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1954-04-23 第19回国会 参議院 外務・内閣・大蔵連合委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十三日(金曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。   外務委員    委員長     佐藤 尚武君    理事            團  伊能君            佐多 忠隆君    委員            鹿島守之助君            西郷吉之助君            杉原 荒太君            宮澤 喜一君            梶原 茂嘉君            高良 とみ君            中田 吉雄君            羽生 三七君   内閣委員    委員長     小酒井義男君    理事            長嶋 銀蔵君            竹下 豐次君    委員            白波瀬米吉君            矢嶋 三義君            吉田 法晴君            山下 義信君            八木 幸吉君            堀  眞琴君   大蔵委員    委員長     大矢半次郎君    理事            藤野 繁雄君            小林 政夫君            菊川 孝夫君            東   隆君    委員            白井  勇君            山本 米治君            土田國太郎君            成瀬 幡治君            堀木 鎌三君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    法制局第一部長 高辻 正己君    保安庁次長   増原 恵吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁人事局長 加藤 陽三君    外務省欧米同長 土屋  隼君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君    常任委員会専門    員       杉田正二郎君    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国アメリカ合衆国との間の相  互防衛援助協定批准について承認  を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○農産物購入に関する日本国とアメ  リカ合衆国との間の協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○経済的措置に関する日本国アメリ  カ合衆国との岡の協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付) ○投資保証に関する日本国アメリ  カ合衆国との間の協定締結につい  て承認十求めるの件(内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務内閣大蔵連合委員会を開きます。  議題は、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件、農産物購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、投資保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの作、以上四件であります。  昨日に引続いて質疑のあるかたの御発言をお願いします。
  3. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 昨日私の質問の途中に横から関連質問が長く入つて、途中で切れてしまつているわけですが、昨日私が質問いたしましたのは、憲法制定当時に、吉田総理自衛権の発動としての戦争を否定するという憲法解釈をなされ、国会でそういう答弁をされた。本日に至つて木村保安庁長官が、自衛戦争は現憲法下で可能であるという憲法解釈をされた。この憲法解釈相違に対する責任の追及、即ちみずから憲法違反であるところの今の自衛隊法案或いはMSA協定国会に出されているところの憲法違反の件、その件と、それから緒方総理が昨日答弁されました、内閣が変れば憲法解釈というものは或る程度変つても差支えない、具体的に申しますならば、内閣が変れば、自衛戦争に認めないと主張する立場とそれから自衛戦争は認めると、こういうふうに変つてもこれは差支えないという、この考え方についての質問は、私これから質問を展開して行くわけでありますが、後刻更に質問いたしますので、一応初めから順序を追つてつて行きたいと思います。  先ず外務大臣にお尋ねいたしますが、このMSA受諾の件は、一九五三会計年度アメリカ予算案にこの援助額が組まれているということから、昨年の五月頃国内でこれが問題になり、それから論議がなされて参つたわけですが、この予算案極東向け援助、その中に日本に対するMSA援助を含むというこの予算を含むことについては、日本側から要望してそういうことになつたのか、それとも何ら日本側意向も質すことなく、一方的にアメリカ側予算案に組むことによつてこの問題が発生して参つたのか、その点を伺いたいと思います。
  4. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは、アメリカ予算には、日本にこれだけのものを出すというふうには書いてないのでありまして、今おつしやつたように、極東向けといいますかチャイナ・エアリアといいますか、そういう方面にいろいろの国があつて、その中に十億なにがしか入つてつて日本希望すればこの中に入り得るということであります。これは先方でそういうふうに予算の中に説明を附しているわけであります。従いまして、日本としては、希望すればMSA援助を受け得るということが判明したわけでありますので、そこでいろいろ検討した結果この援助を受けたいということに結論ができまして交渉を始めた、こういうことであります。
  5. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 結局のところMSA援助というものは、手続上としては、こちらが自発的にMSA援助を受けたい、こういう意思表示の下に協議が進められ、今日の段階まで来た、こういう形はとられているけれども、実質的には向うさんのほうで日本にもMSA援助を与えたいという、この基本的な考え方から日本が受けた形ということになつていることを、あなたの今の答弁は裏付されていると思うのですが、そうでございますね。
  6. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先方は与えたいという積極的の気持も、それから積極的の規定もありません。併しながら従来のアメリカ側MSAの予質等においては、いずれの国からも希望があつたからこれを計上するということになつておりませんで、アメリカ側で計上して、関係する国が希望すればこの費用から、援助を差出すということであります。
  7. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこでやはりMSA援助性格が問題になつて来ると思うのでございますが、この母法には、窮極においてはそれによつてアメリカ安全保障外交政策を促進しようとする、こういうふうに母法に謳われているのを見ますと、このMSA援助というものは、アメリカ側立場に立つた場合には、H木のためということよりそれ以上上廻るところの自国安全保障と、自国外交政策の促進というものが先行している、こういうふうに考えられるのでございますが、これは如何様にお考えになつていらつしやるか、お伺いいたします。
  8. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカ側では、国際の平和と安全保障を維持するということが、合衆国の安全を維持することであり、且つ合衆国外交政策を促進することになるという見地から、国際平和及び安全保障のためには、友好国援助を与えることが必要である。こういう二つの考え方から、友好国援助を与えることによつて国際の平和を維持し、これによつて合衆国の安全を維持し、同時に合衆国外交方針を推進することになる、こういう見解の下にこの法律を作つているわけであります。
  9. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 このたび我が国に与えられる援助軍事援助助であるということは、各委員会で言明されていることでありますから、お伺いするまでもないと思いますが、外務大臣交渉に当られたのでありますから御答弁頂けると思うのでございますが、アメリカ側はここ三年くらいで駐留軍を引き上げたい、そうしてMSA折助は、今のところここ三年ぐらいの援助で止めたい、こういう立場アメリカ側では立つていると、こういうふうに私は読物で承知しているわけでございますが、そうでございましようか。
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカ側の予定としましては、大体一九五七年くらいで一般的にはこの援助を打切りたいという基本的な考えは持つているようでありますが、併し個々の場合には必要のある向きに対して引続いて援助を行うということは、当然あり得ると考えております。なおアメリカ駐留軍を三年以内に引揚げたいという希望若しくは要望等はありません。
  11. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 緒方総理に伺いますが、自衛隊法内閣から国会提案されております。又MSA協定承認を、国会に求めているわけでございますが、これらの自衛力増強というのは、アメリカ側としては、駐留軍を一刻も早く引揚げたいという気持であるということは、これは間違いないと思うのです。それに代るところの、あなた方が申される自衛力でございますが、その充実を図りつつある、これをお認めになりますか。
  12. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 日本独立後、日本国力を以てして十分の防衛に充てるだけものがないので、日米安全保障条約によつてアメリカ事が駐留しておるのでありますが、併しアメリカ側の事情も今お述べになつたようなことが予想されますし、日本としても漸増ということを申しておつてそれにアメリカ側も期待を持つている。従つてできるだけ早く、但し国力の許す範囲において漸増して参りたい、これが終始変らない政府方針でございます。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では保安庁長官に伺いますが、あなたは昨日の答弁でも、駐留軍引揚げた後で、日本自衛力というものがなかつたならば、或いは内乱、或いはどこの国かわからんけれども、想像はしていないけれども、直接侵略があるところのおそれがある、従つて補力を業績しなければならないということを答弁されているわけですが、アメリカ意思駐留軍引揚げて行くとなると、それに代るべき保宏隊なり、海上警備隊、或いはこれから自衛隊となりましようが、そういうものを増強して行かなければならない、こういう基本的な立場に立つていると、私は昨日の答弁から了承したのでありますが、相違ございませんか。
  14. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) アメリカがすぐ駐留軍を、引揚げようということは考えていないと考えております。日本自衛力漸増によりまして日本の態勢が徐々に整つて行く、それに応じてアメリカ駐留軍引揚げて行こう、こういうことになろうと私は考えております。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうすると、自衛力漸増駐留軍引揚げとは不可分の関係にあることは明白でありますが、木村長官、この日本にいるアメリカ駐留軍というのは戦力でございますか。戦力でございませんか。如何でございますか。
  16. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) アメリカ駐留軍実勢の細かいことは我々は存じておりませんが、アメリカ日本で駐留いたしております地上部隊海上部隊航空部隊、これらを合せますと、まさしく我々は戦力に該当するものと思つております。
  17. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうすると、あなたのお考え、今の防衛自衛政策というものは、駐留軍独立国として代るべきところの、自国を守るところの力を蓄積しなければならない、こういう立場から進んでいるとすれば、アメリカ駐留軍引揚げた後に日本自衛隊が到達する線というのは、自衛力を持つようになるのだ、従つてその前の段階において憲法改正が必要になつて来るのだ、そういう場合はあり得るのだ、こういう考えの下に進まれているということが答弁からして明白だと思うのでございますが、相違ございませんね。
  18. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は、現段階においては、憲法範囲内において漸増して行こうと考えておるのでありますが、今仰せになりまするように、アメリカ駐留軍全部に代るべきまうな実勢日本独自で持とうとするのであるならば、無論憲法改正しなければならないと私は考えております。
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 日本独立国なつた、それで独立国自衛ということについて常々緒方総理木村長官も言明されているわけですが、私がさつき申上げた方向に進みつつあるということは、これは一点の疑いないと思うのでございますが、そうでございましよう。そんなことを隠す必要はない……。
  20. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 隠す必要は毛頭ありませんが、我々は今自衛力漸増の下にやつておるのであります。即ち繰返して申しますと、憲法範囲内において現在は自衛力漸増方式をとつておるのであります。
