運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-11-18 第19回国会 衆議院 労働委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月十八日(木曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 大橋 武夫君    理事 鈴木 正文君 理事 持永 義夫君    理事 稻葉  修君 理事 多賀谷真稔君    理事 日野 吉夫君       木村 文男君    仲川房次郎君       三浦寅之助君    川崎 秀二君       並木 芳雄君    黒澤 幸一君       島上善五郎君    辻  文雄君       中村 高一君    中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小坂善太郎君  委員外出席者         外務事務官         (国際協力局第         三課長)    安川  壮君         労働事務官         (労働局長)  中西  実君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    石黒 拓爾君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    和田 勝美君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君         参  考  人         (名古屋交通労         働組合執行委員         長)      小林 義信君         参  考  人         (秋田県労働部         長)      森松 孝作君         参  考  人         (東京証券取引         所労働組合委員         長)      細谷 節也君         参  考  人         (実栄証券株式         会社社員)   深山 寛二君         参  考  人         (東京証券取引         所理事長)   小林 光次君         参  考  人         (東京証券取引         所書記長)   鈴木 万造君         参  考  人         (東京証券取引         所調査部長)  佐藤  舜君         参  考  人         (東京証券取引         所労働組合調査         部部員)    佐藤 武志君         参  考  人         (熊本県中小企         業協同組合理         事)      富家  一君         専  門  員 浜品金一郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  失業対策関係及び労働基準に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  証券会社における労使関係について、参考人追加をしたいと思います。東京証券取引所労組情宣部佐藤武志君を参考人とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 赤松勇

    赤松委員長 それではさよう決します。     —————————————
  4. 赤松勇

    赤松委員長 失業対策労使関係及び労働基準に関する件を議題といたします。  本日は地方公営企業労働関係に関する問題について、名古屋交通労働組合執行委員長小林義信君が参考人として御出席されておりますので、まず同君の御意見を聴取いたします。小林参考人
  5. 小林光次

    小林(光)参考人 御承知地方公営企業法施行によりまして、名古屋市におきましても、その法第三十八条の第三項に基きまして、企業職員給与種類基準を定める条例昭和二十八年六月一日に公布施行いたしたわけでございます。  御承知企業職員給与種類基準は、ただその種類基準でありまして、内容につきましては、規程でこれを定めるということに相なつております関係から、企業管理者名古屋交通労働組合との間におきまして、団体交渉を何回も続けて参つた次第でございますが、その基準等につきまして、なかなか解決を見出すことができ得なかつたわけでございます。  次に、当組合といたしましては、名古屋市の企業管理者におきまして今日まで定められておりました給与条例内容は、名古屋職員給与条例そのままが適用いたされておりまして、私たち企業職員といたしましては、法の稿神に基きまして別な給与種類基準を定めるということで、今せつかく給与種類基準を定める条例を定めりれましたが、その中に流れております基準等は、すべて名古屋一般職員給与条例を、そのまま当局の方において採用をいたしたいという関係で、当組合との団体交渉が、ここで解状を見出すことができ得なかつたわけでございます。  従いまして、組合といたしましては、労働協約の定めによりまして愛知県の地方労働委員会調停申請をいたしまして、その調停の案につきましては、五月二十八日に至りまして、調停案双方提示をされたわけでございます。この間組合は、昭和二十九年三月三日に愛知地方労働委員会調停申請をいたしまして、出方公営企業労働関係法の十五条四号の関係におきまして、二箇月の調停期間の間に調停案が示されることが非常にむずかしいというような事務当局お話もあり、かつまた組合あるいは管出者当局とも話合いの上におきまして、二箇月のその期間をさらに一箇月延長の申請をいたしまして、先ほど申し上げましたように五月二十八日に至りまして調停案提示がなされたわけでございます。その調停案内容につきまして、組合といたしましてもいろいろと討議をいたしたわけでございますが、第三者の地方労働委員会において調停をいただきましたその案の内容を検討いたしますと、地方公営企業労働関係法の精神がくまれておるという点も考慮いたしまして、組合はこれを受諾いたしたわけでございます。しかし、企業当局におきましては、その調停案を拒否いたしました関係から、自動的に地方公営企業労働関係法の第十五四号の示すところによりまして、仲裁にただちに入つたわけでございます。  従いまして、仲裁に入りましてから、昭和二十九年七月十九日並びに八月二十日と、仲裁委員会の審問を両者受けたわけでございますが、その後今日に至りましても仲裁裁定提示がいたされないというような関係におきまして、私ら組合といたしましては、平和的に、また私らが仲裁委にお願いいたしております問題がすみやかに解決をいたしていただきたいという関係から、愛知労働部労政課あるいは労働委員会等にも催促をいたしておるわけでございますが、いまだその調停案を知らしていただくことができ得ないような状態に立ち至つておるわけでございます。このことに対しまして、三公社五現業に適用をいたされております公共企業体等労働関係法におきましては、私らの適用いたされております地方公営企業労働関係法と同じく、調停期間につきましては、二箇月ということが法の上に示されております。しかし、仲裁関係につきましては、公共企業体等労働関係法施行令の第十二条二項によりまして、仲裁の開始から三十日以内に仲裁裁定を出すことが明示いたされておりますが、不幸にいたしまして私らの適用を受けておりますところの地方公営企業労働関係法には、そのような仲裁期間の明示がどうしても、私ら研究をいたしたわけでございますが見つからないわけでございます。こういう関係等におきまして、できることでありますれば地方公営企業労働関係法の中に、仲裁期間を定めていただくようにおとりはからいが願いたい。  次に、当名古屋交通労働組合が現在係争中でありますところの問題につきましても、早期解決の何らかの御指示関係方面に御指示が仰ぎたいということによりまして、衆議院の労働委員会陳情書を提出いたしまして、よろしく御努力方をお願いいたしたい、このような関係からお願いに上つたわけでございます。  以上でございます。
  6. 赤松勇

    赤松委員長 多賀谷君。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労政局長にお尋ねいたしたいと思いますが、今参考人参考陳述をお聞き及びでありましようが、この件について質問をいたしたいと思います。  今参考人からも提示がありましたように、公企労法関係では、当然施行令において仲裁期間が定めてあるにかかわらず、地方公営企業労働関係法におきましては定めてない。そこで、今日まで六箇月間も延びておる、こういうお話でありますが、この公企労並びに地公労関係いたします従業員は、争議権を奪われておるわけであります。そこで、普通の労働組合ですと、仲裁とかあるいは調停期間がございませんけれども、ここには期間がある。しかも調停が二箇月続いても成立しなかつた場合には自動的に仲裁に入る、こういうことが明記されているのは、やはり争議権関係であろうと思うわけであります。全然圧力がかからない、しかしずるずるになつてはいけない、こういう点で、やはり期間が明示されておると思うのです。私は、本来ならば地公労法にもやはり施行令を設けて、そうして同じように取扱うべきであると思うのですが、地公労法の方には残念ながら施行令がありません。一体なぜないか。さらに、この問題はどういうように取扱われるのか、この点について見解を述べていただきたいと思います。
  8. 中西実

    中西説明員 法律関係は、今の多賀谷委員の言われた通りになつております。公労法の、施行令におきましては、仲裁は一月以内に出すようにという規定がございます。ただしかし、この規定も訓示的な規定で、できるだけ一月の間に出すように努力しろという趣旨のものでございます。地公労法につきましても、そういう規定があつてもいいわけでありますが、実は地公労法は、地方労働委員会それから中央労働委員会という一般労働委員会処理をすることになつております。そこで、労働委員会処理手続につきましては、中労委中労委規則規定をするというようなことになつておりますので、実は中労委で何らかそういつた訓示的なものをつくられるのも一つではなかろうかと思います。  ただ、仲裁のことは、労働委員会におきましても従来ともあつたわけです。従つて地方公労法仲裁が加わりましても、特に規定追加する必要もないということも考えられますので、中労委においては、特に地方公労法ができたときに中労委規則追加ということもしなかつたのじやなかろうかと思うのです。  しかし、おつしやいましたように、争議権もない労働組合関係の問題でありますので、調停仲裁、これができるだけ早く出ることが望ましいことは同感であります。そこでこの問題につきましては、私の方でも非常に気がかりになりまして、再三名古屋県庁とも連絡し、すみやかなる結論が出されるように、干渉する筋合いはございませんけれども、連絡はとりつつあつたわけでございます。何分にもこの問題は地方公労法仲裁の初めてのケースで、従つて地方労働委員会におきましても、慎重にやつておるのじやなかろうか。聞くところによりますと、労使双方からの資料の提出に不十分な部面があるということでございます。ただ、それにしましても、すでに五箇月以上たつておりまして、ちよつとおそ過ぎるという感じは確かにあります。お話もございますので、私の方からさらに十分に御意思のあるところを連絡いたしまして、すみやかに措置するように要望したいというふうに考えております。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 立法的な、あるいは施行令的な手続におきましては、むしろ中央労働委員会規則で定めるべきでないか、こういうお話でございます。しかし、従来ともお説のように、仲裁というものは地方並びに中央労働委員会も扱つておりますけれども、これは一般の主として争議権を持つておる組合を扱つておる、あるいは争議権を抑圧した場合には緊急調整等においてやはり制限があるわけで、これは法律はつきり明記してある、ですから、争議権を押えておつて調停仲裁をそのまま引延ばして行くというようには、今の労働法体系はなつていない。ですから、やはり公労法規定し、訓示規定ではございますけれども、やはり一箇月という目途を定めておる。しかるに地公労法にはそれがないために、五箇月も延びておるわけであります。なるほど、労働委員会といたしましても、地公労仲裁事件は初めてにいたしましても、こういう調停案とか仲裁の案をつくることは、何も初めてのことではない。しかも、調停案の方は一応つくつてある。それは案としてはできましたけれども、不成立に終つたわけであります。組合は承認をいたしましたけれども、理事者の方が拒否した、こういう形でありますので、すでに同じ委員会——性格調停仲裁は違いますけれども、事件は取扱つておる。しかるに今日まで延びたというのは、一つは法の不備であるし、政治的な意図がありはしないか、かように考えております。政治的な意図といいましても、何も国の意図だけではございませんでしよう。あるいは地方財政関係もありましよう。しかしながら、私は何だか政治的意図がそこに含まれているのじやなかろうか、かように考えるわけであります。とにかく一箇月以内で仲裁をしろということになつておるが、これを六箇月間延ばしておる。法といいましても、法律でなくて、むしろあなたの方の省でおやりになる施行令のないというところから、この問題を引起しておるのでありますので、私はすみやかに施行令出してもらいたい、かように考えますが、いつお出しになるか、これをお尋ねしたい。
  10. 中西実

    中西説明員 先ほど言いましたように、もし規定しまするなら、従来の取扱いから見ましても、施行令よりは、中労委規則で、内部手続ではありますけれども、それに準拠してやるようにした方が、あるいはいいのではなかろうかと今のところ考えております。ひとつ至急中労委とも相談いたしまして、もし中労委におきましても、そういう規定のあつた方が——たとい訓示規定といえども、あつた方がいいということに、おそらくなると思いますけれども、そういうふうに意見が一致しますれば、ぜひ規則改正方連絡してみたいと思います。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうしますと、どちらかの方法で近くお出しになる、かように私は考えたいと思うのです。これは何もむずかしいことではないのでありまして、だれが考えても、立案にそんなに時間のかかる性格のものではないと思いますので、早い機会に出していただきたい、かように希望する次第であります。  それから、この事件はやはりあなたの方の手続不備——中央労働委員会不備なのか、労働省がおやりにならないのか、それは別個の問題でありますが、要するに、あなたの方から原因は発しておるのでありますから、ひとつ責任をもつて早く解決してもらいたい。解決というのは、仲裁案出してもらいたい、かように考える次第であります。
  12. 中西実

    中西説明員 御趣旨ごもつともでございますので、十分にひとつ連絡いたしたい、要望いたしたいと思います。
  13. 赤松勇

    赤松委員長 他にもまだたくさんございますので、本件につきましては、先ほど来の多賀谷君の御希望のように、労働省当局においてすみやかに法的な措置をする、同時に愛知地方労働委員会におきましても、すみやかに裁定の出るように促進する。  なお当労働委員会といたしましても、愛知県の労働委員会勧告をする。その勧告内容文案等につきましては、ひとつ委員長に御一任願いたいと思いますが、よろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 赤松勇

    赤松委員長 それではさよう決定いたします。     —————————————
  15. 赤松勇

    赤松委員長 次は証券会社における労使関係について——参考人の方こちらへ来てください。  そこで皆さん、御相談ですけれども、昨日は昼飯を抜き、休憩を抜きにしてやつたのですが、これは委員長としてまことに忍びがたい。それで皆さんの生命の安全を保障するためにも、本日は十二時になれば休憩をする、正一時に再開をいたしまして、労働大臣に対する質疑をいたしたいと思いますので、御協力を求めます。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 赤松勇

    赤松委員長 それでは参考人陳述はこの際省略しまして、ただちに委員の方からそれぞれ必要な質疑に入りたいと思います——賀谷君。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 このたび証券会社ストライキ、あるいは会社でなくて、正式に言えば取引所かもしれませんが、要するに、証券関係従業員ストをした。日経連の方では、これは盲点ストであると、こう言われておるのでありますが、最近われわれがあまりタツチしてない、十分知識のないこの証券会社等においてストライキが行われた。こういう点につきまして、私たち証券会社における労使関係あるいは労働条件というものに対して、やはり実態を把握する必要がある、かように考える次第であります。そこで本日来ていただきまして、何もその当時のストライキの模様ということでなくて、そういう一般的な話を主としてお聞きしたい、かように考えておるわけであります。  つきましては、労働組合関係にお尋ねいたしたいと思うわけですが、最近聞くところによりますと、何か証券会社あるいはあなたの方の取引所ではないのですが、証券会社等において労働組合をつくろう、あるいはその動きがある、こういうことに対して経営者の方から弾圧がある。これは当然不当労働行為と思いますが、そういうことが行われておる。そうして組合はつくれない、あるいはつつた組合も一週間にして解散をしなければならない、こういうような事態になつておるということを聞き及ぶわけであまりす。そこで、そういつた問題がどういう程度に行われておるかということをお聞きいたしたいと、かように考えるわけであります。直接の関係者ではないかもしれませんが、そういう関係に比較的詳しいあなた方を呼んでわれわれは聞くわけです。直接事件がありました方を呼べばいいのですけれども、なかなかこれはその人に迷惑がかかる、こういう点も考慮いたしまして、あなた方に一応聞き、さらにそういう必要がありますれば、直接証人なり、参考人になつていただいて、その証券会社従業員にも聞いてみたい、かように考えますので、一応そういう点があつたかどうか、またどういう実情であるかをお話願いたい、かように考えます。
  18. 細谷節也

    細谷参考人 まずどういう実情であるかという点から申し述べないと、兜町で組合結成ということがいかに困難であるかということがおわかりにならないと思いますので、簡単に兜町の現状というものを申し上げて、それから個々の証券会社の例を申し上げたいと思います。  兜町におきましては、四大証券を初め、基準法がほとんど守られておりません。たとえば就業規則でも、山一証券を初め百十社の証券会社において、従業員がこれを見ることができないのです。ひどい例になりますと、山幸証券では、組合を結成いたしまして就業規則を見せてくれと言つたら、君たちでそう言つても、何もないから、じや君たちりつぱなものをつくつてくれ、そういうような状態であります。さらに丸水証券だと思いましたが、就業規則を見せてくれと言つたら、きようは人事担当者がいないから明日まで待つてくれというので、明日行つたら、ほかの会社就業規則を見せて、それをゴム消しで消して、その上に墨で自分の会社の名前が書いてあつた、こういう実情であります。  さらに、兜町独得の考え方として、親心ということがよく言われますが、この親心という考え方が、賃金の面でも、あるいは従業員労働条件に関する面でも、親心という美名のもとに不当な弾圧がされているのです。それが組合結成に関しても、あるいは従業員の自由な活動に関しても、非常に大きな妨げとなつているということが申し上げられると思うのであります。  具体的にその例を申し上げますと、山一証券で、われわれが争議に入る前に、山一証券人事課長が、従業員個個に当りまして、君たちの中に取引所員姻戚関係にある者があつたら、そういう者とは連絡をとらない方がいい。もし連絡をとつたりなどしたら、北海道に転勤させられるおそれがあるから、そういうことはやめた方がいい。まあ私は親心で事前にそういうことを君たち勧告しておく、こういうふうに言つているのです。それは転勤という脅迫的言辞によつて従業員の自由なる意思を圧迫する。その圧迫を親心という美名のもとに行つているそういう現状なんです。  具体的に申しますと、千代田証券では、われわれ取引所組合をつくりましてから、ただちに組合をつくつたのですが、その際に社長は、ほかの証券会社組合をつくる前につくつてくれるな、もしどうしても組合をつくりたいなら、おれがつくつてやるから、それまで待つておれ、そうはつきり言つております。そうしてこの千代田証券では、会社とお客の圧力によつて組合を解散しなければならない立場に追い込まれております。  さらに金十証券では、取引所デモ行進を見て、五名の従業員が、デモというものはいいものだな、われわれもやつてみたいなと言つたら、ただちに三名が解雇されております。また大福証券におきましては従業員家族を呼びまして、社員組合をつくらせないように、もしつくつた場合には、君たちを紹介した人たちに迷惑がかかるから、家族の方からやめさせるようにと、こう申しております。こういうことが組合員の自由な意思を側面的に圧迫しているというのが事実なんです。  さらに、そういうような動きがあつた場合に、これは家風に合わないと言つて、解雇された者もあります。証券業協会におきましては、部長が、組合をつくるなら、その者をただちに解雇し、新親の者を採用すると、こうはつきり申しております。そういうようにして、われわれ東京証券取引所従業員労働組合を結成しまして、それによつて証券会社組合結成動きができたのですが、玉塚証券千代田証券、それからここにおります実栄会においても、組合ができたのですが、経営者側の不当な圧力によつて次々とつぶされ、あるいはつぶれざるを得ないような立場に追い込まれております。六三証券におきましても、組合を結成すれば会社は解散する、全部首を切る。但し、君たち組合をつくらなければ新規に採用する。そういうように申して、従業員の自由なる意思を阻害しております。こまかいことは、ここに実栄会の人がおりますから、実栄会組合を結成して解散せざるを得ないような立場に追い込まれた実情は、深山君から申し上げたいと思います。
  19. 深山寛二

    深山参考人 私は兜町における一従業員立場として、本日ここに臨んだわけですが、証券界における労働者の主義、主張あるいは要望、これは労働条件維持改善ということにあると思うのです。それは、直接には就業規則こいうことになつて来るわけなんですか、その就業規則が、今細谷さんから話されたように、非常に不備である。たとえて言いますと、全然ないところがある、あるいはあつても完全実施されていない、実行されていない、こういうのが多いわけです。それにもかかわらず、従業員経営者側が協議の上でつくらなければならない性質のものであるこの就業規則が、経営者だけの一存によつてつくられている。しかるにこれを見たことがない。これがいわゆる実情ではないかと思います。  以上のことから、組合を結成してわれわれの労働条件維持改善を行いたい、こういう希望は、兜町における全従業員気持ではないかと思います。この労働条件維持改善について、経営者側がどうして関心がないか。これは過去における徒弟制度、要するに今細谷さんからおつしやつたように、親心というものが非常に阻害しておるのじやないか、こう思うわけなんです。この徒弟制度というのは、非常に封建的なものである。話合いによつて何事も事を済まそう、こういう気持であると思うのです。従つて労働条件維持改善のルールである就業規則というものに、経営者側は全然関心がない、こういうことが言えるのじやないかと思います。この労働条件維持改善におきまして、話合いで事を処理して行こう、こういうことは、基準がなければその話合いすらもできないわけなんです。従つてわれわれは、われわれの主張、要望を通そうとする気持を行動に出した場合、不当労働行為ということによつて無残に葬られて行く、こういう実情じやないかと思います。一例をとつてみますれば、従業員が会合を持つような場合、経営者が事前に、強制的に会合を不能に至らせるべく退社を命ずる、こういうようなことが現在起つておるわけです。それから組合の結成にあたり、事由意思によつてそれに賛成をして加入した者に対して、組合の離脱を説得しておる、こういうことは非常に不当労働行為としてみなさるべきことじやないかと思います。また組合の未加入者に対しても、個別に説得して、自由意思による組合加入ということをくつがえして行く、こういうことが兜町の津々浦々に起つておる現状でございます。  また、第一組合結成にあたりまして、それに対する切りくずしの策というものは、経営者側として確かにあるわけなんでありますが、それを実際に行うべく、一部の社員に、自由意思でない、半強制的といいますか、いわゆる説得によつて、そういうことをなさしめる、実行させる、こういうことがないわけでもないわけなんです。  それから、組合を組織したために経営が非常に不振になる、経営が不可能になる。こういうことを公表いたしまして、従業員の心理を薄弱化させる、こういうことも一例として取上げられ、考えられるのではないかと思います。
  20. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 具体的にあなたの会社のことを話してください。
  21. 赤松勇

    赤松委員長 時間がありませんから、一般論は別として、要点だけおつしやつてください。
  22. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いつ組合を結成してこうなつたというように、具体的にあなたの組合のことを話してください。
  23. 深山寛二

    深山参考人 最初にぼくが述べましたように、われわれは、今までに就業規則に立脚した労務条件じやなかつたということから、組合を結成しなければいけない、こういつた機運になつたわけです。それで九月三十一日に結成大会を開催して結成したわけでありますが、経営者側からのいろいろな要望などがありまして、一週間後に組合を解散しなければいけなかつた、こういうような立場に追い込まれたわけです。その間におきましてわれわれが感ずることは、今述べましたような不当労働行為ということが実際にあつたようにぼくは思うのでありますが、まず最初にいわゆる強制的に退社を命じた、こういうような例もこれに含まれておると思います。
  24. 赤松勇

    赤松委員長 参考人希望しますが、と思うとか、あるいは例に含まれると思うというのではなくして、いつ幾日だれがどのように不当労働行為を受けたのかということを具体的に示してもらえばいいのです。いろいろな主観的な問題は、よくわかつておりますから、いいです。事実調べをやつておりますから、事実だけを述べてください。
  25. 深山寛二

    深山参考人 まず二十一日に結成大会を持つべく、われわれな従業員に参集するようにしたわけなんですが、これに対して、経営者は、それを事前に探知しまして、きようの会合には出席するな、こういうことを従業員言つておるわけです。それからその次の日二十二日に組合未加入者及び組合加入者に対しての個人的な説得というものがありました。それから二、三日休みが続きましたので、日にちは飛びますが、二十七日にいわゆる第二組合の結成というものが朝行われて、この従業員気持、勢力というものが二分されたわけです。これは経営者側の言動と、その代表従業員の言動と非常に一致しておるところが多いことから考えましても、何かそこに裏づけがあつたのじやないかというふうに思うのであります。
  26. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいま参考人陳述をお聞きしておつたのでありますが、委員長から御注意がありましたように、非常に抽象的なことで、これではどうも審議をするのに私の方では困るのです。たとえば、組合に加入した者に対して離脱を説得されたとか、未加入者に対して個人的に組合加入をしないように説得をしたとか、組合をつくろうとしたために解雇をされたとか、そういう場合に、使用者のだれが組合員あるいは非組合員に対して、いつ幾日にどういうことを言われたかと、そういう具体的な事実でないと、われわれはちよつと審議をして行く上に困るのでありまして、そういう点をひとつ明瞭にしてもらいたいと思います。それから細谷参考人から、労働基準法の守られない点があるということを述べられましたが、その労働基準法が守られていないおもなる具体的な事実はどんなことですか。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 証券会社労使関係を調査する前に、私は委員長希望を申し上げ、なお質問をいたしたいと思うのですが、今お聞きのようになかなかお話が抽象的である。抽象的であるということは、やはりわれわれが参考人をこの国会に呼ぶについても、きわめて困難な事態に立ち至つたわけであります。と申しますのは、こういうことを国会で発言すると、あるいは解雇されはしないか、こういうことを非常に危惧をされる。その気持は、われわれよくわかるわけであります。もしそういう事態になれは、国会の委員長としてはどういう御処置をとられるか、これをひとつお尋ねいたしたいと思います。
  28. 赤松勇

    赤松委員長 多賀谷君らしくない質問ですが、それでは今度私は小林理事長に逆にお尋ねいたします。今お聞きのような御質問があつたのです。むろん日本の代表的な兜町を背負つて立たれる大理事長ですから、労働委員会に出席して証言したからといつて、首を切るというような——夏川さんでもそういうことはやりません。いわんや大理事長ですから、さようなことは万々ないと思いますが、これは何もあなたたちを調べるということではなくて、証券会社という特殊な機構の中で、労働争議がどうして起きたのだろうということについて、お互いの特殊ケースとして研究してみようじやないかということで——これは警察官の争議介入問題とは別個の問題です。これは昨日も警視総監を呼んで、明日もまた別にやるのですから、そういう点からひとつ御協力願いたい。この点については、どうでしようか。聞くまでもないことですが、一応意思表示をしておいていただきたい。
  29. 小林光次

    小林(光)参考人 お答えいたしますが、証券会社の件につきましては、遺憾ながら私にはお答えできないのであります。御承知の通り、証券会社は営利会社であり、証券取引所は営利会社ではございません。そういう性格の違つたものでございます。従つて、私には何らこの労働問題に関する監督権は持つておりませんから、これはお答えかちよつと困難であります。
  30. 赤松勇

