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1954-09-08 第19回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月八日(水曜日)    午前十時二十二分開会   —————————————   委員長補欠 六月三日佐藤尚武委員長辞任につ き、その補欠として石黒忠篤君を議長おい委員長に指名した。   委員の異動 六月三日委員梶原茂嘉辞任につき、 その補欠として石黒忠篤君を議長にお いて指名した。 六月十五日委員高良とみ君辞任につ き、その補欠として高橋道男君を議長おいて指名した。 六月二十八日委員高橋道男辞任につ き、その補欠として高良とみ君を議長おいて指名した。 七月三十一日委員曾祢益君及び佐多忠 隆君辞任につきその補欠として片岡 文重君及び森崎隆君を議長おいて指 名した。 八月二日委員森崎隆辞任につき、そ の補欠として佐多忠隆君を議長おい て指名した。 八月六日委員高良とみ君辞任につき、 その補欠として高橋道男君を議長にお いて指名した。 八月十日委員片岡文重辞任につき、 その補欠として曾祢益君を議長おい て指名した。 八月三十日委員松野鶴平辞任につ き、その補欠として小滝彬君を議長おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            團  伊能君            佐多 忠隆君            曾祢  益君    委員            古池 信三君            小滝  彬君            宮澤 喜一君            佐藤 尚武君            高橋 道男君            中田 吉雄君            羽生 三七君            加藤シヅエ君            鶴見 祐輔君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君    警察庁警務部長 柏村 信雄君    防衛庁防衛局長 山田  誠君    外務政務次官  秋山俊一郎君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省欧米局長 武内 龍次君    外務省条約局長 下田 武三君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○本委員会の運営に関する件 ○理事補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢等に関する諸問題)   —————————————
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは只今より外務委員会開会いたします。議事に入りまする前に、ちよつと私から御挨拶を申上げます。先国会終りに、私委員長の御指名を頂いたのでありますが、非常に慣れんものでありますし、殊に外交の方面は専門でございませんので、どうぞ皆様の一層の御協力、御援助をお願いいたしたいと思います。  本日、委員会を開くに至りました経緯について簡単に申上げてみたいと思います。前国会閉会後に相当の時日が経過いたしまして、その間におきまして、国際情勢等に関しまする調査を継続しておりまする当委員会といたしましては、この辺で一回お集まりを願つたほうがよかろうかと存じまして、そうして先月の二十六日に委員長理事の打合会をいたしまして、そうして皆さんに御通知申上げて、本日の開会をいたすに至りましたわけでございます。御要求の、政府への出席の中人等もいたしたのでありますが、その間多少の不行届の点もあつたかと思いますが、又政府のほうにおいても、いろいろ政務の都会上、すべての要求をいたしました方々の御出席が困難なかたが多いのであります。そこでできるだけそれらの点を考え合せまして、有効に委員会の時間を使つてもらいたいと思います。特にその点についても御了解を頂き、御協力を願いたいと存じます。  それから本日は継続審査国際情勢調査の件に入るのでありますが、その前に理事互選を願いたいと存じます。只今理事が二名欠員になつておりますが、その補欠互選を行います。互選方法は、先例によりまして委員長より指名いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議もないようでありますから、委員長佐多忠隆君、曾祢益君を理事に指名いたします。   —————————————
  4. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 先ほど申上げましたように、御質問のかたが七名で、而も政府のほうの出席都合等もございますので、今日の議事進行方法については、できるだけ皆さんお話合で、時間を十分に経済的に使つて参りたいと思いますが、議事進行方法につきましては如何いたしましようか。
  5. 曾禰益

    曾祢益君 早速理事会を開いて頂きまして、理事会で大体案を作つて委員会にお諮りしたらと思います。
  6. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではこれより理事会で相談をいたしまして案を作りたいと思いますから、暫らく休憩をいたしたいと思います。    午前十時二十八分休憩    ——————————    午前十時五十五分開会
  7. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではこれより外務委員会を再開いたします。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 吉田総理外遊に関する問題でお尋ねしたいと思うのですが、内容的な問題については総理自身から承わるのが適当だと思いますので、これには触れません。ただ手続上の問題に噂してこの際副総理の御見解を承わつておきたいと存じます。その第一は、総理外遊は、新聞等で今月二十五日出発されて十一月十四日に帰られるというように伝えられておりますが、それは確定的なものであるかどうか。それは確定的なものであるとするならば、どういう形で国会に対して了解を得られるか。もとより一党の総裁が何か正式の使命でなしに、単なる親善関係というようなことで行く場合に必ずしも議会了解を必要とするかどうか、それは法的なことは知りませんが、常識的に見て、どういう形で国会了解を得られるか、この二つを先にお聞きしてから、あともう一つ二つお伺いします。
  9. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 総理のいわゆる外遊のことは大体きまつておりまするけれども、まだ閣議を経ておりませんので正式決定というわけには参らないかと考えております。今お述べになりましたように、九月二十六日、今のところ六日と思つておりますが、六日に出発をして十一月の十四日に帰る、そういう予定になつておりまするが、これは今申上げましたように、閣議決定を経ておりませんから正式の決定ではございません。若しこれが正式に決定いたしました場合、これをどういうふうに国会了承を求めるか、或いは国会を通して国民の理解を得るかということでございまするが、これについてもまだはつきりした話合はいたしておりません、おりませんが、国会開会中でありませんので、何らか国会各派など代表方々とでもお寄りを願つて総理外遊について総理からお話をするという機会を作つたらばと、これは私の考えでございます。
  10. 中田吉雄

    中田吉雄君 先に理事会がありましたので、そこでは総理出席されない理由についてつまびらかにされたと思いますが、実は新らしく就任されました石黒委員長とされては、我々の手許に十日ぐらい前ですか、外務委員会を本日持ちたい、それについては質問事項出席要求する大臣を記入して至急に送付されたいという周到なる配慮の下に手配をされたわけであります。我々もそれによりまして、質問事項関係大臣並びに国際情勢に鑑みまして、外交政策が大きな試煉に直面しておりますので、是非最高責任者である吉田総理出席を強く要請して置いたわけであります。同僚委員の人もたくさん要求されたように思いますし、石黒委員長とされてもその旨を政府にお伝えになつたということでありますが、這般の消息は、どんなものでしようか。それについてお承わりして、それから議事に入つて行きたい。
  11. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 委員長からお答えいたしますが、只今中田委員のおつしやつた通り手続をとりまして、政府のほうへは各委員の御要求方々出席を要望し、質問の要綱もお知らせをしてあるわけであります。総理に関しましては作品まで出席の御通知を得ることができませんでしたので、昨日私から副総理お話をいたして御出席を頂きたいということを申入れたのでありますが、昨日も閣議にも欠席をされたというような事情であるから、本日は出席ができまいということを昨日御通知を頂きましたのであります。そういうことで総理は本日は欠席をされるわけであります。
  12. 中田吉雄

    中田吉雄君 緒方総理にお尋ねしますが、どういう御理由出席されないのでしようか、法的な根拠から言えば副総理が出てもいいわけですが、併し吉田総理国会を軽視されますことは周知の事実で、もう目に余るものがあると思うわけであります。第十九国会におきましても百八十八日という長期の国会にたつた一カ月くらい、一週間に一遍くらいしか御出席されていない。いつかも病気診断書を添えて出されて、そして病気だからと思つて了としていましたところが、我が党の同僚議員銀座に出てみましたところが、麻生和子さんを連れて銀座に出ておられるのの現行犯をちやんと知つておるわけである。イギリスのチャーチルは七十九才の高齢であるにもかかわりませず、殆んど一日も国会を休んだことがないということを我々はいろんな情報で知つておるわけであります。我々は相当前以て御要求したわけですから、その意思を付度しておいで願うべきだと思うのですが、一体如何なる理由で御出席されないのでしようか。昨日上京される予定やに新聞には出されていましたが、衆議院決算委員会で召喚のことが問題になつて突如として雲隠れされたというような浮説もありますし、その間の消息についてはつきりして頂きたいと思うわけであります。
  13. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 総理国会を軽視するような考えは私の承知しておりまする限りございません。十九国会中に出席の数が非常に少なかつたのは事実でありまするが、これは御承知のような病気で私ども非常に残念に思つております。今回のこの外務委員会への出席のことは、或いは委員会から官房長官に御連絡があつてつたのかも知れませんが、私は実は昨日委員長から御連絡がありましたのが、御要求のあつたことを知つた最初でありまして、今、委員長からお話がありました通りに私はお答えいたしたのであります。昨日閣議に出る予定はあつたろうとは思いますが、別に雲隠れしたわけではなくて、体の工合が引続いて余りよくない、そのために閣議を急に欠席いたしましたことは今お話通りであります。そういう次第で今日委員会出席はむずかしいだろうということを委員長までお答えしたような次第であります。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 引続いてお尋ねいたしますが、仮に各党首の参集を得て了解を求められるというような場合に各党首が全部賛成されれ、ばよろしいですが、外遊反対をされたという場合、この間私他の機会緒方総理にお目にかかつたときに、副総理は、総理外遊というものは国民的支持がなければ駄目だ、そういう基盤の上で外遊をするのだということを言われておりましたが、今の場合国民的支持ということ具体的に掘下げていろいろ問題がありますし、これはあとにちよつと触れたいと思いますが、仮に各党領袖参集を求めて了解を求めた場合に、多数の会派政党代表反対されたという場合には、これはどういうことになるのでしよう。
  15. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 各会派領袖にお集まり願つて総理からお話をするということもまた正式にきめておるわけではございませんが、今お話のように、その中の何人かの人が出席を拒否されたというような場合がありましても、ほかの出席を了諾された領袖方々お話をすべきであると考えますし、又拒否されることのないようにできるだけの手段を尽します。又よくお話をすれば拒否されんであろうと考えまするし、その機会に是非拒否されんようにお考えをお願いしたいということをお願いいたします。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 勿論政府が常識的な取扱いをされれば、別に出席を拒否されるということは余りないと思う。ただ出席をされても、その総理外遊目的に同意するかどうかは疑問であるということを私は申上げておる。そこで政党、今の場合員は自由党ですが、第一党の立場におつて、それが議席が多数であるから、どんな場合でもそれが国民意思代表しておる、こういう立場政府は今度の外遊問題のみならず、すべての問題についてそういう立場に立つておると思うのです。だからよその国のように付か重大な問題について議会信任投票に訴えるというようなことは全然ない、選挙のときの比較的多数の第一党であるから、どんなことをやつても、例えばこの間からの衆議院決算委員会で起つておる問題を見ても、或いは外遊問題を見ても、とにかく第一党のやることなら、これはすべて国民的支持を得ておる、そういうお考えで今度の外遊問題も、たとえ各党代表了解を得られないでも強行されるわけですか。
  17. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) これは私ども考えでは、総理外遊がグッド・ウイル・ミツシヨンというような目的でありますので、必ず各派代表方々の御支持を受け得るというふうに考えております。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 十九国会終りがけに、例の混乱が起る直前ですが、そのとき総理外遊問題は或る程度明らかになつてつたにもかかわらず、その最後まで予定々々と言われておつて、結局あの乱闘国会の結果事実その通りになつてしまいましたが、今度の場合でも、殆んど三十五、六百に立たれることが明らかになり、そうして各国からのそれぞれの都合の返事も全部来ておる。誰が見ても常識的に出発されると思つておるのに、まだ閣議を経ておらんからとか、各党領袖了解を得ることすらまだ総理が何と言うかわからんという状態であるとか、而も外務委員会が合今日開かれておる。昨日官房長官からお話があつて、急であつたかどうか知りませんが、非常にいい機会で、そういう機会を通じて、こういう考え方で自分は外国に行つて来たいとか、何とか所信を披瀝する絶好のチャンスだと存じますが、そういうのを更に活用しようとしない、どういうことなんでしようか。
  19. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) それは総理が体がよくて、この委員会出席できてお話ができればいい機会だと考えます。事実は先ほど申上げましたように病気でございまして、昨日閣議欠席せざるを得なかつたような事情でありますので、本日のところは止むを得ないと考えます。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それではちよつとお尋ねいたしますが、私たちはすでに四日までには総理是非出席をしてもらいたいということを通告をいたしております。従つて委員長は直ちにその通告政府に取次がれているはずでありますから、相当前にその通知が行つていると思うのですが、その扱いはどうなつているのか。而もその通告を受けられた当座においては、この委員会出席をすることを予定をしておられたのかどうか、そういう予定であつたにかかわらず、たまたま昨日病気なつたために初めて出席が不可能になつたのか、それとも通告は早く受けておりながら、出席を無視して今まで無関心な態度で放つておかれたのか、その辺のいきさつを詳しく御説明を願いたいと思います。
  21. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 実際のところ私は総理出席を当外務委員会から要求されておつたことを知つたのは昨日でございます。
  22. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 委員長から申上げることは先ほど申上げた通りのことでございまして、事務のほうにおいて、委員各位からの要望の大臣出席、それから御質問の要旨は政府にそれぞれ通達をしてあります。昨日まで総理出席の有無について御返事がなかつたのであります。そこで私が或いは官房長官お話をしようか、総理お話をしようかということを考えまして、どちらかにということで私は秘書に電話を通じさせたのであります。そこで副総理お話をいたしたわけであります。
  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 只今委員長お話で、すでに相当前から通告がされていることは明瞭になつたわけであります。にもかかわらず、副総理は今昨日聞いたとおつしやいますが、私たちは副総理個人に聞いているのじやない、政府全体としてこの問題をどういうふうに扱おうとされたのか、その点を明瞭にして頂きたい。
  24. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) いつ委員長からそういう御通告があつて、そして出席を求められておつたかということは私は承知しておりません。従つてその間にどういう考え方をしたかということを私ここで申上げることはできません。
  25. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほどから申上げているように、緒方総理個人質問をしているのじやなくて、政府の中でどうなつているか知らないというようなことは御答弁にならない。政府全体を代表してここへ出席しておられるのたから、若し今おわかりにならないのなら、すぐ正確にお調べを願つてすぐ御返事を願いたい。
  26. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 間違いが起るといけませんから、調べまして、後ほどお答えをいたします。
  27. 曾禰益

    曾祢益君 副総理にお伺いしたいのですが、確かに十九国会会の不出席総理病気で甚だ遺憾であるとのお話があつたのですが、どうも併し我々が克ておるところでは、その病気も非常に政治的な病気ではないかと思われるような節がちらほらあつた。私は現認しておりませんけれども衆議院における不信任案が否決されたときには、総理大臣はそれまでは腰が痛いのでステッキをついておられたそうですが、そのステッキを忘れて、喜んでステッキなしで歩いておられたという話も巷間伝えられているようなわけです。
  28. 中田吉雄

    中田吉雄君 本当ですよ。
  29. 曾禰益

    曾祢益君 今同僚中田委員から証言がありましたから間違いない。(笑声)そういう政治病であるからですね、どうも国会を軽視されるつもりはないと副総理が非常に総理をカバーしておられますが、只今同僚羽生委員佐多委員からも御質問があつたように、現にこの当委員会に対する出席要求に対してすら、これは全く国会を尊重し、委員会を尊重している姿ではない。それで私が伺いたいのは、昨日も病気閣議に出ない、今日も恐らく病気なんでしような、病気外務委員会に出ない。一方においては九月の二十六日には、長途の旅行に行かれる。これはまだ内定であつて確定ではない。私たちはどうもそこが納得ができない。議会に出て来るときには病気が起るし、我々総理なんかに比べると非常にまだ年が若くて丈夫なつもりですが、飛行機の旅行ぐらい疲れるものはございません。着いたらとたんに、それこそ親善ミツシヨンか、その他いろいろな政治的目的がおありじやないかと思うのですが、それらのたくさんな重要な行事があつてあの御老齢で外国へ行かれしるということは、これは私も非常に御苦労だと思う。そつちはまあ大体できる。ところが事国内議会に対する関係おいては病気一つも治らない。これは国民としても納得できないところなんですが、そこで伺いたいのは、大体今副総理からはつきりお答えがあつたように、総理外遊は、これは我々も常識的に外国と十分な打合せしてからでたいと出られるはずがない、今おつしやいました九月二十六日出発、十一月十四日帰国の予定というのは、これは実質的には確定です。いやしくも一国の総理が行くのに、そんな予定がぐらぐらするようなことでは大変と思う。再び六月三日のような事件が起らんことを国民願つているでしようが、如何なる事情にせよ、対外的には再び直せない確定的な旅程がある、それがなぜ閣議では正式に決定にならないのでしようか。総理国内議会関係の喚問或いは出席要求には応ずることができないくらいの非常な不健康状態であるから、外国に対しては二十六日出発という立派な旅程ができておるにかかわらず、まだ最後的な決定総理の健康上の関係でおきめになつていないのかどうかを、この点を一つ明かにして頂きたい。
  30. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 総理がいわゆる外遊をいたします相手国との打合せの終つたのは、私の承知しておる限りでは先週末であつたように思つております。私ども昨日の閣議で、総理外遊ということを正式にきめるものと予想しておつたのでありますが、急に総理出席がなかつたので、それが延びておる次第であります。別に病気の容態を気遣つて決定が延ばされた、或いはそのために付か作為的に閣議に出なかつたというふうには考えておりません。
  31. 曾禰益

    曾祢益君 それならは私はこういうふうに了解して聞違いないですね。総理外遊決定は昨日の閣議できめる予定であつた政府としてたまたまどういう関係か知らたいけれども総理閣議に出られなかつたから、総理が出られる次の閣議等できめるのであつて、何も総理健康状態が悪いから、外遊計画がどうなるかわからないから、昨日の閣議決定をしなかつたのではない、言換えれば総理健康状態外遊に現状においては適しているものである、私はかように解釈してよろしうございますか。
  32. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) その通りでございます。
  33. 曾禰益

    曾祢益君 然らば外遊に適する程度の健康状態総理が、何故に国内的には、閣議のことは私は問いませんか、国会に対する当委員会要求に応じられなかつたのか、今後、先ほど総理自身も言われましたように、副総理自身としては、何というか大政党代表者を呼んで、まあ国会形式でなくて、そういう政党政党私的話合というとおかしいですけれども、いわゆる国会行事の形をとらない何らかの会合をお考えのようですが、これは副総理自身も言われたように、それよりもベター考えとしては、これは何といつてもやつぱり国会を尊重する実を挙げて国会了承を求める。従つて更に又国会を通じて国民了承を求める。この形式のほうがベターに違いない。副総理嘗つて我が党の代表者の申入に対して、いや、国会休会中だから外国に行くのだ、こう言われた、それはそうでしよう。閉会中に行かれないで休会中に行かれるのか原則でしよう。併しその休会中であつても、総理が国を代表してこの重大な親善使節として行かれる場合には、これは副総理もお認めになつておる、国会を開くなり、少くとも国会委員会出席要求に進んで応じて、というよりも出て来られて、そうして国会を通じてその趣旨を明らかにする。先ほど中田君か言われたように、チャーチルが六月の末にあの歴史的なワシントン会談に行かれたときには、これは勿論あらかじめ野党にも話しておつたでしよう、少くとも……。併し形においては国会におけるみずからの説明、その上にその目的が納得され、野党立場も主張も入れた超党派的な代表であるから、そこに超党派的な歓送という、みんなが送ろうという気持になり、その国民的な基盤に立つた外交であるから、それは政治的な会談であろうが、親善外交であろうが、使節であろうが、初めて意味を持つ、私はこういうことは釈迦に説法だと思う。であるから、副総理は必ずそういうことに心から御賛成になると思う。して入れば、少くとも私はこの委員会には必らず出る。その他の国会要求に応じて、そうしてこの親善使節として外遊されるというならば、飽くまで国会に正式に出て、その一等いい方法は勿論臨時国会を開いて、そうして目的を示されて、それで質疑応答を通じてその国民外交基盤に立つて、そうして外遊するということができるならば、これかベストなんです。我々もそういうことについては、総則及び政府本当のまじめな気持でそういうルールを尊重し、民主主義議会制度を尊重するという実を挙げてくれるならば、我々は野党だから何でもかんでも反対だというような考えは毛頭持つておりません。我々は付のためのあれだか知らされていない。総理はそれを語ろうとしない。殊に議会を通じて語ろうとしない。この非常に不明朗な、あえて私がいうならば危険な状態を醸しておることについては、私は副総理としては非常に心配されておる。だからこそ間をとつて、せめて各党代表との懇談というようなことをお考えになつておる。ところが基本を直さずしてそういうことをやれば、これは羽生君から御指摘がありましたように、却つてまずい結果になる。政治的にそういうことをしないで、なぜ堂々と国会に出て来られないか。先ずその初めとして当委員会要求に応じて、病気のことは申立の理由になりませんから、必ずいつこの委員会に出るか、この御確答を願いたいと思います。
  34. 中田吉雄

    中田吉雄君 関連して……。在外公館を通じて九月二十六日から十一月十四日までの日程で外遊したいと思うが、どうかというので、イタリア、カナダ、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカというふうに外遊先を交渉しておられて、一番遅れておつたイタリアも来て、政府は十日の閣議で最後的に決定して官房長官名を以て発表し、ラジオとテレビを通じてだけ国民に訴えて、国会ではやらないということを決定されているように伝えられていますが、只今の曾祢氏の発言とからんで、一つその点も併せて、そういうことがきまつているのかどうかはつきりして頂きたい。
  35. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 曾祢委員の御質問お答えしますが、いつこの委員会総理大臣出席するかを確答しろという御質問でありまするか、これは私も昨日突如閣議出席しなかつたので、又少し悪くなつたということを知つたわけで、容態を知りませんから、ここで確答を申上げることはできません。それから中田委員の御質問のラジオ、テレビ等を通じてやるか、各党各派代表者との会談はしないというふうにきまつたということは私は承知しておりません。多分きまつていないと思います。
  36. 曾禰益

    曾祢益君 まあ私非常に長談義的になつて恐縮でしたけれど、まあ副総理におかれても、そういう形式的な返事でなくて、私の申上げたことの言葉に少し毒があつた点は勘弁して頂きまして、恐らく私は御同感だろうと思うのです。それならば我々非常にモディストな要求を出しておる、具体的には……。私はあなたにお願いして、この外務委員としての発言として取りあえずお願いするのは、この外務委員会に、勿論出発前に相当前日に時間の余裕をとつて進んで出席をして、そうして堂々とその意図を告げるように、あなたとしてはその方向に努力して頂けるものかどうか、この点を伺いたいわけであります。
  37. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 参議院の外務会員からそういう御意見が出たということは、私そのままに総理に伝えまして、成るべく参議院のそういつた機会を利用するように申します。
  38. 曾禰益

