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1954-05-11 第19回国会 衆議院 法務委員会 第53号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十一日(火曜日)    午前十一時二十一分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君    理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君       押谷 富三君    花村 四郎君       牧野 寛索君    中村三之丞君       吉田  安君    猪俣 浩三君  出席国務大臣         法 務 大 臣 加藤鐐五郎君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         法務事務官         (公安調査庁長         官)      藤井一郎君         法務事務官         (公安調査庁次         長)      高橋 一郎君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 五月十日  中国人の入国許可に関する請願(辻文雄君紹  介)(第四八一八号) の審査を本秀員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから順次これを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 政策的なことは法務大臣がお見えになりましてからお尋ねいたします。事実関係につきまして刑事局長から御答弁を願います。  それは、去る日大磯吉田邸暴漢が侵入した事件でありますが、この事件につきまして私ども非常に関心を持つものであります。そこで、この事件の詳細について御発表願いたいと思います。
  4. 井本臺吉

    井本政府委員 お答えいたします。本件犯人は、大阪市都島区内代町二の一番地の案の兄幸作方に同居中の大工職葛原法生昭和六年生れでございまして、本年の五月二日に、旅行に出ると称して右の同居先を立ち出まして、翌三日上京したものでございます。上京後は、まず宮城を遥拝の上、一旦目黒の総理官邸付近に参りましたが、総理大磯私邸にいることを知りまして、東京駅から大磯駅へ到着し、徒歩で総理私邸付近におもむき、午後七時半ごろ、折からの雨を利用いたしまして生けがきをくぐり抜けて邸内に侵入したものであります。邸内に入りましてから警邏中の警官一人と出合いましたが、格闘の上これを払いのけて、総理邸宅の勝手口にまわり、同所から土足のまま屋内に侵入いたしましたが、間もなく総理護衛係警察官に逮捕せられたものでございます。  なお、取調べの結果によりますと、同人は事前にアドルム二、三十錠を嚥下しておりまして、また刃渡り約七・五センチのジヤツク・ナイフを携帯し、かつ遺書と目せられるものを所持していたのであります。犯行の動機につきましては、今までの取調べでは必ずしも明白ではありませんが、同人は約二年ぐらい前から政治関心を持ちまして、吉田総理に対してはいたく反感を抱き、総理の反省を求めるにとどまらず、場合によつて総理暗殺をも決意したのではないかと考えられる状況でございます。本件は、目下のところ犯人個人犯行と認められますが、なお背後関係共犯等調べておりますけれども、現在のところではこれは認められない模様でございます。以上の通りでございます。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 今承りますと非常に単純な事件でありますが、新聞の報ずるところによりますと、何がゆえかすなおに事案関係を発表しない態度警察官とつたというのであります。さようにして事実関係を公表しないで、数日たつてから公表するようなことに相なつた。多少そこに対していろいろの説があるのでありますが、どういう理由で、こんな単純な行為についてふだんと建つて新聞発表をしなかつたのであるか、その理由がありましたら御説明願いたい。
  6. 井本臺吉

    井本政府委員 私どもといたしましては、かようなことはとかく模倣者が出ますので、さようなことを恐れまして、もし発表せずして済むものであればそのまま調べを続けて行きたいという考えでおつたのでございますが、すでにある程度世間でも知つておる模様でございますので、大体の詳細な模様を申し上げた次第でございます。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、今後政府としては、かようなことがあつてはなりませんが、こういう行為をなす者がありましても、これをなるべく世間に公表しない方針でありますか、どうですか。
  8. 井本臺吉

    井本政府委員 そのときになつてみませんければわかりませんが、その事案の性質によりまして、場合によつては公表することもあり得ると考えておるのでございます。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 この、葛原法生でありますか、これは、今までのお調べの結果は、大体右翼的な人物左翼的な人物という型がありますが、このどちら側に属する人物だとお認めになりますか。
  10. 井本臺吉

    井本政府委員 本人は、自分右翼でも左翼でもないということを申し立てておるのでございます。いかなるものが右翼でありいかなるものが左翼であるかということ定義もなかなかむずかしいと思います。私、ただいまのところ、この人間がどちらの方に属するかということは断言ができかねる次第でございます。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 共産党とか、あるいはその他の共産主義に賛意を表するよう陣営側人物ではないと思われるのですが、それはどういうふうに御判定ですか。
  12. 井本臺吉

    井本政府委員 今までの調べでは、共産主義を信奉しているというよう状況はございません。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 この犯人は、ただいまどこへ留置されてどこの機関において調べを受けておりますか。
  14. 井本臺吉

    井本政府委員 私どもへの報告では、横浜検察庁小田原支部大沢検事が主任で調べております。小田原支部の管内の拘置所に留置しておると考えております。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 この人物行為につきましては、今捜査当局は、単なる家宅侵入というようなことで捜査されているのですか、殺人未遂というようなことで捜査されているわけですか。
  16. 井本臺吉

    井本政府委員 住居侵入殺人予備の罪名で調べておるのでございます。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 この人物吉田総理大臣に対して、かりに殺意を持つてつたとすれば、それは今までの取調べ状況においては、いかなる理由に基いたのであるか、お明し願いたいと思います。
  18. 井本臺吉

    井本政府委員 本人取調べがまだ徹底しておりませんが、要するに吉田総理に対しまして、非常な反感を持つておるということに帰着すると存じます。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 その反感理由についてはわかりませんか。
  20. 井本臺吉

