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1954-10-06 第19回国会 衆議院 労働委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月六日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 大橋 武夫君    理事 持永 義夫君 理事 多賀谷真稔君    理事 井堀 繁雄君       木村 文男君    倉石 忠雄君       三浦寅之助君    黒澤 幸一君       島上善五郎君    大西 正道君       日野 吉夫君    矢尾喜三郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小坂善太郎君  委員外出席者         調達庁次長   山内 隆一君         総理府事務官         (調達庁労務部         労務給与第二課         長)      宇田 直寛君         外務事務官         (国際協力局         長)      湯川 盛夫君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         労働政務次官  佐々木盛雄君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    黒石 拓爾君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      龜井  光君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君         参  考  人         (全日本自由労         働者組合中央執         行副委員長)  坂本 周一君         参  考  人         (東京自由労働         組合組合長)  馬場 大静君         参  考  人         (全駐留軍労働         組合書記長)  久保 具人君         参  考  人         (全国銀行従業         員組合連合会中         央執行委員長) 中尾 敏雄君         参  考  人         (塚田木工労働         組合組合長)  赤津  勉君         参  考  人         (元塚田木工労         働組合書記長) 山本 榮一君         参  考  人         (長野警察本         部長)     原 文兵衛君         参  考  人         (長野社会部         長)      鈴木 鳴海君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  失業対策労使関係及び労働基準に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  失業対策労使関係及び労働基準に関する件について調査を進めます。  それではまず労使関係につきまして、久保参考人より御意見をお述べ願います。久保参考人
  3. 久保具人

    久保参考人 私が全駐留軍労働組合書記長久保具人でございます。ただいまより特別退職手当に関する争議に関しまして、今日までの簡単な経過と全駐労としての意見を公述いたしたいと思います。なお本件に関しましては、七月三十一日、本委員会において決議がなされ、その後本委員会におきましては、積極的に審査をされておりますことに対しまして、各委員に深く感謝を申し上げる次第でございます。  全駐労といたしましては、すでに御承知のように、北海道におきますところの米駐留軍の撤退に伴いまして、LISOの労務者四千三百、それに軍直関係を含めまして、約七千の人員整理発生をいたしております。さらにまた極東陸軍関係におきましては、一九五五年度の予算二五%の削減に伴いまして、約一万五千三百人の大量の人員整理発生をいたしております。これらの人員整理者を救済するために、失業対策の完全に確立されておらない現在におきましては、少くともその過程といたしまして、公務員と同様、現行退職手当の八割増し日本政府要求をいたしたわけでございます。しかしながら、管理者側は、この要求に対しまして、何ら誠意を示しません。従いまして、八月の十三、十四の両日、四十八時間の全国ストライキを決行いたしました。  このストライキの前後にわたりまして、軍側といたしましては、ストライキ対抗策ストライキ対策に終始をいたしまして、具体的な内容につきましては、何ら誠意を示しておりません。それのみではなく、九月の十六日付で極東陸軍司令部テンプル参謀次長の方から、調達庁福島長官に対しまして書簡が出されております。この書簡内容につきましては、公務員退職手当LSO退職手当比較をしてみた。その結果LSO退職手当は低くない、従つていかなる増額をも認めない、こういう趣旨でございます。  この比較の問題につきまして、きわめて了解しがたい点がございます。軍側のこの比較に対しまして、いわゆるLSO労務者退職手当の中に、失業保険金給付までも含めております。御承知のように失業保険退職手当は、全然別個なものでございまして、アメリカのごとく、失業保険事業主全額負担をする、そうして国が経費を一部負担するというシステムであるなら別でございますが、日本におきましては、事業主が三分の一、それに国家が三分の一、それに労働者が三分のというように、それぞれ負担をいたしております。こういうシステムになつておりますところの日本の法律を無視し、慣習を無視したこの比較のやり方、これらについては、私どもとしては了承できないわけでございます。  なおかつ解雇手当についても、やはり退職手当の中に算入をいたしております。御承知のように、解雇手当は、予告をしない場合に三十日分を支給するということになつておりまして、現在私どもの場合におきましては、ほとんどの場合、解雇予告がなされておりますので、少くとも三十日間は就労をいたします。従つて、この三十日間の就労に対しましては、当然労働の対価として支給を受けるのが正しい見方でありまして、これらをLSO退職手当算入の基礎にいたしておる点につきましても、私どもといたしましては、了承できないわけでございます、  なおこの書簡の中には、以上のような考え方をもつて、三者会議開催いたしましても利益がないということで、はつきり拒否をいたしております、この三者会議拒否する軍の態度に対しましては、私どもが平和的に交渉を進めようとするこの道をとざすものでありまして、正当な理由なくして団体交渉拒否するという点につきましては、不当労働行為であるというように私ども考える次第でございます。特に私どもの場合におきましては、現行労務基本契約付属協定第四十五項といたしまして、中央の労働協議会または団体交渉に対しましては、軍が参加をするということになつております。にもかかわらず、今日に至りまして三箇月有余、この三者会議に応じて来ないという点につきましては、私どもは明らかに労働協約違反であり、さらに労務基本契約違反である。信義誠実の原則に反するというように考えておるわけでございます。この十六日レターに対しまして「調達庁といたしましては、翌十七日に福島長官よりテンプル参謀次長に対しまして、失業保険並びに解雇手当算入につきましての反駁資料を添えて提出をいたしております。  なお九月の二十日に至りまして、全駐労といたしましては、軍に対しまして三者会議早期開催要求を申し入れたわけでございます。しかし軍側はこれに応じませんので、二十一日より極東軍司令部の前ですわり込みを決行いたしました。その後九月の二十四日に至りまして、テンプル参謀次長の方から福島調達庁長官にあてまして、再び書簡が出されたわけでございますが、この書簡内容は十六日の書簡とまつたく同じでありまして、失業保険給付解雇手当算入の正当であるということを再び主張して、拒否をいたして参つたわけでございます。私どもといたしましては、九月の二十四日に三組合——全駐労、日駐労、海員組合、この三組合共同で、三者会議を九月中に開催すること、そうしてこの回答は二十八日にするように要求をいたしたわけでございます。その後二十九日に至りまして、テンプル参謀次長より調達庁長官あてにいたしまして、三者会議原則的に開催する、但し管理者間の意見の一致を見た上で開催をいたしたいというような回答が参つたわけでございます。以来今日まで三者会議はいまだ開催されておりません。調達庁といたしましては軍、政府の二者会議に臨むために軍側から出されておりますところのレターに対する最終的な反駁をするためにいろいろ案を用意いたしておる模様でございますが、私どもの方にはいまだ提示をされておりません。  このような情勢の中で全駐労といたしましては次のような考え方を持つております。十一月末日までに解雇されますところの北海道整理者及び陸軍関係人員整理者一万九千六百名を救済するためには、早期にこの問題を解決いたしたい。そのためには、三者会議に臨むにあたりまして、従来全駐労といたしましては八〇%の要求をいたしておりますが、この八〇%は固執するものではない。従つて幅のある考え方を持つて臨む。その一つの例といたしましては、軍並びに日本政府が今考えております国家公務員LSO均衡論の上に立つての問題でございます。これに対しまして、組合側といたしましては、昭和二十三年度におきますところの公務員退職手当の額が、昭和二十九年度にどれくらいの上昇をいたしておるかという点でございます。いろいろと検討いたしました結果、この間の上昇率は三三%という平均値が出て参つております。従いまして、私どもといたしましては、現行退職手当にこの国家公務員の二十三年から二十九年におけるところの上昇率であります三三%を乗じて、これをもつていわゆる均衡論といたしたい。この理由といたしましては、一九五二年の駐留軍関係ベース改訂の際に、極東軍司令部の当時の参謀次長でありましたロートン少将が公式の三者会議の席上において、次のようなステートメントを出しております。駐留軍関係労務者給与については、公務員等との関係も考慮して特殊な考慮が払われておる、従つて今回のベース改訂にあたつては、特に公務員より上まわつた上昇率をかけることはできない。しかし、公務員同時同率原則で行きたい、こういうステートメントを出しております。さらに、一九五三年の暮れにおきますベース改訂の際にも、団体交渉者会議の席上、さらには労働委員会公席におきましても、軍側は常に国家公務員同時同率という原則を今日までポリシーとして主張し続けております。こういう軍側考え方を私たちは一応認めるとするならば、国家公務員におきますところの退職手当の問題にいたしましても、先ほど申し上げましたように当然三三%増しというものは、国家公務員同率でなくてはならないという主張が出て来るわけでございます。  このような幅のあるわれわれとしての考え方も持つておりますので、結論的に申し上げますと、まず第一点といたしまして、すみやかに三者会議開催して、その中で十分交渉をして行きたい。第二点といたしましては、退職手当の実施の期日につきましては、九月一日に遡及をしてもらいたい。第三点といたしましては、軍側がもし増額を拓否いたしました場合には、日本政府の責任において措置をする、特に今回の北海道並び陸軍関係大量人員整理者に対しては特別な措置を講じてもらいたい。このような問題については、単に調達庁一庁の交渉でなく、日本政府全体としての問題として解決をするようにすべきである。全駐労といたしましては、もしこのようなわれわれの主張が、誠意をもつて管理者側の方で示されない限り、今月中に第二波の全国ストライキを決行する決意を有しております。  このような事情でございますので、どうか当委員会といたしましても、十分御審査あらんことをお願い申し上げまして、私の陳述を終ります。
  4. 赤松勇

    赤松委員長 ただいま調達庁の方から山内次長、それから宇田労務給与第二課長外務省国際協力局長がかわられまして湯川国際協力局長が御出席になつております。  それでは多賀谷君。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 調達庁にお尋ねいたしたいと思います。  まずこの問題は、かなり長い間紛争を見ておるのでありまして、非常に遺憾に考える次第でありますが、軍側から公務員との均衡において、LSOの方には解雇手当——これはもちろん予告手当ですが、さらに失業保険あるじやないか、こういう反言もしておるのであります。これに対して調達庁の方ではどういうお考えであるか、まずお聞かせ願いたい。
  6. 山内隆一

    山内説明員 今お話公務員LSO比較において、失業保険とかあるいは退職手当解雇手当とか、そういう問題について取扱いをどう考えておるかという問題でありますが、実は軍の方で調達庁の出しておる退職手当増額に対して、いろいろの見地から反駁をして参つておるわけであります。その反駁の中に、今御指摘なつたような事項がすべて入つておりまして、LSOの方については失業保険手当あるじやないか、あるいは解雇手当あるじやないか、あるいはまたベースそのものが、講和条約発効の際に、一応身分切りかえによつて新規採用になつておる、従つてそのときの新規採用としての給与を定むべきものを、引続き勤務者としての給与を定めている、それ自体給与も高くなつている、いろいろの事項をあげておりますが、調達庁は各問題について軍の考えが適当でないという意味合いの反駁書を出して、向うからの返事要求したわけであります。それがしばらくたつて返事が来たのでありますが、その軍の返答も、大体前の反駁文の意向と同じようなものを書いてあります。しかし、若干訂正したところもありますので、それに対して今再度の反駁書を書いております。近くその反駁書を出すことにいたしております。まだその内容は決定しておりませんが、大体前に述べたことと大同小異の内容になることと考えます。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 軍の示した案に対して、調達庁の方では反論を出したということで、今私が指摘をいたしました二、三の点についても、調達庁としては承服できない、こういうふうに意思表示をされておると承つたのです。そういたしますと、先ほど全駐労の書記長の方から陳述がありました、二十三年四月の退職手当制度の確立されたとき、そのときの公務員退職手当と、やはりほぼ見合うというのが妥当ではないかと思う。そのとき同じベースで出発したのではないかと考えるのですが、その後一方においてはどんどん上つて来ており、一方においては停止されたままになつておる。こういうことでは、非常に不均衡を来す思うのです。そこでいろいろ公式な席上において、同時同率原則を発表したそうですが、そういう点においては、当然私は二十三年四月現在においてお互いに同じベースにあつたものが、その後一方においてはいろいろ改正を加えられて増額を見ておる、一方においてはその後増額を見ていない、こういうことになりますと、非常な不均衡を来しておると考えるのですが、調達庁の方では、その点二十三年のベース比較において現在も是正すべきである、かように考えておられるかどうかお尋ねしたい。
  8. 山内隆一

    山内説明員 二十三年にLSO給与退職手当をきめる時分に、国家公務員との比較をいろいろ検討して、国家公務員より若干上まわる程度できめたわけでございます。従つて、その他国家公務員の方は、たびたびの制度改正によりまして、現在、先ほど組合代表者からお話がありましたように、大体三〇%上昇しておる、こういうふうに考えておるわけです。従つて、そういう同じ比率で上ることが至当と考えております。現在調達庁の提案しておるのは、そういう問題と、もう一つは、国家公務員については最低保障制度という特殊の制度が、ごく勤続年数の短かい者についてはありますので、そういう線に沿つて改正することが適当ではないか、かように考えております。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、もう一度確認しておきたいと思いますが、調達庁の方といたしましては、やはり同じような率で引上げるべきが妥当である、すなわち三〇%程度引上げるべきが妥当であり、さらに公務員のように最低保障額をプラス・アルフアすべきである、こういうふうにお考えである、かように了承してよろしいのですか。
  10. 山内隆一

    山内説明員 大体お話の通りでありますが、実は長年の勤続者につきましては、現在LSOは、先ほど申し上げましたように、講和条約発効の時期に、身分切りかえによつて一応新しく採用されたという形になりますから、今長い者でも二年数箇月というような状態でありまして、その大部分の人の実益のある案をつくつて、これをまず解決することにして、長年の者については、今すぐに役に立つわけではありませんので——承知のように、労務基本契約の問題で今まだ未解決のものは、給与の問題だけになつております。それはいずれ取急ぎきめなければならぬのでありまして、そういう際にあらためて検討するつもりでありますが、今差迫つた退職手当の問題のあろ際、そういうすぐに実効のない問題までも取上げて、いたずらに交渉を長引かせるとか、あるいは問題をむずかしくすることは適当でないじやないか。そういう意味で、実は長年の勤続者の方の問題については、現在の規定に手を入れるようにはいたしておりません。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その点非常に問題ではないかと思います。退職金というものは、何もそのときにやめる者のみを対象に常に交渉しているわけではない。やはり自分が三十年後にやめて、最低幾らもらえるかということが、働く者としての楽しみであり、希望であり、期待であると思うのであります。この前のフランスの大きな争議も、やはり年金制度を中心として大きな争議が起つたのであります。また普通の組合あたり要求する場合でも、それは三十年というような者はあまりいなくて、まだ操業間もなくて十年くらいの会社でも、三十年あるいは四十年までの退職手当制度というものを確立するわけです。ところが今の調達庁考えは、なるほど早急に事態を収拾しなければならぬという気持はわかりますけれども、現在大多数の者が、長年と申しましても二十年や三十年の話でなくて、やはり五年から十年、あるいは十二、三年、こういう見通しのつく話でありますが、その退職制度がまだはつきり確率されない。そういう連中は押えられておる。それらは後に交渉したらいいじやないか、こうおつしやるかもしれませんが、組合闘争と申しますものは、なかなかそういうようには行かない。やはり退職手当制度の確立という一つの目標に対して闘争しておる場合には、全部がそういうような恩恵あるいは期待を持ち得る、こういうような情勢において交渉をされるのが至当であると思うのです。あなたの方では、二、三年の現在適用される者だけを考えて、あとの者はあと交渉されればいいと言われるかもしれないが、なるほどそれは、調達庁長官とかあるいはあなた方の任期中はそれでいいかもしれませんけれども、それではアメリカ側一つ既得権ができ、また一つ制度が確立されるわけですから、組合側としてはどうしても承服ができないだろうと私は思うのです。そこで、これらの点も含めて、やまり交渉される意思がないか、その点をお聞かせ願いたい。
  12. 山内隆一

    山内説明員 ごもつともなお考えとは思いますが、先ほどもお話のありましたように、大量解雇がもう差迫つておりまして、現に北海道のごときは、九月十三日にほんとうの意味退職者が現われております。これらに対して至急退職手当を支給することが、さしあつての大問題になつております。従つて今回の大量解雇者に対して、退職手当の適正なる増額考えて早く支給することが、非常に必要なことじやないか、そういうような見地がら、今の調達庁の案というものができ上つたわけでありますが、さればといつて、現在の労務者勤続年数である二年数箇月——それ以上の者は全然含まれていないというわけではありませんが、退職手当最低保障額というものは、五年あたりがきわどいところでありまして、今の制度としてもたしか五年までくらいで最低保障制度のきめ方があつて、その場合には従来の規定による方がいいか、最低保障額によつた方がいいかということになります。しかし四年以下になれば最低保障額の方が明らかに有利でありますから、少くとも四年までは現在の退職手当修正案といいますか、あるいは増額案で十分まかないがつくわけであります。そういうような事情と、もう一つは、いずれにしても退職手当の問題は、一般の給与の問題とともに至急折衝してきめなければならぬ。これは基本契約の中のただ一つ残された問題として、早晩きめなければならぬから、今早急に必要なる退職手当の場合に、根本的に解決するということはなかなか容易ではないからあとまわしにした方がいいじやないか、かような考え方をしたわけであります。
  13. 赤松勇

    赤松委員長 国際協力局長は、いろいろな渉外問題もありまして急いでおりますので、なるべく早く質問してください。
  14. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では外務省にお尋ねいたしたいと思いますが、この問題につきましては、外務省ではどういうようにタッチされており、どういうように協力を願つておるか、ひとに協力局からお話を聞きたいと思います。
  15. 湯川盛夫

    湯川説明員 私どもとしましては、本件労務基本契約の問題でありますから、その当事者である調達庁長官交渉していただくのが一番よいと思いますし、また福島長官もそういう点では非常に最適任と思つておりますので、今せつかく交渉中ですから、その推移を注意して見ているわけでございますが、他方これは軍と調達庁との問といつても、在京米国大使館等も何かと相談にあずかることもあろうと思いますし、また間接にあつせんをとるということも考えられますので、大使館の方にはいろいろな経緯を説明して、十分に問題の焦点をわかつてもらうといつたようなことを、非公式会談で行つております。
  16. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この問題は、全駐労としても、組織をあげて闘争をしておるようであります。それで、もうすでに闘争をしてストライキも行われ、さらに第二、第三の闘争が計画されておるやに聞くわけでありますが、この紛争を見ますと、現地においていろいろな摩擦も起きはしないかと思うわけです。そういたしますと、外交面にもいろいろ支障を来すと考えますので、なお強力に、あるいは直接の当事者ではないかもしれませんが、それならばなおやりよかろうと思う点もあるわけですから、あつせん調停をお願いしたい、かように希望するわけです。  そこで、さらに調達庁の方に、政府案を作成するやに聞いておるわけでありますが、そういたしますと、政府案では、一応今ご説明になりましたなるべく年限の短かい者差迫つた者のみを主として救済をする、こういう趣旨で案をつくられて折衝されるつもりでありますかどうか、お尋ねいたします。
  17. 山内隆一

    山内説明員 大体そういう趣旨で案をつくつて今せつかく折衝中であります。
  18. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういうことになりますと、おそらく労働組合の方では、その案自体に対して反対をする、こういう結果になると思うのです。そういたしますと、せつかく交渉をされるけれども労働組合の方も反対をしている、こういうことでは、なかなか解決が困難ではないかと思うのですが、あなたの方では、現在出す案でも、労働組合を説得する自信があるかどうか、お尋ねいたしたい。
  19. 山内隆一

    山内説明員 非常にむずかしい問題でありますので、今の状態調達庁案がかりに軍にいれられた場合に、組合に了解を求めることができるかどうかということになりますと、今自信があるというようなことは申し上げかねると思います。ただ調達庁としては、調達庁案そのものは、今非常な難航を続けておりますので、これ自体がはたしてこの通りいれられるかどうか、非常な疑問になつております。しかし、どんなことをしても、軍の了解を得るためにあらゆる努力を払つているような状態でありまして、従つて、かりにそのままこの案そのものが通つたとしても、まだまだ組合との折衝には非常な問題が残ると思います。
  20. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうしますと、今の段階は、もう軍と折衝されておるのですか。もう一度三者会議の前に、二者会議に臨む案をつくられている段階ですか、どちらですか。
  21. 山内隆一

    山内説明員 一面においては、軍に調達庁退職手当増額案を出してやりまして、軍との折衝はずつと続いております。先ほど申しました通り、いろいろ内容について軍が反駁して来たり、こちらがさらに反駁するというようなこともやつております。従つて、一面においては軍と折衝を続けながら、組合との間もやはり折衝を続けているわけであります。組合との間については、完全にこまかな数字的なものまで一致するということは、なかなか容易に期待できませんから、せめて軍と交渉する場合に、ある程度方向、考え方を同じくするということは、少くとも必要ではないか。その辺が非常に食い違つておりますと、調達庁がほんとうに腹をすえて軍と交渉することもできないような弱みがそこに自然あるものですから、その辺に交渉上どうも不利益な点も考えられますので、何とか組合とせめて方向だけでも合せて、一層力強く軍と折衝したいという念願を持つておる次第であます。
  22. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私が聞いたところによりますと、一応調達庁案というのは拒否されたので、それを持つてつて、さらに政府案としてこれを各省とも話し合つて出す、今、調達庁の方ではむしろ政府案の作成に急いでおられる、こういうように承つておつた。これはあるいは間違いであつたかどうかしりまんが、その件については、私の聞きましたのが間違いであつたかどうか。それからそういう作成はしないで、この前出されました案通りであくまでも折衝しておるのかどうか、その点少しはつきりと伺いたい。
  23. 山内隆一

    山内説明員 現在のところ、まだ調達庁がさきに出してある案を修正するとか、撤回して出すということの手続はとつておりませんが、組合との間に、調達庁案そのものが、せめて方向だけでも同じくしようというような折衝も容易でありません。一方組合の方も、ただいまお話がありましたように、必ずしも八〇%増というものを絶対譲歩せぬ、あるいは最後までこの案で押し通すというような考え方は、もうすでに持つておらないようで、かなり弾力のある考え方をしているようにこの席でも伺いましたし、今までも、他の委員会とか、あるいは直接の話の際にも伺つております。なおまた、退職手当の全面的改訂の問題は、先ほど申しましたように、なかなか今早急の場合に間に合わぬ。従つてその辺も、あるいはさしあたつた必要なものだけについて、検討することも、必ずしもやぶかさかではないというような意味のことを、間接に伺つたこともあるわけで従つて調達庁としても、今まで出した案が、必ずしも少しの考慮の余地もない最善の案と、うぬぼれた考え方は毛頭持つておりません。国家公務員と同じような方向という意味で、最低保障制を入れる。但し組合については、最低保障六箇月未満ならば六箇月、これにプラス一というのが、今まで組合がずつと長い間やつて来た方法ですから、そういう意味最低保障制度を出してあつたわけですが、組合のいろいろの気持もよくわかつて来ておりますし、この案そのものがどうしても通らぬというような情勢ならば、なおひとつ各省のそれぞれの関係官の意向も聞いて、さらに適切な案を考えてみたい。そういう意味で、今、政府案といいますか、すでに調達庁の提出した案に対して、さらに適切な修正案がないかどうかということを検討しておるような状態でございます。
  24. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちよつと労働省にお尋ねいたします。大臣も政務次官もおられませんので、あるいは直接の関係ではないかと思いますけれども、しかし争議が起きたら、あなたの方の関係になるわけです。それで、これは調達庁としても、非常に難航をされておりますし、また今お聞きのように、調達庁案そのものについて、労働組合反対しておる。労働組合は、単に短期の年限の物だけでなくて、長期の者までこの際確率したい、こういう基本的な態度で行かれておる。調達庁の方では、早期解決ということで、一応基本契約の中に入るのだからと、こう言われておる。しかし組合の法では、基本契約がいつできるかわからないし、この際やはり長期のものをとつておかなければ……という気持がある。そこで非常に難航を呈しておるわけですが、この問題について、労働大臣は直接軍の方に折衝をされたことがあるかどうか、そういう点がわかりましたら、ひとつ局長の方から御答弁願いたい。
  25. 中西實

    ○中西説明員 駐留軍労務者退職金の問題は、直接には調達庁と軍との関係であるというので、折々の連絡はいただいておつたのでありますが、最近はいよいよ最終的な段階にもなつて参りましたので、割合緊密な連絡をしてやつております。この問題につきましては、労働大臣がたまたま調達庁の担当大臣になりましたので、今まででも調達庁長官とともに、あるいは単独で、裏面でいろいろと向うと折衝をしておられるようには聞いておりますが、具体的にはかく承知しておりません。この問題は、結局軍と組合考え方が根本的に違つておる。軍ではもう全然原稿をいじる気持がない。それに対して八割増し——それは最近では非常に緩和した気持を持つておられるようでありますが、労働省といたしましては、退職金が幾らでなければならないという問題ではないので、結局世間の相場というか、駐留軍労務者につきましては、公務員との比較という問題になろうかと思います。そういう観点から、労働省といたしましても、従来のいきさるもございますので、できれば若干とも有利になるように協力しようおいう気持で、実は今お手伝いをしておるのであります。
  26. 久保具人

    久保参考人 ただいまの調達庁側の発言によりますと、政府の最終的な案を今まとめておるようにも聞えますし、いないようにも聞えます。そういう点については、やはりこの委員会はつきりしていただきたいと思います。従来調達庁が持つてつております案が、軍側によつて反駁されておる。そうといたしますと、これは調達庁のみでなく、日本政府全体として、これが日本政府のまとまつた意見だというところで持つて行かなければならない段階に来ておるのではないかというように考えております。従いまして、この委員会の席上でもそういう点を明らかにしていただいて、先ほど私が陳述の際に申し上げましたように、ただ調達庁だけの交渉でなく、日本政府全体としての交渉であるというように持つて行かなければ、この問題はなかなか解決しないのではなかろうかというように考えております。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今参考人からも言われ、また私も指摘したわけですが、その点がどうも明確でない。最初持つて行かれた案は、政府としての案ですかそれとも、政府以外の調達庁の案と言うと、これまたどうもはつきりしないのです。私、官庁機構をよく知らないので、はつきりわからないかとも思うのですが、その点ひとつ政府の最後の案として、やはり強力な折衝をされなければならぬと思うのですが、その点をもう少し明確に御答弁願いたい。
  28. 山内隆一

