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1954-02-22 第19回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十二日(月曜日)    午前十一時三十六分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    岡田 五郎君       尾関 義一君    小林 絹治君       迫水 久常君    庄司 一郎君       高橋圓三郎君    中村  清君       灘尾 弘吉君    葉梨新五郎君       原 健三郎君    福田 赳夫君       船越  弘君    本間 俊一君       八木 一郎君    山崎  巖君       山本 勝市君    亘  四郎君       稻葉  修君    小山倉之助君       河本 敏夫君    櫻内 義雄君       中曽根康弘君    中野 四郎君       並木 芳雄君    古井 喜實君       三浦 一雄君    足鹿  覺君       伊藤 好道君    滝井 義高君       古屋 貞雄君    武藤運十郎君       山花 秀雄君    横路 節雄君       春日 一幸君    川島 金次君       小林  進君    佐竹 新市君       堤 ツルヨ君    西村 榮一君       平岡忠次郎君    松前 重義君       黒田 寿男君    安藤  覺君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君         通商産業大臣  愛知 揆一君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 大野 伴睦君         国 務 大 臣 加藤鐐五郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     齋藤  昇君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         大蔵事務官         (大臣官房長) 石田  正君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         文部政務次官  福井  勇君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君         運輸技官         (船舶局長)  甘利 昂一君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月二十二日  委員尾崎末吉君、富田健治君、羽田武嗣郎君、  河野金昇君、中村三之丞君、古井喜實君、松原  喜之次君、岡良一君、川島金次君、河野密君及  び西村榮一辞任につき、その補欠として山口  喜久一郎君、瀬戸山三男君、亘四郎君、並木芳  雄君、三浦一雄君、中野四郎君、古屋貞雄君、  平岡忠次郎君、小林進君、佐竹新市君及び春日  一幸君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中野四郎君、並木芳雄君、三浦一雄君、古  屋貞雄君、小林進君及び佐竹新市辞任につき、  その補欠として古井喜實君、河野金昇君、中村  三之丞君、松原喜之次君、川島金次君及び西村  榮一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十九年度一般会計予算  昭和二十九年度特別会計予算  昭和二十九年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十九年度一般会計予算外二案を一括議題といたします。質疑を継続いたします。中曽根康弘君。
  3. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は吉田内欄に対しまして、綱紀粛正に関してまず御質問を申し上げたいと思います。  今日の有田君の事件は非常に不幸な事件であります。私は国会議員の一人といたしまして、いずれの名目にせよ同僚議員国会開会逮捕状請求されたということは、議会政治の将来のために、国会議員の名誉のために、深く悲しむものでありまして、有川君の事態が無実の罪であることを祈るものであります。それと同時に、今日この事態が起きたのは、単に有田君の過失によるものではない。今日の政治情勢がそのレベルにあるということを国会議員の一人として私は深く反省するものであります。有田君一人の罪でも嫌疑でもない、私は同じ国会議員といたしまして、政党政派を離れて、今日の事態国会に及んだということを、国会議員の一人として国民に申訳なく思います。議会政治の権威を高めて、国民負託に沿うという点については、党.派を離れて国民に対して共同連帯責任を私は持つておると思うのであります。そういう観点から、私はまじめにまた悲しみの心をもつてこの事態を明らかにして、国会の潔白あるいは将来国会がこの汚名をそそぐという決意国民に示さんがために、御質問を申し上げたいと思うのであります。  そもそも今回このような騒然たる事態汚職中心にして起きて来た根因はどこにあるか、このことから私たち反省しなければならないと思うのであります。この問題は単に昨年十一月の部船汚職の問題からのみ起きたものではない、積年の弊風がここへたまりにたまつて欝積して爆発して来たものであると、私は考えなければならないと思うのであります。根は深いのであります。そこでこの事態がいつから起つて来ているかということを反省いたしますと、それは占領政策の総締以来の問題であるだろうと思います。進駐軍が参りまして、進駐軍将校等にいろいろ籠絡をやつたり金品を贈与したり、それによつて金をもうけたり立身出世をしようというその社会風潮が、占領六年の間憂延いたしました。そうして独立後もその弊風のままに政界財界も流れて来ているという根本は、ここにあると思うのであります。そういう根本から考えると、日本独立をいたしました瞬間に、今までのすベての態勢を一新してほんとうに潔白な正しい日本へ誕生しなければならなかつたはずであります。造船の問題あるいは昭電の問題、いろんな問題がありますが、われわれ政治家としてここで責任を感ずることは、占領軍がおつて外国の指揮を仰いでおつたときは、日本人には自由がなかつたかもしれないが、日本人が自由を回復したその瞬間から、日本人は独自の立場をとつて国の立て直しをやるべきであつたと思うのであります。しかるに吉田内閣はそのときに総辞職も何もいたしませんでした。そのまま政権を維持して、便々として今日に参りました。吉田さんに言わしむれば、あとがまがないとかなんとかいう理由があるでございましよう。また客観的にそう見られたかもしれません。しかしもつと大きな国の歩みを考えたならば、そのときに吉田内閣決意をして人心を新たにし、新たなるコースに日本は進むべきであつたと思うのであります。この一番重要なときにその切りかえが行われなかつたから、占領中続いた進駐軍に対するいろいろなスキヤンダルや社会風潮が、漫然として今日に至るまで流れて来た、ここに今日の根因があると思うのであります。私はそれ以来の日本状態を見、今日ここに山積した事実を見ますと、まさに今日の事態議会政治危機であるだろうと思うのであります。保全経済会の問題にしても、あるいは殖産金庫の問題にしても、あるいは造船の問題にしても山積しておる。との議会政治危機議会みずからで切り抜けて、議会みずからが粛正してこれを解決しなければ、議会政治は没落するのであります。この危機をだれが乗り切るか、国民一般にやらせるわけには行きません、官僚にやらせるわけにも行きません。政治家議会中心にしてこの問題を解決する以外に、議会政治民主主義を救う道はないと思うのであります。そういう反省をもつて私は今日の事態に対する解決策各党とも党派を離れて考うべきときに至つたと思います。この瞬間にその決意国会に起らなかつたならば、日本極左極右やその他の勢力の過程に埋没してしまうおそれがあるのであります。これはドイツやイタリアその他の例を見ても歴然としておるのであります。蒋介石政権の末路を見ても歴然としておるのであります。そういう意味におきまして、今まで政治を指導して来た政府に、この事態に対処するいかなる決意があるか、そのような反省をもつて今日の事態に対処しようとしているか、まずお伺いいたしたいのであります。
  4. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政界の現状に対しましてお述べになりました感想につきましては、私も大体同じような感想を持つております。今の汚職事件と申しますか、疑獄事件、この内容につきましては私まだ十分に確かめておりませんけれども、いずれにしましても、国権の最高機関である国会唯一立法機関である国会、また国民が最も注目を集めております国会が、何がしかの疑雲に包まれているということに対しましては、私は中曽根委員と同様にまことに遺憾に存じておるのであります。でありますが、問題は今や司直の手にゆだねられておりますので、私どもといたしましては、司直の厳正公正なる取調べの結果をまつて、それに対する善処の道を考えるべきであると思つておりますし、その間におきまして時局はきわめて重大であります、できるだけ政局を動揺させぬように、日本再建のために各般の施策を強硬に推進して参りたい、今日御審議を願つております二十九年度の予算案——日本経済自立日本独立を完成する上に一番中核的な問題であると思いますが、この経済自立を達成いたします第一歩といたしまして、この予算審議あるいは今回あまた御審議を願つております重要法案を、一日も早く実現いたすべく万全の努力を払つて参りたい、かように考えております。
  5. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は緒方総理の御答弁をきわめて遺憾に聞いておりました。なぜかというと、今日の問題は、法案の問題であるとか議会手続の問題ではありません。御存じのように、この国会をとりまくすべての社会に、議会否認の思想が横行して来ているのであります。これは恐るべきものであります。今日世の中の声を聞くと、吉田さんはやめないだろう、この段階至つてしかもやめないというようならば、これは極右極左がぶすつとやつてくれたらよい、こういう不吉な言葉までもこの国会のまわりには出て来ている有様であります。そういうときにあたつて司直の手が延びて、これが司直の手によつて判断を受けるまでは、このまま政治が継続されるということをお考えになるその考えが、私は今日の国家の災いをなしている考えだと思うのであります。吉田内閣が今までおとりになつたやり方を考えてみるとみなそれであります。一体政治というものは逮捕状のラインで移動しておつてよろしいものでありますか。政治というものは、道義であるとか倫理であるとか、そういう線で動いておらなければ国民を指導するものにはならないはずであります。逮捕状の線で政治が常に動いておるというのであれば、これは検察庁にすべて政治をまかせればよいということになります。これでは政治の価値もなければ存立の意義もありません。今日の世の中状態を一体国民はどう考えておるか、政治家党利党略で金がほしさに財界と結託して収賄ばかりして、それが出て来たら隠そう隠そう、逃切ろうとしておる。財界は金もうけに狂奔しており、労働者はストライキに狂奔して賃金ばかり上げようとしておる。一体声のない大衆はどうしたらよいのだ、われわれは大衆——声のない無組織労働者中小企業者や農民であるけれども、国会に声がない。しかし、声がないからといつて、その人たちの声を聞かないで、司直の手が延びるまで政治がまかり通つているというのならば、革命以外にはありません。ほかに方法はあり得ないじやありませんか。そこに今日の内閣考え方の根本があると私は思うのであります。この点について副総理はいかなるお考えを持つておられますか、お示し願いたい。
  6. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今の御意見の点につきましては、私は全然見解を異にしております。今日いろいろな風説があり、また国会疑獄事件が問題になつておる、こういうときこそ、政府といたしましてはますます覚悟を新たにすべきでありまして、うわさが飛ぶごとに動揺しておりましては、それこそ国民人心の上に及ぼす影響は非常に大きいと思います。この際におきまして、政府も、また国会も、確信を持つて政界の中にもし疑惑に値するものがあるならばこれを一致して郭清する、郭清すると同時に、このような重要な段階においてわれわれがなすべき足元の仕事は、確信を持つて、やつて行く、これが私は政府の所信でなければならない、その通りに私は考えております。
  7. 中曽根康弘

    中曽根委員 緒方総理のお考えはまだ私を納得させてくれません。今日の事態になればますます内閣自分立場を強化して乗り切らなければならない、そういうお考えであります。しかし乗り切らなければならないと考えておる内閣基礎自体がもはやくずれておるのである、人心が離れておるのであります。人心がこの内閣を支持しておるならよろしい、しかしこれだけの多くの汚職が出て、この内閣にはもういけないものがあるんだ、そう思つて人心が離れているものをいかにあなたが権力をもつて押し切ろうとしても、これは民主主義として許すべき態度ではないと思うのであります。そこで副総理にお尋ねいたしたいと思いますが、吉田内閣は今日の事態を見て司直の手がまわらないうちは辞職をしない、この態度をこの際きつぼり改めて、この時局にかんがみてほんとう日本再建して行く根底をつちかうために人心を一新し、政局を転換し、そして総辞職をして各党各派の協力を求めて、新しい建設に乗り出す用意はないか。お尋ねいたしたいと思います。
  8. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 人心政府を離れているかどうかということは、私は軽々に判断できるものではないと思います。(「新聞を見ればわかるよ」と呼ぶ者あり)新聞を見て、それだけで判断することは早計だと思います。私はもし人心をためす必要があれば、総選挙による以外はないと思います。   〔「やれやれ」と呼び、その他発言する者多し〕
  9. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  10. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただ今は政府としては確信を持つております。政府の中にとの疑獄に関する者がないと信じております。従いまして政府はどこまでも国民負託を受けた責任を果すつもりであります。従いまして今中曽根委員から御示唆になりました各一派を集めて、ここに新しい内閣をつくる意図はないか、これは今の段階におきましては、考えておりません。
  11. 中曽根康弘

    中曽根委員 もう一回それではあなたのお言葉を確認いたしたいと思いますが、内閣としては今日の事態において辞職をして人心を新たにする意思はない、こう断言したと解釈してさしつかえありませんか。これは念のためにもう一回お尋ねいたします。
  12. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それよりも、この疑雲の中にも時局を安定して行くことが、より大きな政府責任だと確信をいたしております。
  13. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は今の御答弁を聞いて、これから質問しなければならない内容をここではつきりきめました。私はこの質問をするにあたりましては、いろいろのことを考え、ある者は保守陣営の内部がいろいろ角を突き合つたり、切り合つたりすれば、これは日本のほかの勢力を増大させるから自重しなければならぬという意見もあつた。またこの経済危機を前にして、あまり政界を混乱させることもどうかという議論もあります。しかし今日の時局は、そのように保守陣営がどうであるとか何とかいう事態を離れた、もつと根本を洗わなければならないものだろうと思います。改進党の立場からすれば、かりに政権がほしいとすれば、自由党と角突き合つてやるということは、政略から見れば不利であるに違いない。票をもらおうとすれば、自由党のごきげんをとつて静かに引かせるのが一番いいに違いない。しかしそういう党利党略で今日は効いてはならないときと信じます。一番重要なことは、国民の目の前に政界が、特に保守陣営がうみを出し切つて見せて、自分健康体にたるという決意国民に見せることであります。それがこの時局を展開するスタートであります。それ以外のいかなることも彌縫策であり、糊塗策であります。そういう関係から、私はほんとう国家を縫えて、もう一回内閣に御反省を願いたいと思うのであります。決して私は改進党の常略で言つているのではありません。わが党の重光さんを総理大臣にしようというようなさもしい考えでは申し上げません。もしそうならこんな質問をいたしません。そうではなくて、一番重要なことは、日本のわれわれと考えの違う勢力を伸ばさないためには、ほんとう自分たちが血を出して、うみを出しきつて健康体になるという意思決意を、あかしを、国民に対してこの国会でみずから見せるということです。それが今日日本を救う唯一の道であると私は信ずる。その点からもう一回、内閣の御答弁を願いたいと思います。
  14. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私は日本再建の途上において、保守勢力責任は非常に重大であると考えます。私は保守勢力の力をもつてしなければ、日本再建は不可能であるとさえ考えます。   〔「うぬぼれるな」と呼び、その他発言する者多し〕
  15. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  16. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今中曽根委員から御指摘になりましたごとく、これらの汚職問題、疑獄問題に関する国民疑惑、このうみを出しきるということには全然同感であります。私は司直の手によつてそれが厳正に進められることを期待いたします。
  17. 中曽根康弘

    中曽根委員 緒方総理の御答弁は、内閣の今までの態度と少しもかわつていません。司直逮捕状を出すまでは、たとい閣僚に重大な疑惑があつても催すわるのだ、こういうお考えでありまして、自由党の党の立場を守るという立場に終始しておられるように思います。私はほんとうに改進党とか自由党とかいう立場を離れて、ほんとう国家立場国会議員として考えなければならぬということで申し上げているのであります。その私の質問に対して同じ答弁でありますから、やむを得ません。私は次に質問を継続いたします。  そういう考えでこの内閣が続く限り、占領政策のもとにあつた日本弊風、言いかえれば吉田さんや池田さんや岡崎さんというような占領政策下請機関として政治をやつて来た、それで今まで流れて来たこの弊風というものは、この政界から断てない。今日日本時局を転換しようと思つたら、今日日本人心を一新しようと思つたら、一番重要なことは改進党が天下をとるとか、吉田さんが天下をとるとか、鳩山さんが天下をとるとかいう問題ではない。その占領政策下請として今日の事態を生んで来た吉田さんや岡崎さんや池田さんという一連の勢力が崩れなければ、政変の意味はないと私は信ずる。それが国家のためだと思う。日本が次の発展の段階に伸びて行くと確信する。その信念から私は質問します。私がこれから申し上げるととは人の名誉に関するかもしれない。私はしかしこれだけの発言をするについては責任を持ちます。責任を持ちます。  第二番目に、犬養法務大臣の御答弁の模様によつては、犬養法務大臣の進退について重大な考慮をしなければならぬ。犬養法務大臣についてもかなりの疑惑があります。そのほかに国際関係から、外国の代残部との関係から見てもかなり疑惑が出ている。そういうやさきでありまして、まさか犬養さんにそのような事実があるとは思わないが、御答弁については慎重に御答弁くださるようにお願いいたします。これから質問することは多くの事件の中の一角であります。造船疑獄というのは、昭電疑獄のように何グループかにわかれている。私は今日は閣僚関係することを申し上げる。内閣態度によつて政党役員関係することは、次の機会に留保いたします。  まず緒方さんに、やむを得ない、お尋ねいたしますが、閣議決定をもつて有田君の逮捕許諾請求をして参りました、吉田内閣総理大臣の名前で閣議決定を経て、衆議院議長に提出されました逮捕許諾要求は、内閣としては検察庁犯罪事実に対する確信及び本捜査方針を支持して請求して来たものと思うが、しかるものでありますか。
  18. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 内閣といたしましては、国会許諾を得ることに対しまして、これは国会の議に付して、国会において本人の弁明を十分に聞き、また逮捕状を出すまでの事情をよく調べる、そして公正にその許諾かいなかを決すべきである、早く国会意見を尽して結論を出すべきである、そういう考えから閣議できめた次第であります。
  19. 中曽根康弘

    中曽根委員 ここへ出て来ました被疑事実というものがあります。この被疑事実を正当なりと認めて、これをつくり上げて来た検察庁犯罪事実に対する確信及び捜査方針を是認して、これを要求して来たかどうかという質問であります。
  20. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをしますが、それは是認するとかしないかとは問題でなくして、これは被疑事実でありまして、その疑いはいずれ晴らされるもの、そういう確信を持つております。
  21. 中曽根康弘

    中曽根委員 従つて私は断定をしているのではない。この被疑事実を是認して出したのかというのです。是認しないというのならば、出す必要はないと思う。
  22. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 内閣がそれを閣議できめたという事実は、是認していることては少しもならぬと考えます。
  23. 中曽根康弘

