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1954-05-19 第19回国会 衆議院 法務委員会 第57号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十九日(水曜日)    午後零時二十九分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君    理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君    理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    花村 四郎君       猪俣 浩三君    神近 市子君       木下  郁君    佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 大 臣 加藤鐐五郎君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君  委員外出席者         議     員 堤 ツルヨ君         検     事         (人権擁護局第         二課長)    斎藤  巌君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  売春等処罰法案堤ツルヨ君外十一名提出、衆  法第三四号)  法務行政に関する件  人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  売春等処罰法案議題となし、提出者よりその趣旨説明を聴取いたします。堤ツルヨ君。
  3. 堤ツルヨ

    堤ツルヨ君 ただいま議題となりました売春等処罰法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  戦後の混乱期におきまして、社会不安、道義の頽廃等影響を受け、売春をする婦女の数が著しく増加いたしましたことは、すでに御承知通りと存じますが、その後わが国独立を獲得し、社会の秩序もおいおいに回復して参りました今日におきましても、依然として売春をする婦女がおびただしく存在しておりますことは、まことに遺憾のことと存じます。申すまでもなく、売春は、健全な性道徳を破壊し、善良な風俗を乱し、おそるべき性病を蔓延させる原因となるところの反文明的行為ともいうべきものでありまして、特にそれは、婦女の純潔を害し、その基本的人権を無視する行為として、現代の文明国家におきましては、ぜひともその絶滅を期さなければならないものと考えるのであります。さらに、わが国における売春の形態といたしましては、古くからいわゆる公娼私娼とが存在しておりましたことは、御承知通りでありますが、占領時代に、一九四六年一月二十一日付連合国最高司令官日本における公娼廃止に関する覚書によりまして、表面上は、従来の公娼私娼ともその存在を禁ぜられたにもかかわらず、事実におきましては、依然として、娼家及びこれに隷属する私娼と認められるものが、形をかえて存在しているといわざるを得ない実情にあるのであります。かかる存在は、一面におきまして身体及び意思の自由を拘束されて日夜売春を行うことを余儀なくされている女性があり、他面におきましては、かかる白色奴隷ともいうべき女性に寄生して、その肉体的精神的苦業による利得をむさぼる業者があることを裏書きするにほかならないのでありまして、かかる現実の事態は、日本国憲法基本的人権を確立し、個人の自由と尊厳とを宣言し、その奴隷的拘束を排除している趣旨にまつたく背反するものといわなければなりません。わが国独立を獲得し、民主主義国家として鋭意再建に努力を払つておりますときに、かかる封建的な暗黒面存在を許すことは、根本的に矛盾する事態であるばかりでなく、将来、国際連合に加盟したあかつきにおきまして、世界人権宣言目的を実現し、他の民主主義国家と肩を並べて、国際社会に名誉ある地位を占めようとするためにも、重大な障害となるものと申さなければならないのであります。  以上のような事態に対処いたしまして、売春売春をさせる行為等絶滅を期するためには、もとより国民一般民主主義的自覚道徳的観念の高揚、衛生思想普及向上にあわせて、民生の安定のための諸施策にまたなければならないことは言うまでもないのでありますが、これと同時に売春及びこれを助長する行為、これに寄生する行為等処罰する立法措置を講ずべき必要のあることを痛感いたすのであります。現行の昭和二十三年勅令第九号婦女に売淫をさせた者等処罰に関する勅令は全文わずかに三箇条にすぎないのでありまして、その効果をあげるためには、きわめて不備でありますとともに、この勅令は、いわゆるポツダム勅令と称せられるものでありまして、今日、昭和二十七年法律第百三十七号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務関係命令措置に関する法律によりまして、一応その法律としての効力は与えられておりますが、わが国独立の獲得とともに、当然これを廃止して、根本的な立法措置をとるべきであります。翻つて外国立法例を見ますのに、今日民主主義国家におきまして売春等処罰するために法制を具備しているのが多いのでありますが、さきに申し述べましたように、将来わが国国際連合に加盟いたすためにも、この際、国際連合が採択いたしましたところの人身売買及び売春により利益を得る行為の禁止に関する条約の趣旨を尊重した法律を制定いたしますことは、きわめて必要と考えまして、この法律案を立案提出いたした次第であります。  次に、この法律案内容について申し上げます。  第一に、この法律案におきましては、売春定義を掲げて、婦女が対償を受ける目的で不特定の相手方と性交することをいうものとし、その売春をした者及びその相手方となつた者をともに処罰することといたしました。  第二は売春の周旋、勧誘、売春を行う場所を供与した者を処罰せんとするものであります。  第三に、婦女を欺き、もしくは困惑させて、または親族、業務、雇用その他の特殊関係を利用して売春をさせた者をも処罰することといたしました。この規定は、もし脅迫または暴行によつて売春をさせた場合には刑法の適用がありますが、それ以外の不法な手段を用いて婦女自由意思を束縛して売春するに至らしめる者を処罰するための規定であります。さらに、その者が婦女からその売春の対償を収受し、要求し、約束したときは、刑を加重して五年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処することといたしました。  第四に、売春をさせることを内容とする契約の申込みまたは承諾をした者についてこれを処罰することにいたしました。これは当然公序良俗に反する行為でありますから、かかる契約の無効であることは論を要しませんが、これに刑罰規定を設けることによつて人身売買を防ぎ、婦女を奴隷的に拘束するがごとき関係成立を防止しようとするものであります。  第五に、売春施設を経営し、または管理した者及び売春施設の経営に要する資金、建物その他の財産上の利益を供与した者を処罰することにいたしております。  なお、以上の罰則には、原則として情状により懲役及び罰金を併科し得ることとし、さらに第六条から第八条までの行為については取締りの徹底を期するため、いわゆる両罰規定を設けることにいたしました。  以上立法趣旨及び規定の要点を御説明申し上げました。全国婦人団体、また輿論をあげての本国会におけるところの本法案成立の要望は、まさに最高潮に達しておるといわなければなりません。どうかこの法務委員会におかれましても、拝見いたしますところ男性の議員の方が多いようでございますけれども提案者の意図を了とされまして、できるだけ本国会において皆様方が早く審議をしてくださつて、これを成立させていただきたいということを、特に私たち提案者の中心になつております女性立場からもお願い申し上げておきたいと存ずるのでございます。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決されますよう重ねて希望いたして、私の提案理由説明を終ります。
  4. 小林錡

