運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-05-21 第19回国会 衆議院 法務委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十一日(金曜日)    午前十一時五十九分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君    理事 高橋 禎一君 理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    吉田  安君       猪俣 浩三君    神近 市子君       木下  郁君    佐竹 晴記君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         法 務 大 臣 加藤鐐五郎君  出席政府委員         法制局次長   林  修三君         国家地方警察         本部警視長         (警備部長)  山口 喜雄君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 五月二十一日  委員古屋貞雄君及び佐竹晴記君辞任につき、そ  の補欠として井谷正吉君及び堤ツルヨ君が議長  の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二十日  売春禁止法制定に関する請願神近市子君紹  介)(第一九二七号)  同(神近市子君外二名紹介)(第三六一六号)  同(松平忠久紹介)(第四五六〇号)  同(萩元たけ子君紹介)(第四六三一号)  同(小川平二紹介)(第四六三二号)   同(中澤茂一紹介)(第四六七五号)   戦犯者釈放に関する請願羽田武嗣郎君外一  名紹介)(第四九四八号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  法務行政及び人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから、順次これを許します。佐竹晴記君。
  3. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それでは刑事局長並びに国警の係の方にお尋ねいたしたいと思います。福島県の石城郡に鳳城炭鉱というのがございまして、その平坑の前労働組合組合長箭内光殺害された事件がございまして、地方新聞記事等にも重大な事件として報ぜられておるのでございますが、これにつきまして調査されました結果をひとつ御報告願いたいと思います。
  4. 井本台吉

    井本政府委員 お答え申し上げます。去る四月二十四日福島小田炭鉱におきまして発生いたしました殺人事件につきましては、ただちに被疑者二名を逮捕いたしまして取調べますと同時に、同月二十七日に至りまして被疑者両名の親分と目せられる井田清造、これをも逮捕して取調べをしたのでございます。現在までの処理状況といたしましては、被告人として起訴されました者は武藤正見、鈴木豊、この両名は五月十六日に殺人罪として起訴されております。それから井田清造、これも五月の十九日共犯者として起訴されております。なおその関係者といたしましてそのほか二名の者を検挙して取調べを続けております。この犯罪事実の概要を申し上げますと、武藤と申します被告人被害者でありまする箭内光遊び仲間でありましたが、同人は更生して小田炭鉱消費組合長などになつて、その地位が向上し、昔の遊び仲間を疎遠にしたのを不快と思つて同人殺害すべく機会をねらつておりましたところが、去る四月二十四日午前五時ごろに同炭鉱共同浴場友人でありまする被告人鈴木豊と会いまして、鈴木自分と同様に箭内を快からず思つていたので、これを誘いまして殺人の共謀をなし、武藤が二ふりの匕首のうち一ふりを鈴木に与え、炭鉱組合事務所で一番方として入坑する箭内を待ち伏せしまして、同人が来たので、付近広場両人ともども匕首をもつて同人を刺し、午前九時ごろに死亡させて殺害したというのがこの両名の公訴事実の概要であります。この町名の親分でありまする井田傷害罪として前科があり、月下執行猶予中でございますが、この殺人事件共犯者といたしまして四月二十七日逮捕し、取調べました結果、この共犯者として五月の十九日に起訴したのでございます。そのほか平の福島地方検察庁支部におきましては、本事件関係いたしましてその地方暴力事犯が相当行われているということに注目して、親分でありまする井田のみならず、これまで申告のなかつた被害事実全部について徹底的に捜査を遂げる方針を立てまして、福島県の橋本検事正みずからこの捜査指揮に当り、国警福島本部長ども現地に臨みまして署員を督励している次第でございます。この取締り進捗状況に応じまして今月の十九日に、さらに富沢五郎、またその弟の富沢国男井田子分西村幸雄というような者も同様の暴力事犯がありましたので、これも検挙して目下厳重に取調べ中でございます。最初下作発生直後におきましては、この関係者におきまして捜査機関に対する協力を多少躊躇する傾向が見えましたので、検察庁といたしましてはただいま申しましたように、警察当局と連絡をいたしまして、一般に対して暴力排除のために断固たる決意を表明するとともに、五月の八日には地元の防犯協会主催防犯懇談会次席検出自分で出席いたしまして、捜査機関に対する一般村民協力の必要なるゆえんを説明いたしました結果、村民は積極的な協力をするに至りまして、本件捜査が進捗している状況でございます。  以上申し上げましたように、かような事犯の起きますことは、まことに嘆かわしいことでありまして、起きたものはいたし方ありませんから、それにつきましては厳重な謙虚をいたします。とともに、将来かような事犯の起らないように極力努力して参るつもりでございます。
  5. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 詳細な御説明をいただきまして大体了承したのでありますが、私の手先にありまする資料によれば、たとえば朝日新聞の四百二十五日の福島版を見ますと、殺害された箭内さんの妻サト子さん、妹のキミさんなどのこもごも語るところによれば、かように書いてあります。「前からねらわれていました。昨年四月組合長選挙のころ、ならず者が来て選挙に出るな、今後村会議員選挙にも出たら承知しないぞ、といつて家鉄ビンをとつて投げつけ、暴れていました。その後一人連れの若い者をしよつちゆう寄越して呼び出しをかけ、いつかは殺してやると脅して、最近では十八日の夜も来ました。恐ろしくて心配しながら気をつけていたのでした。いつも酒をたかつて飲んで歩き、出さないと暴行する気違い犬みたいな人たちで、こんな恐ろしいならず昔をどうして放つておくのでしよう。」とあります。それから山の人々はまた次のように語つております。「ならず者は山のダニで、正義派箭内さんを目のカタキにしていた。箭内さんが生活協同組合をつくつたのをねたみ、子分をそそのかしていたようです。前に平地区署で暴れて捕つた村の添田登一さんも当時子分で、自分警察へ捕まれば箭内さんを殺さずに済むからわざと暴れて捕つたと自供したそうで、駐在巡査が事情を調べに来たことがありました。」かように述べております。これはほんとのことを語つたと思われますが、こういう状態だといたしますと、まつた治安状態はなかつたものと言わなければならぬほどであります。ただいまの御説明の中にも、村民捜査機関協力することを躊躇する傾向があつて、そこで次席検事みずからが進んでその衝に当つて村民もこれに協力するようになつたと仰せられております。そのような治安の乱れた、そしていつ殺されるかもわからぬ戦々きようきようたる状態であるのにかかわらず、これに保護さえも加えない状態が続いておるというがごときは、今日の法治下においてとうてい認めらるべきことではないと思います。法務当局といたしましても、また国警当局といたしましても、相当これは責任を感ずべきことではないかと思うのでありますが、ただいまの御説明では、前のことはしかたがないが、将来はこうする、こう言うだけで済まされる事件ではないと思います。ただいまの御説明によつても、この事件があつてから、暴力事犯というものが非常に繰返されていたことを認め、今日まで申告のなかつた点についても、検事正みずから進んで調査し、国警本部長も乗り出して、そしてこれを取締るようになつたとございますが、さように御説明の中にも現われております通り旧来かくのごとき暴力行為が公然行われておるのにかかわらず、被害を受けた者なども申告をようしないで、泣寝入りしておつたよう状態であつた。今度の事犯をきつかけに初めて、検事正国警本部長が乗り出して、これではいかぬ、と取締りを開始したなどということは、これは将来のことはいいといたしまして、今日までほとんど無警察状態であつた治安というものがまつたく乱れておつた状態については、相当私は責任を負わなければならぬ事案と存じますが、いかがでございましようか。
  6. 井本台吉