    中曽根委員 それではこの被疑事実というものは、検察庁捜査方針その他が間違つておる、そういうお考えでもない、正しいということでもない、ただ取次だけで国会に出したという意味でありますか。
  24. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これは政府としてとるべき当然の手続であると考えております。
  25. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば犬養法務大臣はこの運営委員会において何とお答えになりましたか。この逮捕状を出すについては万斛の涙をのんで、断腸の思いで出す、しかしこの請求書は支持せざるを得ない、そういうことで内容を是認してあなたは御答弁なすつておる。今のと大分食い違うようでありますが、あなたは前に食言なすつたのか、あるいは緒方総理が食言なすつたのか、いかがでありますか。
  26. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。もちろん一議員として、同僚としてはそういうことは普通でございます。しかし運営委員会で説明しました私の内容は、秘密会でございますからその通りとは申し上げられませんが、今あらためて申し上げますならば、有田二郎議員被疑事実、容疑を明らかにするためには身柄の拘束が必要であるという当局事情を取次ぐことに決定いたして、その意思発表をいたした次第であります。
  27. 中曽根康弘

    中曽根委員 犬養さんはこの間の運営委員会における御答弁を、今ここで否定はいたしませんですな。
  28. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。肯定とか否定とかいうのではないのであつて容疑事実を捜査当局が明らかにするためには、遺憾ながら有田議員を自由なおからだのままでなく、拘束してする必要があるといつたその必要性をやむを得ざることとしてお取次したのであるます。被疑事実が正しいとか、正しくないとかいう問題とは別でございます。
  29. 中曽根康弘

    中曽根委員 犬養法務大臣がここで御答弁になつていることは、この間の運営委員会で二回御答弁になつていることは非常に違う。あのときは刑事局長言葉を是認されておる。そうして刑事局長は何と言つておるかというと、もうすでに新聞その他で伝えられているように、けたの違う金が動いた。これは、取消したけれども、事実はあるとあとで言つておる。あるいはさらに次の段階に飛火をするのだと、きわめて重大なることを印象づけて運営委員会で説明しておる。そうして犬養さんはそのまま肯定しておつた。それと今日の態度とはきわめて違う。なぜ法務大臣立場がそう違うのか、私は内閣立場がこういうふうになつて来たから、そういう答弁をせざるを得ぬのだと思う。しかしここで質問しても、あなたは今の答弁をかえられる立場でないようですから、私はこれ以上追究しません。  次に伺います。井本刑事局長に伺います。どうぞこちらへ出て来てください。  本件で動いた金は、有田君の弁明によりましても、二百五十万円と二百五十万円の二個、計五百万円は、これは確認された。少くとも五百万円以上の金が動いたことは事実であり、あなたはそのことを運営委員会で言つたと私は聞いておりますが、事実でありますか。
  30. 井本臺吉

    ○井本政府委員 目下捜査の途中の問題でありますから、この機会においては言明することを差控えたいと存じます。
  31. 中曽根康弘

    中曽根委員 しかしこの間あなたは、けたの違う金が動いたと言つておる。私はそのときから数字も知つてつた。その後有田君は弁明されて、一つは寄付金で二百五十万もう一つは別に二百五十万、二個出て来たんだ、おれはそれは知らぬのだと有田君自体が一言つておる。あなたはあのときに五十万円がこの壷井君に対する被疑事実であつて、けたが違うといつた五十万円にゼロをつければ五百万円になる。二百五十万円と二百五十万円で五百万円になる。あなたの頭の中にちやんとあつたことなんです。それまで否定されるということは、お立場上つらいかもしれませんが、少くとも五百万以上の金が動いたということは事実でしよう、これはすでに有田君自体が言つておることだから、間違いないと思うがいかがでしよう。
  32. 井本臺吉

    ○井本政府委員 秘密会でありますので、私がある程度申し上げたのでございます。秘密会において私が申し上げたことは否定いたしませんが、秘密会で申し上げたことを、そのままここでは申し上げかねる次第でございます。
  33. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからばあなたはこの間秘密会で、二回の運営委員会で言われたことは、ここで否定はいたしませんですな、それだけ聞いておけば満足です。
  34. 井本臺吉

    ○井本政府委員 委員会で申し上げたことは——秘密会で申し上げたことは否定いたしません。(拍子)
  35. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからばお尋ねいたしますが、有田弁明による二百五十万円、これは後援会の寄附として来た金と、そうでない二百五十万円とありますが、この二百五十万円の金の性質は、贈収賄の構成要件としての性質を持つておるものである、すなわちこのあなたが逮捕要求して来た五十万円、その他との関連関係を見て、明らかに贈収賄の構成要件としての性質を持つておる金であると思うが、いかがでありますか。
  36. 井本臺吉

    ○井本政府委員 議会において逮捕の許諾をお願いしましたのは、五十万円に関係してだけのことでありまして、そのほかは調べ中でございます。詳細にいろいろ取調べをしなければ結論的なことは申し上げられません。
  37. 中曽根康弘

    中曽根委員 あなたは役人でありますから、関係者を前にして言うことはつらいと思います。だからそれではそれは一応聞いておきます。そのことは、しかし有田君が動かした金というものは、一つは二百五十万、もう一つは二百五十万、そのうち一つは返つたとか何とか言つておる、そうするとそれしか当つていない、そのうちから有田二郎を介して金が出た、出所は名村造船である、今現に名村源、武田勝一等は入つておる、それらの自供です。それから二百五十万二箇出て、壷井君に有田君を介して行つたというのであるから、その中の一部分と考えなくちやならぬ。そうするとこの動いた金というものは、壷井君に移つた金と同性質のものであると考えなくちやならぬ。当然そうなるわけです。ほかに金が動いておるなら刑ですよ。しかし名村造船から動いた金も二百五十万二口で、その名村造船から動いた金の五十万が有田君を介して壷井君に行つたとここに書いてあるのですから、その中の一部と考えるのは、ほかにあなたの反証がない限り、そうであると考えざるを得ない。そこであなたにお伺いいたしますが、この二つの二百五十万の性質は、名村造船関係被疑者より贈賄の意思と、相手方に渡す意思有田君に渡されたものと、われわれは認定する。つまり今の事実を見ればわかるわけです。ここにそういうことが書いてある。これは間違いないと思うが、いかがでありますか。
  38. 井本臺吉

    ○井本政府委員 何度も申し上げますように、目下調べ中のことでありまして、私は最初の五十万円以外につきましては、ここでははつきりしたことは申し上げかねます。
  39. 中曽根康弘

    中曽根委員 私はこの問題に関してはれつきたる人的証人を持つておる。現に私は確実なことを申し上げておる。しかしそれがだれであり、何であるかということは、まだ有田君の逮捕許諾が発せられない今日、証拠の問題があるから申し上げられない。しかしすでに二百五十万が二箇出て、その出た意思と相手方だけは割れている。それ以外に金が出ていない。しかもその中の一つだけが最終目的に出たということは、これで明らかになつて来ております。そう断定してさしつかえないのですが、これは私は責任をもつて言いますよ、私は間違つていたらこれは政治責任をとります。それだけの確信を持つて言うのです。そこでこの五十万円のこの逮捕許諾の出て来た壷井君に行つた金は、今申し上げた性質のものであり二百五十万の一部である、そういうふうに私は認定しておるのでありますが、間違いでありますか。
  40. 井本臺吉

    ○井本政府委員 何度も申し上げますように、目下調べ中のことでありますから、これ以上は申し上げかねます。
  41. 中曽根康弘

    中曽根委員 あなたはそういう役目におるから何とも言えないかもしれないが、私は事実を調べて知つているから、その疑惑を明らかにするために、あなたが何度そう言つても、申し上げてみたいと思う。  そこで、しからばこの逮捕許諾請求書の甲にこう書いてある。「造船割当等に関し審議決定する職務を鞅掌中の運輸省当局に対し」云々——「運輸省当局に対し」と、こういうふうに書いてありますが、この二百五十万円のうちの他の部分が運輸省当局に——これは当局というのですから複数でしよう。今現に運輸省でやられているのは壷井君と今井田君です。他の方面に行つておれば、当然これは壷井君と同じ事件になり。われわれはそう判定するのでありますが、いかがでございますか。
  42. 井本臺吉

    ○井本政府委員 許諾請求書には名前すらはつきり書いてなかつたような次第でありまして、何回も申し上げます通り、仮定のことにはただいまは御答弁いたしかねます。とにかく五十万円の問題については許諾をお願いしたということを繰返して申し上げますだけで、そのほかには御答弁いたしません。
  43. 中曽根康弘

    中曽根委員 委員長、御答弁いたしませんと言つておりますが、今重大な疑惑内閣にかかつておる。従つて疑惑を解く必要がある。その点はひとつ注意していただきたい。これは内閣の名誉のために注意していただきたいと思います。  そこで次にお伺いいたします。あなたはこの間の運営委員会において、有田逮捕の結果、そして調査の結果によつては次の段階に進まなければならない、そういうことをおつしやつておる。しかもこの逮捕の許諾は、運輸省当局に対して云々と書いてあつて、一番最後のところにはその一人である壷井玄剛君に五十万円を供与し、そうして贈収賄の幇助をした、こう言われておる。これは間違いない。しかもあなたは、この五十万円だけでも起訴すべきものであります、もし許諾を与えないならば起訴すべき性格あります。このように断言しておられる。これでこの二百五十万円の性格というものはわかつて来たと思うのであります。そこで伺いたいが、次の段階ということをあなたはこの間言われておる。次の段階とは、割当等の職務に関係する段階と認定される。この間あなたがおつしやつたのはその通りである。次の段階ということは、つまりこれに関係する問題であるのであるから、従つて運輸省当局に対し云々と書いてあるのであるから、これは条理として当然割当等の職務に関係する段階と認定される。しかもすでに官房長は逮捕されておる。そうすると公務員なら、これはいつでも逮捕ができるのである。しかも官房長という最高の位にある者が逮捕されているのであるから、次の段階ということはそれ以上の位にある者ということになる。つまり政治的地位ということになると思う。このことをあなたは否定いたしますか。
  44. 井本臺吉

    ○井本政府委員 許諾請求をお願いしました五十万円の事件について、有田さんに証拠隠滅の嫌疑があるかどうか、これが逮捕請求の事由になりますので、その事情を申し上げたのでありまして、そのほかはすべて調べの結果をまたなければ、明言いたしかねます。
  45. 中曽根康弘

    中曽根委員 あなたは肯定も否定もせられない。少くとも否定はしていない。否定しておるならば、内閣の名誉に関することですから、ずばりと言うはずです。肯定も否定もしていないということは、依然として疑惑に包まれる。私は人の名前を出すのはまことに忍びないが、あなたがそこまで隠すなら、やむを得ない、私は申し上げたいと思う。壷井君という人は私は年来よく知つておる。改進党の党員と親戚の関係にもあつた人であつて、彼はなかなかいい男です。なかなか侠気のある男であつて、そうして仕事に熱心である。私は何もここで壷井君の弁護を申し上げたいとは思わないが、あの人がああいうことをやるとは実際思わなかつた。あれは無実であるというような気が今でもしておる。壷井を弁護したい気持が私は非常にある。第一この問題が割れたのはどこから割れたかといえば、例のゴルフの事件でしよう。運輸省でゴルフの会をやるのに金が足りない。カップの代とかあるいは弁当代がいる。壷井は侠気を出して、自分が何とか調達するといつて、山下汽船の関係で三十万円とつたのでしよう。山下汽船が持つて来たのでしよう。おそらく宴会でもらつて家へ持つてつたあとで支払いのときに、その三十万円から金を出さなくて、役所にあつた五十万円から出した。その役所にあつた五十万円はどこから来たかということで、名村から来たということが自供された。それでこの火がついて来た。これは犬養さんも、その辺におる人も、目を見ればわかる、ほんとうのことです。それから割れて来た。それを見てもわかるように、壷井という人はなかなか侠気のある人で、仕事熱心で、自分の私腹を肥やすような人ではない。現に次の次官を約束されておるような人である。従つてもし壺井君に、この許諾請求しておるような、この中に書いてあるような贈収賄の被疑事実があるとすれば、もしこれが贈収賄になるというのであるならば、その二百五十万円は壷井に行つた。残りの百万円と百万円は、言うのははばかるが、やむを得ない、石井運輸大臣と大野国務大臣に渡つたという重大なる疑惑がある。私は疑惑と言う。なぜ疑惑と言うか。これは御本人の弁明陳述がないうちは、疑惑と申し上げる。しかしこれは確実なる疑惑であると私は信じておる。なぜかというと、現に収容されておる、金を出した名村関係被疑者の供述その他で、私はある程度知つておる。そのほかその金がいつ、幾ら出て、その一口はどこへ行つて、残りがどう行つた有田君がそれ途中で使つたか使わなかつたか、何の目的でそれが渡つたか、その事実を人的、物的記録の証拠をもつて私は知つておる。しかしそれは有田君がまだ逮補許諾がない前であるから、検察庁の捜査の妨害になるからここでは申し上げません。しかしこのことがもし万一間違つてつたならば、私は政治責任をとります。人に御迷惑のかかることでありますから、明らかに政治責任をとります。従つて壷井君がもし収賄の事実に当るならば、何ゆえ残りの人も同じように逮捕状を出さないのであるか、その点をお伺いいたしたい。
  46. 井本臺吉

    ○井本政府委員 犯罪の嫌疑のない者に、逮捕状を出すというようなむちやなことはできません。ある程度の証拠が集まつたからこそ許諾をお願いしたのでありまして、嫌疑のない者に対して逮捕状請求というようなことはできません。
  47. 中曽根康弘

    中曽根委員 その嫌疑を持つために有田君を逮捕するということであろうと思う。そこで私がここで申し上げたいのは、大野国務大臣は船に関係のない職務なんです。従つてこれは収賄とか何とかいうことにはならない。しかし検察庁の見解によれば——芦田さんは、当時外務大臣あるいは総理大臣であつた閣議決定して支払い促進に関係したからといつて、芦田さんは逮捕されておる。しかしあつせん収賄の罪名は刑法にないからというので無罪になつておる。大野さんのケースはそれと同じだと思う。従つて私は犯罪事実に当らないと思う。しかし石井国務大臣の重要なる疑惑は、これは運輸省当局であつて決定権に関係しておる。従つて当然これはそこまで行くべきである、しかもその後有田君の動きを見ておると、公然として、あるいは隠然として証拠隠滅をやるような行動をやつておる。現にあなたは検察庁を見て知つておるではないか。壷井をそこまでやつて、これをやらないということは不公平ではないか。司法当局にお尋ねいたしたい。
  48. 井本臺吉

    ○井本政府委員 要するに有田さんが犯罪容疑がある。これは刑事訴訟法のいわゆる証拠隠滅のおそれがあるということで、早く調べたいということから、逮捕の許諾をお願いしておるということを、何回も申し上げただけでございまして、その他のことについては言明する限りではありません。
  49. 中曽根康弘

    中曽根委員 私はこれまで申し上げるには、非常な決心をもつて申し上げるのであります。何も私は改進党員だから申すとか、国会議員あるいはその他であるから申すというのじやない。今日の国民の外の空気を見てごらんなさい。今日の国民の外の空気は、議会政治自体が吹つ飛ぶという瞬間にある。このとき国会議員が、そういう党派を離れて、ほんとう政界自分で粛正して行かなければ、議会政治はもたないと私は考えるから、慎重な考慮をもつて申し上げているのであります。何も改進党が政権をとろうとか、古田さんの陣営を痛めつけようとか、そんなけちな考えで申し上げているのではない。私はこのことを言つた以上は、私の言葉に断じて責任を持ちます。緒方総理にお尋ねいたしますが、このような疑惑は、私が言つているだけではなくて、すでにジャーナリズムの世界にも、国会議員政治家の世界にも、当然の言葉として頭にしみついておるのですよ。あなたは御存じないかもしれないが、あれだけの人間を動員して、これだけの長い時間かかつたものが、わからないということはないのです。これだけ国会で私が責任をもつて言い、天下からこれだけの疑惑をもつて騒がれている事態を、内閣は依然として先ほどのような御態度で継続して行かれるつもりであるか、御所信を承りたいと思います。
  50. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 先ほど来御質問をつぶさに承つておりますが、今まで伺つたところで、内閣が進退をきめなければならぬという理由は、政府は少しも感じておりません。
  51. 中曽根康弘

    中曽根委員 内閣の御答弁を私はきわめて遺憾に思います。国会議員予算委員会で、責任をもつてこれだけ言うということについては、自分ほんとう政治生命を賭して言つておることであります。しかもそれは世の中に普遍化している事実なのであります。私はもし事態が許すならば、証拠を示してもいいのです。しかし、これは検察当局のおじやまになるからやらない。有田逮捕後ならば私はもう一回やつてもよろしいと思う。しからば犬養さんにもう一回一お尋ねしますが、内閣は依然として責任をとる必要はない、このままほおかむりして行けばよろしい、こういうお考えでありますか。
  52. 犬養健

    犬養国務大臣 内閣責任をとらなければならないという判断をしなければならないという報告は、検察当局から一度も受けておりません。
  53. 中曽根康弘

    中曽根委員 犬養さんは、私の質問の趣旨をまつたく事実無根であると、全然否定いたしますか。
  54. 犬養健

    犬養国務大臣 私は容疑事実が現われたものについて判断を下す役目でありまして、否定するも肯定するも、これから出て来るものをどうして答弁ができましようか。
  55. 中曽根康弘

    中曽根委員 それは犬養さんが下の方を掌握してないから、そういう御答弁が出るのであります。私は、内閣がこの際一挙に決心をして、辞職して国民に罪を謝すべきであると思う。緒方囲物大臣、もう一回所信を明らかにしていただきたい。
  56. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 こういう審議が紛糾しておりますときに、内閣がそう軽々に動くべきものではないと、私は確信いたします。   〔川崎委員「議事進行について」と呼ぶ〕
  57. 倉石忠雄

    倉石委員長 議事進行の御発言は適当な時期に許します。中曽根康弘君。   〔発言する者多し〕
  58. 中曽根康弘

    中曽根委員 委員長にお願いします。私は議事進行を認めます。
  59. 倉石忠雄

    倉石委員長 議事進行はすぐ許しますから、続行してください。中曽根康弘君。
  60. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからばもう一問いたします。今日の事態はきわめて憂慮すべき内外の情勢にあるのであつて国会がみずから自己を粛正して、逮捕状であるとか、あるいは刑事犯罪であるとか、そこまで事態が行かなければ内閣辞職責任もとらぬ。そういう事態民主主義の没落を意味するものである。もう一回このことを緒方国務大臣質問する。責任をとつて辞職するかしないか、もう一回伺いたい。
  61. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたしますが、今の事態において、責任をとつて辞職するということは、全然考えておりません。   〔川崎委員委員長」と呼ぶ〕
  62. 倉石忠雄

