○山崎始男君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、今回
政府提案になりました、並びに改進党、
日本自由党、
自由党の三派共同の
修正案に対しまして、一括して
反対の
討論をいたしたいと存じます。(
拍手)
今回の
教育公務員特例法の一部を改正する
法律案並びに
義務教育諸
学校における
教育の
政治的中立の
確保に関する
法律案でございますが、まず
教育公務員特例法の一部を改正する
法律案の重要なる点は、
地方公務員である
教員に
国家公務員と同様に
政治的行為の
制限を加え、その違反に対する刑罰
規定を設けた点でございます。この
法律案に対しまして、文部大臣はまことに奇妙な
答弁をいたしているのでございます。すなわち、大学の先生が
国家公務員であつたからというて、
国家公務員法百二条でその
政治的自由の
制限を受けてお
つても、いまだか
つて何ら
政治的な不自由さ、その不平を訴えられたことはない、それどころではない、
地方における県立その他の
学校の国立に移管をしてくれという陳情がたくさんあるのを見ても、大学の先生が不自由でない証拠だ、こういうふうな、まことに珍無類の
答弁をいたしているのでございます。
教員の
基本的の人権を剥奪して、しかも既得の人権を剥奪して平気な顔でこういう
答弁ができるとは、その無知、無感覚、まことに驚くのほかございません。(
拍手)一体、文部大臣は人事院規則の第七項をおそらく御
承知ではないのではないかと思うのでございます。すなわち、人事院規則の第七項は、大学の先生というその特殊的な
性格から、その
政治的発言に対しまして弾力性を認める特例と称すべきものでございます。この特例の意味を御存じないから、先ほどのような、みそもくそも一緒にしたような
答弁をされているのでございます。(
拍手)小
学校、中
学校の先生に、この第七項の大学の先生と同様な
政治的発言に対する弾力性が認められるとは、とうてい考えられないのでございます。(
拍手)
国家公務員は、
現行法におきまして、
政治的な
制限を受けておりますかわりに、たくさんの恩恵が保障されていることは、申し上げるまでもございません。しかるに、今回の改正では、既得の人権を剥奪された
地方公務員である
教職員は、何らの恩恵が法の上で保障されておりません。その代償として、保障されない代償として、三年以下の懲役、十万円以下の罰金というものが与えられているのでございます。これは、いわゆる目が近いかわりには耳が遠い、こういうような類のものであります。いわゆる
国家公務員の持つ悪い面だけを負担するという、理解することのできない
法律上の欠陥を生じておるのでございます。このような片手落ちの結果を生ずるということは、もともと
国家公務員法と
地方公務員法とはその立法の精神において相異なる
法律であるにもかかわらず、
教員の身分は
地方公務員そのままで、何とかして
政治的な自由だけはと
つてやろうという考えがあまりに強過ぎるものでありますから、
国家公務員の例によりと、簡単に百二条をいきなり適用したところにこの矛盾があると言わざるを得ません。(
拍手)私は、この改正案は明らかに
憲法第十三条に反する違憲立法だと申し上げたいのでございます。(
拍手)
次に、この
法律案は、
教育委員会法、
教育基本法あるいは
学校教育法、現在の
教育三法のその精神とまつたく矛盾することを指摘しなければなりません。昭和二十一年
日本を訪れましたアメリカの
教育使節団が残して行きましたその
報告書の中には、重要なる点が四つございます。第一は極端に中央集権化された
教育制度、第二番目は官僚独善の
教育制度、第三番目は特権的な
教育制度、第四番目は画一的な詰め込み
教育。ここにおいて、われわれは、世界的に共通な
教育理念に基いて、
日本の
教育の
目的、
理想あるいはそのあか方を
規定したのがこの
教育三法でございます。また使節団は、十年前の
わが国の敗戦の原因を
