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1954-05-26 第19回国会 衆議院 法務委員会 第62号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十六日(水曜日)    午後一時五十二分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 林  信雄君 理事 高橋 禎一君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    高橋 英吉君       吉田  安君    猪俣 浩三君       神近 市子君    木下  郁君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         法 務 大 臣 加藤鐐五郎君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君  委員外出席者         議     員 山本 勝市君         検     事         (刑事局刑事課         長)      長戸 寛美君         検     事 石井 春水君         参  考  人         (警視庁防犯部         長)      養老 絢雄君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 五月二十五日  委員山下春江君及び萩元たけ子君辞任につき、  その補欠として三木武夫君及び木原津與志君が  議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員木下郁辞任につき、その補欠として伊瀬  幸太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員伊瀬幸太郎辞任につき、その補欠として  木下郁君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二十五日  売春禁止法制定に関する請願増田甲子七君紹  介)(第四九七七号)  福岡地方裁判所小倉支部等の昇格に関する請願  (林信雄君紹介)(第五〇三二号) の審査を本委員会に付託された。 同日  売春禁止法制定等促進に関する陳情書  (第五一九号)  同  (第三一七五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  売春等処罰法案堤ツルヨ君外十一名提出、衆  法第三四号)  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  売春等処罰法案を議題といたし、審議を進めます。この際お諮りいたします。本案審査のため、参考人より意見及び実態について詳細聴取いたすことといたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議がなければさよう決定いたします。なお参考人としては、瀬川八十雄君、平林たい子君、菊田一夫君、平田義弘君といたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林錡

    小林委員長 御異議がなければさよう決定いたします。なお参考人に多少異動があるかもしれませんが、その際には委員長に御一任願います。  なお本案につきまして、警視庁防犯部長養老絢雄君に参考人として発言してもらうことといたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 小林錡

    小林委員長 それでは本案に関し発言通告がありますから、順次これを許します。神近市子君。
  7. 神近市子

    神近委員 法務省の方は出ていらつしやるのでしようか。私見えたと思つてお願いしたのですけれども、今お見えにならなければあとにまわしていただきます。
  8. 小林錡

    小林委員長 今すぐ見えると思いますから、それまで養老参考人に御質問でもございましたら……。
  9. 神近市子

    神近委員 それでは養老さんはいろいろ実務にお当りになつていられるので、私どもの提出いたしました法案について、いろいろ御批評も、それからこれが成立しましたときの御任務について、いろいろ予想していらつしやることがあるはずだと思います。それでそういうあらゆる方面で、今の御職務上どういう方面からでもけつこうでございますから、ひとつ批判的な御意見を伺いたいと思います。
  10. 養老絢雄

    養老参考人 現在提案せられております売春等処罰法案内容は、私詳しく研究いたしたわけではないのでございますが、内容について大要承知いたしました限りでは、売春行為並びに売春行為に関連する好ましくない行為を禁止する上に、相当効果がある規定が整備せられておると考えております。従いましてこれが実施に移されれば、売春並びにそうしたものに関連する好ましくない行為取締る上に、相当効果は望めると思うのでございます。ただこれは必ずしも本質的なものではないのでございますが、われわれこれまで売春取締りをなして参りまして、実際の経験からあえて意見を申し上げますと、現在の犯罪捜査やり方といいますか、これは犯罪が行われるだろうという予想のもとに、――そうした場合に捜査を行うということ自身がおかしいのでありますが、そうした予想のもとに警察が行動するというようなことは、考えられないのでございまして、すでに犯罪が行われたあとをおつかけて、捜査して行くという形になつております。しかしこの売春行為につきましては、ただそのあとをおつかけるというだけでは、普通には取締り上非常によくできたという印象を持たれないのでありまして、たとえば売春行為の事前に必ず起きます客引きというような場合、これは売春婦自身による客引きもありますし、ないしは間に人を仲介しました、たとえばポン引きというようなものが、事実上は非常に動くのでありますが、こうしたもの自身が実際は町に出て来る。それが非常に一般の普通の人々に対して迷惑を及ぼす、あるいは町の清浄な空気を、そうした者の横行によつて非常に乱されるというような場合におきまして、常識的にはこれは明らかに売春のために動いておるということが考えられましても、ただちにこれを取締つて行く上には、警察としては非常に困難を感ずるのであります。この点は売春禁止の上に決して本質的なものではないのでありますけれども、われわれの警察的な立場からしいて申しますと、そうした点もあわせて取締り得るような形であれば、もう未然にそうした行為を押え、ないしはそうした行為が非常に広く進むのを防ぐ意味で、効果を持ち得るのじやないかということを考えております。  それからいま一つは、これはもう幾度もこれまでのいろいろ御質疑等で繰返されたことでございますが、われわれが考えることとしては少し行き過ぎかもしれませんけれども警察が、こうした法案ができましたときに、現在以上さらに精一ぱい、あらゆる点を通じまして、法規執行に当つて売春婦ないしはそれに関連した犯罪者を検挙いたしました場合に、十分それがはけて行くくらいのこうした女たち収容所というものが、はたしてスムーズに行くかどうか、しいて申しますれば、こういう点についても心配するのであります。警察としてそこまで考えることは過ぎたことと思うのでありますが、たとえば覚醒剤、これは今日の問題じやないのでありますが、覚醒剤等違反者警察が現認いたしまして、取締つておりますけれども、実際そうした法規違反者は始末に困るのが通常であります。どうしてもそうしたものを的確に収容させておくところの場所があることによつて取締りました決著が非常につくのでありまして、そうしたものがつかないと、どうしても取締りにあたる警察官の士気にも結果的には影響して来るということになりますので、あとでそうした点も考慮せられて行く必要があるのではないかという点を考えております。それ以外につきまして、これはあえて申し上げたのでありますが、この法規そのものとしては、私としては徹底した取締りができるものじやないかと考えております。
  11. 神近市子