    井本政府委員 ただいまのところ、まだその点は詳細に報告を受けておりません。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 大臣がおいでになりましたから、大臣に、これは私の意見を申し上げまして、大臣の御見解を承りたいと思います。近来政府の施策その他から、終戦直後ほうはいとして起りました民主主義傾向が退潮し、自衛隊、再軍備というようなかけ声とともに、今まで鳴りをひそめておりました右翼暴力団体テロ行為を是認するような輩が相当台頭して来た。この前の吉田内閣不信任案上程当時、傍聴席からビラをまかれた状況、あの際に私ども不吉な予感がいたしました。続いて吉田邸暴漢闖入事件に相なつた。この最大の責任吉田政府にあると思うのでありまして、この吉田政府反動政策、そうして革新陣営に対しまする弾圧政策、陰に陽に右翼的な勢力の台頭を促すがごとき態度、そうして民生の安定を庶幾せずして、厖大な不必要な自衛隊の拡張などばかりを考えて、そうして一家心中親子心中が毎日の新聞に報道せられるというよう状況、そこへ持つて来まして、政界の汚職、案にあらゆる階層におなりましたる疑獄、しかも事が与党の運命に来る予感がありまするならば、ただちに検察庁法を、発動してそれを阻止してしまう。国民の憤激はその頂点に達しておると思います。かようなことが原因をいたしまして、かようテロがまた台頭して参りました。私どもは着田内閣責任実に重夫であり、なお国会議員にして汚職関係する者多数出て来るというよう状況で、一般の議会政治民主主義に対しまするほうはいたる不信、これはゆゆしき大問題だと痛心いたしておるものでございまするが、その際にかよう乱暴者が出て来た、これはテロのはしりではないかと思うのであります。  そこで私は吉田内閣を責めますることは第二といたしまして、さしあたりまして、かようテロ行為に対しますることについては、われわれ民主主義を信奉する者は、敵も味方もなく断固たる態度で排撃しなければならぬと存ずるのであります。われわれの過去の歴史におきまして、いわゆる五・一五事件血盟団事件、あのような際に、いわゆる政党の腐敗を痛憤するあまり、かような話せばわかることに対しましてテロを行う、これをまるで志士義人のごとく国民考え、時の官僚政府軍部連中はこれをあおり立てる、かようにいたしました結果が二・二六事件となつて発展して来た、これは明らかなる事実であります。二・二六事件関連将校どもは、自分たちが死刑になるなどいうことは予想しておらなかつたということは相当明らかになつて来ておる。そういう意味におきまして、私は今回の吉田邸に乗り込んだ暴漢のごときに対しましては、野党でありまするけれども、仮借なく厳罰に処してもらいたい。その断固たる態度天下に表明してもらいたい。いやしくも民主主義の国におきまして、堂々言論によつて、選挙によつて闘うことは当然でございますけれどもテロを行うということは卑怯未練なやり方でございます。これに対しまして、いかに吉田政府の失政の結果なりといえども、これを英雄視し、これをほめ上げるがごときことは、野党といえども絶対に慎まなければならぬと私は考えます。この意味におきまして、私はこの人物に対しましてはあれゆる角度から慎重なる捜査をせられるとともに、この法律違反の点がありましたならば、最も厳罰に処していただきたい。さようにいたしまして、愚かなる輩の今後輩出することを機先を制して抑制する、私はこれを熱望にたえません。もちろんいかなる人物といえども人権蹂躪的行動をしてはいけけせんけれども、あまりにこれを甘やかすよう態度をとることは、国家百年の大計をくずすことに相なりますので、私は汚職の摘発と同様、かようなものに対しましては敵たる態度で臨んでいただきたいが、法務大臣はいかなるお考えでありますか、承りたいのであります。
  22. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま猪俣委員の真面目の御意見まことに傾聴いたしました。私はただいまお説のありましたごとく、歴史を見ましても、時の政府に対して非難攻撃がある場合に、政治上の一時の興奮痛憤によつて民主主義の敵であるところの直接行動をする、これがいかにも正義の士のごとく思われ、また一部においては軽薄にもこれを志士義人のごとく吹聴する者があるのでありまして、その結果が五・一五事件に相なつた、あるいは二・二六事件に相なつたというお説は、私はまことにごもつともであるのでありまして、ことに猪俣君は反対党の、野党の立場においてこの議論をなさることに深く敬意を表する次第でございます。直接行動に出る者に対しましては、法の許す範囲において厳重に取締りをいたしたいと存じておる次第でございます。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 そういう政府の厳然たる態度を何らかの方法において天下に声明してもらいたい。そうしてなおかようテロ行為なるものがいかに民主主義の敵であるか、この機会に内閣としてもこれは重要な問題であると考える。区々たる法律問題とは違います。これは日本の将来を明るくするか暗くするかという分岐点になつておる。ほうはいとしてテロ団体が復活して来ております。まことに私ども憂慮にたえない。今後吉田総理大臣というような性格の政治家に対しましては、相当の危険が私はあると思う。これは十二分なる御警戒をなさなければならぬと思いまするが、とにかくかよう行為民主主義の敵であることに対しまして、もつと国民全体に徹底させていただきたい。これは政府の大きな責任じやないかと私は思う。かようなばかものどもが今後出ないように何らかの手を打つていただきたいが、何か御方針はありませんか。
  24. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 今後かような者が出ることを世間の一部の者が賞揚するがごとき態度に出でないことを、私は希望するとともに、政府におきましてもまた誤解を受けるようなことのないように慎み、かつまた取締りを厳重にいたしたいと思つておる次第でございます。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 大臣に私が要望したいことは、あなた方の総理大臣の身に降りかかりましたことであります。総理はつまらないことには腹を立てて憤慨するにかかわらず、重要なことに対しては、何かいやに悠容迫らざるようなことを言うておる。たとえば汚職に対してはあんなことは大したことじやないというよう態度をとる、今回のことも、あんなことにびくびくしておられるかというよう態度をとる。何もびくびくする必要はないが、それと日本民主政治に暗い影をさすこととは違うことです。汚職もしかり、盛んに政治家汚職をやつて、また戦前のように一部の者の扇動に乗ぜられて議会政治国民不信を持つ結果はどうなるか、あるいはまたテロ行為なんというものを、このはしりが出た際にもう徹底的な処置を講じないと、また終戦前のような実に世界の文明国としてはずかしいようテロ行為が行われないとも限らぬ。その意味におきまして、これは重大な問題だと考えるので、閣議においてこういう暴力行動に対して――これは左翼右翼を問いません。ことに暗殺行為というものは文明国家として最も私は原始的な野蛮行為だと考えまするので、そういうことに対して何か国民啓蒙的方策をお立てになつていただきたい。今すぐあなたに質問してもなかなか御答弁できないでしようが、そういうことを閣議に持ち出していただきたい、これをあなたに強く要望しておきます。かようテロの風潮に対してそのいけないことであること、いやしむべきことであることを何らかの方法によつて国民に徹底させていただきたい、さようなことを今から私はお考えになつていただきたいと思う。あなたは法務大臣就任日なお浅いから大勢はおわかりにならぬかもしれません。私はその意味において公安調査庁長官をお願いしたのでありますが、われわれの耳に響くものは、どうもまた終戦前のあらゆる方向日本状態が返つて来ておる。またこのテロというものも復活して来ておるというふうに感ずるのであります。これに対しまして政府として適当なる適正なる御処置をとつていただきたい、これを強くあなたに要望いたします。出していただけますかどうか、それくらいは御答弁願いたい。
  26. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 先刻お答えいたしましたように、暴力行為というものは民主主義の敵でありまするが、世間ややともすればかよう暴力行為をする者を正義人扱いにしておるような傾きがあるのでありまして、また一部政府反対の者はこれをいかにも誘発さす潜在意識を持つような者もないではないのでございまするが、これはただいま猪俣君の御説のごとく、いずれこういうことがだんだん多くなつて参りますれば、これは議会否認という民主主義の最も恐るべきものであるのでございまして、これは右翼たると左翼たるとを問わず、こういうものを絶滅するよう考えなければならぬと思います。今承りまして、今後対策を講ずるように善処いたしたいと存じておる次第でございます。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 こういう政治的なテロ行為なるものの非なることは申すまでもありませんが、いわゆる人権蹂躙の形で現われまするテロ行為、これは検察及び警察に関しましては、終戦相当の修正をせられたと思います。まだ絶無ではございませんが、昔のようなことはない。しかるに民間におきましてかようテロ行為が行われ、しかもそれが告訴をいたしましてもさつぱり事件の進展を見ないということでは、暴力をやつた者がやり得になるよう傾向が生じて参りまして、こういうことも結局においては政治上のテロ行為の一つの温床をなすものではないか。私は大臣刑事局長がお見えでありますから、一種の関連事項と存じまするので、この暴行をやつて平然としておるような問題につきましてお尋ねをしたい。それは新興宗教に多くあるようでありますが、ことに顕著なのは、今ほかの問題で摘発せられておりまする霊友会に関する問題であります。この霊友会会長と称しておるインチキ師小谷キミなる女、これはヒステリーの精神鑑定を要する女じやないかと思うのでありますが、この霊友会――もちろんこれは保安庁木村篤太郎さんが顧問をなさつておられるので、あまり悪口言うてはしかられるかもしれませんが、この小谷キミという婦人が、その婦人のもとに仕えておりました桑島貞子という婦人に対しまして、非常な暴行傷害を与えておる。これは昨年八月桑島から告訴をしておるはずであります。しかるに本日になるまでさつぱり要領を得ないのであります。一々ごの事案を申し上げませんが、これは実に慄然たる内容なんです。この婦人は私昨日面会いたしまして、今ほとんどまだ三十五、六の血色のいい働き盛り婦人でありますが、衆議院の第一議員会館の階段を上れません。その殴打のために負傷いたしておりまして……。しかるに、この治療をいたしました医者が何べん請求いたしましても診料書を書いてくれない。これは小谷キミと非常に特別なる関係医者だそうでありまして、何か相当の金でももらつておるのでありますか、書いてくれない。またどういうものだか、警察も、川島という病院でありますが、この病院調べていない。どうも私どもこの捜査に対しましてもふに落ちない。聞けば警視庁からは捜査終つて検察庁報告されているそうでありますが、一体これはいかようになつておるのでありますか。告訴人桑島貞子でございます。被告訴人小谷キミでございます。昭代の御代にあり得べからざる状態であります。残虐をきわめた暴行をやつておる、仏の名においてそのようなことは許されません。しかるにこれに対しましては捜査がさつぱり要領を得ない。さればいろいろのデマがそこに飛ぶのであります。木村保安庁長官に対しましてもいろいろデマが飛んで来る。そこで私はきのうのうちにこの質問を通告してあるのでありますから御調査なつたと思う。大臣からでも、刑事局長からでもこの現段階について御説明を願いたい。
  28. 井本臺吉

    井本政府委員 お答えいたします。昨年の八月十一日、霊友会会長小谷キミ方女中桑島貞子及び高田とくの両名から小谷キミに対しまして暴行傷害不法監禁等の被疑事実の告訴東京警視庁に出されたのでございます。この事件は同年十一月二十四日東京地方検察庁に送致された次第であります。告訴内容は、桑畠貞子昭和二十三年八月ころから昭和二十四年七月ころまでの間約四回にわたり、また高田とく昭和二十四年八月ごろから昭和二十八年六月ころまでの間約三回にわたり、いずれも小谷キミ方で仕事の仕方が悪いというようなことから同女より暴行障害を受け、また不法に監禁されたというのが告訴内容になつております。この事件につきましては処理が非常に遅れておりまするが、なお目下東京地方検察庁におきまして慎重捜査中でございます。関係者もきわめて多く、また事案内容相当複雑でございますので、現在までのところなお最終処理のできる段階には達しておりません。しかしながら決してこれは放任等閑しておるのではございませんので、引続き調べをしておるという点を御了承いただきたいと存じます。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 検察庁も非常に多忙でありますので私どもも無理は申し上げられませんが、これはほかに木村篤太郎告発事件に対しまして、栗田代議士告発代理人で告発したのを金をもらつて取下げたなんという事件もあります。いろいろ霊友会をめぐりまして芳ばしからざるうわさをわれわれ聞くが、そんなような場合でありますので、この事件につきましても徹底的な御調査を願いたい。これは強く要望しておきます。この事件につきましては私はそれだけにしておきます。  それから今度は公安調査庁長官にお尋ねいたします。先ほど私が法務大臣意見を申し上げましたが、そういう心持におきましてあなたにお尋ねします。これはしかし法務大臣もお聞きになつておいていただきたい。破壊活動防止法なるものは、これは必ずしも共産党だけの取締りの規則ではないはずです。ずつと始まりは、これは終戦後は右翼を取締る法律があつた。それが破壊活動防止法にまた変形して来たのでありますが、いつとはなしに右翼の方は手を抜いてしまつて左翼共産関係ばかりに勢力を集中しておるのではないか、こういうふうなわれわれは疑いを持つ。ところが今日の民主政治下から考えますと、共産主義による弊害に負けず、右翼暴力団体フアツシヨ団体、こういうものの弊害というものも甚大であろうかと思う。これはことに日本では過ぐる十年以前に古い洗礼を受けておるはずであります。あの大東亜戦争のごときも、軍部官僚の徒輩と、それに便乗いたしました右翼暴力団対、それらの総力によつてあの戦争は勃発した。彼らの存在というものは、日本民主政治発展のためには見のがすことのできないこれは存在であります。ところが吉田内閣は何かしら左翼にばかり気をとられ、そうして教育二法案だの警察法の改正だなんといつて、そういう方向にばかり頭を注いでやつておる。しかし、話せばわかる階級と、話してもわからぬ階級がある。この右翼暴力団体のごときは話してもわからない連中が多いのではないか。こういうものに対する的確なる情勢判断対策とを持たなければならない。そこで公安査庁長官にお尋ねするのですが、あなた方は一体近来のことに日本平和条約締結以後、いわゆるパージ問題が解除された以後において相当暴力団の復活が考えられるが、それに対していかなる感想を持つておるか、いや、そんなものはてんで大したことはない、心配する必要がないというお考えであるかどうか。その表示をまず吉田政府の頭になつてつてもらつちや困る。われわれ革新陣営の頭になつて、そうしてわれわれ心配しないでいいかどうか、現状はそんな状態でない、そんなものは一、二あるかしらぬが、とるに足らぬものだというようにお考えであるかどうか、吉田政府ならそんなふうに考えるか知りませんが、私どもはそうは思われない。そこで日本の現時におきまする右翼団体動向、この勢力、これが社会全般に及ぼす影響、これの弊害、そのうちに、またテロなんてことをやる一体と、しからざる団体とがあるかもしれない。さようなことにつきましてのあなたの報告を求めたいと思うのであります。
  30. 藤井五一郎