教育制度の欠陥だと指摘いたしました。そして、注意しなければならないことは、
日本の民主化のためには、
日本の
教育制度を徹底的に
地方分権化することと、
教育公務員の
政治的自由は
一般公務員以上の自由を与える必要があるという
報告を残して行
つておるのでございます。(
拍手)民主的な自由人をつくるためには、まず
学校の
教師みずからが自由人でなければならない。
政治的自由を保障されていないところの先生のもとでは、民主的な
国民は生れて来ないという大
原則でございます。(
拍手)
地方公務員法五十七条が
教育公務員の職務の特殊性に基き
政治行為の特例を
規定してお
つたのも、まつたく右の
趣旨によ
つて、まことに
理由あるものと言わなければなりません。しかるに、今回の改正でこの五十七条の特例を取去ることは、人権の侵害ということだけにとどまらず、右申し上げました敗戦の歴史的
経過に目をおおい、新
教育の理念に逆行するもまつたくはなはだしきものと言わなければなりません。(
拍手)
政府は、今回の
二つの
法律案の提出の根本的
理由は、
教育基本法第八条の
教育の中立性が現在阻害されている、あるいはまた将来阻害ざれるおそれがあるから、この
法律は必要だと説明をいたしておるのでございます。文部大臣は、この第八条の字句の表面だけの解釈をされております。
教育の
政治的中立と
教職員の
政治的中立とをまつたく同一に考えておるところにその欠陥があるのでございます。
教職員は意思決定の能力を持つ人間であります以上、その世界観において、資本主義かあるいは社会主義か、そのいずれかに分類ざれることは当然であります。また、そのいずれかの意思決定を持つことの自由と権利は、これまた当然でございます。(
拍手)すなわち、
教育の中立性ということは存在をいたしまするが、
教職員の
政治的中立性というものは存在しないのでございます。(
拍手)
教育基本法第八条はこの考え方が
基本とな
つておる。そこで、第一項において
政治教育の必要なることを
規定いたしまして、第二項において
教育の中立性を
規定をしておる。すなわち、
政治的
教育の必要上から
教職員の
政治的自由を保障をしようというのが、この第八条の主眼点でございます。(
拍手)
学校すなわち
教育の
政治的中立性を侵してならないという義務を第二項に負わしておるのは、すなわち第一項の裏づけとな
つておるのでございます。今回の
教育二
法案の
提案の
理由の根本がこの
教育基本法の第八条を守るためだと言いながら、
自己にか
つてのよい表面上の字句だけに目がついて、
教職員の
政治的自由を保障するこの第八条の主眼点を没却しておるのであります。(
拍手、「その
通り」)いとも簡単に
教職員の
政治的自由を剥奪することは、第八条を守るどころではございません。その矛盾撞着はまことに許しがたく、いわゆる論語読みの論語知らずとはまさにこのことでございます。(
拍手)
政治には
保守の原理が認められましても、
教育には進歩の原理しか認められません。進歩の原理しか認められないのであります。(「その理論はどこから来たのか」と呼び、その他発言する者あり)一切のすぐれた
教育者が常に
時代の先覚者であつたという世界の
教育史を通ずる根本的事実は、
教育の機能から出て来た当然の帰結でございます。
教育が未来を扱うためには見通しを必要といたしますが、この見通しは、
教育者に自由が許され、
教育者に自由が保障ざれた場合にのみ可能となるのでございます。すなわち、進歩と自由は
教育を動かし、
教育を可能ならしむるところの絶対的の
条件と言わなければなりません。そうしてまた、
教育の進歩と自由を最も強く妨げたものは、時の
政治権力や時の
政党による
教育に対する干渉であつたという事実も、これまた同様に歴史の証明する貴重なる教訓でございます。
従つて、
教育の中立性という
原則は、
教育者が
政治権力や
政党の下僕になることを防ぎ、あくまでも
教育の自由と進歩を
確保ぜんがための根本
原則でございます。
教育者が
