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1954-07-29 第19回国会 衆議院 労働委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年七月二十九日(木曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 鈴木 正文君    理事 持永 義夫君 理事 稻葉  修君    理事 多賀谷真稔君 理事 井堀 繁雄君       大橋 武夫君    倉石 忠雄君       並木 芳雄君    黒澤 幸一君       島上善五郎君    大西 正道君       日野 吉夫君    矢尾喜三郎君       中原 健次君  委員外出席者         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         法務事務官         (人権擁護局第         一課長)    高橋 忠雄君         文部事務官         (初等中等教育         局中等教育課         長)      杉江  清君         文部事務官         (管理局学校給         食課長)    岩倉 武嗣君         通商産業事務官         (石炭局長)  斎藤 正年君         通商産業事務官         (石炭局炭政課         長)      及川 逸平君         中小企業庁長官 記内 角一君         労働事務官         (大臣官房総務         課長)     堀  秀夫君         労働事務官         (労政局長)  中西  実君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      亀井  光君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君         参  考  人         (帝国酸素労働         組合連合中央         執行委員長)  尾崎  治君         参  考  人         (帝国酸素株式         会社総務支配席         付)      西村 芳雄君         参  考  人         (帝国酸素株式         会社人事部長) 大木 六雄君         参  考  人         (高倉鉱業岩屋         鉱業所労働組合         書記長)    古賀  茂君         参  考  人         (高倉鉱業岩屋         鉱業所組合員) 秋好トムノ君         参  考  人         (同)     今村 国年君         参  考  人         (全繊同盟本部         組織部長)   山口 正義君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合大垣渋副支         部長)     内田 秀雄君         参  考  人         (同執行委員) 菅家 泰子君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合津支部副支         部長)     池本正三郎君         参  考  人         (同執行委員) 北山香保里君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合中津川支部         委員)     早川 ヒサ君         参  考  人         (同副支部長) 鈴木 六郎君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合岸和田支部         婦人部長)   鷲沢 愛子君         参  考  人         (同副支部長) 中前 研二君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合彦根支部書         記長)     下村 宏二君         参  考  人         (同副支部長) 吉田美代子君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合長浜支部執         行委員)    木下 準仁君         参  考  人         (同執行委員) 宮元 節子君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合大阪本部財         政部長)    西島 恒雄君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合本部婦人         部長)     三輪美智子君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合東京支部副         支部長)    川又 キミ君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合富士宮支部         調査部長)  岩原 利子君         参  考  人         (近江絹糸労働         組合大阪本部組         織部長)    高村  茂君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人招致の件  失業対策労使関係及び労働基準に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  失業対策労使関係及び労働基準に関する件について調査を進めます。  まず帝国酸素関係に移りたいと思います。この際帝国酸素株式会社総務支配席付西村芳雄君より従来の労使関係紛争の経過につきまして御説明を願いたいと思います。西村参考人
  3. 西村芳雄

    西村参考人 私は直接今やつておりませんことでございますから、大体の概要だけを一言申し上げます。
  4. 赤松勇

    赤松委員長 なお補足を必要とするならば、大木参考人からでもあとで……。
  5. 西村芳雄

    西村参考人 大木参考人からでも、あとでお願いしたいと思いますが、私は概略だけを申し上げます。  私どもの方で、ちようど二年前、昭和二十七年十一月ごろに、当時組合書記長をしておりました江原庄平という方がありました。それを機器製作所という工場から、同じ神戸市内にございます本山という工場に転任してもらうことになりました。これは当人に予告いたしませんでやりました。それにつきまして組合の方から、予告なしにやつたということで不当労働行為申請がございまして、これが地労委中労委と行きまして現在東京地方裁判所に問題が行つておりますが、ただいま審理中で、まだ判決が出ていないような状態であります。  それから引続きまして昨年の七月——現在もそうでございますけれども七月一日に定期昇給というのがございます。これは組合との約束で、毎年七月一日にやることになつておるのでございますが、そのとき」に副委員長でありました立川氏、この人の昇給が非常に少かつた。これはいろいろ書が、ございまして、会社といたしましては、組合と約束しておりまする最高最低範囲内できめたのでございますから、別にさしつかえないと思つてつたのでございますけれども、その点が不当に低かつたということで、これがまた問題になりまして、今地方労働委員会から中労委の方にまわつておる事件がございます。  それからその次に、問題は昨年の十一月ごろでございます。ちようど当時ストがございまして、そのときに会社人間名古屋の方に行きまして第二組合をつくるように慫慂をしたとかいうようなお話で、これもまた不当労働行為だというようなことで、これが今出ております。この点は名古屋地労委で御審理になりました結果、これは棄却するという御決定が最近になつて出たようなわけでございます。  それともう一つ、これも昨年のスト中に起つた問題でございますが、スト中に出て来た人間は休日の扱いとしてよけいなものを払おうというようなことを一般に知らせましたのですが、これはもうただ簡単に考えて、休日でございましてもいろいろ顧客の都合で、その人にぜひやつていただかなければ困るというようなこともございますので特別に出ていただいたり——もちろんこれは当人が承知された上で出ていただくのでございますけれども、そういうような出ていただいた方に対しましては休日の扱いとして——普通の一般人間は休んでおるのでございますから、休日の出勤の扱いをしようということを申しましたのですが、その点についてもこれはいかぬというので、不当労働行為というようなことが出て、地労委を通りましてこれも中労委に出てそのままになつておる問題がございます。  それからもう一つは、同じく名古屋で起きた問題でございますけれども争議中並びに争議名古屋支社長——ども支社長と申しておるのでございますけれども、これは営業の方を担当しておる支社の長でございます。支社長工場長排斥の問題が起きまして、いろいろな手段を講じまして、なかなかひどいことをやつたのでございます。会社としては、それは争議行為を逸脱しておるのではないかと思われるようなことをやつたことがございます。それからその当時、数箇月前にすでに決定したことでございますが、支社を市の中心地に移転しようという問題がありました。その当時は、工場支社と同じところで営業しておりましたけれども、どうも不便でございますので、中心地に持つて行くということがきまつてつたのでございます。それを移転を実行する際に妨害をしたというような理由で、その当時名古屋の首謀を懲戒、解雇したことかございます。この点についても、これは不当労働行為ではないと思いますが、救済か何かの問題で、地方裁判所と愛知県の地労委とに提訴されておるようでございまして、これも係争中でございます。  大体今問題になつておりますのはそんなものではないかと思います。
  6. 赤松勇

    赤松委員長 大木参考人、何か発言がございますか。
  7. 大木六雄

    大木参考人 別にございません。今の点で大体尽きておると思いますから、御質問があれば御質問に対してお答え申し上げたいと思います。
  8. 赤松勇

    赤松委員長 それでは尾崎参考人
  9. 尾崎治

    尾崎参考人 私帝国酸素組合長をしております尾崎でございます。  私どもが願つておりますことは、ただいま会社側参考人から述べられましたような個々ケースについて、こういうケースがあるからどうということを、この委員会に訴えようと考えておるのではございません。私どもが申したいと思いますのは、前回に立川君という副委員長がこの席で種々申し上げたはずでございますが、私どもは非常に特殊なケース企業の中におる労働者でございます。すなわち外国人資本帝国酸素の場合には九五%も入つておる。そのように外人経営者であるがためにいろいろな問題が起つている。こういうことにつきまして、外人支配下日本人労働者が、日本労働法規によつて守られていないのじやないかという点について訴えたいというのが趣旨でございます。  なお誤解をされると困りますので、私どもの考え方についてだけ一言申し上げておきたいのでございますが、私ども外国資本をボイコットしようと考えたり、あるいは外人経営者追放運動を起すというようなことは毛頭考えておりません。外国資本のもとにおいて、あるいは外人経営者のもとにおいて、どのような日本人らしい労働者の生活ができるかということを願つているだけでございます。この問題は一帝国酸素だけの問題ではございません。実は去る七月一日に、総評の方が御主催いただきまして、外資会社労働組合懇談会を開催いたしました。これは引続きまして八月二日にもやる予定になつておりますし、今後継続的にこの懇談会は開催する予定でございます。お集まり願いましたのは、五〇%以上外国資本の入つている労働組合中心にお集まりになつたのでありますが、帝国酸素、これはフランス資本であります。それから東洋オーチス・エレベーターアメリカ資本であります。ダンロップ・ゴムこれはイギリス資本であります。そのほか石油関係等等がたくさんお集まりになりました。いろいろと懇談をしたのでありますが、程度の差こそあれ、みな一様に私どもと同じような悩みを持つております。私ども外人支配であるからどうこうということを強く主張いたしまして、企業の中に民族的な対立感情を持ち込もうとは決して考えておりません。ただこういう外人支配であるがゆえに、こういう不当労働行為がたくさん起る。あるいは円満な労使関係が樹立せられないということになりますと、これは勢い私どもがいかに押えようといたしましても、労働者の中には外資を排除しようとする空気がどうしても出て参ります。そのことが、日本産業を復興して行くために、経済を復興するために、決してためにならないということを考えますし、それがまた同時に将来の国際関係にも悪影響を及ぼすのじやないか、こういうことを最もおそれるものでございます。そういつた意味で、帝国酸素においてどうこうという個々ケースにつきましては、それぞれ労働委員会あるいはその他の方法によつて解決をして行く所存でございますし、現にやつております。  ただこの際私どもとして特に強く主張いたしたいと存じますのは、昨日も大江絹糸の皆さんからいろいろ真剣な御発言がございましたのを拝聴いたしておつたのでございますが、非常によく似ている点があるということでございます。それは昨日も近江絹糸の同志の諸君が強く訴えておられたところでございますが、近江絹糸にああいう問題が起つて来たのについては、過度の中央集権制度による経営というものがあるということを言われておりました。これが帝国酸素の場合においてもまつたく同様でございます。あるいは法律を無視もしくは軽視する風潮があるということ、あるいは話合いによつて労使関係を円満に妥結して行こうという気持がまつたくないということ、こういつたような点は非常によく似ているところでございます。そういつたことによつてつて来る問題が、先ほども申し上げましたように、組合員の中にフランス人を敵視するようなことを起しては相ならぬと思います。また外国資本を否定するような空気を起すようなことは、決して好ましいことではありません。そういつた意味で私どもが訴えてしるということだけを、この際あらためて主張いたしたいと存じます。
  10. 赤松勇

    赤松委員長 御質疑ありますか。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 参考人の方に二、三お尋ねいたしたいと思うわけでありますが、私たちいろいろ判例を見ましたり、また労働委員会不当労働行為事件についていろいろ調査を進めておりましたところ、帝国酸素という会社が、あるいは申請人となり、あるいは被申請人なつた場合が非常に多い。私どもは、帝国酸素というのは、実は研究が不十分でございまして、相当大きな従業員を持たれていると、かように思いましたところが、あにはからんや、千名内外である。しかもこれほど多くの紛争が起きておつて、ほとんど解決されていない。先ほども申されましたが、すでに地労委あるいは中労委、あるいは裁判所に提訴あるいは係争中のものが五件もある、こういうことでございます。そこで私たちはぜひこの問題を取上げてみたいと考えたわけですが、普通の場合、団体交渉をされるような場合に、フランス人幹部の方は出られるわけでしようか、それとも日本人の方が出られて交渉されるのでしようか。またその日本人幹部の方は、どの程度権限を持つておやりになつているのでしようか、そういう点から聞いてみたいと思います。
  12. 大木六雄

    大木参考人 ただいま御質問のありました団体交渉方法についてお答え申し上げます。団体交渉について、私の帝国酸素方針といたしまして、外人は出席しておりません。出席いたします者は人事部長人事課長以下数人、大体五名以内で出席しております。組合の方も従来の申合せでやにし五名以内出席しております。  それでその場合に、しからば会社側はどういう権限を持つているかという問題になりますが、その場合に、会社提案である場合もあり、組合提案である場合もございますけれども、いわゆる社長室というものがございまして、そこからあらかじめそこに出席する会社側の代表に対しまして、ある一定方針を授けられて参ります。その方針範囲内で私たち組合と交渉しているのでありまして、あるいは組合の方で、単なる伝達機関にすぎないというようなことを前の参考人立川君からも発言があつたかもわかりませんけれども、そういう簡略なものではなく、相当な発言をいたしております。それについては、両方で交換しております団体交渉議事録がございますから、組合なり会社に御要求になれば御提出して御参考に供してもよいと思つております。もちろん与えられた権限を越えた場合には、その回答は留保いたすことは、大公使の場合に本国に訓令を仰いで、しかる後に回答をするのと同様のことでございまして、これはやむを得ないことであると思います。大体右のような次第であります。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 幹部が、ことに最高幹部外人の場合には、中間に立てる方の御苦労はわかるのでございますが、しかしながら、これほど多くの不当労働行為が頻発して連続的に行われておる、こういうようにわれわれは判断するわけであります。大きな会社でありまして従業員を何万とかかえて各地に営業所を持つておるところなら別ですけれども従業員はわずかに千名程度である。しかも紛争は絶えない。しかもほとんど法廷問題になつておる。こういう事情に関しては、私はあなた方があまり権限がないのじやなかろうかという危惧さえあるわけであります。それは日本人幹部としては、外国人ももちろん日本において経営するにおいては、日本法規を遵奉しなければならないのは当然です。あるいは事情に暗い面があるかもしれませんが、しかしながら日本人幹部が、しかも人事部長のいすにすわつておられて、どうしてそういう事案を未然に防ぎ得なかつたかと私は思うのであります。あなた方は、いや、これはまだ係争中で最終決定ではございませんと言われるかもしれませんが、とにかく初審でも、一部を除きましてはほとんど命令が出ておる。しかも割合に急速に命令が出ておる。こういう点を考えますと、当然人事関係を担当されておる幹部としては、ことに日本人幹部は、その間どうして未然に防止できなかつたか、そういうことをされてなかつたかどうか。この点について一体会社労務管理ということに対してどういうようにお考えであるか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  14. 大木六雄

    大木参考人 ただいま何ゆえに不当労働行為的な行為が多いかという御質問でございましたけれども先ほど申し上げましたように、私の会社はやはり外人会社関係上、団体交渉その他におきましても、日本会社におけるような簡略な方法がとれない状況でございます。いわゆる日本人外人の間の意思疏通及びその間における不完全な通訳、そういうもの等に災いされまして、労使間の意思疏通を欠いておることは認めざるを得ないと思います。  それからもう一つ外人は非常に法律を軽視しているというような印象を持つておいでのように伺いましたけれどもフランス人は決して法律を軽視しているようなことはございません、法律は非常に遵奉しております。それなら、なぜ法律を遵奉しておるのに、ああいう問題が起るかという疑問をお持ちになるかと思いますけれども、いわゆる不当労働行為といわれておりますその内容について御検討願いたいと思うのでございます。たとえば立川君の昇給問題なども不当労働行為として提訴する前に、もう少し労使間において話し合えば、あるいは解決する問題じやないかと思われる問題でも、すぐに地労委その他の仲裁機関に提訴しておるのが実情でございます。こういう種類のものも、事前にもう少し労使間において話し合つたならば、いわゆる不当労働行為と称して地労委あるいは中労委等に提訴しないで、未然解決しておるのではないかと存じます。また不当労働行為として最終的に決定しておる事実もございません。  それから今委員の方から、なぜ地労委において不当労働行為として一応命令が出ておるのに服従しないかという御質問がありましたけれどもフランス人といたしましては、一応自分不当労働行為としては行つておらない、しかも不当労働行為という決定があつても、今の制度地労委から中労委、さらに行政訴訟まで持つて行かれる手続がある以上は、最終決定をまつて、しかもそれが動かし得ざるものなら当然認めるけれども、第一審においての決定が必ずしも自分において満足行かない場合には、第二審、第三審まで持つて行つて、その結果をまつてから会社は服従しようじやないか、これは無理からぬ行き方じやないかと私どもは存じております。それですから、地労委でたとい不当労働行為決定が出ましても、首脳者である外人の方でどうしても不満である、さらにこれを上級仲裁機関である中労委なり、あるいは裁判所なりまでにその救済措置をとることも、やはり外資会社に勤めている以上はやむを得ないと思つて、私たちはじつとしておるわけであります。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最初は団交その他においてかなり権限がある、こういうようなお話でありましたが、さらにやはりフランス人幹部最高責任者の意見を十分聞かなければならぬ、こういうような話にも移つておるかと思います。ところが労使間で話合いができるじやないか、たとえば立川君の場合なんかは話せば解決ができたじやないか、こういうようなお話もあつたように聞くのであります。そこで私はこの組合から出ております資料で、ことに立川君の定期昇給の場合において、地労委の審問の際に人事部長大木さんは「人事部に於ては計算にまり六〇〇円以上の決定をしたが、最終決定権を持つロベール・カボー取締役が二〇〇円に訂正した。その理由は判らない。」こういうように述べておるわけであります。こういうことを証言で述べておられるのですから、もちろん当然真実であろうと思いますが、そういうことになりますと、一体最高幹部の方は給与の是正あるいは昇給にまでタッチされるのかどうか、こういう点についても御答弁願いたいと思います。
  16. 大木六雄

    大木参考人 私の方の人事部その他の各機構における権限については、これは各会社によつてそれぞれ違うように、やはり異なつております。普通の会社人事部の持つところの権限は、私の部には与えられておりません。従つて一応昇給等の場合には、ある一定基準、考査その他によりまして、人事部としての一定数字は出しますけれども、最終的の数字社長室において決定をいたしております。それでそういう証言をいたしておる次第であります。ですから、人事部決定したことも、それ以後においてある程度訂正される事実はございます。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこであなたにお尋ねいたしたいと思うのですが、普通の計算で行くと、大体立川君のような経験のあり、また熟練度を持つ人は、少くとも七、八百円から六百円を下らない。地労委命令にも六百五十円ということがたしか書いてあつたと思いますが、第三者が考えましても六百五十円という線が出る。そういう場合に、あなたの方でも六百円という線を一応決定しておきながら、さらにその上部の取締役が二百円にした。こういうことでは、これは不当労働行為になる可能性が強い、こういう進言はされなかつたかどうか、お尋ねいたしたいと思います。  さらに時間の関係がありますので、重ねてほかの点についてお尋ねいたしたいと思います。労使関係というものは、なるほど手続によりますと、地労委から中労委、さらに裁判所、こう行つてもいいわけです。それは国内法で認められておるのですから、いいわけですが、労使関係というのは生きておる関係でありまして、普通の民法的な債権債務関係で、いわば固定した動かない静的な問題ではないので、やはり非常に動いておる、動的な問題である。そのことだけの紛争が、やがて大きな紛争を惹起する、こういうような憂いもあるわけであります、先ほども、どうも組合話合いをすればいいのに、すぐ提訴をするという話があつた。こういう根源をつくつた、またそういう点があつたと仮定しても、そういうものは、やはり地労委から中労委——普通の常識で行きますと、裁判所までは行かないのですが、さらに裁判所にお訴えになつておる。そういう点において、労使関係が迅速に解決しなければならない問題であるという点を、あなた方はぜひ強調なさつて、そうしてすみやかに事態を解決するように——あるいは負けるときもあるでしよう、あるいは勝つときもあるでしようが、とにかく早く正常にもどす、こういう努力をされていないかどうか、あわせてその二点をお尋ねいたしたいと思います。
  18. 大木六雄

    大木参考人 もちろん私は長いこと組合問題に関係しておりますから、労使が平和であるべきであり、また友好的でなければならないということは十分承知しております。それで、私のできる範囲内においては、もちろん常に最善の努力をいたしておりますが、しかし遺憾ながら微力のいたすところと、権限が十分に付与されておりませんので、今おつしやつたようなことが実現できないのは、非常に残念に思つております。  それから、次々提訴する問題でございますけれども、中には私たち日本人といたしましても、その決定に非常に不服がある場合には、当然さらに上級機関にも提訴いたすことに賛成しております。中には第一審である地労委決定で承服すべきではないかというような気持を持つ者もございますけれどもフランス人の方でどうしてもそれに対して不満であれば、やはり私たちとしては下部機関として、その決定に応じないわけには行きませんから、必要な手続を経て提訴しております。でありますから、少くとも交渉その他に出ております日本人としては、決してすき好んで今の状態をかもし出すようなことはしていないつもりでおります。その点は十分御了承願いたいと思います。
  19. 赤松勇

    赤松委員長 この際前回の理事会の決定を再確認しておきたいと思います。前の理事会の決定は、帝国酸素労使関係紛争につきまして、ひとまず経営者の中の日本人関係者を呼ぼう、しかしながらその日本人に十分な権限が付与されていないというような場合には、専務取締役であるピエールサンルー、それから同じく取締役であるロベール・カボー、この二人をば本委員会に召喚する、こういうことになつておるわけであります。それを再確認しておきたいと思います。  なおこの際会社側にお尋ねしたいのですが、ピエール・サンルーとロベール・カボーのお二人は、ただいま休暇でフランスに帰つておられるということを聞いておるのですが、それは事実かどうか。もし帰つて来るとすれば、いつごろ日本に帰つて来るかということを、ちよつと念のためお伺いしておきたいと思います。
  20. 西村芳雄

    西村参考人 私からお答えいたしましよう。専務取締役のピエール・サンルーは去る七月二日休暇を終えまして帰つて参りまして、翌日から出社しております。次に取締役ロベール・カボーはそれにかわりまして、これから六箇月の休暇をもちまして、明後日日本を立つ船で向うに帰る予定でございます。
  21. 赤松勇

    赤松委員長 交代されるわけですか。
  22. 西村芳雄

    西村参考人 交代でございます。
  23. 赤松勇

    赤松委員長 それではどうですか。これはまた理事会でもう一度御相談願うのですが、なお質疑を続行しますか。それとももう一度理事会において話合いをしますか。
  24. 並木芳雄

    ○並木委員 簡単に一点だけ……。私簡単に経営者側と組合側の両方にお尋ねしたいのです。外国系の会社であるがために特殊な事情に置かれておる。私、本来外務委員をしておりまして、たまたまきようは臨時に労働委員になつたのですが、そのことは、私どももやはり非常に関心を持つておる問題なんです。ただいま吉田内閣は、しきりに外資の導入ということに重点を置いて奔走をしておる最中であります。この外資というものは、いろいろの形で来るでしようけれども、お宅のように八割以上、八割五分も株式が外国資本で握られておるというようなことがだんだんと日本に普及して来ますと、日本の大きな産業が結局外国資本に握られてしまうという憂いが出て来るわけであります。そこで、たまたま根本的な問題に触れられましたので、私傾聴しておつたのでございますが、しからばそれに対して、どういうように政府とか国会に希望されるか。つまり封建性を持つておるものを是正するため、あるいは当事者の話合いを円滑にやつて行かないというような問題を解決するために、何らかの法制的な措置を要望せられるのか、あるいは現在の法律のもとにおいて政府の監督をこういうふうにしてもらいたいとか、指導をこういうふうにしてもらいたいとか、そういう御要望があつたら、私はこの際伺つておきたいのであります。両方からお答え願います。
  25. 西村芳雄

    西村参考人 ただいま御発言になりましたから、それにお答え申し上げます。外資会社でございますからというて、別にかわつたことはございませんけれども、ただ言葉の関係で、普通の日本人同士よりも、非常に行き違いが起きやすいという場合が一番問題でございまして、それともう一つは、多少中央集権的の色が濃い、こういうことでございます。その他に対して、外国資本たからどうという支障があるというようなことはございませんと思います。ただ二つの点だけで多少かわつたところがございますし、また日常の社務の運営上にも多少かわつたところが生じて来るのではないか。それ以外には別に支障はないのじやないかと、ただいまのところでは思つております。
  26. 尾崎治

    尾崎参考人 政府なり国会にどういうことを望むかという御質問であつたと思いますが、これはたいへん問題が大きいと思います。これは私のごく個人的な考えになるかも存じませんけれども、この問題を突き詰めて行きますと、こういう法律ができるかできないかは存じませんけれども外国資本にある種の制限を加えるという立法措置が講じられない限りは、むずかしい問題ではないかと思います。かつて汪兆銘の傀儡政権が中国にできました当時でも、四九%以上の外国資本は入れないということを注兆銘は非常に強く主張したというふうに聞いております。そこで私は、根本的にこの問題を解決して行くためには、そういうことが考えられなければむずかしいのじやないかというふうに考えております。具体的には今日ただいま委員の方もおつしやつておられますように、政府が外資の導入を非常に叫んでおるはずなんでありますが、一方ではやはり国産愛用運動というものを盛んにやつておられる。けさも読売新聞を見ますと、通産省が後援で読売新聞と国産愛用運動を大々的にやるというような新聞記事が出ております。そこで外資導入と国産愛用産運動とを、私ども外資会社におる者から見ますと、何か政府の御方針なり何なりにちぐはぐなものがあるように感じられるのでございます。こういつた点につきまして、私どもにはそういつた面での発言権がございませんので、国会方面からそういう方面についての御追究をしていただきたいというふうにも考えます。  それから当面私ども外国資本家の労使関係につきましては、先ほどちよつと申しましたように、決して一計算だけの問題ではございません。たとえば私どもの場合に、団体交渉がある程度行き詰まつて参りますと、これはもうパリへ行つて聞いて来い、こういう発言をせられる。同じようなことが東洋オーチスの場合にもありまして、問題が行き詰まつて来ますと、それはニューヨークに行つて聞け、そういうことが言われる。そういうようなことで、はたして健全な労使関係というものができるだろうかどうかという問題でございます。従つて、これに対して司法処分とか、あるいはいろいろなそういうことはできなかろうと存じますけれども、私はやはり国会で十分御調査をいただきまして、特にこういう外資系の労働組合労使関係というものが、外資系であるがゆえに円満に行つていないということが、もし明らかになりました場合には、御勧告をいただくとか、あるいは労働省を通じての監督をさらに強化をしていただくとか、そういつたことを特に希望いたしたいと存じます。
  27. 並木芳雄

    ○並木委員 経営者の側の方にお尋ねしますが、いかがでしようか、今労組関係の方からああいう御発言があつたのですけれども、もう一度お答え願いたいのです。ただいまの発言に対して特にどうのこうのということはないということか、あるいは今の発言が少し行き過ぎであるとか、どういうふうにお感じになりましたか、この際承つておきたいと思います。
  28. 西村芳雄

    西村参考人 別に行き過ぎとは思いませんけれども、そういうふうに資本を制限することができますならば、あるいは現在のやり方は多少かわつて来るかも存じません。私どものように九〇%以上も持つておりますと、自然そういうふうな行き方になるのはやむを得ないのじやないかと思います。
  29. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 会社側にお尋ねしたいと思うのでありますが、組合の配付されました資料によりますご、帝国酸素資本金の九〇%がフランス資本であるということになつておりますが、このフランス資本帝国酸素に入りました経緯につきまして、最初にお尋ねしたいと思います。
  30. 西村芳雄

    西村参考人 それでは径路を申し上げます。大体あの会社は、明治四十四年に向うの、ただいま大株主でありますエルエア・リクイット会社日本の支店として事業を開始いたしました。そして長年間現在の事業を経営しておりましたのですが、昭和五年になりまして、当時の住友本社と共同経営の形をとりまして、帝国酸素株式会社というふうになりまして、その当時の持株の比率は八七・五の一二・五——一二・五を住友本社の方で持つておりました。それが今度の財閥解体によりまして、住友の持株を全部従業員の方に渡しになりました。それがいろいろないきさつがあつて、買取りや、減資も多少いたしましたりして、現在大体九四%幾らくらいが向うの持株になつております。
  31. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいまお聞きいたしますと、帝国酸素フランス資本は、これは組合の資料によりますとフランス液体空気会社、そこの所有になつておるようでありますが、フランス液体空気会社帝国酸素は、どちらも独立した会社になつておるのです。先ほど組合参考人の陳述によりますと、何かむずかしいことになるとパリで聞いて来い、こういうような非常にパリ本国のフランス液体空気会社に制約されているように思われるのでありますが、その点お聞きしたいと思います。
  32. 西村芳雄

    西村参考人 それは全然独立した会社でございます。帝国酸素株式会社日本の法人でございまして、ただ向うが九〇%以上の株を持つているだけでございます。そういうふうに全面的に向うが持つておりますから、内部的には多少向うの指令によつて動くこともございますが、会社自体といたしましては、独立した日本の法人でございます。
  33. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと黒澤君、今職安局長が見えているので、昼から職安局長は経済審議庁の緊急失業対策会議に出なければならないのですが、なお職安局長に対する質問が残つておりますから、帝国酸素の方はひとつ簡単に願います。
  34. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 それではもしお都合がおありのようでしたら、あとに保留いたします。
  35. 赤松勇

    赤松委員長 ではそうしてください。島上君。
  36. 島上善五郎

    ○島上委員 私も簡単に二、三質問します。先ほど参考人証言にも、言葉がよく通じなかつたり、意思疏通が不十分であるというきらいがないでもないという言葉がありましたが、フランス人は、もちろんフランスの法律労使関係の慣行というようなものと、日本のそれとが違うということについて、十分理解をしていない点もあろうと思うのです。そうであるならば、団体交渉等に対して、日本人の重役がかなり権限を持つて交渉に当り得るようになつていないと、意思疏通と申しますか、そういう点が円滑に行かぬのではないか。これは組合側の資料で、はたして事実であるかどうか、お伺いしなければわかりませんが、フランス人の重役が非常に強大な権限を持つてつて、しかもその強大な権限を持つている者が団交に出て来ない、団交に出て来る日本人の重役は、きわめて限られた範囲でしか交渉できない、少しむずかしくなると、すぐフランス人の重役に言つて相談をして来なければならない、まるで文書で団体交渉しているような感がある、こういうふうに言われておりますが、その間の事情について、会社側組合側から、日本人会社において行われている団体交渉の状況と比較して、両方の御意見を承りたいと思います。
  37. 西村芳雄

    西村参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。団体交渉に責任者が出席しないということでございましたが、これは御指摘のようにおそらくこちらの一般会社ではそういうことはないと思うのでございます。これはどうも会社自体の組織がそういうふうになつておりますから、現在のところそれをかえるということは、なかなか困難じやないかと思つておりますけれども、漸次そういうふうに向いて努力いたしてはおりますが、急にそれが普通一般にやつているような方法になるというようなことは、今のところむずかしいんじやないかと思つております。
  38. 尾崎治

