運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-04-16 第19回国会 参議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十六日(金曜日)    午前十時五十七分開会   —————————————   委員の異動 四月十三日委員松政二君辞任につ き、その補欠として古池信三君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事      團  伊能君            佐多 忠隆君            曾祢  益君    委員            鹿島守之助君            西郷吉之助君            杉原 荒太君            宮澤 喜一君            梶原 茂嘉君            高良 とみ君            中田 吉雄君            羽生 三七君            加藤シヅエ君            鶴見 祐輔君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    保安政務次官  前田 正男君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   説明員    食糧庁業務第二   部輸入計画課長  羽場 光高君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国アメリカ合衆国との間の相  互防衛援助協定批准について承認  を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○農産物購入に関する日本国とアメ  リカ合衆国との間の協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○経済的措置に関する日本国アメリ  カ合衆国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付) ○投資保証に関する日本国アメリ  カ合衆国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付) ○連合委員会開会の件   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件、農産物購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、投資保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、以上四件を一括して議題といたします。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 お尋ねしたい問題は、日本自衛力がどの程度になれば米軍撤退条件となるかという問題であります。これはいろいろ経済力の問題或いは国力の問題その他いろいろな条件があつて、一概にはなかなかこの結論は出ないと思いますが、併し一応政府としてお考えになる場合に、空、海は別としまして一応地上軍だけについてみても言われておる十八、九万とか或いは三十二、三万とかいろいろ数字が出ておるわけでありますが、大体どの程度地上軍ができればまあ空、海のことは別としまして、一応アメリカ軍撤退条件となるのか、これを先ず第一番におねいたします。
  4. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知通りアメリカ駐留軍撤退のことについて日本自衛力はどこまで漸増して行く必要があるかというお尋ねのようであります。御承知通り兵器進歩というものはなかなか著しいのであります。我々といたしましてもできる限り大勢に遅れないように措置をとつて行かなければならん。部隊の数だけの問題ではないのであります。徒らに部隊の数ばかりをふやしておつてはいかんということを我々は考えておるのであります。  そこで現在アメリカ日本駐留している兵力は、詳しいことは我々はまだわかつていないのです、実はこれは。向うも秘密にしておりまするから。そこで今後の国際情勢のあり方、それらのものと睨み合せて、と同時にこれは我々といたしましては日本周辺軍事情勢、それらを勘案して計画を立てなければならん。的確な数字はこれはつかめません。併し我々今後あらゆる情報を収集してそれに対処して行かなければならんことは勿論であります。それらと睨み合せて且つ日本財政力その他を勘案して今しきりにこれを研究中であります。従いまして部隊漸増して行き、又今仰せになりました飛行機、艦船はどれくらいの数字までふやして行くべきかということを研究しているのであります。併しこれはなかなか確定的なことは今結論が出ていないのであります。併し当分我々といたしましてはアメリカ駐留軍撤退を望むことはちよつとむずかしいのじやないか、こう考えております。残念ながらここしばらくの間やはりアメリカ駐留軍撤退せずに、だんだんその間に日本兵力漸増して行かなくちやならん、こう考えております。お尋ねに対して的確な御返事は誠に遺憾ながらできないわけなんです。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 それでその場合、まあしばらくは駐留軍撤退が困難だという場合ですね、その場合はその地上だけのことを言うのですか。アメリカ言つているこの地上軍に見合う空、海、地上軍に見合うという、言葉を使つておりますが、それに見合う空、海という場合、それでまあ空、海はちよつと日本経済力等からいつてもなかなかこれは困難かと思うのですが、併し一応地上軍に限定していつた場合、どうもそれすらも数の想定、的確に何万になつたらどうなんという、そういう杓子定規のことがあり得るはずはありませんが、併しそれにしても例えば三十万程度になればとか、二十万程度ならばその撤退を可能ならしめると判断すると、その判断ということはおありになると思うのですが、如何ですか。
  6. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御尤もでございます。そこで今お話になりました三十万なんということは、実はいわゆる志願制度の下では私はできんと思います。これはそこで現在の志願制度の下に最大可能なつまり数字というものがおよそ想定はできるわけです。併しその数字すら我々は今後いわゆるいろいろな兵器進歩によつて最小限度に持つて行きたい、こう考えているわけであります。差当りのところといたしましてはこの三十年度は、この間申しました制服二万、空のほうは六千、海は八千六百、大体目標を立てているのでありまするが、これとても私は来年度には非常にむずかしいのではなかろうか。これは一応のめどでありますけれども、それすら私はむずかしいと、こう考えております。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 そのむずかしいと言われるのは、経済的な条件からということでありますか。
  8. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうです。誠にその通りです。我々といたしましては、日本経済力を無視してやるということは絶対にできないのです。いろいろの観点から考えて殊に一番主要なものは、私は経済力だとこう考えております。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、この安保条約から、ずつと保安隊、今度の自衛隊創設等から関連して、アメリカ軍撤退を期待しつつ自衛力増強し、又アメリカ自身自国軍撤退を可能ならしめるように日本自衛力増強を期待しているわけですが、それは一応の期待に過ぎないので、当分は駐留軍撤退というようなことを可能ならしめる条件の造成と言いますか、これはちよつと困難だと、こういうことになるわけですね。
  10. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうです。ここ数年以上私は駐留軍撤退を望むことはできんと思います。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 そうするとですね、どうも独立国家態勢という言葉はいいかどうか知りませんが、独立国家態勢を整えるために、いつまでも外国駐留年に依存していることは適当でないから、日本みずからが何とかして自衛力維持発展を図らなければならないというようなことは、まあ一応ちよつと何と言うか停頓状態で半永久的にアメリカ軍駐留に依存しなければならないという、そういう見通しになると思うのですが、これは非常に重大だと思うのですが、どうでございますか。
  12. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お説の通り、我々といたしましては一日も早く自力で日本防衛態勢を確立して行きたいと、こう考えております。併しそれはしばしば申しましたように、容易じやありません。そこで、我々は一日も早くいわゆる国民が緊褌一番一つ日本の先ず財政力強化を図つて行く、そうしてそれにマッチした漸増計画を立てて行くよりほかにないと考えております。
  13. 中田吉雄

    中田吉雄君 長官は、なかなかここ数年後は引揚げはいろんな事情から困難であろうということですが、そういう関係において日米関係を友好的な関係に保ち得るかどうか。それはもう講和条約発効後、極めて短日月ですが、想像以上にアメリカに対する批判的な空気が駐留軍のために起きているわけです。例えば最近アメリカ下院東南アジア調査団として参りましたジヤツド調査団長は、日本において反米感情がどういう点に起因するかということを分析されて四つ上げているんです。外国の支配から逃れようとする国家主義の台頭、それから特権を与えられた多数の米兵が日本駐留することから来るいやらしい感情、それから日本を徹底的に武装解除しながら、情勢が変つたからと言つて再び政策転換を強いることに対する反対。中共との貿易拡張に対する経済的独立の要求とこの四つ上げている。そしてアメリカ駐留軍から来る反米感情がもう決定的なもので、一番重要だ。これはアメリカ下院調査団長ジヤツド氏が三月に発表されたので、若しこのままにしておくならば日本アメリカにとつて頼りにならん同盟国となり、悪くすればだんだん共産主義のほうに傾いて行く。これが原因でそういうふうになつて行く可能性もあるとすら見ているんですが、そういうことについては御懸念はないわけですか。
  14. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) ジヤツド氏はそういうことを言つているようでありますが、我々といたしましては、やはり日本防衛のためにはどうしても駐留軍のここ暫く撤退を望むことはできんとすれば、これをよく国民に理解させる方法を講じて、即ち、何もアメリカが好きこのんでやつているわけじやない、アメリカ日本防衛を担任し、これが極東の国際平和の一つのよすがになり、ひいては世界の平和をもたらすためにやつている、この観念を十分に国民に私は理解させる必要があるんじやないかと思うのです。最近のアメリカ駐留軍の態度は、だんだん私の目から見ればよくなつたと思つております。非常に謙虚な気持日本国民感情を成るたけ害さないようにということに配慮しておるように見受けられるのであります。勿論独立国家としていつまでもアメリカ駐留軍の手によつて日本防衛を任せるということは、これはよくないことでありますが、併し申上げる通り、これは必要なことなんであります。そこは一つ日本国民もよくこの点に思いをいたして忍んでもらうより仕方がないと、こう考えております。その間に我々は一日も早く日本財政力強化図つて自前国防態勢を立てて行こう、これが日本の国の生きる途であろうと、私はこう考えております。
  15. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと申上げますが、木村長官は役所の都合でほんの四、五分中座したいということでありまするからして、その間外務大臣に対する質問をどうかやつて頂くことにしたいと思います。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 外務大臣に今のにちよつと関連してお尋ねしたいのでありますが、自衛力がどの程度になれば、米軍が徐々にしろ全部にしろ撤退するかという問題についてその限度とか限界というようなものを、数的なものに関係するわけでありますが、そういうことについてアメリカ当局お話合なつたことはあるのでありましようか。
  17. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今までのところはありません。今木村長官の言われたようなのが実情なんですが、私としてはできれば一部でも取りかえるように保安庁とも今後話したいと思つております。一部でも取りかわり得れば、今度はどのくらいということがもつと的確に将来の見当がつくのじやないかと思つております。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 そこで一部でもと言われる場合ですが、全部の点になると、アメリカ側ではいつも自分が好きこのんで駐留しているわけじやないんだからいつでも撤退するし、又撤退したほうがいいんだというような意見を必ず発表しておると思うのであります。そうすると、当然そこには自衛力漸増の問題と関連をしてこの程度のものということが日本政府に示されなければならんと思うのであります。この程度になれば撤退するとか或いはまだそれでは早過ぎるとかいう細かい取りきめは別としまして、一応のめどとして大体日本自衛軍がこの程度なつた場合にはそれを可能ならしめるつまり前提条件になる、そのときにもいろいろあとからお尋ねいたしますが、国際情勢その他いろいろ問題はあると思いますけれども、一応日本自体に問題を限定すればこの程度になれば撤退可能な条件となるとか、そういう問題について全然アメリカが話がないということもちよつと受取れないのでありますが、如何でありましようか。
  19. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはアメリカ側としてはいろいろ研究しおられると思いますし、又そういう意味で二十何万とか三十何万とかいうような数まで言われたことが、それだけではありますまいが、そういう意味でも、これだけあれば撤退できるんだというような数字を言つたこともあるんじやないかと思います。こちらには言つておりませんけれども、併しそれが日本の世論には、却つてアメリカ日本に対してどれだけの増強を要求しておるというふうにとられて非常に驚いておりまして、最近はそういうことを一切口に出しておりません。今向う希望しているのは、やはりでき得る限り一部でも一つ変つて、だんだん日本の力ができたときにこれをふやして行きしたいという程度希望を持つております。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 その米軍撤退という条件の場合に、例えば自衛力増強ということもありますが、それ以外に国際情勢というものに制約されて、それもアメリカの主観的な国際情勢判断から、更にこの米軍駐留というものがより永続化して行くという、そういうことはないんでしようか。
  21. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今のところは先ほど中田君がおつしやつたような国内反米感情というようなものを、むしろこれによつて減らし得ないという考えから、日米関係の大局に立つて早く撤退したいという気持、と同時に予算の縮減ということもこれによつて行われる。というのは、防衛分担金はお互いに出しておりますが、それ以上にアメリカのほうの予算は余計要るのでありまして、例えば給料だとか装備だとか被服だとかいろいろなものは、これは当然アメリカ側は軍隊を持つておるのでありますから持つべきでありましようが、それ以外に日本国内にいるがために要る費用が、防衛分担金よりは遥かに超えている実情なんであります。従つて経費の節約という面から見ても早く撤退したいということは考えておりましようし、これは決して口だけで言うわけでなく実際そういう希望を強く持つております。国際情勢が非常に危くなるというようなことが将来ありとすればこれは又別問題ですけれども、今のところそういう理由で長くいたいなんということは、これはもう全然考えていないようであります。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 これはまあ長官がお帰りになつてから関連することがありますが、それはあとにしまして、ちよつと先日の総理大臣の出られたときの問題にやや関連するのですが、最近の特にインドシナ戦争に関連するアメリカ動きを見ておりますと、どうもアメリカ外交というものは、最初の何か直接の軍事行動があつてそれが否みがたい侵略行為ということになれば、その場合にアメリカの戦略が変つて来ることは、これはよくわかりますが、そうでなしに先日もちよつと外務大臣お尋ねしたように、イデオロギー外交が支配されそうな危険が非常に増大したよう思われるのであります。丁度曽つて日独防共協定と同じようなイデオロギー外交というものがアメリカ政策の中に非常に強くその地位を占めて来た。特に最近のアジアにおける一連の動きを見ますると、これはもう明白に侵略という直接の問題よりも、むしろイデオロギーに沿うて来ている侵略者と認めてそれに対応する外交手段を講じて行く。こういうことになつて来ると非常に問題の範囲が広くなつて来ますので、又従つて我が国の将来としては非常にいろいろとあの御承知共同宣言の問題とか、或いは統一行動の問題とか、又今度は太平洋同盟機構のほかに、更に東南アジア同盟機構というものも考えられて日本を除外するとか加入せしめるとかいろいろな情報が伝つているわけでありますが、特に今申上げたイデオロギーによつて外交が支配される危険性が非常に増大したように私ども判断するのでありますが、これに対する外相の見解をお伺いしたいと思います。
  23. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はどうもアメリカ政策を批評することは好まないのでありまして、勿論弁解する必要もないわけですから、これはどうお考えになつてもいたし方ない。それはそうじやない、こうであるというふうに私から、言う必要もないと思います。ただ私も日本としても重要な関係があるんですからインドシナ状況は多少注意をして勿論見ているのです。自分もハノイへ昨年は行きましてナヴアール司令官その他いろいろの人に状況も開いてみましたが、一番問題になつておるのは、国内一種の内乱であるならばこれは別でありますが、その武器、殊に銃火器等はことごとく中共側から来ていることは、これを捕獲して持つている事実の証拠からはつきりしておるようであります。それからもう一つ問題になりますのは、ときどきはインドシナ側でこれを追詰めて包囲したりすることもあるんですが、そうすると中共国境向うへ逃げてしまう。で、そこで又訓練を受けたり休養をしたり、編制建直したりして又現れて来るということで、中共介入ということが非常に問題になつておるようであります。その点が今度のアメリカ側の声明の一番大きな理由じやないかと思つております。勿論これは両方に争いがあつて、例えば中共の人間は一人も行つておらないということを中共側では言つているようであります。ただ武器が非常に大量に中共側から供給されておることと、それから一部の部隊国境を越えて中共側に入つてそこで編制替え等建直し行つてインドシナ側に入つて来る。これだけは争われない事実のようでありまして、この点から中共介入ということが問題になり、中共が介入するならばこちら側も仏印側だけに任しておくわけに行かんじやないかという議論になつて来るんじやないかと思つております。まあこれは事実だけのお話で。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 外務大臣には、今日はもう一点だけでありますが、これは先日やはりちよつと触れた問題でありますが、この日本自衛力増強して行くことは、当然MSA協定の結果一種義務になるわけでありますが、私どもこの前申上げましたように、この場合この一般的な経済条件が許す範囲とか、或いは日本経済的能力という場合に、実際上日米間に見解相違が起つて来やしないかと思う。例えば経済の点については、日本ではこれは非常に経済上から言つて無理だと思つても、アメリカ側から言うならば日本経済はまだ自衛力増強に堪え得る、そういう見解相違がかなり起つて来るのではないかと思う。例えば日本で若干の貿易改善が行われた場合があつても、それが一種の二重価格制の上に立つた貿易の伸長であり、或いは非常な労働階級の低賃金等でかろうじて表面上は貿易の振興というように見られる。併し実質上は非常に日本経済から言えば国民生活の面ではかなり困難なことをやつているけれども、併しアメリカ側から見るならば或る特殊の数字をとり上げて、これは貿易上の数字を見ても可能だからもつと自衛力増強すべきである、こういう面が出て来ると思う。その速度と態様は日本が自主的にきめることになつてつても、併し誰が常識的に考えましてもこの問題に必ずアメリカが何らかの発言を而も強力にするであろうことは想像するにかたくないと思うのであります。そこで今後、さつき木村長官もこの駐留軍撤退は当分不可能だと言われたのも、この経済条件に関連してだと思うのでありますが、この経済上の問題について日米間にかなり見解相違が起るということはお考えにならないでしようか。
  25. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはこういうふうに協定を見て頂くともつとわかりやすくなるのじやないかと思います。第一に、日本防衛力増強という約束をいたしております。それはなぜしておるかというと、若し防衛力増強しないと仮にしますならば、それは多少勿論装備改善ということは要りましようけれども、アメリカ側MSA武器援助をするという必要はなくなるのじやないか、殆んど。つまり防衛力増強するから武器援助を求めるのである。つまり従つて武器援助というものと防衛力増強というものはこれは原因と結果になるのであつて、従いましてこの防衛力増強ということを永久にやつておるというようにお考えになる必要はないのであつて援助を受ける間防衛力増強という約束をしている。援助を受けなくなれば勿論そういう約束はなくなる。又半面から言えば防衛力増強したいと思うからこそこういう約束をして援助を受けているのであるからして、その点は比較的軽くと言つては語弊があるかも知れないけれども、そう義務ばかり非常に負い込んだとお考えになる必要はないのじやないかと私は思うわけであります。従つて成るほどアメリカ側ではお話のように、もつと防衛力増強できるはずだという考えを持ちましよう、こつちはそうは行かんのだと。こういうことになりますが、具体的にそれでは防衛力をこれだけ増強したということになつた場合にそれに見合う援助が来るのであつて、つまりもつと援助を余計ほしいならば防衛力増強しなさいということに結果は落着くのである。従つてそれに思うほどのことがなければ思うほどの援助は来ない。それでおしまいになると私は考えております。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 常識的にはそれは一つの解釈が成り立つわけでありますが、この場合、先日も引用した問題ですが、先ほど中田委員も言われたように、アメリカ下院軍事委員会分科会団長ですかの言われた、あれの日本視察結果の発表から見ましても、日本には非常な耐乏生活を求めなければならない、それでその上で軍事力増強して行かなければならないということを言つていると思う。従つてそれはMSA援助を受けなければ義務従つて生じないわけでありますけれども、併し現在昭和二十九年度予算で見ても、このMSA協定で、正確には幾らかわかりませんが、僅か一億ドル内外の完成兵器援助を受けなければ、日本自衛隊増強もできない、装備内容充実もできない。そういう経済的な制約の下にある以上は、やはり私はこの今の政府としてはMSA援助を継続されて行くと思う。そういう場合に、当然私は憲法上の問題とか、或いは国際法上とか、このMSA協定についていろいろ問題があるでありましようが、なかんずく私はこの日本経済自衛力増強との相関性というものが非常な私はこの協定の眼目と言いますか、重大な点になると思う。自衛力増強したくなければ援助を受けなければいいというような簡単なことでは済まされないと私は思つておるのであります。従つて私は今申上げましたように、この経済力が許すか許さないか、それをアメリカが認めるか認めないかということは、今後のこの日本自衛力増強に非常に重大な関係を持つて来る問題だし、又それの解決なくしては、アメリカ軍撤退を可能ならしめる条件というものはできない。永久にアメリカ軍が駐とんしているということを前提とすればこれは問題でありません。而もこれが交替するという前提政府が立つならば、当然今申上げた経済力との限界を見きわめながら相当程度自衛力漸増なき限り、アメリカ軍撤退はあり得ないのでありますから、従つて今の経済力限界についての日米相互間の見解相違ということは、かなり我が国経済上或いはその他非常に重要な関係を持つ。こう思います。併しまあ外務大臣が今のように簡単に御解釈になつているならばこれは止むを得ないのですが、それ以上お話になることはございませんか。
  27. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) まあこれは日本では非常に重要に考えられておつてさように考え意味も勿論ありますが、大体この世界の非常に多くの国に援助をいたしているのですからその模様を見てみますると、やはり私の申したように受けたきや防衛力増強しろ、防衛力増強しなければ援助つてしないということに結局は落ち着いて来るのであつて従つて或る国はそれじやもう受けないという国もあるし、まあ逆にもつと防衛力増強して援助を受けたいという国もありますが、これはまあそうその何と言いますかむずかしく考えるほどにはよその国も取扱つておりませんから、日本の場合にも同様で当然いいだろうとこう私どもは思つております。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 私はあと木村長官が来たときにして、外務大臣に対する質問は今日はここで打切りますけれども、それはほかの国はこの前にもどなたかからもこの委員会でさんざん言われましたけれども、現に軍事力を持つてつてそしてその上で締結されたMSA協定でありますから、日本がこれから或る程度の、まあそれは軍備に値するかどうか別として、或る程度軍事力を、或いは自衛力をこれから持とうという場合の条件とは全然私は違うと思う。併しまあこれは議論になりますから。長官がお帰りになつたから一、二点だけ触れたいと思います。  木村長官お尋ねしたい次の問題は、これはやはり日本自衛力漸増という場合には陸海空の三軍方式をおとりになるわけですか。
  29. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 三軍方式と言つていいか、厳密な意味においてはないのですが、少くともやはり将来は海のほうも空のほうも漸増して行きたいと考えております。併しこの際特に申し上げたいのは、これはなかなか容易じやない。殊にこれを我々思うようにやるというには金がかかるのであります。それを急速に増強して行くということは非常に日本財政力の点から見て困難であるということだけは申上げておきます。
  30. 羽生三七

