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1954-02-18 第19回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月十八日(木曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 森 幸太郎君    理事 川崎 秀二君 理事 佐藤觀次郎君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    岡田 五郎君       尾関 義一君    小林 絹治君       迫水 久常君    庄司 一郎君       高橋圓三郎君    富田 健治君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       福田 赳夫君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山崎  巖君    山本 勝市君       稻葉  修君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       中曽根康弘君    中村三之丞君       古井 喜實君    足鹿  覺君       伊藤 好道君    滝井 義高君       松原喜之次君    山花 秀雄君       横路 節雄君    稲富 稜人君       川島 金次君    河野  密君       小平  忠君    堤 ツルヨ君       西村 榮一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  愛知 揆一君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 大野 伴睦君         国 務 大 臣 加藤鐐五郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         保安庁長官官房         長官      上村健太郎君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         農林事務官         (大臣官房長) 渡辺 伍良君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君         運 輸 技 官         (船舶局長)  甘利 勗一君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月十八日  委員赤澤正道君、成田知巳君及び稲富稜人君辞  任につき、その補欠として吉川久衛君、足鹿覺  君及び岡良一君が議長の指名で委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十九年度一般会計予算  昭和二十九年度特別会計予算  昭和二十九年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。昭和二十九年度一般会計予算外二案を一括議題といたします。質疑を継続いたします。川島金次君。
  3. 川島金次

    川島(金)委員 私はこの機会に、まず大蔵通産大臣に対しまして、予算に直接関連のある、ことに国民生活の問題を中心としてお尋ね申し上げたいと思います。次いで時間の許す限りにおきまして、当面の問題となつております造船疑獄事件簿中心としての質疑を行いたいと思います。まず第一に、これは経済審議庁長官である愛知さんにお伺いをいたしますが、わが国は敗戦によりまして国富の大半を喪失いたしました。しかしながら、終戦後における勤労国民階級の烈烈たる祖国復興の精神と、生産力への協力によりまして、逐次国内における経済生産力上界をいたして、国民経済もまたやや見るべきものがあるに至つたことは、いなむべくもない事実であります。こうした経過によりまして、今や日本国内における富の蓄積も、順次戦前に近い水準に向つて来ようとしていることも、否定できない事柄でありましよう。そこで経済問題として一番重大な事柄として私ども関心を持ちたいものに、国富という問題があろうかと思います。一体今日における日本国富は、政府調査するところによつて現在どのくらいあるという推定をされておるか、それをまず承つておきたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お答えいたします。ただいまお尋ね国富調査につきましては、実は昭和三十年度におきまして、経済審議庁においてこれを調査することにかねがね計画いたしておりますので、現在のところ公の調査としてはないわけでございます。
  5. 川島金次

    川島(金)委員 現在のところ公の調査はないにいたしましても、少くとも政府は、この問題について一応重大な関心を持つておらなければならぬ。従つて三十年度において初めて公の調査をするということではあるけれども、今から数年前に、私が衆議院の所得税調査に関する委員会の席上において当時の吉田内閣に尋ねましたところ、そのときの調査によれば云々という国富棚卸が公にされておることを私は承知いたしておるのであります。従つてそのときの棚卸基礎といたしまして、その後における生産力国民経済力等を勘案いたしますならば、大よその推定額は算出できるであろうと私は思うのでありますが、その点はいかがでありますか。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国富調査が非常に大事であるということ、並びに国民所得と同様に、諸般の政策基礎的な資料にいたしたいということで、きわめて最近になりましてから、昭和二十八年度におきましてこの調査のために予算を特に計上いたしまして、ことし中くらいに大体今お話がございましたような現在入手し得るいろいろな資料から、試験的の概算をいたしたいと考えております。ただいまのところ政府側としてそういうふうな推定というものは持ち合せており幸せんので、御了承願いたいと思います。
  7. 川島金次

    川島(金)委員 まことに私どもといたしましては、政府の怠慢を感ずるのであります。少くとも国民経済の基本となるものは国の生産力経済力、そしてその蓄積によるところの国の富の力、この総額というものが大よそでも政府の中で研究されわかつておらなければ、日本経済再建の大方針を打立てる要件として、一つの重大な欠陥を持つことになるのではないかと私は考えるのであります。そこでしからば、逆に申し上げてみたいのでありますが、日本統計によりますると、昭和五年現在において、日本国富総額はおよそ一千百億万円といわれております。しかもその一千百億万円であつたが、終戦当時において、日本国富は、大体当時政府の非公式ではありましても発表するところによれば、二兆四千億の損失をこうむつたということは、あなたもおそらく御記憶であろうかと思うのであります。この二兆四千億の損失額というものは、日本全体の宵の総額におけるおよそ二分の一に近いものであると想像されておつたのであります。その二兆四千億の損失額が二分の一であるといたしますならば、当時における国富推定額は四兆八千億という計算になろうかと思います。この四兆八千億を物価指数にスライドして計算いたしまする場合において、今日における大体の富の計数がそこから基礎的に算出されるものではなかろうか、かように考えるのであります。そうした計範を立てた場合において、日本の今日における国富総額概算がつくのではないかと思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお話のございました、太平洋戦争によりまする国富被害調査を大よそ推計したことはございます。しかしその後におきましては、先ほども申しましたように、私的の調査と申しますか、推計というようなものはいろいろあろうと思いますが、政府といたしましては、本年中に試験的な国富調査をやりたい、こういうことで今鋭意やつておりますので、ただいませつかくお尋ねではございますが、政府としてこういうような推計というものを申し上げる用意がないわけであります。
  9. 川島金次

    川島(金)委員 まことに驚き入つたることであります。いやしくも敗戦日本経済再建にあたりまして、日本経済基礎的な一大要件であるべき国の宿の総額概算をすら算定することを怠つてつたというのでは、日本経済再建の計画的な基礎をどこに置かれたか与らわれわれは怪しむのでありまして、まことに政府の怠慢、不勉強ぶりは驚きにたえたといわなければならぬのであります。今からでもおそくはありません。すみやかにこうした問題について一切の資料を集計いたしまして、その概算的なものなりとも明確にすることを強く私は求めておくものであります。  次に、しからば国民所得の問題をお尋ね申し上げたいと思うのであります。政府の発表いたしますところによれば、本二十九年度予算編成の当初におきまして、二十九年度国民所得はおよそ六兆を越えるものなりとの算定を新聞等で明らかにいたしたことがあります。しかるに最終的な予算編成が終るころになりますると、デフレ政策に関連いたしまして、国民所得を二十八年度と大差のない五兆八千億に切下げたということはまぎれもない事実であります。政府の今回立てました予算中心としたデフレ政策によつて国民所得が二十八年度に比べて横ばい程度となるということは、これを逆に言えば、国民生活水準切下げ意味するではないかと感ずるのでありますけれども、その点、審議庁長官としてどのような見解を持たれておりますか、伺つておきたい。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国民所縁推測でございますが、これは今回の予算案編成、その他経済政策の調整と関連いたしまして予測し得るいろいろな資料を分析いたしまして、その結果、当委員会におきましても申し上げておりますがごとく、生産活動状況、あるいは国際収支状況、その他いろいろな関係を総合いたしまして、生産活動で申せば、鉱工業については、規模としては、年度間を通じて大体前年通り、それに対しまして、消費生活水準等について推計をいたしました結果、昨年度よりもほんのわずかではありますが上昇するということで、五兆九千八百億というものを推測いたしたわけでございます。
  11. 川島金次

    川島(金)委員 国民所得推計において若干の増額は認めておるようでありますけれども、一方において生産が増加するというても、一方において人口が増加するということも否定することのできない事実であります。そういうことと関連いたしまして、昨年度国民所得と二十九年度国民所御との差がきわめて僅少であるということは、一方において、先ほど申し上げましたように、国民消費生活水準切下げ意味するものであると推定せざるを得ないのでありますが、その点をお尋ね申し上げておるわけであります。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国民消費生活水準でございますが、二十八年度に比べましてある程度上昇するというような推測ができるわけでございます。たとえばCPI等関係を見ましても、人口の増加その他の要因を相殺いたしまして、若干の余りがあるということになりまするので、それらの関係から見ましても、たとえば賃金の名目的上昇というものは、ほとんど考えられないにいたしましても、消費物資値下り等からいつて実質賃金内容が充実するというような点から考えましても、私は消費の面におきましての国民所得推計というものは、われわれとしてはこれを合理的な推計やり方である、こういうふうに考えております。
  13. 川島金次

    川島(金)委員 消費生活水準においてはかわらないであろう、むしろふえるであろうという今の通産大臣言明は、きわめて重大であろうと思う。吉田内閣は今度の財政経済政策において、国是に耐乏生活を強調いたしておるのである。国民耐乏生活を強調し、それを根幹としてデフレ政策を行いまする以上は、国民消費水準はいやおうなしに引下げられるということが目的でなければならない。しかるに今の審議庁長官消費水準が若干上るであろうということは、吉田内閣経済財政方針根幹と著しい矛盾を来した言明になるのでありますが、その点はいかがでありますか。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点の見通しをさらにもう少し掘り下げて申し上げますると、たとえば賃金等につきまして、先ほど申し上げました生産活動が、年度を通じての規模はかわらないというような点から出発いたしまして推測を立ててみますると、二十八年度に比べまして、二十九年度の様相といたしましては、二十九年度年度当初においては、ある程度生産活動水準というものはやはり依然として高い。これが夏から下半期にかけまして、生産上昇が停滞するということが見通されるわけでございます。従つて企業等について見当をつけてみますると、下半期におきましては、収益の減少というようなこともございましようから、たとえば臨時的な収入といつたようなものは、これは賃金の方におきましても減少をするだろうと思います。しかしながら賃金水準の名目的なものにつきましては、雇用の減というようなことも一方におきまして多少は考えなければなるまいと思いますが、賃金水準それ自体の結果として現われまするところは、さしたる下落はない。同時に、この夏ごろから以降におきましては、物価値下り等も見越しておりますから、実質的な賃金の安定ということがむしろ期待されるであろう。そこで、実質的にさように内容が充実するということであれば、これをいたずらに消費その他の面に費すことなく、これを蓄積をするというような意味におきまして、消費節約とか貯蓄とかいう方面が強調されなければならない、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
  15. 川島金次

    川島(金)委員 長官見解をもう一ぺん重ねて逆に申し上げますが、消費水準実質において下ることはない、しかるに政府は一方において国民耐乏生活要求しておる。この矛盾というものはおおうべくもない事実であろうと思うのですが、今の長官言明によれば、政府の今次の大方針であるところ国民に対する耐乏生活というものは、言うべくして行われないものであるということの見通しを持つておられるということになるのでありますか、その点はいかがですか。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういう意味ではございませんで、要するに、企業にいたしましても、先ほど来申しておりますように、生産水準上昇というものがそれだけの形において現われるのでは、輸出の伸び悩みというようなことにもなりますから、そこで、健全な姿で企業もやりたい、コストの低下もやりたいということを基本的に考えておるわけでありますが、同時に、年度を通じてみれば、鉱工業の上産でいいましても、規模は同じなんでございますから、そんなにドラステイツクな、深刻な倒産が非常に起つたり、失業者がちまたに大量に現われたりというようなことはないだろう。同時に賃金問題等にいたしましても、むしろ総合的な施策によつてその安定と内容の充実をはかりたい。これを受ける方から言えば、多少でも余裕のできる面があれば、これはもつと積極的に貯蓄の面に努力していただきたい、協力をお願いしたいということなんであります。これは口で申せばそういうことでございますが、しかし、実際にその立場々々に立たれる方から見れば、相当に引締めたところ努力であり、相当な協力内容がなければ、今申しましたようなことはできないと思うのであります。こういう意味耐乏ということが大きく打出されて来るわけだと思うのです。
  17. 川島金次

    川島(金)委員 それでは続いてお伺いしますが、今長官の言われた、国民消費節約してもらいたいということになれば、一体国民の——ことに勤労大衆という側に立つて申し上げますが、今の勤労大衆生活の実態、物価の実情、あるいは税金の関係等からいつて消費節約する余地があると長官は考えられておるか、その点をまずお伺いしたい。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は、ただいまも申しましたように、その立場心々の方から見れば、これは非常な努力であり、それがいわゆる耐乏生活であるということは申し上げた通りでございまして、相当余裕のある現在の状態であるということを前提にし、あるいは非常な余裕がこれから出て来るということを前提に申し上げておるわけではございません。企業立場も、政府立場も、あるいは勤労者立場においても、それぞれその立場において相応な努力と犠牲とを払つて行かなければ経済自立ができない、こういうように私は考えております。
  19. 川島金次

    川島(金)委員 言うまでもなく、日本敗戦以来今日まで、こにと働く勤労国民階級というものは、耐乏生活を続けて参りましたが、その耐乏生活は、まだまだ戦前の標準に復活するまでにはほど遠いありさまであることは、長官も御存じの通りであります。しかも今日消費水準が復活したとは申しながらも、エンゲル係数によりますれば、まだまだ日本国民は、諸外国に比較いたしましてもきわめて高いところにあるということも、長官は御承知のことと思います。かりに私が最近の資料をもつて調べて参りましたことだけを申し上げましても、日本国民所得というものは、ドルに換算いたしまして、ごく最近の統計でありますが、わずかに一人平均百六十七ドルである。これに反しまして、同じく敗戦のうき目を見ておりまするところ西ドイツは四百四十六ドルという高額な所得であります。さらに英国におきましては六百三十三ドル、フランスのごときにおいてすらも六百二ドルという高い所得を持つております。この高い所得によつて、いかに国民生活水準が高いかということもおよそ想像がつくのでございます。しかるに、いまなお日本園児所得というものは、一人平均ドルに換算いたしまして百六十七ドル、しかもエンゲル係数におきましては、いまなお六〇%に近いところ食糧費を占めておるのであります。このような実際的な統計基礎といたしまして論ずる場合において、はたして、政府が言うところの、国民に対するところ耐乏生活要求ということが妥当であるかどうかということには、きわめて重大な疑問があろうと私は思うのであります。にもかかわらず、今の長官の話によれば、その苦しい中でも、個々の立場はあろうけれども努力をしてもらうのだと言うけれども、はたしてその努力余地現実にあるかどうか、こういう問題を私は真剣に考えておきたいと思うのでありますが、その点をもう一ぺん繰返してお尋ねしておきたいと思う。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私もごもつともな御意見と思う点が多々あることは、先ほど申し上げた通りでございまして、ただいまおあげになりました数字のごとく、諸外国に比べてみますると、ドル表示国民所得というものはいまだまことに貧弱なものであります。またエンゲル係数を見ましても、最近改善されたとはいいながら、まだくその道は遠いような感じがいたすわけでございますが、しかしこれは、前に申しましたことを繰返すようでございますが、この苦しい中ではありますが、しかしながら、同時にこれからの消費水準等を分折してみましても、むしろよくなる面もあるのでありまするから、この際としては、国民立場におきましても、消費節約耐乏、いわゆる貯蓄性向を少しでも伸ばして行くということについて格段の御協力を願いたい、こういうふうに考えるわけであります。
  21. 川島金次

    川島(金)委員 そこで結論的にお伺いしますが、一体政府国民に対する耐乏生活要求というものは、国民全体に向つて強調されている意図であるのか。それとも、国民の中で、消費生活においてきわめて余裕のある一部の階級にのみこれを要求しておこうという意図であるのか。あるいはまた、余裕がなくても、たとえば生活保護者、あるいは失業者、あるいは戦争未亡人等、これらの貧困をきわめた、いまなお耐乏のどん底にある生活現実において営んでいるところ国民もかなりの数字に達しておることも御承知通りでありますが、こういつた人たちにまでも、政府はあえて耐乏生活要求せんとする意図であるのかどうか。その点を私は結論的にお尋ねしておきたいと思う。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、政府としても、それから国民としても、全体としての考え方の筋道は同じだと思うのであります。そこでこの一両日中に、政府といたしましても具体的に、たとえば政府物品購入等についてもこういうくふうができるではないかということを、政府部内におきましてもとりまとめて実行に移したいと思います。それから奢侈品等については、たとえば課税の問題その他金融の引締め等の問題、あるいは外貨の予算編成の問題というようなところから、根本的な手を打たんとしておることも御承知通りでございます。しかしこれらともあわせて、経済自立に対する国民的な気構え、気味というものは、国民最後の一人の力にまで同じ気持で協力していただきたい、こういうふうに考えております。
  23. 川島金次

    川島(金)委員 それではさらに続いて最後お尋ねしておきますが、今までの政府やり方を見ておると、西ドイツの今日までの政策と比較いたしまして、まつたく逆な方向である。御承知通り西ドイツの今日の現状というものは、行つた人も行かない人も承知されておるところでございますけれども、ベルリンあるいはその他の大都会は、今なお戦災を受けたままの瓦礫の山を横たえております。しかるに、その瓦礫の山を横たえておるところのメイン・ストリートを一歩裏に入れば、そこには実にみごとな商店街あるいは勤労住宅街が建設されておる。しかも西ドイツにおけるところ生産復興というものは、きわめて世界的にも驚異的な数字であることもあなたが御承知通りであります。しかもその上に、国民生活水準日本と比べてこれまた格段の相違のある躍進を遂げておるということも御承知のことと思う。ところ日本においては、東京のどまん中において、不急不要の大建築が陸続と立ち並んでおる。しかるに、その反面においては、今なお三百五十万戸という住宅が払底をしておる。この現実は、吉田内閣経済財政金融政策の何よりも失政の現われではないかと私は断言せざるを得ない。しからばさらに尋ねておきますが、そうした今日まで行われておるような不急不要の建物、あるいはそうしたことに類する問題に対するところ金融あるいはその他の政策において、徹底的にこれを引締めて行くという確信と見通しを持つて今後進むかどうか、その点をさらに伺つておきたいと思う。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ビルデイングの問題等につきましては、大蔵大臣財政演説でも率直にこの点をうたわれてあることでありまして、これについては、今後の策といたしまして、金融の引締めの問題もやります。それから不動産取得税の創設というような面からも手を講ずるわけでございますが、ただ建築そのものに対するいわゆる物的の詐可、認可というような制度をとことんまでやることは、かえつてその効果なりあるいは弊害なりがいかがかと思われる点もありますので、その点について今ただちに特段の措置をするということはなく、むしろ資金の問題で申しますならば、重点的なところにいかにして所要の額が確保できるか、その経済効果が発揮できるかという積極的な面においてこれを確保するというようなことによつて不要不急の面が出ないようにやることの方がこの際われわれとしてとるべき措置ではなかろうか、こういうように考えております。
  25. 川島金次

    川島(金)委員 それでは、その問題について大蔵大臣にお伺いいたしますが、大蔵大臣は、今後の金融政策において、金融統制というものを構想に考えられておるか。およそいかにデフレ政策を遂行し、金融引締めと口ではとなえておりましても、計画的な金融統制というものの裏づけがございませんければ、その目的は完全に達成できないと私は考えておるのでありますが、その点は大蔵大臣としてどのように考えておりますか。
  26. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 金融の問題につきましては、これはやはり日本の本年度予算と同様の方向で、日本物価を引下げ、そうして経済自立を果す意味で一層この引締めを強化して参りたいと考えております。従いまして、不要不急の方面に資金が流れざるよう、各金融業者に絶えず機会を得ては協力を求めておる次第であります。金融業者も自主的にだんだんと自粛して、国の重点的に考えておる方面に資金を流してくれつつありますが、しかしもし今後とも、その点に金融業者の協力が非常に不十分である、そういうときには、あるいは資金統制等についても考えなければならぬのではあるまいか。しかし現在のところは、そういうことではなくて、金融業者に協力を求めて、金融業者が自主的にこれらのいわば政府意図に沿つた金融引締めをやつてくれること、及びその貸出し先の選定等をやつてくれる、貸出し業種の選定等もあわせてやつてくれる、こういうように期待いたしておる次第でございます。
  27. 川島金次