    尾崎参考人 他の企業との比較においてというお話がございましたが、私も限られた範囲しか存じませんので、そう多くの事例は存じておりませんけれども帝国酸素のように交渉に出て来る方がまつたく権限を持つていないにひとしいような交渉は私はないと思います。同じ外人経営会社でございましても、神戸にございますダンロツプ・ゴムのごときは、イギリス人が率先して出て来て団体交渉をやつております。そのためにダンロップ・ゴムの場合にはほとんど給与らしい紛争も起さず今日まで来ているわけであります。従つて私は帝国酸素の場合は特殊の例である、このように考えております。このことは、私はきよう何か会社の側の方がこの席においでになりますと、対立してけんかをしているような印象になりますけれども、決してそうは考えておりません。人事部長の方に人事権がないということが、帝国酸素労使関係が円満に行かないもとなんでありまして、むしろ私は人事部長の方が人事権を掌握せられてこそ、初めて健全な労使関係というものが育成されて行く、そのように私は信じております。
  39. 島上善五郎

    ○島上委員 よくわかりました。この点はフランス人の重役が来ました際にあらためて質問することにして保留しておきますが、もう一点伺つておきたいことは、これまた組合側の資料によりますと、フランス人の重役が途中で一ぺんかわつている。かわつてロベール・カボーという人が来ましてから、前重役系の非組合員をかなり大量的に追放もしくは左遷をして、それ以来労働組合に対する対策も非常に強硬になつたと申しますか、カボーが来ましてから、今後組合対策一切おれが担当する、組合は和戦いずれでも選んだらよろしいといつたようなことを宣言して、それ以来非常に強硬になつて来たということが書かれておりますが、そしてその後労働協約締結問題がもう数年にわたつて話合いが進まぬでいる。こういうような事実から徴しましても、そうであるように私どもも思われますが、重役がかわつたことによつて労働組合対策がかわつて来たという点があるかどうか。また今度ロベール・カボーという人が交代して本国へ帰るそうですが、ロベール・カボーの労働組合に対する対策が誤りだつたという反省が、若干そういう意味が含まれているかどうか、その点も伺つておきたいと思います。これも会社側労働組合側の両方から聞きたいと思います。
  40. 西村芳雄

    西村参考人 私は組合側から出ておりまする書類を拝見いたしておりませんので、よくわからないのでございますけれども、大体ただいままでに承りましたお話によりますと、よほどどうも大げさに書いてあるような感じを受けるのです。それで御質問でございますが、首脳部がかわりました点につきまして、もちろん以前のオアリーという専務がかわりまして、カボーというのになつたのでありますが、これは人間がかわつたのでありますから、多少の変化がございますけれども、ただいまお話のようなそう大した変更はなかつたように私は思つております。今度カボーが帰りますと申し上げましたのは、これは休暇で帰るのでありまして、もう帰つて来ないという意味じやないのであります。これは規定がございまして、ある年月勤めますと六箇月間の休暇がございますので、それで帰るという意味でございますから、また六箇月すればこちらにもどつて来るという意味に御解釈願いたいと思います。
  41. 尾崎治

    尾崎参考人 御質問の点にお答え申し上げたいと存じます。労働組合を結成いたしましてから八年になります。その間むろん労使間でございますから、いろいろな労使紛争があつたことは事実でございますが、一昨年の十一月にロベール・カボー氏が私を呼びまして、私に対して今後はおれが労働組合のことをやるということを宣言したことは、これは事実でございます。それ以後不当労働行為が頻発されたことも事実でございます。それ以前には、労働組合結成以来一昨年の十一月までには、紛争はございましたが、少くとも不当労働行為の事例は一つも起つておりません。それ以来僅々一年半の間に五件の不当労働行為が起つている。しかもこれは単に提訴したのがこれだけなんでありまして、それ以外に証拠が不十分であるとか、あるいは立証方法が非常にむずかしいというので泣寝入りをしているものはもつとございます。従つて会社の方で別にこういうことをやつているのじやないという御主張があるのは当然かとも存じますが、私どもはただ事実の入を主張しているだけでありまして、八年間に及ぶ労使関係において、もちろん労使の間でございますから紛争は当然でございますけれども、一昨年ロベール・カボー氏が労務担当をいたしまして以来不当労働行為が続発いたしている、こういうことを申し上げておきたいと存じます。
  42. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最後に委員長に要望しておきたいと思うわけであります。今参考人からもお話がありましたように、この帝国酸素労使関係をめぐつて幾多の問題が連続的に頻発しているわけであります。しかし、今お話を承りますと、やはり日本人幹部の方にはどうも権限がないようでございます。委員の方もこれ以上追究してもだめじやないか、やはりフランスの幹部の方を呼んで来なければだめだという空気が強いようでありますので、私たち質問をやめて、そうしてフランスの幹部の方に来ていただこうと思うわけであります。ことに今また現実の紛争として起きんとしております問題に、やはり定期昇給の問題があるわけであります。就業規則の付属規定の昇給規程には、七月一日に定期昇給をするということが明記してある、それが履行されていない。また労働協約のごときは数年間全然結ばれていない。昨年の九月におきまして、やはり紛争中に会つた際に、会社は次のように言つております。「団交の会社案が準備の遅延によつていまだ決定していないのを遺憾に思います。しかし支配席は右の準備を至急するよう正式に指令いたしましたから数日中に同案文を提示できると考えております」。こう言いながら本年になつてもまだ結ばれていないどころか、今の状態では協約の交渉に入れない、こういうようにも言つているわけであります。でありますから、今後この帝国酸素労使関係はますます私は紛糾をするだろう、かように考えられるわけであります。また帝国酸素では、転勤を制裁の一種のように考えられているやに聞くわけでありまして、そういう点についても、ぜひ最高幹部の人に来ていただいて、ここでいろいろわれわれ書見を述べ質問をいたしたいと思います。それで本日は委員長におかれましてはすみやかなる機会において最高幹部の人を呼んでもらう、こういうことを考えていただきまして、質問を打切りたいと思います。     —————————————
  43. 赤松勇

    赤松委員長 それではお諮りいたします。ただいま持ちまわり理事会におきまして、専務取締役のピエール・サンルーを本委員会に呼ぶことになつたわけでありますが、本委員会においてこれを決定いたしたいと思います。帝国酸素専務取締役ピエール・サンルーを本委員会に証人として呼ぶことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 赤松勇

    赤松委員長 異議なければさように決します。なおその出頭日時につきましては、後刻理事会で協議の上、委員会で正式に決定いたしますから御了承願います。     —————————————
  45. 赤松勇

    赤松委員長 次に、炭鉱関係の労働問題の調査に入りますが、本日御出席予定参考人の渡辺維誠君及び秋月フサエ君の両君がお見えになりませんから、参考人として古賀茂君及び今村国年君の両君から本問題について説明を聴取したいと存じますが御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なければさよう決します。  なお参考人の秋好トムノ君は本日御出席になつておりますから御了承を願  います。  それでは秋好トムノ君より発言をお願いしたいと思います。秋好君。
  47. 秋好トムノ

    ○秋好参考人 岩屋の炭鉱でございますが、一箇月に千円もらつたり、多いときに千五百円もらつております。これでは一日の平均が五十円から十円でございます。十円と申しますと朝の一回のおみおつけのおとうふ一丁買えないのでります。まるく千円とか千五百円の金を私たちが受取つて、それを家庭の方に使つた場合が以上のようでございます。しかし長いときで二十七日、短かくて十七日目ぐらいにその現金をいただけるのです。十七日日に千円の現金を握つても、そのときにはすでに野菜屋とか魚屋、こういうところに顔で買つた借金が相当できておるわけであります。そのために千円の中から少くとも百円ぐらいを入れておかないと、それから先が全然借りられないわけであります。現在会社から米と調味料——みそ、しようゆこれだけをもらつております。近江絹糸の場合は、一応基本的人権が蹂躙されまして、私も婦人の立場から憤慨にたえないのでございますが、私たちの場合には——筑紫炭鉱かきついと言われましても、筑紫炭鉱でも本月になつて二千五百円いただいております。私たち岩屋炭鉱の場合は千五百円しかいただいていないのであります。いかに高倉の会社といえども、私たち生命に関する問題でございますので、今まではしんぼうしておりましたが、これ以上しんぼうしていたら、あつちこつちにいろいろと暴動が起るんじやないかと思つて、現在佐賀の駅の前のところと博多の水上公園の前にすわり込みをしております。私も博多の水上公園の前に二十一日から五日間すわりまして、それからこちらへ来たわけであります。また炭鉱が景気がいいとぎには講というものがたいていはやつております。一人千円から千八百円かけておりますので、現金千円しかもらえないのに千八百円の講をかけなければならないということで、私たち婦人会に泣きつかれたこともあります。こういう状態の中で学校のPTAなどの会費を入れる袋を持つて参りますと、夏休みになる前に納めないと先生からしかられるといつて、子供が学校へ行かないので、親はどうしても米とかみそとかしようゆとかを——昨年の水害以来罹災者の方か百五十名くらいおりまして、失対事業に行つております。この方たち会社から米とか麦とかそういうものを全然現金で買えないわけであります。そういう方たちに米とか麦とかを売りまして、そうして学校の百二十円という毎月必要なPTAの会費を納めております。会社の方でも先月おしようゆを一斗四升とつた者がありまして、これでは会社が立つて行かないというので、制限されております。それでお米などを五日分くらいくれておりますので、この米をそういうふうにして売つておりますので、三度のところは二回はぞうすいというふうにしております。はなはだしいところでは、先日も、質ぐさもない状態なのに、お母ちやん、卵焼きをしてというので、隣の人がのぞいて見たらそれがたくあんであつたという話もあります。また副会長さんの話では、社宅の奥さんが、お母さんが悪くなつたので急に帰ることになつた。お父さんは坑内に入つておる。現金といつて別にない。私たちには百円の金も大金で、五百円なんという金はなかなか借りられないのであります。そこで奥さんはあり合せの米を売つて金をつくつてそのまま行つてしまつた。子供さんが学校から帰つて来たら、お母さんがいないので、あり合せの梅ぼしで御飯を食べた。それでお母さんが五日たつても帰らないので、子供は五日間ずつと梅ぼしで御飯を食べておつたそうであります。副会長さんがその話を聞いて、汽車賃をあげますからお母さんの所に行つておあげなさいといつて行かしたのは五日目であります。こういう状態があちらこちらに続いております。  私たちは今の千円よりも——失業保険をもらつて、六箇月たつてそれが切れたら失職するということはわかつていながら、今のように月千円、千五百円もらつておつたんでは失業保険をもらつた方が得なような感じがいたしまして、現在の千円、五百円に泣きながら、失業保険をとりたいという希望者が多くなつております。婦人会の会員の方も、この十日間に幹部の奥さんが四名もやめております。これらの人たちはしんぼうしきれるだけしんぼうしたのでありますが、これ以上しんぼうしていたら、親子もろとも死ななくてはならないというので、先の見通しがないのでありますが、現在失業保険をとるように準備しておるのであります。
  48. 赤松勇

    赤松委員長 続いて古賀参考人にお願いします。
  49. 古賀茂

    ○古賀参考人 婦人会長より、生活実態について御説明があつたわけであります。大体御存じの通り、岩屋炭鉱は、昨年の六月二十六日の水害におきまして坑内に浸水しまして、一応会社側で失対事業に関する特別措置を申請いたしまして、結局千名の首切り保安要員二百八十名、いわゆる千人斬りをやつたわけであります。その後組合といたしましては復興闘争を展開し、一応地労委のあつせん案に基きまして全員採用するように努力するということにおきまして、希望を持つて生活を続けておつたわけであります。しかるに九月十九日に勤労課長の廃山になるという宣告のもとに、一応つるし上げ事件——残念の二字を残して自殺された行為にまで発展いたしまして、復興の道は、十月より逐次採用されまして、ことしの一月になりまして約八百五十名の人が再採用され、正常な状態になつたわけであります。その間失業保険で生活しておつた。あれは約六〇%でありますので、家計的にも多くの負債をかかえておつた人もおつたわけであります。その後復興に邁進して来ましたが、賃金支払いについては会社側としては二月分より、十五日までの上期の賃金は二十八日に支払い、後半の十五日の分は翌月の十八日に支払うという形態になつておりますが、その間賃金が正常に支払われないで、たびたび交渉を持ち続けて来たのであります。四月十三日に、一応現物給与五〇%、現金支給三〇%——現金支給の三〇%は毎週千円、計四千円を月に支給する、現物給与といたしましては、主食、副食、鮮魚、野菜等に至るまで支給するという確約をとりまして、一応その方を待つておつたわけであります。しかしなかなか実行されず、四月に三千五百円、五月に千円、六月に五千五百円、七月に千五百円の賃金をもらつたわけであります。六月の五千五百円は、組合幹部といたしまして、県議団あるいは知事、経済部長なんかを動かしまして、一応県の救済資金より一人当り二千円、労働金庫から借用したのが千円、計三千円が組合側が調達した金額であります。  以上のようなわけで、われわれ組合といたしましてもいろいろ棄しましたが、会社の言い分といたしましては、三月ごろより一応社長の私有林を売却して賃金に充てる、あるいは福岡市にあそ中島の土地の問題ですが、匹百五十坪、二十万円ぐらいを売却して一応賃金に充てる、あるいは無担保である鉄製炭車を抵当に入れて賃金を支給するといういろいろの回答をしておりましたが、現在に至るもその見通しすらない次第であります。一応土地の問題につきましては、開発銀行の担保に入つている六千万円を無条件で抜いてもらいたい、あるいは開発銀行としては、かわりの担保権云々ということを主張しておるそうです。現在社長が上京いたしまして、緒方副総理と対面されたという話も聞いておりますが、一応福岡に帰られまして、その結果報告は聞いておりませんが、現在なお賃金の支払いがなくて、困つておるわけです。見通しといたしましても、きよう二、三日が山ではないか。佐賀興業銀行に一応六千万円の融資申請をしておりますが、それも同じ担保物件の問題、あるいは金融関係の問題などで話も進展しておらない次第であるそうです。  そこで、われわれといたしましては、このまま行けば餓死寸前であり、また五月三十日ごろまでは八百五十名の人員がおりましたが、現在約百名近くの人が失業保険をたよつて離職をしおる。われわれの与えられた生活は、このままほつておけば餓死するという寸前まで行き、かぼちやのくきなどを混食いたしまして一応生活はやつておりますが、入坑率といいますか、稼働率が現在採炭部におきまして五〇%内外であるということは、おかゆをすすつて重労働地下三千尺のところに労働するものはからだが続かないわけであります。またそれと同時に病弱者か出ておるとしうことか率直な事実であります。  以上のような点におきまして、組合といたしましても万全の策を講ずべきでありまして、何も失業者のちまたに本人をほうり出すということは、われわれとしても忍びないが、その裏づけとなるものは何といつても金であるので、われわれとしても阻止する何ものも持たない。そこでみすみす本人が失業保険に生活を切りかえるということは、われわれとしては忍びないが、やむを得すその手段をとつておる人もおるわけなのであります。そこで中小炭鉱におきましても一番ひどいとは思いますが、何分政府のデフレ政策がその原因だとも思うし、またわれわれといたしましては、水害以来、会社経営から来る問題もあるだろうと思いますが、何分われわれといたしましては、当日の生活の問題であり、死ぬか生きるかという実態であるし、このまま放置しておけば、軌条を売却し、坑木を売却して食に充てるということが、現在でも一、二問題化しておりますので、われわれ防犯につきましては細心の注意を払つておりますが、死をかけた行為あるし、われわれとしても阻止するよう警戒はしておりますけれども、暴動寸前であるということが率直に認められる。また組合といたしましては、復興に邁進する、また事業を継続するということを会社に強調しまして、五月二十三日臨時大会をもちまして、一応会社側の合理化案というのが二〇%賃金カット、それから入坑督励、いろいろの問題につきまして出炭九千トンというようなことも、いろいろ会社側に率直に申しまして再建に努力して来ましたか、何分賃金か支払えないし、組合も待てない、廃山を賭してもやらなければわれわれの生活はできない。また会社といたしましても、一応貯炭あるいは土地の問題もあるかと思いますが、何分その点の問題は社長の私有財産であるか、あるいは公有財産に入つておるものかわからぬし、われわれとしては、それを売却して支給せよと言つておるが、会社としては抵当物件に入つておるということで、それも不可能ではないか。ただ政府の融資等におきましてこの危機を救助されることを、切にお願いに参つたわけであります。なお二〇%のカットにおきまして一応会社側の出炭計画は、七月、八月には一万トンというような計画でありましたが、現在入坑率その他におきまして五千トンくらいの上下で約五〇%の出炭しかないというのが実態であります。そこでおかゆをすすつて稼働せよというようなこともできないし、現在六、七千万円あるいは一億あれば、一応再建も円滑に行きはせぬかということを重ねてお願いする次第であります。  以上をもつて簡単でありますが、説明にかえます。
  50. 赤松勇

  51. 今村国年

    ○今村参考人 特に昨年の暮れあたりから炭鉱が非常に不況に見舞われまして、中小炭鉱は相当数すでに倒産をやつております。私は昨日の当委員会に参りまして、近江絹糸の問題、それから本日の帝旧酸素の問題等お聞きしておりましたが、私ども岩屋炭鉱を主体として本委員会に申し述べますことは、それらの問題とは非常に異なつておりますので、委員の皆様方には奇異の感をお抱きになる点があるだろうと考えておりますが、現在私どもが皆様方にお訴え申し上げたいことは、高倉鉱業という炭鉱の企業の中で、労使で処分をしようといたしましても、どうにもならない問題になつてつております。従つて近江絹糸帝国酸素のような団体交渉の持つて行き方がどうであるか、あるいは勤労管理の方式がどうであるかというような問題、こういつたいわゆる基本的な人権問題も、もちろん非常に深刻であり、重大な問題だとは考えますが、私どもの問題はそれ以前の、ただちに死か生かという問題につながつておるわけであります。そこでその問題を処理いたしますのには、これは経営者企業努力をいかにいたしたといたしましても、現在の状態ではどうにもならない。そこで資本家を責め上げまして、最後の血の一滴まで資本家から吐き出させたといたしましても、それでも解決がつかない、こういつた企業努力ではどうにもならないという問題に直面しておるわけであります。従つて私の申し上げますことは、反面経営者資本家を代表したような意見を勢い申し上げざるを得ない。この問題を解決しますためには、やはり企業をどうして存続するかということが先決になるような状態でございますので、そういう事情をまず基礎的にお考えになつてお聞きとりをお願いしたいと思うわけでございます。抜本的にこれを解決するということになりますと、問題は石炭が売れないから炭鉱が不景気なんでございますから、石炭が売れるようにならなければ救えない、こういうことになるわけです。そこでそれではどうして石炭が売れな’かという問題になつて来ないと、本質的な問題の解決にはならない。結局問題がそういうふうになつて参りますと、私どもの立場から考えました政治のあり方、現在なされております政治のあり方、そのものに根本的な問題があろうかと考えるわけであります。しかしながら当面明日の生活をどうするかというような労働者を抱えておりまして、直接その組合の責任者として何とか打開の方法を講じたい、こういうふうに考えて参つておりますので、そういう問題ととり組みましていろいろと皆様方の御意見も承り、私どもの申し分も申し上げる、こういうことではとても間に合わない。そこでそういう問題につきましては、これは労働組合が直接やるべき問題でもございませんし、委員の皆様方がそれぞれ会議において検討され、論議されまして方策を立てていただく、それに本筋としてはお訴え申し上げる以外にない、そういうふうに考えますから、私は当面しております高倉鉱業の状態をどういうふうにやつたら失業者を出さずに、それから山を廃山しなくてやつて行けるかということについて申し上げまして、皆様方の御協力をお願いしたい、こういうふうに考えるわけでございます。  ただいま組合の生活の実態につきましては、炭鉱婦人会の副会長であります秋好さんとそれから組合書記長であります古賀氏から申し上げました通りでございます。七月に入りまして現金千五百円とそれから米をもらつておるだけであります。なるほど炭鉱は家賃はいりませんし、光熱費も都会のそれに比べますと非常に少い。しかしいかに、どういう条件にありましようとも、家族を持つた人間が一箇月千五百円、これだけの現金と米だけで生活ができるかどうか。しかもこれは私どもが身びいきで申し上げるわけではございませんが、地下数千尺で働いております。従つてその労働も決して軽い労働ではございません。農村なんかの労働よりは、もつと重労働であります。そういう人たちが梅ぼしでおかゆをすすつて坑内で重労働ができるかどうか、これは常識上お考えを願つてもわかることだと考えます。従つて主人を働かせるためには、その金のほとんどすべてがタバコ銭と主人の副食費になつてしまう。そこで子供の小使い銭はもちろんのこと、今は夏場だから、いいわけでありますけれども、冬場ですと子供を外にも出せない。外に出すにははだか同様で出さなければなりません。辛いに炭鉱にあります燃料で、かんてきといいます、炭鉱では七輪といいますが、それをたいてごろくさせておる、そういう実態であります。そういう実態も過去に賃金をもらつておりました余力のある間は、どうやらこうやらやつてつたのでありますが、もはや現在ではどうにもならない段階まで来ております。  詳しくは御質問等がございますれば直接生活を担当しております秋好さんから皆様方に御説明を申し上げると考えますが、そういう実態で、ただいま岩屋の組合といたしましては、もはや今月一ぱい——ども組合員の諸君をなだめまして、とにかく会社も金をつくるために一生懸命になつておる、だから今月一ぱい待つてくれと会社も言つておるから、しかも会社が努力しておる有様もわかるので、今月一ぱいはがまんをしてくれ、こういうことでやつとなだめております。それから先ほど秋好君が発言いたしましたように、福岡と佐賀県で現在すわり込みをやつております。すわり込みをしたからといつて、大した効果があるとは私ども考えておりません。しかしながら死の影に追い詰められて憤激の頂点に達しております組合員の秩序を保つためには、こういう方法も必要です。すわり込みの主たる目的はそこにあるわけであります。山元ではそういう実態にまでなつてつております。従つて今月末に何らかの方途が見出されない限り、おそらく私ども労働組合として秩序を保つて行動することはできないような事態が発生するのではないか。会社がうんと持つておりますところの生産設備にいたしましても、あるいは在庫品にいたしましても、坑木その他機械諸工具、あるいはゴム製品であるとか、どうしても生活ができない、命がつないで行けないというようなことになると、その所有権が会社にあろうがどうであろうが、命をつなぐためには、これをたたき売つて金にして生活をしようという事態から発端をいたしまして、暴動的な状態が起るのではないかということが、非常に懸念をされるのであります。もちろんこれは失業、それから生活苦という問題につながつておりますので、労働問題の本質であるには違いありませんが、考えられる労働問題の域をはるかに脱しておる。このことを十分に御認識をいただきたいと思うわけでございます。  そこで私ども考えると、今日までこういう事態の解決のために、いろいろと折衝をやつて参りました。その結果、山を再建して行くためには、どうしても現在協定をいたしております賃金を支払つたのではやつて行けない。石炭の値段が一カロリー当りについて六十銭くらいで売れますとやつて行けるわけでありますが、現在のところは平均いたしましてカロリー当り四十二、三銭にしか売れない。その石炭の値段に生産コストをあわせて参りますために、いろいろなものを削減いたしましたし、会社の機構も重役陣の縮小等まで行つたといたしましても、さらにやはり労働条件の中に食い込んで行かないとどうしてもやつて行けない、こういうことが明らかになつて参りましたので、二〇%賃金切下げということを労使で認め合つたわけであります。そして再建に乗り出したわけであります。そこで会社が計画をいたしましたことは、そのために過去にありましたところの未払い賃金であるとか、あるいは非常に差迫つております電力料金であるとか、あるいは労災保険の給付制限を受けないための掛金であるとか、こういつた最低限度の支払い計画、こういうものを一括いたしまして、さらに一箇月間くらい賃金が払える状態、そうして労働者の生活が安定いたして参りますと、二箇月日くらいから正常な営業に立ち直る、こういう計画を組みますと、どうしてもそこに一億くらいの金がいることが明らかになつてつたのであります。内訳を申し上げますと未払い賃金が約三千五百万円ございます。それから運転資金と申しますか、一箇月分の賃金を保障し、その他の労働安定のための金が約二千万円、これだけは見ておかなければなりません。そういたしますと、五千五百万円、それから月々に決済する手形、これが二千万円ばかりございます。それからぜひとも買い入れなければならぬ坑木であるとか、火薬であるとか、あるいは主食であるとか、こういつたものの買入れの予備金を見ますと、どうしても一億円の金がいるということで、では一億円の金をつくれということで、盛んに一億円の金をつくる努力を会社はいたしたのであります。最大限度の努力をしたという私ども会社の努力は一応認めております。  そこで会社はその金をつくる手段として行いましたことは、福岡市内の目抜きの場所に四百七十五坪の鉱業財団名義の土地を持つております。これは開発銀行の八千万円の設備資金の融資の担保に鉱業財団で一括して入つておりますが、これは開発銀行の担保を抜いてもらいたいということを言つておりますので、これを売るという努力をしております。その売先が農林中金でございまして、農林中金の福岡支店を建設する用地として売つてもらいたい。この評価が坪約十六万円といたしまして、税引七千万円の金はこれでできるという計画を会社は立てました。事前に農林中金との話合いもできておりまして、農林中金の福岡支店としては買おうということになつておつたそうであります。そこで一応七千万円の金が、売れるとすればできる。  そこで、さらに不足分といたしましては、平田山という炭鉱を長崎の方に持つておりますが、そこに粘結炭を現在一万四千五百トン持つております。これは高倉の経営が幼稚であつたということは現在はつきりしております。一昨年炭労の六十日のストライキで、石炭がたくさん売れたので、昨年も炭労がああいうストライキをやるだろうという想定のもとに貯炭を抱き込んで、しかもそれが売れなかつた。こういうことも一応高倉の経営を圧迫いたしておる事情でございますが、そういう点が失敗があつたといたしましても、これはいまさら取返しのつかない事態でございますので、そういう失敗の余りとして一万四千五百トンの貯炭がございます。これを全部ただちに売つてしまいますと、たとえば二千二百円で投売りいたしましても三千三、四百万円の金はできるわけであります。大体七千カロリーの粘結炭でございます。従つて現在市価といたしましては四千円近い市価だと考えますが、ただ灰分が少し多いので一割程度引きましても三千五、六百円で売れる石炭であります。そこでこれを千円でも千五百円でもいいからたたき売れということで、会社も売る気持になつたわけであります。これによつて月内に未払い賃金を払つてしまつて将来の安定した計画を立てる、こういう約束で七月の初めから、七月の十一日であつたと記憶いたしますが、私どもの方の社長が上京いたしまして、開発銀行、農林中金、それから佐賀興業銀行、これが親銀行になるわけでありますが、そこの神原という重役もともに上京いたしまして、土地を売る作業、それから並行的に平田山の貯炭を売る作業をやつたのであります。しかしながら、その結果といたしましては、現在政府の方針として緊急やむを得ざるものを除いては高層建築物は築造をしない、こういう方針だ。従つて農林中金の場合にいたしましても、土地を買つて新しい農林中金ビルを福岡に建設する必要はない、こういうような方針で土地が売れなくなつた、農林中金へは少くとも売れないようであるということであります。従つてこれが一つ最初から失敗した。それから貯炭の問題でありますが、これも現在盛んに折衝を続けておりますけれども、まだ売先がはつきりしない。こういうことで、今月の当初会社と契約をいたしまして、会社もその間二十日間ばかり最大限度の努力はいたしたようであります。これは毎月社長と電話連絡をいたしまして、その行動は私どももキヤツチいたしておりますので、努力をしたということは一応認められるわけでありますが、その約束をいたしました計画そのものが全部おじやんになつてしまつた。そこで組合の実態は、ただいま申しましたようにこれが蹉跌をいたしますと、今月一千五百円の現金しかもらつておりませんし、生活ももうぎりぎりのところまで参つておりますので、組合としての統制上、これ以上は組合として本責任が持てない。こういう段階と並行的にお考えを願いますと、事態がいかに窮迫しておるかということはおわかりを願えるというふうに考えるわけであります。  そこで当面お願いをいたしたいことは、もちろん抜本的に申し上げますならば、私は五月上京いたしまして通産省、労働省その他いろいろ折衝申し上げたのでございますが、問題はやはり重油の輸入——重油そのものが石炭を非常に圧迫しておるようであります。これは全部が全部というわけには参りませんし、低品位炭の炭鉱には、重油の輸入はいいということが言われておりますが、これは部分的な問題であります。そこで重油の輸入を大幅に削減してもらう以外に、炭鉱は立ち直る方法はない、こういうことでいろいろ通産省関係の方々の御意見も承りましたし、通権省としても、そういうふうにやりたいというお約束をいただきましたが、しかし実際はそのお約束通りには行つておらない。削減はされていなくてそのまま来ておる、こういう状態だというふうに聞いております。そこでそういう抜本的な問題が解決しないと、根本的に解決というものは成り立たないと考えますけれども、当面私どもの近隣の炭鉱をながめてみますと、それぞれ同じような苦悩をやはりなめております。しかしながら、現在非常に安い賃金でみんなががまんをしておりますが、それはそれなりにどうやら小康を保つております。現在ごく小さい炭鉱は別といたしまして、今月末にどうなるかという炭鉱は、結局私どもの炭鉱だけだというふうに私ども調査範囲では見ております。そこでその炭鉱も、ただいま申し上げました土地が売れる、それから貯炭が売れる、こういうことになれば、労働者も失業しなくて、炭鉱は立ち直つて参ります。高倉鉱業で月二万トン生産の計画を立てておりますが、その二万トンは全部販売できることになつておる。その販売いたします平均価格はカロリー当り四十三、四銭、これで現在の再建計画に十分乗つて行くわけであります。  ただ問題は、労働者が腹を減らしておつて労働ができない。この事態を何とか解決しなければならぬ、こういう状態にあるわけでございますから、できますならば、総合的な施策については労働省関係、政府側あるいは労働委員会だけでどうこうというような問題ではありません、そういう問題はあらためて本会議で御審議をお願いしたいと考えるわけでありますが、本委員会としては、できますならただいま申しておりました土地を農林中金が買つてくれるか、そうしてさらに平田山にあります一万四千五百トンの貯炭を売るあつせんをしていただくことが可能であるか、それをやつていただくことと、土地の売買のあつせんをやつていただくことが可能であるということでありますならば、一応小康を保つことができる、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。私どもといたしましては、県知事にもすがりましたし、それから県会等も動員いたしまして最大限度の活動をいたしましたが、どうにも解決がつかない事態でございます。従つて委員会で以上の事情を御検討くださいまして、そういうことができるかどうか、できますなら御検討をいただきたい。そうしてまたその後の御検討の結果、あるいはそれかできないといたしますならば、さらにあらためて——ども失業者を出さない、賃金を下げてまで職場を維持して行きたい。今の状態で失業するということは、六箇月間の生活は現在働いておるよりも安定をいたします。しかしその後の就職ということは大よそ望めない、そういうふうに考えますので、できるだけはしたくないというふうに考えておりますから、その問題についての御討議の結果、さらにそれではほかの問題についての解決策はないかどうかということについても、時間をとりまして恐縮でございますが、できますならば、いろいろと私どもの申し上げることも聞いていただきたいし、皆さん方の御意見も承らせていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  52. 赤松勇

