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1954-04-23 第19回国会 衆議院 労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十三日(金曜日)     午後一時五十二分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 持永 義夫君    理事 稻葉  修君 理事 多賀谷真稔君    理事 井堀 繁雄君       木村 文男君    黒澤 幸一君       島上善五郎君    大西 正道君       日野 吉夫君    矢尾喜三郎君       中原 健次君  出席政府委員         労働政務次官  安井  謙君  委員外出席者         運輸事務官   高橋 壽夫君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    石黒 拓爾君         参  考  人         (全日本海員組         合門司支部長) 石山 正治君         参  考  人         (元山運輸商事         株式会社管理部         長)      松重 善三君         参  考  人         (全日本港湾労         働組合関門支部         書記長)    奧田金太郎君         参  考  人         (全日本港湾労         働組合中央執行         委員長)    兼田富太郎君         専  門  員 濱口金一郎君     ————————————— 四月二十三日  委員藤田義光君辞任につき、その補欠として川  崎秀二君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月二十一日  最低賃金法案井堀繁雄君外六十三名提出、衆  法第一六号)  最低賃金保障金融公庫法案井堀繁雄君外六十  三名提出衆法第一七号)  最低賃金法案和田博雄君外四名提出衆法第  一八号)  最低賃金保障金融公庫法案和田博雄君外四名  提出衆法第一九号) 同月二十三日  駐留軍家族宿舎要員労働保護に関する請願(  大石ヨシエ紹介)(第四五五一号)  高等学校卒業者就職促進に関する請願(只野  直三郎君紹介)(第四五九〇号)  地方労働委員会事務局存置に関する請願(中澤  茂一君紹介)(第四六〇八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  港湾労働に関する件  駐留軍労務に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  まず港湾労働に関する件に関連いたしまして、宇部元山運輸商事株式会社争議問題について調査を進めます。  本問題につきまして、前会に御出席になりました参考人の方々が、本日も御出席なつておりますから、御了承願います。なお和田参考人は、御都合で御出席なつておりません。  前会において、まだ御意見を聴取いたしておりませんでした石山参考人の御意見を聴取したいと思います。石山参考人
  3. 石山正治

    石山参考人 私は全日本海員組合門司支部長であります石山でございます。一昨日、本席上におきまして委員長から本審問の趣旨につきましてお話がありました通り本件全日本港湾労働組合元山運輸商事株式会社争議にかかわる問題が取上げられておりますが、御意見発表過程において、現在締結を見ておりますところの元山運輸商事株式会社全日本海員組合との労働協約並びに本組合組合員組織過程等に関連する問題について、海員組合見解を異にし、また事実と相違いたしている点もございますので、全日本海員組合地方機関責任者として、前回組合和田参考人協約の原則的問題の説明をいたしました点を除きまして、協約締結いきさつ説明を一応要点的にいたします。  元山運輸商事株式会社と本組合との関係は、昭和二十四年四月、定期用船切りかえに伴いまして、汽船元山運輸株式会社に帰属して以来、約五箇年の関係を有しております。その間、会社側とされては、人繰りの都合からと思いますが、海員組合立場から見た場合、著しく作為的と考えられる配乗が——船員の配乗でございますが、汽船機帆船等の間に行われまして、それがため賃金ベースの安い機帆船乗組員が、ベースの高い汽船に送り込まれる場合、はなはだしく不利益を来しますので、これが賃金ベースの確保ないしは身分の保障ための手段並びにそれを助成する機会の来ることにつきまして、爾来研究いたして来た次第でございます。  一方会社のとられた船員労務管理方式が、一般的に中小船主等にしばしば見受けられる家族主義を表面に掲げた封建的な制度をもつていたしまして、それがために従来行われた交渉等にも、特に人事等について、いろいろ紛糾を見た場合が多いのでございます。従いまして、これが根本的解決を見るためには、協力にしてかつ合理的な協約締結組合員の中からも要望されていたのでございます。ところが昨年の十月ごろから機帆船船員自主的加入申込みがありまして、資格確認の上、逐次加入を見るに至つた次第でございます。たまたま海員組合定期大会におきまして決定された越年手当の十五割要求会社要求いたしまして、これがため団体交渉が十一月の十日に海員組合門司支部会議室において開催されました。この団交におきましては、越年手当につきましては、ほとんど予備的交渉に終りましたが、かねて申入れをしておりました中島船長下船にかかわる人事の問題が非常に紛糾をいたしまして、組合はこの例が協約の不備をねらつた作為的な不当行為であるので、協約改訂の必要あることを力説した次第でございます。特に組合員雇用解雇の規定の含みます協約改訂を重点的に会社申入れをいたした次第でございますが、会社は言を左右にされまして応ぜられたなかつたのであります。  第二回目の交渉が、十一月十四日、前回同様に海員組合門司支部会議室において開催されました。組合は正式に改訂案を作成いたしまして、交渉に入つた次第でございます。会社交渉権人事権について強く反対されましたが、組合は従来行われました配乗等についての不当な取扱いの実績について、現実に前回団体交渉のときにも問題になつておりました中島船長のことをこまかく審議をいたしまして追及、交渉組合要求によつて夜半まで行われた次第でございます。その結果、会社は理論的には了解されたかに見えましたが、この問題は非常に重要案件であるというので、社長意見も徴する必要があると申されまして、法的にもまた研究をいたしたいので、しばらくの猶予を願いたいというような会社側見解でありました。組合交渉担当者としての責任が那辺にあるかということを強く警告いたしまして、会社からは組合員名簿提出方の申出がありました。  第三回目の交渉が十一月十六日、前回同様の場所で開催されました。会社は例によりまして態度をかえないで、前回ほとんど理論的には了解されたかに見えましたところの問題についても再び強く反対されました。特に会社側が申されたのは、君のところは組合員の数が足らぬのではないかというような、非常に組合側を侮辱するかのごとき態度が見受けられましたので、本組合既加入者の六十名の名簿会社提出いたしましたところが、会社は非常に狼狽されたようであります。組合立場といたしまして、会社はあくまでも団体交渉の引延ばしを策する場合は、実力による闘争の用意があることを明らかにいたしました。その結果、会社は非常に狼狽されまして、別室において長時間協議の結果、遂に人事並びに交渉権についての本組合の主張を了解された次第でございます。その後逐条その他に残りました懸案について審議をいたし、最終的には了解点に達しましたが、手続の関係からいたしまして、当日は調印に至らなかつた次第でございます。調印文書整理都合もありまして、十一月十八日に完全に整理されまして、当日調印ということになつたわけであります。以上が協約締結に至るいきさつでございます。  なお、協約締結以降につきましては、口頭をもつて再三にわたる協約実施方を督促をした次第でございますが、たまたま二月の十六日、突然に宇部電労組宮原委員長というお方が、元山運輸松重輸運部長さんと一緒に海員組合おいでになりまして、海員組合から見た場合は、非組合員でありますところの全港湾労組所属船員取扱いについて、いろいろと御質問があつた次第でございます。結果的には、協約の一部変更を迫るようなお話内容でございました。本組合といたしましては、協約実施について、われわれから見れば非常に誠意のない会社側と、直接には関係のないところの陸上の労組委員長とが、本海員組合労働協約の問題につきまして、何の関係があつておいでになつたかという点につきましては、まつたく理解ができなかつた次第でございます。なお、組合立場からいたしますと、非常に不可解であり、かつ迷惑を感じたのであります。後ほど聞くところによりますれば、元山運輸全日本港湾労組との紛争について、全日本港湾労組に非常に電産労組協力をされたということがあとからわかりまして、その理由がうなずけた次第でございます。このような情勢のもとに、一方元山運輸所属の本組合員からは、海員組合門司支部に対しまして、協約の厳正なるところの実施要求する声が、従来ないように強くしばしば行われて来たのでございます。その声は、転じて執行部不信の声にまで及ばんとする情勢にありました。従いまして、船員大会を開き、海員組合組合員意見を徴する必要がありますので、三月二十日宇部港におきまして、船員大会の開催を見るに至つた次第でございます。その大会におきましては、前委員会におきまして資料としてお配りいたしておきました通り内容による決議が採択されたのであります。当日は海員組合門司支部責任による抗議文と、大会において採決されましたところの決議文とを、会社に出頭いたしまして社長に面会いたしまして、その実施迫つたわけでございます。その後の会社側態度を見ていますと、何ら従来とかわるところはなく、遂に三月の中旬、付属協定書締結方要求いたしました。会社は言を左右にいたしまして、態度を明らかにされなかつたのでございますが、強い交渉によりまして、遂に三月三十一日をもちまして調印を見るに至つたのでございます。なお一部におきましては、海員組合協約を結ぶことによりまして、非組合員の首を切るというような流言が飛んでおるそうでございますが、海員組合は現在に至るまで、一度も首を切れと会社その他に対して、だれにも申したことはございません。非組合員が団結して海員組合組合員なつて、お互いに向上をはかろうというのがこの協約の目的でございます。また海員組合は、いつでもこれを受入れる用意のあることを、この席上明らかにしておきます。  なお、前回委員会に関連いたしまして、念のために申し上げておきますが、奧田参考人の御説明のうち、全港湾労働組合が、元山運輸所属船員組織の当初、海員組合村上さんより組織云々のことがありましたが、海員組合門司支部村上さんという執行部員はおりません。またそのようなことを支部部員言つたということは、聞いてもおりません。また元山運輸による海員組合懲罰委員会云々という言葉がありましたが、いまだ会社とは懲罰委員会をつくつた覚えはございません。  以上、簡単ながら海員組合門司支部の当の責任者といたしましての御説明を終ります。
  4. 赤松勇

    赤松委員長 これより質疑を許します。
  5. 黒澤幸一

    黒澤委員 一昨日、労使の担当責任者から、いろいろ事情をお聞きしたのでありますが、わからない言葉が私にありますので、この機会にお伺いしたいと思うのです。それは予備船員でありますが、これの雇用関係はどうなつておるのでありますか。
  6. 奧田金太郎

    奧田参考人 予備船員雇用関係につきましては、私どもが全港湾元山分会ができましてから、組織せられてからの大体の予備船員移りかわりについて簡単に……。
  7. 黒澤幸一

    黒澤委員 そういうことではなく、会社予備船員雇用関係がどういうふうになつているか、それかお聞きしたいのです。いわゆる予備船員とほかの船員との間に、雇用関係相違があるかどうかということなんです。
  8. 奧田金太郎

    奧田参考人 相違があります点は、賃金収入面において大きな開きがございます。この点は、昨年の八月ごろまでは、予備船員は非常に賃金が安かつた。これは乗船者より安いのは当然でございますけれども、それでも非常に賃金が安く、それだけではとても生活がやつて行けないような状態であつたということは事実でございます。この点につきましては、昨年の十月十日及び十一日の日に行いました賃金交渉の結果、最近では、それ以来は改正せられておりまして、本人給プラス家族給、それから職務手当といつたようなものを含めまして、現在、大体基準内賃金総額程度を支給せられております。基準外賃金につきましては、乗船者の場合は、船員法通りのものはとても払えないから歩合制度にしてくれということでございまして、歩合制度なつております。私ども、経営の実態からある程度やむを得ないということで、それを認めておりますので、そうりつなぱ待遇とは言えませんけれども、かなりのものはあるわけであります。予価船員はそれがございませんので、賃金面につきまして相当な収入の差があることは事実でございます。それからほかに賃金待遇の面につきまして、特にかわつているということは私存じません。
  9. 黒澤幸一

    黒澤委員 いただきました資料中のに「雇止め」という言葉が使つてあるのでありますが、雇止め解雇とは相違があるかどうか、お尋ねいたします。
  10. 松重善三

    松重参考人 雇止めについてでございますが、船員雇用関係におきましては、雇用契約を結ぶことと、それからその船の船長あるいは船舶所有者におきまして、その船から下船せしめることを雇止めと申すのでありますが、この雇止めと申しますものは、雇用契約の解除とは違うのでございます。
  11. 黒澤幸一

    黒澤委員 これは港湾労働組合の方から出されました資料の中に、第二組合組織されたということがあるのでございますが、この第二組合は、港湾労働組合全日本海員組合以外の組合宇部元山商事にできたということでありますか。
  12. 奧田金太郎

    奧田参考人 お答え申し上げます。第二組合がどういう形でどういうふうに組織せられておつたかは、はつきりしていないわけであります。ただ、その点ですが、私どもが全日海、全港湾以外の、しかも汽船部門以外の労働者船員加入したということを知りましたのは、十一月の二十一日が最初でございます。そのことは労働協約交渉の席上において、会社から伝えられたのでございますが、それまで、全日海にも入つていないし、全港湾にも入つていないと思われる人が、十六名程度つたわけであります。その人々が別に組合をつくつたとかどうとかいうことを、話としていろいろ聞いておりましたので、そのことをさしてそういうふうに言つております。なお具体的にどういう規約があり、どういう組織があつたものか、その辺のことは私どもは存じません。ただ、それはある時期において、そういう全日海にも入らない、全港湾にも入らない一つのグループがあつた、そういうことをさしておるわけであります。
  13. 黒澤幸一

