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1954-04-26 第19回国会 参議院 外務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十六日(月曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            團  伊能君            佐多 忠隆君            曾祢  益君    委員            鹿島守之助君            西郷吉之助君            杉原 荒太君            宮澤 喜一君            梶原 茂嘉君            高良 とみ君            中田 吉雄君            羽生 三七君            鶴見 祐輔君   政府委員    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    外務政務次官  小滝  彬君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   説明員            土屋  隼君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国アメリカ合衆国との間の相  互防衛援助協定批准について承認  を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。  本日よりは逐次質疑に入ることになります。先ず日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件を議題といたします。先ず前文から入ります。質疑のあるかたは順次御発言をお願いいたします。
  3. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これは条約局から何か御説明なり何なりはないのですか。
  4. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 条約局長は質問がおありでしたらお答えすると言つておられます。如何いたしますか、第一項、第二項をずつとやつて参りましようか、全部ですか、それでは前文全部を問題にいたします。
  5. 中田吉雄

    中田吉雄君 少し問題の取上げ方が総論的になつて大変恐縮だと思うのですが、この前文アメリカのとります、或いは日本のとろうとしています外交政策安全保障形態等に対する基本的な問題が織込まれた全体を貫く思想が要約されている大切な問題と思いますので、少し総括的になつて恐縮ですが御了承願いたいと思うのですが、十九世紀並びに二十世紀の初頭における安全、平和の保持の方法としては同盟政策がとられ、そうして今の二十世紀集団安全保障の世代である。同盟から集団安全保障へということで国連憲章もその問題を中心にして、この侵略の予防と侵略の起きた場合の救済の措置というようないろいろな問題が説かれているので、従つて我が国MSAを受けて再軍備する、或いは自衛力を漸増する場合においても、その集団安全機構の中に個別的にでも結構ですが入るので、私はここでこの集団安全保障機構に対する兵器発展の及ぼす影響、この問題についていろいろ、特に集団安全保障に対して革命的な兵器であると言われる水爆原爆影響というものについて、アメリカの一九五四年の大統領教書にもあるアメリカ周辺作戦報復作戦との関連で、あとでも質問したいと思つているのですが、最初集団安全保障機構に対して兵器がどういう影響を及ぼすか、私は結論として申上げますならば、原爆水爆、こういう兵器ができたことは、集団安全保障機構に対して重大な影響を及ぼすものであるという結論に導く前提として、同盟政策がとられたときには同盟政策がとられるにふさわしい兵器であり、集団安全保障がとられる際にはやはり兵器発展というものが重大な規定力を成していると、そこで要約としては、集団安全保障機構に対する原爆水爆影響は如何、こういう問題なんです。
  6. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 御高説は拝聴しておりましたが。勿論兵器発達というものが防備というものに対するいろんな措置に変更を及ぼす、或いは重大なる影響を及ぼすだろうと、いうことは私どもも同感であります。ただ併し中田さんのおつしやいますように、こういうように水爆原爆発達したので日本が今防衛力を増強してもそれは大した意味がないじやないかという点がポイントではなかろうかと考えますが、私どもは実はそういうように考えていないのでありまして、原爆水爆発達というようなものが非常に大規模戦争というものを困難ならしめる、グローバル・ウォーというものを困難ならしめるという現実は十分認めまするが、併し同時に一方の現実は例えば朝鮮事変でもわかりまするように、局地的に抵抗力のない真空状態の所へ或る他の勢力が入つて来るという可能性というものは、この水爆原爆が発進いたしましてもこれを排除するものではなかろうというように考えられるのであります。一面から考えれば、水爆原爆というようなものが発達する大きな規模戦争というものは遠のくかも知れないが、小さな小競合的なものは隙のあるところへ入り込むというような形式の紛争というものは却つて多くなる可能性考え得るんじやなかろうかと存ずるのであります。私はその意味におきましてこうした水爆とか原爆というものを離れた、地方的な、地域的な最低限の自衛力を持つということは現在の兵器発達状態においても是非必要なことであるというように考えている次第であります。
  7. 中田吉雄

    中田吉雄君 この一九五四年のアイゼンハワー大統領一般教書に基く予算の作成におきましても、ハンフリー財務長官軍備戦略に従属し、戦略兵器によつて規定される、そして軍備というものは、まあ日本政府の言われるのでは、自衛力というものは戦略によつて規定される、戦略というものは新兵器によつて影響される、だからそういう兵器発展段階にふさわしい外交政策並びに軍事予算を組まねばならんという見地に立つて今度の予算も組まれ、それと一体関係に立つ日本としても非常に深い関係があると思うので、私はやはり只今の小瀧次官言葉だけではなかなかそういうことだけで今とられている日本のこの協定を結んで自衛力を漸増する方式に安んじて従うということができないと思うんです。  特にそれでは問題を限定しまして、この一九四五年の六月二十六日ですか、サンフランシスコで国際連合憲章に対して調印された際、そしてそれが十月の二四日に集団安全保障機構というものを平和と安全の支柱とした国際連合憲章がとられた際には、この革命的な兵器である原爆水爆というものが予想されずに、このような重大な影響を及ぼすということが想定されずにこれはできた問題であつて、この原爆水爆ができた際においては、この集団安全保障機構というものに私たちは百パーセントの信頼をもつて、今アメリカがとつておるような集団安全保障機構の中にすべり込むということは非常に問題である。世界におけるいろんな集団安全保障機構が重大なデッドロックに入つているというのは、実は言わず語らずして外交規定する戦略戦略規定する新兵器というものが重大な影響を及ぼしているので、やはりその点について私としては小瀧氏の今言われた程度では問題があると思うのですが、一九四五年の国際連合憲章ができたときには今日のような原爆水爆発展が予想されない、従つてそういう兵器ができて偉大な発展をした際においては、その機構が重大な変質を受ける。従つてこの条約前文に謳われるようなことによつて我が国の安全が保障されるということはいささかズレがあるのではないかというふうに私は考えるわけであります。特にアメリカ財務長官すらそういう戦略の、兵器の国策に及ぼす影響についてそういう見解をとるペンタゴンの主張に対して強力な規制を加えておるわけですから、外交政策を決定されるに際してもそういう問題について十分検討されたことと思うのですが、その点は如何ですか。
  8. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 中田さんの国際情勢に対する見方と、我々の見方は相当相違しておるということを先ず考えなければ、これは平行線議論をしても結局中田さんを承服させるような議論はできないだろうと考えます。勿論この国連憲章ができた時代から比べますると国際情勢も変つておりまするし、又兵器発達ということも仰せの通りであります。が併し日本が今度MSA援助を受けまして日本防衛力を増強しようというのは、決して一九四五年のことを考えてやつたのではなし現実事態をよく見つめまして、結局そうするほうが日本の安全のためにより有利であるという考えからいたしまして、この協定を締結しようとしているものでありまするし、それに先立ちまして日本といたしましては安全保障条約を必要であるという認識の下に日米安全保障条約もあるわけでありまして、決して一九四五年頃の考えをそのまま受継いでこうした政策をとつておるというわけではございません。
  9. 中田吉雄

    中田吉雄君 それなら一つ国際的に世界的に見ても、例えばNATO条約にしても、もうNATO機構ができてから一九五四年には九十五個師の安全保障機構前提として陸軍を作る、そういうことで安全保障機構としてのチピカルなNATO協定というものも現在半分も進行していない。更に又欧州軍条約は一九五二年に調印されたが、なお発効もしてない。更に中東防衛機構においてもこれができない。更に先般アメリカパキスタンとの集団安全機構を確立した途端に選挙が行われて、東パキスタンではこの条約を調印した政府与党がもう徹底的な敗北を吃しておる。そういうふうに世界的な集団安全保障機構というものが一体アメリカの提唱するようにどんどん進行しないという理由はどこにあるのですか。私はこれはやはり集団安全保障機構というものが、国連憲章ができた当時とは、重大な兵器発展その他から影響を受けて新たな変質の過程にある。こういうふうに見て我が国としてもそういうことを十分考慮のうちにおくべきではないか。一体先に挙げましたようなNATO機構欧州軍条約機構中東防衛機構パキスタンとの機構というようなのが一体すらすらと行かない、停頓状況とも言つていい状態にあるのは一体なぜですか。
  10. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) NATOとかEDCというようなものと日本の今度のMSA援助を受ける協定とは、相当大きな距離のある実質を持つていることはもう中田さん御承知の通りであります。勿論これらのヨーロッパにおける集団安全保障機構と申しますかこういう協定の実施というものが遅れていることは、これは御指摘通りであります。でありますからEDCにつきましてもフランスあたりでは議論をしておりますが、併しながらその時期とか或いは貸与とかというようなものにいろいろ意見はありましても、これら十五カ国の協力ということはあくまで必要であるというこの建前というものは、過般のベルリン会議でもイーデンもビドーも皆これを了承いたしましてあのときに声明を出したくらいでありまして、私はそう根本的にそういう協力関係がぐらつきつつあるというようには見ないのであります。殊に日本の今御審議を願つております協定とこれらの欧米における集団安全保障機構とは、私どもはそこに実質的に異なつたものがあると考えますので、これも中田さんの議論で行けば終局同じようなところに到達するのだというような御議論ありましようけれども、併しそういう関係もありまするので、私はこうしたヨーロツパにおける情勢があるからというので、直ちに以てこのMSA協定考え直さなければならないというような考え方に対しては、直ちに賛成申上げることはできないと存じます。
  11. 中田吉雄

    中田吉雄君 今我が党と小瀧政務次官の属せられる党とは、集団安全保障に対する考えが違うわけですが、併し小瀧次官の或いは吉田内閣のとられる安全保障政策をとられるにしても、私はこういう世界情勢における集団安全保障に対する推移を十分考慮のうちに置いてやることが先ず必要であると思うわけなんです。そこでそれならこの前文にも謳つてあるように、或いはこの安保条約の中にも謳つてあるように、直接、間接侵略に対してまあ自衛力を漸増する。そうしてその間暫定措置としてアメリカに駐留してもらう。こういう規定を入れているわけですが、それなら米ソ勢力原爆水爆を持つている際に、そういう安全保障機構に置いている際に、直接侵略が若し起きたとすれば少くともそういう場合も想定しなければならんと思うが、アメリカ日本の安全を保障し得るか。この問題は政府としては非常に十分考えておかなければならない。直接侵略間接侵略、そういうあらゆる場合を想定しておかなくちやならないと思うのですが、それならいろいろな直接侵略が起きた際に、そういう安全保障機構に入ればアメリカ日本の安全を保障し得るか。これはやはり米ソ勢力原爆を持ち水爆を持つた際に、日本安全保障考える際に相当考慮せねばならんと思うのですが、そういう際に直接侵略が起きた場合にアメリカ日本の安全を保障し得るか。その点あらゆる考慮の下に、一つ小瀧政務次官の御意見を伺いたい。アメリカは守り得るか。私は結論としては、そういう際には守り得ない。こういう結論を持つているわけですが、その点お伺いしたい。
  12. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 現在の国際情勢というものを十分考慮のうちに置いて、こうした自衛態勢というものを立てなければならないということが最初指摘せられた点であろうと考えますが、これは誠に御尤もであります。米国一体日本に対する直接の侵略の際に守り得るかどうか。安全保障条約にはこういう規定があるが、それが果して実行できるかどうかということでありまするが、これは勿論そのときの侵略状態なり、或いはそのときにプリヴエイルしております国際情勢如何というようなことに大きく支配されますので、今概括的にできるとかできないというようなことは断定し得ないでありましようが、日本はそういういろいろな危険も考えまするので日本としても自衛力を持たなければならないという考えでありまするし、この安全保障条約というようなものも当分この力に頼らざるを得ないという現状でありますので、そうした事態に対しましてはその際に協議されるということにもなつておりまするから、今からそれじや協議して協力した措置がどういう結果を生むかということについて断言することはできないと存じます。
  13. 中田吉雄

    中田吉雄君 私の党が再軍備したい、軍隊を持たない安全保障機構を提唱する際に、いつもそういう際には、なら侵略があつたらどうするかというようなことがあるのです。そして又ここには保安庁はおられませんが、保安庁が立てられた防衛計画には、私もそれを持つていますが、やはりアメリカとしては直接侵略の際にはヨーロツパは三カ月堪え得る、こういう想定の下にやるということが、いつもこの最近第八次くらいの防衛計画ができていると思いますが、いつでも日本防衛計画が、第一次、第二次、第三次とずつと来て、そこで第八次になつておると思うのですが、その際にいつも書いてあることは侵略があつた際には八カ月、日本の自衛隊で持ち堪える、そのときにその間にアメリカ援助態勢ができて、日本の安全が守れるということがもう仮定ではなしに、現実防衛態勢を組んでおられるその計画前提条件になつているわけなんです。ですから我々としては直接侵略間接侵略に対して、今の発展せる兵器段階を想定して、やはり我が国の安全がこういう機構に入つたほうが、これは日本社会党方法よりかも安全を保障し、被害の少い方法においてアメリカ日本を守れるか、このことをやはり十分納得させてもらわんと、見解相違というようなことでは、私も小瀧次官意見がよろしいのでしたら党を挙げてでもやらないこともないわけですが、(笑声)これは重要な問題でいろいろ言いますが、こういう安全保障というものは、原子力以前の実際国防なんです。斎藤忠君の意見に言わせれば原子力以前の安全保障で、それはもうどの角度から見たつて私は論証し得ると思うのですが、アメリカは守り得ないのだ。その点を一つはつきり、若し直接侵略があつた際には、どういう状態日本を守り得るか。これは少くとも外交政策を立てられる限りは、直接、間接のあらゆる侵略に対処しての防衛計画の一環としての何ですから、その点を一つはつきりしてもらわんといけないと思うわけであります。
  14. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 今のこの防衛態勢というようなものはできるだけそうした事態が起らないようにするという点において、まあ中田さんのほうじや無防備にしておいてよろしいという意見でありまするし、我々はそうではなくして自衛力を漸増するとかそうしてできるだけ防衛力を強くして行くということが、そうした侵略に備えるゆえんであるという立場に立つておりまするので、先ほど指摘いたしましたように、根本的に考え方が違つておると考えます。でありまするから、我々としてはこうした措置によつて、そうした事態の起らないようにという点に最善の努力をしているわけでありまして、そうしてそうした万一の場合ということに対して最善協力をするという趣旨のこれまでの協定もあり、そうした事態に対処するためにはあらかじめの計画というものが、或いは御指摘のように米国側にあるかも知れませんが、私はその点は戦略家でもないしそういう情報を全然存じません。が併し最善を尽してそうした事態の起らないようにするということは先ず何としても大前提であり、その意味において政府のほうは今MSA協定その他について努力しておる次第でございます。
  15. 中田吉雄

    中田吉雄君 これはただ見解相違というようなことでなしに、とにかく一衣帯水の中ソ両国を大陸に控えておる日本、数千マイル彼方の運命を託するアメリカとこういう環境において、仮にそういうまあ局地戦争としてもいいですが、日本に向つて直接な侵略があつた際に、やはり安全の保障が完全にできる、或いはより少いということが自信を持つて説得できないと困りますし、更に又そういうことが起らんようにすると言われたのですが、今のアメリカの取つておる世界政策からすれば、私はむしろそういう危険が必ずしもないとは言えないわけなんです。その点を我々としてもむしろそういう備えさえあれば、そういう破局的なこの直接侵略が未然に防止できるということが言い得るかどうかという問題です。例えばこれは四月二十三日の朝日新聞の夕刊に出てあちこち探してみましたら、毎日にも産経にも、その他の各紙に出ていましたが、アイゼンハワー・アメリカ大統領は、二十二日のニユーヨークで開かれた米国新聞発行者協会の大会に臨んで、今ヨーロツパでは非常にアメリカこついて多くの誤解がある。その一つアメリカの取つておる世界政策に理解がないために、この米ソ勢力というものは時来らばもう実力で問題を解決する、こういう危惧を持つている。ヨーロツパ米ソ勢力実力で問題を解決すると見ておるという点と、更に両国とも危険が到来したならば犠牲に供するつもりで欧州諸国同盟の中に入らしている。これは非常に重要な問題で、我が党がためにするのではなしに、はつきりアイゼンハワー大統領が、アメリカのとつておる一九四七年以来のトルーマン政策ロール・バツク政策封じ込め政策、或いはアイゼンハワー巻き返し政策、或いは最近の周辺作戦ニユールツク作戦というようなものが時来らばこの問題を武力によつて解決するというふうにヨーロツパが見ている。もう一つは今同盟ヨーロツパに作らしているが、両国とも危機が到来したら犠牲に供するつもりで欧州同盟を求めている。こういうことがもう自由諸国において考えられて、曽つてないほどヨーロツパでこのアメリカ政策危機に直面している。だから一つこれは啓蒙によつて誤解を解かねばいけないというので新聞記者協会に対して協力を求められている。とにかくこの政策というものが時来らば両国とも力で危機を解決する。そういう危険を包蔵している点と、最後には同盟諸国犠牲にして自国の安全を守る手段としてそういうものを作つているという抜きがたい危険があるということを言つているわけで、私はそういう点からも、こういう政策に入ることはやはり私はそういう危険を持つというふうに考えるのですが、アメリカ世界政策というものにのつかつてMSAを受けてこういう集団保障機構に入ることが、ヨーロツパ諸国が持つているような危惧が絶対に起らないものであるという保障はどうしてもできます。
  16. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) アメリカ政策は結局この自由国家群防衛力を強くするということにおいて侵略を避け得るというので、今御指摘のありましたようなロール・バツク・ポリシイであるとか、或いはニユールックの政策はとられておるわけでありまして、何も集団保障機構によつて対ソ侵略的な政策をとろうとしているのではなく、現にジエネバでも会議が開かれるという段階にも至つておりますからして、私は日本日米安全保障条約を持つているとか、或いはMSA援助を受けて自衛力を増強するということが平和を脅威するような因になろうというようには、これは絶対に中田さんといえども考えておられないところであろうと存じます。ヨーロツパのほうでそういう或いは誤解があつたかも知れないけれども先ほど指摘いたしましたようにヨーロツパの為政者、責任者というものはそういつた集団保障の必要というものを痛感しておればこそ、ここまでEDC条約というものも持つて来られたし、すでに批准しておるものもあるし、NATO協定というものも立派にこれだけの役割を果して来た。それだからこそソ連のほうではこれじやたまらないというので、自分のほうがNATOに入つて行こうというような提案までいたしておりまするが、これに対して自由国家群の態度というものは、決してそういうソ連の一時的な切崩し政策に乗ろうとはしていないということは、私はNATO或いはEDC条約というものは現に成功しつつあるというように見ておるわけでありまして、一部にそういう誤解があつて、或いは殊にフランスあたりではインドシナの問題もありまするから国内に異論もあるでありましよう。どこの国でもそれは異論があるのは当然でありまするが、それだからといつて今のそうした政策が平和に非常な脅威をもたらし、或いは自由国家群内においてもそういう危険というものが非常に強く認識されておるというように見るのは、私としてはそれに賛成できないのでありまして、今申しましたように、この政策というのは、だんだん成功しつつあるというように見ておる次第であります。
  17. 中田吉雄

    中田吉雄君 私もアメリカ政策については善意を持つておるのですが、ああいう対立する二つの巨大な勢力が、アイゼンハワー大統領言葉を借りて言うと米ソの両勢力はお互いに恐れおののいている、二大国で恐れおののいている。相互がだから時来らば実力で解決するという危険、何といつてヨーロツパ自由世界政策協力する集団安全保障機構の中に入つておる強国すらそういう心配を持ち、アメリカがそうして欧州諸国をそういう危機が到来したら犠牲に供するつもりで欧州同盟を求めようとしていると考えている、この誤解を払拭せんといけないと言つているのは、やはり私は対立する集団安全保障にしても、同盟政策にしても、いつでも世界の歴史は対立した二つ同盟機構が激突しては必ず戦争になつているし、又更に軍拡競争というものがいつでも武装を整えて平和を保つというふうになつているが、特に私は自主性の弱い日本では、ヨーロツパが恐れているように、危機が到来したならばそういう犠牲に供せられる機構になつてしまいはしないかということを非常に恐れるわけなんです。善意にもかかわらず軍事同盟というものはすべて戦争への道である。武装を整えて平和を保つということはすべて戦争への道である。そういう歴史的な反省の上に立つても私は多くの憂慮を持つわけです。特に私は、日本とドイツがアメリカの言うそういう機構に乗つかつて、本格的な再軍備ができて、もうソビエトが片を付けるというようなときになつたならば、やつばり力に訴えるかも知れんという危険が全然ないということは保証できんじやないか。そういう点でくどいようですが、もう少し。
  18. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 言葉尻をとらえるわけじやございませんが、アメリカのほうが結局ヨーロッパを犠牲にして逃げて行きやしないかというようなきらいがあとおつしやいまするけれども、これは又一面その通りでありまして、アメリカの力を成るべく借りたい、であるからヨーロツパとしても、イギリスやアメリカにあそこにいてもらいたい。ということは、如何にソ連の脅威にさらされて、これらの国がアメリカとの集団安全保障機構というものを強くしようかということを熱望しておることの現われでありまして、中田さんのおつしやることは、半面から見れば、又事実から解しまするならば、これはまさしくアメリカにいてもらいたいという気持の現われでありまして、現にいろいろの情報を御覧になりましても、イギリスとかアメリカをあすこに引つ張つておきたい、これがフランスなども非常に強く希望しておるところであります。これは、集団安全保障機構に対していや気がさした、それから逃げようとしておるのではなくて、むしろそのために是非やつて来てもらいたいということを現わしたものなんでありまして、更に軍備を拡張して平和を保とうなんて、それはむしろ言い得るとすれば、ソ連ではなかろうかと思います。現に軍縮委員会においてソ連は、チエコであるとか中共が入らなければあすこで原子力の国際管理をしないというような意向を洩らしているようであります。即ち、これはあの五カ国によつてやろうとしているのは、チエコであるとか中共を引つ張り出して、事実上軍縮委員会がフアンクシヨンをしないようにしているのはソ連であります。今までの原子力の国際管理の問題についても、本当に偏見なしに虚心坦懐にこれまでの経過を眺めてみまするときに、結局軍拡を非常にしておるのはソ連であり、戦後軍縮しなかつたのはソ連である。又原子力の国際管理に対しても、飽くまでああいうむずかしい不合理な案を出したのはソ連ではなかろうかと考えられまするし、現に中共にいたしましても、ソ連にいたしましても、自由国家群よりも遥かに厖大なる軍備を持つておるということは私は国際人の常識ではなかろうかと考えます。その対岸にある日本が或る程度の自衛力を持つということは、これはもう当然のことであろうと存じまするので、私はこうした点においては残念ながら同僚の中田さんと意見を同一にすることはできないのをくれぐれも遺憾に存じます。
  19. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 如何でございましようか。我々は今逐条質議の段階にあるわけでありまして、前文が議題となつておるわけであります。この前文に関して中田委員は根本的な質疑を提供されて、政府委員のほうからそれに対して政府見解を披瀝して来られた。こういうわけでありまするから、中田委員質疑の趣旨もはつきりいたしましたし、又政府側のこれに対する意見も今までの答弁によつてはつきりしたように思います。政府意見を変えろといつたところでこれはできない相談でありましようからして、政府見解がどこにあるかということさえはつきりすればいいわけであります。従いまして、これまでの政府の答弁において私は政府の態度ははつきりしたと思うのであります。これについて中田委員も賛否の態度を決せられる大きな資料になつたろうと思うのであります。それだけで私はこの質疑の目的は達したと思われるのであります。従いまして、これ以上時間をかけましてもどうかと思いまするが故に、ほかの委員諸君において質疑がおありであるなららば、そちらのほうに移りたいと思うのでありますが中田委員如何ですか。
  20. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は二十九日ですか、憲法第六十一条による最終の自然成立……。
  21. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) そうです。
  22. 中田吉雄

