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1954-11-13 第19回国会 衆議院 法務委員会外国人の出入国に関する小委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月十三日(土曜日)     午前十一時九分開議  出席小委員    小委員長 花村 四郎君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       林  信雄君    吉田  安君       神近 市子君    猪俣 浩三君       辻  文雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 小原  直君  小委員外出席者         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         検     事         (入国管理局警         備課長)    中村 正夫君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 十一月十三日  辻文雄君十月二十六日委員辞任につき、小委員  に補欠選任された。 同日  小委員小林かなえ君及び牧野寛索君同日小委員  辞任につき、その補欠として林信雄君及び神近  市子君が委員長の指名で小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  外国人出入国に関する件     —————————————
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより外国人出入国に関する小委員会を開会いたします。  この際小委員長より小原法務大臣に対して簡単な質疑をいたしたいと存じます。  申し上げるまでもなくわが国の時局にかんがみ、出入国管理に関する問題は相当重要性を持つておると認めておるのでありますが、この外国人出入国に関しまする政府根本施策はどこに置かれておるか、その方針の御説明を願いたいと思います。
  3. 小原直

    小原国務大臣 ただいまのお尋ねお答えそいたします。わが国外国人出入国に対する取扱い方針をどうきめておるかというお尋ねであります。条約国間においてきまつた問題は別段でありまするが、主としてわが国考えるべき問題は密入国の問題であります。密入国者については最近たいへんふえておる傾向があるのであります。この密入国者が多くなることは好ましくないことでありますから、入国許可するについて相当厳重な調査をいたしまして、その入国者にして、どうしても置かなければならぬという者は、これは事情によつて入国を許す者もありますが、原則としては密入国者はことごとく許可をしないということにならなければならぬわけであります。ただ申し上げましたようにそれらの密入国者でもいろいろの事情があり、また条件が違つておりますから、それらを勘案いたしまして、許すべき者は事情をしんしやくして許しておるということになるのであります。方針と申して、大体この出入国管理令によつて取扱つておるのでありまして、出入国管理令に違反した者については厳重に取締りをして入国を許さない、しかし事情の気の毒な者についてはしんしやくしてこれを許して行く、こういうことに扱つておるわけであります。
  4. 花村四郎

    花村委員長 何か御質疑はありませんか。
  5. 林信雄

    ○林(信)委員 ただいまも小委員長質問お答えになりましたそのことが、この小委員会根幹をなすところであるのでありまして、入国管理局においてお取扱いのこともお答え通りそれが全部のお仕事であろうと思います。従いましてその根幹をなしまするそのことより派生して参ります諸点について伺いたいのであります。原則として、密入国した者は退去せしめるということには実際上なるでありましようし、そう取扱つておられるのでありますが、いわゆる原則としてであり、例外としてその入国それ自体を認めるものでなくても、その後の居住を許すことが適当である場合には、これが許されておる、その事例及びその内容でありまするが、率直に申しましてこの委員会でもしばしばその点について意見を交換して参つたのであります。しかしながら委員会に所属いたしまするおおむねの意見と、入国管理局のお考えになつておるところとは、その例外の部分について必ずしもしつくりしないのであります。かようなところよりいたしまして、本夏七月十四日の当小委員会におきましても全会一致をもつて決議したものがあるのであります。これは当局におかせられても御存じのところでありまするが、少くともその取扱いの点において、この辺まではお考えを下すといいますか、緩和されての取扱いが、諸般関係考え合せまして適当ではないかということであります。これは考え方の基盤をなしますものはいろいろ複雑であり、広汎であり、むずかしいと思うのであります。いやしくも国家世界の諸国家国交をいたして参りまする以上、それが正式に認められておるとかいないとかいうようなことは別にいたしましても、広く人類の生存目的と申しますとか、生きとし生けるものの存在価値といいますか、そこには場合により国境を越えまして人間的なものがそのもとをなすのではないか、なお現在の国交を思いあるいは将来への国際関係を思いまするときに、自国利益言葉は悪いかもしれませんが、利己的な考え外国人出入国を当つて行くと、当然に自国利益考えられますことは他国の不利益になり、他国人の忍びがたいものがあるのではないか。なかんずく朝鮮及び台湾人立場におきましては、かつて日本人であつたわけであります。われわれのかつての同胞であつたのであります。従いまして当時におきましては、特殊の例外不心得者は別にいたしまして、当時の言葉あと日本国に忠誠を尽して来たのであります。その日本に奉公して参りました者がそのまま日本に滞留いたしておりますれば、これは密入国の問題は起らないのでありますけれども、たまたまなる事情よりして朝鮮あるいは台湾居住しておつた、その間に終戦を迎え日本入国することが不可能となつた、それも全部入れるべきである、あるいはそこにはそれなりの理由のある者を入れるべきである、こういうことが問題になるのでありますが、今夏七月十四日の決議は、限りました範囲において、これくらいの程度には緩和せらるべきものではないかということで決議をいたしておるのであります。  これを読み上げますれば、在留許可緩和基準といたしまして、「一、終戦相当期間日本居住し、戦争末期強制疎開その他の理由によつて朝鮮台湾疎開等をした者が、終戦後、日本の旧居住に現状を快復したような場合。」説明をするまでもないのでありますが、その日本を離れた時期は戦争中の時代であり、日本人自体におきましても疎開ということがなされたのでありますが、これは他国には出ないとしましても、朝鮮台湾諸君は、これらの場合疎開先をまず朝鮮台湾に求めるということは自然の姿であり、また当時の日本官辺におきましても、このことを慫慂したのであります。しかるに終戦後となりまして、帰国して来ることが、日本への入国が、不可能となつた。これはまつた本人の任意の意思に基かずして日本の領土を離れたものであります。かつて日本人として、かつて日本生活基準を持つており、こういう異常な事情によつて国を離れた者が復帰して来るということは、これは理論といいますか、そういう大義名分からいつていなみ得ないのではないか、もちろんその当人感情考えを及ぼしますならば、これは同情すべきものであろうという観点に立つのであります。  その二は、「現に、日本居住する夫婦親子兄弟姉妹等近親関係の一方が、他方を朝鮮台湾から呼び寄せた場合。」こうしるしておるのでありますが、実際問題におきましては、日本居住いたします夫婦親子兄弟姉妹を頼りあるいは求めて、他の一方が入国して来る場合であります。こういう場合も第一の考えと大体同じ考えでありますが、なかんずくその当人感情に立つて考えてみますならば、これは自分がその立場におかれた場合を考えますればさらは痛切でありますが、夫婦その所を異にし、親子その所を異にし、兄弟姉妹離れ離れに暮すことの、どのくらい苦痛であるか、これは言うまでもないのであります。  ことに、これらの場合が、一の場合のように戦争時代特殊事情より離れ離れにさせられた者が相寄るという姿、まことに自然なものでなくてはならない、この競合するような場合を第三に掲げております。  その四といたしまして、「日韓日台日中関係事業に従事しているもの及び技術、芸能、学問研究を志望しているもので、相当実績をおさめている場合。」もとよりこれは不法入国を前提とするところでありますが、実際の面において、入国当時においてその在留を許すべきやいなやを審査する機会を逸して時を経、月を経まして、これらの諸君はそこに一つ生活根拠をつくり、行いますととろの事業相当実績を収めておる、場合によれば日本のために寄与しておる実績がある事業のものもあり得るわけなのであります。かようなものについて特に緩和すべきではないかというのであります。  もつとも、これにつきましては、同時に決議せられたものとしまして、一般的な条件として、これらのものは少くとも生活の能力のある善良な市民であらねばならぬということ——善良な市民でありますから、もちろん自然犯的国内法令に違反したというがごとき事実のないということ、または場合により信用のある日本人の十分なる身元引受のある者というようなことも当然考えなければならないのでありまして、これをあわせて決議いたしておるのであります。かような点が当面いたします不法入国者に対する在留許可緩和条件一つ基準として取上げられないものかどうか。出入国管理関係法令は早々の間になされましたもので、必ずしも今日の自体に合つていないということ、それは内田局長の前の鈴木局長においてもこれを認められ、その改正のことが研究されつつあることを聞いておるのでありますが、しかし根本的な改正に至りますると、やや長日月を要することもいなみ得ないと存じます。当面いたしておりまする不法入国者取扱いについては、暫定的にでもこの程度基準をおつくりになつて天下に示すといいますか、この事態の起りました場合のよるべきものにされたならば、今日のごとく、ただ人づて来たら何でもかんでも帰されるのだというような誤解を一般に持たしめることがなくて済むのではないか、かように考えましたことがこの決議趣旨なのでありますが、この点について法務大臣はどういうふうにお考えなのでございましようか、これを伺つておきたいのであります。
  6. 小原直