    神近委員 今の後の方のお答えから伺いたいのでありますが、この点について私ども全国事業協会その他の収容施設関係者の方十数人集つていただいて御意見を聞いたことがございます。それでどなたもおつしやることですが、これは救世軍瀬川先生がよく御存じだと思うのですが、御参考までによく伺つておきたいと思つていますが、収容所を経営するときの一番の困難は、警察人たちが、たとえば山形県とか秋田県とかいうようなところから家出をして来る転落直前にある女の子どもたち施設に送り込まないで、めんどうくさいものですから、それをすぐに親元に送り帰すということがもう常態でございます。よければ旅費を提供してくださる。だけれどお帰しになるだけではすぐにまた機会を見れば同じ人が出て来るというような状態で、施設を経営する人たちが一番困難と考えておるところは、警察がそういう施設にちつとも御連絡くださらないことです。これを三日でも三日でも預けてくださると、自分たちのからだをどういうふうにして守らなくちやならないかということ、それから事情でどうしても東京にいたければ、正当なところに収まらなくちやならぬというようなことで教育ができるのです。  もう一つ伺いたいのは、どういうわけで収容所に通さないで直接帰したがるかということ。それはめんどうくさいというようなこともあるだろうということでした。  それからもう一つ伺いたいことは、警察官がどろぼうや、詐欺をつかまえますと点数になるのでございましよう。ところがこういう保護施設はちつとも、成績関係しないというようなことを理由としてあげられていたのですけれど、それはほんとうでございますかどうか。  それに関連しまして売春をあるいは売春婦を――現場をつかめれば別だと思いますけれど、何かそれを引いていた人たちをあげても、これも成績にならないというようなことを伺いましたけれど、これはほんとうでございますか。
  12. 養老絢雄

    養老参考人 警察としましては、関係のあるいろいろな保護施設等とあらゆる機会におきまして連絡を密接にするように心がけております。従いまして売春婦ないしはそうした立場に陥りそうな婦女等につきまして、警察官がそれを見出して適当と思う場合には、そうした施設連絡するようにはいたしておるのでありますが、たとえば家出して来た娘というようなものに対しまして、ただちにそれを収容施設に持つて行こうということを考えることがありましても、本人がいやがる場合がむしろ非常に多いのであります。結局本人意思に反しまして、警察官自分気持で適当と思うところにこれを連れて行くということは、非常に困難でございまして、やや強制的な措置をとろうとすれば、警察官等職務執行法による保護というようなことにもなると思うのでありますが、そういうようなことの時間的の制約もありますし、それを越えれば一々判事の令状がいるというようなことになつております。結局本人家元を聞いて家元に帰すということで、本人がいやと言えば、その家元の親なり兄弟を呼び出しまして引渡すというような措置をとることが結果的には多くなつておるという事情であります。従いまして、そういう施設の方でさらによく連絡をとれば、もつともつとそうした転落直前婦女を救う道があるというふうな御意見がございますれば、そうした御趣旨に沿つて一層努力して参りたいと思つております。  それから、この売春事犯につきまして、これを警察官取締る際の点数制度との関連から熱意を持たないのじやないかというふうな御意見でございましたが、通常点数制度といわれておりますこれの長所、短所、これは種々意見がわかれるのでありますけれども警察といたしましては、主として外勤巡査  監督者の目から離れまして単独で行動し職務執行に当ることを通常とする外勤巡査に対しまして、一部こうした成績評定制度をとつておるのでありますが、売春事犯等取締りにつきましては、別途の専門的な、いわゆる私服の警察官が当ることが多いのでございまして、こういう者に対しましては、点数制度というようなやり方はいたしておらないのであります。従いましてわれわれといたしましても、点数制度等によるところの成績評定があらゆる面において妥当なものであるとは決して考えておりませんので、そうした職務内容によりましてすべて点数制度をとつておるわけではないのでありまして、この点数制度等の点から、売春事犯に対して警察官熱意を持たないというようなことはないと考えております。具体的に言うと、町を歩いておる巡査が、売春事犯等取締りに直接当るという場合は、すべて常道ではないかもしれませんが、実際はこうしたものを外勤巡査がただちに取締るということはむしろ控えさせておるわけでありまして、専門といいますか、むしろそういうことに手なれた者に当らせるようにして、外勤警察官等は、あまりひどい客引きとか、あるいはひどい時間外の営業等について注意をさせる程度がせいぜいじやないかという実情であります。
  13. 神近市子

    神近委員 これはやはり警察の方でめんどうくさいということで親元にお帰しになるのが常態だということは、施設の経営に当つておられる人たちが口をきわめておつしやつたことであります。たとえば家出娘なんというのは、上野あたりに行けばブローカーのような人には安易に連れられて行つて、そして転落が始まるという事例がとても多いのです。それで警察施設を利用なさろうとしても行きたがらないというようなことは、私どもちよつと受取れないように思います。施設を経営している方々の全部が口をそろえておつしやつたことは、警察がわれわれを重視してその子供たち保護を委任してくれないということに対する不満が多くて、そしてこれは瀬川さんに、参考人としておいでになつたらよく聞いていただきたいと思うのですけれども、その点やはりあたのおつしやる口裏からしましても、警察はこの転落を防止しようという考え方でいらつしやらない。親元に帰せば、その親元がいやで出て来たのですから、また出て来ることはこれはもう二度でも三度でも同じで、三度目には結局ブローカーにひつかかるということになつて転落が始まる、ということをたいへん嘆いていらした。これは機構をおかえになつて、ある程度家出して来た子供たち保護措置という考え方から――相当人格者たちが経営していらつしやるのですから、そこに一応連絡して、電話一本くだされば出かけて行くということの言つていらつしやいました。それが自分たちには一向通告がないのだということ。これが一点。  それからもう一つ点数の問題でございますけれども、どろぼうやかつぱらいは必ず点数になる。けれども売春に関する事犯点数にとらないというようなところにも、何か熱意のありどころが違うのではないかと考えられます。それで今後はそういう犯則もその警官の成績に数えていただきたいというふうに私は感じます。
  14. 養老絢雄

    養老参考人 収容保護施設等との警察連絡でありますが、われわれとしては、家出人等につきましては、その者が少年と申しますか三十才未満の者である場合には、これはもうそれに対する措置をきめます際に必ず児童相談所等との連絡はいたしておると思うのでありますが、それが成年者である場合には、本人意思等によりまして、そういう保護施設等へ送る場合は少かろうと思うのであります。しかしただいまのようなそういう収容施設保護施設等責任者の方の御意見――私は残念ながらまだ直接にはお聞きしたことはないのでございますが、今後そうした方と連絡を密にとりまして、ただいまの御意見のような線で一層努力して参りたいと思つております。  それから成績の点は、売春事犯に対する警察官取締りを、ほかの窃盗等等のものと全然別個の扱いをいたしまして、窃盗等については成績評定の場合に採点に入れるが、売春事犯に対しては入れない、ないしは点数が非常に少いというようなことはいたしておりません。先ほど特殊なものだけで、あらゆる外勤警察官等に対しまして売春事犯取締りを公然にはさせておらないということを申し上げたのでありますが、もちろんでき得る場合にはいたしております。そうした場合には、成績には十分人れておるのであります。従いまして成績評定制度等関係から、売春事犯に対して非常に軽く扱いまして、そのために一線の警察官熱意を失わせるということは決してないというふうに考えておるのでございます。もちろんそうした点の職務執行熱意を高揚させるように、さらに努力をいたして参りたいと考えております。
  15. 小林錡

