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1954-05-12 第19回国会 衆議院 法務委員会 第54号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十二日(水曜日)    午後零時三十六分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君    理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君    理事 井伊 誠一君       花村 四郎君    吉田  安君       猪俣 浩三君    神近 市子君       木原津與志君    佐竹 晴記君  出席政府委員         厚生事務官         (薬務局長)  高田 正巳君  委員外出席者         厚 生 技 官         (薬務局麻楽課         長)      市川可知男君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 五月十一日  委員猪俣浩三辞任につき、その補欠として石  村英雄君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員石村英雄君及び木下郁辞任につき、その  補欠として猪俣浩三君及び西尾末廣君が議長の  指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから、これを許します。花村四郎君。
  3. 花村四郎

    花村委員 私は人権蹂躪問題に関しまして、厚生当局なかんずく麻薬取締りを所管しております局長に対して質問を試みようとするものであります。  申し上げるまでもなく麻薬に関する司法警察権は、特段のある事情に基いて厚生省の官吏が保有をいたしておるのであります。本来ならば検察並びに警察当局において扱うのが筋であると思うのでありますが、しかし麻薬に関しましては、特にその方面における技能、知識経験等の特殊な経歴と申しますか、そういう特段なる性格を持つた人でなければうまく司法警察権の行使ができないという意味において、麻薬官に対してこの種警察権を与えておることはきわめて明瞭でございます。従いまして、この種警察権麻薬にのみ限られて行使せられるべきは当然であり、これは鉄道公安官鉄道の構内もしくはその鉄道所有地域限つてのみ司法警察権を持つておると同様であることも、多く申し上げる必要もなかろうと思うのであります。従いまして麻薬に関しましては、そういう特段なる事情考慮に置いて、慎重にその司法警察権を行使せねばならないと思うのでありますけれども、近来この麻薬取締りに関する役人の行動を見あるいは聞いてみまするのに、とかくこの取締り行き過ぎがあると申し上げて私はよろしいと思う。すなわちその取締り行き過ぎということは、要するに一面からいえば人権蹂躪である。こういうことはやはり麻薬取締りの上から十分に考慮をしなけれで、その取締り行き過ぎによつて国民基本的人権を侵害するがごときことがあつては相ならぬと私は申し上げてよろしいと思う。そこでお伺いをいたしたいのは、麻薬取締りに関しまして麻薬官司法警察権を与えにゆえんのものは何であるかといえば、これは主として、私は主としてという言葉を用いるのだが、麻薬密輸入であるとかあるいは麻薬密造であるとかいうようなことに関して主として取締りを行つて行く上において専門的知識が必要であるということで、司法警察権を与えられたということは、過去の記録によつてきわめて明瞭でありまするが、この点はいかがでありましようか。
  4. 高田正巳

    高田政府委員 麻薬関係犯罪につきまして厚生省関係麻薬取締官司法警察権を付与されております根本的な考え方というものにつきましては、今花村先生がお述べになりましたようなところであろうと私は考えるのであります。ただこれらの取締官対象といたしまする犯罪密輸密造密売というふうなものが、ただいまにおきましても主たる分野になつておりまするけれども、法の精神といたしましてはさような麻薬取扱者でない者の犯罪も、もちろんこれは十分にやつて参らなければなりませんが、同時にまた麻薬取扱者犯罪というものもこれも同じように取締らなければならないものであり、またその任務を持つておるのであります。その両面の任務を持つておる、かように考えております。
  5. 花村四郎

    花村委員 ただいま局長の御説明のありましたことは、私も承知をいたしております。でありまするから先ほども注を加えて血として麻薬密輸入密造密売をあげたのでありまするが、もちろんこの麻薬を取扱う人あるいはまた取扱わざる人等に関する麻薬取締り対象と相なつておりますことは、これは言うをまたざるところでありまするが、そこで私はさらに進んでお伺いをしたいのは、この麻薬違反に関する事件は大体どの程度ありましようか、終戦直後における統計並びにその後の統計を大体お示しを願いたいと思います。いかなる麻薬違反事件がどの程度あつたかということをお聞きしたいと思います。
  6. 高田正巳

