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1954-04-08 第19回国会 参議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月八日(木曜日)    午後一時三十三分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            團  伊能君            佐多 忠隆君            曾祢  益君    委員            鹿島守之助君            西郷吉之助君            杉原 荒太君            梶原 茂嘉君            高良 とみ君            羽生 三七君            鶴見 祐輔君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    保安政務次官  前田 正男君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁保安局長 山田  誠君    保安庁人事局長 加藤 陽三君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省経済局長    心得      小田部謙一君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○本委員会の運営に関する件 ○国際情勢等に関する調査の件  (インドシナ問題に関する件) ○日本国アメリカ合衆国目との間の  相互防衛援助協定批准について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付) ○農産物購入に関する日本国とアメ  リカ合衆国との間の協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○経済的措置に関する日本品アメリ  カ合衆国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付) ○投資保証に関する日本国アメリ  カ合衆国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣出拠出、  衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。会議に入る前に今朝の理事会の経過について御報告いたします。今朝理事会を開きましてMSA取扱ぶりについて御相談をいたしました。前回から総理一席用題が主たる案件であつたのでありまするが、昨日の理事会乃至は委員会決定に従いまして官房長官とお打合せをしたのでありまするが、今朝官房長官から電話が参りまして、総理はゆうべ遅く六時過ぎに東京に着かれた、そこで早速外務委員会側要望をお伝えしました。それで総理もごの委員会出席をしてそして質疑に応じたいというはつきりとした意向を持つておられるというわけで、ただ病状が許さないために今週一ぱい国会出席を見合せたい、それで外務委員会に対しては来週の月曜十二日に出席するごとにしたい、こういう御返事であつたそうであります。そこで私は念を押したのでありまするが、然らば十二日に総理が来られるということを予定して、そしてプログラムを組むということにいたして差支えないかということを念を押しましたが、その通りにしてもらいたいということでございました。そこで今朝の理事会にそれをお諮りしましていろいろ論議がございましたが、と申しますることは総理出席をする日からMSAに関する審議を始めたいという要望もあつたわけであり摂するが、それはいろいろ相談の結果強いても張されることをやめて頂きまして、そして本日から外務大臣に対する質疑を開始する、そうして総理には来週月曜日に来て頂く、こういうことに今朝の理事会では話合がまとまつたわけであります。  ただ御存じの通りに、砂糖協定に関しまする審議も、これは外務省側から急いで参つておりますので、MSA関係外相に対する質問は本日の午後と明日の午前中といたしまして、明日の午後と土曜日一ぱいは砂糖問題に当てて、できるだけ審議を促進して土曜日の夕刻までには委員会を上げたいという、これは希望でありますが、そういう希望を持つているのであります。而して本日の午後と明日の午前のMSA関係質問はこういうことに理事会としてはまとまりました。各会派一名持ち時間一時間といたしまして、質問順序は大会派順ということにいたしまして、そうして各会派から一名ずつ順を追うて質問に当る、と申しますることは、大会派順で一名ずつ質問に立つて頂くことになります。自由党、緑風会社会党の第四、続いては社会党の二、それから改進党ということにいたしまして、一人一時間ずつの割合で質疑に立つて頂くわけでございます。但し私の了解しておりますところでは、一人一回に必ずしも一時間をお使いになるという要はないのであります。残つた時間はその会派の次回の質問時間に加える、こういうことになると了解いたします。従いまして一つ会派が例えば人で二時間をお持ちになつているとしまして、本日そのうち一人が立つて一十分きりしか使われなかつたといたしますれば、その次の時間が廻つて参りましたときには、その会派はまだ一時間半の質問時間を持つ、こういうことになろうと思うのであります。そういうお含みで質疑に立つて頂くことに今朝の理事会申合せはできたわけでありますが、それを委員会にお諮りいたしまして、それでそういうような理事会決定に従いまして質疑を進行して頂くということに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 羽生三七

    羽生三七君 異議はありませんし、それから理事会の御決定とあればこれは尊重いたしますが、来週の月曜日には委員長におかれても是非総理が確実に出席できるよう御配慮を願いたい。
  4. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 持ち時間は各会派で一人一時間ずつですね、そうしますと二回にそれを使えということになりますか、何回でもいいのですか。
  5. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 何回でも廻つて参ります、その時間の続く限りは。そういうことになります。
  6. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 関連質問の時間は。
  7. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 関連質問の時間はその持ち時間の中に入れておりません。でありますからして持ち時間はその人の純粋の持ち時間になるわけです。  羽生委員の今念を押されましたことは、今朝はども理事会で随分それに関しての論議がございました。私もその理事会の乃至はこの委員の空気をよく存じておりまするので、十三日には是非総理出席をして頂くごとに努力をするつもりでおります。  これから質疑に入るわけでありまするが、その前に皆様方ちよつとお諮りをしたいと思います。羽生委員から緊急質問の形でほんの僅かの時間外務大臣に御質問申上げたいということでありまするが、それに御同意をするごとに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは羽生委員緊急質問の形で短時間質問の時間を上げることにいたします。どうぞ。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 外務大臣に最近の国際情勢関連した問題で一、二短時間お尋ねいたしたいと思います。  その問題は最近の外電の伝えるところによりますと、インドシナ問題に関連して米国政府が五カ国の共同宣言を発表するように伝えられておる。そのアメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、ニュージーランド等五カ国のほかにインドシナに近いアジアの一部諸国にもこの共同宣言参加するよう要請されることがあるかも知れないと伝えられております。更に又一部外電によりますと、先般ダレス長官インドシナ問題に関連して自由諸国統一行動が必要である旨を述べて世界各国の注目を集めております。又ワシントン特電によれば、INSの記者は恐らく日本がこの共同宣言参加を求められることもあり得ると語つております。これらにつきまして当のフランスは余り行き過ぎることは中共爆撃の誘発の危険を招くということで警戒ぎみであり、又極めて当惑しておるとも伝えられておりますが、これに対する外相見通しをお伺いしたいのが第一点であります。  第二点は仮にMSA協定が成立したような場合、今申上げましたダレス長官の言う自由諸国統一行動が求められるようなことが起るかどうか、仮に起つた場合には日本にそういう要請があるような見通しはないかどうか、これが第三点であります。  それから第三点は今までアメリカでいわれておりました侵略の危険という場合には、大体普通我々は現実侵略が起つた場合の問題を検討の素材にしておつたわけでありますが、今度のインドシナ問題に関連する動きを見ますると、これは東西両陣営がイデオロギーが違つておる場合には相許容しがたい一つ侵略的な勢力とみなされるような方向に動いておるようにも感ぜられるのでありますが、これに対する外相見解を伺いたいのであります。  以上三点について御見解を御発表願いたいと思います。
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今お話の第一点につきましては、我々もまだ如何なる宣言をするのか、それがどういう意味であるかというようなことについて、詳報を持つておりません。従いましてまだ判断をする材料が整つておりませんので見通し等を申すわけに参りません。尤も外務省としてはもうすでに訓令を発してその実績を調査するように申しておるのであります。  第二点につきましては、MSA自体はこれかりも御説明いたしますが、要するに端的にいえばアメリカから兵器、装備その他のものを援助として受けるというのでそれに基く関連した規定はありますが、それが骨子でありまして、MSA自体協定からは何らその他の義務は出て参りません。従つて日本がこれに参加するかしないかということにつきましては、MSA自体の結論からは何も出て来ない。そのほかの日本独自の政治的、経済的その他の考慮から、仮にそういう問題が起こつたとすれば決定すべき問題であります。  それから侵略というのは何か。これは非常にむずかしい問題でありまして、実際上のことを考えなければわかりませんが、必ずしもイデオロギーの違いがあるからそこで争いが起つたときに、直ちにこれをどちらかが侵略と名付けるのだというほどに広義には我々解しておりません。インドシナ自体の問題が侵略であるかどうかということについては、いろいろ議論はありましよう。又仮に国内の問題だとしても、いわゆる間接侵略部願に入るのかどうかという点についてはおのおの違つた意見があろうかと思いまするが、侵略なるものを一般的に言いますれば、私は或る国に対して直接それの安全を害するかどうかという点で判断をいたすべきものだと思つておりまして、単にイデオロギーの違う国どうし争つたから、直ちに自分が気に入らないイデオロギーを持つている国の行為は侵略であるというふうには片付けるべきでないと考えております。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 第二の点についてもう一回お尋ねいたします。それはこのMSA協定によつて相手側から何らか求められるようなことはないであろうし、又それによつて何もこちらが制約されるものではないという御説明でありましたが、その場合例えば海外派兵というようなことは仮になくとも、例えば先般衆議院外務委員会において外務大臣が言われたように、何らかその他の域外買付というような言葉を使われておりましたが、その他のそういう派兵以外の国内的な、つまり協力し得る条件、そういうもので何か明いてから求められるようなことはないか、それが第一点であります。  それからもう一つは、MSA協定からはそういうものは出て来なくとも、国際情勢から何らかそういうことも求められるようなことが見通されるかどうか、そういう場合が若し仮にあつても、日本が同意しなければそれまでだと言われればそれこそそれまででありますけれども、併し見通しとしてそういうことがあり得るかどうか、又ありそうであるかどうか、その点を外相見通しとして一つお聞かせ願いたい。
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) MSA自体につきましてはこれからいろいろ御質問もあることと思いますが、いろいろの約束をいたしております。例えばアメリカで必要とする、而もアメリカに十分ない物資を有償ではありますが、アメリカにできるだけ送つてやるというようなこともありますし、その他いろいろの約束をいたしております。併しそれ海外に兵隊を出すとかという種類のものは何もありません。  それから国際情勢一般から見てどうか、これは非常に抽象的でお答えがしにくいのでありますが、例えば国連が或る種の措置決定したというときを想像しますと、先ず国連に協力するという建前から日本としても可能な範囲での協力はいたすべきだと思つております。従来からよく言われますように、仮に武力の提供等はしないにしても、例えば国内国連の部隊の通過を許すとか或いは金融上の措置経済上の措置について協力するというようなことは考え得ることでありますが勿論それは現実に何も今問題になつておるのではありませんが、国連決定しないが、自由主義諸国が皆で相談をして成る種の行動をとつた場合に日本はどうするか、これもそのときになつてみないと実情はわかりませんけれども、我々としては一つ争いがあつたときに、原則的にはその争いの渦中に入らないようにいたすのは当然であろうと思いますが、若しその争いがどちらか  一方が正しくなくして他方が正しいのだ、こういうことが明白であるような場合、これも仮定の問題で議論はありましようが、一方が正しく一方が正しくないという場合であつたなら正しいほうに味方をするのは当然であろうと考えております。どういうことを実際やるか、又どちらが正しいかということになりますと、これは具体的な事実が起つて来ないとわかりませんので一応そういうふうにお答えをしておきます。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 関連して。
  14. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと御相談申上げますが、実は羽生委員質問は緊急の性質であるからということで質問を許可することにしたわけでありまするが、第一点の例えば五カ国共同宣言というものは現実の問題として緊急性があつたと思いますが、その他の問題はMSAに関する皆さんがたの御質問の中で質問のできる問題でもあり、又そのときで遅くはない問題ではなかろうかと思うのでありますが曾祢委員如何でしようか。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 その共同宣言についてだけであります。極めて簡単に。
  16. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それではどうぞ。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 新聞の伝えるところによると内交渉が行われておるというやにも伝えられておる。従つて今の外務大臣お話ではまだ情報を集めておるというお話でしたが、内交渉があつたかないか、この点を明確にして頂きたい、これが一点。  第二点は、さような共同宣言のようなものに参加を求められた場合には明確にこれを拒否すべきではないかと思うけれども、それに対する政府の明確たる態度を御説明願いたいと思います。と申しますのは、日本としてはむしろいわゆる話合による停戦、それからインドシナ三国に対する完全なる独立の付与こういう方針がむしろ正しいのだ。いやしくも中共に対する警告的な外交的な通諜等に対しては、軍事的には勿論日本が制約するなんということは別としても、政治的には加わるべきでないと思うが、この二点についてだけイエスかノーかをはつさりお答え願いたい。
  18. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 第一点につきましては、全然まだ話合がありません。従つて内容も実は承知していないので、それで調べさしておるわけであります。  第二点につきましては、先ず曾祢君の言われることもわかりますが、併しこれが如何なるもので、如何なる意図を持つているかとオフィシャルには知らないので、新聞報道程度のものしか我々持つておりません。従つてそれを土台にして議論してもこれは正確であるかどうかわからないのです。もう少し事態がはつきりしてから政府態度はきめるべきものだと思つております。今ちよつと早いだろうと思います。   ―――――――――――――
  19. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それではこれから先はど御採決になりました理事会決定従つて質疑に入るわけでありまするが、従いまして日本国アメリカ合衆国との相互防衛援助批准について承認を求めるの件、農産物購入に関する日本アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定縦結について承認を求めるの件、投資保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、以上四件を一括して議題といたします。  これより質疑に入るわけでありまするが、第一回の質疑者といたしましては、その順序を申上げまするとこういうことになります。杉原委員梶原委員佐多委員曾根委員鶴見委員、これが第一回の質問順序でございます。又付加えて申上げなければならんことは、二時の衆議院の本会議砂糖協定が上程されるそうであります。その際外務大臣は約十五分間この座を中座しなければならんということでありまするが、最初は討議の間は政務次官があちらに出るそうであります。ただ投票の際には外務大臣はあちらにおいでにならなければならない。こういうことでありますが、投票でありますならばごく短時間で済むかと思うのであります。つきましては杉原委員にお諮りいたしますが、外務大臣がおられる間に質問をお始めになつて頂きましようか。  速記をとめて下さい。    〔速記中止
  20. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。杉原委員質問を始めて頂きます。
  21. 杉原荒太