    黒澤委員 そうしますと、資料に書いてあります第二組合というのは、正式に労働組合としての組織はなかつたということですか。
  14. 奧田金太郎

    奧田参考人 もちろんそのように私どもは解釈いたしております。この点は、会社側並びに全日海側の方にお尋ねいただければよくわかると思います。
  15. 黒澤幸一

    黒澤委員 それでは第二組合につきまして、松重参考人にお聞きしたいと思います。
  16. 松重善三

    松重参考人 今奧田参考人が申されます第二組合について、会社は、前記山口地方労働委員会でもそういうお言葉を使つておられるのでありますが、全日本海員組合のことをさしておられるのでなければ、われわれとして了解する、あるいはそういうことを聞いたことはないのでございます。
  17. 黒澤幸一

    黒澤委員 それでは伺いますが、宇部元山運輸商事におきましては、昭和二十三年以来、就業規則がつくられておつたというふうに資料には述べられておりますが、この就業規則につきまして、従業員過半数同意を得てつくられたものであるかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  18. 松重善三

    松重参考人 お答え申し上げます。昭和二十三年就業規則締結いたしますとき、私会社に在籍いたしておりませんでしたから、その内容帰つてよく調査の上お答えいたしたいと思いますが、その当時の代表者であると思われます塩田亀市という者の捺印がある就業規則が現在残つております。それで、塩田亀市が会社従業員の大方の同意を得て、あるいはその意見を聴取した上で意見を述べ、これに調印いたしたものと心得ております。
  19. 奧田金太郎

    奧田参考人 その点につきまして、私どもが現在までこの問題についていろいろと研究した結果をちよつと申し上げたいと思います。この会社に全港湾元山分会組織されました当時、正式の就業規則はなかつたと主張いたします点は、先ほど御質問炉ありました過半数の者の意見書を付したものがなかつたということであります。なお会社側の方は、今おつしやいますように、地労委その他に対しましても、塩田亀市なる者がおつてこれがいわゆる船員親和会なる組織を持つてつて、そうして十分に過半数労働者意見を代表するものであるというふうな御見解でございますけれども、この塩田亀市は、地労委審問廷におきましても、私は従来組合運動の活動をやつた経験がないという点と、それからこうした船員親和会なるものは、事実有名無実なるものであつたというこ点の証言をいたしております。そういつた点をいろいろ総合いたしまして、また私どもの全港湾に一時汽船部門に約七十名おつたうちの五十六名が組織されておりました当時に、ほとんどの船員塩田からそういつた就業規則説明を受け、あるいは意見を聞かれたという事実はないわけであります。以上の点で、私どもははなはだ疑問に思いまして、この点九州海運局調査いたしたのでありますが、そのときにわれわれが確認いたしましたことは、要するにそれが正式の組織された過半数労働者を代表するものであるならば、正式の組織でなければならないし、何か正式の組織であるべきだし、またそれでなければ、未組織あるいはそういつた正式の組織でないものの代表者であるならば、これはやはり全員の連署連名があるべきだという御見解で、その点会社に対していろいろと御調査中であつたということを確認いたしております。そういうわけでございまして、この点は後に、たしか十二月五日付でございますか、全日海のここにおいでになります石山参考人意見書が付されまして、その後提出されておるように存じますが、それ以前におきまして正式の意見書あるいは同意書をつけて提出されておるというふうには、私どもどう考えても考えられないわけであります。
  20. 黒澤幸一

    黒澤委員 ただいま松重参考人お話を聞きますと、就業規則ができた時に、あなたは会社におられなかつた。しかし会社就業規則塩田某署名捺印がしてあつたというお話でありましたが、それではその就業規則従業員過半数同意書なり意見書が当然添付されてなければならないと思うのでありますが、そういうものがおありであるかどうか、お伺いしたい。
  21. 松重善三

    松重参考人 奧田参考人が申されました就業規則と申しますのは、会社昭和二十三年ごろに制定いたしました就業規則が、少くとも現在の時勢にかんがみ、非常にずさんであり、それが従業員お方にも非常に不備なものであるということを心得ましたために、昭和二十八年五月でございましたか、よく記憶しておりませんが、このときに改訂いたしたく、その申込みを、その以前に調印しております塩田亀市氏に依頼して、それを各船に配付し、その意見聴取方をお願いしたのであります。ところが、それに対して塩田亀市氏は、各船にこれを配付され、そして配付されたものに対して何らの意見がない。であるから多分このままでよろしいのであろうということで、九月中旬でございましたか、その新しい就業規則捺印なさいまして会社の方に提出なさいましたのでございます。これは会社といたしましては、署名捺印が具備されておらなければならないということを忘れておりましたがために、これをなすつておらないのでございます。それがため海運局よりこれに対する御注意がありまして、その改訂方塩田亀市氏を通じてもう一度とつていただこうと思つておりますやさき、全日本海員組合との協約が成立いたしましたため全日本海員組合過半数組合でありますがゆえに、その意見を添付してあらため海運局提出いたした次第でございます。     —————————————
  22. 赤松勇

    赤松委員長 この際駐留軍労務に関する件について緊急に質問がありますので、本件について調査を進めます。多賀谷真稔君。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政務次官が見えておりますので、時間の都合もあるかと思いますので、ごく簡単に緊急に質問いたしたいと思います。それは昨日の午前一時から、福岡県の板付の飛行場で、駐留軍労務者争議をしておるわけでありますが、これは次のような事情によるものであります。駐留軍労務者給与は、福岡県におきましては、労働組合ができていなかつた関係もありましようが、とにかく他の県に比して非常に低いわけであります。そこで、この点につきまして、福岡県の総務部長を初め、特別調達庁労務官現地に参りまして、小倉のごときは、給与是正について現地の部隊と調印をいたしまして、一応認めたわけであります。ところがその後になりまして、ハル指令に基くものであるということで、その賃金給与是正については、かつてにしてはならないというストツブ令が出たわけであります。そこで、今その軍当局不信に対して、争議が行われておるわけでありますが、これについて労働省では、どういうふうに考えられておるか。ことに福岡県におきましては、他県に比して非常に給与が低いわけであります。福岡県の平均が一万六千十二円、神奈川県が一万八千六百二十二円、京都が一万九千五百二十円、兵庫が一万七千八百四十四円、広島が一万六千二百九十六円、大分が一万六千六百三十四円、長崎が一万六千八百二十二円、熊本が一万七千九十六円、全国平均が一万八千四百五十三円という状態なつておりますのに、福岡県は全国平均より二千円も低い。しかも物価の状態は、駐留軍がおりますところは、地域給にいたしましても、ほとんど全部が現在の四級地、元の五級地であります。そういうところでありますのに、給与は非常に低い状態であるということになつておりますが、労働省としては、一体この給与是正についてどういうお考えであるか、お尋ねいたしたいと思います。
  24. 安井謙

    安井政府委員 ただいまの多賀谷委員の御質問につきましては、もう少し具体的に調べて正確な御答弁を申し上げたいと思いますが、ハル指令が出ておりまして、給与是正にかつてつてはいかぬというのが出ておることも事実であります。同時に、調停案によつてある程度の線が打出されておることも事実でありますが、もう少し両者の関係を調べまして、正確に御答弁申し上げたいと思います。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはすでにストライキが起きており、重大問題化せんとしておるのでございます。昨日突然ストが起きたのではなく、一月前からハンストに入つておる。それでハンストを解く条件で若干金が出ましたが、その後不満でストライキに入つたということで、もう一箇月も前からいろいろ紛争現地で起つておるわけであります。調達庁といたしましても非常に憂慮されて、長官を初め労務部長等がいろいろ努力されておることも事実であります。そこで私は、こういう状態でありますので、調達庁にまかせないで、労働省としても大臣みずから行つて折衝願いたいと考えておるわけであります。少し具体的になりますけれどもハル指令というのは、一一四八号指令と申しまして、給与是正に関する指令でありますが、これはわく外であるかわく内であるかということで、いろいろ折衝しておりますから、非常に大きな問題でありますので、調達庁にまかせないで、労働省としても積極的に取上げて折衝をしていただきたいということを要望して、私の質問を終ります。
  26. 赤松勇

    赤松委員長 なおこの問題に関連いたしまして、全駅留軍労働組合北海道地区本部執行委員長川島博君より、正木清議員に対しまして陳情があり、正木清議員より、私の手元に調査の依頼がありましたので、ただいま多賀谷君の問題と関連をいたしまして労働省にお願いしておきたいと思います。陳情の要点は、ただいま千歳の駐留軍労働者は、駐留軍の撤退ないしは国内移動等の問題及び軍予算の削減等を原因とする人員整理の問題について、深刻な不安に陥つております。軍の撤退移動の問題は、国際情勢と微妙な関係があり、その時期や程度については予測のできないものでありますが、それだけにまたわれわれとしては一層不安がつのつて来るのであります。最近における国の内外の情勢は、すべて駐留軍の漸減につながるものばかりであり、このことは駐留軍労働が次第に終りに近づきつつあることを意味しているからであります。われわれは特に駐留軍が今後何年となく駐留することを望んでいるものではありませんけれども、ただ事後における失業の対策について、何らの見通しも持つていないことを不安とし心配に思うのであります。軍の撤退移動の時期やその情勢は、あるいはわれわれの思い過ぎであるかもしれませんが、われわれにとつてはきわめて大きな関心事であるのでございます。またかりにこのような問題は早急に起きないとしても、伝えられるところによると、軍予算の大幅削減、陸軍関係四十億ドルにより、一九五五米会計年度においては、本年にも増して大量な人員整理を受けることは想像にかたくないところであります。このようなことから当地区本部は、新年度の闘争の中心を特別退職手当の獲得、現行の八割増しと失業対策において積極的な闘争を行う方針を決定いたしました。特に特別退職手当につきましては全駐労中央本部よりも、すでに国会に対して特別立法制定に関する請願書も提出済みでありますので、一日も早く実現化されるよう御配慮をお願いいたします。  次に、軍の撤退移動、保安隊増強計画その他について、次の諸事項に関してぜひ御調査の上御善処をお願いしたいと思います。一、政府は五箇年計画をもつて保安隊等の増強をはかろうとしているといわれているが、その計画の概要、特に北海道に対する増強計画、人員、地域、時期等及びこれと相関連する駐留軍の撤退もしくは移動についての見通し。二、本年度政府は保安隊を二箇師団増員し、北海道にも新たに管区を設けると伝えられているが、その詳細、人員、地域、時期等。三、これと相関連して千歳町においては、町当局が千歳キヤンプの第二基地の返還を求めてここに保安隊誘致の運動を起しているが、これに対する政府の態度もしくは方針。四、三月十七日の参議院予算委員会における木村禧八郎氏の質問に対し保安庁経理局長石原氏は、北海道、仙台、岐阜三箇所において相当規模の米側の施設の接収解除、これの使用ということを予定していると答えられているが、これについての詳細、またこれは昭和二十九年度における北海道に対する保安隊の増員計画といかなる関連があるか。五、保安隊増員五箇年計画と関連する北海道の米軍施設の接収解除の計画いかん。六、昨年来駐留軍労働者は軍予算の削減等により逐次減少の一途をたどつており、約一万名減少、この傾向は一九五五米会計年度においては一層増大すると思われるが、このような駐留軍労働者の失業問題について、政府はいかなる対策と方針を持つているか。また情勢の変化によつて米軍の国内移動もしくは撤退等によつて、ある特定地域に一時に多数の失業者が出現した場合、これに対して政府はいかにその対策を講ずるか。七、二十九年度における北海道に対する政府の失業対策の計画いかん。八、一九五五米会計年度における極東軍、特に在日極東陸軍の予算状態はどうなつているか。またそれと相関連する駐留軍労働者雇用量はどうなつているか。現在の雇用数に異動があるかどうか。九、相次ぐ軍の大量人員整理に対して、駐留軍労働者組合を通じて特別退職手当、現行の八割増しを要求しておるが、これに対して政府はいかに考えるか。十、最後に、ここ最近中に軍の縮小、移動に伴つて駐留軍労働者が大量に整理される情勢にあるかどうか。また予算上の理由からの見通しはどうか。以上について御調査をお願いし、御善処をば賜わりたいと思います。  以上が、全駐留軍労働組合北海道地区本部からの陳情であり、正木議員を通しまして本委員会提出されておるのであります。この点につきましてもあわせて調査御善処をばお願いしたいと思います。     —————————————
  27. 赤松勇

    赤松委員長 それでは前問題にもどりまして質疑を継続いたします。黒澤幸一君。
  28. 黒澤幸一

    黒澤委員 就業規則につきまして、ただいまいろいろお尋ねしたのでありますが、昭和二十八年五月ですか、それまでは従業員過半数同意を得ない就業規則であつた。二十八年五月になりまして、従業員過半数同意を得て新たに就業規則をお出しになつた、こういうふうに私了解しているのですが、それは間違いでございましようか。
  29. 松重善三

    松重参考人 私らも、就業規則を作成いたしまして、これは管轄官庁に一応届け出なければならない制度なつております。それゆえにわれわれは昭和二十八年五月あるいは七月以前の就業規則におきましては、ただ単に船員従業員代表者塩田亀市の記名捺印のあるものをもつて管轄官庁に届け出たのでありますが、これは受領されて有効と認められております。またそのときにおきましても、塩田亀市氏は、その就業規則を一応各人に配付して、これの意見を聴取しておるという公述がございます。但し、その記名連署捺印はございません。
  30. 奧田金太郎

