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1954-07-30 第19回国会 衆議院 労働委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年七月三十日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 持永 義夫君    理事 稻葉  修君 理事 多賀谷真稔君    理事 井堀 繁雄君    並木 芳雄君       大橋 武夫君    島上善五郎君       大西 正道君    日野 吉夫君       矢尾喜三郎君    中原 健次君  委員外出席者         人事院総裁   淺井  清君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         調達庁長官   福島愼太郎君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      後藤  博君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      福田  勝君         大蔵事務官         (銀行局特殊金         融課長)    加治木俊道君         文部事務官         (初等中等教育         局初等教育課         長)      大島 文義君         文部事務官         (管理局学校給         食課長)    岩倉 武嗣君         厚生事務官         (社会局庶務課         長)      竹下 晴記君         厚生事務官   外園 徹美君         通商産業事務官         (石炭局長)  齋藤 正年君         通商産業事務官         (石炭局炭政課         長)      及川 逸平君         中小企業庁長官 記内 角一君         運輸政務次官  西村 英一君         運輸事務官         (船舶局長)  甘利 昂一君         労働事務官         (労政局労政課         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君         参  考  人         (高倉鉱業岩屋         鉱業所労働組合         書記長)    古賀  茂君         参  考  人         (高倉鉱業岩屋         鉱業所組合員) 秋好トムノ君         参  考  人         (同)     今村 國年君         参  考  人         (全国造船労働         組合連合中央         執行委員)   濱口  榮君         参  考  人         (全日本造船労         働組合中央執行         委員長)    溝口 光治君         参  考  人         (播磨造船労働         組合長)    淺野 重美君         参  考  人         (全駐留軍労働         組合中央執行委         員長)     市川  誠君         参  考  人         (近江絹糸紡績         株式会社人事係         長)      石田 嶺江君         専  門  員 演口金一郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  失業対策労使関係及び労働基準に関する件     ―――――――――――――
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  失業対策労使関係及び労働基準に関する件について調査を進めます。  この際駐留軍労務関係につきまして、福島調達庁長官より全般の情勢の御報告をお願いしたいと思います。――ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止
  3. 赤松勇

    赤松委員長 速記を始めてください。  市川参考人
  4. 市川誠

    市川参考人 全駐労の中央執行委員長市川でございます。駐留軍労働者が今直面している問題につきまして、内容を五つの事項にわけまして陳述をいたしたいと思つております。  第一の問題は、北海道からアメリカ陸軍部隊撤退する、これに伴う失業対策の問題であります。第二の問題といたしましては、二十七日に発表されました極東陸軍関係予算削減に伴う大量の人員整理の問題、並びにこれに対する対策の問題であります。第三の問題は、軍の行うところ保安解雇の問題であります。第四の問題は、すでに一応結着を見た問題でありますが、過般横田基地に発生した問題であります。第五の問題といたしまして、全般的な労働条件改訂するところ日米労務基本契約の問題、以上五点について要点だけ陳述いたしたいと思つております。  北海道撤退問題でありますが、北海道におきましては、前国会において防衛二法案が審議された際に、いろいろと話が出ておつたのであります。衆長院労働委員長質問に対する木村保安庁長官回答書、あるいはまた五月二十六日でございましたか、岡田参議院議員質問したのに対しまして保安庁長官等がこれに答えまして、初めて従来義務的に進められておつたところ自衛隊の増強というものが明るみに出されまして、しかも北海道においては自衛隊米軍に肩がわりして行くという事実が明らかになつたのであります。労働組合といたしましては、六月の十七日でありましたか、調達庁長官に会見をいたしまして、いろいろと真相を確かめたのでありますが、その際総合して判明した点については、八月から大体十月にかけて、北海道におきましては空軍を除いて陸軍部隊が全部引揚げる、これは大よそ東北方面に移駐するというような状況がわかつたのであります。御承知のように北海道におきましては、冬になりますと雪が非常に多くねりますので、十月という時期が、やはり降雪期等とにらみ合せて、かなり逼迫した状態でこの撤退の問題並びにこれに伴う首切りの問題が出て来るのではないかと予想されたのであります。しかも自衛隊が肩がわりするというのは、大体札幌、真駒内、千歳に相当集中的に行われる、すでに日本政府軍側との間におきましては、施設の転換についても大体了解がついておる、こういうような状態もその際明らかになつたのであります。一方いろいろ現地事情等調査してみますと、すでにあるキヤンプの中においては、たといどんな小部分の破損についても、全然手入れをしないとかいうような状態、または労務省の作業の配置移動というようなことも感じられまして、撤退という問題が現実の問題として確かに近く出て来るということが十分に察知されたのであります。北海道地域におきまして大体政府が雇用しております労働者が四千五百人ほど、その他にダイレクトが三千数百名ほどおるわけであります。これらの人たちが、今度空軍関係を除きまして全部撤退いたしますと、空軍関係の使用人としては大体三百名程度でありますので、七、八千という数の労働者失業状態に直面する。すでに北海道におきましては、石炭産業においても、あるいは造船ないしは鉄鋼等産業労働事情を見ましても、相次いでの首切り等が出ておるのでありまして、そこにまた七、八千の数の失業者が出るという事態は、北海道の問題としては容易ならぬ事態である。すでにこの問題は、北海道地域についてみますと、労働問題としてわくを越えての問題なり、あるいは治安問題化するというような事態も看取されたのであります。もちろん組合といたしましてはこれらの事態に対して、政府側にいかなる対策があるかという点もただしたのでありますが、はつきり申しまして、失業対策の総元締めでありますととろの労働省においても、根本的な対策というものが聞きとれなかつたのであります。そういう状態も考えまして、われわれとしては、当直の七、八千の労働者失業対策の問題についてある程度見通しがつくまで、この撤退等の問題についても、自衛隊と軍との入れかえの問題、この時期について十分考慮をすべきではないかというようなことも申し出たのであります。  さらに、その他の問題といたしましては、北海道は特殊的な地域といたしまして、石炭手当あるいは寒冷地手当支給の問題がありますので、もし八月ないし十月というごの見込みの時期におきまして、八月末以前に撤退が行われ、また首切りが出て来るというような場合に直面いたしますと、石炭手当支給もできない、寒冷地手当支給もできないというような特殊な事情もありますので、それらの給与支給の問題について、規定の改訂問題等を考慮して、現実労働者にそれらの地域的な特殊な給与がなされるようなととも要求として出したのであります。  根本的な問題といたしましては、失業対策が完全になされまして、労働者が他の平和産業に就職いたしまして、そうして生活をすることができるめどがありますれば、問題は比較的解決しやすいのでありますが、それらの見通しも困難でありますので、全駐労といたしましては、当面首切られる駐留軍労務者が、すでに占領以来八、九年の長い間、言語習慣等を異にする外国軍隊のもとにおいて苦しい条件の中において動き続けて来たこれらの実績というものを認めていただいて、この際退職手当の八割増し特別退職手当として支給する、こういうような要求提出いたしたのであります。さらにまたいろいろ情勢を勘案いたしてみますと、政府失業対策のみにたよることも困難でありまして、自力更生という問題も組合として当然考えなければならない。その部面におけるところの個人の企業に対するところ生業資金の貸付の問題等もやはり政府として措置を講じてもらう。  さらにまた職業補導の問題でありますが、これらについても十分措置をとつてもらいたい。現在北海道には、約一千二、三百名の職業補導収容施設があるのでありますが、それではとてもまかないきれない面がありますので、この職業補導の問題並びに施設の充実について十分な措置をとつてもらう、塙に今回の場合には、軍が東北地方に移駐するという状況もありますので、北海道の住民の関係を見ますと、東北から移つて行つたというような人も、きわめて数は少いのでありますが、そういう事例もございますので、部隊同行希望者に対するところの就職の保障問題等要求として出したのであります。そういうような要求の問題も、やはり中央地方一貫して協議をしなければならないと考えまして、中央失業対策協議会、並びに地方にもそれに準じた会議を持ちまして、いろいろと進めて参つております。その後だんだんと問題がはつきりして参りまして、大体八月中には労務者解雇はないというところまでははつきりして来たのでありますが、九月の初めからは、おそらく北海道に、撤退に伴う一斉の解雇が起るか、あるいは逐次段階を画しての解雇が起るか、いずれかその方法は明らかではありませんが、九月に入りますれば、北海道現実首切りの問題が出て来る、こういうような情勢になつております。  そういうようなときにおきまして、たまたま二十七日に極東陸軍から、新年度の予算削減伴つて相当数整理を行わなければならないというような発表がありました。これを私どもの情報基礎として勘案してみますと、大体今までの例から見ましても、陸軍関係労務者十一万二千ほど擁しておりますので、予算が総体的に二割五分程度のカツトになりますと、おそらく二万七、八千人ないし三万人程度首切りが出て来るのではないか、こういうよう情勢を見たのであります。これらの問題もまた、いつ出て来るかわからないのでありますが、従来の例から見ますと、おそらく軍がこの程度発表をした場合には、すでに相当の準備が進行しており、そうして相次いで具体的な首切りの通知というものがなされるのではないか、こういうように考ええられるのであります。これらの問題にりきましても、まだ全貌がはつきりいたしませんので、具体的な交渉に入つておらないのでありますが、われわれといたしましては、たとい軍が予算削減伴つて首切りを行うという場合につきましても、解雇の理由というものをはつきりしてもらわなければ困る。ことに行政協定防衛分担金の問題を考えてみますと、あれは双方が大体半額ずつ負担するという形になつております。もしアメリカ側の方で予算削減によつて防衛分担金と見合う額の支出というものがかなり下まわつたとするならば、日本側負担金というものもかなり切り下げることができるのではないか。そういう部面から、これらの問題を、たまたま行政協定によつて差出しているところ資金によつて何らかカバーする方法があるかないかという問題も、根本的な問題として考えてもらいたいと存ずるのであります。  要するに北海道の問題、並びにそれにきびすを接して発したところ陸軍労務者大量整理の問題につきましては、われわれの要望事項といたしましては、現行制度わくの中においての失業対策の問題を、政府といろいろ折衝してみましても、万に及ぶところ失業者の救済の問題については、何ら生活保障がないということであります。これらの点については、一般産業の不況の問題等々を勘案いたしまして、労働者失業対策の問題につきましては、現行制度わくを越えたところ失業対策の問題を、国会等で十分御審議の上、労働者生活保障という問題を考えていただかないことには、日本産業の完全な復興とか、あるいは経済の興隆というようなものも期待し得ないのではないかというように考えております。  第三点の保安の問題については、先ほど福島長官からも述べられたのでありますが、二月二日に保安解雇に関するところ協定を結んだのでありますが、その後空軍関係において三十九名、陸軍関係においては九名、海軍関係においては十三名という保安解雇該当者が出されているのであります。これらがいずれも黒であるという形で、すべて解雇措置が最終的にとられてしまつた、こういうような状況にありますが、二月二日にわれわれも合意したところ保安解雇協定の中におきましては、もし本人の再審要求あるいは調達庁長官意見等によつて審議した結果、おそらく相手側にも、これらの数の中には調査の不確実な問題等もあろうかと思います。そういう場合において、無実な者は救済し得るというのがこの保安解雇協定のただ一点われわれの期待し得たところでありますが、同時に解雇基準明確化の問題も、昨年のゼネストによつてかち得たという状況であります。これらが軍の一方的な濫用にゆだねられている、こういう現状を見たときに、保安解雇の問題につきまして、われわれといたしましては、軍側信義というものもこの際疑わざるを得ない。特に最近この六十九号協定について、さらに軍側がこれを改悪するという案を出して来る。この事態を見たときに、はたしてわれわれといたしましては、軍側信義があるのかないのか、その根本的な問題に突つ込んで問題を考えざるを得ないのであります。  第四点の横田問題につきましては、これはたまたま組合費源泉徴収の問題に端を発しまして、司令官組合内部事情を事実を歪曲して、しかも組合幹部組合員との離間を策するような文書を配布したのであります。さらにまた総評大会をめぐりましてのある種の情報基礎として、全駐労が破壊的な団体立場にあるというような趣旨女書を出したのです。これらはただいま申し上げたように、保安解雇協定によりますと、破壊的な団体に属する者あるいはそれらと関連ある者は解雇される、こういうような協定駐留軍労働労使関係におきましては、かなり重大な組合員に対するところの脅威を与える、そうしてまた組合内部の運営に干渉しようとした、こういうような事態が察知できましたので、これらについて政府を通じて撤回要求をいたしたのであります。特に司令官直接支部の委員長に対しまして、全駐労よりの脱退、あるいはまた脱退しない場合にはパージされるというような趣旨のことを言つているのは、組合幹部に対するところの重大な干渉圧迫であるというような点を重視しまして、いろいろと政府を通じて折衝したのですが、その結果、二十三日に軍側といたしましては、あの横田ステイヴアーズ司令官の出したところ声明というものは、誤解を招くところの表現があつた。軍としては民主的な合法的な組合活動を圧迫してこれに保安解雇条項を適用することは軍の労働政策ではない、さらにまた全駐労の組合員であるということによつて解雇されるようなことはないというような声明がなされたのです。われわれとしては、二つ文書撤回要求した建前から、この声明ではきわめて不満でありましたが、問題はさらに現地におけるいろいろな労働条件に関する問題等もありますので、それらの交渉の中において実質的に二つ司令官文書撤回されるという事態を監視する立場をとりまして、この事案について、一応の静観的態度をとるということを決定したのであります。  最後に契約問題については、先ほど長官がおよそ話されたような状況でありますが、すでに三年余にわたりますところ契約改訂交渉がいまだ解決をしていない、何年続くかわからない駐留軍労働者、近く三万と予想されるような大量整理が出て来る場合において、それらの労働者労働条件を規定するところ日米労務基本契約改訂がこのように延引することになりますれば、りつぱな基本契約ができた場合には、労働者が一人もいなくなつてつたというようなことも危惧されますので、それらの問題を勘案して、早急に労務契約改訂の問題については結着をつけて行きたい、そうして少くとも占領時代契約というものはなるべく早く撤回して、独立国労働者にふさわしいような基本契約を一刻も早く樹立したい、こういうように考えております。  以上申し上げた中から抽出して申しますれば、最近の駐留軍労働者の直面している事態の中から、完全な失業対策を確立するために、現行制度わくを越えての対策というものをぜひ御考慮願いたいということであります。  さらにまたそのような措置がなされるまで、長い間苦労をして来たところ労働者の切望しておる特別退職手当、すなわち現行退職手当の八割増し支給措置につきまして、深い御配慮を願いたいと思います。これらの問題の推移につきましては、われわれとしてもすでに一応の闘争の方針、計画等もきめまして、北海道はすでにせつぱ詰まつた問題として、八月初旬から具体的に要求貫徹のために最終的な交渉を経た後、実力行使にも入らざるを得ないというような事態に直面しております。かなり苦しい中に置かれております駐留軍労働者につきましても、十分深い理解を与えていただきまして、占領以来七、八年の苦しい労働に対するところの報いが、ある程度なされるというような点について、十分な御配慮をお願いしたいと思つております。  時間の関係もありますので、一応以上申し上げまして私の陳述を終りたいと思います。
  5. 赤松勇

    赤松委員長 それでは、ただいまの福島長官及び市川参考人の発言につきまして、質問があろうかと存じますが、都合によりまして明日の午後三時よりこの問題を取上げまして質疑を行いたいと思います。市川参考人は明日午後三時にひとつ御足労をお願いしたいと思います。     ―――――――――――――
  6. 赤松勇

    赤松委員長 なお、時間がございませんから、できれば十二時までに人事院勧告に関する御報告をしていただき、それから通産省は、きよう省議がありまして、どうしても一時まではということでございますから、二までにしていただきまして、これは主として石炭限つて質疑をお願いしたい。それから、運輸省の方は間もなくやつて参りますから造船に移る。そうして江下職安局長よりは、連日政府失業対策緊急措置について検討を行つておりますので、その経過と結論等につきまして報告をしていただき、それに対する質疑を行いたい、かように考えますので、ひとつ御協力をお願いしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 赤松勇

    赤松委員長 それではさよう決定いたします。  それでは引続きまして淺井人事院総裁より、給与勧告に関する問題につきましてこの際御報告をお願いしたいと思います。  なお、浅井人事院総裁のお話が終りましたあと、きようはこの問題につきまして、じつくりはやれませんから、二、三質問がありましたら簡単にやつていただいて、そうしてあとから資料提出等もお願いする。  なお炭鉱関係につきまして、委員諸君希望のございましたうちで、ただいま御出席通産省記内中小企業庁長官齋藤石炭局長自治庁より、この問題に関連して、地方財政が危機に瀕しておりますので後藤財政部長、それから多賀谷君より特に要求のありました炭鉱地帯における児童の教育問題等につきまして、文部省より大島初等教育課長岩倉学校給食課長、大蔵省より、主として失業対策の問題と関連し、また造船問題と関連しまして福田理財局資金課長加治木銀行局特殊金融課長、以上の方々の御出席を願つておりますから御了承願います。  淺井人事院総裁
  8. 淺井清

    淺井説明員 七月十九日に国会及び内閣へ上提出いたしました給与に関する報告について、簡単に要点を申し上げ、なお御質疑に応じて敷衍いたしたいと存じております。  この報告書の冒頭に、七月現在における人事院所管国家公務員給与ベースはおよそ一万五千六百三十円と推定をいたしております。第二に、民間給与は昨年の三月から今年の三月まで九・五%上昇したものと考えております。一方、人事院所管国家公務員は同様の時期に対して一三・九%給与上昇を見たと考えております。  次に、民間給与国家公務員との比較をいたしますれば、このような上昇にもかかわらず、なお若干の低位にあることが認められております。その低位にあるのは、職種等により違いまするが、相当低位にあることが認められているのでございます。  次に、いわゆる標準生計費によりますれば、これまた相当の増額を見たのでございますが、これは大体従来の計算によりまして、成年男子国家公務員の号俸と見合つておるものという判断でございます。しかし、従来標準生計費一般俸給表の二級三号に当てておつたのでございますが、これは昨年行いました国家公務員実態調査の結果、分布の状態がかわつておることが認められましたので、今回の報告におきましては、これを三級の四号に当てることを適当と認めたのでございます。このように、従来のいわゆる人事院方式によりますれば、国家公務員給与が、昨年度中において相当改善されたとは申しますけれども、なお民間給与に比して低位にあることは否定できないので、この点は報告書にもはつきりと書いたのでございます。  ところが、一方翻つて民間におきまする最近の経済情勢は、非常な転換期に当つておりまして、今ただちに人事院俸給表引上げ勧告をいたしてよいかどうか、この点にかんがみまして、将来にこれを決定する不確定要因が多いと考えております。そこで人事院といたしましては、これまでは報告と同時に必ず引上げ勧告をやつて来た過去の実情ではございますが、今回はあのような給与を決定すべき諸条件に幾多の不確定な要因を含んでいる段階におきまして、単なる民間給与との較差をもつて引上げ勧告をいたすことは、ちよつと判断をいたしかねるのでございます。そこで人事院といたしましては、七月十九日現在におきましての勧告は、一応これを留保して、報告のみにとどめ、給与関係のある諸条件推移を注視いたしたい、かように考えた次第でございます。  これが報告内容でございます。
  9. 赤松勇

    赤松委員長 この点につきまして、その報告書国会に出ておりますけれども、さらに委員諸君希望されまする諸般の資料提出要求しまして、次の機会にこの問題についての質疑をば行いたい、かように思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 赤松勇

    赤松委員長 さよう決定します。  それでは井堀君より御要求のございました大蔵省に対する質問でございます。はなはだあれですけれども、ごく簡単にひとつお願いしたいと思います。井堀繁雄君。
  11. 井堀繁雄

    井堀委員 労働省にお尋ねをいたしたいと思いますが、最近賃金の遅欠配が全国的に蔓延いたしまして、相当の金額が労働者生活を脅威するに至つておりまする現状を、われわれは部分的には承知いたしておりますが、全体的な数字を持ち合せておりませんので――、監督署に問題にされた文案は明らかだと思いますが、さらに監督署の手に移つていない相当のものがあると思いますので、その二つについて正確な御報告ができるならお願いいたしたい。
  12. 江下孝

    江下説明員 曲答えいたします。六月末現在、労働省が監督署を使いまして、監督署が定期訪問ないしはいろいろな情報で――これはほとんど全事業場にわたつておると思いますが、つかみました賃金の不払額が件数にしまして四千三十五件、金額にいたしまして十五億七千万円、これは五月末に比べまして七千万円の増額になつております。
  13. 井堀繁雄

    井堀委員 ただいまのは基準監督署によつて調査されたものでありましようが、それ以外に相当の賃金遅配ないしは支払い不能になつておるもので、表向きにならぬものがかなりあると思うのです。このことは説明を要しないのでありまして、賃金のことにつきましては、労働者にとつてはただちに生活を左右する、しかも労働を提供した報酬が約束に基いて受取れないということは、申すまでもなく基準法違反であることは確かであります。こういうように労働者生活が、働いた報酬を得られないで生活の脅威にさらされていて、法がこれを保護することができないということは恐るべき事柄だと思うのです。このことについては、後刻労働省に十分その対策をただし、われわれの所見も述べたいと思つておりますが、大蔵省にこのことについてお尋ねをいたしたいのは、本日の朝日新聞によりますと、賃金遅配対償として、労働省から大蔵省に申入れをいたした事柄が記事になつて出ています。この記事によりますと、労働省は賃金未払いの解決のために、全国に三十九の労働金庫が活動している状況を前提にいたしまして、労働金庫を通じて賃金遅配による労働者生活の危機の一部を救済するために、労働金庫に三億六千万円程度の融資を資金運用部からできぬかという申入れに対して、大蔵省は難色を示しているという記事の内容であります。私は非常に不可解に思うのでありますが、大蔵省については、前回すなわち第十九国会の厚生年金保険法の改正をめぐりまして、私からも厚生大臣にただし、言質を得ておることがございます。それは厚生年金保険の当時の日雇い者あるいは雇い主の積み立てた金額が一千百十億を突破するという巨額な金が、大蔵省の官吏にまつたく独占されておる。一部労働者の住宅あるいは病院施設に、それも三十億か四十億足らずの還元融資しか行われていない。こういうことはまことに不合理なことであり、苦しい労働者や雇い主の困難な手元から、長期にわたつてこのような巨額な金が運用部資金として一方的に管理されるということの不都合ももちろんでありますが、そういう金は当然大幅に労働者の福利のために還元融資されるべきものであるという主張があり、当時社会保険審議会からも、その旨の答申が行われておるのであります。委員会におきましても各党からそのような要望が行われて、これに対して厚生大臣は、その趣旨に沿うように努力することを誓つておるのであります。さらに係官でありまする大蔵省の理財局長の出席を求めまして、この点について手続のことをもただしておるのであります。還元融資の不可能でない者情も、その節明らかにされているわけであります。こういう労働者の当然領有すべき金があるにもかかわらず、先ほど申し上げるような賃金遅欠配というような問題に対してこの金を融資することができないというのは一体どういう事情にあるのか、この点をまず明らかにしてぼしいと思うのであります。
  14. 福田勝

    福田説明員 私大蔵省の理財局の資金課長でございますが、ただいまの御質問の、厚生年金の関係から見たこの賃金遅欠配の融資額を資金運用部で融資できないかという御質問に対しまして御説明申し上げます。  今おつしやいましたように、前国会の厚生年金の法案に関連しまして、確かにそういう還元融資の線によつて十分考慮を払つたような運用方法を将来考えようというような説明をしているようでございますので、その線につきましては、ただいままでのところ、たとえば今年度の運用計画におきましても、ただいま御指摘になつた厚生省でやつております校正年金の還元融資としての病院なり、あるいは勤労者の厚生住宅というような点につきましては、御承知のように一兆円予算に関連しまして財政投融資上、ほとんど前年度の投資以上に増額したところはないのでございますけれども、この点につきましては、前年度よりも特に十億程度当初の予算のときには増額することにきめられた次第でございます。そういうわけでプリンシプルといたしましては、御指摘のような線になつておる還元融資の問題につきましては、そういうふうにいたしていると思うのでありますが、今おつしやいました賃金の遅配欠配のつなぎ融資と、それから厚生年金の還元融資という思想とただちに結びつけてお考えになつておられる点につきましては、また別個にこれは厚生省側におきましても十分検討されるべき問題ではないかという争うに考える次第でございます。  そこで、きようの新聞記事に出ております労働省の方で資金運用部と労働金庫との関係でその融資ができないかというお話には、必ずしも厚生年金の還元融資もしくは厚生年金の運用のあり方というものとの兼ね合いからお話がなされているのではなくて、むしろ前年慶に、御承知のように災害が起きましたときに、約二億数千万円でしたか、労働金庫の関係に、地方団体を通じまして資金運用部が融資をいたしました。その前例との兼ね合いからも、同じように地方公共団体を通じまして、労働金庫等の金融機関を通じて、三億五千万ですか、目下の情勢では一応造船関係限つて遅配欠配の融資を話が来ているように考えるわけでございます。政府が金融機関全体について、そういつた融資をどういうふうに考えるかという問題につきましては、これは銀行局の方の所管でございまして、その点については、もし御必要ならば銀行局の説明員が今参つておりますから、そちらの方から御説明いたすべき筋合いでございますが、私の方といたしましては、資金運用部として、その造船関係の三億数千万円の融資をどう考えるかという点だけについて一応御説明を申し上げますと、デフレの影響によりまして、今後も炭鉱その他いろいろな方面に、こういつた問題は起つて参ると思いますので、総合的な失業対策の一環として検討を要するだろうと考えるわけでございまして、その関係からいいますと、まず第一に三億数千万円という金額は、わずかであるが、去年も二億数千万円だから、三億数千万円という金額だけに限るならば、資金運用部が難色を示す必要はないじやないかというような御質問が当然出るだろうと思うのでありますが、今申し上げましたような今後のデフレの進行から当然想定される問題を考えると、必ずしも、局部的に造船関係の三億という問題だけをただちに取上げて、去年と同じようにやつていいかということは、なお検討を要するのじやないか。なお去年の労働金庫を通ずる、地方公共団体を通じました還元融資の趣旨は、不幸にしてそういう賃金の欠配の問題から主張されたのではなくして、むしろ災害に関連する問題として処理されれわけでございます。資金運用部といたしましては、従来いろいろの御批判はございますが、御承知のように、先ほどおつしやつた厚生年金にしろ、あるいは郵便貯金にいたしましても、数多くの全国の預金者の方々が有利確実に利殖するというその点についての信頼をもつてされた預託金の運用について、何よりもそういう償還の確実な、有利な運用ということを、法によつて憲法とされておるわけでございまして、そういう点から、そういう遅配欠配という新たなる融資の問題についてどう考えるかということは、かなり校訂しなければならぬのじやないか。一応そういう関係から、去年の例が必ずしも今年の問題と簡単につながるというわけには参らない点がございます。そういう事務的な一応の検討を進めておるわけでございますが、その難色を示しているのはどうだといういわゆる政策的な問題について、今ただちに決定的に、だからいかぬのだというふうに私から申し上げるわけではないので、そういう点から、資金運用部としても、預金者に対する関係から運用については十分責任がございますので、その点について顧慮しなければならない。そういう関係から、目下なお検討さしていただいております。  それから、造船そのものに限りました場合にどうなるかということになりますと、これは御承知のように十次造船が不幸にして非常に遅滞したために、こういつた点が招来されておりますけれども、しかし、結局もし資金運用部からの融資という方針で行くならば、これが金融である限り、十次造船を受注することになつた企業におきましては、つなぎ融資をいたしましても、これを償還することができるわけでございますが、もし受注しないということになりますと、その企業は、融資の問題ではちよつと泳げないのじやないか。そこで、それでは十次造船の企業で受注するかどうかという問題は、御承知のように昨今急に進展が伝えられておりますような段階でございまして、その点からも、かりに造船の三億数千万円の問題に限定いたしました場合でも、十次造船のここ近い将来におけるはつきりした推移というものと関連して考える必要がありはしないか。大体こういうような事務的な点から、目下検討を続けておる次第であります。
  15. 加治木俊道