    杉原荒太君 少し外務大臣にお尋ねいたします。  先ず第一に、この協定内容に立入る前に、この協定を結ぶに至つたこと、それから今後この協定締結の結果いろいろのことが予想されるわけでありまするが、これと基本的な外交政策との関係についてお尋ねしたいと思うのです。この協定は直接間接日本国政全般に非常な関係を持つておる。なかんづく日本の今後の国防政策、又日本外交政策というものに非常に重要な関係を持つている。そこで私が合日お尋ねしたいのは、この中の特にその外交政策との関係です。その中でも特需戦争防止、平和の維持ということを目標にした外交政策といいますかそういうものとの関連。又更にもう少し別の方面から見まするならばソ連等との関係についての今後の外交政策についてはどういうふうな基本的な考え方で進めて行かれるかという点です。これは直接に相手防衛援助ということを目標内容としておりますが、今申しました基本的な外交政策を非常にこれは実際上重要な関係を持つている。それでこういう協定を結ぶ際には政府はそういう点について確たる一つ方針を持つておられるに違いないと思う。そうしてそれを国内に対しても又更に外国に対してもその辺のところについて政府の基本的な方針というものを明らかにしておかれる、宣明されるということが是非とも必要なことだろうと思う。そこでこの委員会の席上において外務大臣から特に今申しました点について政府の基本的の考え方を御説明願いたい。この協定内容の中にも第何条でしたか、八条でしたかに「世界平和の維持に協同する」ということ、それから「一際緊張原因を除去するため相互間で合意することがある措置を執る」ということ、こういうことを条約規定として設けておる。これはそれ自体を抽象的に見来すと何ら問題がないように思われますけれども、具体的の問題になつて来るとこの辺のところは非常にこれの運用というようなことは重要なことになつて来ると思う。殊に世界平和の維持だとか或いは国際緊張原因を除去するための措置ということについて、どういうことが一体その世界平和の維持になり又国際緊張原因を除去することになるかという点について考え方締約国間と異なる場合、これは非常に問題になつてくることだと思う。それで今後この協定がまあできたとしまして、できあがつた後にこの運用に当つて政府がどういうふうな基本的な方針の下にこれを運用して行かんとしておられるか。今私が第一番にお尋ねしましたことと表裏をなす関係になるわけでありますが、その点を先ず外務大臣からはつきり御説明願いたい。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 少し御質問が抽象的なところがあつて、或いは私のお答えが御質問と合つていないかも知れませんが、一応申しますと、政府の基本的な外交方針は、このMSA協定まつまでもなく、すでに内外に宣明しておると思うのであります。又宣明しておるのみならず実際にも行つておる。例えば平和条約安保条約等一連の実際の政策がこれでありますが、外交に関する国会における演説におきましても、私は自由主義諸国との提携強化ということを常に強調いたしております。又或る場合には、これはいろいろ議論がありましようが、中立政策ということはとれないということも申しております。すでに明らかになつておる外交政策一つの現れとして今回のMSA協定ができておる。こういうふうに考えておりまして、この協定を作るに当つて新らたに外交方針を樹立するという意味にはいたしておりません。で根本自由主義諸国との提携強化ということにありまして、これは非常に只今実情で不幸ではありましようけれども、やはりそれには自由主義諸国防衛力強化ということが必要であり、又それがおつしやるような戦争防止に決して理想的な方法ではありますまいが、戦争防止にも役立つてれるというふうに私は考えております。従つて平和維持ということもとにかく自由主義諸国防衛力強化ということがなければ只今の現状では望まれない。こう考えておりまして、MSA協定も非常にこれはその大きな世界平和という意味からいえば比較的小さなものではありましようけれども、その一環として本協定を結んだわけであります。附け足して申しますと、国際緊張原因を除去すること。これもいろいろ解釈の問題がありまして、具体的になるとむずかしいかと思います。又おつしやるように関係国間に意見の合わない点もありましようけれども、これは、念のためまあこういう点でありますから合意する措置をとるというので、両方の国が合意した場合にこれは拙門が決定する。一方の意見だけではきまらないという趣旨でやつております。要するに今申した辺り根本方針自由主義諸国との提携強化するという点に政府外交方針はおいておるわけであります。
  23. 杉原荒太

    杉原荒太君 只今外務大臣から自由主義諸国との提携強化基本方針にしておるということでありますがこの自由主義諸国との提携強化ということはやはり戦争防止、平和の維持という見地からも現実に私も必要なことだと思う。その点については私も所見を同じうするのでありますが私が実はここで特に外務大臣からお聞きしたがつた点は、それはもとよりであるけれども、それだけじやなくして更にもう少し幅広くといいますか、それは一つの機軸になるけれども、しかし同時に合せてやはり機会があればソ連等との関係の緩和という方向も努力する。勿論現実にはやさしいことじやないが、方針としてはそのはうも努力するという方針でやつて行くんだというふうな考え方をその外交政策の中に極めて大事なこととして織込んで考えておられるかどうかという点を私はお聞きしたかつたのです。そうして又そういうことが日本の国の立場を世界にこういう協定を結ぶ際にに明らかにすることが私は非常に重要な意味があると思うからお尋ねしたわけなんです。
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お話の点は御尤もでありまして、普通当然これは世界各国との友好関係ということが一番重要になるし、又現在は特にそういうことが重要視されなければならん時代であります。でありますから通り一遍と言いますか、ちよつと語弊がありますが、普通なら私も一方においては自由主義諸国との提携強化他方においては共産圏諸国とも仲良くやつて行くということを言うと当りさわりがないように思いますけれども、こういう重要な委員会で御答弁するときはむしろ多少非難されてもあいまいなことは避けたいと思いまして、私もわざとソ連圏のことは申さなかつたのであります。というのはとかく口ではそういうふうに言いましても、実際それではどうするのだということになりますと、これは非常にむずかしい問題であり、又例えばソ連側から引揚というようなことをやつてくれる、協力してくれる、従いましてそういう点でソ連側の感情を悪くするようなことはしたくないのでありまするし、又北洋漁業というようなことも考慮される現在でありますから、こういう点でも具体的には個々の問題ではできるだけそういう感情的なことのないようにいたしたいと思つております。又実際上例えばソ連から船が難破して北海道へ来るというような場合には丁重にしてこれを引渡すというような措置もいたしております。おりますが併しそれだからといつて自由主義諸国との提携強化するという根本方針がぐらつくようなことに相成つてはいけない、こう思います。従いまして私はお話の趣旨はよくわかりまするし、又決して好んでことを荒立てたりするのではなく、逆にできるだけいろいろの問題を具体的には解決して行きたいと思つておりますが、併し自由主義諸国との提携強化ということとソ連圏と仲よくして行こうということは、これはなかなか言うべくして行われないことだと思います。尤もジュネーヴ等で今度会議が行われまして、多少ともそういう点で緩和される情勢になれば結構であろうと思いますが、今その現状は冷たい戦争と言いますか、そういうことを端的に考えてみますると、両方にいいようにということはなかなか困難であろうかと思います。これはどうも外務大臣としては少し言い過ぎかも知れませんが、一応お答えいたします。
  25. 杉原荒太