    羽生三七君 私も日本財政力から見れば空、海ということは実施上非常に困難な問題だと思うのですが、それは別として、その地上軍に見合う空、海というようなものでアメリカの期待するものはどの程度かということはお話合なつたことはないのでありましようか。
  31. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 見合うと言つてつまりバランスのとれたものというのですね。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 空、海としてアメリカ日本に期待しておるものですね、どの程度
  33. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは只今のところでは先ず二十九年度で我々計画したように地上兵力のほうに重きを置いているものです。海のほうも重きを置いていないというわけじやありませんが、これはなかなか容易じやありませんから、アメリカからこの面について援助を得る。陸のほうもそうですよ。装備はそろつているのですから。  そこで日本のほうでも実際にみずからの手で増強を図つて行きたいと考えているのであります。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 誠にどうも抽象的なお話でこれはまあ無理がないと思うのです。併し根本的な問題になると結局水かけ論みたいになるのですが、一体永久にアメリカ軍に駐とんしてもらうという理由日本にもないし、又アメリカもそんなことは考えておらない。まあ今外務大臣もそうおつしやつたのですが、然らば日米相互間で大体この程度ならばアメリカ軍撤退するであろうし、又日本撤退してもらわなければならないという基準が全然ないということは、もう私としては全く考えられないことなのでありますが、まあ併しお答えがなければしようがない。次の問題に移ります。
  35. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちよつと今のに関連して。いつも増強に関連して引揚なり何なりがどういうふうになるのだという質問が出て、その答弁がはつきりしないのですが、その前に一体今のアメリカ軍日本駐留している状態、それは地上、海空に亘つてどういうふうな態様、どういうふうな量になつているのですか、それを一つ
  36. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) アメリカ駐留軍の実体というものは、実は私らもよくわかつていないのであります。ただこの地上部隊に関する限りにおいては、日本地上部隊増強に見合つて向う引揚げよう、こういうことなんです。そこで我々といたしましては、少くとも地上部隊だけは早く引揚げてもらうほうがいいのじやないかということで差当り二十九年度では二万、これを先ず増強して行き、これに見合うものだけのものはアメリカ駐留軍撤退をしてもらう、こういうことなんです。
  37. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私の聞いているのは、撤退のほうの問題は私自身の質問のときにもつと詳しくお聞きしようと思つている。その前に駐留軍駐留の態様、陸海空に亘つてそれはどうなつている。
  38. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そいつは私らにも実体はわかりません。
  39. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それがわからなければどう撤退してもらう、どうそれとの関連において地上軍をふやし、或いは三軍をふやすというような計画は何ら立たないのじやないですか。
  40. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本漸増して行く限りにおいて、それに見合うものを撤退しようというのですから。
  41. 羽生三七

    羽生三七君 そこでですね、こういう具体的な問題は出て来ないでしようか。例えば今のアメリカの陸海空に亘り日本におる駐留部隊の実体はわからないにしても、それに見合うものができれば撤退する、それは地上軍だけでなしに空、海を含んでいるわけですか。
  42. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 無論日本の空軍力、或いは海軍力、これが増強して行けばアメリカもそれに見合うものは引揚げるということになつております。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 一部には空軍基地を沖縄に移してどうこうというようなことも出ておりました、新聞なんかにも。そういうことは何かお話合なつたことはありませんか。
  44. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) ありません。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 それでは次にもう一二点だけ伺つてやめますが、この日本のような地理的な条件としての直接侵略ということはどういう場合が想像されますか。
  46. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは主として海から或いは空からと考えられます。
  47. 羽生三七

    羽生三七君 それ以外には恐らくないでありましようが、その場合には全面戦争になるのじやないですか。日本への直接侵略の場合、これを想像すると私は無論全面戦争の場合が予想される、こういうことをお考えなつたことはありませんか。
  48. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 全面戦争というものはどういうのか、私わかりません。一部或る地点においてそれは武力侵略があるということは考えられます、或る局地的に。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 例えばインドシナを見ましても同一国内に二重政権がある。それから中国のほうは中共本土と台湾を見てもこれは二重政権、朝鮮を見ましても北鮮と南鮮も二重政権、ドイツも問題があつてこれもまあ西や東にわかれている。そうすると世界で問題のある国は大体同一国内に二重政権がある国と殆んど限定されている。だから従つて日本の将来何か問題があるとすれば陸続きで何か問題が起つて来たというようなときには、或いは朝鮮や、或いはインドシナに見られるような状態があるかないか知りませんけれども抽象的に言つてないとは断言できない。併し日本のようなこの地理的な条件の下にあるときに、今お話のような空、海を以て外国が入つて来るというようなときには、これはもうちよつと何と言うか局地戦争じやなしに、むしろ全面戦争的な性格をもつて来る。従つてさようなことは簡単に起らない。そういう私どもは想定に立つて問題を考えているわけでありますが、例えば地理的に或る所へは来るというのは、どこかの国の海軍が日本の長い海岸線のどこか一角へちよつと上陸する、そういうことを指すのでありますか。
  50. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 端的に申しますると、北海道の地点とか或いは九州の地点とかというようなことが考えられるのであります。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 まあこれ以上のことになりますとその戦略論でこれは中田さんの領域に大分なるので、あと大分御研究のようでありますから、私は今日はこの程度にしておきます。
  52. 曾禰益

    ○曾祢益君 先だつての当委員会におきまして、佐藤法制局長官が同僚杉原委員の質問に対して自衛力の法律的見解について述べられたのでありまするが、その要点と私の認めるところでは、自衛力というのは結局まあ社会通念みたいなもので、従つて軍隊、戦力という、ものも観念的には含み得るのだと、こういう点が私としては要点であつたと思うわけです。そこでそういたしますると、まあその点で防衛力という言葉とは、多少自衛力というのはみずからという気持が現われているようでありますが、実質的には同じようなものだ。防衛力がそういう戦力的なものを、或いは軍隊的なものを含むということになると、第八条にいろいろの条件をつけているけれども、日本が「自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与」する、この点が我々としても、国民としても憲法の違反のいわゆる軍隊的なもの或いは軍隊その他の戦力的なものをここでは少くとも日本がふやすという約束をしている。それにもかかわらずこの協定全体から憲法に違反しないという議論は一体どこに求めておられるのか、この点を外務大臣から伺いたい。
  53. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 協定全体として憲法に違反しないようにやるということはこれはもう政府としては当然やることであつて、それは九条の第二項にそういうことはなくても当然やれるのでありますけれども、従つてその意味では念のための規定だと言つても差支えないわけですけれども、つまりこの八条でそういうふうに書いておいて、憲法の九条でそう言つているのは矛盾じやないかと、こういうお話のようでありますが、そうじやなくして、八条で書いてあることが仮に憲法を逸脱するところまで行き得るような書き方であるとすればそれに対して九条二項でそれはそこまでは行かないんだということを制約いたしているのであります。
  54. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは法律的には外務大臣法制局長官の意向と同じように、少くともこの八条に書いてある防衛力というものは、国際的の通念から言つてもこの字句そのものからは、何も日本の特殊な憲法が規定しているような軍隊その他の戦力を持つてはいけないという制約はないということはお認めになるわけですね。
  55. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りです。
  56. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういたしますると、なぜそういうものを使わなければならないか、なぜ九条二項、これはあとでも論じたいのですが、九条二項で果してそれがいわゆる免責規定になつているかどうかという点が問題になると思うのですが、なぜ政府としてはそういうような極めて憲法上疑義を生ずるような字句を使わなければならんか。勿論それには恐らく御答弁は、これはアメリカMSA法にある字句だからということであろうけれども、若し真に政府日本の特殊性に即した誰が見ても合憲的なものを作ろうというのならば、ここに書いてある自衛力そのものという表現を、或いは防衛力というあやふやな表現を使わない方法もあり得たと思うのです。なぜそれをおやりにならなかつたのか、できなかつたのか御説明願いたい。
  57. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはその前に政治上、経済上という字句が入つておりました。それで政治上という字句の中には当然憲法の問題も入つて来ていると我々は了解し、アメリカ側もその通りだという説明でありました。従つてこれだけでもうすでに差支えないと考えているわけであります。そこに勿論第九条二項もありますが、従つてアメリカの法律の中に書いてある字句をそのままとることが特に差支えがあれば別でありますけれども、そういう意味で憲法の範囲内で行うということは当然のことと考えましたからこれは差支えないだろうという意味で入れました。
  58. 曾禰益

    ○曾祢益君 それはそういう御見解かも知れませんが、自国の政治上及び経済上の安定と矛盾しない範囲で云々ということは、これは日本アメリカとの条約のときばかりでなく、各国、日本と事情の違つた憲法上のいわゆる悩みのない国のときにも使つていることなんですから、これはもう率直に言つて政治上の安定、経済上の安定と矛盾しない範囲ということは、言葉を換えて言うならば、いわゆる軍事的防衛力だけでいいのじやなくて、間接侵略を受けつけないような政治経済体制が必要だという意味であつて日本の特殊憲法のことまでここで政治上の安定と矛盾しない範囲内でということは、これはどうも解釈上そういう理窟は立つかも知れませんが、これは非常に無理なんです。若しそういう解釈をとられるならばこと憲法との関連における重大な問題であるから、当然に外務省とされたならば少くともその点を附属交換公文等において明らかにその措置をとられるのが当り前であつて、実は恐らく国民としては今初めてで、この防衛力という意味は或いは憲法上以上の防衛的な能力を含むものである、併しそれはその前にあるこの条件、即ち政治上の安定と矛盾しない範囲内でということになつているから、そこでやつと救われるのだ。こういうようなことは実際の協定を読んだ人はわからないことなんです。そういう国民がわからないような協定を作るというのは、本旨とするところじやない。だから少くとも若しそういう御解釈ならば改めてこの点を附属交換公文等で明らかに誰にもわかるようにおやりになるのが当然じやないですか。
  59. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 我々も国会内においても防衛力増強ということを言つておるのです。その防衛力というのは延長すればそれは戦力以上になる場合もありましようが、とへかく我々防衛力増強ということを言つております。そうしてこれは当然憲法の範囲内においてやることであるという意味言つているのであります。従つて防衛力増強ということをここに謳つても、それに政治上という制限もありまするし、殊に第九条第二項に憲法の規定の範囲内ということも特に念を押してありますから、私は附属書で更に言う必要はないと考えております。
  60. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは問題の焦点をそらした御答弁であつて、正確に言うなら、やはりここに言つている防衛力というのは条約上の義務を生ずる問題である。従つて政府防衛力増強すると言つている際もあくまでも憲法の範囲内でやるといつておられるのであつて、その憲法の範囲内であるかどうかということについては、それは人によつても見方は違うと思うのですが、少くともそれなら同様に、いやしくも政府の国会における答弁でも、ちやんと条件付きで防衛力増強をする、憲法の範囲内でと、それなら外国との条約において、いやしくも憲法の範囲内においてということをなぜ入れないかということの私は御答弁にならないと思う。この点は非常に私としては不満な点でありまするが、さような観点から、結局は最後のいわゆる合憲的に結ぼうとする努力の現われが第九条第二項に私は現われておると思う。仮に岡崎外務大臣の言われるような説明が条理上通らなくても、もう一つのこの防衛措置が第九条第二項においてとられんとしていると私は考える。ところが果してこの第九条第二項の規定が、一体免責規定になるかどうかということについては、私は勿論専門家じやありませんけれども非常に疑いを持たざるを得ない。これは本会議の際における私の質問に対する外務大臣の御答弁にもありましたことと記憶しておりまするが、いわば今の御答弁の中にもちよつとそれがありましたが、これはまあ念のための規定だというような御見解、並びに憲法上の規定に従つて実施するということの説明の中には、この協定が国会に承認を求めてそしてやるのだ。若しそういう意味の規定ならば、この協定の内容そのものが、今言つたように第八条の中でも憲法を逸脱するおそれが十分なときにそういうものを作つておいて、そうして作つたものがすぐに憲法を逸脱していることがあつたとした場合に、この協定をただ憲法の手続に従つて実施すると言つたつて、この協定自身がもう憲法を逸脱したようなものを作つていることを何ら抑えるような免責規定にはならないのじやないですか。
  61. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この九条の二項は憲法の手続によつて実施するということを言つているのじやなくて、憲法の規定に従つて実施する、こういうことを言つているので、手続の問題じやないのであります。併しこれがなくても私は当然憲法の規定に基いてやることは、政治上という制限があるからはつきりしていると思うけれども、念のため新たにこれをはつきりして憲法の規定に従つてやるのだということにいたしたのであります。
  62. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は今申し上げた言葉が足りなかつたのですが、勿論憲法の規定に従つて実施すると書いてあるわけなんであります。それはその通りだと思います。ただその例証として岡崎大臣みずから言われた御説明の中には、憲法の手続に従つて実施する、こういうことも言つておつたわけであります。規定に従つてとなればその全部じやなくて一部であることは認めます。併し憲法の規定に従つて実施するといえば問題はその、実施する、ということがある。であるからこの条約そのものが憲法を逸脱するものがあつたとした場合にも、これはその条項が憲法をはみ出していることをくいとめる規定にはならないのじやないですか。それだけの効果は持ち得ないと思います。この点は如何でしようか。
  63. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 我々はこの協定の規定のどこにも憲法に逸脱して作つたという考えは毛頭持つておりません。全部憲法に従つて、特に憲法は日本の場合には特殊のものがありますからこの点を特に念を入れて憲法に背かないように、憲法の範囲内でやるようにという特に念を入れてあらゆる点を検討して間違いないようにして作つたのでありますから、私どものほうから言えばこの協定のどこにも憲法に逸脱するような文句はないと確信しているわけです。
  64. 曾禰益