    小林委員長 なお国家警察の方から藤本防犯課長が来ておられますから、そのつもりで御質問をお願いいたします。
  16. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 関連して。ただいまの神近委員の御発言について、私は強い希望を持つておりますので、念のために申し添えておきます。今法的権限を持たないで、そうした転落家出娘で町を彷徨する人たちが収容されるべき施設全国に十八箇所ある。昨年度のごときも予算が余つてしかたがない。婦人少年局にその予算をたしか一千万円くらい返してもいいというくらいで、実はがらんどうなんですね。施設人たちに言わせると、今の神近さんが御指摘になりましたように、警察自体家出娘であるとか、人身売買のわなに陥る直前にある彷徨未成年者に対して、これを保護しなければならないということを一番考えてもらわなければならないのに考えてくださらない。従つて汽車賃なり電車賃をくれてやつて、お前、そんなところをうろうろしておつてはいけないから親のところへ帰れというので、訓示くらいして帰そうとして、ぽいと警察の表にお放しなさるわけです。もしもう一つ良心があつたならば、これはまともに帰らないだろうからといつて、そうした施設に連れて行つてくださるならば、この施設予算が余つてしかたがないということはないと思う。あなたはどういう御報告を第一線からお聞きになつておるか知りませんけれども神近委員が御指摘になりましたように、転落防止保護更生という点について非常に熱意がない。従つて警察はこの通りだし、設備におつて手を受けて待つておる人たちにしてみれば、何ら法的権限がないから、ひとつ国内法規をつくつてわれわれのような施設に国費をまわしてもらい、そうして法的権限を持たせてもらつて、あの人たち転落防止に一役買いたいということを申し出ておられるのでありますから、この実情養老さんももう少し御研究いただきまして、私は善処していただきたいと思います。  それから点数制度の問題でありますけれども、非常にあさましい制度だと思います。いろいろな方法でおやりにならなければ成績はあがらないでしようけれども、しかし窃盗詐欺や殺人の類をそれにお入れになるのだつたら、やはり人間が本来してはならない売春行為に対しては、それ並に点数の中に入れてやるということが、熱意一つの現われではないかと思います。これは参考人の方もお見えになりますので蛇足かと思いますけれども、先ほどからの問答を承つておりますと、実情をあまり御存じでないように思います。予算が余つてつておるのですが、こんなばかなことはないのです。この点は私重ねて申し上げておきます。質問神近さんに返します。
  17. 小林錡

    小林委員長 山本勝議員より委員外発言の申出がありますが、これを許すに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 小林錡

    小林委員長 御異議がないと認めます。――山本勝市君。
  19. 山本勝市

    山本勝市君 一言大臣にお伺いしておきたいのですが、大臣は業として売春行為を行う者、つまり本人がやるというよりも、それらを介して仕事をする者を絶滅するような意思があるかないかという一点であります。なかなか困難なこともよくわかりますし、複雑な問題でありますが、おそらく阿片売買というようなものは、絶滅意思を持つておりましよう。ヒロポンについても、困難ではあろうけれども、これを絶滅する意思を持つておりましようが、要するに春を売つたり買つたりするということ、春を売買対象とするということ、またそれに関連してこれを一つ事業とするということが、もちろん表面上はないことになつておりましようけれども、事実上これを絶滅する意思があるかどうか、この点を伺つておきたい。
  20. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 お答えいたします。先般も御質問がありました際にお答えいたしたのでございますが、こういう売春行為というものはまことに悲しむべきことでございまして、またそういうものを業としておるという者に対しまして、これを絶滅する意思があるかないかということは、私は絶滅いたしたいと思つておるのでございます。事実上においてこういう問題はなかなか私ども希望通りには参りませんが、精神はできるだけこういうものはなしにいたしたいという気持に至りましては、山本さんと同感を持つておるわけでございます。
  21. 山本勝市

    山本勝市君 絶滅意思ほんとうにあるならば、少くとも世界の水準まではこれを少くすることができるのではないかと思う。これは、性慾そのものは食慾とは違うことは申すまでもありません。食わずに生きて行くわけに行きませんが、性慾の場合には、必ずしもそれで生命に関係するというわけじやない。しかし、さらにそれを商売にするというようなことは、これは必ずしも必然の問題じやないと思う。これを商売にする、つまり売買対象にするということは、阿片のようなものですら売買対象にさせない。いわんや、貞操という言葉は悪いかもしれませんが、要するに春を売買対象にする、またそういう娘をかかえて商売をする、それは形式上はなくなつたというかもしれませんが、実際上堂々と店を張つてつておる。その程度のことは、私は必ずしも必然的なものじやないと思う。先般も前の法務委員会であつたと思うのですが、自由党の某議員が来られて、二十年前にパリに留学しておつた時代と先般パリ行つて見たときとでは面目を一新しておるということを申しておりましたが、もちろん日本にも昔からこういうことはありますけれども、しかし最近の実情は、とうてい昔と比較にならぬような実情になつている。ですから、初めからむずかしいのだというふうな頭でかかつておられるのと、そうではなしに、この限度までは少くともなくさねばならぬという固い決意でやるのとでは結果が違うと思う。私が自由党議員として今般の提案に加わつたということが、どうも出会うたびごとにひやかしの材料になつて、どうも君はまだ若いとか、つまらぬものに加わつたものだとかいうふうな、何かたがのゆるんだ応対が非常に多いのでありますが、しかしこれが自分の娘であるとか自分の妹であるとかいう問題として考えたら、もつと切実になるのだろうと思います。しかし代議士諸君は、身近にそういう者を持たぬから、人ごとだ、警察官の方でも法務省の方でも、直接自分の身に近くないために、そういうことをあまりやかましく言うのはやぼくさい、こういうようなことになつている点が少くないように思うが、もちろん提案者神近さんにいたしましても、婦人代議士の方にしても、これが一挙に絶滅できるなどというようなことも思つておらぬようでありますし、十分物事はわかつた上で提案されているように私は受取つておるのであります。昔のアメリカにおける奴隷制度廃止の問題のときでも、これの廃止を主張いたした人たちは笑われたことだろうと思うのでありますが、ある意味においては、奴隷制度よりももつと一層深刻な問題であると私は思う。しかもこれは努力いかんでは、あるところまでは取締られると思う。先般私は遊興飲食税の問題でかなりいろいろ動いたのでありますけれども、しかし、決してこういうものを是認する意味において業者の要望にこたえたのではなかつた。ですから、これについては、この委員会における単なる答弁とか質問とかいうのではなしに、少くともどの限界までは一定の期間に持つて行きたいというようなことを切実に考えるべきではないかと思うのです。まあ、これからたびたびお伺いいたしたいと思いますが、きようはこの点だけ伺つて質問をとめておきます。
  22. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいまの山本君よりの、このまじめな問題がひやかし半分の問題になつているという点については、私もそういう感じを受けておるのでありますが、私どもはこれはまじめな問題だと考えているのでございまして、この点におきましては、今回のこの委員会におきましても私の考えをまじめに述べた次第であります。ただ今仰せになりましたごとく、婦人の人権に関する問題、風紀、教育に関する問題、あるいは性病と申しますか、病気に関する問題でありまして、これは重大なる、まじめに論議すべき問題であると思つておるのでありますが、それをただ外観的に表面的によくなつたというだけでは参らぬと私は思うのであります。表向きはよくなつているが、素通りの観客にはよくなつたと思われましても、その火が縁の下へ参りまして、上へ出ずに煙が縁の下へ参りましては、これはどうかと思うのであります。そこで、ここでしばしば申しましたごとく、内閣においては売春対策協議会というものができて、あらゆる面から、これを絶滅することはできませんでしようが、今われわれがいろいろ考えているように、できるだけ少くするというように対策を今やつておることでございまして、その点においては、私は、まじめに根絶に向つて一歩前進するものと考えております。
  23. 神近市子

