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1954-04-12 第19回国会 参議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十二日(月曜日)    午前十時二十分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員草葉隆圓君及び古池信三君辞 任につき、その補欠として一松政二君 及び宮澤喜一君を議長において指名し た。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            團  伊能君            佐多 忠隆君            曾祢  益君    委員            鹿島守之助君            西郷吉之助君            杉原 荒太君            一松 政二君            宮澤 喜一君            梶原 茂嘉君            高良 とみ君            羽生 三七君            加藤シヅエ君            鶴見 祐輔君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    内閣官房長官  福永 健司君    法制局長官   佐藤 達夫君    保安政務次官  前田 正男君    保安庁次長   増原 恵吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁経理局長 石原 周夫君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省経済局長    心得      小田部謙一君    外務省条約局長 下田 武三君    通商産業政務次    官       古池 信三君    通商産業省企業    局長      記内 角一君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件日本国アメリカ合衆国との間の相  互防衛援助協定批准について承認  を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○農産物輸入に関する日本国とアメ  リカ合衆国との間の協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○経済的措置に関する日本国アメリ  カ合衆国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付) ○投資保証に関する日本国アメリ  カ合衆国との岡の協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付)   ―――――――――――――
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件、農産物輸入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、投資保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、以上四件を一括して議題といたします。  なお総理大臣に対しまする質疑は、かねて打合せの通り最初の一巡は一人二十分の持時間でやることになつておりまするので、あらかじめ御承知の上で御発行を願います。又附け加えて、これは私からお願いするのでありまするが、各合会派から一巡質疑が終るまでは、これは大事な時間でございまするから、成るべく関連質問はお避け下さるように、そうし残つた晴間において関連質問がおありならば御発言願う。こういうことにしてとにかく一巡はしてしまいたいと思いますので、その点あらかじめお含みの上御発言をお願いすることにいたします。又もう一つ附け加えまするが、これもかねて皆様がたお話しておきました通りに、総理大臣は今日はすわつたままで御答弁申上げたいということでありまするからして、あらかじめ御了承を願います。では最初質問といたしまして梶原委員
  3. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 MSA協定締結することによりまして、我が国はいろいろの義務を負うことになるのであります。第一は我が国自体防衛力を増強する義務であります。第二は自由世界防衛力維持発展に対する義務であります。第三はアメリカ中心といたしまする自由国家群連帯的防衛態勢の中におきまして、何らかの役割を荷うであろう国際政治上の責務であります。我が国がその自衛力なり防衛力を増強いたしますこと自体自由諸国に対しまする寄与であり、ひいては国際政治上の責務も又この範囲内であり限度内であるといたしますれば、これは総理もかねぐ言われておりまする自衛力漸増範囲であつて問題は比較的簡明であろうと思うのであります。併しながら、今日の国際情勢から見まして、果してその程度で事が済むのであろうかどうか、MSA協定一つのステップといたしまして、更に我が国は好むと好まざるにかかわらず二歩三歩前進して行かざるを得ないことになるのではなかろうか。その辺にこのMSAを廻りまして国民の間におおうことのできない不安のありますることは、これは現実の事実であります。私はMSA協定をめぐりまするところのこれら種々の不安なり又は疑念をこの際できる限り解明いたしますことが肝要だろうと思うのであります。こういう観点から数点につきまして総理見解をお伺いいたしたいと思うのであります。  第一にお尋ねしたい点は、現在のアメリカ、特に共和党政権の持つております態度であり方針についてであります。MSA協定関連して起つておりまする不次の一つは、私は現在の共和党政材態度にあるように思われるのであります。現在のアメリカ政策戦略中心であり、ともすれば武力一点張りであり強引であつて、ときに偏狭でさえあるように感ぜられるのであります。平和を期待いたしまする上において防衛力の強化は勿論必要でありましよう。併しながら武力のみに頼らんといたしますことは世界緊張を緩和するゆえんではないことは申上げるまでもないのであります。現在の共和党政権態度国際緊張を緩和しようとする方向に対する努力に欠けるところがあるのではなかろうかということを痛感いたすのであります。アメリカの現在の政策水爆実験そのものといううらみがあるのであります。而も我我水爆実験のいけにえになりつつあるMSA協定締結せんとしておるのでありまして、そこにアメリカとの友好を念願し期待せんとするものにとりましても不安の念を禁じないのであります。他国の政策をとやかく批判いたしますことは勿論差控えるべきことであろうと思いますが、アメリカ政策我が国運命に重大な関連がありといたしますればこれに無関心ではあり得ないのであります。この点についての総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 恐縮でありまするがすわつてお答えいたします。  只今質問に対するこれは私見に過ぎないと思いまするが、只今お話の平和いわゆる何といいますか国際緊張に対してはこれはしばしば私は申すのでありますが、戦争直後においては、或いは戦争直後よりは戦争の時代を暫く過ぎると又再び国際緊張を加える。戦争直後においての平和を望むという空気が暫くたつと又再び国際関係緊張して来ることは歴史の示すところでありますが、併しながら終戦後の状況を見ますと緊張程度はだんだんゆるみつつあるというのが一般の傾向、ゆるみつつあるというのがこれは概括して申せばそういう結論に達する。これは私の一家言ではなく、例えばイギリスのチヤーチル総理にしても或いはその他の総理にしてもしばしばこれは申すところであつてソ連自身でも平和を望むということをいつも申しているのでありまして、戦争をしたいということを誰も言つているわけではないのでありまして、又人類として戦争を希望する場合もありますけれども、戦争がいいということを考える人は先ず余りたくさんではない、こういうのが大体論としては正しいかと思います。いずれにしても近来の終戦後の傾向を見ますと、平和への歩みは一歩一歩進みつつあるということは事実であろうと思います。問題はソ連との関係でありますが、ソ連関係にしましても、今までソ連と席を同じうし国際会議は困るといつて主張したアメリカでさえも遂にベルリン会議が持たれ、又チヤーチルにしても問題は外括的にこうと言わずに、一問題一問題ずつ片付けて行くというのが国際緊張を解くゆえんではないか、その趣意で行われたのでありましよう、ベルリン会議なり又ジュネーブ会議になつてつて、交渉によつて解決して行こうという空気が時と共に濃厚になつておるということの結論は、これは常識の上からいつて正しいかと思います。今共和党云々お話がありましたが、共和党政策について私ははつきりしたことは実はよく知りませんが、併し又共和党政策は変らないとしてこれを批評することは、これは私としては避けたいと思いますが、とにかく今まで非常にソ連と席を同じうしたくないというアメリカが、ソ連と席を同じうし国際会議に臨む、或いは又米国中共承認したくない、しないといつているのがだんだんとにかくジユネーブにおいては共に協議に入るということになつて、一歩一歩平和の方向へ前進につつあるということは、結論において正しいかと私は思うのであります。又そう我々は希望いたします。それで現在特に傾向から申して、戦争への歩み寄りというよりは、平和への歩み寄りがだんだん濃厚になりつつあるという結論が正しいとするならば、私はMSA協定に入り、若しくは世界の平和を増進するように協力することが日本としてとるべき途ではないかと、こう確信いたします。
  5. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 只今総理世界緊張緩和に対する御見解をお答え預いたのでありますが、なお私はそれに関連してお伺いしたいのであります。アメリカとの連繋を強化して参ること、これは平和条約以来の経過から見ましても、私は是認し得るところと思うのでありますが、そのことが同時に我が国としてソ連なり特に中共との関係を疎隔せしめることを意味するものであつてはならないと思うのであります。MSA協定一つの類型、形を持つておるようでありますが、これを締結しておりまする国には、その国の事情からいたしましていろいろのニユアンスがその態度にあるようであります。我が国MSAに参加いたしまして自由世界の一員としての役割を考えてみますると、我が国の置かれておりまする立場から見ましても、どうしても国際緊張を緩和する努力を尽すということがその役割であるべきであろうと思うのであります。MSA協定締結するにつきましては、この国際緊張緩和への努力を払うことが必然的の私は前提条件であるべきだと思うのであります。この点は我が国アメリカなり又他の自由諸国と違いまする特殊の立場から当然言い得ることだと思うの、であります。MSA協定締結いたします以上その方向に当然の努力を払うことが私は吉田総理の大きな責務でなかろうかと考えるのであります。勿論私は中ソ友好条約現実を無視するものではないのであります。又朝鮮や台湾を控えましてのこの問題の困難さ、これを理解しないものではないのであります。併しながらそれだけに事は重要であり、何としてもこの問題の解決方向を進めることが肝要だと思うのであります。従来政府相手国サンフランシスコ平和条約に参加すればそれで事が済むんではないかと極めて簡単に言つておられるのでありますが、私はそれではならないと思うのであります。日本と中国、ソ連との国交が調整されないままに一方アメリカとの連帯的の迎撃が強まつて行くというところに私は今日の日本の不安の一つがあると思うのであります。中共国連加入問題等につきましても、我が目の立場といたしましてはこれをむしろ積極的に支持すべきものではなかろうかとさえ私は思うのであります。これらの問題につきましては総理も従来しばしばその御見解を御披露になつたのでありますが、MSA協定我が国に対しまして一つの新たな重大な段階を画するうものでありまするから、総理にもこの問題についての新たなる構想があるべきではなかろうかと私は期待をいたしたのであります。この中共の問題、ソ連との国交調整の問題に対する新たなる構想なくしては私は総理外遊もさしたる意義はないようにさえ思うのであります。総理外遊に私が期待をいたしますのも実はこの点のみであります。総理の御見解を承りたいと思います。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御趣意は私も全然同感でありますが、中共ソビエトの問題は単に日本だけの問題ではなくして実は世界的の問題で、いわゆる冷戦なるものはソビエト相手中共利手の問題であつてこれが緩和せられるならば世界国際緊張は殆んど解決せられると言つていいのでありましよう。単にこれは日本ばかりの問題ではないのみならず、併しお話通りこれによつて直接の利益を受けるものは日本でありましよう、これは疑うべからざることであります。殊に支那との関係解決するならば、結構なことでありますが、併しこれにはやはり相当の時をかさなければ、直ちに私が外遊いたしたからと言つてこの問題が解決せられるわけでもありますまい。いわゆるこれは国民協力と言いますか両国の政府が互いに理解し合う、或いはその運動を起すということによつて打開もできるでありましようが、只今のところは如何にしても余りに問題が直接過るためでありますか、殆んど正面衝突のようなことになり、幾多の国際問題が解決せずにそれが残つております。併しそのまま残つておるからといつて、それをうつちやらかしていいかというと、それは解決の途を尽すべきであると思いますけれども何分にも手がかりがないと申しても差支えないと思つております。が、御趣意には副うようにいたしますけれども、これは結局方法をどうするか、どういうふうにして問題を解決して行く、どういうふうにして接触を求めるか、よく言葉で申すことでありますが、いつも隣国とは問題が多いために自然敵対関係になり、遠い国との間には利害関係が薄いだけに友好関係を結ぶことはやさしい、これは今日の日本においてもその通りであろうと思います。殊に支那との関係においては同文同種という関係があり、地理的にも歴史的にも錯綜しておつてこれが一朝にしてすぐにということは殆んど望むべからざるものでありましよう。けれどもそのためにうつちやらかしていいとは私は毛頭思いません。できるだけのことはいたしますが、問題は如何にしてその緊張を緩和するかということに帰するであろうと思います。それには日本だけでなくて勢三国の援助或いは集団的保障と言いますか、国際的の空気が全般的に緩和せられるということ、それから又日本支那との国の関係は殊に緩和すべきじやないかという第三者からの助言、ということもあります。あらゆる方法を以て努むべきものであると思いますが、然らばどうするかというと、私にも具体的にこうという名案は持つておりません。
  7. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 第三点といたしまして、MSA協定締結関連いたしまして我が国海外出動の問題、それから地域的集団安全保障体制についてお伺いしたいと思います。MSA協定自体から直ちに海外出兵なり或いは地域的集団安全保障体制に進むということにはならないのでありまして、このことは言うまでもないところでありますが、併しながらMSA協定がその方向に成る示唆を与えておるということもこれは、否定ができないところと思うのであります。従来憲法解釈につきましては、いろいろ論議が行われて参つてたのであります。憲法解釈憲法が法であります以上、時に応じておのずから弾力性のありますことは当然であります。併しながらその解釈にも又おのずから限度があることは言うまでもないことであります。政府解釈を以ていたしましても現在におきまする自衛隊創設、更にMSA協定、この態勢がまずまず解釈上容認せられ得る限度ではなかろうかと思われるのであります。総理が現在の国際情勢から見まして憲法を改正しないというかねての態度は、私は極めて賢明なる態度であると思つておるのであります。併しながら事態はその程度で許されるかどうか、そこにMSA関連しての我々の不事の一つが存在するわけであります。アメリカ豪州、ニユージランドとの協定アメリカとフイリッピンとの相互防衛協定等におきまして、太平洋地域におきます地域的安全保障の一層包括的体制発展期待されておるのであります。更に現在におきましては、インドシナをめぐりまして、統一行動が提唱せられようとしておる。更に又太平洋におきまするNATO方式PATO方式に変わるのではないかということさえ論議されておるのであります。総理のこれら太平洋中心といたしました地域的集団防衛体制に対する御見解を伺いたいと思うのであります。  又海外出動につきましても、政府のこれに対します見解は必ずしも明確でないようであります。私自身自衛のための武力行動が当然に、時には戦争状態発展することがあると思うのであつて、そういう場合には海外出動憲法解釈上可能であるという見解を持つておるのでありますが、憲法解釈を離れ又憲法の条章を離れましても、現在の我が国の置かれております実態から見まして、広い意味の地域的集団保障に参加することや、又海外に出動するようなことは、これはどうしても避けるべきことと私は信ずるのであります。これらについての総理の御見解を伺いたいと思います。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。第一の地域的安全保障体制の問題につきましては、これはいろいろ議論もありましようけれども、日本に対する誤解、恐怖というような点はまだ全然解消いたしておらんのみならず、ややもすれば再び経済的侵略などと言われておるので、日本政府なり国民気持なり政策なりが、例えば豪州・ニュージランドその他東南アジア諸国に十分了解せられた後でなければ、地域的安全保障体制というものは実現せられないと私は思うのであります。これは外国のほうから見てのことですが、内輪においてもこの点においてはいろいろ議論もありましよう。又これをするために日本として義務を負わなければならんでありましようが、今日日本として先ず考えなければならんことは自国態勢を整える、自国の治安なり安全なりを確保することが第一であつて、その他に及ぶことは国力が許さない。いろいろ慾張つて考えればいたしたいことはたくさんあるでありましようが、今日敗戦後の日本としては国勢を整えるということに全力を注ぐべきであつて地域的安全保障体制に入るがいいかどうかということはよほど熟慮を要するものではないかと思うのであります。又現に日本を入れるということについて反対はありますが、日本誘つてつてくれという招請はまだ来ておりません。むしろ反対の国のほうが多いのではないかと思います。これはよく日本の国情或いは日本の過去を清算した今日の気持相手国に徹底することが必要である。このまま地域的安全保障に入るというようなことが仮にあつたとするならば、従来の誤解が一層深まることがあつても決して解消しないだろうと思います。  それから又海外派兵ということは法律如何にかかわらず国民が欲すれば、とにかくでありますけれども、敗戦後の今日日本国民としては海外派兵を希望しないほうが多いでありましよう。でありますから仮に法律が可能であるとしても軽々しくこういうことを考えるべきではないと思いますので、政府は全然考えておりません。
  9. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 最後にお伺いしたい点は、MSA協定我が国の考え方によりますと運命にも関する重大な国際的問題であります。然るにMSA協定をめぐりまして国内におきまする思想、国民の感情はこの自衛隊創設とも関連いたしまして、不幸にも分裂の症状、混迷の状態にあるように思われるのであります。而もこれらのことは現在の政治に対しまする国民の不信によつて、拍車をかけられておるような状況と遺憾ながら思われるので、あります。限りなき汚職誠になげかわしいことと私は思うのであります。政治におきまする道義の頽廃、政治の信義がまさに失われんとさえしておると思われるのでありまして、誠に堪えがたいこと、であります。かかる状況の下で、かかる重要な協定締結せられんとしておるのであります。こういう状況でありましては将来MSA協定の運営に関連いたしましても誠に不安に堪えないと思うのであります。総理の御所信をこの際伺いたいと思うのであります。  以上をもつて私の質問の時間が切れております。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) MSA協定が内政にも非常に影響を及ぼすというお話のように伺いますが、これは協定に入つたからとて従来の政策と相背馳するものであるとは考えないのであります。何となれば日本独立国であつて日本独立なり安全なりは今の国力を以てみずからの力で守ることのできない事態にあるために、アメリカとの間に安全保障条約等作つて、そうして国の安全独立を保持しよう、今度のMSA協定もその趣意から出たのでありまして、いわゆる従来の方針を覆えしたものではない、のみならず、安全保障条約においても日本保安隊といいますか、防衛力漸増ということを期待せられており、又期待せられることを我々は承諾いたしておるの、であります。そこで米国政府としては経費の節減といいますか、軍事費節減のため日本から、東洋地域から幾らかの軍隊を引揚げたいという希望があり、従つて我々は漸増せざるを得なくなつたのであり、まして、この漸増資金保障条約に予期せられておつたことであります。又MSA援助を受けるために従来の政策を違えたのではなくして従来の政策の線をふんで参るつもりでありますから、これは安全保障条約をこしらえるときにも予期せられていたことであるのであります。  そこで今の汚職問題でありますがこれは誠に遺憾なことであります。遺憾なことでありますが、それはできた以上は、その事態全貌が明らかになつた場合に適当な処置をとるというよりほか政府としてはいたしかたないの、あり、又将来に同じような不愉快な不詳事件が再発上ないような適当な手段をどうしてとるかということは、このたびの事件全貌が明らかになつたのちに初めて考え得ることではないか、これは政府としての慎重な処置をいたすつもりであります。
  11. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次は羽生委員
  12. 羽生三七

