運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-10-12 第19回国会 衆議院 法務委員会 第74号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月十二日(火曜日)     午前十一時二十六分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 林  信雄君 理事 古屋 貞雄君       押谷 富三君    高橋 英吉君       花村 四郎君    牧野 寛索君       吉田  安君    井手 以誠君       猪俣 浩三君    森 三樹二君       佐竹 晴記君    中村 高一君       岡田 春夫君  委員外出席者         警察庁長官   斎藤  昇君         警  視  庁         (警察庁警務部         長)      柏村 信雄君         警  視  長         (警察庁警備部         警備第一課長) 三輪 良雄君         検     事         (民事局参事         官)      平賀 健太君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正道君         公安調査庁次長 高橋 一郎君         運輸事務官         (大臣官房長) 山内 公猷君         日本国有鉄         道参事         (総裁室法務課         長)      鵜沢 勝義君         参  考  人         (警視庁公安第         一課長)    山本 鎮彦君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 九月二十八日  委員田渕光一辞任につき、その補欠として坊  秀男者議長指名委信に選任された 同月二十九日  委員並木芳雄辞任につき、その補欠として三  木武夫君が議長指名委員に選任された。 十月五日  委員坊秀男辞任につき、その補欠として保利  茂君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として中  原健次君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員長伊誠一君、神近市子君、木原津與志君及  び中原健次辞任につき、その補欠として中村  高一君、井手以誠君森三樹二君及び岡田春夫  者が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  法務及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  法務及び検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  まずラストボロフ事件について発言の申出がありますから、順次これを許します。林信雄者
  3. 林信雄

    ○林(信)委員 政府委員の各位、正確にどなたがおいでになっているか、存じた向きもありますが、そうでない向きもありますので、場合によって質問の目標がこの際不適当でありますれば、その部分については後にあらためて質疑を繰返してもけっこうでありますので、一応この際私が政府それぞれの方面お尋ねいたしたいことをそのままに提出いたしたいと存じます。  公安調査庁次長並びに山本警視庁公安課長、柏村警察庁警務部長おいでになるようでありますから、およそわかる事柄が多いと思います。すでに委員長よりも命題として述べられましたラストボロフ事件と申しますと、本年の八月十四日、外務省公安調査庁共同発表せられました在日ソ連代表部ラストボロフ二等記官日本におけるスパイ活動と、同人アメリカ亡命の問題であります。このことはいわゆるこの共同発表によりましても、またその後の政府要路諸君の動きが新聞等にも伝えられておりまするので、繰返して私がここにその知っておるだけの知識を並べる必要もないと思います。従ってお尋ねする必要もないようでありますが、一応質問順序といたしまして今日とりまとめまして、この問題の真相はどういうものか。ラストボロフ事件真相といったような質問お答えを願いたいと存じます。これはお答えくださるお方の良識といいますか、お考えによってとりまとめられたものでけっこうであります。あえて内容的に申し上げる必要はないと存じまするが、たとえば彼の出しましたるスパイ活動範囲、あるいはその内密の一部といたしましては、アメリカ情報のみが対象になっておったのか、日本のものもあるのか、あるいは活動の面におきましては、彼はその後に手記として発表いたしました中に見ますると、いわく、日本人の犠牲においてソ連の利益をはかる仕事をしていた、人々といったような部分もあるのであります。日本においてその行為がなされたというのみにとどまらず、日本自体関係のある問題もかなりあるのではないか、こう考えられまするが、かような点等を申し添えまして、冒頭いたしまする彼のなしましたスパイ活動とその後に続きまするアメリカ亡命への真相ということを一応要領よくお答え願いたい。
  4. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ラストボロフ事件の概要につきましては、去る八月十四日に外務省情報文化局公安調査庁共同発表で出しましたもので、概貌としては一応尽きておるわけでございますが、元来このラストボロフソ連内務省所属陸軍中佐でありまして、二等書記官という仮装のもとに、諜報活動に従事することを目的として派遣されておったものであります。ただいまお尋ね活動範囲につきましては、外国人、いわゆるアメリカ人に対する工作もいたしましたし、また日本人に対する工作もいたしておったわけであります。なお活動の内容につきましても、その意図としましては、アメリカ事情のみならず、日本における、日本と諸外国との関係であるとか、あるいは日本国内事情であるとか、各般にわたって調査をいたしておったように思われるのであります。彼がアメリカ亡命いたしましたいきさつにつきましても、先般発表いたしましたことで御了解を願いたいと思いますが、結局その動機としましては、彼のおい立ちに遠因がありますと同時に、彼が日本に来ておって、次第にソ連の体制というものに対して疑惑を持っておったということが非常に大きい原因になっておるのではないかと思うのであります。特にベリヤの追放によりまして非常なショックを受け、亡命直前においては、ソビエト・ミツシヨン内において上司と申しますか、同僚と申しますか、ミツシヨン内の他の人との折合いも必ずしもよくない、また急速帰任を命ぜられるというようなことについて、非常に一身上の不安を感じたということが、去る一月二十四日の夕刻に出た直接の原因になったわけでありますが、これは単にそのときに身の危険を感じて亡命したということでなくて、相当に深い事情があったように思われるわけであります。むしろこの亡命の径路といいますか、そういうことは私よりも外務省の方で、外交上の問題としてこまかに調査をされたようでありまして、私の命ぜられた調査は、むしろ彼がどういう活動をしておったかという点にありましたので、正確に申し上げられませんが、軍用機で国外に出て、それからアメリカに渡ったというふうに私は聞いておるわけであります。非常に御質問に対して要領を得ないかもしれませんが、一応それだけお答えいたします。
  5. 林信雄

    ○林(信)委員 大まかな質問をいたしておりますので、自然大まかにお答えになりましたことも了承せざるを得ません。大体お答えになったと思います。  そこでつけ加えてお尋ねいたしますが、そのスパイ活動方法といたしまして、単なる米側の軍人あるいはその他の者あるいは日本の必要と感ずる方面諸君からのみ、いわゆる社交的な程度の間におのずから知り得た情報程度であるのか、立ち入って特殊の方法を用いておったかどうか、たとえば刑事特別法第六条、すなわち合衆国軍隊機密を犯す罪に該当するような特殊の目的をもつて、不当な方法事柄を探知し、または収集する等の特殊の行為にででておったものであるか、あるいは日本側関係者におきましても、やはり同様の積極的特殊な方法が講ぜられておったのか、これらに関連いたしましては、日本の官憲のある関係者につきましては、報酬問題等もからんでおったことが想像せられます。これらの点はどのようなものでございますか。
  6. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ラストボロフの話によりますると、彼は主たる目的は、やはりアメリカ人工作対象とするということが主任務であったようでありまするが、これについては、なかなか思うように行かなかったということを申しております。日本人につきましては、彼が接触したもののほとんど全部と言つていいのでありますが、敗戦の際に、ソ連領内におったものでありまして、向う抑留中にソ連諜報活動に協力する旨の誓約をざせられて来ておったものに近つきまして、そうしてたとえば米軍に雇われているものから米軍諜報をとる。これはむしろ刑事問題として、検察庁なり警察なりの問題になる。刑事特別法に触れるか触れないかの問題は、ざらに検討を要する問題でありまするが、そういう危険のある事柄についても、諜報の手を差延べておったということは事実であります。またその他の日本官吏あるいは民間人につきましても、同じように抑留中に誓約をさせられて来たものに対して、額はまちまちでございますが、相当額報酬を、大体月ぎめにして与えて、そうして情報を提供させるというやり方をしておった次第であります。
  7. 林信雄

    ○林(信)委員 日本人ソ連抑留中にスパイ行為を約束させられて帰って来た、そんな連中はどのくらいやってたんでしようか。あるいは日本官吏で、今日では公務員国家公務員等に対して、どれくらいの謝礼がやられておったようでありますか。具体的のものでなくても、大体……。
  8. 柏村信雄

    ○柏村説明員 誓約というのは、向う抑留中に、自分の方に協力しないかということで誘われて、もしこれを断れば帰されないのではないかという心理的圧迫から、そのときに誓約書を書いて帰って来ている人が、相当に多いんではないか。しかし帰って来まして、もう帰ってみれば、向う考えておったような母国でもないということで、ソ連側に協力することを拒否した人もあるわけでありまして、むしろ数としては、誓約したものの大部分と申しますか、相当多くの人は、この協力関係を断っておる。自発的に断っておるのもあるし、向うから近づいて来なかったものも相当にあるんではないか。そのうちの一部が、誓約通り向うに協力するということになったものと思うのであります。報酬は、私も記憶にちよつとはっきりいたしませんか、少いもので月五千円くらいから、月ぎめとしては四万円くらいの人もあったようです。そのほかに特殊なもので、数十万というものを受けておる人もあったように承知しております。月ぎめとしては大体二、三万から三、四万くらいが普通であります。
  9. 林信雄

    ○林(信)委員 そこで一応かような問題に触れますると、すぐに感じまする、いわば本問題から受ける示唆なんでありますが、この場合、ソ連スパイの問題でありまするけれども、おそらく日本におきまして、スパイ活動をいたしておりますものは、ソ連のみにとどまらないで、順序にはこだわらないのでありまするが、たとえば中共、北鮮アメリカ南鮮、あるいは台湾といいますか、国民政府というようなもの、その他あげつらいますれば多数浮んで参るのであります。その数におきましても、官名といい、あるいは百五十名内外であったという。これも的確な数字ではない。全地球、人類の数字から行けばわずかなものかもしれない。日本国民人口数から参りましても、わずかなものかもしれない。事柄それ自体、これに専念いたしますものの、数字といたしましては、百名、二百名ということになれば、かなり大きなものであります。元来存在を許さない性質のものが、さような活動をかよりにたくさんの人員によってなされ心ということでありますれば、これ自体とうてい無関心でいられる問題ではないのであります。かような点については、どういうふうに御調査になっておるか。非常に少いのであるか、また多いのであるか。将来どういうふうにその数を見通されるのか。その活動状況といったようなものの推移、その要領を伺いたい。
  10. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまのお尋ねは、私のラストボロフ事件調査とはちよつと直接しないので、私自身お答えしにくいのでありますが、お話のように、確かにソ連関係スパイだけでなしに、ただいまの日本の置かれておりまする情勢からいたしまして、非常に多くの国の諜報活動がこの国において入り乱れて行われておるというふうには港えられるわけであります。従いましてそれによって活動しております者が、ただいまお話の百名、百五十名和度ではない、もっと多くの専従者、あるいは部分的な協力者というものが六つと非常に多くの数に私は上っておるのではないかと思うのであります。ただこういうものについて、どういうふうに今後考えて行くかということは、これは非常に大きい政治上の問題で広ございますし、私のかつて公安調査庁部長をしておりましたささたる立場から、ちよつとその問題をここでこうすべきではないかということを申し上げる資格はないように思いますので、お許しを願いたいと思います。
  11. 林信雄

    ○林(信)委員 資格云々でなくて、すでにその関係職務にあったのである。現職とせられて警察庁におられますれば、国内的に職務をとられる場合においても、これは十分御研究になり、御存じになっておらなきやならぬ問題ではないか。私は、むしろそこにあるのではなくて、さようないわば国家機密ですか、何かそんなことで発表しがたい、遠慮したいとかいうなら聞えるのでございますが、いわばその道のべテランのあなたが、その立場でないといったような、知らぬで通るような御意見はどうかと思うのでありますけれども、しいて議論はいたしませんが、私はこの点について思いまするに、元来各国が他国情報、一口に事情を知ろうといたしまする中で、調査によって容易に知り得る情報程度のものは、ある程度つつ込んで取調べましても、国家機密に属しない、なお依然として情報秘匿のものと、これだけは漏らしてならない事実、漏らしてならない情報としましての、普通にいう諜報的なもの、この機密というものはおのずからあると思うのでありまするが、その辺の事柄日本政府部内におきましては、実際どの程度にえりわけまして警戒しておるのでございましようか。ただ漠然と当該官吏考えだけにまかせられておるものなのでありましようか。スパイ活動に対するわが心構えとでもいいますか、その辺の区別から参りまする態度というものは一体どういうふうなのでありましようか。思いまするに、日本は現在いわば無軍備になった等の関係から、そういう諜報網に対してあまり多くの関心を払っておらないのじやないか。しかしながら独立国次でありますれば、やはり諸外国との国交の関係があり、また国是といったようなものもあり、何か秘匿すべきもののあることも考えられる。それがあたかも地球における真空地帯のようになつてしまつて、無防備状態にあるのではないか。これが今日かようなスパイ網跳梁の現状を助勢しているのじゃないか、こう考えられますので、政府のとっておる態度心構え、そういうものを調査を通じて、あなたのかつて及び現在の職掌柄よりされて、御説明願い得る程度をいわば御教示を願いたい。
  12. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お話のように責任のがれをするお答えをしたわけではございませんので、確かに御指摘のように、このラストボロフ事件調査します当時におきまして、その当時の情勢を見ますと、先ほども申し上げましたように、日本というものが、非常な国際的なスパイ活動舞台になっておる。しかも日本においては、刑事特別法と、一部国家公務員法において、秘密を守る義務というものを規定しておるという程度でありまして、これだけで十分なものであるかどうかという点は、まさしく検討を要する問題だと思うのでありますが、しかしこれは同時にまた、この前、防衛庁関係の法律において、いろいろ議論のありましたように、秘密を守るということに、非常に強く考えるあまりに、また国民の自由とか権利の尊重ということが、傷つけられるようなことにもなってはならない。この点の調整をどこに求めるか。国家の安泰をはかりつつ、国民の自由を確保して行くか、というような調和点というものを、どこに求めるかということが問題だろうと思うのでありまして、今政府としてなり、あるいは私の今までの経験からして、どの程度にするのが適当だということは、実際はずかしいことでございますが、現在申し上げるだけの段階に至っておらないわけであります。従って少くとも、私の知っておる範囲におきまして、政府で、ある木を持っておって、秘密にこれを進めておるということは、私、現在承知いたしておりません。
  13. 林信雄

    ○林(信)委員 今回かような事件に当面せられて、非常に熱心にお取扱いになったあなたが、現在お答えのできないような問題を、これ以上お尋ねしてもしかたがありませんから、そり斜度にとどめます。  続いて、このラストボロフ事件が及ぼす影響なのですが、いわば日本国家活動、ないし国家機能に及ぼした影響いかんといったような問題、たとえば外交上に及ぼす影響はあったと思うのであります。といいますのは、この問題の発表の当時、あるいはその後のあなたの渡米等問題等も、いくらかさよう考えられまするし、その他いろいろの点から、この問題に対して、いわば親ソ的であったと見得られるところから、対ソの外交関係正式外交があるとかないとかいったものはのけまして、そういう面に及ぼす影響はないのでございましようか。あるといたしますれば、どんなものなのですか。  それからこれはあなたからお答え願うには困難かも存じませんが、あの際ラストボロフは、日本入国管理局出国許可というものがなく、亡命的にあちらに行ってしまった。このことについてはアリソン・アメリカ大使の一片の遺憾の意表明文得交換等も伝えられておるのでありますが、少くとも正式の許可のない、いな一応の通報すらなかったということは、これは厳然たる事実です。こういう問題は、事後の処理も困るというよりは、できない問題であることもわかるのでありますが、将来かような事態が絶対発生しないということを保証し得ない以上、何とかこれは対策を講じられなければならぬ問題であると思うのであります。こういうことに対する国内的な国家活動に及ぼす影響もあったと思うのであります。こういったことをあげましても、無影響ではなかったと思うのでありますが、その他諸般の影響について、どういうふうにお考えになっておりますか。
  14. 柏村信雄

    ○柏村説明員 この事件の及ぼした影響ということは、これは非常にむずかしい問題だと思うのであります。外交上の問題は私も専門でありませんので、どの程度影響があったかということを申し上げかねますか、国内的にみましても、あの発表によりまして、いろいろの見方があつたと思います。結局あの発表によって、日本人が何という気なしにスパイ行為というものに協力しておった者とか、あるいはそういうことがまつたくあるというようなことを考えずに、平穏に楽観的に考えておつた者について警戎心を与えたというような点は看取されるわけであります。しかしまた一方において、これ私はなかったではないと思っております。  それから出国許可なしに出たことは、これは御指摘通り事実でありまして、これは非常に遺憾なことであります。この点については、外務省として、御承知のように例の往復文書によつて厳重に抗議を申し込み、将来は木においても、日本国の法令が尊重されるようなすべての注意が払われ、かつこの種の事件が発生した場合には、日本国政府にただちに協議する旨の保証を与えるということを言っておるようなわけで、今後ああいうような亡命事件というものは起る可能性がないとは申せませんが、あの事件のごとくに、日本政府が知らない間に、日本国内においてあれと同じような日本の法への無視される事件は起らないであろうというふうに考えておるわけであります。
  15. 林信雄

    ○林(信)委員 私が今尋ねておりまする点は、むしろあなたよりは外務当面の諸君の方が適当ではないかと思うのですけれども、特にあなたはこの問題に深く職務上御関係になっておりますので、御存じになっておる点が多いがろうと考えお尋ねしておるわけですが、ただいま申しまするような外交関係に及ぼす影響の基本となる問題としてとらえながら、やや一方的な好意に偏しはしないか。主として他国他国との間のスパイ戦といいますか、そういう問題に関連して、一方の国のみに好意を示したような取扱いをすることは、スパイ行為それ自体が一つの尖鋭化した行動であるだけに、他の一方に受ける影響は大きいと思うのです。  たとえばこの発表の問題にいたしましても、私より繰返して申すまでもたく、この問題は一月の二十三日に始まりましたか、四日に始まりましたか、多分一月二十四日であったと思います。そのラ氏の失跡に始まるのですが、始まりからその後三日を経ました一月の二十七日に、ソ連代表部から同人捜索願警視庁に出されたということで、少くとも一月の二十七日には、広い意味の、日本側においてその情報はキャッチされたわけなんです。それが出されましたので、警視庁公安第三課では、管下の各署に手配をするとともに、警視庁から国警に連絡をした。全国にも指名手配がされまして、事件は実に日本警察全体の活動になった、もっともその後四日を過ぎましニ月の一日には、ソ連代表部発表としまして、ルノフ参事官が、ラストボロフ氏は在日アメリカ諜報部に拉致され、抑留されておる。亡命云々までは触れておらないようですという声明発表されまして、日本警察活動のそのための日時は少かつたのでありますが、少くともそのころにおいて、この事実を知つたのであります。やがてそれが亡命した事実、あるいは無許可出国した事実、アメリカ本国に在留しておる事実等は十分わかっている。ことにソ連代表部より日本警察にその捜索願が出された。日を同じういたしまして、アメリカ大使及びアチソン氏と岡崎外相との間には、秘密文書がかわされておって、無許可出国のことの弁明的事実が述べられ、その処置に対して遺憾の意を表明したといったような趣旨の事実もあったのであります。にもかかわりませず、その後半年を絡ました八月の十四日に、公安調査庁外務省共同声明共同コミニュケが現われて参ったのであります。それが何かの国内的な事情のみによると考えられてしまえばよろしいのでありますけれども、何となく気になるのは、時たまたまその前日アメリカにおいてこれを発表した。アメリカ政府アメリカ国内において発表した。そのときを同じうするかのごとく、翌八月十四日のこの発表になっておることは、あまりにもアメリカ共同歩調、同一体をなしておる観があります。こうしなければならなかったのか、偶然であるのか、こういうふうであってはならぬのか、この辺に対して考えさせられるものがあるのです。そこで私は及ぼす影響をお聞きしておるのでありますが、今はこの発表問題を根幹といたしまして、どういう事情でこういうふうになったのか、これでよいのかという点を伺いたい。
  16. 柏村信雄

    ○柏村説明員 このラストボロフは、初めは失跡ということであったのでありますが、結局アメリカ亡命したということが相当早くわかって、直後にわかっておって、なぜ八月まで発表しなかったか。また発表アメリカと符合して発表してお心のは、非常に一方的でないかというお話でございますが、大体このラストボロフは、さきに申し上げましたように、いろいろな複雑な事情から、彼が自発的にアメリカに出たものであるということについての調査をまず十分にする必要があったわけであります。これにつきましては、これは最初アリソン大使からの手紙によって、彼が自発的に出たということと、その間しかし自発的に出たということを知られたくないというような希望があった。と申しますのは、彼の家族がソ連国内におるわけでありまして、彼がどういう理由でいなくなったかということがはっきりしない間は、これに対しての復讐と申しますか、そういう手段がとられにくいであろうというラストボロフ考えアメリカ側に伝えられまして、なるべく事をそのままはっきりさせないで置くことが、人道的な方法であろうというふうにアメリカ側で考え、それを日本の外務大臣の方に育つて来ておるわけであります。従いまして何もアメリカの肩を持つとか、ソ連に対抗するという意味において調査を進めるというのでなくて、彼がそういうことをアメリカ側に言つたということが事実であるかどうか、またそういうことであって、彼がアメリカ側にいろく話しておることがどんな内容であるか、また関係者はどういう人たちであるか、また彼の活動はどんなふうであったかということをできるだけ極秘裡に調べるということが、これはわれわれとしましては、日本の利益を守るための当然の方法考えて、相当の期間を要したわけなのであります。一つにはそのラストボロフが、彼の家族ができるだけ残酷な取扱いを受けないようにしてもらいたいという切なる願いというものも増えたわけでありますが、何分にも広汎な彼の供述を検討するには、相当の日時を要したわけでありまして、その調査の結果、彼の言つていることが間違いないという確信を持つに至りましたけれども、それではただアメリカ側から聞いて、それをわれわれが裏づけの調査をしたということだけではまだ不十分である。さらに念を押して、確信を得るためにアメリカに渡って、直接本人について聞きただした次第でありまして、その結果帰って参りましたのが八月一日であります。その後警視庁、検察庁等で捜査の問題もございましたし、そういうことがあって、私ども帰りました直後に発表することはできなかったわけでありますが、ちょうど八月十四日に発表し得る段階に達したということであります。またアメリカと一日違いというお話でありますが、これは暦の上でありまして、アメリカ側とは、彼の身柄がアメリカに行っておるということ、それからアメリカの当局において保護されているという事実というようなことで、また彼の活動アメリカに対する諜報活動もあったというような事実から、この問題についての調査アメリカ側と協力しながらやって参った点もあるわけでありまして、そういうことで発表するにつきましても、同時に発表しようという話合いをしたわけであります。従って時間的には同時の発表になっておるわけであります。そういう事情がありまして、発表までに日にちがかかったということを御了承願いたいと思います。
  17. 林信雄

    ○林(信)委員 発表の遅れたのは、諸般の事実の調査というようなことが三体であったと聞き取ります。そう遅らせることにも、また若干の事情があったように思います。たとえば彼の妻子が故国に残されている、これが事情の判明によってどういう処置を受けるかもわからないということを非常に心配している。これはあり得ることであります。あるいは発表を急がないことが日本の利益だというふうに言われますが、その前者はなるほど人情的に考えて一応同情しなければならぬもののようにも思われますが、といったところで、もうソ連の方へどれだけの事情がわからずにいるのか。わずか三日にして、そのいなくなった事情はわかり、四日にして米軍に拉致されたということもわかっておる。おそらくその後になって軍用機アメリカに飛んだこともわかつておる。それをただ人情一片で、日本の国がそこまで考えなければならない事情があるかどうか、これもただちには受取れません。またそうすることが日本国家のための利益だと言われますけれども、その説明はまだつまびらかでなかったようであります。これらの点についても、相当疑問は残るのであります。私はむしろこれは何かわれわれの知らない、また知り得べくして私が知らない問題もありますが、また知り得ない問題で、特にこういうふうにアメリカとの一体的な動きがなされなければならない何ものかがあるんじゃないか、あなたたちだけの問題じゃなくて、政府として、国家としての義務づけられたと申しますか、何かそういったものがあるんじゃないか。公式のものがあれば、これは問題解決であります。これは大きな政治問題であります。ここで論議しても、今日において、それは論議にならない問題かもしれません。そういうものがあるかどうか、重ねてその点だけ伺いたい。
  18. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ちよつと先ほどの説明について誤解があるかと思いますが、私が国家の利益だと申し上げたのは、極秘裡に彼の活動の状況というものをつまびらかに知り、それで何でもないか、何かあるかという問題は後の問題でありますが、つぶさにそれを調査するということが必要であった。そのために日子を要したという意味で申し上けたわけでありますから御了解願いたいと思います。  それから少くとも私の知る範囲においてアメリカとの外交関係なりあるいは政府の問題として一緒にしなければならぬという特別の理由はなかったではないか。そうした方がお互いに都合がいいという意味でやったのではないか。しかしこの発表のいきさつ等については私よりも主として向うとの直接のこういう外交上の問題は、外務省関係しておりましたので、そちらからお聞取り願った方が正確かもしれませんが、私は少くともそういう点は承知いたしております。
  19. 林信雄