    曾祢益君 どうぞこの委員会のすべてのかたのお気持おいて一致しておると思いますから、委員長おいても是非善処されんことを希望申上げます。
  39. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の問題と同じですか、どうも副総理として、期日は別として、御出発になるならば、病気はお治りになるはずだから、その出発の前に、ここに御出席になることを政府意思として、ここに御確約をして頂きたいと思う。若し確約ができないのならば、こちらの委員会意思決定として、そちらに申入をして頂きたいのです。そのどちらかを委員長としてはとつて頂きたい。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 私も佐多委員の言われたことと同じ考え方なんです。たから政府が進んでそういう措置をとつて頂けばそれで結構、そうでなければ委員会としてまあ申合せをしたほうが適当だということになるかも知れない、だから総理が仮にこの委員会に出られるというならば、絶対一から十まで皆喋べらなければならんということもないでしよう。又そういうことも事実できないし、喋べりたくないこともあるでしよう。そんなことを要求するんじやない。併し差支えのない範囲はこの機会に明らかにしたほうがいいのです。外国に行つて喋べつて、どうせいろいろな形で明らかになる問題のあらましぐらい、而も議会外務委員会にすら話せないということは、私はおかしいと思いますので、是非どうか進んでその健全を得られるならば非常にベターだと思う。そうでなければ、委員長が各委員気持を察して頂いて、総理が適当の機会に当委員会に出られるようにお取計らいを願いたい。
  41. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 只今羽生委員佐多委員からも御意見、御要求がありましたが、当委員会といたしましては、相当多数のかたの御意向が総理が当委員会出席して、外遊についての目的等の大きなお話を直接になさることを希望をしておることと存じますのでありますから、副総理におかれましては、当委員会のそういう情勢をよくお認め頂いて、総理出席に御尽力下さることをお願いをいたしておきます。
  42. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 委員長の御要求通りにいたします。
  43. 中田吉雄

    中田吉雄君 ちよつと外遊の問題に一つ関連して。この外遊に関して国会に対する挨拶のまあ代りとして野党の首脳部との会談をやるという問題があるのですが、池田幹事長は多数派工作をやつて十分乗り切れるような成算がついてからぎりぎリにやるべきで、それまではもう如何なる要請があつても無視して、主として政局の安定を先ずやる。これはいずれ多数派工作だと思うのですが、そうしておいて間際に挨拶して、もう夜逃げのように外遊するというようにはつきり伝えられているし、これは昨日の新聞にもはつきり出ているわけですが、こういう意見というものは非常に国会を無視して、外交国民支持なしにはできないということに対する無知を表明するものたと思うのですが、そういう意見が党内にあるのですか、首脳部に……。そういう意見があるのですか、多数派工作をやつてぎりぎりに。
  44. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) いやしくも一国の総理大臣が夜逃げのように出て行こうということは絶対に考えておりません。党内に今お話なつたような意見があるかどうか、恐らくないと思いますが、政局の安定ということは、これは今に始まつたことでなくて終始考えております。でありますが、それとこの外遊の問題について各党各派の御了解を得る問題と何か駈引きに使うというようなことは考えておりません。
  45. 中田吉雄

    中田吉雄君 この外遊総理としては一体如何なる法的な……、外遊するということは法的な関係は一体何に基いてやられるのですか。その関係一つ外遊は行政権の一つとして行かれると思うのですが、それについて一つお伺いしたい。
  46. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 法的の根拠というと行政権に基いて行くと思いますが、それ以上に説明のしようがありません。
  47. 中田吉雄

    中田吉雄君 私も憲法六十五条の行政権、或いは七十三条二号の外交関係を処理するというような、そういうことに基いての外遊だと思うのですが、併しそういうことは行政権があるからといつて、これは政府の専断と独善を許すものでは私はないと思うのですが、これはやはり国会を通じてやるということと関連するのですか、その点の理解の仕方が私は非常に問題ではないかと思うのですか、これを余り六十五条なり七十三条というものが正しい仕方で理解され、運用されていないではないかと思うのですが、そういう関係について御所見を伺いたい。
  48. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) これは忠法の七十三条、第二号に「外交関係を処理すること。」ということがありますが、この条項に基いていわゆる外遊をすることになるものであろうと解釈いたしております。
  49. 中田吉雄

    中田吉雄君 時間がありませんからもうちよつだけ。いずれいろいろな各派の意見にもかかわらず、外遊されると思うのですが、私反対ですが、併し行かれる際の飛行機の問題であります。この点はもう予約もあると思うのですが、申上げておきたいと思うわけであります。  チャーチルは数回トルーマン大統領やアイゼンハワーと会談するために行つています。先には曾禰氏も申されたように、六月二十四日に外遊するときにはイギリスの飛行機のBOACで外遊しています。更に帰るときにはクインエリザベス号というイギリスの船に乗つてつています。更に先般来ましたイギリスの労働党の代表の諸君もBOACで来てBOACで帰つています。更に又私先般岡崎外務大臣に、総評の諸君が五名フランスの労働同盟の招待で行くので、旅券の交渉をやつて、下付して頂いたのですが、そのときに、フランス総同盟では、乗つて来る飛行機はエヤ・フランスに必ず乗つて来てもらいたい。併し、どうしても日程の都合でエヤ・フランスがない際にはサイゴンまで一つ外国の飛行機で来ても、サイゴンに二日でも三日でも滞在して、フランスの飛行機があるまではこちらで滞在費を持つから、サイゴンからフランスまではフランスの旅客機で来るように、こういうことが言われて、非常に外貨を如何に大切にしているかということが、もう諸外国の責任者の外遊を見ても明らかであります。然るに先般吉田総理はパン・アメリカン機に予約されていまして、それより前に今の武内局長の前の土屋欧米局長も、吉田総理がそうでありますから、上がやることを下がこれを倣うというので、パン・アメリカン機でアメリカに赴任しています。更に又先般統合幕僚会議、長の林敬三氏がアメリカの軍用機に乗つてアメリカの極東作戦の打合せに行つたということは、日本の作られつつある軍隊というものが、どういう性格を持つておるかということがはつきりこれで示されています。アメリカの軍用機に虜にしてアメリカに行つているわけであります。  而も、日本航空株式会社は政府が二十億の出資をしている。吉田総理自身がお乗りにならないようですから、日本の高官の諸君が海外に赴任する際にも乗らない。だから日本航空株式会社は五百円の一株の株式であるにもかかわらず赤字に悩んで、半額しか、二百五十円ぐらいしか時価していない。而も我が国の外貨状態は七億ドルぐらいしかないが、インドネシアと朝鮮における焦付き等を考えると五億の台を割つてしまう。国際収支の必要の最低限を割るというような状態であるわけであります。私はこの点については、是非政府が半額出資して作つておられる日本航空機というものを、将来の航空事業の発展のため、外貨節約のために率先垂範されるためにも、是非政府が日本の飛行機を使われることを、吉田総理が使われることを希望しておきますが、この関係はどうでございましようか。一つこういう点こそチャーチルや労働党、フランス等の措置に是非倣つて頂きたいと思うのですが、副総理とされては如何でありますか。
  50. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 総理大臣の今予定されておりまする旅程は、アメリカの指導者と会見する日取りが十一月になりまする関係上、旅程をアメリカを最後にする必要が生じまして、そのために旅程をこの前の六月のときに言われておりましたのと違つた旅程を立てたのでありまするが、それによりますると、先ずカナダに先に参ることになつております。今お話の日航の飛行機にも乗りませんが、同時にパン・アメリカン機にも乗らない、カナデイアン・パシフィックに乗つて参ります。これはそれよりしようがない。
  51. 中田吉雄

    中田吉雄君 先に曾祢氏の提案で緒方総理のほうからお勧め願うか、さもない場合は委員長におかれて適当に総理に御出席願うようにお願いしたわけですが、私、終戦以来外交というものが、一国の総理大臣が相手の国に飛んで行つて、そして膝詰め談判をしていることをたくさん例を知つています。そういう点で私もあえて反対するものではございません。私が昨日来から国会図書館で調べても、イギリスのアトリー、ネール、サンローラン、オリオールフランス大統領、ラニェルフランス首相、プレバンフランス首相、トルコのメンデルス外相というふうにたくさん外遊をされております。そういう点で吉田総理外遊についても国民の十分なる理解と共鳴の下にやられることについては反対するものではありませんか、特に私は先に曾祢氏が言われたように、チャーチルがどういう態度を議会にとつてつたかということを一言述べさせて頂いて、是非副総理のほうから吉田総理にも伝えて頂きたいと思います。  先ずチャーチルは六月二十四日に渡米する前に、二十二日にチャーチル自身が率先してイギリスの下院におきまして渡米の目的を挨拶しています。更にジュネーヴに行つていましたイーデン外相が、忙しい会議のさなかにもかかわらず、飛行機で帰つて二十三日にチャーチル説明と、それに対するアトリーの質疑応答で不足の部分を補完して、そしてアトリーの野党党主が七十九歳の高齢をひつさげて大典帝国のために渡米することの労を多として、そして餞別の言葉を述べて、誠に言わず語らずのうちに超党派外交の実が挙つていることを知つておるわけであります。更に又チャーチルは七月六日にサザンプトンの港に入つたわけでありますが、彼は船の上で直ちにバトラー蔵相に電話をかけまして、先ず直ちに閣議の招集をしている。そうしてイギリスの議会を、下院を十一日に招集するように言つてチャーチル自身が率先して、渡米の際にこういう目的で行くということをお約束したが、アイクとの会談はこうなつたということを報告し、アトリーとの大論戦をやつて、ロンドンタイムスはドラマティックな、劇的な、歴史的な大論戦であつたというふうに、国民外交の実を挙げているわけであります。我々はこれと思い合せてみますると非常に、距りがあると思いますので、是非緒方総理とされては、国民の、そうして国会の強い意思のある点をお伝え願いまして、御出席願つて、抱負経輪の一端を披瀝されて、そうして国民がどういう意見を持つているかということを野党を通じて知つて、そうしてその背景の上に立つて強力な外交一つつて頂きたいということをお願いしておきます。
  52. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは緒方総理に対しまする御発言はこの程度でよろしゆうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは引続きまして各委員から御発言のお申出があるのでありますが、先に理事会で相談をいたしましたのでは、だんだん時間の割当を考えますると、お一人三十分ぐらいの御発言ということを腹に入れてお述べを願うことにいたしたい。言論を制限するわけではございませんが、そういう大体おつもりで御発言を願うということにいたしておりますので、そのことをあらかじめ申上げておきます。
  54. 團伊能

    ○團伊能君 私日韓会談の経過につきまして、一応御説明を承わりたいと思いますが、それにつきまして特に二、三の点について政府から説明を頂きたいと思います。但し私の質問は、今日防衛庁長官が乃至は次官が御出席になるという予定で打聞いたすことにいたしておりましたが、長官、次官が御出席になりませんから、長官、次官に対するところだけの質問は、若しこの委員会質問が他日に継続すれは保留して、他日にこれを附け加えさして頂きたいと思います。  去る八月二十三日に保安庁の巡視船の「おき」が竹島の近海に近付きましたところ、竹島から発砲を受けまして約二百発の銃弾を受け、その船舶の中で材質が非常に薄い鉄板を通貫する、銃弾が通貫しておりますが、幸いに人間の被害はありませんでしたが、この事件のすぐあとで、外務省は強硬なる抗議を韓国に向つてなつたということか新聞に伝えられておりますが、この強硬な抗議というものの内容につきまして、如何なる形において如何なることを抗議されたのか、それを第一に伺いたいと思います。
  55. 中川融

    説明員(中川融君) 只今質問になりました件につきましては、早速海上保安庁から詳細な調査を聞きまして、関係官庁と相談の上韓国側に抗議書を送つたのであります。その内容は、我々の政府として承知しております事件の概要を先ず書きまして、このような事態が日本の領土である竹島において起つたということは、従来から竹島が日本の領土であるという明確な証拠は韓国側に通報して明らかな通りであるにもかかわらず、かようなことが起つたのは重大なる日本の主権の侵害である。かようなことが今後起らないことを要求すると共に、起りました事態につきましては、陳謝及び責任者の処罰、更にそれの損害についてはこちらから更に補償の要求をする権利を留保する。かようなことを厳重に通報したのであります。
  56. 團伊能

    ○團伊能君 この抗議は、送られました結果、相手国おいてはこれがどう処理されたかという、どう受入れられたかということについての情報はお持ちにならないでありましようか。
  57. 中川融

    説明員(中川融君) 我がほうが抗議を出しますと、若干時日をおきまして、先方からは逆に我がほうに抗議が参つておるのであります。それは韓国領土である独島に日本の巡視船が近寄つて未だ、そうしてこれに対して警告を発したにもかかわらず退去しなかつた、なお独島の上におります韓国民、韓国人等に対して敵対的なる態度を示したが故にこれに対して発砲した、今後このような事実が起らないようにという要求を先方から発して来ておるのであります。なおそれに対しては、我がほうから重ねて我がほうの立場を明らかにする文書を送つております。
  58. 團伊能

    ○團伊能君 只今の御説明と共に考えられるのは八月二十九日のAP通信で、これは若しも日本の船舶が韓国の竹島に侵入した場合は如何なる方法おいてもこれを撃退するということを韓国政府が発表しておりますし、更に三十一日には特にこの独島のための防衛費として三千万円と申しますか、朝鮮ドルの予算を以てこれの防衛に充てるということも発表しておりまして、この日本の抗議に対しては韓国は何らこれを誠意を以て受入れるという態度でないことが明らかでありますが、これについて外務省としては将来どういう方針をとられるおつもりでありますか。
  59. 秋山俊一郎

    説明員(秋山俊一郎君) 私は先頃外務政務次官の重任を拝しました秋山でございます。もとより非才の者でございまして、殊に又全然畑違いのところに参つておる次第でございまして、今後皆様の大いなる御協力を頂かなければこの重任を果すことはできないと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。  只今お尋ねの竹島の問題でございますが、竹島自体そのものは大きな島ではございませんけれども、この島は明らかに日本の領土として古くから自他ともに認めておつた領土であるのであります。この終戦後に至りまして、韓国政府が不法なる処置によつて只今質疑のございましたような結果が現在出ておることに対しましては、日本政府として誠に遺憾な次第でありますが、ここにこの問題を解決するために手荒な処置をするということは今日の情勢上誠に妥当でない、かように考えておりますために、あらゆる外交手段を請じまして、おだやかにこの問題を解決することが必要だろうとかように考えますために、先ほど申しまするように韓国に対してはしばしば抗議を申しますると共に、関係の第三国を通じまして、日本の置かれております状態、又今日韓国のとつております不法処置等をつぶさに通知いたしまして了解を求め、これらの輿論によつてこの問題を円満裡に解決するような努力を今後続けて行きたいと考えておる次第でございます。
  60. 團伊能

    ○團伊能君 只今の次官の御説明は、一般論としては非常に私ども賛成でありますけれども、実際この抗議文を送つたことはすでに今回にとどまらず、二十七年以来、李承晩ラインの設定以来再三のことでございまして、この問題の抗議は、常に両方の考えと申しまするか、韓国の考え方及び立場をいささかも変化することなく、このたび三十一日の発表でも日本が竹島に対する不法侵入という言集を使つておりまして、竹島は飽くまでも韓国領土であるという観念を動かしていないのであります。竹島は元来日本の領土であることは明白でありますが、こういう処置に出て参りましたとき、通常の外交交渉というもので抗議文を交換するということは、もはや幾たびか繰返して参りました実例に照らしまして、これは将来とも有効でない方法であるということに我々は考えなければならないと思いますが、それについて従来の方法でない、一つ新しい方法おいてこれを打開する、こういう方法をお考えであるかどうか、お伺いしたい。
  61. 小滝彬

    小滝彬君 関連質問……。御答弁になる前に私は指摘しておきたいのですが、極めて最近の新聞であれを国際司法裁判所の問題にして取上げるかも知れないということが出ておる。これは或いは新聞のほうで想像記事かも知れないが、その点にも触れて答弁をお願いいたします。
  62. 秋山俊一郎

    説明員(秋山俊一郎君) 只今の、今後のこれに対する新しい処置ということにつきまして、政府といたしましても、只今御指摘のございました国際司法裁判所に提起する問題の可否についても目下慎重に考慮をいたしておる次第でありますが、まだ決定を見るに至つておりませんけれども、さような処置も現在要求しつつあるということを御了解願いたいと思います。
  63. 團伊能

    ○團伊能君 そういう処置を請じるという結論に漸く外務省においてはお達しになるかのごとく考えられますが、すでにこれは三年以来の問題でありまして、今日までこの竹島問題をいわばあまり国民の利害関係のない問題であるかのごとき考えの下に放置されてありました責任は、私外務当局としては十分お感じにならなければならないことではないかと考えます。そのために日本がこの竹島のごとき問題を提起して日韓の間にいろいろな不幸なる交渉に入ることを恐れるという気持があるその盲点を突いて李承晩外交は著々この竹島にいろいろな施設を施し、最近におきましては燈台を造りまして、すでにその燈台がアメリカの航路図に載つているという状態までの実績をとられてしまつて、今日に至つてはなかなかこれを国際司法裁判に訴えましても、すなおに日本の領土であるということを承認させることが困難になるかのごとき感じがするのでありますが、こういう今日までのいわば非常に鈍い、非常に緩い態度のために著々竹島は韓国領土であるという証左のほうが固められて行くという実情にありますために、私はこの問題をどう考えられるか。殊に最近燈台が米国の航路標識に承認されておる、載つているというような事件についてはどうお考えになりますか。
  64. 秋山俊一郎

    説明員(秋山俊一郎君) 燈台の設置等も伺つておりますが、これがアメリカのチャートでありますか、航路図に載つておるということがありますといたしましても、私の考えといたしましては、航海上の安全を期するためにその施設が誰のものであるかということは問題外といたしましても、そこに点燈をするということが航海の安全を期するためにどうしてもそこにしるさなければならん、仮に海洋において突如として岩礁が飛び出しましても、それがどこの領域であるかということは問題外といたしまして、それは海図の上に航路の上にしるさるべきものであると考えるのでありまして、これがしるされておるから韓国の領土であるということの証左には私はならないかと考えるのであります。いずれにいたしましてもさような施設をどんどんいたしまして、どこまでも既成事実を作ろうとする韓国の態度に対しては、誠に我々も遺憾至極に感じますと同時に、むしろ憤りを感ずる次第であります。併しながらこれはひとり竹島問題に限りませず、いわゆる李承晩ラインのごとき不法行為もこれは韓国があえてしておるのでありまして、噂ごとに常識で判断のできないような行動のあることに対しましては、我が国としても絶えず抗議をしておるのでありまして、現在あらゆる手段は講じておりますが、遺憾ながら韓国は我がほうの意思をくむような状態になりませんことを誠に遺憾に存じております。併しながら我がほうといたしましては十分これに対する措置を推進して行く考えであります。現在のところこれをどうするというはつきりした、奪回と申しますか、その処置は、現在のところ打つことになつておらないわけであります。
  65. 團伊能

    ○團伊能君 こういう事件の処理につきまして、特に防衛庁はこの問題をどういう工合に考えられるか。日本の国土の中に外国兵が侵入して来て、これを占拠して、且つこれに燈台までつけていて、日本の国籍のある船が近づいて来たときに、これを攻撃するという事件が起きました。この事実を防衛庁の当局としてはこれをどうすればいいというお考えであるか。その考えを伺いたいと思います。
  66. 山田誠

    説明員(山田誠君) 今日の段階におきまして、関係各当局といろいろお打合せをいたしておるのでございます。その段階におきます情報をあれこれ総合して見ますると、今日竹島を占拠しているのは大体警備員らしいということでありまして、これは大体警察官憲ではなかろうか。かような一応の見解が有力でございまして、恐らくこれは軍隊ではなかろうということであります。今日ではこれか武力による、不法侵略である、かように解釈するか、単に不法入国、かような段階としてこれを規定するかという点につきましては、現在の我々としましては未だそれが武力による不法侵略と断定いたすことは時機尚早でございまして、いわば一種の不法入国、かように考えるのが現段階におきましては妥当である、かように私ども考えておるのでございまして、従いまして、直ちに自衛隊法七十六条による防衛出動ということは目下のところ考えておりませず、これは若しやるとすれば、一種の警察措置として海上保安庁或いは警察当局がなさるべきことでありまして、先ほど外務次官からもお話がございましたように、目下のところは外交的手段によりましてできるだけ平和的に処理されることが望ましい、かように考えております。
  67. 團伊能

    ○團伊能君 只今の御説明でありますと、日本の領土内におきまして武器を使つて、それが軍隊であろうとなかろうと、武器を使つて日本の保安庁の巡視船に攻撃をし、それに近づくことを、領土に接近することを不可能ならしめているという事実を、相手国が軍隊であろうとなかろうと、日本としては放置できない国内問題であると思いますが、これに対して只今の御説明は警察措置を以てやつて行くというお話でありますが、それではこれらの不法行為攻行う外国人を捕えてこれを不法入国者として処理して行くというお考えでありますか。それでそういうことはできますかどうか、伺いたいと思います。
  68. 山田誠

    説明員(山田誠君) 直接警察行動による措置につきましては、私ども所管外でございますので、海上保安庁なり、或いは警察側の御答弁を御要求願いたいと思います。
  69. 團伊能

    ○團伊能君 ちよつと海上保安庁の前に……。只今防衛庁のお考えを開きましたが、すでに韓国が、その竹島においては防衛庁の巡視船が行きましたときに、上陸いたしたときに、射撃されまして、引き返してこれを捕えて来て不法入国者として処理しようと思つたときに失敗をしております。多分二十七年の七月十二日だと思いますが、そういう事件があつて、その方式はすでにできない。保安庁といたしましては巡視船においてこれを処理することができないという只今状態になつておりますので、防衛庁の態度を伺つたのでありますが、防衛庁はなおこれが保安庁の出動によつて処理できるというお考えでありますか。そういうような状態を御認識になつておるかどうか、伺いたい。
  70. 山田誠

    説明員(山田誠君) 先ほどお話のうちの防衛庁の船というのはこれは防衛庁ではございませんで、海上保安庁の巡視船であります。なお、最近におきましては海上保安庁も或る程度の実力を持つようになりました。一応海上保安庁なり、警察当局でさような措置を武みると御決意になりますれば、一応その実力行使をやつた上におきまして、どうしてもその力が足らないという場合におきましては、防衛庁としましてこれに協力するということはやぶさかではございません。
  71. 團伊能