    井本政府委員 先ほど申し上げましたように、かような事案未然に防ぐのであれば非常によかつたのでありまするが、人員の手不足その他によりまして、申告が従来ありませんでしたので、かような事案が看過されまして殺人犯が起きてから後に、遂にかような処置をとらざるを得ざるに至つたことになるわけでございます。この点につきましては、さらに住民全般治安状況にもつと注意をして、ただいまのごとき暴力事案未然に防ぐべきであつたという点を、痛感する次第でございます。
  7. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 刑事局長も進んで未然防ぐべきであつたことをお認めになられたのでありますが、遺憾ながら防ぎ得られないで、今日の事案を惹起いたしましたことについては、政府当局といたしましても、検察当局といたしましても、さらに国警当局といたしましても、これは相当責任を持たれなければならぬ事案であると思います。今日暴力というものは、絶対に私どもは排撃しなければならぬと思います。その暴力が公然行われて、それで救済の道がない。そうして日々不安な状態が過されておりながら、保護を加えられない。その結果今日のごとき事案が起つたことは、まことにこれは悲しむべき、事態であると存じます。  なお私はこの際お尋ねをいたしておきたいのでありますが、この加害者武藤正見、鈴木豊であつて、すでに逮捕されて――先ほど両者が逮捕されためは御説明があつたかどうか、わかりませんが、逮捕された後、二十九日に至つて親分井田清造をさらに逮捕をなし、これが共犯であるというふうな御説明がありました。しこうしてその動機を見るに、武藤は昔の遊び友だちである。そうして箭内がその後労働組合組合長などになつて、いわば出世した。こういつたことで快からず思つてつた。ところが四月二十四日に鈴木共同のふろ場で会つて、これと語り合つて鈴木も快からず思つていたので、これに加担することになつたというふうな御説明のようでありますが、それよりも本件は、井田清造というものが、事件の一番の総元締めであると見なければならぬ客観情勢にあるのであります。しかし井田はその後わずかに加担したといつたことで逮捕された程度のようにただいま承りましたけれども、それよりもこの井田の方が、もつと根本的に事件を起した首謀者ではないかと見るのでございますが、いかがでございましようか。
  8. 井本台吉

    井本政府委員 先ほど落しましたが、井田清造は、この地方に勢力を持つておりまする、いわゆるやくざ仲間野田一家親分でありまして、昭和二十二年以来好間小田炭鉱消費組合長を勤めていたのでありますが、昭和二十八年九月ごろから箭内光らによつて新設されました生活協同組合が活動いたしまして、加入者も漸次増加し、ことに箭内労働組合長好間村会議員になつたことなどから、自分たち立場が劣勢になるのを不愉快に思つてつたようでございます。ことに井田の経営上の不正を攻撃いたしましたことから、井田は深くこの被害者箭内を恨みまして、そのことから面接の加害者でありまする武藤に対して、あと自分が引受けるからやつてくれというようなことの教唆を加えたのでございます。道徳的に申しますと、この井田行為は、親分であつて、しかもかような背景から見ますると、責任は重大でございまするが、法律的に直接実行行為をいたしましたのはこの武藤鈴木の両名でございますので、まずこれに対して手をつけて、続いて井田に手をつけたという状況になるわけでございます。別に井田に対して簡単な教唆者とかなんとかいうようなことで事件を進めたというわけではございません。
  9. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 四月三十日の福島民友という新聞がありますが、これによると「「暗黒王井田」戦慄の証拠固まる」と題して「殺せば縄張を譲る」そうして「一生を保証と頼む」といつたような題目のもとに、次のようなことが書かれてあります。「三月二十五日夜、添田自宅富沢憲男井田の妻の弟)が訪ねてきて「おれのことはセツちやん(井田清蔵)のいうことだと思つてきいてくれ」と前おきして箭内氏の殺害を命じた、井田は時期をみて自分箭内をやるつもりでいたが、もうがまんができなくなつたからやつてもらいたい、やるのは添田武藤しかいないので腹をきかしてくれといわれて添田殺害を決心したらしい、そのとき憲男はこれまで消費組合の件を根にもつている関係から井田がやつたことがすぐバレるので、二カ月ほど待てといつたが、犯行の動機をくらます方法として箭内自宅でやらず、場所は労組事務所でやれ、まず箭内添田富沢の就職をたのむ、たのめば当然断わるだろうから、断われたら二言、三言いいあつて殺せば動機がくらませるからといい含め、さらに殺したあとは自首しても、箭内を殺した代償として好間縄ばりをゆずる、ここから上るテラ銭で生涯をすごすだけのことはしてやると、のちのちの保証まであつたといわれる」こういうふうに報ぜられておるのであります。おそらくこの件はお調べ願つておりまして、もう大体おわかりのことと思いますが、もしこういつたようなことで、いわゆるなわ張り争いといいますか、あるいは一方が少し出世をするとか有力な地位につくとかすれば、これをねたんで衆力をもつてこれを殺す、あれをやつつけたならばおれはお前になわ張りを譲る、そしてお前の生涯の生活を保障してやる、こういつたようなことをもつて親分友人あるいは、自分の妻の弟ないしその他の遊び友達のグループにこれを命じて、共同戦線張つてかくのごとき殺人行為が行われるというがごときは、今日の時代においては予想されないことだと思います。もし検察当局警察当局が十分に治安確保にお努めになりましたならば、かようなことは起りつこないと思います。なわ張り争いをする、そしてあれを殺したならばあのなわ張りを譲るというような、明治以前のような事柄が今日なお続いておるというがごときは、とうていこれを解するに苦しみますが、こういう報道に対しまして検察当局のお調べの結果はいかがでございましようか。
  10. 井本台吉

    井本政府委員 ただいままでは先ほど御報告申し上げた程度の報告しか参つておらないのでありますが、この井田清蔵らがいわゆる井田一家なるやくざ仲間であるというようなことが報ぜられておりますので、おそらくさようなやくざ連中傷害行為には、なわ張りをどうするとか、あとどう見てやるとかいうような申合せがあつたということは、容易に想像し得るところでございます。かような事犯がこの民主主義時代に公然と行われるということは、まことに嘆かわしいことでございまして、厳重に取締りを続けて行きたいと考えるのでございます。少し前にも広島市内あるいは福井等におきまして集団的な親分子分の争闘がありまするし、これらに対しましては徹底的に検挙を続けておるのでございますが、さらに暴力事犯につきましては、できるだけ事の発生を少くいたしますために、引続き厳重な取締りを続けて行きたいと考える次第でございます。
  11. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 この新聞の妻子が泣きくずれている写真等を見て、実にわれわれは心を痛めざるを得ないのであります。かくのごとき暴力のためにどれほどの良民が苦しんでおるかということを考えまするならば、その治安確保の衝に当ります当局責任は重大であると存じます。今日民主主義時代において、法治国の時代において、かくのごとき暴力が公然と横行するがごとき事態に放置されておつたことの当局責任は重大であると存じまするが、これをよき参考として将来に向つてかくのごとき不祥事を叫び繰返さないように徹底的にお取締りあらんことを切望いたしまして、私の質問を打切ります。
  12. 木下郁

