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1954-09-11 第19回国会 衆議院 法務委員会 第68号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月十一日(土曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君    理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君    理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    高橋 英吉君       田中 角榮君    田渕 光一君       花村 四郎君    長谷川四郎君       本多 市郎君    松山 義雄君       安井 大吉君    赤澤 正道君       中村三之丞君    吉田  安君       猪俣 浩三君    神近 市子君       高津 正道君    田中幾三郎君       中村 高一君    岡田 春夫君       池田正之輔君    中村 梅吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 小原  直君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 六月三日  委員山下春江君及び神近市子辞任につき、そ  の補欠として三木武夫君及び萩元たけ子君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員萩たけ子辞任につき、その補欠として  神近市子君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員押谷富三君及び鍛冶良作辞任につき、そ  の補欠として橋本龍伍君及び福永健司君が議長  の指名委員に選任された。 同月二十三日  委員橋本龍伍君及び福永健司辞任につき、そ  の補欠として押谷富三君及び鍛冶良作君が議長  の指名委員に選任された。 七月六日  委員押谷富三辞任につき、その補欠として林  譲治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員林譲治辞任につき、その補欠として押谷  富三君か議長指名委員に選任された。 七月十四日  委員木下郁辞任につき、その補欠として辻文  雄君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員辻文雄辞任につき、その補欠として細野  三千雄君が議長指名委員に選任された。 八月七日  委員細野三千雄辞任につき、その補欠として  木下郁君が議長指名委員に選任された。 九月二日  委員木下郁辞任につき、その補欠として辻文  雄君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員青木正君及び保利茂辞任につき、その補  欠として長谷川峻君及び田渕光一君が議長の指  名で委員に選任された。 同月十日  委員田渕光一君及び牧野寛索辞任につき、そ  の補欠として坪川信三君及び松山義雄君が議長  の指名委員に選任された。 同月十一日  委員高橋英吉君、坪川信三君、松山義雄君、三  木武夫君、佐竹晴記君、辻文雄君、木原津與志  君及び池田正之輔君辞任につき、その補欠とし  て田中角榮君、田渕光一君 安井大吉君、赤澤  正道君、田中幾三郎君、中村高一君、高津正道  君及び中村梅吉君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  鍛冶良作君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 六月三日 刑法の一部を改正する法律案八百板正君外百三  十四名提出衆法第一三号)  売春等処罰法案堤ツルヨ君外十一名提出、衆  法第三四号)  裁判所の司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件  上訴制度及び違憲訴訟に関する件  外国人の出入国に関する件  弁護士法及び執行費用に関する件  戦犯服役に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  法務行政及び検察行政所謂造船陸運保全  経済会日本殖産金庫等疑獄事件)に関する  件  人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入る前にお諮りいたします。理事が一名欠員になつておりますから先例によりまして委員長より指名いたしたいと存じますが御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 なければ鍛冶良作君を理事指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 小林錡

    小林委員長 それでは本日は法務行政及び検察行政、いわゆる造船陸運保全経済会日本殖産金庫等疑獄事件に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入りますが、質疑順序は昨日理事会でいろいろ御相談をしてお打合せをいたしましたが、それに従つて順次これを許すことにいたします。なお皆さんに申し上げたいことは、別に質疑の時間は制限いたしませんが、良識に従つてできるだけ簡潔に、あまり長くないようにお心得を願いたいと思います。  それではこれより順次申出の順序従つて質疑を許します。鍛冶良作君。
  5. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は主として小原法務大臣質問いたしまして、それに関連いたして井本局長にもお尋ねしたいと考えます。小原大臣法務行政上最も難点と思われます保全経済日本殖産造船並びに陸運等汚職事件捜査のまだ未解決のうちに就任せられたものでありますから、これらの処理に関してよほどの決心と用意を持つて就任されたものと考えるのでございます。しこうしてこの難点を究明するお覚悟であつたと考えますが、これに対してどのようなお気持法務大臣に御就任なつたか。しこうしてその後この処理に対してどのような御努力をなされたか、この点をお伺いしたいと思います。
  6. 小原直

    小原国務大臣 ただいまの鍛冶委員の御質問に対してお答えいたします。私が法務大臣就任いたしましたのは、本年の六月十九日であります。その一両日前に吉田総理から突然私に法務大臣就任してもらいたいというお話がありました。私は御承知ように官界を去ることすでに十数年、しかも年もとつおります。今日のいろいろの事情にも不案内でありますので、あの造船疑獄等の、ほとんど検察史上まれなる事件といわれたほどの大事件終結に至らざる間に、しかも佐藤自由党幹事長に対する逮捕についての指揮権発動世の中でごうごうたる最中にありましたから、私はかような際にこの難局に当ることはとうていできないことであるということで、かたくお断りしたのでありますが、たつて御希望があり、かつ私が党に関係がないからこの際には就任してもらつて善後処理をやつてもらいたいというお話で、だんだん考えました末、不敏ではありますが何とかこの難局を乗り切つて法務行政及び検察行政の姿をできるだけ調整したいという考え就任いたしたのであります。
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員 さような御決心の下に御就任せられたことをわれわれも多といたします。しこうして御就任後においてこれが処理結末がついたと考えますが、それにつきましても、あなたのおとりになつた態様、どういう方法でこれを処理ようとなさいましたか。それから処理の結果でき得る限り国民疑惑を解くために、これを発表せられる方がよかつたと考え、またあなたもそうなさつたと考えますが、それらに対してどのよう方法をおとりになつたか、大体のところを具体的にお示しを願いたいと存じます。
  8. 小原直

    小原国務大臣 お答え申します。ちようど私が就任した六月十九日は、先はと申しましたように、佐藤自由党幹事長に対する逮捕及びこれが指揮権発動についてのいろいろの物議が一応ちよつとしずまりかけておつたように思いました。その際に就任いたしまして、まず第一に感じたことは、この大きな事件処理がまだ相当未解決にあるということでありましたので、さつそく本省の事務次官、刑事局長等について、この事件の初めからの経過並びに今日の段階においては、どういうふうになつておるかということを聞いたのであります。もちろん非常に多数の人が調べられ、また多数の証拠を調べられておりまして、事件の詳細はとうてい頭に入り切らないのであります。大体の概貌だけは頭につかんだ次第であります。そして爾来この事件についての処理をいかにすべきかということを考えたのでありますが、時あたかも佐藤幹事長に対しまする分の収賄界疑の点は、結局起訴ができないという状態になつてつて、いわゆる政治資金規正法で、その数日前に起訴されておるということがわかつたのであります。その他の取調べを受けた被疑者、あるいは参考人等についての状態は詳しいことはとうていわかりませんでしたが、大体においてその当時は検察庁捜査は終りに近づいておつて、新たに捜査を進むべき対象になるものはなかつたと私は聞いておつたのであります。それならば今まで懸案になつておる未解決事件を、できるだけ早く取調べを終了して終結に向わせることがよかろう、こういう考えのもとに事務当局に話して、検察庁の方にそれの連絡をとらせたのでありす。その結果だんだん取調べが進歩いたしまして、結局あの七月三十日に検事総長談話をもつて発表せられたよう結末に到達をいたしたのであります。  ただいま鍛冶委員からお尋ねになりましたように、その際において、あの発表にできるだけもつと全貌発表した方がよかつたのではないか、そのときの私の考え方がどうであつたかという、御質問であります。私もあれほど大きな世の中を騒がせた事件であり、ことにリベートに関する金の使い方というものは、国民の税金から成り立つておるのでありますから、その点はできるだけ明らかにして、世の中の誤解を解き、そして事件のできるだけのことは明らかにした方がいいのではないかと考えました。しかし当時はまだ反面においてリベートに関する背任、横領その他の多数の事件起訴になつております。また開会議員に対する収賄事件及びこれの反面になるところの会社重役等に対する贈賄事件等起訴になつてつたのでありまして、この際にあの捜査内容をできるだけ国民にお知らせしたいと申しましても、そこにはおのずから限度かありますので、関係者の名誉の保持考えなければなりませんが、これはいろいろ規定制約もあつて、それほど昔のようには名誉保持に強く考えを及ぼす必要もないと思いましたが、それでもなおこの点については相当の考慮を要、します。さらに起訴されておる事件公訴を維持する上において検察官捜査によつて得ました材料を公にする、あるいはそれの捜査の技術を公にするというようなことは、公訴権の維持に害を生ずるおそれが多分にあると思います。さらにまた御存知のように今日の刑事訴訟法におきましては公判開始前は公判に関する類を公にすることを得ずということになつております。これは言うまでもなく判事公訴の提起を受けて、その事件を審理する場合にあたりましては、公判においては起訴状一本を受取つてあと証拠検察官被告人弁護人関係者がそれぞれ後日において攻撃防禦方法を提供する。これによつて判事が心証によつて証拠を裁断して、そうして公平 の判断をなす、こういうのが今日の刑 事訴訟法建前であります。これは講義めいて申し上げる必要はないのでありまして、実際そうなつておるのでありますが、これをするには、捜査中に得たところの材料公判開始前にその内容発表いたしまするということは、とりもなおさず判事に公平なる判断をなすべき司法権能障害を与えることであり、言いかえますると判事判断を誤らしむるおそれがある、公平なる司法権の行使が障害を受けるおそれがある、こういうことにもなりまするから、その程度において制約せられた範囲であの事件概貌を公表するほかはない、こういうことに考えたのであります。  そこであの事件発表でありまするが、これは第一線の東京地方検事正のもとにおいての各主任検事東京高等検察庁検事長以下の各検事、及び最高検察庁においては検事総長を主として各係検事、それぞれが協議いたしまして、今申し上げたような趣旨においてと思うのでありますが、やはり検察庁でもそういうようなことを考えられて、今日ではあの程度において発表することがよかろうということになりましたものと見えて、ああいう発表になつたのであります。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 御事情はわかりましたが、大臣あとうものなら許す限り全貌を明らかにして、国民疑惑を解きたいというお気持のあつた点は、今のお話通りだと考えます。そこで今お開きしたよう事情で、これ以上発表できないということであつたと考えまするが、私はこれらの事件政治上重大なる関係があり、かつまた特別に国民が関心を深めておるものであるということを前提といたすのでありますが、この談話内容には起訴になつた者が何名、起訴猶予になつた者は何名、不起訴になつた者は何名と書いてあるのであります。ここまで出ておりますると、だれしも考えるのは、起訴になつたのはこれは公判に出まするから明瞭になるし、また公判前に発表できないという刑事訴訟法規定のあることも周知の事実でありますから、これはそれほどでもありませんが、起訴猶予なつたり不起訴なつたりした者に対しては、どういう人がどういうことをしたのであろうか、またどういう情状で起訴猶予にせられたのであるか、どういうことで不起訴にせられたのか、それらの点を知りたいと思うのは、これは人情の常だと考えます。これらの点を考えまして、そのお気付と両方合せまするならば、いま少しく内容に触れてさしつかえないのでなかろうかと考えまするが、どうしてもいかないものか。いかないとすれば、いかなる事由をもつていかないのか、この点をいま一度明瞭にしていただきたいと考えます。
  10. 小原直

    小原国務大臣 お答えいたします。申し上げたように私もできるだけは発表する方がいいと思つたのでありますが、あの程度をもつて今日の段階においてはやむを得ないとの検察庁決定で、ああいうふうになつたのであります。そこで国民疑惑を解くために、なるべく早く、全貌といわずとも、ある程度川らかにした方がいいのではないかというお話、ごもつともでありますが、これはやはりしばらくかすに時をもつてしていただきたいのであります。捜査秘密と申しましても、それはある時期があるのであります。ある時期を過ぎれば、捜査秘密はおのずから解けてしまう。たとえば公判が開廷になりすると、公判にいろいろの証拠が出まして、関係者の供述、それに関する書類、ことごとく公判に展開せられますから、これによつて国民事件の大よそのことを知り得るのであります。本件の公判がいつ開かれるかわかりませんけれども、とにかく年内に開かれますか、あるいは少し遅れますか、その後においては相当の内容がこれによつてわかることと思うのであります。であるからしばらくはこの時期を待つていただきたい。  それから、その他のもので、公判には出ないがなお秘密を要するというものもやはり若干あつたんじやないかと思います。ここにやはり国政調査権限界検察庁捜査秘密というものとの間に、できるだけ調和はしましても、やはり何かの限界があつて制約を受けることがあるように私は今のところは思うのでありますが、これもまだ結論を得ませんので、今せつかく事務当局及び検察庁においても研究中でありますから、確言はいたしません。ただ司法権及び準司法といわれる検察権とは、国政調査権との間に何か適当なる調和点があるんじやないか、こういうことを考えておるのであります。それゆえにある時期を過ぎれば、起訴された事件に全然関係のないものでも、自然に秘密が解除される時期が来ると思いますから、少しごしんぼう願えば、その時期に大よそのことがわかるのではないか、こういうことを考えます。  なおもう一つは、あの処分決定内容として検事総長発表せられたもののわく外に、わくを越えて若干何か言い得るものがあるか、こういうお尋ねであります。これも私はあり得ると考えます。それらも今せつかく検討中であります。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今の国政調査権についてはまたあとでお聞きしますが、今のところは抽象的にお聞きしたいのです。起訴なつたものは現在発表できないことは、これはわかります。ただ起訴猶予なつたり、不起訴なつたものも職務上の秘密であるというだけでは展が難しないのです。われわれはある程度のことはわかります。起訴猶予なつたものはなぜ発表できないか、不起訴なつたものはこういう理由発表できない、こういうことはおそらく法規上のもと、もしくは検察庁職務上の点からおつしやるものと私は考えますが、この点をひとつこの際、国民疑惑を解くためにでき得る限り明瞭にお示しを願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  12. 小原直

    小原国務大臣 お答えいたします。不起訴になりあるいは起訴猶予になりました者の事案の内容は、今のところでは起訴せられておる事件証拠になるべきものが大部分であると考えております。それゆえにこの点は結局今日の段階においては申し上げられぬ、こういうことになります。そのほか、なお検察本来の立場においてどうしてもこれは秘密を守らなければならぬというものもあるのではないか、これも今せつかく検討中でありますから、その点においても、後日において検討ができましたならば申し上げます。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほど私が質問せぬ前に大臣からお触れになりましたが、そういうことでこれ以上発表できないということを法務当局として厳守せられておるといたしますならば、過日決算委員会において国政調査の面でこの点の糾明がございまして、その結果、被疑者なつ佐藤榮作並びに池田勇人両氏に関する事実の内容を、証人として検事総長が出る場合に説明してもよいという承認を与えてもらいたいという要求があつたと聞いておるのであります。この点に関して私は、この秘密職務上及び検察立場からの秘密であるならば、どこから言うて来よう秘密秘密であると思うのでありまするが、この点に関しまして特に私が御考慮を願いたいのは、今おつしやつたよう国政調査ということでやつておる。国政調査は憲法によつて認められたる国会の権能でありますから、これに対してでき得る限り調査をなし得るように便宜を与えるというか、御協力なさることは当然の義務だと考えるのであります。そこでそれらの点から考えまして、どうしてもいかないのか。それからまた決算委員会法務委員会というものとでは委員会の職責の異なることも御承知だと考えるのであります。かりに決算委員会で不適当であつても、法務委員会の本貫から言うならば、法務委員会として法務省という所管の役所の関係から、決算委員会では不適当であるが法務委員会ならいい、こういうようなこともなかろうかと思いまするが、これらに関していかなるお考えをお持ちになつておるかを承りたいと思います。
  14. 小原直