    中田吉雄君 ですから私は何もこの議事を遷延するというような問題もありませんし、討論採決をしてはつきり党の立場をするという点においても私は委員長協力するつもりですし、こういう問題はもう少しやつてみておくこともいいと思いますし、私だけといつてはいけませんから、ほかの人がやられるのは結構だと思いますが、この前文から次に移るときにはほかの人がやられたあとにもう少しやらして頂きたいと思います。
  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これは条約局長にお尋ねしたいのですが、この前文でこの協定を取結ぶための背景と言いますか、そういうものを概括的に述べたものだろうと思いますが、今中田委員もいろいろ問題にしておられるように、集団的自衛の問題がたびたび出て来てここでも強調されておるように思うのです。そこで日本集団安全保障体制にいつ入つたというふうに考えればいいのか。それから入つたとすればどういう形式、或いは内容、又は能様を以つて、この体制に入つておると考えればいいのか、その辺を少し御説明を願いたい。
  24. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 日本は現在なお固有の意味における集団安全保障体制に入つておりません。この協定は前集団安全保障段階において、つまり将来は日本が固有の意味における集団安全保障に入ることもあり得るかも知れないことなんでありまして、その前の段階において集団安全保障一つの単位として日本考えられるような段階に達するまでの一つの準備の一歩にしか過ぎない。つまりこの協定は、前集団安全保障のものである、そうお考え願えれば結構だと思います。
  25. 羽生三七

    ○羽生三七君 今佐多委員のお尋ねになつたと同じような問題を私この前外務大臣に尋ねたら、現在の日米安全保障条約が自分たちは集団安全保障だと思つておるから、これがその一つの形式だと答えられたのですが、それと今の御答弁はどういうことになるのですか。
  26. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 私が固有の意味における集団安全保障ということを申しましたのは意味があることでございまして、つまり集団安全保障というのは、その中の三角の一つが一方的にその集団安全保障の利益を受けるというのでは完全な集団安全保障とは考えないという建前でございます。つまり非常に広義に用います場合には、日本のように一方的に恩恵を受けて自分のほうからは何らの寄与をしないという安保条約の方式も、これも非常に広義の集団安全保障一つではございまするけれども、私が申しましたのはそういうちんばな不完全な集団安全保障でなくて、固有な意味における集団安全保障というものを考えますときに、日本は遥かにその前の段階にある。そこで、安保条約との関連性は、この安保条約前文とだけの関連性でございます。その点になりますと、この前文は確かに安全保障条約前文考え方と同じような考え方をいたしておるのでありまして、その点においてのみ関連があると申上げられると思うのであります。
  27. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうすると、まあ固有な意味の集団機構へ入る入らんは別にして、でき得るとすれば、憲法でも改正し、国連へでも加盟したようなときになりますか。そういう意味の、そのよしあし、そういうことをされるされないは別にして、その点を。
  28. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 私の申上げる固有の意味の本当の集団安全保障体制に入るためには、憲法を改正することは当然必要だろうと思います。
  29. 曾禰益

    ○曾祢益君 その点に関連して。それは言葉のあやの問題だとは思いますけれども、やはり法理的に、条約的に、又安全保障の体制そのものからの説明としては、今の条約局長の御説明はやや政治的考慮が入り過ぎてやしないかと私は考えるのであります。やはり日米安保条約のような片務的なものであつても、やはりこれは一種の集団安全保障の形である、これをはつきり打出すのが法理的に正しいのじやないか。ただそういうのは片ちんばであるし、通常の形でないということは明確にしなければならないし、これはMSA協定を結ぶことによつて、片務的な形から双務的な杉に進むような私は気がすると思う。その議論は別とし、只今佐多さんの御質問の、現在の日本段階からみて日本集団安全保障体制の中のどういう地位にあるのかという御質問に対する法理的な明確な説明としては、極めて片務的な異常の形であるけれども、日米安保条約という二国間の一つ集団安全保障体制の下にございますということが正確な私は御答弁でなければならないと思いますが如何ですか。
  30. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 私の申上げるのはこういう意味でございます。この協定の締結によつて、つまり新たな方向に日本が一歩踏み出したかどうかという点が根本問題だと思います。これは私はそうでないと思います。つまり日本が新たな方向に一歩踏み出したのは平和条約のときに踏み出した、それ憲法の問題につきましていろいろ議論がすでに行われましたですが、私ども対外的な見地から憲法、平和条約安保条約というものを見ますと、一連の関係があるように存ずるのであります。日本の憲法は日本が占領されておるときにできた憲法でありまして、普通の国の憲法とは逢うのでありまして、憲法の中で私は日本は一種の対外的コミツトメントをさせられておる、普通の憲法でしたら対外的文書として憲法を見るということは必要はないのでありますが、占領時代にできた憲法というものの国際的な意味が確かにあるのじやないか。そこで紛争解決のために武力を行使しないとか、国の交戦権は認めないとか、戦力を持たないとかということは、単に国内法的規範としての意味のほかに、占領下における一種の対外的コミツトメントを国としてさせられている。それは憲法ができました当時の国際環境、又マッカーサー元帥が太平洋のスイスたるべしと申しましたようなことを考えておつた時代にできた対外的コミツトメントであります。従いまして、国の自衛というような面から見たことは全然閑却されております。その閑却されておつた部面を平和条約で明かにした、これも平和条約の第五条なんというものは、日本の趣意よりも連合国側の趣旨でできたものであります。その第五条で国連憲障の第一条の基本原則を受諾させられておるわけであります。でございますから、日本国憲法ができましたときの方向と言いますか、日本国憲法ができたときの人々が考えなかつた面が平和条約で明かに補充されて、今度はそつちの面が強調されておる。自衛なんということは顧みなかつた憲法の性質、そうして交戦権なり戦力なりを禁止いたしました憲法の性質が、平和条約で明かに連合国側から、お仕着せではありますが、一つの新たな、今まで閑却されておつた部面に日本の国の目を向けさしたということは、もう私は明かであると思います。そうしますと、平和条約と同時にできました安保条約によりまして、不完全ながら一つの一歩足を進められて来た、その継続であることは私は認めますが、このMSA協定がその意味で新しいほうに一歩足を踏み人れた。私は曾祢先輩の御質問の要点はそう私にお言わせになるのが狙いじやないかと思いましたのて、見当違いかも知れませんがその点を考え、冗長に亘りまして恐縮でございましたが述べさして頂いたのであります。
  31. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういうむづかしいことを聞いておるのではなくて、佐多委員の御質問の趣旨は、私は自分でただ理解しておるだけで、間違つておるかも知れないが、このMSA協定によつてどう事態が変るかという御質問ではなかつたと思う。今日本安全保障の体制から見ればいわゆる一つ集団安全保障の中に入つているのかいないのか。即ち言い換えるならば、これは羽生委員の御質問はより明確にされたと思うのですが、安保条約というものは一つ集団安全保障なのかどうなのか。それを固有の安全保障ではないという言い方もあろうが、固有であるなしということは、いわゆる片ちんばであるかないかということは、いわゆる片ちんばであるかないかということだけであつて一つの変態的ではあるけれども安保条約もそれ自身が国連憲章の枠内における一つ集団安全保障の形ではないか、そこをはつきりしたらどうですかということだけなんです。私はMSAのほうからもたらされるほうの事態についての議論をしておるのではない。今は。
  32. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもそこでなおわからなくなつて来るのですが、平和条約の第五条、今局長も触れられましたが、その(C)項によつて、いわゆる日本が集団的な自衛の固有の権利を有して、従つて、又集団的な安全保障取極を自発的に締結することができるということを承認されたわけですね。これに基いて安保条約では、これらの権利の行使として、先ず合衆国が日本に軍隊を駐留をする半面において、日本は自国の防衛のために漸増的にみずから責任を負うというふうなことになつているので、ここですでにこの安全保障体制に入つたというふうに考えるのか。これはさつき羽生委員が言つた通りにそういうように考える。更にこのMSA協定によつて自国の防衛力を増強する義務を負つたわけだから、そういう意味では集団的な安全保障体制に或る意味で完全に入つたというふうに考えていいのじやないか。更にはこれが軍事同盟なりなんなりそういう形のものに入ればもつと完全な意味において、従つて或いは局長の言われる固有の意味集団安全保障体制に入つたということになるのかも知れませんが、それはその形式、内容、能様の相違であつて本質的にはすでにそういう段階にあると見ていいのじやないかと思うのですが、その辺はどうですか。
  33. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 仰せの通り安保条約前文で平和条約を引用いたしまして、「日本国が主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、」と、そうしてその集団安全保障取極を締結する権利を行使する一つ方法として、日本は一方的に恩惠をこうむるだけであるけれども米国の駐留軍の駐留を認めて、そうして極東の平和維持及び日本区域の安全に寄与するために米軍の使用を認めるという第一条の規定を導き出しているわけでありまして、これは私の申上げる、つまり広義の集団安全保障、固有の意味でない広義の集団安全保障を導き出す一つの足がかりであろうと思うのです。そうすると固有の意味において集団安全保障の足がかりが安保条約に全然ないかどうかという点になりますと、これは前文の末項のつまり日本が漸増的に自国の防衛のための責任をとるようになることを期待するというところで、この期待が実現して行つたならば、日本も今度は固有の意味における集団安全保障一つのメンバーとして考え得ることがあるのではないかという問題を投げかけていると思うのであります。でございますから固有の意味集団安全保障の問題と広義の集団安全保障の問題とは、両方私は安保条約前文で足がかりを作つているのではないか、そういうふうに存じております。
  34. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると更にMSA協定によつて自国の防衛のために義務を負う、防衛増強のために義務を負うということになれば、これはなつたことは確実なんだろうと思うのですが、そうだとすれば局長の言われる固有の意味の体制の中にこれから入つたというふうに考えてもよくはないですか。
  35. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その問題は確かに提起されたわけでありますが、その問題に直面するに当りまして憲法の規定の範囲内で実施するという明確な枠をつけまして、日本政府としてはその問題は将来の日本国民の決定に任すという態度であつて、憲法の規定ということを明らかに打出しましてそこに明確な枠をはめたというのが真相でございます。
  36. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その枠は政府の御説明によると防衛力の内容、規模、態様等等の問題であつて防衛力自体を増強しなければならんということにおいては変りがないのじやないか。そうだとそういう義務を負つているとすればやはり相互的に集団安全保障体制の中に入つた言つていいので、あとの問題は単に量的な問題じやないですか。
  37. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 援助の種々の物的面におきましては直接は戦力に達しないという数的の限界でございますが、集団安全保障という観点からの関連になりますと、これは「国の交戦権は、これを認めない。」というやはり憲法の規定従つて海外派兵は行えないというような枠が生きてくるわけだと存じております。
  38. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ここでいう或いは国連憲章でいう集団的な自衛権というものは、みずからの国を守ることでなくて、集団的自衛の名の下に実は他の国を守るということになつていると思うのですが、その点はどうですか。
  39. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 私は、国連憲章ができますときにはむしろ固有の意味での集団安全保障というものを締約国は考えていたのではないか、日本のような例外のことは実は忘れておつたのではないかと思うのであります。併し何とも限定されておりませんので、連合国が対日平和条約を締結するに当りまして、非常にこれを広義に用いまして、そうして日本のように一方的に恩惠を受けるような取極も広義の集団安全保障一つであるというように考え安保条約を作つたのではなかろうか。もともとはこれは大多数の国に対して一般に考えられる場合には、やはり固有の意味集団安全保障というものが、国連憲章作成の当事者の頭にあつたのではないかというように推察いたしているのであります。
  40. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちよつとほかの問題で。この前総括質問のときに外務大臣にお伺いしたことですが、その場合の御答弁が非常に不明確だつたのでもう一度お伺いいたします。それは「日本国の寄与がその経済の一般的な条件及び能力の許す範囲内」、これで日本自衛力を増強して行くわけですが、この場合日本の経済が許さなければMSAを断わればいいのだと外務大臣は簡単に言われているのですが、私はそんなことはもう答弁としては問題にならんと思うのです。結局この経済の条件や能力でかなり日米間に意見相違ができてくると思うのです。その場合日本はこれが経済の限界だと思う場合に、向うはまだ余力があると思う、ところが逆にアメリカがもつと耐乏をしても自衛力を増強すべきだというような、いろいろな両国間の経済の限度についての見解相違が起るのですが、そういうことは予測されませんか。
  41. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これも実は第八条の協定文を作ります際に、自国の政治及び経済の安定と矛盾しないということが、一体誰が最後的に判定者になるかという点で議論をいたしました。アメリカ側と日本といろいろ違つた意見のあることは当然おつしやる通りでありますが、ただ自国の政治であり自国の経済である限りにおいては、政治並びに経済の安定を害するか害しないか、自国の経済の一般状態が許すか許さないかということは、最後的には日本のきめる問題で、それはアメリカ意見を述べることはできるが、日本にその意見を強いることはできないということはアメリカ側も認めました。
  42. 羽生三七

    ○羽生三七君 それでは援助を継続して行く場合、折衝に時間がかかることはあるが、それにしても最終的には日本がその問題については、十分自主的にきめ得る条件を備えていると解釈してよろしいですか。
  43. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) その通りでございます。
  44. 中田吉雄

    中田吉雄君 その点に関して第八条と関連するのですが、この点では非常に折衝に暇どつたようで、政府とされてはエツセンシヤル・エレメントでなしに前提条件だというふうに新聞で見た、……経済の安定が絶対的な前提条件だとして突張られたのを、アメリカ側としてはそれを了とせず、こういう形になつたというふうに出ているのですが、それと当初主張されたのとではどういうふうな影響がありますか、今後経済の安定を測定する場合に。
  45. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 中田さんの只今の御質問になりました点と新聞に報道されました点は、実は今回の協定の第一条並びに前文日本の経済の復興若しくは安定を優先させるという言葉を使いたいと思いまして、我々が努力したことは事実でございます。一九五一年にMSA法ができます前の欧州とのアメリカが結んでおります協定の中には、経済の優先という言葉、つまり経済にプライオリテイを与えるという言葉を使つた例があつたわけであります。私どももそういうことができますれば、今後この援助を受けますにつきまして経済の優先性を謳うことによつてかなり経済的のうまみが出て来るのではないか思いまして、いろいろ交渉をいたしたのでありますが、アメリカでは五十一年以後経済の優先ということは謳わなくなつたし、又日本の経済が当時欧州の疲弊した経済に比較してはまま良好な状態にあつて、現在MSA援助の中に経済の優先を謳う時期はもうすでに過ぎているのだということを主張いたしまして、結局前文経済の安定ということが不可欠の要件であるということで、漸く落合つたいきさつがございまして、この点について交渉がかなり長引いたいきさつはございます。ただ第八条の五百十一条を取入れた問題でございますが、この点につきましては実は時間がかかつたということよりはしまいまでこの取扱をどうするかということについて両者の意見が合わなかつたということが本当である。MSAの第五百十一条があります限り、この第八条は免れないとは思つてつたのでありますが、或いは附属書に或いは議事録がある場合には議事録に譲るということは事ないか、余りれいれいしくこれを掲げたないというのが我々の意向だつたのであますりが、アメリカMSAの五百十一条というのはお題目にしろ、これはいわばMSAの憲法に匹敵すべきものであるから、これを協定文の中から省くことは日本だけの協定にそれがないということになり骨抜きになる、何とか入れてくれというので最後に落合つたことになります。  それで最後の御質問の、然らば今後日本の経済の安定ということに対して、この第八条並びに前文或いは第一条に謳つた経済安定を不可欠要件にするということによつて日本は何かの利益を得る点があるだろうかという点についてであります。私どもは今後仮にアメリカ日本防衛計画に対して意見を挾み、それが我々の観点によつて日本の経済に対する負担を重くするということになれば、これらの点を取上げて日本の経済の安定を害するから、アメリカの御意見意見として聞くが採用することはできないという口実はここにあるだろうと思います。
  46. 中田吉雄

    中田吉雄君 その問題ですが、確かに今局長が言われたように一つの絶対の有力の条件にはなると思います。併し客観的な指標といいますか、経済がどうして安定したか自国政府が判断するということになるのですが、一体政府はどういうことを客観的に有力な指標とされるのか。例えば今外貨の保有にしても、或いは貿易のアンバランスにしても、更に国際物価とのコストの比較においても、或いは失業者又は要生活保護者というような問題、或いは賃金の国際的な水準というような問題で、我々としては仮にそういうことが前提条件だとすれば、もつと自衛力漸増に優先すべき数々の問題があると思うんですが、そういう先に挙げたような諸条件を放つておいて、而もそういうさ中にありながらあの保安庁費というものは百七十何億ですかふやされているというような問題で、さつきの羽生さんの言われたようなやはり耐乏等も要求されるでしようし、そうなると客観的な判断としては何をよりどころにしてやられようとするのですか。
  47. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) この点は私どもそく聞するところによりますと、池田さんがワシントンに行かれましたときに、ロバートソン次官との間において大分この日本の経済の算定についての御議論があつたように承知しております。アメリカ側の意向は一般的に現われた数字、今お話のように在外外貨がどうであるとか予算の均衡がどうしておるとか、日本の一般的な国民所得が幾らであるか、これに対する支出がどうであつたかという点を主にして日本の経済がかなり安定しているのではないかという点にアメリカの論拠があつたようであります。これに対して池田特使の話されたのは外面的に現われたこの予算面だけで、つまり耐乏生活によつて生れ出たところの予算画の均衡ということを取上げてその国の経済を批判するということは必ずしも当らない。それから第二に日本欧州の各国と違いまして戦争中に非常に資本その他につきまして喪失をしておるのでありますから、そういう点について何ら考慮を加えずして、一般的な教字だけから日本の経済的な安定は説けないという点を主張されたようであります。  それは別といたしまして、私どもは今後アメリカ側からそういう点についての主張がある場合において、我々としてもやはりリーゾナブルに日本の経済が安定しているかどうか、或いは防衛力の増強ということが日本の経済の許す範囲であるかどうかということを十分検討する必要がありますが、その標準はその協定文からいいますと、自国の人力、資源、施設及び一般的経済の許す限りにおいてというこの条項が第八条にございますから、そういう点につきましてやはり日本側が自主的に考える面が最後的には出て来るのではないか、こういうふうに考えているわけなんであります。
  48. 中田吉雄

    中田吉雄君 私はやはりさつき言いましたように、これは一つの絶対の条件にはなるが、結局客観的な指標がないために力関係に押されてしまつてつてしまうのではないかとまあ思うのですが、特にMSAを受けてそうしてその贈与に関する三十六億というようなものを日本の防衛産業に有利なるいろんな形で投資して、一旦そういうものができるとそれ自身が一つの目的を持つて、自己目的をだんだん持つてつたりして、だんだんと経済の安定を害してもそれ自身は運行するというようなことになつて非常にまあ問題で、事実上これは力関係によつて押されて余り意味がないことになつてしまうのではないか。客観的な指標がない限りはそれは何と言つても、ここに持つておりますアメリカ自身の米下院のアジア調査団長のジヤツド氏の報告を見ても、資本の投下率においても、資本蓄積においても、国際収支の問題においても、或いは国際物価との比較においても、或いは産業の近代化においてももう殆んど日本は問題にならんというようなことを言われているのですが、こういう協定が結ばれるにもかかわらず、そういう条件の下にああいう防衛力の漸増がなされておれば、これも余り実益を伴わんようなことになりはしないかというふうに考えて、結局耐乏の方向に持つて行きながらやらされるというふうになると思うのですが、まあこれも見解相違でしようから。
  49. 曾禰益

    ○曾祢益君 前文の、実質的の第一項ですが、これは非常に重要な点だと思うので伺いたいのですが、「国際連合憲章の体制内において、同憲章の目的及び原則を信奉する諸国がその目的及び原則を支持して個別的及び集団的自衛のための効果ある方策を推進する能力を高めるべき自発的措置によつて、国際の平和及び安全保障を育成することを希望すると、こういうことを言つておられるわけであります。これは先ほど安全保障条約ができた際及び平和条約ができた際の日本安全保障というような考え方から見れば、かなり進歩と言いますか一歩を進めた考え方であることは明瞭であると思われます。そこでこういつたような自発的の措置ではあるけれども、憲章の原則、目的を支持して、そうして個別的及び集団的安全保障のための効果的な方法を推進する能力を高める、これはもう言うまでもなくかなり広い意味で、自国の防衛力のみならず、いわゆる先ほどの局長の言われる本格的なような広い意味自由世界というか、国連憲章の原則と目的にそうようにする、広い意味の集団的な防衛力の増加を必要と認めてという、一つの重大なる私は宣言みたいなものだと思うわけです。そこでこの日本は勿論まだ国連には入つてないわけですが、ここの同憲章の目的及び原則を信奉する諸国がと、この諸国の中には日本みずからを入れておるわけなんですか、その点はどうなんですか。
  50. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは私は日本は入つてない、国連加盟国のことだけを意味すると思うのです。
  51. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは併しなぜそうなるのですか。これは必ずしも加盟国ということは言つてないのですね。国連憲章の体制内において、或いは枠内においてというのは、この安全保障のなんと言いますか考えかたの問題であつて、これは何も国連加盟国であろうとなかろうと、関係はないわけです。  それから諸国にという諸国に対して加えた制限という意味は、国連加盟国である諸国ということは言つてない。憲章の目的及び原則を信奉する諸国なんですから、これ又加盟国たることを必要条件としないわけです。従つて殊に日本は平和条約においても、国連のこういつたような目的、こればかりではありません、目的を支持することを条約上はつきり誓つております。又政府政策としても、国連の少くとも憲章の原則と目的を信奉する国であることを標榜しておるわけです。ここでなぜ信奉する諸国ということに日本は入つてないのか。そうすると外国がこういう意味で個別的及び集団的の自衛力を自発的に強化することは、日本が希望するが、その諸国の中に日本は入つてないという見かたは非常に無理がある諸国じやないのですか。
  52. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 日本は平和条約の五条で、国連憲章の義務を受諾するときに、第五条の(a)で日本国国際連合憲章第二条に掲げる義務、特に次の義務を受諾すると言いまして、第二条に掲げる義務は明確に法律的に受諾しておるわけなんでありますが、この前文の同憲章の目的原則を信奉するというところに日本を入れるのは、平和条約関係から見ますと多少無理だと存じまして前のようにお答え申上げたのでありますが、併し半面ここは必ずしも法律的に同憲章の目的原則を支持する義務を持つておる諸国という意味に正確に規定した字句とも思えませんので、或いは曾祢委員の仰せになりますようなふうに、国連の加盟国であろうとなかろうと、憲章の目的原則に賛成してこれを支持する気持を有する国というような考えかたも確かに成立つというようなふうに考えます。
  53. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはむしろまあ私の聞きかたが少し何と言いますか、意地の悪いような聞きかたになつたきらいがあると思うのですが、元来どうしてこういう一項が入つて来たのか。入つて来たとすればいわゆるMSA協定を結ぶ一つの基本的な考えかたなんであつて、私はこの原則そのものが一つも悪いとは思つてない。ただ日本の場合にこういう基本的な考えかたを政府がはつきりすることは、先ほど来お話があつたように、第一条、第八条等の関係から、果して日本はそういつたようた本格的な集団安全保障体系を希望しているかしていないか、それが又はね返つて憲法上どう考えられるかという、いろいろな問題を起こすというきらいは確にあるけれども、こういう考えかたがた自身は、これはもう国連憲章そのものの精神であつて国連憲章自身がいわゆる集団保障で行こうという精神であつて、これ自身何ら排撃し或いはこれを躊躇すべき原則ではないと思う。なぜこういうものが入つたのか、入つた以上は日本政府の明確の態度は、そういつたような憲章の原則目的を支持するために、いわゆる個別的及び集団的自衛のための効果的措置は自発的にやつて行くのだ、各国がやつて行くのがいいんだ、日本もそういう方向がいいんだこういう考えで、私はこの一項を入れられたと思うのです。入れられた以上はそれはその通り基本方針というものを明確に説明すべきではないか。かように思うから、ただ諸国というやつに日本が入つているのか入つていないのか、という変なところから伺つたんです。私の趣旨を明確にして、改めて明確な答弁をして頂きたい。
  54. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは米国とよその国とが結びました協定と大部分は同じでございますが、前文は一番違つているところでございます。そこで一番違つている前文の中でなお且つよその国と全く同じ条項はどうかと申しますと、第一項の国連憲章にリフアーしてこの一項が極り文句でございまして、よその国のMSA協定もすべてこれを入れております。そこで日本といたしましても、仰せのように国連憲章の二条の義務を受諾いたしている関係もありますし、アメリカとしては如何なる国に援助を与えるについても、それが国連憲章の目的と矛盾するような援助は絶対に行わないというのがアメリカの基本的立場でございまして、従つて日米ともMSA協定前文には国連憲章にリフアーしようという意向が初めから今致いたしまして、この条項だけは早くからきまつたのでありまして、併しこれを書きます以上は、日本日本なりに検討いたさなければならないのでありまして、この項は正に御指摘のように、先ほど申上げました安保条約前文の末項つまり個有の意味集団安全保障を将来に考えての一つの足がかりとなつたことばたしかでございます。そこで日本といたしましては、個別的及び集団的自衛のための効果ある能力を高めようということを希望いたすことは確かでありますが、この希望の達成は第九条の憲法の規定を逸脱しないという制限をつけての希望であるわけであります。ただ根本方針としてこれを希望するということは日本の場合でも仰せのように確かに言えると存ずるのであります。
  55. 曾禰益