    赤松委員長 取引所の方はどうですか。
  31. 小林光次

    小林(光)参考人 私自体の問題についての御質問の要点は、どういう点でございましようか。
  32. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今は証券会社で、あなたの方の関係ではないので……。しかし適当な方が見つからなかつたものですから 来てしただしたわけです。まだ述べられておりませんけれども、東京証券取引所の問題もまたお聞きするわけでありますが、従来とも別個な問題としてお聞きしたわけであります。ですから、証券取引所としては、国会に来て話したという理由によつて、あるいは表面はそういう理由ではないと考えますが、事実問題として、そういうことによつて不利益な取扱いをされてはわれわれは困るわけであります。その点について、ひとつ御言明を願いたい。
  33. 小林光次

    小林(光)参考人 私は国会において証言をしたから、首を切るというようなことは考えておりません。
  34. 赤松勇

    赤松委員長 では御了承願います。もしさようなことがあれば、むろん委員会の責任において処理いたします。
  35. 細谷節也

    細谷参考人 先ほどの御質問の趣旨に沿つて具体的事例を申し上げます。これはわれわれ東京証券取引労働組合で、兜町における労働問題懇談会というのを組織しまして、そこに集まつた人々に来ていただいたのですが、大阪商事を初め勧業証券でも、そういう会合に出るなと、はつきり言つております。しかしながらそこへ来た人たらは、首を覚悟で来た人たちですから、そういう人たちがわれわれに言つたことであります。  まず就業規則について、二十八年三月のブーム時代に入つた。これは満十八才です。入つた直後から残業させられ、帰宅は十時ごろ。五月に入つて未成年者が人事課長の命令により屋上に集合させられ、いわく、労働基準局の人が調査に来るから就業時間、退所時間、残業につき聞かれたら、山一の利益は君たちの利益であるからうまく答えてくれと言い渡され、残業のため十時まで残されておるにかかわらず、五時に退所していると言つてくれと言われた。このときに、初めて定時退所の時間がわかつた。それまで全然わかりようもなかつた。このほか、給料から差引かれるのは強制的である。任意とは言つても、課長がみずから来てどうだと言うので、入らないわけには行くない。積立金が未成年者は五百円、一般者は千円ずつ差引かれる。このような積立金は、他の会社にもある例で、小柳証券の場合は身元保証金という名目で強制的に差引かれる。結婚するときにおろそうと思つても、おろしてくれない。資本金十億円を擁し、兜町第一と言われる山一証券でも、このように就業規則すら従業員は見ることができない。さらに日東証券では、就業規則をつくつた際に、朝まわして昼までの間に判を押せと言われて、内容を見ることはできなかつた証券会社というものは相場の変動によつて非常に事務が忙しくなるものですが、就業規則を社長みずからが内容を知らないような現状であるので、われわれが強制労働をさせられているかどうかというはつきりした基準もわからない。日東証券です。就業規則に関して集まつている資料は以上です。
  36. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいま、午後の十時まで残業されておるということですが、これに対して残業手当はどういうことになつておりますか。また強制的に賃金から差引かれている金ですが、これは身元保証金というようなことを言われましたが、これだけですか、ほかに強制的に引かれておるものはありませんか。
  37. 細谷節也

    細谷参考人 山一の場合は、残業手当はついておりますが、協同証券、六三証券、それから三成証券、丸岡証券等は、残業手当は一切ついておりません。それから丸万証券で強制貯金が進められておると申しましたが、そのほかに、入つたときに身元保証金は積んであります。ただ強制貯金がされておるのです。それが名目的に身元保証金という形で徴収されておる。これは従業員の承認を得ておるのではなく、入社と同時に強制的にやつておる制度であります。
  38. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 労働基準局または労働基準監督署から、各会社に係官がおいでになつたことがあるだろうか、その点どうでしようか。
  39. 佐藤武志

    佐藤(武)参考人 基準局の方が、昭和二十七年の末から二十八年三月のブームの当時、調査に来られたことがあります。そのときに、われわれもそうであつたのですが、会社側に不利なことは言わないように、各証券会社でも要請したらしいし、私も要請されましたし、私のところの女子従業員も要請されたのでありまして、みな組織がなかつたものですから、何も言えないでおつたような状態であります。
  40. 島上善五郎

    ○島上委員 さつき委員長は十二時までと言いましたが、基準局長も見えてないし……。
  41. 赤松勇

    赤松委員長 運営につきましては、あとで御相談申し上げます。
  42. 島上善五郎

    ○島上委員 ただいまの陳述を聞きますと、これは近江絹糸以上かもしれない、それほど驚くべき労働基準法違反が行われておる。ただいまの陳述は、少し具体性を欠いておりましたのでお伺いいたしますが——もちろん具体的に陳述することによつて、不利な扱いをするということは、あるべきことではありませんから、あなた方は、ただいま陳述されましたことに対して、いつ幾日、どこの会社で、だれがこういうことをしたというふうに具体的に言つていただきたい。もし今ここに書類がなければ、あとでもいいのですが、具体的に陳述することができますか。
  43. 佐藤武志

    佐藤(武)参考人 これは私のところの東京証券取引所の例でございますが、現在女子はパンチを使つておりますが、その女子が一週間に九時間の残業を強制されております。また昭和二十七年末から二十八年三月のブーム当時は、われわれは休憩時間というものを一切与えられず、昼食が済んで、すぐ仕事にかからないわけに行かないように、課長並びに係長から要請を受けてやりました。その当時、女子には九時か十時ごろまで残業をさせた。そのとき私が、基準法というものがあるんだから、少くとも女子は早く帰してくれと言つたら、係長は、うちの会社は女子が主力なんだから、女子が帰つてしまうと、君たちだけでは何ともしようがないから、できるだけのことはしてもらわなければならないと言いまして、おそくまでやらして、あと自動車で送つた。私などは百七十時間残業をしました。それから水島課長という方ですが、取引所には休憩時間というものがないんだということを言つております。  それから、たしかこれは昭和二十六年だつたと思いますが、業務規程あるいは給与規則の改訂の際に、従業員の代表がこれに捺印しなければならない、従業員代表はここにおられる鈴木書記長だと言われて、われわれは全然関知しない間に鈴木書記長が判を押してそういうものを承認した、われわれはあとで承認させられた、そういう事実があります。これは課長から伺いました。  それから、われわれが採用される場合、小林理事長あるいは鈴木書記長、そういう方から、組合をつくらないように、つくつたらすぐ首にする、そういうことは言われております。  それから、これもやはり昭和二十六年の夏だつたと思いますが、その当時われわれ社員の親睦会として清交会という団体がありました。私もそのとき幹事だつたわけです。その幹事長をしておりました森田光次という、その当時調査課に勤務しておりましたが、その人を中心として、この会を組合にかえて行こうという考え方を持つて動いておりましたが、ほかの理由——勤務成績が不良であるとか、そういう理由で、その人は馘首されまして、遂に失敗したことがあります。
  44. 赤松勇

    赤松委員長 監督課長が来られましたから……。
  45. 島上善五郎

    ○島上委員 監督課長は、ただいまの参考人陳述をお聞きになつていなかつたと思いますが、ただいま述べられた範囲でも、就業規則の問題、残業の問題、強制貯金の問題、その他未成年有の問題、さらに未成年者を屋上に集めて、基準署から聞きに来たら五時までで残業しなかつたと言えというようはことを訓示をしておるというような事実等、驚くべき基準法違反の事実が存在しておりますが、今まで基準監督署においては、これに対してどのような監督をされたか、お答え願いたい。
  46. 和田勝美

    ○和田説明員 証券会社関係では非常に問題があるという申告が、昨年の二月、三月ごろに非常に多うございましたので、私どもの方で当時——二十八年三月でありましたか、総合監督をいたしました結果、御指摘のように、今おあげになりましたような点について、相当多数違反が出て参りました。業者の方に、それぞれ是正の措置をば勧告あるいは命令をいたしまして、それ以来漸次基準法に関しましては、是正の方向に向つておられるようであります。  当時の監督方針といたしまして、重点をば四つ置いて参りました。第一は、女子の労働時間に関する問題、第二は、割増賃金の是正、第三は、時間外協定が出ていないので、これに関する是正、次は健康診断——あそこは御存じのように多数の人が立会をいたします関係もありますので、健康が少し心配だというようなことから健康診断、この四つに重点を置いて、それ以来監督を実施いたして来ております。その結果、賃金の近代化運動とか、あるいは賃金問題の研究会とかそういうものが、具体的に、昨年から本年にかけて、どの証券会会においてもおのおの努力をされまして、従来よく大入袋とかそういつたことで金が出されておつたのが、大分是正をされて来ておる、こういうふうに私ども報告を受けております。  本年に入りましては、三月、七月、十月の三回申告がありました。件数にいたしましては六件であります。内容は大体退職金と解雇予告手当金の問題、割増賃金の問題でございますが、これらの申告のありました事件については、全部監督をいたしまして解決を見ております。  私どもが昨年、本年にわたつてとりましたのは、以上申し上げたものであります。
  47. 島上善五郎

    ○島上委員 これは組合側に伺いますが、ただいま御答弁のあつたように、監督をした結果、是正されて来た、あるいは是正の方向に向かいつつある、こう言うのでありますが、はたして昨年勧告をした以後、そのように是正されて、基準法違反の事実が皆無になつたかどうか。
  48. 佐藤武志

    佐藤(武)参考人 これはたしか今年の三月だと思います。入中証券で、退職の場合、いわゆるリコメンデーシヨン、二十二条の証明書を要求したのですが、それを拒否された。それから残業手当、休憩時間については、三木証券は残業手当がなく休憩時間もない、勤務時間は午前八時二十分から午後五時まで、有給休暇が一年中ない。三成証券も同じく残業手当がありません。丸和証券は有給休暇がありません。丸国証券は残業手当がなく、有給休暇が年に二回、これは夏休みという形で夏期しかないのです。二、三の例でありますが、大体こういう例がありますので、決して是正されているとは思いません。
  49. 小林光次

    小林(光)参考人 ただいま佐藤君から労働組合を組織したら首にするということを私が言うたという発言がございましたが、そういうことは絶対にございません。  それから社員代表として鈴木書記長がここに見えておりますので、もしお許しがありますれば、鈴木書記長から答弁いたしますが、いかがでしようか。     —————————————
  50. 赤松勇

    赤松委員長 この際お諮りいたします。小林参考人の申出を許可し、東京証券取引所書記長鈴木万造君に、参考人として発言を許すことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認め、それではさように決します。     —————————————
  52. 赤松勇

  53. 鈴木万造

    鈴木参考人 先ほど佐藤参考人から、取引所の使用人代表として、私が経営者と契約をしたようなことを申しておりましたけれども、これは非常な間違いであります。私は所員筆頭の地位におりますけれども、初めから経営陣の中におりますので、決して使用人の代表になつて調印をしたことはありません。使用人の代表として調印した者は、取引所の中に清交会という所員の会がありますので、多分その幹事長なり、あるいはその他の役員が調印したことと思います。この点ははつきりした間違いでありますから、申し上げておきます。
  54. 佐藤武志

    佐藤(武)参考人 理事長がただいまそういうことはないとおつしやいましたが、これはおそらく私のところの組合員全員が承認になると思います。みんな聞いております。それから書記長のおつしやつたことですが、内田課長という方が、私、市場課勤務のときに、課員の前で説明したのを私が聞いたので、そのときに二十何名おりましたが、これもみんな承認になると思います。
  55. 鈴木万造

    鈴木参考人 これは調印した書類がありますから、すぐわかります。
  56. 佐藤武志

    佐藤(武)参考人 書類は私は見ておりません。
  57. 細谷節也

    細谷参考人 ただいま就業規則に関して、清交会という親睦会があるから、そこの幹事が調印したと思います言われたのですが、われわれ従業員は、そのような事実を知つておりません。それまで休暇が十二日あつたのですが、昨年の六月に、八日に改悪されております。さらにボーナスが年二回二箇月分以上と明記してあつたものが、やはり二十八年六月に改悪されて、ボーナスは本所の事業成績によつて支給すると、こういうような漠然とした規定になつているのです。これを従業員に諮ることもなく、また経営者の一部であるとみずから言つている鈴木書記長が、多分清交会という親睦団体が調印したであろうと言うのですが、われわれは調印した覚えもなければ、改悪されて行つた経過について、何らの審議も受けておりません。ただきまつたことについて、これが新しい就業規則だと言つて強制的に手元に配付されて、即日からそのように施行されたことは、はつきり申し上げられます。
  58. 島上善五郎

    ○島上委員 私、先ほどの基準法関係のことを、もう少し聞きたいのですが、監督課長さんは、是正の方向にある、あるいは是正されつつあると言われましたが、事実はそうではないようです。その是正されたということについては、再監督をしてはつきりしたものをつかんで、そういう報告をされたのでしようか、どの程度に再監督がされておるかということを伺いたい。
  59. 和田勝美

    ○和田説明員 昨年の三月にやりました点については、同年の四月に確認をしております。本年の申告事件につきましては、日にちがここに私の手元にはございませんが、中央監督署に問い合せましたところ、全部確認をしておる、こう言つております。
  60. 並木芳雄

    ○並木委員 関連して……。先ほど小林理事長が、労働組合を組織したら首にすると言つたことは絶対にありませんと、こう言い切つております。ところが佐藤参考人の方では、確かに言つたと言うので、これは水かけ論になるわけです。こういうときは、マイクでもあつて録音でもとつておけば一番いいわけですが、非常に大事な点ですから、もし参考人はつきりした記録があるならば、いつ何どきに、どこの場所でだれだれがはつきり言つたということを、ここで言明していただけませんか。
  61. 佐藤武志

    佐藤(武)参考人 それに対して、われわれははつきりした記録というものは持つていないのですが、私のところの所員は、それを言われたという話を全部聞いています。各所員が入社しますと、そのときに市場なり何なりに集めまして、小林理事長あるいは鈴木書記長から言われております。ですかり、書類を出せと言われると困るのですが……。
  62. 並木芳雄

    ○並木委員 書類は出なくても、今の答弁でかなり具体的になつて来たわけです。入社のときに集めて、理事長がですか……。
  63. 佐藤武志

    佐藤(武)参考人 理事長、あるいは書記長の場合もあります。
  64. 並木芳雄

    ○並木委員 それでそういうあいさつをするということになれば、これは公の席上でやることになるわけですから、それに対して小林理事長がそういうことを言つた覚えがありませんとか、あるいは理事長の代理の者にそういうことを言わせた覚えがないということになると、非常な食い違いになつて来るわけです。  もう一度理事長にお尋ねしますが、今の言明に対してどういうふうにお答えになりますか。
  65. 小林光次

    小林(光)参考人 再確認して申し上げますが、絶対にありません。
  66. 細谷節也

    細谷参考人 これは文書がないので、はつきり証拠として提出することはできませんが、毎年入つた者に関しては、そのような訓示があります。その証拠には、あそこに、うちの組合員が四十人ばかり傍聴に来ておりますから、その者に聞いてもはつきり申し上げられると思います。
  67. 赤松勇

    赤松委員長 組合側に私からお尋ねしますが、ここに非常な食い違いがあるわけですけれども、私があなたの方に要求した場合に、二十名とか二十五名とか、人数をあげられますね。それらの諸君の確認書を提出願いたいと要求した場合にできますか。
  68. 細谷節也

    細谷参考人 できます。
  69. 赤松勇

    赤松委員長 それでは出してください。
  70. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 東京証券取引所に関連する問題につきましてお尋ねしたいと思います。まず監督課長に質問いたしたいと思います。たしか休暇の変更の問題と、こういうような話でありますが、あるいは就業規則と銘打つておるかどうか、私どもよくわかりませんけれども、これは当然就業規則の一環であろうと思います。ましてや、労働組合のございません当時ですし、労働協約ではないのですから、当然就業規則の中に入ると思いますが、この改訂につきましては、当然監督署に書類を提出するわけでありまして、この問題は書類が提出されておるかどうか。そのときの従業員の代表はだれであつたか。これは今わからなくても、わかることになつておるはずですが、あなたの方で調査して出していただけますか。
  71. 和田勝美

    ○和田説明員 私がただいま監督署から持つて参りました書類で、就業規則の一部変更に対する一番新しいのは、昨年の七月二十二日に変更届が出ておるのであります。そのときの代表は、これは正本でございますからなんでございますが、東京証券取引職員代表佐藤舜という方が代表でございます。これは判が押してございますから、私の方は間違いないと確認いたします。  なお、今お話の休暇の件でございますが、ちよつとここで書類を見てみますからお待ちを願いたいと思います。
  72. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 二十六年の分です。
  73. 細谷節也

    細谷参考人 ただいま署名捺印してある佐藤というのは、現在われわれと団体交渉をしている経営者側の一人であります。これは調査部長です。しかもそのときに、先ほど申しました清交会という親睦団体の幹事長をやつてつたので、その資格で署名したと思います。それから、それに関連しまして、ほかの証券会社において、監督官庁の方には就業規則が出ているのですが、従業員は、それを見ることもできません。山崎証券の場合は、就業規則を見る場合には、人事課長の前に行つて判をつかなければ見せてくれない、そういう実情なんです。さらに実栄証券の場合は、本人の判を社長が全部保管しております。それで、いつでも判がつけると思うのです。そういうような実態であつて、社長対監督官庁の間では、形式上正式の就業規則の書面が出ていると思うのですが、従業員に対しては、何ら行き渡つておりません。社長自身も、その内容は何ら知らないのです。ほかの就業規則を写して出しております。実栄証券の場合は、日興証券と何らかわつておりません。
  74. 佐藤武志

    佐藤(武)参考人 先ほどから盛んに出ます清交会という名前の団体なんですが、私幹事長をしておりましたときに、この清交会という団体は、所員の親睦団体であるのだから、就業規則とか労働条件、そういうものに対して一切干渉しないということになつておりましたのですが、いつの間にそういう親睦団体の責任者がわれわれの就業規則、あるいはそういう労働条件に対する代表者として捺印したのか、私全然知りません。
  75. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 清交会の鈴木書記長にお尋ねしたいと思います。あなたは就業規則に署名捺印しておるようでありますが、この署名捺印をするときに、その就業規則に対して従業員一同の意向をお聞になつたのかどうか。
  76. 鈴木万造

    鈴木参考人 お答えします。私は書記長ではありますけれども、清交会の役員でもなんでもありません、従つて、清交会の代表者として調印はいたしておりません。何かのお間違いでしようと思います。     —————————————
  77. 赤松勇

    赤松委員長 この際お諮りいたします。本問題につき東京証券取引所調査部長佐藤舜君よりも御意見を聴取したいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 赤松勇

    赤松委員長 それではさよう決します。     —————————————
  79. 赤松勇

  80. 佐藤舜

    佐藤(舜)参考人 当時、私は清交会の幹事長をしておりました。その清交会は、所員全部の加盟をもつておりまして、就業規則につきまして担当総務部から相談を受けまして、全所員の意向を聞きましてから、私の名前において調印いたしました。
  81. 並木芳雄

    ○並木委員 全所員の了解を得たと、今おつしやいましたが、それはどういう方法によつてですか。
  82. 佐藤舜

    佐藤(舜)参考人 ただいまの手続の問題でございますが、それは総務部を通じまして、ただいまの各部各課を通じまして全所員に閲覧を求めまして、その後において清交会の幹事長として私が調印いたしました。
  83. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいまの佐藤参考人の発言に対して、そちらの佐藤参考人、あるいはほかの方の発言はありませんか。
  84. 細谷節也

    細谷参考人 清交会というものは、これは親睦団体でございまして、主として文化活動、それから運動、福利厚生、そういうものをやつておるのです。しかしながら労働基準法第九十条によりますと「労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」とあるのです。われわれは清交会を労働者の過半数を代表するものと考えておつたことは一切ございません。かつて、清交会をそのように持つていこうという運動が二度ほどあつたのですが、それは頭から全然押えられて、そのために首になつた者もあります。従つて、清交会というものが労働者を代表する機関であるとは認められません。
  85. 並木芳雄

    ○並木委員 そういたしますと、ここに二つの問題が出て来たと思います。清交会自体の資格審査の問題、それから、かりにそれが合法な、有効なものであつたとしても、ただいま申されたような手続をもつて、各部各課に回覧をもつてつて、それぞれ了承しておるかどうか、その二つの問題です。  あとの方から先にお聞きしますが、実際に各部各課に回覧をもつて、書類をもつて了解を得たというその事実はございますか。
  86. 佐藤武志

    佐藤(武)参考人 そういう事実は、たしかあつたと思います。しかし、それは課長あるいは係長からこういうものを回覧せよ、さつとまわすだけで、それに対して不服を申し立てるとか、そういうことをすれば当然これはにらまれて、首にならないまでも、その次の昇給にも影響する、あるいはいろいろ勤務成績に影響するのですから、事実上不満でも、一人も文句が言えないようになつております。ですから、やむを得ず承認するわけです。
  87. 佐藤舜

    佐藤(舜)参考人 ただいまの問題につきまして、簡単に申し上げたいと存じます。清交会がございました当時は、遺憾ながら労働組合がございません時代でありまして、清交会には全社員が加盟しております。清交会は、もちろん当時の取引所幹部の態度——私も従業員の一人といたしまして、取引所組合ができますときに、これに対して圧迫を加えるとか、ないしこれの反対の態度をとつたというような事実は、私は全然ないように思つております。たとえば先ほどの契約書の回覧にいたしましても、佐藤参考人も認めております通り、各部各課に回覧いたしました。当時就業規則その他につきましても、ことごとく回覧いたしておりまして、これに対しての、たとえば不平なり意見なりの開陳は、いくらでも方法はあつたはずでありまして、たとえば毎日上司において、さような意見の開陳に対して、何と申しますか、圧迫というような態度をとれば、これの救済措置はいくらでもあるのでありまして、私どもといたしましては、今日組合員になりました従業員が、清交会当時において幹部なり——清交会自身の幹部におきましても、取引所の幹部におきましても、社員なり従業員なりを圧迫するというようなことのございませんでしたことを、はつきり申し上げたいと思います。
  88. 赤松勇

    赤松委員長 島上君より関連質問の要求がありますからこれを許します。島上君。
  89. 島上善五郎

    ○島上委員 どうも今の両者の陳述を聞きますと、就業規則は、ただ回覧をしただけで、それも課長を通じてみんなに見せただけで、これに対して皆さん意見があつたら述べるというような措置がとられていないように思うのです。単なる回覧であつたか、これに対して意見があつたら、こういう形で出すようにというような措置がとられたか、これは、今の組合側にひとつ最初に聞きたい。
  90. 佐藤武志

    佐藤(武)参考人 はつきり覚えておりませんが、そういうことはあつたかと思いますけれども、それに対して、そういうことを言つた場合に、何も保障してくれるものはないわけです。もし不服を言つて何とかやられた場合に、われわれとしては対抗する手段がないわけですから、これは事実上全然ないのと同じことです。
  91. 並木芳雄

    ○並木委員 さつき私二つ申し上げましたが、そのもう一つの点でございます。これは政府に尋ねたいと思います。つまり清交会というものは、親睦団体であつたにすぎないという組合側の意向であります。そうすると、親睦団体にすぎないものが、全所員を代表して労働組合にかわるような行動が法的にとれるかどうか。そういうものを政府としては認めるかどうか。  もう一つは、かりにそれが認められたとした場合に、さつきのようなやり方でもつて合理化されるかどうか。単に書類を回覧して、文句があつたら申し出ろというだけでは、十分目的が達せられないと私は思う。やはり委任状をとるとか、一々書類を渡して、異議がないという署名捺印をもらうとか、そういう物的な措置をとるべきであつたと思うのですけれども、それらの点について、政府のはつきりした態度を表明してもらいたい。
  92. 和田勝美

    ○和田説明員 基準法の三十六条によりますと、時間外及び休日に労働させます場合には、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がありますときは、その労働組合意見を聞くことになつておりますが、その組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者の意見を聞いて出す、こういうことになつております。当時の二十八年の七月九日にこの意見書が出ておりますが、これによりますと、当時は東京証券取引所には労働組合がございませんでした。そういたしますと、だれが労働者の過半数の意思を代表するかという問題は、これは事実判定の問題になります。従いまして、佐藤さんがどういう資格の方か、私よく存じ上げておりませんが、当時の事実の確認は、私もここに持つておりませんけれども、今お話を聞いております範囲内におきましては、いろいろの手続がございますので、とにかく労働者側の意見を一応とりまとめて、異存がないならない、あるならあるということがわかつて——この場合におきますと、異存がないということでございますが、そういうことを委任状をはつきりとつてやらなくても、従来三十六条の適用としては可能であるということにいたしております。委任状をおとりになれば、非常に確実でありますが、それは非常に多数の場合においては、事務的に困難でございますので、労働者側の意思がどこにあるかということが確認し得るような方式であれば、これは事実行為でございますので、なくてもさしつかえない、こういうように考えております。
  93. 島上善五郎

    ○島上委員 清交会なるものは、幹事長は、取引所の命令で部長がなつてつて、幹事長代理は課長がなつてつたということを聞いておりますが、それは事実かどうか。
  94. 細谷節也

    細谷参考人 事実でございます。  それでは、なぜそういうようになつかと申しますと、それまでは選挙で幹事長が選出されていたのです。しかしながら、二十七年だつたと思いますが、そのときの幹事長の森田という人がやめさせられまして、そのときこ全幹事を集めまして、当時の山本部長が幹事から、一切の手帳並びに今持つている書類を提出しろ、こう言われたのです。なぜそういうことをするかというと、清交会の経理上の問題があるからというような名のもとに、手帳並びに控えを提出させました。そしてそこに書いてあることによつて、徹底的に押えられた。そういうようにして圧迫をかけられておいて、清交会の組織をかえました。幹事長は部長から、幹事長代理は課長から、そういうような方向になつて来たのです。従つて、われわれはこの清交会というものは、労働者意見を代表するものとは思つておりません。また今まではそのような活動をしたこともありません。先ほども申しましたように、文化活動と体育と福利厚生、この面だけで活動しております。
  95. 島上善五郎