    羽生三七君 時間の制約がありますので直ちに要点を御質問申上げます。  政府は直接、間接の侵略に対応するため自衛力の増強を行うことは何ら憲法に違反するものでないという立場をとつております。私はここで憲法論議をする意思は全然ないのでありますが、次の点について首相所信を伺いたいと思います。その第一はこの国際法上の権利たる自衛権そのものの問題は別にしまして、この憲法第九条の規定は自衛の名においての武力行使は明白に禁ぜられており、従つてこの目的のためには陸海空その他の戦力は保持し得ないという解釈をする説も又有力であります。即ち政府解釈と異なる立場をとる政党、学者、民衆も数多く存在するわけでありますが、こういう場合にかかる重要な、問題について政府が一方的な解釈の下に強引に既成事実を作り上げるようなことをやめて、むしろその審判国民の中に委ねるべきであると思いますが、首相の御所信如何でありますか。
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。政府としてはその責任において自己所信に従う政策をとるよりほかしかたがないのでその所信従つてつた政策について国会その他において批判が起り、批評が起り、そうし批評の結果政府が倒れた場合にはつまり自民の審判を受けるものでありますが、行政府としてはその責任において自己解釈守つてうし政策の遂行をいたすというよりほか、その結果批判は別でありますけれども、政府責任において政府所信に従う政策をとつて行くというよりほかいたしかたないものと私も考えます。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 若しそうでありますならば、現在の国会議員任期が、仮に今総理なり或いは自由党指導部の考えられるような保守合同或いは自由党の多数派工作によつて任期一ぱい仮に続くことがあると仮定した場合、而もその間政府なり予定が多数をたのんで独善的な憲法解釈をやつて行くことは民主主義政治のルールに反するとお考えになりませんか。将来若し国民がこれを審判する機会があるといたしましても、その場合はもう実質上、我々の立場から見る再軍備が既成事実としてでき上つたときとなつて国民審判の機会というものは既成事実を単に合理化するために使われるに過ぎない結果となると考えるのであります。保守合同によつてこの任期一ぱい続くような場合であります。こういうことが民主政治のルールに反するとお考えにならないのでありますか。こういう場合にはこういう重要な問題について国内にあい異なる二つの解釈なり政治勢力が存在する場合には、保守合同よりもむしろ速かに総辞職することによつて信を国民に問う機会を選ぶべきものと考えますが、御所信を伺いたいと思います。
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは見解の相違と言いますか、おのおの見るところによつて違うでありましようが、政府といたしては今お話のように保守合同ができるかできないか、これは将来のことでありますが、政府として又反対党としてはその主張を以て国民に訴え、政府はその信ずるところを以て国民に訴えてそうし国民批判を仰ぐ、これが民主主義であり、今のお話のような独善的云々ということがありますが、政府としてはしばじば申す通り再軍備はいたさないつもりであります。既成事実によつて云々と言われますけれども、予算の審議なり或いは法律の改正なり制定なりによつて一々国会承認を経て参るのでありますから、国民或いは国会が知らない間に再軍備ができ上つた、既成事実ができ上つたということは、民主主義国家においてあり得べからざることだと私は始終主張しておるのであります。仮にそういたして国民がこれに対して批判をする、反対の意見或いは空気が生ずれば、それは総選挙において或いはその他の政治上の動きによつて政府は辞職するなり何なりいたすことでありますが、そういう我々は間違つたことをいたしておらないと、再軍備をいたすつもりはないと申しておるのでありますから、総辞職いたして国民に信を問うという手段には出でないつもりであります。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 ではその点はほかのことならとにかく、かような重要な問題について二つの異なる見解、或いは政治勢力が存在する場合には、今私が申したような態度をとらるべきだと思のうでありますが、併しまあお話を承わつておると、この内閣もそう長く続くということを前提にされておることでもないので、問題を次のほうへ移して参ります。  第二番目の問題は、この兵器の発達に比例しまして、戦争の規模や性格が変つて行くことは言うまでもありません。水爆実験威力にも見られるような兵器の革命は従来の自衛方式に根本的なこの新らしい問題を投じたと思うのであります。独立国家が自衛力を持つ或いは持たないの議論は別といたしまして、戦力に至らない自衛力というものは、役に立たない軍隊ということの代名詞だと私は考えております。そこで我々は独立国家のこの体裁のために自衛力論議しておるのではないので、実質的の祖国の安全保障をどうするかということを希求すべきであると考えております。そういう意味から考えますならば、例えば国内消炭の維持はこれを警察力に任せて、他方今日のような国際情勢或いはこの革命的な兵器の出現するような時代においても、生兵法は怪我のもとだという古い格言はなかなか味うべきものがあると思うのであります。この自衛手段の方法が幾ばくのこの武力だけに存在するのではなくて広く国内経済の安定とか或いは治安の確立、有効な外交手段等に求められるべき時期であると思うので、あります。丁度私は今の国際情勢がその時期だと思う。永久に日本が今のままでいいとか何とかいう議論は別としまして、丁度むしろ経法的なり或いは有力な外交手段に日本が絶対的な安全を求める時期が今日の段階だと考えられるのであります。そういう意味で今日のような客観情勢においては政府国民が一体になつて、現行平和憲法の精神を以て世界に訴えることのほうがより強く日本の安全保障になるとお考えになりませんか。
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 外交も一つの手段でありましようし、又経済の発達ということも自衛一つの手段でありましよう。単に一つの外交だけで行けとおつしやつてもなかなか行くものではないのであつて日本の外交が力あらしむるためには、日本における治安の維持というもの、日本政府日本安全独立を守るために相当の力を尽しており、外交に防衛に、経済その他に最も力強い政府として立派な措置政策をとつている、こういうことが明らかになつてこそ初めて日本独立なり日本の外交に力あるのであつて、外交だけで自衛隊は要らない、防衛は要らないというようなことで、やはり政府としての能力を外国が疑うことになれば外交も又力強い外交はできないことになるであろうと思います。故に或るものだけ、或る勢力だけが集中すべきものということは余りに簡単過ぎて私は直ちに承服できません。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 次にこれはちよつと総理が御覧になつているかと思いますが、MSA協定附属書Dの世界平和の維持をおびやかす国とは具体的にはどこの国を指すのでありますか。
  19. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと私から代つてお答えいたします。これはどこということは書いてないのでありまして、どこにしろ世界平和をおびやかす国があつたとすれば、その国を対象といたします。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 私がこの問題をお尋ねしたのは次の理由であります。この附属書Dの一定は確かにどこの国とは書いておりませんが、併しこれは明らかに中共を指しているのであります。これは天下問知の事実であります。そこで民主主義国家に属するという政府の主張は、いわば一種の精神的な気持の上のものであつたに過ぎませんが、今回のMSA協定によつて日本は実質上この条約上の義務を伴いつつ明白に西欧陣営に投じたものと私は考えるのであります。これは本来我が国ひいては世界の平和に寄与するというMSAの筋書にもかかわらず、この協定の結果却つて国際紛争の渦中に介入せしめられる条件を作ることにならないか、私はそう思うのであります。又その結果先ほど梶原委員からもお話のあつた中ソとの国交調整の機会を却つて遠ざけることになる。私はこう思うのでありますが、MSA協定の結果却つて国際紛争の渦中に巻き込まれる危険が増大するとお考えになりませんか。
  21. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これによつて新らしく政府は何か義務を負うた、これは将来のことについては世界の平和をおびやかす国があればどこの国についても適当な措置をとるということについてはアメリカと約束をいたしております。これはその通りであります。併しながらいま中共を御指摘になりましたが、中共が国連から侵略国という決議をされております。従つて政府中共に対する貿易の制限等を行なつております。併しながらこれは日本だけがやつておることじやない、国際連合の決議に基いてこれに協力する意味でやつておるのでありまして、今後も世界の平和をおびやかす国というのを誰がきめるかという問題はありましようけれども、明らかに世界の、平和をおびやかす国がありとすればその国に対して適当の措置を講じて平和をおびやかさないようにするのは我々どこの国としても当然の務であろうと思うのであります。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 次の問題は総理自身からお答えを願いたいと思うのでありますが、この自衛隊創設或いは日本防衛力の増強は言うまでもなくこれは直接侵略を想定してのことであります。つまり直接侵略の場合を想定して自衛隊の増強をやるわけであります。併しそれとは全く別に協定の他方の当事国たるアメリカソ連及び中国と紛争を起して、その結果として軍事基地を提供している日本が爆撃にさらされるような危険は起らないでありましようか。日本は今外国の侵略だけを論議してそして自衛隊の増強・祖国の安全の保障ということをそういう角度からだけ論じておるわけでありますが、むしろ私は今申上げましたようにアメリカと相反する勢力とが戦うことによつてその渦中に日本が巻き込まれることの危険のほうが遥かに危険の度合が多い。こう考えておるのでありますが首相見解を承わりたいと思います。
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話の前提としてここにソビエトとの間の戦争を予期せられるわけでありますが、私はその戦争だんだん遠のくように各国ともに努力している。いわゆるひややかなる戦争さえも今日はこれを何とかして防止しようと各国はいたしておるのでありますから、この現在の瞬間において今お話のような直ちに戦争が再び起る、米国でさえも私は直ちにとはこれを考えておらないであろう、避けることに努力をいたしておるであろうと思います。故にジュネーブとかその他においての国際会議が開かれるのであつて、先ず国としては平和への、冷戦を防止し、国際緊張を成るべく緩和することに国際的に努力が行われておるので、戦争のほうに直ちに持つて行くということの危険は、現衣のところは遠のきつつあるというのが私の考え方であります。お話のような場合があるかも知れませんが、私はそういう場合が生じないことに各国が今努力しておると考えます。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 いや、私が只今のことをお尋ねしましたのは、まあ首相としてはそういうことは、平和的な方向世界は向つておるからないということを、それから一つには口には出されなかつたけれども、仮定の問題だということがおありだと思いますが、丁度今日本が育つておる直接侵略ということが仮定の問題なんです。それと同じ程度に私が今の問題に触れても一向差支えないと思います。そこで問題が今世界が平和の方向に向つておるということは、私はその通りだと思うし首相が強くそれを主張されるのもなお更結構だと思いますが、併し現にインドシナについてはアメリカが五カ国共同宣言の計画をしております。自由諸国統一行動を求める場合に、インドシナに近いアジア諸国にもその参加を求められることがあるかも知れないと外電は伝えております。若しこの自由諸国統一行動日本が参加を求められた場合には、如何なる態度をおとりになりましようか。これは仮定の問題とおつしやいますが、仮定で結構であります。参加を求められた場合には、はつきり断わるのが、或いは自由諸国に協力するという、MSA精神でこれに賛成するというのですか。その点はつきりお願いいたします。
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 現在お断わりいたすよりほか方法がありません。極力これは許しません。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 非常に結構であります。  そこで次の問題は、経済に関連するのでありますが、MSA協定は、その前文におきまして、この「経済の安定が日本国の防衛能力の発展のために欠くことができない要素であり、また、日本国の寄与がその経済の一般的な条件及び能力の許す範囲においてのみ行うこと」を規定しております。我々が今日日本経済の現状を見ますると、先ず輸出の不振、輸入の増加、手持外貨の減少等、経済は悪化の一路をたどつております。加うるに防衛費の増加は内政費への圧迫となりまして、日本経済の脆弱な現状におきましては、これが勤労大衆や中小企業へしわ寄せされまして、このままで行くとすれば、日本経済というものは決定的な段階に行くのではないかと思われるのであります。そこでお尋ねしたいことは、総理は昨年の六月に議会の答弁で保安隊の増強は行わない旨を述べられたのでありますが、その直後に御承知のように岡崎・アリソン交換公文のやりとりがありました。更に昨秋池田・ロバートソン会談があつて、急速にこの自衛力増強の方針に転換されたわけであります。これは首相従来のお考えからからして非常に一貫性を欠き、又アメリカの主張に非常に譲られた点が多いと思うのでありますが、特に昭和二十九年度予算は昨年の末に一応の検討が終つたものであります。併しすでにその当時日本経済はもう貿易上のアンバランスが著しく、或いはその他の要因もありましたが経済は下向きになつてつた。これは何人にも明白であります。而も二十八年度予算は補正予算を含めまして一兆二百数十億あつたものが、二十九年度は耐乏の令の下に、一兆円の枠にしぼつたことは言うまでもありません。併しこの中には防衛費のみがふくれておるのであります。而も経済は今申しましたように下向きである、且つ安定を欠いている。これは協定の前文に掲げられました、経済安定が重要な要素であり、経済の一般的な条件及び能力の許す範囲内でという、MSA協定の前文に書かれた精神と著しく矛盾すると思うのでありますが、総理如何ようにお考えになりましようか。
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。保安隊を増強せずと言いながら増強したではないかと言われますが、これは昨年度の予算におきまして増強しないと申したであろうと思います。永遠に増強しないと育つたわけではない。なんとなれば、安全保障条約にも漸増ということを約束いたしておるのでありますから、永久に増強しないと言つたのではないと私は思いますが、速記録を見てお答えいたします。  それから増強になつた次第は、先ほど申しました通りアメリカの駐留軍を引揚げるということになつたものでありますから、それだけ日本としては安全保護のために適当な処置を講じなければならなくなつたので、これはアメリカに譲つたわけでなく、又日本の自主的な増強を考えたのであります。  今経済について非常に経済が悪い、これは不幸にして、昨年天災、水害その地風害とかいうようなものが起つた一つは外貨予算で輸入がふえて輸出が伸びなかつたということもありますが、これに対して政府としては時に貿易が不振になり或いは産業が不振になつた場合に、それぞれそれに応ずる処置をとるべきであつて、とらなかつた場合には政府としては怠慢でありますが、それぞれ耐乏予算なり何なりを組んで、これに対応するところの処置をいたしており、又貿易伸張についしは、相当考慮をいたしております。すでに貿易については相当輸出増加の方向に一つておると聞いております。これは日本の経済からいつてもますます貿易は伸張せしめなければならん。殊に受取形態については最も考慮をさなければ、必要であると考えて、専らその方面に力を尽しております。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 私が只今のことをお尋ねしたのは、特に次の問題に関連するのであります。それは去る九日ワシントン発ロイター電報によりますと、アメリカの下院の軍需委員会分科会は昨秋日本を訪問調査した結果を議会に報告しまして、その中でこう言つております。我々は日本について二つの要な見場解に達した、一つ日本の経済が弱いことである、日本がきびしい耐乏計画を実施することが極めて必要である。第二は、日本自衛のために再軍備をすべきである。これが下院軍需委員会分科会の日本調さの結果についての発表であります。このことは極めて重でありまして、政府は今後ともMSAの計画を運営する上に、非常に上要な関連を持つわけでありますが、今後とも更に強い耐乏を求めての自衛力増強の方針を実行されるのかどうか、これが一つ。  もう一つは、総理にお尋ねしておきますが、一体MSA協定に示された経済の安定及び不安定並びに経済の一段的な条件のす範囲、或いは評さぬ範囲、そういう基準を一体どこでおきめになるのですか。それがなければこの協定の前文というものは、全く意味がないもので、単なる飾り文句に過ぎないので、以上についてお答え願います。
  29. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今の議会への報告について、私は答弁の責任上申しませんが、経済は冠しつい、併しながら保安隊ですか、増強するというようなこたはいたしません。国力に応じた防御計画は立てますが、その国力に応じた防御計画はその年々に、おいて自主的に考えるべきことであつて、経済は別にしてどんどん防衛だけはふやすということはいたしません。
  30. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 日本の経済の安定とか或いは一般的な条任、これは勿論日本政府が定めます。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 日本政府が定めますが、その安定及び不安定、許す許さんの限界はどこに目安を置くのですか、どの程度が安定であり、どの程度が不安定であり、どの程度で許し、どの程度で許さない、その限界はどこにお求めになるのですか。
  32. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは諸般の国内の状況を見て判断を下すよりいたし方ないのであつて、そういう、幾ら国民所得があれば安定して、幾らなければ不安定だという勘定は、それだけではできないのであります。これはもう常識的に判断する以外に方法はないと考えます。
  33. 羽生三七

    羽生三七君 時間の関係がありますのでここで首相外遊問題にについてお尋ねして、それから若し時間が外ればほかの問題を一々お尋ねしてみたいと思います。  実はこういう首相外遊というのは、或る意味においては個人的な問題かも知れませんが、そういうことに立入つて余り伺うのもどうかと思うのでありますが、併し非常に重要な問題でありますのでこの機場合に差支えのない限りのお答えを頂きたいと思います。  緒方副総理は、先日日商総会に出席して、首相外遊問題に触れまして、アメリカに行つた際に防衛問題の解決を図りたいと述べております。そこでここで特にお尋ねしたいことは、解決にもいろいろありあります。例えば、日本経済の限界をアメリカに示してアメリカの要求を緩和せしめる方向をとられるのか、それとも更に援助を懇請することによつて自衛力の増強を、更に計画されるのか、この問題であります。どの方針をおとりになるか、これはいささか立入り過ぎておるかも知れませんけれども、併し問題が非常に重要でありますのでお差支えなかつたらお答えを頂きたいと思います。
  34. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の外遊問題についてしばしばいろいろな方面から開かれますが、これは相手国の都合もあることであつて相手国の都合等も問合せてあります。又国内における今お話のような問題、若し行くとするならどういう問題を考えるべきかということも研究はさしておりますが、併しまだ決定はいたしておりません。私は出かけたほうがよいとは考えておりますけれども、併し今、お話いたしたように相手国の都合もありましようし決定はいたしかねております。併しながら準備だけは進めさしております。そういう状態であります。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 どうも準備だけだと質問がしにくくなつてしまうのですが、併し緒方副総理がわざわざ日商総会に出て、渡米の目的のやることはこれだと、総理の代理である副総理が議会の外で演説しておるのですよ。だからそれに基いてもうちよつと正確な御答弁を頂かないと困ると思うのであります。それをどういう方針をとられるかということ。  もう一つは、やはり緒方副総理が中国問題の解決に対して日本が何らかの指導的立場を以てその問題解決役割を果したいということを述べておられますが、これもやはり首相はまだ予定だけで方針がないからとお答えでありますか。併し首相の代理である副総理、が議会の外で演説をやつておるのですよ。だからこのMSA協定の審議をやる委員会ではもう少し正確な御答弁を得たいと思うのであります。
  36. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今私が申したことが本当の事実であります。緒方君の演説については実は私も前以て協議にあずかつたわけではありませんから、こういうことを言つてもらいたいということを依頼したのではありませんが、緒方君としていろいろ考えておられるようです。その考えの中にそういうことがあるかも知れませんが本人は只今研究中であるとお答えする以上にどうもお答えのしようがありません。
  37. 羽生三七

