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1954-04-03 第19回国会 衆議院 郵政委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月三日(土曜日)    午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 田中織之進君    理事 小林 絹治君 理事 羽田武嗣郎君    理事 船越  弘君 理事 大高  康君    理事 山花 秀雄君 理事 吉田 賢一君       河原田稼吉君    坂田 英一君       三池  信君    櫻内 義雄君       佐藤觀次郎君    淺沼稻次郎君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         国家地方警察本         部警視長         (刑事部長)  中川 董治君         国家地方警察本         部警視長         (警備部長)  山口 喜雄君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         公安調査庁次長 高橋 一郎君         郵政政務次官  飯塚 定輔君         郵政事務官         (監察局長)  齋藤信一郎君  委員外出席者         郵政事務官         (大臣官房人事         部長)     宮本 武夫君         郵政事務官         (郵務局次長) 渡邊 秀一君         専  門  員 稻田  穰君         専  門  員 山戸 利生君     ――――――――――――― 三月二十九日  委員櫻内義雄辞任につき、その補欠として並  木芳雄君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員並木芳雄辞任につき、その補欠として櫻  内義雄君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員松浦周太郎辞任につき、その補欠として  今井耕君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月一日  特定郵便局廃止反対に関する陳情書  (第二六四六  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  郵政行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 田中織之進

    田中委員長 これより郵政委員会を開会いたします。  郵政行政に関して調査を進めます。まず先般の上田市における公安調査官による郵便物調査事件について、その概要の説明を聴取いたしたいと思います。まず郵政省側から説明を願います。
  3. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 本件長野県の上田市の公安調査官が、配達途上郵便集配員に対しまして、特定の人にあてた郵便物発着状況部数発受人住所氏名等質問いたした事件であります。昨年の十一月ないし十二月ごろに一回と本年の三月に三回、集配員は別人でございますが、これに対しまして質問があつたわけであります。これに対しまして集配員は、平素から業務研究会その他の機会におきまして、こういう事案につきましては郵便法第九条に違反するものだということをよく承知をいたしておりましたので、それに関する情報の提供を拒絶いたした次第であります。本件のような郵便物発受人住所氏名等を漏らしますことは、もちろん郵便法の第九条第一項にいう信書秘密を侵すということにはならないと存じますが、第二項における郵便物に関して知り得た他人秘密を提供するということに該当いたしますので、郵便業務に従事しておる者といたしましては、かたくこれを守らなければならないところでありますので、今後ともこのような事案が再発して法律違反に該当するようなことのないように、最近におきまして一般関係局に対しまして、それぞれその規定違反することのないよう厳重注意するよう通達をいたしまして、注意を喚起いたしておる次第であります。
  4. 田中織之進

    田中委員長 次にその点について公安調査庁側から説明を求めます。高橋公安調査庁次長
  5. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 今回のことにつきましてはまことに申訳ないと考えております。事実関係は今郵政省の方からお話になつた通りでございまして、私どもの方は、各県に地方公安調査局というのがございまして、長野県の場合は長野にございますが、県下各地域に少数の駐在官を置く場合があるのでございます。上田の場合にはその駐在官が二人おりまして、常時そこに駐在して調査事務をやつておるわけでございます。今回の問題はその一人がしたことでございますが、調査をいたしました対象と申しますのは、別途担当公安調査局の方で、普通祖防委と言つておりますけれども、正式な名前在日朝鮮全国祖防委員会という団体がございます。その機関紙もあるわけでありますが、それの配付ルートがほぼ判明いたしておるのでありまして、この機関紙は、在日朝鮮祖国防衛委員会軍事組織であります祖国防衛隊の隊員に主として配られるものであります。それでこの機関紙というのが団体の非常に乗要な組織網の中心になつておりますので、団体員の解明をする場合には、この機関紙を突きとめることが非常に重要となつて参ります。それで私ども一応の資料では不十分であると考えまして、一般的にその裏づけ調査をしなければならないと考えておるのでありますが、上田の問題の調査官の場合には、この裏づけ調査につきまして、実は方法を誤つたということに相なると思うのであります。上田市内のある人のところへその郵便物、つまり機関紙配達されておるというふうに見まして、それを確かめるために昨年の十二月中に一回、本年三月に三回にわたりまして、配達途上郵便局外務員に対しまして、ただいま郵政省の方からおつしやつたように、郵便物内容ではございませんけれども、かくかくの郵便物差出人でありますとか、あるいは部数でありますかというようなことをお尋ねしたのであります。幸いにこれは外務員の方でお断りなつたので、いわゆる実害という程度には至らなかつたのでありますが、これが三月二十三日の朝日新聞投書欄に出ましたので、私どもさつそくその事実を調査したのでありますけれども長野の本局にはそういう事実はない。あと投書だけではどこの地域であるか実ははつきりしませんうちに、二十七日にその場所も明確に朝日新聞に記事が出ましたので、さつそく今週の月曜日に長野局長が病気で今長期欠勤中なのですから、担当の課長を呼びまして事情をよく聞いた上で、厳戒を与えておいたのであります。本件につきましては、これはただいま郵政省の方からおつしやつたように、信書秘密ではないのでありますけれども、要するに広く通信秘密という問題であるべきであつて、このような調査方法は決してしないようにということを一般にもかたく戒めるつもりでございます。
  6. 田中織之進

    田中委員長 ただいまの説明に対して質疑があればこれを許します。
  7. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの説明内容はよくわかつたのですが、その善後措置について、どういうような適切な処置をとられたかについてお伺いしたいと思うのであります。事件はたまたま上田市に起きた一例でございますが、全国的にそういうような形が行われておるかどうかということについては、私どもはまだ疑問を持つております。そこで不祥事件の発生しないように、予防措置とでも申しましようか、適切な訓示とか指示とかいうようなものを、全国的にお出しなつたかどうかという点であります。  もう一つ郵政省の方にお尋ねしたいのであります。たまたま当該のその配達をされていた方が、法規十分知つておりましたから拒絶をした形になつておりますが、もしこれが全国的にあるといたしますと、郵政配達をなすつていらつしやる方が、公安官というような肩書きをもつて見せろと言われますと、気骨のある人は拒絶いたしますが、普通ではなかなか拒絶しにくいと考えております。こういうようなことがないとは言えまもんので、たまたまここに現われて来たのでありますが、今後こういう問題があつたときには当然これは拒絶すべきものであるということを、やはり部内に周知徹底せしめる措置を講ぜられたかどうかという点についてお尋ねしたいと思います。
  8. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 今回の措置につきましては、私ども非常に心配いたしまして、一般にこのようなことを再び起さないために、全国に対してまず通知をすることを考えております。それで先日衆議院の本会議でこの問題について質問があり、大臣からも答弁しておりますので、この速記録を全部複写いたしまして、全国に徹底するように配るということを第一段として考えております。それから全国に対しましてその点をさらに徹底いたしますと同時に、私ども公安調査官研修をいろいろやつておるのでございまして、この場合の調査官は、最初に初任の研修を十日間ほど受けた人でありますけれども、現在二箇月研修を逐次やつております。そういう研修機会において十分にこの点を徹底いたしたいと考えております。
  9. 飯塚定輔

    飯塚政府委員 ただいま山花委員お話のように、郵政当局といたしましても、この事件の直後においては長野郵政局長から長野公安調査官に対して厳重にこの問題について申し入れておりますし、なお一昨日全国郵政局に対して、郵政局長名をもつてただいま御心配になるようなことについて厳重に申し伝えております。
  10. 山花秀雄

    山花委員 それぞれの省において、そういう適切な善後措置がとられたということを聞きまして、一応は私も安心するのでありますが、今後そういうような不祥事件が起きないように、なお格段の努力を上司の方々が払われんことを希望して、私の質問はこれで終ります。
  11. 田中織之進