    赤松委員長 この際議事を能率的に進めるために、各党の代表の質問をお願いしたい。つきましては、むろん関連質問がありますから、その党の代表の御質問の際に発言席に一緒におつてもらつて、関連質問をしていただければけつこうだと思います。  なお、ただいま労働省からは中西労政局長、江下職業安定局長、通産省から斎藤石炭局長、それから及川炭政課長、記内中小企業庁長官、なお文部省より初等中等教育局の杉江さん、同じく管理局の学校給食課長岩倉さん、またこれは地方自治体の財政問題に深い関係がございますので、自治庁から財政部長の後藤さん、以上の方々の御出席を願つております。  それでは最初に改進党の、稻葉委員より御質問をお願いしたいと思います。なお並木君、関連質問があるでしようから、どうぞそこに一緒におつてください。
  53. 稻葉修

    ○稻葉委員 昨日は近江絹糸の問題につき、きようは岩屋炭鉱の問題につきまして、参考人を呼んでいろいろ事情を聞いたのでありますが、わが国の現在の経済情勢が、今年度予算編成にあたつての急カーブを切つたデフレ政策と金融の引締めと相まつて、きわめて重大な段階に来ていることは、政府委員諸公におかれましても、昨日米の参考人の意見陳述を聞かれてひしひしと身に感じておられることと存じます。ことに、ただいま岩屋炭鉱の組合側の参考人の陳述の通り、わが国の労働問題のきわめて特質中の特質とも称すべきものは、一体労働争議を政治的目的に使つてはいかぬということを一般論として言います。労働者の経済的利益の擁護のためという目的の範囲を労働運動は越えてはならぬといわれておりますけれども、たとえばアメリカのような資本家のもうかつている企業体、これでありますと経済闘争をもつて、多くその目的は達しますけれども、ただいま参考人の陳述もありましたように、国の経済政策それ自体というか、政府の経済政策の誤りのために企業それ自体が立つて行けないというような場合には、勢い政治の貧困を責めるとか、あるいは政策の転換を求める、さらに進んでは内閣の打倒を叫ぶというような政治ストに移行するということは、これはわが国の状態としてはやむを得ぬことだと思います。私は、名目を経済闘争にかりて、初めから政治闘争をもくろんでおる一部の労働運動の不健全性はあると思うけれども、ただいまの岩屋炭鉱の問題等においては、実に経済闘争だけでは問題は解決しないという重大な根本的な問題を含んでおると思いますが、労働省のそれに対する御見解はいかがですか、承つておきます。
  54. 中西実

    ○中西説明員 問題は非常に大きな問題でございまして、私どもから答弁するには、あるいは適当でないかと思つております。ただ、日本の経済からいたしまして、どうしても一度は通らなければならない道ということで、この基本の政策につきましては、われわれとしても十二分に協力し、これができるだけ摩擦少く運ぶように考えて行かなければならないということで、労働省としましてもいろいろと考えておるわけでございます。こういう事態につきまして、労使関係も大きく転換いたして来ております。終戦直後以来今日までのような、ああいつた労働運動から、ほんとうに地道な、しかもほんとうに労働者の実生活というものを直視しての運動に切りかわらざるを得ない状況に来ておると思うのであります。失業関係その他の問題につきましても、それぞれ所管の局におきまして、今年度のそういつた政府の大きな経済政策につきましてはこれを是認し、協力するという意味で、諸般のできるだけの対策を講じたいと考えております。
  55. 稻葉修

    ○稻葉委員 ただいまの労政局長の御答弁では、私はまことに不満である。そういうことで、差迫つた今日のあふれ出んとする失業群を救済することはとうてい不可能だと思うのです。職業安定局長は、昨日経済審議庁において失業問題に対する対策を御協議になつたと聞いておりますが、その協議の結果、どういう対策を持つておられますか承つておきたい。
  56. 江下孝

    ○江下説明員 お答えいたします。経済審議庁で、現在労務対策連絡協議会を設置いたしまして、各省が集まりまして、デフレ下の労働問題につきまして、いろいろ相談しておることは事実でございます。しかし、今日までまだはつきり確定した内容のものがございませんので、今ここでまだ申し上げる時期ではないと思います。  なお、先ほどの失業問題につきましてのお話でございますが、労政局長も申し上げましたように、今のデフレ経済を推進して行くためには、どうしても失業者がある程度発生するということはあると思うのであります。私どもの立場といたしますれば、できるだけ失業者を出さないでこのデフレ経済が運営されれば、一番望むところでございます。現実の問題として、いろいろ失業者の発生の防止をやつておりますけれども、どうしても今の経済政策のもとでは、発生して行くということも避けられないと思つております。そこでこれに対しまして、再々申し上げておることでありますけれども、もちろん貧弱な国家の予算でございまするので、なかなか十分のことはできないのでございますけれども、しかし最低生活はぜひ保障してやりたいという方針をもちまして、現在公共事業への労務者の吸収ないしは失業対策事業の機動的な運営実施という面につきまして、重点を置いてやつておるわけでございます。
  57. 稻葉修

    ○稻葉委員 職安局長の御答弁もきわめて抽象的で、私は不満足です。炭鉱の問題については、かねて昭和二十四年当時、自由党第二次吉田内閣ができるころ、いわゆる自由経済ということを標榜しておりましたために、臨時炭鉱国家管理法を二十五年に廃止いたしました。あのころ私どもは、これを廃止して自由放任に移行したならば、必ず将来は大きな問題を起す、ことに中小の炭鉱に大きな失業群が出ることをおそれて極力これに反対したが、とうとうこれをやつてしまつた。しかも、その当時反対の理由一つとして、これ以上石炭が値上りしては困るということを言いましたところ、政府側及び業者側の一部からも、これを自由にやらしてくれれば、必ず石炭の値段を下げてみせると言つた。ところがやらしてみるとどんどん値段は上つて来てしまつた。ことに近ごろ中小企業においては救済々々というけれども、大企業においては、少くとも経営者側は割合に頭が社会化されておる。労働者の住宅の問題や医療施設の問題や、そういう点で比較的中小企業と比べて行き届くのだけれども、中小企業経営者というものは、少しもうかると、先ほどの写真にもあります通り、労働者の住宅の問題のごときは実に豚小屋にひとしい。しかるに経営者の邸宅を写真にとつたのを見ますと、でんとしたところに住んでおる。そういうふうに、自分経営能力の社会的な義務という観念は非常に薄いようです。そういう状態にあるのだから、レツセ・フエアをやつたならば必ず問題を起すということで、私どもは極力あの臨時炭鉱国家管理法の廃止をやめよう、法律を廃止してはいかぬということを言つたのだけれども、聞かないでやつて、こういう事態になつた。そこで今度はあわてて、一昨年あるいは昨年来、コストの引下げ、経営の合理化、そういう旗じるしのもとに縦坑を掘れということを言い出した。なるほど経営は合理化され、きわめて能率が上りますからいいですけれども、大きな資本を持つておる大炭鉱はいいが、中小の炭鉱は、そういうことをやろうと思つてもできない、そのまま旧態依然たる経営方針をやつて行かざるを得ない。従つて企業の方面ではどんどん経営を合理化し、能率化して、ある程度安く掘ることができるけれども、中小の炭鉱では、そういうコストの引下げは不可能であるということから、圧迫されて、どんどん滞貨を生じた、こういうことになつたわけでしよう。これはお認めになると思う。そうして今日すでに先ほど参考人の陳述の通り、単なる会社内部、企業それ自体内の労使の協調をどこまでやつても、それだけでは解決しないところまで来た。この際中小企業庁の長官もおられるが、私どもは一昨二十六日、通産大臣及び大蔵大臣を訪問いたしまして、今日の緊急経済対策に関する要事事項を三十二項目にわたつて申入れをいたしております。この中には労働問題も入つておるので、労働省側もすでにお聞きになつておると思うが、ただいまの労政局長及び職安局長の御答弁はきわめて抽象的で、差迫つたこの大きな失業問題について、われわれを納得翼しめ、労働者を安心せしめ、わが国の経済の安定自立に資する具体的方策を示していただけないということは、私はきわめて不満です。  この際基準監督局長が見えておられますから、続いてわれわれの労働基準法に対する一つの考えを持ちつつ御質問したいと思う。わが国の労働基準法につきましては、少しく理想にすぎるところがあつて、ことに中小企業に対して、これをそのまま適用したのでは、少しく経営者側が経営困難に陥る部面がなしとしない、私はこう見ております。ILOの決議による労働基準というものは、会議の性質上、どうしても理想的最高のところを決定しがちであります。従つて各国の経験ある労働組合の代表者たちは、これを国に持ち帰つて、その国の労働立法をなす場合には、ある程度そういう理想案を緩和して、その国の経済の実態に即応した、少し低次なものを立案しておるのだけれども、わが国の労働基準法は、ほとんど過半数の各国の承認していないようなきわめて理想的なものを規定してしまつたために、なるほど一見労働者の利益をはかつているようだけれども企業それ自体の維持が困難なために、かえつて失業者を出し、結果としては労働者のためになつていないというような実情も存するように思いますが、この点は当該担当官として、あなたはいかようにお考えですか、承りたいと思います。
  58. 亀井光

    ○亀井説明員 基準法の根本の問題につきましてこの御質問であります。言うまでもなく労働基準法は、国際的な労働条件の水準というものを一応考慮に入れまして、その考慮の中において日本の実情にどういうとかうに合せて行くかということを考えまして、われわれとしてこの法律の運用をはかつておるわけであります。事が国内だけの問題で片づきますものであれは、国内だけの処理で片づきますが、問題は労働条件というものは、公正な競争をするという国際信義の上から申しますと、国際的な労働条件の水準というものが一応確保されることが、やはり将来の日本の貿易伸張のためにも、基本的な問題としては大事な点ではないかと思うのであります。そこでそれと日本の現在置かれております実情との調整をどういうふうにはかつて行くかということが、われわれ運用の面において絶えず苦心をしておるところでございます。特に中小企業を九〇%以上、あるいはそ、れ以上の割合で持つております日本の宿命的な経済構造の上におきまして、現在の労働基準法のあり方がいかにあるべきかという問題につきましても、絶えず検討を加えておるのであります。基本的な労働基準法の持つております精神、使命というものからはずれずに、しかもまた、国際的な労働条件の水準というものからはずれずにわが国の自主性にどういうふうに合せて行くかということについて、各方面からの御意見等も参照しながら日夜検討いたしております。最近、御承知のように、七月一日から労働基準法の施行規則、女子年少者労働基準規則、技能者養成規程この三つの省令の改正を実施いたしましたのもそういう趣旨のものでございまして、それぞれ実情に合せ、また実情に合せるだけでは労働基準法の使命あるいは目的の達成ができないので、その調整をもはかりながら、われわれとしてはステップ・バイ・ステップで、段階を追いまして、この問題の処理をいたして行きたいと思います。
  59. 稻葉修

    ○稻葉委員 そういたしますと、労働省としては、つまり政府としては現行労働基準法の中小企業に対するある種の適用の緩和ということを考えている、こういうふうに理解してよろしゆうございますか。
  60. 亀井光

    ○亀井説明員 法律の内容につきまして絶えず検討いたしますることは、われわれ行政官としても大きな責務でございまして、各方面から出ておりまするいろいろな意見を参考にいたしまして、絶えず検討をいたしております。中小企業の問題は、特にわれわれとしましても重点を置いて検討をいたしておるところでございます。先般の施行規則の改正の中で、物の販売、配給、主として商店のたぐいでありますが、従来十人未満の労働者を使用しまするような商店の事業につきましては、八時間労働制の例外として、九時間労働制かとられて来た。それにつきまして実態の調査をしました結果、九時間労働制が適当であるという結論が出ましたので、三十人未満の商店等につきましてもこの制度を拡大したような次第でありまして、われわれの検討の重点が中小企業労働基準法との調整をどういうふうにはかるかということに重点を置いて検討を進めておる次第であります。
  61. 並木芳雄

    ○並木委員 関連して……。今まで同僚稻葉委員質問を聞いておつたのですけれども、それに対しての政府の答弁は、まことに皮を隔ててかゆいところをかいているような感じで、ほんとうにピンと来たい。そこで私は単刀直入に、具体的にこの炭鉱の問題についてお聞きしたいのです。政府としては、つぶれてしまつてもかまわないというのですか。今までの話を聞いておわかりでしようけれども、この炭鉱がどうにも救済ができなくてつぶれてしまつてもしかたがない。一度はこういうところを通るものだという覚悟をきめておるのですか、そこのところをひとつ伺いたい。
  62. 斎藤正年

    ○斎藤説明員 現在のような自由経済の建前でありますと、どこの石炭をどこにどのくらいの価格でということにつきましては、別に政府の方で干渉しておるわけでもございません。ただ最近全体の趨勢として、出炭に対して引取りが一割ぐらい下まわつておりまして、貯炭が累次増加しておるような情勢でございます。従つて、できるだけ現在の使用量に対しまして余裕のあるところでも、資金的に余裕のあるところ、たとえば電力会社でありますとか、国鉄でありますとか、そういつたところには、将来の使用に備えて引取りを促進してもらうようにいろいろ申入れをしておる次第であります。
  63. 並木芳雄

    ○並木委員 どうもとても焼石に水という言葉があるけれども、そういう言葉では表現のできないような状況じやないでしようか。現に先ほど参考人の御意見の中に、具体的の対策が出ておるのです。農林中央金庫があすこで土地を買いたい、会社との間で内約東、内交渉ができておつたように私承つた、これをやつてやればいいじやないですか。そういう約束ができておつたならば、その約束に基いて買つてやれば、一つの炭鉱がりつぱに息を吹き返すというのですから、そういうあつせんを政府の中で、皆さんが、親心をもつてつて行くところに、ほんとうの生きた中小企業対策、中小炭鉱対策というものが出て来るのじやないでしようか。そういう声を今までもちろん聞いておつたと思いますけれども、政府はどういうふうにこれに対処して参つておるのですか。聞きつぱなしですか。農林中金の方へ何とかしてやつてくれとか、声をかけてやつたことがあるのですか、その点をまず私お伺いしたい。
  64. 斎藤正年

    ○斎藤説明員 具体的な農林中央金庫のお話は、われわれの方の所管ではございませんし、私も今まで存じておりませんので、何ともお答えのしようがないと思いますが、今申し上げましたように、現地におきましては貯炭の引取りなりあるいは金融なりに、現に通商産業局長が特に石炭関係は重点を置いてあつせんするようにいたしております。現在の経済情勢では、先ほども申し上げましたように、政府としてはみずから資金を持つているわけではございませんし、権力を持つているわけでもございませんから、これはあつせんの程度を出ませんけれども、そういうことはできるだけやる。なお現在一番問題の点は、金融関係であります。金融関係で安心して炭鉱に金を貸すようにするには、今どうしたらいいかということでございますが、その方面は、こういう炭鉱はこういうふうにやれば立ち直ることができるのだというところをまず調べて、それでこの炭鉱はこういうふうにやつて立ち直る計画を持つているのだから融資をやつてくれ、そういう形で金融問題を取上げるのが一番正式なと申しますか、一番効果のあるやり方じやないかと思いまして、今年度の一これは中小企業庁の方の所管でありますが、企業診断をできるだけ中小炭鉱によけいにやつてもらいたい。それの診断のついたものについて、はつきり更生の対策の立つたものにつきましては、農林中金なりその他に対して融資のあつせんをするように今準備しております。
  65. 並木芳雄

    ○並木委員 土地の問題について局長は、それでは今まで聞いておらなかつたという答弁ですけれども、聞いておらなかつたとすればしかたがありません。きようは聞いたんですから、今の答弁に従つて、これは何か中央金庫の方へ至急あつせんをしていただきたい。具体的にそういうところから救済して行かなければ、どうにもしかたがないと思う。  それから金融々々と言われますけれども、金融の方ではそれぞれ今まで手を尽してやつていると思います。それがなかなかめどが立たないからこそ、こういう最後のところへ追い込まれたわけなんです。それを政府として、やはりよく調べましてというのは、ずいぶん私は怠慢だと思う。各地で今まで中小炭鉱というものの危機が叫ばれておつたんですから、当然今までその調査が進んでおらなければならなかつたわけなんです。従つてその対策の一つとして、土地を農林中金に買つてもらえば、それで息を吹き返すのだというようなことも、ほんとうは知つていなければならなかつたわけです。しかし、私はそこまでこの際追究することはあとまわしにしまして、とにかく、さしあたりそういう対策があるものなら、今局長の言う通り至急あつせんの労をとつていただいて、そうしてできれば買い上げてもらうというふうにしてもらいたい。これは投資ですから、土地を買つておくのですから、別に農林中金がむだ使いするわけじやないでしよう。それから今支店とか支所をつくることは、政府の方針としては躊躇しているということですが、将来だんだん発展してくればまた建築の許可も出るわけですから、その一挙手一投足迷つて、これこれをちよつとしてやれば息を吹き返すというようなものを、いかにも私は惜しいと思う。自由経済の下ではしかたがないとか、一度は経験するとかいうようなことは、大きな政策の根本問題であつて、これはわれわれとして別途に富内閣に警告を発するし、内閣打倒というようなところにまで持つて行くかもしれないが、これは別問題です。とりあえずその範囲内で救えるものがあつたら救つてやる、これはやはり当局がとるべき道であろうと思います。従つてもう一度最後に、あつせんの労をとつて炭鉱を救済するように全力を上げるということを、きつぱり約束してもらいたい。
  66. 斎藤正年

    ○斎藤説明員 われわれ通産省と申しますか、石炭局といたしまして、中小炭坑のうちで、合理的な経営をやつて何とか経営し得る炭鉱が立ち直るためには、われわれの官庁としてできる限りの努力をいたしますことは、さつきもお話申した通りでございます。ただ御存じのように、炭鉱は全国に八百ほどございまして、われわれの本省で全部の状況を詳細に把握するということはなかなか困難でございます。従いまして、今高倉の話もここで伺つたわけでございますけれども、こういう問題の第一線の仕事は、先ほども申しましたように通商産業局でやつておりますので、今お話を伺いましたので、この点現地の通産局に移牒いたしまして至急実情に合うようにいたして参りたいと思つております。
  67. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと石炭局長、今の長崎県の平田山の貯炭の状況ですが、会社の方は、それで労働賃金が払えるならばダンピングしてもいい、損な値段で売つてもいい、こう言つているのです。だから一万八千トンというものをあつせんしてもらつても、非常に強度な、しかもカロリーの高い粘結炭だそうですから、売れないわけはない。そういうものをあつせんし、今の並木君の御意見のようなことをすれば、一応山はつぶれないで息を吹き返すと思います。私も現地に行つて見まして、ほんとうに涙が出ました。ボストンバッグが百円で入質されておる。子供の雨ぐつなんか八十円くらいで入つておる。子供のかさも入つて、子供は雨にぬれているのです。現地はもう餓死寸前です。あの通りだつたら、ほんとうに暴動が起る。炭労が辛うじて押えておる。そういう状況ですから、これは誠意をもつて善処してもらわないと、たいへんな治安上の問題になる。これはまだ委員会でやつている間はいいのです。その間に治安上の問題になるということを私は現地に行つてしみじみ思いました。稻葉君。
  68. 稻葉修

    ○稻葉委員 ただいま委員長からも具体的な救済方法について御提案があつたようです。事はきわめて深刻です。先ほどあなたは並木委員質問に対する答弁の中で、金融の問題とも関連してということをおつしやつたようです。だからこそわれわれは、二十九年度予算の修正にあたつて、金融の単なる量的な圧縮は企業を滅ぼすものである、不急不要の企業設備や過剰または二重設備等、これらへの少いわが国の資金の流出を極力押えて、急速を要する、しかも労働問題の救済等になる喫緊な生産的な方面に資金がまわるようにするため、投融資計画委員会のごときものを設置すべきことを、予算の修正通過にあたつて、ここに当時の予算委員長も見えておられますが、国会側は圧倒的多数をもつてあの三条件を提案しておいた。それにもかかわらず、一昨日通産大臣、大蔵大臣を訪問いたしましたところ、それらの国会の決議を無視するというのか、怠慢というのか、そういう計画委員会の法案いよいよつくらなければいかぬかな、ぜひ必要である、そういうことを今になつて申しておるのけ、きわめて私は遺憾である、こういうように感じておるのでありますが、これらの点については、あなたはたまたま金融の問題とも関連いたしまして、こういう言葉をおつしやつたのです。現政府の怠慢をここで指摘しておきたい、警告を発しておきたいと思う。今後すみやかに、今からではすでにおそいけれども、やらぬよりはいいから、早急に、金融の量的圧縮にとどまらず、質的な規正をするために、具体的な措置を講じなければならぬと思う。政府側を代表して中小企業庁長官のこの問題に対する明確な御答弁を要求いたします。
  69. 記内角一

    ○記内説明員 事は中小企業だけの問題でありませんで、非常に重要な問題を含んでおるようでございます。ただ最近の金融の様子を見ておりますと、御承知の通りの金融の引締めの状態でありまして、新しい投資に向けるということよりも、運転資金にまわす金をどうするかということが中心になつてつておるようであります。従いまして、いわゆる設備投資について新しく金融をやつて行こうというふうなことは、当初考えられておりましたよりも比較的薄くなつて来ているのではないか。むしろ運転資金として必要なものを必要な方面に流させる方途を考えなければならぬのじやないかというふうに考えておるのであります。ただ運転資金の規正ということになつて参りますと、御承知の通り既存の企業はすべて運転資金を金融機関から相当多額に借りてまわしておる。これが現在引締められておるわけであります。これをさらに質的に考えて引揚げることになりますと、いわゆる不急不要産業の分を引揚げて来るならけつこうでありますが、緊要産業とも行きませんが、しかし不急産業でもないものが相当大部分を占めておるのであります。従いましてこういう方面の運転資金を引揚げるということも、これまたそういう大部分の産業をつぶす結果にもなるわけであります。緊要ではありませんけれども、ある程度必要な産業になるわけです。従いまして、押えるべきところとしましては、不急産業に対する運転資金ということになつて参ろうかと思うのであります。ただそうなつて参りますと、どの辺が不急であり、どの辺が必要であるかというラインがなかなかむずかしいのであります。従いまし似て、おそらくその方面に対して積極的な規正委員会ができるという段階までにはなつておらないわけであります。ただ私どもといたしましては、そういう委員会ができる、できないにかかわりませず、今申し上げた中小企業は、どちらかというと不急産業ではない、またいわゆる緊要産業ではないかもしれませんが、その中間段階にある企業が非常に多い。ところが、これがともすると抑圧されるおそれがある。もちろん中小企業にも設備資金は必要でありますけれども、それ以上に運転資金が必要であります。下手をしますと、むしろこれがよけいに抑圧されることにもなりますが、そういうことの起らないように、日限方面あるいは銀行協会連合会あたりにも申入れをしまして、そういう方向に動いてもらうように努力しておるわけであります。そういうふうな実情から考えまして、われわれとしては委員会のあるいは協議会のできるできないはとにかくといたしまして、実効を上げるように努力して参りたいというふうに考えておる次第であります。
  70. 稻葉修

    ○稻葉委員 端的に伺いますが、あなたはただいま私が申上げましたような委員会日本にできますことを望まれますか、望みませんか。
  71. 記内角一

    ○記内説明員 これはまだ諸般の事情を考慮して検討しなければなりませんので、さしあたりましては今申し上げたような方向で進んでおる次第であります。
  72. 稻葉修

    ○稻葉委員 まだ諸般の事情を検討中だと承りますが、そういうことではだめだと私は思います。すでに国会の意思は、そういう委員会を設置すべきものだというふうに決議をいたしておるのでありまして、それをはたしてその決議のような委員会ができることを望んでいるのか、望んでいないのか。まだ検討しなければならぬというような答弁では、はなはだ国会の権威にも関する。私は今の御答弁は非常に不満です。ことにあなたは中小企業庁長官として——われわれが今の項目をも含んだ問題について、通産大臣に申入れをしたときに、通産大臣は、これは同感である、急いで法案をつくらなければいかぬと思つておる、こう言つておるが、あなた自身が、多数の中小企業者をかかえておる行政責任者として、そういうものが必要であるかないか、諸般の事情を検討いたしますということでは、少しく御答弁としてはふざけていると思う。もう一度やり直していただきたいと思います。
  73. 記内角一

    ○記内説明員 御趣旨のほどもよく了承いたしまして、慎重に検討したいと思います。
  74. 稻葉修

    ○稻葉委員 中小企業庁長官ともなれば、属僚ではないと思うけれども、しかし問題は大きいというなら、委員長、いずれわれわれ労働委員会としても、単に日本の労働問題というものは、労働問題だけとして解決さるべき問題ではなくて、金融政策とも関係し、あるいは広汎に全体の内閣の経済政策とも密接に関連する問題でありますから、大臣を呼んで、その点各省間に緊密な連絡をとりつつ、差迫つた失業群の救済を初め、近江絹糸等のあのわが国労働史上珍奇な事件についても検討をして行きつつ、現政府に総合的な計画の樹立を要望したいと思います。  私の諸君に対する質問はこれで終りますが、最後にただ一点、昨日の近江絹糸参考人の陳述、委員のこれに対する質問応答、さらに委員労働基準局長に質問したのに局長が答えられた中に、基準局として労働基準法の適用上非常な怠慢があつたように思いますから、この点について一言お尋ねをいたします。これは委員からも質問されたことでありますが、あなたは昨日の答弁で、基準法の適正な適用が近江絹糸の労働関係について行われておるかどうかの調査に行つた際に、工員の多くは口を織してその実態の調査に応じてくれない、それがために実態上の証拠があがらないために、これの刑事問題としての処理ができなかつた、こういうことをおつしやいましたが、その通りでございますか。
  75. 亀井光

    ○亀井説明員 昨日も御答弁申し上げましたように、近江絹糸につきましては、他の工場、事業場と違いまして、特別な関心を持ちまして監督を実施して参りました。従いまして、監督の実施の結果におきまして、法律の違反のございます事項については、行政命令によつてそれぞれ是正もさせて来ております。たた同じ通反が瞬間的な間隔を置きまして繰返されて来ております。従つてこれらの違反に対しまして、最後のきめ手としてわれわれが行い得ます権限の行使といたしましては、司法処分があると思います。司法処分につきましては、昨日も申し上げましたように、従来労働者の供述がとりにくいために、証拠固めに非常た困難を感じました。従いまして、過去におきまして五件だけ司法処分としただけでありまして、さらに過去におきまして労働者の供述が十分得られましたならば、これ以上の司法処分が行われたのではないかということを私申し上げたのであります。
  76. 稻葉修

    ○稻葉委員 監督署の官吏が行つていろいろ調べるけれども、しやべつてくれないということに非常な問題があるということを気づきませんでしたか。ここに昨日委員長から配付された資料のうち、全国繊維産業労働組合同盟が出した「近江絹糸争議経過記録」というものがあり、本日は労働者が提出した「近江絹糸紡績株式会社の労働争議概況」という資料をいただきましたが、その中には組合側の要望事項が二十二項目あります。この中に、十六、密告者報償制度、尾行等一切のスパイ活動及びスパイ活動強要をやめてくれという要望事項がございます。こういう要望をしなければならぬような密告者報償制度、尾行等があつたのですか。労働省としてはそういう事実があつたことをお認めになつておるのですか、どうですか。
  77. 亀井光

    ○亀井説明員 過去におきましてそういう事実のあつたことについては、承知いたしておりません。
  78. 稻葉修

    ○稻葉委員 労働基準局から監督官が行つて、いろいろ労働者の擁護のために、労働条件が悪いのではないか、深夜業はありませんかと聞いたその親切な問いに対して、労働者側が口を織して言わないというようなことは、ほんとうに親切ならば、はつと気づいて、これは何か会社側から圧迫があるのじやないか、経営者側から強烈な圧迫があるのじやないかということを気づいて、基準法上の権限があるのでありますから、もう少し親切に調べてやるべきにもかかわらず、今日においてなおかつ基準局長がそういう事実のあつたごとを承知いたしておりませんというのは、調べた結果、事実がなかつたという意味ですか。
  79. 亀井光

    ○亀井説明員 それらしいうわさは聞いておりますが、これに対して的確にそうであつたということについての事例を私は存じませんということを申し上げたのであります。  なお、調査にあたりまして、供述等をとる場合に、親切味が足りなかつたのじやないかというお話でありますが、これにつきましても、供述をとります際に、われわれとしてその労働者に、十分あなたが真実を申し立てても、これに対しては何ら会社側にあなたが不利益にならないように、名前も秘するし、またその内容についても絶対に秘密にするというような条件をつけ、供述をとるのでございます。従つてそういう点につきましては、労働者に十分納得させて、労働者に不利益か来ることはないということを確信を持たせ、供述をとろうといたしましても、過去におきましては十分な供述はとれなかつた。ただ行政命令でございますと、そういう物的あるいは参考人と申しますか、そういう供述がなくても、行政命令としては違反の是正はさせ得るわけでございますから、この点につきましては絶えず監督を繰返しまして、違反の是正をさして来ておるわけであります。
  80. 赤松勇

    赤松委員長 稻葉君、どうでしようか、近江絹糸の問題は、再び取上げることになつておりますから……。
  81. 稻葉修

    ○稻葉委員 私は改進党を代表して、委員長からの指名により、この炭鉱の失業問題と近江絹糸の昨日からの問題について、若干質問をいたしたわけでありますが、ただいまも申し上げました通り、単に近江絹糸だけの問題あるいは炭鉱だけの問題としてこの問題は解決しにくい。従つて各省間の関連事項と、しかも私の痛切に感じますことは、現在の日本の労働省の企画というものは、他の通産省あるいは大蔵省とか、そういう他の省の権限に属する政策事項と切離されている、それ自体あがいているというふうに強く思いますから、今後は大臣を呼んでわれわれはその点についての追究をしたいと思います。  本日はこれで改進党を代表してのこの問題に対する質問は終ります。
  82. 赤松勇