    ○加治木説明員 私は銀行局の特殊金融課長でございます。ただいま福田説明員の方から説明がありまして、あまりつけ加えることはないと思いますが、銀行局として一体どう考えるかということでございますが、御承知のように、政府金融機関を通ずる特殊の政策的な意味合いを込めた金融の方式というものは、現在幾つかございます。しかし、あく集われわれは、まず金融の問題で考えなければならぬ。これは今福田説明員の言われた通りであります。これはわれわれ金融関係を通ずる鉄則であります。かりに金融に乗り得る場合でも、現在たとえば一般国民大衆に対して特殊金融をやるという機関では、御承知のように国民金融公庫というのがございますが、この場合でも、原則として一つは事業資金――生業資金と申し上げた方が的確かと思いますが、生業資金には限られておる。こういつたプリンシプルから考えて、かりに資金運用部の資金供給をこの関係において要請する場合でも、そういつた一般のプリンシプルとの関係でどういうふうにこれを考えるか、こういつた点もあわせて検討すべきではないかというふうに考えておる次第であります。いずれにいたしましても、今福田説明員が申しましたように、新聞では決定的にだめだというふうに印象づけるような記事になつておりますけれども、まだそこまで至つておりません。ただいま福田説明員が申しました諸点、今私が申しました諸点について検討中でございます。問題の重要性にかんがみまして、単に造船関係だけにしぼつて考えられるかどうかという点もあわせ考えますならば、資金運用部の資金状況等もにらみ合せて態度を決定すべきである、こういうふうに考えております。
  16. 井堀繁雄

    井堀委員 課長さんにかような質問はお気の毒だと思いまして、実は大蔵大臣に出席を求めたいと思いましたが、御都合がつかぬそうで、それでは局長にというわけでしたが、ところが局長は二人ともお見えにならないので、課長さんにおいでをいただいたわけであります。私の質問は課長さんにお尋ねするのは多少酷であると思いますが、しかしせつかく代表されてお見えになつておりますから、明らかにしたいと思います。先ほども私が述べたことでおわかりだと思いますが、ただいまの御答弁では、私からいうと的はずれのお答えだと思う。私のお伺いしておりますのは、すでにもうきまつたことなのであります。労働者が長い期間にわたつて積み立てておる金があるのです。間違いがない。しかも一千百十億に上つておる。一方では当然法律で保護を受けるべき、すでに働いた賃金がもらえないで生活に困つておる。これをどうするかといえば、当然これは政府の責任である。でありますから、右の金を左に渡すということは何も困難ではない。これは事務屋の仕事ではない、政治であるかもしれない。であるから、大臣を呼べば、この問題の解決はすぐできるはずであります。あなた方にそのことを迫ることは、多少私もわきまえておるつもりですが、しかし今の御答弁によりますと、奇怪に思うことは、造船に限るということがあるわけであります。よしんば造船限つても三億数千万円出ておりますが、一体この程度の金が――しかも十次計画の行き詰まりはどこに原因があるかということは、いまさら説く必要はないと思います。多かれ少かれ政治的貧困から来るものでありますから、広く言えば、われわれも含めて政治に関係する者の責任であるかもしれませんが、当面の責任は政府にあるわけであります。この問題が、社会に及ぼす影響の中でも、法律違反を構成するような事態があれば、即刻解決する措置を講ずべきが当然なんです。あなた方は賃金の遅配ということを軽く考えるから、そういう言葉が出て来る。一体労働省の監督官は何をしておる、働いた賃金がもらえぬようなことでどうする。しかもその賃金は安いじやないか。その解決ができないようなことで、政治がどこにある。きわめて平凡なことです。それも、ないものをどうこう言つておるのじやない、労働者の金を預かつておるじやないか。預かつおる票どうして出せない。労働者同士同士が零細な金を集め合つて労働金庫をつくつて、その金庫が危険を冒して貸付をやつておるじやありませんか。それをてれつと見ているという手があるか。特殊金融課というのは、一体何です、労働金庫を監督しておるでしよう。危険な状態を冒しているのなら、あなたは監督の立場からこれを抑えなければならぬ。押さえていないところを見ると、この限界で許されているに違いない。その許す状態にあつて、片方で労働者の金が余つておるのを、なぜそつちに入れない。営利会社である市中銀行に対しては、政府は幾ら貸し付けておる。こういつた問題だけでも、特殊金融課の課長としての権限で、どうしたらいいかという判断があるでしよう。この点に対して、課長の見解だけ伺つておきましよう。
  17. 加治木俊道

    ○加治木説明員 厚生年金資金との関係をどう考えるかは、私の答弁の限りでないかと思いますが、特殊金融課として、労働金庫が当然これは金融のベースに乗るということで自分でやるということであれば、それはやるならやるがよかろうというふうには、われわれはもちろん考えられないのであります。十分説明を聞きまして、金融のペースに乗り得る――単純な遅欠配でなく、将来事業が計画に乗つて、十分自分たちのもらう賃金あるいは会社自身の経理内容の好転に伴つてそちらから金が入るという、そういう両方の保証がなければ、金融の対象としてただちにこれを取上げるということは、必ずしも適当でない、かように考えております。
  18. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいま大蔵当局の御答弁によりますと、厚生年金保険の積立金が、たいへんに労働者方面に融資されているというような御答弁でありますが、私が十九国会の厚生・労働連合審査会におきまして草葉厚生大臣の御答弁を求めた中に、今年の五月末で積立金が八百三十数億ある。そのうち労働者関係の住宅、病院、それに流用している金が昭和二十七年、八年、九年、今年度までで約八十億円程度である、そういうような答弁を得ておるのでありますが、八百三十教億あるうちの一割程度しか労働者の直接の必要には利用されていないのであります。それで労働金庫に対する融資が非常にむずかしいような御答弁でありますが、現在各都道府県にあります労働金庫に対して、各都道府県ではみな預託をしておる。それでありますから、中央労働金庫もできておる今日におきましては、それよりも進んで労働金庫に対する預託の方法ができないということは私はないと思う。ことに労働金庫におきましても、今日中小企業が非常に不振に陥りまして、今井堀委員が言われるように、賃金の遅配欠配が出ておる。それで各都道府県の労働金庫といたしましても、もちろん直接各加盟組合に融資するのでありますが、その加盟組合に融資しましたのを各中小企業の事業者に組合から融資する、そういう形をとりまして、困つておる中小企業の金融の面を緩和しておる。そういう方向に今日労働金庫の運営が向いておるのでありますが、私は労働金庫に厚生年金保険の積立金というようなものを進んで政府が融資いたしまして、それを通じて今日の中小企業の金融の道を緩和しながら、労働賃金の遅配欠配を解消する、そういうことをしますならば、今たいへん御心配になつておるようでありますけれども、労働金庫を通ずるならば、私は心配ないと思う。その点についてお答え願いたい。
  19. 福田勝

    福田説明員 お答え申し上げます。お尋ねの結局のポイントは、地方公共団体を通ずる方法ではなくして、労働金庫に資金運用部から金を出せないか、こういう点にあるようにお聞きいたしたのでございますが、その点についてお答えいたしますと、現行法の建前では、資金運用部から融資をしてもよろしい相手の資格というと語弊がございますが、相手を、つまり法によつてきめておりまして、現在の段階におきましては、労働金庫は資金運用部からは直接の融資は現行法のもとではできないことになつております。これは民間資金が入つたものには、特別の立法がない限りは、そういうふうに相なつておるわけであります。そこで現状におきましては、地方公共団体を通ずるそういつた方途で融資の問題が出て参つておる次第でございます。
  20. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 もちろん私は各都道府県にありまする労働金庫に直接融資ができるというようなことは考えておりません。現在四十都道府県に近いものに労働金庫ができておりまして、そうして現在東京に労働金庫の連合会ができております。これに融資ができるかどうか、その点なんです。
  21. 福田勝

    福田説明員 お答えいたします。実は私はその点についてそういうふうにお答え申し上げたつもりだつたのでありますが、県の金庫のみならず、そういう連合会も、今の法の建前では一応対象外に相なつておる次第であります。
  22. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の問題に関連してお尋ねいたしたいと思いますが、金融に乗らないという問題であります。金融に乗らないということになりますと、要するに回収の見込みがなかなかつかない、危険度が非常に濃厚である、こういうことであろうと思うのであります。そこで私は労政課長と特殊金融課長にお尋ねいたしたいと思いますが――これは政治的な問題でありますので、実は課長では無理と思いますけれども、事務的にお尋ねいたしたい。労働金庫が貸すにいたしましても、遅欠配が多くなりますと、非常に危険度が増して来る。そうすると信用保険制度というものの確立、再保険の確立が必要である、こういうことになると思うのであります。そこで現在の中小企業信用保険法の中では、金融機関の信用保険制度として、銀行とか無尽会社とか農林中金とか商工中金、信用金庫、信用協同組合あるいはその後に法律が改正になつて中小金融公庫も入つておると思いますが、こういつたものには再保険の制度がある。そうすると当然労働金庫にも信用保険の制度を確立されてもいいと思うのですが、そういう準備は事務的に考えられていないかどうか、これを両課長にお尋ねいたしたいと思います。
  23. 有馬元治

    ○有馬説明員 先ほどから資金運用部の金を、県を通じて労金に融資すべしという御意見が非常に活発なんでございますが、これは特金課長も説明されましたように、金融ベースに乗らなければ、金融機関として貸出しを行うことができないことは当然でございまして、この点はわれわれとしても造船を主体に考え、しかも金額を三億六千万円と、非常に内輪にといいますか見方によつては少額の要求をしたわけでございますが、これは一にかかつて金融ベースでものを考えるという大前提に立つておりますので、そういう結論を一応労働省としては出したわけでございます。この現在のデフレ下の各種の賃金不払い対策、あるいは労働者の困窮に対する救済対策という見地から見ました場合に、これを一労金もしくは賃金対策という面からだけものを見ても、根本的には解決しないのでございまして、やはり企業が再建するまでの場つなぎという程度のきき目しかないのでございまして、その点にも、こういつた方法で融資をする場合の限界がすぐ考えられるだろうと思います。  それともう一つ、現状のもとにおいてこれをフルに活用するといたします場合に、どういう問題があるかということになれば、多賀谷委員からお話がありましたように、融資保険の制度が裏づけされておらなければ、貸したくても貸せないではないかという問題でございます。私が労金を見ておるところによりますと、市中銀行よりは非常に労働者の味方といいますか、労働者の銀行でございますので、市中銀行ならば金融ペースに乗らない場合でも、思い切つて融資をいたし、しかもそれが現在までのところは焦げつかずに回収されておる、これが労金の一つの大きな特色でございます。今後の事態を考えますと、今までのような信用貸し一本やりで行つた場合に、はたしてうまく回収ができるかどうか、ベースで計算できるかどうかという点につきましては、非常に大きな疑問を持つております。現に――これは具体的な問題になつて非常に恐縮でございますが、昨年の年末融資の場合におきましても、石炭関係においては、やはり若干の延滞、焦げつき的な現象が出ておるということも、われわれ検査を実施して承知いたしております。そういう状態でございますので、問題はそういう融資保険の裏づけをこの時期において考慮、研究すべきではないかという段階に立ち至りつつあるのではないかという見通しをもちまして、われわれ事務当局の立場におきましては、現在ぼつぼつ融資保険の研究をやつておる段階でございます。御指摘のように融資の保証ないしは保険制度が確立されてなければ、現状でいくら資金源を確保してみましても、やはり一定の限度があるということは争えない事実でございます。その点は今後とも研究はして参りたいと思いますが、何せこの労働金庫制度は、生れましてから間もなく、あまり期間もたつておりませんし、また特殊な消費金融の本質を持つておりますので、その点のいろいろな問題もございまして、中小企業に行われております信用保険制度をその表まこれに導入するという点につきましても、いろいろな問題があると存じます。われわれ事務当局といたしましては、いろいろな角度から融資保険の制度の研究を進めて行きたい、かように考えております。
  24. 加治木俊道

    ○加治木説明員 金融のベースにしぼつて考えるということは、今労政課長からの御説明もありましたが、あくまでもわれわれとして労働金庫の健全な発展を願う立場、また金融機関としてこれを発展せしめるという立場から当然出て来る結論かと思います。今全国で約六十億ばかりでございまして、まだ発足早々で、資金量はほかの金融機関に比べれば小さいのでありますが、これがやがて健全に発展して行きますならば、労働金庫の業務は、決して通常の業務からいつて危険なものではないし、十分力をつけて、単に資金繰りだけの見地から言うならば、こういつた問題ができたときに、その際しいて政府なりその他の資金源泉にお願いすることなく、みずからの力で解決するような時期は遠からず来るのではないかと私は期待しておるのであります。しかし、それはあくまでも資金源としての見地からだけであります、今申されたような非常に金融ベースに乗りがたいものについてどういうふうに考えるか、できるだけ何らかの形で、これを救済するなり、取上げるような方向で考えたらどうか、その一つとして、融資保険というようなことも考えられるのじやないかということでありまして、十分検討して行きたいと思います。保険も、これもはなはだ渋い話を申し上げて恐縮でありますが、やはり一種の金融原理に沿つた保険原理でやつて行かなければならない。従つて、どんなに危険があつて絶対に回収の見込みがないものでも保険にするかというと、これはそういうものばかり保険にしたならば、保険自身も成り立たないわけであります。そうすると、金融の危険といつても、労働者失業の危険ということに実質的には通ずるわけでありますから、一方で失業保険の制度とのかみ合せの問題も、実質的な問題として出て来るかと思います。あるいは、よくわかりませんが、厚生年金との関連も出て来るかもしれません。それらに関連せしめながら、労働省でも検討を進めておるようでありますが、われわれの方でも十分検討して行きたいと考えております。
  25. 赤松勇

    赤松委員長 それでは理財局長、銀行局長にも来てもらいまして、さらに審議を進めたいと思います。
  26. 井堀繁雄

    井堀委員 私はこれで質問を打切りまして次会に、適当な早い機会に銀行局長、理財局長に出席を求め、特に理財局長には約束がございますので、もつとはつきりしたその後の模様を伺つておきたいと思つております。しかし、せつかくの機会でありますから、課長にお答えができるならばお答えしていただきたいと思いますが、この新聞の最後に、労働省からの要請に対して大蔵省は、地方財政の危機から公務員の賃金遅欠配もあり、これに対する対策も十分講じられてないのに、一般産業までめんどうを見る余裕がないとしている、こう労働省の申入れを断る理由を明らかにしております。これは誤報でしようか、それとも大蔵省の見解でしようか、この点をひとつ確かめておきたいと思います。
  27. 福田勝

    福田説明員 前にお答え申し上げましたように、決定的に大蔵省がある意思を外部に発表しているわけではございませんので、新聞に書かれております観測的な記事だというふうに御了解いただきたいと思います。そういう点についてどう考えるべきかについては、これは地方公共団体の財政につきましても、先生方のよく御承知のように、ところによつては非常に悲惨な状態にもありますので、人によつてはそういうことについていろいろな見方があると思いますが、大蔵省としてそういうふうなことを表明しているのだとすぐ了解いただくのは、正鵠を得ているものではないと考えております。
  28. 赤松勇

    赤松委員長 先ほどから運輸省の方が待つておりますので、皆さんにお諮りいたしましたように、石炭関係が二時にかつきり終るようにお願いしたいと思います。  なおただいま入電がありまして、昨日委員会で決定しました高倉鉱業の社長は病気入院中でございまして、それにかわつて中山常務、古野重役が、ただいま板付から二便の飛行機で、きようこちらに到着すそ予定であります。これは明日にまわしまして、明日なお審議を進めたいと思います。多賀谷委員。
  29. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石炭局長がお急ぎでありますので、まず昨日の質問に続きまして、石炭局長にお尋ねいたしたいと思います。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕  まず昨日の説明の中で、私が非常におかしく思います点は、重油の規制について、従来の石炭局長でありました佐久石炭局長が、この委員会において説明されたのと違う点があるからでございます。われわれが参つたのによりますと、昨年度の五百三十七万キロよりも、大体政府としては百万キロリツター下げようと考えておる、その線に乗せたいと考えておる。であるから、本年度の需要は最初は、四千八百万トンといつたが、これは確かに間違いでありまして、旗をおろします。しかし、昨年よりも二百万トン、すなわち四千六百万程度はぜひ確保する見通しがありますと、こういうことを言われてから、まだ二月とたたないのでございます。しかるに、昨日の石炭局長の話によりますと、現在月において三十八万キロリッターですか、こういうような実績を示しつつあり、これは昨年度の五百三十七万キロの大体わく見通しのように行いつつある、こういうことですが、それではどうも不満足であります。私たちは少くとも三十一万キロリットルあるいは三十三万キロリッター、こういうように承つてつたわけですが、その点は一体石炭局としてはどういうように把握されておるのか。直接の関係ではないでしようが、直接石炭関係がありますので、御答弁願いたいと思います。
  30. 齋藤正年

    齋藤説明員 お答えいたします。重油の規制の問題でございますが、昨年度の消費実績が正確に五百三十七万キロでありましたかどうか、その点についてははつきりした数字がまだ出ておりません。あるいは出ておるかもしれませんが、私本日までまだ承知いたしておりませんが、五百三十七万キロであつたという統計をもとにしまして、本年度の重油の、特に外貨割当に関連いたしまして、計画を立てたわけであります、そしてその計画では――あらためて申しますが、一応本年度といたしましては五百三十七万キロの消費ベースで行くということになつておりまして、それが月々に、消費の量が在庫の関係から違つておりますが、六月分といたしましては、たしか三十六万キロでなかつたかと思います。今はつきりした数字は持つておりませんが、それに対して実績は三十八万キロでございます。実質的に規制が始まりましたのは六月からでございますから、それとしては、成績は大体所定の軌道に乗つている。昨日でも御説明いたしましたように、五月は四十六万キロでありますが、それに比べて三十八万キロまで消費が抑制されましたことは、大体通産省として考えております消費抑制の軌道に乗つているというふうに、われわれとしては考えているのでございます。しかし、石炭局の立場といたしましては、五百三十七万キロが最も妥当なものだ、それ以下に圧縮はできないものだというふうに考えているわけではございません。昨日も御説明いたしましたように、通産省といたしましても恒久的に五百三十七万キロのベースが妥当なものであるというふうに考えているわけでもございませんので、あらためて消費の実態を再調査して、どこが妥当なベースか決定したい、こういう考え方でございます。その基準が、これは石炭局側からの調査によりますれば、もう少し低い線にあるのじやないかというふうに考えておりますけれども、重油の消費の個別の実態につきましては、われわれの方で把握いたしておりませんので、はつきりしたことは申し上げかねる次第であります。
  31. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも行政の仕事が、あとからあとから行つているような感じがしてならないのです。少くともデフレの政策をやり、重油がこれだけ入つて来るという状態の中では、どの程度重油を規制し、石炭の消費量がどの程度ある、こういうことは、もう予算を組むときに、やはり政府としては発表しなければならぬものであります。なるほど五千二百万トンの能力があるにかかわらず、今年は四千八百万トン需要があるだろうということは発表された。ところがその四千八百万トンもうそだ、こういうことになつて、通産大臣は、いやこれはあやまちでしたと答弁されたが、今の話を聞きますと、昨年の重油がそのまま入つて来ることを努力しているということになると、やはり昨年の消費量四千四百万トンにならざるを得ない。それは昨年と本年との終済の事情が同じであり、燃料が同じだけいると換算してそうである。ところがこの前――どうもあなたを責めるのは都合が悪いのですが、四千八百万トンはなくても少くとも四千六百万トンはあります、二百万トンの増を見込んでいる。こういう話であつたところがまだ二月とかからないうちに、今お聞きすると、四千四百万トン以下のような気がするのですが、一体石炭局としてはどういう見通しを持つておられ、どういう経緯でそういうようにくらくらかわるのか。これは非常な影響を持つものでありますので、私は明確な答弁をお願いいたしたいと思います。
  32. 齋藤正年

    齋藤説明員 お答えいたします。最初に重油の関係につきまして、ちよつと補足的に御説明いたしますが、昨年の五百三十七万キロは、実は一応本年度の外貨割当の計画を策定いたしますときに、昨年度の実績がごのくらいではないかということで計算したわけでございますが、実績は若干それよりも上まわつていいるようでございます。先ほど申しましたように、正確な数字は承知いたしておりません。また正確には把握されておらないのでありますが、若干上まわつて来たように思われます。ただ本年度がその五百三十七万キロにきまりましたいきさつは、御存じのように昨年は年初から五百三十七万キロのベースで消費されたのではございませんで、逐月消費が増加いたしまして、年間として五百三十七万キロになつた。従つて年度末の消費ベースをそのまま継続いたしますれば、五百三十七万キロよりも相当増加する見通しでございます。それを一応昨年度の年間消費総量に押えようということにしたのでございますから、重油の方といたしましては、相当の消費規制に現実になつておる次第でございます。  ただ、それに関連いたしまして、そういうことでありますから、石炭の消費が四千六百万トン程度になるだろうということをこの国会で申し上げた、それに対して現在の見通しがどうもそこまで行きそうもないではないかというお話でございます。これは現状に関する限りは、まつたくおつしやる通りでございまして、われわれ石炭局の需給推算がたいへん誤つてつたという点については、おわびを申し上げるよりいたし方がないのであります。昨日も御説明いたしましたように、実は重油が五百三十七万キロに、大幅に五月よりも減つておりますが、石炭の荷渡しは一向改善しておりません状況でございます。そういうことでございますので、ちよつとその例でもわかりますように、現在の荷渡し状況ちよつとアブノーマルと申しますか、通常のベースで考えられない金融的な要求と申しますか事情が非常に強く作用しておるように考えられます。従つてそういつた金融的な梗塞がある程度平準化しましたときに、初めて安定した消費需要がどれくらいになるだろうかということがわかるのではないか。現状では昨日も御説明いたしたかと思うわけでありますが、荷渡し実績は四千万トンあるいはそれをちよつと下まわるくらいの程度でございますが、しかしごく最近、今月になりまして以後販売業者等の見通しを聞きますと、大分好転をしておる。石炭に対する引合いもぶえつつあるというふうな状態のようであります。ただ先ほども申しました非常に金融的な事情に左右されておりまして、その引合いがはたしてどの程度まで資金の裏づけのある需要であるかどうか。特に重油の方から石炭に再転換して来る需要がぼつぼつ出て来ておるようでありますが、どの程度までその需要が現実に支払い能力と結びついた需要であるか、そういうようなところがまだ未確定であります。そういうふうな問題がある程度おちついて見通しも立つようなときになりますれば、もつとはつきり割切つたお返事ができるのではないかと思います。現状ではどうも四千六百万トンは今の情勢では出そうもないじやないかとおつしやられます。しかしまたそういうふうにも考えられますが、しかし今の四千万トンのベースのまま推移するとはちよつと考えられません。それがどのくらいになるか、先ほども申しましたように、重油の消費規則の影響もほとんど出てない。さつき申しましたように、転換需要の引合いがぼつぼつ出だしたという段階でございますので、何とも今のところ残念でございますが、はつきりしたことを申し上げる段階に至つておりません次第でございます。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石炭の最高の担任者である局長からそう言われると、われわれも非常に困るわけですが、四千万トンをどうも見通しがつかないというようなことでは、これは非常な悲しい事態であると思うわけです。とにかく五千二百万トンもキヤパシティがあつて、四千八百万トンというのでも不安だ、しかもその四千八百万トンを言われたときには、少くとも六百八十万キロというような二十九年度の消費の見通しのあつたときに、それとあわせて四千八百万トンという数字が出た。ところがその後重油の規制その他によつて、四千六百万トンということを言われた。昨年は四千四百万トンと五百三十七万キロですから、五百三十七万キロを下げなければ、昨年と需要が総合燃料として同じであるということになれば、やはり四千四百万トンの線は止らないじやなかろうか、こういう話をしましたところが、いややはり四千六百万トンはやりたい、こういうことです。このおもな理由は、やはり五百三十七万キロリッターから百万キロリッター下げて、石炭に直しまして大体二百万トン、そういうのが基準になつてつたと思う。それでそれにわれわれは非常な期待をしておつた。それがどうも五百三十七万キロもあぶないということになると、四千四百万トンもあぶないということになる。どうも残念な状態ですが、政府としまして一応早く私は見通しをつけられることが、やはりこの炭況を安定さすことであると思う。単に政府見通しがない、見通しがないと言つたんでは――ことに今府政は荷渡しの状態を見て四千万トンぐらいかもしれないと言われましたが、石炭はものすごく落ちます。がた落ちです。政府の方で四千六百万トンというようなことを言つてつたんですが、今ここで四千万トンぐらいしか需要はなかろうと言つたら、少くともあとの四百万トンぐらいはただで売らなければならぬ、こういうことになりまして非常に動揺すると思います。その意味におきましても、私は今価格が鉄鋼とか電力とかにおいて決定を見ましたので、早くこの見通しをつけられるということが、やはり炭界を安定さす一つの方法ではないかと思う。局長が新しく見えて、いじめることはどうかと思いますが、しかし局長もかつて課長の時代に、いろいろ石炭については研究をされ、その担任をされておられた方であります。でありますから、私はさらに早くその対策を樹立されんことをお願いするわけであります。しかし早くと言いましても、もうすでにできておらなければならぬ問題であります。今ごろ実は重油がその企業のコストに占める割合はどの程度であるかとか、あるいは輸出に影響するもの、あるいは影響の少いものはどの程度であるか、こういうことを調べているようでは、どうも私は、あなただけの立場ではありませんが、通産行政全般として怠慢ではなかろうかと思う。これは重油というものが国内から出るものではないので、外国から全部買つて来るものがどこにどう使われておるか把握ができていない、しかもこれは外貨割当という点を政府は握つておる。でありますから、かなりその点においてほかの産業と違いまして、わかるはずであります。それがわからない。しかも今から燃料に占める割合とか、コストに占める割合を調べようということでは、炭鉱がつぶれてしまつてあとから対策ができるということでありまして、もうつぶれるものはつぶれてしまうわけです。あとは優秀な炭鉱だけ残るのでありますから、その後はだれがやつてもうまくできます。それは労務者を、ことにコストの五〇%も労務費を払つておる労務者を抱えておる炭鉱では、ゆゆしい問題であると思うのであります。  そこで私は、時間の関係がありますから、あまり長く質問するわけに行きませんが、こういうように石炭の把握ができない。ことに需要が不安定であれば供給も不安定である。供給の不安定とか、ストライキのことばかり言いますが、そればかりではなくて、需要が不安定であるということが、また供給を将来不安定にする。先ほども申しましたように、高炭価問題は、ますます困難な方向へ行きつつある。現在とりやすいところをとつておりますから、今後はちよつと好況に向いますと、ものすごく石炭は上るだろうということは予想できるわけであります。高炭価の解決にはだんだん遠ざかつておる。しかも今のような状態で、炭鉱の供給自体が将来においてあぶなくなりつつある炭鉱は、閉山しましたら、すぐ掘れといいましても、できるような品物ではありません。こういう状態でありますから、私は事務当局としてはこの需給調整についてどういうような考え方を持つておられるか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  34. 齋藤正年