    小林委員長 これにて趣旨説明は終りました。  なお本案に対する質疑は、これを後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 次に法務行政に関する件について調査を進めます。  発言の通告がありますからこれを許します。佐竹晴記君。
  6. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 法務大臣お尋ねをいたします。  佐藤榮作氏に対する逮捕請求許可を願いたいという検察当局から大臣に対する請求があつた際に、前犬養大臣検察庁法十四条の規定に基いて逮捕を延期せよとの指揮権を発動されたのでありますが、その理由は今日においてはもうすでに消滅いたしておると考えますが、大臣はいかがお考えでございますか。
  7. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま佐竹君より、犬養法相逮捕請求を延期して任意捜査を継続すべしという意見は、今では消失しておるではないかという御質問でありましたが、私はいまなおこの理由は消失しておらないものと存ずるものでございます。
  8. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 はたしてその事由が消滅いたしておるかどうかということを検討するについては、当時大臣より検事総長にあてました指示内容を知ることが必要であると存じます。大臣から検事総長にあてまして、当時延期を命じた文書内容をここに公表されたいと存じます。
  9. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 文書内容にわたりましては、ただいまこの問題は捜査中に属しておりまして、捜査内容にわたることになりますから、この場合公表することは遠慮いたしたいと存じます。
  10. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 捜査内容に関するものではないのです。法務大臣から検事総長にあてて、この案件逮捕を延期せよということを指示いたしました、その指示文書をひとつここに御公表を願いたいというのであります。
  11. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 それが内容にわたつておりますがゆえに、ただいま申したように公表は差控えたいと存じます。
  12. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それなら何がゆえに前の大臣は堂々とこれを新聞公表なさいましたか。昭和二十九年四月二十一日はつきりと、前大臣は天下にその事由公表しておる。その新聞発表内容によれば、昨日付をもつて、今朝自分の手元に検事総長から自由党幹事長佐藤榮作氏の第三者収賄等のいわゆる汚職案件につき、逮捕請求許可の請訓があつたが、事件法律的性格国家的重要法案審議現状にかんがみ、本件は特殊例外的な事情にあるものと認め、重要法案通過見通しのつくまで暫時逮捕請求を延期して任意捜査を継続すべき旨を指示した。この指示書検察庁法第十四条の規定に基きなされたものであると、かように前大臣公表をいたしておりますが、この公表の事実をも否定なさるでありましようか。
  13. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま佐竹君が御朗読になりましたのは、新聞紙にその要約が発表された文案でありますが、これはその通りであろうと思われます。ただこの場合文書ということでございますが、そういう内容文書だけならば発表いたしてよかろうと思いますが、今の方がよく意を尽しておりますがゆえに、もし必要でありとすれば、その指示の点だけはこれを御発表してもよいのでございます。
  14. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それならその指示内容をここに明らかにされたいと存じます。
  15. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 法務大臣犬養健君より佐藤検事総長にあてた指示でございます。    衆議院議員佐藤榮作に対する収賄等被疑事件処分件指示   昭和二十九年四月二十日附日記秘庶第一九九号で具申の逮捕請求許可稟請案件事件性格と、防衛関係教育関係等国家的重要法案審議の推移が国策の基本に重大な影響を及ぼすものと考えられる現状とに鑑み別途指示のある時期まで逮捕請求を行わぬよう取計らわれたい。   右指示する。 これだけであります。
  16. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 大体明らかにされました。前に大臣はその重要案件というものの中には、警察法案なんかも含まれておるとおつしやつてつたけれども、ただいまあなたのそこで明らかにされたものの中には、警察法案やあるいは教育法案等は含まれていないことが明らかであることが認められるのでありますが、いかがでございますか。
  17. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 「等」とあるのでありまして、一々具体的にはあがつておりません。これはただ「等」とある。すなわち「等国家的重要法案」とあるのでありまして、当時の意味は明確にさように承つておるのであります。
  18. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それははなはだ言葉が適切でないかもしれませんが、三百代言的言い分である。今あなたのお読み上げになつたものについても、冒頭に防衛関係に関するものと書いてある。防衛関係とあるじやありませんか。教育法案や、警察法審議はただちに防衛関係に直接関係のあるものとは思われません。案ずるに、いわゆる犬養法相の予想いたしましたものはMSA関係案件防衛庁設置法案自衛隊法案等を指さすものと見るほかはないのであります。そこでこのいずれの法案についても、いずれも衆議院通過しております。しこうして警察法案教育法案についても、あなたはそうおつしやられても、これは参議院に参つております。従いまして衆議院議員佐藤榮作逮捕を延期しなければならぬという理由というものは、衆議院議員佐藤榮作に関する限りないと存じますが、いかがでありますか。
  19. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私の読みようが早かつたかもしれませんが、防衛関係教育関係という字も出ておりますし、その他「等」とありますことで、防衛関係だけではないのであります。ことに逮捕延期すべしということは衆議院議員佐藤榮作君のことではございませんのでありまして、自由党幹事長という立場において出したことは申すまでもないのであります。
  20. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 自由党幹事長とおつしやるならば、これは与党の御都合のためと見るほかはございません。与党の御都合のために検察庁法十四条の発動などができますか。
  21. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 与党幹事長というだけのことではございませんで、幹事長ということであります。それがたまたま自由党幹事長であるのでございます。
  22. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 昨日も緒方副総理にも会つてお語いたしましたが、やはり与党幹事長なるがゆえに延期しなければならぬということを交渉せられておる。野党幹事長などは必要はないとおつしやつておられる。あなたと副総理との御意見が建つておるようでありますが、まずそれはそれとしておきましよう。それなら自由党幹事長として必要だとおつしやるが、自由党幹事長逮捕しないで延期して、今日に至るまで佐藤さんは一体何をやつておられたのです。先生のやつたところのものは、新党工作であり、新党工作を通じて改進党の一部を切りくずすことによつて法案通過をはかろうと努力いたしました。それ以外には何も、いわゆる国家的見地に立つ法案審議促進影響する関係はございません。ところがその新党工作については、今私が申し上げるまでもなく、よく御存じの通り状態であつて、すでに二十幾名の者は改進党の党議に反して、あるいは欠席し、ないしは自由党に同調の状態であつて、すでにMSA関係も、防衛庁設置法案関係も、自衛隊法案関係通つておる。かようにいたしまして、すでに政局見通しはついておるのであります。この新聞発表によりましても、重要法案通過見通しのつくまで暫時とあります。見通しはすでについておるじやありませんか。いかがですか。
  23. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま佐竹君は、幹事長の仕業は新党問題のごとく限局されてはおりませんが、それが主なる仕事のように御質問でございまするが、幹事長仕事はひとり新党問題のみならず、また表面に現われた事実のみならず、党の運営法案通過等に努力することは申すまでもないのでありまして、表面に現われたる一、二の事項のみで、幹事長仕事が済んだということは私は申され得ないと思います。この点は、多年議会生活をされましたる佐竹君も、よく御了承のことなりと信ずるものであります。それから見通しがついたではないかということでありますが、見通しというものはどう解釈いたすべきかわかりませんが、見通しはまだなかなかついておらない、私はかように考えております。
  24. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 しからばお尋ねをいたしたいのでありますが、吉田総理大臣外遊をすでに計画なさいました。そして飛行機座席に至るまでこれをとりきめ、諸外国外遊の旨を通達されたことが、すでに大体明らかになつております。一党の総裁であり、総理である吉田さんは、内を留守にして数箇月外遊をいたしましてもさしつかえないだけの見通しが立つたものと見なければなりません。その見通しなしにいかに吉田さんといえども、国政を放棄して外遊などなさろう道理はございません。吉田さんはすでに一つの政局見通しを立てて、それで座席も買い、外国へ参る。まだ国会の済まない前から、国会が済んだら行く、いつごろ済むのだ、それまでに各種法律案が通るのだという見通しをお立てになつたのでしよう。その見通しを立てないで、そんな計画を立てよう道理はございません。自由党総裁であり、総理である人が、さように見通しを立て、外遊計画を立ててよろしいのにかかわらず、幹事長がここに逮捕されましても、それは法の命ずるところによつて十日ないし二十日です。総理は数箇月外遊をしてもさしつかえないが、幹事長が十日ないし二十日留守をしてはまことに困るといつたようなことは、今日の段階においては言い得べき状態ではないと存じますが、いかがでございましようか。
  25. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 総理外遊ということを新聞で私どもは見ておりまするが、まだ正式に閣議などで何とも申しておりません。それは国会が終了して後に行かれることなりと私どもは想像いたしておるのでありますが、重要法案はまだ参議院に重積いたしておりまして、その通過見通しというものは、いまだ私どもははつきりいたしておりません。見通しということはどういうことかという定義を下すというとともできまいと思いますが、これは見方によることでありまするが、私ども参議院がもう大丈夫通過するという見通しまで行かなければ、法案通過見通しはついたと言えない、こう思つております。
  26. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 見通しがつかないで外遊計画なさるなど、それほど吉田さんは乱暴ではなかろうと思う。法律案がどうなろうとかまわない、おれは外遊してしまうなど、それほどのことであつたならば、佐藤榮作に対して、これは重要なる法律案通過するまであれを押えてはならぬなどとは言われた義理ではございません。佐藤を押えてはならぬというほどであつたならば、自分日本留守にして外国行つていいなどと、そういうお考えが起ろう道理はございません。今大臣は、それは国会が済んで後に行くのだとおつしやるけれども、いつごろまでにこの法律案通つて、いつごろには会期が済んで、いつごろには出発ができるという見通しがつけばこそ、飛行機座席もちやんときめ、諸外国にもいつごろには参りますと通知をする。あなたの先ほど言われた内容によつても、重要法案通過見通しがつくまでしばらく延期しろということを、前大臣が命じておることが明らかでございます。今日の段階では、重要法案に対する審議見通しがちやんとついたればこそ、吉田総理としてもそういう行動をとつておると見なければなりません。あなたと総理見解を異にいたしております。
  27. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 見通し見解について、まだ意見の交換をいたしことがございませんから、それはわかりませんが、先刻来私がお答えいたしましたように、見通しというものの定義ということになつて来るわけだと思います。もしそれ見通しをきわめて大まかに申しますれば、われわれ与党の者は、政府法案を出したときに、これは通過見通しが必ずあると思つておりますけれども、実際問題におきましては見通しというものは、なかなかその瞬間までわからないのでありまして、たとえば先日来具体的に申し上げますれば、ある法案のごときは何票の差で通過するだろうか、投票したあとでも、どちらが勝つておるだろうか、白票が多いか、青票が多いかということがわからなかつたのでございますがゆえに、この見通し定義というものは、私はここで言うわけではないのでございますが、見解いかんにあるのでございまして、私はまだ必ずしも参議院において通過見通しはついておらない、かような見解を持つておる次第でございます。
  28. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私は通過見通しを聞いておるのじやない。通過するか、通過しないか、どつちかに勝負がきまると、吉田さんは腰をきめて、今日の行動をとつておると見られる。法務大臣も同様にお考えはしないか、見解が違つておるのかということを聞くのであります。