    ○曾祢益君 私はこの第一項が、そういうアメリカ相互防衛援助協定を結ぶ諸国の立場から見て、これはみんな日本みたいな特殊な憲法を持つているわけでもなく、いわゆる個別的な自衛権はフルにとつておるし、更にいわゆる自由世界といいますか、共同防衛というような考え方を割切つた国がMSA協定を組んでいるのですから、この条項が問題にならない国との間のパタンとしては、こういうものが出て来るのは当然なんです。日本の場合にはこの問題についての明確な割切り方をしておらないままに、ただそれをそのままひな型であるから入れて行くということに非常に危惧の念を持つておるわけです。殊に今おつしやつたように、これが又本格的な集団防衛体制の足がかりというようなことになると、それなら初めから相互防衛援助協定は、少くとも憲法の制約はあるけれども、基本的な安全保障考え方においては、先ほど佐多さんの言われたように、私も第八条等においてすでに指摘したように、やはり漸進の姿で、自由世界の共同防衛というような本格的な集団保障機構にするという一つの現われではないかということを常に伺つておるのです。そういう点についてはとかく政治的な困難さがあるからそれをあいまいにして行こう、こういうような態度はいやしくも条約をつくる上において適当ではない。殊に安保条約の例を引張つて一つ申上げるならば、安保条約においては日本のいわゆる自衛力の増強漸増の責任を逐次とるということは、前文におけるアメリカの期待に過ぎない。明確な前文以外の各第一条以下に相互協定したものでないから、これははつきりした条約の義務でないという立場をとつて来られた。これは法理的にそうかも知れないけれども政治論としては殆んどナンセンスな議論である。今度MSA協定ではその点はつきり第八条に基いて条約上の義務となつている。そういう足がかりだというようなことを不明確な形のままに前文等に残すことがいけない。私はその点は、むしろ政務次官、外務大臣等に対する意見になるかも知れないけれども、そういうあいまいなことをせすに、はつきりした政府安全保障の方式等を、なぜはつきりと基本的な考え方を国民に訴え、又その理解の上に立つた明確な条約文としては一字一句もおろそかにしないような形において条約をおつくりにならなかつたか。そういうあいまいな点から次から次へと足がかりだ、足がかりだということで、国民の不安と疑心が生まれて来る。であるからこれ以上は逐条審議だから、政治論は申上げませんが、只今’伺つたように諸国という中には日本は入つてないのだというような形式論ではなくして、これは第八条、第九条等の憲法問題についてはエスケープ・クローズがあるのだから、ここはやはり日本政府としてはそういうことを希望して日本としてはそういう方向に向くのがいいのだということで、前文の而も第一項の大原則として打立てた。こういう説明をされるべきではないか、政務次官どうですか。
  56. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 前文の第一項については先ほど曾祢さんのほうでも異議がないということで、政府としては特にこの点は今申しましたように、条約局長説明いたしましたように、憲法上の問題はあるけれども、とにかく自衛力を漸増して行つて、個別的集団的な自衛措置というものには日本の経済力或いは政治力が許す限度において協力しようという考えを以てこの協定にも臨んだわけでありますから、その趣旨において先ず第一項にこれが記載されて行くという関係でやりまして、その点は今曽林さんのお説を十分政府としては体して進んでおるものと私は思います。
  57. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 前文に入る前のもう一つ協定の表題ですがね、相互防衛援助協定、これはどうしてそういうふうにきめたか。今まで政府説明によると一方的のいわゆるアメリカ援助を受けるということが主体で、事実そうだろうと思う。どうしてわざわざこういうふうに名を一体付けたのか、つまり相互援助というのだから日本側からの防衛援助一体何であるか、成るほど協定文を見ると、これはあとのほうに関連するけれども、一条、二条の形の上ではそれができておるけれども、実際の実の上でどういう援助で防衛しよう、この辺どうですか。これは私なぜ質問するかというとこの表題がこうなつている。そうして而も前文というのが非常に広範な大事な基本原則のことを謳つてつて、かなりさつきからもいろいろ問題になつておるけれども、集団自衛という思想が強く出ておる。そうすると本文のほうの解釈でも、それが一つの指導原理をなして来て、例えば第一条の、これはあとのほうで言つたほうが適当かも知れないけれども、いろいろの援助、例えば装備とか資材、役務その他という、何もその他といつてアザー・アシスタンスということがこれは限定はない、而もそれは政府の権限だけに一任しておる。この協定政府が指定している援助は何でもやつていいという建前になるわけで、そういうふうな趣旨から一条などの解釈に当つてもそれが非常に大きな関連を持つて来るので特にお尋ねをするわけです。
  58. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 表題につきましては確かに御指摘のような点があるのでありまして、成るほど法律的には一条の規定、或いは二条の規定相互的になつておるのでありますが、実際上の問題といたしましては日本の経済力からいたしまして、相互的の意味日本からアメリカ援助を与えるということは実際問題としてはなくて、ただ法律上の規定では相互的な性質を与えておるに止まるわけでありまして、実際論から申しますと確かに羊頭狗肉と申しまするか表題と内容とは違うという点は御指摘通りだと思います。そこで普通MSA協定と申しておりますが、実際はMDA協定と申すのが確かでありまして、ミユウチユアル・デフエンス・アシスタンス・アグリーメント、この表題は実はアメリカが交換公文の中で取りきめております国は別といたしまして、この法律ができてから締結いたしました諸外国とのすべての協定が実はMDA協定という表題を付けておりまして、これはむしろアメリカの内政的の考慮と申しますか、何もアメリカが一方的に援助ばかりやるのではないのだという、向うからの援助をもらう相互性を持つておるのだということをアメリカの国民に対して説明するには、相互防衛援助と申したほうが通りがいいわけであります。日本側の希望よりもアメリカ側の希望から表題が相互的なことを現わすという必要がございましたので、日本も他国の例と同じようにMDAアグリーメントということにいたした次第であります。併し仰せのように法律上の規定の上ではともかく実際面におきましては相互と申しますよりも甚だしく一方的なことになるということはこれはもう争われない事実であろうと存じております。
  59. 中田吉雄

    中田吉雄君 このしまいの一頁の一行目なんですが、「平和及び安全保障のために暫定措置として若干の自国軍隊を日本」に云々ということと駐留の問題ですが、これについては随分衆参両院で質問があつたのですが、こういう新たなる義務を伴う国際協定をされる際に、駐留の問題について日本としては何らの考慮、いろいろなことをそう考えて対処されず、ただ講和安保両条約で認めたことを全面的にただ継承、再確認するということで何らの躊躇はなかつたのですか。実は講和条約が問題になつた際に私たち萩原徹さんですか、あの人にいろいろレクチユアを受けたのですが、社会党のような全面講和と違つて単独講和論者である。その点ははつきりする。併し外国の軍隊を置かせる際には、その数とか基地とか撤退の時期とかいうような問題だけは具体的にがんじがらめになるように詳細に規定しておかんと、あとあとこれを一つの既得権として非常に主張されて将来に問題を残すということを、単独講和論者だが、そういう条約を結ぶ際にでもこの駅留に対してはエジプトその他でも非常に問題になつておるし、具体的な規定をおくべきだ、あとで問題を残さないようにすべきだということでまあ一つ見解だと思つたのですが、全然これは問題にならなかつたのですか。或いは公表できないというような事情なんですか、その点はどうですか。
  60. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 恐縮でございますが、それはこの平和条約締結時の事情でございますか、或いは……。
  61. 中田吉雄

    中田吉雄君 この協定を結ぶときに、全然こういう新たな条約を結ぶ際には、講和条約を結んだとき、安保条約を結んだときに起きた後の事情を勘案し、それを取引といつてはあれですが、そういうものを考えてやはりしなくてはいけない、すべきではないかと思うのですが、それはもう当然駐留すべきであるから何ら依存はないし、そういう撤退がいつか予測されんでもいいのだというようなことなんですか。この点についてもう少し。
  62. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この協定の締結の際には、前文第三項の問題は安保条約の字句をもうそのままとり入れましたので、駐留の期限、態様等につきましてはもう別に何ら改めて話をいたしませんでした。
  63. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点は非常に重要な点ですが、第九条の第一項のときに改めてお聞きすることに留保しておきたいと思いますが、ただ先ほど杉原委員からも質問されましたように、相互防衛援助協定という名前、これはまあ局長のお話によるとアメリカの対内的のいろいろな一つのいわば語弊があるかも知れませんが、ゼスチユアとしてこういうことがなされておるのだというお話のようでしたが、これは成るほど一応はそういうアメリカの国民を、或いは国会を納得させるゼスチユアであるかも知れないが、併しアメリカの国民なり国会は、そのゼスチユアだけでごまかされるのではなくして、それは必ず何らかの意味においてその約束なりそういうゼスチユアは実を以て結ばなければ決して承知はしないのだろうと思うのです。そういう内容を持つたものと考えなければならんと思うのですが、そこでそれに関連して、先ほどの集団的安全保障体制の問題が更に問題になるのですけれども、どうも局長の御説明でははつきりしないんですが、然らば局長のいわゆる固有の意味の集団的安全保障体制という場合は、日本の場合にはどういう体制をそういうものであるとお考えになるのか、それを日本状態に即してもつと具体的に一つの御説明を願いたいと思う。
  64. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これはもうすべて遠い将来の問題だろうと思いますが、日本が固有の意味集団安全保障体制に入る場合は、そのときの国際事情からどういうものが案出されて参りまするかわかりませんが、ただあり得ないことはつまり第一次大戦前の同盟二国間のバイラテラルの同盟条約によつてバランス・オブ・パワーを保持しようとしたあの当初のような状態には帰ることはない。いずれにいたしましても今次大戦後起りましたNATOでございますとかアンザスでございますとか、或いは全米相互保障条約でございますとかいうマルチラテラルな体制というものが一歩ポシビリテイがあるのではないかと思います。併しこのマルチラテラルの方式もアジアにおきましては、ヨーロッパほど又米大陸ほど、国の特に事情というものが非常に違つておりますので、これ又非常にNATO式なものがアジア方面にできるということの見通しは私は非常に遠いものではないかと、そういうように将来の問題ではありまするが想像いたしております。
  65. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするとこれはそれじやまあ次官にお尋ねしたいのですが、しばしば聞かれる例の対日講和条約のサン・フランシスコ会議におけるトルーマン大統領の演説、太平洋における平和を維持するための適当な安全保障取極にできるだけ早く日本を包含することは絶対に必要である。これは日本自身を保護するためにも又他の諸国を保護するためにも必要である。それ故この平和条約日本が主権国として国連憲章に基く自衛権及び他の諸国との防衛取極に参加する権利を有すべきことを認めたのである。太平洋における防衛のため地域取極を発展させることは、創設されることのある日本の防衛軍が太平洋における他の諸国の防衛軍と連合することとなることを意味するものである。こういうふうな演説をトルーマンはやつておるし、これはこの委員会もたびたび聞かれたことですが、こういう態勢になれば本来の意味での集団安全保障体制に日本が入つたということを意味するのかどうか。それからトルーマンはすでにこういう方向を考えておつた。併し現在のアイゼンハワーはもつとこの点を積極的に考えて行つているのじやないかと思いますが、MSA協定を結ぶに際してこういうことも予測しながら、そしていつかはこういうものに発展することを意図しながらこういう前文が書かれておるのかどうか、その辺のことを詳しく説明を願いたいと思います。
  66. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) アメリカのほうで太平洋の安全保障機構考えておるらしいことは、極めて最近におきましてもダレスがジユネーブ会議に出席する前に韓国の意向をサウンドしたかのような報道も出ておりまするので、そういう意向があるということは現在もちつとも変りがないと考えます。ただ今度いろいろダレスの接触した面については、私どもは勿論正式の又何らの公的な米国側からの指示を受けておりませんので、新聞情報などで知る程度でありまするけれども、まだ現在の段階においては例えば韓国であるとか或いは中国政府というようないろいろな機微の関係もあるので、極めて限定された範囲において太平洋諸国相互協力関係を増進することについて、関係国の意向を探つているに過ぎないもののようでありますが、併し今後これら諸国間の政治関係というようなものも調整せられ、又各国の政治経済事情が許すというようになれば、そうした機構が太平洋にもできることを希望し、又他国の協力を求めるという措置は、ジユネーブ会議の結果如何によりましようけれどもとられるであろうということは私も考えております。ただ併しその際に日本が仲間に入ることを要請されるかどうかということになれば現在の日本の実情からいたしまして、これは日本の事情をよく知つている米国としては、そうした措置に直ちに出るものとは考えられないのではないかと存じますが、併し御質問のように、いやしくも日本が仮にそうした機構がどういう形で、どういう義務を各国に負担せしめてでき上るか存じませんが、今まで存在しておるいわゆる集団安全保障機構と目せられるような形式の条約ができるという場合に、日本も入る資格を持ち、又そういう国内法も整つてつてそこに加入するということになれば、そのときは先ほど下田君の言つておりました、固有の意味集団安全保障機構に入るということは、これは当然言えるだろうと思います。が、併しそれは今後の日本の国内事情というものにもよりますし、もう一つは極東の問題が、ジユネーブ会議のみならずその後において如何に解決せられて行くかということによつて時期の遅速ということもあるでありましようし、そうした取極の内容というものも違つて来るでありましようから、現在それではどの時期に日本はそうした集団安全保障機構に入るかということは直ちにお答えすることはできないだろうと考えます。
  67. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、今トルーマンの言つた態勢、トルーマンが希望しているような態勢ならば、これは固有の意味での集団安全保障機構に入つたと言えますね。局長どうですか。
  68. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 仮にトルーマンが夢想しましたようなプロジエクトが実現すれば、これはまさに固有の集団安全保障体制であると思います。
  69. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その固有の意味での集団安全保障体制に入るとすれば、さつきの局長のお話によると憲法改正を必要とする。憲法が現在のままでは入れないのだというお話でしたが、それが憲法と抵触するというのはどういう意味でですか。
  70. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 直接には九条の戦力保持禁止と、国の交戦権はこれを認めないという二つのことであります。
  71. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはやつばり将来の大きな問題であつて、私も外務大臣にも質問して明確な答弁を得られなかつた点で、これは仮定の問題だから答えられないというようなことですが、私は、この点は次官にも局長にも御意見を伺つておきたいのですが、佐多さんが引用されたサン・フランシスコ平和条約の例えば今のトルーマン大統領意見の背景をなすものは、むしろ平和条約そのものの中に日本自衛力に関して何らの制限条項を設けない、これに対して非常な太平洋諸国、アンザス及びフィリピン等に非常にまあ危惧の念があつた従つて、丁度これは只今ヨーロツパEDC枠の中でドイツの再軍備をやらせよう、つまりドイツ国軍を勝手に作らせない。併しそれはEDCという形でお互いに他のもつと危険な世界に対する対抗のために、ドイツのやはり防衛に対する寄与は認めなければいかん。この二つの、つまりドイツの復興を無制限にはさせないという気持で、而も真空状態には置いちやいけないという二つの見地から、いわば日本の平和条約軍備問題に関する制限条項を設けないための代りとして、一種の太平洋的な地域、多数国家の地域集団安全保障の中に将来は入れるのだ、だからいいじやないかということでアメリカが太平洋諸国をなだめるために考えておつた構想だと思う。ところが最近は、むしろその点も勿論国によつては依然として考えている国はあるけれども、むしろそれよりも、日本がいよいよ自衛力を持ち出した今日は、これを積極的に大陸の共産圏の膨張政策に対するバランスに使おうというような意味で、今直ちにには勿論日本国民がこれに賛成しておらないし、憲法の制約も明白にあるから、今直ちに伝えられる通り西南アジア防衛同盟等に日本を勧誘には来ないと思うが、むしろ積極的に日本を加えて、一つバランスをとつて行こうという意味考えて来ている傾向が非常にあると思う。従つてこれらの点について明確な御答弁はあえて求めないけれども、例えば今条約局長が言われたように、本格的ないわゆる集団自衛の体制というものがある場合には、それは日本としては必ず多数国、マルチラテラルな集団防衛体制しかないのだ。二国間のものはあり得ないというようなことをうかつに私は政治論としては言つてはならない。日本自身に対する制約を加えようとする面と、日本自身を積極的に軍事的のバランスに使おうという両方の面を含んでいるマルチラテラルの防衛問題に対しては、むしろ私は警戒的な態度を政治論ですけれどもつて行くべきではないか。かように考えるので、一つの仮定の上に立つた議論でも、こういう点はよほどそういう意味で私は慎重に考えて行かなければならん。かように考えますが、次官の御意見を伺いたい。
  72. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 曾祢さんの説私非常に傾聴いたしましたが、私も非常に同感に存ずる点が多いのであります。殊に今の東洋の事態、政治関係というようなものを考えてみますると、勿論原則的に集団安全保障機構というものが平和に貢献するという点からすれば、これは将来、今下田君の言つておりました憲法との障害がなくなつて、そうしてそういうことが極東の平和に本当に役立つという見通しならば、勿論これまでの国策の線に沿いまして、国連憲章の下においてそうした措置に参加するということは結構なことでありましようが、現実の極東諸国関係というようなものを見まする際には、十二分に慎重な態度をとらなければならない点が非常に多いのじやないかと思うのであります。ただ勿論抽象的な言い廻しから言えば、下田君の言つておりましたように、多分に二国間の片面的なものでなしに、国連憲章下における集団保障機構というものに発達しなければならないのは当然でありまするけれども、今申しましたような現実的な法律問題としては、今の日本が憲法九条の問題があるとかないとかというそんな問題を離れまして、十二分に考えなければならん問題であるという点においては全く同感であります。
  73. 中田吉雄

    中田吉雄君 この国連憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的な固有の自衛権を再確認するということは、この憲章第九条の規定があつても事実上余り役に立たんようになることにはなりませんか。第九条との関連で私は質問をしてみようと思つていたのですが、第九条があつても、固有の自衛権というものを認めることは大してこの抑制措置にならんのではないか、第九条は。そういうことはありませんか。
  74. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 固有の自衛権を認めるということを平和条約でわざわざ申しましたのは、先ほど申上げました、つまり占領下憲法の第九条という一種の対外的にも意味のあるデクラレーシヨンと申しますか、コミツトメントを指して自衛権のほうを閑却しておつた誤りを平和条約の際に明らかにしたという意味があると思うのであります。けれども、この平和条約の自衛権の行使のし方は、これは日本憲法が厳として存する限りやはり第九条の制約の下においてのみ行われるものである。そういうように考えておるわけであります。
  75. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ちよつと今のに関連して。今の点私も実は総括質問のとき聞きたいと思つて時間がなかつたから、丁度いいですからちよつと許してもらいたいのですが、つまり自衛権の発動と九条との関係ですがね。今まで私法制局長官などの答弁を聞いておつても、論理は一貫しないと私は思つております。それはよく自衛権の問題を、九条の一項だけについて言われて、二項ではこうなつているからと言われるのですがね。自衛権のそのものの本質は、よく考えてみると、自衛権というものの一番効果のある今の五十一条の関係をちようとあとに別にしますと、本来の自衛権の効果は、通常の場合はつまり違法行為になるのだが、自衛の必要ということの根拠によつて違法性が阻却されるということに大きな一つの効果がある。そうすれば、そうして而も自衛権というものを認めるという以上、そうして不戦条約の際などでも各国間で認められたように、あの当時の国際通念では、つまりあらゆる条約の中には自衛権という条項を暗黙の間に認められておるのだ。そううい解釈なんですね。まあ事実そう解釈せなならんだろうと私も思うのです。そうすれば、自衛権あるものは、一方又憲法の各章について言うと、自衛権というものの存在を認める以上、一項のほうだけで認めて二項で認めんというのは私はあり得ないと思うのです。二項のほうだつてもつと自衛権の本来の性質から言いますと、つまりあそこに但し自衛権の行使の場合はこの限りにあらずと書いてあるのと同じことなんです、法理的に。この点一体どうなんですか。認める以上。
  76. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その点につきましては、自衛権が権利という半面もありますが、確かに普通の場合であつたならば明らかに不法行為であるような、外国の人命を殺傷し財産を破壊することが許される違法性の阻却の性質を持つものでございまするが、又交戦権も同時に、平時であつたならば許されないような人の殺傷、財産の破壊ということをなしてもその違法性が阻却されるような権利であることは同じことだと思います。そこで第九条第二項の意味でございまするが、一言で言えば、いわゆる自衛戦争はできない。つまり自衛権で許されるところの必要最小限度の自衛。従つて自衛行動から来る人の殺傷なり財産の破壊は許されるけれども、交戦権を持つたならば更に広範囲の戦時国際法で認められている、そうして各種の条約で禁止されていない限りは無制限な害敵手段が行使できる、佐藤長官のいわゆる自由奔放な害敵手段の行使が。これは交戦権があつて初めて認められる。ところが憲法九条二項で交戦権はこれを認めないと言われております結果、その自由奔放な害敵手段の行使はできない。厳密に言えば国際法で自衛の範囲として認められている、或いは窮屈かも知れませんが、必要最小限度の害敵手段の行使しか認められていない。そこに憲法第九条第二項の意味が生ずるのじやないかというように考えます。
  77. 中田吉雄