    奧田参考人 ただいまの松重参考人のおつしやつたことについて、ちよつと申し上げたいのでございますが、私どもがこの就業規則を改正いたしましたのは、組合結成当時からのことをいろいろ調査いたし、会社にも申し上げたのであります。そうして昭和二十三年から会社は、今おつしやいました昭和二十八年五月あるいは七月までの間においては、塩田亀市名義のものがあつた。そこで会社側では五月に案をつくつて七月に宇部海運支局の了解を得て、確実にこれを実施しておるということを主張されるわけであります。このことは会社の答弁書の中にも書いてございますが、私どもの方では、当時九月、就業規則の改正について非常に疑義があつたわけでございます。そこで会社の方では、七月より宇部支局長の了解を得て確実に行つておると申されますけれども、私ども宇部支局に参りまして——これは十月の三日ごろでございますが、そういつた点について、船員親和会なるものがあるが、今全港湾組合員は五十数名ある。これは大体過半数に近いものであるが、このことについて組合団体交渉を持ちながら、こちらへは改正について何らの相談がない。そうして塩田亀市なる者の意見書をつけてそういう改訂をやろうとしておるということを言つておるが、この点についてどう思われますかと御質問した際に、九州海運局宇部支局では、これは九州海運局船員規準課が検討すべき問題であつて、支局ではこれを事務的に取次ぐだけの話であるということで、その翌日私どもは九州海運局船員規準課に参りまして実情を申し上げましたところが、それはどうも船員親和会の代表なるものは、過半数労働者の代表とは認められないし、労働組合あるいは正式の組織であるということは認められないとすれば、過半数の署名、捺印がいるんだ、私どもの報告が事実とすれば、その同意書の作成について文書偽造の疑いがあるから調査する、こういうことでございます。なお会社の方では、先ほども申しましたように、昭和二十八年の七月中旬以来、そのように確実に実施しておる、こういうふうに言われておりますので、その確実に実施しておるところの就業規則なるものが、そういつた経緯で改訂せられたのだ。しかも先ほど塩田亀市の同意書については非常に疑義があるという御指摘を受けたので、十二月の五日に全日海の方の意見書を付していただいて提出した、こういうことでございますけれども、その問いわゆる就業規則海運局に再度精査をして提出したと称する時期におきましては、われわれの全日本港湾労働組合関門支部組合員が、ほぼ過半数程度つて、これと団体交渉を持つておるのに、過半数を越えるかどうかは別といたしましても、訂正に関する一言の御協議もいただけないし、あるいは意見を聞かれていない。組合に対してでなく、全港湾に所属する組合員に対しても、個人についても、全然意見を聞かれていない。このことは、何べんか会社に対して申し上げたことでございます。なお一例を申し上げますと、十一月三十日、谷勝という船長が、船内居住に妻子をはしけに乗せたという理由で解雇せられた場合にも、会社に正式な就業規則があるのか、それに基いておやりになつたのですかと尋ねましたところ、そういうものはない。そこで正式なものがないということになれば、就業規則に基いてでなく、単に社命に基いて、これはけしからぬ、どうだこうだということは、ずさんきわまるのではないかというお話をいろいろ申し上げまして、この解雇は一応撤回されたわけでございます。そういう経緯で、私どもの主張といたしましては、七月より確実に改訂実施しておるというその改訂実施について問題があるわけでございます。
  31. 黒澤幸一

    黒澤委員 松重参考人の先ほどの答弁を聞きますと、塩田亀市なる者が船員代表として署名捺印をして、個人個人の同意を得たというような公述をしているいうことを申されたのでありますが、そういうことでありますならば、何ら九州海運局船員基準課ですか、そこでいろいろ御注意を受ける必要はなかつたのじやないか。また二十八年の七月にあらためて当局に届出をする必要もなかつたのじやないか。そういうところに私非常に疑問の点があるのですが、事実を事実としておつしやつてもらいたいと思うのです。もう一度はつきり御答弁願いたい。
  32. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。これは奧田参考人のおつしやいましたこと、それから先ほど私が申しました管轄官庁より捺印がありますものは一応の届出をしなければならないということとは、どちらも正確なものでございまして、一応この就業規則改訂をいたしましたものは、会社の意思といたしまして改訂したいということで、それまで実施しておりました就業規則を追加あるいは改正ということをいたし、これを五月中旬より八月に至る間、船員の方に配付してそれの意見を聴取いたしたのであります。そして船の運航の都合上、九月になりまして船員代表とみなしております塩田亀市氏が宇部に帰航なさいました際に、その結果というものを拝聴したのでございます。そのときに塩田亀市氏は、その就業規則も一応各船の船長より以下であつたかということを聞いたところ、別に意見はない、こういう御返答であり、そしてそれあるがゆえに、記名捺印いたしましよう、こういうことで意見書をつけられて提出するという段階に至つたのであります。しかるところ、全港湾労働組合が結成されまして、十月でございますか、海運局の方へおいでになりまして、自分のところの組合とさつきのようなことを申されたのでございましよう。管轄官庁といたしましては、疑義があるゆえ、これに対する過半数捺印のあるものによつて意見書を不備とすべきである、こういうふうに十月末、あるいは十一月初めごろ、われわれの方に御通牒があつたのであります。そしてそれに伴つて、私どもはさつそく就業規則に対する意見を聴取すべくその手配をいたしておりますやさき、全日本海員組合からは、労働協約改訂その他をいたしますし、全日本港湾労働組合は今にも争議をいたそうとなさるような空気の最中であつたために、十一月末までその件を一応処理いたすことができない状態に置かれておつたのであります。しかるところ、十一月十八日に全日本海員組合の人名数を調べましたところ、前参考人全日本海員組合石山さんがおつしやいますように、過半数組合であるということを確認いたしましたがゆえ、その組合に向つて就業規則改訂に対する意見というものを求めたのであります。これに対する意見書がついて管轄官庁に提出する手配になりまして、それでその実施の期日というものに対しては、意見書がついたときにおいて実施期日と定めるべきであるか、あるいは改訂の時期よりこれを実施する期日といたすべきであるか、これを管轄官庁の方にお尋ねいたしましたところ、就業規則改訂いたしましたその日よりこの就業規則は有効なるものとすることがいいのだということでございましたので、就業規則を七月一日より有効であるというふうに海運局の方から申されたと陳述しておるわけでございます。
  33. 黒澤幸一

    黒澤委員 ほかの同僚委員の御質問もあると思いますので、この就業規則だけについて時間をとるわけにも参りませんが、ただ従来の就業規則が不備であつた過半数意見書が添付されていなかつた。そのことについて九州海運局から御注意を受けた、こういう点を承知いたしまして、次の質問に移りたいと思います。
  34. 松重善三

    松重参考人 今おつしやいました、従来の就業規則が不備であるがゆえに改訂する——これはちよつと違うのであります。前のものは一応認められておつたのでございますが、会社の方といたしまして、と申しますのは、前の方の七月一日以前の就業規則は有効であつた。しかしながら、七月一日以降会社の意思によつて、これの改訂あるいは追加を必要とするがゆえに改訂をいたしました、こういうことでございます。
  35. 黒澤幸一

    黒澤委員 それでは奧田参考人にお伺いいたしますが、あなたの方から出されました資料によりますと、従来の就業規則船員法九十八条違反の疑いがある。それで九州海運局の基準課から就業規則の不備の点が指摘されまして、塩田亀田亀市名義の同意書では偽造の疑いがある、また過半数署名捺印もしてないので、それを請求するところであるということが述べられておるのでありますが、これは真実であるかどうか、この機会にはつきり御答弁願いたい。
  36. 奧田金太郎

    奧田参考人 先ほど申し上げました意味において、真実であります。松重参考人は、今、七月以前のものについてはそういうことで有効と認められておつたと述べられたのでありますが、それは、なるほど有効と認められておつたのでありましようけれども、私どもの全港湾元山分会組織されておりまして、多数の船員がおつても、どういうケースで意見を求められ、どういうふうにしてその就業規則が制定されたのか、ほとんどの者が知らないのであります。と申しますことは、九州海運局としては、塩田亀市なるものが過半数労働者を代表するものであるとお考えになつて、有効とお認めになつたのでありましようけれども、その後地労委審問廷におきましても、塩田証人ははつきりと明言しております。と申しますことは、従来私は組織活動をやつた経験がないこと、それから船員親和会なるものもやつみたが、事実は有名無実であるというような二つのことを証言していること、そういつた点から、私どもは九州海運局に参りまして、そういう実情を——それは陳述の日付はあとでありますけれども、初めからそういう実情はわかつておりますので、私どもといたしましては、九州海運局に行つて、実情はこういうふうである、当然この就業規則には疑義があると申し上げたわけであります。九州海運局といたしましては、前に一度有効であるといつて確認されたものについて云々されたわけではなく、会社がここに主張しておりますように、七月以降海運局宇部支局の了解を得て、確実に実施しておると称しておりますし、当時私どもが参りました十月中旬において、問題になつておりましたこの就業規則改訂につきまして、九州海運局も御調査なつておつたわけであります。それからなお、先ほど松重参考人が、十月の下旬あるいは十一月の初めに海運局からそういつた御注意があつたので、皆の意見を聞き直すことにしておつたけれども、当時の状況でそういう段階に至らなかつたというような御解明のようでありますけれども、私どもといたしましては、その当時において、全港湾組合あるいは全港湾組合員に対して、当然意見を求められるような時期がたびたびあつた。と申しますのは、その就業規則が問題になつたことがあるわけでございます。解雇問題等につきましてもあるわけでございますから、当然そういつたことは、意見を求められるべきである、このように考えておるわけであります。  なお全港湾はいやだから——ほかに好きな組合ができたから、その好きな組合意見は聞くが、きらいな組合があるときは、そんなものの意見を聞く必要はないのだというお考えだつたら、これはいたしかたがございませんけれども、そうでないならば、今の期日の問題につきましては、十分われわれの方の意見を聞いていただいてしかるべきだと思われるような情勢もあつたわけであります。以上申し上げます。
  37. 黒澤幸一

    黒澤委員 ただいまの奧田参考人の御答弁に対して、松重参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  38. 松重善三

    松重参考人 今奧田参考人は、われわれの組合意見を聞かれる機会があつたということを申しておられますが、先日私陳述申し上げましたように、私どもが全港湾労働組合からその加入されておりますお方の氏名及び員数をお伺いした機会というものは、非常にまれなのであります。それで、いつ、いかなるときにそういう状態にあつたかということは、会社においては全然判明していなかつたために、かかる手落ちがあつたものだと私心得ております。
  39. 奧田金太郎

    奧田参考人 一点申し上げたいと思います。十一月二十三日ごろ、全日本海員組合の結成を会社から私どもは告げられたわけであります。しかしながら、当時すでに越年資金の団体交渉をやつておりまして、そうして越年資金の支給の対象になる人員は何名であるか——当時私どもの方では五十六名でございましたが、そのことについては会社の方も十分心得て、五十六名で、支給の金額は幾らになるというようなそろばんをはじいて交渉しておられましたのですから、少くとも十一月の上旬ごろに、そういつたことは十分御承知であつたはずでございます。
  40. 黒澤幸一

    黒澤委員 就業規則の問題につきましては、これ以上お尋ねしましても、双方の意見の一致を見るような御答弁を願えないと思いますので、今までの御答弁あるいはいただきましたいろいろな資料から、われわれは正しい判断をするということにしたいと思います。  次にお伺いいたしますが、昨年の八月二十四日に全港湾労働組合から会社に対して、文書をもつて団体交渉の申し入れをしたようであります。これに対して松重部長は、そうした団体交渉申入れの書類を受取らないということで、この団体交渉が持たれなかつた。また八月二十七日にも団体交渉会社に申し入れたようでありますが、これも拒否されておる。こういうふうに資料に出ておるのでありまりが、この点、どういう理由でこの団体交渉申入れを拒否されたのか、松重参考人にお聞きしたい。
  41. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。この点は、山口地方労働委員会においても一応審問に入りまして、そのことが聞かれておるのでありますが、一応そのときの答弁書のその部分を読ましていただきます。  八月二十四日、このとき組合の方からは藤田船舶課長にその書類を渡して会見を求めとありますが、藤田船舶課長はこのとき不在であります。またそのあと、佐々木と申しますか、この人に文書を手交したということでありますが、このとき私も出張をしておりまして、事実御面接にあずかつておる事実がないのであります。それから八月二十七日にここにおられます奧田氏と、田中書記長さんだつたと思いますが、全港湾の方が——これもございますから読ましていただきます。八月二十七日申立て組合、これは全港湾働組合関門支部から団体交渉申入れ松重部長が受けたが、申立て組合に被申立て会社船員が加盟している事実の明示がないので回答を拒否したことは事実である。  これはそのときまで全港湾労働組合が、私の方の船員従業員が加盟しておるかおらないかということの事実が全然会社に判明しておりませんので、こういうふうなものが御提示にならなければ、一応会社といたしましては団体交渉には応じかねる、話合いはしても団体交渉を持つということはちよつとおかしいのではなかろうかと思いましたのと、そのときにちようど社長も常務もおりませんし、私だけでどうにも扱いかねますので、団体交渉を拒否したというようなかつこうになつたことは事実でございます。
  42. 奧田金太郎