  29. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これは私の想像でございますが、吉田総理大臣は、国会が終了したあとに、四、五日ひまがあるか、十日あるか、わかりませんが、国会が終了した後に外遊するということであろうと思います。法案通過ということとはあるいは別個のお考えであるかもしれないと、かように私は想像いたすのであります。
  30. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 のれんと腕押しをいたしておるようなことでは一向はかどりませんから、それではさらに転じてお聞きをいたしたいのは、佐藤幹事長逮捕しないでおいて、重要法案通過見通しについて、一体どういう影響がありますか。佐藤を押えないでおいたならばうまいぐあいに行く、あれを逮捕したならばたちまち各種法律案通過しないで、政府提案がつぶれてしまうおそれがある、そういつたようなお考えかどうか。
  31. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これは佐竹君御承知通りに、与党であると野党たるとを問わず、幹事長地位というものはきわめて重大なものでありまして、国会開会のときには一層これが重責になると思うのであります。それでありますがゆえに、議案通過その他におきまして、幹事長というものの地位は一層重大を加えるものであることは、与党野党たるを問わず同様なことであると思います。
  32. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 その重要なということは、先ほど申し上げた佐藤榮作氏に限れば、新党工作に一生懸命専念されておる。もつぱら新党工作に当られておる。そうしてその新党工作法案審議影響する事柄としてお扱いになつておる。ところがそのことは、もう政局の分野の傾向というものが大体明らかになつて来たではありませんか。MSA関係の諸案件についても、防衛庁設置法案についても、自衛隊法案についても、警察法案についても、すでに衆議院はあの通り通つて参議院に送られて、佐藤さんの担任されておつたところの任務というものは、一応もう遂行されて、すでに見通しはついておる。方向はきまつておる。従つて今日佐藤さんを逮捕しないでおこうがおくまいが、参議院においてこれがひつくりかえるか、ひつくりかえらないか、私はそこには大した影響はないと思います。ことに、私が申し上げるまでもございませんが、国会に関する議院運営ということについては、これは国会対策についての委員長があつたり――私の方では委員長ですが、あなたの方ではまた別の名前をもつてせられておるでありましよう。あるいは政調会長のいす――私どもでは政審会長といつておるが、そういつた方々がおられて、議院運営委員会というものがあつて、これらによつて運営されて行くのであつて幹事長が口を出したからただちに法案が、通らぬものが通るようになるなどといつたような問題ではありません。もしそれほどの重要な任務を背負われておる人だといたしまするならば、その人を逮捕してぐあいが悪かつたならば、ただちにそれをとりかえたらどうです。自由党の御都合のために、あの検察庁全体を抑えるような、そうして臭いものにふたをするかのごとき誤解を受け、あるいは偉い者であるならば何をやつてもかまわぬ、弱い者はもう小さなことをやつてもすぐ逮捕されてしまうといつたような感じを国民に与えることによつて、実に重大なる影響国民に与えておる。そういう犠牲を払つてまでも、犯罪容疑者を政権のもとに擁護しなければならぬ理由がどこにあるか。自由党にはずいぶんたくさんの人物があります。とりかえたらいかがでございましようか。それもできないのでしようか。
  33. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 佐竹君の御質問の要旨は、幹事長仕事新党工作を主にしておるものであつて――ほかのことはまあいいではないかという御議論ではございませんが、新党工作が一番主であるような御意見のようでありますが、それも幹事長としては重大なる仕事の一つでありますが、法律通過の努力ということは、ひとり新党工作のみではないのであります。もとより政調会というものもありますし、ただいま御指摘になりました国会対策委員というものもありますし、運営委員というあらゆる機関もあることでございますが、その総くくりをするのが、佐竹君御承知通り幹事長仕事でなかろうか、私はこう思うのでございます。それで、それはお前の方の都合のいいことであるが、こういう党略によつてのみ与党幹事長を擁護するというのはけしからぬではないか、国民は非常な奇異をもつてこれを見ておるではないかと申しまするが、私どもはこれを党略によつて左右いたしておるのではないのでありまして、今国家はきわめて重大な危局に当つておりますがゆえに、国家的の見地から、国家的の高所大所よりこの法案通過させなければならない、その場合これはしばらく逮捕を延ばせ、こういう意味であるのでありまして、党略にこれを使つた――これは御意はいろいろあるでございましよう、とにかく十四条の指揮権を発動いたしたことにつきましての批判はあるでありましようが、私どもの真意は国家の高所大所より見てということでございまして、断じて党略ではないのでございます。
  34. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私、時間の都合がありますので、この点についていま一点だけお尋ねをいたしておきたいと存じます。  検察庁法第十四条による指揮権の発動は、申し上げるまでもなく検察庁法という法律規定に基くものであります。つまり検察官が検察権を行使すること自体に過誤を犯さしめないようにというのであります。そこで政治的理由によつて指揮権を発動するにいたしましても、それは検察官が検察権を行使すること自体について誤りがある場合においてのみなさるべきもので出る。従いましてその検察官のなすところに誤りがないといたしますならば、これはいかに法務大臣が政治的理由ありといたしましても、断じてかくのごとき指揮権発動をすべきものでない、根本的にさようなことは許されないと私どもは深く信じているのであります。そこで政治的理由があるならばそれは国会へ持つて来る。国会において政治的理由ありやいなやということについて、衆議院がこれに決定を与えればいいのであります。検察官が検察庁法に基いて、その検察権行使に何らの過誤がない場合に、いきなり政治的理由によつてかくのごとき逮捕をさしとめるがごときは、その根本において誤りを犯しているものであり、この際法務大臣はすべからく十分に内省されて、それが誤りであるということにお気づきになれば、この際一日も早くこれを正常な姿にもどすということが、私はこの際とるべき唯一の方法であると思うのであります。ことに国民に及ぼすところの影響は大である。またこれはいわゆる行政権と称しておりますけれども、普通準司法権と称せられておつて国民がひとしく司法権の一部と見ております。司法権の厳正のうちは国民もこれにすがつて安心いたしておりますが、もし司法権にしてあるいは与党の御都合や内閣の延命工作等のために左右せられるといつたようなことになりますならば、国民はそのよりどころを失います。国民に及ぼす影響が重大でありますから、この際この検察庁法十四条に基くところの指揮権の発動については、きわめて早い機会にこれを元の正常な姿にもどすことが、この際何よりもとるべき方法であると私は存じますが、法務大臣はいかがでございますか。
  35. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 いろいろ御意見は拝聴いたしました。しかし私どもは、この検察庁法の十四条には、但書に、法務大臣はこれを「個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」とあるのでありまして、これは法律違反でも何でもないと思います。ただ今御指摘になりましたごとく、検察権というものは司法権と密接不離の関係があるがゆえに、国民に、ただ党利党略のためにそういうことをしたという感じを抱かせてはならないという御忠言に対しましては、深く了承いたしている次第であります。今回のことは、国家非常の場合でございまして、ただいまも繰返して申しましたごとく、大局の上より見てやむを得ざる措置であるかと思うのであります。従いまして、この重要法案通過見通しはまだついておりません。つきましたならば御期待に沿うように考えたい、こう思つて、御批判を承りましてよく考慮いたしたいと思つておるのでございます。
  36. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 関連して二つだけ承りたいのです。先刻佐竹君からお尋ねのありました根本の問題なんですが、検察庁法十四条は、検察官がその権利を濫用する場合にこれを法務大臣がコントロールする、こういう関係でございまして、政治的な意味で法務大臣があの十四条を行使すべきものでないと私は信じております。その点が一点。  もう一つは、どうも法務大臣の御答弁を承つておりますと混同されておるようでございますが、国会における重要法案審議の必要に応じて佐藤幹事長逮捕許諾に関しては見合せるようにということを法務大臣理由としておりますけれども、これは根本的に誤りだと私は思うのです。はたして佐藤幹事長がおらなければ重要法案審議にさしつかえがあるかどうか、重要法案審議見通しがつかないかどうかという、さような認定というものは国会自身がやるべきものであつて、決して法務大臣がやるべきものでないとかたく私どもは信じております。従いまして、犬養法相がとられました、重要法案審議見通しがつくまでは、逮捕許諾問題については遠慮するように、延期するようにというような、さような認定を法務大臣がすること自体が、検察庁法十四条の濫用であり、違法である、かように私どもは信じておるわけでありますが、その二つに対する法務大臣の明確な御答弁をいただきたい。従来の答弁を拝聴いたしますと、どうもその点が不明確であります。私どもの信念といたしましては、少くとも重要法案審議のため許諾の必要があるかないかは、国会において許諾可否の決定をすべきである。それに先んじて、かつて法務大臣が御自身の立場からさような認定をされて、許諾手続を見合せるようにというようなことは、これまた行き過ぎであつて違法である、かように信じます。  先刻の問題は、検察庁法十四条の濫用であるかどうか、法務大臣の正当な権利行使であるかどうか、私は濫用であると信じます。重ねて申し上げますならば、検察官の捜査権、検察権発動の濫用をコントロールするために十四条の運用が必要になつて参るのであつて、今回のように検察官が正当な手続をとりまして、国民あるいは司法に関係する大多数の者が、検察官の取扱いは正当なりとかたく信じております場合に、これを延期させる、かようなことは延期にあらずして、収賄罪の本質から考えましても、あの十四条を運用して、故意に証拠を抹消するものであり、証拠固めを妨害するものである、かように私どもかたく信じておるのでありますが、かような場合のあの十四条の運用は行き過ぎであり、濫用である、さように考えますが、法務大臣の明確な御答弁を願いたいと思います。
  37. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これは私がしばしば御答弁申し上げましたように、終始かようなことはなすべきものではなかろうと思います。この点につきましては、政略的にこれを悪用したという意味ではいけませんけれども、先刻来しばしば申し上げた通り、今度のは国家的の立場からやむを得ざる措置である、こう私どもは信ずるのであります。こういう検察庁法という法律がある以上は、法務大臣としてその指揮権を行使することは法律違反ではない。しかしながら、これに対しましては、いろいろ御意見のあることはよくわかつておることでございます。  次に、逮捕許諾は国会にまかせればよいではないか、国会の権限を法務大臣が前もつて処分したような御議論でありますが、もとより逮捕許諾は国会にあるのでございますが、その前段におきまして法務大臣が職権をもつてかような指揮権を行使いたしますことは、何とも国会をどうしたということはないと思つております。
  38. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 どうもその点納得が行きませんが、指揮権行使が政治的な意味を含んで政略的の目的にやられておるということは、法務大臣の御答弁で明確になつております。いわゆる国会審議見通しということは政治的な問題です。この検察庁法十四条の指揮権発動は、政治的意味にあらずして単なる現実の刑事事件に対する検察官の行き過ぎがあるかないかということを決定すべき指揮権であつて、政治上の目的のためにあの指揮権を運用するということ自体が違法である、かように考えますが、その点はいかがでありますか。
  39. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 前段お答えした通りでございます。
  40. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そういたしますと、少くとも法律運用に関係を持ちます私どもは、法務大臣の政治的意図をもつて指揮権を濫用して、今回の重大な造船汚職事件の最後の焦点、言いかえますならば、百数十日間検察官が苦心捜査いたしました最後の結論に対しまして、その結論を得ることができない状態に陥れた、かように考えておりますので、議論があるとかないとかいう問題にあらずして、それは政治的意図のもとに指揮権を行使したものであるというように承つていいのかどうか。言いかえますならば、政治的意図のもとに法務大臣検察庁法十四条を発動されたのだというように承つていいか悪いか。私どもはさように信ずる以外にないのであります。
  41. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 しばしばお答えいたしました通り国家的の大局の立場に立つてやむを得ざる措置であつた、こう私は思うのであります。
  42. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それがやむを得ざるかいなかは見方によりましようが、政治的意図のもとに指揮権を発動したのであるか、検察庁の事務処理のために指揮権を発動したのか、その点をお聞きしたいのです。
  43. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これも今申しましたように、国家の大局における政治的の立場でやむを得ざる措置であつた、こう思うのであります。
  44. 木下郁