    ○團伊能君 ちよつと防衛庁のお考えを伺いますが、海上保安庁の船がこれに手向つて、その力に及ばないときは防衛庁としてこの船を出動させるというお話ですが、防衛庁の船が出動しても果してそれが実行できる状態にありますかどうか、実情観測を伺いたいと思います。
  72. 山田誠

    説明員(山田誠君) ちよつと御質問について……。
  73. 團伊能

    ○團伊能君 私の質問は、韓国が相当の軍艦も出動いたし、これに対抗する場合、日本が持つている防衛庁の船舶、即ちアメリカから借りましたフリゲートその他の船でこれに向つてこの問題を処理しようと思つても、日本は非常に劣性でありますから、その行為は実行できないという私は観測を持つておりますが、その点の御観測は如何ですか。
  74. 山田誠

    説明員(山田誠君) さような場合になりました場合には、果して完全に処理できるかどうかという点につきましてはいろいろと私どもも問題は多うかろうと思います。併しさような政府の最高の御方針がきまり、内閣総理大臣からさような命令が出ましたならば、我々は真に全力を尽して職務に邁進いたす、かような考えでおります。
  75. 團伊能

    ○團伊能君 その点につきまして、この我々の考えている自衛の観念と及び自衛権の発動の形についてのまあいろいろ憲法上にもあるそういうような考え方につきましては、次の機会に防衛庁長官に質問したいと思いますので、質問を保留いたしますが、そこで次にこれに続いて私が質問したいと思いますのは外務省に対してでありますが、従来竹島は朝鮮のほうは独島と申しておりますような日本海の孤島でありまして、ここに住民がいなかつた関係で非常に軽視していた。参議院外務委員会はすでに、長い間非常にこの問題を研究いたし、しばしば質問をいたし、今年の夏は中田議員と私が隠岐へ参りまして、この独島が属している五箇村の村民を集めていろいろ調査をいたして参りました。ところが、根本的に外務省或いは国民の間には竹島に対する考え方が違つているのではないか、或いはこれを誤つて考えているのではないかと思えるところがありますので、是正して頂きたいと思いますが、竹島は従来の考えからいたしますと、僅かに竹島に漁夫などが出かけて参りまして、あそこに非常に群棲いたしておりましたあしかを捕えて来る、あしかの漁場というような形の価値しかありませんでしたが、今日ごのあしかも始んど姿を消している有様で、これはあしかにつきましては、勿論おつとせい、らつこというような高級な動物ではございませんで、それほどの経済価値はございませんけれども、日本の領土の中にこういう海獣が棲息いたしておりますことは、経済的観点からばかりでなく、海洋動物学その他の学術的関係からもこれを保護すべき重大な責任があると思います。がそれは別といたしまして、今日の漁業の状態が従来と非常に変りまして、非常に設備のいい遠洋の出動のできる漁船で行く、以西底曳その他の設備を持つて行く漁業においては、非常に遠海の漁場として役に立ちます関係で、殊に鯖の漁場として有名なこの地区において、独島でございますけれども六万坪以上の土地がございますので、これに然るべき港湾施設その他の施設を施して行けば非常に経済的な有効な港、或いは船溜りその他の施設もできて、日本漁業の発展の上に大きな一つの基礎を築くことができる所だと考えますが、こういう租いから考えますと、竹島の価値は非常に大きくなつているわけでありますが、それにかかわらず今日までこの問題が無人島なるが故に放置されて来たことは我々は非常に遺憾なことと考え施すので、この点の交渉につきまして、或いは国際裁判所への提起の問題等については、なお一層外務省に積極的な立場をとつてこれを推進して頂くことを要望するものであります。  次には、竹島から移りまして、竹島がこういう状態になつていつのまにか実績をとられ、今日はいろいろ日本政府の抗議があるにかかわらず、すでに韓国にこれが支配権を握られているという実態に至つておりますことは、延いて日本周辺島嶼においても夥しく非常な不安をかりたてておりまして、例えばその隣りの対馬におきましては、すでに李承晩大統領は二回に亘りまして対馬の領有権を主張いたしておりましたようなこともありまして、この竹島における日本の態度はやがて対馬等に同じ態度がとられるのではないかという不安をかりたてております。これには対馬には御承知のように韓国への住民も非常に数が多い関係にあつて、日本人はなお数においては遥かに多数でございますけれども、何か非常に平和的な人民でございますので、これらの間に非常な問題が起つているのでありますが、この対馬について今防衛庁に一つ伺いますけれども、最近九州の防衛上の隊を次々に北海道へ移して、北辺の守りを堅めているというようなお話新聞に出ますけれども、もつと手近な対馬についてどういう防衛上の設計を持つていられるか、これを一つあるならばお聞かせ願いたいと思います。
  76. 山田誠

    説明員(山田誠君) 現在のところ防衛庁といたしましては、対馬に海上部隊の連絡所を設置いたしまして、これは佐世保の総監部の直轄になります連絡所を設置いたしまして、先ずあの方面の具体的な情報をはつきり把握いたしたいと、かような考えで数名の連絡員をあちらに近々のうちに出すことにきめております。なお、陸上部隊が最近北海道に次々に移駐をしておりますが、あれば決して九州の部隊の数を減らして北海道に移駐するということではありませんので、一部持つて行きますが、すぐ新らしい隊員を入れまして、次々に編成をいたしておりますので、九州の部隊を剤減して北海道に持つてつておるというようなことではございません。なお、防衛庁といたして徒らに北海道に偏重いたし、九州を多少軽視いたしておるのではないか、かような御質問の御趣旨のようでございまするが、来年度の予算につきまして、これは又次の国会でいろいろ御審議をお願いいたさなければならないのでございますが、若し防衛庁の計画いたしておりまする陸上部隊の要請が仮に認められるといたしますれば、来年度は九州方面の防衛力を固めたいとかような考え方でおります。
  77. 團伊能

    ○團伊能君 只今私が質問いたしたところは、北海道を偏重するという意味ではございませんが、いろいろな観点から日本を防御する立場における対馬の価殖というものをどういう工合に考えていられるか、これにただ連絡場所を置くというようなことを以て足りるかどうか、これはなお長官にもその点伺いたいと思いますが、今日対馬におきましては、東西十八里の通貫道路もない、自動車の交通もできませんし、又上の島、下の島を繋ぐ萬関の橋というのかございますが、これもわけなく自動車交通ができる施設であるにかかわらず、まだ吊橋を歩いて渡つて自転車以外のものは渡れないということで、島内に何らの施設もございません。私は二十四年に参りましたときにすでにその問題がございましたので、いろいろ要請いたしましたけれども、何らの実行はできておりません。最近又運輸省の海湾局におきまして、萬関の拡張に入り、海峡を出繁して更に大きな船を入れるというような計画はあるようでございますが、実地に見て参りますと、両岸の灌木を伐り払つただけで何らの手をつけて実行されておりません。又旧竹敷の水雷艇隊の本部がございましたが、その辺に防衛庁の施設ができるという話もございますが、何らの手をつけてもなし、又一つの近代的なこれを防衛する上に必要な飛行場の計画もない。又対馬は今のところ放棄されておる形で何ら進展を見ておりませんが、この辺に対しての長官の御意見は又次に伺いたいと考えておりますが、更に進みまして、もう時間もございませんから次の問題に移りまして、従来非常な日本海川辺の海上において頻々として起り、すでに四年に亘つて事件が継続しながら、外務省におきましては何らの解決の方途が立つておりません周辺の漁船拿捕の問題でありますが、これはしばしばこちらでも問題になり、水産委員会その他でも取上げられて参つた問題でありますから、これらにつきましてはいろいろ説明或いは要求いたしませんけれども、これに対しても我が国といたして、我が国の国民のために、放冠していたことができずにいる。国土の一部と考えられる所で漁船がこれだけの不法拿捕をせられながら、今日まで佳かになしたものは日本国内における損害の補償というような極めて消極的なもので、これを外交問題としては何らの強き要求が行われておらず、強き態度もとられていないことにつきまして、私どもは非常な不安を感ずる次第でありますが、これにつきまして何ら新らしい方策が、外務省においては積極的な方式をお考えになつておるかどうか、外務次官から伺いたいと思います。
  78. 秋山俊一郎

    説明員(秋山俊一郎君) 只今御指摘の通りに、終戦以来韓国或いは中共、或いは台湾等の政府から、必ずしも政府でない場合もありましようけれども、日本の漁船が多数不法拿捕を受けまして、その大部分の船は殆んど帰つておりません。ただ三十数人まだ最近のものか残つておりますが、殆んど朝鮮のほうの乗組員は帰りましたが、漁船は帰つておりません。それから父中共におきましては、これは殆んど数隻が帰つた程度でありまして、なお抑留されて百三十数隻が残つておるわけであります。台湾におきましても同様に漁船は向うに抑留されたままになつております。これらの処置につきまして、台湾に対しましては、大使を通じまして返還の交渉をしばしば行つておりますが、まだそれが返還するような域に達していないのでございます。中共に対しましては、これは御承知のような国交状態でございますので、直接何らの交渉する政府としての途を持ちませんので、第三国を通じまして絶えずこの返還に対して要求をいたしておりますが、全然これとても返還の城に達していないのでございます。朝鮮の状態におきましては、御承知の通り李承晩ラインも最近では平和ラインと言つておりますが、これも朝鮮の一方的考え方によつて拿捕いたしまして船を返さない。これらの問題が日本の漁民に及ぼす経済的の影響、精神的な影響というものは絶大のものでありまして、同時に日本の経済に及ぼす影響も非常に大きいのでありまして、政府といたしましても、何とか船の返還と、この海域における安全操業の途を講じたいとあらゆる手段をとつておりますけれども、今申上げるような状態でその結果が現われて参つておりません。これに対しまして、日本政府は補償を出しておりません。ただこれらの漁船の代船を建造する場合に対しまして、朝鮮の拿捕に対しましては、昨年の九月に集団拿捕がありましたのに対しまして、法律を制定いたしまして代船建造の融資をすることに相成つておりまするが、これは農林省の所管でございますけれども、私は当時水産委員をやつておりましたためにその内容を或る程度存じておりますが、中共の拿捕に対しましては今以てそういう法的措置が講ぜられておりません。ただ徒らに、と申しましては甚だ言葉が過ぎるかも知れませんが、拿捕に任せておつたというような現状は誠に我々といたしましても遺憾の極みでございますけれども、未曾有の状態におきまして、現存これに国内的措置を講ずるという域にはまた達しておらんようでありますが、農林省当局などのお考え等を一つお尋ね下さいまして、補償或いはそれに代るべき措置についての政府考え方をお尋ね願いたいと、こういうことを希望いたします。
  79. 團伊能

    ○團伊能君 この問題の国内措置につきまして、私はこの外務委員会でお伺いいたしておるのではありません。又先ほど補償と申しましたのは私の考え違いで、大きな形における保障、大きな意味における保障であつたのでありますが、今次官の御説明通りであることも私は承知いたしております。外交措置といたしまして、これらの拿捕船舶の実は返還交渉につきまして、今日もはや時代の形は非常に変つて来ているにかかわらず、中共等に拿捕されたものに対する返還交渉は少しも進んでおらず、いつか外務委員会のほうで伺つたと思いますが、それについてはインド政府を通して申入がしてあるというような話をいつか伺つたことがあります。こういうような状態考え方では今日に処して行くことはできないように考えますが、何かそこいらに対中共関係は直接にこれを訴える方策につきましてお考えがあるかどうか、アジア局長もおりますから、どなたか一つお答え願いたいと思います。
  80. 中川融

    説明員(中川融君) 中共に拿捕、抑留されております漁船或いは乗員の返還につきましては、只今次官から御説明いたしました通り、従来までのところ一本としては直接これと折衝する途かないために、やり得る方法としては第三国に依頼してそれを向うに伝えてもらうという程度のことしかできないわけであります。なお中共と直接交渉したらどうかというような御質問のように拝聴いたしました。これは先般邦人のかたが中共に行かれまして、向うの政府のかたに会われた際に、いろいろ電報等で中共としては漁船を釈放することについて考慮しておるやの報道もあつたのでありまして、その後詳細なる報道を見てみますと、中共の立場は比較的冷い感じのように我々としては見ております。つまり日本が置かれている立場、要するに日本が米国といわば安全保障条約を結んでおる関係、或いは台湾政府を承認しておる関係というような点から、中共としては一つの安全措置として自分の領土に近づく船はこれを捕えているのだ、その間の状況を十分日本の業界の人にも伝えて欲しいというような伝言があつたというようなことであります。従つて中共側の考え方というものも、やはり漁船の問題については相当まだ固い考え方をしておるのではないかと考えられますと共に、中共政府としては現日本政府とは直接活をする気持がないというようなことも先方はラジオ放送その他で伝えておるのであります。かような事態におきまして、日本政府が直接中共政府話合いを開始するという客観的な事態はまだ熟していない、かように我々は判断いたしております。  なお、韓国との間につきましては、結局漁船の問題も含めて大きな李ラインの問題、そのほかの問題等を併せまして、日韓交渉という形でこれを再開して話を進めたいと、かように考えております。
  81. 團伊能

    ○團伊能君 併し、只今の御説明はありますけれども、勿論両国の間柄といたし、又他国との関係おいて、中共と日本と直ちに国交を回復して国際関係を再建するという今般的な問題に触れることは、只今直ちに到達することは困難であることは我々もよく承知しておりますが、併し、部分的な意味においては相当ほかの方面では話が個別的に進んでいる問題もあり、すでに政府におかれても中共貿易その他を決して軽視してはいられないようなことがあつて、中共と貿易を結び、或いはこのたび中京からいろいろな日本の中共にとどまつていた在留の邦人を帰すいろいろな状態もありまして、只今説明のように中共も一概に日本に対して冷たいとばかりは、言えない面もあるかと思いまして、これらの共産圏諸国との関係は、今日においては個別的な問題を捉えて、これが国のために有利なものはこれを進めて行くという態度にあるほうが私は時宜に適した外交ではないかと思いますが、只今の御説明ではやはり全般的な国交、国柄相容れないということの一事を以てこういう問題も解決する途がないというお考えには、多少の私は是正をして頂きたい点もございますが、今日はそれはそれとして伺つておきますが、更に国際問題として、こういう状態が存在するということは、日本の敗戦後の場なさけない国柄でありますから、これが許されますけれども、これが或いはほかの国の、これはビスケー湾で行われたとか、オホーツク海で行われたということになつたら直ちに重大な国際問題であり、非常な国際紛争を引起す原因になるべきものだと考えます。それでこれは単に朝鮮水域なり支那海で行われておる問題ではなく、平和な漁船が公海に出漁したのに、向うにこれが拿捕されてしまつて、その数おびただしきに上るというような半作は、世界の海上平和の上から考えましても非常に不幸な問題と思いますが、こういうのが将来における国際紛争の原因を来たす一つの大きな事実だと思います。これらについて国際問題としてこれを解決する道はないか、これは次官にも一つお伺いいたしたいと思います。
  82. 秋山俊一郎

    説明員(秋山俊一郎君) 只今御指摘の問題は、四面海をめぐらしております日本といたしまして、又非常な重要産業であります漁業の問題から考えまして、日本としては特別重大な関心を持つ問題であります。終戦以来国土は狭くなりまして、我々の活動する生産面は海に伸びる以外には道がないという現状におきましては、殊更この感を深くするものでありますが、最近、終戦以来日本の国力が低下いたしますと同時に、各地におきまして日本の活動する場面に制約を受けまして、いわゆる自由なるべき公海にいろいろな制限を設けまして、日本の漁船を締め出しておるという事実は先ほど来の支那東海、黄海、朝鮮周辺等、或いは又遠く濠洲のアラフラ海等においても現われておるわけであります。我が国といたしましては、飽くまでも公海自由の原則を貫き通したいという意味におきまして、いろいろな努力を払つてつておるのであります。最近のニユースによりますというと、近く開かれますとろの国連総会に対しまして、アメリカその他の国々からこの公海の問題、特に大陸棚の問題に対しまして問題を提起するという情報を受取つておるのであります。この問題は極めて大きな影響のある問題でありまして、若し大陸棚というものを認めるということになりまするというと、その国の領土の一部に認めるということになりますというと、あらゆる問題が日本側に極めて不利な状態になるのでありまして、私どもといたしましても重大な関心を持つてこの提案に対しまして注意を払つておる次第であります。ただこれらの情報も簡単な情報でございますので詳しいことはわかりませんが、電報等によりますというと、ソ連或いは朝鮮、中国等が下法に日本の漁業を各海域から締め出しておる、そして差別待遇をしておるということは穏やかでない、これらが只今の御指摘のように将来国際紛争の因をなすものであるというような見地から、これを何とか適当な処置において解決しようというのが提案の趣旨であるかのごとく私どもは受取つておるのでありますが、若しさような趣旨であるとするならば、我々としても誠に仕合せに考えるわけでありまして、是非ともそれらの趣旨が貫徹されますように、日本の国といたしましても努力をしなければなりませんので、現在外務省といたしましては、国連に派遣しております沢田大使を通じまして、それらの内容をどういうことであるか詳しく調査いたしますと同時に、日本に有利な解決をなすべくあらゆる手を打つと同時に、本国政府と十分緊密なる連絡をとるように連絡を続けております。この問題はつい最近に入つた情報でございますので、詳しいことはよくわかりませんが、これらの問題が適当に公海自由の原則というものを打立てて解決いたします。ならば、今日起つておりますところの李承晩ラインの問題にしましても、或いは中国における拿捕の問題にしましても、又アラフラ海の、現在国際司法裁判所に提起しております問題にしましても、我がほうの有利に展開するものと考えまして、この問題の進展はひとり外務省のみならず、日本の国へ体が大きな関心を持つて成果の上るように努力をしなければならん問題だと考えておる次第であります。
  83. 團伊能

    ○團伊能君 最後にお伺いしますが、只今次官の御説明にありましたように、これは単に外交事務処理でなく、国民の非常な大きな関心がある問題だというお話がありましたが、外務省はまだそのお考えをおまとめになる時期ではないかと思いますが、この問題は非常に日本の漁業、水産業のみなら食糧問題その他国民の生命線に触れる問題だと思いますので、これについて外務省はその場合に立ち至つたらば、国民代表する衆参両院、或いは国民代表を現地に送つて国連総会に参加させ、或いは国連総会についてこの問題を説明させるようなお考えはありますかどうか、この際にお伺いいたしておきます。
  84. 秋山俊一郎

    説明員(秋山俊一郎君) 非常に重大な問題でございますので、この問題の進展如何によりましては、今御指摘のような処置もとらなければならんのではないかと考えております。ただ問題が今漸く芽生えた程度でありまして、その情報をいま少しく詳しくとりまして、その結果如何によりましては、政府のみならず民間代表等によりましても、日本の実情を訴え、この公正なる国際間の判断を促すことに努力しなければならんと考えております。
  85. 中田吉雄

    中田吉雄君 午後再開されるときに、一つ外務省で六月頃ですか、両陣営の功きと日本というような国際情勢の分析をなされた資料があるということですが、これがありましたらお願いしたい点と、もう一つは対米債務の折衝に当つておられる武内局長に具体的な問題で御質問したいと思いますので、その内容についてもう少し詳しい統計のようなものがあれば、ガリオア、イロア等の援助の仕訳別等についての資料を一つありましたら、お願いしたいと思います。
  86. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは委員会は午前はこれで閉じまして、午後は二時から開くことにいたしたいと思います。    午後零時三十九分休憩    ——————————    午後二時十四分開会
  87. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは午前に引続きまして外務委員会開会いたします。  高橋委員が平和条約未締結国との間の外交関係のこと、及び賠償問題の経過に関しての御質問があるようでありますが、これらの件に関しましては、他の委員諸君にも御質問の御希望があると思います。先ず高橋委員から御質問願いまして、連関の問題として他の委員諸君から御質問頂くことにいたしたいと思います。
  88. 高橋道男

    高橋道男君 只今発言の機会を与えられましたが、私は外務委員としては初めてでありまするし、ほかの委員方々で前からの連関する問題を持つておられると思いますので、只今委員長から仰せられた二つの問題につきましては、私は質問をやめまして、私だけの問題になつておりまする問題をあとで適当の機会質問をすることにお許しを得たいと思います。
  89. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは各委員から御質問一つ
  90. 羽生三七

    羽生三七君 それでは最初私から質問さして頂きます。十九国会が終つてあと丁度三カ月くらいになるわけですが、この間、ジュネーブ会議によるインドシナ休戦の成立等から、国際情勢も相当な変化があつたと思うのであります。もとより一晩で世の中が、世界が変るというわけはありませんから、私の言うのは、でんぐり返えるように変つたというわけではありません。併し常職的に漸次変つて来た。東西共存の気持というものが双方に芽生えて来たし、又その具体的な現われがインドシナの休戦でもあつたわけだと思うのであります。併し今台湾海域に若干の好ましくない傾向が見られますが、これはまあ全面的なものでもないし、又ローカル・ウオーというすら適当でないくらいな単なる派生的な問題だと思いますので、根本的には、依然としてジュネーブ会議に現われたような気持が東西両陣営を支配しておると思うのであります。そういう中で、東西貿易の問題、それから高橋さんも質問予定されておつたと思いますが、中国、ソ連等の、或いはビルマもありますけれども、国交未回復国との今後の外交交渉の問題、そういう問題があると思うのであります。又今現にマニラでは、昨日までですか、東南アジア防衛機構についての会談も行われておる。そういうように最近の国際情勢一般は非常に大きな動きを示しておるわけでありますが、併しSEATO、東南アジア防衛磯構の問題があるにいたしましても、絶対的には先ほど申上げましたように、東西両陣営の共存と、そうして日本人から言うならば、国交未回復国との外交をどうやつて再開して行くかということも一つの課題になろうかと思うのであります。三カ月間外務大臣の御意見を伺う機会を得なかつたわけでありますが、今日この機会にこういう問題について、最近の御見解を承わつて、それからあと若干具体的な問題に入つてお尋ねしたいと思います。
  91. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お話のようなジュネーブ会議やら仏印の休戦というようなことで緩和された部分は勿論ありますが、大きく言いますと、他方においては今おつしやつたようなフイリピンの会議等もありまして、やはりこの冷たい戦争といいますか、そういう言葉は適当かどうかわかりませんが、私は大きく見ると、それほどの変化があるとは考えておりません。程度の問題としては、共産陣営との貿易は漸次拡大される可能性はありましよう。ありましようけれども、これは程度の問題であつて、性質の問題が変つて来たとは考えておりません。従いまして一般的に見ますると、前よりも程度は緩和しつつあるということは認められましようが、質的に非常な変化があつたとは考えておりません。
  92. 羽生三七