    川島(金)委員 私は、政府デフレ政策やいわゆる国民生活耐乏要求するという建前を貫こうといたしますならば、まず何はともあれ、強力な金融統制というものがバック・ボーンとなつて進んで行かなければ、必ずしも政府のとなえておるような経済財政政策目的は達成できない、こういうふうに考えております。その点をさらに論議いたしますることは議論になりますから、この点にとどめておきます。  さらにそこでお尋ねいたしますけれども、最近ひんぴんとして問題となつておりまする問題に、やはり金融上の問題としてオーバー・ローンの解消の問題があります。これは初め政府において、オーバー・ローンの解消についていろいろな議論があり、また中には具体的な施策が考えられたようにも新聞等に出ております。ところがこれに反しまして、かんじんかなめの日銀一万田総裁は、このオーバー・ローンに対するところ政府の具体策、あるいは自由党内におけるところの政調の具体案に対して反論をしておるというような現象も出て参つたことは事実であります。それからさらに最近に至りますと、このオーバー・ローンの解消の問題はしいて行わないというようなことになつたということも新聞に報ぜられておりまして、オーバー・ローンをめぐるところ政府対自由党対日銀総裁の意見が常に変転きわまりないありさまでありますることは、政府金融統制金融政策に対しての識見のないことを如実に暴露したものではないか、こういうふうに私は思つておるのであります。そこで今日大蔵大臣にお伺いいたしますが、オーバー・ローン、オーバー・ローンとやかましくいわれておりますけれども国民全体の預金と、その預金が貸し出されておる額との開きというものは一体どのくらいになつておるのか、具体的な数字をあげて、まずここで示しておいてもらいたいと思う。それからその具体的な数字に基いて、オーバー・ローンを解消する当面の必要ありやいなや、しかも解消する必要があるとするならば、政府はいかなる具体的な方策によつてこのオーバー・ローンを解消し、そうして物価と通貨との安定を期そうといたしておるか、その点についての明快な具体的な意見を承つておきたいと思う。
  28. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 オーバー・ローンの問題は、申すまでもなく各市中銀行等から、いわゆる得意先の方から見ればオーバー・ボローイングでありますが、よけい借りておるがために起つて来た問題でありまして、根本的解決として申せば、もちろんオーバー・ボローイング、つまり借り手の方からの解消がなければ根本的な解決にならぬことは申すまでもありません。しかしながら、オーバー・ローンは大体において、残高は絶えず動きますが、為替等の関係まで合せれば三千五、七百億に達するかと思いますが、これをどうして解決するかという問題については、いろいろ議論があるわけであります。その一つとして、この間大蔵省で日銀の政策委員会へ相談したのは、これは新聞等で御承知ですからここで繰返しませんが、要するに外貨を売ることによつて得た金を開発銀行その他を経て預託をすることによつて、これらを解消さそう、こういう考え方であるのであります。預託でありますから、預託担保をとり、預託に期限をつける、従つてだんだんと資本の蓄積を増加すること等によつてこれが返されて行く、こういうことになつておるので、一時的の解決ではありませんが、だんだんとこれを解決して行く、こういうのが根本の案になつております。しかしこれはつまり即時根本的解決になる問題でないので、そういう策、やり方がよいかどうかということについては、これは当時いろいろな考え方があるわけであります。そでまたこれをやるのに、言いかえますと、今まで日本銀行一本で貸しておるものが、あるいは開発銀行あるいは長期信用銀行等を経て行くことにもなりますので、一応ある程度形は整うが、しかし形が整うことが即根本問題の解決にはならぬので、よく新聞に出ておる言葉をかりて言うと、それならばおやじから借りておつた金を、おじさんの方から借りることにしただけの話で、それとかわりはないじやないかというような意見が出ておるのはその点でありますが、しかしおやじから借りておるものをおじさんの方から借りて、おじの方に幾分移すことによつて形を整えて、その返済なりをやらす。今申し上げた通り、それは預託金になつて、担保を提供しなければならぬ、期限も付されることになるのだから、そういうことは一歩を進めるゆえんでもある。しかし申し上げるまでもなく、これは日本銀行を相手にやるのであるから、大蔵省の意向は日本銀行によく徹底をはかりますが、日本銀行の政策委員会は、これは日本銀行で扱うのだから、十分審議するのは当然のことであります。大蔵省の一方的な考え方を押しつけるべきものでないことは、川島さんもよくおわかりだろうと思う。従つてこういう問題は、一定の識見だとか一定の考えはあるけれども、やはりものを円滑にまとめる上においては効果あらしめることが大切なんで、最初おれがこうきめたから、この通りやれと言つて、命令一下やるべきものでないことは申すまでもないことであります。
  29. 川島金次

    川島(金)委員 最後大蔵大臣の話は、何も聞くまでもない事柄であります。問題は、大蔵大臣金融政策に対して三転四転の形で、ついでに言いますけれども、税制問題でもそうです。繊維消費税なんかどうですか。あの問題についても、初めは原糸、原綿課税、次は小売課税、今度は三転いたしまして卸売課税、こういつた方針、考え方、態度、これはやはり大蔵大臣に確固たる識見のない、方策のない証拠だと私は思う。常に外部の一部の力、一部の意見に動かされて三転しておる。これはやはり大蔵大臣として、あるいは吉田内閣全体としての問題であるけれども、非常に確固たる方策がない、出たとこ勝負の政策をもつて継ぎ合しておる、こう言わざるを得ないので申し上げたのであります。  このオーバー・ローンの問題についてここで詳しく論争することは、時間がございませんからいたしませんが、先ほどお願いしておりました、最近におけるところの預金と貸出しの具体的の数字の比較をひとつここで示してもらいたいと思います。
  30. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 全国銀行の預金に対する主要勘定の割合、二十八年九月末日の分がここにありますので、申し上げます。このときは、預金が二兆五千百二十二億六千万、貸出しが二兆五千百八十五億一千八百万、その時分のいわゆるオーバー・ローンというのか、日銀よりの借入金が三千四百十六億六千九百万円、これは川島さんも御承知のごとく、絶えず異動がありますが、大勢には異動がありません。
  31. 川島金次

    川島(金)委員 いずれにいたしましても、デフレ政策の遂行といい、オーバー・ローンの解消といいましても、究極においては、強力な、総合的な金融統制の筋を通して行かなければ、その目的の大半は失われる結果になるであろうということを、この際特に強調し、警告をいたしておくものであります。  それから政府は、最近はもちろん従来もそうでありますが、何か日本経済の再建について行き詰まつたような事態が起りますると、すぐに外資という言葉を持つて参りまして、外資を救いの神のごとくに国民に示して来たことは一度にとどまつておりません。そこでお伺いいたしますが、一体日本で今日まで導入されました外資はどのくらいの総額に上つてつて、しかもこれら外資と提携いたしております日本の重要な、有力な工業会社、工場というものは一体どういう形においてその外資と提携されておるか、その点について資料がありますれば、この際明らかにしてもらいたいと思う。
  32. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 なお川島さんに申し上げておきますが、これは案であつて最後に出すものは一つである。その道行きにおいていろいろ研究するので、それをもつて信念がないとか、それを言うことはあなたの御自由だけれども、私ども最後案は出していない。出す前にいろいろ過程を経て出すのは当然であつて、一人でやる政治ならやりますが、皆さんとともにやるのですから、当然そうなるのがあたりまえであつて、そうなることをはつきり御了承願つておきます。  それから今のわが国の主要会社中、資体金一億円以上のものについて、外資法による外資受入れ状況、昨年十二月末の数字を申し上げます。株式の一部を外資受入れによつているもの二十九社、総受入額約七十七億円。おもなものとしては石油工業五社、約四十億円、化学工業六社、約十一億円、電気機械製造業七社、約九億円等であります。その次は、主要会社で貸付を受けておるもの、これは十五社、約三百十二億円。おもなものは電力関係四社、約百六十九億円、石油工業四社、約九十八億円、海運関係三社、約三十六億円などとなつております。
  33. 川島金次

    川島(金)委員 外資々々と救いの神のように、たいこをたたくようなことで史伝はしておりますけれども、その実態は、今日までのところ大した効果が額においてはあがつておらないのであります。ただ問題は、この際私の注目いたしたいのは、日本のの石油工業に対しましてはほとんど外資が投入されている。株式の形あるいは借金の形で外資が投入されております。そしてその外資の形態から申し上げますと、一見いたしますると、日本の石油工業は外国資本によつてほとんど支配されておるという形であります。石油のみならず、他の会社におきましても、若干その傾向を深めているものがあろうかと思います。私は、外資導入に対してことさら異議をとなえるものでは決してないのでありますが、この状況をもつていたしますると、日本の重要な工業が将来外国資本の勢力によつて支配されるというおそれがあるのではないかと思うのでありますが、そういう問題について、大蔵大臣はどのように考えておりますか。
  34. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 日本のような資本の蓄積が不十分なところでは、外資導入が大切であることはよくおわかりのことと思います。さつき川島さんが言われたように、西ドイツでも外資導入は盛んにやつておるのであつて、これは日本経済再興についてきわめて必要だと思うのでありますが、お話のごとくに弊害があつては相ならぬ。その点から私どもは、現行の外資法によりますると、その外資が国際収支の改善に寄与し、または重要産業の発達に害与する、こういうものに限つて認可しておるのでありまして、不公正なものとか、日本経済に要影響を及ほすもの、こういうものは認可しないという基準になつております。すなわち外資導入の審査にあたりましては、この認可基準に立ちまして、日本企業が外資によつて不当な圧迫をこうむらないように十分留意いたしておるのでありまして、日本経済が外資によつて支配される、こういうおそれはないものと信じております。
  35. 川島金次

    川島(金)委員 財政金融等の問題、国民生活の問題についてさらに掘り下げてお尋ねをいたしたい点があるのでありますが、時間がございませんので、経済問題につきましての質問は一応これで打切りまして、他日に譲ることといたします。  次に、私は数日来国会の問題の焦点となつておりまするもつぱら造船疑獄事件について、副総理その他関係閣僚の所見を、さらにこの際あらためてただしておきたいと思うのであります。  まず緒方副総理にお尋ねを申し上げますが、昨日緒方副総理は、同僚成田議員の質問に対しまして、かなり率直に近い答弁をされたようであります。私はその緒方副総理の率直な人柄に信頼をいたしまして、私の質問にもさらに一歩進んで率直に御答弁あることを期待いたしまして、数点についてお尋ね申し上げたいと思います。ことに昨日成田議員からお尋ねになりました問題は、当面の仮定の問題について、政府のいわゆる責任性の事柄について質問があつたのでありますが、私は一歩しりぞきまして、これを一般論的な立場から、まず副総理の考え方を尋ねておきたいと思うのであります。それは、いやしくも今日の内閣は総理大臣が首班であり、その総理大臣には、内閣法の定めるところによつて閣僚大臣の任免権があるわけであります。従つて総理大臣は、閣僚を任免する自由の権利を持つておるわけであります。そこでその最高の責任者たるところの総理大臣の主宰する内閣の中において、あるいは民間と、あるいは官界を中心として汚職、疑獄等と叫ばれるような事件に連坐するような閣僚もしくは閣僚に準ずる有力者が出来いたしました場合には、内閣総理大臣はそれに対して当然重大な責任を感ずべきであろうと、私は一般論的にも考えておるのでありますが、その点はいかがでございますか。
  36. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今御質問の中の閣僚に準ずるという意味は、私によくわかりませんが、いずれにしましても、その汚職の容疑者と申しまするか、汚職に何がしかの関係政府部内にあるという場合には、その都度によりまして、責任を明らかにすべきことは当然だと考えます。
  37. 川島金次

    川島(金)委員 そこでさらに一般論的にお尋ねいたしますが、その責任を明らかにするという意味は、内閣が総辞職をするという意味に受取つてさしつかえないのであるかどうか、その点はいかがでありますか。
  38. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 そういう場合もあり得ますが、それは責任を明らかにする方法はいろいろあつて、一概に申すことはできません。
  39. 川島金次

    川島(金)委員 本日の新聞等では一斉に報道されておるところでありますので、その一部をとらえてまずお尋ねを申し上げるのですが、東京日日の伝えるところによりますれば、「最悪の場合総辞職を決意」、「閣僚懇談会で検討」という大見出しをつけた記事が出ております。緒方副総理もさだめしこの新聞もしくはこれに類した記事を、けさほど見ておるのではないかと思うのですが、その見出しの記事の中に、「院内大臣室に緒方副総理、犬養法相、石井運輸相、大野国務相、副永官房長官らが善後策を協議したが事態はさらに悪化をたどるものとして、もし現閣僚の身辺にまで及んだ場合は内閣は総辞職すべきであるとの意見が強く、ここ一両日の情勢を見ることになつた」云云といわれておるのであります。これはひとりこの新聞だけでなしに、他の有力な東京の新聞がこれと同じような筆陣をもちまして、本日は一斉に報道をいたしておりまして一内閣の土台骨がゆらぐの兆がまことに明らかになつて来たと国民は見ておるのでありますが、今日の事態に対しまして、政局は行き詰まりの観を呈し、人心はまことに混迷をきわめておるようなこともおおいがたい事実であろうと思います。従つて今次の疑獄事件内容いかんにかかわらず、政局は行き詰まり、人心は混迷をきわめ、政局は暗欝をきわめておるようなこの事態に対してだけでも、内閣の責任はきわめて重大であると申さなければなりませんが、この点について、総理の代理であるところの緒方さんはいかなる見解でおられるか、その点についての率直な意見を承つておきたいと思う。
  40. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今お読み上げになりました新聞の記事、及びそれに類するうわさというものについては、私は存じませんが、そういううわさが乱れ飛んでおるとすれば、いい機会であるから申し上げますが、今お読み上げになつたような閣僚懇談会を開いた事実はございません。  それから、政局の行き詰まりということは、政府としては感じておりません。このデマの乱れ飛ぶ中に、政府といたしましては自信を失わなくて、今の重大なる緊縮予算並びに重要法案の実現に一層力を注いで、一路邁進いたしたい、これが国民の負託にこたえるゆえんであると確信をいたしております。(拍手)
  41. 川島金次

    川島(金)委員 国民は今の緒方副総理の言明にもかかわらず、別なことを考えております。もはや吉田内閣には政局担当の資格がないとさえ感じておる国民もあるのであります。(拍手、発言する者あり)ことに保全、造船疑獄等をめぐりまして、吉田内閣中心とする政局は、きわめて混迷を続けておるということだけはいなめない事実であります。ことにこの際、あなたは御承知ないかもしれませんが、これは有力な方面の伝える話でありますけれども、去る七日に、鳩山前田会談が行われておるという話であります。この鳩山前田会談におきましては、もはや吉田さんは政局担当の力を失いかけておるから、この吉田さんには引退してもらおうではないか云々というような、下相談までが行われたと、一部ではいわれておるようなことであります。もつともありそうなことではないかと私どもは想像をいたしておるのであります。さらにまた、元海軍大将であつた小林躋造氏並びに元アメリカ大使であつた野村さん、これらの人たちがやはり寄り寄り集まつていることも事実のようであります。これらの人たちがまたやはり同様に、吉田さんの引退の時期が来たという事柄もお互いに話し合つておるような事柄が伝えられておるのであります。これは単なる一例にすぎません。国民の総体的な輿論から申し上げますれば、もはや吉田内閣に対する政局担当の信頼がきわめて薄弱になつたということだけは、いなめない事実ではないかと私どもは痛感いたしておるのでございまして、はたしてこの事態に処しまして、緒方さん及びその首班であるところの吉田さん——吉田さんは病気と称して、今日までこの重大な時局に議会に登院はいたしておりませんけれども、吉田さんと常に接触をいたしておりますところの緒方さん、その緒方さんにおきまして、こういう事態をあなたは承知しておるかどうか、その点を承つておきたい。
  42. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今お読上げになりました元海軍大将、元海軍中将がどういうことを申しておるか知りませんが、それはいわゆる処士横議というもので、何を申しましても一向政府には関係ないところであります。  それから国民がはたしてこの内閣を信頼しておるかどうかということは、結局国民の投票にまたなければ、これははつきりしないことであります。もちろん川島さんの所属しておられまする社会党におきましては、今御披露になつたようなことを考えておられると思いますが、また政府与党におきましても、今の政府を支持するべく最善の努力を尽し、同時に信頼を持つておることと私は信じておるのであります。
  43. 川島金次

    川島(金)委員 緒方さんもなかなか苦しい立場だろうと御同情申し上げるのであります。そこでさらにお尋ねをいたすのでありますが、それかあらぬか、伝えるところによりますれば、自由党の中においてすらも政局の微妙な推移を見まして、いろいろな私語が行われ、あるいは具体的な動きさえも見られるといわれておるのであります。しかもいうところの次期政権をめぐつて、保守再編の胎動すらも具体的になろうと世間は伝えております。われわれもそれを身に感じておるのでありますが、しかもその保守再編の中心勢力の一人としてあなた自身が加わられておるということも伝えられておる、あなたにとつてはありがたいか迷惑であるかは別といたしまして、そういうことさえも伝えられております。ことに昨日のごときは、三木武吉氏と松村幹事長との間に会談がかわされて、保守再編の下話がまず第一に行われたと新聞は一斉に報じておりますが、はたしてやがて自由党の総裁になるであろうと世間の一部ではいわれておりまするあなた、今日の段階において保守再編の必要はあるかどうか、そうしてまた保守再編という問題は将来可能性を持つものであるかどうかというような事柄についても、あなたはかりそめにも政府の要路者の一人であり、自由党内におけるところの有力な幹部の一人でありますので、その問題についての平素の心構えがあろうかと思いますので、この点について一応承つておきたいと思います。
  44. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今回のいわゆる汚職事件が新聞にうわさされ始めましてから、急に保守再編を考えたことはございません。ただこの国会の中の分野、情勢を見まして、保守勢力が結集する必要があるということはかねて考えておりまして、分党自由党が自由党に復帰する場合にも、分党自由党だけでなくて、将来同憂の勢力がわれわれの考えに共鳴してくれることを信ずるということを声明いたしましたことは、あるいはお目にとまつておるかと考えますが、そういう考えはかねて持つておる。ただ今回の汚職事件に関連して、急に保守再編成ということを言い出した事実は全然ございません。
  45. 川島金次

    川島(金)委員 昨日の参議院の本会議における質問に対しまして緒方副総理は、新聞の報ずるところによりますると、今回の造船疑獄事件に関連して、いやしくも閣内にはその容疑者は絶対にない旨を言明されたと伝えておりまするけれども、これは事実でありますかどうか。
  46. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 事実でございます。
  47. 川島金次

    川島(金)委員 それは閣内において緒方副総理が調査をいたしました結果であるかどうか、その点はいかがですか。
  48. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 そういうことは川島君も常識でおわかりと思いますが、閣内で調査をするということはできません。しかし私はその確信を持つておるということを申し上げておきます。
  49. 川島金次

    川島(金)委員 それはただ緒方副総理の主観的観測ではないのでありますか。
  50. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 もちろん私の主観的観測であります。
  51. 川島金次

    川島(金)委員 それではお伺いいたしますが、ただそれは緒方副総理の主観的な観測であつて、実際上において閣内にはそういう容疑者が今後とも絶対に出ないという客観的な確信のある見通しを持つておるという意味ではないと了解いたしまして、さしつかえないかどうか。
  52. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 閣僚の数はきまつておりますので、大対閣僚がどういう人かということはよく存じておりますが、その閣僚の平素から、また昨年以来置かれました内閣の立場から考えまして、そういう閣僚は絶対にないということを確信しておるのであります。
  53. 川島金次

    川島(金)委員 これ以上は議論になりますからやめますが、続いて法務大臣に……。
  54. 倉石忠雄

    倉石委員長 法務大臣は、ただいま他の委員会に出ております。
  55. 川島金次

    川島(金)委員 それでは運輸大臣にお伺いをいたします。法務大臣への質問は保留をいたしておきます。  まず運輸大臣に最初に伺つておきたいことは、問題の計画造船に関しまして、今日まで政府及び市中銀行から融資をされました資金別の元金の総額を示してもらいたい。一ぺんに申し上げます。第二には、この総額の中で今日まで返還された元金と利息、第三番目にはこの中で返還を怠つているところの未払いの元金と利息、その未払いをいたしております会社の名前、次に現在の融資の残額について期限が到来している分にして未払いの元金と利息、それからこれら利子補給を受けておりますところの船会社の社名、さらにできますれば、その会社に関係しておりまする重役の中で閣僚、前閣僚、または党派にかかわらず、世間から有力だと見られておりまする政治家で関係しておりまする者がありますれば、さしつかえない限り、その氏名をこの機会に明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  56. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 詳細にわたりますので、海運局長から御答弁いたさせます。
  57. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 計画造船に対する貸出額でございますが、これは計画が決定して貸し出すことのきまつておる額も含んでおりますが、開発銀行で八百三十四億、それから市中で九百九十八億、その中で実際貸しておりますのは、これはとりまする日時によつて違いますが、現在におきまして大体開銀で七百六十四億、市中で九百四十億、かように考えております。  返還額それから未払いの元利、未払い会社名、その他の事項は今手元に資料がございませんので、後ほどお届けいたしたいと思います。  なお、利子補給会社名等は、これは別に資料をお手元にお届けいたしたいと思います。
  58. 川島金次

    川島(金)委員 私はこの機会に、この席上で明らかにしてほしいと思いましたので、一昨日すでに運輸省の一関係係官にこういうことについて資料をとりまとめてほしいという旨を便宜上申し上げておつたはずであります。しかるに今の海運局長お話では、かんじんかなめのわれわれが、国民が聞きたい点になりますと資料で配付する、これは私の要求するところではございません。私はこの国民の見ておる目の前で、海運局長のまとまつた資料をここで発表してほしいということを強く重ねて要求するものであります。いかがでありましようか。
  59. 倉石忠雄

    倉石委員長 川島君に申し上げますが、委員会に提出される資料については、委員長を経由して御請求になつておりますれば、今ごろ問に合つておると思いますので、ただいまのことは非常に詳細になりますから、委員長から資料政府当局に要求いたします。
  60. 川島金次