    小原国務大臣 ただいま鍛冶さんの御質問のうち、私ちよつと了解しかねる点があるからお尋ねするのですが、佐藤榮作氏と池田勇人氏に関する分について証言承認してくれという要求があつたというお話がありましたが、だれが承認しろと要求して来たかというお話ですか。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 決算委員長名で、佐藤検事総長証言に対して内容を説明してもよいという承認を与えてくれという書類が出ておるはずであります。私は委員会に出ておるものは見ましたが、あなたのところへ行つたものは見ませんが、あなたのところに来ておるかと考えますから、その点を申し上げておるのであります。
  16. 小原直

    小原国務大臣 あの決算委員長から来た承認要求する書面のことをおつしやるのですか。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうであります。
  18. 小原直

    小原国務大臣 それは参つております。それは参つておりますので、それについて今せつかく検討中であります。承認を与えてもいいものがあるかもしれないし、与えられないものがあるかもしれないので今調べておる最中であります。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは慎重に御研究中であるというならば、私はここでこれ以上追究してもやむを得ませんが、もう一つ私がお聞きしたいのは、あの要求書には特別の人だけを指摘しております。これはまことに私は重大なことだと考えるのであります。もしかようなことの承認を求めるというならば、件全体に関してさしつかえない限りのものの承認を求めるのは当然でないかと考えるのでありまするが、たつた二人だけを限定しておる。かような場合に法務当局としてどういうお考えを持っておるか、われわれは重大なること考えますがゆえにここでお気持ちを確かめておきたいのであります。この談話の中にも書いてあります通り、これは造船汚職だけであります。これだけでも六十何名の被疑者があつたと書いてあるのであります。もしこれらの事実について、御承認を与えられるたらば、佐藤池田に限るべきものではなくて、他の関係者全体に対してやるのが当然だと思う。私はこれはひとり自由党の者だけを調べられるのは奇怪千万だ。改進党においても十幾名の者があると聞いておる。社会党においても何名かある。ことに衆議院副議長という重職にある原彪氏も被疑者として調べられておると聞いておる。これらの者に対してはなおさら私は天下に公表すべき重責があると思う。この意味において、あなた方は承認せられるたらば全部に承認すべきものと思うがどうか。またその中の一人や二人だけか指定してやられる場合には、その承認は不適当なものであるということでけられるお考えはないか、この点について伺います。
  20. 小原直

    小原国務大臣 お答え申し上げます。あの決算委員長から法務大臣あて承認要求書は、佐藤検事総長に対する決算委員会における各委員質問に対しての総長の答弁中証言を拒否せられた分について承認を求めて来るということになるものと思うのであります。従つて今御指摘になりました佐藤池田両氏のことは、あの決算委員会における佐藤検事総長に対する質問中にあの名前が出ておる、その点について検事総長証言を拒否せられておる点がある。従つて決算委員長はその点に関する承認を求めて来られたものと私どもは了解いたしております。これは法律上からいえばそうなるほかしかたないと思います。であるから、証百を求められた者以外にわたつて法務大臣がその余の者をもだれだれということの証言についてこれを承認するという方法法律規定に書いてないのでありますから、これはやむを得ないのであります。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 なるほどあなたの方では向うから要求せないものは承認するとかせぬとかを返事をする必要はないということはもつともだと考えますが、われわれは職務秘密であると言われるからそれに触れない。いやしくもそうでない、そういうことが許されるならばわれわれも聞きたいことはたくさんあるのです。改進党においてもうまいことを育つてつてもたくさんおる。それらに対してはわれわれは現在において言わぬ方がいいと思うから言わないが、あそこに出ておるからこれに承認するというならば、われわれが調べて出たらそれに対してまた承認しなければならぬということになりますが、そういうことであつたならはきりなしにどこまでも出て来ますが、これはいかがでありますか。
  22. 小原直

    小原国務大臣 お答え申しますが、委員会における証人尋問のやり方が、あるいは一人調べ、一問を聞くというような場合もあり得ると思う。その場合に、やはり証言を拒絶した場合には、やはりその証言承認せよといつて来られることもあり得るんじやないか、これはどうも法律建前がさようになつておるのであるからやむを得ない。もしたくさんの人に対して証人調べをしで、その証人についての分が証言を拒否するということになりますれば、それを合せて全部承認せよといつて来られれば、これは私どもの方も割合に処理がしやすいのでありますけれども、どうも法律建前がああなつておるので、あるいはどういう御理由か知らぬが、今度来たのは佐藤検事総長に対する質問事項中、証言を拒否せられた八項目だけについて承認せよという要求が来ておるのでありまするから、私どもは今この範囲において検討をいたしておるのであります。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 いやしくも承認を求める場合において、そういう特殊の人だけの承認をせよということは、委員会として慎むべきことで、私はあなたを責めたつてようがないけれども委員会としてはさようなことをやれば、これから出て来ればまたやらなきやならぬ。やるならば造船汚職なら造船汚職に関してこれこれの内容を言つてもらいたい、これならば私はわかると思う。今そんなことを育つておつたらだんだん出てやります。改進党の総裁である重光葵君にも関係があると聞いておる。それらの点に対してもわれわれは聞かなければならぬ、同党の首脳に対してもやる、そんなことを育つてつては私はいかぬと思う。そういうやり方をすることを私は定めるのである。私はあなたを責めてみてもしようがないから、これらの点に関して相当御注意あつて、相当御研究つて、これに対して善処せられんことを私は望んでおきます。  次に私がお開きしたいのは、この事件に関して先ほど来お触れになりましたが、犬養法務大臣が指揮権を発動いたしましたがために、捜査上非常な支障を来したと、この談話のうちにも発表されておるのであります。ところがこの談話を種にいたしまして、世上この指揮権の発動によつてこの事件をもみ消したのである、これでもみ消されたがゆえにこの事件はものにならなかつた、かようなことが流布されておるのであります。この点は重要なことでありますがゆえに、私は項をわけて承つてみたい。  第一、この指揮権の発動は、捜査を中止せよという指揮権の発動であつたか、単に佐藤榮作逮捕をやめて、身柄不拘東のままで捜査ができ得るはずであるから、それでできるだけの捜査をせよという指揮権であつたか、これを明瞭にしていただきたい。
  24. 小原直

    小原国務大臣 私はあの当時職におりませんので、あのときの、いわゆる指揮権が発動に至りましたいきさつのこまかいことを承知いたしておりません。従つてあの検察庁から出て来た佐藤榮作逮捕に関する要請のてんまつは、井本刑事局長から御説明させたいと思います。
  25. 井本台吉

    井本説明員 犬養法務大臣検事総長に対します指示の内容は、昭和三十九年四月二十一日付で、佐藤榮作氏に対する涜職事件に関する稟請については、事件の性格と重要法案審議の現状にかんがみて、追つて指示あるまで逮捕の手続を猶予せられたいという趣旨のものでございました。
  26. 鍛冶良作

    鍛冶委員 大体わかりますが、大事な点ですから、明白にしておきたいからもう一ぺんこまかく承ります。逮捕することをしばらく待て、こういう指抑であつて捜査をやめよという指揮ではなかつた。ことに佐藤榮作一人に関する事件であつて、他の事件に関してまでも、指揮の及んでおらぬことは当然だと思いますが、これは当時お取扱いになつたあなたから、ここで明瞭にしておいてもらいたい。
  27. 井本台吉

    井本説明員 佐藤榮作氏の涜職事件につきまして、東京地検の検事正から東京高検の検事長並びに検事総長を経まして、逮捕を請求することの許可の票請があつたのでございます。それに対する法務大臣の指示が先ほど申上げた指示でありまして、その余の人の事件には、この指示は何ら直接関係はございません。
  28. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そのときの新聞発表がここにございますから読んでみますが、これに間違いなかつたかどうか。重要法案通過の見通しのつくまで暫時逮捕請求を延期して、任意捜査を継続すべき旨指示した、こうなつておりますが、この点は間違いがございませんか。逮捕をやらないでできるだけの捜査をせよ、こういう指示であつたと心得ますが、いかがでありますか。
  29. 井本台吉

    井本説明員 犬養大臣の新聞に発表せられました内容は、実質におきましては直接検事総長になされました指示と同じでございます。ただ法律専門家に対する指示でありますから、原文通りではございません。原文は先ほど私が申し上げましたように、佐藤榮作に関する汚職事件の要請については、事件の性格と重要法案審議の現状にかんがみて、追つて指示あるまで逮捕請求の手続を延期せられたい、そういうことが書いてあつたのでございます。その意味は新聞発表と同じつもりでやつたものと考えております。
  30. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それではもう一度局長に承りますが、捜査は相かわらず続けておやりになつておつたことと存じますが、おやりになつておりましたか。またでき得る限りの手段を尽しておやりになつたと思いますが、その点はいかがです。
  31. 井本台吉

    井本説明員 逮捕請求の手続はいたしませんでしたが、その以外の捜査手続につきましては、可能な範囲においてできるだけのことをしておつたのでございます。
  32. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この点私は大臣と両方に聞きたい。まず大臣から御答弁を求めたいのですが、われわれは旧刑出訴訟法の時代においても、捜査は身柄不拘束でやるということか原則で、やむを得ざるときに限つて拘束すべきものであると出つて参りました。いわんや今日新憲法ができて人権を尊重せられ、かつこれに基いて新刑事訴訟法ができまして、人権尊重を第一にしてこの規定ができたものであります以上は、あとう限り身柄の拘束をせないで捜査をするということが原則でなければならぬと心得ますが、大臣はこの点に対していかなる御所見を持つておられますか。
  33. 小原直

    小原国務大臣 刑事手続において、被疑者その他関係者の人権を尊重すべきことは、旧刑訴法の時代も今日の新刑事訴訟法の時代も同一であるのみならず、今日はかえつてその点は人権尊重の意義が強くなつていると承知いたしております。従いまして、捜査はなるべく不拘束でやるということが好ましいのであります。しかし事件によりましては、どうしても逃走あるいは証拠隠滅を防ぐがために、身柄を拘束して調べなければ結果を得られないことが多々あるのでありますから、この場合においては、身柄を拘束することはやむを得ないのでありまして、今日の刑事訴訟法においてもこの点認めているのであります。ただこれをどの点までやることが、人権尊重の意味に合するかということは、当該係のよく心得て、間違いを起さないように努むべきことであると存じております。
  34. 鍛冶良作

    鍛冶委員 井本局長に伺いたい。これは国会でもずいぶん問答したところでありまして、局長も同一のお考えであろうと私は思うが、いかがでございますか。それから、あなた方はよく精神はそうであるが、逮捕する方が便宜だ、こういう言葉をたびたび承る。私は、なるほどそれは身柄を拘束しておけは便宜でございましよう。自白を強要させるのにはたいへんな武器でございましようが、今大臣の言われたように、人権尊重の建前から行くならば、あなた方の便宜をもつてようなことはなすべきものじやない。事情やむを得ざるという具体的のことがなかつたらなすべきじやない、こう私は考えますが、この点は局長並びに検察官考え方はいかがですか。
  35. 井本台吉

    井本説明員 大臣が御答弁になりました通りと私は考えております。なおただいま御質問がありましたので、私従来申し上げた点について、あるいは私の言葉が足りなかつたので、さような誤解を生じたかと存じますが、逮捕捜査の便宜のためにやるというようなことは、これは邪道でございます。便宜のために人権を躊躇するというようなことがあつてはならないのでございます。但し、私先月二十三日の決算委員会のときにも申し上げましたが、逮捕すべき段階におきまして、逮捕すべきものを逮捕しないということになりますと、これまた検察官としては職務怠慢を問われるのじやないかと考える節もございます。それはもつと端的な例をあげて申しますと、たとえば凶悪な殺人犯人がある。さような者が逃走するのに、いくらこれは人権を尊重すべきであるからというて、逮捕しないで調べるというようなことがあつては、これは人権の尊重を重んずるあまり、そういうようなことがあつてはならないと私は考えるのであります。(「殺人犯と一緒にしては困る」「不謹慎だ」と呼ぶ者あり)
  36. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あなた方は捜査の必要上やむを得ないと言われるが、私はいつも言うのだ。具体的にやむを得ない事情がなくてはいかぬものだと思うにかかわらず、それを抽象的に、こういう場合もあるからあるのだ、あるのだからこれをやるのだ、こういうならば、これはどこでもやれるはずです。私はそれらに対して今の局長の御答弁では満足を得ません。あなた方はほんとうに人権尊重の意味から新刑事訴訟法の精神を体して、あとう限り身柄を拘束しないで任意捜査を継続すべきものであるという原則心があるのかどうか。この点をもう一ぺん明確にしていただきたい。
  37. 井本台吉

    井本説明員 先ほど申し上げましたよりに犯罪の捜査は任意捜査を原則とするのでございます。その点ははつきり申し上げます。
  38. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは一般の場合ですか、憲法五十条があります場合においては議員に対しては特に身分の保障がある。さらに国会開会中においては審議権を尊重するという意味が重大にうたわれておるものと心得るのであります。なおまたその人の地位によつて国政上重大なる支障があるということになれば、これも特に考慮に入れて捜査方法考慮せられなければならぬものでないかと私は考えますが、大臣はこの点に対していかなる御所見をお持ちになつておりますか。
  39. 小原直