    木下委員 関連して。今暴力団の問題について佐竹姿員から質疑がありましたが、先般猪俣委員から加藤国務大臣大磯に起きた例の問題について質疑がありました。私はそのとき出席いたしませんでしたが、速記録を見ますと、加藤国務大臣のその問題に対するお答えの中に、初めは省きますが、「かつて五・一五事件に始まりました暴力行為というものが遂に東亜の大戦争になつたのでありまして、しかしてその結果敗戦いたしました。」、それから先に「その敗戦の結果といたしまして民主主義の実現となりましたが、これもまた行き過ぎ民主主義となつたのでありますがゆえに、またまた昨今のような反動右翼が頭を上げかけまして、」ということが出ておるのであります。この点について加藤国務大臣ちよつと伺つておきたいと思いまするのは、敗戦の結果、各方面に民主主義を徹底させる制度が設けられましたが、この国務大臣の言われる民主主義がまた行き過ぎ民主主義となつたという中には、新憲法等もやはり含まれておる意味でのお話でありましようかどうか、その点をひとつ伺つておきたいのであります。
  13. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私が先般大磯の問題につきまして答弁中、ただいまのように、右翼暴力行為があつた、また敗戦後左翼的の運動にも暴行になつて来たものがある、こういう意味を申し上げたつもりでありまして、極端なものは、右翼左翼たるとを問わず、こういう暴力行為はいけないという意味で申上げたつもりであつたのでありますが、あるいは言葉がたらず、また表現がまずかつた点もあるであろうと思います。そういう意味で申し上げたのでありまして、今の憲法がさような極端なものであるという意味で申し上げたつもりではなかつたのであります。
  14. 木下郁

    木下委員 右翼台頭の中にはつきり民主主義行き過ぎが今日ぼつぼつ現われつつある、またわれわれも重大な関心を持つておりますところのいわゆる右翼台頭というものに、民主主義行き過ぎ原因になつているという意味のお言葉がありますので、それでその行き過ぎの中には、新憲法できめたあの制度にもやはりその行き過ぎ点等もあるというふうにお考えになつておるのかどうか。なぜそういうことを申しますかというのに、現にあなたの所属されておる自由党でも、憲法を改正する――これは吉田総理言葉では、改正するかどうかという問題を検討するのだということでありますが、世間の理解しておる常識的な判断では、やはり最大の課題としては憲法九条の問題その他について研究するのであつて、それが自由党諸君あたりの言われているいわゆる行き過ぎという中に含まれておるかのように世間も理解いたします。それが全部ではありませんが、さような意味も含まれておるのじやなかろうかというふうに私もまた受取つておるわけであります。それでたまたまここで、最近ぼつぼつ現われた右翼の台風の原因として、民主主義行き過ぎ、平たい言葉で、言えば乱暴な民主主義ということを世間で言う人があります。さような意味で、あなたがおつしやつた中には新憲法も言つておるのかどうか、入れる気持でおつしやつたのかどうかを伺いたかつたわけであります。
  15. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 新憲法民主主義ということをその中に含んでおるつもりは毛頭ないのでありまして、右翼的の行動、行為がぼつぼつ出たというのは、私の言うのは、共産主義無力革命のようなことに対する反動ではなかろうか、こういう意味でありまして、今の憲法をそのうちに含むなどということは考えておりません。
  16. 木下郁

    木下委員 この速記録言葉だけでは、今のようなふうにはほとんどうかがい得ないような言葉になつておるわけです。それで、民主主義は少し行き過ぎたということは、自由党諸君の中にはよく言われておる人もある。占領政策行き過ぎという言葉でそれが言われておる。そこでもう一点だけ伺つておきたいのは、私の解釈し、また信ずるところでは、右翼台頭のきつかけは政治道徳頽廃である。民主政治というものは、全体主義政治に比ぶればちよつと気長いところがあることは、間違いのない事実であります。それに対して、議会政治等において政治道徳が紊乱しておるし、端的に最近の事例をとつてみますれば、国民が憤激しておるあの汚職事件、及びこれは先日来当委員会でいろいろ審議しましたが、あの政治的な、しかもその政治的意味はよろしくない権利の濫用としてなされた検察庁法第十四条に基く指揮権の発動というような、汚職事件によつて現われた政治の面の道徳頽廃というようなものが、民主主義の行き過ぎとかいうよりもおもな原因であると私は確信いたしております。ところがこの問題について、あなたの言葉では、いかにも最近の右翼台頭民主主義の行き過きだ、そうしてこの文句通りにとりますと、戦後にできた新憲法を基本にした、あらゆる場面における民主主義伸展のための制度行き過ぎておるからと、これが右翼台頭最大原因であるかのように受取られる御答弁速記になつております。この点は、私は、そうじやない、政治が紊乱しておつて国民のほんとうにまじめな政治に対する要求が満たされない、そうして国民生活が安定しないというようなところに右翼台頭最大原因があると考えておるので、その点については大臣はいかにお考えになつておるか、はつきり伺つておきたいと思います。
  17. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私はその速記をまだ見るひまがありませんで、そういうふうにありましたならば、それは先刻来私が申し上げた趣旨でありまして、表現の仕方がまずかつたか、言葉が足りなかつたのであるのでございまして、さよう御承知を願いたいのであります。  ただいま木下君が申されましたごとく、民主主義は手ぬるいのでありまして、それで、ややともすればわからぬ者が暴力によつて一挙に郭清をしたいというふうなことがあるのでありまするが、これは民主主義の敵であるということを、先般猪俣君の御質問のときにも申したことでございます。ことに汚職問題があるがゆえにこういう右翼台頭するというような御言説がありましたが、こういう問題も、私は、汚職問題があるがゆえにというがごときことは、お互い議会人といたしましては慎んで行きたいと思う。これは言論をもつて国会を通じて論議することでありまして、いやしくもこれを助長されるがごときことは、お互い慎みたいと申すことは、先般猪俣君が熱心に御主張になりまして、私はえりを正して傾聴いたした次第でございます。私が申しあげました言葉が足らなかつたならば、そういう意味ではないということを御承知を願いとう存じます。
  18. 木下郁

    木下委員 それでその今の御答弁の中にも、それを読んでいないからはつきりしないとおつしやいますので、今お読み願つてもいいのですが、共産党のいろいろの活動、早く言えば共産党の力が大きくなるというようなことが右翼台頭最大原因であるかのような今のお話がありました。その点なんです。その点も私は大臣のお考えが的をはずれていると思う。共産党と言いましてもこれが全体主義的な右翼と同じ考え方、それが私ども民主主義立場に立つ者からやかましく言われるところであります。共産党、また共産主義が出て、あの暴力革命という方向政治方向を持つて行く気持になる。それはやはり右翼台頭と同じことで、政治の綱紀が紊乱している、それに耐えかね、また国民生活が安定しない、不合理なことが政治の面で横行する、正しいことが通らない、まじめな連中がばかを見るというところに共産党の大きくなるゆえんもあるし、また右翼の大きくなるゆえんもあるのである。私は右翼台頭の一番の大きな原因は、これは大臣のお考えのような右翼台頭は、共産党が直接行動のようなことであばれまわるからこういうようなことが出るのだ、というように簡単にお考えになるのはたいへんな見当違いです。その点についてなおひとつお考えを伺つておきたいと思います。
  19. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私は、共産党憲法にいうところの合法政党でありまして、これを言うのではありませんが、マルクス、エンゲルスの宣言のごときは暴力革命ということで私は解しているのでありまして、そういう手段を共産党でとる者がある、こういうことを私は言うたのでございます。あとの点におきましては私はしばしば御答弁申し上げている通りでございます。
  20. 木下郁