    小原国務大臣 お答え申します。戦争前は出入国がきわめて自由であつたことは言うまでもないことでありますが、戦争諸般の国内的その他の事情をしんしやくいたしまして、出入国管理令を発布いたしまして、これによつて不法入国者取締りを厳にし、不法入国者原則として退去を強制するということになつたのでありまするけれども、ただいまお話のありましたように、不法入国者ことごとく日本におつては不都合な者ばかりではないのであります。たとえば例をお話になりましたように、台湾朝鮮のごとき戦前わが国土であつたのでありまするから、この方面から入つて来た人で、現に長く日本居住し、あるいは日本に生れた者、その他親族関係者日本におつたというような場合に、それをたより、正しい生活日本で続けて行くという目的で入つて来たような者について、必ずしもこれを退去せしめなければならぬというものではないと思うのであります。問題は主として台湾、南北朝鮮及び中共人たちであります。そのほかの外国人はきわめて少数でありまするから、取上げて言う必要もないと思うのであります。この台湾朝鮮中共から入つて参ります者についての取扱いが今一番問題になつておるのであります。管理令ができました当時は、今申し上げたように非常に厳重に取締つてつたのでありますが、その後だんだんお話のような事情考え原則として退去をさせるということであつても、なお相当これを緩和することがよかろうということで、取扱いをだんだん寛大にして参つたのであります。私は御承知のように本年の六月就任したのでありますが、その前の取扱いぶりを見ますると、まだ私の来たときはなかなか厳重であつたのであります。五十条によつて異議申立てをして、法務大臣裁決の結果許可し及び不許可にする率等を見ますと、割合に許可するものが少くて、不許可の方が多いくらいであつたのであります。どうもだんだん事情を調べてみますると、いかにも仰せられるような関係からそう厳重にはからうのも無理であるように考えましたので、この取扱いを寛大にするように事務当局の方に話をいたしまして、爾来取扱い相当寛大になつてつておるのであります。今日では、法務大臣裁決は、むしろ不許可にするものの数がよほど少くなり、許可する方が増大して参つております。  その方針をどこに置くかというお話でありますが、これはただいまお示しになりましたように、衆議院の法務委員会の小委員会で本年七月十四日にお話合いできまつたという基準がありますが、こういうことももちろん考慮の中に入れて裁決をいたしておるのであります。ただ、しかしこれをこの通り全的に取上げて、この条件にはまつたものはことごとく入国を許す、在留許可するのだということになりますと、これはまた非常に入国者がふえて来て困るのであります。この御決議があつたということを伝え聞いて、すでにその後における入国者あるいは在住希望者がだんだんふえて来ておる傾向であります。大体この御決議になりましたようなことを考慮には入れますけれども、これは必ずしもこの通りには行かぬので、やはり諸般事情を調べますと、在留許可し得ない者もあるのであります。大よそわれわれの考え方は、この御決議と大体同じようなことではありますけれども、これをこのまま全的に取上げるというわけには参りませんので、これらを勘案して、許すものと許さないものとがきまるのであります。それでは基準なしに、かつてに、わがままにきめるのはどうであろうかという御批判が出ると思います。これはごもつともであります。われわれも実は一定の基準を求めたいのでありますが、基準をきめたところでやはりその基準に当てはめて裁決するときには、右に行き、左に行き、多少寛になり厳になつている場合があるのであります。これはどうも人間としてやむを得ないのでありますが、大体はお話になりました国際関係外交等関係、それから本人戦前日本に結びついておつた関係、また親族故旧等日本におるかどうか、本人がどういう営業をやり、その資産関係がどうであるか、あるいは在留するについての保証が確実であるかどうか、こういうことを考慮いたしまして、在留をしてさしつかえないと思う者は在留を許すという方針できめて行こう、であるから、大体今お尋ねになりましたような条件を勘案して実行をいたしておるわけであります。
  7. 林信雄

    ○林(信)委員 御丁重なお答えで了承するところが多いのであります。私が緩和基準といたしまして具体的な決議そのままを申し上げましたが、私自身も、この決議が文字によつてかなりわくがつくられておるように見られますことは、まだ気持にぴつたり来ないのであります。基準はどこまでも基準でありまして、具体的な問題にあたりましては、そこにやはりいろいろな点が考え合されて実際問題が処理されるということ、これはそうあらねばならぬと存じまするし、その根本考え方において、おおむねこの程度、この趣旨が受入れられまして、具体的な問題が処理せられますれば、率直な話が、国民の間において当該外国人の間において、批判を受けることはないと思うのであります。従いましてどうぞその趣旨を実際の取扱いの面に生かしていただきたい、こうお願いをいたしておきます。しかるに最近私の耳にしたところですと、不法入国関係でなくて、具体的な問題として、事件自体ではないのですが、私の耳にいたしましたのは朝鮮人渡航関係なんですが、従来はどういうことであつたのか、これも承りたいと存じます。これは大臣がそんなところまではということであれば局長さんから承りますが、従前のものを承り、今日従前制度といいますか、やり方が大いに狭められたということは、どういうことに基因するのであるか。私の知つたというのは、朝鮮へ出かけて行くには日韓貿易をやつておる会社で、その過去の実績が年五万ドル以上のものである会社重役に限り行かれる。そうしますると、一般の者は許されない。日韓貿易関係の、これらの限られた者だけが許されるのだ。しかも本年の十月一日でありましたか、ごく近い日にちでありますが、そういうことに基準がなされておるということは、入る者をたいへん入れないことにする。じや出る者は出てもいいのじやないかというのでもなくて、ちよつと行つて来るだけでも、なかなかこれはやらないというのは、一体どういうところから来ておるのであるか。すぐに考えられることは、いわゆる国家機密ということであります。スパイ活動に利用せられるというようなことも、懸念せられるのじやないかと思うのですけれども、それであるならばそれだけの調査、それだけの取調べをして、支障のない者は出してよろしいのじやないか。ただ貿易関係のみに限るということになりますと、先刻から言つておりましたような人情的な面において、まさに親が死に瀕しておる、子供が死にかけておる、あるいは結婚の問題でぜひ出かけて行つてその当人に会い、そして連れて帰る——帰ることは困難であるかもしれませんが、まあ事例は別といたしまして貿易以外のことで、やはりこれも人道上ですが、また将来の国交関係考えましても、あまりに縛つてしまうということはどうか。その制度がとられたというのはかなり大きな問題ですから、しつかりした省令か何かで基準を明らかにせられなければならないのじやないかと思うのですが、私の聞くところによれば一種の方針、内規的なものだ、それでよろしいというお考えだろうと思うのですが、それはどういうところに法の根拠を置いて、それでよろしいとお考えになるのか、そのことについては大臣お答えを願いたいと思います。  その他今までの取扱い等については過去のことでございまするし、大臣お話のごとく六月御就任以後においても御経験はあると思いますけれども、問題は十月一日に始まりますので、下地をなしまする以前のことは局長さんからも承りたいと思うのであります。以上お尋ねいたします。
  8. 小原直

    小原国務大臣 今お尋ねのことは再入国条件が厳重になつたというお尋ねかと思います。これは私当局からまだ詳しいことを聞いておりませんので承知いたしません。局長から御答弁をいたさせます。
  9. 内田藤雄

    内田説明員 ただいま御質問の要点は、ことに十月一日という日付もおつしやつておられますので再入国許可、これは法の二十六条にあります問題でございますが、これにつきまして従来より厳重に基準をきめたということはなぜかという御趣旨であろうと了解いたします。これは確かにその通りでございます。それはなぜかと申しますならば、本来、再入国許可——私はまずはなはだ素朴な原則論から申し上げるのでありますが、旅券を持つて外国に参りました場合に再入国許可するというのは、本来きわめて例外的なのが国際慣行でございます。つまり外へ一旦出たならば、またもう一度新たな旅券を持つてつて来るというのが国際的な原則でございまして、ただそれでははなはだ不便な場合がございますので、例外的に、たとえばアメリカに行つております間にちよつとよそに行つて来る場合の再入国を認めるという例はむろんございますけれども、これは本来の原則ではなくして、本人に対する非常に恩恵的な便宜供与として認められておるのでございます。ところが日本の場合におきましては、従来これはスキヤツプにおきまして出入国管理をやつておりました時代からの惰性だそうでございますが、はなはだルーズに、ほとんど世界各国の例に見ないほどルーズな再入国許可が与えられて参つておりました。その結果、特に朝鮮人々につきましては、中には月に数回、どうかしますと週に二回と複数の回数でもつて朝鮮の間を往復しておるというような実例が頻繁に上つて参りました。これはどういう結果か。その内容をさらに検討してみますと、ただいま林委員の御質問になりましたようなやむを得ない本国への帰郷と申しますか、そういうものとはとうてい考えられない、何かそこに、むろんあまり根拠のない推定をいたすべきではございませんが、今日の日本及び韓国の物価の相違とか、あるいはその他ドルの軍票の関係、そういうことをいろいろにらみ合せますと、密貿易等疑い相当持たざるを得ない、またさらにその間に密出入国にも相当関係があり得るのではないか、また先ほど林委員もおつしやいましたように、その間に、われわれの公安、治安関係から見ても望ましくないようなものもあり得るのではないか、こういうもろもろの考慮がなされたわけでございます。そして一方御承知通り日本人に対しましては韓国政府は一切出入国を認めておりません。こういう具体的な情勢下におきまして、これはまさしく朝鮮人々のみが持つ特権なんでございますが、朝鮮人々のみに日本側で自由に再入国を認める、こういうことは国際的な常識から考えまして、あまりへんぱでもありますし、かたがたただいま申し上げましたような諸般考慮がなされまして、確かにある方々には御不便をかけておるとは考えますが、この際しばらく再入国許可というものを厳重にしてみよう、こういうことで九月でございましたが、われわれ一つの内規をきめました。それでお説のごとく、貿易で、確かにこれは正常な貿易として認め得られるようなものにはむろん認めます。それからそのほか種々の観点から、決して利己的な意味ではございませんが、大きな意味において日本利益になる——たとえば日本人は向うへ参れません関係で、日本商社貿易をするために韓国の人を使うというような場合もございますので、そういうことが十分の根拠ありと認められるような場合にはむろんこれを認めます。しかし、たとえば具体的例で申し上げますと、先般韓国に国体がござがまして、日本からも選手を出したいということでございましたので、これも相当な数でございましたが認めました。また前に戦災の孤児慰問団を出したいということで御婦人の方が五、六十名という相当大きな数でございましたが、半分が前に行つておられて、残つた半分の方が十月のこれにかかつてしまつたという場合にはもちろんこれもお許しいたすということでやつております。要するに私どもいたしましては、従来あまりにもルーズに行われておつた入国許可を各個の場合に検討いたしましてこれを認めて行きたい、こういう考えでございまして、ただいまやり出したばかりなものでございますので、目下のところちよつと固いきらいがあるかもしれません。しかしわれわれといたしましてもそんないやがらせと申しますか、妙な意味でこういうことを続けて行くつもりもございませんので、日韓国交関係が一日もすみやかに回復することを期待しつつ、同時にこの取扱いについても適正な調整を加えて参りたい、こう考えております。
  10. 林信雄