    ○島上委員 そうだとするならば、これは今細谷委員長も言われましたが、従業員を代表する団体とはどう考えても認められない。また、運動会をやるとか、映画を見るとかいうことはどうか知りませんけれども、従業員就業規則労働条件等に関して、少くとも従業員意思が反映するような組織ではない。いわば上意下達、上の命令を下に伝えるだけのものにすぎないと、こう思われるのです。実際にそういう今言つた就業規則に調印したとしますならば、就業規則問題については、上意下達で、上から単に皆さんに示したにすぎない。そういう運営をされておつたのじやないかと想像されますが、どうでしよう。
  96. 細谷節也

    細谷参考人 まつたくその通りです。さらに、昨年あたりからまわつて来た清交会の会員に対するふれの中に、取引所は現在赤字が多くなりつつあるから、諸経費を節約しろ、そういりようなふれもまわつて来ているのです。そういうようなことを考えれば、確かにこれは上意下達以外の何ものでもないと思います。
  97. 赤松勇

    赤松委員長 そこで、労使双方へお願いいたしますが、今までもいろいろ事実問題が出て来ているのですが、さらにあなた方は、いろいろこの委員会でお述べになりたい点があると思うのです。それはひとつ労使双方から、参考書類としてこの委員会に提出してくれませんか。小林理事長いかがですか。あなたの方の言い分もあるでしようから、そういうものをつくつて
  98. 小林義信

    小林参考人 承知しました。わかつたものは出します。私は清交会のことは存じませんから……。
  99. 赤松勇

    赤松委員長 ひとつあなたの方でまとめてください。
  100. 並木芳雄

    ○並木委員 今日の問答を聞いておつて愕然としたのは、労働組合を組織すれば首にするぞという発言が行われたということを、この席上ではつきり言明する組合員があるということなんです。そうすると、こういう場所だからそういう発言ができるのであつて、日本全体を見れば、相当の大きな会社で、当然組合がつくらるべきにかかわらず、そういう威力に恐れをなして、組織していないところが多分にあるのじやないかと思います。現に私の方の改進党に所属しておりました堤議長は、今は無所属ですが、おれの会社、つまり西武会社には組合がないのだといことを、自慢話にしているのです。ほんとうに民主的に、みんながつくる必要がないというのでない会社なら、それは自慢話もいいと思います。またそれを私は念願いたします。もしそうでなく、実際に腹を割つて話し合つたときに、きようのような問答が行われるとすれば大問題でありますから、組織を持たない大きな企業体を逐次この委員会で取上げて、そして一応事情を聞いてみる、とりあえず西武電車から始めてもらいたいということを、私は特に提案してみたいと思います。
  101. 赤松勇

    赤松委員長 さすがに改進党の中でも進歩的な、名負うての並木君の発言でありまして、委員長もまつたく同感で、はなはだ欣快にたえません。  そこで委員各位にお諮りいたしますが、実はこの委員会でこの問題を取上げましたのも、一つには、東証争議のような争議の発生しない、労使双方が民主的な団体交渉によつて、円満に労働問題をば解決して行くという慣行を、社会的に積み上げて行きたいというところにねらいがあるわけでございまして、いわば争議の発生をば未然に防いで、労使の関係をば近代的なルールの上に乗せて行くというねらいなんです。その意味から申しますと、この問題は、今並木君が御指摘のように、特殊ケースでなくやはり一般的な問題でもありますので、本委員会としましては、今資料の提出をばお願いをして御快諾を得ましたから、その資料の提出と相まつて、さらに調査を継続して行きたい、こう思います。つきましては、皆さんと相談をいたしました日程は、午後は労働大臣に対する次官通牒等の問題に関運して各派の質問があります。おそらくこれで一ぱいになる。夕方には秋田県労働部長から、ぜひ労働委員会に陳情しだいという申出がございましたので、この陳情があるわけです。これで本日は一ぱいです。  明日は、警視総監の都合がありまして、十時から御出席をお願いし、さらに組合側も御出席をお願いして、先般の東証争議に関する警察官の介入問題についてこれを究明する、こういうことになつております。そのほか港湾労働組合の例の輸入米の問題につきまして、ぜひ午前中に取上げて行きたい。午後は労働省、運輸省、農林省等においてこの問題に関する三省の協議が行われますので、できればその前にこれを取上げて行きたい。なお失業対策に関する問題もございますので、日程はこれで明日一ぱいであります。  そうしますと、この間打合せをしましたとき、私は二十日までを希望したのでありますけれども、いろいろ御希望がありまして、一応十九日で打切ろう、その後の委員会の招集は私に一任されておるわけです。私どもとしましては、ちようど港湾労働に関する小委員会が二十五、二十六、二十七とありますので、この三日間に委員会を招集したいと考えております。しかしこの三日間も、港湾労働等の問題がありまして、日程が相当詰まつでおりますので、問題は、二十日に委員会を開いて、この問題をさらに継続調査するかどうかということですが、それ以外には今のところ時間がないのでございます。この点につきましていかがでございましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 赤松勇

    赤松委員長 それでは各派の了解を得たようですから、二十日さらに委員会を開くことにいたします。
  103. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先ほど小林証券取引所理事長よりもお話がありましたように、私たちが対象にしているのは、取引所だけでなく、証券会社もです。ところが理事長の方では、取引所だけの理事長であるからというお話がありました。でもつともなことであります。そこで証券会社の議長である遠山元一氏を呼んでいただきたい。
  104. 赤松勇

    赤松委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  105. 赤松勇

    赤松委員長 それでは多賀谷君から要求のございました参考人として遠山元一さん、山一証券の小池厚之助さん、この二人を参考人に呼ぶことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 赤松勇

    赤松委員長 さよう決定いたします。  それでは二十日午前からやりましよう。  午後一時半まで休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後一時五十四分開議
  107. 赤松勇

    赤松委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。  失業対策労使関係及び労働基準に関する件を議題といたします。  労働大臣が出席されましたので、去る十一月六日の次官通牒について大臣に対する質疑を行いたいと存じます。  なお労働金庫の問題に関して、持永義夫君より質疑の通告がありますが、まだ御出席になりませんので、あとにまわします。御出席をされましたならば、ただちに質問していただきます。  それでは大橋武夫君。
  108. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 先般労働大臣から、次官通牒についての御説明を承つたのでございますが、また昨日は当委員会におきまして、各界から参考人として出席していただきまして、それの意見をも聴取いたしたのであります。これらの参考人諸君の意見を総合いたしますと、通牒に書かれておる内容について、全面的にこれを否定するというような意見はなかつたのでございますが、特に労働者側の参考人と見られる諸君の言われる点は、この通牒を出すに至つたところの当局の動機というものについて、非常に疑問を持ち、あるいは不満を持つておられるような意見が伺われたわけであります。その趣旨は、この通牒を当局が現在出されるということは、ピケその他争議のルールの確立に名をかりて、官憲が労働運動の一方的な弾圧をはかつておるのではないか、こういうような意見であつたわけでございます。これにつきまして、特に大臣から、今日この際、かくのごとき通牒をお出しになりました動機につきまして、明確に御説明をいただきたいと思います。
  109. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 労働運動が、あくまで民主的なルールにのつとりまして、健全に発違いたしますることは、望ましいことであるのはもとより当然でございます。  わが国における労働運動の傾向を見て参りますと、数年前は、やはりわが国の労働運動も、独裁的な組合指導あるいは暴力的な労働運動の横行する傾向が顕著であつたことは御承知の通りであります。しかしこうした傾向は、やはり世の指弾を受けまして、また組合員大衆の強い反省による反発かございまして、漸次これが衰微いたして参りまして、健全な労働運動というものかここにおいて主導権をとるに至つたのでありまするが、最近におきますると、やはり労働運動に暴力ないしその他不法な実力の行使という非民主的な手段に訴えようとする傾向が間々現われて参つておるのであります。私どもは、もとよりこうした慣行が、漸次関係者の反省によりまして、正しいルールにのつとるという傾向をとることを希望はいたしておるのでありますが、一面におきまして、何か労働運動であれば何をやつてもいいのだ、一条二項にありまする暴力の行使は正当な行為でないということは、団体行動権の名のもとに、あらゆる暴力を含む行動をも是認されるというような風潮も一方に看取されまするので——これはもとより、そうした企図をもつて扇動しておるものは、これは例外でございますが、なおそういう実態を知らずして、何か労働運動というものはそういうこを許されるのだというような感覚を持つ者が多くなつて参りますることは、これはいかにもゆゆしきことだと考えまして、労働運動の名のもとにおいても暴力はいけない、暴行、脅迫、そうしたことは許されないのであるということを明確にすることがわれわれの努めである、かように考えた次第でございます。
  110. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そこで、この通牒の内容として取上げられておりますところは、労働関係におきまする不法な実力の行使ということになつておるわけでございますが、これらの事柄は、いずれも終戦以来、たびたびの労働争議において、実際に出たことであります。そうして、それにつきましては、裁判において取上げられたことも多いわけでございます。今日まで、こうしたことについて、いろいろな裁判例があることは、申すまでもないわけであります。今日これらの裁判例の全体を要約して、労働省としても一つの抽象的な通牒をつくられる、このことについて、従来の裁判例と今度の通牒の内容に記載された事項との関係が、どういう関係のものであるかということを伺いたいと思います。
  111. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私どもといたしまして、この行政解釈をいたしまする場合には、従来の判例、判決例等に現われましたところの結果を集約いたしまして、これを行政解釈として一本にまとめて行くという考えでいたしたものでございまするので、大体判例の線すなわち行政解釈の線、かように御承知願いたいと思います。
  112. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうしますと、今度通牒の内容として記載されたことは、当初の意図といたしましては、従来の判例に対して、労働省は独自の立場から一つの批判をして、判例にはこうなつておるが、事実はこうなつて来たというような新しい考えをお出しなつたわけではないのであつて、従来の判例というものをまとめてみれば、結局こういうことになるぞということをはつきりしただけである、こういうふうに理解してよろしゆうございますか。
  113. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 仰せの通りで、従来の判例はそれぞれございまするが、個個の特殊なケースは別といたしまして、私ども行政解釈を下す者といたしましては、一般論として判例をまとめた線がこれであるということでございまして、ことさらに従来の判例に対して新しい解釈論、新機軸を出すというような、そういう観点は盛られておらないわけでございます。
  114. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 むろんこの通牒をおつくりになるにあたりましては、労働省として各方面の判例をお集めになつたことはもちろんだと思いますが、しかしこの法規の解釈適用等につきましては、法務省であるとか、あるいは検察当局であるとか、従来それぞれの立場からいろいろ解釈しておる他の政府の機関があるわけでございますが、この通牒の内容を策定されるにあたりまして、そうした関係機関とはどういうふうなご相談がございましたか。
  115. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 法務省または検察庁、あるいは警察の当局等に対しまして、十分この点は打合せまして、合議の上に積み重ねたものでございます。
  116. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 この通牒自体は、地方庁に対する労働省からの通牒になつておりますが、警察あるいは検察庁等においても、やはりこういう通牒が出ました以上は、今後労働省の指導がこうした方針で行われるということを承知するわけであります。従つて、今後もこうした事案についての取締り等においては、この通牒が大いに参考になるのじやないかということは、当然予想されるわけであります。従つてこの通牒を警察なりあるいは検察庁、法務省等で、全国の各機関に並行的に流しておるような事実がありましようか、どうでしようか。
  117. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この行政解釈につきましては、これは一つの労働法規の解釈の責めに当つておりまする労働省の解釈はこうである。しかも、これが今申し上げたように、関係各省との間に研究を十分重ねておることでありまするから、これは一般に解釈基準を明定したことになると考えております。従いまして、そうしたことは、それぞれの当局におきまして、全般に徹底されるような努力がされておるものと存じております。
  118. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうしますと、最近労働関係の、特に争議の問題につきまして、警察が非常に消極的な態度をとつておる。それがために争議に伴う不法行為、あるいは暴行等が非常に極端な段階に行つて、初めて現実に警察力が出動するというようなことが多かつたように思われるのであります。これに対しましては、一般に、もう少し警察として防犯的な立場から、十分に危険が、あるいは犯罪が予想されるような場合には、あらかじめ警察として行動に出るべきじやなかろうかというような意向も、社会の一部には相当あつたわけでございますが、今日こうした基準が明確になつたということになりますと、警察力の行使においても、やはりこの通牒によつて、明らかに不法であるとされているような事柄については、当然警察力の発動ということが期待できる、こういうふうに考えてよろしいものでございましようか。
  119. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 警察が治安の責めに当りまする立場からいたしまして、個個の具体的な事例をいかように判断されるかということにつきましては、警察当局の御判断によることでありますが、その判断をいたしまする場合に、労働法の解釈上、ここまでは違法であるということが明確になつておりますることは、その判断の一つの根拠になるものという場合もあるというふうに考えております。
  120. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 もう一つお伺いいたしておきたい点は、最近におきまするいろいろは労働者側の暴力行為等につきまして、これは使用者側から挑発されたものである、あるいはまた使用者の不当労働行為に対して、防衛的な意味においてこうした行動がなされたのであるというような弁解がなされることが多いのでございます。従つて、現実に争議における使用者なり、あるいは労働者なりの行動を不法であると、こう断定するにあたりましては、他面において、相手側がどういう行動に出たかということを考え直してみなければならぬような場合が非常に多い。ところがこの通牒を拝見いたしますと、主としてこの内容労働者側の行為の批判が多いのでございます。むろん、一部には事業主の行動について、こういうことはなすべきでないというようなことも書いてありますが、大体内容の八割以上は、労働者側の不当なる行為を書いてあるわけであります。これでは、どうも現在の実情から見まして、これが不当じやないかということを言つた場合に、しかしそれは使用者側の不当労働行為に挑発されたんだ、こう言われることが非常に多いわけであります。従つて、私どもの希望といたしましては、労働者側の不法な行動というものを明らかに指摘する場合においては、その反面において、これこれの事柄は使用者側としての不当労働行為であるということをも並行的に規定するとことが、いろいろな問題の解決の上において最も望ましいことではないかと存ずる次第であります。これは特に労働者だけを保護するという意味でなく、事業者の立場からいいましても、不当労働行為となるのはこういう事柄であるということを、はつきり規定されるということは、その反面において、事業主の権利ないし自由として、これだけのことは争議においてなし得るという許された範囲を明確にされるわけでございますから、使用者の側におきましても、これについて大いに必要を痛感されておると思うのでございますが、労働省とされまして、こり通牒をお出しなつた反面において、将来、使用者側の不当労働行為を明確にし、また不当労働行為でない許される行為の範囲を明確にする、そういう意味で、やはり従来の判決例等を照応せられまして、この通牒に似たようなものをお考えになるというような御意向がありますかどうか、伺いたい。
  121. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のごとく、この通牒は不法な実力の行使が現に行われておるということが、各方面において常識を持たれる方の強く考えられるところでありますので、こういうことは、やはり基準を明確にする必要が感ぜられるということで発しましたものでございます。これが出されました直後におきましての各新聞の社説等を見ましても、この内窓はきわめて賛同するところが多い趣旨のことがうたつてございます。また一方からいいまして、今御指摘のように、反面この通牒にも、基本的な考え方の四項、五項、あるいはピケの解釈の際のピケ破りに関する考え方、あるいはまた団体交渉における三項あるいは第八等におきまして、使用者がいわゆる暴力的な挑発的な行動をすることを厳に戒めておる点はございますけれども、今御指摘のような考えもまた実施されておるようなところであります。私どもといたしまして、不当労働行為制度というものは、日本とアメリカの特殊の制度でありまして、その他のヨーロツパ諸国においては、こういう制度はないように聞いておりますが、これが非常に解釈等におきましては、ある程度幅を持つておるように言われておる。この点について、やはり研究をしてみてくれということは言つております。ただこの点が、今までに現われておりまするところま、暴力団を入れるというようなこと、そうしてスト破りをするというようなことは、それ自体争議行為以前のものである。暴力団そのものはいかぬことは明瞭なことであります。いかぬことをやつたからいかぬことをやるという議論は、これは正しくない。要するに、現に行われておることでも、そういう考えは間違つておると言うことは、緊急の要務であろうということでこれを出したようなわけであります。ただいまお話のような点については研究を進めたいと思います。     —————————————
  122. 赤松勇

    赤松委員長 この際持永君より労働金庫に関する点につきまして発言を求められております。これを許します。持永義夫君。
  123. 持永義夫

    ○持永委員 それでは大臣にお尋ね申し上げます。労働金庫は、発足いたしましてから相当の年数を経ておるわけでありますが、最近の金庫の経営状況は、どういうふうになつていますか。
  124. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 詳しくはひとつ局長からお答え申し上げるようにしますが、労働金庫は、健全に預金の伸び等も見られますので、非常に発展をしておるといいますか、法律が本院において議決されまして以来、まだ日が浅いのに、今の発展は相当注目するところがあるという状況と心得ます。
  125. 持永義夫

    ○持永委員 そこでお尋ね申し上げますが、昨年の九州地方その他の地方の災害の際、また年末にあたりまして、労働省の非常な御援助によりまして、労働金庫に対して相当なる融資があつたのでありますが、その融資の弁済状況はどういうふうになつておりますか。順調に進んでおりますかどうか。
  126. 中西実

    中西説明員 今ちよつと手元に詳細な数字は持つておりませんのですが、昨年の災害のときの融資は、その後一応順調に行つております。ただ、対象が災害のためのものでございましたので、若干借りかえ等で残つておる分がありますが、大体順調に行つております。  それから昨年の二億七千万円余りの年末融資、これは予定通り全部償還されております。
  127. 持永義夫

    ○持永委員 そこで、大臣に特にお願い申し上げまして、御尽力願いたいと思いますることは、本年の風水害によりまして、府県によりましては、労働者階級の人々も相当金融に困つておるということであります。それからまた、ちようど年末を差控えておりますので、できますならば、昨年の水害の際、年末に準じまして、この際相当の金融を労働金庫にしていただくように御尽力願いたい、こう思うのでありますが、大臣はどういうお気持でいらつしやいますか、この点を……。
  128. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 風水害そのものに対しましては、実は財政当局の見方といたしまして、昨年とは相当異なる被害と見ておりますので、これだけを対象としてということも、現在のところ、いろいろ話はしてみますが、見通しの問題として、それほどはつきりここで申し上げるようなことはないのではないかと思います。いずれにいたしましても、年末の融資という問題は、ぜひひとつ強力に話合いをしてみたい。そこでその際に、今仰せられましたような九州の南部の県等におきましては、なかなか被害も認められまするので、こうしたものを織り込んで年末に考慮してもらうというふうに交渉を強力にしてみたい、かように心得ております。
  129. 持永義夫

    ○持永委員 ぜひひとつ大臣の御尽力をお願い申し上げます。なるほど今年の災害は、全国的に見ますと狭いのでありますが、局部的に見ますと、非常に激甚なる被害を受けた所もあります。どうかそれらの地方におきましては、連合会等から事務当局にも御陳情申し上げると思いますが、どうかこれらの点をよく御聴取願いまして、最善の御尽力を願いたいのであります。     —————————————
  130. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいま議題になつております労働関係における不法な実力の行使の防止についての労働次官通牒につきまして、労働大臣にお尋ねしたいと思うのでありますが、割当の時間が少いので簡潔に御質問申し上げたいと思います。  この通牒は、昨日有泉参考人からも仰せられたのでありますが、まさにべからず通牒である感がするのであります。私もそれを調べてみたのでありますが、たとえば「正当化されるものではない」、「正当な行為とは解しがたい」、「正当なものとは解されない」、「正当でない」、「正当な行為とはいいがたい」、「正当な行為ではない」、こういうふうに正当という言葉だけでも非常にたくさん出されておるのでありますが、これは違法行為として述べられておるのであるかどうか、その点をお聞きしたい。
  131. 中西実

    中西説明員 この通牒は、われわれが所管いたしております労働法規に関する解釈通牒でございます。従つて、労働法上正当でない一応の限界につきまして、解明しておるわけでございます。そこで、具体的に申せば、憲法で団結権、団体行動の自由等を認めております。それをさらに具体的には、組合法に、正当のものについては云々という字句で、たとえば組合法の一条、七条、八条等にございます。その正当という限界を、一応解明したものというふうに御承知おきを願います。
  132. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 こういうあいまいな言葉の通牒が下部に参りますと、私は非常に誤解をされるのではないかと思います。それではこの通牒に反した行為が行われる場合におきましては、労組法上の労働組合の保護は受けられないというのであるか、あるいは刑法上の責任が問われることになるのであるか、その点いかがでしよう。
  133. 中西実

    中西説明員 ただいま申しましたように、労組法上正当なものは云々としう、その解釈でございますので、たとえば第一条について申せば、正当なものについては刑法三十五条の適用があるということになつておりますが、この解釈で、それを越えたものにつきましては、場合によつては、刑法上の責任も問われるということになります。それからさらに七条におきましては、正当な行為をなしたものについて、不利益処分をしてはいけないということになつておりますが、その限度を越えたものにつきましては、こういつた保護がない。あるいはまた八条に参りましては、民事上の損害賠償の責任を問われるという場合もあり得るということになるわけであります。
  134. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私は、この通達を見まして、これは労働省の労働教育の一環として出されたように述べられたことを見たのでありますが、しかしながら、これが都道府県の警察あるいは検察庁に参りまするならば、これは違法行為として取締り基準になるのではないか、そういうことが心配せられておるのでありますが、その点お聞きしたいと思います。
  135. 中西実