    高田政府委員 ただいま持つて参りました資料は二十七年と八年しか持つて参りませんで、古いものを持参しておりませんが、それについて申し上げてみますと、二十七年度におきましては事件件数は十百九十件、検挙人員が千六百四十二名、その中で中毒者が六百七十八名、それから再犯である者が三百四十名、こういうふうなことになつております。それから二十八年におきましては事件件数が十三十件、それから検挙人員が千四百六十二人、その中で中毒者が六百三人、それから再犯者が三百六十一人、大体こういうふうな数字になつております。
  7. 花村四郎

    花村委員 そこで、この種事件は大体どういう事件が多いわけですか。いかなる事件が多いかを、おもなるものをおつしやつていただけばいいのでありますが、麻薬に関する事件はいかなる種類の事件であるかということと、そうして麻薬官はいかなる者を採用しておるか、採用される麻薬官経歴等をひとつお聞きしたいと思います。
  8. 高田正巳

    高田政府委員 いかなる犯罪内容であるかというふうなことにつきましてはいろいろとわけ方があると思いますが、御参考までに申し上げてみますと、ただいま読み上げました数字の大部分は花村先生指摘取扱者以外の密輸とか密売とか、そういうふうなもの、それで取扱者の方の件数は二十七年が先ほど申し上げました数字の中で百二十六件、二十八年は五十一件になつております。これは終戦直後から比べますると取扱者の方の事件というものがだんだんと減つてつておる傾向でございます。と申しまするのは、取扱いについてだんだんとなれて参りまして、そういうことが少くなつて参つた、かように私どもは考えております。  それから麻薬取締官資格は、これはたしか法律にも根拠があつたと思いますが、その内容政令で定めております。採用資格政令によつてただいま定めております。ちよつと読ましていただきたいと思います。「左の各号の一に該当する者でなければ、麻薬取締官又は麻薬取締員となることができない。」四号ほどございまして、一号が「通算して二年以上麻薬取締に関する事務に従事した者」二号といたしまして「通算して三年以上薬事に関する行政事務に従事した者」三号といたしまして「学校教育法昭和二十二年法律第二十六号)に基く大学又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)に基く大学において法律又は薬事に関する科目を修めて卒業し、学士と称することができる者」四号といたしまして「学校教育法に基く短期大学又は旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)に基く専門学校において、法律又は薬事に関する科目め修て卒業した後、通算して一年以上麻薬取締に関する事務に従事した者」大体こういうことになつております。これを要約して申し上げますると、大体大学を卒業した者であるか、法律または薬学の方をやつた者であるか、あるいは専門学校を出て一年以上麻薬取締りに関する事務経験があるかということが大体の基本になつております。その他は過去の経験というもの、二年なり三年なりの経験というものをくみまして従事させる、こういうことになつております。
  9. 花村四郎

    花村委員 そうしますると麻薬官性格はよくわかりましたが、その麻薬官にあらざる者がこの麻薬取締りに当つておるというようなことはありませんか。
  10. 高田正巳

    高田政府委員 ただいまの御質問は今申し上げましたような資格のない者がやつておるのではないかという御質問でございますが、それはないと心得ております。
  11. 花村四郎

    花村委員 そうすると、たとえば東京都内東京都の麻薬出張所と申しまするか、あそこに麻薬取締官がおるわけですが、あそこにおる若い人は事務官ですか。事務官等もやはり麻薬取締り関係をしておるようですが、あそこにおる者は全部麻薬官じやないように私は聞いておるが、いかがですか。
  12. 高田正巳

    高田政府委員 全国でただいま麻薬取締官は百五十名、都道府県に取締員が百名ほどおりますが、その百五十名の取締官に対しまして事務補助者雇員が十名ほどおります。百五十名に対して十名。従いまして取締官事務所が八つありますから、各事務所に大体一名ぐらい雇員がいる、こういうことになつております。
  13. 花村四郎

    花村委員 麻薬についてはかつて取締りがすこぶるゆるやかであつたことは事実でありますが、アメリカが進駐して参りまして、アメリカの意図に基いてこの麻薬取締りが急激に厳格さを加えて来たということは、これは事実でありまして、何人も認むるところでありますが、こういう関係から一時は麻薬事件が多くなつて来たのでありまするが、だんだんとその麻薬取扱いに関する違法性等を認識して参つたというような関係から、違反事件も少く相なつて来たことであろうと思いますが、しかし麻薬に関する取扱者としての医師に対する取締り状況であります。これは御承知のように麻薬患者麻薬施用するということは禁じられておるのでありますけれども麻薬患者麻薬施用するということ以外においては、少くとも麻薬取扱いの許可を得ておる以上、患者に対していかようにこの麻薬を投じようとも、これは制限のないように私は承知しておりますが、その点はどうでしようか。
  14. 高田正巳