    小原国務大臣 今のお尋ねの点は私もさよう考えるのでありますが、要するに国会議員が国会の開会中には特別に身分の保障を強く持つておるのであります。従いましてこれを逮捕するかどうかということは慎重に考慮せんければならぬものと思います。国政の臨機とあわせて考え逮捕して、なおかつ証拠を得てその者を検挙できるかどうか、つまり犯罪の証明をするかどうかという考え方と国政審議の重要性とは、やはり十分考慮をしてみなければならぬものと考えております。
  40. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこでこの事件に関しまして、逮捕拒否せられたがために捜査に支障を来した。なるほど逮捕することと逮捕せないでやることでは、逮捕せないでやることは困難でありましよう。手数のかかることでございましよう。苦心のいつたところでございましよう。不便であつたこと、多少の支障のあつたことはわれわれも認めますが、先ほども言われた、あとう限りの捜査を続けて捜査に遺憾のないだけのことをやられたかどうか。これは局長から伺いたいのであります。
  41. 井本台吉

    井本説明員 七日の決算委員会証人として馬場検事正が証言しておりましたのを私はラジオで聞いておりましたが、相当支障があつたということはあの当時の証言通りと思います。ただ具体的にしからばいかなる障害があつたかという点についてはその例を指示することはできないと思います。できるだけのことは努力をして捜査を続けたというよう考えております。
  42. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これに関して世上このために検察庁の威信を疑われ、遂にうやむやにしてしまつた、こういうことを言われておりますが、あなた方はさようなことがあると思いますか。それともできるだけのことをやり、検察庁としてはこれ以上遺憾のないまでにやつたものである、かようにおつしやられまするか、いかがでありますか。
  43. 井本台吉

    井本説明員 法律の許された範囲でできるだけのことはいたしたつもりでございます。
  44. 鍛冶良作

    鍛冶委員 検察庁の威信を保持するだけの確信はございましようか。
  45. 井本台吉

    井本説明員 世上いろいろな批判があると思いまするが、主観的には検察庁側といたしましては、自分たちのなすべきことは全部尽したというように私は考えておると思います。
  46. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ついで承りたいのは、去る八月十日に吉田総理大臣が自由党全国支部長会議の席上で流言飛語という言葉を用いられました。これに対して大臣は、当時どの委員会でありましたかに出られて、非常に驚いたというお言葉を述べておられる。また過日も検事総長から検察陣全体が驚きかつ憤慨した、こう言つておられるのでありますが、私は大臣並びに局長から検察側がどの点を驚き憤慨しておられるのか、ここで明瞭に承りたいのであります。私はここに当時の速記録がありますから、その流言飛語の点をここで明瞭に申し上げます。政府の指揮権発効のゆえんであります。この点についていろいろ誤解もありますが、新聞その他でおもしろ半分に流説しているものがあるのであるが、政府としては、かかるこれら流言飛語を考慮せず、法律の命ずるところによつて指揮権を発動したのであります。これは諸君が、県民諸君に十分お話を願いたいと思います。そう言うておられます。指揮権発動をしたということをこういうので指揮権発動をした点について、いろいろの誤りがあるけれども、われわれはさような流語飛語にまどわされることなく、法の命ずるところによつてやつたことを、県民諸君に伝えてくれ、こう言うておられる。しかるに世上では流言飛語によつて検察陣がおどらされた、かような報道をしておるものもありまして、これによつて私は検察陣が憤慨したのではないかと思うのでありますが、この点は大臣も十分御承知の上でございましようか。もしこの点が御承知であるならば、私はそう驚かぬでもよろしい。用語のよしあしは別であります。別でありますが検察陣を誹謗したり、検察陣が流言飛語でおどつたと言うたものでないことは明瞭でありますから、これが明瞭であるならば驚くとか憤慨するということがないと思いますが、この点はいかがにお考えでざいまいすか。
  47. 小原直

    小原国務大臣 ただいまのお尋ねにお答えいたします。あの八月十日の自由党支部長会議吉田総理大臣の演説中、私どもが理解しかねる点が多々あつたのであります。それは皆さんも御承知でありましようが、当日の夕刊に大々的にいろいろの事項をあげて書いてありました。また翌日の朝刊にもやはり引続いて同様のことが記載してありました。ところがこれは各新聞の記事がまちまちでありまして、統一がとれておらぬのであります。従いましてどの記事が実際の事実に適合しておるのかどうかということを、私どもは理解しかねたのであります。しかるにその際に八月の十二日に衆議院の決算委員会において、私に対してこの吉田総理の支部長会議における演説の若干の事項をあげて、こういう言葉があるがどう思うかというお話がありましたので、私も当時は各新聞の記事がまちまちで、あるものは流言飛語によつて検事が踊つて本件の捜査ができたのであるかのごとく申しております。またあるものはいかにも総理大臣佐藤榮作氏の政治資金規正法違反によつて起訴せられておることをよく御了解にならずにお話になつておるのではないかというような節があつたのでありまして、それらの点をあげて私に御質問になりましたから、私もあのうちでふに落ちないものがあります、あるいは流言飛語によつて検事捜査したなどということになつてはたいへんなことであります、こういうことを申し上げたのでありますが、とにもかくにも新聞の記事が不統一であるからよく実情を調べた上で申し上げなければならぬのでありますから、今日は詳しいことは申し上げられませんということで、あの質問に対する詳細な答弁はお断りしたのであります。かよう事情であります。
  48. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今私がここで読み上げた通りであります。指揮権発動に関して流言飛語があるが、そんなものをわれわれは考慮する必要はないのだと育つております。今明瞭になりましたように、指揮権の発動は、逮捕をしばらく待て、そして任意捜査でできるだけの捜査を続けておく、こういうことであつて捜査を打切つたものでは絶対にありません。これは今明瞭になつた。しかるに世上では、これを捜査を打切れと育つたのだ、この指揮権によつてこの事件をもみつぶしてしまつたのだ、こういうことが流布されておる。これが流言飛語なんだ。私はこの点を流言飛語と言われたものと解釈するし、あなた方もこの点を流言飛語と考えられるであろうと思う。してみれば、さようなことを言つたからといつて、驚くにも足りなければ、憤慨するにも足りない。要するに誤伝がもとでそういうことになつたと心得えまするが、この点もう一度あなたの御所信を伺いたい。
  49. 小原直

    小原国務大臣 先ほどの御質問に私の答弁が足りなかつたのであります。新聞の記事がまちまちになつおりまするから、どこかにほんとうの種があるのであろうということを調べました結果、NHKが録音をとつて、録音盤があるという話を聞きました。早速その録音盤を手に入れたいと思つたのでありますが、これがなかなか手に入らない。しかしそれの翻訳が、次に出た週刊朝日及び産業経済の記事に詳細出ております。これを読み合せますと、録音とまつたく同じものでありまして、これによつて初めて当時の支部長会議における吉田総理の演説なるものがこれであつたということがわかつたのであります。これによると、当日の夕刊あるいは翌日の朝刊に書いたものとは大分隔たりがあるように私は思つたのであります。御指摘になりました流言飛語によつて検事捜査をしたというようなことは、あの録音には書いてありません。また検察陣を大臣が誹謗したということについても、なるほどそう言われればそう見られる点はありますが、あの当時の新聞に書かれた記事ほどではないことがわかりました。
  50. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は六日の決算委員会において、今読み上げたと同じものを明瞭に読み上げまして、検事総長に対して御了解を得たと心得ます。ところがその委員会に出ていて聞いていた委員諸君は、いまなお流言飛語でおどらされたと言つておる。お前らまだ憤慨しないかという質問をしたり、そこらで流説をしておられます。私はまことになげかわしいことだと思う。この点この間検事正もちよつと言われたけれども、あまり明瞭にせられなかつたが、私は六日の委員会でこれだけ明瞭にいたしましたから、検察陣においても、流言飛語ということは、捜査が流言飛語でおどらされておると言つたことではないのだ、これが誤り伝えられてこういうふうに問題になつたんだ、今こういう信念を持つておられますか。それとも相かわらず流言飛語でおどらされた、まことに憤慨にたえない、こういう気持を持つておられるか。この点はいかがに考えますか。これは局長でよろしゆうございます。
  51. 井本台吉

    井本説明員 八月二十八日の検事長会議において大臣からも、吉田総理の意のあるところをお伝えになりましたし、事情も大分わかりましたので、検察官捜査が全部流言飛語に基くものであるという発言をされたのでないことは、検察官諸君も全部承知しておることと存じます。
  52. 鍛冶良作

    鍛冶委員 相かわらずさような流説を、ためにせんがために振りまわして歩く者がたくさんあります。これらに対しましては、広い日本全体の検察陣に大なる影響を与えることでありまするから、これは誤解のないように、ひとつあなた方の方から説き聞かされる方が、将来の検察運営の上においても必要なことだ、また国家のためにもこのことを明瞭にしておく方がいいと思いまするから、この点を特に私は申し上げておきます。  次いで承りたいのは、今まで聞きましたのは主として造船汚職の問題でありますが、そのほかあなた方の方で大がかりにやられておる――さきに私の聞いておるところでは、決算委員会で七千四百万円かの予備費を使つたといつてたいへん問題にしておりますが、その予備費の大部分を消耗されたと承つておりまする保全経済会に関する汚職事件日本殖産金庫に対する汚職事件、その他陸運関係に対する汚職事件等はどのようになつておるか。今日どこまで発表せられるものであるか。また発表し得る限りにおいてここで発表していただけるかどうか。この点を承りたいと思います。
  53. 井本台吉

    井本説明員 こまかいことでございますから私から御答弁申し上げます。まず保全経済会事件の概要でございます。保全経済会につきましては、昨年の末以来東京地方検察庁におきまして警視庁の捜査第二課と協力の上で、その実態を内偵中でございましたが、商会につきまして詐欺の容疑が濃厚になりましたので、本年一月二十六日、商会の理事長伊藤斗福外四名を逮捕するとともに、最高検察庁の指揮のもとに、全国各地の地方検察庁におきまして、町会の本店、支店、営業所、出張所などを一斉に捜索いたしまして、現在に至るもなお捜査が継続中でございます。今までに取調べました被疑者は大体十二名で、うち九名は逮捕して調べております。そのうち九人がすでに起訴になつております。参考人として調べました数は約一万五千名でございます。伊藤斗福に対する詐欺事件につきましては、本年三月十七日以降九月一日までの間に、九回にわたりまして逐次公判の請求をいたしました。その事実の内容は、概略を申し上げますと、被告人の伊藤斗福が昭和二十八年七月ごろから十二月ごろまでの間、いわゆる出資者三千二百二十一名をして、保全経済会が堅実な営業方法で、確実に月約二分の配当及び契約満期後には元本の支払いを受けられるものと誤信させまして、出資金の名儀のもとに合計四億一千六百万円余を詐取したという事実であります。なおそのほか八名に対しましては外国為替及び外国賛助管理法違反、銃砲等所持禁止令違反、業務横領詐欺罪等の罪名でそれぞれ公判を請求しております。現在までこの事件について働きました検事は延べで三百十四、副検事が二百三十、事務官が一千百七十七、その他の職員が六百七十一という数になつております。  それから日本殖産金庫の関係でございますが、日本殖産金庫と申しますのは、株主相互金融を営む株式会社日本殖産金庫と、匿名組合方式により出資の受入れを行う匿名組合日本殖産金庫の同社を言うのでありますが、昨年十月三十四日保全経済会の休業声明後会社の職員、出資者が動揺を示しまして、社長下ノ村勗以下の幹部が財産を隠匿しておるといううわさが捜査機関に入りましたので内偵を進めましたところ、会社庶務課用度係長松本昭生が印刷業者と結託いたしまして、印刷代金を水増し請求させていた横領の事実が発覚いたしましたので、本年一月十八自に何人を逮捕し、その後同社の経営の実態が判明するに従つて、右社長の下ノ村勗外被疑者三十名を検挙いたし、そのうち本年七月三十日までに右の下ノ村社長外三十一名を順次詐欺、業務上横領、外国為替及び外国貿易管理法違反などの罪名で起訴いたしたのでございます。なお若干の補充捜査を続けておりますが、この件につきましては捜査の大半を終つたのであります。  本件の起訴事実は、社長の下ノ村勗、副社長の下ノ村昭一郎、業務部次長下ノ村典昭など四名が共謀いたしまして、匿名一組合日本殖産金庫に対する出資金の名のもとに昭和二十八年八月八日ごろから十二月ごろまでの間に日本全国にわたりまして、三千八日十九名のものから合計五億七百万円はどの現金及び小切手を編取した詐欺事犯でございます。その詐欺の方法は 要するに会社が多額の損失を生じ新規の加入者があつてもその出資金を大下会社の経滋賀、旧出資者に対する元本及び配当の支払いに充当せざるを得ないいわゆる自転車操業の状態に陥つてつたのにかかわらず、その実情を隠しまして、会社の運営が安全確実かつ有利であつて、約定通りの配当金及び元本の支払いを受けられるものと虚偽誇大な宣伝を行いまして、多数の人をだましたのでございます。その余の公訴事実は、右のような会社経営の乱脈を現わす下ノ村勗以下の業務上横領、特別背任、外国為替及び外国貿易官理法違反などの罪であります。本件の中心をなします詐欺事犯の被作者が全国各地にありますので、多数の参考人の取調べを必要としたのでありまして、この関係被疑者は総計いたしますと三十八名、参考人は純一万二千六御名でございます。この関係逮捕人員は三十一名、起訴人員は一十三名、不起訴人員が十四名でございます。なお本件に動員した検事の数は、被害者が全国にわたりますために非常に広範囲にわたりまして、その延人員は検事が三百九十、副検事が百九十六、事務官が九百八十七、その他の職員が二百九十二名ということになつております。
  54. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今両事件取調べの大要をお示しになりましたが、われわれが特に承りたいのは、たまたまこれを議院の行政監察委員会で調べております際に、ある人の証言と申しますか、言葉から、政界にこれに関するたいへんな多くの汚職がある、しかもその汚職の大部分はわれわれが属しておる自由党の者だ、かようなことを流布せられたのであります。私はこれらの点から考えまして、一日も早く事件の真相を明らかにせられまして、汚職があるならばどういう者が汚職をやつてつたのか、はたしてその当時デマを飛ばしたことく自由党の者が大部分であつたかいなや、これを一日も早く明らかにしてもらいたいと待望しておつたのであります。そこで今日はそれらに対してお取調べになつておるのかどうか、調べておるならば、これは明らかにできるのかできないのか、この点を明瞭にしていただきたい。
  55. 井本台吉

    井本説明員 ただいま申し上げましたのが本日申し上げ得る限度でございましてそのほかのことにつきましてはただいま申し上げ得る段階にはなつておりません。
  56. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そういうことに対して取調べておられますかいかがですか。私が聞いておるところでは、他党の者が自由党々々々と言うがとんでもない話で、党の総裁と申しますか、責任者で関係しておらないのは自由党だけだ。あとはみな総裁とか、書記長とか、委員長かといいながら、いろいろの名義をもつて、情ないかな金をもらつて洋行したり、何らかの便宜を与えられおるという事実がわれわれにあがつております。これに対してお調べになりましたか、いかがですか。お調べになりましたら、それくらいのことは言うてもいいでしよう。この間そう言うておられましたが、調べたか調べないか、その点をお示し願いたい。
  57. 井本台吉