    中田吉雄君 その問題が、第九条のときにも質問したいのですが、アメリカの国会の私は速記録を見いのですが、講和条約締結の際にこういう論争も起きている。平和条約を結んでしまうと日本は独立の食い逃げをやりはせんか、これは平和憲法をたてにとつて日本の再軍備をせいというアメリカの明らかに見通している、それをこう抵抗する一つ措置として、独立の食い逃げのしつ放しでアメリカの意図したものに合わないのじやないかということで非常に論争が起きて、この平和憲法を制定さした責任者如何ということで、グルー大使、アチソン、ラチモアを引出していろいろ論争した。アメリカがそこで考えたことは、再軍備するために自衛権の問題を出して、自衛権はあるのだ、だからその一つの形態として再軍備はできるのだということで明らかに自衛権を持出している。そこで今持つて来ておりませんが、もう一つの速記録では、第九条の規定にもかかわらず、いろいろ努力された規定にもかかわらず、やはり固有の自衛権を再確認する以上はそれは次のようなことが問題になると思うのです。アメリカのダレスが去年の春国会で答弁した、日本は平和憲法をたてにとつて軍備をしないじやないか、又海外に出せないじやないかという際に、いや現行憲法の枠内でできるということを彼は言つている。それは戦争の種類を自衛戦争侵略戦争に分けて、そうして自衛のためなら、改進党の言われているように、現行憲法の枠内でもできるし、それから侵略者に対する制裁権の発動として、制裁戦争は現行憲法の枠内でも海外に出せるのだ、それで違法性は阻却できるということをまあ言つて、そういうことは心配要らんということを言つて、私は法制局長官なんかの意見を聞くとだんだんとそれに近寄つて来つつあつて、固有の自衛権を再確認した以上は、日本の置かれた立場から第九条でまあ非常に狭い枠をはめようとされることも、事実上破られて行くのじやないかと思うのでありますが、そういう点は。
  78. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 御指摘のようにアメリカ側で、憲法第九条から来る、つまり日本側のあれをたてにとつての非協力ということを恐れた人々もあるということを私も聞いております。そこで自衛戦争或いは制裁戦争は許されるという考えを持つておられるアメリカ人もあると思いまするが、日本政府の従来の見解は一貫して自衛といえども戦争はできないということに明らかに統一せられておりまするが、それから又そういう虞れをアメリカ人が持つその反面、又先ほど曾祢委員の御指摘になりましたように、つまり日本が再び軍国主義勢力として復活するかどうかという心配も確かにあるわけでありまして、この協定前文でも実はその問題が第三項の安保条約前文に書いてあります。「日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則に従つて平和及び安全保障を増進すること以外に用いらるべき軍備をもつことを常に避けつつ、」そういうつまり平和条約では自衛権を認めておきながら、同時に作つた安保条約で、日本が攻撃的な脅威となるというようなことはないということを安保条約前文で又同時に掲げまして、そうして曾祢委員の御指摘になりましたアジア諸国の心配に対しても対処すると、両方の手を打つております。そこでこの前文のリダクシヨンにやはり安保条約前文にある攻撃的な云々というのを入れるべきか入れないべきかということが問題になりまして、結局検討の結果、曾祢委員の御指摘になりましたような心配はまだ大分薄くはなりましたけれども、そういう疑念を持つておる人たちも全然ないとは言えませんので、依然としてこれを残すというようにきまつたわけでございます。
  79. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 前文で自衛権が非常に問題になつておるのですが、今まで繰返し御説明なつたところによると現実に不正な危害が行われたときに自衛権の行使が行われるのだと、これは国際上或いは国際慣習上認められるものだからというような御説明でずつと終始をしておられると思うのですが、ところが平和条約に述べられている自衛権は、国際連合憲章第五十一条に掲げる自衛権であるわけですね。この自衛権は従来の普通の国際法或いは国際慣習としての自衛権をもつと狭めて、武力攻撃が現実に行われた場合に自衛権が発動し得るんだという考え方だと思うのですが、日本が持つていると確信されている自衛権なるものは、そういう限定した意味での国連憲章規定した意味での自衛権なのか。もつと一般的に広い従来の国際条約或いは国際慣習に認められている自衛権なのかそこは区別して考えておるのかどうか、その辺をもう少し詳しく御説明を願いたい。
  80. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 国連憲章五十一条の自衛権につきまして学者の間にも二通り意見があると存じます。つまり憲章は武力攻撃が現実に発生した場合だけにしか自衛権というものは認めないのだという説と、もう一つはいやこれは第七章の平和破壊及び侵略行動という章で問題にしておるのであつて、これは武力攻撃の発生したときだけしかここに現定した意味がない、つまり武力攻撃のときにどうするかということがこの第七章には明らかであつて、つまりそれ以外のマイナー・ケースの場合の自衛、一般規定では、国際法では自衛をしていかんということが明らかになつていないのであります。でありますから私どもは後者の学説に賛成いたすのでありまして、第七章で特にこれをいただきましたのは、武力攻撃が発生いたした場合が平和に対する、平和破壊、侵略行動の問題でありまするからそう書いたのであります。従つてこの五十一条をそのまま受けて平和条約の第五条で固有の自衛権と言つておりまするが、これはやはり一般国際法にありまする、つまり学者によつては正当防衛と申しますか、緊急避難と申すかも知れませんが、武力攻撃以外のマイナー・ケースの場合の自衛もあれはいけないので、五十一条にいう要件の発生した場合の自衛権しか認めないのだというような意味を平和条約は私は持つていないと思うのであります。武力攻撃以外の問題はこれは一般国際法にやはり任しておるんだと、そういうふうに思うのであります。
  81. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 前文に関しまする質疑はこの辺で。
  82. 中田吉雄

    中田吉雄君 大体いいと思いますが、一つ明日でもしめくくりのときにもう少し私どうも委員長が急ぎで協力する意味で打切つていますので、あの問題をそう議事進行に差支えない限度でやりますので、一の集団保障による兵器或いは外交に対する原爆水爆等の影響という問題は一つ保留させて頂いて。
  83. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) どうぞ適当なときにおつしやつて下さい。  それでは午後の委員会ではこの第一条から始めることにいたします。午前中はこれで休憩いたしまして、午後は二時からいたします。    午後零時五十八分休憩    —————・—————    午後三時五十六分開会
  84. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは休憩前に引き続いて外務委員会を開会いたします。前文についての質疑は一応終つつことになつておりますので、只今から第一条以下各条ごとに条を逐うて進んで参りたいと思います。先ず第一条全部を問題に供します。質疑のあるかたはそれぞれ御発言を願います。
  85. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは一項からやつて行くのですか、全部に亘つているのですか。
  86. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) どちらでも御都合のほうでいいと思うのですが、前文は全部を一括して問題に供しましたので、只今私が第一条全部と申上げましたけれども或いは各項に分けたほうが早いかも知れません。御異議なかつたら項別にして進んで参りたいと思います。御異議ない模様でありますからそれでは第一条第一項を問題に供します。
  87. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先も杉原委員からちよつと問題にされたのですが、第一項の三行目の「装備、資材、役務その他の援助」という場合の「その他」というのは具体的にはどういうことが考えられているのか、問題になつたのか、外国に当つての実際の例としてはどういうことがあるのかその辺を一つ
  88. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 「装備、資材、役務その他の援助」の「その他」の意味でございますが、私どもの了解いたします限りは、あとの規定にもございまする工業所有権だとか技術だとか技術上の知識だとか、こういうものにつきまして一般的な情報その他を提供する意味を含めまして「その他の援助」という言葉で現わされておると了解いたしております。
  89. 高良とみ

    高良とみ君 この第一条の一項の説明の際に不要になつた武器のみをという説明がこの前大臣からあつたのでありますが、そういう意味をどの中で読み出そうとしているのでしようか、御説明を願います。
  90. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) この規定から申しますと、一応相互防衛援助協定という建前をとりましたので、日本からも第三国に対して援助を与えるような文字が使つてありますけれども、あとのほうを御覧頂きますと、アメリカから日本援助を与える場合の条件につきましてはかなり細かい点につきましても規定がございますが、日本からアメリカに或いは第三国に出す場合につきましては何らの規定も設けておりません。その理由は、私どもここで了解いたしますのは、一応相互援助協定である限りにおきまして、双方の政府援助をするという形は取りましたものの大部分につきましては日本から援助を受けるという場合が多いものでございますから、日本からの場合は規定しなかつたがいいと考えましたのと、それからもう一つはここにございます第三国に対しましての援助に関しまして、仮にそういう状態があつたとすれば、これは日本アメリカが合意する条件によりますものの、日本から出す場合におきましては、日本アメリカからすでに援助を受けたもののうち、もはや利用価値のなくなつたものについてアメリカが第三国にやりたいと言うならばやりましようと、こういう趣旨をその当時内容を確かめましたので、そこで細かい規定はございませんがそう読んでいるのが実際でございます。
  91. 高良とみ

    高良とみ君 今の御説明ですと利用価値のなくなつたものを、ということでありますが、それはこの前の御説明では日本において不要になつたものを、という意味であり、今度の御説明では利用価置のなくなつたものを第三国に援助として出すということで、ちよつと了解できないのですが、その点は役に立たなくなつた武器ということでございましようか、どうですか、ちよつともう一遍御説明願います。
  92. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 当初の目的のために援助を受けまして、すでに必要でなくなつたものの返還につきましては、あとで第三項がございますので、アメリカに一応返すという形ができるわけであります。日本が実際上援助を受けまして使つていたのでありますが、日本としてはもはやこれを利用するということについて興味のなくなつたものでも、アメリカがほかの国に援助を与えておりまする関係上、第三国に与えればそこではまだ利用できるという兵器もあり得るわけであります。その際に日本が一応アメリカから援助を受けたものはアメリカに返して、アメリカがそれを持つて行けばいいのでありますが、そういう手続をとらずして、初めからそれでは第三国に日本が出すということを承認してくれ、日本も承知しましたというので出す場合もあり得るわけであります。言葉が足りませんでしたと思いますが、利用価値のなくなつたというのは日本に関する限りにおいてでございます。第三国では価値があるわけであります。
  93. 高良とみ

    高良とみ君 なお先ほどのお言葉の中にもありました通り日本米国との了解の下に出す新品もあるというふうに伺つたのでありますが、そういうものはこの中に入つていないと考えていいのですか。或いは細目取極に従つて出す中には、日本で作る新しい武器等もあると考えてよろしいのでしようか。
  94. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 規定の限りでございますと、只今御質問になりましたように新品を日本から供与するということもあるように見えますが、実際上は私どもが現在仮に第三国にアメリカとの話で持つて行きますという場合におきましても、日本は第三国を援助する義務をどこにも負つていないわけであります。つまりアメリカだけが負つているわけでございます。従つてそういう場合には新しいものをアメリカ日本へ域外買付をして、そして買付をしたものを自分のものとして第三国にMSA援助として与えるべきだと考えますので、当時そういう話をしまして、アメリカも勿論そのように了解をいたしてございます。従つてども日本から新しい品物をアメリカとの合意で第三国に送るということは先ずあり得ない。そういう場合にはアメリカが域外買付の形をとる、こう了解しております。
  95. 高良とみ

    高良とみ君 それから役務でありますが、原文のほうではサービセスと書いてありますが、これは顧問団を入れてのことか、或いはもう少し広い意味で言えば顧問団のサービスも入ると共に、今度は日本からそういう新品等或いは武器等の使用に関して教える人或いは武器の運営について行くような人の役務も入るかという点を御説明願います。
  96. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) この役務の中には軍事顧問団は勿論入りません。軍事顧問団の役務は御存じの通りきまつておりますので、この援助の内容として、役務として出て行くということはあり得ないと思います。ではどういうものが内容になるかという御質問でございますが、まあ例を一つつて見ますと、日本アメリカ兵器援助を受けましてこれの訓練を受けた結果、日本もそれを修得したものを更に或る場合に第三国に持つてつたときに、まあ日本からもうすでに修得した知識を持つてつて向うを教えてもらえないかというような場合においては、この役務という条項が生きて来ますと、日本も場合によつて、有償でございますが、日本から役務を出すということもあり得ると思います。決して日本の兵力を出すとか或いは保安隊が援助に行くということをここで約束しないこと勿論でございます。
  97. 高良とみ

    高良とみ君 併しこういう場合には保安隊を出すのでなくても、保安隊の高級技術者即ちやはり必ずしも平服でない制服の人を出すということもあり得るんではないでしようか、そうすればそれはやはり保安隊を歩兵として出さないでも、陸海空の将校として出すことがあると了承して間違いございませんか。
  98. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 国内的に申しますと保安隊の人が表に参りますので、まあよく論議されます海外派兵その他の問題に多少の関係を持つように見られますが、私どもはこの問題はいつぞやここで議論がございましたように、保安隊にいる日本の公務員がその職務について外国に行つて、或る意味で外国の人たちに教えるという契約をいたしまして、この契約で公務員が外国に出向を命ぜられたものだと了解いたしますので、保安隊としての出張ということと違うと思います。
  99. 高良とみ

    高良とみ君 一応やはり確めておきたいのですが、併しその場合は公務員であつても、その人の専門は将校としての軍籍にあるものでありますから、それは向うに行つてはほかの外交官の出張なんかと同じですけれども、任務はやはり将校が公務員として出張するという場合も考慮して間違いございませんと存じますが、如何ですか。
  100. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 保安隊の隊員として参りますということでなくして、技術の専門家として参ることになります。従つて公務員といたしましてそういう技術を持つている者が、一定期間その限られた目的のために技術の教授なりに行くということになりますように了解しております。
  101. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の役務に関連して、今のは日本から「他方の政府」に行く場合ですが、アメリカから日本に来るもので役務と称されるようなものは今具体的には考えてないですか。
  102. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 只今段階でございますと、例えば航空関係でございますが、日本にパイロットその他或いは場合によつては、地上整備につきましても戦後欠けておりますので、こういうものの訓練を受けることが向うの役務を受けることになりまするし、必要に応じては日本の保安隊の人がアメリカに行きまして、アメリカで訓練を受けるということも場合によつてはあり得るかと思います。そんな点を現在私どもアメリカから援助を受ける役務の内容として考えております。
  103. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると。パイロットとか地上整備あたりに来るのは、軍事顧問団以外にここでいう役務として別に来るというふうに考えておるのですか。
  104. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 軍事顧問団の中にそういうものを取扱う人もあるかと思いますが、航空援助として受けますものは、軍事顧問団以外に、例えばこの極東空軍におきましてアメリカ人の一般の訓練をしております、そこに行つて日本のパイロットも一緒に訓練を受けることがあるとすれば、アメリカの役務を受けたことになりますから、アメリカ援助を役務として受けたことになると思います。
  105. 高良とみ

    高良とみ君 装備のほうは完成兵器と大体伺つておりますが、資材、マテリアルというほうはどういう程度のものでありましようか。軍需産業に使う資材としてのウラニウムとかそういうものにまで、至るのかその点御説明願います。
  106. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 只今そういう高い段階のものを予期する段階ではないよりでございます。大体が従来の保安隊が受けておりました装備などにつきまして例えばパーツかいる、或いはその中で特にアメリカでしかできないものがある、こういう場合に日本では従来ともこの兵器を使用しております関係上、修理その他に資材が要るわけであります。これに対する資材の提供をアメリカがする、こう読んでおります。
  107. 中田吉雄

    中田吉雄君 この供与される装備とか資材とかいうようなものを細目取極によつていろいろきめるわけですが、その際の防衛計画との関係は問題になると思うのですが、これはどうなんですか。やはりそういう供与を受ける際には、日本の持つ防衛計画が細目坂極の際にいずれ問題になると思うのですが、それはどうなんですか。
  108. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 防衛計画がございますと、これに見合いまして手続、いろいろの点がきまつてきます。種類がきまつてきますので非常に楽なわけであります。ただ中田さんがおつしやるように、若し防衛計画がなければ一体細目取極もできないじやないかという点でありますが、これは私どもの交渉の初めから、場合によつてそういうことがありますと、国内的にもいろいろの問題がありますので、アメリカ側に聞きましたところが、アメリカ側では仮に増員をしないということがあつても、現在の保安隊に足りない武器を持つて来るということもあり得るわけなんです。理論的には防衛計画と細目取極とは決して必須不可欠の条件ではないわけであります。ただ、実際上から申しますと、何にも計画がなくて細目取極をきめるといつても漫然と受けることになりますものですから、細目協定をする場合において、防衛計画がはつきりきまつておれば細目協定がおのずからはつきりできます。ないということになりますとどういうものをどういうことになつて、そこの細目取極にも交渉が必要になつて来ようかと思います。本年は幸い最終的にできました関係上、これに見合つた細目協定がおのずからでできるということになると思います。
  109. 中田吉雄

    中田吉雄君 これは最初にはやはり何と言われてもダレス長官が来、ノーランドとかいろいろアメリカ要路の人が来て、やはり防衛五カ年計画といいますか、かなりの見通しを立てた計画を出せというようなこともあり、併しこれに対しては池田さんその他もかなり日本の立場を主張され、実際はもうないと言われ、まあ一年間、今年だけのと言われたが、三年くらいの防衛計画を提示して、実際発表はされないが、了解ができて、その一環として今年の取極がなされているんではないかというような記事も見たように思うのですが、その関係は全然なしで今年だけのこの計画に基いてきめられているんですか、それはどうなんですか。大分外務省も、特に池田さんなんかもこの点なんかは頑張つたようで、まあ完全な計画はなしでもよかろうというところまでアメリカも折れたし、併しそれも出されないから援助もあとに言うようにもつとたくさんの援助をしたのを五千万ドルの二〇%に削られたのは、その防衛計画のまあ最終といいますか、アメリカの要請するものにマツチしたものを出さなんだために二割に削られた、それはこれと引換えだというような記事をはつきり見たのですが、その関係はどうですか。
  110. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは私ども交渉の段階におきましてはそうした意味アメリカからこれがなければこれをこういうことにするという指示を受けたこともございません。ただ池田さんがおいでになりましたときに、単に二、三年の問題だけじやなくて、根本的に日本の防衛問題については論議があつたことだと思われます。ただ結論を得ませんで、東京会談に持ち込んだことは御承知の通りでありますが、東京におきましてはいろいろ私どもも会談の前後の様子から判断いたしまして、決して二年や三年ということを約束する必要がなくなりましたのは、アメリカも来年なり再来年のことにつきましては行政府として約束の権限を持つていないことが非常にはつきりしたものですから、結局向うの一年間の予算に見合わしてこちらも防衛計画を立てればそれで必要なものはもらえるわけなんで、決して先までについての約束をする必要はないと、こういう結論なつたのであります。私ども事務当局の了解の限りにおきましては、本年の増強計画は本年だけのものであり、アメリカ従つてそれに見合つての五十三年乃至四年に対する予算面からできるだけのことをする、こういうことになつておりまして、来年、再来年に亘る問題につきましては、両方ともいわばひもがついていないということになつております。ただ話合の中で、将来こういう段階から日本がだんだん防衛計画を増強して行くことに、成るたけこういう計画にしてほしいというような希望その他は、勿論池田さんとロバートソンとの話合の間に多々出たことだと想像しております。
  111. 中田吉雄

    中田吉雄君 その点三カ年計画、二十数万、二十五、六万でしたかな、それで今年はまあ十六万ぐらいですか、そうしてそれが三年だが、アメリカの会計年度とのずれで、日本は三年と予定しているが、アメリカは二年半というふうな不一致の点もあるように聞いているんですが、その如何ですか。
  112. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは保安庁が御存じの通り一応の案を持ちまして向うの人たちといろいろ話をしたようでありますが、その際今申されましたアメリカの会計年度と日本の会計年度とのずれが、うまく三カ月を一年に使えるという話も出たことはございます。ただ現実の問題といたしまして、先ほどから申上げましたように、アメリカもそういう面白い話に乗つてみたところで、さてじや来年必ず約束して援助しますかというと、これは国会の権限を侵すことになりますのでアメリカの行政府はできないと言えます。従つてそういう利用し得るということは承知しておりましよう、日本側でも利用したいと考えておるかもわかりません。ただ初年度個々の援助につきましての協定につきましては、そういうことを両方ともが言わずが花というと非常にうまい話でありますが、そうでなくて両方とも、言えないものだから、そういうことを抽象的に論議したけれども、約束を両方ともしなかつたということで終つていると思います。
  113. 中田吉雄

    中田吉雄君 私の党はこういうことに反対しているのですが、是認する立場からしても装備、資材、役務というようなものまでいろいろ種類があるのですが、アメリカの最近の防衛計画というものはものすごいスピードで更新されているのです。何といつても新しい兵器発展段階にからんで、そういう点から結局廃品ばかりとは言いませんが、この装備の完成、兵器ばかり来て、実際この日本の防衛或いは自衛のために自衛力の具体化を必要とするという点からも、非常に問題が起きると思うのですが、折衝をされる際には、むしろ資材といいますかそういうものを特に要望されるというようなことはないのですか。特にまあ将来局地戦争とかいろんなことを想定して、起きた際に、やはりこういう形の完成兵器を太平洋を横断してもらつておる際には、その補給というもので絶えず依存せねばならんということで非常に問題ではないか。ソビエトのまあ仮に潜水艦その他でやられたりして非常に問題ではないかということですが、この援助を受ける見通しとしては今年はまあ完成兵器ばかりのようですが、大体の見通しはどうですか。そういうものをまあ自給といいますか、域外日買付等でだんだん自給の形には持つて行くのでしようが、その関係はどうですか。資材と装備との関係、或いは又日本の自立的な防衛計画として政府はどちらを大体懇請されているのですか。
  114. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 私どもといたしましても成るたけ装備自身を受けるということよりは、資材なり役務なりのほうに重点を置いたはうが、日本の自立的な立場からよくはなかろうかという考えを初め持ちまして、交渉の段階でそういうことも主張いたしたこともございました。ただ実際上初年度の援助を児ますと、日本が二万なり三万なりの増強をいたしまして、従来保安隊が貸与を受けていたアメリカ兵器を受けるということで実は本年度の援助というものは殆んど手一杯だというのが実際でございます。ただ中田さんのお話のようにもらうものがアメリカでも要らない、どこでも要らないというのですとこの面につきましては非常に不便になるのでございますが、私どもの了解いたしておりますところでは、現在保安隊の使つております兵器と同じ種類のものが来ると考えております。保安隊の使つております兵器と同じ種類のものが来るという前提に立つて考えますと、現在保安隊の使つておる兵器は在日米軍も又使つている兵器であります。従つてその中にアメリカが特に優秀なものを持ち、日本には要らないものをくれてしまうということは今の段階では少くともないというふうに考えております。勿論私ども兵器援助を受けましてから、どうも自分たちで使つて不用ですから返すというのは勿論ございますし、初めからいやだと言つて断わる手もあるわけですが、決して向うからよこしたものをそのままもらわなければならないということにはなつていないのであります。私どものみるところでは、初めどうも日本がそういうふうに増員をまだ必要としている事態におきましては、従来の保安隊の持つているような兵器を借りる、もらうということが手一杯であろうかと思います。その段階が過ぎまして日本が大体このくらいで増員その他しないのだということになりますと、やはり装備その他の点において近代性を持たせる必要がありましよう。そういう点から、資材、役務、その他につきまして援助を受けることが可能ということになつて来るかと思います。
  115. 中田吉雄

    中田吉雄君 そういう余り廃品でない、在日米軍が使つている程度としても私が聞いたのでは、日本人の体格に合わんのでバズーカ砲その他でも非常に、トレーニングの段階としてはいいだろうが、非常事が起きたら非常に体力、体重等でも通うし、身長等も違うし、踏台なんかをして標準をせねばならず非常な矛盾を含んでいるということも開いたのですが、そういう関係はどうですか。
  116. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) その点は多少保安隊の受けた武器などはそういう難点もあつたものもあつたように私ども承知しております。そこで本年の協定か交渉しますに当りましては、そういう点について特に日本に向いたもの、日本人の使えるものということを考えました。一方附属書のCというものを御覧願いますと、城外買付の点から、アメリカで生産するもので、日本で域外買付に応じ得るものとの規格が同じものでない場合におきまして、これが第三国に流れるとアメリカが買付に非常に不便を感ずるわけですが、中田さんがおつしやつたように、実は日本人の規格に合わないのだということになりますと、日本はその工業だけを拡張して進めるわけに参りません。そんな関係上附属書Cにつきましては、いろいろな関係から標準化を達成することか目標としながらも、買付の実際上の事情をよく考慮に入れてほしいという出方の意向を入れまして、実際上可能の共同歩調をとることが望ましいということで附属書Cの中に日本側の意のあるところを説明いたしました。その点はアメリカ側も了承いたしましたし、本年における、兵器の中には今おつしやるような身体が合わないとか、或いは長くて困るというようなことはなかろうと存じております。
  117. 高良とみ