    羽生三七君 私も先ほど申上げたように、百八十度の大転換があつたとは申しませんが、併しまあジユネーブ会議の成果というものは、これは私は大きく評価しなければいけないと思います。そういうことから、而もまあ一部には次の新らしい世界戦争の発火点になるのではないかと言われたインドシナ戦争も一応片づいて、それで明るい見通しも立ち、又イギリスの労働党の代表団なんかもソ連や中国を見て、先般日本にも立寄つたというような、新らしい動きを示しておるわけです。そういうように私どもは大きく転換したと理解しますが、それはまあ理解の仕方でありますから、あえてかれこれ申しませんが、そこで私どもが理解する限りでは、そういう東西の共存の可能性が漸次芽生えて来たのであるから、日本として中国或いはソ連等との国交回復問題については、ビルマの問題は又あとでお尋ねいたしますが、中国、ソ連との国交回復問題については、具体的に何らかお考えになつておるか。先ず具体的な問題としては、この第一点から伺いたい。
  93. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは従来の考えと違つておりません。ソ連につきましては、サンフランシスコ条約及びこれに関連する一連の条約上の立場を認めて、これに加入されるということならば、前々から申しておる通り、国交を回復することは非常に結構であろうと思います。  中国の問題につきましては、今未帰還者の送還というような事態も出ておりますので、できるだけこういう点は円満に解決をいたしたいと思つておりまして、李徳全女史が来るかどうかわかりませんが、とにかく中国の紅十字からも人が来るというような状況になつております。従つて事実上両国間にできるだけ摩擦のないような方法は講じたいと思つております。  一方我々は、このことのよしあしは別としまして、国民政府を承認しております。これは国の信義の問題にもかかわるのであります。この国民政府を承認しているという事実は、中国問題の一般的の見方が、ソ連との国交回復とは多少趣きを異にしていることは、これは止むを得ないと、こう考えております。
  94. 羽生三七

    羽生三七君 それではソ連と中国との問題は一応切離して、ソ連だけについて考えてみますが、仮に先方が、これは全く仮定の問題でありますけれども、先方が現状のままで国交回復をする用心がある。仮にこういう場合には、政府従来の考えから、いつでも国交回復するということは、具体的な問題になるわけであります。
  95. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 現状のままというのは、ちよつと私にはよく意味がとれませんが……。
  96. 羽生三七

    羽生三七君 ちよつと補足いたします。今すぐそれじや日米安保条約を廃棄するというわけではないとか、或いは今あるままの形で今日本がサンフランシスコ条約を認めて来たのですから、そういう現状のままでとにかく国交はすぐ再開しよう、問題があるならあとからいつか外交交渉で話合いの機会がある、そういう非常に現実的な立場で再開を求めて来た場合にはどうするのですか。
  97. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはもうすでにサンフランシスコ条約の中にもあるのです。この条約に参加する国については、これを拒むものは一つもない、
  98. 羽生三七

    羽生三七君 その場合に拒むものがないのは当然だと思うのですが、その場合には向うが言つて来るのを待つわけですか。それとも日本から何か意思表示をするようなこともお考えになつておるのか。向うが言つて来るまでは黙つておるということか。それとも日本からチャンスを作つて何らかの意思表示をする、そういうことはお考えになつておりませんか。
  99. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 日本としましては、サンフランシスコ条約にできるだけ多くの国が参加することを希望することは、もうたびたび発表いたしております。まあこれが、変な言葉ですが、単独何とか講和か全面講和かというような議論になつておるわけであつて、我々はサンフランシスコ条約で世界のあらゆる多数の国と少くとも講和することができるという確信を持つてこの条約に参加したのであります。その後もできるだけ多くの国が参加することを希望しておるのは当然であります。これはもう周知の事実だと考えております。
  100. 羽生三七

    羽生三七君 いやいや、そうでなしに、そういう場合に向うからそれを言つて来るのを待つのか、日本が積極的にそういうチャンスを求める意思はないかという、そういう消極面と積極面について承わりたい。
  101. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) それはそうむずかしく言われても、それはこういう問題ですから、どうということも言えませんが、それは機を見てどちらでもいいでしよう。我々は少くとも常にそういう意思表示をしておるということを申したのです。特定の国にはしていないけれども、世界中の国に向つてそうしておる。こう申したのです。
  102. 羽生三七

    羽生三七君 次に中国との問題にも入りたいと思うのです。これは恐らくあとから同僚議員から詳しく触れられると思いますので、ただ一点だけ承わつておきますが、先ほど外務大臣お話の中に、李徳全女史が来られた時に云々ということかあつたのですが、その機会お話合いをされるような何かお考えがあつて言われたのですか、どうなんです。
  103. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) いや、そうじやないのです。私の申したのは、要するに今いわゆる戦犯者の帰還ということも現実に行われておるし、それから一般の個人的な希望者の引揚げということも考慮するという話でありますから、いろいろこういう中国関係或いは中国本土との関係余り詮議立てをして、中共側の気持を乱すということはいたしたくない。現にこういうふうにして季徳全女史を呼ぶことを認めておるような事情である。要するに余り気持を乱したくない。こういうことを申したのです。
  104. 羽生三七

    羽生三七君 それじやその問題はもう一点伺いますが、そうすると台湾問題が片づかない限り、中国との国交回復の可能性はないというお考え方なんですか、どうなんでありましようか、その辺は。世界情勢のあり方によつては又別途に考え方もあると考えていいのですか。
  105. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは情勢がどう変化するかによつて、又その事情おいてそう外交というものはきまつたレールを真つすぐに走るというばかりでもありますまいからして、いろいろ変化はありましようと思います。ただ、我々は国民政府を承認しておる。国民政府を承認しているという事実はこれははつきりしておる。よしあしは別として、承認しているという事実は頭に置いて考えなければならん。こう申したのです。
  106. 羽生三七

    羽生三七君 まあこの問題はまだうんと意見があるのですが、時間の関係があるので次の問題を伺いますが、最近ビルマとのいろいろ賠償問題で交渉が行われたようですが、その過程に平和条約の問題で何かお話なつたことがあるのか。或いは若しお話合いになつたとすれば、どの程度進んでおるのか。その問題を先にちよつと伺いたい。
  107. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私の了解しておるところでは、ビルマのウ・チヨゥ・ニェン氏を首班とする使節団が来ましたのは、ビルマと日本との友好関係を回復したい、こういう気持で来ておられると信じております。その大きな目的のために賠償問題を解決する必要がある、こういう意味で、賠償問題だけを解決するというのじやなくて、ビルマと日本との間の平和関係を回復するという大きな目的一つの支障になつておるから、賠償問題を解決する、こういう意味で来られておるのでありまして、当然そういう国交回復の話合いはしておるわけです。
  108. 羽生三七

    羽生三七君 この問題は、賠償問題に関してあと恐らく各委員から関連の御質問があると思いますので、その機会にして、この国際情勢関係でもう一点伺いたいことは、東南アジア防衛機構、今のマニラの会議でありますが、この問題については、第九国国会で、かなりこの委員会で論議もし、総理からも或いは外務大臣からもそれぞれ所見の開陳があつたのでありますが、まあ今度の会議では、日本はもとより関係がないことでありますから問題はないわけであります。併し新聞などを見ますと、一部には日本を経済協力の枠内に入れるようなアメリカ案もあり、それがフィリピン、タイ等の反対で駄目になつたとか何とか、まあいろいろの説が伝えられております。いずれにしても、それがいい悪いは別としまして、一体そういうようなことについて、何か外務省は承知をされておつたのか。若し承知をされておるとすれば、一体どういうようなものであつたのか。お差支えのない限り一つ承わりたいと思います。
  109. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) この問題につきましては、必要なと考える情報は入手しておるつもりでおります。併し御承知のように、マニフの会議も秘密会として協議されておりまして、本日中にも結論を得るのじやないかと思いますが、その結論が出てはつきり発表がありますまでは、我々の得ておる情報はいわゆる内報でありまして、ほかの国との信義上、ちよつとそれを申上げることは差控えたいと思いますが、いずれ今日中にも何らかの発表が正式にあるだろうと思います。その上で必要なコメント等をいたすつもりでおります。
  110. 羽生三七

    羽生三七君 そこで内容的なものについては、勿論向うが秘密会議であつたからお差支えがあるだろうと思いますが、十九国会の当委員会質疑応答の過程から考えて、あのときの総理考え方、それから外務大しの考え方そのものは依然として今もなお続いておるのか。尤も総理と外務大臣との間には若干ニュアンスの違いはあつたと思いますが、様子如何によつては参加する。つまり日本の憲法上の義務とか、海外派兵の義務なんかを伴わない場合は考慮の対象になるというようなお話もあつたのでありますが、それらの点はその後どういうふうにお考えになつておるのか、併せてお答え願いたいと思います。
  111. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは一つの仮定の問題になりますが、まだ結論が出ておりませんから、いわゆる国連憲章の下における地域的安全保障の形であるならば、主義として日本としてはこれに賛成であります。従いまして、そういうものであれば、少くともモーラル・サポートはいたすべきものであると考えております。併しそうでない場合日とか或いは仮にそうであつても海外派兵とか今おつしやつたようないろいろなことがありますと、日本としては賛成ではあるが、参加はできない、こういうことになろうと思うのであります。
  112. 羽生三七

    羽生三七君 この問題は非常に問題でもあるし、それから現に直接日本に振りかかつておる問題じやないので議論が抽象的になりますのでこれ以上は申しません。ただ自分の、これは質問ではありませんが、自分の意見をちよつと附加えさして頂くならば、そういう安全保障の形も、それは国々で、又或いは国々の指導者によつてそれぞれ違いがあるでありましようが、前の委員会でも申上げたように、朝鮮や台湾や、まあそういう国々の名を指して言うのはどうかと思いますけれども、そういうところと結ぶような形の安全保障が必ずしも日本の本当の意味の安全になるかどうか。自由主義国家群というようなことを一般的に言う場合に、そういうものだけが対象になり得るのかということには、私は相当問題があると思うのです。だから安全保障というものは、名前でなしに具体的な内容をも伴わなければ意味ないと思いますが、そういう意味からいつて、私は今進められておるSEATO等については、日本が十分警戒的であることのほうが、日本の安全保障になると思いますが、これは意見であるからこれ以上は申上げません。  まだ若干時間があるようでありますから、さつきのところにもう一度戻りましてお尋ねいたしますが、ビルマとの賠償問題は、今現に会談を続行されておることであるし、又代表も北海道に旅行されて今夕ですか、帰られるようならが、更に明日でも続行されるという矢先でありますから、なかなか問題がデリケートであつて、公開の席上でお話できる点もできない点もあるだろうと思いますが、大体どういうふうに進行しておるのか。僕ら新聞で見ておる程度でありますけれども、お差支えのない範囲で承わつて、それから質問に入りたいと思いますが、お聞かせ願いたいと思います。
  113. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ビルマの代表の態度は、こう私から申してはおかしいようですが、非常にリーズナブルである。そうして日本との国交回復をしようという強い気持で来ておられるのであります。又ビルマの代表が日本のいろいろの状況を見ておられますが、その判断は非常に公平であり、冷静であると思つております。従つて日本の支払能力等につきましても、かなりの認識を持つた上での話をいたしておりますから、そうして私のほうから言えば、ウ・チヨウ・ニエン氏のごとき有力なるビルマの要人が日本にわざわざ来るということは、そう何遍もあることじやないと思いますので、この機会に何とか話をまとめたいと思つて、日夜努力をいたしております。ただ賠償の支払いということは、政府が思い切つて賛成すれはいいようなものでありますけれども、この支払いの財源は皆納税者の負担になるわけでありますから、国民の、納税者の考えといいますか、納税者の負担をできるだけ少くしたいという政府考え方も、これは無論止むを得ないことでありまして、その間にできるだけの調和を求めて話をまとめたいと思つて努力をいたしております。その気持は先方にも通じておると思います。又勿論予断はできません。先方もビルマの利益を考えてやつておられることであり、我々は日本の利益を考えてやつておることでありますから、お互いに何とかまとめたいという気持がありましても、これはまとまるかどうか、勿論予断は許しませんけれども、できるだけまとめるつもりで我々は努力をしております。
  114. 羽生三七

    羽生三七君 大体お考え方はわかつたわけでありますが、私はやはりこの機会に努力をされてまとめられるべきだという考え方に立つております。これは先ほどこの国交回復問題について外務大臣から意見の開陳がありましたが、やはりこの賠償問題の解決からビルマと日本との平和条約も生まれて来ると思われるし、又先方の団長もそのつもりでおるのではないかと、我々から見れば思われるのであります。まあもとより我々特に議員なんかとすれば、日本の国民負担の軽減ということも、賠償の中でも非常に重要な一つの条件になることは当然でありますから、無制限に何でもかんでもということは申せる筋のものではないけれども、併し向うの、まあ私も先般いろいろな会合の席の末席を汚して、いろいろな意見を聞いてみて、非常に日本に対しては何というか、我々の想像したよりももつと親愛感も持ち、日本との経済的な提携も協力も希望し、更に国交の回復も希望しており、それから外務大臣から今言われたように、有力な団長として今現におるのですから、この機会に何とか双方歩み寄つて話をまとめるべきだと固くまあ信じて期待しておるわけですが、その見通しなんかは如何でありますか。いま少し詳しく一つ伺いたい。
  115. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 見通しにつきましては、私が楽観的なことを言いましても、事実もう日ならずしてどちらかになることはわかるのでありますが、楽観的なことを言つても、悲観的なことを言つても当らなければ何にもならんわけでありまして、この点はまああらゆる努力をして、政府としては予算上の困難はいろいろありますけれども、努力をしてまとめるつもりで今関係各省とも相談しておるのであります。その程度で一つ了承を願いたいと思います。
  116. 羽生三七

    羽生三七君 私の時間はまだ残つておるのでありますが、あと他の議員の質問される中国問題、それから対米債務の問題、そういう問題に関連したときに関連質問でやらして頂きたいと思いますので、時間を留保して一時ここでちよつと打切つておきたいと思います。
  117. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは次に曾祢委員
  118. 曾禰益

    曾祢益君 只今同僚羽生委員も言われましたが、確かに十九国会が終つてから今日までの間に世界の情勢にいろいろの変化があつたと思うわけであります。そこで、まあその情勢の変化をどういうふうに見るかについては、これは人によつていろいろ変りがあると思いますが、私の見るところによれば、少くともインドシナ戦争という局地戦争がなくなつて、世界中どこでも局地戦争はやつておらない。従つて、何と言つても世界の危機がやや遠のいた感があることが第一点だろうと思うのであります。併し、だからといつて、世界がいきなり百八十度理想の平和に突入したものではないことは、これは常識の示すところであろうと思います。従つて私はこれを冷たい平和と、こう言つているのですが、併しその中にもおのずとインドシナ停戦ができたというところに、自由国家群の中にもアメリカの性急な外交戦略方式は行き詰つておる。同時に共産陣営のいわゆる武力を背景とした、その援助によるところの膨脹政策にも一つの行き詰りが来ておる。こういう点。殊にアメリカとイギリスとの関係、マンデスフランスのいわゆる自主の外交、これらの点を考えてみると、やはり自由陣営の中にある日本としても、今までみたいなアメリカ一辺倒と呼ばれるような姿を根本的に直して行かなければならないという要素が出て来る。私はまあかように考える。更にアジアの独立国或いは独立を要望する世界の国々の声というものに対しては、いわゆる植民地を圧迫しながら共産陣営と対抗して行くという方式は駄目だ。アジアの独立国の声は大きく聞かれなければならないという一つの現われがある。更に今一つの問題は、何と言つても中共というものの国際的地位が強化されておる。これを我々が現実の姿を率直に捉えて、そうして冷たい平和、即ちチャーチルの言葉を以てすれば、まだ十分に警戒しながらの共存であるかも知れない。そういう制限付きのいわゆる平和共存といいますか、この問題に十分な考えを置いて日本の外交方針をきめなければならないじやないか。まあ非常に私独断的で恐縮ですが、そういつたようないろいろな大きな要素があるとするならば、今までの政府外交はとかくその都度外交である。とかく秘密である。とかく向米一辺倒である。こういう点から今や自由党内部においても外交の検討が行われていると私どもは聞くのであります。従つてこれらの新らしい情勢に応じて、以下いろいろな点について、時間のある限り、御質問を申上げたいのですが、最初に伺いたい点は、新らしい情勢に応じてやはり正確な情勢分析をする。そうして日本の外交一つの路線、基本的方向というものを立てて、それを目標に立ててその上に、外交は勿論相手方があるのですから、目標通りに行かないことは幾らもある。そういう意味においては、その都度という言葉は非常に悪意に満ちた言葉であつて、岡崎外務大臣としてはケース・バイ・ケースという言葉を使われたの、たと思います。やはり時宜に適した弾力性ある外交をやる。非常に講義がましくて恐縮でありますが、我々はそう思うので、従つて岡崎外務大臣がこの際如何なる外交の基本方針を立てられるか。或いは立てられんとしつつあるか。全然そういう必要はないと、今まで通りにケース・バイ・ケースでやつて行かれるのかという基本的なお考えをお漏らし願いたいと存ずるのであります。
  119. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私の外交方針は、いつも基本方針がなくてその都度だというお話のように思いますが、それはちよつと私は不服なんで、議会開会のたびごとに外交演説を行なつております。そうしてそのたんびに開き直つて政府外交政策の基調は……と言つて述べている。非常に抽象的かも知れませんが、とにかく自由主義陣営との緊密な提携ということを根拠にして外交方針を立てておる。その大きな枠の中ではケース・バイ・ケースによつてやる場合も勿論あります。併し大きな方針は私はそれで行つているのです。それがいい悪いはこれは別問題でありますが、従つて基本方針は今なおそれであります。
  120. 曾禰益

    曾祢益君 自由国家群の中に置かれた日本として、自由国家群の中に身を置きながら日本の独立、自立、経済自立、日本の安全と世界の平和を考えるのは、これは一つ方法論にして、目標それ自身ではないと思いますが、我我はあえてそれを否定するものではありません。併し一方において、アメリカとの外交おいて、どうも今日国民が非常に不満を持つているようないろいろな事態がある。私はやはり自由国家群との協力という建前に我々は立つか故に、特にそこに自立性の要求というものが強く盛上げられているのは当然だと思う。従つて日本の経済的自立は困難だ、安全保障においてアメリカに事実上独立国日本が守つてもらう、こういう状態だから仕方がないと言つてしまわずに、その制約の下にありながら基本方針において自由国家群との協力を旨としつつも、やはり平等の尊敬の基礎に立てる平等の日米関係ということに真剣な努力がなされておらないところに問題が起つていると、かように考える。そこで我々の見地から言うならば、アメリカの外交がイギリスからもフランスからも非常に批判されている点は、いわゆる、例えば即時大量報復方式を言い出してみたり、或いは軍備のみに重点を置いて、日本が先ず、ダレスの言葉で言うならば、間接侵略を寄せつけないような社会、経済を作ることが先だということを忘れて、そうしてただ陸兵を作ればいいというような押しつけをやつて来ようとした。それを又我々から見るならば、どうも唯々諾々として必要なレジスタンスもしておらないのじやないか。こういうところに問題があるのです。従つて我々はそういう意味から、再軍備より生活安定が先でなければならない。援助よりも自立と貿易ということを、こういう基本方針を立てて対米外交をやつて頂きたいと思うのですが、その点に関連して早速具体的な問題で伺いたいのは、援助より貿易をやらしてくれという意味から言うと、一等先に来るのは、例の債務と称するガリオア、イロアの返還の問題です。これは何も全部が全部帳消しにしろ、そんなものは全然道義的にも一切かまわないのだというような議論を立てるのではないか、一方においてはどう考えてみても占領行政の、彼らの占領軍の安全のためにやつたガリオア的なものまでも当然に取ろうというような態度、これは我々としては到底受け入れられないのではないか。そういうことを取立てる一方においては、僕らから見ると、軍事的な紐付きの援助というようなものならばMSAという形でよこす。それは根本において誤つておるのであつて、援助でなくても救済は債務としてもそれは免除してもらうというような見地から、この債務問題は基本的なそういう考えでやつてもらいたいと思うのですが、この点に関する政府の従来からの態度は、これは財政法的に或いは憲法的に言えば、まだ国会の承認を得てないから債務じやない、併し実は債務だと心得る、この態度だけで、そういう形式的な法律論だけでやつて来られた結果、どうもこの交渉が非常に行き悩んでおると聞くのでありまするが、現状と見通しはどうであるかを、簡単に要領よく教えて頂きたいのであります。
  121. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) いろいろお説を伺つたのですが、例えばガリオアにしましても、私ども気持は曾祢君とは少し考え方が違うのでして、これは有難く頂戴してしまえというようにちよつと聞えるのでありますが、全部かどうか知りませんけれども、我々はそういう負い目を負いたくない、できるだけ払うものは払いたい、これは少し長くなるかも知れませんが、要するに自衛隊法を作りましたのも、デフレ予算を編んでおりますのも、今の国の守りをアメリカに依頼しておる事実、及び経済の自立においてアメリカの域外買付とかアメリカ軍の消費とか、そういうものに頼つておる現状から早く抜け出して、政治上の独立は一応平和条約ができたとしても、実質的な本当の意味の独立ということになれが、経済的にも誰にもお世話にならず、国の守りもできるだけ自分でやれるようにしたいという意味でやつておるのであつて、対米一辺倒とか言われますが、私が衝に当つていると早くそういうことをなくして行きたいという気持は人一倍強いのでありまして、併しながら今私がえらそうなことを言つたところで、八千七百万の国民の生活水準を維持するためには貿易以外のドル収入がなければやつて行かれないので仕方がない。ガリオアにつきましても同様で、私はアメリカに負い目を負いたくない、払うものは払いたい、こう考えておるのであります。  そこで今のガリオアの交渉の内容につきましては、向う側もドイツの例もありますのですが、何もガリオアの総額を皆返せと言つているのじやない。御承知のようにドイツでは約三七%でありましたかの程度のものを払つておるわけでありまして、従つて約三分の一強で、三分の二程度のものは切下げといいますか、要するにとつておるわけであります。そこでただドイツの経済状況と日本の経済状況は必ずしも一致しておりませんから、ドイツ方式をとるにしても、日本の実情に合うようにしなければならないと考えますので、今大体の方式はドイツ並みとしましても、例えば債務の総額というようなものをどうするか、或いは年限をどうするか、又その返済の金をどういうふうにするかというような点でいろいろ事務的にも交渉しておりまするし、米国側の首脳部、とも話をいたしておりますが、まだちよつとどうなるかという見通しはついておりません。
  122. 曾禰益

