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1954-04-16 第19回国会 衆議院 労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十六日(金曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 池田  清君 理事 鈴木 正文君    理事 丹羽喬四郎君 理事 持永 義夫君    理事 稻葉  修君 理事 多賀谷真稔君    理事 井堀 繁雄君       木村 文男君    倉石 忠雄君       黒澤 幸一君    島上善五郎君       大西 正道君    日野 吉夫君       矢尾喜三郎君    中原 健次君  出席政府委員         労働事務官         (労政局長)  中西  実君  委員外出席者         議     員 青野 武一君         議     員 山口丈太郎君         議     員 館  俊三君         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         日本国有鉄道参         与         (職員局長)  井上 正忠君         日本国有鉄道参         事         (職員局労働課         長)      中畑 三郎君         日本国有鉄道理         事         (厚生局長)  吾孫子 豊君         参  考  人 矢上 正直君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 四月十六日  委員三浦一雄君辞任につき、その補欠として稻  葉修君が議長の指名で委員に選任された。 同日  稻葉修君が理事に補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  参考人招致に関する件  仲裁裁定実施に関する件  造船関係労働者生活確保に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  仲裁裁定実施をめぐる紛争問題について調査を進めます。     —————————————
  3. 赤松勇

    赤松委員長 本問題につきまして、前々回の委員会に御出席になりました参考人岩井章君が、本日は都合によりお見えになりませんので、矢上正直君を本問題についての参考人として御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければさよう決します。     —————————————
  5. 赤松勇

    赤松委員長 なお本問題につきまして委員外青野武一君、山口丈太郎君、館俊三君より、それぞれ発言を求められておりますので、これを許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければさよう決します。  これより質疑を許します。黒澤幸一君。
  7. 黒澤幸一

    黒澤委員 国鉄総裁お尋ねしたいと思うのであります、昨年の年末闘争によりまして、国鉄におきまして十八名の解雇言い渡しがあつたのであります。その解雇の理由は、一つは、当局でいわれております組織上の責任、もう一つは、実行行為責任、この二つの責任を問われて、十八名の人たち解雇言い渡しを受けたのでありますが、私は最初に、中闘の指令がどういう方法によつて決定せられ、どういう方法によつて下部に発令せられたものであるか、その点を当局ではどういうふうにお考えになつておるか、お聞きしたいと思います。
  8. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 中闘の指令がどういうふうにして決定され、どういうふうにして下部に下達されたか、この点につきましては、当局側としてはわかつておることもございますし、わかつておらないこともあるわけでございまして、これは当委員会における今までのいろいろ御質問に対する関係者お答えの中にもございましたが、今回の闘争に際しましては、組合側一般電電公社の方の電話を使いましたり、あるいは直接オルグを派遣して口頭でもつて指令を与えますとか、当局に対しては秘密の指令というような形でいろいろさしずをされておつたことが多かつたように承知いたしておりますので、当局側としては、そのすべてを明らかにしておるというわけではございません。
  9. 黒澤幸一

    黒澤委員 どうも私の質問に対するお答えちよつとずれておると思うのであります。それでは私の方からなお具体的に申し上げてお尋ねしたいと思うのでありますが、国鉄の中闘の指令は、中開委員合議制によつて決定せられたものであると、私たち考えておるものであります。従いまして、その発せられました指令につきましては、中闘委員の全体的な責任があるものであると私は考えておるのでありますが、当局においては、どういうふうにこの点をお考えになつておりますか。
  10. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 中闘委員連帯責任ということではないかというお尋ねでございますが、この点は、ごく一般的に形式的に考えますれば、やはり中闘委員連帯責任であるということもいえるかと思いますけれども、これはむしろ組合側から話をしていただいた方がよろしくはなかろうかとも思うのですが、戦術委員会というものがさらに中闘の中に設けられまして、戦術委員会のメンバーである諸君に対して、一般中闘委員よりは、よりよけいに責任を認めるべきものではないかというふうに思われる点もあると存じます。いずれにいたしましても、組合組織として行いました闘争行為責任は、組合中闘委員会全体にそれぞれ責任はあると思うのでございますけれども処分をするにあたりましては、その中で特に組合を代表する、もしくは指導的な立場にある責任の方に、その責任をとつていただいた、こういうような考え方でおる次第でございます。
  11. 黒澤幸一

    黒澤委員 ただいまの吾孫子局長の御答弁は、非常にまわりくどい御答弁をされておるのでありますが、しかし中闘の指令中闘委員連帯責任であるということを、今申されたと思うのであります。そういうことになりますと、今回の解雇にあたりまして、中闘の三役だけがその責任を問われておるということに、私は矛盾が起つて来るのじやないかと思うのです。今局長が特に三役の人たちがこの中闘の指令に対する責任が重いようにとられた御答弁があつたのでありますが、私は中闘の委員長、副委員長書記長というものは、決定したことを下部にそのまま伝える役目はあるにいたしましても、指令そのものに対しては、三役のみの負うべき筋合いのものではなくして、中闘委員全体の責任でありまして、特に甲乙はないのじやないか、そういうふうに考えておるのでありますが、その点につきまして、もう一度当局の御説明を願いたいと思います。
  12. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 今回処分対象として責任を追究いたしませんでした中闘委員皆さんに、全然責任がなかつたという考え方で、私ども処分をしなかつたのではございませんで、むろん今回の争議行為に関与した職員である人々は、全部その責任を負うべきものであるというふうな考え方に立つてつたわけでございますが、特に委員長組合最高責任者であり、すべて委員長の名において争議行為指令もされ、その指令が実現をされたわけでございまして、委員長はその意味でその責任を問うたものであり、副委員長はこれに次ぐ重要な立場に立つておる方であり、また書記長はこれに次ぐ重要な位置にあつたものであると同時に、今回の場合には中闘の戦術委員会戦術委員長であるということも兼ねておる立場にあつた、そういう意味国鉄中闘の三役の諸君は、むろんその三役の三人にのみ責任があるという考え方責任を追究したのではございませんが、組合組織の上から申しましても、また今回具体的に現実に行われました争議行為の態様の上から見ましても、重大なインフルエンスを持つた立場にあるのだというふうに考えまして、これらの三役の責任を問うた、こういう考え方でおるわけでございます。
  13. 黒澤幸一

    黒澤委員 この指令責任は、指令決定し、指令下部指令することを決定した、私はその責任を問うのが指令責任ではないかと思うのであります。ただいま繰返して局長は、指令決定した、指令決定したものを下部指令する責任、そういうことはこれは中闘において申すまでもなくきまつたことであります。それをただ委員長あるいは副委員長書記長は、事務的にそれを下部中闘委員決定に従つて伝えたものである。そういうことになりますならば、三役だけの責任を追究するということは、この指令決定の経緯から考えましても、私は不当ではないかと考えておるのですが、もう一度その点を聞きたいと思います。
  14. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 昨年末の闘争は、これは国鉄労働組合行つたのでございまして、そういう組合争議行為を行うことを、公労法は禁止しておるのでございます。その組合最高責任者地位にある者は、当然組合に対して責任が問われる場合に、具体的にはその責任地位にある人の問題ということになるのが、むしろ常識的な考えではなかろうかと思つておりまするし、また事実問題としても、三役の三人の方並びに当時の企画部長であつた岩井君、こういうような皆さんが実質的にも特に有力な立場で働かれたということは、否定できない事実じやなかろうかというふうに考えております。
  15. 黒澤幸一

    黒澤委員 そういう局長の御答弁によりまするならば、地方管理局関係解雇者について矛盾が起つて来ると思うのでありますが、その点は、質問あとにまわしまして、昨年末の国鉄闘争遵法闘争超勤拒否闘争賜暇休暇闘争、こういう形をとりまして、それが中闘から下部指令されたわけであります。このことは昭和二十九年一月、日本国有鉄道職員局の発行しております「国鉄の二十八年度賃金改訂並びに年末手当問題に関する経過概要」この中に十二ページ、十五ページ、二十三ページ、二十八ページ、三十三ページ、四十一ページに詳細に明記してあるのでありまして、地方本部がかつてにかような指令をしたことは全然見受けることができないと思うのでありますが、その点さように御了承願えるかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  16. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまお尋ねがございましたように、地方本部が何ら根拠なしにかつてに年末の闘争行為を行つたものであるとは、私ども考えておりませんで、あのような行為が行われました原因が、国鉄労働組合の中闘からの指令にあつたということは、当然前提に認めておるわけでございます。ただ、その地方本部は、各所にたくさん全国にあるわけでございますが、今回処分対象者を出しました地方本部は、この中闘の指令を受けるにあたつて、その指令を受けて、さらにこれを具体的な実行に移す際のさしずの仕方、指導の仕方、そういうものが、処分のなかつたところに比較して非常にはげしい方法で行われたということと、そういう方法がとられましたために、結果としても非常に大きく正常な業務運営を阻害するような結果を生じたという点を考えまして、地方本部責任者をも処分をいたした、こういう事情でございます。
  17. 黒澤幸一

    黒澤委員 これらの闘争か中間の指令に基いてなされたということは、ただいま局長もお認めになつたようであります。ところが、本委員会におきまして、今日まで審議をして来ました過程におきまして、東京新潟広島の場合におきましては、各地方管理局におきましての御答弁によりますと、地方本部指令を発したという事情によりまして、解雇対象になつておるという事実をわれわれは聞いたのであります。そうしますと、かような地方本部指示をしたということは、これはあやまちであつた、そういうように考えられるのでありますが、その点いかがでございましようか。
  18. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 地方本部指令を出したということが、あやまちであつたというふうには考えておりません。地方本部は、事実いろいろ指令を出しておるわけでございます。また組合側参考人の今までの御説明の中にも、地方責任者がいろいろ実行上のさしずをしたというお話も出ておりました。ただ、そういうさしずをし、指令をする原因は、中闘から指令が出ておつたから、その中闘の指令を受けてさらに地闘指令を出した、こういう因果関係はあるということを認めておる次第でございます。
  19. 黒澤幸一

    黒澤委員 国鉄労働組合組織上から見ましても、また組合の規約から見ましても、中闘の指令下部に発令されました以上は、下部機関におきましては、これを実行する責任義務が当然あると思うのであります。私は地方本部が具体的な別な指令を出したというようなことを発見することができないのであります。その事実といたしまして、これは先ほど申し上げました職員局からの、昨年末の闘争結果概要の中にも詳細に書いてあります。ただいまの運転保安規整運動については、列車の検査、制動試験動力車搭載品及び乗務員携帯品の点検、入れかえ機関車の速度、連結手に対しての飛乗り、飛びおり作業及び構内の走行作業を禁止するというようなこまかい指令を出しております。あるいは荷物愛護運動につきましても、同様なこまかい指令が出ておるようであります。また安全衛生規則遵守運動につきましても、工場内の通路、作業服等不良不備箇所あるいは法規の上の不良品を摘発、安全衛生規則違反しているかどうか、あるいは修理またはとりかえ、そういうふうにこまかい指令が出ていまして、これに基いてこの遵法闘争はやられたようになつております。またこの賜暇休暇につきましても、この報告書の別表十一に、今回の解雇対象となりました地方管理局新潟東京大阪天王寺広島というようなところに、どことどことどれだけの休暇をやるようにというように、こまかい指令が参つております。こういうように、地方本部が新しい指令のもとにやられたということには、われわれは見受けるわけにいかないのでありまして、今局長地方本部が別に新たに指令を出したようなことを御答弁になつておるのでありますが、そういう指令がありましたならば、この機会に御発表願いたいと思いますが、その点いかがでございましよう。
  20. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 中闘の指令も、相当いろいろこまがいものがあつたということは確かであろうと思いますが、それよりもさらにこまかく地闘で具体的な実行方法指令をし、指示をしたということは争えない事実でございまして、ただいまこの百二十四ページの三割休段戦術指定箇所を御指摘になりましたが、本部の抽象的に三害の休暇戦術をとれという指令に対して、具体的にどこの車掌区なりどこの駅なりをやらせるかということは地闘がきめておるのでございまして、これが一つの例であるわけであります。
  21. 黒澤幸一

    黒澤委員 私はそういうことは指令ではないのではないかと思います。中闘からの指令に基いて、それを具体的に実行する義務責任地方本部にはあるわけでありまして、それを具体的にやつたからそれが地闘責任だということにはならないと思います。繰返して申し上げるようでありますが、中闘の指令が三割休暇なら三割休暇をやれ、あるいは遵法闘争をこういうところについてこういうふうにやれということになれば、地方本部においてそれを具体的に実行することは、地方本部指令ではなくて、中闘の指令に基いてやつたことであつて、何ら新たな指令ということにはならないと思いますが、その点もう一度はつきりお伺いしたいと思います。
  22. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 これも例でお答えを申し上げたいと思います。たとえば駅を何箇所機関区を何箇所というような指令が中闘の指令であるわけでございますが、それに対してどの駅を選ぶかということは、地闘がやつておるわけであります。その際に、広い管内でございますから、選び場所によりましては、全体に大きな業務運営に支障を与えないような場所を選ぶことも可能なわけであります。たとえば広島あたりの例をとりますと、山陽線の一番心臓に当るような広島操車場を選んで、そこに厳重なピケを張つて、その結果、事実問題として貨物輸送に関する限り、山陽線が何日かの間死んだも同然な形になつてしまつた。こういうところに、やはり地闘責任もあるのだという考え方を私どもはいたしておるわけであります。
  23. 黒澤幸一

    黒澤委員 その点につきましては、私と非常に見解が違います。その点はどこまで行つて平行線になると思いますから、先に進みたいと思います。  先ほど吾孫子局長は、中闘の指令に対しての三役の責任をとつてもらつたと言われたのでありますが、地方本部における責任については、非常に不統一であり、不明確であり、不合理であるということを、私は申し上げざるを得ないのであります。ことに大阪におきましては、副委員長が二名おるにもかかわらず一名しか責任が問われていない。あるいは広島では書記長が免れておる。天王寺におきましては、三役が全部解雇対象になつていないというように、中闘の責任と三役の責任とを求めたことと、それに対する吾孫子局長の御答弁とを比較してみますと、ここに大きな矛盾が出ておるのではないかと思いますが、その点に対してどういうふうにお考えになつておりますか。
  24. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 この点は、同じ中闘の指令を受けた地闘でございますけれども、その受けて実行に移す方法違つてつたのだということを、ただいまちよつと申したのでありますが、実際に休暇を請求するというような場合にいたしましても、この点は前に広島管理局長あたりから詳細に申しましたように、よそと違つたきわどい時間に、また非常に違つた方法休暇を請求するというようなことをやつておるわけであります。また同じく出勤阻止をいたしますにつきましても、ピケツテイングの張り方が、場所によつて非常に違つております。ピケット張つた時間にも長短の差がございますし、またピケット張り方それ自身の方法にも、非常に違いがあるわけでございます。なお、こまかく申しますと、同じ地闘の幹部でありましても、やはり一人一人について見ますと、かなり違つた動き方がその間にあるのでございまして、非常に積極的であつた人もあれば、どちらかと申しますと消極的であつた人もあるわけでございます。そういうふうに、中闘指令に基いて争議行為が起つたという点は、これは確かにその通りでございますが、全国地方本部動きを見ました場合に、実際に現われましたところは非常な違いがあるのでございます。その違いというのは、やはり地闘指導者たち、あるいはそれよりもつと下部組織指導的な立場にある人たち、そういう人たち動き方というものが強く影響しておるということを認めざるを得ませんので、当局側としましては、それらの方の中で、動きが非常に顕著であつた方たち責任を追究した。そういう事情で、各地本によつて形式的に画一的な処分のやり方をしなかつたわけでございます。
  25. 黒澤幸一

    黒澤委員 天王寺におきましては、三役が全部解雇対象から免れておるのでありますが、それでは天王寺における闘争はだれの指令によつてなされたのか、その点をお聞きしたい。
  26. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 天王寺の例についてのお尋ねがございましたが、当局側としましては、やはり地本の指令に基いたものであると推定いたすのでございますが、この点は必ずしも地闘のどのような指令に基いて、あの二人の人が実際にああいう行動をしたかということは、明確を欠いておる点もございます。しかしながら、あの二人の人が争議行為の一環として、公労法十七条で明瞭に禁止をしておるあのような行動をされたという事実は、非常にはつきりいたしておりますので、あの二人の方の責任を問うた、こういうことでございます。
  27. 黒澤幸一

    黒澤委員 指令が出ました所在もわからないで、その下部行為者のみの責任を問う、そういうことでは、今まで繰返してお尋ねしておりまするのに対する吾孫子局長説明というものは、非常に矛盾して来ておるのじやないかと私は思うのです。ただいま、多分地闘から指令があつたと思うというような御答弁でありますが、そういういいかげんな考えのもとに、労働者の死刑に値するような解雇をするということは、われわれは非常に遺憾にたえないのであります。ほかの中闘初め地方本部責任者責任を問われているときに、天王寺において三役が全部責任を問われていない。そうすると、この行為者行為というものが、これらの人たちの自由な意思によつてされたというようにもとれるのじやないかと私は思いますが、その点もう一度明確に御答弁願いたいと思います。
  28. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 天王寺の二人の人の場合に、この二人の方たちが全然今回の年末闘争関係なしに、まつたく個人的な考えで自由にこういうことをやられたのだというふうには私ども考えておりません。やはり争議行為の一部分としてこれらの行動を行われたものであるというふうに考えておるのでありますが、再々申し上げておりますように、公労法十七条の解釈について、私どもとしては、単に組合に対してあのような行為を禁止しておるのみにとどまらず、公共企業体職員に対して、そのような行為を行うことを禁止しておる法の精神から考えまして、天王寺の二人の方の行動というものは、明瞭に公労法違反しておることはあまりにも明らかであるというところから、二人の方の責任を追究した次第でございます。
  29. 黒澤幸一

    黒澤委員 公労法十七条違反であるかどうか、またこうした遵法闘争超勤拒否闘争休暇闘争争議行為であるかどうかというようなことにつきましては、同僚委員から御質問があると思いますので、その点につきましては私はお聞きいたしませんけれども、これらの闘争に対しては、当局はこれを容認していたのではないか、違法行為とは認めていなかつたのではないか、私はそういうふうに考えるわけであります。というのは、これも職員局提出闘争経過概要の二十六ページのロにこういうことが書いてあります。国鉄当局は十一月二十九日行われた第四次交渉において、こういうことを組合に申し入れております。「「一日以降行うと伝えられる休暇戦術は中止するか、中止されないまでも、延期してもらいたい。」と、現情勢の説明を行うと共に、併せて休暇戦術の中止または延期方を要望した。」ということになつておるのであります。当局が、公労法違反行為であり争議行為であるという断定に立ちますならば、こうした闘争を容認するような言葉は使うはずがない。今申し上げました文章から見ますならば、「休暇戦術は中止するか、中止されないまでも、延期してもらいたい」。この「延期してもらいたい。」ということは、やることを是認しての言葉だと考えるのです。やるならやつてもいいけれども、今は一時延ばして、そうしてあとでやつてもらいたい、常識的にこう解釈するのであります。これから見ますると、こういう休暇戦術にいたしましても、これを容認しておる、違法行為とは認めていないというふうに解釈するのでありますが、その点をお伺いしたいと思います。
  30. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 今御指摘になりました通り、この日に当局側として、休暇戦術をとるようなことをぜひ中止してもらいたい、どうしても中止できないというなら、せめて延ばしてもらいたいということを申したことは事実でございます。しかしながら、これは決して争議行為を容認するという意味で申したのではございませんで、当時年末の闘争の主目標でありました問題が、国会においてもお取上げいただいておりました最中でもあり、この問題をめぐつて政府の部内でもいろいろデリケートな動きのあつた際でもございましたし、当局側としては、ぜひ争議行為に突入するようなことはやめてほしいということを強く申したのでありますが、どうしてもそれができないということなら方また国会方面等において、あるいは問題を解決し得るような答えが出していただけるかもしれないというわずかな期待も持ちまして、せめて争議行為に着手することを延ばしてくれ、こういう意味で申したのでございまして、決してこの争議行為に入ることを容認したというような考えではなかつたのでございます。
  31. 黒澤幸一

    黒澤委員 争議行為に移ることを延ばしてくれということは、少くとも違法行為と認める以上は、そういうふうに延ばしてくれとかいうことは、当局として言われる筋合いのものじやないのじやないかと思います。違法行為を延ばしてやつてくれと言うようなことは、私はあり得ないと思うのであります。違法行為違法行為であるからそれはやめてくれというならわかりますけれども、やるならやつてもいいが少し延ばしてくれということはあり得ないと思うのですが、もう一度その点お伺いしておきたいと思います。
  32. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 まさにお話の通り、やるならやつてもいいが延ばしてくれ、ということで申したとすれば、はなはだおかしなことであると思うのでございますが、当時の私どもの気持といたしましては、ともかく実行行為に入ることを待つてくれ、そのうちには何とか国会方面なりあるいは政府の方面なりで新たな打開点が開かれて来るかもしれない。そうすれば組合としても好んでこういう実行行為をやりたいと考えておられるのでないということは大体想像もついておりますし、延ばしてもらえれば、結局こういうような争議行為も行わないで済むようになるのではないかという期待を持ちまして、とにかく実行行為をやめてくれ、どうしてもやめないなら、せめてしばらくやらずにいてくれという意味で申したわけでありまして、容認するという意味で申したわけではございません。
  33. 黒澤幸一