    山内説明員 私は調達庁案、政府案という二つの考えがあるとは実は考えておりません。法律の上からいいましても、駐留軍労務者の待遇をきめるものは調達庁長官であると、はつきり書いてあります。従つて、この問題についての主務庁は、日本政府としては調達庁が当つておる。従つて調達庁案というのは、言いかえれば日本政府の案、こう申し上げてさしつかえないのではなかろうかと実は思つておるわけです。ただ調達庁が出した案が難航を続けておる、組合反対しておる、軍もなかなかのんでくれない、そういうような状態でありますので、何とかその打開策として、調達庁の責任においてではありますけれども、ほかの関係の者のいろいろな関係官の意向も十分拝聴して、さらに適切な案があればこれをまたかえることにやぶさかでない。そういう意味で、大急ぎで関係者の打合せ会を開き、あるいは個々の折衝もし、御意見も伺つて、今検討中でありますので、それで適切な案ができれば、いつでもかえることにやぶさかでないと申し上げている次第であります。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では調達庁及び労働省にお願いしておきたいのですが、軍の方では、公務員の方は失業保険金もなく予告手当もないというような、きわめた給与制度を知らない者の話をしておるわけです。金額が高いとか安いとかいうことは別として、公務員との比較において、公務員の方は失業保険もないし、あるいは予告解雇制度もない。しかも実際は解雇手当というものはほとんどもつていないので、三十日働いておる、こういう現状なんてす。しかもそれを金額に換算して働かしておる。金額に換算して、しかもそれを退職金の一部のごとく考えておるということは、まつたくそういう給与制度そのものを知らない者の言辞のように考えられるわけです。そういう点を、ひとつ軍を教育すると言つたら語弊がありますが、十分納得するように、そういうべらぼうな言を吐かないようにぜひ折衝をお願いしたい、かように労働省にお願いしたいのであります。さらに調達庁におきましても、今労働組合の方が言われたように、基本契約の中に入れるといつても、いつのことやらなかなかわからないし、今までの例によりますと、そういう事情であるし、この際という気持がありますので、ひとつこういう解雇があつた際に、少しは遅れましても、あとから遡及するということもありますので、ぜひ退職手当制度の確立をしていただきたい。この問題は、ここで解決しておかなければ、今後解雇が進むとともにいろいろ紛争を見ると思いますので、ぜひお願い申して、私の質問を打切ります。
  30. 赤松勇

    赤松委員長 この際私からも政府に対して希望しておきます。当委員会におきましては、七月三十一日次のような決議をしております。    駐留軍労務者退職手当に関する決議   駐留軍労務者給与については、従来その特殊な勤務の事情を考慮し、国家公務員に比べて相当程度上位の給与水準が支給されるよう定められている。   ところが退職手当については、国家公務員に特別措置がなされているにもかかわらず、駐留軍労務者に関しこの点の考慮がなされていないために、国家公務員退職手当より低位に置かれている現況である。   今般の米陸軍部隊の大幅なる予算削減並びに北海道撤退に伴う大量解雇の問題が発生している現在駐留軍労務者退職手当については、国家公務員等と比べて相当程度の特別措置をとるよう申入れる。   右決議する。  これが七月三十一日衆議院労働委員会におきまして満場一致決議をされました政府に対する所望でございます。この決議を再確認いたしまして、今後政府の努力をまちたいと思います。  これにつきまして山内次長から所信を述べていただきたいと思います。
  31. 山内隆一

    山内説明員 この衆議院の御決議の趣旨に沿いまして、できるだけ早く退職手当の問題を解決したい、かように考えております。  なお、今も御希望として、至急退職手当の根本的な解決をはかるようにというお話でありますが、私の方も、実は基本契約の中で、それだけが残つているので、これを早く解決したいと思つておるやさきに、北海道の退職の発表がありまして、現に退職者を出したというような状態に差迫つておりますので、とりあえずこの際なるべくそれらの組合退職手当の支給として、遺憾のないような案を早くきめて、そしてそのあとでこの根本的の問題を今後すぐに入つて解決したい、かように考えております。御趣旨を尊重しまして、極力早くこの問題を解決するように努力いたしたいと考えております。     —————————————
  32. 赤松勇

    赤松委員長 それでは次に塚田木工製作所の労使関係について、参考人の公述をお願いいたします。長野社会部長鈴木鳴海君。
  33. 鈴木鳴海

    ○鈴木参考人 塚田木工事件について、県の社会部といたしましての見て来た点を申し上げたいと思います。  問題点は、すでに大体御報告があつたと思いますが、七月十一日における第二組合結成の準備金に際しまして、第一組合員がその分裂行為を阻止しようとした問題、それから第二の問題は、七月十二日の臨時大会におきまして、山本書記長に謝罪文を書かしたというような問題、それから第三点は、七月十五日において、組合員が統制部長である組合員西沢氏に対しての詰問の状況、この三つが一応問題点になるわけであります。逐次県の労働行政の立場から意見を申し上げて行きたいと思います。  塚田木工事件は、当時賃上げの争議の最中でありまして、それ以前にストの実施に入つておつたわけであります。それで十一日に、このストの行動に対して不満を持つ組合員が第二組合を結成しようとして、秘密準備会を開いたわけでありますが、その際に、その秘密準備会のあることを知りまして、第一組合の者がそこに入つてつて、第二組合の結成を阻止しようとした、こういう点であります。この阻止しようとした態度は、結局労働争議の最中においての第二組合結成ということは、組合の自衛上非常に重大な問題になるわけでありまして、結局この阻止的な行為、並びに動機に対しては、われわれは一応の動機については妥当と認めるわけでありますが、ただそのとつた行為が刑法上の問題になるか、ならないかということは、われわれ労働組合育成の上から行きましては、そこまで調査する権利もないわけであります。従いまして、ただそこに第二組合が結成されようとした際に、使用者側が入つておつたという点において、この点については、一応使用者の労働組合介入というふうな問題で、不当労働行為の疑いをもつて、目下これは地労委に組合側から提訴されておるわけでありまして、やがてこの結論は地労委から出されるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。  それから七月十二日の臨時大会は、前述の第二組合をつくろうとした人々の査問を目的にする臨時大会であつたわけでありますが、この臨時大会の手続は、大体において正当な手続をとられ、それからそういう意味において臨時大会は成立したというふうにわれわれは見ておるわけであります。  そこで問題になるのは、第二組合をつくろうとした山本書記長に対しましての謝罪文を書かした点が一応問題になるわけでありますが、われわれ社会部の調査といたしましては、大体山本書記長に謝罪文を書かせようという動議が提出され、その動議が満場一致で可決されたという点、それからさらに、同書記長の謝罪文を全員の前で発表し、さらに書記長の自発的な退社を認めるかどうかというふうな、こういつた一つの問題について全員投票をして、多数でそれが可決されておるというふうな面から行きまして、一応この組合の運営は正常に行われたというふうにわれわれは見ておるわけであります。その間の個々の組合員のとつた行為について、これが刑法的に問題になつておるようでありますが、これは労働行政をやるわれわれといたしましては、そこまでの認定の権利はないわけであります。しかし、その個々の行為というものが、刑法的な疑いを持たれたといことは、非常に残念なことであるわけであります。また同時に、現在の労働組合の大会の中で、これが民主的に平穏裡に行われるというふうな指導をして参つておるわけでありますが、しかし、その指導の程度が、まだ一般には不十分であるというふうにわれわれは考えておるわけでありまして、結局今後こういつた正当に行われる組合並びに自己防衛の立場においてのこの大会を運行する場合に、その大会の運行の途上における個々人の行為が、刑法的な一つの疑いを持たれる、こういつた点については、十分今後とも指導して行きたいというふうに考えておるわけであります。  それから七月十五日の問題でありますが、これは組合の統制部長である西沢氏が、この争議中ほとんど大会にも出ないというふうなことで、組合員の一部がこれに対して憤激し、そして西沢氏の自宅に行きまして、いろいろその点を問詰したわけでありますが、これが自宅ではいかぬということで公園に呼び出し、さらに工場まで連れて行つたということであります。その間に暴行行為があつたというふうな一応刑法上の被疑事件を惹起しておるわけでありますが、この十五日の問題は、組合活動の一部とは認められるわけであります。しかし、工場内におけるいろいろな集合というものは、一応組合側では、臨時大会というふうに言われておるわけでありますが、われわれ労働行政を担当いたします者といたしましては、成規の手続もふまずになされておるというふうな面で、成規の組合大会というふうには見ておらぬわけであります。従いまして、その間におきます個々の組合員の行為については、労働行政の立場といたしましては、別にわれわれとしてはタッチしていないということだけを申し上げておきます。以上であります。
  34. 赤松勇

    赤松委員長 今社会部長から、今度の塚田問題の労使関係の概要をお聞きしたのですけれども、赤津参考人からも、ちよつと説明してみてください。赤津参考人。
  35. 赤津勉

    ○赤津参考人 私が塚田製作所の組合長をやつておつたわけです。  今度、八月八日の日に、突然警察から逮捕されたわけですが、ぼくたちはそういうことを全然予期しなかつた。何で逮捕されたのか、そのときはわからなかつた。それでは逮捕状を見せろと言つても、警察ではなかなかぼくたちに見せない。そこで、ぼくらさんざん五回も六回も聞いたのです。そのとき六人ばかり来たのですが、さんざん要求して、それじや見せると言つて、見せたけれども、警察では逮捕状を手へ渡さない。ただ、君たちは七月十二日の日に共謀して暴力を振つたと言つて、さあ行くんだ。ところが、ぼくは一人で間借りしておつたものですから、うちの母やおやじたちにもこのことを知らせなければいけない。何しろこんなことをやられるのは初めてだし、心配するから、知らせるのに手紙を書くから待つてくれ。いや、そんなことは絶対だめだ。手を両方握られて、どうにも動きがとれない。それではしようがないというので、すぐ出て行つた。  ところが、松本の署に連れて行かれるのかと思つたから黙つておつたら、とんでもない方へ行くわけです。それで何が何だかわかないものだから、もう一度警察手帳を見せてくれと言つた。鹿地事件なんかあつたあとなものですから、ぼくもどこかとんでもないところへ連れて行かれるのじやないかと思つて、もう一度警察手帳を見せてくれ、おれをどこへ連れて行くのかと言つたところが、行けばわかるんだ、それじやどこだと言つてさんざん聞いたところが、やつと豊科の署だと言い、豊科の署へ連れられて行つて、逮捕状を見せてくれと頼めば見せてくれるから、よく頼みなさいと言われたので、ぼくはそういうことをよく知らないし、何が何だかわからないから見せてくれと言つて、やつと逮捕状を見せてもらつた。それによると、組合の大会が七月の十二日にあつたのですが、今度一緒に逮捕された北原君や宮崎君と共謀して、なぐるけるの暴行を働いたのだ、そのかどによつて君たちを逮捕するのだと言われたのです。  そのときの話をいたしますと、ぼくたちは七月一日から賃金の問題をめぐつて会社と争議をやつておつた。そのことは、会社が六月十五日ごろに、君たちが非常に困るだろうから賃金を上げてやる、そう言われて、組合から要求したのじやないのです。これは会社がぼくたちにくれた文書にも、そういうことをはつきり書いてある。賃金を上げてくださいということで会社と交捗していたところが、七月一日になつて会社は、組合要求には一切応じられない、会社の言つた賃上げも一切取下げると言つたのです。このときは個人個人全部、この人には幾ら幾ら上げる、君には幾ら幾ら上げると、組合に全部文書をよこして発表した。それを会社が取下げたのです。これで組合の人たちがものすごく怒つて、そんなばかなことはない——会社は頑迷だから、いつもそういうことをやるのです。今までも給料の支払いはちよいちよい遅れるのです、十日ぐらい延びる。そういうことがあつたあとですから、みんな怒つて、これは争議をやらなければいけない。このことについては、ここにぼくたちが警察で、つるし上げをやつたと言われた山本さんや、十五日にやはりつるし上げをやつたと警察で言う西沢守人さんも、ストライキでも何でもやつて、会社にうんと圧力をかけてとらなければならないと言つて、執行委員会ではだれも争議をやるということについては反対するものがなかつた。西沢さんなんかは、スの字以外はない、スの字スの字というあだ名がついておる。これはストライキのことです。それで、ずつと争議を続けて来たわけですが、たまたま十日にストライキをやつて、十一日に、この争議はよくない、争議だからやめた方がいいという切りくずしの文書がぼくたちのところに来た。これはおかしいというので、ぼくの家に集まつた。そこにたまたまある人が組合大会をやるから来てくれと言われたといつてそういうことがわかつたのです。これはえらいことだ、組合大会だといつて第二組合をつくる腹じやないか。そういう切りくずしの文書が来たあとですから、ぼくたちはすぐその会場に行つたのです。そこにはここに来ておられる山本さんが招集して二十人くらいいた。そこへ行つたぼくたちが、山本さん裏切つたねと言つたら、ええ裏切りました。会社へついていいことをする気かといつたら、ええ私は会社側についていいことをします。山本さんは、当時組合書記長で、副闘争委員長でした。そういうことをその人が言つた。ぼくたちは、そのときに、そんなことをしたらだめじやないかといつて、約十五分ばかり話をした、そこで最後に、こういうことをしたら悪いから、ぼくたちと一緒にやつて行こうと思う人は帰ろうと言つて訴えたところが、四人の人が帰つてくれた。そこで中島芳雄という人、これは今逮捕されて不起訴になつておりますが、その人にいろいろその会議の模様を聞いたのです。ところが、明日の十二日に、裏切つた山本さんたちを初めとして、ぼくたちが大会を召集して、現闘争委員には一言も発言させずに、現在の闘争委員をボイコツトするという、そういうことをきめたそうです。そこにちようどまた会社側の丸山労務係長が来ることになつていて、ぼくたちが行つたところが、山本さんたちがあわてて、会社の丸山さんが来ちやまずい、すぐ連絡をしろということで、裏から脱けて連絡に行つたそうです。ところが、実際にはその会場に丸山労務係長——これは会社の人ですが、現に来ちやつたわけです。そういうことを聞いたものですから、ぼくたちはすぐ組合大会を十二日の日に開いて、山本さん初め、裏切り行為をやつた人たちに、いろいろ聞こうじやないかということで、組合大会を開いたわけです。ところが、組合大会では、ぼくは最初そういうことを報告しました。やつたところが、みんなものすごく怒つちやつた。この裏切り者、お前たちは何をやつているんだ、ばかやろう、そういうことは確かに言つたのです。いろいろ聞いているうちに、山本さんたちは、初め、会社との関係は一切なかつた、そういうことを言つておつたわけですが、そのうちに、山本さんたちが裏切り行為をやつたのは七日ごろからで、それからストをやつたのが十日だつたわけです。ところが十日のストライキの日に、会社は拒否拒否拒否だということを言つて組合案には一切応じなかつたわけです。その裏には、山本さんたちが第二組合をつくるということで、はつきり会社と連絡して、そういうことをやつていたわけです。そういうことがわかつたものですから、よけい怒つちやつたわけです。それで山本さんたちに最後にあやまれと言つたわけです。ところが山本さんたちは、謝罪文をその通りに書いているわけなんです。どうも済みませんでした、こういうことをしたのは組合を混乱させた、申訳なかつたと言つてあやまつたわけです。ところが組合員は、あやまつただけじやだめだ、一筆書け、こう言つたわけです。それで一筆みんな書いたわけです。これは全然別の部屋で書かしたわけです。それでそれを警察では強要罪と言つているわけです。しかしぼくたちは争議をやつて、裏切り行為をやつた人たちに謝罪文を書かすということは、当然のことで、あたりまえのことだ、それをさしちやいけないということは絶対ないと思うのです。ところが警察では、強要罪だ、そういうふうにぼくたちを起訴しているわけです。  その席上わかつたことは、山本さんたちが四回ばかり会合を開いているわけです。第二組合の人たちが、その席上へ四回も会社側の丸山労務係長も来て、第二組合をつくることを指導しているわけです。そのこともちやんと謝罪文の中に、書いているわけです。山本さん、丸山労務係長が第二組合をつくることを話しました。あるいは第二組合をつくることは違法行為じやないかというような話をしたら、いやそうじやないということを労務係長さえ言つているわけです。その組合の一回の会合のときに、会社側の切りくずしの文書を会社側が発表したものを、それを第二組合の人たちが上書きを書いたり、あるいは切手をはつて、第二組合の人たちが会社の文書を発送しているということが、その大会の席上でわかつたわけです。これは朝から五時ごろまでやつたわけです。そういうことがありましたものですから、みんな怒つたわけです。しかしだれも、このやろう、この裏切り者がと言つたことを、わざわざうしろにいた者が、前に来てそういうことをしたことはないのです。ちやんとすわつていて、それは確かに騒がしいことはあつたが、議長がおつて、議長がそういうことをしなくちやだめだ、議長を通してやれということで制して、ちやんとそういう組合の規約に基いて、この大会を開いたわけです。ところが、これは会社では、その前日に共謀してこういうことをやるということをきめて、それでつるし上げをやつたというふうに、ぼくたちを訴えているわけです。ぼくたちはそういうことは絶対ないのです。ただそれだけなんです  それで、その後十五日の日になつて、同じく山本書記長と同じように裏切りをやつた人なんですが、この人は闘争委員で統制部長であつた人です。その人が最後まで組合闘争委員会に出ておつたわけです。その人が裏切り行為をやつたということがわかつたわけです。それで同じ職場に働いている同僚が非常に怒つちやつた。その人は、すぐスの字くスの字とあおつた人なんです。それで怒つて、西沢統制部長に向つて言つたわけなんです。西沢、どうして裏切つたのか。ところが、そこでは話がわからない、話がまずいだろうということで、松本の中央公園に行つてくれないか、中央公園で話を聞こうと言つたところが、西沢さんは中央公園に出て来たわけです。ところが西沢さんは、何か非常にアジが上手な人なんです。そこへ来て、お前たちは何を見てるのだ、そういうことを言つて、同僚がどなられちやつたわけです。ひつぱり出した人がどなられたわけです。それじやこれは形勢不利だということで、ほかの人が闘争委員会にすぐ連絡して、ここへ連れて来て話を聞いてるが、闘争委員の人はどうしたらいいかということで連絡をして来たわけです。闘争委員会は、西沢統制部長であるから、それはすく闘争委員会に連れて来て、それでそれを聞こうじやないか、そういうことを電話で来たものですから連絡した。それで西沢を闘争本部へ連れて来たわけです。闘争本部へ連れて来たところが、実際はぼくたち三役は、ちようど争議の問題で地労委に調停を依頼したものですから——調停があつた日なんです。ぼくたち三役はおらなくて、ほかの闘争委員組合員が終業後五時ごろでしたから、おつたわけです。そこへ組合員もやつて来て、西沢、どうしたんだという話をしたわけです。ところがそのときも、いやこれはまずい、ちやんと議長を選んでやろうじやないかということで、十二日の大会に議長をやつた田中という人を議長に選んで、それで西沢に、お前統制部長のくせに何だ、スの字スの字とおれたちをあおつたくせに裏切りやがつてということを言つたわけなんです。そのときのことをまた警察は、暴力を振つてなぐる、けるの暴行を働いた、そういうことを言つている。実際ぼくたちは、全然そういうことはしていないのです。ぼくもそのとき六時ごろ調停から帰つて来て、西沢といろいろ話をしているわけです。ところが、そういうことは全然していないのです。警察では、そういうことをしている。ぼくたちが執行委員会を十一日の日にやつた。その日山本さんたちが裏切り行為をやつた。その会議場にぼくたちが行つたことが、不法侵入だと言つておりますけれども組合の大会だといつて集めたところへぼくたちが行つてやるのは当然のことで、そのあと、大会を開くにはどうしたらいいかということを相談したことがあるのです。そういうことを共同謀議と言つているわけです。執行委員会で大会を開くことを実際にお互いに話し合つたことが、それを共謀してつるし上げをやるんだということを相談した。そういうことが悪いといつて、ぼくたちは警察に行つて、ものすごく調べられたわけです。追究されたわけです。ぼくたちは、そういう執行委員会をやつたことが、共同謀議になつて、そうして大会をやつて、第二組合をつくろうとした人たちに謝罪文を書かしてあやまつてもらう、こういうことは強要罪である。執行委員会を開いたことが共同謀議で、それでいろいろお前たちは裏切り者じやないか、そういうことを言つたことが暴力行為だ、そう言われた。ぼくたちはこういうふうに言われたら、ぼくたちは実際に何にもできない。ぼくたちが法律で認められている団結権とか、あるいは労働組合の行動というものは絶対できない。それを警察では盛んにぼくたちに追究したわけです。最後に——最後じやない、初めから実際証拠はないとぼくは信じておつたのです。ところが警察では輿君なんかはものすごく調べられたわけです。  実際ぼくたちが驚いたことには、検事が調べているときでも、手錠をはめて、最後に調書をとられて判こを押すときだけ手錠をはずしてくれたのです。そのときだけはずしてもらつた人が現にあつたわけです。輿さんなんかが、警察の伊藤警部という人に調べられたが、お前自白しねえと三年間たたき込むぞとか、あるいはこのばかやろうと、こぶしをつきつけて、いかにもくらわすようなかつこうをして調べた。輿君はこの点でものすごく恐怖感を覚えて、実際やりもしないことを、やりましたと言わざるを得なかつた。輿君は実際何もしてないわけです。ところが、言わされちやつたのですね。最後に調書を読んだときには、まるつきり坊主がお経を読むような調子で読んでもらうのだから、何が何だかさつぱりわからない。しかも夜中の十一時ごろまで調べられて、最後に調書を読んでもろうたときは、十一時ごろなんです。彼は五日も六日も十一時ごろまで調べられて、頭がふらふらしておる、何が何だかわからない。調書に何を書かれたか覚えていない。輿君は、どなられたりあるいはなぐる、けるというようなことはしましたということは覚えているけれども、そのほかのことは、実際何をやつて何を書かれたか知らないという。それくらいいじめられてしまつた。  大体ぼくの言いたいことはそれだけであります。
  36. 赤松勇

    赤松委員長 質問はあとでします。ちよつと念のために、輿君という名前が出たけれども、私のところに陳述書が来ておるわけであります。ちよつと読んで見ます。  八月八日午前六時前頃、警官七名が来て私は逮捕状を見せられず早く行けと言われ何事かもわからず連れ出されました。此の日は日曜日で、村の野球がある事になつており私は嬉しくて早く起きて居りました。私は村の野球部のキャプテンをやつて居りますので野球にはどうしても行かなければならないし、楽しみにして居りましたが、警官はすぐ帰すと言うので私は八時迄に帰してくれと言つてすなおについて行きました。そして自動車に乗つて松本署に行くものと思つていたら変な方を廻つて塩尻署に連れて行かれました。塩尻署に着くと私は恐ろしく不安になり「八時迄に帰して下さい」と頼みましたが「今日はそんな訳にはゆかない」と言われ間もなく留置場に入れられました。私は早く帰りたいし恐ろしいので鉄棒がはまり金網の張つてある戸につかまり力の限りゆすつて、「早く出してくれ……」「早く帰してくれ……」と、たのんだけれども出してくれないので淋しくなつて泣き出し泣きながら「早く出してくれ」「早く帰してくれ」とたのみましたが出してくれませんでした。取調は其の日の昼過ぎから伊藤警部によつて行われました。私は取調を受けて居る時にも伊藤警部に出してくれ、早く帰してくれと頭を下げて泣いてたのみましたが調は三日頃迄は大体私の言う通りに書いてくれましたが三日日頃がら「白状しないと帰す事はできない」「早く本当の事を言えば家に帰す」などと言いましたが、白状するもしないも本当にないものはないしおぼえていないものはいないのでその様に言うと「てめえしらばくれるな」「馬鹿野郎早く観念して白状しろ」「白状しなけりや三年位たたつ込むぞ」「忘れた忘れたと言つているが一ケ月前ぐらいの事が思え出せない様な馬鹿ではないだろう「早く思い出せ思い出せ」「早く言え」「早く言え」「早く白状しろ」「早く白状しろ」などと言われ私は警察に来たのは初めてで留置場などに入れられた事も「初めてでむやみに恐ろしくなり、そして、こんな所へ入れられてよわつた事になつた。出て行つたら誰も相手にしてくれないだろう、白い目で見られ道も歩けない位になるだろう、そんな事をいろいろ考え、只淋しくて悲しく泣き乍ら早く出たい、早く帰りたい気持で一杯でした。  こんな時に「恋人がてめえの事をものすごく心配しているぞ」などと言われ思出したくても思い出せずよけい出たくなり手をついて泣いてたのみました、すると「明日出してやる」とか「早く白状すればすぐ出してやる」と言うので一ケ月も前の事なので思い出せず誰が何と言つたのか、誰がどういう事をしたのか全く思い出せませんでしたが、どうかして早く出してもらいたかつたので忘れた事を一生県命思い出そうとしているとすぐ「てめえ眠かつたら取調を打切るぞ留置場へ入つている」とおどされるので、私は打切られては早く出られないと思い、言うから、言うからとたのみ、だんだん伊藤警部の言う通りになつて行きました。そして六日間先に述べた様な事や、又ある時は「検事に、君は懲役にならぬ様にうまく話をしてやるから白状した方が身の為だ」「赤津、宮崎など観念して白状しているぞ」とだまされ又ある時は大声でどなられ、おどかされ、貴様!!貴様!!と拳を突きつけられて、警察で何か恐ろしい事をやられる……されれば困ると恐ろしくなり、私達は何もやつていないのだ、大した事はないだろうと思い、私達執行委員がやりもしない事を思い出せない事を警察の言う通りにさせられて了つたのです。全部伊藤警部の言う通り調書を取られて了いました。私は塩尻署で一人きりで伊藤警部に大声でどなられ、すかされて、身体も非常に疲れ、又頭もすつかり混乱して了つて、伊藤警部の言う通りになつて了つたのです。私達は共同謀議をした事も、私が山本氏や西澤氏に対して暴力、暴行、強要など絶対した事は有りません。伊藤警部がどなつたり、おどしたり拳を突き出したりして長い時は朝八時から夜の十一時頃迄調べられたので警察がそういうのならそんな事もあつたのかも知れないと思う様になり、それにこんな事になるとは思わないし何でもない事だと思い早く出してくれれば良いと思い伊藤警部の言う通りになりました。七月十一日の事は調書には明十二日臨時大会を開き山本等をつるし上げ謝罪させた上謝罪文を書かせるなど、赤津組合長の提案によりつるし上げる事をきめたと調書にとられて了いました然し本当は明日大会を開く事をきめただけです。だが伊藤警部は赤津の家で共同謀議をしたのだろう、誰はここにいたのだろうと云う様にしてデッチ上げられて了いました。十二日の日は昨日きめた通りに大会を開き、私や宮崎君、北原君が「此の野郎今日はただでは帰さぬぞ」「殺して了え」「ぶんなぐつて了え」「裏切者なんか殺して了え」と言つた様に言わされて了いました。そしてその晩執行委員会で西澤を近い中につるし上げてやつてやると言う様に調書をとられました。だがこんな事実は全然ありません。十五日の日は私はこんな事はした事は有りませんが西澤氏の背中を突きとばした様に言いました。伊藤警部が「突きとばしたはずだ」「うそをつけ」「馬鹿野郎」などとどなりつけ、貴様、貴様と拳を突き出すので、そう言つて了つたのです。又北原君や宮崎君清水さんが「死んで了え」とか「たたき殺していいからみんなでやつつけて了え」「太い野郎だなぐつて了え」などの暴言を吐いた様に調書にとられて了いましたがこの様な事は有りません。こういうふうに輿宗作君がぼくのところへ陳述書を送つて来ているわけであります。これは事実ですか。
  37. 赤津勉