    杉原荒太君 次の問題に移りたいと思いますが、今までもすでに何回となく問題になつたことでありますけれども、憲法との関連。これは併し非常に大事なことで、いずれにしてもはつきりさしておく必要がある。特に私今日改めてこの問題をお尋ねしておく必要があると思いましたのは、この外務省で作つておられる解説書を見て私その必要を感じたのです。それは外省で作つておられるMSA協定の解説というパンフレットですが、二つの要点がありますが、一つはこういうことが書い「安保条約で負つている軍事的主義を履行する決意を再確認すること」、六つの条件の中の一つとしてこのことを挙げておおのは、「六条件を受諾してもわが憲法に抵触するものでないことをはつきりさせるために、」規定したのだということが書いてあります。これは非常に私、問題の所在を少し取り違えておられるのじやないか、我々こういうことがそれよりももつと憲法との関係を生ずるのはむしろそこに重点があるのではなくして、もつとはかのところにある。それは協定の八条のつまり防衛力の増強義務をこつちで負担するというところにある。それに対するこたえるところがなければならん。それからもう一つ、この文章のあとのほうに九条で、「この協定は、各政府がそれぞれ自国の憲法上の規定従つて実施するものとする。」という規定を設けたのは、これは注意規定だという、この規定の性質を注意規定というふうに解釈しておる。これも私非常に納得しにくい。これは注意規定じやなくして、これによつて第八条の防衛力増強義務、法理的に見ればむしろ八条をここで制限しておるのだ。この今の憲法九条との関係のみからすれば、この第八条では防衛力増強義務と、非常に広い概念ですが、それが九条のこの規定を設けたためにそれだけ制限されるのだ。決して注意規定というそんな軽い規定ではない。これによつて一種の除外規定になつて来るのだ、こういう性質のものだと思います。それでこれは外務省の情報文化局で作つておられるけれども、これは外務省の本当の最後的な、外務大臣も最終的なものだというふうに何して一体とつておられるのか、そのへんのところをはつきりしてもらいたいと思います。
  26. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 実は申訳ないんですが、私もこれを事前に見ておらない、どうもおつしやるようにこれはどういう意味か、書き方を見ると成るほど余り感心しない点があるように思いますから、これをよく注意いたします。
  27. 高良とみ

    高良とみ君 ちよつと関連して。それは大臣はどういうふうに御解釈になつておるか伺いたいんです。どちらが正しいか。
  28. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはこの条項の規定の御審議のときに御説明いたします。
  29. 杉原荒太

    杉原荒太君 最後にお尋ねしたいのは、今度の協定全体を見て一番大事な点は何と言つてもこの協定によつて日本がどういう義務を負担するかということと、それからアメリカ側から援助を受けるがその援助内容如何。この二つが一番大事な点だと思います。そこでいつぞや外務大臣、この協定そのものは援助を受けるという点から言えば一種の土管みたようなものだ。そこを流れて来る水というものは又別であつてこれは土管みたようなものだという説明をされた。まあそういうふうにも観念することができると思いますが、そこで大事なことは何と言つても、どういう一体内容援助をどのくらいやられるかということ、これは非常に大事なことである。これは事柄の性質から言いましても、もうこういう協定ができるときには、そういうことの殆んど、大体実質的にはそういうことがきまつておらないかんと思うのです。それは成るはど論理的には、これができてからということだけれども、実際の事柄というものを考えてみると、むしろそつちのはうが先決と言つてもいいくらいなんで、これはいわば衣を着せるだけの、それだからこういう点、つまりどういう援助をどのくらいということ、これは今までもこの委員会でもたびたび明らかにしてもらいたいといということがあつたのです。これは私尤ものことだと思う。勿論です。そこには限度はあるでしよう。それはあつていいけれども、これは大体その中味のところ、ただ土管だけ説明するのじやなく、その中味のところ、これは大体やはりお示しになること、国民もそれを知りたがつている。そういう意味で、最大限度までここでその点を御説明して頂きたい。
  30. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは仰せの通り、形式的にはこの協定が済んでからということになりますが、この協定を交渉中にずつと下話はいたしております。今でも下話をしてまだきまつてない部分もありますけれども、大体の見当はもうすでについております。今日ここに保安庁から来ておられますから、具体的のことについて……。
  31. 前田正男

    政府委員(前田正男君) 今大臣からお話のありました通り、現在供与の期待につきまして、まだ交渉中でありまして確定をいたしておりませんが、大体の内容につきましてはすでに委員会等で、或いは又予算委員会等で説明をいたしておりますので、大体我々が期待いたしておりますところの量について御説明をさして頂きます。  陸上自衛隊の装備につきましては、火器類或いは車両類等を合せまして二管区分くらい、概算いたしまして約二百八十億円ぐらいのものを期待いたしております。それから船舶につきましては、詳細は参議院の予算委員会で申上げましたが、もう一度申上げますと、約二千四百トンぐらいの駆逐艦二隻、それから千六百三十トンくらいの駆逐艦三隻、千四百トンの駆逐艦二隻、千六百トンの潜水艦二隻、三百二十トンの掃海艇四隻、三十トンの掃海艇一隻、千六百トンの上陸支援艇二隻、それから七千トンの補給工作船一隻、合子いたしまして十七隻、約二万七千トンばかりを要望いたして参りまして、これを大体新造価格の六割と見まして、邦貨にいたしまして約二百二十億円ぐらい。それから航空機は練習機、戦闘機を入れまして、百四十三機、概算いたしまして約五十億円ぐらい。合計いたしまして五百五十億円ぐらいの概算の金額で、現在供与期待をいたしておりますが、併しながら今申上げました通り折衝中でありまして、これが全部もらえるかどうか確定しておりません。
  32. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちよつと関連して。今の援助期待量、期待の種類、量等については、詳しい表で現在保安隊が保有しておるものが幾らあつて、新たにアメリカ側から期待するものが幾らあつて更に日本自体で装備を増強するものが幾らあるかということを詳細に、明瞭にわかるように資料を提出して頂きたいことを何遍も要求しておりますけれども、まだ出ておりませんので、至急に一つ御提出を願いたい。
  33. 前田正男

    政府委員(前田正男君) その資料につきましては、今盛んに調べておりまして、近日もう今日か二、三日中には出せる、こう思つております。
  34. 杉原荒太

    杉原荒太君 今おつしやつたのは初年度分のことですね。この次の年度ですが、アメリカの会計年度もすぐだが、この次年度の分も実際上今からもう話しておらなければならんような時期じやないかと私は想像するのですが、今おつしやつたのは初年度だけの分、それから次年度分のことはすでに話しておられるのか、話しておられないのか、若し話しておられればその内容はどうですか。
  35. 前田正男

    政府委員(前田正男君) 只今申上げましたのは、二十九年度分として期待いたしておる分でございます。三十年度分といたしまして期待いたします分については、現在のところ我々まだ三十年度の漸増計画を確定いたしておりませんので、従いましてそのほうの交渉に入つておりません。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 これは私も自分の時間のときにお尋ねしたいと思つてつたのですが、関連してお尋ねしますが、この前本会議で御質問したけれども、適切なお答えがなかつたのですが、そのときの経済事情上、国力に制約されてその計画が不確定になるということは成る程度認められます。これは我々了承しますが、併しそのときの経済事情に応じてなぜ不確定になるか、その可能不可能をきめる基準がなくて、そうして計画をお立てになるのですか。例えば船を五万トン増強しようと思うが三万トンにしておく、地上部隊を五万増強したいけれども経済事情で三万に制約される。その可能、不可能をきめる基準がなしに、本年のところはさまつておるが明年のところは不確定だ。その基準があつて可能、不可能が出て来るから今になつてまだ明年の推算もつかない。不確定であるけれども、こういう推算をしておるということをお示しにならないのは了解に苦しむのですが、一つその点をお示し願いたいと思います。
  37. 前田正男

    政府委員(前田正男君) 実は三十年度につきまして、我々のほうといたしましては大体大臣からも他の機会に述べたことがあると思いますが、陸上につきましては制服二万人、海のほうにつきましては制服で約六千人ばかり、航空につきましては八千六百人ばかり、その他私服を含めました程度の増強をいたしたいと思つて研究をいたしておりますが、日本の財政力の許せる範囲において、我々の自衛力漸増ということはやつて参らなければなりませんので、その点におきまして、いろいろこの計画につきまして再検討を加えなければならん、どうしてもいろいろ交渉しなければならんこともあるだろうと考えております。
  38. 杉原荒太

    杉原荒太君 もう一つちよつと附け加えてお尋ねしておきたいのですが、これは日本側として三十年度までを、今具体的にはきめ得ないだろうということはわかりましたのですが、一方アメリカの予算の関係を見ると、大体日本に対する援助に、要する予算というものは、アメリカですでに組んでいるでしよう。そしてそれが国会でこれから六月までの間に決定されて行く、その間に大体のことがそう細かくなくてもなつておらんと受入れられないと思うのす。そういうような必要からここで最後的な決定的なものでなくても大体のこつちの要請額というものが出ておらなければ、どうも私は作業というものは進まないと思うのだが、その辺のところはどうなんですか。
  39. 前田正男