  21. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それはもう耳に「たこ」ができるほど聞いてよくわかつているのですよ。自衛力漸増と、それから、今、日本にいる占領軍である駐留軍引揚げとは不可分の関係だということは明白なんでしよう。だからその駐留軍引揚げた後に日本自衛力というものは今のままであつたならば危険だ、努力しなければならんということを言明されているのでしようが……。従つてアメリカ駐留軍というものは永久的に日本におるはずはないのです。アメリカ国内の輿論がこれを許さないということは、これは皆さん御承知の通りだと思う。又、現大統領が選挙に立つた当時の国民に対する公約というものが如何なるものであつたかということは御存じの通りであります。でありますれば、今は憲法の許す範囲内において自衛力漸増しているのだ、併しその方向というものは、独立国として自分の国を守るための、今の駐留軍戦力にとつて代るべき自衛力というものを目標としているのだということはこれは明白だと思うのです。それが今憲法違反だとか何とかいうことは私は申上げてない。国民はそういうことをはつきりしないで税金を納めて行かれますか。今の私の質問緒方総理答弁願います。
  22. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 日本独立国である以上、日本の自力を以てすべての防衛に当りたいということは、これは国民的念願であると考えます。でありまするが、今計画的に陸海空すべての防衛力日本で持つということは、ちよつと時期が想像できない、今のところは国力の許す範囲において漸増しているというのが実情であります。
  23. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今のところじやなく、将来の目標を伺つているのです。何故そんな……、あなた方はなんですか。私は何も他意があつて聞いているのじやないのです。包み隠しをしないでおつしやつて頂きたい。木村保安庁長官曽つて衆議院予算委員会で、駐留軍引揚げた場合に、そこに日本保安隊というものがある、駐留軍引揚げた後の日本保安隊戦力になるということも。答弁されたのじやないですか。予算委員会で、横路君の質問に対して……。ましてや吉田総理は、今すぐ憲法改正するという考えはないけれども、独立国として自衛力急増し出て行けば憲法改正の時期に達し得ることもあるということを言明されたのじやないですか。その目標というものはそういうところにあるんだ、それがいつ来るかわからんけれども、そういうことにあるんだということは再確認願つて異議ございませんれと、国民はそのつもりで頑張つて行けばよろしうございますねということを伺つているんです。重ねて木村長官答弁を求めます。
  24. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はあなたの先ほどの質問に対して答弁したように、或いは駐留軍、いわゆる地上部隊航空部隊海上部隊に代るべきような実勢を持つ場合においては、日本としては憲法改正する必要はあるであろう、併し日本の国情は現在はさようなことを許さんのであります。申すまでもなく、財政状態と言い、人員の点と言い、いずれの面から見てもさようなことは許すことはできませんが故に、我々は漸増方式をとつてつて参つているのであります。これが将来どういう実方になるのか、今のところは私は繰返して申すようになかなか判断が付かん。併し国民といたしましてはみずからの手によつてみずからを守るだけの気持は持つべきが当然であることは言うを待たないのであります。その目標はいずれにおくかということは国民判断をすべきであり、我々は差当り漸増方式をとつてアメリカ駐留軍相俣つて日本防衛の全きを期したい、この精神であることは常に申している通りであります。
  25. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは方向を変えてお伺いいたしますが、このアメリカ日本MSA援助を与えるわけでございますが、アメリカ当局日本戦力を持つようになるということを希望しているでしようか。希望していないでしようか。折衝過程においてどういうふうに感知されておられるか。外務大臣に伺いたいと思います。なおそのあとで木村長官にも答弁を求めます。
  26. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカ側との折衝過程におきましては、先方はそういう日本内政に関連するようなことについては言及することを努めて避けておりまして、要するにこの自衛力増強の時期と態様は日本政府に任せるものである、こういう方針をとつております。そこで先ほども御質問がありましたが、昨日法制局長官が言われましたように、我々のほうでは、例えば富士山の八合目のところに棚があつて、それ以上はいけないという憲法規定がある。そうしますれば、今その富士山の八合目のほうに向つて進んでおりますが、これは頂上へ行くと必ずしも限つていない。同じ方向には行つておりますが、我々のほうは八合目でとまる、憲法範囲内でとまる考えでやつておるのでありまして、アメリカ側もこれは十分了承いたしております。
  27. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私が伺つているのは、アメリカ側日本戦力を持つことを、将来持つことを希望し、期待してMSAを与えているのか。それとも、日本は今の憲法戦力は持てない。そんなものは、戦力は持たなくてもいいのだというような気持MSA協定日本に与えているのか、どうだか。これはちよつと愚問に熱するのですが、木村長官どうですか。どうお考えになつておりますか。軍事援助をやつているのですよ。
  28. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) アメリカ軍事援助をしようとすることはまさに御説の通りであります。併しアメリカとしても現在の日本憲法の枠を超えてまで日本にやらせるという意思は私はないと思います。いわゆる日本財政力その他のことから勘案しても、濫りに日本に要請して、日本憲法範囲外のことまでもやらせるという意思はないと私は考えております。
  29. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなた方は実に恐るべき判断力を持つていると思うのです。或いは稀に見る虚偽を述べられるかただと思うのです。どの記事を見ても、アメリカは、はつきりと、アメリカ駐留軍、これは戦力でありますが、これに代るべき日本自衛力戦力というものを、一刻も早くこれを日本に持たしたい。そして駐留軍引揚げたい。そうなれは日本憲法改正が必要であろうが、そういうこともやつてもらいたい。こういう基本的な立場日本に対処し、又MSA援助アメリカ国民税金で与えているということは、三才の童子といえどもこれは明白なことです。それを、将来日本のこの自衛力というものはどういう目標を持つているのかということを素直に国民の前に述べられずに、効かむりをして、今の自衛力急増方針を、やられておるということは、国民にとつて見れは絶対納得のできないことだと請うのです。而も岡崎外務大臣はこの段階になつても、今のMSA協定軍事援助受入れ、それに伴う自衛隊の創設、こういうものは戦力に通ずる途じやない、こういうふうにこの委員会で述べられた。余りにも虚偽に満ちた、ごまかしに満ちた答弁であることには、私は不満を禁じ得ません。時間がかかりますので次の質問に進んで行きますが……。
  30. 堀眞琴

    堀眞琴君 ちよつとそれに関連質問していいですか。
  31. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) どうぞ。
  32. 堀眞琴

    堀眞琴君 只今保安庁長官は、アメリカのほうでは期待してはおるだろうというお話日本自衛力戦力としての軍隊になることを期待してはいるだろう。併し外務大臣の御説明によりますと、内政に関連する問題については何ら言及されていない、これがMSA交渉過程において示された向う側意向である、こういうお話であります。ところで、日米安全保障条約では、自衛力漸増アメリカ側によつて期待されている。ところが今度のMSA条約においてみますると、日本に軍事的な義務を負わしているのみならず、第八条は向うMSA法の五百十一条の義務日本が負担するということを明確に書いているわけなんです。そうしますると、はつきりと日本の再軍備向う側としては日本に要請しているということは明らかだと思うのです。矢嶋君が今言うように、日本国内報道機関だけが再軍備でないという政府報道をそのまま載せているだけであつて外国のどの新聞をとつてみましても、日本MSA協定を通じて再軍備義務を負うているということは、もうはつきりしているわけです。それでもなお外務大臣乃至は保守庁長官は、日本は再軍備ではない、八合目まで憲法の許す範囲において自衛力漸増するんだ、こういう答弁なんです。この五百十一条の義務を負担したことについて、日本の再軍備はどうなるのですか。これを義務付けられている日本として軍事的な義務を負うということは当然ではないかという工合に考えられるのですが、この点について外務大臣保安庁長官答弁をお願いしたい。
  33. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 五百十一条、つまりこの八条におきましては、防衛力増強義務しれつております。これは、私から行わせれば当り前の話であつてアメリカ側からの援助を受ける限りにおいては防衛力増強をしなければ別に援助を受ける必要はないのであります。つまり防衛力増強をするから援助を受けるのであつて、逆に言えば援助を受ける限りにおいては防衛力増強ということを約束するのは何ら不思議はない。だから防衛力増強しなかつたら、しなくなつたら援助を受けなければよろしい。或いは防衛力増強したくなければ援助を受けなければよろしい。つまりこの協定をやめればよろしい。これは援助を受けておいて何ら防衛力増強しなければ、それは何の使い途があるか私にはわからない。又これが再軍備の途だとおつしやるが、防衛力増強と再軍備とは全然私は性格を異にすると思う。矢嶋君はさつき虚偽に満ちたとかいうような言葉を使われましたが、私は一向わからない。何が虚偽に満ちたのか。私は正直なことを言つておるので、あなたが新聞報道と言われても、アメリカ政府、責任ある政府当局はそんなことは全然言つておりません。又、堀君は、日本以外のものは全部再軍備だと言つておる、こうおつしやいますが、そんなことはありません。あなたは何か誤解をしておられる。例えばアメリカの上院における政府当局説明報道されておりますが、それには、日本憲法規定があつて、その規定範囲内で行動しなければならないから、自衛力増強ということにもおのずから限度がある、こういうことを言つておるということを新聞報道が伝えております。決して、日本は再軍備をしておるんだという新聞報道ばかりであつて、ほかのことは何もないなんということは、これはありません。
  34. 堀眞琴

    堀眞琴君 私が誤解しておるという強い御発言ででありますが、私の言葉に言い足りない点があつたとすれば、それは補足しなければならんと思います。併し五百十一条によつて日本が軍事的な義務を負うていることは事実であります。あなたは、防衛力日本増強するという義務がないとすれば、MSA協定などは結ばないのだという御発言のようですが、MSA協定防衛力漸増ということにおいて軍事的義務日本に課しているということは、この第八条に書いているではありませんか。私はこれを指摘しているのです。これは言うまでもなく日本の再軍備向う側において要請しているものだと、とらなければ、どうとるのでありますか。防衛力漸増は軍事的な義務である、こういう工合に向うでは規定している場合に、これをあなたの言葉で言うなら、再軍備ではない、日本憲法範囲内においてこれをやるのだ。そして上院におけるところの政府側の説明をされているのです。私もそれは知つております。併しその防衛力増強ということは用事的義務として日本に課せられている。軍事上そういう防衛力をやらなければならん、こういう義務を負うているのですから、再軍備と何ら違わんじやありませんか。その点もう一度明確にせられたい。  それから新聞報道でありますが、あなたはそのような事実はないとおつしやいますが、私は今手許に持つておりませんが、私の少くとも知つている限りの新聞では、日本MSA協定を通じて再軍備の過程に入つたということを指摘していない新聞は殆んどないといつてもいい。これはアメリカ新聞でもそうです。私は今手許に持つていないので、それを具体的にお示しできないのですが、ニューヨーク・ヘラルド・トリビユーンであるとか、或いはクリスチャン・サイエンス・モニターというようなアメリカ新聞ですら、それを指摘している。ましてやフランスやイギリスの新聞等はいずれも同様のことを指摘しているのです。あなたは外務大臣の職責にあつて、外国の新聞がどういう論調であるかというようなことはすでに御存じだと思います。それをあなたはそうではないというのですから、矢嶋君が言う虚偽を話していられるのだ、こういつても差支えないのじやないか。もう一度御答弁を願います。
  35. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 新聞報道については今申した通り。この八条によつてどこに一体防衛力増強軍事的義務だと書いてありますか。それを指摘して頂きたい。
  36. 堀眞琴

    堀眞琴君 第八条中頃であります。これは英文のやつ……に本文で「日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて負つている軍事的義務を履行することの決意を再確認するとともに、自国の政治及び経済の定定と矛盾しない範囲で」云々と、こう書いてある、この条項であります。
  37. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) だから防衛力増強軍事的義務だということがどこに書いてありますか。
  38. 堀眞琴

    堀眞琴君 これは全部読まなければいけないですか。これを読んで下さい。
  39. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 防衛力増強軍事的義務だとあなたおつしやつた、防衛力増強軍事的義務だということがどこに、この第八条に書いてありますか。
  40. 堀眞琴

    堀眞琴君 書いてあるじやありませんか。じや読んでみます。もう一度……。「日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて負つている軍事的義務を履行することの決意を再確認するとともに、自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲で、その人力、資源、施設及び一般的経済条件の許す限り自国防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し、自国防衛能力の増強に必要となることがあるすべての合理的な措置を執り、且つ、アメリカ合衆国政府が提供する」云々と書いてあるじやありませんか。このことを指しております。