    ○赤津参考人 事実その通りなんです。
  38. 赤松勇

    赤松委員長 山本参考人。山本君は元書記長ですね。
  39. 山本榮一

    ○山本参考人 私の意見を申し上げたいと思います。  ただいま赤津君の申したこと、これは一部分を除いてほとんど事実に反したことを言つておる。私はここで、はつきり断言します。このように国会まで持ち出すような大きな事件になつたという理由、これは私は非常に意外に思つているのです。なぜかというと、こういうふうになつ理由というのは、私どものほんとうの被害を受けた者の言葉、これは全然甲信地区評議会、または県評、総評では、全然取上げておらないのです。のみか、県民抗議大会には、全然被害を受けなかつた、そういうふうに言うように出席してもらいたい。これは県評の副議長長谷部儀助さん、その他からは鶴川書記長を通じて、私のところへそう申して参りました。しかし、私は事実被害を受けておりますので、私がそういうところへ出て、陳述を曲げてまでみんなに言う必要はない。だから私は出席しない。はつきりそう申し上げましたが、いや、おれの立場を考えてくれないか、おれは非常に苦しい立場にあるから、ぜひ出席してもらいたい。このようなことを県評の副議長から私のところへ言つて参りました。  それから、その後において、輿委員が私のところへ参りまして、私に救いを求めて参りました。それは、山本さんは、割にこの事件に関していろいろ大きなことを言つていない、だからわかつてもらえると思う。非常に今は苦しい立場にある。実際山本さん、私と同じ工場に働いておる輿君も、同じ工場に働いておつた渡辺さん、こういうのに対して、私は非常に申訳ないと思つている。このようなことはもう警察ではつきり言つてつて、今度の裁判の折にもはつきり真相を打明けたい。真相を打明けて、早くこういう苦しい気持から脱けたい。こういうふうにしたいんたが、実は私は——それは県評か総評かよく存じません、その点はつきり聞き落しましたが、長野へ呼ばれた。長野に呼ばれたときに、おれは真実を打明けたいのだがということで、事実を話し出したところが、いやそれはいけない、あくまで五人は同じように事実を否定してまでも闘争をして行かなければいけない、法廷闘争をして行かなければいけない、そういうように力を合せてやつて行け、そういうように言われた。このようなぐあいで、私ども労働者をだしに使つて、この事件をますます大きくこのようにしたことは、県評、総評、そういつたものに非常に責任があると私は思います。  それから、この事件の方にもどりますが、私は決して第二組合を意図したわけではございません。赤津組合長たちのいわゆる執行部、この当時の執行部は、私と西沢守人氏を除いては全部ひとりもので、しかも平均年齢二十四歳から二十五歳ぐらいの若い方です。その中に私と西沢氏、これは世帯を持つておる者ですが、これが含まれておつて、最初から、今の赤津君の言うように、スの字だスの字だとか、ストライキをやるべきだとか、このようなことをぼくらが主張したというように申しておりますが、実際私は労働運動というものを知らないのです。ですから、一応書記長という役目を与えられたが、私にはできない、私は、こういつた非常に過激な運動といえば語弊があるかもしれませんが、こういう運動は、私にはできない。だから、書記長をやめさしてもらいたいということを、私が書記長に選出されたときに、はつきり申し上げたところが、いや、みんながついて行くからやれ、そう言われて、やむを得ずといえばやむを得ずですが、私は書記長なつた。そういう若い執行部の中に、私ども、世帯主が二人ということで、私ども意見、主義主張というものが、多数決によつてきめられてしまう面がしばしば生じて来たのです。それで、私は非常に消極的で、書記長ともある者がどうして強い意見を吐かないのだ、こういうことを輿委員はつきり言われました。言われたけれども、私はできないということを最初から断つてある。それを今になつてやれということは無理ではないかということを言つたり、それからこういうような過激なことは慎しむべきだということを、執行部に私は申したのです。しかし現在の執行部は、今も申し上げたように非常に若い人たちで、経済的にも私ども世帯主よりも非常に楽な境遇にあり、気分的にも非常に、こうやればこうやるのだという無鉄砲なやり方をする。そういう人たちの執行部のために、現在の執行、部というのが非常に暴力的でありまた破壊的であり、非常に個人の人権とか、そういうものを無視した独走的な組合の幹部なんです。  私はこういうことをはつきり感じたので、六日の日に辞表を提出しましたが、二日ばかりやむを得ず私は組合の仕事をしました。帰りましてよく考えたところが、こういう組合と一緒にやつて行くということは、みずからしてみずからの職場をなくすようなはめに陥る、こういう結論に達したので、私は一人で考えました。考えて、これは私一人の力ではどうにもならない、組合員全員に訴えて、何とかこの無期限ストを排除したい、こういう考えで私はプリントを刷りまして、各人の家へ配付しました。それが、はからずもそういう私と志を同じゆうする人たちが集まりまして——ただいま四回ほど集まつておると申しましたが、事実は二回集まりました。その二回というのも、別に強制したわけではありません、そういう気持の人が私のところに集まつてくれたのです。それで、無期限ストを避けるにはどうしたらいいか、それはとにかく仕事につくことである、もし執行部にじやまをされたら、それを排除しても作業につくようにしようじやないかということを申し合せたにすぎません。  たまたま会社の丸山係長が——私の家に下条という係長がおりましたが、その方のところに連絡に来て——私の家に寄つてその会議に参加しておるというようなことを今申しましたが、事実は別に会社から指示されてやつたことでもなく、また作戦を与えられたわけでもなく、私の一存でやつたのです。がゆえに、私が労働運動というものを知らないので手落ちがあつてこのような状態になつてしまつたということなのです。  それから、先ほどの組合の暴力的なという裏づけは、中に非常にチンピラ——チンピラといえば語弊がありますが、非常に凶暴なたちの人がおりまして、普通の作業をしているときでも、気に入らないことがあると、こんな大きな、ミシンをつくるテーブルの盤ですが、それを投げつけてよこすというようなことを平気でするような人が執行部の中におるのです。そういう人が、常に組合員に対して、裏切者を出すんじやないぞ、卑怯者は去つて行けというような高圧的な圧力を加えて、組合員を何でもかんでも執行部の言うように持つて行くようなやり方にする人がおるのです。そういつた非常に暴力的なことがあるのです。  それから破壊的というのは、非常に経営を麻痺さして、倒産のうき目にあうようなことをあえてする。実際、現在の中小企業は、金融引締めによつて非常に苦しい資金繰りの状態を続けているのが、その実態ではないかと私は思うのです。そういう時代に、ストライキをやるとか、部分ストをやるとか、そういうようなことは、すでに会社の作業を麻痺さして、われわれ作業に従事している者の収入減をあえて来さしておるような状態です。  個人的な人権を非常に無視しておるというのは、現在会社は、すでに今までの百八十名の従業員を擁して経営して行くことは不可能だということで、企業整備を先日行いました。その折解雇通知を各人に送付しておきましたところ、執行委員が各家庭をまわつて——それは全部かどうかわかりませんが、まわつて、解雇通知を全部一括返上するからよこせといつて集めて——集めたが、その解雇通知を、実は会社をやめたいのだが、解雇通知を持つて行かれたからやめられない、どうしたらいいかと言つて、私どものところへ泣きついて来た人があります。それは当然組合長のところへ行つて、もらつて来るべきだということを言つたら、組合長のところへ行つたところが、もう少し待てと言つてよこさない。そんなことを言つたつて、もらうときはもらえるじやないかと言うと、何でも執行部の人たちがおつかなくてもらいに行けない、こういうふうに若い娘たちは執行部というものを非常に恐れているのです。これはもう組合の圧迫的な圧力、いわゆる暴力的なものがあつて、個人が個人的にそうやりたいということを無視された形になつている。こう私は思います。  それで、警察の問題に入りますが、警察の問題に対しては、決して私は告訴したわけじやございませんが、西沢守人さん、この人が——私が十二日の日に事実つるし上げを受けました。それでただいま委員長さんから読まれたように、輿君の陳情書があるといいましたが、それには、私はそういうことは言わないとありましたが、私に対しては、どてつぱらに風穴を明けてやるぞ、覚悟しているか、そんなものはたたき殺してしまえ、ちつともおつかなくねえぞ、こういうような暴言をもつて私たちをつるし上げたのです。謝罪文のことに関しても、組合員の中から追放してしまえ、会社から追放してしまえ、そういう意見を出して、どうだどうだ、それでいいだろう、というようなことによつて、私を一応会社から追放するということに話ができたので、私も朝の八時半から夕方の五時まで、その間というものは、ほとんど百八十人のまん中に立たされて、のどがかわくので水を飲みに行きたいと思えば、どこへ逃げて行くか、逃げるのかというようなことを言われる。便所へ行きたくても行かれない。またお昼においては、わずか小さいパンを一つ与えられたのみで、休憩時間も与えられない、こういうようなことで、朝八時半から夕方の五時まで続けられたときに、先ほども輿君が警察で何が何だかわからなくなつてしまつたと言われたように、私も実際そのときは、もう何が何だかわからなくなつて、熱は出る、もうふらふらの状態なつたときに、やめる、そう書けと言われて、私も書きました。書いたところが、それではいけない、あくまでも自主的にやめると書け、自主的にと書き込め、そういうふうに書き込まなければいけない。もうそうする以外、私は帰してもらえる方法はなかつたのです。ですから、私はそのときは、そう書くよりしかたがなくなつてしまつたのです。その謝罪文も、一度ならともかく、二度三度、私だけでなく、あと十一名の裏切者といわれる人たちも、一度でその謝罪文を書き終つた者は一人もおりません。全部少い人で二度、多い人は三度書き直されています。それはあくまで私たちが会社側と共謀してこういうことをしたのだというような、都合のいいように書かされたのです。私はあくまでそれを書かなかつたのが、最後になつてから、そう書き込まない限りは帰してやるな、これははつきりと赤津組合長が言つていました、と同時に、田中政明という議長がおりましたが、それが早くそう書いた方がいいじやないか、そうすれば帰れる、というようなことを言つておる。結局、私の謝罪文を見ていただけばわかりますが、継ぎ足し継ぎ足し、もうまつ黒になるくらい継ぎ足されて、やつと私は帰されたようなぐあいです。これは明らかに私は強要されて書いたのです。その強要というのも、先ほど言いましたように、非常に暴力的な言葉、それ以外に、もう常日ごろからして執行部の一員には、先ほど言いましたように、チンピラ的な行動をとる者がおります。そういう者がいるために、もうすでに現在の組合自体にすら、執行部がおつかなくて、執行部の言う通りにならなければおつかないから、私はこうやらなければいけないということがわかつておるけれども、できません、こういうようにはつきり言つている人があるように、もう組合執行部というものが、いかに圧力を加え、高圧的に出て、組合員をやつておるかということがはつきりするのです。  いろいろとあとさきが行き違つてしまつて、私の話がおかしくなりますが、その当日の十二日は、そういうような状態で、私は一応書かされた。また先ほどの話にもどりますが、西沢守人さんの奥さんが、それを聞いて非常に恐怖を感じたのです。というのは、なぜかというと、十一日の夜十二時過ぎまで、輿委員、橋詰行動隊員、まだあと名前は私忘れましたが、そういう人がうちのまわりをうろついて、まだ帰つて来ないかというようなことを言つて、うろうろしたのだそうです。それのみか、そのあくる日も、あくる日も、うちのまわりへ来て、西沢さんはいねえのか、どこへ行つた、出て来たら、そんなものはひどい目にあわしてやるぞ、覚えているがいい、こういうような言語で、常に西沢さんの奥さんに対して恐怖感を与えておつたのです。それが十五日の西沢さんのつるし上げ当日、奥さんが警察へ保護願いを申し出たという大きな原因だと思うのです。だれしも自分の夫が何をされるかわからない人たらに連れて行かれて、どこに連れて行かれるかわからないような状態にあつたときに、その家族が不安なしにおられるということはおそらくないと思うのです。そういうことによつて警察に保護を願い出たということが端緒で、おそらく警察は、それから次々と出て来たことによつて、こうしなければいけないというようなはめになつたのじやないかと、私はそう判断します。  西沢さんの当日の様子も、今西沢さんがここにおりませんからはつきりわかりませんが、私の聞いたところでは、表でまきを割つておつた、そのときに四、五名の者がうちのまわりへ来て、西沢さん、用があるからちよつと来てくれないか、そう言つて、先ほど言われた松本の中央公園へ連れて行つたそうです。そのときも、うしろからあとを押すような——つつこくるとか、押すとか、私はそういう点ははつきり知りませんけれども、何しろ中央公園まで連れて行つたそうです。中央公園で話ができるかと思つたら、白板の闘争本部まで行つてもらう、こういうようなことでもつて、結局闘争本部へ連れて行かれたのだそうです。闘争本部に連れて行つたというのは、すでにもう執行部では、西沢氏をつるし上げをしてやるのだ、そういう計画的なもとでもつて、連絡がとれておつて、白板工場、いわゆる闘争本部でもつて組合員を待たせておつてやつたのだと、私はこう思うのです。西沢さんもそのように申しておりました。暴力を受けたか受けないか、私はそういう点は知りません。しかし、十五日の問題はそれだけですが、またもとにもどりますが、十二日の私のつるし上げにあつた当日、あれはああいうような事態、いわゆる人民裁判的な行い、ああいうことが公然と行われるならば、それがたとい労働運動の間においても、行われたならば、警察も裁判所も私はいらないと思います。先ほど赤津組合長さんが申したように、私の言うことと非常に食い違いがあると思います。あつても、やはり赤津組合長にしても私にしても、だれにしてもそうだと思いますが、自分というものがかわいくて、自分を守るということで、赤津組合長も直実を申さなかつたかもしれません、あるいは自分の御都合主義で言つたかもしれません。私もそうかもしれません。しかし、ただいまの警察の問題は、明らかに警察が不法弾圧をしているというようなことは私は絶対あり得ないと確信します。  以上で終ります。
  40. 赤松勇

    赤松委員長 島上君、先般あなたから参考人召喚の要求のあつた輿君が、うしろに傍聴に来ております。  それでは長野警察本部長の原文兵衛君。
  41. 原文兵衛

    ○原参考人 塚田製作所の労働争議に関連して起きました不法事件の検挙につきまして、概要を申し上げます。  七月の十一日から十五日の間におきまして、かねて賃上げをめぐつて争議中の松本市所在の塚田木工製作所の労組の執行部員その他が、争議に関しまして、反執行部的行動のあつた者数名に対しまして暴行、強要等を加えた事案が発生いたしましたので八月八日、被疑者赤津勉君外五名を検挙した事件でございます。この事件は、爾後検事が拘留し、取調べ中であつたのでございますが、八月十九日処分保留のまま釈放され、八月三十一日に赤津勉君外四名が起訴されておるのでございます。公判は近く開かれるであろうと思います。従いまして、公判前の事件でございますので、私の方からはその詳細については申し上げかねる点もございますので、概要を申し上げます。  この塚田製作所の争議は、賃上げに発して起きておりまして、七月六日からストライキに突入したのでございますが、このストライキにつきまして、労組の前の書記長の山本栄一君、執行委員の西沢守人君等は、赤津君等当時の執行部の争議指導方針に反対をしまして、そのような争議の指導方針に従つておつたのでは、日給制組合員の不利益を来し、労使共倒れを招くとして反対をし、一部の組合員と対策を協議する等、反執行部的な行動を行いつつあつたのでございます。  事件は、第一に、ただいまのように赤津君その他の執行部の指導する争議指導方針に反対する山本君等が、七月の十一日夜、その対策を協議すべく本郷村所在の天理教教会の信陽分教会というところの詰所において、その対策の協議の会合を持ちましたところ、その会議中であることを知つて、赤津君その他の者が会議場所に押しかけまして、そうしてその行動を糾弾しようとして、山本君に拒否されたにもかかわらず、警察に訴えるなら訴えてみろというようなぐあいに、同詰所入口から侵入いたしまして、そうして山本君から退去を要求されたにかかわらず、退去せずして喧騒な行動に出て、その会議を持たせなくし、めちやくちやにし、ゆえなく人の住居に侵入したというのが一つの事実でございます。  第二の事実は、赤津、宮崎、輿北原君等が、これはすべて被疑者でございます。橋詰勇君その他の数名の組合執行委員とともに、山本栄一君の反執行部的行動を糾弾追究して、同人を強要して謝罪文を作成させることを共謀し、七月十二日午前八時三十分ごろから午後五時半ごろまでの間に白板工場内で開催されました同労組の臨時大会の席上、組合員等百数十名と一団になつて山本栄一君等を取囲みまして、同人に対し、赤津君がまずその行動を難詰し、その他多くの者が山本君に対して騒然たる悪罵怒声を浴びせ、あるいはある者は、このやろう、きようはただでは帰さないぞ、近いうちに必ず追い出してやるぞとか、あるいは、腹を切つて死んでしまえ、殺してしまえ、いろいろな罵詈讒謗があつたようでございます。たたき殺してしまえというように、こもごも怒号して、山本君の身体の自由に対して害を加うべき態度を示して脅迫し、よつて山本君を畏怖さして謝罪をなさしめた上、謝罪文の内容を指示して、これを作成提出せしめたというのが第二の事実でございます。  第三の事実は、この十二日のときに行かなかつた西沢守人君を清水、輿君が、七月十五日夕刻松本市新町の西沢君の宅の前でまき割りをしておるところを連れ出しまして、そうして松本の中央公園内に連れて行き、さらに背中をこずきまわす。あるいは突き飛ばす等の暴行を働いて白板工場の入口付近まで無理に連れて行き、そこでも再度突き飛ばして同人に暴行したという事実でございます。それが第三の事実でございます。  次は、そうして西沢君を十五日の夕刻六時ごろから白板工場に連れ込みまして、七時五十分ごろまでの間におきまして赤津君その他の者がこの白板工場内の組立室におきまして、組合員数十名とともに西沢守人君を取囲みまして、こもごも何ゆえ裏切り行為をしたか、騒然たる悪罵怒声のうちに、ある者はこぶしを突き出して謝罪を要求し、あるいはある者はかたわらの仕事台をたたいたり、また床板を踏みたたいたり、石油カンをけつたりして大いに気勢をあげて、このやろう、どてつ腹に風穴をあけるぞ、裏切者死んでしまえ、たたき殺していいから皆でやつつけてしまえ、いろいろな怒号をして、多数の威力を示して、西沢守人君を脅迫したのでございます。これが第四の事実であります。  以上の事実は、刑法の住居侵入なり、あるいは強要なり、あるいは暴行なりの罪に該当し、また暴力行為等処罰に関する法律違反になる容疑があるのであります。警察としましては、容疑が明白になつて来たのでございますが、事が労働争議に関連を持つものでありますので、その捜査にあたつては、労働争議に与えるところの影響も慎重に考慮し、また関係者に不当に不利益を与えるようなことのないよう、慎重に慎重を重ねて内偵し捜査を進めたところ、被疑事実は明確となり、強要罪並びに暴行行為事犯は、いずれも共同謀議によるものとの疑いが濃厚となりましたので、赤津君外五名の者につきまして通謀、証拠隠滅のおそれがありましたので、これを強制処分手続によつて検挙することとし、その他の者につきましては、任意捜査によることとしたのでございます、しかし、それも先ほど申しましたように、労働争議に与える影響、あるいは関係者に対して不当に不利益を与えないように慎重に慎重を重ねた考慮の結果、七月三十一日に労働争議が一応妥結しましたので、その後一週間ばかりたちました八月七日に逮捕令状、捜索令状をもらい、八月八日に検挙したのでございます。  ごく概要でございますが、以上が本事件の捜査、検挙に至るまでの経過でございます。
  42. 赤松勇

    赤松委員長 昨日は昼飯抜きにやつてしまつたのですが、しばしば基準法違反を繰返すということも、当労働委員会としては、どうかと思いますので、午後一時で休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ————◇—————     午後一時十六分開議
  43. 赤松勇

    赤松委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。質疑を許します。倉石忠雄君。
  44. 倉石忠雄

    ○倉石委員 私は、今日おいでになりました参考人の方々にお話をお聞きする前に、委員長に注文を申し上げたいと思うのであります。  本日午前の全駐労の争議の経過を、委員会でおやりになるべき事柄であつて、国権の最高機関であるといわれておる国会の労働委員会で取扱うべき筋の事柄ではないのであります。本日の塚田製作所の事件も、先ほど来当事者お話を承つておれば、その大半はやはり労働委員会または裁判所の問題であつて、われわれ国会の労働委員会が審議の対象とすべき事柄ではないのであります。従来、しばしば労働委員長がかわられましたが、今回の赤松労働委員長労働委員会の運営については、委員としてわれわれは多くの不満を持つものであります。もとより、個人の赤松君に対しては、私どもは同僚として尊敬の念を払つておる。しかし、せつかく有為なる赤松君の労働委員長の時代に、国会の委員会の運営が権威を失墜するようなことのないようにわれわれは強く要望いたすのであります。  塚田製作所の所在地は、長野県ではありますが、私の選挙区ではありません。しかし長野市においでになつて赤松君は、本件の報告演説会といつようなものを産業会館において開かれたとき、本日お見えになりました赤津君とともに出席され、その御演説の大要の写しを、私も選挙区の関係で拝見いたしておりますが、先日北海道にあなたが委員長としておいでになりました事柄が問題になつて、疑惑を生ずることなきやをおそれ、将来は慎むということで、われわれ委員の間に円満に話がついておるはずであります。今回は、もちろん労働委員長という公の立場を僣称して行かれたのではありませんが、やはりあなたはどこまでも労働委員長でありますから、出て行つて、そこで事案の判定に近いような御演説をなさるということは、社会に誤解を生ずることである。われわれは名誉ある国会の労働委員会委員長という赤松君に対して、自重を要望いたします。  ことに運営については、今回三日間労働委員会を招集されましたが、いかなる委員会においても、委員長はその運営にあたつては、あらかじめあなたを補佐しておる各派から出されておる理事会を招集して、理事会においてあらかじめの運営の御相談をなさつて、そうして開会をしておるのは、どこの委員長も同じであります。しかるに今回は突然電報をもつてわれわれを招集されました。理事会も招集しておらない。われわれは、そういうことをいたずらに責めるのではありませんが、あくまでも国会の運営はルールを尊重してもらいたい。ことにわれわれ労働委員会に所属いたしておる者から見まして、それぞれの国会議員は、よつて立つところの政党的基盤を顧慮しておるのは、これはあたりまえである。従つて労働委員長たりといえども赤松君は御自分の所属しておられる政党、またその政党の意向を尊重して行動されるということについて、われわれは何ものも異議をさしはさもうとするものではありません。私どももまた、私どもの立つておる政党を根拠に物事を判断いたすのである。しかし、あくまでもやはりその一面において国会議員であり、あなたはことに国会役員である労働委員長でありますから、私は深くあなたをとがめだてしようとするのではなく、労働委員会の権威のために、また赤松委員長の名誉のために、将来の運営については御自重を要望いたすのであります。これ以上くどいことを申し上げません。  そこで、今日ここにお取上げになりました塚田製作所の問題でも、今申しましたような立場から委員諸君が御判断を願うときに、私は本委員会においてかような事案を取上げるべきではないと思う。しかしこれはすでに理事の諸君が御決定になつたことであるから尊重をいたします。その事案の中に含まれておる問題については、われわれも注意をしてみなければならない問題がありますので、せつかくおいでになりました方々にその点二、三お尋ねをいたしてみたいと思います。  赤津、山本両君の御陳述を拝聴いたしましたが、これはこのお二人とも、衆議院の労働委員会が何を審議の対象にしておるかということを把握しておいでにならないために、検察庁か裁判所で力説せらるべきようなことを特に主張しておられまして、私どもははなはだ残念でありました。そういうことは、われわれの干渉する範囲ではないのです。鈴木社会部長が御説明になりました事柄こそ、われわれ国会議員としては承りたかつた事柄であります。この鈴木参考人の御説明は、本件を審議いたすのに非常に参考になりました。第一われわれが気がつきますことは、まだ遺憾ながら発展途上におけるわが国の労働組合運動において、労働組合員及びその使用者側両方とも、労働運動ということに対して十分なる理解を持つておいでにならない、ここに多くの災いを招来する原因があると思うのであります。そこで鈴木部長の言われましたように、七月十二日の組合の大会において、赤津組合長その他の執行部の諸君が先頭に立つて、山本君その他の人々を、何と申しますか、いわゆるつるし上げをいたして、威迫して、わび証文のようなものをおとりになつた。もしこのことが、やはり憲法二十九条の労働基本権の発動であつて、当然のことであるという主張組合側がなされるとすれば、これは労働運動を理解せざる行動であると断定しなければならない。しかし、その事柄が事実であつたかどうかということについては、われわれのいかんともしがたいところでありまして、すでに過去の事実であつて、これが警察及び検察に摘発されて裁判が進行中であるようであります。そこで私どもは、今問題になりました七月十二日に赤津君その他の人々がおやりになつた行動を、われわれの手元に配布されております長野地方検察庁松本支部の長山検事の起訴状、この起訴状の内容が事実であるか、あるいはまた原参考人及び松本警察署長を職権濫用として告発をせられました日本労働組合総評議会及び長野労働組合評議会の告発が事実であるかどうかということについて、われわれは二、三考えなければならぬ点があります。  私どもは、いわゆる民主主義議会において最も恐れるのは、時代の逆行であります。私どもは外国の占領のもとにおいてではありましたが、とにかく労働者の権益を守り、労働組合の発達を促すような傾向にあつたことは、諸君とともにわれわれは非常に喜んでおつた。独立を回復して以来、もしこの民主主義政治の傾向に逆行するようなことがありましたならば、私どもは死を賭しても守り抜かなければならない。しかるに、最近たまたま労働運動に対して、警察官の不当弾圧というようなことを耳にいたすに至りましては、この点非常に心配をいたしておる一人であります。そこで、幸いこの問題が今日取上げられました機会に、この点を究明して、将来われわれが立法府の議員として、労働立法についても、そのようなことが再びあつてはならないという建前で考慮しなければならない。そういう点だけは、御意見を承つていて痛切に感じるのであります。まずその第一点として、警察本部長にお尋ねをいたしますが、本件の発覚いたしましたその動機を、まず御説明を願いたいのであります。
  45. 原文兵衛

    ○原参考人 本件の犯罪容疑が発覚いたしました動機についてお答えいたします。  七月十五日被害者の一人である西沢守人君が、先ほど私が事実について概要を申し上げました通り、自宅前から連れ出されて行つて、中央公園においてこづきまわされ、白板工場に連れ込まれて、いろいろな暴言のもとに脅迫されたのでございますが、その当日、被害者の西沢守人君の細君が、松本警察署の派出所に、うちのお父ちやんがどこかに連れて行かれてたいへんなことになりそうだという保護願を出して来た。これによりまして、松本警察署では、人身に関する重要な問題でありますので、その内偵をしてこの事実を知つたのであります。  いま一つ、県の警備課におきましては、それより後七月の二十日に労政課の一係官から、県の警察本部の警備課の係官に、松本の塚田製作所の労働争議の中には不法事件があるようだということを通報して参りました。それによつて、警備課が松本警察署に、その詳細について報告を求めたところが、松本署におきましては、それより前十五日、西沢守人君の細君が保護願を出した。その結果によつて調査したとここが、こういうような容疑があるようだという返事でございました。  この両者を合せますと、これは労働争議に関連して起きた問題ではありますが、重要なる犯罪がそこにあるのではないかという容疑がありましたので、これを発覚の端緒として、警察の捜査活動が開始されたのであります。以上でございます。
  46. 倉石忠雄