    奧田参考人 ただいまの団交経緯の点について、一点だけ申し上げたいと思います。松重参考人は、そのときに組合加入の事実を知らなかつたから拒否したということでございますが、その後地労委審問廷において、うすうすは知つてつたというような御証言をなさつたという点が、私どもの記録に残つております。  それから、その後結成を阻害したかどうかという問題につきまして、各人を呼んで、お前は組合に入つているか、入つていないのかということを聞いたら、何名かの者は入つたと言うた。しかし聞いただけで、組合に入つたかどうかということを言うた覚えはないというようなことを証言しております。これは八月二十四日から九月五日まで会社は結成を知らなかつたということについての反論でございます。  なお八月二十四日、佐々木という人に文書を渡しておりましたのに、二十七日全然知らないというてけられたとありますが、事実はそうではなく、私が参りましたところ、共産党に入ろうと、自由党に入ろうと、全金属に入ろうと、おれの知つたことではない、うちの従業員以外の者と話し合う必要はないからお断りする、こういうことでございます。その後、こういうふうな申立てをされておるわけです。ところが、二十七日に宇部地区連の三役が、そういうむちやくちやなことで団体交渉をやることは不当である、話合いでやれば解決するということで、御仲介の労をとられまして、その席上で西田委員長が言われましたことは、そういうふうにして団体交渉申入れの公式文書が、会社のある下部幹部に渡された。それについて、そういう団体交渉申入れの書類が来ておる話は聞いたけれども、受取つても見ぬし、知らないのだ。こういうお話があつたので、それはあまりにも不誠意ではないか、要するに会社の幹部、責任者として、そういつた団体交渉申入れ書類である正式の文書が手交されたならば、当然直属の幹部であるところの松重参考人は御承知なさつておるべきだ。それを申入書が来ておるという話は聞いたが、私はそのものは見ておらぬし、知らぬということは、非常に不誠意であるか、あるいは非常識な話ではないかということを指摘せられまして、その点については、一応松重参考人も了解せられて、団体交渉に当つた事実がございます。
  43. 石山正治

    石山参考人 元山運輸商事株式会社と全港湾労働組合との紛争に関連いたしまして、全日本海員組合組合員が非常に不利益な取扱いを受けておるという案件がございますので、これを一応御説明申し上げたいと思います。すなわち昭和二十九年三月二十五日付をもちまして、差出人川畑保雄という名前の——その当時海員組合におつた者でございますが、そのほか八名の方の脱退届が参つたわけでございます。その脱退届が参りましたので、海員組合の規約といたしましては、一月前にこれを出さなければならないというようなことになつていますが、規約上の問題は別といたしまして、これを一応受理いたしたわけでございます。けれども、本文書は——内容をここに持つて来ておりますが、とにかく筆蹟が大体同一と見受けられる点が一つ、そして同じ紙を使つておられるという点で若干疑義を持ちましたが、一応受理したわけでございます。その後、その中の一名でありますところの松本勇の名で、四月十五日付をもちまして、松本勇の差出しによりますところの文書が参りました。中を開いてみましたところが、全然自分は脱退をした覚えもないし、またするつもりもないというふうな文書でございます。従いまして、すぐその筆蹟をちよつと見ましたところが、前回脱退のときの届けと全然違つており、なお印鑑におきましても違つておるというのが内容でございます。前回説明申し上げました通り、山口地裁におきまして、解雇仮処分の処置がとられておりますが、その解雇仮処分の一名がこの松本勇という本組合組合員と思われるものでございます。従いまして、これが真実とすれば、本組合組合員が、本人の知らない間に仮処分の申請を受け、かつはいろいろと迷惑をしておるということでございます。そのことは、結局本人の人権を無視した態度でもあろうというふうに考えます。ここにその資料を持つて来ておりますので、委員長並びに各委員に御高覧を願いたいと考えます。
  44. 黒澤幸一

    黒澤委員 時間がありませんから、次の質問を進めたいと思うのでありますが、十月十一日に全港湾労働組合会社側におきまして、賃金問題、労働協約の問題につきまして、原則的に妥結ができまして、十月十二日に細目についての協定もできた。ところがその後社長調印をしないために、それが実施に至らなかつたということに、資料ではなつておりますが、このとき会社から交渉おいでになりましたのは、松重部長さんということになつております。この場合に、松重部長は会社の代表として出られたものだと思うのであります。そうしますならば、この妥結いたしましたことにつきましては、社長捺印しようがしまいが、当然これは会社組合の話合いがついたのでありますから、実施しなければならないはずであると思うのでありますが、どうしてそういう実施に至らなかつたのか、その点お伺いしておきます。
  45. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。そのときの状況は、一応先日松重が陳述申し上げましたが、これに組合がそういうふうに御指導になつたためであるかどうかは存じませんが、あるいはわれわれの組合とわれわれの組合のいう労働協約締結しない場合には会社をつぶす、会社の看板をおろすあるいは自分の組合に入つておりさえすれば会社はどういうこともようしないのだ、こういうふうなことが風聞を通じてわれわれの耳に入り、かつまた、それまでの労働協約を御提示願いましたあとから、労働協約審議せいといわれます十一月十一日に至るまでの期間というものは、全然そういう御態度でありまして、われわれとしては、それがどういう点が不満であるかということを申し上げることもできなかつたような状態に終始したのであります。と申しますのは、ここに来られております奧田参考人が九州海運局にいらつしやいまして、私ども雇用関係を結ぶべき原則である一番初めに結びますときに契約いたします船員である身分というものを、組合からいらつしやいまして、陸上労務者にとりかえろ、こういうふうなことを言われておるのであります。そしてまた、それが現実に所轄管轄官庁よりわれわれの方に、はしけの一部の者を、船員を乗せることをやめて陸上労務者に切りかえろ、そうしてすみやかに船員名簿よりはずし、雇いどめをしろ、こういうふうな御通達があつたわけであります。そのときに、私の方といたしましても、いささか疑義がございますので、所轄管轄官庁の方に参りましたところ、実はこうこうこういうことでやつて来たのだ。ところで、その場合にわれわれが申請いたしました書類に、その船が宇部港内を航行しておるということが記載されて、ほかのところに行かないということだから、一応理由が立つからはずしたのだ、こういうふうに言われております。但し、現実において動いておりますものは、こういう地方におきます港外に、われわれのどの船も出ており、かつ港湾運送業者が行われております陸より船、かつ船より陸にその品物をはしけ取りすることもやらずに、われわれといたしましては陸より陸へ向けての転送をいたしておりますし、どういうふうな状況におきましても、われわれは港外に出なければならないということを条件に雇用関係を結ばなければならないのであります。こういう意味におきまして、私どもはその賃金が、賃金以外のものにおいて食糧資金の支払いというものを要求され、実質的に支払います総額においても、陸上労務者よりある程度賃金の上昇を見ます。海員労務者、船員というものにおいてその従業員雇用しておるもの、これをさえ一応自分の組合組合員過半数がいらつしやいますものの資格に直そうとなさいましたような事実、あるいはこれは十一月の十五日でございましたか、組合の松岡執行委員長が、うちの会社におる船員船員の身分でなくてもいいじやないか、こういうような御発言があるなどのことより、われわれとしては労働協約審議の話合いにも入られず、一言言いますと、そのときに執行部員お方か、あるいはわれわれの従業員組合に入つておられぬあるお方などが、この組合労働協約を通さなければ、あるいはのまなければ、会社の看板をはずすというふうなお言葉が先に立ちますがゆえに、いかんとも協約内容に入ることができ得なかつたのであります。ところが、先ほど申されます十一月十一日に、その中におります船員のある者を解雇いたしましたという動機において、九州本部の田中書記長さんがいらつしやいまして、われわれの組合も港内組合であり、そうしてそんな乱暴なことをするのではない。と申しますのは、われわれがその理由を説明したときに、そういうことがあつたのか、しかしわれわれもそういう組合じやないのだ、話し合えばわかるのだ、こういうふうなお話で、ああそうですが、それでは話合いをさしていただきますような段階に至ることができましようか、こう申しますと、それはもちろんだということで、ああそうですか、それではあすから協約審議に入ろう——もちろんそのときに御提示になりましたのは、一昨日私陳述申し上げました労働協約、これではわれわれは協約締結することはでき得ない、また船員たるがゆえに船員の身分をつまびらかにしなければ、協約締結することはでき得ないのだといことを申し上げて、申し上げるときに、この労働協約というものは非常にけつこうなものです、しかしあまり簡にして明であるがゆえに、その一箇条々々々において非常な大きな幅がある。その幅の解釈にわれわれ苦しみますから、逐条審議のときには、一応われわれとして申し込まなければならないものがありましよう、それでは一応社長にそういうことを稟議し、そうして審議に入ることに決裁を得ましよう、こういうことを申し上げたことを、組合の方では、協約締結されるような段階に至つたのだと、こういうふうに皆さんに申されたように私は記憶しております。また私は、そういうふうに組合の方に申しておるのであります。
  46. 奧田金太郎

    奧田参考人 ただいまのことについて、申し上げたいと思いますが、その前に、ただいま全日海の石山参考人から、脱退者のことについて、何か全日海が非常に不利益をこうむつておるという事実のお話があつたようでありますが、この件につきましては、私帰りましてよく調査いたしませんとわかりませんですが、おそらく会社の作為あるいはまた全日海の作為ではないかと見ておりますので、いずれ調査いたします。  それから、ただいまの件でございますが、九州海運局に行つて私の方で船員法の適用を一部はずせと言つたと申されますが、そういう事実はございません。ただ就業規則の点についていろいろ御調査の際に、海運局の審査の基準として実情を聞かれたわけでございます。あそこのはしけは港外区域を走つておるのか、それとも純然たる一港域の中を走つておるのか、いわゆる外港、内港かという御質問があつたので、私どもが見受けたところ、港域の問題については研究はしておりませんが、一応港域である。そうすれば、これは船員法の適用について問題がある、こういうお話があつたことは事実でありますが、私の方でそれをはずしてしまえとかなんとかいうことは申しません。それから私の方の松岡が、船員の身分でなくてもよいではないかと言つたといいますが、これは港内のはしけにつきましては、はしけの船内居住の問題等で、いろいろ話し合つたときに、それから賃金交渉で話し合つたときに、「船員法の適用通り賃金を払うと、とてもやれないということで、基準外賃金船員法通りつておらないわけであります。そういつた点で、船員法通り払うということになると非常に困る。従つて、これはむしろ船員法によるのではなくて、何かそのほかの形でひとつ考えた方がいいのではないか。そういう話はいたしましたけれども、それをはずせとか、あるいは船員法の適用がいけないぞとかいうことは一切申し上げたことはございません。  それから、労働協約が非常に簡単過ぎるから、いろいろなものをつけたらどうか、こういうお話でございますが、それをつけることについては、十月十日の協約が一応の妥結を見ましたときも、そういうことをこの条文の中に一々うたうと、骨子が非常に不明瞭になる。協約というものは、やはり簡にして要を得たものがいいので、一応そういうものにしておいて、あとに明細をくつつけて——会村側の主張せられるのは、船員法の一箇条々々々の箇条を全部協約の中に織り込もうという方式でありましたので、それはいささか煩雑になるから、あとにそういつたごとを抜萃してつけたらどうか、こういうことで一応双方の意見の一致を見ております。従つて、そういう問題で社長に稟議を仰ぐとかいう問題はなかつたと思います。
  47. 黒澤幸一

    黒澤委員 もう一点だけお伺いしたいと思います。昭和二十八年の十一月十八日に、元山運輸商事株式会社全日本海員組合との間に締結されました労働協約第四条には「船員はすべて組合組合員とし組合員でなければ雇用しない。」——全日本海員組合員でなければ雇用しないという、いわゆるクローズド・シヨップの協約を結ばれたのでありますが、昭和二十九年三月三十一日のこの労働協約付属協定書の第二条には「会社は、この附属協定締結の日以降組合組合員でなくなつたものを引続き会社船員及び予備員として雇用しないこと並びに組合組合員でないものを会社船員及び予備員として新たに雇用しないことに同意する。」ということにきめられております。申し上げるまでもなく、この付属協定書は、労働協約第四条の実施に関しまして、協約本文のみでは不十分である、これを明確にしたものであると、私たちは考えておるのでありますが、これによりますと、全日本海員組合組合員でなくなつた者を引続き会社船員及び予備員として雇用してはいけないということ、それから全日本海員組合組合員でない者を会社船員及び予備員として新たに雇用しないこと、この双方の同意が成立いたしまして協定せられたものと思うのであります。これによりますならば、現在会社従業員である者は、全日本港湾労働組合加入していようがいまいが、そういうことに対しては、何らこの協約によつて解雇をしたり、また強制的に組合に入らせるというような拘束力はないというふうに私は考えるのであります。ところが会社におきましては、これは全港湾組合から出された資料の中にこういうことが書いてあります。「十一月二十八日、会社組合員の個人宛に出頭命令を出して呼びつけ「会社は全港湾を相手とせず、全日海に加入したものでなければ使わぬが全日海に加入するか、それとも会社を辞めるか」」というようなことが述べられております。それから「十一月二十六日午後三時、会社松重部長が組合員たる機帆船船長四名を呼び出して、同様、全日海加入を求め、拒否せられるや、ストライキ中で積荷ある場合は目的地まで責任を以て輸送することを誓約せよ、さもなければ繋船雇止めすると威圧し、会社側で書いた文書に捺印させた。又同日松重社長自ら会社小野田出張所に全員集合を命じ、組合員十一名に対して、全日海に加入せよ、さもなければ全日海が皆首を切るぞ、今全港湾を脱退して全日海に加入すれば、その場合の待遇も用意がある。」こういうことが書かれております。それからまた、これも十一月二十六日でありますが「多数従業員の面前に於て全日海加入者に対しては十一月分賃金を支払い全港湾組合員に対しては直前二百万円準備ある旨ほのめかしなが口金がないから支払できない」というように、この全日本海員組合との労働協約及び付属協定書をたてにとつて会社におきましては全港湾労働組合員に対してさようなことをなされている。こういうふうに述べられておるのでありますが、今私が申し上げたことに対てし、松重参考人はどういうふうにお考えになるか、またこういう事実があつたかどうか、その点御答弁願いたいと思います。
  48. 赤松勇