  41. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私の日本語の知識によれば、何々をすると共に何々をするとは、一つのことをすると共にこつちのことをする、こういうことであります。ここにあるのは、安全保障条約に基いて負つている軍事的義務を履行すると共に、防衛力増強をするというのであつて防衛力増強軍事的義務だとは一つもここに書いていないと私の日本語の知識は教えます。
  42. 堀眞琴

    堀眞琴君 これはあなたは、こういう工合に履行すると共に何々する、のだ、こういうことだからして防備力増強義務付けていないのだとおつしやいますけれども、これはそういうことを示しているじやありませんか。私は文理的解釈をやつているわけなんです。あなたの説明によりますと、防衛力増強について軍事的義務を負うてないんたとおつしやるのですが、併し「軍事的義務を履行することの決意を再確認するとともに、」云々と番いてある。これはあなた、日本として五百十一条に基くところのアメリカ側の申出によつて、その内容について日本側としては義務付けられたものだ、こう言わなければならんと思う。そのことを私は指している。
  43. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は義務を負うていないと言つておりません。防衛力増強をするという約束をいたしておる。併し防衛力増強をするということが軍事的義務だとあなたはおつしやる。そんなことは一つも書いてないというのです。
  44. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連して……
  45. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 吉田君。
  46. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじやちよつとお尋ねをいたしますが、この協定の前文にも、安保条約の「漸増的に自ら責任を負うことを」云々の「趣旨を想起し」と書いてあります。それから他の点にもございますが、普通理解されておるところでいいますと、安保条約の前文の末項に書いてございます、前のほうは省略をいたしますが、「平和及び安全保障を増進すること以外に用いられるべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接の侵略に対する自国防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを、アメリカ合衆国が期待」すると書いておるのを、受けて「軍事的義務を履行する」云々と書いであるのは、その「軍事的義務」と「期待」が、この協定によつて義務に変化したのだと、かよう理解されておりますが、それは違うのでありますか。
  47. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 「軍事的義務を履行し」とありますのは、安全保障条約に基いて負つている軍事的義務を履行する、従つて安全保障条約において規定されておる軍事的業務を履行するのではありません。安全保障条約において規定されておりますのは防衛方の増強であつて、それはここに別の項において防衛力増強を約束いたしております。併しここに「軍事的義務を履行する」ということが書いてありますのは、すでに安全保障条約に基いて約束をしておる義務を履行することを再確認する、こういうことであつて、それは安全保障条約の第一条以下の日本の負つている義務であります。
  48. 吉田法晴

    吉田法晴君 では、ついでにもう一度念を押しますが、この八条の軍事的義務というのは、安全保障条約の前文に書いてあることではなくて、米軍の駐留を許すなり、或いは基地を提供するなり、そういう義務であつて自衛力漸増を期待すると言われたこの期待或いは責任というものを、ここで義務として認めているものではない、かように理解してよろしいのでありましようか。それが一つ。  それからもう一つは、関連してでありますが、今度の協定の前に、実質的には協定の、何と申しますか、前交渉と申しますか、池田・ロバートソン会談というものがございましたが、その池田・ロバートソン会談のその結論というのは、あとで公表せられました公表は、これは政府で確認せられておつて、公式なものだと考えるのでございますが、その中にございます、これは翻訳が適当であるかどうかわかりませんが、英文を読まないで日本文を読みますが、そういう意味の原文があることは御承知の通りであります。「会談人たちは、日本を起り得る侵略から守り、かつ日本防衛に関連する合衆国の重荷を軽減するために、日本自衛軍を増強する必要がある、という意見が一致した。しかし現状のもとにおいては、憲法上、経済上、予算上その他の諸制約あり、日本防衛に十分な点まで日本自衛軍を即時つくり上げることはできない。」云々と書いてありますが、その中に「自衛軍を増強する必要がある。」、「ジヤパンズ・セルフ・デフェンス・フオーセズ」という言葉が使つてありますが、そういう自衛軍と申しますか、セルフ・デフェンス・フオーセズというものについては、この八条に言う、日本国の、今問題になりました点の、防衛力の発展及び維持というものと繋がりがあると解していいかどうか。その二点を伺います。
  49. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 第八条の「安全保障条約に基いて負つている軍勢的義務」、「義務」と書いてありますから、前文にある「期待」はこれには含まれておりません。義務だけが含まれております。それから池田・ロバートソンの共同声明における外務省の、何と言いますか、公式の訳文をここに持つておりますが、それには「日本自衛力」と書いてありまして、「日本自衛軍」とはいたしておりません。(笑声)
  50. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次の質問に移ろうと思つたのでありますが、只今の問題で外務大臣に伺いたいのですが、外務大臣は、この防衛力増強の期待が義務なつた……、それはですね。アメリカとしては、日本戦力を持つようになることを期待しておつたのが、それを義務付けるようになつて来た、こういうことじやないですか。
  51. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先ほど申した通り、これは例は適切かどうかは別として、富士山の八合目に憲法の枠ができておつて、それ以上は上れないように憲法がなつておる。そうして富士山の麓から上へ上つて行く人は、ひとしく頂上の方向には向いておりますが、我々は八合目でとまるつもりでおりますから、軍備をするとか、戦力を持つとかいうことじやありません。又、日米安全保障条約の前文にも、戦力や軍隊を持つということは書いてないのであつて、要するに自衛力漸増するということが書いてある。今度も自衛力と等しい意味の防衛力増強する、こういう約束をいたしております。
  52. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では、これはやはり憲法のところから一つ話を戻して行きましよう。今富士山の八合目というような問題が出ましたので、それから伺つて参りますが、緒方総理はどこへ行かれましたか。
  53. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 緒方総理はやむを得ない用事があつてちよつと席を外されました。すぐ帰つて参ります。
  54. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 昨日緒方総理佐藤法制局長官は、内閣が変れば憲法解釈というものは変つてよろしいのだ、憲法制定当時は自衛戦争を否定しておつたが、現在では自衛戦争憲法範囲内でできると、こういう木村長官の言明は差支えないのだと、こういうことを昨日答弁されたわけですが、そうだとすれば、今、吉田内閣は、自衛のためにも戦力は持てない、こういうことを言われておる。ところが改進党は、自衛のためには戦力は保持できる、こういう立場に立つておる。そうなれば、今、吉重会談でも持たれて、そうしてここに第六次ですか、吉田内閣なり或いは重光内閣ができた場合には、その内閣の閣議決定として、自衛力としての戦力は保持できる、こういうような解釈も可能だということになると思うのですが、それでよろしいのかどうか。木村長官法制局長官答弁を求めます。
  55. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほどお言葉の前提になつておるところを質す意味で繰返しますが、第一点としては、憲法制定の際に政府自衛戦争までも否定しておつたということでありますが、これは昨晩縷々例証を挙けて申上げました通りに、自衛戦争憲法上否定されておらない。併し九条第二項からして、実際の結果として、自衛戦争の形をなすようなことはできません。戦闘状態はでき得るかも知れんけれども、自衛戦争というような、戦争という形のものはできませんでしようという趣旨のことを答えておるのでありまして、その考え方は、今日吉田内閣においても全然変つておりません。  それから第二点として、内閣が変ればという問題は、全然そういう問題を離れての一般抽象論としての立場になるわけであります。そうなりますと、これは内閣が変れば当然のことでありまして、吉田内閣が退陣されて、その後に仮に社会党の内閣ができるということになれは、その社会党内閣が、前の吉田内閣憲法解釈を踏襲して頂くのは、私どもの信念から言うと正しいことだと思いますけれども、併しそういうわけに参りますか、参りませんか、それはおのおのその内閣の特殊性を持つておりますから、その内閣の正しいと信ずる憲法解釈をおとりになる、これは当然のことだと思います。
  56. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたは、その前段に、木村長官が昨日自衛戦争は可能だということを認めたことについて自衛戦争のような形はとらないだろう云々というような少しぼかしたことを言つておりますが、ちよつと憲法の九条のところを開けて下さい。ということは、私はこういうことを言つてるんですよ。国際紛争を解決する手段としては武力の行使はできないが、自衛のためには武力の行使はできるということを言明されておるわけですね。政府は。でありますと、この憲法九条を見ますと、「国権の発動たる戦争と、」一これが一つになつているのですね、「戦争と、」それから「武力による威嚇又は武力の行使は、」と、こういうふうに並列になつておるのです。国文法上……そうしてこれを国際紛争解決手段としてはこれを放棄するというわけですね。ところが武力の行使は国際紛争を解決する手段でなければよろしいとなれば、この文法土からの条文解釈によれば、国権の発動たる戦争は、国際紛争を解決する手段としてはいかんけれども、自衛のためには、国権の発動たる戦争、これは可能だ、こういうことになるじやございませんか。それを木村長官が認められた。だからこれは立派に自衛戦争ということになるしやございませんか。如何ですか。
  57. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 国文的な解釈は全くおつしやる通りでございます。この戦争といい、或いは武力の行使といい、いずれにせよ、国際紛争解決の手段としては放棄しておるということは、第一項の示すところであるわけであります。それを裏から言えば、国際紛争の解決の手段としてでない場合においては、禁止していない。だから、自衛のための戦争といい、或は実力行使といい、第九条第一項から言えば禁止しておらない。当時の金森国務大臣が何度も答えておる通りであります。但し第二項も見て頂かなければなりません。第二項を御覧頂けば、先ず戦力という物的手段、それから交戦権という法的手段、この二つを放棄して否認しておる。従つて、例えば交戦権という場合を考えますと、交戦権があつてこそ、のびのびとした戦争の形ができるわけであります。交戦権というものがない以上は、そういう戦争の形というものはできません。併しながら、自衛権があり、自衛権のための実力行使というものができる以上は、勿論相手国との間に交戦状態が、或いは戦闘状態が発生することは、これは当然のことであります。それは何ら憲法に禁止しておるところではないのであります。その戦闘状態なるものを常識的に見て、戦争というか、或いは戦争以外の実力行使であると言うか、これは見方の問題でありますが、交戦権がないという建前から言うと、本格的な戦争の形はできないことに第二項のほうからなつているという趣旨でありまして何も今の話には矛盾も間違いもないと思つております。
  58. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連して……。憲法九条の解釈の通説として、大体、今、佐藤長官の言われたようなことでありますが、併し多少今の答弁で矛盾をいたしますのは、自衛戦争を第一項では認められておる。論理的に反対解釈として認められることになるけれども、二項の戦力の否定があり、或いは交戦権が認められない。そういう結果、第一項で論理的に認められるかも知らん自衛戦争といえども、できないのではないか、或いは認められないのではないか、こういうことであります。その点までは異議がございませんが、昨日の質疑に対しまする答弁の中では、戦闘行為と申しますか、自衛のために外国の拠点に対しての攻撃を加えることができる、叩くことができる、こういう答弁があつて、その点は、二項の交戦権を認めない、或いはその他の戦力も認めない、こういう点と矛盾すると、これは考えられませんかどうか。特に憲法の前文から解釈いたしますならば、他国の侵略がある、これはまあ昨日も明らかになりませんでしたけれども、共産主義陣営の侵略が、協定なり、或いは自衛力漸増いたして参ります前提になつておることは、いろいろな議論で出ておりますが、その場合にも、憲法を貫きます精神から言いますならば、それは前文に二段に書いてございます、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、」「名誉ある地位を占めたいと思ふ。」ということになれば、実力を以て、武力を以て平和を守るということは、少くともこの憲法の下においては許されないのではないか。或いは国連等に期待するということはあつても、実力で平和を維持する、或いは侵略を防ぐというのは、これは憲法の精神から認められないのではないか。それが第二点。  それから、もう一つ、その二項に関連しまして自衛のためであろうと、なかろうと、戦力を持つことは認められない、交戦権を認められないということになりますと、或いは戦闘力を保持する云々ということも、これは当然認められないのではないかと思うし、その点が、今度保安隊から自衛隊に切りかわります自衛隊憲法上許されるかどうかという問題になつて来ると思うのでありますが、その最後の点は、これは自衛隊法に関連して、更に質疑、論議をいたしたいと思うのでありますが、三点について、特に一、二点について、関連してここで御答弁を願いたいと思います。
