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1954-02-26 第19回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十六日(金曜日)    午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    岡田 五郎君       小林 絹治君    迫水 久常君       富田 健治君    中村  清君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       八木 一郎君    山崎  巖君       稻葉  修君    小山倉之助君       櫻内 義雄君    中曽根康弘君       松村 謙三君    足鹿  覺君       長谷川 保君    山花 秀雄君       河野  密君    堤 ツルヨ君       黒田 寿男君    三木 武吉君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       庄司 一郎君    高橋圓三郎君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       福田 赳夫君    船越  弘君       山本 勝市君    荒木萬壽夫君       河野 金昇君    河本 敏夫君       中村三之丞君    古井 喜實君       勝間田清一君    滝井 義高君       横路 節雄君    川島 金次君       西村 榮一君    吉田 賢一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         農 林 大 臣 保利  茂君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 大野 伴睦君         国 務 大 臣 加藤鐐五郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局長官   佐藤 達夫君         保安政務次官  前田 正男君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月二十五日  委員武藤運十郎君、柳田秀一君及び稲富稜人君  辞任につき、その補欠として井手以誠君、長谷  川保君及び吉田賢一君が議長指名委員に選  任された。 同月二十六日  委員本間俊一君、櫻内義雄君、古井喜實君、井  手以誠君及び小平忠辞任につき、その補欠と  して天野公義君、松村謙三君、荒木萬壽夫君、  勝間田清一君及び稲富稜人君議長指名で委  員に選任された。 同日  委員天野公義君、荒木萬壽夫君、松村謙三君、  勝間田清一君及び稲富稜人君辞任につき、その  補欠として本間俊一君、古井喜實君、櫻内義雄  君、井手以誠君及び川俣清音君が議長指名で  委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十九年度一般会計予算  昭和二十九年度特別会計予算  昭和二十九年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十九年度一般会計予算外二案を一括議題といたします。質疑を継続いたしますが、本日の御質疑につきましては、先日の理事会において時間を厳守していただくことに申合せになつておりますから、御質疑の方はさように御了承願います。  この際佐藤觀次郎君より議事進行について発言を求められております。これを許します。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 去る二十二日、中曽根委員より発言されたことにつきまして、大野国務大臣自由党総務会において懲罰に付するとの発言がありましたが、いつ実行されるのでありますか。国会法第百二十一条には、「委員会において懲罰事犯があるときは、委員長は、これを議長に報告し処分を求めなければならない。」となつております。大野大臣中曽根委員とには全然反対発言がされております。かかる問題について、この委員会の権威におきまして、委員長はいかなる処置をとられますか、その責任答弁されたいと思います。  第二点は、昨日第一分科会において、わが党の横路委員より前田次官質問いたしましたところ、政府はその予算において予備役制度を認め、その予備員に年間一万円の予備員手当を支給する九千万円の予算を組んでおります。かかる重大ね案件について、ここに保安庁法改正なくしては、われわれは予算を審議することができないのであります。委員長は即刻この法案をお出しになるように政府に間わなければ、われわれは審議することができないのでありますので、二つのことについて御答弁を願います。
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 佐藤君にお答えいたします。第一点につきましては、委員長または委員会懲罰動議を提出いたしたものではないのでありまして、私は中曽根君に対する懲罰動議の提出されたということを新聞では承つておりますが、私どもの関知しないところでございます。  第二点につきましては、保安庁法改正案をすみやかに提出せよという委員からの御要求がございましたので、政府に対してそのことを委員長から申し入れてあります。政府はお聞き及びの通りでございますから、さように善処せられんことを希望いたします。  それでは松村謙三君。
  5. 松村謙三

    松村委員 私は改進党を代表いたしまして、総理大臣質疑をいたしたいと存じます。先般来自由党幹事長と両回にわたりまして、この重大な時局収拾について会談をいたしましたが、今日は幸いに機会を得まして、この席において直接総理大臣に、この重大なる時局に対する総理のお考えをただし、あわせてわが党の時局に対する態度を明らかにいたしたいと存じます。  今回の汚職事件はまことに遺憾千万のことでございます。今日におきましては、政府に対する国民信頼がまつたく地を払い、議会に対する国民信頼もまた同様でございます。国民政府を信じなくなり、議会を信じなくなつたときのその恐るべき結果は、これは申すまでもなく、日本議会政治根底を動かすものであると思うのでございます。このような事態のもとにいかなるよい政治も行わるるはずがないと考えます。総理は今日緊縮予算を提出せられ、そして緊縮政策を行わんといたしておられます。これもまことにけつこうなことでございますが、このような事態において、はたしてこの緊縮政策——きわめて重大な、かつて浜口内閣なんかにもその先例のあるこの重大な政策が行わるるとお考えでございますか。また総理議会が済むと外遊なさるということでございます。これもまことにけつこうなこと、しかしながら国内の情勢がこのように一触即発の事態において外遊をなさつて、はたしてほんとうに国のためになるものを得てお帰りになることができるかどうか。私はこれらのことについて現在のこの局面を見ますときに、ほんとうに深憂なきを得ないのでございます。(拍手)大体総理はこの時局をいかに認識しておいででございますか。この時局はなかなか尋常一様では乗り切れないと思うのでございますが、まず総理の現在の時局に対する認識をお伺いいたしたいと存ずるものでございます。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。両幹事長との間において——松村君と佐藤君との間において会談が行われて、政界動揺を安定させたい、そしてまたそのためにはできるだけ協力をしたいという御真意承知しておりますが、私もその御真意はまことにけつこうと考えておるのであります。また自由党といたしても、政界安定のために協力することにおいて何ら異議はないと考えております。(「人心一新はどうした」と呼ぶ者あり)これから答えるから聞きたまえ。私は今のような事態において人心動揺をますます激化するような行動があることを遺憾とするのであります。(拍手)   〔発言する者多し〕
  7. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは単に政党のみならず、新聞界においてもまたしかりであります。   〔発言する者多し〕
  9. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 いやしくも問題は司直の手に、あるいは検察庁の手にかかつておるのでありまして、私は事態真相がわかり、その全貌がわかつた場合において、政府は善処いたすことに何ら躊躇いたさないということを、終始申しておるのであります。しかしながら、現に取調べ中の問題を、ある一部の話を聞き、あるいは一部の人の話をもつて、それをただちに真実なりと断定して、政界動揺を激化せしむるような行動のあることを、私は遺憾といたすのであります。(拍手)   〔発言する者多し〕
  11. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府といたしましては、再び申しますが、事件真相がわかつた場合には善処いたすことに全然躊躇いたさないつもりであります。  私の外遊についてはこれはまだ決定いたしておりませんからお答えをいたしません。
  13. 松村謙三

    松村委員 私は時局認識について総理大臣のお考えを承つたのでございますが、きつぱりしたお返事ではございませんが、そのただいまのお答えにおいても、政界動揺を激化するようなことがあつてはならぬと仰せられる。しかしながら、激化されるその原因がある。その原因を除かないならば、この日を追うての苛烈な形は解けないものだと思います。私は今の総理のお言葉に返すのではございませんが、単なる激化の現状だけにとらわれたならば、これは収拾のつかない状態になることは明らかでございます。(拍手)私どもはそうではなくて、その根底について虚心坦懐にお互い考えて行かなくちやならないものと思うのでございます。総理は言外にこの時局のきわめて重大なることについては、われわれと所見を一にしておいでになることと考えるのでございますが、さてそういう重大なこの時局を御認識なつた上のこれに対する対策は、いかがにお考えでございますか。これはきわめて重大であろうと私は考えるものでございます。政府としてはこの重大なる時局に対処するには、非常な決意を持つた対策がなくてはならぬ。非常の時には非常の対策が必要である。尋常一様のことでは乗り切れるものではないと考えます。そういう点につきまして、今後の御方針を承ることができたならば、私は幸いであると思います。これは国民の聞かんと欲するところであろうと思うのであります。
  14. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。政府といたしては、また私といたしても時局の重大と申すかどうか、これは今申した通り時局を重大ならしむるような運動のあることを私は認めなければならぬと思います。これは私は政界のためにも、また民主政治の将来のためにも、また日本の名誉のためにも遺憾と思うのであります。私は反対党諸君におかれても事態真相を静かにきわめられて、これに善処する道を講ずることが、この事態に処するゆえんであると思う。政府としては事態全貌がわかつた場合には、これに対して十分の力を尽し、善処いたし、また善処いたすことに躊躇しないということを、国民にはつきり告げることによつて、この事態収拾され得るものと私は確信いたします。(拍手
  15. 松村謙三

    松村委員 私はこの重大なる時局をきわめて憂慮いたすものでございます。従いましてこれがほんとう議会政治を守り、そしてこれによつて人心を一新して、国民生活の安定、国民思想の安定を得ることができるならば、わが党はいかなることもいたし、いかなる協力もいたす考えでございます。(拍手)しかしながら現在政府のおやりになつておりますことは、私どもがこういう熱意をささぐるのには、はなはだまだ距離があるような感じがいたします。たとえて申すならば、ここ一週間、十日にわたる大切な時期に何ら施さるるところがない。そして有田某氏逮捕許諾に対するやり方等のことは、これはまだ問わないといたしましても、閣僚諸君がとられましたところは、法律にはかかわらないとは申さるるようでありますが、それは別といたして、政治的に見て批判の起ることは当然のことでございます。このような事態のもとに手を握つて、この大きな時局収拾に乗り出そうといたしましても、乗り出す道がないことを痛感いたすものでございます。政府はこういう点につきまして虚心坦懐にわれわれが協力をして、そしてやつて行ける、いわゆる人心一新と申しますか、国民ほんとうの気持が、なるほどと思うような態度をお示しになつて、ともに協力して、超党派的に協力をして行く道をお開きになることを切に希望するものでありますが、これは国のためにぼくは必要であると思うものでありますが、総理のお考えを承りたいと思います。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 同じことを繰返して申すようでありますが、時局の重大なることを認められれば認めらるるほど、事態真相をきわめて善処することに御同意あつてしかるべきものと思います。これは私としては虚心坦懐に申しておることであり、また佐藤君とあなたとの間の話も、虚心坦懐にお互いに誠意を披瀝して、今日まで至つたものと私は了解いたすものであります。
  17. 松村謙三

