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1954-04-17 第19回国会 参議院 外務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十七日(土曜日)    午前十一時十分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            團  伊能君            佐多 忠隆君            曾祢  益君    委員            鹿島守之助君            西郷吉之幼君            杉原 荒太君            宮澤 喜一君            梶原 茂嘉君            高良 とみ君            羽生 三七君            加藤シヅエ君            鶴見 祐輔君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局第二部長 野木 新一君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○本委員会の運営に関する件 ○日本国アメリカ合衆国との国の相  互防衛援助協定批准について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送  付) ○農産物購入に関する日本国とアメ  リカ合衆国との開の協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○経済的措置に関する日本国アメリ  カ合衆国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付) ○投資保証に関する日本国アメリ  カ合衆国との間の協定締結につい  て承引を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付)   ―――――――――――――
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。  日程に入ります前に御報告申上げたいのは、今朝の理事会相談の模様をお伝えする点でありまするが、MSAに関しまする日程について相談をいたしました。日繰りのほうから申しますると本日と十九日の月曜日で大体総括質問を終つて頂きたいということであります。それから二十日に農林と大蔵委員会との連合委員会を開く。二十一日一ぱいと二十二日にかけまして逐条質疑をこれは終つて頂きたいのでありまして、二十二日の午後討論、採決そして二十三日の本会議に上程、こういうことに大体お打合せをいたしましたことを御承知願いたいと思います。  それから発言のことでありまするが、持時間の残りを御参考までに申上げます。緑風会残りが四十四分、社会党の第四控室が八十六分、社会党の第二控室が四十四分、改進党二十八分、自由党九十三分であります。尤も自由党の九十三分は日程が迫つておれば強いて発言しなくてもいいという御了解であります。自由党を引きますると合計二百二分ということになつております。そこで今度は委員諸君の持時間の残りでありまするが、梶原委員が四分、高良委員が四十分、佐多委員が三十八分、羽生委員が三十四分、中田委員が十四分、曾祢委員はオーバーしてマイナス十六分、加藤委員は六十分、これは加藤委員のほうから差引きますから社会党の第二控室は四十四分ということになつたわけであります。鶴見委員が三十八分、こういうことであります。  そこで本日のことでありまするが、先ほど来御了解になりました通りに、保安庁長官は今朝午前の会議だけこちらにおいで下さつたわけでありまして、衆議院内閣委員会がそのために午前の会議を延期して午後集つて下さるそうであります。つきましては今朝のこの委員会では保安庁長官外務大臣列席の上での御質問でありまするが主として保安庁長官に対する質疑を集中して頂きたいと思うのであります。そして又各委員の持時間の中でも長官に対する質疑に全部お当てになるわけでもございますまいからして、できるだけ切り詰めて質問をして瞬く、こういうことにお願いいたします。順序は最初は佐多委員、その次には曾祢委員、それから高良羽生中田の各委員であります。鶴見委員外務大臣に対してのみ質問をしたい、こういうことであります。これは後刻に譲ります。大体そういうことに御了承願います。  では日程に入りまして、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件、農産物購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との国の協定締結について承認を求めるの件、投資保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、以上四件を一猛して議題といたします。では佐多委員
  3. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 MSA援助によつて日本自衛力増強する、それは日本が独立である以上は日本みずから守らなければならないからなんだということが政府のこれまでの御説明であつたと思うのですが、そこで私はそれでは日本防衛力増強するにつれて駐留軍はどういうふうに撤退をして行くかという問題についてお尋ねをしたいと思うのですが、その前にアメリカ日本への駐留軍、それの現在の状態、特に地上軍空軍海軍、それがどういう態様駐留しているのか、先ずその点を詳しく御説明を願いたいと思います。
  4. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 駐留軍実勢如何という御質問でありまするが、内容の詳細は我々はわかつておりません。
  5. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 詳細機微に亘つてお尋ねしようとは思いませんが、大要大体どれくらいのものがどういうふうに駐留をしておるのか、その程度のことはおわかりだと思いますので御説明願いたいと思います。
  6. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知の通り船のことにつきましても船の出入りがたくさんあるのでありまして、日本の近海のみ遊よくしておるわけではありません。従つてどれだけの船が常時日本駐留しておるかというようなことは全然我々わかつておりません。空のほうにいたしましてもこれも駐留軍実勢はわかつておりません。地上軍にいたしましても我々といたしましては大体の数は知りたいと考えておるのでありますが、併しアメリカのほうもこれについては我々に対して実勢を打明けておりません。ただ我々といたしましてはどれくらいの数字になろうということだけの推測に過ぎないのであります。併しその推測は私は国際信義上いろいろ差障りがありまするから申上げることは差控えたいと考えております。
  7. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういうことがわからないで、而もわかつていても国会なり国民に知らせないでいて、駐留軍との見合いにおいて自衛力増強するのだ、みずから守るために更にそれに撤退をしてもらうためにというようなことは何ら説明にならないのじやないですか。そういうことを少くともわかつておる限りにおいては詳しく国民説明をし、納得をすることによつて自衛力増強が一体適当であるかどうか、そういうことの判断ができるのであつて、そういうことを何ら知らさないでいてみずから国を守るために自衛力増強するのだということだけでは少しも納得が行かないと思うのですが、その点をもう少し御説明を願いたいと思う。
  8. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 二十九年度において我々はどれくらいの増をして行くべきかということの計画を立てて今国会の御審議を願つておるわけであります。これに基いてアメリカのほうでは恐らく見合うだけの撤退考えは持つことでありましよう。併しこの数字についてもまた打合せをしておりませんからわかりません。而して我々といたしましては大体において日本地上を我らのほうにおいて守り得るかということの研究をいろいろ各方面からして十両を立てるのであります。たたアメリカがこれに対して対応して幾ら撤退をしておるかということは今後の問題であります。この実勢力について示せということでありますが、今申上げ通知りまだ実勢力の実態というものが十分に我々わかつておりません。推測したのをこれを今軽卒に示すということは私は時期じやないと思います。わかつた上において十分に国民に理解できるようにいたしたいと考えております。
  9. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今わからないからとおつしやるのならば、それじやそれがわからないままにMSA援助の問題もそれに関連をする自衛隊増強の問題も的確な判断ができないのだから、今は少し見送るべきだとおつしやるならばそれを了承することができます。併しそうでなくて、相手方のほうは何もわからないで、それを示さないでいて、自分たちのほうだけはこう作らなければならないのだと言われてもそれの可否判断はできないのであります。
  10. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 二十九年度においてどれだけの漸増をするかということは我々は計画を立てておるのであります。それに必要なる援助を我々は求めるのであります。
  11. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから二十九年度で幾ら自衛力増強することが適当かどうかというような問題は、みずから守るために何ら必要なのか、或いは現在の二十九年度はあちら側の兵力とコンバインして守るために幾ら必要なんだということの判断ができなければこちらの自衛隊可否数量或いは編成可否、そういうものはわからないのです。それを判断するためにはどうしてもそういうことがあらましだけでもわからなければならないと思います。殊に地上軍を二万増加するとおつしやるが、それは二万も増加すると国内の師団幾らになり、従つてそれとアメリカのどれだけのものがコンバインして地上の守りはこれだけにするつもりだとか、或いは空軍をこれだけふやすとか、或いは海軍をこれだけふやす等々のことは、駐留軍幾ら幾らとの関係においてそれとのコンバインにおいてそれが必要なんだとか、将来はそれをどう態様を変えていくのだというようなことが考えられる、それがなければ我々は判断ができないと思います。だからそれの判断の材料になる程度でいいからお示し願いたい。
  12. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々といたしましては、三十九年度で地上部隊を二万増員すれば大体において現下情勢に対処し得るものと考えてやつているのであります。それは実勢力が増加できるとそれに見合つてアメリカ駐留軍引揚げるであろうとこう考えておるのであります。
  13. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その二万をおふやしになつて恐らく師団としては一個師団ですかをふやされるでしようが、それで、それが二十九年度絶対に必要だというならば、それだけで守るのじやないでしようから、それとコンバインさしれる駐留軍地上軍はどれくらいで、どういうふうになるのか。
  14. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) アメリカの実勢力というものは我々にはわかつておりません。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それがわからなければ一個師団増強だとか、二万人増強だとかの適否もわからない。
  16. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は二十九年度で二万名を増加すれば、大体において日本の現情勢に対処し得るものと考えておるのであります。
  17. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもその点がはつきりわからなければ二万の適否、それが果して必要なりや否やというような問題もわからないのですが、何らそういうことをお示しにならないでこういうものを国民に強要するというのは我々ふに落ちないのですが、こんな問題ばかりやつていたんじやちつとも議論が進みませんから次に移ります。  防衛力増強すると言つておられますが、その自衛力戦力でないのだというようなことを今までに何遍も繰返しておられますが、それならば戦力決定する具体的な基準はどういうものとおわえになつているのか。
  18. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 基準というものは、これは確定したものは私はないと考えます。我々がここまで来れば戦力になるということを大体において判定をすべきである。現下の我々の考えといたしましては今度ふやすべき自衛隊が増員されても戦力に至らんということの判断をすればいい。これが最終的にはすべて国民を代表するところの国会において判断される、こう考えます。
  19. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ここまでは戦力にならんというふうにお考えになつているのだから、それじやどこまでが戦力になるのか、それを具体的にお示し願いたい。
  20. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々はいわゆる近代戦を有効的確に遂行する実力、こう考えておるのであります。
  21. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは具体的な基準じやないので、それは言葉だけの問題で、私が聞いておるのは具体的な基準を、今あなたがおつしやつている現在の状態というのは火器その他援助を期付しておられるものがかなりあると思います。具体的にあとでお聞きしたいと思いますが、それでは戦力になつていないというふうな御判断をしておられるなら、そういうものがどういうことになつたら戦力だというふうにお考えになりますか。
  22. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 具体的にどれだけの数の兵員を擁しどれだけの船があり、どれだけの装備があるから戦力であるという具体的なことは私は申上げることはできません。又さようなことは如何なる学者といえどもそう言つておらないのであります。これはいろいろ抽象的に言うよりいたし方ない。
  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それができなければ現在の自衛力戦力でないという決定なり判断もできないはずじやないですか。
  24. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは我我が……。
  25. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そつちのやられるときだけ、ないということを言つて、であるという積極的な具体的な基準はないのだ。
  26. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は近代戦を有効適切に遂行し得る能力であると判断するところに限界があると、こう考えております。それが先ず以て政府判断すべきであろうと考えております。
  27. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから近代戦を有効適切に遂行し得る越力というものの具体的な基準は何なのか、今あなたが心強しようとしておられるものでは戦力ではないといわれるから、それでは戦力というものは具体的にどういうものか。
  28. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今申上げましたように具体的に数字を以て言うことはできないのであります。あらゆる社会通念に基いてこれをきめるよりほかないと思います。
  29. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 社会通念に基いて今のような程度装備、火力等々を持つていれば明らかに戦力であるということがむしろ常識であり具体的な通念なんです。それがあなたがたは社会通念に反してそうでないと言われるのだから、それならばそれをもつと明確にお示しなつたらどうですか、そうでなければ何ら、でないということの論証にはなつていないのです。
  30. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々はどこに基準をおくかということを具体的に数字を以て示すことはできませんが、大体においていわゆる平和条約にきめられておるように、他国に攻撃的脅威を与えるほどの実勢力を持つていない、従つて戦力に至らんものと考えております。
  31. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもそういう点も何らお示しにならないで少しも問題の内容はつきりしない、ただ言葉でごまかしておられるに過ぎないとしか思えんのです。  それではもう少し別な面から聞きますが、自衛力増強目途陸上自衛隊を三カ年とか五カ年でどうするというようなお話があるようですが、それの大体の目途はどういうところにつけておられるか、特に自衛隊をどういうふうにつけておられるか。
  32. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々としては場長期防備計画を立てたいと思つておるのでありまするが、これは容易に立たんということはしばく申上げたはずであります。つまり兵器の進歩その他から考えてみましても、確定的に何カ年たてば何カ年、こういうものを立てるかということはこれはすべきではない、これは又し得ないところであります。殊に我々としては日本財政力とマッチしてこの漸増計画を立てて行かなくちやならない。従いまして長期防衛計画というものは容易に立つべきものではないと我々は考えております。
  33. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと速記を止めて。    〔速記中止
  34. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。
  35. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは今の問題は後に廻しまして、艦船貸借協定の問題をお聞きしたいのですが、艦船貸借協定貸与交渉保安庁のほうではやつておられるのかどうか。それからその場合に艦種数量等はどういうふうな交渉をしておられるのか、その話合はどういうことになつておるか、その点を先ず御説明願います。
  36. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私のほうでは事務的に交渉をしておるのであります。正式の交渉外務省を通じてやつております、
  37. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その事務的な交渉内容の問題、特に艦種数量の問題等々はどういうふうにお話になつておりますか。
  38. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今のところ大体において一千六百トン級のものは恐らく二隻になろうと思います。それから一千四百トン級のものも二隻になろうと思います。それから三百トンが一隻先ずその辺に落着くのではないかと考えております。我々といたしましてはもう少し艦艇の貸与を受けたいと思つておりますが、大体それらの点で向うも承諾するのではないかと考えておりますが、まだ詳細なことはわかりません。
  39. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その一千五百トン以下の一千四百トン、三百トンとかいうものは貸与協定のほうで交渉しておられますか。
  40. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今申上げましたのは貸与協定のほうで話をしております。
  41. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 別にお出し願つた資料によりますと、補給工作船ですが七十トン級一隻、駆逐艦二十四百二十五トン一隻、千六百三十トン三隻、潜水艦千六百トン三隻、こういうものが挙げられておりますが、これらは全部十五百トン以上ですから、常識的に我々が判断すると、これらが貸与協定交渉の対象になると思いますが、その辺はどういうふうになつておりますか。
  42. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 元来さような希望をこちらから事務的に申入れておつたのでございます。併しながらなかなか向うにもいろいろ都合があるようでありまするから、今申上げたような程度のところで落着くのじやないかと考えております。詳細なことはまだきまつておりません。
  43. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると千五百トン以下のもので貸借協定でならなければならないというのはどういう理由に基いてですか。
  44. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) ならなければならんというわけではありません。これは貸借協定のほうで向うに入れる都合があるのじやないかと考えております。
  45. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうしますと今予算その他で予定をしておられる期待量と非常に食違つて来るので、海上自衛隊増強方針は変更され或いは修正をされることになるのかどうか。
  46. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 修正はいたしません。これは船舶貸与協定のほうの何でありまして、これに洩れた分は、千五百トン以下のものはMSA協定によつてもらい受けたい、こう考えております。
  47. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 洩れたものの大部分が十五百トン以上のものなのです、今の説明判断すると。
  48. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) ですから今これは十五百トン以下のものでカバーして行きたい、こういうふうに考えております。
  49. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 千五百トン以下のものでカバーするとなれば、全部艦隊の編成が違つて来るわけです。艦種その他が違つて来るわけだから、人員その他は遠いを生じて来る、従つて予算は重要な変更を見る。海上行隊増強方針等々は全部基本的に変つて来るということになるのじやないかと思うのですが、その点はどういうふうに思いますか。
  50. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 私からお答え申上げます。千五百トン以上の分につきましてはやはりMSAでは参りませんので、別の協定でやるという話のようでございます。ただその内容につきましては、只今長官からお話がありました四杯乃至五杯のものは取りあえずアメリカ側において、すぐにでも協定ができ次第引渡ができる、こういうような達しを聞いているのであります。その他につきましては今後なおここ数日の閲に交渉されることと思つておりますので、この我々のほうで希望しておりまする艦種並びにトン数につきましては大した異動はないと存じております。ただ七千トン級のものにつきましてはやや実現性が変つて来るかも知れません。ただ変つて参りましてもこれに代るべきトン数少い船二はいを以て濁音換えるとか、或いは他の艦種に変えるとかということになろうかと持つておりまして、従いまして総トン数及び隻数は変動があるかも知れませんけれども、総トン数につきましては大体予算に計上してお願いをいたしましただけのものは返事をしてくれる、こういうふうに存じております。
  51. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると今の長官の御説明は、今殆んど確定しているようなものをお挙げになつて、それ以外の二十四百トンとか、千六百五十トンの五ばい等々のものは期待量としてはなお交渉を続けておられる。而もそれは向うから貸与を受ける見通しがあるということなんですか、そこのところをはつきり。
  52. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) その通りでございます。
  53. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 長官お尋ねしますが、それは貸与ということになるのですか、譲渡ということになるのか。それは前の船舶貸店協定のものも今度の機会にどういうふうに切換えられるのか。その辺はどういうふうにお見通しですか。
  54. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは前のと同じ形式の貸与であります。
  55. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 貸与ですか。
  56. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) はあ。
  57. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 外務大臣お尋ねしますが、それらの交渉なり折衝が今お聞きの通り非常に具体化しているのですが、外務省はこれに対して協定その他はどういうふうなお考えを持つておられるのですか。
  58. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今非公式の交渉保安庁のほうでやつておられますが、その結果を待つておるわけですが、大体前のフリゲート等協定がありますので、あれをモデルにして話が音守ればそう長くかからずに協定案ができるつもりでおります。
  59. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 外務省のほうですでに協定試案を出してサウンドしておられるというようなお話も伝わつておりますが、そういうことをしておられるのですか。
  60. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 事務的にはいろいろ相談をしておりますが、まだそれは事務的なサウンド程度で、それについていろいろ私のところに決済を求めたり何かしている程度ではありません。
  61. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 一週間くらい前でしたか、私この問題を取上げて外務大臣お尋ねをしたら、外務省としては何ら折衝等々をやつておらないというようなお話つたと思うのですが、その翌日には小瀧政務次官、或いは局長等々から、すでに外務省としても内折衡をしており、或いは試案程度のものを提出をしているというようなお話があつたのですが、そういうふうな答弁では、我々の質問を全く愚弄しておられるという感じしか受けないのですが、その辺のいきさつはどうなんですか。
  62. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 大臣次官等決裁を経たものであればこれが正式交渉でなくても非公式な交渉になります。併しそういう決裁を経ずにこういう形ではどうだろうか、ああいう形はどうだろうかという相談をしているのは事務的なサウンドの範囲でありまして、我々としては非公式の交渉の範疇にも入らない。それはやはりお互いに事務的にいろいろ研究して、そして大体これならばまとまりそうだという案を得た上で決裁を経て、それを今度外務省交渉として話合を始めるわけであります。只今のところはサウンドをいたしておるという程度に過ぎません。
  63. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 形式的にはいろいろそういう御説明ができるのでありましようけれども、それらの点は国民が非常な関心を持つていろいろ見守つておるところなんですから、もう少し国民のための政治である、国民のための外交であるというふうな気持が外務大臣にあるならば、あの当吟といえども今御説明になつた程度のことは親切に御答弁があつて然るべきだと思うのですが、そういうことが何らなくて、そうして今そういうふうな形式的な御説明を願うのは誠に遺憾なんですが、そういう点をもう少しフランクに国民と共にそういう問題を考え、論議し、決定をして行くという態度に運ばれたいと思うのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  64. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 佐多君も始終私の質問に答えてくれ、余計なことを言わないでくれというお話を承わつております。私は外務大臣に対して質問をされますればそういう程度のお答えをするのが質問に対するお答えであると考えております。
  65. 羽生三七