    ○木下委員 大臣の答弁でどうもはつきりしないところがありますので、関連して承つておきたいと思います。  最初に伺いたいことは、今度のあの指揮権の発動は、佐藤榮作君の身柄が拘束されては、政治的に大臣の、いわゆる国家的見地からぐあいが悪いというのでああいう指揮権を行使され、また現在もその方針を継続されておるわけでありまして佐藤榮作君の身柄が逮捕される、身柄が拘束されることが困るという意味でこの指導権の行使がなされて、それが維持されておるというふうに伺つてよろしゆうございますか。
  45. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 身柄が拘束されましては法案通過に非常なる支障を生ずる、さような意味でございます。
  46. 木下郁

    ○木下委員 検察当局が伺いを立てたのは身柄を拘束するということじやなくて、身柄を拘束することについて国会の許諾を求めるという意味なんであります。大臣の御方針だとすると、幹事長であれば、それが衆議院議員でなくしても逮捕はするなというさしずをするように伺えるのでありまするが、それでよろしゆうございますか。
  47. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これは私よりも木下君よく御承知のことでありまして、衆議院議員でない場合には何も私ども第十四条の指揮権を発動する必要もなし、また逮捕を要求して来る訳合いはないのであります。
  48. 木下郁

    ○木下委員 いや、衆議院議員でない普通の人でも、個々の事件についてはさしずがあつて国家的見地からならば、あなた方の解釈で出れば、検察庁がそれを逮捕しようとする場合、あるいは事件がどんどん拡大する場合に、この程度で打切れというようなさしずのできるのがこの十四条であります。それならば普通の衆議院議員の資格を持たない人でも、端的にいいまするならば、佐藤榮作君が衆議院議員ではないが自由党幹事長であり、今党内では重要な役割をしておるという意味であれば、やはり逮捕はするなとさしずをするという趣旨に伺えるでありますが、そういう意味でありますか。
  49. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 原則といたしましては、そういう一々の場合に指揮権を発動するというようなことはないのであります。しかしてあとの、衆議院議員であるとか参議院議員でない場合はどうかという御質問のようでありまするが、それは個々の具体的の事実を見なければ、今から何とも予言はできませんが、原則としては指揮権などは発動いたしたくないのであります。
  50. 木下郁

    ○木下委員 原則があつてのことは今問題になつておりません。異例のことをなさつたがゆえに国民は非常な憤激をいたしておるのであります。  それではこういう意味でございましようか、このたびの逮捕許諾の申請に関して異例な指揮権の発動をした。吉田内閣は権力の座に居すわつて横暴の限りを尽しており、今や国民の信頼は行政府よりも司法部に対してずつと高い。それが今度の指揮権行使によつて国民は非常な疑惑を抱き、非常な不満を抱いておることは事実であります。その点について大臣は、国民はこれを納得しておるとお考えになつておるか、指揮権の発動についてかれこれの批判があるという言葉が先ほどありましたが、そういうかれこれの批判あるいは法律解釈論でなくして、国民はこれに対して納得しておると本心からお考えになつておるかどうか、非常なる危惧を抱いておる、不満を抱いておるという点について、大臣はどういうふうに御観察になつておりますか、その点を伺つておきたい。
  51. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 国民は、これに対して不満を持つている者もあるであろうと思います。またこれをよく理解している者もあるであろうと思います。こういう国家の重大なる問題、高所大所より見なければならぬ問題は、必ずしも一時の国民の憤慨だけ、不満だけで解決する問題でないと思います。たとえばポーツマス条約のごときは、御承知のごとく国民が沸騰いたしましたが、将来の歴史家はどう見るか、つまらぬことを申しますようですが、いろいろのこともございまするがゆえに、国民に不満を持つ者もあり、また話せばわかる者もあり、理解している者もある。ことに衆議院におきましても、これを認めておる議員も多数あることであると私は信ずるのでございます。
  52. 木下郁

    ○木下委員 なお一つ伺つておきたい。議員の不逮捕の特権というのは、衆議院議員に対しては衆議院議員としての活動についてあるのでありまして、これは参議院なんかには関係のないものである。この不逮捕の特権は、その属する院の議員としての特権であると私は解釈します。憲法五十条及び国会法の三十三条をごらんになれば、逮捕の許諾を与えるものは、その議員参議院議員であれば単に参議院だけ、衆議院議員であれば衆議院だけで決定する権能を持つているという事実からいたしましても、またこの特権の制度が例外的に認められるという歴史的な関係よりしても、その属する議院、具体的に申しますならば、佐藤榮作君は衆議院議員であるという意味でこの特権を享受しているものと私は考えまするが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  53. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 衆議院議員衆議院で、参議院議員参議院で、逮捕許否いずれでもその院の意思によることは御承知通りであります。
  54. 木下郁

    ○木下委員 そういう意味から言いますならば、この佐藤榮作君の逮捕を許諾するかしないかという問題は、佐藤榮作君の衆議院議員としての地位に対する特権であつて、これが幹事長の職にあるとかあるいは山口県の何かの組合の組合長をしているというようなことでしんしやくさるべきものでないことは、はつきりすると思います。先ほど来の大臣の御答弁からするならば、幹事長であれば――今度の検察庁が相談を持ちかけたのは逮捕許諾の申請をするということであつて、それにつかまつてはいけないということを大臣が独自で判断する、先ほど古屋委員からも言われましたように、許諾するかしないかは国会できめるべきものであつて、それを一大臣が、身柄を拘束されては困る、その権利は、今の答弁はそれは口先だけの答弁と思います。国家的見地からということであれば。が、とにかく国家的見地から逮捕すべきものか逮捕すべからざるものかを大臣がきめてこの十四条で押えたというならば、これは普通の議員でなくてもおやりになる、逮捕しないという特別の指図をなさるものと考えざるを得ないわけであります。大臣はお医者さんでこういうことは専門家でありませんから、ひとつ知恵を借りて御相談なさつてもよろしゆうございますが、逮捕許諾だけではありません。普通人に対して逮捕するときた、具体的な個々の事実に対しては、大臣の言われる通りに、国家的見地から逮捕してはならぬとお考えになれば、議員であろうとあるまいとそれはできる。それが検察庁法十四条の建前である。検察庁法十四条は議員逮捕の特権に関する規定ではありません。そういう点において、大臣の御答弁を今伺つておれば、幹事長なるがゆえにということであります。そうすると繰返して申しますが、やはり佐藤幹事長衆議院議員でなくしても――衆議院議員でなければ逮捕の要求は来ませんが、しかし単に佐藤榮作君を逮捕して調べようという問題が起る。それなら、やはり幹事長なるがゆえに、それはどつこい待てという指揮権を発動をなさるものだというふうに伺つてよろしゆうございますか。
  55. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 十四条の指揮権の正しい発動につきましては、たとい衆議院議員でなくても原則的にはできないことはないと思います。法律的にはできますけれども、しかしさような場合にこれを実行するかどうかということは、これは容易ならざることでございます。今回の問題は、衆議院議員、ことに自由党幹事長たる者でございまするがゆえに、検察庁より逮捕請求があつたので、これを発動いたしたのでありますが、原則的にいえば、何村の何でもできないことはないのであります。しかしかような場合にするということは私ども考えておりません。
  56. 木下郁

    ○木下委員 衆議院議員としてということが重点であるならば、最初に犬養法相が言つた対外関係MSA関係法案、秘密保護法案その他いろいろの法案、あるいは承認を与える条約等は、すでに衆議院通過いたしまして、衆議院議員としての関係では、これはもうあなたが何と詭弁を弄せられようとも、その大部分は指揮権行使のときから今日までの間にすでになくなつておると思います。大部分の指揮権行使の理由はなくなつておると思いまするが、それをまだなくなつていないとお考えになりますかどうか、その点を伺いたいと思います。
  57. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 犬養法相は、これもたびたび申し上げましたごとく、重要法案通過見通しのつくまで暫時延期しろと言うたのでございまして、佐藤榮作君は仰せになつたごとく衆議院議員ではございまするが、今参議院にこの法案が山積いたしておるのでございます。佐藤榮作君は衆議院議員であるのみならず幹事長ということでございまするがゆえに、幹事長としては、まだ衆議院通過しただけで重要法案通過見通しがついたとは申されませんので、両院を兼ねたものでなければならぬのでございまして、この逮捕を延期しろという趣旨というものはいまなお一つも減じておらないと思うのでございます。
  58. 木下郁