    倉石委員長 もう少し待つてください。
  63. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は議事進行の発言を許します。   〔発言する者多し〕
  64. 倉石忠雄

    倉石委員長 中曽根康弘君。   〔川崎委員「議事進行について発言を求めます。委員長」と呼ぶ〕
  65. 倉石忠雄

    倉石委員長 ちよつと待つてください。   〔発言する者多し〕
  66. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。——静粛に願います。   〔川崎委員「ただいま中曽根君と……」と呼ぶ〕
  67. 倉石忠雄

    倉石委員長 川崎君、まだ御発言を許しておりません。   〔発言する者、離席する者多し〕
  68. 倉石忠雄

    倉石委員長 川崎秀二君より議事進行について発言を求められております。これを許します。川崎秀二君。
  69. 川崎秀二

    ○川崎委員 ただいま中曽根君と政府閣僚との質疑応答を聞いておりますと、この問題は政局に関し、吉田内閣成立以来、その存立に関連しても重大な問題が惹起しつつあることを承知するものであります。すなわち衆議院が許諾を求められておる有田二郎議員の問題に関して重大な関連を持ち、かつ新たなる発展を示唆する問答が投げられ、中曽根議員造船疑獄中心課題たる造船割当に関し、その最高責任者たる運輸大臣が関係しているという疑惑があるということを、発言いたしておるのであります。神聖なる予算委員会の席上において、かかる重大な疑惑を投げられたということは、目下世間の耳目を集めつつある造船問題のキー・ポイントがここに投げられたということにおいて、私は人の名誉を毀損するがごとき発言は、中曽根君といえども、絶対の責任をもつて言うのでなければ、許してはならぬと一思うのであります。(「その通り」)従つてかくのごとき発言をする以上は、政治家としても相当有為なる将来を期待されておる中曽根君は、相当の責任をもつて発言をしたものといわなければならない。この経緯については、わが改進党の部内においても、中曽根発言を許すべきかいなかということについて、昨日来相当なる経緯があつたのであります。しかしわれわれはあらゆる反対を封鎖しつつ、この問題を提供して、議会政治の根底から醜悪を一掃したいという大決意のもとにこの発言をわれわれは許し、また応援をしておるということを、あらためてここに宣言するとともに、このような問題が指摘された以上、この発言が真なりやいなやは、終局的には司直のすみやかなる調査とともに、また各政党の政局に対する態度も協議すべき段階に立ち至つたと思うのであります。ことに予算委員会においてかかる問題が投げられ——昭和電工事件以来の経過を見ても、閣僚が融資の割当に動いて、その裁判において職権に関係のないものは、あるいは最後は白になる場合もあるのであります。しかし今までの経緯からすれば、担当大臣、その仕事の関係の農商責任者というものは、今日いかなる場合においても黒になつておることは、天下明々たる事実であつて、その意味では石井運輸大臣に疑惑が投げられたということは、吉田内閣存立に関する重大な危機がここに到来しておると、私は指摘せざるを得ないのであります。かかる意味におきまして私は、中曽根発言と政府閣僚の問題の重要性にかんがみて、委員会は暫時休憩をなし、この処理について理事会を開くことを要求するものであります。その旨の動議を提出いたすのであります。
  70. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ————◇—————    午後二時二十六分開議
  71. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  質疑を継続いたします。この際午前中の中曽根康弘君の発言に関して、大野国務大臣及び石井運輸大臣より発言を求められております。これを許します。大野国務大臣。
  72. 大野伴睦

    ○大野国務大臣 中曽根委員の、先ほど私に対する不当な発言がありました。それに対して私は一身上の弁明をいたします。あまり物に驚かぬ私でありましたが、先ほどの中曽根発言には、深山の雷鳴のごとく、青天の霹靂のごとく私は驚いた。よくもこんな——どういう材料でそれを証拠とされるか存じませんが、第一に、その材料の出所を私はお尋ねいたしたい、かように考える。そうしてあなたは——私と有田議員とは多年の同志であり、世間では親分、子分と申しておりますが、今日の世の中親分もなければ子分もありませんが、グループの一人であることだけは間違いございません。水魚管鮑の間柄であることをはつきり申し上げておきます。世間言う親分であり、子分であり、子分から金をもらうほどに失礼ながら大野伴睦は耄碌いたしません。ことに私は、御承知の通り、過去において友人の軍政、松岡が昭電事件の問題で、こんなことは何にも関連のない私が、二十万円収賄した——これは二審でも最高裁判所においても無罪と相なつておりまするが、その間私は、二箇年四箇月の間非常な憂欝な生活を続けた。そのことはよく御承知であろうと思います。爾来私は、あつものに懲りてなますを吹くようなつもりで処世をいたしております。有田議員から私が百万円もらつた、こんな事実は絶対にありませんから、はつきりここで申し上げておきます。
  73. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私は、大野君が今いろいろ申されましたとほとんど同じような御答弁を申し上げるようなことになるのでありますが、私が有田君から百万円をもらつたということは絶対にありません。どういうところからそういう声が出たのか、私としてはふしぎに思うのでございます。有田君とは親しい、同じ党に属しておりまするから折衝は多くあります。ほかの同僚諸君と同じことでございます。それがこの問題に関連して有田君から百万円もらつたと言われるが、私自身がもらつてないのでありますから、このくらい私としてははつきりしておることはないと思う。そういたしますると、どこか何か間違つた話を基礎とされまして、いろいろなことを言われるのではないかと思うので、出所等につきましてはつきりとしたことをお教え願いたいと思います。
  74. 大野伴睦

    ○大野国務大臣 なお中曽根議員は、政治的生命を賭して闘うのだとおつしやる。それはけつこうですが、私がそういう事実が全然ないとなつたら、政治責任とはどういうことでありますか、私の方からあえてお尋ねしておきます。
  75. 中曽根康弘

    中曽根委員 政治責任というものは、自分の良心に恥じない行動をとるという意味であります。しからば今の両大臣の御答弁に関しまして、私はもう一回申し上げたいことがある。御存じのように名村造船から出た金は二百五十万円が二個ある。一つは十月に出ておる。これは有田後援会とか有田君は言うておる。これはあわててあとで返却された。もう一個の二百五十万円がある。これは十一月初旬です。その二百五十万円を出すにあたつては、何のために、だれだれだれに渡す、それが明らかにされて、それを認識して本人は持つてつて、その一つがこの許諾状の五十万円に出て来ておる。そして本人はその結果を報告しておる。そして本人が途中で費消したことがないという事実も明らかにわかつておる。これ以上は、私は捜査方針の妨げになりますから、申し上げない。これだけの事実は歴然としてあるのです。  石井運輸大臣にお伺いいたしますが、第九次後期の造船割当に際して、名村造船でつくる東西汽船の信用状態は非常に悪いというので——この本件です。非常に悪いというので、開発銀行ではその資産調査その他をやつて、しばしばこれは不適当であると申し入れているはずです。これは事実です。ところがふしぎにもその運輸大臣が、なるほど今は悪いが、割当をすれば大阪商船に合併させる、だから割当をしてくれ、そう言つて無理に強行して割当をしておるじやないか。何のためにこういう必要があるのですか。これだけ申し上げれば、これ以上申し上げる必要はない。  以上で私の質問は終ります。
  76. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 名村造船の割当の問題で何か不正があるようにおつしやいましたが、これははつきりと申し上げたいと思います。私ども造船の割当を決定するにあたりまして、造船合理化審議会にいろいろな諮問いたしました。その答えの中に、造船所の合理化と申しますか、安い値段でこしらえるような努力をしたところの尊重ということの項目があるのでございます。名村造船は、その意味におきましては、ほかの造船会社の値段よりは一割ぐらいな割安の値段を出しておるのでございます。これが一つの大きな理由になつております。それからそこでつくりました船会社の東西汽船というのでありますか、それは私の方の運輸省の事務でいろいろ調べましときにおきましては、ランクは低くはありまするが、落第点ではないのでございます。これをいろいろ持ち寄りまして開銀と相談をいたしました際に、開銀から、この名村造船に対する合理化の務力はこれを認むべきだ、しかしそこに受けまする東西汽船が、少しく信用度合いが薄い部になるから、これは商船会社があとで使う船だから、商船会社と一緒に連帯保証をすれば、それでわれわれの方は賛成だということで決定されたものでざいまして、明るいみんなの前でこしらえたもので、おかしなものは終対にございません。
  77. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際中曽根君の質疑に関連いたしまして、山花秀雄君より質疑を求められております。これを許します。簡単に願います。
  78. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま同僚議員の発言につき、その対象になられました大野国務大臣、石井運輸大臣より答弁がございました。事が国会の名誉に関する、また政局の推移にも関する非常に重大なる問題でございますので、若干時間をいただきまして関連質問をいたしたいと思うのであります。  昨日の朝日新聞、毎日新聞日本で二大新聞といわれておる大新聞でございますが、この夕刊に掲載されておりました大野国務大臣が岐阜県において発言をされておる内容に、次のようなことが言われておるのであります。「いろいろいわれているが、おれはあくまで潔白だ。有田君の件は、彼はおれの子分に違いないが、五百万円は後援会の金で問題ではない。」ただいま同僚議員質問の金額は、偶然にも五百万円の金額がここに提示されておるのであります。大野国務大臣が岐阜県において発言された新聞報道によりましても、やはり五百万円という金額がたまたま偶然の一致のような形で出ておるのでございますが、この五百万円が後援会の金だという意味のことを、大野国務大臣からこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。  またもう一つは、有田逮捕の問題について、別に証拠隠滅ができるわけではないから現行犯ではない、五十万円くらいの贈賄容疑で、これは任意出頭で調べるのが至当ではないか、こういう発言をされておるのでございます。金額の多少はこの際われわれは論ずるところではございません。問題の本質が贈賄、収賄というような、こういう忌まわしい犯罪事実に関連しておるのでございます。そこで私どもは、大野国務大臣の五十万円くらいの贈賄容疑で任意出頭と言われるそのものの考え方の感覚を、綱紀粛正を唱えておるこの内閣閣僚の一員としての奥意を、ひとつお尋ねしたいのであります。  また、内閣辞職が話題になつているそうであるが、一人や二人の容疑者が出たとて、そんなことは一々問題にしてはおられない、こういう発言をされておるのでございます。せんだつて吉田総理大臣あるいは緒方総理がたびたびこの問題の答弁に立ちまして、仮定の事実、仮定の事実というようなことを言われておりますが、仮定の事実の裏には、もし閣僚にこの問題が波及するようなことがあれば、政治責任をとるという言外の意味を含んで、仮定のことには答えられない、こう総理大臣や副総理は言われておるのでございますか。私はこの際この問題に関して、特に大野国務相のその説明と、それから吉出総理大臣は今日参つておられませんが、副総理の御見解をひとつこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。国民は、この国会に、この種の疑惑に非常に関心を持つて見ておりますので、国会の名誉のために、日本政治の名誉のために、この際問題の諸点を明らかにしていただきたいことをお願いしまして、御答弁を願うものであります。
  79. 大野伴睦

    ○大野国務大臣 お答えいたします。私は、岐阜でどんなことをしやべつたか、記憶がございませんが、たくさんの新聞記者に取巻かれて、そうしていろいろ話がありました。五十万の問題で百出議員は逮捕されるのか、どうも逮捕要求がそうらしい。けれども検察庁のだれかが議運において、けた違いの金が動いておると言つたのはどういうわけだろう——それは五十万円にまるをつければ五百万円になるのではないか、こう言うたのでありますが、それが誤まつてそういう序うに伝えられておるのであります。  また五十万円ばかりで逮捕云々——それは私は名村の重役は全部逮捕されておる、そして家宅捜索も済んでしまつておる、証拠隠滅をするというても仕様がないじやないか、といつたようなことを言うたのでございます。新聞に出ております範囲を逸脱していない発言を私はいたしておりました。
  80. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたしますが、今大野大臣からお答え申した点から見ましても、またそうでなくて、私自身新聞記者をしておりましたが、新聞事は必ずしも本人の発言通り出ていない場合があります。その新聞記事は私自身見ておらないし、その分についてはお答えしない方が間違いないと思います。
  81. 倉石忠雄

    倉石委員長 山花君、五分というお約束ですが……。
  82. 山花秀雄

    ○山花委員 どうも新聞記事がでたらめのようだというような意味の御答弁でございましたが、副総理新聞入用身というふうに承つておるのでございます。この記事が出たのは朝日、毎日という二大新聞で、相当信用のある新聞でございます。  なお一つ大野国務大臣から御答弁がなかつたのは、五百万円は後援会の命で問題はない——この後援会の金という意味についてこの際国民疑惑を特つておりますので、明らかにしていただきたい。  それから緒方総理にもう一度お尋ねしたいことは、一人や二人の閣僚関係しても問題にしておらないと大野国務相は言われておるのでございますが、もし中曽根委員政治的生命を張つて発言されましたことが事実となつて現われましたときには、内欄は責任をとつて辞職をされるかどうか。そういう責任をとられるかどうかということをこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  83. 大野伴睦

    ○大野国務大臣 お答えいたします。有田後援会については、この間有田君がわが自由党の総務会においてでありましたが、二百五十万円は後援会へ寄付としてもらつたのだ、しかもこれは秘書が扱つたのであるから自分は知らないということを言明しましたから、それで私は、後援会へ秘書がもらつたならば本人に累が及ぶことは何もないじやなかろうか、こういうことを言うたのであるます。
  84. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 閣僚が一人二人ひつかかつても何でもないということを大野大臣が言われた模様はございません。してみますと、仮定の上のお答えはできかねるということは先般来私繰返して申した通りでありまして、ここで重ねて申し上げることを差控えます。
  85. 倉石忠雄

    倉石委員長 今澄夫君。
  86. 今澄勇

    今澄委員 私は緒方総理にお伺いいたしたいのですが、二十日の日の午後緒方さんは、首相官邸に田中衆議院決算委員長を招かれて、森脇メモのことについていろいろお話があつた。どういう意味のことを申されたのか、ちよつとお伺いしておきます。
  87. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 田中決算委員長から森脇メモのことの話を聞きました。それだけであります。
  88. 今澄勇

    今澄委員 私はこの問題は重大な問題であると思う。そのときに緒方総理は田中委員長に対して森脇メモについて、このメモは絶対に公表しないようにしてほしい、メモの内容は与党に不利だから運営は慎重にすべきであるということを言うて、田中決算委員長はその後新聞記者と会見をして、これはいろいろ新聞に載つておるので御存じの通りですが、緒方総理から私はこういうことを言われたが、この問題については私個人ではどうにもならないということを申しておるのであります。このことは一見簡単なことのようだけれども、あなたは政府を代表し、副総理である。行政府が立法府の運営についてあれこれさしずをするということは、われわれ国会議員全体から見るとまことに言語道断のことでなければならない。特に非常な疑惑を生んでおるこの造船汚職に関する国会審議に関して副総理である緒方さんが容喙をするがごとき発言は、断じて許されないものではないか。これは田中決算委員長の直接の話でもあり、かつはまたあなたとの話であるから、これについてひとつ責任ある答弁をお願いしたいと思います。
  89. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私は国会の運営についてさしずがましいことをしたことは一ぺんもございません。田中委員長に対してそういうことをしたことは一つもございません。
  90. 今澄勇

    今澄委員 そこで二十一日の朝日新聞並びにその他の新聞紙上において、田中決算委員長が申しておることは、田中決算委員長がその通りであるということになれば、緒方総理責任をとつて政治的な態度を明らかにされますかどうですか、質問申し上げます。
  91. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私事実でないことは事実でないと申し上げるより申し上げようはございません。
  92. 倉石忠雄

    倉石委員 今澄君お持ち合わせの時間がなくなりました。
  93. 今澄勇

    今澄委員 この造船疑獄の問題では今日までいろいろ論議をされましたが、総理官邸の大臣室において、有田氏が地検に出て行くような打合せを顧問弁護士といたされたり、それからもう一つは時の内則副総理であるあなたが決算委員長を呼んで、森脇メモについて発表を差控えたらどうかということを申されて、しかも決算委員長ともあろうものが——私はうそを言うことは絶対にないと思いますが、決算委員長ともあろうものが、公衆の面前において、これは緒方氏から頼まれたけれども、私も個人ではやれないと言つてつた、こういうことでございます。もしこの決算委員長の話が事実であるとするならば、時の内閣責任者としての緒方さんがわれわれ国会審議権に対して容喙をいたしたものであるという意味において、私はぜひ緒方さんの責任を問いたいと思います。もし田中決算委員とわれわれとの打ち合わせよつて、この事実を予算委員会に出したときには、あなたは責任だけはおとりになるかどうかとということだけをお伺いしておきます。
  94. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをします。田中委員長を私が呼んだ覚えはございません。   〔今澄委員「お会いになつたこともございませんか」と呼ぶ〕
  95. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 会つたことはたびたびあります。
  96. 倉石忠雄