    ○曾祢益君 それはもう当然に政府とされては憲法の規定を遵守するように最大の努力をすべきであるし、又されたであろうことは私も疑つておりません。ただその憲法の解釈について遺憾ながら私たちと意見が違うとも思いますけれども、併し政府の立場においても、政府の立場に基くところの憲法の解釈においては、それ以上に逸脱しまいと努力されたことは認める。ただ私たちは、ここにその結果、或る国際条約の原文ができている、それから見ると第八条において指摘したように、必ずしもこの点ばかりじやございませんでしようが、特にこの点において欠くるところの心配が濃厚である。従つてこれを如何にして救うかということにおいて、先ほど申上げたように第八条の防衛力の内容規定の意味について、少くとも交換公文くらいおやりになるのが本当じやないか。それでない場合には第九条で救われるかということを誠意を以て考えてみる場合に疑いを生じているのだ。例えば少し観点を変えて言えば、第九条の第一項第一号と言いますか、あの安全保障条約又は行政協定等々の取極を何ら改変するということと解してはならないと、こう書いてありますが、併し現実にこれも又、第八条の防衛力増強をはつきり約したということは、見方によつてはこれは前文に掲げてあつたアメリカ日本に対する期待、即ち日本防衛力漸増に責任を持つてほしいという期待が、今度は実質的に変つているのです。だからそういうことはどうにもしようがない。ただここにいわゆる純条約的、法律的に考えて、この協定そのものが安保条約を変える意図でないということを書いてあるだけなんです。併し現実には安保条約以上の、而も安保条約に関連のある重大な点においては、違つた事態がこの条約で作られているのです。それと同じことでこの協定全体が憲法に逸脱している場合には九条二項のこの書き方では救えない。少くともここにただ憲法上の規定と書いてあるのですね。この憲法というものはそのときの憲法であつていいわけで現在の憲法ということにもならない。仮に万が一に日本の憲法が変つた場合にはその規定に従つてやるというだけの話で、今の憲法上の逸脱するような条項がこの中にあつた場合には、この九条二項の書き方ではこれを救うことにはなりませんと私は思うのですが、この点如何ですか。
  65. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうも私曾祢君の言うことがよくわからないのですが、安保条約を変えたとは私は思つておりません。というのは、安保条約約束しておりますことはこの第一条以下の問題であつて、この初めの点はこれは約束というわけには行かないのであります。そこでこれは期待であるが、今度ははつきり約束したという点においては一歩進んでおりますが、併し安保条約約束を変えるということにはならないのは、この前文は約束しておらないからであります。  それから憲法、これは自国の憲法と書いてありますから、憲法は日本の憲法が何か修正されるというようなことがあれば、それはそのときはその憲法に従うより仕方がないと思います。併しいずれにしても政府としてはその現在ある憲法に忠実にこの協定を作ろう、こういう意味であります。
  66. 曾禰益

    ○曾祢益君 私はもう実質的な理論をしているのに岡崎君は形式的に御答弁願つている。私自身もこの第一条の第一項の一号の規定に、何も安保条約そのものを変えない、形の上で変えないということを言つているので、併し実質的にはそれ以上の期待を約束しているということを申上げたのですが、そこで今度はこの点も非常に重要な点で明らかにしておきたいと思うのですが、これは又仮定の議論だというふうにおつしやるかも知れないが、重要な問題でありますから伺つておきたい。すでに本委員会においても他の委員会、本会議等でも問題になりましたのはやはり憲法九十八条第二項と本協定との関係でございますが、これは政府のはつきりした解釈は一体どうなのであるか。あえて古証文を出すわけではありませんが、憲法制定の際の国会の審議をずつと慎重に謙虚にたどつて見ると、どうしても憲法の九十八条第二項の規定そのものから考えて、国際条約が場合によつては憲法に影響を与える、憲法をそのまま国際条約が修正するものではないでしよう。併し憲法以上の国際条約ができた場合には、これは事実憲法に影響を与えるといいますか、そういう結果を招来するということははつきり当時は認めておられた。この点は憲法にも今言つた証拠はございます。例えば高柳議員の政府に対する質問の中に、憲法に反する条約は国内法上無効であると考えていいかというのに対して、政府の答弁は、憲法に対して制約を加える条約もあり得る、こういうことをはつきり述べておられるわけです。又大河内議員から、条約が締結されれば国民を拘束する、その効力は場合によつては憲法をも動かし得ると解してよろしいか、それに対する政府の答弁は、大体お説の通り。更に佐々木議員から、条約で憲法に異なる約束をすれば、その範囲で憲法は当然に変更されると解釈するか、それに対しては変更されるとは言わない、影響を受けると言つた、事実変えられることは金森さんは政府を代表してはつきり認めておられる。ところが最近になりますと、殊にMSA協定が問題になつて合憲性が問題になると、そういうことはないというようなお話、それでなければ、政府はそういうことをするはずがありません。そういう主観的の意図の問題を論じているのではない。相手もあることであるから政府が如何に努力されても、客観的にできた条約文書そのものが憲法に逸脱している場合には、一体そういう条約は無効なのか、それともどうなのか、この問題。これは勿論影響は国際的に無効である、国内的に無効であるという二つに分けられろでしよう。私は主として国内的な見地から憲法に逸脱する条約ができた場合には、それはどうするのか、どう見るのか、この問題を伺いたいわけです。最終的の結果は最高裁判所だろうというような御答弁であつてはならないので、政府のそういつた問題に対する見解はどうなのか、この点を外務大臣及び法制局長官からはつきりと伺いたい。
  67. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私から先にお答えさせて頂きます。この間予算委員会でも御質疑がございましたが、憲法制定の際の只今の御引用の部分は、確かにそういう部分があると思います。それは併し我々の考えているところから言うと工合の悪い部分だけを御引用になつているように拝承するわけであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)大体においての金森さんの答弁の趣旨は、もとより一般的には憲法が優位であるという立場をとつていることは、他の場合において明らかになつているはずであります。ただ何故にそういう御引用になりましたような質疑応答がなされたかということは、我々も当時知つておりますが、御承知通りに敗戦の直後のことであります。つまり敗戦の即ち無条件降伏によつて実は降伏文書なりその他のいきさつがあつて、それは実は明治憲法と対比しますれば憲法に対して大きな影響を与えたということは、これは現実の事実であつたと思います。従つてそういう無条件降伏というような、一面から言えば学者が革命といつておりますようなそういう場合をも理論的には考えておられた。これは当時は降伏ののちで近い時期でありますから、そういうことも金森さんの頭におきながら答えられたために、今のような言葉使いが出て来ている、これは私も当時おりましたから承知しております。ただ一般的な原則として、憲法よりも条約が強いということは決して言つておらないはずだと思つております。そこでそういう特殊の場合を仮に除きまして考えますれば、たびたび申上げますように大体憲法改正の手続というものは、衆参両院三分の二以上の大多数の賛成がなければならないのみならず、更に国民投票に付して大多数が賛成しなければ改正はできないという厳重な手続が設けられているわけであります。これに対して条約締結の手続というものは、或いは法律の場合に比べてもゆるやかであると申し得るくらいに、両院の普通の議決のみで条約は締結され、その制定手続において憲法改正の場合と条約締結の場合とは非常に違うわけであります。その簡易手続によるところの条約の形を以て、重大な手続を要するものとされている憲法の条章が覆えされる、或いは変更されるというようなことは、この憲法が認めているはずがないというのが一般的な私は考え方であろうと思うわけであります。その意味におきまして我々といたしましては、条約は憲法には優先し得ないものである、憲法に違反する条約ができた場合には少くとも国内法的には、これは無効であるというような考え方を、ずつと堅持して参つておるわけであります。
  68. 曾禰益

    ○曾祢益君 私も当時の情勢から言つて政府の答弁非常につらいところもあつたと思うのです。だからはつきり言えば無条件降伏文書、そういうものに反対できない。そういう特殊の制約のあることを明らかにして、そうしてそういつたような国際法規その他のいわゆる慣習的法規ですか、エスタブリツシユされた国際法規、或いは或る種の条約等についてはこれは優先する場合もあるということを言おうとしたのかも知れないと思うけれども、併し政府の説明の仕方は非常にこの点は誤解を招く説明をしているわけであります。だから今のあなたの御答弁は、明確に占領が終つた日本の現在の憲法の解釈としては、政府としては、条約は憲法に優先する場合はない、若しそういうものがあつたとしたならば、国内的には無効である。これが政府の今の正式な解釈だとかように見てよろしうございますか。
  69. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その通り考えております。
  70. 曾禰益

    ○曾祢益君 次にこの間これ又同僚委員諸君からすでに数回に亘つて提起され又政府の御答弁があつた実は自衛権の問題ですが、私はこの間の政府の御答弁はまだ明確を欠いていると思うのです。と申しまするのは、私の解釈によれば、日本の持つている自衛権というものは、何と申しましても従来の一般的な国際法の通念である自衛権そのものではなくて、やはり平和条約によつて限定された、言いかえるならば国連憲章第五十一条のあの自衛権に限定して解釈するのが正しいのではないか。この点をいろいろ伺つて行きますると、政府の御答弁は、一方においてはそれを肯定するがごとく、他方においてはやはり国際法の通念である、旧来の自衛権も何らかやつぱりとつておきたい、いざというときに心配だから。こういうようなあやふやな点が見えて、その点私非常に遺憾に思う。そこでもう一ぺん伺いまするが、いわゆる急迫した不正に対して緊急止むを得ざる、そうして他の方法を以てこれを排除できないような場合に、必要な限界内だけで取り得る、この行動に関するいわゆる自衛権という解釈は、これは国際法の解釈としては依然としてそれは一般国際法としては考えられ得ない。併し日本の現状においては日本が国際的に主張し得る自衛権というものは、平和条約と憲章五十一条のいわゆる武力攻撃を受けた場合の自衛権、但しその場合には通例の国際法の観念になかつた集団的自衛権はありますが、その点においてはふくらんでいるけれども、ただ発動の態様、条件において新らしい国連憲章の精神によつた自衛権のみに限るのだ、この点は明確に断定し得べきではないか、又すべきじやないかと思うが、外務大臣、保安庁長官及び法制局長官の御意見をはつきり伺いたいと存じます。
  71. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私も平和条約の五条ですかには国連憲章の五十一条を引いて、日本は集団的或いは個別的の自衛権を持つている。こう書いてありますからこの通りだと思います。ただ念のためにお断わりしておけば、国連で安全保障措置を取られるまでのその間の自衛権でありますが、その間においてはその自衛権は、やはり国際法の観念に基く自衛権の行使であろう、こう考えております。
  72. 曾禰益

    ○曾祢益君 私が問題にしているのは、発動してしまつた場合に自衛権ということは国際法の通念である。ただ発動の条件、それからそれが一応又これが制約されて、安保理事会の決定があつたらこれに従わなければならん。こういう何といいますか発動の始期と終期と申しますか、これにおいては限定されている。こういうふうに解釈せられるのは正しいのでありますか。
  73. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はそれはそうだと思います。
  74. 曾禰益

    ○曾祢益君 この点は明確にされておいて非常に結構なことだと思う。と申しますのは、先般来の衆議院におけるこの問題、特に海外派兵から起つた問題だと思いまするが、質疑応答の中にはどうも政府としては必ずしも武力攻撃は現に起らないでも自衛権の発動があり得るやの御答弁、御説明が非常に多かつたように思う。私はこれは非常に重大であつてそういうことが今後日本としてあつてはならないのじやないか。いわゆる向うから武力攻撃の虞れがあるというようなことで勝手に発動するということはあり得ない。厳格に発動の条件というものは、五十一条に従つて現に武力攻撃が起つたときに発動する。その発動の態様、条件等においては勿論国際法の通念による自衛権であるというのなら話がわかる。その点明確でなかつたと思う。従つて私は今御質問申上げたのですが、発効が、つまり武力攻撃がないのに、過去において、いわゆるややともしてやつた拡張解釈から、自衛権をいきなり発動して行くのは、これはない。この点は明確にし得たと思うのですが、その点は、私は了解するわけであります。  そこで今度は、自衛権の発動の条件については話がわかつたが、その範囲内の問題として、先般から問題になつておつた、いわゆる、例えば日本の領土外からこの武力攻撃が加えられたような場合に、いわゆる、国外的に自衛権がどこまで、公海であるか、外国の領土に及ぶかというような、この点について、いろいろ御見解の御発表があつたと思いますので、この点を更に伺いたいのですが、例えば、国際法上のいう、平時国際法でございましようが、公海に対して日本の自衛権が発動することは、これはあり得ることだと思います。その発動してみた結果、向うの例えば艦船とか飛行機等が公海から外の国の領土等に逃げて行つた場合に、いわゆる追蹟権、迫つかけて行く、ホット・パースートといいますか、現実にこれを追つかけて行つた場合には、相手国或いは第三国の領土に入つて行つて行使できるものとお考えになるかどうか、この点はどうですか。
  75. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは非常にむずかしい問題であつて場所によつて違います。例えばヨーロツパの国なんかでは国境を越えるときになつてぴたつと飛行機をとめることは事実上困難なことで、どうしても相手の国というかよその国の領土の上にはみ出す場合があり得る。ただ日本の場合には海がありますからその点は比較的事情が違うであろう。勿論飛行機で例えば追つかける場合に、領水三マイルのところに行つてぴたつととまるということは、これはできないでしようけれども、併し他国の領土まで追つかけて行く必要は自衛権においてはなかろうかと思つております。
  76. 曾禰益

    ○曾祢益君 飛行機とか船を追つかける場合は公海が限度で他国の領土まで行かないのが普通でございましようが、今度は大陸等からいわゆる攻撃が加えられた場合に、それは長距離砲もあるし又いわゆるロケット長距離誘導弾というものがあり得る今日からいうと、途中で落すことがこれは一番いいでしようが、他に方法がなければ、やはり根元まで行つて、そうしてこれに対して自衛権を発動するということはあり得るやに政府は答弁されておりますが、その点は間違いない、さように解釈していいですか、それは。
  77. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 理論をどんどん押しつめたことで、現実の問題とは、つまりポシブルではあるがプロバブルではないというような程度のことになると思いますけれども、理窟からいうと、例えばよその領土から非常に優秀なロケット弾かなんかあつて日本の領土の上に雨、あられと降り注いで来る。国民はそれでどんどん殺されて行く。そのときにこれは他国の領土から来たものであるから仕方がない、死んでろというわけにはそれはいかない場合があろうかと思う。これはほんの理窟のむしろことであつて、現実にそういうことがあろうとはちよつと今のところは考えられない。
  78. 曾禰益

    ○曾祢益君 理論的にはまあ自衛権はそういう場合には他国の領土にも及び得ると、こう解釈するわけですね。
  79. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りです。
  80. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう一つこの点に関連して伺つておきたいのはこの間もちよつと伺つたのですが、いわゆるアメリカの最近の戦略方針といいますか、いわゆる即時に大量的に報復を加えるというようなことが方針になつているようであります。その発動については、これは日本の場合等は当然に日本と相談があつて、そうしてからでなければ発動しない。殊に航空機及び航空機による原子兵器の利用というような、非常に危険な、いわゆる全面戦争に導くような危険のある場合も含んでおるわけですから、従つてかような日本の領土からいわゆる進発して、かようなアメリカ側が外に攻撃を加えるような場合には、これは行政協定等によつて日本が相談を受けるのは当然であるというようなあいまいなことではなくて、はつきりと、殊に原子兵器等の場合には、はつきりと日本側の同意なくしてはやらないということを、政治的にもはつきりした約束ができておると見ていいのか、それともその都度協議されるからいいだろうというような程度でおられるのかどうか、これは非常に重要点だと思うので、もう一点外務大臣から明確にお答え願いたい。
  81. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 行政協定の二十四条の規定は、決して私はいいかげんな規定とは考えておりません。殊にその当時も文字の使い方いろいろ研究をいたしたのでありますが、或いはたしか「直ちに協議しなければならない。」というような字を使つております。これはここに書いてあるけれども、あいまいなんだというようなことは全然ありません。それは必ず協議をすべきものであります。
  82. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは何も二十四条の規定全体があいまいだとかいつたわけではありませんが、これによると結局日本の区域において敵対行為、又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合に限定しているわけですね。安保条約によつてアメリカ軍駐留はもつと広い極東の平和及び安全に対する備えもあるわけです。ですから直接日本区域のみに対する脅威或いは武力行為でなくても、日本を基地とするアメリカ軍隊が、勿論これは趣旨としては国連の決定或いは国連憲章に基くそれこそ自衛権の発動として五十一条の制約のもとにせられるとは思うけれども、そういう場合もあり得るわけなんだからその点から言いまして、日本区域に対する攻撃の場合、或いは攻撃の危険の場合は二十四条でカバーできる。併し他の地域、例えばインドネシアに飛び出すというやつは、これは二十四条ではカバーしておらないと思うから、実際の日本区域内、日本領土内から進発するような場合には、当然にそのはね返りが日本に来ないとは限らないのであるから、日本としては当然協議権をはつきり確立しておく必要がありやしないか。その点に当つては二十四条だけでは不安である、こういうふうに申上げているわけであります。
  83. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは当時の安保条約の審議に際しまして再三繰返して述べたところであります。この駐留軍の目的は、日本の安全を保障するにあるのでありますが、念のため第一にはその誤解を招く虞れがないように申しますれば、この極東の安全に寄与するということも大きな目的である。これをほかの、例えば何か侵略といつては語弊がありますが、そういうようなほかの意味には用いるのではないのであつて、極東の安全に寄与する、その意味日本の安全を守る、これは一貫した思想であります。従つて安保条約には日本若しくは日本の周辺と書いてありますが、極東の平和が非常に乱されるということ、つまりこれは日本の危険にもなることでありまして、これはよくよくの場合のことを言つているのでありますが、その意味で行政協定の二十四条の規定は、私は安保条約の全般をカバーしていると確信いたしております。
  84. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 曾祢委員ちよつと申上げますが、木村長官は十二時半頃に渉外事務で出かけられなければならないのでありますが。
  85. 曾禰益