    羽生三七君 次の質問は研究を要さない問題なのであります。首相のもう即断で御答弁願える問題でありますが、ちよつと非常に立入りますがお許し願いたいと思います。世間では汚職に関連する内閣の危機を保守合同外遊によつて活路を見出さんとするという厳しい批判が行われております。これは現政局と関連してのことでありますが、これはもう緒方副総理のこととは別に首相みずからこの問題に対しては明快なる御答弁を頂きたいと思う。
  38. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 明快にお答えいたしますが、私の外遊と汚職事件とは全然関係がありません。
  39. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 羽生委員、時間が参りました。ほんの一、二分です。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 実はこの問題を私重ねてくどくは申しませんが、緒方副総理保守合同首相外遊前提条件であると演説しておるわけなんです。だから私はお尋ねしたわけです。  最後に、まだいろいろお尋ねしたい問題がありますが、時間がございませんから一点だけ申上げますが、それは岡崎外務大臣と並べておいてお尋ねするのは、審議上どうかと思うのですが、先日岡崎外相は衆議院のそと日米協会の席上で、ビキニ被災に関係いたしまして衆議院の決議がありましたが、これに対して原爆の実験に協力する、そう演説されておるのであります。ところが両院で明らかにこの国際管理の決議を行なつております。その中には実験禁止という言葉は人づておりません。確かにそれは岡崎外相の言われる通りであります。実験禁止という言葉は入つておりませんが、併し精神としては両院の決議はそれをも含めた私は非常に厳粛なものであつたと思うのであります。だからそういう場合に、いやしくも両院の決議を以て世界に訴えるべき時期に、而もインドのネール首相初め世界各国がこれに非常な関心を持つて、軍縮委員会に何らかの意思表示をせんとする瞬間に、当の問題の国とある日本の外務大臣がそういう御発言をされることは私は問題だと思う。むしろ言わぬは言うにまさるというのは私はこれを指すと思うのでありますが、むしろ黙つておられるべきである。私はこれは非常な重大な問題であると思いますが、かような決議が院で行われた場合にかような御発言をなされることが外交上適当とお考えになりますか。
  41. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 所管事項でございますから私からお答えいたします。決議には実験禁止ということまで含まれておるとおつしやいますが、成るほど参議院の決議には実験のことは何も言及してあり観せん。だから含まれておるかも知れません。併し衆議院の決議には原爆実験に対する被害防止ということが入つておるのであります。被害防止という以上は実験を認めるという意味がなければ被害防止ということはないのであります。従つて実験はしてはいかんということは決議の中にはない。併し実験をしないようになることは望ましいことで我々も極力努力、するが、それは両陣営の国両方に適用されなくてはならないので、その片方だけに実験を妨げるというのは適当でない。従つて、両方の国に対して適当な原子力の管理が行われるまではやはり実験をいたさなければならん。いたさなければならんとすればこれを故意に妨害することは適当でないと、私はこう信じております。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 総理から、一体今のビキニ問題に関する両院の決議をどういうふうにお考えになつておるか、この機会にそれ国際的に応える御意思はないかどうか。外相のお言葉は結構ですからそれに関連して総理自身からお答えを頂きたい。
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。私の休んでおる間に起つておる問題で、実はまだ十分研究いたしておりませんから研究いたした上でお答えいたします。
  44. 曾禰益

    ○曾祢益君 総理大臣MSAの問題で国会にお出になつて、そうして十分に国会議員との間に質疑応答をされる機会というのは、甚だ遺憾であるけれども今日のこの委員会だけになるのではないかと思うのです。これは総理の突然の御病気の結果であつたの、でありまするが、従いまして私は是非総理に、従来とかくこういう問題について成るべく簡単な答弁、成るべくいわゆる核心に触れることを避けたような態度でなくて、この重大な問題について国会を通ずる唯一の総理国民との間の接触の機関であり機会であるのでありまするから、十分に隔意なくお答えを願いたいと特にお願いしておく次第でございます。  第一に、私、このMSA問題について総理も先ほどの御答弁にも認められておるように、何といいましても日本の防御力増強ということとアメリカの駐留軍が漸減する方針というものが相待つて、このMSA受入といわゆる自行隊の創設というような日本側の防衛力増強に関係があるわけです。相関関係がそこにはつきりあると思う。従つて実はすでに昨年の十一月の参議院の予算委員会においても、私は、日本の防衛計画というものはアメリカ軍の漸減に即応して日本自衛力増強のいわゆる、長期的な計画或いは見通しというものがあつて、その上に立つて日本の防衛方針の大まかなものがきまつて、それに基いて日本の二十九年度の防衛計画が予算化される、こういう順序が当然ではないか。こういうことを御質問したのに対してその通りである、それが常識的である、こういうお答えであつたわけ、あります。ところが今度の議会いに対する提案を見ますると、二十九年川の防衛計画だけはあるけれども、三十年度或いは三十一年度、いわゆる逐年の防衛計画というものに何も触れておらない。そうして保安庁長官によると、三十年度についても一種の見通し、目安を持つておる。例えばそれは陸軍は二万で海軍は六千、或いは空軍が八千六百ですか、これは目安に過ぎない。こういうようなお答えでございまするが、併しこれは私たちとしては日本国民全体としてはMSAを受入れてそうして増強に着手する、併しアメリカとの間のそれらの相関関係については何もわからない、これでは画期的な増強に際して国民が不安を持つのは当然なんです。でありまするからこの日本の増強の或る種の限界というようなものについて、政府はこの際明確に国民に安心を与える、このことが必要だと思うのてありまするが、この点について総理の決心を伺いたいと思うのであります。
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) よく計画々々といわれて計画が立てば結構でありますが、今日日本状態といたして経済力も微力である、又一面には原子力などの問題があつて、各国といえどもイギリスその他もいわゆるニュールックとか何とかいうので従来の防衛計画を変更せんとしつつあるときであります。普遍のときには長期計画なり何なり立つべきでありますが、日本だけの実情からいつてみても又世界的の原子力等の研究からいつてみても、英米その他も従来の計画を変更しておるようなときでありますから、私は長期計画というものを立てることは常識であし立てることがいいと思いますけれども、これを立てたために果して国民が安心するか或いは安心しないか、この点は私は問題であると思います。計画ということは結構なことで、ありますが、現在の日本としては長期計画を立てるのはまだ早い、又できにくいことではないかと私は思うのであります。併しながら関係責任大臣、主管大臣においてはそれぞれ見通しを付け、又究究を急いでおらるることは当然、ありますが、今のあなたのお話の長期計画立つべしということは常識的であるが、併しながら今日の日本においてはどうか、私にこれに多少の疑いを持つております。
  46. 曾禰益

    ○曾祢益君 おつしやる点でわかる点もあるのです。それはいわゆるニュールックというか戦略の変更ということもありましようし、殊に財政の長期的の見通しが立てにくい、かような関係でいわゆるペーパー・プランを作つてもこれは何人も満足できないでしよう。併し私は逆にそれでは伺いたいのは、総理のお考えではアメリカ駐留軍をいつまでも日本に置いておくというお考えでない、これははつきりしておると思うのです。でありまするからアメリカ駐留軍が漸減するのに即応して、アメリカ駐留軍が要らない程度日本自衛力を増強してゆく、こういう一つの基本方針に立つておられる。併しそれは財政の目途も立たないし、戦術、兵器の革命もあるだろうからそれを内容的に具体化した各年度の長期計画はまだ立てられないから研究中である、方針アメリカ駐留軍をいつまでも置かないという、これととつて代るというような計画或いは基本方針というものをとつておられるのかどうか、その点を伺いたい。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 米国政府としては長くアメリカの駐留軍を日本に置きたいという考えはないことは御承知の通りであります。又日本としても成るべく国力の回復と共に日本安全独立は自分の手で守りたいと考えておることも当然でありますが、今お話申した通り、現在の日本としては長期計画を立てるのに未だ適当な時期でないと考えますから、研究はいたしておりますが今直ちにこういう見通しであるとか、こういう計画を持つて進むという政府の計画は政府としては持つておりません。併しながら関係省としてはそれぞれ研究を進めております。
  48. 曾禰益

    ○曾祢益君 それではどうもこま切れ的に増強されて、一体どこまで行つたら限界なんだかということが国民には納得できない。これが非常に不安の種の一つであろうと思うのですが、然らば今度は防衛の方式について、先ほども同僚議員のかたからの御質問がありましたが、政府のいわゆる日本の防衛の基本的な方式はアメリカ軍が全部いなくなつて日本の防御力だけで守るという方式を考えておられるのか。それともアメリカその他の諸国とのいわゆる協力の下にやつて行くのか、日本側の自衛力はそのときの限度に応じてこれを持つといういわゆる集団防衛方式といいますか、さような計画の一環としての自衛力のことを考えておられるのか、これは計数の問題よりも基本的な考えでありますからはつきり伺いたいと思うのであります。
  49. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今のところは日米安全保障条約によつて打立てられた原則で参るつもりでおります。
  50. 曾禰益

    ○曾祢益君 日米安全保障条約でやつ出て行くが、併し安全保障条約そのものが安全保障条約の終了を一定の条件の下に規定しておるわけです。それはもう御承知のように日本が個別的自衛力を十分に持つたとき、或いは国際連合の安全保障の能力が十分になつたとき、何と言いますか、地域的集団保障と言いますかそういう別なものができて、その結果が日米両国ともにこれで日本附近の平和と安全が十分だと思つたときにはこれに代るということを予想しているわけです。従つて日本自衛力の増強が或る程度進んで行きますると、安保条約に代る一つの防御体制というものができることを予想している。でありまするから総理が今言われた只今のところは安保条約による。それはその通りだと思うのですが、そういつたようなものをもう少し長期的に見通したならば、一体どういう防衛計画か、飽くまで自力防御で行くのか、或いは集団防衛方式をとるのかこれらの基本的な構想はおのずとなければならないと思うのでもう一遍はつきり伺いたいわけであります。
  51. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは只今申した通り長期計画を立てるということは未だそのときでないと考えておるのでありますから、駐留年の撤退のときに至れば勿論計画は立てなくちやなりませんが今のところは長期計画は立てることができないのが本当であると私は考えます。
  52. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうもそういう通り一遍のことでない、国民の深刻な悩みに対してはつきりとした方向をお示しになるべきだと思うのですが、時間がありませんから次に移ります。  只今原子力問題について若干の御質問があつたのですが、私はいわゆる言葉尻をとらえるわけではありませんが、これは総理におかれても御病気中といえどもこの大きな問題については非常な大きな関心を持たれておつたでありましようし、この原子力問題に関する少くとも第一にビキニ環礁事件に対する外交の基本については当然に必要なる外務大臣に対する指示をなされたことだと私は思う。従つて簡単に伺いますが、このビキニ環礁事件については我々が常に申上げているように、この不幸なる事件についてはいわゆる無責任な反米闘争というふうなものを考えておるのは極く一部の国民に過ぎない。何人もそういう気持ではないが、やはり責任が明らかな以上は、この問題についてははつきりとアメリカに対して外交交渉を行い責任の所在を明らかにし、責任をとらせる。それから損害賠償を十分にやらせる。更に将来の保障も完備させるという基本方針で外交を進めることが正しいと私どもは考えるのでありますが、その基本的な考え方について総理の御意見を伺いたい。
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは只今申した通り私の病気中でありまして、問題の真相等についてはまだ十分研究いたしておりませんが、すでに国会において議決されたことでもありまするし、又国会の議決の精神に基いて政府としても成るべく早く米国政府との間に交渉をいたすように外務大臣においていたしておるはずであります。又そうしてもらいたいということを私も希望を述べておきました。
  54. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは甚だ失礼ですが二つの問題を混同されておるのではないかと思います。私が今伺いましたのは、いわゆる被害事件の外交交渉と国会の決議のほうはあとで伺いたい原子力の国際管理及び兵器禁止のほうでありまするから、国会は別に外交交渉についてはこれは相手方があることでありまするから、国会はそういうものについて政府の手を縛つておらない、別に決議等はされておりませんがただ基本方針についてはこれは総理が十分に基本的な方向は御指示あつて然るべきだと思う。殊に世界においてもこの問題に非常に正大な関心を持つて国際問題となつておる以上は、当然に被害事件についてもこれをすつきりした形で解決する、この産本方針がなければならないと思うので伺う次第であります。
  55. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申した通りこの問題を等閑に付する考えはないのであつて、又米国政府としてもこれをこのまま打つちやつておく考えは持つておらないようてあります。従つて日米の間にこの問題について交渉が不日開かれることであり、又すでに予備交渉は開かれておるようでありますから、暫くその結果についてお待ちを願いたいと思います。
  56. 曾禰益

    ○曾祢益君 第二の原子力国際管理及び兵器の禁止、又でき得るならばそれを待つまでもなく原子兵器実験についてこれを成るべく一際的に規制して行く、両陣営ともに。かような方向についても総理大臣の当然この大きな問題についてのお考えがなければならないと思うのでありますが、国会の議決に対する総理の御所信を伺いたいと思います。
  57. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申した通り重大な問題でありまするからよく経緯を承知いたした後に私として方針を定めるということは私は当然であると思います。
  58. 曾禰益

    ○曾祢益君 先ほど総理も言われたように、アメリカがいわゆる戦略的のニュールックといいますか、さような戦略方針の変化と相待つて御承知のように共産主義諸国が仮に侵略的な行動を今度とることがあつた場合には、いわゆる大量的な報復手段をとる。これを何と申しますか戦略の中心にして発表しておることは御承知の通りであります。そこのよしあしについては別といたしまして、さような場合に安全保障条約の下に日本に駐留しているアメリカ軍隊が当然にこれは日本と相談なしに、国際平和と安全のためという名目にせよ、外国に出撃して行く。つまりその場合に大量的な報復行為即ち原子兵器の使用を伴うようなことがあり得ると考えられますが、かかる重大な問題についてはアメリカとイギリスとの間でもいろいろな秘密な外交交渉があり、少くともイギリスの基地から出発する原子力攻撃ということについて、イギリスに諮らずしてアメリカが勝手にやるということはない、しないような確約をされておるやに附いております。これは外国の事例でありまするが、国民気持も当然に日本政府としてはそれらの点についてアメリカの勝手な独断的なかような大量的な報復行為の発動はいけない、当然日本と協議の上でなくてはいけないということについては十分に確約をしておくべきだと思いますが、その点は如何ようにお考えになり、如何に措置しておられますか、伺いたいと思います。
  59. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申した通り重大なる問題であり国際的関係もありますから、十分私において研究した上でお答えをいたします。
  60. 曾禰益

    ○曾祢益君 かような重大な問題でありまするので御研究に結構でありまするが、時間はどんどん進んで行くのでありまするから、基本的な方針についてはむしろ速かに国民に安心を与えて頂きたいと考えるわけであります。  次にジュネーブ会議に対する日本側の心得でありますが、すでに同僚議員からも提起されましたように、中共に対するいわゆる統一的な警告等には加わらないというはつきりした御答弁があつて、そのことは我々も誠に了承するのでありまするが、中共の問題についてはこれ又総理外遊される機会に、これは決して日本が指導的立場に立つとかそういう大それた見地ではなくて、米英両国の間のこのジュネーブ会議を機会といたしまして中共の問題はどうするかということが非常に大きな自由世界の間の争点であつて従つてダレス氏がジュネーブ会議前に特に英仏を訪問するというような点もここに基本が関連していると思うのでありまするが、総理はこの中共の処遇につきまして、中共に対する承認の問題或いは中共貿易等については、いろいろなお考えがあろうと思うのでありまするが、外遊等の機会に日本側の気持を十分に伝えて、でき得るならば米英の間の意見の接近のために御努力を傾けられるおつもりがあるかどうか伺いたいと存ずるのであります。
  61. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私見を述べれば、この極東における安全といいますか、平和を増進せしむるためにも中井問題について英米の間に意見の相違があるということは、問題の解決の上においてもよくないことであると考えますが、併しながらこの承認問題の由来するところは相当長い関係があるので、一概に簡単に協定と申しても協定はできにくいであろうと思います。協定することについて或いは協定の案とか或いはいろいろなこれに附随した問題等について十分な提案といいますか、考えがきまつた上でないと、英米においても今までにおいての関係からみて直ちに承服はむずかしいと思いますが、この問題は十分に私においても研究いたしたいと思つております。
  62. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは総理にもいろいろお考えがおありでしようから、具体的なことを伺つておるのではなく外遊されるならばこの点についての御奮闘を心から期待するものであります。  次に憲法問題について伺いたいのでありまするが、総理憲法は改正しない、再軍備はしない、こういう固き御決意だと我々はたびたび承つておるので、私はそれをそのまま信用して行くべきだと思うのであります。ただ憲法解釈問題については我々から言えば納得できない、憲法の空文化が行われている。こういう重大な政治責任を追求しなければならないと思うのでありまするが、さて、その改正問題について自由党の中でも憲法改正のためにというと語弊があるかも知れませんが憲法の調査会を作つて、改正するとすればどういう点を改正すべきかというので、必ずしも再軍備問題だけでなく広く研究されていると聞いております。そてで私は総理が常にお考えになつていると思うのですしその片鱗をいろいろ承わつているように憲法の改正は適当でない、殊に外交上日本が再軍備にいわゆる大びらは乗出すことは現在国際上おもしろくない、こういうことから憲法は改正しないほうがいい。こういう気持を持つておられると私は確信しておるのですが、併し憲法を改正しないことはいいけれども、外交上改正しない、そうして外交上再軍備に乗出すと工合が悪いからという一種の障壁としてこの憲法を抑えておく、併し同時に逆に憲法の明白に禁じておるような事実上の再軍備のほうはどんどんやつて行くというのでは、却つて国民に対し憲法に対する信頼という重大なこの問題を犠牲に供する結果になるのではないか。かように考えるのでありまするが、総理の御見解を伺いたいと思います。
  63. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 憲法問題はかねて申す通り、軽々に憲法改正などということは考えるべきものではないというのは私の確信であります。従つて単に再軍備とか何とかいうような問題のためとか、或いは又憲法は改正せずに事実上再軍備をいたしておるというようなお話でありますが、これはしばしば申す通り国会がある以上、民主国である以上は国会承認なくして国会、自民の知らざる間に再軍備の事実ができたということは想像もできないことであると私は確信しておるのであります。故に再軍備の問題について或いはその他の問題についても、国民なり政党なり国会なりが十分に研究に研究を重ねた上で憲法改正をするのはとにかく、今日のところ直ちに憲法改正というようなことに突き進むということはどうであろうか。自由党において憲法問題を調査いたしておるのは、日本の現在の憲法というものはどういう精神であり、どういう運行をいたすべきであり、又どういう運行がされつつあるか、憲法問題は絶えず重要な基本法律でありますから政党として絶えず憲法の運行なり、或いは又現在、将来に亘つて憲法問題等を十分に研究するがいいというので調査会を作つておるのであります。故に調査会が直ちに憲法改正を目途にいたしておるのではなくして現在の憲法如何によく運用するか、如何なる前例を作つて行くか、或いは又現在の憲法をどこまでそのままにしても、どこまでもよく運用ができるかというような問題等についても十分な調査を進めるようにといつて、研究調査会をいま設けているわけであります。必ずしも改正を目途といたして調査会を置いているわけではないのであります。
  64. 曾禰益