警察官の取締りによ
つて政治に関係するあらゆる
言論や
活動から退却せしめられたはてには、
政治的無関心、
政治的権力への盲
目的服従であります。(
拍手)この
政治的無関心や権力への盲
目的服従は、
教育の中立どころではございません。
支配的
政治勢力の下僕となつたところの
教育のみじめな残骸にすぎません。(
拍手)あしたに平家を迎えタベに源氏を迎えるような
教育者は、まつたく
教育そのものの自主性を没却したものと言わざるを得ないのでございます。(
拍手)明治の初年に偉大なる先覚者の輩出いたしましたのは、当時のインテリゲノチヤが
政治に対する恐怖、黙従あるいは無関心から解放され、
教育の進歩と自由の
条件が実現されておつたからでございます。福沢諭吉、あるいはその他の先覚者はもちろんでございます。森有礼のごとき、おのれの身を殺して
教育の進歩と自由を守つたところの文部大臣がおつたからでございます。(
拍手)
今回の
法案がこの自由を
教育者から一切奪おうということは、
全国五十余万の
教職員の
諸君を、
教育の
政治的中立性の美名のもとに、みずからが
教育基本法八条を蹂躪をして、
自由党の政策に盲従させんとし、
教育を不当に
支配せんとしておるのでございます。(
拍手)こういう一大野望であることを
国民諸君は十分に知らなければなりません。真に
教育の中立性を唱えるならば、法務大臣、文部大臣は
政党から離脱するというような
法律案をなぜ出されないかと私は言いたいのでございます。(
拍手)
次に
教唆、
扇動に関する
法律案でございますが、昭和二十七年七月に、自由と平和を愛する人々から憎しみと憤りを一身に浴びて成立いたしましたところの破防法の中核をなしておるこの
教唆、
扇動の
規定が、ここでもまたそののろわしい姿を現わして来ておるのであります。(
拍手)
教唆というものは、本来刑法上の
概念であ
つて、
特定の他人に一定の犯罪
行為の実行を決意させることを申します。しかし、刑法は
教唆そのものを処罰しているのではなくて、被
教唆者がこの
教唆に基いてその犯罪の実行を決意したこと、さらにその決意に
従つて犯罪を実行したことを必要とするのであります。しかるに、今回の
法律案では
教唆犯の独立性を認めたことは、まつたく無謀きわまることであると言わなければなりません。特にわれわれが最も注意しなければならないことは、
教唆行為、特に
言論によ
つてなされるところの
教唆行為は、その事実を客観的に立証することはきわめて困難であります。
従つて、しいてこれを処罰しようといたしますならば、客観的裏づけのない自白を強要されるおそれが多分に存在することを忘れてはならないのでございます。(
拍手)
扇動については、
特定の
行為を実行させる
目的をも
つて、その
行為を実行する決意を生ぜしめる、またはすでに生じておるところの決意を助長させるような勢いのある刺激を与えることをいうものとされておりますが、その
範囲は
教唆の場合よりさらに広く、現実に決意をさせ、または決意を助長させたことは必要としないのでございます。
一体、今回のごとく
教唆、
扇動を独立犯といたしまして、実行の伴わない
教唆、
扇動そのものを処罰の
対象としよう、こういうことが人権の保障にと
つてまことに危険なものであることは、破防法制定当時すでに世人の批判を買つたところでございます。(
拍手)刑法の根本
原則たる
罪刑法定主義の第一の要件たる犯罪構成の要件の明確さがまつたくないことは、刑法学上の伝統をまつたく破
つておるのでございます。(
拍手)
言論そのものを処罰しようとする、かかる威嚇立法は、明らかに
憲法二十一条の違反であると言わなければなりません。(
拍手)一体、吉田
政府は何ゆえにかかる数々の違憲立法を強行せんとするのでありましようか。すなわち、彼らの持つところの
政治的権力、階級的
支配を守るために、個人の人権の保障というような、まだるこしいことは、もはや言
つておれなくなつたところの、吉田
政府の断末魔の姿であると申さざるを得ないのであります。(