    高田政府委員 大体今花村先生のおつしやつたようなことでございまして、麻薬取締法等二十七条二項でございますが、「麻薬施用者は、疾病治療以外の目的で、麻薬施用し、若しくは施用のため交付し、又は麻薬記載した処方せんを交付してはならない。」こういうように疾病治療以外の目的でやることは施用者といえども禁じられておるのでありまして、今先生が御指摘のように、医療上必要なものに施用をいたしますことは、何らさしつかえないわけであります。
  15. 花村四郎

    花村委員 そこでこれは今を去るちようど半年前に立川で起きた問題でありますが、愛生堂という病院を経営しておる松井というお医者さんが立川にありますが、この医師麻薬密造しておるという嫌疑のもとに二十八年の十一月四日に家宅捜索を受け、しかも身柄を勾留されたのでありますが、身柄の方は二日後に釈放せらるるに至つたのでありますけれども、結局大げさな麻薬密造嫌疑のもとに捜査を始めたところ、ほとんどこれは何も問題はなかつたわけです。そこでカルテ記載が少し不十分であるということで麻薬官が引上げまして、カルテをもう少し完全なものに整えるようにということで帰されたので、そのカルテ麻薬官の指示する通りに整備いたして、そうして医局に備えつけて置き、その後は何らの間違いのないように、きわめてまじめに医業を進めて来たのであります。ところが麻薬取締官が参りまして、整理されたカルテを持ち帰りまして、そうしてそのカルテによつて――それは三百何十人か記載してあつたそうでありますが、そのカルテに基いて六箇月の長きにわたつてその患者の家を一々訪問して、そうして愛生堂麻薬注射を受けたかどうかというようなことを根掘り葉掘り聞いて歩いたということで、この六箇月の間に松井医師のところへ言うて来た患者が約二十人を越えておるそうであります。まあこれは愛生堂に言わぬでくれというて麻薬取締官が来たんだけれども、こういう事実があるんだというて、取調べに来た事実を松井医師に訴えて来たという事実があるのでございます。従いまして相当数にわたつて、このカルテに基いて麻薬取締官が一々患者の家をまわつて歩いたことは想像するにかたくない。しかしながらこういうことが、はたして麻薬取締官のなすべきことであるかどうか。また麻薬取締官はこういうことをやらなければほかに仕事がないのであるかどうか。麻薬取締官の数から申しますると、きわめて少い数でありまするが、これでは麻薬取締りがはたしてできるかどうかということを疑う余地もあるように思うのであります。しかしこういう取締りの必要なきことを六箇月の長きにわたつてつておるということであれば、よほど麻薬取締官というものはひま仕事がなくて困つておるのじやないだろうかとも想像できる。こういうことは、なるほど取締りに熱心であるという点は買つてつてもいいでありましようけれども、しかし一々患者の家をカルテに基いてまわつて歩くというようなことは、これはむしろ営業妨害である。営業妨害でありまするのみならず、これは基本人権を蹂躪するもはなはだしいものである。医者の方も迷惑ならば、患者の方も迷惑である。これによつて愛生堂患者は著しく来る者がなくなつたというて、松井というお医者さんはこぼしておつたのでありますが、なるほどこれはその通りだと思う。こういうことを麻薬取締官がどうしてやらなければならぬのか。しかも麻薬密造嫌疑でやつてみたところが、麻薬密造嫌疑は隣れた。しかも麻薬患者麻薬施用したのではないかという麻薬法違反嫌疑のために取調べを進めておるということであれば、これはまた一応りくつも立つ。ところがそうじやない。麻薬患者麻薬施用する以外、病人麻薬を使うということについての制限医者にはないわけなんです。どういう病人にどう使おうが、それは医師の自由であるということで、医師の正当なる権限に基いてやり得る事柄についてまでもその取調べを進めなければならぬ、こういうばかげたことは幾ら考えてもわれわれには了解ができないのでありまするが、こういう事実をお開きになつたかならぬか。あるいはなつたとすれば、こういう事実を上長としてあなたが認めておられるのであるかどうかどうであるか、これをお尋ねしたい。
  16. 高田正巳