    ○林(信)委員 ただいまの問題にも関連しますが、こういうことがあったのですから伺うのですが、先刻言いましたようにラストボロフ失跡が一月二十四日で、三日経ちました一月二十七日にはソ連代表部から警視庁に捜査願が出た。初めて知ったことのようにと特に申して、全国手配になって来たと言うのですが、他の情報によりますと、ラストボロフはすでに一九四六年ですか、昭和二十一年からやって来ておる。その後日本官吏で調べられた諸君は昭和二十四年ごろから関係の者が多かった。すでにその当時から米軍、これはCICでしよう、これが警視庁に協力を求め、職務的には公安第三課がこれを引受けて非常に活動してやったということを聞くのであります。たいへん協力いたしまして、たとえば公安第三課におきましては、ソ連代表部の家の近くに望遠レンズをつけたカメラを備えつけて代表部を訪れる人の写真記録をつくったり、その家の間取りなどもすっかり調べ上げた。あるいは出入りする者の銀行当座係等を調べておる。もちろんラストボロフの交友関係等を一切洗って知らせたというようなことがあったというのです。これはやや――ややではありません。信用さるべきアメリカの新聞の、正確に言いますれば、AP東京支局長のロバート・アンソン記者の責任持つて述べるところであります。そうなりますと、すでに数年前から警視庁公安第三課はそういう問題を協力して知つておりながら、事が表に出ましたあと、ソ連代表部から何かが出たというので、あわてふためいて手配をしなければならぬということでなくて、それならばおれのところは知っておったのがというような態度とこれは少し態度が違うと思う。何となく他人行儀的にあらためて知ったようにして驚いて事に処したというようなところは何かやはり一方に偏して悪いことをしておったような、口をぬぐっていわば芝居的にあとを動いたというような印象も受けるのですが、その根本である、以前において日本警察というものがそういういわばスパイ関係の行動に協力したということはあるのですかないのですか承っておきたい。
  20. 柏村信雄

    ○柏村説明員 私は警視庁の公安第二課で、そういう点について、どういう活動をしておったか、つまびらかに承知いたしておりませんが、昨日の新聞の記事はそのままには受取れないのではないかというふうに常識的に考えておるわけであります。ここに警視庁の当時の公安第三課長山本君も見えておりますので、場合によってはそちらからお聞き願いたいと思います。私の知っておる範囲ではラストボロフ事件は、向うからの通報それから新聞発表によって私も初めて知りましたし、おそらく警規庁においてもそうであったのではないかという、ふうに思います。従って彼が離脱したことを暗に知っていながらおためごかしに捜索というような手配をしたというようなことは絶対になかったのではないかというふうに考えております。
  21. 山本鎮彦

    山本説明員 一月二十七日に代表部のサヴエリエフ領事、チヤソコニコフ書記官が参りまして、ラストボロフ失踪に伴う捜索の手配を依頼して参りました。それに基いてただちに手配をいたしたのでありまして、それ以前においてラストボロフ氏の失跡の問題につきましては私は何ら知っておらないのでございます。
  22. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ちよつと関連して……。APのロバート・アンソン氏の手記なるものが朝日新聞にでております。これによりますと警視庁の公安第三課がアメリカのCICの依頼によって長い間張込みをやってソ連代表部の行動を調べておったというふうに相なっておる。今質問がありましたような具体的なことが述べてあるのみならず、なおその記事によれば、このラストボロノ脱出するに至つた動機は、警視庁の第三課がアメリカの婦人がソ連代表部を訪れたというあの写真を提供したことから、これがそもそもラストボロフの脱出の動機をつくつたというように相なっておる。これは外国の新聞記者の手記でありますがゆえにでたらめというわけには行かない。しかも載せられたのが日本の大新聞である朝日新聞である。これに対して質問したわけなんですが、そういうアメリカのCICでもよし、その他の諜報機関から警視庁が依頼を受けて、ソ連代表部に対していわゆる犯罪捜査によく用いる望遠レンズだとか張込みだというようなことをやっておったかどうか、これが質問の中心点なんです。脱出する瞬間は知っておったか知っておらぬかということは、第二段の問題です。さような捜査活動をやつてておつたかどうか。  なお聞きたいことは、やっておったとすれば、いかなる日本の法規によってさようなことをおやりになったのであるか、その法規の根拠を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  23. 山本鎮彦

    山本説明員 非常に長い間公安三課がCICと関連を持って代表部員の行動を見ておったのではないかという趣旨の御質問だと思います。三課ができたのは二年半前でありまして、その当時から最近まで私課長をしておったのでありますが、CICから、向う代表部に出入する状況を見てほしいというような依頼を受けた事実は全然ございません。ただこのような情報がしばしばあったのであります。それは、ソ連代表部指名重要犯人がしばしば出入する、こういう情報を受けたために、時に応じ、あるいはその情報の角度に基きまして、あの付近に若干の張込みをかけ、あるいは物陰から、そういう指名犯人が出入するかどうかということを確認するための捜査活動はやった事実がございます。  以上でございます。
  24. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その指名犯人とは何ぞや。これはだれに頼まれた指名犯人ですか。日本の国内犯罪についての指名犯人であるか、もう少し具体的に育ってください。また、さようなことをいつごろから、何回ぐらいやつたのであるか――そうすれば、このロバート・アンソンの言ったことはでたらめじやないか。それをあなた方がもう少し具体的に言うならば、あるいはこの事実と符号するかもしれぬ。だから、いかなる犯罪の指名犯人であるか、それがいかなる事情でもつてソ連大使館に出入りしたというのであるか、それをいかなる権限といかなる捜査の必要のもとに張込みをやったのであるか、それをひとつ明らかにしてください。
  25. 山本鎮彦

    山本説明員 それは日本の法律に違反した、日本人の犯人であります。しかしこれは現在捜査の段階にあるものでありますから、この点は申し上げかねる次第でございます。
  26. 林信雄

    ○林(信)委員 今の問題、日本指名犯への動向を調べることを米軍の方から頼まれた、こういうことになるのですか。それじやちよつとおかしい。
  27. 山本鎮彦

    山本説明員 そういうことは全然申し上げなかったのでございまして、私はそういうことについてCICから相談を受けたこともないし、依頼を受けたことも全然ないのであります。これはソビエト代表部にしばしばそういう指名犯人が出入りするという、われわれの捜査活動で得た独自の情報に基いて、これの捜査の一環として行ったわけでございます。
  28. 林信雄

    ○林(信)委員 それでは全然無関係で――そういうことを言い出されるから、私は関係のあることだろうと思つて、お答えになっておるだろうと思っておる。そうするとこれは何だかあいまいな――どうも日本の犯人を米軍の方から捜査を依頼して来るというようなことはあろうわけはない。しかしこの問題に関連して聞いておるのだから、それも全然無関係なことを言われると思わないから、疑問を持っておる。あなたの言う通りなら無関係だ。しかもそれは重要な問題のようですし、なお今日数年にわたって捜査されておる事件であって、やがて発表になるでしようから、そのときを待ちましようけれども、そういうことはあったのですね。この事件とは関係ないけれども……。  そこで時間の関係もありますから、問題を少々かえまして、かようなことから問題が起りますと、日本の官憲の諸君国家機密といいますか、職務上知り得た事実を漏らしたというようなことで、すでに国家公務員法違反で訴追されておる者もあります。しかしながら一般の者におきましては、さような行為に協力いたしましても処罰規定がないというようなところから、何とか立法措置を講じなければならぬ。たとえば緒方副総理のごとき秘密保護法とは別に国家機関を保護する立法化を早急にやらなければならぬと思うというような発言も伝えられておる。ことに当委員会に関係の深い小原法相も、これを一閣議に持ち出して、満場一致一人の異議もなかった、いわば閣議の了承を得たというようなことも聞くのであります。この点はむしろ法務関係でいかがなことになっておりますか、伺いたいのでありますが、もうその方針はそこまで行つておるのでありますか、要綱までは行かなくても、少くとも方針がどんなところにあるのか伺っておきたいと思います。
  29. 井本台吉

    ○井本説明員 昨年の夏に北海道でクリコフ事件が起きまして、その当時から国内のスパイ活動について取締りをする必要があるのではないかという議が寄り寄りなされております。スパイ取締りの法規は戦争中には相当厳重なものがありましたが、そのために一般の言論活動相当封殺されまして、その悪影響もかなりあったというような点もありますので、このスパイの取締りをする観点とさような一般の国民の言論を圧迫しはせぬかという観点とをにらみ合せまして、さようなものはどの程度に法規をつくって取締つたらいいかということは目下とくと研究中であります。
  30. 林信雄

    ○林(信)委員 もう一点刑事局長に何っておきます。それをもって私は時間の関係もありますし、一応終りたいと思います。すでにこの問題で起訴せらた者何者、その罪名といったようなもの、またできますれば、起訴せられておらないけれども捜査線上に浮んで参りました者――しかしその内容について、例の上司の許可を仰がなければ言えないような、証人の証言拒絶をなし得るような内容まで聞こうというのではありません、罪名を聞きたいのです。というのは、法務関係で大京地検の特捜部の長谷副部長ですか、長谷検事が、法務省公安課長桃沢氏を相携えて渡米せられておりますが、この問題のためであったと存じます。しかしながらこれは第二陣であって、役者はかわりますれども、第一陣は先刻から質問に思われておりますように、ここにおられる植村さんが、公安調査庁時代に、ここにおられる警視庁山本さんと一緒に、七月の十日かに出かけられて、八月の一日に帰られたといりさつきの話なんです。参りましても、本人に会うのは会って、話くらいは聞けたけれども、厚真もとれなかった、あるいは調書も写しをもらったとか、正式の間取りのよりかものはできなかった。あるいは役所の関係でそれで済んだかもしれません。そのあとに出て参りました法務関係のこの御両君は、犯罪捜査上証拠を得るためにおいでになったのじやない。情報としては一応公安調査庁あるは警視庁諸君で事足りたのではないか。この両君のおいでになった目的はどこにあるか。その目的に従いまして得られた成果は何であるか。本人の調書がとられておりますれば、これは刑事訴訟法上議論もあるかもしれませんが、一応の証拠になるが、単に情報をキャッチされて帰られただけでは、参考になり得るかもしれないが、それで証拠とは行かない。にもかかわらず――御説明があるでありましようが それ――犯罪の起訴がなされておるといたしますと、この御出張によって証拠関係が固まったということになるのでありましようか、あるいはその目的で行ったけれども疲労であったというのか、その辺に関連したいきさつ、御見解を承りたいと思います。
  31. 井本台吉

    ○井本説明員 ラストボロフ関係では国家公務員を三名検挙いたしまして、そのうちの一人は自殺いたしました。あとの二名につきましては国家公務員法違反もしくは為替管理法違反等によりまして現在起訴公判中でございます。長谷、桃沢面検事がアメリカへ参りましたのは、この越訴前に、起訴になりました被疑者の証拠を固めるたす。そのほかの情報活動の濃度につきましては、現在の段階ではまだ申し上げるほどの形にはなっておりません。また私どもの係の検事が参りましたのは、主として公判の証拠を固めるという意味にありましたので、その意味では十分目的を達したものと考えております。
  32. 林信雄

    ○林(信)委員 先刻から言っておりますように証拠関係でありますが、証拠関係の内容は、これはちよつと公判との関係もあって公にしにくいということはわかると思います。しかし私はこの範囲なら承っておけるのではないかと思うのですが、人間に会ったというようなことで、検証による証拠あるいは書証、あるいは物証――物証はちよつとどうかと怒りのですが、物証というものについて考えて、書証あるいは検証の結果、物証というようなものが得られておるのでありましようか。ぐどいようですが重ねて承っておきます。
  33. 井本台吉

    ○井本説明員 ラストボロフに直接関係いたした者が一名、さように申し上げましたので、そのまた二名の関係者に起訴された者もおります。  それから証拠の関係でございますが、いろ  法律上の問題がございますが、私どもといたしましては、法廷において十分に証拠となり得る証拠を固めて参つたということを申し上げておきたいと思います。あとのこれが証人になるのか、あるいは証書になるのかという点はしばらく御容赦を願いたいと思います。
  34. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私の質問の相手の方が適当じやないかと思うのでありますが、ただどなたか適当に御答弁くださればそれでいいと思うのです。  先年当法務委員会におきまして鹿地亘の失跡事件取扱い、これが不法監禁なりやいなやを審理いたしました。その際に明らかになりましたことは、しているはずであります。しかるに今回また軍用機によってひそかに外国へ連れ出されるというような事件が起りました。これに対して、日本政府態度というものは何らわけがわからない。これが一点であつて、当法務委員会の決議というものが何ら意味をなしておらなかつたことに対して、一体どういうふうに政府は弁解なさるのであるか。日本人であろうが外国人であろうが、日本の法の範囲内におきまする人が外国人であろうが、日本の法の範囲内におきまする人が外国人によつてひそかに他国へ連れ出されるというようなこと、そのままにうやむやになつてよろしいものかどうか。これは外務当局の答弁かもしれませんが、これに私どもはなはだ、不満なんであります。  それから第二といたしましては、この鹿地亘事件の審査に際しましても多大の疑問が残った。それは鹿地亘がアメリカ諜報機関に監禁せられたことを警察では知っておったのではないかと思われる節があるのであります。しかるに今日、同じ外国人でありましても、ラストボロフの脱出事件に対しまして、やはり日本警察関係しておったという疑いが濃厚であります。口っておりますけれども、私どもはこれが一から十まででたらめとは思われない。相当具体的なことが出いてある。日本警察関係しておる、一体かようなことをやっていいのであろうか、世界の両陣営が緊張しておりましてはなはだ憂慮にたえない現在において、日本がまるでスパイ戦の中心みたいになって、それに日本の官憲が関係しておるというようなことはいずれにしても私どもは寒心にたえないことでありまして、先ほど林君の質問にありましたように、アメリカ一辺倒のような態度でかようなスパイ事件などに官憲が関係し、アメリカ諜報機閥の手先になるようなことをやっておっていいのであるかどうか。そうでないとおつしやるかもしれぬが、その嫌いが濃厚にの疑問であります。むろん鹿地亘事件は電波法違反として公判になった際に全貌が明らかになるかと思いますが、とにかくかような不愉快なことに対し、根絶するよう当法務委員会は申し入れてあるはずなんです。しかるに今回この中入れにまったくそむいた現状が起りましても、関係当局は何だかさつぱりうやむやになっておる。これは私どもはなはだ不満であります。そこで私は重ねて質問いたしますが、柏村さんもアメリカに行って来られたということであるが、一体ラストボロフという人間に実際会ったのかどうか。それからそのラストボロフが確かに自分の発意によってアメリカに逃亡したということを自白したのであるかどうか――こんなことは日本の刑事事件には関係がないと思う。ですからそれは明らかになされていいと思う。それからこれは柏村さんなりあるいは法務関係でもいいが、かような日本の出入国管理令に違反して脱出せしめたことについて、わざわざアメリカおいでになったのだから、それに対する何らかの意思表示をなさったのかどうか、あるいはアメリカ日本大使館あたりの交渉の経過をお聞きになったのかどうか、かようなことについて御説明願いたいと思います。
  35. 柏村信雄

    ○柏村説明員 私ども七月十日に大京をたち、面接ワシントンに参りまして、ラストボロフに直後会いました。また彼が自発的に出国したという事情をこまごまとから直接聞きただしたわけであります。法律違反の問題につきましては、これは私の職掌柄でもありませんし、すでに外務大臣とアメリカ大使との間にとりかわされておる問題でありますので、この問題には私触れて参りませんでした。
  36. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務省側は……。
  37. 井本台吉

    ○井本説明員 ラストボロフ出国いたしましたのは、猪俣さん御承知の通り出入国管理令の二十五条の違反で、七十一条に該当いたします。本人の犯罪になりますのは……。これは別に逃亡犯罪人引渡法の犯罪にもなりませんし、従来の慣例では日本から出国いたしました者がさような法規を犯しましても、わざわざこちらに連れもどして日本で処分するというようなことはいたしておりません。従って事実上これはこのまま放任するよりほかいたし方がないのでございます。しかしながらラストボロフがかような出入国管理令違反を犯すということについて、アメリカ側がある程度関与していることは事実上明らかでございます。この点につきましては、私間接ではございますが、アメリカの方でも非度に遺憾の意を表しまして、将来かようなことがないようにするということを言明しておる由を聞いております。
  38. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 アメリカ側へ脱出するまでに至った経過、これはお調べになっておると思いますが、一体どういうふうなやり方で日本を脱出したのであるか、アメリカ側はどの程度の手を差延べたのであるか、その具体的なことを承りたい。お調べになっておいでになったと思うのでありますが、これはどなたでもよろしゆうございます。脱出の模様及び彼が脱出の意思があったかどうか、私ども疑問だと思うが、かりに彼の言う通り彼自身が逃げたいと考えたにいたしましても、アメリカ側はいかなる方法において彼を逃がしてやったのであるか、その皆さんが直接お調べになった具体的のことを承りたい。
  39. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先ほどもちよつと申し上げましたように、この前の発表で大体尽しておるわけでありますが、少しこまかに申し上げますと、動機については先ほど申し上げましたからお許しを願いたいと思いますが、一月二十四日の昼頃に、彼が昼食をしに徒歩で出かけまして、飯倉一丁目で電車を待つておって、そこにバスが来たので、彼がバスに乗って、同僚二人がわきにおったが、これは、バスに乗らないかと言つたが乗らなかった。それでこの二人はおそらく電車で行ったのだろうと思います。それから彼は昼食をとりまして、そのあと、彼はそのときにすでに機会を見て脱出するという決意を持っておりましたので、彼の知っておるアメリカ人に連絡をとって、いつ会うという時間を打合せたそうでありまかけまして、どつちが先でしたか――トルコぶろに入り、スエヒロで食事をして、約束の時間に約束の場所に行って、そこからアメリカ人と一緒に自動車に乗つて去った、こういうことになっておるわけであります。なおその後の、軍用機出国したということにつきましては、先ほど申し上げましたように、私そのときの状況をこまかに聞いておりません。外務省の方で詳しく聞いておると思うのでありますが、私の知っておる範囲では、軍用機で国外に出たということを開いておる程度であります。
  40. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 では法務省の方の方にお尋ねしたいと思います。しかしこれは検察庁でも、知らぬというのはおかしいです。犯罪なんだから……。ラストボロフの犯罪で、それに対する共犯関係アメリカ側にある、これをお調べになる必要があると思うが、御存じたいとすればしかたがないが、検察庁でお調べになっておるだろうと思う。どういうふうにして出入国管理令に違反して、アメリカ側がラストボロフアメリカに連れて行ったのか、その具体的方法、これはあなた方はもうお調べになっておるに違いない。それを明らかにしてください。
  41. 井本台吉

    ○井本説明員 先ほども申し上げました通り、すでに国外に去った人間でありまするから、この人間の事件については私ども立件いたしませんで、現在事件として扱っておりません。
  42. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それが実にぼくらはけしからぬと思うのです。先ほど私どもが言うたように、鹿地事件のときも、私どもはかような飛行機で脱出せしめられたというようなことが二度とあってはいけないという痛切なる警告を決議してあるわけです。しかしそれをまるで無視した行動が間もなく起って来ておるわけなんです。それに対してあなた方は出入国管理令に違反する事件だ、場合によつてはアメリカは共犯関係になるのだ、かようなことについて、持って行つちやつたんだから、そんな者はこっちは調べない、一体そんな態度がありますか。それは法務省として十二分に法令違反を調べて、あるいはその材料を外務省に渡して、厳重にすみやかに交渉させる、そのくらいのことをやらぬであなたどうするのです。日本の衆議院の法務委員会でも、こういう決議がさきにあった、なお今回はこういうふうな違反の事実がある、少くとも法務省自身がアメリカに交渉しないとしても、資料を研究して外務省に渡して、外務省をして交渉せしめるということが当然じゃありませんか。もうすでに外国へ行つちやつたので、しようがないからといってほつたらかしておる、そういうことはぼくは理解ができない。では日本の国法に違反した者があっても、外国へ行ってしまえばほったらかしになりますか、それを伺いたい。
  43. 井本台吉

    ○井本説明員 先ほども申し上げました通り、出入国管理令の二十五条、七十一条違反の犯罪につきましては、日本の国を去って外国に行っておる者までも私どもは従来調べる慣例はございません。従ってこのラストボロフ事件も従来の慣例に従いまして事件としては立てなかったのでございます。
  44. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 わざわざ検察庁からはラストボロフ自身については調査に行っているじゃありませんか。そうすればどういうふうにして脱出したかを聞けるわけであります。アメリカがどんなふうにラストボロフに手を差延べたか、ラストボロフ自身から証言を聞けるはずだと思う。それをわざわざアメリカまで行きながら、そういうことはさっぱり調査しないで――私ども言わんとするところは、臨地事件のとぎにああいいふうに法務委員会は警告しておるのです。それにまた今回研本に在住しておる外国人といえども、また飛行機でひそかに脱出せしめてしまうというようなことをやられておっては、私どもの法秩序が立たぬと思う。それに対しては厳重なる外交交渉をすべきものだと思う。それに対して法務省がこういうふうな法令違反があるのだということについて外務省に資料を出すくらいの働きはすべきものだと思う。だから、アメリカまで調査員を派遣しながら全然そういうことを調査しないということはどういうわけなんです。慣例がないかもしれぬが、今までそんなことがないでしよう。ある国の正式な機関が日本の国の政府に黙つて連れ出してしまうなんということは、過去において私はなかつたと思う。今はまるで属国みたいなことになつているからそういう現象が起るのです。これに対して私はやはり筋は立てておくべきだと思う。法務省はいかなる点で法令違反があるか、その事実を調べて、そうして外務省に資料を出しておくべきものだ。わざわざアメリカまでおいでになつておつて、そういうことを捨ててしまうという、その精神に対して私どもは疑惑を持つている。だからさつき林君の質問のようないろいろなあれも出て来るのです。そうすると、これは今後もさような態度ですか。外国へ行つてしまつた者は、そんな者はかまわないという態度ですか、それをお聞きします。
  45. 井本台吉

    ○井本説明員 今回の事件は共犯をどうするかという問題について多少の疑問があるわけでございますが、従来通り、何らかの形で出国の証印を得ずに外国に去つてしまつた者を、わざ外国手配いたしまして調べるというようなことはいたさないつもりでございます。
  46. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは私どもはなぜやかましく言うか、ただあなた方を責める意味じやないのです。外交上これは非常な影響があることなんです。さつきの林君の笠間のように何かアメリカソ連に与える悪影響というものははかり知れさるものがあるのです。心にないことを、ソ連人としてあるいはその他の外国人としてもあぶなくてしようがない。アメリカのひもつきならいいけれども、そうでもない人間は、いつ何時アメリカに飛行機に乗せて遮れて行かれるかもしれない。日本の官憲はそれに対しては協力こそすれ、さつぱり防止してくれないということになると、日本におる外国人の人権はどうなる。鹿地亘と同じことになる。あれは日本人であつたが、外国人だつて同じことじやありませんか。この海外へ脱出するというようなことは、現在においては外国相当の機関が協力しなければできないことなのです。ですから問題はラストボロフが逃げたということじやない。これは自分の生命に諸君の言うように危険があつて、どうしてもソ連に連れもどされることがいやで逃げたとすれば、人情上同情すべき点もあると思う。しかし日本政府に無断でそういう人間をどんどん外国へ、自分の国で便利だと称して運び出されたら、人権保護のためにも、あるいは外交のためにも実に悪影響を及ぼすという意味なんです。ラストボロフがはたして自分の思う通りアメリカへ行きたくて行つた場合もありましようし、そうじやない、無理に連れて行かれるという場合も想定できる。いやしくもそういう場合においても、外国へ行つちやつたのだから出入国管理令ではどうしようもない、そうしてそれを連れ出した共犯関係の国に対してもどうしようもないというような法務省の態度では、日本における外国人の人権保護はできません。あぶなくてしようがない。日本人がやられた、今度また外国人がやられておる。こういうことが続々と起つたらどうします。私どもはこれはもう少し法務省がしつかりして、徹底的にその共犯関係調査して、それを外交交渉の資料として外務省に出すべきであつたのではないかと思う。あなたのそのお答えはまことにぼくはあまりあつさりし過ぎていはしないかと思うのだ。アメリカはこういうことを日本政府がやつたらそんなにあつさりやるでしようか。日本だつて独立国なのですから、やはり独立国としてお考えにならなければいかなかつたのではないか。これはひいては日本人及び外国人の人権保護のことになる。これはまた外交スパイ戦なんかに、片方のために色めがねで見られるような感じを与えない効果もあるわけなのだ。そういういろいろなことを考えて、もう少し法務省はしつかりしておいてもらいたかつたと思う。今後もあなたはそういう態度をおとりになるかどうか、これは重大問題だと思う。そうすると法務委員会の決議というものはまるで無視されるのみならず、将来日本外交上に大いなるひびが入ります。また外国人の人権保護についても非常な疑惧を与えます。今後の方針についてはつきりしたことを御説明願いたいと思います。これはあなたに無理かもしれません。無理なら無理で、法務大臣が来たら法務大臣に質問しますが、事務当局としてはどういうお考えなんです。
  47. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 答弁を更けます前に、そのラストボロフ自身が日米行政協定第三条に基く刑事特別法に対する被疑者じやなかつたのでしようか。いわゆるスパイをやつたということの問題……。だからその前提に立つて、それが被疑者であつてさらに今の出国の問題と二つ重なつて来る前に、被疑者であつたということはどうなんでしよう。そうなれば、今の質問がまただぶつて来るわけなのです。被疑者であるものを、また出入国管理令において逃がした、こういうこと、被疑者であるなら、なぜそのときに日本で抑えていなかつたかということが問題になる。刑事特別法に基く被疑者でなかつたか。そうなれば、犯人の引渡しを求めることもできますが、どうですか。
  48. 井本台吉