拍手)
次に今回の
教育二
法案の
審議について私は一言言及したいと思います。
ただいまわが党の
野原委員からもございましたし、
委員長からの
報告にもございましたが、三月一日より
文部委員会においてこの
法律案の
審議が始ま
つたのでございますが、三月十四日までは、ほとんどが
自由党の
委員の発言によ
つて埋められてしま
つたのでございます。しかも、その発言の
内容たるや、
職員団体であるところの
日教組の悪口雑言以外の何ものもございません。(
拍手)三月十五日から私たち野党議員の
質問が初めて行われましたが、とたんに、多数の力をも
つて、われわれの
審議に対し非常なる時間の制約を加えて来たのでございます。今回の
法律案の
中心的課題は、
教育の中立性とは一体何ぞや、この問題、はたして
わが国の現在の
教育がその現場の実態においてこの中立性が侵されているやいなやということ、また侵されるおそれがあわやいなやということがこの
法律案の
中心課題でなければなりません。
日教組という
団体がいかようでありましようとも、それは今回の
法律案には関係がございません。この点は文部大臣自身も私への
答弁において認められておるのでございます。(
拍手)しかるに、終始一貫
日教組の悪口で埋められたことは、
全国父兄や
国民大衆に向
つてこの二
法案の客観的妥当性を印象づけようとする、すなわち顧みて他を言う類にして、まことに
国会の品位を傷つける卑劣なる
行為だと言わざるを得ません。(
拍手)かくのごとく、議場にて
日本の将来の
教育を滅ぼすようなおそれのある重大なる今回の二
法案に対する
審議をほとんど許されず、最も関係のある法務
委員会との連合
審査すら許されていないのでございます。先ほど、
委員長は得々として、そういうことはないと申しておられますが、皆さんは議事録を読んでいただけば一目瞭然でございます。私は、この点におきまして、
国民諸君に対して申訳がない。この機会を利用いたしまして、私は深くおわび申し上げたのでございます。(
拍手)同時に、その
責任の全般は吉田
政府の反動性にあることもまたこの機会に御
報告をいたしておきます。(
拍手)
次に、
政府より、
わが国の
教育の中立性が侵されているという実例として、文部省内の特高班と
自由党が鐘やたいこで探し歩いた末に出した二十四の
事例が示されました。この点につきまして、衆議院におきましては三班の
調査団を派遣いたし、私もその
調査団の一人として
山口県へ派遣され、
山口日記と同じく、
山口県における安下庄の
調査の担当に当
つたのでございます。先ほど、
委員長は、この
山口日記を
報告されまして、実に誇大なる
報告をいたされておりましたが、私は実はこの演壇で今日はそのことを申し上げるつもりでございませんでしたが、ただいま
委員長の
報告を聞きまして、ぜひ申し上げなければならぬと思いますので、一言触れます。
山口県において、岩国と
山口市におきまして、各界の代表者数十人に集ま
つていただきました。そして、いろいろ調べました結果は、あのくらい誇大に宣伝されました
山口日記も、
山口県全体三十万の
児童、学生に対して販売いたしましたのは九千六百冊、その中で、ほんとうに
生徒が自分で日記をつけた人間は三千七百人でございます。このような事情によりまして、非常な宣伝にもかかわらず、県内における
父兄たちはほとんどその実情を知らなか
つたのでございますが、今回の問題が喧伝されて初めて知つたというのが実情でございます。そして、私たちがこの数十人の人に会いましたその結果は、
山口県の
教育日記が少くとも
一つのきつかけとな
つて今回の
法律案になつたということに対しては、逆に非常な反感を
政府に持
つておるのでございます。(
拍手)すなわち、自分らの県のできごとがきつかけとはいえ、こういう
法律案を出したということはあまりにもひどいという県民感情が一点と、同時に、
山口県の現場の
教育の実態は何ら虫ばまれていない、また虫ばまれるおそれもないということは、各階層の一致した