    政府委員(前田正男君) 私たちの自衛力漸増計画につきましてはたびたび政府から説明いたしておりまする通りこれは我が国の独自の考えで漸増計画を立てて行くわけでありまして、日本の物価、財政難から見ましての漸増計画を立てるわけであります。従いまして、日本政府といたしましては、三十年度の漸増方針がきまらなければ、それに対して幾らの協力を期待するかという話も出て来ないわけでありまして、アメリカの予算措置がいろいろとありましても、日本政府の財政的な面から又防衛力漸増の方針から見ましてどの程度にやるかということがきまらなければ、交渉に入ることはできないわけであります。
  40. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは次に梶原委員
  41. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 数点お伺いいたしましてあとは後日に廻わしたいと思います。第一点は只今杉原委員質問された点でありますが、MSAの本協定関連しての外務大臣の基本的態度MSA協定自体の持つておる性格と申しますか意味合、これについての御見解を承わりたいと思うのであります。  外務大臣はこれまでしばしば本協定日本の自衝力増強に成る程度役立つであろう、又防衛産業にも多少のプラスはあるであろう、義務の点は安保条約の範囲内であつてすでに負つている範囲を出るものではない、従つて協定締結することは、何と申しますか、さしたる問題ではないので、多少プラスになるからそれでいいのではないかという、極めて淡々とした説明をこれまでしばしば繰返されているのであります。本協定の条項自体を見ます乙とまさしく大臣の説明されておる通りだろうと思う。併しながら本協定の背後にある動き、本協定が現在世界の自由出国殆んど全部を通じて同じような形において締結されておる特殊の意味合が、この表現された条項以外に私はあると思うのであります。その点は、従来例えば安保条約において日本が殆んど防衛力のないときに暫定的にアメリカ日本の防衛に当るというあの性質と相当の私は差異があるのじやないかと思う。時間的にも大きな差異がありますし、世界の動きの上においても差異があるのであります。従つて、単純に自由諸国との協力を従来通り強化して行く方針に副つての極めて軽い一つのステップというふうには必ずしも考えられないのであります。やはりこの協定締結すること自体が、勿論自由諸国相互間の連携を強化する上においての日本の役割というものを打出すわけでありますけれども、その給び付き方如何によつては、一つの今後の日本の進み方に転換を画するような重要な私、意義を持つておると思うのであります。それらについての態度については、先ほど杉原委員に刈して大臣がお答えなつたのでありますが、私少し実は不満なのであります。といいますのは、自由諸国との連携を強化するということ自体、これをとやかく申すわけではありません。併し日本の置かれている現在の立場、敗戦によつてすべてがなくなつて、新らしく出発して行こうという出発の第一歩なのであります。而も、東洋における特殊の地勢的、歴史的立場にあるのであります。そごに、自由諸国と連携を強化すると言いましても、おのずから日本としての一つの特殊の立場というものがなくてはならない、かように思うのであります。現在MSA協定しておつて、その点の関連においてそれぞれの自由諸国が結び付いておりますけれども、英国にいたしましても、フランスにいたしましても、その他の国においても、おのずから違つた一つの色彩といいますか、立場が出ておると思うのであります。そういう立場というものは日本としてはもつと強く出ることがいいのじやないか、又必要じやないかということを私は感ずるのであります。単に概念的と申しますか、自由諸国のただ一員としてこれは当然のことであつて当然協定して行く、今後どういう方向に進むかは別として、その一列の中の一員として進んで行くというので、は甚だ心もとないと思うのであります。もつと日本の特殊な立場を自由諸国の一員であつても強く宣明されて然るべきであると、そのことが自由諸国に対する、当然の本当の意味の協力ではないかと私は思うのであります。そういう点についてMSAに対する大臣のこれまでの御説明は、それはそれで結構でありますけれども、それだけだとすると、甚だ国民をして納得せしめないものが私はあるように思うのであります。そういう点についての外務大臣としての態度MSAの持つておる本当の意義というようなものに対する御見解、これを一つお聞かせ願いたいと思います。
  42. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はMSA自体については、この協定にある以外の背後的なものはないと思つております。これはこれだけで御審議を願えば十分であろうかと思つております。ただ日本として特殊の立場にある、これはどこの国もそれぞれ特殊な立場にありのは」然でありまして、その特殊な立場を強く打出す、これも又当然であろうと思います。又、MSA自体ではありませんが、日本が従来とり来つておる方針は、平和条約、安保条約、又ごの協定と、だんだんに具体化されつつあるものは一貫した方針の下にあるのでありますから、MSA自体がどうということではなくして、日本方針がどつちのはうに向いておるかということについては、先ほど御説明した通りであります。そこで、例えば日本としてはほかの国と違う点がいろいろあろうと思います。殊に東南アジア諸国との関係についてはほかの国に見られないような特殊な関係があるのであります。又中共非常に近い所に国をなしておるところの関係もあろうかと思いますぶ、おつしやる意味日本の特殊性というのははつきり出ていないとか、おつしやるのは一体どういう点か、私ちよつとよくわからないのですが、その点を具体的にお示しがあれば更に御回答ができるかと思います。
  43. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 個々の問題についての、この点はどうこう、その点はどうこういうわけではありません、ただ日本としてはアジアの大陸とは離れてはこれは存在し得ない、それは単に中共との貿易がどうこうという意味合ではありません。必ずしもそういう経済的のことを言つておるのではない、何千年か一緒に隣に位してやつて来た立場から見て、アメリカ中共に対する立場と日本のシナに対する立場とはおのずから違うものがあつて然るべきである。かように思うのであります。従つてそういう点については、何も具体的にどうこうということをいうのではありませんけれども、基本的な態度としては、できる限りそういう面での打開を日本が率先して行なつていくというような態度が私はやはり必要ではないかと思うのであります。  その程度にいたしまして次に進みたいと思いますが、先ほど杉原委員との質疑応答の中にありました八条に、「国際緊張原因を除去するため相互間で合意することがある措置を執る」という条項があるのであります。私は実は大臣の御答弁に非常に意外に感じたのであります。この条項は、国際緊張原因を除去するためにそれぞれの国が独自の立場において必要な措置をとるということをここで制約しておるものではない、私は初め今までそういうふうに苛んでおつたのであります。勿論両国で、相互間で合意ができれば、当然その合意に基いて措置をとることは当然でありますけれども、合意をしなければ日本だけで独自の国際緊張原因を除去するための措置がとれないという制約を何が故にきめなければならないか。何が故に日本だけで、日本だけといいますか、一国でこの国際緊張を緩和するための措置がとられることがいけない、合意しなければいけない、そういう制約をこの協定によつて作り出す合理性といいますか、必要がどこにあるのかということを伺いたいのであります。実は私今までそうは思わなかつたのであります。合意すればその措置をとる、それでいいので、各国がそれぞれやることについてはそれでいいじやないか、当然のことと思つてつたのでありますが、大臣の御答弁によつて私は不可解に思うのであります。  それからこの条項に今日まで折衝される過程において、日本側としてはどういう具体的の構想を持つて当られたのか、又今後これが締結し発効したあとにおいてどういう構想を以て対処されんとするのか、その点を伺いたいと思うのです。ただこの末項ができたが何らの用意と考えがないということでは甚だ不満足に感ぜられるのであります。その点についての御見解をお伺いしたいと思います。
  44. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先ほどの杉原君に対する御答弁をちよつと誤解されて私の言い方が悪かつたかも知れませんが、私の申したのは、アメリカが一方的に何かこういう措置がいいときめたときにそれを受けなければいかんというのじやなく、日本アメリカの間には合意しなければ、国際緊張の緩和の措置はとらないのだ、両国でやる場合は。併しおつしやるように日本が独自でやることもありまし上うし、日本がイギリスやフランスやその他の国々と相談して国際緊張の緩和の措置をとることありましよう。ただアメリカと一緒にやる場合には国際緊張緩和の措置については合意した方法をとる、こういう意味であります。だからおつしやるような日本独自の措置をとることは一向妨げないわけであります。義務として何か押付けられるということはないということを申したのであります。  それから国際緊張緩和の措置といいますか、これは国際連合にもむいてある言葉でありまして、各国ともにそういうものが起つた場合には、できるだけこれが戦争原因にならないような努力をいたすのは当然でありますので、今それではすぐどの措置をとろうかという具体的のことはないのでありますけれども、将来何かそういう問題が起つた場合には直ちに相談して緊張の緩和に努力しよう、こういう意味なんであります。
  45. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 次にMSA協定の持つておりまする義務の中で、軍半的義務についてお伺いしたい。MSA協定は勿論いろいろの事柄が内容としてあるのでありますけれども、最も重要なことは軍事的義務であり、又MSA協定自体が軍事上的の性格を帯びておることはこれは否み得ないことを思うのであります。これまでの御説明において、又昨年六月末の日米間の往復文官におきましても、軍事的義務は日米安全保障条約による義務を超えないのだというふうに言われておつたのであります。協定におきまする条項としては、安全保障条約に基いて負つている軍事的義務を履行することの決意の再確認という表現がされておるわけです。この条項はこれは大臣も説明されましたように、日本の特殊事情と申しますか、から設けられた規定と聞いておるのであります。この表現の方法でありますれば、安保条約に基く義務の再確認であつて、軍事的義務があの条約以上に出ないという趣旨でないことは、これは文運上明らかであります。安全保障条約の単一的義務には私二通りあるかと思うのであります。これまでの説明によりますと、アメリカの軍隊の駐留を承認し、それから勿論それにその後に必要な基地の設定を承認するということでありますが、いま一つ安保条約の前文にありますように、極東における平和を維持するという意味で、アメリカの軍隊が駐留するということを義務付けられておると私は思うのであります。従つて日本が直接、間接に侵略を受けた場合に限らず、いま少しく広く日本に直接、間接の侵略はなくても、極東における平和の維持という観点においてアメリカの軍隊が駐留し、その基地がそういう意味合での機能をなすということを私は日本として義務を負つておるように思われるのであります。
  46. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 梶原委員、丁度今衆議院から外務大臣出席を求めて参りました。