    川島(金)委員 私は便宜上と言つたのでありまして、今あらためてここで委員の発言として正式に要求したのでございます。
  61. 倉石忠雄

    倉石委員長 よろしゆうございます。それならばさつそく政府に私から通達いたしまして、政府当局から委員長資料を提出されるように要望いたします。
  62. 川島金次

    川島(金)委員 それでは私が申し上げます。それに違いがありましたならば、当局の御訂正を願いたいと思います。  この計画造船に関係いたしておりまするところの会社と、その利子補給額と、この会社の中で関係されておりまするところの、また関係しておつたところの前閣僚、閣僚並びに閣僚に匹敵する有力な政治家の氏名が、去る二月十五日の毎日新聞紙上に詳しく報道されております。有力な新聞の報道でございますから、よもや間違いはないと思いますが、間違いがありましたら、当局から御訂正を願つてさしつかえないと思います。  まず第一に太平洋海運、これは問題の小笠原さんがつい先日まで取締役をしておつた会社、そして第八次造船に十五億五千万円を契約、利子補給は年間六千三百万円にわたつております。そして開銀の二分五厘を加えると八千万円に上つておると書いてあります。次に新日本海運、これは、これまた二、三日前に重役をやめられたといわれておりまする大野伴睦氏、現国務相が重役でございます。監査役には今逮捕状が出されておりまするところの有田二郎氏、これは第七次に第三満鉄、第八次第五満鉄、合せて十三億二千五百万円、利子補給の額は五千三百万円、開銀の負担を加えると驚くなかれ七千万円であります。次に新日本汽船、これは社長が前厚生大臣山縣氏であります。六次、七次、八次に五隻、四十三億七千万円を契約して、利子補給は一億七千万円、開銀負担を入れると実に二億三千万円に上つておる。山下汽船、この顧問に参議院の自由党の所属でありますが、青木一男さんです。これはいろいろ合わせて六十二億五千六百万円の契約をしておつて、利子補給は一億八千五百万円、開銀負担分を加えると、これまた驚くなかれ三億六百余万円に上る補給を受けております。明治海運は会長は前農林大臣の内田信也氏、これは六次、八次で合計二十億六千万円の契約、このうち利子補給額は年間八千二百四十万円、開銀負担を入れて一億八百十五万円。次に協立汽船、これは監査役にたまたま元大蔵大臣の向井さんがおられるようであります。これは契約額十八億九千五百万円、利子補給を受けている額は年間において七千五百余万円、開銀負担を加えますと、これまた九千九百余万円であります。名村汽船、これはやはり有田二郎君が重役として関係しておりますが、これは第八次に九千五百万円の契約をしておる。利子補給は年間三千八百万円、開銀負担を加えると実に四千九百余万円であります。さらに三光汽船、これは改進党の河本君が社長でありまして、十四億八千万円の契約で、利子補給は五千九百余万円、開銀負担を加えると七千七百万円。岡田商船、これは改進党の岡田君が会長であります。これが弟六次に八億一千万円の契約、利子補給額は年間三千二百余万円、開銀負担を加えると五千五百余万円、飯野海運、これは池田清志という方が嘱託になつておるが、六次、七次、八次にわたつて五隻の契約をして七十八億一千万円、利子補給年間三億一千六百万円、そうして開銀負担を入れると、驚くなかれ四億一千四百余万一という高瀬に上つておると報道しておりますが、これは事実であるかどうか、それを伺いたい。
  63. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 詳細に調べまして、後ほどお答えさせていただきます。
  64. 倉石忠雄

    倉石委員長 川島君に申し上げますが、お手持ちの時間がなくなつております。簡潔に願います。
  65. 川島金次

    川島(金)委員 なるべく簡単にいたしますから、若干の御容赦を願います。  それでは先ほど来から私が要求いたしておりまするところ資料は、すみやかに本委員会に提出されることをさらに強く要求しておくものであります。  次に、続いて運輸大臣にお伺いをいたしますが、この船舶計画造船に対する利子補給の問題をめぐつて、昨年政府から現行の補給法と違つたいわゆる原案が出ております。これに対して三党の修正案なるものが出されたわけであります。このときは当時たまたま運輸委員の一人でありますので、若干の経過は私自身も承知しているものであります。その立場から運輸大臣にお伺いするのでありますが、この三党の修正案が出されまするときに、運輸大臣の石井さんは、あらかじめいろいろとそのいきさつについて承知をされておつたのではないかと推測をする向きがかなりあります。そういう意味で、この三党修正案を出されますときにおける前後の事情というものを、あらかじめ石井運輸大臣におかれましては承知される、あるいは了承されておつたかどうか、この点をあらためてお尋ねしたいと思います。
  66. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 政府の原案が最後に決定したものと違つてつたのは御承知通りでございます。私ども政府の原案を出しました後に三党の話合いが始まりまして、いろいろ、予算の問題について討議され、その一項目としてこの利子補給問題が取上げられ、利子補給の点について、もう少し利子補給を増さなければ世界の競争に耐え得ないということが三党の話合いによつて決定し、私どもの方にこの結果の活があつたのでございます。私どもといたしましては、昨年の補正予算のときに、市中銀行に対しまして利子補給の一部をやるということで始めたのでございまして、それではどうしても実際上世界の競争に耐え伴ないというので、続いて七分五厘を五分だと思いますが、それを提案したわけでございましたが、そのときの実情から見ましても、世界の競争に耐え得るのは三分ないし三分五厘という意向が非常に強く、初め運輸省においてこしらえたときに、三分五厘案というものが一応出たのでございましたが、いろいろ政府部内の折価で一応五分になつてつたのでありましたが、三党の話合いで開銀の利子を三分五厘まで下げるという問題になりまして、私どもはこれが実際上世界の海運界の最近の情勢を見ますと、三分五厘まで引下げたならば、ここでほんとうに世界の競争に耐え得る状態になるであろうというようなことで、私どもはそれに賛成をいたしたものでございます。
  67. 倉石忠雄

    倉石委員長 川島君に申し上げますが、今のお尋ねのことは、当委員会ですでに繰返して同じ質疑応答が行われておるのでありまして、この間の理事会で、新しく委員にかわられて質問をされる方は、その党においてそれぞれ重複を避けるという申合せをいたしておりますので、お手持ちの時間もなくなつておりますから、ひとつ簡潔に願います。
  68. 川島金次

    川島(金)委員 私は前提は重複したと思いますが、その次が違うのであります。(笑声)大臣はそれを承知されておつたという話でありますが、内閣法によれば、一切の政府の決議、執行というものは総理大臣が責任者である、そしてその総理大臣の責任のもとに開かれた閣議の決定を経なければならぬ、従つて一旦閣議が決定いたしました事項については、忠実なる閣僚としてはそれを遵守するという立場をとらなければならぬ、これは言うまでもないと思うのであります。そういう立場にあります運輸大臣が、たまたま運輸委員会の一部に出て参りましたところの閣議決定事項と相反する修正案の動きを、知らなかつたならばともかくといたしまして、あらかじめこれを知り、これを了承したということは、内閣法の精神と条章にもとる立場をとつたということになるのではないかと思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  69. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私が委員会でそれに大体賛成の意思を発表する前には、もちろん三党の話合いの線を閣議において話し合つたのでありますから、そういうことはないと私は思つております。
  70. 倉石忠雄

    倉石委員長 川島君、時間がありません。ただいまのお尋ねも横路君と重複されておりますから、ひとつ理事会の申合せを尊重していただきます。   〔「二十分も超過しているんだよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  71. 川島金次

    川島(金)委員 もう一問でやめます。ぼくがかつて予算委員長の席におつたときも、同僚諸君の発言に対しては時間の余裕を持たしたのであります。その意味において……。
  72. 倉石忠雄

    倉石委員長 どうぞ御進行願います。本論に願います。
  73. 川島金次

    川島(金)委員 運輸大臣にさらにお尋ねいたしますが、この造船疑獄と世にいわれております事件に対しましては、あなたの直属の部下が相次いで召喚を受けたり取調べを受けております。しかも運輸大臣には、この利子補給をめぐつて融資先の造船関係あるいは海運関係に対して最高の監督の責任が負荷されておつたわけであります。造船計画の単価を幾らでも安くしたい、あるいは外貨獲得の意味において計画造船を遂行して、そして日本経済の再建の一部に寄与したいというこの大方針には、われわれもあえて異議を唱えるものではないのでありますが、今次の事件を総合して考えてみますと、運輸大臣にとつてはきわめて重大な責任があつたようにわれわれは考えるのでありますが、運輸大臣においては、今次のこのような事態の展開に対して重大な責任を感じておるのかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  74. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 今のような情勢が出たことは、まことに遺憾千万に思うております。特に私の部下から被疑者を出したことは、まことに申訳ないことであります。私どもは全然こういう問題が起るとは承知もいたしていなかつたのでありまして、寝耳に水のような事態でございました。運輸省が交通の中枢の行政府として、世間から期待されておるところにりつぱに沿うような実際の状態に、われわれ運輸省内をきちんとこれからやつて行くことが私の責任だと思つております。そのつもりで動いております。また造船業界に対しましては、私どもの監督がもう少し強くこれから出て行かなくちやならぬというような声もいろいろあります。海運界に対しまして利子補給をやるようになりましてから、私どもは経理の監査もすることができるようになつたのでありますから、ただいまそれを進行中でございます。
  75. 川島金次

    川島(金)委員 今いわれました経理監査をしておるということ、これはもう平素においてやるべき責任があろうと思います。山下汽船あるいは新日本海運等に経理上乱脈ぶりがあるということはすでに世間に伝えられておるところであります。一部は事件にさえなつておるのであります。こういつた相手方の経理について、平素から厳重に監督すべき立場にあるのが運輸大臣であります。その運輸大臣立場にありながらこのような事態を発生せしめたということは、あなたにとつてきわめて重大な責任問題ではなかろうかと私は思うのであります。  時間がありませんから、せつかく出席されました大野国務相に最後お尋ねをいたします。世間で伝えておるところによりますと、大野さんにおかれましては新日本海運の重役であられたようでありますが、今でも重役でありますのか、いかがでありましようか、その点を伺つておきたいと思います。
  76. 大野伴睦

    ○大野国務大臣 私は入閣と同時に口頭をもつて通告いたしてあります。それで、秘警官にもすぐ辞表を出すように命じておいたところが、秘書官が忘れて……(笑声)そこで、すでにもう十一月に正式に私は督促して出させて、一月八日に登記完了いたして解任されております。
  77. 倉石忠雄

    倉石委員長 川島君、もうあなたの時間は超過いたしております。   〔川島(金)委「もう一言。ぼくが要求している法務大臣が来ていない、法務大臣も来るという約束で発言しておる」と呼び、その他発言する者多し〕
  78. 倉石忠雄