    赤松委員長 時間がありませんから、質疑応答はひとつ簡潔に願います。
  49. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。今私十一月十八日の労働協約第四条及び三月三十一日の付属協定書第二条というもの、これを実は探しておりますが、ちよつと目につかないのであります。それからあとの十一月二十八日及び十一月二十六日、十一月二十六日の三件に対しては、これは山口地方労働委員会審問の席上、組合が今申されたような状態——これも一字一句正確に同じかどうかはよくわかりませんが、感じでは同じようでございました。それに対する会社の答弁がそのまま出ておりますので、でき得べくんば、その答弁書の速記録を写して参りますから、それで答弁にかえさせていただきたい、こう思いますがいかがでしようか。一々の内容といたしまして、そのときの状態がすつかり、私日にち日にちで覚え切らないところがあると思うのでございますので、御容赦願いたいと思います。
  50. 赤松勇

    赤松委員長 当委員会におきましても審問の議事録を取寄せるように手配しておりますから、どうです。
  51. 黒澤幸一

    黒澤委員 記憶がある点だけでけつこうなんですが、お述べ願いたいと思います。
  52. 松重善三

    松重参考人 私この前運輸部長として参りましたときに申したことでございますから、日にちあるいは時間については誤差があるかもしれませんが、要領はわかつております。この件は、先に十一月十二日ごろから申しますが、全港湾労働組合が一日二十四時間のストライキをなさつたのであります。そのときに私どもとしては、スト態勢をとられた場合にその船の保安というものをいかにするかということの協議その他をしたあと——そのときは二十四時間でストライキは解決いたしました。そのあとほかの船は動きましたが、この四隻——この四隻と申しますのは、小野田セメントの小野田工場に製品を積むことに従事している船であります。この船が十日間ぐらい全然荷物が積めないという状態にあつたのであります。私、出張から帰りましたときに、そういう状態が続いておりますので、その状態調査いたしましたところ、小野田セメント小野田工場の販売課に小野田セメントの労働組合より申込みがあつた。この申込みは、全港湾労働組合が本船が積荷をすると争議に入るおそれがあるから御注意願いたい、こういうふうな要旨の申入れをなさつておる。それがために小野田工場としては、その四隻にはあぶなくて荷物が積まされないからこれをとめておくのだというふうなお答えがあつたから、積めなくて、そのまま放置してあるのだ、こういうお話でございました。ところで、私すぐ担当部員に、しからば、その指令は本船の船長にはいかにして行つておるかということを尋ねました。ところがその調査が出ておりませんものですから、さつそく部員をして各船長に対し、組合指令があるから現在とどまつて何にも言つて来ないのか、あるいは自己の意思によつて積荷の指令を受けずに、そのまま本船において待機しておるのか、こういうことを聞かせたのであります。ところが、組合からの指令ではない、そして自分たちもサボタージュをするつもりはないのだ、しかし荷物が積めないからその状態で置いておるのだ。こういう話でありますから、各船長——これは船舶所有者の代表四人であります。この各船長に、それではその港にとまつておる場合には、会社からいかにせよというまでは何日でもそこに停船しておくべきが当然な義務であろうかどうか、あるいは慣行としてそういうことがあるものだろうかということを聞きましたら、さつそくこの四船の船長の代表といたしまして第二十五号元山丸の船長中村氏だつたと思いますが、その人が、われわれは待船しておつて、その間の賃金も少くとも寡少になるのだ、だから一日も早く荷物を積ましてくれ、こういう申込みが参りました。それで、実は現在会社としても積みたいという意思にかわりはないのだ。ところが、小野田セメントの販売課より、本船に積荷ある場合においては、積んだ状態において争議をかもし出すおそれがあるから、積まないのだ、その解決がつくまではこのまま積まずに置くのだというふうな申込みがあつたために、積めないのだが、君たちはそのときにどういうふうに処理するか。そう申しますと、船長は、私が積荷をしました場合には、船長責任として、少くとも可及的に品質不変の原則を守つて相手方の港にその品物を持つて行くのだ。それでは組合指令争議ということがあつても、君たちは、そういうふうにするのかと聞きますと、われわれは組合があつても、一応船乗りであるから、そういうことをするのが当然なんだ、だから私は船長としてそういうふうにいたします、こういうふうな返事でございました。それで、君は船長代表者として来たのか、ほかの船長はどうかと言いますと、ほかの船長も、その通りだ、積みます、こう申しますので、なおそれに念を押すために、四人の船長を小野田出張所に集合させまして、私もそこへ参りまして、前述のごとき状態を話したのであります。ところが船長は、各人とも積んで参りますというので、それではわれわれとして小野田セメントに、船が積むと言いますから、それでお願いしますと言つたところで、私がそれに乗つて行くのではないのだから、あるいはどうこうと言われることもあり得るであろう。それから船長としてそういうふうにするのだという一札を入れてくれ、そうすれば、積荷が可能であるからと申しまして、その受諾を受けたわけであります     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕その受諾をしますと、船長たちは、それを文書にしてくれと申しますので、その通りにいたしまして、彼らの言う意思を小野田出張所の所長に代筆をいたさせたのであります。その意味を、これでいいかということの可否を口頭で求めまして、それに本人のサイン及び捺印を求め、小野田セメントに提出しておる、これがそのときの状態であります。それに対して、各船長ではございませんが、中村船長が、脅迫した、こういうことを申されて、地労委の公述書に書いておられますが、そのときの公述内容も一応雰囲気といたしまして、地労委の記録をごらんになつたらよくわかると思います。それから十一月十八日の協定書、それに対しての解釈は、——その間に抗議文あるいは決議文をつきつけられました。そのひしひしとわれわれにこたえます力は、われわれに三十一日の協定書をもちまして、会社組合に入つていただかなければその非組合員に対して処理をしなければならないであろう状態になるのだということをお知らせしなければならないような苦境に立ち至らされたということなんであります。
  53. 兼田富太郎

    ○兼田参考人 会社側からも、海員組合石山さんからも言われた言葉で、私ども組合立場を明確にしておかなければならないと思う点がございますので、ちよと申し上げますが、この宇部元山争議の場合に限らず、私ども組合では、会社の拡大再生産と申しますか、会社が一応何がしかの利益をあげて大きくなつて行く、その過程の中で、労働者の生活の安定を闘いとるのだ、こういう建前をとつております。従いまして、今度の元山争議の場合の紛争につきましても、これを平和裡に解決をするために、現行法が与えてくれたわく内で、きわめて厳重に、それにはずれないようにやつて参りましたことも、地労委なり山口地裁なりがよく認めておるところでございます。けれども、今度の紛争で遺憾なことには、一昨日来ここで聞いておられる方も、いろいろお困りの様子が見えるのでございますが、やはり立場々々がございますから、何ほどか自分の主観が入るのでありましようけれども、ともかく前に言つたことを、いや、そうじやなかつたという、前言を翻すということが、この紛争のきわめて大きな特徴であつたというふうに私は思つておるのです。事実私自身が昨年の暮れ、十二月二十九日に現地に参りまして、この元山運輸の百衣という専務さんに会いまして、こういうことではいけないからということで話し合いましたところ、全港湾との間に団体交渉を進めるということの約束もして参りましたし、ただの口約束ではいけないからというので、大みそかの十二月三十一日に、山口地労委が中に入つて、そういう方法で解決をつけるという協定書を調印いたしております。にもかかわりませず、またぞろそういう約束をした覚えがないとかあるとかいうことで、ごろごろかわつて行く、これがこの紛争を長引かせておる大きな特徴だと思うのです。従いまして、私どもは、やはり人間のことですから、間違いを起す場合もあるでありましようけれども、事実は事実として率直に認めなければならない、そういう態度をこれからとるのでなければ、幾らたつてもいろいろかわつて来る。先ほども、何か現地の方の風評というものを言われました。私も現地に行つたときに二、三聞いた風評、これは風評でございますから責任は持てないのですが、このごろごろかわるという裏には、会社社長さん並びにここにおいで松重部長さんは、親子の間柄であるそうでありますけれども、専務さんは違う人なんで、会社の中に内紛があるということ、その内紛のために、会社の統一された意思が表面に出ないのだということも聞いております。これも風評でございます。そのほか、密貿易で拿捕された船があつて、これの国籍証書の隠滅に奔走したという話が飛んでおる。これは冒頭に申し上げましたように、風評でございますので、私は言うまいと思いましたけれども、一応風評としてお伝えしておきます。それから海員組合協約を結ばれた裏にも、いろいろな動きがあるという風評を聞いておりますけれども、私どもはここでそういうことを問題にしようというのではありません。たださようなこの元山運輸という会社の中にあるいろいろな家庭の事情と申しますか、そういうもので、私どもの話を聞いてやるとか、いや聞いてやらないというふうに言われるのでは、労働者は実に困るのであります。そういう点では、私どもはできないことはできないと言つたらいいので、会社に二言をついてもらつては話が積み重なつていけないと考えます。一昨日と本日とやつていただいても、こういうことでありますと、現地事情というものも十分に把握される必要があるのではないかということを考えますので、どうかそういうふうにしていただきたいと思うものでございます。  なお海員組合とのことでございますが、私どもは、当面海員組合を敵にまわしてどうのこうのというようなことは考えておりません。ただ会社が、われわれに与えられておる団体交渉という権利を否定する場合に、海員組合さんとの約束を守らなければならないから、遺憾ながらあなた方と話合いはできませんということが、一番前面に出て来る団交拒否の理由でございます。ですから私どもは、海員組合さんが、同じ労働組合で、全港湾を相手にするな、あんなものをつぶしてしまえということをおつしやつたとは思いませんけれども会社は、ともかくそれでも、海員組合さんが切におつしやるのでいたし方がございませんということを、しきりに理由にするからということで、三月十七日に海員組合の陰山組合長と私が会見いたしました際にも、このことはとくとお願いをしてあります。つまり、会社側が団交を拒否する理由に、海員組合からいろいろ注文がつけられておるから、そういうことはどうしてもできませんというふうに、いつでも言うから、あなたの方でほんとうにそういうことを言つていないならば、会社がそういうことを逃げ口上の理由に使つてはならない、海員組合をだしに使つてはならぬというように、会社側に厳重に勧告をしてほしいということも、陰山組合長にお願いしました。陰山組合長は、そういう場合のことがあるなら、現地の方にも連絡をとつてみようということも言つておりました。けれども三月三十一日には、あの通告書というものが出て来た。いわゆる付属協定書がその日に締結されて、その日に通告書が出て来た、こういうことになつております。先ほどから申し述べておりますような、ぐるぐるかわつて行くという現象が、幾らでも果てしなく続いておるわけです。それからほかにも山九運輸という会社がありますが、そういうところでもこういう事件が起きて、一つの会社の中に組合が二つできて争つて行くと、小さな経営はつぶれるような危機に瀕するということも、私どもはよく心を配つております。ですから、そういうことにならないようにということも、十分な用意を持つておるはずなんです。はずというように言いますと、人ごとみたいですが、私どもは、ともかくあそこの中では、従業員みんなが一本になるとか、どつちかに片寄つてしまうということをきめない限りは、共存して行くよりほかに手がないのじやないかというように考えております。ともかく平和的に妥結をして行くという最後の腹を持つておるわけでございます。今までお聞き取りいただいた点で、まだぐるぐるかわつておるような証言を私も聞きますので、でき得ますならば、国会の立場から事実をよく調べるという方法をとつていただきまして、私ども紛争の解決に御指導を賜わりたいと考えるわけでございます。
  54. 石山正治