    ○曾祢益君 それではちよつと木村長官に対しては時間がなくなつちやつて今度にして頂かなければならないのですが。
  86. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 僅かな時間で今御質問になるようなことがございませんか。
  87. 曾禰益

    ○曾祢益君 僅かな時間ではちよつと無理ではないかと思うのですが、一点だけ伺います。例の合同指揮権、我々しろうと的に合同指揮権といつておりますが、これは予測しないような事態が起つたときに、アメリカ軍日本におる、日本の軍隊的なものが日本にあつて、お互いに安保条約によつて、又行政協定によつて協議してこうして防衛に当るわけです。その場合長官は合同指揮権の問題が起りやせんか、起るだろうけれども、まあ日本のことだから、これは何もきめていないけれども、これは日本側がいわゆる指揮権をとるのは当り前であるやの非常に景気のいい御答弁を参議院の予算委員会でされている。そう明確ではなかつたが、そういうふうにとれるように、まだきまつておらないが、併しまあ恐らくこつちに落ちそうだと。ところが私はこれは今までの安保条約の下においては対内的な、いわゆる大規模な暴動のときですら場合によつては御出動願うというような姿なんです、ところが政府計画によつて今度はともかくも、おたまじやくしがかえるになつた、軍隊ができたのでありますからここに初めて、今までは合同指揮権なんという問題はなかつた。ここに起り得る事態が起つた。従つて普通ならば例えばNATOの場合なんかでは、そういう非常事態が起つたときにこんなことで争つちやいかんというので、いわゆる合同指揮権といいますか、これははつきりしているのは当り前なんです。していなかつたならば曠職のそしりを免れない。現にしておられないということが一つ。果してこれでいいのかどうかこの一点と、そういう場合には誰が考えてもまだ地上軍に羽のはえた程度のものである海空軍で、実力のバツクがなければ木村長官が得意の近代的な戦力にならないもののように思う。而も軍事知識も半分しろうとみたいな日本の軍人が合同指揮権を取るということで話がつくと本当にお考えになつているのかどうか、この二点はつきり伺いたい。
  88. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) NATOの場合と日本の場合とではやや趣きを異にしていると考えます。NATOの場合は多数の国がそこに関与する。多数の国が参加する場合においてはあらかじめ指揮者をきめておくということは、これは必要であろうと考えます。日本の場合はアメリカ日本だけの場合、勿論この情勢が切迫してその範囲、規模にもよりましようが、丁度 同作戦をとる場合においてはもとより緊密な連絡をとつて行く。日本軍が、日本部隊アメリカの軍隊の一部に従属することがありましよう。又アメリカの軍隊が日本の軍隊の一部に従属することもございましよう。どこまでも日本部隊については日本のほうで指揮権をとることは当然である。併しこれを合同していわゆる統一の作戦を最終的にとらなくてはならん場合も出て来る。そういう場合が出て来たときには現実に即してお互いに協議していずれの指揮に属するかということを協議すべきであろうと思います。あらかじめそういう場合を想定して一般的にどちらに指揮権を持たせるかということについては話合は何もきまつておりません。
  89. 曾禰益

    ○曾祢益君 それはNATOと違う点は多数国間の場合と二カ国の場合ですから形においても違う。併しまあNATOの場合でも各地域々々限つてつているわけです。日本区域の場合は二カ国の場合でもそういうことは考え得るわけです。ただ長官が言われるように、成るほどいわゆる同盟軍が共同作戦するというような形で、その合同指揮権を頭におかないし、各陸軍なら陸軍、海軍なら海軍、空軍なら空軍も共同作戦でやつてそれらのトップの、しやつぽの合同指揮権は設けないということもあり得るかも知れない。そういうこと自身が近代戦には向かないという現実からどこの国もいやだけれども、NATOみたいなことで又そういうときに非常事が起つてからやつたのでは、アイゼンハワーが第二次世界戦争中にこの総司令官になるまでにあれだけの大騒ぎをしたことを考えて、その轍をふむまいということでああいうことをやつている。あなたは恐らく心の中では考えて研究しておられると思うのだけれども、本当に同盟軍だからそのときになつてから考えるというような考えを持つているとされたら、誠に大変あなたの職務に忠実でないということに考えるのですが、どうでしよう。
  90. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 決して職務に忠実ではないとは考えません。我々はどこまでもそういう不測の事態についての対策を常に考えております。ただ一番問題は双方が緊密に連絡をとつて行く、そこで今お話のように全面的にそういう事変が起つて来るか、或いは局部的に起つて来るか。これの問題があるのでありますが、我々の建前としてはどこまでも日本部隊に関する限り日本の指揮権の下においておきたい、この建前をとつて行くのであります。併し全面的に事変が拡大した場合において、これはどちらに指揮権を持たせるかということについては、これはそのときに当つて私は考えることであらかじめそういうことをきめておくべきことじやないと考えます。
  91. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 長官に対する質問はまだおありだと思いますけれども、先ほど申しましたように時間がありませんのでこの次の機会にお願いすることにいたします。  それでは又長官一つおいでをお願いいたします。
  92. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう少し外務大臣に伺いたいのですが、今のようにインドシナ等に不幸にして日本からも進発するというような事態があつて、今これは行政協定二十四条が十分にカバーし得るという御説明で、その点は一応了といたしますが、そこでこれ又この前の委員会のときに質疑応答がありましたり、それから総理大臣みずからその点はつきり言われたことですが、最近いよいよ英米、英仏間に話合が一応政治的に成立しま出したいわゆるSEATOとか、PATOとか言われている東南アジア条約機構とか、或いは太平洋条約機構というような問題をいよいよ考えて行こうということになつているわけなんですが、この構想から言うと英米仏三国とオーストラリア、ニュージランドといういわゆる白人側と、それからフィリピン、タイ、インドシナ三国、アジア側がこの五カ国だ。一応の第一次のまあ予定はそういうことにしている。併しすでに新聞に伝えられているようにアメリカ下院における国務省当局の証言等を見ても、更にそれを拡げて少くともその限りにしないで口をふさがないでおこう、のみならずインド、ビルマ、インドネシア等に入つてもらいたいという交渉をすでにしているということが伝えられておりますし、殊にドラムライト国務副次官補ですか、これの話ではそういうふうに口をあけておけば日本がこれに入るのは必然的であるといつたようなことも言つているようなわけですが、この問題についてはその後もアメリカから何らの情報の提供或いは下相談等がなかつたかどうか、この点が第一点と。第二点は総理大臣は明確に現状においてはお断りするほかはないというような言葉で言われましたが、その点ははつきり外務大臣から言明を頂きたいと思います。
  93. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) このいろいろ言われていますことについては、我々もアメリカなりイギリスなり各方面で情報等を取るように努めておりますが、今のところ我々の知つている範囲ではこの具体的内容はまだきまつておらないようであります。従つてこれがどんなものであるかということを判断するのは少し早いようでありますが、少くとも差当りのところ日本がこれに加入すること要請されることはないと信じております。そこで総理大臣の言われたことは実はまだ具体的になつておらない問題でありますが、質問等から見て兵力の提供というようなことが必要になるような協定であろうということを仮定してお答えしたんだと思います。で、これはどういう形になるかわかりませんが、一般的に言えば地域的安全保障ということができればこれは悪くないことだと思つております。ただそれに日本が加入できるかどうかということはこれは又別問題であつて、それは麦全保障とりきめの内容如何によることだと思います。現在の憲法の下においてできることとできないことがあつて併しその内容如何によつては加入したくとも加入できない、或いは加入することを好まないという場合が多々あろうと思いますが、今のところ今申しました通り具体的内容はきまつておりませんからして、仮にそれが普通に言われる地域的女全保障の形をとるならば、日本とししは加入することはできないであろうということしか申上げられないのであります。
  94. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで外務大臣がお答え下さるように、これは勿論まだ英米仏すらもそういう構想を探究しようという段階であつて、まあ非常に先走つたようにお考えになるかも知れませんが、これは非常に重大なことであつて、まして外交の方向付けの問題であるから我々が伺うわけです。確かに総理のこの間の簡単な答弁はあなたが御指摘のように特に兵力提供の義務というようなことに触れてあれはお断りするよりほかないと言われたと思います。だが併し勿論それはその意味から言えば現在のみならず将来も私はできないと思いますが、そのほかに誰が考えてもやはりどういうその国家群であるかという構成もこれは非常に重大だと思います。アメリカ自身が少くともいわゆる白人だけのあれでは駄目だ、又アジアの中でも地域々々によつて国の入つて来るグループが違うでしようけれども、なるべくならいわゆる純英米系統ばかりと目されないインドだとかビルマだとかなんかにも入つてもらえばなおいいという気持だろうと思うのです。従つて我々もそういつたような兵力提供の義務を伴うようなものはこれは問題にならないのですから、これは全然問題にならないとして、外務大臣外交の進行のコースとして、一体少くともインド、ビルマというものが入つて来たような場合には考慮の価値が違うのか、それともそんなことは全然おかまいなしに日本にも直接関係が薄いと思われる西南アジアの問題等についても、兵力提供の義務さえなければおつき合いで入ることを考えてもいいというようなお気持であるかどうか、そこらへんの点は若しできるならば明確にコースを示して頂くほうがいいだろう、かような見地から伺つておるわけなんです。
  95. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は今どの国が入れば値打があるとか、どれとどれの国はちよつと余り感心しないというようなことは私としては避けなければならんので、この点はお答えを差控えますが、私は原則的にはこれはその中味によりまするけれども、地域的安全保障というものは国連でも認めておることであり、これはできればできるほうがいいと思うのです。従つてこれを冷笑するような態度はとりたくない。日本の場合は別としてただそのやはりこれは具体的になつてみないと、果して事際にこの平和を維持するに役立つものであるか、或いはむしろ危険なほうに導くものであるかというような判断はなかなか下しにくい。下しにくいからし、従つてこれに原則的に賛成するかどうかということになると、これは申しにくいのであります。併しこれはその形の上では勿論この平和維持に役立つような地域的安全保障とりきめということでありましようけれども、併し内容を実際見ないと現実に即さない議論になつてしまいます。ただ形式的に言えば先ほど申しましたように地域的安全保障というものはあつたほうがいいものであるということは言えると思います。
  96. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 申上げまするが、外務大臣は三時に宮中においでにならなければならんそうであります。四、五十分のあいだ中座をされることになるわけでありますが、三時の前後の時間を有効に使いたいと思うのであります。従いまして昼からは少し時日が少いのですけれども一時半に集つて頂きたいと思いますが、それまでに今の曾祢先生の御質問はどうなりますか。
  97. 曾禰益

    ○曾祢益君 私はもう一問さして頂いて、そしてあとの時間は加藤委員ともお打合わせしてほかの会派にぐるぐる廻したほうが、余りぼくらだけ長くなつても悪いですから。
  98. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それではもう一問午前中にお願いいたします。
  99. 曾禰益

    ○曾祢益君 ちよつとMSA直接ではございませんが伺つておきたい点は、例の原子爆発実験に関する問題ですが、最近これは新聞報道で私は知つたのですが、第一回のこの間の三月一日の爆発のときも、第二回のときも、イギリスはアメリカといろいろな特殊な関係が勿論あるからであります。爆発の現地における警戒措置ですね、措置に加わつておるということが議会で明らかにされている。従つてこれは当然に事前通告を受けておるということは明瞭であります。でありますので、原子実験、今後ないほうが、これに越したことはないと私たちは考えるのですが、今後どうもあり得るような状態において、政府もこの点をこの間の委員会等においても非常に悩んでおられることは私もよくわかる。向うからしてみれば不必要なパブリシティを避けたいという気持はあるでしよう。併し日本から言うならば何と言つても非常に、被害を避けるためにどうしても現場においても事前に何らか、アメリカだけに任さないでそうして現場で漁撈をやつておる漁船等に知らし得る措置が望ましいことは、これは問題ないと思うのです。従つて政府が事前通告の点についてその後どういう程度に話合が進んでおられるか。只今私が申上げたような例もあつて、一言にそれはイギリスとアメリカとは原子力についていろいろな話合があつたからだ、当り前じやないかというふうに片付けられないで、必ずしも事前にいわゆる水路部の通告とか或いは保安庁の国内における通告をする必要がなくて、現場に例えば監視船を出して日本の漁船に知らせるようにするというような方法もあり得るのだから、そういうことを含んで被害をくいとめるための必要な最少限度に限つての事前通告を受けるという方法が、私はあり得るように考えるのであります。その点について交渉の現状と、そういう問題にからんでの外務大臣のお考えを伺いたい。
  100. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はイギリスが事前通告を受けたということは、その正確な日取りについて聞いておらないのですが、イギリス側の受けておりましたのは、こういう爆発の実験をやるということをあらかじめ知らせられておつたという意味じやないかと思うのです。併しそれはいずれにしても、イギリス側が仮に事前に通告を受けたとしましても、イギリス側からいつ何日に爆撃をやるから気をつけろというような実際の措置は全然とられていなかつたと思うのです。又現場にイギリスの船がいて、警戒をしたというようなことは聞いておりません。恐らくそれはないだろうと思うのです。で仮に通告を事前に受けましても、これは政府の極く少数の者が知つてつて、実際上の警戒措置等をとることができなければ、これは非常に大きな意味がありとは考えられないので、ただ今お話のようにこの実際の危険水域に対して船がおるかおるないか、おればそれを警告して退去させるというようなことは是非必要なことである。この点についてはどういう方法でやるか。とにかく原則的にはアメリカ側も十分な措置をとるということは言つておる、で具体的にどういうことをするかということについてはまだ結論が出ておりません。只今のところはアメリカ側でそういう十分なる措置をとるということを向うでは言つておりまするが、その程度にしかなつておりませんが、これは今後もあることでありますから、ほかの問題と一緒に今交渉中であります。
  101. 曾禰益

    ○曾祢益君 私が申上げたのは、つまり何と言いますか、現場におけるイギリスの実力部隊、恐らく海空軍等だろうと思うのです。これが現場を警戒して船舶等がおつたら待避させるという事前に協議にあずかつている。その一役を買つてつて事前に受けておつて、軍事的に非常に秘密にしながら現場における警戒の措置に加わつている。これは日本とイギリスとは事情が違いまして、そんなところに日本は潜水艦を出しておるわけではありせせんが、海空軍がおるわけではないでしようが、併しそういうアイデアを参酌すれば海上保安庁ですか、軍艦でないほうの警備船が行つて、そうして日本に関する限りはアメリカだけに委しておくということは、これは非常に私は無責任だと思う。私は日本としても少くとも現場の者が日本の漁船に対して間違いがないような措置をとる方法があり得るのじやないか、こういうことを申上げたわけです。これ以上は申上げませんが、事実はそういうイギリスの議会におけるあれだつたと思いますので、お調べになつて頂いて御研究願いたいと思います。
  102. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それではちよつと申上げますが、法制局長官は午後衆議院のほうにおいでになられるそうでありますか心、今それじや余り長く時間がかからないようでしたら法制局長官に対する質問をやつて頂きたいのですが。
  103. 中田吉雄