    木下委員 どうもはつきりしたお答えになつていないと思うのですが、まあ大臣答弁ですから、そしてまあ戦力なき軍隊というようなよくもああいうようにあきもしないで同じことを繰返しおつしやる人ですから、もうこれ以上言つても始まらぬと思うけれども、もう少し真剣に――私の今言つたの共産党という言葉でなくて、あなたのおつしやつたのが、共産党であろうと共産主義者であろうと、その人たちの言ういわゆる火炎びん戦術、そういうものが出るから民主主義に反対してこの暴力行為右翼が出るのだとあなたははつきりおつしやつているが、これよりも原因はこうではなくて、今の吉田内閣のやつているような綱紀の紊乱した政治、これが右翼台頭を助長するのではないか、私はその意味を聞いているわけであります。
  21. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 世論がそういう汚職に憤激いたしておりますので、これに若い思慮のない者がこれを正義であると考えまして、このような直接行動に出るのは遺憾でありますが、これも先般猪俣君にお答えした通り政治家はできるだけそういう誤解を与えぬようにし、また世間もそういうことを挑発と申しますと言葉が惑うございますが、いかにもそういうことをするのはやむを得ないことであるというような容認するかのことき態度、言説は慎まなければならぬということを猪俣さんも仰せられて、私も同感の意を表したのであります。
  22. 小林錡

  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は法務大臣にお尋ねいたしまして、法的解釈につきましてまた刑事局長並びに法制局側からの御意見も承りたいと思います。  それは先般地方行政委員会におきまして私が質問いたしました警察大学におきまするスパイ教育のことであります。これはわが国の民主主義を破壊し憲法を破壊する重大問題である。今木下君が質問されました、法務大臣民主主義行き過ぎというような言葉を用いた、その民主主義というものを妙に解釈され、そうして結局において警察大学におけるこういう特高教育というものが行われる一連の関係があると存ずるのでありますが、そこで私はこの警察大学におけるスパイ教育、すなわち信書の秘密を侵す方法、あるいは金庫のかぎを明ける方法、あるいは秘密に家宅侵入する方法、さような不法なる訓練をしておつたことは明かなる事実であります。現にまたその訓練のきき目が現われまして、郵便局あるいは郵便集配人に対しまして、アカハタ等の宛名人、差出人及びその枚数を調べている。あるいはポストにある人が郵便物を投下すると、その脇に追随しておつてそれを見すまして、それを明けて持ち出します集配人に対して、今入れた郵便物を少し調べたいからだれがだれにやつたのであるか教えてくれろといつて調査する。さようなことが現に行われているのであります。これは容易ならさることでありまして、私は憲法の崩壊現象と名づけているのでありますが、憲法の規定をそのままにしておいて内容をすりかえる。憲法三十一条は内容的には何にも行われてないと同じことをやる。憲法九条の内容を失墜せしめるために再軍備をやる。これは憲法の規定はそのまま改正しないでやる。これは憲法の崩壊現象であります。憲法の改正現象でなくして崩壊現象であります。さようなことが現に行われているのは重大問題だと思うのであります。そこで警察大学においてかような教授をしている。前には犬養さんは法務大臣として警察担当の大臣をやつておられた。されば法務省においてはかような警察大学における特殊な教育指導を御存じであつたはずである。まずこれを知つてつたかどうか、それをお尋ねいたします。
  24. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 警察大学において金庫のかぎをかぎなしで明けるとか、あるいはほかの方法で封書をわからぬように明けてあとでぐあいよくしておくとかいうような教育をしたということは、私当国会の答弁において知つたわけでございます。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 その点について今の法務大臣はあるいは前法務大臣から引継ぎなさつておらなかつたかもしれぬ。犬養さんは警察大臣でもあつて、その大臣に相談なしにやる道理がない。あなたはその当時からの事務当局であられたから、井本さんからその実情を御説明願いたい。
  26. 井本台吉

    井本政府委員 前大臣警察担当の大臣であられたことはお話通りでございますが、私どもといたしましては、国警等におきましてどのような教育をいたしておりましたか、所管外でありまして全然さようなことの通知は受けておりません。直接また内容についてその後においても開いておりませんので、私どもといたしましてはどのような方法でどのような教育をしておつたかということはわらないのでございます。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると警察担当の国務大臣が全然知らざる間に、憲法を破壊するような指導を警察の最高学府においてやつておる。実にこれは奇怪なことじやありませんか。こういうことは許されることですか。警察大臣が存在する。国務大臣が存在する。しかるに内閣も知らず、国務大臣も知らず、その人権擁護の点につきましては最高の権限を持つておる法務省において事務当局も知らぬ。しかるに警察大学という国家の経営いたしまする教育機関においてかような憲法破壊の訓練をしておる。これは容易ならざることだと思う。これは謀叛じやないか。革命じやないか。警察大学に謀叛を起させる訓練をしておる者が――この平和憲法憲法として存在する限り、これを維持することが国家の安寧秩序に重大な関係があると私は考える。憲法の破壊は革命であります。しかるにこの憲法の条章をまつたく蹂躪するようなことを国家機関が行つておるということはどういうことに相なるか。今の警察大学において、国家警察責任者が憲法を破壊する訓育をしておつたということになると、これは一体どういうことになるか。法務大臣の御答弁をお聞きいたします。
  28. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 通信の秘密を侵害するということは、ただいま御質問になりました通り憲法違反であることは申すまでもないのでございまして、今後このことは厳重にわれわれとしては、この問題について注意監督をせなければならぬことは申すまでもないのでございます。この点は全然猪俣君の御質問の御趣旨に同感であるのでございます。ただ私が今承つた金庫のかぎをあけるとか、あるいは封筒を開くというがごときことを教育したということは、信書の通信の秘密を侵害するという意味ではもちろんこれはいけませんが、金庫のかぎなしにあけるということを教えるということは、昨今科学的犯罪が進歩いたしておりますがゆえに、これは私はそういう研究として教えることは必ずしも悪くなかろうかと思うのでありまして、ことに私どもが知つております医学的の方面においても、わからぬようにごまかして殺す方法もありますがゆえに、こういう方法もあるということを教える、これは必ずしを悪いことでなかろうかと思うのでありまするが、信書の通信の秘密を侵害するという目的をもつて教えるということであるならば、ただいま猪俣君の仰せの通りでございます。これは私どもは強くこの問題は注意を喚起し、勧告をせねばならぬと思つておる次第でございます。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 今は金庫のかぎをあけるということは第二にいたしましよう。それはあなたの答弁と非常に意見が違う。しかし事を多岐にわたらしてすりかえられると困るからそれをやめて、この信書の秘密のことだけひとつ御答弁を承ることにしましよう。そうすると大体私がかような訓練をすることは実に違法であると言うことに対して大臣も同感の意を表された。そうすると大臣も閣僚の一員としてかような事実の調査及び事実ありとするならば、これを指導した者に対していかなる責任を問うつもりであるか、今あなたは警察大臣ではないかもしれぬが、閣僚の一人として法務行政に携わつている方として、これは無縁の問題ではないと思う。だから私は先を質問すれば、法務省なり検察庁責任問題も出て来ると思うのだが、まず第一にそのような憲法違反、郵便法違反、あるいはその他の刑法違反、その他重大なる犯罪行為を犯す方法を警察大学において訓練する。かようなことはまつた憲法を破壊し、国家に対する反逆であると考える。いやしくも国家の警察官がかような憲法を破壊するようなことを訓練するということは重大なことである。あなたはこれに同感をされたのであるがゆえに、この責任者をいかに処罰されるか、閣僚の一人として閣議に諮るなり、あるいはいろいろ方法はございましようが、内容をまず内閣として具体的に調査していただき、その結果そのような事実が明らかになつたならば、この責任者をいかに処罰するか、閣僚の一員として、法務大臣としてのあなたの覚悟を祈りたい。
  30. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私はただいまの御質問に対しまして新聞記事などによりましてそういうことがあつたであろうかと存じて申し上げました次第でございますが、ただいまここでただしましたところ、山口警備部長はさような教育を学校においていたしたことはないということを申したのでございます。右様御承知を願います。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 山口という人はなぜそんなことを言うか知らぬが、斎藤国警長官はちやんと地方行政委員会において私の質問に対して認めているじやないですか。ただ犯意がなかつたとか、違法じやないんだという説明をしているだけで、虚実は認めておる。それはあとで聞きますが、そんな途方もないことを大臣の耳に入れてはいけない。ひいきの引倒しというものだ、長官はちやんと認めているじやないか、認めておつて、それは違法じやないんだ、それはやらなければならぬことだ、こう言つておる。それをまた下僚の者がそういうことはないんだと言うことは許されません。それはそれとして、これは大臣でなくともいい、法制局に聞いてもいいし、刑事局長でもいいが、ある郵便物の差出人、あて名人及び枚数というようなことは、これは郵便法第九条第二項にこういうことが書いてある。「郵便の業務に従事する者は、在職中郵便物に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。」こういう規定がある。この「郵便物に関して知り得た」という知識の中に差出人がだれであるか、あて名人がだれであるかということは含まれることだと思う。それに対する法律解釈をおつしやつていただきたい。
  32. 井本台吉