  47. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 そういう観点から見まして、このMSA協定において新らしくここに安保条約の義務の再確認というこの字句の持つておる意味合は、私今中しました安保条約後段の義務、これをもはつきりと再確認するということを私は意味して参るのであろうと思うのでありますが、その点についての御見解を承わりたいと思います。  それからこの安保条約関連する軍事的義務の条項は、日米間のこのMSA協定だけだと思いますが、他の国とアメリカとのMSA協定において軍事的義務の表現がどうなつておるのかという点を、これは局長からでも結構でありますが御説明を併せてお願いしたいと思います。  それからこの協定全体を通じ又、又八条後段においていろいろな規定があるのであります。特にこの防衛力の発展、維持、それから日本の防衛能力の増強に必要とするあらゆる合理的な措置をとる、これはまさしく一つの軍平酌義務と思うのでありまして、今回の予算に現われておりまする防衛力措置が、この条項から以てすればこれが発効すればこの協定上の義務となるのかどうか。従つて極端に言えば、国会において防衛関係の予算が全面的に否決されるということはこの条約の違反になるのか。ここに盛つておる義務の内容はどういうものであるか、又限度はどういう限度であるかということを御説明願いたいと存じます。
  48. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 誠に恐縮でありますが、衆議院の記名投票ちよつと参りますので私の答弁を留保さして頂いてすぐに帰つて参ります。その間局長で答えられる部分だけ取りあえずお答えをいたします。
  49. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 只今の第八条の三項にあります軍事的義務の問題でありますが、これはほかの国とアメリカとの協定の部分を大体見まするに、もともとこの第八条に日本が謳つております条項は、一九五一年のMSA法の五百十一条(a)項と呼ばれる六つの資格要件であります。五百十一条の第三項に合衆国とMSA援助を受けます国との両方が当事国である条約で、こうした条約には合衆国と援助を受ける国とのニカ国だけが当時国の条約もありましようし、或いは二国だけでなく他に当事国も多数に亘る多数国間の条約もございましようが、こうした条約ですでに援助を受ける国が負つておる軍事的義務を履行するという規定があるわけであります。そこで日本といたしましては一体日本は軍的義務というものを負つておるということを入れるかどうか、これにつきましてMSA交渉を始めます前に日本政府としての疑問がございましたので、昨年の六月二十四日付の当方からアリソン宛の公文におきまして、この五百十一条(a)項の第三項に謳つておるところの軍事的義務というものは、幾ら探しても日本アメリカとの関係で問題になる条約は安保条約以外にはない。その安保条約に謳つておる義務というのは結局アメリカの駐留を認める、日本に軍事基地を認める。第三国に対してはアメリカの許可なくして或いは同意なくして基地を与えないということの義務しか負つていないわけであります。従つてこれを若し非常に広く解釈されるということになりますと話が違いますので、念のために六月二十四日大臣からアリソン宛の手紙で確かめたわけであります。これに対してアメリカは、日本が考えておる通りで、この条項は現在の日本にあてはめますと安保条約で負つておるところの義務を出でないという返事があつたわけであります。そこで先ほどからお話がありました前段の問題は、私ども事務当局といたしましては、要するに前段に誕つてありますところは一つアメリカの期待であり、又情勢についての意向を述べたものに過ぎないので、法律上申します権利義務の観念ということで、はつきり日本が義務付けられたものとは見ていないわけであります。従つて私どもはこの第三項というのは安保条約で受けておるところの、すでに日本が負つておるところの義務を出でない、こういうことを確かめましたので、この交渉を進めました次第であります。従つて第八条はそれを受けまして安保条約ということを謳つたわけでありまして、ほかの国とアメリカが結んだ協定には安保条約という義務はなく、ただ五百十一条(a)項と同様な一般的な文字を使つておるということが各国の例でございます。
  50. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 そういたしますと、ほかの国におきまする軍事的義務というのは抽象的な表現であつてそれから直接具体的の義務は出て来ない、こういうふうに見ていいのでしようか。言い換えればこの安保条約或いはそれに類する一つの具体的な条約があつて、それによつて軍事的義務が現実に行われているのか、MSA協定自体から具体的な義務が出ておるのか、ほかの国の場合とももう一遍御説明願いたい。
  51. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) これはどこの国にもこのMSA協定アメリカと結ぶ当時におきまして、条約上負つておる軍事的義務に限られるわけであります。つまりここにあります自国が受諾した軍事的義務というと日本語の表現が少し受諾という点がはつきりしませんが、英文で御覧願いますと、すでに自国が受諾しておる業務というふうに書いておるのであります。従つてMSA協定を結びます当時にMSA援助を受けるときに持つていた義務でありまして、その後結びました条約、その後の義務というものはここには入つて来ないわけであります。
  52. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 先ほど安保条約内容についての関連ですね、それを大臣からでもどちらでも結構ですから。
  53. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 第一条の御質問かと思うのでありますが、これは義務としては日本アメリカの駐留軍を国内置くことを約束するというのぶ義務でありまして、その駐留軍は今度の目的に使うというのかと言いますと、これは極東の平和維持、その他日本の直接侵略に対抗する或いは政府の明示する要請があれば内乱等に使用するということを義務として、軍隊を置くということが義務であります。むしろおつしやるように極東の平和維持その他というのは軍隊の目的を書いてあるのであります。
  54. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 従つて軍隊がおり基地があつてその軍隊の行動、それから基地の行動というものが、直接日本侵略の虞れのない場合に、事が極東の平和に関係する場合に、それに対して発動すると、それを安保条約は容認すると申しますか、そういうことを日本が容認する義務を持つておる、こういうふうに解釈しておるのであります。そういうのをやはりこの第八条のこの規定において再確認する、こういうふうに解釈して当然かと思うので、あります。間違いがあれば一つ御指摘を願いたい。
  55. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは当時の考え方として日本に軍隊を置くということは約束したわけであります。そこでその軍隊が、例えば極端なことを言えばアメリカの極東侵略に使われるということじや相成らん。従いまして極東の平和に寄与するような、平和を維持するための目的でこれは置いてあるのであるという軍隊の大きな目的を明らかにしたつもりでおります。従いまして現実にごの駐留軍が何と申しますか実際に使われる場合は原則としてこれは日本の安全保障のために役立つものでなければ使わないわけでございます。と言いますのは、それじや日本に直接侵略が来たときだけ使うかというとそれは必ずしもそうじやない。直接侵略がかなり濃厚で非常に危険で、あるという場合にもこれは使うことがあり得ましようけれども、つまり領海内に軍艦がずつと並んでもう砲門を開かんばかりにしておるというときに弾が現実に来なければ駐留軍は使わないかというと、そうは行きますまいからして、そういう点は別でありますが、要するに日本の安全保障に役に立つような方法で使う。尤もこれに一つの例外があります。と申しますのは、安全保障条約ができる前から日本国連協力という趣旨で、朝鮮に関する国連の決議に協力するということを申しておりますから、そこでサンフランシスコでもその趣旨の交換公文を行なつておりますが、これは仮に理論的に朝鮮の問題が日本の安全に直接脅威を与えるか与えないかは別としまして、国連に協力するという意味日本における飛行場、その他の施設を使用して国連の決議を実行するために使うことは、これは当時から容認しておりますが、それ以外の問題については日本の安全に直接関係のある互大なる問題にあらざればこの駐留軍は使用されないわけであります。そこで極東の平和を維持し、とありますのは、むしろごこに置く軍隊の目的が決して侵略だとか平和を乱すという趣旨で置くんじやないのだということをはつきりさしたつもりでおります。
  56. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 簡単に言えば、例えば日本における安保条条に基いて設置されておる飛行機の基地が使用されて、例えば中共の爆撃が行われる。それが直接日本侵略の危険がなくても極東の平和を維持するために必要だと、こういうことであればそういうふうに安保条約運用をいたすのか。これは合法的である、こういうふうに解釈せられるように思うのでありますが、その通りでありますね。
  57. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは実際上は、論理的には極東の平和を維持しということがありますからして極東の平和を維持するためにはこの軍隊を使用するということがあり得まするけれども、併し行政協定その他で実際上にいろいろ話をいたしまして、そんなに無制限に日本のいわゆる拡張解釈をいたしてすべきものじやなくて、この軍隊の出動に当りましては両国政府岡六十分協議をして行われることになるわけであります。従いまして行政協定二十四条の趣旨も当然この中に入つておるわけでありまするからして、実際問題としては非常な拡張解釈をすることはないと我々も考えております。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 ちよつと一点だけ関連質問をさして頂きますが、何か例えば兵を動かすとか何か合意を求められる場合は、これは全然別問題としまして、そうでなしに例えば侵略とかなんとかいうことは、日本への侵略と判定するという場合、その場合に日米の合意がなくてもアメリカ側の一方的な解釈で、つまりアメリカの主観でそういう判定ができるのでありますか。その結末何か相談なつたことに対して合意するしない、これは日本の自主性で、相手を侵略とみなすとかみなさないとかということはアメリカの一方的な解釈で認定できるのか。侵略者とみなすかみなさないかということは日米の合意によるのかどうか、その点をちよつと伺いたい。
  59. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカが或る行動に対してこれを侵略とみなすかどうかはアメリカの勝手であります。併し駐留軍を使用するという場合、これは日本の国との間の協議が決定せられてから行われます。
  60. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 それから先ほど防衛能力の増強に必要なるあらゆる合理的の措置をとる、これはこの協定に基く義務だ。従つて勿論前段にいろいろの制約はあります。けれども、ともかく防衝能力の増強に必再な措置をとらなければならない。その義務として日本は自衛隊の設置或いは防衛関係の予算を作るということ、こういうことがやはりこの協定から当然来る義務である。そういうふうに解せられますが、その点はそう見ていいのかどうか。
  61. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは説明するのに非常に言葉がむずかしいのですが、これは確かに防衛カ増強は、いろいろの条件に別といたしまして、防衛力を増強するのに必要な合理的の措置をとるということは、この援助を受け乙限りにおいては日本の義務であります。従いましていろいろの制約がありますから実際上の場合に今年は駄目だということもありましようし、併しとにかくいろいろの制約の下において合理的なあらゆる措置をとつて防衛力を増強しようということは日本は義務としておつたわけであります。今度の自衛隊の設置等につきましては、その結果はまだ出ておりませんから、結果というわけには行きませんけれども、そういう趣旨の協定を調印いたしましたので、現状における可能なる範囲の防衛力の増強を図るという意味で新らしい法案を提出したわけであります。ただこの新らしい法案を提出したそのやり方、防衛力増強の方法等につきましてはアメリカ側の註文によつてつたわけでなく、日本側独自で考えてやつたわけでありますが、この法案が成立しなければ今日本としてできると考えておる防衛力の増強ができないわけでありますから、従いまして協定の義務を完全に履行したというわけには参らんかと思つております。