    中西説明員 ただいま申しましたごとく、労働法上の正当な限界を示したものでございます。従つて、その限界を越えたものに対しまして、たとえば検察当局、取締り当局がそれをどう処置しますか、これは検察当局の方の判断で行われるという関係になるわけであります。
  136. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私は、労働省がかような、かつてといいましては言い過ぎかもしれませんが、解釈をいたしまして、通達によつて行政措置がとられる、そういうことは、都道府県警察あるいは検察庁を一方においては拘束いたしまして、それが非常に誤つた取締りの方向に向いて行くのではないか。先ほど労働大臣は今までの判例等をまとめたものであると言われておりまするが、こういう重大な問題が労働省の一片の通達としてやられるということは、非常に行き過ぎではないか。もし、それほど労働省が重要にお考えになりまするならば、こうした通牒の形をとらないで、立法の措置がとられるべきが至当ではないかと考えるのでありますが、その点をお尋ねしたいと思います。
  137. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この通達は、先ほども申し上げましたように、一貫して流るるものは、暴力否定の考え方であります。その考え方につきまして、今までの判例あるいは判決例の方向も、もとより一定しておるのであります。労働省といたしましては、労働法規の解釈をつかさどる役所といたしまして、従来の判例あるいは判決例をとりまとめたものを、解釈としてここに明らかにするということは、私どもの務めからいたしましても、当然と考えております。いわんや、最近におきましては、かなり暴力事犯がふえて来ております。これは知らずして暴力を行う、知らずして罪に問われるということになりますことは、これまた当局としても遺憾でございまするから、あくまでここは正しい、ここは不当である、ここは違法であるということは明瞭にしておく責任があると感じております。
  138. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 申し上げるまでもなく、労使問題につきましては、行政府といたしまして、厳正中立の立場に当然あるべきだと思うのであります。ただいま大橋委員からも指摘されましたように、この通達は非常に労働組合にはきつい一方的な解釈がされた内容のものである、そういうふうにわれわれは考えておるのであります。従いまして、この内容は、資本家の一方的な意図にこたえるものであつて、こういう通達は、政府の労使関係の問題につきまする中立性というものが侵されて来るのではないか、そう考えるのでありますが、その点お答え願いたいと思います。
  139. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 最近労使の紛争に伴う暴力事犯が非常にふえて来ておりますので、それはどうも不法な実力を行使することは、労働争議であつても避けるべきであるという見解を、これはだれでも内容については当然と考えておられるところでありますが、それを明らかにするという必要に応じましてやつたのでございまして、別に労使という点について、特に径庭を設けておるというような考えは毛頭ないのでございます。なお御参考までに、世論の良識を代表すると申しますか、新聞の社説が、十一月の七日は各社が書いておられるのでありますが、これにつきましても、不法なる実力的な暴力を行使するということにつきまして、これはいかぬのではないか、やはり争議にもルールがあるのであつて、ルールを確立するということを、役所としておそまきながらやつたということについては、これは当然だ、こういう御趣旨が書いてあります。政治論としてはいろいろ意見があることはありますが、そのことそのものについてのお話は、皆さん妥当とお認め願つておると考えておるのであります。  なお、よく言われることでありますが、使用者が挑発するからしようがないのだ、暴には暴をもつてする、これはまたやむを得ないというお考え方もあるのでありますが、一体暴力を挑発するということそのものが悪いのであつて、悪いことを、相手がしたからわれわれもするのだ、それでは、決してものを正当化するりくつにはならぬのであります。もとより使用者側において、暴力的なスキヤツプの雇い入れというようなことは、労働争議以前のことであります。そうしたことが許されぬことは当然でございます。しかし、それがあるから、暴力的な争議行為があるということは認められなければならぬという議論は、これはまたおかしなことだと思う。いずれにしても悪いことは悪いということは、はつきり政府として言うべきことであると考えております。
  140. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私はかような重大な影響を持つ通達が、今日急遽発せられたということが了解ができないのであります。労働大臣は、先ほど大橋委員にお答えになつておりますように、数年前のわが国の労働運動は、非常に独裁的で暴力的な運動が行われていた。それが最近になりまして、非常に民主的な健全な運動に発展して来たということは御承知になつている通りであります。ところが最近になつて、また暴力が非常に労働争議に現われて来た。なぜ最近の日本の労働運動に、労働大臣の指摘するような事態が起つて来たか、その根本的な原因をきわめることなくして、ただ労働争議に現われました現象だけをとらえてこれを取締るという方法は、私は決して問題の根本的な解決にはならないと考えておるのであります。われわれから考えますならば、今日大臣が指摘するような労働争議の起つて来たという原因は、何といいましても、吉田内閣の長年にわたる放慢なる経済政策あるいは最近の誤つたデフレ政策、そういうものによつて日本の産業が非常に不振に陥つて来た、そういう結果が、厖大な首切りとなり、あるいはその他労働条件の改悪というようなことになつて来ているのでありまして、そういう点を何ら考慮することなく、ただ労働争議に現われました事態に対してだけを処置するということは、われわれから見ますならば、本末転倒であると言わないわけには行かないのであります。ことに、労働大臣は常日ごろ、よき慣行の確立ということをしばしば述べておるのでありますが、よき慣行の確立ということは労働組合にか自主的に長い体験を通じて積み上げて行くところに、初めて私はよき慣行ができ上るものであると考えておる。最近に現われましたような若干の事態を取扱つて、そうして全体の日本の労働組合運動を律しようということでありまするならば、非常に間違つたやり方ではないかと私は指摘するのであります。私は、労働大臣が日本の労働運動の推移を目している通りに、今日あるいは労働大臣の指摘するような事態がありましても、これらが労働組合の自主的な判断と経験によつて、そういうことが除かれて行く。今申しましたような根本的な政府の施策の行き方によつて、これはわれわれ除くことができると考えておるのでありますが、この点に対する労働大臣の御意見を承りたいと思うのであります。
  141. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 数年前の暴力的な労働組合運動というものが、二・一ゼネストまで行こうとして、外国人の手によつてとめられた。そのことに付する反省が非常にわき起りまして、労働組合運動の転換がなされたことは御承知の通りであります。そのとき、外国人のさしとめ命令がなかつたならば、どこへ行つたかということになりますと、これは仮定でありますから、いろいろ議論はありましようけれども、思い半ばに過ぎるものがある。やはりよき慣行を確立しようといたしましても、あるときには、指導をしなければならない。物事は、すべてそうであります。ただ成行きにまかせて、川の流れに沿うごとくに流れて行つてものが自然によくなるということでは、やはり万全ではないのであつて、よき慣行の確立ということも、ただ自然にまかせておけばいいというのではなくて、そこに暴力事犯が発生すれは——最近の事犯を見てみますと、暴力労組が横行したときよりも暴力事件がふえております。昨年一年間におきます暴力事犯は百八十件と言われております。本年におきましては、半年の間において、すでに百三十件を数えておるという状態でありまして、やはりよき慣行を確立するために、いいことはいい、悪いことは悪いと、はつきり申しますことが、私は政府として当然の務めであると考えておるのであります。しかしこれは政府の悪いことに基因するのだというお話がございましたけれども、これは政治論でありまして、政治的見解はいろいろありましようから、それについて特に私が口角あわを飛ばすことは、むしろ本題を混乱させますから避けますが、かりに千歩を譲つて、政府が悪いと仮定いたしましても、暴力がいいという議論は、いかにしても出て来ないのであります。なお立場をかえて、それではほつておけばよき慣行が確立される、暴力が否定されるであろうかと考えてみますと、通牒の内容そのものに対して、これを肯定しようという議論が見られておりますことが、すでに暴力はそのままにおいては肯定されて行く傾向にあるのだということを、私は事実において示すことになるだろうと思います。私どもは、あくまで衆力を否定いたしまして、民主的な労組のよき慣行を確立したい、こういう念願にほかならないのでありますから、御了承願いたいと思います。
  142. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 労働大臣労働組合の暴力ということを、たいへんに強調されておりますが、最近における労働争議の暴力行為は、だれによつて行われておるかということも、一応考えてもらいたいのであります。東証の争議におきましても、警視庁が千名の警察官を動員してピケ突破をやるという警察の実力行使がなければ、私は東証の争議におきましても、何ら暴力行為はなかつたのではないかと思う。昨日警視総監も、非常に整然としたピケを張つて、一人の公務執行妨害者も出なかつたということを感心して述べておられるのであります。あるいは室蘭における日鋼の争議にいたしましても、この労働争議の暴力行為が起るということは、警察官の実力行使によつてつておるということが、最近の幾多の事例によつてわれわれは知ることができるのであります。私はかような一片の通牒によりまして、昨日までは合法的な争議行為であつたものが、この通牒が出た瞬間にそれが違法行為となる、そういう結果を招くと思うのであります。労働大臣はかような通牒を発しまして、そこに警察あるいは検察庁の取締りによりまして違法行為を積み上げて行つて、いわゆる既成事実をつくりまして、今まで正当なる日本の労働運動に対する違法化を避けるために法の改正をされるのではないか、そういう意図が含まれておるのではないかとさえわれわれは考えないわけに行かないのでありますが、その点につきまして、どういうお考えをお持ちになつておられますか。
  143. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 従来慣例あるいは判決例等において否定されていたものを、新たに労働省において肯定しようという事実はございません。従来の行き方に沿うて暴力は否定する、こういう考えでやるのであります。ただいま仰せになりましたようなことは、むしろ私といたしましては逆に、現状のまま放置しておけば、暴行、脅迫あるいは人の糧道を断つというような、人道的に許すべからざるような行為が、事実問題として積み重ねられて行く。それがむしろ労働運動の正常なる行き方であるということを積み重ねようとしている人が、かりにありとすれば、そういうことの方が恐ろしいのであつて、こういうことが積み重なるならば、私どもお互いに議会人といたしまして、いくらよき民主的な労働運動を確立しようといたしましても、事実において暴行、脅迫が既成事実としてもう認識されるまでに至つておるようになりましては、悔いを千載に残すことになりますので、私どもは、当然のことを当然としてやつておるにすぎないということを、ここに強調いたしておきたいと思います。
  144. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 この通牒の通りになりますと、ピケ・ラインを張りましても、何ら効力を持たないことになるのではないかと私は思うのであります。たとえば、使用者あるいは利益代表者でありましても、あるいは第二組合あるいはスキヤツプ、そうした人たちに対しましても、ピケはどこまでも阻止することはできない。いわゆる出入しようとすれば、これらの人たちはいくらでもできるということになりますと、もうピケの効力というものは全然なくなつてしまうのであります。その結果は、ピケの効力ばかりではなくて、ストライキまで、争議行為まても否認され、禁圧される事態が起るのではないかと私は考えておるのでありますが、そうした点につきまして、労働大臣の御意見を承つておきたいと思います。
  145. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、イギリス等においては、マス・ピケツテイングそのものが否定されておるのであります、これは違法なのであります。しかし日本では、憲法で団体行動権というものを認めておりますから、私どもの通牒の内容にいたしましても、ピケツトの方法について、その態様は対象なり状況なりによつて若干の相違はあるけれども、事業場の入口付近に多数の者が集合していること自体は、ピケツトとしては違法にならないと言つておる。多数の者が集合していることは認めておる。マス・ピケツテイングを日本では認めておる。しかしそれも、労使が法令に従つてお互いに他人の権利を尊重すべきことは、法治国の国民として当然なことでありまして、人の身体や行動の自由や、あるいは住居、私生活の不可侵というものは、基本的に尊重さるべき権利であるのでありますから、いわゆる平和的な説得の範囲を越えない、この限界を守らざるものは正当でない、こういうことを明らかに申しておる次第でございます。
  146. 赤松勇

    赤松委員長 一昨日来当委員会に呼んでおりました参考人から、ただいま私の手元に、きよう極東軍司令部から通達のあつた件につきまして申出がございました。なお外務省から本委員会に報告をしたいという申出もありまするので、後刻外務省から呼びまして報告をさせたいと思います。簡単ですから、組合側から持つて参りましたそれをちよつと読んでみます。一、セントラル・コマンド・マギール中佐はAP通信をもつて次のように声明した、極東軍司令部名をもつて牛島寿子の基地立入り禁止が解かれた旨発表された、二、組合は現地日本管理事務所長に連絡の結果、牛島寿子の基地立入りは許可される、パスは本人に返還される、勤務先のハウスはマサチオ夫人のところでなく、大佐の名前は書いてありませんけれども、何とかいう大佐の家にとまり込みで勤務するよう用意してあるという連絡があつたそうであります。  こういうことでありますが、この点につきまして若干問題は残つておると思うのです。基地管理の問題は一応解消したのですけれども、やはりもとの家へ復帰しておりませんから、この点若干問題が残つておると思いますが、なお本人の意向等もよく聞きまして善処したいと思います。  いろいろ委員会で御協力をいただきまして、どうもありがとうございました。(拍手)  日野吉夫君。
  147. 日野吉夫

    ○日野委員 過般来、労働大臣からこの通牒についてのいろいろな点を伺つたのであります。すでに答弁がいろいろなされておりますが、本通牒を出さなければならなかつた緊急性、緊急事態があつたのかどうか。近く国会も開かれる予定になつており、労働委員会も継続審議で随時開かれておる状況のもとにおいて、どうしても次官通牒の形でこれを出さなければならない緊急事態が存在したかどうか、この点をまずお伺いしたい。
  148. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほど来年し上げておりますように最近争議に伴う不法行為が多くなつて来た、不法事案が多くなつて来たということからいたしまして、どうもピケの限界というものに対しまして解釈が種々あるし、また、むしろそれを知らぬために起る事案もありますので、これは明足した方がよかろう、行政解釈を明らかにした方がよかろうというので、従来研究しておりましたものができ上りましたので発表した、こういうわけでございます。たた、これが輿論に非常に大きく取上げりれまして、新聞等にも御承知のごとく非常に大きく取上げられました。実はここに十一月七日の読売新聞の社説かございますが、その中にも、たとえば「ピケの正当性の問題がこのように大きく浮び上つて来た折から、労働省では六日「労使関係における不法な実力行使の防止について」という詳細な見解を発表、」云々と書いてあります。非常に大きく取上げられたということは、やはり世間でそれだけ問題にしておつたということにもなると思いまに必要な解釈を出したのだというふうな認識を持つておる次第であります。
  149. 日野吉夫

    ○日野委員 本通牒のねらいは、しばしば説明もされておりますし答弁もされておりますが、ここに具体的に現われたのは、労働教育的なねらいが明確にうたわれてあります。そのほかに何か本通牒のねらいが、教育効果以外の何物かを期待しているのかどうか。今大臣の答弁にもありましたように、大きく取上げられた、取上げられるだけの一つの根拠はまさにある。歳末闘争を控えて、いろいろ起るであろう争議の事態に備えたとも考えられる。それだけに、非常に神経質にこの通牒が解釈されておる。こういうこともありますので、この点は教育的な一つのねらいとしてここに書いてありますが、もし教育的なねらいとするならば、労働教育をその最も重要な使命とする労働行政機関、こういうふうに書いておりますが、これは私が言うまでもなく、吉田内閣は反動、逆コースをやる内閣であるということは、もはや明確に相場がきまつているのであつて、これを書きかえまして、反動逆コースの教育をその最も重要な使命とする労働行政機関、こういうふうに解釈するならば、このねらわれた教育的効果というものは、非常に恐ろしいものであるとも解釈できるのである。これに対して、どういう考え方——いろいろこの通牒の不用意なことや軽率なことや、指摘されておりますけれども、この通牒を出す場合、大きく取上げられるであろうことを予想していたかどうかわかりませんが、これくらいの通牒を出す場合は、大きく取上げられるであろうことは大体考えがつくはずである。しからばこの通牒は、単に軽く労働教育の効果をねらうだけでなく、これはいろいろに運用され、副作用が起るであろうことも当然考慮さるべきでなかつたか。医者が薬を盛る場合は、まずそれがきくか、きかぬかよりも、副作用が起るか起らぬかを考えてやるのであるが、大臣はこの通牒を出す場合、どういう逆効果、副作用、そしていかにこれが運用されるであろうかということについての配慮がなかつたかどうか。もしそういう配慮を十分した上にこれを出したものだということであるならば、いかなる点にこれが影響、結果をもたらすかということについての一つ考え方を御発表願いたい。
  150. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この通牒に対する反響といいますか、そういうものについては、実は先ほど読みました読売の社説にも「これに対し高野総評事務局長は「再軍備のための弾圧政策だ」と真向から反対しているということが紹介してあります。しかし「われわれは、労働省の見解はおおむね常識の範囲を出ないもので、ピケをめぐる紛争が各地に続発している際、このような見解を公表したことは主務官庁として当然のことだと思う。」と、書いてございます。私もまことさように心得ておりまして、当然のことをいたしたというふうに思つておるのです。「今回の労働省の通達も、要するに争議行為のルールを常識的に示したにすぎず」云々と書いてあります。  なお、その他種々の社説がございます。ここに朝日新聞の同日の社説を御紹介いたしますが、「労使とも経験をつみ重ねて、争議行為のルールをつくつてゆくことが、大事である。この通達が、そうしたルールの確立に役立つことは確かであろうが、しかし一挙にルールを築き上げようと考えて、争議行為に対する取締り的な面だけを強めたり、あるいは直ちに立法化をはかろうとするのは決して賢明ではあるまい。」云々という批評もあるのであります。  要するに、私どももさように心得ておるのでありまして、これは実に健全な民主的な労使慣行のルールをしきたい、これは世界的に通念化している常識なのでありまして、労働争議だから暴力を振つていいということが確立されている国は、どこにもないと私は心得ております。また争議そのものを禁止しておる国もありますけれども、われわれ民主国におきましては、争議は認めておる。しかし、これはあくまでも民主的な慣行でやつてもらいたいということを申しておるのでありまして、こうした争議行為のルールを確立したいという一念にほかならぬ。これを特定に非常に神経質に考えられて、自由党がやる、あるいは吉田内閣がやることだから、すべてわれわれにことごとく不利であろう、こういうように考えられて御反対になることは、少し思い過しでございまして、私は、極論いたしますれば、いかなる政党を基盤とする内閣ができましても、現状のごとき争議行為がよいという通達が出せる内閣というものは、ないのじやないかとまで考えております。
  151. 日野吉夫

    ○日野委員 今大臣から答弁がありましたが、その点は、あとの点でまた弁駁いたしますが、大体この通牒を出す場合に、表現のことにつきましては、巧拙これは別といたしまして、当然大きな影響を持ち、これはいろいろに利用されるであろうことはわかる。そのうち最もわれわれのおそれる点、警戒しなければならぬ点は、警察権の介入であろう。これは労働争議に、この解釈によつて警察権の介入を当然許す道を開いてやるごときものでないか。今答弁しておられる労働大臣は、警察大臣をも兼ねておられたと私は記憶しておる。そういう人が、こういう次官通牒に名をかりてこういうものを出すから、一層そういう印象を受けたかもしらぬが、昨日来ここで論議されております労働争議の暴力化の大きい原因として、やはり警察権の介入かあげられておる。この道を開くようなまぎらわしい一つの通牒をここに次官通牒として出されておる。非常にあいまいな規定であることは、昨日来指摘されておる通りであるが、この不徹底な中にも、非常に重要な要素を持つているのではないか。  今のような警察権の介入の問題もあれば、大きな基本人権に関する侵害の問題、先刻労働組合法を解釈する役所だとも言つておられるが、労働組合法の解釈にも、解釈を歪曲する一つ規定が見えて、労働組合法の第一条二項等の解釈も、先刻の答弁の通り解釈しておられる。もし、そういう考え方を基本としておるならば、ここで次官通牒の形をとるよりも、当然開かれるであろう国会に堂々と提出すべきものではないか、こう考えられるのでありますが、これに対して大臣はどう考えておられるのか。  さらに、基本的な考え方の章では、スキャップというものを、最終的には是認されてあることは当然であるけれども、ここでは、いかにもスキヤツプを奨励するかのごとき感を与えているのではないか、そういう印象を受ける。それからさらに争議行為に対しては、きわめて穏やかな言葉で表現しておるけれども、ある意味では威嚇を与える、労働争議に対する一つの威嚇とも解釈されないことはない。基本的な考え方の章でそういう印象を受けるのであるが、大臣はどう考えておるか、この見解を伺いたい。
  152. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これはあくまで労働法規の解釈でございまして、判例の集積ともいうべきものでございます。そこでこれを法律化するという考えでございますが、法律化します場合に、どういう点を法律化いたすのでございますか、私どもとしては大体これでよかろうと思つております。  なお、なおこうした解釈を基準といたしまして、個々の具体的な事例において、これが違法であるかあるいは正当であるかということを判断することは、われわれとしては別の機関でやるべきことと考えております。  なお、スキヤツプ奨励というような意図は、毛頭ないのでございます。大体労働協約を結びまする場合に、スキヤツプを入れるということは、争議が起きた場合において、争議自体の解決を困難ならしめるものでありますから、大体保安要員の確保とスキヤツプの禁止というものは、協約と相対で禁止して、片一方保安要員は必ず確保する、しかしスキヤツプは入れない、こういう協約ができておるのであります。しかし、スキやつプを入れること自体、不当労働行為であるとは言えないのでありまして、そういう法律解釈を明らかにしておるのであります。かも、ピケツトに対して、スキヤツプといいますと、すぐに暴力というような印象を伴いますので、そういうことがいいのかというふうな御質問を受けたこともありまするが、もとより暴力は争議以前の問題でありまして、否定さるべきことは当然であります。     —————————————
  153. 赤松勇

    赤松委員長 この際皆さんにお諮りしたいのですけれども、外務省の安川課長が見えておられまして、発言を求められておりますから、これを許したいと思います。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 赤松勇

    赤松委員長 それでは、安川課長
  155. 安川壮

    ○安川説明員 それでは、先日御要求のありましたグランド・ハイツのメードの解雇事件につきまして、その後極東軍の方に再三回答を督促いたしました結果、実は、本朝、極東軍司令部のテンプル参謀次長から国際協力局の局長のところへ電話がございまして、本件については、調査した結果、現地の司令官がメイドの出入をさしとめておつた件は、たしか昨日の夜これは解除した。従つて、今後は施設、家族住宅区域への出入は自由に従来通りできることになりましたので、残りました問題は、復職するかどうかという問題、これは雇い主と御本人との間の関係において復職も可能である。従つて、怖設の出入りを禁止したという件はこれで解決したものと考える。ただ、復職できるかどうかは、これは個人の雇用関係になりますので、軍の措置とは無関係でございます。従つて、元の雇い主に帰れるかどうかの問題は、雇い主の考え次第で——この点は軍としては何とも言えないけれども、とにかく施設への出入は従来通り自由にしたという連絡がありました。
  156. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 牛島君の問題につきまして、ただいま第三課長の御報告を伺つたのでありますが、外務当局の誠意あるあつせんと米軍の理解ある措置によりまして、当委員会希望しておりました線に沿いまして、この問題が円満なる解決を見つつあることにつきましては、非常に満足に存ずるところであります。ただ、ただいまの御報告中にも承りましたるごとく、残つた問題といたしまして、元の雇い主に牛島君が復帰できるかどうかという問題もあるわけでございますが、聞くところによりますると、本人は、できれば元の雇い主のもとに帰りたい、こういうふうに希望しておるそうでありますから、この上とも当局として、ごあつせんの方法がありましたならば、できるだけの御努力によりまして、本人の希望がかなえられるようにしていただきたいことを希望いたします。  なお、この機会に一言希望を申し上げますると、聞くところによると、この種の事案が、本件ばかりでなく、他にもあるのではないかというようなことも承るのでございますが、はたしてそうであつたといたしましたならば、どうぞ外務当局におかれましては、今後他の類似の問題につきましても、本件と同様御尽力をいただきたいと思うのであります。  なお、これも聞いておるところでございますが、米軍におきます直接の雇用員の労務関係につきましては、いろいろな事情から、わが国の現行の労働基準に照しまして、必ずしも一致しないというような点が少くないようでございます。もとより法律的に、あるいはまた社会的に特殊関係にあることは了解できるのでございますが、これらの米軍家族の直接の雇用員の待遇につきまして、今後その向上につきまして、できるだけ当局の御尽力ごあつせんをいただきますよう、この機会に希望をいたしたいと思います。
  157. 島上善五郎

    ○島上委員 ただいまの大橋委員の御意見、御要望に賛成するものでありますが、さらに言うならば、この問題は新聞に大きく報道され、国会で取上げられてからこういうふうになつたということは、実は私どもから見ると、労働組合が取上げて、数回にわたる団体交渉を行い、国際協力局に対しても、具体的に書面でもつて申入れをしておるのに、ここまで来たということは、その間に国際協力局の誠意ある努力とございましたが、その誠意と申しますか、熱意が少し欠くるところがあつたのじやないかと思う。私どもは、こういう問題は、ある種の誤解から起つたものにしましても、組合団体交渉しましたならば、その組合団体交渉の間において、すみやかに解決されることが一番望ましいと思う。今後こういう問題が起らないように、私ども希望するものでありますが、不幸にして起きましても、そういうことは組合との団体交渉の過程においてすみやかに解決するように、今後国際協力局においては、もつと積極的に——アメリカさんの言うなり次第になるということはなかろうと思うけれども、そういう感じもございますので、もつと積極的に自主的な立場から折衝して、こういう問題の起らないように、また不幸にして起つても、すみやかに円満な解決ができるように、御努力をお願いしたいと思う。  さらに、この問題が起ります実際の理由の一つとして、メイドは組合をつくることはできないのだ、基準法適用されないものは、組合をつくることはできないのだということを、アメリカ流に考えておつたらしいのですが、それは一昨日の国会において、日本の法律ではそうではないのだということが明確になりましたので、今後メイドの組合の組織並びにその活動に対しては、アメリカさんか誤解をしないように、日本の法律を正しく理解して、そのような活動に対して支配干渉がましいことのないように、その点も十分に向うに理解させていただくように努力していただきたいと思う。  なお、本委員会において調査することになつておりますが、仙台においてストライキ中に暴行事件が起つたというような問題もありますし、今大橋委員が言われましたように、駐留軍の労務者一般労働条件、今問題になつておる例の退職金等の問題もございまするから、こういうような問題に対しても積極的に努力されるように希望申し上げまして、私の発言を終る次第であります。
  158. 安川壮

    ○安川説明員 ただいまお二人の委員からの御発言は、十分尊重いたしたいと思います。  ただ一点、今回の事件がこの委員会で取上げられる前に、組合の方から協力局に申入れがあつた、それに対する動き方がおそいということでございました。私は担当の課長でございますが、私の記憶する限りでは——この事件を知りましたのは、新聞記事に出たのが最初でありまして、それ以前には、組合その他から本件に関して何の申入れもなかつたし、また新聞報道されまして国会で取上げられまして以後も、組合その他からは直接の連絡はなかつたと思います。これは何か書類の行き違いかとも思いますが、少くとも私に関する限りは、何も連絡は受けておりませんから、その点は誤解のないように願います。
  159. 赤松勇

    赤松委員長 それは組合の人に聞きましたら、外務省へ行つたが、あなたはお留守て他の人に会われたそうてす。それであなたの耳には達していなかつたわけですね。これから連絡を十分に密にしていただきたいと思います。  本件につきましては、本委員会において越党派的にこの問題を取上げまして、また政府の方でも非常に熱心に協力していただきまして感謝にたえません。幸い曲りなりにも一応解決のめどがついたわけでございますけれども、また米軍当局も、この問題が国会で問題になりまするや、非常に率直にその非を非として反省して、こういう態度に出られたことに関しましては敬意を表します。  皆さんの御協力に対しまして感謝をいたしまして、さらにあとの質疑に移りたいと思います。     —————————————
  160. 日野吉夫

    ○日野委員 今の質問を継続しますが、時間の制約がありますから、簡単にかいつまんで質問いたします。このピケの問題につきましては、いろいろこまかく規定がありまして、非常にめんどうでありますが、大臣が先刻、個個の判断は警察官の判断にまかせる、こういう答弁をしておられるが、これは非常に危険な問題で、警察力介入がこのストの暴力化を結果する、こういうことが昨日来問題になつておるのに、こういうまぎらわしい規定を発表して、この警察官の介入を許すことによつて、一層ピケ破りが使用者側とからんだり、いろいろな形で行われないか、こういう心配があるので、これに対する一つの見解。  それから、この通牒の一番あとで、昨日も大分問題になつた、使用者側でも、このことには不満の意思を表明しておられるようでありますが、結局問題は、正当防衛、緊急避難の問題が問題になるので、もしここに規定するならば、過剰防衛だけが一つ問題になるので、こういうまぎらわしい表現でなく、むしろ過剰防衛は許されない、こういう明確な規定の仕方をする方がすつきりしていいのではないか。この議論にも大分議論があるところでありますが、ぼくは、むしろこういうことは、明確にうたうべきでないかと思うのであります。これに対する大臣の見解を伺つておきたいのであります。
  161. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私どもは、労働法規を扱う役所といたしまして、この解釈を明冠する責任があるのであります。さればといつて、むやみやたらな解釈を出すということは、もちろんいたしませんので、判例あるいは判決例等で見られました線を中心といたしまして、これをとりまとめたのがこの通牒であるのであります。そこで、それが警察官の行動を誘発する云々のお話がございましたけれども、私どもといたしましては、だれが見ても不当なことは不当なんだということを明らかにしておくことが、私どもの責任でこれから先をどう判断するかは、またそれぞれの役所の責任であるわけでありまして、これがあつたからどうということは、当然のことを言つておるわけでありますから、それによつて不当なことが特に起るというふうには予想はいたしておらないのであります。もとより政府は不当なことをするつもりではないのでありまして、しかし正当なことは断固としてやる。これが政府の立場であろうと思います。  なお第八の代替要員の雇入れ禁止条項の違反、争議不参加要員協定違反等の場合には、それに対応する必要最小限度において対抗的手段を講ずることが正当化される場合がある云々のこの問題についてでありますが、これは一応相手方がけしからぬ、あるいは争議戦術において当方が不利であるというような主観的な判断によつて何かするということは、程度の問題でありまして、非常にまぎらわしいことになりますから、相手方に争議のルールにおいて客観的に明白にして、かつ重大な法令協約違反等の行為が現実に存することを必要とする。その場合にはこの対抗手段が講ぜられることが正当化されることと相なる、こういう程度で申しておるわけでありまして、これについては、非常になまぬるいではないかという使用者側の御意見があるということも聞きましたし、本院における参考人意見としての話も聞きましたし、また組合側においても、これは今お話のごとく、むしろあいまいである、こういう御意見もあつたように承つておりまするが、具体的にそれぞれの事例をここに想定せられまして、比較ということよりも、やはり法文の解釈をするという建前からいたしますれば、かような程度にするのがよかろうと一応は考えておる次第であります。
  162. 日野吉夫