    ○林(信)委員 そうしますと今度十月一日からのそういう基準をおきめになつたというのは、実績年間五万ドル以上の商社関係者——私は重役と聞いたのですけれども——関係者ということではなく実例でお示しになつたような、たとえば体育関係選手として韓国に渡る必要があるといつたようなものは許した、そういう一般的な場合はあるにはあるのでございますか。
  11. 内田藤雄

    内田説明員 例はいろいろございます。それで今の貿易の問題につきましてもそういう大きな商社の方で——これは常識的に正式な、つまり関税法違反とか密貿とかいう疑いのないような方は一般的な条件で比較的寛大に許しておるわけでございますが、そのほかの場合でも、先ほど申しましたように日本側商社の方からの正当なと申しますか、十分根拠のある資料などをいただきましたときにはやつておりますし、そのほか先ほど林委員もおつしやいましたような人道的な見地から見てやむを得ないというような場合には、これは許可する考えでございます。
  12. 林信雄

    ○林(信)委員 そう承りますと、私の外務省あるいは入国管理局で聞いておりましたこととは少し違うようでありますが、しいてお尋ねするほどのことでなかつたかもしれません。  そこで御意見のうちに出ました話からヒントそ得てお尋ねするのですが、なるほど韓国日本人入国を許しておりません。人われにつらければわれまた人につらしと申しますか、敵本主義と申しますか、そういう考え方は一応だれも持つのでありますが、そういうことが日韓会談の進捗することによつて相互の了解の一日も早く成立することを望むのであります。その間の問題であつて、彼がそうあるからそれきりに言い切られはしないのですが、それがあまり大きく打出されますと、何だか韓国を侮辱するわけではありませんが、日本も必ずしも大きくはないかもしれませんけれども、まあまああの朝鮮半島の半分の国を相手にしまして、彼がこういう態度だからおれもまたこうだというふうに見られますことは、大国日本としてこの場合決して利益でないのじやないか、もう少し日本日本国家らしい態度というものが打出されてしかるべきではないか、いなそうすることがやがて日韓会談の進捗面におきまして必ず私はプラスするものがあろう、こう思うのであります。この点は深い御理解を賜わりたいと存じますが、これに牽連いたしまして日韓会談のその後の再開の進捗状態はどういうふうになつておるのでございましようか。その会談が始まりますならば、少くともこの出入国関係においてどういうふうな内容態度をもつて御折衝になるのでございましようか、さしつかえない範囲において大臣もしくはその他の方の御意見を承りたいと存じます。
  13. 小原直

    小原国務大臣 ただいまお尋ねになりました質問のうち日韓会談の問題でありますが、これはせつかくお尋ねになりましたけれども、私は所管外でほとんど承知いたしておりません。お答えいたしかねます。  それから朝鮮の人であるから特に再入国を厳重に扱うというのはいかぬじやないかというお話でありますが、これも先ほど内田局長から答弁いたしましたように、事情によつては許しておるのであります。ただしかし御承知のごとく、南北鮮人が日本におります数は、正確の数はわかりませんが、約六十万、非常に多数の南北朝鮮人日本に在住いたしておりまして、しかもこれらの者のうち犯罪を犯すものの数がなかなか多いのであります。今ここに統計を持つおりませんけれども、殺人、強盗その他昨今やかましく取締つておりますヒロポンの関係——ヒロポンの関係等は大部分が朝鮮人であります。こういうような関係から見ますると、この悪い人たち——いい人もたくさんおりますが、そのうちの悪い人たち日本在留することはまつたく好ましくない、日本の治安の関係から見ると、こういう方々はおつてもらいたくない、しかしその犯罪者に対しては退去を交渉いたしましても先方は引取らぬのであります。やむを得ず在留しておるというような関係になつております。さようなことで善良の朝鮮の方々が日本に来られて、しかも正業に従事して国民とともに和協して居住せられるということは必ずしも悪いことではありませんけれども、今のような関係考慮せられると、再入国許可等についてやはり相当厳重な措置をこの際とるということはやむを得ないことであろうと思います。
  14. 林信雄

    ○林(信)委員 今大臣のお述べになりました日本在留いたします朝鮮人六十万程度、それ以外にも台湾人あるいはその他の外国人もあろうかと思いますが、いわゆる日本国との平和条約の規定に基いて同条約の最初の効力発生の日において日本の国籍を離脱する者、これらの諸君は別に法律で定めるところによつてその者の在留資格及び在留期間が決定されるまでの間引続き在留資格を有することなく本邦に在留することができる。いわゆるポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係者命令の措置に関する法律、昭和二十七年四月二十八日公布法律第百二十六号の第二条の六に規定せられる、これによつて在留しておるものであると存じまするが、この規定に見えまする「別に法律で定めるところにより」としながら、その定められる法律は今日まで発布せられておらないのはいかなる事情に基くのでありましようか。現実の事情在留を認められておりまするので、実際には必要がないもののごとくでありますが、すでにかように法律において予定しておきながら、全然その法律が出ないということはいかがであろうかと存じますので、この間の事情を御説明願いたいと思います。
  15. 内田藤雄

    内田説明員 ただいまの問題、確かにごもつともな御質問なんでございますが、これは私も実はあまり長くおりませんので、十分な事情承知しておりませんが、私の承知いたします限りでは、この問題は絶えずわれわれの念願にあるのでございますが、現在日本におります韓国人あるいは朝鮮人在留資格の問題というのは、日韓会談の外交交渉のなかなか大きなテーマになつておるわけでありまして、当時の気持といたしましては、その外交交渉の結果を待ちたいというので今日に至つておるように聞いております。そこでこれを外交交渉と切り離しまして、日本側の純然たる国内問題として処理したいという考えもございまして、実はこのうち台湾人の問題につきましては、平和条約もできたことでございますので、台湾出身者については準備を今いたしております。しかし韓国人の問題につきましては、やはりわれわれとしては、国内措置できめてしまうのはちよつと早いのではないかという考えでおりますので、まだそう近い将来にこの法律に基きます立法措置をいたそうという考えは今のところ持つておりません。
  16. 林信雄

    ○林(信)委員 かような関係から行きましても、日韓会談がすみやかに再開せられまして、円満な条約の締結を見ますることを望んでやまないのであります。そのことがまだ始まらないのでありますから、お答えのようなこともやむを得ないと存じます。しかしそれが早急でなくても、非常に遠く成立見込みがないということになりますれば、やはり何らかの措置が適当ではないかと思いますので、これは御考慮を願つておきます。  なお一、二点お尋ねします。先般もお尋ねしたのでありますが、この出入国管理令改正すべきもののあることは、これは小さい点を選びましても、また大局から見ましても、もはや私がくどくど何も言うことはないと思うのであります。先刻事例の出ました、日本に対して好ましからざる人物、これらの諸君退去せしめるというようなことは、これは当然とも言い得るのでありますが、実際問題としてなかなかそう参りませんし、それでなくて、今日新しく起つて参ります不法入国諸君退去せしめようとしても、彼はこれを受取らない。すでに大村においては、余裕を見て建設せられた収容所がその限度を越えてしまつている。すなわち千名もあつたら、ゆうゆうたるものであろう——当時四、五百あるいは五、六百程度でありましたかであつたにかかわらず、今日では収容予定人員数を上まわつて、千百五十とか千二百かになつているように聞くのでありますが、実際面において当然のことが当然に行かない、こういうこともまことに残念に思うのでありますけれども、最近これらの諸君がなお漸増しつつあると思うのでありますが、その実情、すなわち密入国いたして参ります連中の状態、数等はどんなふうになつているのでございましようか、最近の実情をお伺いしておきたいと思います。
  17. 内田藤雄