    倉石委員長 川島君、発言を許しておりません。時間です。  森幸太郎君に発言を許します。森幸太郎君。
  79. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 私は時間の節約上、質問の要点を概略申し上げて御回答を願いたいと思うのであります。  私の質問は二つあるのでございます。まず第一は、二十九年度予算編成されましたについて、今日まで各委員がそれぞれの観点から議案を審議し、質問をされたのでありますが、今回一兆億円以内の切り詰めた予算をつくられたことは、月内の事情から大蔵大臣が至上命令だとおつしやつたことは、これはやむを得ないこととわれわれは同意するのであります。しかし、今日のこの国内の情勢は突如として出て来たのではないのでありまして、独立いたしまして以来日本が占領政策の惰性による放漫な生活をいたしておつたということは、朝鮮動乱が起つた結果特需がふえまして、そうしてついうかうかとその生活が弛緩いたした結果であつて、もつと早く私ども引締め策を講ずべきではなかつたかと思うのであります。しかし、二十九年度予算を緊縮予算として国民耐乏要求されることは、国内事情よりやむを得ないと申しますが、これはただ単に政府の声明あるいは緊縮予算編成の呼び声だけではとうていその目的を達することはでき得ないと思うのであります。国民がこの政府方針協力して、初めて政府の予期するところの戦後の建直しができるのではないかと私は信ずるのであります。政府は、ただ一兆円以内の予算をつくつて国民耐乏生活を口頭をもつて叫ぶのみならず、真に日本経済の実情を国民に知らしめて、これではとても日本は立ち上れないのだということを国民に知悉せしめて、初めてその目的が達せると思うのでありますから、政府はその用意に欠けてはならないのであります。結論の上から申しまして、二十九年度予算はやむを得ないとわれわれは信ずるのであります。  ところで独立いたしました国家といたしまして、いろいろの条件がここに加わらなければならないが、まず第一は経済力自立であります。経済力自立せずしてどこに独立国家がありますか。政府が貿易を順調にし、国際収支を完全にして、日本経済力を高めようということに専念せられるのも当然でありまするが、しかし日本経済力の建直しはまだまだ前途遼遠であります。これについては格段の施策を要すると存ずるのでありますが、政府はただ単に場当りの政策、その日暮しの政策であつてはならない、将来を見通し政策を立てなければならぬ、こういうことを要望するのであります。それについて、この二十九年度予算は非常な緊縮予算をされまして、この予算をまとめるについては各閣僚がそれぞれの主管事務において不平、不満があつたろうと思います。しかし一旦閣議で決定し、予算として編成されました以上は、その予算を忠実に守り、その方針を貫徹するように努力せられることが私は当然と思うのでありまするが、二十九年度予算を見まするのに、昨年非常な風水害、冷害等がありまして、農山村の復興に相当の経費がいる。それをもある程度緊縮せられて予算が計上されておることは、食糧増産の上からまことに遺憾に存ずるのであります。それにもかかわらず予算を通じて比較的に防衛費が増加されておるのであります。国民は、緊縮予算であるのにかかわらずこの防衛費が増加されておることについては、はたして日本がさような防衛力を増加せなければならないかという一つの疑問を持つのであります。政府財政力の許す範囲において自衛力は漸増すると、たびたびおつしやつております。  ここでまず第一の質問として木村長官に伺うことは、漸増ということであります。日本の自衛力増加の目標をどこに置いておられるのであるか。今日世界の戦力は、近代武器の発見によつて明日を企図することはできないとたびたびおつしやつております。その通りであります。しかして二十九年度はこうする、三十年度はこうするという計画は、容易に立つべきものではないともおつしやつておる、しからば日本の自衛力というものは、一体どこまで増加されることを理想とされておりまするか。先般本間委員が戦力問題についてその意見を述べられました。今日日本の治安ができておることは、その背後に強大なるアメリカの陸海空軍が控えておつて、ここに駐留して初めて日本の治安が保たれておる。しからば日本が今後これらの力を持つことについては、何年かかるやしれない、こういう意見をお話になりましたが、その通りであります。いかに日本は自分で自分の国を守らなければ独立国家とは言えないとは申しながら、自分の力では今日アメリカの守つているくらいの陸海空軍の力を保有することは、とうていできなないのであります。私は、保安庁長官のお考えになつていることは、海なり空なりは安全保障条約によつてこれを守る、ただ日本国内における陸上部隊——今日駐留軍がおるが、この駐留軍の力だけを、われわれ日本国民みずからの手によつてつくり上げることを目標にされておるのではないかと考えるのであります。この点であります。われわれ独立国家といたしまして、駐留軍がおつて、自分の家を自分の力で守れずして他人に守つてもらう、そんなばかげたことはないのであります。一日も早く経済力を充実して、そして自分の国はせめて自分で守るだけの力を持ちたい。アメリカは四年とか五年で駐留軍を引揚げるとも申しました。しかし国民の感情から申しましても、外国の部隊に駐留してもらつて、この国を守つてもらう、こんな独立国家はどこにありますか。われわれは一日も早くこの駐留軍が退去されるようなわれわれの力を持たなければらぬと思うのであります。きのうの新聞に出ておりましたアメリカの外交委員長のスミス氏の言に、日本の防衛については、日本経済問題という大問題や、その他微妙な国内の事情もあるから、早急に軍備を拡張するのはかえつて危険であろう、そこで国民の間に防衛の必要を十分納得させるとともに、経済その他の事情に応じて充実をはかるのが最も堅実なやり方であると思う、にわかに米軍を日本から引揚げることはできない、それが四年かかるか五年かかるかは、防衛力の充実の努力にかかつておる、こういうことを発表しております。われわれは駐留軍に一日も早くアメリカに帰つてもらつて、自分で自分の国を守る、非常な場合においては、安全保障条約によつて守られるという態勢にすることが、そういう境界をつくることが、われわれ独立国家として必要であろうと思うのでありますが、この自衛力の漸増につきましても、国民がなるほど日本はこうだ、こういうことを自覚せなければ、せつかくつくり上げた自衛力に対しての力が地につかない、私はこう思うのであります。これにつきまして木村保安庁長官は漸増々々とおつしやるのでありますが、かりに日本経済力が復興して、御必要なれば何ぼの命でも出しますというように経済力が充実した場合において、どの程度に漸増されるおつもりでありますか。これをお話つて国民がなるほどと了解を得るようにされる責任が、私は政府として当然あると思うのであります。
  80. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。今森君から申された通り、わが国が独立国たる以上は、みずからの手によつてみずからの団を守るという態勢を、一日も早く立つべきが当然だと考えております。しかしながらかような防衛力を持つということは、現在の日本の段階においてはとうてい私は不可能であろうと考えます。かるがゆえに日米安全保障条約に基いて、アメリカと日本とが互いに提携して日本の国を防衛し、ひいては世界の平和に気よしよう、アジアの平和を守つて行こうという態勢を整えておるのであります。しかし日本といたしましては、今申された通り、いつまでも全部アメリカの手によつて日本の国を守るということは、これまた国民感情からの点、あるいはもろもろの点から言つてもこれはできません。申すまでもなく、アメリカも国内事情からして、一日も早く駐留軍を引揚げたいという希望を持つておる。これは私ども当然だろうと考えております。しかし日本といたしましては、今ただちにアメリカの駐留軍を引揚げられては実は困ることは御承知通りであり事。そこでわれわれといたしましては、日本経済力その他諸般の事情から考察して、でき得る限り日本の自衛力を漸増して行こうという建前をとつておるのであります。これがわれわれの考えておる点であります。従いまして二十九年度にはどういうふうにして日本の自衛力を漸増して行こうか、また三十年度にはどういうようにして自衛力を漸増して行こうか、こういうことを今考えておる。その目標は、結局日本国内事情、ことに経済事情、あるいは国民感情、これが一つ。もう一つは世界の情勢の動き、これが一つ、また三には、日本の周辺における軍事情勢がどうあろうかというこを勘案して、われわれは日本の自衛力の漸増計画というものを立てて行きたい、こう考えて、今せつかく検討中であります。また担当においても互いに研究をいたしまして、成案を得るように努力いたしておるように聞いております。それらをわれわれは勘案いたしまして、日本の自衛力の漸増をして行きたい。しからばどの点まで漸増して行こうかという点でありまするが、これはなかなか申すことはできないと思います。これは今申すように、国際情勢あるいは周辺の軍事情勢、日本経済状態、国民感情、もろもろのものを忘れて、われわれはその計画を立てて行かなければならぬと考えておりますので、これを固定的に、今ここまでやればいいということは、私は申しかねると考えております。ただ差迫つての問題は、二十九年度においてこれだけのものだけは漸増して行きたいということを、われわれは計画を立てて、予算に盛つて御審議を願つておるこう御了承していただきたい。
  81. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 保安庁長官のお気持はわかりますが、漸増とおつしやるが、どこまでこれをふやして行くかということが、国民は不安なんです。年々二万なり何なりふやして行く。しかしやはり駐留年がおるというようなことでは、どうも国民は自衛力漸増に協力しない。われわれは一日も早く駐留軍にアメリカに帰つてもらいたい。それまでは日本経済の許す範囲内において、一日も早く自衛力を充実しよう。そうして駐留軍にアメリカへ帰つてもらう。これなら独立国家として非常にみんな希望するのです。漸増々々といつていつまでやつても、アメリカの駐留車がおつてはどうにもならぬのでありますから、われわれはアメリカの駐留軍が一日も早く本国に帰つてもらうことがめどである。それがいつときにはできないから、経済力の許す範囲内において、一日も早く帰つてもらうということが国民の希望である。私はそういう気持で漸増の目標をおきめ願いたいと思うのであります。  この問題はそれといたしまして、この自衛力漸増にいたしましても、実に経済力の強化であります。私は先回の委員会において政府の方々に申し上げた。そのときは総理も出席されておつたのでありますが、——厚生大臣はおりませんか。厚生大臣を呼んでださい。日本の独立後一番の問題は、先ほど申しました自衛力を自分で持つ、独立国家としてはずかしいような今日の態度をかえるということが一つ。それには何をおいても経済力を強化しなければならない。経済力を充実するについては貿易を伸張しなければならない。これは大蔵大臣も御異議はないと思います。それについて、どうすれば日本が今木村保安庁長官が言われるような自衛力の漸増ができ得るかということは、一に経済力の充実であります。それは要するに、海外貿易のバランスがうまく整つて、そうして国際の貿易に交わつて日本がもうけて行くというほかない。  そこで私は本論に入りたいのは、日本の貿易は繰返して申し上げるまでもなく、五億ドルの食糧を輸入しておる。これなんです。今回の乏しい予算でありますが、政府は治山治水、国土防衛のために、非常に森林事業に力を入れられまして、まことにけつこうなことである。しかし山に木を植えましても、三十年先でないと間に合わない。三十年先でないと山の力を出しません。三十年先のことでも、この苦しい緊縮予算の中から、森林保護のために政府予算を出しておる。これはまことにけつこうなことだと思う。今、日本国民生活状況はどうでありますか。私がその日暮しの政策はいけないと申しますことは、日本国民は十六秒か二十秒に一人ずつふえて行く。このふえて行く国民と食糧問題をどう解決するかということは、これは重大な問題である。ことしは何とかかんとかしのげる。一割、二割増産すれば何とかしのげる。現在三年や四年はしのげましよう。しかし五年、十年、十五年先になれば、日本人は何を食うのですか。これを今から手をつけなければいかぬということを、さきの予算委員会でも皆さんに申し上げた。これはひとり農林大臣の責任ではない。内閣総理初め政府をあずかつておる各閣僚全部が、それぞれの立場から責任を持たなければならぬ問題であります。それで私は国民の食生活改善ということを叫んだ。食生活を改善して、日本国民がふえても、ほんとうに栄養を保有するような食糧をとつて行くようにしなければならぬ。日本の局限された国土においては国民は養えない。これを総理大臣初めすべての閣僚が考えて、これを推進して行かなければならぬと思うのであります。たまたま前の予算委員会で、私は農林大臣に、つまらぬ人造米をしなさるな、こんなものに金を出しなさるなと言つたのですが、三千五百万円の補助金はおやめになつたようでありますが、人造米の会社は何百もできました。粒食に依存する日本人の執着、これをかえなければいかぬ。私は決して主要食糧の生産をおろそかにするというのではありません。農産物の増産を一生懸命をらなければならない。しかしこれは末端の問題であります。これを幾らやつたつて限度がある。人間の増加には限度がない。これをどうして行くのか。それは内閣は五年、十年続くかもしれませんけれども……。   〔発言する者あり〕
  82. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。委員外の発言は許しておりません。
  83. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 われわれは永遠に日本国民を養つて行かなければならぬのであるから、だれが内閣をとろうが、かれが内閣をとろうが、日本はこういう事情であるという一貫した食糧政策を立てなければならぬ。それがおろそかにされておる。そうして一年でも二年でも延ばして行けば何とかなるだろう、こういう気持ちでおられるのがいけない。総理大臣以下閣僚が協力して、この狭い国土の食糧のないところで、どうしてこのインフレ国民を養うかということを考えなければならぬ。これについて今日まで閣僚の諸君がはなはだ不熱心であることを私は残念に思うのであります。それについてはまず第一に、国民の食生活の習慣を是正しなければならぬ。それには学校の給食から始めなければならぬ。学校の給食をして、偏食に陥らないように、貧富の懸隔なしに同じものを食わして、どんなものでも食わす。そうしてそれがほんとうに栄養価値のある食糧であつたら、それでいいのだ。そういう習性を子供のときからつけて行かなければ、日本の食生活の改善はできない。大蔵大臣はアメリカへ行かれまして帰つて来られたときに、新聞であなたのお話を見ました。どうも日本の食生活はぜいたくだ、アメリカでは一さらでけつこう栄養をとる食糧をやつておる。日本のように七さらも九さらも食いもせぬものを出すようなぜいたくなことはいけない。今後は食生活を一さら主義に改めなければならないということをあなたがおつしやつたかおつしやらないか知らないが新聞に出た。その通りだ。実際日本の食生活はぜいたくだ。私はこの点について、厚生大臣はおられないが、厚生大臣、文部大臣はどういうようなことを考えておるか聞きたい。  農林大臣といたしましては、この食糧増産には一生懸命になつておられる。まことにそのお骨折りは私は察しますが、いくらやつたつて、いくら骨折つたつて国民を全部養う食糧は日本にはできません。われわれがもつと食生活をかえて、澱粉生活をやるなら穀物はそうなくてもいい。ところ日本の食生活もだんだんぜいたくになつて来て、もういもを食わない。私はいもが食生活に最もいいのだというので、さつまいも、じやがいもを奨励いたしましたが、今はぜいたくになつていもを食わない。一反歩の土地から澱粉のカロリーをとるのはいもよりほかない。ところがそのいもはお粗末になつている。そうして米じや米じやと言つて米がなくなつたら米に形が似たようなうどん粉のかたまりをつくつて食わす。これは言語道断断だ。昨年の不作はまことに残念でございましたが、これを機会としてこの粒食から粉食に切りかえて行かなければならぬ。ところが粉食とすればパンかうどんになりましよう。うどんは燃料関係で困る。パン食が一番いいのでありますが、パン食に対してはバターがない。バターを輸入すると日本の酪農を圧迫する、こういうことになりますので、もつと酪農を奨励することに力を入れて、そうして日本人は腹をふくらすのではない、われわれに必要な食糧をとるのだということに観念づけなければならぬと私は思うのであります。  厚生大臣は今お見えになりましたが、日本人は非常に体化が向上しまして、今まで五十四歳か五歳の寿命が六十何歳に延びたそうであります。これは厚生省があらゆる面からいろいろ衛生施設を研究された結果であり、また国民も自覚した結果と思いますが、日本人の体位というものはまだまだ諸外国国民の体位に劣つております。それはこういうふうな食糧をとつておるから、それで日本国民の体位が諸外国国民の体位に劣つている、私はかように考えるのでありますが、厚生大臣として、今後国民の食生活改善にどういうお考えを持つておられるか。農林大臣は今後食糧増産に対してどういうお考えを持つておられるか。また文部大臣はおりませんが、この学校給食に対して今後どういう手を打たんとしておるか。今のようなあんな申訳的な学校給食であつては徹底いたしません。大蔵大臣に思い切つて予算を出させて、そうして小中学校の生徒に給食せしめるというくらいなことまで努力せられなければなりません。われわれは食生活の改善が日本再建の第一のことと考えておるのであります。こういうことによつて外国からの食糧の輸入は減つて来る。五億ドルが三億ドルになり、二億五千万ドルになつて、それだけ原料資材の方に入つて来ると私は思うのでありますが、厚生大臣、農林大臣はこういうふうな施策に対して、どういうふうな決意をお持ちになつておるか。また海外貿易の関係でありますが、絹糸の輸出に対して大蔵大臣はどういうお考えを持つておるか。今日蚕糸業は非常に衰退いたしております。これは戦争当時の食糧政策の犠牲になつたわけでありますが、絹糸は今でも京だ海外において非常に嘱望されておるから、やり方一つによつて、うまくやれば戦前のように輸出できるのであります。ことに、申し上げるまでもなく、スフ、人絹、化学繊維と同じように絹糸は一〇〇%の外貨獲得率であります。綿花のように買うは買つて来たが、これを輸出するときは国内消費に七割もとられてしまつて、外貨獲得率が六〇%というような貧弱なものでなく、一〇〇%の輸出能力を持つておるところの絹糸を、もつと輸出する方針をお考えになつたらどうか。これはむだな金じやない。大蔵大臣は思い切つてこの方面に命を出して外貨獲得をやつてもらいたい。戦争前蚕糸業はわが国の輸出の大宗だと申しましたが、そこで復興する余地はしやくしやくたるものがあると私は思うのであります。ただいま農林省で考えておりますところの臨時措置法によりまして、いかにしたら輸出が盛んになるかということを研究されておるようでありますが、あまりに農林省は外国人のきげんをとろうというのでおびえておりはしないかと思います。と申しますことは、外国は絹糸が二十四万円だから負わぬ、二十五万円は戸過ぎると言うのではないのであります。二十四万円でも二十五万円でもいい、それが動かず、ずつとある期間続いてくれば企業原料として使えると言うのであります。政府は二十四万円を最高限度として、二十三万円で輸出しなければ絹糸が外国外売れないような誤つた考えをお持ちになつておるのでないか。アメリカの今日の消費生活から見まして、二十四万円、二十五万円の絹糸は高いものではありません。この八月からニューヨークで二十八万の取引をやるではありませんか。ただ価格がたえず変動することが輸出の妨害になつておるのであります。これは農林省として、農林大臣として十分考えなければならない。ただ目先の取引上の問題なんかに眩惑されて、変な措置をされたらたいへんなことになります。今日絹糸の最高、最低が十八万から二十三万になつて、もしそれが不適当なら二十万から二十六万に上げなさつてもよろしい。この法律が履行されないのに新しく臨時措置をお出しになりましても、決して法の執行はおぼつかない、かように考えるのであります。この点について農林大臣はどういう所信をお持ちになつておるか。また大蔵大臣は絹糸の輸出に対してどういうお考えをお持ちになつておるか。  この食生活改善に対しましては、かつて前国会において決議案が満場一致可決されております。あのときの決議案は食生活改善に関する決議案であつたところが食生活改善だけでは何だか。パンやうどんを奨励するようであつて、米や麦やそういう主食をおろそかにするような誤解を受けるというので、食糧増産をあわせた決議案になつたことは御承知通りであります。その決議案に対して政府は、責任をもつてその趣旨に沿うということをお答えになつておるのでありますが、食生活改善は国定運動を起さなければいけません。厚生省だけじやない、文部省だけでない、農林省だけでない、内閣の大きな仕事としてやらなければならぬと思うのでありますが、緒方副総理はどういうお考えをお持ちになつておるか。  また通産大臣がおりませんから大蔵大臣にお願いしておきますが、日本は外囲から物を入れないのが能じやない、日本外国に売りたいものがありますから、自分のものは買うてくれ、お前のものは買わぬというような、そんなことでは貿易はできません。それはいやなものもしかたがなく買うてやらなければならぬ場合もありましよう。けれども耐乏生活をおつしやつておる内閣が、バナナなどというぜいたくなものを輸入することはお考えになつたらどうか。私はこれを、通産大臣がおられませんから大蔵大臣に申し上げておくのであります。耐乏生活政府がやるならば、耐乏生活に相当するような品物が市場に現われて来なければいけない。戦後あまりにアメリカのお世話になつたために、生活がぜいたくになつている、こういうことを痛感するのでありますが、この点についてのお考えを承りたいのであります。どうか緒方副総理は、ぜひともこの食生活改悪に対して大きな力を今から入れてもらいたい。これは山へ木を植えるのと一緒である。この効果が現われるのは、二十年先かもしれません、三十年先かもしれませんけれども、今から手をつけなければ、なかなか体位の向上、食糧の自給度を高めるまでには行かないのであります。私は一日も早く食生活を改善しまして、国民体位の向上と、そうして食糧で外国へ金を払うというようなことをできるだけ少くして行きたい。もちろん土地改良であるとか、国内におけるところの食糧自給度を高めることは申すまでもないことでありまするが、それで追つつかぬ将来の国柄を考えましたときに、この点について今の内閣の方々の所信をただしたいと思うのであります。
  84. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 御質問の趣旨は全然同感でございます。ただいまお述べになりました御質問の中に私どもの考えもお述べくださつて、あらためてお答えをするに及ばぬほど詳しくお述べになつたのであります。日本経済自立を達成します上からも、また国際収支を改善いたす上からも、国民の体位をよくして行く上からも、食糧自給度の向上ということは最も重要な政策だと考えます。その総合的な食糧の自給度の向上と同時に、食生活の改善、これまた今お述べになりました通り政府も信じておるのでありまして、この前の国会の末期にあたつて各党一致で決議案が提出されました。それが通過した際に、私政府を代表いたしまして、全面的にこの決議案の趣旨に賛成であるということを申したのであります。その後この問題を促進する上に国民運動を起したいということが、これまた各派を通して話がありました。社会党も自由党も提携してこの運動を展開したいという御意見がありましたので、これに対しても政府といたしまして全面的に賛成をいたしまして、刻々にそういう運動の起ることを実はお待ちしておるような次第であります。国民運動という建前から、政府が率先して、政府が先に立つて声をあげるよりは、国会と申しますか、各党の間からそういう意見が唱えられ、それにまた各界が呼応する、そしてそれを政府が受けて立つという形が一番望ましいと考えます。その国民運動の起つて来ることを今政府としては待つておる次第であります。食糧の増産ももちろん必要でありますし、また食生活の改善の内容といたしまして、粉食の奨励ということもその国民運動の中に含まれる。これはお説のように、国民辻動的なものが起らないと、急速に普及することができないのではないかと思うので、政府といたしましても切にその国民運動を待望しておる次第であります。
  85. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 生糸の輸出についてのお話はまつたく同感であります。この点につきましては、ちようど私が向うにおつたときに、日本国内では生糸は二十何万円する、ところが輸出は二十四万円程度で行つておるという状況でありましたので、これらに対する措置が向うでも強く要望されました。なおその当時私が親しく見たところでも、これは宣伝その他よろしきを得れば、現在の倍額くらいまでは容易に出し得るというようなことでもございましたので、帰つてからそういう問題については相談もいたしたのであります。目下農林省の方でもいろいろお考えになつておることでもあり、近く成案を得られることと存じます。そうすれば生糸の方はできるだけそういう方面で輸出の増進をはかつて参りたい。なお宣伝その他に要する諸費は、御承知のごとくに本年の乏しい予算の中でも、これは減少いたしておりません。  それから今の貿易の点でございますが、ちよつとごらんになると、そういう感を与えるのはもつともな点かと思いますが、実は不要不急品、あるいは奢侈品、ぜいたく品は、一切入れない建前をとつておりますが、このごろの貿易というものは、御承知のごとくいろいろな協定を先方と結ばなければなりません。その結果、向うに品物がないとこちらからのみ叱るわけに行きませんで、これを買つてくれという要求がある。ちよつと例をあげますと、この間イギリスとも日英協定はできましたが、その中に日本からおもちや等も向うに売る。向うもおもちやはありがたくないというのですが、こういうことも約束されております。同様に向うからも、ある程度の純毛品も買い、スコッチ・ウイスキーもある程度入れなければならぬということもあるのでありまして、これらの点は、貿易というものは、森さんも御承知通りギブ・アンド・テークの点が多いのでありますから、一方的にのみやることはできませんし、同町にこの意味をよく徹底させまして、国民消費がぜいたくにならぬようにぜひいたしたいと思うのでありますが、御指摘になつているものは、その土地との貿易関係上、実は最小限度で消費するのはやむを得ぬことになつておるのであります。バナナのごときも、これは自由に入れさせたならばもつと安くなると思いますが、これは少くしたいというところからいろいろの措置をとつておる次第でありまして、この点は貿易事情としてひとつ御了承願いたいと存じております。
  86. 保利茂

    ○保利国務大臣 政府全体の考えとしては、先ほど緒方副総理から申し上げた通りであります。この来年度の緊縮予算におきましては、政府の食糧政策の方向は、森さんも最後におつしやいましたように、この効果を十分現わすのにはやはり相当の年月がかかるだろう。だからひとつ早く方向、政策をはつきりさせて出発をしないと、いつまでたつてもこの食糧問題というものが昏迷の中にあつて、その日暮しになりがちだからという御警告は、私どももまことにその通りに思つております。そこでこの来年度予算から申しますれば、何と申しましても自給度の向上のために、食料のあらゆる増産の手段に力を注ぐ。それにはまず根本的には、農地として新たに造成し得る余力があれば、できるだけこの新しい農地をつくる。それにも増して大事なことは、現在の既耕地三百万町歩のうちに、一応のめどとしましても、百八十万町歩からの土地改良の余地が残されておる。この百八十万町歩からの土地改良をできるだけ推進して行つて、基本的な土地条件を整備するということが、何と育つてもかんじんなんです。その上に立ちますれば、朝日新聞と農林省共同でやつております米作日本一の事業にいたしましても、昨年相当の災害を受けましたにかかわらず、最高六万石近い収量をあげておるというような実情から見ましても、この三百万町歩の既耕地の生産をあげ得る力というものは、相当大きなものが残つている。今日御承知のように反収二石一斗台でございましようが、これが二割三割の引上げ余力は残されておるのじやないか。それはむろん土地条件を整備すること、同時に農家の耕作技術を向上して行くこと、農業科学を取入れた新しい進歩した農業を営むようになりますならば、相当の生産余力というものはあると思う。これからこの方向で力を入れて行つて増産を実現して行きたいということでございますが、同時にお話のように、年々歳々増加して参りますこの大人口を擁してそれをやつてもなおかつ米だけで日本の食糧をまかなうということは、どうも追いつかないことであるから、しからばどうするのか。これは結局必然的に伴います麦の増産及び食糧としての麦の価値に対する認識、これを目途といたしまする食生活の改善ということが必要である。これが昨年衆議院で食糧増産、食生活改善が決議されたゆえんだと私も思うわけであります。そこで食生活を改善して参りまするためには、麦食もしくは粉食を容易ならしめる条件を政府としてはできるだけ改善して参るということが第一ではないか。しからば粉食を奨励して参ります基礎条件は何かといえば、これはむろん酪農製品の供給、乳製品の供給力を増して行くということは当然のことでありまして、この乏しい予算でございますけれども、ともかく脂肪、蛋白食糧の供給力を増すという方向において、酪農及び畜産振興に対しては特段の御心配をいただいて予算に計上することができておりますが、しかしこれとても今日要請せられておる上から行きますれば乏しいものでございます。しかしながら少くとも日本の食糧政策の方向というものは、私どもはこの予算の中にも示しておるつもりでございまして、今後ともその方向は強く持つて参りたいと考えておる次第でございます。  なお生糸の問題に関しましては、これは専門家である森さんのお話通りと思うのでありますが、二十四万か二十三万で輸出の最宮価格を押えようというのは、決して外国にいらざるお世辞を使おうという気では毛頭ないわけであります。ただ今日大事なことは、とにかく外貨事情からいたしましても、貿易事情からいたしましても、生糸の輸出ということを第一に考えなければならぬのじやないか。それは同時に海外における生糸の需要層を守り、拡大して行くというところに主点を置いて考えて、多少統制がましい措置をとらなければならないかということで、ただいま検討いたしておりまするけれども、統制的なことによつて輸出を増進して行くということは決して政府の本旨ではないわけでございまして、業界の努力によつて生糸の海外輸出をできるだけ待望するわけであります。しかしながら現状におきましては、ある程度の措置はやむを得ないのじやないか、そして外貨獲得、輸出の拡大に努力して行くべきじやないかということで、ただいま案の内容については検討いたしておりますから、遠からざる機会に御審議を十分お願いいたしたいと考えておる次第でございます。  なお海外の生糸需要に対する認識の点につきましては、私も同様に考えております。特に靴下原料としての生糸の価値が少くなりました今日におきましては、やはり高級衣料としての販路を拡張して参る、それには非常に余力が残されている。特に世界の流行を引出しますフランスの状態等から考えまして、ここに特段のくふうを考え、措置を講じまして、生糸の海外宣伝には力を入れて行きたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  87. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 栄養改善のことにつきましては、私どももまつたく森さんと同様に考えております。そこで厚生省といたしましてはその内容、質の改善というものに中心を置いております。日本人の食糧を考えますと、動物性蛋白あるいは脂肪、ビタミン、カルシューム等がどうしても欠乏いたしておりまするから、こういうものの欠乏を充足する意味におきまして、量の改善よりも質の改善に中心を置いていたしております。そこで栄養改善法等に基きまして栄養対策審議会を中央につくつて各省との連絡を十分いたしまして、また一方には国立栄養研究所を設けまして実地の研究に当らせる。地方におきましては保健所を中心にいたしまして、都市農村におけるこれらの指導に当る考えであります。従つて粉食奨励等に力を注ぎまして今後進んで参りたいと思います。
  88. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 最後に一言、緒方副総理にお願いいたしたいのでありますが、食生活改善の問題については学校給食があり、食糧増産があり、あるいは厚生省の救護施設等、いろいろ各省に分担されておりまして、予算編成の上においてわけどり争いがあるのであります。それは学校のこと、そんなことは農林省のやることではない、これは文部省だというように、農林省と文部省と厚生省との間に、食生活改善の仕事をやろうと思いましても、予算がばらばらになつてしまいまして力が弱い。たとえば学校給食をやろうといたしましても、その予算はどこにある。厚生省が食生活改善の講習会をやろうとしましても、その講習費はどこにあるのだというようにわかれております関係上、仕事が非常に弱くなつておる。こういうのですから、これはもう内閣に食生活改善課をこしらえてもいいですから、こういう大きな仕事ですから、一本で力強く国民に働きかけるというふうに私は将来考えていただきたいことをお願いして、私の質問を終ります。
  89. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際川崎秀二君より議事進行について発言を求められております。これを許します。
  90. 川崎秀二

    ○川崎委員 資料要求をいたしておきます。本日私は午後一般質問の残りがありますので質問をさせていただくことになつておりますが、日英支払協定に伴う日本とイギリス並びにイギリス連邦諸国あるいは植民地関係、その他のポンド地域に対するところの輸出入の数字というものが今日注目の的になつておるわけでありますから、従つてこの輸出入の地域別、品種別積算の基礎をぜひ本日午後二時半くらいまでに提出をしていただきたい。もし印刷物が間に合いませんでしたならば、印刷物でなくてもよろしいから、私の質問の際に十分に答弁ができるようにあらかじめお願いをいたしておきます。
  91. 倉石忠雄

    倉石委員長 川崎委員資料要求はお聞き及びの通りであります。政府において用意せられんことを要望いたします。  それでは午後二時より開会することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時五十八分休憩      ————◇—————    午後二時三十九分開議
  92. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  質疑を継続いたします。川崎秀二君。
  93. 川崎秀二