    倉石委員長 西村直己君。
  97. 西村直己

    西村(直)委員 私はこの際国会の権威を保つために政府並びに委員長質問申し上げたいと思うのであります。実は今朝来の中曽根君御発言を聞いておりますと、まるで検察庁の検事の一歩手前のようなことを、しかも証拠もはつきりなくして発言をしておる。最近の国会の空気はまことは遺憾でありまして、たとえば先般の今澄君の発言のごときにおきましても、はつきりした証拠がなく、いたずらに宣伝の場所にここを使つておる。そうして最終の目的は、ただ倒閣をやればよいという党利党略に出ておるのであります。たとえば、今澄君の発言の場合におきましても、営業案内であるとか、新夕刊というような新聞、あるいは真相というような雑誌に名前が出ておつた。しかもそれが、犯罪被疑者でないところの普通の類似金融機関まで持つて来て、その顧問をやつておる、しかもそれを法務大臣に調査しろと言つて、いかにもその顧問として関係しておる者は全部被疑者のごとくに扱い、かつ自分の党に所属しておる人がたまたま顧問であるような場合には、これを隠匿して申しておる。こういうような発言は証拠がないのであります。本日の中曽根君の発言におきましても、もし証拠があるなら証拠をはつきりお出しになるならいいが、ただいまの閣僚諸君の御答弁を聞きましても、何らそこに確然たる証拠がない。ただ宣伝のため、はつたりの見地から、自分政治責任をとると言つておる。中曽根君にして政治責任をとるならば、ちようど有田君が、おれが黒であつた政界を隠退すると言つたと同じく、君はそれならば政界を隠退するぐらいの覚悟を持つておるかどうか。その点におきましてさらに、私の申し上げたいのは、本日の発言において国会のルールを蹂躙しておることであります。先般の議院運営委員会において秘密会をやつてつたのであります。その秘密会内容は、国会のルールにおいて、道義的にお互いに示さないということになつておるのを、わざわざ秘密会の材料を持つて、しかも政治責任者でないところの刑事局長を誘導してこれに裏打ちをせしめるようなことは、私は、国会のルールをきわめて乱るものであると思うのであります。従つて、この機会に委員長にぜひお願いをいたしたいのは、今朝来、重要なる閣僚に対してきわめて名誉を毀損するがごとき言動をされたる中曽根君の発言に対して、あるいは取消しをなさるか。あるいはこれは、私はおそらくは改進党公党の全体の意見ではないと思うのでありますが、その点においてきわめて不穏当な点がありますならば、ぜひ委員長において、速記録をお調べの上、適当に御訂正を願いたいのであります。   〔発言する者多し〕
  98. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  99. 西村直己

    西村(直)委員 なおこの機会に政府におかれましては、国際収支の改善、物価の引下げ、いわゆる切りかえる大きなるところの予算を出しておるのであります。また、あわせて重要なるととろの法案を漸次お出しになると思うのでありますが、あくまでも法案を続続とお出しいただき、国会本来の姿において、本来の使命の遂行のため、政府においてこの機会に十分所信を披瀝されたいのであります。
  100. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府は現在の時局のきわめて重大なること、またその間に処しまして政府責任がきわめて大きいことを信じます。その信念に基き、いかにデマが乱れ飛びましようとも、断固としてこの責任を果すことが、八千万国民負託にこたえるゆえんであると信じております。
  101. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際委員長から申し上げます。西村君の関連質問委員長の名前が出ましたが、委員長といたしましては、国会審議をあくまでも尊重するという建前から、委員各位がお互いに国会の権威を尊重し、意義あらしめるためにお互いに自粛していただいて、国政の審議を十分に尽していただきたいというのが委員長の念願であります。どうぞ御協力をお願いいたします。  それでは、古屋貞雄君。   〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕
  102. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 本日は、同僚議員並び政府からいろいろと重大な御発言ございましたけれども、本件につきましては、院内における言葉のやりとりというようなことよりも、先刻同僚委員中曽根君から申されたように、造船疑獄の問題、あるいは保全経経会の問題、日殖の問題に対する国民疑惑を解かなければならない問題につきまして、まず中曽根君から、みずから国会が自粛し、みずからの力をもつて国会の威信のために事実を明確にしなければならぬという御発言がございました。しかも中曽根委員の御発言は相当なる確信責任のある言葉をもつて発言されておるのでございまして、私どもは、この同僚中曽根委員の発言に対する真実性の問題につきましては、その他のわれわれの調査いたしました幾多の事実に徴しまして、やがて司直の手によつて明確にされることを確信するものでございます。従いまして、政府当路の御答弁によりますると、さような事実はないということの御答弁をしておりまするが、私どもは、国会の品位を傷つけたり、あるいはいたずらに国会審議を引延ばそうとするために、この委員会に出席して質問をされている方はおそらく一人もないと私は思う。従いまして、中曽根委員質問の事実は、中曽根委員が相当あらゆる方面の調査をされた結果の発言であると信じます。しかも、有田君が五百万円の金を、自分の後援会という名前であるかどうか知りませんけれども、寄付を受けたということは事実になつております。従いまして、この五百万円の金がどういうぐあいに行使されておるかということについては、あとから法務大臣に承りたいと存じまするけれども、少くともこの事実が事実として司直の手によつて明らかになつたときには一体——吉田内閣は、あらゆる機会において、国会の自粛と網紀粛正を生命として、今日まで参つております。吉田内閣は、口を開けば綱紀粛正を叫んで参りました。従いまして、その建前から、吉田総理の潔癖性からも考えまして、本日は直接承ることができませんので残念でございますけれども、副総理緒方国務大臣に対して、かような事実が司直の手によつて明らかになつた場合には、いかなる責任をとるかさらに重ねて私は御質問申し上げて、御確答を得たいと存じます。
  103. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 司直の取調べの結果に対しましては善処をいたしまするが、今の御質問の仮定のことに対しましては、先般来繰返しお答えしていると同じようにここで申し上げるわけには参りません。
  104. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私は、ただいまの緒方総理答弁に対しまして納得が参りませんのは、仮定ではございません。現に運輸省におけるところの官房長あるいは今井田氏が起訴されておる事実がございます。従いまして、この事実からかんがみましても、綱紀粛正を生命としております。吉田内閣、しかも本日の中曽根委員の発言によりますると、かような事実がやがて明らかになるだろうと考えられまするところの運輸大臣の問題、大野大臣の問題が、ここにはつきりと責任を持つ委員の発言において明らかになつておりますので、改めて、私は、仮定ではございませんから、この具体的事実に対して御答弁願いたいと思います。
  105. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 あなたが、仮定のこととして、もしと言うてお尋ねになりまするから、仮定のことに対しては申し上げかねると申したのでありまして、今の運輸省の中に官房長その他のの汚職容疑者が出たということに対しましては、政府責任をとる段階でないと考えております。
  106. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 犬養大臣に御質問を申し上げまするが、犬養法務大臣は、まず本年の一月十日に法務大臣の官邸におきまして、山下汽船の山下太郎氏と面接した事実があるかどうか、この点を承つております。
  107. 犬養健

    犬養国務大臣 山下汽船会長が面会したいと秘書官を通じて言つて参りましたので、大臣室で会いました。
  108. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 さらに一月十三日に中川という料理屋で山下汽船の方たちに招待を受けてそこに出席した事実があるかどうか。
  109. 犬養健

    犬養国務大臣 事情が全然違います。今日私はお尋ねまでもなく、自分の身の明しを立てるために進んで記者クラブに発表いたしました。少し長いけれどもお聞き願います。  その日は八時ごろ私はよそから帰りまして、実はある流儀の踊りの切符を友人に頼まれまして、なかなか手に入りませんので中川に頼みました。玄関で押し問答しておりまして、いずれとりに来る。ついでに小さいことですが、昔、私の子供の時分から赤坂の名物になつているあるまんゆうを私の妻が客に使いたいというので、これも頼みに参りまして、いずれとりに来るからよこしてくださいと言つているととろへ、山下太郎君が玄関に出て来たのです。そうして君はどうしていると言つたら正月の祝儀に来た。あなたは何をしていると言うから、私は切符とほかのものを頼みに来た。寒いからお茶でも飲みませんか——お断りいたしますが、そのときは造船疑獄というものは全然出ておりません、新聞をごらんになればわかります。それで同年配の年来の友人で、先代からも知つております。但し家庭のつき合いはございません。二月か三月に一ぺん澁澤敬三君その他の同年配の会がありまして、そこで久闊を叙し、あとはあまり個人的につき合いがないというような、まあほどほどのごく気安い仲であります。特に家庭で行き来はしておりません。そういう関係で、それでは立つているのも寒いし、またいろいろなお客がそろそろ出て来る時刻であるから人に見られてもといつて、中へ入つて、お茶は飲みませんが、冷たい物を飲みまして、新年おめでとうと言つてわかれたのであります。これを要するに、そのときは造船疑獄なんという頭は向うにもないしこつちにもない。友人としてさしつかえないと思つている次第であります。人生にはそのくらいの余裕を認めていただかなければ……。
  110. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいま犬養大臣は、その当時造船の捜査をしていられないとおつしやいましたけれども、それでは承りますが、壷井官房長が逮捕状を出されたのがいつであつたか。それから横田山下汽船社長が逮捕状を出されたのはいつであつたか、その点を御答弁願いたいと思います。
  111. 犬養健

    犬養国務大臣 私は一々覚えておりません。その当時横田社長が逮捕せられたということはお互いの頭にないことは明瞭でありまして、これは新聞の日にちをごらんにななればわかると思います。
  112. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 すでに山下汽船は七日に捜査を受けておる事実があると私は心得ております。従いまして造船疑獄に対する捜査が相当進展をしている過程であると私どもは信じまするけれども、それでも犬養法相は全然知らなかつたとおつしやるのか、確信のある御答弁を願いたいと思います。
  113. 犬養健

    犬養国務大臣 あなたこそおかしいと思います。その当時の新聞をごらんになつてから明日対決いたしましよう。
  114. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 十五日に積田社長が逮捕された事実には間違いないと私ども心得ておりますが、いかがでしよう。
  115. 犬養健

    犬養国務大臣 私は神様でありませんから数日後に何が起るか存じません。あなたはわかりますか、そういうことを。   〔発言する者あり〕
  116. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 静粛に願います。
  117. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 少くとも二日後に重大なるこの疑獄事件について山下汽船の社長が逮捕状を出されるというほどの状態に置かれたことは、これは重要な案件でございます。その当時二日前に法務大臣がその当の会社の会長である八と料亭で酒を飲んでいたという事実があつた。これを疑わないことはありませんよ。対決をいたします。御返事願います、国民は信頼できませんよ。
  118. 犬養健

    犬養国務大臣 あなたがそういう質問をなさる立場はわかります。しかし私は二日後に逮捕になるということは夢にも考えません。第一、一番かんじんなことは——これが一番かんじんだと思いますが、私が横山あるいは山下等、山下汽船の重役について事情を調べてくれとか、何とかしてくれということを、法務省あるいは検察庁につゆほどの指示をしたことがありましたら即刻辞職いたします。
  119. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 重ねて質問を申し上げます。しからば有田二郎君に対する逮捕状あるいは逮捕の許可についての御相談を、検事総長並びに井本刑事局長から受けたのはいつであつたか、その点を承りたいと思います。
  120. 犬養健

    犬養国務大臣 これも進んでお答えをしたい事項の一つでございます。私がその報告を受けましたのは、当日警察法の改正案の上程で胸当大臣として大臣席ですわつておるときに、岡崎秘書課長からメモが参りまして、有田二郎議員の逮捕請求が行われたということでございます。
  121. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 その事実を大臣は御承知の上で、自由党のある一部の方たちに、この事実を漏らしておるということを、この予算委員会におきまして御質問せられた事実があると私は承つておるのでありますが、さような疑いを受けまするような事実のあつたと称するその事実を、ただいま申し上げましたような事実と総合して私どもが考えまするときに、国民がこれを判断いたしますときに、私がただいま法務大臣に御質問するようなことは当然に起るべき疑問でありまして、もつと国民並びにわれわれ委員にはつきりと証明し、納得の行く御答弁を願いたいと、私は思うのであります。ただいまは非常に興奮された御答弁をなされておりますけれども、私どもは、御自身がいかにきれいだとおつしやいましても、そのきれいな事実が証明され、国民に納得されなければならない、さような義務を大臣は持つておると思う。その義務の履行を私はここで要求しておる関係上、明確に御証明願つて、私ども国民委員が納得が行きますならば、私どもはまことに幸いだと存じますから、親切丁寧に御答弁を願いたいと思います。
  122. 犬養健

    犬養国務大臣 長年法務委員会で御一緒にいる古屋さんに対して言葉が荒かつたことは遺憾に存じます。今度は穏やかに丁寧に御答弁申し上げます。これも進んでお答えをしたい事項の一つでございます。実は自由党の総務会では古屋さんと反対のおしかりを受けまして、一体まるで物を知つてないじやないか、まるでロボットではないかというおしかりを受けたわけであります。先日もここで申し上げたように、法務大臣というような地位はこういう場合に必ず両様の非難を受けるのでありまして、これが私は世の中だと思つております。しかし私としては両方の非難を十分にくみとつてまじめにやつて行きたいと思つております。さてただそう言つただけでは証拠がないとおつしやると思いますから、どうか事務的に私に通達した刑事局長あるいは要すれば検察当局から何時何分——何秒まではむづかしいかもしれませんが、大体何分ぐらいに大臣に初めて通知した——この日は実情を申し上げれば、警察法改正案の上程で連絡の非常に悪い日でございました。御承知のように、担当大臣は、本会議では政府委員答弁させるわけに行きませんので、一人で答弁いたしております。外へ出られないときに、向うから紙で言つて来る。いやしくも国会議員の逮捕請求なんということは、紙で言うべきではなく口で言うべきことでありますが、どうもすわつて一々しやべつておる者を外へ出すわけに行かない。まことにあの日は連絡の悪い日でございまして、その点で私は偶然にも日にちのことから起つたことはいえ、紙で同僚議員の一身上の変化を読んだということは、ほんとうに苦痛に思つております。しかし右ようの次第でございますから、事前に漏らすも漏らさないも全然ないわけでございます。これをひとつどうか御了承願いたいと存じます。
  123. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで私は重ねて御質問申し上げまするが、有田議員逮捕許諾請求に対する犬養大臣の議運に対する御説明の問題は、先ほど中曽根委員からお尋ねをしておつたのでございますが、私どもはああいう答弁では納得が行かないのであります。と申しまするのは、単なる事務的に取次をおやりになつたということでは、法務大臣といたしましては相済まないと私は思うのであります。かような事実があることを前提といたしまして、御自分の部下の調べたことを御信任になつておればこそ、私は国会に対してこの許諾の可否を要求しておることと信ずるのでありますが、ああした事実を部下が調べ上げておる。部下の調べ上げた事実に対して、これを信任され、さようなことを事実であると御確信を持つておられるかどうか、その御確信の上に逮捕許諾請求をなさつておるのかどうか。先刻中曽根委員に対する御答弁では、私どもの承りました感じでは、単なる事務的な取扱いをしたのだ、さような感じがあるのでありまするが、私は重ねて確認しておきたいと思うのです。信任される部下が調べた事実、その事実があるからこそこの逮捕について国会の承認を要求する、こういうことの確認された事実を前提としての御要求であるかどうか、その点を承つておきます。
  124. 犬養健

    犬養国務大臣 できるだけ丁寧に申し上げたいと思います。その日は朝閣議でありまして、あとで聞きますと、松事総長が逮捕請求のやむを得ざるの結論に達した——実は前の晩にここにおります刑事局長がみずから法務本省の責任において詳細に読みまして、これではどうも逮捕請求もやむを得ないだろうという結論に逃したのが非常に深夜に近いころであつたそうでございます。私はその前に有田議員の問題について逮捕請求の問題は別として、いろいろそう詳しくではありませんが要点々々の報告を受けました。それではいずれもつと問題が切迫したときに報告があるだろうというわけで、実はうちへ帰つたわけであます。話がまたもどりますが、あくる日私が閣議に出ましたあとで、検事総長が、それではすぐに大臣にいよいよ逮捕の請求をすることに決定したと自分から詳細に説明しなければならぬと言つて出て来たら、私がもう閣議に入つておる、こういうことでございます。次いであの日はまことに不仕合せな日でありまして、午後早々今度は警察法改正で本会議に入り、やむを得ず紙で知らせたということでございまして、逮捕請求に私が自分の判断力をもつと使う時間がなかつたのは、同僚に対してけしからぬではないかというおしかりは十分に甘受いたしまして、今後そのことのなきよう努めますけれども、今の御質問の主体であります事前に漏らすということは、ただいま申し上げたような事情でありまして、したくても不可能であります。またしたいとは思つておりません。
  125. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいまの御答弁によりますと、事前に有田議員に対する容疑の捜査が行われておつて、確定的な報告ではないが、報告を受けておつたという御答弁がございましたが、その最初の報告を受けました日時はいつでございましようか、お尋ねいたします。
  126. 犬養健

    犬養国務大臣 前の日の明りがついてから、電燈の光を覚えておりますから、七時か七時半じやないかと思います。
  127. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 重ねてお尋ねいたしますが、犬養法相は、自分においてこの事実については責任を負うということを、おつしやられておるという事実を承つておりまするが、その責任を負うということになりまするならば、その事実に対して確信を持たなければ、さような言葉は生れて参らないと私は思うのでありますが、さような事実に責任を負うという前提となりまする事実については、ただいまお答えをいただきましたような事務的な問題では私は生れて来ないと思うのであります。さような確信を持たれて責任を持つという言葉が生れて来ると思いまするので、あらためてさらにその点の確信を持たれておるかどうか、責任を持つに必要な程度の事実に対する確信自分が持つておるかどうか、この点も承りたい。
  128. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。それは私が前後の順序をつずめて申し上げたためでございまして、あらためてお答えをいたします。警察法の答弁が済みまして、非常に気になつておりましたが、すぐこの内容を読んで説明を聞きました。まことに同僚議員に対して逮捕請求許諾を与えることは、人間として苦痛でございますが、説明を聞いた上、これはやむを得なかつた従つてやむを得ないと結論を下しました国務大臣の責任は、全部今でも負うつもりでおります。
  129. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいま私が御質問申し上げたのは、最初に報告を受けたのはいつであつたかということ、その点がお答えをいただいておりませんから、いわゆる容疑捜査をいたしました報告を最初に受けた日時はいつであつたか、この点を承りたい。
  130. 犬養健