    神近委員 前から大臣にちよつとこのことを伺いたいと思つておりましたが、山本先生の御質問に便乗するようでたいへん悪いのでございますけれど、私は大臣にこういうことを伺つてみたいと思うのです。新聞の一事によりますと、大勢お子様もお係さんもおありになる非常に平和な御家庭のように私どもは見ているのですけれど、今日の状態で日本を放置しておいて、将来お子様の御家庭なりあるいはお孫さんの御家庭なりに何らかの形で困つた不幸なことが舞い込まないという自信をお持ちになつて、そしてまだ施設がどうの、保護措置ができないのといつていらつしやるのでございましようか。私はその自信のほどを、どちらでございますかということをお伺いしたい。――おわかりてございますか。私はこういうことを申し上げているのです。今日のような状態に日本をほつておきまして、大臣のりつぱな御家庭の中でお育ちになつたお子様、お嬢さんがおありだつたら、お嫁にもおいでになるでしよう。それからお孫さんが大勢おいでになるようなふうに見えまずけれど、そういう方々が大きくなつて、何らかの困つた事情が起るということ、たとえばお嬢さんの場合であつたら、夫におあたりになる方がいろいろのことをお始めになるということ、そういうことが今の形で絶対に防止ができるというふうに御自信がおありでありますかどうか、それをちよつと伺わせていただきたいと思います。
  24. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 問題が大きゆうございまして、具体的にこうということはお答えできないかもしれませんが、今日の状態におきましては、これを野放しでいいかとおつしやられれば、われわれは今日の状態においてはどうか、こう心配をいたしておる次第でございます。ことにただいまの教育のああいう状態でございましては私どもは非常に心配をいたしておるのでございます。ことに売春の問題のごときは、何とか一歩でも前進の道を進まねばならぬ、かように考えております。私は先日久布白女史より本をいただきまして、なかなかひまがありませんが、それを少しずつ読んでおりまして、皆様方がこの問題に真剣に取組んでおいでになりますことに対しましては、深く敬意を表しておる次第でございます。     ―――――――――――――
  25. 小林錡

    小林委員長 それではこの際法務行政について調査を進めます。発言通告がありますから、これを許します。木下郁君。
  26. 木下郁

    木下委員 大臣に伺いたいことは、大臣は新聞をごらんになつてすでにお気づきであり、何らかの御庁さもなさつていることと思いますが、昨日の夕刊に兵庫県の現役の吉川副知事が自分の上長である浮田知事を含めて神戸地検に告発したという事があります。これは常識的に考えましても、ちよつとあり得べからざることであるが、空気が相当つてつて、両当事者もそれぞれ新聞に談を述べております。告発された事は、気が狂つただろうというふうなことを言つております。気が狂うはずはないので、その間にはよほど複雑な事情があるかと思いますが、それについて御調査になつておれば、その点を承りたい。
  27. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいまの御質問のありました兵庫県知事に対する告発事件につきましては、神戸地検におきましては、告発を受けるやただちに商館検事を主任検事といたしまして捜査を開始することにいたしました。
  28. 木下郁

    木下委員 ただそれだけのことであつたら新聞にも出ていることです。事件の内容は新聞にもいろいろ出ておりますが、これは副知事の言うところ必ず根拠のあることだと思います。それは、第二回の公選知事選挙のときに知事は朱印の知事三選をにおわしたようなこともあるらしいのであります。かようなことは、官紀の粛正を叫ばれている今日重大な事件なんです。さような意味で、大臣は先般来例の指揮権の問題でも国家的見地から云々ということを言われておりますが、これは汚職事件などと少しも比重のかわらないくらいの事件だと思つております。なおこの点について私の耳にしているところでは、地検の安井検事正に対していろいろもみ消しをやつている。しかもその人は前に検事正をされておつて四国の検事正になつたんですが、それが弁護士をしておつて現にもみ消しの方を盛んにやつているといううわさを耳にしている。そういううわさが出ていることは御承知でありましようか。寡聞なる私らにしてそういうことを耳にしているのですが、その方の監視をなさる司法当局として、そういう点等調査されておりましたら伺いたい。
  29. 井本台吉

    ○井本政府委員 お話の告発事件につきましては、今月二十五日に私どもその報告を受けたのであります。被告発人の方は知事の岸田幸雄氏外五名でございます。罪名はたくさんありまして、横領であるとか、贈収賄、背任、所得税法違反等いろいろついておりますが、とにかく現職の知事が現職の副知事から告発されたという事件でございまして、神戸地方検察庁におきましては、捜査に非常に堪能な安井検事正が、ただちに南館検事を主任検事といたしましてその捜査を開始したのでございます。詳細の点につきましてはまだ報告を受けておりませんが、本日も神戸から三席の検事が来ておりますので、その検事にも御趣旨の点は伝えまして、厳正公平にこの捜査を続けて行きたいと考えておるのであります。
  30. 木下郁