    松村委員 ただいまのところは、おそらくこれ以上の御返答は得ることはできないと考えます。しかしながら私が最も憂慮にたえませんことは、院内は別といたしまして、国民のこの議会政治に対する空気が、日一日と険悪を加えて来つつあることでございます。この際人心を一新して、そうしてそこに大きな転換の機会をつかむにあらざれば、今にいかような方法をもつてしても、時局収拾ができかねる時代が来ることを心からおそれておるものでございます。事ここに至りましたならば、いかに悔ゆるも及ばない事態が出て参ります。私は総理がここに大きな考慮をなさるる必要があるのではございませんかと考えます。閣内に国民から刑事上の疑いをかけられている者がいるとかいないとかというふうなことは、これは問題ではございません。今日も、そういうことがかりにあつてもなくても、時代のこの急な流れ、この国民の声は、これはあなたがお聞取りになることができるかどうか、今や国民の間における声は、これはいわゆる声なくして、そうして非常に大きなものがあることは、お互い考えなくてはなりません。いわゆる政治の局に当らるる者は、声のないのを聞き姿のないのを見るというくらいの御用意が必要だと思うのでございます。今や国民は黙つてはおりますが、その黙つておるうちにほうはいたる声がどこともなく声えて参ります。従つてこの大きな事実に対処する責任は、政府に十分あるのであろうと考えます。これらに対する総理のお考えはいかがでございますか。私は民主政治の要諦というものは、責任政治でなければならぬと思います。(拍手)この責任政治を逸脱しては、そこには民主政治はないと心得ます。今日のこの事態は、こまかいことは別といたしまして、占領行政時代から累積せられた政治の弊害が、ここに現われて参つたものでございます。(拍手)その長い政弊の蓄積、これに対する責任は、大体だれが負わるるのでありますか。閣僚はしよつちゆうかわられる、従つて閣僚に対する責任は、私はあつても薄いと思う。これは長い間局に対処せらるる総理大臣の、悪い意味責任ばかりじやない、総理のおやりになつたことには、国家に功労のあることは、これは私はもちろん認めます。しかし責任はきわめて明らかにせられなくてはならないというのが、これが公正な見方であろうと思うのでございます。(拍手)私はこういう意味から申しまして、ここに総理の的確なる御返答を、求めるものではございません。このようなことにもちろん御承知のことと思いますが、今は最も重大なるときでありますから、私どもはここに重ねて総理が、この重大なる時局を乗り切らるるときの心構えを正しくいたしていただきたいとお願いをいたすものでございます。われわれは決してこの時局を荒立てようといたしておるものではございません。今、ただいまの場合において、これ以上政局を険悪にする考えは持ちません。しかしながら、この政界険悪化を防ぐのには、政府、特に総理において十分に考慮を願うべき点がはなはだ多いと思うのでございます。私はこれ以上問題を繰返して申し上げません。申し上げませんけれども総理はこの重大なる点を決してお間違いなく善処せられんことを希望して、私の質問を終る次第でございます。総理から何らかの御返事があれば、なお承りたいと思います。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。御意見はよく承つておきます。また私の所信は、これまで説明したところでたいがい御承知ができることと私は考えますから、さらに再び繰返しません。
  19. 松村謙三

    松村委員 これで私の質問を終ります。
  20. 倉石忠雄

  21. 勝間田清一

    勝間田委員 日本社会党を代表いたしまして、きわめて内外にその信を失墜いたした日本の現在の吉田内閣責任について、またそれに対する吉田内閣責任をいかに果すかについて、私はここで若干の質問をいたしたいと存ずるのであります。  今日新聞紙上におきましても、またあらゆる国会の審議の状況を見ましても、すでに造船疑獄日殖事件保全経済会のいかがわしい問題は、もはや白日のもとにさらされつつあることは、吉田総理も否定することのできない事実であろうかと存じます。しかしこれに対して吉田総理もそれぞれの見解を持ち、それぞれの責任を感ぜられると考えてはおるが、しかしかかる未曽有事件を起したその原因については、ここで深く反省しなければならない問題であるかと私は存じます。吉田総理がこの原因に対していかなる認識を持つておるかによつて、今後の時局の処理の問題についての明確な態度が、同時に明らかになつて来るものと私は考える。そこで私は今日八千数百万の日本国民の心から嘆いておるこの政治の堕落に対して、根本の原因はどこにあると吉田総理考えておられるか、この点を私はまずあなたにお尋ねしてみたいと思う。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。一体いまだこの問題は新聞に出たとか、人のうわさに出たとか、議会において問題になつたという程度であつて、明らかになつておらないのであります。   〔「じようだんじやない」と呼び、その他発言する者あり〕
  23. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 明らかになつておらないものをつかまえて、いわゆる政界動揺を引起しているということは、はなはだ遺憾に思うのでありますが、要するに内閣責任といたしましては……。   〔発言する者多し〕
  25. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  26. 吉田茂

    吉田国務大臣 わかつた場合にこれに対して善処する。この措置が悪ければ内閣責任であります。事態真相がわかつた場合に、政府は手をつかねて何らいたすことがないとか、あるいは犯罪者を見のがすとかいうことになれば、これはまことに重大な政府の大責任であることは私も了承いたしますが、いまだ事件取調べの途中においてとやかく問題を引起すことは、むしろ政界動揺を引起し、さらに信を内外に失するゆえんであつて、これこそ、私は重大と考えるのであります。私は静かに事態真相事態の、取調べの経過を見て、これに善処することを怠りません。あるいは国会としては、政府措置に対して十分監督するということであつてこそ議会責任が尽され、また内閣責任が尽されるゆえんと思うのであります。
  27. 勝間田清一

    勝間田委員 吉田総理は今日、この事件真相をきわめるまではそういう態度で実はおられる。しかし私は過ぐる国会において、ある機会において吉田総理に対して、あなたが綱紀粛正を唱えられるけれども、今日における吉田内閣政策と、またこれに関連する政治献金との問題を明確に区別しておくことなくしては、断じてあなたの綱紀粛正は達成せられないであろうということを私はあらかじめ警告し、あなたは善処を約束せられたことを御記憶に煙いないと思う。しかるに今日における問題を見れば明らかな通り造船疑獄である、保全経済会及び日殖事件である。この事件が今日における未曾有の汚職であるという事実に対しては、これを否定することができないと思う。そこでわれわれが今日、われわれの代表である横路君を立てて今日における造船、今日における金融と吉田内閣のつながりというものを今日まで指摘して参つた。それに対する吉田内閣答弁はきわめて不的確である。しかし私はここで明らかに申す。造船という問題があなたの自由党という政党に対して、どういう悪縁を持つておるかということは今日明白でありましよう。昭和二十七年、二十八年にわたる両選挙において、自由党政治資金を見れば明らかな通り昭和の二十七年十月の選挙に対しては一億五千一百万円の金が収入せられて、寄付金が一億四千一百万円、支出総額実に一億三千五百万円に達しております。昭和二十八年四月の選挙におきまして収入総額二億一千三百六十五万円が収入されております。寄付金が一億三千三百六十五万円ありましよう。しかも支出は二億九千百五十五万円支出されておるのでありましよう。選挙管理委員会に提出されたものを見れば、昭和二十七年二月より二十八年七月までに自由党に対する政治献金は、造船工業会において一千万円を筆頭に前後九回に及んで献金が行われておりますが、その金は実に二千七百五十万円に達していることは、自由党総裁であるあなたはよく御存じのことと存じます。また改進党へ七百八十万円、右社ヘ二百万円、鳩山自由党へ四百五十万円が、造船関係支出になつていることは明らかな通りであります。ここに四千百八十万円が造船関係によつて政治資金として届けられている表面の金額であることば否定すべくもない事柄でございましよう。(「届けてある」と呼ぶ者あり)ここにおいて、政党が届けているからいいという問題でないのであつで、いかなる政治的基盤の上にたつて政策が行われているかということが、今日における最大の課題であると私は考える。(「日教組はどうなんだ」と呼ぶ者あり)勤労階級が百円、二百円の金を出して自己の政治的利益を守つて行くことは当然の帰結である。しかし今日における吉田内閣政策が、いわゆる造船業者に対して、赤字である日本造船工業はやつて行けない。従つて損失補償までもしなければならないという、一方において提案をやつておきながら、そこに三十数億の金を出しながら、その自由党諸君が二千数百万の金をとつて、どうしてこの造船疑獄事件吉田内閣責任でないと言えるのでありましようか。(拍手)これが造船と結びついた疑獄であることは、もはや明白であると私は存じます。この連なりを打破することなくしては、今日私は絶対に疑獄の道は清掃できないものと思うが、吉田総理はどう考えておられるか、この点を質問いたします。   〔発言する者多し〕
  28. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  29. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。議会政治があり、民主政治があり、また政党政治がある以上は、その政党に対して政党同志者寄付をいたすことはあたりまえな話である。それによつて政党が動きあるいは民主政治が動く。これは各国ともことごとくそうであります。献金がいけないのじやない、その献金をしたことと疑獄といかなる関係があるかということが問題であります。政党献金そのものが不当なりということは、私は賛成ができない。またその寄付金疑獄といかなる関係があるか、これは司法当局の、検察庁その他の取調べが済んで問題の全貌が明らかになつた上において、政府としてあるいは政党としてその責任の所在を明らかにすべきものである。単に言いがかりで何がしがどうしたとかいうようなことでもつて片言隻語をもつて獄を断ずることはできないのであります。これは当然であります。
  30. 勝間田清一

    勝間田委員 吉田総理片言隻句と言われるけれども政策のあり方と政治献金との関係の問題は、片言隻句の問題では断じてございません。今日まで私ども考え、またわれわれ見ておるところの造船の問題、いわゆる利子補給、資金の融資、これにからんでこういつた多額の、四千数百万円の金が出るということは、私は単なる片言の問題では断じてないと思う。しかも今日における吉田内閣政策を見ると、石炭に対する利子補給として遡及してまでも国民の血税をここに支出した。それに対して日本石炭鉱業連盟及び日本石炭協会等から幾らの金が出ておつたかということは、今日まで明らかな通り、実に五百万円、三百万円、四百万円と、合計千二百万円の金が出ておる。これもいわゆる石炭に対する利子補給・融資、これと自由党内閣に対する千二百万円の献金。これは一見合法的に見えるが、これで政治が明白と言い得るか、明朗なる政治と言い得るか。これがまず第一の問題であろう。電気事業の関係については、皆さんは一千万円の献金を受けられた。これによつて電気に対する融資、スト規制が同時に行われておるということは、献金の届と国会における法案の提出とが一致しておることから明白ではないか。同時に生命保険の関係についても、勤労所得からの生命保険料の控除額を上げる法案が出て来るや、生命保険関係の有志会社から八百万円の政治献金が行われておることも明白であります。吉田内閣がいかに広言をいたしましても、一部の財閥、一部の政策と結びついて政治の運営が行われておることは明白ではないか。私はそこに今日における吉田内閣の実体というもの一このことにおいては断じて汚職事件は解決できないものと考える。これに対する吉田総理の再答弁をお願いいたします。
  31. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の申すことは前言の通りであります。事態全貌がわかつて、その場合に内閣は善処する。決してお疑いのようなことはないと私は確信いたします。また問題は寄附金と政策、あるいは法案等の間に因果関係があるかないかということであります。これは検察当局その他の調べにおいて初めて全貌がわかるのであつて、これを私は申すのであります。片言隻語をもつて獄を断ずべからず。検察庁の調べを待つて、あるいは司直の取調べの結果を待つて善処いたして決してさしつかえないものと思います。また政府としては軽々しく責任をどうするとか、責任をとつてやめる——やめたならば満足でありましようが、そうは参りません。政府責任上そうは参りません。
  32. 勝間田清一