    ○川崎委員 私はすでに総括質問もいたしておりましたので、今回は前の質問の際に明白にならなかつた問題、並びにその後の新しい問題のみをそ上に、質問をいたしたいと存ずるのであります。  まず第一に、最近汚職問題その他が世間の注目を浴びておりますが、一方においても相当重要な問題が経済界、政界あるいは産業界に惹起しつつあるのであります。まずわれわれは炭鉱ストの今日の状況につきまして、労働大臣の御意見を承りたいのであります。炭労のストは最近に至つて本格化しまして、これは全体的なストライキではないけれども、炭鉱のうち最も重要なる部門を形成しておるものにおいて完全なストライキが起つておる。その結果出炭が非常な減少を示している。現在では全産業にわたつての影響は少いと見られますけれども、これが二週間ないし三週間後に至りますと、わが国産業にとりましてきわめて重大な危機が来るのではないかと思われるのであります。この際労働大臣に最近における炭鉱ストライキの現状について御報告を求め、逐次質問をいたしたいと存ずるのであります。
  94. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御指摘のような炭鉱争議が行われておりまして、私どもこは国家経済立場からも非常に深憂にたえないことであると考えておるのであります。御承知のように一作々年の炭労ストのあと、石炭の事情が非常に不安定でありましたために、非常に多く重油に転換が行われました。そのために炭業界は今日に至るも非常に不況であるのであります。私どもといたしましても、でき得る限り国内の原料をもちまして国内の産業を興すという方針にのつとつて、石炭の需要に再転換してもらうように、重油を使用しておる方面にも折衝しておるのでありますが、こうした争議が繰返されるということになつて参りますと、せつかくのそういう機運がまたしぼんでしまうのではないか、需要が不安定であるし、また重油の方が安いということになると、石炭鉱業自身の労使双方にとつて、将来非常な大きな問題になるのではないか。ただいま御指摘がございましたように、ただいま若干の貯炭はありますけれども、この影響もだんだんに多くなつて来る、そういうことが非常に憂えられておる次第でございます。その状況についてごく概略御報告申し上げますと、十月以降の賃金、給与についての折衝が、石炭鉱業連盟と日本炭鉱労働組合との間に行われて参つたのでありますが、一月二十五日付で炭労の方から、一月二十八日、二十九日、二月一日、二日、五日、六日、八日の各日一時間五十分の期限ストを行う、また一月三十日、三十一日、二月三日、四日、十一日、十四日の各日の各方早出残業拒否を行う、二月九日、十日、十二日、十三日、十五日、十六日各日原炭の搬出拒否を行う、なおその他ございますが、こういうことに対して会社側がロック・アウトを行つた場合には保安要員は差出さない、こういう通告をいたしております。これに対しまして日本石炭鉱業連盟より組合側に対しまして、炭界の現状は非常に不況に舞われているが、われわれとしては従前の賃金の維持さえ困難なる状況のもとにおいて、今次の賃金並びに給与に関する提案をすでに行つておる、であるから貴方において十分早期解決に努力せられたい、またロック・アウト中の保安要員の引揚げというものは、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律並びに労働関係調整法に違反する行為をあえて宣言されることになる、こういう無謀な行為を通じて作業場の破壊をもたらすようなものであるし、また組合側の法律違反の責任を免れないから猛省を促したい。なおできるだけ交渉したいという趣旨の文書が出まして、これがとりかわされておるのであります。そこで石炭鉱業連盟側としましては、二百円という金を一月から九月までの間増給する、なお一時金として七百円を出すということを言つておりましたが、後この二百円はベース・アップに組み入れる、こういう提案をいたしております。しかし炭労側はそれをもつて納得いたしませんで、さらに九日十日を第一波とし、十二日十三日、十五日十六日、十九日二十日、二十二日二十三日、二十五日二十六日、すなわち第一波から第六波の四十八時間の運搬ストを行う、こういうことを計画し、その計画に基いて一波から三波まではすでに行つているのであります。こういう状況でありまして、争議の方法が非常に部分的な搬送部門のストライキという形をとつて行われておりますのが、今回の争議の特徴であろうと思われるのであります。そこで、その搬送部門のストライキが、全体に対してどういう影響を及ぼすかということになりますと、御承知のように炭鉱が合理化されればされるほど、搬送部門も合理化されておるので、従つてそこに従事する人間の数も少いわけであります。炭鉱全体としては、炭労というのは約二十七万人おるのでありますが、そのうちの数百人の者が搬送部門に従事している。この人たちがストライキをやることによりまして、一日九万トンから予定されております出炭量がゼロになる、こういう形をとつておる次第であります。  以上概略でありますが御報告申し上げます。
  95. 川崎秀二

    ○川崎委員 これらの質問がすでに参議院あるいは衆議院の労働委員会でも出ておるのですが、私が次に聞きたい点は、部分ストを行つておるけれどもそれが全般に非常に大きな影響を及ぼしておる、そのために全然出炭しておらぬということになりますならば、その効果は全体的なストライキをやつておるのと同様の効果をあげておるのじやないか、そういうことになりますと、事態はきわめて重大であつて、この問題に対する処理を誤るということは、労働政策において非常な大きな支障を来すのではないかと思われるのであります。これに対して経営者側が今日どういう態度に出ておるかというと、経営者側は、部分ストといえども、それが全般的に波及をして、自分らが期待をするような出炭ができないのであるから、従つてそれに対しては賃金を払う必要はないという見解をとつておるようであります。こういうことになりますと、これは労働者に対し非常な脅威を与えることになります。そして労使間の摩擦はいよいよはげしくなつて行くと思うのでありますが、私のお聞きしたい点は次の二点であります。  第一の点は、部分ストに対して賃金を支払わないとするところの経営者側の出方は正しいかどうか、それから、今度のストライキは法律的には違法にはならぬと思うのでありますが、労働大臣あるいは中央労働委員会は、今日までにこの争議の形態について何らかの勧告をなしたかどうか、また今後どういう処置をなさるつもりであるか、お伺いいたしておきたいと思うのであります。
  96. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御指摘のように炭労が現在行つております部分ストは、まつたく全体に対する影響を持つものでありまして、非常に重大な関心を持つておりますが、事件は目下紛争中でございまして、当事者が世論の動向を察知して、良識をもつて事態を解決せられんことを期待いたしておるのでありますが、世論の動向を反映する新聞の社説その他の論調は、ことごとくこれは好ましくない争議方法であると論じておるのであります。政府としての、これが好ましいか好ましくないかという意見はこの際は差控えたいと存じますが、世論はそうなつておるということを申し上げたいと思います。なおそうした部分ストが行われました場合に、これがどういうふうな賃金関係を持つかということにつきまして、私ども労働基準法を扱う役所といたしまして、解釈上こう見ておる次第でございます。部分ストを行つた場合において、その部分ストに参加した労働者の賃金を差引くことは当然であるが、当該部分スト、たとえば運搬部門ストが、炭鉱の他の部門の機能を麻痺停滞せしめることを目的とするものであり、部門スト職場以外の労働者も、形式的には出勤して労務の提供をなすがごとくであつても、組合のかかる効果をもたらす争議行為の一翼をになうために、形式上出勤しつつ予定の行動として、労務の全部または一部の不遂行を来している場合には、部分スト以外でこれに関係のある全労働者について、ノー・ワーク・ノー・ペイの原則により賃金を差引くことは当然であり、労働基準法ないし労働組合法違反の問題は生じない。この場合使用者は、ロック・アウトをなさなくとも、ノー・ワーク・ノー・ペイの原則により賃金を差引くことができる。この場合の賃金差引は、当該部分ストにより、これに関係ある全労働者について、労働契約の本旨にかなつた労働がなされなかつた限度において、差引かれるものであり、具体的な差引額は結局個々の場合の認定によるものであるが、出炭量を賃金差引の基準とすることは当然であると考えられる。こういう解釈をいたしておるのであります。すなわち労務の提供が契約の本旨に沿うたものでなければ、その部分において賃金債権は生じない、こういう解釈でございます。
  97. 川崎秀二

    ○川崎委員 ただいまのお話は、結局組合側が指令を出して、そして全体にストライキはやつておらないけれども、ある部分の重要な作業について、サボタージュあるいはストライキの方法をとらしめたならば、それは全般に及ぶものだ。こういうふうに解釈してよろしいのですか。ということは、つまりノー・ワーク・ノー・ペイの原則は全体に及ぶものだ。
  98. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 大体そのように解していただいてさしつかえございません。と申しますのは、組合がストライキの指令によりまして、労務の提供を拒否している、その労務の提供を拒否した行動をしておるのであります。形式的に単なる労働が行われておつても、これは金銭債権を生ずる対象とならぬ、こういう解釈でございます。
  99. 川崎秀二

    ○川崎委員 私は多くの質問をいたしませんが、このストライキの及ぼすところの影響はきわめて甚大であります。しこうして労働省としても、あるいは中央労働委員会としても、この推移に対しては世間はまだ注目をいたしておりませんけれども、十分意を払つて、その来るべきところに対して善処しなければならぬ。かように考えておるのであります。もちろんただいまのノー・ワーク・ノー・ペイの原則についても、いろいろ日本の労働法には学説があるようであります。部分ストを行つておる者に対しては賃金不払いはよいけれども、その他の者に対してはこれを及ぼすべきでないとする考え方も相当強力にあります。しかし一方ではただいま労働大臣言明されたような見解を支持しておる人も非常に多数あるようであります。また私の調べたところによると、国際的な労働問題に対する書物の中では、こういうような問題に対してはまだ多くの事例がありませんので、従つてそう権威あるものは出ておりませんが、ドイツのアルトワール・ニキツシユという教授が書いた労働法の本の中にはこういうような場合を想像して、次のようなことも書かれておる。すなわち「経営の経続が(可能とはならないような単なる一部ストについてみれば、多くの場合は、表面上は労働を希望する労働者は、自分達が働こうが働くまいがいずれにしても経営が参つて了うのを承知しているのだから、ストライキを行つている労働者と共同して事を構えそれだからこそ労働の準備をしている旨を表明しているのだ、と見倣されるにしても、経営障碍の取扱に関する諸原理によるならば、かかる労働者は賃金を確保しつづける筈のものであろう。そうだとすると、労働希望者はその賃金によつてストライキを行つている者を扶助することができるであろうし、こういつたことでは使用者がストライキそのものの資金援助をする、という結果になつて了うだろう。こういつた結果があり得べからざるものであることは明々白々である。」というような考え方を示しておる国際的な一つの労働解説もあるわけであります。従つてこの際労働大臣においては、炭鉱ストライキの前途に対してはもちろん労使双方の間において交渉が決定されることであり、労働省としては干渉すべきことではありませんけれども、しかし輿論並びにこれらの権威ある学説に徴して、今回の炭労ストが及ぼす影響をはかりつつ善処されんことを、句に要望するものであります。  次に私は外務大臣がおいでならばぜひともお伺いしたいと思います。きようは三時までおいで願いたいということを通告しておいたのでありますが、すでに三時近くなつておりますが、来る見込みがありますか。
  100. 倉石忠雄

    倉石委員長 三時までに参ります。
  101. 川崎秀二

    ○川崎委員 私の持時間は一時間十分くらいでありますから、従つてその間ほとんど外務大臣にお伺いしたかつた。ほかの方はほとんど知らないかもしれません。外務大臣は私の質問に対して、いつも知らぬ知らぬと言うけれども、なかなか知つてつて重大なる交渉を行つておるのであります。そこで私は外務大臣が来られるまで通産大臣に、外務大臣が来られてからの問題と関連をしつつ、少しずつ前置きに伺つておくことにいたします。   〔石倉一委員長退席、小峯委員代理着席〕  まずMSA協定で成立をする余剰農産物協定案というものがあります。これは先日朝日新聞に載つておりましたが、朝日新聞だけでなしに、私も違う筋から最近の情報を入手いたしております。そこで通産大臣に伺いたい第一点は、四千万ドルの小麦協定、それについておる防衛産業に投下される千万ドルの資金の使途配分について、通産省はどういう計画を立てられておるか。この際明白にお答えを願いたいと思います。
  102. 愛知揆一

    愛知国務大臣 MSAの協定並びに余剰農産物買入れについての協定の案というものにつきましては、まだ最終的な段階として政府部内におきましても、結論的に最終的の形にはなつておりません。なおこの経緯につきましては外務大臣からお答えした方が適当かと思いますが、ただいま御指導の五千万ドルの中の贈与になると予想されますところの千万ドルにつきましては、大体防衛関係生産、あるいはその他の経済自立という関係もあわせまして、別個に通産省の立場等におきまして、こういうところにこういう使途になればよろしいという希望案は、いろいろ考えておりますけれども、これがそのままの姿、あるいは他のいかなる姿において確定的なものになりますかは、まだきまつておりません。
  103. 川崎秀二

    ○川崎委員 最終的な御決定がないということでありますけれども、少くとも中間的な案というものは、私はあると思うのであります。それをひとつこの際御明示を願えませんか。
  104. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まだ私ども通産省といたしましても、最終的にこういうことでやりたいという省議で決定するような段階のものは持つておりません。十分ただいま研究を続けておるところであります。
  105. 川崎秀二

    ○川崎委員 千万ドルの防衛産業に対するところの贈与と見られるものについては、これから逐次直間をいたして行きます。あなたはただいま最終的な省議によつて決定したものはないとおつしやるが、最終的な省議もきまらないうちに、閣議で決定しておるものはありませんか。
  106. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういうものはないつもりでございます。
  107. 川崎秀二

    ○川崎委員 飛行機のジエツト会社に対するところ政府資金の貸出しということについては、この防衛産業に対する投下をあてにして、そうしてすでに——日付はちよつとここにないが、閣議で決定をしたのではないですか。
  108. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お答えいたします。閣議の決定をいたしておるものはございません。
  109. 川崎秀二

    ○川崎委員 それはあなた、通産大臣になられる前のことですよ、ありませんか。
  110. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の就任いたしましてからございませんし、おそらくその前にも私はないと思うのでございます。
  111. 川崎秀二

    ○川崎委員 これは押し問答しても果てのないことですけれども、閣議で大体決定をして、そうしてそれを外務大臣を通じて交渉した結果、これが在日米大使館からけられたという情報が私にはあるのであります。そういう経過は全然ないですか。
  112. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の承知いたしておりまする限り、さようなことは引継ぎも受けておりませんし、私が就任後もございません。
  113. 川崎秀二

    ○川崎委員 それであればけつこうでありますが、確かにジエツト会社の問題はすでに閣議で一応決定をして、子うして持ち出したところがけられたという話があるのであります。そこで私はさらにあなたにお伺いをしたいが、中間的な案もない、省議もないと言うけれども、大体やはりあなたの構想というものはあるだろうと思う。それを全部ここで出せとは言わないが、たとえばどういうようなものを今日考えておるか、承りたいのであります。
  114. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点につきましては、御承知のようにMSAの方の協定の調印とが、あるいは小麦の買受けの協定と申しますか協約と申しますか、そういうものがきまつておりませんので、従つて時期的にもそれよりもむしろあとにきまりますもりでありますので、ただいま鋭意研究いたしております。そこでたとえばどんなものかというお話てございますが、たとえば一例をあげれば、先ほど御指摘になりましたようなものなども、でき得れば研究の対象にはなろうかと思つております。
  115. 川崎秀二

    ○川崎委員 ところがすでに折衝をしておつて、大体アメリカ側でもよかろうと思われるものもあるようにわれわれも聞いておるのであります。たとえば火薬共同三社に対する設備資金、あるいは川崎航空、新三菱重工、こういうものに対する砲弾の発注等々のものは、大体オーケーになつておるのではないか、あるいは新明和興業会社に対するオーバーホール、この設備資金もオーケーになつておるのでないか、こういうような工作を進めておいて、あなたは何もないと言うのはどういうわけですか。
  116. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは外務省を通ずる等の方法によりまして、正式の交渉をいたす段階には全然まだ参つておりません。ただこういうものであれば、どんなものであろうかというようなノンフオーメーシヨン的なものとして、いわゆる瀬踏み的に見通しをつけておるというような作業をやつておることはございますが、しかしこれもまとめて全部で三十六億になる、この計画はこれ以外にはない、こういうようなかつこうで、かつ正式のステップを経て話合いを進めておるものはございません。
  117. 川崎秀二

    ○川崎委員 インフォーメーションとしてはすでにやつておるものもある。そういう作業をしておるものもある。あなたの方では、すなわち通産省の中では構想をまとめておればこそ、インフォーメーシヨンもできておるのではないか、それを出しなさいよ。
  118. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは今も申しましたように、一つのセットとして、こういうことならば。バランスがとれるということを積み上げるために、いろいろの情報を収集しておるのでありますから、ただいまのところとしてまだお目にかけるような段階に、政府部内としてなつておりません。
  119. 川崎秀二

    ○川崎委員 それじや私が言いましたものは、すでにインフオーメーシヨンにはなつておるのですか。たとえば私が申し上げた事例は……。
  120. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一々具体的に会社の名前等もおあげになりましたが、そういうものは出ておりません。
  121. 川崎秀二

    ○川崎委員 会社は出ておらなくても、そういう種類、砲弾であるとか、あるいは銃弾であるとか、火薬等に関する設備資金などというものは、話が出ておるのですか。
  122. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど申しましたように、この使途として大体こういう話合いになるであろうという範疇的なものは予想されますから、そうすれば、そういう中で考え得るものとして、ただいまお話になりましたようなものが考えられる、こういう程度のことであります。
  123. 川崎秀二

    ○川崎委員 全然やつておらぬということであつたが、話が少しずつかわつて来たようであります。そこで外務大臣にお伺いします。外務大臣にお伺いしたいのは、この一千万ドルの使途配分については、ただいま愛知さんからお答えの通り、まだ通産省の中ではインフオーメーシヨンの程度であるというようなことを言われた。従つて正式の交渉はいたしておらぬということでありますが、私がお伺いしたい点は、一千万ドルというものははたして完全なる贈与であるのか、あるはい経済援助であるのか、その点であります。実際にはそうではないのじやないですか。たとえばこれは日本側が完全にアメリカから贈与してもらつて、そうしてその使途配分については日本側自身で計画をつくつて、これを最終決定をするということはできない経緯になつておるのじやないか、つまりアメリカ側はこれらに対して相当な規制を与えておるのではないかということが、私の質問であります。
  124. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 一千万ドルというものは、五千万ドル借りるとしての一千万ドルでありますが、これは贈与であります。贈与でありますけれども、われわれとしては、アメリカ側から贈与を受けまして、また将来にもかかることを続けて行きたいと実は考えております。従いまして、一々こまかいことについては相談いたしませんが、どういう種類の産業にこれを使うかというような点についてはできるだけ相談をいたしまして、アメリカの域外買付にも便利のいいようにという筋で、大筋については相談をいたしてきめようと思いまするが、そのきめる最後のきめ方、それから大きな筋の中で一体どこの会社にやるとか、あるいはどういう機械にやるというような種類のことは、日本側で十分独自の考えできめるつもりでございます。
  125. 川崎秀二

    ○川崎委員 どこの会社へどれだけやるかという点を聞いておるのじやないのですが、どういうような産業に——むろん防衛産業ですが、防衛産業の内訳でどういうところへこれは投下すべきであるという意見が、実はアメリカ側に主導権があつて、事実上は日本側に決定権がないのじやないですか。
  126. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういうことはございません。日本側に決定権があります。ただ私の申しているのは、これは域外買付を相当程度対象にして行きたいと思つておりますから、どういう種類の域外買付がよけいあるかということによりまして、その産業にはよけい投下するということが自然起ると思います。従いましてその範囲においては、アメリカが将来いかなる方面に域外買付がふえるかというような点については十分、アメリカ側の意見を聞いてやりたい、こう考えております。
  127. 川崎秀二

    ○川崎委員 デイールという財務官の外人記者団などに話しておるところによると、この一千万ドルというものは贈与じやない、最終決定はアメリカが握つておるのだということを、公然と言つておるようであります。そういたしますと、先ほど愛知さんとの問答を見ても、日本側はまだ最終の案もきまらないのだというようなことである。ところがアメリカ側の方はなるほど向うに決定権があると見えて、たとえば第一には三十六億円の防衛産業への資金投下について日本政府は同質金額に見合う三十六億円見当の防衛資金を投下せよとか、あるいは日本政府政府資金で防衛産業の設備資材を購入しろとか、兵器メーカーに貸与すべきであるとか、これを防衛産業を将来半民半官とするための布石とせよとかいうような具体的な条項がすでに発せられておつて、それについての細目の問題についても指示があるようになつております。もとよりあなたはそういうようなことはないと返事をされるかもしれないけれども、すでにこういうような動きというものがあつて、そうして一方においてはアメリカ側に最終決定権があるのだという一財務官の言うておることもある。そうするとこれは結局アメリカ側の意図によつて、すべてのものが計画され、進められて行くのではないか、実際上は贈与ではないのではないかというような見解が生まれて来るのも、私は当然だと思う。こつちには何もない、向うはすでに能力を持つておる、そうして最後の各会社に対する割当とか、そういうものに対しては日本が最終決定をする、それはそうでしよう、そんなことくらい持つておらなければ困ると思うが、諸産業に対する割当というようなものについても、実際上には日本の自主権がないのではないかと、私は質問をいたしておるのであります。明快なる答弁を要求します。
  128. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私が今まで申したことを、御信用にならなければどうもしかたがありませんが、これは事実として現われて来るのでありますから、いずれその点は実際上の問題として明白になると思います。しかし私もデイールはよく知つております。そうしてしばしば話もいたしておりますが、そういうようなことをデイールが言つたことを私は一度も聞いたことはありません。あるいはそれは新聞か何かに伝えられているのが、多少大げさに伝えられたり、あるいは何か誤解されて伝えられたりしたこともあるかもしれませんが、今までのところ私の申したことは間違いないのであります。繰返して申しますが、どの産業に投資するかという大筋については、これは域外買付の関係がありますから、われわれはアメリカ側の考え方もよく聞いて一どれが将来一番望みがあるかということは、アメリカの意見も十分聞いてやらないと、注文のない方に投下しても、これはいたし方ないことでありますから、この点はよくいたすつもりであります。しかしその決定は必ずわれわれの方でいたします。
  129. 川崎秀二

    ○川崎委員 問題をいろいろあげたいと思いますので、その点は非常に不満ではあるが、これで打切ります。  先般私が予算委員会の冒頭にあなたに申し上げた韓国の復興特需に対する日本側のFOA本部あるいはその州の国連の韓国関係機関に対するところの督促ですが、それに対して何らかの返事あるいは回答というものはありましたでしようか。
  130. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この間実は川崎君が何か持つておられて、これだこれだと言つつておられたが、実はは見せてもらえなかつたのでありますが、そのとき私は想像して、それは通産省から外務省に出された書類ではないか、こう申したのであります。もしそうだとすれば、それは実は措置をとつておりません。そのままになつております。従つて返事等はありませんが、その後のいろいろな動きを見てみますと、それかどうかわかりませんが、その書類に書いてあつたような心配は、大部分解消したように考えておりますので、特にそれに新たなる処置をとる必要はなく、むしろ静かにしておいた方がいいのではないか、こういうふうに考えております。
  131. 川崎秀二