    赤松委員長 多賀谷君。
  83. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 問題がきわあて多岐にわたりますので、私は通産省、労働省、文部省、自治庁に対して、質問をしたいと思います。  まず石炭局長にお願いいたしたいのですが、先ほど稻葉委員からも御指摘がありましたが、一体総合燃料対策というのはできておるのかどうか。さらにその一環としての石炭対策は、政府はどういうように考えておられるのかということを質問したいと思うのであります。それは高炭価問題がとやかく言われましたが、今の状態で行きますと、高炭価問題は解決されないどころか、現在の炭鉱の実情は、私が申し上げるまでもないと思いますが、非常な安易な掘り方をしておる。現在デフレであり、売れない、コストを下げなければなりませんので、はつきり申し上げますと、とりやすいところから、しかも良質炭をとつておる。こういう状態でそのまま推移いたしますと、これが好景気に向いますと、当然高炭価として現われて来ることは必至である。こういう状態の中で、今後の合理化の問題をどういうようにお考えになつておるのか。さらにまた、貯炭はなるほどかかえております。私は、なるほど日本経済にとつて、これは莫大な貯炭であると思います。しかし、一体かような重要物資が、炭鉱が一箇月くらい争議をすればすぐ需要に影響がある、こういうことではこれはゆゆしい問題であると思うのです。どこかで貯炭を調整しなければならないというような点も、やはり考えられはしないかと思うのであります。あるときは余り、あるときはすぐ足らなくなる、こういう状態でま、きわめてこの基礎物資に対する政府の政策がないと思うのであります。労働者に対しましてはストライキ制限法ができましたが、経営者に対してもいろいろな面において何らか規制をする必要がないでしようか。たとえば融資の問題にしましても、先ほども指摘ありましたが、あるいは好景気の場合には私的にいろいろ金を使つておる。ある人のごときは一億円の邸宅を建てておる、これは事実でございます。こういうようなことでは、なるほどこの不況において会社はつぶれた、そうして従業員は全部解雇された、しかし社長、重役の個人の財産は残つた、こういう面もなきにしもあらずと思うのであります。こういう点を勘案いたしますと、われわれは投棄するということは、大いに賛成であり、合理化のために投資をし、炭価を安くしなければならないと考えますが、そういつた面に使われてはこれは非常に迷惑な話である、また良識をもつて良心的に行つておる経営者は非常に迷惑をこうむる話であろうと思います。こういう点についても、やはり何らか監査の必要はないか。あるいはまた強粘結炭の問題にいたしましても、御存じのように、日本の強粘結炭の産出は、非常に貧弱でございます。わずかに長崎の北松炭田のみが強粘結を産出する状態でございます。そのわずかに出ております強粘結ですら現在は売れなくて困つておるような状態である、外炭が入つて来ておる。なるほど灰分の問題もございますけれども、このわずかな資源で、ほとんど外国から輸入を仰いでいるような状態において、この貴重な資源が売れないというような状態では、私はこれば非常に困つた問題であると思います。局長は長崎の北松炭田にまわつて見られるとわかると思いますが、今は悲惨な状態を呈しておるのでございます。  さらに、重油の問題でございますが、なるほど上期は、重油の規制を昨年の五百三十七万キロに見合うように行つたという話でありますが、その実績はどういうようになつておるのか、また下期の重油の規制についてはどういうようにお考えであるか、こういつた点を総合的に答弁順いたいと思うわけでございます。
  84. 斎藤正年

    ○斎藤説明員 最初に通産省として総合燃料対策というものがあるかという御質問でありまようが、本年度の重油の消費を五百三十七万キロに制限するということを決定いたしましたことは御存じの通りであります。これもやはり、少くとも本年度におきましてはこれ以上の重油は、たとい需要がありましても入れないのだということをきめたわけでございまして、この燃料対策というものが、まずその程度において申しますか、そういう面からスタートしつつある状態でございます。ただ、この重油と石炭との使用分野につきましては、非常に複雑な問題がございます。これは日本の経済全体といたしましては、どうしても現状に比べまして相当に輸出を増加しなければならない状態でございます。それがためには、どうしても輸出品、特に鉄鋼でありますとか、あるいは硫安でありますとか、そういつた燃料費か相当大きなコストの要素を占めているものについては、国内産業の保護という見地と同時に、やはりコストの低減というものをはからなければならぬわけでありまして、どの辺がはたして適正な限界点でありますか、これは各現存使用しております設備のそれぞれにつきまして、具体的に決定しなければならない問題ではないかと思います。そういう見地で、今通産省といたしまして、重油を使用いたしております主要な工場につきまして、個別にどの程度まで重油を確保し、あるいはどの程度まで規制をすべきであるか、あるいはし得るかというような問題につきまして、今調査をいたしております。その調査ができますれば、まず少くとも対重油の関係は、ある程度長期にわたつて、見通しがつくのではないかというふうに考えております。  それから二番目の御質問は、投資の資金が経営者の個人的な利益のために横流れしているのではないかという御懸念から、それがために必要な監査をしているかどうかという御質問でございましたように思われます。現在政府資金として炭鉱に出て、おりますものは、直接には開発銀行の資金だけでございますが、開発銀行の融資につきましては、計画を立てますときに、こういう問題について十分検討を加えまして、そういうおそれのないところだけしか推薦をしておらないつもりでございます。なお開発銀行の融資につきましては、開発銀行自体といたしましても非常に厳重にその使途を監査しておりますので、少くとも政府資金に関する限りは、そういう問題はないと私は信じております。  第二番目の御質問は、強粘結炭、特に北松炭のお話でございますが、国内資源として重要なものがあるのに、輸入に圧迫されて非常に困つているが、それに対して政府はどういうふうな対策を持つているかという御質問のように伺いました。これは強粘結炭が製鉄用の原料として非常に重要なものであることは、いまさら申し上げるまでもないことでございまして、その点は石炭を所管しておりますわれわればかりでなしに、製鉄業者の方も十分承知しております。なおガス事業にも強度のコークスが用途によりましては必要でございますから、ガス事業の方も十分承知いたしております。ただ先ほどの総合燃料対策のときにも申し上げましたように、現在製鉄業につきましては、相当輸出をしておりますことは御存じの通りでございます。昨年も八十何万トンという輸出をしておりまして、世界でも鉄鋼の輸出国としては一流国にまでなつております。日本の鉄の高いことは、国内でも非常に問題になつておりますが、それを押してそこまでの輸出をやらなければならない状態でございます。しかも鉄鋼業につきましては御存じのように現在非常に不況のような関係もございます。また輸出につきましては、国際的な競争がございますので、国内に比べて非常に苦しい値段をしいられている面がございまして、鉄鋼業の採算の点につきましては、われわれとしても十分立場を考慮しなければならぬのじやないかというように考えられるわけであります。従つてどのくらいが強粘結炭として適当か、主として鉄鋼ですが、鉄鋼として規模が適当かどうかというのは、そのときの産業の状況にもよりますし、一概には言えないのでありますが、製鉄業者もガス業者も、この強粘結炭につきましては、戦争以来非常に世話になつているのでありますから、またもつと外貨が窮屈になりますれば、強粘結炭のお世話にならなければならぬウエートがふえて来るということもよく承知しておりますが、何分にも非常に苦しい状態でございますので、現在生産されますものを百パーセントにとるというところまでは行けないわけで、この問題につきましては、絶えず製鉄業薫りガス業者なりに、いろいろわれわれの方からも話をしているのでありますけれども、製鉄業者もガス業者も、この重要性をよく理解しているのでありますけれども、まだ完全にとるというところまで至つておらない。これは石炭業者の方も、なお一層コストを勉強いたしまして、できるだけ外国炭との差を縮めるように努力することが必要だと存じます。  それから五番目の、重油の規制はどの程度まで行われているかという話でございますが、これは私の方の何ではございません、従つて詳しい内容を私は存じませんが、四月五月がたしか四十五、六万キロの消費実績でございまして、規制が実質的に効果を及ぼし出したのは六月分でございます。六月分は三十八万キロだと思います。それが大体五百三十八万キロの計画の線に乗つているようでございます。  大体御質問の趣旨に対しましては、以上のようでございます。
  85. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  86. 赤松勇

    赤松委員長 それでは暫時休憩いたします。     午後一時十二分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  87. 赤松勇

    赤松委員長 休憩前に引続き再開いたします。  この際お諮りいたします。近江絹糸関係につきまして大阪本社の高村茂君を仲川参考人にかわつて参考人として追加したいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なければさよう決します。     —————————————
  89. 赤松勇

    赤松委員長 最初に従業員側の各工場別の実情の調査を行いたいと思います。まず大垣工場から始めたいと思います。大垣工場の内田君、それから菅家君ですね。——それではあなたたちの要求項目に従つて、以下陳述を行つてもらいたい、こう思います。  まず要求の第四まではわかるのですけれども、第五のタイム・レコーダーの即時復活、残業手当の支給、賃金体系の確立という要求があるのですが、残業手当の問題はどうなつておるか、あるいは賃金体系の確立という要求は
  90. 内田秀雄

    ○内田参考人 残業手当また賃金体系の確立ということがありますが、賃金体系といいましても、はつきりと全体的に初めのときに年に三回上るとか、次続けて上つて行くというようなことは、募集の際には言われますが、実際に人づて来ますと、初めに上りますのは三箇月で、すぐ上ります。それから一年目のときには大体上つて行くのですが、二年目になりますと、半年に一ぺん、三年目になりますと、一年に一ぺん、三年過ぎますと、いつ次の昇給があるのやらもわからない。また昇給の率にしましても、最低が二円から六円までで、つい最近になりまして、やつと最高が八円になり、最低が三円に上つたわけです。その割合は一、三、五、一の割合にわかれておるわけであります。それで三年ぐらいになりますと、すでに相当の人数が減つてしまうわけです。三年たつて残るような者は、初めの一割の一の一番上の特項、そういう級の者が残るわけです。次に上るときには、そのうちからまた一、三、五、一の割合になるわけです。そういうわけでありまして、極度に昇給の人数が制限されるわけであります。それで、いつになつたら自分たちの給料がどれだけ上り、どれだけ保障されるかというようなことがわからず、またこれなら何年問待つてもしれたものだ、そういうような気持になつてやめる者も相当多いわけです。それらのことを詳しく聞こうと思いましても、なかなかはつきりは説明してもらえませんし、また残業手当のことでも、請求書を出せばもらえます。しかし、それが遅れていたり、またその次の月の給料の支払いのときになつてももらえないようなときもあるわけです。それらのことを請求しましても、別に伝票が出てないというようなことが相当多くあるわけです。また残業するにしましても、はつきりと初めに年齢の掌握その他ができずに残業をやつてしまうような場合があるわけです。そういうような場合に、やむを得ずやつたのだから、この分については支払いをしてほしいというようなことを言いますけれども、年齢が残業できるだけの位置に達していない者が残業をやつたのだから、そのようなことは禁止しているはずなんだということで、そのままお流れになるようなことがあるわけです。また残業はしたくなくてもやらざるを得ない状態が非常に多いのです。きよう中にこれだけやらなければならない、あす中にこれだけやらなければならない、あさつての仕事はこれだ、そういうことになりますと、それだけやり切れない場合があるわけであります。そうすると、好むというわけではないのですけれども、その責任を問われることによつてやらざるを得なくなるわけです。そのような場合、伝票を出そうと思いましても、それは君らがかつてにやつたのではないか、そのくらいのことをやることは君の責任だ、そういうふうに言われるわけであります。それで一応残業はすることになりますが、それが君の責任だ、よその十大紡を見てみろ、あれだけの君らの何倍もの仕事をしているじやないか、君らは給料が安いと言うけれども、仕事もしていないじやないか、そういうふうに言われると、残業してまでも仕事をやりますが、それを請求する気持にはなれなくなつてしまいます。そういうことが非常に多く、残業をするというようなことは普通のようなことになつてしまつているわけです。だれしも近江絹糸へ来ると、初めは奇異に思いますが、それが、いかにも近江絹糸はこれでなければいけないのだ、そういうようなことになつて、いわゆる泣寝入り的なものになつてしまうわけです。それらのことを外へ訴えようと思いましても、また監督署その他から来られましても、いつもたいていの場合、事前にわかるわけなんです。そうすると下の者に対しては、監督署が来るからこういうことを聞きに来るかもしれない、そういうときにはこういうふうに答えなければいけない、会社の不利になるようなことは言うものではないと言われます。  特に社長などが強調しました点は、家族制度的なことを言うわけです。つまり会社というものは一つの大きな家庭の延長にすぎない、社長は一家の家長である、おやじなんだ、だから社内において多少まずいことがあつても、それをよそへ言いに行くようでは、その家というものはいつまでたつてもよくならない。そのようなことを言つても、だれも認めてくれる者はいない、何と乱れた家だろうということになる。また自分の家であれば、多少の仕事をよけいすることは当然ではないか、そういうようなことを言われるわけであります。それで、しいて伝票を出せば出せますが、出せないような、出すのがはずかしいような状態になつてしまいます。大垣の場合、また私が彦根におりましたときにも、以上のような状態であつたわけです。
  91. 赤松勇

    赤松委員長 菅家参考人、今内田君が言つた通りですね。
  92. 菅家泰子

    ○菅家参考人 はい、そうです。
  93. 赤松勇

    赤松委員長 それでは次に要求第六項目の退職金、それから旅費、宿直費、こういう規定を新しく設けろという要求ですけれども、これはなかつたわけですね。この点についてどうなつておるのであるか……。
  94. 内田秀雄

    ○内田参考人 宿直手当としまして、普通工員ですと五十円くらいです。社員が宿直しますと、宿直の手当が八十円かそこらです。しかしこれらのことも、はつきりこ体系づけられておる共うな様子も星喜んし、われわれに知らせるというような態度も見られません。もちろんどこにも掲示はしてないわけであります。退職金にしてもどれだけたつたらもらえるかというようなことは、つい最近になつて、三年以上はもらえる、三年未満はもらえない、そういうことを聞いたわけです。三年未満の者でも何とかできないかということを言いましたところ、宝くじというものがあるではないか、あれは退職金をもらうかわりにあるのだ。ところが、その退職金と同じように言われている宝くじその他でも、欠勤が多かつたりするといけない、また超勤が五百円毎月やらなければ該当しないというようなことであります。退職金なら、超勤をしなくてもしてももらえるように思われるのですけれども、超勤をしなければもらえないというような状態があるわけであります。
  95. 赤松勇

    赤松委員長 わかりました。  それで今度は菅家参考人に聞きますけれども、有給休暇、それから生理休暇の問題、これは完全実施してくれという要求があるわけですけれども、この点はどうなつていますか。
  96. 菅家泰子

    ○菅家参考人 有給休暇のことですが、両親または兄弟の面会の場合でしたら、しぶくながらも百くらいはいただけるのです。それであとの場合の、からだの都合が悪いとか病気の場合でしたり、友達が面会とかいう場合には、有給は全然いただけないのです。それで人員が足りないとか、または仕事が追われているとか係長の方から言われて、有給は全然とれないのです。私の場合でしたら三年に一日で、及んなままだ全容とつていないというのが大部分です。有給休暇はほとんどがとつていません。  生理休暇も、こつちからからだの調子が悪いからというふうなことを言つて行くと、係長からいやな目で見られて、変な態度がとられるわけです。それでどうしてもみんながいやがつて、自然に有給休暇をとらなくなつてしまうのです。それで募集のころ、私たちがこつちへ入る前に、安定所からもいろいろな書類を見せられたときは、有給休暇または生理休暇は完全にとれると言われたのです。それが会社に来たら、一年たつて有給休暇をとれるようになつても、全然とれませんし、生理休暇もまた新入教育のときにとれるような話も聞いていないのです。そういうふうですから、みんなもまたとれると思つていないし、またとろうと思つても係長の方からいやな目で見られたり何かするので、それがいやさに、みんな自然ととらなくなつてしまうのです。有給休暇なども、友達が面会に来た場合に、やはり追い返すこともできないから、公休はとらないから有給をくださいとよく言う。そうすると、今は人が足りないから、または仕事が追われているからというような口実で、自然ととられないようになつてしまうのです。
  97. 赤松勇

    赤松委員長 それで君は今まで有給休暇や生理休暇はもらいましたか。
  98. 菅家泰子

    ○菅家参考人 いいえ。
  99. 赤松勇

    赤松委員長 もう何年働いているのですか。
  100. 菅家泰子

    ○菅家参考人 三年一箇月です。
  101. 赤松勇

    赤松委員長 その間もらいましたか。
  102. 菅家泰子

    ○菅家参考人 有給休暇は一日もらいました。生理休暇はもらつていません。
  103. 赤松勇

    赤松委員長 三年一箇月で有給休暇は一日、生理休暇は全然なし、こういうことですね。わかりました。  次に、食堂の完備、更衣室の新設、社宅並びに寮設備の改善充実等福利厚生施設を充実してもらいたいという要求が出ておるのですが、この点についてはどうですか。
  104. 内田秀雄

    ○内田参考人 宿直室の完備とか専門宿直者とか、そういう問題につきまして、大垣工場の場合は、他の工場に比べて一番恵まれていると言つていいくらいです。他の工場においては、後ほど述べますように相当ひどいのでありますが、大垣工場におきましては、宿直室もあります。しかし専門宿直者、専門掃除夫などがおりません。また寮の方の福利厚生というふうな面で、ある程度はできています。しかし福利的なものてあつて——会社はそう言うのですけれども、単にぶらんことか、すべり台とかいうふうな遊び道具であつたり、また部屋にしましても、一応きれいにはできています。しかしその中には相当多数の人数が詰め込まれているのが実情です。現在判明したところによりますと、十五骨に二十五人まで入つています。二十二人まで入つていたという出勤名籍などが、証拠書類として集まつております。きのうも申し上げた人がありましたが、部屋のぞうりとか名札をしまつたりするようなことは、いつものことで、監督署な一どが来るというようなことが伝われば、ただちにそういうふうなことをするようになつてつたのです。そのとき、われわれはおそ番でしたけれども、十時半に帰つて来た。帰つて来ると、女子寮の場合ですが、すぐ部屋がえが真夜中の一時ごろまで行われた。あす監督署が来るから部屋がえはその晩のうちにやれというので、畳数に合せようとして普通使つていない仏間、会議室である本館、またミシン室、割烹室その他、ありとあらゆる畳の敷けそうな部屋——もちろん和室などもそうですが、それに全部を収容したわけです。それでさらに足りなくて、前に社宅として使つていました外の寮——非常にきたないばらばらになつておるところで、非常階段もないのですけれども、一月か二月の間そこへ入れておいたような状況です。
  105. 赤松勇

    赤松委員長 専属の炊事係というのがいないのですか。
  106. 内田秀雄

    ○内田参考人 事理の炊事係はいます。
  107. 赤松勇

    赤松委員長 各寮。
  108. 内田秀雄

    ○内田参考人 各寮ではありません、一つの食堂でまとまつて食事しますから。
  109. 赤松勇

    赤松委員長 各寮専属の炊事係を置けというのは、どういうことですか。
  110. 内田秀雄

    ○内田参考人 これは本店の場合です。各工場においてはそれぞれの従業員——炊事係、炊事の部門がありまして、そこに何十人かいて、それを専門にやつております。
  111. 赤松勇

    赤松委員長 次に、仏教の強制反対という要求が出ておりますね。この点は強制されておる事実がありますか。
  112. 内田秀雄

    ○内田参考人 われわれが感ずる限りにおきましては、強制であると言い切れますというのは、社長がしつも言つています、仏教の信念で働かなければならない、そういうような面からも、察することができるわけです。つまり一日の、また一週、一箇月の間において、すべての生活面に仏教の問題が入つて来るわけです。女子寮においては朝出勤する前にそれを唱えたり、また退場のときにもそれを唱えます。工場に入れば仕事をする前に台に向つて手を合ぜたり、また自治会というような名のもとに——自治会というのは、何らそのものはないのですけれども、毎日出勤前、出勤後等に、普通の昼番の出勤時間ですと、七時半に全員が部屋に集まり、部屋長が床の間に机を並べてすわり、そこでいわゆる「鑑」と称する仏教を教え、正信念仏偶その他を書いたものであります。それには社憲その他のことがありまして、それを朗読するわけです。また毎週一回、女子の場合は木曜日、男子の場合は水曜日に仏間へ上りまして念仏をとなえ、「今日一日は」というようなことを唱えます。それに出席しない者については、相当厳重に取調べ、寮長、部屋長を通じてだれが出ていなかつた、どこへ行つてい恥かというようなことを追究します。男子寮の場合には連絡会という名で——そういうのを、女子寮では仏間と呼んでおりますが、そう言うと男子は非常にきらうので、単に連絡会という名で始めたわけです。それにしましても、われわれが出なかつたりしますと——よく押入れに隠れたり窓の外に行つたりしますが、それについても舎監がすべて知つていて、押入れをあけて出したり、へいの外に行つている者を呼び出したり、そんなようなことをすることがあります。男子の場合はある程度のがれますが、女子の場合は絶対強制的に出なければならないような状態であります。もちろんそのときには、男子も女子も外出は禁止されます。また男子の場合は、反省会という名のもとに、女子寮の夜の自治会というのと同じように、ある部屋に正座し、経文をとなえ、自分のその日のことを反省せよ、そういうことを言われます。また月一回は専門のお坊さんが来まして仏間に上り、社員も工員も全員が上るわけです。その前に、それが終るまでは食事を出さないこともたびたびあります。もちろん外出は禁止されます。その仏間において言われますことは、私が今まで六年間聞いたところによりますと、すべて現在に満足することが、すべてを感謝することが仏教のほんとうの心であり、幸福に達するということでありました。そういうことでわれわれは一応そのときは聞きましたけれども、どうも納得が行かず、陰ではぶつぶつ言つている者が相当あるわけであります。
  113. 赤松勇

    赤松委員長 それでぼくが行きましたときに、社長と前の社長の銅像が仏間のところに飾つてありましたね。
  114. 内田秀雄

    ○内田参考人 あります。
  115. 赤松勇

    赤松委員長 あれを拝むわけですか。——そして何かありますね。
  116. 内田秀雄

    ○内田参考人 「鑑」というのがあります。
  117. 赤松勇

    赤松委員長 きよう一日不平言いませんとか言つてみな誓うのが……。
  118. 内田秀雄

    ○内田参考人 「わが誓願」というのがあります。それは「今日一月過分の欲を起しますまい。今日一日腹を立てますまい。今日一日、愚痴、不平、不足を申しますまい。今日一日、うそをおしますまい。今日一日、人の悪口かげ口を申しますまい。今日一日、清い静かな心温い情、つつましやかな態度でくらしましよう。今日一日、人を憎みねたみますまい。今日一日、心身を害うすべての欲望から遠ざかりましよう。今日一日、食事は御仏よりのたまものとおもい、合掌礼拝して頂きましよう。今日一日、もろもろの御恩を思い、感謝のうちに過さして頂きましよう。今日一日、私の仕事におのれを空しくし全身全力をあげて尽さして頂きましよう。」こういうことを毎日唱えるわけです。
  119. 赤松勇

    赤松委員長 それから第十一の要求項目に夜間通学等教育の自由を認めよというのがありますね、これはどうですか。
  120. 内田秀雄

    ○内田参考人 夜間通学のことですけれども、初め募集して来るときは完全な学校があり、これは文部省からも認められているものである、完全な勉強ができるというような募集で来るわけです。しかし来てみますと、その設備は実に情ない状態で、大垣の分校の場合などは、文部省の検定を受けるときには必要な設備があるそうです。ところがそれができないというので、いろいろ机、図書、その他を彦根から持つて来るのです。それが終るとすぐそのままトラックで持ち帰つて行く。現在では非常に不備な状態であり、また授業にいたしましても、いわゆる仏間のある日、清潔整頓を来客の来る前にやりますが、そういう重要な清潔整頓のある日は授業をよします。そのために一定の一週間の授業内でも完全なことが行われず、他の学校と比べると相当学力が落ちるそうです。他の学校へ転校しようと思つた者が、どの程度のことが出るかと思つてその先生に聞いたそうです。ところが近江絹糸ならばどうせだめだろうから、白紙でもいいから出すだけ出しなさい、入れてあげましようと言われた。試験を受けましても全然わからない状態です。あとで聞きましたけれども、それより一学級ほど前の問題を出した。昨年すでに習つていなければならない問題を出したというのですが、大垣の学校に行つておる者にはそれがわからなかつた。実に残念だつた、きやしかつた、そういうことを言つておる。それで外へ出ようと思う者は、大垣の場合はそれほどでもありませんでしたけれども——多少ありましたが、他の工場においては転勤させられたりします。二年ほど前ですが、津工場から二十名ほどの者がまわされて来ました。そのほとんどが学生でした。学校へ行くために運動したがだめだつた、それで遂に大垣にまわされて来たということでした。それから私たち部屋長をしておつたときに、舎監が、今度津工場から来る者は会社の言りことを聞かない、しようがない者だから、よほど注意して各部屋に置いてくれ、各部屋に分散した方がいいという札つきだつたのです。しかし来てみますと、やはり学校に行きたい、学校に行くために闘つたのだ、しかしだめだつたということを聞いたので、会社が言つておることが何であるかということもはつきりわかつたわけです。
  121. 赤松勇

    赤松委員長 なお法務省から戸田人権擁護局長と斎藤保護局長が見えておりますから御了承願います。  それから結婚の自由を認めよ、別居生活を強制するな、これはどうですか。
  122. 内田秀雄

    ○内田参考人 私自身若年でありますので、はつきりと身に覚えもありません。大垣工場の場合も、若い者が多いので、直接感じておりませんが、私の知る限りにおいて、幹部の人たち本相当別居のままいることは事実であり、また若い社員にしても、結婚しようとしても、それだけの生滅が保障してもらえない、次から次へと転勤では話にならない、社宅のある工場と、ない工場とあるわけです。転勤が非常に多く、次から次にまわされても、社宅がなかつたらついて行けない。結婚するなとは言わないけれども、できないよりな状態であるということを聞いております。
  123. 赤松勇

    赤松委員長 次に要求第十三のハイキング、音楽、映画サークル等一切の入化活動を認めよ、これはどうですか。
  124. 内田秀雄

    ○内田参考人 これはハイキングその他のことについて、組合でやりたい場合でも。一応会社の承認を得なければならない状態です。また映画をやるにしましても、会社の意見を聞いて、会社が反対するものはやれないような状態です。また大垣の場合はその程度で非常に穏やかですが、それらの自由さえ認められていない工場もたくさんあるわけです。
  125. 赤松勇

    赤松委員長 要求第十四の労働強化を強制する各種対抗競技を廃止せよ、これはどうですか。
  126. 内田秀雄

    ○内田参考人 これが一番大きな問題であると思います。全工場同じでありますし、また現在第三組合、第一組合におる者でも、この競技をすることについては、全面的に反対しております。というのは、近江絹糸はかけ出しの工場ではありますが、規模において相当大きい。またそこで大紡績を追い越そうとするのが、社長らの意欲でもあるわけです。そのためには、相当の経験もいるわけですが、未経験者が非常に多いために、機械の整備その他についても非常にまずく、一流の線まで行くのは非常にむずかしいわけです。早急にそれらを上げるために、すべての面で競技ということが行われます。その競技は生産向上の競技、品質改善のための競技、清潔整頓の競技その他いろいろなことがありますが、あるときは工場対抗であり、あるときは寮対抗であり、あるときは各課対抗であり、各番対抗であり、それらのことが相次いで来るわけです。最近では毎月々々、次から次に、次は何の競技、何の競技と、すでにスケジュールがきまつておりまして、競技が追いかけて来るような状態です。それも単なる競技ならいいのですが、その競技のでき、不できによつては、自分たちの賃金、また首にも影響するほどの重要なものであり、その競技をさせられる以上は、何としても勝とう、勝たなければならないというのが、すべての人の気持であります。勝たなければ次のときどういうみじめな状態が来るかもしれない、どうしてもやらなければならないというところに、またこの目的があるのではないかと思うほどで、これによつて数多くの基準法違反その他のことが出て来たわけです。生産競技の面におきましては、時間外にまわさざるを得なくなつたり、品質競技のことでは、すべてごまかしをやらなければならないような状態に追い込まれるわけなのです。
  127. 赤松勇

    赤松委員長 菅家参考人にお尋ねいたしますが、要求第十五の信書の開封、私物検査の即時停止、これをひとつ具体的事実をあげて説明してください。
  128. 菅家泰子

    ○菅家参考人 私物検査のことですけれども、毎週一回、寮では所持品調査というのがあります。これは向うでちやんと用紙ができていて、そこに自分のこうりのものを全部、下着類に至るまでこまかに書き入れるのです。その書き入れた書類と自分の持つているものが合うかどうか、部屋の者を部屋長が調べて、それを寮長さんがまわつて来て調べるのです。それから一箇月に一回は、部屋長が一番上、座にすわつてあとお部屋の人が二列に並んで、その前に自分の下着類をみな並べて、その品物と所持品カードと合つているかどうか、舎監がまわつて来て調べるのです。
  129. 赤松勇

    赤松委員長 次に密告者報償制度、尾行等一切のスパイ活動及びスパイ活動の強要をやめてもらいたい、これが第十六の要求として出ておりますが、これをひとつ話してください。
  130. 菅家泰子

    ○菅家参考人 去年でしたか、あすは監督署の方が見えて、いろいろ生活のこと々聞かれるからというので、寮長さんたちを集めなさつたのです。寮主任の先生が、そのとき一人ずつ行かないで、全部一緒に行つたのです。そうして寮長さんたちが帰つて来たときに、自分はああ言われたときに、こんなふうに答えたかつたけれども、そこにいつも告げ口する人がいたので、自分はこういうことを言えなかつたということを聞きました。
  131. 赤松勇

    赤松委員長 それから外出の自由を認めよというのがありますね、十七に。この点どうですか、自由に外出できないのですか。
  132. 菅家泰子

    ○菅家参考人 普通お仏間で、今内田さんが申しましたように報恩行事のあるときは外出どめです。それから全繊の人たちが私たちに呼びかけるために見えているときなどは、映画とか娯楽方面のことをやつて、完全に外出をとめてしまいます。それから無断退社の人があつた場合は、そのお部屋の人全体が責任をとる意味において一箇月外出禁止になります。それで、外出の門限が八時になつておりますので、それに三回遅れた場合には、本人が一週間の外出どめにたります。あとはメーデー、それから十一月三日のときなどは、演芸会があるからというので外出をとめられます。
  133. 赤松勇