    齋藤説明員 通産省といたしましては、今お話のように、なるべく早く正確な石炭の需要の見通しをつけることが必要であることは、われわれもまつたくそのつもりであるわけであります。ただ事情が、先ほど御説明いたしましたように、現在の荷渡し状況は、いかにもアブノーマルなもので、さつき四千万トンと申しましたが、現在の荷渡し状況がそういうアブノーマルな状況にあるもとにおいて、四千万トンの実績であるということを申し上げたので、これは決してわれわれが四千万トンの需要しかないというようなことを申し上げたのではございません。特に多賀谷委員も御承知のように、石炭は夏場と冬場では消費係数が全然違いますので、冬場になれば当然ある程度の需要の増が見込まれるわけであります。それで決してわれわれが四千万トンの需要の見通しであるとか、あるいはそれでしかたがないというふうに考えておるわけではございません。  それから燃料政策の問題でございますが、先ほど申しましたように、われわれは重油の消費を一応五百三十七万キロということで進んでおりますけれども、さつき申しましたように、これは重油の消費実態が十分わからないからで、その消費実態を十分つかんでおらないのは、非常に怠慢ではないかというお話もございましたけれども、普通の物資の外貨の割当は需要者割当になつておりますが、石油の場合には精製業者または販売業者になつておりまして、要するに全部一括販売者割当になつております。それから先の具体的な使用状況につきましては、一応各それぞれの業種からこれこれの需要があるのだという見通しをとりまして、それを基準にして考えておつたという程度でございます。従つて個々の業種の中の個々の工場が具体的にどういう使い方で使つておるか。たとえば、ボイラーに使つておるのか、あるいは平炉その他の加熱炉に使つておるのか、その具体的な設備によりまして規制していい限度が違つて来るものでありますから、そういつた具体的な設備別にどのくらいの油が必要であるかということを、今調査しておるという段階でありまして、もちろん、こういうことはもつと早くやつておけばよろしいわけでございますけれども、今まで消費規制自体が、よく御存じのように五月になりましてやつと発足しかけたというような状態でありますので、これは私の局の所管ではございませんが、ある程度やむを得ないことだと思つております。  そこで、消費の見通しでありますが、これはできるだけ早くつけたいと思つております。しかし、われわれ石炭の需給対策といたしましては、石炭の競争燃料、すなわち重油でありますとか、あるいは輸入炭でありますとか、そういうふうなものを、現在の事情で許す限り削減をいたしまして、いわば石炭の活躍し得る場所を広げるという線で今努力しておるわけであります。そして広がりました活動分野において具体的にどれだけの需要が出るかということは、先ほど申しましたように現在のようなちよつとアブノーマルな状況では予測が困難だ、それがまた今後のデフレ経済進行の状況いかんによることでありますから、非常に正確な見通しをつけにくいのでありますけれども、しかしそういつた石炭の分野が定まつて参りまして、なお今のアブノーマルの事情が解消いたしますれば、ある程度の正確さを持つた見通しができるのではないか、またできるだけ早く、そういう程度のものではございますが、見通しをつけたいというふうに考えておる次第でございます。
  35. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 見通しについては、ことに大口消費の、電力会社とか、国鉄とか、あるいは鉄鋼の価格がきまつた、そこで炭界はこの価格に従つて取引がなされる、こういう見通しがついて、むしろ炭界の見通しは、この前われわれ奮闘したと至りも、その見通しはついておるはずであります。逆に今ごろ見通しがつかなくなつたと言われるにおいては、きわめて心外であります。むしろわれわれからいうならば、価格の点も一応大品がきまりましたから、そのベースに沿つて大体見通しがつくはずでありまして、取引が今後なされる、あるいはさらに電力会社等には無理を言つて臨時に買付をしてくれ、こういう話まで行われておるやに聞くわけであります。そうすると、逆に私は見通しがついておらなければならぬ、かように考えるわけですが、まだ見通しがつかぬということになると私は非常に残念に思うわけであります。  それで再度質問をいたしたいと思いますが、四千万トンなんということになりますと、これはたいへんなことでありまして、そんなに少いはずはないと思つております。しかし一体どの程度あるのかということと、それから私あ先ほど質問しましたおもな重要な問題は、やはり需給に対する何らかの方策を事務当局としては考えつつあるのか。そうしなければ、一体投資をしても、また将来において需要がうまく行かなければ、炭鉱は高炭価の問題がだんだん遠ざかるのじやないか、ことに現在の開発銀行に納入しなければならぬ二十九年度の分が六十三億あると聞いている。ところが開発銀行から受ける開発の合理化資金は三十億と聞いている。現在のような炭界の不況から、一体三十三億をどうしてとるのか、こういう点も、私はきわめて重大な問題だろうと思います。もつとも、炭鉱は違います、個々の炭鉱が一致しておるわけではございません。炭鉱は違いますけれども、炭界からとるとこういうについては同じである。でありますから、これらの問題はどういうふうに考えておられるのか。  それから、再度申し上げますが、需給安定法といいますか、そういう法案については、どういうふうにお考えであるか、これについてお尋ねいたしたいと思います。
  36. 齋藤正年

    齋藤説明員 需給安定法というような問題が、新聞紙上に若干取上げられておりますけれども、現在のところ、事務当局内で具体的に案が固まつたというような段階にはまだ至つておりません。ただ新聞紙上にそういうことが出、あるいは多賀谷委員からの御質問がございますことは、そういうふうな対策を少くとも研究する必要があるのしやないかということを炭界の事情が示しておるものと、われわれも考えておるわけであります。通産部内でも、単にわれわれのところばかりでなしに、企画部門でも、いろいろそういう問題について研究をいたしております。何分にも石炭基礎産業の中でも最も重要なものでありまして、しかも現在の事情が、他産業に比べて極端に不況な異常な状態にございますので、何らかこれに対して措置をとる必要あるということは、みな承知しておりますが、ただ、どの程度のものをどういうふうな方法でというような具体的な段階には、残念ながらまだ検討が進んでおらない状態でございます。  それから開銀資金の償還の問題でございますが、これはお話の通り、今年は非常な引揚げ超過になつて参りまして、しかも今度返還いたしますのは復金時代の借入金でありまして、これは七分五厘、新規に借入れますのは一割の開発銀行資金であるというような点で、金利的にも、不況の石炭業界にとつて相当苦痛な問題でございますので、この問題についても、実はわれわれ石炭局といたしましては、いろいろ努力いたしておる状態でございます。先ほどお話が出ました需給安定法というような、そういう法律になりますかどうか、まだ何ともわかりませんけれども、需給安定につきまして、ある程度はつきりした対策なり見通しなりが立ちますときには、金融問題も、それと並んで解決してもらうようにしたい、またそうすべ集ある。われわれもこの点について努力したいと、思つておる次第であります。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は先日参議院の通産委員が九州に国政調査に見えましたときに、その席で傍聴したわけですが、九州電力とか、西部瓦斯とか、三菱化成とか、あるいは八幡製鉄とか、こういう会社の所長さんあるいは社長さんが見えました。このときに石炭の価格の問題が出ました。それは安いに越したことはないけれども、安定した価格が必要だということが言われた。一年間の予算を組むにおいて、予算の組みようがない。非常に高くなつたり――あるいは落ちる方はいいけれども、高くなつて、われわれは関連産業であるので、必ずしも安いだけを言うのではなくて、安定した価格が必要である、こういう話も出たのであります。そういう点を考えますと、やはり価格の調節といいますか、炭鉱の銘柄はいろいろありまして、価格もなかなか困難でございますけれども、そういう点についても、やはり考えなければならぬ問題があると思うのです。電力とか、ガスだけを料金を規整して、炭鉱は野放しにするというわけにも行かないだろう。そういう点をあわせてやはり総合的に考えられることが――現在炭鉱に対する一般産業並びに国民の感情が、必ずしもかつての復金時代からの融資その他でよくありません今日、合理化資金の方に高炭価の問題を解決しようとして努力する場合に非常な支障がある。これを解決しなければ、高炭価問題も、国民の声としてなかなか許してくれないだろう、かように考える意味において、そういう考え方を入れられることを希望しておくわけでございます。  さらに、私は需要の喚起についてお尋ねしたいのでありますが、コールケミカルの問題が盛んに言われております。もつともこれはもうおそいので、重油のケミカルの問題が世界的になつているときに、コール・ケミカルの問題を今ごろ言うのはおそいじやないかというお話もあると思いますが、とにかく日本はまだそれすらできていない、こういう状態でありますので、との点についてはどういうようにお考えであるか、私はお尋ねいたしたいと思います。  さらに、中小企業庁長官も見えておられますので、一言お尋ねいたしたいと思いますが、現在炭鉱が非常に困つておる、炭鉱の非常な景気のいいのに従いまして、雨後のたけのこのごとくできた炭鉱が、また泡沫のごとく去り行くのは、あるいは経済事情としてやむを得ない点があるかと思いますが、今度の場合は、そういつた小炭鉱でなくて、中炭鉱が非常に倒れて行つておるのであります。佐賀の新屋敷にいたしましても、今問題になつております高倉鉱業の筑紫あるいは岩屋、平田山にいたしましても、かなりの中炭鉱であります。あるいはあなたの方の関係よりも大きいかもしれませんけれども、しかしこの中堅炭鉱が倒れておるということは、これゆゆしき問題であろうと思うのであります。それで長官としても、一体そういう面についてはどういうようにお考えであるか。これは石炭局長にもお尋ねいたしたいと思いますが、あわせてそれらをお答え願いたいと思います。
  38. 齋藤正年

    齋藤説明員 今石炭を原料とする化手工業についてどう考えるかというお話でございましたが、お話のように今ペトロ・ケミカルというものが非常に人気の焦点になつておるようでございます。ただ日本の場合には、これは日本の原油は、原油の価格とほとんど同額程度の運賃を背負つた原油の価格になますので、日本におきましてペトロ・ケミカルをやります場合には、非常に石油生産額に比べて不利な立場でやらなければならないことになるわけでございまして、そういう点から行きますと有機合成化学の原料として、必ずしも日本におきましてはペトロ・ケミカルだけになるかどうか、その辺はまだ大いに問題があるのではないかと思われます。なおドイツあたりでは石炭からの合成化学の方のいろいろの面で着々進んでおるようでございます。そういう方面の研究は、日本でもかなりいろいろのところでやつておるようでございます。ただ、われわれのところでも燃料研究所あたりで、ある程度こういう問題も取上げておりますけれども、遺憾ながら日本では石炭乾溜工業というものが、石炭鉱業から全然離れまして、化学工業の立場として行われておる。そこにドイツ等は、石炭乾留工業というものが炭鉱と結びついてありますので、こういつた石炭の不況のどきには特にそういう方面に力を入れるということができるわけでございます。日本の現在の経営形態では、石炭側から積極的にこれを推進するような体制になつておりませんのははなはだ残念でございます。  それから、中小炭鉱の倒壊についてどう考えるかというお尋ねでございますが、これは今もお話がございましたように中小炭鉱の一部のものは、他人の鉱区を賃借いたしまして、ごくわずかの数量を好況のときに不利な条件で掘るというものがございます。こういうものは、経済が平常化して来れば、それだけでも持たない。まして、今のような不況の際に、そういうものが全部生き残つて行くということは困難ではないかと私も思うわけでございますが、しかし、お話のように、規模は大炭鉱ほどではないが、独立の炭鉱として長期に堅実な経営をやつて来た炭鉱でありまして、資源的にもなお今後その出炭に期待しなければならないようなものにつきましては、これは当然政としてもその立上り、更生に援助すべきであると考えるわけでございます。昨日も答弁いたしましたように目下企業庁あるいは公庫と打合せしまして、資金の融資方法について、従来の方法に比べてさらにそれを強化する方法を今準備をしておる次第であります。
  39. 記内角一

    ○記内説明員 中小炭鉱の問題につきして、ただいま石炭局長から御答弁申し上げたのでございますが、われわれの方といたしましても、今石炭局長が申し述べましたことと同じ考え方のもとに、この問題を扱つて参りたいとうふうに考えておるわけでございます。ことに、こういう問題につきましては、いわゆるケース・バイ・ケースに処理いたしませんければ、一般的な基本原則だけでは処理をできないのであります。また中小企業庁自身がどうこうするということよりも、現地にあつて常時その企業と密接な関連を持つております通産局なりあるいは県庁あたりが実際的な指導をするのが適当ではないかというふうに考えております。そういう面で、現地ともよく連絡いたしまして、そういう問題の起らないように解決に当らせておるような次第であります。
  40. 池田清

    ○池田(清)委員 多賀谷委員の問題に関連しまして、局長に質問をしたいのですが、一時石炭の値が非常に高くなつて、このために石炭を使う業者は安い油に転換しまして、そうしてその設備も大分できたのであります、しかるに今度は、石炭側の方から、生産が余るというような関係で、重油を減らせ、こういうようなことで、せつかく重油の方面ではその設備ができたに法かかわらず、だんだん重油の需要を減らす、こういうような関係になつてつたのでありますが、仄聞するに、多賀谷委員からもこの問題についてつつ込んだお話があつたのでありますが、石炭関係石炭局と、それから同じ届産省内の石油を扱う鉱山局、この間に需給関係についてどうも意見がしつり合わないで、常に論争しているというか、そういうようなことがあるということを聞いておるのであります。この問題は、国として、これは基本産業のきわめて重大な産業でありますから、そういうようなことは万々ないと私は思いますけれども、先ほどの話から伺うと、どうもそういうようなことで両局の間でうまく話がつかないので、さつきお話のような石炭の生産が四千万トンにも落ちる、こういうようなことに石炭局の方で見積りをするようなふうになつたのではないかと思うのでありますが、その点はいかがでございましようか。
  41. 齋藤正年

    齋藤説明員 石炭局と鉱山局との間に意見の食い違いがありまして、それが石炭の需給に影響を及ぼしたのではないかという御質問のように伺いましたが、これはわれわれ石炭を担当いたします者は石油のことをよく知らない、石油の担当者は石炭のことは知らないのでありますから、議論の過程におきましては、どうしても意見が食い違うということは、もう免れがたい問題で、何もこの問題に限りませず、すべてにそういうことがしばしばあるわけであります。ただ、この重油の消費規制につきましては、すでに大臣のもとで決定されまして、一つのきまつた方針で行われておりますので、鉱山局がその方針に違つた処置をするとか、あるいは石炭局でそれと違つた処置を要求するとかいうふうなことをする合地は全然ございませんし、そんなことをすべきでもないわけでございます。ただ、われわれの考え方から申しますれば、もう少し原油の供給を抑制する余地があるのではないか、石炭局で研究した結果では、そんな感じがするということをさつき申し上げましたけれども、これは具体的に重油の消費量を決定しまする際には、省として決定いたすわけでありますから、御心配のような懸念は絶対に起らないものと存じます。
  42. 池田清

    ○池田(清)委員 先ほど現在のアブノーマルの石炭状況では、四千万トンという低い生産に見積りをした、こういうようなお話でありましたが、そういうことになると、主としては中小炭鉱業者が非常に困つた状況にあるのではないかと思います。これはその原因はだんだんある思います。聞くところによれば、資金関係で非常に悩んでおる、そういうために、今のような数字が出るということも聞いておりますが、そういうような原因について、少しくお話を伺いたいと思います。
  43. 齋藤正年

    齋藤説明員 今四千万トンの生産というような話でございますが、私が四千万トンと申し上げましたのは、四月―六月の荷渡しの実績を年率に直しますと四千万程度になる。実際の生産のベースは、これもやはり四―六月の実績を年率に直しますと四千三百万トン程度であります。  それから中小炭鉱が非常に窮境に陥つておるのは、金融問題ではないかというお話でございます。これは確かに金融で非常に苦しんでおる面もあると思われます。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕 従つて、先ほど答弁いたしましたように、その方面に今手を打ちつつあるわけでございますが、しかし根本的には、掘つただけの炭が売れないというところに難点があるわけでありまして、金融問題が非常に困難な状況に至つておりますのも、はたしてその山の炭が全部売れるかどうか、売れて必ず回収できるかどうかという点につきまして、はつきりした見通しがつかない。しかも、山の数が非常に多いものでありますから、金融機関側からすれば、どれが健全な炭鉱で、どれがその点危険と申しますか、金融的に見て危険か判別がつかないというところに金融の難点があるわけでありますので、そういう点を解決するように今準備をしておる次第であります。
  44. 池田清

    ○池田(清)委員 よくわかりました。そうしますと、重油の量をもう少し減せば、この石炭の方の関係がよくなる、こういうような意味で重油の輸入を減すという交渉をするような御意図はありませんですか。
  45. 齋藤正年

    齋藤説明員 先ほど来御説明いたしておりますように、現在の五百三十七万キロというベースは、当面としては、この数字がやむを得ない数字ときまりましたけれども、必ずしも恒久的な長期にわたる計画の基礎として、そのような合理的な根拠を持つておるものではございません。先ほど申しましたように、具体的な設備別に輸出方面に対する影響あるいは国内の物価の趨勢に対する影響というふうなものを考え合せまして、それに悪影響を及ぼさない限度において重油の消費を抑制するということは、単に石炭の需要をふやし、それによつて石炭鉱業の従業員をふやして雇用機会を改善するという意味だけでなしに、外貨の節約という面においても重要でありまして、単に石炭方面の救済という面を離れまして研究しなければならない問題であります。ただ今申しましたような点について具体的にいたすためには、さつき申しましたような個別の消費実態というものを把握する必要がある。それができ上つた上で、どういうラインで線を引くか、きめたいというふうに思つているわけであります。
  46. 日野吉夫

    ○日野委員 関連してちよつと伺いますが、昨日来この問題を現地からよく聞いておるのであります。高倉とか平田山とか大分切迫した事情にある、もう数箇所ですわり込みをやつており、今月一ぱいまでというようなことで何とかしのいでいる、こういう事情のようにわれわれは承知しておるのでありますが、今局長の話で、どうも急速にこの問題が解決しそうな見込みがない。現地では今月一ぱい待てば何とかなるということでいるのに、消費規制の問題が――重油と石炭関係を規整することは、根本的な問題であろうけれども、今ただちにこの問題が逼迫した石炭事情を解決する問題にはならないのではないか。何かはかに、これを急速に解決する緊急の対策、つなぎ融資とか、そうしたものの考慮が石炭局にあるのかどうか。これは石炭局だけではなく、関連する方面がたくさんありますからむずかしかろうけれども、しかし事石炭に関する限りは、あなたのところで一応の案を持つて臨まなければならないのではないかと思うのであるが、何かこの事態に対応する一つの首肯できるような案があるのかどうか。あつたら、ひとつお聞かせを願いたいと思うわけであります。
  47. 齋藤正年

    齋藤説明員 申すまでもなく、現在の自由経済の体制下におきましては、石炭企業の全企業について一律に融資をするというふうなことは、とうてい望み得ないわけでございます。ただ、現在すでに四百万トンにも及ぶ貯炭ができたということは、それ自体ある程度、少くとも大会社については、金融がついていることだと思うわけでございます。但し、中小炭鉱につきましては、御指摘を待つまでもなく相当急迫した事情炉あることは承知いたしておりますので、先ほど来御説明いたしておりますように、公庫を通じて、従来のベースと離れて緊急に所要の資金が出るようにいろいろ手配をしおる次第であります。
  48. 日野吉夫

    ○日野委員 その折衝の見通しはどうですか。
  49. 齋藤正年

    齋藤説明員 これは中小企業庁の長官も来ておりますので、長官から答弁した方がよろしいかと思いますが、もうじき所要の準備ができると思つておる次第であります。
  50. 日野吉夫

    ○日野委員 この問題につきましては、問題を二つにわけて根本的な対策、それは今話された重油の消費規制の問題等が重大に考えられて、これが根本的に解決しない限り安定しない、こう考えるのでありますが、多賀谷君からも言われましたそのほかに需要の喚起とかあるいは転換とか、そうした根本的な一つの案が立てられなければならないと考えられるし、もしそれでもつてどうしても若干の整理をしなければならぬということになれば、これは計画的に整理されなければならない。ただ野放しで自由主義の原則によつて優勝劣敗、弱い者はつぶれてもしかたがない、こういう考えのもとに現状の中小炭鉱を放置されることは、これは石炭問題以外の重大な問題を引起すおそれがある。これは今のデフレ政策遂行の途上における対策として、失業対策等が講ぜられなければならないので、通産省ばかりでなく、経審あるいは労働省その他各省とも十分に連絡の二、一貫した一つの基本的なものが持たれなければならないと思うのでありますが、われわれは当面、このことよりも、今説明されている緊急つなぎ融資等の問題でもつて、何とかこの場を救済して行く方法が考えられなければならないと思う。厖大な貯炭のあることは、これはもちろんでありますが、大手筋の大炭鉱は、すでにこれらについての融資の自信等も持つていると思うので、当面問題になるのは中小の炭鉱で、今いろいろの問題を起しているが、もし政府が、ほんとうにこの問題を解決しようという熱意があるならば、何かの方法があるであろう。たとえば買い上げることを前提として一部の融資をするというようなことも考えられる。今中小企業庁から金融公庫に申入れをしているというが、それは現状において、はたしてこの急場をしのぐ融資ができるのかどうか。これは企業庁の長官から明確に聞いて率きたいと思うのでありますが、何かそのほかにこれを救済するこれに類似したような方法でもあれば、ひとつ御指針を伺つて、さらに失業対策として別個の考慮を払つてもらう。一応中小企業庁長官から何か緊急融資、つなぎ融資等の問題について中小企業庁の中小企業金融公庫との折衝の経過、その自信、なおそのほかに方法があれば、それらについてひとつつておきたい。
  51. 記内角一

    ○記内説明員 お答え申し上げます。ただいま緊急融資の問題について、どういうようになつているかというお話でございましたが、御承知の通り、中小企業金融公庫は、自分で直接融資するのではありませんで、金融機関が保証する場合におきまして、この金融機関を通じて資金を出すということになつております。いわゆる窓口銀行というものが、これを取扱うことにいたしておるわけであります。従いまして、窓口銀行の方面によく事情を話しまして、金庫としても十分に資金を出す準備態勢をとつているから、できるだけめんどうを見るようにということで、地元の銀行に話をいたしておるわけであります。さらにまた現地におきましては、通産局あるいは県庁の方面におきまして、各銀行と個別に折衝させておるという事情でございます。  なお、石炭の買上げ等を前提にした対策というふうな面につきましては、何分にも財政にも予算の問題にもからんで参りますので、さしあたりの問題としては考え得ない状態になつておりますが、目下そういうことでこの事態の解決に当りたいと考えている次第でございます。
  52. 日野吉夫

    ○日野委員 大体こうした問題の発生は政治の貧困から来ることでありまして、デフレ政策をやろうというのに――デフレ政策をやるならば、十分なる計画を持つて、その対策を用意して臨まなければならないのに、慢然とデフレ政策という一つの方針をきめてすべり出した。そこにこうした悲劇が生れておると思うのでありまして、政府もデフレ政策の手直しと称してこれのやり直しを考えているようでありますが、何せ事情が、あまりにも予算効果が早く現われて窮迫した事態に行つてしまつた。けれども、これをこのままにしておけない、重大なる問題としてこれが解決されなければならぬ。消費規制の問題等も、その一環としてやられなければならぬが、まず炭鉱問題は、失業問題として非常に重要性がある。昨日の話でも、もしこの事態をそのまま放置して遍くならば、いかなる事態が発生するかわからぬ、暴動が起るかもしらぬというようなことまで言われておるので、われわれは、究極は失業問題として――十九国会労働委員会の最終末に、失業問題の重大性が論ぜられ、さらにこれは継続して論議される問題であり、労働省等でも考えておることとは思うけれども、通産省も、ことに炭鉱等は厖大なる雇用力を持つておる基幹産業であるから、この失業防止のために重大なる関心を持つてもらわなければならぬので、通産省石炭局等が中心になつて問題の解決に当つてもらいたい。この委員会等でもそういう要求が出、今労務対策協議会というようなものがあるようでありますが、そうしたことでは、今度のデフレ政策の対策のあれにはならない。さつき来ここで繰返されているように、事務的な領域だけで処理できる問題ではない。これはもつと政治的な要素を持つて、今言つた支持価格で買い上げるというようなことも事務の領域では困難であるが、失業対策としてどうしてもやらなければならないというなら、やれない理由はどとにもないので、こうした政治性を持つた一つの失業対策特別委員会とか、各省を網羅した機関を設置してこれに当らなければ対抗できない、われわれはこう考えておるので、通産省等が中心になつて労働省その他関係官庁と提携してこの問題に当り、事務的に解決できなければ、政治的にこれを打開して行くという熱意を持つてこの問題に当つてもらいたい。こういう必要を感ずるか、その熱意があるか、企業庁長官の熱意のほどを伺つて、さらに希望を申し述べておく次第であります。
  53. 記内角一

    ○記内説明員 御指摘の通り、デフレによつて生産縮小をする、あるいは閉鎖するいうふうなことによつて失業問題も当然予想されて参るわけでありきて、われわれといたしましては、単に中小企業庁ばかりではございませんで、通産省をあげて、できる限りそういう事態の発生しないようにいろいろ手を打ち、くふうを凝らし、またケース・バイ・ケースでありますが、事態の解決に当つておるような次第でございまして、今後ともそういう方向で進んで参りたいと考える次第であります。
  54. 日野吉夫