  59. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 第一点は、結論としては、要するに自衛権というものと交戦権というものとの対比といいますか、交錯関係と申しますか、そういう点から御説明をすべきことであろうと思います。国として独立しておる以上、自衛権というものはもう固有の権利として認められておる、これは申すまでもないことでありまして、国の一種の生存権でありまして、これはもう天然自然の権利として自衛権があることは当然であると思います。その意味において、敵の急迫な武力の侵害を受けました場合には、決してそのまま八千万の国民がのたれ死をする、撃たれ死をするというべきではなくて、それ相応にそれを防ぐ作用を営むことが独立国としては当然であろう、そういう原理がそれらに伴うわけであります。それに又必要な限度においては、敵の攻めて来たものに対する害敵行為と申しますか、場合によつては必要最小限度において殺人ということもあり得るであろう。これはもう自衛の限界内のことであるならば、普通の国の生存権の維持という限度においては当然許されることである。これが自衛権の実態及びその発動の場合であろうと思います。ところが交戦権を持つておる場合ということを考えますと、交戦権というのは、自衛の場合を除いて、一般平時の状態においてそういうことをやつたとすれば許されないであろうような行為ということに、まあ帰着すると思いますけれども、要するに、今例えば敵から攻められた場合を考えてみましても、その攻められたことに伴つて国を守る必要最小限度の実力行使は自衛権範囲に入りますけれども、ついでに敵の本拠まで追いかけて行つて、現在の危険でなしに、将来又攻めて来るような禍根を断つというような意味で、敵の本国を大いに蹂躪して全滅さしてやれという活動が実際上考えられます。交戦権があればそれができると思います。併しながら自衛権範囲においては、そういうことはできないということが要点であります。そこで敵から長距離砲を射つて来たらどうのこうのというお話がたびたび出て参つておるのでありますが、これは私どもは、交戦権がない以上は自衛権の限界の範囲内においてその場合にどういう程度のことができるであろうかという純理論を強いて問い詰められましたからお答えしているので、その純理論と申しますのは、先ほど申しましたように、国民全部が敵に攻められて、そのままであれば全滅しなければならんという場合に、それを防ぐに必要な必要最小限度の防禦手段というものができるであろう。飛行機が攻めて来るという場合であれば高射砲で射ち落すということで、手段があるわけです。その場合に飛行機の基地まで出て行つて爆撃するということはあり得ないのが原則でございます。高射砲で迎え撃つというのが普通でございます。これは自衛権の普通の発動の場合でございます。ところが長距離砲で射つて来た大砲の弾丸を途中で激撃することはできるかということになると、今までの科学の力ではできないでしよう。従つてこの根本から出て来ないような措置をこの根本に対してとらなければならんでしよう。こつちも長距離砲を持つていれば、向うの長距離砲の出て来るその根本をこつちから長距離砲で射つて、いながらにして根本をとめることができましよう。それができないということになれば、射的の場合に腕を伸ばしながら射ちますように、多少領海の外くらいまで出て弾丸を射ち出すということもできましよう。これは純理論としては可能である、そういう意味で申上げておるわけであります。  それから第二点として、前文の「諸国民の公正と信義」云々のお言葉がございましたが、これは大乗的な意味と小乗的な意味と隻方の意味があります。今の吉田委員のお尋ねは、或いは小乗的な意味、小乗的と言つても悪い意味で言つているのではありませんけれども、それに重的を置いたお尋ねだつたと思います。大乗的な意味から申しますと、勿論お互いに戦争しなけれげならん、そういう嫌な原因を作りたくたい、そういう原因を、日本もそうであるが、「諸国民の公正と信義に信頼して、」およそ世界からこういう切つかけのないようにしたい、これは大乗的に当然出て来る原理であろう。この原理は何ら我々して変えて考える必要はない。勿論堅持すべき原理であろうと思います。小乗的の原理として、何か敵からやつつけられたときは、よその国に日本は頼んだりしないというような意味が出て来るとすれば、だんだん自衛力漸増して行つて、よその国の力を借りずに日本でぽんぽんやつつけることができるということになつたら、それに矛盾しやしないかという問題が出て来ましようと思います。併しながら小乗的な意味から申しまして戦力というものが持てませんから、戦力を持てればいいのですが、持てない以上は、小乗的な意味において、やはり「諸国民の公正と信義に信頼」しなければならない部面が残るわけであります。大乗的と小乗的な意味からいつても、何ら矛盾しないということに結論はなろうと思います。  それから第三点の、自衛のためでも戦闘力は持てないのじやないか、九条第二項の解釈としてそういうことになるだろう——私どもが言つておるのはまさにその通りであります。自衛のためといえども戦力は持てない。ただ戦闘力というお言葉がございましたが、戦力という言葉を戦う力、こう読んでしまいますというと、それは広い意味の戦闘力になつて、一切いけない、戦う力ということになりますと、国内の暴徒を鎮圧する、これも戦う力、内乱が起つた、内乱を抑える、これも戦う力、それを禁止されては、これ又憲法はナンセンスになつてしまうから、我々としては戦力というものに一定の合理的な限界を設けてそれを持つことを許されないと、こういうふうに解釈しております。
  60. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 法制局長官は、この憲法が、あなたの言葉で言えば、保障しておる自衛権自衛力というものについてのあなたの御見解は、あなたそれはいつ頃からそういう御見解を持たれたのてすか。盛んに自衛権とそれから自衛力というものについて、射的で手を延ばすような例を挙げていろいろお述べになつていますが、そういう御見解は、いつ頃からあなたはそれをお持ちになつたのでございますか。それをちよつと聞いてから質問をしたいと思います。
  61. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 学校で国際法を教わりましたときから、(笑声)それからずつと考えておつたわけであります。ただ今までの議会等の質疑応答において、敵が長距離砲でやつて来た場合にどうのこうのという御質問を受ける機会が、実は甚だ残念でありましたけれども、会日までなかつたわけです。今までは保安隊或いは警察予備隊、過去に直接侵略ということを表に出していませんから、そういう御質問が出ないのは当り前であります。ところがだんだんとお話が詳しくなつて、そういう御質問が出て来ましたから、純理論の問題としてはかようなことになります。これ又当然のことであろうと考えます。
  62. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたは憲法自衛戦争を否定していない。私は憲法制定国会における吉田総理の言明と木村保安庁長官の言明と食い違いがあるということを言えば、あなたは食い違わない、その当時からそうだつた。こういうふうに申されておるわけですが、あのポツダム宣言ですね、ポツダム宣言の十一項たつたと思うのですが、十一項には軍需産業さえ禁止しておりますね。そのポツダム宣言の有効なるときに制定された、或いは一部の人によればアメリカから押付けられた憲法だと言われておるのです。そうしてその憲法性格というものが、精神というものが、さつき吉田君が申された憲法の前文に平和憲法としての徹底した絶対平和主義的なものが出されておる。この憲法に今の保安隊或いは海上警備隊、これからの自衛隊のような、そういう隊として、木村長官に言えば軍隊と言つてよろしいと答弁されておるのですが、そういう編成された而も外敵に対抗できるように、訓練されて敵の基地まで叩くような自衛権というものを、一体内容としておつたかどうかということなんです。この憲法制定当時の自衛権とは、あなたが射的の例を出すから、私は別の例を出しますが、人が殴つて来た場合に、自分で抵抗するとか、或いはどうにも及ばないときにはナイフで応じるとか、国家としては警察というものは秩序と治安の維持のために警察がある。そうすると、仮に直接侵略があつたならば、その警察がぼやつとしておらんで何しに来たかと言つて応ずる、或いは国民が或いは竹槍とか鍬とか鎌とか、適宜なものを持つて何らかの抵抗をする。この程度の自衛権であつて、今申されるような自衛権というものはポツダム宣言の有効下にできたこの憲法というものは、絶対にそういうものは私は認めていないと思う。その証拠には、あなたは昨日私の質問に対して、二十一年六月二十六日の吉田総理答弁については自衛権を否定してはいないということを言つておる、そうして自衛権を否定してはおりませぬがと一応述べて、そうしてはつきりと自衛権の発動としての戦争も交戦権も放棄したということを申しておる。そうして更に従来近年の戦争は多く自衛権の名において戦われたのでありますとして、結びのほうには、我が国においては如何なる名義を以てしても交戦権は先ず第一みずから進んで放棄する。そうして世界にその範を示すのだというような意味のことを申されておる。更にもう一つ重要なことは、これはあなた如何に答弁されますか。吉田総理考え変つていないということを、吉田総理が来ておらないから、緒方総理にも伺いますが、二十一年六月二十八日衆議院本会議野坂議員の質問に対しての答弁は、国家正当防衛権による戦争は正当なりとせらるるようであるが、私はかかることを認めることはできない。更にこう言つているじやないですか。国家正当防衛権を認めるということそれ自身が有害である、規定いたしますと、言つているじやないですか。自衛戦争というのは国家の正当防衛権による行動じやないのですか、そうでしようが。だから吉田総理の見解は変つていないというのは、その詭弁は許されませんよ。正当防衛権を認めることはできない。即ちそれに基く行動はできないということを総則は答弁しているのですから、だからMSA協出定によつて援助によつて充実されて来るであろう自衛隊によつて自衛の戦いができる、而もそれは吉田総理としては見解は全然変つていないというあなたの、吉田総理ここにおいでになつていれば非常に都合いいのですが、おいで願われないから、あなたに伺つておるわけですが、少し言葉が過ぎやしませんか。先ず総理に代つての副総理に伺います。
  63. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今御質問の途中からでよく伺つておりませんが、今私が来て伺つたところでは、昨日その御質問にはすつかり私の考えはお述べしてありますから、重ねて申上げません。
  64. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いや、副総理、その問題少しこじれて来ているから伺つているのです。吉田総理は国家の正当防衛権による行動は認められない、それを術語で言えば自衛戦争というものはこの憲法では放棄したということを憲法解釈として速記に残されておる。ところが保安庁長官自衛戦争は可能であるということを昨日私の質問に言明されたのです。ところが法制局長官は大学で勉強した当時から(笑声)自衛戦争は可能だと考えておつた。而も吉田総理の見解は変つていないということを言われておるのです。だから私はポツダム宣言の十一項とその有効下にできた憲法、それから吉田総理の今の速記とですね、憲法前文に満ち満ちているところの平和主義の前文と、こういうところから法制局長官の言明は間違つている、過ぎているということを私は法制局長官に先ず聞きたい。  その前に総理に代つての副総理ですね、……じや一つ簡単に聞いて行きましよう。自衛戦争は可能なんですか。
  65. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) わかりました。昨日の通りですから何遍お答えしても同じように思いますが、今の自衛戦争という字義、あなたのお考えと我々の考えと違つておるのだと思います。その他は昨日同じような質問をなさつたので同じような答弁を繰返してもしようがありませんから……。
  66. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 昨日と同じでもいいから答弁して下さい。
  67. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) もういいですよ。(笑声)
  68. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いいことはないですよ。答弁して下さい。そんなことがありますか。(「繰返しでもいいから、そこが問題になつているんだからもう一遍」「余り混乱せんように」と呼ぶ者あり)
  69. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 自衛権は、これは国の固有のものでありまして、その裏付をする自衛力、いわゆる防衛力というものがあるが、この自衛的な防衛ということは、これは今の政府においてもというよりは、国が独立しておる以上は当然であります。併し自衛戦争という、いわゆる戦力を持つてやる戦争というものは前も今もできない、そういうふうに憲法の解釈をとつております。