    井本説明員 ただいま申し上げましたようにこれは直接捜査関係がありますし、また法廷の関係もございまして、ただいま調べたか調べないかということを申し上げ得る段階ではございません。
  58. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はこの間ある人の聞いたのと同様にやりますが、重光改進党総裁と言われる者が検事局で調べられた事実があると聞いておりますが、調べたとするならば何検事にどこで調べられたかをお示し願いたい。
  59. 井本台吉

    井本説明員 たびたび申し上げました通り、ただいま私が申し上げた以外はここで御発表申し上げ得る段階ではございません。
  60. 鍛冶良作

    鍛冶委員 おかしい。検事総長が調べられた事実があるということを言われたが、あなたは言われない。それはちよつとふといじやないですか。検事総長は調べられた事実があるが名前は申されないと言われた。私は調べられた事実があるかと聞いておる。社会党左派の委員長である鈴木茂三郎君も調べられたと聞いておる。これもどうか。社会党右派の委員長である河上君さえも調べられたと聞いておる。この点はいかがか。
  61. 井本台吉

    井本説明員 速記録をよく調べまして、後日また御答弁申し上げますが、ただいまの段階では、先ほど申し上げたのが私の御答弁でございます。
  62. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは重大なことでありますから、いま一応お考えになつて、どの程度まで言えるか、言える限りのものを私は言つてもらいたい。またそれ以上になお公表していいものがあるならば、国民は待望しておるところでありますから、これ以上の点で公表できるところは一日も早く公表していただきたい。私の質問はこれで一応打切ります。
  63. 小林錡

    小林委員長 それでは午前中はこの程度にとどめ、午後引続きやることに一して、しばらく休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ――――◇―――――     午後三時三十二分開議
  64. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。吉田安君。
  65. 吉田安

    吉田(安)委員 議事進行について。私はこの際委員長に一、二点お尋ねをいたしまして、その御答弁の結果によりましては緊急動議に移行しまして、そうして決議を提出いたすことになりはしないかと思うのでございます。  去る八月十日に吉田総理が自由党全国文部長会議の席上で言われた言葉がはしなくも今日決算委員会で非常な問題となりまして、国会は閉会中にもかかわらず、またこの残暑にもかかわらず、まつたく国民注視の的となるほどの大問題が展開されておるのであります。御承知通り、先般吉田暴言がありまする数日前に、検事総長佐藤君から汚職問題に関する声明書が出たのであります。この声明書が出ましたのに対して、佐藤氏を法務委員会に呼んでその真相を尋ね、いろいろ質疑をしたいということで委員会に対して同僚猪俣君から委員会開催の要求があつたのであります。その際に委員長は、いろいろ各方面からのお考えがあつたと見えて、それを念に取上げることが不可能だとして、今月の本日、当時開会しておりましたる法務委員会委員会の最終の日に一日取上げることに相なつておつたことも委員長承知通りであります。私どもとしましても検事総長のああした声明がありましたから、これについていろいろ質問し、尋ねたいことを十分尋ねたいというのはやまやまでありましたけれども、すでに汚職事件は御承知通りに大分日にちがたつております。人のうわさも七十五日というたとえがありまする通りに、地方に行きましても国会の乱闘、あれほどの醜態、国内に限らず、世界にまでもさらけ出したほどの問題でも、地方に帰りますと、日にちがたちましたるせいか、多く聞かれることは新党問題であり、臨時国会であり、解散というようなことは聞かれまするが、今申しました汚職問題であるとか、あるいは国会の乱闘のようなことについては、その幾割かの人は聞きまするが、多くの人は聞かなくなつておつた。しかしこれは私の体験です。そういうふうになつておりまする際に、検事総長のあの声明を取上げて、これをまた委員会に取上げて、そうしていろいろ質問をすると、その結果はあらゆる方面にまた発展して繰返しむし返すことになることはどうかというので、あのとき委員長初めお互い口にはそれほどは出しませんけれども、あまり乗り気がなかつたと私は考えるのです。ところがその後間もなく吉田総理によつて爆発いたしましたのがあの吉田暴言である。これがただちに決算委員会に取上げられたのであります。そうして毎日あの峻烈なる質疑応答が繰返されておつた。ところが九月の五日になりまして小林法務委員長は、突如として議長あてに何をなされたかといえば、法務委員長として決算委員会のあの取上げ方について異議の申出を議長にされたということであります。それが九月の五日だと聞いております。私どもは九月の六日から違憲審査権あるいは鰻筒裁判所機構問題の連合小委員会をやるのでありますが、六日には皆来るのです。法務委員会理事の諸君も大体そろわれるわけです。それを大日を待たずして五日に突如として委員長単独のお考えで法務委員長として提出をされたのでありますが、これは委員長のどうしたお考えであるか、まずこの点を率直にひとつ承りたいと思うのであります。
  66. 小林錡

    小林委員長 お答えいたします。七月三十日であつたかと思いますが、検事総長造船その他の疑獄事件捜査打切りの声明があつた直後に、古屋貞雄君外八名、すなわち九名の方から七月三十一日に私あてに造船陸運疑獄のこの声明について質疑をしたいから、委員会を開いてくれ、こういう要求がありました。それからそのころやはり近江絹糸の事件で人権蹂躙問題で審査の必要があるから、同じく開けという要求もございました。その以後私は機会さえあれば早く開きたいと思つてつたのでありますが、御承知ように八月二日から六日間小委員会がありまして、皆さんにお目にかかつておる機会があつたのでありますから、その際にもいろいろ御相談をしたのでありますが、何分御承知ように上訴機構の改革、違憲訴訟に関する問題は事きわめて学理的なものでありまして、皆さんがまじめに真剣な研究を続けておられるところに、いろいろごたごたしても困るとは思つておりましたが、とにかく皆さんに御相談した結果、九月六日から十一日まで、また小委員会をやりますから、そのときにやろうじやないかということで、一番初めの六日にやろうというお説もありましたが、いろいろ相談の結果、最後の日にやろうじやないかということで、一応お打合せができておつたわけであります。その聞私が怠慢で開かないようにおつしやいますが、私は自分の都合のいい候補の日をあげましてみんなに御相談した結果、おれはその日は都合が悪い、おれはその日は都合が悪いというようないろいろの話がありまして、なかなかその日がさまらなくて――何分九州から来られる方もあるし、北海道から来られる方もあり、一週間という日をここにつないでおきますから、御都合も考えて、まことに無理のないことだと思つておつたわけです。ところが九月十一日に開こうということに八月中にきめまして、そしてお互いに別れた次第であります。その以後、九月五日に私が委員長として皆さんに御相談をせずに申入れをしたことは、ただいま吉田君のおつしやる通りでありますが、そういうふうに従来そういう請求があり、また八月十三日に吉田安君外五名の改進党の方々からも緊急の問題で質問したいという委員会招集の意見もありましたので、方々へ電話連絡をしてみましたが、もう国へお帰りになつあとで連絡がとれない。そうなれば九月十一日にはまた皆さんにお目にかかれるからということで、九月十一日に開く決意を私は持つてつたのです。ところが私は国に帰つて演説などをしておつたのでありますが、九月五日に帰つてみまして、新聞をいろいろ見ると、決算委員会いろいろやつておられる事柄が、検察行政が主になるような問題になるのじやないかという危惧の念を持つたものですから、帰つてすぐいろいろ聞いてみると、どうもそういうふうに進むように聞いたのであります。ところが委員諸君はよく御承知通り、従来秘密保護法のときも、警察法案のときも、法務委員会にかけるべきのを、よその委員会にかけられて、これは越権だ、委員長何をしておるのだという、たいへん御激励を受け、不満の言も大分漏らされた次第でありまして、私としては法務委員会における従来の伝統、権威の上から見まして、どこまでも法務委員会に属するものは、国家のためにも、法律というものを根拠にした見方をして、りつぱな法律をつくつて参らなければならぬという信念でおりますところへ、たまたまこういう問題が起つたのでありまして、こういうふうに法務委員会範囲に属する検察行政法務委員会でやるべきものだということを、一応主張しておくことは、これは法務委員長として、従来の私の考え、皆さんの御態度によつて当然と思い、また喜んでもらえるくらいに考えて実はやつたのであります。その以後十三名の方々から小林がやつたのはわれわれの意思ではない、こういう弁明の異議申立てが議長のところまで出ておることを聞いて実は驚いた次第であります。  申入書の文面は皆さん御承知のことであろうと思いまするが、いわゆる造船疑獄に関する検察権の運用について証人喚問の手続を決算委員会で行いつつあるように聞いておるが、検察権の運用に関する国政調査法務委員会の権限に属するものである、次会委員会においてその調査をすることになつておるから、本件の所管について裁定を願いちい、こういうのでありまして、決算委員会権能に属する範囲まで法務委員会がこちらにとつて来てやる意味ではないのであります。従つて私の主張したところのこの考えというものは、いやしくも国会の中に各委員会があり、その範囲というものが大体きめてある限りは、法務委員会としてこういう主張をすることは正しいことであり、また法務委員長としてなさねばならぬ義務である、こう考えていたしたことでありまして、おしかりはいくらでも受けますが、しかしいかに多数の力によりましても、白いものを黒というふうにかえることは断じてできないと私は思う。その意味において私は今日やつたことを決して法務委員長としての職責に反するものとは考えないのでありますから、おしかりを受けることはいくらでも受けますが、その理論には承服いたしがたいのであります。
  67. 吉田安

    吉田(安)委員 いきさつ、御心境の点は大体了承はできます。誤解のないようにお願いをしておく必要がありますが、私ただいま立つておるゆえんのものは、それを理由として決して委員長をおしかりするとか、あるいは窮地に追い込むとか、あるいは不信任案を出そうというような、そんな意味は毛頭ないのであります。この点は気持よくひとつお受取りを願いたいと思います。ただ私がかようなことを申しますものも、実は今日午前中劈頭に、私はこれをただしてみたいと思つてつたのでありますが、いろいろな手違いから遅れまして、実は時期を失したようなかつこうですが、私がこういうことを聞きますゆえんというものは、何か割切れない気持があるわけです。それで今委員長が言われる気持はもうよくわかります。今度これが法務委員会で取上げてやるということになれば、一体法務委員会というものは、御承知ように非常にまじめで紳士的で、特にはつたりをやるとかどうするということではないのです。ほんとうに委員会の権威あらしめて行き得ることは、委員長初め同僚各位の御承知通りであります。それで今度も決算委員会の様子をながめまして、これを取上げてやる以上は、その委員会の運営をなるべくなめらかにやりたい、将来の議事進行もなるべくスムーズにやりたい、そして委員長を助けて、協力して、所期の目的を達するようにすることが一番大事なことではないか、こういうことを考えますと、今申し上げましたようなことで、やはりいささか割り切れない点があるのであります。たとえばあの申出がありまする前に、新聞のことでありますから、どこまで確かであるかわかりませんけれども、自由党の方面では、これは決算委員会でやるのじやない、法務委員会でやるのだ、法務委員会に移すのだということも新聞には流れておつたのであります。そういうことから想像いたしますると、委員長は、これは委員長のことをそこまで踏み込んで考えることはあるいは失礼にあたるかもしれませんけれども検事総長の声明のときの問題から考えて、たいへん苦しい立場にお立ちになつてつたのではないか、こう考えるのであります。委員長は平素物事を非常に慎重におやりになり、決して独断では何事もおやりになるような方でないと私は尊敬をし信じておるのです。ところがこの問題だけは六日にみな寄るのにそれを五日におやりになつたというところに一つ割り切れないものがあつたわけです。しかしそれもただいま委員長の御釈明によつて私は決してわからぬとは申し上げません。なおまた議長に対する申入れの内容も、実は議長の御返答いかんではあの申入書を取寄せてもらつて内容を知りたかつたのでありますが、今率直に御答弁がありましたから、あえてさような手数をいたすことは差控えます。差控えますが、あの申入れがありましたために、あるいは世に伝うる気分が――一方ではなはだしく決算委員会でやるものだから、私個人の気持から行きましても、今せつかく取上げておるものだから、どちらにも管轄があるのだから、せつかくやつておるからしばらくは成り行きを見てもよかつたのではないか、こうも私は思うのです。しかも急に管轄争いのようなことを議長は言うておられるけれども、何も争いをしたこともないし、むしろあの成り行きを静観しておつた。と同時に、あのやり方ではどうだろうかなとさえも憂慮しておつたよう状態であつたのであります。ところが突如としてあれが出ましたから、何か法務委員会がおかやき半分にあれを横やりを入れて取上げて、そうして自分たちの仕事にするのだというような感じも多数国民の中にはないとは言われません。こういうことが委員長初めわれわれ法務委員会気持としては実は遺憾に思うような次第であります。しかしそれではこの取上げた委員会をどうするかということは、これからのことでありますが、私願わくは本委員会だけはまじめにどろ試合にならないように、ほんとうに政党としても国家を思う立場から考えましたならば、紳士的にやりたいというのが初めからの考えでありました。それで私はそこまで御答弁になりましたから、あえて決議までする必要はないと思いますが、この際緊急動議を提出いたしまして、こういう決議案を採決していただきたいと思うのであります。案文をここで朗読いたします。    決議案   決算委員会の権限に関する九月五日付の小林法務委員長議長に対する申入れは、委員長個人の意思であつて委員会の意思ではない。   右決議する。 以上の動議を提出いたします。御賛成を願います。
  68. 小林錡

    小林委員長 そういうことはわかつているじやありませんか。ちよつと私申し上げますが、あなた方の署名で議長に出ていることは先ほど私お答えした中にも内容として申し上げたのです。私も認めていることですし、私は委員長としてやつたことであります。別に委員会の議決によつてやつたということは言つておらないのであります。これはもう決議をしなくてもわかつていることだろうと思います。そういう意味ですからどうも決議までする必要はないように思います。いかに多数をもつて押し切つても白いものを黒いと決議するようなことはできないと思います。  〔「理事会を開こう」「協議しよう」   〔〔異議なしと呼ぶ者あり」〕
  69. 小林錡

    小林委員長 しばらく休憩いたします。    午後二時五十六分休憩      ――――◇―――――    午後四時十八分開議
  70. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  先ほどの吉田君の動議の御趣旨の通り右の申入れは私が法務委員長としてなしたもので、委員会に諮つたものでないことはこれを認めます。
  71. 吉田安