  12. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 監察局長に伺いたいのであります。郵便法第九条にいう郵政省取扱いにかかる信書秘密ということはどういう趣旨なんでしようか。たとえば信書なつておりますから電話は含まないのかわかりませんけれども、関連しましてそれらにつきましても信書秘密なるものの概念、何を目的としておるか、ひとつはつきりしておきたいと思います。
  13. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 郵便法の第九条第一項におきまして規定いたしております信書秘密の範囲でございますが、いろいろ議論のあるところかと存じます。御承知のように刑法におきましては封緘したる信書というふうに明記いたしておりますのに対しまして、郵便法第九条では単に信書とだけ規定されております。それでこの信書意味につきましては、もちろん封緘しないもの、つまり郵便はがき等もこれに包含するものと存じております。また信書秘密を侵すということは、信書内容を知る意図をもつて、その内容を知ることによつてであります。こういうふうに解釈しております。
  14. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は信書ということは何かということから、ひとつ簡明にやつてもらいたいのです。刑法刑法としまして、郵便法にいう信書、その秘密なるもの、それをひとつ具体的に御説明願いたいと思います。ほかの議題もあるようでありますから、お互いにできるだけ時間を節約して行きたいと思いますからそのつもりで……。
  15. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 特定人から特定人にあてました普通郵便物信書というふうに、郵便関係においては解しております。
  16. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますと普通郵便物というたら、もうちよつと具体的に示していただきますとどういうことになりますか。第何種の何とかいうことになるのですか。その点はどうなんですか。
  17. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 普通郵便物が第一種から第五種までございますが、第一種手紙、第二種がはがきというふうに……。
  18. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 手紙はがき、それから何ですか。
  19. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 なお詳しいことは主管局次長からお答えいたします。
  20. 田中織之進

    田中委員長 要点だけを簡明にお願いいたします。
  21. 飯塚定輔

    飯塚政府委員 今はつきりお答えさせますけれども、第一種封書、第二種ははがき、それ以下のことについては担当官からお答えいたさせます。
  22. 渡邊秀一

    渡邊説明員 普通信書と言いますのは、やはり第一種と二種、つまり書状とはがき、かようなものをさすものと考えております。
  23. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますと第一種手紙封書、それから第二種のはがきがこれに該当するものである、それ以外のものは該当しないということの御説明と了解せざるを得ないのでありますが、もつと広い意味におきまして、これは保護されるべきではないでしようか。これは議論のようでありまして、私も十分の研究はしておりませんから、従つて準備不十分でありますので、確信をもつてお尋ねできないのでありますけれども、大体思想を一方から一方に伝達するといつた方法以外に、その他ここにある十六条の郵便物には一種ないし五種となつております。それから郵便法の二十条には無料郵便として、為替、貯金振替貯金、年金その他いろいろあります。通常郵便物あり、小包郵便物あり等々あります。もちろん九条は信書なつておりますからでありますけれども、第九条の註釈のような括弧の中には秘密確保なつておりますが、秘密確保という以上は、思想の伝達、そういつた種類に限定することなく、金とか物とかそういういろいろな広い意味におきまして秘密確保せらるべき必要もあろうかと思います。ことに今問題になつておりましたのは機関紙の問題であります。機関紙差出人あて名人部数等というようなものが今問題になつておりますから、今お述べになつたところによると、封緘及びはがきに限定してしまえば、それがはずれてしまうことになります、九条は、もつと広い意味におきまして、ほんとうは秘密確保することが立法の大きな目的ではないかと思いますが、その辺の食い違いをはつきりしておきませんと、これは筋が通つて来ないと思うのですがいかがですか。
  24. 田中織之進

    田中委員長 この点について郵政省部内意見を統一してお答え願いたいと思います。
  25. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もし別の違反とかあるいは違法とかいうことになるのはともかくいたしまして、こういうふうにいろいろな種類のものが限定せられておる、その郵便物が今の信書はがきのみが秘密保護対象になり、それ以外のものは秘密確保せられることがないということになつたらたいへんだと思います。でありますのでこれは広く保護するということが私は立法趣旨だろうと思います。どうぞ答えてください。
  26. 飯塚定輔

    飯塚政府委員 ただいまの話のごとく、信書秘密を守るという意味からして、郵便物内容のみならず、差出人名前、たとえばあなたから私にお出しなつ郵便の、差出人受取人という名前まで信書秘密内容として取扱つております。
  27. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまの吉田委員の御心配は、信書になるかならないかで、その秘密が守られるか守られないかという区別になるかとの御心配だと思います。私どもの方はそう考えておりませんで、郵便法の九条は信書であればその保護が、たとえば刑が重いといつたように高度でありますけれども、それだけでなくて、つまり通信物意味内容といつたようなことだけでなくして、それ以外の発信人受取人とかいつたようなことまで、やはり二項の方で広く業務上の秘密として守つておるわけでありまして、これに違反することはできないわけでありますから、私どもさように考えて、特に信書だから秘密を侵すことはできない、信書でないからこれは幾らでも調べられるのだというふうに考えておりませんので、吉田さんの御心配は、私どもの方の考え方からしますと、御不要じやないかというふうに考えております。
  28. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうですか。それは私が誤謬であればまことに幸いなんですが、九条の二項は従事する職員自体に対する規定じやないでしようか。一項は広く職員外部の者もすべてをさすのじやないでしようか。二項によれば「従事する者」と前段にあり、そして秘密を守り、また退職した後も同様に秘密を保持しておらねばならぬということになつておりまするので、それならばあなたのお説によると、二項は除いて、知ることも禁止してあるという御趣旨らしいのですが、二項の解釈はそういうふうに出て来ないのでありますが、その点はいかがでしよう。
  29. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 法律の方の解釈自体はその所管の方にお願いするとしまして、私どもは別に二項だからこれを侵してよいというふうに心得ておりませんから、そのように運用いたしたいと思います。
  30. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 法的根拠はどこから来るのですか。
  31. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 郵便法の九条と考えております。
  32. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 郵便法の九条の二項の解釈は、今申しましたように職員に関する規定とは違うのですか。
  33. 田中織之進

    田中委員長 九条二項についての郵務局側見解はいかがですか。問題点は、二項は郵便に携わる従事員のみに課せられた秘密保持義務であるかどうかという点です。
  34. 渡邊秀一

    渡邊説明員 この第二項の方は、ここに書いてありますように、結局業務上知り得た秘密確保する、こういう意味でありまして、郵便物について言いますと、おつしやるように郵便取扱いに従事しておる者が知り得た秘密といたしまして、今問題になつておりますような点は、秘密保護対象になるわけであります。
  35. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 郵政当局の御説明は、やはり私が今解釈しましたように、郵便業務に従事する者に関する秘密保持の責務の規定、こういうふうに私は御説明を了解するのでありますが、公安調査庁当局の御説明は、規定にかからわらず、侵してはならぬというふうにお考えなつておるようでありまするが、それは別のところからどこか来るのじやないでしようか。この規定外部の者に関する規定でないということであるならば、もつと別のところから、あなた方に対して他人郵便秘密を侵してはならぬという解釈が出て来ねばならぬように思うのですが、これも私十分研究しておりませんので、高橋さんのお教えを請いたいのですが、どうでございましようか。
  36. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 郵便法九条の法律問題については、どこまでも所管の方からお聞き取りを願いたいと思います。私どもは要するにこの問題に関しまして、運用上どういう考え方で行こうかということにつきましては、信書秘密であるかないかということを区別して、調査上差別を設けるつもりはないのであります。もちろん信書内容については非常に高度でございまするから、もちろんこれは侵せないわけでございますが、それ以外のものにつきましても、同様に調査したいというふうに考えております。
  37. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これはやはりあなたの方といたしましても、広く国民の言論とか思想とか交通とか通信とかの自由に関するものでありまするから、その自由を侵害してはならぬというような、そういう憲法上の国民の権利、個人の自由といつたようなところにも、私は基礎があるのではないかと思うのでありまするが、その辺は相当明確に憲法ないしは法律上の根拠を持つて、そしてあなたの方の全般の職員職務行動を律して行かれるようしなければならぬ。もし法律上の根拠がないときであるならば、法律上の根拠に基かずしてある種の職員行動を制限するということは、これまた国家公務員といたしましても、十分に従うことを拒否するというような権限も生じて来るのではないかというようなことすら考えられるのであります。そこで結論的に高度の信書秘密を侵すべからず、さらに第二項の、郵政業務に従事する職員はもとより、広くあなたの方も侵してはならぬ。こういうふうな結論は、私も至極同感でありますけれども、よつて来る法律根拠を明確にしておくということでないと、今後何かとあやまちが生ずることではないかと思うのでありますが、その点はどうでしよう。今第九条の解釈郵政当局に御一任というような御趣旨でありましたが、何も法律郵政省独占物ではないのでありますから、法律内容に対する御見解も、公安調査庁といたしましてもやはり当然正当な解釈を持つておらねばならぬのでありますから、法律上の根拠を明確にして、今の結論裏づけをするということが必要でないかと思うのでありますが、その点いかがでしよう。
  38. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 まことにごもつともの御意見と存じます。しかし郵便法九条自体につきましては、どこまでも専門の方からお聞き取りを願いたいと思うのですが、要するに私ども考えとしましては、もし郵便局外務員がそういう秘密を守る義務を持つておるならば、それを侵させるようなことはやはりいけないのではないかというふうに心得ておるのであります。
  39. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの議論をだんだん推し進めて行きますると、郵便局外務員秘密を守る義務郵便法九条第二項によつて負担しておる。そうしてあなた方の方においては、それを侵してはならぬ法律的根拠はないということであるならば、もしここに外務員がみずから今の九条二項を侵す、そしてそれを受けるあなたの方は、みずから教唆したりするのでなかつたならば、適当に流れて来るものは、見たつてちつとも法律には触れない。こういうことになる危険があるように思うのですが、その点はいかがですか。この問題は郵政当局、それから公安調査庁の両方がともに国家の官庁でありまするので、そして今郵便物信書秘密なるものをお互いに侵さないようにせねばならぬということにおいては、両方一致しておるのでありますから、こういう問題に対する法的の根拠、適用の根拠を、お互いに一方がはずれて一方が縛られるというようなことのないように、やはり統一した結論を得ておかねばならぬ問題のように考えられますので、そういう趣旨におきまして、両方一致した結論出してもらいたい。もしすぐにできなければ、日をかえてもよろしゆうございますが、ちやんとしておきたい。
  40. 田中織之進

