA受諾と照応しまして防衛
関係二法案を提出され、特に自衛隊法の第三条には「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる
任務」と
規定されておるのでありますが、これは交戦権を否定しました現行憲法に違反することは明らかであります。
協定第九条第三項の憲法上の
規定に
従つてこれを実施するとの
規定を以ていたしましても、何らその違法性を阻却するものではないと思うわけである。
特に私はこの際指摘しておきたい点は、
アメリカの
日本憲法に対する態度であります。
アメリカは一九五一年講和、安保両条約を結びましたときには、
日本は平和憲法をたてに取
つて独立の食い逃げをやるではないかという論争が
アメリカの議会でなされていました。併し
アメリカは講和条約の中に個別的、集団的自衛権のあることによ
つて再軍備の合憲件を打出そうとし、更に又昨年ダレス長官は
アメリカ議会におきまして、戦争の種類を自衛戦争と侵略戦争の二つに分け、自衛戦争に対して再軍備することは現行憲法の違反でない、又それに対する交戦権の発動も現行憲法の範囲でできるというふうに変えて答弁をいたしているわけであります。更に又制裁戦争という概念を導き込みまして、侵略者に対する制裁権を発動するためには現行憲法の枠内においても海外に派兵し得るというような拡張解釈をいたしておられるわけであります。このようなことが
日本の改進党並びに自由党の憲法解釈に強く
影響をいたしていることを私は思わずにはいられないわけであります。
それはともかくといたしまして、そういうような
アメリカの
日本国憲法に対する態度は、終戦の直後においては、東洋のスイスになれとい
つて平和憲法を慫慂し、そうして国際情勢が変
つたからとい
つて又再びそれに反するような態度を公然ととられるに至
つては、極めて遺憾の意を表さざるを得ないわけである。憲法の解釈が時世の変遷につれて変ることは明らかでありますが、私たちの最も
心配いたしますのは、
日本政府の、或いは
日本の主要なる保守党の解釈というものが、
アメリカの打出した解釈を少し遅れてそれに追随をしているという自主性のない態度について多くの憂慮を持つものであります。特にこのたびの
協定によ
つて、一九五一年の九月四日のサンフランシスコにおけるトルーマン大統領は、
日本をできるだけ早く太平洋の平和を維持するため適当な安全保障に参加させることが肝要である。太平洋の防衛の地域的取極めが発展すれば創設されるかも知れない
日本の防衛軍は、同地域の他の防衛軍と提携を持つに至るであろうというような構想が極めて着実なプログラムの下に進展しつつある態度であります。私は
MSA協定は講和安保両条約によ
つて打出されたその線が更に一歩前進し、そしてそれがやがて
アメリカの
意図する太平洋軍事同盟への大きな道を歩み、そしてそれが海外派兵に結び付くではないかということを憂慮するわけであります。特に私は
アメリカが
意図する
日本における地上軍の創設というものは、いろいろな戦略態勢からいたしましても、
日本の国内には不当に大きなものでありまして、将来の海外派兵を予想せずにはああいう態勢は作り得ないものであるわけであります。
更に反対すべき第五の理由は、負担のみ多くいたしまして経済的な寄与が極めて少いのみか、我が国経済の自立の根底を危くする点でございます。この農産物の購入に関しまする
協定によ
つてアメリカから与えられる総額は、五千万ドルのうちた
つた一千万ドル、三十六億に過ぎないわけであります。域外買付に廻されます四千万ドルも、これがために輸入を必要としますところの原材料を差引いたしますならば、ネットに
日本経済に加わるものは両者合せまして七十億乃至八十億に過ぎないわけであります。このような僅少な額を受けますことによ
つて我が国は米国から内政について強力なる
発言権を持たれ、特にこれは
アメリカの過剰農産物十億ドルの輸出計画とまちまして
日本農業に対する
影響は極めて甚大であると思わざるを得ないわけであります。特に昭和二十九
年度の農業予算を見ましても、食糧増産対策費はた
つた三百六十三億しか組まれていないわけであります。昭和二十八
年度におきましては四億七千万ドルのぼう大な食糧輸入をし、本
年度におきましても、三億八千万ドルのぼう大な輸入片面がなされ、我が国際収支の均衡のためには食糧増産対策は絶対不可欠な要請でありますが、私はこのたび
MSA援助をきつかけにし我が国農業が丁度十九世紀の初頭にイギリスの穀物条例の廃止、農業保護政策をめぐ