    羽生三七君 関連して一点だけ。今の艦艇貸与協定が仮に成立した場合に、MSA援助以外の艦艇貸与協定から、今佐多さんからもお話がありましたが、人員、二十九年度の予算の上に何らかの変更があるかどうか。  それからもう一つは、この協定ができた場合にやはり軍事顧問団というようなものの増員というようなことが起るかどうか、この点をお伺いいたします。
  66. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) この隻数の変更等がございましても総括合計いたしましたトン数に影響がないとみておりまするので、委員その他については予算に変更がないと存じております。  それから顧問団につきましては、先ほど大体話合がまとまつておりまするのでそれより増加するということはございません。
  67. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 外務大臣、よろしうございますか。
  68. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もう少し、もう一問だけ。そうしますと今の保安庁長官の或いは事務当局のお話ですと、期待量とはかなりかけ離れてまだ問題が具体的に決定をしないような艦種も相当あるようでありますが、そうだとすると貸借協定交渉自体、内容交渉自体まだ相当期間がかかると思うし、従つてそれを持つて協定を外交的に結ばれるということになればそれも相当な後の時期にずれると思いますが、この協定の問題は今度の国会にお出しになるめどを以ておやりになつておるのか、特に外務大臣のほうはそれをどういうふうに見通しておられるのか。
  69. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私のほうは保安庁のほうの事務的な実質に亘るいろいろな話合ができますれば協定案の作成等々は徹夜してもやるつもりでございます。それから長く外務省のほうで手間をかける考えはありません。あらゆる方法で促進いたしまして、できれば今国会に間に合せたいと思つておりますが、これはまだ勿論わかりません。
  70. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その今の話合でまだ内枠的に未決の問題が相当たくさんあるので、なかなか早急にはきまらないと思いますが、そうすれば今国会には出せない。今国会はもう御承知の通り五月早々で切れるわけですから、今国会には出されなくなると思いますが、そういう場合にはこの問題は打切りにして来年もう一遍やり直すということになるのか、それとも何らかの措置をとろうとしておられるのか、これは外務大臣長官と両方に一つお尋ねいたします。
  71. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私のほうはまとまりさえすれば今国会に間に合うように協定案を一日か二日のうちに作つてしまいたいと思つております。
  72. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々のほうも早急に協定を成立させたいと、こう考えております。
  73. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、早急にと言われますけれども、今までにすでに何カ月もお話になつていてようやくきまつたのは今長官がおつしやる程度なんです。むしろあとにもつと大きな大事な問題が控えていてそれがなかなかきまらないというような実情ですから、実際上まじめに考えて今会期には間に合わんのじやないですか。協定が今すでに出ていても国会の審議その他の期間を考えれば間に合わんことが考えられる。ましてや協定はまだできていない。それは一晩でやると外務大臣は言われるが、まあそれはそれならそれでいいが、協定内容になるものはなかなかそう簡単にきまらない。そうすれば今国会にも間に合わないということは余りにも明白です。その場合にどういう措置をされるか、そこを明瞭に一つ承わりたいと思います。
  74. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々はどこまでも今国会に間に合うようにしたいと努力をしているのでありまするが、努力をしても間に合わなければこれはいたし方ありません。その際にも我々はMSA協定のほうにおいて最善の努力をいたしたいと考えております。
  75. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると少くとも海上自衛隊編成増強等々については大きな修正を必要とする、従つて予算もそれに関連して来るという結果になると思いますが、それも考えておられるかどうか。
  76. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は千五百トン以下の船で隻数が多ければトン数において変りのないようにいたしたいと考えております。
  77. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その協定承認前に或いは発効前に行政上の措置として何かそういうことを実際にやつてしまおうというようなお気持があるのかどうか、その点はどうなんですか。
  78. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まだそこまでは考えておりません。
  79. 羽生三七

    羽生三七君 ちよつと一点。今のお話の千五百トン級以上のものが期待できない場合にはMSA援助の範囲内でというお話がありましたが、そうすると場合によつてMSAの今度の援助内でそういう操作ができるわけでありますか。
  80. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 千五百トン以下であればできると考えております。
  81. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この問題については非常に重要な問題でありますので、すでに話がそこいらまで進んでおり、而も、試案等々もお出しになつているとすれば、この協定を正式にきまつて上程をされる前に適当な機会にこの外務委員会に改めて中間報告なり経過報告なりを是非別な機会で結構ですが、やつて頂きたいことを希望してこの問題はこれで打切ります。外務大臣いいですね、適当な機会でいいです。
  82. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは佐多委員保安庁長官に対する質問はそれでよろしゆうございますか。二十分のお約束がほぼ……。
  83. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじや又の機会にします。
  84. 曾禰益

    ○曾祢益君 保安庁長官お尋ねいたしますが、いよいよ防衛庁及び自衛隊法ができまして直接侵略に対する事実上の軍隊ができるわけですが、これはもういうまでもなく国の交戦権は認めないということになつておるわけで、いわゆる自衛的な自衛行動としての武力有効はとれるでしようが、いわゆる交戦権は日本国がみずから認めないという立場をとつておるわけですから、この軍隊はいわゆる交戦者といいますか、交戦者の権利はないという建前になると思います。そういたしまするとその自衛行動に基くいわゆる武力を使つた場合にいろいろな制約が加えられることになりはしないか。殊にこの自衛隊員等が交戦者でないという立場をとるならば、これは外国の側から見ればそういう非交戦者が域倒する行為に従事することが、これが一種の戦時重罪というような国際法上の観念をもつて律せられるという心配はないのか。この点については自衛隊の士気に関する非常に大きな問題であると共に、憲法の条章を遵守する建前からいつてこれは当然に保安庁長官としては大きく考えておられるところだと思いますが、これに関する明確な解釈と態度をお示し願いたい。
  85. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本の憲法ではいわゆる交戦権を否定しておるのでありますが、これは国内関係であります。外国との関係におきましては御承知の通り一九四九年のジュネーブ条約というのがあるのでありまして、これは戦争宣言した場合のみでなく、その戦争状態を当事者が承認しないと否とにかかわらず武力紛争に適用されておることは御承知の通りであります。その規定によりましておそらく相手国でありましても今お示しになりましたような捕虜の取扱ということは当然されるものと面々は考えております。
  86. 曾禰益

    ○曾祢益君 今おつしやつた条約は的確にはどの条約ですか、もう一遍おつしやつて頂きたいと思います。
  87. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 一九四九年ジュネーブ条約、日本は昨年参加いたしております。
  88. 曾禰益

    ○曾祢益君 その条約の第何条によつてそういうことがはつきり言えますか。あとでも結構です。私も勉強不足ですが、それもあるでしようし、然らばいわゆるへーグの条約に基く陸戦法規のほうからもそういう交戦者の資格というところで、木村さんの言ういわゆる軍隊というものは国際的通念からそんなはつきりした規格はないなんかと言つておるけれども、この「交戦者ノ資格」の中では民兵であつても或いは義勇兵団であつても又いわゆる郡民蜂起の場合でも戦争の法規慣例を遵守する場合には、これは交戦者の資格を与えるということが明瞭になつている。この点はどうお考えですか。
  89. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 如何にもその通りであります。
  90. 曾禰益

    ○曾祢益君 さような関係から木村長官としては交戦権を国が持つてない場合でも、その下における軍隊が自衛権を発動した場合には決して戦時重罪にならない、捕虜の待遇を受けるとかそういうものについてははつきりした確信をお打ちですか。
  91. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) この自衛隊の行動につきましては、国内法上から交戦権を認めておりませんけれども、国際法の働く分野におきましてはやはり戦闘行為が行われますれば交戦者になると存じております。従いまして国際法の関する限りにおいてはこの自衛隊の任務のみに着眼して判断されると思いまするから、交戦をする部隊は軍隊と同様の取扱を受けましようし、又船は軍艦と同様の国際法上の取扱を受けると解釈いたしております。
  92. 曾禰益

    ○曾祢益君 その場合に日本国が交戦権を認めないと言つていると、国内法的には国が勿論持つておる権利ですけれども、それに基いてその自衛隊等が交戦者の資格を持つてならない、こういう解釈になると思う。一方外国に対しては交戦者の資格を主張するのであるか。主張はしないけれども、先方から認めてくれるだろうという期待を持つておるのか、その点はどうなんですか。
  93. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 国際法上は交戦者としての地位を認めてくれるというばかりてなく、我がほうにおいてもやはり国際法の働く分野におきましては交戦者としての地位を主張することになると思います。ただ交戦者としての地位を主張いたしまするが、交戦者として有しておる権利を憲法において放棄をしておるというだけに過ぎないのではないかと思います。
  94. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうもわからないのですがね。憲法においてこれを放棄しているんですから、これは一種の国内法的に見れば禁止と同様であつて、国内においては禁止されていることを国際的には国際法の分野においては、向うが条約、国際法親等によつて認めるであろうという期待は正しいとして、併し日本側からみずから捨てておる権利を外に対しては主張するという根拠は一体どこにあるのですか。
  95. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 主張すると申しましても権利として主張するということはできないと思いまするが、併し交戦権というものは全般的に闘いを交える権利という意味ではないことは前々御説明申上げておる通りでございまして、交戦者として有する個々の権利を指すと解釈いたしますので、交戦者はやはり交戦者であろうと存じております。
  96. 曾禰益