    赤松委員長 彦根のときに、外出禁止について、門限は午後八時で、それに遅れると、一週間外出を禁止されるということは事実であるかどうか。そうすると、工員さんの方で、門限に遅れると一週間外出禁止になる、それが苦しくて逃げ出したというので、部屋長の方から一箇月外出禁止をするということはほんとうですか。
  134. 菅家泰子

    ○菅家参考人 部屋長だけじやないのです。お部屋全体が一箇月外出どめです。
  135. 赤松勇

    赤松委員長 そのお部屋というのは、二十人から二十五人ぐらいおるのですか。
  136. 菅家泰子

    ○菅家参考人 畳十五畳に十二名から十五名おるときがありました。
  137. 赤松勇

    赤松委員長 その人が全部連帯責任で……。
  138. 菅家泰子

    ○菅家参考人 そうです。それで身分証明というものがあるのです。その身分証明を寮長が一箇月間取上げて、舎監のところに持つて行くわけです。身分証明がなかつたら外出はできないのですが、一箇月たつたら、きちんとまた返してよこすのです。
  139. 赤松勇

    赤松委員長 十八の、工場長に強制して行わせる月例首切反対、こういうのが出ておりますが、これは内田君から御説明願います。
  140. 内田秀雄

    ○内田参考人 ここにはこう書いてありますが、はつきり毎月首を切れ、そういうようなことは、私のような下つぱははつきり聞いておりませんが、とにかく毎月、工場合理化のために人員を最低に持つて行くというので、目標をつくるわけです。今月は各課において何割減らしてもらいたい、つまり今月は何人を出せ、来月は何人出せということを言われます。それでわれわれといたしましても仕事がやりにくくなり、競技など始まつた場合、非常に困るので出したくないのですけれども、割当だから出せ、十大紡あたりではこれだけの人数だし、やつて行けるはずだから、そこまで持つて行かなければならないと言われ、やるのが君らの責任である、当然やらなければならぬ任務であり、またやる気ならやれるのだと言われ、次第にその予定の人数を毎月出しているわけです。その人員は他工場へ転勤したり、津工場とか富士宮工場とか、増設の工場へ、人員を採用せずにそれをまわしたり、また管理課という従来なかつたものを設けて、相当古くなつた者ばかり集めたり、また美化班といつて掃除専門にやる方にまわしたりするわけです。そうでなくても、大体においてそういうふうに指名されて出されるというのが、その工場内の各課において一から百まで番号をつけるとすれば、やはり百から九十八までというふうに下から下からけずつて行くわけです。今まで自分は一生懸命やつて来たから、もつと認められると思つておつたような人でも、そういヶときになつて毎月々々何人かは、はつきりとその月の成績が悪い者だというふうになつて来るわけです。するともう戦々きようようとして、いつ自分が指名されて出されなければならないかというので、心配されて、われわれのところへも、私は大丈夫だろうか、そういうことを聞きに来る子もおります。そういうふうにレツテルを張られて出されると、自然にやめて行く者が相当多いわけです。はつきり首を切るというような形ではなく、大体においてすべて依願退職という形においてやめて行くわけです。
  141. 赤松勇

    赤松委員長 要求項目の十九、二十、二十一、二十二、これらにつきまして、簡単でよろしいから、一括説明してくださいませんか。
  142. 内田秀雄

    ○内田参考人 各課最低必要人員の即時補充というところでは、非常に少いところと十分いるところとあるわけです。それで、こちらで仕事をする面において必要だと思いましても、重役室において必要と認めないような場合、これくらいならやれるというようなことで一方的にけずられるときがあるわけです。大垣工場の場合、その数字ども私はわかつております。  重役たちの人権を無視した言動及び始末書濫発の禁止——重役室に入つて話をするというようなことも、われわれにはあまりないので、直接には多くのことを知りませんが、とにかく相当ひどいことを言つておるのは事実であります。今度争議が始まつてから、夏川工場長のところへ団交に行きましたときも、確かにそれらの事実があるということを感じました。というのは、工場長は、第二組合はどろぼうであるというようなことを言われた。どろぼうということを言われてはいやだから、事実があつたら言つてもらいたいと聞きましら、なかなか言わなかつたが、遂に言つたのです。それは食堂へ搬入するふが一きれ足りなかつた、またはんぺんが一きれなかつた、それは門でピケを張つている新組合員がとつたに違いない、だからどろぼうと言つたのだということを言いました。  また食事の件につきまして、自炊をぜよということを工場長が言つた。食堂があるのに、なぜ自炊をさせるのかと聞くと、あすこで食べると赤痢発生の危険があると言う。完全に炊事の設備があり消毒設備があるところでやつて何でいけないのか、寮でやればよけいいけないじやないかと言つたら、言葉を濁してしまい、さらに火災予防の点から見ても非常に危険だと言つたのですが、そのときには工場長を支持する第一組合の者が相当おつたが、それらの人がけがしたらどうするかと言うと、それはやむを得ない。けがをして、死んだらどうしますか。そんなことになつてもしようがない、お互いに気をつけなければいけないということを言う。あなたは人間よりも工場の施設の方を重視するのだが、あなたの大事な工場施設が、寮が焼けますよと言つたら、それはしようがない、焼いたら焼げたで保険金がもらえるようになつておる、そういうようなことを言う。こんなことは重役として、また会社幹部の地位にある責任者として言うべき言葉じやないと思います。  自動車部員の社内寄宿を廃止し社外寮に引移すことということですが、先に言いました通り、残業手当も確立されていない、就業時間も正確でなかつたりする、この問題については、少い人員で、工場にいれば、いつでも呼び出されてやらなければならないような状態で、休憩もろくにとれないような状態です。  自動車に対する傷害保険の即時加入ということ、自動車については保険がかかつているそうですが、人間については何らかかつていないそうです。また名古屋だつたと思いますが、会社の運転手が衝突をして自動車をいためたわけです。そのことについて、会社は払おうとせずに、その運転手であつた本人に損害の賠償をせよということを言つて、その何百万円かの金を本人が月賦で払おうと努力しているそうです。これは事実であり、後ほどはつきりと聞けば詳細がわかると思います。
  143. 赤松勇

    赤松委員長 他に何か発言したいことはありませんか。
  144. 内田秀雄

    ○内田参考人 何か特別に質問があつたらお答えします。
  145. 赤松勇

    赤松委員長 それでは次に中津川の早川ヒサ君、それから鈴木六郎君。  先ほど大垣の工場のことを聞いたのですけれども、この要求項目に従つて、こういう点は一緒だ、あるいはこういう点は自分工場では事情が違う、そういうことがあつたら言つてください、  まず第五から始めましよう。第五の残業手当の問題あるいは賃金体系の問題について。鈴木参考人
  146. 鈴木六郎

    鈴木参考人 ただいま大垣工場から第五項目について、大体説明されたようですが、中津川におきましても同じようなことがあります。残業手当の場合は、伝票を切れば手当はくれますが、事務所において工銭の方で忘れましたと言うので、すぐもらえないかということを請求しますと、来月にまわしてくれと言う。また来月に行つて、くれないかと言うと、また忘れたということで、しまいには全然支給されないという事実があります。  賃金体系の方は先ほど大垣工場の方から説明された通りであります。
  147. 赤松勇

    赤松委員長 第六の退職金や旅費、それから宿直費なんかの問題はどうですか。
  148. 鈴木六郎

    鈴木参考人 この問題も、退職金の方は、今まで全然支給されたことはありません。それ以外のことは大垣工場と同じであります。
  149. 赤松勇

    赤松委員長 やはり工員五十円、社員八十円というのですか。
  150. 鈴木六郎

    鈴木参考人 そうです。
  151. 赤松勇

    赤松委員長 第七はどうですか——これは早川参考人から聞きましよう、有給休暇、生理休暇の完全実施の問題です。
  152. 早川ヒサ

    ○早川参考人 中津川では、有給休暇は工場の忙しい限りは絶対とらせないということになつています。それでひまな場合だつたらとらせてあげると言いなさるけれども、ひまの場合は全然ないために、とる人はほとんどございません。
  153. 赤松勇

    赤松委員長 あなたは工場に何年くらいおられますか。
  154. 早川ヒサ

    ○早川参考人 六年八箇月くらいになります。
  155. 赤松勇

    赤松委員長 その間に有給休暇や生理休暇はとりましたか。
  156. 早川ヒサ

    ○早川参考人 生理休暇は一回もとつたことはございませんが、有給休暇は六年にわたつて十一日くらいとつております。
  157. 赤松勇

    赤松委員長 わかりました。  それでは、今度は鈴木君にお尋ねしたいのですが、第八の食堂の問題、更衣室の問題、社宅、寮その他福利厚生施設の問題、こういう問題はどうです
  158. 早川ヒサ

    ○早川参考人 福利厚生施設のことについて、去年の十月に集団赤痢が発生しましたとき、医者がございませんでしたので、近くに日赤病院がありますから、医者を呼んでくださいと言つても、外部へ漏れたら悪いから大垣へ電話をかけて大垣のお医者に来ていただくからと言つて、四十度にもなる病人を一昼夜と半日待たせました。それを見かねて、寮の人が外出をごまかして出て行つて市役所へ訴えました。それで市役所の方から保健所へ連絡して、保健所の人が調べに参りましたら、すぐ私たちに連絡して、病人を隠せと言つて仏間に百何名を隠してしまいました。     〔「仏間に百何人も入るのですか」と呼ぶ者あり〕
  159. 早川ヒサ

    ○早川参考人 入ります。ごてくに押し込めました。製品に親切とか機械に親切とかということは、ずいぶんしなさるけれども、私たちにはそういう親切は全然いたしません。
  160. 赤松勇

    赤松委員長 仏教の強制問題はどうですか。
  161. 早川ヒサ

    ○早川参考人 いろいろ工場の方にも連絡してあつて、仏教に出ない者は仕事も怠るとかいつて、給料なんかも上らなくなります。また仏教のある日は外出どめになります。
  162. 赤松勇

    赤松委員長 十一の点は大垣と同じですね。
  163. 早川ヒサ

    ○早川参考人 そうです。
  164. 赤松勇

    赤松委員長 それから十二の結婚の自由を認めよとか、別居生活を強制するなというのはどうなんですか。
  165. 鈴木六郎

    鈴木参考人 十二項目の結婚の自由、このことについては、先ほど大垣の言つた通りであります。結婚しますと、すぐ転勤とか転職されまして、一諸に生活ができない、別にされるということが強制されております。
  166. 赤松勇

    赤松委員長 十三のハイキング、音楽、映画サークル等一切の文化活動を認めよというのはどうですか。
  167. 鈴木六郎

    鈴木参考人 こういう点は、中津川では一切やつておりません。
  168. 赤松勇

    赤松委員長 十四の労働強化を強制する各種対抗競技というのはどうですか。
  169. 鈴木六郎

    鈴木参考人 十四項目の問題は、大垣工場で説明した通りでありますが、中津川の場合は特にひどいことになつております。この問題は、深夜に持台数増加競技という競技がありまして、その趣旨としましては、糸切れの減少をはかると同時に機械の調子を向上するといつて、一台持つていたものを二台にふやし、また三台にふやすということで、そのパーセントによつて賞品を出すという方法によつてその競技を行つたのであります。それ以外両競技ありますが、深夜の場合は十時三十分かつ朝七時十五分までやりますが、競技がありますと、上つて来てすぐ午前中くらい掃除をやらされます。それで十二時ごろ寝ても、やはり昼間ですから三時間ぐらいしか寝れません。そして十時半ぐらいから出勤するので、非常に仕事の能率が悪くなる。そういう場合にはやはり欠勤率も多くなるので、欠勤の多い場合には始末書をとるといつたような方法で苦しめて行つたというのが事実であります。
  170. 赤松勇

    赤松委員長 次に早川君にお尋ねしたいのですが、要求項目の第十五、たとえば信書の開封とか私物検査をやるとか、こういう点はどうですか。
  171. 早川ヒサ

    ○早川参考人 信書の開封については、私はまだ一度もやられておりませんけれども、友達で信書の開封をされている人があります。それから私物検査は大垣と同様です。
  172. 赤松勇

    赤松委員長 それから要求項目十六の密告者報償制度、これはどうなつておりますか。
  173. 鈴木六郎

    鈴木参考人 十六項目も同じく大垣の説明された通りでありますが、尾行等の一切のスパイ活動というのは、組合結成当時に、外出すると、すぐ会社側の社員に尾行されたという事実があります。
  174. 赤松勇

    赤松委員長 要求項目十七の外出の自由ということはどうですか。
  175. 鈴木六郎

    鈴木参考人 外出の場合も、やはり報恩行事といいまして、一週間に一回木曜日にあるのですが、そのときは強制的に仏教を強制するという面において外出を禁止します。それから近江絹糸の専従で体操の先生がおります。それは安生先生といいますが、その先生が来て二、三日教える場合は、外出をとめてその体操を強制的に教えるということがあります。
  176. 赤松勇

    赤松委員長 たとえば逃げて帰つたり門限に遅れたりするような場合、やはり大垣と同じように連帯責任でやられるのですか。
  177. 鈴木六郎

    鈴木参考人 はあ、それで始末書をとるということをやつております。
  178. 赤松勇

    赤松委員長 その場合全部の外出を禁止するというのは……。
  179. 鈴木六郎

    鈴木参考人 そういう場合も、夜は九時が門限になつておりますが、一分でも遅れると名前をつけられて、三回なら三回続けると始末書をとられる。
  180. 赤松勇

    赤松委員長 要求項目の十八から二十二まではどうですか。これは先ほど大垣の参考人のおつしやつた通りですね。
  181. 鈴木六郎

    鈴木参考人 十八項目の、工場長に強制して行わせる月例首切りというのは、先ほどの競技大会に持台数増加競技というのがありまして、それで今まで二台ずつ持つていたのが三台、四台になると、人が余つて来るのです。その人間は、管理課という課を置きまして、その方べまわされます。その管理課の仕事はどういう仕事かといいますと、雑役仕事でありまして、車をひいてものを運んだり、そういう外部の土方のような仕事をやらされます。それでどうしても自分でやめて行く。えらいからやめなければならないというふうに会社が圧力を加える、そういう方法であります。
  182. 赤松勇

    赤松委員長 わかりました。  それでは次に津の工場の実情調査をいたしたいと思います。池本正三郎君、それから北山香保里君。  やはり先ほどのそれに従つて要求第五から行きましよう。この第五の残業手当や賃金体系の問題はどうですか。
  183. 池本正三郎

    ○池本参考人 賃金体系の確立とまた残業手当の支給は、中津川、大垣と大体同様です。
  184. 赤松勇

    赤松委員長 第六の点はどうですか。退職盆、それから旅費、宿面費、こういうものの規定。
  185. 池本正三郎

    ○池本参考人 大体これも他の工場と同じであります。
  186. 赤松勇

    赤松委員長 それでは第七の有給休暇、生理休暇の問題はどうですか。
  187. 北山香保里

    ○北山参考人 大体これも中津川とが大垣工場と同じような現状です。
  188. 赤松勇

    赤松委員長 第八の点もかわりませんね。食堂の設備とか、更衣室の新設とか、社宅並びに寮設備の改善等、福利厚生施設の充実。
  189. 池本正三郎

    ○池本参考人 八項目の食堂の完備、それから脱衣場の新設、寮の設備、社宅並びに福利厚生施設の充実、これについて津の工場の場合は他の工場と少し違う場合があります。第一番に寮の問題ですが、これは自分らが昨年の六月から深夜業をやりまして——それは大体深夜番というものがやることになつております。そしてその寝ておる寮がどういう寮かといいますと、つゆになると、なめくじが出て来て、夜は寝られない。
  190. 赤松勇

    赤松委員長 寮へですか。
  191. 池本正三郎

    ○池本参考人 ええ。なめくじが出るだけだつたらいいが、地震があつたら倒れるような寮なんです。それで寝るときにはまつすぐに寝ておつても、朝起きるとき、また夜中に目がさめるときには、すみの方にころがつておる、こういうような寮であります。大体深夜番は百五十名くらいおります。それからまた別な寮は、豚小屋がすぐ前にあります。その豚小屋は寮よりちよつと高い所にありますが、雨なんか降ると、寮の前に豚のあれが流れて来るのです。そういう普通の状態だと住めないような所におります。また昼でも電気をつけないと、廊下なんかあぶなくて通れない。へびなんか出てもわからないというような状態です。
  192. 赤松勇

    赤松委員長 へびなんか出るのですか。
  193. 池本正三郎

    ○池本参考人 出ます。  それから今年できました新寮ですが、この寮の場合も、同じく廊下を張つたばかりでありますが、まだ波のようにでんでん、でんでんする。それから部屋の戸とか障子、こういうものもきちんと締まらなくて、大体上が一寸から一寸五分くらいあくような状態であります。全然防音装置というようなものができていない。
  194. 赤松勇

    赤松委員長 十一の夜間通学等教育の自由については同じですか。
  195. 池本正三郎

    ○池本参考人 これは大体他の工場と同じです。
  196. 赤松勇

    赤松委員長 北山参考人にお尋ねしますが、この要求第十項目の仏教の強制の問題と、それから十二の結婚の自由の問題なんかどうですか。
  197. 北山香保里

    ○北山参考人 仏教は私も強制しておるとしか思われません。他の工場と比べまして、同じような形態でありますけれども、やはり週一回必ず集合させるわけです。それは全部非番の方がやるわけで、結局出勤しておる間は絶対にやりません。先番でしたら五時から一時四十五分まで就業しますが、それ以後に帰つて来てから、からだが疲れてくたくたになつておるところを、強制的に上らせるわけです。仏間という百何十畳敷かの大きな畳の部屋がございます。そこに大きなりつぱた仏壇もございます。
  198. 赤松勇

    赤松委員長 十二の結婚の自由という問題とか、あるいは別居生活を強制するとか……。
  199. 北山香保里

    ○北山参考人 私たち工場におきましては、平場年齢女子で十七歳、男子で十七歳半です。だから、そこまで到達する人は少いと思いますけれども、別居生活になりますと、今までの例で行きますと、私の工場でありますれば工場長、それから事務部長、工務長なんか結婚をしております。但し現在では全部別居しております。
  200. 赤松勇

    赤松委員長 そうすると、これは大阪本社というのですか、それから東京支社というのですか、そういうところの問題が多いのですれ、おもに社員……。
  201. 北山香保里

    ○北山参考人 社員クラスの工場が多いと思います。
  202. 赤松勇

    赤松委員長 第十二の点は、これも各工場と同じですね。
  203. 北山香保里

    ○北山参考人 そうであります。
  204. 赤松勇

    赤松委員長 各種対抗競技はどうですか。
  205. 北山香保里

    ○北山参考人 それも同じ形態で、大体工場対抗でやる場合なんかは、会社全体が競つてやるわけですから、同じです。
  206. 赤松勇

    赤松委員長 あなたの方では、主としてどういう対抗競技をやらぜるのですか。
  207. 北山香保里

    ○北山参考人 糸切れ減少といいまして、私のところは紡績の力ですから、精紡におきまして糸切れ調査というものをやるわけです。だから一万錘についてどれだけ糸が切れるかということを対抗競技でやるわけです。糸が切れればそれだけ成績が悪い。そういう場合をあげたり、生産高の増進をはかるためにいろいろ競技をやる。
  208. 赤松勇

    赤松委員長 競技といつても、スポーツではないのですね。
  209. 北山香保里

    ○北山参考人 そうです。  もう一つの競技といたしまして、真剣週間とか、美化デーとか、いろいろ名前をかえてやる場合があります。それは工場内のおもに清掃に当るわけですけれども、真剣週間になると徹底的に社内、社外の外掃除をやるわけです。そうしてくもの巣一筋あつても、ガラス窓一枚曇つてつて、五点とか十点とかいうふうに減点して、審査員がまわるわけです。たからその場合、私たち工場の寄宿舎におきましては、労かをみがかすわけです。その廊下をみがく場合に、普通のぞうきんでみがくだけでは、とうていみがきがいがないわけですから、全部実費で一句十円とか二十円とか、少い給料の中からお金を出して、その油を買つて来て、部屋ごとに競争してみがくわけです。
  210. 赤松勇

    赤松委員長 それから信書の開封とか私物の検査、こういう点はどうですか。
  211. 北山香保里

    ○北山参考人 信書の開封は、私は一度もされておりませんけれども、よく聞いております。
  212. 赤松勇

    赤松委員長 私物の検査は。
  213. 北山香保里

    ○北山参考人 私物の検査は私は存じません。
  214. 赤松勇

    赤松委員長 十六の密告者報償制度なんかはどうですか。
  215. 北山香保里

    ○北山参考人 これはおもに労働組合運動とかやつた場合に何されるわけで、このたびの争議におきまして、いろいろ会社に信用のある人を、少しにらまれている人につかすということは、現にありました。
  216. 赤松勇

    赤松委員長 しかしそれは労働争議になつてからじやないでしよう。去年でしたか、本委員会から彦根へ調査に参りましたときに、女工員の人に来てもらつたが、ほんとうのことが言えない。あるいは基準監督署なんかにもほんとうのことを言いに行くと、スパイ制度になつてつてすぐ密告されるので、それもできなかつた。ぼくらにもほんとうのことが言えなかつた、こういうことを言つておりましたけれども、あなたの方の工場で、そういうものはないのですか。
  217. 北山香保里

    ○北山参考人 私も現に基準監督署から見えまして供述書をとられたことがあります。但しそのとき監督署の方は、え顔をもつて、あなたたちに不利な点がありましたら言つてください、会社側の方にはだれにも言いませんから、どんどんと有利なようにやつてあげますから言いなさいということを言われましたけれども、どういうところから聞えるのか、それはわかりませんけれども、言えばすぐににらまれるといいますか、そうい面で何されるから、正式の回答はできなかつたわけです。
  218. 赤松勇

    赤松委員長 外出の問題はどうですか。
  219. 北山香保里

    ○北山参考人 外出も他の工場とかわりありません。
  220. 赤松勇

    赤松委員長 その他側か発言したいことがありますか。
  221. 北山香保里

    ○北山参考人 御質問がございましたら、そのときに発表させていただきます。
  222. 赤松勇

    赤松委員長 それでは次は岸和田の中前研二君、鷲沢愛子君。  まず中前参考人から要求第五の問題について、かわりがなければかわらない、一緒だと言つていただけばけつこうですから……。
  223. 中前研二

    ○中前参考人 タイム・レコーダーのことについては、昭和二十五年に私が入社しました当時、もうすでにありませんでした。そして残業手当の方ですけれども、二十五年に入社して大体一箇年ほど手当をいただいておりましたけれども、非常に世の中が不況になつて来たということに対して、社長はまず重役の減俸をはかり、それに付随して社員の諸君の残業を遠慮してもらいたいということを、はつきり工場会議で言われて、その決定工場から私たちにはつきりと言われました。そして一般従業員の方の残業手当については、未成年者の場合は、先ほど言われましたと同じようなことでありますけれども、成年者でありましても、基準法にきめられました時間以上になつた場合に、それはかつてにやつたんだから支払えないといつて、はつきりと残業手当を支給しない。あるいはまた未成年者の場合であれば、これはもちろんだれがやらしたのだ、やらした者は始末書を書けといつて、私たちに逆に始末書をとるというようなのが、現在までの状態でありました。
  224. 赤松勇

    赤松委員長 要求第六、これもやはり他の工場と一緒ですね。退職金、これはどうですか。
  225. 中前研二

    ○中前参考人 退職金は、そうです。一緒です。
  226. 赤松勇

    赤松委員長 それから第七の有給休暇、生理休暇。
  227. 中前研二

    ○中前参考人 有給休暇でありますけれども、私の場合には、約四年になりますけれども、そのうち有給休暇は一度もいただいておりません。しかも公休日は月に四回は大体きめられているのですけれども、そのうち一回か二回だけはとることができますが、その次に続けて、次の週の日曜日であれば日曜日に公休届を出す。そうすると工場長、先週休んだじやないか、そういつて公休をとらせないように仕向けております。生理休暇については鷲沢さんの方から言つていただきたいと思います。
  228. 鷲沢愛子

    ○鷲沢参考人 生理休暇について申し上げます。その前に有給休暇ですが、これは、今のところ忙しい過渡期でありますから、一応ひまになつてから上けるからと言つて、くれないのです。一年中競技とかいろいろございましてその間にお流れになるということが往往にして多かつたのです。  生理休暇の点でございますが、生理休暇は女の病気でだれしもあることだから、病気の中に入らない。生理休暇で休むと、職務怠慢だというので、寮母の方からいやみを与えられる。ですから、生理休暇では絶対休めません。  それから病気の点ですけれども、病気で医師の診断をいただいていながらもその診断が会社側に対して認めてもらえないことが往々にしてありました。私も昨年の六月二十七日でしたけれども、超過勤務と深夜業をいたしましてからだの調子が悪くなり、医者に見てもらいますと黄疸と脚気でございました。一月半の診断をいただいてそれを寮母に出したのですが、医者はそれが商売である、その病名をつけるのが……。二、三人こういう診断書を持つて来ている。だれも一緒のことを書いているの、だと言つて受けつけてくれなかつたのです。ですから、その次も出勤したのですが、二時間ぐらいしますと耐えられなくなりまして、中退しまして、それから一月半ずつと寄宿舎の方で休んだような状態です。
  229. 赤松勇

    赤松委員長 仏教の問題はどうですか、他の工場と同じですか。
  230. 鷲沢愛子

    ○鷲沢参考人 仏教の方の強制は、私たちとして自由な時間がなかつたので了。それは潮五時に出勤なんですけれども、三時半に超床しましてそれからお掃除し点呼し、それから鑑手帳にありますわが誓願をいたしまして、それから入場いたします。一時四十五分にばりましてまた退場行事をいたしましと、お食事しますと三時です。三時かり五時半ごろまで、自分で高価な油を買いまして廊下みがきとか壁みがき、ガラスみがきをしていたのです。
  231. 赤松勇

    赤松委員長 やはり対抗競技をやるのですね、他の工場と同じように。
  232. 鷲沢愛子

    ○鷲沢参考人 寮の対抗競技もやりました。
  233. 赤松勇

    赤松委員長 それから手紙を開封したり私物検査は君やられたの。
  234. 鷲沢愛子

    ○鷲沢参考人 はい、やられました。
  235. 赤松勇

    赤松委員長 私物の検査も……。
  236. 鷲沢愛子

    ○鷲沢参考人 私物の検査も、私の工場は非常に盗難が多いので、月に一回とか二回とか必ず行うのです。その場合に、私たちはシュミーズ一枚に脱がされて徹底的に検査を受けるのです。
  237. 赤松勇

    赤松委員長 これは問題だ、シュミーズ一枚で……。  それから密告者の報償制度はどうですか、ほかの工場と同じですか。
  238. 鷲沢愛子

    ○鷲沢参考人 あります。
  239. 中前研二

    ○中前参考人 食堂の件についてですが、寄宿舎の状態は、食堂のすぐ横に便所がありまして、非常に悪臭が発散して、給食中にもいやな感じを受けます。そればかりではありません、はえも非常にたくさんわき出て、食堂の方に幾らはえとり紙を用意しても、あとからわいて来るのがはなはだしいので、おつつかないという状態です。それから、しばしば基準局の方から調べに来られたときに、あわてて石灰をまく。その石灰もないときに私がやりましたのですが、のり材料の澱粉を便所にまいて石灰の風を見せてごまかしたようなこともあるのです。それは何とか間に合せてやれと工場長から言われて、私がそのようにやりました。  それから福利厚生施設については、岸和田工場従業員約六百人おりますけれども、医師一人看護婦一人もおりません、もちろん医局もございません。
  240. 赤松勇

    赤松委員長 上医者はいないのですか。
  241. 中前研二

    ○中前参考人 おらないのです。そうして救急箱も箱だけでありまして、その中に頭痛薬あるいは腹痛薬が入つているのみで、その薬すらしばしば切れるというのが、現在岸和田の厚生施設め状態なんです。そうして募集に行つた場合に、募集先では、運動施設あるいはまた娯楽施設そうして医局等完備してあり、あるいはまたミシンも非常にたくさんある、それはだれでも自由に使えると言つておりますけれども、運動施設は全然ゼロでありまして、娯楽施設もゼロであります。そうしてミシンは約十台ありますけれども、それがほとんど故障して、そのうち二台ばかりが縫える状態なんですけれども、その二台の使えるミシンは常時ふとん場の作業に使つて、実際寮生が自由に使えるミシンは一台もありません。そうしてまた二十四畳の部屋に二十二人も今まで詰め込まれたような状態たんです。  それから勉学の自由なんですけれども、これも募集の際に、採用条件として、工場に学校があるから、その学校に入つてもらいたいといつて連れて来ますけれども、事実岸和田には学校がございません。ですから、向学心に燃えた若い人たちは、何とかして学校へ行ぎたい、都合をしてもらいたいと会社側に請求しても、その人事係の人あるいはまた工場側の方では、そうかそうかと聞き流して、一向にそのようにはからつてやらない。あるいはまた仕事の都合もそのように仕向けてやらないために、本人が会社に内緒で受験してパスしてから、通つたのだから何とかしてやつてくれと要求しますと、しばしば職場の方を少しでも都合の悪い方へ仕向けてやるというような状態でありまして、これは会社側にたよつておれば、いくら勉強したくてもできないというのが現状なんです。  それから結婚の自由を認めよ、別居生活を強制するなということですが、これについては、昨年春から岸和田工場工場長が四人かわりました。わずか半年ばかりの間に四人もかわりまして、そのうち一人の工場長だけが家族の方を連れて来られましたが、その工場長は約一箇月で転勤させられてしまいました。そして現在の工場長も、私ら非常に気の毒に思いまして、どうして御家族の方をこちらに迎えたいのですかと聞きますと、私はそれを非常に期待しておるけれども、子供の教育ができない。なぜ教育ができないのですか、こういうように聞きますと、しよつちゆう転勤があるからできない。その点ははつきりするのですが、工場長に苦痛じやありませんかと聞きましても、いたし方ないと言うばかりで、工場長も私らの言うことに対しては納得しているのでありますけれども近江絹糸の社風は、御存じのように夏川一族でない限りは、どのような発言も、あるいは自分のやりたいこともできないわけなんです。こういうところから、別居生活を強制するなということを申しておるわけです。
  242. 赤松勇