    吉田(安)委員 ただいま私の先刻の動議に対しまして、委員長率直にこれをお認めになりました。この上は決議する必要を認めませんから、先刻の動議はこれを撤回いたします。
  72. 小林錡

    小林委員長 猪俣君が発言を求められておりますから、この際これを許します。猪俣君。
  73. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ただいま動議が撤回されました。これは委員長がわれわれの動議の内容をお認めになつたのでありますから、この勘案われわれがどこまでも維持する必要もなくなつたわけであります。ただ法務委員の一人として私が申し上げたいことは、この九月五日に委員長名義をもつて議長に申し入れられましたる決算委員会との権限の問題、この申入れが重大なる政治的反響を及ぼしたことは、委員長お認めの通りであります。もちろん委員長委員会の代表であることは明らかでありますけれども委員会それ自体の意見決定があつて、しかる後に委員長の代表というものが出て来るわけであります。委員会の意思決定ないにかかわらず、委員会の意思決定のごとき誤解を生ずるような申入れをなされたことに対しては、私どもはなはだ遺憾に存ずるものでありまして、あたかも世人は決算委員会法務委員会において権限の争いがあるがごとき誤解を生じ、なおまた議長においてもさような衆議院規則九十五条の誤解に基きまして、二箇の常任委員会に権限の争いがあるがごとき考えのものに議運を開いて諮問されたというようなことから、なお決算委員会におきまする吉田茂その他の喚問に支障を来しまして、大きな政治問題として今日までごたついて来たことは御存じの通りであります。かよう委員長たる立場というものは重大なる責任がありますがゆえに、私どもはかようなことは特に委員会に諮つて処置していただきたかつた。ことに秘密保護法案をどの委員会で取上げるかなどという問題と違つて、この問題は委員会内部において相当異論のあることは明らかなことでありますがゆえに、六日に小委員会の集まりがあつて理事諸君が多数出席せられるその前日に急速そのようなことをおやりになつた、その点につきまして幾多の誤解が出て来たわけであります。私どもは今委員長の率直な事実を認定された態度に対しまして、これ以上申し上げる必要はないのでありますが、以後そのような重大発言に対しましてはやはり委員会の意思を尊重されて行動されることが民主的なルールだと思うのであります。それを今後も御注意くださらんことを切にお願いいたす次第であります。
  74. 小林錡

    小林委員長 それでは質疑を続行いたします。高橋禎一君。
  75. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 法務大臣お尋ねをいたします。いわゆる佐藤前自由党幹事長の被疑事件に関しまして、法務大臣が指揮権を発動されたことは御存じの通りでありまして、その指揮権発動によつて検察権の運用に支障を来したものであるということは、検察当局が過日の決算委員会において明言されたところであります。私どももやはり同じような見解を持つておるわけでありますが、小原法務大臣指揮権発動によつて検察当局が抱いておられると同じように、検察権の運用に支障を来したものであるということをお認めになりますか、いかがでありますか。その点をお伺いいたしたいと思います。
  76. 小原直

    小原国務大臣 先刻来申し上げますように、佐藤榮作氏に対する逮捕稟請の問題について、指揮権が発動されたということは、私の就任前の問題でありますから、詳しいことはわからないのでありますが、これにつきましては決算委員会において佐藤検事総長への質問に対する答弁によりまして、この指揮権の発動があつたがために爾後のこの事件に関する捜査に大いに支障を来したということを言つておられます。私もおそらくは相当の支障があつたことは相違ないことであろうと思います。どの程度あつたかは私としては明言いたしかねます。
  77. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この指揮権発動によつて捜査に支障を来したということは、法務大臣検察当局と同様にお認めになつたのでありますが、決算委員会における検察当局の証言によりますと、保全経済会事件及び日殖関係事件等には支障を来しておらない。指揮権発動によつて捜査上支障を来したものは、いわゆる造船疑獄に関係するものである、こういうふうに証言されておるのでありますが、法務大臣はやはりその点もお認めになりますでしようか、いかがでしようか。
  78. 小原直

    小原国務大臣 これまた私は当時の捜査の実情を承知いたしません。しかし検事総長が先日答弁せられたところによりますると、あの指揮権発動のために支障を来したのは、主として造船疑獄関係であつて保全経済事件あるいは日殖事件等には及んでおらないと思う、こういうふうに言つておられます。私もそれはそうであろうと思つております。
  79. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 指揮権の発動によりまして、検察当局が捜査上支障を来し、しかもその証言の中には涙をのんでがまんをした、こういうふうな言葉もあつたのでありますが、すなわち検察当局の考え法務大臣考えとが非常に翻臨いたしまして、しかもそれがためにひとり政府側だけでなく、私は検察当局が国民の間から非常に信頼感を薄らがせる、検察に対する信用というものが地に落ちたという感じがいたすのであります。むしろこれは国民の輿論であるとさえ思うのでありますが、法務大臣はそのように、すなわち指揮権発動によつて検察官の信用、検察庁に対する信頼がとみに薄らいだ、こういうことをお認めになりますか、いかがでありますか。
  80. 小原直

    小原国務大臣 実際に局に当つておらないとほんとうのことはわかりません。しかしあの指揮権発動によつて佐藤榮作氏の逮捕ができなくなり、当時の検察当局が予定しておつた捜査方針に狂いを生じて、爾後の捜査に支障を来したということは、先ほど申した通りあるべきであつたと思つております。しかしあの指揮権発動検察当局が従つて、爾後の捜査を任意捜査によつてつて極力捜査したけれども、結局予定通り証拠が集まらないので、佐藤榮作氏に対する被疑事実についてはこれを起訴するに至らなかつた。そうしてその他の分についても若干の捜査に支障を来したものがある、こういうことを言つておるのでありまするが、この段階において当時の検察当局は、自己の許されたる範囲において極力捜査に努力をいたしました。あらん限りの力を尽して、なおかつ調べたけれども、結局証拠が得られないで、その事件を不起訴にするほかに方法がなかつた、こういうことであるというのでありまするが、それがために検察の信用が地に落ちた、あるいは国民検察に対する信用を薄くしたとかいうようなことは、私はちよつと言えないのではないかと思つております。できるだけのことをやつて、なおかつ力が足りないということになりますれば、これは当時の法律規定従つて検事が動いてやつたことでありまして、検事の与えられたる権能で全能力を発揮したのでありまするから、これ以上局に当る検察当局を責めることは無理ではなかろうかと私は考えております。
  81. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私が感じましたことは、佐藤自由党幹事長の被疑事件について指揮権の発動があつて、そうして捜査上支障を来して、国民が常識的に考えていたところとはその結果が非常に違つたものですから、従つて指揮権発動によつて検察権というものに対して国民疑惑を持つて、いわゆる検察権は厳正公平に行使されなければならないのに、そうでないのではないかというような疑いを持つて、それがために国民検察権に信頼する感じが非常に薄らいだのではないか、この点をお尋ねしておるわけです。私も検察当局が日夜事件捜査に当られた努力は認め、しかも検察当局が捜査上の相当の能率を上げられたことも認めておる。検察当局を非難しようなんという考えは毛頭ない。ただ国民がその点を常識的に考えて、どうも検察庁もたよりにならないのではないかというような感じを持つたということは、これは新聞記事等により、あるいは私どもが直接民衆に接しまして、やはり同じ感じを持つておるように見られるわけであります。法務大臣は、国民のその考えが正しいとか正しくないとか、そういうことを抜きにして、この指揮権発動以後国民検察庁に対する信頼感が薄らいでおるとごらんになるかならないか。これは将来の検察権運用に関する重大な問題であり、小原法務大臣検察権運用に関してなされる仕事の内容にも関連するわけでありますから、そこのところをお尋ねいたしておるわけであります。申し上げるまでもなく政治国民の間における輿論を無視するわけには参りません。しかも声に出さなくても、声なきに聞くぐらいの考えが必要だと思うのですが、世間では非常にこの検察権に対して信用しないような言辞が横行しておるように私ども見受けます。それを小原法務大臣はお感じになつておられるかどうか、その点をお伺いいたしておるわけです。
  82. 小原直

    小原国務大臣 繰返してのお尋ねでありますが、あのとき検察当局は指揮権発動後において、法律に認められたる自己の権能従つてあらん限りの力を尽して、ああいう結果に到達したのでありますから、検察としてはこれ以上なし得なかつたわけであります。それに対して国民が不満を抱くということも、これはあり得ることであろうと思いますが、しかしそれならば、このときにおいて検察官はどういう態度をとればよかつたのであるかということを反間してみたいのであります。世の中ではあの指揮権の発動があつた際に、検察当局は法律に認められて保障の制度があるのであるから、敢然とこれを争うてどこまでも指揮権を発動させないようにすればよかつたのではないか、こういうことをいわれたのでありますが、これは佐藤検事総長決算委員会において答えておりますように、検事はおのおのその法律規定従つて自己の権威を守らなければならぬのでありまして、法律に与えられたる自分の権威を越えて、不当に法律を曲げてやるというわけには参らないのであります。国家の秩序を維持する検事が、みずから法律を破り秩序を破つて不当の行動、不法の行動をやるということこそ、国民の信頼を失うもとでありましよう。正しい仕事をあくまでもやつて、それで結果が得なかつたということで国民が信用しないということは、あろうはずがないと思うのであります。あの当時における検察当局の態度としては、まさにとるべき態度であつた。あれを間違つてストライキみたようなことをやつたり、上官に反抗するようなことをやりましたら、それこそ検事みずから秩序を破ることになる、かようなことをいたしてはそれこそ国民検察に対する信用をなくするでありましよう。あの程度における検察のやり方から見て、国民の信頼を薄くするというようなことは私はないものと考えております。
  83. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 法務大臣も新聞をごらんになつたりラジオをお聞きになつたり、あるいはまた直接大衆に接しられるような機会もあると思いますから、この指揮権発動に関連して国民の抱いておる感じというものは十分おわかりにならなければならぬと思うのですが、指揮権発動後、検察当局のやり方、検察権について、前よりも国民の信用が落ちたのだということをお感じになりませんでしようか。そこをもう一度念を押してお尋ねをするわけです。
  84. 小原直

    小原国務大臣 重ねてのお尋ねでありますが、私はあれがために国民検察に対する信用をなくしたとは思つておりません。もし市井にそういう声があるといたしますならば――それはあるかもしれません、私も若干聞きます。しかしそれはただいま申し上げたように間違つた根本に基いていつておる。なぜ検察はあのときに奮い立つて反抗をしなかつたかというような意味において、どうも検事が弱いのじやないかというような声は聞きますけれども、これは先ほどから繰返し申し上げたように、検事はさようなことをやるべきではないと思うのであります。国民に多少そういう考えがあるかもしれませんが、しかしそれはそういう考えを持たれる国民諸君が再思三考して、さよう考えを持たないようにしていただくことがほんとうじやないかと思つております。
  85. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私は、検察当局のやり方があの場合相当であつたか不相当であつたかということは抜きにしまして、国民がいかに感じておるかという点をお尋ねいたしたわけでありますが、まあ法務大臣の耳にも目にも指揮権発動以来国民の間に不平あるいは不満の声があるのだということはお入りになつておるようにお述べになりました。それが入らないはずはないと私は思つております。ところが私は、この際国民検察権に対する信頼感が薄らいだというのは、その源はどこにあるかといいますと、指揮権発動そのものにあるのじやないか、そう思つておる。検察当局のやり方云々という問題でなくて、検察当局をしてそういうふうにやらしめた、捜査上支障を来さしめた、それによつて所期の目的を達成し得なかつた、それを国民は、検察当局のやる仕事だから検察当局に対する信頼感を失つておるのであるが、それをせんじつめて源を尋ねれば法務大臣指揮権発動そのものが検察官の行動をいろいろと制約して検察権運用に支障を来さして、そうして国民の信頼感を薄らがさしたものである、こういうふうに見るわけですが、法務大臣は、犬養法務大臣の発せられた指揮権発動が非常に妥当を欠いておつたために、それが原因となつて検察権の信用を非常に落さしたのだ、そういうふうにお感じになるはずだと思うのでありますが、そこのところはどのようにお考えでございますか。
  86. 小原直

    小原国務大臣 あのときにおける指揮権発動は、当時の犬養法務大臣が自己の責任においてああいう指揮権発動をしなければならなかつたというお考えのもとになされたものと思うのであります。犬養法務大臣検察庁法第十四条の規定に基いておやりになつたので適法の行為でありますから、これは法律的には適法である。ただそれが度を越したとか、あるいはもつとほかの方法ではできなかつたのではなかろうかというような問題はあるかもしれませんが、とにかく当時の当局はあれを適法であり、正当であるとしてやられたものであるのであります。その結果はただいまお話になりましたように、国民の信頼がなくなつたとおつしやるのでありまするが、私はそう考えないということをさつきから繰返して申し上げておるのであります。国民は確かにあの指揮権発動があつたがために、松察に対して後の結果から見て不満を持つておるということは、これは確かに事実あつたろうと思うのであります。そういうことだけは私申し上げていいと思うのであります。それが指揮権発動の結果国民の信頼の検察に対してなくなつたのであるというまでに断言し得るかどうか、私はちよつと今躊躇いたすわけであります。
  87. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 国民がいわゆる犬養法務大臣指揮権発動によつて、それに原因して検察権に対する信頼感が非常に薄らいで来たということは、耳をおおい、目をつむる者としてはそれは言えるかもしれませんけれども、今のいわゆる一般の常識としては、もう国民全体のそれが声である、こういうように私ども思うのでありますが、法務大臣にしてもそれは国民全体の声でない、一部にそういう者がいる、そういうふうなかりにお考えになるとしても、それをそのまま放任しておいていいものかどうか、これは法務大臣のお考えがあるであろうと思います。私は指揮権発動のむしろいろいろ問題の起りました跡始末をつけるために小原法務大臣就任されたよう考えておるのでありますが、国民の方が間違つておるのだから、それはほつておけばいいというようなもので政治はあるはずがないと思うのでありますが、ほんとうに将来検察権を確立して行くために、小原法務大臣は一体この指揮権発動に関して、そして検察権の運用に関して、国民の持つておるところの不平なり不満なり等に対して、何か特別に考慮し、措置しなければならないというふうにお考えになつておるか。あるいはそれはそのままほつておけばいいのだ、国民考えが間違いだというふうにお考えになつておるか、その点をお伺いいたしたい。
  88. 小原直