    ○曾祢益君 この点は本当なら外務大臣法制局長官等も一緒に伺わなきやいけないのですが、留保して次に長官に伺いまするが、最近原子兵器が非常に発達して殊に水爆の脅威的な発達に伴いましてこれは日本ばかりでなく国際的に一つの防衛理論上大きな問題が起つていること言うまでもないのですが、この原子力の発達に伴つていわゆる原子力兵器を持たないような、みずから持たないような正確に言えばなるでしようが、防備力というものは全然無意味であるというような意見が行われておるかと思いますると、又逆に防衛力の最大のとりでとしての原子力兵器がいわゆる自由陣営にあるから、これが戦争を制御する力がある。面して原子兵器の残虐な惨禍が余りに過大であるから、仮に国際的な禁止ができなくとも、お互いに報復を恐れる余り原子兵器は存外使わないかも知れない。そうなつて来ると原子兵器だけに頼るわけに行かない。従つていわゆるコンベンシヨナルな兵器が決して無用ではないというような意見、これはイギリスのチャーチルなんかもそういう立場のようですが、こういう意見もあるわけです。これは決して学理ある防衛論争ではなくて、こういう正大な時期に日本自衛力強化に責任のある保安庁長官としてはこれらの問題をどういうふうにお考えになつておりますか。いわゆる原子力時代にこんなちやちなものを作つたつて意味ないじやないかという意見に対しては、如何なる確信を持つて答えられるかということを明瞭にして頂きたい。
  97. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今仰せの通り原爆、水爆ができた時代にもう普通の軍隊なんか要らんじやないかという議論のあることは承知しておりまするが、これは私は非常に飛躍した議論であると思います。原子力兵器ができたことによつて大きな戦争の起ることの成る程度の防止の役に立つものと逆に私は考えております。これが用いられるようになるということになればおそらく人類が非常な惨憺たる悲境に陥るのであります。勿論用いられる場合にはいわゆる第三次戦争であつて、これをきつかけとして世界が非常な悲惨な目にあう、従つてさような原子兵器というものは使うようなことはおそらく起ることはなかろう、これは私だけの想像でございます。併し原子兵器を使う前において我々はいろいろな事態のあることを予想されるのであります。これが予想されなければ誠に仕合せであります。現に世界においても原子兵器ができたからというて軍備を撤廃したり縮小する国はどこもありません。我々といたしましては原子兵器を使う以前におけるいろいろの事態に鑑みて我々の防衛をして行くということに心を寄せなければならんと考えております。すなわち原子兵器を用いる程度に至らざる外部からの侵略というものはあり得ることを我々は十分考慮に入れて、日本の防衛ということに何らかの処置をすることが当然だろうと、こう考えておる次第であります。
  98. 曾禰益

    ○曾祢益君 まあ木村さんはチヤーチルと同じような御意見のようですが、それはそれとして、然らば逆に原子兵器をもつて攻撃されるような場合に対する防衛方針はどうなんですか。
  99. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これも我我は将来大いに予想しなきやならない。原子兵器は使われないだろうということは一応考えております。使われた場合に日本を惨澹たる状況におくということはこれは我々として忍ぶべからざるところであります。そこにおいては私は常に言いまするいわゆる電波のほうに力を注がなきやならん。勿論原子兵器ができても原子兵器自体が攻撃力になるのでありません。これを運ぶ飛行機、電波兵器、これが要るのであります。これに対して対処し得る我我は科学的の研究ということは十分ふだんからすべきである、こう考えております。いわゆるガイデッド・ウエポン、これが研究の対象になり得るのだろうと、こう考えております。
  100. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういう消極的な防衛と言いますか、そのほかに、やはり原子兵器に対しては原子兵器の報復をするというふうなアメリカ考え方、これと安保条約を結んでいる日本MSAを結ぶ日本という観点からどういうふうにお考えになりますか。
  101. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は原子兵器を日本で作るというような考えは持つておりません。
  102. 曾禰益

    ○曾祢益君 日本で持つとか作るという考えは、勿論これはないでしようが、いわゆるアメリカ側が持つておるという制御力に期待しているのか、いないのかというこの点を伺つておきたい。
  103. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まだそこまでは我々は考えておりません。
  104. 曾禰益

    ○曾祢益君 それはおかしいな。次にこれも幾たびか議論になつた点でありますが、いわゆる地上の自衛、陸上自衛隊ですが、これのめどに関連する問題ですが、いわゆる三十二万五十、十個師団、こういう一つの地上軍に対するアメリカ側から見た目安というものがあると思うのですが、こういうものに対していわゆる防衛の研究の見地から言つて、例えば十個師団は必要であるという考えに立つのか、或いは仮にその十個師団は必要であると考えた場合に、その師団の範囲は三万二十五百というのは多過ぎる、例えば一万八千でいいとかいうふうな研究はこれは当然にされておると思うのです。何もそれを今長期防衛計画として議会に出せとは申しません。そういう点に関する、つまり地上軍の規模及びそのいわゆるデビジヨン・スライス、この問題についてどうお考えになりますか。
  105. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今示しになりました三十二万五十というふうな数字考えておりません。申すまでもなくそういうような数字になりますと、今のような志願制度ではいけないのであります。我々の自衛力漸増の極限というものは人員において制限されるのであります、それは地上部隊に関する限りにおいて。そういたしますと、さような数は出て来ないのであります。従いまして、我々は志願制度の許す範囲内においてこのことをどうあるべきかということを考えなければならない。師団編成にいたしましても、アメリカ或いはソヴイエトのような編成型がいいのであるか、これは非常に疑問であろうと考えるのであります。我々といたしましては、日本的のいわゆる部隊編成というものを研究しておるのであります。これがいわゆる一個部隊一万二十にすべきであるか、一万五十にすべきか、これも非常な問題である。或いは九十くらいにおくべきであるか、しきりに我々はこの点について研究を進めておるのであります。
  106. 曾禰益

    ○曾祢益君 それでありますると、大体いわゆる師団単位というものについてはまだ確定的なあれではないが、まあ一万五千を中心にお考えのようですが、まだきまつておらない。いま一つの点はいわゆる応募の関係、志願兵制度で行くのに限界がある。それはその観点でいつたらどのくらいの限界があるとお考えですか。
  107. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) ラウンドナンバーで約二十三、三万かと考えております。
  108. 曾禰益

    ○曾祢益君 次に防衛分担金の問題でありまするが、今年の自衛力増強に伴つて、これは政府としては当然に防備分担金の減額を努力されたと思うのですが、まあ結果は極めて少額の減額しか行われなかつたのですが、これは勿論直接の理窟から言えば、日本側の増強分に見合つて減らすという理窟にはなつていない。これは日米行政協定にも明らかである。アメリカ日本にいる駐留軍の規模に応じて減らし得るという問題であろうと思うのであります。併し先ほど来佐多委員が鋭く言つておられたように、この問題はやはり相関性は当然あるわけで、それがアメリカ側が、自分としては成るべく、特に地上軍を撤収したいということと相見合つて日本側の自衛軍の増強であるわけであります。そこで一体今年はああいう結果になつたけれども、今年防衛分担金、これは五百八十億から少し減つても非常に大きな負担であります。でありまするから、若し政府が自衛軍を今後とも増強して行きたいという観点に立つならば、それに関連して、大体これと見合つたようにアメリカ軍が撤退するということにもなるのでしようが、財政的な見地から、防衛分担金の減額のほうをむしろ日本の自衛軍のほうとからみ合わせた考え方で政府はおられるのか、おられないのか。今年の分は非常に少かつたけれども、来年からは少くともあなたが考えておられるように、一応の品定は陸上三万、海上六十とか、空軍八千六百とかいう目安は持つておられると思う。従つてそういう防衛計画を持ち、増強計画をお持ちならば、当然に武器の供与のほかに防衛分担金のからめ手の減額ということが考えられるはずだと思うけれども、それらの点についてのお考えはどうですか。
  109. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 間接の関係になりますけれども、日本自衛力漸増いたして参りますれば米軍の駐留軍引揚げて行く。従いまして防衛分担金は漸次毎年減額して行くはずでございますし、又そういうようなことも期待いたしております。
  110. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういう間接の期待ではなくて、今年すでに現われておるように、少くとも今年ふやした分に相応するアメリカ軍の撤退も明かでない。じやどういう基準でああいう防衛分担金の減額がきまつたのですか。少くともそれだけアメリカ軍が撤収するからという具体的のあれなのか。それとも腰だめ的な単なる妥協によつてなつたのか今年は減らした基準はつきり示して頂きたい。
  111. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 防衛分担金につきましては、保安庁の所管でございませんので、はつきりお答えは申上げることができないのでありますけれども、併し本年の防衛分担金が減額されましたことにつきましては、保安庁のほうで地上隊の増強が行われますればアメリカ側において駐留軍撤退が行われるという見通しの下に減額されたと存じております。
  112. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはまあ関係大臣が全部来ておられませんから仕方がありません。
  113. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 予算をきめるときにすでに二十五億ですか削減をされ、更に予算決定して後最近二十五億か幾ら削減されたというようなことが出ており決したが、この実情はどうなつているのですか。
  114. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 二十五億の削減は予算編成当時でございまして、その後はございません。
  115. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その後はないのですか。
  116. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) ありません。
  117. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 更に最近何か二十五億という話が出ておりますが、それは全然ありませんか。
  118. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 私は承知しておりません。
  119. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 外務省は。
  120. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 最近新聞に出ておりましたのはただ一回の二十五億の削減しかなかつたのでありますが、それを確認いたしますために交換公文を行なつたのでありますが、それは行政協定の二十五条に新たに取極の効力の発生の日まで一億五千五百万ドルときめておりますので、新たな取極をどつちみ必要といたしますので、確認する意味の交換公文を行なつたわけであります。
  121. 曾禰益

    ○曾祢益君 これまた同僚議員諸君からも御質問があつたのですが、私どうもわからないのは、この今度のMSAの受入による武器等は、いわゆる新たな自衛隊増強分に充てるのだ、こういうようになつているわけですね。それが五百何十億でしたか、まあ言い換えるならば大体一億五十万ドルというアメリカのはらづもりもあつた。これは帳簿価額でしよう、武器を受入れる。それは増強分に充てる。ところが今までの既存のいわゆる保安隊分については、これは個人貸借の関係になつているわけですね。そこで而も今やアメリカではアメリカのいわゆる五十五会計年度のMSA政府予算原案というものができんとしつつある。而もその内容日本部分はどのぐらいであるかということは、これは勿論明かに伝えられておりません。おりませんが、一体これはひいては先ほど来お話なつたようにフリーゲート艦及び上陸支援艇のあの船舶の貸与の問題にも関係がある。とにかくこういう既存の貸与の分は一体MSAに外えられるのか。若しこれが枠えられ而も来年度これが科えられるということにたるならば、これからの増強分に対してはもう殆んどアメリカ予算をよほど大きくでもしなければ、もうMSAによる実質的の増強分の武器の支援というものはなくなるのではないか、かようにも考えられるのですが、それらの関係は一体どう当えておるか。又殊にそれが今後明らかにされるのか、その点をはつきりお話を願いたい。
  122. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 現在までの十一万編成に伴つて貸してもらつておりまする武器については、MSA貸与、供与には入らないようであります。従いましてMSAによりまする分は増強分のみが入つて、何千万ドル或いは何億ドルというのは増強分だけが計算してあるわけです。
  123. 曾禰益

    ○曾祢益君 それはもうわかり切つているので、政府から何遍もそういうふうに説明を聞いているのですが、併しMSAによるのはこれはまち大体贈与と私は見ているわけです。中には貸与もありましよう。併しまあ大体贈与の分です。ところがこの十一万のほう及び上陸支援艇とフリゲート艦は一体これは将来どうなるのか。殊にこんど来年度等に日本が増すした分だけは別のやつをくれて、貸与のままにしておくのか。それともこの貸与の分は贈与の中のMSAの中に入れてあれして来れば、日本は金額上では非常に大きな援助を受けているようになるが、実質上は今まで只で借りていたという観点に立てば、一向MSAの金額はふえても実質的には余りプフスにならない結果も考えられるから、今度のMSAの分は増強分だということはわかつている、今までの借りた分はどうなるのですかと、この点を伺つておるのです。
  124. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) これまでの武器につきましては、米国側におきまして別個の法律を作りましてそして日本側に供与しようというようなことになると存じますので、今後のMSAの中には入つて来ない、それ以外の分になると存じております。
  125. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうすると丁度船舶貸与協定のように、まあ武器を日本に今まで貸しておつたやつを合法化するようなアメリカの国内法ができる。それに基いて又別に協定して、そしてMSA以外の貸与分として合法化する。それで今後MSAによる武器供与はすべて増強分だけに見合うのだ。今年の分だけでなく今後続くと仮定して、さように考えて間違いないかどうか。
  126. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 只今上村官房長の申されました法案は、恐らく対日武器取扱法とでもいう独立の法案になると思います。そこで見知しとしては、恐らくそれは日本側に談渡してしまう、所有権を移すということを正式に確言するものであると思います。そこで只今御指摘の来年度のMSA予算との関係でございまするが、これは米国内部の予算やりくりをどうするかという米国の内部のやりくりでございますが、考えられまする問題は、FOAにつけました米国の対日援助予算の一部で今まで保安隊に事実上譲渡していた中古の装備、武器の評価した頃に匹敵するものを、国防省の予算に繰替えるというようなことも考えられるのではないかと思います。そういうことをやつておる例は外国の場合にございますので、或いは仰せの通り来年度のMSA予算の計上額が全部新たなる援助として日本に来るのではなくて、その中の一部をすでに事実上貸与したものの評価額だけさつ引いて、その残りが新たなる援助となるということも十分考えられるのであります。
  127. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうするとどつちになるかわからないわけですね。来年度のMSA予算に、一応この新増強分と、それからFOAから国防省に移すかも知れない中古品の、今まで十一万の船舶貸与協定に基く船舶の、これは入るか入らないかわからない十一万のそういうものを譲渡するそれの価格が一応入つておる、こういうことはあり得るわけですか。
  128. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 仰せの通りであります。
  129. 曾禰益

    ○曾祢益君 それで来年度の援助計画が、そういつたような点も含んで、MSAそれから既住の借りた分、こういうものも含んで向う予算ができ上らんとしておるわけです。その際に政府としては、一向、来年度の分は国民に対してはただ防衛計画はまだ何といいますか一応の目安だという程度言つておられますが、アメリカ予算のほうがもう議会に同まつて出るという際に、そこら辺の話は、来年度はこのくらいほしいという話が行われてないとは常識上考えられない。若しMSAを受入れて拡大してもいいという見解に立つならば、むしろ速かにこつちの案を作つて、速かにこれを取りに行くのが当り前だ。諸外国ともにアメリカからMSAを受入れる国はアメリカ予算の分取りです。これは日本の各省が予算分取りをやるのと同じです。だからそれがいいという立場に立つならば、予算の分取りを大いにやらなければならない時期がもう旭つている。すでにやつておられるのではないか。ところが国民に対しては、日本予算はもう遅れているから今全貌は示さない、まだ目安だけであるというような、国内と国外に使い分けをしなきやならない立場におられるのじやないかと思う。その点はどうなんですか。
  130. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知の通りMSA援助を受けたからといつてそれたけでは行くものじやない。やはりこれはMSA援助を受けるについては日本の部隊を増強しなければならない。増強するということは即日本の財政計画に非常に影響して来る。二十九年度は一先ずこれで行きましたが、三十年度の財政計画というものはまだ立たないのであります。それで国民所得がどうなるか、それらの点もはつきりわかつていない。従つて日本の財政計画が立たん先にMSA援助をこれだけ受けたいというようなことははつきりできないわけであります。財政計画見通しがついた上においてどれだけのものを援助を受けるかということを我我は検討すべきであろうと、こう考えます。
  131. 曾禰益