    ○曾祢益君 時間がありません。最後にこの憲法改正問題について、私は先ほど申上げたように、総理憲法を改正しないほうがいいという、或いは現状においてと言いますか、確信でやつておられる一それがいろいろの対話考慮なりということはわかるのですが、併し中には国民は、だんだん憲法九条が事実上無効になるような再軍備がなされて来て、或る程度になると国民は、もうこれは、九条二項は殆んど空文だというのを見計らつて、いわゆる世論の成熟するのを待つてうし憲法を改正する。それまでは今この憲法改正問題を或いは国会で議決し国民投票にかけるというようなことがあると、これは万一政府憲法改正論が負けないまでもいわゆる国論が非常に大きくわかれて、積極論、消極論が非常に接近しているようなときにこの問題を解決するのはまずい。従つて一方における既成事実の進行と他方における国民の気分の転換等を待つて、いわゆる改正待ちだ、それまでは改正は研究するということで、最後には幕を引いて見ると、これはもう改正を圧倒的な勢力でやつてしまう、こういうようなことだと。かように誤解、或いは曲解かも知れませんが、そういう見方をする向きもある。そういうことでなくてやはり憲法は改正しないのだという確固たる信念にお立ちになつておるかどうか、もう一遍明らかにして頂きたいと思います。
  65. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 憲法を改正しないということも、これはいわゆる憲法が万世不易であるべきはずではないのであつて、そのときの事情によつて、国勢の進歩なり或いは外交の事情等によつて憲法改正ということはあり得るところであります。併しいずれにしても私は再軍備のためのみに憲法は改正しないということをはつきり喧しておるのであります。将来は将来であります。国民が要処して憲法を改正するということの必要を国民が自覚する、或いは世論の風潮がそこに至れば、これは政党としても又その風潮に従うべきものであります。併しながらその風潮を故意に待つておるかとおつしやれば、故意に待つておりません。
  66. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私がお尋ねしようと思つたことは前の三人の同僚議員がお触れになつておるのであります。おるのでありますが、非常に大事な問題でありますから私の観点からお尋ねをしておきたいのであります。それは幸い総理がこの委員会にお出になりましたから、根本の問題についてお尋ねをしたいのでありますが、私が第二におねしたいと思つて総理のお手許に要項を差上げておいたのは外遊の意思がおありになるかどうかということを伺つておりますのは、外遊されるかどうかということは日本の国内の情勢もあり外国の今お話のように先方の意見もございましようから今御決定はできないと思います。併し外国においでになる意思のおありになることは、先ほどから同僚議員の質問にお答えになりまして、例えば羽生委員質問に答えて出かけたほうがよいと考えておるということでありますから、おいでになる御意思のあることは大体了承いたしたのであります。そこでなぜ総理がおいでになることを必要とされるかという総理のお考えを伺つておきたいのであります。と申しますのは、このMSA協定の内容の事実的なことは詳細に本委員会で研究中であり、衆議院においても研究いたされました。併しこのMSA協定一つの転機といたしまして、日本がサンフランシスコの条約以来、できておつた国際関係一つの転換期に入るということだけは殆んど争うことができないと思うのであります。そこでどういう転換期に入るか、この結果日本世界との関係がどう坐るかということが国民の大きい関心の的であると思うのでありまして、総理がこの際この協定が発効いたしましたあとで外遊したいとお思いになるのも、このほかのこともおありになりましようが、MSA協定ができて日本に新情勢が発生するということが根本になつておると思うのでありますから、そこで私がお尋ねいたしたいと思いますのは、第一に日本として一番大切なのは何と申しましてもアメリカとの関係でございます。そこで現職の総理大臣としておいでになるのであつて、従来いろいろな政府関係の方もおいでになつておりますけれども、今度総理大臣がおいでになるのには日本国民が非常な注意をしておるのは勿論でありますけれども、日本の占領中及び占領後殆んど六年に近い五年何カ月の間政権を担当された総理大臣が初めて公の資格でおいでになるのでありますから、世界がやつぱり非常な関心を持つてこれを見ると思うのであります。そこで総理大臣お話世界に非常な影響を持つと共に、又その片言英語が日本国民を義務付けると思うのであります。コミツトすると思うのであります。長い間外交官の経歴をお持ちになつ総理大臣でありますから、勿論非常に慎重な行動をされるとは我々も信用をいたしますけれども、同時に日本国民としては今度の外遊というものを非常に若し起るならば重大と考えております。そこでお伺いしたいのでありますが、総理が今若し情勢が許して外遊される場合にどうしても外遊をする必要があるとお考えになるその基本的なお労えを伺つてみたいのであります。
  67. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。今お話のように今国際的に考えてみて転換期にあるということ私もそう思います。この転換がどうなるかということは日本の将来の運命にも関係しますのでよく私も実情を承知いたしたいという希望を持つて、それから又日本に対して今お話のように米国が従来非常な好意を示してくれまして、終戦直後食糧のないときには食糧を持つて来てくれる、或いは又脆弱な日本の経済が今日まで持つたのは、アメリカ援助により或いはアメリカ投資によりその他の好意によつてここに至つたということもこれは事実であり、率直に私はアメリカに感謝するがいいと思います。同時に将来の希望についても率直に述べることがよくはないかと思います。それから又併しながら、これはいい方面でありますが、同時に日本に対する随分深刻な誤解もあります。米国自身においても誤解があると思います。又その他の国においても誤解があり、この誤解日本の将来からいつてみてどうしても解かなきやならんと思います。それが私が適任なりや否やということは問題でありますけれども、とにかく誰か行つてこの日本に対する誤解、例えば日本は軍国主義であるとか或いは日本は経済的に使い労力で貿易を撹乱する、いろいろな誤解があります。これは私が一々申さなくても鶴見君は私よりも御存じでありましようが、そういう誤解日本の進路に相当悪影響を及ぼし、又将来においても重大な結果を生じやしないか。何してみても日本は、貿易の今日の逆に対しては勿論のことでありますけれども貿易の進展によつて日本の経済を確立いたして行かなければならんためには、外国の誤解を解くと共に、外国の信頼といいますか、親善関係を増進して行かなければならんと考えますが、その増進をするためには相手方の国情を承知いたしておきたいということもありますので、この転換期において私が行つつてみたい、併し私が適任なりや否やということは別問題でありますが、私が行かなければ誰か適当な人を派出してよく国際事情について研究を一層進めたい。まあこういう考えからとにかく相手国の都合さえよければ又内外の情勢等許すならば行つたほうがよくはないかとかねて考えている次第であります。
  68. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 大体のお話はわかりましたが、今のお話では世界の情勢をその場でよく見届けておきたい感謝をしたい、日本国民の希望を述べたい、又誤解を解きたいという抽象的な今の御希望はよくわかります。併しおそらくは外国は吉田総理大臣の公式な資格でおいでになるについては、もつと具体的なことを期待するだろうと思うのであります。例えば私のお伺いしておきたいと思いますことは、アメリカの外交方針が時によつて非常に変るものでありますから、殊に最近のアメリカ世界の指導的な地位に立つてから、従来のような人道的な、或るアメリカ人が悪く言うセンチメンタルな外交から離れて非常に現実的になつて来た。そこでアメリカ日本に対する期待も非常に現実的な具体的なものがあると思うのであります。勢い総理大臣がおいでになればそのアメリカ側の希望は出て来ると思います。その場合に総理大臣がおいでになつてお話になることが、サンフフンシスコの条約及びこのMSA協定を結ばれた当事者としての総理大臣でありますから、アメリカとしてはそれを非常に長く日本国民の考えとして受取るだろうと思います。それで私の具体的にお尋ねしたいということはこういう点であります。今総理大臣世界戦争に関する情勢は緩和したと考えておる。私も総理大臣だけの情報は打つておりませんけれども、全然御同感でありまして、後に又具体的に伺いたいのですが、戦争の形勢は緩和しておると思います。思いますが、アメリカの今日の外交のやり方は非常に現実的になつておりますために、ソ連反対して戦争を避けるためには力以外は納得しめる方法はないということを露骨に考えておるということですが、そこでその政策を持つて日本アメリカ期待することは相当日本の今日の実力以上の軍事力を考えておるように私は思うのであります。そこで私は総理大臣がお出でになりましたら、この日本の実力、それは経済上の問題でもあり或いは人間の数の問題でもありますが、日本国民感情の上からも非常に重大なものがありますから、今日本誤解を解くという御説明の中にどうしてもなさる必要が起つて来ると考えるのであります。そこで私はすぐアメリカ人が必ず聞くと思うのは、日本における共産主義思想の蔓延ということであろうと思うのであります。それが日米間の問題の調整を邪魔しておるというふうに考えております。私個人としてはそれはアメリカ人の日本の研究が不足であると思つておる一人であります。ですから総理大臣がお出でになつて御説明になれば、総理大臣が共産党員に好意を持つておられないということは非常に明白でありますから、非常に説得力がある。それから私は日本国内において例えば非常に大きな再軍備に対する一つの抵抗がある。アメリカ期待するだけのものを持たないという抵抗がある。それをすぐアメリカ人は日本における親ソ的な思想の賜われだと考えるのに対して、これをはつきりとそうでないのだ、日本にはそのほかにこういう事情があるのだということを御説明なさることが、私は総理大臣の非常に大きなお仕事だと外から考えておるのであります。この点は総理大臣は、甚だ抽象的に伺いましたが、どういうふうにお考えになるのですか。
  69. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話通り日本における共産主義の勢力についてはアメリカは相当重視しておることは御承知の通りであります。なぜならばアメリカ自身においても相当共産主義なるものが侵潤いたしておつてマッカーシイの問題なんかもあるので、遠くから見たアメリカとしては、日本においては果してどれだけの勢力があるか、アメリカの今日重大に考えておることは共産主義との戦いでありますから、日本における共産党の動きということについてはむしろ過大に評価いたしておるのではないかと思います。これらについても誤解と申せば誤解或いは警戒であるかも知れませんが、日本の実情について私から説明をいたしたいと思います。何分人種が違い、今まで向うも目のかたきにしておつた言つても差支えないのでありましようが、随分日本に対する或いは東洋に対する米国一流の誤解があるように思いますから極く率直に事情は説明いたしたいと思います。併し私自身も共産主義の実情がこれだけの勢力があるとかないとか申しても、これは地下運動が多いので或いは思想的の問題が多いので、私自身が把握いたしておらんかも知れませんが、材料は相当集めて参りたいと思つております。
  70. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 只今総理大臣が片言隻語の間でありましたけれども、アメリカ日本における共産主義勢力を過大評価しておるように思うというお言葉があつたので、私も非常に意味のあるお話と伺つたのであります。私がただ余計な心配をして今お尋ねしておるのは、今アメリカの国論がルーズベルト時代とは逆に百八十度の転換をしておるときに、総理大臣がお出でになつてその当事者とお話になることが今日現在のアメリカ政策のために日本がコミツトされるようなことになると非常に危険だと考えましてお伺いしたわけでありますが、今の抽象的な御答弁ではありましたが大体趣旨はわかりました。  そこで第二の問題をお伺いしたいのでありますが、それはMSA憲法との関係であります。というのはMSAの審議をいたしておるときに必ずついて来る問題は憲法違反にはならないかという点であります。議論を聞いておりますと、MSA協定の准行とそれに随伴する表裏一体をなす日本の防御力の増強ということと憲法、特に九条との関係が紙ひとえの関係にあるということがたくさんあると思うのであります。従つて政府委員のお答えなどが聞いておつていろいろ違うように感じられることが起りますのは、非常にこの関係が微妙だからだと思うのであります。外務大臣がしばしば日本は主権国であるからこの憲法の問題は自分のほうで決定すべきだというふうにおつしやるのでありますけれども、現実日本アメリカとの関係は昔の日英同盟というようなものとは違いまして、余りに勢力が違いますから日本の自力で解決するのだからということは、それは法律上はそれで納得できますけれども、それは形式論で実際上ははなかなかそうは行かない。そこで憲法MSAとの関係がこれから始終国民の間の不安或いは疑惑として残ると思うのでありますが、そこで私は具体的に総理大臣に付いたいことは、総理大臣はこの憲法の裁定を飽くまでも厳格に、むしろ窮屈に解釈して行きたいという考えであるか。或いはこれを非常にゆるやかに考えて行きたいという考えであるのかということを伺つておきたいのであります。
  71. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は窮屈という表現がいいか悪いか知りませんが、いやしくも憲法の条にきめられたことを極く率直に飾り気なく遵守して行くということが憲法に対する国民としても政府としてもとるべき態度ではないか。これを曲解するとかいうことは無論ありませんが、併しながら厳格にも何にも極く常識的に、国民が納得行くような解釈で行くのが憲法解釈の正解であるのではないかと思います。促つて憲法の条章通り守つて行く。憲法を改正すれば別でありますけれども、改正するまでは極く常識的に憲法解釈して行きたい。又行くことが国民の信頼を得るゆえんであり、又外国の信頼を得るゆえんではないかと思います。そこに多少の何といいますか、技巧を弄するということは却つてよくないと思うので極く常識的に解釈して行きたいと思います。これは私見でありますけれども、私としてはそう考える。
  72. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 今抽象的に伺つたのですが、私が窮屈とか厳格と言うのは、具体的にこれからお心ねすればわかるのでありまして、例えば海外派兵の、問題であります。これを趣くゆるやかに考えれば、例えば敵が釜山から撃つたのだからこつちもそつちの基地まで行つて撃たなければならんということは、これは明らかに海外派兵だと思う。そんなら釜山から撃つなら撃つ。モスクワから足の長いのが来たらそこにも行くかということになりますと水掛論であります。そこで海外派兵ということは、この自衛ということをきめる具体的な線だと思うのでありますが、実際日本は海の国ですからはつきりしておると思います。それから例えばもう一つアメリカが若し大きな軍隊を要求するときも、これ以上無制限に軍隊を作つて行くということになれば、幸い保安庁長官もお出でになるが、これは志願兵ではできない、どうしても徴兵制に行かなければならない。徴兵制とか海外派兵ということは厳格に考えたらこれは憲法は許していないと思うのであります。  それからもう一つ重大なことは、この日本自衛ということを論じているときに、具体的に入つて参りますと二つのことが混雑して来る。一つは故なくして日本侵略して来た外国の兵力に対抗する場合は自衛であるということは常識で認められます。ところが不幸にして日本協定しておる或る国が国際戦争に入つた場合、日本は非常に近い所に存在しており、基地も貸しておりますから、日本国民が知らないうちに国際戦争に入つて行くかも知らん。そういたしますとどういう形をとつて日本人は国際戦争に入るということは日本憲法が許していないのであります。殊に私から言えば、この自衛軍ということについて国内の防衛と国際戦争と混雑した議論が非常に多いと思うのであります。私はあくまでも日本は国際戦争にはいる権限を今日の憲法では与えていないと思うのでありますが、この三つの点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  73. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これも私の解釈論は非常に常識的で素人論でありますがこれは国民の納得の行くような解釈でありませんと、国民が納得するような海外派兵ということが若しあればこれはとにかくでありますけれども、今日常識の上から言つてみて政府としても海外派兵は考えておりません。交すべきではないと思います。殊に戦争直後において今なお戦争の苦しみを国民が忘れ切らない今日において、再び戦争の惨害を繰返すということは国民感情がこれを許さんでありましようから、海外派兵ということは我我には全然考えておりません。それからして今国際関係から自然に捲込まれるというお話がありますが、私はこれは杞憂ではないかと思います。何となれば私の接触した部面から申しますと、米国政府は非常に日本国際関係なり米国関係なりを慎重に考えており、日本国民の誤解を生ずるようなこと、或いは疑いを招くようなことは成るべく避けたいという極く慎重な態度をとつておりますから、従つて国民反対するような問題に日本を引入れようということは米国人の気持から申してないと私は思います。そういう非常な事態が生ずれば別でありますけれども、普通に考えてみて今お話のような予想しがたい日本が国際戦争に引入れられるというようなことはあり得ない、生じ得ないのではないかと私は思いますが、若しそういう場合においてはこれは慎重に政府は考えなければならんと思います。いずれにしても戦争はもうこのへんで御免をこうむらざるを得ないと思います。
  74. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 総理大臣もそういうお考えでありますならば、これも若し外遊の機会がおありになつたときに、日本国民の大多数の人の考えとして外国にお伝えを願いたいとお願いをいたします。それで時間もございませんから第三の点をお尋ねしたいと思います。このMSA協定一つの転換期としまして、アメリカ日本に対して今日よりもつとたくさんの軍備を或いは防衛力を要求して来るということを考えるのでありますが、これは今羽生委員もお引きになりましたように、アメリカの下院の軍事委員会の分科委員会のほうでも報告しています。ダレス長官は上院で昨年三十二万五十人といつており、私がニユーヨークで会いましたアイゼンハワーの一番有力な支持者である知事のデューイ氏は百万人将来作つてくれと言つていた。即ち日本に対する要求が非常に大きいものがあるということは大体考え得ると思います。そこで将来アメリカはどうしても日本に対して今日より大きな軍隊を要求して来ると思うのでありますが、そこで起つて来る問題は一つ法律上の、憲法の問題でありますがもう一つは私は非常に重大なことは経済の問題になつて来ると思うのであります。そこで今日の窮迫した日本の経済状態でこれ以上の軍備を負担することは非常に危険である、国内情勢から言つて私は考えるのであります。それで総理にお尋ねいたしたいのでありますが、私は再軍備という字は嫌いなんでありますが、世間で言う再軍備という字を便宜上用いますれば二つの考え方があると思うのであります。一つ日本の圏内の治安を維持するために直接或いは間接の侵略に対処するとこういうことであります。これは私は自衛範囲だと思うのであります。ところがいま一つ漠然と国民の一部にあります考えは何かのときに自然に出て来ると思うのでありますが、それは将来日本がもう一度国を守つて外国に対抗できるだけの軍備を作つておきたい、その下抗えとして、丁度ドイツが第一次戦争のあとでノスケが警察隊の名の下に軍隊を作つて次の再軍備の支度をしたわけ、ですが、同じように今日の日本の場合でも例えば朝鮮の竹島の問題などが起るとそういう再軍備の議論が、しやべつておる人に無意識に出ておる。その二つの思想の混雑が非常に危険である。従つてアメリカのほうからもつと自衛軍をふやせというとそれに同調する考えが日本に絶無ではないと私は思います。そこに私は将来の日本の国防問題の危険があると思うのであります。今しばしばここで問題にになつておりましたビキニの水爆実験の話がございましたが、私個人の意見としては、あの水爆が起つたためにイギリスなんか非常に大騒ぎを議会でしておる。アメリカでは大変な狼狽をしておる。言い換えればあれで私は世界戦争に対する実際は変つたのだと思うのであります。戦争が不可能になつて来たのだと私個人は思うのでありますけれども、併しそうではなく水爆を使つて戦争するという考えもありますから、従つて日本に対して大きい軍隊を要求することがその心配が全然ないと私は言えないと思うのです。それを私は総理にお尋ねしておきたい、そういう場合に総理はどういう態度をおとりになるか。
  75. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。一つ訂正をいたしておきたいと言いますのは、ダレス氏が私に三十万の兵隊を置けといつたことはありません。
  76. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 アメリカの議会で…。
  77. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私に言つたのではありません。それから兵隊の大きさについてはいろいろな人がいろいろな意見を言つて知りますが、責任のある政府当局からはそういう話はなかつたのであります。日本が自主的にきめるべきである。ただ日本として考えなければならんことは、米国政府軍事費を節約したい、財政の緊縮を図りたい、従つて日本における駐留軍を少くしたいと言われますと、これは我々相手方の懐勘定も考えてやらなければならん、現に我々自身の懐勘定からみて海陸軍を持てと言つたつて打てないと言つておるにもかかわらず、相手方の懐はともかくとして、成るべく大きな軍隊を置いてもらいたいということは、これは技術から言つてみてもできないので、米国が予算を削る緊縮予算といえば我々も緊縮予算の必要を現に自分どもが認めておるのでありますからして、相手方に対してこれを拒むことはできませんから、駐留軍漸減ということを言われると応ぜざるを得ないと思います。事情も十分了解してもらわなければなりませんけれども、日本が直ちにこれに対して反対はできないのでありますから、従つて漸増ということはあり得ることでありますけれども、直ちにそれによつて再軍備まで持つて行くことは今お話通り日本国力が許さない。こんなことによつて増税でもすればいわゆる共産主義が起つて来て国民が反感を持つということになりますから、我々は再軍備なんということは軽々しく考うべからざるものだと確信しております。仮に米国政府がこれだけの兵隊を持つてくれと言つたところが、国力に応じないような軍備を曾つてつたために日本がこの災いをこうむつておることは国民の記憶に最も新たなところでありますから、この過ちを上再び繰返せと言われたところがこれは応ずることはできないと思います。又現に名前はちよつと差控えますけれども我々のとつておる国防の大きさと言いますかサイズは、まさに日本国に適当なサイズであると言つて大いに賛成を表してくれる有力者もあるのであります。でありますからして、日本が大きな軍隊を持つということはアメリカ側としては希望することでありましようけれども、併しながら又責任のある筋においては必ずしも何でもかんでも要求はするということは私はないだろうと思います。併しこれらの点については間接に、手紙とか人づてに聞いておる話でありますから、非常な、誰々がこう言つたということをここに発言はできませんけれども、米国政府責任のある筋においては、日本の国防については相当私は理解があると思います。でありますから、仮にぼう大な要求があつても、これに対してこれに応ずることはできないと卒直に育つても、米国人のことでありますから卒直にこれを受けるだけの雅量があると私は確信いたします。それで将来は将来でありますけれども、現在のところ米国政府日本にぼう大な軍備を強要するということは断じてないと私は思います。日本が自主的にきめるがいいということが初めてからの態度であるのであります。
  78. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 鶴見委員、もうほんの僅かの時間ですから。
  79. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 総理大臣がそういう御意見をお持ちならば、万一外遊されるときにはそれを徹底的にお話を頂きたいと思います。それには私は具体的にやはり理由があるのです。アメリカ人は日本は人口八千七百万ある、又海岸線が非常に広い、その割合でもつと持つべきだ。戦争前にあんな強い軍隊を持つていたのだからできないことはない。こういう考えを持つ人がたくさんあると思います。非常な違いは、非常に日本の持つている一つの危険は、今耐乏予算を政府言つておる。恐らく民間で産業の合理化が行われ行政整理も行われておる。これをしつ放しにすることはできないのです。ただ人を免職してそれだけじや済みませんから、そのどうしても基本的な工作として非常に大幅な、そうして徹底的な予算が準備された社会保障制度が先決だと私は思うのです。それがために日本の混乱した経済を先ず安定した線に持つてつてから経済の再建もできましようし自衛力の増強もでき、るわけでありまして、私はこの社会保障制度の充実ということを日本防衛力をやる前提条件に先にやらなければならんというふに考えるのであります。その点で私は今回の予算で社会保障制度がまだ十分計上されていないで、一見すれば防衛費だけがふえたという恰好になる。これを国民のためにも遺憾とし、又外国に対する日本の説明としても非常にまずい。こう思うのでありますが、そこで私は総理大臣にお伺いしておきたいのですが、総理大臣も私の今考えておりますような社会保障制度は今日のような窮迫した非常に危険な社会的要素を持つている日本に欠くべからざるものであるという強いお考えを持つていられるかどうか。又そこに日本の経済上の防衛費増強の限度があるのだというふうにお考えになりますかどうかを伺つておきます。
  80. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私も社会保障制度は結構なものでありしなければならんと考えているのでありますが、これは財政全般から考えるべきものだと思うのであつて社会保障制度を必要なりと言つて直ちにこれに重点をおくというところまでは私は確信がないのであります。財政の全局を按配してやつて行きたい。本年も社会保障制度は多少ふえているはずであります。乏しい中からも政府としてはその増額には努力いたしております。併し何ものをもおいて社会保障制度の増額ということまでは私は考えておりません。併し財政の許す限りこの問題も十分の予算を組入れたいと考えております。
  81. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 ちよつと私が総理大臣にお尋ねするのは厚生大臣や大蔵大臣にお尋ねすることじやないので、ものの見方の問題でございますから、私はどうしても社会保障制度によつて日本の生活の最低の水準を守るという点が確立してからでなければ、如何自衛隊作つても守るに価する日本というものができていなくては本当の防衛にもならんと思いますので、ただ考え方の基本をここに赴いて頂きたいということを申上げているので、技術的な数字を申上げているわけではございませんから、もう一遍総理大臣にこの点お考え直しを頂きたいと思います。何かそれについて御発言でございますか。
  82. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 伺つておきますという程度に。数字の点は危いですから。(笑声)
  83. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは丁度これで一巡済みましたので休憩をいたします。午後は一時半に再開をしまして直ちに質疑を続けて行くことにいたします。    午後零時三十五分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十四分開会
  84. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは休憩前に引続きまして外務委員会を開会会いたします。総理大臣に対する質疑を続行いたします。
  85. 高良とみ