    ○井本説明員 ラストボロフが被疑者であつたかどうかという点につきましては、少くも日本出国する当事におきましてはさようなことは考えていなかつたわけであります。本人がアメリカにおりますのについて私どもがこれを取調べに参りましたのは、アメリカ好意によつて一種の日本の法権がアメリカにまで及んだという形にある程度なるかと思いますが、一にこれ公判の証拠維持のために私どもがさような次第に出たわけでありまして、結局現に起訴されておりまする被告の証拠集めということに帰着するわけでございます。  なお本人の意思に反して拉致するというような事件につきましてはただいまの出入国管理令違反とは全然また趣を興にするのでありまして、さようなものにつきましては、猪俣さんのお話ももちろんでございますが、これについては十分私ども対策を講じて行きたいと思つておる次第でございます。なお出入国管理令違反につきましても、かような本人の自発的意思でありましても、アメリカ軍が日本の法律を無視いたしまして、承認を経ずに出国させるというようなことは、これは私どもといたしましても非常に遺憾なことでありますが、将来かようなことはいたさないということをアメリカ側は日本外務省に弁明しておるということで、私どもも一応了承しておる次第でございます。
  49. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 どうもそのときに知らなかつたというのですが、スパイであつたということが明確になつておる、スパイであるからこそアメリカに拉致した、スパイであつたということになれば日本の法律で処罰しなければならぬ。今の局長の御答弁を開いておるというと、日本の司法権などというものはアメリカの命令さえあればどうにでもなるのだというような、まるでアメリカの属国のような感じを私ども受けるのですが、ただいま猪俣委員からも言われたが、法務委員会では特に外国の飛行機でああいうような拉致事件を起すということは、今後非常に慎重にやつて絶無の状態にしていただきたいという決議まで行われておる。この刑事特別法に基くと、スパイだから日本の法律で処罰しなければならない人なんだ。その捜査が行われずに、またその人間を今の出入国粋理令違反まで犯して連れて行つてしまつた。そうしてこの間あちらへ行つてお調べ願つたが、そういうようなことであるならば、日本の司法部の捜査というものはアメリカの自由になつてしまう。私はこの点が問題になると思う。今御答弁になりましたのは、向うに行つてしまつたのだからやむを得ないんだ、その点はそういう御答弁なんですが、その前に前提となるべき日本の法律に違反しておる被疑者であつたけれども、アメリカに連れて行かれてしまつた、こういうことなんです。これに対する司法部の処置は一体どうするのか、検察庁の処置をどうするか、こういうことを私は聞いておる。知らなかつたというわけにいかぬと私は思うのです。りつぱにスパイであつて、明確に確認されておる事実なんです。被疑者をさようなことで連れて行かれて、それをべんべんとして指をくわえて見ておつたのか、こういうことに対してあなたのお考えをお聞きしたい。
  50. 井本台吉

    ○井本説明員 ラストボロフアメリカに行つてしまつてから、私どもは本人がさような態度に出たことを知つたくらいでありまして、出国当時においてどのような状況であつたかということは、当時残念ながらわからなかつたのでございます。しからばかようなスパイ活動をした者は引渡しを受ければいいじやないかというようなお話もあるかと思いますが、これは一種の政治犯でありまして、引渡しの対象には私はならぬと考えるのでございます。お話通りわれわれの力がもう少し十分であつて、かような人間が出国する前にただちに完全にこちらで容疑者としてつかまえることができるのであれば、かような者は日本の法律に照してある程度の処罰はできると考えるのでございます。
  51. 中村高一

    中村(高)委員 今刑事局長は政治犯だというのだが、あなたは何か感違いしておるようでありますけれども、行政協定に基く刑事特別法という法律にちやんと違反をしている。第六条に諜報活動をした者ということが書いてある、そうして本人もアメリカでおれは日本諜報活動をしたということをはつきり言つておるのです。それを国内における官吏に対して、ただ国家公務員法違反だなどということでこれを処罰しようとするから、いやおれは無罪だとかいつて自殺したり、いろいろな問題を起して、ラストボロフと対決させろなどということを、保釈になつて出て来てから新聞などで言つておるのですけれども、国家公務員法違反なんて、秘密を漏らしたつて事務的なものを漏らしたという罪であつて、今度の諜報活動をやつたというような問題は、ちやんと刑事特別法の第六条に十年以下の懲役ということが書いてある。これをあなたは政治犯だとかなんとかいうようなことを言つてごまかしてはいけません。こんな犯人は引渡しを要求して、日本政府が毅然として立つべきだ。日本の国内においてこれだけの諜報活動をしたものを逃げられて、犯人の引渡しも求めることができないなんて、そんな弱い刑事局長ではしかたがないです。厳重に犯罪人の引渡しを求めて、そうしてこの法律において裁判をしなさい。そのくらいのことができなければあなたは刑事局長などやめなければだめだ。そんなへつぴり腰で政治犯だなどと情ないことを言つてはいけません。
  52. 井本台吉

    ○井本説明員 日米犯罪人引渡し条約を御改訂願いまして、その条約が直りますれば私喜んで引渡しを受けたい、こう考えます。
  53. 小林錡

    小林委員長 午前中はこの程度にとどめ、午後二時より再開いたします。    午後一時二十五分休憩      ――――◇―――――    午後三時五十一分間議
  54. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  法務及び検察行政に関する件、並びに人権擁護に関する件について調査を進めます。  まず洞爺丸の問題について発言の申出がありますからこれを許します。古屋貞雄君。
  55. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 洞爺丸の事故は近来まれに見る大きな事故でございまして、これは非常に悲しい、御質問申し上げるのも何だかと思うくらいにまで悲しい事件でございますが、これについて再びかようなことを繰返すということは私ども断じてなしてはならない、かように考えておりますので、いろいろと今日まで新聞その他の報道を承つておりまするけれども、直接関係者からこれの原因並びに今後の処置につきまして、詳しい御説明を承りたいと存じます。
  56. 井本台吉

    ○井本説明員 私どもの方に参つておりまする洞爺丸関係事件につきまして、一応とりまとめて簡単に御報告申し上げます。  第一に事故発生当時の概況でございます。青函連絡船の洞爺丸船長は近藤平市氏、容積トンが四千三百三十七トンになつております。この洞爺丸は本年九月二十六日午後二時四十分、第四便として函館を出港の予定であつたのでありますが、気象状況の悪化等の事情によつて数度出航時間の延期をなし、乗員一千三百十五名、うち一般旅客一千百四十二名、外人旅客六十三名、職員百十一名、貨車八両、客車四両を載せたまま気象の回復を待つたのでありますが、同日午後六時三十九分、一応状況がよろしいというので出港したのであります。当時なお海上は風速二十メートルないし二十五メートルの強風が吹いておりましたが、同船が防波堤を過ぎましてから風速はいよいよ強まりましたため、南口の防波堤燈台から三百度、〇・八五海里の地点に投錨、仮泊するのやむなきに至つた模様であります。その後風、波はともにますますはげしくなり、平均風速三十五メートルのときには突風五十七メートルに及び、走錨のため船体は七重浜方向に押し流されて、午後十時ごろには、追い波のために海水が後部の貨車引込品から機関室にと侵入しましたために機関が停止し、同十時二十六分ごろに船体にシヨックが感ぜられ、船長は座礁を宣し、同十時三十九分SOSを発した模様であります。同船はなお座礁しながらも二、三回押し流された末に突然横倒しとなつて転覆するに至つたもののごとくであります。  これに対する捜査の開始の模様でございますが、函館の地方検察庁におきましては、右の事件の報告を受けますると、同夜から翌二十七日の早朝にかけまして北海道警察函館方面隊及び函館海上保安部と協議いたしまして、ただちに合同捜査本部を設置し、右船長らに対する業務上過失致死並びに過失艦船覆没の容疑のもとに捜査を開始いたしたのでございます。捜査陣容としては、函館地方検察庁の検事正以下検事が五名、副検事一名、検察事務官七名のほかに、札幌高等検察庁管内から検事六名、検察事務官五名を派遣し、捜査の応援をなさしめて今日に至つております。  その次に捜査方針につきましてでありますが、洞爺丸の遭難事故が非常に市大性を持つのである点にかんがみまして、まずこれが原因探究を第一の目標とし、あわせて洞爺丸とともに遭難沈没いたしました青函連絡船十勝丸、日高丸、第十一青函丸、北見丸などの各沈没原因について、いずれもその船長――これはいずれも死亡しておりますが、その船長の業務上過失致死、過失艦船覆没の罪の容疑をもつて捜査を進めこるとにいたしたのでございます。しこうして洞爺丸事件につきましては、調査の重点を第一に、暴風警報下に出港しました点に過失があるかどうか、被疑者である船長のほかに共同過失責任を負うべき者があるかどうか、すなわち船長の出港を指揮する権限のある者があるかどうか。第二に、出港の際の船舶の荒天に対する準備、出港後の操船、あるいは積荷を投げるとか、錨を投げるとか、あるいは転覆、浸水予防指導というようなことに過失があるかないかという点についていろいろ捜査中でございます。現在までの捜査の状況でありますが、現在まですでにこの七重浜の現場の実況見聞、もしくはこの洞爺丸と同じ構造の大雪丸の実況見聞 それから生き残りの洞爺丸の乗組員、乗客の取調べ、函館海岸の気象台、中央気象台あるいはNHK、HBCなどの各気象通報の状況、七重浜に座礁した貨物船第六真盛丸の船長らの取調べを行いましたが、本件は、その内容内容が非常に複雑であるのみならず、関係人が多数であり、また船舶航海の岬町的な、たくさんの問題を含んでおりますので、目下海難審判所の調査状況も参考資料として参酌し、北海道警察函館方面本部、函館海上保安部などと緊密な連繋のもとに、事件真相究明に努めておるのでございます。  当時の出港につきましては、現在までの操作状況では、暴風警報下において、現に風速二十五メートルに及ぶ際は、今までは出港の実例がほとんどなかったようでありまして、この点に関して船長が気象に対してあるいは軽く見ておったのではないかと思われる節もありますが、なお具体的な事情及びその他の点につきましては、鋭意操作を進めておる状況でございます。
  57. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ただいま大あらましの経過を承りましたが、出港当時の気象観測の状況、それからもちろん出港前における気象観測の状況、ことに船舶気象観測などをやった事実があったかどうか、そういう点についてのこまかい情報をいかに収集され、いかなる状況において出港の決意をされたような状況にあったかということだけを、関係当局から科学的に御説明を承りたいと思います。
  58. 山内公猷

    ○山内説明員 ただいまの御質問の要旨は、気象台のとった措置がおもなものと思われるのでありますが、気象台の台風に対する指示といたしましては、その日の天気図をつくりまして、その天気図に基きまして中央気象台から各測候所に対して指示報を流しまして、各測候所はその中央の観測に基きまして、その地方地方の地形その他を参酌いたしました警報あるいは注意報というものを流すのが、通例の仕事の状態になっております。  この函館の場合におきましては、二十六日の八時に風雨注意報を流しております。次に二十六日の十一時に暴風警報を発しております。その後十六時に、放送局あてに台風の情勢を流しております。また二十一時に、放送局あてにその後の状態を流しておるわけでございますが、二十二時、午後の十時ごろには、暴風のために電話線その他に故障が起りまして、放送局に対する情報の提供が不能の状態になっております。そのほか函館には海洋気象台がございまして、鉄道気象といたしまして青函局司令室あてに特別の情報をそれぞれ流しておるのが通常の状態でございます。船舶には御承知のようにそのほか気象に関します無線受信機その他を備えまして、船舶自身も気象の収集をやっておるというのが通常の状態になっております。
  59. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 従来はこの船舶で気象観測をやることが行われておったのですが、現在は行われておったのでしょうか。たとえば台風の進路などの付近に気象観測の船が出かけて行って、気象の観測をしておる。そうして刻々それを近海の航海中の船、あるいは関係方面の船に通報しておるというようなことが行われたということを聞いておりますが、現在行われておったかどうか。この当時も行われておった事実があったかどうか。
  60. 山内公猷

    ○山内説明員 従来は気象台から南点及び北点に観測船を出しておりまして、これは主として米空軍の要請に基きまして、そういう南北両定点の観測をやっておったわけでございます。その後占領が終りましたときに、気象台といたしましては、この南北両定点の観測を続けたいという希望を持っておったわけでございますが、その船が非常に悪い船でありまして――アメリカの航空要請に対しまして北方定点をやめました状況について御説明いたしますと、大体そういう荒天に行きます観測船でありますために、世界におきましても、定点観測の船は二千トン以上の船でないと非常にむずかしいという状態でありました、ところか日本がそれまでに南北両定点に使っておりました船は、約千トンそこそこの船でございました。一応戦時中できました海防艦の古い船を使っておりましたので、非常に危険な状態で、船員からもいい船をつくってもらいたい、それでなければあぶなくて観測に当れないという要請がありましたので、日本側からしましてアメリカ側にいい船を出してもらいたいという交渉をしたわけでございます。それに対して代船の提供不能であるということで、覇時運輸省といたしましては、南北両定点に対する観測船五隻、約三十億の船を新造する必要に迫られまして、予算の折衡をいたしたわけでございますが、国家財政上どうしてもできないということになりまして、現在では南点に対しまして半年間の観測をいたしておるだけでございます。  それではなぜ南点ができて北点の観測ができないのかと申しますと、もちろん南点におきましても二千トン程度の船をつくって観測をするということが望ましい状態でございますが、南方定点は御存じのように冷風の向って来るコースでありますが、その台風の足がおそいために観測船が台風の進行に対してある程度よけられる、自分の船の安全を期し得られるという状態でありまして、まずまず南点においては現在の船でもできるという見込みで半年間やつております。しかし北点にお声ましては、特に冬季非常に波浪が高いことと、 いわゆる北方における台風は、冬は非常に足が早い。しかも樺太からシベリアに通ずる気象観測の情報がありませんので、定点観測船自体が台風の速度、方向を知らないで、ぶつかって初めて台風であることを知るということで、非常にいい船を要請されるわけでありまして、予算の都合上北方定点に関しましては二十九年度一年間中絶いたしましたが、最近の情勢にかんがみまして強く大蔵省に要請をいたしまして、本年度約十八億要求いたしましたが、どうしてもこの北方定点を再開したいという強い要請を運輸省としては持っております。  またただいまのお話の中で、南北両定点の船が気象通報をするようにということでありましたが、実はそれらはすべて無線によりまして、中央気象台に気象の情勢を報告する機関でございます。そのほか現在気象につきましては、各船舶がそれぞれの地点で気象観測をいたしております。これは全部の商船その他の船が気象観測をいたしまして、それを中央気象台に連絡を願って、なるべく広いデータのもとに観測をすることが正確を期せられますので、各船はみなそういうような使命を持っておることを申し添えておきます。
  61. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今回のような不詳事が起りましたので、いかなるような犠牲を払っても今御説明のような観測船をつくることが必要だ、かように私どもは考えておるのですが、今回の問題につきましても、今刑事局長の御報告によると、二十五メートル以上のような暴風の場合には大体において出港はしなかったのだ、そういたしますと、船長の過失というような問題が起きて来るのでしようか。そういうような問題は抜きにいたしましても、気象観測などの通報あるいは船に対する当時の天候に関する情報がある程度まで船長のところに集まりまするならば出港をしなかっただろう、こういうようなことも考えられるのですが、大体今のような情勢では、今後この航海をいたしまする青函連絡についての現在の状況においては、再びかようなことを繰返さなくても、船長並びにその他の関係方面において過失を犯さない範囲で出港いたしまするならば、かような不詳事を引起すような状態ではないというようにお考えになられるのか。それとも、気象観測に対しても不備がある、あるいはその他の方面においても、万全を期すには、かような設備かような方法を講じなければならぬというような状況に置かれておるかどうか。置かれておるとすれば、どういうような設備、どういうような処置をすれば完全なものが行われるというようなお考えがございましたらひとつ御参考に承りたいと思います。
  62. 山内公猷

    ○山内説明員 当時の状況につきましては、運輸省といたしましては、その原因の究明の一日も早いということを望んでおりまして、私の省の関係といたしましては海難審判庁が全力をあげてこれに当っております。海難審判庁も、ただいま御説明がありましたように、洞爺丸外四隻の船の原因探究をしなければならないのでありますが、事は、洞爺丸が非常に大きな事件でありますために、まず第一に、できれは、切り離せれば洞爺丸事件原因探究その他諸般の問題についての究明を第一義的にやりたいという意向でやっておりますし、かつまた検察庁からも当時の状況につきましては十分お調べを願っておりますので、運輸省といたしましては、それ  権限のある官庁の事態の究明を待ちたい、かように考えております。  第二点につきましては、ただいま申し上げましたように、十時以後の気象観測というものが専用電話線の故障によりまして通じていなかつたということにもかんがみまして、これは従前から、気象におきましてはできるだけたくさんの伝達の通信機関を持ちたいという希望を持つておりまして、電話線のはかに無線電信機の設置をできるだけ充実したいということで、本年度この点も特に大蔵当局にお願いを申しておる次第でございます。
  63. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 もう一つは救助作業に対する対策でございますが、当時非常に荒れておりましたから救助作業も非常に御困難とは想像がつきまするけれども、救助作業に対してどうも万全を期していなかつたというように考えられる節々があるのですが、救助作業に対する対策はどんなような御対策を講じたのか、具体的に報告ができまするならば御報告を願いたいと思います。
  64. 山内公猷

    ○山内説明員 当時の具体的な問題につきましては、国鉄の方がおられますのでそれからお聞きを願いたいと思いますが、運輸省といたしましては、あの事件を聞きまして、すぐ大臣が閣議で内閣へ報告されるとともに、運輸大臣と鉄道監督局長をすぐ現地に差向けまして当時の状況をつぶさに見ていただいたわけでございます。それから運輸省におきましては、次の日にただちに対策本部を設置いたしまして、それぞれの問題について運輸省の総力をあげてこの対策に当つたわけでありますが、何分にもああいう事件になりますといろいろ不手ぎわな点があつたかもしれないのでございまして、われわれといたしましては、できるだけの力を注いであの事件に対処いたしたということは申し上げられると思いますが、当時の状況につきましては、ただいま申し上げましたように、責任のある者がちよつと今運輸委員会に呼ばれて入つているそうでございますから、またあとで申し上げたいと思います。
  65. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ではそれはあとからでよろしゆうございますが、ただ私の申し上げたいことは、当時ほかの方面の必要でないところに警察官などが集結されてしまつて、北海道ではそういうような急場の場合の警察官の活動などもほとんどなかつたというようなことを承つておりますので、それについて承りたいと思つておつたのであります。これは警察の方から承ります。  もう一つは、最後に賠償問題なんですが、運輸省では賠償についてどういうお考えを持つておりまするか。これは非常に大事なことでございまして、尊い生命でございまするから、金をもつて償うということは、幾ばくの金を積みましてもとうてい償えないのでございますけれども、生活に困窮しておられる人たちも相当多数おりますし、それからなお、一家の大事な主人公を奪われたというような家庭もございます。そこで、賠償に対する基準などがもうすでにおきまりになつておれば、その基準を大体私どもは承りたいと思つております。
  66. 山内公猷

    ○山内説明員 賠償につきましては、先般新聞紙上にも発表いたしましたように、本件事故が有責事故であるか無責事故であるかまだ判明いたしません状態ではありますが、その有責、無責を俟つて遺族あるいは遭難された方方に対して弔慰の方法を講ずるときには、生活に不如意を来たされる方もあるということを考えまして、運輸省から国鉄に対しまして、有責、無責の問題とは別に、いわゆる弔慰金という名前におきまして、遭難死亡者十八年以上の者に対しましては五十万円、同じく十八年末満の者につきましては三十万円、幼児につきましては、その三十万円の範囲内において、お見舞金という名前か、弔慰金という名前か、一応弔慰金という名前にしたわけでございますが、そういう金を支出するようにという勧奨をいたしまして、国鉄はそれを受けまして、ただいま申し上げましたような金額をとりあえず遭難者に贈呈するということを決定いたしております。爾後のことにつきましては、今後の、審判あるいはその他検察庁、裁判所のお調べによりまして、有責ときまればまた別途の賠償の措置が国鉄から講ぜられることになつております。
  67. 岡田春夫

    岡田(春)委員 二、三の点を伺いたいと思います。  まず第一に、先ほど法務当局の現在までの捜査の過程についてお話があつたのでありますが、現在まで捜査される立場として、船長の業務上過失致死の容疑をもつて捜査している、こういう報告が先ほどありました。ところが今度の問題については、船長の業務上の過失致死の問題だけとして、それだけに限定をして調べられているというように、限定をされている理由がどういう点にあるか、まずこういう点から伺いたいと思います。
  68. 井本台吉

    ○井本説明員 先ほど申し上げました通り、船長を第一次の容疑者として立つておりますが、それに対する共犯関係の者があるかないかということについても、もちろん同じ立場で取調べを進めております。
  69. 岡田春夫

    岡田(春)委員 まず第一に船長がという点でありますが、おそらく出航の権限を持つているのは船長であるという観点に立つて第一次の容疑者として調べられておるのだろうと思いますが、ここで伺いたい点は、青函連絡船運航事務取扱手続によると、ダイヤの変更の指定は、船長の権限というよりも局長の指示によるということになつております。ところが先ほどのあなたの中間報告によりますと、定時すなわち二時四十分にこの洞爺丸は出帆いたしておりません。従つてダイヤが変更された場合であります。六時三十九分に出帆したということはダイヤが変更された場合であり、そのダイヤの変更された場合においては、具体的には青函管理当局の中に指令室があつて、この中で運航指令というのでダイヤの変更をやりまして、その上で局長が指示をしてダイヤの変更が行われるわけであります。こういう観点から見て参りますと、ダイヤの変更された場合における出港の責任というものは、船長だけではなくて当然局長にあるということが明確になつて来ているわけなのです。こういう点についてお調べになつているかどうか、こういう点を伺いたいと思います。
  70. 井本台吉

    ○井本説明員 先ほど簡単に申し上げました通り、第一次的には船長に過失があると思つておるのでありますが、被疑者である船長のほかに共同過失責任を負うべきものがあるかどうか、ただいまお話のようなダイヤの変更を命令する局長などがこの共同過失責任を負うべきものであるかどうかという点についても、あらゆる観点から取調べを進めておる次第であります。
  71. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の言い方が不十分であつたとは思わないのだけれども、今私が申し上げているように、ダイヤの変更という場合には局長が指示をする権限がある、この法的な根拠に立つならば、船長が第一容疑者であると同時に、第二、第三のそれに関連する者、こういうような調べ方ではなくて、ダイヤの変更された場合には局長それ自体が第一の容疑者である、こういう法解釈に立つべきではないかと私は考えておる。そういう法的な基礎なくしてただ調べられていると言われても――この点を明確にすることがまず第一ではないかと思うのですが、この取扱手続の点について、関係方面に取調べさしたか、あるいはあなた御自身がお調べになつたか、こういう点があるのでしようかどうでしようか。
  72. 井本台吉