    田中委員長 その点については、今すぐにでなくてもいいそうですけれども、ひとつこの問題について郵政当局公安調査庁の方で十分話し合つて、それぞれの法的な根拠を明確にした上で御答弁願えませんか。  なお委員長から、これは吉田委員と多少考え方が違うかもしれませんけれども公安調査庁当局に一点伺いたいのは、公安調査庁の所要の調査に、たまたま上田市に起つたようなこういう調査方法というものは、一般的にとつてはならないということが下部へ徹底しているのか。調査のためには、もちろんいろいろの方法があると思いますけれども、そういうことについては、端的に言えば、あらゆる手段を尽して調査をする、こういう建前になつているのか。全国的に同様な事件があるのではないかという疑いがあるという、先ほどの山花委員質問とも関連して、調査方法等についてはやはり法規に準拠した、従つて人権の侵害にならぬような関係についての特段の考慮を平素から払つておるかどうか、この点を調査庁から伺つておきたいと思います。
  41. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 それはもちろん合法的な一線を守つて調査をいたすことを当然と考えておりますので、目的のためには手段を選ばないといつたような考え方は、毛頭とつておりません。
  42. 田中織之進

    田中委員長 委員長から重ねて伺いますが、実は公安調査庁活動で、昔の特高警察的ないろいろな調査方法がとられておる。一つの事例として、警察大学における捜査についての教授の内容に、われわれの聞くところでは、たとえば特定のマークした人間については、その者についての必要な機密を探る意味において、端的に言えば、その者が持っている手さげカバン、そういうようなものを隠密のうちに引きさいてでも必要なものをとれというようなことまで、警察大学の講義の内容なつているということが、われわれの手元に実はかなり的確な資料として入つておる。そういうような形の方法がとられるということは、これは私非常に重大な問題だと思うのでありますが、そういう意味で、ただいま吉田委員からの質疑の点も、これはたまたま郵便法第九条との関連で起つた問題でありますけれども従つて調査官活動調査方法についての明確なる法規根拠というものを、持つてもらわなければならないというところにおちついて来るのではないかと思うのですが、その点を重ねて伺つておきたいと思います。
  43. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 公安調査官は、もちろん破壊活動防止法とそれから公安調査庁設置法に基く法律上の根拠によりまして、調査を進めておるのでございます。従つてただいま委員長のおつしやつたような教え方は、決していたしておりません。それから公安調査官調査権限は、原則としてこれは任意調査でございます。概約して言えば、新聞記者諸君の取材活動というふうに御了解願えば大体おわかりになると思うのでありますが、しかしそれはどこまでも法律に基く調査権限でございまして、警察官その他のような一般的な強制権というものは持つておりません。
  44. 小林絹治

    ○小林(絹)委員 少しお伺いしたいと思いますが、私はそんなむずかしい問題のようには思わぬのです。御承知の通り旧憲法には「日本臣民八——信書秘密ヲ侵サル、コトナシ」という規定がございました。それから新憲法の第三章、第二十一条には、一項に「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」二項には「検閲は、これをしてはならない。通信秘密はこれを侵してはならない。」とあります。もちろん検閲については、ほかの法律とか占領行政下ではやつておりましたが、憲法は根本の人権を保障するという点からきめたものじやないかと思います。それから刑法には第十三章、百三十三条に、「〔信書開披〕故ナク封緘シタル信書ヲ開披シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス」という規定があるのであります。でありますから、郵便法第九条の規定は、郵便従業員に対する規定じやないかと思いますが、その点はいかがですか。
  45. 渡邊秀一

    渡邊説明員 郵便法第九条第二項は、おつしやる通りだと考えております。多少今の御説明で行き違いを来したのじやないかと思いますが、結局信書秘密を侵してはならない。それから業務員が取扱い中に知り得た秘密は、これは守らなければならぬ。それを一本にして説明を求められたのかもしれませんが、それを別々に御説明申し上げたものですから、若干そこに考え方あるいは答弁の仕方に混乱を来したのじやないかと思いますが、今の御質問は、いわゆる従業員が業務上知り得た秘密は侵してはならないということでありまして、郵便法対象じやないかと考えます。
  46. 小林絹治

    ○小林(絹)委員 刑法の百三十三条は、今申し上げたような規定があるのです。百三十四条においては、「医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁護人、公証人又ハ此等ノ職二在リシ者故ナク其業務上」云々とあるが、「此等」ということの中には、おそらくその郵政関係規定も包含しているものと解釈してよいと思うのです。「此等ノ職ニ在リシ者故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ秘密ヲ漏泄シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス」という規定がある。そこで百三十三条は、「〔信書開披〕故ナク封緘シタル信書」ということを書いてございますから、この刑法百三十三条の規定手紙のようなものに限つておりはしないかと思います。そこで憲法規定では、検閲云々の次に、「通信秘密は、これを侵してはならない。」ということがあるのですから、この憲法上の規定解釈いたしますと、ひとり封緘した手紙のみならず、ほかの通信、電信、電話等をも含むのじやないかと考えられますが、この点はいかがですか。
  47. 渡邊秀一

    渡邊説明員 私から憲法あるいは刑法解釈について申し上げることは、いかがかと存じますが、この郵便法九条に書いてあります信書秘密は、もちろん封緘したものだけではないと考えております。
  48. 小林絹治

    ○小林(絹)委員 今のお答えは、新憲法規定しておるところに当てはまつた解釈であると思います。ただこれをこのたびの事件と対照して考究する場合において、先ほど山花君から言われましたように、行政上の措置としては今後こういうことが起らないように、十分手当をしてもらいたい。また常識から考えましても、封緘しておろうがおるまいが、どこからどこそこに何が来たとか、はがきが来たとか、電報が来たというようなことは、上品なことではない。そういうことを慎むことは、やはりみなの心がけなければならぬことだと思います。そういう点等から考えまして、そうむずかしい問題のように私どもは思わない。私どもの希望としては、今後こういう事態が起らないように注意をしていただきたい。そしてそれを扱つた人たちの考えのいかんによつては、行政上の処置をなさるなり何なりされたらいいのじやないかと思いますが、政府のお考えはどうでしようか。
  49. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 先ほど来お答えしておりますのは、今小林委員のおつしやつた通りのことでございます。
  50. 田中織之進