    井本政府委員 郵便物のあて名人、差出人等の記載は郵便法第九条の二項に該当すると思います。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 しからば警察官が郵便案配人に対してアカハタのあて名人はだれで、差出人はだれで、何通出ているかというようなことを聞くことは、犯罪の教唆になりませんか。
  34. 井本台吉

    井本政府委員 郵便の業務に従事しておる者が郵便法九条二項に当るということは考えられますが、集配人に対してお話のような差出人がだれか、あて名人がだれかというようなことを聞くことは、けしからぬ行為ではございますが、ただちにその行為が郵便法違反になるというようには考えられません。
  35. 猪俣浩三

    猪俣委員 そんな答弁はない。だから、さつき私は前提から聞いている。あて名人を調べたり差出人を調べたりすることは九条二項違反じやないかと言つたら、あなたは違反であると言つた。そうすると、これは犯罪行為でしよう、制裁までくつついている。集配人にかようなことをやらしめるということは、犯罪行為を実行させることじやないか。これが共犯関係に立たぬという理論はどこにあるか。ある人に犯罪行為をさせることは共犯じやないですか。それに従つてやれば集配人は犯罪者になる。犯罪をやれとそそのかすのは教唆じやありませんか。教唆とどこが違うか、警察官がやれば教唆になら心という理論はないと思う。どういう法理になるのですか。
  36. 井本台吉

    井本政府委員 郵便法第九条二項には罰則がございません。一般的にいいまして、秘密漏泄の関係で、たとえば弁護士とか医者とか、さような方が秘密を漏泄すれば、これはただちに犯罪になりますが、その秘密の漏泄をさせた者――それが医者と共謀であつた場合には、あるいは共犯の理論も立つことはありますが、その行為がすぐに医者と同様罰条に触れるということはあり得ないと私は考えます。
  37. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお刑法の信書の秘密の場合ですが、そこに国警側からどなたか来ているから、私前提としてお尋ねいたしますが、警察大学で訓練したという信書の秘密を探る法というのはどういう訓練をしたのですか。斎藤国警長官は、違法ならざる方法で訓練したと言う。何かそういう科学が発達して、レントゲンみたいなものをかけてわかる方法があるならば、われわれも後学のために承りたい。封緘を開封せずして内容を読みとるというからにはキリシタン・バテレンみたいな方法があるに違いない。それを承りたい。
  38. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 私からお答え申し上げますが、猪俣委員の御質問に対して二、三事実を明らかにいたしておきたいと思います。  第一点は、警察大学で講義をしておるというお話でございますが、警察大学の課程といたしまして、こういうことはいたしておりません。警備関係の者について別に講習会をやる場合がございますが、ほかに場所もございません関係で、大学の中のある教室を借りて行つておりますが、講義その他には大学の関係者は一切関係をいたしておりません。大学の構内においてそういう講習会をいたしたことはございます。講習会の内容につきましては後ほど申し上げます。  それであのときの御質問は、手紙を開封したり金庫のかぎをあけたり住居に侵入する方法を教えておるということを聞いておるがどうかという御質問であつたと思うのであります。これに対しまして長官は、封をしてあるものをあける方法は場合によつて必要がありますので教えておりますということは言われたと思います。その封をしたものをあける必要がある場合というのはどういう場合かと申し上げますと、長官もはつきり言つておられますように、手紙の封をあけるということを言つておられるのでは絶対にないのであります。御承知のように革命勢力が地下活動といたしまして、いろいろの文献等をごく秘密で、ごく限られた者の範囲内におきましていろいろと動かしておる、あるいはまた保管をいたしておるわけであります。暴力革命を否定せず、あくまでもこれ、認めて行くというやり方をとつておる以上は、その団体の動きを、治安責任を持つておる当局といたしましてはやはり知つておらなければならない立場に立つわけであります。そこで、それはどういうようにして知るかと申し上げますと、いろいろ情報覇といたしまして普通の方法で情報を得る場合もありますが、場合によつては私ども協力者を求めるのであります。この協力者を求めるについてもいろいろむずかしい点もございます。どういうようにすれば協力者をうまく手に入れることができるか、またこれに対してどういうようにして接触をして行かなければならないかということは、これは情報を収集する専門家に対しましては教えておるのであります。その場合におきまして、普通の場合には協力者がそういう秘密の文献あるいは文書というようなものは私どもの方に手渡してくれるのでありますが、間々その者が保管をしております極秘の文献、文書等につきましては、封をしたままその者が保管しておる場合があり得るのであります。その場合に、連絡を受けました警察側の者がこれに対してどういう措置をとればよいかということは教えております。その場合には、保管をしております本人がもちろん協力行動の一つとしてこれをわれわれの方に提供をいたすのでありますが、後日、本人が協力しておるということがわかりますれば、本人は規律違反として非常な懲罰というかリンチを受けるという場合も考えられる、その場合に、本人の迷惑にならないようにし、しかも事実をうまく知るためにはどうするか、その場合に初めてこれをわからないように封を解くという技術を知つておく必要が出て参る。そういう場合における方法として講習をいたしておることはございますが、御質問の冒頭にありましたように、手紙を開封するというようなことは絶対にいたしておりません。これは憲法あるいはその他の法律に触れることでもあります。警察官が法律に触れるような行動を行うということは、厳に慎まなければならぬことは申すまでもないわけであります。従いまして、たとえば住居侵入の方法を教えるというようなことは絶対にございません。また金庫のかぎというところにつきまして誤解がありますから申し上げますが、先ほど申し上げましたような協力を得る場合におきまして、場合によりましては、たとえばあるトランクにかぎがかかつてつて、その保管を命ぜられておる。これはどうも中がピストルらしいという場合が相当あるのであります。はたしてそれがピストルであるかどうか、これはやはりわれわれ治安責任を持つております者といたしましては中を知る必要がある、本人はまたこれをひとつやつてもらつてもよろしいというので提供する場合があるわけであります。従つてそういう場合におきまして、金庫の合かぎをどこかで求めて来るということもできませんし、そういう場合にどうすればあけ得るかということで、そういうごく限られた場合に行うべき旨を厳重に申し渡しました上で教育をやつておることはございます。金庫のかぎをあけるとおつしやいましたが、そういうごく限られた場合においてトランクをあける方法は、場合によつて必要でありますから、講習をいたしております。その場合と申しますのは、たとえば本人の保管しておりますトランクの中にピストルが入つておるというような場合、あるいはきわめて秘密の程度の高い暗号表が人つておるというような場合もあり得るわけであります。そういう事情でございまして、手紙を開封する、あるいは金庫のかぎをあける、あるいはまた住居侵入と、ぱつと申されますと非常にわれわれといたしまして、何と申しますか実際と相違いたしておりますので、以上長々と御説明を申し上げた次第であります。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたの答弁を私は信じません。はつきり言つておく。しかしどういう方法という具体的な事実は、証人の喚問によつて明らかにしていただくより道がない。あなたの言うような、そういう信書をもらつた人間と相談ずくであけて見る、そんなことが問題になる道理がない。またそんなことを何も特別訓練する必要がない。だれのところに行つた手紙でも、差出人かあて名人が承知の上であけて見せるようなことが問題になる道理がない。そういう訓練ならば、今日これが公の問題になる道理はないのです。なぜ私が信じ得ないかということはあとで申します。あなたの説明はまつとうな説明じやない。きようは私はあまり事実関係を糾明しない。事実関係は、要するに実際訓練を受けた人が来てすべてを語らなければはつきりしません。そうしないと、あなた方の一方だけの説明に終つてしまう。私ども自分で訓練を受けたんじやないからわからない、証人で明らかにします。ただ法律関係を聞きたいのだが、今アカハタならアカハタのあて名人、差出人、そういうものを郵便局ないし集配人において調査するということは、郵便に関係のある事項であることは先ほどの答弁で、郵便法第九条の二項でわかつたが、これは郵便法の第八十条の「郵政省の取扱中に係る信書の秘密を侵した」という中に入るか入らぬか、これをお尋ねしたい。
  40. 井本台吉