    ○倉石委員 赤津さんにお尋ねをいたします。参考までに伺つておくのでありますが、赤津さんは、かつて品川白煉瓦という会社に御在勤になつたことがありますか。
  47. 赤津勉

    ○赤津参考人 あります。
  48. 倉石忠雄

    ○倉石委員 そのときは共産党に所属しておいでになつたことはありませんか。品川白煉瓦にお勤めになつておつた当時、共産党員であつたかどうか。
  49. 赤津勉

    ○赤津参考人 そうじやないのです。これは、ぼくが塚田製作所に入つてから、ぼくの問題で不当労働行為を会社側がやつたことがあるのです。そのときにぼくは中労委まで来て不当労働行為だという判定を受けて、ぼくが勝つたのです。そのときに使つた資料で、興信所の調べがあるのです。会社では、それを組合の人たち全部に配付したものです。ぼくが共産党員のシンパだということを発表しております。ぼくは、そのためにものすごく脅威を受けたのです。
  50. 倉石忠雄

    ○倉石委員 それでいいです。品川白煉瓦においでになつたころ、共産党員であつたかなかつたかということだけでいい。
  51. 赤津勉

    ○赤津参考人 ないです。
  52. 倉石忠雄

    ○倉石委員 赤津さんに、もう一ぺんお尋ねしますが、ただいま四人の参考人の方々が、われわれの前でいろいろお述べくださいました。そこで刑事事案として取上げるようになつた端緒は、ただいまのあなたがお聞きになつたように、原本部長から御説明がありました。そこで警察の方では、その前に、つまり事前にこの争議をいわゆる不当弾圧をするという意思であつたならば——その組合員の家族の人が警察に泣き込んで来たというようなことがある前に、この事案がいわゆる暴力行為というようなことで、警察が何らかの干渉をいたしたかどうか、この点をひとつ御説明願います。
  53. 赤津勉

    ○赤津参考人 その点についてちよつと……。ぼくが逮捕されてから、ぼくの家は家宅捜査されました。それで何を持つて行つたかというと、ぼくの私信を全部持つて行きました。ぼくの友達から来たものを、全部持つて行きました。暴力を振つたとか、あるいは何とかということで、ぼくの組合員がやつたことに私信が何で必要か。
  54. 倉石忠雄

    ○倉石委員 それでいい。
  55. 赤津勉

    ○赤津参考人 弾圧ということについてぼくは言いたいのです。
  56. 倉石忠雄

    ○倉石委員 私がお尋ねしておる趣旨を、私がちよつと言いまわしが下手で勘違いをされたかもしれませんが……。
  57. 赤津勉

    ○赤津参考人 そういう点についてはあります。
  58. 倉石忠雄

    ○倉石委員 つまり、警察の態度は、今、原参考人からお述べになつた通りだと思います。そうだとすると、その暴力ざたが起きる前に、この塚田製作所の争議に対して、いわゆる労働運動に対して、警察が越権にもこれに対して不当なる弾圧を試みた形跡はないかということです。
  59. 赤津勉

    ○赤津参考人 具体的には、そういうことは承つておりません。しかし、ぼくらの家や近所がしよつちゆう警察によつて調査されておることは事実です。それで、あの家で会合を開いたことはないか、あるいはだれだれが来て話をしたことはないか、そういうことで、しよつちゆう警察はぼくたちのまわりを調べております。
  60. 倉石忠雄

    ○倉石委員 それはその争議の最中ですか、いわゆる暴力ざたということであなた方が検挙される前ですか、あとですか。
  61. 赤津勉

    ○赤津参考人 前もあとも、そういう調査をしております。
  62. 倉石忠雄

    ○倉石委員 本部長をお尋ねいたしますが、そういうこまかいことについて、御存じかどうか存じませんが、いやしくも労働運動はフリーな立場で、つまり講釈を言う必要はありませんが、使用者も労働者も対等の立場に立つて団体交渉を行つておるのですから、これについては、警察権は何らの干渉も許されないのであります。しかるに、今のようなお話であるというと、どういう事情でそういうことが行われたのでありましようか。あるいは行われなかつたのか、そういう点について御説明願いたい。
  63. 原文兵衛

    ○原参考人 警察は、労働運動あるいは労働争議というものは、もちろん干渉もいたしません。介入するようなことは毛頭ありません。先ほど概要の説明にも申しましたように、犯罪容疑があり、それを捜査するにつきましてさえ、労働争議中であるということで、争議に与える影響については十分慎重に考慮をするというふうにしておるのでございまして、労働運動あるいは労働争議に不当に干渉し弾圧するようなことは毛頭ありませんし、そういうよようなことが、いやしくも行われてはいかぬということは、現在全警察官が心して、みずからよく注意しておるところでございます。  なお、今赤津参考人が逮捕になる前にもあとにも、いろいろ自分の身辺ですか、あるいは組合事情ですか、よくはわかりませんでしたが、警察の人が聞きに来たり何かしたというようなことを言われました。それについて御質問がございましたが、私、松本警察署の警察官が、平生どこへ行つて何時何分に何をしたかということは、もちろん存じません警察官としては、捜査あるいは管内の必要なる事情を知るために、いろいろな行動を日夜とつておるであろうと思います。あるいは、もちろん警察としては、事件が起きてから捜査するということも、これは警察の当然の責務でございますが、管内に不法事件が起きないように、いわゆる防犯的な意味でもつて活動すること、これもまた警察の当然な使命でございます。その当然な責務を果すためには、警察としては管内の事情をできるだけ詳しく知つておく必要があるのは当然でございます。そのために警察官が、あるいは管内の有力者あるいは管内にどういう団体があるかというようなことを調査し、それを知つておくことは、当然なる警察活動として行われるだろうと思います。その個々の行動について、どういうことが行われたかということについては、私は本部長でございますが、一々のことは報告を受けておりませんので、お答えできません。
  64. 倉石忠雄

    ○倉石委員 鈴木さんにお伺いいたします。私は先ほどの鈴木社会部長の御説明は、きわめて穏当であり公平であり、県の社会部を担当しておいでになる方としては、まことにりつぱな御態度だと尊敬をいたしておるのでありますが、鈴木さんのおつしやつたお言葉は本件を勘案するのに、多くの示唆をわれわれに与えおります。また労働政策上も、これは非常に参考になる。そこで、あなたの御説明の中に、十二日の大会というものは合法的なものであつたと認める、こういうお話でありました。これは私の聞き違いではないかと思いますが、いかがですか。
  65. 鈴木鳴海

    ○鈴木参考人 その通りです。
  66. 倉石忠雄

    ○倉石委員 その合法的な大会で、山本君その他の方々が、現在の執行部労働運動のやり方は不穏当だ、こういうようなことをやつておつたのでは企業体もつぶれてしまうかもしれない、われわれはこの罷業の方法については反対であるということで、他のところに会合をされて、そうしていわゆる第二組合といつたようなものを組織しようという相談をしておいでになつたので、当事者の山本君その他をこの合法的に行われた大会に呼んで来て、そこで裏切り行為ではないかというので、糾明をいたした、こういうことのようでありますが、その事柄が、合法的に行われたる組合の大会ではあるが、その糾明の仕方について違法行為があつたというので、検察に商発をされておるようである。  これから先は労働行政の立場におるあなたは関与する限りではない、こういうふうにおつしやつた、まことにその通りであります。  そこで、私どもの腹をこしらえるために、もう一度念を押して、今度は山本さんにお尋ねをいたしたい。その十二日の、今、社会部長のおつしやつた合法的に行われましたる組合の大会において、あなたは組合の人から招かれてそこに出席をされて、そうして話合いで組合を脱退する、会社をやめておわびをするというふうにされたのではなくて、非常な威迫を受けて、やむを得ず、心ならずもああいうことを書いたのだといつたようにさつきお延べになつたようでありますが、もう一度簡単でいいですから、その点を御説明を願います。
  67. 山本榮一

    ○山本参考人 では十二日の様子をもう一度申し上げます。  十二日の朝八時半に大会を開催する話を私は聞きましたので、会社に参りました。闘争本部の白板工場に参りましたときに、常の大会では、議長席を設け、その席の前へ組合員がみんな並んでやる、そういう組合大会体制をやつておりましたが、当日は、まん中に立たせるがごとく部屋の中央をわずかにあけて、議長席もなく、ただそのまん中にぽつねんと立たせるというような、いつもの組合大会とは全然異なつた大会の配置の仕方でした。そこにおいて、先ほど私が申しましたよりにただ一方的につるし上げたというような態度で、私が私の信念を申し述べたいということに話を持つて行きましたところ、もうがやがや言つて、私の言うことは常に中断されがちで話ができませんでした。たまたまそのときに、組合長が、一応弁解の余地を与えろということで、また話を続けましたが、議長がおるにかかわらず、常に議長を無視した態度で、議場はただ騒然とし、先ほど申しましたように、裏切者、たたき殺せ、ぶた、犬、あらゆる暴言罵倒で、私らの言うことは騒音の中で聞かれないようなありさまでした。そのような状態の中で、八時半から五時まで行われ、ただいま申しましたように謝罪文を強要されて書いたのです。
  68. 倉石忠雄

    ○倉石委員 本委員会が審議の対象とすべきものは、その正当なる労働組合運動に対して、不当なる官憲の弾圧があつたかどうかということを、われわれは国政調査の参考として知るという一点に尽きるのでありますが、この告発状を拝見いたしますと、告発状の第二に、「右逮捕の理由たる犯罪容疑は起訴状にも伺われるとおり、塚田製作所労働組合労働争議の諸行為を対象としたものである。」と、うたつております。もしこのようであるとすれば、これはたいへんなことです。当然労働組合は、憲法及び労働組合法によつて許されたる行為範囲の行動をしたにもかかわらず、いわゆるこの弾圧をくらつたということならば、これはたいへんなことになるのでありまして、その一点われわれは知りたい。またこの告発の理由の中に「犯罪容疑としてあげられた事実の真相は正に右の如き労働法上当然の行為を対象とし、之を歪曲したものに外ならない。」こういう見解を告発者側がとつておられる。三の(四)のところに「同日、同人に対し、組合員大衆がその裏切行為を追求し、非をせめた事実等正に団結権の発動として当然の行動であつて、之等を逮捕状記載罪名の如くとり扱うのは労働者の諸権利を不当に害するものに外ならない。」こういうふうな御意見であります。きわめて事態は明らかになつて来ておる。  私ども現行労働組合法を数年前に改正いたした。これはわれわれが制定いたしたのでありますから、制定者自身がよくその事情を知つておるのでありますが、運営及びその解釈は、労働省において常に一定のものを下しておいでになる。そこで、私は労政局長にお尋ねをいたしたいのであります。労働組合法の第一条の第二項には「刑法第三十五条の規定は、労働組合団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。」——これは当然であります。「但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」——これは本法改正のときにわれわれが挿入したものであることは、皆さん御記憶の通りであります。そこで非常に焦点が狭まつて来たのでありますが、労働組合運動ならば、あのくらいなことをやつても違法性を阻却するのだというのが、赤津さんその他の御意見のようであります。そうでなければ、この告発状にはなつて来ない。そこで、山本参考人の言われるような事態及び検察がこれを摘発いたしましたような事態があつたといたしましたならば、これは労働組合法第一条に禁止しておるものとわれわれは解釈するのであるが、労働省はどういう見解を持つておいでになるかを承りたいのであります。
  69. 中西實

    ○中西説明員 事実の判定がまだはつきりついていないときでありますが、結局あの起訴状にありますような事実がありとすれば、当然ここにいう暴力、それ以上のものになりますので、労働組合運動としても、いかなる場合においても、但書にあります暴力の行使は正当なものとは解釈されないということ、これに該当するのではないかということであります。
  70. 倉石忠雄

    ○倉石委員 赤津さんにお尋ねいたしますが、私どもは、あなたが起訴されておるその事実の真実はわからないのであります。ただ、あなたと山本さんと警察本部長の御説明だけで判断をしておるだけでありますが、あなた方が山本さんその他に対してとられたる態度は、やはりこの日本労働組合総評議会の告発状に書いておられるように、あれも労働組合運動として許されたる行為である。こういうふうに解釈しておいでになるのかどうか、承りたいのであります。
  71. 赤津勉

    ○赤津参考人 そういう点については、ぼくたちは国会の議員さんたちが法律をつくつたりあるいは警察が守ることについて、その番犬をやつておると思う。ぼくたち国民自身は、法律を守る義務もあるし、法律に違反した行為をした場合には、警察がやらなくとも、ぼくたちがまつ先に法律を犯した者に対してそれを防止する権利があると思うのです。それで、ぼくたちが、会社と通謀して第二組合をつくつた人たちに対して、団結を乱す者に対して批判したり、あるいは謝罪文を求めたり、あるいは裏切り行為をやつてはならないということを言い、追究するのは、これはわれわれ法律を守る第一線に立つ国民だと思います。その当然な義務であると考えております。それでなければ、第二組合をやろうとして裏切り行為をした人たちに謝罪をさせたり、あるいはそういうことをしてはいけないということを、警察に頼まなければやつていけないというようなことになるのじやないかと思います。ぼくたちは、だから当然だと考えております。
  72. 倉石忠雄

    ○倉石委員 少し私の言葉を誤解されたのじやないかと思うのですが、私は最初申し上げましたように、労働組合運動というものは育成しなければならない。これが健全に発達して行かなければ、日本の経済復興は困難である、それは先ほど鈴木社会部長もおつしやつたことなんです。しかしながら、事実は遺憾ながら経営者も労働組合も、まだ民主的労働運動というものに対して、十分な理解を持つておいでにならないから、ときどき行き過ぎが行われて残念だ。しかし、これは長い目で見て、将来ますます発展して行くようにわれわれは希望するのです。そこで、今あなたの言われましたように、せつかく組合というものができて、争議行為をやつているその最中に、その団結を乱すような行動をとつた者を非難してやめさせようとする行動は正しいかどうか——そのことをわれわれは責めておるのではありません。それはあくまでもあなた方の内部の行動であるから、それはそういうことのないように誤得されることは、まことにけつこうだと思います。またあなた方が当然おやりになる権利を持つておいでになる。ただ、それが今焦点はどこにあるかといえば、労働法上の問題をわれわれは考えておるのだが、今事実あなた方が問題にされておるのは、その検察に摘発された事案の問題になつてしまつている。そこで、そういうような行為は正当なる労働運動ではないという規定を持つておるのが労働組合法なんです。先ほど私が読んだ通りです。そこで、あなた方が第二組合というものを山本君がおつくりになることについて反省を求め、これをやめろという要求をすることは、あなた方としては正しい主張であつた、このことをだれも責める者はない。ただその行動が、労働組合法第一条第二項に、あくまでも暴力行為をしてはならないと書いてあるが、山本さんの御説明、原本部長の検挙の理由の御説明によれば、暴力行為があつたんだ、鈴木さんは、社会部長としてはそれ以上のことはタッチするところではない、検察と裁判の仕事であるこう言われた。その通りであるが、そういう検察及び裁判で摘発されるような行動をとつても、なおかつ、それは労働組合運動として当然許される範囲の行動であると考えておられかどうかということです。
  73. 赤津勉

    ○赤津参考人 今聞かれたことについて倉石さんの言うのには、ぼくたちがいかにも暴力を振つたというように考えられておるようですが、ぼくたちはそういうことはしていないから、国会がここで取上げてくれると思つているのです。ぼくたちは警察に逮捕され、検察庁で起訴されたが、こういう事実はないわけなんです。ないのにやるから、ここで取上げてくれるのは、ぼくたちは非常にありがたいのです。こういうところでやつてくれなければ、ぼくたちは実際立つ瀬がないのです。そういう事実は全然ないのです。
  74. 倉石忠雄

    ○倉石委員 衆議院の労働委員会は、検察や裁判をここで審理するところではない、そんな権能は何も持つていない。ただ労働委員会としては、最高立法府として、国民のために制定せられたる法律が遵守されておるかどうかということを、国政調査として取扱つておるのだが、皆さんがここでたとえば警察で言つたようなことを否認されても、それは裁判の結果に何らの影響をもたらすものではないし、もし国会議員の一人、二人がそういう意思をもつて労働委員会などで発言をしておる者があるとしたならば、とんでもない越権行為であるばかりでなく、それは国会の威信に関することで、われわれはそういうことをしようとは思わないし、そんなことをする権限を持つていない。ただ、私がお尋ねしておるのは、この告発状によれば——この告発状は、あなたがお書きになつたのではないと思います。皆さんが所属しておる労働組合総評議会の名においておやりになつておるので、この文章は簡単だから、要を得ておらないかもしれませんが、皆さんのおやりになつた行為は労働法上当然の行為をしたんだ、しかるにこれを逮捕したのは、職権の濫用である、こういうふうに告発をしておいでになる。ところで、その行為がなかつたとあなたは言われる。なければけつこうです。ところで、もしあつたならば、そういうことは労働法上の当然の権利である、労働組合運動としては当然な権利であると考えておられるかということなんです。
  75. 赤津勉

    ○赤津参考人 これはぼくたちのことを言われるのですから、ぼくたちのことだけについて言うのですが、ぼくたちは、なかつたのだから、そういうことを警察がやるのは不当な弾圧だ、さように考えております。そういうようなことを、ぼくたちはやつた覚えがないのです。だから、あつたらという仮定は、ないのですから、ぼくたちには言えないのです。
  76. 倉石忠雄

    ○倉石委員 よくわかりました。そこでそういう事案があつたかどうかということは、当労働委員会で審議の対象にする権利をわれわれは持つていない。そこでこれは裁判所に属すべきものでありますが、私はここに警察本部長もおいでになるし、社会部長もおいでになるわけでありますから申し上げたいのでありますが、われわれは労働組合の団結権をあくまでも守るということは、労働法上当然なことです。従つて、いわゆるこの団結を破るような行動をとる者が一、二ありといたしましたならば、その団結を確保するために、これを守ることは当然なことです。これは組合としてはあたりまえのことです。ただ、そこに行き過ぎがあるとしたならば、今摘発されておるような事犯があつたとしたならば、これは民主主義労働組合のために、まことに惜しむべきことであり、先ほど鈴木部長が言われましたように、そういうことのないように労働教育をして行かなければならぬという御趣旨は、まことにその通りなんです。一方、今度はその組合所属の組合員の中にも、今やつておるような争議を継続しておつたならば、われわれが職場として立つておる企業が崩壊してしまう、これではいかぬということを考えるのも労働者の自由であります。その労働組合に所属しておるがゆえに、あくまでも執行部の命令に服さなければならぬということはない。こんなことは当然なことであります。御存じのように、尼崎製鋼所という会社では、結局労働組合が極端なる争議をやつたために、企業は崩壊してしまつた。  そこで、私は最後に山本参考人にお尋ねをいたしたいのでありますが、あなた方は、この塚田製作所の労働組合に所属しておいでになつて、どうして第二組合を結成しなければならないという考え方をお持ちになつたか、これが第一点。  第二点は、この組合側でお出しになられた塚田事件の真相というものによれば、あなた方がいわゆる第二組合を結成されようとするのは、経営者側と一脈相通じておやりになつたんだ、こういうふうにうたわれておりますが、これが真実であるかどうか、この二つの点についてお尋ねをいたします。
  77. 山本榮一

    ○山本参考人 先ほども申し上げましたように、私ども組合の執行部は、非常に年の若い人が多く、特にひとりものが多いのです。世帯主でやつているのは、私と西沢さんと二人しかございません。そういう点で、現在金融引締めによつて中小企業が非常に苦しい立場にあるという社会状態、こういうものを冷静に批判するには、若い人よりも、むしろわれわれ世帯主の方が非常に痛切に感じる、実際感じたのです。現在の組合に沿つて行けば、会社はつぶれるかもしれない。会社は、そういうことを団体交渉の折にたびたび言つておりました。これは私も団体交渉におりましたから、聞いたのです。それに執行部の執行委員の中には、何だ、会社をつぶす気ではないのか、おれはつぶすまでやるんだ、こういう過激な言葉を使う人もあり、また組合長自身も、もらうものさえもらえば会社はつぶれてもいい、こういうことを団体交渉の席上においても、はつきりと言つているのです。われわれがこの経済社会状態の中において、自分で自分の職場を守らなければ、一体だれが守つてくれるのですか。無期限ストという状態に入つたので、日給制であるわれわれは、一日休めば一日の給料が減る。二日休めばそれだけの給料がなくなつて、すでに台所に響いて来る、こういう切実な状態にあるのです。現に私は四月の争議のあつたときの給料は、少くとも八千円から九千円近くもらえるものが、たつた二千二百円、これだけの金しかもらえませんでした。こういう状態の中において、このままストライキを続けて行けば、われわれはどうにもならなくなつてしまう。われわれの企業体は、われわれが守るほかに道がない、こういう結論によつてこの無期限ストをやめるというよりも、仕事につきたい、こういう世帯持ちが集まつたわけで、最初は決して第二組合をつくるとか、そういう考えでやつたことではありません。ただいま申したように、職につかなければわれわれは金にならない、そういう切実な問題に当面して、そういう行動をとつたのです。第二の、会社側と通謀という点でありますが、これはちやんと赤津君が申されたように、私の家で四回も会合を開き、その席上丸山係長が四回も来ておる、こういう事実がすでにないのです。たまたま私の家で会合を開いたというか、そういう気持のある者が集まつたのは二回です。その二回の席上に、ただ一回下条という係長が私の考えに賛成して集まつて来たと思いました。それを知つて、何か下条係長に業務上のことで連絡に来たようでした。私は丸山係長とは話しておりません。ただ玄向寺の場合において、組合は常に団体交渉において正しい真実を組合員に打明けたことがない。自分らの有利なように、自分らは団結しなければいけないという意味のことを強調するために、常に団体交渉の結果を、事実を曲げて発表しておつたというようなことが多いのです。そういう事実を玄向寺の会合で、会社側はこういう事実があつたということを説明してもらいたいということを、私はお願いしたのです。一度そういうことが玄向寺へ丸山係長が来たということに——先ほども申しましたが、事実は来たか来ないかわかりません。ただお願いしたことは事実でした。しかし、そこへ執行委員が来たので、来られては、実際誤解を招かれるといけないから、何とかしなければいけないという考えなつたことは事実です。しかし、当会場には、丸山係長は最後まで姿を見せませんでした。そういう点を、先ほど非常に会社側と結託してやつているように申されておりますが、私は決して会社と結託してやつたのではなく、私個人でもつてあくまでやつたことに間違いありません。
  78. 倉石忠雄

    ○倉石委員 私はあとの諸君が御質問になるでしようから保留いたしまして、もし他の諸君の御質疑の中で、お尋ねしたいことがあれば関連質問をすることにして、あとの方に譲ります。
  79. 赤松勇

  80. 島上善五郎

    ○島上委員 参考人の方々に少し伺いたいと思います。こういう問題が国会へ持ち出されたのははなはだ意外であると、山本参考人はそういうことを言つておりましたが、私どもは、長野県の松本市という、いわば小都市における小さな工場の事件であるということにおいては、必ずしも大事件だとは言えないかもしれませんけれども、しかし労働組合法の不当労働行為に該当すると思われるような行為、また労働組合の正常なる組合活動に対する警察の不当な介入と思われるような行為がある。今日不当労働行為は地労委において、またもう一つの問題は裁判において審理されておりますから、私どもはそういう権限に介入しようとは思いませんけれども、こういうようなことが不問に付されるならば、日本労働運動にとつて重大な危機を招くと言わざるを得ない。特に前国会において問題になつた警察法が通過して実施され——どもは、これを今日なお無効だと信じておりますが、その直後、原部長が警視庁から転任されて、ただちに思想調査を行つたというような、越権行為と思われる行動があつたと伝えられておる。その後にこういうような問題が起つておりますので、これは松本市における二百名そこそこの一小工場の問題といえども、不問に付するわけには行かぬと思う。そこで私は伺いたいのですが、労働者に許されている団結権というものは、労働組合をつくる自由であるとともに、つくつた労働組合を守る自由も当然認められていると思う。その場合に、しかも争議のまつただ中において第二組合をつくろうとするような動きがあつた場合、これに対して組合が自分の団結権を守るためにこれを防止する行動に出ることは、組合に許された当然の行為である。この事実については、両者の間に食い違いが若干あるようでございますけれども、私どもの見るところでは、第一組合が自己の団結権を守る当然の行為を行つたにすぎないものである、こう考えているわけです。そこで山本参考人に伺いたいのですが、あなたは、もちろん労働組合をつくることに賛成をされてこれに加入したと思われる。また書記長に選ばれた際に、先ほどの陳述によりますと、私は過激な運動はできないと言つて辞退した、こう言つておりますが、労働組合自体の運動は、もちろん過激な運動でもなんでもないのであつて、そういう感覚自体が、すでに少し妙だと思います。いずれにしましても、一応辞退したが、あと書記長を引受けた。その後、会社の労働者に対する労働条件があまりにもひどい、賃金体系はまつたくでたらめで、給与水準も低い。昇給なども三年間も停止されており、会社がすきな者だけたまに昇給させるというようなひどい状態である。これではいかぬというので、組合が会社に要求書を出すことを相談してきめられた。この要求書提出に対して、あなたも、もちろん御賛成をされておつたと思います。それから要求書提出後、両者の団体交渉が順調に行かなくてストライキを行う、こういう決定を組合の機関においてしているわけです。この組合機関において決定をする際には、まずあなたが傘下に入つている執行部、つまり執行委員会において、大会にはかる原案をあらかじめ相談をして、私の聞き及ぶところにおいては、執行部はその際満場一致ストライキを行うことを大会にはかるということを決定したと聞いている。要求書を提出することに賛成し、その後の団交が順調に行かなくて、ストライキを行うことを大会においてきめましたか、その大会に提案する執行部の相談にあなたも参画して、ストライキを行うことを満場一致をもつてきめたというのですから、あなたも当然賛成されていると思いますが、その点、いかががでございましようか。
  81. 山本榮一

    ○山本参考人 この点に関して、先ほどもお話があつたと思いますが、賃金の問題に対して組合要求する前に、会社側からバランスをとつて平等にするという新賃金案を組合へ出して参りました。組合側は、これに対して一応保留という形でもつてそれを引受けなかつた。これは一般組合員の声では、当然もらえるものだ。こういう考えでおつたわけです。そういうような点から推して、執行部はそれを大会にはからず、執行部自体でもつて一応それを保留という形で組合員に発表しなかつたわけです。そういうように、すべて執行部は、先ほども申しましたように独走であつて、われわれがそこで個人の意見を吐いても通らない。少数意見は尊重すべきではないかということを話しましたが、そういうことは全然尊重されず、あくまで独走的なやり方でやつている組合で、私は最初からそういう組合にはとうてい賛成できないということを先ほど申し上げましたが、後に至つても、私は確かに労働運動というものに全然無知で知らなかつたのです。ですから、こういうものが組合執行部へ入るということは非常に不安だと私申し上げて、非常に過激な運動は、きらいだということを言つたことがある。そういうことで、私にはわからないからできないんだ、そういうことを私は申し上げたのです。いや、それはまかしておけば、われわれがやるからいいということで、それじや私は知らないんだからまかせます、こういうことで、私は執行部にオブザーヴアー的について歩いていた、その程度にすぎません。以上であります。
  82. 島上善五郎