    中田吉雄君 やはりそうすると法制局長官は昼からはだめなんですか。
  104. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 昼からはだめなんです。
  105. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうすると私なんかの都合で相当延びても我々の事情でないという了解があるならそういうこともいいと思います。
  106. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 向うの都合次第でいつでも間を見て伺つてもよろしうございます。向うの都合はわかりませんけれども。
  107. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それはそういうことにお願いして、そして又明日もあることですから或るべく来て頂くことに努力をいたします。  それでは今すぐ梶原委員どうそ。
  108. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 先ほど曾祢委員との質疑応答に対して……
  109. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 外務大臣に対しては御質疑はございませんね。
  110. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 後ほどで結構です。私のほうはそう時間はかからないと思いますが。  憲法と条約との問題であります。私非常にこれは重要な問題と思うのです。先ほどのお話で憲法は条約にまあ優先するのだ。それが原則てあり、それの一つ理由として憲法の改廃については特別の手続が要る。条約はそれに比べ、簡単であるということを理由にされたのです。実はその手続の問題如何によつて条約と憲法との優越性の断定をすることはそれは何ら理窟にならんじやないかと思うのであります。仮に憲法の改正の手続を簡素にして条約の締結の手続を慎重にするということもこれは可能なんであります。決してそれによつて本質的には憲法が常に如何なる場合においても条約に優るのだというとは言い得ないのではないか。やはり憲法と条約との関係は、或る国の政府だけが独断的にこうだときめるべきものではなかろう。やはり国際的の通念というものがあつてそれと見合つて考えなくちやならないので、日本の憲法というものはいつも条約より優先するのだということは却つて私は憲法に対する一般の考え方において曾つて明治憲法にもあつたかと思うのでありますけれども、頑迷牽強な風潮を作るのじやないかということをむしろ憂慮するのであります。もう一度なぜ憲法が常に条約よりも優先するのかという法律的と言いますか、法理論的の見解を、お聞かせ願いたい。私はこれは一概には言えないのであつて条約の性質によつて憲法よりも優越する場合もあれば、そうでない場合もあり得るというのがむしろ正しい、偏らない見解じやなかろうかとこう思うのでありますが。これからなお先ほど言われましたが、国内法的には無効であるということですね、これはどういう意味合であるかということ、これをお伺いしたいと思います。
  111. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私ども考えておりますところをむしろ率直に申上げ、お教えを受けたほうがいいと思うのでありますが、今の最初のお言葉にありました我々が制定手続の点を頼りにしているのではないかという点につきましては、こういうふうに逆に考えてみますると、即ちいわゆる軟性憲法の主義をとつた。即ち法律と憲法等々との間においても特別の上下と言いますか、制定手続に違いがないという場合を仮定いたしますと、先ほど私どもが申し上げたような理窟は通らなくなります。即ち今まででさえも条約と法律との効力関係はどうなつているかと聞かれれば、同等でございます、併しまあ国際関係でありますから、事実上は条約のほうが法律より勝つかも知れませんが、いずれにせよ制定手続にはさして違いはないから同等でありますと言つておるのであります。その論理から言いいますと、実は憲法が軟性憲法であつた場合には私の考えは貫き得ないのであります。理詰めに行きますと、どうもそういうことになりはしないか。  それからもう一つ憲法そのものの中に、国際条約はこの憲法に優越するという書き方も、これは理論的には、先例はたしかあつたと思いますが、考えられるわけであります。そうするとその意味では一種の、条約を憲法が立てておるということにもなるわけであります。やはりそういうことをいろいろ総合して考えてみますと、憲法の形がどうできてるかということは、お言葉ではございますけれども、やはり考えて行く上については大きな手がかりにして行かないと通らないのではないかという気持であります。  なお先ほどの御質問の九十八条の点がございましたけれども、この法としては九十九条という、条文もございまして、「公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」とかいうようなこともありまするからしてそういうことも添えて申上げたいのでありますが、ただその政治的にこれを見た場合には、憲法というものは軟性であろうと硬性であろうと、これは国の政治についての基本法だという意味では政治的に非常な強い力を持つているという意味で、仮に軟性憲法であつてもそういう意味で条約との関係というものは律せられるのじやないかという気持も、これは洗いざらい申上げて、しないではありませんけれども、とにかくそういうような、憲法の形というものはその意味においては大きな手がかりになるので、先ほど来申上げましたところも全面的には間違いとは言い得ないのではないかという気持があるわけであります。  それから後にお言葉にありました国内法的には無効という問題でございますが、これは要するに条約というものが法律のような純粋的の国内限りのものではなく、他の主権国との間の約束という形を持つております。そうすると一国々々の憲法というものは実はその国の主権の範囲内のことしかきめ得ないことであつて、他国との関係において憲法の効力を及ぼすということは法理上はあり得ないことである。そこで憲法のカバーする分野における問題はやはり国内問題と法律的には考えなければなりませんから、或る条約が憲法違反だということになつた場合に、その効力問題は憲法の受持つている幅の中でしか憲法論は出て来ないという論理になるわけであります。従いまして、国内法的に憲法違反であるということはこれは憲法の受持の分野のことでありますから、はつきりいうと、そうすると今度は同じ約束という面でそれが無効になるか、無効にならないか、これは私は卒直に言つて大きな問題だろうと思います。仮に国際締約法というような一般的な国際法がありまして、こういう場合一国の手続が無効の手続であつた場合、一国の憲法に反するような条約が糾ばれた場合には、すべてこういう条約は無効だというような国際的な憲法、国際法というものがあれば、これは又そのほうから解決のつく問題でごさいましようけれども、今のところそういうものがございませんから、そうすると憲法の受持の範囲で論ずる場合には国内法的には無効でございますというだけのことであつて、他国との関係の問題はいわば今の国際法の問題であつて日本憲法の問題ではないのであります。まあそういうことを金森さんも当時から答えておつたと思いますが、そういう頭で律するほかはない。そうすると外との関係においてはやはり一つの交渉問題ということに、政治的の扱いの問題に発展して行くのじやないか。純理的にはどうもそういうことになりそうに思うわけであります。
  112. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 国内法的に無効になればですね、その条約自体が無効だということを相手国に対しては言い得なくちやならん。そうでなければ国際的に条約としては有効だけれども、憲法に背反する場合にはその国としては条約上の義務は履行できないという、義務を履行し得ない責任が残る。そこが私違うのじやないかと思うのであります。これは今度のMSA協定の九条にも関連を持つて来る問題であります。あすこには憲法を引用しているのであります。引用しておる。将来憲法が仮に改正されてあのMSA協定の各条項と背反することになつても、それはあの条項がある限り違反にならないと思うのであります。若しあの条項がなければなくて将来憲法が改正されてあの趣旨に反することになつた場合に、長官の御意見を以てすれば当然にこれは憲法に背反するから無効である。従つてアメリカに対しても日本は何らMSA協定に関する責任はないのだ、免責されるのだということにまあなると、あの条項があればそうはならないという私は法律的の効果が違つて来るのじやないかと実は思つてお伺いしたのであります。そうでなければあの条項をあすこに持つて来る意味合というものはまずまずないのじやないか。殊に長官の解釈のように常に優先するのだという意味であればなお更あの条項をああいう形において引用することは変だ。まあこれは当面の問題からのみ考えられずに、一つ憲法は憲法自体として、条約は条約自体として、長官としては慎重に私お考え願わなければ、又その憲法に対する何と言いますか、初めに申しましたように、一般国民考え方に偏狭な間違つた方向に持つて行く心配があるのじやないか。憲法は勿論最高であくまで大事にしなければいかんのでありますけれども、独善であつてはならんという考え方から今お伺いしたのであります。  それから私曾祢委員の議事録を拝見したのでありますけれども、先ほど曾祢委員との応答もあつたのでありますが、自衛権の行使として海外に対する行動、それが憲法の単純なる解釈上可能か不可能か。先ほど外務大臣は理論的には可能である。これは海外にいわゆる出兵も含めているのであろうかどうか。私は可能だと思うのですけれども、長官の衆議院における議事録を見ますると、ややあいまいに実は感ぜられる。この際政治論を離れまして、法律論から。
  113. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 法律論として今の海外派兵という言葉はあいまいでございますから、今の言葉通り自衛権の発動として外に力が及ぶ場合に限定して申上げたいと存じます。筋道をたどつて申上げますと、要するに憲法九条そのものは自衛権というものは何ら否定しておらない。而もその自衛権というものはあらゆる国についての生存権と言つてもいいくらいの基本的なものだということがまあ言われているわけであります。そういう意味から極端なことを言いますれば、実は憲法九条の第一項だけを見れば自衛戦争だつて禁止されておらない。あれは国際紛争解決の手段としての場合のみを禁じておるのでありますが、自衛戦争そのものは禁じておらない。併し第二項ではその有力な手段となるような戦力を否定している。それから法律的には交戦権というものを否定しておる。従つて第二項のある結果からして、自衛戦争というものは形をなさないということで金森さんもずつと答えて来ているのです。私もそれは一応正しい考え方として踏襲しておるのでありますが、そこで今の自衛権の発動という場合を考えますと、今日の憲法のもとにおきましては交戦権のない場合の自衛権の発動ということに限局されて考えなければならんわけであります。そこで今の自衛権を裸にして考えた場合におきましては、国の生存維持のための最終の手段ということの働きということは、これは客観的に考えられろところであります。言い換えますればこの間申上げましたように、国に対する不正侵害があつた、それを避けるために他の方法がない、そのときにおいて必要最小限度やむを得ざる防衛措置をとるということが許されておる。自衛権の見解であろうと思います。これに交戦権が仮に認められている場合であるとしますれば、そのいわゆる自衛行動、自衛権の純粋の発動プラス何らかが加わりまして自衛行動という形のものになつて、相当伸び伸びとした戦争が或いはできるかも知れませんけれども、それは交戦権がないからできない。先ほど申上げましたように三つの原則の範囲内に限られてしまうのじやないかということが私の考えであります。そこでその原則のもとに立つて考えた場合に、曾祢委員のお言葉にもありましたように、例えば外から飛行機で爆撃にやつて来るという場合に、高射砲で撃ち落すという方法もちやんとあるわけであります。ところが長距離砲か何かで向うの岸から撃つという場合には、大砲の弾の激撃作戦ということはできない。そうすると外務大臣が答えられましたように撃たれつ放しで日本は全滅しなければならんかということは、これは自衛権の本来の働きはとまつてしまうということになるのでありますから、それを防ぐための最小限度の方法を考えなければならない。仮にこつちに向うに届くだけの長距離砲を持つておればやはり長距離砲を以て、居ながらにして撃つということはこれは許されることである。長距離砲がないという場合には領海或いは領海のちよつと外ぐらいまで出て手のとどく範囲内に延ばして向うの本源をつくといことは可能である。併し、どんどん行つて敵前上陸できるかどうかということは理論的の問題でありまして、これを客観的に見た場合には必要やむを得ざる最小限度限界線というものはあるはずであります。その線にとどまらなければならないというのが考え方の大筋であります。
  114. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私はその必要最小限度限界線とか或いは飛行機がどうこうとかいうことは、これは一つの戦略の問題だと思うのであります。戦略の問題であつて憲法解釈の問題では私はないと思う。私の聞かんとしているのは戦略の問題とか政治の論議ではなくて、純粋に憲法の解釈としてその行動はでない。今長官の御説明によりますと、交戦権が二百項で持たれないということになつておるからという御解釈のように承わるのでありますけれども、交戦権というものは戦争に伴う、戦争あつての交戦権だと思う。あらかじめ、交戦権というものはあらかじめですよ。あるとかないとかいう問題ではなくて一つの戦争行為というものに附随して起つて来るものだろうと思うのです。勿論交戦権には長官も言われたように広く考える場合と狭く考える場合とありまするけれども、長官見解は狭く考える解釈をとつておられる。それはいいとしてそれならなお更のことであります。従来説明されているのは捕虜の問題であるとか、或いは直接船舶のだ捕の問題であるとかそういうことを意味していると言われておるのであります。こういうことは、どちらも戦争が起つてその戦争に附随して国際的に全国際法上あり得る権利なのだ、権能だと思う。それを一国の国内法である憲法で交戦権を認めないということは、これは私見になりますけれども、私は法律的には何らの意味がないものだ、法律的には又それを認めないという理由ですね、立法理由も政治的には別ですけれども、法律的には了解し得ないのであります。交戦権がないならおのずから戦略行動に限界があるという理論は出て来ない。どこを考えてもそう思うのであります。勿論だからと言つて戦略的にどんどん出ていいとかいう意味では毛頭ありません。今海外に出兵すべきじやないということは、それはその通りであります。それは憲法からできないのだ、交戦権がないからできないのだという、やや何と言いますか、かたよつた国際的に通用しないセンスを出している。そうなると却つて国民に誤らせることになりはせんかというわけです。
  115. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) いやよくわかりました、要するに自衛権を論ずるのに交戦権のことなぞ論ずる必要はなかつたと私も思います。従つて交戦権のあろうとなかろうと、自衛権の幅そのものには違いつこない。純粋につかんだ場合には違いありませんから、その意味でその分で申しますればさつきの三原則というものに制約された一つの力の発動というものは自衛権の限界であり、それは実体であると申上げれば、これは法律論としては尽きるものと思うのであります。ただ付け加えて交戦権のことを申上げたのは、大体自衛権の幅について非常に昔から一方において広く考えられて来た。少くとも一部には広く考えられて来た傾向もあるわけであります。又現在においても或いは学者によつてはその幅についての違いがあるかも知れないと思うのであります。それは多くの国においては交戦権というのは常に当然のものとして持つておりますから、その交戦権に一部分当るようなものを加えたものを同じ自衛権として考えておられるのではないかと思つて余計なことを言つたのでありますが、それは抜いて裸にして考えなければならないということはおつしやる通りであります。それは交戦権は意味がないということでありますから、これは国際法的には本来意味がない、これは本来国際法で認められておりますから意味がないと思うのであります。国内法で即ち憲法であれを禁止している以上は国内法的には仮に自衛隊なり保安隊が交戦権に当たる権能を行使した場合には、これは憲法違反であるという批判は免れない、明らかに憲法違反、そういう法律的の意味国内的にはあるということを申し添えておきます。
  116. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) この議論は一つこの程度でとどめて頂きたいと思うのであります。時間が非常に経過してしまいましたから法制局長官許して頂かないと……、又この次の機会に一つ、それでは時間がつまりましたけれども、一時四十五分に再開いたします。今度は梶原先生の番です。  休憩いたします。    午後一時十四分休憩    —————・—————    午後二時一分開会
  117. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは午前に引き続いて委員会を再開いたします。
  118. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 外務大臣に極く簡単にお伺いしたいのでありますが、先ほども法制局長官にお伺いしたのですけれども、今回の協定の九条に引用されて九条の二項がこの協定になければ、言い換えればあの条項のあるなしがこの協定全体に、或いは他の各条項に何らか条約上の変化があるのですか。あるなしによつて、あることによつて変化があるのか、なければ何か違いがあるのかという点なんです。
  119. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは見方によつて私は違うと思います。この規定は全然意味のないというわけではないのであつて、ただ何と言いますか、明確でない部分については特に明確にするという意味があるのでありますが、併しなければそれじや意味が違うかといえば意味は違わない。ただ場合によつては見る人があいまいであると考えられる点があの規定ではつきりし得る。こういう点ではやはり意味があると考えます。
  120. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そうしますと、結論としては条約的には念のための規定だと、これまで大臣の言われておる通りと、こう了解していいわけですね。
  121. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 早く言えばそういうことになります。
  122. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それから安保条約との関係でありますが、安保条約の前文を見ますると、駐留軍日本が容認しておるのは、日本の自衛権の行使として、こういう表現になつているのであります。基地の容認、駐留軍の承諾ということは、日本の自衛権の行使として認めている、こういうふうに安保条約も解釈していいですか。
  123. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつと御質問の趣旨がはつきりしないのですが。
  124. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 安保条約日本駐留軍駐留を了承しているわけですね。それは日本の持つている自衛権の行使の方法として認めている、安保条約の前文にはその趣旨の表現があるのであります。
  125. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は多少そこは違うように了解しているのでありまして、安保条約の前文の趣旨は日本は自衛権を持つている、併し自衛権を行使する有効な手段を持つていない。そこでアメリカが早く言えば代つて日本の安全を護るというのが前文の趣旨であつてアメリカ日本の自衛権を日本の代りに行使するということではないと思います。
  126. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 安保条約の前文には、第三項ですか、一応ここで日本が個別的に又集団的に固有の自衛権を持つということを確認をして、そうしてこれらの権利の行使として「日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため」云々とあるのです。「行使として」と特に謳われておるのであります。この規定の文言から見れば、駐留軍駐留及びそれが日本国に対する直接間接の侵略に対して行動するのは、これは日本に代つて日本の持つている自衛権の行使のためにやる、こういうふうに読み得るのであります。
  127. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはその当時もいろいろ議論があつてそういうふうにも読めるということでありましたが、これは或いは非常に本質的な意見でないかと思います。この点は条約局長がいればもつとはつきりすると思いますが、私は自衛権の行使として今武力を持つていないから暫定措置でするのであつて、その暫定措置の内容がアメリカ駐留軍によつて武力攻撃を阻止する。こういう内容になるのでありまして、アメリカ自体は日本の自衛権を日本に代つて行使するという意味ではなくて、暫定措置として日本がやることの自衛権の行使である、その暫定措置の内容としては、アメリカ駐留軍が行うのでありまして、その点では自衛権を代つて行うという結論になるかも知れませんが、アメリカ側としては日本の自衛権を代つて行使するという意味でなくて、暫定措置言葉は悪いのですが道具としてはアメリカを使うと、こういうことに私どもは了解しております。
  128. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 文言的に見ますと、私は先ほど言つたように字句そのままから見るとそういうふうに感じる。若しそういうふうに読み得るといたしますと、駐留軍の行動というものは国内的に限定されているわけでは必ずしもないと思う。直接侵略に対して海外において行動するということも当然あり得ることであろうと思う。そうすれば安保条約の前文においては日本の持つている自衛権の行使として、私の苦し読みようから見れば行使として海外においても日本防衛するためにアメリカ軍事行動をするのだ。アメリカ自体の行動ではなくて日本の自衛権の行使である、それをこの安保条約においてそういう趣旨でこの条約を締結しているのだ。こういうふうに読み得るので、むしろ素直に考えるとアメリカはそういうふうに考えているのでありす。それをお伺いしたいわけなのであります。
  129. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはなかなか御説明がこみ入つていてむずかしいのでありますが、アメリカ側としても実質的には自衛権の行使と同じような行動をすることになろうと思います。ただ自衛権という制約を非常に強く受けるかどうかという点につきましては、これは日米両国で協議をいたすわけでありますが、先ほど曾根君にお答えしましたように、この一条の文句を御覧下さいますと多少違つた字が使つてあるのであります。極東における国際の平和と安全を」というところは「安全の維持に寄与し、」と言つて、維持という字が入っておるのであります。日本の場合は「日本国の安全に寄与する。」維持という字が入つていない。多少ニュアンスがそこが違つているのでありまして、それが先ほど曾根君にお答えしましたように行政協定の二十四条はこれは、前半にかかるのだと私は申上げたのですが、併しアメリカ側考えは、日本に直接の武力攻撃が来ない場合でも非常に緊迫した脅威があるということは、当然日本の外側、例えばそういう場所を育つてはちょつと問題がありましようが、北の方でいえば北海道の北辺等に非常に危険が切迫したという場合には、アメリカ側としては当然日本政府に協力するだろうと思うのです。日本側としての自衛権の行使というものは非常に限定しております。で、今度できるという自衛隊なども行動はその点で非常に制限されて、武力の行使が相手方から起こらなければめつたに出るものではないということになろうかと思います。アメリカ側の軍隊が日本の安全を守るという点から申しますと、もう少し広く解釈し得る場合もあろうかと思うのであります。事実上の問題としては、自衛権という非常に限られたるものだけで日本の安全が守れるかどうかということについては、アメリカ側としては相当の意見があろうかと思うのであります。その場合はいずれ日本政府アメリカ政府が協議しなければなりませんけれども、アメリカ側としても、この条約に限られた範囲のものを行使するんだと、従つて軍隊の受ける制約も、その点に非常に厳格なものがあるんだということよりも、広く日本の安全という見地に立つてものを見るであろうと思いますので、多少そこに考え方が広いかとも思うのであります。
  130. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 大臣の考えておられる点、それはそれなりに私はわかるにであります。ただ日本が直接侵略を受けたときに、これは国連憲章を待つまでもなく、先ほど曾根委員に対するお答えにもありましたように、結局自衛権の発動としての一との軍事的行動が起こるわけなんであります。その場合に安保条約によつてアメリカとしては日本の平和を守るという観点で、日本の自衛権の行使として、国内においては勿論、海外に対してもその行動は及ぶと当然アメリカ考えておるであろう。同じく自衛という言葉を使つて日本の国においてはこの自衛は非常に制約された解釈であるということで、国内だけにとどまるということになるわけであります。自衛という言葉の持つておる意味合いを、そう違つて解釈することに将来非常に無理が起こりはしないか。勿論日本が戦力を持つておらないのですから、おのずからそこに行動上の制約が来ることはもちろんであります。又憲法全体の趣旨から、海外には行動しないということもこれは当然言い得ることでしょうけれども、自衛という言葉の解釈によつてそこを区別いて行くところに、この条約との関係MSA等の関係等から見て非常な無理な事態にぶつかるようなことが今後ありはしないか。こういう観点からお伺いをしたわけでありますが、これ以上は見方の相違になるかもわかりませんから、これで結構であります。
  131. 羽生三七