    田中委員長 本件についてさらに御質疑はございませんか。——別にないようでございますから、本件はこの程度にいたします。     —————————————
  51. 田中織之進

    田中委員長 次に去る三月下旬における吉田内閣総理大臣あてダイナマイト小包郵送事件について、その概要の説明を聴取いたしたいと思います。井本刑事局長
  52. 井本臺吉

    ○井本政府委員 本年三月二十八日に、神奈川県大磯町吉田首相私邸に、普通速達郵便小包一個が郵送されまして、これには首相あての脅迫状一通と、導火線をとりつけました鉱山爆破用ダイナマイト五本が発見されたのであります。この事実は、刑罰法規に照しますと、刑法の脅迫罪、火薬類取締法第二十一条の罪、郵便法第十四条の爆発性のある郵便物を差出した罪、これらの犯罪に当るものでございます。この事実につきましては、ただちに関係の東京警視庁、国警及び東京地方検察庁が協力の上で、押収物件の鑑別、その他関係の捜査に着手して参つた次第でございます。この脅迫状の文面等によりまして、一部右翼運動関係者の犯行ではないかというような考え方もあるようでございますが、当局といたしましては、いまだこの点は確認しておりません。鋭意差出人の発見に努力中でございます。
  53. 田中織之進

    田中委員長 本件について、郵政省側で調べた事情を御報告されることがあれば、御報告願いたいと思います。齋藤監察局長
  54. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 郵政省における本件郵便物取扱い状況概略を申し上げます。三月二十七日の午後零時から六時までの間におきまして、本件とおぼしき郵便物を引受けたのでありますが、その引受模様は、東京中央郵便局の窓口の通常郵便物の差入口に投入されてあつたものと思われます。同局員が窓口の差入口から集めた通常郵便物の中からこれを発見いたしました。もちろん消印はしてございませんで、百五円の切手が張つてありましたので、包装の大きさ、形からいたしまして、これを速達小包に差出したものと認めました。その扱いをして一般郵便物と一緒に取扱つたという状況でございます。
  55. 田中織之進

    田中委員長 本件について質疑があればこれを許します。吉田賢一君。
  56. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この問題はまことに不祥なできごとでございます。吉田内閣の政治上の責任とかあるいは罪とか、そういつた問題については、あらゆる機会、あらゆる問題を通じまして、世論はだんだんと深刻になつておるところでございます。但しこういう脅迫状であるとか、あるいは鉱山爆破用のこの種の物件が送致されるということは、見のがしがたい重大な現象であると考えます。  そこで少しく具体的に、脅迫状の内容とか、あるいは爆発物の性能とか、そういうものもここで明らかにしてもらわねばならぬと思います。これを前段といたします。次に郵便物として扱う上におきまして、幾多検討しなければならぬ問題がありますが、新聞にも伝えられておりましたけれども、まず前段の脅迫状の内容と、送られました爆発物の性能とか種類とか、そういうものについて少し専門的な御説明が願いたいと思うのであります。
  57. 井本臺吉

    ○井本政府委員 いま少し詳しく申し上げますと、郵便小包の方は、中央区小伝馬町二丁目の小林平市という人の名前が記載されておつたのでございます。封書の表紙には憂国慨世の士という文字が記載されておつたのであります。脅迫文の内容は要するに、今改めなければこの次には点火したものを重ねて送るというようなことが記載されてあります。ここに写真がございますらこれをごらんに入れます。それからダイナマイトは、日本油脂製のもののようでございます。書かれました手紙が、インデイアン・ペーパーといいますか、特殊の紙に書いてありますし、冒頭に申し上げましたように、文句にも従来いわゆる右翼関係者の使つておつたような文句が散見せられますので、その関係者じやないかというようなことも思つておる次第でございます。
  58. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 さきに伺いましたが、その小包の内容をなす爆発物の性能などは、どの程度のものなのでありますか。
  59. 井本臺吉

    ○井本政府委員 一般の鉱山用のダイナマイトでありまして、一本で十メートル四方くらいのものを吹き飛ばすということになつておるそうでございます。
  60. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 国警の方に伺いますが、今日本油脂という会社の製造物だという御説明があつたのですが、その辺について何かお調べになりました経緯などの御説明を願いたい。
  61. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 これは製品にマークがついておりますので、日本油脂でつくりまてたダイナマイトであると私の方で一応鑑定をいたしておるのであります。性能につきましては、ただいま刑事局長からお話がございましたように、一本によりまして、点火爆発すれば十メートル四方においての人を十分に殺傷するだけの能力を持つている、こういうように一応鑑定をいたしております。この鑑定は警視庁にあります鑑定の専門機関において、そういう鑑定をいたしました。
  62. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 マークによつてこの製品の出所が明らかになつたそうでありますが、製品の出所だけではなしに、やはりそこで真実に製造せられたのかどうか、どういう経路で持ち出されたものであるかどうか。日本油脂なるものが吉田内閣に対して一体何らかの恨みでもあるのかどうか。まことにこれは唐突なものの言い方ですけれども、とにかく一応ものを逆にも考えたり、いろいろな角度からお考え願いたいと思うのでありまして、右翼的な文句だから右翼だという、そういう紋切型ではなしに、いろいろな角度からこれは考えてみるべきだと思うのであります。そういう意味におきまして、日本油脂と吉田首相との間に何か関連があるのですか。その中に右翼でもあるのかどうか。その辺についての御説明はいかがですか。
  63. 井本臺吉