    高田政府委員 ただいまの事案につきましては、私の承知いたしておりまするところでは、花村先生お話ちよつと違つておるのでございます。私が承知いたしておりまするのは、そのお医者さんにつきましては、今先生がお述べになりましたように、最初十一月四日に一度家宅捜索をいたしておるのでありますが、これは立川市警の方が、ある二名の者の供述から、同医師から覚醒剤及び麻薬注射を受けたということを申しましたので、覚醒剤及び麻薬不正施用容疑立川市警令状をもらいまして、そうして十一月四日に捜索をいたしたのでございます。この立川市警の控室につきましては、麻薬取締官が求められまして協力をいたしております。それで捜索をいたしました結果、現場におきましてドル及び駐留軍物資を発見いたしましたので、これはその事件といたしまして、令状をもつて立川市警が十一月四日より十一月六日まで身柄を拘束してこれを送検した、こういうことであります。  それで一方、この捜索をいたしました際に、療養所におきましては、覚醒剤及び麻薬、それから麻薬診療録というようなものがございません。自宅において麻薬を発見いたしました。このことは取締法の三十四条違反ということに相なるわけでございます。なおまた自宅において帳簿等を発見いたしましたが、取締法に規定する記載がしてなかつた。これは三十九条違反の問題になるわけであります。それから施用に関する記録もしてなかつた。これは四十一条違反ということに相なるわけでありまして、さような事実を発見しましたほかに、付近の麻薬施用者になつておらない人からの麻薬貸与についての同人あて依頼状等も出ております。かような事由よりいたしまして、これは麻薬取締法違反容疑が十分であるのでありますが、立川市警は、これはひとつ麻薬取締官のほうでやつてもらいたい、麻薬の問題についてはそちらが専門であるから、そちらでやつてもらいたい、こういう要請によりまして、麻薬取締官取調べをいたすことに相なつたのでございます。  その後の経過でございますが同医師取締官といたしましては出頭を求めましたが、なかなか出頭をしない。まれに出頭しても、その陳述をしていただけないというような状態であつたそうでございます。その後作成したと思料される診療録を持参されたのでありますが、虚偽記載の疑いが非常に多く、だんだんと捜査を進めて参りまするうちに全然同医師に診察を受けたことのない人について、人を介して頼んで、自分から麻薬を売つたことにしておいてくれというふうなことが行われておる。従つてそれらのものに麻薬をそれぞれ七本とかあるいは六本とか注射したという記載になつておるわけでありますが、これらのことは全然虚偽であるというようなことが判明して参つたのでございます。それで任意出頭は、これはなかなか捜査はむずかしい、しかも証拠隠滅のおそれが多分に生じて参りましたので、本月の六日に令状を得て身柄を拘束いたしまして、翌七日にこれを送検した、こういうことに私ども承知をいたしております。それで、非常に長くかかつておるというようなお話でございますが、これは今も申し上げましたように、私ども聞いておりますのは、最初はいろいろ任意出頭をしてもらつて事情伺いたいということで言つたのでありますが、容易に応じなかつたために、非常に長くかかつたというふうなことだと私は承知いたしております。
  17. 花村四郎