    犬養国務大臣 十五日の午後七時半ごろか、もう少し過ぎか、大分もうおそくなつておるときでございました。八時にはなつていなかつたように思いますが、七時半か、その近所だと記憶いたしております。
  131. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで法相の決意を承りたいのですが、法相も議員でございます。兼ねておるわけである。現在のような吉田内閣汚職事件についての、どろ沼に足を入れたようにぞろぞろあとからあとからと出て来るこの状態、はたして結論におきまして、いかなる事実が生れて来るかは存じませんけれども、この汚職事件が問題になつておることが一つ、さらに問題になつておるばかりでなく、具体的に捜査が相当進められておる事実、しかるに一方におきましては、これに対して内閣の生命とも申しまする事態が発生をし得る疑いが、ぞろぞろと出ておりまするので、法務大臣立場といたしましては、まことに人間法務大臣といたしましては、御苦心の点は私どもはよくわかります。しかしながら現在の世相において、はつきりとこの汚職事件が明確にされ、その事実が国民において納得されるという状態にまでならなければ、おそらく日本国民議会制度に対する信頼を失い、議会否認の傾向がますます増大をいたしまして、恐るべき結果を招来することを私どもは憂えるのでございますので、犬養法相は自由党党員といたしました立場から考えまするならば、まことに苦しいかもしれませんけれども、あるいはその他の政党にこの汚職事件において幾多の不祥事件が発生いたしまする場合において、司法の独立を何ものにも制約をされない、何ものにも妨害をされない立場において、はつきりと断固たる処置をおとりになるかどうか。もちろん法相の人格から脅えまして、かような御質問を申し上げますことは、まことに蛇足であり、けしからないというおしかりを受けるしれませんけれども、やはり神様でない以上、人間には感情もあり、利害もございますので、私は犬養法相を信じるがゆえに、この司直によつてあばかれております事実が爬羅剔抉されて、徹底的に内閣の命取りになるような状況に向われます場合におきましても、断固確信を持つてこの捜査を進められ、この事実を明らかにいたしまして、日本の法に触れます場合には、法の裁きの前にはつきりとこれが理非曲直が明らかになり、その責任をとらせることができるような断固たる処置をおとりになる決意があるかどうか、この席上において固くお約束を願いたいと思いますが、いかがでしようか。
  132. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。御指摘のように非常にむづかしい役目でございますけれども、仰せのように政界に対して国民が少しでも疑惑を持つておれば、この機会にこれを晴らして、新しい政界の空気を入れなければならぬと思つております。その意味で、私はいやしくも不当な政治的圧迫を神聖なる検察庁にすることは、毛頭考えてもおりませんし、これからもいたしません。古屋さんよく御承知のように、法務大臣は検事総長を通じて指揮はできますけれども、一々現場の検察庁を指揮する権限は、検察庁法によつて与えられておりません。また私がかりに廊下を歩いて現場に行きましたらたいへんなことでもあり、すぐ輿論に移ることでございます。また不当な政治的圧迫をいたしましたならば、御承知のように非常に正義感の強い役所でございますから、必ずや反発の方が目立ちまして、あなたのような専門家はすぐ、このごろのことでございますから、うわさに入ると思います。どうぞ徹底的に、私が少しでも不当な干渉をしておるかどうか、御調査を願いたいと思います。先ほどの山下汽船の会長のとにしましても、それから有田議員の逮捕について事前に漏れたというようなお疑いも、国家のためになすつておらるるところと思いますから、どうぞ当事者の私のみならず、法務当局及びもしどうしても御必要ならば検察庁にも、このことを公然とお聞きただし願いたいと存じます。私はそれを切望いたす次第でございます。
  133. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 まことに確信のあるお言葉をいただきまして、その通り御履行願いたいと要望申し上げます。  さらに進みまして、石井運輸大臣に御質問申し上げたいと思います。私は重点をまず御質問申し上げて、こまかい点に入りたいと思つておるのでありますが、外航船舶建造融資利子補給法の一部を改正するの法律案というものを、昨年の七月七日に石井運輸大臣は原案として国会に上程し、御説明を願つております。しかるにこれに対しまする審理はそのまま放任されまして、同月の二十四日に自由党並びに改進党三派修正案というものが動議として提案され、その修正案によりますと利子補給に限られておりません。損失補償法もこれに附加されまして、二十三条に及ぶ法案が動議提案され、御審議を願つて通過いたしておるのでございますが、この通過いたしました法案によりますと、船会社はみずからの金を幾ばくも出資せずに、十億数十億の船がつくれるような法案になつておるのでございますが、まことにこの点が私ども国民疑惑の焦点になつておりますので、との法律をめぐりまして、本件の造船疑獄が発生しておるということも明らかな事実でございます。政府原案の利子補給法が通過いたしました場合と、修正案が通過いたしました今日との、この政府の補給予算の差額が、八年間に十六億から百六十八億という厖大な予算になつておるということも明らかな事実でございます。そこで私がひとつ承りたいことは、さらに船をつくります鉄材の価格を引下げる。そしてとの鉄材の価格を引下げて、造船業者に安い資材を使わせて、船をつくるという構想になつておるようでございますけれども、その点においてひとつ承りたいことは、造船会社に対して実際に船の材料である鋼材の安い材料を支給するようなことになつておるかどうか。また製鉄会社がいかなる法の根拠によつていかなる原因によつて、開発銀行から借りておりますところの利息の一別が七分五厘になり、日本銀行が貸し付けておりますところの五分の利息が二分五厘になり、かような処置をおとりになつておりますところのこの即実に対して、いかなる根拠に基いてかような方法が行われておるのか、その点を承りたいと存じます。
  134. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私どもが昨年の議会に原案として一応提出いたしましたのが、三派の議員提案によりまして、利子補給の率がふえたのでございます。私どもは今お話のように、金額は非常に多くなつたのでありますが、これは世界の海運界の情勢からして、どうしても世界の競争に耐えるには、三分五五厘くらいな世界並の金利に持つて行きたいということが願いでございます。それは私どもも初め案としては考えておつたのでございますが、去年の春からやりましたおととしの補正予算で七分五厘まで下つただけでございます。それを急激に持つて行くことは、なかなか予算の上で難点がありましたので、五分といたしておつたのでございます。それが三分五厘に開銀の利子が下つたということでございまして、もしそういうことが認められますならば、日本の海運業は世界の海運界に伍して必ず競争することができる。また造船の上におきましても、そういうようにいたしますれば、盛んになつて行くであろうということが私どものねらいであつたわけでございます。  それから開銀の利子の下げる法規の基準につきましては、大蔵大臣から御答弁願うことにします。
  135. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいま石井運輸大臣から、大蔵大臣から御答弁を願いたいと申しますので、大蔵大臣にただいまの点を承りたいと思います。
  136. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 日本開発銀行の外航船建造資金融資につきましては、昭和二十九年二月一日以降は年六分五厘、それ以前は年七分五厘と定められております。これは日本開発銀行法第十九条の規定に基いて、日本開発銀行が定めたものであります。外航船のうち、第六次以降の貨物船、第七次後期以降の油送船については、その建造資金融資に対し、昭和二十八年八月十五日以降同年九月末日までの資金融資につき、外航船舶、建造融資利子補給及び損失補償法に基き、年一分五厘の割合で利子補給がなされることに、予算措置が講ぜられておるのであります。従つて日本開発銀行は、同法第二十一条の規定によりまして、当該融資について、同期間に請求する利子額を七分五厘から一分五厘を差引いた六分相当額以下としなければならないのであります。  以上によりまして、第六次以降の貨物船、第七次後期以降の油送船の建造資金融資について日本開発銀行が請求すべき利子額は、昭和二十八年八月十四日までは年七分五厘、同年八月十五日から九月末日までの期間は年六分、同年十月一日から昭和二十九年一月末日までの期間は年七分五厘、同年二月以降は、年六分五厘相当額であります。  第六次以降の貨物船、第七次後期以降の油送船の建造資金融資にかかる海運業者の金利負担は、年三分五厘とすることが適当であるという国会意思が、昭和二十八年度予算審議に関連して明らかにされておりますので、昭和二十八年度予算修正案に関する昭和二十八年七月十七日、衆議員予算委員会における河本敏夫委員の説明及び同月十八日、参議院予算委員会における三浦一雄委員の説明速記録を御参照願うとよくわかります。日本開発銀行は、この国会意思を尊重して、これらの造船資金融資にかかる海運業者の金利負担が、さしあたり年三分五厘となるように、その融資額と年三分五厘相当額の差額につき、徴収猶予の措置をとることに方針を決定いたしました。その徴収猶予の期間としては、海運業者の経理状況が好転して、外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の規定に基き、利子補給相当額を国に納付すべきこととなる程度に、収益が上るまでの期間を予定しております。  その次には、外航船建造融資について、日本開発銀行の昭和二十九年の収入予算に計上された利子収入額は、第六次以降の貨物船及び第七次後期以降の油送船については、年三分五厘を基準とし、それ以外の外航船については、年六分五厘を基準として計上されております。以上であります。
  137. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 さつきお尋ねの鋼材のことを御返事いたします。鋼材はいろいろ話合いをいたしました結果、日銀並びに開銀からの設備資金とか別口融資の貸付、こういうものの金利を下げますのがトン当り七千五百円、それから製鉄会社が自分のいろいろ合理化で別に千八百円、合計それだけのものがトン当り実際下つておるわけであります。それから銀行からの下りました分は、これは別に積み立ててありまして、そうして実際に船をつくる場合にそのトン数に応じて、造船所に支給されておりました。現実に金が渡つておるわけであります。
  138. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいまの点であります。今の鋼材の値下げに対する開銀の利息一割を七分五厘に下げ・別口外貨の日銀の貸付金五分を二分五厘に下げましたその金です。その金が石井運輸大臣の御説明によりますと、船をつくりますたびごとにプールしておきまして、造船所及び造船会社に支給されておるという御答弁がございましたけれども、私どもの調査によりますと、それが一銭一厘も支給されていないという調査でございますが、さように確信を持つて交付されておるという事実が御答弁できるかどうか。しかも昨年の八月中旬から今日までその鋼材値下げに伴う日銀、開銀の利子を下げました金額は幾ばくに当るか、この点を御答弁願いたいと思います。
  139. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 実際上に一億数千万円払つてあるそうであります。また今お話の点は少しこまかくなりますので、間違いのないように政府委員からお答えいたします。
  140. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 私からお答えしますが、これは開銀の別口外貨の残高、それから日銀の別口外貨の残高と開銀の設備資金の残高について、おのおの二分五厘ずつ金利を引下げておりますから、その残高が変化しておりますので、これを開銀及び日銀の利子支払い銀行に、特に工業会が口座を設けまして、その口座で開銀及び日銀に製鉄業者が利子を払う場合に、同時にその二分五厘に相当する分を、その銀行の工業会の口座に払い込むわけであります。一方また建造しております造船所の口座へは、当初私の方で査定いたしまして、大体このくらい使うというふうな鋼材量をはずしまして承認書を与えております。それでその承認書に基いて私の方でその承認したものを工業会を通じて造船業者に出しておりますので、それによつて工業会が事務を取扱つておりますから、おそらく三箇月目か四箇月月にやつておるとは思いますが、そのときの集まつた金をその量に応じて配分します。配分しますと、その銀行の工業会の口座からその造船所の銀行の口座へその金が入るようになつております。
  141. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 今ルールだけを御説明になりましたが、私の質問は幾ばくの金がここに生れ、そうしてプールされてどこにどういうぐあいにその金が支給されておるかを承つておるのです。その明細を御答弁願いたいと思う。
  142. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 当初の計画されたときには、昨年八月十五日から本年四月十五日までの間に、二分五厘に下げたものの全体として九億三千万円予定されておりましたが、その後別に外貨の残高が計画より減りましたので、今のところの予想では七億七千万程度に減つておるのではないかと思います。開銀の設備資金は当初たしか二億二千万円ですか、これは大体計画通りに納まつております。これは先ほど申しましたように、今までに昨年の暮れに一回、ことしの一月十五日かに一回、両方合せまして一億六千三百万円、造船業者に渡つております。
  143. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私どもが調べますと、造船業者に渡していないという事実がありますから、私はその明細を御答弁願いたいと思う。これははたして造船されるトン数に平均されて支給されておるかどうか、支給されておるとするならば、どこの何という造船会社に幾らを曳船されておるか、明細に承りたい。
  144. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 ただいま各造船会社に幾らずつ納まつておるかという資料を持ち合せておりませんが、これははつきりした資料がございますから後日提出いたします。
  145. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 委員長からただいまの明細書を当委員会に提出するように、ひとつおとりはからいを願います。
  146. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 お聞き及びの通りでありますから、どうぞ……。
  147. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで、私はさらに石井運輸大臣に最後に承りたいのでありますが、これは蛇足かもしれませんけれども、佐竹町記者の発表したメモによりますと、相当石井運輸大臣も、この法案が昨年の七月七日に原案が提出され、七月の二十四日に修正案が提出され、二十七日に衆議院を通過いたしておりますその前後におきまして、船会社、いわゆる利害関係を持つたたちと待合に出入りしたというようなことが新聞に出てございますけれども、さような事実があつたかなかつたか、なお、それがためにわれわれ国民はあの新聞を拝見いたしますと同時に、中曽根委員から御発言がございましたようないろいろな疑わるべきような発言がございますので、さようなちまたに出入りした事実があつたかどうか、もしあつたとすれば、それはどういう理由において出入りをいたしたのか、さらに先刻御発言がございました百万円の金の問題もございますけれども、いわゆるこの法律によつて利害を持つところの船会社、あるいは造船会社関係者に饗応を受けた事実があるかないかを、明確に御答弁を願いたいと思います。
  148. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私がこの間から新聞に載つております宴会に出入りしたかということでございますが、私も一度二度大勢の閣僚その他実業界の連中と、一緒に酒の席に呼ばれたことはございます。しかしこれは何も商売の話をしたこともなければ、あらかじめそう言われたわけでもなく、粗酒を一献献上の形で呼ばれて、どのくらいの時間おつたかという覚えもないくらいで、もちろんそんな話をした覚えもありません。従いましてそういうふうな席においての話が、造船の上や利子補給の上に影響するようなことは絶対にございません。
  149. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいま石井運輸大臣は、そういう席にはべつたこともあるとおつしやいますが、飯野海運の招待で、昨年の七月の十日に中川という待合にほかの大臣と一緒に招かれて、御出席になつた事実があるかどうか。この点は私ども国民として最も疑いを持つ一つの事実でございまして、当時資本を一つも出さずに船がつくれる、こういうふうなばかげた法律が通過されますその審議の過程においての時期でございますので、私ども非常に明朗でございませんから、この点をはつきりと、七月の十日に中川という待合に、飯野海運の招待において石井運輸大臣は出席された事実があるかどうか、この点伺いたい。
  150. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 いつのことか日は私は一つも承知いたしておりませんが、そういうふうな会合のあつたことは、きのうもみなと話したのでありますが、私と一緒だつたということを閣僚の一人が言つておりまして、私がどこかのちよつとおそくに顔を出したときであつたというようなことを言つておりまして、私はその程度のことしか記憶しておりませんが、確かに出ておつたと思います。但しさつきも申しましたように、これが何もその商売の話合いであるなどということは、私は想像だもしておりませんでした。
  151. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 最後でございますが、さようにいたしますと、当時は軽くお考えあそばしたけれども、造船汚職の問題が問題となつてつております現在におきましては、この七月十日の出席に対する当時のお気持はよくわかりますけれども、現在の石井運輸大臣のこれに対するお考えを承りたいと考えます。
  152. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私は単純な交際だと今でも思つておるのであります。妙なことをやつたならば、今でもしもうたと思うのでありまして、そういうことではなく、単純な交際だと思つております。
  153. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 以上で終ります。
  154. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 松前重義君。通産大臣は今すぐ参ます。それから副総理は四時までには必ず帰ります。従つて適当においでになる大臣に対してお願いします。
  155. 松前重義

    ○松前委員 私は非常におちつかない国会で、少しおちついたことを質問しなくちやならないのでありますが、しかしその前に今まで続けられましたもろもろの汚職を通じての問題、これは私としてはあまり触れたくないのであります。触れたくないのでありますけれども、大蔵大臣に対しまして一言御質問したいと思うのであります。  それは最近における汚職の傾向を見てみれば、日本国家資金が一切の産業資金となつておる、国家資金の融資が産業資金になるという建前でありまして、過去におけるような民間資金がほとんどない、こういうことによりまして、その国家資金の運用面においてこのような汚職が、政府を通じあるいは行政官庁を通じまして、その汚職の原因がなされておるのであります。かつての芦田内閣当時におきましても、昭電事件もまた同じような意味において起つたところの汚職でありまして、こういうようなことを繰返しておりましたのでは、政治はほとんど国民の信頼を失うのであります。そうして日本の海外に対する信用もまつたく失墜するのであります。わが国の再建なんということは、こういう問題からどろがついて来る、こういうことに相なりますので、大蔵大臣はこの国家資金の運用について、あるいは融資その他の面につきまして、具体的な新しい方策、すなわちこのような汚職の起らないような将来のあり方について、もうすでに二度も体験したわれわれの苦い歴史でありますので、お持ちであろうと思うのでありますが、伺いたいのであります。
  156. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 松前さんの仰せになる点、まことに御同感でございます。特に昨今産業投融資等が非常に増加いたしまして、国家資金をもつてまかなう部面が一これは重点産業を主としておりますが、増加いたしております。本年は昨年に比べて約五百億くらい減つておりますが、しかしいずれにしても相当の金額に達しますので、そういうことについて今回の汚職などの問題も、それに関連あるやにいわれておることは、まことに私ども遺憾千万に思うのであります。ただ従来の例でございますと、特別会計あるいは関係の機関につきましては、それぞれ国会でも予算あるいは決算等御審議を願つておるのでありますが、そのほかには予算実施監査官といつたものがありますし、あるいはまた財務局その他においても調べますが、最近行政監察の方面からもこれを十分調べるような組織があります。行政監察は昨年から特にこの方面にもやれることになつており、また大蔵省の地方の財務局も地方におきましてこの方面について相当注意をして、絶えず監査をいたしております。従来の会計検査院一本建でずつと以前にやつたころに比べれば、相当厳格に行われておると思いますが、それでもまだ毎年少からざるこういう問題が起つておることについては、まことに私ども遺憾に存じております。予算が効率的に使われるかどうか、またとういう財政投融資がほんとうに適切に使われるかどうか、これはまことに重大な問題でありますので、今後ともこの監督には一段と留意いたしたい。それでは仕組みとして何か特に考えておるかと仰せになりますと、ただいまあります諸機関を使つてつて参りたいと思いますほか、補助金その他の問題につきましては、今後不正あるいは水増し等のものにつきましては、特に補助金の返還を命ずるとか、中止をするとか、いろいろなことについて、これは立法措置で今国会の御承認を得ることにいたすために、近く提案を申し上げることになつております。
  157. 松前重義