    小原国務大臣 お答え申し上げます。ただいま高橋委員お尋ねでありまするが、国民検察に対する信頼が薄くなつておる事実があるならば、これに対して法務大臣たる私はどういうふうに対処する考えでおるかというお尋ねであります。私がこの老骨をもつて現職につきましたのは、先ほども申しましたように、この造船疑獄等一連の疑獄事件によつて生じた各種の混乱また跡始末等をできるだけよく調整いたしまして、しこうしてただいま仰せになりましたように、この指揮権発動によつて検察に対する国民の感じ等もいくらか悪くなつておることは事実と思うのでありまするから、これらを回復して検察の本来の姿をとりもどし、検察の信用をいよいよ高めなければならぬということを覚悟いたしておるのであります。それに対する方法としては、目下いろいろ画策いたしております。まず第一に何と申しても人の和が大事でありまするから、本省及び各検察庁、地方に至るまで検察の人心の和をはかる、これが第一であると思つて、先般も全国の検事長を招集いたしまして、この疑獄事件以後における検察の態度をしつかりと引締めていただきたいということを懇々と話をいたしたのであります。各検事長もこれを了承いたしまして、帰つたならば各検事を統率して大いに元気を出し、事務に精励して、検察の信用をいよいよ高めて行こうじやないかという決意を見せてくれたので、私は大いに意を強うしておるのであります。その他各般のことにわたりまして、懸案等もいろいろ滞つておるものもありまするから、こういうようなものもできるだけ早く解決をいたし、庁内、検察庁にわたる人心を新たにして奮励努力させるように努めて参りたいと思つております。
  89. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 いかに検察部内が和合統一され、いかに法律に精通し、いかに物的改憲をいたして強化いたしましても、国民がこれを信頼せず、国民がこれに協力しないということであつたのでは、検察庁の威信というものが保てないと私は思うのであります。  そこでただいま法務大臣お話にありましたいわゆる指揮権発動の跡始末、その後の諸般の調整をして立ち上らなければならぬというその使命というものを考えますと、これから政府当局がこの指揮権発動に関連する諸般の跡始末をいかにするかということが大きな問題だと思うのであります。そこで非常に純真な気持を持つて職務に延身しておるところの検察当局をして、良心的な検察を伸ばさせて行くような政府の措置が大切であると思うのでありますが、せつかくりつぱな検察陣営がそこに存在いたしましても、これに政府が災いをして良心的な職務の遂行を妨害する、検察権運用に支障を来す、捜査障害を来すというようなとがあつたのではたいへんだと思うのでありますが、それらについて政治的な意味において高い立場から法務大臣はどのようにお考えになつておられますか。
  90. 小原直

    小原国務大臣 お答え申し上げます。私がただいま申し上げます。私がただいま申し上げましたように、今後の検察のあり方について、極力骨を折りたいと思つておるのでありますが、この私の方針に対してはただいまの政府は当然私の考え方を援助し協力してくれることは間違いないと信じております。
  91. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 犬養法務大臣佐藤自由党幹事長の被疑事件について発せられた検察庁法第十四条に基く指揮権の発動は、犬養法務大臣が独自の識見においてこれをなされたものであるか、あるいは総理大臣、あるいは副総理その他内閣の意向としてこれをなされたものであるか、その点をお伺いいたしたいのであります。
  92. 小原直

    小原国務大臣 その当時のことは私は存じません。刑事局長は若干知つておろうかと思いまするから、刑事局長からお答えいたさせます。
  93. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この問題は刑事局長から満足な答弁が得られるとは私は思わないのです。法務大臣の御答弁を求めるわけでありますが、指揮権発動に関して、その後の調整をし、ここに検察権を確立して行こうという重大使命を帯びておられる小原法務大臣が、一体犬養法務大臣の発せられたる指揮権発動は、犬養法務大臣独自の考えでなされたものであるかあるいはまた吉田内閣総理大臣等政府の意向によつてこれをなされたものであるかということぐらいのことを御存じなけらねばその跡始末ができない。私はこう思いますし、それが要点であると思いますから、この点について引継ぎなり、あるいはその後いろいろの情案を御調査し、またその当時の模様を御調査になつておらないはずはないと思いますから、この点について法務大臣の明確な御答弁を求める次第であります。
  94. 小原直

    小原国務大臣 私はその当時のことをあとから聞いて知つておる限りにおきましては、犬養法務大臣独自の責任においてやられたものである、こう聞いております。
  95. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そこで問題になりますのは、この八月十日吉田内閣総理大臣が自由党支部長会議においてなされたいわゆる吉田暴言でありますが、吉田さんのこの発言によりますというと、これは政府がやつたものである、しかも指揮権発動をした理由というものはかようようかくかくのものであるということを述べておられるのです。内閣総理大臣みずからがやつたような印象を与えるような言葉が強く出ておるわけです。言葉が足りなかつたから意味がよく通じないなどとおつしやることは、これを読んでみてわからなければそういうことが言えるかもしれませんけれども、読んでみれば意味はよく通じておる。言葉が足りなくてもこの程度のことがはつきりしておるのであるから、言葉が足りなくなかつたらもつと明瞭に、いわゆるあの当時の検察庁法の十四条による指揮権発動に関しての実情が暴露されたであろう、こういうふうに考えておるのであります。私は一々これを読み上げることは今は省略しておきますが、法務大臣よく御存じだと思うのですが、吉田内閣総理大臣は、政府がやつたんだ、いかにも自分がやつたんだ、そしてその理由はこうこうだ、こういうことまで言つておられるのですが、今法務大臣のおつしやつたのは、犬養君が独自の見解、識見によつてやつたものだと思えると、こうおつしやるのは、非常な矛盾があるわけです。私はそうでないんだ、やはり内閣総理大臣の意向がその指揮権発動に十分出ておるのだ、その内容をなしておるのだ、こう思えるのですが、そのようにお考えになりませんでしようか。率直にひとつ御答弁を願いたい。
  96. 小原直

    小原国務大臣 そのときの吉田総理大臣の発言の中に、指揮権発動を信念をもつてやつたと書いてあるようであります。その意味はやはり政府の国務大臣である犬養法務大臣が自己の責任においてやつたということを、やはり政府という意味において言われたものと私は解するのであります。
  97. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 それがますますおかしくなつて来るのです。そうすると、ここをちよつと読んでみますとこうなるのです。「その次に問題になつたの汚職事件であります。指揮権発動の問題であります。政府としては信念をもつて指揮権の発動をしたのであります。汚職問題々々々々と申しますが、その内容は何であるか、何がゆえに幹事長を逮捕しなければならぬかということを突きとめてみますと、政党の会計簿といいますか、記帳が不十分であるということに偏するのであります。一体政党の会計帳簿なるものは不正確であるのが当然であるのであります。何となれば」云々とこういうふうに申しまして、そして「これはまさに政党政治の破壊であります。政党政治の破壊を目標とするわけではありますまいが、結果において政党政治の破壊を来すようならば、それは政党として断じてこれと闘うのが当然であります。これ政府が指揮権を発動したゆえんであります。」こういうふうに言つておられる。ここで言つておられる総理大臣、すなわち政府のいわゆる指揮権発動理由というものは、いわゆる検察当局と闘うというこういう意味をもつてなさつておられるということが明瞭なのです。検察庁法第十四条に基いて法務大臣たる犬養さんが自己の識見において独立の立場に立つて指揮権の発動をされるということであれば、こういうことを総理がいくら政党の総裁の資格において述べられるにしても、品から出て来るはずがない、私はこう思うのです。そこで非常な疑惑が起つて来るわけです。と申しますのは、犬養法務大臣は――これは午前中刑事局長から説明がありましたような意味において指揮権を発動したのだ、こういうことをかつて法務委員会において加藤法務大臣からも、引継ぎを受けた問題として説明があつたわけです。そうすると法務大臣のおつしやることと内閣総理大臣の言われることとはてんで内容が矛盾しておるわけなんです。表面にはいかにももつともらしく、合理的に、合法的に指揮権を発動したのだ、こういうふうにしたのだ、こういうふに法務大臣は申しておりますけれども、総理大臣はそうでなくして、犬養法務大臣指揮権発動に関する理由なんかは全然無視をして、検察当局と闘争をするのだ、こういうふうな趣旨で実は政府は確信をもつてやつたんだとまで、言葉が足りないどころではない、もう詳細にこれを説明しておられるわけであります。だから、ここに至つて私は、ほんとうに政府のあの指揮権発動に関する意図というものは明瞭になつた、いわば馬脚を現わしたものであると確信をいたしておるのでありますし、国民もそう思つておるのであります。この暴言が元になつて、党内においてもいろいろの問題が起つたようでございますが、それは別といたしまして、法務大臣はこういう問題についてはたしてどちらがほんとうであつたのかということを御調査なさらぬはずはない思うのであります。吉田内閣総理大臣は、総裁の資格において自由党の支部長に対して全然偽りのことを育つて国民を欺く一つの手段としてこういうことをやつたのであるか、あるいはまたこれが本音であつて、犬養法務大臣がかつて発表した指揮権発効に関する理由というのはてんで大うそであつたのか、それらの点についての法務大臣のこれ事いろいろ調査された結果なり御所感等を承りたいと思うのであります。
  98. 小原直

    小原国務大臣 当時の犬養法務大臣が自己の責任においてあの指揮権発動をしたということを言つておられ、また私どももさように聞いておるのでれります。吉田総理大臣が八月十日の自由党の支部長会議において言われたただいまの言葉は、やはり犬養法務大臣が信念をもつてやつたことを総理大臣がそれをただ表わすというか、犬養がこうやつたということを言うと同じ意味において言われたものと解するほかないかと思つております。
  99. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私は小原法務大臣非常に良心的な方であるとして実は平素尊敬しておるわけでありますが、今のお言葉を聞きますと、吉田内閣総理大臣は犬養のいの字も申しておりません。そうして犬養法務大臣のいわゆる指揮権発動に関して発表された理由というものとは全然内容が異なるわけです。しかもこれは確信をもつてと、声高らかに説明されておるわけなんです。こういう点がはつきりしないで、いわゆる指揮権発動に関連して起つたいろいろの問題の跡始末をなし、それらを調整をして、将来国民の疑いを解いて検察権の健全なる発達を意図し、それを育成して行こうとされる小原法務大臣としては、今おしつやつたようなあいまいなことでは、私は解決がつかぬと思う。吉田総理の言つたことがうそか、犬養法務大臣の言つたのがうそか、それらの点について内容的にどのようにお考えになるか、その御説明を承らなければならぬと思うのです。
  100. 小原直

    小原国務大臣 内閣におる国務大臣は、自分の省のことも、またたとえば他省のことを所管の国務大臣がなしたときも、やはりそれはみな政府心々と言つております。であるからこの犬養法務大臣指揮権発動についても、吉田総理大臣はそれを受けて、ただ政府がやつたとこう言われるものと私は理解いたしております。
  101. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私の質問の要点に触れての御答弁がないのですが、吉田内閣総理大臣が政府とおつしやつたのは、これは犬養法務大臣のことをさすのだ、こういうふうにおつしやられることは、それはそれとしてお聞きしておきまして、内容が全然違いますでしよう。犬養法務大臣は、あの指揮権発動に対して、第三者収賄の汚職案件について、逮捕請求許諾の請訓があつたが――内容はここなんです。事件法律的性格と国家的重要法案件の審議の現状にかんがみ云々と、こういう理由をあげておられる。ところが吉田内閣総理大臣は、そういう点については一言も触れておられない。先ほど読み上げましたように、佐藤逮捕するがごときは政党政治の破壊である。政党政治の破壊を目標とするようなものであれば、これは政党としては断じて闘うのが当然であります。これ政府が指揮権を発動したゆえんであります、こういうふうに述べておられます。言葉が足りないことも何もない。明瞭に意思は表示されておるわけであります。私は流言飛語云々の問題について、検察庁が憤慨されたかどうかということは別問題として、少くとも一国の総理大臣が、検察庁を目して政党政治を破壊する、いわゆる政党政治家の敵である。だから、こういうものとは断然闘わなければならぬという、闘争の意図をもつて政府が指揮権を発動するというようなことになつたのでは――そういうふうに総理大臣が言つておるのです。だからそういうふうな理由でやつたのか、あるいは犬養法務大臣の言つておられる通りにやつたのかくらいのことは御調査にならなければ、法務大臣としての将来の職責を完全に果して行かれないと思うのです。やつておられるに違いないと思うのです。犬養さんの言つたのがほんとうなのか吉田内閣総理大臣が言つたのがほんとうなのか、その点を正直に明確に御答弁を願いたいと思います。
  102. 小原直

    小原国務大臣 重ねてお尋ねでございますが、結局私は繰返して同じお答えを申し上げるほかに方法がないのであります。私はさよう考えております。
  103. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この点については答弁を避けておられるとしか思えないのです。私の質問がわからないはずはないと思うのです。犬養法務大臣は先ほど読んだように、要するに事件法律的性格と、国家的重要法案の審議の現状にかんがみて指揮権を発動したのだ、こう言つておられる。吉田内閣総理大臣は、そうでなくして検察庁は政党政治を破壊する、政党としてこれは敵であるから、断じて闘わなければならない。だから政府が指揮権を発動したのだ、こう言つておられる。国民はどつちがほんとうか迷うでしよう。それをはつきり国会で国民の前に明らかにされなければ、検察権というもの、あるいは政府の検察権運用に関しての信用いうものは、私は、ますます失墜して参ると思うのであります。これは重要な点なんです。答弁を避けられるような問題でないと思います。私は小原法務大臣の人格に信頼して重ねてお尋ねをいたす次第であります。
  104. 小原直