    ○曾祢益君 誠にその通りなんで、その御意見は正しいんです。ただ一方においてそう言いながら、アメリカのほうの予算にはやはり一口入つておきたいから、事務的のサウンドとか何とかいうことをやつておられるんじやないかということを伺つておるわけです。
  132. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々の関する限りにおいてまだサウンドもやつておりません。
  133. 曾禰益

    ○曾祢益君 今別の協定によりますると、附属書のCですか、これには兵器等の標準化達成のために共同措置をとるということが書いてありますが、これはアメリカとのいわゆる同盟国、殊にNATOの場合なんかは非常に標準化ということをやかましく言つておりますし、これはNATOそれ自身が一種の共同防衛軍みたいな恰好になつておりますから無理もない。或いは純軍事的にみれば当然かもしれないが、日本の場合には非常にこういう標準化みたいなことを約束して、そのプラスの面も或いはあるかもしれません。併しいわゆるアメリカの標準というものは或る種の武器についてもそんな贅沢なものは日本に向かない。必ずしも要らないというような軍事専門家の意見もある。従つて自主性を阻害するような虞れはないのか。附属書のCですね。標準化のための一種の約束をしておるわけです。その点はどうお考えですか。
  134. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この附属書Cの「標準化の原則から生ずる利益を認めて」とこう書いてございます。確かに利益はれるわけであります。特に日本といたしましては域外発注を多量に受けることを考えます場合には、日本の規格が米国の規格に合致いたしますことは、今度は米国から第三国に援助として参ります装備、備品等の規格も同じことでありますから、日本で作つたものはそのまま第三国の援助に使えるということで、域外発注を多からしめるという経済的利益も日本の場合にはあるわけであります。ただ御指摘のように、日本人の体格それから日本の道路でございますとか橋梁のキャパシチー、それから山岳地帯が多くてトンネル等で高さの制限とか、そういういろいろな点がごいますので、交渉の際にそういう日本人の特質、及び日本の地勢上の特質から来る制約はこれは十分認める。そこでフイージブルな限りの標準化をいたそうということに話合ができております。
  135. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは条約局長は条約の意味を御説明して頂いたんですか、これはやはり内容的に防衛計画の問題、勿論そのほかに域外買付のような問題もあるでしようが、主として防衛計画に関連する問題なんですから、そういつたような標準化の望ましい場合域外買付のときには都合がいいというような児地だけで、或いはそういう点を主としてアメリカと約束することは、これは非常に問題じやないか。木村長官は特に電波兵器とか或いは誘導弾とかいう動常に日本の防衛に即した最新のものを持つ必要があるという、少くともそういう希望を持つておられるということをしはしば聞いているのですが、さような見地に立つても、又逆に一般の歩兵等の使う武器は何もアメリカのようなぜいたくなものでなくてもいいじやないか。標準化というものを認めて行けば行くほどやはり標準化された武器を使うためにはこれだけの弾薬が要る。これだけの部隊が要る。結局先ほど言われた一カ師団編成に直しても、仮に一万から一万五千くらいの単位で普通の陸軍師団はいいと言つていても、やはりアメリカ式の標準の計算で行きますと全部で三万二千五百というところにずるずると引つられて行く、こういうきらいもある。これは一つの大きな点だと思うのですが、木村長官の識見と抱負を一つ聞かしてもらいたい。
  136. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 標準化と申しましても何も規格を全然一緒にするというわけではないと我々は考えます。例えば百五十ミリの大砲であれば百五十ミリのこれは規格に一定するでしよう。併し標準にしてもこの構造は何ミリにするか、これは規格を一定にしてもいいですが、その実際の長さ、重量というようなことは変つて一向差支えないと私は思います。根本的の規格を揃えるということは双方に非常にいぎという場合に便利である。これは原則として統一しておく。併し細部の点において必ずしも両者の岡には全然一致しなければならんというわけのものでは全然私はないと思います。今又誘導兵器のお話がありましたが、この誘導兵器一つにしても、日本独自で勿論きめて行つてアメリカの技術のいいところは取入れるが、又日本の技術のいいところはアメリカは又これを援助によつて採用するでありましようし、お互いの研究ということは相呼応して進めて行けばいいのでありまして、必ずしも誘導兵器にしても同じものを作らなければならんというわけじやないと私はこう考えております。
  137. 曾禰益

    ○曾祢益君 最後に一点伺いますが、顧問団の性格が非常に国民に大きい疑去を与えていると思うのですが、協定の案文からいえば如何にも無害のように見える。例えば武器をチェックするとか、自分のほうから与えたものですから、或いはその使用を教える、まあそういうようなもののように言つておるわけてありますが、併しこれについてはいろいろ疑惑が起るのですが、そこでそういう部隊に対する勿論指揮とか何とかということは、はつきりない。それから防衛計画そのものについていわゆる干渉して来ないというような点をもつと明確に出すことをお考えになつておるかどうか、この点を伺いたい。
  138. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 顧問団の性格はしばしば申上げた通りでありまして、あれ以上には出ないのであります。現在におきましても顧問団は決して部隊の指揮ということには関与しておりません。これははつきり申上げます。又向うが進んでそういうことに関知しようという気持は毛頭ありません。ただ今仰せになりましたように、新しい兵群が来たときに、その操作等についていろいろ指示を受ける、そうして日本に来た装備が適正に使われておるかどうかというようなことについて、向うはいろいろ調査をするというように過ぎないのであります。無論防衛計画にタッチすることもありませんし、又部隊直接に対して指示することもなければ指揮することもないということを私はつきり申上げます。
  139. 曾禰益

    ○曾祢益君 この顧問団は軍隊の教育や何か訓練に教えるというようなことは全然あり得ないのですか。殊に例え航空隊みたいなもの、ああいうものにそういうことが起り得るのではないか。これはいい悪いは別です、昔の日本の陸海軍でもこれは航空等については或いはフランスから或いはイギリスからいわゆる顧問団じやありませんが、教官をよんだことがあります。一時的に招致したことがある。そういうことは顧問団とは全然関係ないと思われるが、そういうことがあるとすれば一体それは別に教官というような制度をおくお考えであるかどうか、そんなものは全然受付けないで木村さんらの旧軍人だけでやつて行く御自信がおありになるかどうか、この点をお伺いしたい。
  140. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 顧問団は今申上げます通りに、新らしい装備、武器の操縦等についていろいろ指示されるわけであります。今仰せになりまする飛行機一つにいたしましても、新らしい飛行機を持つて来ればその操縦等については十分指示を受けます。これを教示と言えば教示でありましよう。一緒に乗つて操縦等について十分なる訓練を私は受けることはあり得ると考えております。併しそれがために航空隊の編成とかその他万般に亘る指揮というようなことについては全然関与することはありません。これは又我我といたしましては、考えるとすれは別個に考えるべきことであつて、顧問団の正確はさようなものでないということを御了承願いたいと思います。
  141. 曾禰益

    ○曾祢益君 時間がありませんから私は一応打切ります。
  142. 羽生三七

    羽生三七君 私の質問外務大臣とお揃いの席でと思いましたが、趣く簡単なことでありますので一、二点お伺いいたします。昨日の私の質問に対して長官駐留軍撤退は今後暫くなかろうということでありましたが、これはまあ大体経済上の制約、それから今の志願兵制度の限界、そういうようなものからまあ暫く日本独自で言うに足る自衛力を持てない、こういうことになると思います。そこでお君ねしたいことは、日本独自で今の近代戦に対応するような自衛力が持てないという場合に、いわゆる一国だけの防衛方式というものでなしに二国間或いは多数国間の防衛方式をとることになると思うのであります。その場合に現在は御承知のように日米安全保障条約でアメリカが何らか日本に問題がある場合にはこれをカバーしておるわけであります。そこでこれはまあ今先ほど申上げきたようになかなか簡単に日本アメリカ軍の撤退を可能ならしめる程度自衛力増強できない。そういうことになつて来ますと勢いアメリカ軍の駐留がもう暫くは続く、こういうことになるのであります。ところがそのアメリカ軍の駐留という場合には、御承知のように日本に問題があつたときにアメリカがこれをカバーするだけのことであります。そこでそれ以外の多数国間の安全保障方式というと、問題になつている太平洋同盟的なものが考えられる。ところがこの太平洋同盟的なものは日本の憲法の限界から言つていわゆる派兵の義務を伴うようなものはこれは絶対にできないのはわかりきつておる。併し今度は派兵の義務を伴わない何らかの他の協力ということであつたならば場合によつたら人つてもいいというお説もあるが、ところがそんなことは相手が歓迎しないと思います。そうすると結局日本の単独では言うに足る防衛力はできない。それから多数国間の防衛方式と安全保障体制というもの現下情勢からなかなか困難だ。そうすると結局日米安全保障条約だけが残るわけであります。そこで日米安全保障条約を改訂をして、そうして何かまあ非常に言葉は語弊がありますが、軍事同盟的な性格を持たして行くような私は公算が非常に大きいと思います。どうでありますか、そういうことは全然予定されておりませんか。
  143. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今のところはそういうことは考えておりません。
  144. 羽生三七

    羽生三七君 考えておらなければそれで結構なんであります。結構でありますが、併し常識的に見まして、もう一度繰返しますけれども日本独自の防衛力はなかなか持てない、アメリカ軍の駐留軍に顧る、暫らく頼る、先ず今後数年間はその撤退は不可能だ。併し、と言つて多数国間のいわゆる太平洋軍事同盟的なものの参加ということも憲法上の制約その他から或いは国際的な制約からなかなか困難だ。そうするともう駐留軍に救つておるわけだが、それもアメリカにカバーしてもらうだけというようなことから、昨日ちよつとこれは栃原さんがいささか触れておりますが、そういうことから私は漸次将来そういう方向へ行くのではないかということを前々から考えておつたのでありますが、併し全然考えておらないと言えばまあそれまでであります。  そこでその次にお伺いしたいことは日本が提供している軍事基地であります。こういうものに仮に万一攻撃が加えられたというような場合には、これは日本に対する直接攻撃とみなすのでありますか、その判断はどうですか。
  145. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はそういう場合にはやはり日本に対する直接の攻撃とみなすものであろうと考えます。
  146. 羽生三七

    羽生三七君 そうなりますると、日本に対する直接攻撃とみなすというと、必ず今私が申したような問題に発展して来ると思うのがあります。というのはまあ日米の協議なり或いは合意によつて日本がどういう役割を果すか知りませんけれども、それだけではなかなか問題が解決しないことができて、やかて日米安全保障条約を改訂してもつと軍事的な性格を持たせなければならないようなところへ今のままの形で行けば発展して行く。そういうふうに論理的に考えられるのでありますが、そういうことは全然お考えになつておりませんか。
  147. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は今の段階においてこの安保条約を十分にお互いに守つて行けば外敵の不当な侵略に対しては対処し得るものと考えております。従つて今仰せになりまするような軍事同盟というようなことは考えておりません。
  148. 羽生三七

    羽生三七君 私はそういうことを心から希望する一人でありますが、そこでもう一点お尋ねしたいのでありますが、昨日衆議院の何かの委員会で保安長官は、この海外派兵の義務を負わないような鳴合にはいわゆる東南アジアと言いますか、太平洋の集団安全保障方式に参加してもよいというような意味の御発言があつたように思いますが、これは私の誤解でありますか、ちよつとその辺を明らかにしてもらいたいと思います。
  149. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 太平洋条約ができたら参加するかどうかという御質問がありました。それに対して、私は太平洋条約というものの機構について或いは内容についてまだ少しもわかつていない、これがわかつた上において、日本の参加することが利益であれば参加してもよろしい、不利益ならば参加しない、これは日本は独自で参加すべきかどうかということを決定する、こういう趣旨のことを申上げたのであります。
  150. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちよつと関連して。タイであるとか、フイリピンであるとか等々に太平洋条約ですか、或いは太平洋軍事同盟ですか、それの構想内容を通知した、その通知した国には日本も入つておるという報道がありますが、それは全然ないのかどうか。
  151. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の手許には入つていないことを確信いたします。
  152. 羽生三七

    羽生三七君 もう一点だけ。実はこれは先日曾祢委員もちよつと触れられた問題でありますが、例えば仮にインドシナを中心として一極の統一行動というようなものを求められた場合、そういうときに自由国家という言葉を使う、その自由国家の中にはここで名前を挙げるのは、外務委員会の席上適当じやありませんが、近隣の自由諸国の中はいろいろな国がある。その国は例えば本来平和のために、自由、平和のために団体を固めて統一行動をやる、自由の擁護のためにそれがスローガンになつて出て来るわけですね。ところがその国は問題のある国なんです、みんな。昨日申上げましたように、同一国内において二重政権がある国だ。一つの国で二つ政権がある。だからそういうものに介入することは、それは平和を守るのではなしに、逆に日本が国際紛争の渦中に捲き込まれる。確実にそうなつております。これは私は素人判断ですが、たいこ判を押しておきます。必ずそういうことになる。平和のための隻団安全保障であるべきものが、必ず平和を破壊し、又そういうものの中に捲き込まれる危険性が非常に多い。だからその集団安全保障の方式というものははつきりしないが、役に立つ立たんということの基準はどういうことに置いておいでになりますか。
  153. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) もとより日本は自国の平和と安全、そうして国民の自由を守ることに主点を置いて利益があるか否かと、こう判断するわけであります。
  154. 羽生三七

    羽生三七君 あとは意見になりますから、質問でなくなりますから、これでやめておきます。
  155. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 高良委員何か。
  156. 高良とみ

    高良とみ君 数分だけ長官がお帰りになる前に。だんだんこの討論でいろいろなことがわかりましたのですが、長官の先ほどのお話振りですと、日本の今のアメリカが期待するほどの人員を、陸上兵力数には自由制度ではできない。まあ裏から言えば徴兵制度でなくては十八万とか二十三万というようなものはできないというお話でありましたが、それだけお伸ばしになる意思があるのか。端的に申せば徴兵制にしても二十三万ぐらいなければ国を守れないというような御研究ができているのでしようか。
  157. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) いや実はどこまでも日本財政力を害するような漸増方式をとつて行くことはよくないと考えております。日本財政力、一面において今申上げましたようにさような大きな人員というものは増加できないということは、つまり志願制度の下においてのためである。これを大きくやろうとすれば徴兵制度をとるよりいたしカがない。それは現在の憲法下においてはできない。こう申したのであります。
  158. 高良とみ