つて遂にイギリスの農業が衰退の一途をたどるに至るような重大な結果に至るではないかということを強く憂慮するものであります。更に又この三十六億の防衛産業への投資というものが我が国の産業構造に対して重大なゆがみを与えて来るではないかと思うわけであります。ひとたびそれに投下いたしました資本はそれ自身の要請を以て自己回転をいたしましてだんだんとそれが採算のできぬ限度内に拡充し、そして又その生産する
兵器自体が、産業構造の必然的な要請から、我が国を集団安全保障
機構に加入せしめるような事態に至るではないかということを憂慮するものであります。この
援助を受けることによ
つて我が国が
自衛力を漸増する際には、経済の安定であるというようないろいろな諸条件が加味されておりますが、本
年度の輸出入貿易の逆調、外貨の危機、或いは輸入物価指数と輸出物価指数との非常な懸隔等を考えますると、到底
自衛力を漸増するような経済構造ではないわけでありますが、あのような抽象的な
規定をも
つては到底弱い我が国の立場を主張し得ずして、このことがだんだんと
自衛力の急増に発展し、丁度それは明治四年に戸籍制度を作
つて明治五年に徴兵令を布いて富国強兵の国是を立てることによ
つて、遂にこれが我が国の平和ではなくして我が国の大きな禍根に
なつたような結果に至るのではないかと思うわけであります。私は国際情勢を勘案し、明らかに冷戦から平和への大きな動きをなしつつある際には、先ずこのような
MSAを受けて西欧陣営にはつきりとびこんでの再軍備は慎むべきではないかと思うわけであります。特に私は、このような政策をとることによ
つて起きる危機というものは、丁度トルーマン・ドクトリンが
最後に適用されたトルコの状態に似ているではないかと思うわけであります。トルコが一九四七年以来十五億ドルに及びますところのぼう大なる
アメリカの
援助を受けましたが、今やトルコの国際収支は破局的な
段階に達しまして、むしろ共産主義の脅威よりか
アメリカの
援助を受けて西欧陣営に突入することによ
つて起る危機のほうが大きいという重大な
段階であるわけであります。
最後に、このような観点からいたしますならば、相対立する米ソ両陣営の中にある我が国といたしましては、一方の陣営につきまして
MSAを受けますことは、以上のような結果になることは当然の論理です。
従つて軍備によ
つて我々としては安全を保障されたためしはないわけであります。又武装平和がすべて戦争への道であ
つたことも知らなくてはなりません。又地代的な集団保障の名の下に呼ばれる軍事同盟の行き着くところもすべて戦争であ
つたわけであります。特にソ連が先にも申しましたように原爆や水爆を持ち、
アメリカの独占が破れました現在において、
アメリカだけに頼
つて我が国の安全が保たれるというがごときは全くナンセンスと言わなくてはなりません。原爆時代には再軍備による安全保障はありません。又原爆時代には、よし再軍備を認める立場からいたしましても、自衛の概念は根本的な反省を要するものと思います。隣国に敵を作らないところの自主中立の政策こそ私は最大の安全であり、そのような点から外交こそ再軍備以上の安全保障であると思うわけであります。これを要しまするに、世界情勢を見渡し、我が国の過去を反省し、将来の展望をいたしますならば、我が国がなさねばならんことは、未調印国との国交を調整することが第一である。再軍備ではありません。経済の自立態勢を確立し、護るに値するところの祖国を私は作ることではないかと思うわけであります。併し私たちが長きに且
つて反対いたしましたが、この諸
協定は調印されることでございましよう。併し私はこの機に際して、今は亡きドイツ社会民主党のシユーマッハーが唱えた言葉を言い出さずにはいられないわけであります。シユーマッハーは、
アメリカが
意図します、彼はこの講和条約と称しておりますが、この講和条約を受諾するドイツ人はもはや真のドイツ人ではないという、又我々はヨーロッパ防衛同盟条約に反対する、若しもこれが調印されますならその
批准に反対する、若し
批准がなされまするならその実施に反対するとい
つた不屈な、この祖国を思うこの言を思わずにはいられないわけであります。我々といたしましては、
日本が過ちを侵さないために、今日我我のあらゆる反対にもかかわりませず
通りましたならば、更にシユーマッハーになら
つてこれが実施に反対し、そして我が国の祖国を再び過ちなからしめたいと思うわけでございます。なおいろいろ条約上の解釈その他ついては、明日の本
会議で我が党の
佐多氏が申されますので、一般的なことを申上げまして、
日本社会党の反対の理由にいたすところであります。(拍手)