    木下委員 これは今私の申し上げましたように、三期知事をやつて、その間に相当宿弊がたまつておるということは世間一般の評判になつてつた。しかもその評判というのがただ煙じやなくて、実際はつきりしたものをつかんでおるからこそ副知事がここまでやつておる、ここまでやる以上、副知事としても相当の自信を持ち、また責任を負うだけの覚悟をしてやつたことと思う。その反面には、今刑事局長からは堪能で厳正な安井検事正と言つておりますけれども、その安井検事正のやり方につきましても、最近の造船汚職事件についてもとかくのうわさのある人であります。その点は私うわさを聞いておりますので申しておくのであります。かような人でありますので、大臣としてはこれを徹底的に、そうしてほんとうに真剣に捜査をやるようにということを希望しておきますが、大臣そのお覚悟がありますかどうか、その点を伺いたいと思います。
  31. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま御質問に述べられましたごとく、この事件に関しましては厳正に処置するように命令をいたします。
  32. 木下郁

    木下委員 なおいずれ詳しいことはまた伺うことにいたしまして、別なケースでありますが、東京から出しておる毎夕新聞に例の汚職事件で森脇から出たメモの情報等がずつと掲載されておる。それが急に記事の模様がかわつて、三月四日の新聞に森脇メモ、それに関して河井検事がいろいろの取引という言葉を使つてありますが、そういうことがあるのだという記事が出ている。そしてそのために毎夕新聞の編集の責任者である成田穰という人が身柄が逮捕されておるそうであります。これは森脇が名誉毀損だとして告訴したために逮捕された。もう一人の高橋義一という社員がひつぱられて、これは四十八時間で帰つておるそうであります。私は汚職事件の追究に対して水をさすというようなことがあつてはならぬと思う。この記事なんかは世間には多少そういうふうにとる人があるのではないかと思いますが、さような意味で私は聞いておるのではありません。ただ名誉毀損という問題について、これが大臣が先般来指揮権の問題でもおつしやつておるように、その罪名の法的性格からいえば、はつきり新聞に出ておるその記事が問題になつております。そうして新聞社の編集の責任者である本人は、いわば逃亡の危険もないし、また証拠の隠滅という点についても心配がないものでありますが、それは身柄が逮捕されておるということであります。この点についてはどういう事情であるか、大臣が指揮されてやつておるのかどうかということと、なおあわせて、民主主義が新憲法のもとに強く主張されるようになつてから、言論の自由ということがもちろん基礎になりますが、その反面に言論の自由に名をかりて、人の名誉を尊重するという点にいろいろの新たなる問題が提起されておると思います。一体に名誉を毀損された人が強く自分の名誉を争う、あるいは言論機関に関係する人は、人の名誉はこれを尊重するというその気風がなければ、やはり言論の自由ということも弊害を生ずる。今までの口日本においては名誉毀損の闘い、毀損された人が弱気を持つて闘うということが少しく欠けておつたと思います。さような意味で、この新聞社の人が新聞記事によつて逮捕されておる。しかもその罪質は逮捕する理由にならぬようなものだと私は考える。そういう者が長く逮捕されておるというのは、一面からいえばこれは人権の蹂躙という問題になると思う。さような点について大臣はこの事実を御承知でありますか。また御承知であるならばどういう態度でお取扱いになるおつもりであるか、その点を伺つておきたいと思います。
  33. 井本台吉

    ○井本政府委員 こまかい事務的な問題もありますので、一応私から御答弁申し上げます。  この事件につきましては、本年の三月六日に告訴人の方から毎夕新聞社の社長外四名が告訴になつておるのでございます。この事実につきましては、東京地方検察庁といたしましては渡辺寛一検事が主任になりまして、五月十八日に編集局長の成田氏及びその編集局の部員であります高橋という方を取調べたのでございます。成田氏につきましては五月二十日勾留請求の上、これは昨日処分留保のまま釈放いたしたのであります。高橋につきましては、健康上の理由で五月三十日に釈放しております。先ほどのお話では、新聞記事になつておるから全部証憑を隠滅するおそれはないのではないかということでありますが、この書かれました記事が一体だれが書いたものであるか、書いた者が面接の責任者でありまして、それを編集して記事にした者ももちろんこれは責任者でございます。しかしながら編集局長であるからということで名誉毀損の罪責を負うわけには参りません。従つてもしこの記事が名誉毀損ということになりましても、その犯人を特定いたしますのには相当の手数をかけなければならないのでございます。この記事の執筆者並びに編集者につきましては、大体取調べの結果によつてわかつたのでございますけれども、調べの経過におきましてはそれぞれ申立てにも食い違いがありますし、刑事訴訟法上のいわゆる罪証隠滅のおそれがあるということで勾留いたしましたので、これはこの令状を出しました裁判所においてもこの点をお認めになつて、さような令状を発付なされたのでありますから、私どもといたしましてはこれは法律上当然のことをしただけで、少しも不当なことをしていないと考えるのであります。名誉毀損の問題は、これは言論の自由を尊重すると同時に、この問題も反面からは厳粛に取上げなければならない問題でありまして、新聞社の行為であるから全部これは放任行為であるというわけには参らないのであります。言論は十分これは尊重いたしますけれども、名誉毀損の問題があれば、その点につきましても私どもはその職責を尽して行きたいと考えておるのでございます。
  34. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま井本局長より事件の内容及び法の適用につきましてはお答えいたした通りでございます。ただ私どものまことに遺憾なことは、ある新聞紙のごときは無責任な名誉を傷つけることをいい、また一部においても無責任に人の名誉を傷つけることがあるのはまことに遺憾なことでございまして、こういう名誉毀損のために闘うというのは、これはまた当然なことであります。ただいまのことにつきましての法の適用その他につきましては、ただいま申し述べた通りであります。     ―――――――――――――
  35. 小林錡

    小林委員長 それでは再び売春等処罰法案について審議を進めます。発言通告に従つてこれを許します。神近市子君。
  36. 神近市子

    神近委員 石井検事にちよつと伺いたいことがございます。というのは、北海道の千歳の町の条例ができたときのことでございます。手元にその条例はございますけれども、そのときに札幌地検がその相談を受けて、そうしてなお不確かな点があつて法務省に御相談をかけて、そうして石井検事がそれに対して幾らか御助言があつたということを承つたのですけれども、どの点でどういう御助言があつたかということをちよつと伺つておきたいと思います。
  37. 石井春水