    石山参考人 先ほど奧田参考人から、委員長並びに各委員に御提示を願いました資料について、会社の作為ないしは海員組合の作為ではないかと思われる、こういう御発言がございました。私どもは本席上において、少くとも事実に基いてこのことを判断していただくということが趣旨でございます。これが全港湾責任において行われたかどうかということには、全然付言いたしておりません、ないしは、会社が行われたかどうかということもわかりません。しかしながら、こういう事実がほんとうであれば、これは完全に組合員の権限が阻害されるということを申し上げておるのです。それに組合の作為であるということを考えられるというふうなお言葉は、海員組合としては非常に不可解な言葉であると考えます。なお兼田委員長さんが、先ほどから海員組合会社と裏で取引をしておるというよう風評があると言われますが、もちろん風評でございますから、根拠はないものと思われますけれども、私ども二十四年以降、会社が相当頑強に抵抗するものを、汽船船員賃金については少くとも一般並の水準を保持して来た、こういう実績がございます。かりに、これがなれ合いで行うものであるとすれば、こういう水準はとれないことは事実でございます。なおかつ兼田委員長は、海員組合を敵にまわしていないと言われますが、まことにけつこうなんで、海員組合もまた全港湾を敵にまわしておりません。従来も現地におきましては、こういう問題につきまして、いろいろとビラないしはいろいろな方面からの風評が入ります。これは兼田さんと一緒でございますけれども海員組合に対する誹謗讒訴は、少くとも労働組合の主体性を奪うがごときそういうビラが出ております。誤解されるようなビラが出ておるのであります。しかしながら、これに対しては、全日海としても一言もそれに対応する態度は示しておりません。これは何ゆえかと申しますと、一番先に申し上げました通り労働組合労働組合とが争うということを何ゆえにするかというためでございます。ひいては、さつき兼田さんがおつしやつたように、こういうことの結果として、中小企業が危機に瀕することになる場合も予想されます。かるがゆえに、組合員の不利でもあり、そういうことは決して組合の安定策ではないということで、冷静に対処するためにわれわれとしてはそういうものに対して全然行動していないのであります。  なお、現地活動の問題でございますけれども、私ども宇部に行きましていろいろと運動いたしましたのは、船員大会が一度と、その他連絡事項が一度くらいなものでございます。その他は全然元山運輸にはお伺いしておりまむん。団体交渉の場合、船種が約十五くらいございまして、私どもの方では一々交渉の必要もございますので、会社側にはたいへん無理かもしれまむんが、一々門司の海員組合まで来ていただきまして、ほとんど公開的な要素を持ちまして船員代表も主として交え、そこで団体交渉しておるのが実情でございます。  なお、陰山組合長云々の問題につきましては、前回委員会和田参考人からるる申されておりますから付言いたしません。  次に、船資法等の問題でございますが、今回の委員会におきましては、船員法に関連する問題が多々出ております。この船員法の監督官庁は運輸省の船員局でございます。本席上船員局の監督官もお見えにならぬようでございますけれども、少くとも法治国家である以上、船員法に基いて船員法の問題が出る以上、やはり厳正に判断する必要があると考える次第でございます。  なお、現地組織状況につきましては、もちろん全港湾労組内容的な組織状態は、私はわかりませんが、門司関門港の周辺におきます組織状況は、大体船員法を適用される者が海員組可の組合員を形成しており、その他労働基準法に律せられるべき船員港湾労働船合に加盟されておるというふうに私は見ております。従いまして、おのおのがおのおのの立場を尊重するということにおいて、かかる現象も冷静に判断してやるべき必要がある。われわれは全港湾労組組織について、何ら従来までも干渉した覚えもなし、かつはお互いに信義と道義に反するがごとき内容を持つたところの組織を行つたことはございません。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 議事進行について、われわれはこの問題につきましてはきわめて慎重に扱つているわけであります。それは両組合間の問題が、普通の労使関係でない要素を含んでおるからでございます。先ほどから参考人意見を聞いておりますと、議員の方で質問をしないことをわざわざ答えられておる。あるいは資料が出ておる、こういうことで両方の応酬がされております。しかしそのことにつきましても、われわれは何も全然調査をしないということではありませんけれども、本日はわれわれは議事の進行上調査をしたくない、かように考えておるわけであります。また海員組合も全港湾も全国組織でありますし、東京に本部がございますので、われわれとしても、必要に応じ、いつでも調査し得ると思いますので、なるべく現地の事実について発言をしてもらいたい、かように考えます。
  56. 持永義夫

    ○持永委員長代理 それでは委員長からも特に付言いたしておきますが、この委員会では事実の調査を基礎にいたしますから、そういうおつもりで、今後御発言の際にはよろしくお願いいたします。
  57. 井堀繁雄

    井堀委員 松重参考人に一、二お尋ねいたしたいと思いますが、労働協約締結されました時期はいつであるか。それから当時の従業員の数、あるいはわかりますならば当時の従業員の種類、組合員の数、それから締結しました相手方の労働組合の名前、代表者の名前等について、この際簡潔にお答え願いたいと思います。
  58. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。全日本海員組合元山運輸商事株式会社労働協約締結いたしました期日は、昭和二十八年十一月十八日、その当時におきます組合員は、全日本海員組合は六十一名であると心得ます。全港湾に所属いたされておる組合員は、その後の交渉おきまして、越年資金のときに一応知つたのでありますが、五十六名であると思います。全日本海員組合組合長は陰山氏でございます。名前は今ちよつと記憶しておりません。その協約締結に立ち会いました者は、組合側が全日本海員組合門司支部石山氏、執行部員平田氏、それに速山氏、この三名でございます。会社側が立ち会いましたのは常務取締役百衣貞雄、その当時管理部長である松重善三の二名でございます。以上でございます。
  59. 井堀繁雄

    井堀委員 そうすると、当時従業員の数は百十七名になりますか、それともまた、その二つの組合以外に従業員がおりましたら、その数をお述べ願いたいと思います。
  60. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。その当時百十七名であつたと記憶いたしております。
  61. 井堀繁雄

    井堀委員 今松重参考人からお答えをいただきました組合員の数、協約締結された期日、会社側の代表名、組合側の代表名に相違があるかないかについて、石山参考人からお答え願いたいと思います。
  62. 石山正治

    石山参考人 私どもの方の協約締結当時の組合員は、原薄によりまして六十一名でございます。なおその他非組合員が、全港湾労働組合にどのくらい所属しているかということについては、私は海員組合としては知りませんけれども、大体会社側の総従業員は百五名と、われわれの調査ではなつております。
  63. 井堀繁雄

    井堀委員 同じく奧田参考人にお尋ねいたしたいと思います。奧田参考人の方は、直接給与には関係がないでしようが、当時、今会社側を代表されます松重参考人からお述べになりました全港湾組合員の数について、相違があるかないかだけでけつこうでございますが、伺いたい。
  64. 奧田金太郎

    奧田参考人 ただいま松重参考人から申されました通り、当時五十六名であつたと記憶いたしております。全日海側の方が何名であつたかにつきましては、会社側からいただいた名簿では六十四名となつております。なおその六十四名のうち、私どもが疑問に思う人が何名がありまして、その後調査いたしております。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  65. 井堀繁雄

    井堀委員 もう一つだけちよつと松重参考人に伺つておきたいと思います。私ども委員の手元に、それぞれ資料が各方面から提示されておりますが、会社側紛争に関する動きの中で、非常に重要だと思う点がありますので、この機会に伺いたい。これは全日本港湾労働組合の方からわれわれに提示された資料でありますが、それにこういう事実がある。前後は省略いたしますが、その紛争の原因の一つとしてあげている中に「全港湾組織をつぶしてしまおうと悪質なデマ、中傷、さらには買収、恫喝等あらゆる手段で全港湾組織の分裂を策して来ました。同時にまた官憲を使つて首切りの挙に出て来ました。」云々とありますが、こういうことを組合側が訴えておる。これに対して会社側としては、どういうふうに抗弁なさるか。もし松重参考人として答えられるならばお答えを願いたい。
  66. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。会社といたしましては、本件に対して作為、策謀というものは全然ございません。かつ官憲を使つてというお言葉がありましたが、これはある船長とある船員の無断下船ということ、及びその船員の無断下船の事実があるにかかわらず、それを会社に報告しなかつたということであります。それから会社の業務の完全遂行かつ安全なる就業を妨げるがために、その船員二名に下船勧告をしたのであります。これに対して、その二名の船員が船内にすわり込みをしましたがために、会社としてはやむなく強制下船の挙に出でまして、そのような理由により、小野田警察署にお願いした事実があることはございます。以上でごまざいす。
  67. 井堀繁雄

    井堀委員 私のお尋ねいたしていることは、組合側の方で私どもに提示されている資料をあげてお尋ねしているので、その事実があるかないかということだけでけつこうであります。  そこで、今官憲云々ということについては、事実の説明があつたので、よくわかりましたが「買収、恫喝」という、言葉をそのままとる必要はないと思いますが、文字の前後にそれぞれ説明が加えられております。それで、これは組合側としては、あるいは「恫喝」という言葉が適当でないなら、ある威圧を受けたという意味でありましようし、また「買収」というのも、ある利益をもつてつたということを意味するのだろうと思いますが、これらに対して、会社側としては何か思い当る節でもございますか。
  68. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。私ども全然記憶がございません。
  69. 井堀繁雄

    井堀委員 それではお尋ねいたしますが、そうすると、この全港湾会社との間の紛争について、先ほど一つの事実についてはお認めになつたが、他の事実については否定されたような答弁でありました。私が今お尋ねしているのは、こういう争いのときですから、事実について大小にかかわらずお互いにそれぞれ御主張を異にする場合もあると思いますが、今はこういう争いがあつたかなかつたかということについての事実をお尋ねしたいのであります。しかし、一つは認めて一つは否認しているので、それはけつこうでありますが、こういう事柄が一方では起つており、他方では先ほどお尋ねして明らかになつたように、それぞれ参考人意見がまつたく一致しているのは一つの職場に二つの労働組合があるということで、これはそれぞれみなお認めになつている。そういう場合に争いが起つて、その争いの事実をこれからわれわれは知つて行きたいわけです。その場合に、それぞれ立場々々の主張をなされることはけつこうだと思いますが、こういう事実の一つ一つをこれからわれわれが調べて参りますために、いろいろなことをお尋ねいたさなければならぬのでありますが、委員会も多くの仕事を持つておりますから、こればかりをやるわけには行かぬので、御協力を願う意味で簡単に、あるかないかという事実だけをはつきり伺えればいいのであります。  そこで、今たいへん事実が明らかになつて来たのでありますが、こういう事実について、会社側としては今委員会に提訴されましたり、あるいは法廷に出たりしておりますから、そういう事柄については、これは別にいたしまして、とにかくこういう紛争が起きておるということは一日も早く解決しなければならぬ。そういう解決に対して、会社側としてどういう処置をおとりになつておるか、このことについて具体的に、ごく簡単でけつこうでありますから、お述べを願いたい。
  70. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。その前に私の方の会社におきまして、かかる不祥事件が起りましたがために、皆様のお手を煩わせることを非常に遺憾に思い、かつ恐縮いたしておる次第でございます。なお本問題がかかる段階にまで至りましたことは、私どもも非常に不備な点が多かつたことをおわびいたすとともに、現在、私ども強力な両組合の間に入りまして、右するも左するも非常に困難な事態にありますので、一日も早く両組合の方が円満に御協調なさいまして、その中に出て来ます健全なる労働思想というものを私どもに御提示ありますことを、深く念願いたしております。会社といたしましては、中小企業体として、組合をどうしようこうしようというふうな意図は全然ございませんがゆえに、両組合の御当事者がしつかりと御協調なさいまして、そうしてその中で、会社にこういうふうにせいということの申出をわれわれにされることを、深く念願いたしておるわけでございます。
  71. 井堀繁雄

    井堀委員 今お尋ねいたしましたことに対するお答えは、何か二つの組合の方の話合いがつけば、あなたの方は何でもないようなお答えですが、ちよつと事実とは大分違うような感じがいたします。私の今お尋ねしておるのは——組合同士の話合いは、組合の御意見を伺うつもりでおりますので、問題は、あなたの方の従業員の一部の人と会社との関係については、今のお答えではちよつとわれわれとしては納得できませんから、その点について、もしお答えができればしていただくし、できなければ後日でけつこうだと思います。  それから、ついでに今のことに関係いたしましたことで、全海員と全港湾の両方の現場の参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、会社側の今の主張の主たるものでは、何か労働組合の両者の争いが解決すれば、すべての問題は解決するかのような感じを受けたのでありますが、そういうことでありましようか。あるいは資料によりますと、決してそういうことではないといういろいろなものをわれわれは今承知したわけです。これは非常に重大なことでありますから、現場においでになる奧田さんと石山さんのお二人から、このことについて、ごく簡単でけつこうですからお答えを願います。
  72. 奧田金太郎

    奧田参考人 私、昨年八月以来、いろいろな問題に直接あずかつて参りましたので、私の意見を申し上げますと、要するに、会社は非常に数々の不当労働行為をやられた結果として、その責任をのがれるために、あるいは地労委のあつせんがまずかつたから紛争が起つた、あるいは全日海との協約があるからこうだというふうに、責任のがれをして来られたと思うのであります。そういつたことでなくて、真に労働組合の人格を尊重するという建前に到達して今後一切を話合いで解決するということのお約束、それからそういつた約束についての背信行為をしないという考え方、この二点をよくよくお考えになつて、今後とにかく話合いによつて問題を解決して行くという態度をおとりくださるならば、ここにほんとうの意味の解決が生れて来るのではないか、このように痛感いたすわけであります。
  73. 石山正治

    石山参考人 ただいま奧田参考人から御意見がありましたが、海員組合は、もともと全港湾労組と争いを起すというような考えはありません。従いまして、先ほど申しましたように、こういうものに対していろいろ流言がございますけれども、それに対応したことはございません。なお、この問題が起きます協約締結当時、全港湾労組がどのくらいいるものやら、あるいは船員法を適用されているものか、いないものかという調査が十分でございませんので、そういうことでもめていることは聞いておりますが、船員法上の問題は全然関知いたしておりません。従来行われた労働基準法に関与して港湾労働組合の諸君が紛議を起しているのではあるまいかと思いましたところ、協約締結後、港湾労働組合との間にいろいろ争いがあつたということが具体的にいろいろ話が出ましたので、この問題については、われわれも何とか平和的に解決する方法はないかと腐心いたしているわけでございますけれども港湾労働組合からわれわれの方に、協約上の問題についての正式なお話は、現地としては全然ございません。ただ本部間においていろいろと話があつたということでありますけれども海員組合としては、労働組合間における信義にもとる行為は、全然したことがございません。従いまして、ほんとうに労働組合の友愛と信義という問題から話合いが行われるならば、何らかの解決が見出されるのではないかと思いますけれども、私の方では単一でございまして、責任組合長にございますので、ここで私がどうこうするという意見の持合せはございません。
  74. 奧田金太郎