    藤井政府委員 公安調査庁といたしましては破壊活動防止法見地に基きまして、いわゆる共産党とあるいは右翼極右というものと、特別にその調査の対象に区別をつけておるのではありません。破壊活動防止法見地からいたしまして、いやしくも破壊活動をなす団体については極右に対しても調査の目を放さないでおるのでございます。本庁におきましても、また各公安局におきましてもそれぞれ専門の係がおりまして常に調査に当つておるのであります。しかし現在におきましてテロ行為を目的とする団体があるかということについては、私はそういう団体はまだないと思つておりますが、将来あるいは出るか出ぬかということにつきましては、これは非常に心配はいたしております。現在における右翼団体の数なり動向の具体的な点につきましては、次長から述べていただきたいと思います。
  31. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 お答えいたします。現在の右翼動向につきましては、猪俣さんが仰せられた通りどもも憂慮すべき傾向があるというふうに考えておるのであります。それで現在の情勢というものを、特に昭和五年の右翼テロが連続的に行われ始めたその最初のころに比較いたしまして、この法務委員会におきまして、二月十七日にかなり詳しく申し上げた次第であります。それで本日はその点については深く触れることは、控えさせていただきたいと思つておるのでありますが、第一に公安調査庁態度といたしましては、左翼政治的無力というものとまつたく同様に、右翼政治暴力というものを対象として考えております。ただ私どもはどこまでも破壊活動防止法の観点からこれを見見ておりますので、現実に右翼のどの団体が、破壊活動防止法のいわゆる破壊的団体としての疑いがある団体であるというふうには、現在の段階では具体化しておりません。その点がやや左翼の方とは趣を異にする点であります。しかし先ほど申し上げたように、一般動向としては決してこれを軽視しておるのではございません。それで現在の右翼の一般的な動向を示すものといたしまして、今月の二日から四日までの間に、救国運動全国協議会結成準備全国連絡委員会というものが開かれております。大体その中心になつて動いておると見られます維新運動関東協議会が、「救国運動」という機関紙を出しておるのであります。その四月二十五日号の主張において、この「全国連絡会議開催の意義について」という論説を出しておるのであります。その中にいわゆる右翼テロというものに関連する部分がございますから、ちよつとそれを読んでみます。「恥を知らぬ悪徳吉田内閣に対する国民の憤慨は、今や頂点に達している。かかる吉田内閣の命脈を一時的に断絶せしめることは簡単である。吉田ワンマンをこの地上から葬り去るか、或は二度と再び足腰立たぬ健康状態に陥し入れれば事足りる。  嘗つて血盟団、五一五事件等はそうした事象の現れであつた。しかし、それで汚職政界やその不健全な社会的基盤が刷新されるものではない。  かかるとき、かかる機会に、われわれは全国協議会結成準備のための全国連絡会議を催すものである。若しわれわれの会議が、所謂「右翼」の大同団結にとどまり、或は小数グループの自己満足的な集合に終るならば、歴史的、時代的意義を担うことはおぼつかない。現在国民大衆の渇望し祖国の危機打開に望ましいものは、広汎な国民政治力に他ならない。故にその要望に応え得るような運動の推進、方針、組織について、既往に囚われるごとない内容の会合たらしめねばならない。」というようなことを申しております。この場合にも一応戦前のいわゆる右翼テロ行為というものを考えて、それを否定するという表現を使つておるのであります。一概に右翼と申しましても、その掲げる政策、綱領、あるいはそれを達成する手段という観点から見まして、種々雑多と申してよいのでありますが、しかしその一般的、組織的動向というものは大観して、ほぼこの辺に現在の段階では要約できるのではないかというふうに考えておるのであります。従つてこのよう右翼テロというものを考える分子が、中には絶無、とは言えないと思うのでありますが、全体としては、そのような戦前の旧式なやり方では、右翼といえども目的を達成することはできないというような反省の結果、結局国民の間の思想啓蒙ということを掲げまして、それの政治的な結集をはかるというふうに方向は向いておると思うのであります。しかし先ほど申し上げたように、いろいろな分子がございますから、われわれの方としては実は一刻もゆだんはしておらないのでありまして、微力でありますけれども始終いろいろな動向を注意して見ており、もし破壊活動防止法に申します特定の政治的な目的をもつてする殺人、放火その他の暴力行為を手段とするよう団体の疑いがあるということになりますれば、正式に破壊活動防止法による調査の対象といたすつもりであります。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 今あなたが読んでくださつた文章の中にはなはだ穏やかならざる文句があると思うのでありますが、十二分なる御調査を願つて、不測の災いのできないようにお願いしたいと思います。ただ私が政府になお総括的にお尋ねしたいことは、会回の大磯の侵入事件、この青年の思想動向及びこの青年がかかる暴行をいたすようなつた動機、理由というものは、よほど分析して研究していただきたいと思います。そこで今一つお尋ねいたしますが、この葛原法生吉田を殺そうとするあるいは吉田に対する非常な憎しみを感じた、その理由の中に先般犬養法務大臣がやられた検察庁法第十四条の発動、汚職があるにかかわらず自由党の重要な人物あるいは政府の大官だというようなことによつてこの取調べを妨害するというようなことに対して、これではとてももう国家の正式な機関を待つてつてはしかたがないというようなことが殺意を生じた理由の一つになつている人じやないか、こう思われますが、その点の報告はありませんか。
  33. 井本臺吉

    井本政府委員 さような点に関する詳細な報告は受けておりません。
  34. 猪俣浩三

    猪俣委員 私はとくとそういう方向からよく調査研究していただきたい。これがはしりであります。終戦後私は初めてだと思うのです。もちろん先般何か爆発物を郵送したとかいうことがあつたのでありますが、その人間はわかりませんので、どういう動機、考えからやつたかわかりません。会回はたまたまやつた人間がつかまつておりますから、それをよく御調査なさるならば、一部の輿論を現わしているものなのです。政友会はなやかなりし時分に原敬が暗殺されました。それはあの当時私ども青年でわかつておりますが、もうああいう輿論が一部にあつた。ですからこういう事件が起りますには、そのたびに政府はよほど反省しなければいけないと思うのです。それを押し切つて行きますと、わが国の民主政治は破壊されるような不祥事がまたここに繰返されることが起つて来る。そこで私はその原因を先にお尋ねしたのです。何が原因で縁もゆかりもない吉田さんを憎み、吉田内閣を倒さなければならぬと考えたのであるか。私はその行為はどこまでも憎まなければならないが、その動機については綿密なる調査をしてほしい。なお私は重ねて聞きますが、その動機についてもつと詳細なる報告が来ているんじやありませんか。もう一ぺんお尋ねいたします。
  35. 井本臺吉