    黒澤委員 どうも私は納得できないのであるが、常識的に考えても、そういうことは言い訳にしか過ぎない、そういうふうにしかとれないのであります。これはお聞きになつている同僚委員の方、また一般には通用しないものである。当局がただいま御答弁になつていることは、ただ単に今になつて、詭弁と言つては失礼かもしれませんが、そういうふうに私はとらざるを得ないのであります。時間が来ましたので、ただ一点だけお聞きしたいと思うのでありますが、本委員会の審議の過程におきまして、当局は十八名の解雇者に対しては、何ら本人の意思弁明もされなかつた、またその必要はなく、されなくても解雇できるのだというようなことをおつしやつたのでありますが、これはやはり職員局から出しました闘争経過概要の四十ページにこう書いてあります。「職員側は、処分問題についての当局側見解を質したところ、当局側は「この問題に関し貴側の意見を聞くにやぶさかでないが、慎重に調査検討する必要があるので、賃金問題の解決後に行いたい」と回答した。」——これは組合側の、当局は犠牲者を出すかどうか、解雇をするかどうかという問題に対する当局答弁であります。この御答弁を見ますと、賃金問題を解決してから組合側解雇問題等については意見をお聞きするというふうに解釈されるわけでありますが、こういうことを闘争の過程においておつしやつておりながら、解雇対象になりました十八名の人の意見を何ら聞かないで、ばつさり解雇をしてしまつた、少くともそういうことは、法規上やつてもいい、やらなくてもいいということではなくて、少くともあなた方の職場にある人に対して、解雇というような、労働者を断頭台に上せたような処置をとるに至りましては、本人の意見を聞いて処置をするということが当然ではないかと思うのでありますが、こういうことをおつしやつておりながら、どうして本人の意向を聞かないで処置されたか、その点をお聞きしておきます。
  34. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 そのときに当局側が、今御指摘になりましたように、意見を述べておりますのは、当時紛争の本筋でありました賃金問題について、とにかく早く一応答えを出そうじやないかということで、こういうふうに申したわけでございます。それで処分の問題について、この話のあと——実際に処分が行われましたのは一月の下旬であつたわけでございますが、その間に組合側との間でいろいろこれらの点についても話合いの機会を持つたことは事実でございます。しかしながら、その処分対象になりました一人々々の個人の苦情なり陳弁なりを聞くということは、これは前にも申し上げましたが、公労法十八条によつて処分をいたしましたので——いわゆる日鉄法の懲戒手続とは違つた方法処分をいたしておりますので、公労法十八条にも定めておりますように、この法律によつて有する一切の権利を失うということにもなつておりますし、各個人の意見を聞くということはやらなかつたようなわけでございます。     —————————————
  35. 赤松勇

    赤松委員長 この際理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。理事葉修君が去る十三日一日委員を辞任されましたので、理事が一名欠員となつております。前例によりまして、委員長より補欠理事の指名をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なければ、稻葉修君を理事に指名いたします。  それでは一時半まで休憩いたします。     午後零時十一分休憩L     午後一時五十三分開議
  37. 赤松勇

    赤松委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。井堀繁雄君。
  38. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今度の年末闘争を通じて、国鉄経営に重大な影響を与えた事情を詳しく述べられて参りましたが、その実害は、金額に見積つてどの程度だと思いますか、その点をお答え願いたい。
  39. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 金額に見積るという考え方はいたしておりませんでしたので、今金額でどれくらいになるかというお尋ねに、ただちにお答えをいたすことができないのを、まことに遺憾に思います。
  40. 井堀繁雄

    ○井堀委員 実害は一体何によつて判断するかということになれば——企業それ自身が、今度の国鉄法によつて明らかなように、特別会計による特別法人としての経営体になつておるわけです。その被害が経済的に見積れないということであれば、解雇の根拠がきわめて薄弱になる。明確な数字かここてお答えができないとすれば、大体どの程度のお見込みであるか、見込みだけをお伺いしたい。
  41. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまのお尋ねに対して、ただちにお答えを申し上げられないのは、はなはだ遺憾でありますが、私どもといたしましては、たとえば貨物列車あたりが何百本か運休になつておる。通常の場合、貨物列車を一本動かせばおおむねどれくらいという収入は、全体として算定できますし、また欠勤によつて業務に従事しなかつた者に対して、給料を本来ならば差引くべきところを差引かずに支払つた賃金の額というようなものも、計算すれは大よその額が出て来ると思うのでありますが、そういう考え方でこの処分問題を扱つておりませんために、そういう計算を今いたしておりませんことを、はなはだ遺憾に思います。
  42. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは念のために、重大なことでありますから総裁にに一言お答えを願いたいと思います。総裁は国鉄事業を総理されておりまする立場から、今度の被害を相当甚大なものと見積つて、十七条による解雇の理由にされておりますが、あくまで経済闘争によるわけでありますから、経済上の問題によつてわれわれは価値判断をして行かなければならないと思います。一体、経済的にどれだけの被害を受けたかということを、判断の外に置いて処分をされたのであるか。あるいはそれを判断の中に、もちろん入れておると思うのであるが、そうだとすれば、その見積りなり金額なりをただちにわれわれの前に提示できるものと私ども考えておる。今局長答弁では、それに対する明確な回答を得られないが、非常に重大なことでありますから、総裁の見解を伺いたい。
  43. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 これはたびたび申し上げておることでございますが、法律的に申しますと、正常な業務運営の阻害、あるいはその阻害行為をあおり、そそのかし云々という条文があります。そういうものに抵触するということで処分をいたしております。国鉄だけが受けた損害は、比較的概数で出そうと思えば出せると思います。しかしながら、そのほかに一般の国民経済の面に及ぼした被害も相当大きいものがあると考えます。と申しますことは、多数の貨物列車が動かなくなつておるということによつて、国民経済上に与えた損害も相当ある。旅客交通にいたしましても、国民各位に多大の御迷惑をおかけした、その損害額もこれを計算に入れるとすれば、相当のものに上るのではないかと思いますが、これらはなかなか算定が困難でございます。また公共企業体等労働関係法において十七条、十八条があるということも、やはり公共の福祉の擁護というところにあるのではないかと思つております。
  44. 井堀繁雄

    ○井堀委員 国鉄の受けた経済的実害は、比較的軽少だとおつしやいましたが、軽少だというからには、どのくらいというお見込みがあるでしよう。さらに重大なことは、公共の福祉をモツトーとします事業として、国民大衆に多大の被害を負わしたということでございますが、その被害は、もちろんただちに数字に現わすことは困難であるとしても、およそどの程度の経済的な被害が与えられたかということぐらいはおわかりになると思います。これは大体のあなたの見解でけつこうであります。正確な数字は他日また検討することにいたしまして、あなたとしては、大体経済的に見積ればどの程度の被害を与えたか。それから国鉄としては、直接これは被害を受けているのでありますから、およそじやなくて、確実な数字が出て来るものと思うのです。しかし今日のところではどのくらい——これは大体推測でけつこうであります。その点に対するお答えを願いたい。
  45. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 金額でどれだけということを、はつきりここで申し上げることはできませんが、当時どれだけの列車が動かなかつたか、あるいはどれだけの旅客列車が遅れたかということにつきましては、これは当時も御報告申し上げたかと存じますが、当時の職員局長でありました吾孫子厚生局長からお答え申し上げます。
  46. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいま総裁が、列車の運休等の数、その他について、前にも御説明申し上げてあるということを申し上げましたが、たとえば急行列車なんかの急行料金がとれなくなつたもの、こういうものは非常にはつきりいたしておるわけでございます。そういうものは、もちろん計算をしてあるわけでございますけれども、貨物列車の運休による減収というものは——もちろんこれは計算すれば答えは出ることではございますが、数字によりまして、数字の性質によつて、急行料金の払いもどし額というようなものは非常にはつきりいたしますが、そうでない議論の余地のあるような数字もあると思いますのでそういう意味で的確な数字ということはなかなかむずかしくはないかと思います。相当巨額に上るであろうということは、先ほど総裁もそういう意味で言われましたので、軽少であるというふうにはおつしやらなかつたように思うのであります。
  47. 井堀繁雄

    ○井堀委員 このことは、この問題を私どもが調査を進めて行きます上に、きわめて重大な事柄でありましたが、数字的なお答えができないとすれば、これをいかに追及しても、われわれの懸念しておりますことをはつきりつかむことができぬのであります。これはこれからお尋ねすることによつてだんだん明らかになつて来ると思いますが、あとでいいかげんな数字を出されては困ると思うので、事前にお尋ねをしたわけであります。もう一ぺん念のために申し上げておきますが、さつき総裁の口吻では、国鉄が直接減収を来すような損失は比較的軽く見られる、むしろ一般の受益者といいますか、国民に不便を与える、あるいは経済的な損失を与えた事柄についてはかなり甚大なものである、こう述べられたわけであります。それから今局長答弁によりますと、国鉄の直接経済的被害も決して少くはない、こう言つておられます。そこでこのことは大切なことでありますから、もう一度総裁にその辺の食い違いについてお尋ねしておきたいと思います。すなわち国鉄が直接経済上の損失を来したのは、金額においては、ただちに明らかではないけれども、それが甚大であるか軽少であるかということは比較対照の問題だと思います。でありますから、比較対照を何に置いておいでになるかということはあると思う。たとえば国鉄の全体の経済からいえば一億程度は僅少である、百億以上になれば甚大というのか、大体目安というものがおありになるはずであります。総裁としてその辺の目安だけでもこの際明らかにしていただきたい。
  48. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私が先ほど申し上げましたのは、私の考え方といたしまして、国有鉄道の受けました損害も相当なものであろうとは存じますが、そこに重点を置いて十七条、十八条というものを深く取上げるべきではなくてむしろああいう行為によつて正常の業務の運営が阻害され、その結果国民大衆の皆さんに与えました損害の方を重視すべきであるというふうな考え方でございます。いずれが多いか少いかという金額の問題に相なりますと、これは計算をしてみなくてはわからないのでありますが、国民大衆に与えました損害ということになりますと、その計 算のやり方、あるいは額というものは、非常にむずかしい問題ではないかと考えておる次第であります。
  49. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私が第十七条に触れましたから、それに籍口されたようでありますが、十七条の適用がいいとか悪いということは、われわれが判断するわけです。私の今お尋ねしたのは、国鉄国鉄法によつて、第一条にも規定されておるように、能率的な経営をすることを役員に命じておるわけであります、この資本は全額国有財産なんです従つて経営も、もちろん国のために運営されなければならぬことは言うまでもないと思いますが、どちらにしても営利を目的とする事業、採算を必要とする事業でありますから、実害がどの程度であつたかということは、われわれ国会としては国の事業に対して敏感でなければなりません。この種の事柄が、どれだけ経済的に損失をこうむつたかということは、非常に大事な事柄です。それでお尋ねをしておるわけです。その答弁ができないというのであれば、これはやむを得ません。しかし、比較的軽少であつたという言葉を使われる以上においては、的確な数字は出なくても、国鉄をあずかる総裁としては、今度のあれでどれだけ国鉄が損害をこうむつたかということぐらいはおわかりであろうと思う。ことにこのことによつて処分を行おうとしておるくらいでありますから、その辺が明らかでないと、どうも理解ができぬわけです。しかし、あなたの方で数字的なものについては何らの検討を遂げていないとおつしやるなら、私が答弁を求めることは無理だと思います。それでは念のために伺いますが、そういう経済的な損失については、計算の中に入れなかつたのかあるいは入れたか、どつちか、その辺に対するお考えを承りたい。
  50. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 日本国有鉄道法第一条のお話でございますが、私は日本国有鉄道を国民の皆様からお預かりしておる立場からいたしまして、もとより能率的運営ということを一つのモットーとしております。しかしながら、同時に、日本国有鉄道は、公共企業体という面におきまして、公共の福祉に貢献するという二つの、ややもすれば相矛盾するがごとき立場にあるものを調和して行かなくてはならないということを考えております。でありますから、私どもは能率的運営、あるいは営利というお話がございましたが、必ずしも営利だけを考えて国有鉄道の運営に当つておるわけではございません。その例は、非常に悪いかもしれませんが、現に私どもが今日国の要請によりまして、新しく建設をいたしておりますところの新線、いわゆる建設線というようなものは、日本国有鉄道それ自体の営利の観点からのみいたしますと、非常に不利な線でございます。しかしながら、これは国全般の利益ということから考えますと、私はやはり重要なものとして要請されておるものと心得まして、それにも従事いたしておるような次第でございます。それで、今公労法の十七条の問題は違うのだとおつしやいますが、公労法十七条というものは、日本国有鉄道法第一条との関連から申しますと、能率的運営云々ではなくて、公共の福祉の増進ということが目的となつてあれができておるんじやないかと考える次第でございます。過日の争議が日本国有鉄道の財政経済に及ぼしました影響というものを、私は決して軽視をいたしておるつもりではございません。いずれこれは計算をしてお目にかけることもできようと思いますが、先ほど来局長も申し上げておりますように、正確、的確なる計算はなかなか困難であろう思います。これが列車の運転その他にどういう影響を及ぼしたかということは、過日来御報告申し上げたつもりでございますが、それからでも国民経済なり国民大衆の生活の上に大きな影響を及ぼしたであろうことは、想像にかたくないと私は考えておる次第でございます。
  51. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これも法律で、国鉄の会計については、特別会計として国会に承認を求められる手続があり、年度が四月一日から始まつて翌年の三月三十一日と規定してありますから、必ず国会にその結果が数字として現われることは言うまでもないことであります。しかし、ここで明らかにしなければならないことは、この年末闘争を通じて国鉄はストライキをやつておりますが、ストライキによる被害がどのくらいかということが、そのときになつて明らかにされたのでは、今当面の問題を調査するためには役に立たない。当然義務として明らかにされなければならぬ事柄でありますから、今正確な数字が上らないとしても、大体どのくらいという金額について答弁ができないということはあり得ないと私ども考えお尋ねをしておるわけです。だから、この解雇問題について、関係をつけなくてもけつこうです。この争議によつてどれだけ損失をこうむつたかということは、当然総裁はわれわれの質問に答える義務があると思うからお尋ねしたのです。答弁ができなければ、できない理由を明らかにしておいてもらいたい。
  52. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 昨年の年末闘争によつて国鉄の正常な業務が阻害された計数的な根拠というものは、これははつきりいたしておるのでありまして、具体的に申しますれば、十二月一日から三日間の争議によりまして、旅客列車が何本、電車が何本、貨物が何本、合計して三日間だけで七百七十七本の列車が運休になつておりますし、遅延いたしました列車は、旅客、貨物双方合せますと五千二百三十三本というふうに、すべてデータはそういう意味はつきりいたしておるわけでございます。しかしながら、それではどの列車が運休になつておるから、その運休によつて生じた損害金額をいかに算定するかということについては、実際問題としては、いろいろ計算の仕方もございますし、議論の余地もない問題ではございませんから、的確な数字が金額的に申し上げられないということでございまして、業務の運営が阻害された数字というものは、これは数学的にもはつきりいたしておるわけでございます。なお、たとえば、このために急行列車あたりの料金の払いもどしというようなことをいたしておりますが、そういう額は、もうはつきりと四十五万六百円というふうに数字が出ております。そういうようなわけで、計算をすれば出し得る根拠になる数字というものは、もちろんはつきりいたしておるのでございますが、それをどういうふうに見積つて計算するかという計算がしてない、こういうことでございまして、何らその数字的な根拠を持たなかつたというわけじやないということは、ひとつ御了解いただきたいと思います。
  53. 井堀繁雄

    ○井堀委員 この問題は非常に重大なんで、しつこいようでありますが、金額がまつたく捕捉できないものであれば私の質問が無理であります。今の局長答弁で、計算をする対象になるべきものについては明らかになつておるということである。もちろん正確な数字はにわかに出ないと思う。しかし、およそどのくらいの被害をこうむつたかということは、国会国鉄関係は、御案内のように莫大な国有財産を一切おまかせしてあるわけですから、それが今度の争議でたいへん迷惑をこうむつたというからには、どんな迷惑をしたかということを、われわれ国会に報告する義務があると思つてお尋ねをしておるのです。それでわれわれとしては、ただ漫然と、今度の争議で被害をこうむつたということだけでは、了承はできぬわけです。第一条の能率的経営という言葉は二つの意味があることは総裁の言う通りだと思うのです。公共企業でありますから、公共の福祉のために貢献しなければならぬことは言うまでもない。しかし、あくまで経営を能率的にやろうとすれば、最も少い経費で多くの収益をあげて、それを国民の福祉に還元して行くというのが、とりも直さず国鉄の使命であるわけであります。あくまで経済的な採算問題になり得る。経済上何らの被害を受けないようなことであれば、これはわれわれも争議に対して考え方をかえなければならぬ。そこで一番大事なのは、直接国の財産に対して、この争議行為がどれだけ迷惑を与えたかということは、やはり金額で表現しなければ方法がない。さらに一般国民に迷惑を与えたということは、これはなかなか貨幣に換算することは困難だと思います。この点については、これまた金額で証明ができなければ、別な方法で判断するよりしかたがないと思いますが、この第一条の能率的経営をやつて行くための責任地位にある役員としては、われわれの質問に対してただちに答弁できるというのが、私は任務に対する忠実な態度だと考えお尋ねしたわけです。数字的な答弁をする準備がなかつたとか、あるいは、あるけれどもきよう持ち合せがないというのであれば、後日でもけつこうです。——それでは、その辺はいつごろ貸料が提供できるか。今の答弁では、そういうものをお考えになつていないのではないかという感じがいたしました。くどいようでありますけれども、もう一度念のために、総裁は今度の問題について、直接経済上の被害については見積る必要を感じなかつたのであるかどうかということについてお伺いします。もう一ぺん御答えしていただけば、私はこの点に対する追究はいたしません。
  54. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 御説まことにごもつともでございまして、能率のいい運営ということも、もとより私の責任でございますので、従いまして、これを金額に見積つて御報告申し上げるのが、ただちにできなくてはならないというお話は、ごもつともだと思います。残念ながら、それを今日においてはいたしておりません、なるべく早い時期に——私は概数しか出ないと思います。これは非常にむずかしい問題でございまして、列車何本休んだ、そのあるべき場合には幾らであつたかというような想定は、非常に困難だと思いますから非常に概数的なものになると思いますが、でき得る限り数字を出してお目にかけるなり御報告申し上げたいと思います。ただ繰返して申し上げますように、争議行為の禁止という条項が公労法にございますのは、やはり日本国有鉄道法第一条の公共の福祉の増進、日本国有鉄道の公共性の保持あるいは擁護という点に、私は眼目があろうと考える次第でございますので、その点におきましては、先ほど局長から申し上げましたように、相当数の列車の運行停止、あるいは遅延というものがございましたので、これこよつても想像ができるどころではない、まつたく国民各位に対して申訳のないことであつた考えておる次第でございます。そこに重点が置かれておるような考え方でございます。
  55. 井堀繁雄

    ○井堀委員 残念ながら、経済的実害を受けたと言いながら、その実害が明らかになりません。これ以上追究することはむだだと思いますので、別な方法で検討したいと思います。  そこで、お尋ねをいたしたいのですが、国鉄法第一条の解釈については、先ほど総裁の言われる通りに、事業を能率的に経営することによつて事業を発展せしめ、公共の福祉を増進するということが目的であることは、私どもよく承知しておるわけです。そこで、この国鉄法の精神からいたしますと、この場合は、職員だけにその責を負わせようとするものでないことは、あまりにも明白であつて、もちろん役員、職員を一本にして、第一条目的の遂行に当らなければならぬことは当然だと思うのです。ことに、この国鉄法を熟読いたしますと、一般の商事会社と異なつて、公共性を高く評価し、運営の上に民主性を高く要請しておる箇条がたくさん出て来ておる。たとえば、経営委員会のごとき民主的な制度が設けられておるようであります。この問題について、総裁としては、役員の一人として、あるいは経営委員会の重要な地位にあるのでありますから、こういう立場からいたしまして、第一条の目的が妨げられたということになる以上においては、国民対国鉄、ことに国民を代表する国会にあつては、国民を台にして国鉄経営の衝に当つておりまする総裁に対して一体かかる事態が発生したということは、まつた労働者の責めであるという当局の主張通りであつたとしても、この国鉄法の精神から言えば、総裁並びに役員は、その責任を国民に対してどうお思いになつておるかをこの際伺つておきたいと思います。またその責任の所在を、どういう方法で明らかにされるつもりか。あなたの部下に対しては、首を切るという処置をとつて、きわめて正確な態度に出ておるのでありますが、役員として、国民あるいは国会に対してどういう責めをとる決意であられるか、この点に対して明確な見解を伺いたいと思います。
  56. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 これは公共企業体等労働関係法と日本国有鉄道法との関係を論ぜられておるのじやないかと存ずるのでありますが、私は率直に申し上げまして、公共企業体等労働関係法の中には、立法的に申しますと、もう少し改善の余地があるのじやないかということも考えられます。しかし現行法の実施、解釈ということにつきましては、おのずから一定したものがございますので、私はその責任を遂行したつもりでございます。そういう立法的な意味合いにおきましては、私はあくまでも今回のような違法の行為なからしめるようにして行くこと、そういう方面に努力することがわれわれの責任でもあり、また組合の各位におかれても、おそらくそういうふうに考えておられるのじやないかと思うのでございまして、きわめて遺憾でございましたが、違法の行為があつた以上、やむを得ざる処置に出たわけでございまして、これを将来の問題として、立法的な考え方で参りますれば、そこに何らか打開の道を講じて行くということが私ども責任ではないかと思つております。かりに立法的措置ができないといたしましても、その間において一歩、二歩前進して、今回のようなことのないように努力して行くことが私たちの責務である、かように考えております。
  57. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私はできたことをいたずらに責めを追究しようとは思いません。むしろ今後の問題が重要だと思うのです。今後公労法の精神、国鉄法の精神によつて、公共の福祉のために、渾然一体になつて奉仕できる姿が望ましいわけであります。そのために、今度の問題の処理をしなければならぬことは言うまでもない。処分のための処分意味をなしません。そこで、将来一体どういう方法で労使関係を調整して行こうとされるかをこの機会に伺つておきたい。
  58. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私どもは私どもなりに、組合との間におきまして、あまりかみしもを着ない形でろいろ研究をして参りたい。同時に、一方御承知のように、内閣に臨時公共企業体等合理化審議会というものができております。そこらにもこういう大きな問題を提出いたしまして、衆知を集め、あるいはもとより国会の皆様の御意見というようなものも十分に翫味いたしまして対処して参りたい、一日も早くそういう方向に向つて進みたいものだというふうに念願をいたし、祈念をいたしておる次第でございます。
  59. 井堀繁雄