    勝間田委員 吉田総理にお尋ねをいたします。あなたはあの芦田内閣による未曽有疑獄事件の際に、引続いて政権を担当せられました。そのときにあなたは、疑獄によつて倒れたる後の政権は、民主的ルールによつて行われなければならない、新憲法下における、あるいは終戦後における日本の新たなるよき前例をつくりたいという見地に立つて明確なる態度をとられた。私はその意味においては、当時あなたの態度に対して尊敬を持つておつた。あなたは当時あの芦田内閣が倒れた数日後において、自由党の大会において演説をされておる。私はそれを今日ながめてみて、当時の精神が今日生きるか生きないかの境目にあると考えた。あなたがあのときに言つた態度は、今度疑獄吉田内閣といわれる今日において、反省をしなければならぬことだと思う。私はあのときのあなたの演説を読んでみましよう。「昨年五月、反対党政局に立ちてより今日に至る間、庶政とかくわれわれの期待に反するもの多く、遂に昭電事件の勃発によりて政変を見るに至り、政府の面目、威信を内外に失するの醜状を呈したるは、遺憾の極みである。」とあなたは言われておる。あなたが今日まで数年間政局を担当せられた労は多とするものでありますが、とかく庶政われらの期待のごときものでなくて、今日までの幾多の外交政策、いろいろの政策を見ても、それがはつきり露呈せられておる。遂に昭電事件に至る——遂にあなたは今日造船疑獄事件に至つておるのである。政府の面目まさに内外に失墜されておるのである。しかも「かかる結果を生じたるは、芦田内閣成立の当初より無理を重ね」——あなたは少数党内閣によつて多数派工作に専念し、無理な多数派工作を行つて、多額の資金も使つておるであろうと存ずる。無理なることを重ねて、「政権たらいまわしというがごとき」−今日私はよもや保守たらいまわしをされておるものとは考えない。しかし今日一番重要なことは、政権たらいまわしのごとき「納得し得ざる言動」が報じられておることは、もはや明白であると存じます。ここにおいて私は、あなたがこの民主的な政治のルールを確立せられたことに対して、今度の時局に対してあなたが真に納得の行けるように——あなたの言う「世論の納得せざる行動はすべきではない」という態度によつて、あなたは政局に対する重大責任を負わなければならぬと私は思う。あなたの、政局に処する態度をお伺いしておきたいと存じます。
  33. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。私は今日たらいまわしなどは考えておりません。また世論の納得の行くような行動をとることにおいては五年前も今日も毛頭かわつておりません。
  34. 勝間田清一

    勝間田委員 政権たらいまわしを考えていない——しかし今日懸念されるところは、あるいは自由党諸君の間でだれだれが首班をつくるであろうとか、いろいろなうわさが今日立つておるという際に、あなたはその問題をも含めて、政権たらいまわしなどは考えないと考えておるものと私は了承いたします。あなたは政権たらいまわしによつて時局を処理する考えはないと私は理解いたします。さように考えてよろしゆうございますか。
  35. 吉田茂

    吉田国務大臣 その通りであります。どうか世間のうわさを土台にして議論をお立てにならぬように希望します。
  36. 勝間田清一

    勝間田委員 そこでもう一……。あなたは先ほど改進党の幹事長に対して、事態が明白になつた際には、いさぎよき明確なる善処の態度をとる、善処することにやぶさかでないと言われた。事態の推移いかんによつては、あなたは明白なる責任を負つて総辞職する覚悟を意味したものであるかどうか、この点を明らかにしていただきたい。
  37. 吉田茂

    吉田国務大臣 重ねて申し上げますが、政府は軽々に進道いたしません。
  38. 勝間田清一

    勝間田委員 今日私はこの問題と関連をいたして、石井運輸大臣、大野国務大臣に対してお尋ねいたしたいと思います。石井国務大臣は今日生じておるこの事態、あなたの所管されておる造船疑獄の問題、吉田内閣としても、日本国民としても、造船政策は一番の重大な問題でありましよう。しかるに今日あなたの所管せられる運輸関係においては、すでに官房長が検挙せられ、十数社にわたる各会社が次々に捜索を受け、検挙を受け、逮捕されておるという事実はあなたも御存じでしよう。あるいはあなたは交通公社等に対する今日の状況も御存じでございましよう。ここにおいて石井運輸大臣は、吉田内閣責任とは別個に、運輸大臣としての責任が当然あると私は考える。(「その通り」)その考えに対して、私はあなたにここに強要をせんとするものではない。あなたが一政治家とせられてみずから進退を決せられることは、あなたの政治的な良心に従つての問題であるから、私はそれを私自自身から申し上げることは失礼と存ずる。しかしあなたがいかなる態度をとるかということは、今日日本のすべてがこれを見守つておるに違いないと私は存ずる。あなたはどういう態度をとられるか、どういう責任をとられるか、この重大な事態に対してあなたにお尋ねいたしたい。
  39. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 いわゆる造船疑獄というものが進展しておるのはあなたのお話の通りでございます。私といたしましては、すみやかにこれらの内容がはつきりして、そうしてどういう状態であつて、どう進むべきかという状態がはつきりすることを待つておるわけでございます。それによりまして、私どもはどうするかという問題はその次の問題でございます。私ども造船の必要ということを力説し、また今度の予算にも計画造船のために予算を掲げておるわけでございますが、この本体の仕事にどうあつたかということでありますれば、私自身が責任をとるべき問題だと思うのでありますが、本体の仕事でなくして、これに関連して何か怪しいものがあるというようなことで、私が責任をとるべきものでなくして、私としては日本の海運界をりつぱに持つて行くことが、私の責任だと思うております。
  40. 勝間田清一

    勝間田委員 吉田総理は今の石井運輸大臣のあの態度を了承せられるか。石井運輸大臣の責任は、現在のいわゆる造船政策の根本に関係するものでなければ、派生的な問題であれば、責任をとる意思がないかのごとき言辞を弄された。しかし今日だれが見ても、いかに言いのがれをしようとむ、今日の運輸行政が国民の批判の前にさらされておることは明らかだと私は思う。それに対して吉田総理はどう考えておられるか。
  41. 吉田茂

    吉田国務大臣 運輸大臣の説明の通り考えております。
  42. 勝間田清一

    勝間田委員 私はきわめて遺憾に思う。しかし先ほど来私の方の佐藤君から提案された通りに——石井運輸大臣も中曽根質問によつて百万円もらつた、大野国務大臣も百万円もらつたという重大な発言があつた。政治的生命をかけるという発言があつた。しかしながらこれが真実と違うならば、大野国務大臣に対し、石井運輸大臣に対し重大なる侮辱といわなければならない。しかしこれが真実でありとすれば、今日における政治の重大なる問題といわなければならぬ。一体中曽根が真なのか、あなたたちが真なのか。一体どうなのか。それをあなたたちは明白にする必要がある。これを明らかにしてもらいたい。御両人……。   〔発言する者多し〕
  43. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  44. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 先日の質問に対しまして私がお答えした通りのことでございます。私は断じてそういうことはありません。従つてこの問題に対しまして、中曽根発言につきましては、私は議員の名誉のために、国会の権威のために、国会がしかるべく行動してくれることを期待して待つておるのであります。
  45. 勝間田清一

  46. 大野伴睦

    大野国務大臣 私はこの間ここではつきり中曽根君に、一体あなたは無責任な荒唐無稽な発言をされたが、その出所は、その種はどこから出たものであるかということを、私は中曽根君に追究いたしましたが、彼は答弁がございませんでした。   〔発言する者多し〕
  47. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  48. 大野伴睦

    大野国務大臣 それを出さなければ、その根拠がわからぬじやないか。荒唐無稽な言を弄して議員の名誉を傷つけるとは何事であるか。しかし私は天地神明に誓つて、さようなことはないと言うたのである。その有田君から……(発言する者あり)有田代議士から私が百万円もらつたという。有田君は今日すでに取調べを受けているまつ最中でありますから、これはもう数日間のうちに結論が出ると思いますが、私は断じてさような……(発言する者あり)この間言うた通り、世間で親分子分というておる、子分から金をもらうほど耄碌しないということをはつきり言うておるじやないか。断じてさような献金は受けておりません。はつきり申し上げておきます。   〔発言する者多し〕
  49. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  50. 大野伴睦

    大野国務大臣 なお懲罰委員会に付すべく、すでにわが党においてその手続がとつてあります。(「とつてない」と呼び発言する者多し)ちやんと総務会できまつて、ちやんとその手続がとつてあります。   〔発言する者多し〕
  51. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  52. 勝間田清一

    勝間田委員 これは御存じの通り大野国務大臣も、一身上の重大な問題であるから、あなたの名誉のためにも、最後まで結論をつけられることが、同時にあなたのためであり、国会のためであると私は思う。しかし今日残念なことには、なるほど懲罰は出されたが、これは三日間の期限があるから、それまでは議運に出さないようにしてもらいたいといつて、きようが期限ではないか。こういう状態を続けておる限り、これはなれ合いの取引が行われるのではないかとさえ、私は考えざるを得ないのである。そういう事態に追い込んで行くことが、事態真相を究明することには断じてならない。私はその意味.においてきわめて遺憾にたえないのである。  同時に私は最後に吉田総理に御質問をいたしたいと思う。私は吉田総理の今日までの政策を見て、対米一辺倒の政策、これが日本民族の独立の気魄というものを失わしめておる。今日巷間においては、アメリカの援助に従いさえすれば日本の国はよくなるかのごとき風潮さえ今日生んでおる。真に日本の独立自主の気魄ある政治を行うことにおいて、あなたは重大なる失策を犯しておると私は思う。   〔発言する者多し〕
  53. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  54. 勝間田清一