    井本政府委員 詳細の報告はまだ来ておりません。ただいまお話があるまでもなく、私どもといたしましては本件犯行の動機につきましては綿密に調査いたしまして、かようなことが二度と起らぬように諸般の手続をいたしたいと考えている次第でございます。
  36. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務大臣にお尋ねいたしますが、かような今回は幸いにして大した人物でもないし、やつた行為も児戯に類しておるのでありますけれども、これがいわゆるはしりとなりましてはたいへんなことになる。その意味におきまして重大だと考えるのでありますが、その原因の中には私はいろいろあると思うのですが、国民に非常なシヨツクを与えたのは、あの検察庁法の第十四条の発動であります。私ども地方に遊説に参りましても、非常にそのことに対して地方民は関心を持つておる。そこで私は法務大臣にお尋ねをする。あの十四条の発動は、あなたは今振りかえつてみて間違つてつた考えるか。それが第一点。将来ああいうことをまたやる気であるかどうか。これが第二点。これについてお尋ねします。
  37. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 先刻来のお尋ねに対しましても一応お答えをいたしたいと思います。かつて五二五事件に始まりました暴力行為というものが遂に東亜の大戦争なつたのでありまして、しかしてその結果敗戦いたしました。その敗戦の結果といたしまして民主主義の実現となりましたが、これもまた行き過ぎの民主主義なつたのでありますがゆえに、なかなか昨今のような反動の右翼が頭を上げかけまして、ただいまはしりだと仰せになりました大磯事件のごときもこれであるのであります。これらについては私どもはただいま政府委員が御答弁申し上げましたごとく、いずれも非でありまして、こういう極端な行動はあくまでも取締らねばならぬ、こう思つておるのであります。しかして民主主義猪俣君と同様にあくまで守るためには言論界及び政治家及び学者、識者の良識と指導にまたねばならぬと思いますし、また国民大多数の聰明なる判新と自重を望んでやみません。  そこでただいま検察庁法十四条の指揮権の問題でございますが、私は、一部あるいは見方によりましていろいろでありましようが、これは国家の大局の上より見ましてやむを得ざる処置であると思いますが、これに対しまして批判はあろうと思います。また将来の問題はどうするかということでございますが、将来の問題は具体的事実が判明いたしまして、具体的事実が示された場合に私の良識によつてこの判断をいたしたい、かよう考えておるのでございます。要するにこの行き過ぎの結果といたしましていろいろ世間の誤解を招き、これが暴力沙汰になるようなことは、猪俣委員の御心配になるよう政府としては今後十分に戒心いたしたいと存じておる次第でございます。
  38. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは警察当局に聞く問題になるかもしれませんが、法務大臣も御関係があると思います。近ごろ御存じのように社会現象の一つとして何と申しますか、卑近な言葉で言えば、エロ犯罪、ことに少年においてそれが多い。これは奥に顕著な現代の病的現象だと思うのであります。もちろんこれはいろいろなことから起つて来るのでありまして、一方的にだけ処置はできない、法律だけ強化して処置することは困難と存じますけれども汚職の発生原因に対しまするやはり法律的な対策ということも、これは一つの対策でありまして、エロ犯罪の防止につきましても、やはり法律的な対策が必要ではないか。私ども本屋の店頭へ立つて雑誌なんか読みますと、実に驚くべき雑誌が公然と陳列されておる。これは二十前後の青少年が見ましたならば、私ども自分の若かりしころを回想して、実に苦痛にたえないような記事が満載されておる。かようなことが一体野放図に許されていること、もちろん検閲制度をしてはならぬというからこうなつたのかもしれませんし、私ども考えからすればいわゆる占領軍、アメリカ軍の占領政策の一つとしてかような野放図なエロ的出版物が行われておる。あるいはストリツプ、ストリツプなどと申しても、どうもはアメリカかフランスあたりが本場だと聞いておりましたが、昨年見て参りましたけれども日本ようにひどくないと思う。もつと芸術的だと思うのです。一体かようなことをそのまま放任しておいていいものであろうか。これは青年が共産主義に走ることをエロによつて鈍らせようとする麻薬の働きをするんだという説明をする人がある。そんな深謀遠慮かもしれない。しかし現在の汚職に、テロに、エロ、これは政府として放任すべからざる根本的な政策の中に編み込まなければならぬ問題ではないかと考える。私も数人の子供を持つておりまして、案は寒心にたえないのであります。それはもう性教育なんというものはおやじ以上なんです。性教育の必要なんかありません。驚くべきことです。私どもの青少年の時分考えられない状態です。私ども頑固おやじなんていわれかもしれませんけれども、どうもかよう状態を放任しておくということは容易ならざる弊害を生ずると思うのでありますが、これに対して今どういう対策を立てておられるのであるか、大きな政策として私は御意見を承りたいのであります。これでよろしいのかどうか、よろしからざるものなりとするならばどういう対策があるか、これをお聞かせ願いたい。
  39. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいまエロの出版物取締りに関して御質疑がございました。私といたしましてもいかにも猪俣君の御説に同感で、同憂にたえないのであります。ただいま占領政策というお話がございましたが、私は占頭政策は義務教育におきましても御承知のごとく修身、歴史、地理などというものを廃止して、音楽だとか、音楽はけつこうでございますが、青少年に対しまして享楽本位のよう態度、教育方針をやつたことなどが大分たたつておることであると思うのでございまして、私ども街頭で見ましてもパンパンと外人が手を組んで行くのを苦々しく日限視するよりも、むしろ少しく美里の情にたえぬかのごとき状態を示しておるということは、まことに苦々しく思つておる次第でございます。ことにただいま御指摘になりました出版物におきまして私ども同感の至りにたえませんことは、婦人雑誌などにおきましてはまじめなる態度のごとき、たとえば医者の説明のごとき態度をとりまして挑発的の文句、驚くべきエロの文句を並べておるのでございまして、これが思春期の青少年に及ぼす弊害のごときはお説の通りまことに深憂にたえぬ次第でございます。しかしてただいまわが国といたしましてそういう取締りをどうするかということに対しましては、猪俣君御承知のごとく刑法の猥褻文書頒布等の取締りによる以外の方法はないのでありまして、これは何とか教育家、父兄などの識者の力によりましてこれを取締る方法を講じたい、こう思つておるのでございます。ことに不良文書、図画につきましては一定年齢以下の者にはその閲覧を禁ずるような罰則を設けたところもあるのでございまして、今そういう方法を研究中であるのでございます。
  40. 猪俣浩三

    猪俣委員 実は売春取締法案を私も提案者の一人となつて昨日正式に衆議院に提案をいたしたものでありますが、その前提といたしましてもエロ出版物を取締るということがなお大事じやないか、これがあおり立てられて実行行為に移つたとものだけを取締つてつても、元をつかないとしようがないんじやないかというふうにも考えられる、いずれにいたしましても売春取締法のごときもこういう青少年の性的犯罪の温床をつぶす一つの役割をなすと思いまして、私ども提案したのであります。  そこで売春取締法につきまして何か政府では提案を渋つておられ、遂にそれを待ち切れずに婦人議員団が議員提出のごとき形で出したのである、これはどういういきさつがあるかわかりませんが、まつた政府の原案として出すのが順当だと私は思つたのでありますが、今日まで出さない、そこで私どもが出すようにしたのであります。そこでお尋ねすることは、一体政府としてはこういう売春取締法のようなものが法律になるといろいろの事情上何か困る点があるのかないのか、あるいはこれができてくれることをあなた方は望んでおるのか望まぬのか、その政府方針をひとつ説明してください。
  41. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま売春取締法が提案されたが、これに対する政府意見はどうであるかというお尋ねであるのでございます。この売春の問題はなかなか多年の問題でありまして、これにうまく解決をつけるということは容易ならざることであるのでございまして、一は人道の問題と申しまするか、風紀に関する問題と申しまするか、あるいは病毒感染の見地からの問題と申しまするか、いろいろ多岐にわたつておるのでございまするがゆえに、政府といたしましてはただいま法務省内に売春対策審議会というものをつくりまして、学者あるいは経験者、各界の有識者を集めていろいろ審議を煩わしておる次第でございまして、この審議の結果に基きまして政府はとくと考慮いたしまして何らかの対策に出たい、かよう考えておる次第でございます。
  42. 猪俣浩三

    猪俣委員 最後に、この売春取締法の提案につきまして、デマであろうと思いますが、われわれにいろいろのうわさが入る、それは利害関係を持つ貸座敷業者のような者から相当反対運動が行われ、法務省が今まで渋つているのも、それらのいろいろの有力な者の手によつて法務省に働きかけられて、それで提案がなかなかすつと行かないというふうなデマも飛ぶのであります。これはデマだと思うのでありますが、なお今後これが当国会の問題となつて審議されますると、必ず利害関係者から猛烈な何らかの阻止運動が起るのじやないかと思われる。そうするとそれには必ず汚職が伴うのであります。どうぞ警察及び検察庁捜査関係官におかれましては、この審議に伴いまする反対陳情運動、それに関連する贈収賄の問題、そういうものに十二分なる目を光らしておいていただきたい、これを私は今から強く要望しておきます。いろいろなうわさが起りまするので、これは強く法務大臣に要望し、ほんとうの良心に従つてわれわれが法案の審議ができるように、検警庁が断固たる態度をとつてつていただきたい。何か法務省ではあまり賛成しておらぬような疑いもある、その審議会なるものもさつぱりはかばかしく行かない、それで婦人議員団がこういう態度をとつて来た、その陰にはどうも金銭的関係があるのだということも聞くのであります。さようなことを私は信ずるわけではありませんが、今後もあることでありますので、十二分なる御警戒を願いたい。これだけ要望して私の質問を打切ります。
  43. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 関連して、先ほどからのお話を聞いておりまして特に重大だと思うのは葛原某なるものは殺人予備として捜査されておるというのです。それについて重大なる疑念を持たれるのはアドルムを飲んで入つたということなのですが、どういうわけで飲んだのか、またさようなものを飲んで入れば普通の精神状態でなくなるのではなかろうか、それに対する影響はどういうふうに見ておられるか、本件捜査の上において、ことに先ほど来猪俣委員の言われる動機、原因について非常に重大な関係があると思いまするから、これに対してわかつておる程度において詳細なる御報告を願いたい。
  44. 井本臺吉

    井本政府委員 先ほど猪俣さんにお答え申し上げました通り、今まで報告を受けた事実にさような点があつたというわけでございまして、その間の詳細な動機、何ゆえに殺意を抱いたかというような点につきましては、なお慎重に捜査中でございます。ただいまのところは、先ほど御報告申し上げた以外には御報告申し上げるべき材料を持つておりません。
  45. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の言うのは、殺意の動機、原因も重大でありまするが、アドルムを飲んで入つたということが看過すべからざることだ、こういうことです。これは何ゆえに飲んだのか、飲んだ以上は精神状態その他に相当影響があるものと思うが、それらの影響はどうであつたか、これが本件を決定する上に重大だと思いまするから、その点の詳細がわからぬかというのです。もしわからぬとするならば、これは動機、原因と同様になおさら重大に調査してもらいたい、こういうことを私は申し上げるのですが、その点はいかがですか。
  46. 井本臺吉