  62. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 これは逐条のときに伺いたいと思つてつたのですが、ここでは自国の防衛力、これについては寄与ということで一応打切つて、それから後段には防衛能力の増強という広い範囲であつて、その場合、合理的な推置と使い分けしておる。従いまして読み方によりますと、自衛力増強ということは向うから武器等の供与を受けて日本の自衛力を増強することに日本自体が寄与するということであつて、どの程度今年はやらないということは条約違反だ、それから後段の防衛力の増強ということは極めて広い言葉であつて、いろいろな点がある、必ずしもここにいわゆる防衛力の増強、自衛隊を作るとか作らないとかそういうことには触れないというふうに読めば読めるのであります。その点はあとの機会に又お尋ねすることにしたいと思います。  それから今言つたように、安保条約との関連でありますが、安保条約にも又この協定の前段にも直接侵略という言葉が出ておるのであります。従来直接侵略に対して日本が防衛すると、いうことは、ともかく制度的にはなかつた。とにかく初めて出て来たのであります。MSA協定が発効するごとによつて日本としては直接侵略に対してこれを防衛する一つの債務を招来した、こういうふうに当然なるのでありますけれども、そう見ていいかどうか、直接帰路に対抗するというのは、日本独自で従来の警察予備隊程度でやるというふうに考えてもいいし、又場合によつては、直接侵略に対してもやると、独自の立場においては考え得るのでありますが、この協定締結するごとによつてれ接侵略に対しても備えるという義務を負うことになるのかどうか、その点を一つ伺いたい。
  63. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この協定からは、直接侵略に対抗しなければならんという義務は出て参りません。というのは、言葉を換えて申せば、日本の自衛隊法を改正しないで、直接侵略に対する独自の任務というものを自衛隊に与えないで、ただ自衛隊を何万人増強するというようなことにいたした場合でも、恐らく必要な援助は受けられるごとと考えます。ただ直接侵略という字をだんだん入れて参りましたのは、安保条約にありますように、だんだんそういうふうにいたしたいという日本政府方針に基いてやつたのであります。この協定からの義務ではありません。
  64. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 憲法の関係は極めて重要であると思うのであります。先ほど杉原委員等の質疑応答にもあつたのであります。私はこの条項が九条に挿入されたことにその法律的意味合を了解するのに実は苦しんだのであります。現在でもそうでありますが、これはこれまで説明されておつたように、単に念のために入れたという意味合とは思われないのであります。それであれば今憲法を持出す意味は毛頭ない。それに関連してこれは外務大臣にお伺いしたいのでありますが、憲法と条約の効力の関係であります。憲法制定時当の記録を見ましても、すべての条約に対して憲法が常に優先するとは言つておらいのであります。条約如何によつては、憲法よりも優先するという場合が私はあろうと思うのであります。例えば平和条約よりも日本の憲法が当然優先するかどうか私は非常に疑問であります。ここに憲法の条項が入つたのは、条約は大体において、或いはこのMSA協定協定締結すれば憲法よりも優先し得るのだという原則を考えれば、ここに憲法を持つて来た意味合がよくわかるのであります。条約と憲法との関係においでれ私は条約が憲法に優先するものではないかと、かように考えておる一人であります。従いまして、これは別の機会に法制局長官にも質したいのでありますが、日本の憲法九条第一項は、戦争放棄の条項である。これは戦争というものは国際法上の関連であつて、一国の国内法である憲法を以て、それを放棄するとか放棄しないとかいうことは、およそ法律的には意味がない、単なる宣言に過ぎない、かように私は思うのであります。同時に又二項の交戦権の問題にいたしましても、現在政府は非常に苦しい解釈を辛うじてされておる、そこに私は非常な無理があると思うのです。交戦権というものこれ又国際法上の権能であつて、それを国内法である憲法で一方的にこれを廃止するとかいうこと自体が、何ら法律的な私は効果がないのじやないかと思うのであります。それから自衛権につきましても、政府は非常に、何と申しますか、窮屈な解釈をして海外出兵等に関連して説明されておるのであります。自衛権等については、平和条約においても又国連帽章においても、安保条約においても、自衛権というものは掲げられておるのであります。外務大臣政府のこれまで説明しておるあの自衛権という言葉と、平和条約国連憲章、それから安保条約等にあるところの自衛権、あれと同様に考えられておるのか、別と考えておられるのか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  65. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 憲法と条約の問題については、これは学説はいろいろありますことは御承知の通りでありますが、政府として条約が憲法に優先するとは考えておらないのであります。従いまして政府としてどうしてもこの憲法の規定の範囲で条約を結ぶべきであるという方針でやつておるのであります。それから自衛権と申しますものについてはこれは私はやはり二つに考えておるのでありまして、一つは国際法で認めておる自衛権、こはは平和条約なりその他で国際的に日本の自衛権というものは認められておりますから、これは国際法で認められておる範囲の自衛権を日本が持つておるということは国際的に認められておるので、ただその自衛権をその範囲一杯に行使するかどうかは日本の自由であつて、これは日本政治的の判断によつて三分の一しか行使しないということも可能であります。又考え方によつていろいろ区別がありましようし、或いは国内の法律で成る点が制限されており、それが制限一杯行使できないという場合もあると思います。従つて今のお話の国際法的に認められておるものを国内法で規定しても無意義だとは私は必ずしも考えておりませんので、国際的にそういう権利を持つておるけれども、国内法で制限があり、或いは国内の政治情勢という制限がありますから、一杯には使わない或いは使えない、こういう場合もあろうかと思います。それが政府の考えておる自衛権の限界と言いますか、やはり交戦権その他の問題も入つて来るわけであります。
  66. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の憲法と条約との関係ですが、このMSA協定は、私たちの見解によれば明らかに憲法違反だと、こう思うのですが、これは議論の分れるところで、それ自体はあとから議論したいと思いますが、仮に憲法違反の条約である場合には、その条約は効力を有しないというふうに考えていいかどうか。ということは、もつと正確に言えば、憲法の九十八条の、「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」という規定があるのですが、法律、命令が憲法の条章に反したときには効力を有しないことははつきりしておるのですけれども、条約が反したときはどうなるかという規定は、ここには明示はしてないのですが、ただ「国務に関するその他の行為」というふうに条約を解して、従つて条約も又効力を有しないというふうに結論をしていいのかどうか、その点だけ一点。
  67. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今おつしやつた九十八条には第二項がありまして、「日本国締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」こういうような文句があるわけです。例えばこれは、議論ですから実際上の問題とは別ですけれども、それじや確立された国際法規に日本の憲法が違反したらどうなるか、こういうことも起るわけです。ところが我々の考えでは、確立されたる国際法規というものは憲法と違反するものでないという確信を持つておるわけです。日本の憲法も、又国際法規も、これはむちやくちやなことを規定しているものではないのであつて、又条約も同様でありまして、我々としてはひとしく、憲法も重要ならば条約も重要である、国際法規も重要である。こう思つておりますが、例えば日本が憲法に違反しておる国際法規だといつて、その国際法規を各国に直せと言うことは、実際的にできるかどうか。これは国際的にきまつておる問題ですから、併し理論的にはそういう議論が成り立ちましようけれども、私は憲法というものは国際法規は矛盾するようなものはないと確信いたしております。同様に条約におきましても、政府条約を誠実にこれは、尊重しなければいかん、同時に憲法の条章は、これは当然政府としてはこれを議案に遵守しなければならん、従つて条約を結ぶ場合には、憲法の条章に従つて結ぶ以外に方法はないのでありますから、それを憲法と違つた場合というのが、すでに憲法と違わないように作らなければならんのでありますから、どうも私にはその……
  68. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはおつしやる通りに、違わないように作らなければならないのだけれども、条約その他命令等等についても同じことなんです。ただ併し、仮に憲法に違反した条約締結された場合にはどうなるのか、その解釈としてはどうなるのか、「国務に関するその他の行為」ということで従つて効力を有しないというふうに考えておいていいいのかどうか。
  69. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは恐らく実際問題を考えてみますと、憲法に違反しているという判決をどこが下すかということになりますが、例えば国会の大多数で憲法に違反しているということになれば、それは政府の与党のカが少くて、野党の力が多い場合にそういうことが起る。そうしたら政府はつぶれてしまつて、そうすると新らしい政府がどういう措置をとるのか、それはまあわかりませんけれども、要するにいろいろな政治情勢の変化によつて、いろいろの措置が行われるでありましようが、それまでは、政府は当然憲法の範囲内において条約を結んでおるのだ、従つて憲法に違反することはあり得ないと考えざるを得ない。
  70. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 あり得ないのではなくして、もつとそういう政治情勢まで勘案して入れるならば、野党なら野党が多数になつて従つて、この条約が憲法違反だという判定を国会がしたとします、その場合には、これは従つて効力を有しないというふうにすぐ結論をしていいのかどうか。
  71. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは条約でありますから、日本側が一方的に廃棄ということはできないでありましよう、こういう理由で憲法に違反しておつて政府がつぶれたといえば、次の政府が交渉して憲法に合うような条約に改正するよわ仕方ないと思います。
  72. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 まあ別な機会に。
  73. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 なお憲法の問題は、MSAの本協定関連していろんな問題を残しておるのでありますが、次の機会に質疑することにしまして私の本日の質疑はこの程度で打切ります。
  74. 高良とみ