    高良とみ君 午前中から御説明を頂きまして疑問に思いました点も大変に明らかになつた点が多くて感謝しております。三つの問題を挙げておきましたが、一番初めの水爆実験に関することにつきましては、先ほど岡崎外務大臣から御説明順いたわけであります。けれどもこれはほかの同僚議員からも御質問がございましたが、非常に日本としては平和国家であるということ、又力の誇示乃至はそういう原子兵器事を背景においてする武力の恐喝をソ連米国両方が若ししておるとしますならば、そういうデモンストレーシヨンに対しては平和国家はもつとほかの方法をとつて人道的な道をとつてもらいたいということを申出るのには日本は非常に重要な地位にあると考えますので、これについて日本が原爆の被害を受けたのは、それは一つの専売特許ではないというお話もあつたようでございますが、そうでなくどこまでも平和を推進するためには弱きを以て力とするという考え方も東洋の思想にはございますので、一つ原爆原子兵器の爆発実験には被害を少くするという消極的な方針でなく、もう少し積極的な世界中が心配しておりますることについて、日本は平和を希うことが切な国であり、又その被を経験した国であるから、特にこれは一日も早く国際管理や或いは兵器の実験は待つてもらいたい。こういうふうなことが言えるよい機会であつたのではないかと考えた次第でございまして、総理大臣はこの水爆実験について日本の国として外交のよい機会を持つており、又今後も外遊でもなさいましたときには非常によい、又そういうことをすべき使命があるようにお考えになるかどうか、その点をお示し願えれば私どもも大変にものの言いようがはつきりすると存じますが、如何でございましようか。
  86. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ほどの出題について私からして一応私見を述べておきましたが、現にこれは日本でも大問題になつておりますが、同時に国際的に大問題になり、又国連等においてもしきりに議論が行われておるよう、あります。即ち国際的に相当に研究もされ、議論もされつつあるものでありますから、日本として発言する場合には各国が受入れられるような形でもつ、て参らないと、徒らにその議論の種をまくようになつても面白くありませんから十分研究いたしましてお答えをいたします。先ほど申しましたが、私もこの問題については多少考えておることもありますからもう少し研究して、しつかりした確信を得た場合に私の意見としてはお答えをいたしたいと思います。それから同時にこれは平和、人道問題、いろいろな大問題でありますから、日本の国論としても十分研究された、洗練された結論を得たいと思います。でありますからして、国会におかれての議員諸君におかれても十分慎重にお考えを願いたいと思います。
  87. 高良とみ

    高良とみ君 御趣旨は、今後御研究願いますることは非常に有意義だと思うのであります。ただ多少日本からの実被害、或いは実際の平和を願う声が世界に伝わつておらない、よその国のほうが熱心に日本のことを心配しておつて、国内からも海外へは余りそういう声も出ておらないという注意等もあつたようでありまして、まあ民間人がもつと努力したらいいという要望もあるようでございますが、政府におかれましても出際の状況をただアメリカに対してのみでなく、世界人道の立場に立つて各国へこういう被害の結果こうであつたというような材料を御提供になつて頂きますように希望いたします。私は大臣の御趣旨はよくわかりました。  又二番目に挙げておきましたことは憲法の問題でございますが、憲法は改正しないという御趣旨と重ねて今日了承いたしました。が、そればかりではありませんで、今度のMSA協定と連関して国民憲法について深い疑義と不安を持つておりまするので、ただ改正は、まあときにいろいろ民法その他についてもあるかも知れませんが、憲法をもつと守つて行くのだ、殊にその、中の発布の当時の詔勅にありました通り、みずから進んで戦争を放棄したということがございまして、私はこれは永久に戦争は放棄したというような意思だと思うのであります。即ち宣戦布告をした戦争とか、或いはみずからよその地域に出兵するような戦争は放棄したど国民はあの当時の経過及び詔勅、前文及び九条で考えておるのでございまするので、これは一、二の党のかたがたの間に今日もう一遍宣戦布告をする権利、交戦権を持てるように九条の二項も改正しようという戸があつたりしますと、なお一般の国民は非常に不安に思うのでございます。私ども余り軍事的な知識を持つておりません者としては、自衛戦というようなものとももうそれは殆ど民族の滅亡或いは世界の破壊ではないかとさえも、多少油断かも知れませんが、そういう心配がございまするときに、一つ総理から国の根本法であるから憲法は守るばかりでなく、これは世界が一本について誤解をしておることがたくさんある。先ほどお話もありました軍国主義であろうとか、或いは反動、封建的になるのじやないかという心配もございますので、世界外遊する場合にも、平和憲法こそ日本民族の誤解を一掃する旗じるしであり、又日本は民主主義と平和憲法とで復興したのだということを世界にもつとよくわからせる御努力を癒えるかどうか。つまりこれが日本の国是であるということを国民にも迷わないように示して頂き、又世界にもこういうわけだから再び軍国主義は復活しないというような御指示が願えるかどうか。申すまでもないことかも知れませんが、その点の一つ御意思を伺いたいと思います。
  88. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本の新憲法のできた当時の気分を申しますと、御承知の通り第二次世界戦争は、戦争をおしまいにする戦争だという気分が世界的と言いますか、少くとも主要なる交戦国の間にはその気分があり、又その気分から憲法第九条の思想が出て来たわけでありますが、その後共産主義との争いが大分国際関係緊張せしめて、そこで水爆とかいろいろなものができた。この世界の思想の流れがどういうふうになつておりますか、これも又研究しなければならん一つの出題であると思います。無論私が再軍備はしない、憲法は改正しないという狙いの一つは、過去において日本は三平和を破壊する軍国主義国であり、世界の平和に危険な存在であるという考えを現に持つており、例えば豪州、ニユージラントにおいても現にそういう考えがあつて、そうしてとかく例えば真珠貝の同類にしましても、その他の問題にしても、その考え方は豪州人などのはらの中にはまだみなぎつていると思います。その他フィリピンにしても或いはインドネシアにしても日本のいわゆる大東亜戦争のために損害を受けた国においては、やはり日本国民戦争が好きなんだ、危険だというような何か誤解が随分あるために、賠償問題その他においても交渉がなかなか容易ならんというようなきらいがあります。こういう、日本国民に対する誤解は十分解たいと思うのでありますが、同時に又極端に申しますと、戦争はしない、それじや共産主義が勝利を得ても日本はかまわないのか、或いは日本自身が共産主義に賛成しておるのかというような誤解が一方において生ずる危険がありますので、日本立場としては相当そこに微妙なところがあると思いますが、併し私自身としては戦争はすべきものではない、とめることができたならば戦争ということが人数社会からなくなれば結構なことであり、その時代が来るのにはやはりなお相当ときがありましようから、余り極端な議論はできませんが、少くとも日本国民としては戦争は回避したい、現在においては日本の国論はそこにあると思います。決して戦争をやれ、再び戦うというような人は極く少数であつて戦争回避芳しくは平和論が多いと思います。その気分は十分説明をいたしたいと思いますが、如何にこれを表現するかということは相当これは注意を要すべきもので、表現の仕方においては相当注意をしなければならぬ問題ではないかと思います。思いますが、いずれにしても戦争は回避すべきであり、平和は大事であるというこの主張は、日本国民の主張として十分伝えたいと思います。
  89. 高良とみ

    高良とみ君 よく御趣旨わかりました。今回のMSA協定の間にも自衛戦というものがあり、ただ自衛権があるばかりでなく、又国連やその他の国に訴えて当分の間国内で抵抗して行くばかりでなく、更に進んで自衛戦の場合には敵の基地を爆撃することもあり、出かけて行くこともあるのだというような理論上の仮定の議論のようでございますけれども、そういうことが今までは余り日本国内或いは議会でも出なかつたのが、今回のMSAの交渉過程と殊に防衛二法案等を中心にいたしまして、そういう議論がかなり出ますために、国民の間では戦争にこりごりしたものは、また、徴兵に行くのではないか、或いは自衛戦という名においてよその国がしたような戦争もあるのではないかというような不安がかもし出されていることは非常に不幸なことだと考える次第でございます。でアメリカもまさかそういう名の下にそういう誤解はそのままでいいから武器を援助しようと、こういうようには考えていないと思いまするが、お説のような戦争をできるだけ避けていきたいという御趣旨からしても、内閣のかたがたが御説明になりまするときにも、日本自衛権はあるが自衛戦争というものは仮定し得ないのだ、又武器を持ち訓練もするけれども、いよいよ外から日本の領土を侵略して来るときのほかは、この武器は役に立たないでもこれは仕方がないのだというくらいなはつきりした憲法範囲内での御説明を頂いたほうが、国民の感情的な不安が一掃されるのではないかと考えます。大変くどいようでございますが、自衛戦というものもないのだ、ないように努力しているのだというお考えを御発表願えますれば、よほど影響するところがあると存じますが、岡崎大臣からでも結構でございますが、如何なものでございましようか。
  90. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 自衛権は勿論持つておりますから、自衛の行為はいたす場合があろうかと思います。併し自衛の行為はどういうものであるかといえば、これは国際法上はつきりした定義がありまして、何でも自衛のためということで出て行くわけにはいかないのであります。又日本としましては特にこの自衛権というものを狭く解釈いたすべきだと思います。従いまして自衛のために行う措置はまあ場合によつてはあるかもわかりませんが日本としては少くともその行為を以て戦争するつもりはないのであります。よその国は日本が防いだ場合にこれを戦争だといわれるかも知れませんが、我々としては自衛行為をいたすのであつて戦争するつもりは決してありません。又その行為の範囲国際法では一応認められておりまするけれども、それもできるだけ制限的に解釈して狭く取扱うべき問題だ、こう考えます。
  91. 高良とみ