    曾祢益君 その点についてもう一言伺いたいのですが、私は少くともただ機械的にドイツの方式を取入れるということは意味をなさないのではないか。ガリオアとイロアの性質も違いましようし、そういう点を考えても、結局は今の政府考えでは、三分の一程度は止むを得ないと考えておられるだろうと思いまするが、三分の一程度ということは、これは何ら合理性がないという点を指摘したい。  それからいま一つは、仮にそういうようなフォーミユラーをとる場合にも、外務大臣が言われたように、或いは債務は認めても年限の問題でどうということによつて違う。或いは外貨払いの問題を起さないように国内的に統一するという問題もあるかに考えるのですが、そういつた点で只今この席上で基本的に、基本的と言うと語弊がありますが、そういつたような割合の点、それから年限の点或いは外貨払いの点、国内再投資の点、こういう点について何らか政府考え方を、先方とどういう交渉になつて今どうなつておるということは御説明なくても結構ですが、御説明を願えれば非常に幸いだと思います。
  123. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私どももドイツのその当時の経済状況と日本の現在の経済状況がどこが違つておるかという点は考虚しなければならんと思います。ドイツの通りここに経済状況が全然同じならばそれは、適用するという理由もあるかも知れませんが、それも異なつておると思いますので、そういう点を主として、従つていろいろの点で違つて来る場合もありましようと思いますが、先方は、アメリカの議会におきましてはなかなかドイツ方式と違つたものはむずかしいという話であります。これは議会気持から言えばそうかも知れませんが、我々としては、成るべく日本の実情に合うような変更を加えたいと、こう思つて話をいたしておりますが、見込みについてはちよつとまだわかりませんし、大体の気持一つ御勘弁を願いたいと思います。
  124. 羽生三七

    羽生三七君 ちよつと今の点に関連して。十九国会で私がこの問題をお心ねしたときに、政府から言われたあの発言を総合すると、大体二十五億五千万ドル、アメリカ側の線と日本側の線で五千万ドルぐらい差があつたようですが、大体二十億乃至二十億五千万ドルの線であつた。ところが最近はずつと変つて来て、六億ドルとか七億ドルというふうに言われておるのです。どうしてそういう変化が起つておるのか、それから十九国会の最後の委員会のときに、これは僕と中田君と外務大臣で、傍聴人もどなたもおられなくてゆつくりお話いたしましたが、そのとき外務大臣は、全部事務当局に任してあるという話でありましたが、この会談の成り行きは事務当局で何か数学的に検討されて、その結果必然的に出て来る数字がものを言うのか。それから何か政治的た検討というものでもあるのか。第一には、先ほど申しました二十五億五千万ドルが六、七億ドルになつたのは、どういうところからそういう数字の変化が起つたのか。次は、個個の資料に基いて数字は出て来るのか、或いはそれは何か政治的な折衝で上下することがあるのか。その辺ちよつと詳しくお話を願いたいと思います。
  125. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) それは今曾祢君から言われましたように、ドイツの方式をとりますとドイツの数字は、正確な数字は覚えておりませんが、三七・五というような、総額に対してその率を掛けて出て来たものが債務であるということであります。三七%、その率をかけると七億何千万という額が出て来るわけであります。新聞に伝えておられるのはその額であろうと思います。尤もそれが又いろいろ引算がありまして、例えば問題になつた朝鮮に対する債務、そういうものを引くとか、琉球へ行つたものを引くとかいうようなことをすると、又それが七億でなくて六億何千万になるというような議論もありましよう。こういう点の検討は事務当局に任しております。又事務当局としましては、資料を正確に整備して果して確かに日本側に来たものであるか、勿論それは三分の一でありますから、全額の幾らかが来なくても、それは三分の二まけてしまうのだからと言えばそれまでですが、併し正確に資料を調べて、そうして日本に来たもの、日本から外へ行つたもの等を分けて、そうして計算の基礎を出すわけです。それに基いてドイツ方式を当てはめればどれだけになるという議論になるわけです。その上において私なり或いはアメリカにおる井口大使なりが更に日本の経済状況に当てはめてみればどうなるかというような話合いをいたすことは、これは当然だと思います。が、根本的には事務当局の検討に待つておるわけであります。
  126. 羽生三七

    羽生三七君 もう一点。あと詳しくは中田さんから御質問があると思いますので、もう一点だけ今の点に関して伺います。それはこの前十九国会の本会議のときにお尋ねして、その点は不明確のままになつておるのですが、この折衝の過程で日本が終戦処理費として支払うといいますか、支払うという言葉は妥当かどうかわかりませんが、終戦処理費として邦貨五千二百億万円というものは一体、度の交渉の過程ではどういう地位を占めるのか。何らか考慮の対象になるのか。全然それは別個のもので、占領されておつた国は終戦処理費を払うのが当り前だという立場で、全然両国の交渉の過程において何らの地位を占めないのか、この点を一つ
  127. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは法律的な議論をすれば何ら関係がないということになろうかと思います。ただ日本の経済状況が現状のような状況になつておるのは、やはりそういう負担もあつたからであるということになろうかと思います。従つて話合いの一つの材料にはなろうかと思うわけであります。法律的にはそれは載然たる区別があると思います。
  128. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、今の終戦処理費五千二百億は、それは事務当局の数字的検討の過程で問題の対象になるのか。外務大臣の政治的折衝の過程で問題になる性質のものか。どちらでありますか。
  129. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) それは非常にむずかしい御質問で私にも正確に答えられませんが、事務当局の法律的な頭から言えば、これは別問題ということになろうかと思います。従つて若し何らかそういう点を考属するとすれば、それ以外のところで考慮することになろうかと思います。
  130. 曾禰益

    曾祢益君 先ほど羽生委員から御質問があつたSEATOに関する政府の態度、これを私は先ほどの岡崎外務大臣の御答弁を伺つておりますと、どうも十九国会のときに伺つたのよりも一歩何だか進んでおるような感じがする。十九国会のときでも今でもあなたのお答えの中で共通している点は、これはまだできておらない。できておらないものに対しては、仮定の問題には答えられない。これはまあ非常に特にお得意な弁論だろうと思うのですが、その中にも、この前のときにはやはり憲法の制約等もあつて、だからそれに日本は入れないのだろうと、憲法の制約から逸脱するようなものなら当然入れないのだというやや警戒的な態度が強かつた只今お話を承わつておると、例えば国連憲章の範囲内に属する地域的な集団保障ならば、主義としては日本は賛成なんだ。従つてモーラル・サポートをするというような、非常に積極的に日本に直接関係のないものでもそういうものはいいんだ。賛成なんだ。従つて日本としてはモーラル・サポートするのだという、少くとも今までよりも積極的な面を出しておられると思うのです。これは一つの見解だと思います。併し私は日本が参加しなくとも、直接日本の問題でなくとも、このSEATOの賛否をめぐつて各国がいろいろ議論しおります。御承知のように東南アジアのいわゆるコロンボ五カ国と称せられるグループ、この中の。パキスタンがSEATOに入つておりますけれども、インド、ビルマ、インドネシア、セイロン等が、こういうものに自分が参加することは反対である、のみならず主義上反対だという明確な態度をとつているやに私は聞いております。そういう場合に日本が何を好んで日本に直接関係のない、日本が入れないと私は思うし、入つてはならない機構でありまするが、その問題について米英は賛成しておる、一部のアジアの国は賛成しておる、そういうデリケートな問題にモーラリーにその方向がいいんだということまでなぜ言わなければならないのか。これは私は非常に問題ではなかろうかと思うのです。少くとも日本の外交の方針としては、日本の安全保障は日本独自で考える。これはどこの国が何とおつしやつても日本の独自の考えでやればいい。併し東南アジア防衛についていろいろ賛否の問題がある。殊に我々が東南アジアの共産陣営でもない、而もいわゆる西欧陣営にも余りインヴオルヴされたくないという気持を持つた諸国こそ、我々が友として大いに提携して行かなければならない私は外交一つの路線だと思う。そういう諸君の気持、コロンボ五カ国の主流の気持ということを無視したようなまあ何というか、西欧陣営へそつくりそのままのほうに賛成、軍配を挙げるがごとき態度は私は損じやないかと思うのですが、これは私のあなたの御発言に対する誤解かも知れませんので、その点をつまり日本の外交の路線を東南アジアに対する関係から考えてSEATOに対してはモーラル・サポートする、或いは賛成だというようなことを、日本の加入の問題とは別に離れて、そういう考えであるかどうか、もう一遍明確にして頂きたい。
  131. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私はやはり日本の考え方としては、東南アジアの諸国の気持ということも十分察して行くべきでありましようが、東南アジアの諸国に追随する必要もないのであつて、自分の考え通りつて差支えないと思います。この前のときにはまだ全貌がはつきりしていなかつたが、今でも正確にははつきりしていないわけでありますが、かなりいろいろの報道からどういうものかということが大体はつきりしつつあるわけであります。今日中にはつきりすると思いますが、その中身を見ますると、私は日本は入れないだろうと思いますが、主義においては異存のないものであろうと考えて申したのであつて、別に東南アジアの諸国の感情を害する、東南アジアの諸国と違つた方向にわざわざ行くという意味じやありませんので、見たところそう反対だというほどのものじやないような気がいたします。
  132. 曾禰益

    曾祢益君 私よりも岡崎大臣は少くとも内報を受けておられて内容は御承知と思いますから、私は内容に触れては申しません。私も何も東南アジアの一部の諸国に追随せよといつておるのではない。又反対しろと言つておるのでもない。併し賛成的のことを言わなくてもいいのではないか。賛成的のことを言うということは、やはり侵略に対して防衛するのは本当だとか、或いは東南アジアから植民地主義を払拭しなければならない。経済開発に対しては先進国は援助して行くべきだ。こういう精神においては精神はいいけれども、これをSEATOという形でやることについては私は反対するのが日本の外交だと思いますが、それは議論でありますからやめまして、今あなたは日本は参加することはなかろうと言われましたが、若し伝えられるごとく単なる軍事協定ではなく、経済援助協定の性格が強く、その方面からほかの国が現加盟国、現署名国以外の国に参加の途を開いておる形をとるやに伝えられておるので、そういうところから殊に吉田さんあたりが外遊してSEATOのいわゆる一部としての日本の役割を期待しておるのが露骨に言つてアメリカの侵略方式だと思う。従つてそういう経済援助のほうならいいというところからずるずると廻込まないように十分にお考えを願いたいと思うのですが、あなたがおつしやいました日本は入らないだろうという意味は、どういう点を指しているのか、はつきりして頂きたいと思います。
  133. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはやはり海外派兵というようなこととか、日本の実際上の経済的な能力というようなことに関連すると思います。尤もSEATOの、或いはできていわゆるアンザス方式ということになれば、そこに多少の抜け道はあるかも知れませんが、例えば各国の憲法の規定に従つてというようなことがあるならば、抜け道があるかも知れませんが、趣旨としては、日本として入るべきものじやないと想像しております。これは発表してから議論して行きたいと思います。
  134. 曾禰益

    曾祢益君 この点は発表されてからもう一遍やり直したほうがいいと思います。では次の質問に入ります。第十九国会のたしか外務委員会、予算委員会おいて申上げましたが、原子力の国際管理の確立と、原子兵器の禁止に関する大々的な世界へのアッピールをやつて頂くことは、これは申上げるまでもなく両院の決議であるので、それを基本方針として強くやつて頂くと共に、一方現に起つてしまつておる日米間の問題に過ぎないこのビキニ水爆の被害事件については、実は今日も安藤国務大臣にも来て頂いて、岡崎外務大臣と対決させるわけじやありませんが、どちらかと言えば、被害者側の立場に立つ安藤さんにも質問してみたかつたのです。そして交渉側に立つ外務大臣の意見とどうも意見の食い違いが起つて来ているのじやないか。そこでどういう点に食い違いが起つて来ておるかというと、たまたま最近二十三名の福龍丸の乗組員の久保山さんが重態に陥られたという悲しむべき事態が起きたから急に騒いだという気持じやなく、元来こういう問題に対する外交のやり方ということが、私が注文しておいたにもかかわらず、普通の外交のやり方から当然に行うべき交渉をしていなかつた。そこに私は今日の問題が起つて来ているのじやないかと思うのであります。別の問題でありますが、今朝竹島の問題に関連して、外務省の局長から同僚団委員質問に対する御答弁の中で、例えば向うが発砲したと、そうすると責任者の処罰、陳謝、損害賠償、将来の事故再発の保証、いわゆる国際間の交渉の四原則とでも申しましようか、これは勿論不法行為の場合と、過失の場合とは多少違いましようが、そういう交渉をしているのですね。それにもかかわらず李承晩の場合になかなか向うも言うこと聞かぬようですが、少くとも弱い国に対してはそういう正規の国際公法が教える堂々たる要求をされておる。ところがビキニ被爆のごとき重大なる過失による損害、而も権利に基いて当然やれるところでやつたというのじやなくして、向うが権利のないところに危険区域を設け、その外におつた者に対する被害、これは重大なる過失に違いない。重大なる過失は悪意の場合と殆んど違いないだけの厳重な交渉が行われて差支えない。これらのことをやつておられない。従つてここに国民のビキニ被爆に対する政府の交渉のやり方のだらしのなさに対する憤慨というものは、全般的に原子力の国際管理と兵器の禁止問題がからみ合つていると思います。原子問題と言えば、これはただ反米闘争だという変な事態を起しておるのは、これは恐らく外務大臣としては最も自分の意思に反する状態ではないかと私は想像するのです、会計なことのようですか。そこで現段階において、もう一遍考え直して正規のルートにおいて厳粛なる交渉によつてかかる下愉快な問題に対して、少くとも跡始末だけは早くこれを解決する御意向がないのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  135. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私もできるだけ早く解決したいと考えております。
  136. 曾禰益

    曾祢益君 具体的にはどういう要求をして、どの程度に事件を解決する御方針であるかをお示し願いたい。
  137. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これにつきましては今言われたような外交方針の普通のルールがあると思います。この中の私は責任者の処罰ということは非常に困難であると思います。ということは、非常に新らしい爆薬でありますから、予想外の事件が起つたので、誰の過失とかということではないように見られるのであります。他の問題のアメリカ側の陳謝とか或いは今後の再発の防止ということについては、十分先方の保証を取付けております。それから損害の補償につきましては、これは原則としてはいわゆる直接被害といいますか、そういうものについては、アメリカ側として常に支払う用意ありと言つております。直接の被害というものと間接の被害というものは、遠く離れたところは非常に区一別がありますが、近くなるとどれが直接被害か間接被害であるかということはなかなか判断のできない場合がたくさんあります。アメリカ側としてはそれについてとやかく中身は余り言わずに、日本側の提出する資料に基きまして直接被害であるというものに対しては皆払うと言つておるわけであります。又同時にそれが計算の基礎であると了解するが、日本側に補償額を渡せば、それを配分するときにその計算の基礎通り配分するかどうかは日本でみずからきめればよろしい、こういうようなことを言つておりますが、今まだ交渉中でありますが、今申した通りできるだけ早く解決したいと思つております。
  138. 曾禰益

    曾祢益君 もう一つだけ……、その点について責任者の処罰についてはなかなか責任者の捕捉ができないということでありますので、その点は必ずしも追及しませんが、陳謝についてはアリソン大使がこの間遺憾の意を表したという程度のものでなく、正式の陳謝を要求します。それからこれらの事件の解決に当つては、正式に交換公文で発表して頂きたい。それから将来の事件の再発の防止について、具体的に今日取付けておるかどうか伺いたい。
  139. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は一国の大使が遺憾の意を表したということは、これは正式の意思表示であると考えております。将来の保証につきましては、これは原則的には勿論アメリカ側て保証しておるわけでありますが、この実際的の問題になりますと、これは科学的の調査の結果によらなければならん。又科学的調査の結果によつて余り広い場所を危険区域とすれば、漁業のほうに邪魔になるというようなことがありますから、俊鵬丸の調査を急ぎまして、果して日本の漁業に或る程度保証すれば済む程度の危険区域の設定で安全が保てるかどうか、こういうことは科学的な基礎がないと正確にきまらない。今そういうことをあらゆる材料から検討してもらつております。結論が出ますると具体的にそれでどうなるかということが言えるかと思います。
  140. 曾禰益

    曾祢益君 私は大使の正式の言葉であるから遺憾の意でいいとは考えません。これは釈迦に説法ですが、遺憾の意と陳謝とは内容が通うのですから、これは飽くまでも陳謝を要求すべきものだと思う。これは見解の相違ですが、明確にしておきたいと思います。それから将来の保証は科学的な調査の問題もありましようが、これはやはり今一つの原子兵器に関連する問題から根本的に、ただ実験に対しては協力します、協力するけれども、被害の程度は科学的に最小限度にして下さいという態度だけでおやりにならないようにお願いしておきます。  次にもう一つ、日米関係の今日はいやな問題ばかりで非常に私も不愉快なんですが、有名なラストボロフ事件について伺いますが、私はこの問題でいろいりろ考える点がありますけれども、少くとも日本の国内おいてこの人権の尊重を日本の憲法によつて受けべきすべての外国人を含めた日本の住民が、いわゆるキッドナップされたような恰好になつて、そのことを日本の官憲に通知もなく、日本の法律を無視してアメリカに連れて行くというような一件が起つたことを、甚だ日本の国権上、重大なる私は国権侵害だと思います。而もなお今日これについてはアメリカから遺憾の意を表したそうですが、その交渉とそのはつきりした公文書を御提出願いたいのであります。これも事故再発防止の完全なる保証をとつて頂きたいと思います。更に又これは私素人でありまするけれども、日本の国民の中に、岡崎外務大臣の部下の中に被疑者、国家公務員としての秘密を漏洩さしたというので被疑者を出しているという話であります。甚だ遺憾に堪えないことでありまするが、これは裁判の結果を待つて見なければ真偽はわかりません。併しそういうことの司法手続上、一体外国に日本の公務員を派遣して、そうして外国から官憲を通じてそうして証言をとつたりなんかして来る、そういうふしだらなやり方をしないで、日本の捜査上或いは司法手続上必要だとあれば、なぜラストボロ7を日本に連れて来て、そうしてやるだけのことを主張されないのか。この前の国権侵害事件については遺憾の意を表しておるそうでありまするが、現にこういつたようなことを続けておることは甚だ下都合ではないかと思うのであります。従つて過去における国権侵害の事実とそれに対する措置、現に国権とみずから尊重しないような態度で捜査なり或いは司法手続をやつていることに対して、外務大臣は如何にお考えになるかをお伺いしたいのであります。
  141. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私も本人がキッドナップされた、つまり強制的に連れて行かれたのじやないかということについては特別の注意を払つております。当時報告を受けまして、それから日本側の官憲に訊問さしてもいいと言つていろいろな材料をよこしました。それから判断して大体これは本人の自由意思で行つたのであると思いましたが、念のためにその点も確めるために、公安調査庁、警察等から人を先方に派遣したわけであります。その点は力を以て連れ去つたのではないということは、係官の調査によりましてはつきりいたしました。従つて幸いその点は問題はなかつたわけでありますが、そこでその点が問題がないとすると、或る人が自由意思で或る方面に行つたということについては、日本政府として特に干渉すべきととはないのであつて、問題は出国の手続がとれておらなかつたという点になるわけであります。従つてその点を先方に申入れて、その文書等は発表しておりますが、御希望ならその写しを差上げます。双方のつまり交換した文書の資料です。  それから本人をこちらに呼び戻して調べるかどうかという点につきましては、これは条約局長がおるともつとよく説明ができると思いますが、つまり犯罪人引渡条約等に該当する犯罪でないこういう引渡しを求めることは、条約上は適当でないという解釈であります。従つて今度起訴する場合に当りましては、更に関係のへが先方に行つて証言をとる等の手続をとるわけであります。  外務省の公務員及び前に外務省の公務員であつた者が逮捕されております。これは勿論結果を見なければわかりませんが、私としては非常に残念であります。こういうことのないように今後はできるだけ努めたいと思います。
  142. 曾禰益

    曾祢益君 それでは先ずいわゆるキッドナップでないということを確認したという公安調査庁の係官からの証言をお伺いいたします。
  143. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) この問題につきましては、二月の十日頃公安調査調査第一部長をいたしております際に、公安調査庁の長官からラストボロフが米国に離脱しておる。離脱の後におきましてアメリカ側に相当貴重な情報を提供しておる。アメリカ側としてはこれに対して日本側の然るべき機関と十分協力する用意がある。それで調査第一部長として私にこの調査をするように命ぜられたわけであります。  そこで先ず第一の問題としまして、本人が日発的に離脱したかどうかという問題ですが、今の第一の点になるわけでありますが、本人の離脱当時の模様、本人の話しました事柄から見ましても、又これは先般発表した通りでありますが、本人の経歴それからその心境の変化というような点から見まして、疑いないものというふうに考えておつたのでありますが、更に先般七月十日になおこれを確認するためにワシントンに参りまして、本人に直接会いまして本人からその当時のことを聞きまして、その態度その他についても何ら疑いの余地がないというふうに考えたわけであります。それで手配をしたためてもらつてこれを持帰つたようなわけであります。
  144. 中田吉雄

    中田吉雄君 関連して。折角外貨を使つて行かれたが、アメリカ当局の作つた供述書というものをもらつて、顔を見て帰るだけだということを私は相当事情に通じている人から聞いているのですが、もつとやはり行かれたことに値するようないろいろなことを聞かしてもらいたいと思います。
  145. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) どういう事情に通じたかたのお話か知りませんが、行つて、アメリカに調書を作つてもらつて、ただそれをもらつてつて来たということではございません。彼が前に述べておりましたことの裏付けの調査をその当時の国警、警視庁、それから公安調査庁が協力をいたしまして、相当日数をかけて調べ、なお且つ彼の離脱直後に警視庁に自首して出ました者の供述と、ラストボロフのアメリカ側に申しておつたことがぴつたり符合しておるというような点、即ち自首して出た者の供述内容、又我々の現実の調査というものから、ラストボロフがアメリカ側に言いましたことが全般的に見て間違いないという確信はすでに持つてつたのでありますが、更に例えば具体的な時間であるとか場所であるとかいう問題についても、更に聞き質したい問題もありましたし、特に今問題になつております、基本になります、本人が自発的に出たという証言を取るというような問題で命ぜられて出張をいたしたわけでありまして、この聞き質しました個々の具体的内容につきましては、現在なお調査中、又は捜査中にかかつている問題もありますので、ここで披露申上げることは差控えたいと思いますが、相当新たなる貴重な資料も取り得たわけであります。
  146. 曾禰益