    ○井本説明員 もちろんダイヤ変更の命令に従つてかりに出航したといたしましても、船長の措置よろしきを得れば殺すというようなことはないこともあり得るのでありまして、出航を命令したから船が沈没したという、その間に因果関係がありますれば、これは第一にさようなダイヤの変更を命令した方が責任を負うべきものであるかもしれませんが、私どもはとにかく船を出航さしたその船長が第一の責任者であるという点については見解がかわらないのでありまして、それに対して共同責任を負うべきものがあるかどうかということについて調べを進めておるということは先ほど来申し上げた通りであります。
  73. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あまり一つのことにこだわつてはいけないけれども、そういうあらしのときに出航しても船長がうまくやれば沈没しなかつたであろう、そういう問題ならば局長の責任もないであろうというような三段論法式のあなたの答弁でわれわれは承服できないのです。先ほどあなたの報告によると、出帆当時においては二十五メートルということを言われた、これは間違つている。これは函館の気象台へこの間調査団として行つて調べて来ている。函館海洋気象台では三十メートルあると言つている。けれどもそういうこまかい点は私は一々言いません。しかし出帆してみても船長がうまく操縦すればひつくり返らなかつたであろうというようなことを言つて、この問題を適当な形で言われると困るのですけれども、この点はこの程度にしておきます。  しかしここで一つだけはつきり申し上げておきますが、そのあとの十月三日に少し風が函館に吹いた。そのときに羊蹄丸という船が出帆しようとした。ところがこれに対して局長が出帆を拒否している事実が上つている。ですからこれは出帆拒否で出帆しなかつた。局長がこの台風の状態を危険であると考えるならば出帆を拒否する権限があるということは、このあとの十月三日の事実によつても明らかになつている。こういう点から見ても、今あなたの調べられている立場として、単に死んでしまつた船長だけにすべての責任をかぶせるという一部の考え方と同じ方向で調べられるのではなくて、今度の犠牲者と、このような悲惨な事実を再び繰返さないためには徹底的にこの事実を明らかにしてもらわなければならないと思う。同じ政府の中の一部の関係でそういうようになくなつた船長にすべての責任をおつかぶせるような方向でやつておるから、ただ船長を第一の容疑者としてそういう方向で調べるというような態度では、私はなくなつた犠牲者に対してもほんとうにとるべき道ではないと思います。  そこで引続いて申し上げますが、検察当局では、聞くところによると、大体今月中に結論を出す、そうしてしかも船長がこの事故を起したという問題だけではなくて、船長が出航するために何か指示を与えた者があるかのよう考え方がだんだん強くなつて来た。某新聞においてもこういう点について出航指示の線が非常に強くなつて来たというように出ております。検察当局もそういう見方をしておるといつておりますが、こういう見方についてはどういうように考えるか。それから今月中に結論が出ると言われておりますが、一体出るものであるかどうか、こういう点を伺いたい。
  74. 井本台吉

    ○井本説明員 実は函館の検察当局におきましては、検事正以下連日この点を熱心に捜査しておるのでありまして、先般私どもの年一回の行事であります次席検事の会同などにも、函館の現地では人が出せないからということで一応出席を拒否して来たくらいの状況であります。できるだけ早く結論を出したいという気持でおることは申し上げるまでもないことと存じます。しかし今月中に必ず結論を出すというような報告は来ておりません。それから近藤船長のほかにたれが容疑者になつておるか、さような命令をした者がたれであるかということにつきましてもまだ的確な報告も来ておりませんので、先ほど私が概括的に申し上げた程度が現在報告でき得る範囲でございます。
  75. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の聞いておるのは、別にたれが容疑者であるかということを伺つておるのじやない、私の伺つておるのは、船長だけの責任であるというようには考えられない、ほかに容疑者があるのではないか、こういう点を伺つておるので、具体的にその人はだれであるかということを伺つておるのではありません。その点がまず第一、それから先ほどあなたの中間報告として最初に報告された中で大体風速二十五メートル以上の場合においては出帆した例がないというようなことを御報告されております。これは事実なんです。函館地検の中間報告においても大体同様のことがいわれておる、これは事実です。ところが二十五メートル以上の風速の場合出たことがないのに、今度だけ出たとするならば、船長自身がことさらに出たというよりも何かほかの方からこの船は出すべきであるというようなことを強制されたような指示があるのではないか、こういう点が常識としても推測されるのではないかと思う。そういう点について、具体的にたれが容疑者であるかというようなことを聞いておるのではなくて、そういう点についてもう少し具体的にそういうように出航を強制されたという色が濃いのか薄いのか、一体どうなんだ、こういう点についてひとつ御答弁を願いたい。
  76. 井本台吉

    ○井本説明員 まことに恐縮でございますが、ただいま報告が参つておりますのは、先ほど申し上げた程度でありまして、それ以上具体的に今お話のような点があつたのかないのか、ただいま否定する材料もございませんし、肯定する材料もございません。
  77. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう少し簡単にやりますが、それではあなたは下部の方から連絡がなかつたから御存じないと言うのなら、あなたの御存じのことを言おうと私思うのです。これは新聞にも出ているし、正式の衆議院の機関としての調査報告にも出ておる、というのは、この船の出帆は、大体五時半ごろに決定をして、出帆のドラを鳴らしたのは五時五十分であります。そうして事実出帆しておるのは六時三十九分であります。ところが大体五時五十分前後といわれるが、青函管理当局から函館海洋気象台に対して台風の状態を問い合せておる。それに対して、ちようどたまたま海洋気象台長がそのところにおりまして、これに対した電話の応答をやつておる。このときの応答は重要でありますから申し上げますけれども、こう育つておるのです。今度の台風はどうでしようかと鉄道の人が聞いた。ところがこれに対して――その前にちよつと前後の関係をもう少し申し上げますが、ちようどその当時の状況は、風がないで、西の空が夕焼けになつて、からすが飛んでおつた、こういう状況だそうです。非常に風のなかつた状態だそうです。海もないでおつたそうです。そのときに今申し上げたように電話の間合せがあつた。これに対して海洋気象台長は答えて、今このように静かなのは台風の眼です、こう答えております。そうしてこのあとどうなるかと聞いたら、このあとは先ほど吹いたよりももつと強い風が吹きます、こう答えた。いつごろですかと聞いたら、間もなくですと答えております。これは電話で国鉄の関係の者から問合せがあつたわけです。この問い合せた人の名前も実はあとで新聞等にも出ております。運輸司令のそのときの当直の人であるということがだんだん明らかになつて来ております。ところがこういう問合せがあつたのに、何ゆえに船長のところに連絡があつたのかないのか、ともかくもこういう状態であるにもかかわらず、船は六時三十九分に出帆した、こういうことで事故が起つたわけでございます。そこでこういうような危険な状態であるにもかかわらず出帆をしたとするならば、船長自身が予報なり台風の状況というものを誤断したとか、決してこういうことではなくて、何か船を出さなければならないような理由があつたのでないかと思います。こういう点も想像にかたくないと私は思うのです。しかしそういう関係については今あなたが現在ではわからないとお話になるから、これについては私は答弁を求めません。しかし五時五十分前後において、海洋気象台にそういう問合せがあつて、なおかつ船が出帆したという事実を御存じであるかどうか、この点を伺いたい。
  78. 井本台吉

    ○井本説明員 新聞紙でさような記事を読んだような気がいたしますが、明確な記憶はございません。
  79. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それからこういう点を調べておられるかどうかをお聞きしたいと思うのです。この船の出帆する前に、駐留軍が主として乗る第十一青函丸という船が出帆しておる。この十一青函丸が函館から出帆したのに間もなく引返して来て、この乗客すなわちアメリカの駐留軍の軍隊が洞爺丸に乗り移つたわけです。ところがこの前後に十一青函丸の中に入つておつた駐留軍用の荷物を全部洞爺丸に載せかえるために、時間が遅れておる。こういう点はともかくとして、こういう事実と同時に、私の聞いた限りでは、十一青函丸は出帆を実は拒否したかつた。ところがアメリカの軍隊の責任者が、十一青函丸の船長に対して、ぜひとも船を出帆しろ、こういうことを再三にわたつて強く要求したと伝えられておる。そうしてそのために出帆したけれども、実際は船は途中まで行つたが、あらしが強くなつて、行くことができなくなつてもどつて来た。そうして洞爺丸に引移つたというのであるが、われわれが調べた限りでは、青函の管理当局あるいは天坊副総裁等によると、十一青函丸は貨物船であるから、そのために風の中で航海するのは困難である。しかし洞爺丸の方はあらしの中で航海するのには、十一青函丸ほどではない。それで出帆したのであろうというようなことが言われておる。そこで十一青函丸に対してアメリカのある人が出帆を強要したとするならば、おそらく――特に先ほど育つたように、静かな夕焼けの状態である。その五時半から六時三十九分の前後においては、おそらくアメリカの責任者という人か何か知らないが、この人が出帆を強要したのではないかと考えられる節があるように考えられる。こういう点については、あなたの方でお調べになることができると思う。十一青函丸の関係を調べればいいわけです、あるいは桟橋の埠頭関係を調べればいいわけですから、こういう関係をお調べになつておるかどうか、この点については法務当局ばかりではない、運輸省関係についてもこの関係を明らかにしていただきたいと思います。
  80. 井本台吉

    ○井本説明員 十一青函丸が引返したという状況は私どもの調べの中に出ておるのでございます。こまかいデータがわかりませんので、かような状況のもとに、だれが出帆を強要したものであるとか、あるいはどのような過失があつて船がやむを得ず出たかというような点につきましても、われわれといたしましては一切ひつくるめまして、どこに被疑者があるかということを検討しておるのであまりして、何も近藤船長一人だけを目標にしておるわけでは全然ございません。とにかく公平に率直に過失の存在がどこにあるかという点を追究しておるものであるということを申し上げます。
  81. 山内公猷

    ○山内説明員 十一青函につきましては、ただいま御指摘のように千三百二便といたしまして出港すべく当日函館港外に碇泊しておつたわけでありますが、海上非常に風浪が高いために十三時五十三分函館港内に入りました。十四時四十八分再度函館二岸に着岸いたしました後に、船客を四便洞爺丸に乗せたという事実が報告に参つております。ただいま御指摘の出港を強要した者があるのではないかということにつきましては、私どもの方としてはまだ全然そういう話を聞いておらないわけであります。
  82. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題については二人の人に伺いたいのですが、その日はちようど日曜日でありました。日曜日であるために、その日の青函管理当局の出港関係の船のダイヤを編成するとかその他の関係において、日曜日の勤務として非常にそのときの勤務員が少かつたわけです。平常の勤務の状態であつたわけです。ところが局長並びに運輸部長その他の人々も実は当直しておらなかつたわけです。台風というようなこういう非常に恐しい状態があるのに、勤務の状態というのは平常勤務の状態にあつたということが一つ。それからもう一つは特に高見という管理局長は、一説によるとその日浅井総支配人、今度なくなつた人ですが、国鉄の総支配人と一緒に札幌から函館の方にもどつて来てどこで飲んだか知らないが、その目は非常に飲んでおつたということをわれわれは実は聞いている。そういう状態であるために、先ほどから申し上げているように、タイヤの変更の場合の局長の権限である出港指示、これについてもほとんど権限というものを果し得られない状態にあつたということをわれわれ聞いている。こういう点についてもやはり今後捜査当局としては調べるべき一つの大きな問題として私は問題を提供しておきますが、おそらく先ほどのあなたの中間報告程度では、まだこういう点もおそらく知らないとおつしやるだろうと思うのだが、そういう点も私は実は開いております。こういう点について運輸当局の方で何か開いておられるならば、ぜひ御答弁を願いたいと思うのですが、特に天坊副総裁は函館に相当長期間にわたつて滞在いたしまして、省内部の問題としても調べているはずでありますから、こういう点について御答弁を願いたいと思う。
  83. 山内公猷

    ○山内説明員 ただいま御指摘のような事実は、運輸省にはまだ聞いておりません。
  84. 岡田春夫

    岡田(春)委員 先ほど法務省の局長に聞いた点で運輸省の方にももう一度お伺いしておきたいのですが、船舶従事員職制及び服務規程四条、いわゆるダイヤの変更に対する指示の問題、これについては運輸省としてはいかに解釈されておるかは、これについて御答弁願いたいと思う。
  85. 山内公猷

    ○山内説明員 青函連絡船の運用につきまして、大体の通牒のきまりようを御説明いたしたいと思うわけでありますが、これは旬計画によりますと、配船表をもつて概括的に通常の場合においては指定いたしております。但し天候その他によりましてその当該便の変更を要する場合には、その都度指示することになつておるわけでございますが、天候が不利で出港するという状態になりますと、この条文によりましてその都度指示することになるわけでございますが、大体船を出すか出さないかということは、船長と運航担当者と連絡いたしました上できめることでございます。船長にはその場合天候が悪くてどうしても欠航しなければならない決心をすれば、船員法上合法的な拒否をする権限がありますし、それによりまして運航指導者も、船長の反対を押し切つて船を出させるということはできないとわれわれ解釈いたしております。
  86. 岡田春夫

    岡田(春)委員 変ですね。その四条をちよつと読んでごらんなさい。局長のダイヤの変更を指示することになつていませんか、どうなつていますか。
  87. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 今のお尋ねがありました条文を読んでみますと「青函連絡船の運用は旬計画による配船表をもつて指定する。但し天候その他により当該便の変更を要する場合はその都度指示する。」そういうふうに四条はなつておりまして、これは見出しは青函連絡船運航事務取扱手続で服務規程ではないのでありますが、これの解釈でございますけれども、これは今運輸省の山内官房長がお答え申し上げた通りの、船長の方で第四便としては天候で出られない、こういうふうに判断いたしますと、これを鉄道局の管理局――原則といたしましては、当否運航司令のところに来る運航指令は、第四便のダイヤを六便にする、これだけのことでありまして、お前は二便で出られなければその次の四便にする、あるいは大使にする、こういう指示とわれわれの方は解釈しております。
  88. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この指示ということを明確に委員の皆さんも開いておいていただきたい。これは指示すると明確に出ている、事務規定であるということでありますが、運航するということは明らかに事務規定である。従つて指示する権限というものは局長にあると解釈して間違いないと思います。しかも何か四便を六便にする程度であるというような御答弁であつたのでありますが、もしそれがそれだけの権限しかないものとすれば、十月三日に羊蹄丸の出港を拒否したという部長命による指示というものは何ら法的根拠はないものと解釈してよろしいのですか。
  89. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 ただいまの十月三日の羊蹄丸の出港をとめることを指示したというのは初めて承ったので、かりにそういうことがあるとすれば、これは船舶所有者としてこういう天候では出てはいけない、こういう意味でありまして、この規定からではないと思います。
  90. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは船舶所有者であろうが船長であろうが、この事件が起きた刑事責任の問題があるのですから、それは所有者であろうが船長であろうが、その権限を持っているという限りにおいては事実です。ですから法務当局に言っている。こういう点から第一容疑者として船長だけを調べるという考え方では、これは間違いが起きるということをさつきから言っている。指示の権限というものはこれほどはっきり出ているということ、これははっきりしている。従って捜査をしてもらわなければいけないと思うのです。先ほどから両三再四申し上げているように、政府の一部の中から何か船長はかってに出たのだ、あるいは不可抗力であるというようなあいまいなことでごまかしてしまおうとしているけれども、こういうことではなくなったたくさんな犠牲者の霊を慰めるわけには行かないと思う。特にあなたは中間報告の中に出ているか出ていないか知らないけれども、もっといろいろ具体的な問題がある、船長室にそのタイヤの変更の任務を持っている責任者である最南の運航司令の中の川上という海務課長が、一時間半も船長室にいるのです。しかも台風の問題について話をしていると言っている。台風の問題について話をしたときに、船長はこう言っている、今度の台風は非常に気圧が下っているから恐ろしいということまで言つている。そこでわれわれがいろいろ聞いたのですが、それじゃあなたはその場合に船を出すか出さないかということを話したじゃないかと聞いたところが、その点については権限がございませんから一言も触れておりませんという、ところがそうじやない、権限があるのです。第四条にあるのですよ。こういう形で、青函管理当局の責任という点は非常に明らかに出て来ていると思うのです。しかも海務課長というのはそのあと船を立ち去らないで今度は事務長室へ行っている。これは一時ころから乗って六時ごろまでいるのです。事務長室で何をしていたんだと聞いたら、いや何もすることがなかったので、週刊タイムスを読んでいました、こう言うのです。そんなはずはないですよ。一方なくなった総支配人は三時から五時近くまでずっと運輸部長のところにいるということを中沢という運輸部長が言っている。こういう点から見ても、おそらく巷間一部に伝えられるように、何か国鉄の総支配人が出航しろというような強制を与えたのではないかという印象が非常に強く出て来ているわけです。私たちはこういう点を、それから先ほど育ったアメリカ駐留軍が出航を強要したのではないか、こういう点を特にわれわれとしては重視すべき問題であると考えています。全体としてこれは単に不可抗力の問題ではない。あるいは船長の麦作の問題ではない。明らかにこれは国鉄当局の責任であると同時に政府自身の責任でもあるとわれわれは考えておる。こういう点からいっても、法務当局としては政府の一部であるからといって一つの立場に立って片寄つた捜査をやらないように、徹底的にこの機会に捜査をして、再びこのような惨事の起らないように、そしてまたそれこそ犠牲者を慰める道であるとわれは考えて、この点を強く要望いたして私の質問を終ります。
  91. 小林錡

  92. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は先般北海道から帰って来ましたが、連絡船上から洞爺丸の遭難場に対して黙祷を捧げて来たのです。私は月に一、二回は必ず連絡船に乗らなければならない立場にあるのでありまして、非常にこの問題を重視いたしております。  ただいま井本刑事局長の御報告を聞きまして、実は私は今後安心して連絡船に乗れないのではないかというような気分を抱いておるのであります。と申しますことは、捜査当局の重点が船長に第一の責任があるのだというように、いわゆる死人に日なしであって、死んだ者に責任をかけようとしている。これは明らかに問題の重心をはずされておると思うのであります。と申しますことは、あの二十六日の暴風雨によって被害あるいは沈没をこうむった船は洞爺丸、第十一青函丸、北見丸、十勝丸ですか、その他たくさんあるのですでありますから、出帆をすれば必ずあの運命になるのだ。あの場合、船長がとった処置が適当であるかどうかというようなことは、われわれしろうとから考えますと、実際風速五十五メートル下においては、しかも波が十メートルも二十メートルもかぶさつて来たという状況においてはどの船も沈没しておる、あるいは転覆しておる、港外に出ましたあの洞爺丸は一人も助かり得ないような状況にあったと私らは考えておる。従いまして出帆したことによっていわゆる死の運命に入っておる。ところがあなたの御報告を聞いておりますと、出帆してから後にあの船を転覆させないように、安全を保つように船長がいかにすべきであったか、その処置については過失があったか、なかったかというようなことを第一義にあなたはとらえておられる。私はこれは非常に遺憾です。われの仲間にもたくさんの被害者がある。しかもその被害者の多くの遺族はどういうことを言つているかというと、ああいう暴風雨が来ることがわかっておりながら出帆させたという当局に責任があるということを口をそろえて言つておる。私の聞いた範囲では、しろうとの一般の人ですが、船長が悪いという声はほとんどない。船長は上部からどうしても出帆せいということを言われたからやむなく出帆したんだ、こう言つておる。  そこで私は井本局長にお尋ねしたいのですが、この捜査というものは、あなた方のお考えは出帆後におけるところの、つまりその船体を安全な場所に移すとか、それから救難上において船長に過失があったということを重点的に調べておるのか、あるいは出帆をすることを決定したことについて過失があったかどうかということを調べておるのか、その限界をお尋ねしたいと思う。ここが非常に今後のあなた方の捜査の上においても重点だと思う。
  93. 井本台吉

    ○井本説明員 私は先ほども捜査の重点を第一に暴風雨警報下に出船した点に過失があるかどうかという点を申し上げておるはずなんです。その次に船長のほかに過失の共同責任を負うべき者があるかどうか、すなわち船長を指揮する権限のある者があるかどうかということを申し上げておるはずなんで、出航後のことだけを問題にしておるわけではございません。
  94. 森三樹二

    ○森(三)委員 そこで私はこの問題はなかなかむずかしくなつて来ると思う。当日洞爺丸を運転した船長がほんとうの正船長ではない、そういうことを局長がお知りかどうか。大泉が今年の夏北海道に行幸されたときの洞爺丸の正船長というものは吉岡という船長なんです。正船長は吉岡船長であり、副船長は杉田という船長です。この近藤船長は洞爺丸の船長にあらずして、不特定な、つまり船長が足りないとき、事故があるときに運転する人であって、貨物船であろうが、あるいは旅客船であろうが、その都度都度に決定される人である。私はこれを聞いているのですが、まずこの問題を確かめてからまた本論に入ろうと思うのですが、国鉄あるいは運輸省の方からその点をお聞きしたい。  なお新聞にはつきり出ておりましたが、その正船長の古岡船長は、当日は暴風雨が来るので私は乗らないというので乗船を拒否しておる。自分は乗らない。その次の杉田という船長も、こういうしけどきには乗りたくないと言って逃げておる。――逃げておるという言葉は妥当でないかもしれませんが、とにかく自分は乗りたくないと言つて乗つていない。それでやむなく国鉄当局としては、この近藤船長を無理やりに乗せておるという事実がある。これは大問題です。ひとつ御答弁を願いたい。
  95. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 ただいま森委員からお尋ねがありました本件の当日乗りました近藤船長が正船長でない、これはその通りであります。なぜ正船長でない者が乗つたかと申しますと、あの青函の連絡船は本番の船長と副の船長が交互に乗るようになつておりまして、そのほかに四人の船長が連絡予備員のようなかつこうになつておりまして、その人たちが本船長あるいは副の船長が用務のあるときにかわるようになつておりまして、そうして連絡船の予備船長は一群高い経験、知識を持つておる者を、貨物船でも旅客船でも乗れるような人を予備船長、こういうふうに勤務割がなつております。それからもう一つ、近藤船長以外の本番の船長あるいは片番の方の船長が乗らないで、無理やりに本件の遭難された近藤船長を乗せた、こういう事実は私たちが聞いておる範囲ではないと報告を受けております。
  96. 森三樹二

    ○森(三)委員 まあ国鉄当局としてはそういうような御説明をされるかもしれませんが、しからば今年の夏天皇が行幸されたときに運転した船長は何という船長ですか。それから洞爺丸のほんとうの船長は何という船長か。杉田という船長はどういう地位にあるか。天皇の乗つたときに運転した吉岡という船長はなぜそのときに乗らなかつたのか。その次に、杉田という船長はなぜ乗らなかつたか。どういうわけでそういう予備といいますか、貨物船に乗つたり、旅客船に乗つたりするような近藤船長が当日に限つて乗つたのか。その理由をひとつ明確に御説明願いたい。
  97. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 行幸のときの船長は多分岡田船長だろうと思います。
  98. 森三樹二

    ○森(三)委員 本番の吉岡じやないか。
  99. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 吉岡船長で、それはたまたま当日勤務割がそうなつたから、かように聞いております。   〔「杉田船長は、」「命令書が出たはずだ」と呼ぶ者あり〕
  100. 小林錡

    小林委員長 もう一ぺん質問してください。
  101. 森三樹二

    ○森(三)委員 私がさつき質問した、つまり天皇陛下行幸のときに乗つた船長は、吉岡船長であるということは間違いないですね。これがそうしてまたこの洞爺丸の船長でしよう。それも間違いないのでしよう。それから杉田という船長が第二船長といいますか、副船長といいますか、杉田という船長の地位も述べてもらいたい。それから当日乗つた近藤船長が通常どういうような船に乗つておつたか。私の聞いたところでは、ふだんは貨物の船長だというのです。その点も明確に説明願いたい。
  102. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 吉岡という船長が本番の船長で、杉田という船長がそれの片番といいますか一あれは一日何回と往復しておりますので、本番の船長だけでは勤務が過労になりますので、必ず本番、片番と、こういうふうになつておりますが、それで、杉田さんという船長さんが片番の方の船長さんであり、本件の事故でなくなつた近藤船長は予備船長でありまして、どの船にも乗る、こういうふうになつております。  それから当日はどうして乗つたか、たまたまそういうふうに勤務割なつたから乗つた、こういうふうに開いておりますけれども、ここに勤務割の資料を持つて来ないので、聞いておるというだけで……。
  103. 森三樹二

    ○森(三)委員 鵜沢さん、あなたも私と札幌の駅で会つて、運輸大臣と一緒に行つたでしよう。相当あなたは調べておるはずだと思う。あなたは、吉岡船長がどういう日取りで乗らなかつたか、吉岡船長が、はつきり自分は乗らないと言つて拒絶している事実は見のがすことができませんよ。これは見のがすことができない。自分は乗船をしたくないと言つて拒否しているのです。  それからあなたは、さつき杉田という船長について何か言つていましたが、とにかくノーマルな状態においては、吉岡船長と杉田船長とが洞爺丸を運転している船長でしよう。そのところを私ははつきりしてもらいたい。本来近藤船長はその船に乗るべき筋合いの人ではない。貨物が第一か人が第一か、どちらが第一か。その近藤船長というのは、髪はたまたま貨物に乗る程度の船長だということを私は聞いている。その近藤船長のふだんの地位といいますか、その船に対する就航状態――どのくらいこの人が乗つているのか、この程度をお聞きしたい。
  104. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 はつきりさせるために関連質問……。  一体洞爺丸の船長というのは、普通の場合にはだれとだれの係か。それが近藤という船長になつたのは、いつもそうやつておるのか。たとえば三人がかわりばんこに就航しておるのか、あるいは吉岡、杉田という者に事故があつたり何かのことがあつた場合に予備的に近藤さんが洞爺丸に乗るようになつておるのか、そういう本番片番の勤務状況及び今回洞爺丸に近藤氏が乗つたのは、吉岡、杉田にどういう事情があつて近藤という船長にまわつて来たのか。そういうことをあなたはお調べだろうと思うから、洞爺丸という船を中心として、その船長はだれとだれが係であつたか、ちようどその順番がルールとして近藤氏のところへ来るようなことがあるのかどうか、その辺を明らかにしてもらわないと、森君の質問がはつきりせぬ。
  105. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 勤務割によりますれば、予備船長も本船といいますか、洞爺丸に乗る順番が来ることになつておりますけれども、当日なぜ近藤船長が洞爺丸の船長として乗り組んだかという勤務割の資料は持つておりませんので、資料をもつて後ほどお答えいたします。
  106. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、洞爺丸には三人の船長がかわりばんこに乗るようになつていたのですか。通常の場合においては三人がかわりばんこになるのか。
  107. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 その点資料を今ここに持ち合せておりませんが、参議院の運輸委員会の方に営業局長が行つて持つておりますから、何でしたらお許しを得て資料を持つて来てお答えいたします。
  108. 森三樹二