    ○松前委員 私はただいまの大蔵大臣の御答弁のようなことを伺つたのではありません。大体運輸省の官房長や今井田審議官などがやられたというようなことに対しましては、場合によつては今の大臣のようなやり方でもつて行けるかもしれません。しかしながらそれがようやく当時の運輸委員会の委員長が逮捕の許諾を要求されて来た、こういうような問題になり、すなわち内閣全体の問題に及んで参ります場合において、私はこの問題は一番重大な問題であり、従つてただいまのようないわゆる役人を取締るとか末端の方をいじめるとかいうようなことでは、この問題は解決しないと思います。日本の歴史で一番こわいのは、いわゆる政治そのものが、もちろん行政も含めて政治そのものが、国民の信頼を失うということであろうと思うのです。この意味におきまして、今度のような問題が起り——いわゆる官吏だけがやられておる場合において、どのような新しい特別な方策をとるかということを、私どもが今御質問するのでなくて、すなわち政治全体の立場で、ことに内閣のような大きな屋台骨がゆるごうとするような大問題、芦田内閣しかり、そして吉田内閣はどうであるか知らないが、とにかくそのような事態が起つているというこのようなことに対して、大蔵大臣として、これらの取締りというよりも、具体的に起らないようにする将来の措置をお考えになつておられるかどうかを伺いたい。
  158. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 大蔵大臣としての立場から申しますれば、予算の適正なる行使、また財政投融資等の適正なる行使これだけを目安にいろいろな措置をいたして参つているわけでありますが、こういつたような問題で、今松前さんのお話は、どうもいろいろむしろ上層部に起つて来るようなことがあつては困るのではないか、何かそれについて措置をとつておるかというお話ではないかと考えるのでありますが、これは、やはりみんながほんとうに国を思い、道義心に基いて信を政治の面につないで行くということに努力する以外にはないのではないか。制度の上で、なるたけいい考えがありますれば、お伺いいたしまして考えてみますが、やはり各人が信を政治の面につなぐだけの十分な誠意と覚悟をもつて臨む以外にないのではないか、私は実はそう考えております。
  159. 松前重義

    ○松前委員 すでにこの問題は十分大蔵当局でもお考えになつておらなければならないことであろうと思うのであります。このような事態に当面して、このような歴史的な悲劇を何度も繰返しておつたのでは、これはたまつたものではないのでありまして、どうしてもこれは何らかの具体的な方途を責任当局はお考えになつておられるべきであろうと思うけれども、その方途が具体的に見出されない。ただ道義的な反省にのみ求めるというお話でありますが、道義的反省はもちろんのことでありまして、その融資や投資の具体的な措置を、どのように変更するかということが、今後における重要なる問題の一つであると思うのであります。具体的な措置がないままにこの内閣を継続して行かれるということは、これは私将来に非常な危険を残すのではないかと思うのでありまして、この点についてはまだ現出のままおやりになるつもりであるかをお伺いいたしたい。
  160. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 先ほども申しました国政全般に関する問題としては、いろいろあるいは閣議その他においても決定を要するし、また総理においても考えがあろうと思います。ただ大蔵大臣としてのやり得る範囲でいえば、予算を適正に行使することと、財政投融資等が所期の目的を達するようにうまく効率的に使われること、これになるのでありまして、それは現在の制度でも私は行けると思う。ただそのうちに多少不心得な人がおつて、そういうことが行われるのであつて、これはやはり行政監察とかあるいは会計検査とか、あるいは財務局の特別な取調べとか、そういうものでやる以外にない。こういう仕組みをつくれば、いかなる人が出てもそういうことはないといつたよい仕組みがあれば、これを私は松前さんにお伺いして、その御意見に基いて考えてみたいと思います。
  161. 松前重義

    ○松前委員 結局道義的な立場においてのみ、この問題は解決されるというお話でありますが、これにつきましては、先ほど来汚職を通じて同僚議員よりいろいろ質問もありましたので、私は問い詰めることはいたしませんが、少くとも道義的な頽廃に基因しているという現実はお認めになつたと思うのであります。  次にお伺い申し上げたいと思いますのは、災害復旧工事であります。この災害復旧の問題につきましては、そもそも災害を完全に復旧するためには、大体千五百六十四億の金額を必要とするのでありますが、これを千百七十九億に圧縮をされた。もちろんこれは自衛隊の創設のために、こちらの方に犠牲をしいたことであろうと思うのでありますが、こういう中途半端なことで、一体はたして災害の復旧ができ、来年も、再来年も、また将来において洪水が起つても、これによつていわゆる災害を受けない、こういう自信がおありになるかどうかを伺いたい。
  162. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 この災害対策につきましては、当初の調べに基きまして千五百六十五億国の支弁すべきものがあるというふうに申し上げたのでございましたが、その後十二月の一日からずつと監査を遂げたのであります。その結果、これはひとり大蔵省ばかりではございませんが、先般も申し上げましたように、ちようど大蔵省で調べました件数が九千四百六十件でございましたところが、そのうちあるいは架空のものであつたり、あるいは二重のものであつたり、あるいは水増しその他のものが実は件数では三割五分八厘の多きに上つたのであります。それからまた行政管理庁でも同様に調べました。これは三千九百二十五件を取調べましたところが、実に件数で五割四分二厘というものが不正の申請であつたのであります。それからなお会計検査院でも九千三百流十九件を取調べましたところが、これも二割三分四厘というものがやはり不正のものであつたのであります。そこでこれらのことからずつといろいろなものを、たとえば農林省の関係で申しますれば、農地についてはどう、治山治水についてはどう、農業施設についてはどう、あるいは林道についてはどう、入植についてはどう、漁港についてはどうとか、あるいは建設省では公共土木はどう、橋梁はどうと、ずつとこまかく取調べました結果、ほぼある数字を得ましたので、まだ全部終了したわけではございませんが、この取調べに基きまして一応昭和二十八年の災害を査定いたしまして、圏の出すべきものがどれだけになるかと申しますと、約千百億円をちよつと越す、こういう金額になつたのであります。しかしこれは今後も取調べまして、この数字があるいはふえる場合もありましよう。あるいは若干減ずる場合もございましようが、要するに実情に基いてやりたい。これは松前さんも御存じですが、災害のときはいつも相当水増し的なものが行われる。はなはだしいのはおととしの写真をそのままつけて来たりしてまた請求に及ぶ。全然川の橋もないところへ、橋が流れた、橋をかけるということを言つて来た。はなはだしいところでは一つの川で十二もある。そういうことがありまして、ずつと取調べた結果取出したのであります。これはまだ全部を終了いたしませんが、大体九千何百を会計検査院なり、大蔵省で調べました。そういうようなところから出た数字でございますので、一応今の千百何ぼという方が実情に合うであろうと私ども考えておる次第でございます。決して災害の費用を特に惜しんでおる、それをもつてちと今仰せになつたように防衛費に向けるのだ、こういう考えに出たものではございません。
  163. 松前重義

    ○松前委員 災害復旧の費用は二十七年度分と二十八年度分と両方合せまして六百七十六億円にすぎないのです。また一十七年度末現在で二十七年度災害事業費の量は千七百二億円であつたのでありますが、二十八年度末現在では千三百三十億と推定することができるのです。この千三百三十余値であるのを六百九十五億に圧縮しておる。いまだに災害復旧もできてないで、つゆどきになりますとまた雨が降る。当然またさんたんたる洪水が起つて国民は塗炭の苦しみにあう。こういうことは必至であろうと思うのであります。ただいまお話がありましたように、今後の監査その他を通じて増額の可能性ありというお話でありましたが、これではとうていほんとう日本の国土の安全を保つことはできないと思うのであります。そこで問題は災害は年々歳々増大の一途をたどつております。このままに放置しておきますれば、国土は荒廃してしまうことは必然であります。一千億以上の災害をそのまま年々繰返しておつて、一兆円が国家予算とするならば、その十分の一が災害のために使われなくてはならぬ。このような浪費はありません。まじめに考えて行くならば、まずもつてこれを防止することが大事であり、重点的なやり方でやらなければならないと思うのでありますが、この点についてただいまの大蔵大臣の御説明ではどうしても納得が参らぬのであります。  それと同時に、また災害が起らないように、私の立場から言えば、もう少し科学的にこれを研究して行かなくてはならぬ。総合的、科学的な研究機関を必要とすると思う。すなわち山林の方は農林省で、それから河川その他は建設省で、あるいはまた気象台で、それぞれ、分離した態勢で何の連絡もないような状態であります。それであのようなさんたんたる状態を呈したことは申すまでもありません。これらに対しまして政府は災害を予防する意味において、防災の何らかの具体的な措置を——洪水が出てから提防を築き上げて行くとか、あるいは消防団を出すとか、そういう跡始末でなくて、供水が出ても十分それを防ぎ縛るところの具体的なもろもろの研究をやる。そうしてそれに向つて国土を守るというような措置を講じておられるかどうか、それらについてのお考えをお伺いします。
  164. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お尋ねの点まことにごもつともの点がございますが、あれも松前さん御承知のように、二十八年度災害については昨年のいわゆる救農国会で三百八億ですか、出しましたし、今度の予算で三百七十数億出しております。それと昨年は災害予算が百三十億ありまして、その相当部分を実は二十八年度災害に向けておるのでありまして、予備費から、これも五十億ちよつと上まわつておると思いますが、三十八年度の災害に向けております。これで十分とは思いません、もう少しこれを出したいとは思いますけれども、しかし乏しい配分の中としましては、この程度で忍んでいただく。これで大体六割はできる、こういうことになつております。従いましてこれを重点的に、効率的に使つていただけば、災害が重なつてつて来るというようなことのないように、相当阻止し得ると考えているわけであります。もちろん十分でないことは申すまでもありません。  それから今仰せになつたような治山治水の関係根本でございますが、別に災害防止特別委員会というようなものはございませんが、治山治水につきましては先般内閣に特別委員会をつくりまして、これは各方面の方々に集まつてもらいまして一応の結論を得たのであります。それは十年間でありましたが、数兆円を要するような大きなもので、ちよつと予算化するのに困難な点がございます。またさらに現在の実情に合うように今だんだんとやつてもらつておるのでありますが、仰せになるまでもなく、治山治水対策は根本対策でございますので、本年もこの方面に乏しい予算の中では一番重点的に処理いたしました。治山治水の方は昨年よりも金額が増加しているのはそういう点からであります。但しそれにつきましても十分でないことは申すまでもございません。  それからもう少し科学的に研究すべきであるというお話に対しましては、これはまつたく御同感ですございますが、今それぞれ建設省なり、農林省でもそういうことについて研究していると思いますけれども、ここに特別に一つの機関があつて、それが総合的に、科学的に研究する、これはどうしても今ないように思いますので、この点は今後十分考えてみたいと思います。
  165. 松前重義

    ○松前委員 ただいまの最後の問題については、特に御考慮願いたいと思います。  次に貿易の問題で特に通産大臣、また外務大臣にもお伺いいたしたいと思いますが、簡潔に申しますれば、日本貿易は非常に不振であることは申すまでもありません。私どもが一旦足を外に踏み出しますとただちに目につくことは、日本品が全然その市場になくて、製品のほとんどすべてが英国や米国や西ドイツの品物であるということであります。これは申すまでもなく日本品の質が悪い、優秀でないということと値段が高いということでありますが、これに対しまして政府はどのような具体的な方策をお持ちでありますか。方策の一つとして、いわゆる品位をよくして、しかも値段を安くするという政府のやつておられる具体的な努力を伺いたいと思います。
  166. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは御指摘のように非常にむづかしい問題と存じましていろいろの面から総合的な対策を推進いたしたいと考えております。つきましては、先般来屡次申し上げておりますように、一つは基本的な財政金融政策によりまして国内の有効需要を切つて、できるだけ価格を下げて、国際的な水準に近づけた輸出に努めたいということであり、また具体的には各基幹物資等につきまして、それぞれの、たとえば鉄鋼なり石炭等につきましての具体的なコストの低下政策を推進して参りたいと考えておるわけでございます。それから品物のよい、いわゆる良質なるものをどうやつて輸出するような努力をするかということにつきましては、たとえば税制の面なり金融の面からの措置もございますが、また工業技術の振興、品質の向上、あるいはたとえば輸出品取締法に基きます輸出検査制度の運用というような点につきましても、今後ともできるだけの措置を講じて参りたいと思います。その他たとえば国産化の問題その他等についても、乏しい中ではございますが、できるだけの日本の技術を振興する、良質な品物をつくりたいという面につきましては、補助金、助成金等についてもできるだけの配慮をいたしておるつもりでございます。
  167. 松前重義

    ○松前委員 現在外国から技術を導入しておる願は、外国に支払う特許料だけでも年に五十億を越しておるといわれております。ただいま技術を同上するというようなお話がありましたけれども、これは、とにかく外国の技術を入れることによつて日本の産業技術を向上せしめ、それでもつて海外に輸出する、こういう概念の上に立つておられるのであります。ところが外国から技術を輸入するときに、五十値以上のロヤルテイを払つておるということが一つ、それと同時に、それだけならまだいいのでありますが、その上に技術を導入するときの条件としては、その技術でつくつた品物はわが国には売つてよろしいが、わが国以外のところに輸出することは断じてまかりならぬという契約が裏になされておるものが大部分であります。そうでなければ決して外国は、特にアメリカはわが国に対してこのような技術を売るようなことはいたしません。何となれば労働賃金の安いところで能率よく品物をつくられれば、安くできて海外市場を独占されることは当然でありますので、絶対に許さないのであります。   〔小峯委員長代理退席、四村(直)委員長代理講席〕 これらに対しまして、ただいまのようななまぬるい方途をもつてしては、貿易の振興、すなわち低物価で高品位のものを海外に出すというようなことは、この世界市場の競争が非常にはげしい今日におきましては、とうていその目的を達することはできないと思うのです。日本の重要な産業が、技術の導入に関し、その市場協定特にアメリカとの市場協定をなす場合においては、日本はアメリカの産業的植民地たることを絶対に脱却することはできないと思います。これに対しまして通産大臣はどのような意見をお持ちであるか、お伺いしたいと思います。
  168. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この問題につきましては、もちろん外資法の適用なりあるいは外資委員会の審議等を通じまして、技術の提携あるいはロヤルテイの問題等につきましては、その条件等についてただいま御心配のような点ができるだけ少いようにするという配慮を、従来もいたしておるつもりでありますが、今後におきましてもこの点は十分慎重にいたしたいと考えます。ただ、これは私が申し上げるまでもなくよく御承知の通り、私どもといたしましてはやはりできるだけ国際的に良質廉価のものを日本で手早くつくれるようにすることのためには、一方においてすなおに外国の技術を受入れるという点も必要ではないかと思うのでありまして、もちろん御心配のような点については十分考慮いたしますが、さりとて技術の提携を非常に消極的に考えるということは、この際としてとるべき措置ではないのではないかと思います。なお先ほど申しましたように、同時に国内の技術の振興ということについてはここで一般と努力を傾注して参らなければならぬと考えます。
  169. 松前重義

    ○松前委員 通産大臣就任後わずかの期間でありますから、そう急に貿易が上昇の方向に向うとは考えられませんが、しかし、少くとも現在におきましては減退の方向をたどつておるからこそ私どもはこれを心配するのであります。今のままにいたしますならば、西ドイツのようなところはどんどん上つておるのに対して日本はいよいよ済済的に破滅に陥ることは必然であります。こういう状態でありますがゆえに、私どもは真剣にこの問題を考えなければならないと思つておるのでありまして、ただいまのお話のように、技術の導入その他の問題はある程度は考えなければならないことはもちろんであります。程度問題であります。しかしながら、現在の状況からいたしますれば、海外の特許を買うのに、たとえばテレビジヨンのようなものでも、一つの特許を十何箇所で買つておる、一人買えばそれが全部使えるのにもかかわらず、アメリカとしては十何箇所にも売つた方がたくさん金がとれるからよろしい、こういうことで、まつた外国の特許あるいは技術の市場として日本は搾取されておる。ことにアメリカでありますが、このような状態に放置してある。それからまた特許を入れるときの契約に市場協定がなされておることについて、現在のところどうもこれに対して監督あるいはまた指導等をやつておられない。一覧表もできてないと思う。これらにつきまして、何らかその契約についての具体的な措置、すなわち市場協定についての具体的な措置をとつておられるかどうかを伺いたい。
  170. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまテレビの例をおあげになりましたが、こういう点はごもつともな御質疑であるということを率直に私も認めます。先ほど申しましたように、今後外資委員会の審議等に際しまして、十分これらの点については遺憾のないような措置を講ずるように運営を改善して参りたいと思います。また市場協定等が付随しておりますようなものにつきまして、ただいま事例を具体的に御説明するだけの用意をして参りませんでしたが、今後の措置におきましては、やはり先ほども抽象的にお答えいたしたのでありますが、そういう方針に基きまして、具体的に御懸念の点が少くなりまするように努めて参りたいと思います。
  171. 松前重義