    井本政府委員 おそらく自殺の目的があつたのじやないかと臆測するのでありますが、まだ本人の飲んだ程度のアドルムでは致死量に達しておりません。従つてこのアドルムを飲みました事情等についても、本人犯行の動機もしくは情状にも重要な影響がありますので、ただいま慎重に調査中でございます。その詳細な結果につきましては、ただいまのところではこれ以上御報告申し上げる材料を持つておりません。
  47. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 もう一つ重大だと思うのは、なるほど講和条約締結後においていわゆる右翼団体が台頭して来たという事実は、かねがね当局からの報告によつて聞いておりまするが、その原因について先ほど猪俣君が言われたのは吉田内閣は反動政治をとつておる、ことに保安庁であるとか自衛隊であるとかいうようなものを認めるからわようなものがだんだん台頭して来る、こういう前提で質問しておられたのである。これに対する政府なり公安調査庁の御答弁がないのでありまするがこれは重大だと私は思う。徐々に台頭して来ておるという事案は動かすことのできない事案でありまするが、その原因についてはいろいろ考え方がございます。先ほどちよつと加藤法務大臣は触れられましたが、むしろ猪俣君とあべこべに、いわゆる民主主義の徹底という点に重きを置いて、民主主義の徹底のための反動ということがあつたのではないかと思われます。というのは、左翼思想の者を助長と言つては悪いかもしれぬが野放図にしておいてそうして右翼思想の者に対しては、極力圧迫しておつたという事実であります。それゆえにそういう考えを持つておる人は屈服しておりましたが、その政策が抜けて来た以上は、今度はその反動として出て来ることは当然考えなければならぬことだろうと思います。私はいいことだとは言わないが、原因がそこにあるのではないかと思われるのであります。これは将来にとつて日本の政策上重大なる影響のあるごとと思いまするから、私の考えが間違いであるか猪俣君の考えが正当であるか、まず法務大臣からお答え願いたい。――これは大事なことですからもう一度申し上げますが、先ほど猪俣君の御説を聞いておりますと右翼団体が頭をもたげて来た、それは古田政府反動政策から起つて来るのである、その反動政策の実例として保安庁を設けるとか自衛隊を設けるというような反動政治をやられて、戦争前と同様のことを行おうとするがゆえに右翼団体がこれに乗じて出て来る、こういう説があつたのであります。私はこれに対して法務大臣なり公安調査庁長官から何らか触れられるものとかと思つてつたが、遂にお触れにならなかつた。それで私はその点を聞きたいのですが、私は猪俣君と全然反対考えを持つておる。というのは、占領政策は民主主義を徹底するということに重きを置かれた。これは悪いこととは思いませんが、そのために右翼団体は極力これを圧迫したが、左翼思想の者に対しては野放図であつた。これは隠すべからざる事実であります。それゆえに共産党もあそこまで行つた。そうしていよいよこれではたいへんだということになつていろいろの政策がまたとられたのであります。これは民主主義を徹底せしむるがための反動であつたと思う。その反動政策が講和条約の締結によつてなくなつたのですから、そこでまたその反動として、今まで押えられておつた右聰が台頭して来るのは私は当然だと思う。台頭するということはいいことではありませんよ。そういうことが原因でこうなつたのではないかと思いますが、私の見解が当つていると思われるか猪俣君の見解が正しいと思われるか、その点に対する法務当局としての御意見を承りたい、こういうのであります。
  48. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 御意見つつしんで拝聴いたしました。
  49. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大臣は御就任早々ですから、そこまでお考えにならぬのならあえて追究いたしませんが、これは刑事局長でもよろしゆうございます。それから公安調査庁長官がおられまするから、これはあなたの方の専門でありますので、この点に対するあなた方の御見解を承わつておきたい。
  50. 藤井五一郎

    藤井政府委員 これは別に保安庁ができたとか、自衛隊ができたから右翼が台頭したと見るべきものじやないと思います。それかといつて反動もございましよう。いろいろ現在の社会情勢等から、あるいは議会主義等に対する不満とかいうようなこと、いろいろな見解が動機をなしておるのではないかと思うのでございます。
  51. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは要するにこういう敗戦後における思想の混乱時代でありますから免れぬと思いまするが、何でもやろうと思うと、そのやることに行き過ぎができて来る。行き過ぎができて来るから、一方のものを助長しようと思えば伸びるかわりに一方のものが圧迫される、そこでこれではいかぬというのでこの行き過ぎたものをとどめてやると、今度は圧迫されたものが伸び上つて来る。これは当然だと思う。私はこれらの両面を考えてやるにあらざれば、今日の日本の混乱状態を治めることはできないのではないかと思う。かような見解から当局の御見解を承るのでありまするが、私はそのように思つている。あなた方がこれらに対して両方の行き過ぎを是正して、中庸をとつて行くようにやることが、今日の日本の混乱をまとめる根本だと考えるのでありますが、その点はいかがでありましよう。またそうであるならば今後さような方策をとつていただけるかどうかをつけ加えてお聞きする次第であります。
  52. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまの鍛冶さんのお尋ねはまことに問題点をお取上げになつたと思うのでありますが、問題は一概に右翼と申しましても、その中で特にどういうものを論ずるかという問題だろうと思います。終戦後のいわゆる民主主義の行き過ぎによりまして左翼階級闘争理論というものが非常に広汎に実践に移されて、これに対する反対の現象としてここに民族あるいは国民の統一の機運が出て参つた、それが右翼の特色だと思うのであります。こういう意味におきましては、右翼がただちに破壊活動防止法の観点から問題になることはございません。ただ問題は、それらのものの中でこれを達成する手段においていわゆる議会主義によらないで、政治暴力によろうというものがあるのかないのかという問題で、このよう政治暴力を持つものが、将来破壊活動防止法の破壊的団体に発展するものとして、特にわれわれの調査対象になるものであります。先ほどおつしやいましたたとえば保安庁法とかあるいは警察法の改正とかいうことが反動であつて、それに関連してこのような動きが出ておるのではないかというような御趣旨を猪俣さんは仰せられるのでありますけれも、私どもはそういうふうな法案自体がどうこうということを全然問題にしておりませんで、問題はそのようないろいろな、たとえば、いわゆる民主主義の行き過ぎ、左翼民主主義の行き過ぎも議会主義のわく内で当然是正さるべきものである。ところが議会主義のわく内での是正が、右翼の一部の人たちの考えように活発に参らぬ、そこに議会主義を否定する右翼というものが出て参る可能性があるということについて申し上げたのであります。決してこの法案自体がどうこうというようなことについて申し上げておるのではございません。
  53. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この点は将来の政策上重大なことであると思いますから、とくと御研究、御留意を願うこととして、もう一ついいでですから売春法に対することを伺います。  現在の風潮、ことに先ほど加藤法務大臣が言われたように、街頭公然と売春婦が売春を行つておるというようなことは、許すべからざることである。何とかしてこれを防止せなければなりませんが、私は売春行為を取締るだけではたしてこれができるかどうかということには相当疑問があると思う。ほかの社会的の方面から考えましても、十分研究せなければならぬ余地がたくさんございまするので、これもひとつ慎重にやつてもらわなければならぬと思うが、それよりももつと手近に、先ほどから問題になりました猥褻図面等の分布の取締り、これはやつておられるかしらぬが、どうも私は手ぬるいように思えてならない。免ればすぐわかることですから、取締ろうと思えばわけのないことであるが、取締りができておらない。さらにまた図画だけじやない、猥褻行為も半公然と行われておると聞いております。私はそういうところを見たことがないのだが、いなかから来る不良老年どもは、たいへんおもしろいところがあるそうだが連れて行かぬか。そういうところい知らぬというと、お前は東京におつてそんなところらを知ぬのかといつてひやかされる実情である。東京の者よりいなかの者がよく知つておる。いなかの人がよく知つておるくらいなら、取締り当局の耳に入らぬことはないと思うのだが、かようなことを取締ることもできないのに、もつと大きなことを取締ろうとしたつてそれはできないことだと思う。私はまずこれに着手して、これを厳格にやられることが大事だと思うが、できないのでございましようか。またやりつつあるか、さらにどういうことになつているのか、ひとつお聞きしたい。
  54. 井本臺吉

    井本政府委員 先ほど大臣から答弁されました通り、現行の法規では刑法の公然猥褻罪以外には取締る規定がないのです。従つて公然猥褻をやつたかどうかという点をつかまえて、公然猥褻に当るということになれば、仮借なく取締りをやつております。先ほどの答弁の中にありました通り、中には医学的な知識を解説するというようなことで、猥褻に当らないのだというような弁解をつけましたり、その他いろいろと弁解の辞を述べております。これがはたして弁解であるかどうか、その間の処置につきましては、刑法の猥褻に当るということになれば、遠慮なしに処分するつもりでございますが、とにかく日本は法治国でございますから、御承知の通り刑法に触れないものは処分できません。その点については、香川県の青少年保護育成条例あるいは岡山県における図書による青少年の保護育成に関する条例というようなもので、ある一定の審議機関にかけまして、青少年に見せてはいけない雑誌、図書などを指摘しまして、それをしいて見せたというような場合には、そう重い罰ではありませんが、ある程度の罰を科しております。さよう方法をとつて青少年に対するエロ本の影響を遮断するというようなことも考えておるのでございますが、その点の調査をしておるわけでございます。いずれにいたしましてももし刑法の百七十五条に触れますれば、私どもといたしましては厳重に処分しておるということを申し上げる次第でございます。
  55. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま鍛冶君の御質問、あわせて先刻猪俣君よりいたしまして売春取締法を法務省が提案を躊躇しておるのは、何か金銭上の問題がひそんでおるのでないかというような御質疑がありましたが、法務省といたしましては、さようなことは断じてありませんから御安心を願いたいと思います。それで先刻も申しましたごとく、政府といたしましては、売春対策審議会というものをつくりまして、売春の総合的対策を練つておりますが、まだ結論を得ません。今回の新聞で拝見いたしますあの法案というものは罰則だけを書いておるようでありますがゆえに、今にわかにこれに賛意を表するというわけには参らぬのであります。この点猪俣君は御退席になりましたが、お答え申し上げる次第でございます。
  56. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の言うのは、取締る考えであるというだけではまだるいというのです。公然行われておる、どういうわけでこれを取締らないか、あなた方にそういう考えがあるならば、取締りの任に当つておるものはもつと厳重にやるという考えがないか、その方が一番手取り早く、また一番大事だ、大きなことを考えるよりか、手近なところで――あれは取締りますということではだめです。われわれは、お前はまだそういうものを見たことはないのかといつて笑いものになつているのです。その点を指摘する。どういうわけでああいうものを摘発しないか、あまりふしぎですから、その点ついでに申し上げます。
  57. 井本臺吉