    井本政府委員 アカハタがどういうふうにして配られておるのか、その状態によりますが、郵便法第八十条の信書というのはおのずから意味が限定されていると思うのであります。郵便法九条の秘密に当つても、八十条の秘密にただちに出るとは、簡単に結論は出せないのではないかと思うのでございます。従つてアカハタが配られるその状態によつて、またおのずから結論がかわつて来ると私は考えるのでございます。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 私があなたにお尋ねしたいことは、アカハタを離れてもよろしい、これは信書であると仮定して、そのあて名人及び差出人を調査することがこの八十条の違反になるかならぬかということです。内容じやないのです。あて名人及び差出人、枚数というようなことが信書の秘密の中に入るか入らぬかということです。
  42. 井本台吉

    井本政府委員 郵便局で扱つております信書と限定してお答え申し上げますが、多少の疑問はあるのでありますけれども、私はあて名人も差出人も、やはり信書といたしますれば信書の秘密の中に入ると考えております。
  43. 猪俣浩三

    猪俣委員 井本氏の解釈は、私は正しいと思う。なぜならば、この憲法第二十一条の立法の趣旨、及び刑法、郵便法における信書の秘密を守る、つまり法益というものの概念からするならば、これはあて名人、差出人等もこの中に入らなければならぬと思う。そうすると郵政省の取扱い中にかかる信書の秘密を侵した者は、一年以下の懲役または二万円以下の罰金に処せられることになる。そうすると、先ほど私が質問したことに返るのでありますが、集配人がさようなことを他人にしやべることは、この八十条に違反することになるかならないか。郵便局の取扱い者、あるいは集配人がこれこれの信書は何通だれだれのところに行つて、だれだれが差出したものであるというようなことをしやべつたら、八十条違反になるかなりませんか。
  44. 井本台吉

    井本政府委員 集配人が任意で、自分の扱つております信書の秘密についてしやべつたということになりますれば、八十条二項の罰則がこれに当ると考えます。
  45. 猪俣浩三

    猪俣委員 今局長が指摘されたように、八十条二項には「郵便の業務に従事する者が前項の行為をしたときは、これを二年以上の懲役又は五万円以下の罰金に処する。」とある。そこで問題になるのは、何人かがこの郵便配達人に、あるいは郵便局に行つて、ぜひそれを教えてくれ、しやべれと言つてしやべらした場合に、この八十条二項の教唆が成立するかしないかという問題です。
  46. 井本台吉

    井本政府委員 問題はいろいろの場合がありますので、簡単に結論を出しにくいのでありますが、たとえばAなる男が郵便集配人のすきに乗じてカバンを奪取して中の物を、秘密を探知するというような場合には、これは八十条一項の犯罪が成立すると考えます。それでは郵便集配人の持つているカバンの中の信書の秘密を教えてくれと頼むと、頼んだ場合のその行為がそれではただちに八十条の一項の犯罪の着手になるか、どうかということになりますと、その頼む行為は決していい行為とは言いませんが、それではただちに八十条一項の着手行為になる、あるいは未遂になる、予備になるというように考えるかどうか、これは多少私は疑問を持つております。従つてお話の局に行きまして、郵便物の秘密を教えてくれという行為が、ただちに八十条の一項の犯罪になるというようには、簡単には結論は出ないというふうに私は考える次第でございます。
  47. 猪俣浩三

    猪俣委員 たとえば先ほど私が例に申し上げたように、郵便物をポストに入れるのを尾行しておつて、そうして集配人が来て明けて持つて行こうとするときに、ちよつとそのあて名人はだれだ、それを開かしてくれろ。渋つても、おれはこういう者だ、聞かせろというようなことで、それを聞かせたとするならば、聞かせた方はやはり八十条違反になると思う。そうすれば、聞かせろと言うて要請した人間はどういう犯罪になるかというのです。私の理解するところによれば、集配人の行為が罪になるならば、その行為をそそのかした者が教唆というのが、私ども刑法の原則だろうと思う。それは警察官であろうが何であろうが、第八十条に違反することを郵便配達人にさせた人間は何になるかというのです。だから今言つた。ポストの例でもいいのです。ある人間がポストへ郵便を出した。その出す人を尾行しておつた。これも人に追随して歩くのだから、軽犯罪法の違反だと思う。そうして入れたものを、集配人が来るのを待つてつて、だれのところにやつたのだ、教えろ。集配人が教えたとすれば、教えた集配人、及び教えろと迫つたその人はどういう罪になるか。
  48. 井本台吉

    井本政府委員 信書の秘密が漏泄されたということについて、その業務に当る者と、その以外の者とが共犯関係になるということになりますれば、それぞれ八十条の一項ないし二項に当ると私は考えるのであります。未遂の事情につきましては、またそれぞれの場合によつて結論がおのずから違つて参りますから、既遂の場合には同じようには考えるわけに行かないのでございます。
  49. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、今の設例の場合において、郵便局ないし郵便集配人に対して、一体だれのところにその信書を配つたのだとあて名人を調査することは、もしその報告をしたならば、八十条違反である。それからそうさせたならば、共犯の疑いがあるという答弁だと承つたのですが、そうすると、もし警察大学の特別講座とやらにおいてかような方法を訓練したとするならば、警察大学が犯罪の訓練をしたようになるが、それはどうだ。それは山口さんが答弁してください。
  50. 井本台吉

