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滝井委員 時間がありませんので、厚生
大臣の御
答弁はあとで一緒に……。今機構が非常に複雑であるということを私は具体的に御
説明申しました。今度は事務的な面を具体的に御
説明申します。たとえば私が一人の結核患者を見たとします。いかにこれが事務的に複雑であるかということを具体的に御
説明します。われわれまず今までの昔の開業医制度の時代であるならば、患者が来れば大体一枚の診療録に患者のプロトコールをと
つて、いわゆるいろいろの既往症その他を聞いて書けばこれで済んだ。そうしてこれも医師法の規定によ
つて何年か大事に直ておけばそれでよか
つた。
ところが現在の社会保険の制度にな
つて、いかに事務が複雑にな
つておるかというおとを申し上げて、改革をしてもらわたければならぬと思いますが、まずここに健康保険の被保険者で一人の結核患者が来たとします。そうしますと、まず診療録に詳細なものを記入します。診療録に記入するにあた
つては、皆さん保険証を持
つて行きます。
従つてこの保険証に医者はまず来た病人の病名を、肺浸潤なら肺浸潤と書いて何月何日に初診をしたと、こう書きます。これをまず来たときにすぐ出して書くわけです。それからこれは被保険者ですから、当然会社を休まなければならぬから、医者は診断書を会社に出させるような処置を講じなければならぬ。これがいります。それからさらに今度は患者が会社を休んでおるか、それとも
現実に会社に行
つておるかというために通院表というのがいるわけです。この通院表によ
つて、診療の判を押し、会社の労務あるいは勤労課に行
つて、毎日医者に行
つておりますという通知表というものに判を押してもらわなければならぬ。これがいります。さらにこの患者は結核患者でございますので、医者は保健所に向
つて結核患者の届出をやらなければならない。実にこういう複雑なものです。これは秘密でございます。結核患者についてはこれを保健所に出さなければならない。結核患者を見たら、医者はすぐにこれだけの処置を当然義務としてやらなければなりません。そうしてこの患者が月末になりますと、今度は診療費の請求をやらなければなりません。そうすると、私のうちに百人の患者がおれば、百人について今まで診療した薬品あるいは注射の数を、診療報酬の請求明細書というものに全部書かなければなりません。これに書きますと、今度はその上に診療報酬の請求書というものをつけまして、これが今度は政府の分は政府の分、組合の分は組合の分、消防署の分は消防署の分、警察の分は警察の分、学校の先生は学校の分というように、それぞれの会社別にこれをつく
つて、この上に置きます。そうしてさらにその上に、私の一箇月のすべての請求額は、患者が五百人で、請求の
金額は十万円になりますという総括票をつけて、これを出します。そうして三箇月ぐらいすると、今度は組合員の事務所から
滝井義高の診療報酬の請求書は十万円に
なつた、お前の口座を開いている何々銀行に行
つて受取りなさいという、診療報酬の支払いの通知書がや
つて来る。そうするとその支払い通知書を持
つて行
つて、銀行にこれを出しますと、銀行が現金をくれることになる。三箇月後です。そうすると今度は患者の方の措置をしてやらなければなりません。結核患者ですから、当然仕事を休みますと、結核患者は月末には賃金の六割だけの傷病手当金の請求書をこしらえますから、この傷病手当金の請求書二枚を、われわれは詳細にその主要症状からその
病気の経過、なぜこれが労務不可能であるかという具体的なものを書いてやらなければなりません。これがまず見たときの
段階。今度はこの患者が結核予防法の処置でパスマイシンを受けることになりますと、さらにその上にパスマイシンの申請書の書類かいります。家族の
調査票がいります。住民登録の抄本かいります。納税の証明書がいります。診断書がいります。レントゲンの写真がいります。それから今の結核患者の届出がいります。これだけが医者が一人の結核患者を見たときの書類でございます。
日本の
科学技術を振興しなければならないという論が行われております。おそらく各官庁においても、たとえば私は
地方団体、農業会における農業技術員、農業協同組合における農業技術員というものは、農業の生産力を上げる技術を指導するものだと思います。
ところがこの技術屋が事務屋にな