    花村委員 私のただいま申し上げたことにも違いがあるという話でありますが、ただいま局員のお話になられたことも、私の調査から言えはやはり合つておらない。多分下僚の報告に来いたものでありましようが、もちろん下僚上可に報告するのに、なるべく自分の非行は隠蔽して報告するというのが人の常でありますから、食い違いがありますことは、これは当然であると申し上げてよろしいと思うのでありますが、私は立川署至つて次席とも会つてよく立川署意見も聞いたのであるが、ただいま局長の言われたごとく、二人の密告によつて捜査を始めたのであるが、その事実なしと認めて二日で身柄は返したのだという話をしておつたのです。あとはこれは麻薬官がやつておられることで、その後のことは警察は何らの関係もないんだという話で、あつたのでありますが、その辺局長のただいま申されたことと異なつておるようであります。私は少くとも立川署次席の言を信じてよろしいと思う。それから、その後呼び出しても出て来ないと言うのでありますが、呼出しは十回以上に及んでおる。医者もこれは相当に多忙をきわめておるので、従つて近所医者からそねまれておるというような関係もありますだけに、非常に患者も多く、忙しいお医者さんであるそうでありますが、それを立川から十何回も呼び出して調べておる。そうして最後は何か病気で出られなかつたこともあるとは申しておつたのでありますが、私もこのごろ東京都庁内にあるあの出張所ヘ行きまして、大橋某という、あれは麻薬取締官ですかに尋ねておつたところが、そこに若い事務官か何かが参りまして、どうもこういう簡単な事案に対して身柄を拘束してまでもやる必要はないじやないか、少くともお医者さんだ。しかるに医者をとめて調べなければならぬというような事案ではないじやないかというて話したところが、いや、このごろ二、三呼出しを出したのだが、出て来ない、誠意がないから、やむを得ず身柄を拘束するようにしたのだ、こう私の前で現に申しておりました。それで本人に開きましたところが、それは最後に二度ばかり呼出しが来たのであるが、最後のときは病気で行くことができなかつたのだという話ですが、それまでにはとにかく十何回出頭しておる。局長の今申されたような話を聞いても、麻薬取締りの見地から見るならば、そう大した事案じやない。それはもちろん法律違反には違いはないでしようけれども、しかし大げさに取扱うがごとき罪質でないことは、きわめて明瞭であるにもかかわらず、六箇月の長きにわたつて本人立川からわざわざ呼出し取調べをするというような大げさなことを一体やる必要がどこにありますか。そうして個十人か、あるいは何百人か知りませんが、多くの患者の家庭をまわつて歩き、そうして十何回も東京まてわざわざ忙しい人を呼び出して調べた結果は、一体何があがりましたか。泰山鳴動してねずみ一匹も出ない。オピスコと称する麻薬が十三不足しておつたので、その不足を糊塗する意味において、このお医者さんの女中の姉の収入の新井というのと立花というのを名前を借りて、そうしてこのつじつまを合わしたというに過ぎない。これだけ本人が認めておる。犯罪事実を認めておる。しかるにこれをしも、お医者さんを身柄を拘束して調べる。調べた結果は何も出ないじやありませんか。こういうことではたして麻薬取締りの上で妥当であるかどうか。これは私は行過ぎのはなはだしいものであると申してよいと思う。こういうことをされたのでは、お医者さんの患者が減ることは当然です。これはまつた麻薬取締りに藉口して基本的人権を蹂躪するものなりと極論してよろしいと思う。麻薬官がこんなにひまがあるならば、麻薬官に高い月給を出して、そうして今日窮乏せる国家財政の中から麻薬官を置く必要はないと思うので、この点は麻薬官をもつと削つてもいいのじやないか。こんなくだらぬ麻薬取締りに貴重な時間や労力を費しておるというようなことであつてはならない。行政機構の改革は、やはりこういう面にも及ばなければならない。また役人としてのその仕事を忠実にやつて行くという意味において、司法警察権をりつぱに運用して行くという意味において、こういう取締りをやつて悪いというのではありませんけれども、しかし取締りに名をかりで、そうして六箇月の長きにわたつて患者の家を一々訪問して聞いて歩く、こんなばかげた取締りが一体どこにありますか。そうして相当労力も費し、骨も折つたでありましよう。これはまことに、取締官には御苦労だと言えば御苦労だと言いたいのですが、しかしそうして出て来たものは、オヒスコの十三箇にすぎないのだ。これは下痢だとか腹痛等注射する薬なんで、対した麻薬じやないのだ、こういうことをして医者職芸を窮地に陥れしめるというようなことは大いに慎しむべきことであろうと私は申し上げたいのですが、この点に対する局長の御意見を承りたい。
  18. 高田正巳

    高田政府委員 花村先生からおしかりをこうむつたのでありますが、この点ひとつ御了承いただきたいと思うのであります。麻薬というものは医療上非常に必要なものでありますけれども、これがわきに流れたりなんかして、適当に使用されませんと、非常な弊害があるのであります。それとその施用期間の受払いということ、どれだけ受けて、どれだけ使つたという数字が合いませんということは、実は非常に困ることなんでございます。それでそういうふうなことからいろいろと間違いも起つて参りますので、その点は麻薬は非常に特別なものであつて、そのために非常にやかましい法律が出ておるわけでございます。ただいまの案件につきましては、初めから実は事件にするつもりでやつたのではないように私どもは聞いておるのでございます。ただいろいろ十何回もとおつしやいましたが、なかなか出頭していただけないので、何回も出頭依頼状を出しておるそうであります。そうしてそのあげくに、いろいろと捜査をやりましたらそういうふうに間違つた、全然架空なことを書いて、つじつまを合せているといりようなことで、結局このままでは何ともできないというようなことで、身柄を拘束した、こういうふうなことであろうと私は考えておる次第でございます。確かに先生のおつしやいますように、不必要に事を好んでささいな問題を取上げて、そうしてお医者さんに御迷惑をかけ、あるいは一般の方に御迷惑をかけるということは厳に慎しまなければなりませんので、私どもといたしましてもさようなことのないように十分に戒めたい、かように存じておるわけでございます。この事案につきまして取締官のやりましたことが、ただちに今のように非常に不適当なことであつたというふうにも、私ども調査をいたしましたところでは考えない、あるいはやむを得なかつたんじやないかというふうに一応考えておる次第でございます。
  19. 花村四郎