    ○島上委員 私の質問した要点だけお答え願えばけつこうです。オブザーヴアー的と言いますけれども、あなたは書記長を引受けている。あなたの書記長時分に、あなたも入つて構成した執行委員会で満場一致で——一人の異議を唱える者もなくて、大会へストライキを決行するという原案を提出することをきめている。その席にあなたもおつて賛成したということは事実だと思う。私はそう聞いている。その前後の独走したとかしないとかいうことを私は聞いているのではない。
  83. 山本榮一

    ○山本参考人 ただいま満場一致という言葉が出ましたが、スト権を与えるとか、あるいはストライキをやるとかいうことについて、決して満場一致ではできておりません。スト権を与えるということに関しても、反対者はある。ストライキをやるということに対しても、反対者はありました。以上です。
  84. 島上善五郎

    ○島上委員 あなたは私の質問に対して意識的にずらしているような気がする。執行委員会において、大会へこういうことを出そうということを相談した際には、満場一致であつたろう、その席にあなたもおつたろうと聞いている。大会においては、もちろん採決をして、圧倒的多数ではあつたけれども、少数者はストライキ反対の投票もあつた、これは私も知つている。その点をあなたにお伺いし、同時に赤津参考人に伺います。
  85. 山本榮一

    ○山本参考人 執行部の会場には私はおりましたが、私の意思は、当時ははつきりきまつておりません。ただストライキをやるということに対して、あまり過激なことはやつてもらいたくないという意見を私は吐きましたが、それ以上のことは私は言つておりません。
  86. 赤津勉

    ○赤津参考人 今山本さんの言つた通りで、ストライキをやることには、山本さんは賛成をしました。しかし、過激なことはやつちやいけないということを、たしか言つたと思いますけれども、山本さんはその後、ストライキをやるということについて反対だと言つているのです。過激ということがどういうことか、ぼくたちにもわからなかつたので、どういうことかと山本さんに聞いたのです。ストライキに過激なことつて、どういうことがあるかと聞いたのですが、それについては、山本さんも言わなかつた。その執行委員会では、確かに山本さんも満場一致で賛成しているのです
  87. 島上善五郎

    ○島上委員 ストライキを称して過激だなどという考え自体にも、たいへん問題がありますが、そういうことは私はここでは申しません。ストライキ労働組合が必要なときにやる権限を持保障され、労働組合法で保障された正当な行為である。これを労働者が過激だなんて、労働運動を理解しない資本家が言う言葉なら、さもありなんと思いますが、労働者であり、現職の書記長であるあなたの口から出ることは、私は心外だと思う。しかしこれは申しません。そういうふうにしてあなたも、とにかく消極的であるにせよ、書記長という重要な現職にあつて賛成して大会に提案して、大会の多数の意思決定においてストライキを行うということに決定した。私たちの意見は無視されたと言いますけれども労働組合の運用というものは、大勢の人が集まつておりますから、多数意見あり少数意見あり、多数の意見、少数の意見は十分にお互いに討議し合つた結果、結句多数の決定に従わなければならぬということは、民主主義の運営の原則ですから、いずれにしましても、そういうふうにして多数の意見によつてストライキをやることをきめた。このストライキは、あなたは無期限ストに入つた、こう言つておりますが、私の聞いいるところでは、ストライキは一日か二日で終つた。ストライキが非常に長期にわたつて、世帯持ちが経済的に困つて、もうこの辺で何とか妥結しようじやないかということは、しばしば起り得ることですけれども、私の聞いているところが、もし間違いでなければ、ストライキはそう長い間行つていなかつたはずです。しかもこの報告によりますれば、ストライキは、たしか十二日の組合の大会を行つた際に、組合長がストライキを打切つたことを報告しておる。ですから、十二日の前に打切つておる。そうして、あす地労委が入つて来るということも報告しているわけです。あなたも、消極的であるにせよ、賛成して行つたストを、やつたとたんに、すぐそれと全然逆な行為をするということは、少くとも労働者の側から見て裏切り行為と言われても、しかたがないと思う。こういうような行為をするに際して、あなたは会社と通謀してはいない、こうおつしやつておりますけれども——、もちろん丸山労務係長と会つてどういう話をしたかという内容については、あなたもこれは通謀したとは簡単におつしやらないでしようけれども、しかし、あなたの家で会社の争議切りくずしのための文書を発送しておる事実がある。私はその書類を持つて来ておりますが、会社の文書ですよ。会社の文書を会社の封筒に入れて、あなたの自宅で仲間を数人手伝わして発送している事実がある。株式会社塚田製作所という名により、文書を発送しておる事実がある。私の調べているところによれば、それは労務係長があなたのところに持つて来て、それをあなたの家で発送した、こういうような事実である。これは通謀以上だと私思うのです。あなたはそういうことをなさて、労働者として、現職書記長として、自分の労働者としての良心に何ら恥ずるところがないかどうか。その事実とあなたの良心に恥ずるところがないかということを、一ぺん伺つておきたい。
  88. 山本榮一

    ○山本参考人 ただいま、現職書記長にあつて、そういう行いをしたと言つておりますが、私は書記長を、辞表を出してやめております。私の思つておる通り、過激と申しましたが、確かにそういう行いは私はやりたくないということで、辞表を六日の日に出しております。その点に関しても、私は会社の品物が来たということは、当日うちを出て、そういつたことに関しては、全然関係せずにおりました以上です。
  89. 島上善五郎

    ○島上委員 あなたのうちで会社の文書を発送したということは、事実でございますね。
  90. 山本榮一

    ○山本参考人 私は知りません。
  91. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは赤津組合長にその点を……。
  92. 赤津勉

    ○赤津参考人 その点については、山本さんと一緒にそういう裏切り行為をやつたということを、やつた人たちがはつきり言つておるし、書いておるのです。そうして山本さんはそこにおらないから知らないと言つていますが。事実知つています。それから山本さんは、非常にうそをついておるのです。山本さんは、組合活動のことについて全然知らないというようなことを言つているのです。しろうとで知らないからまかしておく——、事実はそうじやないのです。ぼくたちのところにも来て、ぼくは実は積極的にやれないんだ、その理由は、前には相当共産党にも関係してそういう運動をやつて来た、そのために細君にわかれているのです、だから今度はそういうことが起きてはいけないからやらないということを、みんなの執行委員に言つておるのです。そういうことを言いながら、山本さんはそういううそをついておる。実際に会社に関係しておるということについては、山本さん自身い書いていますし、それからそのほかの人も、強要して謝罪文を書かしたのではなくて、事実任意に書いておるのです。だから、文句も全部違いますし、実際書いてない人もあります。そのとき、そういう悪いことをした人は謝罪文を書いてもらいたい、いや私は私の意思で絶対書きません、そう言つてつておる人も事実あるのです。決して強要したわけじやないのです。その点についても、ちやんと山本さんが会合を開いたときに、女の子を集めて、第二組合をつくるから判こをつけと言つてつかしておるわけです。そこに丸山係長がちやんと来ている。そのときには、会社側の丸山さんがそこへ集めたのです。そこに来た女の子たちは、丸山さんが来ていることだろうと思つてここに来ておるわけです。だから、こういうことを言つておる——これは山本さんの言つておることですが。丸山さんが呼んだところへ私が来ておるから、おかしいと思うでしよう、ということを、女の子にちやんと言つておるのです。その集めた日は公休日でした。だから丸山係長は、あなた行きなさい、ここのところへ行つた時間は残業につけておいてやるから……、そういうことを言つて丸山さんが集めでおるのです。山本さんも、実際そういうことを言つておるのです。
  93. 島上善五郎

    ○島上委員 大分不当労働行為の事実がはつきりして来ました。私は先ほどもちよつと言いましたが、労働組合は、自己の団結権を守るために、この団結権を弱化するような、あるいは分裂せしめるような行為に対して、極力これを阻止しようとする行動は、組合の団結権の正常なる行動であると思います。特にストライキ——ストライキというか、争議の非常にはげしいまつただ中において、今言われたような事実を背景として、つまり、会社の労務係長が相当陰で活躍しておると見られる事実を背景としてお寺で会合した。そのときに、赤津参考人を初めとして第一組合——その時分は第二組合はできていませんでしたが、組合の執行部が、何を相談するのであろうかということで、そこへ乗り込んで行つて、たいへん暴行を働いたように言つておりますが、私の聞き及んでおるところによれば、その会合へ行きまして、赤津参考人は、上らしてもらいますと言つてつてつておる。それから上つたといつても、直接会合しておる部屋に行かずに隣の板敷のところで、組合のことを相談するなら私たちにも聞かしてもらいたい、また、今争議の大事なときだから、第二組合をつくるというようなことはしないでほしいという説得をしたというのです。私は全体を通じて、この組合活動は若干未熟な点はあると認められますけれども、よくも自重してその程度で済んだと思うのです。私だつたら、ほんとうにぶんなぐつてやるほど憤激する——、もちろん、これは憤激するけれども、ぶんなぐりはしませんが、しかし、よくも自重して手をあげたりなとしないで、説得の範囲で終つたものだ、この程度のことも家宅侵入などと言われたら、労働組合運動はできなくなると思うのです。私は、そこで赤津組合長に聞きたいのだが、あなた方は少しはげしい言葉を使つたかもしれませんが、手をあげてなぐつたり、け飛ばしたりという事実は、私の聞いておるところではなかつたように思うのです。あつたかなかつたか、それをあなたと山本君と両方に伺います。
  94. 赤津勉

    ○赤津参考人 そういうことは全然ありません。
  95. 山本榮一

    ○山本参考人 ただいまの不法侵入の件に関しては、上がらしてもらいます、それで返事もなく、がんがんと上つて来て、隣りの部屋というが、隣りの部屋も何の部屋もない、一つの部屋であります。そこでもつて、上つたのに対して私が、ここは一応会場だから帰つてもらいたい、そういうふうにすなおに三回ほど言いましたが、上つていけないなら、不法侵入で訴えるならどこえでも訴えろ、警察へ行くなら行け、こう言つて私に詰め寄つて来ております。先ほどのように、手を上げたとか、け飛ばされたとか、そういつたことは私は受けておりません。しかし、よくも裏切つたな、どてつ腹に風穴を明けてやるぞとか、たたき殺してやるぞとか私はそういう脅迫的な言葉を受けたことは事実であります。
  96. 島上善五郎

    ○島上委員 これは私の聞いた事実ですが、何でもお寺の会合は、組合の大会とか総会とかをやる、こういうことで、かなり広汎に通知をされたと聞いておる。もしそうだとするならばその時分には、まだ第二組合というものができていませんから、その現にある組合以外の組合の会合というものがあり得ようはずがない、組合の会合だとすれば、組合の執行部の諸君が、かりに通知を受けないにしても、私はそこへ行くのは当然だと思う。あなたは、そのときの会合を、組合の会合だと言つて、かなり広汎に——但し執行部には通知はなかつたが、かなり広汎に通知をされているはずです。どうして執行部が行つた際に、組合の会合だというのに断つたのですか。私は組合の会合ならば、断る必要はない思う。またあなたの争議に対する考えが違つたとしても、違つた考えは大いに議論し話し合つて、まだ第二組合という別個の組合ができていないから、一つ組合で話し合つて事を運ぶのが、一番円満ではなかつたかと思う。なぜあなたは、組合の会合だと称して招集した会合に、組合の者が来ることを拒否されたか、それをひとつ伺いたい。
  97. 山本榮一

    ○山本参考人 決して今の組合の会合だから行つてくれ、そういうことは私は申しておりません。ただストライキをやる前も、無期限ストをやるということに反対をする人は集まつてもらいたい、そういうことで集まつたのでありますから、暗に執行部のやることに対して不満の者が集まつたところであつて、そのこと対して、何も不満の者に集まつてもらつてやる必要はないと思つたので、私は一応帰つてもらうように話はいたしました。
  98. 島上善五郎

    ○島上委員 あなたは先ほど、たしか第二組合をつくる意思はなかつた、こういうことをおつしやつたのですから、第二組合をつくる意思はなかつたとするならば、要するに第一組合に属しておつて、あなたの考える過激な争議を早く解決したい、こうお考えになつておつたと思う、その点はどうですか。
  99. 山本榮一

    ○山本参考人 とにかく第二組合とか第一組合とか、そういうものを抜きにして働きたい、そういう気持だけでもつて、ただ単純な考えで、とにかく働きたいんだ、働かなければいけないんだ、そういう気持で私はやりました。ただ単純な気持でやつたのです。
  100. 島上善五郎

    ○島上委員 まあわかりました。そうしますと、とにかくあなたは、その当時はまだ第一組合に属しておつたわけです。そうして別個のものをつくつて組合を割ろうなどという考えはなかつた。そうだとするならば、あながストライキを早く解決して働きたいという気持はわかります。またそういう意見があつてもいいのです。そういう意見組合の中にあつてもいい。これは私はそういう意見自体が悪いとは申しません。しかし、そういうあなたの意見に、一般の人々の共鳴を得るためには、あなたは第一組合に属して——その当時はやめておつたかどうか知りませんが、書記長という重責を勤めた人ですから、組合の機関にそういうことを持ち出して相談するのが、最も民主的な正しい行き方だと思います。その点はどう思いますか。
  101. 山本榮一

    ○山本参考人 その話に関しては、この間浜口専門員がいらつしやて、それじやその会合の折に、君らが集まつたのが二十二名いて、執行委員が十二名いたのだから、自分の思つていることを組合の執行委員に申し述べる絶好のチャンスじやなかつたかとそう言われました。今の質問と同じでございますが、そういう点に関して、非常に暴力的なチンピラ的な執行委員が多い、それで一種のこわい気持になつて話ができなかつた、組合長が来る前に、すでに三人、四人の執行委員は一応その会場へ来て、どてつ腹へ風穴を明けてやるぞとか、あほうだとか、犬だとか、豚だとか、そういう暴言罵倒を浴せられた直後に、そういつた話がそこですなおにでき得たか、でき得なかつたか、そのときの心境は実際はでき得なかつたのです。以上です。
  102. 島上善五郎

    ○島上委員 そういう罵倒されたとおつしやいますけれども、あなたが会社の人々と裏面で相当行き来をして、会社の意を受けて、あるいは通謀してやつたと思われるようなそういう行動をとつたことによつて組合員が憤激して、その結果そういう罵倒という言葉が出たわけであつて、あなたが普通の組合員として、普通の組合役員としての行動をとつており、争議に関して多少違う意見が出たからといつて、それを私は一々罵倒するなどということは、これは普通はあり得ないことだ思う。あなたはすぐ暴力的だ暴力的だ言いますけれども、少しきつい言葉を使つたら暴力的だと言つたら、暴力は至るところに横行していると言わぎるを得ない。労働者は単純ですから、激高すれば、すぐはげしい言葉を使うかもしれないし、おそらくあなたも使うだろう。そういうようなあなたの行動の結果起つたことであつて、そういうことさえしなければ、私はそんなことはないと思う。ですから、組合の正常な機関に持ち出して、みんなで十分相談し合う、こういうことが一番正常な穏やかな行き方だと私は思う。組合の機関で何を発言しても、いつでもばかやろうと言つて押えつけてしまうということは、私はそういう運営はあり得べきものではないし、なかつたと思う。赤津君に聞きますが、あなたの組合は、ちよつとでも違つた意見でもあると、ばかやろう、どてつ腹に風穴を明けるぞと言つたことがあつたかどうか。
  103. 赤津勉

    ○赤津参考人 全然そういうことはありません。そこでちよつとそのことで山本さんが第二組合をつくろうとした意思はなかつたと言つておるのですが、実際に第二組合をつくろうとして、新組合結成について、こういうビラを配つておる、それで月曜日には組合員脱退の手続をしておる。もうきようから組合ができているんですというようなことを言つてみなに配つているのです。それは玄向寺の会議の場所で渡しておるわけです。そういうことがおかしいので、何が何だか山本さんの言うことはわからないのです。
  104. 島上善五郎

    ○島上委員 例の七月十二日の大会でございますが、この大会は、鈴木社会部長の発言によりますれば、大会そのものは成規の手続によつて行われた大会である、こう言われた。私もそうだと思います。そうしてこの大会には、あなたは強要されることなく、普通の組合員として、あるいは組合役員として、当然出る権利があるわけです。また招集しなければならぬ義務が組合にあるわけです。そういう普通の組合員の権利を行使するという形において、強要されることなくこの大会に出席している、こう私ども聞いておりますが、これまた赤津参考人と山本参考人に、この大会へ出席するに際して強要したかどうか、強要されたかどうかという点を伺いたい。
  105. 山本榮一

    ○山本参考人 大会出席に際しては、強要はされておりません。
  106. 赤津勉

    ○赤津参考人 山本さんの通りです。
  107. 島上善五郎

    ○島上委員 あなたの組合の規約の五十七条、五十八条、五十九条は、組合員の除名または権利の停止処分等々と統制に関する事項規定しておりますが、この五十九条には、罰則として、組合員を処罰する場合は、罰則は大会における公正なる審議を受け、かつ本人が弁明する十分な機会を与えられた後、無記名投票による三分の二以上の同意がなければ決定することができないという意味規定がございます。私の調べの範囲では、大会そのものの運営について、それは若干の未熟な点はあつたかもしれません。地方の小組合では、あまりなれておりませんから、若干の未熟な点はあつたかもしれませんが、大会そのものは議長を置き、書記を置、正常に運営されている。そうして大会においてあなたのとつた行動に対する審議は、この第五十九条の規約にのつとつて行われたものである、こう私は解釈しておりまするが、この点はどのようにお考えですか。
  108. 山本榮一

    ○山本参考人 その組合規約は別に会社とは結ばれておらないと私は承つております。
  109. 島上善五郎

    ○島上委員 会社と結ばれているかどうかを私は聞いておるのではない。この規約は、あなたの組合の規約であり、あなたもこれは御存じのはずです。この規約の第五十九条に準拠して、当日の大会において、あなたの行動を審議した、こういうふうに私は解釈しているのですが、その点はいかがですか。
  110. 山本榮一

    ○山本参考人 審議をするのなら審議をするらしい方法でやつてくれるべきだと思います。あくまでつるし上げのようなああいう態度でなくて、もう少しものやわらかくできたのではないかと、私はそう思います。
  111. 島上善五郎

    ○島上委員 審議の仕方が、少し激高して、はげしい言葉を使つたかどうかということを私は聞いているのではない。少くとも大会は、この組合規約によつてやつた。つまり、こういう組合員の約束に基いて運営されているから、私は組合の大会は正常な大会だと言えると思うのです。どんなに静かにおだやかにやつても、規約に何にもないことをでたらめにやつたのでは、正常な大会とは言えない。大会の開催手続その他運営においても正常であつたし、あなたの問題を審議する際にも、ちやんと組合規約五十九条にのつとつてつて来た。こういう意味において、その中において審議をする際にやじなどの不規則発言はあります。あまりけつこうだとは思いませんけれども。不規則発言というものは、国会においてもしばしばあるのです。その不規則発言の際に、ばかやろう、このやろうということは、あるいはあつたかもしれませんが、大会における審議そのものが、このように規約にのつとつて正常に運営され、そうして最後には表決をもつて決せられた、こう聞いております。この点は山本君よりも、あるいは赤津参考人の方が適当かと思いますが、その状況を伺いたい。
  112. 赤津勉

    ○赤津参考人 そういう点については、確かにみな怒つていたのです。こういうのがいるからおれたちの給料は上らないのだ、拒否拒否拒否で会社はやつたのですから、そのときは確かに怒つていて、議長も制したのです。みな静かにして聞くだけ聞こう、言うことは言うで、ちやんと議長を通してやれと言つておつた。そういうことは、初めのうち少しあつただけで、あとは議長を通してずつとやつておるのです。
  113. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと御了承を得ておきたいと思いますが、銀行局長が間もなくやつて来ますが、しかし大蔵省の方にいろいろ忙しい用件があるということです。これに対して多賀谷君から質問通告がありますが、十分程度の短かい時間だと思いますので、それをはさんでやりたいと思いますから、さよう御了承願います。
  114. 島上善五郎

    ○島上委員 私ばかり質問してもいけませんから、適当なところで結論にしますが、私は先ほど輿宗作という人がうしろにお見えになつておるということだつたので、ぜひ参考人として聞きたいと思いましたが、見えませんので、伺うことができないのは残念であります。  この際原部長に伺いますが、輿参考人の先ほど委員長あてに出した陳情書によりますれば、警察における取調べが実にひどい、戦前の特高の拷問をほうふつたらしめるような、それに近いようなものがあると書いてある。そして取調べの際の状況は陳情書に書いてありますから、私はここであらためて申しませんが、とにかくああいう事実があつたとすれば、これはたいへんなことだと思う。あなたの部かがやつたのです。そして輿君は、実際には西沢守人という人に暴行を加えていないのに、暴行したのだ、こういうことを強要されて書かされている。こういうことも陳情書に書いてあります。私の聞いているところでは、西沢守人という本人が、いつどこの場所であつたかはつきり記憶ありませんが、本人自身が、こう言つております。組合に行けと言われたので行つた、からだにさわられたことは事実だけれども、暴行を受けたことはありませんと、本人がある場所でこう言つているのです。それは組合に来てほしいというのですから、手にさわるとか、からだにさわるということはあり得るでしようけれども、さわつたこと自体は、暴行ではあり得ないと思うのです。それを先ほどの陳情書にあつたような、拷問に近いような取調べをもつて、本人にないことをあると言わせている、こういうような伊藤警部のひどい取調べ状況に対して、あなたは御承知かどうか、伺いたい。
  115. 原文兵衛

    ○原参考人 ただいまの島上委員の御質問にお答えいたしますが、本件の被疑者の取調べにあたりましては、警部、警部補、あるいは巡査部長のうち、捜査経験が十分な者を充てまして、しかも特に公平無私、親切丁寧にして、いやしくも取調べないしは留置場における取扱い等について、いささかも問題を残すようなことのないように、くれぐれも注意を与えて当らしたのでございます。八月の十九日に釈放になりまして、被疑者が松本警察署から出て来たときに、それを待ちかまえておりました数社の新聞社の記者諸君が、いろいろと留置場の扱いとか調べはどうだつたとかいうような質問をしたのに対して、警察の取扱いは非常によかつたというような答えをしている者が大部分であります。輿君のことにつきましても、私どもとしまして、何か輿君がひどい取調べを受けたというようなことを言つているということを聞きましたので、その取調べに当りました伊藤警部について十分調査をいたしましたところが、全然そのような事実がないだけでなく、輿君は留置場を出るときに、その留置場のあつた塩尻の警察署長に、非常に気持よく丁寧な扱いをしてもらつて感謝にたえないというようなことを言つております。この点につきましては、私ども常々取調べなりあるいは留置場の取扱いについては、戒めておるところでありまして、今度のことについても、釈放になつてからそういうことを言つておる被疑者もあるということを聞きましたので、特に私どもとしましても、事後また取調べに当つた警察官について調査したところが、さような事実はないのであります。さらに何か被疑者である輿君が被害者西沢守人君に対して、別に大した乱暴を働かなかつたということを言つたというようなお言葉もありましたが、私ども取調べの結果、この点ははつきり暴行罪を構成するという認定のもとに検察庁に送り、検察庁はそれによつて起訴されておるのでありまして、その程度がはたして犯罪を構成するかしないかということにつきましては、これは検察官がやられると思いますから、私はここでは申し上げません。
  116. 島上善五郎

    ○島上委員 あなたは取調べの結果、なかつたとおつしやいますけれども、私は輿君が国会の委員長あてに、まつたく荒唐無稽のことを陳情するとは思いません。輿君が出たとき、署長に親切な扱いを受けてありがたかつたという感謝の手紙を送つたということを言われましたが、そういうことを私も聞いておる。しかし、この間の事情を私が聞いたところによると、伊藤警部というのが、ものすごい大きな声でどなつて、げんこつを突きつけて、言わなければ、お前三年もこのままにしておくぞというようなことを言つて、ないことを言わせて自分の目的を達してしまう。そのあと今度別の人が来て、それこそまつたく打つてかわつたように親切に扱つて、看守も頼みもしないキヤンデーを買つて来たり、実に親切に扱つておる。これは別にあなたが扇動するとは思いませんが、戦前に特高がよく使つた手なんです。私どもをさんざん拷問にかけて、釈放する前は甘いものを買つて来たり、ねこなで声で親切にする。そうすると、大体労働者は単純なものですから、前にひどい目にあつたことを忘れて、出るまぎわに一日か二日親切にされると、まことにありがたがつた。そういう手をまさに使つておる。あなたはそういうこましやくれた手を使うとは思いませんが、これは戦前特高の経験のある人が、きつとこういう衝に当つておるのではないかと、私は想像するのであります。いずれにしても、こういうような手を使つて労働者をだましたと思われる。これは裁判の結果はつきりいたしますが、こういうようなことに対しては、あなたはなかつたとおつしやるので、なかつたならばけつこうな話ですが、今後特に十分にひとつ御注意願いたい。  なお逮捕というのは、証拠隠滅のおそれがあり、あるいは逃亡のおそれがあるというときに逮捕するものだと思いますが、どうもあの逮捕の場合、いわゆる事案が起つたのはかなり前のごとであり、しかも一人、二人ではなくて、大勢の組合のそういうところにおいて起つた事件ですから、隠滅するといつても、あつた事実は隠滅できるものではないし、逃亡するおそれがあるということは少しも考えられませんが、どうしても逮捕しなければならぬ理由があつたのかという点が私ども納得行かぬ。それからもう一つは、逮捕の際に逮捕状を要求されても、どうしても見せなかつた。赤津君の陳述によりますればそうだ。ほかの人も、同様に逮捕状を見せなかつたということを聞いておりますが、労働組合の幹部を逮捕する際に、こういうことをされては非常に迷惑するので、これはどうしても逮捕しなければならぬ理由があつたのかどうか、証拠隠滅あるいは逃亡のおそれがあつたかどうか、逮捕状を本人に示さなかつたのは一体どういうわけか、こういう点をお述べ願いたい。
  117. 原文兵衛

    ○原参考人 逮捕して、すなわち強制処分によつてこの取調べをしなければならない理由があつたかどうかという御質問でございましたが、この点は最初に概要のときにも申し上げましたように、この犯罪容疑が、共謀の上行われたという疑いが十分にありましたので、その犯罪の容疑を明らかにし、しかして証拠資料を確保するためには、通謀、証拠隠滅のおそれある者——しかしこれも最小限に限つたのであります。この最小限の者については、逮捕し、また捜索もしなければならぬという考えのもとに私どもやつたのであります。  さらに、逮捕令状を示さなかつたというようなお言葉がありましたが、その点も事後そういうことが言われているということを聞きまして、さらに慎重を期して、逮捕令状を示さなかつたかどうかという点をいま一度調べてみたのでございますが、明らかに逮捕令状を示しておりまして、必要ならばその証拠をお見せしてもさしつかえございません。
  118. 島上善五郎