    内田説明員 お説のごとく、ただいま密入国者でさえも向うが受取つてくれないという状況にありますことは、われわれとしてまことに困つておりますので、その結果、お説の通り大村の収容所は大体今千二百名くらいに達しております。それで密入国者として帰つてもらわなければならない人の数というのは、毎月二百くらいで、この八月ごろまで来ておりましたのですが、九月以降の状況は、これはまだあまり正確には申し上げかねますが、新しい密入国の数というものは多少減つておるのではないかと考えておりますが、他方切りかえなどに伴いまして、前から密入国者としてもぐつてつた人人、いわゆるわれわれが潜在密入国と申しております人々が、またその事実があがつて、過去の密入国者であるということが発見されて参ります数字が他方でふえて参つております。かたがた結局におきましては、密入国者としてわれわれが取扱う数は必ずしも減つておりません。そういつた関係で、ざつとした数字で申し上げますと、月に二百ないし二百五十くらいの程度でふえて行つておるのではないかと考えます。そこでこの収容所の問題が当然起きて参りますので、われわれの方といたしましては、繰返して申し上げますように、少くとも密入国者——これは原則として引取らぬということは一ぺんも言つておらぬのですが、ただ諸般の政治的理由か何か存じませんが、原則は否定しないのでございますが、実際上それが動いていないのでございますが、せめて密入国者だけでも早く引取つてもらうような状態が一日も早く生れて来ることを期待しているのでございますが、他方いつまでもただ期待を持つて漫然待つわけにも参りませんので、やはり大村がほんとうに一ぱいにならない前に準備を何かしなければならぬと思いまして、目下その方の準備も進めております。
  18. 林信雄

    ○林(信)委員 どうもこれはたいへんな傾向のようで、われわれもまことに憂慮にたえないのです。どんどんふえるからといつて、どんどんそういう収容所を拡張して行く、あるいは別に新設して行くというようなことになれば、収容自体はできるのですが、これはやつかいしごくな次第であります。罪人じやないのだから犯罪人扱いはできない。といつてお客さんとしてそんなに歓待する気持にもなれないのであります。そこで考えられますことは、その比率はわずかの部分であるかもしれませんが、少くともそんなふうに収容しきれないほどたくさんいる連中の中におきましても、一応これを出所せしめてみずからの力で生活せしめても、必ずしもいろいろな面において支障のないものについては、これはいわゆる仮放免の制度はあるのであります。保証金におきましても三十万円まではとれる、もちろんその他の関係においては十分な身元引受けとか、ことに幼年者等におきまして当然扶養者が考えられますが、思想の面等は全然考えなくともよろしうございます。これらの諸君に適当なる方法をもつて出所せしめることは少くとも一部緩和になるのでありますが、この前承りましたときはずつと古いころに、一度送還の手続をとつて韓国側が受入れなかつた連中については、素質のいい者は仮放免をむしろ慫慂しておるという話であります。そういう者に限つて仮放免を考慮せられるのはどういう事情なんでありましようか。私のただいま述べておりますような考え方をもつていたしますれば、その後のものにおきましても同様の考えを持ち得ると思うのでありますが、そこになお差別をして処遇せられつつあるのでありますか、であるならばこれはお考え直しが願えるのではないか、かように思うのでありますが、いかがでございましようか。
  19. 内田藤雄

    内田説明員 ただいまの林委員のお説はわれわれも実際上考慮に加えております。しかしわれわれの方としましてはまだ少し固いかもしれませんが、仮放免いたしましたあとの再収容——帰せる時期が来たときに再び帰つてもらうためのその再収容の可能性ということを考えながらやつておりますので、実はその数などにおきましてなかなか思うようには多くなつておりませんが、そういうお考えはごもつともと思つておりますので、われわれも実は考慮に入れております。ただわれわれの方の立場を一言申し述べさせていただきますならば、実は従来の例に見ますと、一度出してそこに一つ生活状態が続いて参りますと、今度はほんとうに人道上の考慮から、もう一度再収容するということは非常に困難になる場合が少くないのであります。中にはその住んでおります地域などの関係から、たとえて申しますならば朝鮮人の人ばかりが住んでおるような地域に小さい子供を仮放免で放したというようなことになりますと、これを収容に行きますのにたいへんな警官まで用意しなければならぬといつた事態が過去にもあつたそうでございまして、そういう再収容の可能性あるいはそれが物理的な意味ばかりでなく、人情的な意味から起りますいろいろな問題なども考慮いたしまして、現在のところ少し固く運用されておるのでありますが、御趣旨のことはわれわれも十分考えておりますし、今後そういう考えを多少広げて行かなければならぬかと考えております。
  20. 林信雄

    ○林(信)委員 お話の固過ぎるかもしれないがというのはまさに固過ぎるように思うのです。これは比較しては無理かもしれませんが、私は比較していくらかわかつていただけると思うのですが、犯罪人の場合です。刑事訴訟法におきましては犯罪をいたしましても保釈が原則的に考えられております。そういう連中を出しました場合でも、これは一ぺん出ると、入るのはなかなかいやなんだ、この場合に密入国者が一応でも出されて、さらに強制送還されるということで再収容されることはいやだというのと、これは考え方はあるかもしれませんが、大体いやなことは同じなんです。それであつてもやはり刑訴訟法の訴訟手続においては原則として収容しないという建前をとり、現にやつております。その結果やはり逃げる者もあり、つかまらない者もあるのです。しかしそれは何といつたつてやはり例外の場合であります。不法入国者の仮放免した者が全部つかまらないわけじやないと思うのでありまして、その間に例外の出ますることは、これは刑事訴訟法の保釈の場合を考えても同じで、事例は出て来ると思うのであります。そういう場合のために大局的な面が別に考えられる、言葉を悪く言えば、ゆがめて考えられるということはどうかと思うのです。いわばあつものにこりてなますを吹くようなことを考えなくてもよろしいのじやないか。現にこちらが迷惑をしておるのだから、その迷惑を少しでも少くするということ、これは当然であり、しかもそれらの諸君は喜ぶところでありまして、一石二鳥といいますか、ほおかむり以上に両方よろしいことなのですから、これはもう少し緩和して適当な措置がなされていいのじやないか、こう考えられてなりません。なお御意見があれば承りますが、ひとつ最後のお言葉のように広げて考えるというか、緩和して考えるというか、これをじつくりひとつ考えていただきたい。  そこで最後に伺います。私は法の改正の点をお伺いしながら二、三ぶつぶつ切つて参りましたが、理由は申しませんが、その改正がすでに考えられておる、月日もかなりたつと思います。すなわち時期的に申しますれば、私が申し上げるその御意思のあることを承つたのは、第十九通常国会の時代、やや月日もたつたのでありますが、当局におかれては法改正の要綱程度でもお定めになつておるのでございましようか。及び大体の方向はどういうところに持つて行かれつつあるか、あるいは特殊な改正要点等ございましたならば、この機会に概略でも承つておきたいと思います。かようにお尋ねいたしまして一応私の質疑を終ることにいたします。
  21. 小原直

    小原国務大臣 十九国会の当時にも若干お話があつたそうでありますが、省内におきましても、やがてこれは改正せぬげればならぬであろうという話は私も聞いておるのであります。ただまだ具体的にどうかえようという案は立つておりません、いわば研究中であると申し上げるほかないのであります。しかし改正せぬければならぬ点があるならば、なるべく早く改正した方がよかろうと思うのであります。私もそういう点を研究いたしまして、改正すべきものならば促進したいと考えております。  なお先ほど林委員からお尋ねになりまして、局長お答えしたのでありすが、今の収容所に収容しておる人員が約千二百人に達して、まことに多くなつておるのであります。御承知のように先般の日韓対談が始まつたときにも、この収容所の人間を早く引取つてもらいたいということを交渉したのでありますが、結局日韓会談は途中でああいうふうになつて、そのままになつております。問題は日韓の間に会談ができ、条約がとりかわされればこの問題はただちに解決するのであります。私どもも日韓会談がなるべく早くできることを望んでおるのでありますが、御承知のような事態で日本からは早く日韓会談を開きたいということを申し込んでおることは事実なのでありまして、先方が応じないために今日に至つております。その後の詳しい状況はさつき申したように私所管外で知つておりません。政府としてはなるべく早く日韓会談をとりきめたいという考えはあるのではないかと思います。収容所に多くなつた者をなるべく仮放免をしたらいいじやないかというお話もあり、当局考えて、現に若干は実行しておるのでありますが、ただ収容所に多くなつたから仮放免するというので仮放免をする、それの再入は困難があるかもしれませんが、それは別としましても、収容所が多くなつて仮放免をする、また収容所が多くなつて仮放免をする、詰まりますからこぼれた者をどんどん出して行く、その数がだんだんふえるということは、要するに不法入国者その他在留をさせられない者の数が多くなつて行くというだけになりまして、日韓会談でこの点を早くきめないとこの問題の解決ができない。お話のように人道上も考慮せぬければならぬのでありますから、収容所に二年以上も長く置くというようなことはなるべく避けたいのでありまして、そういう者は現にできるだけ条件をつけて仮釈放をするように努めておるのが現実であるのであります。私もその点は承知しておるのでありますが、ただせつかく仮放免をして、少し少くなるとまた今までのように一ぱいになつてしまう、これにまことに困つておる状態であります。しかし何とかこの解決をせぬければならぬので、結局日韓会談で解決する以外に方法はないと思います。
  22. 林信雄