    小原国務大臣 犬養法務大臣指揮権発動に関して、吉田総理大臣が言われたただいまの言葉は、先ほど来私が繰返して御返答申す通りであります。そこで私はさよう吉田総理大臣の書案、われわれとしては理解いたしかねる点がありましたから、吉田総理大臣にどういう意思でそういうことを言われたのであるかということを確かめることに努めました。その結果として、結局言葉が足りないがためにああいうようなことになつて遺憾に存ずる、こういう返事が、私の方にありました。自由党支部長会議における総裁のあいさつのうちに、現行法規を軽視したり、検察当局を誹謗したかのごとき言葉があつたかのように伝えられておりますが、これも用語の不十分であつたための誤解でありまして、法規を軽視したり、忠実に職務を遂行した検察の人たちを非難したりするつもりはごうもなかつたのであります、こういうあいさつが総理大臣から池田幹事長を通して私の方に参つたのであります。これによつて当時の吉田総理大臣の言葉があるいは言葉の間違い、あるいは多少の誤解から出ておる、こういうことをこの回答に述べられておるものと私は理解いたします。私の方ではお返事をいただいてこれで当時のことがおよそわかつた、こういうふうに考えております。その結果として、先般開かれました検事長会議においてこのことを検事長各位にも伝え、部下の検事諸君にもこれを伝えて、その当時のいきさつはこういうことであつたということを了解してもらうように努めたのであります。
  105. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 吉田総理大臣検察当局に対して申入れをし、釈明をしたということだけでは国民の方は治まらないということはおわかりになると思うのです。犬養法務大臣の言つておることと、内閣総理大臣である吉田さんの言つておることと内容が全然違うわけなんです。総理大臣はただ検察部内に対してあれはどうも言い過ぎだ、君たちを非難する考えではなかつたと言つて、いわば部下に当る者が了承をしたからといつても、国民承知せぬ、国民疑惑というものは解けないわけです。一体政治は、特に政治を支配する立場にある者は、一言ものを言えば世の中が治まるという言い方をしなければ意味がない。ところが一言ものを言えば世の中が乱れて来る、国民の疑いがますます深まって来る、そういうことは慎まなければならぬというぐらいのことは吉田さんでもよくおわかりのはずです。だから私はむしろ吉田さんの言つたのが本音であつて、犬養さんの言つたのが間違いじやないか、犬養さんはむしろただ表面を飾つて、いかにも妥当合理的にやつたのだということを国会で明らかにするだけのためにああいう表面をつけたのだと思いますが、吉田さんにお会いになつていろいろお話になつて吉田さんの方が本音で犬養さんの方がうそだというふうにお感じになりませんでしたか。それをお伺いいたしたい。
  106. 小原直

    小原国務大臣 私は指揮権発動に関して特に吉田総理と話合つたことはございません。
  107. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 国民は先ほど来申し上げましたような非常な疑惑を持つておるわけですが、これを解くために小原法務大臣は何か具体的な方法をお考えになつておりますか、どうでありますか。それをお伺いいたしたい。
  108. 小原直

    小原国務大臣 ちよつともう一度お確かめしますが、何の点を確かめたかとおつしやるのですか。
  109. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今まで犬養さんの考えは新聞にも発表をし、国会でも明らかになつておるわけです。指揮権発動についての理由、それから吉田総理大臣がこの前支部長会議でおつしやつたことも国民にはよくわかつておるわけです。ところがそれがもう矛盾しておる。どちらかうそであるし、あるいは両方ともうそであるかもしれない。国民は非常に疑いを持つておる。国会でも非常な疑いを持つておる。そこで国政調査権に基いてこれからいろいろ調査もしよう、こういうふうな立場をとつておるわけです。この疑いを解くということは、これは政治上大きな問題あり、しかも将来検察権運用に関し重大な問題であり、小原法務大臣としては、自分の職責を果されるためにこれは慎重に配慮されなければならない問題である、こう思いますから、こういうことについて小原法務大臣国民疑惑を解くためにどういう措置をとろうと考えておいでになりますか、それをお伺いしたい。
  110. 小原直

    小原国務大臣 お問いのことはよくわかりました。それを解くために、ただいま申し上げましたように、吉田総理大臣のあの演説がどういう趣旨であるかということを確かめて、吉田総理大臣から私の方にそれの弁明的のあいさつがありましたから、これを検察庁全体に伝えられるように流し、一面においては検事長会議において、この趣旨を検事長に話をし、検事長はことごとくこれを了承したのであります。そのときの私の演説は当時新聞に発表いたして、新聞もことごとく掲載してあるのであります。かよう方法によつてこの点に関する国民疑惑を解く、こういう手段をとつたのであります。
  111. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 小原法務大臣検察権に対して、一体これは純粋の行政権であるとお考えであるか、あるいはまた司法権であるとお考えであるか、それらの点についてお伺いいたしたい。
  112. 小原直

    小原国務大臣 たいへん大きな問題を簡単な言葉でお尋ねになりまして、お答えするに少し講義めくようなことになると困るので、簡潔に申し上げようと思うのでありますが、検察権が行政権であるか司法権であるかということは、昔においては大きな争いがあつたのであります。戦前のわが国の裁判所構成法が実施せられて、裁判所と検察庁が同一に扱われた当時においては、検察権司法権の一部であるというふうに言われた時代が相当長く続いておりました。しかしその後だんだん刑事学の進歩に従いまして、司法権検察権とは異なるものである。検察権は一の行政権であるという解釈が出て参りました。しかしその当時におきましても、今日におきましてもなおそうでありまするが、検察権司法権を適正に行使するための必要権能でありますから、普通の行政権とは異なつて、ほとんど司法権に類しておるものである。準司法的性格を持つた行政権である、こういうことは、今日の学説の一致しておるところであり、実際家もそれに従つて運用をしておるのであります。
  113. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 準司法権という育葉、これはわれわれのお考え方にもぴつたり来るわけなんです。そこで今ごろ政府のいろいろやつおられることを見ますと、こう三権分立なんてわれわれが考え、しかもそれを民主政治の金科玉条のよう考えておつた、そういう考え方がすつかり変遷といいますか、躊躇と申しますか、三権分立主義に基いてのいわゆる国権の発動というようなことは考えておられないのではないかというような面が多々あるわけなんです。その中でも特にいわゆる準司法権というような中間的な存在ということになりますと、なおさらそれが躊躇されて行くよう考えられてならないわけなんです。小原法務大臣は、検察権というものは独立させて行きたいというようなお考えであるかどうか。これは行政権、政府に隷属させて行くべきものであるとお考えであるか、あるいはまた独立させて行きたいというお考えであるか。これから検察権運用に関して小原法務大臣は一体その点をどうお考えになつておるか、ここから出発しないと問題の解決はつかぬと思いますから、お尋ねをいたすわけであります。そして検察権の独立を保つというお考えであれば、一体今の制度のもとにおいてはどういうふうな方法でそれが実現できるか、あるいは今の制度ではどうも独立は保ち得ないというのであれば、一体制度をどういうふうに改めようというようなお考えがあるのかないのか、それらについてお答えを願いたい。
  114. 小原直

    小原国務大臣 ただいまのお尋ねにお答えいたしますが、検察権司法権にほとんど類似した準司法権であるということは、高橋委員もお認めくださつたのであります。そこで準司法権たる検察権をいかに機構の上に現わすのが一番適当であるかという問題は、これは非常に大きな問題だと思うのであります。そこで戦前は、申し上げるまでもなく裁判所と検察庁――当時は検事局と申しました。裁判所と検事局とは一つの裁判所構成法というものの規定の中に規定せられておりまして、あたかも裁判所と横車川、当時の検事局は相隣した兄弟かのごとく取扱われて来ておつたのであります。そうしてその上には司法大臣がおりまして、司法大臣が裁判所及び検事局を監督し、また横車局の捜査を指揮する、こういう規定司法省官制の大臣の権限として定められておつたのであります。しかるに戦後におきまして裁判所と検事局を分離いたしまして、裁判所は裁判所法によつて定められ、検察庁検察庁法によつて定められて、おのおの独立の立場に立つて来たのであります。その裁判所法と検察庁法をつくるときに――これは、私はみずから局に当つたのではありませんが、当時の話をよく開いて知つております。裁判所は、これは純然たる司法権でありまするから、三権分立の趣旨に従つて立法、行政からは独立して、司法権こそは、純司法権こそは、全然どこからも干犯を受けない、こういう建前になつておることは御承知通りであります。横車価すなわち検察庁をやはり裁判機関と同様に司法と準じて独立の機関にすべきかどうかという問題になりますると、これはいろいろ問題があつて、当時非常に研究せられたそうでありますが、もしも検察庁をまつたく独立の機関として三権分立すなわち立法、行政、司法検察、こういうことにして検察権もまた立法、行政から全然犯されない建前をとることにいたしますると、ここに検察庁一つのかしらがなければなりません。ちようど今日の最高裁判所の長打が全裁判所を監督するがごとく、検察庁にもまた全然何人からも犯されない独立の何と申しますか、検察庁の長ができまして、この長が全検察を指揮、監督する、こういう建前にならなければならぬのでありますが、さようにいたしますと、検察に関する限りは何人もこれに対して監督あるいは干渉と申しますかすることができないのでありますから、それでは検察があまり独自に走り過ぎて、これを制御することのできないようなことになつたときに、どうもいたし方がないのであります。そこで、やはりこれは内閣の責任において検察庁というものの監督をして行かなければいかぬのではなかろうか、こういう説になりまして、ここに検察庁というものは、やはり法務大臣というものを置いて、法務大臣のもとに検察を監督、指揮させ、そうして法務大臣は内閣の一員として閣議に従う、こういう難前をとることがよかろうというので、ただいまの検察庁法ができ、そうして内閣法によつて法務省が設置せられて法務大臣がその地位につく、こういう建前になつておると思うのであります。それゆえ検察権は行政権ではありますが、特別の行政権であつて、他からできるだけ犯されない体制をとるがために特別の規定が設けられておると思うのであります。以上でお尋ねに対する私の答えといたします。
  115. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今のようなことは規則にあるわけです。憲法で、内閣総理大臣は行政各部を指揮監督し、そして法務大臣はまた検事総長に対して指揮権を持つておる。こういうふうなやり方で、しかもときには検察当局とは絶対意見の異なつた、検察当局が涙をのんで忍ばなければならぬという指揮権を発動されて、しかも法律上それは当然であるというふうな考え方であつたのでは、準司法機関と言つてみても何ら意味はない。いわゆる検察権というものの中立性の確保もできないし、独立というものもできない、こう思うのですが、一体そこのところを、準司法機関としての独立をはかろうとするためには、どういうふうになさるおつもりなのですか。
  116. 小原直

    小原国務大臣 この指揮権発動に関して、検察庁法十四条の設けられた理由について世の中にいろいろ誤解があるように思います。それから出発いたして検察権の問題が出て参ると思うのであります。簡単に申し上げますれば、この検察庁法十四条は、先ほど申し上げましたよう検察庁というものを全然独立の地位に置いてはいかぬ、法務大臣の監督下に属せしめなければいけない、しかし監督はするが、全然捜査事務について法務大臣が指揮権を持たなくては検察権の適正なる行使ができない場合もあるから、そこで検察庁法十四条の但書をもつて、個々の捜査事件については法務大臣検事総長を通じてのみ指揮することができるという規定ができたのであります。これは先ほど申したように、従来からも司法大臣は全般の検事捜査事務に対して直接に監督、指揮ができたのであります。司法大臣は津々浦々の検事に対して面接に、あの事件はこう扱え、この事件はこうやれと言つて指揮はできたのでありまするが、さようなやり方をしておつては命令が二途、三途に出て統一が欠けるからそういうやり方はいかぬというので、今度は捜査に関しては法務大臣は横車総長を通じてのみこれをなすことができるということで、この指揮権の統一をはかつたのであります。  それならばこの検察庁法十四条の但書というものはまつたく異例のことであつて、容易に行われないものであるかと申しますると、ここに世の中がたいへん誤解をいたしております。さよう規定ができたことは、要するに検察全体に対する捜査上の指揮が法務大臣からできるということを書くというのは、先ほど来申したよう事件によつて法務大臣がこれを指揮せなければならぬことが多々あるからであります。現にこの検察庁法ができて以来今日に至るまで、この法条によつて検事総長を通しまして法務大臣が各般の事件について指揮をいたしておるのであります。決してこのたび出た佐藤榮作氏に対する逮捕請求に関しての指揮権発動のみではないのであります。今でも始終あります。外国人の犯罪、駐留軍の犯罪事件はことごとく法務大臣が指揮をすることになつております。毎日毎日私は三件、四件決裁をいたしております。これはもう当然この規定によつてやるのであります。そのほかまた国会議員の犯罪に対する起訴、不起訴の件、その他各種稟請事件というものが法務省で定められておりまするが、この各種の稟請事件に対しましては、これは起訴にしろ、不起訴にしろ、捜査はこうやれということを始終検事総長を通じていたしておるのであります。ただそれは先般の佐藤榮作氏に対する指揮権の発動のよう検察庁法務大臣とがつばぜり合いになつて、そこで書面を出して稟請を仰ぐ、その書面に対して、法務大臣が書面をもつてさしずする、こんなことは私はかつて聞いたことがないのであります。しかしあの当時のことはああいうふうにならなければならぬからあの通りなつた。そうでなくて、始終穏やかに話し合つておれは何も異例の処置でもなんでもなく、毎日平生のごとくにこの指揮権は発動されておるのであります。これは世の中の方はみな御承知でありません。そうして新聞なども指揮権発動を異例だ異例だとおつしやる。あれがああいう形においてやつたことは異例であります。けれどもやり方は法規に従つてつたのであります。この点は御了承を願いたいと思います。(「そんなことは知つている」と呼ぶ者あり)
  117. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私のお尋ねしておるのは制度を聞いておるのではない。どういう制度があるかということをお尋ねしておるのではなくして……。   〔発言する者多し〕
  118. 小林錡

    小林委員長 静粛に願います。
  119. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 小原法務大臣は今の制度のもとにおいて一体検察権の中立性を確保しよう検察権の独立をはかろうというお考えがなけらねば問題はないのですが、先ほど来聞いてみるとおありのようです。準司法機関としてその中立性を保ち、できるだけ独立性をはかろう、こういうお考えようですから、今の制度のもとにおいてそのお考えを貫徹されるためには、実践されるためにはどういうことをおやりになろう、どういうふうに考えておられるか、それを聞いておるのです。それをひとつ説明していただかなければなりません。
  120. 小原直

    小原国務大臣 今のお答えが少し講釈めいたりして、いばるとかなんとか言われるが、そんなことはありません。世の中に実際に誤解がありまするから――法務委員会の力がおわかりにならぬからというのではない。世の中が誤解をしておるから誤解を解く意味でお話申し上げておるのであります。ただいまお尋ねのことはどうしたならばなるだけ独立にやつて行けるかというお尋ねですが、それは法務大臣さえしつかりすればよろしいのであります。(「名答」「しつかりしているか」と呼ぶ者あり)
  121. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 法務大臣がしつかりしておりさえすればいいというお答えですが、これがまたいろいろ内宴託して説明していただかなければわからないことで、現に検察当局と衝突していわゆる異例、いまだかつてないような計画による指揮権を発動するというよう方法も、しつかりしておると自分で考えつつやる場合もあると思うのです。ただしつかりしておるとおつしやつただけでは、私はどうも具体的にどういう方法かということがわかりませんから、今の制度のもとにおいて自分はこういうよう方法をとつて検察権の中立を確保しようと思う、検察権を独立させて行こうと思うということの内枠をお示し願いたいと思うのであります。
  122. 小原直