    羽生三七君 ちよつとそれに関連してお伺いしたいんですが、その場合、日本の場合は直接に侵略があつた場合にだけしか問題にならないわけですが、アメリカが何か緊迫した事態があると過程して何らかの処置をとる場合に、勿論当然日本に協力を求めると思いますが、その場合日本は協議がととのわないとすれば日本日本で独自に自由にしておれると、そう解釈してよろしいのですか。
  132. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは日米双方ともに同様の措置をとるのでありまして、協議がととのわなければどつちかを納得させるよりし方がないのでありますが、とにかく約束の上では協議をした上で話合いのきまつた措置をとるので、協議がととのわなかつたら勝手な行動をするということではないのであります。ただちよつと私の先ほど申上げたのは誤解があるかもわかりませんが、私は事実上の問題としては、自衛権の解釈には違いがないとしても、それを実行する心がまえの上においては、多少国によつて違いがあると思うのです。例えばアメリカを例にとつていいか悪いかわかりませんが、仮にアメリカを例にとりますれば、仮にアメリカは今まで自衛の名において侵略的な戦争をしたことがないという確信を持つておりますれば、自衛権の行動というものも、例のカロライナ号とかいろいろな例がありますが、先制攻撃といいますが、そこにおいては非常に自分が危険だと思つて出て行くというようなこともやつても、決して侵略戦争をその名前においてやらないというような気持ちがあると、かなり解釈にゆとりが実際上とれる場合があろうと思います。日本の場合は、前の戦争のこともあり、憲法のこともあるので、いやしくも自衛の名において戦争を起こすことのないようにということが非常に強く憲法で現れておりますから、従つて自衛ということを非常に厳格に解釈しているという点で、多少考えかたの違いが国によつては出て来る場合があろうかと思うのであります。そういう趣旨のことを申上げたのであります。
  133. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると協議がととのわないということはないんだと、協議がつまりととのつて双方の合意が成立した場合に問題が起こるわけですが、その場合に、それは自衛権に対する解釈が日米によつてそれぞれニュアンスの違いはありますけれども、併し同時に協議がととのう、而もアメリカ側の解釈が優位を示してそれに日本が合意を余儀なくされる、これは日米の国力の相違等から私はそういうことがあり得ると思う。そうすると日本国内的に言うならば、非常に自衛権の解釈として違つた解釈を持つ場合、これはどうういうことになるんですか。
  134. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカが力が強いことは私も認めざるを得ない。併し事は日本で起こることなんです。従いまして日本が解釈するその解釈も重きをなさざるを得ないと思うのであります。この行政協定ではそういう危険が起こつたらば共同措置をとるということになつております。この共同措置についてもいろいろな場合があろうかと思います。直ぐ武力に訴えるというんじゃなくて、あぶなそうだから準備をしておこうとかいうような準備的な共同措置もありましよう。そうして直ちに協議をしてどういうふうにするかということをきめるわけでありますから、この共同措置ということについては、もう直ちにとるんです。そうして協議は又協議で並行的に行う、こういうことでありますから、そうその実際上の問題としては、まあ日本が非常に危いと思うけれども、アメリカは危くないと思うことはむしろあり得るかも知れんと思いますが、アメリカが危いと思い、日本は大丈夫だ、そんなことは何でもないんだというようなことはあり得ないと思います。むしろ自分のことですからして私はそういうふうに実際上思つております。
  135. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 先ほどの大臣のお答え、私はその通りだと思うのでありますけれども、そこにいろいろの問題がそれだけにあると、こういう感じがするのであります。同じく自衛権です。それはどこを守るかといえば日本を守るのであつて日本の自衛権が日本自体としてはこれを十分行使し得るだけの力はない。従つて暫定的にアメリカが協力をして守るんだ、それでアメリカにおいては日本と違つていろいろ自衛権の考え方に相違があることはその通りだと思うのであります。ところがこれは現実の行動になつて現われますると、アメリカ日本に対する直接侵略を守るために日本国内だけで行動するとは毛頭考えておらないだろうと思うのです。そういう観念はどこにも私は日本以外にはないであろうと思うのです。そうすれば当然に日本以外の海外においてアメリカ日本を守るために行動するということ、これは考え得ることだと思う。それと日本が同じ自衛権の行使の下で、狭い解釈をとつて国内だけにとどまる一つの軍事的の行動なんですね。そういうことが私将来に果して通用することかどうか。こちらの実際上の実力、これは別問題であります。考えとして通用することであるか。日本は武力が不十分だから、戦力がないから十分の行動ができない。これは問題ありませんよ。又そう海外に出兵すべきものでも、行動すべきものでも毛頭ないと思います。併しながら同じく自衛権であつて、それを行使する上において、日本は憲法の解釈上の制約があるから自分自身はやらんけれども、他人をしてやらしめることは、これは正当なことということは、恐らく私は世界に通用しないんじやないか、そういう場合においては。ということを痛感をするのであります。大臣の言われたのはいいのですけれども、実際の現れというのは、安保条約でもそうですし、MSAでもアメリカ式の自衛権と言いますか、そういう方向に進みつつあつて、その進みつつある中に日本だけがじつととどまつておるという状況のように思われるのであります。そういうことがやはり割り切れない問題をだんだん出しつつあるということじやないかと思うのであります。これはその点については結構であります。  次に、これは農産物関係でありますが、先般大臣は、今回の協定の五千万ドル、これはこの次は相当増額の可能性があるであろうという見通しを述べられたと思います。今年は主として小麦と主要食糧に重点が置かれている。去年の凶作から見まして非常に国内の需給が逼迫しておつて、或る程度の量が入つて来るということが、これは我が国にとつても非常に好都合であろうと私は思うのであります。ただこれが平年作程度にあるならば、そう多きをこの協定によつて期待することは量的にできないのではないか。特にあの三条でしたか、あれで従来の取引関係、これは大体において減らさんように持つて行くという制約があるといたしますと、そう多きを小麦等のいわゆる主食的なものに期待できない。而も全体の金額は増すであろうということになれば、勢い他の農産物関係の輸入ということに向わざるを得ない。ところがそれらもそれぞれ相当額を従来すでに輸入しつつあるわけですね。それをプラスして輸入するということにならざるを得ないのであります。そうしますと、相当国内における農産物関係に影響が起つて来はしないかと思うのであります。或いはこれは農林大臣にお聞きしたいと思うのであります。金額は将来増加するであろうというお見通しの場合はどういう具体的の農産物想定されておるのかどうか。又綿花あたりはどういうふうにこれに関連して今後考えられるかどうか、そういう点について一つ御意見を伺いたいと思います。
  136. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 実は私は増加するであろうという意味でなくて、私の言う意味は増加し得るものであるということなんであります。あとは一に農林省の考え方或いは通産省の考え方によるんであります。おつしやる通りで今でも通常の輸入量以外に自由に買える部分はありますけれどもそうたくさんはないのであります。従いまして平年作とすれば麦等がそう非常に要るとは思わない。ただ政府としては総理の施政方針にもありましたように、食生活の改善ということをこれはまじめに考えているわけで、或いは将来できれば米食率というようなものも考慮してみる値打があるのじやないか。又根本方針としては統制の撤廃ということもできればやりたいというふうな気持でおります。仮にそういうことになりますれば又これは違つて参ります。それから綿花の場合でも、綿花借款でやつておる部分が相当ありますが、若しこれが円で買えて而もその円のほうが有利であるということになれば、ほかの綿花をこちらに移すという場合でも、通常の輸入量以上にほかから輸入しておる分を切つてもいいものがありまするから、多少その点でもできるのじやないかと思います。それからとうもろこしのようなもの等も考え得るのではないかと思つております。それから例えばバターとかそういう種類のものが、併しこれは私は実は交渉によつては将来増加し得るものであるというだけでありまして、あと国内措置がどうなるかによつてこれはきまるのであります。場合によつたら減るということも考えられるのではなかろうかと思います。
  137. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それに関連していま一点だけ伺いたいのですけれども、大臣の言われました食生活改善について、米が麦のほうに転換して行くということがあろうという見方であります。御承知のようにこの見解は相当広く又熱心に説かれているのであります。そのこと自体は結構なことだと私も思うのであります。併し現実の問題として考えますると、そのことは大体において外米を外麦に転換するということを意味すると思う。これは外貨との関係からも来ておるわけでありますけれども、ところが外米の市場は大部分御承知のように東南アジア方面、麦のほうはカナダとかアメリカとか濠州とかそういう方面になつて来るのであります。いわゆる経済外交という観点から言いまして、外米を麦のほうに切換えるということを簡単に言つて、簡単に推進して行つていいかどうか。その点私以前からやや疑問を持つて実は見ている問題の一つであります。経済外交、特に東南アジア方面の将来を考えますると、ちよつと簡単に言い切れない問題ではないかと実は私は思うのでありますが、先ほど外務大臣その問題にお触れになりましたから、もう一度御見解を伺いたいと思います。
  138. 岡崎勝男

    国務大臣( 君) 私も差当りはタイとか、ビルマの米の買付を減らすことは得策でない、が、ただその長い将来を考えますと、賠償の関係もありましようけれども、これらの国には地下資源だとか、木材だとか、いろいろのものがあり得るわけであります。将来そういう場合もあるのと、それから日本自身の人口の増加ということも考えられますので、毎年同じだけの量で済むかというとそうではございませんからこの点で自然に殖えなければならんことはあるが、すぐにそうだからと言つて今の外米の輸入を制限するということは私は東南アジア諸国との関連上困ると思うので、これはまあ先のことになろうかと思います。
  139. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私もそう先のことについて考えても、成るほど東南アジアで地下資源の開発とか、いろいろの問題があると思います。それを日本に輸入することによつて東南アジアを助けて行くということは当然でありまするけれども、何と言いましてもやはり大きな農業国となつておりますあの地帯の農民の生活というものを安定さして行くということがどうしても半面必要ではないか。そうするとやはり米作というものの改良、これをよくして行く、収量を増して行くというふうなことは日本として当然やらなくちやならない問題じやなかろうかと、こう思うのでありまして、まあ現在の量はこの程度入るだろう、今後も入るだろうというだけでは、東南アジアとの関係考えますると、どうも不十分のような感じが私にはするわけであります。何としても大きな地下資源だけを持つて来てこつちへ来ましても、全体のああいう地帯の農民の生活、経済というものは私はそう向上はしない。やはり農産物の点を日本援助をし、それによつてあの方面との関係改善して行くということは必要のように思うのであります、これはまあお考え置き願えれば結構であります。
  140. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いやその点は私も梶原委員と同様に非常に関心を以ております。十分これは考えなくちやならん問題だと存じます。
  141. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私の質問はこれで終ります。
  142. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 今度は中田委員ですが、外務大臣もう五分ばかりで出られますが、三時五十分に帰つて来られますが、三時五十分から続行しますので。
  143. 中田吉雄

    中田吉雄君 それはね、まあ外務大臣の御事情も、了とするのですが、私今日割当をやつて明日は党の命令で演説に行こうと思つて組んでるのです。まあやれないということは一つ外務大臣の御都合もあるのですからね、そう遷延するということはございませんが、総括質問打切りの際にはその点を少し考えて頂きたいと思うのです。
  144. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 今朝から三時……。
  145. 中田吉雄

    中田吉雄君 それはわかつていますが、これは必ずしも私の事情ばかりでないのですから、一つ一般総括質問打切りの際には少し考えて頂きたい。まあそれではやりますから、少し。
  146. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 総括質問はまだ続きます。
  147. 中田吉雄

    中田吉雄君 それで外務大臣に質問に入る前に土屋局長にちよつとだけ、昨年七月七日のこの外務委員会におきまして、上屋局長に対しまして私はこの速記録を見ますと、最近アメリカでは綿花と小麦が非常に余つているので過剰滞貨に悩んでいる結果まあ恐慌を外国に輸出するというような表現を使つては何であるが、併しアメリカの議会で支持価格の下に過剰農産物を二十億ドル買込んで、それを相互安全保障本部MSAに切換えてやつて行くと、そこでそういう問題がMSA援助にからんで我が国に過大になつて来ないかという質問を土屋局長にしているわけであります。ところがその際土屋局長は、とんでもないことだ、只今お話のような点につきましては私たちは材料を全然持つていない。常識的に考えてみてもMSA日本に対する援助はどうも中国一般地域という項目で軍事援助に限定されている現段階においては、綿花や米等のいうようなものが議論になつて来るというようなことは全然ないと思うと断言をしておられるのですが、こういうことについて一言をあえて求めるわけであります。
  148. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 只今のを伺いまして私も当時の事情をおぼろげに思い出したわけでありますが、御承知通りこの五百五十条というのは本年というよりか、アメリカの今会計年度に初めて入れられた章であります。従つてこの農産物の内容につきましては当時まだ細かい事情がわかりませんでしたが、その後主として小麦、大麦であろうということはわかつて来たわけであります。そこで御返答を申上げました際私どもの頭にありましたのは、これを日本側が強いられてどうしてもこれを買付けなければならないということで、中田さんの言うところの強いられて国民にしわ寄せをくうということはあり得ないと思います。我々は、という事情を申上げたと思います。その後勿論国内の水害その他による点がございまして、日本も食糧を買うことが日本のためにいいということの結論に達しましたので、この五百五十条というものはようやく浮き彫りにされまして利用されるようになりましたので、実は大分交渉が進んでからあとの話でございます。ただ今ひるがえりましてじや昨年の七月頃お前はこの五百五十条の適用について見通しを誤つたではないかというお叱りであるとすれば、そのお叱りは確かに当るわけで、当時不明であつた点はここでおわびを申上げます。
  149. 中田吉雄

    中田吉雄君 誠実な土屋局長に対しては恐縮ですが、やはり少し不勉強だつた。我々のような素人でも、私エコノミストで見たのです。これはもう必ず過剰滞貨に悩んでいるから、こういう形で、のつけて来る、MSAに。そうして日本の新聞には殆んどその頃には七月七日には全然と言つてもいいほどどの新聞にも出ていなかつたのです。併し岡崎外交の幕僚とされてはそういうような、不勉強とは言いませんが、ことだからまあMSAが全面的な敗北とは申しませんが、私は好結果にならなんだ一つの何ではないかと思うのです。まあ一つ今後勉強されんことを一言しておきます。
  150. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) そうすると今度は中田委員は。
  151. 中田吉雄

    中田吉雄君 岡崎大臣に。
  152. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 大臣は今御答弁の時間がないようでありますが。三時四十五分には帰つて来られるそうであります。
  153. 中田吉雄

    中田吉雄君 それでは農林省のかたに。
  154. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それではその質問のある間続行いたします。農林省のかたは食糧庁業務第二部輸入計画課長の羽場さんがみえておられます。
  155. 中田吉雄

    中田吉雄君 この協定が成立前にこの小麦や大麦を輸入するための外貨措置をされたことについては質問いたしませんが、いろいろ問題があると思いますが、今度割当されたので輸入することになつた小麦並びに大麦が、日本着価格で八十ドルで大体一トン当り三ドル高いという問題ですがね。この点について協定の三条との関係について先ず外務省のほうからちよつとお伺いしておきます。
  156. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 農林省のほうからお答えがあるそうです。
  157. 羽場光高

    説明員(羽場光高君) ちよつと価格の点お答え申上げたいのですが、只今中田委員からおつしやいました点ですが、価格につきましては三ドル高いということは今のところ考えておりませんのでございますが。と申しますのは、これは御承知でいらつしやいましようと思いますが、アメリカがまあ輸出する方法に、通常の輸出業者が輸出するやり方と、それからあちらの商品金融会社が輸出するやり方と二つございまして、只今価格の面から申しますと、商品金融会社が輸出向け価格として発表している価格が国際小麦協定並みの価格でございますので、一般にどこの国でも国際小麦協定以外の小麦を買いますときには、この商品金融会社から買つております。それでその価格は国際小麦協定並みの価格になつておりますので、三ドル高いということは考えておりませんのでございます。
  158. 中田吉雄

    中田吉雄君 それはアメリカの商品何とか会社ですね、その商品何とかいう会社から入れればまあそういうことが言えるのですが、カナダから若し買うとすればやはりカナダのものに比べては三ドル高いということになつて、そこで例えばそういう形で六十万トンも輸入して、その一トンに三ドルをかけると大体六億円にまあなるわけなんです。そういうことがまああとの問題、品質検査の問題で質問しますが、大した贈与にならんじやないかという前提で私質問しているのですが、この朝日、毎日等では皆新聞にはカナダから入れるより三ドル高いというふうになつているのです。そういう関係はどうなんですか。
  159. 羽場光高