    高良とみ君 一つだけ。自衛権の問題で国務大臣の御説明で、国際法上のものとしての自衛権と、もう一つあるようにおつしやつたのですが伺いそこねましたが、国際法上の自衛権でない個別的、個有の自衛権というような考え方があるのでございますか。
  75. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そうじやありません、自衛権というものは国際法上ごの自衛権という範囲が認められる、その中で国内法的に何か制限があれば、その自衛権の範囲一杯に行使できない場合もあろうか、こういうことであります。
  76. 高良とみ

    高良とみ君 それですが、国際法上の自衛権は大変に制限されて来たように私どもも伺つておるのでありまして今国際法上の自衛権とおにしやるのは、自由諸国或いは国連等がこれは明らかに侵略と認めるとか、戦争をしてもよろしいというような決定があるまでの間の抵抗というふうに了承して間違いございませんか。
  77. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつと、抵抗と……。
  78. 高良とみ

    高良とみ君 その自衛権というのは、日本のように国連に加盟してない国が、どこまでも自分の国だけで抵抗していいのではなく、ほかの国が国際法上にこれは正当な抵抗であるというふうに決定をするまで、その間だけは抵抗してもいいというのが国連憲章等の自衛権と了承いたしますが、そういう意味の自衛権を国際法上の自衛権と考えて間違いないですか。それとも自衛権は個有なものであるから、抵抗があつたときには日本のように国連に加盟してない国は、どこまでも自衛権の名において敵の基地に出動して行くというように、自衛権は拡大解釈され得るのでありましようか、そこをお伺いしたいのです。
  79. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 拡大解釈とか何とかいうことではありません。国連で言つているのは自衛権と申すよりも、国連の安全保障条約措置がとれるまで、その品がやるということであります。自衛権と称するものは国連の加盟国であろうとなかろうと国際的に認められておるものであつて、それは大体三つの条件を付せられておるわけです。一つは緊急にして不正の危険が切迫した場合。第二にはほかの方法ではその危険を防ぐことができないという場合。第三にはそういう場合に必要な最小限度において適当な措置をとる。こういうことです。こういう意味でその範囲内では戦争を予想しようが、しまいがそんなことには関係ないてもよろしいというような決定がある危険が迫つて来たということが判断の一番基礎なのであります。ほかの方法ではとてもどうすることもできないという場合にはその手段を講ずる、こういうことになります。
  80. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、日本平和条約において、国連の趣旨及びそれらの立法を認め、これに協力するというのでありますから、今の御説明の範囲内における自衛権であつてそれ以外のものはないと了承いたしておりますが、世間では、自衛権の名においてしばしば戦争が繰返されたではないか、例えば吉田首相の憲法制定当時の説明などは、そういう国連憲章の枠のはまつておらなかつた当時の自衛権の考えであつたと思うのです。ですから自衛権の考え自体が今日国際性を持ち、又日本もこれで一応の縛りを受けておるというふうに考えて間違いございませんか。
  81. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私の申した自衛権の定義というものは国連が始まつてからできたわけではありませんで、その前からできておる国際法上の通念であります。
  82. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは次の質疑者といたしまして佐多委員
  83. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 質疑に入る前にちよつとお伺いしたいのですが、大臣はいつ頃中座されるのですか。
  84. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) さつきもう四十分ぐらいでということになつております。これはただ記名投票だけです。記名投票がすめば帰つて参ります。
  85. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするといつ頃ですか。
  86. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いつ頃か迎いが来ることになつております。まだ討論をやつておりますのではつきりした時間はわかつておりません。
  87. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それからもう一つ保安庁長官、大蔵大臣同時に出席して頂きたいということをお願いしてあるのです。というのはMSA協定とそれから日本の防衛計画ですか、再軍備計画とそれに関連する予算の問題、それらを少し相互関連しながらお尋ねをしたいと思いますので、その三人のかたがお出になられるのはいつになるのか。
  88. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 大蔵大臣の都合は目下衆議院大蔵委員会で入場税法案討論中、これは一時半現在でありますが、その採決後本会議に上程されますので、そちらに大蔵大臣は出席しなければならん関係上、こちらの外務委員会には出席ができかねるということであります。  それから保安庁長官は衆議院内閣委員会で保安庁法を審議中なので、只今のところ出席いたしかねますとこういうことで今日の午後は両大臣とも出席を求めることはできないかも知れません。外務大臣に対する部分だけの質問を進めて頂くわけにゆきませんか。
  89. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それではそれでもいいのですが、五分か十分くらいで行かれちやうと困るのですが。
  90. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 又大臣はこつちへ帰つて来られるので、その間こちらは一時休憩とか又その他の方法はそのときになつて相談申上げます。
  91. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほどからのいろいろを御議論を聞いていて先ず一つ非常にわからなくなつたのですが、一体このいわゆるMSA協定なるものによつて日本はどういう義務を特に新たに負うことになるのか、それを一つ先ずはつきりさして頂きたい。
  92. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは先ず第二条に書いてある義務、これは新たなものであります。それから第三条の秘密保持の措置をとる、これも新たな部分であります。それから第四条も一種の義務であります。それから第六条の中でも、義務といえば義務ですが、租税の免除などをするということ。併し大きな問題は第七条顧問団のこと、それから第八条等であります。そのほかに小麦の問題等がありますが、これは別として本協定では大体そういうことでありますが、極く普通にいえば第二条、第八条ということになります。それに強いていえば第三条であります。
  93. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると第八条も全部義務ということになるでしようが、その場合に自衛力を増強しなければならんという項目は、そうすると自国の防衛力を発展或いは維持しなければならんというのは義務というふうに明瞭に考えていいわけですか。
  94. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 自国の防衛力の発展、維持に寄与し、とここに書いてあります。むしろはつきりした義務といえば、自国の防衛能力の増強に必要となることがあるすべての合理的な措置をとる、こつちのほうが大きいけれども、やはり義務には義務と考えております。
  95. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そこでちよつと言葉の問題ですが、この「自国の防衛力及び自由世界防衛力の発祥及び維持」、ここは例の有名な文句だろうと思うのですが、今までは全幅的に寄与するとか貢献するとかいうふうになつていたし、原文も恐らくそうなつていると思うのですが、それをとつておられるのはどういう意味ですか、全幅的に寄与する、全幅的に貢献するというのがMSA協定の本協定でも、それからこの協定でも。
  96. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは例のフル・コントリビューションという字を言われていてのだと思いますが、これは日本文としてどうも適当にそれを直的にできませなかつたので、一般的条件の許す限りというので、限りというのはできるだけやるのだというところでフルを持つて来たのであります。
  97. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはおかしい。限りと、それは文句のあれですからいいですが、どうもそこらに問題を非常に故意にあいまいにしておられるのじやないかとすら思うし、若し故意でなかつたら非常に、重大な誤訳じやないかと思うのですが、これは事務当局ではどういうふうに考えますか。
  98. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 全面的に寄与といたしますと、英語の持つ意味よりも遥かに強くなつてしまいます。そういうようなつもりではなくて、フル・コントリビューション・ハーミツテドということで、ハーミツトされる限りのフルということでありまして、日本の許す限りというのは多少日本語のほうが弱いかも知れませんが、むしろそれのほうに近いという見地から、こういうように訳したものでございますが、この日本語のテキストにつきましては事前にアメリカにも見せまして、アメリカが納得の上で調印をいたしておるのでございます。
  99. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その限り、という限定は何もMSA協定だけではなくて、例えばMSA法自身にもある文句だと思うのですが、それを今までずつと訳しておられるときには、許す限度で全幅的に貢献するという言葉をずつと使つて来てわられろと思うのですが、それにもかかわらず協定だけには文句は同じであるにもかかわらず、違つた表現をされたのは何か意味があるのではなかろうか。
  100. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 前にお手許に配付いたしましたのは、米国の法律を御紹介する意味で極めてずさんな訳を付けた日本語のテキストをお配りしたと思つております。そのときには確かに全面的と訳したのでありまするが、今度は日本語のテキストもこれは同じく成文でありまして、これによつて日本が義務を引き受けることにいよいよなるのでございまするから、慎重に全部検討いたしまして日本語を作り直したわけであります。それで外務省のみならず内閣の法制局も慎重に審議いたしまして、いよいよ最後に日本が義務を負う段になつて日本語のテキストといたしましてはこれが至当であると認めまして、事前に米国側とも相談いたしましてこういうふうにきめたのでございます。
  101. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするとMSA自体の翻訳としては、全幅的に貢献するというふうにしなければならんという恥考えですか。日本協定だから全幅的ということは若干強過ぎるというお話なんでございます。原文は両方同じだと思うのですが。
  102. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 原文は同じでございます。併し前のはほんの仮訳でございまして、英語を御配付いたしたのでは御不便かと思いまして、極く下の者に大急ぎで訳さして仮訳をお見せしたような次第でございます。
  103. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは一九五四年三月のさつき杉原さんが問題にされた協定の解説、これも極めてずさんなものですな。それにはMSA法の例の六条件が出てその十四頁には何々の限度で全幅的に貢献すると、依然としてそれを踏襲しておられるわけです。
  104. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 先ほどの解説はあれは情報文化局が作成いたしまして私も実は見ておりません。
  105. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういうずさんなことでは非常に困ります。もう少しその点は明瞭に一つ出して頂きたい。
  106. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと情報を申し上げます。三時三十分現在地方税法の一部改正法案の討論があと三人残つております。記名投票までには一時間あります。それが終つて直ちに人場税法案が上程されます。従つて大蔵大臣はこちらには出席ができない。保安庁長官は目下連絡中、こういうことであります。  どうぞお続け下さい。
  107. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると第八条の点は全部一応義務という、特に後段のほうは新しい義務として負つたものと考えるのですが、その場合に自国の防衛力に寄与するという義務は軍事的義務であるというふうに考えていいのでありますかどうか。
  108. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 防御力を増強するという問題が軍事的の義務であるかどうかということは、これはおのおのお考えがありましよう。でこれを向うの法律の第五百十一条の第三項にあるミリタリー・オプリゲーションというのは何を意味するかという、そごにミリタリーという字がありましたから特にこれを重視して出した結果がこの安保条約に負つている義務、こういうことであつてそれ以外にいろいろな義務をここで負つております。それをこれは軍事的義務であると判断されるか、或いはこれは軍事的義務ではなくて日本の固有の防衛力の増強を援助を受けてやるのだという解釈になるのか、これはおのおの解釈のしようでありましようけれども、その一つのミリタリー・オブリゲーシヨン、軍事的義務というきちんとした言葉がもとの法律にあつて、それはこういうものである、それ以外のものについては、我々はこれは暫通の防衛力増強の義務を負つているのだと考えておりますが、それはお考えよう次第で、どうもあなたのお考えまで曲げるわけにはゆきません。
  109. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると自国の防衛力の発展、維持に寄与するというのは、政府の解釈では軍事的な義務ではないというふうにお考えになるのですか。
  110. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 我々は防衛力の埴強の義務である、こう解釈しております。
  111. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならばさつきどなたかお話なつたのですが、一体諸外国で負つている軍事的な義務というのは内容的にはどういうものですか。
  112. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは一つの例ですが、北大西洋条約の加盟はみなMSA援助を受けております。そうすると北大西洋条約アメリカの加入しておる条約であつて、それによつていろいろの軍事的義務を負つている、そいういうものはやはり具体的に軍事的義務であるわけです。
  113. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それの内容防衛力を増強するということなんかじやないですか。
  114. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは防衛力を増強するということもありましようけれども、お互に兵力を出し合つて司令官を一人とか、或いは成る国が攻撃された場合には全部の国が攻撃されたと思つて直ちに適当な措置を協議してやるというようないろいろな義務があろうかと考えております。
  115. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや特にMSA協定援助関連しての直接の義務というのは、防衛力の増強を丙容としているのじやないですか。
  116. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは軍事的義務とは別問題であつて、軍事的義務というのはこのMSA協定締結する前にもうすでに負つている義務であつて、この協定によつてできる義務じやないのです。  それからこの防衛力の増強等はこれを軍事力の増強とお考えになるかも知れんが、それは八条のあとのほうにある義務で、これはMSA協定を結ぶと負う義務であります。
  117. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじやもう少し前の方面からお尋ねしますが、自衛力というのは一体何んです。
  118. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 自衛力というのは緊急不正な脅威が発生した場合に、ほかの方法を以てして防ぎ得ない場合に、必要最小限度の手段を講じてその危険を追払うというものであります。