    ○木下委員 幹事長ということにたいへん重きを置かれておる。なるほど自由党の御都合からいえば、今新党工作をやりつつあるから、立役者であつてかんじんの人かもしれませんが、この法律運営の面、逮捕許諾の面でさようなことを考えるべきものではない。ことに今法案通過見通し犬養法相が言つているからという言葉じりでごまかそうというような御答弁でございましたが、もう少し虚心になつて犬養法相があのときに言つた重要法案通過見通しというのが衆議院議員としての活動であるなら、それは衆議院通過ということに重点を置かるべきものであります。それを言葉のしりをとつてかれこれ言う。幹事長というものをたいへんかんじんの者のように言いまするが、これは幹事長であるとかないとかいうことのために逮捕許諾に関する指揮権の行使に甲乙をつけるということは、国会議員に対する重大な侮辱である。国会議員四百六十六名、いずれもが国民の代表として真剣に国務に当つております。その間に法の適用の面において甲乙をつけて幹事長なるがゆえにこれに手かげんをするというようなことがあつてはならない。法の原則は、いくらしろうとのあなたでもおわかりだと思うが、法律の前には国民は平等であるということが基本的建前であります。ただ例外中の例外として、各院に属する議員のその院の会期中における逮捕という問題については院できめろという特権が与えられておる。それを院にかわつて法務大臣が決定するというようなことは、これは言語道断なことであると思うわけであります。しかしながら先刻来の御答弁の様子を伺つておりますると、私としては非常に失望いたしました。党籍を持ち、そして大臣の責任を持つておるという立場になれば、やはりそこまで答弁を片寄らせねばならぬものかと思う次第でありまするが、しかしこれ以上同じことを繰返してもしかたがありませんから、最後に一点だけ伺つておきます。  今度の指揮権の行使で、検察庁が今問題となつておる疑獄事件捜査をする上において非常なマイナスになつておる、非常な不便を感じておるということは、これは常識的にだれも認めるところでありますが、検察陣の活動がこのたびの指揮権の発動によつて非常なブレーキがかけられておるかおらないかという点について、捜査の上において不便を感じておるかいないかという点について、大臣はどういうふうにお考えになつておりますか、それを承つておきます。
  59. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 前段からお答えいたします。法案はすでに衆議院通過しておるではないかということでございまするが、いまさら私がかれこれ申し上げるまでもなく、参議院通過しなければ法案通過ということが言えないことは申すまでもないのでありまして、法案通過の見込みということは、参議院通過する見込という意味であるのであります。また法の前には平等であるべきであるということもむろんごもつともでありまして、議員である以上はだれでも同様であることは申すまでもない。議員でなくても、一般の国民に対しても同様であることは申すまでもございませんが、ことに議員に対しましては逮捕がむやみにできないことは先刻来仰せの通りでございます。また議員はどの議員でも一票は一票でないかという御質問のようでございまするが、その間にいろいろ厚薄軽重があることは申すまでもないのであります。一党の総裁、一党の幹事長、一党の政務調査会長、われわれのごとき陣がさ、こういろいろあるのでありまして、これは重要の度合いは大分違うであろうと思うのでありますが、その党におけるところの幹事長地位というものは相当重要視しなければならぬと思つておる次第でございます。  それから最後に御質問になりましたのは、こういうことをしたがため捜査は不便を感じないかという御意見でございまするが、私もこの点はやむを得ざる措置でありまして、これは身柄を拘束しておいて取調べた方が便利である、こう思うのでございますが、前段しばしば申したごとく、国家の大局から見てやむを得さる措置であるのでございますが、しからば今捜査はやめておるかというと、現に続けておることは御承知通りであります。不便ではございまするが、今全力をあげてできるだけの範囲において捜査を続けておることは、この場合申し上げてさしつかえないことであります。
  60. 木下郁

    ○木下委員 私は不便を感じておるかどうかということを伺つたのではございません。そのために捜査の上にマイナスが一つもないとお考えになつておるかどうか、いいかえれば逮捕されて調べたときに証拠がつかみ得るものが、のほほんと何箇月も外に出しておるというようなことがあれば、これは法理的にではなくて、常識的にいつてマイナスになつておるというふうに考えます。その意味は、やはり捜査権の発動の面でマイナスの点があろうというふうにお考えになるか、それともマイナスの点は少しもないとお考えになるか、あるいは極端なことをいえばプラスになつているというふうにお考えになつておるのか、その辺を伺つておきたい。
  61. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 不便という言葉は、先刻あなたが不便という言葉を使われましたから、私もおうむ返しに申し上げましたが、マイナスになつているかプラスになつているかという御質問でありますれば、幾分マイナスになるだろう、不便ということは、すなわちプラスになつたことはなかろう、こういうことであります。
  62. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今法務大臣の答弁によりますると、重大な食い違いが出て来る。法務大臣は、私の最初の質問、いわゆる指揮権の行使は検察事務に関しての指揮権の行使であつたか、政治的意味を含んだ政治的指揮権行使であつたかという質問をいたしましたが、政治的な指揮権行使であるという御答弁でありました。検察庁法十四条には明確に検事の事務に関する指揮権しかないということになつておる。そういたしますると、私ども考えましたように、やはり犬養さんの政治的意味による指揮権行使は濫用であつて、本件捜査の妨害になるという結論になるのでありますが、この点はやはり政治的な意味であるという御主張をなさるのであるかどうか、検察事務に関する関係でありまするならば、ただ手続をするだけなのです。この検察庁法十四条は法務大臣が事実認定をしてなすべきものでなくて、私どもは検察事務処理に関する指揮であると考えておる、その点を明確に御答弁いただかなければ、結局ただいまの法務大臣の答弁では、私ども考えておりまするような、いわゆる政治的陰謀、はつきり申し上げまするならば、吉田内閣延命工作のために濫用したという結論になりますが、いかがでありましよう。
  63. 井本台吉

    ○井本政府委員 法律の解釈問題でございますから……。
  64. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 さつきの法務大臣の答弁そのものでありまするから、法務大臣から答弁をいただいて、事務的な御説明あとから伺いたいと思います。
  65. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 事務ではございまするが、この事務も政治的判断を加える余地があるのであります。かように解釈いたします。
  66. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 事務に対する政治的意味ということは私にはちよつとわからないのですが、事務に対する政治的意味ということはどういうことであるか、具体的に御説明願いたいと思います。法務大臣の御答弁では、明確に吉田内閣の延命工作、政治工作だという結論になるのですが、従つて濫用だということになり、犬養法務大臣はやめざるを得なかつたことが事実、真相であると私ども考えますが、その点はもう少し具体的に、かような事務であるけれども、それはかような政治的意味があるという御答弁を願いたい。
  67. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 指揮権行使はもとより国家立場でありますが、検察の事務というものは、この指揮権行使の立場において検察の事務、こういう意味でございまするが、法律上のこまかい正確な解釈は政府委員をして答弁させます。
  68. 井本台吉

    ○井本政府委員 結局検察庁法十四条の解釈問題になると思います。検察庁法十四条但書の法務大臣が個々の事件について指揮をするというのは、その指揮される内容は事務的な問題でございまするが、判断は先ほど来大臣から答弁がありましたように、政治的判断があり得るという結論になるわけでございまするか、逮捕を延期するとかあるいは起訴するとかしないとかいうようなことは、これは検察事務でございますから、その指揮をされるのでありまして、それに対する判断にいろいろな考慮が加えられるということは検察庁法十四条は別に禁止しておることではございません。
  69. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 その点は検察庁法四条と六条でございまして、従いましてこれは手続だけの事務であります。決して判断が加わるべきものじやないのであります。許諾の手続を内閣に稟請し、内閣がこれをするかしないかというだけの手続の問題だということは、しばしば当委員会におきましても、その他の委員会におきましても、すなわち大臣が許諾請求の手続に閣議で同意を決定しておりながら反対投票をいたしておりまする場合の質問に答えてこれは事務であるから、手続をしただけであつて意思表示は入つてないのだ、だから大臣が本会議において反対投票をするのに何もやぶさかではない、こういう答弁をしておりますことから考えましても、四条、六条を受けた十四条でありますから、これは単なる事務的な問題であつて、政治的な意味は全然ない、かように解釈することが正しいと思うのですが、その点はいかがでしよう。
  70. 井本台吉

    ○井本政府委員 この検察庁法による指揮事務はこれは事務でございまして、政治的な行為をするわけではございません。先ほどお尋ねのような逮捕の許諾をするかしないか、これを内閣を通じて国会に出すという場合には、内閣は、逮捕するかしないかということを審議してもらうということで国会にはかるのでございまして、その点からしますれば事務的な処理にすぎないと考えるのでございます。この検察庁法十四条、たとえば今度の指揮のように逮捕を延期するとかしないとかいうようなことにだけなるのでありまして、その内容自体は確かに事務と私は考えるのでございます。
  71. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 お聞きの通り、前の犬養法務大臣の腹は、政治的に吉田内閣延命工作、いわゆる涜職罪の妨害をするという意図でやられたということは、大臣の今までの御答弁ではつきりいたしました。ただいま刑事局長の御答弁によりますと、大臣の御答弁と相達して、十四条は事務である、事務的指揮であるということに認定をいたしたのでありますから、従つてども犬養法相のとられた処置は十四条の濫用であつたとかようにかたく信じておりますので、大臣はその点で先刻の御答弁を御訂正する意思があるかないか、念のため確かめておきます。
  72. 井本台吉

    ○井本政府委員 私も表示の仕方が少し足らなかつたのかもしれませんが、検察庁法十四条の但書等におきましても、政治的判断によつて指揮をされるということは、別にこれは禁止しておりません。従つて大きな意味で言えば、かような指揮をするのも一つの政治かもしれません。さような意味においてこれは政治的な行為だというのであれば、あるいは政治的行為ということになるかもしれませんが、あくまでも指揮事務は検察官の仕事についての指揮をするということになるのでございます。
  73. 林信雄