    ○森(三)委員 今の問題はあとにいたしまして、そこで、私は井本さんにお尋ねしたいが、私ども常識からして汽車の場合を考える。汽車が駅に着いて、そうして何分か停車して発車する。あれは機関士が自主的に出発しておるのではない。あれは駅長なり助役なりがちやんと合図の信号をして車掌にそれを伝える。そうすると車掌が発車の信号を鳴らす、あるいは駅長がベルをリリーンと押して、機関士は発車しておる。私どもの常識としては、船長はつまり出帆命令を下されて、それに基いて出帆するのであつて、船長みずからが、おれはこれから行くんだということは考えられない。もつともあなたの報告には、船長が出帆するについて上部の者と相談をしたかどうかという責任だと言つておりますが、そうなれば、死んだ船長よりは、この船長に対して出帆命令をした者の方が賛仰があるということはだれでもわかる。しかも当時船長が船の上におつて気象その他の情報をつかむとか、あるいけ現在の海上の状況を調べるということは、いわゆる出航に関するところの職務を遂行しておる管理局あるいは高見管理局長というような、つまり出帆命令を下す専門の地位の者があるはず下す。そういうところへ、あなた方の捜査の焦点が向けられないで、その出帆そのものに対する第一の責任を船長に向けておるということは、捜査上非常に大きな誤謬を犯すものではないかと思う。これはもつと御反省にならないと、現地との連絡が非常に悪いと思う。あなたは函館へ行かれたかどうかは知りませんが、函館では検事が五、六名寄つてやつておられるようでありますが、私はどうも問題の核心をお突きになつていらつしやらないように思います。この点いかがですか。
  109. 井本台吉

    ○井本説明員 何回も申し上げます通り事件を立てまする際には、予断を抱かない、これが原則でございます。従つて、ある場合には船長が第一の責任者であるかもしれませんが、場合によつては船長に命令した幹部の者が責任者であるかもしれません。それらの点につきましては、あらゆる観点から検討しておるのでありまして、特に船長だけにぜひとも責任を負わせなければならぬというような予断を持つて調べておるのでありません。厳正公平にやつております。
  110. 森三樹二

    ○森(三)委員 そういうことなら話はわかる。ところがさつきあなたの御報告では、船長を第一の容疑者としてやつていると、あなた明らかに言つたではありませんか。今は大分気持が公平になつて来ましたが、さつき最初のあなたのスタートは、一方的に船長の方にばかり責任を押しつけてしまつた。そうして生きている方の人々に対する責任というものは、まつたく第二、第三のような考えを持つておられたと思うのであつて、私は非常に遺憾に思うのです。しかも先ほど私が言つたように、これは本来の船長でないのだ、本来の船長でないものを乗せて、どうして正船長の吉岡という、天皇の行幸のとき運転しておる船長が要らなかつたかということ、その次にまた杉田とい船長もどうして乗らなかつたというところに大きな関連性があるのです。これは調べればわかりますが、吉岡船長はその目運転しなければならない船長であつたのです。新聞に出ています。その新聞も見せます。こういうしけのときに乗つてもとてもだめだといつて、自分が拒否しているのです。第二船長も乗つていない。そこで貨物の船長をひつぱつて来て、しやにむに命令だといつて乗せてしまつている。あなたはこれをメモしておいて、函館の地検の方に至急連絡して、この問題を調べてもらいたいと私は思うのです。死んだ人間に罪を着せるような調べ方を今しているが、これは大きな誤謬をあなた方は犯していると私は思う。この点についてどうお考えになりますか。
  111. 井本台吉

    ○井本説明員 何回も申し上げております通り、私は別に予断を持つているわけではないのでありまして、先ほど少しく言葉が足りませんで、何か船長の責任だけを追究しておるかのような印象を与えました点は、恐縮に存ずる次第であります。しかしながら大体かような事件調査いたします際には、船が沈みますれば、まず最初に沈んだ船に乗つておる船長に過失があるかないかということを目標に調べます。その次に、その船長がさような荒天の際に出港したことについて命令を受けたかどうか、出れば必ず覆没するような状況のもとに出港させた上級者があつたかなかつたかというようなこと、あれば、もちろん過失としてその責任者となることは当然であります。従つて、さような点につきましては、予断を抱かずに広い立場から厳正公平にやつて行きたいと私は考えておるのであります。なお現地から詳しい報告がまだ参つておりませんが、おそらく御指摘の点は現地の検察庁でも十分気をつけて調べておるとは思いますが、念のためにお話の趣旨は向うへ伝えたいと思つております。
  112. 森三樹二

    ○森(三)委員 鵜沢さんが来られたのですが、洞爺丸の本来の正船長、副船長はたれだれであるか、それから当日の運悪かつた近藤船長という人はふだんどういうことをしておる人であつたか、一体何日くらい前に船に乗つたことがあるのか、そのことをひとつ聞いておきたい。
  113. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 今参議院の委員会の方に、相当の局長をこちらに来て御説明するようにお願いしたのですが、たまたま今御説明中でできないので、当日だけの勤務割を今聞いて参りました。それによると本番の船長の吉岡さんは当日は明け番です。それから片番の方の杉田船長は二十五日から三十七日まで休暇で休んでおられる、それで予備船長の近藤船長が洞爺丸に勤務した、こういうことだけが今わかりましたから御説明申し上げます。
  114. 森三樹二

    ○森(三)委員 私がいろいろ新聞紙上、その他国鉄の知つている人から聞いたところでは、あなたの御答弁とちよつと違ついると思います。そのときは本来ならば吉岡さんの運転しなければならぬときだというように私は聞いております。これは逆かと思いますが、追つてまたお調べ願いたいと思います。ただ近藤船長は洞爺丸に一体それ以前何回くらい乗つている人なのか。客船に船長として昨年あるいは、ことしになつて乗つた経験があるのかどうか、そういうような点もおわかりだつたらひとつ御答弁願いたいと思います。
  115. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 私担当の者ではないので正確にはわかつておりませんけれども、近藤船長は技倆優秀で、国鉄の方の船長の格づけではA、B、C、D、Eまでのクラスがあつて、そのAクラスに該当する船長だというふうに聞いております。それから何回乗つたかということにつきましては、直接そういう方を担当しておりませんので、ここに今資料がございませんから、後刻直接なり何かで御説明したい、かように考えております。
  116. 山内公猷

    ○山内説明員 敷衍いたしまして私からもちよつと御説明申し上げたいと思います。予備船長といいますと、何か通常陸の関係で駅長よりも下とお考えになつておるかもしれないのでありますが、一般的に船の船長といたしましては、たとえばあるラインの旅客船の船長というものは相当数ございまして、その中で予備船長といいましてどの船にも乗らせるという船長は、一応どの船の経験をも経て来ました船長がなるのが通例でございまして、この点鉄道とかあるいは陸の方の関係と違います。ですから、会社によりましては、一つのラインの船の中に船長団というものがありまして、そういうところでその団長として全部を統べるのは大体予備船長というようなことになつておりますので、この点あるいはこの問題と直接関係ないわけでございますが、予備船長というのは一応そういうふうに船の方では運用いたしてりおます。
  117. 森三樹二

    ○森(三)委員 何か苦しいような、巧妙のような御答弁をなすつていらつしやいますが、私はそういう答弁にはとうてい満足いたしません。そういうりつぱな船長がいるならば、天皇が北海道へ行幸されたときに近藤船長が運転していると私は思うのです。これはわれわれの経験からいいましても、機関車の運転でもなんでも、行幸のときには一番優秀な者を乗せるのです。これはあなた方いかに答弁されても、私はそれは納得できない。しかしこれはまた後の問題としまして、とにかく当日いかなる理由があろうとも正船長二人が乗らなかつたというこの事実、ここに大きな問題がある。それはあなた十としてはこの際何とかかんとか言つてこの場を治めなければならぬからそういう御答弁をなさるのは無理からぬことと思いますが、私どもはそこには暴風雨と、二人の船長が乗らなくて、曲物の船長が船へ乗つて来たという点において深い深い因果関係あることは明らかです。ここへ検察当局は捜査の陣を向けなければならない、私はかように考える。井本さんはこの点ひとつ函館の地検の方へ至急に連絡をとつて、出港を命令して、近藤船長に白羽の矢を立つた理由を究明していただけば、おのずから本件の真相がわかると私は思う。  時間もないようですから、大体結論に入りますが、ちよつと参考までに開いておきます。汽車の場合も船の場合も大差ないと思うのですが、汽車を発車させるのはたれがするか。私らの常識から考えてみますと、駅長なり、駅のその当時の上位にある人が決定すると思うのです。機関士が自分の意思不出発するのではないと私は思うが、どうですか。
  118. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 汽車の場合と船の場合は異なりまして、船の場合には、船員法第九条で船長が出航の権限を持つておる、こういうふうに法律は明確にたつております。
  119. 森三樹二

    ○森(三)委員 先ほど青函連絡船の職制の問題を、岡田委員からも盛んに質疑されておりましたが、とにかくその出航の命令の権限というものはあくまでも上部の者にあるのだ、私はこのように考えております。時間がありませんから、また追つてこの点はひとつ御質疑をしたいと思います。  最後に一点、損害賠償の問題ですが、さつき弔慰金とか見舞金で一時、五十万円、あるいは十八歳未満の者は三十万円を支給して、それで打切るというようなお話がありましたが、これをたとえば交付する場合には、これはよく桜木町の国電の事件でも問題がありましたが、ある者は五万円、ある者は十万円、最後に裁判か何かして争つた者は九十何万円かもらつたというような例も開いておるのですが、今度の弔慰金を渡すについては、今後の損害賠償の請求権を放棄した形において渡すものであるか。その請求権放棄の判を押さなければ金をやらないということもよく例があつたわけなんです。そういう形でとにかくこの金五十万円と書いた領収書に判を押せ、そうしてこれをもつて今後損害賠償金を請求しないというようなことをよくやるのです。そういうようなことは遺族に対して、ペテン式と言いますと語弊がありますが、将来の損害賠償を請求する権利を放棄さすようになるのですが、そういう点はいかがですか、やるのですかやらないのですか。
  120. 山内公猷

    ○山内説明員 ただいまの点につきましては、閣議了解をとりましたものにも明らかにしておるのでございまして、その第三項に「本件海難事故が日本国有鉄道の有責と確定した場合には、本弔慰金は日本国有鉄道が支払う損害賠償金の全部又は一部に充当するものとする。」とありまして、これは当然のことを書いただけでございますけれども、その方の法関係政府機関ともいろいろ打合せたわけでございまして、名前が何であつても社会上相当の金額である場合には、これが損害賠償金の一部と見られるということでございますが、誤解を避けるために明らかにしたわけでございます。有責の場合にはさらにそれぞれまた国鉄の方から、それより多く払わねばならない人につきましては払うことになると政府は解釈いたしております。
  121. 森三樹二

    ○森(三)委員 最後にもう一点だけ……。非常にひどいしけでありまして、中にはこれではもうとても乗つて行けないから自分はおりるということを申して、おろしてくれと申し出た者も相当あつた。函館から昔代議士に出ました大島寅吉という人がありますが、この人がこれではとてもあぶないからというので、おろしてくれということを言つた。ところが桟橋から橋をとつてしまつておりることができない。頼んで頼んで下の方から引上げておろしてもらつたということを言つております。おりた者も十二、三人あるはずだと思いますが、その点いかがですか、おりた人の数は……。
  122. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 正確にはわかつておりませんですけれども、私たちの方といたしましては、乗船名薄に載つている方で、御遭難しておるのではなかろうかというので、留守宅あてに電報を差上げました。そうして正確にではないのですけれども、今日までわかつたのは約三十名ほど、乗船名籍に記入されていて、おりた方々がおられます。  それからタラップを上げてしまつた、こういう御質問でありますけれども、それは一つははずしておりましたけれども、あとは全部……(「二つしかないんだよ」と呼ぶ者あり)いえ、一等、二等、三等が二つございまして、(「おりたくてもおろさなかつた」と呼ぶ者あり)そこの点は、タラツプを実は上げようとしても電気が来なくて上げられなかつた。それから自動的に手の力で上げるやつは上つておるし、そうでないやつはついておつた、こういう事実でございます。
  123. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 関連して……。これは刑事局長にお願いしますが、そういうふうにおりたいと言つておらされなかつたような者、これは相当の刑事問題だと思うのだが、おりたいのにおろされないために死んでしまつたということは犯罪の疑いが濃厚なんだ。これをお調べになつているかなつていないかということです。おりたいおりたいと言うても、何だかんだ言うておろさないでしまつたという事実があるかないか。それもお調べになつたかならぬか、お調べにならぬとすれば、ついでに今後ひとつ今の電話と一緒に聞きたいが、どうですか。
  124. 井本台吉

    ○井本説明員 もちろん調べておると思いますけれども、私まだ正確な報告を受けておりません。従つて御趣旨に沿うように現地に連絡いたしたいと存じます。
  125. 森三樹二

    ○森(三)委員 私もうこれで終りますが、井本刑事局長に、非常に被害者が多いし、これに対しましては輿論も大きいのです。私はあなたがほんとうに公平な見地から徹底的に究明せられまして、この刑事上の責任、法律上の責任を明確にされることを心から希望いたしまして、私の質疑を終ります。
  126. 小林錡

    小林委員長 中村高一君。
  127. 中村高一

    中村(高)委員 今の刑事上の責任について、森君からも要求がありましたが、われわれも遭難者はもちろんのこと、遺族の人も早くこの結論を出してもらつて、過失があつたのかなかつたのか、これがわからないとなかなか遺族も納得できないというのが、私はほんとうの気持だと思うのです。今刑事局長の方は急いでやると言うのでありますが、もう一つ海難審判所の方でも同じことを調べておるはずでありますが、先日何かの新聞に今年一ぱいくらいは結論が出そうもないというようなことがあつたと思うのですが、運輸省の方では何か報告を受けておると思うのですが、海難審判所の方は一体どういうふうに進行しておるのでありましようか。
  128. 山内公猷

    ○山内説明員 海難審判所におきましても、できるだけ結論を急ぎたいということで、実は洞爺丸外四隻の船の海難の原因を調べなければならないわけでありますが、ほかの件よりも洞爺丸を切り離してできるだけ早く結論を出したいということで、現在努力しております。新聞にはいろいろ報道されておりますが、まだ理事所の方で調査中でございまして、いつになるかという的確な報告はまだ受けておりません。
  129. 中村高一

    中村(高)委員 海難審判所の方の権限についてちよつとお聞きしておきたいのでありますが、これは独立の裁判所に準ずるような機関のようでもありますが、一体この海難審判所の理事所というものは多分検察庁のような役目をするものであつて、審判所は裁判所のような審理をする結果になるのでしようが、これは一体直接の指揮監督はどこがやるのですか。
  130. 山内公猷

    ○山内説明員 海難審判所は、官制から申しますと、運輸省の付属機関になつておりますが、司法的業務を取扱うために、業務においては独立してやつております。
  131. 中村高一

    中村(高)委員 これも先日新聞で問題になつたようでありますが、函館の海難審判所の理事所長率坂という人が中間発表をやつておりますが、あれによると、近藤船長にも過失があるし、第一あの貨車が入る口、採炭品あるいは船員の非常口など、みんなふたが不完全だつたというようなことを発表して、いかにも過失があるような意味の中間発表を談話の形式でしたのに、何か武内欧米局長が三回とか電話をかけて、調査の途中そんな過失だなんということを発表してはいかぬというような苦情を言つておるそうですが、外務省が海難審判庁に対して一体そんなことをやる権限がありますか、どうですか、はつきりしていただきたいと思います。
  132. 山内公猷

    ○山内説明員 実は海難審判庁が中間発表をしたというお話でございますが、理事所の性格といたしまして、十分調査しないで中間発表ということはないのじやないか、正式に役所の方にもそういう報告は参つておりません。それで外務省関係も初めてお聞きするわけで、外務省お話については私全然伺つておらないのであります。
  133. 中村高一

    中村(高)委員 それは官房長としてとんでもないことです。たいへん問題になつて、そうして高等海難審判庁の方からもいろいろ発表しておるし、外務省からも発表をしておるし、何かあまり強硬な意見を言つたのじやないかということもその当時出ておりますが、はなはだわれわれが理解できないのは、運輸省の方から途中であまり意見は発表するなとかなんとか言うのならいいのですけれども、全然関係のない外務省からそういうことを言つて、しかもその当時は伝えるところによると、ビキニの損害の請求をしておるのに、これでどうもアメリカ人を大分殺してしまつたのでうまく行かぬといけないから伏せておけといつた外務省からの電話だと思いますが、あなたはそういうことを知らぬはずはないと思うのです。そういうことを全然知らないのですか。
  134. 山内公猷

    ○山内説明員 実は私知らないことは事実でございまして、それで海難審判庁にそういう話を聞いたことがあるのでございますが、それは新聞記者に何か話した点が出たんじやないか、所としてそういう中間発表を公式にやることはあり得ないというふうに私聞いたわけであります。
  135. 中村高一

    中村(高)委員 正式に中間発表なんてそんなものをぼくは問題にしておるのではない。それは談話かもしれない、雑談かもしれない、そんなことは何でもない。外務省から海難審判庁に三度も電話をかけていけないいけないと言う権限があるかどうかということを私は聞いている。外務省はそんなことを言う資格がございますか。
  136. 山内公猷

    ○山内説明員 そういう権限の問題ならば、外務省がそういうことを有権的に発表をさしとめるということは外務省だけではないのじやないかと思つております。
  137. 中村高一

    中村(高)委員 今海難審判庁と司法裁判所の方の検察庁、両方とにかく同じような調べをしておるのですが、多分海難審判庁の方でも調べて行けばだれの過失であつたか、その当時の気象がどうだつたかというようなことで結局同じようなものになつて行くと思うのです。しかしどつちも独立の機関なんですから、結果においては片方は国鉄の方に責任があり、また過失もあつたというふうに出るかもしれない。片方はまた過失がないというふうに出るかもしれません。二つ違つた場合が現われることもあり得ますか。どちらでもいいからお答え願います。
  138. 山内公猷

    ○山内説明員 理論的には、たとえば海難審判庁が、無責であるという結論を出しました場合に刑事裁判になりますか、あるいは民事裁判になりますか、一船司法におきまして争いまして、その結果有責であるということは法律的にもあり得ますが、従来の仕事のやり方といたしまして、特に海難審判において司法的な独立機関を設けてやつておりますことは、海上のそういう事故は非常に技術的な問題が多いためにまかされておるわけでございまして、海難審判庁及び検察庁といたしましても、従来十分連絡をとつてやつておるのでございまして、従来そういう海難審判庁が無責であり、検察庁が有責であるという具体的な判例は、私寡聞にしてまだ聞いておらないわけであります。一応独立の機関であるということは法律的にありますので、法律的には可能な場合も起り得るということは考えられますが、実際上はそういうことのないように、十分両者の間に連絡をとつてやつておるというのが実情でございます。
  139. 中村高一

    中村(高)委員 その両方とも独立であるから別のものが出る場合もあり得るのです。これはどつちも監督官庁でも何でもないのですから出てもいいし、出る場合も、これはおのおの違つた官庁であり違つた組織で調べるのですから、あり得るだろうと思うのですが、今あなたの言うことで言うと、どうも海難の方は、審判庁の方が技術的に相当専門的なのですから、それの方の意見を聞いて、それからあと司法裁判所の方がやるのではないかと思われるのです。井本刑事局長の話によるとあなたの方は、場合によると近いうちにやつてしまいそうである、そうするとあとから専門的なものが出て来て、司法裁判所の方は先に出るというような場合もあるかもしれないのです。刑事局長は誠意を示してそういうことを言われたのだろうと思うのですが、実際は専門的な海難審判庁の方に一応まかせて、その議論を聞いてから裁判所の方をやるというような、そんな順序になりそうに思うのですがどうですか。
  140. 井本台吉

    ○井本説明員 まことに古いことで恐縮なのですが、明治二十六年に司、民刑甲第六七号海難審判先行に関する通牒が出ておりまして、これが何回もその後に確認されまして、最近では昭和二十三年の七月八日に当時の法務庁の検務局長からやはり前の海難審判先行に関する申合せ通牒が出ております。従つて原則としては海難審判の方を先行にするということになつておりますが、あくまでも原則でありまして、前の明治二十六年当時から、証憑の非常に明らかなものについては、司法裁判の方はどんどんやつてもよろしいということになつておるのでございます。従つて私どもの方が事情を非常にはつきりすれば、その方が先行するということもないとはいえないのであります。
  141. 中村高一

    中村(高)委員 そうすると今度の場合はなかなか問題が大きいから、あなたの方はあとになるという結論になりそうですね。先になるですか。
  142. 井本台吉

    ○井本説明員 とにかく証拠は、生きている人が非常に多いものですから、何日もたつてしまいますと調べができないので、なまなましいうちに私ども早く証拠を集めたいということで、関係者と協力して証拠を集めておるということになるわけでございます。
  143. 中村高一

    中村(高)委員 それでは私希望だけ申し上げておしまいにします。どうも外務省や何かがいろいろ外交関係などを考慮して、裁判所の関係あるいは海難審判庁の方に圧力を加えておるように見えるのでありまするが、どうかそういうことに関係なしに、両者ともひとつ審理を促進して、司法裁判所の方が先になつてもいいということなのですから、何とかして早く結論を出して、そうして遺族に対しても安心させるということも私は政治の重要なことだと思いまするので、どうかそういうことについては圧力などに対してははねのけて、ひとつ審理を促進するようにしていただきたいという希望を申し上げておきます。
  144. 小林錡

    小林委員長 佐瀬君。
  145. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 私はもつばら法律の観点から若干御質問を申し上げておきたいのです。大体事後処置としましては海難審判庁による行政上の責任問題、また検察庁による刑事上の責任問題及び民事上の賠償責任問題、この三つに法律論としてはわけて考えられるわけであります。井本刑事局長の話によれば、刑事処分の方は捜査が進行中である。私どもは一日も早く完結することを望むわけであります。海難審判庁は船員の懲戒処分を目標として、技術的に過失ありやいなや、あわせて将来の航海上の安全保持の対策を検討するのが目的であります。検察庁の捜査は従業員の刑事過失があつたかどうか、従つて処分に値するかどうかを決定される。おのずから目的が違うのでありますから、それぞれの立場において迅速に事を運ばれんことを希望します。  ただ井本刑事局長の発言について先ほど大分同僚諸君の間から批判があつたようでありますが、これは申すまでもなく業務上過失については船長をいわば本犯として、他の従業員がこの共犯であるかどうかというような立論の仕方であつたために、そういう誤解やら批判が出たと思うのであります。言うまでもなく過失犯には共同正犯はないという大審院の判例でもあり、理論的にもそれぞれの職務規範なり、あるいは職制等なりから見て幹部、局長等のあるいは運航指令等に対する過失というような問題も、当然別個の責任者として捜査の線上にこれは登場すべきものである、こう考えますから、その方面にも広くひとつ捜査を進めていただきたいということを希望しておきます。  それから民事賠償責任の問題でありますが、山内官房長のお話によると、一人当り五十万円という弔慰金をもつてさしあたり措置して、将来なお有責事故であるか、無責事故であるかによつて賠償の問題をきめたいという御意見のようでありましたが、そこでその賠償ということは一体準拠法は何によつておやりになるつもりであるか、この方針をひとつお聞きしたい。
  146. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 御説明申し上げます。有責ときまつた場合においては、国有鉄道は普通の民事上の損害賠償をお払いする。権利者の方から債務不履行で参りますか、あるいは七百九条、十条、十一条の不法行為で来るかわかりませんけれども、いずれにいたしましても民事上の損害賠償をお払いいたします。こういうことで、準拠法は民法及び商法に従つてお払いいたします。
  147. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 昭和二十二年に国家賠償法という法案われわれ国会で制定いたしたのでありますが、この場合に国家賠償法は適用されるものであるかどうか、この点に対する法務当局の御意見を伺いたい。
  148. 平賀健太