    ○島上委員 私は他の諸君の御質問もありますからこの程度にとどめておきますが、私どもからいたしますと、労働組合の普通組合活動に、若干その間未熟な点があるにいたしましても、普通の労働組合活動と思われるものを、一々家宅侵入である、暴行脅迫であるといつて起訴されたり逮捕されたりしたのでは、日本労働組合運動にとつて、たいへんなことになつてしまうと思います。事実の結果については、裁判の判決あるいは地労委の判定によつて、いずれ明らかになることであろうと思うが、私どもの調べた範囲において判断し得ることは、明らかに警察の不当な介入であると考えざるを得ない。私どもは、裁判の結果、こういう問題に対してさらに適当な厳重な態度をもつて臨みたいと考えておりますし、警察当局においても、今後このような問題はそう起るものではないと思いますけれども、そういう問題に際しては、十分慎重に対処してほしいということを希望申し上げて、私の質問を終ります。
  119. 赤松勇

    赤松委員長 黒澤幸一君。
  120. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 簡単に参考人にお尋ねしたいと思うのであります。山本参考人にお尋ねいたします。どうも今まで山本参考人の御答弁を聞いておりますと、非常は真実を曲げたような感じがするのであります。先ほど山本参考人は、私は自分の都合のいいことを言うというような前置きをして述べられておるのでありますが、そういう自分の都合のいいようなことを言うという考えでこの席上で御答弁されては、非常に困るのでありまして、事実を事実として、御答弁願いたいということを、前もつて申し上げておきます。  最初に、あなたは塚田木工製作所の書記長であつたのでありますが、ただいままでの御答弁を聞いておりますと、自分では労働組合の仕事に経験がない、あるいは労働組合のやり方に非常に過激的なことがあるというようなことを、繰返して述べられておるのでありますが、少くとも約二百名からの労働組合書記長というものは、非常に重要な地位であります。あなたが書記長になりまして、いかに労働組合における書記長の地位、仕事というものが重要であるかということは、身をもつて御体験になつて来ていると思うのであります。そういう書記長にあなたがなる場合に、ただいままで申されたような書記長としての不安といいますか、そういうお考えを持つているあなたが、何ゆえにこの書記長の職についたのか、     〔委員長退席、池田(清)委員長代理着席〕 その書記長の職につくときの心境を、この機会にお伺いしておきたいと思います。
  121. 山本榮一

    ○山本参考人 最初に申されました、私は都合のいいことを申し上げると言いましたが、あれは一応私間違つた言い方をしましたので、おわびさしていただきます。  それから、ただいまの書記長なつたときの心境、私は書記長という名のもとに仕事をしたのは、わずか一週間そこそこであつて、それ以上書記長というものを私はやつておりません。六月の二十五日の大会できまりまして、それから七月の六日に辞表を出しております。そういうような状態で、私は書記長という任務は非常に重大なものだ、私ごとき者にはできないということを最初から申し上げまして、できないということにしておつたのですが、組合の大会のみんなの勢いで、どうしてもやれというように言われまして、組合長初め執行委員の皆さんが、われわれが補佐してやつて行くのだからいいから、特に名前だけでもいいからやれとこう言われまして私はやつたので、書記長という役を任命されたときも、実は不安で、どうしたらいいかわからないという状態でありました。終ります。
  122. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 少くとも書記長になります以上は、私はあなたが組合員から非常な信望があつてなられたと思うのです。私はこの塚田製作所の組合がいつできまして、どういう闘争経歴を持つているかわかりませんけれども、いずれにいたしましても、二百人近い組合員のうちから、三役の一つである書記長にあなたが選ばれるということは、書記長としてあなたが最も適任である、あなたが書記長として今後の組合の仕事などの中心になつてつて行けるという組合員の輿望をになつて、あなたはなつたんじやないかと、われわれは想像するのでありますがあなたが今おつしやつたようなふらふらした気持の人が書記長の職につくということは、われわれは日本全国の組合を通じましても考えられないことであります。  そこで、あなたが書記長になつてから後、第二組合をつくるような心境になつたのは、何かそこに私は心境の変化といいますか、そういうものがあつたんじやないかと想像するのでありますが、どうでしよう。
  123. 山本榮一

    ○山本参考人 別にそういう考えはございません。
  124. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 先ほど赤津参考人の御答弁によりますと、組合が賃上げを要求しようとする前に、七月一日でありましたが、会社の方から自発的に賃上げを個々の従業員に対してなされて来た、ところがその会社の賃上げに対して組合はこれを保留したというようなことを言つておりますが、なお会社におきましては、間もなくこの賃上げを個人々々に通告したものを破棄してしまつた。こういう会社のやり方に対しまして、あなたは当時書記長であつたと思うのでありますが、どういうふうにお考えになり、またこれをどうしようとするお考えを持つておりましたか、その点をお伺いいたします。
  125. 山本榮一

    ○山本参考人 私は会社の賃上げの当時には、書記長をやつておりませんでした。撤回されたそのときはそうでしたが、組合側でもつて保留ということにきまつたときまで、私は書記長をやつておりませんでした。
  126. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 それでは私が考え違いだつたのですが、書記長をやつている、やつていないにかかわらず、この会社りやり方に対しまして、あなたはどういうようなお考を当時お持ちでありましたか。会社が賃上げを従業員個人個人にまでもしたのを、間もなくこれを破棄してしまつた、取消してしまつた、そのように私は聞いておるのでありますが、そうした会社のやり方に対して、あなたは従業員として、また一組合員として、どういうお考えをお持ちになつておりましたか。
  127. 山本榮一

    ○山本参考人 その賃上げをしてもらうということに関しては、私にしても赤津君にしても、意見は同じでございます。方法こそ違つたかもしれませんが、賃上げをして組合員全員がよりよい生活をするという気持に持つて行こうとした考えは、決してかわりはありません。その問題に関しても、もちろん上げてもらいたいという気持はございました。
  128. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私がお尋ねしたのと、ちよつと違つたお答えのようでありますが、そうした会社のやり方はいいとお考えになりますか、不当である、けしからぬとお考えになりますか、その点……。
  129. 山本榮一

    ○山本参考人 それも当時の会社の状態というか、社会の経済状態とか、そういうことを考えたときに、当時の経済界が非常に苦しくなつて来たという状態考えれば、ある程度は無理もないのじやないかというような考えになりました。以上であります。
  130. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 銀行局長がおいでになつたそうでありますから、一応質問を保管いたしまして、ただ、今の御答弁では、あなたは賃上げは自分でも望んでいたのだ、賃上げはしてもらわなければならない、こういうふうに今おつしやつた。ところが、一方会社においては、自発的に賃上げをして来たわけです。ところが、それを破棄してしまつた。こういう会社のやり方に対して、あなたはどうお考えになつておるか。あなたは会社の不況であるとか、そういうことを言つておられますが、あなた自身が賃上げをしてもらいたい、しかも会社においては賃上げを通告したにかかわらず、それを破棄してしまつたという、この会社の不信といいますか、そういう行動に対して、あなたはどういうふうにお考えになりますか、その点明確に簡単にお願いいたします。
  131. 山本榮一

    ○山本参考人 私は賃上げをしなくても、現在の給料でもつて、細々ながら生活はやつて行けるという自信がありましたので、別に上げてもたわぬでも、争議をしなければしないでも、毎日作業に従事していれば、どうにかこうにかやつて行けるという気持がありましたので、さほど会社のやり方に対しては不信は感じませんでした。
  132. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 これでやめますが、あなたは先ほどの御答弁によりますと、一箇月八千円程度の賃金のようなことを御答弁になつておるのでありますが、あなたは妻子があるような家庭のように承つたのでありますが、この八千円程度の低賃金でもつて、はたして生活がやつて行けるかどうか。われわれはよけいな心配をしておりますが、こういう低賃金のもとにあるあなた方ほかたくさんの労働者の人たちが、賃上げをしてもらい、最低の生活が何とかできる賃金を支給してもらいたい、かういう運動を組合がやる場合に、あなたはこれをどうお考えになりますか。
  133. 山本榮一

    ○山本参考人 私は現在の社会の経済状態が悪いのじやないかと思います。金融引締めによつて、われわれ中小企業は非常に苦しくなつて来ておる。われわれの会社においてもしかりで、景気さえよければ、私の会社は請負制なものですから、給料のよいときは一万四千円以上私はもらつておつたわけであります。そういうようなぐあいで、現在の事業さえ、経済状態さえよくなつて来れば、私の給料はけつこう請負制ですから上つて来るわけです。ですから、先ほど申し上げましたように、一日仕事をやらなければ、一日影響して来るということは、日給制で請負制ですから、そういうことによつて非常に苦しくなるということはわかります。
  134. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 多賀谷君。
  135. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大蔵省の銀行局長が見えておりますので、私は昭和二十九年八月三十一日、谷村銀行課長の私信として各財務局長あてに銀行員給与引上げについての通牒が出されておる、この問題について質問をしたいと思うわけであります。この通牒を局長は御存じであつたかどうかという点と、さらにこの通牒は、私信ではございますけれども政府を代表した意見であつたか、そのの二点について承りたいと思います。
  136. 河野通一

    ○河野説明員 今お示しの銀行課長から財務局長にあてして出ました書類は、私もよく承知しております。それからそこに書いてありますことにつきましては、私の名前で書類として出し得る公の性質はございません。従つて、私はその書類にサインはいたしておりませんけれども、私の考えとまつたく同じ考えであります。  それから政府という意味でありますが、大蔵省としての考え方は、その中に書いてあります内容と同じ考えであります。
  137. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は経理について、大蔵省でいろいろ指示をなされるということ自体を、否定しているものではございません。しかしこの内容によりますと、経理的に余裕のある銀行でも、引上げてはいけない。その理由は、他の銀行に影響する、その次の理由は、他産業とのバランスにおいて思わしくない、こういうことなんです。これは私はきわめて大きな問題と思うわけです。他産業の給与に影響するから銀行の給与を上げてはいけない、こういうことは、私は銀行の給与がいいとか悪いとかいうことを言つておるのではございません。賃金ストツプをやつておる状態ならば、こういう通牒を出されていいと思いますが、しかし私たちは、今賃金ストツプが行わいているとは考えませんし、また反対でもあるし、政府としてもそういうお考えはないと思うのでありますが、そういう中において、なぜこういう通牒を出されたか。これは各銀行における労使関係に非常な障害を来しているだけでなくて、実際この通牒をめぐつて、むしろ労使がいろいろ紛争を起している、これが非常にがんになつている。でありますから、各地方の労働委員会では、これを中心としていろいろ討議をしている、こういう状態でございます。そこで、私はそういつた憲法に規定されております、また組合法あるいは労調法に基いております労使関係に、なぜ政府が介入されるのか、こういう点について質問をしたいと思う。
  138. 河野通一

    ○河野説明員 私どもは基本的な考え方といたしまして、これは当然のことでありますけれども、銀行の従業員の給与について、具体的に干渉いたすというような意思は毛頭持つておりません。ただいま御指摘のありました銀行課長からの書面の中に、他産業における給与の状況とにおける相関関係ということに触れておりますが、私が申し上げたいことは、現在の銀行における従業員の給与というものが、私は他の産業に比べてきわめて高いとはあえて申しませんけれども、決して低くないと考えております。しかるに、こういう時期におきまして、そのよしあしの議論はいろいろありましようが、財政金融について相当私どもは健全化の政策を進めて参つておる一方におきまして、企業の中にはいろいろあるいは給与を減らさなければならちところもあろうし、あるいは遅配という状況の起つているところもあるように私は聞いておる、そういう際に、銀行における従業員の給与の問題を考えます場合には、銀行いとうものの公の性質というものを私ども考えて参らなければならぬと思つております。一方に多数の預金者をかかえて、この預金者に対して十分なる留保をとることが必要であることは申すまでもない。私どもはこの観点から、銀行の経理ということについて重大なる関心を持つておるのであります。また一方におきまして、これは皆様よく御案内の通り、日本の金融機関の金利、特に貸出金利というものは、国際水準に比べて非常に高い。この金利の引下げということに対する要望は、強い世論としてすでに主張されておる。私どももこの点については、できるだけ貸出金利の引下げということによつて、わが国の経済が、特に企業が国際競争に打ちかち得るような条件を金融面から与えることが、きわめて必要であろうと考えておるのであります。もちろん、この貸出金利が他の諸外国における金利に比べて高いということにつきましては、いろいろな原因があります。これは必ずしも、ただ金融機関における合理化が足りないということだけの問題ではもちろんないと思いますが、私どもはさらに今申し上げましたように企業、いわゆる経済界に対して強くコストの切下げ、それによつて国際競争力をつけて行くということが、わが国の経済を建て直して行くために、最も必要なことと考えております。その一貫として、むしろそれに率先して金融機関におけるコストの切下げと申しますか、経営の合理化ということを、まず第一に強調いたさなければならぬ段階と申しますか、そういうところへ来ておると私は考えておるのであります。従いまして、銀行の経理上、ある程度の余裕がかりにありといたしますならば、私はまず進んで貸出し金利の引下げに充てるべきであると考えておるのであります。そういう観点から、銀行の経理については、その出て来る利益の源、収益の源というものが、単なる普通の純然たる私企業とは、銀行の公の性格という点にかんがみて、おのずからそこに違うものがある。従つてこの点に着目いたしますならば、銀行の経理という観点から、この経理を堅実にして行くという観点から、できるだけその堅実性を保持するというところに、すべての施策を集中して参らなければならぬと考えておるのであります。しかも、先ほど申し上げましたように、これは失礼な言い分かもしれませんが、銀行の銀行員の方々の給与は、必ずしも他の企業に比べて 悪いとは言えないと私は考えております。そういう観点から申し上げますと、先ほど来引用されております銀行課長の出しました書面の趣旨は、決して今お話のありましたように、労働の基本的な権利に対して不当なる干渉をしておる結果になつておるとは、私ども考えておらないのであります。
  139. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 不当な労使間の介入ではない、こう言われておりますけれども、事実は、これをめぐつて非常な紛争がき起たということは、御承知の通であります。そういうような政策をとりたい、こう言うならば、あるいはそれについていろいろ審議もして行きたいと思うのですけれども、この労働関係は、こういつたものに制限をする場合、あるいは政府が介入する場合には、やはり制限列挙で、そうして法律的な根拠に基いてさるべきであると思う。公務員でも公企労法の関係の労使紛争の場合でも、その通りであります。ところが、何ら法規に根拠を持たずして、こういうことをされるのは、まさに越権行為ではなかろうか。たとえば、通産大臣が電力の労働者の賃金について、監督官庁であるというので、そういうことをしたら、電気料金が高くなるといつて給与を上げてはいけない、こういう指示をしたと仮定します。これは常識的に考えましても不当介入ではないか、こういうことが考えられる。あるいは運輸大臣が私鉄の問題について、そういう発言をしたといたしますと、やはり同じ状態になる。そこで私は、そういうことは大蔵省だけが許さるべき性格のものではないと思う。ですから、法律的に根拠を持たないでそういうことをおやりになつておるが、これは不当ではないか、政策を言うのではなくて、むしろ法律的な根拠をお示し願いたい、かように考えております。
  140. 河野通一

    ○河野説明員 先ほど冒頭に申し上げましたように、銀行における従業員の給与自体に、私は干渉するようなことは考えておりません。しかしながら、銀行の経理、ことに銀行の経理の中に占める経費のもちには、御承知のように、物件費と人件費がもちろんあります。そのうちにおける人件費が相当多額なものを占めるということも、御案内の通りであります。従いまして、この経費を節減するという観点からいいますならば、やはり人件費についても、できるだけ節減をしてもらわなければならぬということは、私としては当然申し上げてさしつかえないと考えておるのであります。これは銀行の従業員の方々だけにその犠牲を押しつけるということではもちろんありませんで、経営者においても、経費の節減といいますか、合理化といいますか、そういう点で改善をしなければならぬところは多々あると思うのであります。この点については、常時いろいろな形で私は経費の節減、合理化という点について、たびたび行政上の注意を与えて参つております。それとあわせて従業員の給与、つまり広く言つて人件費というものが、銀行の経費の中に占める割合が非常に大きいのでありますから、この経費の節減という観点から、人件費がいたずらに膨脹することのないように、私どもは常に経営者に対して十分なる注意を喚起し、また指導をいたして参らなければならぬと考えておる次第であります。
  141. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 経費の節減という点は、若干わかるのですけれども、他産業に影響するとか、他の銀行に影響するということは、まつたくあなたの所管外のことである。しかも非常に能率を上げて経理上余裕のある銀行でも、他産業に影響するからということは、大蔵省としては、まさに越権行為である、不当介入ではないか、こういうことを言つておるのですが、その点に限定してお答え願いたい。
  142. 河野通一

    ○河野説明員 私は科学的な計算の仕方は、いろいろ専門的にあると思いますが、銀行の従業員の方々の給与は、他産業に比べて決して低くないということを申し上げたので、いかに銀行の経理について経費の節減が必要であろうといたしましても、その銀行の従業員の給与を、常識的に考えて非常に低いところに押えてまで、銀行の経費を節約するようにということは言えないと思います。ここは結局常識的に考えて、世間で行われている他産業の給与とも比較して考えて参らなければならぬ。そういう意味で、私は常識的に今他産業との比較ということを申しておるのであります。高いか低いかということは、いろいろ議論はあると思います。ことにそういう点は、実は私は専門家ではございませんから、理論的にははつきりしたことは申し上げかねるのでありますけれども、やはりそういつた給与が他産業に比して低いとは言えないという点に、これらの問題についての私ども考え方を立つて行く基本があるのでありますから、それらの問題は、やはり他産業との給与比較ということを頭に置いてでなければ言えない、私はかように考えている。
  143. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その点労働省にお尋ねしたいのですが、労政局長は四時ごろでなくては来られないというので、法規課長にお尋ねしたい。  他の銀行への影響及び他産業との関係においておもしろくないという通牒は、従来政府がとつて参りました民間産業の労使関係には介入しないという原則に、違反しはしないか、少くとも違反の疑いがあるのではないか。この点、労働省ではどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  144. 黒石拓爾

    ○石黒説明員 お答え申し上げます。実は銀行課長の書類は、私は正確なものを承知いたしておりませんので、あるいはピントがぼけるかと思いますが、大体のところを申し上げます。  銀行法は、大分古い法律でございますので、非常に包括的な書き方をしておりますが、ともかく今銀行局長が申しましたごとく、銀行の経理健全化のために、一般的にいろいろな経理内容について指示を与えるというような権限は、銀行局長にあることは確かにあると思います。その範囲におきまして命令をなし、あるいは勧告をするということは当然のことでありまして、私どもとしてとやかく申すべき筋合いではないと考えております。
  145. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この通牒は、ちようど全銀連が要求を出し、また闘争しつつあるさ中に出た通牒であります。でありますから、与えるところの影響も大きいし、またねらいもそれである。そういう情勢の中に出たということになると、通牒そのものも問題で、出し方も問題でありますが、これは労使の中に政府は不介入だ、こういうことを常に大臣も叫ばれておる、その原則にどうも理論上もとると私は考える。ことに他の銀行はどうだとか、他の産業の労働者の賃金に影響があるとか、そういう政策であれば別ですけれども、いかに銀行法で規定しておりましても、これは前の古い法律であるということになれば、なお、その後組合法ができました後において、労使不介入の原則が確立されております今日においては、私は明らかに越権な私信であり、通牒であると考えるわけですが、その点についてお聞かせ願いたい。
  146. 黒石拓爾

    ○石黒説明員 労使関係は労使の自主的な交渉によつて決定すべきものであつて政府としてはこれに介入しない、これは仰せの通りでありまして、労働省としてはそういう方針で来ておるわけであります。しかしながら、その事業の監督官庁が、その与えられた権限の面から監督をすることが、労使関係に影響を及ぼすようなことは絶対いけないということは、これは少し無理じやなかろうか。そこで、間接的に労使関係に若干の影響が出て来ることは、私どもとしてやむを得ないところじやないかと考えておる次第であります。
  147. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 間接的に少し出るということではなくて、題から見ましても、銀行員の給与引上げについてということで、かなり長い私信ですけれども、今度の給与引上げは絶対にまかりならぬという通牒です。ちよつと読みましても、これが間接的にとかなんとということでなくて、直接この問題とめぐつて労使が紛争を続けておる、またこれが地方労働委員会の大きなテーマになつている。こういうことを労働省は知つておられるはずである。それに実は専門家である課長から、よもやそういう答弁を伺うとは思わなかつたのですけれども、この件について、私は公労法との関係において、この前の委員会日本銀行法を中心として中西労政局長に質問を展開したことがある。その際に、同じ公共性ということを言うならば、日本銀行の給与についてはどうかという質問をいたしました。ところが、いや、あれは日本銀行法といいましても、これは純然たる民間企業ではないけれども給与の面については全然別で、これは労使双方でやれるのだということで介入は全然できない、こういう趣旨であつたのであります。そこで、どうもきようの話とはまるつきり食い違うのじやないかと思いまして、実は質問をしておるわけですけれども、当の本人がお見えにならないので、これは一応銀行局長として通牒を撤回するとか、取消すとか、そういう御意思はないかどうかということを承つて後に、労政局長に質問いたしたいと思います。
  148. 河野通一

    ○河野説明員 私の名前で出た書類でありませんから、私が撤回するというわけには参りません。また撤回させる意思はございません。
  149. 持永義夫

    ○持永委員 今の問題に関連して、ちよつと局長にお尋ねいたします。先ほどのあなたの御意見は、われわれ非常に賛成であります。そこで一点お伺いしたいのは、各銀行の株式の配当ですが、これについて、やはり大蔵省としてある程度の指示をされておることだと思いますが、それは一般の監督権でおやりになられるのか、あるいは特別な法規によつてつておられるのか、その点をお伺いいたします。
  150. 河野通一

    ○河野説明員 これは一般の監督権によつて、いわば言葉は非常に悪いかと思いますが、行政指導としてやつております。強制力は持つておりません。しかし現在においてはわれわれの指導いたしております線に来ておるのであります。
  151. 持永義夫

    ○持永委員 そういうことからして、やなり同じような考えで、銀行職員の給与は、局長は非常に慎重な言葉で言われましたけれども、大体においてわれわれは高いと思つております。従つてお話のように、こういう広義の非常に公共性を持つておる銀行職員が、非常に高い給料をもらうということについては、これは他の産業の従業員、また一般国民も必ずしもこれを快しとしません。だから私は先ほど局長が言われた一般の監督権において適当な指示をされたことにつきましては賛成であります。これはわれわれの立場から、そういう点を特に申し上げておきます。
  152. 井堀繁雄

    ○井堀委員 銀行局長に、重要な点だけはつきりさしておきたいと思います。機能銀行課長から、かなり詳しい説明を伺いました。要約いたしますと、銀行経営の公共性にかんがみて、銀行の従業員の給与に重大な制約を加えるような処置もまたやむを得ないといつた意味説明が何回となく繰返されて、この委員会でも確認されました。そこで、かかる重大な、政府の政策といたしましても基本的な性格を持つものについて、一課長が書面をもつてそういう重大な意思表示をするということについて、多大の疑いを持ちましたので、上司の指揮監督のもとに行われたものと思いましたので、その上司は一体とどういう地位の人かということを尋ねたら、銀行局長の指揮を受けたという回答があつたわけであります。そこであなたに本日御出席委員長を通じてお願いしたわけであります。私のお尋ねしたいのは、銀行関係の従業員の給与がいいか悪いかということは、今日問うところでありまして、もし他の労働者給与比較して格段な高い給与が支払われていたといたしましても、そして銀行業務の正常な運営の上に悪影響があるという極端な反射作用が起きたといたしましても、そういうことを政府の一行政機関が、日本の国民経済の基本的な政策に触れるような問題を簡単に処置すべきものでないとわれわれは考えたものですから、これは吉田政府の方針がかわつて来たのではないかという疑いを持つたのであります。この点を明らかにしておきたい。あなたの責任をどうこう言うのではありません。私どもは昨日の課長の発表といい、本日のあなたのこれに対する裏打ちといい、われわれは非常に重大にとつておる。それは一銀行に関する問題だけじやありません。あらゆるものに通ずるものであります。ことに今日の銀行は営利社団、すなわち私企業である。この私企業に対して、政府が大胆な利潤の制約を加えるなり、財産権に対して極端な制約を加えるような政策が、もし打出されて来るとするならば、労働者の生活権を左右する賃金問題に対して、統制もしくは制約をなさることもまたあり得ると思う。ところが今日吉田政府は、どこにも私企業に対する財産権を左右するような政策は見受けられません。利潤を制限するにいたしましても、こく行政的な、遠慮がちな——私は今日のような銀行業務に対しては、もつと思い切つた利潤制限をなぜしないかと言いたいのでありますが、そういうことについては、実に手ぬるい感じを国民は持つておるのであります。一番弱い労働者のところへ影響するような政策というものは、よほど考慮を払わなければならぬと思う。そこで私ははつきりしていただきたいと思うのは、簡単なことです。局長、あなたの御意思か、あるいはむしろ吉田政府の御意思かということを聞きたいと思うのです。これを伺つてからもう一度お尋ねいたしたいと思いますから、この点について、もう一度はつきり御回答をいただきたいと思います。
  153. 河野通一

    ○河野説明員 先ほど御質問がありましてお答え申し上げました通り、大蔵省といたしましては、今銀行課長の書面として御指摘のありました内容につきましては、その通りにみな考えております。それ以外私どもとしては、特に一般産業、一般企業の従業員の問題をかれこれ言つておるのではありませんので、公共的性質を持つている金融機関、ことに銀行というものの立場から、特殊な問題として私どもはこの問題を考えておる次第でございます。
  154. 井堀繁雄

    ○井堀委員 重ねてその点はつきりしていただきたいと思いますが、大蔵省という抽象的なものでなくて、政府というふうにとつてよろしいか。
  155. 河野通一

    ○河野説明員 具体的に私はこの問題について相談をいたしましたのは、事務当局の最高の責任者である事務次官以下各局長でありまして、この問題について完全に相談をした上で、この問題を処理したのであります。
  156. 井堀繁雄

    ○井堀委員 重ねてお尋ねいたしますが、大蔵大臣はこのことを承知いたしておりますか。
  157. 河野通一

    ○河野説明員 銀行課長の書面自体については、承知をいたしておらぬかと思います。しかし、今私が申し上げておりますような意味における私の考え方については、大蔵大臣は十分了承されておるものと私は考えております。
  158. 井堀繁雄