    高良とみ君 もう一点。このMSA法の第一条にございますような日本アメリカとが合意をする第三国に向つて役務、装備、資材等を今後援助するということは、御説明によりますと、これはいろいろな必要な資材等のようでありますが、このMSAを受諾いたしましたあとの日本の姿を考えまするとジエツト機その他がたくさん日本側の手にも入りましようし、又現下の武器の発進からいたしまして、現在あります飛行基地なども遥かに大きなものになり、長いものになり、或いは岩国とかその他の方面を拡大いたしますと相当大きな基地ができる。又日本は兵器庫としてあらゆる軍需産業に域外買付の活躍ができると、少し拡大して想像してみますときに、その中の注文により或いは合意の上で東南アジア諸地域、これは朝鮮も含むかも知れませんし、マレー、台湾、仏印、インドネシアはどうか知りませんが、それらのものへ装備、資材を送りますると共に、相当な工場の指導者或いはこれを操縦する教官なども出て行くのではないかとこう考えるので、私の考え方が間違つておりますれば別でありますが、そのときにいろいろな困難にレジストしながらもMSAのような相互援助協定を拒呈して参りました国々、そういう所にも及ぼす影響は自然間接ではございましようとも、あるだろうと思う。そうすると一種のやはり先ほど総理がおつしやいました日本は安い役務で東南アジア地区へ経済侵略をするのだという声がある。これも誤解であるが、或いはそれが而も軍需品を造つてこれを売つて歩くということになりますると、かなりの誤解が生じて来るのではないかと思いまして、平和国家としてはむしろ東南アジア地区の貧しい平和産業のほうにこそプラント輸出その他も願わしいのでございますが、こういう方面の軍事、軍需、軍装備の援助等について今後近隣の国がどう外交的に反応して来るか。そうし誤解といえども日本がこれよりもつと大きな最大限までの軍を持つのではないかということについて、総理といたしましては東南アジアを今後誤解させないでいくためには、どういう御方策がおありになるか、伺えますれば仕合せでございます。
  92. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと協定文に関することだけ私からお答えいたします。今の御質問でありますが、この装備、資材、役務を他の国に提供する、これは勿論日米両国間で細目取極を作りまして、これに従つて提供するのでありますが、差当りこの規定の、今考えておる目標となりますものは、アメリカから提供を受けました装備であるとか資材であるとか、或いは役務でありましよう。それでそのうちで日本で要らなくなつたものがあつた場合に、これをアメリカ側が希望した場合には、相談してこれを第三国に出そうというわけであります。従つてアメリカから提供されました装備とか資材とか役務というものを第三国に提供しよう。こういうのがこの協定の目標でありますが、その他にもこういうふうに一般的に書いてありますから日本自体の持つ装備、資材、役務等も拠出する場合があり得るかも知れませんけれども、差当り考えておりますのは、又このMSA関連してこの第一条に書いてあります意味は、アメリカの装備、資材等の不要になつたものということを目標にいたしております。従いまして東南アジア方面でこの点について誤解が起ろうとは考えておりません。  又この軍需品を東南アジア諸国に提供するよりも、平和産業のほうで大いにやつたらよかろう、これはその通りでありまして、平和産業による貿易を促進しようと思つて政府としては日夜心をくだいておるわけであります。併しながら東電アジア諸国もやはり独立国として自国防衛力を増強しようという考えはいずれも持つておるようでありまして、これが要求される場合にはこの方面の品物も提供して悪いということはないはずだと我々は考えておりますし、特に外貨を必要とする場合には差支えない範囲ではできるだけ輸出を増進する。その中には平和産業以外のこういう需需品等もありましても各国が希望するものであれば誤解をいたすはずはなかろう、こう忠つておるわけであります。
  93. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと日米が合意する中には仏印も含まれることになると了解してよろしうございますか。それは私があえて申すまでもなく、現にどういう理由がございましようとも、戦端を開き戦争をしておる国々でございまするから、日本がそれらの国に援助を与えるということはやはり戦争の片一方に援助することになるのでありまして、やはり日本戦争に巻込まれないという保障はないように考えますので御説明願いたいと思います。
  94. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 仏印も、仏印と言つてはいけませんが、インドシナ三国もMSA援助を受けております。従いましてこれらの関係から、日本としてこれらに資材を送る場合もあろうかと考えますが、併し別に仏印の内部における現在の状況は、戦争というべきものでは……、実質的には戦いでありましようけれども、やはりおのずからここには国際的に認められておる政府とこれに反抗する政府のような形をしたものとが戦つておるのでありまして、これについては国際的に認められているほうを正統政府と認めるのが当然であろうと思つております。併し実際上仏印に資材、役務等を提供するということは、日本が先ずアメリカから援助を受けまして、それの中で将来不要になつたものを目標として考えておりますから、ここにおけるこの協定にあるようなことが実施されるのはなかなか先のことであろうと思つております。
  95. 高良とみ

    高良とみ君 仏印が一種の内乱であり、というのは戦争であるかどうか疑わしいというお言葉を伺いまして長大息せざるを得ない実情であります。これは世界中、心配しておることなのでありまして、これは先のことであるにいたしましても、どうかアジアの戦争日本が巻込まれないような保障をつけておいて頂きたい。その点でMSAを受諾する如何に関しましては、国民が多くの先のことを心配しておるわけなのでございまするから、それについて総理はどうか戦争に巻込まれないようにしたいと言われておりまするけれども、もうかることなら戦争の武器を作り、これに弾薬を運ぶことは朝鮮戦争でもやつたことなのでありまして、ここに日本が平和国家であるか或いは本当に戦争を避けたいと思つているかどうかということについて多くの誤解を招いていると思うのであります。どうかこの点で総理から、アジアの戦争であろうとも或いは内乱であろうとも、日本としては戦争を避けるためには武器を売つたり或いは役務を出したりすることには国民の世論が信じてやつて行くようにという御希望だろうと思うのですが、そういうことは如何でしようか。一つ大事なところでございまするから一言伺いたいと思うのです。殊にデイエンビエンフーの戦争等は世界中が心配しておりますので、国民に非常な安心を与えて頂きたいと思いますが、如何でございましようか。
  96. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話によりますと軍器の輸出はやめるがいいというようにも伺えますが、これは国内産業とも関連いたしますし、又政治的にもよその国の叛乱軍を助けるというようなことになるのは当然いけないことでありますが、正統政府といいますか、日本と平和関係にある国からして註文があつたという場合に、戦争に関する資材であるからといつて直ちに輸出禁止をするというまでの極端な措置をとつて、そうして輸出振興とか何とかいろいろ考えておるときに、率直に申しますが、或いは武器製造業者があるときに、而も輸出が不振のときに、武器に関することだからして輸出はとめるということも、ときによつては困ることもできやしないかと思いますが、これは実際問題でありますが、よその国の戦争を奨励するようなこと、或いは又激化せしむるような政策はこれは政府としてもとらないほうがいいと思いますから、つまり戦争回避については無論努力いたしますが、国際連合とか或いはその他の関係からして、日本に対して武器の註文があつたけれども、それは戦争を激化するものであるからやめろという政策をとることが、そのときの事情に適しておるか、適しておらないか、これは実際問題として考えてみたいと思います。併し戦争をそのために奨励するとか激化するというような政策を故意にとるということは、政府としては無論いたさないつもりでおります。
  97. 高良とみ