    井本政府委員 私どもは、目に触れさえすればどんどん取締つております。もしそういう例がありましたら恐縮でありますが、遠慮なしに取調べますから、何らかの形においてお知らせ願いたいと思います。
  58. 小林錡

    小林委員長 古屋委員。
  59. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 私は法務大臣にお尋ねしたいのですが、先刻来大磯吉田総理に対する家宅侵入事件あるいはダイナマイト事件について、その原因は今取調べ中だということでありますが、十分調査をされて御報告願いたいと思うのであります。こういう事犯が行われるに至りました原因について、一体法務大臣はどうお考えになつておるか。言いかえますならば、二・二六事件にいたしましても五・一五事件にいたしましても、当時の政治が非常に堕落をして、議会が信用できないのだ、しかも権力と財力が組織的に汚職をやり、特に権力をもつて法の運営の公正なる施行を妨げておる。従つて国民が、当時の政治情勢、法の運営、こういうものに対して納得が行かないのだ。だから直接行動より以外に自分たち考えを述べることはできないんだいわゆる国民を代表して、正しい社会生活をするための一つの方法としての直接行動に出るんだ。こういうことは東西の歴史が証明しておるのであります。今回の問題も、たとえば造船疑獄にいたしましても、一部の政界人、財界人、官界の人々が組織的に結託して、歴史的な汚職をやつたんだ。だからこれを徹底的に糾明し、責任を明らかにして、国民に納得さしてもらいたいという要望が強いようであります。これは当然だと思うのです。しかるに例の唯一のたよりにした検察庁捜査陣に対するいろいろな障害が出て参りましたので、直接行動に出る者あるいは右翼の直接行動主義者の勃興が行われておる、かように私どもは信ずるのであります。従いまして法務大臣はいかにお考えになつておるか、私は真剣に法務大臣からお答えを願いたいと思います。法務大臣日本の治安や犯罪の予防に対する対策の根本方針をきめなければならぬお方なんです。でありますから、現在の大磯に対する事件の原因は何であるか、法務大臣のお考えをお聞かせ願いたい。
  60. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 今事件捜査中でありますから、結果をまたねば内容のことは申し上げかねますが、えて政治上におけるこういう直接行動というものは、そのときの国民の感情の突発と、またこれを、潜在的と申しますか、やや扇動するような者もあるのでございまして、それで思慮のない者が多く直接行動に出ることは、先刻申し上げた通りに、史上例が少くないのであります。りつぱな人であつて、死んだあとにおいては非常に一世の尊敬を受ける人でありましても、その当時は憎まれて、そういう行為に訴えられる人があることは御承知の通りでございます。南北戦争においても偉人であるリンカーンは逆賊として殺されました。原敬が死なれましたときも、これが実に逆臣のごとき感じをもつて迎えられたのでありまして、また浜口雄幸氏のときもそうであるのであります。私はこういうことは直接行動でなくして、国会というものがありますがゆえに、ここで大いに闘つていただきたいと思います。これが民主主義に徹底することでありまして、いやしくもかよう行為を潜在的にでも容認するがごときことがありますならば、かようテロというものは跡を絶たぬのでございまして、お互いこの点につきましては、先刻来申し上げましたごとく、言論界も、われわれ政治に携わつておる者も、聰明なる、良識ある国民の人たちも力を合せまして、闘いは国会を通じてやる。言論を通じてやる。こういうことに行かなければならない。いやしくも国会ではいかぬ、言論だけではいかぬから、直接行動に出るのもやむを得ないというようなことは、われわれ立憲政治家といたしましては、潜在的でもこれは慎まなければならぬというふうに、先刻の猪俣君の御質問においても私は補足しておる次第でありまして、私どもも将来こういう種をまかないようにすることにまた努めなければならぬのでありますが、政治上の問題というものはどういうことをいたしましても、一面において非難があるのであります。これはもちろんお互い慎んで、かような直接行動の出ぬように戒心しなければならぬことと思つておる次第でございます。
  61. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 どうも大臣のお答えは方法論を言つておるが、この大磯に対する直接行動、いわゆるダイナマイトや葛原の侵入事件、殺人事件の予備であつたということの原因をなすものはどういうところにあるかということを、私は法務大臣にお尋ねをしておるのであります。その点いわゆる現在行われておる吉田内閣政治が悪い、完全でないものが相当ある。特にその中で、先ほど申し上げましたように、政界、財界、官界の一部の者が結託して汚職をしておる。国民の血の出るような税金をごまかしたのであります。そうして民衆が信頼してお願いしておりまする検査陣と対する妨害が行われた。だからそういうようなことが原因になつて、ああいう直接行動が行われ、あるいは右翼団体の勃興、蹶起が行われておるというように私ども考えておりますが、そういうふうな具体的な原因についての大臣のお考えを私は承つておる。政治の混濁、腐敗堕落、法の運営に間違つた点がある。こういうところに今回の直接行動の原因がある、ないか、その点に対するお考えを承つておるのであります。
  62. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 汚職事件が生じまして世間を騒がしておることは、まことに政界のため、議会政治の上に遺憾であるのであります。これは今捜査中の問題でありまして、どう判明するか、その結果をまたなければならぬのであります。ただ十四条を発動して強権でこれを押えてしまうということが世間の反動を招いて、そういう直接行動に出るのはやむを得ぬではなかろうか、かよう意味を含んだような御質疑であろうと思うのであります。それはやはり政治上いろいろ意見のあるところでございまして、これは後世史家と申しますと偉そうでありますが、いろいろ批判のあることだろうと思います。吉田内閣といたしましては、今国家の重大なる問題を解決するまで勾留、拘束を差控えてやれということでありまして、批判はいろいろあるでしようが、これも一つのやり得る行為であるのでございます。
  63. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 どうもそこのところが納得行かぬのでありますが、法務大臣に承つておるのは、ただいまの法務大臣のお答えの中で、原因または結果がわからない、捜査中であるからと言つておりますけれども法務大臣の部下はすでに政党の一部の人を起訴しております。役人を起訴しております。財界人を起訴しております。その事実もは御否認にならぬと思います。そういうよう汚職事件、ただいま検察庁の十四条の問題を御説明になりましたけれども、十四条の指揮権を発動をして、いわゆる佐藤栄作氏の逮捕に対する稟請をやめさせた、そういうような具体的な事実が、今回の大磯に対する葛原の直接侵入事件、ダイナマイトを届けた事件、あるいは右翼救国団体の勃興し台頭するという動機となつておる、こういうようにお考えになるかならぬかを私は承つておる。そういうことを具体的に私は承つておるので、意見や後世の歴史の問題ではないのです。私どもはそれが原因だと思う。結局法務大臣のただいまおつしやつております。それが原因として、国会にもたよれない、議会制度否認の問題になることを、私どもは一番おそれておるのです。この議会制度を否認する団体が勃興して、活発な活動をするに至つた原因は、議会活動が十分でない、議会活動がそういう人たちに納得を与えていないというところに、私は起因すると思う。従いまして、そういうような具体的な事実を原因として、大磯に対する葛原の侵入事件が行われ、あるいはダイナマイトが送付されたのであるか、さようにお考えになつておるかということを私は承ればいいわけです。その点を率直に、簡明に御答弁願いたいと思います。
  64. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 今度の十四条の行政権の行使が異例であつたということは、これは前犬養法相も認めておるのでございます。それは国家の今の情勢もまた異例であるがゆえに、やむを得ぬという立場に立つておるのでありますが、これは私もしばしばここで申したごとく、議論のあるところでございます。あなたは議会の活動が十分でないと仰せになるのでありまするが、議会活動は十分されておるのであります。ことに野党の諸君があらゆる機会において議会活動を十分されておりますがゆえに、私は議会活動によつて、かような直接行動のごときは避くべきものであるというふうにしたい、こう思つております。議会活動が十分でないからこういうことになつて来たのだということは、私は信じません。野党の諸君があらゆる努力をして、議会活動はされておるのでございます。こういう不心得の者はいつの時代にもあるのでございます。これこそ先刻来申し上げるごとく、冷静なる国民の批判、良識と申しますか、あらゆる方面の者が、冷静にそういう直接行動にせずして、議会活動によつてやる。そして直接行動の防止に努めていただきたいと思うのでありまして、皆様の議会活動は十分過ぎるほど十分であると私は考えておる次第であります。
  65. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今の議会活動が十分であつたかどうかは、これはお互いの議論でありますから、議論はやめます。但し私の申し上げておるのは、直接行動をするに至つた動機に、今回の造船汚職その他の汚職事件などが原因になつておるとお考えになつておるかどうかということを、私は承りたいのです。と申しますのは、今後の治安取締り、犯罪予防の一つの万策をする上において、法務大臣のお考えが重要な関係を持つわけです。私どもは今後の日本の治安の上に、暴力革命が起き、議会否認の思想が勃興し、そして直接行動が盛んになることを、国家の将来のためにまことに悲しむものであると同時に、何とかしてさよう行動に出ることがありとするならば阻止しなければならぬ。阻止いたしますには、その直接行動のよつてつてつた原因に対して、間違いない把握された考えを持たなければならぬ。ことに法務大臣におきましては、この点は私が申し上げる必要もないほど明らかな事実だと思いますので、大磯吉田総理官邸に対する偉人一件、あるいは殺人未遂でございますか、爆弾の送付されたようなことが、一体汚職事件関係を持つているかどうか、あるいはただいま法務大臣のおつしやられた検察庁法の第十四条の指揮権発動などが、原因をなしておるかどうかという、大臣のお考えを承りたいのであります。
  66. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 今度の犯行の動機は、先刻来申し上げましたように、目下取調べ中でありまして、吉田首相に反感を持つておるということは来集でありまするが、しからばいかなる点において反感を持つておるかということは、捜査中でありまして、ただいまそれをここでお話することは遠慮いたしたいと思います。
  67. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 私はその点がどうも納得が行かないのですが、あなたのお考えはどうかということを私は承つておるのです。葛原がどういう考えを持つてつたかということを聞くのじやない。大臣がどう考えておるか。その考えがなければ犯罪予防の方針は立たぬと思う。こういう事案が出ておりまする一つの具体的な事実、社会事象というものは明らかです。この事実に対する法務大臣のお考えを承りたい。どうお考えになつておるか。言いかえますならば、政界の混濁堕落に原因しておるのか、あるいは捜査陣の法の運営に対するところの妨害に原因をしておるのか、あるいは吉田内閣政治が悪いために、国民が生活に困つてつて、一方では非常なぜいたくな生活をしておる、言いかえますならば、一方であなたの部下である人たちが生命を賭して捜査に従事いたしております場合に、その大元締めである大臣が料理屋に行つて平気で遊んでおる、そういうようなやり方、いわゆる官紀の堕落が、本件よう事案を起す原因になつておるのかどうかという大臣のお考えを承つて、そうしてしからばその後に行われる方策いかんということを私は承りたいのです。そのお考えはどうかという大臣のお考えを承りたい。その捜査中の事実、葛原がどういう意思でやつたかということではない。葛原がそこに侵入して、吉田首相を殺そう、あるいは傷つけよう、あるいはやめてもらおうということをやつた事実は、これはあるわけであります。その事実に対する大臣のお考えを私は承りたい。率直にお答えを願いたいと思います。
  68. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 政治上の問題について反対の気持を持つておる者がそういうことをいたしたということは、動機がどこにあるか、政治上の問題について反対をいたしておるということであろう、こう思うのであります。こまかいことはわかりません。想像にすぎません。反対の人が政治上の反対の立場にあつて、言論だけではいけないから、直接行動に来たのだろう、こう思うのであります。
  69. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 これはもうそこまで押しても、やむを得ず大臣はこれに対する具体的なお考えを持つていないと私どもは承ります。  進めまして、しからばこういうような事象に対する大臣対策はどうするか。ただいま猪俣委員に対し、また私に対する御答弁の中に、文化人、報道人、聰明な国民の協力をまたなければならぬ、これはむろん当然の話であります。あに大臣でなくとも、われわれでも国民全体がそう考えております。しかし犯罪予防の立場からその責任を持つておりまする法務大臣は、あるいは有名な政治家に対し、あるいは相当の地位にある官界人に対して、かような直接行動が行われるよう関係は、なきにしもあらずでございます。今の情勢で行きますと、新聞その他の言論機関などに現われております国民の不平、不満というものは、相当あるように私ども考えております。従いましてそういうような直接行動に対する法務省としての根本方針をどうお立てになつておるか、具体的にどうするか、抽象的でもけつこうでございますから、これをお答え願つて、私どもをして安心させていただきたい。もしもその点に欠ける点がありますならば、われわれ国民も微力でありましても協力するにやぶさかでない。日本の民族の幸福と将来の発展のためには、われわれは直接行動暴力行動、さようなものを絶対的に排撃いたします。いわゆる民主主義のルールの精神を基調とする議会政治によつてのみ、私ども日本政治は発展し、日本国民の幸福があり得ると考えております。でありますから、かような直接行動に対する具体的な方策いかん、御答弁を願いたいと思います。
  70. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 対策につきましては、私は先刻来お答えしたことで尽きておるのありまして、一面におきましては取締法を厳重に施行いたしたいと考えております。
  71. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それでは私は具体的に承りましよう。今までこれはいろいろ議論にもなりましたし、非難も受けたのですが、一本あなたの指揮監督のもとに置かれております部下の捜査陣におきまして、一億になんなんとするような金を使つて、国の将来のために、私どもから見ますならば血みどろで捜査が続けられております。そうして御承知の通り、中にはたしか藤井という検事だと思つておりますが、気の毒に過労のために生命まで犠牲にいたした、さようなときに、上司犬養さんは赤坂の料亭で酒を飲んでおつたということも事実である。そういうようなことをまず私は、今の法務大臣のお答えでは、言論人、聰明なる国民の協力によつてと言つておりますが、協力をするには基本的に考えなければならぬ。法務省内部において法務大臣が自己の行動、自己の日常の起居に範を示して、司法部の信頼を傷つけないよう行動に出られて、そうしていわゆる司法部の方たちが一体となつて今回のような幾多の汚職事件を徹底的に捜査せられて、いろいろ妨害がございましても、依然として捜査がされて、その責任の所在を明らかにし、将来さようなことが再び行われないような一つの処置を願いたい。これは国民全体の司法部に対する要望であると同時に、炭に司法部を信頼しているための強い要望だと私は思う。従いましてまず第一に、司法部内におけるところのあなたの指揮下において、上下一体となつて範を示すということの態度をとられるかどうか。言いかえますならば、もつとはつきり申しますならば、司法部の内部において捜査の妨害をしております。あるいはその検察官に対するいろいろの妨害行為――これはさような妨害行為をいたしましたので、私どもからただいま告発をしておりますが、そういうような問題について徹底的に厳粛にこの捜査が行われる、言いかえまするならば、捜査の厳粛であり、公平なる点と司法部内の上下一体、精神的にも実質的にも一本になつて、まことに国民の信頼を得られるような態勢を整える決意がございますかどうか、こういうことを私は一応承りたいと思う。
  72. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 今回の汚職事件に関しまして、検察当局の熱意をもつて捜査に当られましたことにつきましては、私は深く敬意を表しておる次第でございます。  ただいま御質問中に、犬養君の私的行為についていろいろございましたが、前法相の私的行為についての批判は私は一切避けたいと思います。私自身といたしましては、身を持することきわめてまじめに、自粛いたして今後の行動をいたしたいと存じます。ごとに私自身のことを申してはまことに相済まざることでございますが、きようまでまじめにやつて来たつもりであります。一層謹厳なる態度、素行、平素の私自身の態度は、まじめなる行動に出たいと思つておる次第でございます。
  73. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そこで私はこの捜査陣に対する妨害行為の実は告発をしたのですが、それをすみやかにお調べ願いたい。もう一つは今回の汚職の原因になりました政党に対する、政府との関係を持つておる人々の政党献金と申しましようか、寄付金に対しても、私ども吉田総理大臣と佐藤榮作氏を政治資金規正法並びに選挙法違反で告発しております。これが二月になりましたのに、まだ手をつけられておらない。法務大臣の今おつしやつたような熱意があり、謹厳なる立場から公正なる法の運営をいたしていただくという決意がありまするならば、こういう問題については、すみやかに捜査を始めてはつきりしていただきたい。総理大臣が被告発になつているからというので遠慮され、あるいは佐藤榮作氏が自由党の幹事長であるからという立場で捜査を遠慮されたというようなことがあるように私ども考えられるのですが、至急にこれに対する事実の有無を調べ、犯罪が成立する場合におきましては断然たる処置を部下にとらせるような御決意があるかどうか、この点法務大臣に承りたい。
  74. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 さような告発が出ていることは承知いたしておりまして、検察陣におきましては鋭意その捜査に当つている次第でございます。そこに私が私情をはさむ考えはありません。
  75. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 鋭意捜査に当つているとおつしやいますが、告発人が調べられておりません。その事案はどうですか。そんな御答弁は信用しません。鋭意捜査ならば私ども告発人を調べなければなりません。告発人を調べぬというそんなりくつはない。この点は刑事局長がそこにいらつしやいますからその点を御答弁願いたい。
  76. 井本臺吉