    奧田参考人 ただいま石山参考人からおつしやつたことについて、誤解はないと思いますが、念のために申し上げておきます。私が先ほど申し上げました意見は、会社に対する意見でございまして、全日海に対する意見ではございませんので、この点ちよつと付言しておきたいと思います。
  75. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 事実について二、三点お尋ねいたしたいと思います。全港湾から出ております資料によりますと、十二月五日会社は十五名の新規採用を行つたと書いているわけであります。会社参考人は、そのことには全然お触れになつていないのみならず、実は十五名の者を解雇した、そのうち海員組合に属する者が七名、港湾労働組合に属する者が八名、海員組合の方は納得していただいて何の異議もなくおやめになつたが、港湾労働組合に属する人々が異議を申し立てられて、仮処分ですか、地労委ですか——仮処分だつたと思いますが、を出された。こういうように一昨日陳述があつたと思うのであります。松重参考人から、これはどういう経緯であるか、時間の問題はどういうようになつているか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  76. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。十二月五日には、会社解雇はございましたが、雇入れ、あるいは雇入れ契約の事実はございません。
  77. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ただいま私の読み違いであつたかと思いますが、十二月五日というのは、採用されましたところにかからないで、解雇の方に文字がかかつてつたようであります。  そういたしますと、解雇する以前に、会社は十五名なりあるいは十四名なり、そういつた新規採用をされた事実があるかないか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  78. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。会社はその配乗において、いつごろからかよくわかりませんが、解雇あるいは雇入れという事実は、その間常にやつております。
  79. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 少くとも団交が申し込まれてから、すなわち全港湾労働組合の団交が申し込まれてから、同名程度お雇いになつているか、お尋ねいたしたい。
  80. 松重善三

    松重参考人 何名と申されますが、それはあとで調査して御返答いたしたいと思いますが、つまびらかに記憶いたしておりません。ある特定事項についてお聞き願いました場合には、その記憶をたどることができるかと思います。
  81. 奧田金太郎

    奧田参考人 今松重参考人は御記憶がないと言われましたけれども、ただいまの御質問は、組合側が言うているのは十四、五名新規採用があつたと言うがそうかという御質問だと思います。会社側地労委に出しておられます書類では、新規採用のいきさつというので、特別にいきさつを出しておるれるわけであります。それに載つておりますことは、十一月一日全日海二名、十一月十日全日海四名、十一月十四日全日海六名、計十二名の新規採用を行つたということをはつきり書いてございますので、松重参考人の御記憶を呼び起し願いたいと思います。
  82. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 松重参考人にお尋ねいたしますが、あなたはこの事件が紛争なつてから、会社の代表として参加されているはずですが、しかもあなたの方から答弁書というか、そういうものにちやんと明記していることを、はつきりわからない、こういうことはどういうことですか。
  83. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。会社雇用関係が、常に下船、乗船において切れ、切れぬということの状態については、私詳細にわかりませんが、ある特定の時期において、現在奧田参考人が言われますように組合から動議を出したということでございましたら、私たちも書類がございますから、それを見ますと思い出すと思います。今持に奧田参考人から組合が申し立てたと言われましたことで、私その意味をはき違えておりますことをおわびいたします。
  84. 奧田金太郎

    奧田参考人 組合が申し立てた、動議を出したというふうに今言われましたけれども、これは別に持別に動議を申し立てたわけでもなんでもないのでありまして、一貫したいろいろの問題の中で、会社の方がこういうふうに持別に新規採用の経過ということで明細にお出しになつております。なお松重参考人地労委審問並びに主尋問、反対尋問、いろいろな際に、このことにはかなり触れておられると思いますし、御存じないわけはない。これは最も焦点の問題じやないかと思います。
  85. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 奧田参考人にお尋ねいたしますが、あなたが持つて読まれた書類は、答弁書ですか。
  86. 奧田金太郎

    奧田参考人 説明書です。
  87. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 印刷して出されたものですか。
  88. 奧田金太郎

    奧田参考人 そうでございます。
  89. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 松重参考人にお尋ねいたしますが、また注意申し上げておきますが、一応地労委なんかで書類でお出しになつたものについては、十分把握されているんだという前提で、われわれは質問をしておるわけです。ことにあなたの方から印刷をして説明書として出された、そのことを、組合は引用して言つておるのですから、そういうこと自体が事実において違つておるならば、これはなかなかわれわれが何日あなた方の陳述を聞きましても、事実の把握はできないと思うのです。ですから、組合側が出し、またあなたの方でちやんと印刷して説明書が出ている事項については、ひとつ明確に御答弁願いたいと考えます。  しからば再度お尋ねしますが、今あなたの方から出ておる説明書に基いて、全港湾の方から人数の確認がございました。すなわちこの十二名という数字の確認がありましたが、これは正しいでしようか。
  90. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。後ほど調査してお答えさしていただきたいと思いますが、現在調べておりますが、それが出て参りません。     〔委員長退席、井堀委員長代理着席〕
  91. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 奧田参考人で持つておられる書類、それは会社の方で印刷した書類とは違いますか。
  92. 奧田金太郎

    奧田参考人 その通りです。社印が押してあります。
  93. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ではその書類を見てからお答え願いたいと思います。
  94. 松重善三

    松重参考人 今の御質問にお答えいたしますが、組合から提出されております書類が、ここにあります原文と同じでございましたら、その通りであります。
  95. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一応十一月一日から十二名の採用があつたということになりますと、参考人の一昨日の陳述によりますと、少くとも十二月の五日に十五名の解雇が出ておる。私たちは、どうもそういう点がふに落ちないのであります。いやしくも経営不振ということで解雇をされるといつた予想がつき得るときに、十二名の採用をしながら十五名の解雇を出しておる。こういう点がはなはだふに落ちないのですが、一体どうしてこういう経営の見通しのないことをおやりになつておるのか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  96. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。大体この問題につきましては、会社が八月以前にいたしました経営の行為から御説明いたさなければならぬと思うのでありますが、会社は八月の十七日に会社所属汽船である第一、第三徳宝丸という二はいの船を売船いたしたのであります。この売船した理由は、一応その船が私の方の事業体の経営に沿つておらない。そこでこの代船を求めて行くということで二はいの船を売つたのでありますが、この二はいの船を売ることによつて、営業上に一つの穴があく。それでその資金を引当てにして小型鋼船あるいはF型程度の船を手に入れる、そういう肩がわりするための売却であつた、そういう事実があるのであります。ところで、これを重役会にかけましたところ、その承認を得ましたのでどこかに適当な船舶はなろうかということで買船に心がけたのであります。その後に至りまして、十月末の重役会のときに、その資金が買船のほかのものに流出した。と申しますのは、その間における借入金の操作——これを返還することにおいて新規に借入れをする、こういうことでその債務の時期を新たにしようということで、一応復興金融公庫その他の借入金を返済いたしたのでありますが、金融逼迫の折から、その代替借入れが円滑に行かない。しかる上に、昨年八月より漸次海運界が不況に向いまして、営業分野におきましては、その自己の営業の幅を保つために、営業資産である船腹はほしいけれども会社の財政においてはこれが許されないという現状に立ち至つたのであります。それでこのことを重役会に相談いたしましたところ、それでは営業としても持たなければならないから、なるべくそれに合うような代替船を求め、その資金とのかち合せをつけようではないかというふうな決議が出て、一応Fあるいはその程度の船腹を二隻購入するということを、その十月の重役会で決議したのであります。それがために、それまでの状態といたしまして、買入れを予定した船舶に対する船員の準備をしてその待機を命じておりましたものを、その代替船舶が小さくなりまして定員が減りましたがために、十二月の末日には何としてもやめていただかたければならないような状態になりました。しかしながら、このやめていただかなければならないような状態になつたときの要員の中で八名——これはしつかり記憶がございません、九名であるかもしれませんが、それらの人々は私方の会社だあります富久丸という機帆船——これは業務上におきまして、現在の機帆船界は、石炭の売行きが非常に悪いために、汽船の資格を有しないためと鋼船でないがゆえに、船待ちが非常に多いのであります。そのために運航実績が上らず、いかにしても損失を招かなければならないというような状態にあつた。たまたまここに朝鮮に機帆船を輸出するという話がありまして、それと合致して、われわれもその契約を了といたしましたために売船した。その事実が重なり合いまして十二月十五日にやめていただかなければならない状態になつた、こういう実情でございます。この実情は予備員並びに新規採用の分は、私方の会社からは地方労働委員会あてに説明書が出ておりまして、これに詳細書いてございますから、何でしたら提出いたしたいと思います。
  97. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも見通しのない話ですが、この十二名の方を雇われた場合に——この十二名というのは正式に採用なさつたのですか、それとも試用期間として置かれたのですか。保険金その他においても、正式な手続で雇用されたかどうか、これをお尋ねいたします。
  98. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。正式に雇い入れたものであります。保険の点は、これはおしかりを受けなければなりませんが、私ども会社の労務係が事務の整理の都合上、一箇月あるいは二箇月間保険規則を忘却して取得さしていない事実が発見できたのであります。それがためにその雇い入れした人の中に、保険制度の保険資格を有しておられないお方があつたと記憶しております。
  99. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 十二名の方を全部忘れたのでなくて、あるいはその中に忘れた人がある、こういうことなんですか。
  100. 松重善三

    松重参考人 そうでございます。その十二名以外にも、忘れた方がありました。
  101. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 解雇された海員組合の七名は、その後どういうようになつておるのですか、ほかの方に就職されておるのですか。
  102. 松重善三

    松重参考人 それはよくわかりません。
  103. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 海員組合の方では、この七名の解雇のあつた場合に、納得さして解雇を認めたかどうか、この点お尋ねしたい。
  104. 石山正治

    石山参考人 七名の解雇につきましては、会社側の代船その他の理由が事実と相違しておりますので、その点の理由を船員諸君にるる説明いたしました。なおわれわれは、詳細な個々の経済状況までは調べておりませんが、これがほんとうに会社の経営上やむを得ないものであつたかどうかということを調べました。なおかつ退職金等の問題についても、できるだけ有利にすることが現実の解決の方法であると理解いたしましたので、船員諸君個々にも説明申し上げまして了解を得ました。  なお、先ほどからいろいろ解雇の問題が言われておりますけども、現在の日本海運界においては……。
  105. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がありませんから、私の質問しておることだけを答えてください。
  106. 石山正治

    石山参考人 われわれの方は、画一的に個々の調査はやらないが、現在海員組合には失業登録制度がありまして、組合員の希望によつて登録したり、できるだけすみやかにやるように、全組織をもつてあつせんに努めております。
  107. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 採用された十二名の中に、解雇された十五名の方が入つておるかどうか。
  108. 松重善三

    松重参考人 七名ほど入つております。
  109. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると七名の方は、どちらに所属なさつていらつしやいますか。
  110. 奧田金太郎

    奧田参考人 今の方は全部全日海であります。
  111. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 松重参考人に再度お尋ねいたしますが、最後に採用された日にちは、何日になつておりますか。
  112. 松重善三

    松重参考人 十一月十四日でございます。
  113. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あなたの会社では、代替船を求められる場合、あるいは船を買われる場合に、買う前に大体船員を雇われておるわけですか。
  114. 松重善三

    松重参考人 この件につきましては、さきに売船いたしました一、三億豊丸の船長あるいは船員が余つております関係上、その船を買わなければならない。そうしてその人間の生活を保障しなければならないというような意味におきまして、船長が自分の船に乗せるべき人間などの手配をいたしたわけであります。もちろん、そのものが決定しかけてはくずれ、決定しかけてはくずれるというふうな現状が続いておつたことも事実であります。そういう意味で、予備員として先に雇用しておつた事実がございます。
  115. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 経営が非常に不振であり、業界も八月から悪いというときに、前もつて予定して船員を雇うということは、なかなかわれわれの想像ではできないのでありますが、もしそういうことだといたしましても、十一月十四日に人を雇つておる。しかも十二月五日には十五名も解雇しておる。こういう点を見ますときに、どうも私はふしぎでならない。また経営者としてこれを行われるということになりますと、まことに経営の見通しのない話であると私は考えるのです。これに対して港湾労働組合では、どういうように御判断になつておるか、お尋ねいたしたい。
  116. 奧田金太郎