    花村委員 これでやめますが、最後に、身柄を拘束され、七月くらいおりましたが、ほとんど一回も調べずにほうり込んだままにしておつたというようなことで、これが取調べに関しても適当でないように思います。麻薬官も私は感心しないと思うのですが、その取調べの責任の衝に当つておる検察官もあまり感心しないと思いますので、この点は検察官にも私は注意をいたしたような次第で、なるべく早く調べてその罪質を明確にして、身柄は出してもらいたいということを申しておいたのでありますが、麻薬官としてもほうり込みつぱなしで一回も調べぬというようなことは、これは取調べの方法として適当でないと申し上げてよろしいと思う。私はこの取調べをするなという意味ではございません。取調べをやつていただくのはけつこうなので、また麻薬に関しては特に厳重にやられることはむしろわれわれの希望するところで、進駐軍が参りましてこの種事件取扱いに対して厳重なる指示を与えられたということは、私どもむしろこれを喜んでおる次第でありますけれども、しかし一つのこういう簡単な事犯を六箇月の長きにわたつて捜査するというようなことは、これは不適当であることはきわめて明瞭なのである。事件によつては六箇月もたてば時効によつて消滅するような事件もある。わが刑事訴訟法において勾留期間は二十日を越えてはいかぬという規定を設けてあるゆえんのものも、その捜査をなるべく早くやつて、そうして事件の真相を明確にすることによつて、人の身柄をみだりに拘束しないようにしなければならぬという民主主義の見地からこういう法律が生れて来ておるのでありまして、なるべくすみやかに専任を捜査して解決をして行くという方途を講ずることが、これが最も必要であり、わが刑事訴訟法のあらゆる面においても、そういう方向を示した精神が現われておりますことは、多く申し上げるまでもないのであります。でありますからもしこういう事件を扱われるならば、もつとすみやかに事の真相を究明されて、そして罪のある者はどんどん処罰されるのがよかろう、罪がなければそれで捜査を打切るのがよかろう、そういう捜査の本格的使命をよく考えられて、そうして真剣に取組んでもらいたいということを私は心から希望をいたして質問を打切ります。
  20. 林信雄

    ○林(信)委員 この際花村委員質問に関連しまして、少し伺いたいと思います。時間の関係もありますので、一括して伺います。  花村委員も述べておられますように、占領軍において、この麻薬関係事件を厳重に処罰することを要求したかのような話を聞きますが、そのことは検察陣にも影響いたしまして、検察陣において取調べの実際上、勾留の関係におきましても、また量刑に関する意見におきましても、一般の事件よりやや重くこれを取扱つてやる。たとえば体刑を要求して――事件にもよりますけれども、おおむね体刑を要求いたしまして、しかも執行猶予をされないことを従来主張されて来た。このことは裁判所にも反映いたしまして、裁判所もまたおおむねこれを採用せられて来ておつたようであります。この一連の事実をながめまして、さような要求が占領軍からあつたものでありましようか。当時でありますれば、被占領国家といたしまして、当然その命令に従わなければならなかつた。しかしながら、平和条約発効後の今日においては、それはおのずから趣を異にしてよろしいわけでありますが、事の性質はやはり麻薬とという関係から、現に裁判所で判決の場合に始終するのでありますが、判決をジユネーヴまで送らなければならない。麻薬に関するジユネーヴ会議ですか、何か事務当局といつたようなところに、でも送るのでありますか、そういつたような国際関係のあるようなことも聞くのであります。従いまして、被占領国ではなくなりましても、また形のかわつた意味におきまして、この事件は特に厳罰に処さなければならない事情があるのでありますか。こういう検察及び裁判所の麻薬に関しまする取扱い関係も御存じでありますか、いなむしろ御存じというよりは、そのことを被占領国の時代及び今日、厚生省とせられましては、裁判所は御無理であろうと思うのでありますが、少くとも法務省関係には御連絡をなすつておられるのであるか、もとは厚生省関係にあるのではないかと思いますが、この一連の関係につきまして、ひとつ具体的に実情をお尋ねしたい。
  21. 高田正巳