    ○林(信)委員 そこで一つだけ伺わさしていただきますが、収容所に収容者があふれて来るというのは、密入国者が多くてそれを発見するからなのであります。やつて来た連中を発見して収容するのはやむを得ないのですが、これをなるべく来ないようにせしめるという暫定措置——来た者はこれをつかまえなければならぬから、来れば当然ふえるのだということになる。つかまえなければふえないかもしれませんけれども、それはつかまえなければならぬ。それでどういうわけでやつて来るかということ、さつきもいろいろお話があつたように、入つて来れば盛んに管理局が許される、あるいは仮放免がどんどん許される、それで甘く見られて来る者が多いのだ、こういうことも一つ考えなければなりませんが、しかし来ればつかまらなくて自由に入つてしまう可能性が多いということになりますと、来る者が非常にふえて参ります。ふえて来ればその中でつかまえる率がまた高くなつて参ります。そうすると収容者がふえて来るわけなのです。そこで行つてもなかなか目をのがれて入ることは困難だ、すぐつかまつて収容されてしまう。日本に行くのは行くけれども、収容されるだけのために行つたのでは何のためかわからぬということで、来ないようにするためにはどうしても警備を厳重にするということなのでありましよう。一人の漏れなくつかまつてしまう、行つてもだめだ、こう観念さしてしまえば来ないわけなのであります。これはりくつの上なので、その通りには行かなくても、その警備を厳重にするということは密入国をする者の数を減らす大きな力じやないかと思うのです。もちろんこれはやつておられるに違いありませんし、いなやつておられますが、これをもう少し強化して効果的なものにする方法はないものなのでありましようか。これはどうしても警備船、警備員、これをふやす以外にないのですけれども、これは十分でないものがあると思うのです。これは入国管理局だけのよくするところではないのでありますが、法務省の大きな力として、一つの大きな問題として取上げて、もう少しく効果的なことになし得られると思うのでありますが、これは御考慮を払つていただいておるのでございましようか、どんな状況にあるのでございましようか、これを御答弁願いたいと思います。
  23. 内田藤雄

    内田説明員 われわれまつたく同感でございまして、そういうふうにいたしたい。またそれゆえにこそ、われわれ個々の場合非常に気の毒だと思つても収容所に入れて密入国者は帰つてもらうということにしたいと思つておるのでありますが、それの発見の問題になりますと、もちろんわれわれもその方向に努力いたしておらぬわけではございませんのですが、何分にもこれは非常に数も少いことでございますし、この広い海岸線に密入国で入つて来る者の阻止ということになりますと、主管は、これは責任転嫁をいたすつもりではございませんが、まず海上保安庁とかそういつた海上関係の機関、それから入つた瞬間にいろいろつかまえることになりますと警察にお願いいたさなければならぬわけでありまして、まつたくお説のように、われわれとしてもその密入国を企図してもだめだ、こういう状態を早くつくりたいということをほんとうに念願いたしております。しかし今申し上げましたように、主としてそれを引受けていただくところは海上保安庁とか警察とかいうようなことになるわけであります。われわれの方が実際上主として分担しておりますことは、正規に入つて来ます船で密入国しようとして来る者、これは最近非常に減りましたが、いまだにないことではございませんで、朝鮮から参ります漁船などあるいは香港方面から参ります外国船というようなことで、そういつた形による密入国の阻止には非常に今力を尽しておりまして、成績も相当つておるつもりであります。
  24. 花村四郎

    花村委員長 ちよつとただいまの林君の質問に関連してお尋ねしたいと思うのですが、われわれ委員が七月末に大村を視察に行つたのですが、そのとき収容されておる人員は多分六百何十名と聞いておりましたが、それが三月たつかたたざるに千二百名にふえたということはこれはどういうことなんでしようか、あまり著しくふえ過ぎておるように思うのですが……。
  25. 内田藤雄

    内田説明員 先ほど私申し上げましたように、大体におきまして密入国だけで申し上げましても月にほぼ二百ずつくらいふえております。ですから三箇月たちますと大体六百くらいになるわけであります。でありますから、六月にごらんいただきました当時六百幾つであつたということはおそらく事実であろうと思いますが、今日千二百くらいありますということもふしぎではないことと御理解いただけると思います。
  26. 花村四郎

    花村委員長 そうしますと、これは毎月二百名ずつ密入国があるということになると、現在の収容所では収容でき得ないことはこれは明瞭なんですが、収容でき得なくなつた後の処置はどういうぐあいに扱うでしようか。
  27. 内田藤雄

    内田説明員 実はやはり国会の御助力を得まして収容所をふやしていただくというよりほかに方法がないと思つております。しかし先ほども申し上げましたように、林委員のいろいろ御指摘もございましたように、われわれは密入国の企図を妨げたいということも非常に考えておりますので、密入国で来ます人は帰されるのだという原則的な方向をくずしてしまいますと、また密入国がふえてしまうような結果を招来するのではないか。それからこれは主として外交上の問題になりますが、向うの政府の頭にもこうやつてほうつておけば、日本側が困つて向うの主張することに属せざるを得ないのじやないかと、こういうように見ておるのじやないかと思われる節もございますので、われわれとしましてはこの際——私はこういう状態がずつと長く続くとは考えてもおりませんし、ここしばらくの間ははなはだ不愉快であり、実際内心は相当つても、密入国者は収容するのだという原則でがんばつて行きたいというのがわれわれの当面の気持であります。
  28. 花村四郎

    花村委員長 そこで林委員の先ほど質問されたことが考えられるのですが、これは毎月二百名から入つて来て、そうして収容所も増設し、その他いろいろと国費をこういう方面に費すことが相当かさんで行くわけです。今でも相当の予算を使つているのですから……。それだから、こういう密入国した人々の処置に関して多くの国費を使うよりも、それを入れない、密入国させないという方面に金を使うという方が、これは有意義だと思うのです。そこで、それにはやはり海上保安の警備力を強化するということであつていいと思うのでありまするが、御承知のごとく今科学も進んでおるのですから、それは海岸線が広いとか何とか言われるが、あるいは国内の陸地なりあるいは船なりにレーダーというのですか、海上を進んで来ればすぐ機械に触れてわかる施設がありましようし、あるいはまたレーダーでなくても何かほかに、われわれは技術者でないからわからぬけれども、技術の上から見て科学で密入国の船が入つて来るくらいなことはわかるような何か方途が講ぜられてしかるべきものであろうと思う。ことに今日水素爆弾すらできておるのですから、海岸線が広いからその警備ができぬというような考え方じや、どうもあまりにも非科学的であるように考えられるのだが、そこでそういう何か警備力強化に関する方途を講じ、しかもその方面に予算を投じて、そうしてこれを根本的に防止する。それからわれわれに言わせると、ややともすると警察にしろ、あるいは入国管理局にしろ、密入国の船が入つて来れば、喜んでそれを進んで捕えるような傾きがあるのですけれども、そういう任務についておる人だから職務上そういうことは一つの手柄として喜んでやられる、このような心理状態にあることは、これは警察なんかでもよく留置場があいているから、ことさら何か見つけて来て入れるような間違つた考えを持つておるような場面もわれわれは発見するのです。それですから、そういうことなしに、密入国の船を発見したら、それを追い払つたらどうですか。それをことさら捕えて来て上陸させて、そうしてこういう収容所へ入れたり、裁判へかけたりする、それだからそういうものを捕えずにそこから追い払つて、いけなければ、向うの韓国なら韓国の国の領海内まで送つて行つて、向うへ放してやつたらどうかと思うのです。御承知のようにアメリカなどでも密入国でロサンゼルスの先の南方の国境からは相当多くの人が入つて来るのだが、入つて来ればそこでつかまえて、国内に連れ込まずに、そのまま外へほうり出してしまつて、国境線内に入れぬという戦法でやつておるのだが、それが相当に効果を上げておるという話を私はアメリカへ行つて聞いて来たのです。それだから、日本でもあまり手柄立てをして無理にひつぱつて来て国内へ入れるようなことをしないで、見たらばそこから外へ放逐するような方法を考えて行つたりすれば、相当根本的の解決ができるのじやないでしようか。ひとつそういうことをお考えになり、あるいは保安庁と協力して、そうして後入国する箇所も大体わかつておるでしようから、そういう方面の警備力を強化するというような方途を講じられたらどうかと思うのだが、そういうことはどうでしようか、小原法務大臣にお聞きしたいと思います。
  29. 小原直

    小原国務大臣 私はそういうこまかいことをよく承知いたしませんが、聞くところによるとやはり向うに小さな漁船、小舟というものが相当たくさんあるそうです。そうして海岸のどこでもつけて上つてしまう。今のお話のように入る前につかまえて、その船で送り返せばいいのじやないかとおつしやるけれども、そんな小舟で来て、食糧はどうか知りませんが、来たら来つばなしで、帰るだけの余裕がない状態で来るのが多いのじやないかと思います。警察その他の者が手柄顔につかまえて陸地に引揚げて収容所へ入れるのだというようなことは、この場合にはちよつと考えられないのじやないかと思います。今事務の方とも話したのですけれども、まつたく手に負えないので、夜間に来る、そして船を置きつぱなしにして上陸してしまう。つかまえて船で帰すといつたところで、しようがない。今来ているのは実際やむを得ず連れ込んであるので、好んで連れ込んだのではないのです。
  30. 内田藤雄