    曾祢益君 もう一点だけ柏村君に伺いますが、中田君も言われた通り、折角国民の税金を使つて行かれたのですから、これはラストボロフがただ自発的に向うに、アメリカにサレンダーしたとか或いはキッドナツプしたとか、そういう点だけを調べに行かれたことではないのは明瞭なんで、日本においてラストボロフ自身がどういう活動をしたか、これに日本国民がどういう関与をしておつたか、これらの情報を調べるために行かれたのだと思うのであります。従つてその捜査の途中等もあろうけれども新聞にもいろいろな記事があり、国民の中にも揣摩臆測があるのであるから、今日まであなたが確められたところによると、どれほど根が深くて、旧外務次官等のいわゆる大物が関係しているという話もありますが、どの程度の深さで、広さであるかということについてあなたの見て来られたところはどうなのか一つ伺いたい
  147. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 発表にもありますように、政府の高官がこれに関与しているという事実はございません。今までの私ども調査並びに警察側の捜査の関係、又本人から聞き質した問題におきましても、日本政府の高官がこれに関与しているという事実はございません。併しながら公務員以外にも相当数の人間が関与しておつたことは事実であります。ただその具体的な問題につきましては、先ほど申上げましたように非常にデリケートな調査、捜査上の問題もございますので、ここでは発言を差控えたいと思います。
  148. 曾禰益

    曾祢益君 そこで公安調査庁長官にも伺いたいのですが、その前に私が伺いたいのは、外務大臣お答えの中に、犯罪人引渡条約の中に該当しないから……、条約局長に答弁させるというお話でありましたが、これは勿論実質的には日本に対する犯罪だと思うのであります、ラストボロ自自身が……。そうであつても引渡条約に該当しないから引渡請求の根拠がないやに伺つたわけでありますが、その点はどういうものであるか、法律的に御説明願いたいと思います。
  149. 下田武三

    説明員(下田武三君) 日米間の犯罪人引渡条約によりますと、犯罪人を引渡を請求し、且つそれを引渡すための条件が定められております。第一は犯罪について告訴、告発を受けておる者であるとか、或いは有罪の宣告を受けておる者ということでございます。従いましてラストボロフは日本におきまして告訴、告発を受けておりません。いわんや有罪の宣告も受けておらない者でありますので、その点の要件にも欠けるわけであります。又日米犯罪人引渡条約の第二条を見ますと、どういう犯罪に関係のある者だけを引渡すかという犯罪につきまして限定されておるのでございます。そこでラストボロフがひつかかる可能性があるかも知れないという犯罪は、これは公務員ではございませんから、公務員法には関係ございません。唯一のひつかかりがあるかも知れないものは、刑事特別法、つまり在日米軍の機密を漏らしたという点だろうと思います。ところが刑事特別法離反という犯罪は、犯罪人引渡条約第ニ条に引渡すべき犯罪として掲げられておらないのであります。従いましてこの点からも犯罪人引渡条約に該当いたさないわけであります。
  150. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると、例えば庄司君という元外務事務官は、最近又外国為替管理法違反ということで逮捕したようですが、そういうような外国為券管理法なんかというものの違反については日米間の犯罪人引渡条約に入つていないのですか。
  151. 下田武三

    説明員(下田武三君) 入つておりません。
  152. 曾禰益

    曾祢益君 これは形式的には成るほどそういういろいろな理窟も付こうが、これは政治的に、逃げた、いわゆる庇護を求めたような場合以外は、条約に入つていないからこれを請求できないという意味に私はとるべきではなかろう。一方においては日本国民のほうは外国為替管理法で又引張つてみたりするけれども、アメリカの手にある者に対しては、形式的な論議で、これはこつちに明確な条約上の権利がないからただ遠慮しているというようなことであつてはならないと思うのですが、犯罪人引渡条約にないからと言つて引渡の交渉ができないということにはならないでしよう、それはどうなんですか。
  153. 下田武三

    説明員(下田武三君) 犯罪人も国際間を逃げて歩く場合がございますので、或る線を引く必要がございます。そこでどうしても自分のほうに引張つて来て調べる必要があるのだという重要性のけじめを付けるわけでありますが、それ以外の場合には国際間に御承知の司法共助という方式がございまして、証言を聴取するなり、こちらの裁判所の要求する事項を先方の裁判所に委託して代つてつてもらうという方式もあるわけでございます。そこで条約の建前といたしましては、どうしても先ほどの引渡しすべき犯罪人の種類、それからどの程度のつまり有罪の宣告を受けたとか、或いは告訴、告発を受けたとか、裁判手続上の一定の段階においての線というものを付けておるわけでございます。従いまして権利として要求するということはやはり条約の規定に従つてのみ行われるわけでございまして、それ以外の場合はこれはもう事実上の問題になつておると思うのであります。
  154. 曾禰益

    曾祢益君 ですから事実上の問題としても、少くとも形式を整えるために告発ですか告訴の手続を取つてからやれば全然途なきにあらずだつたと思うが、なぜそれをおやりにならないのか。これはどこの主管ですか、公安調査庁ですか、日本人ばかり調べて、ラストボロフの実際の証言ということは非常に重要なんですね。日本人を調べる意味においても、それをアメリカに置いておいて、そうしてアメリカ政府を通して取るなんかということは、そういう不見識なことを今後もおやりになるお考えであるかどうか。
  155. 下田武三

    説明員(下田武三君) その点につきましては先ほど申上げましたように、若しひつかかることがあるかも知れませんのでありますれ、ば刑事特別法違反でございまするが、刑事特別法の守らんとする法益は在日米軍の安全、機密擁護ということでございます。ところが御本尊のアメリカ自身がそれを一向かまわなくて、むしろこれを政治犯罪人として保護してやろうという建前をとつておるのでありますので、日本のほうからわざわざ米軍の機密を犯したじやないかと言つてアキューズするということも又少しおかしい問題であると思うのであります。
  156. 曾禰益

    曾祢益君 この点についてはまだ同僚委員お話もあろうと思いますので、私非常に持ち時間が殆んど絶えんとしておるのでほかの問題に移りたいと思います。  先ほど羽生委員からの中ソとの国交調整についての政府の見解を求められたのに対して、岡崎外務大臣より一応の御答弁があつたのですが、大体そのサンフランシスコ条約に加わつて来ればいいじやないか、その途が開かれているのだ。こういう態度は、これはもう全く形式的な議論であつて、現にインドとの間には別の形の単独講和条約を作つておられになるんだし、これはまあきまつたことでないけれども、例えばフイリピンとの間においてすら、サンフランンスコ条約に調印したフイリピンとの間においてすらこれは単独講和条約という形のほうがいい場合も予想されておつたわけです。ビルマにおいても然り。でございますからそういうことでなくつて本当にソ連との間にも、又中共との問題は次の問題になりまするが、国交調整を必要とする。勿論先方から我がほうが受け入れられないようた条件を出した場合にこれを受けろというのではありませんが、その国交調整ということは戦争状態を終結し、国交を回復する、そういう極めて簡素なものを考えて、そして勿論相手方の出方もありましようが、我がほうも又そういうもので国交調整に努力するということを基本にすべきではなかろうかと思うのです。その点に関する外務大臣のお考えをもう一遍承わりたいと思います。
  157. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはサンフランシスコ条約の二十六条にも必ずしもそのサンフランシスコ条約に入れということだけを規定しておるのじやなくて、二国間の平和条約というものもあるわけでございますが、併しそれでも「同一の又は実質的に同一の条件で」ということがありますからして、少くとも三カ年の間というものはそういうものであろうかと思います。そこでお話のような点もわかりますが、サンフランシスコ条約に、ソ連はとにかく来たのでありますけれども、あのときの演説等で見ると、これはどうもサンフランシスコ条約の実質的な同一条件でということは非常にむずかしいんじやないかと思います。併しお話のように二国間条約であつちやいかんということを私は言つておるんじやないけれども、要するに同一の問題であればよろしい、こう考えております。
  158. 曾禰益

    曾祢益君 ですからやや具体的に言えば、例えば日本とインドとのような聞の条約であつたら結構である。こういうことは明確に言えるんじやないですか。ただ問題が残つて来るのは領土問題ですが、それは暫らくおいて、他の点についてはそういうものがもつとより簡単に、戦争終結と国交回復というだけの法三章的な条約になつつて結構だということなら言えるんじやないですか。
  159. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ちよつとこれはその結構であると言えるかどうか、私はすぐ御返答はできませんが、少くとも差支えないということは言えると思います。
  160. 曾禰益

    曾祢益君 次に中国関係ですが、これはまあ我々の反対にもかかわらず、台湾政府との間に平和条約という厳かな条約を作られた関係があるから、非常に政府としてお困りな点もわかるし、又国家としてこれは議会意思なつた以上は、厄介な問題でございますか、併し先ほどの言葉尻をつかまえるわけではありませんが、信義の問題だからというだけでは私は理窟になりません。如何に我々は信義を守るつもりであつても、客観的情勢が、先方の客観的情勢が変つたのにいつまでたつても昔の政党政府に信義を立てたということは、日本の外交おいては余り見たことがない。そうでなくて、一方における蒋介石政府に対する信義のこともあるが、併し中国の主人が嫌いなあれでも、毛沢東になつたという時代においてはやはりこれ又何らかの国交調整の措置を考えて行く必要があるのじやなかろうか。我々から言えば、蒋介石との条約に賛成していないのですから、それは中共と正式の、今申上げたような、ソ連の場合において申上げたような意味の簡単な国交調整条約を作ればいいということになるのですが、政府としてはそうも言えないところがあると思いますが、そういう場合には、例えば戦争終了宣言というようなことを向うがやつて来るなら、それも結構とは言えなくても、あなたは何と言われたかわかりませんが、それは差支えない、差支えないでは少しどうも……(笑声)少し消極的でないか、結構ではなかろうかと思うのですが、如何でしようか。
  161. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は中国の問題について、今引揚げ等が現在行われておるときでありますから、先ほども申したように、双方の感情を乱すようなことを余り申したくないのであります。ただ質問がありますと、どうも問い詰められて返事をしないわけにもいかん。そうするとだんだんむずかしい方向になつて行くという虞れがあるのでありますが、ただ、ですから余り、言外にいろいろお察し願いたいが、例えば、国連の侵略者というような言葉を実はまだ取消されておらないのであります。そういう点もやはり、これはもうそんなものはなくなつてしまつたのだとおつしやるかも知れませんが、現に形の上はとにかくあるのであります。こういう点も我々は考慮しなければならん。
  162. 曾禰益

    曾祢益君 それは確かにそういう考慮もする必要もあるという主張もあると思います。殊にアメリカか特にそういう点が強いですから……。併しそれは一つ手続と時期の問題はいろいろあつても、基本の問題としてはこのままに放つて置くべきではなくて、中国も国連に協力する、そうして日本との間の国交調整にも、次第にむずかしい問題を出して、例えば日米安全保障条約のほうは廃棄しろ、中ソ友好同盟条約のほうは廃棄しないで、そうして非武装の日本には不可侵条約を与えてやるからそれはどうだと言われたときに、それでもOKということは国民大多数の意思ではなかろうと思います。そういう意味ではなくて、お互いにそういうやぼな、或いは極めてデリケートな、国の安全の問題とか安全の方式ということはこれは暫らくおいて、お互いにいろいろ地域集団保証を作つておるような甚だ不愉快な国際情勢なんであるから、併しとにかく国交は、両国間においては国交は回復しようじやないか、安全保障の形式はお互いの都合によろうじやないか、その上に立つての不可侵の条約を交わすならいいじやないかというような柔軟のある考慮が当然私は加えられなければならないと思うのでありますが、併しそれは今直ちにというと、中共の国連加盟に対してアメリカがあれたけやかましく言つておるために、国連加盟に賛成である、強く主張しているべきイギリスですら、今回の国連では時期尚早だというアメリカの意見に賛成している。こういう点も私はわかる。わかるのだけれども 先ほど申上げたように、旧の外交の方向というものはあるのであつて、あとは一つ国際情勢に応じた柔軟性を発揮する。こういう意味においてやはり中国との間の国交調整にそういうふうな弾力性を持つた、発展性を持つた考えでお行きになるお考えはないかどうか、この点を非常にくどいようですが、伺いたいわけであります。
  163. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お気持は私にもわかりますが、現状のところは政府の方針は今までの通りであります。
  164. 曾禰益

    曾祢益君 最後に私これだけで、時間が非常に頂いて恐縮ですからやめますが、御承知かも知れませんが、これはまだ正式に政府連絡したわけじやありませんが、外務大臣が非常に我々から見ると随分無理な主張をされて、どうしても両派社会党だけでは中国の招待を受けて視察団を送るということに旅券を出したくないと言つておられましたが、その事実をそのまま中共側に、人民外交学会に伝えましたところこが、向うは超党派のあれで構成して来る場合には、これを招待することに賛成である、そういうことを考慮していい、こういうことをはつきり言つて来たわけであります。従つてこの問題は、そういう段階になつたので、この際はつきり確認したいのですが、超党派の話合いができて、向うからもはつきりとした招待の意思が来たと、もう見ていいのですが、手続的には電報なんかが必要かと思うのですが、そういう場合には旅券をお出しになるかどうか、はつきり伺いたいのであります。
  165. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは一つ具体的にまだ政府連絡がないとおつしやるのですが、私のほうの考え方は前に申した通りであります。私の聞くところでは、自由党の幹部にも御相談なすつているということであります。そういう点で具体的にきまつてから回答いたします。
  166. 曾禰益

    曾祢益君 時間がありませんから、一応これで次の委員にお護りいたします。
  167. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私の質問は実は総理大臣おいでにならんと思つて外務大臣要求したわけですけれども、実は総理大臣に対する質問なんでありまして、総理大臣おいでになるかどうか、わかりませんですな。
  168. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 今日午前のこの委員会での経過は御承知の通りでございます。そこでおいでになることを要望しているのでありますが、おいでになるかどうかはわかりません。そこでおいでにならんと見て御質問になるか、なると見ておやめになるか、これはあなたの御判断でございます。
  169. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それではならんと見て御質問いたします。
  170. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、ならんと見られる必要はないのです。今日はならんということにしておいて下さい。我々委員としてはならんとは見たくないのです。
  171. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それでは総理大臣質問はあとに留保しまして、外務大臣に対する、質問だけをいたします。  それは、外務大臣が最近ブラジルにおいでになるということが新聞に出ております。これはおきまりになりましたのですか、如何ですか。
  172. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これもどうも同じような答弁になりますが、特別の支障がなければ行くつもりでおりますが、最終的には決定しておりませんので、まだ関係国には通報しておりません。
  173. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それでは仮定の事実ですけれども、若しおいでになるとすれば、どういう問題でおいでになるのですか。
  174. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは第一にはブラジルのサンパウロの四百年祭の慶祝の使節の一員として参ります。が、それが済みますと、南米の移民関係、通商関係等もありますので、これらの国にできるだけ廻つて、意見を交換して来たい、こう考えております。
  175. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 ほかにどういう人をお連れになつてお出になりますか。
  176. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今のところ私が行くか行かないかは別として、行つても行かないでも、慶祝使節は出す予定にしております。そのほうの方々のうちには、これも最終的の決定ではありませんから変る場合がありますが、移民関係では知事に非常に世話になつておりますので、知事会からの推薦で知事一名、これは三重県知事になつているようであります。それから移民関係に前から造詣の深い、衆議院の外務委員長をしておられます上塚君、それからいろいろ鉱山とか事業関係に精通しておられます高碕達之助君、更にできますれば移民の農業関係に非常に精通しておられます小平権一君を加えられたらいいのではないかと思つておりますが、この点はまだ最終的の決定は見ておりません。更に移民船等の関係で大阪商船の社長の伊藤武雄君ということも考慮しております。但しこれは全部政府の費用で行くというのではなくて、或いは優先外貨で行く人もありますが、大体一行はそういうことになるつもりでおりますが、更に代表になるかどうかは別としまして、経済関係が非常にありますので、外務省の経済局長も同行させてはどうかと、こう考えております。
  177. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 日程はブラジルに何日くらいおいでになりますか。
  178. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 慶祝使節予定は、大体サンパウロ、リオデジャネイロをまぜまして一週間以内と考えております。
  179. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 一週間では私ども非常に折角おいでになつて惜しいことだと思うのですが、ブラジルの関係が将来特に日本に重大になつているときに、割合に日本国民の関心が薄いのです。それで今度外務大臣おいでになつて、今お話のような各方面の専門家が行かれて、殊に四十万以上になつておる日本の在外同胞の人たち及び百二世の人にお会いになれば、日本のブラジル関係が非常に促進されると思いますので、一週間では非常に短いと思いますが、ほかの人は長くおとまりになりますか。
  180. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは慶祝使節としてブラジルにおる期間を申上げたので、そのほかのいろいろの関係がありますから、ほかの方はそれが終りますとアルゼンチンに行く人もありましようが、ブラジルの中を各地を歩いて行く人もあります。相当の日数も割くつもりでおられるようであります。
  181. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 そこで最近に、ブラジルのあれだけ親日であつたヴアルガス大統領が自殺しておられますが、その結果ブラジルの国の政治上日本に対する意見の変つておるようなことはないですか。
  182. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今のところそういう報道は受けておりません。従来と同じような方針で来ておられるようでありますが、これは併しい大統領就任早々でありますから、将来のことはわかりませんけれども、なお政清も比較的思つたより安定しておるようであります。やはり予定通りいろいろの方針は進められるのではないかと思います。現に新大統領は従来の方針で進むということを発表されておるようです。
  183. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 併しブラジルの中でもこの前の移民審議会が同数で、僅かに議長の採決で日本人を入れることの反対が押し切られたという事実もありますから、あれだけの、近来南米で出たことのないような偉い政治家が日本に厚意を持つてつたという背景でできておつた日本とブラジルの関係と今日のブラジルとの関係は、少し違いはしないかという私は感じがするのでありますが、その際でありますから、なお私は、このブラジルの問題について今お話なつたいろいろの問題をご研究になるのであれば、この前も私はこの委員会でお尋ねをしたのでありますが、日本の今までの外務省の人員の配置或いは在外公館の経費の関係からいつて、ヨーロッパ及び北米中心であつたようでありますが、日本の重要な相手がだんだん世界の地域別において変つて行く際であるから、どうお考えになるかということに対して、外務大臣は南米に対して将来外交をもつと重点を置いて行くというお考えのようでありますから、その手始めとしてブラジルその他南米においでになるのだと思いますから、今お話で大体の要点は、組かくはお話になりませんが、大体わかりましたが、そこで私具体的に一つつてみたいのでありますが、ブラジルについて、日本人が四十万、或いはこれが将来百万にもなるでありましよう。その場合に我々が一番心配しますのは、幸いにして今ブラジルの国内にはアメリカにあるような排日感情がない。人種差別がない。だからあれだけ日本人が発展したと思うのでありますが、ただ心配になりますのは、アメリカは只今は日本に対して大変恐怖心がなくなつておるからよろしいけれども、やはり日本が南米に進出することに対しては、アメリカの国内にこれに対して危惧の感じを抱く人が起り得ると思うのです。それだけはやはり予想してかからなければいかんと思うのでありますが、そこで外務大臣にお伺いしたいのですが、ブラジルにおいでになる前にアメリカと何かの話合いをなさつてからおいでになりますか。
  184. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は参るとしますれば勿論アメリカにも知らして行くつもりでありまするし、又いろいろ予定を立てているうちには、一つの案には、一両日でもアメリカのワシントンに寄つたらどうかという案もあるのでありますが、併しお話のような点は、アメリカの事情に非常に詳しい鶴見さんのお話でありますから、十分考慮はいたしますが、まあ今のところはそう非常に誤解のあるようなことはなかろうかと考えております。
  185. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 只今はないと思いますが、将来をまあ心配するわけです。それから日本とブラジルの関係で、例えばヴアルガス大統領がおりましたときに、あの大統領の当選に私財をなげうつて世話をした松原氏が、ヴアルガスの非常に懇切な世話で、日本移民に一番よい土地を調べて、そして移民さすということになつて、一昨年見えたのでありますが、どうも私が心配するのは、日本のほうでもその受入態勢ができていないのじやないか。それは日本の国論が、この南米に対する重要性というものがまだ本当にわかつていないものですから、それで予算の関係からいいましても、ブラジルに対する渡航費用、まあ一人当り十万円でありますか、十五万円でありますか、それを一万人も取つてくれと言つてもなかなかくれない。又一方において日本の移民政策についても、私は非常に遺憾だと思うのですが、本当の国策としての移民政策ができていない。行き当りばつたりである。そこで、今ブラジルの問題をお取上げになるのは非常に結構ですけれども、やはり根本的な対策をお考え頂いて、一方においては外国の邪魔が入らない手を打つて行くということ、一方においては向うであれだけ厚意を持つておる間に、日本の移民の入ることについて予算を十分に取り、日本の機構をもつと拡大をして、こつちが却つて大勢頼まれて困るというようなことのないだけのお手配をしておいでになりますか、如何でございますか。
  186. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私も今まで実は移民等の問題についてかなり注意を払つてつたのでありますが、とかく予算などの制限があつて思うように行きません。但し、それは一つは私の説得力が十分でなかつたという結果もあるだろうと思います。勿論移民だけの問題で行くわけじやございませんけれども、今度仮に参るということにきまりますれば、現地の実情をよく調べまして、説得力の強くなるように希望しております。その上で十分機構も拡大いたしたいと考えております。人数も余計送るように予算等も措置したいと、こう考えております。まあその準備行動とも言えないことはないと思います。
  187. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それで私は、外務大臣がお忙しい中をおいでになるのですから、あの広い南米をどれもこれも一通りお歩きになるということでは、却つて目的を達しないのではないかと思います。私は日本の将来の発展して行く先は、濠洲などは日本に一番近いためにああいう傾向がありますけれども、ブラジルはそういう政治的な危険を感じていないから非常に有望な土地である。世界の宝庫はブラジルであるというほど天然資源が富んでおる。そのブラジルと日本との関係について十分な研究もできていない。対策も立つていない。従つて、外務大臣が行かれるのは今度が初めてなのですから、これは私は非常に大切なお仕事だから、あの広い南米を全部お歩きにならないで、まあ仕方がなければお寄りになるのは結構ですが、ブラジルに重点を置いて頂きたいと思います。  それからもう一つは、私はブラジルは移民だけを申上げておるわけではないので、ブラジルとの通商の問題にいたしましても、日本との関係が今お話の船の関係おいてもああいう不完全であつて、今はオランダ船でブラジルに行つておるようなわけでありますから、それだけの手当をやつておいでになるのですか、帰つてからなさろうというのですか。
  188. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 船のほうは、御承知のようになかなか造船の資金の関係で詰つておりますが、大阪商船等でも移民船ができておりますが、あれだけでは今予定しておる小人数も送れないような状態でありますから、止むを得ずオランダ船を使つておりますが、これは運輸大臣にもよく頼んでおきましたが、日本の船で送るようにいたしたいというつもりでおります。
  189. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それで私は特にこの際外務大臣考えおいて頂きたいのは、南米では軍人が非常に力がある。大地主や金持が非常に力がある。これはブラジルにおいてもやはり始終軍人が叛乱を起して大統領になる。ところが幸いにして陸軍を中心とした軍部の人が日本に非常に厚意を持つておる。そこで私は今が日本とブラジルの関係をよくする非常にいい機会ではないかと思う。若し欠陥があるとすればどこにあるかというと、日本に受入態勢がないということです。そこで私がくどくどとお尋ねするのは、これを機会に日本の南米政策と言わないまでも、ブラジルに対する政策をもつと根本的な対策をお作りになるのだという意気込みでおいでになつて、若い外務省の方々もイギリスやアメリカへ行くだけが目的ではないのであつて本当にポルトガル語を一生の言葉として勉強するだけの人を養成されて新らしい進路を求めて、この行き詰つた日本の将来を開拓する。例えば通商の問題にしましても、移民の問題にしても、殊に漁師を送るというような問題にしても非常に結構だと思いますので、おいでになるならば十分な収獲を挙げて頂きたいと思いますが、質問だか意見だかわかりませんが、どういうふうに考えられて、どれだけの御決心を持つておいでになるか伺いたい。
  190. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お話の点は私は一々御尤もだと思います。私もそう考えておるのであります。ですからそういうラインで、できるだけ成果を上げるようにして行くならば行きたいと、こう思つておりますので、御支援をお願いしたいと思います。
  191. 小滝彬