    ○井堀委員 その辺がまだはつきりいたさないようでありますが、私どもはこの機会に大蔵大臣の指揮を受けて——それは課長の手紙でありましようと通牒でありましようと、そのウエートには相違がありましようけれども、その結果するところは同様だと思うのです。その結果について一度申し上げまして、その上ではつきり大臣とどういう関係においてこういうものが出たかということを伺う方が親切だと思うのですが、私のお尋ねしようとする考え方を明らかにいたしたいと思います。  それは二つあります。一つは、少くとも国政をあずかる者といたしまして、きわめて重大なことに関係をしておる。それは日本経済の方向を動かす大きな政策に関係がある。それは先ほども申し上げておりますように、日本の憲法の中における財産権と労働権をはつきりはかりにかけて、すなわちそれは憲法の条章を受けて立つておるのが労働基準法であります。その労働基準法の中において明らかにされておりますることは、労働者労働条件というものは、その理想としては人たるに値する生活を享有せしめる程度のものでなければならぬということを、憲法の条章を受けて明らかにされておる。ことに労働条件というものは、労使が対等の立場において定めなければならぬというこの二つのことがきわめてはつきり現われておるということは、憲法の精神を法律にうたつただけで説明を要さないと思う。こういう基本的な憲法の精神をも動かす場合におきましては、政府の単なる政治政策におきましても、もちろん重大であります。こういうことというものは、そう軽々に行われるべきものではございません。でありますから、ここで問題になりますのは、事柄は一課長が銀行業者に出した書簡であつても、この二つの問題がくずれて来るわけです。第一労使対等の立場がくずれます。銀行の一番こわいお役所は、銀行局であります。そのお役所がこうしなければならぬという意思——強い弱いは、受け方によつて違うのですが、しかし、昨日の課長の答弁といい、あなたの今の裏打ちといい、賃金の抑制を意図しておることだけは争えない。賃金の抑制を意図しておることだけは争えない。賃金がむやみに高くなるということは、結局銀行の経営が適切なものでないという結果を見通してやつたという——その目的はどこにあるかは別でありますが、結果は賃金の抑制にあるわけです。賃金を抑制するということを監督官庁が経営者に向つて言うと、経営者は、そうでなくても何かの力をかりて労使対等の立場をくずしたいのは、分配問題を争うときの、いずれの立場に立とうと、当然な行為です。こういうものに、いささかも権力が介在するような、ことがあつてはならぬことは言うまでもないのであります。この点はよほど考えなければならぬ。  いま一つの問題は、経済政策として国民が重大な関心を寄せ、国会におきましても、このことは再三論議をされて来ておるのです。たとえば、吉田総理大臣も施政方針にも言つておるように、自由主義経済を施行しておるのであります。自由主義経済を施行しておる吉田政府の政策というものは、どこにも根本的には変更を加えられておりません。賃金の統制がいささかでも行われるという政策が出るときには、これと同じ比重において財産権に手がついて来る。これは計画経済、統制経済のどちらにしても、やむを得ざる一つの圧力になつて来ることで、好ましいことではありません。ところが、このことについては再三言つておる。この言葉は失言だと思いますけれども、国会の本会議において、計画的経済を施行されてはどうかという質問に対して、吉田さんは言下に、計画経済は共産党の言うことだといつたようなことを言つて、きわめて明確に自由主義経済の施行を強硬に打出しておる、この変更を聞いておらない。こういうような問題を、ばらばらなしくずしにとるべきものでないと私は思うのでありまして、ここまで十分お考えになつて、かかる文書が出たものであるかどうかを私どもは伺いたかつた。決してあなた方の責任をどうこう言うのではありません。もしそれが、私が今お尋ねしようとするような政府の意図であるとするならば、政策全体に対する問題として考えて行かなければならぬ。私どもは吉田政府の態度に対して、重大な責任の追究をいたさなければならぬことになるのであります。そういうことは、私としては、いかに吉田政府が人気が悪くとも、かかる重大問題を閣議を経ないで修正しようとは思われませんし、そういうことが閣議で決定されたということを私どもは聞いておらない。それといま一つは、先ほど申し上げたような労働者の基本的な人権、憲法の精神に抵触するような事柄というものは強制的になすべき行為じやない、かように考えますが、銀行の公共性を、可能な反面からどこからでもいいから手をつけたいという熱意の余りに、勢い余つてこういうことをやつたのではないかと私は思う、私は好意的に、課長の狭い範囲、狭い視野において判断して行われたことではないかと思つたので、お尋ねをしたわけであります。そのいずれであるかということをこの際明らかにして、善処を望みたいと思うのであります。
  159. 河野通一

    ○河野説明員 御質問の要点が、私あるいは聞き間違つておるかもしれませんので、お答えがあるいはピントがはずれたことになるかもしれませんが、その際はあらためて御指摘をいただきたいと思います。  私が先ほど来申し上げておりますように、この問題につきましては、非常に重要な問題であることはよく承知いたしております。  それからちよつと余談になりますが、銀行課長から出しました書類は、別に大した問題じやございませんけれども、銀行経営者自体に出した書類ではございません、地方におります財務局長に対して財務局長がそういう問題について聞かれた場合に、腹づもりとして持つて置くようにというもので、銀行経営者に出した書類ではございませんので、一応お断り申し上げておきます。  私はかねてから銀行経営あるいは金融機関の経理をどう考えて行くかということについて、いろいろ考えて参つております。銀行における収益の出て参ります源は、銀行の経営者あるいは銀行の従業員の方々の努力にまつことはもちろんでありますが、普通の私企業とはその源が違うと思います。たとえば早い話が、預金金利も統制されておる、貸出し金利も現在統制されておる。従つて、かりにこの統制の貸出し金利の最高限というものをさらに引下げたという場合におきましては、銀行の収益というものはてきめんに減つて参る。早い話が、最近日本銀行の高率適用の場合を上げたために、現在非常に収益が減つてつておるというのは事実であります。よしあしはいろいろ議論がありましようが、私はそういつた意味におきまして、銀行における一番大きな収益の源である貸出の金利と預金の金利の差というものは、どちらも統制されておる。そういう点から行きますと、銀行の収益の出て来る源というものは、非常に失礼な言い方でありますが、単に従業員各位の御努力あるいは経営者各位の尽力あるいは商才あるいは判断とか指揮とか能力とか、そういつたものだけから出て来るものでないと私は考えております。従いまして、銀行における収益をどういうふうに見て行くかという場合におきましては、私は他の一般の純然たる私企業における収益を考えて行く場合とは、考えがおのずから違つて行かなければならぬと考えております。こういう考え方において私は、何もこの半年、一年の間にそういう考え方なつたのでは毛頭ないのでございます。この考え方は、少くとも私が銀行局長に就任いたしました三年半前から、もちろんその前から、私の前任者たちが一貫してとつてつておる考え方であります。もちろん、それだけではありませんが、この点が銀行の公共性というもの、単なる私営利機関でない銀行の公共性というものの特質の現われておる幾つかのうちの一つであろうと私は考えておるのであります。従いまして、これらの収益が、ただ利益が名目的に上つて来たから、これは経営者と株主と従業員とが適当にわけてとればよろしいというような性質のものでないと私は考えておるのであります。もちろん、たびたび繰返して申し上げますように、私どもは従業員の方々の個々の給与に干渉しようという考え方は毛頭ありません。しかし、今お話がありましたように、銀行の経理ということが非常に公の性質を持つておるという点から、これに対して私どもは重大なる関心を持ち、その結果、あるいは人件費全体に対して、私どもができるだけ節減されることを希望するということは、結果として従業員の方々の給与という問題に具体的には触れて参ると思いますけれども、それは私どもはそれが目的ではなくして、銀行の公共的立場から、その経理を堅実にして行く、そうして許されるならば貸出し金利の引下げに充てて行く、あるいはそのときの経済情勢によつては預金金利を上げる。日本のように、資本の蓄積が非常に足りないところにおきましては、資本を集めるために、あるいは預金金利を上げた方がいいかもしれないと思います。そういう余裕があるならば、預金金利を上げるなり、あるいは貸出し金利を下げるなり、もつと別な言葉でいえば、第三の方法としては、預金者の利益のために、安全性を確保するための内部留保を厚くする。これらのいろいろな方法によつて、とにかく利益が出たから株主が配当してしまうといつた考え方は、もちろん私は許されないと思うし、利益が出たから重役が賞与としてみんなとつてしまうということも許されないというふうな考え方に立つて、これらの問題を考えておるのであります。今お話がありました吉田内閣における基本的な経済政策という問題とも、もちろんつながりがないとは私は申しませんけれども、今私が考えておりますところは、そういつた、いわば銀行の経営あるいは銀行というものの公共的な使命を達成するために、どうして行つたらいいかという、ごく局限された範囲内においてこういつた処置をとるべきものと私ども考えて、銀行課長からそういう処置をとらしたような次第でございます。
  160. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねしていることは、きわめて簡単なことでありますが、事柄は、今あなたがじゆんじゆんと銀行の公共性なり社会性についての御配慮の上から、特に経理内容に対する親切な御指導は私どももまつたく同感であります。もつと積極的にやつてほしいという希望すら持つておるくらいであります。その点に対しては、私は何らの疑いもさしはさんでいないのであります。私は一応経理の上からそういう書簡が出たものと善意に解釈してお尋ねをしたのであります。ところが、課長の答弁はそうでなかつた、きわめて確信に満ちて、しかも必要性を強調されましたから、私は議論にわたることを避けて、あなたをお呼びしたわけです。そこで先ほども言つたのでありますが、今あなたの御説明の中ではつきりいたして来たのは私企業ではありますけれども、公共性にかんがみていろいろと制約を加えて——配当の制約、重役の報酬等に対して行政的なあるいは法律的な力を借りてある程度の制約が行われておるということも承知しておるわけです、これは当然のことなんです。だから賃金に手をつけていい——、あなたは人件費という言葉を使われましたが、人件費であればいい。しかしその人件費の内容が、賃金にわたつてはならぬと思う。このことはあなたの所管外でありましようけれども、これは憲法の条章に触れて来ると思う。御存じでしようけれども明らかにしたいのでありますが、憲法の二十七条において、賃金とはつきり書いてあります。賃金、就業時間、休憩その他勤労条件の基準は法律でこれを定めることになつております。法律以外にできないのです、法律をもつてやらなければいかぬ。ところが財産権の保護については、二十九条で、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」という但書がついております。財産権は侵してはならぬという規定に相なつておりますが、この精神に基いて、私企業であても、公共のためにはそれぞれの制約が加えられるということは当然なことでありますから、この憲法の精神から行きますならば、賃金に対して手をつけるときには、法律によらなければいけない。法律によろうということは、憲法がきびしく規定しているのであります。これは全体の政策に影響して来ることであります。もし吉田内閣が賃金の統制を行うということになるならば——昨日の議論になつておりますところでは、最低賃金すらきめ切れぬということを政府は繰返して答弁しておる。最低賃金をきめ切らぬような現状において、賃金の統制ができないことは議論の余地がない。こういう現状において賃金統制を結果するようなやり方は、言うまでもなく今日時期にあらずということは、これはもう自問自答しているのと同じことであります。こういう意味で賃金の規制をするような行き方というものは、非常にやかましく警戒されておるところであります。そういう意味で、今あなたの御答弁によると、経理の健全化のために、単に人件費あるいは物件費その他といつたような経費の二、三について御注意があつたというのならば、きのうの課長の答弁とたいへん趣きが違うと思うのです。ですけれども、銀行の経営者が、もしそれをたてにとつて、賃金統制の行政命令のようにこれを使つたとするならば、これは悪用していることになるのでありますから、労働組合はそれを了とされて適当な措置を講ぜられるであろうと思うのです。きのうまではそれが明らかでなかつたのでお尋ねしたわけであります。なお私のお尋ねがそのままであれば、御答弁はいりませんけれども、もし内閣の方針が何かかわつて来ておるようでありますならば、この際それを他の方法でただして行きたいと思います。
  161. 河野通一

    ○河野説明員 繰返して申し上げたいと思いますが、私どもは先ほど来申し上げておりますように、経理の堅実性、特に人件費というものがコストの中に占める割合が非常に大きいのでありますから、これをできだけ節減をして行くということの必要性を感じておる。しかし、これを裏から言いますとそれじや節減すれば節減するだけ、どれだけ節減してもいいかという問題になるわけであります。これは、やはりおのずからそこには銀行の従業員の方方の給与というものが、非常に低いところにあるのに、さらに人件費を節減しろということは、無理だと考えております。従つて、そこはどうしても、間接的には銀行の従業員の方々の給与というものが、他の産業に比べて、今お話がありましたように非常に高いという御議論もあると思いますけれども、私は少くとも低くない、そういう状況のもとにあるからこそ、人件費の節約ということを強く押し出してもらいたいということが言い得るというふうに考えておるのであります。私どもは、決して給与自体に干渉するということではなしに、人件費の節減ということが言い得るような状態にあるというふうに考えるがゆえに、私は申しておるわけであります。
  162. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 黒澤幸一君。
  163. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 塚田事件に対して、二、三参考人に質問が残つておりますので伺いたいと思います。山本参考人にお尋ねいたします。  山本参考人は、塚用製作所の第一組合を脱けまして、第二組合組織のために何回か会合を開いて参つておるようでありますが、その会合の一回に会社側の丸山労務係長が出席しておるということが明らかであります。この丸山労務係長の出席に対しましては、山本参考人自身が、その会合にお呼びになつたということを先ほど述べておるのでありますが、これは真実であるのかどうか。また何のために丸山労務係長を呼んだのであるか、重ねてこの点を明らかにしてもらいたいと思います。
  164. 山本榮一

    ○山本参考人 先ほど申し上げましたように、組合と会社の団交の真実性というものを組合が発表しないということによつて、実際の団体交渉というものを、ストを避けてやりたいという人に打明けてもらいたいということを要求して、来ていただきたいということをお願いしたのであります。だが、実際は当日会場には参りませんでした。
  165. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 申し上げるまでもなく、労働組合労働者の自主的な意思によつて組織されるべきものでありまして、使用者側の支配、介入、指導のもとにこれが行わるべきものでないことは、労働組合法に明らかになつております。     〔池田(清)委員長代理退席、持永委員長代理着席〕 そうした建前にあるにもかかわらず、争議関係の問題につきまして、使用者側、ことに丸山労務係長を呼ぶというようなことは、あなたのこういう問題に対する行き方が不当ではないか。正しいとわれわれは判断できないのでありますが、あなたは会社側と通謀といいますか、打合せ等で、そういうことをやる行為を正しいと思つておるかどうか、その点、どうお考えになりますか。
  166. 山本榮一

    ○山本参考人 私は過去において労働運動をし、共産党とかそういうものに関連して苦しい経験をなめた、そういうふうに今赤津君が申されましたが、私の身分を洗つていただけばわかりますように、労働運動とかそういうことは、いまだかつて一回もやつたことはありません。それがゆえに、労働運動というものに対する知識が非常に乏しくて、そういう行いをしてもいいものか、いけないものかという判断がつかなかつたのであります。それでそういうことをお願いしたのでありますが、あとで聞いてみた結果、それはいけないことだということがわかりまして、その点に関しては、私は悪かつたと思います。
  167. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 その点明らかになりましたので、続いてお尋ねいたします。あなたは、労働者が団結するということが、労働者の生活改善なり、社会的な地位の向上の上において、最も大きな力であるということは御承知になつておると思いますが、こういう立場にある労働者労働組合をつくつたにもかかわらず、一方においてまた第二労働組合をつくる。わずか二百名足らずの組合において、第一、第二というような二つの組合が分裂するというような行き方が、はたして労働者の幸福をもらすものであるかどうか、そういうことによつて、はたしてお互いの生活を守ることができるかどうか、そういう点に対してどうお考えになりますか。
  168. 山本榮一

    ○山本参考人 当時は、私は非常に単純な考えで、是が非でも働かなければ食えない、そういう考えでおりましたので、当時の心境としては正しい、そう思つておりました。しかし現在に至つては、団結ということはあくまで正しいと私も思います。しかし、それが正当な組合運動でなかつた場合でしたら、私はあくまでそれに反対してやるべきだつた、そう現在は考えております。
  169. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 原参考人にお尋ねしたいと思うのでありますが、先ほどこの点につきましては、保守派の委員からも御質問になつて、御指摘があつたのでありますが、この塚田製作所における争議中、あるいは争議のないときでも、組合長の赤津参考人の自宅の周囲に警察官が参りまして、組合内の会合、あるいは赤津参考人の動勢等を調査しておるというようなことが述べられておるのであります。それに対しまして、原参考人は、警察といたしまして捜査上必要がある、あるいは防犯上、そういういろいろな必要から、そうした警察官のやり方をされるのだという意味のことを述べられたのでありますが、一労働者であり、小さな一組合組合長の赤津君の自宅の周囲に警察官が参りまして、日常ふだんにその動勢を探る、あるいはどういう会合をやつておるかということをあたりから聞き取る、こういうやり方は、警察としては行き過ぎではないかと考えるのでありますが、その点どういうふうにお考えになつておるか、もう一度御答弁を願います。
  170. 原文兵衛

    ○原参考人 先ほどその問題は倉石委員さんの御質問にお答えしたのでありますが、赤津君の家の周囲とか、あるいは赤津君がどこかで会合を持つたときに警察官が聞きに行つたかどうか、そういうような具体的な事件に対して、そういうことがあつたかどうかは、私は報告を受けておりません。毎日たくさんの警察官がいろいろな行動をしておりますが、その行動の一々については、警察本部長に報告はないのであります。ただ、私が申しましたのは、警察は犯罪捜査のため、あるいは犯罪を予防するために、管内の状況というものはできるだけ詳しく知つておく必要もあり、また知つておかねばならない、われわれ警察の責務を完全に遂行するための当然の警察活動であるのであります。そのために管内の有力者であるとか、あるいは管内にどういう団体が存在するか、あるいはどういう労働組合があるかというようなことをいわゆる情報としてこれをキヤツチするのは、警察として当然の任務である、いささかも違法でないというふうに私は申し上げたのでありまして、個々の警察官——松本の警察署にも百数十名の警察官がいるのでありますから、その警察官が毎日どういう行動をしておつたかということについては、私は報告を受けていないから存じない、こういうふうに申し上げたのであります。
  171. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 原参考人はそうした事実を知らないということでありますが、この席上において、赤津参考人がそういうことを述べられたために、私はその真実を知りたいと思つてお尋ねしておるのです。ただいまも申し上げましたように、原参考人は、犯罪の捜査あるいは予防上必要がある場合には労働組合、あるいは、有名な人に対して、こうした警察官が調査をするというようなことで、一労働者であり、一労働組合員である赤津君の自宅の周囲に対して警察官が取巻いて、そうしていろいろ赤津君の行動をお聞きになる、あるいは何か会合があるのではないかということをお尋ねになる、そういう警察の行動は、今あなたが申されたような意味と違つた目的のためにそうした行動をとつているのではないか、そういうふうに私には想像されるのであります。その点につきましては、事情を知らないということでありますから、私はそれ以上お尋ねをしようとは思わないのでありますが、そういうことは、たとい原本部長さんがお考えにならなくても、往々にして誤解をされる、またそういう県の警察本部の見解と違つたような行動をとる警察官も間間あるのでありまして、われわれはそういうことを——私は栃木県の選出でありますが、栃木県におきましてもそうしたようなことがありまして、最近も警察に交渉して、そういうことのないような処置をとつてもらうことをお願いしたのでありますが、そういう誤解を受けるようなことは、あなたの部下に対して今後御注意を願いたいということをお願いしておきたいと思うのであります。  それからもう一点、これも島上委員からお尋ねになつたのでありますが、輿宗作君の陳情書を見てみますと、非常に警察において暴行脅迫をされたということを述べられております。この塚田事件につきまして、赤津君外四名の共同謀議による住居侵入あるいは強要ということで起訴されております。もし輿宗作君の陳情書が真実としますならば、かえつて警察が暴行脅迫をしているのではないか、そういうふうにもわれわれはとれるのでありますが、そういうことは絶対にないということでありますので、その点は重ねてお尋ねいたしませんが、先ほど赤津参考人の答弁によりますと、この塚田事件のために警察に留置されました諸君は、調べ中でありましても手錠をかけられておる、そうして聞取書ができまして署名するときだけ手錠をはずされておる、そういうような調べをされたということを述べられておるのであります。これらの諸君は、逃亡の憂いもない、あるいは暴行の心配も、警察の中でお調べを受けるのでありますから、ないと思うのでありますが、そういう手錠をかけて聞取りをされたというようなことを述べられておるのであります。こういう事実を御承知になつておるのであるかどうか。またそういうことがこの委員会において述べられた以上は、原参考人といたしまして、知らないとおつしやられればそれまででありますが、そういうことを耳にした以上、今後こういう事実があるかどうかお調べになるお考えがおありになるか、御答弁を願いたい。
  172. 原文兵衛

    ○原参考人 被疑者の留置中における取扱いなり、あるいは取調べにつきましては、慎重の上にも慎重を期するように、取調べに当る警察官も十分経験のある者を選び、しかもよくその点を注意してやつたということは、先ほど島上委員の御質問にもお答えした通りであります。また輿君が非常に乱暴な取調べを受けた、あるいは調べ中に暴行脅迫されたということを言つているということを聞きましたので、その点につきましても、われわれはまずないとは信ずるけれども、しかし念には念を入れて、事後におきましても十分調査したところが、そういう事実は絶対にないのであります。その点も先ほどお答えした通りであります。また、ただいまの御質問でございますが、取調べ中に手錠をかけられたまま取調べを受けたということを被疑者が言つているということ、これも私どもやはり耳にしましたので、この点につきましても十分に調査をし、報告を受けたのでありますが、そういう事実は絶対にございませんので、この点お答えいたします。
  173. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 赤津参考人の先ほどの陳述と、まるで反対な御答弁があつたのでありますが、なお重ねて赤津参考人に先ほど言つたことに間違いがないかどうか、お伺いいたします。
  174. 赤津勉

    ○赤津参考人 その点については、検事が調べたときに警察官がついて行つたわけであります。検事に調書をとられている間中、机の上をたたいていてもとつてくれない、そういう事実があるのであります。最後に調書をとられて判を押しなさいと言つたときに、初めて手錠をはずしてくれた。警察の巡査ですが、それもちやんとそばにいて全然はずしてくれなかつた、そう言つております。
  175. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私は塚田事件に対して、ただいままでいろいろ本委員会に提出されました文書あるいは本日の各参考人のお延べになつたこと等から判断して考えるのでありますが、警察があまりに問題を重大に取扱つたのではないか、いわゆる労働組合労働争議に対しての認識に欠けている点があるのではないかというふうな考えをするのであります。本件に対しまして、五名の諸君が共同謀議の上に住居侵入あるいは強要をしたというのでありますが、昨日までお互いに労働組合の同志であり、しかも最も重要な地位にある書記長組合を脱退してしまう、しかも会社の方と通謀した態度をとつているというようなことについて、労働組合の諸君が憤激するのはあたりまえだと思います。ことに、労働者の諸君は単純でありますから、それに対して激高して、けしからぬという気になるのは、これまた当然だと思います。共同謀議の上にそういうことをやつたと言いますが、それじやみんなで行つて聞いてみようじやないかという気持になるのも、やむを得ないと思うのです。それを共同謀議をして住居侵入をやつたとか、事前に計画的に暴行を山本前書記長にやつたということは、われわれ常識的にも考えられない。たとえば、ばかやろうといつたようないろいろな暴言を吐いたと言いますが、われわれ幾多の労働組合争議や、また会合等に行つて、そういう事実を知つております。労働組合の大会などで、もめることがあります、あるいは争議のときに組合内部で紛争が起ることもある。そういう場合の個々の暴言をとりましたならば、これは暴行脅迫になるかもしれません。そういう労働組合という、しかも争議が起きている、お互いに自分の生活を守ろうとする重要な闘争をやつているときに、その最も信頼する闘争の中心であるべき書記長がそうした態度をとつたということに対して、その書記長の真意を確かめ、その書記長の誤つた態度に対して反省を促すことは、許された、さしつかえないことではないか。そういうことの間に起つたこの言動を、一々一般的な個々の問題としてそれを取上げて犯罪になるかどうか。そういうことを申しますならば、先ほど島上委員が申されましたように、日本労働運動というものは、警察官がそこまで介入するといいますか考えるということになると、できなくなつてしまうのではないか、そうして戦前のような特高のもとに労働争議をやるような事態が来るのではないか、そういうことを、われわれはこの問題を通じて考えるのであります。塚田事件の問題は、その影響するところ非常に重大であると思うのでありますが、事件の真相の結論は裁判所あるいは地労委によつて決定されるものでありますから、その点には触れませんけれども、われわれはこの問題を通じて、さような警察官があまりに一般的にこの労働組合闘争を取扱つた結果が、かような問題を起した大きな原因でもあるのではないか、こう考えるのでありますが、これに対する原参考人の御答弁を最後にお願いしたいと思います。     〔持永委員長代理退席、池田(清)委   員長代理着席〕
  176. 原文兵衛

    ○原参考人 ストライキを実施している間におきまして、同じ労働組合員の問におきましても、そのストライキをあくまでも遂行して行かなければならぬと考える者もあるでありましようし、あるいは家族を持つているとか、あるいは日給をもらえないことによつて、その日の生活に追われるというようなことよつて、いろいろと思い迷い、ストライキをやめて早く働いて日給をもらつた方がいいのだ、このまま行つても共倒れになるという考えを持つ者もおるでありましよう。そういう考えを持つ者は、裏切者であるとか、あるいは団結権を乱す者であるというふうに見る見方もあると思います。しかしながら、かりに裏切者であつたとしましても、団結権によつて考えを翻させようというそのやり方には、おのずから限度があるのでございまして、私どもはこの事件を検討するにあたりまして、労働組合法一条も、もちろん十分研究したつもりでございます。もちろん前々からもしておりますが、ここにも言つておりますように、労働組合団体交渉その他の行為であつて、前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて、違法性が阻却されるのであります。しかも、その但書には「いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」ということをはつきり言つておるのであります。私どもこの容疑事実を捜査し検討しましたところ、どうしてもこの一条二項によつて違法性を阻却する程度のものではない、これは明らかに暴力であると認定したのでございます。憲法は、もちろん労働者団体交渉権その他を認めるとともに、すべての國民に対して平等権、自由権、財産権等の基本的な人権を保障しているのでございまして、そのいずれにも優位を認めていないと思うのであります。従いまして、一般的に基本的人権と労働者の権利との調和を破らないことが、労働組合の行為の正当性の限界ではないかと思うのであります。被害者が朝から晩まで異常な雰囲気の間においていろいろと責められて、その意に反して、あるいはもうろうとして、何を考えているか全然わからないというような状況に陥れられて、そうして会社をやめるという謝罪文等を書かされたということは、かりにその臨時大会が正規の大会であつたといたしましても、その大会の中において行われたこういう暴力的な行為は、すでに労働組合法一条二項の違法性阻却の限界を明らかに通り越しているものであると考える。しかしながら、これは労働争議に関連するものでありますから、最初申し上げましたように、争議に与える影響等も十分考慮して——いやしくも不当な弾圧とか介入とかいうことがあつてはならないのでありまして、その点も十分考慮をしてやつたのでございます。私どもといたしましては、このような暴力的な行為が、がりに労働争議の間において、それに関連して行われたといたしましても、それを不問に付す、あるいは放任しておくことは、警察官が責務を怠ることである、そういうことは同じような暴力事犯を連鎖的に繰返さして行く結果になる、治安上決して放置できないものであるという見解に立つてこの事件を捜査し、しかして検挙したのでございます。
  177. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がございませんので二、三の点だけお伺いいたしたいと思います。まず社会部長にお尋ねいたしたいと思います。先ほど山本参考人から、暴力的破壊的高圧的独走的な組合幹部、幹部だけではなくて運営だというような話がございました。そこで、あなたのお調べによると、この組合は過去大体どのくらいストライキが行われたものであるか、さらに、今指摘いたしましたような暴力的破壊的高圧的独走的な組合運営が行われておるかどうか、この点についてお答え願いたいと思います。
  178. 鈴木鳴海