    ○井堀委員 委員会の制度もけつこうでありましようが、私ども考えでは、国鉄の労使関係だけが特別なあり方であるとは思わない。労使関係というものは、ある場合には利害関係がまつたく対立する場合が多いし、それからそうでない場合もある。ことに公共企業の場合においては、渾然一体の姿にならなければ、所期の目的を達することはできぬわけです。ことに今日の民主主義の時代にあつては、個々の労働者の人格だけを尊重するという形だけでは、こういう事業の遂行はできません。言うまでもなく、憲法にも規定してありますように、労働者組織を通じて、ことに公共事業にあつては、組織上の尊重が行われなければ、企業の民主化とか、ことに公共性などというものは望めないわけであります。言いかえますならば、労働組合の健全な発達を一方に要求されますと同時に、雇い主と労働者関係というものは、一方的なものではないわけで、相関関係にありますから、経営者側自身が、民主的な労働組合を育てられるような指導の仕方、ということは言い過ぎかもしれませんが、あり方が必要なんです。そこで私は伺いたいのであります。が——これははなはだ率直な言い方で、私の見解が誤つておれば、御注意をいただくことといたしまして、どうも今までの調査を進めております間に現われて来た行き方というものは、往年の国鉄経営、すなわち役人が経営しており、もつと官僚的な経営の上にどうも封建的なにおいが強過ぎる。古い言葉ではありますが、聖徳太子のお教えにも、上下の争いはおよそその責上にあり。こういう労使関係の場合においては、権力を持ち、あるいは支配的地位にある者が一歩も二歩もへり下つて行かなければ、こういう関係というものがうまく行かぬということは、封建時代にあつてもそういうさとしがあるくらいです。民主的な組織を尊重しなければならぬ今日の段階にあつて、なおさらこういう点は十分慎まなければならぬと思うわけであります。そこでお尋ねをしておるわけであります。もちろんわれわれは、労働組合の健全な成長が一日も早いことを望んでおります。これは、国鉄に限つたことではありません、日本全体、世界の要望するところであると思う。しかし、それにはやはり相手がそうなければならぬということが非常に大事です。そういう意味で、私がさつき冒頭お尋ねしたのは、あくまで今度の場合は、仲裁裁定に対する不満と、あるいはそれを了解させようとする立場の上に相違こそあれ、今までの団体交渉の経過や、あるいは調停や仲裁に現われた当事者の意向を見ますと、必ずしも対立ばかりではないようであります。国鉄法何条でありましたか、職員の給与については、生活を支えるに足るものでなければならぬ、あるいは一般公務員との均衡をとる、民間給与とのバランスを考慮するといつたようなことが、法律で命じてあるくらいでありますが、この点が仲裁委員会や調停委員会の意見書にも出ていますように、実際はこの法律で規定している通りのことができない。というのは、国鉄だけでなくて、民間全体がそうであります。日本経済自身がそれを許さないという実情にあるわけであります。そこに仲裁にも申合せがついておるわけであります。その実施ができなかつたということに不満が起つて来るということは、当然のことです。でありますから、国鉄の事業を能率的に、かつ円満な労使関係の中に運営して行こうという責任の重大であることは申すまでもありません。はなはだ困難なことだと思うのです。それだけに、格別の努力が必要になつて来る。そこにはいろいろのそういう事情を勘案した処置がとられて来るべきであるというところに問題がある。それが突如として、公企労法十七条によつて規定されておるように、首を切ることができるからということで、ただちにこの手段に出るということについては、その前に措置があるべきである。その措置についていろいろ調査を進めて来たけれども、ありません。そこで、ここで私は具体的なものを通じてお尋ねをいたすのでありますが、こういう趣旨で私はお尋ねをしておるわけですから、お答えもできるだけ私の質問がスムーズに行くように答弁を願いたい。  前置きがたいへん長かつたのですが、ぉこで具体的なお尋ねを一、二いたしたいと思います。そういう事情で、国鉄法の建前から行きますと、国会国鉄というものは、権利義務関係においてもそうでありますが、法律では権利義務を規定しております。しかし、私は権利義務の思想でお尋ねしようと思いません。もつとおおらかな立場で、どうすれば国鉄国鉄法の精神にあるように、労使が平和なうちに能率を上げて、福利増進に役立つように運営してもらえるかという希望に満ちてお尋ねするわけです。そういう立場からいたしますと、今回のような事態が発生した場合においては、今までのお答えで明らかなように、労働組合がああいう行動に出ざるを得なくなつた経過については、もう一部始終明らかになりました。ただ処断の方法であります。このことについては、むしろ公企労法によらないで、日本国有鉄道法によつて処置が考えられるべきではなかつたか。たとえば三十二条でございますか、服務に対する基準があるようでございます。今まで述べられて来た資料は、この中に尽きると思うのです。こういうものによつて、個々の行為について、役員とし、あるいは上位にある職員としてしかるべき処置を講じて行くのが、公企労法なり、あるいは日本国有鉄道法の精神からいつて、妥当な扱い方ではないかと思うのですが、この点についてお考えになつたことがあるかどうか。  それからもう一つついでにお尋ねしておきますが、国鉄法によりまして、こういう重大なことについては、経営委員会に御相談なさつて、かかる問題に対する処置をおとりになつたかどうか、この二つについて総裁からお答えをいただきたい。
  60. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 あとの方からお答え申し上げますが、もとより解雇処分というようなことは、重大な事項でございますから、経営委員会にもお話を申し上げてございます。さらに日本国有鉄道法の規定によるべきか、あるいは公労法十七条によるべきかということについても、十分考究いたしたのでございますが、今回のことは、事が労働問題でございます、労働争議でございますので、十七条によるのが正しいと考えた次第でございます。
  61. 井堀繁雄

    ○井堀委員 十七条によることが妥当だということになりますと、労働争議と、こういうことになるわけであります。やぼな質問でありますが、労働争議に対する定義がございます。だから、労働争議ということになりますと、役員と職員が両方責めを負わなければならぬことになるのですが、その辺をお考えになつたことがありますか。
  62. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 今回の紛争は、仲裁裁定の完全実施並びに年末手当の問題、こういう要求に関連いたしまして、その要求貫徹の手段としていろいろなことが行われたわけでございまして、それらの過程において、公労法で明瞭に禁止しておるような業務の正常な運営を阻害するような行為が行われるおそれがある状態が現出して参りましたので、当局側といたしましては、そういうことのないようにということを、繰返し警告も発しておつたような状態であつたのでございますが、結局そういうような当局側の十七条に触れるような行為の発生を何とかして防止しようという努力は水泡に帰しまして、この公労法違反行為が行われてしまつたわけでございます。そのために、当局側といたしましては、いやしくも法律の規定を正面から蹂躪するような行為が行われた以上、これを不問に付するわけにはいきませんので、そういう事態が発生した場合には、やはりその責任を明らかにして責任者処分するということは、これは当局側責任であるというふうに考えまして、今回のような処置をとつたわけでございます。
  63. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そこでストライキは、民間の場合で言つてもよくおわかりだと思いますが、通常営利追求のための商事会社にありましても、社団法人の組織から行きますと、株主と取締役、その取締役を代表する社長及びそれにつながる執行の任に当る役員とがあります。労働争議の場合においては、言うまでもなく株主の利益のために重役は、労働組合と対立もしくは妥協をいろいろやらなければならぬ。よしんば不手ぎわを生じてストライキをやつて工場をつぶしたというようなことにもなると、株主に対して多大の迷惑を与えるわけであります。この場合は、営、利事業であつても、そういう責任をとるというのが通例であります。まして、や、公共企業体であり、そのすべての財産が国のものでありますから、国の財産をそこなうような、あるいは公共の福祉のために奉仕しなければならぬものが、それと反するような事態が発生するということについては、その原因がどこにあるかというと、労使の間の摩擦にあるということは、ストライキの場合においては定義であります。  その摩擦を生じたことは、鐘が鳴るのか撞木が鳴つたかという議論と同じことであつて、ストライキが起きた場合においては、言うまでもなくその執行の地位にあつた者が責任をとるのが当然なのです。もし十七条で争議行為であるということによつて処分をするとすれば、その争議に対する責めは、ここで言いますならば、国会に対しては総裁以下役員、あるいは職員のうちでも、その上位にある、支配的地位にある者は、共同の責任をとらねばならぬ。そういうことをお考えになつて、今度の処断をなさつたのであるかどうかをお尋ねしておきたい。
  64. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 お言葉通り、このような事態を発生せしめたということは、これは単に組合側にのみ責任があるという性格のものとは、私ども考えてはおりません。従いまして、先ほど総裁も申されましたが、このような事態の発生というものは、あらゆる手段を講じて回避しなければなりませんし、また不幸にして今回このようなことが起りましたが、今後二度とこういう事態を起させないように、あらゆる手段を講ずべきであるということも考えておる次第でございます。この問題を契機といたしまして、私どもとして考えなければならないことは、多々あると思つておりますが、しかしそれらの中で、やはり明白に公労法違反した行為というものが行われた以上、その責任を明らかにするということも、やらねばならないことのうちの一つであるというふうに、私どもとしては考えておる次第でございまして、今後の問題につきましては、先ほど総裁も申されましたが、当局側もまた当局側立場において、やるべき努力を決して惜しむものではない、そういうような考え方でおる次第でございます。
  65. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  66. 赤松勇

    赤松委員長 速記を始めて。     —————————————
  67. 赤松勇

    赤松委員長 この際造船関係労務に関する件につきましてお諮りいたしますが、本件につきまして、大西正道君より委員長の手元まで、造船関係労働者生活確保に関する決議案が提出されております。まず本決議案を朗読いたします。    造船関係労働者生活確保に関する決議   第十次計画造船の着手遅延が造船労働者並に関連産業労働者の生活に異常なる生活不安を与えつつあることは誠に寒心に堪えない。   よつて政府は、この際速かに第十次計画造船の実施並にその善後処置に関し適切なる方途を講じ、以つてこれら労働者の生活不安を解消する  よう要望する。  本決議案につきましては、理事会におきまして、各派一致で了承を得ました。本決議案を当委員会の決議といたすことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なければ、さよう決します。     —————————————
  69. 赤松勇

    赤松委員長 質疑を続けます。井堀繁雄君。
  70. 井堀繁雄

    ○井堀委員 大体今までの調査の関係を通じて明らかになりました点は、公労法によつて解雇をいたしました経過については、どうも了承することが困難ないろいろなものがあるように私どもは思つております。もちろん、争議行為であつたか、なかつたかということについても疑問がありますが、それよりも、争議行為と断定することになりますと、どうしても労使双方の責任を同時に問うというのが、妥当な扱い方になるわけです。その場合には、総裁以下役員は、同罪の処置を受けなければならぬと思うのですが、そういう場合に対しての腹構えなりあるいは責任は、どういう方法でとるかいうようなことについてお考えになつたことがあるか、お尋ねしたい。
  71. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 先ほども申し上げましたように、このような紛争を惹起せしめ、その結果として正常なる業務運営を阻害して、公共の福祉を害するというような行為が行われるようになつたことは、返す返すも残念なことでございますが、公労法によつて明瞭に禁止されている行為行つたの組合側であつたわけでございまして、その行為に対して、組合並びに職員の若干の方に対して責任をとつていただいたのでございます。経営者側と申しましようか、当局側としても、確かにいろいろやらねばならないことがあるということは、考えているのでございまして、今までの経過におきましても、いろいろ私どもの見解のあるところは、関係の向きに申し上げたようなこともございまするし、また先ほど総裁が言及されました公共企業体合理化審議会等におきましても、これらの経験を十分に考慮の中に置きまして、当局当局としての立場においてなさねばならぬことが多々ある。その点については努力を措しまない、そういうような考え方でおる次第であります。
  72. 井堀繁雄

    ○井堀委員 どうか私のお尋ねしていることに、お答えいただきたいと思います。公企労法十七条の解釈については、私どももそれぞれ独自の解釈を下す立場にあるわけであります。十七条の事態が起つたとか起らぬとかいうようなことを、私どもお尋ねしているのではありません。私のお尋ねしているのは、十七条ということになると、争議行為であります。今私は国会で国民を代表してお尋ねしている。われわれに対してどういう責任をとるかということを聞いておるわけであります。十七条というのは争議ですよ。しかも上下の争いその責上にありですから、下ばかり切つておれは責任をとらぬというのは、封建時代にもありません。封建時代には人の首を切るかわりに腹を切ることを教えている。この公企労法の十七条は争議行為です。争議行為が発生して、そのために実害があつたということは、先ほどの答弁で明らかです。国民に多大の迷惑をかけたということも事実であります。その経営の責任者である人がどういう態度をとるかということが、先に明らかになつて来るのではないかということをお尋ねしているのですから、私の尋ねていることに答えてください。
  73. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 お尋ねに対して、少し形式的なお答えになるかもしれませんが、公労法十七条で、当局側に対しましては、作業場の閉鎖をしてはならない、こういう意味において争議行為を禁止されておるのでありますが、当局側としてはそのような法律に違反するようなことはやつておりませんので、この点について争議行為としての法律上の責任は、当局側にはないというふうに考えております。
  74. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたは独断的に法律を解釈しておいでになります。公労法を全部お読みください。ここで公企労法の説明をするいとまはありませんが、十七条の規定は、いきなり出ておるものじやありません、第一条の精神を受けておるのです。この公労法の目的をよく読んでください。何回も繰返して言つたことでありますから、申し上げません。労使が円満に労働条件の問題に取組まなければならぬことを、この法律は強く要請しておるのであります。不幸にして、たまたま私ども争議行為であるかどうかの判断については、まだ明らかにいたしておりませんが、あなた方のおつしやるように争議行為だとするならば、これは言うまでもなく労使で話合いができなかつた、団体交渉という道でもうまく行かなかつた、あるいはいろいろ努力したけれども、調停、仲裁もだめだつた、それでやむを得ず処断するという最後にこれを受けて立つ条章なんです。それまで努力したというあなた方の答弁はけつこうです。それを認めるか認めないかは、われわれの判断できめる。私の承つているのは、争議で最悪の事態——あなた方の言う通り百歩譲つて労働者側だけが一方的にストライキをやつたというならば、それはさつきから言つている通り、ストライキというものは相手がなければできないのですよ。一方的行為じやございません、相手が必ずあるのであります。でありますから、この十七条を持つて来るということは、あなた方に決意がなくして持つて来られる筋合いのものではないということは、公労法をよくお読みいただけばわかることであります。ですから、私のお尋ねしているのは、国鉄法によつてやるべきではなかつたか——しかし、まだ団体交渉が持たれておるようでございますから、団体交渉で話合いをして処理をされるということを、われわれはどうこう言うものではありません。だから、そういう点で再考の余地があるかないかをお尋ねしているので、順を追うて聞いているわけであります。あなたが、どうしても争議行為で押し切るということになれば、そう考えることはやむを得ません。しかし、これを争議行為であるときめる以上は、労働者一人々々に対してならば別ですけれども、われわれ国民を代表する国会立場からすれば、役員と職員が意見の一致を見ることができなかつたということになるわけです。その意見の一致を見るためには、あらゆる努力をせいということを法律は命じておるわけであります。その努力をしてなお一致できないで争議になるときには、両方が責任をとるのです。この場合には雇い主と被雇人の間において、雇い主が被雇人を首切るということは一般の事業においては、そのかわりその損害は自分の腹を痛めるのです。あなた方は公務員なんです。公務に従事する職員なんです。あなた方は月給を一銭も痛めるわけではない、損をするのは国民です。そんなことでこの公企労法で扱われては迷惑します。だから、そういう解釈をあなた方がなさるべきではありません。だから、努力をしたというならば、その努力のあと説明すればいいのであつて、私はまた努力の余地はたくさん残つておると思うから聞いている。だから、もう少し団体交渉を持つて、うまくやつてみる意思があるかどうか、あるいはまた調停委員諸君にも相談してないようでありますし、仲裁委員会にもはかつてないようであります。公然たるそういう機関もあることでありますから、そういうものに対して、一段と努力も払う意思があるかないか、この際伺つておきたいと思います。
  75. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 お尋ねになる気持は、大体わかつておるつもりでございますが、この処分の問題を最後的に決定いたしますまでには、これは実際には組合側との間に、はつきりした団体交渉という形ではございませんけれども、いろいろ話合いの機会はあつたわけでございます。その間組合側といろいろ話合いをいたしましたことは、これはその話合いに参加いたしました当事者限りの話でございまして、ここで申し上げるようなことではございませんが、何とかしてこういうような事態を再び繰返さないで済むような方法はないものであろうか、何とか国鉄の労使関係というものを、もう少し建設的な方向に持つて行く道はないであろうかというようなことにつきましても、いろいろと話合いはいたしたのでございます。その間処分の問題につきましても、もちろんいろいろ話は出ておつたのでございますが、その間におきまして、これは組合側として処分に賛成するとか、納得するとかいうことは考えられないことでございますから、強い反対であつたわけでございますが、その強い反対の中におきましても、特にいわゆる懲戒というような形に対しては、なお一層強い反対であるというふうに私ども感じておつたような次第でございまして、いろいろ話合いもしたのでございますが、結局のところどうしてもお互いの間では話合いがきませんで、最後にやむを得ず公労法で処断をしたというのが実際の経過でございます。それで、法律上の責任ということにつきましては、はなはだ形式的なお答えで恐縮いたしておるのでありますが、法律上の責任当局側にはない。しかし道義的にはいろいろ問題もあろうかと思いますけれども、そういう点につきましては、私どもは私ども立場において、単に現在ばかりでなく、将来にわたつてもあらゆる努力を惜しまない考えでおるという気持でおりますので、これを御了承いただきたいと思います。
  76. 矢上正直

    矢上参考人 ただいま吾孫子局長から言われたように、組合側処分の問題について話をした際における当局側の申込みと申しますか、今後こういうことが行われないように、もつと建設的な方向に進もうではないかという話があつたことは事実であります。その際に組合側としては、将来の問題を話すときに、組合側だけの行動を制限をする、こういうことでは組合も納得できない。すなわち、裁定の完全実施に対する努力というものを完全に行う、こういうことの確約ができれば、私どもは将来こういうことは繰返さないという約束はできる。この際条件を組合側につけるならば、当局にもそれだけの責任を持つてもらえないか、こういうことで話をしたという組合の誠意だけを御報告申し上げておきます。
  77. 井堀繁雄

    ○井堀委員 局長は、法律的な責任を形式的に拒否されておるようです。もちろん今の立場としては、労働組合の方としては、その処分が不当で、不法であると言つておりますから、勢いそういう答弁をなさるという立場は了解いたします。しかし、それだからといつて公労法の精神を国鉄当局考えられるようにとつては、今さつき総裁なり、あなたが言われたように、労使関係を円滑に進めようとする考え方からいたしますと、たいへんな誤りであります。言うまでもなく、この公企労法の精神から行きますと、労使関係を一日も早く第三者に迷惑をかけないようにする、ことに公共企業でありますから、それを始末する責任が両者にあると思うのです。争いになつたら、首を切りさえすれば始末がつくというのではありません。現に解雇された組合側の方が、異議を唱え、裁判ざたに持つて来ております。見通しを言いますならば、もし裁判に国鉄が負けたらどうする。解雇は取消さなければならない。損害賠償の責めに応じなければならない。役員がやめることによつて、あなた方は責任をとれるかもしれないが、その損失はだれが負うのですか。国家すなわち国民が負担することになるのであります。そういうようなことを、この法律は決して命じてはおらないのです。この法律は、労使関係はあくまで団体交渉、団体交渉でやむを得ないときには、最終点は仲裁裁定によつて片づけるという精神であります。それを、当局解雇しておいて、聞かなければ相手が悪いのだという解釈は、労使関係を円満に解決する態度でないことは、この事実をもつてもわかることであります。でありますから、私のお尋ねしておりますのは、この公企労法の精神からいえば、まだ調停の機関が残つておるわけです。仲裁委員会も手をあけておる。こういうようなものをどうして当局はお持ちにならなかつたかということを、お尋ねしておるのです。団体交渉だけで、しかもこの団体交渉においては、今も労働組合側からの意見もあるように、組合側では協調的な態度に出ておるわけです。もつともそれは解釈の相違ですから、どちらにひいきするわけにも行かないのですが、しかしこの場合においては、この法の精神は、調停に持ち込まなければならぬ。調停がさじを投げ、仲裁がさじを投げたときに、十八条を発動するのでしよう。その解釈を下すことは自由です。どうして調停を避け、仲裁というこの法律の精神を避けておるかということを、私はお尋ねしておるのです。
  78. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 十七条、十八条の解釈の問題について、お言葉を返してはまことに恐縮でございますけれども、十八条によつて処分をいたします場合には、この法律の文言にありますように一切の権利を失うということにもなつておりますので、調停、仲裁に訴える権利もなくなるものであるというふうに、私ども考えておるわけでございます。しかし、実際問題といたしましては、仲裁委員会におかれましても、また調停委員会におかれましても、国鉄の労使の紛争については、重大な関心をお持ちになつておりますので、この問題が起りました際に、私どもとしては事のいきさつをお話はいたしております。また先方もお尋ねになりました。そこで、こういうような事情であつたということをお話を申し上げたのでございます。調停委員会におかれても、仲裁委員会におかれても、公労法の解釈について、それぞれのお立場のお考えがあつたことと思うのでございますが、この問題について、積極的に進んで仲裁委員会なり調停委員会が何か御発動になるというようなことはございませんでした。私どもとしては、公共企業体の経営当局として、現行法の建前上、やはり当局側が事態を判断して責任を明らかにする義務があるものであると考えて処置をとつたような次第でございます。
  79. 井堀繁雄