    ○日野委員 この問題は、いずれ労働省等に対して強く要求して審議を進めることとしますが、急速に間に合せるために、ひとつ熱意を持つて担当の対策を進められんことを希望して終つておきます。
  55. 赤松勇

    赤松委員長 多賀谷君。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石炭局長は時間がないそうでありますので、続いて質問をいたしたいと思います。  私は今具体的に起つております岩屋炭鉱の問題について質問いたしたいと思います。先ほどからケース・バイ・ケースという言葉が盛んに出ておりますが、私もそれを否定するものでない、いな、ケース・バイ・ケースにおいて、この岩屋炭鉱の問題を審議して行きたいと思うのであります。確かに同じようなケースでございました佐賀の新屋敷炭鉱におきましては、現地の通産局の石炭部もずいぶん努力いたしております。そうして租鉱権ではございますが、とにかく企業が一応再開を見た。こういうことにつきましては、同慶の至りでございます。その点は感謝いたしますが、この岩屋炭鉱も同じような問題が起つている。ことに高倉鉱業の三山は同じような問題であり、岩屋炭鉱はとりわけて、昨年の水害後から引続きいろいろな問題を惹起しておるのであります。でありますから、この岩屋炭鉱におきましては、たしか四月であつたと思いますが、一応一週間に千円ずつ現金をもらう、こういう協定ができておつたにかかわらず、その協定すら履行できなかつた。そうして四月においては千七百円程度、五月において月にただ千円、六月は佐賀の労働金庫やあるいは県庁の生活資金が出ましたので若干潤いましたが、七月に入つて、七月も終ろうといたしますのにいまだ千五百円程度しかもらつておりません。そうして現地を見てみますと、先ほども委員長からお話があり、また現地の方がお話になつたような状態でありまして、まさにこれは労働問題の領域を越えて、すでに社会問題の領域に入つておると思うのであります。組合幹部やあるいは炭労の幹部が行つて、そうしてもう少しであるからといつて、あるいは現地の従業員が直接レールとかその他の機材をはずして持つて行こうとするような動きに対して、極力とめて、経営者並びに政府その他の人の出方を待つておる、こういう状態になつておるのでございます。もちろん就学児童も長期欠席者続出でありまして、弁当を持つて行く者もほとんどいないという状態であります。この岩屋炭鉱について、一体今後どういうふうな対策をもつて臨まれんとするのか。これは町村といたしましても大きな問題でありまして、佐賀県の厳木町では新屋敷をかかえ、岩屋をかかえて――あとから自治庁にも質問いたしますが、ほとんど税金が入らない、しかも失対をやらなければならぬという状態である。そういう状態で町村自体としてもこれは災害以上の問題であると言つております。こういう中で、この高倉鉱業の三山を早く解決してやることは、関係町村並びに関係産業、それらに及ぼす影響が非常に大であると考える、それが政治のあり方であると思うのですが、一体石炭局長はこれに対してどういうように対処される考えであるか、お尋ねいたしたい。
  57. 齋藤正年

    齋藤説明員 昨日も答弁申し上げましたように、私は実はこの問題は、昨日この議場で初めて承知いたした次第でございます。昨晩さつそく通産局に連絡いたしまして、事情調査するように指示をいたしたのであります。その報告を待つて善処いたしたいと考えます。
  58. 赤松勇

    赤松委員長 なお厚生省、文部省も来ておられますので、この際今多賀谷君の質問に関連いたしまして秋好トムノ君から、若干児童の問題について参考人として発言してもらつたらいかがかと思います――秋好参考人。
  59. 秋好トムノ

    ○秋好参考人 大体小学校の方で四十名ずつ一学年が三学級ございます。これが六年生までで大体一学級に五人から六人くらいの長期欠席児童があります。これも四年、五年、六年、このくらいの学年が一番多いようでございます。中学校の方が一学年が八学級ございます。これは五十人ずつでございます。これが三学年まであつて約四十名から五十名の長期欠席がございます。それで中学の方は年間を通じて一人の先生がいらないとまで言われております。大体現金収入がございませんので、家庭の娘さんとか、奥さんあたりは、炭鉱独特の健康に恵まれておりますので、天気のいい日には土方仕事とか、護岸工事とか、洗炭、選炭などに出かけまして、そのために子供のある家庭では小学校の五年、六年の一番大きい子供を休ませたり、また中学の生徒を休ませるわけでございます。学校の方としても十日も無届で休みますと、民生委員が出かけますので、きようは中学生を休ませた、あしたは小学校の生徒というように順に休ませております。私、学校に行きまして、校長先生に長期欠席がどのくらいあるかと申しましたが、学校の方では、長期欠席は今のところはあんまりありませんと言われました。それで私は婦人会の大会のときに、学校の先生はみなこういうふうに言われるのですが、きよう一年生で休ませているところはどのくらいですか、二年はどのくらい、三年はどのくらいと順に調べた結果は、今のようでございます。  また昨年のPTAの会費が全然納まらない方が二十一人ほどございます。今年も四月から慶休み前までのいろいろな会費が一人当り百八十円くらいあつたのですが、全部が滞納です。それが夏休み前に納まらぬというので、先生たちがその家をまわりましたところが、私たちの収入が四月から七月まで千五百円程度でございますから、とてもPTAなんかに出す金がないわけでございます。その結果は聞いておりませんが、まだ大部分が納まらないのではないかと思つております。  また今年四月から教科書代を納めていないという方が、婦人会の方で五人くらいあるわけでございます。もうは、ずかしそうに手をあげておりましたが、このごろでは本の金なんかは――私たちのところへ千円だけでもいいから貸してくれと言つて来たときに、実は私も教科書の金も支払つていないということを申しておりましたが、はなはだしいのは一年生が四月の末に教科書も買つていない人が三人くらいあつたわけでございます。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は現地石炭部に行きまして岩屋の問題を話しましたところ、いや岩屋の方は来ないからまだ全然調べてない、こういうことであります。しかし現地の方では、新屋敷の次は岩屋ということは考えておつた。こういう話です。私はここに官庁の行政がとやかく非難されるゆえんがあると思うのです。とにかく現実の問題としてはそれだけ大きな問題となつて地方の新聞では毎日書かれておる。しかも佐賀の知事並びに労働部長、県の経済部長は石炭部に日参をしておる。そういう状態でありますから、当然岩屋の問題も、呼んで石炭部としてはあつせんに乗り出すなり、いろいろしなければならぬのにかかわらず、依然として官庁仕事をされておる。来たものについては、なるほど新屋敷のようにいろいろ世話をなさつた点あるけれども、岩屋は来ないからといつて、これは労働問題であり、その他の問題だからというので全然見にも庁つておらない、そういう話は実は聞いておるのですがというようなことなんです。私はこれは非常に情ないことだと考えたのであります。問題は石炭から起つておるのであります。ですから、岩屋の問題については、一体どういうふうにしておるか、こういう話があつて、呼び出すなり、あるいは現地に行かれて事情を聞かれるのが当然である。新聞紙上には毎日御承知のように伝えられておる。そのことは、なるほど読んで知つておるけれども、まだどうもこの炭鉱は石炭局なんかにあまり寄りつかない――こういう話では相済まないと思うのです。そこで現実の問題として強粘結炭の問題があります。ことに平田山に一万五千トンの強粘結炭の問題があり、さらにこの高倉鉱業株式会社が持つております土地四百数十坪が、実は農林中金の福岡支所が買うやに、話だんだん進められておりますが、これがまた一頓挫を来したということを聞いております。そういう問題が解決いたしますと、とにかくこれらの従業員が全部救われる。そうして町村が全部救われるわけです。また関連の店も救われるわけであります。この点について、明日も業者の代表の方が見えますので、私は石炭局長にこの二、三日ひとつ強力に動いていただいて、ケース・バイ・ケースとして解決していただきたいと考えるわけであります。そこで局長の答弁をお願いいたしたいと思います。
  61. 齋藤正年

    齋藤説明員 石炭局は、個々の企業の問題にまで十分に注意もし、援助もしなければならぬことは当然でございます。われわれもそういうことで努力はいたしておりますが、しかし可分こも人手が足りないわけでもございまし、全般にいろいろな問題が錯綜しておりますので、具体的な現地事情は存じませんが、御指摘のようなことになつたとすれば、そういう事情なのではないかと思われます。今のお話の高倉炭鉱につきましては、先ほど答弁をいたしましたように、現地の通産局に調査を指示してございます。また関係者が上京して来るということでございますから、話を聞きまして、われわれのところででき得る限りのことをやりたいと存じます。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 局長が急がれておりますので、一言失業対策に関連をいたしまして、鉱害復旧事業の繰上げの問題について質問をいたしたいと思うわけであります。御存じのように特別鉱害の問題は、要するに戦時中の濫掘による鉱害でありまして、これはすでに五年前から施行され、二十九年度には完成を見る予定であつたのであります。ところが、予算の都合がございまして、二年間遅れて三十一年ということに延期されたわけであります。ところ現実の問題といたしまして、福岡県だけでも、いな九州だけでも、相当炭鉱地帯失業者を見ているわけでございます。ことに昨年六月から十二月、また今年一月から六月というように見て参りますと、大手の炭鉱では昨年六月から十二月までに一万六千名の解雇があつた。それから中小企業は、本年一月から六月まで大体一万六千名の解雇があつた。これは経済見通しがむしろ大手の方が早くて、中小企業があとから、いよいよ火がついてからやつてつたということを実証しておると思うのですが、大体こういう状態になつておる。そこで今失対事業を行うといたしましても、市町村は財政が非常こ困難である。ことに炭鉱関係。市町村は、全然収入が入つて来ておりません。鉱産税にいたしましても、住民税の法人割にいたしましても、住民税の個人から徴収する分にいたしましても、あるいは固定資産税にいたしましても、ほとんど炭鉱及び炭鉱の従業員から徴収するようになつておるのでありまして、それらが全然入つて来ていない。しかも負担の方は非常な増加の一路をたどつておる、失対事業もやらなければならぬ。こういう状態でありますので、私は自治庁の財政部長にもあとから質問いたしますが、一応今遠くに行かなくてもすぐできる仕事、かなりの人間を使う仕事、それもやはり鉱害復旧であろうと思うのです。高度の技術もいらないし、費用もあまりかからない。ですから、この鉱害復旧を、現在三十年度分を繰上げ支給して、そうして二十九年度分として施行できないでしようか。そういうようにお考えではないだろうか。通産省としてはそういうことに対してどういう努力をされておるか、これをお尋ねいたしたいと思うわけであります。
  63. 齋藤正年

    齋藤説明員 炭鉱労働者失業につきましては、今お話の通りでありまして、時に炭鉱地帯では、炭鉱以外の事業もございませんし、それから住宅が炭鉱街に固定しておりまして、山間の不便な所でありますので、他の方面で働く機会が非常に少い。しかも失業が集団的に出て来るというような点で、非常に特殊なケースでございます。従つて失業対策も、それに適当するようなものが必要でありまして、一般の都会地等の失対事業というふうなものだけでは、非常に不十分な面があることはわれわれも感じております。そういう点から考えますれば、鉱害復旧事業の繰上げといいますか、あるいは本年度事業量の増加とかいうふうなものを、特に炭鉱労務者失業対策に向くような形で施行するということは、確かに効果があるのではないかとわれわれも思つておりますけれども、実は相当前からこの問題を研究もいたし、労働省からお話がありました各省の失業対策協議会にも、問題としては提出してございます。それからこういう問題があるのだということは、すでに大蔵省にも話してはございますが、ただ実効をあげますためには、当然相当の金額になりますので、補正予算というふうな問題にも発展する可能性がございますし、失業対策全般とのバランスを見るといふうなことも、大蔵省の立場としては、今後なお非常に問題点があろうかと思います。われわれの方で研究をしておるということだけを申し上げまして、まだ政府部内としてこれに対してどういう態度をとるというところまで至つておらないことを申し上げたいと思います。
  64. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今ごろ研究中であるということでは相済ままないのでして、問題があるということを大蔵省に話して駒る程度では、どうも私はおそいと思うのであります。大蔵省と折衝をして、ある点とある点が問題点となつて浮び出ておるということでなくては、なかなか解決がつかない。ことに三十年度といえば、もう折衝しておるうちに三十年が来ます。ですから、私は問題の解決にならないと思うのですが、三十年度を繰上げてもらいたいというのが、大体十一億程度ありまして、国の負担分が七億三千万円、県の負担分が一億円程度、それから鉱業権者が二億七千万円程度とあるわけですが、もちろんこの場合の県、市町村の負担分は、特別わくの起債を願わなければなりませんし、あるいは鉱業権者の負担分については、何か融資措置も願わなければならぬと思うのです。ですから、これは早く折衝をしていただかなければ間に合わないと思うのです。あとから職業安定局長にもお尋ねいたしますが、石炭局としては、もう少し積極的におやりになる意思があるのかどうか、お尋ねいたしたい。ことにこれは石炭局がやられなければ、各省に全部仕事がまたがつておりますので、強力にやられても、なかなか思うように行かないかと思うのであります。ひとつ石炭局の腹をお聞かせ願いたいと思います。
  65. 齋藤正年

    齋藤説明員 先ほど大蔵省に申入れをいたしております、研究しておりますと申しましたのは、実はこういうことをやりますれば、前にはまず他の事業、たとえば今度協議会で取上げられております既定の公共事業にどの程度まで炭鉱労務者を吸収できるか、あるいは炭鉱で行つております鉱害復旧の工事にどの程度まで吸収できるかというような問題、また失業者の中でも、若干は帰農しておる者もあると思います。そういう条件を考え合せまして、当該地で具体的に何人この事業に動員しなければならないか、また具体的に事業をやりました場合、その事業について一体何人炭鉱の失業者を吸収できるかといつたような、相当めんどうな資料が実はいるわけであります。問題として、失業対策事業とし七は、これは一般の失業対策事業とはちよつと線が違つておりますが、炭鉱の失業問題に対しては、非常に好適な事業であるということは先ほど申し上げました通りであります。そういう観点から、そういう準備にはすでにもう一月くらい前から実はかかつておるわけであります。ただ大蔵省との折衝がこういう段階なつたということを、事務当局としてお話するまでには至つておらない、こういうような問題がいろいろございますので、正式に予算折衝という形にまでは行つておらないという意味を申し上げたわけでありまして、失業対策事業が労働省の所管であるというような関係を離れまして、この問題としては、鉱害復旧事業というものが通産省の責任でありますから、通産省として推進するつもりでおります。その点はつきりお答え申し上げます。
  66. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも石炭局長として私は十分な答弁でないと思うのであります。それは、これは二十九年度において終るべき事業であつて、各炭鉱でも、工事費から何まで全部できておる。何庫後に何をやらせるには労務者が幾ら、何が幾らと、全部計算ができておる。ですから、問題は単価を少しかえればよい。県が出したのでも、労務者は延べ幾ら、失対で使えるものが幾ら、こういう数字が出ております。ですから、これは通牒を出されると、すぐ各事業所では当然実施されるものと思つて、計画して図面まで全部できておる。それるあるいは単価が違い、その他が違う点で直されるかもしれませんが、普通の建築工事とは違うのであつて、十分に用意してある。すでに五年前に施行のいろいろの計画が行われた。予算も大体つくられておりますから、これをいまさら資料の準備期間がいるのだとかなんとかいうことは、りくつにならないと思います。石炭局さえ意思があれば、すぐこれはできる。かような問題でありまして、それを今ごろどうも資料が厖大にいるので調査中であります、こういうことではないのであります。これはすでに事業の認定もほとんどできておる、継続事業も多い。それを繰越すだけですから、新規事業というものじやないのです。ですから、石炭局長がその腹でやれば、私は資料なんかすぐ集まると思う。ましてや、その資料準備でずいぶん時間がかかるというようなことを、こういう席で答弁されるのは、どうもおかしいと思う。一体どういう状態になつておるのですか。
  67. 齋藤正年

    齋藤説明員 私が資料が必要で準備をしておると申しましたのは、特別鉱害復旧事業自体といたしましては、三十一年度までの計画が全部きまつております。これはわれわれのところでつくつたものでございますから、よく承知しておるわけでありまして、問題の資料がいりますのは、具体的に失業者がどの地区に何人おつて、そのうちに対策を要するものが何人おるのか、そのうちで一般公共事業に吸収できるものがどれだけあるか、従つて繰上げしなければならない仕事の量はどれだけになるのか、そういうことを調査するわけでございまして、繰上げすべき対象の事業は、特別鉱害については全部きまつております。但し、一般鉱害につきましては、まだ未決定の分が相当ございますか、これは計画の金額の規模がきまりますればただちにきまり得るような部分でございますから、工事の準備につきましては、予算の問題さえきまりますれば、比較的簡単に着工ができるものと思つてやります。
  68. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 むしろ労務者関係の方が把握できなかつたということでありますが、事実は全面的にこれを発動いたしましても足らないのであります。調べられることはけつこうですが、全面的にこれをされましても、まぜ失業者はあぶれて来る、こういう状態になるのであります。ですから、これを調査されることは必要ですが、大蔵省その他に折衝されるについては、それほど資料不足をもつて遅延の理由にはならない、かように考えるわけであります。しかしそれはともかくといたしまして、各省にわたり困難な問題もありますので、ひとつ早急に実施方をお願いしたい、予算の問題がありますれば、予算化の方向に努力していただきたい、かように切望いたしまして質問を終りたいと思います。
  69. 赤松勇

    赤松委員長 それでは石炭局長はよろしいですね。――特に最後に石炭局長にお願いしておきたいのですが、現地の参考人が来まして、非常に悲惨な状態を述べたわけです。ほんとうに食うものがなくて餓死寸前という状態です。問題のネックはわかつておるので、それをどう打開するかということについては、私はそう困難な問題ではないと思います。この点はひとつ石炭局長が局長の立場から、また人道上の非常に大きな問題ですからへ何とか当面飢え死にをさせない方法を講じる、そしてあの山を再建するということについて格段の御協力をお願いしたいと思います。明日経営者が参りましたならば、従業員側とともに、またわれわれも相とむにこの問題についていろいろ善処方をお願いすると思いますが、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 文部省にお尋ねいたしたいと思うのですが、実は先ほども出ておりました欠食児童の問題でございますが、ただ岩屋がございます厳木の町だけでなくて、各所にこの傾向は見られております。なかんずく筑豊炭田とか、あるいは北松炭田にはそれが顕著でございます。たとえば唐津炭田の伊万里市の二里小学校のごときは、学校の諸経費の未納が、二十八年度におきましては三十六名であつたのが、二十九年度におきましては百十七名とふえております。炭鉱の従業員の半分が、ちようどそれらの経費を未納しておるという状態でございます。しかも、学校に行きながら教科書を全然買つていない者が十八名、さらに一部しか教科書を買つてない者が四十二名、計六十名もあるということを報告されております。あるいは一日二食しか食べない者が一四%、あるいは弁当を持つて来ない者が一一・五%、こういうようなことも報告されておるのでございます。また筑豊炭田の長欠はきわめて多数に上りまして、病欠と事故欠の比が七二・三%、これが中学校でございますが、小学校におきましては六七・八%も占めておる、こういうことであります。また長崎の北松地区におきましては、長欠者が八百四十五名、昼飯を持たない者が千二百六十一名、朝を抜いて来る者が七百十名、夕食を抜いておる者が四百十八名を数えておるという教育庁の調査でございます。こういう状態でございまして、犯罪件数も実は非常にふえております。二十八年度の一月から五月までの統計と二十九年度の一月から五月までの統計を見ますと、これもふしぎなことには各町村よりちようど三〇%、炭鉱地帯の町村が平均して犯罪件数がふえておる。こういう状態でございまして、きわめて憂慮すべき社会問題を惹起しつつあるのでございますが、ことに学校の問題につきまして、たとえば諸経費が払われないので、子供がどうしても学校に行きたがらない、また親としてもやり得ない。今も岩屋の問題がございましたが、月千円でそれの中から魚も野菜も買わなければならぬ、こういう状態では、学校の費用がいくら少くございましても、とうていやれないと思うのです。こういう点について何とか方法はないか、お尋ねをいたしたいと思います。文部省、厚生省両方にお願いいたします。
  71. 大島文義

    大島説明員 私どもの方で、昨年度長欠児童生徒の調査を全国的にいたしました。本年度は、まだ全国的な調査はいたしませんが、関係の府県の教育委員会から御報告を受けておるところでは、ただいまお話のようないろいろな状態が起つておるようでございます。これは監督庁であるところの教育委員会が、現地におきまして具体的に当該の各関係方面、たとえば民生委員その他と連絡して、なるべく解決するように努力しているわけであります。文部省といたしましても、それに対する指導その他の面においては従来とも十分やつておるわけでございますが、特に児童に対し、また家庭に対する経済援助の問題につきましては、関係官庁ともよく協議いたしまして解決の方向へ持つて行きたいと、ただいま厚生省その他と話合いをしているところでございます。なお、欠食児童その他学校給食の問題につきましては、学校給食課長が見えておりますから、その方からお答えいたしたいと思います。
  72. 岩倉武嗣

    岩倉説明員 学校給食に関する点について申し上げてみたいと思います。私の方に資料が参つておりますのは、長崎県の北松浦地区のものでございます。これは相当詳細なものでございます。また県の方から教育長の名をもつて、この処置につきまして、とりあえず必要な物資を配給するという報告も受けております。そこで他の地区についても、多少懸念をいたしておりましたので今月の中下旬にわたりまして、各地区ごとに開催をいたしました会議によりまして、特に九州地区におきましては、長崎の問題を主として取上げまして、関連する問題を持つております各県の発言を求めたのであります。福岡、佐賀におきましても、事態を憂慮はいたしておりますが、まだ具体的な資料を完全に教育委員会では、給食の面については把握していない、こういうような話であつたそうであります。なお、長崎県の報告によりますと、とりあえず応急措置として配給いたします物資につきましては、日赤その他から送られております義指金四十五万円をもつて処置をすることになつた、かように承知しております。他の府県におきましても、それらのごとを含みまして、とりあえず処置をするという話合いで、いろいろと協議をしておられます。なお、中国ブロックの会合におきましては、山口県においてやはり類似の問題がある。しかしこれもまだ具体的なものを把握していない模様でございますので、私どもの方には報告が参つておりません。  なお、御参考までに申し上げておきますが、欠食児童という言葉は非常にあいまいでありまして、給食をしております以上、欠食児童はないのでありまして、これは給食費の未払いとなつて現われるのであります。しかもその最も困難を感じておりまする家庭の子供にうきましては、厚生省所管にかかります生活保護法の教育扶助の恩恵を受けることになつております。そこで問題になりますのは、教育扶助の対象となる子供が急激に増加するという傾向、従つてこれを厚生省とも御協議の上で処置をすることが一つの問題でありますし、また全国を通じまして現在約四%ないし五%といわれております、生活保護の対象とならない、いわゆる準要保護者と申しますか、これらの児童がありますので、そういう点まで拡大をして行く。要するにそういう人数がふえて行くということになつて参るかと思いますので、あわせて考慮をいたしております。昨年の水害及び冷害につきましては、関係三十六県にわたりまして、百二十数万の小一中学校の児童、生徒に対して、国際連合のユニセフに救援を求めましてミルクを配給しておりますが、今度の場合にそれらの問題として考えられるかどうかということもございましたけれども、今のところは、これは対外的な問題として進める段階ではなさそうに思います。しかし今後事態推移に応じまして、関係の各省ともよく相談をいたしまして善処して参りたい、かように考えております。
  73. 竹下晴記

    ○竹下説明員 厚生省の方といたしましては、生活保護法によつて最低生活保障いたすわけでございますが、最近におきましての九州地方の炭鉱に関連いたしまして、いろいろ生活保護の問題が出ておりますので、今月の半ばまでに福岡、佐賀、長崎、そういつたところを重点といたしまして調査をいたしたわけでございます。その結果といたしまして、全国的な趨勢は、逐次生活保護の対象者が増加の傾向にありますけれども、まだ顕著じやない、こういう状況でございますが、佐賀、長崎、福岡といつたところは、これが相当出ているように見受けられます。先ほど文部省の方からお話がありましたように、生活保護の問題は、最後の手段としてやつているわけでございまして、そういつた点からいたしまして、学校それから民生委員などと、現地におきまして緊密な連絡をとりまして、生活保護法の申請を出すということにしております。生活保護法では、御承知のようにそれぞれのケースに従いまして、収支認定を行いまして生活保護法を適用する、こういうことになつておりますので、そういつた点については、今後なお文部省その他関係の方と連絡をとりまして、強力に推進いたしたいと思います。
  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず厚生省にちよつとお尋ねいたしたいと思いますが、今問題になつております、働いていながら賃金をもらつていない、こういう者は、私もどうもむずかしいのじやないかと思うのですが、これは生活保護法の対象になるのでしようか。
  75. 竹下晴記

    ○竹下説明員 お答えいたします。私、生活保護法の担当でございませんので、その点は御了承願いたいと思いますが、実際に金が入らないという最悪の場合は、やはり適用になると思います。
  76. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では文部省関係にお尋ねいたしますが、実はわれわれも現地に行きまして、大体次のようなことを市町村にお話をしたわけであります。それは、諸経費を全部会社の債権債務に直して、会社から一括して学校へ払う、こういうことにしていただけば学校へ行けるのじやないか、こういう話をして、市町村にもその了解を求めて来たわけであります。しかし、それもなかなか困難であるという点もありましたが、しかし私が非常に遺憾に考えました点は、やはり学校当局の認識が足りない、あるいは教育委員会自体の認識が足りないという点を非常に遺憾に考えるのです。割合に持つて来ていますよと、こう言う。それは血の出るような金をくめんして、子供にだけは持つて行かせている、それでどうにもならない人が休ませている、こういうことであります。割合に持つておりますとか、あるいは、なるほど請求はいたしますけれども、炭鉱の人々はあまり強く請求はいたしませんからと、こういうことで逃げられている。これは私は非常に遺憾に考えたわけであります。子供が学校に会費を持つて行けないが、しかし泣いて学校へ行きたいと、こう言つている状態をわれわれが考えますときには、これは親としては万難を排してやつておると思うのです。そういうことを、いや請求をしておるけれども強く請求していないとか、割合に持つて来ておるとか、こういうことでは、やはり教育庁としては相済まないと思います。やはり何らか、個人の従業員がそれほど悲しまなくてもできるような方法があると思う。ことにこれらは債権を持つておる。すなわち未払い賃金を持つておる。賃金さえくれれば、これは持つて行けるのですから、それを炭鉱とあるいは教育委員会といいますか、学校といいますか、市町村といいますか、そういうところとで債権債務関係を確立してやれば、あるいは早急に入つて来ないかもしれませんが後になつてつて来る、こういうことをひとつ文部省としても正式に指示していただきたい、かように考えるわけですが、それに対してどういうお考えであるか、御所見を承りたいと思います。
  77. 大島文義