    ○日野委員 時間がありませんから、最後にちよつと伺いたいのは、影響が大きかつたことを大臣は認めておられるようだが、しからば現在の組織労働者は、この通牒の内容を知つてどう考えたか、一つの感激をもつてこの方針に協力する気持を起したかどうか大臣はどう考えておられるか。これが最も重大な点でありまして、吉田内閣の今日までとつて来られた政策の累積がここに現われた、これに対して、私は喜んで迎える気持はおそらくないと思う。今日大臣は、口を開けば日本経済の前途を憂えて大演説をぶたれるのであるが、これは労働者の教育なしに、労働者協力なしにこれをなし遂げられるとお考えになつておられるかどうか、この点をひとつ伺つておきたいと思います。
  163. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この通牒に対する影響でございますが、これに対しましては総評、全労、新産別それぞれにおきまして、意見を述べられておるのであります。これにつきましては、おおむね今お話のように、感激して歓呼をもつて迎えるという態度でないことは知つておりますが、ただ、そのよつて来るところは自由党の責任であるというお話でありまして、これはある程度私も責任があるのではないかと思う。どういう責任かと申しますと、私どもは人格を尊重し、自由にその思うままに教育をするという方針で従来来ておるわけであります。しかし、川でもそうでありますが、ただ自由に流しておきますると氾濫をする場合もありますので、その場合には、堤防を築いて一般に影響を与えざるようにいたしまして、川の流れを調整する必要を認めることはあるのであります。堤防を築く際に反省せよと言われると、やはり今まで自由に流し過ぎたという点は、反省せざるを得ないのであります。今そういう御反対がありますけれども、何か非常に弾圧的なようなことを一方において言われると、そうだそうだということになるのでありますが、静かにこの通牒の内容をよくごらんいただきますと、要でるに暴力はいけない、民主主義社会におきまして、また法治国におきまして、お互いに人の身体、行動の自由、住居、私生活の自由ということは、これはもう尊重さるべき権利であり、労働組合法に基く団結権、統制権あるいは労働協約に基く使用者の指揮管理、こういうものを尊重さるべきものであることは当然であります。要するに、その意に反して、こうしたものをお互いにまつたく否定したり、不当に拘束し侵犯することはできない、こういうことでございますから、民主的なルールを築き上げるように、どうか皆さん協力していただきたい、衷心からそうこい願つておるのであります。
  164. 日野吉夫

    ○日野委員 もう一つつておきたいのは、それならば、あなたの所管する官庁である労働省内において、労働省職員が、この通牒に対してどういう考えを持つておられるか、協力されるかどうか。これはあなたの部下として、あなたの前で反対の意思表示はしばいであろうけれども、賢明なる小坂労相においては、大体の動向は察知できるはずであります。私、なぜこういうことを申し上げるかというと、自由党内閣出て七年、労働政策というものは不得意中の不得意かもしらぬけれども、今日まで積み上げて来たところのものは何であつたか。さつき大分気にされたけれども、まさに反動逆コースの名をもつて呼ばれるに値するものがあつたのではないか。こうしたものを積み重ねた、その最終の分の悪い役割を引受けられた小坂労相ではあるけれども、あなたの新しい感覚に、ある種の期待が持たれているはずなんです。こうした場合に、この通牒を出す前には、次々と労働組合争議権を奪つてておる。さらに今度この種の制約を加える、こういうことに対して、労働省内の諸君といえども感激してこれに協力する態勢はないだろうと思う。先刻、労働省は教育をやる行政機関だとも言つておるけれども、一面福祉増進の重大任務を持つておる役所でもあろうと思う。それが、労働基準法の改悪をほのめかし、労働三法の改正を意図する。これを見た場合、とうとい労働行政、しかも日本再建の最も重要な任務をになつて立とうと感激に燃えて学校を出てあなたの部下にはせ参じた諸君が一体どう思うか、失望するだろう。私はなぜこういうことを申し上げるかというと、過般の近江絹糸の争議でも、あの基準法違反その他いろいろの問題があつて、しかもこれが三年も放置されている。午前中に調べた東証のあの争議の裏にも、ああいう基準法違反もあればいろいろな問題があるが、労働省はこれをあまり詳しくも調査していなければ、これに対処する堂々たる態度もとつておらぬようであります。これは、近江絹糸の場合も、ぼくは、こういう事態を、このままほうつておくわけがない、労働省の中にこうした事態を摘発して、断固として暴戻なる使用者と闘つて行こうという正義感を持つた者は一人もいなかつたか、こういう質問をしているのであるが、こういう反動逆コース政策の累積が、感激と正義感を喪失させた結果を生んでいるのじやないか。こういうことに考え及ぶときあなたがこの施策を遂行する場合に、労働者がこれをどう迎える小、あるいは労働省のこの仕事に携わる諸君がどういう感じを持つてこれを迎えるかということは、十分考えてみなければならないし、その配慮の上に立たない限り、完全な労働行政の遂行はできなかろうと思うが、この点について労働大臣の考え、決意等を伺つて、私の質問を終りたいと思います。
  165. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は、あえて他人の片言隻句をとつて、これを批判するという態度はいたしませんつもりでおりますが、先ほど申し上げましたような労働組合の上部団体の意見の中にも、次官通達あるいは私どものこの考え方についての理解の片鱗を示されておる点はあるのであります。だからといつて、こういう点を書いてあるというようなことを言いますことは、これは全体を統率される方々それぞれの立場がありましようから、決してそういうことは申しませんが、そういうことが出て来たということが、新聞等に書いてございます言葉を使わせていただけば、いわゆる小坂労政の教育的な効果が、萌芽であるにしても、それが出て来つつあるということのように見えて、私は実はこれをもつてはなはだ喜んでおる次第なのであります。労働関係が円満に行かなければ、日本の再建はできないと思います。しかし、労働関係だけに飛び抜けて理想的なものができるということは、なかなかむずかしいのでして、社会一般一つの流れに沿うた労働関係というものが確立されなければならぬ。日本には日本的な労使の関係ができなければならぬし、アメリカにはアメリカ的な、あるいはイギリスにはイギリス的な、西ドイツには西ドイツ的な、それぞれの特色のある労使関係があつていいと思うのであります。しかし、日本の場合、あまりに純粋に理想的なものを追い過ぎているのじやないかという批判を私自身しているのです。日本の許された経済条件というものがあつて、労働賃金なり労働関係だけがこれから飛び抜けて行くということは、むずかしいことなんです。そうしたことは、理想の旗として掲げて、一歩々々それを獲得するように日本経済を復興させる、これが先行しなければならぬ問題だと思うのでございますけれども、ともすれば、その理想の旗と現実との開きの間に入つて来るものが、きわめて偏向を持つた共産党的な指導なんです。そういうものに対しては、私どもはあくまでこれを萌芽のうちに葬り去ることが、日本百年の計のためにとるべきことだと考えておるのであります。ただいまお話労働省職員におきましても、そうした私の方針をよく理解してくれて、この通達については、全面的に協力してくれると、私はかたく信じておる次第であります。
  166. 赤松勇

    赤松委員長 多賀谷君。
  167. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず最初にお尋ねいたしたいのは、次官通牒ですが、昭和二十四年に労働組合関係法律が改正になります以前に、実際上次官通牒によつてその改正の内容を相当部分達せられた、こういう事実があるわけであります。二十三年十二月ごろから、今の労働省では盛んに次官通牒や行政解釈をなさつて、実質上労働組合法の実態を改正して、後になつて法律改正というような面にだんだん追い込まれておる。こういうことはきわめて遺憾でありまして、またこの前せつかく張り切つて解釈をお出しになりました例の部分ストの問題、賃金カットの問題でも、事実は労働大臣がお述べになつたような解決ではなかつた。これは法律的にはそうでなかつたけれども、実質上はそういうようになつた。私はあの実態でああいうふうな声明をされることはきわめて遺憾である。あなたがいかに大きな声で言われましても、解決にはなりませんよ。ことに中西労政局長は、かつて中労委の事務局長である。その中西労政局長が補佐をしておつて、ああいうふうな解釈をなさることはけしからぬということを申し上げたけれども、事実は違つておりました。私は、いまさらこれをとやかく言りわけではありませんけれども、最近そういう事実が顕著になつて、ここにピケツトに対する次官通牒という形で出された。私は次官通牒よりも、その前の労相声明と称するもの、この出された時期について、きわめて重大な関心を持つておるわけであります。この出された時期は、十分御記憶にあると思いますが、二十六日であります。二十六日というのは、証券取引所において二十四時間ストを打つた日であります。私は労働大臣が、証券取引所におけるストライキがきわめて重大な問題であるということと、ピケそのものとを混同されて、この声明がなされたように考える。証券労働組合の連中は、組合をつくつて間がないのでありまして、非常に若い組合であります。しかも、こういうことを言いましてはどうかと思いますが、炭鉱のような重労働をする労働者ではありませんから、おのずからそこに比較的、同じスクラムを組むにしてもゆるやかなスクラム、また今までそういうスクラムを組んだ経験すらない人々がやつておる。ですから、この種のピケは、何も珍しいピケではなくて、ピケとしては、私はきわめて穏便なピケであつたと思うのです。それを、ここにピケに対する労相声明を出されて、そうして何か証券ストを早く解決する、こういうような意図があつたのではなかろうかと思う。これは極端かもしれませんが、むしろストライキを破るために、私はどうもこの声明が出されたように思う。金融界や証券界ストの重大な意義を持つことは、私は十分承知しておるのでありますが、それがどうも混同されて行われておるのではなかろうかと思うのです。その点に対する大臣の釈明をお願いいたしたい。
  168. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 非常によく研究されておつて、かつ記憶力きわめて旺盛な多賀谷さんですから、私もあえて隠しだてなどをしようとは毛頭思つておりませんが、部分ストの問題は、私どもも行政解釈の通りに今も考えております。ただ、この解決において労使双方がそれでよいということになれば、私はそれに対して深入りをするということは、これは労働問題の扱い方として正常な道でないと、こう考えておりますから、双方においてそういうお話合いができるならば、何も政府が出しやばることはなかろう、こういう気持でおります。  ピケの問題につきましては、従来から、非常にピケの問題は、多賀谷さんのお耳にも入るでありましようが、世論としまして、行き過ぎだという声は多いのであります。これについて、役所がいつまでもほつておくということは、これは役所の立場として許されぬことだと思うのであります。時たまたまちようど発表してよいようにすつかりまとまつたわけであります。それが今お話の東証争議の日であるわけであります。ただ、私はそういうことは、いずれのときであつても悪いということはないと思います。一方から言えば、ああいうピケに対する声明が出なければ、われわれのピケも張れて、もつとよかつたろうと言われる方もあるよりです。私のところに、ここに傍聴しておられる人で言つて来られた方もある。しかし、そうだからといつて、私はこう考える。今お話のように、組合を結成されて割合に若い、時期も非常に短かいのであります。従つて団交がうまく行かぬからあつせんをやる、あつせん案が出るというのに、それを待たずにストに入るということは、組合の行き方としては非常によくない、まずい、そういう点こ見られるわけでありますけれども、とにかくああいうことがなかつたら、もう少しうまく行つたのじやなかろうかという議論は、私はたとえば——これはたとえとして申し上げるのでありますが、あの菓子は非常にうまいから、ひとつそつと食つてしまえ、こう思つておるところへ、その先生が来て、君、その菓子は食つちやいかぬよ、こう言つた。なぜ食おうとしておるときに注意をしたんだ、食つてしまつてから注意したらいいじやないか、こういうような議論である。それで、いいことはいい、悪いことは悪い、いずれのときを問わず、政府というものはそういうことをすべき立場のものだ、こういうふうに私は思つております。
  169. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし、たまたまいろいろ立案をしておつたのがてきた、こうおつしやいますが、やはり労働問題を担当される大臣の言葉ではないと私は思う。出す時期のいかんにかかわらず、とにかくできたものを出すのだ——私はこのときできたとは考えません。しかしながら、また出す時期、その時期をあなたの方では、時期を得た声明であるとお考えであるかもしれませんが、私はあの程度のピケは、ピケ自体としては何も珍しいピケではない、むしろあなたの方は、証券取引所従業員争議をやる、こういうことにびつくりされて、ピケに対する声明をされて、私は破つたとは言いませんけれども、争議解決を逆にはかられた、こういう意図がありはしなかつたかと思うわけです。ですから、この問題はきわめて重大なる問題であります。ピケ自体の程度ならば、あれよりも幾多の強力なピケのあつたことを私は知つておるのであります。しかるに、そのピケに名をかつて、むしろ争議を一方的な、経営者に有利といいますか、そういう方向に導かれた意図がある。そこに証券ストライキというものとピケというものを混同されておる、かように考えるわけですが、大臣はそういうようにお考えにならないか。事実問題として、とにかく声明があり、警察官が出、そうして、組合はびつくりしてしまつて、もうピケを解いてすぐ解決の方向に行つておる、いな、ストライキをやめておる。こういう点は、確かに、あなたがいかに強弁されましても、事実行為としては顕著に現われておると思うのです。この点に対して答弁願いたい。
  170. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 従来から、このピケか非常に法ののりを越えておるという点があつたことは、今あなたもおつしやつたように思うのであります。これについて、私どもこれではいかぬから、ひとつ何とかはつきりした解釈を出そうじやないかというようなことで、いろいろ研究をいたしておつたのであります。もとより、自然にしておけば、良識に従つておちつくところにおちつくのだから、それでよかろうという議論も、一方からはあるのでありますけれども、どうもそう思つておりますうちに、ますますひどくなつた。そこでピケの解釈というものを、私の談話の形式をもつて発表いたし、また各府県知事には次官通達の形をもつてこれを通達いたしたのでありまして、それ以外に別に何にもございません。
  171. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 小坂労相の腹の中をはがる機械がないものですから、どうも私もそれを立証せよと言われましても、立証するわけに行かないのですけれども、しかし事実問題としてはそういうようになつておる。客観的には、そういうようになつておると思うのです。時間もありませんが、もう少し具体的に述べてみたいと思います。  あの日、実は証券取引所では、理事者側からロック・アウトを通告しておるわけです。ロック・アウトを通告しておつて、そうして作業所閉鎖が行われておる。ですから、私は業務には何ら問題がないと考えるわけです。この点につきましては、むしろ警察官の問題であつて、私は今大臣から答弁をいただこうとは思いません。また明日実は労働省の方でも、この問題について話されるそうですから、私は申しませんが、そういう事情にもあつた。こういうことをよく記憶しておいていたたきたいと思うわけであります。  そこで、私はこの証券ストに対して、きわめて重大な関心を持つわけですが、午前中に実は証券取引所理事長や証券取引所従業員並びに証券会社従業員の方に来ていただいて事情を調査したわけです。ところが、労使関係におきましては、近江絹糸以上の問題を含んでおると私は考えるわけです。すなわち、いろいろ述べられましたけれども、ある会社におきましては、組合をつくろうとすると解雇になつておる。あるいはデモがいいなと言つただけで五名解雇になつておる。あるいは組合をつくつたけれども、一週間で解散をさせられておる。組合をつくると証券会社が倒れるからといつて経営者の方でやめるように勧告がめつた。あるいは家族を呼びつけて、組合をつくらさないようにしておる、こういう事例は、まつたく枚挙にいとまがないほどあるわけであります。私はむしろ今度の証券ストは、どういうようにお考えになるかしりませんが、私はストライキによつて少々不便になつても、こういう点が明るみに出て、今までの封建的な因習的な労働関係が近代化の方向に向う、民主的に向うという、きわめて国家にとつては喜ばしい、ましてや労働行政にとつては喜ばしい争議であつたと考えるわけです。一体この証券ストに対して、大臣はどういうようにお考えであるか、現在の心境をお聞きいたしたいと思います。     〔委員長退席、日野委員長代理着席〕
  172. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 最初のロツク・アウトの問題であります、ロツク・アウトというのは、もうかぎをかけてしまつて一切入れないのだ、こういうお考えのようでありますが、要するにロツク・アウトと申しましても、場合々々によつてその態様が異なるわけでありまして、一般的に会社自身が一切の正常業務を放棄するという意味ではないと思うのであります。従つてロツク・アウト中でも、会社の業務が存在するという場合には、業務妨害というものが成立する余地があると思います。取引所の場合でも、ここで取引所の方の通告書というものを見ますと、やはりロツク・アウトということを言つておりますけれども、当初は本来の業務たる市場再開維持については、万難を排して従来通り実施をする方針である、こういうことを言つておるのでありまして、会社は、要するにストをしておる組合に対してはロツク・アウトをするか、自分の方としては業務を継続したい、こういう意思を表明しておるのであります。従つて、私は業務妨害というものは、やはり会社がそういう意思を明示しておる際は存在するというふうに見ております。  なお、封建的な労務管理云々の問題でありますけれども、そうした労務管理がなくなることを私どもは期待をいたしておりますが、さればといつて、非常にストライキばかりに熱中されても困るわけであります。要するに、業務の正常な運営を確保いたしまするために、労使が協力してやつていただきたい、こういうことでなければならぬ。これが対立しておるということになりますと、これは日本だけで経済を営み、日本の国だけの歩みばかりでなくて、世界各国において、あるいは産業において貿易において競争しておるのでありますから、日本の国の経済状態を日本人自身が貧困ならしめようとすることは、私は常道でない、そういうことになりませんように労使協力の実をあげていただきたい、かように考えております。
  173. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ストライキばかり好んでやつているわけではないので、終戦後労働組合法が与えられて、初めて組合をつくつてストライキをしておりまして、何も証券会社労働組合の連中が好んでやつているわけではありません。しかも私は、これは単に労使だけの問題というわけには行かないと思うのです。労働組合をつくろうとすれば、ことごとく弾圧されてできない、あるいは解雇になつて泣寝入りをしている。私は後月調査しますけれども、とにかく企業を譲渡する場合に、組合があると非常に困るからといつて、そうして組合があるならば企業を受けない。こういうわけで、中央区の労政事務所が中に立つて、一応組合は解散をしよう、そうしなければ経営者が来ない、こういうことがある。私、労政事務所を責めるわけではないのですが、しかし、そう言わざるを得ないような経営者の労働感覚であります。そういう実情にあつて基準法違反は続出しておるのです。こういう状態の中に証券ストが行われたということは、こういう点が明るみに出て、そうして今後は、おそらく労使関係がうまく行き、労働条件が維持されるであろうと、こういう意味において私は慶賀にたえたい、かように考えるわけですが、大臣はどういうお考えですか。
  174. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 使用者側のこの組合に対する理解といいますか協力といいますか、そういうものが必要であることは、私も同感でありますが、今例におあげになりましたような、どことかに組合があつてはどうもならぬというふうな認識を与えておる点がありとすれば、これは使用者側の無理解も一方にありましようが、組合自身にも反省すべき点があるのではないか。あれがあつたんじやどうにもならぬというくらいに思われるということは、無理なことでも、何でもかんでも力で押し通すということだけに専念している組合があるからであつて、それは組合自身においても、反省してもらわなければならぬと思います。
  175. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣は、事情が十分におわかりになつていない。あるいは事情がおわかりになつていてそういう答弁をしているとすれば、ずいぶんずるい大臣でありますが、そういうことはないと思います。実際は、組合をつくること自体が、商売に影響があるという感覚なんです。ですから、組合ができて何も交渉したのでもなし、ストライキをやつた組合でもない。しかし組合があるということが、証券会社においては困るのだ、自分の会社はつぶれるのだ、こういう認識であるわけであります。ですから、組合があるということ自体が困るといつて、あるいは社員会あるいは社友会、こういうものに全部切りかえろ、こういうような方向に出ておるわけでございます。それをひとつ十分認識されて、今後の行政指導をしていただきたい、かように私は希望いたしまして次の質問に移ります。  このピケの問題で、日本には比較的強力なピケツトがしかれている。しかし外国ではそういう状態にないということは、これは参考人から聞きましたし、皆さんから聞いたわけでございます。ところが、参考人のほとんどが、自由党の方から申請されました参考人ですら、その最も大きな原因は、日本の労働組合は、企業組合であつて産業別組合でない、ですから、労働市場の独占ができないところに、そういう強力なピケをしかざるを得ない理由がある。これはどの学者も申されるわけであります。そこで私はお聞きいたしたいのですが、最近の日本の経営者の動向というものは、企業別組合から産業別組合へということに対して、非常に猛烈な反対をしておる。それがために、ずいぶん大きな争議が行われておる。御存じのように、一昨年の十二月の争議、これは電産の争議ですが、この最もおもな問題は、やはり会社が九つになつて、おのおの労働組合を別個につくる、そうして交渉しなければ応じないというところに、あの大きな争議があつたのであります。また炭労が現在争議をしておりますが、これもやはり交渉権の問題であります。窓口の問題であります。すなわち、炭労という組織と団体交渉をしろ、こういうことを強力に拒否しておる、そこに争議が起きておる。こういうことでありまして、むしろ経営者の方は、あくまで企業別組合で、とにかく自分のところの従業員組合ならば、何とか御用化できるという自信を持つて、産業別なり統一的な労働組合をきらつておる、こういう事情でございます。しかし、自由党の方から申請されました参考人の北岡さんですら、企業別組合労働組合でないのだ、本来産業別組合労働組合である、こういうことすら言われたくらいでありまして、私は労働省としては、産業別組合の方に行政指導をなされるのが当然であろうと思う。大臣はどういうようにお考えであるか、伺いたい。
  176. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 松岡三郎さんという明治の教授の意見が、いち早く出たのでありますが、その中にも、今お話のように、日本の企業別組合は弱いのであるから、ピケは多衆の、いわゆるマスの力をもつてやる、こういうように言われております。私どもの通牒にも、マスが衆合するということについて、多数が衆合するということについては、別に違法だと言つていないのであります。暴力はいかぬ、こういうことを言つているわけであります。そこで、いわゆる産業別組合を指導するかどうかというお話でございますが、別に私はとめておりません。組合法によつて、産業別組合ができるようになつております。これは組合自身においてそういう方向を必要とされれば、それはおやりになることは一向さしつかえないことであります。これはやはり組合内部の問題でございますから、労働省としましてどういう組合になるべきだとか、どういうふうに指導すべきだということは、組合の内部に干渉することになりますので、私どもはそういうことは考えないのでございます。外国のピケなどの話を聞きますと、やはり一度は暴力を振つて、そしていろいろな問題が出て来て、その結果、あれじや困るじやないかということで、現在のような平和的な説得、しかもあくまでピケ・ラインです。しかるに、日本のはピケ隊だ。外国のはピケ・ラインで平和的に説得するというとうとい経験を積んで来ているのであります。その間には、人死にもあるという状態でありました。幸いに日本としては、日本の国民は、そういう暴力を忌む知性高き国民だと私は思いますので、やはり納得ずくで、そういう経験を経ないで平和的な民主主義のルールを確立したい。ピケについても、そう思つているわけでございます。
  177. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働組合の育成強化を言われる大臣として、どうもそれは労使双方の問題じやないか、こういうことでは片づけられないと思う。大きな方向として、労働省はどちらの方向がいいとお考えであるかお尋ねいたしたい。
  178. 中西実