    赤松委員長 まだありますか。また質問のときに答えてもらいましよう。  それでは次は彦根へ移りましよう。下村宏二君、吉田美代子君。  それでは下村君から。大体あなたの方から出された要求が基礎になつているようですから、順次重複するところはなるべく避けて説明してください。
  243. 下村宏二

    ○下村参考人 有給休暇、生理休暇の完全実施のことでありますが、これは以前に申し述べられた程度でありまして、有給休暇は私から、生理休暇の方は吉田さんの方から申し上げたいと思います。  仏教強制絶対反対でありますが、以前に述べられた程度でありまして、二十六年に起きました圧死事件の葬儀後、明るみに出ざれた事実を申し述べたいと思います。事件当日私もおりまして、患者を運搬したのでありますが、何しろ八十名からの負傷者が出まして、その収容する部屋とか設備がないために、寮の廊下とか、そういうところにばらまいたのであります。その当時医者一名と看護婦五名程度でありまして、ずらつと並んでいる死にかかつている女の子の、まだかすかに息があるにかかわらず、ほつぺたをたたいて、これもだめだといつて白い布をかふせる。またたたいては、かすかに息があるにかかわらず、白い布をかぶせた、そういう事実が葬儀後明るみに出まして、われわれといたしましても、社長が仏教云々の美名のもとに仏教を勧めておりながら、このような人権を無視した行為を行わしめていることは、遺憾であると思つておるわけであります。  それから、その裁判のことでありますが、まだ判決はおりておりません。その証人といたしまして、われわれの同士が出たのでありますが、その当時、非常口と入口と二つあつたわけであります。非常口の方は材木が積んでありまして、全然出られなかつたわけでありますが、そこに警察とか新聞記者が来られたときには、きれいに取除いてしまつて従業員は皆知つておりますので、証人に対して、君が証言をするときにはそのようなことは絶対なかつたと言えと強要され、いたし方なくその事実を述べたということがはつきり出て来ております。仏教強制絶対反対についてはその程度であります。  それから夜間通学等教育の自由を認めよ。これに対しまして、私自身二十六年に彦根東高校に入学いたしました。その当時私を含めて五十数名パスしたのでありますが、現在四年を経過いたしまして、私を含めて四名しか通つておりません。その間に解雇とか転勤とかいうことで、現在四名しかおりません。私が二十六年に受験しました当時、舎監に、君が学校に行くなら解雇すると脅迫されまして、大分通学をあきらめた方が多かつたわけでありまして、本年の四月におきまして二十七名の方が学校に受かつたのでありますが、受験したその日から、さつそく解雇、並びに先ほど述べましたように、転勤、強制出張、そのようなことをなされておりまして、現存二名ほど何とか学校へ行けるというような状態であります。そのように、われわれ彦根東高校生に対して猛烈に迫害を加えられまして、谷口工場長に至りましては、女子従業員を集めまして、彦根東高に登校している者は、組合大会においてはでたらめなことを発言している、明らかに不良学生であると言つております。われわれは通称不良学生で通つているのであります。私も四月に強制的に大垣工場に出張命令が出たのでありますが、その出張の意義といいますのは、技術の交換だから行つてくれと言われますが、技術交換ならば、私の上におられる係長とか担任者の方が当然知つておるわけでありながら、係長は全然知らない、いつの間にそんなことになつたのか、こういうふうになつておりまして、私も人事部長に、技術交換ならば係長が知らなければならないのに、なぜ知らないのかと詰め寄つたところ、何とかごまかして、すかしなだめて、私を二日ほど出張させたのであります。出張して二日働きまして、そのあくる日に、君ら帰れと言われましたから、帰つたのでありますが、これはどうもおかしいと思つてあくる日新聞を見ましたところ、彦根東高校生が学校へ行つたために大垣工場に転勤とか出張命令が出されたというので、あわてて帰したのだと私は思つております。以上であります。
  244. 赤松勇

  245. 吉田美代子

    ○吉田参考人 有給休暇、生理休暇の完全実施の件ですが、有給休暇の場合については、他の工場とかわりございませんが、いただく場合には、第一に組長の許可を得て、それから班長、係長の認可を得ていただくようになつております。生理休暇の場合ですと、全然いただく人がなく、また頭痛その他で休んでおられる方は、忙しいとき呼び出しが来る場合もあるとの話であります。  仏教強制絶対反対の件ですが、大体一日の日課がきまつているのです。先番の場合ですと四時十五分の起床で、いろいろお掃除をやつたりして、四時四十五分の出舎で、五時に運転し、五時四十五分から九時まで食事交代をし、二時または三時帰舎して、三時までお掃除をし、三時より寮の行事、たとえば仏間に集合して仏教の教えがあります。それから五時より六時まで夕食とし、六時より七時三十分まで入浴時間とし、七時五十分が自治会始めで、やはり「わが誓願」を読むわけです。  それから夜間通学と教育の自由を認めよという件です。教育の自由を認めよというのは、外部の教育は全然認めてなくて、許可を得ようと思えば、寮長または舎監の許可を得なければなりませんけれども、絶対に社内で習うようにという返答だけしかいただけないのです。  それから労働強化を強制する各種対抗競技を廃止せよというのは、七工場の対抗があるのです。そのときに、寮の場合ですと、全員ずらつと並べて、太鼓をどんどん打ちながら太鼓の調子に合せて掃除をするような仕組みになつております。(笑声)太鼓をどんどん鳴らす。それに合せて皆が床をみがくのです。  それから人権を蹂躙した信書の開封、私物検査を即時停止せよということです。信書開封の件ですが、この間調査に来られたように、三千通という多くの手紙が舎監室とふとん場から出て来ました。私物検査の件ですが、自治会のときに必ず出納簿の検査があるのです。そうして会社の言うことを忠実に守る方であれば、一日に一回ずつ必ずその出納簿の検査をして、何月何日検査という部屋長の印鑑を押すようになつております。それから入つたとたんに下着は何枚、上着は何枚というふうに書かせて、それを事務所に提出するようになつております。  外出の件ですが、外出は行事がある場合には、絶対にさせないようになつております。五分または十分遅れた場合は、本人はもちろん部屋長まで責任者として一箇月または一週間の外出どめです。以上でございます。     —————————————
  246. 赤松勇

    赤松委員長 なおこの際お諮りいたします。炭鉱関係の労働問題について、高倉鉱業株式会社社長高倉矢一君及び同常務取締役中山亀彦君に、来る三十一日に本委員会参考人として御出席を願い、説朗を聴取したしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認め、さよう決します。     —————————————
  248. 赤松勇

    赤松委員長 それでは次に長浜の木下君、宮元君、大阪の西島君、三輪君、東京の川又君、富士宮の岩原君、以上、非常に委員の方でも時間がなくて、質問の通告もございますので、一括してやりましよう。  今まで各工場からの実情を聞いたわけですが、これと違つた点がありましたら、どうぞ自由に委員長発言を求めて発言して下さい。
  249. 岩原利子

    ○岩原参考人 仏教の強制についてですが、これは週に一度木曜日にあるのです。この行事に対しましては、出席しない場合は、寮長や部屋長さんが強制的に仏間に集合させる。それからもう一つの場合は、毎日七時四十五分から自治会というものがあつて、その中にやはり仏教強制の一つとして、社憲を必ず朗読するようになつております。それから作業場への退場とか入場のときには、社憲、社歌、そういうものを必ず歌つたり朗読して退場したり入場したりするようになつています。  それから女子の深夜業ですけれども、私たち二十八年の二、三月ごろでしたか、二、三箇月ありました。それは午後十一時から午前五時まで、六時間の深夜業です。昼間は二十畳の部屋に十八名か十九名が入つて、全部おふとんを敷いて、カーテンを締めて、いろいろくだらないお菓子を食べて、時間が来るまで寝ています。この深夜業があつたときは、工場の方でもそういうとてもひどい作業がありながら、寮の方でも、やはり寮美化という寮の対抗競技があつたのです。この対抗競技は各工場の対抗で、食堂の前に大きな表をつくつて、そこに各工場は何点とか張り出してあるのです。だから、他の工場には負けたくないという競争心から、きめられた時間以外にも、早く出たり、おそくまで労働をして生産とか品質を上げたのです。  それから外出の自由なんですけれども、普通の場合ですと門限が七時三十分までで、それまでしか出られないことになつているのです。もつと映画とかそういう趣味のために外部に出たいのですけれども、七時三十分という時間ですと、自分の自由なことができないので、これをもつとおそくしていただきたいというのが私たちの念願なんです。  それから寮の福利厚生施設なんですけれども、お部屋には十五畳十六名で、基準監督署の方が来た場合には、みなぞうりを隠すようになつています。障子とか窓ガラスなんか、ほんとうにぼろぼろで、私たちもいろいろ寮の対抗競技なんかやるという場合には、とつても苦労して清掃しています。  それから信書の開封なんですけれども、私は開封されたことはないのですが、お手紙を渡されなかつたのです。二十八年の十月でしたか、父から帰省するようにという手紙を、私の方と人事の方に二通出したわけです。しかし、そのときは田中泉人事主任でして、伊藤さんとかわつていたわけです。父から来たものは田中さんあてに出したのですけれども、こちらにはいなくて、その晩すぐ私が入院の方に飛んで行つたのですけれども、私の方に出した手紙は着いており、人事の方に出した手紙は着いていないのです。それで二、三日続けて私もそこに聞きに行つたのですけれども、全然わからなくて、そのままになつてしまいました。それからお友だちの方は、写真を送つていただいたそうですけれども、三枚入つていたのです。それに一、二、三とちやんと番号がつけてあるにもかかわらず、その番号が段違いになつて、三がまん中になつたり、一が一番下になつたり、二が三になつたり、そういうことがありました。  それから始末書ですけれども、品質の対抗競技の場合には、一人のために満点がとれなかつたというのです。なぜ満点がとれなかつたか。十点の差で満点がとれなかつた場合に、どうして十点だけの点数を上げられなかつたという理由を始末書にして出すのです。
  250. 赤松勇

    赤松委員長 それは始末書だけですか。十点とれなかつたといつて、何かあとから文句があるのですか。
  251. 岩原利子

    ○岩原参考人 赤い字で大きく表に掲げられております。それからそういう対抗競技のあつた場合には、各工場り場合には、やはり表にして食堂に大きく張り出しますし、個人別競技の場合には、どれだけ上げればパンが一つとか、うどんが一ぱいとかきめられているのです。お給料も安いので、そういう副食物を得るために、みな一生懸命にやりますけれども、最後には結局そういうものも得られないときがあつたのです。  寮の設備なんかも、私たちの富士宮工場はとても悪く、おふろの面なんかは、ほんとうにおふろとも思われないくらいで、どぶの中に入るくらいなんです。おいも洗いだなんと言つて入りますけれども、そのくらいおふろの設備が悪くなつています。一部この中に工場の写真があります。     〔参考人委員、長に写真を渡す〕
  252. 赤松勇

    赤松委員長 君のところは何人くらいいるのですか。
  253. 岩原利子

    ○岩原参考人 千六百名近くおります。
  254. 赤松勇

    赤松委員長 千六百名の人が片番が入るわけですね。
  255. 岩原利子

    ○岩原参考人 時間ですから二百名が一度に入ります。その中の面積は、二間に一間ぐらいの入浴室なんです。それから寮の中もとてもくさくて「ほんとうに外部から来た人たちの第一印象は、寮がくさいということなのです。
  256. 赤松勇

    赤松委員長 これは何ですか。
  257. 岩原利子

    ○岩原参考人 それは豚小屋です。それからお便所の確立がないために、寮のお庭に流れ込むのです。それでとてもくさくていられないと申し込んで行つても、何の効果もなく、ただ不満を言つているだけです。廊下の床も何十年という昔の板ですので、ちよつと端を通れば、その板が割れて足をはさむというような状態です。
  258. 赤松勇

    赤松委員長 かわつた点で、だれか発言がありますか。
  259. 木下準仁

    ○木下参考人 女子の深夜業の問題でありますが、昨年の五月、六月、七月と三月にわたりまして、深夜の男子の専属を募集したわけであります。そのときに、男子の方はまだ織場関係は知らなくて、大体二週間ぐらい予備に教わりますけれども、それが終りまして深夜業を十時半から朝の七時半までやるわけです。そのときに、まだはつきりわかりませんので、女子の方が十時半から朝まで、男子の中にまじつて男子の帽子をかぶつてやるわけです。なぜそんなことをするかというと、基準局が来た場合に悪いから、男子の帽子をかぶつて、男子に化けてやるわけです。
  260. 赤松勇

    赤松委員長 その女工さんたちですが、監督署が来たときにごまかすために男の帽子をかぶせるのですね。女子従業員の方の年齢はたいてい幾つぐらいですか。
  261. 木下準仁

    ○木下参考人 二十五ぐらいです。それから一日休憩などがあるのはまだましですが、昼間寝て昼から出て同じ人がやるのです。それを交代に約一週間くらいやつたのです。深夜業の問題だけ申し上げます。
  262. 赤松勇

    赤松委員長 他に発言ございませんか。
  263. 宮元節子

    ○宮元参考人 寄宿舎問題についても、工場と寄宿舎とは、四間ぐらいしか離れておりません関係で、また二十四時間運転しておりますから、機械の音で暑い夏の夜などは全然眠れません、睡眠妨害でございます。ただいまの実情を申し上げますと、五十二畳の仏間がございますが、仏間にみんなが集合すれば、その下の部屋の押入れの戸があかない状態でございます。福利厚生施設はまつたく何もございません。長浜工場では従業員はただいま四百二十名おりますが、岸和田工場も申されましたように、いまだに医務室の設備もなく、また看護婦一人すらございません。一里も行かなければ医者がございません。例を申し上げますと、昨年、未成年者の男の子が、シヤフトに巻き込まれてなくなりました。それを当直室に三十分も寝かしておき、そこで応急手当すらできる人は一人もいなかつたのでございます。医者に連れて行つたときは、もう冷たかつたのでございます。そのようなことがありながらも、かつていまだに何の設備もしていただけないのでございます。幾たびお願いいたしたことでございましようか。
  264. 三輪美智子

    ○三輪参考人 第五項目のタイムレコーダーの即時復活、残業手当の支給、賃金体系の確立でございますが、タイムレコーダーは、残業手当の証拠書類をなくするために、去年の六月基準局が調べに来ましたとき、墨で大きく不良と書いた紙をタイムレコーダーに張りつけ、そのカードを全部どこかに隠してしまいまして、それ以降現在に至りましてもタイムレコーダーは使用しておりません。現在は出席簿を作成し、出勤すればそれに印鑑を押す制度になつております。従いまして、本社の社員は全然残業手当は支給されておりません。  また賃金体系の確立に関しましては、今まで何年勤めれば幾らもらえるということは全然きまつておりません。  次に第七項目の有給休暇、生理休暇の完全実施でございますが、有給休暇、生理休暇の規定はございますそうでございます。と申しますのは、私は三年勤めておりますが規定を見たことはございません。  次に、八項目の食堂の完備、更衣室の新設、社宅並びに寮設備の改善拡充など福利厚生施設の充実とございますが、食堂は全然完備されておらず、本店におきましては四階に食堂がございますが、これは娯楽室兼食堂となつております。更衣室は全然ございません。また社宅は夏川一族あるいはその親戚関係のみ住んでおりまして、われわれ平社員は全然社宅を持つておりません。また寮に関しましても、倉庫を使用しておりまして、一階は原綿とか製品を詰め込み、二階に社員が住んでいる状態でございます。  また、十項目の仏教の強制絶対反対に関しまして、本店では八時四十五分に朝礼が始まりますが、重役あるいは社長さんの訓示がございます前に、社歌あるいは仏の教えを五分間にかけまして強制的に歌わせられ、また読ま迂られます。また年に二回報恩行事と称しまして御堂筋の津村別院に全部強制的に入れられ、お坊さんから説教あるいは仏教を読ませられます。私の方からは大体これだけでございます。
  265. 川又キミ

    ○川又参考人 九項目の専属炊事係ということについてお話したいと思います。私たち会社に雇い入れられるときに、女中として働けということを一言も言われておりませんですが、会社に入りまして一週間とたたないうちに、約一箇月の寮当番と、十五日間の会社の炊事係をさせられます。そのほかに、一年間に大体三箇月ぐらい事務の仕事をしますが、そのほかは全部炊事係として、また寮当番として働かせられます。会社の炊事係として働かせられない場合には、朝八時半ごろ出勤しまして、昼と夜の三十人分の食事を一人でまかなわせられますが、その場合に人が足らなくて応援を頼みますと、大阪では百人に対して三人の割合でまかないをしているから、一人で二十人分のまかないはできないはずはないから、一人でやれということを強制されました。  それから十三項目の音楽、映画サークルなど一切の文化活動を認めよということについてですが、音楽に関係して、先日なくなられました中村さんという方と私たちとで、コーラス団をつくろうじやないかということで、二度ほど練習をいたしましたが、ただやかましいということだけで、会社に停止を食わされました。それから二、三日ほどして、運動を全然しておりませんので、バレーをしようということになり、始めましたが、これも三日ほどで、会社の仕事の能率の増進を妨げるから、朝早く起きてバレーをすることはいいけれども、そういうことは会社へ来て害を及ぼすからやつてはいけないということで停止させられました。それから野球も一週間ほどで停止をさせられまして、そのような状態で、私生活にも重役連は私たちに対して手を延ばしております。  それから労働強化の件ですが、対抗競技としては東京ではいたしておりませんが、二十六年の十月から二十八年の二月まで約二年二箇月の間交換手を一台につき一人置いておりました。一日中一人の交換手さんがつかせられまして、便所に行くひまもありませんでした。それから交換室へ御飯を運んで、交換をさせながら御飯を食べさせたのです。また交換手さん及びその見習いの者に、寮当番やら会社での炊事当番をさせておりました。そのような事実があつたわけです。  それから私たちの目黒の寮には、別に夏川宅という社長の宅がありまして、私たちが寮当番をしておりますときには、社長さんが一時であろうが二時であろうが、帰つて来るまで待つておらなければならない状態になつております。たまたまあまり疲れておりましたので、二時まで待つておらずに寝たのです。そうしたら社長が一時半ごろ帰つて来まして、戸締りが悪いということで、私たちの女子社員の寝室をノックもせずに無断であけたという事実があります。以上です。
  266. 西島恒雄

    ○西島参考人 ただいまいろいろと私どもの方からお話申し上げましたが、要するに、今まで申し上げました事実、そういうことは各工場に共通した事実でありまして、これが要するに私たち会社の中の雰囲気というものを構成しているのです。ただ一つの事実だけを見るのではなしに、全体がそういうふうに押えられて何も言えない、ただ奴隷のごとく黙々と働いておる、そのような状態に追い込まれております。これが社長の考え方の一つにあるわけなんで、今度私たちが立ち上つたのも、やはり今までのそういうふうな会社側空気——労働法など、そんなものはぜいたく法だ、基準法などは日本一の悪法だといつておるくらいであります。  今、項目別にみな申し上げたのですが、実を言いますと、各工場ではわからない点も多々あると思いますので、ここで申し上げますと、たとえば結婚の問題であります。結婚の自由を認めよ、別居生活を強制するなと申しますと、非常に奇異に感じますが、私たちの周囲を見てみますと、夏川一族の方は家族と一緒におられますが、夏川一族の方を除いた高馬常務にしましても、池原収締役、高橋取締役、この三人は大阪においでになりますが、この方たちはみな私たちと同じように久宝寺寮という独身寮に一緒に住んでおります。各工場を振り返つてみましても、大垣、彦根、津、富士宮、岸和田の各工場では、工場長自身がみな別居しておりまして、その他の工場はみな独身の方が工場長ですから問題はないのですが、要するに幹部の方自身が別居しておられます。これはどういうことかと言いますと、社長の根本思想が、結婚をすると能率が低下する、女房のことなど考えていては仕事なんかできない、別居してしまえとよく放言するのですが、こういうふうな根本的な考え方から出ておるのであります。私たちの方にもたくさん結婚適齢期の方がおいでになりますが、結婚をしようと思えば、会社をやめるか、それとも別居を覚悟で結婚する、この二つしかない、こういうふうな状態であります。  仏教の強制にしましても、今申された通り、うちでは、社長は仏教を強制してないと申しますが、現に各工場とも外出どめを食つて、仏間へ強制的に収容され、正信念仏偶というお経をあげ、真宗宗歌をあげましてお坊さんの説教を聞く、これは各工場きまつた行事になつております。朝から晩まで時間を縛られており、入場、退場行事などをいたします。その際に社歌とか日常清規、仏のおしえ、こういうような各項目を読ませて各従業員を規制して行く。こういうような方針は、私たちが入つてから今まで常に体験して来たことであります。  ここに書いてあります月例首切りですが、これは従業員の工員の方にはおわかりにならないと思いますが、社長の工場会議における速記をここにとつてあるのですが、「梱当りの人員整理。新入者が入る為反対の方向に進んでいるが、人員整理は何としてもやらねばならぬ。整理表を持つて来る者が少い。工場の整理表を毎月十日までに人事に提出。整理計画表も提出する。」「健康調査を行い、不健康者は家で休養させる方法をとる。帰りの旅費くらい負担してよい。余剰人員の整理の一方法である。」ここにある資料は人権擁護委員会にも出しておりまして、もうじき結論を出していただけると思つておりますが、要するに、こういうような考え方から、毎月本社に一定の人員の整理計画表というのを提出しまして、その計画にのつとつて工場長は人員の整理をしております。社長はいつも、うちはほかの紡績と違つて首切りをしたことはないと申しますが、うちの会社は、そうではなしに、裏からまわつてじわりじわりと攻め行つて、わからないうちに首にしてしまう。それも表面は解雇にすると問題が大きくなるので、何とかいろいろとりくつをつけて、依願退職の形へ持つて行く。そういうふうなやり方が、今までの会社の根本的な一貫した態度となつておるわけです。  それから信書の開封の問題ですが、これは各自が知らないと言つておりますのも当然でありまして、人事課におきまして——大体蒸気に手紙を当てますと封がはがれるのですが、紡績会社には常に蒸気が通つていますから、蒸気に当てますとしめりけがついて封がはがれる。人事課では、手紙が来ますと、まず手紙を各工員あてと会社あてというふうにわけて、工員あてのものは一々差出人と受取人を見比べます。異性から来た手紙なんというのは、これはあける対象になるそうであります。それからほかの紡績会社から来る手紙、あるいは地元から来る手紙、こんなものは、手紙をよこすのはどうもへんだというのであけられるそうであります。あけた手紙は、また封を張つて渡す。こういうふうにやつておりますので、工員さんにはわからないのだそうであります。これは私が人事をやつておりますから、直接聞いている話であります。それから異性と交際しておるという事実が手紙の中で発見されました場合には、その者を舎監室に呼び寄せまして、舎監みずから、あなたはこの手紙を一回読んでみなさいと差出され、自分で封を開かせて読ませる、これはまつたく悪辣な信書開封で、読ませるというような手段をとらせることは、要するに信書の秘密を犯しているのではないか。  外出の自由の問題につきましては、これは各工場共通した問題でして、ちよつと遅れますと一週間の外出どめ、またひどいのになると一箇月の外出どめ、それから連帯責任制をとつて各部屋の者が一週間の外出どめ、そういうような規定を設けまして外出を禁止しております。
  267. 赤松勇

    赤松委員長 それでは委員の方からも早く質問をさせろという強い希望がありますから、質問に入りますが、質問の過程で、もし発言漏れがおれば、あるいは発言したいということがあれば、そういうことを言つてください。  その前に、高村君何かありますか。
  268. 高村茂

    ○高村参考人 先ほど来各自からいろいろ説明いたさせましたので、私の方から特別申し上げる事項はございませんが、深夜業の問題で、深夜業に女子を使つている、こういうふうなことを申し上げましたが、さらに全工場にわたりまして、深夜業をやつている事実があるのでございます。私のところでは、月末に各工場のたなおろしというものを実施いたします。これは原料から製品までの各工程別におきまして、残高がどれだけあるかを調べるたなおろしでございます。このたなおろしは十時半から実施いたします。狂いまして、この業務をやります者は社員ももちろんやりますが、これに従う各工場の工員さんたちが逐一これに当る。こういうことになりますと、当然十時半の交代以後の深夜業の問題にひつかかつて来るのではないかと私は考えるのでございます。  それから先ほど長浜で、年少者の方がベルトに巻かれた、こういうことでございましたが、私のところの工場では年少者の人を、きめられた、制限されている以外の職場で使つている事実が多々ございます。たとえば絹紡で精練と申す工程がございますが、ここでは非常に高熱な湯を使うわけでございます。こういうところに年少者を使用して負傷させたり、あるいは高いところに上つて負傷した、こういつた事実があるわけでございますが、こういう君たちについて、労災保険を適用さすのに、普通のままで申し上げることはできませんので、これをかわつた理由で、いわゆる虚偽の報告をいたしておる事実がございます。  それから年少者及び女子の時間外労働の問題でございますが、各工場で一週間に何回か限られまして、工場の機械掃除を行わせます。この機械掃除は、就業時間が終りました後に、限られた時間全員やるわけでございます。従いまして、女子の方あるいは年少者の方も、当然この十五分から三十分間一曹に掃除に当らされている、こういうことでございます。  それから深夜業の場合、もう一つあるの下ございますが、よく新聞でふくろう労働という言葉が使われております。これは基準法で定められております一年契約ということを理由といたしまし、男子の青年を採用して、一年間だけ深夜に充てよう、こういうことでございますが、成績の悪い者は次から次へ一年の契約期間を過ぎれば首にしようというふうなことで、すでに解雇の通知の出ておる者がございます。  それから御質問がございましたが、始末書の問題でございます。これは単にとるだけではありませんで、この始末書を二枚あるいは三枚ととることによりまして、そういうふうなことを理由といたしまして解雇あるいはまた人員整理の対象にしよう、そういう手段に利用しておるものでございます。  それから信書の開封の件でございますが、故郷から両親あるいは家人の危篤その他によりまして電報で帰郷を言つて来る者がございます。これに対しまして、私ども会社では、安定所に一度照会の電報を出します。ほんとうに親が病気であるかどうかということを尋ねるわけでございます。その結果ほんとうに病気であるならば帰します。しかしそういうことをすることによりまして、時間的に経過して病人の死に目に会えないという悲惨な状態が出て来ておるのでございます。  それからまた信書の開封とは直接関連はないかもしれませんが、たとえば退社あるいは帰省する場合に、信書を退社届に添付しなければならないという事実がございます。そういうようなことは許されるべきではないのではないかと私は思います。それから隠匿の事実も、昨日来保護局あるいは人権擁護局の方からお調べいただいて上つておる事実でありますが、ひとつ申し上げるわけであります。
  269. 赤松勇

    赤松委員長 それではただいまより質疑に移ります。並木芳雄君。
  270. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいままで各位の御説明を聞いておりますと、事柄は非常に重要であるのみならず、各工場に共通しておる問題が多いと思います。そこで私は労働基準監督局長にお尋ねいたします。局長は昨日、各工場長の責任でやつておるのか、本社からの指令でやつておるのかは、なお調査中であるというふうに答弁されたのでありますが、きよう皆さんのお話を承つておりますと、もはやその疑問は一掃されたのではないかと感ずるのです。これだけの事柄が、各工場ほとんど共通に行われておるところから見れば、これは当然本社からの指令に基いて、各工場長がそれを実施しておるというふうにみなさざるを得ないと思う。従つて、単に工場長だけの責任でなくして、これは本社に及ぶ責任問題であろうと思いますが、この点については局長はどういうふうにお感じになりましたか。
  271. 亀井光

    ○亀井説明員 昨日もお答え申し上げました通りに、今回の強制捜査によりまして、いろいろな物的証拠が把握できたのであります。そこでわれわれといたしまして、従来の調査の上において、一番遺憾でありましたのは、その責任の所在ということが絶えずぼやけていて、せいぜい工場長どまりの責任にとどまつておるのでございます。従いまして、今回はそれが本社の責任になるかならないかという問題に、われわれも大きく注目いたしておるわけであります。従つて本社の強制捜査もいたし、あるいは本社関係の首脳部の方々の私宅をも強制捜査をいたしたのであります。また強制的に押収をしました証拠の調査もいたしておりますが、まだ結論が得られておりませんので、明確な御答弁はできないのでありますが、各工場に共通しました違反がある場合には、やはりそれは何らか本社とのつながりがあるのではないかという容疑としてわれわれはこの問題を考えて、その面についての調査を進めておるような次第であります。
  272. 並木芳雄

    ○並木委員 従来からの局長の見解が、一歩前に進んだと思います。確かに各工場に共通した事項については、これは本社の責任であるということが少くとも推定できる。そう見なければ、労働行政というものはうまく行かないのではないか、私はさように思つております。そこで本日皆様がここでお述べになる、これは国会の速記録に載るのでございますが、これはかなり物的証拠になるのではないでしようか。局長が昨日からの答弁の中で、いつも行政上の問題だけでなく、司法上の問題としたいのだけれども、物的の裏づけがないということが悩みであつたようであります。私本日聞いておりまして、これが速記録に載れば、有力な物的証拠になるのであつて、これを材料にして司法上の問題に持つて行けるというふうに感じたのでございますが、局長もそういうふうにお考えになりますか。
  273. 亀井光

    ○亀井説明員 本日の参考人の供述が、ただちに証拠になるかという御質問でございますが、刑事訴訟法上の証拠といたしまして、法律的な効力のありますものは、司法警察権を持つております監督官が、直接一定の形式に基いて供述をとりまして、その結果、供述書としてそこに訴訟法上の形式を整えたものでなければ、ほんとうの証拠としての効力はないものであります。ただ本日の各参考人の供述は、われわれ捜査をする上の大きな参考の資料として、貴重なものとわれわれ考えております。
  274. 並木芳雄

    ○並木委員 そういたしますと、本日これだけの参考人の供述があつたのでありますから、これをただちに労働基準局関係に移して、もよりの基準監督署でですか、そこへ至急手配をして、同じ供述をとれば、それが今度は司法上の問題にする、刑事上の問題にする正式の物的証拠にかわつて行くと思います。そういう手配をすぐとるべきだと私は思うのですが、局長としてはとつてくださいますか、どうか。
  275. 亀井光