    ○松前委員 お答えがまだどうもなまぬるいと思うのでありますが、とにかくこの問題は日本の経済の将来にとつて最も重要な課題である。ことに日本のような資源の貧弱な、人口の多過ぎる国におきましては特に重要であると思うのであります。御承知のように日本は戦前のわずかに三〇%の貿易しかないのに、西ドイツは一三〇%を上まわつておる。敗戦の中からそのようになつたというこの現実は、吉田内閣の六年間の施政の怠慢であり、失敗であると私は思うのであります。汚職の問題はともかくとして、とにかくこの問題は民族の将来に非常に大きな影響を及ぼすものであると思うのでありまして、この点については外国との剛の関係において、いわゆる自由放任の姿では絶対に日本は興らない、こういうふうに考えるのであります。  次に私が御質問申し上げたいのは、海外への輸出をやつて日本の経済を上昇させ、興すということは当然必要なことではありまするけれども、それと同時にわが国はわが国の製品を国内市場に使わせる、すなわち国産の奨励について特に意を払うべきものであると思うのであります。ただいままで私どもが得ました材料によりますれば、自動車のごときものでも昭和二十七年度においては大体千二百六十六万五千ドル、あるいは二十八年度におきましては千三百七十三万ドル、このような厖大なる自動車の輸入が行われておるのであります。部分品におきましても、また相当な額のものが輸入されておるのであります。このようなことでは、わが国において自動車工業の発達はとうてい期することはできません。日本の自動車とアメリカの自動車を比べて、とにかくアメリカの自動車は比較的割安であることはもちろんでありますが、割安で品物がいいからそれをどんどん輸入するような形に置きましては、日本の工業はいつまでたつても興ることはできない。遅れた国はむしろ誘い水をかけて、そうしてそのポンプをうんと政治の力でくみ上げるという態勢をとらなければならぬ、保護政策をとらなければならないのであります。そうでなければ、遅れた国が世界水準に達することは絶対にできないと思うのであります。これに対しましていわゆる国産の奨励、そして日本の工業に対する保護政策をおとりになる意図があるかどうか。私はもう少しばかり内容を申し上げてみますると、機械類にいたしましても、輸入いたしておりまするその金額は実に厖大なものであります。機械類だけでも、海外より輸入しておるものは二百六十九億に達しております。このように厖大な輸入に依存してわが圏の工業を圧迫せしめる、そうしてわが国の工業の技術的なレベルを低下せしめておる、このような現象に対して通産大臣はどういうふうにお考えであるが伺いたいと思います。
  172. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。自動車の輸入、それから機械の輸入等につきまして具体的にお尋ねでございますが、ごもつともと思われます点も非常に多いわけでございます。ただ機械の輸入等につきましては、企業の合理化、設備の近代化というような方面から考えまして、あるものは海外から積極的に入れましてこれをモデルにして日本産業の近代化ということに役立たせるということも、また当面のところは非常に必要なことではなかろうかと考えるわけでございます。それから自動車等につきましては、先般来申しておりまするように、いわゆる奢侈品的なもの、不要不急品と思われるようなもの等につきましては、ただいま二十九年度の外貨予算の編成方針等についていろいろ考究いたしておりまするが、さような場合におきまして、こういうものはできるだけ輸入を抑制いたしたい。少くとも外国側との提携によつて日本の技術なり資材なりを相当程度使えるというような方向に今後は重点を置くべきではなかろうか、しかしながら何よりも一番重点を置くべきものは、私は国産というものであると考えます。   〔西村(直)委員長代理退席、小峯委員長代理着席〕 この点につきましてはまつたく御同感でございまして、先ほど申しましたように、国産品の奨励あるいは使用の奨励とかいうようなことを行いますると同時に、たとえばただいま補助助成政策というような話がございましたが、そういう面は財政資金の重点的投入ということも、あるいはそれに必要なある程度の税制の改正でありますとか、そういつたような優遇措置が総合的に考えられまする場合には、これが大きな助成掛冠になると思います。それらの点につきましては、抽象的になりまして恐縮でございますが、十分意を用いて参りたいと考えております。
  173. 松前重義

    ○松前委員 国産奨励については、特に今日ほど留意しなければならないときはないと思うのであります。現在政府が輸入を許可しておられるものの中には、たくさんに日本でできるものがあるのであります。ほとんど大部分はできます。見本品ぐらいを入れるのならば話はわかりますが、多量にこれを輸入しておられるこの現状に対しては、どうしてもただいまのお話では納得が行かないのであります。  次に保安庁長官に伺いたいと思います。これは大蔵大臣にも関係があります。私どもは、国民生活を圧迫しない程度の保安隊の一部、すなわち警察予備隊程度は、国内治安、暴力革命に備えるために必要である、こういうふうな主張を持つておるのであります。ところがこれは保安隊となり、だんだん増強されまして、今や憲法違反の再軍備の線にも到達したと見られる。しかし私は今これを論じようとはしない。この保安隊の一部、警察予備隊程度のものを、今のようなやり方でほうつておいていいのであるかどうか、すなわち現在のような、朝から晩まで、いわゆる兵隊ごつこばかりをさせるということは、はたして経済的な行き方であるかどうか、しつちちゆう起るところの暴力革命でありませんので、すなわち警察とは大分違うので、この保安隊のあり方はもう少しふだんに日本の国土の開発とか、あるいはまた災害とか、このような目的のためにこれを用いてさしつかえないものであると思う。そうすれば、少くとも今日のような災害復旧の費用とかその他の問題に相当の節約ができる、同時に国民生活を圧迫することが少くなる、このように考えるのでありますが、保安庁長官の御意見を伺いたいと思います。
  174. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。保安隊を土木工事に現在も用いておるのであります。しばしば私が繰返して申し上げておりまする通り、現在におきましても、保安庁法第八十一条に基きまして、国または地方公共団体の要請がある場合には土木工事を引受けて実施することができる、こういうことになつております。この規定の精神を生かしまして、現在も各所に保安隊が出て参りまして、国または地方公共団体のために働いておることは、顕著な事実であります。各方面においてかような施設をわれわれはいたすために、おびただしき感謝状をもらつていることも事実であります。今度自衛隊を創設いたしましても、この規定と同様なまた拡張した規定を設けまして、われわれはさような方面において十分な教育をいたしたい、こう脅えておる次第であります。
  175. 松前重義

    ○松前委員 私のお尋ねしました趣旨は、まつたく違うのでありまして、災害やその他のときに一時的につけこうやくのような、保安隊のいわゆる助力というような意味のことを申し上げておるのではありません。ふだんにこのようなものを本旨として、この保安隊のあり方をいわゆる平和の建設隊の姿をもつておやりになる意図はないかどうか、これを伺いたいと思います。
  176. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま申し上げたのは災害のときばかりではないのであります。これは十分御調べを願いたいと思います。あるいは学校の敷地の地ならし、あるいは道路の開設、その他各方面において、ただいまにおき、ましても、施設部隊を十分に活用いたしておる次第であります。なおわれわれは十分にこの道を切り開いて、あなたのような考えのもとに進めたいと思います。
  177. 松前重義

    ○松前委員 ただいまのお話でありますけれども、しかしもし具体的にそうであるならば、現在の建設省予算その他に対して、当然この予算面にこれは現われて来るはずでありますが、具体的に予算立場からはどのようになつておりますか。
  178. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。建設省の予算とは関係ありません。建設省で使います予算とは別個において、国まは地方公共団体の求めに応じて、われわれはやつておるのであります。別に保安庁といたしまして、それに要する経費等はとつておりません。ただその出動いたしますときに、実費程度のものをとつて、まつたく奉仕的に保安隊はやつておるのであります。
  179. 松前重義

    ○松前委員 ただいまの問題は、それで打切ります。  けさの新聞の報ずるところによりますと、MSA協定の付属書におきまして、対共産圏の貿易を制限するということであります。しかもこれは、日本が共産樹への輸出貿易に対しては、少くともアメリカと協力をするということになつておるのであります。これは米国と協力するという意味のことであると私どもは解しておるのであります。しかしアメリカは、共産圏に対しては、場合によつては自由に輸出ができるかもしれない、アメリカが輸出するということをきめたら、日本も輸出してよろしい、しかし日本だけの立場では輸出をしてはいけない、こういうようなことに私どもは解釈できると思うのでありますが、外務大臣はこれに対してどういうふうな解釈をおとりになりますか。
  180. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 けさの新聞の記事は私も読んでみましたが、大分今やつておるものとは違いまして、おそらく今までの報告等を寄せ集めて協定の形につくり上げてみたものじやないかと思います。共産圏と申しますが、私どもは、平和を脅威するような国に対しては、自由諸国は共同してある種の貿易の制限をするのが適当であろうと考えております。その意味で、アメリカはMSA協定の中には、ずつと最近はそういう一条を入れておりますが、われわれとしても別にこれはさしつかえはないものと考えております趣旨は、アメリカと協議をするのじやなくて、これはMSA協定でありますが、アメリカ政府という字は出て参ります。アメリカ政府及びその他の自由愛好国政府、これを一緒にいたしまして、これらの自由愛好国政府と協議をする。従いましてアメリカを相談してきめるという意味ではない。アメリカを含む自由主義諸国と協議をして適当な方法を講ずる、こういう意味であります。
  181. 松前重義

    ○松前委員 ただいまのお答えは非常に抽象的でありまして、やはりほんとうはアメリカと交渉なさるのであろうと思うのであります。しかもこれは一方的であつて、アメリカが平和愛好国という名称をつけておられるその諸国が決定したときには、共産圏との貿易もよろしい、日本は従属的である。このようなことを私は伺つておるのでありますが、これは確かに、この条文からはそのように解せられる。ところが、アメリカの生産力は非常に旺盛なものであることは申すまでもありません。ニュー・デイール政策以後におけるアメリカの生産力の躍進は、実に目ざましいものであることは御承知の通りであり度す。ところがもしも世界が今日のような、あの西欧において行われておるような、もろもろの現象が実りまして、世界が平和におもむくといたしますならば、アメリカはその生産力のはけ口をどこに求めるか、これが今後におけるわが国の工業あるいは産業の重大な問題であると思われます。政府は中共貿易に対して非常な制限を加えておる。ところが現在のところ、アメリカもまた制限を加えておるといたしましても、もしもアメリカがその生産力のはけ口を中共に求めるべく、場合によつては中共を承認するようなととが起り、そうして国連加盟も可能になるようなことが起り得るであろうというような感じを最近私は持つておるのであります。まずもつてこの点について外務大臣の御意見を伺いたい。すなわち中共に対するアメリカの態度は相当にかわるであろう、そのかわるところの条件は、すなわちアメリカの生産力のはけ口として中共を承認する、こういうことがあり得るかどうか、この点について外務大臣としての責任ある御答弁を承りたいと思います。
  182. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは外国政府の方針でありまするから、将来長きにわたつてどうするであろうとかいうことを私からはつきり申し上げ得ないのであります。しかし現米国政府が続きますれば、おそらく現政府のただいまの考え方は、そうかつてにかわることもあまりあるまいと思つております。ただいまのアメリカ政府考え方をしさいに検討いたしてみますると、今おつしやつたような意見の人もアメリカの国内にはありまするけれども、現米国政府が第一には、中共貿易をやるにしても、大きな期待はとうていかけられないということを強く誓えておるようであります。第二には、ただいまのところは少くとも平和を脅威する国の一つであると考えておりまするが、朝鮮の政治会議等がかりに解決いたしました場合にも、ただいまの政府考え方は、われわれが外から見ますると、中共政府を承認するというような気持には動いておらぬように思つております。
  183. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 松前君、副総理が見えました。大体申合せの時間が来ておりますから、ひとつ簡潔に質問を転換していただきたいと思います。
  184. 松前重義

    ○松前委員 中共の市場は日本にとつて非常に重大だと私は思つております。中共における五箇年計画の基礎は、日本が残した工業であります。その日本が残した工業というものは、大体日本の機械類が入つております。現在中国人がこれを動かして、その生産力を百パーセント以上に上げております。ところが彼らはやつぱり日本品がほしいのです。ですから、それを戦略物資とか何とかいつてわざわざあそこにほしいというのを入れないというのはどうであろうか。私どもはこの日本の経済を考えれば、当然このくらいの貿易は喜んでやるべきではなかろうか。イデオロギーは別として、この問題は経済の問題として別個に考えるべきものである。鉄砲や大砲やその他の原爆を輸出するというわけじやないのでありますから、当然誠意ある態度をもりてこの貿易の問題に臨むべきではないか、こういうふうに思つておるのでありますけれども、この点につきましては、これ以上お尋ねはいたしません。  その次に、副総理もお見えになりましたので、お尋ねいたしたいのは、原子力の問題であります。原子力の発達によりまして、最近原子力会談が行われており、アイゼンハウアー大統領は、原子力の国際管理を提唱いたしたのであります。その原子力の国際管理に対してソ連もまた同意を示したのでありますが、具体的問題で現在話合いをしているような状況であります。原子力時代がここに生れたということは、戦争に対する見方が根本的な課題を人類に投げつけたものであると思われるのであります。アインシュタインなどの説によりますれば、またアインシュタインによらずとも、すべてのすぐれた科学者の説によれば、原子力の時代においては、戦争が起れば当然人類が絶滅する、いな動物界の絶滅である。敵だけを殺して自分だけが生きて行こうということは絶対にできない時代が訪れた、こういうふうな見方をするようになつてつたのであります。従つてここに新しい歴史の見方が——長い間、戦争はしない、平和だ平和と主張した世界の政治家やあるいは平和論者たちの裏には、常にいわゆる武器が準備され、そうして剣がとがれておつた、そうしてそれが常に戦争を誘発しておつたのでありますが、ここに新しい歴史時代が到来いたしまして、初めて何らかの反省、いわゆる理性の上に立つた平和への希求、その望みが生れて来たのではないかとも考えられるのでありますが、こういうふうな歴史の長い流れの中において新しい科学の生んだこの時代に対して、日本の外交も政治も、あるいはもろもろの行き方がこの歴史の線に乗らなければ、私は大きな誤りを来するものであると思うのであります。これに対しまして、将来この原子力時代に処しまして世界は、いろいろの紆余曲折はあろうとも戦争が起るのであるか、それともいろいろの紆余曲折はあろうとも、どどのつまりは何らかの新しい世界秩序がここに生れるのであつて、その上に平和の時代が来るのであるか、このような根本的な見通しについて政府はどのように見られるかを伺いたいと思うので、あります。
  185. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 第一次大戦の直後に、恒久平和というものがはたして来るかどうかということが、世界的に一つの大きな問題になつてつたのであります。あの第一次大戦は、ヨーロッパにおきましても一般的に予期されていなかつた戦争であつただけに、あの戦争が戦争を終るための戦争であるかのごとく一時思われた時期もあつたのでありますが、恒久平和がはたして来るかどうかという設問に対しましては、行く行く兵器が今の人間の知識で想像も及ばない飛躍的な進歩を遂げるときに、それによつて平和がもたらされるのではないかというふうな見方があつたのでありまして、日本の先覚者の間にもそういう意見を発表しておつた人があるのであります。今お述べになりました原子力の発達、これが兵器に利用されることによつて、もし戦争が起つた場合、一方が勝ち一方が負けるというようなことは想像されないのであつて、その原子力を用いる戦争の結果は、人類の文明の壊滅ということになる可能性が多いと、私自身科学の知識をあまり持ちませんが、そういうふうに想像されております。そういう意味から、今は世界の共産主義と自由主義の両陣営がこの原子力を囲んでなお対立しておりますけれども、しかしながら、やはりこの原子力の出現によりましてあるいは恒久平和に至る可能性が出て来たのではないか、日本として今はなはだ微力でありますが、戦争前には、原子力の研究も、ある程度設備の点においても進んでおつたそうでありますが、敗戦と同時にこの設備も破壊された。しかしながら日本の国力のいかんにかかわらず、やはり原子力というものの研究は必要なんで、そのサイクロトロンの設備をするために、今回の予算にもたしか一億二千万かと思いましたが、その費用を計上しているような次第であります。この原子力の研究に伴い、またこれをいかに管理するかという問題が、あるいは世界を恒久平和に湧いて行く一つの契機になるのではないか、さように想像いたしております。
  186. 松前重義

    ○松前委員 私は今の原子力を、日本でそういう設備をつくれというようなことを申し上げておるのではありません。一体この原子力時代に、世の中は平和に向うものであるか、それとも戦争が起る可能性があるとごらんになるのであるか、この辺についての見解をもう少しはつきり……。
  187. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 第一次世界大戦のあとは、第一次大戦の直後に比べまして、なお一層平和に対する希望がさしあたつては少い。第一次大戦の直後におきましては、先ほど申し上げましたように、どことなしに恒久平和が来るのではないかというような想像が出て参りまして、それが納品して国際連盟となつたのでありますが、国際連盟は御承知のように結局成功しなかつた。今度の第二次大戦のあとは、第一次大戦のあとほど平和に対する明るみも出て参つておりませんけれども、しかしながらこれは戦争を通して画陣営の対立がさらに尖鋭された結果、一時的にそうあるのでありまして、私は長い目で見てみれば、これはやはり世界恒久平和に向いつつある。そういう意味におきまして、今は両陣営の対立が相当鋭い形をしておりますけれども、私は行く行くは戦争がなくて済むのではないか。さしあたり防衛力を持たぬことは、独立国として非常に危険でありまするけれども、大きな戦争は遂になくて済むのではないか、こういう想像を持つております。
  188. 松前重義

    ○松前委員 非常に希望的なお話でありましたが、この原子力を超国家的な機関に管理せしめる、すなわちアイゼンハウアー大統領の提唱になるようなああいう考え方に対しまして、もしもその超国家的機関がこれを管理することによつて、偉大なるエネルギー、力を持ち、その力の上に世界の平和を維持せんとする、このような考え方が、将来おそらく世界の秩序となるであろうというような論説を書いておりますのは、ことしの一月一日の朝日新聞にバートランド・ラッセルが出しておつた論説であります。あの考え方は、おそらく今後における歴史の将来を一応予言するものではないだろうかというふうにも私ども考えてみたのであります。ただいま緒方総理も、世界は大体平和の方向に行くであろうというお見通し、第一次世界大戦の後よりも、第二次世界大戦の後の方が、人の気持はやわらいではいないが、必然的にこの原子力というものの前に遂に屈服して、やむを得ず平和を回復しなければならなくなつた。このような歴史的な傾向をお認めになつたのであります。そこでこの超国家的機関が、あるいは国際連合か何かの形において生れるといたしまするならば、これに対して具体的な日本としての政策、積極的な政策、これに日本として動こうとするその方向、外交の方向は一体どのようにおとりになるつもりであるか、これを外務大臣から伺いたいと思います。
  189. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだ具体的になつておるません。なかなか私は長くかかるものだと想像いたしますが、要するに問題は戦争に使うようなことをできるだけ避けて、これを有効な動力として用いる方向に向う趣旨だと考えておりますので、その方向に向つてできるだけ努力をいたすべきが当然であろうと思つております。
  190. 松前重義