    大島説明員 ただいまのお話のような例は、私は聞いておりませんけれども、これは地区々々によりまして、現場の状態であるいはそういう方法をとることがうまく行くというようなところがあるといたしましたら、教育委員会の方でまた実情をよく調べながら、できる限り話し合つて行きたいと考えております。
  78. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 自治庁にお尋ねいたしたいと思います。先ほど来話しておりますので、おわかりになつたと思うのですが、この炭鉱の不況――これは造船でも同じであろうと思いますが、炭鉱の不況とか造船の不況とかいうものは、比較的地域が限られておるわけであります。炭鉱が五万人とか六万人とか整理なつたといいましても、ほとんど一地区ないし何箇所の地区であります。町村としては災害以上のものになつて来ておるのであります。加うるに最近の市町村の税収入というものは、炭鉱からほとんど徴収をされるという仕組みになつておる。鉱産税にいたしましても、住民税、法人税にいたしましても、固定資産税にいたしましても、あるいは電気ガス税にいたしましても、そういう関係になつておると思うのです。そこで地方の財政状態は非常に窮迫すると同時に、また支出の方は非常に増して来ておるのでございます。生活保護法の問題にいたしましても、あるいはまた失業対策にいたしましても、治安関係は最近は県あるいは国に移りましたから今度はないでしようけれども、それにいたしましても非常に厖大な費用がいる、かように考えるわけです。ことに厳木町、これは特別であろうと思うのですが、まだ二十八年度の出納閉鎖ができていない。これはあに厳木町だけでなくて、でも北松炭田でも、ほとんどの町村がまだ二十八年度の出納閉鎖をしておりません。これは御存じのような状態であると思います。厳木町におきましては、千四百万円からの炭鉱だけの未納になつている。ああいう小さい町村で、千四百万円も未納になるといいますと、たいへんな状態でございますが、そこで一体こういう町村に対しましては、特別に何かお考えであるのかどうか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  79. 後藤博

    後藤説明員 炭鉱所在の市町村につきましては、お話の通り収入の減少の問題と、財政需要の増加の問題の二つございます。昨年はその上に災害が加わつて参りましたので、昨年度は特別交付金でもつてある程度――たしか二億ばかり出したと思います。災害関係は別にいたしまして、鉱産税の関係、税収の関係生活保護、失対等の増加の経費を見まして出したのです。本年も現在の状況からいたしますと、やはりそういう措置をしなければならないと思いますが、ただ本年は、全体的にデフレの浸透が地方財政に影響して参りましたので、ひとり炭鉱所在の町村ばかりでなく、全体の問題として財政上の問題は考えて行きたいと考えまして、たとえば起債の許可を早くして、それを使つての前借りができるようにしてもらうという措置を上半期に集中いたしまして、資金繰りの緩和をはかつて行きたいと考えてやつておる次第であります。
  80. 外園徹美

    ○外園説明員 生活保護の仕事を担当している外園であります。働いている者で賃金不払いのために収入がない場合、生活保護法が適用できるかどうかという問題だと思いますが、その場合、鉱山に対して債権ができていて、それでそのまま生活保護法を適用することになりますと、片方で貸金ができていて国の保護を受けるということになるわけであります。それで原則としては、そういつた場合は、債権をかたにしてよそから金が借りられるかどうか、それから資産を持つておるかどうか、売れるものがあるかどうか、親戚なんかにそういつた者を援助してくれる人があるかどうか、そういう点をいろいろ調査いたしまして、どうしてもない場合は、そういう人を見殺しにすることはできませんので、そういつた金が入つた場合は返還するという条件のもとに保護法を適用できるわけです。
  81. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 財政部長に再度質問したいと思います。本年度もやはり特別平衡交付金から、現在の炭鉱だけではないかもしれませんが、何かやはり勘案されるのですか。先ほどはどうも一般的な話だけに終つたようですが、やはりそういう御意思があるかどうかを重ねてお尋ねいたしたい。  それから昨年は、災害復旧と申しますよりも、失業対策事業の市町村あるいは県の負担分といいますか、三分の一とか三分の二とかいつた率を特別立法でかえたわけでありますが、自治庁としては、そういう措置がなければ、失業対策は、いかに政府わくを出しても地方財政としてはやつて行けないという状態にあるかどうかをお尋ねいたしたいと思います。
  82. 後藤博

    後藤説明員 本年もやはり現在の状態が続く限りは、特別平衡交付金でもつてある程度補うべきものと考えております。その額は一体どれくらいになるかということでありますが、私どもといたしましては、年度末にならぬと財政需要がどのくらい伸び、税の減少はどれくらいになるか見当がつきませんので、特別交付金はちようど二月ごろに確定すると思いますので、そのころにあわせて考えることになつております。それは炭鉱所在町村連盟というものがございまして、その方たがしよつちゆうおいでになりますし、また炭鉱地帯の町村の方も、常に入れかわり立ちかわりおいでになりますので、平素私ども大体実情は補足できるのであります。本年も昨年同様の処置をいたしたいと考えております。それから失対事業の問題でありますが、これは私どもの考え方といたしましては、失対事業の負担部分につきましては、大体一定率でもつて起債を認めることにいたしたいと思います。一般の公共事業と同じような考え方でおります。ただ失対の量が非常に大きくて、市町村の負担が非常に多いところにつきましては、これは炭鉱町村に限りませんが、やはり起債の充当率でもつてある程度優遇をいたしまして、起債の量を多くいたしております。個々にこまかい市町村の査定は、中央では非常にむずかしいのでありますが、そういう各府県に認めましたわくの中で、各府県でしさいに市町村財政との関連を考えて起債の童を決定するということに相なると思います。
  83. 赤松勇

    赤松委員長 多賀谷君、ちよつと御相談ですが、自治庁に対する質問が終りましたら、運輸省が来ておられます。非常に今十次造船の問題で忙しいのです。そこで労働省に対する失業対策の問題は、その運輸省の十次造船計画等の説明を聞いて、そのあとで炭鉱及び造船の問題を中心とする一般失業対策、こういうようにやりたいと思いますから御了承願います。
  84. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど質問いたしました失業対策事業のわくに関連しての問題ですが、ただ起債を認めてやるということだけでは、どうも市町村は受入れ態勢がないようでございます。実は私たち市町村に参りましたところが、今の率よりも災害並の率にしてもらわなければどうも受入れられない。いかに国からわくを持つて来てもむずかしいだろうというのが、全部ではございませんでしたけれども、特殊な市町村にはあつたわけでございます。そこで私たちは、これはやはり地域的に申し上げますと、災害以上のものでありますので、やはり地域的には特別指定か何かをして率をかえなければならぬだろう、こういう気持を持つてつて来たわけでありますが、自治庁ではそういう声を聞かれないかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  85. 後藤博

    後藤説明員 私どもの方へ参りまして、災害と同じようにしてくれという要求は、あまり私ども聞いていないのでありますが、ただ災害とは全然別個の考え方でもつて、一般公共事業と同じ率でもつて府県の分を査定いたしまして、その府県の中で個々の市町村の財政規模と、また財源関係を考慮いたしまして、適当にきめてもらいたいといつて、たとえで市町村でありますと、平均の公共事業につけます災害の率は大体四〇%前後であります。これが貧弱な市町村でありますと、その起債のわくをパーセントを高くしてやるとか、非常に多額の自己負担がある場合には高くしてやるとかいうふうな措置を各府県でとつておるようであります。そういうこまかいところまでは私どもはさしずはいたしません。市以上になりますと、直接私どもの方で充当率を失対の場合には考えておりますが、町村の場合にはそとまで手が届きませんので、府県にまかせております。
  86. 赤松勇

    赤松委員長 それではまず西村運輸政務次官から、現在の十次造船計画のいろいろな模様につきましてお話をお伺いしたいと思います。西村運輸政務次官
  87. 西村英一

    ○西村説明員 十次造船の問題でございますが、非常に私たちも重大に考えておりまして努力いたしておりますが、ちよつと概要をお話いたしますと、六月の五日に海運造船合理化審議会――これは従来もあつたわけでございますが、この前海運界でいろいろな問題もありましたので、今度は多少メンバーもかえまして、新発足をいたしたのが六月の五日でございます。それに第十次造船に対する公募の要綱を、われわれといたしまして決定いたしまして、造船審議会にはかりまして、六月十日に一般の関係者に公募をいたしたわけでございます。その公募の要綱のおもなるものは、財政資金を七割にして市中を三割にするという、従来われわれが考えておつた線でなるべく行きたいということが一つと、市中銀行に属する三割分は、会社が任意な方法で調達してもらいたい、その確約書をつけて開銀に申し込んで、その申し込んだ順位によつて運輸省は海運政策から見てそれを認可しよう。昨年とかわりました方法は、一定の期間を定めまして、全部出そろつたところを審議いたしておつたのでありますが、今度は申し込んだ順位から審査して行こうということがおもなることでございまして、そういう方法によつて関係者の方に公募をいたしたのであります。しかしその方法で一番の難点は、市中金融の三割が金融機関の逼迫のためその他の理由によりまして、なかなかわれわれの線に応じないのでございまして、今日までその線を通しましていろいろ話を進めておるわけであります。何さま海運界が非常に不況でございまして、また長い間、今後不況になるのではないかというような見通しから、金利の支払いができないということ並びに一般財政投融資が逼迫しておるので、市中銀行はこの三割に応じられないのみならず、金利も支払わないというようなことで、それでは金融に応ずることができないということで、非常にその問いろいろ折衝が行われたのであります。しかし最近では、この問題につきましても、ある程度われわれの方も考え、市中銀行の方も考えるということで、今話まとまりつつあるわけでございます。その大体の考え方が七割、三割という融資比率を――これはなるべくわれわれとしてはそういたしたいというのは、なるべく多くの船をつくりたい、こういうことのために考えておるのでありますが、その比率を八割と二割くらい、市中に対して二割くらいにしよう、しかも一方従来の市中の借入金を十五億程度を肩がわりすることによつて、さらに金融を緩和しようというようなことで目下話を進めて、その線で交渉いたしまして、話がややまとまるのではないかと思うわけであります。確かに十次造船は少しは遅れましたが、今月中にでもこの線に沿つて早く船を出したい、かように考えて目下努力をいたしておる最中であります。  簡単でございますが、今までのいきさつを申し上げまして、皆様方に御了承を得たいと思います。
  88. 赤松勇

    赤松委員長 それでは参考人の方で随意に御発言願います。恐縮ですけれどもひとつなるべく簡潔にお願いしたいと思います。濱口参考人。
  89. 濱口榮

    ○濱口参考人 造船総連調査部長の濱口と申します。御承知のように十次造船並びに輸出船の現況から非常な苦難な状態が現出されております。この状態につきまして簡潔に報告をしろということでございますので、できるだけ簡潔に御報告申し上げます。  現在臨時工の首切りが続出をいたしておる状態でございます。新三菱神戸造船所におきましては、十二月に臨時工は千六百六十三名でございました。しかしながら七月末現在におきましては、これが約七百名に減つております。日立築港におきましては、これの百八十名が全部解雇に相なつております。それから日立の因ノ島につきましては、十二月三百十五名が、現在二十五名程度つておる実情でございます。林兼造船につきましては三百四十二名が全員解雇に相なつております。現在造船総連の方といたしましての関係労組を調査いたしました結果、十三事業所につきまして、昨年十二月には四千百八十七名の臨時工がおりましたけれども、これが現在約八百名に減つております。臨時工の状態につきましては、先般のたしか労働省の発表した数字と考えますが、七千七百名の臨時工を四月現在で擁しておつたという数字が出ております。現状におきましては、この状態からいたしますと、これがその六割といたしましても大体五千人の人が首切りの対象になつておるというふうに考えられるわけでございます。  それから御承知の通り造船産業につきましては、その持つ特殊性から、一つの市を形成いたしておる実情にございます。なお関連産業につきましては重大な影響を持つ造船産業でございます。現在この関連産業につきましては、との前の労働省の地方労働部長会議報告になつております。本年の六月十五日の日づけをもちまして報告になつておりますが、この中で兵庫県におきましては、御承知のように新三菱神戸造船所、川崎造船所、それから播磨造船所の三大造船所を有しております。この中で四月末、倒産または休業状態にあるのは五十六工場と報告をされております。なおこれが五月から七月までに至りますと、休業に入つた事業所は十六事業所、転業が五事業所、倒産が六事業所、閉鎖が四十七事業所という状態報告されておるのでございます。その他東京都あるいは神奈川県、愛知県、大阪、長崎県というふうに、相次いでこの関連産業が倒産休業の状態に入つて行く状態でございます。  それから現在この造船企業につきまして、御承知のように新聞紙上に発表になつておりますが、命休の問題が出ております。現在命休が実施されておる造船所は、日立因ノ島造船所が六月から命休に入つております。これは現在は一日約五百名ばかりの人が休んでおります。仕事量の手持ちによりまして休んでおる状態でございます。これが八月に入りますと七百五十名から八百名という命休が出るわけであります。なお日立築港におきましては七月八日から命休に入つております。七月の十八日までに二千三百一名が命休、休業の状態に入つておるわけであります。なお相生播磨につきましては、相生播磨の委員長がおいでになつておりますが、現在会社が申しておりますのは、八月に八百七十人、九月が一千七十人、十月が一千七十人、十一月が九百六十人、十二月八百五十人の命休を提案しておるわけでございます。なお御承知のように、仕事量不足によりまして笠戸ドックにつきましては、組合員五百三十六人が全員解雇を通告されておる実情でございます。  なお、これが及ぼします賃金の遅配の問題が当然起つてつております。この問題につきましては、川南造船所におきましては三箇月の遅配が行われております。佐世保造船所におきましても〇・五箇月分の遅配に相なつております。荒田造船におきましては一箇月、大正造船一箇月、日立関係におきましては〇・五箇月分の遅配が出ております。鶴見ドック一箇月、東北ドック三箇月というふうな遅配の状態が出ております。御承知のように、造船企業に働く労働者におきましては、大体通常一日二時間残業、一箇月を通じまして五十時間残業を行つて、ようやくその生活を維持して行くというのが造船企業に働く労働者の実情でございます。しかしながら、現状の仕事量不足によりまして、現在時間外はおろか命休が続出しておる実情でございます。そういう状態の中におきましては、当然実質賃金は低下を示さざるを得ないのでございます。なおその持つところの特殊性から考えまして、御承知のように日立因ノ島におきましては人口四万二千に対しまして、そこに働きます従業員は四千六百名でございます。この四千六百名とその家族を含めますと、日立因ノ島の町は造船によつて左右されておる実情でございます。なお玉野におきましては五万六千名の人口でございまして、三井造船に働く従業員が六千二百名でございます。造船企業におきます家族構成は一世帯主・五人の構成でございます。そういう状態から考えまして、大体二万八百名ぶ造船研の常用労務者でございます。なおそれに続きまして臨時工、社外工というものを入れますと、三井造船におきまして玉野の町の盛衰ははかられておる実情でございます。しかもこの状態は、そういう地帯だけではありません。神戸地区におきましては、御承知のように新三菱神戸造船所、川崎造船所、神戸ドック、こういうところで働きます従業員の数は、神戸市の三分の一を持つておる実情でございます。その神戸市の三分の一を持つ実情にある造船所の従業員が、こういう実情に追い込まれておる状態は、その町の繁栄のためにも重要な影響を及ぼしております。なおその他長崎市、あるいは佐世保市、下関、呉、広島というように、その地区によりまして造船企業の持つ重要性から、非常なその市の衰微が見られるわけでございます。  なお、こういうふうになりまして解雇になりました臨時工並びに社外工は、その解雇が、失業保険に該当する期間工場に勤務しておる人は、半年間の失業保険である程度生活を維持することができますけれども、日雇い並びに臨時工の中におきまして、これが半年間の就業が不可能の場合におきましては、ただちにその日から生活に困つております。その生活に困つた失業者人たちは、当然失対事業に参るわけでございますが、御承知のように失業が増加しておる現在におきましては、失対事業も思うように参らぬ実情でございます。そういう状態の中から造船産業の持つ特殊性から社会的な不安の温床になりつつある実情にございます。  なお、通常におきましては、進水につきましては造船所の町をあげましてとの進水を祝い、そうしてその船の前途を祝福するのでございますけれども、今日の実情におきましては、その船が船台を離れるときには全市が、並びにその従業員は涙のうちにこの船の進水を見るのでございます。はたしてこの船が進水いたした後におきましては、あといつになつたら船台に船が上るかという非常に不安な状態の中にその進水を迎える実情にございます。簡単にということでございますけれども、大体そういう実情の中で現在推移をいたしておるのが実情でございます。  なお賃金その他の内容につきましてこまかい数字も持つて来ておりますけれども、簡単にというようなお話もございましたので、数字の点は省かしていただきますが、現在そういうように都市を形成している造船企業の持つ特殊性から重大な段階に来ておる実情でございますので、十分御賢察くださいまして、この実情を何とか緩和していただくような御処置をお願い申し上げたいと思うのでございます。
  90. 赤松勇

    赤松委員長 あとでまた詳しく今度は質疑のときにお聞きしますから……。  淺野参考人。
  91. 淺野重美

    ○淺野参考人 私播磨造船所の労働組合執行委員長淺野であります。今回の労働委員会に参考人としてお招きにあずかりましたことは、非常に私といたしましても感慨無量でございます。私の申すことは、現在の造船総連並びに全造船の代表の方たが来ておられますので、他社のことは申しませんが、わが播磨造船所につきまして一言お願いしたいと思います。  わが播磨造船所は相生市の一角にありまして、一番小さい市であります。そうしてほんとうの造船の市であり、また造船の町でありまして、いわゆる従業員六千名が働くところ造船しかない。また相生市民は、全部造船所に働いております。八月一日から合併されて矢野村、若狭野村も相生市になりますが、矢野村も若狭野村も、現在までの村民の八割以上は播磨造船所に働いております。また相生市の中にあるところの町の方々はどうであるかというと、下請業者が二十数箇所ありまして、全部播磨造船所の下請をやつておるというような現状でありまして、ここ二、三年前までは千五百名からの臨時工も入つてつたのでありますが、現在におきましては三十二名しか臨時工はおりません。また下請業者につきましても、全然仕事がありませんので、下請業者は失業状態であり、かつまた賃金が不払い状態なのであります。そうして播磨造船所の従業員は、現在いろいろ普通銀行などの御協力を得まして外国船二隻を受注いたしまして、起工式はいたしておりますが、現在におきまして、まだ着工の運びにはなつておりません。しかしわれわれ六千従業員は、何とかしてこれを黒字にして行きたいというがために、外国船で船価は安いけれども、しかしこれはやむを得ないということで、組合と会社側が相協力いたしまして、何とかこれを黒字にして行かなければならないという段階にお互いが励みつつあるわけであります。しかしまだ着工はいたしておりませんが、今後着工は進みつつあるものと考えています。  しかしながら、現在の船台を見ますときには、船台にはほんとうに船らしい船は上つておりません。先般十七日に森田汽船の船が進水いたしまして、その後というものは現在それの工事のみであります。また小さい工事が一、二あるだけでありまして、六千の従業員が仕事をする、そういう仕事はないわけなのであります。われわれが首を長くして待つていたのは十次船なのでありますが、十次船が現在市中銀行との関係などもありまして、いろいろ遅延されておる、この段階においては、われわれは早く何とかして十次船をきめていただきたい。またややもすると、開発銀行のみにとどまるのではないかというようなうわさもありましたので、開発銀行だけの融資で造船所の船がつくれるならば、これこそほんとうに大きい造船所だけに――われわれ播磨は従業員としては六千名以上おりますけれども、開発銀行だけの融資ということになると、なかなか播磨にはまわつて来ないのではないかというような考え方も持つていたのであります。しかしながら、昨日からの情報または新聞紙上などによりますと、いろいろ銀行関係の方々並びに運輸省の方々、あらゆる関係の方々に御協力をしていただきまして、八対二の割で話が進みつつあるのではないかというようなことを漏れ承つておりますので、一日も早くこれが実現するようにお願いする次第であります。また十次船のみならず、やはり日本という国は島国でありまして、船なくしては今後の日本の再建が望めないという現状でありますので、このことは今後市中銀行並びに開発銀行の融資をもう少し大幅に組んでいただいて、多く船をつくつていただくよう御助力を願いたい、かように思うわけであります。  また播磨造船所におきましてはは、八月以降十二月までのアイドルが約十六万工数出ております。このことは、さつき総連の濱口氏から命休と言われましたけれども、私のところでは命休ではありません。いわゆるこれをいかにするかということで組合と会社が労使相互間で生産会議を開きまして、会社側といたしましても、どうしても十六万工数というものはアイドルが出るんだ、これをいかにするかということで再三再四協議を行つた結果、社内工事などで約四万近くのアイドルはこなして行こうではないか、そして十二万余りのアイドルというものについては六千従業員がお互いにかぶろうではないか、そのことこそがほんとうに会社を愛し、日本を愛し、またわれわれ従業員の生活の向上を守る一端であるという考え方で、労使間ではつきりした公約もでき、先般わが播磨におきましても、組合が委員会にも提案いたしまして、八月以降十二月まで組合、会社協議のもとに帰休を認めるということにいたしたのであります。われわれ考えますときに、今までの労働運動のあり方であつてはならない、やはりだれかが申しますように牛を太らせて乳をとるというような考え方で進まないことには、絶対に今後の造船界の企業というものは成り立たないという考え方をわれわれは持つておるのであります。ですから、企業をつぶしてまでもという考え方は毛頭持つていません。このことで播磨造船所におきましては、現在までいわゆる労働間の紛糾というものはなきにひとしいと言つても過言ではありません。私は終戦以来九回組合に出ておりますけれども、その間あらゆる面において労使間の摩擦を避けたいためにいろいろ努力をして来ております。しかしながら現在のこの段階におきまして、政府の立てられておるところの帰休制の問題なども考えまするときに、あの方法でやりますならば厚生年金が減るとか、または健康保険が減るとかいうような問題などもあります。またはたとい三箇月にもせよ四箇月にもせよ、同じ人が犠牲になる、同じ人がそれだけ苦しい目にあうというような考え方もありまして、現在会社におかれましても、ただ一定の方にそれだけのことをさすということも、なかなか見るに忍びない。このことは会社と組合がお互いに話し合つて、六千全員でもつて苦しいときにはかぶろうではないかということで、六千全員でこの休暇を認めて、お互いが月のうちたとい五日でも六日でも六割もらつて休んで、そうして耐え忍んで行こうということが決定されてやつておるような状態であります。  相生市におきます非常に苦しいこの現状は、船なくしては立ち行かない相生市でありますので、運輸省の方々、大蔵省の方々、並びに国会議員の方々今後御協力くださいまして、われわれ造船界が、ぜひより一層船を多く受注いたされるよう御努力あらんことを切望いたしまして、私のお願いといたす次第であります。
  92. 赤松勇

    赤松委員長 溝口参考人。
  93. 溝口光治

    ○溝口参考人 全造船の溝口です。造船産業の危機が盛んに論ぜられておりますけれども、具体的にわれわれの組織の傘下で現われて来ているのは、皆さんも御存じの山口県下松市の笠戸島にある笠戸ドックの問題であります。つい二週間ほど前に、会社は工場休業をやりまして、七百名の組合員を全員解雇してしまいました。ところがこれに対して、本部としてはただちに工場再開の方針を立てまして闘うべくオルグを派遣いたしましたけれども、時すでに遅く、笠戸の組合は全員大会を開いて、この会社の解雇を承認してしまつたのであります。一見労働組合の方向から申しますと非常にぶしぎな現象でありますけれども、ここに特に皆さんに考えていただかなければならない大きな問題があるのであります。それは笠戸島に賃金の遅配が起きましてから、ちようど一年半になります。石炭鉱業の問題でいろいろお話が出ておりましたように、造船産業もその実情はちつともかわりません。一年半の賃金の遅配に次ぐ遅配でもつて、いわゆるあす会社で働くよりも、今昔になつて失業保険でももらつた方がよろしいという結論でもつて、とうとうそれを承認せざるを得なかつた実態をよく御承知願いたいと思うわけであります。そこで、じや失業保険をもらいましようということで職安に行きましたところが、会社がすでに失業保険の金を滞納しておりましたので、会社が滞納している失業保険を支払うことはできないんだといつて失業保険すら今もらえないのが実情であります。さつそく労働省に交渉いたしまして、いろいろ聞いてみますと、そういうときでも失業保険を払つてよろしいということになつておるそうですが、残念なことには下松の職安にそれだけの金の用意がないというのが実情で、労働者諸君も二千円損しろ。会村も二千円損しろ、下松の市も二千円損する、計六千円をお互いに損して、六箇月支払うべき失業保険を五箇月で何とか妥協してくれという話を今われわれの方に持ち込まれているのが実情であります。  こういつたことは、ただに下松だけじやなくして、おそらく各中小都市に起り得る現象であろうかと思います。笠戸がなぜそうなつてしまつたかということは、ソ連の船をやりまして、若干の食い違いがありまして相当の赤字を出しました。しかしながら、技術的な問題で赤字が出た点もないことはありませんけれども、日本経済の現在の実情からいつても、バーター取引の問題は、向うから来る物資をどのように消化して行くかということによつて、輸出船の振興の問題を御研究願いたいのであります。  さらに計画造船については大体今次の十次造船についてはおそらく近いうちに決定するだろうと思いますけれども、日本の将来から考えて、日本の現在の経済事情から考えて、どうしても外貨獲得のために必要な造船、海運を振興しなければならないと思つておるのがわれわれの実情であります。少くとも私たち日本の国民が食つている自分の米だけは自分たちのつくつた船で運びたい、自分たちのつくつた船で運んで来たいというのが、われわれの希望でありまして、そうすることによつて外貨の獲得、貿易外収入が大きくぶえて行くことをわれわれは見のがしてはならない。そういつた観点からどうしても海運造船政策の長期的な計画立案がぜひほしいということであります。そのためには財政投資のわくが拡大されなければならぬし、輸出船振興のためには輸出入銀行のわくが拡大されなければなりません。そういつた方向で御努力願うことによつて、今問題になりつつある失業問題の一切が解決されることが、ほんとうに正しい失業対策ではなかろうか、かように考えておるわけであります。本日ここに運輸省の方々も来られておりますけれども、むしろ問題は運輸省にあるのではなくして、運輸省の政策あるいは造船計画の政策を非常に牽制し、日本の財政投資の方向を誤らしている大蔵省に問題があるのではないか、とういつた観点で今後とも十分御検討を願つて、われわれの持つている自国船による自国海運の振興に御努力願いたいということを特にお願いいたしますとともに、今度の十次造船が決定いたしまして着工する運びになつたといたしますと、最近のいろいろな方向からいつて大企業集中の方向が出て参ります。できることならば――ということよりもぜひ中小企業にもまんべんなく船が受注できる方向でぜひ御努力をお願いいたしたい、かように存じます。はなはだ虫のいいお願いですけれども、十分御検討願つてよろしくお願いいたします。
  94. 赤松勇