    ○井本政府委員 製品が日本油脂株式会社でできたものであるという点を申し上げたのでありますけれども、鉱山用のダイナマイトでありますから、相当多数製造されております。もちろんお話のように鋭意犯人は検挙いたさなければなりませんので、あらゆる観点に立ちまして十分事情を調べて、できるだけ早く犯人の検挙に努めておる次第でありますが、お話の点も考慮いたしまして、なおよく調査するつもりでございます。
  64. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは内部機構と上下関係、捜査の関係についてはつきりしませんが、むしろこれは法務省のお立場もさることだが、国家警察のお立場において、現場の最も重要な業務担当をしておられると思うのでありますから、その面からもう少し核心に触れたような何かの御発言があろうかと存じます。今伺つたのでは新聞の報道以上に出ておらぬようでありまして、これは二十七日ということでありますから、その後相当日数もたつておるわけでありますし、やはり日本の政治の将来に向つてこれはきわめて重大な影響を与えるべきできごとでございますので、これだけの日数を要したのであるから、国警におきましてはもつと具体的な、もつと内容に触れたいろいろの御説明ができるだろうと思うのです。ことに、われわれは野党でありますけれども吉田首相も国会議員であります。また目下国会は開会中であります。その意味において、日本の国政の上におきましても、こういう問題は数日をまたずして一切を解明せられるくらいの有能な警察でなければなるまいとも考えますし、いろいろむずかしい事情もおありになるかとも存じますけれども、すでにきようは四月三日になりますので、もつと具体的に国会に対して御報告願えるべき案件だろうと思うのでありますが、ひとつ国警の方から御説明願いたい。
  65. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 この小包が配達されましたいきさつにつきましては、先ほど刑事局長からお話がございましたが、この小包が配達されますと一応総理のところへ持つて参ることになつておりますので、その日も総理のものに持参をされたそうであります。そうして表面の包紙をを家の方があけましたところが、封書が出て参つた。その封書の送出人は林平市となつておるのでありますが、見知らぬ人からのものでありましたので、総理が封書も小包も内容を見ずに送り返すように指示をされたそうであります。翌二十九日、に総理が病気をしておられますので、これを見に行かれました主治医の杉原という博士が、大磯からの帰りに午後六時ごろ車に乗せて目黒の公邸に持ち帰られたのであります。これは家人から頼まれたようであります。そうして三十日に目黒の公邸であけましたところが、ダイナマイトが入つておるということを初めて知つた。目黒の公邸に届けましたのは、おそらく、ここに警視庁の警衛関係の者が詰めておりますので、警察に届け出るという趣旨でそういうようにされたのかとも思いますが、いずれにしてもそういう経緯で、この現物は警視庁の警察関係の主務課の方に届けられたのであります。それが三十一日であります。三十日に総理の秘書官から目黒の公邸詰めの警察官に渡され、それから警視庁の警衛課の方へ参つたのであります。そうして国警本部も連絡を受けまして捜査に着手をいたしたのであります。この事件は、送り届けられましたのが神奈川県の大磯の町でありまして、国家地方警察の神奈川県本部の管轄区域内にあります。それから郵便物によりまして大体わかりますように、東京から発送されております。従つて警察法の関係からいいまして警視庁にも一つの関連を持つて来るというので、警視庁と神奈川県本部が共同いたしまして現在捜査をいたしておるのでおります。捜査の方法といたしましてはいろいろございましようが、小包の包紙あるいは封書に使用しております紙あるいは筆跡等につきまして、いろいろ心当りの面につきまして筆跡を集めて鑑定をしてみたり、そういうことをやつておるのであります。また先ほどのお話のように送られましたダイナマイトにつきまて、これは一般に市販をいたしておりますが、さらにその経路につきまして追究をいたしておるのであります、ダイナマイトからの追究は相当むずかしいというように聞いておるのであります。いずれにいたしましても、ただいま極力いろいろと各方面からいたしまして捜査をいたしておるのであります。捜査の途中におきまして、十分に御満足の参りますようにお答えいたしかねますのはまことに残念でございますが、以上御了承をいただきたいと存じます。
  66. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今の御説明によりますと、今捜査の段階にあるので、それで公表はできないというようにとれるのですが、あるいはまだまだ十分に何でも国会に報告するまでに至らないというふうにもとれるのであります。私どもが懸念しますことは、それは三十日に公邸の警察官に届けられたので、まだ五日目ということであるから、さほどの日数がたつておらぬじやないかというような、さような趣旨の含みを持つた御説明かもしれませんが、いずれにいたしましても、これはもう一般国民といたしましては、この重大なことが最も迅速に解決せられることを希望しておるのでありますので、従つてその間の日数が一日どうなつた、二日どうなつたというようなことはこれは末梢的な問題でございまして、もつと私どもはそれが警視庁の関連があろうと、国警のみであろうと、自治警の関係があろうとなかろうとにかかわらず、こういつた問題はやはりただちにその出所なども突きとめられるようにできないものだろうか、あるいはしろうとながら、国民の一員として何かもどかしく感ぜられるのでありまして、これは一体どこにそういう欠陥があるのだろうかというような、そこまで考えが進むわけであります。そこで伺いたいのですが、一体こういう鉱山の爆破用に用いられるような今の爆発物というようなものは、それなるがゆえに出所を突きとめたり、経路を突きとめたりすることが困難なのでございましようか、もしさようであるといたしますれば、ずいぶんと無限の量が日常用いられておると思いますが、それが極右であろうと極左であろうとにかかわらず、国民の受ける間接的不安というものは相当深刻であるのでございまするが、そういう点についてどこに一体こういうことの調査が迅速に進められない重点、あるいは盲点、そういつたことがあるのだろうか、そういうことについてのひとつ国警側の何かの御確信のある御発見がほしいと思います。
  67. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 この事件の捜査につきまして、特別盲点と申すような点もございません。先ほど申し上げましたのは、まだここで御報告申し上げるまでに固まつておらないということを申し上げた次第でございます。なおこの火薬のいろいろな許可、認可あるいは授受等につきましては、法律によつて規定が定められておるのでありますが、まことに遺憾ながらこれがそのまま実施されていないという面もだんだんあるようであります。この授受の関係がきわめて正確に判然としておりますれば、これはもう警察といたしまして、この火薬を用いました犯罪の捜査というものは相当に今やりやすいのであります。その点に若干現在いろいろと問題があるやに聞いておるのであります。従つてある火薬を使つた、その火薬の授受を追究して行けば、必ず何か出所はわかるじやないかとお考えになるかと存じますが、その辺にまだ若干のむづかしい点が、残つておるわけであります。
  68. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今御説明を伺いますと、火薬の製造、保管、授受、その辺が法律があつても、実際におきまして正確につかみにくいような事実上の不可抗力の面があるかのように聞くのでありますが、これは一体法律の欠陥でしようか、もしくは業者の怠慢あるいは過失であるのでしようか、もしくは取締りの方のあやまちないしは怠慢等があるのでしようか、一体それはどこにあるのでしよう。郵政大臣はこのことは郵政省業務上の扱い物件になつたのでありまするから、その辺はお調べになつたことはございましようか。あわせて両方から伺えましたらと思うのですが……。
  69. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 ただいま御指摘の三つの点に問題があると思います。法律、それから業者の取扱い、取締り方面の問題、この三つにあると思います。
  70. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは直接捜査にお当りになつている国警の警備部長お話でありますから、体験せられたところで、これは事後の問題としてはやはり重要な爆発物もしくは火薬類の取締りに関する一つの問題が提供せられたと思うのでありますが、これはひとつ郵政省におきまして、というよりも国務大臣のお立場から、ひとり被害者が吉田首相であるからという意味ばかりではなく、この種の事件の頻発をなくするという一助にもなるかと思いますので、大臣は早急に今述べられたごとく、法律にも、取締りにも、両者の側に欠陥があつて授受正確ならず、的確に把握しにくいというところに捜査の一つの困難を来す原因があるかのように聞きますので、早急にこれが対策を立てるべきだと思うのですが、御所見いかがでしようか。
  71. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 実は私も前に土建業に勤務をしておつたことがあるのでありますので、よくこういう爆発物を使うので事情はよく承知しておるのでありまして、今法律にも、取扱いにも、取締りにも、みな欠陥があると言われましたことはその通りだと思うのですが、そうしてまた何らか法律措置考えなければならぬと私は思うのでありますけれども、ただあまり法律なり取締りを厳重にやりますと、今度使う者が非常に不便になるというようなことになつてしまうので、一応私は現在の制度の上でもその大きな欠陥があるとは思つておらぬのでありまして、それぞれの者が注意をするということ以外には方法がないのではないか、これ以上いろいろな方法を講じて非常に運用の上に困難をするような、たとえば取締りを非常に厳重にするということになりますと、おそらく非常にたくさんの取締り警官というものがいると思うのであります。ところが現実にこういうものを使います現場というものは、たとえば山の中とか、しかも非常に広く、たくさんの地域にまたがつておりますので、おそらくそういう意味においても困難でありましようし、また法規的にそれではもつと取扱いを困難に厳重にするかということになりますと、今でもこの火薬の取扱いというものは、扱う人間にまず資格がいるというように相当厳重に私はやつてあると考えておるのでありまして、今具体的にどこをどういうぐあいにするかということは、ちよつと私も思い当らないことでありますけれども、しかし御指摘のように、もう少し検討をしてみる必要はあるのじやないかと、こういうふうに感じております。
  72. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは私はあなたに対して一つの提言をするわけでありますが、やはりこういう事件が起りましたときに、火薬物の扱い、製造、授受はいかにするかということのなまなましい経験が、ほんとうの行政及び政治を生んで来るのだ、平素いろいろと法律を用意しておりましても、実際事件が起つて来ませんとほんとうにその欠陥なり長所なりはわからぬものであります。今取締り、捜査の方におきまして、国会に対する今のようなお聞きの通りの御発言があつたわけであります。だから取締りに警察官がたくさんにいつて従つて予算も膨脹するだろうからという御心配もあるのもしれませんけれども、いずれにいたしましても、もしこの種の問題が半月も一箇月も経路もわからず、迷宮に入るというようなことがありましたならば、それはほんとうに吉田内閣の国内における治安の能力の問題というよりも、私は政治問題だと考えます。こういうようになつて来ますし、ことにあなたの方は閣僚の一人として身近に危害を感じておられるのでありますから、これは最も厳正に真剣に取組んで、片言隻語もゆるがせにしないで、これを取上げて行つて、新しい政治なり、行政なり、立法なりへの参考にするというくらいにするほど、さような事件を有効に用いるという行き方がこの内閣として、またあなたらの閣僚としてのお立場としてなければなるまいと思うのであります。今のことは、たまたま国警の方から出ましたが、私はあなたに提案的に申し上げるのでありますが、あなたの方は吉田内閣とか何とか言うのじやなしに、国の政治が一種の暴力によつて脅されるということになつているのでありますから、こういうものの取締りを強化したら警察に金がたくさんいるというようなけちな考えでなしに、真剣に取組まなければならないと思うのですが、どうでしよう。
  73. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 御忠告はありがたくちようだいし、なお十分に検討してみなければならぬのじやないかと思います。しかし私は、今度の事件がそういう意味において参考になるならば、これは捜査の結果、こういうところに欠点があつたということになつたときに、最も参考になるのだと思うのでありまして、そこのところにこういう欠陥があつて、いうこと事態があつたということになる。おそらくどこかの段階で盗まれていると想像されるのです。しかし一般的にはこういうことがしばしば起きているのでありまして、現場でダイナマイトが盗まれるということはよくあることであります。そういうとき、そういう抜け穴についての措置は、おそらくそれぞれの係のもとにおいて絶えずいたしておる。だから想像できる範囲においては、かなりいろいろな措置ができておると感じておるので、さつきのようなお答えをいたしたわけであります。なおよく御忠告の趣旨を体しまして、さらに検討いたしたいと思います。
  74. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 塚田さんは主管庁でないのでありますが、少し閣議ででも御相談していただきたいと思うのであります。そこで刑事局長に伺うのでありますが、この種の問題につきましては、私は旬日を出ずしてその事情一切が国民の前に判明をいたしまして、安心するということにならなければ、日本の警察能力は問題であると思いますので、法務省といたしましても——これもまた刑事局長に伺うのはどうかと思います。法務大臣に伺うべき筋かと思いますけれども、捜査が適切に敏速に結末がつくことを望むとともに、あわせて今後の問題もあることですから、法務省側としましても相当御検討になるべき案件だと思います。そこでこれはひとつ御意見も聞いておきまして、あなたの方はあなたのお立場でさらに今後の対策も考えてもらいたいと思うのですが、いかがでしよう。
  75. 井本臺吉