    小滝彬君 関連質問。今鶴見さんから、日本の国内態勢が不十分で、向うのほうは相当要求があるというお話でありますが、私が新聞報道あたりで承知しておるところでは、御指摘の、非常に移民に貢献せられた松原さんのほうでの、先方においての取扱いについて非常に齟齬があつた。それで折角の割当もうまく行かないというようなことも出ておつたので、私はこの点を危惧しておるのですが、これは大臣が直接詳細はおわかりでなかつたら、係の方でもいいですが、その後あの松原移民はどうなつておるのですか。それについて、大臣が行かれるのは非常にいい機会でありますから、是非あの松原移民というものがうまく行くように指導して頂きたいと思います。
  192. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは両方にやはり欠点があつたようであります。先方に受入態勢といいますか、土地の割当とかいろいろな準備ができていなかつたことも事実のようでございます。それからこちらのほうの人の選び方も、あれはたしか和歌山県の人が主として固まつてつたようですが、そうえらく働くつもりで行かなかつたような人もあるように聞いております。従つおやおやというようなことになつた点もあろうかと思いますが、今のところは半分以上はその後落着いていると了解しております。併し、その代り松原氏が非常に多くの私財を失つたことについては、非常にこれはお気の毒だと思つております。それから一部の人はほかの地域に分散して収容されて、一応は形が整つたと思つておりますが、更に行きましてよく実情を調査しようと思つております。
  193. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それで経済と友交と通商の関係ですが、私大臣おいでになつたら具体的にやつて頂きたい仕事がある。それはブラジルと日本との広い意味の文化的な交流ということですね。それはどういう意味かと申しますと、イギリスやアメリカとは事情が非常に違うのであります。ブラジルに行つておる四十万の人は大体生活に困らない。いい人は数十億の金を作つておる。ところが移民の農村青年の方は、日本で学問をする機会もなしに向うに行つておられるものですから、そう言つては悪いが、文化の水準が非常に低い。そこでブラジルの人は、日本人によつてブラジル第一のサンパウロ州が経済上開けたということに対して非常に感謝しておるが、日本人が高い文化を持つておるということを知らない。そこでブラジルのサンパウロの大学にしても、リオの大学にしても、日本から相当な学者が行かれて、ポルトガル語のできる人はないでしようが、フランス語でも英語でも、交換教授のようなものをやつて、日本では労働する人以外に非常に高い文化があるのだということをおやりになることが、四十万のブラジルにいる人々の位置を非常に上げると思うので、これは具体的においでになつた間に一つこしらえて来て頂きたい。向うではそういう希望があるのですから、是非それをお願いいたしたいと思います。
  194. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お話の点は、私は実は承知していなかつたのですが、そういうことでありますれば非常に結構ですからして、やつてみるつもりであります。
  195. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 そうしますと、総理大臣質問は私は留保しておきます。
  196. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 ちよつと只今のに関連して申上げます。
  197. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 極く簡単に願います。
  198. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 簡単に申上げたいと思います。鶴見委員からブラジルに対する重要性についてお話がありましたことは、極めて機宜に適したことと思うのでありますが、これにつきましてこの際是非外務大臣にお考えを願いたいと思うことは、実は外務省の考え方として、今まではそうじやなかつたと私は思うのです。大正八、九年の頃でありましたか、外務省内にも南米にもつと力を入れなければいかんという意見を述べた先輩もおられました。不肖私も同じような考え方で、当時の外務大臣、次官等にも意見を申述べたことがあつたのでありまするけれども、一向にそれが採用にならなかつた。そして三十年もたちました今日漸く、今鶴見委員が言われたように南米、殊にブラジルに対する重要性を強調しなければならんといつたような工合になつたと思うのであります。尤もこれは戦争でもなかつたならばもつと発展もしておつたでありましようけれども、いろいろな関係で以てそれができなかつた。そうして日本の戦後におきまする外交上の方策としては、とかく欧米に重きを置いて来たようであります。これも敗戦後の日本としては止むを得なかつたことでありましよう。併し、日本の将来を考えまして、発展の途はどこにあるかと言えば、やはり南米乃至は東南アジアということになろうと思うのであります。従いまして、外務大臣が今度或いはブラジルに行かれるというようなことになりましたならば、これを機会に外務省の南米に対する方策乃至は国全体としての方策を、もつともつとこの南米に重要性を置くという方向に持つてつて頂きたい。これが大変いい機会だと思いまするので、そのことを特に外務大臣にお願い申上げたいと思います。
  199. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 外務大臣は五時までしかおいでになりません。それで書面を以て御希望の委員諸君もございますから、そのほうに向いたいと以います。
  200. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 インドシナ戦争解決後の国際政局を初め対米関係或いは対ソ述、或いは中共の関係或いは東南アジア諸国との関係等について、全般に亘つていろいろお聞きしたいと思いますが、一応同僚委員諸君によつて触れられましたので、それらの問題は後ほど関連する問題でお聞きすることとして、私は先ず第一に非常に具体的に、中共への社会党視察団派遣の問題について質問をしたいと思います。  外務大臣すでに御承知の通り、我々社会党では左右両派、中共の招請に応じて視察団を出したいというので、すでに一月くらい以上前から外務大臣に旅券を出して下さるようにお願いをいたしておるのでありますが、外務大臣はいろいろの理由をかまえて、今に至るまでお出しになつておりません。その理由には全く首肯すべき何物もないにかかわらず、これを突張つておられるという以外にないと思うのであります。そこでここで正式に改めて明瞭に一つ旅券をお出しにならない根拠をお聞きしておきたいのであります。その根拠を少し整理して、いろいろ理由はありましようが、或いは法律上の理由、或いは政治上の理由ありましようが、先ず第一に法律的に見てお出しにならない理由があるのか、法律的にといつた場合に、国際法の関係から、或いは国内法的に、法律的にお出しにならない理由があるのかどうか、その点を先ずお伺いいたします。
  201. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は原則的に言えば、国交の回復してない国がたくさんありまして、国交は回復していなくても総領事を交換しておるとか公使を交換しておるとかいう国もありますが、そういう国は別としまして、お申出のようた国交の回復してない国に対して普通旅券を出すということは如何なものかと考えております。
  202. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう如何なものかというようなあいまいな無責任なお答え要求しているのじやない。先ほども申しましたように、先ず第一に明瞭に国際法的に見て支障があるのかどうか、その点を先ずお開きしたい。
  203. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 国際法的に見て支障があるかと言われますが、普通国際法的に見ても、国交の回復してないところには出さないのが普通だと思います。併し、国際法で禁じているとか禁じていないとか、そういうことはないと思います。
  204. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 従つて、それでは国際法的に言つて出さないことが普通だと言われますが、相手方はすでに来ることを了承し、招請をしておるのですから、その面からは何ら支障はないと思うのです。そうなるとむしろ国内法的な問題になるかと思いますが、その点をどういうふうにお考えになつておるか。
  205. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は原則としては旅券を出すべきでないと解釈しております、特殊の場合は別として……。
  206. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは何に基いてそう言われるのですか。
  207. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 国交が回復しておりませんから……。
  208. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、どういう法的な根拠によつてそれを言つておられますか。
  209. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 先ほど申しましたように国際法で禁止してあるとか禁止してないとかいうことはありませんが、旅券を出さないのが妥当であると考えております。(「旅券法のどこにある、法的な根拠を」と呼ぶ者あり)
  210. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 岡内法の法的な根拠を聞いているのです。
  211. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 法的な根拠は裁判所にでもお訴えにならなければ結論は出て来ないと思います。
  212. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじやもつと具体的にお聞きしますが、旅券法の第十三条第一項第五号「外務大臣おいて、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある」ときには、外務大臣は旅券を出す必要がないということは言えると思うのですが、この見地から外務大臣は旅券をお出しにならないというのかどうか。
  213. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) その通りであります。(「アメリカに遠慮しているのだよ」と呼ぶ者あり)
  214. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、もう一つお尋ねしますが、我々社会党の者が行くことが「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞がある」というふうにお考えになるのは、どういう点でありますか。
  215. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは前から申しておるように、或る個人の人が行つたから公安を害するとか害さないとかいう問題も場合によつてはありましようが、今の考え方、つまり社会党の人が行けば公安を害し、利益を害し、そうでない者が行けば利益を害さないというふうには考えておらないのです。どなたが行かれましても、日本と国交を回復してない国に行かれることについては適当でない、利益を害すると考えておりますから出しませんが、併しそういう利益を害しない場合もあり得るじやないかとおつしやれば、それはあり得るのであります。現に国会の議員諸君が行かれたときには、これは旅券を出しております。そういうふうな或る一つの団体とか、そういうことでない場合には、非常に考えいいということは前から申上げておる通りであります。
  216. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 併し今読上げましたように、旅券法には非常に具体的に明瞭に規定をしているのです。これを今大臣が言われるようにルーズにいい加減に解釈をして、これを当てはめて、自分はそう考えておるのだというようなルーズな援用は許されないように、旅券法を作るときも問題になつたし、又それを運用する場合にも十分に注意をされなければならない性質のものだと思うのです。後つて大臣もおつしやるように、この旅券法の規定からはどうも我々が行くことを禁止する理由は、根拠は何らないということをおつしやつているに過ぎないじやありませんか、その点はどうです。
  217. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私はそうは思つておりません。併しながらこれは政府の見解であり、佐多君の見解は別であるとすれば、これはどうも裁判にでも訴えて、裁判所の判決を求めるよりほか、法律の正式な解釈ということはお互いに言い張つてつても仕方がないのじやないか、これが先ほど申した趣旨であります。
  218. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならばさつき申上げたように、もう少し旅券法にはつきり規定してあるように、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞がある」ということを証明をして頂きたいし、これだからお前たちはやらないのだということをはつきり明示して頂きたい。
  219. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は社会党の諸君だけが行くことはそういうことになると解釈しております。
  220. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうしてですか、それを説明してもらいたい。社会党に対する非常な侮辱でもあると思うのです。その点は明瞭にして頂きたい。(「そうだよ、吉田総理のアメリカ行こそ旅券を出さんほうがいい」と呼ぶ者あり)
  221. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は先ほど申上げた通り、社会党が行くことがどうだと言つておるのではない。併し或る一党一派の方が行くことは面白くない、こう考えております。
  222. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから、それならばなぜです。
  223. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私はそう考えております。国交が回復しておらないから……。
  224. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから一党一派が行くことが、直接に且つ著しく公安を害するというふうにお考えになつているのはなぜか。その御説明を願いたい。
  225. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) そう考えておるのですから、いたし方ありません。(「理由々々」と呼ぶ者あり)
  226. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 我々は質疑をする権利を持つております。ただごう考えるというだけでは答えになつてないのですから、更に重ねて質問をしているのですから、御説明を願いたい。
  227. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は或る党派の人だけが行くということは日本の利益に決してならないと、こう考えております。
  228. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、利益にならなければいかんとは書いてないのですよ。直接に且つ著しく公安を害する行為をなす虞れがあるときと、明白に言つているのですよ。そんないい加減な解釈を許さないのですよ、これは……。
  229. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私はその条項に該当すると考えています。
  230. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だからもう少しそれを具体的に御説明を願いたい。
  231. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 具体的とおつしやつても、国交を回復してない中共のような国に、或る党派の方だけが行かれるとか或いは或る一部の方だけが行かれるということは、これは特殊の目的、例えば先般島津社長その他の人々が引揚の目的で行かれました。こういう目的の場合は別として、普通の場合には、これは国の利益を(「自由党の福永さんは一人で行つたじやないか」と呼ぶ者あり)害すると、こう考えておりますので、旅券を今のところ出すつもりはありません。
  232. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 我々はたびたび御説明をしているように、現在まで中共に行つている諸君は、或る立場の人は、中共が極楽であり、天国そのものであるような報告をしているし、他の反対の側に立つ人は、中国が地獄さながらの状態であるような報告をしておる。我々から見ればそのいずれも恐らく間違つているのだと思う。その真実をもつと現地において冷静にその事実を把握をして来たい、同時に向うに行つて、向うの当局者諸君と知合いにもなり、更に親しく話合いをして、向うの真意を把握して来たい、こういう任務、目的を持つている、はつきりしているのです。我々の任務、目的は、吉田さんみたいに何が何だかわからないみたいなことは言つてないのです。そういう任務、目的を以て行つて来たい、向うもいらつしやいということを言つている。そういう機能を持つた調査団を出そうとしているときに、ただ一党一派だから、これが著しく公安を害するという、そう信ずるのだということだけでは我々は納得ができない。それをもう少しこうこうした例があるじやないか、或いは一党だけが行けばこういう結果になるじやないか、或いは社会党はこういうことをしているじやないか、だから直接に且つ著しく公安を害する結果になるからやらないのだと言われるのならば、正々堂々とそれの説明をして、我々を納得させられるならば、我々は又それならばやめましようということを言います。併しそういうことを何ら言わないで、ルーズに、ただ行つちやいかんのだというのじや我々は納得をし得ないし、我々の基本的な人権を蹂躙するものだと思うのであります。その点をもう少し明瞭にして頂きたい。
  233. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今もお話のようにいろいろの意見も言えば出て来るでしよう。現に前に正式じやなくて行つた人の意見がいろいろに伝わつて国民も迷つたり、誤解をしたりした点がしばしばあります。従つて私はこれは政党の方が行かれるというのだから、その例を取つたわけでありますが、それは何も政党に限つたわけではありません。ほかの一般でもそうであるが、仮に政党に例を取れば、いろいろの政党の人が平均に行かれるということならば、これは非常に考えやすい、こう思つております。然らずんばやはり国の利益を害する、こう思います。
  234. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、だからさつきから聞いているのですよ。直接に公安を害する、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害するというふうにお考えになつているのは、どういう点からそういうふうにお考えになつているのか。ただあなたは一党だけで行けばそういうことになるんじやないかと言つておられるだけなんです。それじや我我は納得し得ない。我々が納得し得ないのみならず、恐らく国民のすべても納得をしないだろうと思う。だからその点をはつきり納得のできるようにもう少し御説明を願いたい。そうでなければ、ただ社会党だけをやるのはいやだというあなたたちこそ、むしろ党派根情にとらわれた感情からの判断に過ぎないと占われても止むを得ないことになりやしないか。そういう汚名をあなたが着ないためにも、もう少しその点は明瞭に納得のゆくように、我々に対しても国民に対しても御説明をなさるべきだと思う。どう、ぞ願います。
  235. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 汚名はいろいろ着ておりますから、この上少しくらい着ても、そう大したことはありませんが、(笑声)私の考え先ほど申した通りで、同じことを繰返すようでありますが、(「満身創痍だ、これ以上着たらたまらん」と呼ぶ者あり)各党の人が行くということならばともかくも、一部のかたが行かれるということについては、国の利益を害する、こう考えております。(「もう少し柔軟性のある解釈をしたらどうだ」と呼ぶ者あり)
  236. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、そつちのほうはわかるのです。そつちのほうはあとからお聞きします。ただ各党でなくて、社会党が、両派社会党だけで行くことが著るしく且つ直接に公安を乱すというふうに御判定になるのは、どういうことを根拠にやられるのか、その点を先ず説明して下さい。その次の問題はその次の問題です。
  237. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) どうも私はそう考えるのだから、これは止むを得ません。(「理由にならんじやないか」「それこそ汚名だよ、社会党に対して汚名を着せることになる」と呼ぶ者あり)念のため申しますが、これは仮に社会党だけじやなくして、自由党だけが行くということにしても、同じごとがいえると思います。(「福永さん行きましたよ、自由党を代表して一人で行つたんですよ」「除名だ除名だ」と呼ぶ者あり)
  238. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だからそれじや社会党だけでなくてもいいですよ。自由党だけ行つても……。自由党だけ行けばどういうふうに著るしく利益を害するということを説明して下さい。質問しているのですから、その質問に答える義務があると思う。
  239. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 答える義務があるから一生懸命に答えているのです。(笑声)前に申した通りであります。
  240. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから答えになつていないのですよ。じやあいくら押し問答してみても始まりません。時間も非常に迫つているので、この答えは他日よく考えて、よく調べて、事務当局ともよく御相談になつて、改めて近い他の機会に納得のゆくような御答弁を頂くことを留保して次に移ります。  大臣は今も社会党だけでなくて、ほかの党派も行くのだつたら出してもいい、もつと可能性が考えられるということを言われたようですが、先ほど曾祢委員も申しましたように、今のような事情を、向うに一応事情として報告、通知をいたしましたら、折返しそういう事情ならば、他の党派も来ることを何ら妨げるものでない、若しそういう場合には、それをも十分に考慮するからという返事が来ております。従つて恐らくそういう方々も誘つて行くことになると思いますが、そういう場合には、今までおつしやつた理由は、理由にもなつておりませんが、その理由も全然消えることになると思いますから、直ちに旅券を出して頂けるかどうか、その点を伺いたい。
  241. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは私のところには佐多君も御承知のように、両派社会党の委員長なり書記長なりが見えて正式のお話であります。で、そういうような今度……別に委員長、書記長が来いというのではありませんが、そういう社会党なりの正式の申入れでありますれば十分その点は考慮いたします。
  242. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、正式の申出でなくたつて一応事実は私が申上げた通りで聞違いないのですよ。そういう事実の場合に、どういうふうな態度をとつて下さるかということをお尋ねしているのです。
  243. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ここはとにかく質疑の場所であつて、そういう具体的の事実をここで以てお前どうするのだといえば、一般の質疑の形で私は御答弁しているのです。それは前にも申した通り、そうなれば非常に考えやすい、これだけのことはいつも言つている通りであります。
  244. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、考えやすいというだけで、出すとも出さんとも、そういうことは言われないのですか。
  245. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) だからそれは具体的にここでそういう申入れをあなたなさるわけじやないでありましよう。委員会でまさかそういう申入れをなさるわけじやありますまいから、ここでは質疑を受けているのです。そういう具体的な申入れがあれば、それは当然考慮する。併しここでは質疑を受けているのだから、一般の質問に対して答えております。
  246. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから申入れに対する回答でなくてもいいのです。私の質問に対する答弁です。
  247. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) そうなれば非常に考えやすい、こういうことであります。(笑声)
  248. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だからそういう点が誠に何というか、けちくさい、しみつたれた考え方で、こう言えばああ、ああいえばこう、それじや我々は日本の大政治家としての、或いは大外交官としてのあなたの態度かと言いたくなるのです。もう少しそこいらははつきりした態度で、先にお話なつた一党一派で行くことは困るのだ、併しそうでないならばかまわないのだということが、心の底からの気持であるならば、こういうときこそさつぱりと、そうなつたのなら喜んで出しますというようなことをはつきり言われてこそ、さつきのあなたが固執しておられたことにも真意があるというふうに考えられる筋のものであると思います。ここでこうなれば又どうだとかこうだとか、誠にけちくさいというか何というか、聞くに堪えない態度であり答弁だと思うのです。従つて問題はもつと根本的に、対中国の態度等についてどうお考えになつているかというような問題にもなると思うのですが、その前にもう一遍もつとその点をはつきりお答えを願いたい。
  249. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私はあなたに前に来られたときも、そうなれば考えやすいということを申しているのであつて、同じことを言つているのです。別に口ぎたなくもなければ、聞きずらくも何でもない、普通のことを言つている。具体的の申入がないのに、具体的の申入はまさか委員会じやできますまい。具体的の申入があれば勿論考えますけれども、一般の質問であれば、それ以上のお答えはできないのです。何も私は別に大外交官になろうと思つておりませんが、(笑声)いつもの答弁を同じようにしておるのです。(「了承」と呼ぶ者あり)
  250. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじやその問題はいずれ他の機会お話合いをすることになると思います。  問題を他に移しますが、今外務大臣が言つておられる一党一派では非常に困るということは、これは言葉はちよつと悪いのですが、そういう事外国に関する問題は、超党派的にというか、そういう国を挙げて問題を処理することが望ましいというような気持から言つておられるのだろうと思う。そこで一つお尋ねをいたしたいのですが、今度イギリス労働党の諸君を私たちは招聘をいたしました。或いは今度の中共行の問題でもそうでありますが、これらの問題についてはそういう超党派的に問題を処理することが妥当であるというような考え方も非常に強いので、私たちとしてはこれらの招請の問題、或いは中共行の問題を、話がまとまつて新聞発表をする等の前に、外務省には御連絡をいたして、その後もこれは個人的ではありますけれども、然るべき方々には二、三回に且つて連絡をいたした。ところが直接に外務省のほうから、今度は逆に我々のほうに対して、それらの問題に対して問合せだとか、御希望等々は何らなかつた。御希望のないのは、同もやろうとお考えになつていないから御希望がないのは了承はできますが、併し事態が、それらの問題の事態かどうなつているのかというようなことは、もう少し積極的に関心を持つていろいろお問合せその他をやられても然るべきことじやないかと思うのです。この問題をずつと運んで行きます過程には、イギリスの大使館でも、更には直接の関係のないアメリカの大使館からも、たびたびいろいろな問合せが来、直接にも会うことを要請されて、いろいろな問題を報告し得ること、しても差支えないことは報告もしてやる。相当のことをしたにかかわらず、日本の外務省は何らそういう態度を示されなかつた。これは一体大臣のそういう方針、御命令があつて、そういう態度をとつておられたか、或いは別にそういうことはないのだが、気が付かないで、或いはそういうことに無責任なため、或いはもつといえば、そういうことに怠惰なために、イギリス大使館やアメリカ大使館がとつた程度の関心もお示しにならなかつたというのか、その辺の事情を御説明願いたい。
  251. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) それはイギリス労働党の来朝についてのことだと思いますが、私は別に命令したことはありません。ありませんが、外務省としてはおのずからこの国際慣例ということは心得ております。従いまして例えばパスポートであるとか、荷物であるとかについての注意は、労働党の代議士が来ればそれに応じたことはやつております。やりますが、別にこれはイギリスの労働党をどうということじやありませんが、例えば日本の議員団がイギリスに行きましたときに、イギリスの外務省がどういうことをしましたか。或いはイギリスで通関の手続きをしてくれたかどうか、又イギリスの外務省なり政府筋が宴会によんでくれたかどうか、これは国際的に普通の議員団が見えましたときには、特にそういうことをやる場合は少いのであります。日本でもアメリカからも始終議員団が見えますけれども、特に我々がどうということはいたしておりません。これが普通の国際的のやり方であつて、それは労働党は社会党が招待されたそうでありますから、社会党がいろいろお世話になるのは、それは結構でありますが、普通どこの国でも、別に議員団が来たから特にどうするということはやつておりません。ただ通関等については、相当のかたが見えるのでありますから、普通の大公使が来たときと同じような手続きをとるようにしております。これが国際礼譲であります。
  252. 曾禰益