    赤松委員長 これより質疑に移りたいと思います。大西君。
  95. 大西正道

    ○大西(正)委員 初めに――運輸大臣は見えておりませんね――それでは次官か甘利局長にお伺いいたしますが、今参考人の方からいろいろ苦しい事情が述べられたのであります。ここで私がこういう事情を申し上げる必要はなかろうと思うのでありますが、特に私非常に印象的に聞きましたのは、造船総連の代表者からのあの言葉であります。従来ならば、船が進水するときには市民あげて歓呼の声で送る。ところが今日の進水のときには涙をもつて送る、こういう言葉を聞きましたときに、私は非常に目がしらが熱くなる思いがいたしました。あとの船台、からつぽになるであろうこの船台にいつ船が上るのだ、それが直接目分らの生活に響いて来るのだ、こういう痛切なる叫びであります。その他具体的な数字が、失業問題その他賃金遅欠配の問題が述べられたわけであります。これはあなた方もよく胸にたたんでおいていただきたいと、私はまず初めにお願いいたしておきます。  それで、最後の全造船の参考人から述べられましたが、今日のこの造船界の不況を乗り切る抜本的な策は、これはむしろ政府全体に責任がある、むしろ大蔵省だということは、とにかく今回のデフレ政策によりまして財政投融資のわくが締められ、また金融引締め、こういうふうな政府のデフレ政策が、根本的に今日の造船界の不況を来しているのだ、こういうふうな話であります。私はこれはもつともだと思う。しかし私がきようお伺いするのは、あなた方運輸省の方々にお伺いするわけでありますが、その前に、今の参考人の述べました今回の造船界の不況の根源というものは、政府の今回の政策に基本的な、よつて来る理由があるのだ、これを根本的にかえずんば、抜本的な解決はあり得ない、こういうふうな陳述でありますが、これに対しましてひとつ、あなた方は造船界の不況を乗り切るために、今の政府全体がとつておるところのデフレ政策についての所見を聞きたい。単なる所見と申しましても、当然これを打開するのにはいかにすべきかという観点からの一つの所見を聞かせてもらいたい。
  96. 西村英一

    ○西村説明員 造船界では船の注文が出ないから不景気でありますが、一般に海運界が不況のために、海運業者はうまく行かないのであります。海運業者から申しますと、これは非常に国際情勢として海運界が不況であるから金を貸すことはできない。先般いろいろ相談いたしてみますと、率直に申しまして、海運業者の方は、あまり船をどんどんつくるということは非常に引合わないということから、積極性が乏しい。しかし一方わが国の造船界から見ますと、これは確かに結局船の注文が早く出ないと困る、いわゆる造船界は不況ということになるのですが、政府立場といたしましては、いずれにいたしましても、日本の海運政策上から若干の船は必要なり、こういうふうに考えまして、財政逼迫の折からではございますが、ある程度造船はするということになつておるわけでございます。しかも二、三年前に政府が立てました造船計画は、まず三十年くらいまでに、とにかく将来の目的として四百万トンぐらいな船舶の保有量はほしい、こう考えて、そうしますと年間三十万トンぐらいの造船をやらなければならぬというふうな計画を立てたのですが、現在の財政事情から申しまして、どうも三十万トンはむずかしいであろう、しかし一方また終局の目的として日本の海運として四百万総トンぐらいは持つておらなければ困るということで、計画を一部変更しまして、三一三年までにそれに到達するとして、年間二十万総トンぐらいはやりたいというふうな、ただいま大体の目安を立てておるわけでございます。  本年慶の十次造船が遅れたことによりまして、なおさら造船界には混乱を来しておりますけれども、さらにまた造船界といたしましては、日本造船は非常に優秀な技術をたくさん持つておりますから、それを救う道は、国内船をつくることが財政投融資の関係上ある制限があるとすれば、輸出市場においてこれをやはり相当確保したい、これも一つの今後のわが国の造船界に対する最も考えなければならぬことではないか。しかし、それにいたしましても、やはりこの財政投融資の面、輸出入銀行等の強化をやつて行かなければならぬということがあるのでございまして、政府といたしましては、造船政策については今後とも十分な力を注ぎたい、かように考えておる次第であります。
  97. 大西正道

    ○大西(正)委員 今の答弁は、十分な努力をいたしたいというふうな話でありますが、どうもそれは私はふに落ちぬのです。今回のこのデフレ政策から、今参考人から話があつたように、非常にこういう悲惨な状況が出ておるのでありますから、私は十次造船の問題は別個にいたしまして、運輸省といたしまして、政府の今回の海運政策について、あなたは満足したような、また十分な手を打つたような発言でありますけれども、これはどうもおかしいと思うのであります。もう少しこれについて御意見を聞きたいと思います。意見がなければ私から言いますが……。
  98. 西村英一

    ○西村説明員 満足しておるということではございませんで、われわれも船がますますたくさん建造されることを希望しておるのでありますが、一方いろいろなことを勘案しまして、そのくらいのところに目標を置きたい。それで造船界のためには、輸出船市場においてやはり努力しなければならぬのじやないか、かように考えておるわけであります。ますます多くつくることは希望いたしておりますが、一方財政事情等もいろいろ勘案いたしまして……。
  99. 大西正道

    ○大西(正)委員 それではその話はあとにいたしまして、運輸省の責任において一つ御答弁願うことを申し上げておきますが、十次造船の促進につきましては、この委員会におきましても、私たびたび関係当局に轟いたし、特に去る委員会におきましては、十次造船促進の決議を提案いたしまして、満場一致でこの決議ができ上つております。また本会議におきましても、十次造船着工促進決議ができ上つておるのであります。しかるに、その後の十次造船着工の足取りを見てみますと、ようやく今日、あなたの報告のように市銀側との話合いがつきかけた、こういうふうな段階なのであります。これはまことにもつて、当労働委員会並びに院議に対して忠実なる処置が行われておらぬと私は考えるのであります。この速記録等を見ましても、大臣並びに局長からいろいろの確約があるわけでありますが、この問題がこの委員会において論議されたのは二月ごろからでありますから、今日すでに四箇月も五箇月も経過しておるのであります。私は決してその努力をやらなかつたと言うわけじやありませんが、その効果という上におきましては、まことにこれは十分でありません。こういう点につきまして、ただ単に十分の努力をしたという、こういうふうなことだけではなしに、もう少しその辺の経過につきまして、運輸省の見解を述べていただきたい。
  100. 甘利昂一

    ○甘利説明員 先ごろ国会で運輸当局からいろいろ皆さんに公約いたしたにかかわらず、その後の交渉状況が非常に緩慢であるというふうなお話でありましたが、決してその問休んでおつたわけではない、新聞等で御承知のように、この問題については絶えず運輸省全体をあげて鋭意その解決に努めて来たのであります。それで、当初われわれが考えておりましたのは、いろいろの建造量の問題、あるいは国として造船政策上、建造量が造船上に非常に影響するというふうな見地から、あるいはまた国としてできるだけ船がほしいという観点から、与えられた財政資金で、できるだけ多量の船をつくりたい、それにはやはり市中銀行の協力をできるだけ得たいというふうな見地から、財政資金七割、市中金融三割ということで話を進めて来たのであります。御承知のように、それで公募要領を発表いたしましたが、その間ただ一社出ただけで、その他の造船会社から出て参りませんので、従つてその後業界の方あるいは各方面といろいろ折衝し、その打開策についていろいろ考えたのでありますが、結局先ほど政務次官から申されたように、この不況の海運界においては、これ以上造船のために融資することはできない、すなわち過去の債権に対して利払いもできない。もちろん利子補給をされておりながら、その残りの利払いもできないというような状況において、しかも国の金融が一般に逼迫した今日、これ以上海運界に融資することはできないというかたい決意を銀行側が表明いたしておりますので、運輸省としてはその市中銀行側の決意をほごすように、この間努力して来たわけでありますが、最後に至つてやはり七割、三割の線ではとうてい無理だというようなことで、先ほど政務次官からお話になりましたように、それでは財政資金を少し増して八割にする、そのかわり市中の方は二割になる、それでも相当困難だというふうなことで、ある程度の肩がわりをそれにプラスしまして、この程度であれば市中としても協力できないはずはない。また単に市中金融の量をふやすばかりではなくて、市中から借りた金に対して利子が払えるようにいろいろの努力をする、あるいは業者をしてこれに協力せしめ、お互いに合理化して船価を安くするとか、あるいは海運業者の経費を切り詰めて、できるだけ利子が払えるように措置をするというふうないろいろなことを含めまして、少くともこのたびつくる船については、銀行の方にそう迷惑をかけずに何とかやつて行けるような措置を講ずることによつて、初めて市中側も協力することになつたのでありまして、今後大蔵省あるいは開銀と事務的の折衝を今月一ぱいぐらいいたしまして、来月早々新しい融資比率による公募要領を発表して、あらためて公募する。今回の公募要領には、おそらく市中金融の確約書を得ることは困難でありますので、適当の融資証明あるいはそれにかわるような書類を提出することになりますので、自然海運業者の資産、信用については、銀行の立場からいろいろ調査し、また運輸省においては海運あるいは造船政策の立場からこれを検討する。それらの検討の基準になるようなものを海運造船合理化審議会に諮問いたしまして、その答申を得て、その答申によつてこれらを処理して行くということになりますので、われわれとしても、できるだけ早い機会に造船所が着工できるようにこれらの手続を進めて行きたい、こう考えております。
  101. 大西正道

    ○大西(正)委員 公募は少くとも来月の初めごろにやりたい、こういうことなんですか。そういうことになると、着工はいつごろになりますか。
  102. 甘利昂一

    ○甘利説明員 従来の公募要領によりますと、提出されたものから審議して、順次許可して行くという方針でありましたが、今回の公募要領によれば、おそらくある一定の期間を限つて公募する。従つて、その期間に集まつたものを全部総括いたしまして、これを今の基準にのつとつて選考するということになりますので、おそらく一ぺんに発表になるだろうと思います。従つて、われわれの繋醸したいろいろな事務手続から見まして、特に本年度は非常に遅れておりますので、できるだけ事務手続を促進いたしましても、おそらく決定は八月末ごろになりはしないか。できるだけ早くはいたしますが、今のところその程度になりはしないかと考えております。従つて早い場合でも造船所の具体的の着工は、九月早々かあるいは中ごろになるのではないかと考えております。
  103. 赤松勇

    赤松委員長 なお参考人の諸君で発言したい方がございましたら、どうぞ委員長にそう言つてください。
  104. 大西正道

    ○大西(正)委員 時期は大体それで了解をいたしましたが、私どもがこの十次造船促進の初めから主張し続けましたその最も大きなねらいは、造船産業労働者失業の問題に対して対処したいということなんです。そこで、今お話のように、少くとも市銀側の一応の了解が得られて公募にかかるわけでありますが、こういう運びになりましても、今あなた方からも説明のあつたように、その建造量としてはまことに一微々たるものであるし、特にその割当許可の問題につきましては、これは当然市銀の融資ということが条件になりますから、赤字に悩んでおるところの企業であるとか、あるいは弱小企業などがこの選考に漏れるということが、われわれとしては考えられるのであります。そういたしますと、失業対策の面から見ますと、ただ十次造船の着工が決定したというだけで満足することはとうていできません。その十次造船の注文を受けなかつたところの中小造船所等に対して、運輸省といたしましては、一体どのような救済策と申しますか、こういつた企業がつぶれないために、どのような考えを持つておられるかということをお聞きしたいのです。
  105. 甘利昂一

    ○甘利説明員 今の大西先生のお話によりますと、たとい十次造船が決定されても、隻数が少いということと、また市中の協力を得るという点において、弱小の船主についておつた造船所はなかなか救いがたいというお話でありますが、本来この造船資金造船所につける金でなくて、海運業者が開銀から借りる金でありますので、このような方法でやつておる限り、銀行の融資を得られるような、あるいは融資承諾書を得られるような船会社と一緒になつ造船所でなければ、その造船所には船がまわつて来ないということは確実であります。ですから、今お話のように、この問題をあくまで造船対策、あるいは造船所の所在地の社会問題、あるいは労働問題として片づけるということであれば、むしろ方法をかえて、あるいは公共事業とか社会事業とかいうような名目で別途の方法を講じ、これによつて、たとえば不定期船というようなものを何十ばいかつくる。今のよような船主の関係でなかなか船ができない、しかし、その町あるいはその地方として非常に大きな影響のある造船所に対しては、これらの船を政府が入札するというようなことにして、それらの造船所でこれをつくるようにして、造船所と船の隻数がきまつた後において、こういうところでこういう船をつくるが、その船をチャーターするなり、あるいはその船に出資をして運航するというような船主の希望者を募つて、これをその船の所有者にする。そのためには国からも財政資金も貸さなければならぬでしようし、市中の協力も得なければならぬと思いますが、いずれにせよ、むしろ造船所を主体にしたそういうふうな造船方法を考えなければ、たといトン数がふえ、あるいは隻数がぶえましても、今のような方法ですと大きな造船所に集中し、船主のいかんによつては、必ずしも中小造船所に行かない場合があり得ると思いますので、お話のような趣旨であれば、やはりそういう方法あるいはそういう趣旨の別途の造船計画を一部立てなければならぬのじやないか、こういうふうに考えております。
  106. 大西正道

    ○大西(正)委員 私の意見のようならば、そういうことを考えなくちやならぬのじやないかということでありますが、そうしますと、あなたの方は、私の言つたようなことは必要ないと零えておられるのか、あるいはそういうことは当然運輸省としては考えなければならぬのだとお考えになるのか、どうですか。
  107. 甘利昂一

    ○甘利説明員 私も、今お話のあつた通り、私たちとしてもそういうことを考えなければならぬのじやないかというふうに思つておりますので、今後そういう方面にわれわれも進みまして具体策を立てる、こういうふうに考えております。
  108. 大西正道

    ○大西(正)委員 大体の局長の考え方はわかりました。ひとつその線を推し進めてもらいたいのであります。しかしあなたの話では、今後研究を進めて行くということでありますけれども、今問題は、こういう形でもつて、もう全国の船台はほとんどからつぽであります、各所で失業が起つておるのでありますから、これに対処する対策としては、これを将来の問題として流すことなく、今から運輸省が、船主の決定にしても、可能なる範囲の努力をやらなければならぬと思うのですが、その点はいかがですか。
  109. 甘利昂一

    ○甘利説明員 御趣旨に沿つて、できるだけそういう意見をもつて選考したいと思いますが、先ほどお話申し上げましたように、この資金は、あくまで船主に貸す金なんでありますから、借りる人の資産信用が、銀行としては一番大きなファクターになるだろうと思います。もちろん、船主の資産信用のみならず、今申し上げましたように、いろいろな船主の航路計画だとか、あるいは造船事情とかということも考慮に入れてしかるべしと思いますので、これらの問題につきましては、造船合理化審議会に、船主選考基準をいかにすべきかという諮問を発しました場合の結果によりまして考慮したい、こういうふうに考えております。
  110. 大西正道

    ○大西(正)委員 その場合に、あなたの方としては、こういうことはお考えになりませんか。造船だけで立つておる企業と、他の陸上産業も併設してやつているような企業とがある。現に、こういう造船界の不況から、続々と陸上産業の方に、同じ企業の中では重点を移行しつつあるということなんですが、これもまた一つの切抜け策としては認めなければならぬと思うのであります。ただ造船だけで立つておる企業が、もし今回この十次造船の割当から漏れた、こういう場合には、これがつぶれてしまうことは明らかであります。その結果どうなるかというのは、単なる労働者のみの問題ではありません。今の参考人の話にあつたように、その造船所にたよつておる地方自治体も、非常な混乱に置かれていることは事実であります。私が今申し上げましたことを、根本的に容認するとかしないとかいうことでなしに、今のままの機構におきましても、私はこの船主の決定のときには考慮されるべきものだ、こういうことを思うのですが、いかがですか。
  111. 甘利昂一

    ○甘利説明員 船主の決定につきましては、今申し上げましたように、合理化審議会にはかりまして、その基準は決定せられるのでありますから、今私がここでいろいろ事前にどうなるかということを申し上げることはできません。ただ、今お話のように、造機の方の能力がなくて、主として造船部門だけで立つて行く造船所を優先さすべきであるかないかという問題につきましては、いろいろ意見があると思います。大体日本造船所は、イギリスと申しますか、ヨーロッパ大陸の造船経営方式にのつとつているのでありまして、主として造船以外に造機の方も相当に持つてつて、しかも造船の不況の際には、造機の方である程度つて行くというふうに、比較的多角的に経営しているのが、日本造船業の大体の傾向なんです。ところが米国のごとく関連産業が発達しているところにおきましては、むしろ経営上造船所が造機能力を持つことは不経済だというような見地から、造船所は船殻だけつくつて、いろいろな中のものは市中から買つてそれを艤装して組み立てるというような方式をとつておるのであります。先ほど申しましたように日本造船所は、大体前者の方にのつとつておるわけであります。その中にも造機能力が多少まさつておるところと、比較的劣つているところがありますが、大体において大陸系に近いのでありますから、多少の造機能力は持つておりますので、造船がなかつたら、全然その工場が動かないということはないと思います。またそういう経営方式をとつているのは、いろいろ経営者の意図もありましようし、経営方針もありましようから、ある経営者がそういう方式をとつているために非常に困つたという場合に、そういう造船所を優先しなければならぬというようなことは、なかなか困難しやないかと思います。しかし、いずれにせよ、これは合理化審議会に選考基準を諮問いたしましたときの結果によつて判断を下すべきじやないかと考えております。
  112. 赤松勇

    赤松委員長 甘利さんにひとつ教えていただきたいのですが、今度の開銀八、市銀二という融資率になりますと、大体十三万から十三万五千総トンと言われておる。そうしますと、あなたの方の予定よりも大分下まわるわけですね。ここで、予想としては輸出船舶の見込みが十万総トン、保安関係の方が五万総トンありますが、これらを入れてもせいぜい三十万が精一ぱいじやないか、こう言われております。昨年の実績が五十万トンですが、そうしますと六割くらいしかやれないということになります。残り四割というものが結局中規模の造船にしわ寄せされるということになつてくるわけです。合理化審議会でどういう結論が出るかわかりませんけれども、今あなたがおつしやつたのは、その中規模の造船所に対しては別途の方策を講じたい、こうおつしやつたように私は聞いたのですけれども、そういう点について、審議会にまかせつきりでなくて、やはり運輸省としましては、われわれの常識論からいつて、当然中規模の造船にしわ寄せが行くのです。これは開銀の場合でも市銀の場合でも、やはり融資の対象というものは、非常に安定したそういうところへまわしたいというのが人情です。そういうところに一つの危機がある。これを造船の従業員諸君も非常に心配している点です。こういう点について、運輸省の対策というものを、この際明確にしておいていただきたいと思うのです。
  113. 甘利昂一

    ○甘利説明員 今お話のありました八割、二割の場合に、一体何万トンになるか、あるいは何隻になるかということは、結局来年度に繰延べる資金量を幾らにするかということで、ずいぶん違つて参ります。たとえば、ある場合には、七千五、六百トン平場にして十八隻ぐらいになる場合もありますし、ある場合にはそれが二十二隻くらいになる場合もあります。ですから、この点は今後大蔵省といろいろ折衝し、あるいは市中とも折衝しまして、来年度に繰越す市中金融あるいは財政資金を幾らにするかということが問題で、それによつて数隻の違いが出て来ると思います。  それから、今のような方式でやれば、中小造船所に全部しわが寄つて来るというふうなお話ですが、これは必ずしもそうじやないと思うのです。私の申し上げたのは、要するに資産信用があり、あるいは資産信用がある一定限度以上あり、しかも運輸省の計画するいろいろな航路計画、国として一番ほしい航路に就航する、そういうものを総合してきめるのでありますから、必ずしも中小造船所に全部しわが寄るとは限らないと思います。
  114. 淺野重美

    ○淺野参考人 ただいま甘利局長から、来年度の方に繰越す分を本年度つくれば、少しでも有利になるのじやないかというようなことを言われたのですが、ぜひひとつ甘利局長にお願いして、そうしていただきたいということです。ということは、われわれ播磨にいたしてもそうですが、造船所一本でありまして、実際何もやつていない、ほかに仕事は全然ない。他社におきましても、やはり造船一本でやつているというようなところが、造船界の中にもたくさんあるわけです。中小企業においてもその通りであります。かような現状から、ただここで十五隻とか十四隻とかいうように限定されますと、これはおそらく、さつきも大西先生が言われたように、中小企業には一つもまわつて来ないのじやないかと思われます。こういう現状から、何とか一つ来年に繰越すような分がありましたら、それをぜひ本年にまわしていただいて、この一番苦しい、帰休制もどんどん出ており、また失業者もどんどん出ているような現状ですから、ぜひひとつ御協力願いたいとお願いする次第であります。
  115. 大西正道

    ○大西(正)委員 そこで、今の十次造船が着工されると考えましても、輸出船を含め、あるいは国内の艦艇の発注を含めましても、三十万トン前後ということになりますと、今委員長のお話のように、昨年よりも非常に総量が少くなる。ところが局長御存じのように、造船能力は約六十万トンの能力があり、また従業員の数もそれに対応するだけのものがあるわけであります。この仕事が大企業に渡るか、あるいは中小企業に渡るかという問題は別といたしまして、トータルといたしましては、ここに何ぼかの失業者が出る、こういうことは当然予想されると思うのでありますが、その点どのようにお考えになりますか。その犠牲やむなしと認められるか、あるいはこれに対して別途の方法をもつてその克服のために努力したいと考えるか。たとえば輸出船をもつと別な方面の努力に率いて解決して行くという努力と見通しがつきますか。
  116. 甘利昂一

    ○甘利説明員 先ほどから造船能力が六十万トンで、需要が四十万トンあるいは三十万トンですから、残りは過剰だから整理しなければならぬ、こういうようなお話なんですが、御承知のように、造船というものは、一般の、たとえば多量生産する産業と違いまして請負注文でありますから、必ずしも小さな造船所あるいは大きな造船所に船が集まるというのではなくて、やはりその船主のすきぐ、あるいはその船の種類によつて、私はこの造船所でこういう船がつくりたいというので、その立場々々、あるいは船主のいろいろな経営上の立場から違つて来るものでありますから、六十から四十引いて二十余つておるのだというような勘定はしないのが常であります。しかし、ただ数学的に見ますと、どこかにそのしわは寄るのではないかということはうなずかれるのでありますが、これは日本だけではなくて、造船能力というものは、いつでもフルに使つておるかというと、決してフルには使つておりません。世界各国を見ましても、あるいは過去の歴史を見ましても、造船能力をフルに使う場合は、戦争中とかあるいは特殊な事変の最中、あるいは事変の事前に使うということだけで、その他の場合は、大体において低い場合には三、四十パーセント、多くても六、七十パーセントというのが、造船所の能力と需要の関係であります。これは各国とも造船国について言えることでありますので、それたけまた造船所としては、一般の企業と違いまして、やはり臨時工とか請負工とかいうふうな制度をとりまして、その需要に応じて、あまり世間に障害を与えないような制度をとつておるわけであります。ですから、そういう点から行きますと、必ずしも能力一ぱい常につくらなければならぬというふうな経営方針はどうかと思います。むしろ不景気の場合には、何か陸上のいろいろなものに進出するとかいうふうな経営あるいは設備を持つておるべきものが当然じやないかと考えます。
  117. 大西正道

    ○大西(正)委員 局長はなかなか物知りでいらつしやいますので、もつと聞きますが、諸外国のそういう三〇%あるいは四〇%くらいしか稼働していないという場合に、従業員はどういうことでその生活を切り抜けておりますか、それもひとつお聞かせ願いたい。
  118. 甘利昂一

    ○甘利説明員 ですから先ほど申し上げましたように、ヨーロツパあるいはイギリス等の造船国においては、主として陸上部門で何とかしのいでおりますし、アメリカのように、陸上部門をほとんど持たずに船殻と艤装だけやつておるところにおいては、いろいろな社会政策あるいは労働政策の面から、随時解雇、雇用ができるような制度をとつておるわけであります。
  119. 大西正道

    ○大西(正)委員 それならば、運輸省といたしましては、今回生ずるところ失業の問題については、今のあなたの該博な知識で、どういう具体的な責任ある救済策をとろうとしておられるのか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  120. 西村英一

    ○西村説明員 先般からのお話で、造船能力に造船の実際が追いつかないから、多少企業の再編成というようなことが行われるのではないかということですが、その場合に、私たちの立場からいたしまして、個々の会社についてどうこうというようなことはできぬのであります。しかし全般的に造船能力が実際に余つておりますれば、どうしても自然に会社としては整理あるいは統合というようなことが行われ得ると思います。そういうようなごとがある場合には、混乱が起らないように、スムーズに事業が行くようにということを政府としては考えて行かなければならぬと思います。  それから、もう一つの問題といたしましては、先般もこの造船の合理化審議会で小委員会をつくりまして、いろいろ専門の方その他学識経験者等に議論をしてもらいました場合も、そういうことになれば、これは社会政策的な見地からそれらのものを考えなければならぬということを強く言われておるわけであります。しかしこれは運輸省でただちにでさきとではない。しかしわれわれといたしましては、相当にその造船能力が余つて、今後長い間それに追いつかない、はるかに少い造船所しかないということになれば、政府全体として何らかの手を下さなければならぬ。ただいま何らかの手というだけで、具体的にこれをどうするというところまでは進んでおらないのでありますが、造船合理化審議会の小委員会におきましても、この点は強く叫ばれておりますので、政府としては、今後研究して行きたいと思つておるわけであります。運輸省としては、十次船を進めるということで、とりあえずそれを一番先に考えておるのでありまして、将来につきましては、相当問題があろうかと思います。     〔委員長退席、池田(清)委員長代理着席〕
  121. 井堀繁雄

    井堀委員 計画造船に関連してお尋ねいたしたいと思います。先ほど西村次官の御発表によりますと、大体第十次造船計画についての輪郭が明らかにされておりますが、との輪郭によりますと、第九次造船計画、あるいはさかのぼつて五次以降のものと比較いたしまして、かなり圧縮された形になることだけはいなめないと思います。そこで私はこの計画の内容について、一、二お尋ねいたしたいと思います。資金繰りの点については、かなり詳しい計画をお持ちのようでありますし、ある程度の御発表があつたようであります。私は、計画造船の最も大きな欠陥は、ただ海運会社に対する積極的な援助が具体化されておるだけということであつて、少くとも造船計画というからには、船をつくるために必要な最低の条件が計画的に行われなければならぬことは常識だと思います。もちろんそういう計画が、第一次から第九次までの間に、多少の変化、ことに第四次から五次の占領下から独立した過程における飛躍的な発展がありましたことはこれはもちろんであります。いずれにいたしましても、多少の歴史的変化は遂げておりますが、計画造船の中には、資金の問題並びに設備に関する問題、労務に関する問題、特に技術の問題でありますとか、そういう問題が取上げられておることは事実であります。また合理化審議会に何か責任をお預けになるような発言がたびたび行われておりますが、審議会に対しては、運輸省もしくはこれを中心にする政府が、ある程度の計画を持つて臨まれるところであります。でありますから、こういう計画があるはずであります。まず私はお尋ねをいたしておきたいのは、第十次計画の修正案といいますか、その中に、一体労務計画はどうなつておるか、あるいは設備の温存に対するどういう方針をお持ちになつておるか、これと金融関係をどういうように結びつけておるか、この点についてお尋ねいたしたい。
  122. 甘利昂一