    ○川崎委員 通産大臣並びに外務大臣に伺いますが、先般スタッセンFOA本部長官が来られて、その際において愛知さんからだつたと思うのでありますが、韓国復興特需の関係に関して、こちらから要請があつたように聞いております。また向うからも何らかの回答があつたように聞いておりますが、これらの内容についてお話を願いたいと思います。
  132. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先般スタツセン氏が来日いたしましたときに、私のところへ訪問して参つたのでありますが、これは初めからいわゆるコーテスイー・コールということであります。それから私も従来から旧知の仲でありましたので、時間も非常に限られた時間でありましたので、一般的な話合いしかいたさなかつたのであります。しかも向うの都合によりまして、大体私の見ておる日本の現在の経済情勢並びに現在政府がとろうとしているいろいろな方策について、ごく簡単にでも時間の許す限り意見を聞きたいということでありました。そういうことが主題でございました。それからそれに関連いたしまして、こういうふうな政策をとつて行きたいという場合においては、結局のところ国際収支の改善ということが目安であるから、その前提としてわれわれが考えておるようなことについては、貴国においても十分考慮に入れて、いろいろな意味協力を与えてほしいというようなことで、これに対してはその通り了承した、こういうかつこうになつております。何しろ瞬間が非常に短かかつたものでありますから、それ以上具体的なことについてこちらから要請し、それに対して直答するというような形をとつておりませんでしたために、ただいまお話のような具体的な問題について、きちつと話合いをいたしたわけではございません。
  133. 川崎秀二

    ○川崎委員 私も大体そうであろうと思います。しかしあなたが今言われたような、そんなに抽象的なものでもないと私は思う。つまり韓国復興特需というようなことについては、先般大蔵大臣がこの席上において、初めは六百万ドルだと言つて、しまいには一億ドル、話はまるで月とすつぽんのように違つて来たのですが、とにかく月の方なら月でよい、非常にけつこうなことですから、その一億ドルの線まで行くように、ひとつ韓国側との間を御折衝を願いたい、あるいはごあつせんを願いたいというような具体的な要望というものはしなかつたのですか、あるいは向うはそれに対して多少の返事をしたのではないですか、そのくらいの具体的なことは言つたのではないですか。
  134. 愛知揆一

    愛知国務大臣 正確に申し上げまして、特需の関係それからドル地域に対する輸出等を、われわれの計画通りにやつて行くということは、われわれの終局の目標でございます。これはもちろん相手のあることでございますから、さような意味において相手の有力なる一人の責任者であるスタッセン氏に対して、包括的に防衛計画がどんどん推進ができるように、この上とも協力と好意を持つてほしい、こういうことを申しましたのに対して、われわれは全面的にできるだけの協力をしよう、こういうことでございました。
  135. 川崎秀二

    ○川崎委員 最近のUP通信によると、李承晩大統領は韓国の再建資材を日本から買いつけることを、その後国際情勢もあつたのですが、条件付で認めるがということを言いまして、しかしそれは国際価格並でやるのだ、国際競争入札でやるのだというような線を明らかに出しておるのであります。そこで私は外務大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、最近の事象では、日本商品の排斥運動というものが、京城でかなり広範囲に行われておるようであります。たとえば韓国の政府日本商品の韓国新聞への広告掲載を禁止した。これは新しい措置であります。こういうような事象が起り、それからもう一つ、日本の商社が最近、むろん前からでもありまが、韓国内に入国ができないため、これにかわつて外国商社がどんどん京城その他の区域に入つて、その外人商社の手を通じてでなければ、有利なる商取引というものができないというような段階になつておるのであつて、これは日本の商社としては非常に不利な立場に立つわけですが、これでも、こういうような非常な制約下において、日本の商品というものは進出し得るのであろうかということを伺いたいのであります。
  136. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今御指摘のようなことは、私も新聞等で見て、非常に困つたことだと思つております。これは日韓会談の中の特に日韓の基本条約ができませんと、根本的には解決できないと思うのです。しかし実際上私も心配しましたので、いろいろ事情を調べてみましたが、必ずしも新聞等に伝えられておるほど、事実は悪化しているわけでもないような点もあるようであります。しかしこれは今後とも十分警戒して行かなければならぬと思つております。そこで今までのところは、日本品はかなり入つておるようでありますが、ただその利益が、必ずしも日本側に入らないで、中間の商人に入つているような事態も確かにあると思います。これはもちろんできるだけ早く改善しなければなりませんが、それにつけてもやはり日韓会談で根本的な話合いが必要である。それまではどうしても応急的な一時手当にすぎない、こう考えております。
  137. 川崎秀二

    ○川崎委員 外務大臣のただいまの答弁は非常に正直です。今までと違つて。今の答弁だけは私は外務大臣の誠意を認めておきます。そこでさらにお伺いしたい点は、この前も私は漠然と指摘をいたしておきましたが、国際競争入札というものが最近では京城その他で行われておつて、そうして緊急調達という形でやられておる。そうすると、今までは西欧側は全然参加できなかつたのが、今度国際競争入札だというので、西ドイツ、ベルギー、これが非常に入つて来ておるようであります。これが入つて来ると、たとえば車両一つとつてみるにしても、非常に日本の製品はコスト高で対抗ができないのではないか。先般大蔵大臣は、硫安をとつたということを鬼の首でもとつたように言われましたが、大体多くの品目にわたつて西欧側の進出というものが非常に予想され、それがために一億ドルの韓国特需というものが期待できない関係にある。今までは、距離も近かつたし、それからアメリカ側が特殊のカバーをしてくれたというので、非常に有利であつたのですが、この一月以来の傾向は非常に不利なので、私はこういうような情勢が続くと、一億ドルというものを確保できないのではないか、そういう打開策を講ずるためにも、今あなたが言われたように、これはどうしても最後には日韓会談の正式再開という線にまで持つて行かなければならぬと思うのですが、そういうような見通しについてどうお考えになりますか。
  138. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは大部分は通産大臣の御担当のようですが、私の見るところでは、今おつしやつた日本品必ずしも安くないものですから、むずかしい点がずいぶんあると思います。ただ一つ日本品のとりえはデリヴアリーが早いということでありまして、これだけはヨーロツパ諸国にほとんど負けない。ただ向うでつくつたストックがある機関車等については、多少劣る点があるかと思います。要するに価格の点もありますが、デリヴアーするのが早いという点で、今までは対抗して来たわけであります。今後もできるがけ、これは通産大臣にもお願いして、その方に向いたいのですが、同時に、今おつしやつた日韓間の関係をよくするということ、これに向つてども努力して行きたい、こう考えております。
  139. 川崎秀二

    ○川崎委員 通産大臣は今の問答を開いておられたと思います。私がさらに深くお聞きしたいことは、今回のアメリカと韓国との話合いによつて——これは秘密協定と呼ぶかどう呼ぶかということについては、いろいろ議論のあるところだろうが、次第に調達権というものを韓国側に委譲するようにされるという形になつて来ておる。それについては、私は必ずしも日本立場を不利に陥れようとしてここで発言をしておるのではないのです。実はアメリカの内部においても、日本にある外交機関と京城にある外交機関との間には、極東政策についていろいろの意見の相違がある。いわばアメリカの極東政策の内部における日本の地位と朝鮮の地位というものに対する比重の問題もあるから、私はなるべく問題を明らかにして、できるだけ日本の輿論でも、朝鮮からするところの特需がだんだんダウンして行くということについては、とうてい承知し得ないという気持を出したいから言つておるのです。ですからこれは質問する方も相当のあんばいをしなければならぬので、実は苦しい質問もあるのであります。しかし私があなたに聞きたいのは、この調達権の問題についても、かりに完全委譲じやなくても、韓国側においてすでに相当な調達の責任を持つている品物があるのですが、その品物の調査はされておりますか。手元にございますか。
  140. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今手元にインフオーメーシヨンとしての資料を、具体的な品目は持つておりませんが、これは先ほど外務大臣からも答弁されたように、一時伝えられたよりも心配が少しやわらいだ気持が私はいたすのであります。それから川崎さんのお気持も非常に私はよくわかるつもりでありますが、根本の問題としては、先般も申し上げましたように、特需といえども、究極の問題としては、日本の輸出品に対すると同様の努力というものが非常に必要である。外交関係によつて日本の商品が特需として売れやすくなるということについて、外交交渉に私どもも非常に期待しなければならぬのですが、同時にそれ以上に必要なことは、こちら側の輸出努力と、それから結局はコストの切下げその他によりまして、韓国側も十分日本の品物を買つてくれるようにするということが必要なのでありまして、その点につきましてはできるだけの努力を続けて参りたいと思つております。
  141. 川崎秀二

    ○川崎委員 手元になければ、私の方の資料を出してみようと思うのです。韓国側において調進の責任のあるもの、そのうち、たとえば調達権そのものは最終的には韓国になくとも、両方で合議するにしても、品物について韓国側が調達をする責任のあるものが、次のようなものだと言われている。これは繊維、医薬品、農薬、鋼材、セメント、石炭、電気器材、鉄道器材、この八つの品目ですが、このうち鋼材であるとか石炭、繊維、セメントというものは、重大な日本の産業だと思うのです。石炭などは遠くから運んで来ればコスト高になりますから、従つて西欧各国とも競争はできるだろうが、ものによつてはなかなか西欧側も進出して来るおそれがあるということを私は指摘したいのです。こういうような資料通産省としては整備されておるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  142. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実を申しますと、現在のところでは、インフオーメーシヨンといいますか、情報という程度のものも中にはあるようでございますが、もちろん情報といえどもできるだけ正確にキャッチすることに努めております。
  143. 川崎秀二

    ○川崎委員 そういうような資材のうちには、運賃によつて競争する部面の少いものがあつて、それが西欧側から相当進出するという危惧があるから私は申しておるのです。その際における競争に対して自信があるかということを聞いておる。
  144. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その危惧の念は私も前々から持つておるのでありまして、この際あらためて先ほど申しましたように、一種の輸出努力なんですが、これに対しましては、基本的な従来申し述べておりまするような政策の展開と具体的な対策というものについて、相当の努力をしなければならぬと思つております。
  145. 川崎秀二

    ○川崎委員 次に、先ほどの問題に少し返るようでありますが、MSA関係の小麦協定の問題、それからさらには投資保証の問題について伺つてみたいのであります。第一の質問は、今回のMSAによつて余剰農産物が入つて来る。その余剰農産物の小麦の価格は、農林大臣の今までここで答弁された経緯によれば、大体一トン八十二、三ドル、つまり従来の国際小麦協定の価格と大差ない線で入つて来るという答弁であつた。しかるに最近私が発見したところによると、外務委員会における並木委員と土屋欧米局長との質疑応答によると、国際小麦協定の値段より高くなることは当然であります。すなわちこれはMSA法第五百五十条ですが、こは最高市場価格で買うということになつてつて、今負けてくれという交渉はしておつて、その線はだんだん出て来たけれども、なおかつこれは保証しがたいという答弁がある。さらに最後に行きまして、それでは数量の関係からして、四千万ドルの小麦協定の中へ、一千万ドルの防衛産業へ贈与として贈られる部分が繰入れられる危険性がないかという並木君の質問に対して、あるいはそうなるかもしれぬということを言つておる。そうすると一千万ドルの贈与じやないということになつて、今まで政府がやつて来たことは全部うそつぱちということになる。これは非常に重大な問題だ。そこであらためてお聞きいたしますが、これは国際小麦協定、すなわち現在まで農林大臣の答弁された線で入るものかどうか。片方は局長の答弁ですから、まず局長の方が詳細知つておるようにも思うけれども、信用ということでは農林大臣を信用しなければならぬ。その食い違いについて外務大臣から答弁をしていただきたい。
  146. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それはいつごろのことか知りませんが……。
  147. 川崎秀二

    ○川崎委員 三日くらい前です。
  148. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 三日くらい前ではそれは何か少しおかしいと思います。局長の答弁がずつと前だつたらそういうことは確かにあつたのですが、その後だんだん要しまして、もう今終結に近づいております。国際小麦協定の価格と全然同様とは私は始終育つておりません。それよりも多少上になることもあり下になることもあるでしようが、国際小麦協定の価格と大きく離れることは決してない。大体において国際小麦協定の価格におちつく、これは間違いございません。
  149. 川崎秀二

    ○川崎委員 そうするとあらためてお聞きいたしますが、四千万ドルの協定の中から一千万ドルの防衛産業の方々食うということは絶対ありませんね。
  150. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それはこういうことなのです。初めは実は五十万ドルの小麦を買えば五千万ドル近いものがなくなつてしまうと思つたのですが、価格が安くなりましたから小麦、大麦まで買つて、まだ多少余りがある程度に今なつております。それをみんな合せて五千万ドルであります。その五千万ドルを円に直したものを国内に積み立てて一それが支払いになるのですが、その中の五分の一を日本に贈与する、こういうことになりますから、五千万ドルのうち一千万ドルを離して、ただ一千万ドルを金でくれるのでなくして、五千万ドルに見合うものの五分の一を日本の円で積み立てる、こういうことになるわけであります。
  151. 川崎秀二

    ○川崎委員 この問題についてさらにお伺いしたいけれども、ほかの問題もありますから、さらに違う新しい問題を聞いてみたいと思います。政府は余剰農産物の受入れ協定と並んで、MRA法の中の第百十一条による投資保証というものを活用しようと考えられておるのじやないか、その点ひとつお聞きしたいと思います。
  152. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは今おつしやつたように、MSA法の中にある規定下あります。行田ともアメリカの援助か受けておるときはその規定をつくつておりますから、日本におきましても投資保証協定をつくろう、こういうことでやつておりまして、これもやはりMSAの協定と同時に調印するつもりでおります。
  153. 川崎秀二

    ○川崎委員 私が今この質問を提起しているわけは、今後のわが国の防衛と、それからわが国の将来の地位について、非常に重要な要素をこの問題がだんだん持つて行くということを予見したからであります。そこで岡崎外務大臣にお伺いしたい点は、これはただいまお答えの通りだと思うが、この百十一条のねらいというものはどこにあるか。われわれの認識するところによれば、これは日本国が——このMSAを受入れる国が共産圏の脅威防止のために防衛産業または他産業について国有化を促進する措置をとる場合には、米国側は同産業の助成資金の投下を保証するというねらいがこの条項であると思うのであります。従つて日本側では、これを経済援助の突破口にしてアメリカの民間外資をも導入して、それが損をした場合においては補償するような形でこの投資保証というものを持ち出されたものと思うが、アメリカ側がもしこの提案をいれて話を進めるというときには、ねらいはむしろ防衛の強化ということにさらに重点が注がれて、そこから来るところのものは相当重大なものになつて来やしないかという観測をいたしておるのであります。これを端的に言うならば、今アジアにおけるところの非常に重要な防共基地になつておるところ日本を、さらに具体的に裏づけるための工作をアメリカが開始するのではないか。つまりこの投資保証というものを日本側が持ち出せば、向うはそういうような形で切り返して来るのじやないか。切り返すということは語弊がありますけれども、MSA法の弟百十一条のねらいというものは、それを受ける国が共産圏の脅威防止のために、防衛産業あるいは他産業について国有化の計画をするということに対しての保証だけであつて、この点について外務大臣の投資保証に対する研究をこの際ここではつぎり出してもらいたいと思います。
  154. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この条文から来る見方はいろいろあろうと思いますが、ただいまわれわれの交渉しております実際の問題としてのこの投資保証の内容は、比較的簡単なものでありまして、条文は大体三箇条くらいにしかならぬはずであります。その内容は要するにアメリカの民間会社が日本に投資をした場合、その投資をしますと普通ならば、利子なり元本なりは一定の期間においてドルで国外に持つて行くことを認められるわけでありますが、もし日本の外貨事情が悪くて、このドルを国外に出すようなことができなくなつて、民間会社としては収益を円では街られるが、ドルでは得られないような場合には、アメリカの政府がその民間会社にドルで投資金を返還してやつて、そのかわりに国内にある円をアメリカ政府が引受ける、その引受けます場合にその円をどういうように使うかというと、要するにアメリカの政府機関、すなわち大使館が軍用以外の目的、すなわち日本人の雇用人の給料とかあるいは新聞、雑誌の購入とか、その他薪炭の購入とか、そういう種類のものに使う、これだけの規定に限定いたしております。
  155. 川崎秀二

    ○川崎委員 えらくあつさり三箇条だと言われました。しかしこれはそういうものではなく、アメリカ側がこの投資保証というものに対して話をして来るならば、当然ここに大きな問題を含んで来ると私は考えておるのであります。現にあなたとアメリカ側との間には相当な話が進んでおると思う。たとえばかつて日本の軍需工場であつたものを調査して、これが再び兵器廠として活動することができるか、そういうところにこそ投資というものは行われる。アメリカ側が今日日本に強力に投資を行おうとしておるのは、何らか効果のある、すなわち日本が極東の防共基地としての効果があるというものでなければ、そう大きな投資をするということはないのではないかと思う。二、三日前にこの投資保証という項目が朝日新聞に出た。その前からわれわれは大体のねらいはつけておつたが、はたせるかな——この問題は今後大きな問題になつて来ると私は思うのですが、あなたは今までこれらの折衝について、日米合弁兵器廠というようなものをつくるということの話合いに乗つたことはありませんか。   〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕
  156. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この投資保証の協定ももう間もなく調印できますから、そのときにはつきりいたします。御質問の点の日米合弁の兵器廠ということはそういう方面の関係者からの案としては、しばしば聞いたことがありますが、政府としては、アメリカ側にまだそういう問題について一度も話したことはございません。
  157. 川崎秀二

    ○川崎委員 きようはたいへん正直なところを少しずつ出すので、けつこうであります。日米合弁兵器廠の話は、あなたとアメリカ側との間においては、相当進捗をしておるようであります。  そこで、さらにこれは大蔵省にお伺いをしておきます。大蔵省はこのことを御承知であるか。大蔵大臣はどうか知りませんけれども、今度投資保証にからんで、今まであつた日本の軍需工廠等をこれに転用し、これを強化するという実情の調査大蔵省の理財局が行つており、そうしてこれを外務省にまわしておるのでありますが、それはどの程度に進行して、どういう程度に外務省との間に進んでおるか、明白にされたいと思うのであります。
  158. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 旧軍需工廠はいずれも国有財産でありますから、絶えず調査をいたしておりますが、特に外務省の依頼があつて調査をしておるということは、私は承知いたしておりません。またそういう報告をときどき私も見ますけれども、まだまとめて外務省とどうこうというふうな話については何ら聞いておりません。
  159. 川崎秀二

    ○川崎委員 何ら聞いておらぬというのは、きわめて怠慢でして、あなたのところの理財局は非常な調査をしておるのですよ。それを言わないだけなんです。ほんとうですよ、それは。外務大臣は、日米合弁の兵器廠という話は出た、しかし政府としては、正式にはやつておらないと言う。ところがその基礎というものがなければ、話は出ない。そこで大蔵省の理財局にこれらのものを調査させて進めているという。進めるなら進めていいのですよ。私は何も反対ばかりするわけじやない。ただ話がおかしいじやないですか。
  160. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私は正直に申し上げておる。実は私は何もそういうことは聞いておりません。なおこれは理財局が扱う問題ではなくて、管財局が扱う問題です。管財局が扱う問題ですが、管財局はいろいろなものを持つておりまするから、絶えずこれを調査いたしております。またその価格等についても絶えず調査はしておりますが、その調査に基いて、たとえば外務省に出すなら私の目を通さぬものが出て行くはずはありません。またそういうものを何ら私は見ておりません。これは私が申し上げることが正直であつて、もしほかの方が何か進めてあるなら、今後話を受けるだろうと思います。
  161. 川崎秀二

    ○川崎委員 あるいは大蔵大臣の言われることが私は真実かもしれないと思う。しかしそれは、外務省がそういう交渉を進めておることについて、下の方で連絡をしてやつてつて大臣にはまだつんぼさじきという問題であるかもしれない。それが今日の実相かと思いまするけれども、もし日米合弁兵器廠という話がすでに出ておるとすれば、正式な交渉はしておらぬけれども、かりにその話がしばしば出ておるとすれば、今日本国民に与える影響も相当大なのであります。すなわち、それだけの準備を一切のことをやつておいて、そうして一方において再軍備はしないのだというようなことを言つてつても、そういう具体的な事実の進捗の上からいつて、現内閣のやつておることはすべて欺瞞ではないか。つまり既成事実はどんどん進捗しておる。ここに問題があるということで、私は今日新しく問題を提起しておるのであります。これはひとつ真剣にお聞きを願いたい。  そこで私はあらためてあなたにお聞きしたい。私も自分の言動を注意しなければならぬけれども、日米合弁兵器廠の話が出ているが、あなたは今までアメリカ側から、将来非常に大きな脅威が日本の前に力として現われた場合には、普通の兵器では対抗できないではないか、つまり極東における防衛基地としての話がコンクリートになるためには、やはり最後には、原子力の貯蔵庫なるものを日本側に整備をすることが必要だという交渉を受けられましたか、そういう話を聞かれたことがありますか。
  162. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ちよつと初めに、川崎さんは何か誤解しておられるようでありますから、申し上げますが、私がさつき申し上げたのは、民間においてそういう案がある量はしばしば聞いたけれども政府としては何らそういう点について話合つたことはまだありません、つまり私の下の者も私もアメリカ側に対して、日米合弁ですか、そういうものについての話をしたことはない、こう申したのであります。  それからただいまの御質問でありますが、そういうことを一ぺんも話していないのでありますから、説明も何もいらぬと思いますが、原子力の貯蔵庫とかなんとかということは、全然話に出ておりません。
  163. 川崎秀二