    中西説明員 労働組合の結成あるいは組織のあり方は、結局国の経済事情とやはり不可分の関係にあるのじやなかろうか。たとえばアメリカあたり、鉄鋼関係などにつきまして争議がありました場合、USスチールといつたような代表的はところでぐつとやつて、そこが片づけば、あとはずつと右へならへというようなことで解決している。そういつたように、大体企業の大きさもそろい、必要なところではそういつた産業別の組合組織ということが可能でもあるし、それで運営がついている。日本の実情を見ますと、同じ産業内でも企業較差がうんとある。しかるにかかわらず、現在、たとえば産業別でいろいろ組合が大会を開き、いろいろと方針をきめられます場合に、そういつた較差はともかくとして、とにかく一律、たとえば二〇%プラス・アルフアといつたような調子の決定をしておられる。しかし、それを現実にやつてみますと、とてもそういうことはできない。従つて、大会のときには非常に気勢が上るのでありますけれども、いよいよ闘争ということになりますと、各企業の組合会社という話合いにだんだんなつて来て、それぞれの実情に応じた解決で納まる、こういう事情にありますので、組合組織でけを先走つて産業別というふうにやりましても、もしそうやりますならば、やはり会社に対する考え方、態度も、日本の経済の実情に合つたような考え方でなければならぬ。今のような一律一体的な、いわば非常に初歩的と言いますか、あるいは組合の最終目的はやはり一律一体的な要求ということになるのかもしれませんが、今の実情から言いまして、きわめて無理なやり方でやられます場合には、われわれどつちがいいということを言うまでもなく、自然の成り行きとして、産業別組合というものがしかく強いものになつて行かないというふうな感じがするのであります。従つて、今の日のD経済の実情、同じ産業内におきます各会社実情を見まして、はたしてどつちがいいか、これは、それこそ先ほど大臣が言われましたように、労働省としましてどつちでなければならないということでなく、組合に経済の実態を考慮してやるという配慮がありますれば、あるいは企業別にもなりましよう。しかし一律一体の押しの一手で行くというような組合のあり方でありますれば、経営人としましては、それじや困るというので強い抵抗がありましよう。そこらは、労使双方の相対的な考え方によつてきまつて行くのじやないか。従つてわれわれとしましては、組合のあり方、考え方、それに対する経営人の実態ということから判断すべきだ、従つて、今のところどつちでなければならないということは言えないのじやないか、一応成り行きを見るよりしようがないというように考えております。
  179. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 参考人の方々が、全部と言つていいほど、ことに学者ですが、その点を指摘されました。そこで、やはり原因を十分探究して、その方を助長しておかないで、結果だけをいかに外国と違うじやないかといつて非難をされましても、私は当らないと、かように考えるわけです。ですから、いやしくもピケに対する次官通牒を出される以上は、当然そういう面についても言及されるべきである、かように考えるわけです。結果だけをいかにお縛りになつても、原因があれば、当然因果関係で好むと好まざるとにかかわらずその結果が出て来るのです。それをなお押えるということになれば弾圧であります。私は当然この点については、もうすでに産業別組合を育成するんだと結論が出てお書きになつたと思うのですが、そういうようでもありません。ところが、今お話によりますと、何か企業較差が非常に多いから無理だとか、組合が一律に要求しているじやないかということでありますが、どうも労政局長の最近の御勉強が足りないと見える、なるほど、組合は要求しておりますけれども、もう基本賃金において違つているのです。二〇%要求しましても、同じ賃金をよこせというわけではありません。おのずから組合も経営の実態を考えまして、いろいろなブロツクにわけてやつているわけでございます。今、むしろ問題なのは、自分の企業の組合であれば何とかして切りくずしができる。すなわち企業資本の個別的な動きによつてできるんだ、自分の企業だけがうまく行こう。石炭で申しますれば、三井がストライキをしておる間は、三菱が三井の販売先を取つてやろう、こういうような企業の中の資本家の動きがむしろ非常に妨げている、私はかように考えるわけです。これは私は非常に労働運動において遺憾であると考える。この点については、これ以上問答はしませんけれども、十分ひとつ考えて、近い間に、これこそ労相声明なり何でも一つつていただきたい、かように考えるわけであります。  続いて細部にわたつて質問いたしますけれども、先ほどからも指摘されておりました通牒の内容の一部でございますが、ピケ破りに対して、使用者において暴力力団等を使つてピケ破りを行うごとき行為は論外であつて、労働法外の問題だ、こういうふうに言われておりますが、やはりこういう問題については、労働法外であるということで一律にお片づけにならないで、親切に、それに対してはこういうふうに対処するんだと、こういうふうにお書きになつた方がいいと思うのです。それをどうしてお書きにならなかつたかお尋ねいたします。
  180. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 後段の問題にお答えいたします前に、集団のピケツトが行われるということと、企業別組合との関係を論ぜられましたが、その点について、ちよつと申し上げておきまして、後段の問題は法規課長からお答え申し上げます。  私ども、通牒の内容をごらんいただきますと、ピケツトについてはこういうことを書いているのであります。「事業場の出入口付近に多数の者が集合していること自体では、ピケツトとしては違法とはならない。然し乍ら、ピケツトは、平和的説得の範囲に止まるべきものであつて、例えば、工場事業場に正当に出入しようとする者に対して、暴行、脅迫にわたることはもとより、一般に、バリケード、厳重なスクラムや坐り込み等により、物理的に出入口を閉塞したり、説得又は団結力の誇示の範囲を越えた多衆の威嚇や甚だしい嫌がらせ等によつてこれを阻止する如きピケツトは、正当でない」こう書いているのでありまして、多数の者が寄つて——現在企業組合であるから、ほかの企業の者も寄つて来て、これに対してピケツトを張るということ自体は、違法ともなんとも言つてないのでございます。その点を、参考人もあるいは勘違いされたか、あるいは故意にそう解せられて、後段のような議論を展開せられたものと私は思うのであります。そのこと自体は、違法ともなんとも言つてないのでありますから、その点誤解のないようにお願いしたい。
  181. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 誤解しておりません。
  182. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 ただいまの後段の御質問で、特に使用者において暴力団を使つてピケ破りをする点は論外であるという点につきましての御質問でございましたが、上の方から読んでいただきますと、もとより正当でない、特に論外であるということで、かかる行為は違法であるということは明らかなことでございます。こういう違法な行為をやつた場合に、組合がどういう手を使えばよろしいかということが書いていないのは、はなはだ不親切であるというような御質問の趣旨かと存じますが、他の部分につきましても、労使双方の行為は、こういうことは正当でない、あるいはこういうことは違法である、だから、すべきでないということをしるすにとどめまして、向うが違法をやつたから、こつちがこういう手で反撃していいということは、通牒全般につきまして書くのを避けまして、最後の第八項におきまして、相手方の違法行為に対しては、ある程度の対抗的行為が許されるというところでまとめました趣旨でございます。
  183. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それではお尋ねいたしますが、ピケツトに対して暴力を振いい、または平和的説得をする者を実力をもつて排除し、ピケツト・ラインを突破するごときは、もとより正当でない、こういうことになれば、それらに対して厳重なスクラムで押し返してもいいのだ、こういうことですね。
  184. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 厳重なスクラムによりまするか、あるいはどういう行動に出でまするか、これは相手の出ようによることでございます。先ほども大臣から申し上げたと思いますが、正当防衛または緊急避難の行為は、もちろん過剰防衛等に至らない限りは正当性を失うものでない、かように考えます。
  185. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 なるほど、厳重なスクラムを組んで押し返しても、それは正当防衛である、こういうあなたの議論を聞いて初めてわかるのですが、これを読んでもなかなかわからない。     〔日野委員長代理退席、委員長着席〕 ましてや、暴力はあくまでもいけないということが書いてある。しかも、その前に平和的説得ということの定義がある。そこで、私たちは頭が悪いのでよくわからなかつたわけですが、私は緊急避難等の問題は、これは責任性の阻却で、違法性の阻却ではありませんから掲げなくてもいい、むしろ掲げない方が誤解を招かないかもしれない、こういうようにも考える。しかし、違法性の阻却の場合には書いてやるべきである。ピケ破りと言いましても、ピケ破りに対するピケは、どんなに厳重にしたらいいか、これはピケ隊が行うビケですから、あくまでも平和的説得でなければいけない、こういうことではないのでありまして、やはりピケ破りに対するピケは、当然厳重なスクラムを組んでもそれは正当なものである、かように書いてしかるべきであろうと思うのですが、その点はどうですか。
  186. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 先ほど申し上げましたところの厳重なスクラム一般が、相手がピケ破りならばいつでもよろしいようにおとりかと存じますが、その点は、そういう趣旨で申し上げたわけではございません。それからピケ破りとおつしやいますが、当該事業場において就労する正当な権利を持つ人がピケ・ラインを通過しようとすること自体は、スト破りというふうに申すべきではなかろうと思います。たとえば嘉穂鉱業の判例にありますように、ピケ・ラインのうしろから暴力団が棒を持つて押しかけた、この場合はまさにピケ破りであります。かような場合、なぐり返すということは、緊急避難あるいは正当防衛ということになるでありましようが、ピケツト・ラインを通過する者について、いつでも厳重なスクラムで防衛してもいいのだというようにおとりいただいては困ると思います。
  187. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 判例を引用される場合に、法規課長たる者が、きわめてあいまいな言葉を使われるのは遺憾に思うわけです。正当な通行をする者については、これは私は責任阻却で、緊急避難で言つている。これはやむを得なかつたというのが判例です。ところが、いわゆるピケ破りを目的とする連中については、これは正当防衛で判例は論じている。ですから、ピケ破りを目的として、暴力を使つて行う者については、当然正当なピケが、普通の実力行使以上にできるのじやなかろうか、私はかように考えるわけですが、速記に残りますから、そういう点をあいまいにされないように願いたい。正当防衛または緊急避難というようなあいまいなことでなくて、ピケ破り、しかも暴力を伴うピケ破りは正当防衛であり、その他それに付随して、正当に入ろうという職員が、たまたま判別がつかなくて入れなかつたというのが緊急避難だ、こういうようにひとつ明確にお答え願いたい。
  188. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 ただいまおつしやいましたように、ピケットに対しまして、このピケットをけ散らすこと自体を目的として、これに対して暴力を振うというような意味におけるピケ破りがございました場合に、それに対してある程度格闘して身を防ぐというようなことは、これは正当防衛になるかと存じます。なお後段の、まぎらわしかつたから一緒に巻添えを食つたのが、必ず緊急避難になるとは私は考えません。なる場合もあろうかと考えます。
  189. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法規課長の言明で、私はきわめて明確に承つたと思うのです。要するに、ピケ破りを目的として、暴力をもつて行う者には、ピケは厳重にしても正当防衛である、こういうように承つて、かなり安心をいたしました。その点は安心いたしましたけれども、さらに私は、続いて次の諸点について見解を異にするものでございますので、御意見を承りたいと思うわけです。  第一点は、この通牒は、組合員に対するものと、争議中に組合を脱退した従業員に対するものと区別してありますが、中身を読んでみますと、どうも区別されているのかされていないのか、私了解に苦しむのですが、これは同一に取扱つてあるものであるか、それとも区別して取扱つてあるものであるか。ピケの実力行使と言えば語弊がありますけれども、説得と言いますか、そういう範囲が違うのかどうか、これをひとつ承りたい。
  190. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 組合に現に加入しております者と、組合員であつたけれども、今は組合員でなくなつた者につきましては、これはその立場法律的にも異なるものであるというふうに私ども考えて、従つて書きわけた次第でございます。どう異なるかと申しますと、組合員は統制に服する義務を有すると同時に、就労の権利も持つている、この二つの権利の競合のものでございます。しかしながら、組合を現に有効に脱退している人は、これはすでに統制に服する義務がない、従つてそういう競合関係がないわけでございます。そういつた法律上の立場の相違からいたしまして、ピケラインの態様、方法につきましても、おのずから差異は生ずるものと考えます。
  191. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 組合で規約をつくり、統制の項がございますが、私は組合で統制を厳重にする必要のあるのは、やはり争議のときであろうと思う。ところが自分たちが参加して総意によつてきめて、そうしてそれに従うということをはつきり確約しておきながら、その後重大な段階で、統制の項の発動される時期に脱退した者が、その統制を受けない、こういうことは、私はきわめて理解に苦しむものであります。一体どうして違うでしようか、これをお聞かせ願いたい。
  192. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 労働組合に加入しまたはこれを脱退することは、労働者の自由である。これはむしろ基本的な自由であると見てよろしいかと存じます。もちろん労働者といたしましては、労働組合の団結に加わり、かつこれを維持することは、きわめて望ましいとは思いますけれども、実力その他をもつてこの自由を侵害することは、私ども許されないと思う。従つてスト中に組合を脱落する、離れて行くということは、これは原則論といたしましては、もとより好ましいことではございません、しかしそれをどうしても出ちやいかぬのだというふうに、国家権力あるいはそのほかの強制力をもつてとめるということは、これはできないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  193. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それにつきましては議論がありますが、その前に有効に脱退したという、有効とはどういうことであるか。たとえば、組合員を脱退する場合に、これは大会の承認がいるというようなことが書いてある。そうした場合に、一方的におれは脱退するのだ、こう言つて脱退した場合は、有効でありますか。
  194. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 多賀谷委員、たいへん御勉強になりまして、たたみかけての御質問で、こちらもたいへん恐縮するわけでございますが、規約に従つた手続をもつて脱退することが有効な脱退であることは、もちろんであると考えます。しかしながら規約におきまして、たとえば大会の承認を得なければならないということで、大会がこれはどうしても脱退させないのだというふうに承認を与えないことはできない。また大会が年に一回しか開かれないというときに、一年間は何でもかんでも組合員でなければならないということにはならないかと存じます。役人などもやめますときには、依願退職ということをいたします。依願退職で辞表を出しますけれども、その場合、ちよつと待つてくれということは申せますけれども、やはり役人に対しまして、どうしてもやめさせないのだ、依頼退職の辞令を出してやらないのだというふうには申せないのと、ケースは違いますけれども、ある程度同じような考え方が動くのではないかと考えます。
  195. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大会でなくても、ある機関で承認をする、こういう方式でもけつこうでありまして、何も一年も待たなくてもできる規約も幾らもあると考えます。そうしますと、かつてに脱退をする場合、組合の側としては、これは機関に諮つていないのだから有効と認めないということであれば、組合の側としては、当然組合員と同じように取扱つていると考えるのですが、その点はどうでしよう。
  196. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 その場合、大会その他の機関で承認するということは、確認的なものであると私どもは考えます。その団結に加入している人が、最終的にかつ確定的に脱退するということを明示いたしました場合には、その脱退の意思表示は有効であると私は考えます。
  197. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし、個人はそういうように考えましても、対組合的な関係においては、私はやはり組合意思組合の行動というものが、当然行われるのではなかろうかと思うのです。ましてや、すでに脱退した人は、そういう統制を受けるということを十分承知して脱退をしておる。ですから、私はやはり組合としては組合員と同じように取扱つてもいい、かように考えるのですが……。
  198. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 組合の方が脱退したことを知らないで、組合員並に統制を加えたというような場合につきましては、それが行き過ぎでありましても、ある場合には犯意阻却というようなここもあろうかと存ずるのでありますけないということは、動かすことができないと存じております。
  199. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 個人は脱退しておりましても、組合の方としましては、本人は当然脱退するつもりでありましても、組合はやはり統制しても違法性はないと私は考えるのです。これはどういうようになりましようか。
  200. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 組合といたしましては、脱退するなという統制力は持たないものと考えます。
  201. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 国際連盟の脱退と同じように、一方的に脱退すれば効力を発生するというようなものでもないし、また国際連盟だつて、私もよく知りませんけれども、あれは脱退しても何年間かその期間があつて、国際連盟については、私は宣言によつて有効になるとは考えません。国際法というのは、比較的その国の自主権を重んずる法律だが、何箇年間は国際連盟に対して純然たる第三者になり得ないというふうに私は記憶しております。あるいは間違いかもしれませんが、そういうふうに記憶しておるのです。それと同じように、対組合関係においても、そのことは言えない、かように考えるのです。
  202. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 それは多賀谷委員とされましては、いささか引例が適当でなかつたのじやないかと思いますが、国際連盟あるいは国際間のそういつた機関設立は、国際間の双務契約としてなされるものでございます。組合の設立ということは、労働行為としてなされるものでございまして、その間性質はまつたく異なる。契約でありますれば、その契約の有効に働いている間中ありますが、しかし労働行為の場合には、いささか異なり、かつまた、たとえば労働契約のごときは、契約が有効期間中でございましても、やめると言つたらば、これはやめなければならぬ、あとは労働契約不履行に対する損害賠償の行為が働くのみであるというふうに考えます。その結社あるいは団結につきましても、やはり団結の自由と同時に、非団結の自由というものも、これを労働組合であるからといつて、まつたく否定することはできないと私ども考えます。
  203. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は時間の制約もあり、まだ四、五点あるわけです。これはこの程度にして、あなたにまた別の機会に質問をいたしたい。かように思うわけです。  次に、職務代置の問題ですが、私は統制だけでなくて、職務代置の場合には、スト権の補助手段としてのピケツトというものは、ある程度有効に行われるのではなかろうかと考えるのですが、その点に対する見解を述べていただきたい。
  204. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 職務代置の場合につきましては、もちろん組合として代置されたくないと希望されることは、ごもつともであると考えます。従いまして、代置しないように呼びかけることも、また別に悪いことではもちろんございませんが、ただ使用者側の者が、労働者が全部ロツク・アウトしちやつた、しようがないから自分たちだけでできるだけやつてみようということで努力いたしますことは、最高裁の判例にもございます通り、使用者側の正当な権利でございます。
  205. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは使用者については、あるいはそういう点があるかもわからない。もつとも使用者の範囲の問題もかなりあろうかと思いますが、純然たる使用者を阻止できるかどうかという点については、私も若干疑問を持つわけでございます。しかし、私が申している職務代置と申しますのは、ほとんどスキヤツプといいますか、よそから雇い入れられる場合であります。私は、職安法の二十条の趣旨は、国家権力の介入を禁止すると同時に、もう一つの要素があろうと思う。争議をしているところに、どんどん人を雇つて行かれてはたまらない、こういう点もある。私は二つの面を持つていると思う。そこで私は、職安法二十条の趣旨を徹底するならば、職務代替のために働く者については、相当な制限ができはしないかと考えるわけですが、その点に対して……。
  206. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 職安法の二十条のお話が出ましたが、職安法二十条は、職安は、スト中には労使いずれにも味方しないということを申しているにすぎないのでございまして、現に使用者側の門前募集は何ら禁止しておらない。使用者ができるだけ自分でやろうということは、何も妨げるものじやない。しかし、国家権力が使用者側に応援することはやらないんだというのが、その趣旨であろうと考えます。  なお代替要員につきまして、ピケツト・ラインにおいてこれが説得を試みるということは、その限りではもとより妨げないことは、通牒にも書いてございます。
  207. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現実の争議の場合、ことに日本の争議におけるピケツトの場合には、実際に職務を遂行するために入つて来るというのはごく少い。ほとんど私は、ピケ破りというのが目的ではなかろうかと思うのです。それに名をかりて行つているのではなかろうか、かように考えるわけですが、その点に対する解釈を労政局長にお願いいたします。
  208. 中西実

    中西説明員 一般に代置職員が入る場合に、ピケ破りを専門に入るのが例だというのは、私は承服しかねるのであります。やはり経営陣が業務遂行のために入れたという場合が多かろうと思います。暴力団でピケをけ散らかすというようなことは、これはもう論外であることは、通牒にもある通りであります。
  209. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし実際は、ピケを突破することが争議解決になる、こう考えている。ですから、ピケを突破しざえすればいいのだという考え方で、実際問題として、仕事のできそうなやつは来ていないのです。あるいは暴力団といつて、入れ墨はしていないかもしれませんが、嘉穂鉱業の場合のごときは、通路があるにかかわらず、その通路に行かないで、一般職員がビケツトや暴力団と一緒に行つている。こういう姿が実態であろうと思う。日本の実情と申しますのは、仕事をするということよりも、まずピケを破るということが、ストライキを切りくずす非常に大きな手段である。そのように考えて行つておると思うのですが、実態をどういうふうに把握されておりますか。
  210. 中西実

    中西説明員 私はそうは思つておりません。ピケだけを破ることによつて争議か勝ちになる、そんなはずはない。結局は操業が続けられなければ、何ともしようがないのであります。ところが、最近のピケの状況を見ますと、いわゆるピケではなくて、事業場、工場を完全封鎖をする。入つた者は外へ出さない。出たら最後、中へ入れない。つまり全体を完全封鎖してしまうというのがピケのような実態になりつつあつた。これは恐ろしく正当な範囲を逸脱しておる。この通牒を出す必要があると考えました動機も、一つにはそういう傾向が見られたことにもよるのであります。
  211. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 見解の相違ですが、私はむしろ現在は、職務をかわつてやるというよりも、ピケ破りが専門である——専門であるといつても、企業ではありませんが、ピケ破りが目的である、かように考えるわけです。それに名をかりて行つておる、かようにしか考えられないわけです。そうすると、職務をやるといいましても、実際ピケ破りを目的とするものであれば、先ほど法規課長が言われましたような正当防衛が成立する、かように考えてもよろしいわけですか。
  212. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 どういう場合を御想定になつていらつしやいますか、よくわからないのでございますが、中に入つても役に立たぬようだし、使用者の負担になるだけのものなら、むしろピケツトとしては、入れてやつたらいいではないか。そうすれば、近江絹糸のように、入れてやつて、使用者が困つてつてもらつたということにもなります。どうしてもピケ・ラインを突破しようというふうに試みなければならないという事情が出て参りますのは、やはり今労政局長からも申し上げましたように、物理的に入口を封鎖してしまつて、食物さえもろくろく入れないという場合に、少し腕力の強い者を頼んで飯を搬入しようというような事情が多いのじやないかと思うのでありますが、私の考え違いでございましたら、具体的な例をお教え願いたいと思います。
  213. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今のお話によりますと、入れた方がいいじやないか、こういうことは、では入れた方がいいから、違法性があるのだ、こういうことにならないのでありまして、入れた方がいいじやないかということは、この通牒から、そういう場合入れた方がいいから、入れない場合は違法性が阻却される、こういうことではないと思うのです。むしろ、それは戦術的な問題であつて、それによつて法律論がこうなる、こういうことではないと思うのです。私は、実際多くのピケを見て来ました。加うるに、最近北九州の旭硝子のピケを見て、現実にとび職団が上にあがつて窓ガラスをこわしたり、机をこわして行つた例も知つておるわけです。実際はやはりピケ破りが目的である。たとい職員であつても、その場合はピケ破り、あるいは請負業者であつても、そのときはもう仕事がないから、実際はピケ破りが目的で、下請の仕事がないのだ。こういう場合に、ピケを破つて入ろうとする場合は、私はやはりこれはピケ破りが目的であろうと考えるわけです。そういう場合には、どういうふうに御判断になりますか。
  214. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 どうも私あるいはまだ十分に実情を存じておらないせいかもしれませんけれども、平和的な説得の限度でピケ・ラインを張つたときに、何でもかんでもピケ・ラインのやつをやつつけてしまおうというピケ破りが、そうたくさんあるとは考えられません。もちろんそういうのがありますれば、この通牒にもございますように違法であります。
  215. 赤松勇

    赤松委員長 多賀谷君、もう四時半になるのですが、法規課長については、いろいろずつとこまかい質問があると思うのです。しかし、この委員会としましても、むろん今日でもつて終るわけではありません、引続きこの問題を取上げて行かなくちやならぬのですから、その際法規課長にも来ていただいて、十分質問していただきたいと思います。あなたが非常に重要な問題をやつておられるので、先ほどから口をはさもうと思つたけれども、もう四時半になります。なお質問者がおいでになりますし、大臣がお見えになつておりますから、今日は主として大臣に対する質問に終始してもらつて、あとは別な機会に重要な点をずつと記録に残しておきたいと思いますので、御協力を願います。
  216. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先ほど日野さんでしたか黒澤さんでしたか、正当という言葉について、正当と言いましても、刑事上の違法性を阻却する場合もあるし、あるいは民事上の場合もある。あるいは解雇をしても、不当労働行為の救済に当らない、こういうような場合がある。こういうことを質問されました。ところが労政局長は、労働組合法の一条とか七条とか八条とかいうことを御指摘になつて、うまく答弁された。そこで私は聞くわけですが、この一条、七条、八条の正当というのは、範囲は同じですか、これをお聞かせ願いたい。
  217. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 一般的には、同様であると思います。
  218. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法律というのは、比較的特殊な場合を扱うので、一般的には同じだ、それは間違いありません。しかし一般的に同じであるということは、違う場合があるのだ、こういうように解釈してよろしいかどうか、御説明願いたい。
  219. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 これは非常に昔から争いになつておる問題であることは、御承知の通りでございます。私どもといたしましては、やはり一応同じであるというふうに考えておるわけでございます。しかし、いかなるケースも一つの例外もなしに、率直に申しまして全部同じかと言いますと、実はその辺必ずしも確信がございません。しかし、私どもの考える範囲においては、同じと考えております。
  220. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あなたの方で同じだということになつても、私はごく最近の傾向は、今労働省中央労働委員会というのは、比較的同じような解釈をされる。その中山さん——これは個人である中山さんか、あるいは中労委の会長である中山さんか知りませんが、たとえば政治ストの場合に、正当性という問題について、別個の正当性の範疇があるということ——これは言わなくても、あなたは御存じの通り、あるいは木村亀二さんでもそういうような解釈をしておる。ですから、やはりこう大きく問題がわかれ、各界においてもかなり大きな問題として議論が闘わされておる問題については、私はもう少し明確な、それこそ解釈例規を出されるのが専門ですから、明確に答えていただきたい。
  221. 中西実

    中西説明員 この問題は、先ほど石黒君からも言いましたように、実は末弘博士も、かつて刑事上の免責、民事上の免責、その場合の正当性の限界はそれぞれ違うというような論も言つておられました。ただしかし、私どもが今一応考えておりますのは、大体において同じだ。ことに、通牒につきましての正当性は、大体その範団は、いずれの正当性の限界にも当てはまるものだというふうに考えております。
  222. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは今、正当性の範囲は同じだという学説はごく少数であります。あるいは労働省以外は、とつていないかもしれません。ほとんどの学説は、その範疇が違うのだ、こういうように言われておる。ですから労働省でも、やはりもう少しはつきり考えを出していただきたい。私は当然範疇が違うものである、単に刑事上、民事上のほかに、不当労働行為等に関連する問題、これはやはり同じ違法性とか正当性とかいいましても、違うものがある、かように解釈するわけであります。ひとつ早く解釈を出してもらいたい。これを希望いたします。  まだ私は質問が残つておるのですが、委員長のお言葉もありますので一応保留いたします。
  223. 赤松勇