    ○井堀委員 一番大事なことは、あなたがちよつと言いましたけれども、十七条のような行為が起きた場合、こう言つております。すなわち争議という意味でしよう。しかししストライキを起させないようにする義務は、国民の立場からすると国鉄の役員にあるのです。極端なことを言うと、首を切つて解決になればいい、しかしもしそれで紛糾してストライキが発生したらどうします、違法だといつて縛りさえすればいいというものではありません。労働争議に対する法理は特別なものであるということは、私が説明するまでもない。でありますから、もう少し歴史をたどつてみると、この法律が提出されたときの提案者の趣旨弁明にはこう書いてある。第一、第二、第三、第四と理由をあげておりますが、第三の理由として「公共企業体職員には団体交渉権は、労働組合法の定めるところにより、完全に保有するのでありますが、これが行使の方法につきまして、従来一般組合においては、ややもすれば混乱を生じ、無用に労働紛争議を生ぜしめている傾向があります。しかしながら、かかる混乱はつとに排除されることは望ましいことでありますが、特に公共企業体において、これら無用な紛争議を極力排除することにより、正常な団体交渉を保障し、これによつて職員地位の維持向上をはかり、もつて公共企業体の能率発揮と、正常な運営を確保しようとする法制的措置を必要としたことであります。」と、まずここで言つている。これに説明を加えるまでもないと思う。あくまで団体交渉の余地を残すというのは、労働条件の維持向上については、公共企業体労働者については、完全に団体交渉権を認めるという前提なのである。団体交渉権というものは、話し合つて一ぺんで解決がつかぬから、それでいいということはない。団体交渉を促進しようとするために、いろいろな措置をとるわけです。その手段が、あなた方の目から見れば争議行為と言うし、一方から見ると遵法闘争、こう言つておるわけです。そこで、その遵法行為が違法であるか、あるいはあなた方の解釈が間違つておるかということは、裁判所できめることでしよう。しかしそういうことを裁判所に持ち込むことは、公労法の精神にそむくのです、それを両者がお互いに極力努力を払つて解決させるということが、公労法の精神です。団体交渉でいけない場合はということで、第四の理由として、公共企業体に関する仲裁裁定のことを言つておるわけです。だから、団体交渉がどうしてもいかぬ場合には、すなわち公共企業体労働者に関する限りにおいては、調停委員会という機関に持ち込む。そこでお骨折り願つて、それでもいかぬ場合は仲裁という最後の段階を求めるということにしてある。それが団体交渉の段階でもまだ不十分、意見の対立がそのままなんです。それを一方的な解釈で首を切り、一方はそれに反対ということで、これは公労法の精神に従順な態度でないことはここでわかるわけです。でありますから、今からでもおそくはない、団体交渉をさらに一段と努力されて、それでうまく行かぬというなら調停委員会を煩わせるということに、この法律としては非常に大きなウエートを置いておるわけです。こういう点に対して再考を促す余地があるかどうかということを、お尋ねしておるわけです。今までの経過についてはそうであつたかもしれぬけれども一方は法廷闘争——闘争という言葉は穏当でないかもしれませんけれども、裁判所の判決を求めようということです。その結果をまつてということでは、国民はたまりません。道がふさがれておる場合はしかたがない、仲裁裁定のように裁定が下つてしまいますと、どちらもこれは法律によつて守らなければならぬ。この辺に対する考えの余地があるようであるが、どういうぐあいにされるつもりであるかという、この扱いの今後のことをお尋ねしておるのです。過去のことを聞いておるのじやない。過去のことはあなた方の方の書類で出ておつて、いろいろ明らかにされておりますから、われわれはそれに基いて判断する。過去の事実に基いて、今後まだそういう余地が残されておるかどうか、それに対してどういうようなお考えを持つておられるかを聞いておるのです。
  80. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 お話のごとく、いつも仲裁裁定によつて問題が落着するのじやなくて、裁定が出てから紛争が激化するというこの現状については、まことに遺憾なことに存じておる次第でございますが、私どもといたしましては、常にやはり国鉄の労使間の問題は、できる限り団体交渉で答えを出して行くという方針でやつて参りましたつもりでございます。それで、今回不幸にしてこういう事態が起つたのでございますが、そこに至りますまでの間においては、再三再四当局側としては警告も発し、また場合によつては懇請もしたのでございますが、こういうような結果になつてしまつたのでございます。今回の事件につきましては、これはもちろん裁判上の争いになるようなことは好ましくないということもその通りでございますが、今回の事件は組合側から今裁判を起しておられますので、今回の問題につきましては裁判でもつて事実をはつきりさしていただくようにお願いする以外に、方法がないんじやないかというふうに考えております。
  81. 井堀繁雄

    ○井堀委員 きわめて事柄が重大だと思いますから、もう一ぺん重ねて総裁の答弁を伺つておきたいと思います。今の局長お答えでは、言葉じりを問うわけではありませんが、労働組合の方で裁判所の判断を煩わせるということは一方的なようなことを言つておられます。一方的に首を切つたから、一方は出て来ておるわけです。そういうことはあくまで労使を対立的にながめての考え方から来ると思うのです。口の上では労使の協力を求めるとか、あるいは団体交渉の上に立つて事態を円満に遂行するということを言いながらも、そういう考え方が明らかに出て来るわけです。これは、もう一ぺん言いますけれども、立法当時における政府の趣旨弁明の中に、争議行為に対してはこう書いてありますよ。「業務の運営の停滞は寸時といえども許されません。かかる事情よりして、やむを得ず争議行為禁止の措置を講ぜざるを得なかつたのでありますが、しかしこの反面におきましては、完全なる団体交渉権の行使と、公正な調停及び仲裁機関の迅速的確なる活動により、職員地位の向上については、十分なる保障がなされることになつております。」すなわち調停と仲裁に対する機能をここに要求して、争議行為というようなことが、いささかも発生しないようにしようとする前においては、当事者がこれらの機関をフルに活用して、そういう争議行為の発生を阻止するということがこの法律の精神なんです。でありますから、調停を頼み、仲裁を経て、その後に争議行為に出たとするなら、十七条の発動を見ることはやむを得ぬ。十七条の発動の前にこういうことを当事者に命じておるわけなんです。だから、この点は大いに反省していただかなければならぬところだと私は思つてお尋ねをしておるわけです。しかし強引にがんばるということになりますと、責任は、私どもからいえば、これは原因を今調査中でありますから何とも言えませんけれども、まつたく第三者的立場に立つて見ても、ストライキというのは経済上の争いで、けんかなんですですから、両成敗を食います。それは成敗することによつて目的が達せられるならいいのでありますけれども、国民の受けた損害はそれによつて救済はできないのであります。でありますからこそ、公労法争議行為を極力阻止するために、憲法の労働者の基本権にかかわるようなものをも忍んで、こういう法律をつくつたのです。当局のために、封建的な雇用制度が、たやすく思うように使えるためにつくつたものじやありません。さつきも例を引きましたように、封建的な時代にあつても、無礼討ちのできるような絶対支配を許しておりましても、腹を切ることを教えておる。少くとも国民に対する国鉄としては、そういう争いが起つたものを第三者に答弁させるというようなことではいけません。どうして解決するかということは、当事者が一番熱心でなければならぬ。手があるなら、どの手でもこの手でも使つて、争議を起さないように、起つたものをさらに拡張しないように、最小限度に食いとめて行くということが、この法の精神なんです。そういう意味お尋ねしておるのです。あなたの方の考えでは、今まで団体交渉でやつたのだから、これ以上調停あるいは仲裁機関を必要としないという解釈は、法自身をあなた方が乱すことになるのです。この辺の解釈は、どういう解釈をつけておいでになるか、もう一度総裁の立場から一言伺つておきたい。それを覚悟の上でおやりになるのなら、これは法に対する解釈上の問題になりますから、ここで私は討議しようとは思わない。
  82. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 公共企業体等労働関係法の精神が、円満な事業の遂行を確保上、同時に職員の福祉増進、また公共の利益の擁護という各般の面において、重要な目的を持つておるということは、ただいま井堀委員からお示しの通りであろうと私は考えます。ただその手段として団体交渉あり、あるいはそれが成立しないときには調停があり、仲裁があるということになつておりまして、さらに進んでは争議行為の禁止という条項が入つております。またさらには、御承知のように公共企業体の予算上資金上の関係の問題と、仲裁裁定の結果ということ等について、必ずしもその間に目的を円満に遂行し得ないようなぎごちない面があるのじやないかということは、私もよく承知しておりまして、これは非常に遺憾なことである。何とかしてほんとうに公共企業体等労働関係法の根本の目的を十分に達成し得るようにやつて行きたいということにつきましては、私は決して努力を惜しむものでもなければ、将来の立法問題としても、それらの点について、いかなる方法で、どういう措置をして行つた方がいいだろうかということについての研究等も、今後十分になし遂げて参りたいと存じます。ただ、遺憾ながら今日の状態におきましては、ただいま問題になつておりますような解雇処分というふうな、きわめて遺憾な事態を引起すことになつておるのでございまして、これは一日も早くそういうことのないように、おつしやるように、われわれと組合の各位との間の関係が、きわめて円満な間に進行するというふうに持つて行きたいと考えておるのでございます。繰返して申し上げますが、今の法律の文言といたしましては、遺憾ながらそこに何かぎこちないものがあつて、今日のような遺憾な状態を来している、これはきわめて自分としては遺憾に考えておる、こういう次第でございます。
  83. 井堀繁雄

    ○井堀委員 何か仲裁裁定に対する予算上資金上の問題を出しておりましたが、今起つている問題は、仲裁裁定に対して不服であるということで——これは仲裁裁定が下つた以上は、労働組合側も経営者側も従わなければならぬ。そこを予算上資金上の問題を議論に出して来ましたが、それはもういいのです。そこはまた別な問題になるので、今の首切りの問題は、その予算上資金上の問題には関係がないのです。仲裁裁定をめぐつて、労使の間の話合いがしつくり行かぬということなのです。だから、それは役員の方からいえば、労働組合のわがままというものである、こう言いたいのだろうと思うが、わがままであろうと、言い分があるならばそれを聞かなければならない。そこに私がさつき朗読したような団体交渉の問題があるので、その団体交渉で話をつけなければならぬということをちやんと法で命じているわけです。その辺の見当を間違いのないようにしなければいかぬ。ですから、総裁は公企労法を詳しくは御存じないかもしれない、またそういうことであなたの言質をとろうというわけではないが、大事なことは、今十七条で解雇したということは、仲裁裁定に対して労組側も政府側も異議を唱えたということになるわけです。これは国会を煩わすほどですから、事実でしよう。それを争議に移さないようにするための責任は、これは労働者側だけではありません、雇い主側にもある。すなわち役員側の方にもあるわけです。それをこの法律では団体交渉によれ、団体交渉でうまく行かない場合はやむを得ず調停に持ち込め、調停に持ち込めない場合は最後は仲裁だということになるのです。だからそういう機関をも今まで十分通して、そうしてだめだつたからこの十七条で首を切つた、こういうのであればそのいい悪いは別として、筋が通る、公労法の精神が通るわけです。それを一体どうして調停、仲裁裁定の道を選ばないで、いきなりこの十七条で首を切つたのか。このことについては、事実そのものは別としてこの法律の精神からいえば、あなた方の方に無理があるわけです。その辺は、どういう理由でそういう無理を押し切つたのかということを、私はお尋ねしておるわけです。それに対しての総裁の考え方お尋ねしたわけです。事務当局としては、今局長から答弁がありましたように、これは組合側が悪い、組合が言うことを聞かぬからだと、同じことを繰返しておられるわけです。しかしそれはこの法の精神に反するというふうに、私は私なりにその局長答弁を判断しているのですが、実際そういう法律の解釈をされるのでしたら、私は法廷に行つて負けると思う。負けることは別にかまわないが、国民自身が非常な迷惑をこうむることになるから心配するのです。それでこれに対する総裁の最後的な見解をお尋ねするわけです。それをも覚悟の上だというならば、これはまた別な方法を講ずるよりしかたがありませんが、一体どんなお考えですか。
  84. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 詳しいことは事務当局からお答えいたさせますが、私の記憶では、この賜暇闘争その他のことが起りかけておりましたときには、仲裁裁定の問題が、政府におきましても国会等におきましても問題になつておりましたので、まだ解決がついていなかつたときであります。従いまして、そういうことの解決に努力をしようじやないか、そういう方向に向おうじやないかということで、私どもとしましては、組合側にも、そういう違法行為になりそうなおそれのあることは、その中止あるいは少くとも延ばして、模様を見たらいいじやないかということを再三再四申し上げたわけでございます。でありますから、私どもとしましては、この違法行為の起りますまでの間にずいぶん努力もいたし、また仲裁裁定の完全実施につきましても、政府その他に——組合側でもむろん大いに努力したのでございますが、私どもとしましても、でき得る限りの努力をしたつもりでございます。ただ遺憾ながら、やはり財政上の問題その他の関係で、金額においては裁定通りでございますが、実施の時期がずれたという遺憾な結果になり、いろいろな問題が起きて来たということでございまして、これは先ほど来申し上げておるように、処分というようなことは、われわれとしてもできるだけ避けなくちやならぬところでございますが、違法な行為が起きた以上は、それは社会全体に対する責任、部内の規律の問題等々から考えまして、そのままに放置することができないのであります。
  85. 赤松勇

    赤松委員長 総裁、井堀君は例の仲裁裁定の実施の問題を言つておるのじやなくて、今度の解雇の問題等について、当局が合理的な解決のために、なぜ調停あるいは仲裁の制度を活用しなかつたのか、なぜそれに持ち込まなか つたのであるか、こういう質問です。 そうでしよう。
  86. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そうです。
  87. 赤松勇

    赤松委員長 ですから、この前の仲裁裁定のものとは違うのです。あとで起きた処分の問題について、首切りというような手段に訴えないで、仲裁、調停になぜ持ち込まなかつたか、こういうことなんです。公労法の精神から言えば、当然そうすべきじやなかつたかということです。(倉石委員「それは違うぞ」と呼ぶ)今国鉄当局に聞いておるのですから……。
  88. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 その点につきましては、先ほど吾孫子局長から申し上げましたように、この十七条の違法行為がございまして、十八条によりますと、一切の権利を失い、そうして当然解雇されると書いてある。でございますが、事実上の問題としては調停委員会、仲裁委員会等にも非常な関係があるといいますか、あの委員人たちも定めし関心を持つておるであろうと考えましたから、事実問題としてこういう事情が起つて、こういう経過になつて、こういう処分をするのやむなきに至つておるという話はいたしたのであります。しかしながら委員会は、どういう十八条の解釈であるかは私はわかりませんが、それに対して調停に出ようとも仲裁に出ようとも、私どもの方には申し出てございません。
  89. 赤松勇

    赤松委員長 井堀君、時間の関係もございますので、ひとつなるべく簡単に願います。
  90. 井堀繁雄

    ○井堀委員 公企労法の十七条の適用で、国鉄側でそういう解釈を下して、そういうことをやるということに対しては、これは決して法律に対して異議を言うわけではないのです。その場合に、そういう裁断を下す前に、この法の精神というものは、あくまで労使関係を円満のうちに解決せいという命令があるわけなんです。でありますから、それを遂行するために、団体交渉がまず適当であり、団体交渉がうまく行かない場合には、調停と仲裁という機関を設けて、その後に処置がとらるべきである。でありますから、これは十七条で首を切りつぱなしで解決するという問題ではない。現に国会で問題になつているし、裁判所に持つて行けば取上げられる。だからそういうことになつて紛争を起すと、そのために被害を受けるのは国民なんです。だから、その紛争を解決するには、雇い主対労働組合の間で努力しなければならぬ。その努力の余地がまだあるんじやないか。その余地が絶対にないという一方的な見解は、労使関係を解決する態度でないんじやないか。公労法の中にある調停制度、仲裁制度は無用の存在ではないのです。この場合に限つて仲裁も調停も無視したが、どういう意味でそういう点を無視されたかということをお尋ねしているけれども答弁がない。調停とか仲裁とかいう機関は、こういう場合に必要がないと言うのなら、どういう理由で必要を認めなかつたかということを答弁しなければならぬわけです。必要を認めなかつたのじやない、今の総裁のお言葉では、連絡はいたしたと言うが、連絡じやありません、調停なり仲裁の申請をすべきだ、それが法律の手続なんです。
  91. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 お言葉を返すようで恐縮でございますが、私どもの解釈といたしましては、十八条の処分の問題というのは、団体交渉の範囲に属する問題ではないと考えているのでございます。従いまして、形式的に申しますと、団体交渉事項についていろいろ問題が起つて、それで話がつかないときに調停のごやつかいになり、また仲裁の御指示を仰ぐというのが、一番代表的な場合であろうと思うのでございます。この十八条の処分の問題という場合には、性質上も団体交渉事項ではございませんし、従つてまた調停、仲裁事項とは考えていないのでございます。そういう考え方ではございましたけれども、実際問題としては、仲裁、調停にお諮りしたことは先ほど申し上げた通りでございます。また団体交渉事項でないという考え方に立つてはおりましたけれども、最後に処分決定するに至ります前には、組合との間でも数次にわたつていろいろ話合いの機会も持つたというのが事実でございます。
  92. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の問題に関連して質問をいたしたいと思います。  今吾孫子説明員は、十七条の問題から十八条の解雇ということになると、これは団体交渉事項ではないと言われておりますけれども、それはどういうところから来ているか。すなわち「一切の権利を失い」こういうことを御解釈になつているのではないかと思うのですが、その点を明らかにいたしたいと思います。
  93. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 それは公労法第八条に、団体交渉の対象事項というのが列挙してございます。その中に入つておりません。
  94. 井堀繁雄

    ○井堀委員 問題は、今初めて明らかにされたわけです。調停、仲裁に持ち込まないということが第八条にある。これで明らかになつた。そこで私がさつきからお尋ねしているように、問題を処理して行くのに、どちらかに、もちろん責任があつたから紛争になつたに違いない。だから、どちらに責任があるかということをわれわれがここで究明することは、将来の参考にはなるだろう。けれども、かかる行為を再び繰返してはならぬということが重要なんです。そのためには、先ほどもお尋ねしたように、労使関係を正常な姿に置くということである。一方には労働組合の健全化をはかる。経営者の方は、公共企業でありますから、最も民主的に、近代的な労使関係をつくり上げて行くということである。そこで近代的な労使関係とはどういうものであるかということが、問題になるわけであります。この扱いの上に、いずれに労使関係の合理化の上において欠くるところがあるかということが重要であつて、そういう意味で、この公労法の運営の仕方の妙味があるわけであります。それを紋切型にここで首を切る——ここで切らなくても、さきにお話のように国鉄法の三十一条ですかによつて処分ができる、大量の処断はできないにいたしましても……。ただ首を切ることによつて問題が進行するのであれば、これはまた一つ方法なんだ。一方は裁判所まで持ち込むのはかつてだ、ストライキやるのは向うのかつてだということで相手にしないのであれば、労使関係など、こんなやさしいものはない。そうは行かない現実の問題がある。でありますから、あらゆる努力をあらゆる方法によつてあらゆる機会に用いることが大切である。その具体的な一つとして、法律にも明らかになつている調停、仲裁の機関を採用したらどうかということをお尋ねしたわけです。それに対して答弁がなかつたが、今の答弁で初めてわかつたように、それは公企労法の表面的解釈である。表面的解釈で行くなら、そういう行き方もできるかもしれぬ。それなら最初から言つているように、労使関係の円満なるあり方なんというものは、決して求められません。そういう労使関係のあり方についての大切な見解をただしたかつたからお尋ねしたわけであります。だから法律の条文をいじくつて小りくつを言つているのではありません。そのことが労使関係のこういう問題を解決するのに非常に大切であるからお尋ねした。その点について総裁の見解をただしたわけです。しかし過去のことはともかくとして、将来自分でそういう点が失敗だと思つたら反省して、次にいい手を考えることが問題の処理の上に大切だ。面子や行きがかりにこだわらずに、調停委員会にも相談をかけ、仲裁委員会諸君にも、個人的には、非公式的には話をしたということでありますが、公式的に話を持ち込む意思があるかないかをお尋ねいたします。
  95. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 井堀さんの御見解にも、私は虚心坦懐に傾聴している次第であります。将来の問題といたしましては、あらゆる方法で労使の間が今日のような状態に陥らないようにして行きたいということは、先ほど来繰返して申し上げておる通りでございます。法律の改正とかいうことになりますと、いろいろな問題がございまして、むずかしいだろうと思いますから、そういうことによらなくても、何とか今日問題になつているようなことを繰返さぬようにして行きたい。これを調停にかけべきか、あるいは仲裁にかけべきかということは第二の問題といたしましても、そういう心持で、またそういう方向に話合いを進めて行きたいということを考えておりまして、実はまだきわめてもうろうたる春のかすみの中にあるような話でありますけれども組合側の二、三の人たちにもそういう意向をお話して、ぜひ組合側でもそういうことを考えてくれ、自分の方でも考えよう。そうして、非公式であるかもしれませんが、話合いを進める機会を持とうじやないかということで進んでおります。
  96. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでたいへん明かになつたのでありますが、あまりこういう問題は紋切型におやりにならないで、十分労働組合組織を尊重され、労働者の人格を尊重されて一日も早く問題が円満に解決がつくことを希望いたしまして、あまり争いが拡大されないように、役員としての職責を全うされることを要望して、また労働組合に対しては日も早く健全な労働組合になることを念願してやみません。
  97. 赤松勇

  98. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それでは総括質問をいたします。まず第一に、次の点を労働省並びに組合並びに国鉄当局お尋ねいたしますが、今度責任者を出されたのは国鉄のみであります。しかし年末闘争と称しまして、仲裁実施をめぐつて闘争は、他の二公社五現業にも行われたわけですが、その二公社五現業が行いました戦術といいますか、そういうものの影響はどういう程度にあつたか、労働省並びに国鉄及び組合はどういうように把握されておるか、お尋ねいたしたいと思います。
  99. 中西実

    ○中西政府委員 三公社のとつた戦術がどういう影響をどこへ与えたかという御質問でございますか。
  100. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 他の二公社五現業にはどういう闘争が行われ、どういうような事実が発生したか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  101. 中西実

    ○中西政府委員 昨年それぞれ組合からの指令によりまして、これは大体は歩調を一致した指令ではございましたけれども、三公社五現業のそれぞれ実際に行いましたのは違つたやり方をやりました。今詳細の資料をちよつと持つておりませんけれども、もしもずつとあの期間中やつた事実がございますれば出したいと思います。
  102. 矢上正直