    ○井本政府委員 お話の通り重大な事件でありますから、迅速、的確に犯人を検挙すべきものであることは論ずるまでもないことでございます。現在捜査の進行中でございまして、その欠陥等につきましてはもしあれば、その捜査の結果をまちまして将来十分その対策を考えて、いかにすれば能率的な捜査ができるかという点について十分研究いたしたいと思います。
  76. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もう一点だけ郵政の業務の方に、これに関連して伺つておきたいのであります。今伺えば中央郵便局の窓口におきまして、消印もなしに扱われたというような御説明のように私は了解したのでありますが、これはまことにお気の毒だが、中央郵便局の当該職員の諸君のうちに、こういう小包郵便物の扱いにつきまして、平素からもつと注意を十分にするということに何か欠けるところがあつたのではないだろうか、こういうことも考えられるのであります。その点、これは機構の問題になるかとも思います。あるいはまた制度であるかもわかりません。あるいはまた業務過重でこういうことになつたのかもわかりません。手不足でこういうことになつたのかもしれません。いろいろ臆測をたくましゆうするのでありますが、いずれにしましても、中央郵便局においてどうも成規の手続に若干欠けておつたという点があつたように思われますので、この点どういうふうになさつたか、また今後どうなさるのか、その原因はどうだつたかということについて、一応伺つておきたいと思います。
  77. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 ただいまの東京中央郵便局における扱い模様についてのお話でございましたが、先ほど私の御説明申し上げました点が不十分だつたために、少し誤解を持たれたのじやないかと思つて恐縮に存じますが、あらためてもう少し詳しく御説明申し上げます。  一般郵便物を引受けました場合は、それぞれのポストないしは局の窓口におきまして投函されました郵便物を全部集めまして、郵便の取扱室におきまして消印をいたします。ちようどこの郵便物が、たとえば普通の窓品等におきまして引受けたものでなしに、一般のポストの中から上つて参つた郵便物でありましたために、まだ消印前のものであつたわけでありまして、これが通常郵便物の差入口に入つておりましたもので、結局形状等からしてこれは小包であろうということで、小包として処理をして初めて消印をしたということでございます。本件郵便物の扱いました経緯におきましては、取扱い上別に欠陥はなかつた次第でございます。御了承を願いたいと思います。
  78. 田中織之進

    田中委員長 ちよつと監察局長に伺いますが、普通郵便物として百十五円か何かの切手を張ってあつたので、切手の額からしてこれは速達でなかろうかと見て、速達の取扱いをしたというのですが、その点ちよつと私らは理解できないものがあるのです。これはダイナマイトが輸送途中か、あるいは配達されてからあとで、自動的に発火するようになつておるかどうかという性能の問題にも関連するわけなんですけれども、速達料金も含んだ切手が張つてあるからということで、別に速達の取扱いを要求してないものを速達の取扱いにしたという点に、何か落度があるのじやないですか、どうですか。
  79. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 窓口に差出したのではなしに、投函された郵便物にそれぞれ所要の表示がしてないので、ただ普通の取扱いに相当する料金以上の料金が張つてある場合は間々ございます。今回の場合は普通小包といたしまして第一種第一地帯が五十五円——目方によつて違いますが、一番軽いので五十五円、それに速達料が五十円でございまして、ちようどそれの料金に相当する百五円の切手が張つてあつたものでありますから、差出人の意思をそんたくしてその取扱いをいたしたのでありますが、これは間々起きる事例でございます。
  80. 田中織之進

    田中委員長 なおもう一点伺いますが、取扱い上禁止明白なもの、たとえば火薬類のような爆発物であるということであれば、もちろん拒否するのでしようけれども、こうした小包の取扱いの上で、何らかその内容等にいて確める等の方法郵政当局として考えられないものでしようか。
  81. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 その点ごもつともな御懸念でございますが、引受の小包につきまして一々内容は何だということを確かめるということも考えられるわけでございますけれども、一々これを確かめるということは、いわゆるサービスの点等におきまして、差出人に対する心理的な影響といつたような点もございまして、あまり不快な感じを起させないという意味合いからいえば、あまり尋ねない方がよろしいのでございますけれども、しかしもちろん今のような郵便禁制品を含むといつたような場合も起きるわけでありますから、平静の取扱いとしては、怪しいもの、つまり禁制品が含まれておりはせぬかという疑いの持たれるものについては、一応内容品を聞くという措置はとつております。
  82. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 高橋次長は帰られましたか。
  83. 田中織之進

    田中委員長 ちよつと所用があつて帰られました。
  84. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 刑事局長にちよつと伺つておきますが、破壊活動防止法の第四条第一項のチというところに、爆発物取締りに関する規定の行為というのがございますが、こういう場合はやはり公安調査庁の仕事の対象になるのですか、ならぬのでしようか、ちよつとその点伺つておきます。
  85. 井本臺吉

    ○井本政府委員 今お話破壊活動防止法第四条の一項二号のチでございますが、これは要するに暴力主義的破壊活動の定義ではないのでございましようか。
  86. 田中織之進

    田中委員長 今度のようなダイナマイトを送付して危害を加えようというような関係のものは、この項に該当するのではないだろうかという吉田さんの質疑なんです。
  87. 井本臺吉

    ○井本政府委員 結局かような爆発物を使用して活動するというのは、ここに規定してあります通り、暴力主義的破壊活動に入るということになりますので、公安調査庁対象になると思います。
  88. 田中織之進

    田中委員長 本件については目下関係当局において調査中のことでございますが、たまたま郵政業務を通じて起つた問題でありますが、影響するところ非常に重大な問題だと思いますので、捜査当局においてすみやかに犯人等の検挙に万全を尽して、不安のないように努力されたいということを希望しておきます。     —————————————
  89. 田中織之進

    田中委員長 次に大分時間も経過いたしましたが、国警当局もお見えのようでありますから、先般の横浜市における郵便車ギヤング事件のその後の状況について、事情を聴取したいと思います。
  90. 中川董治