    説明員(羽場光高君) 実はカナダから買つておりますものは、これはマニトバ・フアイヴと申しまして硬質系の小麦を買つております。大体日本へ持つて参りますとパン用になるのが主でございます。それからアメリカから買つておりますのは大体軟質系でありまして麺用になるのが主なのでございます。  それから実際の価格について申上げますと、このカナダのものとアメリカのものと、軟質系のものと硬質系のものとの差がございますが、その差を度外視して考えますと、アメリカのほうが現在の相場では若干安くなつております。これはアメリカのポートランドの相場がブッシエル当り二ドル三十五セント前後になつておりますが、これに補助金が五十二、三セントまで付いておりますので、一ドル八十五、六セントで買い上げております。そうすると七十ドルを若干下廻るのじやないかと考えられますが、カナダのものが一ドル八十五セントから九十セントの間でございますから、カナダのほうがちよつと高いかと思います。それから船賃は大体同じでございます。
  160. 中田吉雄

    中田吉雄君 じやその点わかりましたが、この協定で買います小麦なり大麦なりは品質を検査するなり、商品についていろいろ選択権を持つているのですか。あてがいぶちのような関係なんですか。その点と、若しアメリカの滞貨を買うとすれば、この保存年限というものがすべて農産物にあるわけです。大麦なら大要品質の損耗する期間はちよつと長いと思うのです。併し小麦に至つてはこれはもう一年も置けば一割以上も品質はもう悪くなることは問題だと思うのですが、その点一つ小麦並びに大麦は一年なり二年なりを置くことによつて品質はどれだけ損耗するかという問題と、それからそういう選択があるかどうかという問題と、これは非常に私まあ今日の新聞から換算して一トン三ドルとすれば六十万トン買えば六億、若し仮に品質が一年なり一年半たつたものを買うなら一割程度の損耗がありとすれば、三十六億贈与してもらうと言つても殆んど無価値になる。こういう観点から質問するのですが、その点はどうなんですか。
  161. 羽場光高

    説明員(羽場光高君) 今の点につきましては私も十分存じない点もございますのですが、品質の選択の点について申上げますと、今後の取引は、それを買うという面では通常の取引と全然同じ建前になつております。従いまして、普通に輸出業者と輸入業者との間で契約いたしましたものにつきましても、通常に買つておりますやり方と全然同一のやり方で買うわけでございます。それで現に商品金融会社から今年の二月、三月に若干づつすでに買つた例がございます。これはMSAが遅れた関係でありまして、需給上止むを得ず若干買いましたのでございます。従いまして、そのとき買つた例に鑑みましても、特に品質の選択が許されないというふうには考えておりませんでございます。  それからアメリカには国立の検査機関がございまして、これが品質についてサーチヒケートと申しますか証明書を発行しているわけでございます。それでアメリカの穀物の取引は大体証明書で買つておりますので、まあ年産の点を申しますと、余り古いものはすでにストックにないようでございます。それで大体五二年、五三年産のものを先ず買うことになるのじやないかと考えておりますが、小麦につきまして只今のところでは私一年置いたものがどのくらい損耗するかということはちよつとわかりませんでございますが、五二、三年産のものを買いましてもアメリカの証明書付きで買つておりますと、特に悪いものは来てない、こういうふうに考えております。
  162. 中田吉雄

    中田吉雄君 そのアメリカの会社から買つておるというのはMSAにのせたやつじやないでしよう、これまで買つているのは。この点はどうです。
  163. 羽場光高

    説明員(羽場光高君) MSAにのせたものではございません。但し商品金融会社から買つているという点では、今後MSAから買うものと同じ買い方であると存じております。
  164. 中田吉雄

    中田吉雄君 五三年産のなら私いいと思いますが、如何なる証明書があつたつて五一年になると、それはこの倉庫設備があつてくん蒸その他もやつていますから虫は食つていない穀象虫その他は食つていない。併し品質は小麦に至つては、私はそのほうの専門家なんだが、農政学者ですから、大学でも何回も講義聞いているのですが、もう二年も置けば米にしても非常な品質の低下を来すのです。大麦はまだ耐久力がありますが、私そういう点が問題になるのじやないかと思います。これは一つ今後又この協定を正式に調べる際にいろいろ質問しますから、一つ調べてみて下さい。それでは私外務大臣がおいでになつてから。
  165. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 休憩前にお諮りしておきたいことがあります。  本日大蔵委員会でMSAの諾協定に関しまして連合委員会を開くことを決定いたしました。当委員会としては委員長及び理事会ですでに農林委員会の申入を受諾しておりますので、大蔵委員会とも連合委員会を開くことに決定いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは大蔵委員会及び農林委員会と連合委員会を開くことに決定いたします。なお連合委員会の日取りにつきましては、農林委員会の都合もありまして二十日、火曜日の午前十時から開くことにいたしたいと存じます。  それではこれで三時四十五分まで休憩いたします。    午後二時五十分休憩    —————・—————    午後四時十一分開会
  167. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは休憩前に引続いて会議を開きます。
  168. 中田吉雄

    中田吉雄君 私、岡崎大臣に三つの点で御質問をしたいと思います。一つアメリカ外交政策の問題、一つは水爆並びに原爆の新兵器の異常な発展というものの地域的な集団保障に対する影響。第三番目は、アメリカのニュールック戦略というような問題が外交政策にどういう影響を及ぼすか。そういう三つの点についてお尋ねするのですが、今日は主として外交政策について少しお伺いしてみたいと思います。  第一点は、今MSAの四協定締結しまして、アメリカ外交政策に全面的に協力して行こうとされるところの、まあ仮にこれを岡崎外交というふうに呼びますなら、この外交方式というものは、曾つてナチス外交に非常に追随しました松岡外交の轍をふむものではないか、こういう問題について御所見をお伺いしたい。そういうものでない、そういう過ちを犯すものでないと言われるならその理由はどういうものであるか。やはり私としては、我が国が戦前に大きな外交上の過失を犯しましたので、再びそういう過ちを犯してはならんという点でそういう御質問をするわけであります。
  169. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは恐らく相互安全保障法の前文と、第三条にありますように、「国際平和及び安全保障のために友好国に援助を与えるこによつて、合衆国の安全を維持し、外交政策を促進し及び一般的な福利を供与するための法律」。というようなことが書いてありますので、こういう御質問かと思うのでありますが、違つていればあとで直しますが、若しこれだとしますると、これはアメリカの法律でこう考えておるのであつて、要するに友好国に援助を与えることによつてアメリカ外交政策が促進される、こういうふうに考えてこの法律を作つたのだと思います。で、友好国に援助を与えることがアメリカ外交政策を促進するかしないか、これはアメリカ側判断することでありましようが、我々としては端的に言えばそういうふうにアメリカ考えておることはこれは私は尤もだと思います。というのは友好国に援助を与えることによつて自然国際平和なり安全保障なりができる、それはつまりアメリカのそういうことを目的とする外交政策を促進することになる、こういうふうに思いますから、尤もだと思いますが、これは決して協定文ではありませんから、日本としてアメリカ外交政策を促進しなければならんという義務は負つておるわけでもありませんが、併し仮にこういう法律があるのだからこういうことを頭に考えてやつておるのだろうとおつしやればアメリカ側としては勿論そう考えておることでしよう。併しこれによりましても具体的なアメリカのいろいろな政策を何でもかんでも批判なしに肩を持つのだ、こういう意味でないことは当然でございまして、現にMSA援助を受けておる国といえどもアメリカの個々の外交政策についてはいろいろ批判もあり、場合によつては反対もあつてその言論は自由であります。ただアメリカ側としては友好国に援助を与えることが即ちアメリカ外交政策を促進することだ、こう考えてこの法律を作つたものだと思つております。
  170. 中田吉雄

    中田吉雄君 その点は実は私もう少し先にお伺いしようと思つておるので先に譲りますが、今とつておられます岡崎外交というものが果して我が国の独立と平和、安全を保障して過ちのないものであるかどうかということもいろいろ言いましてもこれは水かけ論になると思うのですが、そこで我々としてはやはり過去の外交政策に対して歴史的な反省を加えて、そしてそういう歴史的な過程を見ますれば、将来の展望が与えられるのではないか。そこで今岡崎大臣並びに吉田総理のとつておられるこの外交方式というものは、私はやはり二つの点において戦前の外交と全く似ておる、そういう点で先に対して何でもかでも従うものではないというお言葉がありましたが、心配せざるを得ない。その一つは戦前におきましては対立の形式は違いますが、米英と日独伊というものが対立して、昭和十五年一九四〇年に日独伊の防共協定を結び、一九四一年昭和十六年に三国同盟を結んでいる。松岡外交というものは反共政策であり、そしてナチス外交に対して一辺倒である。又リツベントロップ外交に引廻されて反共と枢軸外交に一辺倒であつた。この点が私はやはり今反共政策をとられ、協力の対象は違いますが一辺倒である、こういう点で同じである。私どもそういう歴史的な反省の上に立つて危惧なきを得ないわけなんです。そういう点はどうなんでしようか。
  171. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それはどうも意見の相違で、私どもは一辺倒じやないと思つておるのだが、中田君のほうで一辺倒だとお考えになればこれはどうもいたしかたないのですが、ただ前にそうだから今度もそうだというふうなことは私は受取れない部分があるので、一ぺん馬に乗つて落ちたから馬というものは必ず乗れば落ちるものだというふうにお考えにならずに、馬の性質にもよりましようし、道路の状況にもよりましようし、乗手にもよりましようから、常に馬というものはおつこちるということにはならないと思うのです。(笑声)
  172. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は日本外国軍隊がおり無条件降伏をしたような惰性もあつて、一辺倒の度合においては松岡外交をはるかに越すものであつて、そういう点は近世、国を誤つた例えばフィンランド或いは崩壊前の蒋介石政権というようなものがやはり一辺倒外交で失敗しているので、やはりどこの国でも一辺倒外交で国の過ちなきを得た最近の事例がないという点はどうなんでしよう。例えばフィンランド、中国。こいう点はどうですか。
  173. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうも抽象的な議論で、私ども具体的にものを処理している者にはあまりいい御説明ができないかも知れませんが、元来一辺倒というのは私は中共で言い出した言葉で、中共は、世の中にはアメリカに一辺倒するかソ連に一辺倒するか、早く言えば中共のほうはソ連に一辺倒するのだという趣旨のことだと思うのですが、それで中共については中田君もなかなか尊敬を持つておられるようですが、元祖はそこにあるようであります。私は一辺倒というような抽象的なものでフィンランドその他の国のやり方を、そういうレッテルできめつけてしまうこともどうかと思うのですが、日本においては私は一辺倒ではないと思いますが、ただアメリカ駐留軍を置いたということは、これは私も置きたくない、やむを得ずそうなつたのですが、むしろ反問したいのは駐留軍を置いたのが一辺倒だとおつしやるならば、やはり何も防禦までをなくして日本は素裸でおるべきだという御議論でありますれば別ですが、そうでないとしたら一体どうすればいいのかということを実は反問したいくらいなんです。
  174. 中田吉雄

    中田吉雄君 その問題はあとで我が党の立つている方式がはるかに安全だ、岡崎外務大臣の宗旨を変えてもらうような説得をあとからやります。やはり私はお考え頂いておきたいことは、強大な国に隣接した国が、例えばフィンランドにしても第一次大戦においてはカイゼル皇帝はおれのほうにつけば安全を保障してやるというのでついて、間髪を入れずにソ連にやられて、それにも懲りず一九四一年にはやはりヒットラー外交に追随して対ソ宣戦の布告をしている。こういう大きな過ちを侵したことが、今中立政策をとらしているもとです。更に又蒋介石政権は遠きと交つて近きを攻めるという外交方式をとつて一九二七年ですか南京に政権を立つて、極めて僅かの間に、我が国外交政策の失敗もあつたでしようが、遠きと交わりアメリカ一辺倒の政策をとつてこういう過誤を侵しているという最近の事例に鑑みて、私としてはやはり無条件降伏をしてそういう惰性で十分事情はあると思いますが、やはり憂慮なきを得ない、こういうわけです。
  175. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私も中国には前後八年ほどおりまして、丁度おつしやるような時期には中国におつたわけです。私は、アメリカ一辺倒の政策をとつて日本と対抗したのは、その当時そうではないと思います。併しこれは中国のことですから別問題ですが、我々としては何も一辺倒の政策をとるつもりはないのであつて、問題は日本の利益であり、而も目前の利益ではなくして長い目で見た日本の安全であり利益でありこれに合うものを探し求めている、私のやり方もそれに尽きるのであります。初めから一辺倒とか一辺倒でないというレッテルをはるのでなくして、要するに日本の利益に最も合致するような政策をとつて行きたいというつもりでやつて行きたいと思つております。
  176. 中田吉雄

    中田吉雄君 それでは問題を変えまして、アメリカ外交政策の適格性といいますか特質といいますか、或いは正当性、今アメリカがとつている外交政策が正しいものであるかどうかという点なんです。それは我が国MSAの四協定を受けますことはアメリカ外交政策に協力することである。従つてその外交政策が正しいものであるという前提が許されるなら私も十分了とするわけであります。殊に一九四九年の、今度の四協定の母法になります相互防衛援助法の副題にも、外国援助を与えてアメリカ外交政策を促進するのだ、更に一九五一年の相互安全保障法にも、援助を与えてそうしてアメリカの安全を維持するとともに外交政策を促進するのだ、いわばMSAアメリカ外交政策を促進する一つのてこなんで、ですから私たちとしては、その外交政策が正しい批判に堪えるものでありますならば、全面的に協力することもいいと思うのですが、私は非常にその点を心配するわけであります。大臣は四月九日に日米協会で、日米両国間には史上曾つて見られないほど利害の完全の一致がある、こういうふうに言われておるのですが、そこでそういう点から私はアメリカ外交政策についても相当是々非々の立場をとらんと多くの問題を含んでいるというふうに思うわけなんです。そこでそういう観点からして、それならアメリカ外交政策日米関係にしぼつて、嘉永六年にペルーが来て先般百年祭ですかありました。岡崎大臣も行かれたようですがその一世紀の間の対日政策にかんがみて今の政策は誤りのないものであるかどうか、こういう点についていろいろお伺いして見た。
  177. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 個々の政策についてはいろいろ論議もあろうと思います。この安全保障法に言つているように、先ほど申上げたように個々の政策を何でも肩を持つということではないのであつて、友好国に援助を与えることがアメリカ外交政策の推進になる、これ以上には何も出ておりません。そこでただ具体的に申しますと、過去においてはいろいろありましたでしよう。例えば当初においては不平等条約もありましたし、途中においては排日的な移民法等もありましたし、又そののちには石井ランシング・協定とが或いは九国条約とか日英同盟廃棄とかいろいろ経過を経て来ているのでありますが、只今のところは安保条約にしましても或いは移民法の改正にいたしましても、日米通商航海条約にいたしましても、今までから見れば私は日米関係は非常に利害を一致しつつある、日本があやうくなれば、アメリカの安全も害されるというアメリカの認識、又日本経済が悪くなれば従つてアメリカの平和維持にも影響があるという考えから、軍隊を出しておるのみならず、いろいろの方法で日本の外貨獲得に協力したり、日本の通貨の安定に協力したり、或いは貿易問題に協力を与えたりいたしている。このいろいろの方面から見まして日米関係は現在においては非常に緊密な状況にある。過去に比べましても今が一番緊密な状況にある、こう申して差し支えないと考えております。
  178. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は、ずつと歴史年表をたぐつて見て外交上においては、永久の味方もないし永久の敵もない。絶えず変転しているものだと、こういうことを全体を見て知り得る。そうして特に日本に対し、最も影響力のあるアメリカ日本との関係を見ますると、一八五三年、嘉永六年にペルリが来て現在までを大まかに前半と後半に分けてみて、少くとも日露戦争までは非常に友好的であつた。日露戦争をきつかけにして日本が非常に強国になつて以来は、只今岡崎大臣のいわれたように、一九〇九年のカ州における排日法案、或いは一九二一年のワシントン軍縮会議、ロンドン軍縮会議、或いは満州国不承認、一九四〇年の日米通商航海条約破棄というふうに一世紀の後半においては、むしろ競争関係なり敵対関係が非常に強かつた。そこで今はどういうときに当るだろうかと日米関係考えてみますると、日本アメリカとの一世紀の過去の経験に鑑みると、私はやはり丁度アメリカ日本に今とつている政策というものは、日露戦争の前のような立場である。アメリカとの今の親善関係も必ずしもいつまでもこう続くものではないのではないか、こういうようにまあ考えて、やはり岡崎大臣が四月九日にいわれたような、いわゆる外交辞令としてはともかくとして日米両国間には、史上かつて見られないほど利害の一致があると、全面的に追随することについては、やはり私としては非常に問題があるのではないか、それは時間がありませんからいいませんが、今アメリカがヨーロッパ、中東、近東、東南アジアその他にとつている政策についても、やはり日本と同じようないろいろな問題を起している点から考えても、私たちはどこの国にも敵を作らない外交方式をとるべきだと思いますが、そういうとにかく、私は日露戦争の前の日米関係と同じ関係に今ある。これも時期が来れば限界に来るのではないか。そういうことを心得ながら、あと足をふみながら外交政策を展開することが必要ではないか、こういうふうに考えるのですが、この点は如何ですか。
  179. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうも私どもは、或る国と外交関係を結んだときに、いつか仲が悪くなるだろうということを考えながらやるというふうなそういう気はいたしません。やはり永久に仲をよくして行くつもりでやつております。これはどこの国に対しても同じであります。ただ外交の目的も、やはり日本自身の安全保障と日本自身の利益を中心として考えるべきである。これは勿論、そのときどきの利益ということのみならず、長い目で見て日本の利益になることを考えなければならんということは、むしろ正義に立脚した、一時の慾張つた政策でないことが必要でありましようが、そういう意味考えておりますから、日本の利益に合致しないような場合にはいろいろ変化も起りましようが、何もまだそういうことのないときに、もう直きこれは関係が悪くなるのだというふうにはちよつと考えてやるわけには行かんと思つております。
  180. 中田吉雄