    矢上参考人 私も詳しい資料を持合せませんけれども、各組合指令としては、三割休暇なりあるいは遵法闘争なりこういう指令が、これは三公社五現業の各組合との話合いによつて同じ指令を出す、こういうことにきまつておりますから、指令は出ておると思つております。またそういうことが後日確認をされております。しかしながら、国鉄の場合のように、新聞の種になるような事象がやはり発生をしない、それは各企業の状態が、どういうふうに問題が起りましても、汽車がとまつた、遅れたというふうには、これと同等のいわゆる新聞種になるようなことにはならない、そのために表面上には出ていないのじやないか。それからまた、今日自分たちが聞いておりますのは、他の公社の中には現在三割休暇、この休暇によつて休んだ人の給料の差引きが行われておる。しかし先ほど吾孫子職員局長が言われましたように、国鉄においては、給料は支払つてつたが、しかし首を切つたと申し上げましたように、他の公社においては給料は差引いたが首切りはしなかつた、こういう事態がまだ当事者間で争いとして残つておるように私ども聞き及んでおるわけです。
  103. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 よその公社五現業等におきましても、官公労の共同闘争という形で、それぞれいろいろな形で闘争が行われたことは承知いたしておりますが、この点につきましては、今までの御説明申し上げる機会にも申し上げて参りましたように、指令の出し方、たとえば休暇闘争について申し上げますと、国鉄の場合は、休暇請求というよりは出勤阻止というような形の指令実行方法として、国鉄のごとく厳重なピケツテイングを張つたところは、よそにはあまりないように伺つております。またそのピケの結果発生いたしましたいろいろな事実につきましては、ただいま組合側矢上参考人が申されましたように、よそにはあまり新聞種になるようなことは起つておらなかつたのでありますが、国鉄の場合には数百本の列車が運転休止になる、また数千本の列車の運行が乱れたというような非常に大きな結果が発生しておる。そういう点で、指令の形式から見ましても、その実行方法から見ましても、結果から見ましても、非常に大きな被害があつたというふうに私どもは認めておるわけでございます。
  104. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私たちは、この公労法を実施いたします場合に、ことに注意しなければならないのは、やはり全般的にこれが不公平にならないように、ある公社は非常に厳格にやつたが、ある公社はルーズに行われた、こういうことのないことを期したいとわれわれは思うわけであります。それでありますからお尋ねいたしたわけですが、労働省でも十分把握されておりませんし、また吾孫子説明員の話でも抽象的でありますし、また組合の方でもまだ十分おわかりになつていないようであります。われわれは非常に判断に苦しむのでありますが、これは後ほど労働省から資料を出していただきたいと思うわけであります。  次にお尋ねいたしたいと思いますが、これは私はいやがらせに言つておるわけではありません。それは総合的に判断をしなければならない、ことに従業員が国鉄に対してどういう反感を持つてつたか、こういう点も資料といたしたいという意味お尋ねしておるわけであります。それは、当時国鉄の問題をめぐつて、いろいろ汚職があるといううわさがされておつた。これは一体どういうように発展をしておるか、国鉄総裁からお聞きいたしたいと思います。
  105. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 何か国鉄をめぐつて疑惑を持たれるようなことがあつたといううわさ、新聞記事等はありました。当時は、これがやはり司直の手に取上げられまして、いろいろ取調べを受けておつたようでありますが、私どもは、それがどういうふうに進展するかということを注意をして見守つてつたわけであります。今日においても、まだはつきりはいたしません。しかしながら、そういうことについて、私は従業員諸君が誤解をしておつたこともあつたかもしれませんが、大部分においては、決して誤解をしておらなかつたと確信をいたしております。
  106. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もう少し具体的に事件をあげて回答していただきたいと思いますが、当時すでに疑獄の問題がとやかく言われておつた。現在大体問題になつておる点はどういう点であるか、またそれによつて国鉄内部ではどういうようにその関係者処分されたか、そういう点を——事件も詳しくでなくてけつこうですから、概括的にお話願いたいと思います。
  107. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 先ほど申し上げましたように、やはりまだ事件は司直の手の中にございまして、問題は解決していないものもあります。大体において国鉄職員といたしましては、別段逮捕とか、拘置とか、あるいは勾留とかいうような処分にあつたものはございません。
  108. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国鉄の問題をめぐつて異動をされたり、責任者を左遷されたり、そういうことも全然なかつたのですか。私は新聞で、そういうように何かあるように承知しておつたわけですが、その点もなかつたわけですか。
  109. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 多賀谷さんのお話は、前々国会でございましたか、世間でいういわゆる鉄道会館の問題のことではないかと思います。これにつきましては、当時私は病気をいたしておりましたが、出て来られるようになりましてから、決算委員会あるいは運輸委員会に出まして率直に申し上げました通り、また会計検査院等の御解釈から申しましても、違法あるいは不法というふうなことはございません。ただしかしながら、財産を他人に使わせるという点につきまして、終戦後いろいろと不法占拠があつたり、あるいは転貸があつたりしまして非常に混乱をいたしておつた。これは一つには、輸送という本来の仕事に専念する余り、これが改善をはかるに急でありまして、そういう点において多少の手抜かりがありましたので、今後はこれらを整理するつもりでございます。それらの問題を総括的に処理するために、本社の中に臨時財産管理部という部を設けまして専心これが整理に当つております。実はこれより先、二十七年の秋に機構改正をしました際に、東京大阪には事業課というものを設けまして、そういう問題について専念するような機構にいたしたのでありますが、それが効果を十分に発揮しない間に、ああいう問題が起きたのでございます。これはきわめて遺憾でございます。さらにまた、われわれが申しますところのいわゆる民衆駅——民間と国鉄とがタイ・アツプしてつくる駅の運営について、どういうふうにしたらいいかということは、これはひとり鉄道の知識だけをもつてしたのでは十分でありませんから、民間の有識者経験者等にお願いをいたしまして、これは目下委員会を開いて審議中でございます。中間的結論は近く出るはずでございます。  さらに、貸してある場所の貸料の問題でありますが、これにつきましても、そういう財産のあるところは、主として東京大阪でございますので、東京大阪の両地におきましては、その道の専門家有識者の方々に委員になつていただきまして、土地建物等の評価委員会をつくつて、これが適正をはかるように進めて参つております。  当時それらのことを担当しておりました局長等につきまして、何かこれは左遷をしたように言われる向きもございますが、実は公共企業体ができまして、すでに三年有余を経ておりまして、人事の沈滞というような声も大分ありましたので、それらともにらみ合せ、またさらには機構を一段と強化するために、総支配人の地位と、東京大阪におきましては鉄道局長地位とを一緒にいたしまして、門司も仙台も北海道も同様でございますが、いわば親局というようなかつこうにいたしまして、その総支配人の管理下の局のめんどうをいろいろ見るというふうな機構になりましたので、当時省内におりました理事級の局長を特に重い東京大阪の総支配人兼局長というふうにいたしたのでございます。
  110. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 左遷をされた、あるいは責任をとらしたということはない、こういうことでありますが、とにかくこの事件が、外部には国鉄当局の信用を非常に失わしめ、また従業員に対しては非常な憤懣をもたらしたことは事実であろうと思うのです。この点も、やはり今度のような事態が起つた一つの遠因をなしておると、私はかように判断するわけですが、当局ではどういうように御判断になつておられますか。
  111. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私はさようには考えておりません。結局、やはり仲裁裁定の実施をめぐり、また年末手当の問題をめぐつて起きた闘争であつたと思います。
  112. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは見解の相違ですから、あとから総括して述べたいと思います。一体国鉄は、公労法ができまして仲裁裁定が下つたわけですが、どの程度完全実施をされておるか、この点が第一点。  それから国鉄の給与は、他の公企業体の労働者の給与よりも低位であると聞いておるのですが、一体どの程度低位であるか、これは当局並びに組合側お尋ねいたしたい。
  113. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 第一点は、仲裁裁定が完全に実施されたことがどのくらいあるかというお尋ねであつたと思いますが、本日その記録をここに持つて参りませんので、はつきりした月日等は申し上げられませんが、賃金ベースについての裁定というものは——額の方は別でありますが、実施時期等につきまして遺憾ながら完全に実施されたということはございません。しかし、少しこまかい問題の、たとえば夜勤手当の問題とか、そういうこまかい問題に関して出た仲裁裁定については、その通り実施されております。  それから国鉄職員の給与が、よそに比べて低位ではないかというお尋ねでございますが、この点はお答え申し上げるのになかなかむずかしい点もあるのでございます。ベースそのものの額から比べますと、国鉄はただいまのところでは、他の二公社よりもベースそのものについては高くなつております。しかし人員構成、男女別の割合とか年齢構成とか、そういうような点から見て参りますと、国鉄の大部分はよそに比べて必ずしもよくない、見ようによつては悪いという見方もあるかと思いますが、ただ待遇という問題になりますと、単に給与の額ということだけでなく、広くいろいろな待遇、施設というものも込めて考えなければなりませんので、大きく見ますと、よその方からは、国鉄は非常にうまいことをやつているのではないかというように言われる方もございます。比較の問題になるとなかなかむずかしい思いますが、しかし、ただいまの賃金ベースというものは、仲裁委員会が公正な立場でお考えになつて、公務員の給与とのバランスも考えられ、また民間同種企業との賃金のつり合いのことも考えられてお出しになつた裁定によつてきまつておりますので、個々の問題を取上げますと問題がないわけではございませんが、全体としては、やはり一応バランスがとれているのではないかというふうに考えております。
  114. 矢上正直

    矢上参考人 当局からの御説明のように、本日は第何次の仲裁裁定がどれほど実施されていないかというデータを持つてつておりませんが、当局側も確認されましたように、賃金の裁定につきましては、今日まで実施の時期については完全に実施をされておりません。  その次の国鉄の賃金と他の公務員なり公社との比較でありますが、この点は当局も認められますように、年齢の構成あるいは勤続年数の構成、こういうものにおいては、特に国鉄は勤続が長く、かつ年齢の非常に多い人が、他の公社、官公労よりもたくさんおるわけです。特にここで私たちが強調しなくてはなりませんのは、勤務時間の問題です。一般には週四十八時間労働になつておりますが、国鉄の中の十五万の職員は週六十時間、こういう勤務になる人がたくさんおるわけです。従つて徹夜の勤務あるいは一日十一時間の勤務、こういうものが国鉄職員の中には業務の特質上非常にたくさんおるわけです。ただ当局が言われます厚生あるいはその他の問題で、他の公務員あるいは公社職員よりも優位ではないか、こういう点につきましては、一応制服の貸与があるというような面から、そういうことが一般に言われておりますが、しかし今年二十年勤続をしても、掛職については仕事をするための木綿の服が貸与される、あるいは他の公社に比べれば、全然違つた悪い被服が支給をされる、こういうこともございますし、あるいは宿舎があると言いますけれども、旧軍の払下げの非常にボロの宿舎が、それも本人の勤務に必要なために現在ある、こういうことです。特に先ほど申し上げました十一時間——これは国鉄で特殊日勤勤務というようなものでございますが、この勤務に服している者は、たとえば通勤をして朝の八時なら八時に勤務しますと、いなかに——いなかにこの特殊勤務が多いのですが、いなかに行きますと、終列車の時間が切れて、帰る時間がなくなる。この人々には適当な宿舎もなく、そのために駅で毛布にくるまつて寝込んでいる、こういうのが国鉄の勤務の実態でございます。年齢あるいは勤続の問題もございますが、特に私どもは職務の特殊性から週六十時間勤務が多い点を重視をし、その上に立つて、他の公社あるいは他の公務員よりも給与が低い、このようなことを絶えず主張しておるわけであります。     —————————————
  115. 赤松勇

    赤松委員長 この際参考人招致の件についてお諮りいたしますが、港湾労働に関する件に関連いたしまして、宇部元山運輸商事株式会社の争議問題について、去る九日の委員会において松里善兵衛君及び奥田金太郎君の両君を参考人として意見を聴取することに決定いたしましたが、なお本問題について、参考人を追加して、兼田富太郎君、和田春生君及び石山正治君の三君より、参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければさよう決します。  なお本問題についての参考人招致の日時は、来る二十一日午前十時といたしますから御了承願います。     —————————————
  117. 赤松勇

    赤松委員長 なお労働省側にお願いしておきますが、ただいま労働基準法の規則改正について基準審議会において審議中でございます。その詳細な資料を次の委員会に提出するようお願いいたします。     —————————————
  118. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 残念ながら吾孫子説明員も、あるいは参考人の方も、低いというお話が抽象的でどうもはつきりしなかつた。しかし私が記憶いたしますところによりますと、この前横山参考人が公聴会に見えて、たしか四百幾ら、約五百円程度他の公企業体に比べて低いのだという話をされましたし、また今井仲裁委員長も、国鉄は経理上の関係があつて低いのだ——これは仲裁の内容がいいとか悪いとか言つているのではないのですが、全般的に見て、これ以上は組めないのだというお話であつたのです。そこで私の記憶に間違いないとするならば、これは他の公企業体の労働者に比して低い地位に置かれいる、こういうように私は判断したいのですが、その点について、もう一度当局並びに組合側から、それでいいか悪いかお尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、井堀委員長代理着席〕
  119. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 先ほど申し上げましたように、判断の基準というのはなかなかむずかしい点があるのでございますけれども、よそに比べて決して高いことはないというようにお考えいただいてけつこうだと思います。
  120. 矢上正直

    矢上参考人 多賀谷委員のおつしやる通りだと思います。
  121. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで今度の紛争並びに起りました事態を考察する場合に、私が今第一番に質問いたしました疑獄の問題、さらに今までベース・アツプにおいて仲裁の完全実施が全然されなかつた、しかも国鉄においては他の公企体に比べて給与が低い、こういうことを総合的に判断をして処分をされなければならぬと思うのです。たとえば、郵政なんかに起りました事件につきましても、小荷物が停滞するということになりますと、これも貨物列車の遅延と何らかわりがない。また電信が遅れるということになりましても、これも私は旅客以上の問題であろうと思うのです。そういう点が普通世間にクローズ・アツプされなくても、当局として、また労働省としても、こういう点を総合的に判断をされて、ある公社においては非常にシビヤーにやる、ある公社ではルーズに行われるということのないように希望いたしたいと思うわけです。この点については、あとから資料が出るそうですから、その際に申し上げたいと思います。そこで、十七条及び十八条違反の問題ですが、これは純然たる司法関係として考えるべきではなかろうかと考えるわけです。それはこの十八条の条文にもありますが、これは必ず解雇しなければならないという意味のものでもないと思う。前労働省の法規課長で現在公企体の仲裁委員会事務局長をされておる松崎さんの本を見ても、公共企業体解雇するかしないかについては触れていない条文である、こういうふうに役人すら書いておる。ですから、これはやはり司法関係を律したものであつて、十七条違反行為は世にいう違法行為であるということではないと私は判断するのですが、この点について、吾孫子さんはどういうようにお考えですか、お尋ねいたしたい。
  122. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 十七条、十八条の条文解釈についての国鉄当局としての考え方というのは、今までに断片的に幾たびか申し上げたつもりでございますが、今まで申し上げましたことを一応整理する意味でもう一度申し上げますと、この十七条の方は、公共企業体の中における個人すなわち職員並びに団体である組合に対して、正常な業務運営を阻害する行為違法行為であるとして禁止をし、さらにそのような違法行為を計画したりあるいは教唆、扇動する——この法文の言葉では「共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。」と書いてございますが、そういう違法行為を計画したり教唆、扇動するようなことを禁止している規定であるというふうに解釈しておるわけであります。従いまして、ここで禁止しておりますような違法な行為をあえて犯したような個人並びに団体の場合——団体の場合は責任者と言つておるのでありますが、団体の責任者である公共企業体から排除するために、第十八条によつて、そのあらゆる権利を奪い、かつ解雇をされるものと定めておると解釈をしておるわけでございます。従つて公共企業体から排除の対象とされるものは、違法性を有し、かつその違法性を有することを表明したものでありまして、その場合に違法性を有することの証左となりまするものは、個個の業務運営を阻害する行為でありまして、またこれらの行為の共謀であり、また教唆を行つた事実である、こういうことになると思うのであります。従つて個々の行為そのものは、違法性を立証する証左でありまして、解雇理由そのものではない。申請の解雇理由は、公共企業体の中の法秩序を無視して、これを破壊しようとした違法性そのものではなかろうかというふうに考えるのでございます。従いまして、法秩序を無視しようとする意図が明白であり、しかもその事実があつた以上、解雇するということは当然でございまして、この「解雇されるものとする。」という解釈が、かりに松崎さんのお書きになりましたように解釈の余地があるものといたしましても、やはりこれらの事実が明白にある以上、解雇してさしつかえないものであるという解釈になると思うのでございます。
  123. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 解雇してさしつかえないものであるということについては、私は異論を言うものではない。しかし、私の非常に疑問に思いますことは、労調法違反の争議の場合は刑事罰を科しておる。ところが、この十七条違反行為には、解雇されてもこの法律にいう権利を失うのみだ、この法律の救済を受けないのだというようなことを書いてある。その点はかなり私は違うと思う。それで、十七条違反と労調法違反、この取扱いが労働法体系で非常に異なつておるという点は、きわめて私は重要な問題であろうと思うのですが一体労働省ではどういうように御判断になつておるか。
  124. 中西実

    ○中西政府委員 労働法の中で、刑罰によるものと、いわゆる民事上の責任解雇で終つておるものとございまして、この均衡を失しておるという点につきましては、前々から問題がありまして、適切なる説明ということは言えないのであります。そこで結局は、大体公労法関係におきましては、その組織から排除するということをもつて目的を達するということで、これは刑罰になつていないのではないか。要はそのときの立法者の意思によつて、若干ここいらが権衡がとれていない。これは率直にいつて認めざるを得ないと考えております。
  125. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、単にこれは立法技術の問題ではないと思います。それは立法者の悪意によつて、ある場合にはこういうように規定され、ある場合にはこういうように規定されるという性格ではない。私は本質的にやはりここに差異があるのではなかろうかという気持を持つわけです。それはどういうことを言つておるかと言いますと、この労調法違反争議行為に刑罰を科しておるということは、これは要するに違法行為でありますから、刑事上の責任を免れない、他の刑法上の責任も免れない、こう思うのです。ところがこの十七条違反の場合に、民事的な労使関係にまかせておくということは、これは私は非常に争議というものに対する考え方を異にしておると思うのです。それでことにこの法律が十八条において「前条の規定に違反する行為をした職員は、この法律によつて有する一切の権利を失い、」と書いてあります。こういう一切の権利を失い」という書き方は、他にもあるわけです。労働組合法に、資格のない組合といいますか、法内組合でないものはこの法律の救済を受けない、こうあるのですが、これは必ずしも一致するとは私は思いませんけれども、こういう書き方は、やはり争議行為をやつて解雇されても、この法律の保護を受けないのだ。ということは、解雇されてもそれは不当労働行為とかなんとかいつて救済の申立てはできない、こういう意味である。刑罰を科すのだという意味とは、争議行為そのものの見方が違うというように考えるのですが、その点はどうですか。
  126. 中西実

    ○中西政府委員 すべて争議行為の禁止は、それが公益上適当でないというところから出ておるのでありまして、それは刑罰をもつてやらなければならないほど公益を害するものとか、単に組織から排除することで足りるものとか、いろいろありましようが、その根本はやはり公益との関係に発するものでございます。従つて、根本の趣旨において違うとは存じておりません。
  127. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも私が言うのがわかりにくいのか、また私の引出し方が悪いのかわかりませんが、私は次のように考えるわけです。率直に申しますと、政治ストにもいろいろあるのです。組合の方では、あれは政治ストではないと言うかもしれませんが、とにかく世に政治ストといわれておるものをやつた場合の違法性と申しますか、そういうものについて、大体三通り見解がわかれておる。これは非合法だという見解、合法だという見解、そのほかに次のような考え方をされておるのであります。これは東北大学の木村亀二さんあたりが唱えている説ですが、これを紹介しますと、この政治ストというものは、法で保護するような適法行為でもないし、また処罰するほどの違法行為でもないが、しかしこれによつて経営者が解雇しても、労働組合法上の救済は受けないのだという考え方をしておると思います。そういうのにこの十七条か当りはしないかと思いますが、どうですか。
  128. 中西実

    ○中西政府委員 先ほど申しましたように、適当でないもの、それから不法なもの、さらにそれを確保するのに刑罰をもつてするもの、それから組織から排除する程度でよいみ、いろいろニュアンスはあろうと思うのであります。そこで十七条違反につきましては、十八条によつて処置するのが適当であろうというのが立法の趣旨だと思います。
  129. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はあれだけ丁寧に説明したつもりだつたのですが——そういうことはないならないでもけつこうですが、政治ストに対する考え方として、この説がよいとか悪いとか聞いておるわけではない。こういう説があるのならば、この範疇に入るものだ、かように解釈するかどうかということを聞いておるわけです、このことは中山中労委会長も新聞で談話を発表されたのですから——私は十分な真意はつかめなかつたが、どうもこの説に似ておる。すなわち、政治ストをやろうとした場合に、これは違法だというわけでもないだろう、ただちに刑罰法規を発動するわけでもないだろう、これは労働委員会に持つて来られても不当労働行為というわけには行かない、こういう考え方、いわば適法行為でもない、違法行為でもない、放任行為といいますか、こういうものに属する。そうしなければ、単に一方は刑罰法規を科す、一方は組織から排除する民事的な処分で済む、こういうことで、それはそのときの立法者の気持でそうしたのだということは、労働法を体系的に解釈する意味において非常に支障を来すと考える。ですから、私はこの十七条違反が刑罰法規を科してないということは、やはり今申しましたように、この法律の救済は受けないのだ、こういう意味に解釈すべきであろうと思いますが、労働省の方では、この点について十分今まで意見も発表されておりませんし、だれの本を読みましても、この点について詳しく書いておる本が一つもないのですから体労働省ではどういうふうにお考えなのか。また深く研究している人もないようですから、お尋ねしておるわけです。
  130. 中西実

    ○中西政府委員 この十七条の違反争議行為が、政治ストと同範疇とは考えておりません。性格としましても、私はやはり違うのじやないかと思います。すなわちストの違法性は、先ほど申しましたように、公共の福祉ということの調和において禁止されるのが大体の常でありますが、この十七条も、まさに公益との関係、つまり公共企業体というものの性格から、これが常に正常に運営されていなければならない。運営を阻害することは公益に反するというところから、十七条が出ておるのでありまして、その意味におきまして、これは公益との関係において、やはり制裁として組織から排除するということをもつて、その禁止を確保しておるというふうに考えております。
  131. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は政治ストのことを聞いているのじやない、同じかどうかということも聞いているわけじやない。しかし、今申しましたように、これは適法行為でも違法行為でもない。しかし経営者が解雇をする場合には法律の制裁を受けないのだ、こういうものがあり、また現実に十八条にはそういうことか書いてある。一切の権利を失うということは、そういうことを意味しておる。だから、こういうものの範疇に入りはしないかということをお尋ねしておるのですが、どうも労政局長はピントはずれの答弁ばかりされているので、これは後の議論に譲りたいと思うのでありますが、今後の問題もありますから、この点をひとつよく研究してみていただきたい。  それで、さらに細部についてお尋ねいたしたいと思いますが「一切の権利を失い」——こういうのはどういう意味に解釈されておりますか、これは国鉄当局お尋ねいたします。
  132. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 これも関係の向きでは、いろいろな解釈もあるようでございますが、私どもといたしましては、この法律によつて有する一切の権利を失う、こういうことでございますので、例を申し上げますれば、苦情処理、あつせん、調停、仲裁を受ける権利というものもなくなるのだというふうに解釈いたしております。
  133. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど、こういう解雇の問題は団体交渉の中に入らない、こういうことでしたが、たとえば経営上の都合で大量に解雇する、こういう場合は団体交渉の対象になりませんか。
  134. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 経営上の都合によつて大量解雇をいたします場合の規定が日本国有鉄道法にございます。日本国有鉄道法の第二十九条でございますが、「職員は、左の各号の一に該当する場合を除き、その意に反して、降職され、又は免職されることがない。」そういうことになつておるのでありまして、その四に、「業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じた場合」というのがございますので、これに該当いたします場合は、日鉄法では、その意に反してやめさせられてもしかたがないわけでございます。
  135. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますと、組合の方にお尋ねしますが、あなたの方では、経営上のやむを得ない事由が生じた場合解雇する、こういつた場合に団体交渉の対象にならないのですか、今までしたことはないのですか。
  136. 矢上正直