    勝間田委員 また、日本の今日における経済がきわめて重大であることは御存じの通りでありましよう。しかるに今日朝鮮の特需、朝鮮の動乱に便乗いたして、日本の経済自立の好機を逸せしめ、架空なる繁栄の日本経済をつくり上げてしまつた。ここに出ておるものは、真剣に日本の再建を志す産業の姿では断じてありません。また今日における軍事基地化の政策が、あるいは娘を売り、ヒロポンをつくり出し、いわゆる基地日本の頽廃せる姿を生み出しておることは、あなたの安保条約締結によつて、明白に今日に露呈せられるに至つたものであります。放漫なる自由経済、賭博の経済によつて、これまた日本の経済の根本が破壊されて参つたのであります。今日の保全経済会の問題を見てもわかる通り自由党の財政経済政策というものが保全経済会の問題を生み出し、日殖の問題を生み出したことは、大蔵大臣、吉田内閣の財政経済政策の実体から導かれて来たものであることは、明らかであります。このことを今日考えてみる場合において、あなたの政策が今日内外ともに失墜せられた当然の原因がそこに私はあると思う。ここにおいてあなたは当然今日の疑獄事件を中心として総辞職せらるべきであると私は思う。しかし、この場合においてあなたが政権に恋々するという態度がたといないにいたしましても、今日の逡巡せる状態を考えてみた場合に、私はそこに幾つかの障害があると考える。それは何であるか。まず第一に自分でなければこの時局は乗り切れないというあなたには自負心があられると私は思う。この自負心が今日政局を混迷に陥れておることを私は残念に思うのであります。今日の予算を見ても、あなたはどうしてこの予算が実行できると思われるか。疑獄により今日政治の信は地に落ちたのである。かかる状態のもとにおいて財政収入というものが確保できるかどうか。今日耐乏を要求せずしてはこの予算は遂行できないことは明らかである。その耐乏をあなたの内閣によつて実施することができるかどうか。私は今日の吉田内閣のもとにおいては、たとい二十九年度予算が形式上成立しても、真に国民の納得のもとにおける遂行は断じてできないものであると考える。(拍手吉田内閣はその意味において大きなる責任を感ずべきではないであろうか。さるがゆえに今日人心一新政策をとることが、私は何にもまして政治の要諦であると考えます。私はここに吉田総理が明らかに政局に対して責任をとるか、吉田内閣態度を御質問いたして私の質問を終らんとするものであります。
  55. 吉田茂

    吉田国務大臣 再び申し上げますが、政府としては軽々に進退はいたさない考えでおります。
  56. 倉石忠雄

    倉石委員長 河野密君。
  57. 河野密

    河野(密)委員 私は、ただいままでに吉田内閣総理大臣が同僚議員に答えられましたことと重複することを避けつつ、吉田総理大臣の時局に対する所信を承りたいと存じます。  本国会が再開いたされましてから暴露いたされました諸般の事件は、保全経済会日本殖産、山下汽船、飯野海運、名村汽船、日立造船、浦賀船渠等々実に枚挙にいとまがないのであります。しかも、昨日全国一斉に行われた八つの海運会社並びに陸運関係の諸会社、諸会社の手入れによつて汚職事件はまさにその最高点に達したかの感があるのであります。保全経済会の問題に関しましては、国会関係においてすでに行政監察委員会に喚問せられた人々だけでも、同僚早稲田、平野、大谷等の諸君、あるいは広川、松本等の一人々、それぞれ爼上に上つて、うわさに上つており・あるいはその議に上つた人々の中には、自由党のそうそうたる大幹部の人々が渦中の人物としてクローズ・アップされておるのであります。伝えられるところによりますならば・保全経済会の伊藤理事長のメモが発表いたされますならば、さらに九十数名に上る大小の政客がその中にあげられておるとのことであります。日本殖産金庫の問題に関しましては、その経理乱脈は保全経済会以上であると伝えられ、政治家の名も従つて大きく浮び上つておるのであります。造船疑獄に至りましては、その深さその広さ、今日において予測を許さざるものがあるのであります。すでに有田二郎君が逮捕せられ、日立造船に関して西郷吉之助氏が取調べを受けておる。壷井運輸省の官房長、今井田経済審議官、造船工業会の家宅捜索等々、まつたくその前途予測を許さざるものがあるのであります。しかもこの間にあつて、あるいは事件関係ありとし、あるいは事件のもみ消しに一役買つたと称して追究せられ、もしくは糾弾されております閣僚、あるいは閣僚たりし者は、数名その名があげられておるのであります。閣僚と申しまするのは、もちろん吉田内閣閣僚であります。閣僚たりし者という者も、すべてこれ吉田内閣閣僚たりし者であります。換言するならば、吉田首相がかりに清廉潔白なりといたしましても、閣僚の中に汚職の飛沫を受くる者がこれだけ多くありといたしますならば・これ吉田内閣責任以外の何ものでもないと存じます。(拍手)私は、吉田総理が自分一人が清廉であるという態度をもつてこの事態をほおかむりされることは、許さるべきことではないと存ずるのであります。先般来本委員会その他におきましてしばしば質問をいたされましたのに答えて、緒方副総理は、閣僚の中にさような者がありとは考えないと答弁をいたしておるのでありますが、今日この事態に対して、国民だれ一人としてこの言を信ずる者はございません。(拍手吉田総理大臣はこの期に及んでもなお閣僚の中に一人の関係者なしと断言することができるのでありますか、その点をまず承りたいと思うのであります。
  58. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は閣僚のうちからそういう人はないと断言いたします。また確信いたします。ただしばしば申す通り事態真相がいまだ明らかならざる今日において、とやこう申すことははなはだ内外の——国民民主政治に対する信用の上からいつてみても、外国の日本に対する信用の上からいつてみても、私は反対党諸君といえども、軽々しく同僚議員の名誉を傷つけるような言葉を発言せられないように、切に希望いたします。(拍手
  59. 河野密

    河野(密)委員 私はもとより内閣の威信を傷つけるとか、ことさらにそういう言辞は抑制すべきものと存ずるのでありますが、今日私たちが問題といたしておりまする政局混迷あるいは政局不安定の原因は、あげてこの点にあるのであります。吉田総理大臣が今まで同僚議員の質問に対してしばしば言われましたことは、問題が明白になつたならば善処をする、こういうことであるのでありますが、問題が明白になる前に政局の混迷がすでに来ておるのである。国民は問題の明白をまたずして、現内閣信頼することができず、現政局に対して協力をすることができない立場に追い込まれておると思う。この事態を一体どうなさるか。これが吉田総理大臣に対してわれわれが尋ねんとする要点であります。問題がはつきりするまでにすでに混迷が来ておる。政局不安定の状態が来ておる。この事態に対して吉田総理責任いかん、これが今日問題であります。総理はこの事態に対して一体いかにしてこの混迷せる政局に対処せられんとするのであるか。事態が明白にならざる前に、すでに吉田内閣に対する国民信頼地を払うているこの事態に対して、一体吉田総理大臣は何とされるのであるか、この問題をお尋ねいたしたいのであります。
  60. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。先ほど申しましたように、内閣の威信を持つて行きたいというふうに私としては存じております。しかしながら今日国民が、政府信頼しない、政党信頼しない、国会信頼しないというところまで来ておるとは、私は断じて考えないのであります。
  61. 河野密

    河野(密)委員 私は吉田総理大臣に第二にお尋ねいたしたいのでありますが、この事態になつて閣僚の中から、委員会において、あるいはその他の機会において、名をあげられる者が数名出ておる、もとより私たちはいたずらに傷つけんとするような意図を持つものではございませんが、しかしこの事態に対しては何らかの態度をとらなければ相なりません。先ほど同僚勝間田君の質問に対して、大野国務相、石井運輸相が弁明をされたのであります。私は先般の中曽根発言に対しまして、大野国務相、石井運輸相が、もしその言のごとく、ほんとうに何らのやましいことがないといたされますならば、議員の面目にかけて、あるいは国務大臣としての面目にかけて、おそらくもつとはつきりした態度をとるべきものであると思うのであります。(拍手)しかるにこの委員会の前においてただ弁明をするということだけによつて、断じて国民を納得させることはできません。  私は吉田総理にこの際においてお尋ねするのでありますが、吉田総理大臣は、——をもつて名ざされておる閣僚の一人々々がもしその無実の冤であるとするならば、その無実の冤であることを、なぜ国民の前にはつきりした態度をとるに至らないのであるか。(「何を言うのだ」と呼び、その他発言する者多し)私はその点を吉田総理大臣にお尋ねする。   〔発言する者、離席する者あり〕
  62. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  63. 河野密

    河野(密)委員 国民が納得に値するだけの弁明なり告白なりをして、この責任をとらないのでありますか。   〔発言する者あり〕
  64. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  65. 河野密

    河野(密)委員 私は吉田総理大臣の名において、閣僚の一人々々を俎上に載せて、この明白なる態度国民の前に明らかにいたすべきところの責任ありと考えるのであります。    〔発言する者あり〕
  66. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。ただいま騒音のためによく聞き取れない節がありましたが、ただいまの河野君の発言中、もし不穏当と認められる箇所がありましたならば……(「あるある」と呼び、その他発言する者あり)静粛に願います。——静粛にしなさい。委員長は速記録を取調べた上、不穏当の箇所がありと認めましたときには、適当なる措置をいたします。  なお、この際お願いをいたすのでありますが、どうぞ審議の最中は、審議の促進に御協力を願う意味で御静粛に願います。なお、委員外の方々が常習的に発言されて妨害されることはきつく御遠慮を願います。
  67. 河野密

    河野(密)委員 私の言葉の中に不穏当な言葉がありましたら取消しをいたしますが、私の趣意とするところのものは、同僚議員から公式の席上において名ざされたる閣僚がある。その閣僚は、もしかかる事実なしとするならば、国民の前にそのしかるゆえんをはつきりすべきところの責任がある。これをただそれだけでもつて——もつと適当なる処置をとるべきである。吉田総理大臣は内閣総理大臣として、もし閣僚のうちにかかる議員からの指弾を受ける者があつたならば、そのしからざるゆえんを一人々々について国民の前に明白にせよと命じになる義務があると私は考えるのでありますが、総理大臣の所見を承ります。
  68. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は閣僚の間にうわさのような問題はないと確信いたします。ゆえにあとは各自の自由行動にまかせます。(笑声)
  69. 河野密