    井本政府委員 ちよつと私の先ほどの御答弁が十分でなかつたかと思いますが、私は秘密を漏泄した業務に従事する者と共犯であればと申し上げたので、共犯である場合には、既遂になれば、業務に従事する者は八十条の二項になるし、その共謀者は、業務に従事していなければ、一項になる、こういうふうに申し上げたのでございます。漏泄をさせた相手方がただちに共犯であるかどうかということは多少の疑問があるのでありまして、常に共犯であるとは言い得ない。その罪体によつて区別して行かなければならぬと考えるのでございます。従つて御設例のような、警察官が郵便集配人に頼んで秘密を漏らしてもらつたというものが、ただちに集配人と共犯になるかどうかという点については多少の疑問があると私は考えるのでございます。
  51. 猪俣浩三

    猪俣委員 ぼくらは何も疑問はないと思う。もし漏らすことが犯罪であるならば、さような行為を勧めた者、要請した者、そそのかした春、脅迫した者、ことごとくこれは教唆になる。私ども共犯になると考えるが、あなたは疑問があるというのですから、政府委員としてはその程度でしかたがないかも存じませんが、なおこれはよく研究していただきたい。  そこで内閣法制局、これは内閣の法律顧問だそうですから、内閣法制局の意思を聞かなければならぬ。法制局はどうお考えになるのですか。
  52. 林修三

    ○林政府委員 今の郵便法の関係につきましての件であろうと存ずるわけでありますが、井本政府委員からお答えしたことが、大体そういうことであろうと私どもは存じております。
  53. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは申すまでもなく憲法二十一条の置かれた地位――日本の憲法二十一条は、アメリカの憲法とも、あるいはフランスあるいはイタリアあたりの憲法とも、相当規定のしかたが違つておりまして、申すまでもなく集会、結社、言論、出版その他の表現の自由を保障すると書いてある。「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」と書いてある。ここに憲法の所期する根底があるのです。これは良心の自由、思想の自由保護の一つの方法として、通信の秘密というものが保たれている。日本の憲法はそこが特色です。これを受けて刑法にはいわゆる信書の秘密を守る規定があるのでありますが、古い刑法学者の説明は法益論として区々としておりますけれども、新しい憲法下においては、結局これは思想の自由、言論の自由、集会の自由の一つの保護規定として見なければならぬ。法益はそこに見なければならぬ。されば、内容はもちろんのこと、その差出人、あて名人も信書の秘密の中に入ることは当然です。その点について局長はさように理解されていると思う。私はその点は了といたしますが、ただその先の説明になるとちよつとごまかしがあるのであります。そこはもう少しよく考えていただかなければならぬと思う。通信の秘密の置かれた日本の憲法二十一条の位置からこの精神は解釈してかからなければならぬ。これが共産党関係に限られていることからも推測できるので、結局こういう信書の秘密を侵すことは、良心の自由、信仰の自由、思想の自由、行動の自由を抑圧する一つの方法に相なるわけである。そこにおいて基本的人権と重大な関係がここに生じて来るのであります。かようなことを警察大学が大したことじやないように考えてやつている。また内閣におきましてもこれは重大問題だと私は思う。こんなことで憲法が片つぱしから毀損されて行きまして何にも精神に違反しないということになりますと、ほとんど憲法は全文において条文だけがそのままで、内容はみな崩壊してしまう。かような意味において私どもは問題にしているので、何も政府の落度、警察を攻撃せんがためにやつているんじやないのです。というのは、これは加藤大臣もよく体験されていると思うが、戦争前の特高、憲兵隊の活動、これはそもそも今日日本を亡国に陥れた最大原因であります。彼らはいかなることをやつたか。しかるにまたこの特高警察があらゆるものとともに復活して来ている。軍隊が復活する、憲兵制度が復活する、特高が復活する、そうして防衛秘密保護法が出る、教育二法案が出る、かようなうちに日本はまた戦前に復活して、陥るところまた第三次大戦に突入するでしよう。そうして原子爆弾によつてわれわれ永久に葬られる。そこまでの関連性を持つ問題です。その意味において質問している。あだやおろそかに聞いてもらつては困る。大臣は法律をやらぬから、そんなつまらぬことを猪俣というやつはしつこくやつているとお考えになるかもしれないが、そうじやない。これは重大問題です。千里の長堤もありの一穴から破れるというのは千古の格言であります。必ずここから破れる。なぜ私は先ほど国警側の答弁を信用しないかと申しますと、私はまだ名前の発表は差控えますが、それは検察の重要なポストにある人が、本年の二月ごろ、ある人の訴えによつて相談を受けておる。これは驚くべきことだ、こんなとほうもないことはやつてはいけない、これは考えなければならぬということをその人が忠告しておる。あなた方がどこまでもつつぱるなら、私は証人として当法務委員会に出てもらいます。検察庁の相当の責任者が内容を聞かせられ、こんなことをやつて憲法や刑法に違反しないだろうかという相談を、良心的な警察官から受けておる。こういうことをやれ、訓練を実施せよと言われているが、一体これでいいだろうか。私がこう言えば、それが何人であるか、あなた方は推察がつくはずだ。その人が検察庁へ相談に行つているのです。検察庁は驚いておる。しかるにその忠告を開かずに、断固やつてしまつた。ですからあなたが今答弁するような、承諾を得た上で封を切るというような方法でやつていないことは明らかなんです。どこまでもつつぱるならば、訓練を受けた人、相談を受けた人をみな当法務委員会に呼び出します。だから私どもはこれは加藤大臣も閣議におきまして、これを調査していただきたい。あるいは内閣で知らぬでやつてつたかもしれませんが、調査するとともに、その責任者に対しては、あなた方は適当に考慮していただきたい。かようなことをやつておりましたら、共産党を撲滅する前に、民主主義が崩壊します。共産党を断圧する前に、大事な憲法が崩壊します。こういうことをやれば、あるいは共産党暴力革命の情報をとるには便利かもしれませんが、さような小さい便利のために、大きな憲法の大精神を破壊するようなことに相なることは、国家百年の大計として私どもはとらさるところです。どうかこれは大臣が重大問題として、閣議でこの調査をやつていただきたい。あなた方がやるなら、私どもはその調査の結果をおとなしく待ちますけれども、やらぬならば、内部から明らかにするよりしかたがありません。これを強く要望しておきます。大臣いかがでございますか。
  54. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま猪俣君の御質問中に、いろいろ事例をあげてのお説全体は、必ずしも私は同感でないのでございます。しかしながら憲法を侵害してはならない、憲法をあくまで守らればならぬという御趣意は、傾聴いたしまして、御趣意のようにいろいろ取調べもいたします。
  55. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 先ほど私は私どもの知つております事実を申し上げたのでありますが、必ずしも御信用を得ないようであります。なお先ほど郵便官署の取扱い中にかかる信書の秘密の問題について、いろいろとお取上げになりましたが、先ほど申し上げましたように、われわれは郵便物については一切触れておりません。また革命勢力のきわめて秘密の高い活動におきまして、郵便を利用するということは、これはもうとうてい考えられないのであります。そういう方面で仕事をしております者にとりまして、そういう一般に公表されない極秘を要するようなものを、郵便を使うというようなことは、とうていあり得ないというのが、革命勢力の活動の実態でございます。従いましてわれわれは郵便物に関しましては、その必要もないし、またやればこれは重大な憲法違反であります。そういうことは十分に承知いたしております。一切そういうことはやつておりません。
  56. 猪俣浩三