    井本政府委員 事務的な問題でありますから私からお答えいたします。政治資金規正法の関係につきましては、告発人にお尋ねしたはずでありますが、お尋ねしていなくても大体の事情はわかつておりますから、これらにつきましては全般的な問題として引続いて取調べを進めている次第であります。  それから有田氏に関する検印の公務執行妨害もしくは脅迫の事実につきましては、これは直接捜査に当つている検事の事件でございますので、そのやり方についてとかく痛くない腹を探られても私ども恐縮いたしますので、この点についての考慮をいたしまして引続き捜査している次第でございます。決して投げやりにしているというわけではございません。
  77. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それで私も安心いたしましたが、法務大臣に要望したいのは、私ども犬養法務大臣に対する不信任案を出したときも、大臣が政党に籍を持つていると、政党に直接関係を持つよう捜査についてはややもすると公平なる完全な措置がとれない――人間としてとれないのが私はほんとうだと思いますが、そういうような域を脱却して公正におやりになるかならぬかという質問をいたしましたときに、犬養法務大臣は、それはいたしますということであつた。ところが自分自身が良心的にお仕事ができないので、やめられたのですが、この点は私どもの心配した通りの結論になつたのでございます。従いまして今後捜査の進展につれましていかなる事象が起きましても、法務大臣はいわゆる司法の総元締という立場から政党政派を超越せられて、そうして公正厳正に破邪顕正の剣をお振いになる決意がございますかどうか、これを承りたいことが一つと、それから特に吉田内閣の生命にも関するような、捜査陣の苦心の結果の三箇月の集積された結論に対して、佐藤さんに対する逮捕の問題についてこれが封ぜられてしまつた。従いまして検察関係におかれましては非常に御苦心をされた捜査が続けられていると私どもは心得ておりますが、今後その苦心の結果さらに新しいそうした事象が現われました場合、言いかえますならば自由党の相当の地位の方、あるいは内閣相当責任の立場の方たちの逮捕の問題が起きましたような場合には、はたして厳然たる御処置をおとりになるかどうか。その御決意の御料弁をいただく前に一言私どもの見解を申し上げたいのですが、検察庁法十四条の問題につきまして犬養さんが発表され、政府の答弁されておりまする、いわゆる国会において重要案件の審査の見通しがつくまでは、逮捕を延期するというよう理由、さようなことの判断を内閣がすべきものでない、法務大臣がすべきにあらずして、これはやはり国会がすべきものだと私は思う。佐藤さんの逮捕状を発行することが、国の重要なる案件の審査のために、非常に支障があるんだ、あるいは支障がないんだ、かような判断は、国会自身がやるべきものでありまして、従いまして、法務大臣内閣がこれをすべきものでないという議論を私たちは持つておりますから、あの犬養法務大臣の十四条の指揮権発動は、まことに不明朗であり、承服ができない、かような立場から考えておりますので、かようなことをつけ加えまして、ただいまの二点について、法務大臣の御答弁を承りたいと思います。
  78. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 二つ合せてお答えいたします。私の態度は、公正に行きたいと思います。なお捜査陣の苦心の結果が現われましたときには、やはり今申しましたごとく公正な態度で行きたいと思つております。
  79. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 どうかさような御決意を実践に移していただくことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  80. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 ちよつと関連して、一、二法務大国その他の方に質問いたしたいと思います。先ほど来吉田総理私邸における二、三の事件に関連しての質問がございましたが、新聞で見ますというと、池田自由党政調会長の宅とか、あるいは小笠原大蔵大臣の宅等に脅迫状が舞い込んだというような報道があります。吉田総理の場合におきましても、ダイナマイトを送つたり、あるいは葛原事件が発生しましたり、就職依頼というので、吉田総理を訪問したり、あるいはまた金がないから金を貸してもらいたいというので訪問したりする事件が、ほとんど時を同じゆうして、こう発生しておるということは、どうも私ども、ごく常識的に考えてみましても、何かそこに一連の関係があるのではないかというようなことを思おせられるあけであります。加藤法務大臣は、一体こういうふうな事件は、散発的な、偶発的なものだというふうにお考えになつておるのであるか、あるいはそこに思想的、あるいは政治的な二つの系統のある事犯のようにお思いになつておるかどうか。もちろんその詳細については、目下捜査中で、原因はつまびらかになつてはいないよう報告がありましたので、そのようにも考えられるおけでありますけれども、少くとも検察権の運用に重大な立場を持つておられるところの法務大臣としては、ただ漠然と現場検察官の捜査にまかせつぱなしにしておくというような問題ではないと私は思うわけであります。おそらく加藤法務大臣もその点に思いをいたされて、この問題解決の方法等について何かとお考えになつており、また検察権の一般の運用についてどうしなければならぬというようなことを御研究になつておると思うのでありますが、その点について法務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  81. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 今回のテロ類似行為は系統があるかどうかということでございますが、それはまだ取調べてみなければわからぬと思います。思うに、これらのことは、ただいまの政治上の興奮と申しますか、憤慨と申しますか、その一時的現象であろうと思うのであります。法務省といたしましては、これらのことにつきまして研究をいたしまして、できるだけ未然にこれを防ぐようにし、また現われたることにつきましては十分処置いたしたい、かよう考えております。
  82. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今の法務大臣の御答弁は、これらの事件は一時的な興奮から散発的に、何らの系統なく起つておるもののよう考えていらつしやるように受取つたわけですが、私はそう簡単に、各省が個々ばらばらに、いろいろな事情から憤激の余りこういう事件が起つたんだというようなふうに片ずけてしまう考え方は、検察権運用の重大な立場にあられる法務大臣として多少ここでお考えになる必要があるじやないか、こう思うわけであります。すなわち、世間では暴力的な団体の台頭ということを非常に心配している。それが左翼であろうが右翼であろうが、あるいはまたその他のものであろうが、ともかくも系統的な大規模な暴力的な行動の起つて来ないように何か対策を講じなければならぬということをみな心配しておるわけなんであります。そこでこういう暴力的な行動に出るかもしれないという団体の組織あるいは行動等について、この場合法務大臣としてお考えになることが必要であると思うのであります。ただこの事件を個々の刑罰法規に照して、厳重に取締りをしさえすればよいというようなことでは、捜査自体も完全にできないでしようし、また犯罪の予防という目的も達し得ないと思うのでふりますが、左翼団体とか右翼団体とか暴力的な行動に出るかもしれないようなものに対する対策を、法務大臣としてはどのようにお考えになつておられますか、この点を重ねてお尋ねいたします。
  83. 藤井五一郎