    赤松委員長 中村高一君。
  224. 中村高一

    ○中村(高)委員 先ほど大臣から、今度の通達を発しました表面上の理由を、いろいろ言われましたが、その中に、労働争議の暴力化というようなものを防ぎたいという意味の趣旨がありました。われわれもそういう点については、必ずしも反対しておるわけではないのでありますが、今度出された通達を見ますと、基本的考え方であるとか、さらにまた各論的に、いろいろなことが相当詳細に書かれておるのでございますが、通達はどこまでも通達でありまして、おそらくこれは第一線の取締りをしておりまする警察官に対する一つ指示のようなねらいもあつたと思うのです。あるいは資本家に対するお手伝いのような意味も含まれておると思うのでありますが、何かそこにはさらに進んでこれを法律改正の上に持つて行こうというような一つのねらいで、まあアドバルーンをあげるような意味も含まれておつて、すでに今までもたびたび大臣から、労組法あるいは労働基準法、あるいは争議調停法などについての改正意見などしばしば出しておりまして、その中にも今度の通達の中に含まれておるものもあるようですが、何か法律改正をするという意味を前提としてこういうものを出したというような含みがおありになるのではないでしようか、その点がありましたら御説明願いたい。
  225. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ただいまお話のような法律改正を前提としてこれを出したかというと、そういう考えは私は持つておりません。これは、先ほど申し上げたような判例の集積をこの辺で清算してみる必要もありますし、どうも暴力的事犯がふえているという実態から見て、こういう通達を出す必要性を感じたということが最大の理由でございまして、政府の行政解釈は、お話の中にもございましたように、暴力はいかぬということが特に強調されておるのでありますから、これはぜひ守つていただきたいと思いますし、守られております限りにおいて、別にそれ以上のことをする必要というものはなかろうと思いますが、どうしても法律を出せということになれば、それはそのときのことであります。私は別にそれを前提としてこの通達を出したということはないのであります。
  226. 中村高一

    ○中村(高)委員 通常国会も近づいておりますが、かりに吉田内閣が続くこいたしまして、おそらく大臣としては通常国会に対しては労働法規の改正を考え、あるいは準備しておられるはずであると思うのであります。もう今までに相当準備があるようなことも聞いておるのでありますが、今度の通常国会に提出するとすれば、私こまかいことを聞くのじやありませんけれども、どの法律の改正案をお出しになろうとしておられるか、大体のところをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  227. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 通常国会も十二月の初旬には開かれるわけでございますけれども、さしあたつてその際にただちに法律を出すということは、現段階では考えておりません。十分研究はいたしておりまするが、これをすぐ本年の通常国会に出すということは、今のところは研究の段階でございまして、考えておらないと申し上げてよいと思います。
  228. 中村高一

    ○中村(高)委員 いや、十二月の開会の最初に出すとかなんとかいうようなことを私は聞いておるのではなくして、通常国会であれば相当長期にわたるのでありますが、今まで論議されておる問題でありますから、冒頭に出すか出さぬかではなくして、近い機会に改正案をお出しになるのかどうか。大阪であなたが発表しておるのを見ますと、労働政策は再検討の時期に達したと思う、そこで組合法や調整法の法規のの改正について、いろいろの点で立法措置を考えているのだ、こういうようなことを語つておられるところを見ると、また私はいろいろの今度通達などの基本的考え方というようなものを見ても、何か改正案を出したいという意思のようであります。私は時期を問うのではありませんが、どういう点を改正しようとするのか、法律内容でなくして、そういう考えがあるかどうかをお聞きいたしておるのであります。
  229. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 時期の点は申し上げられませんのですが、私どもとして考えておりますることは、労組法におきましても、争議行為の開始手続の問題であるとか、あるいは調停仲裁というものが出たらば、これは仲裁してくれとまかせたのだから、この際争議行為はしないとか、あるいは労働委員会争議行為または個々の争議手段について正当、不当とかいうことを明らかにすることを考えてみたらどうか、あるいはまた現在の労調法にございます公益事業というもの、またさらに重大なる影響を与える争議についても、職権調停というようなことを考えてみたらどうかと種々研究はいたしております。いたしておりますけれども、これをいつ出すかということについては、先ほど申し上げたように、明言の限りではございません。しかし、労働問題というものは根本はやはり労使がそれぞれ自覚してくれることが前提でございまして、法律を要せずしてよき労働慣行ができれば、これに越したことはない。私どもは何がゆえに必要と思うかということを説いて、それに対する各界の意見も十分聞いてやりたいと思つております。御承知のように、労働問題協議会というものが昨年からできております。これにつきましても、いろいろ法案を出します際には、もとより国会によつておきめを願わなければならぬのでありますけれども、いきなりそれをなまのまま国会にぶつけるよりも、まず労働問題協議会に諮りまして、そこに労使あるいは公益それぞれの委員がおられますから、それらの方々の意見を十分に参酌してやりたいと思つております。また政府の真の意図というものが、労働界なり使用者側の諸君なり、各界に十分認識されて、かかるゆえに労働法をいじるのだ、こういうことが十分認識された上でやりたいと思いますので、この問題は、まだそういう段階であると思つております。
  230. 中村高一

    ○中村(高)委員 私は今、国会の自粛三法の小委員になつておりまして、政治資金規正法の改正案をまとめておるのでありますが、その案の中に、労働組合か政党に政治献金をすることは禁止しなければいけないのだ、禁止すべきだ——全部の労働組合だとは言うておらぬようでありまするが、官公労の労働組合、国鉄であるとかあるいは日教組などを主として、ああいう大組合の政治資金が政党に出る、こういうことに対して、自由党の方から案が出ておるのであります。われわれは、政府から補助を受けたり、あるいは利子の補給を受けたりするような、直接国家の援助を受ける法人が政党に献金するのは、もちろん間違いだというようなことから、改正案を出しているのに対して、自由党の方からそういう案が出ておるのでありますが、労働大臣として、一体労働組合が政党に献金をするというようなことをどうお考えになつておられるか。これは政党にとつても、まことに重要なことでありまするし、労働組合にとつても、また重要な問題として今議論をされておるのであります。労働大臣も、これは御研究になつておられると思うのでありますが、それに対する御意見をひとつお聞きいたしたいと思うのであります。
  231. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は本来政治資金というものは、自発的なものでなければならぬと思いますので、本来から申しますれば、政治資金というものは、組合費のほかに積み立てて、ほかの会計でやるというイギリスの労働組合法に盛られておりますようなことが、妥当であろうと思うのであります。しかしそれにはそれで、いろいろ日本の組合の発達状況等もありまするから、この点については、特に現在すぐやるとかいうことについては、いろいろ考えを持つております。ただ本質的な行き方として、組合の福利厚生のために使わるべき組合の資金というものが、一緒のプールから政治資金に流れるということにつきましては、邪道であるのじやなかろうか。これは将来の問題として考えてみたいと思います。  それから、現在政治資金規正法に関して自由党の提案しておりますことにつきましては、私も承知をいたしております。それは国家から特に恩恵を受けるといいますか、利子補給を受けたりあるいは国家の企業としております企業においても政党献金ができないと同様に、それらの資金によつて給与をまかなわれておる組合においても、そこから政治資金は出せないということでありまするが、またこのことは、個人の組合員が全然個人の立場でもつて——自分のつくつた財産は自分で自由に処分し得るものなのでありますから、そのことを個人としてやられることは、また別の問題であろうと思うのでありますが、要するに組合として、そうした現行法規を前提として、いわゆるチエツク・オフ・システムを前提として、そこから政治資金を出して行くということは、筋が通らないのではないかというふうに私は思つております。
  232. 中村高一

    ○中村(高)委員 個人の献金なんかは、別に私たちの問題の対象にならぬのでございます。要するに、労働組合が現在組合として持つております資金を政党に献金をしておるのでありますが、これはただ、国家的な何かある官公庁のようなものが主として対象になるのでありますけれども、労働者の受けました賃金を、組合規定でもつて組合費として入れたものあるいは寄付金として集まつたものを、任意に寄付するのでありまして、営利の団体でもなんでもないのであつて、株式会社その他の法人などとは、まつた性格を異にした労働組合の本質から行きますならば、政党に献金するというようなことは、われわれは少しも間違いではないと思つておるのでありますが、この点について、資本家の資金と労働組合の持つております資金と同じような性格に見るというところに無理があると思うので、これはなかなか妥協のでざない重点だと思うのであります。会位や何かの資金と労働組合の持つております資金と同じような見方をすることは間違いだと思いますが、それはどうお考えでありますか。
  233. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ただいま御指摘のような、また問題になつておりますような公企業におきまする資金は、公企業を運営するために国家から出ておる。また独占体を国家がつくつて、それによつて国家的な企業を行わせておるのでありまして、その金を政治資金に出すということは、私もよろしくないと思います。と同時に、そうした金から支払われるのが給与になるのでありますから、その給与もやはり税金の一部なんです。これを政治献金することは、まつたく同様に考えたらよろしいだろう、私はこう思つております。
  234. 中村高一

    ○中村(高)委員 これ以上やつても、また見解が相違して来るだろうと思うのでありますが、あなたの立場とわれわれの立場と違いますので、議論してもいたし方ないと思うから、この点はまた別の機会に議論するといたしまして、今度の通達の出る前に、今も多賀谷君から言われたように、東京証券争議がありまして遂に通達が出たのでありますが、あれが直接の動機を与えたか、間接の動機を与えたか、そういうことは別といたしまして、労働大臣にひとつ見解をお聞きしたいのは、今まで産業資本に対する労働争議というものが相当ありましたが、金融資本に対する争議はごく最近の例でありまして、最近やつておる山梨の銀行の争議とか、あるいは今度の大阪、名古屋、東京の証券争議というものは、もう金融資本の中に入つた一つ争議だと思うのであります。資本家にとつては、産業資本に対する争議ならば、それだけの問題でありますけれども、金融資本に対する争議というものは、及ぼすところが非常に大きいのでありまするから、これは政府でもびつくりしたと思うのであります。単なる生産工場の争議と違うので、政府でも力を入れて、やはり警視庁などを動かしたのではないかというふうにも思われるのでありますが、産業資本の争議と金融資本の争議を、労働大臣はどんなふうにお考えになつておりますか、ひとつ見解を聞きたいと思うのであります。
  235. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 現在の労働法規のわく内におきまして、両方とも、争議は同様に取扱われるものだと思います。ただ及ぼす影響について見ますと、金融機関というものは、大勢の預金者を基礎にしてできておる、これは株式による金融機関でありますけれども、その実体は預金者によつて運営されておる。そこでこの預金というものは、やはり通貨と通貨の信用関係に影響するのでありまして、その点が非常に違うと思うのであります。また銀行によつて産業が動いておる。現在自己資本で運営されておる産業というものは、ほとんどないと思う。御承知のように、みな借入金によつてつておるわけでございますが、そうした金融がとまるというようなことが全産業に及ぼす影響が非常に大きい、この点は非常に違うと思うのであります。また証券会社においても同様でございまして、やはり貯蓄といいますか、資本蓄積といいますか、そういうものの一つのプールとしてあるのでありますから、そういうものがとまるということは、現実に動いておる経済に大きな影響を持つということは当然だろうと思うのであります。そのためには、外国においては、金融機関争議というものはほとんどないというふうに聞いております。いわゆるホワイト・カラーですから、これは争議に至らぬで話合いでやつて行く、こういう慣習的なものができ上つておるように聞いておりますが、最近では、盲点ストなどといわれまして、従来なかつたところに非常にストがあるということを、特に経営者側から盲点ストという批評が出ている。これは使用者側においても十分反省すべき点であつて、盲点といわれるようなことは、経営者としても恥ずべきものだろう、労働問題に対してもつと理解を持つ、もつとそういうことがないようにすべきである、こういうふうに考えておるわけであります。
  236. 中村高一

    ○中村(高)委員 その点について、銀行協会というか、資本家団体などでは、その拡大を非常におそれておるだろうと思うのです。何か政府に向つて、これを公益事業のわくの中に入れてもらいたいというような希望があるとかいううわさも聞くのでありますが、何か銀行協会とかそういうような方面から、政府に向つてそのような意味の注文が出ておるようなことはありませんか。
  237. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私自身のところへは、別にそういうものは来ておりません。あるいは大蔵大臣その他に行つておるかもしれませんが、私どもの方には来ておりません。
  238. 中村高一

    ○中村(高)委員 もう時間がなくなつたようでありますから、あとは私は希望を述べておしまいにいたしますが、先ほど来言われておりますこの通達を見ると、いかにもこれは労働組合を取締る趣旨ばかりに尽きておるようでありまして、われわれの立場を離れて公平に見て、どうも今度の通達は、あまりに労働組合側に対する制限ばかりが多いようであります。たとえば資本家側は、争議に入つて団体交渉なんかやろうという場合に、逃げ出しちやうのですね。ひどいのになると、主人がどこにいるかわからない、労働組合の人が手わけをして、おやじを探して歩くと、待合なんかにおつてなかなか出て来ない。こういうことなどによつて争議が長引くというようなことを見れば、団体交渉権というものは、労働組合に与えられておるのであるが、これに対して、団体交渉に応じなければならないのだ、仮病を使つたり、待合なんかを逃げて歩いてはならないのだということをやつてやらないと、小さい工場のおやじさんなどは、もうたちまち逃げる一手でありまして、そのために争議を長引かせるというような場合がたくさんあるのでありますから、団体交渉権というようなものに対する注意なども、もつとやつてやらなければ、私は親切じやないと思うのです。そうして、また公平でもないと思う。それから争議破りなどにつきましても、先日の近江絹糸の争議のとき、北海道からも暴力団が雇われて来て、何でもたいへんな報酬を払う約束をして、帰りには何万円とかくれるという約束で集めに行つたところが、争議が終つて、今後金をくれないというので、近江絹糸の本社に入り込んで動かない、これは約束が違うというのでやつておるのでありますが、ああいうようなことに対しては、少くとも労働組合法というものに対する資本家のむちやなやり方でありますから、争議破りというようなものに対する資本家に対しても、そういうようなことを、もつと明確に指示すべきだと私は思うのです。内容を見ると、ピケなどに対しては、実にバリケードはいけない、スクラムはいけない、すわり込みはいけないなどというような、こまかい注意をしておりながら、資本家に対して何も任意していないじやないですか。これだけこまかいことを注意するならば、貧本家に対して言いたいことがもつとざらです。こんな戦術の一つ一つ、すわり込みまでもいけないなんて通達に入れるなら、待合はいけないとかなんとか、ざらにあるのです。暴力団を北海道から雇つてはいけないとか、とにかくこの程度に労働組合に対して書くならば、あなた方は資本家に対しても、書くことはわれわれの方から幾らでも教えてあげるから、もつと書かなければ公平じやないです。こういうような点について、私はきわめて公平にものを言つておるつもりでありますから、今度通達を出すというようなことに対しては、こういう不公平なものを出さないように考えなくちやいけないと思う。私は希望だけを申し上げておきます。     —————————————
  239. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと島上善五郎石、秋田県の労働部長さんがずつと待つておるので、陳情なのですけれども、大して時間がかかりませんから、先へ発言させてあげてください。——てれでは御了解願います。森松秋田県労働部長。
  240. 森松孝作

    ○森松参考人 非常に貴重な時間を拝借いたしまして、まことに恐縮でございます。私は秋田県労働部長の森松でございます。  本日、秋田県の特殊事情等について、皆様方にお聞きいただく機会をつくつていただいて、まことに感謝いたしております。本件につきましては、すでに国会の方に請願の形式をもつて手続をとつておりますし、きようは時間も切迫しておりますので、ごく簡単に請願の内容、骨子について御説明申し上げまして、皆様の御理解と御高配をいただきたいと存ずる次第でございます。  御承知の通り、秋田県は非常に寒冷単作、後進未開発の地帯でございます。さようなここから、まことに特殊な労働市場を形成いたしておりまして、どうしてもこれらの失業労働力というものは、自然他県にその雇用を期待しなければならぬという宿命的な背景を持つておるのでございます。かような関係から、われわれあらゆる機関、組織を動員いたしまして、いろいろ対策に腐心いたしておりますが、どうしても県だけでできないことがございまして、それも今回県の労働対策連絡協議会あるいは県議会などの意見に基きまして、先般国会並びに労働大臣の方にもお願いを申し上げた次第でございます。  その中の第一は、知識階級の失業対策をすみやかに確立していただきたい。これは政府の方におかれましても、着着その方向にお進めのようで、私たちもまことに安心をいたしておりますが、秋田県のようなところにおきましても、今日高等学校以上の卒業生は、大体五十パーセントぐらいは就職ができないというような実情、また失業対策事業にも、最近調べましたところ、一割強高等学校以上、旧制中学以上の者が入つておられるというような実情でございます。どうかこの知識階級の失業対策を、すみやかにひとつ確立していただきたい。  第二は、失業対策の大都市重点主義を改められて——これは失業発生を根元で、一番最近のところで押えるというのが適切かもしれませんが東北のようなところは、どうしても若干のずれがあります。最近の傾向を見てみますと、都会の失業者が、どんどん秋田などに転落して来るというような状況でございまして、もちろん都市の失業対策も非常に重要でございますが、こうしたわれわれのような東北のずれのあるようなところを閑却しないで、ひとつ御配慮いただきたい、こういうことでございます。  第三は、身体傷害者の国立補導所を秋田に山形、青森、秋田を代表するブロツクとして一つぜひつくつていただきたい。これは非常になまいきのようでありますけれども、まあ秋田は一応鉄道の管理局、あるいは高検、高裁の文部などもあり、一応裏日本の要衝の地になつております。われわれは五百人の身体障害者と、いわゆる要求職者をかかえて、非常に困惑をいたしておる次第であります。何といつても、技術を身につけてやらなければ、いわゆる雇用週間で勧奨いたしましても進捗しないわけであります。この点はぜひともお願いいたします。  第四は、失業保険受給者の多い地域に、特別に失業対策事業を興していただきたい。秋田県は、大体先ほど申し上げたように、非常に県外に依存しておりますので、一方数千名、ことに北海道には一万二、三千の者が出かせぎをいたしておりまして、これらが帰つて来ますと、失業者が普通のときは三千人ぐらいが、二月ごろには一万八千名にも上るという状態で、出張所へ毎日一万八千人の人たちが押しかけるので、交通巡査まで来てもらつて整理していただく窓口の職員が、ほとんどお金を数えるひまもないほど、強奪に近い状態で金を持つて行く、いわんや求職相談にも応ずるひまがないというような雑踏する状況でありまして、それで、失業保険をやめていただくというのではありませんが、こういう地域に特別な事業を興していただきたい。せつかくの政府の金でありますから、失業保険としてやるよりも、何か事業としてやつていただきたい。今日そういうことで、非常に惰民を養成するとか、いろいろ失業保険に対して非難がありますので、この失業保険の方をやめるというわけではありませんけれども、どうかそういう者に仕事を与えていただきたい。  この四点を特に申し上げる次第であります。
  241. 江下孝

    ○江下説明員 最初の、知識階級の失業対策でございますが、来年度大学の新規卒業生の失業問題と関連いたしまして、ただいま慎重にこの問題を研究中でございます。でき得れば、来年度予算に、何らかの形で考えてみたいと思つております。  それから第二番目と四番目の問題は、失業対策事業を地方、農村都市においても、実情に応じてやつてもらいたいということであろうと思います。この点は、大都市中心ということでもございませんので、もちろん地方におきましても、諸般の事情よりいたしまして、失業情勢の悪化いたしました場合には、当然実施をして参りたいと思つております。失業保険金の受給者との関係におきましても、当然同じように、失業対策事業の運営を適切に行うことによつて、惰民養成という面が避けられればけつこうだと思つております。  身体傷害者の職業補導所の問題でありますが、これは現在までに全国で八箇所設置いたしております。大体の考え方といたしましては、ブロツク別でございます。秋田は、一応現在のところ宮城の仙台の職業補導所にブロツク的には結びついているわけであります。なおブロツク的にできておりませんのは、四国地方でございます。さしあたり私どもとしてはブロツク別に完成いたしますれば、おおむね身体傷害者の職業補導所は十分ではないかと考える。ずつと将来のことは別といたしまして、さしあたりとしては、秋田に設置することは困難ではないかと思います。     —————————————
  242. 赤松勇

    赤松委員長 それでは島上君。
  243. 島上善五郎

    ○島上委員 私は大臣に二、三点お伺いしたいのですが、今度の通牒は、少くとも労働関係あるいは労働組合に対して、大きなシヨツクを与えて、ごうごうたる非難と反対の動きが起つておることは御承知のところだと思います。何でもないことのように、当然のことをやつただけだというような答弁を、先ほど来たんたんとされておりまして、新聞やその他の論調でも、御都合のいいものだけ引例されましたけれども、日本の労働組合は、総評も新産別も全労会議も、またこれに属しない労働組合も、あげてこの通牒に対してごうごうたる反対の声をあげておることは御承知の通りであります。あなたのおひざ元の労働省組合においても、もちろん反対です。こういうようなことをあえてしたということは、労働者に対してサービスをするための省として発足した労働省が、いつのまにか向う側の方に行つてしまつて、取締りの省になつたのじやないかというような感じを強く労働者に与えておる。争議に対しては中立である、労使の紛争に対しては中立である。官憲は介入しないことを建前とするというような建前がくずれてしまつて労働省は使用者側の味方になつたのではないかという感じを強く与えておる、われわれもまたそう解釈せざるを得ない。少くこも今度の通牒は、労働組合労働者に対する挑戦的なにおいが多分にするのであります。こういうような挑戦的な、労働階級に強い反対を呼び起すような通牒を、一体なぜにこのときに出さなければならないのか、私どもはどうも了解することができない。年末労働攻勢で争議が起つて来るので、こいつ、ひとつ鼻先をたたいてやれというような意図があるならば、これはおのずから別でありますけれども、そういう考えはないと言つておりました。また先ほど中村委員が、労働法改正と何か関係があるのではないかというのに対しまして、直接に関係はない、こういう答弁をされております。しかし私どもは労働法改悪と深いつながりがある。こういうふうに解釈せざるを得ないわけです。というのは、この前の労働委員会で、労働大臣のいわゆる新労働政策なるものを説明されました。私ども質問して、ほぼその概要が明らかになりましたが、ちようどこの通牒が発せられましたと時を同じくして——二、三日違うのですが、大臣の所属しておる与党たる自由党が、新労働政策の骨子なるものを発表した。これを見ると、これまた労働大臣の新労働政策とまつたく符節を合せておる。基本方針の中では、労働組合を育成し過ぎたからこれを抑制する。闘争意識過剰であるからこれを押えなければならぬということを前提として、具体的にはあつせん、調停仲裁中の争議行為の禁止、ピケの正当性の限界について明確な規定をする等々の具体的な政策骨子を発表しておる。こういうことと関連して考えますと、この通牒は、私ども何もことさらに曲げて解釈をするようなことはいたしませんけれども、どうも最近争議がだんだんはげしくなつて、そうして特に年末には多くなつて来る。これに対して、ひとつ頭をがんとたたいてやれというような意図、並びに新しい労働法改悪の地ならしをするというような意図が多分に看取されるのです。しかしこれは質問しても、そうだとはおそらくおつしやるまいから、別にこれに対する答弁は要求しませんが、しかしこういうような労働階級に大きな反撃を起すような通牒を何のためにこのときに及んでしなければならなかつたのか。そうしてこういうような反撃を起して、一体労働行政がスムーズに進められるかどうか。私どもは、労働行政はおおむね労働階級が納得して協力するような形で進められることが、一番望ましいと思うのです。こういうような措置では、決して労働行政が円滑に進められるものではないと思う。こういう点に対する大臣の所見を、まず承りたいと思います。
  244. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私も、民主的な労働組合が健全に発達することをこいねがつておるのでありますが、組合の行き方というものは、各国間においてそれぞれ特色がありましようが、常識的な線があると思うのであります。ピケの問題は、最近特に暴力的な事犯が多くなつて来ておりまして、いわゆる不法監禁的なことがピケである、職場の占拠がすなわちピケであるというようなことが行われておる面もあるのでありまして、こういうことを正当なり、いわゆる事実行為として認識させてしまうということになりますと、これははなはだしい民主的労組の行き違いになるのであつて、私どもとしては、従来の判例をとりまとめて、その正当性の限界を明らかにした、こういうことでございます。労働組合運動であれば、何をやつてもいいんだというような考え方、終戦直後に行われたこともありますけれども、現在また少しそういう傾向がほの見えるのであります。組合運動といえども、暴力はいけません、不法なる実力行使はいけませんということを申しておるのであります。このことが、今日私は組合に種々御批判があることは承知いたしております。しかしこういつたことは、わずかの期間であろうと思うのです。しばらくたちますれば、なんだ、あのようなことが昔はあつたかという時代がすぐ来ると思うのであります。これは事柄自体が間違つておれば別でありますが、暴力がいけないということは、古今東西を通じて誤まらぬ民主的真理でありますから、もうそういうことはあたりまえだという時代が、私は来ると確信いたしております。
  245. 島上善五郎