    矢上参考人 むずかしい御質問ですけれども、法律問題としては、ただいま吾孫子さんがおつしやつたように一応その意に反して解雇することができるということになるのですが、しかしながら今日まで、たとえば何々線区の運転の廃止とかいろいろな問題につ、きましては、やはり団体交渉によりまして、人員の異動あるいは希望退職の募集、こういうものについて協定をし、交渉をしておりますので、その点は明確に、たとえば二千人の従業員が おつて、この線区が廃止になる。その場合に、ただちに解雇せられる、こういうようにかた苦しく二十九条を解釈し、今日までの労使間の団体交渉には上せない、こういう観念ではないと思うのです。だから、廃止をされ解雇を必要とする、そういう場合でもいろいろ職員の将来なりあるいは転職なり、こういう問題と考え合せて今日までやつて来ておる、私はこういうふうに記憶をしております。
  137. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は解雇の問題は労働条件の中で最も大きな問題であろうと思う。ですから、この労働条件の中で、最も大きな問題が団交の対象にならない、こういうことはきわめて不合理であると思う。と申しますのは、第八条の二項の中にやはり免職の基準ということがある。また四号には労働条件に関する事項、こういうことをうたつておる。なるほど国鉄法にはいかにも反面解釈をすると、二十九条は団交の対象にならぬ、こういうようにも考えられますけれども、これはやはり法律が私の相競合しておる部分があると思う。ですから、私はこれは普通の場合当然団交の対象にされ得る、こういうことに解すべきではなかろうかと思うのですがその点どうですか。
  138. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 公労法の第八条の第一項に、「公共企業体等の管理及び運営に関する事項は、団体交渉の対象とすることができない。」と、こう書いてございます。それでこの「経営上やむを得ない事由」という場合は、これは管理運営に関する事項と私どもとしては考えるわけでありますが、しかしこの弟二項の方に、今御指摘通り免職、休職、先任権及び懲戒の基準に関する事項、こういうことは団体交渉の対象となし得るように定められておりますので、そういう意味で過去においても、たとえば定員法の適用を受けたりいたしたときには、相当大量解雇をいたしたわけでございますが、そういう際の解雇の基準とか先任権の順序とか、そういうようなことについては団体交渉をいたしております。また現に懲戒等については労働協約が存在するということは、前にも御説明申し上げたことがあつたと思つております。
  139. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この第八条一項と二項の問題は、常に争いのあるところで、しかしその争いというものは、やはり労働条件の尤たるものであります。ですから、第一項があるからといつて、これによつて解雇というような大きな問題を私は排除するわけに行かないと思う。そこで、今まででも団体交渉の対象にして来た、こういう話でありますと、なぜ今回の場合に団体交渉をされなかつたか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  140. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 公共企業体職員に団体交渉をする権利が与えられておるというのは、この法律によつて与えられておるのだと私ども考えておるわけであります。この法律により権利を失うということになりますと、そういう問題に関する限り、団体交渉の権利がなくなる、こういうことになると思います。
  141. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は逆に考えておるのです、この法律によつて団体交渉を与えられておるのではない。憲法によつて団体交渉を与えられておる。しかし、この法律によつて制限を受けておる、私はかように考える。ですから、本来禁止規定その他がなければ、やはりそれが適法で、保護するかどうかは別として、そのことは私は交渉権がある、こういうふうに考えておる。ですから第八条の規定は、一切の権利の中には入らない、これはむしろ制限規定でしよう。制限規定ですから切の権利として第八条が団体交渉権の範囲を認めておる。これはやはり制限規定であるから一切の権利が失われてもこれは当然残るものである、私はかように考えるのですが、その点はどうですか。
  142. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 大分お話がむずかしくなつて参りましたのですが、一切の権利を失うという場合は、これは言葉をかえて申せば、やはり利益が失われるということにもなるかと思うのであります。制限の方がなくなるんだということには、ならないのじやないかと思います。
  143. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 制限であるから一切の権利の中には私は入らぬと思う。なるほどたとえば不当労働行為の救済申立て、これは御存じのように三十六条に規定しておりますが、こういうものは私は確かに権利であると思う。しかしこういう条項によつて、私は団体交渉を排除する、こういう理由は出て来ないと思うのです。
  144. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 憲法との関連におけるこの法律の解釈というようなむずかしい問題につきましては、でき得れば政府の方にお尋ねをいただきたいのでございますが、かりに、おつしやるようにこれは制限であつて権利でないということであつたといたしましても、この法律で禁止しておるような争議行為を犯した者の方が、そうでない者よりもよけい保護されるというような結果になつてはおかしいのじやなかろうか、そういうふうに思います。
  145. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いや、どうもそれはおかしい話なんです。さつき団体交渉について既得権でやつておるというお話ですから、私は聞いておる、さつきの話のように、これは団体交渉の範囲じやありません、こう言われれば、私も問いを直したのですけれども、あなたの方は、ずつと話をしたつて、実際免職の基準もありますし、労働条件もありますし、今までやつております、こういう話でしたから、私はなぜやらないのか、こういうことを言つておる。ですから、むしろした者が保護を受けて、しない者の方が保護を受けない、こういう矛盾は何も出て来ないはずです。
  146. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 私どもが今まで団体交渉をこの条項に関連してやつてつたと申しますのは、ここに書いてございますように、免職とか休職とかの基準について、抽象的な規則の制定というようなことについて団体交渉をやつておるのでございまして、具体的な解雇処分というようなことについて団体交渉をやる趣旨ではないというふうに従来考えて来ておりますし、またそのようにやつて来ておつたわけであります。
  147. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 基準という問題につきましても、これもやはり一つの基準です。これだけの争議が起つた、これをどう処分するかということは、やはり基準だろうと思う。経営上の問題でも、基準といえば、これだけもう仕事がなくなつた、だからこの程度切つて、そうしてどうするか。ごく個々の問題につきますと別でありますが、一体どのくらい切るのか、あるいはどのくらい責任者を出すのか、あるいは本部で出すのか地方本部で出すのか、あるいは実行行為者も出さなければならぬ、それはだれとだれとだれとだれということは別として、組織上の責任者も出さなければならない、実行責任者も出さなければならない、本部の者も出さなければならない、地方本部の者も出さなければならない、こういうことは常識上基準の中に入ると思うのです。どうも理論がしつかりしないのですが、もう一度答弁願います。
  148. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 これは実際の例でお話申し上げた方が、一番よくおわかりいただけるじやなかろうかと思うのでありますが、たとえば過去において、先ほど申し上げましたように定員法のときに、相当大量に解雇いたしたわけでありますが、そういう際に、組合側と団体交渉をやりましてきめましたことは、どういうことかと申しますと、職場における勤続年数の短かい者からやめてもらうというような基準をきめるとか、あるいは職種によつて、特定の職務についた場合の先任順位の低い者からやめてもらう、その場合の先任順位をどういう基準で定めるかというようなことを定めるのが団体交渉の対象でございまして、そういう基準だけきめました以後の、何のたれ兵衛がこれに該当するか、そうして何のたれ兵衛にやめてもらうかという解雇処分それ自身についてまでは、団体交渉の対象にはならない、そういう考え方で今まで来ておるわけでございます。
  149. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実行行為者のだれだれというようなこと、あるいはだれとだれが首を切られるとか、こういうことは、あるいは個々の問題かもしれませんが、しかしその解雇を出す基準、たとえばどこどこの鉄道局とどこどこの鉄道局、こういうようなものは、やはり基準の中に入り得ると思うのです。ですから、私は団体交渉の対象になり得るとするならば、やはり団体交渉をすべきだと思うのです。どうも話を聞いてみますと、何かりくつがあつちへ行つたり、こつちへ行つたりされておるようですが、私は率直にこれは団体交渉をされてしかるべきだと思うのですが、総裁はどうですか。私は今の法律でも、当然団体交渉の対象になり得る、かように考えるわけでございます。従来あなたの方では一切の権利というのは団体交渉の対象にならないから、やりたくともやれない、こういうよなことでしたが私はやり得ると考えるのですが、どうですか。
  150. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 公労法の法律解釈の問題でございまして、私にもあまり明瞭な法律解釈はできませんが、どうも団体交渉でやるということは、やはりできないのじやないかと、私は常識的に考えております。
  151. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今できるという話で話を進めておつたわけです。そうしますと、いや、これは個々であるからとかなんとかいうことで逃げられたわけですが、全般的な話としてもされてないのです。ですから、全般的な話としても当然団体交渉の対象になり得るのだから、総裁、されたらどうですか。こういうことを言つているのですが、どうですか。
  152. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 御意見は篤と考えてみたいと思います。
  153. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 なぜ私がそういうことを聞くかといいますと、私も速記録を読んだわけではないのですが、参議院でこの問題が論議された場合に、私は委員の人から聞いたのです。総裁は、立法改正の問題としては団体交渉をすべきが当然であろう。しかしそれじや今かといえば、いや今じやありません、今後の問題として、というように逃げられたと聞いた。ですから、私は今の法律でも、総裁がそういうお気持ならば、団体交渉の対象になり得ると思うから、ひとつつてみたらどうか、こういうことを話しておるわけですが、どうですか
  154. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 たしか参議院でそういうお話が出たことは存じております。その当時に一つ考え方として、そういうことも考えられるかもしれません、立法上の問題として十分にひとつ考慮してみたい、そういうことは申し上げてあります。
  155. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで立法上の問題としては十分考えたい、こういう話です。それから先ほどからの井堀委員の話も、国鉄あるいは国鉄の労働組合ともあろうものが全部裁判にまかせて、しかも裁判で済めばいいですけれども、あるいは闘争が起る、こういうことになると非常に見苦しい。ことに国鉄は、この仲裁裁定——これは何もあなた方だけの責任ではありませんけれども、ずいぶん法律問題になつているわけですこれはむしろ国鉄当局よりも、あるいは政府の責任かもしれませんが、御存じのように仲裁の最初からいろいろ法律問題になつている。     〔井堀委員長代理退席、委員長着席〕 ですから私は、この際現行法でも十分団体交渉ができるのだから、総裁にそういう気持があれば、私は組合の方も一応提訴を取下げて、団体交渉をして、みたらどうか、こういうことを言うわけです。私は結論について言うわけではありませんが、団体交渉をされたらどうですか、こういうことを提案したいのですが、総裁もう一回お考えになつたらどうでしようか。
  156. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 先ほど来申し上げておりますように、これは将来の問題としては、私先ほども井堀委員の問いに対して答えましたが、現状のままでいいものだとは考えておりません。全般的に見まして、労使の間の問題をもつと円満に、もつとうまく解決する方法ということについては、私どももできるだけの努力をしなければなりませんが、組合側におかれても十分努力を払つていただきたいと思います。それについては、先ほども申し上げたように、私どもは何もかみしもを着て何とか委員会とかなんとかいうふうなことでなくて、非公式なものでも、だんだん研究して一歩々々近寄つて行きたい、かように考えております。ただ何分にも、これは多賀谷先生も御承知のように、組合運動というものは、国鉄労働組合だけがこういうことをやると言いましても、一般的な傾向というものもございますので、それらともよくにらみ合せまして、私どもの気持としましては、かようなことを毎年繰返すようなことは避けなければならぬ。先ほど来、ずいぶんむだな、ばかなことをやつている——これは組合側でも、別にやりたくてやつているわけではないと思います。私どもとしましても、そういうことをやつて何も快哉を叫んでいるわけではありません。何とかして歩み寄りて、そういうことを起さないようにして行きたいという気持は十分持つておりますので、皆様の御意見等も十分に考慮しまして、将来の対策という言葉がいいか悪いか存じませんが、さようなものにいい資料として取上げて参りたい、かように考えて、おります。
  157. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総裁が立法上の問題として考慮したいということは、現行法では団体交渉ができないから、立法上改正して、将来の問題として考慮したい、こういう以外には当時の参議院の労働委員会の審議の経過からは出て来ないのです。あなたがいかに今度のようなお話をなさいましても、あの当時立法上考慮したいと言われたことは、現行法ではできないから、それはいかんともしがたいけれども、将来は考慮したい、こういうことであつたと思うのです。そうすると、現行法でも団体交渉ができるということになれば、当然さるべきが至当ではなかろうか、かように考えるわけです。あなたが立法上と言われたのは、うそですか。
  158. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私が参議院で申しましたのは、そういう問題もありましたが、総合的の見方からいたしまして、今日の状態を繰返すべきじやない、またいろいろな手段方法もございましようが、そういうものは将来の立法論としても考えて行かなくちやならぬ、かように申し上げたわけであります。しかしながら、今申し上げているのもそうでありますが、その際に言つたかどうか忘れましたが、とにかく法律は法律の問題としましても、事実上の問題として、何とかうまい方法、円満に行くような進め方というものもとつてみたい、さように答えておるわけでございます。
  159. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 立法論というのは、やはり団体交渉を立法上する、こういう意味でしよう。
  160. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私は、現行法のもとにおきまして、八条の中に入つているとは考えておりません。
  161. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 また話が元へもどるんですがね。では今度は、吾孫子説明員が知恵をつけられたようですから、あなたにお尋ねするのですが、十七条で解雇するかどうかという問題を、あなたは個々の問題とされていますが、これは一般的な基準の問題、大きな問題であると思う。その他の労働条件で、も、十分解釈できる。ですから私は今まででもおやりになつておるというならば、当然現行法でもできると思うのですが、もう一度お尋ねします。
  162. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 この八条の二項の解釈につきましては、この中で特に問題になるのは、懲戒の基準ということでございます。、懲戒の中には免職もあるわけでざいますが、いわゆる日鉄法の違反として懲戒処分をするという場合の基準につきましては、異議の申立てについても、いろいろな善後の措置についても、それらの点についてどういう基準でやるかというようなことを労働協約で定めておるわけでございます。しかしながら、公労法十ヒ条違反で十八条によつて解雇処分をする場合というのは、このいわゆる日鉄法上の懲戒処分とは全然別個の性格のものであるというふうに考えておりますので、現行法の解釈としては、十七条違反による十八条の処分は団体交渉の対象ではない。そういう解釈で今まで来ておるわけでございまして、今回の処分争議行為ということと何ら関連なく考えられるよとな問題であつたといたしますれば、あるいは単純な国鉄法による懲戒ということで、それに関する労働協約の適用という問題も出て来たと思うのでございますけれども、十七条違反に対する十八条の解雇処分は、八条二項に掲げられておる懲戒の基準ということには該当しない、そういうふうに解釈したわけでございます。
  163. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では免職というのと解雇というのは違いますか。
  164. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ここで申しております免職というのは、国鉄法第二十九条の「免職」でありまして、十八条にいう「解雇」とは別のものであるというふうに考えております。
  165. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では国有鉄道法のいう「免職」以外にはこの第八条の二項の「免職」というのは適用ないわけですか。
  166. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 国有鉄道法の第二十九条というのは、身分保障の規定でございますので、ほかには免職という場合がかないのでございます。
  167. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この公労法関係は、全般的な規定で、単に国有鉄道法だけではないと思うのです。それから「前各号に掲げるものの外、労働条件に関する事項」こういうのも別個にあるわけなんです。しかし私は、免職は解雇と同じだとかなんとかいう議論はしたくありません。当然私は解雇は免職と同じだ、法の立て方が違うからそういうふうになつておるのであつて、何も免職というのは明らかに言葉に差異をつけておるものではない、かように思つておりますが、その議論はいたしたくありません。そこでその他の労働条件に関する事項というので、当然免職と同じ解雇になるのですから、それが団体交渉の対象にならぬということは、きわめておかしいと思うのですが、どうですか。
  168. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 争議行為行つて、その行つたことに対する解雇処分という問題が労働条件であるとは考えられないのであります。
  169. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 普通の免職や労働条件であつて、そうして十八条の「解雇」が労働条件でないというのは、どういうことですか。どこに理由があるのですか。
  170. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 私にはその十八条の「解雇」が労働条件であるということがわからないのでございます。
  171. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 免職ということは労働条件でありますか。
  172. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 免職ということは、厳格に言えば労働関係を終了させる一つの事由でございますから、労働条件そのものではないというふうに考えます。
  173. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますと「前各号に掲げるものの外、労働条件に関する事項」——その前各号の中には、労働条件でないものが入つておる、こういう解釈でございますか。
  174. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 免職の基準というものは、労働条件として考えてさしつかえないものだと思いますが、免職自体は労働関係終了の事由でございますので、労働条件の中には入らない、かように考えております。
  175. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それはきわめておかしな議論を展開なさいましたが、私は初めて聞きます。率直に言つて解雇は労働条件でないという学説のあつたことは知つております。しかし、基準は労働条件だけれども解雇というのは労働条件でないということは、きわめておかしな説でありまして、吾孫子説といいますか、日本で初めてだろうと思うのです。しかし、それはともかくといたしまして、今例の規範的部分とかあるいは債務的部分で争そわれております。この労働条件が入るかどうかという問題、解雇は規範的部分かどうかという問題は、現在ほとんど規範的部分ということになつておる。いろいろ裁判所も紆余曲折いたしましたけれども規範的部分ということになつておる。そこで私はそういう状態の中に今解雇というのは労働条件ではないのだ、こういうように言われる根拠がわからない。当然労働条件の尤たるものが解雇です。それを労働条件でないと言われる根拠をお示し願いたい。
  176. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 労働条件というのは、字義通り労働するためのいろいろな条件でございまして、労働関係が開始されてから終了するまでの間における労働に随伴したいろいろな条件というものが労働条件であろうかと思います。従いまして、労働関係終了の解雇という事柄自体は労働条件のうちに入らぬ、そういうふうに考えております。
  177. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それはきわめておかしな説であると思うのです。解雇は労働条件の尤たるものという判例が幾らでもございます。今判例を手元に持つておりませんけれども、どの判例でも、現在解雇は労働条件の尤たるものです。そうでしよう、首が切られるということは労働者にとつては一番たいへんなことです。それを労働条件でないと考えると言われることは、きわめておかしなことであろうと私は思う。しかもこの第八条の二項に書いてありますのは「前各号に掲げるものの外、労働条件に関する事項」という後に、さらに苦情処理の機関ということを書いてある。別個に四号が規定してあるということは、これは当然一、二、三は労働条件である、こういうように考えられるべきですが、どうして労働条件でない、かようにお考えになりますか。どうも聞いておりますと、最初は、今度の場合は団体交渉の対象にならぬ、こう言われる。いや、そんなことはありませんでしよう、団体交渉の対象になるだろう、ああなる、今までやつてつた。そうすると今度は、一切の権利の中に入らぬと言われる。一切の権利の中に入らぬのじやない、一切の権利というものは団体交渉の事項なんかではない、これは不当労働行為の救済、そういうものを指すんだ、こういうことになれば、それは肯定しておられる。そうすると元に返つて今度はまた団体交渉の対象にならぬ、こういう議論をあなたは繰返されておるのです。速記録を見てください。最初肯定したことを否定して、ぐるぐる論理がまわつておる、私はこれ以上時間を費してあまり申したくないのですけれども、しかし当然団体交渉の対象になるということになれば、団体交渉をおやりになるべきである、今まで私はそういう説明を総裁なんかにしておる。これは団体交渉の対象になりません、こういうことを説明しておるならば、それはあなたの責任がかなり重いと思うのであります。それが証拠に、長崎総裁は参議院の労働委員会において、団体交渉をしたいというようなことを言われたそうです。そのときに、自由党でありますか、改進党でありますか、緑風会でありますか知りませんが、総裁に注意をされて、総裁はあわてて、いや、それは立法上の問題として考慮する、こういうことで逃げられたということを聞いておる。そうすると、総裁の考え方は、現在は法律上できないけれども、立法上考慮したい、こういう気持である。そこで私は総裁に、現在の法律でも団体交渉はできるのですよ、こう言いましたところが、ほかのことで逃げられた。しかし、立法上考慮したいということは、これは当然団体交渉の対象に現在はならないけれども、将来はすべきであるという心が総裁の中にある。しかし現行法上当然できるということになれば、総裁は立法改正をされなくても現在できるのですから、私は当然されてしかるべきである、かように考えるのですが、もう一度総裁はこの前参議院でおつしやいましたような気持に返つて団体交渉をする意思がないか、説明願いたいと思います。
  178. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 この前参議院で申し上げましたのは、いささかも今日の答弁とかわつておりません。ただ私の申したことが言葉が足りなかつたからでしよう。今でも同じような心持だろうというふうに申されましたので、それはそうじやないのでありますという補足的説明を申し上げたのでありまして、当時の心持と今日の気持とは何もかわつておりません。
  179. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 残念ながら今速記録を読んでいませんし、人の心はわからないのでありまして、総裁がこの前はそういうふうに答弁されて、事態は非常に困つたというので、口は調法なものですから、またそういうふうにお答えになるのは困る。しかし速記録全般を見れば、そのときの委員質問と総裁の答弁から当然推察できるものである、私はかように解釈しておりますので、速記録を見て、長い時間はとりませんから、ごめんどうでしようが、もう一度いつの機会にか来ていただきたいと思います。  続いて質問いたしたいと思いますが、今度の処分です。組織上の責任を問われでおる人の場合は、これは「職員及びその組合は、」と、こう書いてありますが、それは職員責任ですか、組合責任ですか、どちらですか。
  180. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 この十七条の「職員」というのは、これは各個人である職員をさしております。それから「組合」というのは、職員の中の団体組織をさしているわけであります。結局個人も争議行為をやつてはいけないし、公共企業体の中の団体もやつてはいけない。団体に対して責任を問うという場合には、これはいわゆる組織上の責任を問うということになりますので、団体という組織体を構成しておるその責任地位にある個人、こういうことになると思います。自然人に対して責任を追究する以外に追究のしようがありませんから、この十八条の処分解雇処分でございますから、そういう意味で組会の組織上の責任者責任を問うた、こういうことであります。
  181. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もちろん組合責任の場合は、自然人である幹部といいますか、そういうのが責任をとられる、こう思いますが、地方本部の役員は「職員及びその組合は」というどちらへ入るのですか。
  182. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 地方本部の役員の場合は、やはり大部分は組織上の責任を問うたわけでございます。ただ地方本部の役員の中には組織上の責任と同時に、その人個人が個人としての立場においても、十七条違反行為を犯しておつたと思われる条件を兼ね備える人もございますが、地方本部の役員を処分した原則的な考え方は、やはり地方本部としての組織上の責任者処分した、こういう考え方であります。
  183. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、地方本部の役員は、本部がやりました行為を幇助したからですか、どういうことでしよう。
  184. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 地方本部という組織は、組合側参考人のお話の中にも御説明があつたように記憶いたすのでありますが、中闘の指令を受けて、その指令実行についてさらに指示をし指導をしておるわけであります。そういうわけで違法な指令を受けて、さらにそれを下部に、単に伝達するのみでなく、さらにこれに具体的な業務機関の指定なりあるいはその実行方法なりを積極的に指導しておるわけでございまして、そういう意味地方本部責任を問うた、こういう考えでございます。
  185. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 意思決定は中央でやつたわけですから、積極的にそれを支持した。すなわち、中央からの指令を伝達しただけでなくて、積極的に指定箇所を指定してそうして実行せしめた、こういうことですが、中央は当然何々箇所地方本部では指示して実行させようということになりますと、箇所を指定するという行為は、これは実行行為じやない。むしろ責任を問われるならば、中央本部がやりました争議行為といいますか、それに対する従犯といいますか、幇助罪といいますか、そういう形で行われるべきじやないか、こういうふうに私は思いますが、その点どうですか。
  186. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 先ほど参議院の方のお話をなさいましたので、参議院の例を引くことをお許しいただきたいと思いますが、参議院の三月一八日の労働委員会におきまして、組合側参考人瀬谷君が出ておりました。その発言の中に、本部指令は違法でないと解釈を下したというようなことを言われたようです。指導の仕方としては、旅客に実害を与えないように指導したというようなことを言うておられましたし、そういうように、本部指令に対して解釈を下し、そうしてしまたその実行指導したという意味のことをおつしやつておられたと思うのであります。そういう意味におきまして、十七条というのは、公共企業体職員全部に対して、こういう違法な争議行為を禁止しているのでありますから、地方本部の役員はもとより、下部機関職員も、すべて個人としてこの法規は守らねばならない立場にあるはずでございますが、地方本部の役員としての立場において、本部指令に違法でないという解釈を下して、それをさらに敷衍して下部に流している。こういう意味において、地方本部地方本部として、当然十七条違反責任というものは免れないじやなかろうか、そういうふうに考えております。
  187. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 単一組合でなくて、連合体というような場合なら、私はその議論もかなり成り立つと思います。たとえば地方本部で意思決定ができるという形——どこの例をとればいいですか、あまり具体的な例をとると、あとからさしさわりがあるからとりませんが、要するに中央から指令が来る、しかし下部ではそれを実施しないことができる。もちろん実施しない場合は脱退するわけですが、単位組合として脱退する。要するに個人加入でなくて組合加入の団体、そういう場合ですと、組合としては最終的な意思決定機関ですから、私は脱退するということを決意さえすれば、これはやらないとかやるとかいう意思決定ができると思う。しかし地方本部の場合、ことに国鉄の場合ですと、個人が加入している。たまたまその地方に集まつてつたの地方本部をつくつている、こういう形である。でありますから、当然中央の意思決定が全部下部まで行くので、その中間が、何と言いますか、そういう実行を助ける意味においてあるだけであつて、私は普通の組合のような形ではないと思う。普通の組合ですと、上から来たものを最終的に下部にかけて、そうして実行しない場合は脱退するだけで、そういう最終的な意思決定ができるのでありますけれども、この国鉄のような単一組合というものは、それはできないと私は思うのです。ですから、地方本部の役員というものは、当然幇助をするといいますか、そういう役目しかない。何々の箇所を指定しろと言われてその指定するのは、これは実行に対する一つの幇助である。ですから私は、共同正犯のような取扱いをされるというのは、不届きしごくだと思うのですが、地方本部の実態をどういうように把握されているか、もう一度お尋ねいたしたいと思います。
  188. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 私どもの解釈といたしましては、いやしくもこの争議行為に参加すれば、それだけで、もう十分に十七条違反であるという事実は成立するものと考えているわけでございますが、地方本部の場合には、この行為に参加しておつたということは、これは明らかな事実でございます。単に参加しておつたというだけではなくて、実際には、先ほども午前中であつたと思いましたが、広島の例のお話が出ましたけれども山陽線の中の一番心臓部というようなところを選定して、そこで業務運営を阻害するような行為をやらせるということは、これは地方本部がその機関を指定してやつておるわけでありますから、単純な参加のみにとどまらず、積極的な意図を持つて争議行為実行を、地方本部という組織のもとに整然と行つたという事実が否定できない以上、その責任者処分ということもやむを得ないことじやないかというふうに考えております。
  189. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 広島の例をとられましたが、広島の場合でも、たとえば本部指令で、重要線路についてはそういつた行為をなしてはならないこういうことがあつた場合に、広島地方本部委員長がそれに違反して、あるいは逸脱してやつたという場合なら、確かに中央本部考えておつた範囲以外のことですから、私はそれは問題があろうと思います。しかし今は中央本部指令の範囲内で行つたことですから、当然中央本部はそういう重要路線も地方本部はやるかもしれんということは考えられるのですから、その範囲でやつたということであれば、地方本部責任は私はないと思うのですが、どうでしようか。
  190. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 地方本部が中闘の違法な指令を受けて、単なる伝達をするということでなく、そこに地方本部としての意思決定が行われたことは事実でございますし、また意思決定に基いて地闘がいろいろな指示を出したり命令をしておるということも、それは事実だと思うのでありまして、そういう点から考えまして、やはり地闘には地闘責任がある、こういうふうに思うのでございます。
  191. 矢上正直