    高良とみ君 これは第一条に相互防衛援助の装備、資材、役務を持つて来るのが本来だと思うのですが、ここに第三国相互に「合意するその他の政府」というものを持つて来たところにどういう意味があるのでしようか。私どもとしてはとかく今までの理解では相互援助であつてアメリカの装備、資材、役務、その他日本が受けるということが主体であつたようでありますが、もう一遍考え直してみればこれは第三国というのが第一条に出ているところをみると、日本が今まで保安隊等で使つていた型も大体標準化して来るということで、これはもう内地が軍事的な領域に入つたことは勿論わかるのでありますが、そうすると第三国が第一条に出るということは、更に端的に言えば韓国なり、或いはその他安保条約に欠くことができないという原則と矛盾しない限りの他のほうに対しても、合意する他の政府に対してもやはり規格を一つにし、同じ武器、資材、役務を提供するということになると、端的に申すと非常に範囲が広がつて来るという面を見なければならないと思います。これがその相互防衛援助協定の第一条へ持つて来たところの意味がこれが本来の趣旨なんですか。
  118. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 日本アメリカとの間の協定相互防衛援助協定であること、これは勿論でございますが、ただこの点について少し考えております、我々が読みます点は、相互と申しますけれども、実際上は各国が自国の防衛力を増強するということが一般的な安全の保障に役立つて、それがアメリカの安全に役立つことになるから、日本援助を受ける点で利益になりますが、アメリカは安全を保障される点について利益になるので、こういう点で相互ということができましよう。実は強い意味相互ということでありますと、お互いにものをやつたり受取つたりすることが相互のように言われましようが、今回の援助のような相互性のものが基調であり、かるが故にMSA援助は強いのじやないかと思います。その精神を謳つたのは私第一条と解釈いたしますので、自由諸国家の防衛力を増強するということを大体前提に謳いますと、アメリカ日本援助する、日本も場合によりましては不用になつた物資その他について第三国に送り得るものをアメリカ協力する、こういうことでございますが、親の協定アメリカが他国と結んでいるMSA協定になると思います。そういうところに日本協力しますということをここに示したのでありまして、それがほかの自由諸国家の安全を保障し、それがアメリカの安全を保障するというアメリカのほうから見たわけでございますが、そういう点から見まして、相互防衛援助という言葉が広く第三国にも適用するようなまあ一つの原則を立てまして、この原則が実はMSA援助を受けております各国の援助の原則には皆謳つてある。その理由は申しましたように自由諸国の自分の国を強めることがほかの国を利益することになるし、要らなければほかの国へ廻してもいいのじやないかという精神を謳つたのであります。従つてアメリカのほうを中心としてMSAの各国援助国の間に協力し得る目標を作つたのが第三国に対する援助の精神であると思います。
  119. 高良とみ

    高良とみ君 もう一遍確めておきたい。そうすると今度の相互防衛援助条約というものは日本自衛力を増強するというセルフ・ヘルプの方面に力が入つているのじやなくて、相互ミユウテユアル・エイド、あちらの原文に書いております通りそのほうに力が入つて、両方とも大事でありましようけれども日本にこういう資材装備等をくれることが直ちに戦略的な態勢に入る、これがむしろ相互安全保障条約の本当の精神であるというように今御説明になつておりますが、であるから第一条にこれが来たんだ、こういうふうに考えて間違いございませんね。
  120. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 高良さんがおつしやつたのも実は順序を変えて頂きますと私の申上げようと思つたのもそこなんであります。援助アメリカから受けます国が自衛力を増強する、そこでその国の安全は保障されて行く、結構なんです。その上にその国の安全が保障されることは自由諸国家の安全が保障されることになり、それはアメリカの安全を保障するということになる。その点について相互的である。従つてその関係上自国の自衛力に必要でなくなつ兵器でほかの国が利用するものであれば、日本としてはそれを分けてやつても差支えがない、こういう間接的な意味で第二義的には他国の安全保障になりますが、一義的にはやはり自国の防衛であり自国の安全であると思います。
  121. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この細目取極ですが、これは現在もうすでに細目取極なるものが大体まとまつているのかどうかということが一つと、それから今後細目取極をする場合に時期的にはどうなるのか、例えばアメリカ予算は七月なら七月から出発してきまる。それに照応するようなものは日本では明くる年の三月頃きまるというようなことになると、さつき問題になつたズレが出て来て時期的にいつてどこで一体この細目取極なるものが国会の審議を侵すことなしに作られるようになるのか、その辺の組合せはどうなりますか。
  122. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 細目取極はアメリカのほうの予算を主に考えますと、例えば初年度は本年の六月三十日までにこの細目取極ができませんものは来年度のアメリカ予算になつてしまうわけであります。従つて日本といたしますと、四月一日に会計年度が始りまして、六月の末までにアメリカと細目取極をしてできたものだけが初年度の援助として受けられることになります。次年度のアメリカ予算は七月から実行になりますが、日本のほうはそれを本年度でなくて又改めて協定を結ばなければならないことになりましようから、それを来年受けますのは、又来年七月に新らしく交渉をして細目取極をつけることになります。アメリカの細目取極は何も一遍に作る必要はございませんで、手続、条件文その他種類等を謳つた表を作つて、丁度艦艇貸与のときに作つたような形式で作つてつても差支えないと存じますので、例えば航空機を何機どういう条件でいつどこで引渡す、それに対しての条件は左の通りということこのMSA協定の精神によつてきめてもいいわけです。初年度は六月三十日までに受けませんと、来年度のアメリカの会計年度の予算の中に盛られたものを改めて受けることになります。今のところ細目取極につきましては一つもできておりません。  日本で御存じの通り保安隊がアメリカに期待量を出したのでございますが、アメリカ側から大体につきましては一般兵器につきましては差支えなかろうと言いましたが、航空機特に海上の船につきまして回答がまだございませんので細目取極ができておりません。
  123. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その細目取極は、そうすると初年度のやつは今から六月末ぐらいまでに作れば作るわけですね。第二年度のやつはアメリカのほうの予算はすでに七月にきまつて七月から出発する。ところが日本の次のやつはきまつていない、来年の三月でなければきまらない。そうするとやはり二年度の細目取極は又来年の四月から六月までの二カ月間に作らなければならんというようなことに逐次なつて行くのかどうか。
  124. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 日本側で援助を受けましてその援助自体に対して予算その他を伴うということになりますと、日本予算は初年度は来年三月まできまつているものでございますから、これを動かすような細目取極はできないと思います。予算面に影響がないものでございますとアメリカ予算を作つてしまいまして協定文があるわけでございますから国会の予算審議権その他を侵すことなく日本側では細目取極ができることになつております。
  125. 高良とみ

    高良とみ君 先ほどの私はこれは誤解したくないと思うのです。正しくこれを読みたいと思うのですが、先ほどの私の申しましたことをもう一遍はつきりしておいて頂きたい。  つまり日本自衛力を増強するそのことそのものにおいて間接的に自由諸国の防衛に寄与すると、こういうふうな意味と、そうでなくなおその上に不用になつた武器とか或いはそういうものを第三国に出し、又その上に日本から日本の公務員を技術の教授とし、或いは武器の使用法或いは作戦について送るということになりますと、それからこちらもたくさんのパイロット、地上整備員等を送るということになりますと、私の申しましたやはり相互防衛というほうがやはり同じくらい強いのではないか。日本自衛力を増強するということは、即ちもうすでにそういう戦略的な態勢の中に入つてしまつておるのであつて、その上に更に第三国に対するそういうストラテジツクな態勢を作るということがここに明らかに書いてあるように思うのですが、そういうふうに読んでは間違いでありましようか。同じウエイトがかかつていると思いますがどうですか。先ほどの御説明で、相互防衛ということはそういうことであるというふうにおつしやつたように思うのですが。
  126. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) このウエイトのつけ方につきましてはいろいろあると思いますが、私ども協定を交渉いたしましております際は、日本防衛力を増強しこれに対して援助を受けるということを第一義的にしたことは勿論でございます。ただそれがアメリカの利益になるから相互であつて決して何も日本だけが得をするのではなくてアメリカも大いに得をする。こう考えますが、日本の立場に立つてみるとやはりこれは日本の防衛を増強するということが主になる。その結果間接的にはアメリカの安全にも自由諸国家の安全にも役立つことが結構でございますので異議はございません。こういう意味で受けたつもりであるわけでございます。ただ高良さんのおつしやつた点から見ると反対になるかどうかという点、アメリカから見ると正に反対になるわけで、日本の防衛を増強することは即ちアメリカの安全の保障になりますのでアメリカとすればそう考えるだろうと思います。従つて第三者的に御覧になれば日本アメリカとの両方とくをするのではないか。而も片つ方から片つ方に援助をするということが片つ方だけの得でなくて両方の得になる、即ち相互の問題ではないか、こういう御議論であるとすれば正にその通りでございます。
  127. 高良とみ

    高良とみ君 私の言うのはそういう意味ではございませんで、「およびこの協定の両署名政府が各場合に合意するその他の政府に対し、」というのをこれから取つてしまつたらどうなるかということです。それをお入れになつたという意味はどういうところにあるかというのです。
  128. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちよつとその御答弁の前に。その点は私も若干疑問を持つたのです。今高良さんのお尋ねの点の一番問題点は、第一条の「他方の政府に対し、」ということは日米のどちらかを言う、ここで切れてしまつて、日米相互間のことが重点になつて、かれて、それから第何条とか、或いは附属書とか何とかそういうところに第三国の問題が出て来ればこれは理解し易いが、ところが「他方の政府に対し、」として直ぐ「および」と第一条の第一項の而も一番前面にこれが出て来たところに問題があるということを高良さんが指摘されている。私もその点は若干疑問を持つてつたのです。そういうことで御説明されたらわかると思う。
  129. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 欧米局長の申されます通りアメリカ側の考えから申しますると、相互安全保障法の一番初めに書いてありますように、国際平和及び安全保障のために友好と、これは複数でございますが、「友好の国々に援助を与えることによつて、」と書いてあります。これはこの程度で、先ほど問題になりましたこの前文の第一項でも「国際連合憲章の体制内において、同憲章の目的および原則を信奉する諸国がその目的および原則を支持して個別的および集団的自衛のための効果ある方策を推進する能力を高めるべき自発的措置によつて、国際の平和おいび安全保障を育成することを希望し」と目的が書いてございますから、アメリカから見ましたら何も日本自衛力だけを増強することを狙いとしてこの協定を締結するのではなくて、同じ志を有する国々の自衛力を全般的に高めることが自由諸国全体の利益であり、従つてアメリカの利益であるという基本的の考え方であることは私は明らかであると思います。そこでこの第一条の規定も、これは英仏のような国の例を考えますと、まさにその通りアメリカ側はイギリスだけに或いはフランスだけに援助をやるというのではなくて、イギリス側では又ジエツトエンジンの飛行機を作つて第三国の援助のものを作る。オランダのごときも飛行機のオーバーホールのための援助を与えておりまするから、そういうようなのはむしろ普通なんでございます。ただ日本の場合には先ほど欧米局長が申上げましたように、今の日本の経済力から申しまして英仏のやつているような意味相互的なことはできませんので、ただ不用になつた武器を援助として日本から出すということか考えられる。現在の段階においてはその通りでございますが、つまり現実にできないということとアメリカの理念、従つて協定の建前と法律上の建前として規定するということと距りがありますために、高良さんのお話のような御不審が起るのだと思いますが、MSA協定の根本の考えは私はそこにあるのだろうと存じます。
  130. 高良とみ

    高良とみ君 その建前はそうであるということはよくわかるのでありますが、そのほかの国の相互防衛援助条約を見ると、必ずしも「合意するその他の政府に対し、」ということは書いてないのがあるのです。そういう点でどうしてこれを特にお入れになつたかということが一点。  それから相互防衛援助条約といいましても、それが非常にたくさんの、今の条約局長のお話ですと複数であるということでありますから、マルチラテラル、そうすると日本がこの援助条約を受けたと同時に、自由主義諸国、例えば韓国とか仏印諸国に対してもこういう英仏でやつているような、そういう状態にあり得るということはこの条文から言えばあり得る。日本がそれだけ軍需生産が盛んになつて来たときに、近い将来にあり得ると了解しておくほうが事実じやないかと思うのです。どうでしようか。
  131. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 只今のお話の各国との例でございますが、まあ二、三未開発地域その他につきまして、小さい国で或いはこの協定を欠いているところがあるかも知れませんが、はつきりいたしませんが調べてみます。私どもが承知いたしますところでは、MSAのひな型と称すべき各国の例には少くともこの第三国に対する問題を一応謳うだけは謳つてあると、こういうふうに了解いたしております。  それから将来これが大量に日本から出る品物その他を第三国に援助するということになるかも知れないというお話でありますが、私はどうも交渉の過程においてはそういうことを全然考えておりませんでして、結局やはりMSA援助というものは、アメリカ側が他の諸国といろいろの援助協定を結んでおりまして、そこに日本からできる何かのものがある、不用のものがあつたときに援助するというときにはアメリカを通じての援助であつて日本が直接第三国に対して援助協定を持つていないのでありますから援助するはずはあり得ないと考えます。従つてこの点は一応アメリカという大きないわばフアネルを通しまして流れて行く援助の形でございまして、アメリカから流れるというのが実際上の立場から正しいのじやないかというふうに考えます。従つてここにございます規定は、日本から将来そういうものが第三国に行くということを大して予期いたしません。アメリカ考えるなら勿論又条件もきめるのでございますから、日本は有償でなければ出すはずはない。今の段階においてはない。将来もそういうことはなかろうと思いますので、有償でございますが、それはまあ売るとか何とかいう形で特にアメリカとの話合いをするということになりますから、私はこの点につきましては、この協定の中に規定が書いてあるそこに明らかなるごとく、ここでは一応各国の型に従う、特に不用のものについてはアメリカが第三国に転換するものを一応日本承認して出すと、こういう意味では協定を結んで自由諸国家との協力を結んでいるということになると思います。
  132. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、MSAの向うの原案にありましたその形を大分ほうぼうにとつておるようでありますが、この「合意するその他の政府に対し、」というときには、日本の実情からそういうことが有償であつても無償であつても余りないとお考えなつたので大した問題になさらなかつたと了承いたします。ほかの原案を見ましても、やはり極く簡単にアヴエイラブル・トウ・ジ・アザーと書いてあるのでありまして、非常に軽く扱つているのかも知れませんが、やはり私としては私なりの重要性を見ておるわけであります。併し御説明は大体了承いたしました。
  133. 中田吉雄

    中田吉雄君 この会計年度の関係なんですが、そうすると、日本の二十九年度の会計年度から受けるやつはアメリカの一九五三年から五四年で、このあとアメリカ議会を通つた五四年から五五年のやつは日本の三十年度のですか、その関係はどうなんですか、もう少し。
  134. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 協定は御存じの通り一応毎年受けられる形になつております関係上、若し予算その他で国会の承認を受ける必要がない細目協定ができるならば、七月から始まりますものにつきましても、日本が昭和二十九年度の会計年度に受けても差支えないと思います。
  135. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 若し予算を伴わなければという御説明をしておられるのですが、そういうのはむしろ非常に稀なケースで、そうではなくて一般には予算を伴うことになるのですから、そういう通常の場合には細目取極はどういうことになるかということをお聞きしたい。
  136. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 私は予算と特に申上げました理由は、例えば顧問団がございまして訓練する場合を考えますと、顧問団は来ている数はきまつているわけでございます。従つてそれ以上例えば保安庁予算なり何なりをふやさなくても訓練は受けれるわけでございます、そこにいるのですから。従つてそれは何も一九五三年から一九五四年までの向うの援助の内容でなくても、来年度のものを日本が今の会計年度に受けても差支ないわけです。そういう意味でつまり来年度のアメリカ予算を本年度の日本の会計年度に受けるということがあり得るだろう。併し一般的にはやはり原則として両方が、国会の承認を得た保安庁予算があり、向うの五四年、五五年の予算と見合つて、今年の十二月から来年の三月あたりまでに保安庁予算がきまつて日本の昭和三十年度の予算に、向うの五四年度から五五年度の会計年度を受けるというのが正しい行き方だろうと思います。
  137. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは十二月から三月ぐらいまでにきまるのは、保安庁として内部的にきまるだけで、国会がきめるのは三月末までに大体きめるわけです。そうすると、国会の審議権を無視することなしには四月から六月までの間でなければ細目取極はできないということになるわけでしよう。そうすると、今度ところがアメリカのほうはすでに七月からきまつている。それと日本予算できまつたものとを合せようとすれば、四月から六月までの間だけならば、細目取極は、例外的なものは別です、大宗的な主になるようなものはその二カ月の間にしかできないということになるのじやないかということです。
  138. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 細目取極と書いてございますが、デテールド・アレインジメンツで作るものとも限りませんし、又いつやつてもいいわけです。ただ大きな問題は大体両方の予算がきまります関係から、四月から六月末までということになると思いますが、併し本年の七月一日以降米国の会計の新年度できまりましたものの援助を受けるに当りまして、日本の国会で御承認を経ました予算の枠にはみ出ないものは、欧米局長の言います訓練を受けるとか、或いは別にこれを受入れるために規則を作つたり、人員をふやしたり、その必要のないものを早目に受けておこうということを、デテールド・アレインジメンツで取極めるのは又差支ないわけでありまして、大部分は三カ月の期間にきまりましようが、随時取極めて一向差支ないわけでございます。
  139. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは私も前から提起しておつた問題ですが、第一条の第一項はやはり基本的なアメリカ考え方を現わしておるので、今までの安保条約の下における日本の防衛、或いは安全保障考えというものと非常に基本的な相違を示した基本的な考えはここに現われておると思うのです。それはつまりいわゆる相互防御援助である。それには勿論日本自衛力を持つことが即アメリカの利益であるという意味の土屋局長のお話なんです。これは勿論そういうことも含んでおるでしようが、そのほかに今条約局長説明もあつたように、アメリカMSAを受ける、いわゆる自由国家群との個々の結び付きと、この第一条の、第三国が入つて来るこの考えを入れることによつてやはり日本アメリカ安全保障考え方からもつと広い、アメリカを頂点としつつ、併し、いわゆる自由国家群相互安全保障という基本的な考えをやはり承認した大きなポイントである。この点について高良委員からもなぜこういうようなところに突然として第三国が出て来ておるのかと、こういう御質問が出るのは当然なんです。そういう意味でただ単に現状から見れば、それは恐らく使い古しの兵器を、而も日本とその国とは面接にマルチラテラルな防衛安全保障条約がない場合に、結局アメリカがくれる、その国にやつてやるんだという関係になるでしようし、物質の内容からいつて援助の内容からいつても恐らく大したものを送ることにならないとは思うけれども、この条約の基本的な考え、及びアメリカMSA考えそのものの基本をここに承認しておるということは、何と言つて安保条約のいわゆる片務的な二国間の集団安全保障体系から一応双務的な二国間の安全保障体系、即ち標題に言つておるような相互防衛援助という思想に発展し、更に第一条の第一項に第三国を入れた点においてやはり将来も多数国間川の自由家群の集団安全保障ということに一歩踏み入れている。これは大きな私は意味を含んでおるのではないかと思うのです。そのことをミニマムとして、決して何でもない援助といつても殆んど使い古しの兵器、或いはサービスといつても大したことではないのだというふうに説明して行かれるのは、私はこれは余りよくないのではないか。やはりこういう大きな、そのよしあしは立場々々によつて、人によつて逢うと思うけれども、そういう大きな一つ安全保障考え方、或いは外交の基本路線の一つの進展というか変化というか、これはやはり第一条の第一項に現われておると私は考えるのですが、この点はどうですか。
  140. 下田武三

    政府委員(下田武三君) まさにお説の通りMSAの基本理念と申しますのはマルチラテラルなものだと思う。そのマルチラテラルなMSAというものを現実に約束する場合には、各国と、丁度アメリカを頂点とする房みたいなバイラテラルの房を一ぱい下げておるわけです。基本理念はマルチラテラルであるということは私は明らかだと思うのです。ここで御注意を願いたいのはこのマルチラテラル制に日本が突き進んだことはこれが初めてではなくて、先ほど申しましたように、平和条約で第五条の国連憲章を謳つたときに、実はこのマルチラテラル制に歩足をつつ込んでいるということと、もう一つ御注意を願いたいことは、このMSAのマルチラテラルというのは物的な援助の事実ということだけでしかないということです。つまり海外派兵とか兵力の援助などをインヴオルヴするようなマルチラテラル制はこれからは出て来ないという点が私は非常に重要なポイントだと思いますので、この二つの点を申上げつつ、基本的な点につきましては曾祢さんのおつしやつた通りであると思います。
  141. 曾禰益

    ○曾祢益君 平和条約を引用されて集団安全保障の制度というか或いは観念を一応容認したのは、そのときからだというようなお話だつたと思うのですが、これは私は多少違うと思うのです、正確に言つて。平和条約の第五条でしたかに国連憲章の一部を引用しておりまするが、更に日本安全保障について個別的及び集団的な自衛権、五十一条の権利を明確に承認した、これは確かにある。併しこれは一つの権利として日本にそういう安全保障の態勢をとつていいという権利を与えたものであると共に、日本国連憲章の精神に賛成する、国連憲章の精神そのものは勿論昔のようなスイス型の孤立的ないわゆる中立という考えじやないのです。確かに集団です。併しその集団保障の中にもいわゆる憲章五十一条、五十二条等のいわゆる地域的取極というような意味NATO式の集団保障というものを、日本は権利は認められておるけれどもそいつを行使するかしないかということは、これは全然平和条約にきめてないのです。而うして安保条約においては確かに一つの地域集団保障体制に入つているけれども、これは内容的にはつきりと片務的な片面的な義務であるということが一つと、いま一つは飽くまで二国間のものである、過渡的なものである。こういう性格のものであつた。併しMSA協定を受入れてこの条約を作り、あの標題と、それから前文、第一条第一項、第八条、こう来れば、これは何といつても平和条約安保条約を結んだときのいわゆる集団保障というものとは違つた観念に一歩踏み入れたということに私はなろうと思います。併しこれは議論でありますからそれ以上お答えを求めませんが、そこでこの第一条第二項に基く日本の、仮に第三国と言うか自由国家群との防衛援助というか、に対する防衛援助というか、これが極めてまだ装備的な、物置的なものであるということなんですが、それは日本の現状から見ればその通りだと思います。殊に第一条の書き方から見ても、いずれか一方の政府承認することがあると抑えているから、日本承認さえしなければ、いわゆる物質的な援助以外に殆んど、それから一部の役務、これも非常に軍事的の色彩の薄い役務だけに日本政府が絞つて行くであろうということは、これは政治論としてはわかる。併し飽くまで厳格な条約の字句から解釈するならば、これは私も前から指摘して、外務大臣の意見も聞いたのですが、実際役務ということも非常に広い役務もある。サービスのうちにはミリタリ・サービスもあり得るわけです。だからサービスというからそれでいいというわけでもないし、殊に役務その他の援助ということになると、これは純然たる字句解釈の問題から言えば、その前に古いてある装備、資材とは関係のないような軍事的な援助ということだつて、字句そのものからは排除してないのです。であるから政府の御説明はこの字句の解釈としては決して十分でない。従つてそういう点は議事録事において一切そういう誤解のないような十分な措置をとつておられるかどうか。この点を明確にして頂きたい。
  142. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この協定の字句自体からは、仰せのような少くも御疑念が起るということは確かでございまして、それであるからこそ第九条におきまして、安保条約の義務を何ら改変するものではないという枠と、それから憲法の規定従つて実施するという二つの大きな枠を入れたのでございまするが、只今指摘になりました問題があるからこそ、初めてあの第九条の二つの枠が私は活きて来るのだろうと、そういうように考えているわけであります。
  143. 曾禰益

    ○曾祢益君 それだけではやや心もとないのは、特にこれはもうそのときに、前から議論した通りですが、殊に安保条約を変えるものではないというような条項は、幾らそうお書きになつても、安保条約そのものを変えているのではないけれども安保条約にないような自衛力増強の義務を、この条約そのもの、この協定そのものによつて認めているのだから、これはいわゆるエスケープ・クローズにはならないという解釈も成立つのです。従つてその点は議論になりますけれども、やり第一条そのものの解釈等に明確な議事録をとつておられるかどうか。おられないで、やはり第九条だけでエスケープするという以外に、はつきりした救済方法がないかどうかという一点だけ、もう一回はつきり御説明願いたい。
  144. 下田武三