    ○甘利説明員 選考の基準になることになることについては、目下事務当局といろいろ話合いをしておりますので、一日、二日のうちにきまると思います。もちろん今お話のあつたように、選考基準については、運輸省が独自の立場でやるべきでしようが、ただ非常に大きな問題ですし、市中の金融あるいは開銀の問題もありますので、広く皆さんの意見を聞いて、そのうち適当であるというものは運輸省の原案に繰入れてやるということになりますので、あくまでわれわれとして公募前には、あるいは諮問を発する前には一定の計画を持つべきでありまして、それは目下調整中であります。
  123. 井堀繁雄

    井堀委員 その目下計画中を伺いたかつたのでありますが、これはもう私は何も言質をとるわけではありませんから、大胆に聞かしていただきたい。それはこれから各方面の意向を聞いてなどというような事柄では、もうすでにないのであります。一時第十次計画を立てられたことがある。ところが、ああいう汚職その他の事情がありまして、非常な障害にぶつかつているという点については明らかであります。そこにもすでに計画があるわけであります。ことに先ほど次官の発表は、融資のわくについては、この苦しい中から財政融資を七の割合、市中銀行から三の割合というような大胆な線を発表されておる以上は、これと並行して労務に対する計画がないはずはない。それから遊体施設をどうするか、あるいは高率な施設の活用をどうするかというようなことが前提にならないで、金融対策なんかあるはずがないと思う。金融対策というのは、前提になるべき二つ条件が明らかにされて、金融対策というものが出て来るのが常識だ。これは資本主義の時代における法則なんです。それを今各方面に聞き合わせてなどということは、ちよつと納得できないことです。何かさしさわりがあれば、そのことを言つていただけばいい。幸いにして次官がおいでですから、西村次官からお答えいただきます。
  124. 西村英一

    ○西村説明員 別にさしさわりがあることはありませんが、質問要点ちよとつかめないので、お聞きしておつたわけです。計画造船と申しますのは、造船所の救済ということで考えておるわけではありません。やはり国の海運政策上からきめることなんでありまして、それが現在の造船能力とマッチしないということなんであります。しかし、一方現在の造船界というものは、やはりわが国の産業に及ぼす影響というものが非常に大きいから、これを無視してはやれない、両方にらみ合せて、すべてのことをやつておるわけであります。今雇用量がどれだけになるか、そのためにどうなるかとかいうような御質問であつたかと思います。その点につきましては、航船局長からお話いたしたいと思いますが、それがお答えになるかどうかしれませんが、そういうふうに思つておるわけであります。造船所の救済でやつておるわけではなくて政策としてやつておる、それがこうなつたということを言つておるわけであります。御答弁にならなければまたお答えいたします。
  125. 甘利昂一

    ○甘利説明員 今の雇用量とか設備とかいうお話、私にもよくわかりませんが、造船計画であるから、ある程度あるいは全面的に造船所のそういうものを考慮に入れて、いろいろあれすべきではないか、こういうようなお話だと思いますが、それならば、今政務次官からお話のありましたように、造船計画ではありますが、やはりあくまでも船会社に貸す金でありますので、日本の海運を助長する政策でありますので、やはり船会社の施設、信用、今の航路計画であるとか、そういうものを重点に考えるのは当然と思います。ただ一般的に、多額の財政資金を使うのであるから、単にそういう面だけではなくして、非常に焦眉の急に迫られておる造船所の問題あるいはその地方の社会の問題等も当然考慮に入れるべきではないかということは十分うなずけますので、そういう点については、十分われわれも考慮いたしておりますが、ただこれについては、いろいろ意見がありますので、先ほど政務次官が申されたように、あくまでも海運に関する貸付金であるから、造船所をどの程度に取入れるかということについては、いろいろ問題もありましようし、われわれは取入れるべきだというような考えを持つてつても、皆さんの意見はどうねるかわかりませんし、部内でも調整しなければならぬと思います。また審議会で広く皆さんの意見も聞いてみなければならぬと思つております。
  126. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは私の質問の仕方がわかりにくかつたというなうば、こういうぐあいにお尋ねいたしましよう。すでに西村政務次官からの御発表によりますと、二十万トンないし三十万トンが可能な一番強い線といつたように承つた、そうすると二十万トンの造船能力というものは必ず想定されているに違いない、それと従来の計画との食い違いがここに出て来るわけであります。こういうものをちやんと明らかにしておると思うのであります。その点を伺いたいのです。
  127. 西村英一

    ○西村説明員 二十万トン、三十万トンと申しますが、結局わが国の造船能力、保有量を幾らにするかということが根本であります。その保有量については、ただいまのととろ日本は戦前の七割ぐらい、四百万トンぐらい保有しておつたらいいのじやないか、その線を目標にして達成する。その四百万トンの目標に達成するのを何年度までに達成するかということで、年々の造船の量がきまつて来ると思うのであります。それでは四百万トンはどうして出たかということになりますが、それは結局なるべくわれわれとしてはよけい船をつくりまして、国際収支の改善に努めたいが、しかし現在の海運界から推察しまして、それとまたわが国のこの国際間における輸入、輸出の状況を数字的に考えまして、あるいは日本の邦船によつて積み取る比率等も考えまして、またできれば第三国間の輸入に貢献してもらいたい。いろいろな面を考えまして、最終目的船舶保有童を四百万トンぐらいにしたい、それを早く達成させたいのがわれわれ運輸省の立場でございます。しかしそれが財政資金その他の関係でできないので、政府全体といたしましては、これは従来は三十万トンくらいの年間の計画をしておつたのが、本年度は二十万トンぐらいになつて、結局昭和三十三年ぐらいにならなければ最終目的には達しないのではないか、こういうことを考えておるわけであります。
  128. 井堀繁雄

    井堀委員 時間が非常に少いので、せき込んでお尋ねして恐縮ですが、端町にお答えをいただきたいのは、造船能力をどのようにというようなことについては、もうすでに第一次から九次までに経験済みなんです。ことに第九久の実績があるわけですから、第九次の実績に照しまして、たとえば二十万トンと押え、三十万トンと押えます、そうすると一体どれだけの設備とどれだけの労務とが必要であつて、その違いがどれだけあるかということは明らかになつておるはずでありますから、その点をはつきり数字の上でお示しいただきたい、こうお尋ねしているわけです。
  129. 甘利昂一

    ○甘利説明員 昨年度は輸出船、内地船合せて大体六十万トン近かつたと思いますが、本年度は先ほどからお話のありますように、輸出船を十五万トン、内地船を二十万トン、保安庁船を四万トン、三十九万トンですから昨年に比べて非常に少ないというのですが、ただ輸出船の十五万トンについては、これは従来の実績その他から一応計算したのでありまして、業者の努力いかんによつて相当上ると思います。現在われわれの聞いているところによつても、この数字を相当上まわるようでありますので、それでは具体的に本年度過剰労力が幾らあるかというようなことは、主として輸出船の量がどこまで伸びるかということでもつて変動すると思います。
  130. 井堀繁雄

    井堀委員 そういうあいまいな御答弁でなくて――もつとも何かはばかりがあれば別です。あなたの方では、第九次と今度の計画との食い違いは、いろいろなもので算定されておるはずです。その中で私の聞きたいのは、労務の問題と遊休施設がどうなるかということだけは明らかになつておるから、それだけでもここで――用意がなければ後日書面で出していただいてもけつこうです。これがわからないというようなことでは、計画造船とかいつたところで、何にもならないと思います。
  131. 西村英一

    ○西村説明員 数字上のことでこまかく御質問がございましたけれども、船台がどれだけ遊んでいるかとか、あるいは雇用量がどうなるかということになりますから、それは書面でお答えした方がいいかと思いますので、ひとつさように御了承を願います。
  132. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは委員長にお願いしておきますが、雇用量、それから遊休施設に関して、第九次と今度の計画の比較した数字を出していただきたいと思います。  私はこれで終ります。
  133. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 了承いたしました。次に大西正道君。
  134. 大西正道

    ○大西(正)委員 今輸出船の問題がありましたが、これは限られたる財政投融資の中では、やはり造船産業を救う一つの大きな問題ですが、これについてソ連船の受注がいろいろ話合いに上つておるようでありますが、これに対する運輸省の考え方はどうなのでしようか。
  135. 甘利昂一

    ○甘利説明員 われわれとしては、どこの国の船にかかわらず、できるだけ輸出を促進したいと思いますので、全力をあげていいろ措置をとつており戻す。
  136. 大西正道

    ○大西(正)委員 これは共産圏向けの輸出禁止の問題に触れませんか。政府としては、そういうものについては無制限に許可をするということになりますか。
  137. 甘利昂一

    ○甘利説明員 もちろんそういう調整機関の問題もありますので、そこと十方連絡をとつて、今までできるだけの措置をとつておりますし、今後もできりだけ許し得る範囲においてその量を増すように努力いたします。
  138. 大西正道

    ○大西(正)委員 非常にあいまいな答で、できるだけということでありますが、これにははつきりした一つの制限があるわけです。それはやはりあなたの方としては、これをこの程度までということを、ひとつ言明して努力してもらわなければならぬと思います。また聞くところによりますと、インドネシア向けの輸出船のごときは、せつかく向うから注文がありましても、政府が許可をしなかつた。その理由は何かと申しますと、輸出超過になつておる、代金がこつちへ払われない、それで他の濃関係のものはどんどん輸出を許可しておりながら、今回の船の問題については、政府の方で許可を与えない、こういうようなことが言われておるのでありますが、もしこれが事実であるとすれば運輸省として大いにひとつ努力してもらわなければならぬと思う、この点はどういうふうにお考えですか。
  139. 甘利昂一

    ○甘利説明員 インドネシアの輸出船については、まだ契約ができておりませんので、私の方で許可をするとかしないとかいうことは言つておりませんし、われわれとしても、できるだけ契約ができれば許可したいといつて返事をいたしておるわけであります。  それからソ連船のことについては、先ほど一定のわくがあるというお話ですが、一定のわくはございません、その都度話合いによつてやるのです。われわれはそれに拘泥するわくがないのですから、そのときどきによつて輸出を多くしたい、こういうように考えております。
  140. 大西正道

    ○大西(正)委員 約束ができてから許可をする、こういう話ですが、私はこの辺の事情がよくわかりませんが、どうですか。政府の一応の内諾があつて、しかる後にお互いの話合いがまとまるのでございませんか。そこのところはどうですか。
  141. 甘利昂一

    ○甘利説明員 もちろん、事前にこういう条件でこういう船が建造許可になるか、あるいは輸出許可になるかということは連絡いたします。われわれも建造許可の面については、さしつかえないという内諾を与えておりますので、契約ができれば、さしつかえないと思います。
  142. 大西正道

    ○大西(正)委員 それではその点は十分尽力していただきたいと思います。  それから最後に要望しておきますが、今の運輸省の話を聞いておりますと、われわれが造船労働者の問題を主に取上げると、それはわれわれとしてはあまり重要視しないのだ、むしろ産業計画の上から船が何ぼいるのだから、自分らはその辺から考えておるのだ、こうおつしやいますけれども、これはもう少し視野を広げ、やはり政府全体の責任において、今問題になつておりますところ失業というような問題はともに考えてもらわなければならぬと思います。  それでは、私は開き直つてほんとうは聞きたいのだが、一体今のデフレ政策を、こういうぶざまな形で推し進めておる根源は何か、やはり貿易の輸出輸入のバランスをとろうというのです。そういう場合に、海運政策、特に造船をどんどん振興させるということは最も緊急の課題だと思うのですが、そういう問題については、運輸省の力が足りないのかどうか、それはわからぬけれども、財政のわくを引締めるといつても、下手に引締めてしまつて、輸出産業に対して重点の融資をするといいながら、実際その実効は上つておらぬじやありませんか。そういうところに政策の貧困が私はあると思う。そういうところから見ると、どうもこれは運輸省の政策、考えというものが強力に反映しておらぬし、そのことがやはり日本経済産業計画というものを満足な形に持つて来ておらぬと私は考える。  それから今の話でどうもはつきりと言わなかつたけれども、過剰人員はいわゆる合理化によつてやむを得ぬというようなことが出ておるのだが、これもまことにひどい話だと思う。単なる失業対策とか労働問題とかいうような問題だけではなしに、ほんとうに造船をどんどん進めて海運を振興させるというのであれば、今一時的にこういう不況であるからというので、熟練工をどんどん首切つてしまう、今後海運を飛躍的に発展させるといつた場合に、造船産業は特に熟練工が必要なんだが、こういうものをどうして得ることがでできるのです。こういうものも、単なる労働問題とか失業問題だけではなしに、やはり造船政策といいましようか、そういう問題を真剣に考えれば、この失業の問題ということもその根底になることだと私は思うのです。そういうところにどうも配慮が足りぬように思う。労働委員会だから、どうも労働者の問題ばかりしやべつておるのじやないか、そういう考えを持つておられるのじやないか。私はきよう数字をあげることが割合に少かつたので、あなた方の痛いところを刺すことができなかつたが、今度は数字を示してお伺いいたしますから、考え方をそういうふうにかえてもらわなければならぬと思います。それだけのことを要望いたしまして、また次の機会に申し上げます。
  143. 西村英一

    ○西村説明員 大西さんのせつかくの御要望ですから、私も端的に申し上げて、四百万トンときめたのが、造船所のことのみ考えてやつたように聞えましたが、これは多少誤解を招いたのじやないかと思います。私率直に申しまして、日本産業で国際水準でうまくつくれるのは、やはり造船所の船舶事業であります。私たちはその面から行きましても、日本の船舶、造船関係のととにつきましては、十分関心を払つておるわけでございます。御意見はわれわれ十分わかつておるつもりでございます。ちよつと誤解もあつたかと思いますので、それだけつけ加えて申し上げます。
  144. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 多賀谷君。
  145. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がございませんので、一、二点お聞きいたしますが、輸出船の問題がちらほら出ておつたわけであり示す。輸出船の状態はどういう見込みであるのか、お尋ねいたしたい。それと同時に、たしか笠戸ドックであつたと思いますが、何か外国との契約が破棄されて、非常なうき目を見て、こういう全員解雇というような一つの様相をつくつたやに聞いておるのですが、そういう事実があつたかなかつたか。またあつたらその模様をお聞かせ願いたいと思います。
  146. 甘利昂一

    ○甘利説明員 輸出船については、市場の引合いがありますので、適当の処置さえすれま、十分今後伸びる可能性があると思います。現に確実なもの、先ほど申し上げましたように計画を上まわつておりますので……。
  147. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちよつと具体的に述べていただきたいと思う。
  148. 甘利昂一

    ○甘利説明員 現在話がまとまりそうなのは、ソ連とのやつが約五万三千トンぐらいあります。それからトルコのやつが三万五千トンばかり、それからインドネシアのやつが約三万トンぐらいあります。そのほかパナマとかブラジルとか、そういうものを含めまして、大体金額として二百三十五、六億ございます。そのほかにも話があるものは相当ありますが、今あげたのは大体有望と思われるもの、あるいはすでに一部確定したものであります。  それから先ほど笠戸ドックが非常に苦境に陥つたのは云々というようなことを言われましたが、笠戸ドックは別段そういう意味ではなくて、むしろ今まで非常に苦しい経営をして来たものを、ソ連船の修理によつてカバーしたいということでやつたのですが、結果においては、初めてのそういう船でありますので、いろいろ手違いその他がありまして、結局損害をした。そういうことで会社の経営が一段と苦しくなつて来てそういうはめに陥つた、われわれはこういうふうに報告を受けております。
  149. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほどからこの問題は出ておつたわけですが、十次造船を計画されるときに、政府としては現在のキヤパシテイから二十九年度はどのくらいの見込みである、さらにそれによつて失業がどのくらい出る、こういう見込みは、かなり造船界におきましては政府の計画造船の占める位置が大きいのでございまして、大体おわかりになり、すでにそれに対して対策が立てらるべきであると考えるのであります。もつとも十次造船そのものが現在のように難航して、やつと今ごろきまりかけておるような政府状態では、なかなか困難かと思うのですが、しかしそれにいたしましても、すでに今度の十次造船の計画が立てられる当初において、二十九年度の造船界の見通しというものが、私はかなりはつきり他の産業と違つてわかるはずであると思うのです。それに対して十分な対策がいまだできていない。しかも先ほど局長は、かなりいい案をわれわれにお示しくださつたわけですが、ことに公共事業として国あるいは地方公共団体が船を一応つくつて、それから船主を探すというような名案もあつたのですが、それが今まで放置されておつたのはどういう事情によるのであるか、こういう点も、ひとつお聞かせ願いたいと思う。
  150. 甘利昂一

    ○甘利説明員 先ほど来申しますように、トン数が幾らになつたから、それで自然工員数がどのくらいに減らなければならぬという矛うに、簡単にはじけないことはありませんが、実際問題として、いろいろなかわつた職種がありますので、職種の転換であるとか、あるいは陸上工事の受註量とか、そういうものによつてつて来ます。ただ造船部門に今どれだけ生産に従事する者がおる、それが造船所がこれだけに減れば造船部門ではこれだけの人があくということは、はつきり数字を申し上げられますから、もしそういう御要望であれば後ほど差上げますが、その場合はそれを陸上にまわすとか管理部門にまわすとか、いろいろ所内のやりくりがありますので、そういう点において必ずしも造船所が半分になつたから直接工員が半分になるということは言えない、こういうふうに申し上げたのですが、今のようなお話であれば、そういう数字を後ほどお届けいたし去す。
  151. 池田清

    ○池田(清)委員長代理 それでは今度は失業対策の問題をやりましよう。黒澤幸一君
  152. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 最初に、一般的な失業問題につきましてお尋ねしたいと思うのであります。実は、これは労働大臣に対する質問事項も入つておると思いますが、所管局長にお尋ねしたいと思います。  過ぐる第十九国会の本委員会におきまして、私は労働大臣に、政府の昨年末以来の金融引締め、本年度の緊縮予算のために、中小企業に対する非常な圧迫が加わつて、その結果非常な不振に陥り、工場閉鎖あるいは倒産続出する状況になるのではないかということに対する労働大臣の所見をお尋ねしたことがあるのでありますが、そのときに労働大臣は、その見通しにつきまして、楽観もしなければ悲観もしないというような答弁をされたのであります。ところが、最近になりまして労働大臣は、ある出張先におきまして、楽観を許さない、憂慮すべき事態になつて来たということを、失業問題について話されておるのであります。そうしたわれわれの見通しは、今回の本委員会における炭鉱あるいは造船また港湾、そうした方面の本委員会における審議の過程においても、その重大性が現実の問題となつて来ておることを裏書きしておるものだと思うのであります。十九国会におきまして、三月までの失業者等の数については、労働大臣から発表になつたのでありますが、その後四月、五月、六月、現在まで失業者の数はどういうふうな増大の傾向をたどつておるか、また失業対策事業におきまして、各月どれくらいな就労者があるか、また日雇い労務者で求職者がどのくらいあるか、最初にその点をひとつお示し願いたいと思います。
  153. 江下孝

    江下説明員 四月以後の雇用の統計でございますが、お尋ねになりました完全失業者の動向でございます。これは四月に五十一万という数字を示しましたが、五月には五十八万という数年を示し、また増加に向つております。実は六月分につきましては、もうしばらくしますとわかりますが、今日まだわかつておりません。それから日雇い労働者の求職、就職状況でございますが、安定所に登録いたしています者の数は四月三十五万一千、五月三十五万三千、やや上向きの傾向を示しております、昨年の同期は三十三万でございます。これによりまして就労いたしました者の延べ人員でございますが、五月に五百七十五万四千人、このうち失業対策事業に就労いたしました者の数が四百十万四千人で、平均二十一日稼働であります。次に失業保険の動向でございますが、これは前にも申し上げましたように、この一月から相当高い数字を示しております。この一月から三月までの数字は、主として季節労務者の影響であると申し上げたのでありますが、四月、五月もやはり依然として減りませんで、四月には四十四万五千人、五月には四十四万人というように、昨年同期と比べますと、平均十万人の増加ということになつております。従つて、これは中小企業を初めといたしまして、デフレによります離職者の増加が、今日に至つておるというふうに考えております。そこで、前会悲観も楽観もしないと申し上げたのでありますが、最近におきましては、楽観を許さない状態であるというふう申し上げたいと存じます。
  154. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいま局長からも数字の御発表があつたのであります。これは例年ならば、季節労務者関係上、四月、五月は当然大幅に減るべき失業者が、四月は若干減つておりますが、五月になりまして元に返つて来ている。しかもこの傾向は、非常な上昇の一途をたどつて参るのではないかと思うのでありますが、それでは労働者におきまして、今後における失業者についてどういう見通しをお持ちになつておるか。これは数字的にこまかいことはわからないと思うのでありますが、たとえば今年末にはどのくらいな上昇をたどるのか。当然そういうことは予想しておると思うのでありますが、その点をお漏らし願いたいと思います。
  155. 江下孝

    江下説明員 たいへんむずかしい御質問でございますが、私どもといたしましても、失業者の発生、離職者の将来の見通しを、できるだけ早期に確実につかむということは、一番大事な点でございますので、かねてからその点についていろいろ――これは主として産業の動きというような方面からつかむということ以外に方法がないわけでごがまして、単に統計的に、従来こういうふうにカーブが上つたから今後も上るだろうというような予想では、なかなか物足りませんし、私どもといたしましては、ドツジ・ライン実施当時の失業者発生状況の動きのカーブを、一応今参考に見ておるのでございますが、当時とはまた経済情勢、村会情勢が大分異なつてつております。なお、御承知の通り日本の雇用機構は、非常に複雑でございまして、現実に農村の出来高等にも、大分失業者の発生が影響して来るというようなことも関係いたしまするし、そのほか首になりましても、必ずしも失業者として出ないで、家族従事者あるいは自営業者という面で出て参る場合もございますので、実は予想は――もちろん機械的な予想にできますけれども、的確な数字をつかむということは、全般的には非常に困難でございます。ただ最近デフレの影響も非常に受けておりますような特殊な産業等につきましては、ある程度事業官庁と将来の生産の見通しというようなものにおきまして数字が出るわけでございます。そこで将来の問題でございますが、先ほども申し上げましたように、このデフレ政策が今後も進行して行きます限りにおきましては、この失業情勢は、まあ神様ではございませんので、予測はなかなか困難でございますが、私どもとしては、なかなか緩和されない、やはりある程度上昇カーブをたどつて行くのではないかというように考えております。
  156. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 局長も、失業者上昇のカーブをたどつて行くのではないかというようなことを述べられたのでありますが、そうしますと、この昭和二十九年度の予算によつて、はたして失業者の救済あるいは失対事業の円滑なる運営というものができるかどうかということが、われわれ非常に憂慮されるのであります。御承知のように、たとえば昭和二十九年度の失対事業費は百十一億、二十八年度に比較いたしますと十億二千万円ほどの増額になつております。そうして昨年度の前半期の実績に対して五%の給付人員の増加ということになるのでありますが、これによつて一日平均百十六万三千人を予算としておるというふうに見るのでありますが、一方失業保険費の問題におきましても、本年度は九十億五千八百万円、昨年度より若干の増加にしかすぎないのでありまして、一般保険におきまして毎月三十七万四千八百人、日雇い保険におきまして九万四千人、こういうことに予算上なつておるのでございますが、局長はこの予算ではたして失対事業あるいは失業保険が円滑に運営されるかどうかという点について、率直に御答弁願いたいと思います。
  157. 江下孝

    江下説明員 お答えいたします。失業保険の支給でございますが、これは先生も御承知の通り、法律によります義務費でございますから、幾ら出ましても、これは当然払わなければならぬ金でございます。従つて、もしかりに予算が不足するとしましても、当然この金は政府で支出すべきものであると思います。現在のところ、予備費も入れまして、ほとんどとんとんというところでございます。将来これがどうなるかとこういうにつきましては、私どもも心配をいたしております。ただ失業保険につきましては、御承知の通り従来から積み立てております金が、昨年末で二百六十二億ございます。従いまして、これは相当支給がふえましても、この積立金がございますので、支給には絶対に支障はないわけでございます。料率を変更するとかなんとかいう緊急措置は不必要でござまいまして、当然支給ができるわけでございます。  失業対策事業でございますが、これはお話のように実はなかなか苦しい運営でございます。私どもの考えといたしましては、かねがね申し上げておりますように、離職者が安定所に参りまして就職あつせんをいたすわけでございますが、なかなか定職にあつせんができない、こういう場合に、最後の手段といたしまして失業対策事業に就労せしめるという手を使つているわけでございます。そこでその失業対策事業にあつせんいたします前に、できるだけ他の面にあつせんをするということを、強力に今後進めて行く必要があると思つております。具体的に申しますと、まず安定所におきまして一般の民間の求人の開拓を積極的に行うということでございます。これは現在におきましても、もちろん相当活発に行つておるわけでありますけれども、さらにこれを安定所の機能を総動員いたしまして、民間の求人開拓を行うということが一つであります。  いま一つは公共事業でございますが、公共事業は、御承知かと思いますが、緊急失業対策法に基きまして、安定所の紹介する失業者を一定限度まで雇い入れなければならないということになつております。そこで、現在までの実施状況を見ますと、必ずしもこれが十分な成績を上げていないわけであります。私どもといたしましては、やはり公共事業といえども、緊急度の高い失業者を優先的にあつせんすべきではないかというふうに考えておりまして、今後その点について一段と強くやつて行くということを考えておるわけでございます。そういたしまして、できるだけ失業対策事業に落ちて来るのを防ぐというつもりでおりますが、これは御承知の通りの雇用の減少の時代でございますので、そう申し上げても、なかなかそうは行かぬと思います。そこで、どうしても失業対策事業で吸収するところのものはこれは残るわけでございますので、現在の予算をできるだけ効率的に運用いたしましてやつて参りたいと思つております。予算につきましては、現在のところ何とかこの予算でやつて行きたいと思つておりますが、なお将来の問題につきましては、いましばらく私どもも事態を見ました上で適当な措置をとりたいと思つております。
  158. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 一般民間の方面に就労の道を開いて行くということは、もちろんでありますが、現在のように中小企業が非常な不振に陥つている場合に、そうした方面にどれだけ吸収できるか、私たちあまり大きな期待を持つことは非常に危険ではないかと考えておるのであります。それから公共事業の面に失業者を救済するということでありますが、御承知のように、昭和二十九年度の予算を見ますと、公共事業関係予算が昨年度よりは非常に削減されて来ておる。先ごろの政府の実行予算を見ますと、各省関係の公共事業費が九十一億円も減らされている。こういうことからも、予算関係上あまり期待ができないのではないか。なお公共事業に働いておる労働者は、これは潜在失業者といいますか、そういう人たち、またそうした公共事業で働く労働者がおるのでありまして、そういうところ労働者をあまりに強引に就労させて行く、吸収させて行くということになると、一方にまた失業者が出て来るのではないか。そういうことがら考えまして、失業対策事業にでき得る限り吸収する、予算が足りなければ当然追加予算を出して、ほかの労働者に圧迫の加わらないように、そういう方法をとるべきではないかと私は考えるのですが、局長はこの二十九年度の失対事業の予算ではたしてやつて行けるかどうか。われわれから見ますと、どうしても追加予算を計上しなければやつて行けないというふうに考えるのですが、もう一度その点お伺いしたいと思います。
  159. 江下孝