    高良とみ君 もう一点。日本戦争をしておりましたときに、中国の武器援助を中立国であつたはずの某々国家がビルマ・ルート等を通つてたくさんいたしましたことについて、日本の世論は相当に燃えたことを思い出すのであります。それは量の問題であるか主義の問題であるかは存じませんが、そういう点からも、只今日本の貧乏がいいか戦争がいいかということになると思いますけれども、そうおつしやる理由も理解しないではありませんが、私個人といたしましては、朝鮮の戦争でも占領中でありましたから止むを得ずナパーム爆弾等をたくさんこしらえて朝鮮の人の頭の上に落したことに対しては、どちら側であろうとも、日本戦争に対する本当の反省が不十分であつたと感じており、これが日本立場を非常に国内としては不安にし、又国際的にも不名誉に近いことであつたように私は思うのであります。できるならば国連軍でありましようけれどもこの点におきまして武器を使わずにそうしてこの問題を解決してゆくような方法が願わしかつたと個人的に思つておるのでありますが、どうぞできますならば日本が武器商売で貧乏を解決する以外の途をとつてゆくのが、これがやはり戦力を保持せずという憲法の趣旨だと私どもは解釈したいと思いまするので、今後ともに戦争を避ける、又日本が軍国主義でないということを世界に明らかに実績で証明して頂けるように希望いたしまして私の質問を終ります。
  98. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 MSA協定締結をして、そうしMSA援助に対比して日本自衛力を増強するというのが、このMSA協定なり或いはそれに関連をして提案をされておりますところの防御二法案等々が狙つている点であると思うのですが、この点について先ほどからの質疑応答を聞いておりますと、総理は従来の方針をそのまま踏襲して来たのであつて、何ら事新らしいことではないのだというふうにさりげなくお答えになつて来たのでありますが、私たちから見れば、これは非常に大きな国策の転換ではないか、而も大きく百八十度方向を変えたものではないかというふうに考えるのであります。そういうふうに非常に重大に考えますが故に、私たちはここで一つ改めて厳粛に、一体日本の国防の本義と言いましようか、日本の国を守る、それは特にしばしば言われておりますように、共産主義の脅威から日本の国を守るということであると思うのですが、そういう意味での国防の本義というようなものを総理はどういうふうにお考えになつておるか、先ずその点を明瞭に一つ御説明を願いたいと思います。
  99. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと伺いますが、国防の本義という意味合はどういうことですか。
  100. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 何が一体国防だというふうにお考えになつておりますか。国防の本当の意味。
  101. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと私も質問の本意がわかりませんが、要するに日本の国防は日本独立と安全を守るためにある、一言にして言えばそういうお答えをするよりほか仕方がないと思います。
  102. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじや改めてもう少し具体的に申しますが、私たちは国防の本義は憲法にはつきり明示してあると思うのであります。というのは、しばしば言われますように、憲法はその前文で「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」ということを先ず前文に謳つております。これは諸外国に対する信頼の念を表明をしたものであると思います。そしてそれを受けて、第九条では御承知の通り、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」こういうことを憲法でおごそかに誓つております。そしてその第二十五条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と決定をいたしております。我々から見ればこれが国防の本義であると、こういうふうに思うのでありまして、今朝ほども同僚羽生委員から、日本の国を本当に守るゆえんは、特に共産主義の脅威から守るゆえんは、外交と経済の安定、この方法でやる以外にないじやないかという強い質問が出たのもそういうところに原因をしておると思います。総理のその後の御説明或いは持に今朝ほどの御説明を聞いておりますと、これはその当時においては妥協したかも知れないけれども、その後情勢が変つて来たのだと、更に国を守るのゆえんは外交或いは経済安定だけでは足りないので、やはり外交にしてもその背後に力の裏打がなければいけないのだというようなこともかすかにお述べになつたように思うのですが、その点について、非常に大きな国防の方針に対して非常に大きな転換を最近示されつつあるのかどうか、その点を改めてお開きしたいと思います。
  103. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の考えとして非常な転換があつたとは考えません。憲法の規定の通り戦力は持たない。戦力以外の方法で国の独立と安全を守るという方針については何ら今日において変つておりません。
  104. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういうお考えであるから、例えばMSA援助に基く国防の方針、それも従来からの方針の改変でなくてそのままの継続であるというようなお答えが当然に出て来るのだろうと思いますが、併し私たちから考えれば、MSA協定は、申上げるまでもなく、日本自衛の名の下に日本自身が、自衛力の増強といいますか、特に私たちから言えば軍隊、戦力それを持つことを決意し、而もそれが従来の警察隊と称せられる、警察的な任務と称せられているものは外敵の侵入に対抗する機能を持つていなかつたのに、そういうものに対抗する機能を持ち、そういう力として発言して来るというような状態になつて参つていると思うのでありますが、そういう関連においては、日本の国防方針というのは全く違つて来た、而もそれは以前の安保条約においては単に日本期待をされていたことが、今度はMSA協定によつて日本義務になつて来た。そういう意味でも非常に大きな質的な変化を来しておると思うのでありますが、総理はその点はどういうふうにお考えになりますか。
  105. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本安全保障条約にもある通り期待と書いてはありますが、併しながら日本の防衛は国内に応じて漸増するということを約束し又アメリカ期待しておる。又同時にアメリカの駐留軍は漸減するということを我々は期待もし又これを認めておることで、そのアメリカ駐留軍が漸減するという場合においては、それだけ日本防衛力を増加しなければならん実際の状況に際会いたしておるのでありますから、実際の状況に応じてそして自衛軍といいますか直接の防衛にも当る。又仮に法律がなくとも、直接の攻撃を受けた場合に、外敵が現われて来て、そして日本に直接の攻撃を加えたという場合に、保安隊も勿論でありますが、その他の人民といえども、普通の人間といえども、或いは警察官といえども、外敵に当るということは当然のことで、これはいわゆる自衛隊若くは日本国民生活、或いは生活を保護する上から言つてみても当然剣を取つて立つということもあり得るわけで、法律がなくても保安隊自身が直接攻撃に直面した場合には、法律にないからといつて銃を捨てて逃げ出すわけに行かないわけで、法律がなくとも直接の攻撃を受けた場合には普通の人民といえども自然剣をとつて立つということになり得るわけです。でありますから、観念から言うと、自衛権がある以上は、法律如何に改正されてもされなくても、国の固有の権利として自衛の手段にいずるということは当然のことであります。でありますから、私の考えからいうと、自衛隊ができたからといつて従来の考え方が違うということは考えられないのであります。仮に自防隊ができてもやはり安全保障条約によつて外敵に当るという方針はちつとも変つておらんのであります。又MSA協定の中にも、日本憲法その他を改廃するとか或いは反するような行為はしないということを明らかに書いてあるのでありますから、従来の方正と少しも変つておらないと私は確信するのであります。
  106. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 自衛隊の問題なり自衛力自衛権の発動の問題なりについての今の御脇明を聞いておりますと、曾つて総理お話なつたことは非常に違つて来ている。質的に非常な変化を遂げて来ている。従つて憲法との関連の問題が非常に重要になつて来ることを考えるのですが、その問題はのちほど更にお尋ねをいたすことにいたしまして、その前にそういうふうにMSA援助によつて自衛力の増強する、自衛隊創設するというふうな方針にお変えになつたのでありますが、そういう日本の防備計画或いは日本の防衛隊編成というような決意をされるに当つて、その前にアメリカと或いはその他の国々とそういう問題についてお話合になり、或いは付かの相互了解が得られたのであるかどうか、この点を一つお尋ねをしたいと思うのであります。この点はこれまでもしばしば私たちが当委員会においてお尋ねをいたしたのでありますが、従来私たちが聞いていたところでは、そういうことに関しては何ら外国とアメリカに対しても話合をしたことはない。独自にそういうことはきめたのだというふうな御説明の繰返しであつたと思いますが、その点を改めてもう一遍はつきりそれらの話合はどういうことになつていたのかをお答えを願いたいと思います。
  107. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは外務大臣の担任でありますから事実をお答えいたします。これは折角おつしやるのですから何か話があつたと言えば結構のように思いますけれども、実際ないわけですからどうもいたしかたありません。全然話はありません。
  108. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これまでもたびたびそういうお話を聞いたのですが、まあこれまでは或いは話合の途中であるからその内容その他に触れることがちよつと困るし、妥当でないというようなお考えでそういう答えでもよかつたかもしれませんが、すでに話合は済んでそしてその話合に基いて実際の防衛計画がスタートしているときには、それほど口をぬぐつてしらを切られる必要はないんじやないかと思うのですが、そういう問題について国民をあざむこうとし、国民を愚弄するという態度はおとりにならないほうがいいんじやないか、こういうふうに私は考えるのであります。と申しますのはアイゼンハワー大統領が相互安全保障プログラムの一九五三年下半期実施状況をついこの間三月の八日に発表いたしておりますが、この中には次のようなことが述べられております。一九五三年の十月にはワシントンで一連の会議が行われ、相互安全保障計画の日本への適用、日本の防衛計画、日本一般的経済情勢など、共通の関心事である各種の問題の話合が行われた。これらの会談により両国政府間の継続的礎石が築かれたということを報告書の中にはつきり書いております。この報告書はアイゼンハワー大統領自身の名において而も国会に提出をしたものでありますから、それは知らないとか或いはそういうニュースはあるかもしれないというようなことでは説明のつかない問題じやないかと思うのであります。更にイギリスでもこのことをはつきり申しております。日本の防衛部隊の編成方針についてイギリスの労働党所属の下院議員のドーリー氏が文書質問をやつた。こういう問題について英米の間に打合せがあつたのかどうか、米国の兵器を日本に供給する取極ができる前に英米間にどのような協議がなされたか、こういう質問を文書でやつております。その質問に対してロイド国務相は三月二十四日の下院において次のように述べております。第六の防衛部隊編成方針について英国は一年以上も前から米国と緊密な連絡をとつている。米国日本領土の防備に十分な軍隊を作るため日本政府と協議する計画を出して来たが、英国は昨年夏これに対して反対でない旨を米国政府に通告しておる。これ以来米国政府事態を英国に通報して来ておる。ニュージーランド、オーストラリア、カナダ各国政府も同様協議を受けておる。こういう答弁を下院においてロイド国務相がいたしております。こういう諸外国においてそういう問題の話合が行われたとか或いは協議がなされたとかいうようなことが国会において明瞭に答弁をされ審議をされているときに、当の日本国自身がそういうことを知らない。日本国民が知らないのみならず、国会がそれを幾度質してもそんなことに何にもないと言つてしらばつくれておられるのは、私は非常に口ぎたないようですが国民を愚弄するも甚だしいと、こういうことは我々国会として絶対に許せないと思うのですが、これらの事情はどういうふうにお考えになるか。
  109. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 先ず今の二つの問題を出されて、一つはアイゼンハワー大統領の報告ですか、言われましたが、佐多君は恐らくこれは池田・ロバートソン会談で言つておるというふうに想像されておるのじやないかと思います。それを知りながら若し日本政府が何か協議をしてこれをひた隠ししているのだというふうな印象を与えようとされるなら、それこそ国民を愚弄すること甚だしいものだと私は考えます。池田・ロバートソン会談は共同声明として発表して何も隠しておりません。これは昨年の十月のことであります。そうしてこの中にいろいろの問題を書いてありますが、即ち一本の防衛力の増強、米国援助米国終戦後の対日経済援助の処理、対日投資及び中共貿易に及んだこれらの諸問題に関する非公式の意見の交換は極めて有益であつた、こう書いてあつて、この中に日本の防御問題も入つておる。併しながらこれは日本総理大臣の個人代表池田勇人氏とロバートソン氏の非公式の意見の交換でありまして、これ以外に日本政府がやつたことは何にもありません。  それから第二の点でありますが、これは私はその自体を読んでおりませんから、正確に今お答えすることは困難でありますが、今佐多君が読み上げられたことは日本と交渉しておることはちつとも言つていない。イギリス或いは豪州等がアメリカといろいろ話をしておるということでありますが、若しそうだとするならば恐らく前の敵国であつて平和条約によつてまあ独立はいたしましたが、従来の関係もあるから、この日本に対して武器援助MSAを適用するということについて誤解のないようにこれらの国と話したのじやないかと思います。これはちつとも差支えないことでありますが、その中に佐多君が国民を愚弄するということに言及された日本政府と話合いをしておるということは何にも言つておらないようであります。それは事実何にも話をしておらないのだからその通りであります。
  110. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 このイギリスとの間或いはその他の諸国と協議したにしても、それが日本の防衛部隊編成方針について協議をしておるのでありますから、従つてその前提として当該国の日本が協議を受けておるのであろうことは余りにも明白じやないかと思うのです。更に池田・ロバートソン会談でそういう話合はやつたの政府は何らあずかり知らないことであるというふうな御答弁でありますが、それが国民を愚弄するも甚だしいというのであつて、そういう会談を通じて両国政府間の継続的な了解の礎石が築かれたということをちやんと書いておるのですね。そういう点をどういうふうにお考えであるのかそれ以前にもアメリカ側からはいろいろなそういう報告が率直というか、あけすけに出されて来て日本政府はあわててそれがそうであつたこうであつたといつていろいろな小策を弄しておられるようでありますが、そういうことはすべからくおやめになつて、若し会談の途中においてそういうことを話すのがまずければ、それはその理由をはつきり示してそのときにはご発表にならなくても結構でありましようが、済んだら率直に一つそういう会談その他もお示しになつて国民にその可否を問い、国民に真剣にそういう問題を考究させることこそ本当に民主政治の民主的な外交の行き方ではないかと思うのですが、その点はどういうふうに。
  111. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 池田君は総理の持使でありまするから、総理の持使として日米間の相互の了解を深めるためにいろいろの問題について十分なる話合をしてお互いの理解を深めたのであります。でその中で政府として追認の必要のあることは認めております。例えば東京で各種の問題について会談するということについては会談者の間では了解をしたのでありますが、政府がそれを認めなければ意味のないことでありますから政府はこれを認めております。即ちこの声明の中で政府としてとるべき手段があれば賛成の場合にはこれを賛成といつてその通り実行するのであつて、これを政府が追認して初めてこの中に書いてある問題は政府としての関係が出て来るわけであります。従つて何も隠していない。池田・ロバートソンの共同声明というものはこの通り出ておるのでありまするから、何らそれは国民に隠している問題でも何でもありません。その他いろいろアメリカ側から言つて来たというのに政府はひた隠しに隠しているということを言つておりますが、そんなことはないのでありまして、それこそ何も根拠のないことをさもアメリカ側から何か言つて来るというようなふうな印象を与えるような小策を弄せられないで、政府の言うことを信じられたら私は甚だ幸いだと思います。事実をここで申上げておきます。
  112. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうもその問題は、それではその程度にいたしまして、次に移りますが、今までたびたび論議されたところで、政府は外国の直接侵略に備えるためと称して防衛庁を設置され、自衛隊を編成して、そうし武力行使を決意された。従つてそれは戦争を決意されたことにほかならないと思いますが、そういう決意をこのMSA協定締結関連をしてやられたと思うのであります。そこで名称や装備がどうであろうとも、外国の直接侵略に対する防衛任務を持つている武装団体は国際通念上明らかに軍隊であり戦力であると思うのですが、特に陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊等を持つことになつたとなれば、これは明らかに陸軍、海軍或いは空軍を打つことであつてその点は明瞭であると思うのです。でそれが戦力であるかどうかというようなことは、何かいろいろな問答がこれまで繰返されておりまして、ただ水掛論に終つておりますからその議論はいたしませんが、ただ一体それならばそういう自衛力増強の内容というようなものを政府はどういうふうにお考えになつているか。特に防衛庁第八次案であるとか或いは保守三党案であるとかというようなものがいろいろ論議をされておるのでありますから、政府当局者或いは少くとも政府ではまだ決定をしていないにしても、保守三党案としてはつきり出ていろいろ論議されておる限りでは、自由党の総裁であるところの吉田総裁ははつきりそういう点を御存じのはずであるので、従つて一体今保守三党案として特に自由党がお考えになつておる自衛力増強の内容、特に数年後にどのくらいのものになるというようなふうにお考えになつているのか、その点を概略でいいですからこれは総理自身から、どういう方針でどの程度のものを考えておるということを御説明を願いたいと思うのであります。
  113. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今三党の間でもつて協定案ですか、結論が出たということは私は存じません。私のほうまで来ておりません。又保安庁ですか、保安庁においていろいろ案を研究しておる。これは当局として当然でありますが、併しながらこれは政府の公認した政府の案としてではなくて保安庁自身の研究案に過ぎないので、政府としては何ら承知いたしておりません。即ち政府として承知いたしておるのは、即ち本年二十九年度の予算に盛つた増強案、これが即ち政府案であります。
  114. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 仮に最後的な決定をしていないにしても、大体の草案があり、而も保守三党の間にはいろいろ議論が尽されて、そうしてそれの案に基いて初年度三十九年度案ができておるはずでありますから、若しそうであるならばそういう考え方、そういう案を国民従つて国会に率直にお示しになつて、そういう点を十分に論議させることこそ民主的な国会の運営であると思うのですが、それをなぜひた隠しにお隠しになるのか。東條軍閥時代でも成るほど用兵作戦に関することは非常に厳重に秘密にしていたかも知れませんが、予算に関連をして従つて人員なり装備等々の点においては今の吉田政府よりももつと議論をさせたと思うのでありますが、吉田政府はそれよりももつと秘密のうちに防衛計画を着々と進めておられる。それは甚だ以てけしからんと思うのですが、総理はどういうふうにお考えになつておるか。いろいろ伝えられるところによりますと、陸上自衛隊は今後三カ年間に四個師団七万人増員をして十個師団十八万にする。それは普通料師団を六個師団、飛行師団を三個師団その他一個師団、そうして各一個師団の平均定員が一万八千人というふうに伝えられております。この一万八千人は国内の地形その他から考えると非常に大きな単位部隊であつて、戦略専門家の言うところによると、日本国内で運用する部隊体形ではなくて、大陸への外征部隊の大形であるとすら言つておると伝えられておりますが、とにかくそういう形の軍隊を作ろうとしておられる。又火器だとか、戦車だとか航空機、車両、電波兵器等による装備は少くとも曾つて日本軍隊とは比べものにならないくらいに近代的であると言われております。普通科の師団の火力の重心は明らかに榴弾砲に置かれておつて従つて旧陸軍の四・八倍の火力を持つておる。その射程や発射速度を勘定に入れると六倍から八倍になる火力を持つておるといわれております。非公式……。
  115. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 佐多委員の持ち時間は切れておりますから締めくくりをどうぞ。
  116. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 飛行師団になると旧師団の十三倍から十六倍の火力を持つて、これに戦車の力を加えると十五倍から二十倍に達ずる。車両は二人に一台の割になつておる。而も多量の大型車両を打つておる。これは国内の現在の道路や橋、内地では使い物にならん。大陸作戦用の部隊装備であるというふうなことが言われております。陸上自衛隊についてもこういうことが言われておりますが、更に海上自衛隊或いは航空自衛隊が五カ年計画として考えておるものを勘案いたしますと、相当な軍備であると思うのですが、この内容から見る限り軍備であり戦力であり而もまぎれもなく陸軍であり海軍であり空軍であることは余りにも明白であると思うのでありますが、それにもかかわらずなおこれが戦力でないと、従つて憲法に違反をしないというふうに主張されるのかどうか。総理大臣は今朝ほどのお話によりますとそういう問題は極く常識的にさらつとどんな国民でも納得するような憲法解釈で対処したいということをさりげなく事もなげに言つておられますが、それが真意であるならば私たち最も歓迎をするところでありますけれども、そういうさりげない言葉を使われる裏の事実はまぎれもないこういう厖大なものを計画をしておられる。これでもなお且つ憲法違反でないと常識的に国民全体に納得させられるとお考えになつておるのかどうか、総理の明快な御答弁を願いたいと思います。
  117. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 明快にお答えはしますが、そういう計画は政府としては持つておりません。
  118. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は私の会派の同僚委員に成るべく時間を譲りたいと思つておりますので、極く簡単に一、二の問題について総理大臣に伺いたいと思います。  今日のこの委員会で総理大臣総理大臣のお資格において外遊をなさる御意思があるということがはつきりいたして参りました。総理大臣のお資格で只今外遊をされますならば、日本立場をよく諸外国に明らかにし、又誤解がございました場合にはこれを十分明瞭に解きほごして諸外国を少しでも多く日本の味方になり友だちになるような御努力をなさることは非常に結構なことだと考えます。  そこで私はいろいろな問題がございますけれども、今世界の平和という問題を考えますときに、日本の人口問題ということは大きな問題でございまして、昔は人口が余り多くなつたために自分の狭い国にとどまれない、或いは資源が足りないために侵略戦争を考えるというようなことになりましたし、又今後の戦争は或いは間接侵略というような問題を考えますると、やはりこれが国内における経済的な扶養力、人口の圧力というものがバランスの取れなくなつたときにいろいろの社会不安が起りまして、それに乗じて間接侵略というようなことが考えられるということが言われておるのでございます。それで殊に今日は日本では衛生状態が非常によくなりましたためにいわゆる欧米の文化諸国家と同じような低い死亡率になつた。併し出産率のほうは非常に下りましたけれども、まだこういうふうな低い死亡率の国と比べて高いものがございます。その結果といたしまして日本における人口の自然増加数というものが毎年百二十万くらいございます。これは総理大臣アメリカにおいでになりますと必ず各方面からこの問題を総理大臣に申上げると思います。モンタナ州くらいのあの狭い、資源の貧弱な国に人口が殖えてこれに対してどうするかというようなことを各方面から言われますし、婦人たちにも非常に関心の高い問題でございますので、総理大臣はどうかこの問題に対しましては厚生当局から十分な資料をお集めになりまして、外遊の際には御持参なりまして、この問題について日本立場をよく説明なさる御努力をして頂きたいと私はお願いするものでございます。これ以上私は人口問題について直接総理の御意見を今ここで伺おうとは思わないのでございますが、この人口問題についてはもう一つ日本と同じように悩んでおる国があのイタリアでございます。イタリアの場合には戦後毎年十万くらいの人口をカナダ、アメリカ、南米諸国に移民として送り出しております。このことは日本も非常に考えなければならない問題でございまして、総理大臣はこのことを念頭におかれまして、今度外遊の機会にはイタリアとせめて同じくらいに日本にも移民のはけ口について何か諸外国に考えてもらいたいというようなことについて御努力をして下さる御意思がございますでしようか、如何でございましようか。
  119. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。私の外遊については先ほど申述べました通り、行つたほうがいいとは考えておりますが、相手方の都合もあることでありますのでまだ確定はいたしておりません。  それから若し参ることができた場合には、お話通りいろいろな日本の問題、或いは日本に対する誤解は十分解きたいと考えて、又一応各種の問題の資料を各省から集めさしております。人口問題もその一つであります。移民問題もその一つであります。今日本の移民をほしいという国は南米その他に相当ありますが、それには日本としては渡航費を補助するとかいろいろな財政的な面もありまして、緊縮予算の今日においては十分にその財源を発見することができないために困つておりますが、これについても何とか財源を発見することにいたしたいと思います。又イタリアとはお話通り資源の少いところ、或いは人口の多いこと、或いは人口増加の率において同じような立場におることはお話通りであり、又イタリア政府日本の国情とよく似ておる。従つて日本に対する同情もほかの国と違つて、殊にイタリアにおいては日本の経済上苦しい立場、或いは人口問題についての了解が相当あるようであります。ただ人口問題はこれは日本とイタリアだけの問題ではなくして、むしろ世界的の問題であります。食糧との関係その他において人口問題の解決ができなければ、お話のように世界の平和にまで影響を及ぼすような問題にもなりますので、人口問題或いは移住の問題は今や世界的な問題になつて、そうして各国の権威者が研究をいたしておる現在でありますから、日本の提供する材料も相当研究の材料になりはしないか、成るべく各方面から専門的の知識を集めて参りたいと考えております。
  120. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 総理大臣がこの問題で資料をお集めになつて御研究なさつて、あらゆる機会に日本の人口問題についていろいろ御努力下さいますことを御きたい申上げております。  更にもう一つ新しい考え方として、国際連合に対しまして、この人口過剰の現実の問題をどうするかという問題はなかなか一国々々の問題では今日はもう解決ができない状態になつておりますので、これを国連の問題として一つ取上げてもらいたい。例えば今日世界中にはまだ広い土地が少しも資源が開発されないで放任されておるような土地があるようでございます。併しこういうような土地もこれが無人島ではなくて、どこかの国の所属になつておりますので、それをどこか一国でこの移民に手を着けるというようなことになりますと、又例えば日本がどこかの島へ移民したい、ニユーギニアのような所に移民したいというようなことを考えましても、日本人だけがそこにどんどん入り込んで行つて日本人の勢力を非常にそこで拡げるようなことになると、これが又国際勢力のバランスにいろいろ関係があるというふうに心配する向きもございましようし、又そのたとえばニューギニアという所を持つている国がそれはいやだというようなこともあり得ると思いますから、こういうあいている土地と過剰人口に悩んでいる国の問題を国際連合に持込んで、国際連合の責任においてこれをいい按配に処理するというような考え方を一つ総理大臣外遊の機会にお持出しになつて頂くというような工合に参らないでございましようか。
  121. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは国際連合におけるこの問題の扱取方について私は今直ちにお答えができるだけの材料を持つておりませんが、併し先ほど申した通り、この人口移住問題は世界的の問題でありますから、自然国連においてもこの問題は取上げておるのであろうと思います。それから又国連で取上げるのも一つ方法でありますが、又各個の国々との間に特別な協定をするということも一つ方法でありましよう。ただ従来日本戦争等の関係から、如何にも日本国民が危険な思想の持主であるというふうに考えられておる誤解があります。この誤解を解くことが第一であろうと思いますが、誤解は一度誤解となつてそしてその国の国民の頭に入りますと、これを解くことはそう簡単な短い時間でできることはむずかしいでありましよう。これは国民が一致してそして各種の機会に誤解を解く方法を講ずるよりほか仕方がないと思いますが、仕合せに昨今聞くところによりますと、南米あたりにおいても大分日本の移民を希望しておる向きがあるということであります。又一々名前を挙げるというのもどうかと思いますけれども、その他の方面においても日本国民は勤勉である、そしてよその国というのもおかしくありますが、ヨーロツパの或る国などは田舎に入ればすぐ都に出て来たがる、畠を捨てて都会に集中する、折角移民或いは農園を拓いたにもかかわらず、その農園を捨てて都会に住みたいという傾向があるが、日本の移民はその傾向がないというような報告も来ております。でありますからして、日本の移民の性質が明らかになり、日本国に対する過去の誤解が解けて行きますならば移民という問題も多少光明を認め得やしないか。各方面に努力はいたしておりますが、何分財政の逼迫の今日十分なる渡航費など出すこともできないものですから、この渡航費を何とかできないかというのがお互いの今頭に持つておる一つの問題であります。できるだけのことはいたしたいと思います。併し余り多く御期待下さらないようにお願いいたします。
  122. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 総理大臣が大変御努力下さるということで、大変に私も御期待を申上げております。  もう一つ簡単に伺いたいと思つておりますのは、今朝ほどから総理大臣のこの委員会における御答弁を伺つておりますと、いわゆる再軍備はしない、憲法は改正しないというような強いお言葉がございまして、そのお言葉がそのまま受取れますならば私たちは大変に無用な心配をしないでよいわけなんでございますが、総理大臣がそういうふうに御答弁をなさつていらつしやいましても、そのそばから保安庁長官やそのほかの方がどうも私たち殊に婦人の神経を非常に刺激するような御答弁、お言葉がちらちら出て参りますものですから(笑声)どうも余り安心ができませんで、例えば海外派兵の問題なんかも、岡崎外務大臣もそんなことは自分の国できめる問題なんだからMSA協定の中に海外派兵せずというようなことを書かなくてもいいのだとおつしやるので、それは日本の国が海外派兵なんかしないというのは今国民大多数の考え方でございますから、どうかそうありたいと思うのでございますが、例えば佐藤法制局長官なんかは相手が大陸から長距離砲で国土を攻撃して来たら自衛のためそにの根源を抑えねばなるまいというようなことをおつしやる。そうすると結局長距離砲で撃つて来た国までこつちから出かけて行かなければならないというようなそういう御答弁をなさるのでございますけれども、総理大臣はどういうふうにお思いになります。(笑声)
  123. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) まあ理論と実際とは別であるとでもお考えおきを願いたい。
  124. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、理論は海外派兵をしないけれども、実際においてはやはりそういうときには出かけて行くのでございますか。
  125. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、とにかく私は今のところは現在国民海外派兵などということは希望しないことと考えます。国民の世論に反して国民の常識に反するようなことは政府としてはいたしたくない、ただ理論がどうでありましてもと思います。
  126. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今度岡崎外務大臣にちよつと伺いたいのでございますが、先ほど曾祢委員の御質問に対しましても、このMSA援助を受けますことについて将来の問題について少しもはつきりしたようなことがまだおわかりになつていらつしやらないような御答弁でございましたが、このMSA援助を受けることの継続を希望する場合には、相手国軍事費が予算の二〇%に達することを要求するのが欧洲各国における通例だというようなことを聞いておりますけれども、日本でもやはり将来は二〇%くらいの防衛費をだんだん予算に盛つて行かなきやならないというようなことになるとお考えになつていらつしやいますでしようか。
  127. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 予算の二〇%ということはなかなかヨーロツパでも行われないことでありますが、ただNATO諸国においては互いに助け合う仕組になつております。従つて自分の国は余り義務を負担しないでほかの国から助けてもらうほうばかり考えておるというわけにはいきませんからして、一律にできるだけ予算の何%というところまで持つて行くように努力はいたしております。日本の場合には今まだ経済回復ができておらないのでありますから、差当り考え得る将来においてそのようなことは行おうと思つても行えないのじやないか。私は財政の専門家じやありませんけれども、常識的にはさように考えております。
  128. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私はもうこの辺で。
  129. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 加藤委員の残りの時間が曾祢委員十分ばかし残つております。
  130. 曾禰益

    ○曾祢益君 先ほどまだ私としては伺わなかつた点ですが、自衛権の問題につきまして総理大臣に対する御質問ですから、余り法律的なやかましいことを申上げませんが、やはり自衛権の濫用ということがお互いに近き過去において非常に悩んだ我々としては、ただ政府方針自衛権を濫用しないというだけでなくて、この日本自衛権というものはやはり特殊な制約があるのではないか。勿論憲法の制約。それからいま一つはこれは私の考えですが、平和条約の条項等から見まして少くとも日本自衛権というものは国際連合の憲章で認められた程度自衛権であつて、即ち言い換えれば相手国が直接に武力の攻撃をして来たときにのみ適用されるというような自衛権であつて、攻撃の脅威があるからいわゆる先制して自衛権を発動するということは、そういう古い昔のまあ不戦条約のときにはそういう自衛権の解釈が成り立つたと思いますが、そういう危険な自衛権の解釈は許さない。憲法上及び平和条約上の制約の下におかれておる。ただ単に政府の考え、総理が言われた国民気持から支持のないような自衛権の発動とか更には海外派兵なんかということは考えていない。これは政治論としてその通りだと思いますが、それを裏付けるやはりはつきりした法的の制約というものを認めて、憲法の点から及び国際連合憲章又これを認めた平和条約の条章から見て、そういう危険な自衛権の行使というものはないとこういうふうに解釈していいのじやないかと思うのですが、その点はやや法律問題に触れますけれども、極めて大ざつぱな法律問題で結構ですから総理から伺いたいと思います。
  131. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) いずれにしても自衛権の解釈日本の現在の憲法の下において最も厳粛に狭義に解すべきものと私は信ずるのであります。今お話のように、例えばいわゆる防御と言いますか、プリベンチブ、ウオーというようなことは、自衛権の範囲に属さざるものであると思います。又現在日本国民の考え方からいつてみても、自衛権の範囲を拡大して解釈するということは、国民の常識、ことに敗戦後の日本国民の常識として許可すべからざるものであろうと思います。そこで今お話のその解釈は法的根拠を持たしめるがいいという解釈のようでありますが、ことごとく法的根拠を持たしむることがいいか、国民の常識に訴えるほうかいいか、これは考え方でありますが、私は国民の常識に訴えて、そうし国民の常識が許さないような政策行為はいたすべきでないという先例といいますか、国民の常識、信念がそこに来てこそ初めて民主主義になるのではないか。法律の裏付がなければ何でもできるのだということよりも、国民の常識が賛意を表せざるような行為は政府はいたさない、或いは国としてもいたさない。この国民の常識に訴えることが一番賢明なやり方であり、そうして健全な政策であるのではないかと、これは私見でありますがそう考えております。
  132. 曾禰益