    政府委員(下田武三君) そういう議事録その他は全然作つておりません。
  145. 高良とみ

    高良とみ君 先ほどの御説明によりますと、この役務を出すような場合には、新らしく又米国協定或いは契約をして、そうして日本の保安隊の将校等が公務員として第三国へ出張するようなことを考えておられるのでしようか。そういう出張は契約というようなものなくしてはそういう人は出ないのでしようか。その場合は米国だと思うのですが、或いはその他の国、まあ原文をさつき読み直しましたら、こちらの日本のほうのは、ほかの政府と書いてありますが、ほかの国の協定ですと、トウ・サツチ・アザー・ガバーンメンツと複数に書いてある。そういう場合はどういう、ほかの国との協定なくしては日本の公務員は出張しないのですか。或いはこの第一条でそのまま出られるのですか。
  146. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) この原文でもございますように、日本アメリカだけがその第三国と取極をするわけでありまして、両締約国と申しますのは、日本アメリカだけでございまして、従つて只今のように、第三国に役務その他で公務員が出るという場合になりますと、協定という形で行きますか、取極という形で行きますか、いずれにいたしましても何かの了解事項を取付けなければいけないわけで、それはここに申します細目取極とは違つた何かの了解を取付けて、それによつてはつきりしたものにして出て行くということになるかと思います。
  147. 高良とみ

    高良とみ君 その場合には、先ほどの御説明ですと、すべてのものは米国を通して第三国へというお話でありましたが、若しこの房のように多くの国とマルチラナラルに、安保条約、この援助条約を結んでいる場合には、日本のまあ保安隊の将校、自衛隊の将校ですか、それが公務員として第三国へ行くときは、米国を通して、米国日本とが協定を結んで、そうしてどことかの国へ教えに行つてくれという協定を結んで、そうするとやはり米国の一部の人みたいに雇われた形で出張するような結果になると思うのです。その米国と、今度は韓国なりよその国と条約協定すればいいのだろうと思いますが、契約すればいいのだろうと思いますが、それで間違いございませんですか。
  148. 下田武三

    政府委員(下田武三君) そのような場合には、米国日本の間には、この第一条第一項に基く細目取極ができるでございましようし、援助を受ける第三国と日本の間にもやはりこれは国会に御提出するようなフル・スケールな条約があるかどうかこれはわかりませんが、やはり何らかの話合をまとめまして取極ができることに相成ると存じます。
  149. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 さつきの曾祢君の質問は私は至極御尤もだと拝聴しておつたのです。一体若しこういう法律の公文を書くときに、条約文を書くときにですか、アザー・アシスタンスなんてのは、これは非常に注意して書かなきやいかんもので、そういう抽象的なものを書く場合でも、その前置として、或る具体的な実例を挙げて来て、そうしてそれと類似のものというふうに書くか、或いはこれに何らかの抽象的な制約を付けておかんと、ただこのアザー・アシスタンスというのでは、これは非常に誤解というより、これはむしろ客観的にこの用語を解釈するときに非常に問題が起る事柄だと思うのです。それだから私は曾祢君の言われることは尤もなことであると思うのです。いわんやそうしてそれをその具体的なことをきめるのは、これは政府にここは一種の委任規定になつて、具体的には政府できめるということになつてしまいますからね。この点は私は実はもう少し書き方があつたのじやないか、まあ政府説明されるような趣旨であるとすればですよ、書き方があつたのじやないかしらという感想を持つ。  そのほかには、私が併し今質問したいと思うのは、ちよつと前置が長くなつちやつたのですが、さつきから問題になつた第三国との関係のここに出ておる問題ですね。これはアメリカの国内法などでこういう思想を入れて書いてあるならそれはよくわかるのですがそれが条約に出て来るから、而もこの基定元の仕方が、ちよつとこれで一体この規定の法的効果がどこにあるのか。つまりこの規定を置いた場合と、置かん場合の相違とが一つどこにあるのか、そこをどう見ているのですか。これがこの日米相互間の場合だとはつきりしていますが、その法的効果というものは、これを規定した結果が、どういう権利義務の関係が発生するかということがはつきりするのですか。一体この第三国のそれに関するこの条文の結果が、どういう一体法的の効果というものをこれによつて発生するのですか。
  150. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは私ども実は協定文を制定いたします際などに各国の例などを考えてみまして、各国でこういう字句を使つているわけでありますが、例えば英国、フランス、そういつた国が、一体どういう自国からの援助というものを第三国に出しているかという点を見たのですが、どうも我我が見た限りにおいては、めぼしいものはございません。
  151. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いや、私のちよつと実例を言うのは、実際上どういうのを出しておるかという点は又別の問題であつて、これの結果、法的な効果がどうこの規定によつて発生するのですか。権利義務の関係一体これはどうなるのです。
  152. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 私どもはこれは援助を供与する政府、つまり日米の問題を考えますと、日本が仮に第三国に援助を与えようということになりますと、日本政府がオーソライズしたものを与えるという場合において、この問題は初めて起つて来るわけなんであります。従つてどもはこれはやはり道義的にこの第一条に持ち込むことによつて先ほどからお話がございました自由諸国家間の安全保障に対する共同的な興味というものを謳つたということが題目であり、よく言えば実際上の協力の精神を示したものがこれであろうと思いますが、それから起る実際的な効果ということは、お話のように法律的にこういうことを規定したという精神をとつておるのじやないかと考えたのであります。
  153. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 もう少し私の質問しようとしているところを分けてくだいて言いますとね。この第三国に対して日米のいずれかがこういうことを援助しようというときは、この規定の結果が合意せにやならんということにはならんでしよう。それからもう一つは与えるという場合には、更にその援助の内容、条件等について、日米の両国間に細目取極をせにやならん。そこのところどうなんです。そこのところはいずれもないとすればこれを一体設ける実益というものはどこにあるのですか。法的の面はどこにあるのですか。
  154. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは丸で何と言いますか、第三者のためにする契約みたいに、第三国の意向もわからずに、こういうようなことを書いておるのが非常に奇異な感じを与える点になるのでありますが、その立法理由は、先ほど来申しましておりますような、つまり援助を受ける日本だけがよければいいのだというのでなくて、日本援助を受ける、又両国で合意した第三国の政府に対しては、やはり援助を与えようということを書いて、先ほどMSAの基本面たるマルチラテラル制にミートしようという、これは主としてアメリカ側の政治的な狙いに合わせるために、こういう規定が各国の協定にも前例として入り、又今回日本の場合にも入れたのでありまするが、それならばこれがない場合とある場合との法律的差違如何という問題になりますと、ここに第三国といたために、この規定の自動的適用として、オートマチカルに第三国に行くということにはならない点では、この規定がなかつた場合と私は変りないだろうと思います。つまり御指摘のように各場合に合意した上で又あの一々細目取極を作つて初めて行くわけでありますから、ちつとも第三者のためにする契約のような、オートマチックな効果というものはこれからは出て来ない、そういうように了解しております。
  155. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 第三者のためにする契約などとはおよそ決してそこまではまだ行かんのだが、この規定がある結果、法的に例えばアメリカが国民政府援助しようというとき、日本と合意をせにやならんということもないし、又そのアメリカが国民政府等に対する援助の物資等について、日米相互間に細目取極を結ばなければならんということもちつとも出て来ない。又逆に日本が朝鮮に援助するという場合、それはアメリカにこの規定があるからと言つて、何もアメリカに相談もせにやならんこともないし、それから合意せにやならんということも一つもないでしよう。そうするとこれはどういう場合に一体適用するのですか。これを置いた効果は何にもなくなつてしまうのじやないか。
  156. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 効果は政治的と申しますが、先ほど申した基本理念との適合を図つたというところにあるのだと思います。
  157. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 基本理念と言われるが、つまり何ですか、第三国に、例えば日本が朝鮮等第三国に対してこういう援助を与える場合には、成るべく相談してやらにやいけないのだというようなことでも、ここから多少でも引張り出そうというような含みがあるのですか。
  158. 下田武三

    政府委員(下田武三君) それは実は正直に申しますと、そういう意図で入れたわけではないのでありまするが、併し法律解釈としては、アメリカが韓国、或いは台湾その他アメリカが欲しようとするところに与えようと思いましても、日本が合意しなければ、そうして細目取極を作らなければ行かないという点で、つまり消極的な規制を加えたという意味では法律的な効果はあると思います。
  159. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういうことまで考えているの、これは。
  160. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 正直に申しまして、この起草に際してそういうことまで考えておりません。
  161. 高良とみ

    高良とみ君 日本語のほうにはそういうふうに訳してないのですけれども、ほかの国のも見ると、個々の場合に言うのは、十ぱ一からげのマルチラテイラルでなしに、個々の場合に合意することもあるべきその他の国というふうに書いてありますね。この日本とのもありますが、さつきアザー・ガヴアンメントと書いて、アズ・ザ・ツー・ガヴアンメント・シグナトリイ・ツー・ザ・プレゼント・アグリーメント・メイ・イン・イーチ・ケイス・アグリー・アポンと、そういう意味をどうして日本語でここにお現わしにならなかつたか。
  162. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 日本語でも「各場合に」といとうころでイン・イーチ・ケースというものに訳しております。
  163. 高良とみ

    高良とみ君 それだけですか。そうしますと今杉原委員から御質問になつ通りに、これがあつても大した効果がないとこちらは思つても、先ほど説明にお使いになつた、日本の平和条約で、相互安全が、まあ集団的保障日本が同意したことを、その条約に自分たちは調印したのだから、だからこの日本が武器を持つているならば、必要な場合には合意しないはずはないといつた、今の御説明なつたそれを、今度は台湾のような国が逆手にとつて、もう講和条約をサインしたときに、もう日本集団安全保障を承知したのだから、将来我々は日本から軍事援助があると思つてサインしたのだ、こういう場合が出て来るのじやないですか。そういつた場合に、合意する、権利を保障されていないのじやないかと考えていいのじやないでしようか。それともあなたの御説明のように、個個の場合に、「各場合に」とここにありますが、合意するかも知れないというような意味を持つているのですか。弱い意味ですか。それともどうなんですか。
  164. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 第三国に関する字句がございません場合に、アメリカから、例えば韓国に一つ日本で要らなくなつたものを援助としてとらんかと言われた場合に、日本としては、いやとんでもない、そんなことはこの協定で全然予想していないのだと言つて相談にものらないことができると思います。併しここで「各場合に合意する」ということを言つております以上は、合意ができるかどうかは別といたしまして、アメリカ側からこの問題を提起された場合に、この協定の枠外の問題だとは言えない。少くとも御相談には応ずるということを、これはいたさなければならないと思うのです。
  165. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 随分時間がとるようですけれども、この調子で進んで行くとそれ以上の御質問ですと、いつまでか見当つきませんが。
  166. 高良とみ

    高良とみ君 もうこれでおしまいにします。  併しここに第三国を持つて来たということは、本協定が重要であるので、又非常に重要であると思うのです。私どもはこの第一条を読んだときに、この間大臣に御質問したときに非常に驚いたのでありまして、こういうところに国民の案外知らない、又私どもも単なる日米間のと思つているようなところに間違いがあつたと思いますので、今の御説明を伺いまして、拒否もできない程度に我々のそこに義務の一つができていると了解しまして、御説明私としては十分伺いました。
  167. 羽生三七

    ○羽生三七君 次に移る前にちよつと注文だけ言つておきたいと思うのですが、これは本来大臣に言うべきことですが、仮に日米間だけでなしに、第三国に何らかの関係を持つ取極が行われる場合に、行政部限りの単純な取極でなしに、若し問題が非常に重要である場合には、必ず国会の承認を得るような形でなければならないと私は固く信ずるわけです。だからこれは質問ではありません。そういう性格のものだということを意見だけ申上げております。
  168. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちよつと一つだけ。この援助の供与及び使用か国連憲章と矛盾するものであつてはならないという規定になつているのですが、これは具体的にはどういうことを意味しておられるのですか。矛盾するようなものというのは、どういう場合を言うのですか。
  169. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これはこの国連憲章の、平和維持及び国際協力の原則に合致するように実施するということを漠然と書いたものと了解しております。
  170. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では第一条第一項はこのくらいのことに。
  171. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 アメリカのほうもこの援助の供与は、アメリカの国内法のMSAの一連の関係法規、それから予算によつて実行されることになるわけですか。将来まあいろいろ援助の条件等も勿論変化があると思うのです。その変化があつてもこの条項があるために、この協定としては何らの、何といいますか変化があつても、この条項があるために条約上の義務には変化がないといいますか、そういうふうにこれを読んでいいのですか。それとも或る程度変化があれば、それに対応する当方の義務といいますか、これも当然変つて行くというふうにこれは読むべきものなんでしようか。
  172. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 今後どういうふうに変化があるかわかりませんが、若しそれが日本の義務に新しい義務を生ずるとか、或いは今までの義務と非常に性格の異なつたものになるということになりますと、日本としては当然これを検討した上で受けるか受けないかをきめなければならないのであります。従つてここは簡単なる手続だとか、そういう条項に日本は一応従うとかいう原則を立てただけであります。従つて本質的なものの変化がございますと、日本はこの協定を継続するかそれとも継続しないか、受けるか、こういう三つの問題について考えなければならない問題と思います。
  173. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 こちらのほうの義務といいますかそういうようなものに何も関係なく、アメリカとしては、この条項のために国内的にどういう変化があつても、立場はフリーだという趣旨なんでしようね。
  174. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この後段はアメリカ政府がこの協定従つて援助を与えようとする場合の枠でございまして、一番主たる狙いは、援助すると言つても年々の予算の額からしてきめられているものでありまして、そのアメリカとしては制約を受けるぞということを念のためにここで謳うのが狙いだと思います。
  175. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 この条項はあと出て来ます九条の例の二項の憲法の条章に従つて行う、これは日本側であります。日本側としても国内法は国会によつていろいろ変化するのであります。予算も国会の審議如何によつてはいろいろ変化がある。その変化はやはり当然のことであつて、この協定から来る諸般の義務も、あの条項によつて当然変化があつても義務の違反にならないといいますか、こちらの立場はフリーだと、これと対応するように読んで差支ないのですか。
  176. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 仰せの通りでありまして、憲法の規定従つて実施するということは、援助を幾ら受けてもそれを入れる倉庫を建てるためには国費の支出を要するわけでありまして、憲法八十五条の支出をするには国会の議決を経なければならない。又その点のみならず第三条の秘密保持を日本が確保するために罰則を設けるとしても、刑罰を定めるには法律を以てしなければならないという憲法三十一条の規定の一枠になつておりまして、日本としては第九条でこの同じような問題に対してすべてまあ枠を付けて留保しておるわけであります。
  177. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 一条の一項はそれくらいにいたしまして、随分時間をとりましたが第二項に移ります。
  178. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 一つだけ、一項について。それは事実問題ですが、ここにこの資材というような点ですが、本年度に資材として今具体的に援助を受けるということは予想されていないのか、又日本側から要望している中にもそれは含まれていないかどうか。
  179. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 本年の援助の内容には資材で含まれるものは大きなものはございませんが、小さなものは例えば通信機に対する資材、これは全部もらうわけではございません。日本が必要なものでアメリカでしかできないもの、これに対して資材の要求が多少あるように承知しております。
  180. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では第二項に移ります。
  181. 高良とみ

    高良とみ君 「両政府が満足するような方法で」というのは、その考え方がいろいろある思うのですが、平和及び安全保障を促進するための満足するような方法というのはどういう限度があるのですか。例えば日本側が、日本予算及び人員で、これでこれ以上に訓練その他もこれを使えないといいますか、日本人の体力が弱いのでありますか、どうもこの使い方が不十分であるということもあり得るでしようし、そこに折衝の余地があるのでありましようか。効果的に使うと言いましても、これは単なる儀礼的なものか、これを調整する機関はどこのどういう機関がこれを調整しますか。
  182. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは援助を受けます際に、日本はこういう防衛計画でありこういうものがほしいというのに対して、アメリカがそれならばこれだけの数量をやろうということで出すわけでありますから、アメリカといたしまして渡した援助最初の話のように使われればそれで満足のはずであります。日本といたしましては、要求したような資材若しくは兵器日本に来ますと、それで日本は満足してそれを使うということになるはずであります。従つて、これは常識的に通念的に見ましてアメリカもどうもそういう目的でやつたのじやないのに、日本がほかの目的に使うとか、全然使つてくれないというときには満足しないということになりますが、そうでない限りにおいては、まあ満足だというふうな断定を下すべき材料だと思います。判定は勿論両方の国にかく満足であるかどうかということをきめるわけであります。軍事顧問団がおりますのでアメリカ側の意見は軍事顧問団が表明いたしましよう。日本側はこれを受けて反駁なり或いは意見の開陳があるということはあり得ると思います。
  183. 高良とみ

    高良とみ君 併し顧問団はいつまでもいるわけではないでしよう。大分数が減つていると思いますが、ここに「方法で」と書いてあるのですから、それはずつとその役務がある間は、それに基いて何かの、日米合同委員会が安保条約と共にあるがごとく、何かそこに委員会か何かがなければならない。それがないとしたならば外交交渉によるわけですか。つまり大使館対日本政府ということになるのですか。それとも自衛隊と向うの軍当局との間に何かがあるのでしようか。
  184. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは「方法」と書いてございますが、英文を御覧頂きますとイン・ザ・マナーで、そういうふうに、というような通俗的な言葉のほうが当るかと思います。そこで外交交渉のあることは勿論でございまして、軍事顧問団は御承知の通り大使の指揮下にございますので、そういう問題についての話合は外交問題としての話合になるわけであります。ただ顧問団がなくなつた場合という御想定でございますが、顧問団がなくなるときはもはやこの協定がないときじやないかと存じます。従つて、過去のアメリカから援助を受けましたものが日本のものになる、この協定がもはや効力を失つたときであり、従つて日本側だけの問題で、アメリカ側からとやかく言われるべき筋合というものはあとに残らないということが多いのじやないかと思います。
  185. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、来年度まで或る一定のものがある。それから援助はもうその先は、武器、完成兵器、或いは資材というようなものの継続は御考慮になつておられないのですか。日本の自衛隊の人員の増員にも十分な装備を行渡つたらそれを以て限度として、この協定が第三国への城外買付等も考慮に入れておられないのでしようか。
  186. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 日本がもはやアメリカから自国の自衛力につきまして援助を受ける必要がなくなつたときには、即ちこのMSA協定が効力を失する時だと思います。日本側ももはや要らないと申せましよう、アメリカもそうだと思います。従つてそういう時期に至りまして、城外買付その他の問題は友好国として勿論ございましようが、これは現在におきましてもMSA協定が域外買付を保証するものではないのであります。従つてその際は全然別個に従来日本MSA援助を受けずして域外買付を受けたと同じように、域外買付を受ける形になるわけであります。従つてMSAとの直接の関連を持ちません。
  187. 高良とみ

    高良とみ君 そこがその満足するということの限度を伺いたいところなんでありまして、こちらは防衛力を十分に満したと思つても、それはそういう複数の安全保障でありますれば、満足の度合がないのではないかというふうにも考える。日本としては二十三万なり三十五万なりの人員をふやし、それに十分な装備をしてもまだ近代兵器としてこれは不十分である、軍艦その他航空機においてもまだ不十分であるというので、どんどん変つて行く兵器の度合につれて来年は新しいこういうMSA援助を、その次には又援助というようなことで、満足するというのがどこで抑えてあるのですか、その点をお伺いします。私の考えが違つているのかしらん。
  188. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 「満足するような方法で」と申しますのは「効果的に使用するもの」とするということの枕言葉でございまして、もう軽くお考え下すつていいのでありますが、要するに働かして赤さびにしちやいかんぞ、そんな方法じやいかんというだけのことでございます。
  189. 高良とみ

    高良とみ君 併し第二の私の申上げた問題のお答えを頂きたいのですが。安全保障と申しましてもこれは人員だけの装備は十分に済んだ、そしてそれでいいというそこが、いつでも保安庁長官あたりからの御説明がはつきりしないので、そこを国民は非常に不安に思つておるのでございますが、経済の一つのメルクマールがあるかも知れませんが、まあこれを言うのじやないのですけれども、さつき局長のお話にはMSA協定が効果を失つてもう三年目、四年目にはそういうものを受けなくなることがあると言われましたが、ヨーロツパのいろいろMSAを受けている国国は依然としてまだいろいろ、もうMSAは済んでしまつたという国の実情を少しお話を頂ければなおわかると思います。
  190. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これはその国の防衛力をどういう目途で増強して行くかということにかかつて来るのではないかと思います。日本の例を取りますと非常に例としては適当でないわけでありますが、ただ現実の問題ですから、日本が毎年増強して行く、数をふやして或る一定の数になつたとき満足で、もうこれ以上ふやさないということもありましよう。その際おつしやる通り近代兵器はどんどん進んで行くのでありますから、従来援助を受けていた兵器はもう要らないので、新しい兵部が要るということはございましよう。そのときには日本政府の満足するような方法における有効なる使用をするための新しい兵器というものの要請をするかも知れません。この際アメリカがその余裕がありその意図があればアメリカの満足するような方法においての援助ということができるわけであります。併し若しアメリカもそれを希望しない、日本もそれを希望しない、こういうときに初めて私はこの協定は効力を失うことになる。本日本の自衛はそれで全きで、アメリカ援助をもはや必要としないということなるだろうと思います。従来援助を受けた仲でもあり、同じ自由諸国間に志を同じうするものでありますから、域外買付を規格その他合せまして、同じ志で行くのでありますからそういう点で協力して行くということは可能であると思います。
  191. 高良とみ

    高良とみ君 もう援助を受けておつた国が打切つてしまつて援助を受けてない国がありましたらお教え願いたい。そういう国がございましようか。
  192. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 今までのところそういう国はないようでございます。
  193. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では第三項に移ります。
  194. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 第三項だけに関連するわけじやなく各条に関連するけれども、「装備又は資材」の供与ですが、供与というのはどうなんですか。贈与なんですか、貸与なんでしようか。この覚書によると有償での供与もある。法律的の性格はどうなんでしよう。例えばその物件が損耗もすれば滅失をする場食いろいろあろうと思うのです。そういう場合借りてあるのであればそれに対する責任も負わなければならんと思うのですが、援助というけれども物件に即して考えるとそれはどういうことなのか、借りるのか、その点はどういうふうに解釈すればよいのでしようか。
  195. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) この協定で話しておきましたのは、この供与というのは全部贈与の意味に我々は了解しております。その意味は軍事援助でございますし、それから有償で受けた場合は特にここに規定してあるように無償の援助、無償の贈与ということを我々要求しました。アメリカ側もそれはこの供与という字をここではそういう意味に使いますということを言つております。
  196. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするとそういう意味での完全の贈与だつたら三が意味なさなくなるじやないですか。
  197. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは御存じの通りアメリカMSAの五百二十四条にある大統領に課せられた義務でありまして、贈与するのでありますけれどもその国がもらつた結果もはや使わなくなつちやつたら、やはり屑鉄にするとかいろいろのことでアメリカに返してやる。その規定がございますからその規定を活かしてここに使いました。
  198. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると必ずしも完全な意味における贈与でもないんですね。
  199. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 不用になつたときには返すことを要求されることがあるという贈与であります。
  200. 中田吉雄