    藤井政府委員 いわゆる左右のテロ団体に対しては、私ども破壊活動防止法見地からしてその調査に当つておりまして、万一規制処分に出なければならぬというよう状態になれば、慎重考慮の上その処置に出るかもしれません。今は問題になつていもテロ団体というものについては、まだ確たる資料を持つておりません。
  84. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今の問題は私は加藤法務大臣の御答弁がいただきたかつたわけなんです。と申しますのは、法務大臣として日本の治安維持という重責を果されるためには、私が今お尋ねをした問題はきわめて重要な問題だと思うのでありまして、これらに対する対策法務大臣がお持ちにならぬというようなことであつたのでは、日本のために悲しむべきことであると思うのであります。もちろん法務大臣は就任早々でありまして、私はこれを強く法務大臣に責めようとするのじやないのですけれども、この点を十分意を用いられて、そうしてしつかりとした対策をお立てになつて、その対策が完全に実行できるように、機構の問題なりあるいは待遇の問題なりその他についても考慮を払われなければならぬと思うのであります。そこでお尋ねをいたしたいのは、警察法案の審議等の場合しばしば問題が起るわけでありますが、公安調査庁の存否の問題、かりにそれを存在せしむるとしても、その機構、陣容の拡充等の問題についてしばしば論議がかおされるおけでありますが、加藤法務大臣公安調査庁の存否についてどのようにお考えになつておるか、あるいはそれを存在せしむるものとして、その制度を将来どのように発展させようというふうなお考えであるか、これはすなわち団体的なテロ行為取締り等に関してもきわめて重要な問題でありますから、それについて加藤法務大臣のお考えをお尋ねいたす次第であります。
  85. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 このテロ行為につきましては、高橋君のお説のごとくこれは重大なる問題でありまして、ただいま私が具体的にその対策をどうするかということはなかなか簡単に答えられぬのでございますから、それぞれ担当専門家を集めましてその対策を考究いたしまして対処いたしたいと存じておる次第でございます。かつまた公安調査庁はただいま最も必要と信じておりますがゆえに、この機能をますます活用いたしたい、かよう考えております。
  86. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私のお尋ねしようということについての的確な御答弁のいただき得ないことを遺憾に思うわけでありますが、ただ私は、この際法務大臣が検察権の運用について真剣にお考えくださつて、そうしてもちろん部内関係者その他等からもいろいろと資料を集められて――法務大臣の仕事は、要するに法務大臣自身も御存じの通りに、正しいことをやろうと思えばそれで勤まる仕事だと私は思うのです。ただ法務大臣が、検察権の運用等について、ちよつとでも正義の観念に反した曲つたことでもやろうとすれば、これはなかなか容易なことではないと思うのでありますが、真に良心的に、そして非常な責任感を持つて、そうして法務大臣の教養の上に検察権運用に関する識見をお立てになつて行けば、できないことはないと思う。私は日本の社会の治安維持ということについて、現在きわめて重要な段階にあるということを痛感いたしますから、法務大臣もその点を真剣にお考えいただきたいと思うのであります。それにはただ刑事政策をこういうふうに立てればいいというだけではない。それを実行し得るように、そういうふうな機構なり物的、人的な整備ということその他について、よほど具体的な方法をお立てにならなければ、ただ宣伝屋の広告のようなことに終ると思うのであります。特に私の憂えますことは、犬養法務大臣当時の検察庁法十四条の異例――異例と申しますのは、あのように検察首脳部と法務大臣意見の違つた指揮権の発動ということが異例なのである。これはほとんど両者意見の一致したような場合が多い。その間にこの十四条の指揮権の発動はなされておると思うのでおりますが、そのような異例な世に珍しい両者食い違いの指揮権発動があつたことによつて、検察陣容も実はいろいろの不平もあり不満もあり気を腐らせておるところがあると思うのであります。加藤法務大臣はそのあとを受けてのことですが、それらについての十分の対策を講じられなければ、これはひとり法務省部内の問題だけではない、国家全体の大きな問題であるということを十分お考えになつて、物的にも人的にもほんとうに十分の設備をされて、そして正しい検察権運用の精神を高揚されて、これを健全に発展されるように指導して法務大臣の職責を果されなければならぬと考えるわけでありますが、こういうことについて法務大臣の決意を伺いまして、時間もございませんから本日はこれで質問を打切りたいと思うのであります。
  87. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま高橋君の御親切なる御忠告慎んで承りまして、御趣意に沿うように努力いたしたい、かよう考えております。
  88. 小林錡

    小林委員長 それでは本日はこの程度にしておきます。明日は午前十時より民事訴訟法等の一部を改正する法律案外二件の審査小委員会、午前十時三十分より委員会を開会するこことし、本日はこれにて散会いたします。   午後一時三十九分散会