    ○中川政府委員 ただいま委員長のお尋ねのございました横浜市における郵便自動車ギヤング事件の概要及びその後の捜査の状況を御報告申し上げます。  事件の発生いたしましたのは本年三月一日の午後八時四十分ごろから同十時ごろまでの間でございます。場所は横浜市内でございます。そこにおきまして郵便自動車を運行中の乗務員三人を乗せている自動車に対しまして、加害者がこれをとめまして現金等を奪取して帰つた事案でございます。被害者は被害当時若干監禁的処置を講ぜられたのですが、その後加害者が去りました後に脱出いたしまして郵便局へ連絡をとられまして、郵便局から横浜市警当局に連絡があつたわけでございます。横浜市警に連絡がありましたので、横浜市警は深夜でございましたが、国警、警視庁その他関係の向きにただちに手配をいたしまして、犯人の検挙に乗り出したのでございますが、その後いろいろ各方面で捜査を緻密に続けて参つたのでございますが、被疑者が用いたであろうと推定される自動車が、山梨県下の富浜村というところで発見されまして、この自動車を一つの重要な手がかりといたしまして、この強盗事件の犯人の捜査を進めたのであります。従いまして捜査区域は警視庁、神奈川県、山梨県、さらに静岡も十分協力をいたしまして、犯人の検挙に乗り出し、ことに手がかりは自動車がございますので、自動車を中心にいろいろ被疑者の割出しに努めて参つたのでありますが、一応捜査のいろいろな角度から、被疑者でないかと覚しき人間をだんだん発見して参り、現在捜査も進行中でありますが、ただいまのところこれが被疑者であると確認するに足るという資料がまだ出ておりませんので、加害者が用いたであろうと思われる自動車の出所、持主はわかりましたが、その自動車の管理が移された経路ないしはその部分品等の盗難ということを中心にいたしまして、関係警察当局で非常に連絡を密にいたしまして捜査を続けておりますが、なかなか地域が広汎にわたりますことと、それから短期間にあちこちスピーデイにやられた犯罪でありますので、非常に困難を来しておりまして、いまだに犯人を割出しておりません。この点まことに申訳なく存じておりますが、これは非常に重要な犯罪とわれわれ心得まして、今後も関係警察と密接な連絡をとりまして、緻密な捜査を継続中でございます。これも捜査の継続中でございますのはまことに遺憾でありますが、この点重要な事案でございますので、特に専従員も置きまして捜査を継続しておりますので、被疑者の割出しを早期にいたしたいと考えております。
  91. 田中織之進

    田中委員長 本件に関して質疑があればこれを許します。
  92. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 現実の被害はどの程度にあつたのでしようか。
  93. 中川董治

    ○中川政府委員 現実の被害は現金が二十三万二千三百二十九円、これだけであります。それから書留が二十九通ありまして、うち為替が四百万円ございますが、その書留も奪取されたのでありますけれども、この書留につきましては郵政当局におかれまして支払い停止の処置を講ぜられましたので、金銭の実被害はないのであります。従つて先ほど申し述べました現金三十三万二千余が現実の被害でございます。
  94. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その他器物とか人間についての被害は全然ないのですか。
  95. 中川董治

    ○中川政府委員 自動車に乗務員が三名乗つておられました。この三人が脅迫され、ことにしばらくは監禁されたのでございますが、傷害等の被害はございません。器物は大した被害はございません。
  96. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大してでも、小さくてもですよ。
  97. 中川董治

    ○中川政府委員 袋を切られたとか、そういう器物の被害はございますが、それ以外はございません。
  98. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この二十三万余円の被害の処置は、郵政省はどういうふうになさつておられますか。
  99. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 被害になりました金額は、理金書留でございまして、これの引受の場合には、もしこれが滅失もしくは一部分なくなつた場合にはそれの賠償をすることになつております。その要償額というものを、当時引受けましたのをこちらで料金と関連して確かめてありますので、それの損害賠償はすでにそれぞれいたしてございます。
  100. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その他、職員の脅迫を受けておる事実、それから支払い停止になつておるけれども、ともかく一定の料金を払つて四百万円の書留、為替等々の郵便があつたわけでございますから、現実に被害はなくても、その託送者は私はやはり一種の被害者であろうと思う。それからそういう何の袋でしたか、袋を切られた事実もあるし、脅迫された事実もあるし、さような事件によつて生じました一連の傷に対して、郵政当局としてはどういう処置をなさつたのか、これをあわせてお聞きしておきます。
  101. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 郵便物が破られたり、あるいはそのために著しく送達が遅れたものにつきましては、それぞれあいさつをいたして処理をいたしてございます。それからたとえば、中に大学入学の願書が約二通入つておりまして、入学締切りの期日が非常に切迫しておつて間に合わないのじやないかというような懸念が持たれた郵便物もございましたが、それらにつきましては、差出人にあいさつすると同時に、郵便官署の手を通じましてそれぞれの大学に話をいたしまして、到着の期日が遅れても受付けてもらえるようにということで了解を得て、その通りにとりはからいました次第であります。
  102. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 たとえば今の為替の四百万円の口も、刑事的な立場からすれば、現金被害以外は些少のものだからというようなものだろうけれども、しかし正常な郵便がここに侵害されたのであります。これはやはり適切な措置をとつておかなければいかぬ。支払い停止ということは臨機の処置として当然でありますけれども、料金を支払われて必要な送金をしつつあつたのが途中で遮断されたのですから、そういうことに対しましてはどういうふうに処置をなさつたか。これは当然郵政当局は利用者に対して何らかの措置をしておかなくちやならぬと思う。それから脅迫を受けた人間はどういうふうにしたのか、はたして被害者のみの問題なのか、あるいは何らかの手落ちがあつたのでそんなふうになつたのか、こういつた点を一括して説明しておいてもらいたい。
  103. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 まず払い渡し警戒の措置でございますが、最初、一般の書留が盗難にかかつたものと認められましたので、即刻払い渡しの警戒の手続はいたしましたが、その郵便物は出て参りましたから、結局被害が現金書留だけにとどまりましたので、払い渡し警戒の方はじきに、二、三日いたしましてから解除いたしておるような次第でございます。なお遅れました重要郵便物につきましては、それぞれあいさつをいたして了解を得ておる次第でございます。  それからそれに乗務しておりました運転手並びに助手、それからたまさかそれに便乗いたしておりました磯子の局員でございますが、本件について犯罪の容疑あるものとまでは参りませんけれども、一応関係者として事情等も聞いて参つたのでございますが、今のところではその三人につきましては容疑の点が認められないという状況でございます。
  104. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは小さな問題でありますけれども、御注意を喚起しておきたい点は、今の四百万円の払い渡しが遅延したという事定ですね。結局この事故のために数日間遅れたことになりますから、郵便事務が若干停滞して、利用者がそれだけ迷惑を受けたわけでありますから、そういうことについては利用者に対して何らかの措置をなさるのですか、なさつたのでしようか、しておらぬのでしようか、そこを聞いておきたい。
  105. 齋藤信一郎

    齋藤(信)政府委員 払い渡し警戒の件でございますが、これはあの事件の翌朝にいたしておりますので、この点は十分間に合つておる次第でございますが、ただ今の書留その他重要物件の入つておる郵便物がこの事故のために多少なり遅れるという結果になるわけでございまして、重要郵便物につきましてはあいさつをいたしておるのでありますが、何せ多数の郵袋の中に入つておる多数の郵便物でございますから、個々のものについてはとうてい——遅れたと申しましてもそう大した日数でもございませんので、そのまま送達をいたしておるわけであります。
  106. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは別に答弁はいりませんけれども、あなたの方としましては、多数であるから一々あいさつもできないというものの、その大学の入学願書が重要であるか、あるいは金の支払いが重要であるか、人々によつて非常に違うかもわかりません。どういう必要があつてこれを送金しようとしたのかもわかりませんし、利用者にはそれぞれ相当な迷惑であつたと思いますので——あるいは迷惑でなかつたかもわかりませんけれども、そういうことでありますので、この種の事故が起きましたときには、郵便事業の事故といたしまして何らかの方法で周知せしめて、わびるというか、何らかの措置を今後とつて行かれることが必要でもあるし、適当だと思うのであります。これはぜひ希望申し上げておきたいのであります。  そこで、事件の原因については私もよくわかりませんけれども、これは国警当局に聞くのでありますが、その場所はさびしいところとか、何か特別にそういう犯罪的な環境というものがあつたのでしようか、その辺聞き漏らしましたので、お聞きしておきます。
  107. 中川董治