    ○鈴木参考人 過去において塚田の組合ストライキがあつたことに、私まだ記憶にないのであります。ただ不当労働行為が以前にあつたということだけは聞いておりますが、ストライキはなかつたというふうに記憶しております。それからなお、破壊的暴力的な組合ということが言われたわけでありますが、われわれ労働組合を指導して行く場合に、破壊的暴力的な組合ということを知つておれば、ただちに指導するわけでありまして、塚田木工の組合が破壊的暴力的な組合というふうには、われわれとしては見ておらなかつたわけであります。
  179. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 もう一つ部長さんにお尋ねいたしたいと思いますが、今不当労働行為が申し立てられ、地労委において審議中でございますので、お答えもなかなか微妙かと思いますけれども、どうも不当労働行為的なにおいがかなり強いだろう、かように見るわけですが、大体今まで労働行政をずつと担当になつていて、この第二組合の結成をめぐつて、そういう疑いはなかつたかどうか、どういうようにお感じになつておるか、お尋ねいたしたい。
  180. 鈴木鳴海

    ○鈴木参考人 使用者側の労働組合介入は、不当労働行為ではないかというお尋ねでありますが、これは事件が発生して、つい最近に第二組合結成の際に、丸山労務主任がそれに介在したというふうな話でありますが、まだそこまでは十分な調査が行つておらぬわけであります。  なお、その次にある解雇の問題でありますが、解雇通告の際に、組合執行部をほとんど全部解雇の中に入れた、これが一応不当労働行為の疑いがあるということもわれわれ考えまして、目下これについては調査中であります。
  181. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 続いて赤津参考人にお尋ねいたしますが、この組合はいつごろできて、そして過去何回ぐらいストラキイをやつておつたか、その点をちよつとお答え願いたい。
  182. 赤津勉

    ○赤津参考人 組合はたしか昭和二十四年ごろできたと思います。しかしはつきり組合費を徴収して活動し出したのは、昭和二十六年の四月だつたと思います。それ以降は、争議はやつたことはありません。しかし昭和二十六年以前、二十四年か五年に首切りがあつて、そのときストライキをやつたというような話を聞いていますが、ぼくはそのときにおらなかつたので、事情は知りません。
  183. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ストライキ決定の際に、この事件に関係がございますその当時の山本書記長と、それから当時は何であつたか知りませんが西沢、そういう方々は、執行部におられたのかどうか、その点お聞かせ願いたい。それと同時に、執行部でストライキの原案を決定する際に、どういう態度をとられたか。それは先ほど島上委員からの質問に若干お答がありましたが、特に私がお聞きいたしたいことは、この告発状の中に、西沢氏のことが触れてあります。西沢はスの字をやらなければいかぬ——これはストライキのことですが、スの字をやらなければいかぬと口ぐせのように説いて歩き、スの字とあだなされていたほどであつた、こういうことが書いてある。それを裏切つたので、なお組合員が激高した、こういうことになつていますが、その点について明確なるお話を承りたいと思います。
  184. 赤津勉

    ○赤津参考人 山本さんも西沢さんも、ことしの四月の選挙のときから執行員をやつております。そのときの書記長は、たしか岡田という人だつたのです。岡田さんがいろいろの都合でやめられたものですから、争議の始まる六日ぐらい前に山本さんが書記長なつたと思います。それ以前、賃上げ問題をめぐつて会社と団体交渉をし出したのは、六月十五日からです。そのころは、山本さんは調査部長です。西沢さんは執行員です。六月二十六日ごろ山本さんが書記長になりました。それから七月二日に、会社が個人々々の賃上げの案を発表したのを撤回したのですが、その当時は山本さんも書記長で、西沢さんはスの字スの字と言つてあおつた、スの字以外にないと言つて、みんなに訴えたわけです、その後争議態勢に入りましたから、闘争委員会をつくつて、行動部をつくるということを決定したわけです。西沢さんは統制部長になつて、行動部を指導することになつたわけです。行動部員に、西沢さんが、お前ストライキ以外にないのだから、どうでも入れということを盛んに言つて歩いたわけです。そういうことであつたものですから、みんながものすごく怒つたのです。
  185. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 山本参考人にお尋ねしますが、ストライキを決定したのは七月三日、それから事件の発端になりました玄向寺の会合、これは七月十一日、こういうことになりました。その前に、十日からストライキをやつている。こういうことになりますと、あまり日にちがないので、どうも心境の変化がわれわれにわからないのです。先ほども若干触れられましたけれども、どうも解せない点がある。この点についてちよつとお聞かせ願いたいと思います。
  186. 山本榮一

    ○山本参考人 先ほども申しましたように、われわれがストライキをやるということに関しては、労働運動を知らない私としては不安で、どうしたらいいかというような立場に立つたのであります。執行委員の大勢の人の決議によつてストライキをやることに決定しましたが、私も一応は引きずられたような形で仲間に入りました。しかし、入つて争議状態、いわゆる時限ストとか、あるいは本社前に行つて労働歌を歌つて大騒ぎをするとか、団体交渉をやれとかいうような大きな声を出したり、そういつたような行いを見、また行動隊員が組合員を監視し、まわりにピケを張つて帰さないという状態を見たときに、一部の従業員の中には、どうしてこんなことをやるのだと涙を流す人さえもあつたのを私は見受けました。そういうことによつて、こういうことはやるべきことじやない、よく話し合つてやつたら、もう少しスムーズにできるのじやないかというような考えも持つてはおりました。しかし、私が辞表を出したのは六日で、そういう考えは持つたものの、事実どうしたらいいかというように決心に迷いましたが、無期限ストライキに入るということを考えて、こうしてはいられないということでもつて、私ははつきりと態度をきめたわけであります。
  187. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちよつと警察にお尋ねいたしたいと思いますが、組合の規約による賞罰規定を御承知でしようか。
  188. 原文兵衛

    ○原参考人 私は塚田木工所の規約としての賞罰規程は見ておりません。
  189. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この規定は、あなた方の方で審議される際に当然参考になりましたでしようか。
  190. 原文兵衛

    ○原参考人 もちろん私は先ほど申しましたように、この問題を扱うについては、十分慎重な態度、慎重な考慮を払つたのでございまして、その規定につきましても、私の部下たちなり係におきまして、十分検討しております。
  191. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この賞罰規定は、除名と権利停止という、かなり重い分についてのみ規定されてある。今まで組合の常識からいいますと、それ以下の分は、大会その他の組合員の意思決定によつては自由にやれるのだ、こういうことになると思います。そこで謝罪文という問題ですが、当然決議に違反しております、さらに統制秩序を乱しておるということは事実でございます。何を申しましても組合ストライキが決定され、それが行われるのに、やめようという会合を持ち、第二組合的な動きをする、これは常識から考えましても、当然決議に違反して、あるいは統制秩序を乱した、こういう項に該当すると思うのですが、そういう場合に組合の力で謝罪文を書かすということは、違法の行為でしようか、そのことについてお尋ねいたします。
  192. 原文兵衛

    ○原参考人 私どもは、先ほど来申し上げておりますように、かりにストライキにある者が入つたといたしましても、ストライキの決議によつてストライキに入つた組合員は全部、いつまでたつてもその決議に従わなければならないのであるというふうには考えておりません。けれどもストライキの進行中において、途中からこういうストライキをやつていたのでは労使共倒れになつてしまう、自分たちの生活権そのものが奪われるのであるというふうに考えて、ストライキをやめようじやないかという気持を持つ組合員が出て出ることも、当然あることだろうと思います。しかし、そのような組合員が団体の秩序を乱す、あるいは裏切り者であるというようなことにつきましては、それぞれに言い分がありましようし、またそれぞれの見方があるでありましよう。また先ほど不当労働行為のことを云々されておりました。この点は地労委に提訴して、まだはつきりしていないようでございますが、かりにそういうようなことがあつたといたしましても、それを強制するには、おのずから方法手段があるのでありまして、暴力によつて意思を翻させ、あるいは謝罪文を書かせるというようなことは、いかに労働運動、労働争議に関連する問題でありましようとも、私どもは犯罪として違法性を阻却しないものであるというふうに考え、先ほど申しましたように、この事案を慎重に検討した結果、この問題はどうしてもはつきりとしたこここ犯罪事実があるのだ。あるいは団結権のためとか、あるいは労働争議というような問題であつても、その中において、暴力によつてその目的を達成することはできない、その暴力がここにあるからこれは犯罪があつたんだ、それを慎重な態度のもとに捜査し、しかもこれを労組法その他の関係において検討した結果、やつたのでございまして、その点、私はこの争議そのものが正しかつたとか、あるいはこの大会が成規の大会であつたかどうかということを言つているのではありません。
  193. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その点を全然無視して、一応ネグレクトして、起つた事実、その手段についてのみ言及されておりましたようですが、私は先ほど起訴の条文をお願いしたのですが、二百二十三条、こういうことでありました。私は今法律論を展開しようとは実は思わないのですけれども、態度について若干触れてみたい。これは係争中の問題ですから、法律論の展開はいたしませんけれども、しかしこの条文は「人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ」こうあります。ですから手段はともかくとして、「人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ」ということになりますと、義務があるのかないのか、ほんとうにないのかということは、労働事件に十分タッチされなければわかならいわけです。それを全然ネグレクトして、そういう行為がいけないのだということになれば、この条文はどうもおかしい、かように考えるわけです。そこで私は、こういう行為をした場合、あなたの方では、たといその行為が是認されましても、こういう手段ではいけないんだ、こういうお話でしたが、行為そのものについて、かなり問題がある。と申しますのは、二百二十二条の規定とは違うのでありまして、二百二十二条の規定を適用されるということならば、ある行為、謝罪文を書くとかどうかということについて——これは問わないかもしれません。ところがその謝罪文を書くというのは、これは当然不当労働行為の疑いがあるのではないか、あるいはまた統制違反が行われているのではないか、こういうことによつて、その行為が義務があるかないかという判定になると思うのですが、あなたの方ではこういうことも調べられた、こういうのですから、私は謝罪文を書く義務はない、かような判定になつておるのかどうか、お尋ねするわけであります。
  194. 原文兵衛

    ○原参考人 私が先ほど答弁申しましたのを、あるいは私の言葉が足らなかつたので誤解されたかと思いますけれども、私どもは、この事件そのものだけ、暴力行為だけを取出して考えて、そのほかのものは全部ネグレクトしたというのではございません。これは労働争議に関連する事件でありますために、先ほど申し上げましたように、いろいろな影響、またこの経過等も十分に検討した上、なおかつ労働法によりましても、いかなる場合においても、暴力の行使は許されないという、それに当る暴力行使があつた。すでに労働法上許される限界を越えた暴力の行使があつたという、その犯罪容疑に基いてやつたのでございまして、それが労働法に許された限界を越えたかどうかという点につきましては、これは私どもがそこに犯罪事実があるからこそ捜査をし、検挙をし、これを検察庁に送つたのであります。検察庁は、それをまた検察庁の立場において十分に取調べをした上起訴をしておるのであります。その事実があつたかどうか、うそかどうかということは、私はあつたからということを前提として、しかもそれによつて検挙をするためには、いろいろな経過あるいは労働法との関係等も十分検討してやつたのでございます。確かにその通り事実があつたかどうかという点は、これは公判がまだ始まつておりません。私どもとしましては、その認定の細部にまでは、これは公判前のことでございますし、事件に関することでございますから、ここでお答えはいたしかねます。
  195. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私が聞いておることを十分御存じで、おそらく答弁をされてないと思うのですが、警察担当の、しかも本部長であれば、当然私が話しておることはわかると思うのです。私は、謝罪文を書くというのは義務でない行為であるかどうか、こういうことをお尋ねしておるわけです。ですから、あなたの方でどういう考えであるか、私はそれをいいとか悪いとか言いません。これは係争中ですから言いませんが、あなたの方では、謝罪文を書かしたという行為について、義務なき行為を行わしたと認定されておるのかどうか、その理由はどういうことであるか、これをお尋ねしておるわけであります。
  196. 原文兵衛

    ○原参考人 今までのことは、非常に申訳なかつたとかいうことを、被害者の意思に反して書かせたということは、ここにいう義務なきことを行わしのだというふうに考えるのであります。
  197. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 普通組合あたりで決定をいたしまして謝罪文を書く場合に、本人は好みません。好みませんけれども、あるいは権利停止をくらつたり除名をされるわけです。これは規約が示しておるのです。本人は、おそらくこの場合も好んでない、普通の場合でも好んでないと思う。本人はやはり謝罪文を書くのはいやです。ところが、そいうような違反の問題については、組合では当然そういう行為に出るといのが常識ですし、またそれ以上のことを規約は要求しておる。ですから、私は謝罪文を書くというのは、義務がない行為ではない、かように思うのですが、あなたの方では、謝罪文を統制違反の場合に書くという行為をどういうように考えられておるか、これをもう一度お伺いしたい。
  198. 原文兵衛

    ○原参考人 私どもは、ただいまお答えいたしましたように、十二日に行われた行為が二百二十三条に該当するという見解のもとにこれを検挙し、それによつて検察庁もまたその見解のもとにこれは起訴されておるのであります。それがそれに該当しないのかするのかということは、裁判によつてきめられるべきことで、私がここで申し上げるべきものではないと思います。
  199. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 検事の方で起訴しておる、こういうことになれば、何もわれわれが言うところはないのです。私の責任ではございません、検察庁でやられております、こう逃げられれば、あなたに質問をするわけには行かないのですけれども、しかし、捜査をされました警察側として、義務があるとかないとかいうことは、意思に反するとか反しないとかいうことでなくて、それが義務であるかないかということは、客観的に法規範としてわかるはずであります。ですから、私は客観的に義務がある行為であるかないか、これをどういうふうに考えられておるか、これをお尋ねしておるわけです。
  200. 原文兵衛

    ○原参考人 何回も繰返しますが、私どもはこれを義務なき行為を行わしめたものであると考えましたから、検挙をし、これを検察庁に送つたのでございます。
  201. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 言われたことはわかりましたが、法理論としてはひとつもわからない。その組合における謝罪文の研究が全然されていない。いやしくも労働事件を担当され、その捜査に当られる場合は、私は十分検討してもらいたい。少くとも秩序を乱した場合に、謝罪文を書くのは義務です。大会が決定すれば、義務だと思う。どこの組合でも行つて聞いてごらんなさい、中労委へ行つて意見を聞いてごらんなさい。労働省でも、私は義務だと言うと思う。それが義務でない、これはまたこの条文でなくて、ほかの条文ということならば、私はまだこれは議論がありますけれども、あなたもおわかりのように、単なる暴力的な規定だけでなく、一つの要件がある。その構成要件が別個に掲げられておる二百二十二条とは違うわけです。ですから、私はこの組合ではなくて、一般的に見て、組合といたしまして謝罪文を書くということを決定した場合、書くということは義務になりますかどうか、これをお尋ねいたします。
  202. 原文兵衛

    ○原参考人 私は義務なきものと認めて、これを行わしめたからこそ二百二十三条が適用されたものというふうに考えたわけであります。
  203. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一般的にも義務がないと考えられるわけですね。
  204. 原文兵衛

    ○原参考人 私はここで一般的な問題として法理論を闘わすつもりもございませんし、またそういう意味でここへ呼ばれたとは考えておりません。警察本部長としてとつた行為につきまして、それがどういう見解でとつたかということをお聞きになられるのなら、それはお答えするわけであります。従いまして、それは義務なきことを行わしめて二百二十三条に該当するのであるという見解のもとにこの事件を捜査し、検挙したわけであります。
  205. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その点、押問答になりますので、時間の関係もありますから省略いたしたい。しかしこれらの問題は、また確定的な判決があつた場合、われわれはあなたの方だけでなくて、検察庁に対しても十分聞きたいと思います。  さらに、ついでにお尋ねいたします。会合の場所ですが、お寺であるということでありますけれども、これはしよつちゆう出入りしておるお寺じやないかと思うのです。そこで、こういう場合と、私生活をやつておりますような私宅の場合とでは、同じ不法侵入——不法侵入と言えば語弊がありますが、侵入についても、若干ニユアンスが違うのじやないかと思いますけれども、その点はどうお考えになりますか。
  206. 原文兵衛

    ○原参考人 どうも刑事事件の事実の認定の内容になるようなきらいがありますが、その点は、先ほども申し上げたように、これは裁判できめていただくよりしようがない。そのお寺のような場所に入つたのが不法侵入になるのかならないのかということについては、私どもとあなた方の見解に相違があるかもしれませんが、最後は裁判によるよりほかないと思います。  ただ質問の一つにお答えすれば、この場所はいろいろな会合等に貸されて使われる場所でございます。そこでこの場合は、私どもの調べた限りにおきましては、山本君が——これは天理教の分教会でございますが、そこの管理者から会合のために借りて使つておる場所でございまして、これは私どもの見解からすれば、借りて使つておる限りにおいて、その期間中は山本君の管理しておる寺だろうと思います。これは法律問題になるかもしれませんが、そういう見解でやつておるわけであります。
  207. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 多賀谷君に相談しますが、もう五分しかないのです。約束の時間には終るようにしてください。
  208. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いろいろお聞きしたいのですが、法理論として逃げられると非常に困るわけですけれども組合法の第一条の二項というものは、非常に歴史的な規定でありまして、これは私が申し上げるまでもないと思うのです。すでに憲法二十八条の規定によつて十分であり、これは何も蛇足をつけ加える必要はないという議論さえあつたが、日本の過去の労働運動弾圧の歴史から加えられたものであり、これはわれわれは確認的な規定であり、かように考えておるのであります。さらに暴力規定も、注意規定云々の問題も注意的な規定であると見ておるわけです。これらについていろいろ質問いたしますと、また法理論ということになりますので省略いたします。  そこで、最後に私は分散留置をやつた理由と家宅捜索をやられた理由、この点についてお伺いしたいと思うわけです。
  209. 原文兵衛

    ○原参考人 分散留置いたしました理由は、留置場の構造上、通謀を防止するという事実的な理由だけでございます。  それから家宅捜索をいたしましたのは、先ほど申し上げましたように、私どもはこれが共謀の上、強要その他の犯罪が行われたという容疑が十分にありましたので、その証拠を集めなければなりません。それによつて家宅捜索をしたのであります。
  210. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 家宅捜索をすれば、この通謀というような証拠書類が出て来るのですか。またその家宅捜索によつて、どういうものが出て来たか。私は私信まで持つて行かれなくてもいいように考えるのです。何かこれは思想調査というような——あるいはそういうことでないと言われるかもしれませんが、最初考えられたのは、もう少し別個の思想的な背景があるのではなかろうか、こういうことで、非常に大げさに捜査をされ、逮捕をされたようにわれわれは見受けるのですが、そういう点はどういうお考えでしようか。
  211. 原文兵衛

    ○原参考人 その点につきましてそういうふうに考えられるのは、実ははなはだ心外なのでありまして、この点は、最初この事件がかくかくの動機である、端緒は何であるかというときに申し上げましたように、被害者の細君からのお願いと、一方は県の労政課からの不法暴力行為があるようだという通報によつてやつたのでございまして、そういう御心配になるような、何かこれによつて労働運動をどうしてやれとか、あるいは家宅捜索をすることによつて、何か特別な材料をつかんでやれとかいうようなことは毛頭ないのであります。家宅捜索によつて共同謀議の証拠が得られるか得られないかという点になりますと、現在の訴訟法は、御承知の通りでございますが、私どもは証拠というものを非常に大事にするので、その証拠を得られるであろうということによつてやるのでございまして、その結果どういうものが出ているかということは、これは公判でもつてやらなくちやならぬ問題でございますから、そこでは申し上げかねます。
  212. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最後に、意見だけ申し上げておきたいと思います。
  213. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 簡単に願います。
  214. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 われわれはこの事件をかなり重大に考えておるのであります。塚田製作所という小さな工場に起つた事件ですけれども、本質的に、われわれはかなり大きな問題が投げかけられておると思う。この事件をめぐつての検察および警察当局の動きに対して、これが全国的に行われるといたしますと、労働運動に重大な影響があると思うのであります。そこで、これらの点につきまして、一応確定判決がありました後に、私たちはもう一度あるいは御足労を煩わすかもしれないことをつけ加えて、私の質疑を打切ります。
  215. 島上善五郎

    ○島上委員 これは関連質問ですが、非常に大事な点ですから、一つだけ原部長に伺つておきたい。
  216. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 簡単に願います。
  217. 島上善五郎

    ○島上委員 先ほど黒澤委員の質問に対するお答えの言葉の中にあつたと思います。これはもし私の聞き遠いであればいいのですが、私がさつき聞いたところによりますと、こういうお答えがされておる。犯罪の捜査上あるいは防犯上、警察官が管内のいろいろな情報を集めるのは当然の任務である、従つて労働組合の動静や幹部の動きもよくキヤツチしておくという必要があるのは当然のことである、こういうふうな言葉であつたように聞きましたが、そうでございましたか。
  218. 原文兵衛

    ○原参考人 繰返します。警察は、犯罪の予防、捜査、公安秩序の維持という任務を持つておるわけでございまして、その任務を遂行するためには、できるだけ管内の事情を知つておくことが必要なことでございます。何も知らないでは、そういう任務はできない。従いまして、警察としましては、できるだけ管内の事情を知るために、あるいは管内にどういう団体があるとか、労働組合があるとか、あるいはそれはどこにあつて人数はどのくらいかということを知るのは、私は警察としては当然のことと思うのでございます。個個の人たちの動静を探るために、何か違法なことをしているというような、そんなことが当然であると言つているのではないのであります。警察としましては今言つたような公安の維持あるいは犯罪の予防、捜査、鎮圧のために、できるだけ管内の事情を詳しく知るということは必要な行為であるということを申し上げただけであります。
  219. 島上善五郎

    ○島上委員 ただいまの御答弁は一般論ですから、そういたしますと、あなたは労働組合というもの、あるいは労働組合の幹部というものを犯罪の予防、あるいは治安上、ふだんよく調べておかなきやならぬというお考えのようですが、あなたが就任されてから、さつそく県の職員組合の幹部の思想調査あるいはいずみ合唱団の調査をやられている。そういうような最近やかましい労働組合の思想調査、動向調査をやるのも当然である、こういうふうにお考えになつているとすれば、これはたいへんな問題だと思う。労働組合は法律上許された合法的な存在であつて、普通の場合、一般論として、今日労働組合の存在あるいは労働組合の幹部というものが犯罪捜査の対象、あるいは治安維持のための対象にされて、絶えず監視されるようなものではないと思うのです。この点をもう少しはつきりしてほしい。
  220. 原文兵衛

    ○原参考人 島上委員のおつしやる思想調査ということがどういうことであるか、私にはよくわかりませんが、少くとも私が先ほど来申し上げていますことは、ただ単に労働組合の存在とかいうようなものを調査しているということでなく、管内にはどういう有力者がおられるとか、あるいはどういう団体があるんだ、あるいは、どういう労働組合があるんだとかいうようなことを知つておくこと、いわゆる管内事情を詳しく知つておくことは、警察任務を遂行する上において当然のことであり、それを知つていなければ——つていても十分な活動はできないかもしれませんが、そういうことを知つていることが、警察の任務を遂行する上に当然のことであり必要なことであるというのでございまして、決して思想調査をする——思想調査の意味もいろいろあるかもしれませんが、ある人はどういう思想傾向を持つている、どういうあれをしているからけしからぬといつて、それをどうこうするというような調査をしているのではございません。管内の一般の事情をできるだけ詳しく知るために、組合があるとか、団体があるとか、あるいは個人があるとかいうようなことを知るのが、警察の当然の任務と思うのでございまして、この点につきましては、過去において労働組合に関する情勢を一体警察がとつてよいのであるのかどうかということが問題になつた際、やはり今言つたような警察の任務達成上、当然なことであるという判例があつたように記憶しているのでございます。個々の方法論、あるいは一つ一つ具体的にこういうことをやつたのがけしからぬというようなことがあれば、その点につきましては、また別個の問題であろうと考えますが、一般的に警察は、労働組合に関しても、自分の管内にはこういうような労働組合があつて組合員の数ばどれくらいあるとか、大きな組合は何だというような、管内事情について知つていることは当然のことであろうと考えております。
  221. 島上善五郎

    ○島上委員 そういたしますと、あなたの考えは、治安上あるいは防犯上、労働組合の動向を知つておかなければならないということであるが、私はどこそこの管内にこういうような労働組合があり、こういう会社があるということを知つておくことがいけないと言うのではない。しかし普通の法人でも労働組合でも、これを何か悪いことをする対象である、何か窃盗の常習犯をやつている男が、このごろどうも一定の仕事についていないで、少しぜいたくをしているから怪しいぞといつて調べる場合と、普通の会社や労働組合が何か悪いことをするんじやないかというような前提に立つて、防犯上これは絶えず動向を探つておかなければならぬというようなことであるならば、これはたいへんなことになる。従つて労働組合も、ただあるということだけを調べるのではなしに、個々の労働組合の内部の動向はどうだ、幹部はどんなふうになつているか、あの幹部はふだんだれとつき合つている、どういう思想傾向を持つているということを調べることが当然だということまで、論理上発展して行くんじやないかと思う。その点を私は聞いているのです。
  222. 原文兵衛

    ○原参考人 その点は、あるいは私の言葉も足らない点があつたかもしれませんが、何も労働組合は犯罪を犯す可能性があるんだというようなことで、われわれは管内事情としてどういう労働組合があるとかなんとかいうことを調べるのではない。そういう前提をもつて、色めがねで見るというようなことではないのでありまして、公安の維持というものが、すなわち警察の任務でありますから、その管内に、あるいは天災地変もあるかもしれません、どういうきつかけでどういう秩序が乱れるようなことがあるかもしれません。そういうような場合に、管内のあそこにはこういう工場がある、こういう大きな建物があるとか、あるいはここにはこういう発電所があるとか、いろいろなことを知つておくことは、公安維持上当然なことであると私は申し上げているのであります。
  223. 島上善五郎

    ○島上委員 最後に結論で答弁はいりません。どうもあなたの今の答弁から受ける感じは、労働組合を、戦争前は白眼視して、労働組合は悪いものだ、こういう前提に立つて従つて労働組合の幹部の行動も絶えず監視する、こういう取扱いをしたことは御承知だと思うのです。今日労働組合は合法的な存在であつて、そういう色めがねで白眼視した態度で見られないことは、あなたも御承知の通りである。どうもあなたの答弁から受ける感じは、公安の維持あるいは秩序の維持というような観点からという言葉をしきりに使つている。そうすると公安を乱し、秩序を乱すおそれがある、こういう考えがあなたの考えの中にあるような気がしてならない。これは私の思い過ごしであればけつこうですけれども労働組合というものは断じてそういうものではないのであります。労働組合に対する考えをこの際よく認識して、新たにしていただきたいと思います。一般的に見て労働組合というものは、犯罪をしたり、公安を乱したり、秩序を乱したりする団体ではない。その点はよく理解していただきたい。そうして最近頻繁に問題になつている労働組合に対する思想調査とか、あるいは必要以上の介入というようなことに対しては、先ほど多賀谷君も言いましたように、この事件に対しては、さらにもつと調査をしたい希望を持つておりますが、今後労働組合に対する措置をする際に、十分慎重にやつていただきたいということを申し上げて、質問を打切ります。
  224. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 本日御出席になりました参考人中坂本周一君、馬場大静君の御両名の方は、明七日も御出席くだされるようにお願いいたします。  次会は明七日正午から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時十一分散会