    ○林(信)委員 過般犬養法務大臣のとられた指揮権の発動行為の問題について、本日も同僚諸君よりいろいろ質疑が行われ、その関係について、私も惹起せられました当初からはつきりしておかなければならない重要なものを含んでおるとこう考えておつた一人であります。従つていつやら猪俣氏の言われたような与党議員なるがゆえにというような立場にとらわれた問題でなく、言うべくんば司法の威信、法の解釈の問題よりいたして明瞭にしておかなければならないと考えておつたのであります。従いまして、やや構想をまとめておるつもりでありまするが、ここに申し上げずに、一応私は説明を加えて、結論的な点を伺いたいと思うのであります。  先般の犬養法務大臣のとられた捜査関係の指揮発動のことが異例であつたということは、政府もこれをお認めになつておる。しかしながらこれは決して違法ではないというそのよつて来るところは、検察庁法第十四条に明記せられるからであります。この点は私も異論がなく、おそらく何人も異論がない、かように見ておる。問題の焦点は、その行政的な措置内容が妥当であつたかいなやの問題であると存じております。この点について、さきになされました法務大臣の指揮が、個々の事件に関し、しかもそれが政治問題に関したことであつただけに一般に少しく誤解されているのではないか、私はこう見ておるのです。先刻来の木下、古屋君らの委員の言われたこともこれに牽連していると思います。それは、一般に法務大臣の個々の事件の取調べまたは処分は、政治問題であつて、かつ重大な政治問題に関する場合のみに限局されておるやの印象を一般に受けておると思う。確かにそれはあると思う。私はこの点を遺憾として来た。正直に言いまして、加藤法務大臣も、本日もしばしば口に出されましたように、過去におきましても、その措置基本をなしたものは、国家的大所高所よりそうなされなければならなかつたというような表現で御答弁になりました。もつともそれは必ずしも政治問題関係に限つてやり得ることをやつたのだという説明的なものではないのですけれども、少くとも世間では、政治的行為としてなし得るものをなしたというような印象を受けておると思うので、その点を明瞭にするためお尋ねしたいと思うのであります。  一体その基本になつておりまする検察庁法第十四条それ自体には何もそんな区別はないということ、これははつきり言い得ると思うのです。他面内容は別にいたしまして、人の面から考えましても、その対象となりまする個々の人物が総理大臣であろうと、各省大臣であろうと、最高裁判所長官であろうと、検事総長でありましようとも、大学総長でありましようと、国会議員であろうと、財界人であろうと、また文筆人でありましようとも、市井の一般庶民でありましようとも、政党の総裁であろうと、幹事長であろうと、区別さるべきものではないと私は考えておる。従つてその個人の属する環境がいかなる階層であるやを論ずるものではないのであります。その重要なものは、及ぼす影響が事政界に関するにとどまらず、学会でありましようとも、宗教界でありましようとも、また言論界でありましようとも、財界あるいは国際関係等でありましようとも、いろいろな場合があるが、そのいろいろな場合を考えまして、もし検察官が取調べまたは処分をなさんとすることが、これらの関係において、法務大臣の言われる国家的大所高所より観察してきわめて重大なる事柄であるときた、それが国家のために有害なる事柄であると確信するならば、法務大臣は、法務省の長といたしまして、自己の責任において、その信念と異なるところの検察官の取調べまたは処分を規制するということ、そうしなければならない場合があるということ、これは先刻から木下君の言つておりましたように、人に差等をつけるのではなく、人とその環境、事柄とマツチいたしまするところに結論が出て来るのであつて、単なる人の問題と考えたくないのであります。  元来検察庁法第十四条のよつて来りまするものは、法務省設置法の第一条、第二条にあると考える。検察庁法第十四条はあげてその行為をいい、あるいはその中の事務云々の文言をあげて申しまするが、その検察庁法のよつて来るものは何であるかと言えば、法務省設置法にあると私は考えておる。  ここにおいて法務省設置法の第一条第二項に明記しておるところを見なければならぬと存じます。すなわち法務省設置法第一条第二項には「法務省の長は、法務大臣とする。」と明確に掲げております。さらに第二条第一項には法務省の任務が掲げられておりまして、一より十一まであるのでありまするが、その第一に「検察に関する事項」をあげております。その検察に関する事務法務大臣法務省の長としてこれに当らなければなりません。従いましてその任務の遂行はもちろん責任をもつて、時と場合によりましては畢生の勇を起して挺身もつてこれに当る場合も思わなければならぬのであります。従いましてここに特に注意を喚起しなければならないと感じますることは、およそ責任のあるところ、無為にして責任を負担せしむるということは世の条理が許さないと思う。責任あるところには、その責任あるだけの権限は自然に与えられることが世の条理であろうと思うのであります。すなわちそのことが検察庁法第十四条の行為を知る上において重要なことであると思う。法務大臣法務省の長といたしまして、そのための権限を有するとともに、そのための義務を負う。その義務遂行、言いかえまするならば、責任遂行の上においてその権利もあわせて勘案しなければならぬと思うのであります。  かような関係よりいたしまして、質問の要点は、法務大臣は自己の持つその責任において良心的でありまする以上、今後国会審議その他いわゆる政治問題というものに限られることなく、むしろ従来よりも、重要案件については、場合によつては、個々の取調べの中止、逮捕のとりやめ、起訴中止の問題が取上げられてもよろしいと私は信じている一人であるのであります。  要は、検察庁法第十四条を取上げて、その十四条の性格というものをここに明らかにしておく必要を痛感しておるものであります。法務大臣指揮権性格は、政治的措置ではなく、言うべくんば行政措置であり、その行政措置はあくまで法務行政遂行上適切妥当なものであることはもちろんであるが、特に検察行政は正しい刑事政策の真髄に徹した措置であらねばならぬ、かように確信するものであります。個々の事件捜査に当る検察官、これを指揮監督いたしまする検事総長、それぞれその任務において、その職務の遂行は刑事政策の真髄に徹したものであらねばならぬということが、誤りないといたしまするならば、法務大臣の職務範囲もこれを含み、ことに捜査指揮権発動に際しては、ひとしく刑事政策の真髄に徹した措置をもつて当らなければならぬと思うのです。かような見地に立ちまするならば、先刻来論議されておりまする単なる政治的行動として、法務大臣を離れた一政治家としての行動が、今回のとられた措置ではなくて、法務大臣それ自体の責任においてなされた行為が今回の措置であつたということ、それは現に法律に根拠を置き、またその解釈において決して違法でないことは当然であり、私の述べまする見地に立つてなされたものであるといたしまするならば、先刻来の疑問はないと私は考えておるのであります。この点いかようなものであろうかと思うのです。あらためて申し上げるまでもなく、これは法の解釈の点において、今回の問題の性格を定める上において重要だと存じますので、あえて政府の御所見を承つておきたいと思うのであります。
  74. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 林君にお答えいたす前に、古屋君の先刻の御発言に対しまして私一言申し上げておきます。古屋君はすべて今回の指揮権発動は政略的の意図のもとであつて吉田内閣延命策だ、こういうふうに加藤法相の答弁を結論づけるという御意見でありましたが、これは古屋君の独断でありまして、私は断じて承服できないということを一言申し上げたいと思います。  今回の問題につきましていろいろ世間の批判が大きくなりましたのは、佐藤幹事長という問題であつたのでありますが、私の知るところによりますれば、この指揮権発動ということは必ずしも稀有なことではなかつたのでありまして、初めてこの問題が出てこれが政略的に論議されることになりましたがゆえに、かように問題が大きくなつたのでありますが、過去におきましても、法務大臣の権限において指揮権の発動をいたしたことは、必ずしも稀有ではないのでございます。ただいま林君からいろいろ御注意もありまして、私も今後良心的態度をもちまして――もちろん検察庁法十四条は行政権の一部であるのでございます。私は今後対外関係におきましても、刑事政策の上から見ましても、いろいろ重大なることがある場合においては、熟慮の結果、良心的にこの指揮権を発動することもあり得ることと思います。
  75. 林信雄

    ○林(信)委員 多く長く時間をとろうとは思つておりませんけれども、お答えは簡単でありまするが、刑事政策の見地に立つてということは、法の解釈においても私の所見を了承された結果であると存じます。従いましてその見地に立つて、具体的の場合はきわめて良心的に妥当な処置がなされますることを望んでやみません。従いまして思いまするのは、かような責任の上に立つて法務大臣のやつた行為でありますから、あるいは世の一部には、一般の個々の事件に当つた検察官の諸君に、一部不満があるかのような説も伝えられないではなかつたのでありますが、これはおそらく誤解であろうと思うのであります。かように、法務大臣、個々の捜査に当りまする者、一体をなして検察行政がなされて行くということ、それが国家のためであると思うのであります。その間において若干の意見の相違――あるいは言う者は、その捜査に当つた検察官の行為は行き過ぎのようなことを言い、あるいは法務大臣行為の行き過ぎのようなことを言いますが、しよせんは押し進めれば、これは意見の相違であつたと解釈することが、法の解釈において正しいと思つておる。そこでこれに牽連して一点だけつけ加えることをお許し願い、またお聞きしたいのですが、今回の造船疑獄あるいは保全経済会の事件、日殖事件等につきまして、検察庁の各位が非常に熱心に、繁忙も激務も意に介せずして活躍せられましたことについては、衷心お察しもし、敬意も表するのです。しかしながら事にはさように単純な一面ばかりでなくて、いろいろ複雑化して参りますると、及ぼす影響もまた派生して参ります。すなわち翻つて考えてみますれば、国民の側から見ますると、何百人という者が取調べを受ける、それは言うまでもなく、政界、財界、官界の知名の士、またしからざる人多数であります。検察権の行使によりまして家宅捜索を受ける者、召喚、逮捕、勾留を受ける者、これはおのずから出て来ることではありまするけれども、それが非常に広範囲になつて参りまするときに、繁忙をきわめ、ときに激務になつて来ますると、人のやりまするところには、またあやまちが起き、行き過ぎ場が起きないとは限らないのであります。そのために一部非常に迷惑を受けておる面のありますることもいなめないと思うのです。一例をあげますると、石川島造船関係の者だつたと思いまするが、何もそれが職権濫用、あるいは拷問その他の忌まわしいことを直接いたさないまでも、二名の自殺いたした者ができて来た、あるいは捜査の面において人違いをしてしまつた。もつともこれは同名異人であつたとかいうような原因も伝えられておりまするが、間違つた人間、縁もゆかりもない、関係のない人間を逮捕してしまつた、そういうことになりますると、その人間の迷惑はもちろん、家族の迷惑は実に多大なものでありまして、これは推察します。かように、この種不当の逮捕あるいは思わざる不祥事件というようなものを惹起いたしますることは、これは情においてはおよそわかるのでありまするけれども、やはり検察権行使の面から見まして、断じてプラスではないのであります。これはマイナスといわなければなりません。その権威失墜をなからしめるための努力は今後十分尽して行かなければならぬと思う。そのためには、その起つておりまする事態がどういうものであるか、その起つて来る原因は何であるか、再びこのあやまちを繰返さざるためにはどういう処置をすればよろしいかということが、今日慎重に考えられなければならぬと思うのでありまするが、当局にはその点の調査ができておるのでありますか。少くともひざ元でありまする東京地方検察庁の管轄内では調査済みであり、その報告が法務省にも来ておるかのようなことを漏れ承つておるのでありますが、はたして今岡の捜査事件関係に関連いたしまして、世の常にいう不祥事件といつたようなものは、特にあげますればどういう例があるのでございましようか。確かな範囲においてこれもお示しを願いたいし、今後の処置について、まとまらないまでも一応政府としてはどういうことが考えられるのでありましようか。検察庁の権威のために、法務行政の権威のためにこの点を伺つておきたいと思います。
  76. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま御質疑の点でありますが、熱心に捜査に努力しておつたときにああいう問題が起きて、不満があつたではなかろうかということでございます。これはいろいろ意見の相違もあつたことであろうと思いますが、話せばわかるのでありまして、ただいまは渾然一体となつておる次第でございます。この点御承知おきを願いたいと存じます。  検察当局の諸君が、正義感に立つて献身の努力をいたしましたことにつきましては、私は先般この席においても述べたことでございますが、法務大臣としてそれらの諸君の努力に対しては深く敬意を表する次第でございます。  また御指摘になりました点でありますが、あまり熱心に捜査をいたしました途上、幾分の行き過ぎた点もありますが、この点は私は深く陳謝をいたしておるのでございまして、申すまでもなく人権は尊重いたさなければならない、今後十分注意いたすつもりでございます。不祥事件と申しますか、それらにつきましても、調査は大体終つておるのでございます。私らといたしましては、今後行き過ぎることのないように、また一面捜査の熱意が失墜せぬように十分努力いたしたいと序ずる次第であります。
  77. 井本台吉