  70. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 関連質問。私は今の法制局長官の御答弁でも、緒方総理の御答弁からも察知されるのでありますが、憲法の解釈として政府自衛権自衛力との境界が極めてあいまいな御答弁である。(「その通り」と呼ぶ者あり)従来から私は速記録を拝見してさように思つております。学者の意見としては、今緒方総理が仰せられました通り、国家固有の権利として自衛権はある、これは学者の定説であると私も思つております。併しこの自衛権の行使についてはいろいろ議論があるのは、副総理並びに法制局長官もよく御承知のことであろうと私は思います。吉田首相も国会答弁において、昨日も私はこの席で引用いたしましたが、武力なき自衛権それをどうして行使するか、外交その他の手段によつて行使する、こういうことを国会答弁をされておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)学者の著書によりましても、武力なき自衛権は国家として認めるが、さて戦力を否定した日本憲法下において然らばこの自衛権を実際に如何なる方法によつて発動するか、こういう問題については、或いは竹槍を持つて上陸して来た敵に対して当る、又は警察力を以てこれに当る、消防隊で以てこれに当るというようなことが想像されるけれども、それ以上のことは憲法第九条第二項によつて戦力を否定した以上は、実際においては固有の権利であるところの自衛権を行使する力は、この新らしい憲法によつて日本にはない、こう解せざるを得ないというのが学者の意見であります。ところが憲法制定当時においては、今矢嶋委員が御引用にもなり、昨日も私ここで申上げましたが、制定当時の吉田総理は、むしろ自衛戦争などというのは有害だといつた強い発言もありたのでありますけれども、その後だんだん解釈と申しますか、政府の御答弁の内容が変つて参りまして、自衛権自衛権行使との間の区別が極めて不明確になつて来ました。御承知の通り、戦車もあれば飛行機もある、軍艦もある、而もこれが自衛権の行使であるというふうにまで発展をして来ておるのであります。先ほど、岡崎外務大臣が今朝もお話なさいましたが、私はこの憲法の解釈としては、富士山の八合目も五合目も、富士山そのものに登るということ自体が戦力である以上は憲法違反である、(「その通り」と呼ぶ者あり)こう私は考えておるのでありますが、自衛権自衛権の行使の問題について、憲法制定当時に遡つて冷静に御答弁を頂きたいと思います。
  71. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 自衛権というものは、これは問題なしに許される、それから自衛力というものも、或る限界の問題を外して考えればこれは許される、これは正しいことであろうと思います。即ち、人によつてその限界とするところは違う。或いは竹槍を持つて自衛力考えれば、それも自衛力であります。いわゆる自衛権の存在、これは誰も異存がないところであろうと思います。そこで自衛権の働く限界の出題、これも私は潔癖に三つの原則を挙げて申上げておりますが、これも恐らく何人もその自衛権というものについては問題はないと思います。残るものは自衛力の限界の問題、その中を更に分析いたしますと、自衛力の働きについての手段としての交戦権の問題が一つ出て来ます。その場合に、交戦権は、これは憲法で否認しておるのですから、どうしても行使できない、これも何人も私は異存のないところであると思います。最後に煮詰めたところの問題は、今の八合目であるのか七合目であるのか、或いは太郎坊であるのかという問題になると思います。そこで我々の申上げておるのは、あらゆる憲法の条章を総合して、憲法のいつておるのは、八合目といわず、五合目あたりで上がり下がりすることは何ら憲法の承知しておることではなくて、政治の問題としてはいろいろあるかと思いますが、分析すればこういう形になると思います。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほどの私の質問に対する答弁を願います。
  73. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 少し忘れましたが、第一点はポツダム宣言についてのお話だつたと思いますが……。
  74. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 自衛戦争憲法制定当時から認めておつたのと吉田総理の見解は変つていないということをあなたは申されたわけでありますが、我々がさつきから読んだように、速記に、国が正当防衛権としての戦争、これは一切否定するんだということと、吉田総理が速記に残されているのを見れば、今自衛戦争は可能だというのとは違うじやないかということを主として伺つたわけです。
  75. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは第三次第四次、その後の吉田内閣を通じまして、予備隊或いは保安隊に関連して、たびたび両院の御質問に出ております。その都度お答えはいたしておるのでありますけれども、昨日も私がお答えした通りに、吉田総理は、むしろ憲法の法律的解釈ということでなしに、政治的な見解として自衛戦争或いは侵略戦争、およそ戦争というものは好ましいものではないということを強調して述べられておることは、その他の答弁においても明らかであります。と同時に、金森国務大臣が法律的見解の答弁の責任大臣として、たびたび私が昨夜申しましたような見解を述べておる。第一項においては自衛戦争は禁止しておらんけれども、第二項において事実上それができないような形になつておるということで押通して来ておるわけであります。その意味において当時の政府憲法についての説明というものは、今日私が申上げておるところと根本において何ら変つておりません。
  76. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時と場所とで答弁が狂われるので、こちらも迷つてしまうんですが、衆議院では法制局の方はこういう内容のことを答弁しているじやございませんか。というのは、あなたは今第九条の第二項により、交戦権が認められないから、だから二項のほうでできなくなる、こういう意味のことを今答弁されておりますが、ところが衆議院の委員会では、直接侵略に対しては交戦権の全部或いは一部を行使する、併しこれは自衛のために交戦権の一部を行使するんだから、これは憲法に牴触しない、即ち、この交戦権を認ないというのは、国際紛争を解決する手段としての場合に限られるのであつて自衛のためには人を殺すことも捕虜にすることも、或いは船を焼払うことも、そういうことは可能なんだということを答弁されているわけなんですが、これは食違うじやありませんか。
  77. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) どうもその衆議院の答弁なるものが正確を欠いておりますけれども、そのときのお答えの趣旨は、要するに自衛権というものの限界内において、その限界をはみ出さない限りにおいて必要最小限度の実力行使はできますということをお答えして、更に交戦権がない関係から、それ以上の害敵手段はとれません、この二つのことを申上げたのであろうと思います。
  78. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連して。そうすると今の御説明を聞いていると、自衛のためには戦争はできない。それから交戦権は自衛のためといえども放棄している。これは明瞭ですね。先ずそれから……、これは明瞭ですね。
  79. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 自衛のためには戦争はできない、これはまあ戦争の定義でございますけれども、できないと申上げてよろしいと思います。第二点はおつしやる通り
  80. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじやその次に、自衛のための武力行使はできるんですか、できないんですか。
  81. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは先ほど申しました通り自衛権の限界内であればできます。
  82. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは吉田総理の意見だと思つていいですね。
  83. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今日においてはまさにその通りであろうと思います。
  84. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今日においてはというのが少し曲者ですね。(笑声)併し曾つて吉田総理は、日本戦争を放棄し、軍備を放棄したのであるから、武力によらざる自衛権はあると、外交その他の手段で以て国家を自衛する、守るという権利は無論あると思います。そこで、ここでは自衛権のあることは認めておられるけれども、武力によらないものでなければならないんだということも言つておる。その点から言えば明瞭に、自衛権といえども武力によやものは持てないんだということが明瞭に述べられていると思いますが、この点をどういうふうにお考えか。更に他の機会に吉田総理は施政の演説において、武力を除く自衛権は国家がもとより持つておることであることを言明いたしております。ここでも明瞭に、自衛権の行使といえども武力によるものは除かれているのだということを明瞭に言つておられる。武力行使は従つて自衛権の名の下においてもできないんだということは非常に明瞭だと思うんですが、その点はどういうふうに……。
  85. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは、私は失礼でありますけれども、吉田総理大臣は法律の非常な立派な専門家であるとは私は率直に申上げまして思いません。従いまして戦力であるとか武力であるとかという言葉をそう法律的に正確に使い分けておられたとは考えません。今でも恐らく、或いは場合によつてはその使い分けを混同されるかも知れないと思うのであります。それは別といたしまして、要するに今のお話の重点は、要するに今でも、私どもは考えておりますけれども、自衛権というものを裸ですぐおい来たと、こう発動すべきものであるのか、そこに外交交渉によつて平和的に解決する途があるのかどうか、これは大きな政治の問題として、すべての場合に応じて先ず考えられなければならないことは、外交交渉によつて解決がつくかつかないかということを第一に考えることは、これは当然のことであつて、その点から考えましても、筋道は、政治家としての筋道は全然変つておらないと思います。
  86. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 如何でございましよう。この自衛権の問題は随分これで長い時間論議されましたが、この委員会は質疑の委員会であつて、結論は得られないと思います。  それからもう一つ申上げなければならんことは、まだ質疑者、自分の番として質疑をされてない質疑者がまだ三、四人おられます。そういうことも考えて一つ質疑を続けて頂きたいと思います。
  87. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 答弁のほうがなかなか長いので(笑声)関連質問が多くて私も一項目だけにとどまつておるわけですが、これが長くなると困りますから適当に切りましよう。併し最後に、木村長官法制局長官答弁で我が意を得たりというような恰好で泰然とされてるようですが、あなたは昨日自衛戦争は可能だと言われたんですれ。それを今こちらのほうでは不可能だと言われますが、如何なさいますか。
  88. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 昨日矢嶋委員の御質問憲法第九条第一項のいわゆる国際紛争についての御議論であつたのであります。そこで私は憲法解釈上は自衛戦争も否定されてはいない。併し我々といたしましてもいわゆる自衛権の行動、それはいわゆる自衛権の許す範囲内においての武力行使であるということを繰返して申上げたのであります。
  89. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 皆さん方の説明によれば、極端に他国を侵略する目的で行動する以外はすべてのことが可能になると思うんです。憲法改正しなくて何でもできるじやございませんか。戦争という言葉を使わないで行動と表わす。富士山の頂上までは行かないが、八合か九合目でとどまつている。それから自衛のために、理論上でなくして実際的にも、こちらを攻撃して来るところの海上部隊或いは航空部隊の拠点を自衛のために叩けるということになれば、極端な先制攻撃、侵略戦争以外はすべてのものが可能になるわけで、昔の日本といえども軍国主義時代に侵略という言葉を出していなかつたわけですから、実質的には何ら変らないという結論になると思うのですが、それをどうお考えになりますか、それが一点と、それからこの件に関してもう一つ承わりたい点は、今も佐多委員から質問がございましたが、自衛のためにも武力行使はできないと、こういう解釈に立てば、これは全部すつきりして来るのです。けれども、あなた方は自衛のためには武力の行使ができると言われるわけです。ところが自衛のためにも戦力は持てない、こういうふうにあなた方が規定されるから非常に不明確になつて来るわけです。先にもちよつと申上げましたが、改進党のように、自衛のために戦力は持てる、こういう解釈に立てば、あなた方の今の答弁は一応通つて行くわけです。けれどもそうならない限りはどうしても納得できない。  そこでそれに関して一つ尋ねますが、これは副総理法制局長官に伺いますが、やはり憲法九条の第二項のほうですがね、国際紛争を解決する手段として武力行使はいけないが、自衛のためには武力の行使はよろしい、こういうことになれば、九条の一項で「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」。となれば、そうなつているのですから、自衛のためには武力行使はできる、前項の目的を達するため、自衛のためには戦力は保持しないということはない、即ち保持できる。こういうことになるではございませんか。条文の解釈からすれば、自衛のためには戦力は持てる。条文の解釈はそうなる。私は日本人としての日本語の解釈の立場からいたしますればそういうふうに考えられるのですが、緒方総理如何ですか。ちよつと緒方総理から先に。
  90. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 法務局長官のほうがまともなあれができますから……。
  91. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは正に芦田学説でありまして、芦田学説に御賛成のようでありますけれども、私どもはそうは読んでおりません。自衛のために、この「前項の目的を達するため、」というのを、侵略戦争を目的としてというふうに読むことは、九条第二項の存在の意義というものを薄くしてしまう、むしろナンセンスにしてしまうのではないかと思います。これは如何なる目的のためでも戦力はいかんということにしないと、どうしても九条二項の解釈は筋が通らないと思います。
  92. 矢嶋三義

  93. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今法制局長官から申上げた通りであります。(笑声)