    ○亀井説明員 今後の捜査の参考資料としまして、先ほども申し上げましたように貴重な資料かと思うのであります。ただしかし、監督官が実際の供述をとる際におきましては、第二組合、すなわち今日お話のありました方だけの供述だけで済みますか、あるいは残つております、いわゆる旧組合員の供述までいりますか、これは監督官の物的証拠とのつながりにおいての判断によつてきまる、だろうと考えております。従いまして、今後監督官が現実に供述をとります際には、それぞれきようお見えになりました参考人の方々、あるいはそれと同じような実態を持つておられる方々の供述も、当然とるのでございますから、その点の供述は、供述としての証拠力が確定されるのです。ただ、きようここへ来られました参考人の供述だけで十分であるかどうかということを、私はここではつきり申し上げることはできない。
  276. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは、とにかく急いでその手配を進めていただきたいと思います。特に、ただい京局長からお伺いしますと、本日見えた第二組合の者だけではなくて、第一組合員の方の供述もとることが必要だということですが、これはごもつともだと私思います。確かに対立した二つの意見があるのですから、これは回方の組合員の話を聞いて、そして最後は当局の判断によるものと私は思いますが、公平なる判断を下して、必要ならば至急司法上の問題に持つて行つていただきたいと思います。  それからきようの話を聞いている中に、どこの工場のお嬢さんでしたか、やはり労働基準監督署から、話しても大丈夫だから、秘密は保つてやるからと言われても、やはりその場になると、何か不安で、ほんとうのことが言えなかつたというお話があつたように私記憶しております。これは非常に私は大事なことだと思います。労働行政の上において、ここのところが結局うまく行くかどうかのわかれ目であると思いますので、局長にどうかひとつ必要ならば法的の改正をやるか、規則を改正するか、もしそういうことで会社かそれを理由にして首を切つたりするような場合には、政府の命令でそれができないというような方法がとれないものであろうか。私のきようの直観ですから、あるいはもつと専門的のことをお考えになつておるかどうか知りませんけれども、何かそういう秘密にしてやるから大丈夫だと言うだけでは、不安で簡単にお嬢さん方にはほんとうのことは話せないと思う。もし会社がこんなことをしたら、それは政府が権力でそれを保護してやるからという裏づけがなければいけないと思います。もしそうでないと、この近江絹糸の問題が解決しても、ほかに全国には幾つもこういう問題があるのじやないか、こういう疑問が出て来る。そういうことでみんな躊躇して、正当な必要な申出をしてないとすれば、隠れたる第二、第三の近江絹糸というものはたくさんあるのじやないか。それを防ぎ、今後のこういう問題の再発を防ぐために、私は何らかの措置が、もう少し政府に強権を与えて、工場経営の方でそういう手段がとれないような方法を法的に講ぜられなければならないというふうに考えるのですが、いかがですか。
  277. 亀井光

    ○亀井説明員 現行法におきましては、基準法の百四条に、申告につきまして、使用者が申告をしました労働者に対しまして、その申告をしたことを理由にして解雇その他不利益な処分をしてはならないという規定がございます。これについての罰則の規定もあるわけでございます。ただ、ただいま問題になつております供述をしなかつた、意に反してできなかつたということに対しまする強制処置は、実は現行法ではないのでございます。これは刑事訴訟法との関係もございまして、われわれとしましても、今後研究をして行きたいと思います。
  278. 並木芳雄

    ○並木委員 それはぜひ研究していただきたいと思います。  では割当てられた時間が少うございますから、簡単に質問します。  現在近江絹糸の問題で、きようは予備会談が行われておると思います。この時間までには、あるいは新聞発表があるやに聞いておりますが、その会談がどうあろうとも、争議解決がどう片づこうとも、ただいままで取上げられたもろもろの法律違反の点については、政府としては手をゆるめずに、必要ならば司法上の問題にするということはかわりありませんか。これは中労委の団交のあつせんというものが、かりにうまく行つた場合に、打切つてしまうということはないでしようね。
  279. 亀井光

    ○亀井説明員 労働基準法違反は、法律の違反として現実の事実がありますれば、これに対する措置は、労働争議と何ら関係なしに、われわれとしては措置したいというふうに考えております。
  280. 並木芳雄

    ○並木委員 そこで私、人権擁護局長に一言お伺いしておきたいのですが、きようの皆さんのいろいろの報告を聞いて、局長としても、さぞ感慨無量なるものがあつたろうと思います。それで、いかなる感じを抱いたか、今後これに対して局長はどういうような処置をもつて臨むつもりでありますか、ぜひ開いておきたいと思います。
  281. 戸田正直

    ○戸田説明員 お答えいたします。私途中から組合員たちの話を開きましたが、非常に有力な参考資料となつたと思います。なお私の方におきましても、各工場につきましてただいま詳細な調査をいたしておりますので、近く結論が出るかと思いますから、本日の組合の皆さんのお話参考にいたしまして善処いたしたい、かように考えます。
  282. 並木芳雄

    ○並木委員 最後に労政局長に一言お尋ねいたします。それはきようから近江絹糸争議解決を目ざしての予備会談これがうまく行けば団交に入るのでしようが、行われることになつております。確かにこの時間までには、もう何かあつたかと思いますが、われわれ国会にずつとおりますから、まだその経過を新聞、ラジオ等で聞いたり見たりすることができないのは遺憾でございます。しかし、きようちよつと院内で聞いたところによりますと、夏川社長が幾らか折れて来た。新聞記者と会見をやつたときに大分折れて来て、自分はこういう問題に承知しても、あるいは第一組合の方で承知するかな、今度逆に第二組合でない第一組合の方がいきり立つてストライキを起すのじやないかというようなことを言われたそうであります。社長が折れて来て、この問題がうまく妥結に向えば、それに越したことはございません。しかし、会社側からのパンフレツトなんか見ますと、昨日でしたか、郵便で急にまたあとからパンフレットを送つて来て、それはきよう報告された皆さんの所論に一々反駁しておる、こういうような状態なのです。そうすると、一喜一憂あるでしようけれども、この問題の解決というものは、今後幾日要するかわかりませんが、なかなか楽観を許さないのじやないかと思うのです。それで、私はぜひこの際に聞いておきたいのですけれども、とどのつまり、どうしても円満なる妥結ができないで、交渉が決裂に終つた場合に、政府としてはこの争議に対してどういう最後の処置をとられるつもりであるか、その決意のほどをこの際承つて、私の質問を終りたいと思います。
  283. 中西実

    ○中西説明員 この問題は、事の起りが相当以前にさかのぼつての問題でございますので、おつしやる通り、しかく簡単にすべてが解決するとは思われません。それならばこそ、今までも労働省としましても相当手を尽したのですが、話合いのきつかけすら実は得られない状態でございます。幸い中労委の非常な御熱意のあるごあつせんで、きよう午後に会談の第一回が行われました。ステーション・ホテルで行われておるはずでありますが、まあすべり出したという程度の感じしか持ち得ないように思います。第二回は三十日にやることに聞いております。この問題につきましては、実は特に労働省から中労委に十分にお願いをしたわけで、従つて中労委におきましても、中山会長御自身が非常な努力を払われておりまして、きようからの会談にも公益委員一名が立ち会うという、その一名に中山会長御自身が立ち会われておるというような御熱意で当つておられるのであります。中山中労委会長が、非常な御熱意で当つておられるとしましても、これが一挙にはなかなかむずかしいということは、御自身でもおつしやつております。きようから実は話合いをする、まだ団交とは言つておりません、一応休戦状態に置くということでございます。だんだん何回かにわけて徐々に解決に向うように仕向けて行くよりしようがないのじやないかというような御気持で当つておられるようでございます。中山中労委会長御自身も、この問題の解決は非常にむずかしいという見込みでおられます。ただあらゆる争議がそうでございますが、当初におきましてどういう手で、いつどういうふうに解決するか、複雑なものほどその見通しはきわめて困難でございまして、われわれも相当実際に争議解決に当つて参りましたが、しかく初めから結論がどうなるかという見通しは困難であります。しかし、そのときどきに最善の努力と手を打つて行きますれば、やがては解決に到達するということは、私まあ労使間の争議にあたりましての信念として持つております。中山会長も言つておられますように、もし今の方式でうまく行かなければ、また別個のことを考えたい、こういうようなことを言つておられます。中労委とされましても、いろいろとお考えがあるかと思います。今のところは、これはこれで進めまして、また事態の進展によりまして、中労委だけでどうにもならないときには、さらに中労委と十分相談いたして行きたいというふうに考えております。
  284. 赤松勇

  285. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がありませんので、労働省の関係は明後日にいたしまして、ごく簡単に参考人並びに人権擁護局長にお尋ねいたしたいと思います。  まず最初に参考人にお尋ねいたしますが、機械は常にまわつてつて、機械が運転をとめて休憩をする、こういつたことはないのかどうか  それから、時間がありませんから五、六点まとめてお尋ねいたしますが、さらに、仕事をしたためにけがをした、あるいは死亡した、こういう事例かどの程度にあるのか、あるいはどういう場合であるのか、お聞かせ願いたい。  続いて、危篤という電報が来たにかかわらず、それが手に人らなかつた。その間会社は鹿児島とか宮崎等の出身地の会社の連絡所といいますか、出張所といいますか、そういうところに連絡をして、それからさらに職業安定所に連絡をしてその実否を確かめて、その電報を渡す。中には危篤という電報で問合せが間に合わなかつたために、死すという電報が来た。とろが危篤という電報を渡して帰らした、こういうことを聞いたわけですが、その点は事実であるかどうか、こういう点をお聞かせ願いたいと思います。  さらに、寮の関係でございますが、長浜の寮であつたと思いますが、何か工場から非常に近いところに寮があつて、どうも睡眠もとれない、こういう事情だそうですが、それはいつごろできた寮であるのか。その点については監督署の方ではどういうふうなお話があつたのか、これがわかりましたらお聞かせを願いたいと思います。  それから、深夜業の程度がどの程度に行われているのか。さらに私は次のようなことを聞いたわけですが、それは事実であるかどうかお聞かせを願いたい。それは先番と後番が交代をする際のその日の勤務時間は八時間四十五分の実働になつている、こういうことを聞いているわけです。これは私は数字的に聞きましたが、確かにその通りにたるわけですが、それは事実であるかどうか、確認をいたしたいと思いますので、お聞かせを願いたい。  以上の諸点について、わかる人から順次お答え願いたいと思います。
  286. 高村茂

    ○高村参考人 ただいまの御質問に対しまして、簡単にお答えさしていただきます。  機械が一日中運転しているのかどうかという御一質問だつたと思いますが、この問題は、実は私のところの工場では、先番が五時がらになります。先番の終りは一時四十五分でございます。後番は一時四十五分から午後十時半まででございます。後番の勤務者は、工場によりまして多少異にいたしますが、十時半から七時まであるいは七時半まで、こういうようになつております。その間に昼専と申しましてC番と申しますものが七時半から四町半まで勤務いたしております。従つてこの間の休憩時間は、各班におきまして交代して食事に行く、こういうことになつておりますので、機械が停止されないままに食事に行く、こういうような形をとつております。  それから死亡負傷の件でございますが、現在各工場ごとの統計を私どもの方で持つておりませんので具体的に申し上げることはできませんが、死亡につきましては紡績工業でございますので、比較的件数は少いと思いますが、負傷につきましては、特に手先の労働でございますので、指を切断する者あるいはその他負傷する者がおります。  それから、これはひとつお考え願いたいと思うのでございますが、深夜の労働者が拘束八時間四十五分という勤務をいたしますに対しまして、朝食を朝とりまして、それからあと負傷いたしまして左腕の腕関節から切断いたしました事件が昨年彦根で発生いたしました。これは非常に深夜の労働者が疲れまして、そのあとで食事をとつてねむくなりまして、腕を切断された、こういうような事件が起つておりますが、件数をただいま何件と申し上げることははつきりできませんので、御容赦願いたいと思うのでございます。  それから危篤電報の件でございますが、これはお説の通りでございます。  それから長浜の寮の問題につきましては、長浜の者から御答弁さしたいと思います。  それから実働八時間四十五分の問題でございますが、これも工場の方の者から答弁さしたいと思いますが、実働八時間、拘束八時間四十五分、こういうような形をとつていると思いますが、しかし実質的におきましてはそうでないということだけを答弁さしていただきたいと思います。
  287. 鈴木六郎

    鈴木参考人 ただいま高村さんの方から御説明がありましたように、二十四時間の運転はいつもやつております。休憩は全然なしであります。機械を一度にとめて食事をするということはないのであります。それから、年に正月の一日と二日、それからメーデーの五月一日の九時から夕方の五時まで、それだけの時間がまとまつてあとは全部運転する。それから深夜番のことでございますが、昨年の六月二十日から深夜番をやることになりまして、最初は六時間三十分というわけで始めましたが、その間二回変更しております。それは夜十時三十分から五時までが最初の時間でございますが、その次に十時三十分から朝七時十五分まで、実働八時間働いたことがあります。その次に夜八時から九時まで一時間、それをあと番の食事交替時間に出勤して、また十時三十分から五時までやつたことがあります。  それから電報の件でございますが、先ほど言われたように、そういう事実はあります。長浜の件は長浜の工場の方から説明させていただきますが、私の知つている点はそれだけであります。
  288. 木下準仁

    ○木下参考人 工場の建ちましたのは、ある一部の施工期日が大正七年の四月になつております。寮の建設ははつきりわかつておりません。労働基準局から、別にこのことについて聞いておりません。以上であります。
  289. 高村茂

    ○高村参考人 先ほど私機械の問題で申し落しましたので、敷衍させていただきたいと思いますが、近江絹糸で機械がとまりますのは、停電の日は別といたしまして、それ以外は大みそかの十二月三十一日の十時半から翌年の正月の二日の十時半まで、この二日間と、それからメーデーの日に慰安会と称するものをするために運転をとめます。朝の九時から大体翌日の午後の五時まで、これだけの時間しか、各工場ともとめていないはずでございますので、敷衍させていただきたいと思います。
  290. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 俗にふくろう工員というもの、すなわち十五才以上の男子が連日やつておる、あるいは十六才以上十八才未満の男子は交代制で一週間交代で行つておる、こういう事実を聞くわけですが、その通りでしようか。
  291. 鈴木六郎

    鈴木参考人 ただいまの質問にお答えいたします。満十八才以上の方は、オール深夜といいまして深夜専門であります。それから満十六才から十七才までの方が交代制でありまして、一週同交代で深夜やると、その次には先番またはあと番というふうにして交代でやつております。
  292. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 事実関係につきましては、明後日さらに聞くことにいたしまして、人権擁護局長に一言だけ聞きたいと思いますが、これは人権擁護の問題にきわめて大きな関連があると思います。すなわち労働法以前の問題が多かに含まれておる。そこが重大左要求の項目になつておるのであります。こういうことは、われわれ非常に遺憾に考えるわけですが、通信の秘密をばらししおる、あるいは学問の自由を侵しておる。さらに幾多の、宗教の強制、結婚の制限というような問題が起つておりますが、人権擁護委員法の十一条三号には、そういうこと々委員は通報しなければならぬ、こういうことが書いてあると思うのですが、一体あなたの手元に、この争議以前において、こういう事実が伝えられたかどうかをお尋ねいたしたいと思います。
  293. 戸田正直

    ○戸田説明員 争議以前におきまして、委員から通報があつたというようなことはございません。ただ、津の法務局におきまして、通学の自由が侵されたということで復学させたということが、昭和二十七年かにございまして、これは人権侵犯事件としてすでに処理いたしております。
  294. 赤松勇

    赤松委員長 井堀繁雄君。
  295. 井堀繁雄

    ○井堀委員 本日は事実問題を二、三確認いたす意味でお尋ねしたしたしと思います。  まず人権擁護局長にお尋ねをいたしたいと思いますが、先ほど参考人が、それぞれ要求書の項目順に事実について説明があつたようであります。その中で有給休暇と生理休暇の実施について、それぞれ御婦人の方から事実について述べられておりますが、その中で生理休暇の問題は、基準法でも規定されてはおりますが、この問題は、人権擁護の立場から、ことに日本の民主化を志します意味での婦人に対する人権擁護の問題として非常に高く世界が評価しておることだと思うのです。ただ単に機械的に人権を擁護するという意味よりは、世界の平和を追究するところの、いわば新しき民主主義の理念を追究する意味での婦人の人権の擁護が特に強調されておるのは、これは世界的な共通した傾向であると思うのです。こういう点から私は婦人の生理休暇の問題を、基準法の立場から、すなわち労働行政の監督面からだけ考えるのではなしに、世界の求めております方向に対する新しい日本の立場から、この問題は擁護局は特に高く取上げなければならぬと判断して、今の事実についてそれぞれ御調査があつたことと思うのであります。今の説明でわかるように、このことは私ども基準法の設定の際に、公聴会で私もその際意見を述べたことでありますが、この条項はとかく空文になりはしないかという懸念がしたのです。十五、六から十七、八、差恥心の非常に強い人たちが、公然と生理休暇を要求するということはなかなか困難ではないか。しかし、にもかかわらず、この条項が必要であるということは、たた労働の再生睦を意味する母体を保護するという意味ではなしに、さつき申し上げたような世界の新しき理念を貫く、やはり大きな内容を持つものとしてこれが強調されて、われわれもこれに納得したわけです。こういう点で、私は相当この問題については重視して、事実問題は私どもも調べておる。この点に対して、どのような調査が行われて、またそういう問題に対して人権擁護局としてはどういう態度で臨まれるかということは、争議を離れて重大な問題だと思いますので、この点をまずお伺いいたしたい。  時間の関係で、続けて関連したことを申し上げますが、さらにこれに関係しておりますものは、十二の結婚の自由、別居生活の強制という点であります。これは男女共通する問題ではありますが、この点も、さつき言つた婦人の地位を保護しなければならぬという強い世界的な要請からいいますと、ここにも問題は私は深くあると思う。こういう点は関連がありますので、この点についても同様の意味でお答えをいただきたい。  さらに、一般的な憲法の定めております基本的人権の中で、信教の自由の問題であります。この点は、私が前回基準法違反の最も悪質の内容を持つ一つの現われとして、非常に把握しにくい事柄ではありますけれども、悪質な傾向を露呈するに一番適当な条件であると思いまして、当時労働省に厳重な監督とその事実の調査を依頼し、われわれもその調査に出かけたのでありましたが、今日まで的確な証拠をつかむことができなくて苦しんだのであります。ところが、本日参考人から、るる説明がありましたことで、きわめて明確になつて来たと思うのであります。こういうように相手が少年労働、特に婦人労働の多い場所、しかもそれが若年であります。それに先ほど参考人から述べられておりますように、昔から仏罰とかタブーのようなもので原始人民を支配して来た歴史というものは、法律やこういう問題を扱う場合に非常に重要だと思います。人権をどうして守るかということを、法律だけで守るのであれば、何ら問題はありませんけれども人権擁護局のように、一つの思想的な傾向なり、あるいは思想的な流れなり、そういつたような大局的な見地から人権を守ろうとする場合におきましては、この事柄は非常に私は重大であると思うのであります。こういう点について、もちろん重視されて御検討なさつたことと思うのであります。こういう意味で、ここには単なる労働条件、すなわち労働争議の際の労働者側の会社側に対する要求条件として羅列されてはおりますが、内容を掘り下げてみますと、このような重大性が発見できると私は思うのであります。  さらに、ついででございますから——、十四項に労働の強化をという意味で打出しておりますけれども、これは私は奴隷労働の一番ひどいものだと思うのであります。目先にえさをつる下げて競争させるというやり方は、これは封建的な労働政策というよりは、奴隷に対する支配者の態度である。奴隷解放の問題は、民主主義の基本理念であることは言うまでもないのであります。こういう点は、国際信義を日本が貫こうとする場合に、人権擁護のような衝に当られるところとしては、この点は相当深く御検討なさり、御心配いただいていることだと思うのであります。  さらに十七に、外出の自由を認めよ、こういうやさしい言い方であります。事柄は非常に簡単なことであります。外出の自由を認めろというようなことは、昔はこういうのをかごの鳥といつた悲話がありましたように、古い労働には、寄宿生活なんかに、こういうものがあつたと思います。このことは、先ほど私が申し上げておりますように、一般労働者、ことに腕力にしても思想的な立場においてもあるいは経済的な力においても、実力を持つて闘うことのできる君たちに対しては、こういうものはあまり意味はないと私は思う。しかし先ほどお話のありましたことで御理解があると思いますが、ここの工場には、日本の労働法のいう、憲法のいう、自由にして自主的な労働組合の組織がなかつたことは、明らかになつておるわけであります。こういうところに、女子の外出が制限を加えられて、しかも仏教行事のために外出を制限するというようなことは、先ほど言つた信教の自由と重なり合つて、外出の自由が阻止されているところに重要性があると思うのであります。こういう意味で、私は労働問題の域をはるかに越えた高い見地において、日本の国民がひとしくこの問題と真剣に取組まなければならぬ事柄だと思うのであります。以上のように、ここにあげられております項目順に言いますならば、特に生理休暇の問題、それから仏教の強制による労務管理の問題、さらには結婚の自由と別居生活を強制しておる問題、さらには信書の開封、私物の検査が女子労働にあつたという点、それから外出の自由がきわめて巧みに抑えられておつた、こういうような項目が並べられておるわけであります。この点については参考人からかなり詳細な説明があつたようでありますので、私はこれを重ねて申し上げることはいたしませんが、以上の意味において、人権擁護局としてはもちろんお調べになり、それぞれ方針をお持ちになつておると思いますが、この事柄について今後どのようなお考えをお持ちになつておるかお漏らしいただきたい。
  296. 戸田正直

    ○戸田説明員 婦人の人権擁護が強調されますことは、御質問の通りで、私も同感であります。この問題は、いわゆる人権争議、労働法以前の争議であるというようなことで、私の方といたしましても、きわめて深い関心を持つて調査に当りました。御承知のように、各工場が各地に散在いたしております。また第一組合、第二組合、第三組合あるいは第四組合というように、同じ組合の中で対立したような関係にありますし、また勤続年数も低く、平均年齢も非常に低いというようなことから、非常に調査に困難を来したのであります。しかし、今申し上げましたように、この問題はきわめて重要な問題でありますので、非常に熱意をもつて真剣に調査をして参りましたので、大体の調査が終り、結論も近く出ると思います。従つて、結論を今ただちに申し上げることは少し時期が早いかと思いますので、しばらく御猶予を願いたいと思います。  御質問の生理休暇の問題でありますが、これも十分調査いたしました。有給休暇をもらうのがきわめて困難であるというようなことから、もう生理休暇というのは言つてもむだなんだというようなことで、女工員もみずからの人権を今まで捨てて来たのではなかろうか。自分たちの持つておるところの人権というものを、ほんとうに認識しておらなかつたのではないかということを、実は私前から痛感しておりました。従つて、当然もらえるべき生理休暇を要求しない。要求してもこれはもらえないのだというようなことが、ほとんど一般になつてつて、これもほとんどもつておらぬようであります。これらの点につきましても、調査いたしまして、各労働基準局、検察庁等にも、すでにこの問題も通告いたしております。幸い労働基準局におきましても、強制捜査権によりまして、十分な調査をいたしておりますので、私の方の従来調査いたしました相当疑いのあるものを、すでに基準局等にも通告して処理をお願いいたしております。  ちようどついでですから申し上げますが、人権擁護局といたしましては、強制捜査権を持つておりません。従つて調査については、的確な証拠をつかむのに非常に苦労をいたして、実は努力をいたして参つたのであります。そんなことが非常に調査等に手間取つておりまして、いろいろの御批判をもいただいておるかということも実は存じておるのでありますが、強制捜査権なしに、できる限りの努力をいたして、ただいま調査いたしておる次第であります。  それから結婚の自由の問題につきましても、十分調査をいたしておりますが、ただ私の方の調査範囲内におきましては、工員等における結婚の問題は、一件も私の方には現われておりません。ただ想像といたしましては、大阪の本社等において、昔そういうようなことがあつたのではなかろうかという程度でありまして、今までの段階では、十分な資料を実は得ておらないのです。率直に申しまして、今までのところさような状態であります。  それから仏教の問題であります。これはきわめて大きい問題で、この点につきましても、私は率直に申し上げますが、仏教を強制した疑いがきわめて濃厚であるということを、ただいまの段階でも申し上げられると存じます。近江絹糸会社が印刷した「鑑」というものと同じものが各工場に配付され、三十円で強制的に買わされる。その内容は、すでに委員の皆様方ごらんになつておると存じますが、これはほとんど仏教に関するものだけでありまして、仏間も、各工場大きさの違いはありますが、模様等はほとんど同一である。またこれも各工場多少の違いはありますが、仏間に参りますその日を、いわゆる連絡日とか生活研究日とかいうような名前をつけておりまして、このいろいろの行事のあとで、連絡事項を通達すると申しますか、いろいろ話があるそうであります。従つて、この連絡事項を聞かなければならない。それを聞かせる前に、仏の教えであるとか、社憲とか社歌とか正信偶というものをいろいろ読ませるということも、ほとんど各工場共通であります。また工場によりましては、これも今回新しく発見されたのでありますが、長さ一メートル一直径三センチぐらいの棒を持つて、いわゆるかり出しに使つているというようなことも、一部の工場等にはあるようであります。また仏間に参りますときは、入口等において舎監や寮長等が早く行けというかり出しをしておる。また、もし出ないような者は、勤務成績等に影響するというような事情等を考慮いたしますと、仏教に対する強制をしておるのではなかろうかという疑いを非常に強く持つておる次第であります。その他外出の問題等につきましても、十分調査いたしまして、これまた労働基準局、地検等にも通告をいたして、実は私の方の調べた範囲のものを資料として提供いたしまして、捜査の参考にしていただく、そして処分をしていただきますようにお願いをいたしておる次第であります。
  297. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ただいまのお答えで、私はぜひ委員長にお願いいたしておきたいと思います。今局長の御答弁の中で明らかにされておりますように、この局は調査に強制権がないために、十分な調査ができないようでありますが、ごもつともなことだと存じます。このような重要なポストの機関が、こういう状態であることは、日本の民主化、日本の新しい国づくりのために残念なことと思うのであります。そこで委員長にお願いいたしたいのは、今私が列挙いたしました人権擁護局でぜひ調査を願いたい事柄について、参考人の方から、できるならば文書によつてその事実を列挙して提出するようにおはからいをいただきたいと思います。  それから人権擁護局長に重ねてお尋ねをいたすのですが、この問題は、ひとり国内的の労働問題ではなく、私どもの杞憂は、もうすでに国際的な事実となつて現われて来ておるのであります。ごらんをいただいたと思うのでありますが、国内紙にもそれぞれ転載されておりますし、昨日の産経には、近江絹糸の問題について、英国紙の論評を紹介しております。これはマンチエスターガーデイアン紙の社説を紹介しておるのです。ここで読み上げることは省きますけれども、この内容は、私はきわめて重大だと思うのです。かつて労働大臣は、日本の貿易上の問題に、このことを取上げております。もちろん日本の貿易の上に悪影響があることは、前回来私がこの問題を取上げるときに主張しておるのです。ところがマンチェスター・ガーデイアンのこれを見ますと、ただ単に日本のテープレーバー、すなわち不正なる競争に対する相手方として警戒するだけではないのであります。日本の反動化といいますか、日本の再軍備もしくは軍国主義化、全体主義化へのカム・バツクを非常に警戒しているという論説が現われておる点であります。こういう点は、私はよほど警戒しなければならない事柄だと思うのであります。人権擁護局のようなポストは、こういう問題に対して積極的な御調査と善後措置を講じていただかなければならぬ。もちろん強制権をお持ちにならないにいたしましても、所属されるのは法務省でありまして、それぞれ横の行政上の組織的な機能として、相当強力な事実を把握することのできる機関だと承知いたしております。この点を余すことなく活用されまして、このような問題は、労働争議に限定されないで、日本の国際信義のために御調査を願いたい。またこの点に対する所見を伺つておきたい。
  298. 戸田正直

    ○戸田説明員 理念的と申しますか、思想的と申しますか、きわめて大きい問題でありまして、お答えが非常にむずかしいのでありますが、人権擁護が必要であることは議論の余地はございません。ただ、私たちの経験いたしましたことでは、現在の日本における人権思想の普及活動、それから具体的に起きまする個々の人権侵犯事件の処理だけで、すでに手が一ぱいであります。本来大きな問題にまで行くべきであるということは、私も同感でございますが、実はそこまで手が延びない。実情を申し上げてたいへん恐縮であります、あるいは御質問の趣旨に少し離れるかと存じますが、人権擁護局の定員は現在十四名であります。それから各地方下部機関としまして、地方法務局を持つておりますが、全国で四十九法務局を下部機関として持つております。この四十九局で全部の人権擁護に携わる職員が百六十三名であります。この中には雇員等も入つておりますので、たとえば今回のような事件につきまして、地方の法務局で事実どれだけの人が人権擁護課の者としてやつておるかと申しますと、地方法務局におきましては三名、多いところで四名かと存じます。この中には雇いも入つておる。従つて事実上の調査をできるものは、課長と事務官一人ぐらい。これも全部の仕事をなげうつてこれにかかりましても、せいぜい二名くらい。これに法務局長が応援するというようなことでございますので、もちろん人権擁護という憲法に掲げておりまする高い理想の仕事をいたしますについては、もつともつといたさなければならぬ仕事がたくさんちることは承知いたしておりますが、今の機構でもつて大きな問題を取上げることは、とうてい無理じやないか、実情がもう不可能である、かように申し上げざるを得ませんので、たいへん遺憾だと存じますが、現状は今申し上げたようなわけであります。今回のこの事件につきましても、非常に問題を重視いたしまして、すでに七、八百名以上の人たちを調べたかと存じます。ほとんど土曜、日曜なしであります。これも八時間労働、基準法等にも関係あるかと存じますが、法務局の職員は、土曜日曜を返上しております。本省に報告して来る書類を出すときには、おそらく徹夜をしておるだろうということを、私案は見ております。これも見方によつては人権擁護の問題に関係があるかと存じますが、すでに参つておる書類だけでもこれくらいございます。これは非常に薄つぺらな紙にこまかく書いてこの程度あるのです。これを見るだけでも一相当の月日を要するのでありまして、私たちも、この問題は決して軽視いたしておりません、重視いたしておりますので、なおそれだけに、実は慎重を期しまして調査をいたしておりますので、いろいろ調査等において御不満もあるかと思いますが、この点ひとつ実情を御了承の上お許しを願いたいと思います。  それからただいま井堀先生の申されました強制捜査権を持つことがいいかどうか、これにつきましては、御質問じやありませんが、私見をちよつと申し述べさしていただきたいと存じます。実は私、人権擁護局としては、強制捜査権を持つべきでないという考えを持つております。これも国会等においてしばしば御質問を受ける場合もあるのでありますが、私が心配をいたしますのは、権限を持つということが、いわゆる権力の濫用の基礎になる。権力がなければ、権力の濫用はございません。権力が濫用されますと人権の侵害が起きるのです。人権擁護局として強制捜査の権限を持ちましたときに、もし大勢の職員の中で、誤つてこれが濫用せられたり人権を侵害した場合に、いかなることになりますか。国民の人権を擁護しなければならぬ人権擁護局において人権の侵害があつたということになりますと、これは一体どこに持つて行つたらよろしいか。これは堂々めぐりして、屋上屋を重ねても、とうてい救済できないことでありますので、私は権限は必要でないと思います。非常に調査等に苦労もございますし、困難もありますが、やはり無手でよろしい。一つの思想と正義でりつぱにやつて行ける、苦しいができるものだ、またそうでなければならぬ、かように考えておりますので、強制捜査権と申しますか、権限を持つということは、これはせつかくの御親切でございますが、私は今の日本の段階では持つてはいけないんじやなかろうか、かように考えておりますので、少し言い過ぎかもわかりませんが、私見を申し述べます。
  299. 井堀繁雄