    矢上参考人 先ほど吾孫子さんの方から、東京の場合、参議院におきまして瀬谷さんが言つたことについてのお話がございましたので、組織上の問題について今回開きました中央委員会で確認をされておる事柄を、若干申し上げたいと思います  中闘の指令というものは下部を拘束する。そうでなければ、単一体の国鉄労働組合が、中闘の指令に対して下部が任意にこれを実行するかいなかをきめる。しからば地方本部ばかりでなく、地方本部以下の支部、分会というところに指令をした場合にも、それを任意に判断し、実行する。こういうことでは国鉄の労働組合の団結権というものは一体どこに行つたか、こういう論議から、これは絶対に下部を拘束するという確認が、組合内部においてはなされております。それから、この問題と関連をいたしますけれども当局の方は、中闘指令はそのように下部地方本部で任意に判断をする、こういうことになつておるらしい、こういうことをおつしやいました。そうすれば、中闘指令責任者として処分をされておる中闘の四名、あるいは地方本部責任者として一部の地方本部委員長なり一部の人が解雇されておりますけれども、この地方本部には、なるほどいろいろな問題がほかの地方本部に比べてたくさん起つておるわけであります。ところがこの地方本部が、しからば指令をどうしたかというと、地方本部は支部に指令を落し、支部は職場に、あるいは分会に指令を落して、間接的に組合員に対する指令が行われておるわけです。従つて地方本部指令は、吾孫子さんの解釈のようにして行きますと、支部でとまつてしまうわけであります。支部の指令は分会でとまつてしまうわけであります。分会の指令が初めて組合員の個々に実際の指令として今日休め、あるいは明日休めという指令となつてつて行く、こういうふうになるわけです。従つて指令を発したその指令を、各機関ごとにこれを任意に解釈してやるかやらないかということをきめ得る、こういうふうに解釈をされますならば、中間的組織機関である地方本部責任者解雇されたということについては、私どもはなかなか納得ができない。そうであるとすれば、本部の、指令地方に対しての絶対の拘束力を持ち得ない、あるいは地方本部指令も支部においては絶対的な拘束力を持ち得ない、今度は支部の指令も分会に対しては、絶対的な拘束力を持ち得ない、しかも分会の指令は、組合員に対して絶対の拘束力を持ち得ない。このようなことになるのが、先ほど組合員瀬谷君の陳述だとして言われました。しかも地方本部が、これは非合法指令ではないという判断で受取つた。そういうことは、いわゆる本部指令というものをやるかやらないかということをきめ得るということになるのだという意味のことを言つておられますが、かりに、当局が今もつてそのことを確認されるならば、いかにして組織上の責任者あるいは指令の統制力というものを考えて、組織上の責任者というものを考えて、本部はいざ知らず、中間的組織機関である地方本部に落されたが。このことは私は説明を申し上げますが、中闘指令地方本部に行き、さらに具体的に支部に行き、分会に行く、そして職場に行つて組合員に統制力を持ち得るかいなかということによつて、問題は行動を中闘が規制したかあるいは分会が規制したか、こういうことになると思う。この点については、私は国鉄労働組合責任において、中間の指令によつて職員を動かしたということを、国鉄労働組合は確認をしておる。さらにまた瀬谷君の意見を引用されましてかりに本部指令地方本部でとまる、地方本部指令がまた支部でとまる、このような解釈をされるとするならば、なおさら地方本部の中間的組織機関責任者解雇されたということは、りくつが非常にぼやけて来るのではないか、このように組合としては思うわけです。
  192. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がありませんから、ごく簡単に一、二問で終りますが、私は地方本部の執行部の責任を追究したというのは、単一組合である国鉄についてはどうも納得できない。なるほど吾孫子さんは、十七条違反は全部だ、こう言われますけれども、これは普通の組合でも違法な争議行為指令したと仮定いたしましても、一般組合員には、この違法性は当然阻却されるわけです。これには当然組合員というものは、正当な指令を出して来るだろうという認識があるのですから、これは個々の個人を罰するということは、法理論上からもあり得ない、かように思うのであります。情状酌量ということでなくて、法理論からも違法性を阻却するものだ、かようにわれわれは解釈しておるのであります。  次に、私は質問をいたしたいと思うのです。今度の責任者を出された管理局をながめてみますと、その起りました事件が新聞に出たというようなところに限つて責任をとらされているように考える。あなたの方では、対公衆的な関係がありますので、ある程度事情はわかるのですけれども、被害は多いけれどもあまり問題にはならなかつたというところは、あまり取扱われておらない、むしろ新聞に出たということが責任をとらされる理由になつたというような感じを受けるわけです。ところが、その紛争の事態を見ますと、むしろこれは経営者の方から挑戦をして来ておる、こういうことで紛争になつた。あるいは協定に違反して経営者が行つた、こういうところから事態が紛糾しておる、かように考えられるわけですが一体今度の処分は、そういう点はどういうふうに勘案されて処分されたか、最後にお尋ねいたしたい。
  193. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 結果的にごらんになりますと、新聞で大きく取上げられたところたけが処分されたというふうに思われるのも、御無理はないと思うのでございますが、私どもといたしましては、別に新聞に大きく出たからとか、出なかつたからというようなことを考えて事実の認定をしたのではございません。やはり公労法違反の事実の非常に明白な証拠があるところの関係者責任を追究するということにいたましたので、結果的には、それが新聞にもよけい出ておつたところになつたということだと思うのでございます。  それから、当局側の方の挑戦行為のひどかつたところだけがそうなつたのではないかというお言葉でございますけれども当局側は、挑戦というようなことは毛頭考えておらなかつたわけでございまして、各管理局とも、そのような行為の発生することの防止について、当局側は最後まであらゆる手段を講じて、説得いたしましたり、場合によつては懇請したりしておつたのでございまして、挑戦的な行為というようなことはなかつたことと存じます。それからまた、協定に違反したという言葉がございましたが、このような法律で禁止せられた行為実行について協定するというようなことは、あり得べからざることであると考えております。
  194. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に一言要望しておきたいと思うのですが、この国鉄の問題を考えてみますと、郵政あるいは電電、その他に起つた事態に対しては何ら処置がされないで、国鉄だけがされておる、これには私は大きな疑問を持つております。しかし、かりに国鉄だけがはげしかつたと仮定いたしまして、も、私はやはり国鉄にはそれだけの事情があるように考えられるわけであります。それは、国鉄は仲裁が出ましてから、ベース・アツプにおいては一回も完全実施がなかつた。このことは、当局も認められておる通りであります。こういう点にやはり労働者の不満が爆発したといいますか、そういう事情があつた。あるいはまた鉄道会館を初めとして、疑獄の問題が当時盛んに新聞で喧伝された、こういうところにも、何か金があるのではないかというような気持を非常に労働者に抱かせた、これの反感がやはり実行行為において若干のはげしさを加えたというように考えられる点が、私はなきにしもあらずと思うのであります。そういう全般に立つてながめてみますと、さらに大きな問題は、公労法が違憲立法でないかという気持を、やはり労働者は持つておるのではなかろうかと私は思うのであります。政府が次々に小細工をしまして、なるべく団体交渉の余地を少くせしめておる、こういう点にも私は問題があると思うのです。この前も、御存じのように自由裁量か法規裁量かで非常にもめました例の財源の大蔵大臣の許可の問題でありますけれども、これについても、後に給与総額をもうけて、これに対する解釈論を付して、せつかく勝つた訴訟も意味をなさなくなつた。こういうようにしておる息も、非常に労働者の反感を買つたと思うのです。法に対する不信を、むしろ政府の方から植えつけておると私は考えております。こういう点を総合し判断いたしますときに、当局責任も十分感じてもらいたい、かように思います。なおこれを円満に解決するに賃やはりもう一度団体交渉を持つて、全般的に検討してもらつて組合の方も提訴を取下げて再度——再度といいますか、初めてだそうでありますが、交渉してもらつて、なるべく円満に解決されんことを望みまして私の質問を打切ります。
  195. 赤松勇

    赤松委員長 中原健次君。
  196. 中原健次

    ○中原委員 時間がありませんから、ただ一点の問題について当局の見解を聞いておきたいと思います。     〔委員長退席、多賀谷委員長代理着席〕 数日来の質疑応答の中で、いろいろなことを聞くことができたわけでありますが、いろいろな実情なりあるいは解釈なり、同時に、それぞれの立場における見解なりを耳にいたして最も強く感ずる点は、国鉄当局側がとつた十八名の解雇処分の問題を、何とかしてこれを合理化したいというために、必死の努力がなされておる、こういうことを最も強く感じたわけであります。もちろんあれだけの重大な措置をとられた当局としては、何とかしてこれを合理化し、これを合法化して、措置の不当でなかつたことを釈明しようとせられるその心事はわかるのであります。しかし、それをいかに合法化し得たといたしましても、今起つておるこの問題の究極の処理解決にはならないばかりか、むしろこれは究極の処理解決を混乱に陥れる禍根になると私は痛感するものであります。そういう関係から、今度のこういう措置をなされた根幹に横たわつている問題は一体何であるか、いま一度ここで関係当事者お互いが反省してみる必要があるのじやないか。ただいまも適切な団交の措置の問題に対して、いろいろ御議論がございましたが、そのもう一つ奥にあるこの問題の原因をなしたもの、すなわち仲裁裁定の完全実施に対して当局の取扱つた態度そのものの中に、大きなというか、全部の要因が秘められておるということを感ずる。それだけに、仲裁裁定の問題について当局の今持つておいでになる解釈は一体どういう解釈を持つておいでになるのか、まずその見解を総裁から承りたい。
  197. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私は御承知のように公共企業体の最初から、あるいは公労法実施の最初からのことは承知しておらぬのでございますが、少くとも私が参りましてから、仲裁裁定は二度ございました。そのたびに、これが完全実施ができない。仲裁裁定が下れば、当事者双方を拘束するのでございまして、私どもといたしましては、文句なしに完全実施をしなければならない義務を生ずるわけでございます。従いましてその方向に行きたいということにつきましては、あらゆる努力を払つてつたつもりでございますけれども、どうも政府の事情その他いろいろなことがありまして、遺憾ながら完全実施ができずに、金額の点では完全に実行ができますが、どうも期間がずれるというふうなことでございまして、これは私としましても非常に遺憾なことでございます。御承知のように、私どもの仕事は、われわれだけが経営の衝に一生懸命になりましても、現業の第一線にありまして勤務に服する労働者諸君の熱意ある御協力がなければ、うまく行かないのであります。それにはやはり生活の安定と申しますか、そういうふうな面をしつかりと固めて行くことが必要であるということを痛感いたしております。そういう意味にいたしますと、賃金ベースというものが裁定通り、裁定にある時期から実施される、そうして喜んで勤務に服してもらうことが必要であると考えております。ただ何分にも、国鉄の現在の財政情勢もそうでありますが、国全体の財政とのつながり、あるいは一般公務員との振合い、いろいろな面からいたしまして、これが完全なる実行を見ないということについては、まつたく遺憾きわまりなく存じております。
  198. 中原健次

    ○中原委員 総裁の御見解は、仲裁裁定は、当然労働者の生活権の問題であるから、これを完全に実施しなければならぬ、こういう御理解のようであります。もちろんそれはそうでなければならぬと思うのでありますが、三十五条に、仲裁裁定は最終的な決定であるから、両者はこれに拘束されると明確に言い切つてある。この条文の精神は、いまさら疑義のいささかもあろうはずのものではないのであります。いささかも疑義がないはずのその三十五条の裁定の拘束力が、実は先ほども話がございましたように、仲裁裁定中の最も重要なる賃金裁定に関する場合に関しては、これがいまだかつて一度も完全実施を見ることができなかつた、こういうことになつておるわけであります。そうなつて参りますと、仲裁裁定を最後の頼みとして、少くとも争議あるいは争議に類似の行為をしてはならぬとみずから厳重にこれを守りながら服務しておる職員諸君として、せつかく職務に誠実に服務しようとするその熱情を、そのことから失わざるを得なくなつて来るのではないか、こういうことは当然いえると思うのです。何と申しまして、労働者の賃金問題に関する場合の実情は、単にこれは感情だけではなくて、現実の生活の面から、何はさておいてもこの問題は適当に処理したい、そして労働者の労働力を回復するために役立つだけの生活条件だけは、何はさておいても維持して行きたい、こういう熱意、願望を持つということは、どのような見解からいたしましても、いささかも否定することはできないはずであります。しかも先ほどからのお話によると、またわれわれもさように考えておりますか、国鉄職員諸君の給与の状態は、他の類似の企業あるいはその他の労働者の条件に比べて非常に低い。従つて非常に労働条件がよくないというような立場に立たされて、おることがわかるならば、それだけ、なおさらこの仲裁裁定は、せめてもの最後の一線であるから、これだけは寸毫も譲ることができないという立場に立たなければならない事情になつておると思うのであります。そういうような場合に、この三十五条の解釈というものが他の条文によつてみごとにこわされて行く。こわしても別に省みて悔いようともせないし、恥じようともせないし、反省しよ、うともせないというような実態が、まざまざと見えるわけなんであります。もちろんこのことに関しては、当然国鉄当局のあなた方が、そのようにこの問題に対して熱意を持つておいでになろうとも、政府がこれを拒否し、解決の措置を講じて、出ないというところに最後の問題があるということは、十分に了としておりますが、しかしながら、どうもこの問題に関して私どもは、政府側のとつて参りました態度の中にこの三十五条に対するほんとうの理解、誠実を込めた解釈というものがないのじやなかろうか、こういう不安を感ずるわけであります。従つて、そういう不安、危惧を私どもは感ずるだけ、ぞれだけ当事者である国鉄職員諸君が非常に大きな不安を感ぜられるということは、きわめて妥当であり、当然であろうと思うのであります、そういう関係から考えて参りますと、今回出て参りましたいろいろな事象が、いやこれは争議手段であるといい、いやそうじやないといい、いろいろな解釈も出て参りますが、何はともあれ何らかの可能なる最大限度の形において、そういう誠実のない措置に対する抵抗を試みようということは当然のことであります。その抵抗の出ることが、何らかの大きなあやまちであるかのことべ解釈するそのことが、三十五条に対する理解のなさを示すものだ、こういうふうに私は思うのであります。このことについて、国鉄当局並びに政府側、といつても、労働省の方しか来ておいでにならぬが、労働省側の御見解をこの際聞いておきたい。
  199. 中西実

    ○中西政府委員 私ども労政省の立場といたしましては、先ほど公社からも言われましたように、やはり当初仲裁制度が設けられましたときの趣旨にかんがみまして、当然仲裁が尊重されるべきものである、こういうふうに考えております。
  200. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私もまつたく同じような気持を持つておるのでございまして、仲裁裁定のある以上、これがたとい時期的にだけでも完全に履行されないというようなことは、まことに遺憾であり、どうかして裁定のある場合には、それが完全に履行されまして、組合の各位はもとより、国鉄職員の全般が生活の安定を得て生活を改善することができ、そして勤務に服するというふうな方向にして行きたいものと考えております。
  201. 中原健次

    ○中原委員 そこで、さらに続いてお尋ねしたいのは、それと関連しまして、今回とつた国鉄側のといいますか、政府側のと申しますか、経営者側全般の措置ですが、去年の八月からこれを実施すべしと決定された裁定が、今年の一月にずれた。これはもちろん完全実施しているのなら、議論の余地はないが、その間五箇月の穴をあけている。これは少しも完全実施ではありません。なおそのほか給与の取扱上の経過の中から、たとえば定期昇給等の問題から考えてもいよいよこれは完全実施どころか、似通つた実施にもならないという結論になる。しかし、その解釈は別として、そういう関係から、先ほど国鉄職員諸君の年末行動は合法的でなかつたから十八名の馘首を行つた説明しておりますが、そうなつてみれば、今度の政府を含めた経営者側のとられた措置はやはり合法的だと考えておいでになるのですか。
  202. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 政府のおとりになつた御処置について、私どもから意見を申し上げることは、ちよつと申し上げにくいのでございますが、国鉄当局としては、あの裁定を受けまして、それを完全に裁定通り実施するために必要な補正予算を組んでいただきますように、政府にはお願いをいたしておつたわけでありまして、そこでその問題を政府でお取上げになり、さらに国会で御審議をいただいたわけでございます。その間、組合側の方は、御承知の通りの実力行使に出たわけでございまして、せめて、現在問題が国会で御審議いただいておる最中でもあり、また国鉄当局としては、その補正予算をお認めいただくように政府にもお願いをしておる際でもあるから、自重をしていただきたいということを繰返し申しておつたような事情でございまして、そういう意味で、私どものとつた処置というものは合法的であつたというふうに考えておるのでございます。
  203. 中原健次