    ○川崎委員 私の得ている情報では、原子力の問題も全然話に上らなかつたということはないのであります。ただこういう問題は、今の日本の防衛計画の範囲としては、やや逸脱しているのではないかという問答もあつたようにわれわれは聞いている。今日は原子力の問答はいたしません。またそういうものをすべきでないと私は思つている。また将来日本がいかなる防衛力を持つにしても、これはあくまでも自衛力であつて、海外から侵入されるときにおける防衛措置を強化しさえすればいい。すなわち防衛軍設置ということをわれわれは言つているが、すでにして話がなかなか具体的に進捗しているものがある。原子力の問題は具体的ではない。話題に上つただけですから、私は今日これ以上追究いたしませんけれども、日米合弁兵器廠の問題は、あなたの今のお話では、政府政府の話合いではない、民間ではそういう話合いのあるということは聞いたことがあるが、われわれは何ら話合いはしておらぬのだ、こうおつしやる。それは公式的にはそうかもしれぬが、民間においてそういう話合いが進んでいる、あるいはそういうことをしようということが進んでいるということを是認されておらなければ、これらの投資保証の問題なども出て来る根拠がないとさえ私は思つておるのであります。この投資保証というものは当然防衛産業に対しての投資保証でなければならぬ。その条項を洗つて行くときには、すなわちMSA法の第百十一条によれば、これを受入れる国が共産圏の脅威に対抗して、防衛産業またはこれに類似するものを国有化するという措置について投資を保証するのであるということがはつきりしている。従つてそういう問題に発展するおそれは十分にあるのであります。そういう意味で岡崎外務大臣は、日米合弁兵器廠の問題などは自分らはノー・タッチであるという、ノー・タッチであるが、そういう動きがあるということはまず見ておられることだけは事実であります。それに対していろいろ指示も与えられ、介入もされているということも私は事実ではなかろうかと思われるが、その点に対する御見解を承つておきます。
  164. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 投資保証については、先ほど申し上げたように、もうじき調印もできますから、そのときにすべて明らかになりますが、先ほど私が申したように、これは一般的なものでありまして、少くとも日本とアメリカに関する限りは、この協定は一般的なもので、特に何の産業というようなことはやつておりません。  それから合弁事業等につきましては、民間にそういう案があるということを申し上げたのであつて、民間で交渉しているということは私は知りません。してないのではないかと思います。こういう案で行つたらいいだろうという考え方があるということだけを申し上げておるのであります。もちろん政府としては、今のところこれに全然介入いたしておりません。
  165. 川崎秀二

    ○川崎委員 それではこの問題は、新しい問題を提起しただけにして、今日はこの箇条の質問は終りたいと思うのですが、先ほど議事進行に関連をして発言を求め、特に今日注目をされておる国際収支状況について、一番問題の核心である。すなわちイギリス・ポンド圏に対する輸出というものは、少し見積り額が多いではないかということについて私は聞きたいのです。すでにして積算の基礎を出せということを申ておきましたが、できましたでしようか、御発表願いたいと思います。
  166. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お答えいたします。昭和二十九年の暦年で申し上げたいと思いますが、英本国その他に対する受取り勘定のうちで、輸出は一億九千八百五十万ポンドというふうに見ております。その中で英本国に対しましては千四百五十万ポンド、それを品目別にわけまして、すでに先方が輸入を許可した品目と、新たに今回の話合いによりまして輸入許可をした品目と具体的に区別して、前者は七百十万ポンドド、後者は六百八十万ポンド、こういうふうになつております。それから英植民地関係でありますが、これは香港を含めまして九千百五十万ポンドという見通しをつくつております。以上申し上げました英本国と英植民地との関係につきましては、これは具体的な裏打ちのある輸出計画というふうに見ております。それからその他が自治領、独立国を含む分でありますか、この分が九千二百五十万ポンド、この分につきましては前の二つの項目よりは今後の努力が一層必要なものでございます。かような計画をいたしておるわけでございます。これは全体の、今回の協定のわが方の商品の輸出による受取り計画の五億五千五百万ドルのうちの大体九二%、大事をとりましてこの輸出計画の積算にしたわけでございます。でありまするから、くどいようでありますが、もう一ぺん繰返して申し上げますと、協定の数字のうちの九二%をもつて全体の輸出計画にし、かつその中で英本国に対する関係と英植民地、香港を含む関係とに対する輸出の計画額というものは、相当具体的な裏打ちのあるものと考えております。ちようど全体の輸出額の三分の一強、ほぼ二分の一に近くなりますが、自治領、独立国を含めましたところの輸出の計画が九千二百五十万ポンドでありますから、この分につきましてはさらにいろいろ折衝を固める必要もあり、また当方の輸出努力としても、特に努力しなければならぬ要素が多いものである、こういうふうなかつこうになるものであります。
  167. 川崎秀二

    ○川崎委員 この日英支払協定の関係に関連して、ポンド地域への輸出輸入の内訳をもう少し詳細に私は伺いたかつた。それは地域別、品種別、地域別とは、すなわちイギリス本国並びにイギリス連邦、それから植民地、それからそれ以外のポンド圏というものにわけて作業をしてもらいたいと思います。われわれはいつも政府をいじめることばかりが能ではありませんから、それは作業が土曜日までにしかできないというのなら、土曜日まででもよろしいけれども、私が今指摘したい重大な点は、あなたは五億五千五百万ドルの九二%として五億一千五十万ドルという数字を出したと言われるが、その九二%でも甘いのじやないかということが相当指摘をされておるのです。これは専門家の一致した見解であつて、これは今年の国際収支における非常に大きな政府の見積り誤りではないか。そのくらい期待をしなければ予算の包みができなかつた点もあるだろうと私は思うけれども、そういう問題についてもう少し早く資料を出してもらいたい。私は日英間の問題については、どうも下から数字を積み上げて、最後に五億一千五十万ドルということになつたのじやなしに、ただ五億五千五百万ドルの九二%というので押えて来て、下の数字ができてないのじやないか。下から積み上げて来て五億一千五十万ドルになつたのではなしに、下から積み上げるべきやつを、上のやつをぽんと締めておいて、できたやつをあとで作業をしておるというのが今日の状況ではないか。それだと非常に心もとないと思うのです。この点に関する御答弁だけを承つておきます。
  168. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は一昨日でありましたか、一昨々日でありましたか、衆議院の通産委員会におきまして相当詳細に私御説明いたしております。それで御注文のような資料は、用意のあるものがございますから、さつそくこれはお配りすることにいたしたいと思います。ただくどいようでございますが、川崎さん、最後の点でありますが、さつきも事をわけて申し上げましたように、まず対象として英本国、それから植民地と自治領と三つにわけまして、英本国と植民地の対象になつておりますものは、品目別に非常に具体的になつております。それから自治領の関係におきましても、相当の積上げ作業をやつてわくをつくつたのでありますが、これは御承知のような政治的な事情もありますから、先ほど申しましたほかのものよりも努力が一層必要である、その程度の理由はございますが、私の方からいえば、十分積み上げて作業をしたわけであります。資料は追つてお配りいたします。
  169. 川崎秀二

    ○川崎委員 今日は非常に時間が制約されましたので、二つばかり質問を削除します。しかし大体予告をしておいて、今度だれかの質問のときにでも私からさらにお聞きをしたい点は、公共事業費において非常に濫費がある。農林大臣に特に機会があるときに御答弁を願いたい。今は時間がありませんからいりません。それは岩手県の岩手ダムの建設の問題であります。これは二十三億という大きな費用を計上して、そうして進めておつた。計画としては二十三億で、すでに今まで二億七千万円ですか、投下されておつた。しかるにこれがまつたくダムとして不適当なものだということになつて、そこへ入植された何千人かの樺太からの引揚者は、泣いておるという非常に大きな事実がある。これが一つ。それから北海道の幾春別のダムの問題、これも計画を途中において変更しなければならなくなつた。これは建設省。これらの問題について、適当な機会に答弁を願いたいと思います。今はいりません。  それから最後にお聞きしたいのは、最後左で外務大臣でありますが、こういう問題を今後どう処理されるかということです。河野一郎氏は対米債権の問題で質問をされて、そうして四千万ドルの問題を打ち出されたが、あれは債権が確定しておつたからいい。ところ昭和二十一年の初めから、日本の物資じやない、連合軍の物資をグアムから比島へ、それからフイリピンから朝鮮へ運んだ。日本関係ない。しかしこの運んだものは日本の船であります。日本の船で、日本占領物資と違うこれらの物資を運んだのであるから、当然これらの費用というものはアメリカ側が払わなければならない。それは、大体昭和二十六年の末には最低四十億はあるだろうといわれておる。しかもアメリカ側の調達係官は、最低にしても四十億は払わなければならぬと言明をしておつたそうであります。しかるに、これは先年の講和条約の際、債権として確定されなかつた。そのためにお流れになつて、今日としてはこれをどう持ち出してよいかということが非常に困難な情勢に立ち至つておる。しかし事実は四十七、八億から五十億は確実にあるという、非常に重大な問題であります。そういう問題について外務大臣は知つておられるかどうか、この際御答弁を願いたい。
  170. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 実はそれは私はまだ聞いておりませんので、さつそく調べて、さらにお答えいたします。
  171. 川崎秀二

    ○川崎委員 それでは、その問題は非常に重大な問題で、ことに通産委員会等においてはこれが大きな問題になつて来ると私は思うが、予算委員会としては、一応今日は政治問題としてこういうものがあるということを提起するだけでとどめます。  そこで最後犬養法務大臣に、ただあなたの信念というか、この予算委員会質疑応答に対する態度についてお伺いをしておきたいと思うが、造船汚職の問題は、今日非常な関心の的になつており、注目の的であります。先般横路君から質問があつて、利子補給法案にからんで政党献金をしたその会社は、公職選挙法第百九十九条ですか、これに違反するのではないか、これに対する答弁はあつたけれども、今度は銀行との関係についての明確な答弁がなかつた。これらの問題については、やはりこれは違反になるのかならないのかということは非常に重大な問題でありますから、明白な答弁をしてもらわなければならぬのに、その席上における刑事局長の答弁というものは非常にあいまいである。どつちでもいい。はつきりした答弁をしておかないと、これらは非常な疑惑の的になつて来ると思うから、当然また横路君その他からも関連質問として、残つておる質問が展開されると思うが、私は最後にそれをリレー的にこの際質問をいたしておきます。
  172. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際川崎秀二君の質疑に関連いたしまして、今澄勇君より興野を求められております。これを許しますが、簡単に願います。今澄勇君。
  173. 今澄勇

    今澄委員 今の川崎氏の造船問題に関連して、私は検察庁、その他この造船汚職、保全、日殖等について日夜努力しつつある検察陣の足の問題、食糧その他非常にきゆうくつなる状態であるが、なぜそのようなきゆうくつな状態に法務大臣は置かれておるのであるか。当然予備費その他の費用がいることと思うが、これについての法務大臣大蔵省との折衝、並びにこれらの捜査に関する費用について、予備費等の問題について、犬養さんから簡単でよろしゆうございますから、ちよつとお答え願いたいと思います。
  174. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。まず便宜上今澄さんの御質問からお答えをいたしますが、実はお話があるまでもなく、とうてい今の予算では十分なる捜査ができませんので、夜中に飲むお茶代、あるいはその他複製をつくる写真の費用、あるいは尋問に少し場所が不自由しておりますから、この尋問の場所をつくる費用とか、相当の額の予備費を大蔵省に向つてすでに要求いたしております。この要求は完了いたしておりますから、御承知おき願いたいと思います。  それから……。
  175. 倉石忠雄

    倉石委員長 法務大臣に申し上げますが、議事の進行上ただいまの今澄君に対する御答弁だけに願います。
  176. 今澄勇

    今澄委員 そこで法務大臣にもう一度質問しますが、当初検察当局は、これらの予算について約二億円程度の予算を組んだ、法務省と折衝の結果、本日検事総長から聞くと、もう一ぺんやり直せということでそれをやり直して、一億三百万の予算に組んだと、こういう話であります。私はなぜそんなに予算を一億何ぼに切り詰めたのか、そのきまつた金額というのは、一億幾らがその金額にきまつたのか、法務大臣にもう一度伺います。
  177. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。当初検察庁の要求したのは二億ではございません。少し下まわつております。法務省の経理部としましては、いつも当該庁の要求に対しては、この辺は少しあれで、このくらいでいいんじやないか、これは経理部の当然の仕事であろうと思います。私はどういう態度をとつておるかと申しますと、それに対して、経理部の事情はそうだろうけれども、ここでもう少し増した方がいいという、ある物品について発言をいたしまして、総長は私の主張に非常に同感の意を表しております。しかしそれをすべて含めまして、今大蔵省との折衝の経過中でございます。さよう御了承願います。
  178. 倉石忠雄

    倉石委員長 今澄君、よろしゆうございますね。   〔今澄委員「私はこれに関連し……。」と呼ぶ。〕
  179. 倉石忠雄

    倉石委員長 今澄君、発言をまだ許しておりません。簡単に願うことにお約束してありますから……。今澄勇君。(発言する者あり)静粛に願いすす。
  180. 今澄勇

    今澄委員 そこで、私はまず大蔵大臣に一問を呈しますが、関連ですから簡単にやります。法務大臣大蔵省ととりきめる、今折衝中であると言われておるが、大蔵省が出す予備費の費用は、幾らこれに出すのか、明確に大蔵大臣にこれをお尋ねします。  第二点は、この造船汚職の問題は、巷間いろいろ流布されておるが、私どもの見るところでは、三大会と称する造船会社の社長、重役並びに国会議員、あるいはその他の人々によつてできているところの会に水曜のたんびに会合をして、おもに池田勇人氏と最も密接なりといわれる千代田クラブにおいて会合しておる。ときには赤坂の中川という料亭においても会合したことがある。かようないわゆる三水会というものの会合によつて、この割当というものが大きく左右せられたように伝えられておるが、幸いにして千代田クラブの支配人が呼ばれて、この間の事情を聴取せられておる。さらに中川のおかみも呼ばれて、その岡の出入りの人々について聴取せられておる。それらの人々の陳述によれば、閣僚の中にも顔を出した者が多いといわれておるが、これに対して、犬養法務大臣は私の質問に対して、ここでこの三水会に対する刑見解並びにこれに出入りした閣僚の態度というものは、まことに国民の疑惑を呼んでおると思うが、御答弁願いたい。  第三問は、これは緒方副総理に御答弁願いますが、本日午前十一時よりわが党の川島君から、この造船汚職の問題について質問をせられて、犬養法務大臣並びに大野国務大臣の出席を求めた。当時大野国務大臣は総理官邸国務大臣室において、有田二郎氏、村上勇氏、鍛冶良作氏、小玉顧問弁護士をまじえて密談をされておつたそうであるが、私はこういうことは、国会が質問がしたいといつて呼んだ大臣が出ないで、そういう所で逮捕の許諾を求めておられるような人と密談をまじえるということは、まことに国民に大きな迷惑を投げかける。これに対する副総理としての御答弁を願いたい。  最後に第四点として私が聞きたいことは、この有田二郎氏の逮捕に続いて、大野国務大臣に対しても非常に疑惑が濃厚になつたということを私どもは伝え聞いておるが、犬養法務大臣は、ここ一週間以内に、こういうような閣僚についての逮捕なり、あるいは許諾というものを当衆議院に要請するというような情勢では絶対にないとここで明確に答弁できるかどうか、これが私の質問の第四点。時間がありませんから、以上で終ります。
  181. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今の費用の件でありますが、法務省の方から交渉を受けておりまして、今事務の方で検討しておりますが、できるだけ速急に処理をいたします。
  182. 倉石忠雄

    倉石委員長 なお、この際昨日の横路節雄君の質疑に関連いたしまして、法務大臣より発言を求められております。これを許します。犬養法務大臣。(「委員長、答弁はどうするのか、おかしいじやないか」と呼び、その他発言する者あり)犬養法務大臣
  183. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。作目の横路委員よりの御質問にお答えをいたしたいと思います。横路委員の御質疑の大体の趣旨は、政党が造船融資に関し、政府から利子補給を受けた金融機関から選挙に対して献金を受けた場合、政治資金規正法第二十二条に触れるかどうか、こういう御質疑であつたように承知いたします。そこでこれに対してお答えを申し上げるわけでございますが、当該金融機関が船主に対して融資をなした場合、年利一割一分の貸付利息に対しまして、政府から平均約六分の利子補給を行つています。この場合右金融機関が利子補給契約の当事者でありますが、問題は右契約が公職選挙法第百九十九条にうたつてあるいわゆる特別の利益を伴う契約に該当するかどうかという問題でございます。そこで外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法は、外航船舶建造ということが国家公共の利益にかかわるものであるというのにかんがみまして、市中銀行が船主に対して相当危険性のあるこのような融資を行おうとする場合に、少くともその得べき利子の一部につき損失なからしめてその融資を円滑にし、ひいては船舶建造を促進させるため、特に法律をもつて利子補給をなすのでありまして、これによりまして市中銀行にいわゆる特別の利益を付与するものではないと解釈いたしております。およそ法律というものは、御承知のように特定の業者に対して特別の利益を付与することを目的といたしておるとは考えられません。従つて公職選挙法弟百九十九条のいわゆる特別の利益を伴う契約の当事者には当らないと解釈いたしております。
  184. 横路節雄

    ○横路委員 ただいま法務大臣は、公職選挙法百九十九条の弟二号、衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と請負その他特別の利益を伴う契約の当寺者である者というのにはこの金融機関は当らない、こう言つているのでありますが、この点は昨日の法務委員会におきまして塚田自治庁長官は、この外航船の利子補給に関するところ金融機関は、この法律に基くところの国とのいわゆる特別の利益を伴う契約の当事者であると答弁をいたしておるのであります。従つてただいま法務大臣からこういう答弁があるということは、私は政府部内の意見の不一致だと思うのであります。きのうの法務委員会で現に答弁している。きようは法務大臣はこういう答弁をしている。私はこの塚田自治庁長官の答弁に関する閣内の不一致につきましてはさらにあとでまたお尋ねしますが、ただいま法務大臣からお話されました点につきましては、この外航船舶建造融資利子補給法の第一条は、「この法律は、外航船舶の建造に要する資金の融通について政府が利子補給金を支給し、及び損失補償を行う」となつているのであります。国が金融機関に対して利子補給をするのと、そのほかに金融機関が船会社に金を貸して取立てができなくなつた場合には、国が損失補償をするのであります。この点につきましては第一条に明確にあり、さらに第九条で、損失補償の限度についてもうたつているのでございまして、この点につきまして法務大臣の、この外航船の建造利子補給法について、国と金融機関とはこの公職選挙法百九十九条の第二号に該当するものではないという解釈は、私はあまりにも自由党に所属していらつしやる法務大臣としての見解ではないかと思うのであります。そういう点で、私はこの法によつて正しく答えてもらわなければ——それなればこそ塚田自治庁長官が昨日法務委員会において、国と金融機関とのこの契約は明確に外航船の利子補給法に伴うところの契約の当事者であると言つているのであります。その点重ねてお尋ねします。
  185. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。塚田長官先ほどの法務委員会においてまさに私と同じ答弁をしておられる次第でございます。それから損失補償法の発動はまだ一つも行われておりません。従つて原則論の応酬であるならばともかくも、事実をあげての御質問に対しては、損失補償は、実際はそういうケースはまだないのでございます。また利子補給につきましては、危険性のあるこれらの融資を銀行が引受けまして、その与えらるべき損害を埋めるというので、特に利益を生ずべきという法文には当てはまらない、これが政府の解釈であります。法務省のみならず法制局と打合せした上の見解でございますから、さよう御承知を願います。
  186. 横路節雄

    ○横路委員 私は法務大臣お尋ねいたしますが、いわゆる国との契約者であるということについては、法務大臣はどうお考えになりますか。金融機関が国との契約者である、しかも外航船の建造の利子補給に関する国との契約者であるということについては、この点はどういう見解をおとりになつておるのか、その点をお伺いいたします。
  187. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。一般論としてこの場合、船主または造船所が契約者に当るか、それとも融資機関の方が契約者に当るかという御議論の質問に対しては、一般論としては契約当事者は金融機関である——造船所や船主よりは金融機関というべきである、こう申し上げたのでありますが、この法文の特に利益を生ずべき契約者には当てはまらない、こういう解釈であります。
  188. 横路節雄

    ○横路委員 これはひとつもう少し時間をかけて、法務大臣も、そうあまりにも政府という立場からばかりでなしに、法務大臣として正しい見解を示されたいと思うのでございます。なぜならば、いわゆる一定の利益を船舶会社が上げた場合においては、船舶会社にこれを国に納付すべきことを命じておるのであります。今大臣は一体国との契約という場合に、一般的な契約といえばそれは正しく金融機関であると言われたが、それならば私はあなたにお尋ねしたい。直接の利益を伴うものは一体何なのか、外航船の建造利子補給法に伴つて直接利益を伴うものはだれなのか、ひとつあなたの御見解を伺いたい。だれが一体利益を伴うのか。
  189. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。お互いがここで議している問題は、つまり契約当麻者が何者であるかという問題なのでありますが、その契約当事者は、船主や造船業者よりはむしろ——しいて契約当事者というものを一般論としていえば、それは融資機関だということを昨日もお答え申し上げました。今おあげになりましたこの法文の、特に利益を生ずべき契約という、その法文通りの契約には当てはまらない、こう申し上げているわけであります。
  190. 横路節雄