    ○井本政府委員 先ほど自殺者並びに人違いの者を謙虚したかということのお尋ねがございました。本日書類の全部をここに持つてつておりませんが、自殺者につきましては、運輸省の雛田氏ほか一名が参考人もしくは関係者として取調べを受けまして、その直後において自宅もしくは役所で自殺された事件がございます。これらの事実については私どもといたしましても、詳細取調べました係官も非常に懇切丁寧に調べておりますし、調べ官の方の過失はないという結論に達しておるのでございます。しかしながら、そのときとうとい人命が失われたのでございますから、この上とも将来係の者も自殺者が出ないように気をつけて調べを続けて行きたいという考えでございます。  それからいま一点、人違いがあつたことはないかというお尋ねでございますが、これは本年の三月九日に造船事件関係の家宅捜索をいたします際に、全然同じ名前の重役の方の住所を取違えまして、午前中約一時間半ほど家宅捜索をいたしました事件がございます。これは調べ官の認定の間違いでございまして、私どもといたしましては、とにかく関係のない方のうちに上つたというような点、これは家宅捜索を受ける方の方もあまり突然のことで、自分の家宅捜索を受けるにつきまして、何ら具体的に違うのだという説明もなかつたものですから、そのままやつてしまつた。これはあとで重大な間違いと気づきまして、東京地方検察庁の田中次席検事がみずからその間違つた方のお宅に伺いまして、つつしんでおわび申し上げた次第であります。私どもといたしましても、この調べが確かにある程度不法であつたという点を率直に認めまして、この点につきましては法務省の方から係官並びにその監督者に厳粛に警告を発しております。この点につきましては、検察庁といたしましても二度とかような間違いのないように十分注意をするという建前になつております。  それから、これは誤解を防ぐ意味で発言をさせていただきましたついでにちよつと申し上げたいのでありますが、検察事務は普通の行政事務と違いまして、特に検察庁法によつて捜査につきましては、検事総長以下が第一線に立つて犯罪捜査の指揮並びに捜査をするように規定ができておりまして、法務大臣が第二次的に多くの事件については犯罪捜査の指揮をすることができるというような記載になつております。また検察庁法ができる沿革に徴しましても、犯罪捜査の指揮は全面的に検察庁にまかせまして、人事権までも検事総長以下に与えて、この犯罪捜査が一般的な外の影響を受けないようにした方がいいのではないかという考慮も払われたように聞いております。しかしながら、さような点は人事、予算の関係から法務本省がこれを握つておりますが、司法権に準ずる建前から、一般的な事案につきましては原則として検事総長以下に犯罪捜査をまかせて、特に重要なもののみについて法務大臣が長官として検事総長を指揮できるという建前になつておりますので、どの事件でも第一線に法務大臣が立つて何でも犯罪捜査の指揮をするという建前にはなつておりません。先ほどの林さんの御結論につきましては、私法律的にはまさにその通りであると存じますが、誤解を防ぐ意味におきまして一言申し上げる次第でございます。
  78. 小林錡

    小林委員長 今の間違つて家宅捜索をやつたというのはどういう人が中心になつてつたのですか、検事が行つたのですか副検事が行つたのですか。
  79. 井本台吉

    ○井本政府委員 同姓同名の方のお宅を間違えまして、令状をもらつて事務官が行つたのでございますが、重役のお宅でございますので、非常にりつぱな家だということで、かようなことでお宅に家宅捜索に上りましたと言うと、奥さんが見えまして、どうぞ自由に見てくれというので、家宅捜索を済ませまして間もなく帰りましたが、その会社の顧問弁護士の方から、あれば間違いじやないかということであわてて詳細に調べましたところが、確かに間違いがあつたということで非常に恐縮いたしまして、すぐその日に事務官初め次席検事まで間違つたお宅に伺いまして、その事情をつぶさに申し上げて御了承願つたということでございます。
  80. 小林錡

    小林委員長 おわびに行つたのは当日ですか。
  81. 井本台吉

    ○井本政府委員 すぐその日でございます。
  82. 小林錡

    小林委員長 なお、きようは斎藤人権擁護局第二課長が来ております。
  83. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 人権擁護局の係の方にお尋ねいたします。今問題を起して刑事問題、裁判問題になつておりまする霊友会会長の小谷キミという女、この小谷キミがそこへ女中として働いておつた者に対して非常な暴行を加えておる。これにつきまして警視庁にも訴えておりまするし、人権擁護局に対しましても人権侵害として訴え出たはずであります。人権擁護局はこれに対して詳細なお調べをいただいたと思うのですが、その概要について当委員会に報告していただきたいと思います。
  84. 斎藤巌

    ○斎藤説明員 お尋ねの件につきましては、昨年の七月二十一日に東京法務局におきまして情報を入手して調査を開始いたしました。その後八月の十三日に福島地方法務局から被害者の申告に基く報告がありましたので、なお詳細な調査を開始したのでございますけれども、その後警察、検察庁におきまして同種の事件の告訴か何かに基いて捜査が開始されましたので、私どもは本件の最終的処理を検察庁にゆだねることにいたしまして、その後は調査いたしておりません。
  85. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、あなたの方ではあまり内容は調査していないのですか。
  86. 斎藤巌

    ○斎藤説明員 被害者数名につきまして調査いたしましたが、加害者の点につきましてはまだ十分な調査はいたしておりません。当時検察庁の方に身柄が拘束されておるような事情もございましたので、調査を一応打切りました。本件は刑事事件と認定されましたので、検察庁に最終的処理をゆだねたわけでございます。
  87. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、人権擁護局としては検察庁べその件について正式なる結論を報告したのであるか、ただ検察庁で調べている点でそのまま擁護局として調査もせずにほうつてしまつたということになるのですか、その点はどうですか。   〔委員長退席、林(信)委員長代理着席〕
  88. 斎藤巌

    ○斎藤説明員 先ほど申し上げました通り、東京法務局では調査は十分にいたしておりませんので、ただ調査したということを人権擁護局から警視庁の方へ通告いたしまして、あとの最終的な捜査並びに処理につきましては検察庁にゆだねたわけでございます。
  89. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、人権擁護局で調査したというのは、どういう範囲で調査しましたか。第一に被害者を調べましたか、それから加害者を調べましたか、あるいは関係人を調べましたか、どういう調べをなさつたのですか。
  90. 斎藤巌

    ○斎藤説明員 被害者の桑島貞子につきましては、昨年の八月四日に調査をいたしております。その後同人に対する第二回の調査を昨年の十月二十七日にいたしております。それから昨年の十月三十一日に佐藤マツノの調査をいたしております。また、昨年の十月三十一日に高田とく、同日高橋泰子、それから昨年の十一月の九日に浦和の地方法務局の越ケ谷支局におきまして栗田ちようを調査いたしました。その後昨年の十一月十二日に出川ハツを横浜の地方法務局の横須賀支局で調査いたしました。なおその後参考人を甲府地方法務局その他で調査してございま
  91. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、その結論は、この桑島貞子が訴えたような事実ありという認定になつておるか、どういう結論になつておるのですか。
  92. 斎藤巌