意見でございました。それどころではございません、
教育委員会が、もしかりにそういう好ましからざる
教員があるとすれば、現行の
教育三法によ
つて十分処罰することもできるのに、その
責任を果さずにおいて、かほどまでに大げさに
全国的に宣伝をされる原因をむしろ
教育委員会がつく
つておるという
一つの批判が起
つておるのでございます。(
拍手)いま一点は、こんな
法律を出していただかなくとも、民主的に自分らの手によ
つてこれを解決するという自主的な空気がたくさん県内に出ておるのでございます。これは、今回のような
法律案は必要でない。現在の三法でも
つて十分
教育の中立性は
確保できるはずでございます。この点が私は非常に参考にな
つたのでございます。安下庄の件は、これはまつたく事実無根で、ある
政治的な気違いの人が町の中に二枚のビラを張つたという、これを取上げておるのでございます。私は二日かか
つてこれを
調査いたしましたが、まつたく事実無根でございます。(
拍手)
このようにいたしまして、二十四の
事例は、針小棒大、事実を歪曲し、中には安下庄のごとき、まつたく事実無根のものすらございました。この点は新聞が伝えておりますから、私が申し上げるまでもないと思います。いわゆる泰山鳴動してねずみ一匹も出ずとはこのことだと私は思います。
わが国の
学校は
全国におきまして三万五千ございますが、百歩を譲
つて、かりにこの二十四
事例が全部
政府の言うがごとく中立性を侵しておるといたしましても、その率は千四百六十校中ただの一校にしか当りません。
わが国の
教育がこういう現状であるということは、むしろ、この二十四の
事例をも
つて、決して
わが国の
教育は中立性を侵されていないというりつぱな証拠だということを裏書しておると思います。(
拍手)高知県山田の高等
学校においてアカハタが配布されたという
事例が、この二十四
事例の中に載
つておりまするが、私の遺憾といたしますことは、
全国の
地方教育委員会を通じて数百万枚の
自由党報を各
学校に配
つておりまするが、この点の
報告がございません。(
拍手)
顧みるに、
わが国の文教政策は、天野文相の退任の前後を契機といたしまして、外交政策と文教政策は、吉田好みの色彩が順次濃化されて参りました。そのために、文教政策は政策文教と化し、あたかもあめのごとく、右にねじられ、左にねじられ、遂には修身の復活、あるいは社会科の解体、地歴の復活、愛国心の涵養、遂に臣茂の復活を見るまでに至
つたのでございます。(
拍手)目を一歩外に転ずれば、戦力のない警察予備隊、保安隊、自衛隊という、まことに珍しい戦力が存在しております。また、犯罪のない
政治献金、選挙資金、陣中見舞という、まことに珍しい犯罪が流行いたしておるのでございます。このような複雑怪奇、われわれ
国民にはとうてい現在の世相が理解できません。
この複雑怪奇のさ中にあ
つて、
全国五十数万
教職員諸君が平和と独立、再
軍備反対という看板を掲げておる、
特定政党を支持している、
教育の偏向だということが、このたびの
法案の
提案の
理由にな
つておりますが、
日本の
憲法は平和を守ることをもととして軍備の放棄を宣言をしておることは、一アメリカ人がああ間違いであつたと言うたところで、何ら関係のないことでございます。(
拍手)
憲法九十九条は、
政府にも、
全国五十数万の
教職員の
諸君にも、
憲法を守る義務を負わせておるはずでございます。しかも、平和と独立、再
軍備反対というこの看板は、
特定政党が主張をする以前におきまして、教え子を再び戦場に送るなという、子供の幸福を守る
教育の本質から自然に流れ出た
教育者の真情として掲げた看板であつたはずでございます。たとい、この看板が、百歩を譲
つて、
特定の
政党より遅れて掲げられたといたしましても、
教員の
団体がこれを是認し、そのような
政党を支持することが何ゆえに不当でございましようか。(
拍手)新