    ○平賀説明員 国家賠償法は公権力の行使に当る国の公務員の不法行為によります国の損害賠償責任に関する法律でありますので、本件の場合は国鉄というやはり一種の団体、法人ではありますけれども、国の公権力の行使をやつておるわけではないのでございます。先ほど鵜沢課長から説明されましたように、民法あるいは商法の規定によつて賠償責任を生ずるということになるものだと考えます。
  149. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 それは国家賠償法第一条の規定するところである。国家賠償法はなお第三条を設けまして河川、道路その他公の営造物の管理に関する瑕疵に基く損害についてはなお国家、公共団体が損害賠償の責めに任ずるという規定を設けてあるのですが、第二条に対してはどういう御見解か、承りたい。
  150. 平賀健太

    ○平賀説明員 国家賠償法は、一条の関係におきましてもやはり国または公共団体の責任に関する規定でございまして、公の営造物の設置法による損害賠償法による責任なのであります。日本国有鉄道の所有しておりました船舶、これはここにいう公の営造物ということにはならないのではないかというふうに考えております。
  151. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 国鉄は運輸省からいわゆるパブリック・コーポレーシヨンとして新体制をとられたのですが、それは一体いつでしたか。
  152. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 昭和二十四年の六月一日でございます。
  153. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 今の国家賠償法はそれより二年前、昭和二十二年に制定したものであります。しかもその国家賠償法の趣旨は、憲法第十七条に基いてひとり国家公権力に対する過失上の責任に対する賠償を認めたばかりでなく、今も申し上げましたように公の営造物、鉄道なんかもそれに入る、電信、電話も入るわけであります。そういう公権力の発動以外のいわば私的な公共活動に伴う損害についても賠償を認めよう、憲法十七条の精神をそこに生かして規定されたものであります。従つて当時は当然そういう場合をも予定して、鉄道等の公の営造物の管理上の瑕疵に対しては国家が当然責任を負わなければならぬという趣旨の規定であると私どもは了承しておるのでありますが、この点について法務省並びに国鉄の御見解を承りたい。
  154. 平賀健太

    ○平賀説明員 憲法十七条あるいは国家賠償法ができる以前におきましては、公権力の行使に当る国の公務員あるいは国の維持管理しておりますところの公の営造物の瑕疵による損害については、従来は国は賠償責任がないということになつておつたのであります。それを救済いたしますために憲法十七条ができました関係国家賠償法も制定されたと思うのでございますが、以前から、まだ日本国有鉄道になりません前でも、国が運輸事業を経営しております当時におきましても、本件はやはり公権力の行使に国が当つておるわけではないので、一般の私企業と同一の資格において国が運輸事業を営んでおるものであるということでもつて民法の規定が適用されておつたわけであります。でありますから、交通事故による損害賠償につきましては、民事訴訟によつて民法の規定に基きまして損害賠償を請求いたすということになるわけであります。でありますから、機関手に過失があつたというような場合でありますと、民法の七百十五条によりまして、国が損害賠償の責任を買いますし、それからその他の施設の瑕疵ということでありますれば、民法七百十七条の規定によりまして、国が損害賠償責任を負つておつたわけであります。これは以前と少しもかわるところはない。従いまして国家賠償法がない当時から、すでに民法の規定によつて国が鉄道経営をしております当時からやはり責任を負つておつたわけであります。国家賠償法ができまして、それからさらに日本国有鉄道というものができました後におきましても、この原則はかわらないというふうに私ども解釈しております。
  155. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 国有鉄道といたしましても今民事局の平賀参事官がお答えしたと同じ考えを持つております。なおつけ足しますれば、私どもは国家賠償法の二条は、道路とか、河川というものを国民が利用する法律関係がいかん。それから一般の旅客が日本国有鉄道の汽車なりあるいは船舶を利用する法律関係はいかん。私どもの考えておりますのは、前の方の国民が河川、道路、こういうものを利用する関係は、公法上の利用関係である。船舶なり汽車を利用される関係は商法上の運送行為、運送契約だ、従いまして私法上の関係でありますので、もしも船舶において瑕疵があるといたしますれば、今平賀参事官が言われます民法七百十七条で責任を負わなければならない。かように考えております。
  156. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 これは行政法のいろはなのでありますけれども、公の営造物の利用というものはみんな私法上の契約である、こういう解釈が通説であります。かりにこれが公法上の契約であつても、その責任関係は権力的なものとは別に区別して処理すべきであるということになつております。そこで従来民法や商法で国鉄関係の運送上の事故等は規律されておつたわけでありますが、国家賠償法で認めたのはそういう中間的なあいまいなものをも一切国家賠償責任の範疇に取上げた。ことに賠償問題で常に問題になるのは過失等に関する立証責任の問題、これが公の営造物では被害者の側からは非常に困難である。そこでそういう立証責任の転嫁も考え国家賠償法でそういう場合も広く国が賠償するというような精神のもとにこれは立法されたものであると私は考えております。現にわれわれがそういう趣旨で立法したものであります。でありますからこれに関する解釈をあなた方と議論をしておつてもきりがありませんから、もう一ぺんそういう趣旨のものであるということで、なお当局に御検討を願いたいと思います。  ついでに伺つておきますが、先般新聞によると、内閣の方では国鉄が責任を負うべきであつて、政府として、言いかえれば国として賠償責任はないのだというようなことをスポークスマンが言われたとかいうことを見ましたけれども、それは閣議の決定でそうなつておるのかどうか、法務当局でもし知つておられれば、その点の説明をお聞きしたい。
  157. 平賀健太

    ○平賀説明員 私その点全然承知しておりません。
  158. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 先ほども同僚から笠間のありました通り、私どもは単純な事後の金銭的慰藉や賠償で、遭難者やその遺族が救われるとは思つておりません。しかしながら次善の策としてはぜひ今回の洞爺丸においてもこの点を徹底して、賠償により幾分でも慰藉の道を講じていただきたい、こう考えて、特にその迅速な処置をお願いするわけであります。  この機会にもう一つ要望しておきたいのは、私どもは常に文明の利器でふる交通機関による災害が年々世界的に増加しており、この災害予防の研究対策はもちろん必要であるけれども、なおその賠償、損害補償というものについても、時代に合つた特別な処置をしなければならぬ、こういう考えを持つておりますが、先般運輸省において交通事故災害保険法という法案をつくつたらどうかというので、省議の結果それが取上げられた。しかるに大蔵省の反対か何かでそれがうやむやになつたということを聞いておりますが、現在この法案はどういう状態にあるか、運輸省の責任者からお答えを求めたいと思います。
  159. 山内公猷

    ○山内説明員 現在運輸省で考えておりますのは、自動車賠償保険法と申しますか、一般旅客自動車でございますが、人的損害に対する賠償の特別の補償をするために特別法をつくりたいという意図で現在立案を急いでおります。なぜ自動車だけを取上げたかと申しますと、御存じのように一般交通業者はある程度賠償能力がありますが、ハイヤー、タクシーというような事業になりますと、非常に資本力がありませんために、人命損傷というような事故を起しましても、賠償が適切に行われないという状態でありますので、何らか国家的な助成もして賠償のための保険をつくりたいということで、現在立案中であります。
  160. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 もう一点、これはさかのぼりますが、かりに国鉄当局が民法、商法に基いた賠償責任を負うべきである、従つて有責の場合だけ賠償責任があるという見解をとられたといたしましても、今回の場合においては、民法の責任の解釈上、もう一歩前進して、いわゆる船あるいは運行上の瑕疵に対する賠償責任というところまで拡大して、弁償されるお考えになることが必要ではないかと思うのであります。理論的には民法第七百十七条以下の工作物の過失とかいう以外に、あるいは竹木、あるいは動物の管理上の瑕疵についても責任を負うという規定がありますので、過失責任のほかに瑕疵責任――ことに本件のような場合には船の構造上の欠陥とか、そういう物についての瑕疵以外に運航命令とか、あるいは出港命令とか、あるいは船の操縦、操作における管理上の瑕疵というものが相当あるやに想定されます。こういう場合については民法第七百十七条以下の瑕疵――過失でなくして、瑕疵責任というものによつて、賠償責任というものを認むべきではないか。現にフランスの判例等では、それが過失責任を克服して瑕疵責任というものが無過失賠償責任の理論として判例上認められております。どうか国鉄当局ももし民法に基く責任だと解釈するならば、そこまでひとつ運用の上において進歩していただきたいということを最後に希望しまして質問を終ります。
  161. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私もこれは一つの希望みたいなものになりますが、今の国家賠償法第二条の解釈、これは少し法務省としても、あるいは国有鉄道、運輸省の方々も御研究になられたい。それは一体運輸省と国有鉄道の管理関係、監督関係というものが一体どうなつているか、これははなはだ明らかじやない、そこからも来るのであります。それからこの国家賠償法を見ますと、第一条には「国又は公共団体の公権力の行使」とはつきり書いてありますが、第二条にはそういうことは書いてない。「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理」、そこで国有鉄道の船というようなものが、一体公の営造物であるのかないのか、これは何となれば、国有鉄道は財政的にほとんど国の予算と密接なる関係を持つておる。そうしてそこに財政法その他において普通の営造物ならざる幾多の特徴があるのです。私ども今ことごとくその論拠をここに調べて来ておりませんが、他の私企業の船というものと違うと思う。財政的な方面から見ても、あるいは制度的な方面から見ても日本国有鉄道というものは、これは特殊なものであつていことは、この国家賠償法の第二条の少くとも「公の営造物」、これに当てはまる。そうして「公の営造物の設置又は管理」の責任はどこまで行くのか。運輸省は全然関係がないのかあるのか、そういうことにも関係があると思うのであります。それでありますから、私どもこの国有鉄道のような国営とほとんど密接、不可分にあるこういうものの性質というものは、やはり立法の精神にのつとつて考察しなければなりませんが、先ほどから議論がありますように、これはよほど御考慮になつて解釈を下していただかぬと、今後もあることなのです。その意味において第一条と第二条と相当文句の使いわけがあるところから法律の精神というものがそこにあるのではないか。あなた方の御解釈だと国有鉄道の鉄道あるいは船舶そういうものは公の営造物じやないという御解釈なんだが、そういう解釈で万般のその他の法律関係が説明できることになるのだろうかどうか。もし今御答弁ができましたら御答弁していただきたいし、何なら御研究の結果を御発表していただきたい。
  162. 平賀健太

    ○平賀説明員 国家賠償法の第三条に関しましては、先ほど佐瀬委員あるいは猪俣委員のおつしやるような解釈も十分考え得ると思うのでございますが、私どもといたしましては先ほど申し上げましたように、第二条の関係には入らないのではないか、一般の私企業と同じに、普通の船会社が所有して運送事業に使つておる船舶なんかとやはり同じに見て行くべきじやないかというふうに考えている次第でございます。ただここで注意しなくてはならなは民法の七百十七条でありますが、先ほど佐瀬委員がおつしやいましたように、これは一種の無過失賠償責任だと思います。ただ本件の洞爺丸の事件については航海責任と商法の海上旅客運送に基く契約上の責任と両方考えられるわけであります。契約上の責任につきましては、商法の規定によりまして無過失の立証の責任が転換されておるわけで、無過失を運送人の方で証明しなければ賠償責任を免れることができないという関係になつております。今回の事件の賠償ということを考えます際におきましては、その商法の規定も十分考慮に入れて賠償の責任の有無、従つて賠償するかどうかということも十分考慮されて決定されるべきことだと考えております。でありますから、実際問題といたしましては、かりに国家賠償法の第二条の適用がないといたしましても、公正妥当な被害者の方々の十分納得の行く措置がとられるものと私ども考えておる次第でございます。
  163. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私ちよつとさつき聞き漏らしたのですが、国鉄の法務課長が見えておるので、これは法令上明るい人だから、ぜひこの点明らかにしておいてもらいたいと思うのですが、これはやはり先ほどの第四条の関係ですが、明文上指示するということになつております。そこで具体的な問題で伺つたわけですけれども、十月の三日に羊蹄丸に対して約三十メートルばかりの風速があるために青函当局としては出港すべきでないという命令書を出しているわけです。この命令書についてそういう事実があるのではないかと言つたら、あなたはそれについては知らない、こういうお話でしたが、そういう命令書というものは指示するという意味において当然有効である、かように考えますが、一般的にみて、また法的にみてこの点はどのように御解釈になるか伺いたい。
  164. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 今お尋ねがありました十月三日に羊蹄丸の出港をとめるという指示書があつたかどうかは、私担当が違いますので、現在まで聞いておりませんけれども、かりにそういう指示書がありますれば、それは有効だと思つております。
  165. 岡田春夫

    岡田(春)委員 有効だということになれば、これは指示の権限があるということに解釈して異議ありませんか。
  166. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 船舶所有者たる地位において日本国有鉄道総裁なり、それの下部機関である青函鉄道管理局長は、そういう指示の権限があると思つております。
  167. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これで様子がはつまりしたと思います。指示の権限があるということなんです。指示の命令書も有効なものであるということなんです。こういう点についても先ほどから私は再三言つておるように、そうしてまたあなたもあとで訂正されたように、船長自身の個人の問題だけではなくて、そういう法的な根拠に立つての捜査をぜひとも進めてもらうように重ねて強く要望いたしておきます。今の点はあとからつけ加えたのですが、特にこれは法律的に重要でありますので、一音だけ私申し上げておきます。
  168. 小林錡

    小林委員長 それでは日鋼室蘭事件について発言の通告がありますからこれを許します。なお戸田人権擁護局長、斎藤警察庁長官が出席しております。古屋貞雄君。
  169. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 最近労働争議が非常に頻繁に行われておりますが、労働争議の結果問題が紛糾して参りまして、刑事事件を引起すような状態になりました場合に、警察がこれに対処するというようなことは、これは申し上げるまでもないことなのでございますが、最近の情勢によりますと、中立であるべき警察がしばしば争議に弾圧を加えるような傾向、特に集団的な警察の出動がときに非常に行き過ぎをいたしまして、職権濫用であるとかあるいは陵虐罪を起す、こういうような傾向がありますが、私どもはこの争議というものは資本家と労働者の関係でございますのに、たまたまその副産物である警察と大衆との間に衝突が起きるということが今後行われますならば、これは国家の治安上の重大な問題であると考えまして、かような見地から本日長官にお尋ねいたしたいのでありますが、北海道室蘭の日鋼争議の問題につきまして、労働組合の諸君がピケを張る、労働組合の諸君のピケツテイングというものは労働組合法において認められた正当行為でございますから、これに対して直接警察官が暴力でこれらの人々のピケをこわそうというような行動に出ました場合、さようなことが行われました場合に、一体これをどちらで解決するかという問題が出て来るわけであります。私はこの問題について非常に心配をしておるものでございます。と申しますのは、集団的な出動が行われますならば、遂に指揮官の意図に反して部下の人々の行き過ぎがあり、その行き過ぎがあった場合に一体これをどう処置すべきかという問題が、現地における現実問題として大きな問題になって来る。あとから行き過ぎであったからこれを陵虐罪で処罰するとか、あるいは職権濫用であるから処罰するとかいう問題は、これはあとからの問題でございまして、現地における問題は遂に労働組合の正当行為に対して警察が暴行を加える、行き過ぎをするという場合は、必ずこれに対して大衆が反撃を加えるという挙に出ることは、従来しばしば行われた事実においても明らかでありまして、この点について私斎藤長官にお尋ねしたいのは、私どもはこの点を非常に心配をいたしまして、しばしば長官のところにもお願いに上ったような次第でございますが、まず第一に室蘭製鋼所における先月二十二日の半製品搬出作業に対する当時の六百名の警官出動というのは、どういう意図のもとに出動されたのであるかどうか、これは承ります前に前提を申し上げますけれども、室蘭製鋼所の争議というものは約百日になんなんとしておりますけれども、正々堂々として今日まで一つも暴力行為は行われずに、会社と労働組合との間に紳士的に非常になごやかに交渉が進められて参っておる。従いまして二十二日に半製品搬出についての作業につきましても、これに六百名の警察官が出動しなければならなかった理由はどこにあったか、この点を承りたいと思います。
  170. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 仰せの通り室蘭日鋼の労働争議につきましては、九月の初旬ごろまでは比較的に違法事件が少かったのでございます。ただ九月の初めに組合員に対する構内に入ることの禁止り仮処分が出まして以降、ぼつぼつ不法事件が起りつつあったのでございます。ことに一番大きな事件は、九月の十六日、十七日及び十九日の三日にわたりまして、製鋼所が製品を搬出しよりといたしました際に、仮処分によって禁止せられている区域に、労働組合の青年行動隊、ことに十九日には一般工員約二千二百名が入って参りまして、実力をもつて製品を積み込む作業を妨げ、また暴力事犯もあったのでございます。かように裁判所によって入ることを禁止しておる仮処分が出ており、また執達吏からはこれの確保について警察にも援助を要求せられておったのでありますが、今申しまするように十六、十七、十九日は、警察といたしましてはただ制止の勧告をいたすにとどまったのであります。ただ暴力事犯その他につきましては、後に検挙をする方針をとっておったのでございまするが、この状況におきましては、室蘭製鋼が正当に製品を積み出すということが不可能である、いかにもここには法律が守られていないという状況でありました。十九日にはそういう状況で汽船は一物も積み込むことなくして出航いたしたのでありますが、二十二日にさらに汽船が参りまして積込みをするということに相なったのであります。ただいま申しました前三日間の情勢にかんがみまして、法律秩序だけは維持されなければならないという見解から、警察官を動員をいたしまして、さような不法行為のないように備えた、かように報告を受けております。
  171. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 警察の方たちの方では、会社と労働組合との間に争議協定書というものがつくられていることを御存じだったかどうか。争議協定書の第二条の第三項には、労働争議をしておりまする間は、労働争議から除外した傭賃以外の組合員その他の者を会社が働かせるためには組合の了解を得なければならぬという労働争議協定書がございまして、この争議協定を破っておる、積出しをいたすために第三者を雇って来て積出し行為をいたしますから、それはいけないのだという契約に基く一つの要求をしておるわけです。従いまして、半製品を積み出すについてそういう人を雇う場合には、労働組合の了解がなければならないという契約ができておる。でありますから、それに基いて労働組合では、それは困るんだ、こういう申出をする、これは正当行為であって、契約の履行上の問題で一つも不法行為でないと思う。なお十六、十七、十九日の場合におきましても、物を持ち出すことに対する阻止にあらずして、仮処分の立入り禁止区域の場所に入るのではなくして、そういう人を雇って仕事をさせることがいけないということで、正々堂々とやりまして、何ら犯罪を犯すようなことはしておらないはずでございます。犯罪を犯すようなことがありましたならば、そのときに現行犯で警察がひっぱって行くが、いまだかつて一人も被疑者としてひつぱられたという事実はない。それにもかかわらず六百人もの警察官があそこに配置されたということはどうも納得行かない。この点はいかがでありましよう。
  172. 三輪良雄

    ○三輪説明員 争議協定書の問題でございますから、お許しを得まして便宜私からお答え申し上げますが、争議協定書の中に、争議中に新たに労務者を雇い入れるためには組合の了解がなければならないということがあるのは、私どもも承知いたしております。ただここに作業いたしておりました栗林組というものは、従来から常時会社の製品の荷づくり、出荷をやっておりましたもので、争議協定の違反はないものと思われます。しかし、またかりに争議協定に違反をしたと仮定いたしましても、民事上の問題として会社側の組合側に対する契約不履行の問題が起ると存ずるのでございますけれども、そういうことのために出荷をいたします埠頭は、仮処分では立入り禁止区域に入ってございます。十六日、十七日には青年行動隊を中心として数十名の者がはしけからこの埠頭に上りまして、非組合員である職制が動かすクレーンに乗るとか、あるいはそこに積んでありました半製品の上に乗るとかいうようなことで、実際には作業ができません。最後に十九日には、二千二百名に及ぶ組合員がそのしきりから全部埠頭に入っておるという状態でありまして、これはすでに仮処分で立入り禁止の区域でございますし、占有が執行吏に移っておりますので、それぞれ封印破毀あるいは建造物不法浸入あるいは威力業務妨害というような法律違反の容疑もございますが、その容疑につきましては現地の警察でただいま捜査を続行いたしておるようでございます。二十二日には、そういう事態が再び起りますことを避けます意味で、現地に警察官を持って行っておりましたが、その口には何ら組合側の実力行使もたく出荷を終ったのでございます。結果的にはそれで無事に出荷が終ったようでございますけれども、決して会社側に立つて出荷の援助をいたすというような趣旨で参つたわけではございません。
  173. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そういうような御答弁であれば私申し上げますが、二十三日には第二組合ができ上った。第二組合ができ上りますときには、警察は第二組合の会場を取巻いて、いろいろな人の出入りに対する厳重な警備をしておった事実、もう一つは、二人の第一組合の組合員を何らの現行犯でもないのに、どろぐつで人のうちに飛び込んで、二人の警察官がその二人の人間を逮捕して行った、こういう事実があるのであります。ただいまのような、二十二日には何事も、犯罪の事実もなく済まされ、二十三日には第二組合の発会式のまわりを囲むばかりでなく、警察のジープで第二組合員を運んで会場に連れて行った事実、それから、第一組合の山本並びに石山という組合員が、高橋という工員とその高橋のうちで雑談をしておりますときに、二人の警官がどろぐつで飛び込んでこの二人を逮捕して行った事実、こういう事実があったことはお認めになるかどうか、まずそれをお聞きしたい。
  174. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 この点につきましては、先般私にお話がございましたから特に調べておいたのでございますが、第一組合員であった高橋某が第二組合に加入するということで家を出た、ところが第一組合員の小林、石山某の二名がこれを難詰いたしまして、高橋のうちに同道し、そこで非常な脅迫を受けて、これを救ってもらいたいということを高橋の細君が警察に訴えて参りました。そこで警察は、ここに急迫した事態が起っておるのじやないかというのでかけつけたのであります。かけつけてみますと、高橋が二名の前に蒼白になって、相当急迫したような状態にあるというので、二名を逮捕いたしたのであります。そしてともに連行いたしたのでありますが、後に高橋某にいかなる暴行脅迫を受けておったかということを聞いたときに、実は話をしておったのだ、暴行脅迫を受けておったのじやない、こう言つたので、すぐそこで釈放したのでございますが、後に同人は、あの際ああ言わないとあとでまたどんなひどい目にあうかわからなかったので、後難をおそれてああ言いましたけれども、実はあのときは非常にたいへんな事態でありましたということをまた言っておるのであります。そのように、細君が警察にかけ込み、また本人もあとで確かにそういうことであって警察に救ってもらったと言っておる状況から考えますと、警察がその急迫した状況を排除いたしたのは当然であった、私はかように思つておるのであります。これが二十四日の事件であったと思います。  その前の二十三日の第二組合結成の状況でございますが、第二組合が結成されることに相なりまして、第一組合と第二組合の間が非常に感情が激化をいたしました。二十三日には第二組合の者二名が第一組合側の者から暴行を受け、二週間ぐらいの傷害を受けたという事件も起っておりますし、非常に尖鋭化をいたしておったのであります。さような状態のもとに第二組合の結成をやるということに相なりますと、組合結成の会場に第一組合の組合員が押しかけて参って事件を起すであろうという公算が大きかったので、警備のために警察官が若干周囲におったということは事実でございますが、そういつた状況のもとにおきましては、私は警察がとつた措置は適当であったと、かように考えます。  前にさかのぼりますが、高橋某の家で二名の第一組合の組合員から脅迫を受けた点は今申し上げましたが、このころから第一組合と第二組合の感情上の争いが非常に強くなりまして、社宅の方におきましても、第二組合員及びその家族、これが第一組合員及びその家族からいろいろな不法措置を受けるような事態が頻発しておるのでございます。夜中に電報々々といって呼び出して、そこで暴行を加えるとか、あるいは糞尿を投げ込むとか、その他脅迫のような事柄相当頻発をいたしておりまするので、警察としましては、そういう事態に備えまして相当社宅方面の警羅に力を入れておるような現状でありまして、われわれといたしましては、労働争議は労働争議でございまするが、なおまたこれに対して警察はどこまでも介入をするということは厳に戒めておるのでありますけれども、争議途上におきまして、いろいろ法律が破られたり、あるいは憲法で保障されている人権がそういったぐあいに保障されないという状況であっては相ならない、かように考えておるのであります。大体今まで警察のとっておりました措置は、私は根本方針、大きな方策におきましては適当であろう、かように考えておるのでございます。
  175. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そこで今度は具体的に入りたいと思いますが、なるほどそういう今のような理由がつくかもしれませんけれども、問題は警察が中立であってほしいということなんです。従いまして警察が中立の域を越した事実について私はお伺いしたいのですが、九月の二十三日の日であります。その日に第一組合と第二組合との関係がございまして、第一組合が正門のところにピケを張つておる。警察は第一組合のピケを張つておるわきの茶菓コートと申しますが、広場にたむろしておった。そこで第一組合と第二組合との間の乱闘が起きるとか、あるいはもめごとが起きるというような場合に、警察がこれに割込んで、これに対するところの暴行、脅迫、あるいは不法行為をしてはいけないという一つの措置をとられるならば、私どもは異議はございませんが、警察自身が先に進んでピケを破り、一つの実力行使をやったというようなことがあるとするならば、断じて私どもはただいま長官の御答弁にあった正当な行為であり、適当な方法であったとは断ぜられません。一つの例といたしまして、二十三日の日に、しかも正門の前に二百人ばかりのピケを張った第一組合の者がおり、その傍に相当な数のピケを張った労働組合員がおり、中に制服の巡査がおり、外に制服の巡査がおって、中におります巡査が外におります巡査との連絡をいたしたいからあけてもらいたいという一つの申出があり、それについて第一組合の諸君はすなおにそこをあけた。あけると同時に、第二組合の幹部がここから会社の内部におどり込んで入ってしまったという、こういう事実があるのでありまするが、その事実について長官にどういうような御報告がありましたか、その点を承りたい。
  176. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 ただいまのは九月二十三日の事件でございまして、このときに、先ほど申し上げましたように第二組合が結成され、そうして第二組合の連中が入構をするというので正門に押しかけて参ったのでありますが、第一組合の人たちは相当そこにピケを張つて、実力でどうしても入れない。警察はここで乱闘になってはいけない。ピケは平和説得の限度に限るべきであるということを警告いたしていたのでありますが、第一組合はどうしても入れることはまかりならぬ、第二組合の人たちはどうしても入るというので、衝突のような状況になろうといたしておったのであります。そこで第一組合のピケ・ラインと第二組合の間に警察官を導入して乱闘を避けようというので、構内にいた警察官との間に、入れるために道をあけてもらったのでありまして、この措置も私は第二組合に特に味方をしたというようには解釈ができないと思うのであります。ピケ・ラインをしきますることは、これは平和説得の限りにおいては合法凶だと考えます。しかしそのピケ・ラインを通過しなければどうしても入って行けないという者が、説得されないで、どうしても中に入るという場合には道をあけるべきであって、それをしないということに相なりますと、そのピケ・ラインは不法になる、かように考えるのでございます。
  177. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今の点でございますが、中から警察を入れるのであるからあけろという一つの事実、それからもう一つは、先刻長官が御答弁なさったように、ここは仮処分になっておりますから組合員は立入り禁止なんだ。第二組合の人間も立入り禁止を受けておつたわけだ。第二組合は入ってもかまわない、こういう問題がここに起っておるわけです。私が調査いたしました事実によりますと、執行吏から入つてもいい、就業してもいいという許可評は持っておりません。ただ社長の入つてくれという証明書を持っておる。そういうような場合に、かつての労働組合員である第二組合の組合員がここへ入つて来ることをいいとお認めになるそのこと自体が一体正当な行為かどうか、この点を向いたい。
  178. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 第二組合がそこに入るということは、会社から当日第二組合の人たちが入る許可証をもらっておった、かように警察は報告を受けております。ただ先ほど申しましたのは、第二組合を入れるべく道をあけさせたのではなくて、第一組合と第二組合が衝突をしないように、避けるためにピケ・ラインのうしろの構内にいた警察官を前に出したのであります。そのすきに八名の第二組合員が入ったという事態でありまして、この際に第二組合の連中を中に入れようという原図で当日警察が措置をしたのではなかった、かような報告に相なっております。
  179. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それは長官のおつしやる通りと認めましよう。しかし八人の人が入ったのは違法であるから、これをどうして現行犯で留置しなかったのか。会社の社長がどんな証明書を書きましようとも――この仮処分の条文をごらんなさい。執行史が就業をしてもいいということを認めなければ、許可なくして、社長が言おうが、どなたがおつしやろうが、あそこに入ることはできない。この執行吏の仮処分決定書によりますと、申請人の申出によって、執行吏そのものの許可を受けなければ、時期にならなければ入れないということになっておる。今の第二組合ていない。そうしてそれを、その当時そこにおりました組合員の方たちから警察に交渉をいたしまして、やっと会社では午後の八時ごろになりまして三時間もたってからそこへ執行吏を連れて来たという事実がある。これは私どもがその後に至りまして、室蘭の裁判所のその決定をいたしました判事さんにお目にかかりましたときに、その話を承りましたが、執行吏以外の者の承諾書が何故あろうと人づてはいけない、これは明確になっている。こういうぐあいに第二組合の組合員は入れて、これは違法でない。第一組合の諸君が争議協定に基く会社の不履行を責めた場合には犯罪になるというようなお取扱いをすること自体が、私は不公平であり、労働争議に介入した事実だ、とこう申し上げられると思うのですが、いかがでしよう。
  180. 三輪良雄

