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羽生三七君 では
日本が独力で
防衛力を作り上げるということは現下の
経済上の制約から非常に困難だ。
従つて、当面
日本と
アメリカ間の安保条約でこれをカバーしておるわけでありますが、この点についてやはり日米二国間なり太平洋同盟条約的な多数国間の安全保障態勢に進むかどうかは将来の問題だと思うのですが、そこでアジアの諸情勢から太平洋同職的なものに発展して行くのではないかという説も一部にあるわけで、そのことが現在ダレス長官がその任に当
つておるわけでありますが、サンフランシスコの講和会議のときに、当時のトルーマン
大統領がオペラハウスでやつた演説の一部にこういうことが出ておるわけです。「
日本をできるだけ早く太平洋の平和を維持するための適当な安全保障取極に参加させることは、極めて肝要なことであります」とあ
つて、「
従つて平和条約は、
日本が主権国家として自衛権をもつべきであり、国際連合憲章に基き他の国家との
防衛取極に参加する権利を持たなければならないということを認めているのであります。太平洋における
防衛のための
地域的取極が発展すれば、創設されるかも知れない
日本防衛軍は、同
地域の他の諸国の
防衛軍と連繋をもつことになるでありましよう。
日本の安全は、専ら
日本の軍隊のみに頼ることなく、他国との相互に
関連ある安全保障の取極に顧ることになるでありましよう。
日本のこれに対する貢献は、それだけでは攻撃的脅威を形成するものではないでありましよう。しかし、
日本の軍隊は、他国の軍隊とともに、
日本を含む太平洋諸国の独立に対する脅威に相互
保証を与えるでありましよう。」こういうことでずつとトルーマン
大統領が演説をや
つてそうしてこの講和条約草案というものが会議にかけられたわけであります。当時御承知のように、今のダレス国務長官が
アメリカの両党政治の
建前で、共和党を代表してトルーマン
政府の外交顧問の役割を果していたことは周知の
通りでありますが、そのときからすでに今日まで今のダレスさんの外交が一貫してこの
考え方を持
つていると思うのです。だから最近のインドシナの動きに
関連する
アメリカの動きなんかを見た場合に、現実に今すぐかような問題が起るとは思いません。併し方向としてはやはり
アメリカはこれを
考えておる。これは我々は強く感ぜざるを得ない。而もこれは
日本のつまり
向うじや
防衛軍という名前を使
つておりますが、
日本の
防衛軍というものを創設するそのことを
考えた瞬間に、それは太平洋同盟的なものへ発展しなければならないし、又そうしなければいけないということを
はつきりここでトルーマンが詣で
つておるわけであ
つて、而も客観情勢はまさにこの演説にマツチするような方向へ進んで来ておるのでありますが、これに
関連してお尋ねしたい問題は、そういうことから衆議院でも又当
委員会でも盛んに論議された海外派兵の問題でありますが、この海外派兵の問題については、要するに
外務大臣はそれは合意しなければいいんだ、全く
日本の自主性に委されておる、だから合意しなければいいんだということを第一番に言われておるのであります。誠にそれはその
通りでしようが、併しかくも衆参両院がこの
協定文そのものからそういう危険がすぐ出て来ないにしても、今申上げた国際的背景から非常に大きな危険を含んでおる場合、又そのことの故にこの
MSAの審議過程にそれぞれの
委員が非常に関心を持
つておる際に、単に合意しなければよいというだけでは私は済まされないと思うのです。そこでこれを
協定文の中に何か明記したらばいいかということが昨年のすでに夏以来、当
委員会でも問題にな
つたのでありますが、併し
外務大臣はそれは条約の体裁上おかしい、こういうようにおつしや
つておるわけです。併しいやしくも外交に堪能な
岡崎外務大臣が昨年我々が
質問した当時には、それは十分
考える、だめな場合には
附属書或いは
議事録の中にもこれをとどめたいというように言われてお
つたのが、急に如何にも条約の体裁上から見てこれは変だと言われるようにな
つたのでありますが、その
岡崎さんだつたら前からそんなことを謳い込むことが条約上の体裁上変かどうかおわかりに
なつたはずだと思う。そうであるならば、若干の体裁なんかかまわないから、
憲法の
規定の
範囲内とか何とかいうようなことをわざわざ抽象的に挿入するよりもむしろ明確にこれを成文化したほうが正しい、又そうすべきである、条約の体裁なんかにこだわるべきでないと私は強く
考えるのでありますが如何でございますか。