    奧田参考人 私どもの判断を申せということでありますから申し上げます。私どもでは、十一月一日から十一月十四日までの間に採用されました前記十二名の者は、全日海と十一月十八日のクローズド・シヨッブ締結にあたり、過半数を獲得する必要がある、そのための採用であると思うのでありますが、何かほかに理由があつて急に擬装雇入れをやられ、あるいはそのためにまた一月ほどたつて解雇せられたのである。すなわち協約締結の約十日ぐらい前からその四日前まで、急に新たな人間が雇われ、しかも地労委における会社側証人の証言によりますと、これはほぼ全日海加入を条件としての採用であります。十一月十八日、全日海との労働協約締結前でありますが、全日海加入を条件とする採用が事実行われておるということが証言せられておるという点。それから会社は、ちようどこの採用をやつておる時期に、全港湾側に対しては、予備員はとてもかかえられぬから、全員解雇しなければならぬ。われわれの方では解雇すると言われた、こういうふうに言いますが、会社側の別の答弁書には、解雇しなければならぬ状態にある、こういうふうに社長言つたのだというふうに書いてございまして、それから地労委における組合側の証人に対する会社の百衣常務の反対尋問の中にも、解雇しなければならないと言つたので、解雇するとは言わないといつたようなことが言われております。従いまして、片方で一日から十四日までに全日海の十二名を新規採用をやつております。その同じときに、全港湾側の予備員は経営不振でとても雇用できないから解雇すると言つておる、そういうはつきりした証拠がございます。その点と、先ほど会社は、保険の届出は非常に不注意であつたのだ、こういうふうにおつしやいますが、後ほど解雇いたしました七名だけが、採用された十二名の中で保険の届出がされていないということ、これは保険局の証明でございます。  もう一点申し上げます。一昨日も申し上げました通りに、本船にさしあたり乗せる必要がないのに、全港湾脱退と同時に、後には全日海に一旦加入した者に、会社が公文書をもつて、今何とか船に乗せたいけれども、すぐに席がないからお前はしばらくしんぼうしておつてくれということで、一旦全港湾におるときに切つた者を、すぐ乗船の約束をいたしてございます。これは全部地労委に書面で出しております。こういつた状態で、どうしても会社は経営不振で切つたとは考えられぬのであります。  もう一つ申し上げますならば、その後の地労委立会いの団体交渉の席上で、会社は、とにかく面子を立てて一旦首を切られたことにしてくれ、そうすればまた翌日からすぐに新規採用するのだということを言つております。この点は地労委への資料でも、会社の確認書の一項にはつきり書いてございます。そういつたいろいろな情勢から見て、経営不振のため解雇ということは、どうしても納得できないのであります。従いまして、そのときの地労委において、全日海に加入することを条件に、全港湾の予備員はおるが全日海の予備員がおらぬ、とにかく募集しなければならぬというので、短期間に荒牧という船長が自分の郷里に帰つて、しかも社名を受けてこれをかき集めたという証言をいたしております。それはひとり汽船乗組員のみならず、当時大部分が全港湾加入しておりましたはしけ要員までも、そういつたことをやつております。但し、はしけ要員については、彼の証言では、自分個人の意思でやつたが、会社に話をすればどうにでもなると思つてつた。別の証言では、全日海に当然加入させようと思つてつたんだ、こういうことでありますので、そういつた点から、これは労働協約締結前に、会社が無理に人員の水増しをやつたものである。そうしてまた後に全港湾の人間を切るときに、全日海の側の者を切つたんだということにするために行つた一つの工作であるとしか思えない、こういうふうな判断をいたしております。
  117. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次にお尋ねいたしますが、この海員組合との労働協約締結の団交は、いつごろからお始めになつたか。これは海員組合会社側にお尋ねいたしたいと思います。
  118. 石山正治

    石山参考人 会社組合との団体交渉は、最初に申し上げました通り十一月十日から行いました。
  119. 松重善三

    松重参考人 その通りであります。
  120. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 十一月十日から団交が始まつて、十八日に締結されたというふうに承知するわけですが、このクローズド・シヨツプの締結に対して、会社側は、もしクローズド・シヨツプを結ばなければ他の従業員解雇しなければならない、あるいはその組合に全部吸収しなければならない、こういうように御判断になつてクローズド・シヨツブを結ばれたかどうか、会社側にお尋ねいたしたいと思います。
  121. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。この協約は、われわれとしては結びたくなかつたのであります。それで、結ばなければならないような状態になりましたために結んで、その前に先取得権しております当社の未加入従業員に対しては、その後組合の方に申入れをいたしまして、何とか待つてくれということを言つております。結ぶ当初におきましては、労働組合法第七条一項但書の件を全日本海員組合より理論づけられて持つておいでになりましたときに、過半数あるがゆえに、われわれは否定することができなかつたのであります。
  122. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この労働協約締結について、何かストライキでもするぞという海員組合の方の戦術でもあつたのでしようか、この点をお尋ねいたします。
  123. 松重善三

    松重参考人 お答えいたします。ストライキをするぞと言われたことはございませんが、空気としては、今にでも持ち込まれるかというふうなけはいがございました。これに対しましては、私、宇部興産が労働協約締結の問題において、その所属船舶である清忠丸という船が名古屋で数十日滞船いたしました苦い経験を心得ておるがゆえに、今にもストライキが起るであろうということを、会社の全幹部が考えました。
  124. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 海員組合ではこの労働協約締結に際して、どういう闘争戦術をお用いになつたか、お尋ねいたしたいと思います。
  125. 石山正治

    石山参考人 お答えをいたします。労働協約を結ぶ場合は、一応理論的に相手を説得して、理論が相手側に肯定されておるにもかかわらず、なおかつ聞かないという場合に、この闘争戦術でもいろいろございます。各船に船内委員長という制度がございますから、これにいろいろ連絡をいたしまして、今労働協約締結中である、従つて本件については重大な覚悟をしなければならぬ、並々ならぬものがあるという意味のことは連絡申し上げております。これは船員大会でも、そういうことはいろいろ述べられております。従つて、そういう面で覚悟は持つております。従つて団体交渉におきましても、相当激烈な論議が当然行われます。その余波を受けて、正式とは言いがたいのですが、労働組合と経営者との間の問題でございますから、相当威迫的な字句が使われます。これは会社側にとつては、やはりストライキを背景にしたというふうな——われわれもそういう覚悟でございますが、そういうふうに思われる節があつたかどうかは相手側のとることでございます。闘争戦術にしましても、一応これに対する協約の啓蒙活動が主体でございます。それを主としてやつております。なお停船ストライキの場合には、規約の定めるところによりまして、一応無記名投票によつてやらなければならぬし、相当の手続がございますが、もし解決しない場合は、当然われわれの方としてはストライキもやらなければならぬと思つております。
  126. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では無記名投票というまだ手続の段階にはなかつたわけですね。
  127. 石山正治

    石山参考人 さつきも申しました通り、十六日に最後の第三回の交渉を行つたわけであります。最後にどうしても結ばぬのかというふうに言つたので、これはストライキでもやらなければしようがないんだといつたところが、別室において長時間協議されまして、そうしてこの件について最後の腹をきめられたようにわれわれ記憶しております。
  128. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 全日海の方から、第七条一項但書という条文の提示があつたということになりますと、おそらく全日海の方では、クローズド・シヨツプというのは合法であり、なおクローズド・シヨツプを結べば、未組織労働者であろうと、他に組織された労働者がいようと、これは解雇になり得るのだという解釈がおそらくあつたろうと思うのですが、そういうことは当然御承知で、経営者の方では結ばれたのですか。
  129. 松重善三

    松重参考人 その点については、確かにそういうふうに伺いました。しかしながら、そのあとにおきまして、山口地労委の井上という事務官が来られて、いかにクローズド・シヨツプの協約を結ぼうが、その間に先取特権を有する従業員組合活動をすべく団結した場合には、それとも団体交渉を持つ方がほんとうであろうというふうな意見を述べられましたために、その後団体交渉を持つております。
  130. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それで現在はどういう考え方ですか。
  131. 松重善三

    松重参考人 二月の二十日だと思いますが、所属船第六冨士丸の船上において、全日本海員組合の本社所属の船員お方が、先日述べましたように決議なさり、そしてその抗議文をつきつけられました。その総数が会社従業員の四分の三を越えるがゆえに、現在では協約は他の組合にも及ぶであろうと心得ております。
  132. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 四分の三という労働協約の競合の場合の優位性、組合法十七条をたてにとつてお話ですが、一応あなたの方のお気持はわかりました。  これで私の質疑を終りたいと思いますが、この問題はきわめて重要な問題でございます。ことに組織労働者が他におる場合に、クローズド・シヨツプが、はたして日本の労働法上有効であるかどうか。この問題はきわめて大きい問題ですし、また解釈論としても、特にわれわれ立法に携わる者としても、十分に考えなければならない立法問題でもあると思います。ですから、これは別の機会に取上げることにして、本日は、事実の調査につきましては、一応私は質問を終りたいと思います。
  133. 奧田金太郎

    奧田参考人 会社側協約締結の当時から、この全日海との労働協約が、他のいわゆる私の方の組合及び組合員を拘束するのだということをはつきり考えて締結されたような御答弁を、今されたわけでありますが、私はその点について、今まで会社側が言われた事実と相違しておるというふうに考えるのであります。と申しますのは、山口地労委が立ち会われた正式の団体交渉で、この点が再三問題になりました際、会社側では、錯誤によつてこの協約は結ばれたのである、そういつたことになると思わないで、あとでその話を聞いて非常に弱つた、こういうことを明らかに言つておられるのです。その点非常に事実と相違しておりまずので、申し上げておきます。
  134. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 事実の調査につきましても、なお書類その他でまだ調べたいと思いますが、本日はこれで質問を打切りたい、こういう意味であります。
  135. 松重善三

    松重参考人 ただいま会社が錯誤によつてかかる状態になつた、こういうふうに申されますが、それは私どもといたしまして、立法解釈の理論を全日本海員組合からお伺いしたときには、確かにこの協約は他に及ぶのだ。ということは、われわれが解雇する趣旨ではありませんが、全日本海員組合の方からは、組合員を自分のところに入れんだるという強い働きかけがあるものだろう、こう思つておりました。ところが、そのあとにおいて、会社責任においてこれをやるんだということで、はたと困つたことは事実でございます。そうしたことをやることを認めれば不当労働行為になる、片方、協約を守らなければ不当労働行為になるということで、どつちにも手が出ず弱つたということも事実でございます。先ほども申し上げますように、私どもといたしましては、組合を結成されておりますどのお方に対しても、認めないとか、あるいはそれをぶちこわそうとかいう考えは毛頭ありません。でき得べくんば皆さんのお力によつて、われわれ小さい業者がこういうふうな問題で、非常に頭がはしるのでありますが、円満に御解決方を御指示あるいは御指導賜わらんことをお願いする次第であります。
  136. 石山正治

    石山参考人 今、各参考人の方から、協約締結過程について、組合員の問題がいろいろと問題にされております。私参考のために申し上げておきますが、私の方でお前入れ入れといつてつたのではなく、元山運輸は門司から相当離れておりますし、組合の方から宣伝啓蒙活動をやつて組織したという例はあまりないのです。これはほとんど任意加入でございます。海員組合員たらんとする者は、船員であれば当然加入を許します。しかも加入者は、全国的にどの会社であろうと、組合機関があれば加入できます。門司でなければ加入できないということはありません。従いまして、この中の多数が、記録を読み上げろと言えば読み上げますけれども、下関の支部の方から加入されておるお方が多いわけでございます。
  137. 兼田富太郎

    ○兼田参考人 石山さんは門司の支部の方だから、そのわく内でおつしやつておるのだろうと思いますが、実は同じ石山さんの管下で、関門港のタツグ・ボートの乗組員が、港湾組合海員組合かということで、あつちについてみたりこつちについてみたりやつて、今納まつておりますが、そういう過去がございます。その際に、なぜこういうことになるのかということで、中央本部ではいろいろお互いの組合同士が寄つて話をして、それは両組合の間に組織上の境界線がないからこういうことになるのだ、だからぼくの方から言わせれば、われわれは港湾運送事業法で商売をしている業者のもとに働いておる労働者組織するのだ、海員さんは少くとも大洋を航行する商船の船員を海員と言うんだというのだから、そういうことでやつてくれておれば、こういうことはないではないか。そこでそういう線を引けるか引けないか、海員組合とわれわれとの間で、組織の境界線について協議をしようじやないか、そうでないと話はどこまで行つても納まらぬということを、海員組合の最高指導部と話をしたことはございます。そのときに、こういう問題はまた起るかもしれないから、それは行く行く話合いをするとして、今回のところは、お互いがお互いのなわ張りを争い合わないといつたような共同声明を出すことによつて、一応納めようじやないかということになつた過去がございます。その後、そのとき気がついておつたようなことをやつておれば、今回のこの事件は、あるいはなかつたのではないかというふうにも思われますが、私が再三境界線は引くべきだという主張は——今もしておりますが、現実問題として、それは引けないというのが海員組合態度でございます。以上申し上げておきます。
  138. 石山正治

    石山参考人 今全港湾委員長さんからお話がございましたが、御参考までに申し上げておきますけれども船員法が制定される当時に、九州海運局審問廷におきまして、その公聴会が行われたのでありますが、その席上におきまして港湾労働組合は、当時の記憶に誤りなければ、確かに船員法制定を反対されておつたように記憶しております。従いまして、九州におきまするわれわれの問題の限界というものは、そういう面から実態を見てくだされば、おのずからよくおわかりになりますが、そういうことが行われておる、そういうふうに私は考えます。全国的にそうとは限りませんが、要するに九州海運局管内では、特に門司の関係内では、そういうことが今まで行われて来ておるというふうに考えております。
  139. 井堀繁雄

    井堀委員長代理 次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時十五分散会