    内田説明員 ちよつと誤解の一部を申し上げますが、むろん海上保安庁などともいろいろ話しておりますが、たとえば公海におりますと、これは密入国のための船ということはまだ断定できませんですね、公海にある限り、しかも漁船などたくさんおるわけでございますから……。そうすると、これは密入国者を入れて来ているということは、日本の領海に入つたときに初めて言えるわけです。そこでそれを、今大臣もおつしやいましたように、途中から引き返せといいましても、実際それだけの準備を、して来ている船かどうかわかりませんし、結局私は委員長のおつしやいましたような思想は十分よく了解いたしますけれども、それでどんどんつかまるようになれば、おそらく収容所はますます繁栄するということにならざるを得ないのじやないかと思います。途中でまわれ右して、海岸まで来たものをそのまま帰れと言つて帰すことは、諸般の人道的な考慮等からできるかどうか。それから先ほどおつしやいましたように、アメリカのような場合ですとこれは陸地ですから、陸地へ入れないのだと言うと向うへ行くよりしかたがないので、簡単にできますが、海の場合、その点非常に実際困るのでございます。ですから、海上の警備力をふやしただけで収容所の収容人数が減るということはおそらく言えないと考えます。
  31. 花村四郎

    花村委員長 それですから、ただいまの困るというお話がわれわれにはわからないのだ。ちつともわからぬじやないですか。人道上めんどうを見てやろうというのであるならば、その小舟に帰るだけの食料も積んで与えてやるなり、また一応の保護もして送り返すということにしたらいいじやないですか。食うものや着るものは日本の国へ入れてもやはりめんどうを見てやるのでしよう。同じことじやないですか。むしろそこから帰す方が、そういうような諸費用はいらぬわけだ。日本の国へひつぱつて来ておいて、いつ帰せるかわからぬ、長い間収容所に入れて、喰うものも食わしたり、着るものも着せておいたら、なお金がかさむじやないか。人道上からいうならば、むしろ食糧も一切、帰るだけに必要なる諸物品を与えてやつて、そして帰してやればさしつかえないじやないですか。そういうことをどうしてお考えにならぬのですか。
  32. 内田藤雄

    内田説明員 それはわれわれの方の所管でございませんから、ちよつと明確にお答えいたしかねますが、しかしわれわれの想像できますことは、もし、かりに、そういう措置でやりますならば、密入国の阻止には決してならぬと思います。日本ではいくら来ても、つかまれば食糧と着物を着せて帰してくれるのだ。うまくもぐればもぐつただけ得だ、こういうことになりますれば、とうてい密入国の阻止にはならぬと私は考えます。これは私どもの直接の所管のことでもございませんが、一応私どもはそう考えております。
  33. 花村四郎

    花村委員長 そういう密入国の阻止にはならぬとはわれわれは考えられない。それは考えられないが、その点は大いに法務大臣も御研究くださつて根本的の対策、むしろ密入国をさせぬという方途へ全力を傾けてもらうということを私は希望いたしたい。
  34. 小原直

    小原国務大臣 御趣旨了承いたしました。了承いたしましたが、実はこの朝鮮人問題は、公になつてちよつと困るのでありますけれども、実際に困つているのであります。今の入国者をできるだけ防ぎたい。のみならず国内におつて不良であり、犯罪を犯してどうにもならぬ者はできるだけ退去させなければならぬのであります。これが、日韓会談ができぬために実行できていないのであります。私ども法務の関係において犯罪の取扱いから特に重大視しており、何とかこの問題を早く解決するためには、結局日韓会談が成立することが望ましいのであります。その点にも、われわれはできるだけ政府として努力いたします。
  35. 神近市子

    神近委員 今大臣からお話が出ましたから、私はさつきからうずうずしていたんですけれども、国交がないということでは今の韓国も北鮮も同じことだと思うのです。それで、私の地区に非常にたくさんの朝鮮の人がおりまして、学校の問題、職業の問題、よく聞きますともういろいろうず巻くほど問題があるのであります。私は、日本にいる以上日本の教育を受けさせろというのが私の考え方であります。教育設備もいいし、ともかく技術なり医学なりという方面で日本の発達した教育を受けさせておけばいいじやないか。後日国交が回復したとにき帰るためには、国語、歴史というようなものは全部別に自分たちで私立の学習所をつくつて、一生懸命教えたらばと言うのですけれども、どうしてもこれが納得できないのです。なぜ納得しないかといいますと、将来国交が回復して自由に帰つた場合に子供が特別な扱いを受けますので、どうしても教育は本国でしておきたいというのが、今都立学校や何かの騒ぎのもとであります。でいろいろ考えまして、今さしあたり教育を受けさせなければならない人がいるのかと言いますと、約四千人、これはもうすぐにでも帰したい。今犯罪で困るヒロポンの問題や、あるいは私どもが今研究しております売春の問題、そういうものを扱いましても必ず出て来るのが朝鮮人たちです。いろいろ話合いに見えるときに、私はどうしてあんなに悪いことをするんだということをしきりに責めるわけです。あなた方は日本人をそういうものの商売の対象にしながら、自分たちの民族にはあまりしないという状態じやないかと言いますと、やはり生活に困るためです。職業は得られない、生活はできない、生活保護を受けている人が四万人以上、日本政府からお金を出している。これはわれわれが自分たちの民族の中に行けば、監視も強いし悪事はできない、他国で監視もゆるいし食うに困るので、もう命がけで何でもするようになるのだ。こういうことを考えますと、どうしても六十万のうち、さしあたつて六、七万円はすぐにでも帰れる状態にあるというようなことを言うのでございます。そうすれば、今日韓会談のことがしばしば話に出ましたけれども、どつちにしても国交のないという点では同じことでございますから、韓国に対して引取り方を交渉することがおできになるなら、北の方に対してもやはり引取り方を交渉するということを、一応政府としても考えていただく方がいいのではないかというふうに私には考えられるのです。その点が一点でございます。  それからもう一つは、この間李徳全さんがおいでになつたときに、あちらに居住する者、戦犯の人たち、そういう人たちに家族が会いたいという御意思があるならば受入れてもいいとおつしやつたということを新聞で私どもは拝見したのです。そういうケースで、私もちよつと預かつている問題があるのでございます。七十八歳になるお母さんが福島県にたつた一人残つている。お父さんはなくなつた。中国で安定した生活を夫と一緒にできている。これは夫は中国の人らしいです。本溪湖で、技術者でございます。生活は何とか立つて行くけれども、日本に対して送金もできないし、どうすることもできない。お母さんはたつた一人で生活保護を受けて、非常に困つた生活をしているので、早く中国の娘のところに行つて、孫や娘と一緒に暮したいと望んでいるけれども、方法がない。こういう場合、これは一つのケースでございますけれども、もし赤十字社あたりで、それでは面会に出してやろうという考えになられたときに、お扱いになる手段があるのでございますか、それを二点お伺いしたいと思います。前のことにつきましては大臣の御意見を伺いたい。あとの点につきましては事務局の御答弁でけつこうでございます。
  36. 小原直

    小原国務大臣 神近委員お尋ねお答えいたします。北鮮の人を帰すべく骨折つたらどうかというお話でありますが、北鮮は韓国以上に日本との交渉ができにくいのであります。現に何ら交渉のルートを持つておらぬと思れております。従いまして北鮮から入つて来た人を送還するということについては、まつたく手づるを得られない。日本で何れ北鮮に帰るのを阻止しているわけではございません。帰りたいという者があれば帰つてもらいたいのでありますけれども、これを帰すについての方法を講ずる手段がない、そのために北鮮人を帰すことはできません。やはり韓国人と同様に、北鮮の人たちもいろいろの犯罪を犯しているのがある。また現に不法入国している者もあるのでありますが、韓国以上に送還が困難であります。それゆえに今日これが帰せない、こういう現状であります。韓国とは日韓会談等ができれば問題の解決が早いと思いますけれども、北鮮とは国交の回復がなお困難であろうと思うのでありまして、自然今のような問題の解決も遅くなるだろうと思います。次の問題は事務局からお答え申し上げます。
  37. 内田藤雄