    ○石井説明員 ただいまの点についてお答え申し上げますが、この問題は昨年の五月ごろかと記憶しておりますが、地方自治庁の方から私どもの方に、千歳町で特殊貸間業者の条例をつくりたいということを言つて来ているが、どんなものでしようかという個人的な質問がございました。それをまあそちらの方から知らされました内容を拝見しましたところが、この千歳町で考えている特殊貸間業者の許可に関する特別措置条例とかいう名であつたと思いますが、それは、あとで調べましたところによると、何か千歳の町の駐留軍の方から町が非常に売春婦がはびこつて兵隊の風紀衛生の面からほうつておけない、このままで放置するならば全町に対してオフ・リミツトにするという強い警告がありましたために、町の当局者が考えられたのだそうでございますが、内容はオンリー間貸し業とかハウス業とかいうものを町で届出をさせて許可して、それについては認めるけれども、それ以外についてはこういつたハウス業とかオンリー間貸し業とかいうものは認めないといつたようなものでありましたので、私どもとしましてはこういうような形のものが条例として出るということは、いわゆる公娼制度を復活するものではなかろうか、名前は公娼とは言つておりませんけれども、そういうところを認めるということは、結局町のそういう業者を認めるということになりはしないかというふうに感じたのでございます。そのときちようど全国の次席検事の会同を催しておりましたので、当時の札幌の次席検事にこの旨を話しまして、事態としては地方的なものであるけれども、これが条例として、とにかく一地方の法令として動くということになると非常に問題になるから、札幌地検の方でこの点は十分注意してくれというふうに連絡したわけでございます。その後札幌地検の方から連絡がございまして、個々の点については私もこまかく関知いたしませんでしたが、大要はただいま申し上げたような点で千歳の町の方に注意をしたそうでございます。何かその間のいきさつは相当複雑なものがございます。結局最後には札幌の地方検察庁の検事正の名義で千歳の町長あてに昨年の六月二十日付で、こういつた条例は町議会に提出しないように勧告するといつた文書まで出ております。その結果かどうかわかりませんが、あとで調べましたところ、検察庁だけではなく、ほかの方でもそういつた面の反対が非常に多かつたそうでございまして、千歳の町の当局者としてはこういつた特殊貸間業者に関する条例は提案を思いとどまりまして、千歳の町の風紀取締り条例を改正いたしまして、これによつてある程度の目的を注したいということで改正したそうでございます。この改正の条例につきましては、神近先生も御存じでしようし、私も持つておりますが、この条例の改正をする経過については私どもは関知しておりません。以上でございます。
  38. 神近市子

    神近委員 よくわかりました。それでそういうことをやらない方がいいというようなお考え方は、特殊貸間業といいますと、多分今日の赤線の業者のように承れるのですけれども、その人たちを合法化することがいなけいということでございますね。そうするとこのお考え方は、あらゆる面で用いられるお考え方だと私どもは考えますが、そういうふうに承知してよろしゆうございますか。たとえばそういう業務というものは、今日公認されてはならない、そうして公認されている営業ではないというようなお考え方ですね。そうしていわばこれはもぐりの営業で黙認されているものにすぎないという考え方でございますね。
  39. 石井春水

    ○石井説明員 私どもとしてはただいまの神近委員の御説のように考えております。
  40. 神近市子

    神近委員 ありがとうございました。これでよろしゆうございます。
  41. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は防犯部長に売春の問題に付随して、この間お尋ねする時間がございませんでしたので、人身売買の問題とそれからヒロポンの問題についてお尋ねをいたしたいと思うのでございますが、こういう材料がおありになるかどうか知りませんけれども、現在の赤線地区や青線地区、それから散娼、こういう売春をやつておる女の人たちの数をどのくらいと踏んでおられるか、割合とはつきりしないようでございますが、その何パーセントが人身売買対象になつてここへ落ちて来たかというような見当があなたの方でおつきになつているでしようか。もし数字的にどのくらいとはつきりしておりましたらお知らせいただきたいと思います。
  42. 養老絢雄

    養老参考人 警視庁管内におります売春婦の数につきましては取締り等の経験を通じまして大要の推定しました数字を持つておるのでありますが、人身売買によつてそうした売春婦転落した者が何人かという数字は持つておりません。
  43. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは警視庁管内の売春婦の数はどのくらいと想定しておられますか。その数をちよつと教えていただきたいと思います。
  44. 養老絢雄

    養老参考人 警視庁管内では売春婦としまして大体三色にわけておるのでありますが、一つは街娼、町に出て、単独でもないのでありますが、お客を拾つて来る、そうした売春婦、それからいま一つは、いわゆる特定の場所を持ちまして、お客の求めに応じて出かけて行くというようなやや組織立つた一つ売春婦、それからいま一つは、集娼でございまして、これは沿革のあるもので、十三箇所の集娼地区があるのでございますが、ここに詳しい人数は持つておるのでありますが、ごく最近の推定したところによりますと、集娼地域にいわゆるカフエーの女給といいますか、従業婦というような名目でおります概数が四千六十九人であります。それから街娼、ストリート・ガールが千百人でございます。これは詳しく言うと外人相手、邦人相手とわかれるのでありますが、千百人、それから管理されておりますつまりやや組織立つた形でかかえられておりまして、それが出かけて行くというような形態の売春婦が三千四百人くらいあると考えております。従いまして合せまして八千人程度売春婦が警視庁管内にあると考えております。
  45. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 警視庁管内に御想定になつてつておられる数というのは、それを私たち非常に確かなものだと思うわけに行かないのですが、数の問題でこちらの見解と違うので、これはまたあとにしておきたいと思います。人身売買の問題で、大体あなたの方は八千人と見ておられる。まあ売春婦と申しますか。それが八千人なら八千人と一応仮定――仮定というと失礼かもしれませんが、正直なところ人身売買のコースをたどつてここへ来たであろうというような者は、率直に言つてわからないわけですね。そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。それで労働省の婦人少年局あたりと人身売買の問題についてお打合せをなさつて、青少年保護対策の上から、確かな数を売春婦の中に求めて、そして横の連絡をおとりになつて、積極的な手を人身売買に対してお打ちになつた今までの経過がございましたら、ひとつお聞きしたいと思います。
  46. 養老絢雄