    中田吉雄君 これはこのアメリカ日本に持つ政策を要求する一つの手段として使われるようなことにはなりませんか。例えばこれは第二次大戦においてソビエトに大量の武器を貸与してうまく行かんものだから返せといつて非常なトラブルが起きて、最近私が見た内容では大体返すというふうになつたようですが、そういう手段として自主性を主張したりいろいろその場合に対日政策遂行の具に手段として使われるというような虞れはありませんか。
  201. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 私はそれは心配はないかと思います。その理由は、ここに書いてございますように、「当初の用途のために必要でなくなつた」という条件がございますので、ソ連が例えば軍艦を借りましたのは戦争中に戦争を遂行するために借りたんだと思います。それを武器貸与法によつて戦争が済んだにかかわらずそれを保有しておるために返せという言いがかりがつくわけです。我々といたしましてもアメリカ側から日本防衛力の増強のためにもらつた援助でありますから、それを日本防衛力増強のために必要でなくなつたから、もはや要らないものですから返しても少しも差支えないと思いますので、それがために日本政策的なり何なりにアメリカから威圧を感ずる或いはプレツシユアを感ずるということはなかろうかと思います。
  202. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ソ連の場合は貸与だから問題になるので、貸与協定あたりで借りたやつならば、やはりそういう問題にはなる。それとは違うとおつしやるのでしよう、これは。
  203. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは貸与と勿論違います。ただ初め用途がきまつていてその用途でもらつたわけですから。併しこれは返す義務はないので「申し出る」ということにしなければなりませんが、いやならいや、まだまだということはあり得るわけです。
  204. 高良とみ

    高良とみ君 併しそれは当初の目的というのが、例えばソ連、の場合は戦争していたので、戦争は或る国とは済すだでしようが、日本などのようにまだ講和も結ばないままでやつておる国もある、それは割合にはつきりしていると思うのですが、日本防衛力というのはどこまで行つても当初の目的というものは防衛力のためのみに使うので、それがまだまだ続いていることもあり得るのではないか。併しその場合に日本が例えば何らかもつと中立的な政策でもとつて、そうして必要でなくなつたというようなこともその場合にはそれは打つておるけれども、効果的に使つてくれない、前条にあります効果的に使つていないじやないか、ただじつとして防衛のためにだけ使つておるだけで、ほかの国へ出せと言つて協力もしてくれないし、どうもいけないから返してくれということをアメリカが、貸与しているほうから申出る可能性もあるのじやないでしようか。日本のほうも又自分の防衛、自分のほうの規格に合うようなものができて来たから返還を申出るというようなこともあるのじやないか。そこに両方トラブルのもとが起りはしないでしようか。
  205. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは仰せの通りアメリカ側からも日本側からも言い出ていいわけであります。ただ言い出た場合にそれが実現するかしないかは相手方が受けるか受けないかで合意が成立するしないというところにかかつて来ると思います。それからお話のような日本が何かの事情で援助を受けた物資が全然必要なくなつたときにアメリカ側も返還を申出ましよう。日本も申出るかも知れません。或いは申出ないかも知れませんが、そういう点もございますので、ここではただ両国政府が自由に申出得るという規定を設けただけで両方とも義務付けるものではないと存じます。
  206. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では第四項に移ります。別に質疑はございませんか……。なければ第一条はこれで済んだものといたしまして第二条に移ります。
  207. 中田吉雄

    中田吉雄君 ここに謳われたような実際関係する資材、原料というものは一体どんなものですか、大体。
  208. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 私どもいろいろ例を調べてみましたが、マンガンだとか、或いはタングステンだとか、まあいわゆるダイアモンド、錫、クローム、こういうようなものが一応上げられておるわけであります。日本現実に当てましてアメリカがなくて日本があつて供給し得るものというものは差当りのところ考えられませんが、非常に日本の例えば銅でも出まして、日本では或る程度余裕がある、アメリカに鉄砲の弾か何か作るのに銅が足りないというときに、或いはこの第二条の規定を活かすということがあり得るかも知れません。ただその場合にも国内の事情を考慮に入れますし、ほかの国との貿易も考慮に入れます。条件、期間、価格その他は抑えられることになつております。
  209. 中田吉雄

    中田吉雄君 その問題なんですが、国内需要及び商業輸出の必要に応じては十分の考慮を払わねばならん。実は殆んどこれとは関係ないのですが、朝鮮事変の際にアメリカから硫黄を、硫黄も一つの何になると思うのですが、かなり手きびしくアメリカに対する売渡を要求されて、私鳥取県の農業協同組合の連合会長をやつてつて、硫黄は御存じの通り石灰硫黄剤を作つて農薬の非常な貴重な材料になるのです。そこで手きびしくやられてアメリカ要請に従属してなかなか硫黄が暴騰してものすごい闇相場になる。そのために薬剤撒布ができんで非常に困つた体験を実際事上持つておるわけですが、講和条約の発効後なんですが、この但書と言いますか、この取極に当つて、これで十分そういうことに悪影響のないような措置ができるでしようか。私は硫黄を通じて随分これは苦労して関係したものですから、これだけでそういうことが保証できるかどうか、非常な危惧を持つのですが。
  210. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 私どもは運用に当りましてはやはり合憲された条件というやつを活かしまして、価値を非常に日本が希望するものでなければ困る、或いは国内にこれだけの需要があり、従来これだけのものを輸出した関係で、あなたのほうにはこれだけしかさけないということが事実上第二条におきまして十分対抗できるものと考えております。
  211. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは非常に幼稚な質問ですけれども、この譲渡ということは有償、無償の関係等はどういうことになるのですか。どういうことを予想しておるわけですか。
  212. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは合点します、半加工品若しくは原料品を受ける国自身が合憲の条件でございますから日本の場合は非常にあり余つて何かの関係日本ではただやつてよろしいという状態があるかも知れません。併し今の場合通常の価格で通常の数量でなければ売れないということになりよすので、この譲渡とは我々が差当りの段階におきましては日本が有償を以て相手方に売渡すということであります。
  213. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはどうして護渡、トランスフアーですか、なぜこういうことを使つて片方は供与するということを使つたのですか。特にここに言う譲渡とはどういう意味ですか。
  214. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これはアメリカ側に援助を与えますことは、そのときの日本状態と日米間の関係その他につきまして自然に決定しますので、はつきりと贈与と謳う必要もございませんし、はつきりそのときの市価というほどの性質のものでもございません。日本の都合によつてきめ得るであろうと思いましたので、どの場合でもカバ一できるようなことだというのでこの言葉が使われたように記憶しております。
  215. 高良とみ

    高良とみ君 併しこれは政府が譲渡するようになつていますね。ですから民間のものを政府が買上げておると了解しますと、今の硫黄の例などでも随分雨にさらされるとすつかり駄目になつてしまうものが各駅に積まれておつて、そうしてもう需要がとまつてしまつたというようなことによる民間の損害を受けておる方川が随分多いようです。その点で政府はこれを民間から適当の価格で買上げて、そして政府の譲渡にするつもりなんでしようか。そしてこれは通産省がやるのですか。或いはもう少し軍事的な方面がやるのですか。どこがやるのですか。
  216. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは恐らく貿易の一つの形になりますので通産省所管になると存じます。それから今国民が受ける損害もあり得るということでございますが、この条項は国民を義務付けるものではございません。従つて国民にそういう不利な条件を政府が押付けるということはできないはずであり、国民はいつでもこれを断わることができると思います。ただ政府といたしましては、この条項によつて日本の普通の市場価格で売渡してやるという特殊的な義務、政府が然りべき措置をしてアメリカ側に売渡すということになりましよう。
  217. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと通産省は朝鮮特需の場合のように随分初めにオーダーがあつて、又それに対する民間のスペキユレーシヨンでなくて、突然の停止があり或いはそのために損害を受けておるものが実際多いです。これに対しては通産省は普通のマーケツト価格で、そして競争入札みたいな形でやつておるので、そうしてそれに対する民間の損害等はこれはしようがないというふうに考えておられますか。この点はやはりこれは反米感情を起す一つの因にもなると私は思うのですが、どうでしよう。
  218. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 先ほど高良さんに私ちよつと誤解を招くような御返事を申上げましたからそれを先ず訂正さして項きます。この条文御覧になりますと、「日本国政府は」と書き出しまして「アメリカ合衆国政府に譲渡することを容易にすることに同意する。」こう書いてあります。何か支障があればその支障がないようにして、アメリカか買えるようにしてやる、こういうことでございます。従いまして通産省が買上げて渡すというのではなくて、アメリカが買上げるとぎに支障があるときは通産省もできるだけ面倒をみてあげましようということであると思います。それから先ほどからの例でありますが、そういう例はこの問題では実は起らないので、アメリカが或る戦略資材と申しますか、そういうものを日本に買いに来るがなかなか買えない、日本政府があつせんをするが、価格の点で折合えないときもございましよう。併しそういうときは通常の関係に従うべきものと考えますので、従来のそういう例とはこのMSAによる売買は違うだろうと思います。
  219. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 この規定の実際の適用を、これを作るとき一体具体的にどういう品目が実際上適用を受けるだろうというような話合をしたのですか、或いは近くしようというふうな案があるのですか、ただそうじやなくて、アメリカがよその国とやつている、向うの国内のほうの規定からやらなければならんという軽い程度のものなのか。もつと今具体的品目について話があるのか或いは近くそういうことが予想されておるのか、それらの事実問題はどうなんですか。
  220. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは協定の際に私どもはこの条項自体の持つ意味というものから、実際上商売上向うへ売り行るものがあるかと考えておりましたが、何にも当時はございませんでした。併しアメリカ側でもこれは五百十四条というMSAの法律自体の中にあるので、日本でも入れてほしいが差当り日本から現実に何を買おうという考えは持つておらない、こういうことでございましたので、私ども更に念を押して各国の例を向うに聞きまして、各国の例は先ほどちよつと触れましたように、銅を売つたところもコバルトを売つたところもクロームを売つたところもございましたが、差当り日本からアメリカに売るような段階、つまりアメリカが枯渇して日本から持つて行かなければならない、そういう状態はないようでございます。
  221. 高良とみ

    高良とみ君 これはこの前岡崎大臣の御説明のときにこれは新義務の一つであるという御説明の中に入つたものですけれども、第二条は義務を考えて間違いはないでしようか。そうすると今お話のあつたコバルトなども日本もいろいろ原子研究などに要る。その他貴重な品目であるからといつてこれは拒否する自由もあるのでしようか。商業輸出の必要量について考慮するということを書いてありますが、そのほかどうも日本の国策上売れないということの自由がありますか。
  222. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 制限になりますのは、国内市場と商業輸出とここに書いてありますので、どうも政策上面白くないからお前のところにはやらないということは、やはり少し無理になつて来るのじやないかと思います。ただ先ほど申上げましたように、義務は義務でございますから、政府としての義務は一般国内で買付けるものを容易にしてやろうということで同意したわけで、容易にするのに努力してやろうということで日本の義務はそれで果せるものと思います。
  223. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これは自国の資源において不足するといつておりますが、これはアメリカじやよく人的資源、人口資源と言いますが、人的資源はまあ考えていないでしようね。(笑声)
  224. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 勿論考えていないと思います。(笑声)
  225. 中田吉雄

    中田吉雄君 この五百十四条には戦略物資という規定があつて、非常に厳密な規定になつていると思うのですが、この点この第二条ではかなり広範なことで、そういうことに名を借りてアメリカが仲介貿易をやるという手段に使うということはありませんか。戦略物資というふうに厳密な規定でしたらいいのですが、例えば我々の関係している硫安というようなものをこれは戦略物資とも言えるようでもありますが、爆薬を作り得るので。併しまあ特に蒋介石政権のこの台湾に対してかなり安い価格で出さされたりして、そういうことの出血輸出を国内の二重価格で縛られてかなり来たりして非常に問題があるのですが、厳密な規定ですと先に局長が言われたようなものもあるのですが、これにはそういう厳密な規定になつていないので、仲介貿易の手段に使われるというようなことはありませんか、その点はどうでしよう。
  226. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは私どもはこの協定のときに「相互援助の原則に従い」というそこのところに重きを置きまして、そういうときには当然断り得るのであろうと、日本としてはそういうふうに了解いたします。
  227. 中田吉雄

    中田吉雄君 そんならこれは戦略物資と大体見てもいいでしようか、五百十四条のほうは。
  228. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) さようでございます。
  229. 高良とみ

    高良とみ君 ここに「生産し、」と書いてありますね、それを日本で生産するのですか、この戦略物資の例えば火薬とかその他のナパーム爆弾とかいうようなものでもやはり必要である場合には「生産し、」というふうに読んでいいのでございますか。
  230. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これはそこにございますようにロー・アンド・セミプロセスト・マテリアルズに限られるわけでありますが、ですから例えばコバルトが日本にあるけれども日本ではさつぱり開発しない、併しアメリカにはちつともないのでそれを面倒みてくれという場合には、日本でこれを試掘してやる場合にはこれはやつてもいいと、こういうふうに考えます。
  231. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 第三条に移ります。第三条第一項。
  232. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 第一項の政府が供与する、英文によりますと、クラシフアイド・アーチクルズとあるのでありますが、秘密物件というと範囲が非常に茫漠としておるのでありますが、原文の趣旨と同じ趣旨なのか、クラシフアイドという意味がよく私は了解し得ないのですが、もつとはつきりしておるんじやないかと思われるのであります。この点はあとの附属書Bとも関連し又例の秘密保護法ですか、これとも関連するのです。秘密保護法の範囲が物件については非常に広くなつてつて資材までも入つておるのです。原案のこの協定の第三条の趣旨はもつと限定された趣旨ではないのか。どうもそういうふうに思われるのでありますが、その点の御説明をお伺いしたいと思います。
  233. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) その通りでございます。実はこれは一番先にアメリカと各国との例を調べてみますと、非常に限定されたミリタリ・クラシフアイド・アーチクルズと書いてございます。日本はミリタリというものがございませんので、これを受けて秘密軍事物件と申すことができません。それでミリタリという言葉をとりました関係上今申上げましたように、クラシフアイド・アーチクルズということになります。それでこれに対して言訳的でございますが、第三条に「この協定従つて他方の政府が供与する」とございますので、この軍事援助の目的に従つて渡される兵器であつて、それが秘密を要するものにつきましては相手方も秘密を守ると、こういうふうに了解しております。
  234. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 今のお話の趣旨は一応わかるのであります。実際現われておりまする結果は秘密保護法案のごときは非常に内容が広い、空漠としてそのような感じが実はするのであります。とらえどころが対象物件については極めて不明確に思われるのであります。これは直接外務省関係ではないと思いますけれども、外務当局としては一応どういうふうに考えられましようか、秘密保護法案とこの第三条及び附属書Bとの関係ですが、非常に広く末広がりに広がつた感じが非常に私はするのであります。附属書のBのほうは非常に限定された書き方があつて、限定した範囲でいいという趣旨になつておると思うのですが、この点を一つ説明願いたいと思います。
  235. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 仰せの通りでございます。附属書Bのほうでしぼりましたが、第三条で受けておりますこの秘密というのは、要するにアメリカの国内で軍事秘密として取扱つておるものを日本もその秘密を保持してやろうという共同措置だけでございまして、従つてアメリカで秘密にしないものを日本で秘密にするということもございませんし、秘密の関係アメリカでも発表していないものが勿論全部でございます。アメリカが秘密として取扱つておるものを日本に対して、アメリカはこれをこういう高度の秘密で取扱つているから、そのつもりで渡されたものを日本は秘密保持だけの措置をとるというためにこのBでしぼつて来た、こういうことでございます。ですから第三条において見ますとおつしやるようなことになりますが、Bで限定された品物について限定された機密があるはずだ、こういう趣旨でございます。
  236. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そうすれば秘密保護法案のほうはそういうしぼつた、限定された範囲において立法すれば、それで条約関係協定関係としては事が足りる、こう当然了解されるのですけれども、そう了解していいわけでしようか。
  237. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 秘密保護法案でも非常にしぼつております。先ず装備品ということを申しまして、その装備品について構造、性能、製作、保管又は修理に関する技術、使用の方法というように非常にしぼつております。これは実情から申しましても、現在の保安隊が事実上借りておる陸上兵器のごときものにはちつとも秘密物件がないというわけでありまして、アメリカからそうたくさん秘密のものが来ることはないという実際上の観点から、こういうように規定の上ではなつておりますが、決してたくさんではないということが申上げられると思います。
  238. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 今お話の非常にしぼつておると言われるのですけれども、今例に挙げられました装備品にしても、装備品という観念は極めて私は漠然としていると思うのです。何でも装備品に入ると思うのです。アメリカのほうはその装備品のうちで特にしぼつて限定して来たんであろうと想像するのであります。こちらとしても装備品のうち何かしぼらなくちやいかんじやないか。特に現在或いは今後アメリカから供与されるもののうち、本当に秘密に属するものが極めて少いということであればなお更のこと、この秘密保護法案のことになるのですが、秘密保護法案のほうは全部一応綱をかぶせてしまう、かぶせつぱなしに実はなつておるように思われるので、非常に私はこの点が拡張され過ぎた感じがするのであります。
  239. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この協定ではクラシフアイドという形容詞がついておりますが、結局クラシフアイされるものの範囲が非常に実際問題として少いわけでありますから、先ずそのクラシフアイドという形容詞で非常にしぼられるということに相成ると思います。
  240. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ところが今後秘密保護法案のほうは何もしぼつてない。装備品とか資材は、およそ資材というのは何でも資材になると思うのでありますが、何か。
  241. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 秘密保護法案のほうの規定によりますれば、「防衛秘密とは、左にかかげる事項」ということになつておりまして、且つ「公になつていないもの」というしぼり方をいたしております。協定に基きましてアメリカ合衆国から供与される装備品となつておりますが、この装備品は船舶、航空機、武器、弾藥その他の装備品及び資材というので、装備品という言葉が非常に広いように感ぜられますけれども、大体この船舶、航空機、武器、弾薬というようなものに準ずる程度の装備品、而もその装備品につきましても構造、性能それから技術、使用の方法、品目及び数量というようなことでかなりしぼつておりまするので、そう広くはなり得ないものだと存じております。
  242. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 御説明はその通りでありますけれども少しも実はしぼつておらないので、武器、弾薬その他の資材となれば、何でもかんでも一応アメリカから来るものの、協定に基いて供与されるものは一応全都対象に入つてしまう。物件に対する何らしぼり方はないのじやないでしようか。その他の資材という点、その他大勢が全部入つてしまうわけで、上のほうは例示に過ぎないですね。
  243. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) お説の通り一応装備品等という言葉は非常に広いように思われまするけれども、併しこの防衛秘密というところでしぼつておりまするので、くれるもの或いは供与されるものは一切含まれるというようなことにならないと存じております。
  244. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 一応全部入つてそうしてあといろいろしぼる恰好がついておりますけれども、実質的にはしぼられておらないと私は思うのであります。ところが協定の三条における秘密の物件というものは、先ほど条約局長も言われたように元は非常に限定されておるのですよ。附属書Bにおいてもその限定された範囲であるということにたつておると思う。これはほかの法案で恐縮ですけれども、どうもこの協定の趣旨と秘密保護法案とは大分違いがあると思いますが、範囲が広いように思うのであります。これは見解のあれでありますからこの程度にいたしておきます。
  245. 中田吉雄

    中田吉雄君 実際に中古品の戦力にならん軍隊というようなものに、至らない軍備というものに実際にあるのですかね。そういうものが、実際に。
  246. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 現在借りておりまする武器につきましてもごく数は僅かでございますが、先方で秘密を守つてもらいたいというものはございます。現在は法律がございませんので、一般に知得し且つこれを漏せつされたものを罰するという規定がございませんが、一例を挙げますると現在来ておりまするフリゲートの一部の通信レーダー関係でございますとか、そういうものにも若干ございます。今後、今年供与を受けます武器についてもどの程度のものがあるかということははつきりいたしませんが、又この供与を受けまする艦船そのもの、或いは武器全体を秘密を要するものとは存じておりませんけれども、そのうちの一部についてはあり得ると存じております。
  247. 中田吉雄

    中田吉雄君 たしかいつかも私質問しようと思つたのですけれども、もう時間がないのでやめますが、両局長がアメリカの極東司令部ですかに行つて、極東戦略についての情報なんかを、こういう構想を以てアメリカ戦略配置があるからという情報を得ておられるわけですが、そういうようなのはどういうふうになりますか。これに該当しますか。
  248. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 秘密保護法案のはうに関係いたしますので私からお答え申上げますが、この秘密保護法案のほうの第一条の第三項第二号におきまして「協定等に基き、アメリカ合衆国から供与される情報で、装備品等に関する前号イからハまでに掲げる事項に関するもの」というのがありまして、そのイからハまでというのは装備品の構造父は性能或いは技術、使用の方法、この三つになつておりまするから、一般の軍事情報等はこの秘密保護法案のほうの取締の対象にはならないと思います。ここに言う情報には含まれておらないのであります。
  249. 高良とみ

    高良とみ君 原文ではクラシフアイドというのが次のサービスにもかかると思うのですが、そうすると一つはサービスの中でこの人はこういう情報があるとか、或いはA、B、Cというふうにクラシフアイドされたサービスというものについては、あれはこういう秘密のサービスをしておる、これはいけないという意味になるのでしようか、役務ですね。それが一つと、それから今梶原委員からおつしやつたように、どうしてこれを分類された物件、役務又は情報というふうになさらなかつたのでしようか。
  250. 下田武三

    政府委員(下田武三君) サービスには勿論クラシフアイドがかかるわけでございまして、又あとのインフオメーシヨンにもクラシフアイドがかかつて参ります。それで役務の場合の秘密というものは技術上の情報を与える、或いは技術上の考案を授けるというふうなサービスが秘密として考えられるわけでございます。それからクラシフアイドというのは、分類してという意味ではございませんで、アメリカの慣用的な使い方でありますが、これはただクラシフアイドで、秘密にされた、つまり秘密文書として、或いは秘密のものとして種分けされたというところから、このクラシフアイドだけは秘密のという意味に使つておるので、この意味でこの協定に使つてあるわけであります。
  251. 高良とみ

    高良とみ君 保安庁のほうから伺いたいのは、防衛秘密保護法案のほうに公けになつていないという言葉が出ておりますが、それは今のクラシフアイドの意味なんですか。或いはただここに出ている秘密のということなんですか。それとも附属書Bに秘密保護の等級というものがついておりますが、それはどれを指すのですか。
  252. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) クラシフアイドという意味でございます。
  253. 高良とみ

    高良とみ君 さうしますとクラシフアイドという意味は、今下田条約局長のおつしやいましたような広い意味のものか、或いは附属書Bに言つている秘密保護の等級のついたものは日本では公になつていないという言葉に使つているのか、このことが一般の国民にはわかつていないのです。まあどこかの御解釈に従うと、新聞雑誌で軍事上のことで機械、ジエツト機などの内容について一般人の知つているようなものについてはかまわない、だけれど公に発表していないというふうな御説明が出ていたと思うのですが、どうもそこが等級になつているというのとどちらに解釈したらいいのですか。
  254. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) このクラシフアイドという今おつしやつた意味の中に、例えば向うのものでもクラシフアイケーシヨンがいろいろございます。日本で言うと極秘な扱い、或いは秘の扱いのもの、それから特に極秘を要するもの、このように段階が三つにも四つにもございます。それをここで受けましてアメリカ側で極秘の扱いにしておるのを日本がそれを普通の秘の扱いにしない、こういうことを秘密保護の等級と同等のものとここに書いてございまして、ただお話の中にございましたクラシフアイドというものと、等級その他のついたものと違うのじやないかという御質問がございましたが、これは実はクラシフアイドされたものの中にはみんな等級があるわけでございます。総括的に申しますとクラシフアイドされたサービス、インフオメイシヨンになるわけであります。
  255. 高良とみ

    高良とみ君 それと公になつていないものとしぼり方は違うのですか、同じなのですか。
  256. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 全然同じで、逆から行けば公になつていない、即ちクラシアイド・アーテイクルズ。
  257. 高良とみ