    ○島上委員 暴力がいけないということは、何も議論の余地がない。われわれは、労働組合運動だから何をやつてもいい、人をけがさせても殺してもいいということは、かつて一度も考えたことはございませんし、また労働組合自体も、労働組合の指導者諸君も、そういうことは考えていないと思う。何かと言うと、暴力々々と言いますけれども、あなたの新労働政策も、また自由党の新労働政策の骨子の中にも書いておりますが、このごろの組合は、闘争意識過剰だ、こういう考え自体は、私、労働組合に対するものの見方が片寄つておるのではないか、色めがねをかけてものを見るのではないか。労働組合は何も闘争を好んでやつておるわけではない、最近の労働者の生活状態、経済的の状態というものは、そういう闘争をせざるを得ないようなところに追い込まれておる。最近争議がひんぴんとして起るということは、労働組合が闘争意識が過剰になつたから起つたのではなくて、炭鉱の状態を見ても、せんだつての東証の状態を今日も詳しく聞きましたが、そういう状態を見ましても、その他一般に労働階級が自分の生活を守るために、権利を守るために闘わざるを得ない状態に追い込まれておる。闘わなくてもいいような状態なら、だれが事を好んでやりますか、そういう状態に追い込まれておる。そこで立ち上る、そしてその争議がはげしい形で闘われる。はげしい形で闘われるということは、何も暴力じやない。私どもは、今度の通牒でも、暴力々々という言葉を何十回となく使つて、さながら最近の労働組合は暴力団になつたような、暴力行為を当然のことのように使つておるような、国民に印象づけ、宣伝するようなそういう文章でございます。私は労働組合の最近のピケは、大臣が考えるように暴力化しておるとは思いません。若干のトラブルがあることは事実ですが、そういうふうになるのは、労働組合が平和的な説得をしよう、あるいは集団的な説得をしようとして張つておるピケに対して、争議中脱落した第二組合がピケを突破しようとして、説得そのものに耳をかさないで突破しようとして襲いかかつて来る。日鋼室蘭のごとき、あるいはこれに対して官憲が第二組合や暴力団の味方をするがごとき、不必要な、あるいは不当な介入をするというところからトラブルが起つて、見ようによつては暴力的な現象も起つておる。ところが、そういうことにはほとんど触れないで、ピケが暴力化した、暴力化した——これはあまりにも労働組合の最近の運動に対して、片手落ちな色めがねをかけた見方と言わざるを得ない。近江絹糸の場合も、幾つか参考人から実例をあげられましたが、まつたく言語に絶するようなひどいことをやつておる。ピケを破るためにブルドツクを連れて来てもいいかと警察に相談に行つておる。戦車を持ち出すとか、そういう乱暴なことまでやつておる。こういうような夏川主義者が、少し誇張していえば、今日至るところに存在しておるといつていいと思う。そういうようなことが争議発生の原因になり、争議激化の原因になり、トラブル発生の原因になつておる。そういうことに目をつむつて、さながら労働組合だけが好んで暴力行為をやつておる、こういうようなものの見方、宣伝の仕方をするということは、私ははなはだ片手落ちだと思う。先ほど中村委員も言いましたが、この通牒全体を見ますと、使用者に対してはほんの申訳的にちよつぴりつけ加えてあるだけであつて労働組合ばかりを非難し誹謗しておる。東証争議のごときは、警視総監も、きわめて温和なピケツトであつたと立証しておる。それをああいうような事態に追い込んだということに対して、目をつむつている。使用者の不当なピケ突破、あるいは暴力団使用——暴力団使用も不当ですが、警察官の不当な介入、こういう問題に対して、大臣はどのようにお考えになつておるか。私は、官憲は争議に対しては介入すべきではなく、労働省は労使に対しては中立である、こういう建前が今後も堅持されることを希望しておりますから、この点に対して、あたりまえのことのようですけれども、大臣の所見をはつきりと伺つておきたい。
  246. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほども中村さんから、使用者の不当労働行為、ことに団交を拒否しているような場合、何ら通産が触れていないというような御指摘かございまして、お答えを申し上げませんでしたが、通牒の団体交渉の三に、そのことはよろしくないというここが強く書いてあるわけでございます。  なお最近のピケが暴力的になつたということは、これは全然ならぬというふうにお考えになるのも、ちよつと強弁ではなかろうかと思うのであります。たとえば食事の制限をするというようなことは、基本的人権に関する問題であります。このことについては、同じ労働組合の上部団体の中でも、ある団体は、日鋼室蘭争議に見られるごとく暴力的指導、地域人民闘争方式が清算されない限り、共闘を組まないということを特に断つておりますので、そういう暴力的事案は、組合の中から見ても見られるという事態も一方にはあるわけであります。私どもは、だからといつて組合に対していかぬいかぬということばかりを言つておるのではないのでありまして、ただこうした不当な行為は不当な行為として、これが政府の解釈ですよということを示しておくことが、私はかえつて親切であると思つております。今もお話の中に、非常に待遇が悪いところに争議が起きているというお話がございましたが、それはそういうところもございますし、中には銀行等は、待遇は一般のレベルに比べてよろしいのであります。そういうところにもやはり争議が起きている。(「封建性だ」と呼ぶ者あり)封建性という名のもとに言われるのでありますけれども、しからば封建性とは一体何かということになりますと、片方が封建的だときめつけることが、これまた封建的な行為である。ですから、こういう問題は双方の言い分があるので、政府としては、その一方に味方して、銀行は封建的であるなんということは申しません。ですから、これは組合側においても反省してもらいたい点が多かろうと思うのであります。いずれにいたしましても、物事は平和のうちに納得づくで話合いをするということが、民主的なルールででありますから、その間に暴力を用いたり、威嚇を用いたり、多数の集団の力をもつてすわり込みをする、あるいは糧道を絶つということは、最もはげしいものでありまして、こういうことはいけませんということを申しておるのであります。
  247. 島上善五郎

    ○島上委員 どういうことが封建的だと言われる、私は言葉じりをとらえるわけではありませんけれども、先ほど東証の諸君が適切に事実を陳述されましたが、あるいは銀行などでも、表面上の賃金は相当他に比べていいかもしれない、証券会社もあるいはいいかもしれない。しかし、賃金だけではなしに、その他の労働条件が非常に悪い、人権を無視されているという事実が現に存在しているわけです。東証のごときは、午前中に陳述されましたけれども、親心と称して、君たち組合をつくつた団体交渉を持ち込んだり、主人に刃向いするようなことをしてはいかぬのだ、こういう三十年前の考えを、いまなお多数の経営者が持つている。そのために組合をつくる相談をすることも、会合することもできない。デモというのはいいものだと言つたら、三人首を切られている。こういうような封建的な労使関係が、東京のどまん中に存在している。こういう労働者が立ち上るのは当然だと私は思う。  それはそのくらいにして、そこで私は通牒について伺いたいのですが、一体この通牒が発しました法律解釈は、もちろん私どもにとつては納得行きませんが、この解釈が最高裁の線とぴつたりするかどうか、判例が確定した場合に、ずれた結果が生れるという場合も想像されるわけです。私どもはそういうふうになるであろうと予想しておりますが、その場合に、あの通牒によつて、警察官があれを尺度として判断して、ピケに対して対処するということになりますれば、その間に当然労働者が大きな損失を受けるわけです。そこで、最高裁の判例が出たときに、あれはちよつと間違つてつた、あそこのところは間違つてつたということになつたら、一体その間に受けた労働者の損失はどうなるのか、その責任は一体どうなるのかという点をどのようにお考えですか。
  248. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほども申し上げましたように、この行政解釈というものは、従来の判決例の集積であります。従いまして確定的な、自信のあるものについての解釈を下しておりますので、今お話のようなことは、事実問題としてなかろうと思います。
  249. 島上善五郎

    ○島上委員 なかろうと思うというだけであつて、これは労働省の問題ではないけれども、一つの例として申し上げますが、昨年学生の選挙権に対して、選挙部長の通達を出した。それが最高裁の判決によつて、まつたくくつがえつてしまつた。それをその部長も自治庁も、何らてんとして責任を感ずすことなく、部長のごときは出世して栄転している。こういうようなことは、この通牒でも起りはしないだろうかと思う。だろうと思つて出されたろうけれども、最終的に最高裁の判決がはつきりしてずれたときの責任は、私は当然負わなければならないと思う。労働者はその間に相当の損失をこうむるのですから、当然その責任を負わなければならぬと思いますが、その点に対して、しつこいようですが、もう一ぺん伺いたい。
  250. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御質問申し上げるようで、はなはだ失礼かと思いますが、具体的にどういう点がそういう対象になるかと、実は私ども思うわけでございます。ここにございますのは、きわめて明確に、暴力を内容とするものはいかぬということを言つているので、ことに第八項に至りましては、事実行為の場合は、正当防衛あるいは緊急避難というようなことまであるということを書いてあるのでありまして、これと違つた判決が出るというのは、一体具体的にどういうことであろうかというふうに私は思うのです。
  251. 島上善五郎

    ○島上委員 しかし、この通牒の表現自体が、非常に抽象的で、あいまいで問題がある。せんだつて参考人の間にも、賛否町論がありましたけれども、おおむね反対が多かつた。私はこの通牒全般に対して、ここだここだということをあえて指摘いたしませんけれども、しかし、これが最高裁で必ずこの通り確定したものになるという保証は、どこにもないと私は思う。あなたは、そう思つておやりになつたかもしれませんが、これと違う解釈が出ないという保証はどこにもない。そういつた場合の責任はどうするか聞いておるのです。
  252. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この通達の内容目体について、こういう点は間違つておるという御意見は、学者先生の中にもなかつたと私は思うのです。ただ、こういうものを出すことの意義、あるいは政治的な影響、そういうものについていろいろ議論があつたと思います。しかし、その内容について違うということは、私あまり聞いておりませんが、もし何でしたら法規課等からでも申し上げます。とにかくこの通牒は、そういうことは絶対にないと確信いたします。非常な自信を持つておるわけでございます。たとえば、こういう書き方をしておるわけでございます。ピケ破り等についても「暴力を振い、或は平和的説得をするものを実力をもつて排除し、ピケラインを突破する如きは、固より正当でない。特に使用者において暴力団等を使つてピケ破りを行う如き行為は論外である。」「組合員ストライキから脱落して就業し、または組合から脱退して第二組合を結成する等の行為は、その者の責任と判断に基いてなされることのあるのはやむを得ないとしても、使用者がこれを強制するが如きは不当労働行為になり、許されないことは言うまでもない」、こんな書き方をしてあるので、そういうことはないと確信いたしております。
  253. 赤松勇

    赤松委員長 島上君。もう五時半になりましたから、ちよつと待つてください。一般的な労働政策に対するいろいろな問題もありますし、それとの関趨において論じなければならないと思う。同時にまた、一つは、さつき多賀谷君が各箇条別にこまかく質問しておつたのですが、ああいう逐条審議的なやり方もやつてみたい。そうでないと、やはり将来問題を残すと思う。具体的なピケで問題が起つた場合、聞いておると、政府の方の解釈の方も少しあいまいな点もあるので、これはもう一つみつちり委員会で逐条審議をやつて労働大臣は別として、事務当局の方から来ていただいてやろうと思つております。二十日までは、先ほど要求した東証の労使双方の資料がそろわないので、二十日の日は委員会をやめる。そうして二十五、二十六、二十七と三日間やろうということに各派の意見が一致しましたから、この点だけ先に御了承願つておきたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 赤松勇

    赤松委員長 それではそのときにみつちりやることに決定しました。もうこれは動かしません。  それで、中原君もありますから、あと二、三点で……。
  255. 島上善五郎

    ○島上委員 二、三点でなく、委員長協力しまして、あとでまた不明確な点を伺いますが、この通牒の中で、私は非常にあいまいで困る点がたくさんあるのです。たとえば、厳重なるスクラムはいけない。そうすると別の言葉で解釈すると、ゆるやかなスクラムならいいのかということになる。厳重である。ゆるやかであると現場で判断するのは警察官だ、あれは厳重なスクラムだと判断して自由にやる。それからはなはだしいいやがらせ——はなはだしくないいやがらせとはなはだしいいやがらせとどこで判断するか、どういうものさしがあるのか。多衆の威嚇——労働組合は、ピケツト・ラインというものを多衆で組むわけですから、団結の威力を誇示するということも、あるいは団結の威力をどうするということも、私はピケツト・ラインの意義の中に含まれていると思う。団結の威力を誇示すれば、臆病な経営者ならば、もうピケを張つているだけでも威嚇を感じてしまう、脅威を感じてしまう。こういうようなあいまいな通牒を出して、これを尺度に現地の警察官が不当にあるいは不必要に争議に介入するということになりはしないかと思う。私どもは、最近の警察官の介入、警察官の出方自体が、もう第一に以前とはかわつて参りまして、不介入の建前をくずして来ているというふうに解釈しておりますが、通牒によつて、さらに一層警察官が争議に不必要に、あるいは不当に介入するという事態が生れて来るのではないかという心配が私ども非常にあるわけです。そういう点に対して、大臣はどのようにお考えになつておりますか。
  256. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 不当にとか厳軍なとか、そういう表現は、やはり一般的にそうした事態が起きることによつて、いかほどの範囲であるかということは認識されると思うのです。たとえば、スクラムはわが国に限り認めるわけであります。先ほど申し上げましたように、イギリス等ではこういうことをやらないのですが、わが国においては、今まで団体交渉権ということで解釈しておりますから、言論の自由のほかに、そうしたものも加味してこれは認めておるわけです。ただ、スクラムが平和的な説得をする、こうやつておるところへ来て協力してくださいと説得をするわけです。しかしこれをどうしても通してくださいというものを、どうしてもいかぬという事態が起き、それでは困るからといつて警察に話してやつてくれと言われれば、警察はやる、こういうことになると思う。要するに、当事者自身が十分認識——慣例、習慣的判断のみならず客観的にもこれはちよつと行き過ぎじやないかというようなことが認識されることによつて判断されることだと思います。
  257. 島上善五郎

    ○島上委員 もう質問は打切りますが、ただはつきり言つておきたいことは、質問しつぱなしだと、またそれこそ了承したなんと錯覚されると困ります。私どもは、絶対にこの通牒は了承しない。了承しないどころか、大反対である。そうして今後もなお委員会において徹底的に追究するという態度を明らかにしておきまして、私は本日の質問を終ります。
  258. 赤松勇

    赤松委員長 中原健吹君。
  259. 中原健次

    ○中原委員 私はきよう一点だけ質問しておきます。と申しますのは、まだ質問しなければならぬ事項があまりたくさんありますから、機会をあらためるという意味です。  きよう質問したいと思いますことは、労使の対等を確保せしめる条件について、特に労働者も資本に対する対等な地位を確保させる条件、これはどういうようにお考えですか。
  260. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 労使を対等の立場に置かせるということで、団結権、団体交渉その他の団体行動をする権利を認めておるわけであります。しかし、これはあくまで平和裡にネゴシエートするということが前提でありまして、多数の暴力違反ということが、対等の条件の前提になるものじやない。ただそのこと自体でなく、その背後に大衆の意思があるというその感覚が、多衆の団体行動の内容になるというように、私どもは解釈しております。
  261. 中原健次

    ○中原委員 そういう見解に立つと、先ほども話がありましたが、ピケツトを張るという行為との関係、何でもこれは日本だけに特別に許されているような御説明がありましたが、はたしてそうか。これはちよつとそのことに問題があると思います。そういうことを労働省が考えておいでになると、これは妙なことになると思うのです。今そのことのせんさくをしなければ、必ずしも納得せぬというのではない。ただ労働省が、そういうふうに軽く問題をきめてかかられるというところに、相当問題があるということを申し上げるのです。  そこで、ピケ破りに対する当局側の考え方の中に、一応いろいろここに文字の上で言われておるようでありますが、今までの経験の実態の中身から考えますと、ピケを破る側に、暴力を行使するものがほとんどというより、むしろその方に問題があると思うのです。従つて、ピケを張るという行為が、平和的な関係で維持されるということは、平和的関係ということの解釈の内容にいろいろ問題があると思うのです。いつの場合でも、これはほとんど既成の事実であつて、暴力を行使するなどという考え方は、組合内部で非常に強く戒め合つておる問題なのです。暴力になつてよろしいという言い訳がつけば、いささかもかまわぬという乱暴な考え方は、組合自体の中に存在せぬわけです。しかるに、ピケをもつて自分の労働権を守るための行動をやつているその中へ、一種のなぐり込みをもつてピケを破壊する、打破る、こういうことが、しかも官憲をまじえてなされる場合が、いつの場合の事態からも出て来るわけです。おそらく続いて審議されるでありましようところの証券の場合でも、いろいろ実例があるのです。われわれが知つている範囲でも実は大分あるわけです。そういうことを思えば、ただいま最初に言われた、平和的な形の中で団結の威力を維持せしめるというような言葉の中に意味するものに、ピケに対するただいま言つたようなものに対抗する、いわば正当な防衛のためにするその対抗の行為が、暴力と規定されることになる場合がしばしば出て参るわけであります。そういうことについて、もう少し具体的に掘り下げた労働大臣の認識を説明してもらうと、ものがはつきりすると思うのです。そういう質問をしておるのです。
  262. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 どうも私誤解してお答えしておるかもしれませんから、そうでしたら御訂正を願いたいと思います。  さつきもあげましたが、他の団体では「最近一、二の争議で見られた限界をわきまえぬ極左戦術が支配階級につけ入るすきを与えていることはきわめて遺憾である」という表現もありますが、ある点は暴力が行われているということを認めておられるところもある。私どもの解釈は、もうきようすでに数時間を要して申し上げたので、いまさら繰返すのも、どうも同じことばかり申し上げるようで恐縮でございますけれども、暴力はいけない、とにかく対等の立場に立つために暴力を使わなければならないのだ、暴力を内容としなければ対等の立場に立てないから暴力を認めてもいいのじやないかという御議論は、私は拝承しかねるのでございます。あくまでも対等の立場というのは、勝つときもあれば負けるときもあるのです。必ず勝たせなければならぬというのなら、対等の立場ではない、こういう見解もあると思います。
  263. 中原健次

    ○中原委員 私の質問が大分はき違えられている。とんでもない、対等の立場を維持する場合に暴力を用いてもいいと言つたのではない。私も、暴力を用いることは反対です。ところが、その暴力を用いる側というのは、ピケ破りをする側、その方で暴力が行使されておるという事実がしばしば実証されておるということです。そういう暴力に対して、ピケを張つておる側が対抗しようとすると、それがすぐ暴力の中に巻き込まれる。それを暴力と称せられ、労働組合は暴力を行使したものとしばしば言われる。そうすると、労働組合には正当な防衛権もないということになる。これはどういうことになりますか。
  264. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 暴力はすでに不当なものでありまして、認められておりません。私どもは、暴力は絶対に認めないのであります。ですから、暴力があつたから認めるというのは、正当防衛ないしは緊急避難の場合であります。でございますから、そういう場合については、第八項に書いてございますように、その場合々々によつて異なるでございましようけれども、「相手方の行為が単に主観的にけしからぬとか、争議戦術上この方が不利益を蒙るというような程度でなく、相手方に争議のルールにおいて客観的に明白重大な法令、協約等違反の行為が現実に存すること」云々ということが特に付記してあるのでございまして、暴力を相手が振つたことに対して暴力が振えないかというと、これは正当防衛的なものは暴力でないので、そのものがいけない。いけないものが身に降りかかるとすれば、これを振り払うことは、人間固有の権利であると私は思つております。
  265. 中原健次

    ○中原委員 そこで問題になるのは、ピケを張つてつて、そのピケを突破して労働者側にいわゆる不利益な状況をつくるということをあえてする一つの権力攻勢という側は、実は警察の威力だと思う。これは皆さんがその現場を見ておればわかる。これはしばしばある。昨日も警視総監がいろいろ説明しておりましたけれども、それはここでその説明をする場合に、そういうことがありますとは言えないでしよう。しかし現実にそういう場面に直面してみると、ほんとうにピケの中に割込んで行く警察の暴力行使というものは、だれもが認めておる。単に単純な一般の大衆のピケ破りだけでなしに、そういう権力を背景とした権力攻勢、権力暴行というものがあるのです。その権力を行使する側のピケ破りに対して、労働者がもし手を下すなら、それをはねのけようとするなら、それは公務執行妨害だ、こういう調子でやられるのです。そうなると、いよいよ警察のしたことは絶対性があり、いつも正当性があつて、これに抵抗するものは間違いであるという扱いになつておる場合が、しかもしばしばある。これはひとり証券ストの場合だけじやないのです、実は全国あらゆる場所でそういうことが行使されておる。これに対しての正当な判断を下すいわゆる労働行政当局側の知性が、ややもするとどうも濁つておるように見えるわけなのです。私は今そのことを込めて申し上げておるわけなのです。従つてこういうような場合に、労働者側は、もうしかたがないから、官憲がこん棒を持つて割込んで来たら、もうすつと逃げなければならないのか、もしそれを阻止しようとしたら、公務の執行妨害であつたり、同時にこちらの労働者の方が暴力の行使者であつたりする解釈が成り立つのだろうか。どうだろうか、こういうことなのです。
  266. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 すでに正当性を欠いている行為をしている場合は、いろいろ先ほどから申し上げているように、平和的説得の限界を越えて不当にすわり込んでいる場合は、黙つてすわり込んでおつても、これが正当性の限界を越えている場合はあり得るわけです。ですから、その際どいてくれと言い、どかせようとして公務執行されることは、暴力ではございません。それに対する妨害は、公務執行妨害だと考えます。
  267. 中原健次

    ○中原委員 時間がたつようですし、どうも結論も出そうもないのですが、たとえばこの夏の近江絹糸の人権侵害の労働争議、これはだれもがおそらく承認することなのです。国民的な憤りが出ているわけなんです。資本家の中にも、良心のある人は非常に憤つておる。いわんや労働者立場一般大衆の立場からいえば、そういうことが今日民主主義国家と言われておる日本のもとで、ようもあつたものだとあきれておるわけです。国民は非常にあきれている。その場合に、よく調べてみると、労働行政の役所の側にかなり不注意がある。場合によれば、そういう情勢を助長するような、いわば職務の執行を怠つておる事実も数々あつたわけなんです。そういう場合に、それなら労働省当局としては、そういう行政上の責任はどういうふうに処理するのか。責任を感じないところに公正なる判断もできないし、公正な取扱いは従つて生れて来ない、そういうふうに思うのです。当局側に大きな責任を負わねばならぬような問題が起きた場合でも、なおかつそれが曖昧模湖のうちに消え去つておる事実は幾らもあつたわけなんです。これは近江絹糸のあの事件を通しても大分出ていると思うのです。こういう場合に、それなら労働省当局は、責任を明らかにしてその責めを問い、あるいはそれに対する行政上の立場を明確に表明し、かつ行使せられたかどうか、実はそうではないのです。そこで今のような問題が起りました場合にも——今とはピケツト・ラインを破ろうとする、つまりピケ・ラインを破る権力側の暴力ざたに対して、だからこそ公正な措置がとれなくなつて来るのではないか。従つて、こういうことを憂えるわけなんです。私は最初に労使対等の立場の条件を確保するについて、どう思われるかということをお尋ねしたのは、少くとも今日の段階で、労働階級の立場を資本家側に対して対等たらしめるためには、何としましても、労働者に与えた三権、団結権、団体交渉権、団体行動権、この三権をゆるみなく守らなければ労働者の対等権を維持することはできません。労働者の対等権を維持することなしに労働問題の円満な平和的解決は期待できないのです。これは言うまでもない。そのことをすぐに暴力とかなんとかいう言葉で濁して処理されようとすることは非常に誠意が足りない、誠実さが足りなさ過ぎるというふうに私は思う。並つて、この間の御答弁を求めたいのは、しからば行政上の責任の処理について、今までどのようになさつたか、松川事件でもなんでもかまいません、何か具体的なものを指摘して、この際明らかにしていただきたいと思います。
  268. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 行政上の責任の処理の方法でございますけれども、これについては、明らかに不当なものについては、それぞれの措置をとつております。ただ、今例におあげになりました近江絹糸、松川事件なんかのことについての措置でございますが、これは私どもの方といたしましては、基準法に照しまして違反と思いますところについては戒告もし、行政処分もしておるのであります。その数二百九十何件に及んでおることは、先般も申し上げた通りであります。今回の問題につきましても、行政措置としましては、今司法当局の手に渡つておる事件もあるわけであります。ただ、あの争議内容になつております仏壇を拝ませるとか、結婚の自由が侵されておるというようなことは、私どもとして、労働省がどうこう言う筋のものではないのでありまして、これは私どもの責任をとおつしやいましても、これはいかんとも私どもからお答えするすべはないわけであります。
  269. 赤松勇

    赤松委員長 中原君、ひとつ御協力願います。
  270. 中原健次

    ○中原委員 ちよつと一言。話が深入りしますから、こんな簡単な時間で結論は無理です。無理だとなれば、話が曖昧模糊になつてしまいますが、私が言おうとすることは、警官の暴力ざたに対して、労働大臣にその行政上の措置をどうしろこうしろと言つたのではい。そんな見当はずれを言つたのではない。けれども、そのことと、この次官通牒の中に盛られておる問題の扱い方に関係があるから申し上げたのです。何らかそのところを合理化するような、しばしばそのことをよしとするような誤解を与える内容をこの中に持つておるということから、そういう問題を取上げたわけなんです。  時間がないそうでありますから、遺憾なからそのことは未解決のままで、結論なしできようはお別れしますけれども、質問を留保しまして、次の機会に明らかにしたいと思います。     —————————————
  271. 赤松勇

    赤松委員長 本日御出席になりました参考人中、証券会社における労使関係について出席願つた細谷節也君、佐藤武志君、深山寛二君及び小林光次君の四君には、後日、本問題を調査いたします場合には、再度御出席願うことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  272. 赤松勇

    赤松委員長 御異議ないようですから、さよう決定いたします。  なお、失業対策に関する件について御出席願つた富家参考人は、明十九日も午前十時より御出席くださるようお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十八分散会