    ○中川政府委員 場所は、先ほど簡単に申し上げたのですが、一口に申しましてさびしいところでございます。詳細に申しますと、神奈川区の谷津坂のトンネルの手前からトンネルの入口に至る間ですから、市内とは申せ、比較的さびしいところであります。
  108. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで私は郵政業務の今後のことも考えて思いを深くするのですが、この場合に検察当局は三人の郵務職員が共犯者でないかと一応疑いをお持ちになつたらしいが、もしそうでないとするならば、全国数十万の職員、そのうち何割かの外務職員が安心して郵便業務に従事し得るということについて、お考えにならなくちやいかぬと思うのです。この事件について、ただ単に被害者にすぎないということであるならば、横浜市というだけでトンネルの入口に至るところ、さびしいところであつたということでありますならば、これはやはりこういう業務に従事する人が、真に安心して安全に業務を行い得るようにするということに、相当何か手を打つべきだと思うのであります。まあ全国にこんな例は珍しいでありましようけれども、総理大臣にダイナマイトが送られるような時節でもありまするので、山の中へ集金に行くというようなときに、やはり金を持つておると追いはぎに会うおそれがあるという心理的な影響のことも考える必要がある。行政は生きものですから、こういうことはとつてつて行政を改める上におきましての、一つの指標にせなければならぬと私は思うのであります。でありまするので、もしその三人の人々にほんとうに責任がないということであるならば、これはいたわらなくちやならぬ、あるいはまたこういうような犯罪を防止する方法がないだろうかということの研究もしなくちやならぬと思う。全国的に何らの悪い影響もないというふうにして、むしろこういう災いを利用いたしまして、将来よい方面の資料にするというようなことに考えて行くべきだと私は思うのであります。今の捜査がちよつと迷宮入りのような感じがせぬでもありませんが、どこか遠方からひつぱつて来た人間がそうでないかといつて、紙上報道されたことがありましたけれども、これもそうでなかつたらしい。とうとう幾多の不安と疑惑がこのギヤング事件と称して、まだ世上に投げられたままになつておつて、これは実に遺憾のことでありまするが、それは郵政当局としてどうもしかたがないことでありますから、治安当局にまかす以外に方法はないのでありまするけれども、郵政御当局といたしましては、これを生きた現実の貴重な資料として、こういうものはいろいろな角度から御研究なつてしかるべきだと思いますが、そういうことについて何かなさつたのかどうか等につきまして、ひとつ大臣の御所見を伺つておきたいと思います。
  109. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 適切なお尋ね、かつ御注意をいただいて、まことに感謝しておるわけで、私も事件が起きました当時、当初被害額などもつと大きく伝えられておつたので、一層重大に考えておつたのですが、その後被害額は大したことはなかつたということになつたのでありますけれども、私はそういうことよりもこの事件が郵政事業というもの、もつとはつきり申し上げまするならば、国民——利用者の側から見られる面と、それから内部でこれに従事している従事員の立場から、この事件に対する感じというものが、この事件が未解決で迷宮入りになつてしまう場合に、非常に悪い影響を与えるであろうということを心配しておつたわけであります。今もその考え方はなくなつておらぬのでありますが、私も昨日ちよつとひまを得ましたので、東京監察局へ行きまして、部内としてはどういう措置をしたかということ、それから現在の捜査の状態というものを、自分で行つてみずからいろいろ情勢を聞いたほど関心を持つておるのであります。そこで私といたしましては、犯人が見つかることは私の方の監察、もちろん主としては国警なり、市警なりがお骨折りを願わなければならぬのでありまするが、それと同時に、今後こういう事態が郵政部内の事務運営のやり方で防ぐ面があるならば、これをぜひ考えてみなければならないということで、いろいろ検討をそれぞれ関係の部局の者に命じたわけであります。いろいろ議論をいたしました結果、一つは逓送自動車というもの自体のやり方に問題があるのではないか、問題があるというよりも、もう少し別の考え方をしたならば、犯人があれだけ容易には強奪はできないということになると、これは幾らかでも防げるのじやないかということも考えられます。それから運ぶ者が現金を持つておるということが、一番そういう動機を誘発しやすいのでありまして、現金を最小限度に運ばなければならないということがもう一つ考えられるわけで、その点はいろいろあとになつて調べてみましたところ、やはり最小限の現金で、あとのものは現金でなく、従つて盗んだ者がそれを利用できないで途中で捨ててしまつたということになつて、今現金が運ばれておりますのは、御承知のような現金送金だけのものになつておるのであります。これは利用者の側から便利であると見えまして、創始いたしましてから急速度に利用がふえておりますので、これをやらないというわけに行かないのじやないかという考え方をしておるわけであります。どうしても現金送金というものの制度はやめられないということになると、おそらく今後こういうものに常時何がしかの現金が載つておるということを頭に置いて、いろいろな対策を講じなければならないというので、なおいろいろ検討させておるわけであります。しかしなかなか適切な方法が見当らないで弱つておるのでありますが、そういうことを一方で検討させると同時に、従事員諸君がこれによつて志気沮喪することのないようにということは、私も十分注意をいたしておるわけであります。
  110. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今お述べになりました現金送金という問題でありますが、これは私自身の小さい経験からいたしましても、まことに便利しごくでありまして、受取つたものを今度また現金化しに足を運ぶ必要もなく、ただちに役に立ちますので、これが非常に安全にすみやかに到達授受されることが間違いないということになつて来ましたならば、さらにさらにこの業績は上つて行くだろうと思うのであります。但しこういうような困つたことがあつたということになると、それは国の事業であるから、被害はほつたらかしになることはない、必ず返つて来るという安心がありまするけれども、同時に心理的影響は見のがすことのできないことでございまするので、そういうことを一掃する上においても、これは非常に大事な一つの問題が投げられたものと思うのであります。そこで対策といたしまして、これは私の思いつきでありますから、どうぞそういう意味で一応お聞き願うだけでいいのでありますけれども、必要と思われる——たとえばある坂を越えて行くとか、そういうような何か昔で言えば追いはぎでも出るような場所を通る者には、一つ公安官みたような資格でも持たして、ピストルでも持つようなことでも考えるべきではないだろうか。しかしそういうことがいいか悪いか、またちよつと唐突な、まことに素朴な私の意見でありますから、これはそのおつもりでお聞き願つていいのでありますけれども、何かしらこれに安全な適切な措置というものを講じつつ、現金輸送というような事業もさらに伸ばして行くようなことをしてほしいと思いますので、何かお考え願いたい。いろいろお考えなつておるようでありますから、これはもとつ信頼しておまかせしておきたいと思うのでありますけれども、他面から見ますると、逓送の自動車というものについても、また何かお考えになるべき余地があるのじやなかろうか。今ですと民間請負ということに大体なつておりまするので、それとの関連にも考えねばならぬことがないであろうかというふうなことも考えられます。それはそれでおまかせしておきますが、これが全国の郵政事業に与えました精神的な影響は甚大だと思つております。先般もちよつと私の選挙区の方に帰りましたときも、はしなくも話題に乗つておりました。でありまするので、これは声は出ておらぬかしれませんけれども全国の郵政従業員が非常に深甚の注意を払つておるということも、ひとつぜひ御記憶願わなければいかぬのでありまするので、これはほんとうにすみやかに徹底的に全力を上げて解決してもらわねばならぬと思いますので、御希望申し上げておきたいと思います。
  111. 田中織之進

    田中委員長 この問題については、ただいま吉田委員からも捜査当局に対する激励的の意味の要請もありましたが、何か捜査上、国警と自警との間の先陣争いというようなことで、新聞等にも取上げられたり何かしている問題でありますが、われわれとしては、そういう立場を別といたしまして、郵政業務の進展上重大な問題だと思いますので、すみやかに真相が究明せられるように、一段の努力を要請したいと思います。  本日はこの程度で散会いたします。    午後一時十二分散会