つておる。厚生省でもそうだと思う。厚生省の技官が実際に技術的な自分の習
つたところの医学を厚生省でほんとうに使
つておるかというと、おそらく厚生省におられる大学を卒業している六十人ばかりの技官というものは、自分の技術よりか、こういう事務屋にな
つておると私は思う。これらの紙の一枚一枚の先に役所があるのでございます。こういう
状態で、事務は実に複雑怪奇、機構は複雑怪奇、
従つて医者は医学と医術を勉強するひまがなくて、事務屋になり下
つておるのでございます。これは何も医者のみではありません。
日本の官庁機構においても、技術者はすべて事務屋にな
つておる。
従つて技術者は希望を持ちません。われわれが昔
学生の時代に三丁目一番地という
言葉があ
つた。技術者は高等官三等級までしか行けなか
つた。なぜならば官庁においても技術屋でなくして事務屋なんだから。こういう
ところに
日本の
科学技術の根本的な誤りがあり、
日本の現在の医療制度か行きつつある方向に大きな誤りがあるということを、
大臣は知
つていただかなければなうして国家の権力でも
つて国民の今日与えられた権利というものを、蹂躙しようとしていらつしやる傾きがあると私は思う。六十三億減額されるからということを主張なさいます。もちろん今日の国家警察と自治警察が非能率的であり、不合理であり、非科学的であるということはわか
つておる。しかし警察法の改正を六十三億の減額という面からのみ論ぜられるということは、はなはだ問題だと思う。私は国家警察、また元のおいこら警察でも
つて、再軍備街道を突進せんとする
ところの
吉田内閣が、同時に
国民の思想をもこれによ
つて押えて行こうという行き方があると思う。この非難は私は免れないと思います。今緒方さんがきれいな
言葉で、
国民生活 充実して思想を漸次よい方に向けて行くとおつしやいましたけれ
ども、これは言行不一致であるということを申し上げて、御忠告しておきたいと存ずるのであります。
次に私はこの間から防衛問答を承
つておりますが、これは全国の子供や青少年を持つあらゆる家庭に、大きな黒雲のごとくのしかか
つておる課題でございますから、ひとつはつきりと将来のために
お答え願いたいのであります。この間私がある
ところで非常に入学難に悩む
ところの長男を持つ家庭で、皆さんと話し合
つたことでありますが、今年大学を受ける子供は非常に混乱の中に育
つた。生れたわけのわからないころから
戦争であ
つて、そうしておやつももらわないで、ズツクもはかないで、やつと終戦に
なつた。終戦に
なつたら学制はかわり、
政治はかわり、憲法はかわり、すべてがかわ
つて、風にそよぐあしのごとくこの子供たちは悩み抜いた子供だ。
ところが大学の入学試験でかくも悩む。しかも私はそこにつけ加えて、この息子さんが大学を卒業したころには、義務徴兵制が来るのじやないでしようか、こういうことを申した
ところが、みんながうなずかれたのであります。この間から防衛問答を承
つておりますと、政府は防衛計画に自信がない。またあるいは五年先あるいは六年先の計画をここで発表いたしますと、こつぱみじんにたたかれるから、わざと言わないでおこうということにな
つておるのかもしれませんが、しかし
責任ある政府としては、防衛計画をはつきり示されなければならない。将来の
見込みが立たない、もちろん立たないでありましよう。ジエツト機や軍艦が過去の兵器にな
つてしま
つて、原爆や水爆やコバルトについて行かなければならないとな
つて来ると、木村保安庁長官がおつしやる
ところのいわゆる近代戦を遂行する力というものは、とうてい
日本の国家経済では養い得るものではない。けれ
ども、安全保障条約、そうしてアメリカの大きな軍隊を背景とした今日の駐留軍にと
つてかわるべき
日本自衛軍を創設しようとなさるならば、財政的には及ばない。ことに将来三十八万云々と、か
つての陸海空軍をはるかに上まわる
ところのものを計画なさ
つておるとするならば、好むと好まざるとにかかわらず、当然政府は将来義務徴兵制でなければ、人的にも経済的にもや
つて行けないという考えを持
つておいでになるのではないかと思うのでありますが、将来青少年に対して自衛力強化のため、あるいは戦力に至らざるとも、これを義務徴兵制で召集する意図ありやいなや、これは全国の家庭で大きな関心を持
つておる問題でありますから、ここではつきりと承りたいと存じます。