    養老参考人 人身売買、特に少年対象とするそうした行為につきましては、われわれとして極力取締りをいたしておる所存でございます。これはもう積極的にいたしておるつもりでございますが、労働省とそのためにいろいろ打合せをしたということはございません。
  47. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 御存じ通り、職業安定法、それから児童福祉法は厚生省の所管でございますけれども、労働基準法などの関係と、それから労働省の婦人少年局独自の立場から、この人身売買の問題については――私たちもいろいろ寄り寄り話合いをいたしておりますが、たびたび警視庁の方へ御協力を求めて、いろいろな参考資料を持つてあなたの方へ行かれ、警視庁としての善後措置を御依頼になつたような形跡があるように拝聴しておるのでありますが、あなたの方でこれを真剣にお取上げにならなかつたのではないかと想像いたします。確かにこれは労働省あたりからは、実際にあなた方に協力してもらわなければ、職業安定法の立場、児童福祉法または婦人少年局独自の立場から解決し得ないというので、これをあなたの方へたびたび御交渉なさつたように聞いて、まあ良心的にあなたの方では横の連繋をとつておやりくださつたものだと実は推察しておつたものですから、具体的な例があつたら拝聴したいと思つて質問したわけでありますが、そうするとそういうお申込みなども、この売春問題と結びつけて真剣に考えている労働省の婦人少年局あたりからは、今まであなたの方へお申込みはなかつたわけなんですか。
  48. 養老絢雄

    養老参考人 われわれの手元に労働省から人身売買等についての非常に有益な資料をお届けいただくことがあるのでありまして、そうした資料は十分これを参考にいたしまして、取締り上の資料にいたしておるのでありますけれども、直接に労働省の係官等がわれわれのところへそうした点の問題を持つて見えになり御相談にあずかるということはございません。
  49. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それではそういうことで一応承つておきますが、私どもが赤線、青線区域などに行きますと、体裁のいいことを言つておりますけれども、あの中に働いておる人たち相当そうしたコースをたどつて来ておる。しかも前借りなどでがんじがらめに縛られて動けないような売春婦がほとんど七〇%ではないか、かようににらんでおるわけでございますが、人身売買の警視庁管内における組織について、たとえば今年一年、去年、一昨年、そういうふうに年度がわりの順を追つてでもよろしゆうございますから、人身売買の問題についてお扱いになつ犯罪数というものはどれくらいになつておりますか。真剣にこれをお取上げになつておるのならば、相当な数があなたの管内でもなければならぬと考えるから私はこういう質問をするわけであります。
  50. 養老絢雄

    養老参考人 人身売買取締る場合は、主として職業安定法でありますが、あわせて児童福祉法違反というようなものを建前といたします。それから営利誘拐事犯として立てる場合もあるのでありますが、警視庁で関係した事件といたしましては、私は年を追つてふえておると思うのであります。ここに統計を持つておりますが、二十七年は、売春に関連する職業安定法違反として検挙いたしましたものが十七件であつたのでありますが、それが昨年度は二百四件に増加しております。それから営利誘拐が、これはただちに人身売買とは言えないと思うのでありますが、二十八年度に三件、二十七年度はゼロであつたのであります。大体件数は、ここに明確な資料を持ちましたものは以上でございます。それからいわゆる集娼地域につきましても、こうした事案は検挙した事例があるのでございまして、念のためにこの点を申し添えます。
  51. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 件数として二十七年度は十七件、二十八年度は三百四件と、これは実際おやりになつてつたという数字でございますけれども、何か割切れないものを感じますし、私の方にも考えがございますから、あなたの方の御報告として承りまして、ここに記録にしておくことにして、あとの方に譲りたいと思います。  次にヒロポンの問題でございます。私たちが夜の夜中にあの山谷街などに行つてみますと、もうヒロポン患者ともいうべき売春婦が、はなはだしいときには一間くらいの間に三、四人立つておる。そうしてこの人たちはどのくらいで売春をやるのだろうかといろいろ調査してみますと、二、三百円でやつておる。ヒロポン代一本がほしいというような売春婦相当あります。その街頭の売春婦の顔を、電気の下でございますけれども、見ますと、ほとんどヒロポン患者であります。ヒロポンの問題については、麻薬の対策の立場から特別おとりになつておるとは思いますけれども売春婦と切つても切れないものは、人身売買と、麻薬、ヒロポン、覚醒剤の問題だと思うのでありますが、現在日本の国内においてあなたの目で見て、ヒロポンのこの問題について、一番ヒロポンの密売のはなはだしいところ、そうしてどういう種類の人たちがその業に一番多く携わつておるか。それから実際に検挙されたケースからいつても、ひそかにやるところのヒロポン業者というものが、どういうものであるかということを大体おつかみになつておりましようか。これは非常に抽象的な言葉でありますが、私の言つておることがわかりますか。
  52. 養老絢雄

