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村上政府委員 民事
上告特例法制定の経過は、御承知の
通り当初
民事訴訟法の一部
改正として提案されましたものが二年間の期限付の特例法として制定せられ、その後さらに二年間延長に
なつておるわけでありますが、その制定の際及び
期間延長の際におきまして、
民事訴訟法の全面的
改正を考慮するということを当時の当局者から申し上げておるのであります。もとより
民事訴訟法の
改正にその間努力して参つたわけでありまして、法制審議会に
民事訴訟法部会を設けまして、同部会におきまして根本的
改正を
考えて来たわけであります。ところが
上告の問題になりますと、
最高裁判所の
機構をはたして今のままにしておいていいかどうかということが先決問題じやないかというところにぶつか
つて来るのであります。一方御承知の
通り昭和二十六年、七年にかけまして
最高裁判所の未済
事件が民刑合せて七千数百件に上るという状況にありました。特に二十七年の後半ごろからは
最高裁判所の
機構を改革する必要がある、ことに
裁判官の数が足りなければこれを増員すべきじやないかという非常に強い
意見が在野法曹から出まして、その他各種の
意見が現われて参りましたので、二十八年の初めにさらに司法制度部会を法制審議会に設けまして、
裁判所の
機構の改革ということを中心として審議を続けて参つたのであります。昨年中に
民事訴訟法部会の
委員会は約八回、その間小
委員会、幹事会等はしばしば開きまして検討をいたしたのでありますが、事は民事の
上告だけの問題でなく、刑事の
上告制度とも不可分の
関係にある。また刑事の
上告制度を問題にいたしますと、勢い刑事の控訴審の問題にも触れて参りまして、問題が非常に広汎であります。しかも申すまでもなく
裁判所の
機構は国の基本組織でございまして慎重な検討が必要であろう、かように
考えておつたのであります。法制審議会の審議の経過は、当初逐条説明の際に大体申し上げました
通り、現在の
機構のままで行こう、そして
上告の
範囲は民事については
上告特例法、刑事については現行
刑事訴訟法の制限を維持して行こうということが一方において非常に強く
主張されております。他方、
裁判官の数が足りないために事務の渋滞を来しておるのであるというところから、
裁判官の数を
相当数増員して、この民事
上告特例法なり
刑事訴訟法における
上告の制度をやめてしまうべきであるという
意見が、これは主として在野側から非常に強く
主張されました。その中間に、
最高裁判所と高等
裁判所との間に特別の
上告裁判所をつくる、あるいは東京高等
裁判所に特別の
上告部をつく
つて、
上告のうち軽微なものはそこで処理し、重要なものを
最高裁判所で処理するというふうな段階を設けるべきであるという
意見、その他いろいろない件が出まして、大別いたしますと、ただいま申し上げました三つの
意見にわかれるわけであります。これらの
意見が鋭く対立したままの状態で今年に入つたわけであります。もとより採決によ
つて多数の
意見をとりまして、これを法制審議会の答申として
政府が
法案に織り込んで提案することも
考えられるのでありますけれども、事きわめて重大でございますし、その問題の重要性から申しまして、
意見が対立したまま単に多数決によ
つて法制審議会の答申を出すことはどうであろうかということが、法制審議会自体の中で問題になりまして、ことにこの
程度で採決をすべきかどうかということを司法制度部会の部会長から諮つたのでありますが、ただいま申しましたような
趣旨で、
最高裁判所の
機構改革の問題はこの際採決をして打切るということでなく、なお続けて慎重に検討しようということに
なつた。一方特例法が六月一日で失効いたします。そうしますと、
最高裁判所の事務の
負担がふえまして、現在以上に
事件の渋滞を生ずるおそれがある、それに対する手当をする必要があるということで、司法制度部会から具体的
内容の審議を
民事訴訟法部会に移されまして、
民事訴訟法部会で多数をも
つて定めた要綱に基きまして立案したのが、このたび御審議願
つております
民事訴訟法等の一部を
改正する
法律案であります。従いまして、
最高裁判所の
機構改革の問題につきましては、
法制審議会司法制度部会におきましても、引続き検討を続けることに
なつておるのであります。本
国会終了後におきまして、さらに司法制度部会の
会議を開きましてや
つて行きたい、かように
考えておるわけであります。ただ、従来の実績に照しまして、ただ
会議を繰返して、同じ
委員が同じ
意見を繰返し
主張するというだけでは、結論を得ることは困難であります。私どもの期待いたしておりますのは、在朝在野の法曹並びに学界の方々、それぞれに衆知を集められて、
一つのりつぱな案をまとめていただくということでありますけれども、遺憾ながら今までの経過はさようなことでございます。しかしながら、今後の法制審議会の運用といたしまして何とかまとめる方向に持つた行
つていただくよう、さらに私どもの方としても努力いたしたい、かように
考えておるわけであります。