    中田吉雄君 私はそういうことはやはり十分気をつけながらやつたほうがいいと思う。それはやはりまあそういう見方はともかくとして、善か悪かはともかくとしましてやはり日露戦争に対して、アメリカの大統領が講和のあつせんをしたりいろいろ援助したりしていますが、そういうのはやはりロシヤを当然日本によつて防ぐという大きな意味があつたわけです。ところが、今度は太平洋戦争をきつかけに日本がこういうふうになり、蒋介石は中国から放り出されて毛沢東政権が強大になつて、ソヴィエトが強大になつた。そこでもう一遍かつて蒋介石に果させた役割を日本に果させるような要求が非常に強過ぎるのではないか。特にあとでも御質問したいのですが、軍事面においてそういうことのために中国のいろいろの過失の大きな原因がある。そういう丁度ロシアを牽制するために日本に求めていたものを、蒋介石に果させたものを今度もう一遍日本に果たさせよう、若しこういう政策に乗つかつてアメリカが集団安全保障方式の枠の中に入り、MSAを受けて再軍備をして中ソ両国を敵に廻して行くような政策は蒋介石の二の舞をふむ虞れはないかという、こういうことをしつこいようですが、私心配するわけです。如何ですか。
  181. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうもこれは、非常に前提が違つてつて中田君のほうは、MSAを受けて再軍備をする、こういうふうに割り切つている。我々のほうは、再軍備しないといつている。この点非常に出発が違うのですが、私はやはりそういう点は、蒋介石にアメリカがどういうことをやらしておつたか、これはいろいろ見方もありましようが、そういう役割を日本が引き受けるようにするということも、どうも私は理解ができないので、この点はどうも意見の相違というより仕方がないかも知れません。
  182. 中田吉雄

    中田吉雄君 もう少し野党の我々に対して偉大な説得力を一つ発揮してもらいたいと思うのですが、それはともかくとしてそういうふうにアメリカのアジア政策においては多くの過失があつたと私は考えている。それから戦後におきましても、いろいろアメリカ外交政策においては力の強大に委せて非常に問題がある。例えば一九四一年の八月に、大西洋憲章で絶対領土的にはもう拡大を求めないといいながら、戦略的な要請とかいろいろなことをいつて、小笠原、沖繩等を名目はどうであろうが事実上日本から離されている。或いは平和憲法を日本に押しつけながら、昨年のごときはそういうことが誤りであつたというようなことをいう。或いはヤルタ協定の問題というように、非常に特にアジアにおいては、ヨーロツパにおいては極東ほど過失はないように思うのですが、私は非常にいろいろな点から見るので、まあ十分やはり高度の自主性の発揮を求めてやまない。我々としては今こういう政策が誤りであるか何であるかということは見解相違というようなことでなかなか判定はしにくいと思うが、私たちにただ一つの指標を与えるものは、やはり過去に鑑みてそこからいろいろな教えを導き出して今の反省のかてにする、こういうことが非常に必要だと思うのですが、やはり私をしてアメリカ外交政策を見させますなら、戦前の強力な権力主義的な外交をとつている点はナチス外交と変らんじやないか、他国を自国の手段に使うというような自国中心主義、それから外交政策に英知的なひらめきがない、冷静さがない、非常に喧騒である。そうして無条件降伏というような曾つて戦史にないような非寛容な態度、こういうようなことを考えますと、やはり対米協力には十分是々非々の立場を発揮して努力されんといかんのじやないか、こういうふうに思うのですが、もう一遍その辺の……。
  183. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私にアメリカ政策を弁護しろとおつしやつてもこれはする立場にないのです。従つてアメリカ政策つて悪いことはたくさんありましよう。人間のすることでありますから間違いも随分ありましよう。それは当然のことだと思います。ただ今おつしやつたいろいろの事実を挙げられましたことは、これは事実として申上げれば例えば大西洋憲章或いは日本の憲法、或いはヤルタ協定、これはアメリカがやつたことではない。アメリカがやらなかつたといつてはおかしいかも知れませんが、大西洋憲章にはソ連も加入しております。ヤルタ協定にはイギリスもソ連も入つておる。無条件降伏、憲法改正ということもこれは極東委員会できめることです。即ち米・英・仏・ソ・中国等できめた問題であつてこれは皆アメリカが悪いのだとおつしやる意味は、ソ連なんかは全然無力だということになるのですが、事実はそうでなかつたと思います。ソ連外交政策にしましても誤りは幾らもありましよう。それは私は決して弁護する必要もないのですから何も言いませんが、併しもつと大きな誤りをやつている国も随分なきにしもあらずで、例えばソ連が、いわゆる衛星国と称せられ国連にも代表を出しておるポーランドであるとかその他チェッコであるとかいろいろな国に対する外交政策というのはこれは外交政策とは言えない、むしろ内政みたいなことをやつておるように思いまするし、又中ソ同盟条約のごときも随分これは将来においては歴史上のブランドになり得るものだと思つております。従つて間違いは方々の国でいろいろなことをやつておると思いますが、今おつしやつたような事実はアメリカだけに責任を負せることは酷であろう、こう思つております。
  184. 中田吉雄

    中田吉雄君 大西洋憲章はたしかソヴィエトは関係していない。それから憲法は極東委員会というような極東理事会ですか、極東委員会ですか併し何としましても決定的な影響を及ぼす国はアメリカですから、指導的な立場のリーダーシップをとりますのはやはりアメリカですから、まあそこで最後に最近エコノミストがこういうことを書いていたのを紹介してこの問題では止めようと思います。もう日本は親米的な吉田内閣ではどういうふうにもならんようになつておる。もつと自国の立場をそういうイメージを出す指導者にとつて代らねばならないというようなことを老舗をほこるエコノミストでも言つておりますし、更にマンチェスター・ガーデアンのごときは若しアメリカが余りにもはつきりと自国の目的を達する手段として日本を利用するならば、米国に協力するすべての日本政府はことごとく国民の信用を失つてしまつてどんな警察隊や軍隊を持つてみたところで、そのような政府は蒋介石政権が中国で失脚したと同じような事態を招くであろうというようなことを言つていますので、一つ念頭に置いて、素人の中田がああいうことを言つておつたということを一つ記憶において頂くと幸いに思うわけであります。  そこで次の質問に移りますが、MSA協定を結びますことは中ソ両国との国交調整にどういう影響を持つか、附属書のDには、平和の維持の脅威国に対する貿易制限が謳つてあるだけですが、このMSA協定締結に際しまして、隣国との国交調整についてどういうお話アメリカとされましたか、その点についてお伺いいたします。
  185. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 隣接国との国交調整というのは日本がやることでありまして、別にアメリカと話をする必要も今のところは認めておりませんし、将来必要があれば又話をいたしますが、従つてまだ何もそういう点で話をいたしておりません。
  186. 中田吉雄

    中田吉雄君 自主的にやるのが当然ですが、ではMSA協定とは別に、一体中ソとの国交調整についてどういうお考えをお持ちですか。
  187. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはいつも申すことでありますが、我々も中国の国民一般については長い歴史もありまして、非常に親しく感じておる。中国側もそう思つておるだろうと。ただ途中日支事変等があつて感情の疎隔がありましようが、まあ全体としてはそう考えておる。従いまして成るべくこういう国々とも、又ソ連にしても別に共産国家だから国交を開いていかんという理窟はないので、従つて国交を開かないということは申しておりませんが今の状況では困難であろう、こう考えております。
  188. 中田吉雄

    中田吉雄君 我が党は共産主義に対する好悪等によつて国交調整が左右さるべきでないという立場をとつておるのですが、では今卒急にやらない。日本に随分いろいろなことをやつています李承晩政権その他南方に対してはあらゆる手を尽して国交調整をやつておられますのに、どうして中国に対してはやられないのですか。その点を一つ
  189. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは北京の放送等をお聞きになればもう私が説明するまでもないと思いますが、随分いろいろなことを言つております。これは敵国でなければならないであろうと思うような放送を日本語でいたしております。又今いつも例になります中ソの条約関係というものもありますし、船、漁夫等のつかまえられたのも随分あります。これは決して沿岸で捕えられておるのじやない、こういうことを考えますと、まあちよつと手のつけようがないという状況になつておるように思います。  それからちよつと先ほど申し忘れましたが、大西洋憲章というのは、あれは元は大西洋憲章というのですが、その後連合国宣言となりまして、これはソヴィエトも入つておるのであります。
  190. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は、やはりいろいろ言われますが、アメリカに対する遠慮というものがやはり中国との国交調整に言わず語らずの中にあるのではないかというふうに考えるわけであります。そうして又アメリカの今とつているような政策というものは、私たちはソヴィエトとアメリカが国交調整をしたいきさつを見ると十分警戒を要する、しよい投げを食わされる虞れがあるのではないか、いろいろな状態からして。特にダレスは今度の中間選挙等もあつて、ジュネーヴ会議その他でも中国の不承認の問題を強く打出していますが、やはりそういうこともあるし、私たちがこの際十分考えねばならんのはアメリカは一九一七年ですか、レーニンによる労農政府ができた際に最も遅くこの承認をした国ですが、承認理由というものが日本を牽制するためにソヴィエトを承認した。これはもう一九三一年の九月十八日に満州事変が起きて、そのために日本の大陸進出を抑制するために一九三三年ですか四年ですかやつているわけでして、アメリカの不況打開その他等から考えてなかなか予断を許さん、もつとこの安全保障の立場から言つても、この問題は十分考えねばならんではないか。私はアメリカのソヴィエト、レーニン政府承認したいきさつが日本の満州国進出を抑えて満蒙進出をコントロールするというためにやはりソヴィエト・ロシアを承認したといういきさつを知つて、十分考慮を要するではないかと思うのですが、この点は如何でしよう。
  191. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どういう意味で考慮を要するのか私にはよくわかりませんが、併し一九三三年だと思いますが、私も丁度あの時分にはアメリカにおりまして、そのときの情勢も多少見聞きしておつたのですが、やはりあれは満州国牽制というよりは、むしろルーズヴェルト大統領の根本的な考え方であり、これはもうルーズヴェルト大統領は死ぬまで同じ考え方を持つていたと思うのです。そうして前フーヴアー大統領当時の政策から、新らしいものを生み出すという一連の政策一つの現われじやなかつたかと思うのであります。
  192. 中田吉雄

    中田吉雄君 私もいろいろ調べてみたんですが、成るはどルーズヴェルトは非常に親ソ的な考えを以てそれがテヘランの会談等にもはつきり出ているのですが、やはり何といつてもきつかけは一九三一年の九月十八日に満州事変が起きて、やはりそういうことに対して日本の大陸進出を抑制する、こういうきつかけでやはり三年遅れて承認したわけでして、これはやはり十分考えねばなりませんし、私は何千マイルも離れたようなアメリカとの安全保障の形に入り込んで、そうして極く目と鼻の間にある中ソ両国を仮装敵国にしたような日本の、再軍備というものは安全保障にならん、こういうふうに思うわけなんです。我々としては、MSAを受けてそういう形で安全保障をする前に先ずやらなばならんいろいろな問題は、隣国との国交を調整してそういうあとにもう少し冷静に考えることが必要じやないかと思うのですが、特に私は、再軍備するとすればどこの国だつてどこから大体侵略があるか、そういう危険があるかというようなことを予想してやるのですし、孫子の兵法から言つてもこういう政策は、みずからカーテンを張つてやることは拙な拙なことだと思うのです。例えば孫子の兵法に、彼を知り己を知れば百たび戦つても全部勝つ、その立場も知る、まあこの場合に言えば中ソ両国の事情を知つて戦えば全然危くない、彼を知らず己れを知れば一たび勝ち一たび破れる、彼を知らず己を知らずやれば戦うごとに必ず負けるという。我々としては安全保障を考える立場から言つても、中ソ両国と調整して日本を取り巻く国際環境に対して十分な理解を持つて外交施策をすることが、孫子の兵法に鑑みても、みずからカーテンを置いて相手を知らずしてアメリカ情報だけによつて外交政策を立てることは私は非常に危険だというふうに考えるわけですが、この点は如何でしよう。
  193. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうもお話が、外交政策を立てるのは危険だとおつしやるが、その前のは防備をやるのに相手がなくちやいかんというようなことでちよつと焦点がはつきりしないのですが、第一に又再軍備と言われたのですが、再軍備はしないのですからこの点お断りしておきますが、例えば日本も同じこと、どこの国も同じことですが、スイスにしても、国を護るためにスイスにとつては相当な武力と、いざというときに召集し得べき相当な予備的な兵力を持つております。併しスイスにおきましても、それではイタリーが攻めるんだ、ドイツが攻めるんだ、フランスが攻めるんだという仮想敵国を置いてそういうものを持つておるとは思いませんし、又そういう言論は聞いておりません。国を維持する以上は国の護りを固くするということはこれはどこの国でもやつていることでありまして、即ちすぐ仮想敵国がなければ防備は必要はないんだということには私はならんと思うのです。現に方々の国でやはりそういう状況だと思うのです。
  194. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は外交上の自主性を十分発揮する建前からいつても大陸にカーテンを張つておいては、どうしても両方天ぴんにかけてといいますか、そういう表現は適切でないと思いますが、なかなかできにくいと思うのです。これがやはり岡崎大臣なんかが非常に努力されながら高度な自主性が発揮できないのは、やはりアメリカのいろいろな誤謬が含まれておる。まあそういうことは言わないにしても、非常に出過ぎているというようなことは考えられても十分やれないというのは、もう完全にカーテンを下してアメリカ以外には頼れない、そうでなく均衡の上に立つ外交をとらん限りはなかなか自主外交が発揮できない。そういう点からしても例えばアメリカの大統領候補であるスチブンソンのごときもソ連との会談の扉を閉すことは戦争への扉を開くことだ、こう言つている。我々としてはイデオロギーの如何にかかわらず隣国に敵を作らない、こういう点から韓国なり東南アジア諸国に対せられるような非常な努力を傾けて、もつと積極外交を、MSAを受けて自衛力漸増する前にむしろそういうことのほうがはるかに日本の安全保障に対しては重要ではないか。特に日本に対してソヴィエトと接触することを余り好んでいないアメリカすらソヴィエトに大使を置いて十分ソ連の動向をつかんでいるのですから、日本としてもそういうことをすることが、MSAを受けて再軍備をするという立場をとられるにしても、私はもつととられるべき政策であるのではないか、こういうふうに思うわけですが、最近の通商使節団だけは入れるという点、そういう施策を私は非常に大きな前進だと思うのですが、もつとそういうことを積極的にやられる意思はございませんか。
  195. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 外交上の自主性を保てという点は御同感であります。ただ中田さんはどうも都合の悪いときはダレス国務長官の言うことばかり聞いているとか、アメリカ政府の言うことばかり聞いているとかおつしやつて都合のいいときにはスチブンソンはこう言つているから、或いはマンチェスター・ガーデアンはこう言つているからと言つてどうも外国のことを引例しておつしやるのですが、こうやれ、ああやれと言つてどうも自主性が余りないように思われます。それは別としまして、米国もソ連と外交を結んでおる、我々もソ連と結んじやいかんということはないので、先ほども申しました通りイデオロギーはこれはかかわらないのです。併し独立してまだ二年になりませんからソ連との国交とか中共との国交、つまり或る国と国交を回復するかしないかということですが、先ほどもお話のようにイギリスもたしか一九二四年にソ連と国交を回復したと思います。アメリカは一九三三年に国交を回復したと思います。このようにかなり長くかかつておるのであつて、二年ぐらいの時間がかかつてもこれはやむを得ない事情もあり得るのであります。ただ中共との問題につきましては少くとも中共を今国連は侵略者と決議をされておるのでありますから、これが又変れば別でありますが、今の状況においてはそういう面からいたしましても、私は余り積極的に行くべきものでない、但し貿易関係は別でありますから、必要のある品目の解除等は昨日も行いましたが、今後も適当に行なつて行くつもりであります。
  196. 中田吉雄

    中田吉雄君 吉田総理の外遊の是非は別にして、吉田総理の外遊される一つ理由として中国問題についてアメリカとイギリスと話合をするというのが一つの課題だというふうに出ておりましたが、若しそれが真だとすれば私はやはり卓見だと思うのですが、やはり何としてもアメリカは、阿片戦争以来長い間百年間に亘つて外国の殖民地であつてああいう解放過程にある国に対しての理解が十分でない、やはりアメリカとして、イギリスの植民地であつたのが独立戦争によつて独立した当時に返つて十分謙虚な立場でアジア問題に取組まなければいかんと思う。我が国こそアメリカをして誤りなく大陸に適応させると言いますか、大陸との関係を調整させる国は我が国である。我が国がそれをやらない限りは、やはり私はアメリカの集団保障体制の極東戦略の中に入つて再軍備をして中ソ両国を仮想敵国にするような政策をとるようになる。それは第二の蒋介石の道をふむものである。そういう虞れが多分にあるということを考えますので、一つそういう点は十分御考慮頂きたいということを希望して、大分時間も過ぎましたのでやめますが、まだ保安長官はおいでになりませんか。
  197. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 呼んでおります。今衆議院の連合委員会が終つたそうですから、必要があれば。
  198. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は今日はこれでやめますが、あとで次のような問題について外務大臣並びに局長、保安長官お尋ねしたいと思います。それは水爆並びに原爆等の一連の新兵器が集団安全保障に対してどういう影響を及ぼすかという問題と、アメリカのニュールック作戦についてとの関係を質問しますから一つそういう点について、その場合に地図も一つ、今日は私はこれでやめます。
  199. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  200. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。それでは本日はこれで散会いたします。    午後五時十二分散会