    高良とみ君 そうすると、徴兵制度は現在の慰浜下においてはできないというふうに伺いましたが、今回のMSA協定の中に御存じの通り自国の防御力を持つということはあるのですが、それによつてではなくて、それと共に及び自由世界の防御力の発展維持ということがございますが、そうするとここに、これについては長官としては、お話を伺つていますと、保安庁としては、自国の防衛力については非常に熱心に御考慮になつている。併し、この自由世界の防衛力の発展ということについても今回新らしい義務を負うとしましたならば、どういうふうにお考えになつておられましようか。
  159. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は日本防衛力の強化ということが即自由国家群の防備の強化になろうと考えております。
  160. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、これはMSAアメリカにある原文をそのままとつたものでありまするけれども、私どもの考えからしますと、自国の防衛力ということを一応了解するといたします。それによつて自由世界の防衛力、こういうふうに、今のお話もそうだと思うのでありますが、併し、こののMSA協定の新らしい義務では、そのほかに自由世界の防衛力を発展させるために貢献しなければならないことになるのです。そうしますると、自分の国を守つているだけでは足らないのでありまして、或いは集団安全保障その他に対しても利益のあることならば御貢献になるというのはどういう面を考えておられるか。それは経済面であるか、武器製造であるか、域外買付であるか、そういうことにはまあ防衛の案、保安庁としては直接的な人員的な、或いは軍事的な貢献は御考慮になつておらないのでしようか。
  161. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 保安庁といたしましては、この保安隊或いは警備隊なんでありますが、さような部隊を以て他国に援助するというようなことは考えてはおりません。又できないのであります。
  162. 高良とみ

    高良とみ君 もう一点。只今あります装備等はこれは誠に微力なものでありますが、先ほどお示しになりましたような千六百トンから大きいところになりますと六千トン、或いはその中には駆逐艦もあり或いは潜水艦もあるというようなことになりましても、これはやはり目的が自衛であるからこういう装備をもちまして十分に装備することがまだ戦力に余らないとお思いになるのでしよう。そうしてこれはどれだけ大きな航空母艦を持つても、戦闘艦を持つようになつたとしても、やはりこれは戦力ではないとお考えになるのでしようか。
  163. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) しばしば申上げましたように、目的が自衛のためであるから戦力にならんというのじやありません。幾ら目的が自衛のためであつてもそれが他国に攻撃的脅威を与えるような大きな実力ではこれはいかんという客観的の我々は考えを持つているのであります。ともかく自衛のためだからと言つて大きな力を持つようになると又これが侵略の具に供せられて悲惨な状態を起すようなことになるかも知れない。そういうことがあつてはならんというので、如何なる目的があろうととにかく他国に攻撃的脅威を与えるような大きないわゆる実力、即ち戦力を持つことは憲法が禁止していると我々はこう考えております。
  164. 高良とみ

    高良とみ君 もう一点。
  165. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 高良委員、時間が非常に迫りましたが、どうか簡単に。
  166. 高良とみ

    高良とみ君 もう一点だけ。よく御趣旨はわかつたと思うのであります。併しもうすでに相当な程度の陸海空三軍方式によるところの装備を備え、これからMSAによつて相当又巨大なものが入つて来る。これがアメリカ側としても、いろいろな評論を見ますと、アメリカの議会の言論などを見ますとやはり相当なものを日本に持つてもらいたい。そうしてこちらの財政が許さないならば既成の完成兵器を日本にまあ持たせることもありましよう、或いは最近の交渉のようにアメリカ側としても多少の躊躇はありましようが、そういう場合に、さつきのお話によりますと客観的にどれだけが戦力でありどれだけが戦力でないという客御的な標準はないのだ。これは国民の常識によらねばならんのだ。こうおつしやいますと、やはり国会が賛成するならばこれまでも戦力でない、これまでも戦力ではないというふうに相当に伸びて行く可能性があるのじやないか、それは日本の経済が今後軍需生産等によつて伸びた場合にはやはりめどがないと了承して間違いございませんか。
  167. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) つまり戦力になるかならんかということは社会通念に基いて判断されるべきだと私は一応考えております。要は今申上げましたように、他国に攻撃的脅威を与えるような大きなものであつてはならない。今仰せになりました、もうすでに保安隊が三軍方式をやつているから戦力に至つているのじやないかという御議論でありましたが、これは形の上では飛行機だつて他国に侵略的脅威を与えるようなそんな大きなものではないのであります。又船にいたしましても、今挙げました、たとえ七千トンの船をもらい、或いは潜水艦の一隻や二隻もらつたところで、直ちにこれを以て他国に攻撃的脅威を与えるというような実力は持つていないのであります。又仮に日本で、世間でよく言われまずように、地上部隊を仮に三十万持つてつて日本の内地にいる限りにおいては、これを運ぶ艦船もなければ何もないわけであります。これを以て直ちに他国に攻撃的脅威を与えるような実力即ち戦力というべきものではないと考えております。要するに大きな実力を持つて初めて戦力に至るということを我々は考えております。それは客観的にこれを考えてきむべきだと考えております。
  168. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 長官には今朝は無理して来て頂いたのでありまして、それで長官に対する質疑者の時間を割振りまして、そして今まで続けて来たわけでありますから、高良委員は最後になつて申込まれましたので、その持時間が予定してなかつたので、一時に長官はお帰りになるという約束でございましたからして、高良委員残りの分は他日の機会にお願いいたします。  それでは外務委員会外務大臣の出席を求めまして一時四十五分に再開いたします。    午後一時一分休憩    ―――――・―――――    午後二時十五分開会
  169. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは午前に引続き外務委員会を開会いたします。鶴見委員
  170. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私は外務大臣お尋ねいたしますが、私の持時間が大変少うございますから、質問は極く簡単にいたしますから、大臣のほうはどうぞ長く御答弁下さい。  第一の質問は、なぜフィリピンとの賠償協定を結ぶかということであります……。もう少し申しましようか。それは二つお尋ねするわけです。一つは、まだほかにも賠償を要求しておる国々がある。そのうちに先ずフィリピンを先にとり上げたという理由が一つ。もう一つは、賠償が平和条約でいろいろ書いてありますけれども、今度政府が金銭賠償をするというはらをきめた理由を一つ伺いたい。こういうことであります。
  171. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) フィリピンだけをやるという意味でありません。私は昨年秋参りましたときもフィリピン、インドネシア、ビルマ、インドシナは極く短時間でありますが、インドシナにも行つて、いずれの国とも賠償を早く締結したいと申入をいたしているのであります。ただフイリピンとの間がたまたま早く話がまとまりそうになつたという事実であります。それから金銭賠償というお金で払う賠償というのは今度は考えておりません。
  172. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そうすると四億ドルというのはどういう内容になりますか。
  173. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) あれは十数日のいろいろな仕事があります。例えば水力電気とかイリゲーシヨンとか鉄鉱の開発いろいろなものがあります。その中で双方で相談して四億の限度でその中でやれるものをやつて行くということになつております。
  174. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そうすると役務とか資材とかいう方面ですか。
  175. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 大体は資材といつても例えば水力発電設備を提供するというようなことがありましよう。それから沈船引揚等は主として役務であります。その他先方が材料をよこしてこつちでそのプロセスをやるというようなこともあり得ると思います。これは具体的にどれとどれをやるということはきまつておりませんが、要するに役務を含めた賠償を実行するということがあります。
  176. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そうすると先方がドルでやつてもらいたいという意味はどういうことですか。
  177. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私どもドルでやつてもらいたいということはありません。この協定はどういう標準になりますか。要するにそれに値いするだけのものを役務なりすぐ設備なりで打つて行くということであつて日本側ではこれを円で計算しております。
  178. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そこでその次にお伺いしたいことは、今外務大臣もお触れになつたのでありますが、ここでまあフイリピンに対する賠償が如まりますと、ほかの国々に対する賠償が当然起つて来る。そのどの国に幾らというお見通しになつておるのですか、あとの国は。
  179. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはインドシナは比較的小さいですから早く解決するだろうと思います。ビルマとインドネシアはまだいろいろ話さなければならん部分がたくさんあるかと思います。全部解決したいと思つて努力するつもりであります。
  180. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そうすると、この三国だけで大体済むというお見通しですか。
  181. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) インドシナを一つとすれば四つ。
  182. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 四つ。それじや私これは将来のことですがお尋ねしておきたいのは、今まだ平和条約もでさていないし、国交が回復しておりませんけれども、中共が将来国交回復に暁に賠償の要求があるという場合には、非常な大きな問題になると思うのですが、それはどんなふうにお考えになつておりますか。
  183. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは将来そういうことが起るかも知れません。併し同時に中共の今の勢力範囲にある中には、日本の側の財産も非常に多額にありまして、これはすべし先方に接収されてしまつております。この点も十分考慮に入れるべきものじやないか、こういうふうに考えております。
  184. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私の心配してお尋ねしている点は、平和条約の中にもありますように、日本の経済的の力の限度があるということをまあ締結各国が同情的に書いている。従つてそれが賠償ということになれば、これだけ海外資産を失つた日本が、更に非常に負担をしなければらなない。従つてその総額が不安定である場合、将来の日本の回復の見通しが大変心配であるという点からお尋ねするのでありますが、例えばビルマなどは非常な大きな要求をしているようですけれども、それなんかも合理的な話合がつくというお見通しですか。
  185. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は話合はつくと思いますが、合理的という内容によりまするけれども、大体ビルマ等は、まあこれは正式な話合じやありませんが、伝え聞くところによると、フイリピンと同様のという趣旨のようであります。これでも日本のパイアプル・エコノミーから申しまして、そういうことができるかどうか疑問でありますが、併しその非常な不合理なほどのということにはならんじやないかと思つております。
  186. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そうするとそれ以外の国々からは、まあ大体ないというお見通しでございますね。
  187. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは原則として日本が軍隊を以て占領した、それに基く被害ということを考えておりますからその以外にはないと、こう思つております。
  188. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そこでフイリピンの場合ですが、この賠償協定ができた場合に起つて来る日本の受ける利益というものは、どんなものですか。
  189. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 賠償から直接に利益は起らないと思います。が、日比双方の感情の融和ということ、これに基いて大局的には通商にしろその他いろいろろの点で目に見えない大きい利益もあろうかと思つております。
  190. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 この賠償協定ができれば平和条約批准されるというのじやないのですか。
  191. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そういうことになつております。
  192. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 それがまあ一番大きい利益じやないのですか。
  193. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 直接にはそれになりましようが、つまりそういうふうになつたということは、両国の感情の融和と言いますか、そういう点に非常に大きなあれがあると思います。
  194. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そこで私はこれと関連してお伺いしておきたいのは、勿論ヴェルサイユの平和条約のときのような、苛酷なそして又一本にとつて不可能な要求が今出ているわけではないのでありますけれども、日本国民といたしましては、今度の戦争の結果、日本が連合各国から受けた取扱について、国民全部が釈然としていないことはたくさんあると思うのであります。それでフイリピンのような極く日本に近い国で財力も政治力も非常に大きくない国に日本が友好的の関係を結ぶということは、日本人としては大部分殆んど異存はないだろうと思うのですけれども、この平和条約のよつてつた精神として、ダレス氏が言つたような、このリコンシリエイシヨンと信頼の協約だという精神に基けば、日本国民としてはまた連合各国の取扱については釈然としない点がたくさんあると思うのであります。そこ。今この賠償なら賠償の問題につきまして、日本がやつたことが全部悪いのだということの極印を捺されている基礎においてなされておるということについては、私はこれは長い日本対世界の関係においては非常に重大なものがあとへ残ると思うのであります。それで日本がフィリピンならフイリピンに対して誤つたことをした、その行為に対して日本は非常な謙虚な反省を必要とする。その点には殆んど日本人は異存はないと思います。けれどもこの一連の日本に対する取扱が一極の懲罰的なものがあるとすれば、これには直接関係はありませんけれども、戦犯の取扱、或いは戦争責任は全部日本にあるといつたような取扱については、日本国民が釈然としていない点がたくさんあると思うので、こういう賠償なら賠償について、日本が非常に公明正大な立場をとる場合には、やはり私はそういう点については日本国民が釈然として了解するような手段をとつておいて頂きたい、こう思うのであります。そこで私はこの日本人が東南アジアなら東南アジアの国民との友好的関係を回復するために、賠償その他の問題が解決されるということは非常に結構だと思いますが、それだけに終つたのでは私は日本と世界との関係が非常に正しい軌道に置かれると思わないので、この機会にそれを申上げて、外務大臣が若しこれについて発言をなさる事由があるならば、伺つておきたいと思うのであります。言い換えれば、世界の日本に対する取扱について外務大臣は十分に満足しておられるかということであります。
  195. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは非常にデリケートな問題でありまして、平和条約はすでに国会で圧倒的多数で承認されておりまして、戦犯等の取扱についてもこの平和条約の中に規定してあるわけであります。日本の全権はサン・フランシスコで欣然としどこの平和条約を受諾する、こういうふうに言つております。従いまして条約上今になつてあれは非常に悪いのだと言うことは、非常にこれは政府としては考慮いたすべき問題であろうと思うのでありますが、事実上として仮に平和条約においてはそうであつても、それからもう随分時日が経過している。終戦から勘定してもう非常に長い間たつておりますから、戦犯等の問題についても適当な考慮を新たな別な見地からされることが適当であろうということについては私も同様に考えております。このため関係諸国ともずつと話合をいたしております。戦争責任というような問題についても、まあ戦犯にも関連がありますが、もう日時がたつと共に漸次そういう点は事実上解消しつつあつてだんだん平常の状況に両国民の感情も戻りつつある。こう思つておりますが、これについてもできるだけの努力をして各国との関係が平常の基礎に立つようにいたすべきであると、こう思つております。
  196. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私がこれに言及しますわけは、今日本がフイリッピンに対して与えた損害及び過失について一種の贖罪的な謙虚な気持から賠償するという条約上の義務を履行するなら、同時に戦争直後の敵国と日本国との感情の悪化した際にはできなかつたことでも、条約がたとえ締結された後でも国際関係の改革と共にこれがだんだんと改良されて行くべきものが多々あると思う。例えば日本にとつて台湾とか関東州というものがなくなるということについては、日本国民はこれは止むを得ないと思うでありましよう。併し日本と同じ民族が長い間住んでおつた地面が長く日本から切離されて生木を裂くような特態にあることは、日本民族としては忍ぶことができないので、失地回復の運動というものはどうしても日本人にこれから起つて来ると思います。  それから只今戦犯のお話にお触れになりましたけれども、日本の国が独立したならば、日本が自分の統轄下にあるところの戦犯の刑を受けた人々の取扱は、日本政府日本国民自身でいたす自由は回復したいという感じを日本人は持つている。その他いろいろな点で条約にできておる、成文としてできておることでも、こういう一方において我々が自分の罪のつぐないをするような謙虚な気持で我々の義務を尽すときには、私どもからいえば国際通念に反したような事態が条文にあるならば、それに対しては適当な方方を以てこれを是正して行くというほうにも進んで行かなければならないと思うのであります。その点は今もお触れになつたのでありますが、例えば領土の問題についてはどういうふうにお考えになつておりますか、沖縄とか琉球とか、まあ千島のほうは国交を回復をいたしておらないからいたし方ないとしても。
  197. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは御承知のように主権は日本にあるということは確立いたしておりまして、平和条約の規定に基いてこれの立法、行政、司法等をアメリカ側に委ねておるという実情でありますが、すでに主権は日にあるということを認められておりますので、必ずこれは将来還つて来ると信じております。ただ奄美大島の返還、これもまあ一つの平和条約の規定の変更でありますが、このような例もありますので、将来は必ず遠つて来る、こう期待いたしております。
  198. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 いやそれは将来といいますと、いつのことかわからないので、殊にアメリカの中では議論としては半永久的に相当長い期間あれを軍事基地として使いたいという議論も出ておりますから、こういう際に私は日本国民の感じを率直にいつて然るべきだと思うから、私はこの機会にこれを発言しておるのでありますが、形式的に日本に主権があるとか或いは将来回復するということでなく、日本国民が安心するような相当な処置をとつて頂きたい。こういう感じを持つておるのであります。
  199. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) できるだけ国民の意思に副うように努力したいと考えます。
  200. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 それからその次にお尋ねしておきたいのはMSAに直接関係を持つておることでありますが、インドシナの形勢が非常に逼迫している。それが単に局部的なインドシナのディエンビエンフーという土地の争奪戦にとどまらないで非常に大きな世界の形勢に関連していると思うのであります。そこでジュネーブの会議でこの問題にいずれ触れるのではありましようけれども、若しジュネーブの会議でこれが完全な解決を発見することができず、又戦地においてこれがフランス側に有利に結末をしない規合には、これは非常に危険な様相をはらんでいると感じられるんですが、従つて若しこれが第二の朝鮮のような事態になる場合にはアメリカは大分これについて心配をしていろいろな方途を考えているようですが、これは直接日本に関係して来るとお思いになりますか、全然来る心配はないと思うのでありますか。
  201. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは一方においてはジユネーヴ会議を控えての特に意味を持つた作戦行動でやつている部分もあろうかと思います。それから折から雨期にだんだん入つて来るという点で作戦行動が妨げられるような可能性も相当あると思うのであります。従いましてこれが非常な大事件になるかどうか、これはもうちよつと見てみないとわかりませんが、併し若しこれがだんだん攻守所を変えて共産側といいますか、ホーチミン側の力が非常に強くなるということになれば、やはりこれは近隣諸国にも影響いたしましようし、その意味では東亜の力の均衡ということにも非常に影響をいたしましようから、直接日本に関係がない場合でも日本に影響が非常にあるであろうという意味では最も注意して状況を見守つております。
  202. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私のお尋ねする点は間接な影響でなくて直接の影響が起りはしないかということを心配するのであります。一つは、例えば今は十カ国で共同宣言をするとか、或いは一種の共同防備体制を作ろう、日本と台湾と韓国は除かれているようですけれども、どうしてもおしまいには日本もこれに入るというような、入れたほうがいいというような感じをアメリカで持たないとも限るらい。その場合に外務大臣日本はそういう協定には入らないというお見通しですか、如何でございますか。
  203. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは実は新聞には非常に伝えられておりますが、私の知るところではどういう協定作るのか、或いは共同宣言のようなものをするとか、又協定を作るという場合に、これが各国に兵力提供の義務とか何とかいうものが入るのかどうかということはまた原案という程度のものもできていないように思うのであります。従つてちよつと今判断を下すことは困難であり又新聞に伝えられるところを真なりとして意見を言うことは多少危険があります。というのは新聞でもいろいろの報道がある、どれが正確たということは言えない実情であります。従いましてちよつと意見を申上げることは困難なのでありますが、ただ例えば兵力を仮に出すというようなものであればどこの国が希望しても日本としてはこれに参加することは目下困難だ、こう思つております。
  204. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 言い換えればNATO形式のような軍事同盟のような形のものには入らないというようなことでありますか。
  205. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 簡単に言えばそういうことであります。
  206. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 その点までの義務はない。併しMSA協定によりまして一条か八条で、日本が資材とか装備とか役務を自由国家群のために提供することをアメリカから要求があつたときには合意の上で出すことになりますか。
  207. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは非常に御質問があり、一部誤解があるようでありますが、これは八条なんかそういう意味ではなく、人力、装備、その他の許す範囲内において防衛力増強に寄与するということであつて、なまの人力とかというようなものを出すという意味ではこれはないのであります。
  208. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そうすると、どういう意味から言つても、インドシナの戦争に日本が直接関係する心配はないと、こういうことでございますか。
  209. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) まあ簡単に申せばそういうことであります。直接という範囲が、この頃は総力戦になりますから、金融はどうだ、食糧はどうだということになると、これは一々それを判断して行かなければなりませんが、普通の常識で言う、例えば武力を以てこれを援助するという意味であるならばそういうことはございません。
  210. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 と言いますのは、アメリカのほうでは中共に対するダレス長官の態度があの通り上院で問題になつておりますから、アメリカとしては仏印の問題については非常に慎近な態度をとると同時に、共産主義の勢力が東南アジアに伸びないためには非常な決心をするときが来るかも知れない。現にアメリカでもいろいろな、これは新聞の報道ですからそのまま受取れないと言えばそれまでですけれども、アメリカのほうにおいて、フランスがやらないならアメリカで引受けてやるという決心をしないとも限らない。その場合に、日本は絶対に何の直接関係もなしに済ねかという心配をするわけであります。それでお尋ねをしておるわけでありますから、外務大臣は絶対にないと、こういうお考えございますか。
  211. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はそういうことはないと思います。
  212. 羽生三七