憲法に忠実に服従しているわれわれにはとうてい理解することのできない、珍しい、複雑怪奇な現象だと思います。こういう複雑怪奇な現象が起
つております反面には、平和だとか自由、人権というような
言葉は、赤という一字に還元してしまおうというような単一化運動が起
つておることも、また見のがしてはなりません。(
拍手)
最後に、私は、何ゆえに吉田
政府が、今回のごとき、わけのわからぬ、説明をしようにも説明のしようのないような
教育法案を出したのかという疑問に対しまして、重要なることを思い出さざるを得ないのでございます。それはすなわち、昨年の十月二十五日のワシントン特電として、朝日新聞は、MSA援助受入れに関する池田・ロバートソン会談において
日本側は保安隊増強に四つの制約があることを強調しております。その中の
一つに、敗戦後八年にわた
つて、
日本人はいかなることが起
つても武器をとるべきでないという
教育を最も強く受けたのは、防衛の任にまずつかねばならない青少年であつたという
日本側の言い分に対し、日米両国の間で、
教育の問題と、防衛と、そして愛国心の問題が話されております。その結果、日米両国の出しました結論は、会談当事者は、
日本国民の防衛に対する
責任感を増大させるような
日本の空気を助成することが最も重要であることに同意した、
日本政府は愛国心と自衛のために自発的精神が成長するような空気を助成することに第一の
責任を持つものであるという、結局
日本政府は、アメリカからMSA援助を受けるかわりに、愛国心が成長するような空気をつくる
責任を負担するという約束でございます。(
拍手)日米両国におきまして愛国心をつくるとりきめをするということは、まことに驚くべき、かつ恐ろしいことと言わなければなりません。このような
政治的な背景を頭に描いて今回の
教育二
法案を見るならば、ここに初めて
政府の意図が明らかになり、再軍備を促進するための愛国心を成長させる空気をつくることが
目的であることがうなずけるのでございます。(
拍手)
従つて、
教育の中立性という
言葉などはまつたくの美名でございます。
日教組も、
山口日記も、
国民の目をくらます単なる口実にすぎません。(
拍手)
政府は、すべからく、今回の
法律案の名称を輸出用愛国心製造
法案という名前にかえられんことを、私は申し上げたいのでございます。(
拍手)
全国五十余万
教職員諸君は、今日を境といたしまして、格子のない牢獄の囚人として待遇されることになりました。
憲法を守り、子供の幸福を守
つて、最も忠実に日夜営々として努めて来られましたその代償として今日のような待遇を受けようとは、私たちの最も意外とするところでございます。(
拍手)身は薄給であ
つても、せめて精神的な待遇だけはと思
つてお
つたのが、おらくわれわれ
父兄の心情ではないかと思
つたのでございましたが、まことに残酷な仕打ちだと思います。このような仕打ちを受けたからというて、
全国五十万の
教職員の
諸君が自暴自棄になつたり
教育に無関心になつたりしてもら
つては、私は困ると思うのでございます。
教育の
理想は永遠でございます。人の心を刀で切つたりカでとるような
政治というものは必ず滅びるのであります。(
拍手)吉田
政府のこの
法律案は、いよいよ吉田
政府の断末魔のあがきでございますから、どうぞ、私は、
教職員の
諸君が今まで
通りに新しい
憲法を守
つて、自暴自棄にならずにあ
つてもらいたいことを衷心から念ずる一人でございます。(
拍手)
明治五年に、
わが国に学制の発布がございました。それから七年後において、時の
政府が富国強兵の政策をとつた。その後に二十年ばかりいたしまして戦争が始まつた。それから七十年た
つて、今回の
日本の敗戦とな
つたのでございます。こういう過去の歴史を吉田
政府は心から考える必要がないだろうか、かように私は思うのでございます。この意味におきまして、今回の
政府提案になりまする
原案に対し、同時にまた三派
共同修正案に対しまして、断々固として
反対の意思を表明する次第でございます。(
拍手)