    高良とみ君 わかりました。
  258. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 この三条の第一項によつてこれを適用してみると、これによつて日米間で合意する秘密保持の措置を執る義務を負担するわけですが、その義務は今の秘密保護に関する法律を作り、且つ実施することによつて全部充足されておる、こういう解釈なんですか。
  259. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) さようでございます。
  260. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 その案はアメリカと内容について合意がすでにできておるわけですか、或いはこれからできてしまつたのちに、どういうのですか。
  261. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) この秘密保護の法律に関しまする全文は勿論先方と会議はいたしておりません。ただこの協定に基きましてこの秘密を守るべきものの範囲をどうするかという問題につきましては、先方と協議はすんでおります。
  262. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の説明でわかつたのですが、ただ念を押しておきたいのは、日本はこれによつて秘密保持の措置をとる義務を負うのだが、そうしてそれについては米国政府の合意を要する、こういうことになつておるのだが、それは個々のケースについての防衛秘密保持の措置をとることについてまで合意をする義務はここから発生しない。
  263. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) お尋ねの通りでございまして、個々のケースについてどういう措置をとるかという義務は直接的には協定では出て来ていないと私は解釈しております。従いましてこういう法律案を具体的に提案するという直接の義務は負うておりませんけれども、併し政府として必要な措置をとるということを約束いたしました以上、その措置一つとして日本政府としてこういう法律案を出して秘密の保護をすることが約束を履行することであると思つておる次第であります。
  264. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 字句の解釈ですけれども、クラシフアイド・アーテクルズ、この中に資材も入ると解釈するわけですか。
  265. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 若し資材の中にクラシフアイドされた秘密が保持されておるものがあれば当然入るわけであります。
  266. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この協定に基く活動について公衆に周知させるというのは、これは日本における活動は日本政府が公衆に周知させると同時に、アメリカアメリカとして公衆に周知させる特別な措置をとるのか、日本日本だけでとるのか、その辺はどうなつておりますか。
  267. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これはアメリカアメリカ側におきまして、日本日本側におきましてとる措置でございます。それから協定文の中に「協定に基く活動について」というのでこの前いろいろ議論がございましたが、私ども、ここで原語の意味にオペレーシヨンとなつておりまして、MSA援助の実施の状況についてという意味が正しい意味だろうと思います。ですから活動という意味はちよつと誤解を招きますので説明を加えさせて頂きました。
  268. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、これは日本の公衆に周知させるのは日本政府の責任で、アメリカはやらないわけですね。
  269. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 必ずしも協定文だけではそうではございません。アメリカアメリカ側としてやる、日本日本でやろう、その対象が、日本政府アメリカの大衆を対象にして公衆に周知させる方法をとるか、アメリカ日本の大衆を対象にするか、ここらはわかりませんが、現実の問題としてはアメリカアメリカで、日本日本でこの実施状態日本従つて援助を受けたものについての実施状態説明します。アメリカ援助を与えているものについての実施状態説明するということになります。実際上申しますとパンフレットその他にいたしまして一般に売りさばいております。それからアメリカの議会でもそれを大統領説明書の中に加えておりますから、それが現実アメリカがとつておる今までのところの公知方法であります。
  270. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカでは大統領の実施状況報告書とかいうのを国会に出しておりますね。あれは四半期ごとくらいに出すのですか、それとも四半期か或いは一年に出すのか。それにならつて今後日本ではどういう形式でどうい機関にお出しになる予定をしておられるのか。
  271. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 只今のところで見ますと、大体六カ月ごとに大統領が出しておるようであります。MSAの実施状況につきまして大統領からアメリカの議会に報告の形で出しております。これがここに画がございますがそれでございます。
  272. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本ではどういう形にされておるのですか。
  273. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 日本ではまだきまつておりませんが、恐らく国会に対する報告書の形で出る形が一番正しい形ではないかと考えております。
  274. 曾禰益

    ○曾祢益君 この第二項を入れた意味は、アメリカのほうとしてはこれはもう国民の税金を外国に援助するのですから、これはもう行政府自身の利益からいつても民主主義の原則からいつても国内的な啓発措置、即ち活動状況報告をするのは当り前だと思いますが、これを特にはかのまあMSA協定もあるかも知れませんが、日本側として特にこういうものを入れる必要を認められておるのですか。
  275. 土屋隼

    説明員(土屋隼君)  私どもはこの第三条の第一項、第二項というものをいわば表腹をなすものだと考えております。第一項におきまして、アメリカの機密保持をしておるものを日本で守るということになりますと、何となくMSAには機密が非常に多いような印象を与えがちなんであります。実際がやはり国民の支持と国民の理解を得て初めてMSAの実施、その国の防衛力の増強というものは可能だろうと思いますので、従つて機密を要しない部面につきましては、お互いに約束して成るたけ国民によく知らせて行こうじやないか。私ども特にの実施状況につきましてはその後の批判もあることでありますから当然知らすべきではないかというので、その二項を加えて一項とのいわば裏腹をなしておるのが実際でございます。
  276. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこでだからこれは日本側の主として希望ででこういうものが入つておるのかどうか。これはやはり別に条約上の義務にしなくとも日本政府の当然の政策としてこういうことをやつて差支えないわけですね。特に条約上こういうものを設けたのは主として日本政府の意向というのか或いは両方の意向が合致しているのか、特に条約上のこういう約束にしなければできないものでないのに、特に約束にしたのはどういうわけか、こういう点をお聞きしたい。
  277. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) これは民主主義国家において当然なことでございまして、政府がしておるものにつきましての実施状態を一般国民に周知させるというのはおつしやる通りわざわざ協定を必要としないものであります。アメリカが組んでおりますMSA協定に大部分この規定を持つております。私どもはこの協定規定をいたしたということ自体がいわば政府としてもこの心がけを忘れないというメモランダムになろうと思いまして入れたというのが実際の心がまえであります。
  278. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで公衆に周知させるためにという場合に、まあその対象が国会とか何とか今お話がありましたが、そういうような限定的なものなら問題はないけれども、たまたまこの公衆というのが一般大衆ということになつて而もMSA援助等の具体的なその実施状況でなしに、この項からむしろ主観的なこの国際問題等との関係で何か一方的な宣伝活動が行われるというような危険はないのですか。あなたがたが現存そういうことをお考えにならなくとも碓かそういう人が地位についた場合にこれを利用して一方的にん宣伝をする、国際情勢の主観的な判断でMSAを非常に拡大解釈をしてそういうことをやるということはありませんか。
  279. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) この周知の方法協定に基く実施状況についてだけ限定しておりますので、それ以外のことにつきましては例えば宣伝するとか何とかこういうことが仮にございますとこの協定とは別に勝手に宣伝することになるかと存じます。ただおつしやる趣旨がこのMSAの実際の状況を何というか針小棒大に伝えて、自分が非常に何か功労を立てたかのごとく宣伝する意味に使わんかという趣旨におつしやいますと、軍事顧問団がいることでありますし、余り事実と違つた宣伝方法をとるということは国民にもはつきりすることでございますから不可能だと思います。
  280. 羽生三七

    ○羽生三七君 私のお尋ねしたのはそうではない、例えばMSA自由諸国の団結を高めるために必要だ、そうして相手国はどういう国が侵略国だから、侵略の虞れがあるからどうということで、国際情勢に及ぶような宣伝活動ですね。そういうものをやつた場合に、どつかから文句が出て来る、これは第三条の二項にちやんと公衆に周知させるのは一向差支えないのだというふうにあると悪用される危険はないか。
  281. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 協定文から、本協定の下における実施状況についてという点がございますので、悪用するということはよほど悪意でありましようし、又当然この協定を逸脱するものだと考えます。
  282. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これはこの公衆に周知徹底せしめるという措置アメリカの場合には政府のどこがやつておるのか、日本では外務省がやられることになりますか、防衛庁がやることになりますか、その辺はどうなんですか。
  283. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) アメリカではこの対外活動本部と申しますか、スタツセンのところが、主になりまして事務当局がやり、大統領が議会に報告するという形にしておりましようし、又随時の周知方法につきましては、対外活動本部が、主催しておるものと考えます。私どものほうにおきまして、この援助を受けるようになつてどこがやるかまだ実はきまつておりませんのですが、アメリカの軍事顧問団と折衝する機関、まあ外務省が今のところ予定されておりますが、そこが報告なり何なりをするという義務を負うべきであり、又実施すべきであるという考えを持つております。
  284. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 第四条に移ります。……質疑がおありにならなければ第五条に移ります。第五条。
  285. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 この第五条の援助計画ですね。この中には例の農産物の購入に関しまする相関連する一千万ドルの援助分といいますか贈与分、それも入るわけでしようか。
  286. 下田武三

    政府委員(下田武三君) それは入りません。
  287. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 入らないのですか。
  288. 下田武三

    政府委員(下田武三君) はあ。
  289. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ほかにおありでなければ。
  290. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の第五条ですね、これは実際どういう必要で。
  291. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これも実はアメリカの内部事情から出ました規定でございまして、MSA法の五百二十四条に、やはり協定にこういう規定を入れなければならないという建前になつておりますので、入れたのでありまするが、外国の状況を調べますと、こういうような附属取極、或いはこういうような国内立法をやつた国は一つも実はないという状況でありまして、この協定を入れるに当りまして米国側に聞きましたところ、日本でもこれを現実に立法措置に移すというような必要は全然ないということでありましたので、専らアメリカの必要に応ずるために挿入された規定でございます。
  292. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そういう点はこれは何すか。アメリカの差押その他の法律上の執行手続の対象物か、アメリカから出て来た資金ですか、それでしよう。それに対する差押なり、指示なら指示をやろうという場合が発生した場合を予想した規定でしよう。そういうときに僕はどうしてそういうことが起るか、よくわからんけれども、そういうことがあるとすればそれを法律上できないようにするためにはそれは立法措置を要するので、法律の根拠なくしてそれが法律的に不可能だということにはならないのだね。これを実施するというのなら、やはり立法措置を要する、勧告的のものならいいですよ。併し法律上の拘束でそういう権利を奪うということになれば、立法措置を要しますよ。
  293. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この第五条の規定は、日本の指示に対して米国のそのような資金を差押さえることを禁止するという法律的効果は全然出て来ないのであります。そこで第五条の中味が、アメリカ政府か通告をいたしましたときは協議するというのがこの規定でございます。でございまするから、先ずそういう通告がアメリカ政府から来るポシビリテイがもう殆どないのでございますから、実際問題と恐らくならないと存ずるのであります。専らアメリカMSA法の関係から協定にやはりこういう条項を一つ挿入するという要請を満足させるために入れた次第でございます。
  294. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それは事実問題はそうとして、これの規定の法律上の関係を見ると、これからして今言われるように協議義務が発生する、こういう目的を以て。協議義務が発生する、併しそれは何も指示が、これに対して差押権者が差押えをする権能をこれを剥奪することはできない。それは依然として法律上からする、それは可能ということ、そういうことになるでしよう。この規定だけで放りつぱなしにしておけば。
  295. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 仰せの通りでございます。
  296. 高良とみ

    高良とみ君 この第五条は実際の場合がよくわからないのですが、例えば防衛計画に割当てられた、或いはそれから生じた資金について、例えば、三十六億を或る特定な会社のうち、一部が割当てられたという場合に、それを差押にすることを禁ずるのでございますか。そういうふうなものの処置についてですか。
  297. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 農産物の購入による、三十六億ドルの援助につきましては、先ほど申しましたように、これと関係はないのでありますが、どういう場合に生ずるかという点になりますと、これも現在のアメリカ予算上、すでに起り得ないことなんですが、例のデフエンス・サポート・アシスタンスでございますか、防衛支持援助というようなことで、ヨーロッパの国にはフアンドが行つております。そこでベルギーの工場で現実にあつた例でございます。ベルギーの工場にその防備支持資金からアドバンスいたしまして、援助資金を前貸したのでありますが、そのベルギーの工場が破産をいたしてしまいまして、そして差押えられた、そうするとアメリカ政府資金が実は差押を食つたと同じ結果になつたわけであります。そういうような危険もありますので、MSA法にこういう規定を設けるという建前になつておりますけれども、この協定に入れますときに関係各省とも相談したのでありますが、米国側がすでに実際にはなかなかそういうことは起らないと言つておりますのと、これは通告があつたときに初めて立法を考えればいいというので、現実に何ら差当つて義務が生じないということで、この抽象的な協議義務だけを受諾する規定であるから、そのまま入れても差支えないだろう、そういう見地から入れたような次第でございます。
  298. 高良とみ

    高良とみ君 ところが初めの米国政府が実施する援助計画に割当てられた中には入らないかも知れませんが「同計画から生ずるすべての資金」というと、小麦粉の三十六億が、或る一定の会社に割当てられた、それはやはり計画から生ずる資金には違いないと思う。そうしたらそれは、その会社が破産した、これに対して差押を禁止するということは、一旦日本の特別会計に入つたにしても同計画から生ずる資金ではないでしようか。そしてここの中に読みこむことはできないでしようか、ちよつと御説明願います。
  299. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 援助計画というのは、軍事援助と技術援助と経済援助といろいろございますが、この農産物の購入に関する見返資金の一部をグラントするということは、アメリカMSA法に言う援助とは実は観念されておりませんので、第五条の中に入つて来るということはあり得ないと思います。
  300. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では第六条に作ります。第一項のうちのaの部分を先に問題にいたします。
  301. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 このa関係は国内的の立法も必要はないのでしようか。
  302. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは大蔵省のほうで関税法の特例に関する法律というところで、今度の国会に御承認を願う、もう出ているかと思います。
  303. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはaに限らんのですが、1、2全体を通じてこういう考え方は、駐留軍物資に対する措置、或いは今度の国連軍協定に基くそういうものに対する措置、それと同じなのか、或いは違うのか、その辺の関係はどうなんですか。
  304. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 米駐留軍に対する免税措置は行政協定規定せられたところでございまして、又国連軍につきましては、只今国会に御承認を願つております国連軍協定で認めました範囲の免税を認めておるのでありまして、この第六条の援助に関連する免税とは全く無関係でございます。
  305. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 一つ一つは全く無関係だという考え方なら措置の仕方は同じなんですか。大体同じ精神でやられるのですか。或いは若干どこか食い違つているのですか。
  306. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 免税の範囲等は大体同じでございます。つまりこれでも関税のみならず内国税についても免除を認めております。ただ国連軍協定、行政協定にありまして、これには全然ないのは、つまり人的な関係、所得税の免除等はこれには全然ございません。
  307. 羽生三七

    ○羽生三七君 これはこの場合に該当する資材なり需品等は、具体的にその品目といいますかそういうものは限定されておりますか。拡大解釈されるようなことかないようにきちんとしたものですか、この辺どうですか。
  308. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは免税事由が発生する関門におきまして、明らかに援助物件でなければならないわけでございまするから、極めて範囲はリジドにきまりまして、拡大解釈等は恐らくございません。
  309. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 この場合の内国税というとどういう税でしようか。
  310. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 附属書のほうではつきり書いてございますが、附属書のEというところで、物品税、通行税、揮発油税……。
  311. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 いやaの場合ですよ。そうですが、aの場合の内国税は、やはり附属書Eに掲げる税を意味しておるわけですか。
  312. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 附属書Eは域外買付の場合の規定でございますので、aのほうではそのうち物品税だけが問題になると思います。
  313. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ではbに移ります。
  314. 高良とみ

    高良とみ君 bの中の「他の被援助国との間の同種の協定に基く資材、需品、装備及び役務の調達」に関しても、やはり全部この附属書Eにありまするところの税金が全部免除されると了解して間違いないと思いますが。  それから第二には免除及び払いもどしと書いてありますが、払戻しというのは、一旦税をとつてから又払戻しをするという意味なんですか。
  315. 下田武三

    政府委員(下田武三君) bのほうは、アメリカ政府と第三国との間の同種の相互防衛援助協定によりまして、援助をする物件を日本で発注して日本アメリカが注文して作るという場合でございまするが、その場合の内国税を免除してやるということでございますが、これはMSA法で援助資金は外国の租税を払うために使つてはならないという規定がございます。つまり税金に払うような金があつたらそれだけその金を援助自体に使えばいいじやないかという考えでございます。そこで日本といたしましては、これは域外発注を受ける国なんでありますが、税金で大蔵省が国庫に入れるのもよろしいのですが、その税金額だけ又日本の工場に注文してもらつたほうが更にいいわけでありまして、両方の都合から言いまして、税金はとらないということによつて利益を受けるわけでございます。  それから第二の払戻しの点は、これは将来はどうか知りませんが、現在の日本の税法上は戻し税ということはございませんので、ここには書いてございまするが、現実の問題といたしましては、一旦とつた税を戻すということは発生いたさないと了解いたしております。
  316. 高良とみ

    高良とみ君 それからその米国政府の支出金文は同政府が融資する支出金に影響するときというふうに二つに分けてありますが、それが米国で融資しておるかどうかというようなことはこちらからわからない。同政府日本において融資をするときに限定をされる、そういうものもあると、こういうふうに考えて間違いないのでしようか。つまり、米政府の直接注文と又はどこかの民間会社に政府が融資をして、そうしてそれが若し税金をとれば高くなるからという意味考えて間違いありませんか。  それから第二には、先ほど説明がありましたが、日本で使うものは、そういうふうに税金が減つたらば利益だということがありましようが、第三国の域外買付をするときに、それは日本の物は高いから税は免税にして行くというお考えもありましようが、又外国にやるものまでも免税にして行くというのは、それだけ又余計注文してもらいたいというのですか。
  317. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この「融資する支出金」と申しますのは、日本に発注するものは必ずしも全部米国政府が直接発注をするものに限りません。第三国、或いは先ほどの防衛支持援助のような場合には、第三国の会社にフアンドを渡してそうしてアメリカ政府からフアンドをもらつた第三国の政府或いは第三国の企業というものが、自分の国ではできないからというので日本に注文をするという場合もございますので、その場合は「融資する支出金」ということでこれに対しても免税にいたそうというわけであります。
  318. 高良とみ

    高良とみ君 もう一つ、そのあとの質問をお答え下さい。つまり、域外買付も無税にして行くということの利益の点ですね。
  319. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは現在の日本の生産費は外国と比べまして必ずしも安くございません。その上に日本の内国税をとりましてそうして外国に出すといたしますと非常に高くなりまするから、第三国からの城外発注というものはますます減少することに拍車をかけることになります。でございますから、そういう内国税を免除してやつて日本から出ますときには安い値段で出るということにいたしたほうが、日本の城外発注を潤すという点でも利益であろうと思うのであります。
  320. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 このbは、例の農産物関係の四千万ドル分の域外買付の分についても適用されると見てよいわけですか。
  321. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その点は実は後の2の問題としてそういうことが起るのでございますが、この1のほうは相互防衛援助協定つまりMDA協定だけについて起るのでございます。1のaが日本国との間のMDA協定、それからbのほうはアメリカと第三国との間のMDA協定に基く域外買付と、そういうことになるわけでございます。
  322. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その日本の租税がアメリカ合衆国政府の支出金に影響するときはとしてありますが、影響しないときがあるのですか、どういう場合があるのですか。
  323. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは日本で税金をかけますればすべて影響するわけでありまして、「影響するときは、」という原語は、メイ・アフエクトでございます。結局全部になると思います。
  324. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 全部影響しないという場合はないのですね。
  325. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 影響しますということは、この附属書のEで、物品税、通行税、揮発油税、電気ガス税というものがございますが、こういう四種の税がすべて影響して来るわけでございますので、物によりまして物品税のかからないものもございましようし、通行税、揮発油税に至りましてはアフエクトするし方が少いわけでありまして、要するにいろいろ内国税がありますが、そのうちのアフエクトするものだけは免税するということになつております。
  326. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ではそういう物品税にしても、通行税にしても、電気ガス税にしても、そういう日本の租税が取られれば、アメリカ合衆国政府の支出金には必ず影響するのでしよう。「影響するときは」といつているけれども、そういう祖税を課せられれば必ず支出金には影響する。
  327. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 「影響するときは」と日本語でなつておりますために、影響しない場合が多々あつて、そのうち特に影響する場合だけというようにとられますが、これは影響することのある租税という観念と御承知願いたいと思います。
  328. 高良とみ

    高良とみ君 この和税ですけれども、関税などはそうですけれども、内国税の中で通行税、揮発税、電気ガス税のようなもの、運営に使う費用まで全部免除するということになりますと、それはただそのものが安くなるというよりも、そういうものが道路をどんなにいためても、或いはガソリンその他の税を取つている趣旨そのものに影響してそういうものが全部無税であるということになるわけですね。そうしますと、そのものの、値段ではなく、そのものの運営を安くするためにそうするということになると、これは免税する趣旨もちよつと違うと思うのですが、どうですか。
  329. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この四つの税は実は国連軍協定、日米行政協定のときに免除することにしてやりましたカテゴリーの税と歩調を合わせたわけなんでございます。そこでこの四つの種類が影響する仕方は、駐留軍や国連軍の場合のほうが遥かにたくさんこれはかかると思いますが、域外買付の場合には非常に少いと存ずるのであります。
  330. 高良とみ

    高良とみ君 ちよつと今の税金のとですが、前の日米行政協定や国連軍の協定でそれをしているからといつて、こういうようにいつまでも通行税から何から免除しているというのは世界各国ともこうしているのですか。それから又MSAを受けているところは全部免税しているのですか。
  331. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この通行税はどういうときにかかるかと申しますと、日本の工場が域外買付の発注を受けてでき上りましたその製品を横浜なり神戸なりに汽車で運ぼうといたしますときに、純粋の運賃のみならず通行税までかけられましたらそのものの値段が上つてしまいますので、これは域外買付がコストの関係から日本に来なくなるという危険もございますので、そういうものはむしろ免除してやりましたほうが日本としては有利ではないかと存ずるのでございます。
  332. 高良とみ

    高良とみ君 諸外国ではどうなんですか。
  333. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 諸外国でも大体これと国じ税の名前になつておりませんが、こういうものは免除しておるようでございます。
  334. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この協定ができる前の今までにやられた域外買付には、こういう免税の措置はないわけですね、今度初めてこういう措置をとるのですか。
  335. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 今までもやはり免税しておつたそうでございます。
  336. 中田吉雄

    中田吉雄君 何を根拠にしておつたのですか、根拠法は。
  337. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 今までは物品税だけについて免除があつたそうでございます。これは日本国内で消費或いは使用するもの以外の外国向けのものには関税と共に物品税は課さないという法律の建前になつておりますので、それで物品税だけは免除しておつたそうでございます。ただ輸送等の際に通行税を免除するということは今まではしておらなかつたそうでございます。
  338. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると普通の輸出品と同じような扱いをしていたということですね。
  339. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 仰せの通りでございます。
  340. 高良とみ

    高良とみ君 今の関連ですが、そうしますと電気ガス税などもこれは免除してゆけば、それから揮発油税もですが、通行税は大したことはないだろうと思う。そう年中国内を通るのでもないだろうと思うのですが、それとも常にMSAで来た武器はどこを通ろうが、どういうふうにガス、電気、揮発油を使おうが、それを全部免除してゆくという意味ですか。
  341. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この揮発油税、電気ガス税を免除される場合は私は極めて少いと思うのでございます。つまり域外発註を受ける日本の工場でガソリンを使い、或いは電気、ガスを使うという場合にそれを免除しようというのではないわけでありまするから、実際問題としてこのc、dの二つは殆んど免税になる事例がないだろうと存じます。
  342. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 今度は第二項に移ります。
  343. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは先ほど条約局長の御説明のように、例えば小麦、農産物を買付けるとかその他今後あり得るような特殊な援助のときに免税してゆこう、こういう意味ですか、第二項と第一項と違うところは。
  344. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その通りでございます。MDA協定以外の場合もそうなつております。
  345. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 第二項はそのほかに御質疑がおありにならないようでありまするから、それでは第六条はこれで質疑を了したものといたします。  速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  346. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは速記を付けて下さい。第七条以下は明朝に譲ることとしまして、本日はこれで散会いたします。    午後七時二分散会