    ○斎藤説明員 事実は大体認められる点もございますが、おもに申告者である被害者の方を調査いたしましたので、まだ十分な結論をつけるまでに至つていないわけでございます。
  93. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は人権擁護局はこういう事件こそ典型的に調ぶべきものだと思う。もしここに書いてあることがほんとうだとすれば、昭代あり得べからざることです。しかもこれは宗教と関係がある。重大な人権蹂躪をやつておる。これ以上の人権蹂躪はありません。まるでもう座敷牢に入れたような形で、逃げ出すこともできません。ここに詳細に書いてあるが、何べんもその責苦にたえかねて逃げ出そうとしたけれども、出口にそれぞれ番をする者がおつてとつつかまつて引きもどされて、そうして給料も全部取上げられて、汽車賃もないし、自動車賃もない、逃げることもできない。それから親近者が来ても会わせない。ちようど刑務所で会わせるように、立会人がいて五分間くらいで切り上げてもう会わせない。これは数年間監禁同様のことをやつてつた。それで今阪神不随のような状態でずつと療養を続けております。こんなばかげたことはあり得べからざることです。諸君はこれを聞いて一体義憤を感じないのか。人権擁護局なんて何のために存在するか。中途半端の調べをしてそのままほつたらかしておる。君は局長でもないから今大声を張り上げてもしようがないと思うのだが、局長によく言うてもつとこの次には責任ある答弁をしてもらいたい。こんなべらぼうなことはありません。昭代あり得べからさることが起つておる。これこそ人件擁護局の存在を天下に示すべき絶好の、チヤンスである。それをやらないから、予算を削られてしまうじやないか。まあ、あなたにそれを言うてもしようがないことですが、そうすると結局は調べはしたが、中途半端でそのままうやむやにしてしまつたということになるんですね。これはもう打切つたのですか、それともまだこれから調べるのですか、どうなんですか。
  94. 斎藤巌

    ○斎藤説明員 先ほど申し上げましたように、本件はまだ調査の途中でございまして、検察庁で現在捜査いたしておりますので、検察庁に最終の処分を一応ゆだねたという形になつております。従つて検察庁の処分いかんによつてはなお調査を続けるつもりでございます。御承知と思いますが、人権擁護局の人権侵犯事件処理規程というものがございますが、その規程によりますと、私の方で調査した結果は、一番厳重な処分といたしましては検察庁に告発するということになつております。それまでに至らない段階が勧告、その勧告にも懲戒処分を要する勧告とそれから一般的な勧告とこの二つがございます。その他にもいろいろな処理の方法がございますが、本件は先ほど申し上げましたように、検察庁で刑事事件として取上げておると申しますれば、私の方で告発したと同様な事態になりましたので、その点刑事局を通じて今申し上げましたように一応取調べは検察庁にまかして、調査は中止という形になつておるのであります。
  95. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は人権擁護局に望みたいことは、検察庁が取上げた事件について検察庁はどういうふうに処理しているかということを検察庁と緊密なる連絡をとつて――検察庁は検察権の当事者で、一般の人民から見るとこわい相手なんです。言いたいことも言えない場合もあり得ることなんです。それにかわつて人権擁護局自分が人権を侵害された者の立場に立つて事件の行末までめんどうを見てやるべき筋合いだと思うのです。そうなつてこそ初めて人権擁護局存在価値があると思う。検察庁は御承知のように汚職事件で非常に手がまわりかねておる。だからのんべんだらりとやつておると思う。その際にあなた方がやはりあれはどうなつたと言つて協力して、この人権侵害ありやいなやを明らかにする責務があると考える。どうも何かめんどうな事件はほうつてしまつたような形であるならば、人権擁護局存在の必要がなくなつて来る。これは私は打切らずになお関心を持つて検察庁と連絡の上でこれを調査していただきたい。それをお願いしておきます。  それから井本刑事局長にお尋いたします。私は人権擁護局側にこの事件を聞いておつたのは、あなたに聞かせたいために伺つてつたのだが、あなたはよそ見をして聞いておつたかどうかわからぬが、この事件についてはこの前もお尋ねをしたのです。これは実に聞けば聞くほど奇々怪々の事件であります。私は徹底的にお調べを願いたいのです。そこでこの事件には係検事があると思いますが、どなたが主任検事としてやつて、どの程度調べられておるか。私のところに訴えて来た人に聞けば、何にも調べておらぬそうです。これはいつ警察からまわされて、いつ検事の取扱いになつたか。どういうふうに進行しているのです。
  96. 井本台吉

    ○井本政府委員 昨年の八月十一日に桑島貞子、高田とくの両名から訴えが出まして、目下東京地方検察庁が調べております。前回御答弁申し上げました通り、初めは警視庁において取調べをしていたのでありますが、昨年の十一月二十四日事件が東京地方検察庁に送致されたのであります。事案につきましては、ちようど被告訴人の小谷キミが別の事件で取調べを受けておりましたので、それと相関連させまして取調べをしていたのでありますが、非常に複雑な事件で、被害者におきましても全面的にそのまま真実であるというには承知しがたいので、検討中であるという報告を受けております。いずれにいたしましても告訴人側の言う通りであるといたしますれば、これはほうつておけない事件でございます。さような点を考慮いたしまして、またこの事案が新興宗教内部におけるいろいろな派閥争いに基く特殊な関係事件でございますので、諸般の点を考えあわせまして、なお慎重に調査中であるというふうに申し上げます。
  97. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 慎重に調べられるのはいいのです。去年の十一月二十四日に送致されているのにまだ被害者の調べもない。半年たつているじやありませんか。そう慎重にされると困るのです。慎重にも度があるのです。大体被害者側の言うことが真実であればなんという前提があるが、調べもしないで真実で、あるかどうかわかりますか。大体これはほうつておくのじやないかと思うのです。警視庁が調べて、検察庁事件が送致されておる。半年もたつているのに被害者も加害者もまだ何にも調べてない。一度被害者に会つてごらんなさい。純情な女性なんです。これがどんなひどい目にあつたか、一度検事が会つて聞けばわかるのです。義憤を感ずるのです。それは派閥争いはあるかもしれません。しかしこの女はそんなことには何の関係もない女だ、また同じ日にあつた関係者が数人いるのです。これを調べてくれれば小谷キミというのが精神病者だということがはつきりして来る。それをさつぱり調べない。そこで私どもがあなた方に忠告することは、世間いろいろにデマが飛んでいる。というのは、現内閣の有力閣僚である前法務大臣であつた木村篤太郎君が顧問をやつてつた。相当の顧問料をせしめておる。この木村篤太郎君がみな押えておるのだ、警察ではさつさと調べたけれども検察庁へ行つたらストツプだ、こういうふうに世間では見るのですから、これはわが検察権のために、さような心証をもし世間に与えるとすればたいへんなことだ。そこでそんな痛くない腹を探られる必要もないように、とにかく着手していただきたい。その実情をお聞きしていただきたい。これは調べれば調べるほど慄然たるものがあるのです。医者やあらゆる者を買収して、この被害者を孤立させてしまう。おそらくこういう目にあわせられたら、たいへんです。これは二十三年からのことです。この間本人が来ましたので、面罵したのです。幾ら女でも三十幾つになつて何というばかげたことだ、不法監禁をされて逃げ出すことができないのかと私が問い詰めたら、泣いてばかりいて返答ができない。よくおちついてから文書にして書いて持つて来てくれと言つたら、こういうものを書いて来た。そうして彼女の給料を全部霊友会で預かつて渡されなかつたことは事実です。今警視庁でそのとりもどしに出てくれています。四万何千円の給料は一銭ももらつていない。だから家へ帰ることもできない。かようなことを平気でやつてつて、全国からおさい銭をとつている。これは人権問題としても重大な問題です。われわれは宗教を阿片なりとは考えておりません。私自身も三十年来クリスチヤンであります。しかしかようなインチキ宗教というものがこういうことをやつている。それに対しても何ら法が届かないということになりますと、この霊友会についてはこれはあとお尋ねしますが、大きな脱税事件が出て来ました。これも何だかもみ消された形になつている。第一回の脱税事件も手入れがあつたけれども、これもうやむやにされておる。その当時木村篤太郎氏は弁護士として相当活躍をされたようであります。そのままになつてしまつた。また今回脱税事件がここにある。これは国税庁にちやんと申告されておりますが、これもどういうものだか、さつぱりわからない。かような状態でありまして、はなはだ私どもは疑問にたえない。そこでとにかくびようたる一女子でありましても、この人間が昭代の御代にあり得べからざる状態、真実のことであるかないか、特にこれを調べる必要があると思うのです。十一万に受理されて今日に至るまで何ら取調べがないということは、奇怪に存じます。しかも小谷は今刑事被告人として裁判中であります。場合によりてはこれを追起訴でもしなければならぬ事件であります。この被害者は今親のもとへ帰つて療養中でありまして、医者の診断書も送つてつている。りつぱな体格の女であるが、ほとんど結婚もできないような状態になつてしまつた。しかも女子大学を中途退学したインテリであります。しかもその動機は自分のいいなずけが戦死をした。そこで夫の霊を弔うということで――祖先の霊と弔うということがこの宗教の根源なんです。そこでこの宗教に帰依しまして夫の霊を慰めるということで、ほとんど奉仕的にここに勤めて来たのです。その人間に対してかようなことをやつた。ほんとうに気の毒なんです。もう少し社会正義のためにこういう問題に対しても検察庁が立ち上つていただきたい、これを切にあなたにお願いしておきます。
  98. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 大体これでおしまいのようでございますから、きようはこれでけつこうですが、福島県石城郡好間村鳳城炭鉱の元組合長であつた村会議員箭内光の殺人事件がございます。これは暴力団による虐殺行為と見られておりまして、これにからまつて、「暴力におののく小田鉱」というような題で新聞などにもでかでかと書かれておりまする事件がございます。この件について明日詳しくお尋ねをいたしたいと思いますから、お調べ置きを願いたいと存じます。これはたとえば四月二十五日の朝日新聞福島版、それから四月二十九日の福島民報などにも詳細掲載されておりまして、この記事は新聞にもずいぶんでかでかと書かれております。暴力団の横行いたしております実情が喧伝されておる事件でございますので、お調べの上に御答弁を願いたいと思うものでございます。明日でけつこうでございます。
  99. 林信雄

    ○林(信)委員長代理 他に御発言はありませんか。――御発言がなければ本件についての本日の調査はこの程度にとどめておきまして、明日は午前十時三十分より委員会を開くことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十五分散会