    内田説明員 ただいまの大臣の御答弁にちよつと補充さしていただきたいと思います。まず第二の点からお答え申し上げつつ補充さしていただきます。中共に関しましても、最近われわれは希望者を帰すということにつきまして、外務省の方とも話し合いまして、あまり公の方法ではないのでございますが——と申しますのは、やはり台湾政府との関係があるものですから、多少遠慮しながらではございますがともかく道をあけることにきめました。従いまして今のような一例は具体的にわれわれの方にアプローチしていただきますならば、おそらく希望に沿い得ると考えます。  それで、それに関連いたしますが、実は必ずしも国交がないから帰さないというような考えはわれわれ毛頭持つておりません。帰りたい御希望の方はやはりその御希望の土地にお帰ししたいというのがわれわれの根本考え方でありまして、現に大村におられます方で中共に帰りたいという方もございますので、今申し上げたようないろいろな考慮が出たわけなんでございますが、北鮮の問題につきましても、私は問題自体は同様であると考えております。ただ大臣からも御答弁がございましたごとく、現実に向うが引取つてくれるという事実が確認できませんと、ただ漫然と帰すということはできないというのが第一の大きな理由でございます。それで今のわれわれとしまして希望を持つておりますことは、中共の方面へのそういうルートが開けましたならば、今度は中共政府と北鮮政府との間の話合いができまして、まずわれわれの方は中共の方へお送りするから、あとは中共から北鮮の方へ帰つていただくというような方法が開けて来ますことを実は内心期待しております。ただその際におきましても、これは私の方限りでちよつと御答弁いたしかねますのは、やはり外交上の考慮という問題でありまして、かつて今の韓国政府から相当強い抗議も受け、また現在まだもんちやくになつておりますことの一つに、日本はこつそりと北鮮へ人を送り返した、こういうことをあげております。これは事実無根なんでありますが、そういうことを一つ日本政府の不信な行為にあげております。それはやはり北鮮政府の兵力が強まるとか、そういうことが理由のようでございますが、とにかく北鮮に人を帰すということにつきましては、韓国政府相当敏感である、こういう一つの事実がございます。それでその方面の外交的な調整が望まれるわけなんでございますが、法務省自体といたしましては、帰りたい者を阻止するという考えは毛頭持つておりません。
  38. 神近市子

    神近委員 それで大体わかりました。私も北鮮の人たちの問題は中国との関係でどうにかなるのじやないかということを考えたことがございました。今大臣は方法がないとおつしやいますけれど、放送もございます。これは戦時中によく使われたので、戦争関係の状態にある国同士が何か交渉するときには放送も使われます。それでなくても赤十字というものがあるのです。これは北鮮にも赤十字があるそうでございますから、そういう方法をおとりになつて、ともかく入つて来る人は二百人と私ども聞きますけれど、六十万人の人たち、しかもそれがかつて日本人であつた人たち、これは歴史でも珍しい不幸な出来事だと私どもは感じております。こんなに人口も稠密で困つておるのだし、帰りたいとおつしやるならぜひ帰してあげた方がいいというふうに考えます。それで、管理局としても赤十字あたりと御談合になつてその問題を急速に取上げていただくというわけには行かないでしようか。既往日本人という言葉はたいへんいい言葉であつて、今でもごく少数ではありましても、日本戦争に協力して戦犯になつてその責任を問われた人が巣鴨にも何人かいるはずでございます。その人たちは義務だけを負わされていて、そうして日本がりつぱな国家として、既往日本人に対してせめて親切な扱いだけでもできないというふうなことは、これは私非常にはずかしいことだと思います。ですから、既往日本人であつたということに御考慮いただいて、帰りたい人はもう早く日本から帰つて自分たちの民族の間で働いてもらうということを考えていただく、これが私今出入国管理法についてのいろいろの御論議を聞いておりまして一番必要なことだと思います。そして出す者は出す、入れる者は入れる——私も何のたよりのない女の子をつつ返されたときには、これはたいへんな問題だと思つたのでございます。こういうことに関心を持ち始めましたのはそういうことからでございます。ぜひ帰りたい人は帰して、そしてもつと日本の座席を広くして、こつちに家族がおるという人は入れていただく、比較的緩和していただくというような方針をとつていただきたい。これは私の心からのお願いです。もつと材料をよこせとおつしやれば、委員会ではちよつと申し上げられないいろいろの事例を知つておりますから、私はいつでも出頭して自分の考えを申し上げることにいたします。
  39. 小原直

    小原国務大臣 神近委員からお話になりました御趣旨はまつたく同感でございます。われわれとしても、北鮮あるいは中国、台湾人たちで帰りたいという人はぜひ帰してあげたいと思うのであります。ただ先ほどから申しますように、韓国及び北鮮等は帰りたいといわれても帰す方法がない。先方が受取らぬものでありますから今日のようになつておるのでありますが、これはできるだけその点を改善いたしまして、国交その他の回復によつてすみやかに帰してあげたいと思います。  それからなお一言触れたいのは戦犯の問題であります。台湾人あるいは朝鮮にもありますが、元日本国民として軍に徴集せられて、この戦争で戦犯になつて巣鴨に入つておる者が若干あります。まことに気の毒なんであります。戦犯をなるべく早く解放してもらいたいということについては、関係列国にできるだけの交渉をいたしております。最近は吉田総理大臣外国をまわられて、関係国には熱心にこの解放をすみやかにするように希望され、交渉されたのでありまして、それらの影響もあり、近く何らかの朗報が出ることを期待いたしております。いずれ戦犯を解除されましたならば、この人たちについては、在留の希望があれば在留をさせ、帰国を希望する者にはすみやかに帰国の手を打つてやりたい、こういうことを考えております。
  40. 花村四郎