    高田政府委員 麻薬につきましては、ただいまお話のございましたように、わが国が加盟をいたしておりまする条約は十本に近いくらいございまして、国際的に非常に厳重な取扱いをいたしておるのであります。わが国も戦争前、進駐軍の参ります前も、このこのことは同じであつたわけでございます。しかし進駐軍がやつて参りましてからは、向うのこの方面の専門家が乗り込んで参りまして、そうして実は非常にきびしくいろいろなことにつきまして――最初厚生省あたりが取調べを受けたというふうなかつこうであつたのであります。と申しまするのは、これは言葉をはばかることではございまするけれども、日本が外地におきまして、麻薬に関連していろいろやつたことについて非常に国際的な不信を招いた、さようなことも影響しておつたのだと思いまするが、この問題につきまして、進駐軍から非常にきびしくやられましたことは事実でございます。そのために厚生省におきましても、戦争中の責任を負つて犠牲者が出たりなんかいたしました。しかし進駐軍のやりました――確かにこれはきびしかつたのでございますけれども、先ほど花村先生ちよつとおつしやつたように、間違つたことではない、それぞれ筋のあることであります。それでわが国におきましては、二十享年に麻薬取締法をつくりましてやつて参つたわけでありますが、どうも前の麻薬取締法が、今問題になりました政府機関なんかの方の手続が非常にきゆうくつであつて、あまりに縛り過ぎるというふうな実情もございましたので、それでお医者さんたちが麻薬施用者になりたがらないというふうなこともございまして、実は昨年の四月法律を改正いたしまして、そういう取扱いの方を若干緩和いたしたような実情にあるのであります。しかし、一方麻薬の弊害といいますか、あるいは密輸密売買、中毒者というようなものはだんだんとぐあいの悪いことになつてつております。それに、先ほど申し上げましたように、国際条約でももちろん縛られておりますし――国際条約とかなんとかいうことを抜きにいたしましても、この惨禍は恐るべきものがあるということで、この取締りの方は実は一生懸命私どもつておるわけであります。さような麻薬に関する罪が日本の国あるいは社会全体から見て非常に憂うべきことであるというふうなこと、結局検察庁も裁判所もそういうふうな認識にお立ちになつて、今御質問のようなことの行われることがだんだん多くなるのではないか、かように考えているのであります。なおどういうふうな事犯がどういうふうになつたかということは、これは条約に基きまして国際間で報告をいたし合うことに相なつておるのであります。特に厚生省から検察庁なりあるいは法務省なりにさようなことを申し入れているというふうなことはございません。
  22. 花村四郎

    花村委員 局長の先ほどの答弁ははつきりしない点がありました。この種事件について、六箇月の長きにわたつて、各患者カルテを持つてまわつて歩くというようなこういう取締りは、これはよろしいとお認めになるということですか。麻薬官がこういう捜査方式でしてもよろしいということで、これを局長はお認めになるわけですか。それを最後に。
  23. 高田正巳

    高田政府委員 普通の事態でありますれば、六箇月もかかつてやるというふうなことは、先生のおつしやるように不適当だと思うのでありますが、この具体的な案件につきましては、さようにならざるを得なかつたいろいろな事情があるのではないかと考えておるのであります。一般的な問題といたしまして、捜査技術あるいは捜査方針というものにつきましての先生のいろいろな御注意、これは私ども十分拝承いたしまして、厳に戒めたい、かように考えておるわけでございます。     ―――――――――――――
  24. 小林錡

    小林委員長 この際小委員補欠選任についてお諮りいたします。すなわち、民事訴訟法等の一部を改正する法律案外二件審査小委員でありました猪俣浩三君は、昨日法務委員辞任されたのでありますが、本日再び本委員に選任されましたので、この異動により当該小委員が一名欠員となつておるのであります。この補欠選任につきましては、先例に従い、委員長において御指名いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 小林錡

    小林委員長 御異議ないものと認め、民事訴訟法等の一部を改正する法律案外二件審査小委員補欠には、従前通り猪俣浩三君を御指名いたします。  明日は午前十時より民事訴訟法等の一部を改正する法律案外二件審査小委員会を、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十一分散会