    ○三輪説明員 お答えをいたしますか、仮処分の条項の中には、執行史から直接に許可をもらって入ります者と、会社側が執行吏の許可を受けて業務に従事をさせるために入れる者とございます。当日といたしましては会社側から執行史の許可を受けて、団交のためにその八名を入れる、そういう趣旨で会社側の許可書が出たものと警察側は解釈したものと聞いております。
  181. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 第三項では、執行吏は申請人の申出によって申請人が右の土地及び建物のうちにおいてその従業員を指揮し業務を行うことを許すことができるのですから、執行吏が許さないとだめだということは、ちゃんとはっきりしておる。そうしなければ執行吏というものは管理人にはなれない。あの工場の全部の管理人が執行吏だとここに書いてある。そういう解釈をしてあなたが正しいとおっしゃるから問題になる。これは主文の第三項に書いてある。あなた方がおっしゃるように会社が命令すればいいということがどこに書いてあるか、はっきり説明願いたい。
  182. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 ただいま三輪第一課長が申し上げておりますように、会社側が団交のために八名を入れることを許可してもらいたいということを執行吏に頼んで、執行吏がそれを認めたというように聞いておるのでございますが、ただいま古屋委員のお活によりますと、さようでないかのようでもありますから、この点はもう一度よく調査をしてみたいと思っております。ただいま受けております報告は、さような報告になっております。
  183. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 どうお聞きになつたのか、もう少し具体的に二十三日の何時にどこでどなたからどういうような許可を受けたかということをお答え願いたい。今お答えできなければ書面でお答え願いたい。
  184. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 その点は調べて後刻御報告申し上げます。
  185. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 その点なんです。そのときのあの騒動というものが、われわれが心配する一つの争議行為の介入の問題になつて、会社すなわち資本家と労働者との間のけんかでなくて、今度は警察官との間になるということがおそろしい。革命が起きるのはこれです。革命はいつも警察官と大衆との闘争です。その点を明確に承りたい。  もう一つ承ります。二十五日の日にやはり同じ場所で第二組合と第一組合との間にごたごたの乱闘が起きまして、中川という男は生死の境というような重傷を負いましたが、この犯罪の捜査をやられておるかどうか。やられておるのならば具体的にどの程度まで行っておるか、その点を承りたい。第一組合の人間が第二組合から暴行を加えられて死にそうにまで行っておるにかかわらず、私が参りました当時は警察は具体的な捜査をしていない。そしてむしろ逆に警察の方では第一組合の連中に対してただいま申し上げたような圧迫をしておったという事実がある。どういう捜査をしてどこまで進んでおりますか、その点を御説明願いたい。
  186. 三輪良雄

    ○三輪説明員 九月二十五日には、二十二日にすでに先ほど申したようなことで、警察官を現場に出したということが非常に刺激をするものであるというような非難が組合側からも強くありましたので、当日第一組合と第二組合とが正門の前に行きます前に、警察といたしましては両方の組合に対して厳重な警告をいたしまして、実力行使に出るようなことのないように警告をいたしておったわけでございます。ことに第二組合には、ピケの前に行きまして入門をするときに要求をしても第一組合が実力で入れない際には、実力で飛び込むようなことをしないで、十分話合いのうちに警察の方にも連絡をし来いというような警告がしてあったということを聞いております。そこで当日は現場には情報収集員を三十四名かと思いますが、それだけ置いただけであと三百名は地区署に待機させておったわけでございます。ところが現場に第二組合が到着いたしますと、入れろ入れないという話が始まりました。そしてあとから列をつくった者の力で最初のところがぶつかりますと同時にピケを破つて第二組合が中に入ったということでございまして、その知らせを受けて警察がすぐ出動いたしましたが、現地に到着いたしましたときにはすでに第二組合が全部中に入ってしまっておった。町方から相当にけが人が出ましたので、まことに遺憾に存ずるわけでございますが、そういう趣旨でその際暴力を行使いたしました者につきましては、双方とも他の暴力事犯と同様に捜査をただいま続行いたしております。ただいままでまだ被疑者の検挙というようなところにはなりませんけれども、お話のように第二組合の責任に帰すべき刑事事件については捜査をいたしておらないとか、一方的に捜査をいたしておるというようなことは絶対にないものと私どもは信じております。
  187. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そういうお話がございますと申し上げますが、第二組合の一番先頭に立つた人間はわかつておるのです。青いはち巻をした柔道の選手と相撲の選手が先頭に立っておったのだからわかると思う。今にたってその被疑者がわからないということはどうもわれわれも解せない。ああいう人間をあれだけの大事な関係において御捜査いたしましては、第一組合から、その当時宮永警察署長のところには何の何がしが柔道の選手であり、何の何がしが相撲の選手であり、先頭に立って青いはち巻をして暴力を振つた、こういうことを申し上げておるはずなのであります。私どもから申しますならば、第一組合の諸君はピケを張ってただすわっておった。それをその上を暴力をもつてぶんなぐつて、そこのところを通ろうとした。しかもそれは第一組合の方ではないのです。まだまだ入れる入れないのごたごたが起きたのではないのです。当時そこへ出て参りました炭鉱労働組合の中川という人が、第二組合の諸君についてこういうことがあったのです。第二組合の今暁に幹部になっておる方たちは、芦別の炭鉱労働組合へ行つて、この日鋼の争議をするのだから資金カンパをしてもらいたいといって金をもらいに行っている。その男が金をもらって帰って来ているけれども、もらって来たら今度は第二組合をつくつてしまって第一組合に対立している、こういうような姿であるから、あなた方は少くともぼくのところへ来たときにはこの争議を正当に解決をしたいというので金をもらいに来たのではないか、それを争議破りの方に君らが行っているのはどういうわけだという交渉をしておるところに暴力でやつて来た。これはまだ第一組合、第二組合の衝突じやないのです。これは図面がここにございますから、こういうぐあいに第一組合の諸君と中間におりまする第三のほかの人との間の関係をごらんになれば、一番はつきりわかる。いつでも警察が第一組合と第二組合のまん中に入っている。私どもから申しますならば、第一組合の諸君と第二組合の諸君のごたごたの中に入つてそれを解決させようというのならいいけれども、第二組合の先頭に立って来ている。これはいつでもそうなんです。そして芦別の労鉱労働組合の中川さんが大きなけがをされたというのは、そういういきさつの間になされておるものであって、決してこれは中へ入る入らぬの闘争じゃない。でありますから捜査ですぐわかるはずです。具体的に何の何がしの責任でどういうところで捜査しているか、これを御報告願いたい。
  188. 三輪良雄

    ○三輪説明員 この捜査につきましては札幌方面警察隊が担当いたしております。個々の事件につきまして捜査の主任をきめておることと思いますが、何警部、何警部補がこれに当っておるということは聞いておりません。従いましてただいままでだれをいつ調べ、どういうことになっておるかというこまかいことについては、私ども承知をいたしておりません。
  189. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 私はこのことについて室蘭の中央署の署長さんの宮永さんにお会いいたしましたが、宮永さん自身が捜査をいたしておりませんと言つている。札幌の松本という隊長は帰ってしまってだれもおりません、全部私の責任ですよ、この責任は私が負いますが、まことに申訳ありませんと言ってあやまっていた。あなたのおっしゃったような答弁の捜査はしていないはずです。具体的に答弁してください。うそを言わずにほんとうのことを言ってください。いっどこで、どういう人がどういう捜査をしているか。松本という札幌隊長は引揚げてしまって、もうおらなかった。そうして私が行ったときには、すでにこの事件がありましてから四日も五日もたってから行つたのですが、捜査が何にも行われていたい、こういうことを当の宮永署長が私に言っている。
  190. 三輪良雄

    ○三輪説明員 宮永署長が古屋委員お答えした言葉につきましては、私ども承知いたしておりません。そういうふうに聞いたということでございますれば、私どもとしては本人にそのときの事情について聴取いたします。それから松本本部長もそこに出張いたしておりましたが、その当時おらなかったということでございますけれども、それぞれ事件の捜査につきましては担当をきめて捜査をいたしておるわけでございますから、そういうような大きな事件のあとで警察が何ら捜査をしていないというようなことは、私考えられない。そのときの捜査の進行状況が十分御報告する程度になっていなかったのかと思いますけれども、私はそういうことで捜査が打切られている、もしくは手をつけられていないとは思っておりません。
  191. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それはあなたの想像のことを言っていますが、私はそんななまやさしいことを言うのではない。そこに札幌検事局の沢山次席検事も来ておりまして、そうしてこの問題については相当相談相手になっておりましたから、沢田検事にも私はお目にかかりまして、一体あなたは非常に手まわしがい早いじやないか、争議で何ともしないのにあなたは手まわしが早いじやないかと冷かし半分に言つたら、いや自分の方には殺人行為があってそのために来てるのだ、たまたま来たから両方の労働組合幹部を呼んで、私は乱闘しない方がいいということを申し上げて忠告したのだ。しからばあの中川というのが死亡する程度までに非常に重傷を負っておるのだが、あの捜査はどうしたのか、今のところは手をつけておりません、こういうことなのです。でありますから今のあなたの御想像で、どうもやらざるを得なかったろうという御想像であるのならそれはけっこうですよ。そう御想像でございますが、具体的にはやっていないのだ。片方にだけ援助して片方はほつたらかしておくというその理由を聞きたい。想像からでなく、具体的にやっておればどなたがどういう方面の捜査をされたか承りたいと思います。
  192. 三輪良雄

    ○三輪説明員 現地の報告によりますと、とりあえず現場検証を開始するとともに、地元署長と札幌地方検察庁の長谷部検事が今後の対策、検挙方針をきめたということであります。何刑事、何警部補が当ったかということについて詳細な報告は、他のすべての事件についても受取ることになっておりません。また具体的にだれをいつ調べて、どういうことが出たというようなことは、捜査の段階でございますから御報告はひとつお許しを願うことにいたしたいと思います。
  193. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そこで私どもは、今長官のおっしゃる公平にやられたということが納得が行かないのですよ。もう死ぬような傷を加えられたのにかかわらず、捜査が今日までまだ具体的にやられておらぬというところに問題があるわけです。  なお私が質問を申し上げたいのは十月六日の問題なのです。十月六日の問題は、これは私はそのときに熊野さんという北海道の隊長に向っては、労働争議の問題についてはむしろ警察が群衆心理にかられて争議に介入して、大きな暴動が起きるのではないか。   〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕 それでは私どもとしては非常に心配であるから、つとめて指揮官が指揮をいたしまする場合においては、よほど部下を掌握された一つの指揮をとつてもらいたい、こういうことを申し上げたときに、熊野さんは、あそこには警察を出動させるけれども優秀な者をやつて、つとめて具体的に両者の関係に介入しないようにいたしましよう、こういうようなお話をし、検事正に対しましても今現に地労委の方たちが仲裁裁定に入つておる、なお知事も非常に心配しておる、道においても道会議員が心配しておる、室蘭の市会においても早く解決してもらいたいということで各方面が非常に心配をしておるから、われわれの方といたしましても労働組合の諸君に対してはどこまでも自重をさせよう、絶対的に暴力を振ってはいけない、こういうことで私どもはいろいろと説得をいたして帰って参りましたが、驚くべき十月六日の日の問題は、これはここに図面がございますけれども、これが大きな問題だと私は思うのです。そうしてこれを証拠づける裏づけの原典がここにございまするけれども、写真を見ますと一人も労働組合の組合員が暴力を振っておる姿はない。警察は何百人、何十人というものが指揮棒を持って、そうしてこの棒を持つてぶんなぐつておる姿がここに明らかになっておる。これを上体どうするかという問題です。こういうことがあるから革命が起るのです。私どもはこれを拝見いたしてまして、驚くべきことは、そうやってここで何十人かの傷害者が出たのですけれども、一番ここで問題になっておるのは、明確に棒でぶんなぐつておる、こっちでみんな手でもつて受けこたえておる、こういう事実である。しかも何百人かが行っている。そうしてこれもこれも第一組合と第二組合の諸君のごたごたではないのです。入るの入らぬのの交渉ではない。中間におりますところの富士製鉄の諸君がまだここで話をしておる。御幸橋のところで話をしておる。話中のところへ、今度は警察のスピーカーで、道路妨害になるからどいてくれというのが終るか終らぬうちに突貫して入って来ている。こういうようなことでは戦争をやっておるようなものだ。これでは警察が先頭になって戦争をおつ始めている。幸いに私どもの方で、何も持つていないのです。そうして受けこたえておる。だから済みましたけれども、これが反撃をいたすことになりましたならば、私は相当大きな問題を引起しただろうと思う。むしろ警察が群衆心理にかられて戦闘的になって、そうしてあばれ込んでおるという姿なんです。こういう事実を認めるかどうか。まずこの写真を見たら一番よくわかるのです。これをごらんなさい。まず第一にこの写真ですよ、これをごらんいただけば、私は一番よくわかがると思う。受けています。これが傷をした写真であります。これが隊伍を整えて棒をもつて警察が進軍しておる姿、まるで日本の労働組合の諸君を暴徒のごとく考えておる。暴徒でもまだいいのです。もしこの労働組合の諸君が皆さんのおっしゃるように不法行為をしたならば、一人ずつ縛って行けばいいのです。棒でぶんなぐる必要はないのです。しかもそれは仮処分禁止規定の中ではないし、それからこの会社の前の道というものは会社の通用の道でありまして、この御幸橋というのは公用の道じやございません。この点が問題なんです。国家の公道であるならば、交通妨害ということもあるが、会社の中に出入りをする御幸橋という橋、道路なんです。そこに富士鉄の諸君が行つて、第二組合の諸君と話をして、納得の行くような相談をしておる君がすわり込んでおる。これでは第一組合と第一組合が乱闘するからこれを警察がとりしずめ、納得ずくで就業させようと交渉しておる婆でも何でもない。それをごらんになれば一番よくわかる。そういうような写真の事実は御否認ができないと思う。これをどうお考えになり、どう責任をとるかということをお尋ねしたいのです。
  194. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 十六日の状況は五日の事態から申し上げないと、ちよつとおわかりにくいかと存じますが、五日の場合は御承知のようにほとんど一日第一組合と第二組合が対峙をいたしまして、警察が不測の事故を起してはいけないというので、勧告にこれ努めておったのであります。ちょうど北海道の地方労働委員会も中に入って交渉をまとめようということでもありましたので、様子を見守っておったのでありますが、この両者の対峙は解けることがなかつたのであります。とうとう夕方にもなりましたので、第二組合は引揚げて、当日は事はなかった。その前に五日の昼ごろ、第二組合は自分たちは正式に執達史の許可を得ているから、正門から入れてくれろという交渉をいたしましたが、絶対に入れないという回答を与えたような状況であります。そこで六日の早朝、第二組合が入門をしようというので早くから集まつて、第一組合はこれを入れさせまいというので、約千八百名ですか集まつた。第二組合の方は千一百名ぐらいであります。そうして御幸橋のところに第一組合がピケラインをまず張ったわけであります。御幸橋は工場に入る道であるとおつしやいますが、これは一般のだれ人も自由に通行し得る場所であるわけであります。従ってここで通行を妨害いたしますれば、やはり取締りの対象にたる場所であることはもちろんであるわけであります。のみならず、この橋の下には鉄道が通っていることは御承知の通り、ここでもし乱闘なって、橋から落ちるということになりますと、なおさら大きな不法を来すわけであります。さような見地か成立するから解いてくれるようにということを一、三厩にわたってマイクロオンで警告をし、さらに口頭でもこれを伝えたそうでありますが、ピケを解かないのみならず、だんだん人数が増して参る。ここにすわり込むという状況に相なりましたので、警察の現場を指揮しております者が、これを解散させるといいますか、うしろの方へ下らせるべく、警察が中に割込んだのであります。そのときの厚真がただいまおまわしくださった厚真だと存じます。なるほど警棒を振り上げている写真が出ております。ああいった際にどういうような状況で警棒を振り上げましたか。私といたしましては警棒を振り上げている点はきわめて遺憾であると存じますが、しかし警察が実力をもつてそれを押しもどさなければ、交通妨害、しかも非常に危険なところにおける交通妨害がいつまでも続くと考えて措置をしたのは、私は当然であろうと思うのであります。そのときに相当の傷害者を出したということでございますが、警察といたしましては第一組合に対しまして、当時受けた傷害者の氏名、状況等を聞かしてくれるように申し込んだそうでありますが、それについて何ら回答がないというふうにただいま報告を受けております。ほんとうに警察が過剰な行為によつて傷害を与えたというようなことがあるといたしますならば、これは許すべき事柄ではないと存じます。指揮者はさようなことについては厳に注意を加えておったと存じますが、もし実際に過剰な行為によって傷害を受けた者があるということでありますならば、これは警察自勢としても厳重に調べなければならないものだと存じます。また検察の方でもお調べをいただくことだと、かように考えているのでございます。
  195. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 古屋君、六時も過ぎたのだし、岡田者もやるそうだから、できるだけ簡単に……。
  196. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今の長官の報告はでたらめの報告をおっしゃっておるので、御幸橋のところでは第一組合の組合員は十五名しかおらないのです。絶対にここにはおらないのです。ですからそこにおりまして今なぐられておるのは、富士製鉄の連中がなぐられておるのです。第一組合はそんなところにピケを張っておりません。第一組合は御幸橋のところには――ここに写真がありますからこれを差上げますから、これをごらんくださってこれで御答弁願えれば一番よくわかると思う。これはこういう関係で御幸橋の付近に十五名しかおらないのです。ここにおったのです。これが正門前のピケなんです。これが警察なんです。第二組合はこちらなんですから、これをごらんくださればよくわかります。第二組合の諸君と第一組合の諸君のまん中に警察が入つて、しかもそこは道路が二町もあるのです。離れております。くっついておりません。私は現場を知つていま止す。そういうようなことで、御幸橋のところには十五人の青年行動隊しかおらない。その人たちはそこをどいている。今警棒でなぐられておるのは富士鉄の諸君なんです。富士鉄の諸君がいわゆる第二組合の諸君にどうですかと相談をしておるのであって、決して第一組合と第二組合の入る入らぬの押し問答じやありません。押し問答してないのに、ぶんなぐつているから私どもは質問をしている。ただいまそれも正当だというようなことを長官はおつしやいますけれども、私どもに言わせればそれは暴行です。しかも時間がきつちり合っております。それがもし間違ておるならば、ここにその連中が来ているから参考人とすれば一番よくわかりますよ。これは重大な問題です。でありますから北海道では、労働組合の連中何万人かそろって、今度はこれを応援しようと言つております。警察と何万人の諸君と衡突したらどうなるか。暴動ですよ。それを私に言つている。この問題はなまやさしい問題じゃないのです。もうすでに日鋼と警察との問題でなくして、日鋼の諸君よりも、むしろ富士銀の七千の労働組合の諸君警察の問題になってしまっている。第一組合の諸君は中へ行って、なるべく第二組合の連中を説得して、ピケ破りをしないようにとしている。その御幸橋のところは狭いところなんです。そんなところに百名も二百名もすわり込んでおって――私は知っていますが、わずかの狭い通なんです。その橋に入って行くのは、一般交通道路じゃないのです。会社の社宅に行く道なのです。ですから会社の所有地なんです。行ってごらんになれば一番よくわかります。だからもし妨害した警察官が、第二組合の諸君が入るのを妨害したのをつかまえるならば私は文句は言わない。第二組合の諸君が入ったことによるごたごたの証拠は一つもありません。第二組合の茶菓コートの前の正門のところまでには二町も離れておるのです。その間の乱闘なんです。警察が突貫して押しかけて行ってぶんなぐつた、そこのところなんです。そこのところをよくお調べ願いたいと思う。ただいまのような答弁は、行き過ぎがあれば責任を負う、そんなことはあたりまえです。警察官が第二組合の御用組合のように先頭に立って、決死隊のようなことをなぜやるかということなんです、私の質問は。一体その責任を今後どうするかという問題が問題なんです。その今の事実はどうでしょう。富士鉄の諸君をなぐったので、第二組合の諸君はけがしていない、このことはどうなんでしょう。それは一番よくわかっておるのですが……。
  197. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 私の方では、御幸橋にピケを張つているのは第一組合か富士製鉄の方々であるか聞いておりませんが、だれでありましようとも、一般の人の通行し得る場所を立ちふさいでいるということを排除するのは行き過ぎではない、かように考えます。ことに第二組合がどうしても入ると言って御幸橋を渡ろうとするわけでありますから、そのピケの状況を放置しておってだんだんそこに大勢の人が集つて来るということになって、そこで乱闘が起ってはいけないというので、そういう状態を排除しようと考えたのは、それは警備警察上当然ではなかろうか、かように考えております。ただいまの十五名程度しかいなかったという点は今初めて伺うのでありまするし、第一組合と第二組合が御幸橋の上で団交をしようとしておったということも初めて聞くのでありますが、そういった状況につきましては、さらにしさいに調べてみたいと存じますが、大体のあれといたしましては、私はこの報告が間違っていなければ警察の処置は非難すべきじゃない、かように考えます。
  198. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 いま一つお尋ねしたいのですが、そこには十五名おりまして、青年隊は、警察と話がありまして、その青年の十五へは引下つてしまったんです。そこにおったのは、ピケじゃないんですよ。博士製鉄の連中が立っておるにすぎない、このなぐっております姿をごらんになりますればよくおわかりと思うのですが、ここには一人も第一組合の諸君はおらない。第一組合の諸君は、あちらをお調べになればよくわかりますが、白はち巻、第二組合の諸君は青はち巻、はち巻でない人は組合員じゃないわけです。この写真ですぐわかるのですか、二、三人ここにおるだけなんです。でありますからその道路におる者を暴力でもつてなぐつて、道路交通妨害で取締るということは、一体長官それでいいのですか、私ははっきり答弁を伺いたい。
  199. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 今も申しておりますよりに、それが第一組合であるからとか、あるいは共闘している他の組合員であるからとか、そういう区別は警察としては私は考えないのが当然だと思います。従ってはち巻をしている者はどう、はち巻をしていない者はどうというのではなくて、警備上そういう状況がよろしいか、よろしくないかという判断で行くわけですから、その点は御理解願いたいと存じます。御幸橋の上におきましても、ただ三々五々集まっていたというのではなくて、やはりここにすわり込んでいたというのが、それが事実だと思います。私の方に入っております写真では、そこにすわり込んでいる写真が現にあるわけであります。ただそこで先ほど仰せになりました警棒でぶんなぐつたということがありますならば、これが、過剰にぶんなぐつたということであれば、私は許すことのできない問題だと思います。ただぶんなぐられた人は氏名を申し出ていただきたい。自分の方でもよく調べてみたいと思います。
  200. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今私が答弁を求めるのは、そういう妨害をしたらば、五百人も行っておりますからその人たちを拉致すればいいのじゃないですか、取締りをやるならば、警棒でなぐって、突貫して来るということ自体がこれはまるで正当行為警察の権利行使とは認められないので、ぶんなぐつている事実から行けばこれはほかに方法がないなら、相手方も武器を持ち、あるいは暴力で突貫して来るという姿ならそれはやむを得ません。ところが相手方の無抵抗な人間を、道路妨害をしたからといって警棒でぶんなぐつてけがを与えるということは、行き過ぎも行き過ぎ、それは航行であって、正当行為じゃないんです。その行為をどう責任を負うかと、こう私は申し上げておるわけです。それをお認め願えますかどうか。この事実の点はどうなんです、一体。
  201. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 私はこういう場合に、一々道路交通妨害罪と称して、みな逮捕してしまうのがいいのか、そうでなしに、現状で警察官がずっと押して道を明けるようにする。そうすれば、そこが道があくのですから、その方が私は適当な措置だと存じます。今申しましたように、その場合にぶんなぐる必要があったかどうか、私はなかったと思う。従って警棒でぶんなぐつたという事実があるとすれば、この点は遺憾であって措置をされるべき問題であろう、かように申し上げたのであります。
  202. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 岡田君。
  203. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の問題から始めた方がいいと思うんです。今の問題については、天体長官の御答弁を聞いていると、ここの付近の状況を知らない。道路交通妨害云々とか言われるけれども、こういう点も長官は状況を知らたいから、そういうことを言っておられる。たとえばさっきの速記録をごらんになればおわかりですが、あなたの答弁を聞いておると、この橋のしもの方に鉄道があってと言われた。しもの方じゃないんですよ。字の読み違いなんです。橋の下の方にあった、うそじやない証拠に写真をごらんなさい。私は現に行っておるんです。行っておるからわかっておりますが、鉄道が通るために上に橋がかかっておる。ですから、しもの方じゃない。そういうような現場からいっても、この道路は社宅へ行く袋小路なんです。ですから、こういうような状況等を見ても、全体としてあなたの御答弁を聞いていると、これはきわめて私は不正確だと思う。  もう一つ申し上げますが、これは長官よく聞いておいていただきたいのだけれども、その前日に、第一組合の幹部と、それから室蘭の中央署の署長との間に話合いがついておる。次の日の朝でも第二組合と第一組合とがお互いに了解がついた上で、そしてこの道路を通行する問題について話合いをつけた上で通るなり何なりしようではないか、こういうことに前の日にはつきり中央署長と第一組合の間で話合いがついているのです。ところが、ただいま古屋君からお話があった通りに、御幸橋の上に、先ほどあなたも地図でごらんになった通りに、富士鉄の組合の者が百六十名と、それから第一組合が十五名、そしてそれに相対峙して第二組合がいるのならばまだいいのですが、第二組合が対峙しているのじやなくて、警察官が五百名対峙しているわけです。第二組合の人というのは、ずっと道の向うの方の陰にいるのです。そして武装警官が五百名おって――これはうそだと思ったら、現実に富士鉄のその中の責任者がここにいるのですが、必要があったら参考人で証言してもらってもいいのですけれども、この人がはっきり言っている。この人が、この五百名を指揮している武装警官の責任者に対して、ごたごたが起つてはいけないから、これについてお互いに話合いをしようではないかという提案をして、話合いをし始めた途中なんです。始めたときに、さつき古屋君が言つたように、マイクが鳴つて、マイクの終らないとたんに、ここに書いてあるようにくさび型になって警察官が飛び込んで来て、さつきあなたが言われたようにすわっておったかどうか知らないが、ともかくも暴行を働いたことは事実です。こういう事実についてこの際は徹底的にお調べを願いたい。先ほどあなたの御答弁のあった通りに、交通妨害についてどういうふうにして処理するかということについては、私はさつきじようだんに、ぶんなぐつた方がいいのじやないかと言つてやじつたけれども、まさか長官としてもぶんなぐって交通の取締りをやった方がいいなんてお考えになっていないと思うのであるが、先ほどもそういう御答弁があったと思うのですが、少くともそこでぶんなぐった者があるとすれば、そして証拠が現実に出ているとすれば、この問題について、最近とかくのうわさがあるだけに、徹底的にお調べを願いたいと思う。徹底的にお調べ願えるかどうか、この点からお答えを願いたい。
  204. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 ぶんなぐった者につきましては、先ほどから申しております通り、十分取調べるように向うへ伝えます。
  205. 岡田春夫