    ○中原委員 国鉄当局側としては、この裁定に応ずるために予算措置を講じてもらいたいという立場をおとりになられた。そうであれば、その点は確かに私ども了承できるわけでございます。ところが、これを国会に付議して、審議を求めておる最中に組合側があのような行動に出た、こう言われたと思うのでありますが、政府が国会に付議したのは、何も予算的な措置を講じてこれを出したのではなかつた。むしろこれは否決すべし、この裁定を実施することは不可能であるという立場を込めた国会への付議であつたと私どもは解釈している。そうすると、大体政府は十六条の解釈というものをどういうふうに解釈しておるのであろうかという疑問が当然起つて来るわけです。これは十六条を見ても、はつきりわかつておると思いますが、事由を付して国会に付議して、その承認を求めなければならないということが書いてあるのです。この解釈などは、私は法律家でないから、むずかしいりくつは申しませんが、しかし、少くとも常識のある者ならば、この解釈は予算措置を講じて出すということを意味していないと考えるような、そういう無責任考え方は許されない。なぜなら、仲裁の裁定を得たその結論というものは、その仲裁裁定に至るまでの間に、いろいろな両関係者の団体交渉の経過があつたはずなんです。その数々の経過を経た後、これならば両者が当然従わなければならぬという確信のもとに決定されたものが裁定であるはずでありまして、その裁定がたまたま予算措置の関係上、給与総則のわくに頭打ちをするから、そのままでは払えない。これはもちろんそうでしよう。だから、この予算の追加補正を行うということは当然のことなんです。これに対して、実に一方的な御都合主義的な独断をもつて、この文字を歪曲して、予算措置を講じられても払えないのだから払わないのである、こういう態度に出て、時の与党の多数をかりてこれを否決した、こういうことになつておるわけなんです。そうなつて参りますと、この公企労法に従つていわゆる合法行為をして行こうとしておる熱意を持つ組合側としては、まつたくあつけにとられてものが言えないというような形に実は置かれておるわけです。これは、私ども裁判所がどういう判決を下すか知りませんけれども、おそらく公正にものを判断する者ならば、私はこの十六条に織り込まれておる文字に対する解釈というものは、相当すなおにできるはずだと思います。従つてこれらの問題についても、時の権力を持つ側が自分の御都合のよろしい立場から、独断論をもつてこれを押し切つて、しかもそれが合理的であり、合法的であるというふうに言おうとする所作というものは、避くべからざる一つの結論として労使双方の大きな紛争が巻き起る、そういう条件をその中から織り出しておるというふうに解釈できる。これは決して私どもが革新陣営に属するから、革新陣営の立場から都合よく解釈しているのじやない。このことについては、かねて国会は公聴会を開きまして、その公聴会に各階層の、少くとも労働問題に関心のある人たち、あるいは良識を持つ人たち、あるいはこれらの専門の学者の人たち、そういう諸君のお集まりを願つて、見解を聞かしてもらつた。もちろん専門の学者の諸君の見解は、いささかのゆるぎもなしに一致いたしておりまして、また新聞人の諸君も、これに対してはわれわれの見解と一致しておる、あのとき御参集願つた公述人の中で、私どもの見解を裏切つた人はだだ一人でしたか、二人でしたか、これは資本家団体側の見解で、もちろん一致しなかつたわけです。けれども、その他の方の見解は、みごとに一致しているという点から考えても、この法律解釈は、われわれが独断で、曲げて解釈しておるのでないということが一層明らかに証明できておつたわけです。いや社会一般の良識人に聞いてみても、だれが考えても、この公企労法の解釈に関する限り、おそらくわれわれの見解と一致するでしよう。これは決して私どもの独断論ではない。ことに、皆さんも御存じのように、この公企労法が制定された当時のいきさつから考えても、せめてもの最後の手段としての仲裁裁定が最高の権威を持たなければ、この法をつくつた立法の精神に沿うておらないことになるわけであります。この点については、あまりりくつを申し上げてもしようがないと思いますが、私はあくまでもそのように確信している。これは私どもの一方的な独断論では寸毫もない。そうしたならば、少くともこの点について当局はこの妥当な解釈に対する御理解があるべきものと確信いたします。当然そうでなければならぬと思うのでありまして、いまさらこの三十五条から十六条などの解釈について、ここで議論を盛り上げる必要もないのです。これはすでに長い時間を通じて論議された点でありますけれども、どうもこの点がごつそりとたなに置き上げられて、その後にとられた組合行為だけが問題になるように感ずる。ですから、特にこの点だけを申し上げるわけですが、今私が申しましたような見解に対する国鉄側の見解はどのようでございましようか、承りたいと思います。
  204. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私にまつたく御議論の通りであろうと存じます。団体交渉が認められ、一方においては争議行為は禁止されている。労働条件についていろいろな団体交渉をしたが、それがうまく行かない。調停に入り、調停からさらに仲裁に入つて、最終的に仲裁裁定が下る。そのときには、仰せのように両当事者かこの裁定に拘束されるのでありまして、それを実行できないような規定と申しますか。条件があることについては、私は一考も二考も要するものであろうと考えております。まず法律論としてはそうでございますが、実際問題といたしましては、われわれはやはり国鉄財政の健全化、自説化という面にもできるだけの努力を払つて行くということを考えまして、資金上、予算上不可能であるような事態のないように努力して行かなくちやならぬ、かように実質的には考えております。
  205. 中原健次

    ○中原委員 今回のこの裁定の完全実施については、国鉄側もこれを予算化するために、政府の考慮を促すべく努力せられたということを御言明になりましたが、私はそうなくちやならぬと思うし、またそうであるためには、もちろん国鉄当局とされては、財政のいろいろな事情も考察されて、これくらいは出し得る、また出さなければならぬというふうに御認識になられたことと思います。なお、当時今井仲裁委員長の話でも、この裁定を下すためには、関係当局とかなり話をしておいでになつたように聞いておる。従つて関係当局も、大体これなら行けるだろうという御見解もあつて、従つてそれだけの基礎があつて、この仲裁裁定の結論が出ることに役立つたのではないかと私どもは見ているのであります。従つて、今井委員長が非常に残念がつて、御発言が幾たびかなされましたが、これは確かにあれだけの苦心を重ねての結論であつただけに、これは苦心をなされながらも、手続的には問題なしに、その答えとして予算の修正は可能であると確信をしておられたようであります。それであるからこそ、もちろん組合側としては、非常に不満足であるけれども、今ここで不満足だということを並べてもいたし方がない。法が拘束する権威を持つているからには、その不満点をも秘めて、快くこれに従うという態度をとつてつたのでありますが、それだけに今回の裁定に対する予算措置ができなかつたあの措置に対して、やはりこのまま黙つていたのでは、どのような不可避な、きわめて当然の結果が出て来ようとも、政府側に納得の行かない、あるいは政府側が快しとしない場合には断じて実施されるものじやない、こういう結果が、今度の経験から一層出て来たわけです。従つて、そうであるならば、無遠慮に申しますと、政府側の法律を無視した強引な措置に対して抵抗して行くためには、何らかの実力を示さなければ、これを組合側に有利に展開することは不可能である。こういう解釈は、どの点から考えても、おのずから出て来る解釈だと私ども考えるのであります。そればかりか、公聴会に御出席をいただきました公述人の方の中で、都立の沼田教授であつたか、慶応の峰村教授であつたか、早稲田の野村教授であつたか、この三者の一人の発言の中に、この三十五条の裁定が実施されないようであるなら、公労法の存立の意味はない。従つてこれが実施を見ないならば、十七条の争議行為禁止の権威は消滅する。従つて十七条が消滅するのであるから、十八条に基く処分などは当然あわせて消滅する。いや人間の権利に自覚している西欧の労働者であつたなら、とつくにゼネストを敢行しているであろう、市民たちもそれを支持するだろう、こういう御発言さえあつたのであります。この発言には、むしろわれわれが非常に耳を打たれたわけなんだ。われわれはむしろぼんやりしている、まさにそうだと思います。そのような解釈さえ当然起るはずのこの法の解釈について、政府があえてこれを曲げて解釈され、あのような措置を重ね重ねとられたわけであります。そういうところから考えて参りますと、今回の国鉄職員諸君のとりました行為が、かりにその事件の一部に責任を負わなければならないようなことがあつたといたしましても、ここにそういう行動をなさなければならなかつた原因に対する理解を持つことが、当然起つて来そうに思えるのであります。ただ罰する方だけは、厳重に法の一方的な解釈をもつて臨む、あるいはその局部的な解釈だけをもつて臨んで、一方の方は当然拘束さるべきはずの拘束をけつて行く、こういうことになつたのでは、これは妥当、適当な措置とは言えないのじやないか。そういうことが繰返されて参りますと、第一条が申しておりますような団体交渉のよき慣行をつくることなど、とうてい望むべくもない。いくら法の第一条がそのことをにぎやかに書いておりましても、そのような文字が実際の面として、答えとして出て来ようはずがない、こういうことになるんじやないかと私は解釈いたします。これについて、どのようにお考えになるでございましようか、総裁の御見解を承りたい。
  206. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 ここ一、二年の間同じようなことが繰返されまして、そして私どもの従業員諸君の非常な不満を買つておるということは、非常に遺憾でございます。何とかして完全実施するということに持つて行きたいということは、当時仲裁裁定が下りましたときから考えておつたところでございます。それがどうも完全な実施ができなくて、従業員諸君が今回起つたような行為に出たということについては、きわめてこれまた遺憾でございます。しかしながら、やはり一方においては社会公共の利益の擁護、一方においては部内の秩序の維持というような面からいいまして、これを全然不問に付するということもできないのでありまして、私としては遺憾きわまりなかつたのでございますが、十八条の適用をせざるを得なかつたというのが実際の状況でございます。
  207. 中原健次

    ○中原委員 国鉄当局側の今回の問題に対する御見解は、私どもとやや近いものがあることを喜ぶのでありますが、それだけに、あのとられた十八名の解雇処分に臨まれるときに、私は何をお感じになられたかと思うのであります、やはり組合側のとつた措置の中に、どうも公共の福祉をそこなうものがあり、あるいは業務の正常なる運営をそこなう云々というふうに解釈することだけによられて、あれだけの犠牲者を出されたということになつて参りますと、どうも私はその間、論理が一貫しないのじやないかというふうに感じるのであります。やむを得ざる措置というためには、なるほどこれだけ誠意を尽したにかかわらず、このようなことが起つたのであるから、その措置またやむを得ない、こういうことになつて来れば、第三者も納得ができるわけであります。ところが、今度とられた措置というものは、第三者から見ると、どうも政府というものはきついことができるものだ、こういう解釈を国民に与えておるわけなんです。これはある特別な顧慮を持つておる人は別ですけれども、顧慮を持たざる人は、やはりこのことについては、だれかれとなく同じような見解を述べております。どうもちよつとひどい、ばつさり首を切るなんて、ちよつとひど過ぎる、あれは何とか方法がなかつたのか。こういうことは、私どもは決してこれは労働者から聞いたわけではない、あらゆる方面から聞かされる。これは決して私が今私ども立場を有利にするために申し上げておるのじやない、私は真実を込めて申し上げておるのです。私どもの耳には、そのようなことがしばしば聞かされる。おそらくそのはずです。やはり政府のとつた措置というものは、せつかくつくつた法律をすなおに履行しないでおいて、そうしてその法律の全体の精神から発して出て来た一環としての十七条というものを、それだけを独立させて、その部分だけに問題を集中して措置をしたという感じがする。これじやどうもおかしい。十七条があるということのためには、やはり三十五条に対する拘束というものが権利を持つときに初めてこれがあるのだという解釈は、当然これは少くとも良識者は一致した見解を持つておるわけです。これは決して単に学者だけではない、一般人たちも、この問題に関心のある人は、やはりその間の事情を知れば、皆そのように結論するような状態になつておるわけなんです。でありますから、もちろん総裁だけでおとりになつたわけではありませんが——結局総裁がなさつたということになると思いますが、十八名の解雇処分をなされたことに対して、これが国民に対する何か当時の立場を釈明するに役立つとお考えになられたら、これは違うと思います。まつたく逆なんです。何をしているのだ、こういうむしろ当局側の措置に対して強い批判が起る方が、私は多いと思います。この点に対しては、やはりいろいろな見解もありましようけれども、私どもの耳にする限りにおいては、このことをはつきり言うことができるし、またそのことだけではなしに、先ほどから申しますように、公労法のできましたときの経過から考えてみましても、その後の経過から考えてみましても、これはやはり当局がほんとうに平静な気持で絶えず反省を加えながら、この法の実施のために熱心なる努力を傾けていただかぬことには、職員諸君がこの法を守る決意を、おのずからゆるめざるを得なくなるのではないかと、私はそう思います。従つて、今度の十八名の諸君に下されたあの解雇処分の問題についても、先ほどから質疑がございまして討議がございましたように、やはりこれは手続的にどのような言いのがれの部分がありましようとも、やはり労使関係の誠意を込めた団交というものが、この間には当然尊重されなければ、この最後の結論というものが権威を持たなくなるのである、こういうふうに私は思います。でありますから、この法規上の解釈をいろいろに都合よくひん曲げて述べ立ててみたところで、それはほんとうは権威を持つものではないと思うのです。やはり問題は、起つた紛争の結論を、第三者が納得の行くような誠意を傾けた方法によつて処理されて行くということ以外には、私は妥当な結論は出て来ない、こういうふうに思うのであります。この点に関して、国鉄の御見解はどうでございましようか、もう一度承つておきます。
  208. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 先ほど来繰返して申し上げておりますように、私は今回のような事態が起るについては、きわめて遺憾であり、ほんとうに心から残念に思つたのであります。何とかしてこれを防止したいと考えまして、たびたび組合の方々にもお話をし、場合によると懇請をしたというようなこともございました。さらには、先ほど来御意見の中に一体賜暇戦術というようなものを延期せよということはどういうことか、そういうことを認めているじやないかというお話もございましたが、その真意は、私といたしましても、そこに若干の冷却期間とでも申しますか、そういうものも出て来るでありましようし、またその間には国会の御審議、いわゆる政府の方針というものについても、はつきりした線が出て来るのではないかというふうなことも考えたのでございまして、あらゆる努力を払つたつもりでございます。しかしながら、不幸にして事態は私の最もいやだつた方向に参つたしまつたのであります。われわれ決して自分の同僚、自分と一緒に同じ職場で働いておる人たちを馘首して、それで快とするものではございません。今後におきましても、法の解釈等についても十分な研究を尽し、あるいはまた立法論的に申しますれば、いろいろな完全実施の道を研究せられることになると思いますが、そういうこと以外にも、何かの方法で円満な解決の道はないかということを、先ほどから申し上げておりますように、われわれも努力をいたしますが、組合の各位にもそういう道の発見のために努力しようじやないかという話合いをしておりまして、近い時期に——今度は来月あたりになりますか、一ぺん寄り合つて公式な、いわゆる中闘とかなんとかということでなしに、いわゆる団体交渉ということでなしに、かみしもを脱いだ話で意見の交換をし、その道の発見にお互いに努力するようにということを考えております。
  209. 中原健次

    ○中原委員 最も大事なことは、誠意を傾けて事を進めて行くということでなければならぬ。労働条件に関する問題を扱う場合に特に大切なことは、やはり実を結ぶことでなければならない。中身のない言葉だけの誠意というものは、これは誠意ではない、いわば欺瞞になる。従つてまず実を結ばしめるような方向に持つて行くことであらねばならぬと考えます。従つてまず第一には、一応このようなことになつて一月から実施になつたのでありますから、五箇月間のずれがある。そうしてその間の定期昇給等の問題も含めて、いろいろな不利な条件がそこにかもし出されて参つておるのでありますが、このほかに——そのままの形ではまだ処理はできないかもしれませんが、しかしいずれにしてもこの穴は埋めなければならない。もう一つは、そのような経過から結論された悲しむべき十八名の人たちの馘首問題、これもまあしかたがあるまいというのであきらめさせるというような措置は、やはり実を結ばしめることではないと思います。この問題は、やはり何とかしかるべき方法によつて釈然たらしめることができるような、いわゆる結実することのできる措置におもむかしめなければならないと私ども考えます。やはり人間というものは、よかれあしかれ、何人も自分に与えられた職場を、その場の一時的な腰かけとして勤めておるのではないのでありまして、やはり自分の骨を埋める一生の職業として、身を挺してその職についておるわけであります。その者が、ただいま申し上げたようないろいろな経過から不在な結果を見たといたしますならば、これはその者にとつては、まつたく断罪に値するものである、ほんとうに文字通り死刑の宣告なんである。こう申し上げても、決して誇張ではないのであります。およそ人間がこの世において生きるためには、何といつても自分の身をゆだねる職業に終始服して、自分の職域の任務を果して、そうして終るというのが、当然あるべき姿であると考えます。そうであつてみれば、そのことに対する深い理解を持たれて、この問題の処理のために心を込めた話合いをするこの方法が、単なる言いのがれ的な結果に陥るような方法であつてはならぬというふうに私は考えるのでありまして、組合人たちにしても、おそらくこのような結果を見ることによつて、今後の組合の運営が円満に進められて行くというふうには考えられないであろうと思います。やはり今度とられた措置の中に、論ずべき点が多々伏在しておるだけに、私はこの問題については、組合員全体が了承をしなければならぬというふうに理解をいたします。そこで、この十八名の人たちが犠牲になり、そして他の組合員全体がこれをもつてよしとして、今後ともに公企労法を忠実に守ろうという気持になるという考えがもしあるならば、それはとんでもない錯覚だと考えます。政府が法を守つてほしいと願うならば、守り得るような条件をつくるように絶えず努力して行くという立場に立たれなければならぬのではなかろうかと考えます。最近も、しばしば耳にいたしますところでは、どうも政府側が賃金を押えて行く、いわゆる賃金ストツプ——いやストップだけではがまんできなくて、賃金をもつと落ち込んだところに追い込んで行く、こういう方針が何かの拍子にうかがわれて来るわけです。これはとんでもないことです。こういうことを今論議しても、しかたがありませんが、そういう措置をやるために、それが災いして、それで今回の国鉄の裁定がこういうしぐさにまで追い込まれたのではないか、その最初の瀬踏みとしてこういう手が打たれたのではないか、こういうふうにさえ私どもは感じさせられる点があるわけであります。これはひとり国鉄だけではなくて、他の二公共企業体その他の五現業も、もちろんそういう意味において、今度の裁定に対する不当な措置がとられたのではないかとさえ思われる節が多々あるわけであります。そういう場合であるだけに、私は直接雇用者の立場に立たれる国鉄当局とされては、この問題については相当真剣な御考慮がいるのではないかというふうに思います。とにかく安く使えばそれでよろしい、劣悪な条件になるべく追い込んでおけば、それだけ有利であるというふうな考え方は、この間においては許されないと考えておりますし、また組合側においても、何でもかんでも、りくつに合おうが合うまいが、たくさんとればいいという立場に立つておるのではなく、やはり一つの主張をいたしますには、そこにそれを証明づけるだけのデータをもつて、その立場から結論を出して主張して来ておいでになるはずだと思うのであります。私はむしろ今とつておる組合側の主張というものは、相当弱いとさえ思われる。相当遠慮ぎみである。相当遠慮して主張しておりながら、その主張が蹂躙されるというところを見て、何でこの法律を守ることがあろうか、こういうことにさえなつておるのではないかと考えるのであります。このような見解から——いろいろ申し上げたいこともありますが、これ以上当局と質疑応答をしてみても、結論は出ないと思いますのでやめますが、とにもかくにも総裁は、今度とられた、特に十八名の解雇の問題に関しては、失礼な言い分でありますけれども、ほんとうに誠心誠意を込めての御反省を願いたいと思います。そうしてその御反省の上に立たれて、この問題を納得の行く処理に持つて行くということを、どうしてもやつていただかなければならぬ。それと同時に、先ほどから繰返し申しますように、今日の国鉄の従業員諸君の労働条件の実態から考えますと、この条件をそのままでよろしいなどと考えることは、これはとんでもない一方的なと申しますか、御都合主義的な解釈であると思います。私は勤務の実情を見れば見るほど、これではいけない、これではがまんできないであろうということを感じさせられる面が多々ある。私はいなかにおりましたとき、機関車に乗つてみろと言われて乗つてみましたが、あの汽車に対する責任を感じて真剣にハンドルを持てば、私どもには一時間とは持ちかねる。一時間でへとへとです、こわいと感じました。そういう真剣な仕事をしておる。また車掌諸君立場考えてみましても、あれだけの乗客あるいは荷物等に対する全責任を負つて一つ間違えば自分の命を投げ出さなければならない。そういう責任を負つた条件の中で仕事をしておるのであります。これは、しろうとが外から飛び込んで行つて感じたことでありますが、そういうようなことは1時間をとりますから申し上げませんが、実際の経験から参りましても、これはやはり何とかしなければならないものではないか。聞くところによりますと、退職してものの五年も生きるのはむずかしい、こういうことであります。それはなぜかというと、退職すると心がゆるむ。ゆるんだとたんに全身の生理状態がかわつて来て死に追い込まれる。私はこういうことを耳にいたしまして、ほんとうに何とも言えない暗然たる思いをさせられたのであります。これは単に口先で申し上げているのじやない。いやしくも総裁が機関車に乗つたり、車掌さんと一緒にあの中を歩いてごらんになることはできないかもしれませんが、少くともこの気持に徹しまして、この神聖なる職務に精魂を傾けられたい、そういうふうに感じます。そうでないと、国鉄の労働組合自身にしましても、労働組合の当然背負うべき任務から考えまして、このような形でひつ込むわけには参らぬのが当然でありまして、もしこのような形で労働組合がひつ込んでしまうといたしますれば、もはや基本的な人権を守る方法はいささかもなくなつてしまいます。これは国鉄職員諸君が自分たち組合立場に立つて、自分の利害得失のために専念をするというような立場からだけではないのでありまして、これはいまさら私が釈迦に説法を申し上げる必要はございませんが、戦後日本が民主主義の体制をとろうとしたあの精神から考えますと人一人が人間としての権利を自覚するところに、民主主義の徹底した姿が保障されて来るのでありまして、そういう見解から考えますと、労働組合の今回とられた措置は、この基本的な人権を守らなければならぬと同時に、民主主義を確立しなければならぬという見解にもつながる行動であつたということも、私は当然だと思います。それだけに、この措置がもし不当に終りますならば一大事だと思います。そういう見解から、私はこのことを良識ある総裁以下の幹部諸君に切にお願いしておきます。この点はどうしても相互の納得の行く団体交渉団体交渉という手続をとることが、もしあまりかた苦しくていけないとすれば、それは団交でもなんでもかまいませんが、要するに公明なる話合いの中で、みごとに結実の保証されるような条件にこれを持つて行つていただきたい、こういうことを要望申し上げまして、私の質疑を終ることにいたします。
  210. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長代理 本日の質疑はこれで終ります。  明十七日午前十時より厚生年金保険法案について厚生委員会との連合審査会を開会いたします。また次回の委員会は来る二十一日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時二十四分散会