  94. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そんならなおいけないじやないか、それとちよつとさつきの第一点。
  95. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 第一点は何ですか。余りたくさんあるので……、(「新党問題で頭を奪われてしまつておるのだよ、もう総理大臣になつたつもりで」と呼ぶ者あり、笑声)
  96. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなた方の解釈によると、侵略戦争、先制攻撃以外は、元の日本の軍隊と同じように何でも可能だということを申上げたのです、私は。
  97. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) その点ですか、わかりました。九条の第一項では、自衛戦争は禁止してはいないのであります。併し第二項では、戦力を持つことができないようになつておりまするから、武力行使はできますけれども、戦争できない。ただそこまでは自衛戦はいいという解釈をとつておる方があります、学者の中でも。改進党とおつしやつたが、改進党でもそうとつておられるようであります。(「その改進党さんと仲がいいじやないか」と呼ぶ者あり)併し政府及び自由党ではそういう解釈をとつておりません。
  98. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連して。どうも自衛権であれば武力行使ができるのだという考えをとつておられることが我々にはよくわからないのですが、これは明らかに先ほどから繰返し申上げるように、吉田首相自身が、武力によらざる自衛権でなければならないんだ、自衛権はあるけれども、これは武力によらざるものなんだということを明瞭にしておられるのですよ。それでこれに対して法制局長官は、これは政治的な答弁で、武力によらざるとか何とかいうのは非常にルーズな答弁であるということを言つておられるのですけれども、これはあなた自身を侮辱するも甚だしいものだと思う。これは当時自衛権の問題が非常に問題になつたときの問題の答弁なんですよ。そうであるならば、必ずこれは法制局長官の助言によつて正確に答弁しておられるものだと思う。それにもかかわらず、それはルーズな答弁だから、政治的な答弁だからこれは違うのですというようなことじやその政治的な責任は解けないと思う。それじやこれは政治的にルーズな答弁だから、もつと事務当局が正確に答弁をすればそんなことは言わなかつたはずだというふうに言われるのでしようが、それならば、別に条約局長の西村君が同じときにはつきり言つております。「憲法第九条第一項は、国際紛争を解決する手段としての戦争と武力行使はこれを放棄しておりまして、直接には自衛戦争には触れておりません。しかし第二項で一切の軍備と国の交戦権を認めておりません結果、自衛のための戦争も放棄したものと了解いたします。自衛権の行使が戦争または武力の行使、こういう形をとる場合、わが国は原因のいかんを問わず、すべての戦争または武力行使を放棄しておりますから、そういう形式をとる自衛権はないものと解します。」、明らかに自衛権の行使としての戦争又は武力行使を否定をしておる。これは事務当局の正確な答弁だと思う。従つてこれが政治的にルーズな答弁だからそんなことは許されんのだなんということはあなた自身を自己侮辱しているのですよ。食言も甚だしいと思う。
  99. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ルーズな答弁などと申しますというと、第一私が吉田総理に叱られると思います。そういうことを言つた覚えはありませんが、尤も法律的な正確性は如何でありましたでしようかということを申上げておる。今の西村局長の答弁も同じだと思います。とにかく交戦権というものはないものですからして、戦争になり得ないのであるということなのであると思います。
  100. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それでは武力行使はあり得るというのですか、自衛権のためならば。
  101. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 武力とか戦力とかいう定義は別といたしまして、実力の行使はあり得ると考えております。
  102. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 武力行使はどうか、さつきはあると申された……。
  103. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) あり得ると申上げてよろしいと思います。
  104. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 如何でございましようか。矢嶋君の質問は十時五十分から続いて今まで来ているのでありますが、ほかの委員でまだ一度も自分の持分として発言されていない方が先ほど申しました通りに三、四人おられます。でありますから、如何でございましよう。矢嶋委員はこの際ほかの委員にお譲りになることはできませんか。
  105. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もうちよつとやらして下さい。
  106. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 時間の制限は初めからこの委員会はなかつたのでございまするから、矢嶋委員がまだ発言を求められれば、委員長といたしましてはそれを許可しないわけには行きませんが、併しほかの委員諸君のこともお考えになつて如何なものかと御相談申上げるのであります。
  107. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちよつと議事進行について。もう余計時間はかからんと思うのですがね。私もうちよつと時間頂きたいと思うのですが。(「やれやれ」と呼ぶ者あり)非常に重要な問題で、関連質問があり、ここまで来てなお片付かんわけですが、もうちよつと……。
  108. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) これは片付くわけはないと思いますが、質問でありますから……。
  109. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 意見の相違じやなくて解釈の問題だから片付きますよ、正確に正直に答弁しさえすれば。
  110. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) お互いに自分の意見はお持ちになつておられるのだから、お互いにここで自分の意見を吐いておられるのだからして、結論には到達しないと思う。
  111. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 更に質問を続ける方がございましようし、今の問題については更にいろいろの角度から自分の持ち時間で質問される方がございましようから、私はもう今の問題については余り触れないで、ほかのことを極く簡単に短時間にお伺いしますから……。
  112. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) どうぞ矢嶋君。
  113. 吉田法晴

    吉田法晴君 議事進行について。
  114. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) この問題ですか。
  115. 吉田法晴

    吉田法晴君 ええ。この憲法九条の問題は、或いは自衛隊法に関連しても問題になると思いますので、私どもも適当に終るべきだと思いますが、併し昨日からの答弁で、昨日も岡崎外相と木村保安庁長官との間に答弁の食い違いがあると指摘いたしましたら、違つておらんのだというお話がありましたけれども、例えば外国から日本に対して攻撃がなされた、その拠点を叩き得るかどうか。岡崎外相は、或いは例えば高射砲でこれを防ぐとかそういうことであるべきであろう、こういう答弁がありましたが、木村保安庁長官は、拠点まで叩くことができるだろう、こういう答弁の食い違いが残つております。  それから今明らかになりましたことは、自衛戦争について法制局長官は、自衛戦争もできないのだ、木村保安庁長官は、自衛戦争ならばできるのだ、こういう御答弁がありましたし、その答弁の食い違いについて緒方総理も聞いておられた通りでありますが、政府はつきりした一つ答弁を伺つておきたいと思います。
  116. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私と木村大臣との間には食い違いはないのであります。これはもうよくお互いに了解しているので、ただ表現が木村さんは非常に稀なる場合を述べておるし、私は一般的な原則を述べておるから違うだけでありまして、中身は全然違つておりません。
  117. 吉田法晴

    吉田法晴君 一般的なことと稀な場合云々というお話でございますが、自衛権或いは自衛力の発動の態様として違いが、表現の上と言われますけれども、表現だけでなしに、どこまでできるかということは大きな違いだと思とのです。緒方総理はつきりその辺をどういう工合に政府として考えられるか、伺いたい。  それから自衛戦争について可能であると考えられるのか、ないのか、この点は今お聞きになつ通りでありますが、その点を明確に一つ御答弁を願いたいと思います。
  118. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点について私から一言申上げたいと思います。昨日の御質問でありますが、昨日は、飛行機の襲撃についての設問をされたのでありますが、無論この自衛権の行使には限界があるのであります。いわゆる急速止むを得ざる場合、而してその行使は又最小限度にこれをとどめる、これは論を待たないのであります。飛行機の場合において、飛行機からの襲撃でも、最小限度にこれを食いとめるのには高射砲その他のものでやるべきである、併しそれができない場合、その場合どうするかということになれば、或いは拠点まで叩かなければならない。併しその場合においても必要最小限度であるから、叩いてしまえばすぐこれを引揚けるということであるのであつて、決して我々はその自衛権をどこまでも伸ばして行こうという考えはない。最小限度にとどめる。少しも食い違いはないと考えておるのであります。  第二間は、先ほど申上げました通り憲法上の解釈問題である、九条第一項においてはどうかと、いわゆる自衛戦争はどうかという問題であるから、私は憲法の解釈上としてはこれは自衛戦争も否定されるわけではない、こう申上げた。併し自衛権の行使については繰返して申したように、最小限度にとどめて、いわゆる実力行使は止むを得ない場合に用いる、こういうことを繰返して申したのでありまして、決して食い違いはないと私は考えております。
  119. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 吉田君……。
  120. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 おれの時間がなくなつてしまう。(笑声)吉田さんは持ち時間があるのでありますから、私は簡単にさつさと済ましますから……。
  121. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは矢嶋君、願います。
  122. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では始めましよう。(笑声)緒方総理にお伺いします。昨日緒方総理は、この内閣が変り、事態が変れば、憲法の解釈も若干幅を持たしてもいいという意味の答弁があつた。私が一番あなたにお伺いしたい点は、ここに自由党と改進党で協調が相成り、成立して、ここに自改の共同政権というものができた場合、自衛のためには戦力も持てる、自衛のためには戦力が保持できるという閣議決定の下に解釈を統一して今後防衛の問題を処理されて行かれるというようなことが私はあり得るのじやないかと、こういうように昨日の答弁から想像するわけですが、如何ですか。
  123. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) どういう伏線があるのか知りませんが、(笑声)その意見が調整されなければ共同政権などというものはできないと思いす。
  124. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 鶏と卵になりましたが、私の言うのは、違つた角度からお伺いしますが、共同政権ができるためには、いろいろな要素があつてできるだろうと思うのです。で、できた場合を考えましよう。その共同政権ができた場合にいろいろの政策問題が出て来ましようが、その中の一つの問題として自衛のための戦力は保持できると、こういうことが問題になつた場合に、その新らしい内閣でそういう解釈をされて、今後国民なり国会に臨んで行かれるという場合が、そういうこともあり得るかあり得ないか。そういうことは絶対不能のことだと、自衛のためには戦力は保持できないと、こういう憲法解釈をした以上は、内閣が変ろうが事態が変ろうが、そういう幅というものは絶対に持てないものだと、こういうふうにお考えになつていらつしやるかどうか伺ういたいというのがポイントです。
  125. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) その意見が調整されて後でなければ共同政権はできないと、こう申しているのであります。
  126. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その調整できるか、できないかは問題になりません。私は今度副総理に伺つている点は、憲法自衛の問題に対する解釈の場合にですね、今はつきりと内閣では自衛のための戦力は持てないと、自衛のためでも戦力は持てない、こういう立場に立たれているわけです。これは共同政権であろうと単独政権であろうと、どちらでもよろしい。事態が変つても或いは内閣変つても、そういう憲法解釈というものは今後絶対に変えらるべきものでない、こういう立場に立たれるのであるか。或いは昨日あなたがちよつと御発言になられたように、時と人の流れで、その程度の幅は持たせることができるというお考えでいらつしやるか、副総理の個人的な見解を承わつておきたい。