    ○松前委員 この原子問題は、私は世界の外交の最大の問題となつてつておると思うのであります。そうして平和か戦争かの根本的な課題を人類に投げかけられたものであると思うのであります。私は実は終戦のちよつと前に、広島に爆弾が落ちましたときに、政府に頼まれて、はたしてあれが原子爆弾かどうか見に行つてくれといのうで、見に参りました。これは申すまでもなく、その惨害はさんたんたるものでありました。三十数万の人間が一挙にしてやられた。今は十三倍に力がなつておりますので三百数十万というのが一挙にやられるのでありまするから、この考え方はまつたくかわらざるを得ない。この岡外務省の方があるところで、ソビエトは原子力がないというような話をしておられたそうでありますが、そういうことはありません。もう英国も実は持つております。こういうふうで、方々の国が持つて参りますと、これこそたいへんな、将来人類の絶滅も考えられる。こういうことになりました今日におきまして、新しい歴史のあり方、外交のあり方というものがここになければならない。日本としては準備され、具体的に行動されなければならないと思うのであります。何も原子力を自分で研究するとかなんとかの問題ではありません。その新しい、いわゆる政治概念の変革の時代が訪れておりますので、これを認めないで、知らないで、ただいたずらに外交的なテクニツクだけでは、私は今日の歴史は乗り切れないと思うのであります。科学の立場から、このような一つの新しい時代に私ども当面しておりますので、これに対しまして外務省の現在のあり方というものは、将来の日本の歴史に笑止千万である非常に危険な道を歩くのではないか、このおそれを私は抱くものであります。戦争か平和か、このような問題において、もし平和の方向が大体の人類の方向であり、そうしなければとてもだめだというような方向に、今の歴史が動いておるといたしますならば、私は日本の憲法は最も適切な、これに即応したる憲法であると思うのでございますが、緒方総理の御意見を伺いたいと思います。
  191. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今の現行の憲法がその制定にあたりまして、原子力時代の出現を想定して、平和を唱えておつたかどうかということについて、私はここに断定を下すだけの用意を持つておりません。しかしながら日本の憲法がその前文でごらんになるように、一つの平和に対するあこがれ、恒久平和に対する悲願とでも申すべきものを持つてつたことは、争われない事実であると考えます。憲法の全条章にわたりまして、これが完全無欠のものであるかということは、これは議論の余地があると思いますが、しかしながらこの憲法が進歩的な憲法であるということは間違いない。政府といたしましては、しばしば繰返してお答えしております通り、少くとも現在この憲法を改正しようという意図は持つておりません。憲法の中の平和主義的な考え方については、決して間違つていなかつた考えております。ただ今日、世界の現実が憲法で予想したほどになつていない。そこにいろいろな矛盾が起つて、いわゆる戦争放棄の名前において軍備の無用を想定しながら、なおかつ防衛力を持たねば国が立つて行けないという現実に直面しておることは、御承知の通りであります。
  192. 松前重義

    ○松前委員 ただいまのお話と、先ほどのいわゆる平和が戦争かの問題につきましては、私は多少副総理の御答弁が矛盾があるような感じがいたしますが、ただいまのお言葉中心として考えてみますれば、少くとも、もしも戦争が起つたと仮定して、もし原子力がない時代を仮定いたしましても、今のようなものでは役に立たない。私どもは東條内閣のときに、あのような日本の陸軍や海軍では問題にならないと主張いたしまして、大分東條さんにも迫りまして、私も多少東條さんににらまれてやられたのでありますが、それと同じようなことが日本の現在に行われておると思うのです。あのような保安隊のあり方では、実は戦争が起つたにしても私は役にはあまり立たぬと思う。と同時にただいま申しましたように歴史の動きは、少くとも原子力の新しい時代に当面して平和の方向に動いておるんじやないか、動かざるを得ないのであります。これは何とかかんとかいろいろありましようが、動かざるを得ない。科学的にすべてのものを、新しい時代を把握いたしますれば、平和の方向に動かざるを得ないのであります。このことを認識して、国際連合なりあるいは康子力の国際管理なりに対して全然関心をお持ちにならないような現在の外務省では、また外務大臣では、あるいは吉田さんでは、日本の歴史を担当するのには非常に危険である。私は東條さんのときに実に痛切に感じました。竹やりで戦争する、日本精神で戦争すると盛んにおつしやつて、そのようなことを誹謗する記事を書くと片つぱしからやられた。そのゆえに民族の悲劇に遭遇したのであります。今非常に重要なときでありまして、この歴史の大局を今日において誤つてはならないと思うのであります。こういう意味におきましてて、ただいま私どもは政府の皆様から承りまして、あるいは貿易の問題にいたしましても、まつたく行き詰まりの状態にあり、高物価で低品位で買手がない。これの打開策の具体的な方途もほとんど今行われてない。このような状態に相なつておるのであります。何をおきましても私どもは今日最も重要なることは、この歴史の動きをはつきり把握すること、そうして歴史の動きの中にみずからの進むべき道を発見すること、しかも原子力時代、新しい時代に当面している、こういう大きな立場から考えまするときに、私はアメリカの中共承認はあるいは相当早く行われ、日本だけが置き去りになる。そうしてまた日本が世界の動きと逆行して、せつかく理想的と申しまするか、平和への希求のゆえにできた憲法を今改正して、また世界の笑いものになる。バートランド・ラツセルの所説によりますると、このような憲法が最も矛さわしい姿になるのである。またなるであろう。このようなことはラツセルの口を通じなくとも私どもは言えるのであります。このような意味におきまして、政府は今日において、この歴史の重大なる段階に当面して、ただ世界歴史の小さなさざ波にもみくちやになつて、歴史の動きの大波を忘れるということになつてはたいへんだと思うのであります。いろいろな総理の御答弁などを前々から拝聴いたしまして、私はどうも東條さんのやつたようなあの歴史のさぎ波に驚いておつたあの政治が、今の吉田内閣政治ではないかと心配いたして見ておるのでありまするが、この点につきましては、政府はすみやかに国際関係のこの微妙な中からそこに大きな新しい時代と力が生そておる。そうしてその力を中心として歴史の新しいとびらが開かれようとしておるということを認識されんことを希望いたしまして私の質問を終ります。(拍手)
  193. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 この際一昨日の安藤覺君の保留質疑について、同君から発言を求められております。緒方総理に対する質問であります。安藤覺君。
  194. 安藤覺

    安藤(覺)委員 きわめて時間が制約されておりますので、私はあとう限り簡潔に緒方総理にお尋ねいたしたいと存じます。私は昨今の国会の状況、これから出発するところの政治のあり方について、政治道義の立場から、本来ならば吉田総理大臣に、また国会の分野において半数に近い大勢力を占めておられる大政党の党首としての吉田さんにこのことをお尋ねいたしたく存じたのでありますが、吉田さんが御病気御欠席であられますので、副総理たる緒方国務大臣にお尋ねいたす次第であります。ただ、あらかじめお断りしておきたいことは、私は決して政府を責めるつもりはないのであります。このことだけは特にお断りいたしまして、なだらかなるお気持をもつて私の質問お答えを願いたいと存ずるのあります。  先般当予算委員会におきまして、わが党の幹事長河野議員から吉田総理大臣に対し、昨今の政府をめぐる船舶、保全その他もろもろの汚職疑獄等の事件に対しまして、道義上いかなる責任を、いかなる時期においてとられるかとの質問をいたしましたのに対して、吉田総理大臣は、事態の判明をまつて考えるやの答弁をいたされたのであります。しかして本日も午前の予算委員会において、改進党の中曽根委員から、有田議員逮捕許諾の原因となつた壷井官房長の問題から発展して、石井運輸、大野国務両大臣に大きく疑惑が投げかけられるに至つた結果、遂に予算委員会は一時休憩をしなければならなくなつたことは御承知の通りであります。そうして法務当局としては、中曽根委員が発言しておられるところのものが、はたして事実であるかどうか。それは取調べの衝に立たれる者としては明確な証拠によつて裏づけを行わない限り、法務大臣とされましても御答弁をいたしかねられたでございましよう。また汚職疑惑の名ざしを受けられた石井運輸大臣あるいは大野国務大臣の一身上の弁明も承りました。そうしてその弁明も、そうであろうかと存じます。が、しかし世上昨今流行しておる川柳に、天地神明に誉つて市ヶ谷へ、というのがございます。おそらく両大臣の先ほどの明確なるあの一身上の弁明も、この天地神明に誓つて市ヶ谷への一句でも国民大衆は笑殺してしまうであろうと思います。政治家に対するところの道義観についての国民の信頼は、ここまで落ちておるのであります。先ほど中曽根委員質問に対しまして、緒方総理は、あくまで事態が明確とならなければ進退はきめない。八千万国民の輿望のあることを信じて、どこまでも政権を担当して行くのだと答えられたようでありましたが、はたしてそういう意味お答えであつたかどうか、先ほどの中曽根委員への緒方さんの御答弁をもう一度ここでお聞かせ願いたいと存じます。
  195. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 昨今疑獄に関するいろいろなうわさが飛んでおることはよく承知しておりまするし、また政府部内に容疑者を出したことも、まことに政府として遺憾に存じておるところであります。しかしながら政府としましてはやはり国政運営の重大な責任を持つておるのでありまして、その国政を運営して行く上にはできるだけ政府が、あるいは政局が動揺しないように、政治は一日も廃することはできませんので、その信念に基いて国民の期待を少しでも満足させるように国政を運営して行きたい。いろいろ先ほど来御質問がありましたけれども、私は閣僚にそういう関係者はないとかたく信じておりますし、先ほど申しましたように、運輸省の官房長その他の事務当局容疑者を出しましたけれども、これですぐ政府責任をとつて進退を決することは、かえつて事態を混乱に導くゆえんである、そういう信念のもとに、政府は依然として政局を担当して行く覚悟を持つている次第であります。
  196. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 簡潔にお願いします。
  197. 安藤覺

    安藤(覺)委員 私はただいまの緒方総理の御答弁を承つて、まことに日本の前途に対して深い憂懸を持つものであります。なるほど同僚大臣に対してあなたがかたくその潔白を信じられることはけつこうであります。またそうでありましよう。しかし天下政治せんとする者は義理や行きがかりで行動せられてはなりません。ほんとう緒方総理は今お答えなつたようなことで心からいいとお思いになつておられるのでありましようか。それならば重ねてお尋ねしますが、昨今の国会の姿はどうでありますか。審議状態はどうでありましよう。政府の提出せられた予算案に対して、政府の提出法案に対して、審議がはたしてどれだけ進んでおりましようか。どの委員会もこの委員会も多かれ少かれ汚職疑獄ということに関連してのみの質疑応答が繰返され、本来の政策審議は何一つ進んではいないじやありませんか。のみならず、他の委員会におきましては手をあけて待つていましても、ほとんど成案が提出されて来ない。これもひつきよう部内においてただ疑獄汚職のことについてのみ気をとられて右往左往しておるところから来ていると思います。昨今のこの国会のあり方が、はたして正常だと副総理はお思いになりますか。これでもこの重大な時局下に政局を担当しておられる実体があるとお考えであられましようか。この状態に対する副総理の率直なる御答弁を、私の長年信頼し、私淑して来た緒方総理の御性格から、率直にお聞かせを願いたいと存じます。
  198. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 国会の議事が渋滞しておることは私も承知しておりますが、政府からこれをさしずするわけにも参りませんので、汚職事件汚職事件としてなるたけ早く審議を進められますように、予算だけではなくいろいろなもの——警察法はすでに成案せられた後に提出せられておりますが、やはりそういう議事が正常の姿に返るように政府としては希望いたしておる次第でございまして、それでは国会の今の状態に満足しておるかと言われますれば、はなはだ遺憾な点がありますが、しかしながら、政府でさしずをすることは差控えねばならぬと考えております。
  199. 安藤覺

    安藤(覺)委員 次にもう一つ承りたいと序じますが、昨今の社会但州をはたして副総理御存じだろうか、今や社会には限りない不炭な空気が低迷しておるじやありませんか。一体いかなる事態がいつ勃発するとも保証しがたい状態であります。これを私は心配するのであります。あなたはせめて朝の一とき、夕方の一とき、お忙しくとも電車やバスに乗つてごらんなさい。そこで何が語られ、ささやかれておるか。もしもそこに乗つておられる顔が副総理緒方さんの顔であるとそのとき知つた民衆があつたとすれば、その目がどんな目をしてあなたの顔を射るでありましようか。政府を、国会を取巻いて今や国民大衆の憤りは爆発寸前にあります。去る十四日の放送におきまして、湘南地方において行われた街頭録音、あの放送状況はどうでありましたか。八百屋のおかみさん、老人の叫び、嘆き、青年の怒り、放送司会者がとうとう進めることができずして立往生してしまつたではありませんか。まさにちまたは殺気立つておるのです。政府の方々は、率直に今日のこの社会状態を冷静に見詰められなければならないと思います。この国会状態社会のあの姿は、だれの陰謀でもありません。だれの扇動でもありません。だれの陰謀でも扇動でもないというところにほんとうに心せられなければならないと思います。せんだつても、あの警察法の改正案が本会議に上程されましたときに、犬養法相にされましても、あなたにされましても、あの警察法の改正案によつて警察国家が再現するものではない、今日の民主主義の徹底した時代においては、そういうことを政府はやろうとしてもとうていできるものではない、政治は民衆の輿論に反抗してはできないのだ、このことはよくおわかりになつておるはずだ、なればこそ、われわれも決してこの法律改正によつて警察国家を再現しようなどとは夢にも思つていないと言つてお答えになつておられたのであります。もしもこのお言葉に対してほんとうに信義の裏づけがありとしたならば、昨今の政府に対する不信の声、先ほど来私の申しましたところのちまたの声を何と聞いておられるか。率直に申しますと、輿論は政府の退陣でありますよ。政界の建直しでありますよ。これがほんとうの輿論なのですよ。政府は声なきちまたの声に耳を傾けなければならないと思います。もしもこのことを怠り、これを回避されるようなことがありといたしますならば、その後に何が現われるでしようか。それはまさにモツブの声です、民衆の喊声です。事ここに至つてはもはや取返しがつきません。民衆の不満と憤怒とは、常に暴力革命を用意している人々の唯一最大の雷管であり、武器でありましよう。この不平、不満、これこそは最も乗ずべき機会ではありませんか。春秋の筆法という言葉がありますが、どうか現内閣においてこの春秋の筆法なる言葉を実践せられないように願いたい。おかしなことを申し上げるようでありますが、この間もこういう歌が堂々と公衆の面前で歌われているのを聞いた。廓じや売れつこ女郎はお職女郎というそうだ、綱紀粛正の大臣、議員、引く手あまたの人気で汚職、ハ、ハのんきだね。雪だ白だといつてはいるが、やがて太陽に照されて、雪が解けたらみな黒だろう、ハ、ハのんきだね。(笑声)もつて世相の一角を知るに足るじやありませんか。のみならずなおこの歌のほかに、男なら男ならというきわめて扇動的な歌さえ歌われておる。どうかこういう点についても……。
  200. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 どうぞ簡潔に質問の要旨を述べていただきます。
  201. 安藤覺

    安藤(覺)委員 承知しました。真に心せられまして、この現輿を直視せられまして、行動していただきたいと思う。政治根本は道義にある。道義に出発したところに民衆は動いて来る。しかし今日のごとく道義を疑われておる現状においては、いかに政治しようとしても、それは空転にすぎない。空転を無理に押えようとすれば、それは権力だ、権力によればフアツシヨだ。このことは、深い民衆愛と道義感とに出発し、民衆の命を愛する心から政治して行かねばならぬ。そうでありとするならば、民衆が何を考え、何を願つているかというところに行動を考えていただかなければならぬ。法の決定をまつて、裁決をまつてということよりも、この以前において、今日の事態は単なる一党一派の陰謀とか策謀とかいうものをはるかに越えておると思う。どうかこうした見地に立つて御行動を願いたいと思う。はからずも私はこうして発言しておりまするときに思い出されることは、あの大正以来の日本の憲政史であります。大正八年における原敬氏のあの最後、昭和五年における濱口雄幸総理の最後、昭和七年五月における犬養総理の凶変、そのいずれの内閣におきましても、閣僚の中からなわつきが出たとかいうのでもなければ、どう綱紀が乱れたというのでもありません。ただ世相世論がこれではいけないとしたときに、なおかつ政権に執着しておられたことに起因します。ある総理大臣は話せばわかると言われ、ある総理大臣は男子の本懐だとも言われた。しかしその個人が男子の本懐であつても、ころしたテロが行われるごとに、日本の国情が刻一刻と悪化の一途をたどつて、今日の日本の悲惨な運命を見ておるのではありませんか。先ほど八千万国民の輿望をになつて政局担当に邁進するやに副総理は言われておつたのでありまするが、その志やまことに壮といたしますけれども、しかしながらその認識の根本において誤りがある。八千万国民の信頼があればというのであればともかく、あるとして考えられるところに度しがたい誤謬と独断があるのじやないか。八千万国民の輿論は先ほど述べた通りである。政権担当者としてえてして陥りがちなこのドグマに陥らない、聰明にしてかつゆたかな性格をお持ちになつている緒方総理大臣は、どうかあの吉田総理のよりよき相談役とせられて、現内閣のじやありません、日本の運命をあやまられることなきよう御努力を願いたい。重ねて緒方総理大臣の御所信のほどを承りたい。
  202. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今政府に対しましていろいろな批判のあることも承知いたしております。また社会的にいろいろな問題があることも承知いたしております。その社会不安とか政治的な問題は、その原因がどこにありましようとも、それより生ずるいろいろな派生いたす問題につきましては、政府としては政治的に責任を感ずる、これはもう当然のことでありまして、政府としても昨今の世相に対して深く責任を感じておる次第であります。ただ今国民の信頼していないということを言われまするが、政府は、過半数の数までは持ちませんが、国会にやや半数に近いものを持つている以上、私はこの国会の支持を信ずる以外に道はない。そういう意味で、政府は動揺することなく政局を担当いたしまして、この時局の乗切りに邁進することが、たびたび申しますが、この負託にこたえるゆえんである、さように深く信じておるのでございます。
  203. 安藤覺

    安藤(覺)委員 まことにただいまの答弁、私残念でありますが、ほんとう緒方総理の胸中をたたいたら、今のような御答弁はないはずだ。必ずや君の言葉に従いいたい、だが従うことのできない立場だとお答えくださるだろうと思うのでありますが、これ以上時間をさかしていただくことは恐縮に存じますので、私の質問はこれをもつて終りたいと思います。
  204. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 明日は定刻より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会