    羽生三七君 それとちよつと関連して一問伺いたいのですが、今鶴見さんの御質問のインドシナ問題ですが、もう相手から、相手ということもないですが、関係国から何らかの協定なり、或いは合意を求められて来る場合にはそれを拒絶するということで問題はないですが、国連に対する全面的な協力ということから、そういう相手からの意思表示がなくても自動的に何か問題が起るということはないのでありますか。
  213. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今ちよつとそれは具体的になつておりませんから私にもわかりません。国連は世界的の組織であります。国連で何かの決議をするとか国連の決定があるという場合には、それを具体的に日本はどうするかきめる以外に方法はないと思います。
  214. 高良とみ

    高良とみ君 私は佐藤法制局長官に伺いたいのでありますが、今回のMSAアメリカの原案によりますと、デイフェンシブ・アームド・ストレングスということが書いてあるところから見ると、どうしても軍部義務及び軍事協定ということは、これは否定できないと思います。その点、日本側としては憲法によつて実施するというようなことも念のために書いてあるようでありますが、こういうふうにして、一歩軍事的な協定に入つて行きますと、それからもう一歩進みまして行く可能性があるのではないかと思いますが、これについて法律的な見地からのお考えは、確かに軍事的な協定と申して間違いございませんでしようか。
  215. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 法律的に考えますと、軍事的ということは必然の要請になつておるとは言えないと思います。と申しますのは、軍事的という定義そのものの問題はいろいろあると思いますけれども、そういうことを離れて、前回でありましたか、ちよつとお答え申上げましたように、この防衛力という甘栗の含む意味というものは軍事的ということが決して要件には入つていない。それは言葉自身として含み得るものでありましようけれども、決してそれが要件ではないのであつて、国内における消炭の維持或いは内乱に対処する力というようなものをも含んでのものでございまするから、これを以て直ちに軍事的、こういうレツテルをはることはできない、かように考えております。
  216. 高良とみ

    高良とみ君 只今の御説明は、今の内閣がそういう政策をやつておられるからそれでそういうふうな御解釈になると、一般世間でも、又いろいろの海外の情報、新聞などもそういうふうに書いておるのであります。言葉の上から、言いましても確かに軍事的義務を履行するというMSAを今扱つておるのでありまして、これを二三の海外の評論なんかを見ますと、あれはやはり軍隊は軍隊である。日本は憲法でそういう制限を持つているにしても、自衛軍であつても何にしろとにかく軍隊であつて、そこを将来憲法でも変えてはつきりふみ切るか、それは日本の問題であるけれども、というようなことなんであります。そうして先ほど保安庁のほうからも、国際的には軍隊として若しもそれが発動した場合には、品的は自衛であつても軍隊としての特権、保護を受け得るものと思うというお話がありましたですから、そこは一つはつきりと、我々には政策抜きにして、このMSAというものは日本側はこうとつたけれども、併しその主体は軍事的義務であるというふうに御説明頂けなかつたものでしようか。これによつて私どもは別に反対するとか賛成するとかいうことをきめるわけではないが、世界の世論からいつてどうも国民の常識からいつても、これははつきり正面に言つて頂いたほうがありがたいと思うのですがどうですか。
  217. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 政治的の考え方を抜きにして、正直に申上げて、この防衛力という事柄の示すところは、先ほどお答えをした通りであろうと思います。従つて、この防衛力というものをどういうふうにして充実さして行くかということは全然日本国側の国内政治としてここで任してしまつておるということになるわけであります。仮にここにある文字が例えば防衛力ということでなくて、もつとはつきりと、日本国憲法第九条に言うような、ああいう戦力を持つように努めるということをはつきり文章でしておるとすれば、これは法律的に見て、それは明らかにそれを目指しておるということははつきりいたしますけれども、防衛力という形で非常に広い幅のものをおさえております以上は、その充実の仕方というものは、国内政治の問題として、全然この条約の直接の規定からは外しておる。かように申上げるほかないように考えます。
  218. 高良とみ

    高良とみ君 それならば、非常に幅の広い意味での防衛力を中心にしたよその国との防衛のための申合せ、或いは端的に言えば、もつと協定よりもう一つ進んだ同盟的なものも結び得るのではないかと考えますが、防衛力という範囲で言うならば、そのことは別に今の憲法においても今のような御解釈で、そこには障害はないと考えますが如何でしようか。
  219. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは抽象的に申上げますと、却つて危険を生じると思うのでありますけれども、まあ今まで私のお答えしておつた筋から申しますと、とにかく実体が直ちに憲法に抵触しない。憲法に抵触するような実体でないという条約であれば当然どこと結んでも差支えない。結局非常に不親切なようなお答えになりますけれども、抽象化すればそういうことになります。
  220. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、日本は今後自国の防衛力増強し、合理的な処置をするほかに、前から打つております安保条約にもありまする自由世界の防衛力についても、安保条約以来の関係があるわけなんです。それをもとにいたしまして集団安全保障の下における同盟等を結んでもこれは憲法には差支えないと考えて間違えないでごさいましようね。
  221. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私どもが集団安全保障の下において日本がどういう役割を功めるかという内容はつきりいたしませんと、極端なことを考えますと、虫のいいことでございますけれども日本だけが守つてもらえるので、日本としては何も義務はないんだというような問題であればこれはもう誰も異存がない、もう疑問のない問題であると思いますが、その代りに何をどういう仕事を日本が受持つか、それがはつきりいたしませんとにわかに即断できない問題のように考えます。
  222. 高良とみ

    高良とみ君 併し今日本防衛力が弱いから今までは安保条約のように極めて片務的であつた、受けるばかりであつた。或いは今度のMSAにおいては日本も応分な防衛力増強する、併しもう一歩そこまでふみ切つて行きますれば、現憲法下において集団安全保障のために日本も役務を提供し、又は端的に日本が憲法で禁止した交戦権に及ばない範囲のものを責任を持つという程度の安全保障協定、或いは同盟に参加することは、ここまでふん切つて来れば私は可能ではないかと思うのですが如何ですか、どうも抽象的で誠に失礼ですが。
  223. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私どものほうのお答えも抽象的にならざるを得ないのでございますけれども、法律的な頭で考えての理屈から申しますれば、丁度只今のお言葉にありましたように、こつちで受持つ仕事が何ら憲法に違反しないような仕事である場合、これは理論的には可能なりとして考え得ることと思います。ただそういうことに加わることの善し悪しはこれは大きな別の政治的な問題でありますが、理窟で申しますれば今申上げたようなことになるわけであります。
  224. 高良とみ

    高良とみ君 少し問題は違うのでありますが、隣の韓国との間に李承晩ラインというものが設けられて、そしてこれについて日本の漁船等がだ捕をしばしば繰返されている。或いは竹島という領土についても、こちらは自分の領土であると言うけれども、そうでないと考えているような行動が今まで見られた。これは明らかに国際紛争の一種と考えてよいものではないかと考えるのですが、これは法律的に言いますると憲法に言う国際紛争でありましようかどうですか。或いはこれが談判にならなければ紛争と言えないのでしようか。
  225. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 昨日も衆議院でそういうお尋ねがありましたのですが、私実態の動きを存じませんけれども、成る島の領有をめぐつてとにかく国と国との間に主張をし合つて、そういう主張が一致しないままでもつれているということであれば、これは国際紛争ということになると考えます。
  226. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、もう少し近隣の国でありますが、例えば中国においてもやはり海岸線の問題で片一方は沿岸ニマイル、三マイルと言い、或いは向うがもつと十何マイルというようなことで日本の船がだ捕されているというのは、これは一種の国際紛争には間違いないでありましようか、或いはまだ講和が発効しておりませんから、これは前の戦争の継続と、こう考えてよろしいのでしようか、どうなんでしようか。
  227. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その講話に関係してという問題はちよつとなかなかむずかしい問題になりますから、まあ甚だ勝手でございますけれどものけることをお許し願います。今のように勝手に或る地域に縄張りをして、その海域によその国の船が魚をとりに来ることを絶対禁止するというような形で、片つ方の国のほうではそれじや困ると抗議を申込む、いやそれは当然おれのほうの権利だと言つて向うが反撃して来る、そこに話合のもつれがあればそれは当然国際紛争というふうに考えております。
  228. 高良とみ