    小原国務大臣 それは検察庁の各校事の仕事をよくわれわれが見まして、そうしてその検事のやつている仕事が正しいかどうかということを常に気をつけておらなければなりません。それゆえ検事正なり、検車長なり、それゆえ検事正なり、検事長なり、検事総長から法務大臣にいろいろの報告あるいは要請が参りましたときに、これを検察立場においてこうやることが最も正しい、これがすなわち三権分立に基く検察権の独立である、こういうことを考えてそのもとに指揮をし、さしずをして行けばよろしいと思います。
  123. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 具体的にお尋ねいたしましよう。今で言えば内閣総理大臣吉田さん、吉田さんの考え検察当局の考えが全然相反したようなときに、たとえば検察当局は幹事長を逮捕しなければならぬという強い意見を持つており、総理大臣はそれは逮捕しちやいかぬという意見を持つておるときに法務大臣はどういうような急度をおとりになるか、そこをひとつ御説明願いたいと思います。
  124. 小原直

    小原国務大臣 そういう場合に、私は現におらなかつたのでありまするからどうやるかはわかりません。答えのしようがありません。
  125. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私は法務大臣のまじめな意見をお伺いしておるのです。と申しますのは、今の制度でいいますと、総理大臣の意思に反した行動を法務大臣がとれば首を切つてしまうのでしよう。それは首切られてしまう。罷免せられてしまう。そういう制度になつてるのです。総理大臣の言うところ、内閣の決定法務大臣が実行しなたけれは、これはやめさせられて別の後任を持つて来る、そういうようなことにたつておる制度なんです。そういうときに法務大臣は一体検察当局の意見を尊重して、検察権の中立性を確保するなんという方法があるのかないのか。そういう場合に、どういうふうに対処されるお考えであるか。これはもうすぐにでも起る問題で、現に起つておる。あとで聞きますけれども、たとえば決算委員会から今証言許可の申出があるでしよう。ああいうことについても小原法務大臣は、何でも吉田内閣総理大臣といろいろ御相談なさつて、拒否するようにした方がいいだろうということが新聞等に出ておりますが、たちどころにそういう問題が起るわけです。そういうようなときに、いかに対処して検察権の中立性を確保されるか、これをひとつまじめにお答え願いたい。制度が悪いなら、また制度を改正するということも考えなければならぬわけですから、それをひとつお伺いいたしたい。
  126. 小原直

    小原国務大臣 おつしやる通り法務大臣といえども大臣といえども、内閣総理大臣はいつにでもこれを罷免することを得という規定がありまするから、もし総理大臣の言を聞かないで、これに従わないときには、総理大臣法務大臣をやめさせることはできましよう。できましようが、それはやはりその時と場合と人の問題だと思います。総理大臣といえども、むやみに各省の大臣をどんどん首切るというようなことはできるものではなかろうと思つております。それはやはり今日の制度がさようになつておる限りはやむを得ませんが、それができないようになるべく努めて行かなければならぬのであります。しかし、もしこれでもなお制度が悪ければ、続いて起る問題は制度の改正であります。私は就任後まだ日が浅くて、その制度の改正をいかにすべきかまでは考えておりません。
  127. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今の問題は、日が浅いからまだ考えておらないとおつしやるのですが、非常に重大な問題なんです。私どもは真剣に考えておる。何しろ総理大臣が行政各部を監督し、国務大臣の罷免権を持つてつて、そうして検察権は政府に隷属するものであるという建前をとるなら、それは法務大臣の職責というものも非常ににやすとできるでしようが、どうも小原法務大臣は、検察権は準司法権であるから、その独立を保たねばならぬ、こういう熱意をお持ちのように先ほど来のお言葉で承るのですが、そういう方が具体的に、それじやどういうふうに対処して行くかということは、今の制度でやるのに、これはもう人の問題だと言つても、それだけじや信用できないのです。だから法務大臣たるものは、一体どういう態度で対処して、現制度のもとにおいてはこういうふうに検察権を独立させて行こうと思う、いや独立はもうさすことはできないのだ、させない方がいいんだ、こういうふうな説もあるでしよう。あるいはまた制度を改正しなければどうもできぬということもあるでしよう。私が小原法務大臣に望むのは、現在の場合においては国民の要望するところは、検察権の独立、中立性を確保すること、もつとすつきりした、政府に隷属しない、ほんとうの意味における厳正公平な、しかも検察権がいわゆる刑事裁判の基礎をなす公訴権を持つておるわけですから、検察庁が動くところ初めて裁判所も動くのですから、検察庁の動き方が間違つておつたら、せつかく法律がいいものがあつても台なしになつてしまうと思う。裁判所がいくら公正であつても、仕事をしようにもしようがないと思うのです。そこのところを、いまだ考えておられないならばこれから研究していただかなければならぬでしようが、しかし何といつて指揮権発動あとを受けて、そのあとの調整をしようという重大任務を自覚しておられるならば、私はそれらの問題について、しつかりした御意見がおありになるはずだと思うのですが、どうですか。
  128. 小原直

    小原国務大臣 ただいま高橋委員からるる御説明になりましたことは、私はまつたく同感でありまます。そうして準司法権たる検察権を、できるだけ独立の地位に置かなければならぬと思つております。ただ、制度上これをどうして行けばいいかということは、先ほど申したようにまだ研究は熟しておりませんから、それは申し上げられぬのであります。また私が今法務大臣におります。これも総理大臣がやめさせようと思えばいつでもやめさせられるのでありますから、私がいかにがんばつて検察権の独立に遇進しようと思つて骨を折りましてもだめかもしれません。けれどもこれは私、申し上げてはいささか失礼でありますが、自信を持つておるのは、私が入るときに一切のことは君にまかす、干渉しない、こういうことを言われた言葉があるので、私は私のおる限りはこの検察権の独立に対する私の尽力はいれられると思つております。
  129. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私は、人々と申しましても、これは人だけでは安心できない。そこで現在の制度として方法がないかというと、私はそうじやないと思う。と申しますのは、そこで問題になるのが国政調査権です。憲法が国会に対して国政調査権を認めているということは、一方において予算の審議、あるいは湊のいろいろの資料調査の意味においての権能もさることながら、国政が公正に行われているということの一つの大きな担保であると私は思うのであります。そこで私は国政調査権に対する法務大臣の所見を伺いたい。一体、あとお尋ねようと思つておりますが、公務員を引出して調べれば、これは秘密だといつて証言を拒絶する。そうしてまた主務官庁、監督官庁にその承認を得ようとすれば、これもまたいろいろ文句をつけてその承認を与えないということであつたら、これではもう国政調査権というものは意味がなくなつてしまう。そういうふうな政治が許される、そういうことを是認するという態度であつては、私は断じて検察庁の中立とか独立性は保てないと思う。ただ一つ今の場合頼りになるのは、国民の前における国会の国政調査権を尊重して、国会に、われわれはこういう考えでこういうことをやりましたという、ありのままのことを明らかにして、国民にこれを知らしめるということ、それによつて政治の公正というものが私は期せられると思う。国政調査権についての小原法務大臣の所見をお伺いいたします。
  130. 小原直

    小原国務大臣 重要な問題についてお尋ねでありますが、国会の憲法上の国政調査権は、これはどこまでも尊重せんければならぬことは、よく承知をいたしております。国政調査権が行政各部の調査をするときに、どういう点において限界があるかということは、これは非常にむずかしい問題でありまして、なかなか容易に研究し尽し得ないと思います。先ほども申しましたように、司法権に対して国政調査権というものは、非常に大なる限度において制約を受けるものと思つております。検察権においてもまた相当の制約がなければ、検察権の行使が適正に行われないということも、また言えることであろうと思います。ただその限界がどこにあるかということになりますと、なかなかむずかしい問題でありまして、ただちにこれこれの限界があると申し上げるのは困難であります。せつかく先般来衆議院の決算委員会において証人尋問がありまして、あの証人尋問の際に答えられる範囲について、証言承認を求めて参つております。私どもは今検察庁と協力いたしまして、どの程度証言承認できるかいなかということを検討いたしております。これは、すなわち国政調査権検察権に対していかなる程度まで行い得るかということの限界をある程度まで明らかにしたいという考えを持つておりますので、せつかく検討中でありまして、ここに今その限界をすぐ申し上げるというわけには参りません。
  131. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今の法務大臣の答弁は私の考えとは全然相反しているのです。と申しますのは、検察権は中立性を確保し、その独立をはからなければならぬということは、これは三権分立主義を尊重し、そしていわゆる公訴権を含んでおる検察権内容から励まして、司法機関に準じた公正を保たなければならない。ところが現在の制度のほかの面を見ますと、政府に隷属するの危険が非常にあるわけです。独立をさせなければならぬ必要性が高いものを、しかも政府に隷属するかのごとき制度になつておるのですから、そこを生かして行き、その独立を保ち、公正を確保する方法としては、国政調査権を少くとも検察の面については法務大臣制約しなければならぬ、ほかのものよりは制約があるとおつしやつたが、それは逆であつて、むしろ制約をしないで、国民の前にそっくりそのままを出して行くんだという、国民の前にこれを明らかにするんだというこういう措置こそが私は必要だと思う。それが憲法の精神であり、それを考えない限り検察権の独立はできない。検察権の行動がいわゆる秘密だというのは、これは捜査の妨害になったり、あるいはまた個人の名誉を毀損するというよう理由がある場合にこれを捜査上認めておる。しかしながら国家の利益ということを考え、また検察権全体の健全なる発達ということを考えますときには、ときには個人の名誉ということも犠牲にしなければならぬ。たとえば専制政治ようなやり方を考えるならしかたないですが、われわれは警察はいわゆる秘密警察であってはならない、また検察秘密検察であってはならぬと思っております。ところが、警察の方は公安委員会制度があって非常に民主的にできておるが、検察権に至りましてはそういう民主的運営の制度、民主的な公正な制度はとっておらぬ。そこをまじめによく考えてみなければならぬ。だからそれを救済して行くには、何といっても国会の国政調査権を十分尊重しなければならぬ。しかもほかの行政の面よりはこれを一層制約しないで、明らかにして行くという態度でなければならぬ。そうでないと、三権分立の思想も、準司法権としての検察権の中立性の確保ということも保たれないのです。私は今の答弁を承わりますと、小原法務大臣のお考え検察権の中立性あるいはその独立を確保しようというお考えとは逆なお考えであると思うが、それはどうでしようか。
  132. 小原直

    小原国務大臣 ただいまの高橋委員の御説はおっしゃる通り私の考えとはまったく正反対であります。私は、国政調査権は十分に尊重すべきものであるが、ある点に行くと検察権に対してやはり制約がなければならぬものではないかというように思っております。ところが高橋委員は、国政調査権は万能であって、検察権に対しては全部調査ができるのであるから、検察権秘密を守るも何もない、全国国政調査の前にさらけ出せ、こうおつしやるのでありますが、それでは検察権の独立がむしろ保てないことになるのではないか。だから、そうまでおつしゃらないとすれば、それはどこかに若干の制約の点がある。その制約点われがお互いに研究して、検察権が適正に行使されることに努めることが国家のために必要だと考えております。
  133. 小林錡

    小林委員長 高橋君、大分時間が立ちましたから、簡潔にお願いいたします。
  134. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私は、法務大臣がせっかく検察権の独立ということを念願され、その中立性を確保して行こうと育っておられるが、そうしなければ、検察権国民からの信頼も保てないし、職務の公正も期せられない、こう思うのです。ところが今の制度では内閣総理大臣が行政各部を指導監督し、閣僚に対しては罷免権を持ち、法務大臣検察庁法十四条によって検事総長に対しての指揮権を持っておる。こういう場合にはかつて佐藤自由党幹事長の問題に関連して起つたと同じように、検察庁は、いわゆる検察陣営のものは涙をのんででもそれに従わなければならぬというような、そして国民検察官考え方が正しいのだというような、そういう考えを持たせるようた場面に遭遇して、いわゆる検察権の独立は保てないことになる。しかし憲法は賢明で、そこに国公の国政調査権というものを認めておつて、そうあやまつた検察権の運用はできないのだ、あやまった指揮権の発動はできないのだということを担保しているわけであります。だから一方に検察権の独立の必要性があればあるだけに、今の制度の上においては憲法による国会における国政調査権というものをできるだけ尊重する。私が反対しましたのは、法務大臣から、ほかの行政部門よりは検察権に関しての方を一層制約しなければならぬ、こういうふうなお言葉があったから、それは意見が違う、むしろそれは逆に考えるくらいの心組みがなければ、検察権の独立は保てない、ほかには方法はございませんと思いますが、法務大臣はどうお考えですか、こういうことを聞いた。  そこで続けてお尋ねして行きます。決算委員会から八項目にわたって監督官庁の証書許可の申出があったはずでありますが、それに対していろいろ御研究中のように聞きました。総理大臣と御相談になるんですか、ならないんですか。今まで御相談になったんですか、ならなかったんですか。新聞では御相談になって、これはできるだけ拒否するようにしよう、こういうふうに出ておりましたが、それらについてお答え願います。
  135. 小原直

    小原国務大臣 お答えいたします。馬場委員は先ほどから、新聞に出ているからそうだろうとおっしゃるが、新聞に間違って出ておることがたくさんあります。あれも間違いであります。私は決算委員会から佐藤検事総長証言拒否に対して、証言承認せよという要求を受けております。この問題について総理大臣と話す必要は毛頭ございません。
  136. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 それでは証言許可について根本的に一体どういう態度をおとりになるか。先ほどは、国政調査権を尊重すると言う。しかも検察権の独立を考えるためには、この国政調査権の行使にあたってはできるだけ秘密を守らないようにしなければならぬ、秘密検察にならないようにしなければならぬ。これは重大な問題である。検察秘密になったりあるいは検察権の行使が秘密になるということは専制政治のやり方である。今の制度のもとにおいてはそれは断じて公明でなければならぬと思うのですが、その許可を与えるにあたって何か一般的な基準でもおありですか、あるいはどういうふうにお考えになっておるか、そしてその許可はいつごろなさるのか。
  137. 小原直

    小原国務大臣 お答えいたします。法務省においてはせっかく研究中であります。これは佐藤検事総長の分もありますし、聞くところによると、馬場検事正の証言拒否に対する証言承認要求されているそうであります。この両方を合せると、たしか二十数項目になるのであります。これらをよく検討いたしまして、われわれの方でどういうふうに扱うべきかということをこれから後研究いたしてきめるのであります。いつこれがきまるかということは今ここで即答申し上げかねます。
  138. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 まだ検察権の独立の問題、国政調査権の問題についてお尋ねしたい点は多々あるのでありますが、瞬間も遅いようでありますし、委員会の空気から見て、この辺で打切ります。あとは留保して後日に譲りたいと思います。
  139. 小林錡

    小林委員長 大分時間も経過いたしましたから、次会は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十分散会