    河野(密)委員 私はただいまの吉田総理大臣の御答弁には満足いたしませんが、次に総理大臣にお尋ねをいたします。  総理大臣は先ほど来しばしば、軽々には内閣の進退を決しない、こういうことを御答弁になつて、しばらくは吉田内閣をもつて政局を担当するかのごとき口吻を漏らされておるのでありますが、私は現実の事実をあげて総理大臣に、これでも内閣担当の責任をとり得るやいなやということをお尋ねしたいのであります。  その第一は、与党たる自由党吉田内閣とはたして連繋を持つておるのか。自由党の総裁である吉田総理内閣を組織しておられるにかかわらず、自由党内閣が立案された法律案に対して、自由党のそうそうたる幹部が、大衆の前で反対演説をされておる。先般二月十二日に開かれました繊維業者の大会に私が行つてみますと、繊維課税は自由党内閣が決定した政策である、その繊維課税に対して自由党の平党員がなされるならば私はあえてとがめないが、自由党のそうそうたる代表の幹部が、自分はこの案に反対であるということを大衆の前で述べておる。かくのごときばらばらなる政府と与党との態度をもつて、はたして政局を担当することができるかと、私はまず吉田総理にお尋ねをいたしたいのであります。  さらに先ほど勝間田君からも質問がございましたが、吉田内閣の最も重大なる問題は、二十九年度予算に現わされたところの耐乏生活を国民にしいて、この時局を乗り切るという問題であります。しかるに吉田内閣の一枚看板である耐乏予算、国際収支の均衡をはからんとする予算は、はたしてこれを実行し得る確信を持ち得るであろうか。昨年末の外貨の支払い超は一億九千万ドル、年度末において二億四千万ドルというのが、大蔵大臣初め経済審議庁長官の本委員会における再三の言明であつたのであります。しかるに今日の外貨の状態はどうでありましようか。いわゆる緊縮予算の先物を買つて、見込み輸入の旺盛なること今日のごときものはないのであります。羊毛、原皮・大豆・生ゴム、砂糖等の投機的輸入の激増、石油、木材、カリ肥料、燐鉱石等の輸入の激増、自由承認制の申請の殺到、輸入物資の見込高による金融筋の積極的なる融資によつて、実質的なる赤字の見込みは三億三千万ドルとすでに言われておるのであります。円に対するスペキュレーションは今日国際的に行われつつある。すでに円の為替レートは崩壊の寸前にあるではありませんか。(拍手)かかる吉田内閣の一枚看板である耐乏予算、国際収支の均衡をはからんとするこの政策すら、国民信頼を一つもかち得ていないではありませんか。そればかりではない。今日八百四十万件に達する税金の滞納がある。その総額は千二百億に達しておるのであります。今日国民は何と言つておるか。疑獄に使われる金をわれわれがなぜ納めなければならないか。(拍手疑獄の問題が白日のもとにさらされて、内閣自身が責任をとるにあらざれば、国民は断じて税金を納めません。(拍手)外貨の現状といい、国民のこの気持といい、一体どこに内閣を担当して行くところの情勢があるでありましようか。私は吉田内閣総理大臣は虚心坦懐に日本の現実を直視して、その態度を明確にせられんことを期待してやまないものであります。内閣総理大臣責任ある答弁を私は求めます。
  70. 吉田茂

    吉田国務大臣 自由党内閣とは一心同体であります。その間に何らの間隙はございませんから御安心を願いたいと思います。  政策については今御指摘のように、二十九年度の予算に組まれた政策が実行できるかできないか。現に輸入は激増されておるのじやないかというお話でありますが、激増しつつあるということは、すなわちこの内閣政策が実行ができるということを前提として輸入が激増しておるのであります。輸入が激増し、輸出が激増する、一進一退のあることは当然のことであります。しかしながら何がゆえに激増するかといえば、この政策、耐乏生活の政策のために輸入は会後圧迫されるであろうという予想からして、今日現在において輸入が激増しておる。すなわち現内閣政策が今後実際上実質においてますます実施せられるという前提のもとに、輸入の激増を見つつあるのであります。また税収入は順調に進行いたしております。
  71. 河野密

    河野(密)委員 私は今吉田内閣総理大臣の御答弁なつたことでは決して満足いたしません。ほかの問題については、それは吉田内閣総理大臣が、いろいろにさぎをからすと言われることも私は容認することがあるかもしれません。しかし事現実の問題として、政策の破綻は国民生活全体の破綻と正して現実に現われて来る問題であります。(拍手)現在おそらく吉田内閣以外にこの経済政策が実行し得ると考えておるものは、日本国民はおろか世界中どこにもございません。(拍手)かるがゆえに円のスペキュレーションが国際的に行われておるのであります。こういう事態に当面をして、ただ単なる一時のおざなりの答弁をもつて、この事態を切抜けようとなさるならば、それはたいへんな心得違いであると存じます。もつと深刻に私はお考えを願いたいと思う。私は吉田総理大臣に申し上げたいのでありますが、私は今日まで数回吉田総理大臣にお尋ねをいたしましたけれども吉田総理大臣にお尋ねをすると遂には、一国の宰相としての礼儀を失しない範囲において私はお尋ねをして来たつもりであります。いかなる場合においても、私は常にたとい敗戦国であつても、大国の宰相としての尊敬を払つてお尋ねして来たつもりであります。しかしながらただいまのごときおざなりな答弁に対して、私は断じてこれを許すことはできないと思う。(拍手)これは日本国民全体の死活に関する問題である。ここに国際収支の面よりして、あるいは国内の経済の面よりして、吉田内閣に対する信頼が地を払つておる現在において、吉田内閣総理大臣が根本的なる考え方の建直しをするにあらずんば、断じてこの時局を切抜けることはできないと私は思うのであります。国会においての論議は、多数を頼んであるいは乗り切ることができるかもしれませんが、ほうはいとして外にあるところの大衆をごまかすことは断じてできないと思います。(拍手)私は吉田総理大臣のほんとう時局に対する責任ある態度を、いま一度明確にしていただきたいと存ずるものであります。
  72. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の態度について何と御批評せられても御自由でありますが、政府としては予算に組み込まれた政策は断々固として実施いたすつもりであります。
  73. 河野密

    河野(密)委員 私は次に吉田総理大臣にお尋ねいたしますが、吉田総理大臣は、閣僚の中においてある営利会社に関係する閣僚がそのままおるということは、一体これは政治の常道として許さるべきものとお考えになるかどうか。現在問題となつております造船の問題に対して、私がちよつと政府からいただいた資料をくつただけでも、小笠原大蔵大臣が太平洋海運の取締役、大野伴睦君の新日本海運の取締役、あるいは山縣勝見氏の新日本汽船の社長・協立汽船の監査役向井忠晴、明治海運の会長内田信也、こういういろいろな閣僚もしくは閣僚たりし者でありますが、閣僚の地位にあつた者、また現在ある者が、それらの地位を兼ねておつたということは、これは明らかな事実であります。アメリカにおきましても、たとえば国防長官のウィルソン氏はGM会社の社長であります。内務長官のマッケー氏はGM会社の販売人であります。ハンフリーという財務長官は石炭業者であります。しかしこれらの人々が閣僚となる場合においては、すべてその地位を去つております。しかるにわが国のみがひとり営利会社、しかも国家の恩恵を受け・国家の補助を受けなければならない会社の取締役あるいは監査役という地位を兼ねておる。しかもその地位を通して閣僚であつたこの事実に対して、総理大臣はいかに考えられるのであるか。かくのごときことは望ましいとはもとよりお考えにならないと思うが、どうお考えになるか、総理大臣責任ある御答弁を願いたいのであります。
  74. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府委員をして答弁いたさせます。   〔発言する者多し〕
  75. 河野密

    河野(密)委員 政府委員答弁は求めない。政府委員答弁はいらない。閣僚たる地位に対する政治上の責任の問題である。法律の解釈ではない。
  76. 倉石忠雄

    倉石委員長 法律上の見解を説明するというのだから、一応聞いたらどうです。その上でやりましよう。
  77. 河野密

    河野(密)委員 総理大臣の見解を聞いておる。法律上の問題を聞いているのじやない。
  78. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは、法律上の見解を説明するというから、それを聞いて、その上でもう一度お尋ね願います。佐藤法制局長官。   〔河野(密)委員法制局長官は必要ない」と呼び、その他発言する者多し〕
  79. 倉石忠雄

    倉石委員長 発言を許しました。——発言を許しました。
  80. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これまでもたびたびお尋ねがございましたが、一応制度上の問題といたしましては、国務大臣その他特別職のものについては、官吏服務規律によりまして、総理大臣の許しがあれば、会社その他の役員を兼ねることができることになつております。制度上はさようになつておるわけであります。要は、それについて不正なことが許されるか許されないかという問題であります。   〔「そんなことはわかつておる」「総理大臣答弁はどうした」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  81. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  82. 河野密

    河野(密)委員 総理大臣答弁を願います。
  83. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたしますが、今の法制局長官の説明をもつて尽きておると思います。私は、政府としては、法律の許さざるところ、また法規に合致せざることは許さないつもりであります。しかしながら、法規でこれを許しておる以上は、あえてこれを妨げる理由があるならばとにかくでありますけれども、妨げる理由のない限りは、なるべく自由に許してやりたいと思います。
  84. 河野密

    河野(密)委員 総理大臣の許可があるならばその地位についてもよろしい、してみれば、この造船疑獄がこれだけ起り、かくのごとき事態を生じたについては、これらの閣僚がその地位にあり、疑惑を受けることありとするならば、その責任総理大臣が許可を与えたるそのところにある。その点を私は総理大臣責任ある答弁を求めたいというのであります。もう一ぺん御答弁願います。
  85. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたしますが、結果からいつてそういうふうにこじつけられることがあるかもしれませんが、政府としては許してさしつかえないと考えておつたから許したのであります。
  86. 倉石忠雄