    花村委員長 辻君。
  41. 辻文雄

    ○辻(文)委員 総括的なことは林委員がおつしやつたし、個々のことも大分出て参りましたので、私がお尋ねしてみたいと思うことはほぼ相済んだように思いますけれども、今日は大臣が初めて委員会においでいただきまして、大臣の基本的な、また人道的なお考えを大体伺つて私は非常に心強く思いました。ぜひそのことはおかえいただかなくて、現実のお気持を進めるくらいに人道上から御思考願いたいと存じます。というのは、五十条の三号に法務大臣在留特別許可方針というのがございます。この場合に、私どもが知ります知識においては何らの基準もはつきり出ておりません。極端に申し上げれば、大臣がこれはいいと思えばよろしいのじやないかということになります。むろんそれまでになります間において私どもが重視しなければならぬのは、現行の審判制度なんでございます。審判制度がどうやられておるかということも、すでに鈴木局長時代から各委員が気にされておいでになり、ことに大村なんかをみなで視察いたしましたその後に私どもがいろいろな要望をいたしました過程において、どんな基準で審判をしておるかというようなことをつつ込んで、現内田局長におなりになつてからも、狭義の意味合いで、速記をやりませんで忌憚ないお話を承つたこともございますけれども、遺憾ながらその点は、おそらく出席しておりました各委員が心から納得できる御答弁ではなかつたように私は感じております。かような点から、法務大臣在留特別許可というようなものも、新大臣は新しくあられるという意味ばかりでなく、常に基準として最後の断定をお下しになることと存じますので、この審判制度というものはむろんいろいろ思想的その他外交上の問題もございまして、全部を公開するというようなことは不可能だとも存じますけれども、せめて委員の少数の人たちだけにでも、その意味での国民の代表といたしましても納得の行くような段階になされないものかというようなことをつくづく考えておりますので、かようなことも要望になりますけれども、さらにぜひ大臣のお心に置かれて御勘考いただきたい、かように存じます。  それから事実先ほどから花村委員長林委員からいろいろと御質問、御要望があつたようでありますが、そのことは私どもが現実に大村を視察いたしました場合も——たとえば具体的に申し上げれば一人の費用というものが一箇月に最低一万二千円くらいの費用を要するようになつております。六百人収容しておつても多額になりますが、内田局長の御答弁のように、それが逐次月に二百名からあるいは二百五十名からの増員をして行くというようなことになりますと、それがただいままでの質疑応答の過程において承つておりますように、中共あるいは北鮮あたりでは受入れ態勢さえもできていないという現段階では、何年間そこに収容しておかなければならぬかということになりますと、多額な金額になることはもろ三歳の児童でもわかることだと思う。かようなことですから、われわれがよく考えなければならぬことは、一方には神近委員からもいろいろお尋ねになつたように、その趣旨の中にも帰る者は帰して——現実の食糧事情から申しましても、日本諸般の国情から申しましても帰したい、これはもうお互いに考えなければならぬことでございます。また思想的にも言つても、私自体に言わせるならば、水準の高い人であればたといどういう思想がありましても——実際に私どもの若いとき、これは神近さんよく御体験であろうと思いますが、アナーキストであられた方もボルシエヴイーキであられた人もありましよう。しかしどんな思想であろうとも、日本の春夏秋冬における、いわゆる自然に育てられた国民性といかなる相違があるか。あるいはマルキシズムにしても敗戦後の日本の経済の自立に対してどんな考えを持つたか、そんなこまかいことまで考えていないはずであります。ですからかような体験と学究と歴史をからだに負つて、そうして身に消化しておりますならば、現実の日本としてはいかなる思想で行くべきかということがはつきり身についておるはずなんです。言いかえればいわゆる血になつておると私は存じます。そういう水準の人たちはソ連に参りましようとも、中共に参りましようとも、決して他の思想に侵されて来るということはないと私は思う。いいところは取入れましよう、注入して時代感覚のずれが来ないように盛り立てて、自分みずからを育成して行くような段階になりましようけれども、悪いと思うならば絶対に取入れない。活字の収め方というものとそれが消化されて教養になつておるものとは非常な隔たりがある。私はかように存じますので、その点は私は水準の低い人までにどうということは申し上げられませんけれども、指導者自体がよろしければ、たとえばあつちにやつたりこちらに来たりしても、そうまで恐ろしいということをお考えにならなくてもいいのではないかということを私個人で考えております。さようなことを総合いたしましてとるべき道は、小さく分析いたしますと二つあるのではないかと思います。というのは小委員長花村さんがおつしやいましたように、むだな経費をこのない金から使うよりも総合的に、そんなことをあるいは赤十字社の手を通ずるのもよろしゆうございましようし、いろいろ民間団体の手を通ずることもございましよう。現実に李徳全女史が参りましたこの現われから申し上げても、私は決して空想じやないという確信を持てるのでございます。と同時に一方にはいかにして阻止するかというようなことも局長からいろいろ御答弁がありましたが、科学の進歩した今日では、ちようど委員長が言われるように私はある程度はできると思います。それはここで詳しいことはお時間をとりますからよしますけれども、長崎県あたりに——ちようど神近委員のお生れになつた平戸なんかの辺に上りますところとか、いろいろの現実を私は知つております。その現実から申し上げますると、局長がおつしやつたようなことも非常にございますが、事実これをいかに防止しなければならぬかというこの本質の置きどころを防止する担当の官吏が考えたらできる。私はかように思いますが、かようなことはまたいつかの機会に申し上げることにして、その阻止する方法の法律の画然たる立法と、同時にそれに当る人々が涼しい気持でまじめにやるということをいかにやるか。機構上の問題と責任上の問題ですが、これをやらせるようにやるということが一つと、それからもう一つは、犬養法務大臣のころと加藤大臣におなりになつてから加藤大臣のおやめになる直前に——これは中共朝鮮も同じことだと思いますが、大量に収容されたことがございます。というのは、それまでは保証金をそれぞれ積みまして一定のわくと申し上げると私どもがちようど決議——先ほど大臣林委員から御質問がございました、この文書を差上げるまでの過程のときでございますが、その直前まではそれぞれ日本にじやまにならぬ、むしろ考え方によりますと経済的にも日本にプラスをしておる。思想的にもあるいはその他の犯罪的にもこれは許し得るという範囲を置いてあつたように存じます。また家庭的の事情から申し上げると、これは考え方によると許すべきじやないかもしれませんが、こちらに参りましてから日本の女性と結婚をした、子供もある。こういう範囲の者もこの中に含まつておりますが、さような人たちを広汎に許して保証金をとつて出してあります。それを一時に収容されのでありまするが、そのときにどういう基準でどんなことでそれが大幅に収容されたかということを私の浅い知識かもしれませんが、一応研究してみましたら、これは当然法律の本質に帰つてと言うが——これも私が註釈を入れるようですけれども、人道的な気持とあるいは活字的に一応われわれが守るべきものだということでつくつたものとの差異が、私自体には少々考えられるところがございますけれども、一応法律の本質的なものとして収容しなければならぬから、収容所が大分あいて来たのでその人たちを軌道に乗るように収容したという以外には、これがどんな理由つたかということが私にはふに落ちなかつたのであります。そういうことで収容された後に、先ほどのようにだんだん二百五十人からたとえば大村一箇所でもふえて来ておるということについては、さようなお見通しがなかつたのかというようなことも考えられますので、これを一つの方法だと申し上げたのは、そういう人たちを受入れ態勢ができるまで、日本にじやまにならぬなら、それはむろん審議をしなければならぬ、調査もしなければならぬと思いますが、おそらくさようなことは入国管理局において古い人たちのことについてはおわかりになつているはずだと思いますので、さようなものを保証金をとつて出す。こういうことをいたしますと、少しでも緩和されて来ていい、物質的にも助かつて来るようなことがあるのじやないか、また気持の上から申しますと、今後の外交政策としても、これは外務省がやることでありますけれども、関連して日本国交回復の上にも非常にいい影響を与えるのではないか、いわゆるアメリカ一辺倒と言われるようなこともなくなるのではないか、かように思いますので、かような二つの方法に基準を置かれて大臣もどうぞ御善処いただきたいと存じます。  それから派生的のことでありますけれども、私どももこれを調査し、小委員長もおやりのようであります収容所の問題であります。これは私どもが逆に御加勢しなければならぬと思つておりますのは、何か刑務所に入れたらというようなことも一応考えられておるということでしたが、これも必要に応じてはそうかもしれませんが、もし国に帰れた場合にも、日本はこうして互恵の精精があつたのだと言われなければなりません。この趣旨から申し上げても、大臣は御存じかどうか知りませんが、あの川崎の問題がございます。これに予算が八千万円だとかいるようでありますし、それから下関なんかも一億五千万ばかりいるようになつておりますので、委員長にもお願いして私どもは大蔵省にも当るつもりでありますが、この点について内田局長その他によくお尋ねいただいて、大臣からも大蔵大臣にも閣議のときその他で御努力願つて、かようなものも日本の経済が許す範囲においては設備をしなければならぬだろうと思います。要望になつてまことに相済みませんが、私の申し上げたことについて大臣のお気持だけを御答弁いただければけつこうだと思います。
  42. 小原直

    小原国務大臣 不法入国者の収容及び在留許可等に関する基準の問題でありますが、先ほど来私及び内田局長から申し上げたように、法務省としてはきちんとした基準を規則では定めておりませんけれども、大体七月十四日に小委員会で御決定になつた基準を、それ自体考えておるわけではありません、それと同じことを考えて処理しておりますので、本年の一月七日に時の局長から国内の全部の出入国管理を扱う事務当局に対して、この不法入国者在留許可取扱い等に関して通達を出しておる。それはやはりここで御決定になつたようなことを考えて処理をしろという通達が出ております。であるから、お考えになつておることと、私ども法務省の当局考えておることと違いはないと思います。ただ具体的の問題になると、やはり人の性格、感情等の差異から多少の違いは出て来ますけれども、大体の標準はそこに置いてやつております。それは今後ともさようにいたしたいと思います。その他ただいま仰せになりました横浜の収容所の新築の経費、これはまことはお粗末で、大村にあるものに比較にならぬほどお粗末なものだそうであります。私まだ見ませんけれども、これはどうしても東京の門戸としてはずかしからぬものを建てなければなりませんので、大蔵省に対しては予算の通過を強く要求いたしております。そのほかただいま御要望になりました事項はごもつともなことが多々あると思いまして、私どもとしては御趣旨を尊重して善処いたしたいと思つております。
  43. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 時間の関係もありますから、簡単に一点だけお伺いしておきます。  不法入国をいかに阻止し、またそれをいかに処遇し、送還すべきかという問題は、いろいろな角度から検討されなければならぬ問題でありますが、政府当局のお考え通り、現在における根本的解決は日韓交渉という政治的解決にまたなければならぬというのはわれわれも当然のことと存ずるのであります。ただ事を政治的に処理する前に、なお法的に処理し得る解決策もあるのではないかということをともども検討してみたいと思うのであります。密入国者の中にもしいわゆる政治的亡命者というような者があれば、これは日本としても当然これを国際法上庇護をして送還をするということは許されない義務を負担しておりますが、一般密入国者に対しましては、日本としてこれを本国に送還する権能もあると同時に、特に犯罪者等については追放する権利も国際法上確認されておるわけであります。そこで私どもはなお入国阻止を密入国の国民の属する国に対しても要求する権能もあると考えるのでありますが、これらの国際法上の権利義務をいわゆる国際司法裁判所によつて明確にいたして、そうして各関係国にその措置をとらせるということは、これまた現存認められた制度であります。日本はとかく国際連合に正式に加入されておりませんために、国際司法裁判所を活用する点において非常に躊躇しておりますけれども、規約上日本もこれを活用し得る余地が認められております。今日まで若干提訴の問題もあつたようでありますが、最近外国電報の伝えるところによると、日本の歯舞、色丹等が千島列島に属しないということで、アメリカが日本にかわつて国際司法裁判所に提訴しておるというきわめて珍妙な現象を来しておりますが、かような国際法上許された限度において日本がやはり自主的に措置して行くことは非常に肝要なことではないか、ことにただいま問題になつております密入国関係についても、韓国を対象にして至急にそういう措置をとるのも一つの対策ではないか、かように私は考えるのであります。これはあるいは外務省の政府委員ににお尋ねした方が適切かもしれませんけれども、事司法に関しますから、法務大臣にもこの点に対する御見解を承つておきたいと思います。
  44. 小原直

    小原国務大臣 ただいま佐瀬委員からお話になりました国際司法裁判所へ提訴するという問題ですが、私ちよつと所管外で、御答弁に躊躇いたすのでありますけれども、国際司法裁判所に提訴するという問題については、先般日本から竹島の問題について韓国国際司法裁判所に提訴方を慫慂しておつたのを向うが拒んだように聞いております。不法入国者の引取方を韓国に要求いたしましても、これを国際司法裁判所に出すということについて同意いたしますかどうか、ちよつとわかりかねる。私ども日本国としては、朝鮮にこれを送り返そうとしている、朝鮮の方でも、これを受入れないともはつきり言つておりませんが、事実上とにかく受入れないのが現実なんであります。これをどうするかということが現実困つた問題として残つておるわけであります。国際司法裁判所に提訴ということはどういうものか、どうも私ちよつとお答えいたしかねます。
  45. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御発言はありませんか——なければ本日はこの程度において散会いたします。    午後一時二十二分散会