    ○曾祢益君 今総理のおつしやつた点はおつしやつた限りにおいて私も同感ですが、ただ国民の常識に必ずしも納得できないような防御力の解釈が行われたりしておる点に問題が一つあるし、いま一つはやはり総理もおつしやつておるように、外国の日本に対するまだ疑惑等があつて、従つて日本国民の常識はもの海外派兵だとか自衛権の行過ぎはまつぴら御免なんだ、とんでもないと思つてつても、これを外国、少くとも一部の国から見るならばそこに大きなまだ懸念を持つておるという点は、これは確かに総理もお認めになつておると思うのです。でありますから必ずしも自説を固執するわけではないけれども、むしろ明確にこの自衛権の濫用ができないことなんだ。それは憲法はそうであるし、又日本は完全に国連主義で、過去のような攻撃を受けざるのにいわゆる先制防禦というような自衛権の行使は絶対しない。そういう法的な約束をしておるのだ。この点を強調するほうがまあ外交上も有利ではないか。国民もそれによつていわゆるその法的解釈の下に逐次そういう円満な常識が完全に価値を占めて行くというようなことが民主主義の下にできるのじやないか。かように思いますから、私はやはりそういう点は総理国民の常識に反することはしないと言つても、今重要な日本の将来に関係のあるMSAなどを結ぶ際でありますから、その点はやはり法的の制約を明白に承認して、併し法的な制約よりも国民の意識ということが基本であるという政治のほうが正しいけれども、法的の制約を海外にも国民にも明示されるほうがいいのじやないかと思いますが、如何ですか。
  133. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見としては伺つておきます。又私の考え方が何も必ずしもいいとは限つておるわけでもありませんから考えもいたします。
  134. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう幾度か論議された点ですが、この実はMSA海外派兵の問題ですが、確かに協定自身からいわゆる海外派兵義務が出て来ておらない。協定にその海外派兵を必然化するような条項は勿論ない。ただ協定自身が今まで安保条約で日本がまあいわばただで守つてもらうというような見地から、今度は条約によつて日本防衛力の増強を条約上の義務として認める、更にMSA協定の中ではつきりとその防御力の増強は日本防衛力のみでなくて、自由世界全体の防衛力の増強に寄与するというような、こういうまあ考え方は協定からはつきり生まれて来るわけです。従つてそれは非常に神経過敏だと言えばそうかも知れないけれども、このMSA協定自身には海外派兵をはつきり禁止する条項がないから心配だという、こういう議論が非常に強いのです。従つて何も条約万能主義じやなくて今の国民気持が絶対許さないものを如何なる政府といえどもやるはずはない、又できるとも思わないのです。条約そのものがやはり何と言いますか、永遠じやありませんが、この条約それ自身はいつでも終止できる条約になつておるけれども、条約そのものの尊厳から見て、この条約の中の条項で、これは日本政策であるけれども海外派兵せずという一項目を入れて、或いはそういつたものを何らかの形で留保するというようなことを総理大臣としては考えられるかどうか、その点をもう一遍伺いたいと思います。
  135. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私も又政府海外派兵ということは夢想もしておらない今日であります。従つて条約に規定することは必要がないという考えでおるのであります。又仮に必要があつた場合に、ということがあるかも知れませんけれども、今日のところ米国政府はそういう要求はしておらないのみならず、むしろしないという了解のほうが強いと私は聞いております。でありますから私としてはその必要がないように思うのでありますが、なお併しお話の点については研究いたしてみます。
  136. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 中田委員の持ち時間が二十分ありますが、これを社会党左派のほうで適当に使つて頂きます。但し実は総理は四時に外国大使との会見の約束がおありだそうであります。先ほど来秘書官からしきりに四時十五分前にここを出られるようにとせがまれておりますけれども、私といたしましては今の中田委員の二十分間は確保いたしたいと思います。超過しないようにどうぞ。
  137. 羽生三七

    羽生三七君 総理は非常におつかれのようでありますし、それから時間の制約があるようでありますので、本当に簡単に一、二点追加してお伺いいたします。  外遊問題でありますが、先ほど総理お話では相手のつごうがあることだから好ましいことではあるが、併し不確定であるというお話がございましたが、併しその場合に外国のつごうだけでなしに、今の保守合同問題等関連する政局の動きによつて外遊においでになる、又行かれないということがきまるようなことはございましようか。
  138. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先のことでありますから、そういうことはあり得ましようけれども、私としては相手国のつごうを余り顧みずにこちらが出かけて行くということはいたしたくないと思つております。
  139. 羽生三七

    羽生三七君 総理外遊の場合に若干関連するかと思うのでありますが、お話願えれば願える一つになると思いますが、このMSA協定政府の出した資料で見ましてもこれは世界の全部の国と大体同じようだ、それから日本が格別文句を言う筋はないという御説明もありましたが、軍事援助を受けた国は世界殆んど例外なく経済援助を受けておるのであります。受けておらないのは日本だけであります、極端に言いますならば。但し三十六億円の小麦の援助ということを若し経済援助というならば別でありますが、いわゆる本来のMSA協定の性格から言う本来の意味の援助というのならば、日本は全然援助を受けておりません。ところがアメリカの一九五五年の会計年度は七月から始まるのでありますから、若し日本がこのMSA協定に賛成、反対は別といたしまして、経済援助を受けんとするならば、今直ちにその交渉にかからなければ来年の問題にならないのであります。そこで総理外遊の場合、こういう問題に触れられるのか、或いは総理でなくても、岡崎外務大臣からの御答弁でもよろしいのですが、全然この経済援助というようなことはもう考えられないで、余剰小麦の処理を経済援助と理解してこの問題一本で行かれるという意味であるのか。若し経済援助が必要ならば、速かに交渉を開始すべき時期だと思うのでありますが、この点如何でありますか。
  140. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 先ずお断りいたしておきますが、軍事援助を受けておる国は日本だけだというのはちよつと正確でないのであります。ほかにもたくさんあるのであります。ただヨーロツパの諸国は初めに援助の形がマーシャル計画で、経済援助というものが初めて来ましてそれがMSAに吸収されておりますから、その残滓が残つてと言いますかまだ残つておりますが、その後のアメリカ方針もこの間のランドル委員会でもそうであります通り、経済援助というものはできるだけなくすべきものだという意見も随分強力なんでありますし、我々としても経済上の必要はいろいろあるのでありますから、アメリカ政府の意向はどうあろうとも、日本としては交渉をいたしてできるだけ必要な援助は得たいと考えておりますが、これは先のことでありますから、得られるかどうかはわかりません。併し交渉はいたしてみたいと思うのであります。
  141. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 先ほどからいろいろ問題になつたのですが、このMSA協定中共の資易の関係でありますが、MSA協定によつて中共の貿易が統制を受け、相当阻止される危惧を非常に持つのでありますが、これに対して先ほどの総理の御答弁は、中国との関係は非常に大事だからもう少しその問題の打開にはかすに時を以てしなければならん、今打開をする手がかりが何もないから具体的な策は今のところはないが、もう少し時をおいてほしいというようなお答えであつたと思うのであります。ところが私たちから見れば中国との貿易の問題はそういうのんきに時を待てというような問題ではなくて、もう少し非常に近接をした緊要な問題ではないかと思うのであります。これは日本において特にそうでありますが、そうであるばかりでなく、世界的に東西貿易の問題は非常に重要な問題になつて参り、特に去年の後半期から今年にかけて経済危機、経済不況を打開する唯一の途がこれであるという工合に大きな問題になつて来たと思う。で、イギリスではチャーチル首相が、二月二十五日でしたか、下院で東西貿易の拡大が東西間の平和促進の基礎である、平和を促進するためには東西貿易を拡大する以外にないのだということを非常に大胆に素直に表明している。そのせいでもありましようか、東欧諸国との貿易会談或いは金融会談を相次いで積極的に開いているというような実情であると思うのであります。フランスでも同じように東西貿易の拡大計画を作成をして、一両年の間にその間の貿易を二倍にし、三倍にしようとい一うことに非常に努力をしておる。イタリイその他においても同じようでありますし、更に国連のほうでもヨーロツパ経済委員会の三月十七日の総会では、東西貿易の拡大に対するイギリスソ連の共同決議案を出してこの点を非常に促進しようとしております。四月二十日から始められるジユネーブでは東西貿易会議を特別な議題として開こうとしている。こういうふうに世界的に西欧諸国ではそういう気運が非常に強いのみならず、それに促がされてかアメリカ自身においてもそういう傾向が非常に強くなつて来たと思うのであります。特に商務長官であるとか或いはスタツセン等々もそういう問題を口を極めて力説いたしておりますが、更にウオール・ストリート・ジヤーナルは、なぜアメリカは東西貿易を最近特に増加しようとしているかという質問を出したときにそれの答えが、アメリカ及び盟友国の役人は、ソ連は本当に生産設備を平和的目的に利用しようとしており、又ソ連が近い将来戦争をやらんことを確信しているからであるということをアメリカのウオール・ストリート・ジヤーナルが言つておる。アメリカにおいてもすでにこういうふうに空気は非常に変つて参つておると思うのでありますが、そうだとすればそれにもまして我が国がもつと積極的にイニシアチブをとつて我が国の貿易の重大な部面を占めるに至るであろうところの中国貿易等々に対しては、もう少し積極的に具体的に案を早急に進める必要があると思うのでありますが、総理はこの点についてどういうふうにお考えになりますか。
  142. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ソビエト或いは中共との間の貿易についていろいろコミツシヨンを出したり、或いは運動はありますが、その実績に至つては余り見るべきものはないというのが事実ではないかと思います。又日本として如何にもいろいろな案があるようでありますが、これは相手方があつてのことで相手方もそういう考えになれば格別でありますけれども、その相手方をそういう気持に持つて来るのには早急にということはむづかしいのではないかと私は思います。又ソビエトの貿易額、これだけのものを買うとかあれだけのものをほしいとかいう話は相当あるようでありますが、現に一、二月前にイギリスの実業家がモスコーに行つていろいろと交渉をしたと、併しながらその実績については未だ見るべきものがない。例えば一千万ポンドでありますか買うといつても、何を幾らで買うかという約束がない限りは、これはコントラクトと言うべきものではないというような批評も現にあることであつてソビエト中共との商取引の話は随分長年ありますけれども実績においては甚だとしいと私は承知しています。そこで日本がこれに取かかるとしてどういうふうにして取かかつたらいいか、第三国を仲介にして取かかるという方法もあるでありましようし、又従来の中共との間の関係を頼るという方法もありましようが、すでに大阪商人、実業家等は相当の計画をしておるように聞いておりますがなかなか実績が上らない。併し私はその実績が上らないことを喜んでおるものではなくて、共産主義であろうがなかろうが商売ができれば結構な話で、幾らでもやれば結構であると思つております。又できるだけのことをしたいと思つておりますが、取かかりがなかなかむずかしいというのが実際であろうかと思います。けれども取かかる方法があり通商なり貿易ができることは結構でありますから、政府としてはできるだけのことをいたしはしますが、然らばどうしてやるかと言われますと、急速にどうしてやるかと言われると私には案がありません。又支那関係の人あたりからいろいろ案が出ておるようでありますが、これは研究中であります。できるだけのことはいたしたいと思つております。
  143. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 案がなかなかないのでというお話でありますが、案は、やる決意をされて総理がその押しで積極的にやられれば、案は幾らでも出て参ると思います。どうかそういう決意を強くして具体的な案を早急に作つてこの隘路を打開することに積極的に努力して頂くことを切に希望しておきたいと思います。  それからこれも今朝ほど一応触れられた問題でありますが、インドシナにおける統一行動の問題であります。この問題については、ダレス国務長官が昨日、今日ヨーロッパに参つてロンドン、パリで統一行動、その第一歩としての対中共共同宣言案、それをイギリスなりフランスに説得を行なつていると思いますが、その説得をするにかかわらず、今までの情勢ではダレス長官に対してチャーチル・イギリス首相もラニエル・フランス首相も率直に両国がこの共同宣言案に賛成ができないという理由を答弁するであろうと言われるように判断をされていると思うのであります。ヨーロッパにおいてそういう情勢であるのみならず、特に現地においてはバオダイ首席が十一日パリに飛んで行つたと思いますが、首席もダレス長官と会合してヴエトナムの政治情勢を説明する、特にヴエトナム人は米国の強硬な態度の結果、戦争が激化をしヴエトナムの国土が朝鮮のように荒廃に帰することを極度に恐れている事情を告げるであろうというふうに伝えられておると思うのであります。西欧においても特に現地においてもこういう状況であり、更にタイは成るほどこの誘いに乗つたようでありますが、フイリピンもこれに対してはそういう誘いに乗れないというようなことを返事しておるように思います。そこで我が日本としても、先ほど総理は、そういう誘いを受けたこともないし今の状態ではお断りする以外にないということをおつしやつたのでありますが、その態度は我々も賛成をするところで、その態度を更にもつと明確に押出して頂きたいと思うのでありますが、総理はどうお考えになりますか。特に私がこの点を繰返しお開きするのは、この間中から外務大臣にこの問題をお尋ねした際に、外務大臣は、そういう問題のときには兵を出してこれを助けることはできないかも知れないけれども、自由諸国群の一人としてその他の面においては積極的にこれに協力することが然るべきであろうというような答弁をしておられると思うのですが、如何に自由主義国家群の一つあろうとも、少くともフランスなりイギリスは今申上げたような態度をとつておるのであるから、その点はイギリスやフランスより更にもつと進んでアメリカに引ずられるというようなことのないように、むしろもつと直接に非常に大きな利害関係を持つておる我が国としては、その点は絶対に戦争に介入されるような糸口を作らないことを堅持する、そういう意味では、共同宣言案自体についてもなかなかむずかしいし、そういうことをしないほうがよいという態度をむしろ堅持して然るべきだと思いますし、総理の先ほどのお答えはそういう含みを持つておると思うのですが、その点をもう一遍はつきりと御答弁を願たいと思います。
  144. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、共同宣言に参加するの意図があるかという点については私は研究いたしておりません。が併し戦争に引ずられるということ、或いは海外派兵といいますかそういうことになることは、日本の現在の経済状況、財政状況から言いましてもできないことであります。従つて海外における戦争に引ずり込まれるようなことは断じていたしたくないと思います。
  145. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 フイリピンの賠償の問題でありますが、先に我々が外務委員会その他でいろいろ報告を受けていたのは、二億五十万ドル程度のものがぎりぎりの最高額だと思うというようなお話であつたようでありますが、その後情勢が急変転してそうして昨今は四億ドル程度のものを賠償額として認めるというようなお話がきまつたとかきまらないとかいう報道があります。而もそれがきまる過程においては、外務省の大野公使は二億五千万ドルより若干上廻る程度のことで交渉をしていたにかかわらず、総理側近の人たちから、特に名前をあげれば永野氏あたりからそれとは比較にならない大きな数字がすでに別途フイリピンと交渉をされていて、その二本建になつたためにそれらがもつれてしまつて最後は四億ドルということにきまらざるを得なかつたというようなことが伝えられておりますが、それらの点について総理はどういうふうにお考えになつておるかという点が第一点。  第二点は、賠償を仮にフイリピンに四億ドル出すということになると、それに関連をしてインドネシアであるとかビルマ等々ともいろいろ考えなければならないので、それらをひつくるめてどの程度くらいまでは賠償ができるとお考えになつておるのか。而も私たちもそういう戦災国に対しては道義的にもその他からいつても賠償をしなければならないことは当然であると思いますが、若しフィリピンに対する四億ドルを出発としてその他の諸国の賠償を考えると相当多額になる。そういう多額な賠償の負担を相当長期に亘つて負うということになれば、そこからも日本が大きな軍隊を持つと、再軍備を今のような考え方で今のような規模においておやりになることすら過大な負担になつて、賠償ととても両立をし得ないような事態に立ち至るのではないか。更にアメリカの占領中の対日援助二十億ドルの問題も出て参りますし、それらを考えると若し賠償を合理的にやろうとすれば、日本防衛力増強の問題も更に占領中の対日援助返済の問題も根本的に考え直して、それらを全部削減をして漸く賠償の今四億ドルを出発とする金額が負担されるに過ぎないような状態じやないかと思うのですが、それらの点を総理はどういうふうにお考えになつているか。
  146. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。フイリピンとの関係、殊に戦争関係その他で随分損害をかけており、その結果日本に対する感情の甚だ悪かつたフイリピンに対して未だ平和条約もできておらない、成るべく早くするためには賠償問題は片を付けなければならんと考えますが、さて賠償問題を幾らにしたらいいかということは、これは現地における事情と或いは日本の財政状態等を勘案して適当なところで織込まなければなりませんが、今のところは幾らにするということについての研究をいたしているので、その条約の内容について賠償の内容について今、永野、大野公使の間にしきりに協議をいたさせております。今お話の永野が側近でどうとかということでありますが、これは私の側近であるか外務大臣の側近であるか、それは私も区別はつかないが、いずれにしても両人にはこう言つている。大野は公使で全責任を持つているのであるから、永野君としてはいろいろフイリピン関係等でいろいろな問題を探し出してくれるということになつているから、いろいろな問題、向うの事情の探求その他について永野君がいろいろやつてくれようが、併し問題は大野公使が日本の代表公使として責任の地位にあるのであるから、大野公使が決定しなくちやいけないということを申しておるのでありますから、側近なるものと大野との間にけんかや衝突が起るはずはない、又私のところに来てもけんかをいたさないように申しております。  さてどうなるか、これは今後交渉の経過によるべきものでありますからして、今お話の四億になるか二億になるか、その点はもう暫く交渉の結果を待たないとわかりませんか、いずれにいたしても適当なところに賠償問題は解決して、早くフイリピンとの関係を正常普通の関係におきたいと考えておりますが、お話のような側近とけんかしていることはありません。
  147. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは総理に対しまする質疑はこれで打切りたいと存じます。  ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  148. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて。  それでは明朝委員会を開くことにいたしまして本日はこれで散会いたします。    午後三時五十七分散会