    曾祢益君 国際礼譲はわかつておりますが、初めから待遇をきめておられて、それで一貫したのならいいのだが、先方が着いてから外務大臣が急によびたくなり、発つ日に総理大臣が箱根ですか大磯によびたくなつたりした。そういうことは何も両派社会党のレセプシヨン・コミッテイーに御相談なくて、イギリスの大使館を通じてでもいいかも知れないが、そういう方針に変つて来たのですか。
  253. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 総理大臣がよんだということは全然ありません。私もそういうことを聞きましたので、わざわざ総理大臣に確かめました。又よぶとすれば、私なり外務省なりを通じて何かすべきであろうと思いますが、そういうことはなかつたの、だけれども、念のために聞きましたけれども、そんなことは全然ありません。それから私がよぶということは、これは急にきめたことでなくて、その前からイギリス大使館にも連絡しておつたのですが、これは成るべくイギリス大使館としても、あの人たちは自由な時間を欲するだろうから、あらかじめ私がよぶというようなことをして、いやでも受けなければならんという形にすることは好ましくないから、来たときに十分事情お話をして、若し気があるなら受けるし、自由を欲するならば、決して義理で受ける必要はないということで、よく話をした、その結果であります。
  254. 曾禰益

    曾祢益君 一つだけ。総理大臣がよぶ意思を表示したことは絶対にないとあなたは確言されますか。
  255. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) よぶほうがいいか悪いか別として、そういうことは絶対にありません。
  256. 曾禰益

    曾祢益君 これは重大なことです。
  257. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私は通関の手続きその他について、外務省が積極的な努力なり援助をして下さらなかつたということを言つておるのじやないのです。これはもう通関の手締きにしても、その他、着いたときにいろいろなことを言われましたが、これは外務省が悪いとか、或いは更には我々社会党が手落ちがあつたということを一、二の新聞で言われましたが、これはむしろ新聞の報道が誤つていたのだと私たちは思います。従つてそういうことを問題にしておるのじやないのです。ただ先ほどから言つておるように、もう少し、事惰がどうなつておるのか、一体どういうつもりで社会党はそれをよぼうとしておるのか、それらのことについてはもう少し関心を持ち、社会党にも間合わす等々のことをされて、もつと事情をはつきり把握しておかれるところの熱意を、関心を示されることが、外務省としては必要だつたのじやないかということを申上げておるのであります。というのは、今も、或いは外務省のほうで外務大臣がよぼうと思つてイギリス大使館に話合いをされたと言われますけれども、それはまあ外交儀礼的にそういう筋道でお話になるのはその通り結構だろうと思いますが、併しこの点も外務省にも通知してあるのですが、当の相談を受けたイギリス大使館すら、あれを二時間だけレセプシヨンにあの時間をとるという場合には、主として招牌をした社会党のほうに問合せをし、社会党のほうに時間をもらつて、そうしてあのレセプシヨンを催した、そういう事情になつておると思います。従つて若し外務大臣のほうで、外務省のほうで、そういう御意向等があつたならば、やはり形式的にはイギリス大使飢をお通しになるだろうが、実質的にはこつちに御相談なり何なりすれば、その問題はもつとあなたがたの御意向に副うようにもできたのじやないか、というのは、しよつぱなに私はそう申上げたのです。しよつぱなにこの日程を作る場合には、イギリス大使館ではこういう御希望もあるし、政府のほうで何か御希望があれば、それも配慮いたしますからということも申上げておるのであります。少くとも非常に積極的な関心なり熱心さを示されるのならば、もう少し態度は違つていたのじやないか。その点がイギリス大使館なり或いはアメリカ大使館……アメリカ大使館はこの問題については何ら関連のない役所、直接には関連のない役所であるにかかわらず、始終いろいろな問合せをし、連絡をして来てこの事態がどう運んで行くかということを非常に関心を持つて見守つていた。最も関係のあるべき日本の外務省が何らそういうことに対して関心を示さない、無関心な態度で、放つておかれた。そういう態度で一体いいのかどうか。超党派外交を強調されるあなたがたの態度としてそれでいいのかどうか。自分の都合のいいときだけ超党派外交を言つて、最も重要な総理大臣外遊をされるときにも、或いは今のような問題についても、超党派外交の一片だも考えようともしないでおいて、自分たち都合のいいときだけは超党派外交を押し付ける、そういう態度で一体いいのかどうか。その態度は今後もずつと続けて行かれるつもりなのか、どうか。
  258. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は議員団が来られるということは、日本でもたくさん行くのだし、外国でもほうぼう歩いているのであつて、そんなに珍しいことでもないし、又各国の取扱いというものはおのずからきまつておるのであつて、まあ私がコクテールでもしたいと申出たのは非常に好意を示したつもりでおるのです。別にこういう通例の問題についてまで超党派外交でやらなければいかんとか、やつちやいかんとか、そういうむずかしいことを考えておるわけではありません。併し普通のこととして普通に考えておるだけであります。
  259. 中田吉雄

    中田吉雄君 ちよつと関連して。私は宴会を持つとかなんとかということじやなしに、やはり今の国際政治における指導権はアメリカから離れてイギリスにあるとすら言つているのです。而も一九五一年の選挙には議員数では負けましたが、票数においては多いような、そして今のチャーチル外交というものはピアソン記者に言わせるとべヴアンかぶれしたチャーチルというくらい非常に野党の意見も汲んだ、そういう大きな国際政治に影響を持つというような議員団が来るのですから、外務大臣がお忙しければ欧米局長その他でも来、短時間でもお会いになつて、国際政治の、国際政局の動向等をじかに聞いて見られるというような機会を持たれることは無意味ではないのではないか、そういうような意味は如何なものでしようか。
  260. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) それは結構な話だと思います。これから成るべくそういうことにいたしましよう。
  261. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 佐多委員よるしうございますか。
  262. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もうよします。
  263. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは中田委員
  264. 中田吉雄

    中田吉雄君 ダレス長官がおいでになるということですが、はつきりおいでになるのでしようか。
  265. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これもまだはつきりしたことはないようです。
  266. 中田吉雄

    中田吉雄君 それでは一つ希望を申上げております。私いつでもアメリカの高官、特にダレス長官が来ますと、ぞつとするわけであります。(笑声)気の弱い日本の外務省の方々はその意を迎えるに急じやないか。特に私が適切に表現して言うと、ダレス長官は再軍備の執達史だ、強制執行に来ると言つてもいいくらいで、非常に手きびしく世界的には孤立されておるので、一つそういう点は用心して……。もうアメリカの高官が来るたびごとに、日本の再軍備が国際政局とは反対に前進するというようなことのないように希望しておきます。その点は希望だけですから肝に命じて一つ……。(笑声)  それからこれはこの席で善処方をお願いすることがいいかどうかと思うのですが、国議員と対馬に参りました際に、対馬の人々が世界の有名な地図に対馬が韓国領になつておる地図がたくさんあるので非常に心配しておる。李承晩大統領等がそれを口実にしていろいろ難癖をつけられては困るから善処してもらいたいという意見があつて、直ちに帰りまして、国会図書館長にお願いして国会図書館にある図書、地図、それから大学等にあるのを全部調べてもらいましたところが、古い地図でなしに、一九五一年頃の地図にかなり対馬が韓国領になつておる地図があるわけであります。特に世界最大の地図を発行するというランド・マクネリーという大きな出版社で出しておりますポケツト・ワールド・アトラスという一九五一年版、それからイギリスにおいて最も信用の高いところのエジンバラ大学の地理学教授でありますA・G・オジリビイという人ですか、そのプロフエッサーの出した地図、その他十種近くもそういう地図があるわけであります。いろいろ国際紛争になつてはと思つて外務省へお願いしたのですが、どういう手配をして頂いたのでしようか。
  267. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) イギリスのエジンバラ大学の教授の作りました地図につきましては、直ちに在英大使に訓令を出しましたが、その返事が参つております。それによりますと、この地図はすでに廃刊となり且つ発行部数少きために未だ人手し得ず、目下古本屋を通じて入手かた努力中、該地図入手の際は貴信の趣旨に促つて早速処置する所存だが、取りあえず余り長くなるので、貴信受領以来すでに一カ月を経過したに鑑み、右取りあえず経過を御報告する、こう言つて来ております。  アメリカのポケット・ワールド・アトラスにつきましても又それと同様なものが他にあるように見えますので、そういう点についてはニューヨーク総領事に訓令を出しましたが、このほうはまだ返事が参つておりません。
  268. 中田吉雄

    中田吉雄君 これは島根県の渉外課の人に聞いたのですが、島根県にありますCIEというのですか、あそこにある図書館のスクール・マップという最近の掛地図にもやはりそうなつて、アメリカ出版の図書に私の調べたのでは、ここに持つて来ておりませんが、数としましては多いようであります。イギリスよりかアメリカのが多いようであります。一体在外公館の費用は予算を見ますと、三十五億もあつて、随分たくさんの外交官が行つておられる、そうすると必ずアトラス等を見て、ちやんとそれを座右にされていろいろやられると思いますが、そういうことが知られんというようなことでは、対馬の人が知つて、それを外交官諸君が知らずにおるというようなことが、一体これがダンス・パーテイその他で何をしておるというように言つても決して言い過ぎではないと思うのですが、一つその辺もう少ししやんとしてもらいたい。
  269. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは予算の分科会でも社会党の代表方々が申されたのですが、在外公館は手が不足しているから、もつと殖やさなければいかん、私は反対党だがこの点だけは賛成するといつて非常に強調されております。これは左右両派社会党の代表がそう言つておられる。実際在外公館は非常にたくさんの仕事を少数のものでやつておりますから、それこそ寝食を忘れてやつておるような次第で、ダンス・パーティなんてとんでもない話であります。今度のこともそれはいろいろなことがありまして、例えば通商の協定から一々の物価の変動やらマーケットの工合やらから始まつて、その地方の状況、又たくさん日本から来る人の接待であるとか、連絡であるとか、いろいろな仕事があります。そうだからといつて、こういう地図に気がつかなかつたという言訳にはなりませんが、事実非常に骨を折つておるのでありまして、決して怠けておるのではありません。この地図につきましては気がつかなかつたことは非常に残念でありますが、こういう情報を頂きましたから早速注意をして、各方面に手配をしておるのです。これは国のためにどうしても誤解を取消さなければならないのですが、恐らく或る一つのソースが間違つたのが、だんだんミス・プリントされて、こういうふうになつたであろうと思いますので、これは必ず訂正するように努力をいたします。
  270. 中田吉雄

    中田吉雄君 それではまあ精励しておられる外交官諸君の名誉のために、その発言については訂正しておきますが、併し私の調査ではこのランド・マクネリーというのが世界最大の最も信用のある地図の出版社だということで、大低の外交官の人はそれくらいのものを座右に備えて、いろいろな問題があれば、直ちにそれを参照して、そういうことが日本にどういう影響を及ぼすかということがないといけないではないかと思つたりしますから、その点を申上げておきます。
  271. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その地図というのは幾らでも売つているのではないのですか、我々が二週間ぐらい行つたときでも見る地図であるし、買つて来る地図だし、そんなものがないということは、そんなものが外務省にないということは、或いは何ら返事がないというようなことはおかしいと思うのですがね。どうなんですか。
  272. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ないというのはエジンバラ大学の発行したのです。これはないというのではありません。
  273. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカのほうの……。
  274. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) アメリカのほうの問合せではありません。こちらから訓令を出してその返事がないのです。措置してその結果を待つて返事が来ていないのです。
  275. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはこつちではお調べになつたのですか、簡単な地図だから幾らでも、そこらでも、図書館その他にたくさん来ておると思うのですが……。
  276. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは地図はたくさんありますが、今問題になつておるのはポケットという小さな地図であります。それも勿論調べましてわかつております。
  277. 中田吉雄

    中田吉雄君  これは対馬の人が気にしておりますから、至急に一つお願いいたします。  たくさん質問をしたいと思いましていろいろ資料も刷刷して来ておりますが、これはとても今日にはできませんので今度に譲りますが、一つだけ、対米債務の問題であります。だんだん終りに近付きまして、吉田総理の御裁断を待つ段階に来たというようなことも新聞には出ておるのですが、この点私は先に我が党の羽生委員から申されましたが、やはりこの終戦処理費、安全保障諸費というようなものと関連して、やはり相当強くその面で要請されてもいいじやないかと思うのですが、その点に関連しまして、ガリオア計画等がアメリカの議会でかけられた際の質疑応答を見られて、そうして折衝等に当つておられますか。特にごの全責任を持つておられる武内局長に一つお伺いしておきたい。これは武内局長の試金石と言われておるものですから、よほどあと足を踏んでかかつておられると思うが、一つアメリカの一九五一年のガリオア予算の公聴会、下院歳出委員会の公聴会等を見ますれば、羽生氏の言われた点が絶対必要だということがわかるわけですが、そういうものを見て、対米折衝にあと足を踏んで当つておられるか、その点をお伺いしたい。
  278. 武内龍次

    説明員(武内龍次君) その点は相当勉強をしてやつているつもりでございます。いろいろ当時の公聴会の記録、その他説明等も集めまして、それを勉強してやつております。
  279. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうしますると、一九五一年の下院歳出委員会におけるガリオア予算公聴会に、ボルヒーズ陸軍次官がいろいろ述べております点は、絶対私は対米折衝において見逃すことのできない重要な点ではないかと思うのですが、それは勉強されているか、どういうふうになつておりますか。
  280. 武内龍次

    説明員(武内龍次君) この試験には落第になるかも知れませんが、その発言の内容をはつきりここでは記憶いたしておりませんが、そういう種類の発言は、大体手に入るものだけは集めたつもりでございます。そうしてそれを読んでおりますが、それがどの部分に当りますかは、ちよつとはつきり思い出せません。
  281. 中田吉雄

    中田吉雄君 実はこれにはこういう質問が出ているわけであります。敗戦国の日本に対日援助をやるようなことは馬鹿らしいじやないか、そういうものをする必要がないという意見に対しまして、ボルヒーズ陸軍次官は、日本が支払うところの終戦処理費等を相殺すると、アメリカは遥かに得だからやるべきだということを言つて、日本の支払うこの占領費がなけれが、その兵力をアメリカの国家予算で、アメリカ国内で支払わねばならんのだ、これを占領費によつて日本が負担している、ということを言つております。更に、この占領費は敗戦国の義務として、占領国の占領費をできるだけ軽減するために支払われるものである。一九五一年に又三億ドル日本は支払うが、若し我々がこの軍隊をアメリカ国内に置くならば、更にそれだけ厖大な追加予算を必要とする、ということを言つて、日本は明会計年度においては、我々の軍事支出を軽減する点では、アメリカが日本に援助を与えるのよりかは、二〇%だけ得だから出すべきだ、こういう証言をはつきり言つているわけであります、相殺勘定で。もうこれは非常に私は重大な、これは東京銀行の協会の調査部が通訳されて、私はわざわざ東京銀行まで行つてもらつて来た資料ですが、はつきりととにかく明会計年度に払うところの、日本の負担するところの費用、それからアメリカが日本に対する経済援助を与えるのと相殺すると、なおアメリカは二〇%儲けるのだから、そのくらいはこの占領地を治める費用として負担してもいいじやないかということで、この出すべきでないという意見がそれによつてつているということであります。いろいろ具体的な問題はあると思いますが、一九五一年の下院歳出委員会におけるガリオア予算の公聴会において、はつきりとアメリカはそういう性格のものとして理解しておるわけであります。この点はいろいろ細かい、ドイツとの比較その他については又あとで御質問いたしますが、この点は一つお貸ししても結構ですから、見て頂いて、そういう考えで以て一つ御善処を頂きたいという点であります。
  282. 武内龍次

    説明員(武内龍次君) 只今の証言は、私はよく覚えておりませんが、恐らくその前後の委員会の答弁、或いはその後の公聴会における政府の答弁等によりまして、そういう趣旨にアメリカ政府が解しておるということには見ないのが大体において正しいと思つております。が、今日の御指摘がございましたから、その点もよく勉強いたしまして、今後の事務の参考にいたしたいと思います。
  283. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ちよつと申上げますが、外務大臣は五時を過ぎたけれども、もう少し辛抱しておられるというのですから、どうぞ御質問のエッセンスを、いいところを一つ……。(笑声)
  284. 中田吉雄

    中田吉雄君 この配付いたしましたナンバー四の十一の表を一つ……私いろいろ計算してみたわけであります。その前に、一つそういう資料がありましたら、この公聴会のあとの、こういうふうに考えてないという資料を、一つあとで見せて頂きたいと思います。  ナンバー四の十一に、私は終戦処理費とアメリカの対日援助とを計算してみたわけであります。これはまあ政府が出しました予算書で、ナンバー三の十頁には、対日援助総額は十八億六千三百八十六万ドルということに、大体八億ドルということになつているわけであります。それから日本のアメリカに対して負担しましたのが、日本の対米負担でありますが、それが終戦処理費で五千二百一億、これをその当時のドルと円との換算によりますると、四十七億ドルであります。防衛支出金というものが千八百五十五億で、これを一ドル三百六十円で換算しますと、五億一千万ドル、それから安全保障諸費というものの五百六十億をドルに換算しますと一億六千万ドル。合計いたしまして、我々がアメリカに負担しておるのは今日まで五十三億七千万ドルという厖大な額であります。アメリカの対自援助総額は、内容不明なつけを合計いたしましても十八億ドルであります。いろいろなことは申上げませんが、こういう点をこの公聴会等の証言と絡んで、一つ困難な折衝だと思いますが、あとに問題を残さないように一つ折衝して頂きたいと思います。それも希望であります。  いろいろ申上げたいこともありますが、それから私はもう一つ。十八億ドルの一切の仕訳を今度出して頂きたいと思いますが、私も県の農業協同組合の購買連合会の会長としまして対日援助物資がどんなものであるかということは、もう身を以て体験しているのです。これは何回もここで申上げたと思いますが、一つ我々が供出しました報奨物資としてもらつて代金を払いましたのが十三文、十四文というような履きました靴で、それなんかが今棚下しをするわけにも行かないし、私の農業倉庫にまだ積んであつて、それが協同組合の再建整備法でもつて赤字になつたりして大きな負担になつて、而もこの十八億ドルといいますが、見返資金の援助関係ができるまでは全然どれだけかわからん。十八億のうち八億ドルだけしか援町会計に入つていないので、あとは実際アメリカの言う通りだというようなことも伝えられていますし、一つ今日は委員長の御趣旨もありますし、私はこの程度でやめますが、とにかく、近く吉田総理外遊までに、裁断されるということでありますから、一つアメリカの委員会等における公聴会の発言、更にアメリカの対日援助と日本がこれに対しました負担の実態というようなものを一つ勘案して頂きまして、国民の非難の的にならんように一つ対米折衝に当つて頂きたいということを御希望申上げておきます。
  285. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) そういたしますと……。  ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  286. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは速記を始めて下さい。
  287. 中田吉雄

    中田吉雄君 明後日、何でしたら一つガリオア、イロア等の援助の物資の名前、単価、それからその中で運賃の負担がどれだけ占めておるかというような点を、一つ一覧表をお願いしておきたいと思います。
  288. 武内龍次

    説明員(武内龍次君) 只今御請求の資料につきましては、通産省と相談いたしまして、成るべく御趣意に沿うように努力いたします。
  289. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカの対日援助をいろいろ要請される場合に、世界銀行その他の人がたびたび参りましたが、そのときに日本側のいろいろな資料をお出しになつておるはずです。これを全部一揃え外務委員会に御提出願いたいと思います。
  290. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それは外務省でないほうが多いんじやないですか。今外務省の方々だけですから……。
  291. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 外務省は御存じのはずだと思います。
  292. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) まあ事務局のほうから趣旨を通じて、できるだけ出してもらうということにいたします。  それでは本日はこれを以て委員会を散会することにいたします。    午後五時十九分散会