    倉石委員長 河野君、お持合せの時間が参りました。あと一つでよろしゆうございますね。
  87. 河野密

    河野(密)委員 この問題に対しましての総理大臣答弁は満足することはできません。断じて許すことができないのであります。こういうことが疑獄汚職の最も根源をなすものであると私は思うのであります。  最後にそれでは私はお尋ねいたしますが、先ほど勝間田君からも御質問がありましたが、昭和二十三年十月十五日に第二次吉田内閣が成立をいたしましたと遂に、吉田総理大臣はみずから法務総裁を兼任されまして、法務庁に臨んで、事務引継ぎに際しまして、綱紀粛正に関する異常なる熱意を表明するところの御演説を、法務庁の役人諸君の前でなされたのであります。そのと遂に総理大臣は、吉田個人がもし悪いことがあるならばいつでもひつくくれ、こういうことを再三繰返されて法務庁の役人を激励されたと聞いておるのであります。その当時法務庁の法務次官をしておりましたのは今日の検事総長佐藤藤佐君であります。さらにその当時の検事をしておりました者の中には今日の馬場検事正もあるのでありまして、もとより総理大臣は、この疑獄汚職の問題に対して、徹底的なる検察庁の活動を促すことに対しては、何ら制肘を加えられる御意思はないものと私は感じますが、その通りである下。もしその意思であると考えられますならば、その通りであるといたしますならば、総理の率いられる自由党が、有田二郎君の逮捕要求に対して期限を付し条件を付せられたことに対して、総理はこれを容認されんとするのであるか。この総理考え方と、総理の率いておられる自由党内の動き方というものはまつたくうらはらである。ことに、徹底的なる検察庁の活動を期待すると称せらるる総理大臣のもとにおいて、国会内において、あるいは保全経済会の問題に対し、あるいは造船疑獄の問題に対して、徹底的なるメスを加えんとする議員の行動に対して、最も反対的立場をとられるのは自由党諸君である。この事実に対して総理大臣はいかなる責任を感じられるのであるか。私は、かくのごとき状態を見るにつけて、もう自由党に政局担当の能力なし、吉田内閣に現下の政局を担当すべきところの資格なしと、国民全体の意向を代表して断ぜざるを得ないのであります。こういう事態にこそ吉田総理大臣は、憲政の常道に従つて、その反対党であるところの、保守政権に対抗する革新政権の樹立に向つて、その大道をお開きになることが当然の筋道であると存ずるのでありますが、吉田内閣総理大臣のこの問題に対する責任ある、確信ある意思の表明を求めまして、私の質問を終りたいと思います。
  88. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。検察庁行動については、政府としては何らの制肘を加えません。干渉はいたしません。またただいまの有田君の事跡については、これは国会内のことでありまして、政府としてはこれに干渉いたしませんが、もしあなたのようなお考えの方があるならばけつこうな話であります。議会においてなぜ否決しなかつたかということになるのであります。
  89. 倉石忠雄

    倉石委員長 黒田寿男君。
  90. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は本日は確実性を万人によつて認められておりますような材料を基礎にいたしまして、最初に総理大臣に御質問を申し上げてみたいと思います。  二十九年度予算案は緊縮デフレ予算案であります、政府はこういうように主張しておられるのでありますが、このことは、この予算案が成立して実行に移される段階におきまして、国民のすべてが個人的生活において緊縮、節約の生活を実践しなければならぬという要請を含んでおると思います。この点について念のため総理の御見解を聞いてみたいと思います。
  91. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。ちよつと聞き漏らしましたが、何ですか、この予算案の趣意のうちには、国民にも耐乏生活を求める考えがあるだろうか、こういうことですか。
  92. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうです。
  93. 吉田茂

    吉田国務大臣 それはその通りであります。私はそう希望いたします。
  94. 黒田寿男

    ○黒田委員 その国民の中には、総理大臣初め内閣閣僚をも含んでおると私は思う。ことに内閣はこの予算案の作成者でありますから、総理初め閣僚は、みずから緊縮的生活を、個人的にもまた大臣としても率先して実行しなければならぬと私は思うのです。これは国民に対する道義的責任であるというだけでなくて、予算案の審議を求められております国会に対する政治責任であると私は思うのでありますが、どうでありましよう。
  95. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたしますが、各大臣の私生活については、政府としては干渉いたす考えはございません。また各省において予算の実行等においては、十分厳密なる注意をもつてその実行に当るように命令をいたしております。
  96. 黒田寿男

    ○黒田委員 先ほど申しましたように、閣僚国民の一人であります。この予算案を実行する場合には、すべての国民が節約的生活を行わなければならぬものだということを私も考え総理もお認めになつたのですから、私生活という意味でなくて、大臣も個人的生活においては、率先して節約生活を営まなければならぬという責任があると私は思う。国会に対してこのような予算を審議することも求められております内閣閣僚は、個人的にも節約的生活をみずから率先して示すという政治責任があると私は思う。これは単なる私生活について云々するという問題ではないのです。私は内閣とこの二十九年度予算の性格との関係でこれがあると思いますので、もう一度お尋ねいたします。
  97. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたしますが、私は多少黒田君と考えが違つております。各個人——各大臣といえどもあるいは政府の役人といえども、これは一方において私人であることは同様であります。ゆえに、公私の区別を捨てて、政府が耐乏予算を組むから家庭においても節約しろという命令はできないと思います。私はすべきものでなく、各自の考えによつていたすべきもの、こう考えます。
  98. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はいやしくも国民に耐乏生活を求める以上、閣僚が率先してそうしなければならぬ、これは常識であると思う。そのことをやらなければならぬと思う。これをやらなければ内閣としてこの予算案の審議を国会に求める資格はない、私はそう思う。そこで私は確実な事実について言いますが、現内閣閣僚が、ことに海運行政を主管する大臣をも含めて、海運業者と高級料亭、しかも第一級の料亭で会食したという事実がある。これは佐竹メモが示しておるというだけでなくて、当の運輸大臣が国会委員会でこれを認められた。ただ会食の目的は社交的なものであつたとは仰せられましたけれども、こういう会合に現内閣閣僚が出席しておるということは、運輸大臣自身で認められておるからこれを質問するが……。   〔発言する者あり〕
  99. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  100. 黒田寿男

    ○黒田委員 そういう事実がある、もう一度運輸大臣にここでお尋ねしてみましよう。目的は社交的なものであつたとしても、そういう会合に出席されたかどうか、もう一度私はお聞きしたい。
  101. 吉田茂

    吉田国務大臣 御質問の趣意は、大臣でそういう料亭に出入りしたことがあるかということですか。
  102. 黒田寿男

    ○黒田委員 これは運輸大臣に聞いております。
  103. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 これは何度も御答弁をあちらこちらでしたのでありますが、日は覚えませんが、確かに飯を食つた覚えがあります。
  104. 黒田寿男

    ○黒田委員 耐乏生活を二十九年度予算案の実行を通じて国民に要請する政府閣僚が、かような個人的生活を行うということは、これは耐乏生活ではないのです。こういうぜいたくな生活を行うということは、この予算案を提出する内閣閣僚たるの政治的資格を欠如するものと私は思う。このような高級料理屋に出入りするような閣僚をそのままにして、吉田総理大臣は耐乏生活を国民に求められますか、その間に矛盾がないのでありますか、これを私は総理大臣にお尋ねしてみたいと思います。
  105. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は閣僚の個人生活に立ち入つてとやかく申す考えはございません。
  106. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はそのことは、国民に向つて総理大臣が耐乏生活を求めるという、その要求を放棄せられたことであると思います。そういう無責任総理大臣の言明では、この予算案の審議を求められる政府態度とその言明との間に、はなはだ重大な矛盾があると私は思う。私は、こういう閣僚の生活態度を許す内閣には、国民に対し二十九年度予算案に従う緊縮生活の要求をあえてなすだけの資格はないと思う。こういう内閣は、この予算案との矛盾という点からしても、存在の資格あるものではないと私ども考えるのであります。私ども総理大臣に対して辞職すべきだという意見を持つております。それは今続発しております汚職事件について政府政治責任があるとこう思うからであります。どんな責任があるか、腐敗はどうして起るかということを考えてみなければならぬと思う。先ほど勝間田君が保守政治勢力の腐敗の原因について、それは保守政党と財閥との関係にありということを指摘せられた。私はそれは一般論として根本的に正しい考え方だと思います。しかし第二に、現在の段階におきましての保守政治勢力の腐敗の根源は何であるかということをもう少しつつ込んで考えてみますと、それは保守政治勢力の基礎をなしております現在のわが国の経済機構そのものの老廃性、腐敗性、不健全性にあると私は思う。第三には、わが国の経済のこのような不健全性、腐敗性は、米国の対日政策関係がある。わが国の財政経済の米国への隷属性が、わが国の経済、財政、産業、貿易のあり方を不健全な、ゆがんだものにしておると私は考える。従つて米国への隷属性ということも、保守勢力の腐敗性の根源になつておると思う。しかしながら今日このような問題をここで深く論ずる時間がございませんので、そこで第四に、腐敗性の根源として考えられるものとして、現内閣政策と直接に関係があると思われるものを私は指摘してみたいと思うのです。  今具体的に現われております汚職事件のおもなものは、保全経済会の立法化目的のためにする国会議員に対する献金事件、及び造船疑獄に関する閣僚及び国会議員の涜職問題、こういう問題が今現われておるのであります。私は保全経済会について考えてみたいと思いますが、政府は中小業者に対する積極的な金融対策を欠いておつた、もし健全な中小業者金融対策が樹立されておりさえすれば、町の不健全ないわゆる金融機関が跋扈するという余地は私はなかつたと思う。こういう社会的事象が発生するということについては一これは大蔵大臣にお聞きしてみたいと思いますけれども、腐敗、汚職の問題とは別にいたしまして、このような金融機関を最近まで放置しておつたということは、現内閣の中小業者金融対策において欠けるところがあつたのではないか、その責任を感ぜられるところがあるかどうかということをお聞きしてみたいと思います。
  107. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 中小企業金融につきましては、御承知のごとくに、中小企業金融公庫を初め、あるいは商工中金あるいは相互銀行、その他各種のものがあり、さらに信用保険制度の拡大によりまして、今度は相当市中銀行をたくさん利用し得るように相なつておるのであります。ただ今御指摘になつた問題について申しますと、たとえば保全経済会は、これは私がよく申した通り、金融機関ではないのであります。預金を扱うものでもなければ、貸金を扱うものでもない。これは御承知のごとく、不動産を買つたり、株を買つたりしておる思惑でありまして、いわば一つの、そこらの町の人が投資しておると同じものであります。これを取締るということは、今までの法規にはなかつたので、これが法の盲点になつておる、こう申したのであります。従つてアメリカにおける青空法のようなものによつて、こういう誇大な広告を出してやるものについて——あなた方は金融機関、金融機関というような言葉を使われるが、これは金融機関では全然ありません。預金を扱つているものでも、貸金を扱つているものでもなく、金融の金の字も含まれておりません。すなわちこれはまつたく投資機関であります。けれども、こういうものも取締る必要がある、こういうふうに考えまして、このごろ法務省と打合せをいたしまして、近くアメリカの青空法等がしたような考え方をもちまして、誇大な広告を出して、不特定多数の者から信用を受ける、受信行為を行うようなものについての取締り法規を近く本国会へ出したいと考えているのであります。
  108. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は保全経済会というようなものを存続させておつたのは、政府の中小業者金融対策に欠けるところがあつたからだ、こういう見方をしているのでありますが、こういうものを放置しておつたということについて、大蔵大臣は責任をお感じに触りませんか。
  109. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただいま申しました通り、大蔵省といたしましては、預金業務を扱つておれば、これはすぐ取締れます。また貸金業法もありますから、貸金を扱つておれば、取締れます。しかしこれは今申し上げました通り、不動産を買つたり、株式を買つたりする思惑だけをしている、しかもこれは匿名のものでありまして、これを取締る法規は大蔵省はどこにも持ち合せておりません。
  110. 黒田寿男