    養老参考人 覚醒剤については、われわれとしても専心取締りをいたしておるのでありますが、昨年中覚醒剤取締法違反で検挙いたしました女性が千七百五十四人あるのでありますが、そのうち売春婦と認められる者が、二百五十七人、大体一四%であります。そうしてヒロポンは中毒症状となりますと、次々とこれを打たなければ、もう耐えられないために、あらゆる手段を用いてそれの獲得に狂奔するというようなことになるのでございまして、こうしたものを用いて、売春婦を支配下に置くというようなことはよく言われるのでありますけれども、事実われわれの取締りを通じまして、現に売春婦に対してヒロポンを売つてつた、また売春婦でヒロポンを使用していたという事実を承知いたしております。しかし売春婦覚醒剤必ずしも必然的に相伴うものではないのでございまして、かえつてヒロポンを売春婦が使い出したために、当初、夜働くというような関係もあつて、非常に仕事の能率を上げる上には、一時的には効果的かもしれませんけれども、これがやはり高じて来ると、むしろそうした売春の仕事といいますか、売春そのものに熱意を示さない。結局効果がないというので、むしろそれをとめるというような動きも承知いたしておるのであります。必ずしも売春婦覚醒剤を非常に使う必然性があるということは考えておりません。  それから覚醒剤違反者の職業等を見ましても、そうした風俗関係の職業を持つた者が非常に多くはないのでありまして、やはり無職、結局徒食といいますか、ぶらぶらしておる。結局正常な営業ではなしに、そうした非常によくないことでもつて利をとろうという人間に多いのであります。覚醒剤違反者といたしまして、警視庁が取締つたもののうち、定職がないというのが五〇%近くを占めております。次にパタヤというようなものであります。それから工員、人夫、店員と行きまして、風俗関係営業の者が必ずしも売春婦そのものとは言えないのでありますけれども、非常に女子が多いのでありますが、三%程度を占めておるにすぎないのであります。大体この覚醒剤違反者の職業別といいますか、そうしたものをわれわれの手元で承知し得たものは以上であります。
  53. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これは私たちが鳩の町へ行きますと、鳩の町の売春婦人たちは、鳩の町はヒロポンは使いませんよ、新宿は使いますよ、こう言うのです。それから新宿へ行きますと、新宿ではヒロポンなんかを使つている者は一人もありませんよ。鳩の町が使つていますよ、こう言うのです。非常にヒロポンを使つているということを隠しますけれども、実際はたくさん数をとらさなければならないので――もともとこれは売春婦にくつつくところの業者が客を何回もたくさんとらせるために飲ましたのがもとで、売春婦の中にはこれが非常に横行しております。あなたがいかに御弁明になつても、これはおおいがたい事実だと思うのです。はなはだしいのは、実際私たち当つてみると、ヒロポン代がほしいからというので売春をやつて売春とヒロポンと追いかけつこして食うことなど考えてない売春婦が多いのです。  それからあなたは今職業的におつしやいましたけれども、このヒロポンと密輸業者と韓国人の問題であります。第三国人であるところの、昔鮮人といわれた方々、今日韓国人といわれる方方、私はこのヒロポンと韓国人の方々については、もう少し警視庁において頭を働かしてもらわなければ困ると思うのであります。何も韓国人の方々をいたずらに私は非難するのではありませんが、今職業別に区別されましたけれども、ヒロポン密造業者の七五%ないし八〇%は、私は第三国人じやないかと思う。しかもその第三国人の方々は、私たちが調査した結果によりますれば、決して同一民族へは売らない。そうして人種の違うところの日本人にこれ売りつけて、民族がだんだんこれに侵されて行つているというような実態を、私たちは横須賀においても、またあらゆる基地においても、集娼地帯においても散娼地帯においてもこれを認めざるを得ないのでございますが、この韓国人とヒロポン密輸業の問題については、あなたの方ではどう考えていらつしやいましようか。
  54. 養老絢雄

    養老参考人 ヒロポンの密売者、密造者には韓国人が非常に多い数を占めておるのであります。それはもうおつしやる通りであります。それから特飲街の従業婦に対して、そうした覚醒剤が売られていたという具体的な例も幾つか持つております。また特飲街の中にポン窟をつくりまして、韓国人の方方がそれを密造、密売いたしておつたという例ももちろんございます。そうした点は御指摘通りでございまして、われわれといたしましても覚醒剤取締りについては、十分そうした点も考慮しつつ取締りはいたしておる所存でございます。
  55. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私はもう少し警視庁の方々に気をつけていただきたいのは、まあ政治ももちろん悪いですから、第三国人の方々をけなす前に、政治の貧困みずからを反省しなければなりませんが、ヒロポン密造の問題で日本民族は荒らされる、やみ米を運ぶ人たちの中心は、第三国人のあの人たちです。賭博、いろいろな犯罪行為というものを考えてみますときに、ああした特飲街、売春地帯を中心として非常に韓国人の方々、第三国の方々の御活躍が目にあまり、ひどい某基地の都市に参りますと、もう地元のボスなどは第三国の方方に頭が上らない。すつかり赤線地帯を第三国の人たちに押えられてしまつて、そうしてその町全体が、第三国人が独裁するところの賭博と、ヒロポン密造と、売春と、人身売買と、ポン引きとのまつたく手のつけられないところの治外法権地帯になつているというのが、この東京の近くにも一ぱいあるのであります。もちろん国境を越え、民族を越えてお互いにこの地球の上に生きるのでありますから、私たち所属する政党の立場から申しましても、第三国人の方々が私たちと仲よく手を携えて――日本人の社会に住んでおられることを決して一方的に非難するわけではございませんけれども、しかしお住みになる権利が与えられておる以上は、やはりあの人たちも社会秩序を守り、社会のバチルスになることは、やはり十分責任をもつてこれを避けてもらわなければならないと思うのでありますが、日本国政府の無責任な放任状態によつてこの人たち売春をあおり、ヒロポン密造の先がけとなつて犯罪を犯しつつあるこの状態に対して、今日のような警視庁、法務省、国警のだらしなさでよいかどうか、私はこれを機会に率直に御答弁を願つて、善良なる市民を守るために心構えを新たにしていただきたいと思うのであります。ちよつとはずれましたけれどもいかがでございましようか。
  56. 長戸寛美

    ○長戸説明員 覚醒剤の密造に関するパーセンテージでございますが、東京ではたしか朝鮮人が七二%くらいと存じております。おつしやいますように、覚醒剤の密造犯というものはその根元でありますからして、その意味において、われわれとして徹底的に撲滅しなければならぬというふうに考えております。従つてその中心をなすそういうふうな悪質外国人に対しましても、容赦なくやるという態度をもつて行きたい。またおつしやいますように、売春窟の支配者というものに対しても同様な態度で臨みたいというふうに考えております。
  57. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 政務次官が御出席になつておるのでありますから、私はこれを機会に、第三国人の方々の問題については、単に売春や賭博やヒロポンだけの問題でなしに、今までの政府のだらしない態度というものを私は日本民族のために――極端な民族主義を唱えるのでありませんけれども、もう少しこれから腹を入れかえてやり直してもらうということを、政府の立場から、ひとつ確かなお言葉をいただいておいて具体的にはいろいろな手を打つていただきたいと思いますので、きようはいい機会でございますから、政務次官から御答弁をいただきたいと思います。  そのほかにまだ質問したいことがありますけれども、はたに猪俣委員神近委員から発言を譲れという言葉がありますので、私の、質問はここで一応中止をいたしますが、政務次官どうぞ……。
  58. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 ただいまの御意見はまつたく同感であります。ただいたずらに民族的感情で排斥するということはもちろん慎まなければならないし、また同時に日韓相携えて、仲よく行くことも必要であることは申すまでもないと思うのでありますが、第三国人を中心として犯罪が起きたり、あるいは社会秩序の上において不愉快な点が多多あることは御意見通りであろうと思うのでありまして、今後これらの問題に対しましてはでき得るだけこれをなくすような立場において、だらしがないというおこごとでありますが、だらしがなくないようにこの問題を解決すべく一層努力いたしたいと思うのであります。
  59. 小林錡

    小林委員長 それでは本日はこの程度にとどめておきます。  明日は十時半より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十四分散会