  127. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 個人的な見解を申上げますが、時と人の流れというようなことを私は昨日申した覚えはないのであります。その内閣が変つた場合にはその内閣が、総理大臣の意見を中心とするでありましようが、閣議を以て決定した場合には変る場合があると、こう申したのでありまして、ただ今の憲法第九条の二項に関する解釈は変らないと思います。
  128. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、一瀉千里に進んで行きます。木村保安庁長官にお伺いいたしますが、今度MSA援助を受入れると恐らく完成兵器が来るだろうと思うのです。そうして外敵に対処するような編成と訓練をされるわけですね。で、あなたは警察予備隊当時、警察予備隊は国内の治安を維持するんだ。従つてこの編成と装備も共に外敵というものは全然考えていないのだ。若しも編成、装備を外敵、外から来るものにということを考えるならば、これは憲法に違反するから相成らんけれども、この警察予備隊、それからこれが発展して生れた保安隊、警備隊は、国内警察力の問題で、外敵というものは全然考えていないから、これは憲法に違反しないのだ、こういうことをあなたは曾つて国会答弁しております。ところが今度のMSAの完成兵器の援肋によつて生れる、強化される自衛隊は、条文にもはつきりと一応外から来るものにも対処するところの編成、装備を持たれるわけですが、このお考はいつからお変りになつたのか伺いたいと思います。あなたの憲法解釈変つているのですよ。
  129. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 憲法解釈ちよつとも変つておりません。今度自衛隊ができますると、まさしく自衛隊の任務として不当な外部からの実力行使に対して対処し得ることになるのであります。と同時に又国内におけるいわゆる間接侵略、それらに対しても対処し得ることになるのであります。両々相待つて日本防衛の全きを期するものでありまして、任務は二つあります。そこで今度できまする自衛隊においても両方の部面において装備を我我は完成したいと、こう考えておるのであります。
  130. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういう法案の説明は無用なんです、わかつておるのですよ。あなた曾つて外のものに対する予想しての編成とか装備をしてはならんと、国内の治定と秩序の維持だけでなければ憲法に違反すると、こういう憲法解釈をして国会答弁されておるのです。違うじやございませんか。憲法解釈変つて来たじやございまんか。一言何かあつて然るべきだと思います。
  131. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 決して変つておりません。(「どう変つておらん」と呼ぶ者あり)
  132. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 又時間がかかると委員長から注意を受けるのですが、変つておるでしよう。警察予備隊、保安隊は、これは国内の治安の維持と秩序の維持だ、警察力なんだと、外敵に対処するということは考えないのだと、従つてその警察力という考えで或る程度の装備をし或る程度の編成をしても、これは憲法には違反せんけれども、外から来るものを予想して装備をたり或い編成し訓練するということは憲法の違反になりますと、併し保安隊はそうでないから、この保安庁は憲法違反でないと、こういうふうに保安庁法が国会にかかつたときにあなたはこういう答弁国会を押し切られた。今度はあなたは外敵になれば、その当時のあなたの答弁を以てすればはつきりと憲法違反じやございませんか。
  133. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 自衛隊なりますると、自衛隊はいわゆる今申上げました通り不当な外敵というものの侵略に対してもこれに対処し得ることになるのです。まさしくその装備においては、その外敵侵略に対処し得るようなことに装備はなるだろうと考えております。
  134. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 故意に法案の説明だけされておるようですから、これは木村長官の前の言明から言えば、はつきりみずから今度のMSAの受入れ、自衛隊の創設というものは、木村長官の前言を以てすれば、みずから憲法違反たと立証することをされておるということを私はここに断定いたして次へ進みます。参議院の法制局長のほうがよかつたのですが、お見えになつていないから佐藤さんに御答弁願いたいと思いますが、採決の問題ですよ、採決のね、国会における……。まあMSA協定或いは自衛隊法国会にかかつた場合、これは記名投票になるだろうと思うのです。そのときにこれは恐らく社会党、私の党は憲法違反だという立場から反対するように党議はきまるだろうと思います。で憲法の、合憲であるか違憲であるかということが、この違憲というものがやはり私はポイントになると思うのですね。改進党さんと自由党さん、自由党はまあ与党だからはつきり態度はわかつておるでしようが、改進党さんは恐らく私はこの二つの案件には賛成の記名投票をされるのだろうと推察しておるのですが、そういう場合を予想してお尋ねしますが、で自由党は自衛のためには戦力は持てない、こういう基本線に立つて賛成という投票をされるわけですね。それから改進党は自衛のためには戦力は持てると、それは違憲でないと、こういう立場において、これを賛成の投票をするわけです。憲法解釈は違うわけですね。同じ賛成でも異質のものを、而もこれは枝葉の問題でなくて根本の問題です。そういう異質のものの数を合せたものが反対数を上廻つたからと言つて合法性があるかどうか。私はこれは先ず基本的な問題から、自衛のために戦力は持てるか持てないかというその基本の採決をして、そうしてそれがきまつて、その上に立つての採決をしなければこれはその採決の効力はないと、こういうふうに私は考えているものでございますが、さつきから盛んにこの憲法論がありましたから、この際参議院法制局長のほうがよかつたのですが、あなたの答弁を参考のために聞いて置きたい。
  135. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私としては非常に嬉しい質問でございます。この前提として、憲法の解釈というものは多数决によつて或いは公の権力によつてきめられるものであるか、どうかということが大前提になると思います。私はこれは国会が仮に多数決で憲法解釈が然りとおきめになつても、それを国民に押付けることは私はできないと思います。これはもう各人が、主権者としての国民が自分の良識に従つて判断し、行動すべきことであろうと思います。従つてそういう前提に立ちますというと、今まで憲法論義の盛んでありました破防法におきましても或いは保安庁法におきましても、皆国会の採決の際にいろいろ討論がございます。委員会においても皆憲法論を振りかざして御討論になります。又その同じ賛成者であつても、憲法の根拠を異にしておられる賛成討論というものもたびたびあるわけでございます。併しその採決はこれは政治としておきめになるのでありますから、そういう意思の総合された結果がいいか悪いかということによつて出て来ることで、さようなことで今回のものについても当然その憲法の根拠とするところの解釈はおのおの議員各位においてお違いになろうとも、総合された結論がこうであるということによつてきまることである、これは当然の原理だろうと考えております。
  136. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 まあ私これは納得できないです。まあ総合云々と言つても、その基本的な最も根幹になるものが相違しておる異質のものが、その採決が合法性を帯びるかどうかということについては私は疑点を晴らすことができませんが、次に参ります。  岡崎外務大臣とそれから木村長官に伺いますが、このMSA援助に当つてアメリカ側は陸上部隊に重点を置いて、航空部隊海上部隊については援助を渋つているということをよく聞くのです。又この日本政府から要請しました援助期待額に対するアメリカ側の出方を見ても実際がそれを証明しています。これは一体どこに基づくものか。吉田総理並びに木村長官は、我が国の経済力では三軍均衡方式というものを打建ててもそんな立派なものはでき上りつこない。こういうことを言われておりますが、まあそうだと思います。併し全体として国力に即応した微力のものでありながらも、陣と海と空との均衡という立場はとつて、そうして皆さん方の言う自衛力の強化を図りたいという基本線に立つていることは私は間違いないことと思うのです。ところがMSA援助を受けるに当つて向う側は海と空のほうは非常に渋る、又アメリカ側の通信によると、日本には農村に青年諸君があり余つておる。それで陸上部隊は幾らでも募集ができるし、そうしてこの陸上部隊ならば訓練も楽にできる。海上と空中はこれは移動も楽であるし、小笠原とか或いは沖縄を押えてここに航空基地をおき、原子兵器もここにおいておけば、アメリカの極東政策には何ら支障がない。従つて陸上部隊中心にするのだということが我々の耳に入つて来るわけでありますが、この点と、それからこの援助についてもう一点承わりたい点は、一体援助は何本建になるかということですね。それは保安隊海上警備隊に対するところの援助アメリカの国防省の予算援助されておつたわけですが、昨年の六月三十日打切られたことになつておると思うのです。その後これはMSAと別個に日本側に供与されるのだということを言つているのですが、これはどうなつたのか。それから船舶貸借協定援助の線、それから今度のMSA、それから千五百トン以上はMSAと別個に、伝えられるところの艦艇貸与協定ということになるのですか。というように私らの耳なり目には入つて来るわけでありますが、これはどういう形になつて行くのか。  以上二点について両大臣に承わつておきたいと思います。
  137. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカ側からは、陸上が優位するのか海上が優位するのかというようないずれかの意見ということは日本側には述べられておりません。併しながら最も非公式に私が専門家であるアメリカの軍当局の意見を質しましたところ、日本側に対しまして何ら注文を付ける意味でなく、聞かれたから述べればという前置きをしまして、成るべく陸、海、空の間に均衡の取れた防衛力が最も効果的であろうということは述べております。  それからどこからそういうニュースをお取りになつたか知りませんが、私どもはアメリカが原子爆弾を沖縄へおいておけば大丈夫だといつたようなニュースは聞いておりません。若しその材料をお示し下されば取調べてお答えをすることはできます。  それからもう一つ、何本建かは、これは今いろいろな形になつておりますが、結局は借りるものと贈与を受けるもの、こういう二つにだんだん整理されて行くと思いますが、今のところはその過程で、例えば船につきましても、前のフリゲート艦の協定とそれから今年度新らしく借りればその借入れる協定、二つあり得るわけであります。又今までの保安隊が借りておる船と今度MSAで譲渡を受ける船とは差当りは区別があるかも知れませんが、これはだんだん統一されて、借りるものと譲渡されるもの、こう二つになるだろうと思います。
  138. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 木村長官具体的に……。
  139. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 岡崎外相より申上げた以上のことはございません。
  140. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは借りるものと譲渡をどういうふうに区別されているのですか。どういうふうに予想されているのですか。それで私寡聞にして今知らないわけなんですが、保安隊関係のは別の協定で云々ということをいつか承わつたことがあるのですが、それはどうなるのか。その点と、それから極東向けの駆逐艦等の二十五隻の貸与をするところのアメリカの法律ですね、あの中から十七隻を借りたいということを日本側は強く要望しているわけですが、どうもその十七隻は借りられないらしい。それから飛行機にしてもあなた方の要望のようには行つていないようにも私どもは聞いておるわけなんですが、空と海に対する援助は確かに渋つているのでしよう。その点木村長官如何ですか。それによつてあなたの計画も変つて来るのじやないかと思つてつておるのです。
  141. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この船のことについては今折角交渉中であります。差当り数隻は近く協定ができるだろうと思います。その後のものについてもできるだけ速かに協定できるように努力をしております。いろいろアメリカのほうにも都合があることでありますので、我々の思うように参らんことはこれは当然なことであります。折角努力中であります。
  142. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 贈与と借りるのとはどういうふうになる予定ですか。
  143. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 現在保安隊で持つております装備はこれはMSA援助以外で、協定で……。
  144. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは贈与ですね。
  145. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは貸与です。協定でやるのであります。或いは供与になるかもわかりません。船のはうでは千五百トン以上のものはMSA援助協定外のこれに貸与であります。この前貸与協定を結んだフリゲートと同一の方式をとることになろうと思います。
  146. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうしますと多くを聞きませんが、岡崎外務大臣、贈与はMSAだけのようですね。あと贈与になるものの見込があるかどうか。それから又将来になつてMSAがガリオアみたいに、これは貸したのだ、返せというようなことになる虞れはないのだろうと推察するのでございますが、念のために承わつておきます。