  119. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするとそれは例えば前の十月三十日に共同コミユニケを出されたあの場合に、セルフ・デイフエンス・フオーセズという字を使つておられたと思うのですが、これはやはり自衛力ということですか。
  120. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今の十月何日の共同コミュニケというのは何ですか、ちよつと。
  121. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 あの池田・ロバートソンだつたと思います。
  122. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつとそれは今記憶して、おりません。あれは併し池田ロバートソン共同コミユケであつて、その中で政府が追認したものは正式な政府方針となります。
  123. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、あそこでいつている自衛力というのは従つて軍隊ということじやないのかという質同なんです。
  124. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ですからつまりあれは池田ロバートソン間の共同コミユニケで、政府が追認をしたときに政府としては責任を持つわけでありまして、それ以外のことは池田・ロバートソン間の共同コミユニケというわけであつて、私どもが責任をとるまでには至つていない問題であります。併し内容ちよつと今持つておりませんから覚えていませんが、恐らく軍隊なんという意味は池田君は全然使つていないと思います。
  125. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いやこの原文にはデイフェンス・フオーセズとある、それは普通の慣用語によれば軍隊ということじやないですか。
  126. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国を守る力というものは普通の慣用では軍隊であります。日本の場合だけは特殊の事情があるから軍隊というのは使わないということであります。(笑声)
  127. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじやアメリカで自衛力という場合には、軍備であり、軍隊であり、戦力であるというふうに考えておるのですか。
  128. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 自衛力という場合は必ずしもそういう狭い範囲だけではないので、国民が皆出て行つてやる場合もありましよう。
  129. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 併しそれを有効に遂行し得る力は軍隊であり、軍備であり、戦力であるということが少くとも諸外国では普通の常識なんです。
  130. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りであります。
  131. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならばアメリカが慣用的に使つておる自国の防衛力という問題は、軍隊或いは戦力というふうに両方の話合では向うはそういうふうに御念しておるのではないでしようか。
  132. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカがほかの国に使う場合には、大体ほかの軍隊を持つておりますからそういう意味であります。日本の場合は特殊でありますから軍隊とはアメリか側もそうは思つておりません。
  133. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それではもう一つお尋ねしますが、そういう自衛のための力だというふうに言つておられますが、それならば自衛のためには軍隊を持つということは言えるのですか。
  134. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 憲法がそういうことを禁じていなければ当然できます。
  135. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本では。
  136. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日本では憲法が禁じておると政府は考えております。
  137. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは軍隊は持てないということですか。
  138. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 軍隊といつても語弊があるかと思いますが戦力は持てない。(笑声)
  139. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 戦力は持てないが軍隊は。
  140. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 軍隊というのは名前であつて内容が戦力であるかどうか判定する基準になるわけなのです。
  141. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もう一つお尋ねしますが、そうすると今のお答えでは軍隊はさつきはどうも持てないというふうにおつしやつたようだが、あとから訂正して軍隊は持てるというふうにおつしやるのですか。
  142. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 佐多君は軍隊軍隊ということに非常にごだわつておりますが、私は憲法が禁じておるのは戦力を禁じておる。そこで例えば非常に大きな戦力であつてもこれを警察という名前にしたらどうかというと、我々は内容的に見て非常に大きな戦力であれば憲法が禁じておるので、それは警察という名前であろうと消防という名前であろうと我々はいけないという建前であります。その代り戦力に至らざるものであればそれを仮に軍隊と言いたければ軍隊といつても差支えない、併し普通軍隊とは言えないそういうように考えております。
  143. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その憲法が戦力を禁止しているのは、軍隊を禁止していないかどうかという問題はのちほどお尋ねし議論したいと思つておるのですが、その前にもう一遍はつきりあなたがた或いは政府の考えるような考え方であると、自衛のための軍隊は持てるのだ、こういうふうにおつしやるのですか。
  144. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 軍隊という名前をつけるのは適当でないと我々は考えておりますので、それを軍隊と言われてもそれは仕方がない。併し政府としては軍隊ということは適当でないから、それで自衛隊なり防衛隊なりという字がつくだろうと思つております。自衛のためにそういう戦力に至らざる成る程度の力を持つことは差支えない、こういうわけであります。
  145. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると軍隊ということが適当な表現でないとおつしやるのはどういう意味でありますか。
  146. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 例えば交戦権ということを憲法は認めておりません。それから陸海軍その他の戦力と書いてありますから、それにまぎらわしいような名前をつけることは戦力に至らないものであつても適当でないのじやないか、こう考えます。
  147. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると軍隊は交戦権があるというふうに考えております。
  148. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは当然であります。
  149. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それではその点はのちほど又お尋ねしますが、それではもう少し進めて、自衛のためであれば武力は持てる、又はこれを行使することができる、こういうふうにもお考えになりますが。
  150. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そう考えております。
  151. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そう考えられる。
  152. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 考えております。
  153. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもそうなると、憲法との問題が非常にむずかしくなるのですが、少くも日本の憲法は戦争や武力行使を放棄して、或いは軍備を廃止して交戦権を否認しているというふうに考えなければならないと思うのですが、それはどうですか。
  154. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は、武力という言葉と戦力という言葉が憲法にはある。そうして武力についてはいろいろな規定がありますが、例えば国際紛争を解決する手段としてこれは用いないという言葉がある。その言葉から言うとそれ以外の目的ならば使つてもいいのだというふうに反対解釈がとられないこともない。片方戦力については何ら制限なく戦力の保持は認めていない。従つて戦力というものはこれは持つべからざるものであると解釈しております。併し武力については憲法で制限してある、その制限以内のものであるならばいいのだろう、こう考えております。
  155. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 では、これまでは政府は自衛権そのものはあるのだ、併し武力を行使したり軍備を設けたりすることはできないのだ、従つて戦争に訴えることは禁止せられているのだというふうなのが日本の憲法だというお考えだつたのですか。
  156. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうもおつしやるように、必ずしもそういうふうにきちんとなつていないと思います。  それから自衛のために行う行為が戦争であるかどうか、これは相手方がこれを戦争ととるかどうかという問題にもなりましようけれども、要するに自衛権はある。自衛権を行使する力が十分であるかどうかは別として行使はできる、こう考えております。
  157. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、それならば自衛権の行使であれば戦争はできるというふうにお考えになるのか。我々は戦争は自衛権によるものであつても放棄をしておるというふうに考えなければならないと思うのですが、その点はどういうふうにお考えになつていますか。
  158. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 自衛権というものは、私はすぐ戦争と結び付くものじやないと思うのです。これをよその国が戦争ととるかどうか、これはとる場合もあるかも知れません。併し要するに日本としては自衛権を行使するのであつて戦争するのじやない。
  159. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、自衛権を行使するのは、さつきあなたのおつしやつたのは、武力を行使することは許されるのだ、それならば武力を行使するということは戦争なのじやないか。従つてそこから言えば、あなたがたは、今は自衛権によるものならば戦争はいいのだというふうに言おうとしておられるのか、そこのところはどうなのですか、はつきり一つ
  160. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは憲法学者でないのですから、幾ら議論しても私のほうは権威があると思われませんが、併し私の憲法第九条の解釈はここにはつきり書いてあるので、「国権の発動たる戦争」国権の発動でない戦争であつたら、そういうものがあるかどうか別としてま法は禁止していないわけです。それから「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」要するに国際紛争を解決する手段としては武力を用いない、或いは武力の威嚇を用いない、これも非常にはつきりしているように思います。
  161. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だからそうすると、自衛のためならばそれは許されるのだというふうにおつしやるわけですね。
  162. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 武力の行使は許される、そう考えております。
  163. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも私たちが今まで聞いていたのでは、武力の行使、従つて戦争は自衛権によるものといえども放棄しているのだというふうに政府は主張しておつたのです、例えばこの憲法ができるときの第九十回帝国議会ですか、憲法制定議会、そのときに吉田総理は、原夫次郎氏、これに対する答弁で、こういうことを言つております。「戦争放棄に関する本案の規定は、直接には自衛権を否定しておりませぬが、第九条第二項において、いつさいの軍備と国の交戦権を認めない結果自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も放棄したのであります。従来、近年の戦争は多くは自衛権の名において戦われたのであります。満洲事変然り、太平洋戦争また然りであります。……故に、我が国においては、いかなる名義をもつてしても、交戦権はまず第一みずから進んで放棄する、放棄することによつて、全世界の平和の確立の基礎を成す、全世界の平和愛好国の先頭に立つて世界の平和確立に貢献する意思をまずこの憲法において表明したいとおもうのであります」ということを言つております。  更に野坂參三氏の質問に対しても、もつとその点をはつきり言つておられると思うのですが、「戦争放棄に関する憲法草案の条項におきまして、国家正当防衛権による職印は正当なりとせらるるようでありますが、私はかくのごときことを認むることが有再であるとおもうのであります。近年の戦争は、多くは国家防衛権の名において行われたることは、顕著なる事実であります。故に正当防衛権を認むることがたまたま戦争を誘発するゆえんであるとおもうのであります。……正当防衛による戦争がもしありとするならば、その前提においてに侵略を目的とした国家があることを前提としなければならぬのであります。故に、正当防衛、国家の防衛権による戦争を認むるということは、たまたま戦争を誘発する有害な考えであるのみならず、若し平和団体、国際団体が樹立された場合におきましては、正当防衛権を認むるということそれ自身が有害であるとおもうのであります」こういうふうに言つて自衛権そのものを放棄する或いは否定するような言葉すらあつたのでありますが、それはまあそうでなさそうにあとから改変されて行きますからいいですが、とにかく自衛権によるものであろうとも、武力の行使或いは戦争は完全に放棄してるんだというのが憲法の規定じやないかと思うのですがその点はどうなんですか。
  164. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 外務大臣のこれに対する御答弁は留保されなければならんと思います。今衆議院で最後の討論者に入つたそうでありますからして、大体四時十二分頃記名投票……
  165. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 簡単に。今の速記佐多君初めいろいろな人があらゆる機会に読上げて、私もよく何遍か聞いております。それを見ますと、総理意見はいわゆる自衛戦争といいますか、自衛に名を借りての戦争になり易いのを防ぐのだということを強調しておられるのがその発言になつたんですが、あとで見て少しこれは誤解を招くような発言だというので、たしか金森徳次郎氏がそのあとでそれを修正するような意味の発言を政府全体としていたしておると思います。それによりますれば自衛行為を禁ずるものでないということをはつきり金森国務大臣が言つたと記憶しております。
  166. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは外務大臣は暫らく中座されますが、佐多委員どうしますか。
  167. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 やめます。
  168. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 暫らくそれでは休憩しますか。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  169. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。  それでは四時半まで休憩いたします。    午後四時六分休憩    ―――――・―――――    午後五時四十分開会
  170. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは休憩前に引続き会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十一分散会