    岡田(春)委員 時間がありませんので、できるだけ簡単にやりますが、大体この数回の事故によって相当負傷者が出ているようであります。第一組合、第二組合あるいは警察側にも負傷者が出ているかもしれませんけれども、こういう数字はどういうようになっておりますか、この点をお答え願いたい。
  206. 三輪良雄

    ○三輪説明員 ただいま手元にあります資料で、一番不幸に負傷者が出ましたのが、二十五日の正門前における衝突で一番たくさん負傷者が出たわけでございますが、その際に重傷者が六名、第一組合側一名、第二組合側五名、軽傷者が百六十七名、第一組合側三十五名、第二組合側百三十二名という報告を受けております。そのほか、ただいまの御幸橋の問題につきましては、きよう、どこの資料ですか、何人かお名前が出ているのをちよつと拝見いたしましたけれども、警察側の報告では、先ほど長官がお答えいたしましたように、おけががあった人の名前を伺ったけれども、御返事がなかったという報告を受けております。その他傷害事件が幾つかありましたが、そのけが人の総計は、ただいまここに資料として持つておりませんので、後ほど集計して御報告申し上げます。
  207. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この場合においては、第一組合からも正確な報告を聴取して回答を得たのですか、どうですか。
  208. 三輪良雄

    ○三輪説明員 そのときに重傷者等は警察も収容に当ったようでございますから、ここに数が出ておりますので、おそらくそれぞれの組合からお伺いして書いたものと思いますが、その点は正確にお答えができません。
  209. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それ以外の事件についてはまだ正確な報告がないのですかどうですか。
  210. 三輪良雄

    ○三輪説明員 たとえば傷害事件で一名か負傷を負つたというような事件がございますから、これをここで拾えば何人か出るわけですけれども、一番多い方だけの数字しか持っておりません。あとは事件別に拾いますので、後ほど資料で御報告いたします。
  211. 岡田春夫

    岡田(春)委員 警察官にけが人が出ましたかどうですか。
  212. 三輪良雄

    ○三輪説明員 負傷者があるように聞いておりますが、今資料で探しています。
  213. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ところが、きのう実はこの委員会を開く前に一応あなたの方から意見を聴取しているのです。そのときには警察側は一人もないと言つているのです。そういう点から見て、お調べになって、あれば言つていただいてけっこうですが、しかし先ほどから古屋君その他の言つている状態から見て、警察官の方に負傷者がある状態とは考えられないのです。なぜならは、あそこの日鋼労働組合というのは、私は北海道だからよく知っているけれども、従来非常におとなしい組合で、警察とけんかしようとか、あるいはこういう問題でごたごたしようなんということを考えているような組合ではなかった。ですから、この事件発生のときにおきましても、相当数けが人を出しているというのは、これは主として警察官側から加えられた事故なんです。警察官の方が逆に加えられた事故というものはほとんどない。こういう点はひとつ徹底的に調べていただきたいと思います。聞きとれないといいましようか、はつきりしなかつた点があるのですが、九月二十三日の事件のときに、最後はよう少し調べてみましようという長官の合弁であったけれども、実際に執行吏の入場許可証というものを持っておらなかった何よりもの証拠に、このごたこたの起つたあとで、第一組合の代表者が室蘭中央署の宮永署長と午後五時ころに会見をしたときに、これを明らかに現認しておる。証明書というものを全然持つておらない、許可証を持つておらないということが明らかになつているのです。しかも許可証を持つておらないで、なおかつ先ほど古屋委員からお話のあったように、立入り禁止の中に警察官がおったわけです。警察官がおって、立入り禁止の外側に第一組合の人がおったわけです。これを外へ出してくれ、出してもらわなければ、この問題の処理に困るから出してくれといって、そして四列縦隊になって、ピケ・ラインを引いている第一組合のまん中に――これはピケ・ラインを引いている第一組合の責任者と、それから立入り禁止の中にいる警察官の責任者との話合いで、このピケを解きましようということでピケを解くことになつて、四列縦隊でピケ・ラインの中へ入って行ったわけです。四列縦隊になって入ったとたんに、そのまま向うへ出てしまうのかと思うと、ピケ・ラインをまん中で遮断しておいて、二列縦隊にわかれたのです。二列縦隊にわかれて、そのまん中が通れるようになったのです。少くともだれかが通れる状態に置いておいて、外に待っている第二組合の幹部八各を入れたわけなんです。第二組合の幹部八名を入れた場合において、立入り禁止区域であるならば、先ほど古屋議員の言う通りに、第二組合の人であろうと、少くとも執行吏の入場を許可する旨の明確な何らかの物的証拠なりその他のものを持たない限りにおいては、この中には入れないはすです。それにもかかわらず、入れられるような状態に置いておいて、そのまん中から人名の者を入れたのです。こういう点を見ても、まだそのほかの理由はあるけれども、少くともそのときにおいては警察官が第二組合を援護するために二列縦隊となって、第一組合のピケ・ラインを完全に遮断したということが言えるんじやないですか。そういう現実の事実があるんじやありませんか。しかもこのときに第一組合の方から許可証はないじやないかと言ったら、それに対して答えてない。そしてそのあとで、午後五時に至つて、許可証を持つてないじやないかと言った。そうしたらこれに対して、まことに申訳ない、持っていなかったと言つているじゃないですか。とすれば、あなた方の主観的な意図はともあれ、立入り禁止の中へ第二組合の組合員だけを入れるために援護したのであると客観的に見られても、言われても、しかたがないことになりませんか。どうですか。
  214. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 どうも今おつしやる通りであれば、そう見られてもしかたがないという状況であるかのようにも自えます。ただこの立入り禁止の処分のことについて、会社側が業務上必要と認めまして、執達吏に話をした場合には許可するという条件になっておったことは無知しておったはずだと思います。そうして第二組合の人たちは団交に入つておる。しかも幹部八名が入ったと称しておる。そうして会社側を通して執達吏の承認を得た。こう承知しておればこれは当然入つてもよい人間だと解釈したのはそう大した誤りでなかつたと考えます。ただ八名を入れるために警察が中に割つて入つたのか、警察が第一組合のピケ・ラインをあけてもらわなければ前に出られぬので、前をあけてくれといつて警察が出て来ようとした。その間を割つて入つてしまつた。こう現場では育つておりますが、私の方としては一応現場の言う方を信用せざるを得ない、かように考えております。
  215. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは斎藤警察長官はその場合におつたわけではないのでありますから、どうとも甘えないかもしれませんが、しかしこれは私も経験があるのです。とんでもなくやられた経験がある。しかしそのあとでわれわれが、こういう場合はどうであつたじやないかと追究すると、そのときにはこういう理由でこうしたのですなんといつて事件はあいまいになる。自分自身経験しておるから、もちろん知つておる。この場合において、一つだけ今の長官のお話について言おうと思いますが、たとえばピケ・ラインの中に二列縦隊に並んで――警官隊が立入り禁止の地域からピケ・ラインの向うへ行こうというなら、二列縦隊に並んで停止する必要はない。少くとも二列縦隊に並んで、ある純度の間隔を置いて、しかも第二組合の人が向うに八名おるとするならば、それを通すということの意図のために配置されたということだけは明らかですよ。少くとも人間が常識をもつておるものとすれば明らかである。  それからもう一つこの機会に、あいまいになつてはいけないから、明らかに速記録にとどめておきたいのでありますが、執行吏が第二組合員に対して立入り、入門の許可を与えたのは、その日、二十五日の午後八時三十分ですよ。それ以前に許可を与えておる事実は全然ありません。これは私は調べております。これは速記係にはつきり残しておきます。ですからそれ以前において、もしあなたの方で第二組合の八名に入門許可が与えられておると考えて、そうして八名を入れたのだとするならば、明らかにあなた方のとつた処置は法律上の誤りを犯したものだと思います。許可のないものに対して許可ありとして立入り禁上の地域の中に入れたのであるから、明らかにあなた方は法律上の誤りを犯しておる、そう言わざるを得ないのであります。こういう点は長官から御答弁ができなければ、具体的にその所管事項である課長からお答えになつてもけつこうであります。こういう点をもう少し具体的に明確に御答弁願いたいと思います。
  216. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 先ほども古屋委員に申し上げましたように、現実に許可を得ておつたかどうかということを現地において調査をさせて、報告を徴したいと思います。もし許可を得ていなかつたということが明瞭になりました場合にはどうか。これに対しましては先ほども申しましたように、入るべかざる者が入るについて警察は阻止しなかつたじやないかということを言われるわけであります。だがその際には、先ほども申したように、第二組合の人に対して会社側から許可をもらつた、こういつて警察に話があつたということで、警察がそう信じておつたというのであれば、これはやむを得なかつたのじやなかろうか、こう思うわけであります。
  217. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは結局決定書をごらんになれば長官、おわかりでありましよう。決定書には、執行吏はと書いてある。しかも会社の言うことなら何でも信ずるという警察なんですか。第一組合の言うことなら信ぜられないで、会社の言うことなら信じて、これはやむを得なかつたのではなかろうかというふうに長官自身としてはそのとつた処置に対して了承されるのでありますか。
  218. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 この中へ立ち入るということの禁止は、会社が申請をして、そうして許可を得たわけであります。従つてたれを入れるか、入れないか、大体会社が執達史にこれを入れますといえば、執達吏は大体許すものだということでありますから、従つてただいまそこでお話が出ており出すように、確認をしなかつたという手落ちはあつたかもしれませんが、しかし常識上それはあつたろう、こう思つたのはやむを得なかつたであろうと申し上げるわけであります。
  219. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私はそういう長官の答弁自体がきわめて遺憾だと思う。立入禁止というのは、法律上の問題ですよ。会社が申請したのはあたりまえですよ。会社が申請したのはあたりまえだけれども、しかしこれを執行するのは執行史なんです。会社が言つたからその通りなんだろうなんというような便法では、立入禁止を法律上保全することができますか。それは会社が言つたから、あそこの道路まではこれは全部立入禁止いたします。会社が言つたから室蘭の港湾全部、海面も立入禁止の地域でございます。会社が言つたから、鉄道も全部そうでございます。こう言われても、会社が言つたんだからこれはやむを得ないものでありましたということで、立入禁止の法律的な保全ができますか、どうですか。そういうことでは了承ができないはずなんです。少くとも執行吏が正当の機関を通じて、もつと言うならば、執行吏が具体的、物的な証拠としてこれを認めるのでなければ、特にこのようなきわめて熾烈な状態になつて来ている争議の中においては、警察が軽々に行動すべきではないと私は思うのです。こういう点についてもいろいろ私申し上げたいのですけれども、この程度にしておきますが、第二の点で、第二組合の結成式のときに不穏な空気があつたからということを先ほど長官が言われた。不穏な空気があつたからというのは、どこから連絡があつておわかりになつたのですか。
  220. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 警察の方がさように認めたという報告を私の方が得ておりますと申したわけで、私が不穏な空気があつたことを認めたわけではありません。
  221. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは第二組合の結成式は東宝劇場という屋内で行われたのですが、この屋内に不穏な空気があるということを――屋外においては不穏な空気があるかどうかということは、これは一目瞭然、だれでもわかるが、屋内において不穏な空気があるということを察知できるような状態――どういう形で入手せられたのですか。私服警察でも入れておいてお調べになつておられたのですか。
  222. 三輪良雄

    ○三輪説明員 第二組合の結成式、総決起大会をいたしまして、それから市内のデモ行進に移るということでございました。当日は第一組合は市内各所にピケを張つて、これを妨害をするという計画が見受けられたのでございます。そのために母恋、御前水、東町それぞれ約百名ずつの警察官を待機させてございましたから、それらを配置をして、次第にデモが行くにつれて第一組合のピケ隊が漸次増加して参りまして、その間に乱闘のおそれもあるというふうに考えましたために、最後に本署に待機しておりました約百名の者をさらに輪西町に増派して警戒いたしたということでございまして、その会場自体警察官が警備をして何か援護してやつたというような御指摘でございましたが、そういう事実はないように聞いております。  なお先ほどのお尋ねで一つお答えが抜けておりましたが、先ほど御報告をいたし出した、十五日の負傷は、第一組合のピケ隊に対して、第二組合がそこに実力でぶつかつてけがが出たのでございまして、先ほどは警察官がけがをさしたのであるというような御指摘でございましたが、(岡田(春)委員「おれは六日のことを言つた。」と呼ぶ)六日には、先ほどその点についてもお答えをいたしましたけれども(岡田(春)委員「二十五日はあなたの答弁です。」と呼ぶ)ええ、そうであればよろしいのでございますが、六日のけが人につきましては、先ほど申し上げました通り警察としてはけがをした人の氏名についてお尋ねしたけれども、お答えがなかつたということで確認をいたしておりませんということは、先ほど申し上げた通りでございます。
  223. 岡田春夫

    岡田(春)委員 最後に一つだけ申し上げますが、最初の三輪課長の答弁で非常にへんな答弁があった。これは長官にも同様にお聞きしておるのですが、二十二日の事件です。二十二日には立入禁止の地域内に労働組合員は一人もいないですよ。第一組合員は一人もいないですよ。それなのにあなたの方は約六百名の警察官を動員して、そうして道南丸という船に品物を運び込むために埠頭一ぱい埋まるほどこれを守りながら、そうして品物を運ばしたのですよ。このことは何を意味するかというと、あなた方がここで警備をしなければならないという任務は、立入禁止を侵されるかもしれないという危険に対して六百名の者が警備の状態に立つたんだろうと思う。ところがごらんなさい。三百メートル向うにいるのですよ。組合員のふちにいて警備していたというならわかる。三百メートル向うの会社側の品物を運ぶところに立つていたんですよ。先ほど争議協定は契約上の問題ですからこれは会社側とお話くださいと言うけれども、私から申すならば、立入禁止を守るためではなくて、契約上のことを無視して、会社が品物を運ぶのを擁護するためにここに行ったんですよ。現状をごらんになったらわかる。二百メートル離れておるのです。そうして品物を運ぶのをみなで守つてるんです。これは明らかに争議協定という契約上の事項について、警察官が会社側の契約上の事項を擁護するために立っておったんです。立入禁止の任務じゃないですよ。それをあなたは先ほど、契約上の問題については私は知りません。それは会社と組合でお話くださいとおっしゃるが、そうじやない。会社と警察官はこの面において、われわれの言葉で言うならば、これは結託してやったものと言わざるを得ないじゃないですか。先ほどの御答弁が不十分であったのなら、もっとはっきり御答弁願ってけっこうです。
  224. 三輪良雄

    ○三輪説明員 先ほど申しましたように、すでに十六日、十七日、十九日同じ状態で、埠頭に青年行動隊が入り、最後の十九日には二千二百名の組合員の方が入っております。当日もはしけで約四十名の青年行動隊が海上から埠頭に上る能勢をとっておったようでございますし、御前水の千二百名の人たちが、当時、三百メートルか何メートルかちよつと私も存じませんが、入れは入れる状態におったわけでございまきまして立入禁止地域に入ることは違法であるということは、地元の警察が一、二名行って警告いたしておりましたが、聞き入れていただくわけに参りませんでした。二十二日にまた警察が出動しなければ同じ状態が現出したと当時警察としては見ざるを得なかったと思います。従いまして、そこに六百名の警察官を配置いたしましたが、結果から申せば、組合員の自粛と申しますか自重によってそういうことは起りませんでした。まことにけっこうだと思うのでございますが、警察を配置しなければまた同じ状態が起つたであろうと当時推測いたしました点は、それに続く三日間に同じことが行われておったその点で、立入禁止の仮処分が破られることは明瞭だというふうに予測されたものと思います。
  225. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それで最後に、こういうようなきわめてデリケートな状態になって来ると、これは半製品ですから、品物を運び出すことによって、決して簡単にこれで障害になったとかなんとかいうものじゃないはずなんですよ。やはりこういう点についても、会社の方で事故の起らないように押えて行くようにして、第一組合だけにことさらに圧迫を加えるということではなくて、会社に対しても第二組合に対しても、治安維持の観点に立ってすべてを処理していただきたいのです。あなた方の任務というのは、治安維持の観点に立ってやっていただかないと、争議の中に介入するような状態がともすれば出て来ているということが、きわめてわれわれにとつては遺憾なんです。こういう点はぜひとも今後御注意を願いたいと思います。  最後に、この問題についてはわれわれは告発するつもりでおります。そこでこの問題を徹底的に人権蹂躙の立場において捜査をしてもらわなければならないと思う。そこでただいま申し上げたような状態でありますが、ひとら法務省として両局長からこの問題についての御答弁を願いたいと思うのです。
  226. 井本台吉

    ○井本説明員 告発があれば、告発事実につきましてわれわれは十分調べを
  227. 戸田正道

    ○戸田説明員 私の方には先月の二十八日、新労働組合から室蘭の人権擁護委員会に人権侵害に対する訴願の件として出ております。これは「第二組合が第一組合の指導理念の下には早期円満解決を計ることは不可能であると古志相集まり第二組合を結成しました。しかるに第一組合は機関決定として組合員の行動の自由を束縛するがごとき示達指令を発し、更に新労加入者及びその家族に対し身体あるいは住層に対し各人の行動の自由、人権を甚しく侵害する事実が発生しております。これらの人権について保護してもらいたい。」こういうことが新しい組合から出て参りました。人権擁護局といたしましては、争議に介入してはいけないというので、この申告につきましては慎重を期せなければならぬことで、ただいままだ調査はいたしておりません。しかしただいま警察との事件が出ましたので、あるいは札幌の法務局においてはすでに調査をしておるかと存じます。人権擁護局としましても、十分調査をいたして善処いたしたいと思います。
  228. 岡田春夫

    岡田(春)委員 やはりそういうような抽象的な問題でなくて、具体的になぐられておる。けが人が出ておる。こういう問題はほっておけない問題なんです。どうもこういう問題になると、人権擁護局はどうか知らないが、検察当局はなるべく時間をかして、半年も一年もあとでないかもしれないけれども、ずいぶんあとになって調べるというようなことが多いのです。ですから今度の場合には、告発が出ると同時にただちに行動を開始するようにお願いをしておきたいと思います。人権擁護局にもその点を強く要求いたします。
  229. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十四分散会