    ○井堀委員 人権擁護局の立場については、まつたく私どもも同感であります。強制権を持つことは希望いたしませんが、やはり事実を迅速に把握して処置を迫られる、こういう。国際上の微妙な関係の起きていることを強調いたしておるのであります。その際、人権擁護局としての動き方は、おのずからあると思うのであります。こういう点を私は要請いたしたいので、もちろんその前に、このことは基準法違反の事実として、十分法律違反を構成すると私も考えておるが、いかんぜん最近の日本の政府は、全体がそういう傾向で、その悪い傾向が労働者に響いていることを私は痛感しておるので、こういう傾向がますます国際信用を失墜する恐るべき傾向になることを憂えまして、擁護局の積極的な活動を要請する意味でお尋ねをいたしたわけであります。そういう点でまことに当を得た答弁をいただいたと思うわけです。労働省の関係のことにつきましては、明後日一日予定してありますから、そのときに譲りたいと思うのであります。  そこで、今人権擁護局と応答の際に明らかになりましたように——労働省にはこれは番号だけを申し上げますが、七、十、十二、十五、十七、こういう要求項目について、もちろん基準法の違反として、たとえば七の場合には三十五条がすぐに出て来ます。あるいは十の場合におきましても三十四条、三十五条、六十条、六十一条というものが、私どもしろうとが判断しても、違反を構成すると思われる疑いが濃厚であります。こういうような問題は、さつき人権擁護局長から答弁がありましたように、やはり日本の向うべき大きな方向に逆流するような行き方は、それが保守政権であろうと革新政権であろうと、断じてこれは容赦してはならぬことだと思うのです。いかにそれが保守政権の手にあつても、革新政権の手にあつても、日本の進むべき態様というものはあるわけです。そういうものは今あけました項目に深いつながりがあるということを、担当局長は感じておられるのかおられないのか、この点をまずお尋ねいたしたいと思います。
  300. 亀井光

    ○亀井説明員 労働基準法の違反に関連しまして、人権の侵害の問題につきましても、われわれは重大な関心を持つておるわけであります。従いまして、今回の捜査にあたりましても、法務省の人権擁護局並びに出先の法務局と絶えず連絡しながら、捜査をして参つておる次第であります。その結果、労働基準法違反として明白なものにつきましては、その方で定められました処置を十分とりたいと思いますし、また人権擁護の関係からいたします点については、法務局と協力いたしまして、これが是正について努力をいたして参りたいと思います。
  301. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これに労政局長にお答えしていただきたいと思います。これは先日来たびたび質問の中に出ておることでありますが、ただいまあげました項目については、基準局長も明らかにされておるように、この問題を処理して行くためには、私は労働省の中の機構からいいますと、労政局長の所管事項が最も重視さるべきだと思う。この点に対して所見を伺つておきたい。
  302. 中西実

    ○中西説明員 労働諸法規が守られますことは、官だけの一方的なやり方では、なかなか徹底しかねますので、結局は当事者の協力がなければ、ほんとうの実施はできないんじやないか。そのためにも、たとえば労働者におきまして、真の健全な組合運動のできる組織ができ、それによつて労働諸法規が守られますことが真に円滑に行きますような協力態勢ができることが非常に望ましいんじやないか。そのためには、結局われわれとしましても用意怠らず、やはり労働教育ということに力を入れて行きたいと思つております。なお、組合の側におきましても、特に民主的な健全な組織の組合というものが、そういう点の啓蒙には、われわれと十分協力してやつていただきたいと考えております。
  303. 大西正道

    ○大西(正)委員 今の井堀委員の最後の質問に関連しまして、私は一つだけ労政局長に聞いておきたいのです。労政局長の答弁は、今もそうですが、組合員の意識云々、教育云々と言われるのですが、私はどうもそれが言い抜けのような気がするのです。それならば、今現実に第二組合がこうしてできて、基準局長も、従来は証拠があがらなかつたが、今回のこの組合ができたことによつて証拠が固められるということを言つておるのです。あなたの昨日の答弁によりましても、今ここに見えておる第二組合は、これは従来の組合よりも、より理想に近いいい組合だというふうにお考えになつておる、だろうと思うのですが、そういうふうなお話をしたら、昨日は首をかしげておられたようであつたが、私はどうもそこのところにおきまして、健全なる組合の育成々々と言われるならば、今芽ばえつつあるこの第二組合をほんとうに育成するような手を打つておるかというと、あなたの考えではそうではないように思う。この前多賀谷委員から質問がありましたが、課長——課長とは言いません。主事と言いましたか、主任と言いましたか、これが入つておるような組合は、あなたがいわれるところのほんとうの健全なる組合かどうかということについて追究のあつたときに、それについてははつきりしたお答えがなかつたのです。しかしやはりこの段階に来たら、こういうふうな会社側の立場にあるような者が組合のイニシアをとつておるような組合は、組合としては好ましからぬものだ、こういう一つの見解の発表くらいは、労政局長としては当然やるべきで、そういうことが相伴つてこそ組合の意識もでき、健全なる組合の育成もできると私は思う。この点について、ひとつ責任云々というような問題でなしに、率直に見解を聞かしてもらいたいのです。
  304. 中西実

    ○中西説明員 おつしやることは、結局第一組合は御用組合だ、今度できた第二組合はこれこそいい組合なんだということを言えば、大体意に沿うのかと思いますけれども、実はわれわれといたしましては、争議あつせんが今のところ中労委に移つておる以上、私ども一応の関係者であります。しかも組合の性格がどうこうということは、これは有権的には労働委員会できめることでございます。このことははつきり申さずとも、大体客観的にいろいろと話があり、これについて御判断いただければ、大体どうということは常識的にはわかります。確定的なことは、これは資格審査しなければわからぬ。労働委員会組合の資格審査をいたします場合に、相当慎重にやつて初めて結論を出すのであります。たとえば、会社側の利益を代表するものかどうか、単なる名称にとらわれて、普通ならこれは会社側だと思われるものを、ただちに即断いたしますと、とんでもない間違いを起すことがあるのであります。極端に言えば、工場長という名前がついておるものですら、実態を調べれば、ときにそうでない、組合員としてもいいくらいな者も、私が関係しておりました組合の中にはございました。そういうようなことで、やはりこれは十分に実態を調べなければ、なかなか資格審査というものは結論が出せないわけであります。従つて近江絹糸のなまなましい問題につきまして、目下争議の過程でもございますので、一応私としまして、確定的なことをこういつた席で申し上げるということをしないでおるだけでございます。
  305. 大西正道

    ○大西(正)委員 それじやもう一回具体的にお伺いいたしますが、第一組合並びに第三組合というものですか、それの変貌したものは、労働組合法の第二条によつて、私は組合としては認められないものだと思うのです。それもよく調査しなければならぬということであれば、私は今まで労政局長として、これだけの問題に対して始終熱心に対処して来たという言葉の裏づけにならぬと思う。きのうからの証言によりまして、会社側の立場にある人がこの組合のおもな立場に立つておるし、その運営の切り盛りをしておるのです。そういたしますと、これは労働組合法の第二条によりまして、あなたの言われるところの健全なるということはもちろんのこと、組合として認められぬというような、そういうことは何も中労委というようなものにおいて、労働委員会においてその結論を出さなくても、私は労働省として当然そういうことは結論が出し得るし、また出しておらないことが今日またこういう紛争解決一つの障害の条件になつておると思うのです。だから、今まであなたの調べられた事柄、あるいはこの間からの証言によりまして、この第二美に第一、第二、第三組合と申すものが触れるものだと私は思うのですが、これはどうですか。
  306. 中西実

    ○中西説明員 わが国の労働法制上、組合の設立はまつたく自由になつております。そのために、きのうも申しましたように、不当労働行為の申立てあるいは資格審査の機会がない限りは、われわれの方の組合労働組合だというふうに自身で申しておりますれば、一応労働組合の取扱いをせざるを得ないというような状況になつております。従つて今度の近江絹糸の場合でも、関係者から第一組合ないし第三組合というものが労働組合法の第二条に違反する、いわゆる労働組合じやないのだということについての何らかの提訴があれば、有権的に地労委あるいは中労委でも判定するということになつております。そのことがおそらく提訴されておるのじやないかとも思うのでありますが、そういつた有権的なところでやはりきつちりと公的には結論づけるべきものだという意味において、私は結論を申しかねるのでございます。
  307. 赤松勇

    赤松委員長 大西君、各党十分の約束ですし、あさつて一日やるのですから留保していただきたい。  それでは中原健次君。六時までやつてもらいたいと思うのです。
  308. 中原健次

    ○中原委員 それでは予定された時間の範囲で一、二点だけさらに質問いたしておきたいと思います。  まず最初に、組合側の参考人の方どなたでもけつこうですから、むしろ願わくばそれぞれ関連のある工場組合の方から問題を解明していただきたい。それは先ほどお話のありました中で、対抗競技と申しますか、この対抗競技の問題について、ある程度御発表があつたのでありますが、第三者といいますか、しろうとの立場から、大要わかつたような気がいたしますけれども、どうもなかなかつかみにくいのであります。従つてこの対抗競技の実情を、もう少しわかりやすく御説明を願えれば非常に好都合だと思います。なおその対抗競技が行われたそのあとに起るいろいろな問題、あるいは労働者側にとつて不利益な問題、その他いろいろな問題が、当然競技の後に派生しておるかと思うのであります。そういうことがありますれば、なおそれをつけ加えて御説明を願つておきたい。  それからもう一点は、集団赤痢の発生した場合の措置をちよつと聞いたのでありますが、どうもその点をもう少し明確につかみたかつたのです。これは中津川の工場のことだと思いましたが、その集団赤痢が発生いたしました場合に、その患者の方たちを、とにかくひた隠しに隠して、対外的に外側にこれを知られないように隠蔽したという措置が行われたようであります。しかし、かりにもこれだけの伝染性の病気が集団的に発生しておるのでありますから、これに対しては相当程度の療病のいろいろな施設がなされておらなければなりませんし、従つて療病の措置がなされたと同時に、その措置の後における病気の回復のテンポと申しますか、あるいはその病者の中にはなはだしい犠牲はなかつたのか、その点も集団赤痢発生の問題に関連して、いろいろな事項について御発表を煩わしたい。  それからもう一点は、これは新聞紙の報道するところでありましたが、彦根工場で三名ほど、他の工場で一人、その他もあるいはあつたかもしれませんが、精神の錯乱した方が、この争議ということに関連してかこの最中に発生しておる、こういうことを新聞紙にも伝えておるのであります。先ほどからの数々の御説明の中で想像できますように、会社側は徹底的に人権を圧迫して、もちろん労働者の人たるべき人権を顧みようともしない、めちやくちやな労働搾取を強行した工場のことではあり、ことにその工場のそういう強圧な労働奴隷的な扱いの結果として起つておる今日の争議に関連しまして、もちろん争議の進行の過程に、いろいろ耐えられないようなことがあつたことは想像されますし、またいろいろ具体的に御説明もなされておりますが、そういうことと関連して思いますと、精神が錯乱し、あるいは強度のヒステリーに襲われて常態を失うような心理状態あるいは行動か出て来る場合が予想されないではないのであります。従いまして、新聞紙の報道いたしましたこれらの事項等に関連しまして、そのような精神錯乱の状態に陥られた事項について、許される限りの御発表が願えれば幸いだと思います。同時に、その後におけるその人々の措置はどうなつたか、幸いに回復されておることを期待いたしますが、現状はどうであろうか、こういう問題についても、もう少し明確なところを承つておきたいと思います。  それから、これは昨日の御説明の中で、特に注目された事実の一つでありますが、監督署側が監督の職権行使のために工場にやつて来るという場合に、あらかじめ役所の方から来ることが工場の中に通達されて、工場ではおよそきようは何時ごろに来るということがわかつておる。従つて、役人の来ることに備えての一応の対策を講じてこれを待つ、こういう形で待つておつたかのように思うのであります。もとより監督行政を行うためには、これはとんでもないことであつて、こんなことがあろうとは思いませんが、しかし近江絹糸の場合は、どうもそういうことがはつきり説明されておる。もちろん、これは私の言葉がちよつと足りませんでしたが、社会一般にもこういうことはすでにたくさん仄聞はいたしておりまして、先ほどこんなことがあるとは思わないと言つたのは、ちよつとお上手な言い方であつたのでありまして、実際あるでありましよう。そこでこの問題については、昨日は大垣工場でありましたが、その他の工場においてもこういう類似のできごとがありはしないか。もちろん政府の方では、いわゆる年中行事的な一つ調査が行われる場合には、当然あらかじめ予告もし、その日もきまつておるというふうな答弁がつけ加えられておりましたが、そういうことを問題にしておるのではない、監督署あるいは労政事務所等々の訪れて参ります場合に、あらかじめおよそそういうことがわかつておるという事柄についての具体的な実情が、他の工場の場合にありますなら、それもこの機会に御説明願つておきたいと思います。  もう一つは、夏川社長を先頭に経営者側は、労働基準法なんかというものは実に迷惑千万な法律であつて、天下の悪法であるとまで言つておると言われましたが、それだけに、あの人々は労働基準法などの命ずるところに従つて事をなそうとはしないだろうと思われますけれども、しかし、かりにも法律としてここに厳然たる事実が施行されておるからには、やはり労働基準法の命ずるところに従つて、名目的にだけでもそういう手続はとられておりそうなものだと思うのであります。そういう関係で、そのことについて、ただ一つのことを尋ねておきたいのであります。労働基準法によれば、労働条件はこれを明示しなければならない。明示というからには、みんなの目に見えるようなところに、労働条件についての掲示が当然なされなければならぬと思うのであります。そうでありますれば、当然労働条件に関する事項が明示されて、皆様の目に絶えず映つておるかどうかについて、ついでに承つておきたいと思うのであります。  その他多数ございますが、大体以上申し上げましたような諸点について、組合側の皆さんの方から、それぞれ工場での御経験を遠慮なく御発表を煩わしたいと思います。
  309. 内田秀雄

    ○内田参考人 大垣工場の内田であります。競技のことについて申し上げます。  先ほども申し上げましたが、競技は一つのことではなく、あらゆることすべてに適用されるのです。生産問題におきましても、出来高競技、品質競技、クレーム絶滅競技、清潔整頓競技、そういうものがあります。さらに真剣週間においても、点数をとつて採点しております。寮に恥きましても、清潔整頓競技ということが行われます。それで生産出来高競技の問題についていいますと、たとえば現在一万貫できているとしますと、来月は目標額一割増しで一万一千貫、次にはその一万一千貫を一〇〇としてまた一〇%増し、そういうふうにやつて来るわけです。初めのうちはどうにかやつてついて行きますが、しまいにはどうにもこうにもならなくなつて、向うから深夜業をやれと言われなくても、時間の延長をしたりせざるを得ないような状態になつて来るわけです。一割といいましても、一万貫の一割だと相当のものであり、なかなか思うように上げられるものではないのです。それで回転はできるだけ上げます。そうなりますと、ひどいときには非常に多くなる。ところが次の月になると糸切れ減少が出て来るのです。しかし、以前の回転を下げることは許されません。回転を上げたままでの糸切れ減少をやらされるわけです。すると、ある程度は減りますが、何べんかして来れば糸切れを減らすこともできなくなります。工場対抗となれば、工場の成績にも影響します。工場長以下みな必死となります。それでそういう場合には、出来高というものを犠牲にしてまでも品質をよくしようというので、むちやくちやに回転を下げたりします。それでもやり切れなくなると、工場対抗の場合は、各工場から検査員が来ますが、それらの検査員を、われわれ係長以下担任者が、いわば脅迫めいた言葉で押しつけたり、採点がまずいといつてやり直させたり、おどかしたり、また検査員をだまかしたりして、やつと点数をかせぐのです。何べんか続きますと、実際のことは問題でなく、どれだけ上手にごまかし得るか、いかに化けの皮をはがされないようにするか、向うをおどかして点数をよくするかということが、競技の一番の問題点となつて来るのです。何のために競技しているかもわからず——初めは社長なんか来たときには、堂々と競技をやりなさいと言います。それで勝つた者には賞状またはカップなどを渡します。しかし、社長はすでに知つているとは思いますが、下ではそういうふうな正々堂々とした競技などは行われておりません。時間外に延長してやつたり、だまし合いばかりの競技をやつているわけです。清潔整頓の問題におきましても、寮へ帰つてから掃除を済まして寝るわけですが、そのあとで舎監が見まわりに来て、まずかつたら、十時であろうが十一時であろうが、起してもう一ぺんやらさせたり、私たちもよく見ましたが、十時ごろになつて女の子が二階の窓へ上つて窓ガラスをふいていた、そういうようなこともあります。またこの競技の方法として、各工場に、どこ工場はどれだけどれだけというふうに大きなグラフの掲示板を出します。それで、たとえば大垣工場が負けて来ますと、大垣工場はだらしがない、それで技術者として大きな顔をしていられるか、こういうことを、注意というよりは叱責に近い言葉で毎日々々言われます。またあの工場に負けるようでは、とても君たちを信用するわけにいかないとおどかしてみたり、すべての点でそういうふうに、時間外労働をせよとは言わなくても、やらざるを得ないような、やつてもまだ追いつかないような状態が次から次に来るのて、やむを得すやる。そのために、監督署から摘発されても、事実を述べることができないような状態です。責められたとしても、会社の方で深夜業を何時までやれというようなことは言つていないわけです。ただ次の日になつてどうしてもやらなければいられないような立場に追い込んでやらせる状態だつたのです。  またその後の状態にしましても、われわれは一生懸命やつているつもりですけれども、競技によつて目標まで達しないと、ずぼらだの、サボるだの、会社のために何も考えていないのだ、ただ君らはいるだけで給料をもらおうと思つたら間違いだ、そういうふうに、いかにもこちらがそうい)ことをやるとはずかしくていられないように仕向けられて来たのが実情であります。  それから、基準法のことについてですけれども、電気とかボイラーとかいうところには、危険という赤札が下つておりますが、はつきり基準法とはどういうものか、どういうときにどうするのかということが、見えるところに明示してあつたり、または会社の人から話してもらつたりするようなことはほとんどありませんでした。ほとんどというよりも、全然ありませんでした。特に夏の安全週間のときには、工場の成績をよくするために努力してもらいたい、けがをしないようにしてもらいたいということを言われます。そういうことは、訓育というのがあるわけですが、その訓育というのは、工場方針従つてやるように、毎週月曜日、仕事が終つてから、または仕事の前に、仏間その他のところで、各仕事の担任または部長から、工場方針及びそのときの競技の状態、現在どうなつているかというようなことについて話されるわけです。そういうときには、安全週間のときのみ、大垣工場からは一人もけが人を出したくないから、危険なところに行つてはいけないということを言われますが、その他のことについて、基準法その他を明示したり、話してくれるようなことは全然ありません。また監督官が来るときは、たいていの場合事前にわかります。きよう来るというのがわかるとき、また前の日にすでにわかつてしまうときがありますが、そういうときには、証拠書類を現場にあるようなものをしまつてしまつたり、または連絡簿を部屋に持つて帰るように言われたこともありました。  以上であります。
  310. 下村宏二

    ○下村参考人 対抗競技の問題につきましては、内田参考人とひとしくなりますが、争議後、彦根工場におきまして三名の精神分裂症犠牲者を出しました原因につきましてお答えしたいと思います。その三名の力はすべて旧組合の方でありまして、その方は以前新組合におきまして、旧組合のものすごい説得を受けまして——組合幹部の方から直接聞いたわけでありますが、和光会館という、工場内に寮がありまして、そこに連れて行つて四、五時間説得したところ、ちよつと気が変になつて来たから、気休めに彦根劇場に連れて行つた。その映画館は三本建でありまして、二本目の終りころになりましたところ、急に変になつたから、病院に連れて行つた。それは旧組合の方が申しておりますので、事実だと思います。  それから労基監督署の方から調べに来るときには事前に通達があるか、このような御質問でありましたが、先ほど内田参考人が述べられた通りでありますが、門衛には非常ベルというのがありまして、それを押せば重役室にすぐに通ずる装置になつておりまして、幾ら急に襲つて来ても、すぐにその非常べルを押しまして未然に防ぐという仕組になつているのであります。  以上であります。
  311. 早川ヒサ

    ○早川参考人 集団赤痢についてお答えいたします。  二、三日前から、赤痢に似ているから、私たちが町の医者にか行くと言つても、外出どめになつて全然外出はできませんし、六十人から七十人の患者が出たとき、初めて大垣に電話して、大垣から医者が来ていただくまでしんぼうしろと言つて、看護婦さん一人で注射したりいろいろして、私たちは夜中看護いたしました。そのことを市役所に訴えて、保健所からお見えになりまして、そのときすぐ私らに連絡があつて、全部仏間に隠せといわれまして、五、六名だけ残して全部仏間に隠しました。それからまた元のところに返せと言いまして、元へ返したりしているうちに、患者は、どこでもよいから、もう動かさないでくれと言つていますし、また私の友達が市役所に訴えて、仏間に隠してたくさんの患者がおりますと言つて行きましたら、また保健所から見えましたが、今度は部屋へ隠して、そのときは六十人ばかりの患者を見せて、特に病気の重い方だけを十二、三名隠しました。以上のようなわけであります。
  312. 中原健次

    ○中原委員 ただいまの赤痢患者の取扱いの問題ですが、お話のような状況から想像してみますと、まあ病気のことですから何日を要してなおるかはわかりませんけれども、かりに一週間でなおるといたしましても、それが実際は二週間も三週間もかかる、あるいは必ず回復するはずのものが、一つ間違えば命を失い、あるいは相当大きな症状に追い込まれて行く、そうしてまた副次的にほかの病気まで併発するというような場合もあり得ることが予想されるのであります。従つてそういうような場合に、工場側で、特に労働組合もあるはずでありますが、かりにそれが御用労働組合であつたにいたしましても、人としての知性といいますか、正当な判断があれば、かりにそれがいかに工場側の利益のために組合をつくらされておつたにしても、何とかそこに良識のある判断が出て、こういう場合にもう少し積極的な、病人のその痛苦に、あるいはその危険に備えるようた対策が出て来そうなものだ、実はそう思うのであります。従つてども今の御説明を承つても、どうしても納得が行かないほどに、実は意外千万なできごとだと感じます。幸いそのことについて、何か善意のある対策が、しかしこれだけは講じられたということがありますれば、さらにおつけ加えを願いたい。
  313. 早川ヒサ

    ○早川参考人 私たちとしては、市役所へ訴えるだけが精一ばいのやり方でした。
  314. 中原健次

    ○中原委員 では最後に、時間も来てしまつたようでありますが、せつかく人権擁護局長がお見えになつておられますので、一言だけ承つておきたいと思います。  ただいまもお聞きの通りの状況でありまして、おそらくこのような条件の中では、どのように巧みな言葉で経営側を弁護しようといたしましても、弁護し切れる言葉がないと思います。従つてそういう実に強圧な手段なり、あるいは非常に憎むべき人権蹂躙の条件の中で働いておいでになるこれらの関係労働者諸君にとつてみれば、おそらく一から百まで言いたいほどに、人権は蹂躙され続けておつたであろうことは、想像にかたくありません。もちろん局長も、すでにそのことについて十二分の御認識をお持ちのように拝聴いたしましたが、それに関連いたしまして、先ほど井堀委員の御質疑に対する御答弁の中に、たしか、生理休暇の問題等については、組合員自身、労働者自身がみずからの人権に自覚するところが乏しくて、みずから持つておるその権利を主張しなかつたのではないか、従つてそういうことから生理休暇の手続ができなくて、不可避的た条件として生理休暇をもらわないで、その間働いたのではだかろうか、こういうような意味の御指摘があつたかのように記憶するのであります。さらにもう一つは、結婚問題等についても、現在関係工場それぞれの中で、それらの問題が持ち上つておらない、従つて結婚の自由などというものは、今具体的に実は結婚問題そのことが起つておらぬのであるから、いわば提起されていないというふうに、この点も御指摘があつたように思うのであります。これらの二つの事柄につきましても、ただいまも組合側の方のお話の中で想像されますような、そういう非常に異常な強圧の中で仕事をし、生存しておるといいますか、人間としての価値に値する、いわゆる人たるに値する、そういう価値のある生活というのじやなくて、ただとにかく命をささえておる、そういう重圧といいますか、ある意味では威嚇もあるでしようが、そういうような条件の中では、当然これは起り総べくも起り得ないし、また起りがたい。そういう問題を感じていないでもないけれども、ともかく泣寝入りをし続けて来ておる、こういうようなことにもつながつて来るのではなかろうかと思うのであります。従つて、そうであつてみればそれだけに、やはりここにも許しがたき人権蹂躙が、これらの現象としては現われていないけれども、そういう当然あるべきはずの事柄に関連して、伏在していはしないか、このように私は感ずるわけであります。なお、ただいまの赤痢の問題あるいは競技の問題、これらの問題も、ただ生産を向上させるための善なる意図ではなくて、非常に憎むべき労働強化、労働に対する奴隷的な搾取の強行というものが関連しておりますから、それだけに人権は、これらの諸点からも非常な形で蹂躙されておるというふうに想像することができると思うのであります。従つて労働基準法等ができた立法の精神から考えましても、あるいは労働組合法の精神から考えましても、あるいはまたその最高の法規である憲法の精神から考えましても、そのことごとが人権蹂躙に異常な関連を持つておる。異常といいますか、むしろ非常に大きな関連を持つておるというふうに感ずる次第でありますが、これにつきまして局長の御見解を一言承つておきます。
  315. 戸田正直

    ○戸田説明員 先ほど、あるいは言葉が十分でなかつたかと思いますが、先ほど申し上げましたのは、私の私見が多少入つておりまして、日本における人権というものは非常に新しいものであります、従来封建的な生活を続けて参りましたような関係から、人権に対する認識というものが非常に薄いのじやないか。そこで私たちの仕事も、この人権思想の普及、高揚というところに力を置いておるのでありましてというようなことを、私見を述べたのであります。今の会社あるいは工場内に有るいろいろの空気あるいは工場内と申しますか、長い間のしきたり等で、有給休暇すらくれない、いわんや生理休暇を要求しても、工場によつてはどうもそういうものは普通の病気と違うのだ、だれでもみなあるのだ、だから休む必要はないと言つたというふうな例も聞いておりますですが、おしなべてどうも有給休暇すらもらえないというので、生理休暇の請求をしておらないというのがほとんどではなかろうかということが、実は調査の結果現われたのであります。そこで、こうしたことはよろしくない、結局これは心理的強圧と申しますか、いろいろな面からどうも生理休暇をもらいにくいようにしておるのではなかろうかというようなことから、私どもの方でも、各地にございます基準局にも実は連絡いたしまして、いろいろ基準法の問題として協力をお願いすると申しますか、連絡をいたして、捜査等の参考にしていただくというような措置をとつたのでありまして、決して自分たちが要求せぬから、自分たちの人権を自分たちで守らぬからこれはいけないのだ、こうあつさり捨てておるわけではございませんで、ただ日本における実情、あるいはこれも推測申し上げておりますが、この近江絹糸の多くの女工員、あるいは男工員の方もございますが、人権という問題をほんとうに争議以前からどれだけ認識しておつたかということになると、私はまだ多少の疑問があるのではなかろうかと実は思つております。争議に入りまして、いろいろ人権という問題がやかましくなつて、人権というものを相当認識して来た、自覚したと申しますか、そういう問題を非常に強く考えるようになつたのではなかろうかというような気もいたすのでありまして、やはり日本におきましては、この人権というものをもつと早く自分たちの身につけてもらいませんと、自分たちの人権を守る気になつていただきませんと、この非常に広い、たくさんの社会全体の人権という問題は、役所だけ、小さな一機関等によつては、とうてい処理できるものではございません。そういう意味から私見を多少申し述べましたことが、あるいは間違つたようにおとり願うようになつたかもわかりませんが、決してそういう意味ではございませんので、婦人の人権というものに対しては——男子と女子の区別は、これは人権上ございませんが、特に婦人の人権というものに対しては、やはり関心を持つてつて行かなければならないというような点は十分考えております。女工員の生理休暇、これにつきましても、先ほど申し上げましたように、基準局にその処分をお願いしておるというような実情でございます。
  316. 赤松勇

    赤松委員長 中原君の御質問は、さらに明後日続行していただきたいと思います。  なお明後日の運営につきましては、ひとつ質問順位をきめまして、そして公平を期したいと思いますので、各党でもつてまとめて委員長の手元まで出していただきます。  本日御出席の参考人中、古賀茂君、秋好トムノ君、今村国年君、浜口栄君、溝口光治君及び浅野重美君の諸君におかれては、明三十日も午前十時より御出席願いたいと存じますから御了承く、ださい。  本日御出席になりました近江絹糸関係参考人山口正義君以下十七名の諸君に、来る三十一日にも再度御出席を願い、御説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  317. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めてさよう決します。  次会は三十日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時十二分散会