    ○黒田委員 大蔵大臣の御答弁は、ただ技術的な問題の取扱い方でありまして、責任問題についてはことさらに触れておられぬと思います。そこで私は、要するにこういうものが存在しておつて、これが立法化運動を起す余地を社会的に与えておつたということが、保全経済会を中心とする国会議員への献金等の汚職問題が発生した原因と思う。これは政府政策関係があり、政府責任があると私は思います。それから造船疑獄の問題でもそうです。あのような外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法のような、業者に対し多大の利益を与えるような立法をする、そういう立法を要求して業者が運動する、それに応じて、そういう立法を行えば、業者がその恩恵にあずかるために競争するということはあたりまえである。そこであのような立法を業者の要請に基いて政府がなしたということは、今回の造船疑獄における政府政治責任の存するところであると私は考える。これを顧みないで、ただいたずらにだれだれは被疑者であるとかないとかいうようなことを言えるだけでは、問題の根本的な部分に触れることにならぬと私は思います。吉田総理大臣は現在の造船疑獄の発生について、このような造船融資利子補給に関する政府政策がこれと関係があるというようにお認めになるかどうか、その点を伺つてみたいと思います。
  111. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、しばしば申す通り、全体の真相がわかつた上において政府は善処して参ります。その善処を怠れば、政府責任がありますが、しかしながら必ず善処いたすことを考えております。
  112. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はなおもう一点承つてみたいと思います。私はただいまの総理の御答弁に満足することはできない。こういう立法をしたことが腐敗発生の原因だ、こういうふうに考えます。  いま一つ、海運業者との関係につきまして、これは時間もございませんが、政府にお聞きしてみたいと思いますことは、これは大蔵大臣に最初お聞きしてみたいと思います。元来補給金とか補助金、それから助成金というような性質のものは、国家が地方公共団体その他個人でもよろしいが、そういうものに与えて、後日返還を求めないというところに特徴があるというように私は考えているのですが、その点はいかがでしようか。
  113. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 補助金とか助成金的なものはなるべく少くしたいというので、今度相当大幅に整理をしたのでありますが、しかし国策上やむを得ぬものがありますので、それらについては出しております。御承知のごとくに、返還を求めないのが建前であります。しかし今造船融資の問題についてお尋ねでありますと、これは利息を延期しているのが開発銀行等の建前でありまして、業態がよくなればこれはみな返して行くことになつていることは法の定むるところであります。   〔「時間々々」と呼ぶ者あり〕
  114. 倉石忠雄

    倉石委員長 黒田君、お時間が来ております。
  115. 黒田寿男

    ○黒田委員 この造船融資の利子補給に関するもの以外に、補給金とか助成金あるいは補助金と称するもので、後日返還を求めるというようなものが他に例があつたでしようか。私は寡聞にしてこれを知らない。造船融資において初めてこういう特別なやり方が行われているように思うが、これをお尋ねしてみたいと思います。
  116. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 通産省所管の補助金は、大体後日返還ということに相なつております。
  117. 黒田寿男

    ○黒田委員 後日返還するということになつて来ると、これは先般横路君等の御質問の中に出たようでありますが、これは単に与えてしまつたものでなくて、後日返還する、いわば出世払いのようなものだというようにお考えになつておるということですが、念のためにもう一度お聞きしておきたい。
  118. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 出世払いというと非常に感じが妙でありますが、そうじやありませんで、業務の状況に応じてこれを返還させることに相なつております。
  119. 黒田寿男

    ○黒田委員 そういたしますと、要するに後日一定の条件が発生した場合には返してくれという性質のものでありますから、これはやつてしまつたものでないということは明らかであります。そうするとそういう債権債務の関係が一国家と海運業者との間に存在する。私はこの造船利子補給の場合には明らかに法律を見ましてもそうなつておると考えます。そうすると一体、やつたものでなければ、貸したものということになるのでございましようか、ほかに何か解釈の仕方があるのでございましようか、どうでございましようか。
  120. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 法律的解釈は、私は専門家でないからどうもはつきりいたしませんが、しかしこの点につきましては後日返還し得る、これは開発銀行あるいは貸出し銀行にそれぞれ返還する、こういう建前になつておりますから、御解釈のごとくに解釈できるかとも存じますが、私は法律の専門的な知識を持ち合しておりませんから、正確な答弁はあとからいたします。
  121. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はやつたものでなく後日返還を求めるものというのでありますから、やはり貸したものと解釈するよりほかにはねい、そういうように考える。きようはもう時間がないと委員長はおつしやつておりますが。——このような後日支払わなければならないというような関係が、国と造船会社との間に発生しております。そして私はこれは金銭上の問題であると思うのであります。そういう金銭上の問題が、最初政府造船会社にかわつて、いわば私から言いますならば、利子を立てかえて払つてつておる。後日一定の条件が発生したならば返してくれ、そういう関係になつておると思いますので、これはやはり政府と海運業者との間にそういう関係を発生させようという意思の一致があつてそういう関係が発生したものだ、こういうように解釈できると思いますが、どうでございましようか。
  122. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 契約は政府と金融機関との関係でございますが、法律の解釈は佐藤法制局長官より申し上げることにいたします。
  123. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはあとでまた詳しくお答えする機会があると存じますが、要するにこの御指摘になつていろ利子補給関係のあの法律の表の問題といたしましては、銀行と政府との契約が表面の契約になつておることは申すまでもないことであります。それ以外に造船会社と申しますか、船の方の会社の関係は出て参りますが、これはこの間法務大臣からお答えいたしましたように、反射的利益の関係であります。政府との間の契約関係は全然ねいというふうに見るほかはありません。
  124. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは三木武吉君に御発言を許します。三木武吉君。
  125. 三木武吉

    ○三木(武吉)委員 私は与えられたる時間がわずか十分とか十五分とかいうお話でございますから、理由を抜きにいたしまして、すべて結論的に吉田総理その他の閣僚諸君にお尋ねしてみたいと思います。  と申しまするのは、去る特別国会及び臨時国会の両度の予算委員会において、現段階の日本は、吉田総理の言葉をかりて申せば、占領政策の行き過ぎを是正しなければいけない、これによつて初めて日本の再建を軌道に乗せるんだという声明でございます。私をして言わしむれば、誤つたる占領政策は、独立後の日本としてはその振出しに返つて日本らしい政治の軌道に乗せて再建に従事しなければならぬ、こういう考え方であつて、その趣旨においては吉田総理も私どもも大体において意見の一致があるのでございます。それからその手段方法と申しますか政策考え方についても、社会党両派の諸君とははなはだしく基本的の考え方が違つておるのでございますが、政府自由党及び私どもとの間においては、はなはだしい相違はないのでございます。それは両国会の議案に対するわれわれ野党側の保守政党態度をごらんになつても、はつきりしておるはずでございます。だが、それがおそらく吉田総理も期待するほどの結果を得ておらない、私どもも期待するほどの結果を得ておらない、国民もまたそれに対してはなはだしくあきたらない考え方を抱いておるということは、これは現実偽ることのできない事実なのでございます。この点についてはおそらく政府の方も自由党諸君も同感であると私は信じております。しからばこれはなぜこんなことになつておるのかと申しますれば、結局は保守勢力というものが——国民の間における保守勢力、保守的考え方、国会における保守勢力というものが、おのおの従前の行きがかりあるいは感情もしくは利害というものにとらわれて、それに拘泥するがために、すべてがぎこちなくなつて予期するような効果を上げておらない。そこで私は、何といたしましてもこの占領政策を是正するというには、保守勢力を完全に結集する。結集すれば説明するまでもなく国民の過半数、衆議院における三分の二の勢力というものがあるのでございますから、たとい社会党両派が何と言おうとも、(笑声)また共産党がいかなる運動をしようとも、断々固としてお互いの期待することは実現することができるのです。かような考え方を私は持つておるのでございまして、社会党の諸君には常にこの点において、見解の相違があつて、遺憾の意の表明はせられておりますが、私はそういう信念を持つておる。からいたしまして、前二回にわたる臨時国会及び特別国会においても、政府は保守勢力の結集をして、占領政策の是正に邁進する考えはないかということを質問をいたしておる。総理大臣からこの点についてはつきりした答弁は今日まで承知をしておりませんが、他の閣僚諸君は、すべて異口同音に、私の見解に対しては異議がない、同感だということがはつきり言われておるのであります。だがなぜこれができないかと申しますると、行きがかり、感情、その他の事情と申しましたけれども、それは一言にして尽すならば、吉田総理大臣が一日も早くおのれを無にして、国家的の見地に立つて、占領政策是正のためには自分の進退のごとき一身のごときは、ごうも顧みるべきものでないという気持にならない限りは、できないということを私は確信をしている。しかもその吉田総理が、かつてかような気持でいうことを私どもに言明せられたことがないということが、政局が混乱し、紛糾し、日本の再建が遅遅として進まないばかりでなく、むしろ逆のコースをとるようになつているゆえんであると思うが、吉田総理はこの点について何と今日考えておられるか、この点をはつきり伺つておきたい。
  126. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたしますが、私は常に志を同じゆうし、政策を同じゆうしておる政党と一緒に行くことについては、異存はないと申しておるのであります。ただしかしながら、私が、自分の身を捨ててと言われたか何と言われたか忘れたけれども、今お話のような考えを持つておるかおらないかは別といたしまして、私は私の所信に邁進する以外に、この時局収拾する方法がないと考えますから、政府が今日持つておる政策、すなわち予算に組み込まれた政策を断々固として実行することによつて時局の安定ができる、こう私は確信しております。
  127. 三木武吉