    江下説明員 お話の通り一般の民間産業ないしは公共事業に失業者を吸収すると申しましても、絶対量の増加になるわけではございませんので、その点については、それほど大きな期待はできないわけでございますが、しかし、現在安定所に参ります労働者は、やはり求職者の中でも最も困つておる人たちであると思います。そこで、この限られた国家予算のもとにおきまして、このデフレ経済を実施して行きます場合におきましては、どうしてもやはり緊急度の高い失業者を優先的にあつせんして行くという措置が、まずもつてとられなくてはならないと私は思つております。この効果につきましては、実は内輪のことでございますが、過去におきましては、公共事業におきましても、事業実施官庁、あるいは府県の知事さんなりあるいは市長さんなりというような方々が、比較的失業という問題に関心が少かつたようでございます。それほど雇用問題が深刻でなかつたためでもありましようが、確かにそういう点があつたと思う。そこで今度政府といたしまして、そういう線を上から下まで横の連絡をとりまして強く打出して行くということを考えますと、やはり私は相当の効果は上るのではないかと思つております。なお公共事業以外にも、たとえば電源開発事業というような財政投融資の対象の事業も、全般的にこの失業者吸収の対象といたしまして――もちろん事業効果を非常に阻害するということがあつては困るのでございますが、ある程度事業効果を確保しつつ失業者の吸収をはかつてつて行くということでございます。  なお、お話のように、失業対策事業というものは足りないじやないかということも考えられないではございませんけれども、私どもとしましてはできるだけの手を打つて、なおかつその後の事態に対処してこの失業対策事業の予算問題については考えて行きたいと思つております。
  160. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 失業対策関係の事業につきましては、小笠原大蔵大臣もこれでは足りないというようなことを新聞紙上を通じて言われたことを、私は承知しておるのでありますが、職安局長もその新聞記事をごらんになつておると思うのです。これは七月二十七日の朝日新聞に小笠原大蔵大臣が、二十六日に改進党の三浦政策委員長らと面会したときの談話でありますが、その中にこう大蔵大臣は述べておるように新聞記事はなつているのであります。失業対策費は本年度予算で昨年度より五%増の失業を見込んで計上してある。本年一月一三月の分を今年庭内に支出すれば、少くとも今年末までは切り抜け得ると思う。しかし失業対策費は必ずしも十分と思わないから、今冬の通常国会で必要なる補正予算を出してもよい云んと述べておる。さすがのなかなか出すことの好きではない大蔵大臣、こういうことを述べているのです。ことに労働省におきまして、そういう実情また見通しというものをつけておるのでありまして、大蔵大臣の言をまつまでもなく、これは現在の失業者状況、また続出する失業者の予想せられる今年末筆を考えますならば、現在の予算ではやり得ないというようなことを当然予想されると思うのでありますが、この新聞に述べられておりまする今申し上げました大蔵大臣のお考えに対して、どういうふうに局長はお考えでしようか。
  161. 江下孝

    江下説明員 お話の新聞記事は私も読みましたので、この点については、事務的に事務当局の意見を聞いておりますが、いまだ大臣の話をされました確定の内容が聞かれないでおります。私も先ほど申し上げましたように、一応われわれとして現在の予算わく内でできるだけの手を打つて行くという措置をしたい。なおその後の情勢いかんによつて、この問題については措置をいたしたいというふうに考えております。今ただちに補正予算をするとかしないとか申し上げるのは、まだ時期が早いと思つております。
  162. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間もおそくなりましたので二、三点だけ局長にお尋ねいたします。  まず先ほどからも質問がありましたが、私たちは昨日の経済審議庁長官の官邸でやりました労働対策連絡協議会に非常な期待をしておりました。ところが、この新聞に発表されておりますものを見ますと、これは単に作文にすぎないような感を抱くのであります。と申しますのは、何ら新しいものが一つも出ていない。従来でも、緊急対策事業法には、ちやんと吸収率というものがあつて、その吸収率に沿うように吸収をしなければいかぬということが書いてある。しかも公共事業はもうすでに実施されまして、今からこの吸収率を言いましても、新規に興す事業は別問題ですけれども、あるいは請負に出ておるかどうかしりませんが、その労務者解雇しなければ吸収できない、こういうことになつておる。結局予算わくを広げないのですから――なるほどこのことを実施していない県等につきましては、若干あるいは失業者を救済する面があるかもしれませんが、福岡県のごときは、ほとんどこういうものを実施して、なお足らないという状態にございます。でありますから、吸収率はあまりやかましく言えば、その吸収率のために今度は今まで仕事をしておつた人が失業戦線に出される、こういうことになるわけでありまして、これは何ら効果がない。苦心をされた点はわかりますけれども、今までより一歩も出てないということを、非常に残念に思うわけであります。局長は補正予算の件については何とも言明できないということですが、実際問題としてこの年間の予算を月えに割つて、しかもその月々に割りました分を繰上げて行かなければ、今の各県あるいは各市町村から申し込んでおります失対事業のわくを広げてくれという、こういう事情には応ぜられないと思うのです。現在でもすでに繰越しておると思うのですが、このままで一体十分見通しがありますか、それをお尋ねいたしたいのです。
  163. 江下孝

    江下説明員 先ほど申し上げた点を繰返すことになるわけでございますが、私どもとしましては、失業対策事業に求職者を振り向けますのは、最後の手段でございます。できるだけ失業対策事業に振り向けないで、他の定職にあつせんするということに主眼を置いて今まで参つておるのでございます。ところで公共事業でございますが、今度の審議庁で相談しておる案はなまぬるいというお話でございますが、実はこの案につきましては、御承知の通りの緊急失業対策法の中にございます失業者の吸収率をいかに確保して行くかという問題でございます。私どもの過去におきます努力の足りなかつたせいもございますけれども、従来政府全体としての考え方が、やはり公共事業をいかに運営するかという点におきまして、事業効果という点をもつぱら主眼に置きまして、失業者の吸収ということは二の次になつてつたのでございます。そこでどういう現象になつたかと申しますと、失業者吸収率に書いてあります吸収率は、現実には絵に書いたもちでありまして、なかなか失業者が思うように吸収できない。そこで今度私どもの方で考えておりますのは、今後公共事業の実施をいたします場合には、できる存失業者救済にある程度寄与するような地域にやつてもらうように、各省でも可能な限度で考えるということでございます。そこで、これは本年度におきましては、すでに事業計画等もきまつておるので、あまり効果がないではないかと言われますと、これもごもつともの点がございますが、しかし私はやはりこれはやつた方が相当なプラスになると思うのでございます。少くともこういう政府全体の決定をいたしまして、地方に通達いたしまして、知事を初め現地の事業実施機関の頭を全部切りかえて行くというだけでも、どれだけ失業者救済に役に立つか、この点私は相当つているのでございます。そのほかの点につきましても、たとえば輸送の問題、賃金の払いの問題、これは従来から私どもも各省とも話し合つて来た問題でございますが、現実になかなか協力を得られなかつた問題でございますが、今回は各省ともこの点について相当協力的な態度をとつて来られて来ているわけでございます。これにつきましては来週早々正式な決定をいたしまして地方に通達するということになると思うのでございますが、なおこういう措置をとりました上で失対事業の運営という問題ともあわせて考えて行きたいと思います。
  164. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もう少し具体的に問題をお聞きいたしたいと思いますが、地方でいろいろ聞きますと、現在の資材費の金額では、道路の鋪装も十分できないというのですから、どうもこれ以下の仕事と申しますと、草むしりとか、公園の掃除とか、あるいはただ道路をくわや、シヤベルで直す程度しか、できないと思うのです。四十五円の頭打ちの資材費でどの程度できるのか。それとも四十五円の三分の一を補助金として交付しておりますが、ほとんどの県に四十五円のベースでやられておるのか、あるいは実際は三十円の三分の一の十円程度でやられているのか、そういう点についてお聞かせ願いたいと思います。
  165. 江下孝

    江下説明員 お話の通り四十五円の補助率ではそう高度な道路事業等は実施できないわけでございます。そこでそういう場合には地元で特別に負担をいたしまして――超過負担でございますが、これを負担して実施をしているのでございます。しかし緊急失業対策法の中に、お読みになるとわかりますが、この失業対策事業については、労力費の割合が全体のうち何パーセント以上でなければならぬという規定がございます、この規定はどうしても守つて行かなければならぬのでありまして、これは会計検査院等からも、今まで過去におきまして、その規定を守らないということでおしかり等もありました。そういう規定もございますので、一応各自治体の方におきましては、建前としてはあのわく内で収めているわけでございます。しかし、なお実際には、相当いろいろな形で超過負担をしているという県もあるのではないかと見ております。数字でございますが、これは後ほど申し上げます。
  166. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もちろん道路の高度の鋪装ということを言つておるのでなくて、砂利程度でも、できるところもありできないところもある、こういう話で、どうも砂利程度が資材費で買えないということになりますと。非常に困難を来すと思うのです。今法律の問題も出ましたが、法律が悪ければ法律の改正をしなければならぬ、こういう問題にもなるかと思うのですが、行政措置でできなければ法律改正もやむを得ないと思うわけです。そこで法律改正に関連をして質問いたしたいと思います。先ほども自治庁の財政部長にお尋ねしたわけですが、少くともこの前の災害における特別立法のように五分の四の率にしてもらわなければ、とうてい引受けられない。もつとも現在の日雇い労務者の実態からして、感情的になかなか引受けが困難ということも聞きました。しかしそれは感情的な問題であり、人と人との問題であるから、私は十分納得していただけるものだと思うのですが、そういうことでなくて、財政事情だけの問題からどうしても困難である、こういうことを各地域で言われたわけであります。福岡県におきましても、佐賀県におきましても、そういう話を聞きました。そこで私は、炭鉱あるいは造船の問題も出ておりますが、なるほど全国的にデフレではございますけれども、こういつた町村というのは、全国の町村に比べてそう多くはないと思う。あるいはまた安定所別にいたしましても、そう多くはないと思うので、――災害の場合と違つて地域指定を割合明確にできるのではなかろうか、こういう気持もするわけであります。そこで政府としてはそういつた立法措置を講ぜられる意図がないのかどうか、事務当局としてはどのようにお考えであるか、お尋ねいたしたいと思います。
  167. 江下孝

    江下説明員 今回のデフレ政策によりまして、特に自治団体等におきまして産業が急激に不振となりまして、その自治団体の財政が非常に貧弱になつて、あらゆる事業が実施不可能であるという事態も今後起つて参ると予想されます。そこで失業対策事業の運営から申しますと、一応のりくつといたしましては、それは自治団体の財政の問題である、私どもの方で出します補助の率を、そうそう特別に困つおるということで差をつけることはおかしいではないか。なるほど、昨年水害の特別立法はいたしましたけれども、これは未曽有の危局における非常立法でございまして、現在のようなデフレ政策による場合にこういう立法をすることが、はたして適当であるかどうか、あるいは労働省の方でそれによつて補助率に差をつけることが適当であるかどうかということは、これはなかなか一概に言えない問題であると思います。これは地方財政の方で適宜調整をお願いしたいということで、従来も何回も持ち出しておりますが、地方財政の方も大蔵省の方の問題であるということで、なかなか取合つてくれないというのが実情でございます。しかし、そういたしておりますれば、結局失業者生活の安定という面に大きな欠陥が出て来るおそれがございますので、私どもとしても、この問題につきましては至急自治庁、大蔵省と協議いたしまして、これに対する何らかの打開策をひとつ研究してみたいというふうに考えます。
  168. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この問題は財政の問題にも影響がありますし、ことに予算関係がありますので、なかなか困難な点もあるかと思うのですが、ぜひひとつ努力を願いたいと思います。員としても、これは考慮しなければならない問題ではないかと思うのです。政府としてはむずかしいが、議員としておやりくだされば実施しますというのも間々あるのですから、こういう点も考慮をいたしたいと思いますが、政府においても考えていただきたい、かように思います。  それから失業保険の支給の問題ですが、失業保険の支給について、実は解雇せられて失業保険をもらう予定であつたところが、もらえない。すなわち従業員は毎月の賃金から引かれておるけれども、業者がそれをとつて、安定所の失業保険課に納めていない、こういう事情から失業保険の掛金がかけてない、業者がねこばばというか、そういうことをした理由によつて失業保険料を納めておる労働者失業保険金が渡らない、こういうことがあるわけであります。しかし、私はこの問題は、労災の問題も私はいろいろ意見がございますか、労災保険は一応全部業者からのみとつて政府は一銭も負担していない。こういう保険機構の中では失業保険と同じようには言い得ないかもしれませんけれども、しかしながら失業保険については政府は三分の一補助しておる。三分の一の率を負担しておるということは、これはやはり損失補償ということも、あるいは立法当時には考えていなかつたかもしれませんが、私は理論としては考える余地があると思うのです。ですから、もしも労働者のみが納めて、使用者が納めてない、こういう事情においては、あるいには最終的には、あとから強制執行なりその他をされてもけつこうでありますから、ひとつ失業保険だけはぜひ支給していただきたい、かように思うわけです。私佐賀県に行きましたときに、現実の問題としては起らなかつたけれども、そういう制限についての実は本省から通達が来ておるので、非常に出先の官庁としては困つておる、そのことをひとつ本省で折衝してもらいたい、こういうことでありました。そこでお尋ねするわけですが、そういつた通牒をいつごろどういう文句で出され、またその趣旨はどういうものであるか、さらに現実の取扱いとしてはどういうお考えであるか、お尋ねいたしたいと思います。
  169. 江下孝

    江下説明員 失業保険料の滞納のございます事業所の離職者に対しましては、失業保険金の支給は原則としていたさないという建前になつておりますが、このことは、申し上げるまでもなく、失業保険経済は、当然保険料あつてこそ成り立つものでございますので、滞納があつても保険金を出してもよいということには参らぬと思います。もちろん国が三分の一は持つのでございますが、国の三分の一も入れて保険経済が成り立つておるのでありますので、国の分で民間の保険料のあれを肩がわりするということは、これは理念としてはとり得ないことであると考えております。しかし現実措置といたしましては、事業主があるいはいろいろの事情によりまして滞納した、それにより観して労働者が保険金をもらえないということは、非常に生活問題にも関係いたしまして困るのでありますので、私どもの方といたしましては――失業保険料を滞納しておるというようなところは、大体所得税もほかの公租公課も滞納しておるところでございます。かりに失業保険料だけを滞納して、他の税金を払つておるという場合には、やはり失業保険料を取立てさせていただきたいと思いますが、そうでなく全部滞納しておるというような事業所は、どつちにいたしましても他の公租公課の面で強制執行を受けるわけでございますので、失業保険もその面から加入させていただいて強制執行をやる。あとでどうしても保険料が出ないという場合には、その離職者に対して失業保険金を支払うということでございます。その趣旨のごとを前回に通牒いたしたわけであります。
  170. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は現在これだけの失業者が出ておるにもかかわらず、社会不安というのが、全国的にそれほど目立つていない。部分的にはかなり目立つておるが、目だつていないというのは、私はこれは失業保険制度のおかげであろうと思うのです。ところが、今のようなお話ですと、その期間の問題はあとから聞きますが、それが強制執行をして、その後にきめるというような話でありますと、これはかなり時間がたつものであると思うのですが、一体事実問題としてはどのくらいお考えになつているか、お尋ねいたしたいと思います。
  171. 江下孝

    江下説明員 それはもちろん強制執行いたしますということが決定いたしますれば、その上ですべてのことはわかるわけでございます。しかし強制執行を現実に実施しなくても、しても、どの程度しかとれないということは、会社の経理状況からわかるわけでございますから、その点については、ただちに保険金を支給していい場合が相当あると思います。
  172. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実際問題としん、失業をして失業保険金がもらえなかつた、こういう例がありますか。それも現実として、どれくらい期間がいるのですか。
  173. 江下孝

    江下説明員 別に期間というものは何らきまつたものはないわけであります。私どもの方といたしましては、事業主の方が故意に滞納をしておるというような事態におきましては、やはり事業主の納入を督促するわけでございます。あくまでも納めさせるという立場をとつております。その際当然離職される人があるとすれば、その会社内部の問題として会社に保険料をできるだけ早く納めてもらうということで援助をしていただいて、その結果それをできるだけ早く実施いたしまして保険金を出す、こういうことに現実の取扱いとしてはなると思うのであります。
  174. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、結局会社がつぶれたというような場合には、現実の問題として起らないもけですね。会社が継続して個たに離職して行く。その間まだ会社は継続しておる。しかし賃金未払い等が続いておつて、それに耐え得ずして労働者の方が離職する。こういう場合にのみ問題は起るわけですか。
  175. 江下孝

    江下説明員 会社がつぶれてし表う場合は、これはお話の通り問題ないと思います。それから会社が存続しておるという場合に、やはり会社が納められる能力があるかどうかという点を判定し、見きわめた上で保険金を支払つてもらう、こうなのです。
  176. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この分については、失業保険ですから、結局離職した場合にはすぐに支払つてやる、任意退職の場合は、すぐといいましてもかなり期間があるわけですから、その間十分手続がとれると思う。さらに私は、将来ずつと見通して行つて、故意に納めなくて会社が継続しておれば、将来強制執行してとれるのだし、それから見通しがなくてつぶれれば、もういたし方なくて払うのですから、どつちみち失業保険に通牒出されても意味がないと思う。ただそれを督促するだけの意味しかなくて、あと政府の方で債権債務をはつきり握つて強制執行の手続さえとられればいいのであつて、それは政府あとからやられてもいいことだと思うのです。だから私はこの失業保険の問題は、労働者の不満をかつて、それを利用して督促をする、こういうようなことにしかならない。しかし労災と違いまして、これは離職した人間である、労災の方はまだ障害あるいは療養期間中の人間でありますから、経上者に対する考え方もかなり違うわけです。失業保険の方で離職した者が云々言つて来たつて、そういう故意にやるような会社は、なかなかそれだけでは納めないと思うのです。労災の方とはかなり違う性格を持つておると思いますが、その点はいかがでしよう。
  177. 江下孝

    江下説明員 故意に納めないということがはつきりいたしております場合には、ただちに強制執行を実施するということで、その間失業保険の受給者が長く困るということのないように措置ができると思うのであります。
  178. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはきわめて大きな社会問題にも関連いたしますので、今後こういう事案がありましたら、ひとつ本省の方でもすみやかに処置していただきたい、かようにお願いする次第でございます。あと政務次官が見えましてからあわせて質問いたします。     〔池田(清)委員長代理退席、多賀   谷委員長代理着席〕
  179. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私先ほどお聞きしようと思つて一、二点忘れましたので、職安局長にお尋ねしたいと思うのでありますが、失対事業の就労者の四月、五月六月の一日平均の数はどのくらいになつておりますか、おわかりになりましようか。
  180. 江下孝

    江下説明員 予算上は十五万八千三百八十五人、これとそう大きな開きはないと思います。
  181. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいま十五万八千三百八十五名ということをおつしやつたのですが、私の記憶では、予算上は十六万三千と記憶しておりますが……。
  182. 江下孝

    江下説明員 これはお話のように、年間平均いたしますと十六万三千になるわけでございます。第二・四半期は今のところこの数字であります。
  183. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 前国会の本委員会で小坂労働大臣は、予算上は一日平均十六万三千になつておるけれども、現在一日の就労人員は十五万七千というようにおつしやつたのですが、予算上十六万三千になつておりながら、実施にあたつてはその予算上の人員になつていない。私はこの点どうも了解ができないのです。失対事業の就労希望者はたくさんありまして、あぶれておる人も各職安に非常にあると思う。ところがそれが予算上の人員より圧縮されておる、その事情はどういうわけでしようか。
  184. 江下孝

    江下説明員 安定所に登録いたしております日雇い労働者が毎日安定所に出頭いたすわけでございます。この出頭いたします日雇い労働者は、登録者が全数出て来るわけではございませんで、毎日若干動きがございます。平均二十五、六万は出ると思うのでありますが、これらの人たちが平均して月二十一日の就労を確保する、このために公共事業にどのくらい吸収させるか、失業対策事業にどのくらい、一般の民間にどのくらい吸収させるかという計画をつくつてやるわけでございます。そこでこの第二・四半期といたしましては、二十一日就労を確保するためには、失業対策事業の吸収人員は十五万八千三百八十五人という予算上のこの数で一応行けるということで、この予算措置になつておるわけであります。
  185. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 どうも私は、労働省が予算を節約するために、意識的になるだけ少くするようなお考えがあるんじやたいかということが想像されるのですが、そういうことはあつてはならないと思うのです、その点どうでしよう。
  186. 江下孝

    江下説明員 もちろん失業情勢のいかんによつて予算を運営するわけでございますので、全体の予算を平等に毎月月割りにして使うという必要もないわけでございまして、失業情勢の発生に応じて適宜四半期ごとの計画を立てて実施するわけでございます。そこで第二・四半期も、一応はこの数字にいたしておりますけれども、今後の失業情勢いかんによりましては、またこの数字を変更することも可能でございますが、当初においてはこの計画で実施するということでございます。
  187. 池田清

    ○池田(清)委員 労働省の問題は、ストライキというものが従来大きな問題であつたのでありますが、いよいよデフレの政策が出るに及んで、職安局長の失業対策が非常に重要な問題になつて来た。今デフレについてすぐ頭に浮ぶのは、失業問題は一体どうするんだ、こういうことであります。労働省の今後の問題はこれに集中して来るんじやないかと思います。濱口内閣のときは大体二年半から三年かかりまして、その時分にもうこの問題が大きく取上げられて難儀したのでありますが、今回も、政府においては大体二年ぐらい、しかし世間ではあるいは四、五年このデフレの政策は続かなければ解決がつかぬ、こう言うておる。そうすると、今後相当長い間、局長が中心になつてこの問題に取組んでもらわなければならぬ、かような重大問題と考えます。そこで昨日はこれに関する連絡協議会があつたようでありますが、相当重要な会議で、各方面にわたつて論議されたことと思います。記事を十分に読まなかつたのですが、私が気にかかる問題、先ほどだんだんの話がありましたが、これは普通の予算上の話であつて、当然にやらなくてはならない問題であります。昨年よりは若干失業対策費も増してある、これによつて今年はまあやつてみる、こういうわけですけれども、私の考えではとうていかような予算では解決はつかぬと思う。やはり補正予算ということになるし、来年慶の予算には相当な額を上げなければいかぬ。そうすると、一体仕事は何になるかという問題、これはいつでも世界各国の歴史の上に現われておるのでありますが、土木事業をやるということが普通です。ドイツがさきに負けた時分には、例のヒトラー道路というのが大きな道路で。あれで非常な失業救済ができた。今度弾丸道路というのが問題になつております。これは実現するでしよう。それからただいまアメリカから調査団が来ておりまして、あちこち調査いたしておりますが、例の愛知用水であるとか、あるいは長崎の干拓あるいは八郎潟の干拓等、何千億という大きな事業が取上げられております。私は、今回のこのデフレは、やはりこういう大きな土木事業と取組まなければ、失業者の救済は十分に行かぬのじやないかと思う。これは簡単に言うならば一挙両得の話でありまして、金もかかるがまた仕事も残るというわけでありますから、労働省といたしましては、どうせあなたの方が中心になるわけであるから、こういうような大きな問題とも将来取組む、かような意気込みでやつてもらいたいのでありますが、昨日の会議におけるこれらの問題に関する模様、並びに将来これらの問題に関する労働省の心構えと申しますか計画、そういう点をお伺いいたしたい。
  188. 江下孝

    江下説明員 経済審議庁に、労働省が主唱いたしまして、関係各省からなる労務対策連絡協議会を設けたわけであります。こういうデフレ形態になると、どうしてもいろいろな施策のしわ寄せが労働面、特に雇用面にされて、それがだんだん積りまして社桑安を起すおそれがある。そこで私どもといたしましては、ただ失業者をどんどん出して行くということ、これに対してどういう対策を考えるかということも大事でございますが、ある程度失業者を限られた予算の範囲内で救済しつつ、なおかつ今の経済政策自体の面においても、ある程度失業問題について援助できるような問題がないかどうかという点を考えました結果、この協議会をつくつてもらつたのでございます。そこで昨日審議いたしました問題は、最初からあまり大きい問題に取組むというよりは、まず一応当面の問題を解決したらどうだろうかという意見が強くございまして、私の方では最初にとりあえず先ほど申し上げました既存の公共事業でどうしたら失業者をよけい吸収できるかという問題を審議してもらうということにいたしまして、両三回審議をいたしたわけであります。新聞紙上等にも一部載つておりますが、先ほども申し上げましたように、公共事業に失業者を吸収するということは、雇用量の絶対量のプラスにはなりませんけれども、やはり失業者を他のものに優先して公共事業に吸収させるということは、今の事態に対処してまずまつ先にとらるべき措置であるというふうに各省の意見が一致して、一応の案をつくつたわけでございますから、来週早々決定をいたしたいと思つております。  なおこの問題が済みまして、今後お話のようなもつと根本的な問題をこの協議会で取組むという問題がございますが、当然そういうことになると思いますし、私どもとしましてもそういう問題をぜひこういう協議会で取上げて決定して行つてもらいたいという強い希望も持つておりますが、何しろ御承知の通りの一兆円均衡予算のもとでございますので、この制約下におきましてこの話を進めて行きます上においては、正直に申しまして、事務的だけではなかなかむずかしい面もおるのでございますが、しかし一応そういう意見を交換しておりますうちに、具体案ができますれば、これは各方面にお願いして実施していただくということに相なるかと思います。やや立遅れておりますけれども、これからうんと馬力をかけて、そういうことに取組んで行きたいと思つております。
  189. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長代理 本日御出席の参考人中、古賀茂君、秋好トムノ君、今村国年君及び石田嶺江君の諸君におかれましては、明三十一日も午前十時より御出席願いたいと存じますから、御了承ください。  次会は明三十一日午前十時より開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時十二分散会