    高良とみ君 只今お話のありましたこらちから申入するとか話合で行くのが又外交の本道だと思うのでありますが、それをしないでいるときにはどういうことになるのですか。交渉の権利をこちらが放棄しておると考えられましようか、どうでしよう。
  229. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは場合によることでございましようが、極めて抽象的に申しますと、今の国際紛争ということになれば、お互いに主張をし合つてそうしてそれがもつれてこんがらがつてしまつたという場合でありまして、片つ方が黙つている、これは又黙つておるのもその国の当然の権利でありますから、黙つていようと抗議を申込もうと、これはその国の政治問題であつて法律的問題ではないと思います。要するにお互いに主張し合つて、それがもつれておるという場合が国際紛争ということになろうと思います。
  230. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 先日この委員会外務大臣は、竹島の場合は日本の領土に対してほかの国が不正な危険、緊急な危険を及ぼした場合には国際紛争でなく自衛だという御答弁があつたと思うのですが。如何ですか。
  231. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りであります。
  232. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そうすると法制局長官のほうと意見がお違いになりませんか。法制局長官はこれは国際紛争のようにお考えになる、外務大臣はこれは日本領土内に不正な危険、侵害をもたらすものだから国際紛争でないというお考え
  233. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) つまり侵略という行為は私の考えでは、何かの国際紛争があつた結果侵略という行為が見られるのであつて、何にもないところに侵略して来ることはないと思つております。例えばあの領土がほしいという極く簡単な気持があつても、先ず入つて来るよりはお前はおれのほうの領土に入れとか、属国になれという話があつていやだと言えばそこで侵略ということになる。それ以外にもつといろいろなことがありましようけれども。従つて侵略という行為は国際紛争の結果行われるものだと思つておるのであります。
  234. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そうすると、もつとはつきりするために、例えば日本の島根県に入つて来た場合は、領土というのは明白ですからその場合も上陸して来れば国際紛争と御覧になるのですね。
  235. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はそれは侵略だと思います。
  236. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 国際紛争と侵略とはいつも表裏のようになつておるという今の御意見でしたから。
  237. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いやそうじやなくて、国際紛争の結果が侵略だと言つておるのであります。だからして、島根県に入つて来ればこれは侵略であります。何にも理由がなくて入つて来るような気違いみたいなものはないと思います。何か理由があろうと思います。
  238. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そうすると国際紛争の解決のために努力しなければいけないというあの議論はどうなんですか。
  239. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それはその通りだと思います。
  240. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そうすると、侵略ということと国際紛争ということは表裏一体をなしておるから、どつちのために自衛権を発動するのですか。
  241. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 表裏一体というのは同じということじやない、つまり国際紛争があつてその結果侵略行為が行われる、従つて侵略行為に対しては自衛権を発動してこれを防ぐ、併しその的の国際紛争を武力で解決してはいけない。
  242. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 同じことになりはしませんか、国際紛争の結果行われる侵略に対して自衛権の発動をするのは、結局国際紛争に自衛権の発動をしたと同じことになりはしませんか。
  243. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は全然違うと思います。例えば戦争前であつたならば日本アメリカとの間にいろいろな紛争があつた。その紛争を解決するのには平和的手段で行くわけです。ところがその紛争を解決する手段として相手の国が日本を攻めて来たということになれば侵略だからこれは防ぐ。併しその紛争というものは別にめると糾うのです、何か。それを解決するのに武力で解決しちやいかん。
  244. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 例えば今、日本が一番心配しておることは、理由なくして日本に近接しておる成る国が日本に侵略して来ることを心配している。国際紛争と私ども考えられない、出し抜けに侵略して来る、例えば落下傘舞台で北海道に降りてくる、これは国際紛争ではないのですね、けれども侵略はある。ですから必ずしも国際紛争がなければ侵略はないとは私はどうも考えられないのですが如何ですか。
  245. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうも只今までのことでは、何か理屈がなくて入つてくるという例は私は聞いておりません。例えば北鮮から南鮮に入つてくるのでも、南鮮が侵略したからという理屈をつけて来たようですが、併し何も理窟なしに突然入つてくるということはちよつと考えられませんが、それはそういうこともあるかも知れない、無茶苦茶な相手があればそういうことがあるかも知れん。常識的に見れば何か原因があつて侵略があるのですが、原因のない侵略もあり得るかも知れない。それは当然はつきりした侵略である、勿論これは防ぐことは当り前のことであります。
  246. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そうすると国際紛争に直接武力を使つてはいけないが、国際紛争の結果侵略があつた場合に自衛権を発動する、こう分けておられるのですね。
  247. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そうでございます。
  248. 高良とみ

    高良とみ君 なかなかこの問題は重なつて来ておりますが、佐藤長官にお伺いしますが、少しあとに戻つて恐縮ですが、日本が安保条約を結びましたときに「その附近に」、と書いてあります。日本国及びその附近にアメリカ合衆国が軍隊を維持する、而もその目的は申すまでもなく日本の内乱を治め又外国からの武力攻撃に対して日本政府の明示の要請に応じてやるということが書いてあります。この行政協定の二十四条にも、この間外務大臣がおつしやいました通り、必ず協議しなければならないということになつているのでありますが、この今までの連絡から申しますると、この駐留軍日本におります目的は明確である、従つてこれが発動しますときには、常に日本政府と連絡があると考えて聞違いないだろうと思うのです。これは今度のMSAによつても何ら変更するものではないということでございまするから、今後若しも何らかの日本の附近に必要が起つて日本におります駐留軍が発動する場合には、例えばこれが仏印でありましようと或いは台湾水域でありましようと、これは日本にもやはり連絡があるものと考えておいて間違いないものでありましようか。これは長官に伺つて恐縮でありますが、それは法律的にどういうことになつておりましようか。
  249. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日本の周辺というのはそんな遠い仏印までを指しているのではありません。これは一つには日本の領土であつてもまだ完全に返還されていないものもあるという意味もありますが、同時に日本に侵略行為が行われると言つても、例えば日本の領土の目の前でまだ大砲は撃たないが軍艦がずらつと並んで今や攻撃せんとしているというような場合に、大砲を撃つまで待とうということはちよつと考えられないのであつて、そういう意味も含んで日本周辺と言つているのです。従つてこれは飽くまでも日本の周辺であつて、仏印までは今の世界の兵器の技術では、日本周辺というふうには考えていない。それは弾が遠くまでとどけば周辺というのが遠くになるということはあり得ましようが、そう遠くまでは考えていない。ただ安保条約においては内乱のようなものと日本に対する直接の侵略とは、同時に、意味は違いますが、極東の平和と安全の維持に寄与し、という文句があります。これが日本の安全に直接関係があるような心合もありましようからして、そういう点も広い意味では含まれると考えますが、原則としては勿論必ず協議します。併しこれも万一の場合も考えているのでありまして、それは協議をするいとまのないような非常に急迫した場合もありましようから、すぐに防いでおいて協俵をするというような非常に緊迫した場合もあるかも知れませんが、原則としては必ず事前に協議をして行くということになるわけであります。
  250. 高良とみ

    高良とみ君 外務大臣にお伺いしますが、そうしますと朝鮮にあれだけの事態が起りまして、駐留軍が国連決議に従つてとりました行動については、日本を基地とし或いは出発の港として使われましたことに関しては、日本は協議を受けておつたと了承して間違いはないのでございますね。
  251. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この事態は少し違うのであります。これは平和条約以前から朝鮮の事変は起つております。従つて平和条約締結したときは、朝鮮の事変が現に進行中であつたのであります。そこで平和条約と同時に日本政府は国連軍に協力して、国連軍の国内における支持を認めるという交換公文を作りまして国会承認を得ております。従つて日本駐留軍も国連軍たる資格においては日本国内に支持し、これと協力するという趣旨の国会承認を得た交換公文があるのであります。この点からも平和条約締結当時に了解されておつた事項であります。
  252. 高良とみ

    高良とみ君 そうするとこれからのちには朝鮮の停戦は停戦だけであつて、問題は国連活動の将来はわかりませんけれども、今後朝鮮の事態の変化に関し、又は今後仏印等の事態の変化に関しても、日本に基地を持つている米軍は、その行動に関してはやはり日本に全部連絡をし、協議をしての上で行動をすると了承して間違いございませんでしようか。
  253. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 原則的にはそうであります。ただこれも重大なる軍隊の出動というような意味を持つているものであつて、例えば駐留軍に属する飛行機が一台連絡に仏印へ行つたとか、そんなことまで一々協議をしようという意味じやありません。駐畳軍が軍として出動して何か戦争行為をするというような、そういう意味のときは協議をするという趣旨であります。
  254. 高良とみ

    高良とみ君 それについては例えば英国議会で問題になりました、チャーチルが原爆を使うことに関しては、アメリカとの事前の打合せを要望し、又これに対するあの当時の約束はあつたのでありますが、日本の立場は多少これと似た大陸を前に置いた国でございますが、この場合、それは米英の関係は大分違いますけれども、そういつたことに関しては別にとめるという権限はないということは、方々で副総理などの御答弁も拝見いたしておりますが、如何なものでありましようか。多少はそういうことに対して事態が進みましたときに、日本側としても協議を受ける、或いは了解を受ける可能性がありますのですか。大変素ぼくな質問で恐縮ですが、併し大衆はそのはね返りも心配しておりますので、一応日本人として理解しておきたいと思います。如何なものでしようか。
  255. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 駐留軍関係においてそういうようなことが起りますれば、これは当然日本に協議をするのでありますが、米国政府がよそのほうで駐留軍に関係ない問題であつて、そういうものを仮に使つたというときには、これは米国政府の勝手であります。
  256. 高良とみ

    高良とみ君 それは勿論ほかのところからの問題は問題でないと存じますが、併しアジアの平和についても責任を持つてくれるという米軍でありまするならば、こういう事態にアジアの平和がなつているという場合には、報復爆撃等が行われるようなことが将来あるかも知れません。で英国とアメリカの条約は有効であるか無効であるかとかなかなか問題がありますけれども、日本においてもそれくらいな軍事的まあ了解だけはつけるような力に日本がなつておるのか、それともいやまあそういうことについては一切発言権も承わる権利もないというふうにただお世話にだけなつておるのか、その辺はどんなものなんでしようか。
  257. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 非常にむずかしいことになりましたが、原子爆弾等は日本の国内に現にありませんし、又そんなものは使われることは予期しておりません。
  258. 高良とみ

    高良とみ君 少し問題が離れますが、この経済問題についてお伺いいたしたいのは、例の附属書のE項に免税をし、或いは税で払戻しをするというようなことが書いてございます。そうしますと、こういうその中には電気ガス税もあればき発酒税もあり通行税もあり物品税もあるというようなことであり、或いはE項の二項などにある種類の免税、払戻し、それから第三項、四項、その他いずれ逐条のときに詳しく承わりますが、そうするとこの方面の産業は非常にフエイヴアーを用いまして、その方面に、日本の経済に対しそういう特権のある方面には盛んに人が要求して来るだろうと考えられますがそこで日本国民の経済上の平等の原則から言いますと、軍需産業が特別な保護を受けるとこう考えて間違いはないでございましようか。
  259. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 或る程度の保護は受けますが、これはMSA協定に基いてお互いに助け合うという趣旨でありますからして、その程度のことはよろしかろうと存じます。
  260. 高良とみ

    高良とみ君 まあこれについてはいろいろな見方がある存じます。例えばMSAのこういう軍事産業の援助によつて、域外買付等によつて日本の経済がうるおうという考えと、そうでなくて却つてこれによつてやはりよその軍需産業に依存する度が高くなる。日本の自立経済からはもう非常に遠いものになる。殊にそれによつてアンバランスがひどくなつて、いずれは日本の経済全体をかたわにするという見方とあるのでございますが、軍需生産というものが非常な消耗、非生産的な産業であることはまあ世界の通念でございまして、これについて大臣は或いは今の内閣の方針としては、日本の平和産業をも一生懸命育成するというお考えでありますか。仕方がないからこのくらいの程度の軍需産業のフェイヴアーというものは、これは日本経済にアンバランスをもたらさないものというお見通しでありますか。
  261. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は日本の経済にそうアンバランスをもたらすわけはないと、こう信じております。
  262. 高良とみ

    高良とみ君 これはお見通しの問題でありまして、今後の情勢によつてどれだけたくさんなものが来るか、買付等があるかということによるのでございましようが、それからもう一つお伺いしておきたいのは、しきりに直接侵略に対する間接侵略ということがほうぼうの対論に出ておりますが、間接侵略を防ぐ方面に対する施策、これはまあ政策の問題としてやはり社会保障その他この失業救済等によつて国民の中に不平なからしめ、又経済の全般が育つようにいたしませんと、如何に直接侵略に対する或る程度のこういう武装、或いは武備等が揃いましても、なかなか国民の精神的な基礎ができないことは申すまでもないことでございます。これについて社会保障なり失業救済なり、或いは完全雇用での労働の救済なりということに対しては、今の内容としては、これをどのくらいのバランスに見ておられるか。よく世間で申しますように軍事費、今回の今年の予算の一三・七%に対して社会保障はそれの又四分の一しか見られておらないというようなことについては、社会保障についてのいろいろな批判もございまするけれども、もう少し国民納得の行くような社会福祉的な施策が現在必要ではないかという点については、これは政策の問題ですが、お伺いできますか。
  263. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは厚生大臣からお答えしないと私から僭越でありますが、この社会保障とか社会福祉というものは国民所得のパーセンテージでどこの国も同じようにやるのだというものじやないと思うのです。その国々によつていろいろの差異がありまして、パーセンテージでいつて、あすこの国は悪いとか、この国はいいとかいうべきものではない。例えば日本の国の家族制度というような、完全には今残つておらんにしても、とにかく家族制度というものが残つてつて相当面倒をみるとか、まあいろいろなそういう点で違う点があろうと思いますから、社会保障とか社会福祉ということは、大切なことはこれは誰も論議はないのでありますが、何パーセントなければという議論は、これは少し余り杓子定規式な議論になろうかと思つております。政府としてはできるだけのことはいたしたい。殊に例えば日本においては結核が非常に問題になれば結核病床のほうに特に力を入れるとかいうようなこともあろうかと思います。併し原則的に言いまして、私は守るに足るような国だから守るのであつて日本国民だけれども日本の国は余りよくないからどうでもいいやというのじや何をか言わんやであつて、我々は仮に今は余り立派な状況になつておらんとしても、日本というものをよくするためにこの国を守つて行こうという決意は国民の間にあるのであつて、悪いから放つておく、いいから守るということじやないと思います。
  264. 高良とみ