    猪俣委員 憲法の二十一条の保障するのは、郵便物に限らない。これは通信の秘密ということになつておる。通信の中には、信書の秘密、それから電報、電話の秘密、これが全部包含されておる。その信書の秘密の中に、封緘をした場合、これが刑法の罪になつておる。それから封緘せざるものでも、郵便法では郵政省の取扱いのものでも、今言つた八条、九条でこれを犯罪としておる。あなたの言う郵便官署に付せざるものでも、封緘を開披するならば刑法の罪になります。信書であるならば……。
  57. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 信書であればそうであります。
  58. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで信書であるものを、郵便官署に付せざるものでも開披すれば、刑法の罪になるのであるから、郵便官署に付せざるものということでいたけだかになつて釈明したと思つたら、大間違いであります。
  59. 小林錡

    小林委員長 この際関連事項についての質問がありますから、これを辞します。神近君。
  60. 神近市子

    神近委員 私は今の猪俣先生の警察大学についての問題とは別でございますけれども、これに関連した事実があるのでして、それに対する郵便法の刑罰の問題が出ましたから、井本局長にちよつとお尋ねいたします。  二月十七日だつたと思いますが、文士で徳田戯一という人にあてた手紙が、開封されて配達されて、そうしてそれに検閲済みという何だか変な判こを押して来まして、猪俣先生には相談しなかつたのですけれども、私ども人権擁護委員会の方に取次ぎまして、そうして目黒署の消印がございましたから、調べたのでございます。そうしたら、それは現金を入れて郵送する場合があるので、それの疑いであけた、それはいいのだというような返答をとつて来て、一応そういうものかなと思つて見ていたのですけれども、今の逆コースの問題と結びつけて、中島健蔵氏が中央公論の五月号に書かれたのです。それを郵政省で見つけまして、その文書を私の方に、手元にあるなら貸してくれというので、渡しまして、郵政省の監察課のたしか村尾という監察官だと思いますが、――これは家に帰れば全部ございます。そのときに、そういう現金を封入する法律はもう失効したということで、いろいろ弁明がついて参つたのですけれども、村尾監察官は開封していない配達だと思つて、その検閲済みという判についての弁明だつたものですから、それは違う、開封して配達されたの、だということを私は言つて、その点の弁明を求めたのですが、もう一箇月になるのに何も御返事がないわけなんです。これは事例は一つでございますけれども、文士として名前を知られている人の問題でございますし、何らかの方法で決着をつけなければならぬと思うのです。そういう場合、もしこの八条の罰則が用いられるとすれば、だれが一体その罰則を受けるのでございますか。そうして配達されたときに開封されたということは、家族なりあるいは一家の中で生活する人以外はそれはわからないのですが、そういう場合の証人というものはどういう人が必要なのでございましようか。それをちよつと伺わせていただきたいと思います。
  61. 井本台吉

    井本政府委員 突然のお尋ねで、具体的事案がよくわかりませんので、明確なお答えはできませんが、郵便物が何か郵便法に違反したような郵便物であつたかもしれませんし、当時の責任者がどういう事情で配達したのか、少し時日をいただきますれば、詳細に私の方で取調べましてその結論を申し上げたいと考える次第であります。
  62. 神近市子

    神近委員 それでは村尾監察官のお手紙や何か、書類をとりそろえて――こういう変なことになつているのはがまんができないというので、中島健蔵氏も書かれて一般に訴えられたのだと思います。ですから、ひとつ何とかその点を明瞭にしていただくようお願いいたします。書類は明日持つて参ります。
  63. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお一、二点……。先ほど国警の山口さんからのお話で、大半の校舎を使つたのは別の講習会だ、そうして大学の先生は教えておらないのだという説明がありましたが、その講習を受けた人間はどういう種類の人間ですか。私ども教えた人間より教えを受けた人間が問題だと思う。どういう人間が講習を受けたのですか。
  64. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 国警と自警のそういう方面の情報を担当しております係長あるいはその補佐であります。
  65. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、国警と自警の係長及び補佐のような人たちがその訓練を受けた。そこで、これは今内閣でお調べいただくことになりましたし、それからまたこれがもし刑法、郵便法、憲法その他の精神から見て違法、不当なものであるならば、私は何らかの御処置をしていただきたいと思うのですが、加藤大臣からもそのような御答弁があつたかに思いまするので、あとは事実をもう少し――国警側では否認しておりますので、事実の調べを進めて、その現われた具体的事実によつて、また法律的な問題及びその責任者というようなものに論及したいと思いますから、この点についてはこの程度にとどめたいと思います。  それから、実は二、三日前から検察庁法第十四条のことで承りたい点があつたのでありますが、きようは私ばかり独占したような形になつて、婦人議員団が中心となつて出しまして、私も提案者になつております売春法の質疑ができなくなりますので、問題だけ申し上げて、あとでそれに対する内閣の責任ある答弁をしていただきたい。と申しますのは、検察庁法第十四条、これは重大な意義を持つている条文であります。検察庁法にただ一箇条出ているだけでありますけれども、これは政治と検察権、内閣と検察権というような関係に立ちます実に重大な規定であり、なおまたこれをつくります際、立法者に非常に苦悶のあつた条文であります。行政の所掌庁としての政府と、準司法権といわれている検察権をいかに調和するか、民主政治、多数党政治というものと検察権の独立ということをどういうぐあいに調和させるか、これは重大なかぎになる条文であります。そこで先輩に対しましてはなはだなまいきなことを言うようでありますが、加藤大臣は法律家出身でございませんので、この十四条を軽くお考えになつておられるのではないかと思われる節がありますが、これは法律を学んだ者から言うと、重大な問題である。この十四条の解釈いかんによりましては、準司法権といわれる検察権のあり方、あるいは多数党内閣と法務省あるいは検察庁との関係その他につきまして、民主主義を守る者にとりまして実に重大な条文である。従つて、この解釈は重大であります。そこで今までなかつたこの十四条の発動ということが起りましたこの際、内閣として解釈を統一して確定していただきたい、こういう要望があるのです。私の考えから言えば、この十四条というものは、検察権の濫用を民主主義立場から法務大臣が押えるためのものである。だからこの十四条の発動の前提に検察権の濫用ということが必ずなければならぬ。検察権が正当に行使されているのに、ほかの事情のためにこの十四条を発動するということはあり得ないことである。検察権というものは独立性を持つているし、また持たせなければならぬが、それが行き過ぎると検察フアシヨになり、政党内閣と衝突することが起る。そこでこの身分を保障されております検察権の検察権の濫用を押える意味において院四条というものがあるのである。だからそれは検察権それ自体に関する問題でなければならぬ。ほかの政策問題、政府問題から発動してはいかぬ。検事総長が、発動ずる検察権それ自体を点検して、それが濫用であるか正当であるかその判断からこの十四条は出なければならぬものであつて、そういうふうに解釈しないで、政府が解釈したように、重要法案を通すためだとか何とかいうようなことは、これは将来に災いを残す解釈になると思います。それでありますから、できたことはしかたがないといたしましても、今後この問題につきましては、内閣として一定不動の解釈を下して進まれたい。私は検察権濫用を前提としてでなければこの十四条は発動すべからざるものであるということを問題として提案しておきますから、その点について内閣の御答弁を統一しておいていただきたい。きようはこの程度にとどめておきます。
  66. 小林錡

    小林委員長 それでは本日はこの程度にとどめておきます。  明日は午前十時三十分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十三分散会