    ○横路委員 法務大臣お尋ねしますが、このことはきのうから始まつたことではないのでありまして、これは十五日の私の質問に対する政府側の答弁の保留から始まつたのであります。法務大臣は今まで私に具体的な事例を示せ、具体的な事例を示せと言い、きようは一般的なんですから、私も具体的に話をいたしたいのであります。大臣に私が開いていることは、いわゆる外航船の利子補給法によつて国からだれが利益を与えられるのか、この点についてお尋ねするのです。
  191. 犬養健

    犬養国務大臣 横路さんの今の御質問は、当該の質疑応答と少しはずれるわけでございますが、それではこういうふうに申し上げましよう。つまり具体的に答弁しろというお話でございますから、具体的にこの法文にうたつてある、特に利益を生ずべき契約の当事者というのには当てはまらないと具象的にお答えしておるのであります。
  192. 横路節雄

    ○横路委員 わかりました。それでは法務大臣お尋ねいたしますが、外航船の利子補給に伴つて、国が利子補給をする契約の相手はだれでございますか、外航船の利子補給法に伴つて国がいわゆる契約をする相手はだれですか、この点をお尋ねします。
  193. 犬養健

    犬養国務大臣 よくわかりました。ただこれは法規的の問題でなく、常識論になるのであります。反射的に利益を受けるのは船会社であり、造船所でありますが、あいにくそれは当事者でございません。
  194. 横路節雄

    ○横路委員 それでは法務大臣お尋ねいたしますが、法務大臣お話で、直接の利益を伴うのは船会社であり造船所であるということがわかつたわけです。そういたしますと、ここでひとつ問題になることは、外航船の利子補給法に伴つて造船会社、海運会社は明らかに国から利益を与えられるということになつた。そうするなれば、国から利益を与えられることになつたこの造船会社、船会社、船主協会、造船工業会から、三党の予算の修正並びに政府提案の法律案に対する修正の提案者並びにこれが議決に参加した者にして献金を受けている者は、明らかに刑法の第百九十七条の適用によつて私は涜職罪が成立すると思うがどうか。私が十五日にあなたに念を押しておいた点をあらためてここで御答弁願いたい。
  195. 犬養健

    犬養国務大臣 横路さんの論理は横路さんの論理として敬意を表しますが、私は直接の利益を受けるものが船会社もしくは造船所であるとは申しません。反射的に利益を受けるのは船会社、海運会社。まわりまわつて利益を受けるのはだれかしいて言えというお話でございますから、反射的な利益を受けるのは船会社、しかしあいにく当肝者でない、こう申し上げたのであります。
  196. 横路節雄

    ○横路委員 涜職罪の点を……。
  197. 犬養健

    犬養国務大臣 従つてただちに涜職罪を構成するとは思つておりません。
  198. 横路節雄

    ○横路委員 外航船の利子補給に伴つて造船会社、海運会社が利益を受けるものであるという法務大臣のお考えについては、私もその通りだと思うのであります。そこでもう一ぺん元へもどりまして、きのうから答弁が保留になつております百九十九条の点につきましては、法務大臣の、外航船舶建造融資利子補給法によつては、金融機関は全然国から利益を与えられないという考えはおかしいのであります。なぜなら、金融機関が相手の船会社に金を貸す、金融機関が船会社に金を貸した場合に取立てることができるかどうかということが一番心配なんです。利子が払つてもらえるかどうか、払えなければ金融機関は預金者に迷惑をかける。それに対して国が保証したのでありますから、私は何としてもこの外航船舶利子補給法によつて金融機関は国から利益を与えられておると思うが、あなたは一銭も利益を与えられておらないとお思いですか。ただ契約の当事者たけであつて、一銭も利益が与えられない。この点については、銀行は相手方に金を貸すときに、一体利子を払つてもらえるかどうか、いつ返してもらえるかということが心配なんです。そのとき国が安心して貸してやりなさい、その差額の利子は払つてやりますよ、将来において損失が起きたならば補償してやりますよ、そうですかと言つて安心して貸せる、これが一体特別の利益で全然ないのでございましようか、この点についてお尋ねいたします。
  199. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。そこは結局お互いの解釈の相違となるのでございましようけれども、危険性の多い融資に対して予期し得べき損害を損害なからしめるという作用なのでありまして、特に法文に「特別」という字が使つてありまして、特別に利益を生ずべきということには当てはまつておらぬという解釈でございます。
  200. 横路節雄

    ○横路委員 まだたくさんありますが、もう一度今の点を伺います。金融機関が船会社に金を貸す場合に、金融機関としては、その点に対して、それぞれ信用調査その他非常に心配なのです。その利率の差に対して、相手は利子を払わなければならないが、払わない場合が多い。その点を国が負担してやる。将来損失が起きた場合には、損失を補償してやるということをもつて、なぜ法務大臣は、金融機関は国から何ら利益が与えられてないとおつしやるのか。私は極端に活をする。何ら利益は与えられませんか。この第一条から第十一条までの間で、金融機関は国からは一銭も一また安心して貸せるという信用に対しても、金融機関は四からは何ら、恩恵といいますか、そういう利益は受けておりませんか。その点をお尋ねします。
  201. 犬養健

    犬養国務大臣 問題は法文に書いてある特別の利益を生ずべきということり違反行為になるか、その出発点から出ておるのでございます。従つて損害を損害なからしめるということが特別の利益を生ずべき契約当事者とは考えていないという解釈を申し上げているのでございます。また、どうも私が自由党員だからそういう解釈をしたようなお話でございますが、これは法制局とも十分打合せた結果、同じ結論に達したものであることを申し上げておきます。
  202. 横路節雄

    ○横路委員 昨日から問題になつておるのは、前段のその点と、衆議院並びに参議院選挙においてはということなのですが、実は昭和二十八年の四月十一日、昨年の選挙にあたりまして、都市銀行、地方銀行、信託銀行有志代表水田直昌の名をもつて、自由党は七百万円の献金を受けているのであります。この点につきましては、公職選挙法二百一条に、明確に、衆議院選挙、参議院選挙においては、何人といえども匿名の名義をもつてしてはならないとなつておるのであります。従つてこの都市銀行、地方銀行、信託銀行有志代表というからには、明確にここに何銀行の頭取だれだれあるいは地方銀行、何銀行だれだれ、信託銀行のうちのだれだれと書かなければなりませんのに、水田直昌氏は自分の受けたその金を、匿名をもつて、受けた者の名を隠して、自分の名で、有志代表として七百万円を明らかに献金したのでございます。この点につきましては、御承知のように公職選挙法二百四十八条、二百四十九条、政治資金規正法第二十二条、第二十六条に照しまして、受けた政党自由党は明らかにこの公職選挙法違反であり、さらに政治資金規正法違反であり、届けたものを同様に違反でございますが、この点はどうでございますか。
  203. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。この問題について当局として調査する順序を申し上げます。まず第一にその有志とやらが融資銀行のみであるかどうかということを調べ、かりに融資銀行のみがいわゆる有志ということで献金しておりましても、先ほど申し上げた解釈によつて、これは違法にならないと解釈いたしているのであります。
  204. 横路節雄

    ○横路委員 法務大臣、今のは勘違いなさつていらつしやるのです。それは、今のは百九十九条の点でありましたが、私は献金について二百一条を言つているのです。二百一条には、「匿名の寄附等の禁止及び国庫帰属」と書いてありまして、「何人も、選挙に関し、本人の名義以外の名義を用いた寄附及び匿名の寄附をしてはならない。」第二項「何人も、前項の寄附を受けてはならない。」というのであります。これはあの選挙に関してでありますから、昨年の四月十一日に都市銀行、信託銀行、地方銀行の有志代表水田直昌として受けている。ここに明らかに全部の名前を列挙しなければならぬのに、この七百万円については他から受けたものを水田直昌氏が自分の名前を付してやつているのでございますから、出した水田直昌氏はこの二百一条の第一項、それから受けた自由党につきましてはこれは同様に抵触すべきものでございますので、その点をお尋ねいたしておるのでございます。
  205. 犬養健

    犬養国務大臣 はなはだ失礼いたしました。この点は水田何がしという者が代表として名を連ねておりますので、匿名と解釈しておりません。
  206. 横路節雄

    ○横路委員 今の点につき決しては、法務大臣、この点は有志代表という場合にはそれぞれの銀行名、それぞれの人の名前を全部書かなければ代表というのにはならないのであります。この点につきまして重ねてもう一ぺんお尋ねいたします。   〔発言する者あり〕
  207. 倉石忠雄

    倉石委員長 御静粛に願います。
  208. 横路節雄

    ○横路委員 法務大臣、きようはこの点はぜひお尋ねしたいのです。いわゆる匿名の寄付を受ける制限……。(発言する者あり)静かにしてくれませんか。
  209. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  210. 横路節雄

    ○横路委員 匿名の寄付を受ける制限行為としては、いわゆる街頭の帯付行為につきましても、街頭で資金カンパを受けます場合に、全部で何万円集まつた、代表だれだれではだめなのでございます。これに対する禁止条項は、街頭でした者はだれだれ、十円だれだれと必ず住所氏名を書かなければならない。同時にこの点につきましては演説会場等におきます資金カンパにつきましても、全部住所氏名金額をつけて出さなければ、これは明らかに選挙に関するところの匿名の制限行為になるのでございます。従つて有志代表水田氏ではだめなのでございまして、これには当然何々銀行だれだれ、こういうふうになるべきで、この点は今まで公職選挙法に関しましてこのいわゆる街頭の資金募集あるいは選挙に関する演説会場等における資金カンパに対する禁止条項からあわせて、今の大臣の御答弁は公職選挙法に対する一貫した趣旨ではないのでございます。それなら街頭並びに演説会場におけるそれぞれの届はどうなさるのでございますか、その点をお尋ねいたします。
  211. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。街頭または演説会で資金カンパする場合は、お互いが顔も知らない、住所も知らない人で、だれが代表になり得るという資格を具備しておりません。従つてこの場合とは場合が異なるという解釈をいたしております。
  212. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると法務大臣、今のお言葉ではやはり街頭におけるいわゆる選挙資金あるいは演説会場等における選挙資金については、顔も何もわからないのだから全部書かなければならない、こういうのでございましようか。私はこの点は法務大臣、たとえば東京銀行協会とかあるいは全国銀行協会連合会とか、そういう名前で出されているのであるならば私は言わない、それならば言わないのです。しかしここには明らかに都市銀行、地方銀行、信託銀行の有志代表となつているから、この点につきましてはいわゆる東京銀行協会とか全国銀行協会連合会というものとは違うのでございます。当然それぞれの名前を列挙しなければ明らかにこの二百一条の規定に私は反すると思うのでございます。その点あとの見解と、それから街頭並びに演説会場等における点の見解が、法務省としては違つて来たので、その点あらためてお尋ねをいたします。
  213. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。法務省として見解が違うという意味がよく了解いたしかねるのでありますが、街頭カンパとかいうのはだれが代表になり得るという資格条件を具備しておりません。この場合は代表水田何がし、ちやんと逃げも隠れもせず名乗つておりますので、匿名と解釈しておらない次第であります。
  214. 横路節雄

    ○横路委員 それでは法務大臣お尋ねいたしますが、今私が申し上げました四月十一日の水田氏を有志代表といたしました七百万円については、これはいわゆる政党へ対する献金、選挙に関する選挙資金とお考えになつておるかどうか、この点さらにお尋ねいたします。
  215. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。これも具体的にあらためて当事者に聞いてみなければ、にわかにここで断定するということは多少早計かと存じます。
  216. 横路節雄

    ○横路委員 それで私法務大臣に申し上げますが、これは東京都公報の七月十日です、東京都選挙管理委員会告示第四十五号「政治資金規正法第二十条の規定により、同法第十三条の規定による衆議院議員選挙及び参議院議員選挙における政党協会その他の団体及びその支部の収支に関する報告書の要旨を次のとおり公表する。昭和二十八年七月十日東京都選挙管理委員会委員長佐野保房」と書いてございます。そうしてこの中に自由党はこの期間中に衆議院、参議院選挙の寄付及び収入の、寄付総額といたしまして二億一千三百六十五万円を見ております。そうしてこれに対する支出は二億九百十五万五千五十八円を支出いたしております。この中に今申し上げました七百万円を都市銀行、地方銀行、信託銀行有志代表水田直昌で、これは明らかにいたしておりますので、この点は具体的でないとおつしやるならば、私がここに東京都の公報、その届出を持つて参りましたので、この点については大臣、私の今ので間違いがないかどうかひとつ御答弁を願いたいのであります。
  217. 犬養健

    犬養国務大臣 御教示ありがとうございました。これは有力な参考材料としてただちに調査の材料にいたします。
  218. 横路節雄

    ○横路委員 ただいま私から有力な資料を示されたというが、材料を示すよりも何よりも、東京都選挙管理委員会委員長名をもつて正確に出しておるのであります。そこで私は法務大臣に対してお尋ねをいたしますが、今度の問題は、やはり将来のいわゆる政党間における選挙に関する献金その他の問題に対して重要な問題を含んでおりますので、私もただ単にわが党の立場からばかりでなしに、やはり日本の政界全体のためからも明らかにしておきたいと思うのです。仏は念を押しておきたいのですが、外航船舶建造融資利子補給法で、私どもは社会党としては明らかに国と金融機関とはこれは契約の対象である、この点は大臣もお認めになつた。しかし大臣は、金融機関は国からは直接の利益を与えられていないと言われる、直接の利益を与えられていないということになると、間接の利益を与えられているというように、裏をひつくり返せば聞えるのですが、私が大臣お尋ねしたい点は、大臣先ほど、まだ損失補填を受けていないと言うが、損失補償を受ければ、言葉の印象では何か将来利益を受ける対象になるかのようなことをおつしやつたと私は受けたのであります。契約の当事者であるということはお認めになつたのでございますから、そこでこの全文を通して明らかに金融機関が国から直接の利益を伴うに至つた場合においては、これは献金か受けてはならないということには間違いないと私は思うのでございますが、その点はどうでございますか。もう一ぺん申し上げます。特別の契約当事者であることは大臣もお認めになつたのですから、そこでこの法文全体を通して金融機関が国から利益を伴うという具体的な事例があがつた場合においては、これは明らかに献金を受けてはならない対象である、こう私は思うのでございますが、大臣も御同感だろうと思うのですが、この点を明らかにしておいていただきたいと思います。
  219. 犬養健

    犬養国務大臣 ノートをとつておりまして、開き漏らした点があればまたあとで……。法務大臣は当事者たることは認めたというお話は非常に概念的で、失礼ですがもう二度申し上げます。私は違法か違法でないかを取扱う役所を主宰しておるのであります。違法であるかどうかは具体的な法文に照さなければわからないことであります。具体的な法文に照しますと、特別の利益を生ずべき契約当事者ではない、こう申し上げたのであります。昨日は、造船所や船主が当事者ではない、もし常識論としてしいて当事者といえば、それはむしろ融資機関、こう申し上げたのであります。今日はそれは違法かどうかという御質問に対する答弁でございますから、御指摘になりましたこの法文によつて、違法かどうか言わなければならない、一般論の常識論として言うのはこれはおかしいのであります。その具体的な法文に照して違法かどうかといえば、特別の利益を生ずべき契約当お者ではない、こう申したのであります。  それから第二には、直接の利益を造船所や船主が受けたということはどうも認めたようであるというお話でありますが、これも多少違うのであります。反射的な利益を受けておるのは造船所や船主であるが、これは同時に他方において契約当事者ではありません、こう申し上げたのでありまして、これを要するに公職選挙法違反とは認めておらないのでございます。
  220. 横路節雄

    ○横路委員 今法務大臣のお言葉で私ども非常に微妙であると思うのは、なるほど反射的に利益を伴う、直接には船会社や造船会社の利益だが、反射的には金融機関が利益を受けるのである、なぜならば損失補償を受けるのですから。この点は大臣は今確認された、私はそういうふうにお聞きしたのですが、間違いございませんか。
  221. 犬養健

    犬養国務大臣 どうも常識的な一般論と、この法文を基礎としての違法かどうかという議論がときどき交叉いたすので……。   〔「自分がごちやごちやにしているんだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  222. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  223. 犬養健

    犬養国務大臣 そこでもう一つ申し上げますが、損失補填法が発動すれば、これは違法になるというふうな御期待のもとに、予期のもとにの御質問があつたようでありますが、損失補償が行われても特別の利益を伴う場合とは解釈いたしておらないことをお断りいたします。
  224. 横路節雄

    ○横路委員 それでは私は今までの点につきまして法務大臣から受けました私の見解を申し上げたいのであります。  まず第一番目に、地方銀行、都市銀行、信託銀行の有志代表である水田直昌の献金は、明らかに衆議院、参議院選挙についての献金である。従つて私とあなたとの食い違いは、あなたは有志代表であるから、これは決して二百一条には抵触しないと言うが、私どもは明らかに  この有志代表というのは明らかに匿名です、なぜならば七百万円の金は何十人か何人かから受けているのでありますから。従つてわれわれの考え方は、これは二百一条の違反であり、同時に公職選挙法二百四十八条、政治資金規正法二十二条、二十六条の違反である。金を受けていることは明らかになつたのですから。この点が一つ、もう一つは、大臣はこの公職選挙法の百九十九条の後段を受けて、特別の利益を伴う契約の当事者ということは、この法律の全文からはうたわれないとおつしやつた。この損失補償法の第一条には「この法律は、外航船舶の建造に要する資金の融通について政府が利子補給金を支給し、及び損失補償を行う」と書いてあるのであります。さらに第二条、第四条、第五条、ことに第五条第二項の融資総額を当該船舶の予定竣工日以後十年間の半年賦均等償還の条件という点につきましても、運輸委員会その他の提案によりまして、この法律によつて船会社が金融機関に利子を返すことのできない点につきまして補償する点は明確になつておるのであります。なお第六条につきましても、この点につきましては政府と銀行、銀行と会社との関係において明らかになり、第七条は補償金の総額であり、第八条は損失の範囲、第九条は損失補償の限度でございます。従つてども社会党といたしましては、国と金融機関とはこの外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法に基く契約の当事者であり、しかも公職選挙法第百九十九条第二号にうたつているいわゆる特別の利益を伴う契約の当事者である、そういうように明確に考えているのであります。従つてどもとしましてはこの点は明らに公職選挙法の違反であると考えているのであります。  なお私は法務大臣お尋ねをして、できますならばこれで終りたいのですが、先ほどあなたは造船会社並びに海運会社はこの利子補給法によつて直接の利益を受ける当事者である——契約ではありませんよ、直接の利益を受けるものである、こう答弁された。そこでこの三党協定に基く予算の修正並びに法案の修正に参加された議員が海運会社、造船会社から献金を受けておることがあるとすれば、私は明らかに汚職罪が成立すると思う。この点が一つ。  最後に一つ。いろいろ国会で問題になりました有田二郎氏に関しましては、計画造船の割当について第三者としてあつせんして、その間に賄賂を受取るというか受渡す目的というか、そういう容疑によつて検察当局が逮捕の要求をなすつたものでないかと思うのであります。この機会に計画造船の割当につきましても、先般の十五日の私の質問に明確に御答弁をしていただきたいと思います。なおあわせて有田二郎氏に対する地検の要求はどういうものであるのか、その点も明かにしていただきたいと思うのであります。
  225. 犬養健

    犬養国務大臣 法務省の役目は、御承知のように罰則を伴う法相の法文に照して違法であるかどうかということを具体的にきめることでございます。従つてその意味からいつてこれは違法にならいと解釈しておるのでございまして、これも明確なる解釈を持つております。これは残念ながらお互いに解釈の違いだと思うのでございます。  なお有田二郎議員に対して東京簡易裁判所から国会に対して逮捕許諾を求めて参りましたが、これは有田二郎議員が官吏の壷井氏に対して贈賄したという容疑であります。
  226. 横路節雄

    ○横路委員 この点につきましては、私どもは将来党としての法本的な態度をきめていたしたいと思うのであります。  なお十五日に委員長要求いたしました検事総長の点についてはどうなりましたか。この点は委員長からも、佐藤検事総長については出席するように特別のおとりはからいをいただいておるというお話で、きのうもその点は委員長からお話があつたので、この際本委員会において、委員長としてはどういう措置をおとりになられておるのか、その点お尋ねいたしたいのであります。
  227. 倉石忠雄

    倉石委員長 御承知のように、委員長は各党から選ばれておられます理事諸君をもつて構成する理事会に運営の方針を諮つて、決定いたしておりますが、ただいま御要求のありましたことについては理事会におきましては、理事の多数の方々は、検察当局をこの際本委員会に呼ぶことについてはなお検討を要するということで、留保いたしておるわけであります。後日に相談しようということであります。
  228. 横路節雄

    ○横路委員 ただいまの委員長のおとりはからいですが、私は十五日からこの点につきましては、検事総長から、この外航船の利子補給法に関してのいろいろな成立のいきさつ等から行きまして、私としては先ほど法務大臣からああいうお話がありましたが、ぜひ検事総長から、検事総長としての見解を承りたいし、そういう点につきまして、ぜひ委員長としても、ひとつできますならば明日理事会において早急におきめになつて、検事総長から御答弁をいただき、私からさらに質問できるようにおとりはからいをいただきたいと思います。
  229. 倉石忠雄

    倉石委員長 理事会に相談をいたして御返事いたします。
  230. 横路節雄

    ○横路委員 以上をもちまして本件に関する私の質問を終ります。
  231. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日はこの程度をもつて打切りまして、明日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十一分散会