    高良とみ君 お考えになつておる内容は察することができまするが、一つお伺いしておきたいのは、日米の友好とこのMSAに関しでありますが、このアメリカ人一般のほうの、別に政府の要路のかたばかりではないのでありますが、今回のMSA交渉の過程におきましも、どうなんでしようか、アメリカが本当に日本の誠意というようなものがわかつて、そうして日本が最上を尽しているということを理解している人もあるし、或いは何となしに奥歯に物のはさまつたような、一面では日本がもつと責任を持つべきだと思うのに、日本言葉の上だけで憲法があるからこうはできませんと言つてみたり、何だか非常にかけひきがあるような印象を与えるというようなことがいろいろな評論などに見えるのでありますが、もう少し端的すぱつと、日本としては最上を尽しているのだけれども、実際にこれだけの多くの人口を持つて、それからこれだけ教育もしなければならない、こういう家も建てなくちやならない。戦後の立直りが遅いのだという事情でもう少しわからせて行けば、この前鶴見委員から御発言のありましたような、反米即ち親ソというふうな誤解へ行かないような米国との話合が、そこのところがまあ勿論外務省としては政府の要路のかたと話されるでありましようが、その点をMSAに関しては何ら心配はないのでございましようか。
  265. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは私はアメリカ側の一般の国民からいえばおのずから無理のない点があると思います。例えばアメリカ国民からいえば、早くアメリカ駐留軍を国内に引揚げて行きたい。これは自分たちの子供たちを外国内に長く置くことは好ましくありますまいし、又租税もそれだけ多くなる可能性もあるのですから。そうして全体としては軍隊がいるためにむしろ反米的な感じをあおられておるというようなことをしばしば言われますので、早く引揚げたいと思つているのはこれは一般的な風潮たと思います。その他にまあ戦争中と今とは事情は勿論違いますが、戦前から戦争中日本は何百万という軍隊を擁しておつた。それが今では十一万しかない。人口は千五百万人以上ふえておる。八十七百万になつておる。然るにどうして十一万しか持てないのかというようなことはなかなか理解しにくいと思います。併し我々としてはできるだけその間の事情を説明するに努めております。
  266. 高良とみ

    高良とみ君 それに続いて今度のMSA交渉、或いは保安庁予算の過程、或いは戦艦の貸借などに対しても大蔵省はこう言う、保安庁はこう言う、外務省はこう言うというような多少違う要望なりなんか出ているというようなことで、アメリカ側の意見も私どもの間にもまあ洩れているわけだろうと思いますが、日本で近い将来に軍需省みたいなものを赴く考えがおありでしようか。或いは国防省、先ほども今まで日本に貸しておつた自衛隊に与えておつた武器を、国防省の予算の中に入れるというお話もありましたが、それに見合うようなものを、これだけ日本の軍事的な武装的なものが、こう交渉が多くなりますと、そういうものをお作りになる、これはまあ内閣の機構の問題でございましようが、何か対日援助法というようなものができて来れば、何か一本にしてこれを受け取つて行くようなことを考えておられますか。或いはこれは依然として外務省がその衝に当られて、その中は大蔵省と保安庁であれをこなして行くということになるのでしようか。
  267. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今別に新しい機構ということは考えておりません。
  268. 高良とみ

    高良とみ君 大体お考えになつていることがわかりましたが、最後に一つ伺つておきたいのは、今の内閣としては殊に岡崎外務大臣御自身としては、今のような水爆、原爆の時代に、イデオロギーの違う二つの世界が共存し合つて行く忍耐、雅量或いはいろいろなイデオロギーの差はとにかくとして、両方の世界に戦争でなく行く道を作ることについてのお考えを承われば大変いいと思う。どこかの前の衆議院の議論か何かには、狼は狼なんで、というお話もあつたようですが、狼であるか狼でないかを知るには、やはりその世界各国のやはり時を要すると思うのです。又狼であつてもどちらに狼がいるか、又狼になるほどこわがつている人もあるし、その点で日本などは自分が侵略をした経験もあり、又今賠償も払おうとしているというようなところから、今の事態としては、世界が一つになつて共存し或いは忍耐して行くことに対してどういうお考えになつておられましようか。
  269. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私は世界の良識がそちうのほうへ行くことを希望するのみならず、必ず行くであろうという期待を持つております。ただ狼だろうという心配は、やはりそのソ連の共産主義の説明をいたしておるレーニン、スターリン時代からのいろいろの文献を見ますると、資本主謎と共産主義は結局両立しない。資本主義を打倒して共産主義が世界に行われるときに平和が来る。而もその資本主義というものは最後のあがきで頑張るだろうから、力を以て打倒しなければいけないのだという根本方針が改まつておらんものですから、幾ら平和だ平和だと言つてもこれは狼じやないかという心配があるのであつて、この共産主義の基本方針、つまり共産主義が世界に行われなければ平和はできないのだということと、そのためには異なる主義のものはこれは最後にはカを以て打倒しなければならんだろうということが改められれば、よほど世界は安心するのじやないかと思つております。
  270. 高良とみ

    高良とみ君 それについては私は議論いたしませんが、よほど古い文献のようなお話でありまして、イデオロギーと政策とは別にして考えたほうがいいのじやないかと私は常に考えるのです。現在の共産諸国の政策に対してはいろいろな批評を持ちうるのでありますが、それもどんどん変つて行きつつあるのでありまするから、変つて行くというのは根本方針がそうなんだといつてしまえばそれまでですけれども、今後ともに中日に近くいる日本としては、やつぱりもつと恐怖を避けてもう一つ超えた平和へのレコンシリエーシヨンヘの道を探究して行くことこそ外交の存在の意義だと思うのです。それは意見になりますからやめまして、佐藤長官にちよつともう一つ伺います。  これは先ほど保安庁長官にお伺いしたんでありますが、これから駆逐艦も何隻か持ちジェット機も打つ。或いは十個師団になるかも知れない。三十三万人くらいの陸上兵ができるというような場合にも、これは戦力であるかないかということの基準は、まあ常識で見るより在方がないとおつしやつたのでありますが、法律的にいいますとどういうところにこの戦力。あるかないかの基準は置いたらいいものでございましようか。
  271. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 本当にそれはむずかしい問題でございまして、これはいきさつを申しますと、憲法ができますときの当時に議会での審議でも、政府としてはこれを数学的に現わすことはできないと申上げておつて、やはり大きな今の常識と申しますか、通念で律するほかはないだろうといつてつておるのであります。学者のいろいろ書いたものを見ましても、例えば世界という雑誌を読んで座談会のところに宮澤氏でしたか、戦力戦力でないものとの限界というのは、重い病人と軽い病人の境めを発見しようとするようなものだというようなことを宮澤教授が言つておるのを見て、成るほどと思つたわけであります。ただ私どもはそれだけで成るほどとすましておるわけには参りません。従つてたびたび申上げておりますように、日本が置かれているこの国際環境の下において、現在において戦争を有効に逆行し得るような力になつたら、これは戦力であるという抽象的な基準をきめておるのであります。それについていろいろな角度からお尋ねがあつて、軍艦何隻とか陸上兵力何万というようなことに対しては、これは装備その他を総合して考えなければいけないことでありますけれども、仮にアメリカなどの御厄介にならないで日本日本の国を完全に守れるような装備なつたらこれは危いといいますか、戦力になるという問題が現実化して参りましようというような形ではお答えしているわけであります。こういうお答えをするほかには実際これは数学的には現わせない事柄だろうと考えております。
  272. 高良とみ

    高良とみ君 但しこれは日本たけで持つているものは誠にさ細なものであつて戦力でないかも知れないのでありますが、現に撤退も数年は不能と言われる駐留軍を持ち、そしてそれが海空の設備を十分持つてつて近代戦力であります。それと共同して働くときに、その大きな戦力の一部であれば、これらのジェット機とか駆逐艦もやはり戦力と言わざるを得ないのではないかと、こうプラスしたときの場合はどうでしよう。
  273. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは御尤でございます。そういう御質疑もあるのでありますが、これは法律的に憲法の条文に即して申上げれば、憲法は勿論日本の憲法でございますから、戦力については日本が保持してはならない。日本日本戦力として打つことを禁じておるわけでありまして、よその国と連合する形を見ました場合においても、そのよその国の軍隊というものは、これは形式論のようになつて恐縮でありますけれども、憲法に照してみれば、日本の保持する軍隊、日本の保持する戦力ではないわけであります。アメリカの場合を例にとれば、アメリカの保持する戦力であります。憲法の直接の問題にはならない。ただそれと連合することがいいことか悪いかということは、政治の問題でありますから、政治の出題として国会なり付なりで国民がきめるべきことであるということで憲法の直接の問題とはなり得ないというふうに考えおるわけであります。
  274. 高良とみ

    高良とみ君 もう一つ外務大臣にお伺いしておしまいにします。或る海外の批評なんか見ますと日本は両天びんをかけておる、日本の国内にも、日本の事業家の間にも、金持のアンクル・サムからポケット・マネーをもらうことはかまわない、併しこれだけで日本の産業は立直ることはできないので、八千五百万の人口を養うには中国との貿易或いはソヴイェトとの貿易を盛んにしなければならない。東西買易を今度のMSAによつて制限されることはないのだというようなことから、その点或る意味から費えば本当のところを突いておると思うのでありますが、こういうふうにそのアメリカにいやがらせをしているように思われないように、日本はこういうわけなんだから生きなければならないから、如何にもあなたとの協定で共産国との貿易は制限しますけれども、日本の生きるためにはジヤッド氏が育つたように、中共との貿易もしなければならないということを、率直にアメリカにも理解させてもらうように御尽力になつたことと思いますが、その点如何なんでしようか。
  275. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それはその通りでありまして、アメリカの十分了解しておるところであります。従いまして一昨日も三十品目ばかり中共貿易の緩和を行いましたが、この協定審議中にでもできるものは緩和したいという方針で進んでおります。
  276. 高良とみ

    高良とみ君 私の質問はこれで終ります。
  277. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 ちよつと関連して。先ほど高良さんの御質問にあつた中共と日本の漁船だ捕の関係でありますが、相当中共によつて日本の漁船がだ捕されていると報ぜられておるのであります。それらに関連して日本としては外交上どういうふうな措置を取られつつあるかということであります。
  278. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 外交上の措置としましては、直接中共と話合う機関を持つておりませんからして、間接的にしか方法はないのであります。これは中共に大使館、公使館を打つておる国もありますし、又日本に非常に同情を持つておる国もあります。又直接に関係はないとは言え、例えば中国人の遺骨の送還を日本の費用でやるとか、これに手厚い葬儀を行うというようなこと等もありますが、まあいろいろの間接的な方法で努力する以外に方法はないと、こう思つております。
  279. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私の伺いたいのは、直接交渉する途はない、それはその通りだと思うのでありますが、間接に例えば中共との外交の途を持つている国を通じてでも、現に交渉が行われつつこれまであるのかということであります。それとただ直接折衝の途がないので、そのまま見送りつつあるのか、こういうことであります。
  280. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは関係の国々に依願をいたしております。ただ正直に申しますと、返還されないので年がら年中毎日交渉している、そういうわけではありません。機会を見てやつております。
  281. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 今一点。先ほどの鶴見委員質問に関連するのでありますが、フィリピンとの賠償協定、これが進行しつつあつて非常に喜ばしいと思うのであります。この国会協定案が審議される運びになるであろうかどうか、そのお見通しを一つお聞かせ願いたいと思います。
  282. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 実は協定は今の模様では不日できると思うのでありまして、これはまだやつてみなければ、今日初めて正式の会を開いておるのでありますから結果はまだわかりませんけれども、今までの話合ではもうすぐでき上ると思うのであります。フイリピンの国会は五月の二十何日かまででかなり時日がありますが、日本は大体五月八日が期限になつております。そこでこの国会を外しますと、従つて普通ならば臨時国会はないわけであります。そうしますと、十二月以降にならなければ国会の審議ができない。これではせつかく協定を作つてもかなり無駄ができますので、甚だ期間が短くて委員諸君には申訳ないのでありますが、交渉事でありますから、そう国会の予定通りということもできずにこうなつたのてありまして、せつかくここでまとまりますものならば、時間は短くても一つ国会の御審議を煩わしたい、そういう意味でできるだけ早く協定を作りたいということで全権一行にも特にその点は念を押して依願しております。
  283. 高良とみ

    高良とみ君 先ほど中国における権益のお話がありましたが、日本国との平和条約において、日本は中国における権益を第十条において放棄したのだと思うのですが、ことに中国におけるすべての特殊の権益を、利益を放棄というのは、そういう民間の財産等を含んでいないという意味なんでありましようか。ちよつと御説明頂きます。
  284. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 民間の財産等も放棄しております。
  285. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、先ほど賠償の場合には中国には人くさん財産を残して来たからというお話がありましたが、これは向うは賠償を要求するかどうかわかりませんが、私の知つている範囲ではそうでないことを考えているようであります。併しその場合にも、財産権の要求或いはこれと見返りにしてというような、韓国との交渉の場合のようなああいうことは日本としては放棄していると了承して間違いございませんでしようか。
  286. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今は国民政府が中国の代表者であるという建前から、国民政府との岡に条約を結んでおります。将来何らかの形が変つて参りますれば、又そのときにその適当の考慮をいたすよりしかない。ただ私の申すのは、賠償というのは要するに戦争の被害を償うためである。そこで若し日本の財産が非常にたくさんそのまま相手国の手に入つておるならば、それでかなりの戦争被害は償えるという理窟にもなるのでありまして、その点もやはり考慮に価する問題であろう、こういうことを申上げたのであります。
  287. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ちよつと恐縮ですが一つだけ最後にお聞きしたいのですが、私のお尋ねしたいのは少しデリケートなことてすから、場合によつて委員長の御判断で、又外務大臣の御答弁都合で、速記はとめにして頂いたほうがいいかとも考えますが、適当に一つ。私の希望いたしますのは、外務大臣から極めてフランクなところを一つ御答弁願いたいと思います。それは新しい問題じやないのですが、例の戦犯の問題です。これは誰しも考えていることであり、政府でも特に考えておられるに違いないのですが、このMSA交渉の機会において特に戦犯の問題についてアメリカ側話合なつたか。それでそうしてその結論が今すぐ現われなくても、アメリカ側でも一段の努力をしようというような、そういうアメリカ側の一歩進んだ熱意があるのかどうか、その辺のところを。
  288. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはMSA交渉に関連しては話をいたしておりませんが、MSA交渉中もしばしば話をいたしております、別の問題で。それでアリソン大使もこの事情は非常によく了解しているとみえて、先般帰国いたしましたときも、各方面に話をしてくれたようであります。その結果は相当促進されるような、これはアメリカだけの話でありますが、促進されるようにも見られるのであります。それからオランダその他の関係も漸次よくなつて来ております。オランダなどは先般初めて二十数名仮釈放を終つたような次第であります。一番むづかしいのは原則的に言えばA級の戦犯犯罪者として指定されている人たちであろうと思います。これについては関係各国でやはり話を実際ワシントンではいたしておるようであります。今後とも努力はいたしますが、割にいいほうの傾向をたどつているように思います。
  289. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ほかに外務大臣に対する御質問はございませんか。おありにならないようでありますから、それでは月曜日にもう一度総括質問を続けることにしまして、本日はこれで散会いたします。    午後三時四十三分散会