  147. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今木村大臣がおつしやつたように、只今保安隊の使つておりまする船は将来或いはMSAと同格の取扱いになるかも知れません。MSAにおいて受けますものは特別の規定がない限りは贈与でありまして、返済等は必要といたしません。
  148. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 矢嶋君また続きますか。進行についてお諮りいたしたいと思いますが……。
  149. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一、二点で終ります。
  150. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは成るべく簡単に一つ切上げて頂きたい。
  151. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 岡崎外務大臣に伺いますが、MSA協定の第一条に来いて装備の返還に関する取極がございますね。これはユーコー等の他国のMSA協定には見付からないように私は思うのですが、これは五十数カ国MSA協定を受けているそうですが、その返還の規定というものはどこの国の協定にもあるのかどうか。これが一点と、それから軍司顧問団でありますが、これは他国に比べて我が国は非常に多いのはどういうわけか。私はこれは新聞で承知したわけですが、この交渉というのは相当に難航をしたようですね。日本側は当初二百五十人と主張していたにもかかわらず、結局結論としては日本側希望の倍以上の六百五十人、こういうことに落着いたわけでございますが、この保安顧問団が引続いてMSA協定に基く軍事顧問団として残されるだろうと思うのですが、やはり駐留軍意識というものが相当に残つているのじやないかと思うのですがね。これに対して外務省としては如何ように今後努力されて行かれるか。これは非常に大事な問題じやないかと思うのです。保安顧問団が今度軍事顧問団になれば、これはアメリカ大使館員の一員となつて外交官待遇になつて来るわけですから駐留軍性格とは全然変つたものになつて来るわけですから、同じ元の顧問団が軍事顧問団になりましても、これは日本に対するところのああいう方々の考え方、心掛け、態度というものは、独立国日本に対しては画然と変らなくちやならんと思うので。ございますけれども、そういう点が非常に私懸念される向きがあると思うのです。  従つてこの第二点として外務大臣に伺いたいのは、どういうわけで日本側希望が容れられずに二倍以上の多数になり、而もMSA援助を受けている他国のいずれの例にもないほど多数の人になつているのはどういうわけか。どうして交渉がうまく行かなかつたかというその一点と、それとMSA協定に基く軍事顧問団として日本にとどまるところの顧問団に対して、外務大臣として今後如何ようにこういう人に対処されて行かれるかということなんです。大臣の態度一つでは、この慰問団は全く駐留軍意識を以て日本自衛隊に対しては勿論のこと、或いは予算の編成等の日本内政に対して相当な発言権を持つて干渉して来る虞れが私はあると思いますので、これらの人に対処する外務大臣の心掛けは私は極めて大事だ、こういうふうに考えますので、その決意のほどを承わつておきたいと思います。
  152. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 供与されました装備等が要らなくなつたならば、普通常識的に言えば返すのが当り前なんです。これは日本側から先方に渡した場合でも、先方日本に渡した場合吉でも、つまり第一条の場合でも第二条の場合でも同様に取扱つております。これは常識上当り前なことだと思います。要らなくなれば返す。ユーゴにはないようでありますが、これはユーゴにはユーゴの考えがあるんでしようが、これはMSA規定を調べまして、その規定によつて援助を受けるのでありまして、やはり一般的に言えば、要らなくなれば返すということは承認しておるものと思います。  それから顧問団につきましては、数については政府の内部でも、例えば大蔵省はできるだけ費用の点から人が少いほうがいい、これは当然のことであります。保安庁のほうから言えば、必ずしも金の面にだけこだわらないで、援助を受けました装備等が有効に使えるようには、やはりそれだけの必要な人間が要るという考えもありまして、そうして実際上に当つて見ましてこの程度の数が適当であるという結論に達したのでありますが、同時にこの中には使用方法を教える人がたくさんあります。これらは新らしい船とか装備とか或いは飛行機とか、いろいろなものがありましようが、一通り教えれば任務が済みますので、収えるほうの担当の人は要らなくなるであろうというので年度末までには半分にいたそうということにしております。  それから顧問団等はその任務はアメリカ政府側からも厳重に指令されておりまして、いやしくも法律に定められた任務以上に逸脱すれば、これはアメリカ政府側から見ても淡律違反でありまして、日本側から見ましてもこの協定によりまして顧問団の任務ということはわかつておりますので、これ以上のことには行くわけはないし、又行かないように十分の注意をいたします。
  153. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これで終ります。今のに反問するようでございますが、返還に関する取極について、例えば軍事顧問団がこの兵器はもう日本自衛隊としては無用になつた、こういうように日本側と話をきめて、そうしてそれを第三国、まあアジアの第三国にその兵器を援助の形で持つて行くというような場合が私はあり得るのではないか、こう考えておりますが、これはあとで御答弁を頂きたいと思います。  それと最後の質問というのは、これは副総理にお伺いいたしたいと思うのですが、先刻から論ぜられましたように、平和条約の防衛力増強に対する期待とか或いはMSA協定によるところの義務或いは行政協定、それれからやはり海外派兵というような虞れがあるのではないかというのが、国民はどうも割切れないでおるわけですが、具状的に最近の新聞の報ずるところによると、ダレス氏は統一行動というものを叫ばれておられます。又ニクソン副大統領はインドシナに対する派兵というようなものも述べられておられるわけです。で、このMSA協定には資料、物資、そういうものの援助を日米が話合いが付けば第三国にも援助すると入つているわけですが、そういう場合には恐らく私はその持ち運びとか或いは後方勤務につくところの役務の提供というような形で日本自衛隊員が行くというような場合もあり得るのじやないか、こういうように考えているわけでありますが、これらの問題については話しかけがあつた場合には、毅然として排除するところの決意があるかどうか。  ここにワシントンから坂井特派員の記事が最近の日本新聞に出ておりますが、アメリカ関係当局は平和条約なり或いはMSA協定日本の坂井派員に示して、太平洋同盟へ日本は参加せねばならん。吉田総理が渡米したならば真つ先にそれを要請されるであろうということを、条約文を特派員に突付けて話した。こういうことが日本新聞に出ているわけです。これは日本新聞記者が向うに特派されているんですから、そう私は虚構の記事ではないだろうと思うのですが、吉田総理が若しも渡米したような場合にはこういう要請がやはりなされるということが考えられると思うのです。これらの点については副総理はどういうふうにお考えになつていらつしやるかということと、それと最後に岡崎外務大臣に伺いたい点は、ジュネーヴの会議が近く始るわけでありますが、この会議では反共の集団保障体制を作るべくアメリカは非常に努力しつつある。なるかならんかわかりませんが、ともかくアメリカはそれに努力しつつある。そういう目的にこの会議を利用しようとしている傾向があるということが、日本の大体各新聞にそういう記事が出ているわけですが、そういうことになりますと、このMSA援助を受けた日本としては将来非常に集団安全保障機構の参加と、それによるところの義務の遂行という立場から海外の派兵というものは非常に可能性が強くなり、現実問題として起つて来るのじやないか、こういうふうに考えられますので、このジュネーヴの会議等について外務大臣はどういうふうにお考えになつていらつしやるか、以上の点伺つておきたいと思います。
  154. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今のアメリカの何とか言う特派員にアメリカの役人が、吉田総理が見えたときに何かを突付けるという話は、よく内容は知りませんが、恐らく極く下つぱの役人が自分の意見を言うたのだろうと思います。それからダレス長官の発旨、ニクソン副大統領の発言に対しまする解釈は、私申上げんほうがいいと思います。要しまするに今度のMSA、その他今までの条約によりまして、日本防衛隊が或いは自衛隊が外国の戦地に持つて行かれる、或いは今お話しにあつたように人夫代りにされるというようなことは、何らそういう実務を受けておりませんし、今後も絶対にそういうことはしません。
  155. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは相互防備援助協定の附属の「第一条に基く装備の返還に関する取極」という点の2を御覧になりますと、アメリカ合衆国は、第三国への移転のためということがありまして、第三国へ行く場合もあり得るのであります、つまり要らなくなつた装備が……。  それかジュネーヴの会議につきましては、アメリカ側としては会議が目的を達しない場合には、その善後措置として何かそういう防衛的な体制を作るということも考え得ることであり、努力はするかも知れないと思つております。併しそれは具体的な問題が現われてみないと意見を述べるわけには参りません。
  156. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後ですがね、今返還の第三国云々というのですね、第一条に塞ぐ装備の返還に関する取極とそれから母法の、両国の話合いがまとまつた場合に第三国の援助、こういうものを全部合わせて考えると、反共集団防衛機構というものをはつきりと頭に描いて、その中核として日本の役割を果してもらおう、こういう構想というものがMSA援助はつきり私は現われておると思うのですが、外務大臣はそういう認識の下に、そういう場合の実現を頭に描き、又期待しこのMSA協定を調印されたものだ、こういうふうに私は推察申上げておるのですがそうでごさいましようね。
  157. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 失礼ながらその推察は全然違います。このMSA協定は、こういう趣旨のことはいずれの国も受けております。我々は日本におりますから、日本が中心で、すべて日本が中核体になつて何かするように考えやすいものでありますが、これはヨーロツパの国と日本の問にも、或いはアメリカの国と日本の間にも同じような関係が……、MSA援助を受けてこういう規定ができますと……、第三国というのは何も東南アジアに限りません。いずれの国においてもやれる形になつております。決して日本が中核になつて何かやるという形ではない。いずれの国とも同格となつてこういう協定を結んでおる、こういうふうに考えております。
  158. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) お諮り申上げますが、実はこの本日の会議は、昨夜お話申上げました通りに今朝十時から開いて本会議の開会までということにしておつたのであります。幸いに本会議が延びた結果、この委員会は十時五十分……、正十時には始めることができなかつたのであります。それと閣議の都合で以て十時五十分に延びたのでありますけれども、今申上げましたように本今会議が延びました結果、約二時間半に及んで開くことができたのであります。本会議は一瞬半頃に開けるということ聞いておりますが、それが一つと、もう一つは大蔵委員会も外務委員会も本日午後一時から招集されてふるということが一つ。それから又丁度昼の時間にもなりましたが、如何でございまするか、この辺で本日の委員会を終了するということにいたしまして、御異議ございませんか。
  159. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 午後やつてもらえますか、又。
  160. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それはわかりません。
  161. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はこういうふうに聞いていたのです。実は矢嶋君が質問をやつているときに、委員長もまあいろいろ苦慮されている点はよくわかります、併しあとの通告者もあるから時間をセーブしてくれと、こういうことで矢嶋君はまだ質問があるのをだんだんと整理されてやつておられたと思う。私のほうも当然委員長発言をされるときにぱやられるものと了承を今か今かと実は待つていた、それを今やられんというようなのは、委員長の少し心境の変化ですね。矢嶋君に三十分ぐらい前に言われたことと今私に言われておることが全然違つていると思うのです。ですからそれは少し異議がある。促したとえどうあろうとも、私たちも少しは時間的なものとしてやらして預きたいと私は思う。
  162. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) そういうこともあろうかと思つて私は矢嶋君、に御注意申出上げて、これは皆さん同僚の間であるからして時間を繰合せて預けないかということを矢嶋君には御注意申上げたのであります。但し私は時間を制限するという権限を与えられておりませんから、そのことも併せて申上げました。時間の制限するわけには行かないけれども、ほかにも発言者が三、四人おありになるからして、そのこも考え矢嶋君の発言をして噴きたいと、こういうことを申上げたのであります。然るにかかわらず、一時二十分までかかつた、こういうことになつて、そうして今ほかの委員会もありまするし、私の外務委員会もありまするし、本会議も間近に迫つておると、こういう事態に際して、あとどういたしましようかということをお諮りしている……。
  163. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 議事進行に関して……。私のは速記をとめて下さい。
  164. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記をとめて。   [速記中止〕
  165. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記をつけて。  それでは午前の委員会はこれで休憩いたします。    午後一時三十分休憩    〔休憩後開会に至らなかつた〕