    ○三木(武吉)委員 ただいま吉田総理は、おのれを無にして再建に善処するという考えを持つておるおらないは別として、と言う。これを別にするということはどういうわけか。これが根本問題です。一番大事なことを別にせられたんでは、てんから話にならぬのであります。これは別にしないで、あなたは一体どう考えておるか。
  128. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたしますが、私が無にしておると申しても、御承知にならなければそれまでであります。
  129. 三木武吉

    ○三木武吉委員 無にしておると言うても、信用しなければそのままだと言われるが、いまだかつてそういうことを吉うたことがないから、はつきり言うてくれ。信用するかせぬかはこちらのことだ。(笑声)
  130. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は自分の心中においては、常に無にいたしております。これを信用するかしないかはあなたのごかつてであります。
  131. 三木武吉

    ○三木(武吉)委員 心中においては、すでに無にしておるということを言明せられたんだから、無にしておられるものと私は一応善意にこれをとつておく。  なお緒方君が特によろしいと私は思うが、緒方君も私の今総理に対して質問をしたその要旨については御同感であると私は信じますが、いかがでありましようか。
  132. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今総理からお答えをした通りに私も考えております。
  133. 三木武吉

    ○三木(武吉)委員 私が緒方君にお尋ねをしたのは、総理がおのれを無にしているということを腹の中で持つている、それは間違いないかと聞いたのではない。保守勢力の結集をして時局に当らない限りに、とうてい日本の再建というものは、お互いが望むような結果は得られないのだということについて、緒方君はどうお考えになるのか。
  134. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 これはあらためて御質問にならなくても、先般鳩自党の復帰の際に、親しく三木君と石橋君あるいは佐藤幹事長、一緒にお話をしたときに、つぶさに申し上げたことによつて御了承ができていると思う。そのときに三木君は、保守勢力の結集をしきりに申された。しかしながらそれは最初三木君が言つておられたように実行できなかつた。そこで最後に自由党としての声明書を書く場合に、特に三木君の御注文によりまして、同憂の諸勢力の来り投ずることを期待するという言葉を入れた。これは私ども時局に対する心持であります。
  135. 三木武吉

    ○三木(武吉)委員 私は緒方君の答弁について満足の意を表するのでございますが、すでに緒方君がこれほどの考えを持つているならば、保守勢力の結集ということに対してその後どういう行動をとられたか。ただあの声明だけですべてのことが成るとお考えになつて何事をもしなかつたのであるか。あるいはその実現の一日もすみやかならんことを欲するがために何らかの処置をとられたか。これをお尋ね申し上げたい。
  136. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私は今の政界の実情からしてこれは必ずできることと考えますが、ただ機の熟するのを待たなければ、いたずらにあがいてもしようがないのでございまして、これは今の同憂の諸勢力の事情については、つぶさに観察をいたしております。
  137. 三木武吉

    ○三木(武吉)委員 時期を待てば必ずできると思うが、今はあせらないで時の至るのを待つというお考えらしい。それも一応は今の結論でございましようけれども、事実それが急速に運ばない理由はどこにあるかということを緒方君は御承知であるかどうか。その点についてどういうふうに考えておられるか。
  138. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 それは保守勢力それぞれの政党が立党しているおのおのの歴史がありまして、これは局外者から考えればそれほどのものではないかもしれませんが、その党にいる人といたしましては、なかなかデリケートな問題でありまして、そうわれわれが言葉の上で言うように簡単に解決のできるものではないと考えております。
  139. 三木武吉

    ○三木(武吉)委員 デリケートな問題と言われましたが、私どもには何にもデリケートな問題じやない。ただ緒方君あるいは自由党の緒方君に対してはデリケートな問題であるかもわからない。何となれば、この保守勢力の結集をして清新はつらつたる意気で国政の運営をするには、吉田総理大臣というものの存在が一番のじやまになつている、(拍手)ということは現実の事実なのであります。ゆえに自由党あるいは内閣においては、吉田総理大臣の進退にかかわる問題でございますから、すこぶるデリケートな問題かもしらぬが、われわれからいえば、当然のこと、問題にするほどのことではないのであります。私は間接に伺つたことでございまするが、この点において、特に最近汚職問題その他で物情騒然たるものあるのを憂えて、現に改進党の松村幹事長自由党佐藤幹事長に会見を申し出、これではどうにもならぬから考えようじやないかという申出をしたということは、新聞紙から私どもは教えられたのでございますが、会見の主要なる点はどこにあつたか。私は先刻松村君の質問演説をお聞きしなかつたので、どんな話があつたかは存じませんが、おそらくは人心を一新するにあらずんば、日本の再建は容易でないから、人心の一新をしようじやないか、こういう申出があつたものと私は承知をいたしておる。もしはたしてそうであつたとすれば、この人心の一新というのはどういう意味か。おそらく総理にしても、緒方君にしても、それは松村君が言うたことで、その意味はどういう意味だかわからぬと言われるかもしらぬが、人心の一新とは、私が松村君であつたら吉田総理大臣の退陣のことだと思う。(拍手)あの円満な温厚な松村君でございますから、修辞に注意をせられて、人心の一新という言葉を用いられておるのでございます。この事実から見ても、保守勢力の結集に吉田総理大臣の存在というものが、唯一の妨害であるということだけははつきりいたしておる。おそらく自由党諸君といえども、私の演説に不快な顔をして見られてはおるが、内心は首肯せられておる者が多数だと確信をいたす。ただ、現在の総裁であり、総理大臣である、そこに緒方君のいわゆるデリケートな関係が起つておるだけでございます。但しこれは緒方君に申し上げるのじやないが、これほど明白なる事実を見て、なおかつ吉田君は自分は腹の中ではおのれを無にするということを考えているんだと言う以上は、ただちに退陣するということをお考えになるべきものではないか。当然になるべきものであると思うが、なぜそういう考えを持たれないのか。
  140. 吉田茂

    吉田国務大臣 御意見は伺つておきますが、私はそういう考えは持つておりません。
  141. 倉石忠雄

    倉石委員長 三木さんに申し上げますが、お持合せの時間が来ております。
  142. 三木武吉

    ○三木(武吉)委員 そういう考えは持つておらないということは、吉田君の存在が保守勢力の結集の唯一の妨害であるとは考えないという意味であろうと思いまするが、人間もそこまで時代を見る明を欠いておる以上は、いわゆる縁なき衆生で、それ以上お話を申し上げてみたところで、いわゆる馬の耳に念仏(笑声)釈迦に説法ということになります。(拍手)私はこれ以上は申し上げることを欲しませんが、吉田君に私はここではつきり申し上げる。もし吉田君がその考えをかえない場合においての日本が、どんな結果を来すかということを深夜静かにお考えを願いたい。これだけのことです。あなたもよわいまさに七十五か六です。どうせ先は長くはないんだから、(笑声)少しは人間らしい考え方、まじめな考え方を持つて政治を担当する気持になつてもらいたい。これだけを申し上げて、何もこれに対しては御返答は願いません。
  143. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今三木君のお言葉の中に、デリケートという私が申した言葉について、自分の御都合のいいように御解釈になつておるように感じたのでありますが、自由党としては、総裁、総理の存在をじやまだとは少しも考えておりません。のみならず、保守勢力の合同につきまして、先般いわゆる四者会談の席上におきまして、三木君はすでに当時の分党自由党全員をあげて自由党に復帰することを一度御決意になつた。そのときに総裁の問題は少しも問題になつていない。しかし後にまぎわになつてある個人的な問題が起りまして、それで何人かの人と一緒に三木君が日本自由党にお残りになつたのでありまして、そのときには今仰せられたようなことは少しも問題になつておりません。従いまして、三木君はそういうことは少しも問題ではないと仰せられますが、一度そういう決心をされた日本自由党の少数の方々・そこにおいては問題にならぬかもしれませんが、自由党あるいは改進党におきましては、その党としての歴史がありますし、それを無視してそれを御破算にして政党が一緒になるということは、これはなかなかの問題だろう、そういう考えから私は先ほどデリケートな問題だと申し上げたのでありまして、その点を特にはつきり申し上げておきます。
  144. 三木武吉

    ○三木(武吉)委員 緒方君が分党当時の話を持ち出して、私の考え方をそんたくなさつておるようでございますが、緒方君が何とお考えになろうとも、それは別問題、私は一応私の考え方を申し上げておきたい。分党当時鳩山自由党三十四名全部復帰するならば——私はその当時から復帰の意思はないんですよ。はつきり申し上げておく。復帰の意思はないのだが、その三十四人のうち三十三人までが帰りたいと言うのに、私一人がこれに反対をした場合においては、せつかくそういう人の持つている希望を私の意思によつて若干曲げさせるということは、私は忍びないから、三十四人の復党について、私は三十四番目に意思表示をするということを最初から言明をいたしておつたのでございます。ところがいよいよ復党という段になると、御承知のように若干名の復党反対者があつたのでございますから、私の三十四番目の復党という最後の決心は、当然実現し得ぬはずのものであることを御承知願いたい。  それからその当時もし全部が復党した場合において、もとより吉田総理の退陣は望むのだけれども、退陣を条件として復党するというようなことは、事を円満に解決する上において賢明なる策ではないから、私はそれを固執しなかつた。だが三木武吉もし復党したならば、党内において断々固として吉田総理大臣の退陣を必ず実現させる確固たる決心のあつたことは、ここではつきり申し上げておく。(「三木さんともあろう者がそんなことを言うのはおかしい」と呼ぶ者あり)それでは、私の言うことがおかしいと思えば、諸君が今は吉田君以上に尊敬を持ち、愛着を持つている鳩山君に聞いてごらんなさい。私は偽りを申し上げているのではない。どういう考えであつたかということを鳩山君に聞いてごらんなさい。従つてこの意味において何らその当時と今日とはかわつていない。内部工作か、外部からの攻撃かということにすぎないのでございます。これは緒方君が物を少し甘く考え過ぎていやしないか、かように存じますから、この点をはつきり申し上げておきます。
  145. 倉石忠雄

    倉石委員長 三木さん、御答弁はありませんが、もうお時間が参つております。  次会は公報をもつてお知らせすることといたします。なお本日は、午後には分科会を開くことになつております。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十分散会。